JP2006024650A - 電子トンネル効果を用いた熱電素子 - Google Patents

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Abstract

【課題】 構造を複雑化することなく、従来の熱電素子と比較して飛躍的に安定した冷却および/または加熱特性を示す熱電素子を提供する。
【解決手段】 本発明の冷却素子10(熱電素子)は、陰極11と陽極12とが真空空間14を介して対向して配置されており、陰極11に負電圧を印加するとともに陽極12に正電圧を印加することによって、陰極11から放出された電子を、真空空間14を通過させて陽極12へと移動させ、陰極11を冷却するというものである。この冷却素子10の陰極11は、強相関電子系材料からなる層11に低仕事関数材料からなる層13(電子放出材料からなる層)が積奏された積層構造を有しており、低仕事関数材料からなる層13は、陽極12と対向している面に配置されている。
【選択図】 図1

Description

本発明は、電子トンネル効果を用いて一方から他方へと熱を移動させることによって、冷却および/または加熱を行う熱電素子に関するものである。
熱電素子は、一方の電極から他方の電極へと熱を移動させることによって、一方の電極を冷却し、他方の電極を加熱することができる。このような性質を有する熱電素子は、小型冷蔵庫やレーザ発信器の冷却装置の電子冷却素子として利用されている。
このような電子冷却素子としては、ペルチェ素子、電子トンネル効果を用いた冷却素子、ジョセフソン接合素子がある。以下、各素子について簡単に説明する。
ペルチェ素子は、図6に示すように、金属51とN型半導体(陽極)52、P型半導体(陰極)53とを組み合わせ、N型半導体側を正電位、P型半導体側を負電位にすることにより、金属51が冷却されるというものである。一般にペルチェ素子の冷却性能指数(COP)は、以下の式で与えられる。
COP=(α−α)2÷{√(ρ)+√(ρ)} …(1)
ここで、αは半導体の熱起電能、ρは半導体の比抵抗、kは半導体の熱伝導率を示す。また、添字p、nはそれぞれP型、N型であることを意味している。上記COPの値が大きいほど冷却能力は高く、高効率の冷却素子を得ることができる。
また、電子トンネル効果とは、真空もしくは絶縁体を隔てた対向する2つの電極間を電子が移動する現象であり、より詳しくは、真空空間に形成されたエネルギー障壁を、所望のエネルギーをもった電子が通過することによって起こる現象である。このような現象を利用して冷却を行う素子が、電子トンネル効果を用いた冷却素子である。
ジョセフソン接合素子は、電子トンネル効果の一種である「ジョセフソン効果」を用いた半導体素子であり、図7に示すように、金属(陰極)61、絶縁トンネル障壁(絶縁体)62、および超電導体(陽極)63から構成される。ここで、超電導体63はエネルギーギャップΔを有している。任意の動作温度Tにおいて、金属61中のいくつかの電子はフェルミ・レベルE以上の状態まで熱的に励起され、それに対応しているE以下のホール状態を残している。任意の動作温度Tにおいて、金属61と超電導体63の間にバイアス電圧Vbiasを印加すると、金属61中の、E近傍のエネルギーを有する電子のうち、エネルギーギャップΔとバイアス電圧による電子エネルギーeVbiasの差より大きい電子のみが絶縁トンネル障壁62を通過することが出来、その際に金属61が冷却されるというものである。なお、絶縁トンネル障壁62を通過して超電導体63に到達した電子は準粒子となる。
また、電子トンネル効果を利用したヒートポンプに関する文献として、特許文献1がある。このヒートポンプは図8に示すように、陰極71および陽極72と、これらの電極に各々負電圧と正電圧を印加して電流を供給するための電源73と、両電極の表面に被覆された低仕事関数材料74とで構成される。陰極71と陽極72はスペーサー76を用い、0.1〜1μmの間隔の真空空間75を介して、対向配置されている。低仕事関数材料74は、動作温度でトンネル電子77、及び熱電子77を放出する材料であり、仕事関数が約0.3eV以下のものが用いられる。上記構成により、低仕事関数材料74の表面から、その接触する電極の温度によりエネルギーを供給されたトンネル電子77、及び熱電子77が真空空間75内に放出される。
電源73を用いて図8に示すように電圧を印加すると、陰極71からトンネル電子77、及び熱電子77が放出され、真空空間75を移動して陽極72へ取り込まれる。陰極71からトンネル電子77、及び熱電子77が放出される際には、陰極71の有する熱は冷却される。一方、運動エネルギーをもったトンネル電子77、及び熱電子77が供給される陽極72は温度が上昇する。このようにして陰極71が冷却されると同時に陽極72は加熱されるというものである。
上述のようなヒートポンプに用いられる低仕事関数材料の具体的な例として、特許文献2には、クラウンエーテルやアザクラウンとアルカリ金属、アルカリ土類金属との錯体、ダイヤモンド、サファイアにアルカライドを蒸着した化合物が、特許文献3には、セシウムとモリブデン、ニッケル、プラチナ、タングステンなどとの化合物が、特許文献4には、ダイヤモンド、あるいはナトリウム、カリウム、ルビジウム、リチウムなどの不純物をドーピングしたダイヤモンドなどが記載されている。
米国特許第5722242号明細書(登録日:1998年3月3日) 米国特許第5675972号明細書(登録日:1997年10月14日) 米国特許第5994638号明細書(登録日:1999年11月30日) 米国特許第6064137号明細書(登録日:2000年5月16日) 特開平4−289628号公報(公開日:1992年10月14日) 国際公開公報 WO99/13562(公開日:1999年3月18日) APPLIED PHYSICS LETTERS、Vol.78、No.17、2572頁、2001年 CHEMICAL PHYSICS LETTERS、Vol.166、No.2、133〜136頁、1990年
上述のペルチェ素子は、コンプレッサーに比べコンパクトな設計が実現でき、またCOなどの老廃物を出さないため、小型冷蔵庫やレーザ発信器の冷却など、幅広い用途で実用化されている。しかしながら、従来のコンプレッサーやファンに比べ冷却能力が極端に低いため、高コストとなってしまう。例えば、容量60Lの冷蔵庫において、庫内温度を57℃から5℃に冷却する場合の冷却性能指数(COP)を計算すると、コンプレッサー式では約1.2であるのに対し、ペルチェ式では約0.6である。ペルチェ素子の冷却能力が低い原因の一つとして、熱のやり取りを行う電極(N型半導体、P型半導体)同士が導体で接続されているため、熱の逆流が起こってしまうことが挙げられる。
これに対して、電子トンネル効果を用いた冷却素子(以下、電子トンネル効果素子と呼ぶ)では、熱のやり取りを行う電極の間を絶縁体、若しくは真空にすることで、熱の逆流を防ぎ、ペルチェ素子に比べ冷却能力を高くすることが可能である。
但し、ジョセフソン接合素子の場合は、放熱側の電極に超電導体を用いているため、安定した冷却効率を得るためには、この電極の温度制御を行わなければならない。温度制御にかかる熱量は損失となるため、素子単体での冷却能力は高くても、トータルの冷却能力は必ずしも高くならない。
一方、特許文献1に記載の電子トンネル効果を利用した電子トンネル効果素子(文献では、ヒートポンプ)の場合には、熱のやり取りを行う電極間が真空であり、かつ電極の温度制御を行う必要がないため、ペルチェ素子やジョセフソン接合素子に比べ、高い冷却効率を実現できる。
しかしながら、従来のコンプレッサーに匹敵する程度の冷却能力を実現するためには、電極間の真空空間(すなわち、電極間の距離)を非常に狭くし、かつ電極材料として仕事関数が極端に低い材料を用いる必要がある。
以下、非特許文献1をもとに、電極間の真空空間、および電極材料の仕事関数を見積もる。
非特許文献1によると、冷却性能指数(COP)は、トンネル電子により運ばれる熱量(以下、Qtunとする)、熱電子により運ばれる熱量(以下、Qとする)、真空空間を移動するトンネル電子数(以下、Jtunとする)、真空空間を移動する熱電子数(以下、Jとする)、及び対向電極間に印加する電圧(以下、Vbiasとする)を用いて、
COP=(Qtun+Q)÷{(Jtun+J)×Vbias} …(2)
とあらわされる。
ここで、
tun=N(Ex)×D(Ex、Vx) …(3)
=α×T×exp(−β/T) …(4)
とあらわされる。
上式中のN(Ex)はエネルギーExをもつ電子数、D(Ex、Vx)はエネルギーEx、ポテンシャルエネルギーVxを持つ電子の状態密度、Tは温度、α、βは定数である。さらに、Qtun、QとJtun、Jは、
tun=∫(k×T+Ex)×Jtun(Ex)dEx …(5)
=(γ+η×T)×J …(6)
の関係にある。
なお、Qtunの積分範囲は−∞〜qVmaxであり、γ、ηは定数である。上式において、Qは温度Tのみの関数であるのに対し、Qtunは温度T、電子エネルギーEx、ポテンシャルエネルギーVxの関数である。ここで、Vxは、
Vx∝φ/q−Vbias×x/d …(7)
とあらわされる。
なお、φは対向電極の仕事関数、dは真空空間距離を表している。上式より、冷却能力を高めるためには、仕事関数φを出来るだけ低くするとともに、真空空間距離dを出来るだけ狭くする必要がある。図9に、真空空間距離dを5nmとし、仕事関数φを変化させたときの、冷却性能指数(COP)変化を示す。初期庫内温度は57℃であり、庫内を5℃に冷却する場合の結果である。また、同一温度差におけるコンプレッサー、およびペルチェ素子の冷却性能指数は、前述したようにそれぞれ、1.2、0.6である。図の結果より、コンプレッサーと同等の冷却性能1.2を実現するためには、真空空間距離dを5nmという小さな値にしてもなお、電極材料としては0.6eV以下の低仕事関数材料を用いなければならないことがわかる。
特許文献2、特許文献3、特許文献4では、0.6eV以下の低仕事関数として、クラウンエーテルやアザクラウンとアルカリ金属との錯体、セシウム化合物などが記載されている。
しかしながら、上記低仕事関数材料は、その製法が複雑であり、かつ大気中での特性が不安定である。クラウンエーテルとカリウムの化合物K(15C5) について、非特許文献2で取り上げられている。この文献では、上記化合物のエミッション電流の測定により仕事関数を0.2〜0.5であると見積もっている。文献中では、仕事関数の値が大きくばらついている事に関しての記載がないが、周辺環境や試料の封入方法により、材料の仕事関数が大きくばらつくことを示唆している。
また、特許文献5では、CsOをフィラメント材料として用いた場合、その仕事関数が0.8eVであると記載している。しかしながら、上記結果はフィラメントを800K付近に加熱した場合の結果であり、室温での仕事関数は1.0を超えてしまう。また、製法についても、Cs(OH)溶液を精製し、フィラメントに塗布して800K以上の温度で長時間焼成すると、CsOが生成されるとあるが、溶液の精製方法によっては、所望の特性を得られないという難しさがある。
さらに、図8にあるような従来のヒートポンプ構造では、陽極と陰極で熱応力によるたわみが発生するため、常に5nmという狭い真空空間を維持することは不可能である。なお、特許WO99/13562において、真空空間を機械式圧電モーターや電磁アクチュエーターで制御する方法が提案されているが、空間ギャップを高精度でセンシングする手段と、それをフィードバックする手段が必要であり、複雑な冷却システムになってしまうという課題があった。
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、構造を複雑化することなく、従来の熱電素子と比較して飛躍的に安定した冷却および/または加熱特性を示す熱電素子を提供することにある。
本願発明者らは、上記の問題点をふまえ、冷却・加熱効率を向上させることが可能な熱電素子の構造について鋭意検討した。まず発明者らは、電子トンネル効果を用いた熱電素子において、その冷却・加熱効率は、陰極と陽極との間の真空空間を通過する熱電子およびトンネル電子の数に依存することから、この熱電子およびトンネル電子の数を増加させることによって冷却・加熱効率を向上させることができることに着目した。
ここで、熱電子数およびトンネル電子数を増加させる方法としては、(1)真空空間の距離を狭める、(2)陰極に低仕事関数材料を用いる、(3)バイアス電圧を高くする、という3つの方法が考えられた。しかしながら、上記(1)の方法は、電極面の加工精度により制限を受けるという問題点が存在する。本技術分野における通常の加工精度では、真空空間の距離は、せいぜい5nm程度が限度である。また、上記(2)の方法は、用いる材料に依存するが、本技術分野において一般的に用いられる低仕事関数材料は大気中で非常に不安定であるため、利用可能な低仕事関数材料が制限されるという問題点が存在する。また、上記(3)の方法は、消費電力が増加してしまうという問題点を有している。
そこで、本願発明者らは、見かけ上のバイアス電圧を向上させ、上記(3)の方法と同様の効果が得られる材料を陰極に用いれば、消費電力を増加させることなく熱電子数およびトンネル電子数を増加させることができるのではないかと考えた。
そして、このような材料はないかと調査した結果、電子質量が大きく、高エネルギーを運搬することが可能な強相関電子系材料上に電子放出材料の層を積層した積層構造を陰極に用いることによって、熱電素子の冷却・加熱効率を向上させることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明にかかる熱電素子は、金属板からなる陰極と、金属板からなる陽極とが真空空間を介して対向して配置されており、陰極に負電圧を印加するとともに陽極に正電圧を印加することによって、上記陰極から放出された電子を、上記真空空間を通過させて上記陽極へと移動させ、上記陰極を冷却し、上記陽極を加熱する熱電素子であって、上記陰極は、強相関電子系材料からなる層に電子放出材料からなる層が積層された積層構造を有しており、上記電子放出材料からなる層は、上記陽極と対向している面に配置されていることを特徴としている。
本発明の熱電素子は、陰極に負電圧を印加するとともに陽極に正電圧を印加することによって、上記陰極から放出された電子を上記真空空間を通過して上記陽極へと移動させる、いわゆる「電子トンネル効果」を用いて、冷却および/または加熱を行うものである。
この電子トンネル効果を用いた熱電素子においては、上述のように、陰極と陽極との間の真空空間を通過する熱電子およびトンネル電子の数を増加させることによって、その冷却・加熱効率を向上させることができる。そして、本願発明者らは、より多くの熱電子およびトンネル電子を移動させることができる材料として、上述の強相関電子系材料が最適であることを見出した。
そこで、本発明の熱電素子では、陰極に強相関電子系材料からなる層を形成し、この層上に、電子放出材料からなる層を形成し、かつ、当該電子放出材料からなる層が真空空間に面するような構成としている。
このように、電子放出材料を強相関電子系材料の上に配置することによって、電子放出材料から真空空間へ放出される電子エネルギーの底上げを図っている。これよって、真空空間に面している電子放出材料からなる層から放出される電子のうち、より多くの熱電子およびトンネル電子が真空空間中に形成されるエネルギー障壁を飛び越えて陽極へ到達することができる。なお、上記電子放出材料としては、従来の電子トンネル効果を用いた熱電素子の電極材料として一般的に用いられている電子放出材料と同様のものを使用することができる。
本発明の熱電素子は、上記のような構成を有していることによって、その構造を複雑化することなく、冷却および/または加熱特性を安定させ、冷却効率や加熱効率を向上させることができる。
ところで、本発明の熱電素子は、陰極側が冷却され、陽極側が加熱されるため、対象物の冷却および加熱という2つの目的に利用することができる。つまり、本発明の熱電素子は、その陰極側の機能を利用すれば冷却素子となり、その陽極側の機能を利用すれば加熱素子となる。例えば、本発明にかかる熱電素子を冷却装置の冷却素子として用いれば、従来のコンプレッサー式の冷却装置と同程度の性能を有し、かつ、よりコンパクトな装置を実現することができる。
本発明の熱電素子において、上記強相関電子系材料は、遷移金属酸化物、ランタノイド化合物、アクチノイド化合物、銅酸化物、アルカリ金属と遷移金属とを含む酸化化合物のうちの何れかであることが好ましい。
遷移金属酸化物、ランタノイド化合物、アクチノイド化合物、銅酸化物、アルカリ金属と遷移金属とを含む酸化化合物は、強相関電子系材料の中でも特に電子質量が大きい。それゆえ、上記の構成によれば、より多くの高エネルギー電子を、強相関電子系材料からなる層から電子放出材料からなる層へ供給することができるため、加熱・冷却特性をより向上させることができる。
本発明の熱電素子において、上記電子放出材料は、3eV以下の仕事関数を有する低仕事関数材料であることが好ましい。
電子放出材料として仕事関数が3eV以下の仕事関数を有する低仕事関数材料を用いることによって、真空空間中に形成されるエネルギー障壁の高さを低くすることができる。これによって、陰極から陽極への電子の移動をより促進することができ、熱電素子の加熱・冷却特性をより向上させることができる。
上記の熱電素子において、上記低仕事関数材料は、カーボンナノチューブ、セシウム化合物、アルカリ金属を含む有機化合物、アルカリ金属を含む無機化合物のうちの何れかであることが好ましい。
上記の構成によれば、真空空間中に形成されるエネルギー障壁の高さをより低くすることができるため、陰極から陽極への電子の移動をさらに促進することができる。これによって、熱電素子の加熱・冷却特性をより向上させることができる。
本発明の熱電素子において、上記真空空間には、絶縁体からなるスペーサーが設けられており、上記スペーサーは、上記陰極および上記陽極の各対向面の一部と接触しており、上記電子放出材料からなる層は、陰極側の対向面のうち、上記陰極と上記スペーサーとが接触していない面上に配置されているという構成であってもよい。
上記の構成によれば、陰極と陽極とが対向している部分に形成された真空空間中に部分的にスペーサー存在することによって、陰極と陽極との位置をより確実に固定することができる。これによって、対向面における陰極と陽極との距離が固定され、約1〜10nmという非常に狭い間隔を有する真空空間を安定して維持することができる。
上記の熱電素子において、上記スペーサーは、モット絶縁体で形成されていることが好ましい。
上記スペーサーとしては、SiOなどを用いることも可能である。しかしながら、SiOを用いると、陽極から陰極に熱伝達が行われてしまうため、熱電素子の冷却あるいは加熱効率が低下してしまうという問題がある。
そこで、上記のようにスペーサーにモット絶縁体からなる金属化合物を用いることによって、陰極から陽極へ移動する熱電子量を増加させることができる。したがって、上記の構成によれば、さらに加熱・冷却効率を向上させることができる。
本発明にかかる熱電素子は、以上のように、強相関電子系材料からなる層に電子放出材料からなる層が積層された積層構造を有する陰極を備えており、この電子放出材料からなる層は、陽極と対向している面に配置されている。
それゆえ、本発明の熱電素子は、その構造を複雑化することなく、冷却および/または加熱特性を安定させ、冷却効率や加熱効率を向上させることができるという効果を奏する。
〔実施の形態1〕
本発明の第1の実施形態について図1ないし図3に基づいて説明すると以下の通りである。本実施の形態では、本発明にかかる熱電素子の一例として、小型冷蔵庫やレーザ発信器の冷却装置に内蔵される冷却素子を挙げて説明する。
本実施の形態にかかる冷却素子は、「電子トンネル効果」を利用したものであるため、ここでは先ず、この電子トンネル効果について詳述する。
「電子トンネル効果」とは、真空もしくは絶縁体を隔てた対向する2つの電極間を電子が移動する現象である。より詳しくは、真空空間に形成されたエネルギー障壁を、所望のエネルギーを持った電子が通過するという効果である。このエネルギー障壁の高さは、電手を放出する陰極側の金属の仕事関数に依存している。つまり、陰極側の電極材料の仕事関数が低いほど、真空空間に形成されるエネルギー障壁は低くなる。
ところで、陰極側から放出される電子は、高いエネルギーを有する熱電子、中程度のエネルギーを有するトンネル電子、低いエネルギーを有する逆流電子という3種類の電子に分類される。これら3種類の電子のうち、熱電子はエネルギー障壁を飛び越えて陽極に到達することができる。また、トンネル電子の一部もエネルギー障壁を通過して陽極に到達することができる。それゆえ、熱電素子の冷却および/または加熱特性に影響を与えるのは、熱電子およびトンネル電子の数である。
ここで再度、上記非特許文献1を見直してみる。トンネル電子により運ばれる熱量Qtunは、真空空間を移動するトンネル電子数Jtunに比例し、熱電子により運ばれる熱量Qは、真空空間を移動する熱電子数Jに比例していることについては前述した。さらに、Jtun、Jと電子質量mとはそれぞれ以下の関係にある。
tun ∝ N(Ex)D(Ex) ∝ m×exp(−√m) …(8)
∝ m …(9)
上記内容は、自由電子モデルに基づくものであるが、実際の金属、特に半導体や強相関電子系金属化合物では電子質量が有効質量という概念に置き換わる。ここで、有効質量とは、自由電子質量を1とした場合の、物質中の電子質量のことである。
さて、どのような有効質量をもつ材料が、前述のCOPを高くすることができるのかという点を考えてみる。非特許文献1の理論では、高エネルギーのトンネル電子、及び熱電子が冷却に大きく寄与すると記載されている。ここで、トンネル電子と熱電子の定義について、図2をもとに説明する。図2では、電子トンネル効果を利用した熱電素子を模式的に示すとともに、その真空空間に形成されるエネルギー障壁についても示している。図2に示す熱電素子90では、対向する2つの電極が真空空間100により隔てられているが、この真空空間100は高エネルギーの障壁96を形成する。ここで、対向する同種金属からなる2つの電極のうちの片側を陰極91、もう片側を陽極92として、両電極間にバイアス電圧を印加した場合を考える。
このとき、両電極の真空空間100に形成されるエネルギー障壁96は、電源93からバイアス電圧を印加することにより、陰極91で高く、陽極92で低くなった台形型の形状になる。陰極91中の低エネルギーの電子(逆流電子と呼ばれる)は障壁を通過する確率が非常に低いが、高エネルギーの電子の中には障壁を通過する電子94と障壁を飛び越えて陽極92に到達する電子95が存在する。上記電子のうち、障壁を通過する電子94をトンネル電子、障壁を飛び越える電子95を熱電子と呼ぶ。上記内容から、熱電子のエネルギーはトンネル電子のエネルギーに比べて高いことが分かり、トンネル電子に比べ熱電子の寄与が大きくなるほど、一度に高い熱量を運ぶことが出来るためCOPは高くなることも理解できる。
つまり、先ほどのJ、Jtunの比
ξ=J/Jtun …(10)
が大きいほど、COPを高く出来ると考えられる。
ここで、J、Jtunと電子質量mとの関係式(8)、(9)を考慮すると、関係式(10)は、
ξ=J/Jtun ∝ m/{m×exp(−√m)}
∝ exp(√m) …(11)
とあらわせる。つまり、J、Jtunの比ξを大きくするには、電子質量mを大きくすればよいことが分かる。電子質量mを大きくするということはすなわち、有効質量を大きくするということである。
一般的に有効質量の大きな材料として、強相関電子系の材料が考えられる。強相関電子系とは、通常の金属に比べ電子相関(クーロン反発力)が強い系のことを指す。クーロン反発力の小さな金属では、任意の原子(電子)から受ける反発力がさほど大きくないため、電子は波動関数の重なりによって原子間を移動することができる。これに対し、クーロン反発力の大きな金属では、電子は単純に波動関数の重なりだけでは原子間を移動できない。つまり、強相関電子系では、通常の金属に比べ電子の移動に多くのエネルギーを費やすことになり、見かけの電子質量が大きくなる。
以上のような理由で、本実施の形態にかかる冷却素子には、陰極を形成する材料として強相関電子系材料が用いられている。
続いて、本実施の形態にかかる冷却素子の構造について、図1を用いて説明する。本実施の形態の冷却素子10は、図1に示すように、金属板からなる陰極11、金属板からなる陽極12、および、陰極11・陽極12にバイアス電圧を印加する電源16を主な構成部材として有している。また、金属板からなる陰極11と陽極12は、互いの板面を対向させて配置されており、対向している陰極11と陽極12との間には、真空空間14が形成されている。
また、真空空間14を形成している陰極11および陽極12の対向面の端部には、真空シール15が設けられており、これによって、真空空間14は密閉され真空状態が保たれている。なお、ここで「真空状態」とは、通常、電子トンネル効果を用いた熱電素子を構成する場合に形成される真空空間における気圧の状態を表すものであり、完全に真空の状態だけではなく、真空に近い状態のことも含んでいる。
また、陰極11および陽極12は、強相関電子系の金属化合物であるCeCuSiで形成されている。つまり、上記冷却素子10においては、陰極11そのものが強相関電子系の金属化合物で形成されて、強相関電子系材料からなる層となっている。
そして、本実施の形態の冷却素子10には、陰極11および陽極12の対向面に、それぞれ3eV以下の仕事関数を有する低仕事関数材料からなる層13・13が電子放出材料として形成されている。このように、冷却素子10においては、陰極11および陽極12のそれぞれが、強相関電子系材料からなる層と、低仕事関数材料からなる層13・13との積層構造を有しているとともに、各低仕事関数材料からなる層が互いに対向するように配置されている。
また、本実施の形態において、上記陰極11および陽極12は、それぞれ中空部17・18を有する中空構造になっている。これは両電極によって形成される空間を真空にする際、大気圧による応力を緩衝させるために設けられたものである。よって、前記陰極11、陽極12の中空部は真空であるか、大気圧の影響を打ち消すことができる程度の圧力に保持されていることが好ましい。
陰極11、陽極12に含まれる強相関電子系材料としては、CeCuSiの他に、量子ホール効果やモット絶縁体転移を示す遷移金属酸化物、ランタノイド化合物、アクチノイド化合物、銅酸化物などの高温超電導体、NaCo、CaMnOに代表されるアルカリ金属と遷移金属とを含む酸化化合物などが挙げられる。より望ましいものとしては、上述の重い電子系化合物と呼称される、セリウム化合物(CeCuSi、CeCu、CeRuSi、CeB、CeIn、CeCu、CeNi、CeSn、CeSbなど)、NaCo、CaMnOなどが挙げられる。
なお、ランタノイド化合物、アクチノイド化合物、銅酸化物、アルカリ金属と遷移金属とを含む酸化化合物は、通常の金属化合物に比べ電子の有効質量が100〜1000倍であることから、「重い電子系化合物」と呼ばれる。
また、低仕事関数材料からなる層13に含まれる低仕事関数材料としては、0.6eV以下の仕事関数材料として、特許文献2、特許文献3、特許文献4に挙げられている一連の材料、1eV程度の仕事関数を有するセシウム化合物(TaCs、MoCs、CCs、NiCsなど)、アルカリ金属を含む有機化合物(アルカライド、エレクトライドなど)、2eV程度の仕事関数を有するカルシウム化合物(WCa、CaBなど)、3eV程度の仕事関数を有するカーボンナノチューブ、アルカリ金属を含む無機化合物(アルカライド、エレクトライドなど)が挙げられる。また、上記材料に電子を注入した材料であってもよい。
なお、本発明においては、上記低仕事関数材料からなる層として、従来の電子トンネル効果を用いた熱電素子の電極材料として一般的に用いられている電子放出材料からなる層を形成することもできる。つまり、本実施の形態では、低仕事関数材料からなる層13の材料として、3eV以下の仕事関数を有する材料を用いているが、陰極11、陽極12の材料を適切に選ぶことにより、さらに仕事関数の高い材料を用いることが可能となる。
例えば、NaCoは、重い電子系化合物であるため、電子の有効質量が大きくなるが、それに加えて、室温で通常の金属に比べ10倍程度のゼーベック係数をもつ。ゼーベック係数とは、試料の両端に温度差ΔTをかけて発生した電圧Vに対して、
S=V/ΔT …(12)
の関係をもつ。
また、熱変換の性能指数Zとの関係は
Z=S/ρk …(13)
であらわされる。
一般に、性能指数Zが大きいほど熱変換効率が高いため、(12)式より、ゼーベック係数Sが大きいほど熱変換効率が高いことがわかる。さらに、通常の半導体に比べ10倍程度のキャリア濃度を有することから、高エネルギーの電子密度を運搬することができる。
このように、強相関電子系材料としてNaCoなどの重い電子系化合物を用いることによって、真空空間において高エネルギーを運搬することができるため、3eV以上の仕事関数を持つ材料を用いた場合でも、十分な冷却効率を得ることができると考えられる。
しかしながら、冷却素子の冷却効率をより向上させるためには、3eV以下の仕事関数を有する低仕事関数材料を用いることが好ましく、0.6V以下の仕事関数を有する低仕事関数材料を用いることがより好ましい。
また、上記冷却素子10を構成している真空シール15は、絶縁体であり熱伝導率の比較的低い、低融点ガラスなどで形成されている。これによって、冷却素子の冷却特性をより向上させることができる。
また、真空空間14における真空空間を形成する陰極11および陽極12の対向面の離間距離は、数10nm以下に制御されていることが好ましい。特に本実施の形態では、真空シール15によってこの離間距離は5nmに制御されている。
そして、上記のような構造を有する冷却素子10の陰極11に負電位を、陽極12に正電位を印加すると、電子は陰極11から低仕事関数材料からなる層13に移動し、真空空間14を通過して陽極12に到達する。その際、真空空間を通過するトンネル電子、若しくは熱電子により熱が運搬されるため、陰極11は冷却され、陽極12は加熱される。
図2には、本実施の形態の冷却素子10について、COPの仕事関数依存性を調べた結果を示す。図2に示すように、約3eVの仕事関数を用いたとしても、コンプレッサーと同程度のCOPを得られることがわかった。本実施例ではバイアス電圧Vbiasを0.6Vとしたが、さらに電圧を下げることにより、COPを上げることが可能になる。図2と図9を比較すればわかるように、本実施の形態の冷却素子は、従来のヒートポンプと比較して、同じ仕事関数を有する場合であっても、COPが大きく向上している。
本実施の形態にかかる冷却素子10は、上記のような構造を有することによって、従来構造に比べ飛躍的に安定した冷却特性を得ることができる。そのため、この冷却素子10を用いれば、コンプレッサー式と同程度の性能を示し、かつ、コンパクトな冷却装置を実現することができる。
なお、本実施の形態では、陰極11と陽極12は、同じ積層構造で構成されているが、陽極12については、必ずしもこのような積層構造を有している必要はなく、従来から陽極の材料として用いられる金属化合物のみで形成されているものでもよい。つまり、電子放出側である陰極11には、強相関電子系材料からなる層と電子放出材料からなる層との積層構造を設けることが必須であるが、陽極12側の構造は、このような積層構造に限定はされない。
また、本実施の形態では、陰極11、陽極12を強相関電子系材料のみで構成しているが、より熱伝達をよくするためには、陰極11、陽極12の真空空間と反対側に銅やタングステンなどの電気伝導性の高い材料を設けるか、さらには真空空間を均一に保つため、前記銅やタングステンと強相関電子系材料との間に単結晶シリコン基板を挿入することが好ましい。この場合、陰極(および陽極)は、電気伝導性の高い材料からなる層、強相関電子系材料からなる層、および、電子放出材料からなる層を少なくとも含む3層以上の積層構造を有する。
さらに、本実施の形態では、冷却装置などに利用される冷却素子について述べているが、本発明の熱電素子は、冷却素子としてのみではなく、加熱素子として使用することも可能である。
〔実施の形態2〕
本発明の第2の実施形態について図4、図5を用いて以下に説明する。本実施の形態では、本発明にかかる熱電素子の一例として、小型冷蔵庫やレーザ発信器の冷却装置に内蔵される冷却素子を挙げて説明する。なお、本実施の形態にかかる冷却素子も、実施の形態1と同様、「電子トンネル効果」を利用したものである。
図4には、本実施の形態にかかる冷却素子40の構成を示す。図4に示すように、陰極31、陽極32、および、陰極31・陽極32にバイアス電圧を印加する電源37を主な構成部材として有している。また、陰極31と陽極32は、互いの板面を対向させて配置されており、対向している陰極31と陽極32との間には、真空空間34が形成されている。
具体的には、陰極31は、中空部38を有する金属板31aと、強相関電子系材料からなる層33とが積層された構造となっている。また、陽極32は、中空部39を有する金属板32aと、強相関電子系材料からなる層33とが積層された構造となっている。そして、陰極31および陽極32に設けられた強相関電子系材料からなる層33・33はともに、真空空間34を形成している側に位置している。
また、真空空間34を形成している陰極31および陽極32の対向面の端部には、真空シール36が設けられており、これによって、真空空間34は密閉され真空状態が保たれている。
そして、本実施の形態の冷却素子40には、真空空間の距離を5nm程度の狭い状態に維持するために、絶縁体からなるスペーサー35が真空空間中に複数個配置されている。この複数個のスペーサー35は、陰極31側および陽極32側の強相関電子系材料からなる層33・33の真空空間に面している面(対向面)の一部と接触している。
さらに、陰極31側の強相関電子系材料からなる層33上(すなわち、対向面上)には、3eV以下の仕事関数を有する低仕事関数材料からなる層43が形成されている。この低仕事関数材料からなる層43は、陰極31側の上記対向面上のスペーサー35とスペーサー35との間に配置されている。
スペーサー35の材料としては、絶縁体であり、かつ熱伝導率の低い材料が望まれる。このスペーサーの具体的な材料としては、絶縁材料であるSiOやアルミナなどが考えられる。しかし、冷却効果により寄与する素材である、モット絶縁体などをスペーサー材料として用いることがより好ましい。なお、電気伝導性があり熱伝導しにくい材料としてフラーレンがあるが、このような材料をスペーサーとして用いてもよい。
また、図5は、図4の破線Aで囲んだ部分を拡大した図である。図5に示すように、強相関電子系材料からなる層33と絶縁体からなるスペーサー35との接触部には、低仕事関数材料からなる層43を形成していない。これは、低仕事関数材料からなる層43が5nm程度の非常に薄い膜であるため、スペーサー35と接触させることで膜に亀裂が入ったり、膜剥がれが起こったりすることを防止するという物理的な理由による。また、もう一つの理由として、スペーサー35と強相関電子系材料からなる層35とが、低仕事関数材料からなる層43を介して接触するよりも、強相関電子系材料からなる層35とスペーサー35とを直接接触させたほうが、冷却特性が上がるということが挙げられる。
また、本実施の形態にかかる冷却素子40において、強相関電子系材料および低仕事関数材料は、実施の形態1と同様のものを使用することができる。また、実施の形態1と同様に、上記低仕事関数材料からなる層43として、従来の電子トンネル効果を用いた熱電素子の電極材料として一般的に用いられている電子放出材料からなる層を形成することもできる。また、陰極31、陽極32を構成する金属板31a・32aは、電気伝導性が高く、かつ熱伝導率の高い、銅、タングステンなどで形成されていることが好ましい。
本実施の形態にかかる冷却素子40は、上記のような構造を有することによって、従来構造に比べ飛躍的に冷却特性を向上させることができるとともに、真空空間34の距離を数十nm以下に安定して維持することができる。そのため、この冷却素子40を用いれば、コンプレッサー式と同程度の性能を示し、かつ、コンパクトな冷却装置を実現することができる。
なお、本実施の形態では、陰極31と陽極32は、ともに電気伝導性の高い材料からなる金属板31aまたは32aに、強相関電子系材料からなる層33が積層された積層構造で構成されているが、陽極12については、必ずしもこのような積層構造を有している必要はなく、従来から陽極の材料として用いられる金属化合物のみで形成されているものでもよい。
また、陰極31についても、必ずしも金属板31aと強相関電子系材料からなる層33とが積層された構造を有している必要はなく、強相関電子系材料からなる層33のみで形成されていてもよい。本発明では、少なくとも陰極側に、強相関電子系材料からなる層が設けられており、この層上であって、陽極との対向面に電子放出材料からなる層が形成されていればよい。
さらに、本実施の形態では、冷却装置などに利用される冷却素子について述べているが、本発明の熱電素子は、冷却素子としてのみではなく、加熱素子として使用することも可能である。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
従来の冷却素子と比較してコンパクトな構造でありながら、高い冷却特性を有しているため、冷却装置に有効に利用することができる。また、本発明の熱電素子は、一体で冷却および加熱の両方の機能を備えていることから、加熱・冷却装置の熱電素子として利用することもできる。
本発明の一実施の形態示すものであって、電子トンネル効果を用いた冷却素子の構成を示す断面図である。 電子トンネル効果の動作原理を示す模式図である。 図1に示す冷却素子における電極材料の仕事関数と冷却性能指数(COP値)との相関関係を示すグラフである。 本発明の他の実施の形態を示すものであって、電子トンネル効果を用いた冷却素子の構成を示す断面図である。 図4に示す冷却素子の真空空間部分を拡大した断面図である。 従来の冷却素子の一例であるペルチェ素子の構造を示す模式図である。 従来の冷却素子の一例であるジョセフソン接合素子の構造を示す模式図である。 従来の電子トンネル効果を用いたヒートポンプの構造を示す模式図である。 従来のヒートポンプにおける電極材料の仕事関数と冷却性能指数(COP値)との相関関係を示すグラフである。
符号の説明
10、40、90 冷却素子(熱電素子)
11、31、91 陰極
12、32、92 陽極
13、43 低仕事関数材料からなる層(電子放出材料からなる層)
14、34 真空空間
11、33 強相関電子系材料からなる層
35 スペーサー
16、37、93 電源

Claims (6)

  1. 金属板からなる陰極と、金属板からなる陽極とが真空空間を介して対向して配置されており、陰極に負電圧を印加するとともに陽極に正電圧を印加することによって、上記陰極から放出された電子を、上記真空空間を通過させて上記陽極へと移動させ、上記陰極を冷却し、上記陽極を加熱する熱電素子であって、
    上記陰極は、強相関電子系材料からなる層に電子放出材料からなる層が積層された積層構造を有しており、
    上記電子放出材料からなる層は、上記陽極と対向している面に配置されていることを特徴とする熱電素子。
  2. 上記強相関電子系材料は、遷移金属酸化物、ランタノイド化合物、アクチノイド化合物、銅酸化物、アルカリ金属と遷移金属とを含む酸化化合物のうちの何れかであることを特徴とする請求項1に記載の熱電素子。
  3. 上記電子放出材料は、3eV以下の仕事関数を有する低仕事関数材料であることを特徴とする請求項1に記載の熱電素子。
  4. 上記低仕事関数材料は、カーボンナノチューブ、セシウム化合物、アルカリ金属を含む有機化合物、アルカリ金属を含む無機化合物のうちの何れかであることを特徴とする請求項3に記載の熱電素子。
  5. 上記真空空間には、絶縁体からなるスペーサーが設けられており、
    上記スペーサーは、上記陰極および上記陽極の各対向面の一部と接触しており、
    上記電子放出材料からなる層は、陰極側の対向面のうち、上記陰極と上記スペーサーとが接触していない面上に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の熱電素子。
  6. 上記スペーサーは、モット絶縁体で形成されていることを特徴とする請求項5に記載の熱電素子。
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