JP2006122846A - 液滴噴射ノズル - Google Patents

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Abstract

【課題】高エネルギーの液滴を広範囲に噴射でき、液滴が噴射された構造体に短時間で大きな損傷を与えることができ、金属材料の表面の錆や異物を除去する洗浄作業、表面の劣化塗料やコンクリート劣化層、砥石表面の磨耗層を除去するハツリ作業、金属材料や無機材料等の表面と塗料との密着性を向上させるためのアンカーパターン形成、溶接部の酸化皮膜除去等の大面積の表面改質処理、コンクリートや石材等の切断作業等を短時間で行うことができ作業性に優れる液滴噴射ノズルを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、高圧液体が供給される液体室と、前記液体室の下流側端部に配設若しくは形成された複数のオリフィス孔部と、前記オリフィス孔部の下流側に配設若しくは形成された噴射口と、隣り合う前記オリフィス孔部間の前記液体室の下流側端部に配設若しくは形成され前記液体室を区画する隔壁と、を備える。
【選択図】図1

Description

本発明は、水や塗料等の液体を加圧した高圧液体を噴射して微粒化させ液滴を形成する液滴噴射ノズルに関するものである。
従来より、高圧水の噴流をノズルから噴射して、岩盤,コンクリート,金属材料,木材,無機材料等の構造体の切断等を行うことが広く行われている。これは、ノズルから噴射される高圧水は細い噴流のため、単位面積当たりの加工エネルギーが極めて大きく、綺麗な切断端面が得られるとともに所要動力を小さくできるからである。
しかしながら、高圧水の細い噴流を噴射するのは構造体の切断には適しているものの、金属材料等の洗浄作業やハツリ作業のように構造体の表面を広範囲に壊食する必要がある場合には、作業効率が著しく低いという問題を有していた。
そこで、高圧水の噴流を噴射して構造体の表面を広範囲に壊食できるようにするため、複数箇所から高圧水の噴流を噴射できるようにしたノズルが開発されている。
従来の技術としては、例えば、(特許文献1)に「送り方向に複数個のウォータジェット噴射用のノズル部を備えたウォータジェットノズル装置」が開示されている。
(特許文献2)には、「一直線上に配置されたオリフィスと、上流側に前記オリフィスの上流側開口が連通する1個の高圧水室と、下流側に前記オリフィスの下流側開口が連通するウォータジェット貫通孔と、を備えたウォータジェットノズル」が開示されている。
(特許文献3)には、「複数のノズル孔を形成したマルチウォータノズル」が開示されている。
実開昭62−75000号公報 特開平7−108498号公報 特許第3482467号公報
しかしながら上記従来の技術においては、以下のような課題を有していた。
(1)(特許文献1)に開示の技術は、水路は下流側で分岐水路に分岐しており構造が複雑なため、ブロックに水路や分岐水路を形成する際の加工が困難で生産性が低く、またブロックに形成された複数の装着孔の各々にノズル部を接続するので、部品点数が多く組立てる際の生産性が低く、さらに大型化するという課題を有していた。
(2)装着孔にノズル部を接続するのでノズル部のピッチが広くなるため、明細書に記載の送り方向と略直交する方向に走査して構造体にウォータジェットを噴射すると、損傷部が離散的に形成され、構造体の表面を連続的に広範囲に壊食させ難く作業性に欠ける。
(3)(特許文献2)、(特許文献3)に開示の技術は単に複数のノズル孔を配設した構成なので、壊食効率が低く、所定量の損傷量を得るために長い時間がかかり作業性に欠けるという課題を有していた。特に、(特許文献3)に開示の技術では、10mm/分の非常に遅い送り速度の場合の実験例を示しており、実際に製造現場で金属材料等のハツリ作業を行う場合には、単位時間当たりのハツリ作業の処理量が重要なので、そのような遅い送り速度で作業を行ったのでは作業性や生産性に著しく欠け実用上問題である。なお、単に複数のノズル孔を配設した場合、壊食効率が著しく低いことは、本発明者らが実験して確認したものである。
本発明は上記従来の課題を解決するもので、高エネルギーの液滴を広範囲に噴射でき、液滴が噴射された構造体に短時間で大きな損傷を与えることができ、金属材料の表面の錆や異物を除去する洗浄作業、表面の劣化塗料やコンクリート劣化層、砥石表面の磨耗層を除去するハツリ作業、金属材料や無機材料等の表面と塗料との密着性を向上させるためのアンカーパターン形成、溶接部の酸化皮膜除去等の大面積の表面改質処理、コンクリートや石材等の切断作業等を短時間で行うことができ作業性に優れ、また構造が簡単なので低原価で製造でき、さらにオリフィスを取り替えるだけで構造体の表面に施す処理の用途に対応でき、汎用性に優れるとともにメンテナンスも容易な液滴噴射ノズルを提供することを目的とする。
上記従来の課題を解決するために本発明の液滴噴射ノズルは、以下の構成を有している。
本発明の請求項1に記載の液滴噴射ノズルは、高圧液体が供給される液体室と、前記液体室の下流側端部に配設若しくは形成された複数のオリフィス孔部と、前記オリフィス孔部の下流側に配設若しくは形成された噴射口と、隣り合う前記オリフィス孔部間の前記液体室の下流側端部に配設若しくは形成され前記液体室を区画する隔壁と、を備えた構成を有している。
この構成により、以下のような作用が得られる。
(1)隣り合うオリフィス孔部間の液体室の下流側端部に配設若しくは形成され液体室を区画する隔壁を備えているので、液体室に供給された高圧液体を一様な流動状態で各オリフィス孔部に導入できるため、オリフィス孔部で縮流された高圧液体の流速が減速し難くエネルギーの大きな噴流が各々のオリフィス孔部から噴射口を通して噴射される。流速の大きな噴流の表面と空気との間に生じる大きな剪断力によって、液柱が微粒化され高エネルギーの液滴が広い範囲で形成される。一方、隔壁がない場合は、液体室に供給された高圧液体はオリフィス孔部に近づくと、整流されていないため互いに干渉し合い、オリフィス孔部近傍の高圧液体に乱流や旋回流が形成されるため、オリフィス孔部で縮流された高圧液体は、乱流や旋回流が形成されたまま噴射される。このため、噴流の液滴化が進みすぎ微粒化して、構造体に高圧液体を噴射した場合は、壊食が起こり難く損傷量が小さくなる。
ここで、複数のオリフィス孔部としては、単数のオリフィス孔部が形成されたオリフィス板を液体室の下流側端部に複数配設するもの、複数のオリフィス孔部が形成されたオリフィス板を液体室の下流側端部に単数配設するもの、液体室の下流側端部の閉塞面に複数のオリフィス孔部が形成されたもの等が用いられる。
隔壁としては、隣り合うオリフィス孔部間の液体室の下流側端部に、オリフィス板や閉塞面に密接して配設されたもの、閉塞面と一体に閉塞面に立設させて形成されたもの等が用いられる。
高圧液体としては、水、塗料、油、有機溶剤、無機溶剤等を用いることができる。
高圧液体の圧力としては、水等の高圧液体を用いて構造体の表面のハツリや切断を行う場合は、25〜200MPa好ましくは30〜150MPaが好適に用いられる。高圧液体の圧力が30MPaより小さくなるにつれ高圧液体の圧力エネルギーが小さくなるので液滴の運動エネルギーが小さく表面改質効果が小さくなる傾向がみられ、150MPaより大きくなるにつれ高圧ポンプ等が大型化する傾向がみられるとともに、構造体に液滴を噴射したときの反動が大きく操作性が低下する傾向がみられる。特に、25MPaより小さくなるか200MPaより大きくなると、これらの傾向が著しくなるのでいずれも好ましくない。
また、塗料を高圧液体として用い構造体に塗装を行う場合は、高圧液体の圧力としては、10〜30MPaが好適に用いられる。圧力が10MPaより小さくなるにつれ高圧液体の圧力エネルギーが小さくなり噴流が液滴化し難く均一分散が困難になる傾向がみられ、30MPaより大きくなるにつれ、構造体の材質にもよるが、塗料が噴射された構造体の表面が壊食される傾向がみられるため、いずれも好ましくない。
本発明の請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の液滴噴射ノズルであって、前記隔壁の高さ(T)が、前記隔壁で前記液体室が区画されて形成され前記オリフィス孔部と連通する高圧液体流路の内径(D)、前記オリフィス孔部の孔径(d)と(数2)の関係にあることを特徴とする請求項1に記載の液滴噴射ノズル。
Figure 2006122846
この構成により、請求項1で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)隔壁が所定の高さ(T)を有しているので、液体室に供給された高圧液体がオリフィス孔部の近傍で整流され、干渉されて乱流や旋回流を形成するのを抑制し、一様な流動状態で各オリフィス孔部に導入できるため、オリフィス孔部で縮流された高圧液体の流速が減速し難くエネルギーの大きな噴流をオリフィス孔部から噴射口を通して噴射させることができ、噴流の液滴化を促進させる。
ここで、高圧液体流路としては、隔壁で液体室が区画されてオリフィス孔部と連通し横断面が略円状や略楕円状等の略円筒状に形成されたものが用いられる。高圧液体流路の横断面が略楕円状の場合は、内径(D)は短径が用いられる。
また、オリフィス孔部の横断面が略楕円形状の場合は、孔径(d)は短径が用いられる。
隔壁の高さ(T)が高圧液体流路の内径(D)、オリフィス孔部の孔径(d)を用いて(数2)の関係で表すことができることを、本発明者らは実験によって導き出した。
本発明者らは、高圧液体流路の内径D、オリフィス孔部の孔径d、隔壁の高さTを変えた液滴噴射ノズルを用い、高圧液体としての水を各液滴噴射ノズルから金属製の試験片に所定時間噴射し、高圧水を噴射した前後の試験片の重量減少量(損傷量)を測定する実験を行った。
この実験から、高圧水の噴射時間と試験片の損傷量との関係を調べ、横軸に時間(秒)、縦軸に損傷量(mg)をプロットし、1秒間当たりの最大の傾き、即ち各液滴噴射ノズルが構造体に与える1秒間当たりの最大の損傷量(最大損傷率)を求めた。
この結果、最大損傷率は、高圧液体の圧力が一定の場合、高圧液体流路の内径Dとオリフィス孔部の孔径dとの比D/dによって決まる固有の上限があることがわかった(この最大損傷率の固有の上限を、飽和最大損傷率という。)。また、飽和最大損傷率を記録した液滴噴射ノズルの隔壁の高さTは、Dが大きくなるにつれ、またdが大きくなるにつれ高くなることがわかった。
次に、飽和最大損傷率を記録した液滴噴射ノズルの隔壁の高さTと、高圧液体流路の内径Dとの関係を求めるため、隔壁の高さTと高圧液体流路の内径Dについて両対数プロットしたところ、切片が20、傾きが0.5の直線で近似できることがわかった。
ここで、先の実験結果から、Tはdが大きくなるにつれ高くなることがわかっているため、近似した直線の一般式をT=K・d・D0・5=K・d√D(但し、Kは定数。T,d,Dの単位はmm。)とおいた。さらに、オリフィス孔部の孔径dは、先の実験結果から、高圧液体の流量、損傷効率等を考慮して0.2〜1mmの範囲が好適であることがわかったため、20=K・d(但し、dは0.2〜1とする。)の関係からKの範囲を計算すると、Kは20〜100となる。
以上の結果から、隔壁の高さ(T)は、T=K・d√D(但し、Kは有効な隔壁の高さを示す定数で、20〜100。T,d,Dの単位はmm。)と表すことができることがわかった。
なお、オリフィス孔部の孔径dが0.2mmより小さくなるにつれオリフィス孔部から噴射される噴流の流量が少なく構造体の損傷効率が低下する傾向がみられ、1mmより大きくなるにつれ液滴化が進行せず壊食が起こり難くなる傾向がみられるため、いずれも好ましくない。
本発明の請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の液滴噴射ノズルであって、前記高圧液体流路の内径(D)と前記オリフィス孔部の孔径(d)との比(D/d)が、3〜19である構成を有している。
この構成により、請求項1又は2で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)高圧液体を構造体に噴射し壊食を起こさせたときの1秒間当たりの構造体の最大の損傷量(以下、最大損傷率という。)を大きくすることができ、損傷効率を高めることができ、また液体室の内径を小さくできるのでノズルをコンパクト化できる。
ここで、比(D/d)が3より小さくなるにつれ、高圧液体流路の内径Dとオリフィス孔部の孔径dとの差が小さく、オリフィス孔部から噴射される高圧液体が高圧液体流路の内面の影響を受け噴流が広がり易く液滴化が進行しすぎて壊食が起こり難く最大損傷率が低下する傾向がみられ、比(D/d)が19より大きくなるにつれ、高圧液体流路の内径Dとオリフィス孔部の孔径dとの差が大きくなるので、液体室の内径が大きくなり液滴噴射ノズルが大型化する傾向がみられ、またオリフィス孔部及び液体室の内径が一定の場合、高圧液体流路の内径が大きくなると液体室内に配設等されるオリフィス孔部の数が少なくなり壊食される構造体の面積が狭くなる傾向がみられるため、いずれも好ましくない。
以上のように、本発明の液滴噴射ノズルによれば、以下のような有利な効果が得られる。
請求項1に記載の発明によれば、
(1)流速の大きな噴流の表面と空気との間に生じる大きな剪断力によって、液柱が微粒化され高エネルギーの液滴が形成され、構造体に水等の高圧液体を噴射した場合は、壊食が起こり易く短時間で大きな損傷量を得ることができ、金属材料の表面の錆や異物を除去する洗浄作業、表面の劣化塗料やコンクリート劣化層、砥石表面の磨耗層を除去するハツリ作業、金属材料や無機材料等の表面と塗料との密着性を向上させるためのアンカーパターン形成、溶接部の酸化皮膜除去等の大面積の表面改質処理、コンクリートや石材等の切断作業等を短時間で行うことができ作業性に優れた液滴噴射ノズルを提供することができる。
(2)微粒化された液滴が広範囲で形成されるので、高圧液体として塗料を用いた場合は、塗料の分散性に優れ、大きな面積の塗装処理を短時間で行うことができ作業性に優れた液滴噴射ノズルを提供することができる。
(3)表面改質処理や塗装処理を短時間で行うことができるので、構造体に噴射する水や塗料等の高圧液体が少量で済み省資源性に優れた液滴噴射ノズルを提供することができる。
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の効果に加え、
(1)液体室に供給された高圧液体がオリフィス孔部の近傍で干渉されて乱流や旋回流を形成するのを抑制し、一様な流動状態で各オリフィス孔部に導入できるため、オリフィス孔部で縮流された高圧液体の流速が減速し難くエネルギーの大きな噴流をオリフィス孔部から噴射口を通して噴射させることができ、噴流の液滴化を促進させエネルギー効率の優れた液滴噴射ノズルを提供することができる。
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2の効果に加え、
(1)高圧液体を構造体に噴射し壊食を起こさせたときの最大損傷率を大きくすることができ、損傷効率を高めることができ、またコンパクト化することができる液滴噴射ノズルを提供することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1(a)は本発明の実施の形態1における液滴噴射ノズルの要部断面図であり、図1(b)は図1(a)のA−A線における要部断面図である。
図中、1は実施の形態1における液滴噴射ノズル、2は他端部に図示しない高圧ポンプ等が接続され水等の高圧液体が圧送される高圧液体路、3は一端に高圧液体路2の一端部が螺着され接続された筒状のノズル後端部、4はノズル後端部3の内周面に段差状に形成されたストレーナ係止部、5はストレーナ係止部4と高圧液体路2の先端との間に挟持されたストレーナ、6は一端にノズル後端部3の他端が螺着された筒状のノズル前端部、7はノズル前端部6の内周面に段差状に形成された噴射口形成部材係止部、8はノズル後端部3,ノズル前端部6の内周面側でストレーナ5の下流に形成された液体室、9はノズル前端部6内に嵌装され液体室8の下流側に配設された円柱状の厚さ(T)の隔壁形成部材、10はノズル後端部3の端面と隔壁形成部材9の端面外縁部との間に配設されたOリング等のシール部材、11,11は横断面が内径(D)の円形状に形成され所定の間隔をあけて隔壁形成部材9を略平行に貫通する高圧液体流路、12は高圧液体流路11,11間に形成され高圧液体流路11,11を区画する隔壁、13は後述するオリフィス孔部16の下流側に配設され外周縁部が噴射口形成部材係止部7に係止され外周から中心にかけて肉厚の笠状に形成された噴射口形成部材、14は高圧液体流路11の下流側の隔壁形成部材9側の噴射口形成部材13の端面に高圧液体流路11,11の内径よりも大径の凹状に形成されたオリフィス板装着部、15は隔壁形成部材9の端面と面一に各々のオリフィス板装着部14に装着され隔壁形成部材9の端面と密接されたオリフィス板、16は各々のオリフィス板15の略中心部に形成され高圧液体流路11と同芯状に配置されたオリフィス孔部、17はオリフィス板15の外周部とオリフィス板装着部14の内周部との間に嵌装されたOリング等のシール部材、18はオリフィス孔部16と同軸に噴射口形成部材13の所定部に形成されオリフィス孔部16の孔径(d)よりも大径の噴射口、19は噴射口形成部材13の噴射口18の下流側に噴射口18の孔径よりも大径に形成された先端開口部である。先端開口部19は高圧液体流路11と同軸になるように、隔壁形成部材係止部9aと噴射口形成部材係止部13aの係止で位置決めされる。
ここで、本実施の形態においては、隔壁12の高さ(T)が、高圧液体流路11の内径(D)、オリフィス孔部16の孔径(d)と(数3)の関係になるように構成されており、高圧液体流路11の内径(D)とオリフィス孔部16の孔径(d)との比(D/d)が、3〜19になるように構成されている。
Figure 2006122846
以上のように構成された本発明の実施の形態1における液滴噴射ノズルについて、以下その動作を説明する。
高圧液体路2に水等の高圧液体を圧力25〜200MPa好ましくは30〜150MPa(高圧液体が塗料の場合は10〜30MPa)で圧送すると、高圧液体はストレーナ5を通過して液体室8に入り、隔壁12で区画された高圧液体流路11から一様な流動状態でオリフィス孔部16に達し、オリフィス孔部16から流速の大きな液柱(噴流)として噴射される。オリフィス孔部16から噴射された液柱は、流速の大きな液柱の表面と噴射口18及び先端開口部19内の空気との間に生じる大きな剪断力によって、微粒化され高エネルギーの液滴が形成される。
以上のように、本発明の実施の形態1における液滴噴射ノズルは構成されているので、以下のような作用が得られる。
(1)液体室8の下流側端部に隔壁形成部材9が配設され、液体室8を区画し高圧液体流路11を形成する隔壁12が隔壁形成部材9に形成されているので、液体室8に供給された高圧液体を、隣り合うオリフィス孔部16から噴射される高圧液体に干渉されることなく一様な流動状態で各オリフィス孔部16,16に導入できるため、オリフィス孔部16で縮流された高圧液体の流速が減速し難くエネルギーの大きな噴流が各々のオリフィス孔部16から噴射口18を通して噴射される。この結果、流速の大きな噴流の表面と空気との間に生じる大きな剪断力によって、噴流が微粒化され高エネルギーの液滴が形成される。高エネルギーの液滴が複数のオリフィス孔部16の各々から噴射された噴流で形成されるので、高エネルギーの液滴を広範囲に形成させることができ、短時間で構造体の広い面積を処理できるので作業性に優れる。
(2)隔壁12で区画された高圧液体流路11が隔壁形成部材9に形成され、隔壁形成部材9が液体室8の下流側端部に配設されているので、ノズル後端部3,ノズル前端部6,隔壁形成部材9,オリフィス板15,噴射口形成部材13を組立てるだけで液滴噴射ノズル1を製造することができ、各々の加工が容易なので生産性に優れるとともに品質の安定性に優れる。
(3)噴射口形成部材13が外周から中心にかけて肉厚の笠状に形成されているので、噴射口形成部材13の中心部の機械的強度が高く、高圧液体の圧力がオリフィス板15に加わっても撓んだり破損し難いため、高圧液体が噴射口18以外の箇所から漏れたりオリフィス板15が破損したりするのを防止でき耐久性に優れる。
(4)オリフィス孔部16の下流側にオリフィス孔部16の孔径(d)よりも大径の噴射口18が形成され、その下流に噴射口18の孔径よりも大径に形成された先端開口部19が段状に形成されているので、オリフィス板15に加わる高圧液体の圧力を噴射口18の周囲の噴射口形成部材13で支えることができ、オリフィス板14の撓みや破損を防止し耐久性に優れる。
(5)隔壁12の高さ(T)が、(数3)の関係になるように構成されているので、オリフィス孔部で縮流された高圧液体の流速が減速し難くエネルギーの大きな噴流をオリフィス孔部から噴射口を通して噴射させることができ、噴流の液滴化を促進させることができる。
(6)高圧液体流路11の内径(D)とオリフィス孔部16の孔径(d)との比(D/d)が、3〜19になるように構成されているので、高圧液体を構造体に噴射し壊食を起こさせたときの最大損傷率を大きくすることができ、損傷効率を高めることができ、また液体室8の内径を小さくできるので液滴噴射ノズル1をコンパクト化できる。
(7)オリフィス板15を取り替えるだけで、構造体の表面に施す処理の用途に対応でき汎用性に優れる。
(8)先端開口部19が、隔壁形成部材係止部9aと噴射口形成部材係止部13aの係止で高圧液体流路11と同軸になるように位置決めされるので、軸心合わせ作業を簡単かつ確実に行うことができる。
(実施の形態2)
図2(a)は本発明の実施の形態2における液滴噴射ノズルの要部断面図であり、図2(b)は図2(a)のB−B線における要部断面図である。なお、実施の形態1と同様のものは、同じ符号を付して説明を省略する。
図中、20は実施の形態2における液滴噴射ノズル、21はノズル前端部6内に嵌装され液体室8の下流側に配設された円柱状の隔壁形成部材、22は横断面が内径(D)の円形状に形成され所定の間隔をあけて隔壁形成部材21を略平行に貫通する高圧液体流路、23は高圧液体流路22,22間に形成され高圧液体流路22,22を区画する隔壁、24は隔壁形成部材21の下流側の端面に形成された凹部に挿設され後述するオリフィス板25に密接されるOリング等のシール部材、25はノズル前端部6内に嵌装され隔壁形成部材21の下流側の端面と密接された円盤状のオリフィス板、26はオリフィス板25の所定箇所に複数形成され高圧液体流路22と同芯状に配置されたオリフィス孔部、27はオリフィス孔部26の下流側にオリフィス板25と密接して配設され外周縁部が噴射口形成部材係止部7に係止された円盤状の噴射口形成部材、28はオリフィス孔部26と同軸になるように噴射口形成部材27の所定部に形成されオリフィス孔部26の孔径(d)よりも大径の噴射口である。オリフィス板25は、オリフィス板25の両面に突設されたオリフィス板係止部25a,25bで、隔壁形成部材21に形成された隔壁形成部材係止部21a、噴射口形成部材27に形成された噴射口形成部材係止部27aに係止され、オリフィス孔部26が、高圧液体流路22、噴射口28と同軸になるように配置されている。これにより、軸芯合わせを簡単かつ確実に行うことができる。
以上のように構成された実施の形態2における液滴噴射ノズルの動作は、実施の形態1で説明したものと同様なので、説明を省略する。
以上のように、本発明の実施の形態2における液滴噴射ノズルは構成されているので、実施の形態1に記載の作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)オリフィス板25に複数のオリフィス孔部26が形成されているので、部品点数が少なく組立てが容易で生産性に優れる。
なお、本実施の形態においては、オリフィス板25が1枚配設された場合について説明したが、オリフィス孔部が同軸状になるようにすれば、複数枚のオリフィス板を重ねて配設することもできる。これにより、オリフィス板が薄板状に形成された場合でも、複数枚を重ねることで補強し、オリフィス板やオリフィス孔部が破損したり変形したりするのを防止できる。
図3は実施の形態2における液滴噴射ノズルの噴射口形成部材の変形例を示す要部断面図である。
図中、30は変形例の噴射口形成部材、31はオリフィス板と噴射口形成部材が一体化して形成された噴射口形成部材30の一面側に複数形成されたオリフィス孔部、32は噴射口形成部材30の噴出側にオリフィス孔部31と同軸に形成されオリフィス孔部31の孔径よりも大径の噴射口である。これにより、オリフィス板が不要になり部品点数を少なくすることができ、さらに組立て時の生産性を高めることができる。
なお、オリフィス孔部31が形成された噴射口形成部材30の液体室側に隔壁を一体に形成することもできる。この場合も実施の形態2で説明したのと同様に流体を整流させるという作用を得ることができる。
図4は実施の形態2における液滴噴射ノズルの噴射口形成部材の他の変形例を示す要部断面図である。
図中、30aは他の変形例の噴射口形成部材、33は噴射口形成部材30aの一面側に複数形成された漏斗状の縮径部、34は縮径部33の端部に形成されたオリフィス孔部、35は噴射口形成部材30aの噴出側にオリフィス孔部34と連通して形成されオリフィス孔部34の孔径よりも大径の噴射口である。これにより、オリフィス板が不要になり部品点数を少なくすることができ、組立て時の生産性を高めることができるとともに、流体の整流作用を向上させることができる。
以下、実施の形態1で説明した液滴噴射ノズルを用いて行った隔壁の効果を確認する実験例を示し、本発明を具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実験例に限定されるものではない。
(実験例1)
内径5mmの先端開口部19、内径2.5mmの噴射口18がピッチ6mmで2箇所に形成された噴射口形成部材13を、ノズル前端部6の噴射口形成部材係止部7に係止した。次に、噴射口形成部材13に形成された2箇所のオリフィス板装着部14に、外径5.6mm、厚さ0.4mm、オリフィス孔部16の孔径d=0.45mmのオリフィス板15とシール部材17をそれぞれ装着した。オリフィス孔部16のピッチは、噴射口のピッチと同様の6mmであった。次に、オリフィス板15が装着された噴射口形成部材13の端面に厚さ40mmの隔壁形成部材9を配設した。隔壁形成部材9には、隔壁12によって離間された内径D=4mmの高圧液体流路11がピッチ6mmで形成されている。以上の噴射口形成部材13及び隔壁形成部材9とノズル前端部6、ノズル後端部3、ストレーナ5を組立て、実験例1の液滴噴射ノズル1を得た。実験例1の液滴噴射ノズルは、隔壁形成部材9の厚さが40mmのため、隔壁12の高さT=40mmである。
(実験例2)
厚さ20mmの隔壁形成部材9を用い隔壁12の高さTを20mmにした以外は実験例1と同様にして、実験例2の液滴噴射ノズルを得た。
(実験例3)
厚さ10mmの隔壁形成部材9を用い隔壁12の高さTを10mmにした以外は実験例1と同様にして、実験例3の液滴噴射ノズルを得た。
(実験例4)
図5は実験例4における液滴噴射ノズルの要部断面図である。なお、実施の形態1で説明したものと同様のものは、同じ符号を付して説明を省略する。
図中、40は実験例4における液滴噴射ノズル、41はノズル後端部3の先端と噴射口形成部材13との間に配設されたOリング等のシール部材である。
以上のように、隔壁形成部材を用いない以外は実験例1と同様にして、実験例4における隔壁の高さT=0mmの液滴噴射ノズルを得た。
(実験例5)
図6は実験例5における液滴噴射ノズルの要部断面図である。なお、実施の形態1で説明したものと同様のものは、同じ符号を付して説明を省略する。
図中、50は実験例5における液滴噴射ノズル、51は外周縁部がノズル前端部6の噴射口形成部材係止部7に係止され外周から中心にかけて肉厚の笠状に形成された噴射口形成部材、52は噴射口形成部材51の中心の1箇所に横断面が円形状に一端面側から穿設形成された先端開口部、53は先端開口部52の上流側の噴射口形成部材51に先端開口部52と同軸で先端開口部52の内径よりも小径に形成された噴射口、54は噴射口形成部材51の他端面に密接された円盤状のオリフィス板、55はオリフィス板54の中心の1箇所に形成され噴射口53と同軸に配設されたオリフィス孔部、56はオリフィス板54の端面とノズル後端部3の先端との間に配設されたOリング等のシール部材である。
実験例5の液滴噴射ノズルでは、先端開口部52の内径は5mm、噴射口53の内径は2.5mm、オリフィス板54の厚さは0.4mm、オリフィス孔部55の孔径は0.45mmとした。
以上のようにして、複数のオリフィス孔部を有しない実験例5の液滴噴射ノズルを得た。
(損傷量の測定)
実験例1〜5の液滴噴射ノズルに高圧液体路2を接続し、高圧液体として圧力50MPaの水を試験片に所定時間噴射し、高圧水を所定時間噴射した前後の試験片の重量減少量(損傷量)を測定した。なお、試験片は、Al−Mg系合金(5083)製で一辺の長さ40mm、厚さ5mmの大きさに形成された方形板である。この合金は、非熱処理合金としては最も優れた強度を有し、溶接性、耐海水性、耐低温性に優れるため、溶接構造材として船舶、車両、温用タンク、圧力容器等に広く使用されている。また、オリフィス孔部から試験片までの距離は100mmとした。
高圧水を試験片に噴射することで、オリフィス孔部から噴射された液滴によって、試験片の表面を壊食させ損傷させることができた。構造体の表面を目視観察したところ、損傷は、1個のオリフィス孔部について、直径1〜2mm程度の円形状であった。
図7は高圧水の噴射時間(30秒まで)と試験片の損傷量との関係を示す図であり、図8は高圧水の噴射時間(5秒まで)と試験片の損傷量との関係を示す図である。なお、実験例5の液滴噴射ノズルのオリフィス孔部は1個であるが、実験例1〜4の液滴噴射ノズルでは2個なので、比較のため、実験例5の実験値の損傷量を2倍して、図7及び図8にプロットした。
図7から明らかなように、複数のオリフィス孔部の間に隔壁を有する実験例1〜3の液滴噴射ノズルで得られる損傷量は、複数のオリフィス孔部の間に隔壁を有しない実験例4の液滴ノズルで得られる損傷量より、著しく大きなことが確認された。特に、高圧水の噴射時間が3〜5秒程度と短い場合でも、図8に示すように、実験例4の液滴噴射ノズルでは損傷量がほぼ0mgなのに対し、実験例1〜3の液滴噴射ノズルでは1mg以上の損傷が得られている。また、隔壁の高さTが10mm(実験例3)、20mm(実験例2)、40mm(実験例1)と高くなるにつれ、損傷が大きくなる傾向がみられることも明らかになった。
具体的には、7秒間の噴射時間の場合、実験例1の液滴噴射ノズルで得られた損傷量は5.5mgであり、実験例4の液滴噴射ノズルで得られた損傷量は0.1mgであったため、約50倍の損傷が得られたことになる。また、10秒間の噴射時間の場合、実験例1の液滴噴射ノズルで得られた損傷量は7.9mgであり、実験例4の液滴噴射ノズルで得られた損傷量は0.4mgであったため、約20倍の損傷が得られたことになる。
さらに、隔壁の高さTが40mmの実験例1の液滴噴射ノズルは、試験片に向かって2秒以上高圧水を噴射すれば、噴射時間が同じ場合に、実験例5の液滴噴射ノズル2つ分の損傷量より大きくなることから、複数のオリフィス孔部から噴射された液滴の相乗効果によって、単数のオリフィス孔部を寄せ集めた以上の大きな損傷が得られることが明らかになった。
以上のように、隔壁を有する実験例1〜3の液滴噴射ノズルによれば、隔壁を有しない実験例4の液滴噴射ノズルと比較して、短時間で大きな損傷量を得ることができるので、金属材料の表面の錆や異物を除去する洗浄作業、表面の劣化塗料やコンクリート劣化層、砥石表面の磨耗層を除去するハツリ作業、金属材料や無機材料等の表面と塗料との密着性を向上させるためのアンカーパターン形成、溶接部の酸化皮膜除去等の大面積の表面改質処理、コンクリートや石材等の切断作業等を短時間で行うことができ作業性に著しく優れることが明らかになった。
(実験例6)
実験例1〜3では内径Dが4mmの高圧液体流路11が形成された隔壁形成部材9を用いたが、高圧液体流路の内径Dを小さくしたときの挙動を確認するため、隔壁形成部材9を内径Dが2mmの高圧液体流路が形成された隔壁形成部材に代えて、Al−Mg系合金(5083)製の試験片を損傷させる実験を行った。実験は、隔壁形成部材の厚さ、即ち隔壁の高さTが10mmと30mmの液滴噴射ノズルについて、実験例1〜5の損傷量の測定と同様に、高圧液体として圧力50MPaの水を試験片に所定時間噴射し、高圧水を噴射した前後の試験片の重量減少量(損傷量)を測定する方法で行った。本実験においても、オリフィス孔部(孔径d=0.45mm)から試験片までの距離は100mmとした。
図9は高圧水の噴射時間(30秒まで)と試験片の損傷量との関係を示す図であり、図10は高圧水の噴射時間(5秒まで)と試験片の損傷量との関係を示す図である。
図7と図9、図8と図10を比較して、オリフィス孔部の孔径d=0.45mmのとき、高圧液体流路の内径DがD=4mmからD=2mmに小さくなると損傷量が小さくなることが確認された。これは、高圧液体流路の内径Dが小さくなり、高圧液体流路の内径Dとオリフィス孔部の孔径dとの比D/dが小さくなるにつれ、オリフィス孔部から噴射される高圧液体が高圧液体流路の内面の影響を受け噴流が広がり易く液滴化が進行しすぎて壊食が起こり難くなったものであると推察している。
(実験例7)
高圧液体流路の内径D=2,4,6mm、オリフィス孔部の内径d=0.1〜2mm、隔壁の高さT=10〜100mmと変えた液滴噴射ノズルを用い、実験例6と同様にして、Al−Mg系合金(5083)製の試験片を損傷させる実験を行った。実験は、高圧液体として圧力50MPaの水を各液滴噴射ノズルから試験片に所定時間噴射し、高圧水を噴射した前後の試験片の重量減少量(損傷量)を測定する方法で行った。本実験においても、液滴噴射ノズルのオリフィス孔部から試験片までの距離は100mmとした。
実験例6と同様にして、高圧水の噴射時間(30秒まで)と試験片の損傷量との関係を調べ、横軸に時間(秒)、縦軸に損傷量(mg)をプロットした図における1秒間当たりの最大の傾き、即ち各液滴噴射ノズルが構造体に与える1秒間当たりの最大の損傷量(最大損傷率)を求めた。
この実験の結果から、最大損傷率は、高圧液体の圧力が一定(50MPa)の場合、高圧液体流路の内径Dとオリフィス孔部の孔径dとの比D/dによって決まる固有の上限があることがわかった(この最大損傷率の固有の上限を、飽和最大損傷率という。)。また、飽和最大損傷率を記録した液滴噴射ノズルの隔壁の高さTは、Dが大きくなるにつれ、またdが大きくなるにつれ高くなることがわかった。
図11は高圧液体流路の内径Dとオリフィス孔部の孔径dとの比D/dと飽和最大損傷率(mg/秒)との関係を示す図である。本実験例では、この最大損傷率の曲線よりも上側の値は得られなかったため、図11は、最大損傷率が、高圧液体流路の内径Dとオリフィス孔部の孔径dとの比D/dによって飽和し固有の上限を示すことを示している。
図11から、比D/dが4より小さくなるにつれ最大損傷率が低下する傾向がみられ、予備実験等のデータも併せると、比D/dが18より大きくなるにつれ最大損傷率が上限に近づき増加し難くなる傾向がみられる。特に、比D/dが3より小さくなるか19より大きくなると、これらの傾向が著しくなるためいずれも好ましくない。なお、比D/dが小さくなると、オリフィス孔部から噴射される高圧液体が高圧液体流路の内面の影響を受け噴流が広がり易く液滴化が進行しすぎて壊食が起こり難くなると推察している。
次に、飽和最大損傷率を記録した液滴噴射ノズルの高圧液体流路の内径Dと隔壁の高さTとの相関式を得るため、図11の飽和最大損傷率の曲線上のDとTに対して両対数プロットした。
図12は図11の飽和最大損傷率の曲線上のDとTに対して両対数プロットし近似線を求めた図である。
ここで、近似線の一般式は、最大損傷率が飽和したときの隔壁の高さTが、Dが大きくなるにつれ、またdが大きくなるにつれ高くなること、DとTに対して両対数プロットした結果、図12に示したように近似線が傾き0.5の直線(切片は20)になったことから、T=K・d・D0.5(但し、Kは定数。T,d,Dの単位はmm。)とおける。さらに、オリフィス孔部の孔径dは、高圧液体の流量、損傷効率等を考慮して0.2〜1mmの範囲が好適であることがわかったため、20=K・d(但し、dは0.2〜1とする。)の関係からKの範囲を計算すると、Kは20〜100となる。
以上の結果から、隔壁の高さ(T)は、T=K・d√D(但し、Kは有効な隔壁の高さを示す定数で、20〜100。T,d,Dの単位はmm。)と表すことができることがわかった。
(実験例8)
実験例1で説明した液滴噴射ノズルを用い、圧力10MPaの塩化ビニル樹脂塗料を高圧液体として試験片に噴射した。なお、オリフィス孔部から試験片までの距離は100mmとした。
試験片の表面を目視観察したところ、試験片の表面には微粒化された液滴が噴射され、均一な塗膜が形成されていた。
本実験の結果、実験例1で説明した液滴噴射ノズルは、塗料を噴射する塗装装置としても優れていることが確認された。
本発明は、水や塗料等の液体を加圧した高圧液体を噴射して微粒化させ液滴を形成できる液滴噴射ノズルに関し、高エネルギーの液滴を広範囲に噴射でき、液滴が噴射された構造体に短時間で大きな損傷を与えることができ、金属材料の表面の錆や異物を除去する洗浄作業、表面の劣化塗料やコンクリート劣化層、砥石表面の磨耗層を除去するハツリ作業、金属材料や無機材料等の表面と塗料との密着性を向上させるためのアンカーパターン形成、溶接部の酸化皮膜除去等の大面積の表面改質処理、コンクリートや石材等の切断作業等を短時間で行うことができ作業性に優れた液滴噴射ノズルを提供することができる。
(a)実施の形態1における液滴噴射ノズルの要部断面図 (b)図1(a)のA−A線における要部断面図 (a)実施の形態2における液滴噴射ノズルの要部断面図 (b)図2(a)のB−B線における要部断面図 実施の形態2における液滴噴射ノズルの噴射口形成部材の変形例を示す要部断面図 実施の形態2における液滴噴射ノズルの噴射口形成部材の別の変形例を示す要部断面図 実験例4における液滴噴射ノズルの要部断面図 実験例5における液滴噴射ノズルの要部断面図 高圧水の噴射時間(30秒まで)と試験片の損傷量との関係を示す図 高圧水の噴射時間(5秒まで)と試験片の損傷量との関係を示す図 高圧水の噴射時間(30秒まで)と試験片の損傷量との関係を示す図 高圧水の噴射時間(5秒まで)と試験片の損傷量との関係を示す図 高圧液体流路の内径Dとオリフィス孔部の孔径dとの比D/dと最大損傷率(mg/秒)との関係を示す図 オリフィス孔部の孔径d=0.45mmの液滴噴射ノズルにおいて最大損傷率が得られたときの高圧液体流路の内径Dと隔壁の高さTとの関係をプロットした図
符号の説明
1 液滴噴射ノズル
2 高圧液体路
3 ノズル後端部
4 ストレーナ係止部
5 ストレーナ
6 ノズル前端部
7 噴射口形成部材係止部
8 液体室
9 隔壁形成部材
9a 隔壁形成部材係止部
10 シール部材
11 高圧液体流路
12 隔壁
13 噴射口形成部材
13a 噴射口形成部材係止部
14 オリフィス板装着部
15 オリフィス板
16 オリフィス孔部
17 シール部材
18 噴射口
19 先端開口部
20 液滴噴射ノズル
21 隔壁形成部材
21a 隔壁形成部材係止部
22 高圧液体流路
23 隔壁
24 シール部材
25 オリフィス板
25a,25b オリフィス板係止部
26 オリフィス孔部
27 噴射口形成部材
27a 噴射口形成部材係止部
28 噴射口
30,30a 噴射口形成部材
31 オリフィス孔部
32 噴射口
33 縮径部
34 オリフィス孔部
35 噴射口
40 液滴噴射ノズル
41 シール部材
50 液滴噴射ノズル
51 噴射口形成部材
52 先端開口部
53 噴射口
54 オリフィス板
55 オリフィス孔部
56 シール部材

Claims (3)

  1. 高圧液体が供給される液体室と、前記液体室の下流側端部に配設若しくは形成された複数のオリフィス孔部と、前記オリフィス孔部の下流側に配設若しくは形成された噴射口と、隣り合う前記オリフィス孔部間の前記液体室の下流側端部に配設若しくは形成され前記液体室を区画する隔壁と、を備えていることを特徴とする液滴噴射ノズル。
  2. 前記隔壁の高さ(T)が、前記隔壁で前記液体室が区画されて形成され前記オリフィス孔部と連通する高圧液体流路の内径(D)、前記オリフィス孔部の内径(d)と(数1)の関係にあることを特徴とする請求項1に記載の液滴噴射ノズル。
    Figure 2006122846
  3. 前記高圧液体流路の内径(D)と前記オリフィス孔部の孔径(d)との比(D/d)が、3〜19であることを特徴とする請求項1又は2に記載の液滴噴射ノズル。
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