JP2006120261A - 磁気記録媒体の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】高記録密度特性に優れ、かつ、耐久性においても信頼性の高い磁気記録媒体を提供する。
【解決手段】
磁性層の厚さが100nm未満であり、磁性粉末の形状が略粒状で、磁性層に含まれるカーボンブラックの平均粒子径をDc、磁性層の厚さをDmとした時に、0.5≦Dc/Dm≦1.0の関係を満たす構成とする。
【選択図】図3

Description

本発明は、高記録密度特性に優れ、エラーの少ない塗布型の磁気記録媒体に関する。
磁気記録媒体は、オーディオテープ、ビデオテープ、コンピュータテープ、磁気ディスク、磁気カードなど種々の用途があるが、特にデータバックアップ用テープの分野では、バックアップの対象となるハードディスクの大容量化にともない、1巻当たり数100GB以上の記録容量を持つ磁気テープが商品化されている。また、今後1TBを超える大容量バックアップテープが提案されており、その高記録密度化は不可欠である。
このような高記録密度化に対応した磁気テープを製造するにあたっては、磁性粉末(以下、磁性粒子ともいう)の微粒子化(以下、微粉末化ともいう)とそれらの塗膜中への高密度充填化、塗膜の平滑化、磁性層の薄層化に関する高度な技術が用いられている。
磁性粉末の改良に関しては、主として、短波長記録に対応するために、微粒子化とともに、磁気特性の改善が図られており、平均粒子径が100nm以下の針状の金属磁性粉末(特許文献1)、50nm以下の板状の六方晶フェライト磁性粉末(特許文献2)、50nm以下の球状ないし楕円状の希土類−窒化鉄磁性粉末(特許文献3)を用いた磁気記録媒体が提案されている。また、短波長記録時の減磁による出力低下を防止するために、年々、高保磁力化が図られている。
一方、磁気記録媒体の製造技術の改良に関しては、近年の高記録密度化に伴い、記録波長が短波長化されているため、最上層磁性層(磁性層が一層しか設けられていない場合には、以下、単に磁性層ともいう)の厚さが厚いと、従来それほど問題とならなかった記録再生時の自己減磁損失や磁性層の厚さに起因する厚み損失の影響が大きくなり、出力が減少する問題が大きくなってきた。そのため、最上層磁性層の厚さを低減することが必要となってきている。
最上層磁性層の厚さを低減すると、磁性層からの漏れ磁束の微弱化と、非磁性支持体の表面粗さの影響が磁性層表面に大きく反映し、磁性層の表面性を劣化させやすいという問題がある。また、磁性層単層のみを薄層化する場合、磁性塗料の固形分濃度を低下させるか、塗布量を低減する方法が考えられるが、これらの手法によっては、塗布時の欠陥や磁性粉末の充填性が向上せず、また塗膜強度を弱めるという問題がある。
このため、媒体製造技術の改良により最上層磁性層を薄層化する場合、非磁性支持体と磁性層との間に下塗層(以下、下層とも言う)を設け、該下塗層が湿潤状態にあるうちに最上層磁性層を塗布する、いわゆる同時重層塗布方式が提案されている(例えば特許文献4)。
磁性層からの漏れ磁束の極微弱化に対しては、これらの磁気記録媒体を使用するシステムにおいては、高感度なMR(磁気抵抗効果)型ヘッドを再生ヘッドに用いたものが主流になりつつある。MR型ヘッドは、誘導コイルを持たないために機器ノイズが小さく、磁気記録媒体のノイズを小さくすることで優れたC/Nを得ることが可能になる。ところが、このMRヘッドは磁気誘導型ではあまり問題にならなかった磁性層表面の微小な凹凸とMR素子との衝突によりノイズ(サーマルノイズ)が発生しやすいため、従来以上に磁性層表面の粗さを制御する必要がある。
特開2004−5792号公報 特開2004−30828号公報 WO03/079332A1パンフレット 特開平5−197946号公報
前述したような、短波長記録に対応させるべく薄層化された磁性層に、高記録密度特性と耐久性を併せて付与するためには、塗膜の平滑化や下層からの潤滑剤の供給だけではなく、磁性層中に含まれる各種の研磨剤やカーボンブラックによる塗膜表面の形状制御が重要になる。
しかし、特許文献1ないし特許文献3に開示されている磁気記録媒体においては、かかる塗膜表面の形状制御が不十分で、微粒子磁性粉末を用いて、高記録密度特性と耐久性を十分達成しているとはいい難かった。
本発明は、上記課題を達成するためになされたものであり、例えばテープ1巻当たり1TB以上の記録容量に対応しうる高記録密度特性に優れ、かつ、耐久性においても信頼性の高い磁気テープを提供することを目的としている。
本発明者らは、鋭意検討した結果、上記の目的を達成するため、非磁性支持体上に、少なくとも磁性粉末とカーボンブラックとを含む磁性層を有する磁気記録媒体において、次のように構成することにより上記目的が達成できることを見出し、本発明を為すに至った。
すなわち、前記磁性層の厚さが100nm未満であり、前記磁性粉末の形状が略粒状で、前記カーボンブラックの平均粒子径をDc、前記磁性層の厚さをDmとした時に、0.5≦Dc/Dm≦1.0の関係を満たす構成とする。
磁性層が薄層化され、磁性粉末の形状、磁性層の厚さに対するカーボンブラックの平均粒子径が好ましい範囲に制御されているので、高記録密度特性と耐久性を併せ持った磁気記録媒体が得られる。
短波長記録の際の自己減磁損失や再生波形の分解能を向上させるためには、最上層の磁性層の厚さを小さくすることが好ましい。磁性層の厚さは、10nm以上、100nm未満であることが好ましく、80nm以下であることがより好ましい。磁性層の厚さが10nm未満であると得られる出力が小さくなり過ぎたり均一な磁性層を塗布し難い場合があり、100nm以上になると自己減磁や厚み損失が大きくなりすぎて短波長記録再生特性が悪くなるからである。
MRヘッドを再生ヘッドに使用する記録再生装置においては、磁気記録媒体のノイズを小さくすることが大きな課題である。そのためには磁性層の塗膜の単位体積中に含まれる磁性粉末粒子の数をできるだけ多くすることが必要となる。そのためには磁性粉末の粒子径を小さくして、粒子体積を小さくすると共に、磁性粉末粒子の充填性を大きくすることで、単位体積中に含まれる磁性粉末粒子の数を多くするとことが好ましい。
磁性粉末の形状は、従来、針状、板状が一般的であったが、近年球状(粒状)のものも提案されている(特許文献3)。磁気記録媒体の磁性塗膜を形成する際に、一般に磁性粉末を記録方向に配向させる工程が設けられ、これにより再生出力を大きくしている。配向工程で磁性粉末を配向させても、完全に配向させるのは困難で、ある割合の磁性粉末は、配向せずに残る。針状、板状など形状異方性のある磁性粉末を使用した場合、この未配向磁性粉が充填性を低下させるので、前述したノイズの低減には障害となる場合がある。球状の磁性粉末の場合は、未配向磁性粉末があっても充填構造の乱れは生じないので充填度の高い塗膜が得られる。
本発明者らの検討によれば、前述の観点から、針状磁性粉末や板状磁性粉であっても針状比(長軸長/短軸長)や板状比(板径/板厚さ)は小さい方が好ましく、1に近づくと粒状粉と同様の効果が得られる。本発明者らの検討の結果、強磁性鉄系金属磁性粉末のような針状磁性粉末では、針状比は3未満が好ましく、六方晶バリウムフエライト磁性粉末のような板状磁性粉末では、板状比は3未満が好ましく、2未満がより好ましく、1.5以下がさらに好ましく、1.5未満が最も好ましいことがわかった。本発明では、これらの針状比や板状比の小さな形状異方性磁性粉末と、軸比が2未満、より好ましくは1.5以下、さらに好ましくは1.5未満の粒状磁性粉末とを略粒状磁性粉末と以下称する。
また、前述したように磁性層が薄層化されると、その表面粗さの制御が今まで以上に重要になってくる。磁性層には、従来より、導電性の改良、走行性の向上のために、カーボンブラックが用いられてきた。
本発明者らは、磁性層が薄層化され、磁性層厚さが、カーボンブラックの粒子径に近づいてきた場合の、カーボンブラック粒子の挙動について検討した結果、カーボンブラック粒子は他の非磁性粉末粒子に比較して比重が小さいために、磁性層に含まれる他の非磁性粉末粒子よりも、磁性層表面に突出する傾向が大きく、従来、磁性層厚さが、カーボンブラックの粒子径よりもかなり大きかった場合には、あまり問題とされていなかったカーボンブラックの粒子径が、磁性層の厚さが小さくなるにつれて、他の非磁性粉末にも増して、磁性層の表面形状に大きく影響してくることを見出した。
さらに、磁性層の厚さをDm、磁性層に含まれるカーボンブラックの平均粒子径をDcとした時に、DmとDcとが下記の関係を満たすと、高密度記録特性と耐久性に優れ、特に、サーマルノイズの小さな磁気記録媒体が得られることを見出した。すなわち、Dmは100nm未満であって、DmとDcとが、0.5≦Dc/Dm≦1.0の関係を満たすことが好ましい。Dc/Dmが1.0を超えるとカーボンブラック粒子による突起が大きくなり、MRヘッドとのスペーシングが大きくなって、出力が小さくなったり、サーマルノイズが大きくなったりする。Dc/Dmが0.5未満になるとカーボンブラック粒子による磁性層の低摩擦化効果が低下して、摩擦が大きくなったり、走行耐久性が低下したりする。
ここでいうカーボンブラックの平均粒子径とは、磁性層の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、倍率20万倍で観察し、カーボンブラックの一次粒子径50個を測定し求めた数平均粒子径である。
以下、本発明の他の構成要素について、さらに詳述する。
<磁性層>
磁性層の厚さは、100nm未満が好ましく、10nm以上100nm未満がより好ましい。100nmを超えると自己減磁や厚み損失が大きくなりすぎ、短波長記録再生特性が悪くなるからである。また、10nm未満では得られる出力が小さくなったり、均一な磁性層を塗布し難い場合がある。
磁性層の保磁力は、160〜400kA/mが好ましく、200〜350kA/mがより好ましく、220〜320kA/mがさらに好ましい。この範囲が好ましいのは、160kA/m未満では記録波長を短くすると反磁界減磁で出力低下が起こったり、400kA/mを超えると磁気ヘッドによる記録が困難になる場合があるためである。
磁性層に用いる結合剤(バインダ樹脂)には、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−ビニルアルコール共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体樹脂、塩化ビニル−水酸基含有アルキルアクリレート共重合体樹脂、ニトロセルロースなどのセルロース系樹脂の中から選ばれる少なくとも1種と、ポリウレタン樹脂とを組み合わせたものなどがある。中でも、塩化ビニル−水酸基含有アルキルアクリレート共重合体樹脂とポリウレタン樹脂を併用するのが好ましい。
ポリウレタン樹脂には、ポリエステルポリウレタン樹脂、ポリエーテルポリウレタン樹脂、ポリエーテルポリエステルポリウレタン樹脂、ポリカーボネートポリウレタン樹脂、ポリエステルポリカーボネートポリウレタン樹脂などがある。
バインダ樹脂には、官能基として、−COOH、−SO3 M、−OSO3 M、−P=O(OM)3 、−O−P=O(OM)2 〔これらの式中、Mは水素原子、アルカリ金属塩基またはアミン塩を示す〕、−OH、−NR12 、−N345 〔これらの式中、R1 ,R2 ,R3 ,R4 ,R5 は水素または炭化水素基を示す〕、エポキシ基などを持つウレタン樹脂などの高分子が、とくに好ましい。
このようなバインダ樹脂が好ましい理由は、磁性粉末などの分散性が向上するためである。2種以上の樹脂を併用する場合には、官能基の極性を一致させるのが好ましく、中でも、−SO3 M基同士の組み合わせとするのが好ましい。
磁性層において、上記の結合剤(バインダ樹脂)は、磁性粉末100重量部に対して、通常7〜50重量部、好ましくは10〜35重量部の割合で用いられる。とくに、バインダ樹脂として、塩化ビニル系樹脂5〜30重量部と、ポリウレタン樹脂2〜20重量部とを、複合して用いるのが最も好ましい。
また、上記のバインダ樹脂とともに、バインダ樹脂中に含まれる官能基などと結合させて架橋する熱硬化性の架橋剤を併用するのが好ましい。
架橋剤としては、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどや、これらのイソシアネート類とトリメチロールプロパンなどの水酸基を複数個有するものとの反応生成物、上記イソシアネート類の縮合生成物などの各種のポリイソシアネートが好ましく用いられる。
これらの架橋剤は、バインダ樹脂100重量部あたり、通常1〜30重量部、好ましくは5〜20重量部の割合で用いられる。下塗層上にウエット・オン・ウエットで磁性層を塗布する場合には、下塗塗料からある程度のポリイソシアネートが拡散供給されるので、ポリイソシアネートを併用しなくても磁性層はある程度架橋される。
上記した熱硬化性のバインダ樹脂の代わりに、放射線硬化性樹脂を用いてもよい。放射線硬化性樹脂には、上記の熱硬化性樹脂をアクリル変性して放射線感応性二重結合を持たせたものや、アクリルモノマー、アクリルオリゴマーが用いられる。
磁性層中に含ませる磁性粉末の平均粒子径は、5nm以上30nm以下の範囲にあるのが好ましく、10nm以上がより好ましい。また、25nm以下がより好ましく、20nm以下がさらに好ましい。この範囲が好ましいのは、平均粒子径が5nm未満では、粒子の表面エネルギーが大きくなって分散が困難になる場合があり、平均粒子径が30nmを超えるとノイズが大きくなる傾向にあるためである。
このような磁性粉末には、強磁性鉄系金属磁性粉末、窒化鉄系磁性粉末、六方晶Ba−フエライト磁性粉末などが好ましく用いられる。
強磁性鉄系金属磁性粉末には、Mn、Zn、Ni、Cu、Coなどの遷移金属を合金として含ませてもよい。その中でも、Co、Niが好ましく、とくにCoは飽和磁化を最も向上できるので、好ましい。上記の遷移金属元素の量としては、鉄に対して、5〜50原子%とするのが好ましく、10〜30原子%とするのがより好ましい。
また、イツトリウム、セリウム、イツテルビウム、セシウム、プラセオジム、サマリウム、ランタン、ユ―ロピウム、ネオジム、テルビウムなどから選ばれる少なくとも1種の希土類元素を含ませてもよい。その中でも、セリウム、ネオジムとサマリウム、テルビウム、イツトリウムを用いたときに、高い保磁力が得られるので、好ましい。希土類元素の量は、鉄に対して0.2〜20原子%、好ましくは0.3〜15原子%、より好ましくは0.5〜10原子%である。
強磁性鉄系金属磁性粉末は、通常、針状、紡錘状、米粒状であるが、平均粒子径(長軸径)が10nm以上30nm以下であるのが好ましい。平均粒子径が10nm未満であると、保磁力が好ましい範囲からはずれたり、比表面積が大きくなるため、分散が不安定になったりし、好ましい記録再生特性が得られない場合があるためである。平均粒子径が30nmを超えると、粒子の大きさに基づく粒子ノイズが大きくなる。強磁性鉄系金属磁性粉末の軸比(長軸径/短軸径)は1以上3未満が好ましい。この範囲が好ましいのは、磁場配向したときの塗膜の充填度が低下しないからである。
窒化鉄系磁性粉末は,公知のものを用いることができる。その形状としては、球状、略球状、楕円体状、略楕円体状、立方体形状など多面体状、略多面体状のものを用いることができる。平均粒子径は30nm以下が好ましく、20nm以下がより好ましい。磁性粉末の軸比は1以上2未満が好ましく、1.5以下がより好ましく、1.5未満がさらに好ましい。
中でも、希土類元素、アルミニウム、珪素、ジルコニウム、チタンなどのように、その酸化物が600℃以下の水素還元により還元されない元素(とくに、希土類元素、アルミニウム、珪素)の少なくとも一つを外層部分に主体的に含有し、鉄または鉄を主体とする遷移金属の窒化物(とくに、Fe162 またはFeの一部を遷移金属で置換したもの)をコアー部分に主体的に含有する窒化鉄系磁性粉末は、200kA/m以上の保磁力を得やすいため、好ましく用いられる。
強磁性鉄系金属磁性粉末または窒化鉄系磁性粉末の保磁力は、160〜400kA/mであるのが好ましく、200〜350kA/mであるのがより好ましい。飽和磁化量は60〜200A・m2 /kg(60〜200emu/g)であるのが好ましく、80〜180A・m2 /kg(80〜180emu/g)であるのがより好ましい。
また、これらの強磁性粉末のBET比表面積としては、35m2 /g以上であるのが好ましく、40m2 /g以上であるのがより好ましく、50m2 /g以上であるのが最も好ましい。通常は、100m2 /g以下であるのがよい。
六方晶Ba−フエライト磁性粉末の保磁力は、160〜400kA/mであるのが好ましく、200〜350kA/mであるのがより好ましい。飽和磁化量は、40〜60A・m2 /kg(40〜60emu/g)であるのが好ましい。
六方晶Ba−フエライト磁性粉末の粒径(板面方向の大きさ)は、10nm以上30nm未満が好ましい。また、25nm以下がより好ましく、20nm以下がさらに好ましい。上記粒径が10nm未満となると、粒子の表面エネルギーが増大するため、塗料中への分散が困難になる場合があり、30nmを超えると、粒子の大きさに基づく粒子ノイズが大きくなる傾向にあるためである。
また、六方晶Ba−フエライト磁性粉末の板状比(板径/板厚)としては、1以上3未満が好ましく、1以上2以下がより好ましく、1以上1.5以下がさらに好ましく、1以上1.5未満が最も好ましい。また、六方晶Ba−フエライト磁性粉末のBET比表面積は、1〜100m2 /gであるのが好ましい。
また、磁性粉末の分散性向上のために、上記の強磁性鉄系金属磁性粉末、窒化鉄磁性粉末または六方晶Ba−フエライト磁性粉末を、Al,Si,P,Y,Zr化合物またはこれらの酸化物で表面処理して使用してもかまわない。
磁性層に含ませる磁性粉末には、上記の好ましい各磁性粉末のうち、とくに大きい保磁力が得られる窒化鉄系磁性粉末、六方晶Ba−フエライト磁性粉末がより好ましく、さらに大きな飽和磁化量が得られる窒化鉄系磁性粉末が最も好ましい。
なお、これらの磁性粉末の磁気特性は、いずれも、試料振動形磁束計で外部磁場1273.3kA/m(16kOe)での測定値をいうものである。
また、これらの磁性粉末の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)にて20万倍で撮影した写真から各粒子の最大径(針状粉では長軸径、板状粉では板径)を実測し、50個の数平均値により求めたものである。
本発明の磁気記録媒体においては、磁性層中に、導電性向上と表面潤滑性向上を目的に従来公知のカーボンブラックを添加する。カーボンブラックとしては、アセチレンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラックなどを使用できる。
カーボンブラックとしては、上述のように、カーボンブラックの平均粒子径をDc、磁性層の厚さをDm(100nm未満)とした時に、0.5≦Dc/Dm≦1.0の関係を満たすものが使用される。また、必要により、上述の関係を満たすカーボンブラックより平均粒子径の小さなカーボンブラックを用いてもかまわない。
また、磁性層中には、必要に応じて、カーボンブラック以外の非磁性粉末を添加してもよい。磁性層中に含ませる、カーボンブラック以外の非磁性粉末は、平均粒子径が150nm未満であるのが好ましく、100nm未満がより好ましく、磁性層の厚さ以下であることが最も好ましい。非磁性粉末には、好ましくは、α−アルミナ、β−アルミナ、炭化ケイ素、酸化クロム、酸化セリウム、α−酸化鉄、コランダム、人造ダイアモンド、窒化珪素、炭化珪素、チタンカーバイト、酸化チタン、二酸化珪素、窒化ホウ素など、主としてモース硬度が6以上のものが、単独でまたは組み合わせて用いられる。
また、耐久性向上の効果が得られるものであれば、炭酸カルシウム、硫酸バリウムなどの金属塩類粉末、ベンゾグアナミン、架橋ポリスチレン、ポリエチレン、シリコン樹脂、ポリテトラフルオロエチレンなどの有機溶剤に不溶の有機粉末など、従来公知の非磁性粉末を広く用いることができる。
本発明の磁気記録媒体において、非磁性粉末の添加量は、磁気記録媒体の耐久性やヘッド研磨量の要求仕様に応じて、適宜選択すればよく、通常は、磁性粉末に対して、2〜20重量%であるのが好ましい。
<非磁性支持体>
磁性支持体の厚さは、用途によって異なるが、通常、1.5〜11.0μmのものが使用される。より好ましくは2.0〜7.0μm、最も好ましくは2.0〜6.0μmである。この範囲の厚さの非磁性支持体が使用されるのは、1.5μm未満では製膜が難しく、またテープ強度が小さくなり、11.0μmを超えるとテープ全厚が厚くなり、テープ1巻当りの記録容量が小さくなるためである。
非磁性支持体の長手方向のヤング率は、5.8GPa(590kg/mm)以上が好ましく、7.1GPa(720kg/mm)以上がより好ましく、7.8GPa(800kg/mm)以上が最も好ましい。非磁性支持体の長手方向のヤング率が5.8GPa(590kg/mm)以上がよいのは、長手方向のヤング率5.8GPa(590kg/mm)未満では、テープ走行が不安定になるためである。
また、ヘリキャルスキャンタイプでは、長手方向のヤング率(MD)/幅方向のヤング率(TD)が0.60〜0.80の範囲が好ましく、0.65〜0.75の範囲がより好ましい。上記範囲がよいのは、0.60未満または0.80を超えると、そのメカニズムについては現在のところ不明であるが、磁気ヘッドのトラックの入り側から出側間の出力
のばらつき(フラットネス)が大きくなるためである。
このばらつきは長手方向のヤング率/幅方向のヤング率が0.70付近で最小になる。さらに、リニアレコーディングタイプでは、長手方向のヤング率/幅方向のヤング率は、その理由は明らかではないが、0.70〜1.30が好ましい。
非磁性支持体の幅方向の温度膨張係数は、−10〜10×10−6、湿度膨張係数は、0〜10×10−6が好ましい。この範囲が好ましいのは、この範囲をはずれると、温度・湿度の変化によりオフトラックが生じ、エラーレートが大きくなる場合があるからである。
上記したような特性をすべて満足する非磁性支持体としては、二軸延伸のポリエチレンテレフタレートフイルム、ポリエチレンナフタレートフイルム、芳香族ポリアミドフィルム、芳香族ポリイミドフィルムなどが挙げられる。
<下塗層>
本発明においては、磁性層の厚さが100nm未満と薄いので、磁性層の平滑性を高くして、短波長記録特性を向上させるため、下塗層を設けるのが好ましい。
下塗層の厚さは、0.2μm以上1.0μm未満が好ましく、0.8μm以下がより好ましい。この範囲が好ましいのは、0.2μm未満では、磁性層の厚さむらの低減効果、耐久性の向上効果が小さくなり、また1.0μm以上になると、磁気テープの全厚が厚くなりすぎ、テープ1巻当りの記録容量が小さくなるためである。
下塗層に使用する非磁性粉末には、酸化チタン、酸化鉄、酸化アルミニウムなどがあるが、酸化鉄単独または酸化鉄と酸化アルミニウムの混合系が好ましく使用される。非磁性粉末の粒子形状は、球状、板状、針状、紡錘状のいずれでもよいが、針状、紡錘状の場合は、通常、長軸長50〜200nm、短軸長5〜100nmのものが好ましい。また、粒状の場合は粒径5〜200nm、より好ましくは5〜100nmのものが使用される。
このような非磁性粉末を主として、必要により粒子径0.01〜0.1μmのカーボンブラック、上述の粒子径の針状または粒状の酸化アルミニウムを補助的に含有させることが多い。下塗層を平滑にかつ厚みムラを少なく塗布するには、上記の非磁性粉末およびカーボンブラックは粒度分布がシャープなものを用いるのがとくに好ましい。
下塗層には、磁気記録媒体の温度・湿度膨張係数の低減と、上層磁性層の平滑性向上のために、平均粒子径10〜100nmの非磁性板状粉末を添加するのが好ましい。非磁性板状粉末の成分には、セリウムなどの希土類元素、ジルコニウム、珪素、チタン、マンガン、鉄などの元素の酸化物または複合酸化物が用いられる。
導電性改良の目的で、平均粒子径10〜100nmのグラファイトのような板状炭素性粉末や平均粒子径10〜100nmの板状ITO(インジウム、スズ複合酸化物)粉末などを添加してもよい。前記の非磁性板状粉末を添加することで、膜厚の均一性、表面平滑性、剛性、寸法安定性が改善される。なお、下塗層に使用する結合剤(バインダ樹脂)としては、後記の磁性層と同様のものを用いることができる。
なお、磁性粉末を含む下塗層も排除するものではない。
<潤滑剤>
磁性層、下塗層には、磁性層、下塗層に含まれるそれぞれの全粉体に対して、0.5〜3.0重量%の脂肪酸アミドを含有させるのが好ましく、また0.5〜5.0重量%の高級脂肪酸を含有させるのが好ましく、さらに0.2〜3.0重量%の高級脂肪酸エステルを含有させるのが好ましい。
上記範囲の脂肪酸アミドの添加が好ましいのは、0.5重量%未満ではヘッド/磁性層界面での直接の接触が起こりやすく焼付き防止効果が小さく、3.0重量%を超えるとブリードアウトしてドロップアウトなどの欠陥が発生するおそれがあるからである。また、上記範囲の高級脂肪酸の添加が好ましいのは、0.5重量%未満では摩擦係数低減効果が小さく、5.0重量%を超えると下塗層が可塑化して強靭性が失われるおそれがあるからである。さらに、上記範囲の高級脂肪酸エステルの添加が好ましいのは、0.2重量%未満では摩擦係数低減効果が小さく、3.0重量%を超えると磁性層への移入量が多すぎるため、テープとヘッドが貼り付くなどの副作用を生じるおそれがあるからである。
高級脂肪酸としては、炭素数10以上の脂肪酸を用いるのが好ましく、高級脂肪酸エステルは上記高級脂肪酸のエステルを用いるのが好ましい。炭素数10以上の脂肪酸には、直鎖、分岐、シス・トランスなどの異性体のいずれでもよいが、潤滑性能にすぐれる直鎖型が好ましい。このような脂肪酸としては、たとえば、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ベヘン酸、オレイン酸、リノール酸などが挙げられる。これらの中でも、ミリスチン酸、ステアリン酸、パルミチン酸などが好ましい。
なお、磁性層の潤滑剤と下塗層の潤滑剤の相互移動を排除するものではなく、潤滑剤が下塗層に含まれる場合には、磁性層に潤滑剤を含ませなくてもよい。また、逆に磁性層に含ませるだけで効果が発現する場合には、下塗層に含ませなくてもよい。
また、下塗層、磁性層に潤滑剤を含ませるには、各層形成用の塗料中に潤滑剤を添加する方法のほか、下塗層、磁性層の形成後に、潤滑剤または潤滑剤を含む溶液を浸漬ないし噴霧する方法など、種々の方法を採用することができる。
<分散剤>
下塗層や磁性層に含まれる非磁性粉末やカーボンブラック、磁性粉末は、結合剤(バインダ樹脂)との分散性を良くするため、適宜の分散剤で表面処理することができる。また、上記各粉体を含む下塗層、磁性層を形成するための塗料中に適宜の分散剤を添加してもよい。分散剤としては、リン酸系分散剤、カルボン酸系分散剤、アミン系分散剤、キレート剤、各種シランカップリング剤などが好適なものとして用いられる。これらの分散剤は、混練前処理工程、混練工程や初期分散工程の後に配合するのが好ましい。リン酸系分散剤としては、リン酸モノメチル、リン酸ジメチル、リン酸モノエチル、リン酸ジエチルなどのアルキルリン酸エステル類、フエニルホスホン酸、モノオクチルフエニルホスホン酸などの芳香族リン酸類などが挙げられ、市販品として、東邦化学製の「GARFAC RS410」、城北化学工業製の「JP−502」、「JP−504」、「JP−508」などを用いることができる。また、カルボン酸系分散剤としては、炭素数12〜18個の脂肪酸、具体的には、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、ステアリン酸などが用いられる。また、上記脂肪酸のアルカリ金属またはアルカリ土類金属からなる金属石けん、上記脂肪酸のアミド、上記脂肪酸のエステルまたはこれにフッ素を含ませた化合物、ポリアルキレンオキサイドアルキルリン酸エステル、レシチン、トリアルキルポリオレフィンオキシ第四級アンモニウム塩(アルキルは炭素数1〜5個、オレフィンはエチレン、プロピレンなど)、硫酸塩、スルホン酸塩、りん酸塩、銅フタロシアニン、安息香酸、フタル酸、テトラカルボキシルナフタレン、ジカルボキシルナフタレン、炭素数12〜22の脂肪酸などが挙げられる。アミン系分散剤としては炭素数8〜22の脂肪族アミン、芳香族アミン、アルカノールアミン、アルコキシアルキルアミン等がある。さらに、キレ―ト剤としては、1,10−フエナントロリン、EDTA、ジメチルグリオキシム、アセチルアセトン、グリシン、ジチアゾン、ニトリロ三酢酸などが挙げられる。これらは、単独でも組み合わせて使用してもよい。
分散剤は、いずれの層においても結合剤100重量部に対して通常、0.5〜20重量部の範囲で添加される。
<バックコート層>
本発明の磁気記録媒体を構成する非磁性支持体の他方の面(磁性層が形成されている面とは反対側の面)には、走行性の向上等を目的としてバック層を設けることができる。バック層は、蒸着、スパッタ、CVD、塗布によって形成されるが、おもにカーボンブラックとバインダ樹脂とからなるバックコート層が一般的である。
バックコート層に磁性があると磁性層の磁気信号が乱れる場合があるので、通常、バックコート層は非磁性である。バックコート層の厚さは、0.2〜0.8μmが好ましい。この範囲が良いのは、0.2μm未満では、走行性向上効果が不十分で、0.8μmを超えるとテープ全厚が厚くなり、1巻当たりの記録容量が小さくなるためである。また、中心線平均表面粗さRaは、3〜8nmが好ましく、4〜7nmがより好ましい。
バックコート層に含ませるカーボンブラックには、アセチレンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラックなどを使用することができる。通常、小粒子径カーボンブラックと大粒子径カーボンブラックとを併用するのが望ましい。小粒子径カーボンブラックと大粒子径カーボンブラックとの合計の添加量は、無機粉体重量を基準にして、60〜98重量%が好ましく、70〜95重量%がより好ましい。
小粒子径カーボンブラックとしては、平均粒子径5〜200nmのものが好ましく、平均粒子径10〜100nmのものがより好ましい。この範囲が好ましいのは、平均粒子径が小さすぎるとカーボンブラックの分散が難しくなり、また平均粒子径が大きすぎると多量のカーボンブラックを添加する必要があり、いずれの場合も表面が粗くなり、磁性層への裏移り(エンボス)の原因になるからである。
また、大粒子径カーボンブラックとして、上記した小粒子径カーボンブラックの5〜15重量%、平均粒子径200〜400nmの大粒子径カーボンブラックを使用すると、表面も粗くならず、走行性向上効果も大きくなる。
バックコート層には、強度、温度・湿度寸法安定性向上などを目的として、平均粒子径が10〜100nmの非磁性板状粉末を添加することができる。
非磁性板状粉末の成分は、酸化アルミニウムに限らず、セリウムなどの希土類元素、ジルコニウム、珪素、チタン、マンガン、鉄などの元素の酸化物または複合酸化物が用いられる。導電性改良の目的で、平均粒子径が10〜100nmの板状炭素性粉末や平均粒子径が10〜100nmの板状ITO粉末などを添加してもよい。
また、必要に応じて、平均粒子径が0.1〜0.6μmの粒状酸化鉄粉末を添加してもよい。添加量はバックコート層中の全無機粉体の重量を基準にして2〜40重量%が好ましく、5〜30重量%がより好ましい。また、平均粒子径が0.1〜0.6μmのアルミナを添加すると、耐久性がさらに向上するので、好ましい。
バックコート層には、結合剤(バインダ樹脂)として、磁性層や下塗層に用いる樹脂と同じものを使用できる。中でも、摩擦係数を低減し走行性を向上させるため、セルロース系樹脂とポリウレタン系樹脂とを複合して使用するのが望ましい。
バインダ樹脂の使用量は、カーボンブラックと前記無機非磁性粉末との合計量100重量部に対し、通常40〜150重量部、好ましくは50〜120重量部、より好ましくは60〜110重量部、さらに好ましくは70〜110重量部である。
バインダ樹脂が過少では、バックコート層の強度が不十分となり、過多となると、摩擦係数が高くなりやすい。バインダ樹脂として、セルロース系樹脂を30〜70重量部、ポリウレタン系樹脂を20〜50重量部使用するのが最も望ましい。
また、上記のバインダ樹脂を硬化させるために、ポリイソシアネート化合物などの架橋剤を用いるのが好ましい。架橋剤の使用量は、バインダ樹脂100重量部に対して、通常10〜50重量部、好ましくは10〜35重量部、より好ましくは10〜30重量部である。架橋剤の使用量が過少では、バックコート層の塗膜強度が弱くなりやすく、また過多となると、テープドライブの走行系に備えられるガイドローラなど(材質が、たとえば、SUS304)に対する動摩擦係数が大きくなる。なお、磁性層や下塗層と同様の電子線硬化性樹脂を架橋剤として使用することもできる。
下塗層の厚さが0.5μm以下になると、下塗層から供給される潤滑剤成分が不足する場合がある。その場合、バックコート層に潤滑剤を含ませ、バックコート層から磁性層側の表面に潤滑剤を供給するのが望ましい。潤滑剤の種類は、磁性層、下塗層に用いるものと同様のものが用いられる。添加量としては、バックコート層中の全非磁性粉末に対して、0.5〜3.0重量%の脂肪酸アミド、0.2〜3.0重量%の高級脂肪酸エステル、0.5〜5.0重量%の高級脂肪酸を含有させるのが好ましい。
<有機溶剤>
磁性塗料、下塗塗料、バックコート塗料に使用する有機溶剤としては、たとえば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの酢酸エステル系溶剤などが挙げられる。これらの有機溶剤は、単独でまたは混合して使用され、さらにトルエンなどと混合して使用される。
以下に実施例によって本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例、比較例の部は重量部を示す。また、実施例および比較例の平均粒子径は、数平均粒子径を示す。
実施例1:
《下塗塗料成分》
(1)
・非磁性板状酸化鉄粉末(平均粒子径:50nm) 76部
・カーボンブラック(平均粒子径:25nm) 24部
・ステアリン酸 2.0部
・塩化ビニル−ヒドロキシプロピルアクリレート共重合体 8.8部
(含有−SO3 Na基:0.7×10-4当量/g)
・ポリエステルポリウレタン樹脂 4.4部
(Tg:40℃、含有−SO3 Na基:1×10-4当量/g)
・シクロヘキサノン 25部
・メチルエチルケトン 40部
・トルエン 10部
(2)
・ステアリン酸 1部
・ステアリン酸ブチル 1部
・シクロヘキサノン 70部
・メチルエチルケトン 50部
・トルエン 20部
(3)
・ポリイソシアネート 1.4部
・シクロヘキサノン 10部
・メチルエチルケトン 15部
・トルエン 10部
《磁性塗料成分》
(1)混練工程
・磁性粉末 (Y−N−Fe) 100部
(Y/Fe:5.5at%、
N/Fe:11.9at%
σs:103A・m/kg(103emu/g)、
Hc:211.0kA/m(2650Oe)、
平均粒子径:17nm、軸比:1.2)
・塩化ビニル−ヒドロキシプロピルアクリレート共重合体 13部
(含有−SO3 Na基:0.7×10-4当量/g)
・ポリエステルポリウレタン樹脂(PU) 4.5部
(含有−SO3 Na基:1.0×10-4当量/g)
・粒状アルミナ粉末(平均粒子径:40nm) 10部
・メチルアシッドホスフェート(MAP) 2部
・カーボンブラック 3部
(平均粒子径:75nm、吸油量72ml/100g)
・テトラヒドロフラン(THF) 20部
・メチルエチルケトン/シクロヘキサノン(MEK/A) 9部
(2)希釈工程
・パルミチン酸アミド(PA) 1.5部
・ステアリン酸n−ブチル(SB) 1部
・メチルエチルケトン/シクロヘキサノン(MEK/A) 350部
(3)配合工程
・ポリイソシアネート 1.5部
・メチルエチルケトン/シクロヘキサノン(MEK/A) 29部
上記の下塗塗料成分において(1)を回分式ニーダで混練したのち、(2)を加えて攪拌の後サンドミルで滞留時間を60分として分散処理を行い、これに(3)を加え攪拌・濾過した後、下塗塗料(下塗層用塗料)とした。
これとは別に、上記の磁性塗料の成分において(1)混練工程成分を予め高速混合しておき、その混合粉末を連続式2軸混練機で混練し、さらに(2)希釈工程成分を加え連続式2軸混練機で少なくとも2段階以上に分けて希釈を行い、サンドミルで滞留時間を45分として分散し、これに(3)配合工程成分を加え攪拌・ろ過後、磁性塗料とした。
上記の下塗塗料を、芳香族ポリアミドフィルム(厚さ3.9μm、MD=11GPa、MD/TD=0.7、商品名:ミクトロン、東レ社製)からなる非磁性支持体(ベースフィルム)上に、乾燥、カレンダ後の厚さが0.9μmとなるように塗布し、この下塗層上に、さらに上記の磁性塗料を磁場配向処理、乾燥、カレンダ処理後の磁性層の厚さが0.09μmとなるようにエクストルージョン型コータにてウエット・オン・ウエットで塗布し、磁場配向処理後、ドライヤおよび遠赤外線を用いて乾燥し、磁気シートを得た。
《バックコート層用塗料成分》
・カーボンブラック(平均粒子径:25nm) 80部
・カーボンブラック(平均粒子径:350nm) 10部
・非磁性板状酸化鉄粉末(平均粒子径:50nm) 10部
・ニトロセルロース 45部
・ポリウレタン樹脂(−SO3 Na基含有) 30部
・シクロヘキサノン 260部
・トルエン 260部
・メチルエチルケトン 525部
上記バックコート層用塗料成分をサンドミルで滞留時間45分として分散した後、ポリイソシアネート15部を加えてバックコート層用塗料を調整しろ過後、上記で作製した磁気シートの磁性層の反対面に、乾燥、カレンダ後の厚みが0.5μmとなるように塗布し、乾燥した。
このようにして得られた磁気シートを金属ロールからなる7段カレンダで、温度100℃、線圧196kN/mの条件で鏡面化処理し、磁気シートをコアに巻いた状態で70℃にて72時間エージングし、バック層付き磁気シートを得た。
磁気シートをスリットマシンにより1/2インチ幅に裁断した。スリットマシン(磁気テープ原反を所定幅の磁気テープに裁断する装置)は、構成している各種要素を下記のように改良したものを用いた。巻き出し原反からスリット刃物群に至るウェブ経路中にテンションカットローラを設け、このテンションカットローラをサクションタイプとし、吸引部は多孔質金属を埋め込んだメッシュサクションとした。刃物駆動部に動力を伝達する機構を持たないモータ直結のダイレクトドライブとした。
上記のようにして得られた磁気テープを、カートリッジに組み込み、コンピュータ用テープを作製した。
実施例2:
磁性粉末を、バリウム磁性粉末(Ba−Fe)(σs:51A・m/kg(51emu/g)、Hc:161.5kA/m(2029Oe)、板状比:2.7)に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2のコンピュータ用テープを作製した。
実施例3:
磁性粉末を、鉄系磁性粉末(Co−Fe)(σs:92A・m/kg(92emu/g)、Hc:111.4kA/m(1400Oe)、軸比:2.8)に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例3のコンピュータ用テープを作製した。
比較例1:
磁性塗料に含ませるカーボンブラックを、平均粒子径:100nm、吸油量68ml/100gのものに変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例1のコンピュータ用テープを作製した。
比較例2:
磁性塗料に含ませるカーボンブラックを、平均粒子径:40nm、吸油量114ml/100gのものに変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例2のコンピュータ用テープを作製した。
比較例3:
磁性層の厚さを110nmに変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例3のコンピュータ用テープを作製した。
比較例4:
磁性粉末を、バリウム磁性粉末(Ba−Fe)(σs:52A・m/kg(52emu/g)、Hc:160.8kA/m(2020Oe)、板状比:3.2)に変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例4のコンピュータ用テープを作製した。
比較例5:
磁性粉末を、鉄系磁性粉末(Co−Fe)(σs:88A・m/kg(88emu/g)、Hc:114.6kA/m(1440Oe)、軸比:3.5)に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例3のコンピュータ用テープを作製した。
比較例6:
磁性粉末の平均粒子径を20nm、磁性塗料に含ませるカーボンブラックを、平均粒子径:100nm、吸油量68ml/100gのものに変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例6のコンピュータ用テープを作製した。
評価の方法は、以下のように行った。
〈C/N測定〉
テープの電磁変換特性測定には、ドラムテスターを用いた。ドラムテスターには電磁誘導型ヘッド(トラック幅25μm、ギャップ0.2μm)とMRヘッド(トラック幅8μm)を装着し、誘導型ヘッドで記録、MRヘッドで再生を行った。両ヘッドは回転ドラムに対して異なる場所に設置されており、両ヘッドを上下方向に操作することで、トラッキングを合わせることができる。磁気テープはカートリッジに巻き込んだ状態から適切な量を引き出して廃棄し、更に60cmを切り出し、更に4mm幅に加工して回転ドラムの外周に巻き付けた。
出力及びノイズは、ファンクションジェネレータにより矩形波を記録電流電流発生器に入力制御し、波長0.2μmの信号を書き込み、MRヘッドの出力をプリアンプで増幅後、スペクトラムアナライザーに読み込んだ。0.2μmのキャリア値を媒体出力Cとした。
また0.2μmの矩形波を書き込んだときに、記録波長0.2μm以上に相当するスペクトルの成分から、出力及びシステムノイズを差し引いた値の積分値をノイズ値Nとして用いた。更に両者の比をとってC/Nとし、比較例6のテープの値との相対値を求めた。
〈エラーレート〉
カンタム社製DLT7000ドライブを使用して、室温環境下で全長かつ全トラックを300時間連続で走行させ、ドライブが出力するエラー情報をRS−232Cインターフェース経由で読みとり、記録容量1MB当たりのエラー数として評価した。
〈磁性層厚さ〉
試料の磁気記録媒体を樹脂埋めし、それを集束イオンビーム加工装置で厚さ方向の断面をテープの長手方向に切り出し、その断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で10万倍にて10視野の写真撮影を行い、磁性層表面、磁性層−下塗層界面を縁取りする。つぎに、写真1視野当り、界面に非磁性粉末のかかっていない任意の5個所を選び、それぞれ縁取りした線間の距離を下塗層の厚さとして計測する。写真10視野について同様の計測を行い、それらを平均して磁性層厚さとした。
〈カーボンブラックの粒子径〉
撮影倍率を20万倍としたことを除き、上記した磁性層厚さを求める場合と同様にして、必要枚数の磁性層断面の写真撮影を行い、写真視野中の磁性層を長手方向に0.5μm長さ毎に区切り、各区切りの磁性層中のカーボンブラックの内、粒子径が最大の一次粒子の外形を縁取りする。カーボンブラックは通常、一次粒子が孤立粒子として存在する場合と、一次粒子が鎖状につながったストラクチャを形成している場合とがあるが、いずれの場合にも、粒子径が最大の一次粒子の外形を縁取りし、その外形の最大さしわたしを粒子径として測定する。50個のカーボンブラックのについて同様の測定を行い、それらの数平均値をカーボンブラックの平均粒子径とした。
〈磁性粉末の粒子径および軸比〉
撮影倍率を20万倍としたことを除き、上記した磁性層厚さを求める場合と同様にして、必要枚数の磁性層断面の写真撮影を行い、磁性層中に含まれる磁性粉末の粒子径および軸比を計測する。磁性粉末については粒子径および軸比分布が極めて小さいので、代表的な磁性粉末粒子の粒子径および軸比を測定すればよいが、粒子径および軸比分布がある場合には、50個の磁性粉末粒子について、各粒子の粒子径および軸比を計測し、それら50個の数平均値を磁性粉末の平均粒子径及び平均軸比とした。
表1に各コンピュータ用テープの評価結果を示した。表から明らかなように、本発明に係る実施例1〜3の各コンピュータ用テープは、請求項1を満たさない比較例1〜6の各コンピュータ用テープに比較してC/Nが良好で、耐久性も大きい。
Figure 2006120261
次に、図1乃至図4を用いて、本発明の各種数値の臨界的意義等を明らかにする。まず図1にDc/Dmの値と、C/Nとの関係を示す。実施例1を基本組成とし、カーボンブラックの平均粒子径を25〜100nm、磁性層厚さを35〜100nmの範囲で変化させて実験を行った。得られたコンピュータテープのC/Nの値(dB)を各ポイントに添えて示した。図から明らかなように、Dc/Dmが1のライン(実線で示す)よりも図中で上の領域になるとC/Nが低下することが分る。また、磁性層の厚さが100nm以上になるとC/Nが低下することが分る。
図2にDc/Dmの値と、耐久走行試験後のエラーレート(ER)との関係を示す。実施例1を基本組成とし、カーボンブラックの平均粒子径を25〜100nm、磁性層厚さを35〜100nmの範囲で変化させて実験を行った。得られたコンピュータテープのエラーレートの値(個/MB)を各ポイントに添えて示した。図から明らかなように、Dc/Dmが0.5のライン(実線で示す)よりも図中での下の領域になると耐久走行試験後のエラーレートが増加することが分る。
図3に、図1および図2の結果をまとめて示した。Dc/Dm=1、Dc/Dm=0.5、Dm=100nmの各ラインで囲まれたDc、Dmの範囲が、C/N、耐久性の良好な範囲を示していることが分る。
図4に磁性粉末の粒子径とC/Nとの関係を示す。実施例1を基本組成とし、磁性粉末の粒子径を15〜20nmの範囲で変化させて実験を行った。磁性粉末の粒子径が20nm未満のものは、磁性粉末の粒子径が20nmのものに比べて、C/Nが大きい。また、粒子径が小さくなるにつれて、C/Nが大きくなることが分る。
Dc/Dmの値と、C/Nとの関係を示す図である。 Dc/Dmの値と、耐久走行試験後のエラーレート(ER)との関係を示す図である。 Dc/Dmの値と、C/N、ERとの関係を示すまとめ図である。 磁性粉末の粒子径と、C/Nとの関係を示す図である。

Claims (1)

  1. 非磁性支持体上に、少なくとも磁性粉末とカーボンブラックとを含む磁性層を有する磁気記録媒体において、前記磁性層の厚さが100nm未満であり、前記磁性粉末の形状が略粒状で、前記カーボンブラックの平均粒子径をDc、前記磁性層の厚さをDmとした時に、0.5≦Dc/Dm≦1.0の関係を満たすことを特徴とする磁気記録媒体。
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