本発明によれば、3個あるいはそれ以上の容量のうちの一部の容量をデジタル・データのビットの値に対応した電位に充電した後に残りの容量との間で充電電荷の再配分を行う操作を繰り返すことにより、デジタル・データに対応したアナログ電圧を形成することができる。
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明に至る過程で試作した映像信号駆動回路において用いられるデジタル・アナログ変換回路(DAC)を表す概略図である。
また、図2は、その動作波形を表すタイミング・チャートである。
さらに、図3は、このようなDACを搭載した液晶表示装置の要部概略構成を例示する概念図である。
まず、図3を参照しつつ、本発明の液晶表示装置の構成について説明する。同図に例示した液晶表示装置は、「線順次方式」と称される形式のものであり、全ての映像信号線に対して同時に映像信号を書き込むように動作する。すなわち、画像表示部20に隣接して、映像信号駆動回路VDと走査線駆動回路SDとが同一基板上に設けられている。また、これらを構成するスイッチング素子は、同一の堆積工程により形成されたポリシリコンなどの同層の半導体層からなる。
画像表示部20には、複教本の映像信号線27とこれに直交する複教本の走査線28とが配線され、これらの交点に画素TFT29が設けられている。TFT29のドレイン電極には、液晶容量Clcと補助容量Csとがそれぞれ接続され、表示画素を形成している。
走査線駆動回路SDは、例えば、図示しないシフトレジスタと走査線駆動バッファとにより構成され、各々のバッファ出力が各走査線28に供給される。このようにして各走査線28に供給された走査線信号に基づいて、対応する画素のTFT29がオン・オフ制御される。
映像信号駆動回路VDは、シフトレジスタ21とサンプリング・スイッチ24とDAC10とバッファ・アンプ(アンプ回路)50により構成されている。シフト・レジスタ21には、クロック信号(CLK−A)とトリガ信号が入力される。そして、シフトレジスタ21からの出力と、シリアルデータのサンプリング用クロックとにより、サンプリング・スイッチ24が制御される。サンプリング・スイッチ24からは、サンプル信号(Sample)と、その反転信号(/Sample)と、コントロール信号(Control)とが出力される。
DAC10は、これらの信号に基づいて、シリアル入力されるデジタル映像信号をアナログ信号に変換して出力する。出力されたアナログの映像信号は、書き込み制御スイッチASと、バッファ・アンプ50を介して各映像信号線27に供給され、対応する画素TFT29を介して液晶容量Clcと補助容量Csとに蓄積され、所定の画像を表示する。
次に、本発明に至る過程で試作したシリアルDACの構成について図1を参照しつつ説明する。
まず、その入力段には、スイッチ選択回路11が設けられている。スイッチ選択回路11は、NOR1、NOR2、NOT1、NOT2により構成される。
スイッチ選択回路11の後段には、NチャネルトランジスタM1、PチャネルトランジスタM2、容量C1、NチャネルトランジスタM4、PチャネルトランジスタM5、容量C2、及びNチャネルトランジスタM3が設けられている。
スイッチ選択回路11は、入力されるデータ信号(Data)とコントロール信号(Control)とに応じて、トランジスタM1とトランジスタM2のいずれかを選択する。さらに詳しく説明すると、コントロール信号が、”L”(ロウ)の場合には、トランジスタM1とM2はデータ信号により排他的に選択可能となり、テータ信号が”0”ではトランジスタM1が選択され、データ信号が”1”ではトランジスタM2が選択される。
一方、コントロール信号が”H”(ハイ)では、トランジスタM1,M2はいずれも選択されない。
トランジスタM1は接地電位に接続され、選択回路11からの信号に応じて容量C1の電荷を放電する。また、トランジスタM2は基準電圧Vsに接続され、選択回路11からの信号に応じて容量C1を充電する。
トランジスタM4とトランジスタM5は、サンプル信号(Sample,/Sample)を入力して、容量C1と容量C2の電気的接続状態を制御するトランスファ・ゲートを構成する。すなわち、サンプル信号(Sample)が”L”のときはトランスファ・ゲートは非導通となり、”H”のときに導通となる。 一方、トランジスタM3は、リセット信号(Reset)により制御され、容量C2の電荷を放電する。
次に、図1のDACの動作について図2を参照しつつ説明する。
ここでは、シリアル入力されるデジタル映像信号として、4ビットのデジタル・データである(1001)が入力される場合を一例として図示した。すなわち、データ信号(Data)として、「1」、「0」、「0」、「1」に対応するデジタル信号が順次入力される場合について説明する。また、ここでは、図1の容量C1とC2の容量値は等しいものと仮定する。
まず、データ信号を入力する前の、時刻t0〜t2においては、コントロール信号(Control)は”H”に設定され、トランジスタM1とM2は共に非導通状態とされる。同時に、サンプル信号(Sample)は”L”に設定され、トランスファゲートを構成するトランジスタM4とM5は非導通状態とされる。これにより、容量C1の一端であるB点は開放状態となる。
さらに、時刻t1〜t2において、リセット信号(Reset)は”H”に設定され、トランジスタM3を導通状態にすることにより、容量C2の一端であるA点が接地され、A点の電位Vaは0(ボルト)とされる。
以上の動作が、シリアル映像信号を入力する前のリセット動作に対応する。
次に、時刻t2からシリアル映像信号を順次入力してDA変換動作を開始する。
まず、時刻t2〜t4において、最下位ビット(LSB)である「1」が入力される。これに対応して、まず、時刻t2〜t3において、コントロール信号が”L”とされてトランジスタM1とM2を選択可能とするとともに、サンプル信号が”L”とされてトランスファゲートM4、M5を非導通として、A点とB点とが電気的に遮断される。ここで、入力したデータ信号は「1」であるので、トランジスタM1が非導通、M2が導通状態になり、B点の電位VbはVs(ボルト)に設定される。つまり、容量C1は、Vs(ボルト)の電圧まで充電される。この際、A点の電位Vaは、0(ボルト)のままに保持される。
次に、時刻t3〜t4において、コントロール信号は”H”とされてトランジスタM1とM2を共に非導通状態とし、サンプル信号は”H”とされてトランスファゲートM4、M5を導通状態にして、A点とB点とが電気的に接続され、且つB点の電位が入力データにより変動を受けないようにされる。すると、容量C1と容量C2との間で蓄積電荷の再配分が起こる。
すなわち、時刻t3においては、B点の電位VbはVs(ボルト)に、A点の電位Vaは0(ボルト)に設定されているので、容量C1とC2の容量値が等しいとすると、時刻t4においては、
Va=Vb=1/2×”1”×Vs=Vs/2 (2)
となる。つまり、容量C1と容量C2の充電電圧は、いずれもVs/2(ボルト)となる。
次に、時刻t4〜t6において、映像信号の次のビットである「0」が入力される。これに対応して、まず、時刻t4〜t5においては、時刻t2〜t3と同じ状態の制御信号(コントロール信号とサンプル信号とリセット信号)が入力される。つまり、トランジスタM1とM2を選択可能とし、容量C1とC2とを電気的に遮断する。ここで、データ信号として、第2ビットの「0」が入力されているので、トランジスタM1が導通、トランジスタM2は非導通状態となり、B点の電位Vb=0(ボルト)に、A点の電位Vaは時刻t4での電位Vs/2(ボルト)に維持される。つまり、容量C1の充電電圧は0(ボルト)となり、容量C2の充電電圧はVs/2(ボルト)に維持される。
時刻t5〜t6では、時刻t3〜t4と同じ状態の制御信号が入力されることにより、容量C1と容量C2との間で、蓄積電荷の再配分が起こる。その結果として、時刻t6において、
Va=Vb
=1/2×(”0”×Vs+1/2×”1”×Vs)=Vs/4 (3)
となる。
以降、時刻t6〜t8において映像信号の第3ビットである「0」が入力され、時刻t8〜t10において最上位ビット(MSB)である「1」が入力される。そして、これらのビット・データの入力に対応して、上述した一連の動作が繰り返される。 その結果として、時刻t10において、A点の電位VaとB点の電位Vbは、
Va=Vb
={1/2ד1”+(1/2)2×”0”+(1/2)3×”0”+(1/2)4×”1”}×Vs
=(9/16)Vs (4)
となり、入力デジタルデータ(1001)に対応するアナログ電位が得られる。
時刻t10以降は、コントロール信号(Control)は”H”に、サンプル信号(Sample)とリセット信号(Reset)は”L”に設定される。これによって、容量C1とC2とが電気的に遮断され、また入力デジタルデータによってトランジスタM1とM2が選択されないようにして、Vaを保持することができる。このようにして入力デジタルデータに対応したアナログ電位Vaが得られ、対応する映像信号線27に印加される。
以上説明したように、図1に例示したシリアルDACによれば、シリアル入力されるデジタル映像信号を確実且つ容易にアナログ信号に変換することができる。しかも、DACの回路構成は極めて簡単であり、回路面積を従来よりも大幅に縮小することができる。つまり、同一の基板上に堆積した同層のポリシリコンなどの半導体層を用いて画素TFTと駆動回路のスイッチング素子を形成する際に、駆動回路の面積を縮小することができる。
このような回路規模の縮小効果は、デジタル・データのビット数に応じて高くなり、表示画像を高画質化する程、その効果をより顕著に得ることができる。例えば、図53に例示した従来の6ビットのパラレル入力型DACと比較すると、図1のシリアルDACの回路規模は、約1/6程度と極めて小さくすることができる。つまり、回路が占める面積を従来の約1/6に縮小することができる。
一般的なnビットのパラレル入力型DACと比較すると、図1のシリアルDACの回路規模は、およそ1/nであり、ビット数が増加するほど、回路規模の縮小効果を得ることができる。これは、駆動回路をパネルに集積させたポリシリコンTFTの液晶表示装置においては、特に有利に作用する。表示画像の高画質化するためには、表示階調すなわち、映像信号のビット数を増加する必要があるが、図1のシリアルDACによれば、回路規模を増大させず、パネルの小型化と高画質化とを両立することができる。
さらに、図1のシリアルDACによれば、回路を変更することなく、異なるビット数のデジタル・データをアナログ映像信号に変換することができるという効果も得られる。すなわち、シリアルに入力されるデジタル・データの各ビットについて、上述したような動作を繰り返すことにより、ビット数に依存せずにデジタル・データをアナログ変換することができる。
図1のシリアルDACが奏するこれらの効果は、特にコンピュータの表示装置などに応用する際に有利となる。すなわち、コンピュータにおいては、その用途やソフトウェアなどに応じて画像表示モードを切り替える必要がある場合が多い。その際に、表示分解能とともに表示階調すなわち階調ビット数も切り替えるようにすることが望ましい。図1のシリアルDACによれば、このような場合においても、同一のDACを用いてアナログ変換することができる。
例えば、入力するデジタル・データのビット数に応じて、図2に例示したようなDA変換を行う期間ts〜teをさらに細かく分割することにより、さらにビット数が大きいデジタル・データをアナログ電位に変換できる。nビットのデジタル・データ(Bn、Bn−1、・・・B1)(ここで、各ビットBkは、0または1である。)を図1のDACで変換した時に得られるアナログ電位Vaは、次式により表される。
このように、図1のシリアルDACによれば、従来のDACに比較して少ない素子数でDA変換が可能である。また、回路を変更すること無く変換期間中の制御信号の周波数を変えるだけで任意長のデジタル・データをアナログ電位に変換できる。その結果として、高精細表示が可能で且つ素子数が少ない映像信号駆動回路を実現することができる。
以上説明したシリアルDACを、さらに概念的に説明すると以下の如くである。
図4は、図1に例示したシリアルDACの構成を概念的に表した構成図である。すなわち、図1に例示したシリアルDACは、2つの容量C1とC2を基本構成として有する。そして、データ信号(data、/data)及びコントロール信号(/control)に基づき、容量C1に対して、デジタル信号に対応する電圧をシリアル的に入力する。一方、これと平行してサンプル信号(sample)に基づいて容量C1とC2との間で電荷の再配分を実行することにより、デジタル信号をアナログ電圧に変換する。なお、図4に表した入力電圧V+とV−は、それぞれ図1におけるVsと接地電位に対応する。
本発明者は、このようなシリアルDACに対してさらに改良を加え、表示装置の駆動回路に搭載してさらに好適なシリアルDACを発明した。
図5は、本発明にかかる第1のシリアルDACの基本構成を表す概念図である。
また、図6は、図5のシリアルDACの動作を説明するタイミングチャートである。
図5に表したシリアルDAC10Aは、1次側に1つの容量C1が設けられ、2次側には2つの容量C21及びC22が設けられた「出力容量並列型」のDACである。これら2つの容量C21、C22を交互に使い分けることにより、DA(デジタル・アナログ)変換処理と信号線への書き込みとを連続して実施することができる。
図6のタイミングチャートを参照しつつその動作について説明すると以下の如くである。
まず、リセット信号(RST)をオンすることにより、容量C21、C22を初期化する。
次に、コントロール信号(/control)とサンプル信号(sample1)を交互にオンすることにより、容量C1にデジタル信号の各ビットに対応する電圧をシリアル的に印加し、同時に容量C21との間で電荷の再配分を実行する。この動作によって、デジタルデータに対応するアナログ電位が容量C21に充電される。
次に、コントロール信号(/control)とサンプル信号(sample2)を交互にオンすることにより、容量C1にデジタル信号の各ビットに対応する電圧をシリアル的に印加し、同時に容量C22との間で電荷の再配分を実行する。この動作によって、デジタルデータに対応するアナログ電位が容量C22に充電される。
この際に、容量C22を用いたDA変換処理と平行して容量C21から図示しない信号線に対してアナログ電位の書き込みを実行することができる。つまり、図5に表したシリアルDACによれば、容量C21とC22の一方の容量を用いてDA変換処理を実行しつつ、他方の容量から信号線への電位書き込みを平行して実施できるため、駆動回路の信号処理時間を大幅に短縮することができる。
一般に、液晶表示装置をはじめとする各種の表示装置は、大容量化と高精細化の傾向にあり、信号線自身の寄生容量も増加する傾向にある。つまり、アナログ電位を信号線に正確に書き込むための時間も長くする必要がある。
このような要求に対して、図5の構成によれば、DA変換処理と信号線への電位書き込み処理とを平行して実施できるので、信号処理時間を短縮しつつ、信号線に対して正確にアナログ電位を書き込むことができ、高精細で階調数が高い高品位な画像を迅速且つ正確に表示することが可能となる。
なお、図6のタイミングチャートにおいては、3ビットのデジタルデータをDA変換する場合を例示したが、本発明は、これに限定されず、任意のビット数のデジタルデータに対して同様の処理を行うことができる。
また、後に詳述するように、シリアルDACの2次側の容量C21及びC22のそれぞれは、必ずしも特定の信号線に固定される必要はなく、切換スイッチを介して、複数の信号線のいずれかに随時切換接続可能とすることができる。本発明者の試作検討の結果によれば、例えば、容量C21とC22のそれぞれに対して、6本乃至30本程度の信号線を切換スイッチを介して適宜接続することが可能であることが判明している。このようにすれば、駆動回路に搭載するDACの数を大幅減らして、構成を小型化・簡略化することができる。
次に、本発明にかかる第2のDACについて説明する。
図7は、本発明にかかる第2のDACの基本構成を表す概念図である。
また、図8は、図7のDACの動作を説明するタイミングチャートである。
図7に表したDAC10Bは、1次側に3つの容量C11〜C13が設けられ、2次側には1つの容量C2が設けられた「入力容量並列型」のDACである。このように1次側に複数の容量を設けることにより、デジタル信号をパラレル的に入力し、これをDAC内でシリアル的にアナログ変換することができる。
図8のタイミングチャートを参照しつつその動作について説明すると以下の如くである。
まず、リセット信号(RST)をオンすることにより、容量C2を初期化する。
次に、3つのコントロール信号(/control1 〜/control3)を同時にオンにすることにより、容量C11〜C13にデジタル信号の各ビットに対応する電圧をパラレル的に印加する。入力されるデジタルデータが3ビットデータの場合には、例えば、容量C11に3ビット目(最下位ビット)のデータ(data1)、容量C12に2ビット目のデータ(data2)、容量C13に1ビット目(最上位ビット)のデータ(data3)に相当する電圧がそれぞれ印加される。
次に、サンプル信号(sample1〜sample3)を順次オンすることにより、容量C11〜C13にそれぞれ蓄積された電荷を容量C2との間で再配分する。つまりシリアル的なアナログ変換を実行する。この動作によって、容量C11〜C13に入力されたデジタルデータに対応するアナログ電位が容量C2に充電される。
この後に、図示しないアナログスイッチや出力回路を介して容量C2に充電されたアナログ電位を所定の信号線に書き込む。
以上説明したように、図7に表したDACによれば、1次側に複数の容量C11〜C13を設け、これらに対してデジタルデータをパラレル的に入力することができるので、デジタルデータを高速に入力できるという効果が得られる。
なお、図7に例示した構成において、1次側の容量の数は、必ずしも入力されるデジタルデータと同一である必要はない。例えば、図7に例示したように3つの容量C11〜C13を有するDACを用いて、6ビットのデジタルデータのDA変換を実行することも可能である。具体的には、まず、1サイクル目として6ビット目(最下位ビット)〜4ビット目までのデータをそれぞれ容量C11〜C13に入力してシリアル的なアナログ変換を実行する。次に、2サイクル目として3ビット目〜1ビット目(最上位ビット)までのデータをそれぞれ容量C11〜C13に入力してシリアル的なアナログ変換を実行すれば良い。
この具体例からも分かるように、1次側の容量の数は、必ずしも入力デジタルデータのビット数と等しい必要はないが、1次側の容量の数を入力ビット数の整数分の1とすると、効率が良い。
一方、1次側の容量の数よりも少ないビット数のデジタルデータも同様に扱うことができる。すなわち、このような場合には、ビット数に応じた数の容量を選択して用いれば良い。
一方、図7に表したDACにおいても、2次側の容量C2は、特定の信号線に固定される必要はなく、切換スイッチを介して、複数の信号線のいずれかに随時切換接続可能とすることができる。この点については、図5に関して前述した通りである。
次に、本発明にかかる第3のDACについて説明する。
図9は、本発明にかかる第3のDACの基本構成を表す概念図である。
また、図10は、図9のDACの動作を説明するタイミングチャートである。
図9に表したDAC10Cは、1次側に3つの容量C11〜C13が設けられ、2次側には2つの容量C21、C22が設けられている。つまり、1次側と2次側のいずれにも複数の容量が設けられた「入出力容量並列型」のDACである。
1次側に複数の容量C11〜C13を設けることにより、図7に関して前述したようにデジタル信号をパラレル的に高速入力することができる。一方、2次側に複数の容量C21、C22を設けることにより、図5に関して前述したように、DA変換処理と信号線への書き込みを平行して処理することができる。
図10のタイミングチャートを参照しつつその動作について説明すると以下の如くである。
まず、リセット信号(RST)をオンすることにより、容量C21、C22を初期化する。
次に、3つのコントロール信号(/control1 〜/control3)を同時にオンにすることにより、容量C11〜C13にデジタル信号の各ビットに対応する電圧をパラレル的に印加する。入力されるデジタルデータが3ビットデータの場合には、例えば、容量C11に3ビット目(最下位ビット)のデータ(data1)、容量C12に2ビット目のデータ(data2)、容量C13に1ビット目(最上位ビット)のデータ(data3)に相当する電圧がそれぞれ印加される。
次に、サンプル信号(sample1)をオンすることにより2次側の容量C21を選択する。そして、サンプル信号(sample11〜sample13)を順次オンすることにより、容量C11〜C13にそれぞれ蓄積された電荷を容量C21との間で再配分する。つまりシリアル的なアナログ変換を実行する。この動作によって、容量C11〜C13に入力されたデジタルデータに対応するアナログ電位が容量C21に充電される。
次に、2次側の容量C22を選択して次のDA変換処理を実行する。
すなわち、3つのコントロール信号(/control1 〜/control3)を同時にオンにすることにより、容量C11〜C13にデジタル信号の各ビットデータ(data1〜data3)に対応する電圧をパラレル的に印加する。
次に、サンプル信号(sample2)をオンすることにより2次側の容量C22を選択する。そして、サンプル信号(sample11〜sample13)を順次オンすることにより、容量C11〜C13にそれぞれ蓄積された電荷を容量C22との間で再配分する。この動作によって、容量C11〜C13に入力されたデジタルデータに対応するアナログ電位が容量C22に充電される。
このDA変換処理の間に、図示しないアナログスイッチや出力回路を介して容量C21に充電されたアナログ電位を所定の信号線に書き込むことができる。
以上説明したように、図9に表したDACによれば、1次側に複数の容量C11〜C13を設け、これらに対してデジタルデータをパラレル的に入力することができるので、デジタルデータを高速に入力できるという効果が得られる。
さらに、2次側の複数の容量C21、C22を設けることにより、DA変換処理と信号線への書き込みを同時に処理することができる。
従って、図9に例示したDACによれば、図5乃至図8に関して前述した効果を同時に得ることができる。
以上、本発明の駆動回路において用いるデジタル・アナログ変換回路(DAC)について具体例を参照しつつ説明したが、本発明のDACはこれらの具体例に限定されるものではない。例えば、図1乃至図9に関しては、1次側容量C1(あるいはC11など)と2次側容量C2(あるいはC21など)の容量値が同一の場合を例に挙げて説明したが、これらの容量は同一でなくても良い。1次側の容量値と2次側のの容量値とが異なる場合には、所定の「ゲイン」が得られる。具体的には、例えば、1次側容量C1の容量値をC1、2次側容量C2の容量値をC2とした場合には、式(2)〜式(5)において、右辺の係数「1/2」の代わりに、係数「C1/(C1+C2)」を適用すれば良い。例えば、容量C2が容量C1の3倍の容量値を有する場合には、この係数は「1/4」となる。また、容量C1が容量C2の3倍の容量値を有する場合には、この係数は「3/4」となる。
従って、容量C1と容量C2の容量値を適宜選択して、所定のゲインが得られるようにすれば、基準電位Vsに対して、映像信号電圧の範囲を最適な範囲に調節することもできる。
ところで、図1あるいは図5に表した具体例においては、DACに対してシリアル・データが入力される場合について説明した。しかし、本発明は、これに限定されるものではなく、パラレル入力されるデジタル・データを変換することも可能である。このためには、例えば、パラレル入力されるデジタル・データを蓄積し、その最下位ビットから順次各ビットのデータを取りだして供給する手段を別途設ければ良い。このようにして、パラレル入力されるデジタル・データについても、図2に関して前述したような動作を繰り返すことにより同様にアナログ変換することができる。この場合には、回路規模は、若干大きくなるものの、任意長のデジタル・データに対応することができるという本発明の効果は同様に得ることができる。
また、容量C1、C2を放電させるための接地電位に変えて、第2の基準電位を設けても良い。この場合には、得られるアナログ映像信号の下限電圧が、第2の基準電位と同じ電圧となる。
また、図1乃至図9に例示した具体例においては、第2の容量C2の充電電圧をアナログ映像信号として出力する構成を表したが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、図1あるいは図5の構成においては、最上位ビットまでの一連の充電・電荷再配分の動作が終了した時点においては、第1の容量C1と第2の容量C2の充電電圧は同一の値であるので、第2の容量C2の代わりに第1の容量C1の充電電圧をアナログ映像信号として外部に出力するような選択回路を設けても良い。
さらに、第1の容量C1と第2の容量C2とを短絡した状態で、いわば出力容量C1+C2の充電電圧をアナログ映像信号として外部に出力しても良い。このようにすれば、外部回路の寄生容量によるDAC出力電圧の変動を半減できるという効果が得られる。
次に、本発明の駆動回路において用いて好適なシリアル型DACの変型例について説明する。
図11は、図1乃至図9に例示したシリアル型DACをさらに簡略化しつつ変型した概略回路図である。すなわち、シリアル型DACは、2つのレベルの電圧VrefとVcomとを相補的に切り替えるスイッチdata(図1のトランジスタM2に対応する)及び/data(図1のトランジスタM1に対応する)と、遮断スイッチ/SW1と、容量C1及びC2と、これらの間に設けられた連結スイッチ16と、リセットスイッチ18とを有する。
図11の変型例においては、遮断スイッチ/SW1を設けることにより、容量C1からの蓄積電荷の逆流を確実に防止することができる。
さらに、図1乃至図11のDAC回路においては、リセットスイッチ18のオフ時リーク量が他のスイッチに比べて小さくなるように形成することが望ましい。これは、容量C2の蓄積電荷のリークを防止するためである。このためには、リセットスイッチ18を構成するトランジスタのゲート長Lを長く、ゲート幅Wを短く形成し、ダブルゲート構造とすることが有利である。
また、同様に容量C1の蓄積電荷の変動を防止するためには、遮断スイッチ/SW1もオフ時のリーク量が小さいことが望ましい。このためには、やはり遮断スイッチ/SW1を構成するトランジスタのゲート長Lを長く、ゲート幅Wを短く形成し、ダブルゲート構造とすることが有利である。
またこれと関連して、遮断スイッチ/SW1のオン期間を、連結スイッチ16のオン期間よりも長く設定することが望ましい。これは、遮断スイッチ/SW1をリーク量の小さいトランジスタにより構成した場合には、電圧書き込み時間を長くする必要があるからである。
一方、図3に例示したような表示装置において画素のスイッチング素子を構成するTFT29は、−2ボルト及び12ボルト電源を用いる場合が多い。従って、図1乃至図11に例示したDACの各スイッチも、−2ボルト及び12ボルト電源を用いてオフ条件を画素TFTと同等とすると、電源構成を簡略化することができる。
図12は、本発明の駆動回路に用いて好適なDACの第2の変型例を表す概略回路図である。すなわち、同図の回路においては、遮断スイッチ/SW1と直列にスイッチSAが設けられている。スイッチSAは、遮断スイッチ/SW1と連結スイッチ16とのNAND論理に基づいて動作させる。つまり、遮断スイッチ/SW1と連結スイッチ16が共に半開きのような状態においては、スイッチSAがオフするように動作させる。このようなスイッチSAを設けることにより、スイッチ/SW1とスイッチ16の動作タイミングの「ずれ」による容量C1への誤った電圧書き込みを確実に防止し、DACの変換動作を高精度化できる。
図13は、本発明の駆動回路に用いて好適なDACの第3の変型例を表す概略回路図である。すなわち、同図の回路においては、2次側の容量として容量C2Aと容量C2Bの2つの容量が並列に設けられている。これら2つの容量のそれぞれは、連結スイッチ16A、16Bを介して1次側容量C1と相補的に接続される。つまり、ひとつのDA変換処理を容量C1と容量C2Aとの間で行い、次のDA変換処理は、容量C1と容量C2Bとの間で行うようにする。なお、図13においては省略したが、2次側容量C2AとC2Bには、それぞれリセットスイッチを設けることが望ましい。
このように、2次側の容量として容量C2AとC2Bの2つを設け、DA変換処理毎に切り替えて用いることによって、2次側容量の一方から信号出力回路50にアナログデータを出力する間にも、2次側容量のもう一方を用いて次のDA変換処理を開示でき、データ処理を高速化できる。
もうひとつのメリットとして、隣接するDAC間で1次側容量と2次側容量の容量比C2/C1に「ばらつき」があるような場合に、「誤差拡散」の効果が得られる。
図14は、「誤差拡散」の効果を説明するための概念図である。すなわち、同図(a)に表した例においては、信号線Nに対応するDACは2次側容量C2を有し、隣接する信号線(N+1)に対応するDACは2次側容量C2’を有する。さらにこれらのDACは、ふたつめの2次側容量として容量C2Bを共有している。そして、同図の右側に表したように、信号線NのDACは第1、3、4フレームにおいて容量C2を用い、第2フレームにおいては容量C2Bを用いる。一方、信号線(N+1)のDACは、第1、2、4フレームにおいては容量C2’を用い、第3フレームにおいては容量C2Bを用いる。
このようにすれば、容量C2とC2’との間に容量の「誤差」がある場合にも、容量C2Bを共用することによって、この「誤差」を時間的に拡散させて目立ちにくくすることができる。
さらに、本発明においては、図14(b)に例示したように、2次側容量を新たに追加せずに、隣接したDAC間で利用しあうことも可能である。すなわち、同図に表した具体例においては、信号線Nに対応するDACは2次側容量C2を有し、隣接する信号線(N+1)に対応するDACは2次側容量C2’を有する。そして、それぞれのDACは、フレーム毎に、2次側容量を交換しあってDA変換処理を実行する。このようにしても、容量C2とC2’との間の容量の「誤差」を時間的に拡散させ、目立ちにくくすることができる。
以上、本発明の駆動回路に用いて好適なシリアル型DACについて詳細に説明した。
次に、本発明の駆動回路においてDACから出力された映像信号を映像信号線に出力する信号出力回路(アンプ回路)について詳細に説明する。
図3に関して前述したように、本発明による映像信号線駆動回路は、映像信号線27毎にDAC10A〜10C、アナログスイッチAS、映像信号出力回路50が直列に接続された構成を有する。
図15は、本発明の1実施形態にかかる映像信号線駆動回路の要部を表す概略図である。すなわち、同図は、映像信号線27の1本について、DACとアナログスイッチASと映像信号出力回路50Aとが接続された状態を表す回路図であり、図1乃至図14に関して前述したものと同等の要素には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
信号出力回路50Aは、スイッチS1〜S4と、容量C3と、NOT3、NOT4及びNOT4とトランジスタM4及びM5とに構成される。トランジスタM4とM5は、NOT3〜5とにより選択的に選択される。このような出力回路50を用いることにより、スイッチング動作を制御する反転増幅器動作点電圧を検出してTFT特性のバラツキの影響を軽減でき、良好な画像を提供できる。
図16は、図15の回路における動作波形を表すタイミングチャートである。図16を参照しつつ、信号出力回路50Aの動作について説明すると以下の如くである。
まず、時間t1〜t10までの期間は、DAC10A〜10Cによるシリアル的なデジタル・アナログ(DA)変換が実行される。この変換動作については、図1乃至図10に関して詳細に前述した通りであるので詳細な説明は省略する。そして、t10においてDA変換が終了すると、信号線出力回路の動作が開始する。
まず、時間t11において、制御信号ENABLEが”H”になることにより、アナログスイッチASがオンする。すると、A点とC点が電気的に接続される。ここで、時間t11−t12においては、制御信号CLKは”L”なので、スイッチS2とスイッチS3が導通状態になり、スイッチS1とS4は非導通状態となる。その結果として、静電容量C3の一端D点の電位Vdは映像信号線電位Vsigとなり、もう一端E点の電位VeはS3によりインバータNOT3の入出力が短絡されるので、NOT3の動作点電位Vopとなる。ここで、NOT3の動作点電圧は、回路を構成するTFT特性により異なるので、映像信号線駆動回路に応じて異なる。
次に時間t12〜t13においてCLKが”H”になると、スイツチS1とS4が導通状態となり、スイツチS2とS3は非導通状態となる。このため、D点の電位Vd=Vc=Vaとなり、DAC10A〜10Cの出力電位と等しくなる。一方、E点の電位Veは、CLKが”L”状態の電位をC3が保持するため、Ve=(Va−Vsig)+Vopとなる。よって、F点の電圧Vfは、
(1)Va>Vsigの場合は、Vf=0
(2)Va<Vsigの場合は、Vf=VDD
となる。
本具体例の場合は、時間t11においてVa>Vsig であるので、F点の電位Vfはゼロとなる。その結果として、PチャネルトランジスタM5が導通状態になり、電流Ipが映像信号線27に供給される。この時、期間Tの間における映像信号線27の電圧上昇分△Vpは、信号線容量をCsig とすると、△Vp=1p×T/Csig と表される。
上記動作が複数回行われて時間t26になると、Va<Vsig となるのでNチャネルトランジスタM4が導通状態となり、電流Inが映像信号線27からGNDに流れる。この時、期間Tの間に変化する電位△Vnは、△Vn=In×T/Csig と表される。
時刻t26以降は、映像出力期間中でVsig は、Va近傍において△Vpと△Vn の幅で変化し続ける。そして、最終的に形成される映像信号線電位Vsig の誤差電圧Verr は、Verr=|△Vp−△Vn|/Tとなる。ここで、△VpはトランジスタM5の特性に依存し、△VnはトランジスタM4の特性に依存するが、CLKの周波数を十分高く設定することにより、Verr を無視しうるレベルまで小さくできる。
以上説明したように、本発明の映像信号線駆動回路の信号出力部は、DAC10A〜10Cの出力電圧と映像信号線27の電圧との比較に用いるインバータの動作点電圧バラツキを静電容量C3によりキャンセルできる。さらに、制御信号CLKの周波数を十分高く設定することにより、映像信号線27に電流を直接供給するTFTの特性のバラツキをも低減できる。その結果として、表示ムラの少ない均一で良好な画像を提供できる。
なお、図16においては、DA変換動作における時間ステップt1〜t10と、信号出力動作における時間ステップt11〜t27が略同一の場合を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、DA変換動作における時間ステップと、信号出力動作における時間ステップとは、互いに異なるものであっても良い。
次に、本発明の映像信号駆動回路に用いてさらに好適な映像信号出力回路50について説明する。
図17は、本発明において用いて好適な映像信号出力回路50Bの概念構成を表す回路図である。
本変型例の出力回路(アンプ回路)50Bによっても、TFT特性のばらつきに影響されにくく小規模で高精度な出力アンプを提供することができる。
すなわち、出力回路50Bは、トランジスタM6〜M10により構成される入力比較回路IDと、容量C3、NOT3、スイッチS6〜S8、トランジスタM11及びM12から構成される反転増幅出力回路IOとを有する。DAC10A〜10Cからの出力は、アナログスイッチを介してVinに入力される。また、出力回路50Bからの出力は、出力端Voutをから信号線27に出力される。
この出力回路50Bにおいては、スイッチS5を介してDAC10A〜10Cを信号線27に接続し、信号線27の電位とDACからサンプリングされたアナログ映像電位を入力比較回路IDにより比較し、両電位が一致したら前記スイッチS6がオフにされる。
図18は、出力回路50Bの動作を説明するためのタイミングチャートである。
同チャートにおいてT1の期間は、スイッチS5、S6、S8がオンで、スイッチS7がオフとなる。この状態において、nd点には、入力比較回路IDに対する2入力すなわちIN-とIN+とが等しい状態での電位Vevenが保持される。一方、n1点には反転増幅回路の回路閾値Vinvが保持される。
一方、T2の期間には、スイッチS7がオンで、スイッチS5、S6、S8がオフとなる。この状態においては、2入力すなわちIN-とIN+との間に電位差が生ずる。その結果として、nd点の電位は(Veven+△V)まで上昇する。また、n1点の電位も(Vinv+△V)に上昇する。その結果として、n2点がL出力となり、映像信号線がVddによって充電されて電位が上昇する。
すると、IN+が上昇し、IN+=IN-(=Vin)となると再びnd点はVevenとなる。これと共に、n1点の電位はVinvに戻り、n2点はHレベルに上昇し、映像信号線27の充電が終了する。
以上の説明からも分かるように、一連の動作については、回路を構成するTFTの閾値ばらつきに起因する制約は殆ど無い。例えば、T1の期間において入力比較回路IDの2入力(IN-とIN+)が等しいとき、nd点の電位は閾値ばらつき程度の異なった値をとりうるが、回路動作上は問題とはならない。
さらに、本変型例においては、DAC10A〜10Cからの入力IN-は、入力比較回路IDのTFTのゲートに入力される。TFTのゲートの容量は、一般にフェムトファラッド(fF)のオーダであり、一方DAC10A〜10Cの蓄積容量C2は一般にピコファラッド(pF)のオーダである。
一般には、出力回路の入力容量がDACの出力容量の10%程度以下であれば、製造プロセスの変動などによって出力回路の入力容量が例えば10%程度ばらついたとしても、そのばらつきは、DACの出力容量に対して10%×0.1=1%程度となり、事実上許容しうるレベルとなる。
これに対して、本変型例によれば、DAC10A〜10Cの出力容量に対して出力回路50の入力ゲート容量は、3桁近く小さいので、出力回路50を接続したことによるDACの蓄積容量の再配分を防止し、アナログ出力の「ずれ」を解消することができる。
また、本変型例における容量C3の容量は0.2pF程度であり、出力回路50B全体の面積は、デザインルールを5μmとした場合でも70×300μm2程度と十分に小型化することができる。
また、出力の電流源は、アンプの動作範囲によっては、VddのみまたはVssのみとすることができ、構成を簡略化することができる。
また、電流源を定電流源とすると、入力電圧に対する出力ばらつきをほぼ一定の小さいレベル(=ディレイ時間×定電流/Csig)に抑制できる。
さらに、図17に例示した回路において、NOT3の出力n2の反転信号を生成してn3とし、n3とVoutとの間に抵抗と容量を直列に挿入すれば発振を防止できる。
また、入力比較回路の2入力(IN-とIN+)の微小なずれに対して、容量C3の入力(図17においてはnd)が大きく振れるようにすれば、出力回路50Bをさらに高精度に高出力化することができる。このために、ndとC3との間に図示しない増幅回路をさらに設けてもよい。
また、図17において、IN-とIN+とを入れ替えて、容量C3をneに接続してもよい。
ところで、図17に例示した出力回路50Bのひとつの特徴は、
(1)入力比較回路IDにおいて入力信号(IN-とIN+)をTFTのゲートに入力する点と、
(2)入力比較回路IDからの出力信号が入力信号に対して一義的な関係を有する、すなわち、ある入力信号に対応してひとつの出力信号のみが存在する、点にある。
これらの特徴を有する入力比較回路IDは、図17に例示したものには限定されない。
図19は、出力回路50Bの変型例を表す概略回路図である。同図についても、図1乃至図18に関して前述した部分と同等の要素には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
図19の出力回路(アンプ回路)50Cにおいては、入力比較回路IDは図17に例示したものと同様であり、いわゆる「エミッタ(ソース)結合型」の増幅器の構成を有する。但し、信号入力が異なる。そして、その動作に際しては、符号φで総称したスイッチ群と、符号/φで総称したスイッチ群とが交互にオン・オフする。
まず、符号φで総称したスイッチ群がオンの状態において、図示しないDACからの信号VinがIN-に入力され、同時にNOT3を構成するインバータの動作しきい値の電位が容量C3の両端に保持される。
次に、符号/φで総称したスイッチ群がオンとなる。この時に、仮にVout<Vin とすると、ndは低下する。そして、ノードSはLレベルとなり、信号線27すなわち等価容量Csigに電流書き込みが実行される。そして、信号線容量Csigの電位がVout=Vinに達し、またはそれ以上となると、ノードSはHレベルとなり、Csigの電位の上昇は停止する。
図19に例示した出力回路50Cにおいても、入力信号を入力比較回路IDのTFTのゲートに入力するので、図17に関して前述したように、DACの2次側容量の再配分を防ぐことができる。
また、出力回路50Cの入力比較回路IDは、入力電位IN-に対して、出力ndが一義的な関係を有する。
図20は、入力比較回路IDの入力電位IN-と出力ndとの関係を表すグラフ図である。同図に表したように、入力と出力とが一義的な関係を有するので、NOT3やVbiを適宜設定することによって、出力回路50Cの出力特性を確実且つ容易に制御することが可能となる。
図21は、出力回路50Bの第2の変型例を表す概略回路図である。同図についても、図1乃至図20に関して前述した部分と同等の要素には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
図21の出力回路(アンプ回路)50Dにおいては、入力比較回路IDがいわゆる「相補型」の増幅回路の構成を有する。すなわち、相補トランジスタとしてのnチャネルトランジスタM20とpチャネルトランジスタM22のゲートが共通接続されて入力端とされている。従って、図17に関して前述したように、DACの2次側容量の再配分を防ぐことができる。
また、この出力回路50Dにおいても、符号φで表したスイッチと符号/φで表したスイッチとを交互にオンさせることにより、信号線27にDACからの映像電位を書き込むことができる。
図22は、出力回路50Dの入力比較回路IDの入力と出力との関係を表すグラフ図である。同図に表したように、「相補型」の増幅器としての入力比較回路IDにおいても、入力に対して出力が一義的な関係を有する。
従って、VddやVss、あるいはnチャネルトランジスタM20やpチャネルトランジスタM22のサイズすなわちゲート幅やゲート長などを調節することにより、出力回路50Dの出力特性を精密に制御することが可能となる。
図23は、出力回路50Bの第3の変型例を表す概略回路図である。同図についても、図1乃至図21に関して前述した部分と同等の要素には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
図23に表した出力回路(アンプ回路)50E〜50Gにおいては、入力比較回路IDとして、負荷と駆動用トランジスタとを直列に接続した一般的な増幅回路の構成を有する。すなわち、ゲートに電圧Vbiあるいはndが入力されたトランジスタ(図23(a)においては、符号M24を付した)が負荷として作用し、ゲートにVinまたはVoutが入力されるトランジスタが駆動用トランジスタとして作用する。
これらの回路においても、トランジスタの低容量なゲートに信号が入力されるので、図17に関して前述したように、DACの2次側容量の再配分を防ぐことができる。また、符号φで表したスイッチと符号/φで表したスイッチとを交互にオンさせることにより、信号線27にDACからの映像電位を書き込むことができる。
図24は、出力回路50E〜50Gの入力比較回路IDの入力と出力との関係を表すグラフ図である。同図に表したように、これらの入力比較回路IDにおいても、入力に対して出力が一義的な関係を有するので、Vbiやトランジスタのサイズなどを調節することにより、出力回路50E〜50Gの出力特性を精密に制御することが可能となる。
図25は、出力回路50Bの第4の変型例を表す概略回路図である。同図についても、図1乃至図23に関して前述した部分と同等の要素には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
図25の出力回路(アンプ回路)50Hにおいては、入力比較回路IDは、図17や図19と同様の「エミッタ(ソース)結合型」の増幅器の構成を有する。但し、本変型例においては、反転増幅回路が2系統設けられている。
出力回路50Hの動作について説明すると、以下の如くである。
まず、サンプリング期間においては、符号φで総称したスイッチ群がオンとなり、他のスイッチはオフとなる。この状態において、ndには、入力比較回路IDの入力が、それぞれ、IN-=Vcom、IN+=Vin(すなわちDACの出力)となっている時の電位Vinitが保持される。また、n1Aとn1Bには、それぞれ反転増幅回路を構成するインバータNOT3A、NOT3Bの回路しきい値Vinvが保持される。
次に、信号線に対する書き込み期間においては、符号/φで総称したスイッチ群がオンとなり、他のスイッチはオフとされる。この状態においてVout<Vinの場合について説明すると、まず、IN+=Vout(=信号線電位)となっているためにndは(Vinit+ΔV)となり、n1も(Vinv+ΔV)となる。すると、n2Aは低下し、n3AはLレベルとなり、トランジスタMPがオンする。これにより、信号線27は、Vddによって充電され、Csig電位(すなわちVout)はVddに近づき、ΔVは次第にゼロになる。
ΔV=0となると、n1AはVinvに復帰し、n3AはHレベルとなり、トランジスタMPはオフとなって信号線電位は保持される。
一方、Vout>Vinの場合には、C1B、n1B、n3Bが同様の動作をすることにより、Vssに向かってVsigが放電されて所望の電位に達した後、信号線電位が保持される。
本変型例においては、出力回路50HがDAC出力を参照するのはサンプリング期間のみである。信号線書き込み期間には、DACは次の行の信号電位のDA変換を平行して行うことができる。また、本変型例においても、出力回路の入力容量が小さく、TFTの特性に影響されない安定したサンプリング出力が可能となる。
図26は、出力回路50Bの第5の変型例を表す概略回路図である。同図についても、図1乃至図25に関して前述した部分と同等の要素には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
図26の出力回路(アンプ回路)50Iにおいても、入力比較回路IDは、図17や図19あるいは図25と同様の「エミッタ(ソース)結合型」の増幅器の構成を有する。但し、本変型例においては、反転増幅回路が1系統であり、出力トランジスタMPにスイッチ/φ1が接続され、出力トランジスタMNにはスイッチ/φ2が接続されている。
出力回路50Iの動作について説明すると、以下の如くである。
まず、サンプリング期間においては、符号φで総称したスイッチ群がオンとなり、他のスイッチはオフとなる。この状態において、ndには、入力比較回路IDの入力が、それぞれ、IN-=Vcom、IN+=Vin(すなわちDACの出力)となっている時の電位Vinitが保持される。また、n1は、反転増幅回路を構成するインバータNOT3の回路しきい値Vinvが保持される。
次に、第1の信号線に対する書き込み期間においては、符号/φで総称したスイッチ群とスイッチ/φ1がオンとなり、スイッチφ、/φ2はオフとされる。この状態においてVout<Vinの場合についてのみ信号線容量CsigがVssによってVout=Vinとなるところまで充電される。Vout>Vinの場合は、充電は行われない。
また、第2の信号線に対する書き込み期間においては、符号/φで総称したスイッチ群とスイッチ/φ2がオンとなり、スイッチφ、/φ1はオフとされる。この状態においてVout>Vinの場合についてのみ信号線容量CsigがVssによってVout=Vinとなるところまで充電される。Vout<Vinの場合は、充電は行われない。
本変型例においても、出力回路50IがDAC出力を参照するのはサンプリング期間のみである。信号線書き込み期間には、DACは次の行の信号電位のDA変換を平行して行うことができる。また、本変型例においても、出力回路の入力容量が小さく、TFTの特性に影響されない安定したサンプリング出力が可能となる。つまり、サンプリングラッチやデジタルラッチの数が少なく、且つDAC出力を高精度に増幅して信号線に書き込む信号線駆動回路を実現することができる。
なお、図25及び図26に例示した具体例においては、いわゆるN−TOP型差動増幅段を採用しているが、出力電圧レンジに応じてP−TOP型差動増幅段を用いても良い。
以上、説明した出力回路50A〜50Iは、信号線の電位とDACの電位とをサンプリング比較し、信号線に充電を行うものであった。
しかし、本発明の駆動回路は、このような出力回路には限定されず、アナログ的に信号線の充電を行う出力回路も用いることができる。
図27は、本発明において用いることができる負極性用の出力回路50Jを表す回路図である。出力回路(アンプ回路)50Jは、スイッチSW1〜SW8、インバータINV1、INV2、トランジスタQ1を有する。また、容量C2は、後に詳述するように、DACの2次側容量と共用することが可能である。
スイッチSW6の一端は容量C2の他端に接続され、スイッチSW6の他端は電圧Vdd(例えば、10V)に接続されている。スイッチSW5の一端は前端インバータINV1の入力端子に接続され、スイッチSW5の他端は前段インバータINV1の出力端子に接続されている。スイッチSW7の一端は前段インバータINV1の出力端子に接続され、スイッチSW7の他端は後段インバータINV2の入力端子に接続されている。スイッチSW8の一端は後段インバータINV2の入力端子に接続され、スイッチSW8の他端は電圧VSS(例えば、0V)に接続されている。
そして、容量C2は差分電圧保持回路を構成し、電圧VDDの電圧源と定電流回路I1とが信号線27の電圧を一定割合で変化させる電圧変更回路を構成し、スイッチSW3が入力電圧設定回路を構成し、スイッチSW5の帰還ループがしきい値電圧設定回路を構成している。
図28は、図27の出力回路50Jの各部のタイミング図である。以下、このタイミング図を用いて出力回路50Jの動作を説明する。
まず、時刻T21〜T22の期間(リセット期間)内に、スイッチSW4、SW6、SW8をオンにし、スイッチSW1〜SW3、SW5、SW7をオフにする。これにより、信号線27の電圧(図26のd点)は、電圧VSSと同じ電圧(例えば、0V)になる。また、前段インバータINV1の入力端子の電圧は、電圧VDDと同じ電圧(例えば、10V)になり、後段インバータINV2の入力端子の電圧は、電圧VSSと同じ電圧(例えば、0V)になる。ここで、前段インバータINV1の入力端子の電圧を電圧VDDにし、後段インバータINV2の入力端子の電圧を電圧VSSにするのは、前段インバータや後段インバータを構成するCMOSトランジスタに貫通電流が流れないようにするためである。すなわち、CMOSトランジスタを構成するp型MOSトランジスタとn型MOSトランジスタのうちの一方のMOSトランジスタを十分なオフ状態にすることにより、貫通電流が流れないようにしている。これにより、この出力回路50Jにおける電力消費の低減を図れる。したがって、前段インバータINV1の入力端子と後段インバータINV2の入力端子に印加する電圧は、電圧VDD(例えば、10V)と電圧VSS(例えば、0V)のいずれでもよい。
次に、時刻T22〜T23の期間(2次側容量C2への書き込み期間)内に、スイッチSW3、SW5をオンしして、スイッチSW1、SW2、SW4、SW6〜SW8をオフにする。これにより、a点の電圧はDACからの入力映像信号Vinの電圧に略等しくなる。図27では、入力映像信号Vinの電圧が3Vである例を示している。但し、スイッチSW1がオフであるので、信号線27の電圧は0Vを維持する。
また、スイッチSW5がオンであるため、b点の電圧は前段インバータINV1のしきい値電圧(ここでは、5Vとする)に略等しい電圧に設定される。すなわち、前段インバータINV1の出力を入力にフィードバックすることにより、前段インバータINV1の入力端子及び出力端子の電圧は、前段インバータINV1のしきい値電圧に略等しい電圧に設定される。したがって、容量C2には、入力映像信号Vinの電圧(例えば、3V)と前段インバータINV1のしきい値電圧(例えば、5V)の差分電圧(例えば、2V)が保持される。
次に、時刻T23以降(書き込み期間、安定期間)は、スイッチSW1、SW2、SW7をオンして、スイッチSW3〜SW6、SW8をオフにする。時刻T3の時点では、a点は3Vであるのに対し、d点は0Vである。このため、スイッチSW1がオンすると、a点の電圧がd点に引きづられて低下する。容量C2は上述した差分電圧(2V)を維持しているので、この容量C2の他端側であるb点の電圧もa点の電圧に追随して低下し、論理回路LCの出力が反転してローレベル(例えば、0V)になる。これにより、トランジスタQ1がオンし、一定の電流が定電流回路I1からトランジスタQ1とスイッチSW2を介して信号線27に供給される。このため、信号線27(d点)の電圧は一定の傾きdtで上昇する。
信号線27の電圧が一定の傾きdtで上昇すると、それに応じてa点、b点の電圧も一定の傾きdtで上昇する。やがて、時刻T4になると、信号線27の電圧が入力映像信号Vinの電圧である3Vに等しくなり、a点の電圧も3Vに等しくなる。容量C2は上述した差分電圧(2V)を保持しているので、図26のb点の電圧は前段インバータINV1のしきい値電圧である5Vになる。このため、論理回路LCの出力が再び反転してハイレベル(例えば、10V)になる。これにより、トランジスタQ1がオフとなり、定電流回路I1から信号線27への電流供給、つまり電圧の供給は遮断される。このような動作により、信号線27は入力映像信号Vinの電圧に略等しい3Vに設定される。
次に、出力回路50Jを正極性用に変型した具体例について説明する。
図29は、正極性用の出力回路50Kの詳細構成を示す回路図である。同図に表したように、正極性用の出力回路(アンプ回路)50Kは、トランジスタQ1がn型である点と、定電流回路I1が電圧VSSに接続されている点とが、図27の負極性用の出力回路50Jと異なる。これら以外の点は、上述した負極性用の出力回路50Jと同様であるので、その詳しい説明は省略する。
以上のように、図27乃至図29に関して説明した出力回路50J、50Kによっても、信号線27を入力映像信号Vinの電圧に略等しく設定することができる。
また、前段インバータINV1のしきい値電圧と入力映像信号Vinの電圧の差分電圧を容量C2に保持させた後に、信号線27に入力映像信号Vinを供給するので、前段インバータINV1のしきい値電圧にばらつきがあっても、信号線27の電圧はその影響を受けないようにすることができる。
さらに、出力回路50J、50Kによれば、信号線27に電圧VDDを供給する際に定電流回路I1を介して供給するようにしたので、入力映像信号Vinの電圧や信号線27の電圧にかかわらず、一定の傾きdtで信号線Sの電圧を引き上げることができる。このため、出力回路50J、50Kのリニアリティーを確保することができ、いわゆる書き込みエラーを生じないようにすることができる。
また、出力回路50J、50Kによれば、容量C2が保持すべき差分電圧を容量C2に設定する際に、前段インバータINV1のしきい値電圧と入力映像信号Vinの電圧とを、同一サイクルでサンプリングすることとしたので、これら2つの電圧の設定を別々のサイクルで行う場合と比べて、正確な差分電圧の設定をすることができる。
なお、上記具体例に示す各種スイッチは、トランスファーゲートやアナログスイッチを用いて構成することができる。また、上記具体例では、入力された信号を反転増幅するインバータを2段直列的に接続して論理回路LCを構成する例を説明したが、トランジスタを組み合わせて構成されるものであれば、論理回路LCの内部構成に特に制限はない。
次に、本発明の駆動回路において用いることができるさらに別の出力回路について説明する。
図30は、出力回路50Lの回路図である。出力回路(アンプ回路)50Lは、信号線の電圧を制御する反転増幅回路の各インバータの入力端子の電圧を、各インバータのしきい値電圧に略等しく設定しておくことにより、各インバータのしきい値電圧にばらつきが生じていても、信号線の電圧を所望の電圧に制御することができるようにしたものである。
すなわち、出力回路50Lのそれぞれは、図30に示すように、スイッチSW1〜SW3と、前段インバータINV1と中段インバータINV2と後段インバータINV3とからなる反転増幅回路IAと、容量C2とを、備えている。この出力回路50Lにより駆動される信号線27には、画素表示用のTFT、液晶容量および補助容量等が接続されており、同図では簡略化のため、信号線27の負荷を等価的に抵抗RとキャパシタCsigとで表している。
スイッチSW1の一端は信号線27に接続され、スイッチSW1の他端はスイッチSW3の一端と容量C2の一端に接続されている。スイッチSW3の他端はDACから出力される入力映像信号Vinの入力端子に接続されている。容量C2の他端は、反転増幅回路IAの入力端子に接続されている。反転増幅回路IAの出力端子は、スイッチSW2の一端に接続されている。スイッチSW2の他端は、上述した信号線27に接続されている。
反転増幅回路IAは、前段インバータINV1と中段インバータINV2と後段インバータINV3とを、直列的に接続することにより構成されている。スイッチSW1〜SW3は、図示しないスイッチ切換制御回路により切換制御される。
なお、反転増幅回路IAが信号線電圧制御回路を構成し、容量C2が第1差分電圧保持回路を構成し、スイッチSW3が第1差分電圧設定回路を構成する。
図31は、出力回路50L内の各部のタイミング図である。以下、このタイミング図を用いて出力回路50Lの動作を説明する。
まず、時刻T11〜T12の期間(サンプリング期間)内に、スイッチSW3をオンにして、それ以外のスイッチであるスイッチSW1、SW2をオフにする。これにより、a点の電圧は、入力映像信号Vinの電圧に略等しくなる。図31では、入力映像信号Vinの電圧が3Vである例を示している。但し、スイッチSW1がオフであるので、信号線27(d点)の電圧は、時刻T11以前に供給された電圧を維持する。図31の例では、7Vを維持する。
ここで、上述したように、前段インバータINV1のしきい値電圧が5.5Vであり、中段インバータINV2のしきい値電圧が4.5Vであり、後段インバータINV3のしきい値電圧が5Vであると仮定すると、何らかの手段により、この前段インバータINV1の入力端子の電圧を5.5Vに設定し、中段インバータINV2の入力端子の電圧を4.5Vに設定し、後段インバータINV3の入力端子の電圧を5Vに設定する。つまり、インバータINV1〜INV3の入力端子の電圧を、インバータINV1〜INV3のそれぞれのしきい値電圧に略等しく設定する。このようにインバータINV1〜INV3の入力端子の電圧を、しきい値電圧に設定する手法については、後述する。
このようにインバータINV1〜INV3の入力端子をそれぞれのしきい値電圧に略等しく設定することにより、反転増幅回路IAの増幅度を最大値近傍にすることができる。反転増幅回路IAの増幅度とは、反転増幅回路IAの入力電圧の変化量に対する出力電圧の変化量の比をいう。つまり、この設定により、反転増幅回路IAの入力端子の電圧が僅かに変化しただけでも、反転増幅回路IAの出力端子の電圧は、反転して大きく変化することになる。
また、上述したように、図30のa点の電圧は入力映像信号Vinの電圧である3Vになっており、b点の電圧は上述したe点の電圧と同様に5.5Vになっている。このため、時刻T11〜時刻T12の期間(サンプリング期間)では、容量C2には、この容量C2が後述する時刻T12以降で保持すべき、入力映像信号Vinの電圧(例えば、3V)と前段インバータINV1のしきい値電圧(例えば、5.5V)の差分電圧(例えば、2.5V)が設定される。
次に、時刻T12以降の期間(書き込み期間、安定期間)では、スイッチSW1、SW2をオンにして、これ以外のスイッチであるスイッチSW3をオフにする。時刻T12の時点では、図29のa点は3Vであるのに対し、d点は7Vである。このため、スイッチSW1がオンすると、a点の電圧がd点に引きづられて上昇する。容量C2は上述した差分電圧(2.5V)を保持しているので、この容量C2の他端側であるb点の電圧もa点の電圧に追随して上昇する。
b点の電圧が上昇すると、前段インバータINV1の論理出力がローレベル(例えば、0V)になろうとし、中段インバータINV2の論理出力がハイレベル(例えば、10V)になろうとし、後段インバータINV3の論理出力がローレベル(例えば、0V)になろうとする。つまり、b点の電圧が上昇すると、反転増幅回路IAの論理出力が反転してローレベル(例えば、0V)になろうとする。これにより、信号線27の電圧も下降する。信号線の電圧が下降すると、それに応じて、a点、b点の電圧も下降する。
そのまま信号線27(d点)の電圧が下降すると、やがて、信号線の電圧が入力映像信号Vinの電圧である3Vに等しくなり、a点の電圧も3Vに等しくなる。容量C2は上述した差分電圧(2.5V)を保持しているので、b点の電圧は前段インバータINV1のしきい値電圧である5.5Vになる。このため、前段インバータINV1の論理出力が反転してハイレベル(例えば、10V)になろうとし、中段インバータINV2の論理出力が反転してローレベル(例えば、0V)になろうとし、後段インバータINV3の論理出力が反転しハイレベル(例えば、10V)になろうとする。つまり、b点の電圧が3Vを下回ると、反転増幅回路IAの論理出力が反転してハイレベル(例えば、10V)になろうとする。これにより、信号線27の電圧も上昇する。信号線の電圧が上昇すると、それに応じて、図30のa点、b点の電圧も上昇する。このような現象を繰り返して、時刻T13以降においては、信号線27の電圧は、入力映像信号Vinの電圧である3Vに略等しく収束し、安定する。
但し、実際には、a点とd点とf点の電圧は、完全な3Vに安定するのではなく、オフセット電圧ΔVa1だけずれて、3V+ΔVa1になる。また、b点の電圧も、オフセット電圧ΔVa1だけずれて、5.5V+ΔVa1になる。このため、e点の電圧は、オフセット電圧ΔVb1だけずれて、5.5V−ΔVb1になる。また、c点の電圧は、オフセット電圧ΔVc1だけずれて、4.5V+ΔVc1になる。
しかし、上述したように時刻T11〜時刻T12の期間でインバータINV1〜INV3の入力端子の電圧をそれぞれのしきい値電圧に略等しく設定しているので、反転増幅回路IAの増幅度は極めて大きくなっている。このため、オフセット電圧ΔVa1を極めて小さくすることが可能になる。つまり、オフセット電圧ΔVa1は、実質的にほぼ0Vと考えることができ、d点とa点とf点の電圧は、実質的に3Vに略等しくなると言える。
以上のように、出力回路50Lによれば、反転増幅回路IAを構成する前段インバータINV1と中段インバータINV2と後段インバータINV3の入力端子の電圧を、それぞれのしきい値電圧に略等しく設定し、且つ、入力映像信号Vinの電圧と前段インバータINV1のしきい値電圧との差分電圧をキャパシタC1に保持した状態で、スイッチSW1、SW2と、反転増幅回路IAとで帰還ループを構成することとしたので、信号線27の電圧を入力映像信号Vinの電圧に略等しく設定することができる。
図32は、図30に表した出力回路50Lの変型例を表す概略回路図である。図32に表したように、出力回路50Mにおいては、インバータINV1〜INV3のそれぞれがスイッチSW4〜6により短絡接続され、且つ、これらの間に容量C3、C4が設けられている。
最も入力側に位置するしきい値電圧設定機能付インバータ回路7には、キャパシタC2は設けられておらず、前段インバータINV1の入力端子は、直接的にキャパシタC2の他端に接続されている。したがって、キャパシタC2には、入力映像信号Vinの電圧と前段インバータINV1のしきい値電圧との差分電圧が保持される。
そして、反転増幅回路IAが本実施形態における信号線電圧制御回路を構成し、容量C2が第1差分電圧保持回路を構成し、スイッチSW3、SW4が第1差分電圧設定回路を構成し、容量C3、C4のそれぞれが第2差分電圧保持回路を構成し、スイッチSW5、SW6のそれぞれが第2差分電圧設定回路を構成を構成する。
本変型例に係る出力回路50Mの動作は、上述した出力回路50Lと同様であるので、その詳しい説明は省略する。
以上、図27〜図32を参照しつつ、本発明の映像信号線駆動回路において用いることができる出力回路50J〜50Mについて詳細に説明した。
次に、これら出力回路50J〜50Mと、前述したシリアル型DAC10A〜10Cとを接続するに好適なインターフェイスについて説明する。
図33は、図1〜図14に関して前述したシリアル型DACと、図27〜図32に関して前述した出力回路50J〜50Mとの接続部分を表す概略回路図である。
すなわち、同図においては、DAC10A〜10Cの概略構成と、出力回路50J〜50Mの入力部のみと、が表されている。同図から明らかなように、DACの2次側の容量C2は、そのまま出力回路50J〜50Mの入力容量C2として共用されている。なお、同図において、容量C1とC2のサイズはそれぞれ約1pF程度であり、また階調電圧値は、例えば、正極性の場合には、Vref=9ボルト、Vcom=6ボルトであり、負極性の場合には、Vref=1ボルト、Vcom=4ボルトとすることができる。
図34は、図33における各部の動作を表すタイミングチャートである。1水平期間の前半は、スイッチSW1をオンにした状態でスイッチS1をオン・オフさせることにより、容量C1と容量C2との間で電荷の再配分を行って、シリアルDA変換を実行する。つまり、DA変換と出力回路へのサンプリングを同時に実行する。
次に、1水平期間の後半において、スイッチSW1をオフにした状態でスイッチSW2をオンにして容量C2に蓄積されたアナログ信号としての映像信号電荷を出力回路50J〜50Mによって信号線27に書き込む。
このようにDACと出力回路との間で容量C2を共用することにより、回路を簡略化して回路面積を小型化することができる。但し、図34のタイミングチャートから分かるように、出力回路へのサンプリングとシリアルDA変換とを並列に処理するのでバッファ出力期間が短い。
図35は、シリアル型DACと出力回路50J〜50Mとの接続部分のもうひとつの具体例を表す概略回路図である。すなわち、同図においては、図1〜図14に関して前述したDAC10A〜10Cの概略構成と、図27〜図32に関して前述した出力回路50J〜50Mの入力部のみと、が表されている。同図から明らかなように、本具体例においては、DACの2次側の容量C2と、出力回路の入力容量C3とが別々に設けられている。なお、同図において、容量C1、C2及びC3のサイズはそれぞれ約1pF程度であり、また階調電圧値は、例えば、正極性の場合には、Vref=9ボルト、Vcom=1ボルトであり、負極性の場合には、Vref=1ボルト、Vcom=9ボルトとすることができる。また、図中のノードNにおける電位は、正極性の場合には5〜9ボルト程度で、負極性の場合には1〜5ボルト程度とすることができる。
図36は、図35における各部の動作を表すタイミングチャートである。
1水平期間の前半は、スイッチSW0をオフにして出力回路を切り離した状態でスイッチS1をオン・オフさせることにより、容量C1と容量C2との間で電荷の再配分を行って、シリアルDA変換を実行する。つまり、出力回路へのサンプリングは行わずにシリアルDA変換処理のみを実行する。
次に、スイッチSW0を所定の期間だけオンして出力回路へのサンプリングを実行する。しかる後にスイッチSW2をオンして主力回路から信号線への書き込みを実行する。この書き込み期間は、次の1水平期間の前半まで続き、DACのDA変換処理と重複して実行される。
また、信号線への書き込みが終わると、その次のサンプリングの前に、スイッチSW3が一旦オンとなって容量C3を放電するリセット期間が設けられる。
本具体例によれば、出力回路から信号線へのデータ書き込みD処理とシリアルDA変換処理とを同時に動作させることができる。
なお、本具体例において、DA変換の基準電圧であるVrefとVcomとを9ボルト〜1ボルトの範囲で設定する理由は、DACの容量C2と出力回路の容量C3とを接続させると、蓄積電荷が半減するからである。つまり、最初にDACにおいて容量C2に倍の量の電荷を蓄積しておけば、出力回路の容量C3と電荷を分配した後に、所定の充電量が得られるからである。
以上、本発明の映像信号線駆動回路におけるシリアル型DAC、映像信号出力回路、及びこれらの接続インターフェイスについて詳細に説明した。
次に、これらの各要素を包含した映像信号駆動回路の全体的な構成について概説する。
図37は、本発明の実施の形態にかかる多階調表示装置の回路ブロック図である。本具体例は、例えば6ビット(64階調)対角10インチのXGA表示装置として実現することができる。
また、図38は、図37に表した多階調表示装置の映像信号駆動回路を表す回路ブロック図である。
さらに、図39は、図38の映像信号駆動回路の動作を表すタイミングチャートである。
図37の回路においては、画像表示部20には、複数本の映像信号線27と、これに直交する複数本の走査線28とが配線され、これらの交点に画素TFT29が設けられている。TFT29のドレイン電極には、液晶容量Clcと補助容量Csとがそれぞれ接続されて表示画素を形成している。
走査線駆動回路は、例えば、シフトレジスタと走査線駆動バッファとにより構成され、各々のバッファ出力が各走査線28に供給される。各走査線28に供給された走査線信号に基づいて、対応する行のTFT29がオン・オフ制御される。
図38に例示した映像信号線駆動回路は、デジタル映像データ線(デジタルバス)DBと、シフトレジスタ21と、サンプリングラッチ24と、ロードラッチ23と、DAC10A〜10Cと、出力回路50とにより構成されている。そして前述したように、DAC10A〜10Cは1水平期間中にアナログ電位を一回出力し、出力回路50を介して1本の信号線27に映像信号が書き込まれる。
デジタルバスDBには、外部に設けられたゲートアレイGAから出力されるデジタル映像信号が順次書き込まれる。ここで、本発明の映像信号線駆動回路SDは、図1〜図14に関して詳述したようにシリアル型のDAC10A〜10Cを備える。このために、ゲートアレイGAに格納されているデジタル映像データの出力に際して、データ出力の順番を工夫する必要がある。
図40は、ゲートアレイGAからのデジタル映像データの出力順序を説明するための概念図である。図53に表したような従来のパラレル型DACに対してデジタル映像データを出力する際には、図40(a)に表したように、ゲートアレイGAに格納されている最下位ビット(LSB)から最上位ビット(MSB)までの6ビットのデータの倍数をそのままパラレルに出力すれば良い。
これに対して、本発明のシリアルDACに対してデータ出力する際には、図40(b)に表したように、表示装置の信号線27の本数に応じて、この本数の公約数ずつ、下位ビットから順にデータを出力する必要がある。このためには、ゲートアレイGAの内部または、ゲートアレイGAの外部に、データの並び替えを行う手段を設けると良い。
一方、図37に例示した具体例をポリシリコンTFTにより実現するとTFT特性のばらつきが比較的大きくなる場合があるので、映像信号線駆動回路に入力する信号のゲートアレイ出力は、5ボルト以上の振幅とすることが望ましい。
例えば、図37に例示したように、3.3ボルト電源のゲートアレイGAにレベルシフト回路LSを接続し、3.3ボルト振幅のデジタルデータ、クロック及び制御信号をすべて5ボルト振幅にレベルシフトしてから映像信号線駆動回路SDに供給すると良い。
もし映像信号線駆動回路SDに供給する前にレベルシフトを行わない場合には、(1)ゲートアレイ自体の電源電圧を5ボルトとするか、(2)映像信号線駆動回路と同一基板上にポリシリコンTFTなどを用いてレベルシフト回路を作り込む必要がある。但し、(1)の場合には消費電力が高くなり、(2)の場合にはレベルシフト回路のディレイばらつきが大きい場合に所期のデジタル映像データを所望のタイミングでシフトレジスタに供給することができず、「データずれ」を生ずる恐れがある。
シフトレジスタ21には、クロック信号(CLK、/CLK)とトリガ信号(XST)とが入力される。そして、シフトレジスタ21からの出力によって、サンプリングラッチ24が制御され、デジタル映像データがサンプリングラッチ24に順次格納される。
次に、データロード用の制御信号(LR、/LR)によりサンプリングラッチ24に格納されたデジタルデータが同時にロードラッチ23にラッチされ、次いで、DAC10A〜10Cに出力される。ここで、図示したように、必要に応じてロードラッチ23とDAC10A〜10Cとの間にレベルシフト回路LSを設けても良い。
DACが各信号線27毎に設けられている場合には、上述したサンプリング、ロード、DACへの出力は、6ビット分すなわち6回繰り返される。この一連の動作については、図1〜図14に関して詳述した通りであり、また、図39のタイミングチャートに表した通りである。1回毎に、デジタルデータは電圧変換されてDAC内の容量に保持される。
出力回路50は、サンプリング期間中にDACからの出力を受け、次いで書き込み期間中に信号線27に電圧を書き込む。この詳細については、図15〜図36に関して前述した通りである。DACと出力回路50とは、書き込み期間中は接続されない。
次に、本発明による映像信号線駆動回路の変型例について説明する。
図41及び図42は、本発明による映像信号線駆動回路の変型例を説明するための概念図である。ここで、図41(a)は、図38に表した基本形に対応し、図41(b)及び図42(a)及び(b)は、それぞれ変型例に対応する。
これらの変型例においては、選択スイッチSSWまたはアナログスイッチASWを設けて複数の信号線のいずれかを選択可能とすることにより、ラッチ24A、24B、レベルシフタLS、DAC10A〜10C及び出力回路50の一部を共用して回路を簡略化することができる。
以下の説明においては、便宜上、2本の信号線27のいずれかを選択可能とした場合について説明する。そして、全ての信号線を奇数本目(2N−1)と偶数本目(2N)とに分けて説明する。但し、本発明において選択本数や選択の方法は、その他種々に変型可能であることはいうまでもない。
まず、図41(b)に例示した変型例においては、選択スイッチSSWを設けることにより、ラッチ24A及び24Bを2本の信号線の間で切り替えて使用可能としている。この構成によれば、ラッチの数を半減できる。具体的な動作の方法としては、1水平期間を12分割し、奇数本目の信号線用DACと偶数本目の信号線用DACとを12回切り替えて接続する。出力回路(AMP)による信号線への書き込みは、すべてのDACのアナログ出力が確定してから一斉に行うことが可能である。信号線への書き込みをほぼ1水平期間をかけて行うことができるので、平均電流量が少ないという利点がある。
次に、図42(a)に例示した変型例においては、アナログスイッチASWを設けることにより、2本の信号線の間でラッチ24A、24BとDACを共用可能としている。つまり、ラッチとDACの数を半減することができる。
その動作の方法としては、1水平期間を2分割し、前半の期間では奇数本目の信号線をDACを接続し、後半の期間では偶数本目の信号線をそれぞれDAC10に接続する。出力回路50による信号線への書き込みは、奇数本目のDAC出力が確定してから直ちに行う。書き込み時間はほぼ1水平期間の1/2である。ついで偶数本目のDAC出力が確定してから残りの信号線への書き込みを行う。本変型例の場合には、図41(b)に例示したものと比較してDACの占有面積を半減することができる。
なお、本変型例においては、1個のDACが複数本の信号線に順次アナログ電位を出力することになるが、その際の信号線の選択順序は、1水平期間毎または1フレーム毎に異なるようにするのが良い。先に電圧書き込みされた信号線と、後から電圧書き込みされた信号線との間のわずかに生じうる誤差電圧を時間的に平均化できるからである。
次に、図42(b)に例示した変型例においては、ラッチ、DAC及び出力回路の数を半減できる。すなわち、本変型例においては、出力回路50と信号線27との間にアナログスイッチASWを設けて、1水平期間の1/2程度の期間に書き込みを行うようにする。但し、このためには、アナログスイッチASWを比較的大きく形成して電流容量を確保することが望ましい。
以上説明した具体例においては、1本の信号線に対して1個のDACを用いるが、これとは別の発想として、1本の信号線に対して2個の出力回路50を並列し、その一方をサンプリング用、他方を信号線書き込み用として用いる「アナログバッファ方式」も実現可能である。この構成を上述した図42(a)の変型例に適用すると、信号線の書き込みを1水平期間の間継続することが可能となる。従って、平均電流量を半減することができるという利点がある。
また、以上説明した構成においては、「コモン反転駆動方式」を用いることが特に有利である。すなわち、1水平期間毎にコモン電位を2.5ボルト±2.5ボルトの範囲で変動させる。これに対応して信号線電位を2.5ボルト±2.5ボルトで出力する。このようにすれば、DAC及び出力回路50の電圧出力可能レンジをせいぜい5ボルト程度まで小さくすることができる。ポリシリコンTFTのように結晶シリコンTFTよりも特性のばらつきが大きいTFTにより構成される回路においては、例えばしきい値ばらつきの幅が出力回路50の出力レンジを狭める。画面対角サイズが13インチ以上の大型表示装置においては、コモン電位を1水平期間毎に変動させるのは現実的ではないので、コモン電位を例えば5ボルト程度に固定し、信号線電位を1〜9ボルトの範囲で制御することが得策である。図25や図26に例示した出力回路の場合には、Vdd、Vss及びVbiを調節することによりこれを実現することができる。
以上説明した具体例においては、シフトレジスタ21を高速動作させる必要がある。デジタルバスDBの本数は、10.4インチXGAの場合に画面を4分割し8相×3色(RGB)=24本程度となる。この場合に、1個のビットデータは60ナノ秒程度(すなわち、約16MHz)の間にラッチしなければならない。シフトレジスタが16MHzのクロックに追随できれば問題ないが、TFT特性が大きくばらついた場合には、シフトレジスタの16MHz動作が不確実になる恐れもある。このような問題を解決するために、8MHzクロックでシフトレジスタ21を16MHz相当の動作させる方法がある。
図43及び図44は、このような倍速動作シフトレジスタの構成を表す概念図である。すなわち、同図(a)はそのブロック構成を表し、同図(b)はその概略回路を表す。図43の構成においては、CLKと/CLKのそれぞれに応じて動作するハーフクロック型のシフトレジスタ21が設けられ、クロックCLKの倍の周期でサンプリングラッチ24に制御信号が供給される。
また、図44の構成においては、2つの1クロックシフト型シフトレジスタ21A、21Bを設け、それぞれに、クロックとその反転信号を供給することにより、倍周期でデータをサンプリングし、ロードラッチ23に供給する。
また、図示した具体例とは別に、単にシフトレジスタを2個並列に設けて、一方を他方に対して半クロック分だけシフトさせて動作させるだけでも良い。
図1〜図14に関して前述したようなシリアル型DACを採用すると、従来のパラレル型DACを用いる場合よりも回路占有面積を大幅に縮小することができるので、図43や図44に例示したようなやや複雑なシフトレジスタを形成することも容易となる。
本発明を液晶表示装置に適用する場合について説明すると、液晶材料のしきい値電圧が2.5ボルト程度の場合には、4ボルト型の液晶の場合と比べてDAC10A〜10C及び出力回路50の出力レンジを小さくできるという利点がある。さらに、液晶のしきい値電圧を1.5ボルト程度とすると、垂直ライン(Vライン)反転駆動あるいは水平/垂直(H/V)反転駆動を行う場合(特に、対角サイズが13インチ以上の大画面液晶表示装置の場合に多い)にも、DAC10A〜10C及び出力回路50の出力レンジを10ボルトとする必要がなくなり、電源を削減できる点で有利となる。
本発明による映像信号線駆動回路をガラス基板上に、画素駆動用TFTと同時形成してなる。透過型表示装置、反射型表示装置、半透過型表示装置、発光型表示装置は、モジュール強度が大きく、額縁部を小さくできる点で、携帯端末用表示装置として極めて有利である。
最後に、本発明の実施例としての10.4インチXGA液晶表示装置について説明する。
図45は、本発明による映像信号線駆動回路の実施例を表すブロック図である。
すなわち、同図に表した具体例は、対角10.4インチのXGA液晶表示装置に対応する。同図については、図1乃至図43に関して前述した要素と同等の要素には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
また、図46は、本実施例の表示装置の動作の具体例を表すタイミングチャートである。本実施例においては、映像信号は、8相4分割で供給される。すなわち、ゲートアレイGAからは、8相×3(RGB)×4(分割)=96のデジタル画像データが出力される。また、クロックCLKと制御信号CTRLとしては15種類の信号が供給され、これらは、駆動回路が形成されているガラス基板に5ボルトレベルで入力される。
一方、電源は、12、5、−2及び0ボルトの4種類であり、従来必要とされていた10ボルト電源が不要となる点で有利となる。さらに、YGVddとXVddが共通化されている。
信号線27は、768本設けられ、それぞれに、シフトレジスタ21、サンプリングラッチ24、レベルシフタLS、DAC及び出力回路50が接続されている。各要素に対する電源は、図44に表した如くである。
シフトレジスタ21は、ゲートアレイGAから制御信号及びクロック信号を受け取り、倍速で動作する半クロックシフト出力のシフトレジスタである。この具体的な構成は、例えば、図42に例示した如くである。
本実施例によれば、シリアル型DACを設けることにより、従来よりもはるかに小さい回路面積で、小型軽量の表示装置を形成することができる。さらに、出力回路50の構成を工夫したことにより、ポリシリコンTFTの特性ばらつきに対しても、安定な動作を確保し、製造歩留まりを顕著に改善するのみならず、表示装置の初期特性及び信頼性も改善することができる。
図47は、上述した具体例において採用することができるシフトレジスタ21の変型例を表す概念図である。
また、図48は、その動作を説明するタイミングチャートである。
通常は、シフトレジスタはクロック信号の立ち上がりを基準にして次段にパルスを送るが、本変型例のシフトレジスタは、半クロックシフトレジスタに似た動作を行う。
すなわち、まずシフトレジスタS/RIの出力a*によってサンプリングラッチの出力Aにはデータ(Data)1が出力される。シフトレジスタS/RIIも同様に動作するが、半クロック動作に類似した動作を行うため、その出力Bにはデータ2ではなく、まず始めにデータ1がラッチされ、次に、データ2がラッチされる。シフトレジスタS/RIIIも同様に、まずひとつ前のデータ2をラッチするが、最終的には所望のデータ3をラッチする。
本変型例の特徴は、デジタルデータを扱っており、さらにサンプリングラッチ段の後にロードラッチを経てDACへデータを転送する構成であるので、所望のデータが得られる前の動作には依存しないという点にある。半クロックシフトレジスタのような構成においては、前段と自段の論理演算によって、シフトレジスタ出力が重ならないようにすることは可能であるが、パルス幅が半分になるため、高速動作が容易でないことがある。また、論理演算のための素子の増加やさらにそれに伴う遅延などの影響で、パルス幅の「細り」などが生じ、サンプリングラッチが動作しないことがある。
これに対して、本変型例によれば、一度は前段のデータをラッチした後に所望のデータをラッチする方式であるが、パルス幅を確実に確保することができるため、半クロックシフトレジスタに比べて動作マージンが広く、素子数も少なくて済むという利点がある。
次に、本発明の駆動回路の具体例として、ガンマ補正回路を付加した構成について説明する。
図49は、ガンマ補正回路を付加した液晶表示装置の駆動回路を説明するための概略図である。すなわち、同図(a)は6信号線選択構成の駆動回路に信号を供給するゲートアレイのタイミングチャート、同図(b)は6信号線選択構成の駆動回路の概念図、同図(c)は8信号線選択構成の駆動回路に信号を供給するゲートアレイのタイミングチャート、同図(d)は8信号線選択構成の駆動回路の概念図である。
まず、図49(a)及び(b)を参照しつつ6信号線選択構成の場合について説明すると、6本の信号線に対して、駆動回路は、6個のラッチ24、1個のガンマ(γ)補正回路80、DAC10C、及び6個の出力回路(アンプ回路)50を備える。つまり、DAC10Cは、6本の信号線のいずれかを順次選択してアナログ電位を書き込む。ここで、DAC10Cは図9に例示した構成のものを用いる。また、ガンマ補正回路80は、液晶の光学的な応答特性を補正して人間の肉眼の視感度特性に合わせた画像を表示する役割を有する。
図49(a)に表したように、1水平期間22.75マイクロ秒を2マイクロ秒ずつ区切り、最初の2マイクロ秒では(6N+1)番目(ここでNは自然数とする)の信号線のビットデータ(d1〜d6)がラッチ24によりラッチされる。データのラッチが完了すると、ガンマ補正回路80が上位3ビット(d1〜d3)のラッチデータを参照して基準電位V+及びV-を選択する。一方、DAC10Cは、下位3ビット(d4〜d6)のデータを参照し、DAC内に設けられた入力容量C11,C12及びC13に、基準電位V+、V-をそれぞれ同時に充電する。
1次側の容量に対して充電が完了すると、下位ビットから順に対応する充電電位を2次側容量すなわち出力容量C21との間で再分配を繰り返し行い、所望のアナログ電位Viを得る。このようにして形成されたアナログ電位Viは、出力回路50により参照され、信号線27に書き込まれる。
次の2マイクロ秒以降では、(6N+2)番目・・・(6N+6)番目の信号線まで同様の動作が繰り返されて、全ての信号線にアナログ電位が書き込まれる。そして、1水平期間の後半には、10.125マイクロ秒のブランク期間が設けられる。
ここで各信号線に対する信号処理に際しては、図9に関して前述したように、DAC10Cは、2次側容量C21とC22とを交互に使い分け、次の信号線のためのDA変換を行う間に平行にして前の信号線に対するアナログ電位の書き込みを実行することができる。従って、高速動作を維持しつつ、電位の書き込みを十分に行うことができ、高品位の画像を表示させることができる。
また、本具体例においては、ガンマ補正回路80が電源選択型であるので、上位3ビット分の電圧変換は極めて高速に実行され、殆ど時間を要しない。また、DAC10Cの動作も下位3ビット分のみのDA変換で済むため、高速に動作させることができる。
図49(c)及び(d)に表した8信号線選択構成の場合も、基本的には同様の動作をさせることができる。すなわち、図49(c)に表したように、1水平期間22.75マイクロ秒を2マイクロ秒ずつ区切り、最初の2マイクロ秒では(8N+1)番目(ここでNは自然数とする)の信号線のビットデータをラッチし、ガンマ補正、DA変換、出力する。以降、0.125マイクロ秒毎のブランクを介して(8N+8)番目の信号線まで、上述した場合と同様の動作をさせることができる。1水平期間の後半には、5.875マイクロ秒のブランク期間が設けられる。
図50は、6信号線選択構成の駆動回路のさらに詳細な具体例を表す構成図である。
すなわち、ロードラッチ24のそれぞれには、各ビットのデータ(d1〜d6)が入力され、ラッチされる。これらのうちの上位3ビットのデータ(d1〜d3)は、ガンマ補正回路80に入力され、そのデータに基づいて複数の基準電位のうちのいずれかが選択され、V+、V−としてDAC10Cに供給される。
ガンマ補正回路80は、例えば図示したようにインバータ80Aとアンドゲート80Bとオアゲート80Cとスイッチ80Dとを組み合わせて構成される。さらに、図示した具体例においては、基準電位としてV1〜V9の9種類の電位が用意されている。
論理ゲート80A〜80Cは、ラッチ24から入力される上位3ビットのデータに基づく論理演算を実行し、その結果に応じてスイッチ80Dのいずれかをオンすることにより、基準電位V1〜V9のいずれかを選択してV+、V−として出力する。
基準電位V1〜V9は、例えば液晶への実効電圧が4〜5ボルトとなるような4〜5ボルトレンジの電源電圧範囲を8分割して得られる合計9レベルの電圧ノードとすることができる。但し、視感度特性に応じて補正するために、電源電位を非等間隔に分割することによってV1〜V9を形成する。そして、基準電位V1〜V9のうち連続するいずれか2つの電位ViとV(i+1)とを選択して、DAC側にV+とV−として渡すことにより、上位3ビットのデジタルデータが実質的にアナログ変換されたことになる。次いで、DACにより、ViとV(i+1)との間をさらに細かく刻んで高次の階調電位を以下の説明の如く形成する。
一方、ロードラッチ24にラッチされた下位3ビットのデータ(d4〜d6)は、そのままDAC10Cに送られる。
図示した具体例において、DAC10Cは、3個の1次側容量C11〜C13と6個の2次側容量C21〜C26を有する。DAC10Cは、入力データ(d4〜d6)に基づき、ガンマ補正回路80により選択された基準電位V+、V−を用いて、それぞれ1次側の容量C11〜C13を充電する。そして、1次側容量C11〜C13は、2次側の容量C21〜C26のいずれかとの間で電荷の再配分を行うことによりアナログ変換が完了する。
電荷の再配分を受けた2次側容量は、対応する出力回路(アンプ回路)50Mを介して、対応する信号線27にアナログ電位を書き込む。そして、この書き込み動作と平行して、次の信号線のためのDA変換を実行することができる。
以上説明したように、図50に表した駆動回路は、入力されたデジタル信号をガンマ補正し、DA変換を実行し、形成したアナログ電位を信号線27に書き込む。この際に、次の信号線のためのガンマ補正やDA変換処理と、前の信号線に対する書き込み処理とを平行して実行させることができ、高速で確実なアナログ信号の供給を実現することができる。
図51は、本発明の変形例を表す概念図である。すなわち、同図に例示したものは、「ブロック順次走査型」のサンプル・ホールド型(以下、S/H型と略す)液晶表示装置である。この方式の液晶表示装置においては、所定の数の映像信号線からなるブロック毎に、映像信号が書き込まれる。
すなわち、シフトレジスタ等で構成されるタイミング回路によりサンプリング・スイッチを制御し、ビデオ信号線を介して供給される映像信号を映像信号線容量に保持した後に画素容量に書き込むという方式のものである。
本変形例においても、画像表示部20に隣接して、映像信号駆動回路VDと走査線駆動回路SDとが設けられている。
画像表示部20には、複教本の映像信号線27とこれに直交する複教本の走査線28とが配線され、これらの交点に画素TFT29が設けられている。TFT29のドレイン電極には、液晶容量Clcと補助容量Csとがそれぞれ接続され、表示画素を形成している。
走査線駆動回路SDは、シフトレジスタ25と走査線駆動バッファ26とにより構成され、各々のバッファ出力が各走査線に供給される。これらの入力としては、基本クロックCLK2とトリガ信号IN2が必要とされる。
映像信号駆動回路VDは、DAC10A〜10Cとシフトレジスタ31とビデオ信号線32とサンプリング・スイッチ制御線33とサンプリング・スイッチ34とにより構成されている。DAC10A〜10Cの構成は、図1乃至図14に関して前述したものと同様にすることができる。また、DACの前段には、図3に例示したような図示しないシフト・レジスタ21やサンプリング・スイッチ24が設けられていても良い。
本変型例においても、外部からDACにシリアル入力されたデジタル映像信号は、図1乃至図14に関して前述したようなプロセスを経てアナログ信号に変換され、それぞれのビデオ信号線32に供給される。
そして、シフトレジスタ31によりサンプリング・スイッチ34を制御することによってアナログ映像信号が映像信号線に書き込まれる。同図に例示した構成では、水平方向に隣接するm個の表示画素ごとにブロック化され、このブロック毎に映像信号が供給される。
図52は、映像信号駆動回路VDの動作原理を説明するためのタイミングチャートである。図51も併せて参照しつつ、その動作について説明すると、まず、基本クロックCLK1と、それに同期したm相のビデオ信号(Video1〜Videom)がビデオ信号線32に入力される。
ここで、第nブロックの画素に正極性の映像信号を書き込む場合には、nブロック目に相当するタイミングで、図51中のb点でのサンプリング・スイッチ34の制御信号がオフ(OFF)状態からオン(ON)状態に遷移する。すると、サンプリング・スイッチ34が非導通状態から導通状態となり、a点に入力された映像信号がビデオ信号像32を介して映像信号線27に供給される。この時、映像信号線27の電位は初期電位Vmから所定の電位Vsに向かって上昇を始める。また、画素TFT29をオン状態にしておくと、図51のc点における電位も映像信号線27の電位に追従する。
続いて、サンプリング期間Tw後にサンプリング・スイッチ34がオフ状態になると、映像信号線27と画素容量Clcおよび補助容量Csに映像信号がホールドされ、1水平期間の間、画素電位はVsに保持される。
この動作を基本クロックCLK1に同期しながらm画素毎に水平方向に走査を行うことにより、1フレーム期間内に全画素に映像信号を書き込み、画像を表示する。
本変形例においても、図1〜図14に関して前述したものと同様に、極めて簡略なDACを用いることによって、回路規模を縮小し、さらに、異なるビット数のデジタル・データを処理することが出来るという効果を得ることができる。
なお、図52において、「△Vw」で表した電圧は、「書き込み不足電圧」と呼ばれ、ビデオ信号線32の終端側における映像信号線27の電位が所望の電位に達する前に電位が書き込まれることに起因して生ずる。この原因は、保持され液晶表示装置の大画面化に伴うビデオ信号線や映像信号線の抵抗及び容量の増大や、映像信号伝送系の遅延の増大、また、高精細化に伴う映像信号周波数の増加によりサンプリング時間が短縮されることなどによる。このような、「書き込み不足電圧」は、表示コントラストの低下等の画質の劣化を招くことがある。
本変形例のS/H型駆動回路は「書き込み不足電圧」が生じやすい点で前述した線順次方式よりも劣るが、一方で、m個の画素ブロック毎の順次走査を行うため、線順次走査型の駆動回路と比較すると回路規模が小さく、また、動作に必要な信号が基本クロックCLK1とトリガ信号IN1とm相の映像信号だけで良いという利点を有する。
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
例えば、図5乃至図9に例示したDACにおいて、1次側または2次側に設ける容量の数は、入力データのビット数や信号線の本数などに応じて適宜変更することができる
また、本発明の駆動回路の用途は液晶表示装置場合に限定されるものではなく、エレクトロルミネッセンス表示装置や蛍光発光型表示装置などの各種の表示装置についても同様に適用が可能である。すなわち、画素をマトリクス状に配置してそれぞれにアナログ映像信号電圧を順次供給する方式の全ての表示装置について、本発明を同様に適用して同様の効果を得ることができる。