JP2006126377A - 光学フィルタ部材およびこれを用いた固体撮像装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 光硬化性接着剤を用いて絶縁基板もしくは筐体と良好な接合を行うことが可能である光学フィルタ部材およびこれを用いた固体撮像装置を得ること。
【解決手段】 透光性基板1の一主面の中央部に高屈折率誘電体層3と低屈折率誘電体層4とを交互に複数層積層した誘電体多層膜2を被着して成る光学フィルタ部材5において、誘電体多層膜2は、透光性基板1の一主面を露出させる複数の貫通孔11を形成している。
【選択図】 図1

Description

本発明は、CCD,CMOSイメージセンサ等の固体撮像素子を用いたデジタルカメラや携帯端末用カメラモジュールに搭載される光学フィルタ部材およびこれを用いた固体撮像装置に関する。
近年、CCDやCMOS等の固体撮像素子を搭載する光学機能部品を含むカメラの軽薄短小化および低価格化が急激に進展し、これに伴って搭載されるカメラモジュールをはじめとする光学機能部品も軽薄短小化あるいは部品削減が進んでいる。
このような光学機能部品は、一般に画像を得るために外部からの入射光を集光して固体撮像素子に導くためのガラス材あるいはプラスチック材から成るレンズと、赤みを帯びた色調を補正するための金属錯体を含有する赤外線カットフィルタガラスと、固体撮像素子が実装された酸化アルミニウム質焼結体や有機プリント板等の電気絶縁材料からなる絶縁基板とが樹脂製の筐体に保持されることにより構成されている。
しかしながら、このような光学機能部品の構成では、部品としての性能を得るためには薄型化には限界があり、その結果、部品を使用したカメラ本体も薄型化が困難である。
これを解決するため、それらの部品の中で特に光学特性が厚みに依存するとともに、薄型化が困難である赤外線カットフィルタガラスに変わり、赤外線を遮蔽する部品として、図4に示すようなホウケイ酸ガラスから成る透光性基板21に誘電体多層膜22を形成した光学フィルタ部材が用いられている。この光学フィルタ部材は、五酸化タンタルや酸化チタン,酸化ニオブ,フッ化ランタン,酸化ジルコニウム等の屈折率が1.7以上の誘電体から成る高屈折率誘電体層と、SiOやMgF,NaAlF等の屈折率が1.6以下の低屈折率誘電体層とを、透光性基板21の片面の全面あるいは画像認識に有効な範囲に交互に数十層積層することにより赤外線を遮蔽する誘電体多層膜22を形成するもので、赤外線の遮蔽特性は透光性基板21の厚みに依存することがないためカメラの薄型化が可能になるというものである。
なお、このような透光性基板21に高屈折率誘電体層と低屈折率誘電体層とを交互に複数層積層した光学フィルタ部材は、カバーガラスとしての作用もするため、カバーガラスと赤外線カットフィルタガラスとを併用する必要もなく、より薄型化が可能となる。
誘電体多層膜22は、一般的には、光の干渉効果を用いて、各層におけるλ/4(λは任意の設計波長)の整数倍とした光学膜厚を変えることにより、特定波長の反射強度の極大極小を制御することにより光学的フィルタとしての機能を発揮することが可能となる。これは、誘電体多層膜22の各層の光学膜厚が1/4波長変わるごとに、その波長での光の位相が同じになったり、反転したりするためである。つまり、誘電体多層膜22の各層の光学膜厚を調整することで誘電体多層膜22を構成する高屈折率誘電体層と低屈折率誘電体層との界面や誘電体多層膜22と透光性基板21との界面からの反射光における光の位相調整し、誘電体多層膜22の表面での反射光と干渉させて、反射強度を増加させたり、減少させたりすることが可能となる。従って、入射光のうち透過させたくない波長の光に対して、光学膜厚をλ/4の奇数倍とすることによって、入射光に対する反射強度が増加することによって透過光を減少させ、特定の波長帯域に対して遮光効果を有することができる。実際には、誘電体多層膜22を形成する高屈折率誘電体層と低屈折率誘電体層の光学膜厚をより詳細に調整することによって、良好な特性を有する光学フィルタ部材としている。なお、光学的な膜厚は屈折率nと実際の物理的な膜厚dの積(n×d)で表わされる。
このような光学フィルタ部材をカバーガラスとして絶縁基板と接合する、もしくは樹脂製の筐体に直接貼り付けるとともに筐体と絶縁基板を接着しカメラモジュールとすることによって、赤外線カットフィルタガラスを省くことができ、光学機能部品の薄型化が可能となった。
特開2002−10118号公報
光学フィルタ部材は、絶縁基板もしくは筐体(樹脂ホルダー)にUV硬化型エポキシ接着剤を用いて接合される。その際、紫外線を照射して光硬化性接着剤の硬化反応を促進させることによって、光学フィルタ部材と筐体との接合を行い、その後、加熱を行うことによって光硬化性接着剤の硬化反応を十分に進めることによって完全に接着される。
しかしながら、光学フィルタ部材に形成されている誘電体多層膜22は、光の干渉効果を利用しているために遮光帯域と透過帯域との周期が交互に生じるために、近赤外領域を遮光させるとともに可視光領域を透過させる場合、その周期から紫外線領域で再び遮光効果が生じることとなる。特に波長が700nmから1100nm程度までの近赤外線領域を十分に遮光しようとした場合、波長が400nmよりも短い紫外線領域での透過率も減少する傾向にある。従って、誘電体多層膜に近赤外線を遮光する効果を持たせると、結果として紫外線も遮光されるために、照射した紫外線が光硬化性接着剤にまで達することができない。その結果、紫外線を照射した際に、光学フィルタ部材と筐体との接合を十分に行なうことができず、その状態で加熱を行なうと、光硬化性接着剤が硬化前に低粘度化するため、透光性基板の自重によって位置ズレや、筐体に対して平行にならずに傾た状態で接着されることとなり、固体撮像素子に組み付けた際に、受光領域において良好な光学特性を得ることができないという問題があった。
従って、本発明の光学フィルタ部材およびこれを用いた固体撮像装置は上記問題点に鑑みて完成されたものであり、その目的は、光硬化性接着剤を用いて絶縁基板もしくは筐体と良好な接合を行うことが可能である光学フィルタ部材およびこれを用いた固体撮像装置を得ることである。
本発明の光学フィルタ部材は、透光性基板の一主面の中央部に高屈折率誘電体層と低屈折率誘電体層とを交互に複数層積層した誘電体多層膜を被着して成る光学フィルタ部材において、前記誘電体多層膜には、前記透光性基板の前記一主面を露出させる複数の貫通孔が形成されていることを特徴とする。
本発明の光学フィルタ部材において、好ましくは、前記貫通孔は、前記誘電体多層膜の表面における直径が3〜20μmであることを特徴とする。
本発明の光学フィルタ部材において、好ましくは、前記貫通孔は、前記誘電体多層膜の表面における直径が前記誘電体多層膜と前記透光性基板との界面における直径よりも大きいことを特徴とする。
本発明の固体撮像装置は、絶縁基板と、該絶縁基板の上面に搭載された固体撮像素子と、前記絶縁基板の前記上面の外周部に前記固体撮像素子を覆うように取着された、前記固体撮像素子の上側に位置する部位に貫通窓を有する筐体と、該筐体の前記貫通窓の開口縁に、前記誘電体多層膜を前記筐体に対向させて光硬化性接着剤により取着された上記本発明の光学フィルタ部材とを具備していることを特徴とする。
本発明の光学フィルタ部材は、透光性基板の一主面の中央部に高屈折率誘電体層と低屈折率誘電体層とを交互に複数層積層した誘電体多層膜を被着して成る光学フィルタ部材において、誘電体多層膜には、透光性基板の一主面を露出させる複数の貫通孔が形成されていることから、この貫通孔を介して紫外線を光硬化性接着剤に照射することができ、その周辺の光硬化性接着剤の硬化反応を促進させることにより接合を行うことができる。その結果、その後の加熱の際に光学フィルタ部材の位置ズレや傾きを防止することができる。
また、本発明の光学フィルタ部材は、貫通孔の誘電体多層膜の表面における直径が3〜20μmであることから、貫通孔内部に光硬化性接着剤が入り込むことができ、光学フィルタ部材と筐体との接着においてアンカー効果が得られるために、より強固な接着とすることができる。
本発明の光学フィルタ部材は、貫通孔の誘電体多層膜の表面における直径が誘電体多層膜と透光性基板との界面における直径よりも大きいことから、透光性基板側から照射した紫外線を貫通孔の内面に沿って広がるように光硬化性接着剤に照射することができ、貫通孔を中心としたより広範囲の光硬化性接着剤に対して紫外線を照射することができるとともに、貫通孔内部に光硬化性接着剤がより容易に入り込むことができ良好な接合を行うことができる。
本発明の固体撮像装置は、絶縁基板と、該絶縁基板の上面に搭載された固体撮像素子と、前記絶縁基板の前記上面の外周部に前記固体撮像素子を覆うように取着された、前記固体撮像素子の上側に位置する部位に貫通穴を有する蓋体と、該蓋体の前記貫通穴の開口縁に、前記誘電体多層膜を前記蓋体に対向させて光硬化性接着剤により取着された請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の光学フィルタ部材とを具備していることから、固体撮像装置を実装する際の温度変化による熱応力や接着剤の硬化反応時の収縮による変形によって接合破壊が生じることを防止することができ、光学特性に優れ、長期信頼性に優れた固体撮像素子とすることができる。
本発明の光学フィルタ部材5および固体撮像装置を添付の図面に基づき詳細に説明する。図1は本発明の光学フィルタ部材5の実施の形態の一例を示す断面図である。1はホウケイ酸ガラスから成るガラス材料、もしくはニオブ酸リチウム,水晶,サファイア等の複屈折材料等から成る透光性基板、2は透光性基板1の一主面に被着形成されている誘電体多層膜であり、誘電体多層膜2には貫通孔11が形成されている。主にこれらで本発明の光学フィルタ部材5が構成される。
図2は、本発明の光学フィルタ部材5を説明する要部拡大断面図であり、誘電体多層膜2は、高屈折率誘電体層3と低屈折率誘電体層4とを順次交互に複数層積層することにより形成され、入射光から赤外線の波長領域の成分を反射する機能を有することにより、固体撮像素子6により得られる画像が赤みを帯びることを防止し、画質を高める機能を有する。
ホウケイ酸ガラスは、原料にホウ酸を加えることで耐熱性や耐薬品性に優れる材料となり、さらに透明で平坦な無孔性の表面を有することから光学的に欠陥の少ない材料として好適に用いられる。このようなホウケイ酸ガラスは、溶融した高純度のガラス原料をダウンドロー法により、無研磨にて板厚のバラツキの少ない透光性基板1とすることができる。
または、溶融させた高純度のガラス原料をガラスの溶融温度よりも融点が高い金属から成る容器内、好ましくは、白金(Pt)から成る容器内に流し込んだ後、数日に渡って徐冷却し、ブロック状に形成する。しかる後、所定の板厚および外形寸法に切断するとともに、各稜線部を機械的に切削することによりC面加工を行なったり、バレル加工やケミカルエッチングによりR面加工を行なった後、アルミナ等から成る研磨材を用いてラップ研磨を行ない、さらにアルミナ,酸化セリウム等から成る研磨材を用いて光学研磨することにより透光性基板1とすることができる。これにより、高純度のガラス原料に固体撮像素子6に悪影響を及ぼすα線を発生する不純物が溶け込むことを防止することができる。
また、ニオブ酸リチウムや水晶、サファイア等の複屈折材料から成る透光性基板1においては、透光性基板1に光が入射すると、2つの屈折光が現れ、強さの等しい2本の光線に分かれて進み、互いに垂直な振動面を持つ直線偏光となって出力される。 この現象は複屈折と呼ばれ、物質中に偏光の方向に依存する二つの屈折率があり、各々の屈折率における二つの光線のうち、一方の光線は通常の屈折法則に従い常光線と呼ばれ、他方の光線は、方向によって物質中を進行する光の速度が変化するために屈折法則に従わず、異常光線と呼ばれる。ニオブ酸リチウムや水晶,サファイアは、入射光を常光線と異常光線とに分離することから、一つの入射光を固体撮像素子6の画素配置および画素ピッチに対応して常光線と異常光線とに分離して格子縞などを写すと、固体撮像素子6にて発生する色むらや縞模様などの本来存在しない擬似信号を除去する機能を有する。
また、ニオブ酸リチウムや水晶,サファイア等の複屈折材料は複数枚重ねて使用することにより、入射光を固体撮像素子6の画素配置および画素ピッチに対応させた正方形または長方形の隣接する4つの画素に対応した均等な透過光に分離させることにより、固体撮像素子6の擬似信号をより良好に除去することができる。
このような、ニオブ酸リチウムや水晶、サファイアは高圧高温にした育成炉内で種結晶に人工的に結晶成長させることにより単結晶からなるブロックを得た後、切り出し面が結晶軸に対して所定の角度となるようにワイヤーソーやバンドソー等を用いてウエハーを切り出す。このウエハーを所定の板厚および外形寸法に切断するとともに、各稜線部を機械的に切削することによりC面加工を行なった後、アルミナ等から成る研磨材を用いてラップ研磨を行ない、さらに、アルミナ,酸化セリウム等から成る研磨材を用いて光学研磨することにより透光性基板1とすることができる。
また、透光性基板1の平面視の形状は、正方形や長方形等の四角形状、四隅を面取りした略四角形状、多角形状、円形や楕円形等の略円形状でもよい。
誘電体多層膜2は、図3に示すような固体撮像装置としたときに、筐体13との接合部内側の縁部においても良好に赤外線の遮蔽機能をするように、透光性基板1の一主面において、筐体13との接合部よりも内側の部位だけでなく、筐体13との接合部にも重なるように被着されている。つまり、筐体13と光学フィルタ5とを光硬化性接着剤10を介して取着する際、誘電体多層膜2の外周部が光硬化性接着剤10に接触する。
図2に誘電体多層膜2の拡大図を示す。この誘電体多層膜2は、屈折率が1.6以下の誘電体材料から成る低屈折率誘電体層4および屈折率が1.7以上の誘電体材料から成る高屈折率誘電体層3を数十層に渡って順次交互に複数層積層することにより形成される。これにより、赤外線の遮蔽機能を有することができ、図3に示すような撮像装置としたときに、撮像レンズ14を通過した光から画質にとって有害な赤外線の波長領域の成分を反射させることで、固体撮像素子6によって得られる画像の画質を高めることができる。
なお、高屈折率誘電体層3と低屈折率誘電体層4との屈折率の差を0.1以上とすることにより、高屈折率誘電体層3と低屈折率誘電体層4との界面での赤外線の反射量が大きく、すなわち赤外線の遮蔽効果が大きくなり、その結果、良好な赤外線の遮蔽機能を有する固体撮像装置とすることができる。また、この屈折率の差が0.1未満であると、高屈折率誘電体層3と低屈折率誘電体層4との界面での赤外線の反射量が極端に少なくなり、良好な赤外線の遮蔽機能を得ることが困難となる傾向がある。したがって、高屈折率誘電体層3と低屈折率誘電体層4との屈折率の差を0.1以上とすることが好ましく、さらには低屈折率誘電体層4と高屈折率誘電体層3とを交互に複数層積層した誘電体多層膜2の層数を30乃至50層とするとともに、良好な赤外線の遮蔽機能を高めるためには高屈折率誘電体層3と低屈折率誘電体層4との屈折率の差を0.5以上とすることがより好ましい。屈折率の差が0.5未満である場合には、良好な赤外線の遮蔽機能を有するために誘電体多層膜2の層数が50乃至100層と大幅に増加させる必要があり、真空蒸着装置の内部に設置可能な蒸着材料の容量では増加した膜数を形成することが困難となる。
このような屈折率が1.7以上の絶縁材料としては、五酸化タンタルや酸化チタン,五酸化ニオブ,酸化ランタン,酸化ジルコニウム等が用いられ、屈折率が1.6以下の絶縁材料としては、酸化珪素や酸化アルミニウム,フッ化ランタン,フッ化マグネシウム等が用いられる。また、高屈折率誘電体層3はその屈折率の範囲が通常は1.7〜3.0、低屈折率誘電体層4はその屈折率の範囲が通常は1.2〜1.6であり、これらを形成する絶縁材料は薄膜層の硬さ等の特性や形成し易さ,価格等を考慮して選択される。
このような低屈折率誘電体層4および高屈折率誘電体層3から成る誘電体多層膜2は、CVD法やスパッタ法,真空蒸着法等により成形され、例えば真空蒸着法により成形する場合、酸化珪素,酸化アルミニウム,フッ化マグネシウム等の屈折率が1.6以下の絶縁材料と、五酸化ランタンや酸化チタン,酸化ニオブ等の屈折率が1.7以上の絶縁材料とをそれぞれ真空蒸着装置内に設置した坩堝に入れ、光学的に良質な誘電体多層膜2を得るために、酸素欠乏を起こさないように十分に酸素を供給し、そして真空蒸着装置内を1×10-3Pa程度の真空度に設定された状態で真空蒸着が行なわれる。また、真空蒸着装置内にて誘電体多層膜2が被着形成される際の透光性基板1の表面温度は、熱電対により透光性基板1付近の温度を計測することにより管理され、電熱線ヒーター等を用いて温度範囲30乃至350℃程度に保持される。しかる後、透光性基板1の主面の全面あるいはマスキングをして固体撮像素子6の所望とする領域に、まず低屈折率誘電体層4を被着し、その後、高屈折率誘電体層3と低屈折率誘電体層4とを順次交互に合計10〜100層被着することにより形成される。
また、このような高屈折率誘電体層3としては、アモルファス状態の酸化チタンまたは酸化タンタルから成り、低屈折率誘電体層4としてはアモルファス状態の酸化珪素から成ることが好ましい。これにより、アモルファス状態すなわち非晶質であるので、高屈折率誘電体層3および低屈折率誘電体層4の内部の空隙の数がきわめて少なく充填密度が十分に高い均質な薄膜となることで緻密でより強固な誘電体多層膜2とすることができる。
アモルファス状態の酸化チタン,酸化タンタル,酸化珪素の形成方法として、イオンビームアシスト法、イオンプレーティング法、イオンビームスパッタリング法、スパッタリング法等が用いられる。
例えば、イオンビームアシスト法とは、製膜プロセスである真空蒸着法に陽イオンの照射を併用したものである。陽イオンは、アルゴン等の不活性ガスと酸素ガスとを装置のイオン源に導入してプラズマとすることにより得られる。真空蒸着法に陽イオンの照射を併用することにより、陽イオンが真空中を飛来する蒸着物質であるチタン分子やタンタル分子,シリコン分子,酸素分子の気体分子に衝突することによって、蒸着物質の気体分子が励起されて大きな運動エネルギーを得る。そして、この大きな運動エネルギーを得た蒸着物質の気体分子が被着材である透光性基板1の表面に到達すると、被着材の表面の広い領域を移動するとともに、広い領域の移動に伴って被着材表面のより低いエネルギー状態にある場所を見つけ出す確率が大幅に増大するため、蒸着物質の分子同士が凝集することなく被着材の表面に均一に被着する。さらに、蒸着物質の分子は島状に凝集しないために結晶化しない膜成長となることにより、被着材である透光性基板1の表面にアモルファス状態の薄膜を形成すると考えられる。
また、被着材の表面でエネルギーを失った蒸着物質の分子に陽イオンが衝突すると、その蒸着物質の分子は薄膜内部に押し込まれ、より緻密なアモルファス状態の薄膜を得ることができる。
また、高屈折率誘電体層3および低屈折率誘電体層4をアモルファス状態とすることにより、空孔や柱状構造がきわめて少なくなるので、誘電体多層膜2の内部への水分の侵入吸着による体積変化により生じる誘電体多層膜2のクラックを防止することができ、誘電体多層膜2の赤外線の遮蔽機能が低下することをきわめて効果的に防止して、光学特性に優れた光学フィルタ部材5とすることができる。
本発明の誘電体多層膜2は、透光性基板1の一主面を露出させる複数の貫通孔11が形成されている。貫通孔11を形成するには、透光性基板1の一主面上に3〜20μmからなる粒子を散布する。このような粒子としてはガラスビーズもしくは酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム等からなるセラミックスや酸化珪素からなる石英ガラスを粉砕することにより得られる粉末を用いるとよい。また、散布する方法としては、透光性基板1の一主面状に均一になるように直接塗布するか、もしくは純水やIPA、エタノール等の有機溶剤に粒子を分散させた溶液を、透光性基板1の一主面上に塗布した後、透光性基板1から純水や有機溶剤を揮発させることにより、透光性基板1の一主面状に粒子を点在させることができる。
透光性基板1の一主面上に粒子を散布した後、透光性基板1の粒子を散布させた主面上に誘電体多層膜2を被着形成する。しかる後、誘電体多層膜2を被着形成した光学フィルタ部材5を、超音波洗浄機を用いて洗浄する。超音波の衝撃波によって粒子を透光性基板1から離脱させることによって、誘電体多層膜2に貫通孔11を形成することができる。この貫通孔11を介して紫外線を光硬化性接着剤10に照射することができ、その周辺の光硬化性接着剤10の硬化反応を促進させることにより接合を行うことができる。その結果、紫外線を照射した状態で光学フィルタ部材5と筐体13との固定が可能となり、その後の加熱の際に位置ズレが発生したり傾きが発生することを防止することができる。
貫通孔11の誘電体多層膜2の表面における直径を3μm未満とすると紫外線を照射した際に光硬化性接着剤10に照射される紫外線の量が少ないために、貫通孔11付近での光硬化性接着剤10の硬化する体積が少なくなるとともに、貫通孔11内部に光硬化性接着剤10が容易に入り込むことが困難となるために筐体13と十分に固定されず、その後の加熱の際に位置ズレが発生したり傾きが発生することで光学的に良好な特性を得にくくなる。
一方、通常であれば、撮像レンズ14を通過した光のうち赤外線の波長領域の成分は誘電体多層膜2の表面にて反射し、可視光のみが固体撮像素子6に到達することによって良好な画質が得られるのに対して、固体撮像素子6の受光領域と対向する領域に位置する貫通孔11の直径が20μmを超えると、撮像レンズ14を通過した赤外線の波長領域の成分が貫通孔11を通過することによって、誘電体多層膜2の表面にて反射することなく、固体撮像素子6に到達しやすくなることによって、得られる画像に点状の欠陥が映し出されてしまい良好な画質を得にくくなる。従って、貫通孔11の誘電体多層膜2の表面における直径は、3〜20μmとすることが好ましい。
さらに、貫通孔11の誘電体多層膜2の表面における直径を誘電体多層膜2と透光性基板1との界面における直径よりも大きくすることにより、貫通孔11を中心としたより広範囲の領域の光硬化性接着剤10に対して紫外線を照射することができるとともに、貫通孔11内部に光硬化性接着剤10が容易に入り込むことができるため、紫外線を照射した状態で光学フィルタ部材5と筐体13との固定が可能となり、その後の加熱の際に位置ズレ等が発生することを防止することができる。
次に、本発明の光学フィルタ部材5を用いた固体撮像装置の説明を行なう。
図3に示すように、固体撮像装置は、上面に固体撮像素子6を搭載する搭載部を有する絶縁基板7と、搭載部に搭載された固体撮像素子6と、絶縁基板7の上面の外周部に接合された筐体13と、筐体13の上部に鏡筒15を介して取り付けられた撮像レンズ14と、筐体13内側の撮像レンズ14の下方に配置されるとともに固体撮像素子6を覆うように外周部が光硬化性接着剤10を介して筐体13の内面に接合された光学フィルタ部材5とを具備している。
絶縁基板7には、その上面の中央部に例えばCCDやCMOS等の固体撮像素子6が樹脂等から成る接合材を介して接着固定されて収容される。
このような絶縁基板7は、酸化アルミニウム質焼結体やムライト質焼結体,窒化アルミニウム質焼結体,窒化珪素質焼結体,炭化珪素質焼結体等の無機絶縁材料あるいは、エポキシ樹脂,フェノール樹脂,液晶ポリマー,ポリフェニレンサルファイド,ポリイミド樹脂等の有機絶縁材料から成り、例えば、酸化アルミニウム質焼結体から成る場合であれば、酸化アルミニウムや酸化珪素,酸化マグネシウム,酸化カルシウム等の原料粉末に適当な有機バインダ,溶剤,可塑剤および分散剤を添加混合して泥漿物を作り、この泥漿物を従来周知のドクターブレード法やカレンダーロール法等のシート成形法によりシート状にしてセラミックグリーンシート(セラミック生シート)を得、しかる後、それらセラミックグリーンシートに適当な打抜き加工を施すとともに複数枚積層し、約1600℃の高温で焼成することによって製作される。あるいは、エポキシ樹脂から成る場合であれば、一般的にシリカ粉末を充填した樹脂コンパウンドを射出成形機により、約180℃に加熱した金型形状に成形硬化することにより形成される。
また、絶縁基板7には、上面から絶縁基板7の下面や側面に導出された複数の配線導体8が被着形成されており、この上面に形成された配線導体8には固体撮像素子6の電極12がボンディングワイヤ9を介して電気的に接続される。また、絶縁基板7の下面に導出された配線導体8の部位(図示せず)は外部電気回路(図示せず)に半田等の電気的接続手段を介して電気的に接続される。
配線導体8は、固体撮像素子6の各電極12を外部電気回路に電気的に接続する導電路として機能し、例えば絶縁基板7が無機絶縁材料から成る場合、タングステンやモリブデン,マンガン等の高融点金属粉末に適当な有機溶剤,溶媒および可塑剤等を添加混合して得た金属ペーストを従来周知のスクリーン印刷法等の厚膜手法により絶縁基板7と成るセラミックグリーンシートにあらかじめ印刷塗布し、セラミックグリーンシートと同時に焼成することによって所定パターンに被着形成される。
なお、配線導体8はその表面にニッケルや金等の導電性や耐蝕性に優れるとともにろう材との濡れ性が良好な金属を電解めっき法や無電解めっき法により1乃至20μmの厚みに被着させておくとよい。これにより、配線導体8の酸化腐蝕を有効に防止することができるとともに配線導体8とボンディングワイヤ9との接続および配線導体8と外部電気回路基板の配線導体8との接続をより強固とすることができる。
筐体13は、一般にはエポキシ樹脂にシリカ粉末を充填した樹脂コンパウンドを射出成形機により約180℃の熱で任意の金型形状に成形し硬化させることによって製作される。このような筐体13と光学フィルタ部材5との接合は、光学フィルタ部材5の接合部、または筐体13の接合部に光硬化性接着剤10を塗布した後、光学フィルタ部材5を筐体13に重ね合わせる。しかる後、光硬化性接着剤10の種類に合わせて紫外線を当て固定した後、加熱を行い光硬化性接着剤10を完全に硬化させる。筐体13と光学フィルタ部材5とを接合する光硬化性接着剤10は、紫外線硬化型エポキシ樹脂等が用いられる。
撮像レンズ14は、筐体13の上部に取り付けられており、撮像レンズ14の焦点が固体撮像素子6の受光面の表面に合うように配置されている。または、撮像レンズ14は鏡筒15に固定されており、この鏡筒15を撮像レンズ14の焦点が固体撮像素子6の受光面の表面に合うように位置を調整された後に筐体13に固定されてもよい。
本発明の光学フィルタ部材の実施例を以下に説明する。
最大粒径が1μm、3μm、5μm、10μm、20μmおよび25μmであるガラスビーズの粉末を各々IPAに分散させた溶液を板厚0.3mmで外形寸法が10×10mm角であるホウケイ酸ガラスから成る透光性基板1の一主面に塗布した後、オーブン内に設置し加熱温度100℃にて加熱を行い透光性基板1からIPAを蒸発させることによって、透光性基板1の一主面上に各粒径のガラスビーズを点在させた。しかる後、透光性基板1をガラスビーズが点在している一主面側に誘電体多層膜2が被着形成されるように真空蒸着装置内に設置し、1×10-3Paの真空度に到達した後、加熱温度200℃にて高屈折率誘電体層3と低屈折率誘電体層4を交互に電子銃を用いて蒸着させることにより赤外線遮蔽用の誘電体多層膜2を被着形成した。誘電体多層膜2としては、酸化チタンからなる高屈折率誘電体層3と酸化珪素からなる低屈折率誘電体層4とを交互に層数が41層となるまで積層し、その際に陽イオンとして酸素イオンを使用したイオンビームアシスト法を用いて光学フィルタ部材5を作製した。
光学フィルタ部材5を真空蒸着装置から取り出した後、超音波式洗浄機を用いて純水にて光学フィルタ部材5の洗浄を行なった。この際、透光性基板1の表面上に点在するガラスビーズが超音波の衝撃波によって剥離する。ガラスビーズが剥離した跡によって誘電体多層膜2に透光性基板1の一主面が露出させられた複数の貫通孔11を形成した。
誘電体多層膜2に貫通孔11が形成された光学フィルタ部材5を形成した後、紫外線硬化型エポキシ樹脂から成る光硬化性接着剤10を介して、作製した光学フィルタ部材5と外形寸法が15mm×15mm、内寸が8mmΦの円形の貫通窓を有するエポキシ樹脂にシリカ粉末を充填させた樹脂コンパウンドを射出成形機により約180℃の熱で任意の金型形状に成形し硬化させることによって製作された筐体13に貼り付けを行った。
光学フィルタ部材5と筐体13を接合した段階の接合位置の確認を行なった。位置確認としては、顕微鏡(×10倍)を用いて目視にて観察した。
次に、セラミックスを積層し配線導体8を有する絶縁基板7に固体撮像素子6を銀粒子を分散させた熱硬化型エポキシ樹脂からなる接合剤を介して機械的に接合し、配線導体8と固体撮像素子6の電極12をボンディングワイヤ9にて電気的に接続した。さらに、光学フィルタ部材5を接着した筐体13を固体撮像素子6を覆うように熱硬化型エポキシ樹脂からなる封止材を介して絶縁基板7と接合させた。また、筐体13の貫通窓部には鏡筒15を介して加熱させた金型にて光学ガラスを所定の凹凸形状に成型させた非球面レンズからなる撮像レンズを組み込むことによって固体撮像装置を作製した。この固体撮像装置を専用に作製した画像検査装置に組み込むことにより、実際の光学系、信号処理系と組み合わせ所定のパターンが描かれた被写体を写し、実際に動作することを確認するとともに、取り込んだ画像の色調や色むら黒点等の確認を行なった。
結果を表1に示す。
Figure 2006126377
貫通孔11の誘電体多層膜2の表面における最大径が1μmの場合(試料番号1)では、光学フィルタ部材5と筐体13とを光硬化性接着剤10を介して接合する際に、貫通孔11を通過して光硬化性接着剤10に照射される紫外線の量が少ないために、貫通孔11付近での光硬化性接着剤10の硬化する体積が少なくなるとともに、貫通孔11内部に光硬化性接着剤10が容易に入り込むことができないために光学フィルタ部材5と筐体13とが十分に固定されず、位置ズレが発生した。
一方、貫通孔11の誘電体多層膜2の表面における最大径が3μm(試料番号2)、最大径が5μm(試料番号3)、最大径が10μm(試料番号4)および最大径が20μm(試料番号5)では、紫外線を照射することにより、光学フィルタ部材5と筐体13を光硬化性接着剤10を介して接合する際に、貫通孔11を通過して光硬化性接着剤10に所定の量の紫外線が照射され、貫通孔11付近での光硬化性接着剤10の硬化する体積が十分となり、また、貫通孔11内部に光硬化性接着剤10が容易に入り込むことができるために光学フィルタ部材5と筐体13とが十分に固定され、位置ズレによる不具合は発生せず良好な結果が得られた。
また、固体撮像装置を作製した後に、画像検査装置に組み込み、実際の光学系、信号処理系と組み合わせ所定のパターンが描かれた被写体を写し、実際に動作することを確認するとともに、取り込んだ画像の色調や色むら黒点等の確認を行なったが、得られた画像からは点状のしみ等の不具合は発生しておらず、光学的な良好な結果が得られた。
さらに、貫通孔11の誘電体多層膜2の表面における最大径が25μmの場合(試料番号6)では、固体撮像装置を作製した後に、画像検査装置に組み込み、実際の光学系、信号処理系と組み合わせ所定のパターンが描かれた被写体を写し、実際に動作することを確認するとともに、取り込んだ画像の色調や色むら黒点等の確認を行なった際に得られた画像に点状のしみが映し出されており、光学的な不具合が発生した。
上記の結果より、貫通孔11の誘電体多層膜2の表面における最大径が3〜20μmの場合では、紫外線を照射することにより、光学フィルタ部材5と筐体13とを光硬化性接着剤10を介して接合する際に、光学フィルタ部材5と筐体13とが十分に固定され、位置ズレが発生することに対して効果があるとともに、固体撮像装置を作製した後に、得られる画像に点状のしみ等の光学的な不具合が発生を防止する効果が有ることが確認された。
なお、本発明は上記実施の形態および実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を施すことは何等差し支えない。
例えば、本発明の例として、誘電体多層膜2が、片面に形成されたもので説明しているが、他方の面にも映像の感度を高めるための無反射コート膜や、結露を防ぐための親水性コート膜等が形成されていても良い。
本発明の光学フィルタ部材の実施の形態の一例を示す断面図である。 図1の光学フィルタ部材の要部断面図である。 本発明の固体撮像装置の実施の形態の一例を示す断面図である。 従来の光学フィルタ部材の断面図である。
符号の説明
1:透光性基板
2:誘電体多層膜
3:高屈折率誘電体層
4:低屈折率誘電体層
5:光学フィルタ部材
6:固体撮像素子
7:絶縁基板
10:光硬化性接着剤
11:貫通孔
13:筐体

Claims (4)

  1. 透光性基板の一主面の中央部に高屈折率誘電体層と低屈折率誘電体層とを交互に複数層積層した誘電体多層膜を被着して成る光学フィルタ部材において、前記誘電体多層膜には、前記透光性基板の前記一主面を露出させる複数の貫通孔が形成されていることを特徴とする光学フィルタ部材。
  2. 前記貫通孔は、前記誘電体多層膜の表面における直径が3〜20μmであることを特徴とする請求項1記載の光学フィルタ部材。
  3. 前記貫通孔は、前記誘電体多層膜の表面における直径が前記誘電体多層膜と前記透光性基板との界面における直径よりも大きいことを特徴とする請求項1または請求項2記載の光学フィルタ部材。
  4. 絶縁基板と、該絶縁基板の上面に搭載された固体撮像素子と、前記絶縁基板の前記上面の外周部に前記固体撮像素子を覆うように取着された、前記固体撮像素子の上側に位置する部位に貫通窓を有する筐体と、該筐体の前記貫通窓の開口縁に、前記誘電体多層膜を前記筐体に対向させて光硬化性接着剤により取着された請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の光学フィルタ部材とを具備していることを特徴とする固体撮像装置。
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