JP2005017956A - 光学フィルタ部材およびこれを用いた固体撮像素子収納用パッケージ - Google Patents
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Abstract
【課題】光学特性に優れ、長期信頼性に優れた光学フィルタ部材およびこれを用いた固体撮像素子収納用パッケージを提供すること。
【解決手段】光学フィルタ部材1は、四角平板状の透光性基板2の一主面に屈折率の異なる複数種の誘電体薄膜が積層されて成る誘電体多層膜3を有する光学フィルタ部材1において、誘電体多層膜3は、それに隣接する第一層3aおよび最外層3cが二酸化珪素から成り、第一層3aに隣接する第二層3bはその厚みが0.1nm以上であるとともに第一層3aの厚みの0.15倍以下である。
【選択図】 図1
【解決手段】光学フィルタ部材1は、四角平板状の透光性基板2の一主面に屈折率の異なる複数種の誘電体薄膜が積層されて成る誘電体多層膜3を有する光学フィルタ部材1において、誘電体多層膜3は、それに隣接する第一層3aおよび最外層3cが二酸化珪素から成り、第一層3aに隣接する第二層3bはその厚みが0.1nm以上であるとともに第一層3aの厚みの0.15倍以下である。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、外界からの入力光を補正して固体撮像素子に届ける光学フィルタ部材およびこれを用いた固体撮像素子収納用パッケージに関し、特にCCDやCMOSイメージセンサ等のカラー撮像素子などの固体撮像素子を搭載する光学機能部品に用いられる光学フィルタ部材およびこれを用いた固体撮像素子収納用パッケージに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、CCDやCMOS等のカラー撮像素子を搭載する光学機能部品を備えるカメラの軽薄短小化および低価格化が急激に進展し、これに伴って搭載されるカメラモジュールをはじめとする光学機能部品も軽薄短小化あるいは部品削減が進んでいる。
【0003】
このような光学機能部品は、一般に画像を集光しカラー撮像素子に導くためのガラス材あるいはプラスチック材から成るレンズと、赤みがかる色調を補正するための金属錯体を含有する赤外線カットフィルタと、酸化アルミニウム質焼結体や有機プリント板等の電気絶縁材料から成り、これらの各部品を保持する筒体(ホルダー)とから構成されている。
【0004】
しかしながら、このような光学機能部品の構成では、個々の特性を得るための部材厚みの制約から薄型化が困難であり、結果としてカメラ本体が小型化できないという問題点があった。
【0005】
そこで、特性が厚みに依存するため薄型化が困難な赤外線カットフィルタに代わり、硼珪酸ガラスの基板に誘電体多層膜を形成することにより赤外線遮蔽機能を得る方法が、特許文献1に提案されている。
【0006】
この提案によれば、例えばCVD法,スパッタリング法,真空蒸着法により形成される、Ta2O5,TiO2,Nb2O5,LaF3,La2O3,Ta2O5,ZrO2,Y2O3等の屈折率が1.7以上の誘電体から成る高屈折率層とSiO2,Al2O3,MgF2,Na3AlF6等の屈折率が1.6以下の低屈折率層とを、基板片面の全面あるいは画像認識の有効エリアに交互に数十層積層することにより赤外線遮蔽機能を有する誘電体多層膜を形成するので、赤外線遮蔽特性は基板の厚みに依存することがなく、カメラの薄型化が可能になるというものである。なお、一般的には、λ/4(λは設計波長)で算出される光学的膜厚を屈折率と形状膜厚の積(n×d)で表し、各層の屈折率および形状膜厚を変えることにより特定波長光の反射をコントロールし、結果として透過率をコントロールすることにより遮蔽膜の機能を発揮することが可能となる。
【0007】
【特許文献1】
特開2000−114502号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、硼珪酸硝子に誘電体多層膜を形成することにより赤外線遮蔽機能を付与する構成では、実装時あるいは使用環境下での温度変化により硼珪酸硝子が膨張と収縮を繰り返し、特に硼珪酸硝子が膨張する際に誘電体多層膜が硼珪酸硝子の外周方向に引張られてしまい、誘電体多層膜にクラックが発生して誘電体多層膜の赤外線遮蔽機能が低下してしまうという問題点を有していた。
【0009】
本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑み完成されたものであり、その目的は、光学特性に優れ、長期信頼性に優れた光学フィルタ部材およびこれを用いた固体撮像素子収納用パッケージを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の光学フィルタ部材は、四角平板状の透光性基板の一主面に屈折率の異なる複数種の誘電体薄膜が積層されて成る誘電体多層膜を有する光学フィルタ部材において、前記誘電体多層膜は、前記透光性基板側の第一層および最外層が二酸化珪素から成り、前記第一層に隣接する第二層はその厚みが0.1nm以上であるとともに前記第一層の厚みの0.15倍以下であることを特徴とするものである。
【0011】
本発明の光学フィルタ部材によれば、四角平板状の透光性基板の一主面に屈折率の異なる複数種の誘電体薄膜が積層されて成る誘電体多層膜を有する光学フィルタ部材において、誘電体多層膜は、透光性基板側の第一層および最上層が二酸化珪素から成り、第一層に隣接する第二層はその厚みが0.1nm以上であるとともに第一層の厚みの0.15倍以下であることから、主材料が同一である透光性基板と誘電体多層膜の第一層の二酸化珪素との間の応力歪および第一層の二酸化珪素と異なる第二層の熱膨張差の影響が低減され、さらに第一層と最外層の材料が同一であることから誘電体多層膜内の応力分散も均一化されるため、誘電体多層膜にクラックが発生して誘電体多層膜の赤外線遮蔽機能が低下してしまうことがなく、光学特性に優れた光学フィルタ部材とすることができる。
【0012】
また、本発明の固体撮像素子収納用パッケージは、上面に固体撮像素子を収容するための凹部が形成された絶縁基体と、この絶縁基体の上面の前記凹部の周囲に接合された筒体と、この筒体の内側に設けられた請求項1記載の光学フィルタ部材とを具備していることを特徴とするものである。
【0013】
本発明の固体撮像素子収納用パッケージによれば、蓋体が上記本発明の光学フィルタ部材から成ることから、光学特性に優れ、長期信頼性に優れた固体撮像素子収納用パッケージとすることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の光学フィルタ部材およびこれを用いた固体撮像素子収納用パッケージを、添付の図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の光学フィルタ部材の実施の形態の一例を示す断面図であり、2は硼珪酸ガラス等の透光性材料から成る透光性基板、3は誘電体多層膜、3aは誘電体多層膜3の第一層、3bは第二層、3cは最外層であり、主にこれらで光学フィルタ部材1が構成される。また、図2(a)は、本発明の固体撮像素子収納用パッケージの実施の形態の一例を示す断面図であり、図2(b)は本発明の固体撮像素子収納用パッケージの実施の形態の他の例を示す断面図である。図2(a),(b)において、1は蓋体となる本発明の光学フィルタ部材、4は絶縁基体、5は筒体であり、主にこれらで本発明の固体撮像素子収納用パッケージが構成され、これに固体撮像素子6を収納することにより固体撮像装置となり、さらに筒体(ホルダー)5を介してレンズ7を実装することにより光学機能部品となる。
【0015】
光学フィルタ部材1は、赤外線遮蔽機能を有し、四角平板状の硼珪酸ガラス,ソーダガラス、石英等のガラスや水晶,サファイア,ニオブ酸リチウム等の結晶から成る透光性部材から成る透光性基板2の一主面に誘電体多層膜3を被着することにより形成されている。
なお、光学フィルタ部材1は、通常、固体撮像素子収納用パッケージ等の絶縁基体4や筒体5に光学フィルタ部材1の一主面の外周部あるいは他主面の外周部が接着材等により接合され、内部に収容する固体撮像素子6を気密に封止することから、光学フィルタ部材1を構成する透光性基板2は、その一主面の外周の4つの辺および他主面の外周の4つの辺が、それぞれ同一の平面内に位置するように製作されている。なお、固体撮像素子6は必ずしも気密に封止されていなくてもよい。
【0016】
また、透光性基板2は、その厚みが均一であることが好ましいが、製造方法によっては±10%程度の厚みバラツキを有する場合もある。さらに一主面の外周の4つの辺および他主面の外周の4つの辺も、透光性基板2の厚みバラツキや部分的な反り等により、それぞれ同一平面内からずれて位置する場合もある。
【0017】
誘電体多層膜3は、光学フィルタ部材1に赤外線遮蔽機能を付与するものであり、CVD法やスパッタリング法,真空蒸着法等の従来周知の薄膜形成技術により成膜される。また、誘電体多層膜3が、例えば真空蒸着法により成膜される場合は、蒸着物質を真空蒸着装置の内部に設置された坩堝内に置き、真空蒸着装置の内部を真空にした後、Ta2O5,TiO2,Nb2O5等の屈折率が1.7以上の誘電体から成る高屈折率層とSiO2,Al2O3,MgF2等の屈折率が1.55以下の誘電体から成る低屈折率層とを、透光性基板2の一主面の全面あるいは画像認識の有効エリアに交互に数十層積層することにより形成される。
【0018】
本発明の光学フィルタ部材1は、誘電体多層膜3が硼珪酸硝子等から成る透光性基板2に隣接する第一層3aおよび最外層3cを二酸化珪素(SiO2:シリカ)により形成し、第一層3aに隣接する第二層3bを二酸化珪素と異なる物質により形成し、第二層3bの厚みが0.1nm以上であるとともに第一層3aの厚みの0.15倍以下とする。
【0019】
第一層3aを二酸化珪素により形成することにより、第一層3aと透光性基板2との熱膨張係数が近似し、界面応力を低減することができる。また、二酸化珪素はアモルファスで密な構造であることから、最外層3cをシリカで形成することにより、誘電体多層膜3内への水分浸入を抑制することができる。
【0020】
さらに、第二層3bには通常Ta2O5,TiO2,Nb2O5等の屈折率が1.7以上の高屈折率物質を用いるのがよく、成膜時に発生する膜厚制御のばらつきから膜設計値として、0.1nmを下限とすることが好ましい。また、第一層3aに対する第二層3bの厚みの比が0.15を超える場合、第二層3bを成す高屈折率物質の引っ張り応力が増加し、硼珪酸硝子等から成る透光性基板2と誘電体多層膜との間の応力歪が増加し、界面破壊が発生しやすい傾向がある。
【0021】
なお、固体撮像素子用の光学フィルタ部材として用いられる部材には異物,傷等の外観欠陥が固体撮像素子の画質に影響を与えることから、真空蒸着装置の開放放置等により発生する真空蒸着装置内部での発塵を抑えることが必要である。
【0022】
本発明の光学フィルタ部材1における誘電体多層膜3は、例えば誘電体多層膜3を真空蒸着法により成膜する場合であれば、透光性基板2の加熱温度や成膜数、成膜厚み、成膜面積、真空蒸着装置内の蒸着時の温度、真空度やガス濃度を調整することにより得ることができる。
【0023】
かくして本発明の光学フィルタ部材1によれば、透光性基板2と誘電体多層膜3との間の応力歪は小さく、誘電体多層膜3にクラックが発生して誘電体多層膜3の赤外線遮蔽機能が低下してしまうことはなく、光学特性に優れた光学フィルタ部材1とすることができる。
【0024】
次に、本発明の固体撮像素子収納用パッケージについて説明する。
本発明の固体撮像素子収納用パッケージは、主に上面に固体撮像素子6を収容するための凹部4aが形成された絶縁基体4と、絶縁基体4の上面の凹部4aの周囲に接合された筒体5と、筒体5の内側に設けられた蓋体となる本発明の光学フィルタ部材1とで主に構成され、固体撮像素子6を容器内部に収容することにより固体撮像装置となり、さらにレンズ7を実装することにより光学機能部品となる。
【0025】
このような絶縁基体4は、エポキシ樹脂,フェノール樹脂,液晶ポリマー,ポリフェニレンサルファイド等の有機絶縁材料あるいは酸化アルミニウム質焼結体やムライト質焼結体,窒化アルミニウム質焼結体,窒化珪素質焼結体,炭化珪素質焼結体等の無機絶縁材料から成り、例えば、酸化アルミニウム質焼結体から成る場合であれば、酸化アルミニウム,酸化珪素,酸化マグネシウム,酸化カルシウム等の原料粉末に適当な有機バインダ,溶剤,可塑剤,分散剤を添加混合して泥漿物を作り、この泥漿物を従来周知のドクターブレード法やカレンダーロール法等のシート成形法を採用しシート状にしてセラミックグリーンシート(セラミック生シート)を得、しかる後、セラミックグリーンシートに適当な打抜き加工を施すとともにこれを必要に応じて複数枚積層し、約1600℃の高温で焼成することによって製作される。あるいはエポキシ樹脂から成る場合であれば、一般にシリカ粉末を充填した樹脂コンパウンドを射出成形機により約180℃の熱で任意の金型形状に成形し硬化させることによって製作される。なお、一般的に固体撮像素子6としては対角線長が2インチ以下のものが使用されるため、絶縁基体4の外形寸法としては50mm角以下の寸法のものが使用される。
【0026】
また、絶縁基体4は、その凹部4a内から絶縁基体4の外部にかけて複数の配線導体層(図示せず)が被着形成されており、凹部4a内に位置する配線導体層には固体撮像素子6の各電極がボンディングワイヤあるいは金属バンプを介して電気的に接続され、絶縁基体4の外部に導出される配線導体層には外部電気回路の配線導体(図示せず)が半田等の接続部材を介して電気的に接続される。
【0027】
このような配線導体層は、固体撮像素子6の各電極を外部電気回路に電気的に接続する際の導電路として作用し、絶縁基体4が酸化アルミニウム質焼結体から成る場合であれば、例えばタングステン,モリブデン,マンガン等の高融点金属粉末に適当な有機溶剤,溶媒,可塑剤等を添加混合して得た金属ペーストを従来周知のスクリーン印刷法等の厚膜手法を採用して絶縁基体4となるセラミックグリーンシートにあらかじめ印刷塗布しておき、これをセラミックグリーンシートと同時に焼成することによって絶縁基体4の所望の箇所に所定パターンに被着形成される。
【0028】
また、絶縁基体4の上面には、凹部4a内部に固体撮像素子6を実装後、図2(a)に示すように、凹部4aの周囲に筒体5が接合され、例えば筒体5の内周面に側面を全周にわたって上述の光学フィルタ部材1が封止材(図示せず)を介して接着される。あるいは、図2(b)に示すように、絶縁基体4の上面の凹部4aの周囲に接合された筒体5の内側の段差に光学フィルタ部材1の一主面または他主面の外周部が封止材(図示せず)を介して接着される。
【0029】
光学フィルタ部材1は固体撮像素子6の蓋体としても作用し、そして光学フィルタ部材1は誘電体多層膜3の透光性基板2に隣接する第一層3aおよび最外層3cが二酸化珪素により形成され、第一層3aに隣接する第二層3bは二酸化珪素と異なる物質により形成され、第二層3bの厚みが0.1nm以上かつ第一層3aの厚みの0.15倍以下であることから、光学特性に優れた固体撮像装置を作製することができる。
【0030】
なお、光学フィルタ部材1を筒体5の内側に接着する場合、光学フィルタ部材1の誘電体多層膜3は凹部4a側あるいはその反対側である外部側の表面のどちらに位置してもよいが、耐湿性の観点からは凹部4a側に位置することが好ましい。
【0031】
また、光学フィルタ部材1を筒体5の内側に接着するための封止材は、エポキシ樹脂またはアクリル樹脂等の樹脂から成り、耐湿性あるいは接合強度の観点からは緻密な3次元網目構造を有するエポキシ樹脂を主成分とする熱硬化性樹脂が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂やビスフェノールA変性エポキシ樹脂,ビスフェノールF型エポキシ樹脂,フェノールノボラック型エポキシ樹脂,クレゾールノボラック型エポキシ樹脂,特殊ノボラック型エポキシ樹脂,フェノール誘導体エポキシ樹脂,ビフェノール骨格型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂に、イミダゾール系,アミン系,リン系,ヒドラジン系,イミダゾールアダクト系,アミンアダクト系,カチオン重合系,ジシアンジアミド系等の硬化剤を添加したもので形成することが好ましい。なお、2種類以上のエポキシ樹脂を混合して用いてもよい。
【0032】
また、本実施の形態の例では絶縁基体4の上部に筒体5を介してレンズ7を接合した例を示している。レンズ7は、例えばアクリル系樹脂あるいはガラス材の注型成形により表面が球面または非球面加工され、筒体5にエポキシ樹脂やアクリル樹脂等の樹脂を用いて接合され、あるいは嵌合により固定される。
なお、筒体5は、絶縁基体4と同様の材料を用いて同様の方法で製作される。
【0033】
かくして、絶縁基体4の凹部4aの底面に固体撮像素子6をガラス,樹脂,ろう材等から成る接着剤を介して接着固定するとともに、絶縁基体4の上面の凹部4aの周囲に筒体5を接合し、この筒体5の内側に封止材を介して本発明の光学フィルタ部材1を接着することにより固体撮像装置となり、これに必要に応じてレンズ7等の光学部品を取着することにより光学機能部品となる。
【0034】
【実施例】
本発明の光学フィルタ部材の実施例を以下に説明する。
【0035】
(実施例1)
厚みが0.3mmで、外形寸法が90mm角である硼珪酸ガラスから成る透光性基板2を280℃に加熱し、その表面にEB(エレクトロンビーム)蒸着により38層または39層の赤外線遮光膜としての誘電体多層膜3を形成した。
【0036】
第一層3aの厚み91nm、第二層3bの厚み10nm、最外層3cの厚み70nmに膜厚を固定して評価を行なった。透光性基板2の主面の外周部よりもわずかに凸となっている中央部の高さは、蒸着時の真空度、ガス濃度およびEB銃の出力調整を行なうことにより中央部と外周部の高さの差がほとんどないようにした。試料は、蒸着後24時間経過した後、90mm角の試料を20mm角に切断して高温放置試験(300℃,10分)および耐湿試験(60℃,相対湿度90%,48時間)をそれぞれ行なった。結果を表1に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
表1から、第一層3aを二酸化珪素、第二層3bをチタニア、最外層3cを二酸化珪素とした組み合わせ以外のサンプルでは誘電体多層膜3にクラックあるいはテープピール試験での膜剥がれが発生した。
これに対して、本発明の層構成とされた第一層3aを二酸化珪素、第二層3bをチタニア、最外層3cを二酸化珪素としたものは、良好な結果が得られることがわかった。
【0039】
(実施例2)
第一層3aを91nmの二酸化珪素、最外層3cを70nmの二酸化珪素とし、第二層3bはチタニアを使用し、その厚みを変えて高温放置試験(300℃,10分)および熱衝撃試験(0℃〜100℃,300サイクル)をそれぞれ行なった。
【0040】
このとき、各設計の光学フィルタ部材1を10.0mm×10.0mmの寸法に切断し、トランスファー成形したエポキシ樹脂から成る筒体5にエポキシ樹脂接着材を介して光学フィルタ部材1の誘電体多層膜3側の面を接合した気密評価用サンプルを作製した。
【0041】
【表2】
【0042】
表2から、第一層3aの厚みに対する第二層3bの厚みの比が0.165以上のサンプルでは、誘電体多層膜3にクラックが発生し、0.297では気密性も不良となった。
【0043】
これに対して、本発明の層構成とされた、第二層3bの厚みが第一層3aの厚みの0.15倍以下のものの場合は、良好な結果が得られることがわかった。
【0044】
なお、本発明は上述の実施の形態および実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内であれば種々の変更は可能である。例えば、誘電体多層膜3は赤外線遮光膜に限定されるものではなく、弗化マグネシウム等の材料を誘電体薄膜3として用いることによって反射防止膜とすることもできる。
【0045】
【発明の効果】
本発明の光学フィルタ部材によれば、四角平板状の透光性基板の一主面に屈折率の異なる複数種の誘電体薄膜が積層されて成る誘電体多層膜を有する光学フィルタ部材において、前記誘電体多層膜は、それに隣接する第一層および最外層が二酸化珪素から成り、第一層に隣接する第二層はその厚みが0.1nm以上であるとともに第一層の厚みの0.15倍以下としたことから、主材料が同一である透光性基板と誘電体多層膜の第一層との間の応力歪および第一層の二酸化珪素と異なる第二層の熱膨張差の影響が低減され、さらに第一層と最外層の材料が同一であることから誘電体多層膜内の応力分散も均一化されるため、誘電体多層膜にクラックが発生して誘電体多層膜の赤外線遮蔽機能が低下してしまうことはなく、光学特性に優れた光学フィルタ部材とすることができる。
【0046】
本発明の固体撮像素子収納用パッケージによれば、蓋体が上記本発明の光学フィルタ部材から成ることから、光学特性に優れ、長期信頼性に優れた固体撮像素子収納用パッケージとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光学フィルタ部材の実施の形態の一例を示す断面図である。
【図2】(a),(b)は、それぞれ本発明の固体撮像素子収納用パッケージの実施の形態の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
1・・・・・・光学フィルタ部材
2・・・・・・透光性基板
3・・・・・・誘電体多層膜
3a・・・・・第一層
3b・・・・・第二層
3c・・・・・最外層
4・・・・・・絶縁基体
4a・・・・・凹部
5・・・・・・筒体
6・・・・・・固体撮像素子
7・・・・・・レンズ
【発明の属する技術分野】
本発明は、外界からの入力光を補正して固体撮像素子に届ける光学フィルタ部材およびこれを用いた固体撮像素子収納用パッケージに関し、特にCCDやCMOSイメージセンサ等のカラー撮像素子などの固体撮像素子を搭載する光学機能部品に用いられる光学フィルタ部材およびこれを用いた固体撮像素子収納用パッケージに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、CCDやCMOS等のカラー撮像素子を搭載する光学機能部品を備えるカメラの軽薄短小化および低価格化が急激に進展し、これに伴って搭載されるカメラモジュールをはじめとする光学機能部品も軽薄短小化あるいは部品削減が進んでいる。
【0003】
このような光学機能部品は、一般に画像を集光しカラー撮像素子に導くためのガラス材あるいはプラスチック材から成るレンズと、赤みがかる色調を補正するための金属錯体を含有する赤外線カットフィルタと、酸化アルミニウム質焼結体や有機プリント板等の電気絶縁材料から成り、これらの各部品を保持する筒体(ホルダー)とから構成されている。
【0004】
しかしながら、このような光学機能部品の構成では、個々の特性を得るための部材厚みの制約から薄型化が困難であり、結果としてカメラ本体が小型化できないという問題点があった。
【0005】
そこで、特性が厚みに依存するため薄型化が困難な赤外線カットフィルタに代わり、硼珪酸ガラスの基板に誘電体多層膜を形成することにより赤外線遮蔽機能を得る方法が、特許文献1に提案されている。
【0006】
この提案によれば、例えばCVD法,スパッタリング法,真空蒸着法により形成される、Ta2O5,TiO2,Nb2O5,LaF3,La2O3,Ta2O5,ZrO2,Y2O3等の屈折率が1.7以上の誘電体から成る高屈折率層とSiO2,Al2O3,MgF2,Na3AlF6等の屈折率が1.6以下の低屈折率層とを、基板片面の全面あるいは画像認識の有効エリアに交互に数十層積層することにより赤外線遮蔽機能を有する誘電体多層膜を形成するので、赤外線遮蔽特性は基板の厚みに依存することがなく、カメラの薄型化が可能になるというものである。なお、一般的には、λ/4(λは設計波長)で算出される光学的膜厚を屈折率と形状膜厚の積(n×d)で表し、各層の屈折率および形状膜厚を変えることにより特定波長光の反射をコントロールし、結果として透過率をコントロールすることにより遮蔽膜の機能を発揮することが可能となる。
【0007】
【特許文献1】
特開2000−114502号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、硼珪酸硝子に誘電体多層膜を形成することにより赤外線遮蔽機能を付与する構成では、実装時あるいは使用環境下での温度変化により硼珪酸硝子が膨張と収縮を繰り返し、特に硼珪酸硝子が膨張する際に誘電体多層膜が硼珪酸硝子の外周方向に引張られてしまい、誘電体多層膜にクラックが発生して誘電体多層膜の赤外線遮蔽機能が低下してしまうという問題点を有していた。
【0009】
本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑み完成されたものであり、その目的は、光学特性に優れ、長期信頼性に優れた光学フィルタ部材およびこれを用いた固体撮像素子収納用パッケージを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の光学フィルタ部材は、四角平板状の透光性基板の一主面に屈折率の異なる複数種の誘電体薄膜が積層されて成る誘電体多層膜を有する光学フィルタ部材において、前記誘電体多層膜は、前記透光性基板側の第一層および最外層が二酸化珪素から成り、前記第一層に隣接する第二層はその厚みが0.1nm以上であるとともに前記第一層の厚みの0.15倍以下であることを特徴とするものである。
【0011】
本発明の光学フィルタ部材によれば、四角平板状の透光性基板の一主面に屈折率の異なる複数種の誘電体薄膜が積層されて成る誘電体多層膜を有する光学フィルタ部材において、誘電体多層膜は、透光性基板側の第一層および最上層が二酸化珪素から成り、第一層に隣接する第二層はその厚みが0.1nm以上であるとともに第一層の厚みの0.15倍以下であることから、主材料が同一である透光性基板と誘電体多層膜の第一層の二酸化珪素との間の応力歪および第一層の二酸化珪素と異なる第二層の熱膨張差の影響が低減され、さらに第一層と最外層の材料が同一であることから誘電体多層膜内の応力分散も均一化されるため、誘電体多層膜にクラックが発生して誘電体多層膜の赤外線遮蔽機能が低下してしまうことがなく、光学特性に優れた光学フィルタ部材とすることができる。
【0012】
また、本発明の固体撮像素子収納用パッケージは、上面に固体撮像素子を収容するための凹部が形成された絶縁基体と、この絶縁基体の上面の前記凹部の周囲に接合された筒体と、この筒体の内側に設けられた請求項1記載の光学フィルタ部材とを具備していることを特徴とするものである。
【0013】
本発明の固体撮像素子収納用パッケージによれば、蓋体が上記本発明の光学フィルタ部材から成ることから、光学特性に優れ、長期信頼性に優れた固体撮像素子収納用パッケージとすることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の光学フィルタ部材およびこれを用いた固体撮像素子収納用パッケージを、添付の図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の光学フィルタ部材の実施の形態の一例を示す断面図であり、2は硼珪酸ガラス等の透光性材料から成る透光性基板、3は誘電体多層膜、3aは誘電体多層膜3の第一層、3bは第二層、3cは最外層であり、主にこれらで光学フィルタ部材1が構成される。また、図2(a)は、本発明の固体撮像素子収納用パッケージの実施の形態の一例を示す断面図であり、図2(b)は本発明の固体撮像素子収納用パッケージの実施の形態の他の例を示す断面図である。図2(a),(b)において、1は蓋体となる本発明の光学フィルタ部材、4は絶縁基体、5は筒体であり、主にこれらで本発明の固体撮像素子収納用パッケージが構成され、これに固体撮像素子6を収納することにより固体撮像装置となり、さらに筒体(ホルダー)5を介してレンズ7を実装することにより光学機能部品となる。
【0015】
光学フィルタ部材1は、赤外線遮蔽機能を有し、四角平板状の硼珪酸ガラス,ソーダガラス、石英等のガラスや水晶,サファイア,ニオブ酸リチウム等の結晶から成る透光性部材から成る透光性基板2の一主面に誘電体多層膜3を被着することにより形成されている。
なお、光学フィルタ部材1は、通常、固体撮像素子収納用パッケージ等の絶縁基体4や筒体5に光学フィルタ部材1の一主面の外周部あるいは他主面の外周部が接着材等により接合され、内部に収容する固体撮像素子6を気密に封止することから、光学フィルタ部材1を構成する透光性基板2は、その一主面の外周の4つの辺および他主面の外周の4つの辺が、それぞれ同一の平面内に位置するように製作されている。なお、固体撮像素子6は必ずしも気密に封止されていなくてもよい。
【0016】
また、透光性基板2は、その厚みが均一であることが好ましいが、製造方法によっては±10%程度の厚みバラツキを有する場合もある。さらに一主面の外周の4つの辺および他主面の外周の4つの辺も、透光性基板2の厚みバラツキや部分的な反り等により、それぞれ同一平面内からずれて位置する場合もある。
【0017】
誘電体多層膜3は、光学フィルタ部材1に赤外線遮蔽機能を付与するものであり、CVD法やスパッタリング法,真空蒸着法等の従来周知の薄膜形成技術により成膜される。また、誘電体多層膜3が、例えば真空蒸着法により成膜される場合は、蒸着物質を真空蒸着装置の内部に設置された坩堝内に置き、真空蒸着装置の内部を真空にした後、Ta2O5,TiO2,Nb2O5等の屈折率が1.7以上の誘電体から成る高屈折率層とSiO2,Al2O3,MgF2等の屈折率が1.55以下の誘電体から成る低屈折率層とを、透光性基板2の一主面の全面あるいは画像認識の有効エリアに交互に数十層積層することにより形成される。
【0018】
本発明の光学フィルタ部材1は、誘電体多層膜3が硼珪酸硝子等から成る透光性基板2に隣接する第一層3aおよび最外層3cを二酸化珪素(SiO2:シリカ)により形成し、第一層3aに隣接する第二層3bを二酸化珪素と異なる物質により形成し、第二層3bの厚みが0.1nm以上であるとともに第一層3aの厚みの0.15倍以下とする。
【0019】
第一層3aを二酸化珪素により形成することにより、第一層3aと透光性基板2との熱膨張係数が近似し、界面応力を低減することができる。また、二酸化珪素はアモルファスで密な構造であることから、最外層3cをシリカで形成することにより、誘電体多層膜3内への水分浸入を抑制することができる。
【0020】
さらに、第二層3bには通常Ta2O5,TiO2,Nb2O5等の屈折率が1.7以上の高屈折率物質を用いるのがよく、成膜時に発生する膜厚制御のばらつきから膜設計値として、0.1nmを下限とすることが好ましい。また、第一層3aに対する第二層3bの厚みの比が0.15を超える場合、第二層3bを成す高屈折率物質の引っ張り応力が増加し、硼珪酸硝子等から成る透光性基板2と誘電体多層膜との間の応力歪が増加し、界面破壊が発生しやすい傾向がある。
【0021】
なお、固体撮像素子用の光学フィルタ部材として用いられる部材には異物,傷等の外観欠陥が固体撮像素子の画質に影響を与えることから、真空蒸着装置の開放放置等により発生する真空蒸着装置内部での発塵を抑えることが必要である。
【0022】
本発明の光学フィルタ部材1における誘電体多層膜3は、例えば誘電体多層膜3を真空蒸着法により成膜する場合であれば、透光性基板2の加熱温度や成膜数、成膜厚み、成膜面積、真空蒸着装置内の蒸着時の温度、真空度やガス濃度を調整することにより得ることができる。
【0023】
かくして本発明の光学フィルタ部材1によれば、透光性基板2と誘電体多層膜3との間の応力歪は小さく、誘電体多層膜3にクラックが発生して誘電体多層膜3の赤外線遮蔽機能が低下してしまうことはなく、光学特性に優れた光学フィルタ部材1とすることができる。
【0024】
次に、本発明の固体撮像素子収納用パッケージについて説明する。
本発明の固体撮像素子収納用パッケージは、主に上面に固体撮像素子6を収容するための凹部4aが形成された絶縁基体4と、絶縁基体4の上面の凹部4aの周囲に接合された筒体5と、筒体5の内側に設けられた蓋体となる本発明の光学フィルタ部材1とで主に構成され、固体撮像素子6を容器内部に収容することにより固体撮像装置となり、さらにレンズ7を実装することにより光学機能部品となる。
【0025】
このような絶縁基体4は、エポキシ樹脂,フェノール樹脂,液晶ポリマー,ポリフェニレンサルファイド等の有機絶縁材料あるいは酸化アルミニウム質焼結体やムライト質焼結体,窒化アルミニウム質焼結体,窒化珪素質焼結体,炭化珪素質焼結体等の無機絶縁材料から成り、例えば、酸化アルミニウム質焼結体から成る場合であれば、酸化アルミニウム,酸化珪素,酸化マグネシウム,酸化カルシウム等の原料粉末に適当な有機バインダ,溶剤,可塑剤,分散剤を添加混合して泥漿物を作り、この泥漿物を従来周知のドクターブレード法やカレンダーロール法等のシート成形法を採用しシート状にしてセラミックグリーンシート(セラミック生シート)を得、しかる後、セラミックグリーンシートに適当な打抜き加工を施すとともにこれを必要に応じて複数枚積層し、約1600℃の高温で焼成することによって製作される。あるいはエポキシ樹脂から成る場合であれば、一般にシリカ粉末を充填した樹脂コンパウンドを射出成形機により約180℃の熱で任意の金型形状に成形し硬化させることによって製作される。なお、一般的に固体撮像素子6としては対角線長が2インチ以下のものが使用されるため、絶縁基体4の外形寸法としては50mm角以下の寸法のものが使用される。
【0026】
また、絶縁基体4は、その凹部4a内から絶縁基体4の外部にかけて複数の配線導体層(図示せず)が被着形成されており、凹部4a内に位置する配線導体層には固体撮像素子6の各電極がボンディングワイヤあるいは金属バンプを介して電気的に接続され、絶縁基体4の外部に導出される配線導体層には外部電気回路の配線導体(図示せず)が半田等の接続部材を介して電気的に接続される。
【0027】
このような配線導体層は、固体撮像素子6の各電極を外部電気回路に電気的に接続する際の導電路として作用し、絶縁基体4が酸化アルミニウム質焼結体から成る場合であれば、例えばタングステン,モリブデン,マンガン等の高融点金属粉末に適当な有機溶剤,溶媒,可塑剤等を添加混合して得た金属ペーストを従来周知のスクリーン印刷法等の厚膜手法を採用して絶縁基体4となるセラミックグリーンシートにあらかじめ印刷塗布しておき、これをセラミックグリーンシートと同時に焼成することによって絶縁基体4の所望の箇所に所定パターンに被着形成される。
【0028】
また、絶縁基体4の上面には、凹部4a内部に固体撮像素子6を実装後、図2(a)に示すように、凹部4aの周囲に筒体5が接合され、例えば筒体5の内周面に側面を全周にわたって上述の光学フィルタ部材1が封止材(図示せず)を介して接着される。あるいは、図2(b)に示すように、絶縁基体4の上面の凹部4aの周囲に接合された筒体5の内側の段差に光学フィルタ部材1の一主面または他主面の外周部が封止材(図示せず)を介して接着される。
【0029】
光学フィルタ部材1は固体撮像素子6の蓋体としても作用し、そして光学フィルタ部材1は誘電体多層膜3の透光性基板2に隣接する第一層3aおよび最外層3cが二酸化珪素により形成され、第一層3aに隣接する第二層3bは二酸化珪素と異なる物質により形成され、第二層3bの厚みが0.1nm以上かつ第一層3aの厚みの0.15倍以下であることから、光学特性に優れた固体撮像装置を作製することができる。
【0030】
なお、光学フィルタ部材1を筒体5の内側に接着する場合、光学フィルタ部材1の誘電体多層膜3は凹部4a側あるいはその反対側である外部側の表面のどちらに位置してもよいが、耐湿性の観点からは凹部4a側に位置することが好ましい。
【0031】
また、光学フィルタ部材1を筒体5の内側に接着するための封止材は、エポキシ樹脂またはアクリル樹脂等の樹脂から成り、耐湿性あるいは接合強度の観点からは緻密な3次元網目構造を有するエポキシ樹脂を主成分とする熱硬化性樹脂が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂やビスフェノールA変性エポキシ樹脂,ビスフェノールF型エポキシ樹脂,フェノールノボラック型エポキシ樹脂,クレゾールノボラック型エポキシ樹脂,特殊ノボラック型エポキシ樹脂,フェノール誘導体エポキシ樹脂,ビフェノール骨格型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂に、イミダゾール系,アミン系,リン系,ヒドラジン系,イミダゾールアダクト系,アミンアダクト系,カチオン重合系,ジシアンジアミド系等の硬化剤を添加したもので形成することが好ましい。なお、2種類以上のエポキシ樹脂を混合して用いてもよい。
【0032】
また、本実施の形態の例では絶縁基体4の上部に筒体5を介してレンズ7を接合した例を示している。レンズ7は、例えばアクリル系樹脂あるいはガラス材の注型成形により表面が球面または非球面加工され、筒体5にエポキシ樹脂やアクリル樹脂等の樹脂を用いて接合され、あるいは嵌合により固定される。
なお、筒体5は、絶縁基体4と同様の材料を用いて同様の方法で製作される。
【0033】
かくして、絶縁基体4の凹部4aの底面に固体撮像素子6をガラス,樹脂,ろう材等から成る接着剤を介して接着固定するとともに、絶縁基体4の上面の凹部4aの周囲に筒体5を接合し、この筒体5の内側に封止材を介して本発明の光学フィルタ部材1を接着することにより固体撮像装置となり、これに必要に応じてレンズ7等の光学部品を取着することにより光学機能部品となる。
【0034】
【実施例】
本発明の光学フィルタ部材の実施例を以下に説明する。
【0035】
(実施例1)
厚みが0.3mmで、外形寸法が90mm角である硼珪酸ガラスから成る透光性基板2を280℃に加熱し、その表面にEB(エレクトロンビーム)蒸着により38層または39層の赤外線遮光膜としての誘電体多層膜3を形成した。
【0036】
第一層3aの厚み91nm、第二層3bの厚み10nm、最外層3cの厚み70nmに膜厚を固定して評価を行なった。透光性基板2の主面の外周部よりもわずかに凸となっている中央部の高さは、蒸着時の真空度、ガス濃度およびEB銃の出力調整を行なうことにより中央部と外周部の高さの差がほとんどないようにした。試料は、蒸着後24時間経過した後、90mm角の試料を20mm角に切断して高温放置試験(300℃,10分)および耐湿試験(60℃,相対湿度90%,48時間)をそれぞれ行なった。結果を表1に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
表1から、第一層3aを二酸化珪素、第二層3bをチタニア、最外層3cを二酸化珪素とした組み合わせ以外のサンプルでは誘電体多層膜3にクラックあるいはテープピール試験での膜剥がれが発生した。
これに対して、本発明の層構成とされた第一層3aを二酸化珪素、第二層3bをチタニア、最外層3cを二酸化珪素としたものは、良好な結果が得られることがわかった。
【0039】
(実施例2)
第一層3aを91nmの二酸化珪素、最外層3cを70nmの二酸化珪素とし、第二層3bはチタニアを使用し、その厚みを変えて高温放置試験(300℃,10分)および熱衝撃試験(0℃〜100℃,300サイクル)をそれぞれ行なった。
【0040】
このとき、各設計の光学フィルタ部材1を10.0mm×10.0mmの寸法に切断し、トランスファー成形したエポキシ樹脂から成る筒体5にエポキシ樹脂接着材を介して光学フィルタ部材1の誘電体多層膜3側の面を接合した気密評価用サンプルを作製した。
【0041】
【表2】
【0042】
表2から、第一層3aの厚みに対する第二層3bの厚みの比が0.165以上のサンプルでは、誘電体多層膜3にクラックが発生し、0.297では気密性も不良となった。
【0043】
これに対して、本発明の層構成とされた、第二層3bの厚みが第一層3aの厚みの0.15倍以下のものの場合は、良好な結果が得られることがわかった。
【0044】
なお、本発明は上述の実施の形態および実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内であれば種々の変更は可能である。例えば、誘電体多層膜3は赤外線遮光膜に限定されるものではなく、弗化マグネシウム等の材料を誘電体薄膜3として用いることによって反射防止膜とすることもできる。
【0045】
【発明の効果】
本発明の光学フィルタ部材によれば、四角平板状の透光性基板の一主面に屈折率の異なる複数種の誘電体薄膜が積層されて成る誘電体多層膜を有する光学フィルタ部材において、前記誘電体多層膜は、それに隣接する第一層および最外層が二酸化珪素から成り、第一層に隣接する第二層はその厚みが0.1nm以上であるとともに第一層の厚みの0.15倍以下としたことから、主材料が同一である透光性基板と誘電体多層膜の第一層との間の応力歪および第一層の二酸化珪素と異なる第二層の熱膨張差の影響が低減され、さらに第一層と最外層の材料が同一であることから誘電体多層膜内の応力分散も均一化されるため、誘電体多層膜にクラックが発生して誘電体多層膜の赤外線遮蔽機能が低下してしまうことはなく、光学特性に優れた光学フィルタ部材とすることができる。
【0046】
本発明の固体撮像素子収納用パッケージによれば、蓋体が上記本発明の光学フィルタ部材から成ることから、光学特性に優れ、長期信頼性に優れた固体撮像素子収納用パッケージとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光学フィルタ部材の実施の形態の一例を示す断面図である。
【図2】(a),(b)は、それぞれ本発明の固体撮像素子収納用パッケージの実施の形態の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
1・・・・・・光学フィルタ部材
2・・・・・・透光性基板
3・・・・・・誘電体多層膜
3a・・・・・第一層
3b・・・・・第二層
3c・・・・・最外層
4・・・・・・絶縁基体
4a・・・・・凹部
5・・・・・・筒体
6・・・・・・固体撮像素子
7・・・・・・レンズ
Claims (2)
- 四角平板状の透光性基板の一主面に屈折率の異なる複数種の誘電体薄膜が積層されて成る誘電体多層膜を有する光学フィルタ部材において、前記誘電体多層膜は、前記透光性基板側の第一層および最外層が二酸化珪素から成り、前記第一層に隣接する第二層はその厚みが0.1nm以上であるとともに前記第一層の厚みの0.15倍以下であることを特徴とする光学フィルタ部材。
- 上面に固体撮像素子を収容するための凹部が形成された絶縁基体と、該絶縁基体の上面の前記凹部の周囲に接合された筒体と、該筒体の内側に設けられた請求項1記載の光学フィルタ部材とを具備していることを特徴とする固体撮像素子収納用パッケージ。
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JP2003185891A JP2005017956A (ja) | 2003-06-27 | 2003-06-27 | 光学フィルタ部材およびこれを用いた固体撮像素子収納用パッケージ |
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US8461659B2 (en) | 2010-06-30 | 2013-06-11 | Kabushiki Kaisha Toshiba | Solid state imaging apparatus |
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2003
- 2003-06-27 JP JP2003185891A patent/JP2005017956A/ja active Pending
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