JP2006116631A - 多関節型ロボットの制御方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 従来のオブザーバ制御演算装置では、ロボット自身の姿勢や、アームに取り付ける負荷に変化に対応し、制御性能の劣化を防ごうとすると、負荷イナーシャ、状態オブザーバ、状態FBのパラメータのリアルタイムでの演算が必要であり、演算処理の負荷が非常に多くなるという課題を有していた。
【解決手段】 アームに取り付けられる複数の負荷に対応して予め調整されたパラメータを持つ複数の状態オブザーバ並びに状態FBの演算を同時に行い、アームに取り付けられる負荷情報に基づいて、それぞれの状態FB値のモータ電流指令への加算量を調整する手段を備えることにより、リアルタイムで負荷イナーシャ、状態オブザーバ、状態FBのパラメータ演算を行う必要はなく、十分な振動抑制効果が得られる状態で、演算時間を削減することができる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、減速機を介してモータにより駆動されるロボットの位置制御における多関節型ロボットの制御方法に関するものである。
近年、溶接やハンドリングに用いられる垂直多関節ロボットにおいて、作業精度の向上が求められている。しかし、垂直多関節ロボットは、合成アーム長が1m以上、構成軸が6軸以上の構成が一般的であり、アームのしなりや、各軸に搭載されている減速機のバネ成分により、アーム先端は振動しやすい構造になっている。
特に、減速機のバネ成分による振動は、大型ロボットでは10Hz以下の低い周波数となり、位置制御性能に大きな影響を与える。
図2は、ロボットにおけるモータと減速機をモデル化したものを示してもので、モータ取り付けベースとなるアーム1(1)にモータ(2)、減速機(3)、ベアリング(4)が固定され、減速機2次側(7)の回転部に結合された負荷であるアーム2(9)を駆動する。
減速機1次側(6)はモータ回転軸(10)でモータ内のロータに結合され、モータ回転速度ω(11)で回転する。減速機(3)は減速比Rgで、モータ回転速度ω(11)を負荷回転速度ω(12)に減速する。
Figure 2006116631
しかし、減速機(3)は減速機1次側(6)と減速機2次側(7)の間にバネ成分が存在するので、(数1)の式が成立するのは、バネの伸びが一定となった定常状態のみである。
このバネ成分のバネ定数をKsとして、図2のモデルをブロック線図で表したものが図3である。
図3において、icom(13)はモータ(2)を駆動するモータ電流指令、Kt(14)はモータ(2)のトルク定数、1/Rg(15、16)は減速比の逆数、(17)はモータ伝達関数、(18)は負荷伝達関数、Ks(19)は減速機(3)のバネ定数、θs(20)は減速機1次側(6)と減速機2次側(7)間に発生するねじれ角、(21)は積分、Td(22)は負荷(アーム2)に加わる外力である。
モータ伝達関数(17)において、Jはモータロータ(5)と減速機1次側(6)を合わせた回転軸(10)回りの慣性モーメント、Dは粘性摩擦係数である。
負荷伝達関数(18)においても、Jは負荷(アーム2)(9)と減速機2次側(7)を合わせた回転軸(10)回りの慣性モーメント、Dは粘性摩擦係数である。
図3の負荷に対し、通常用いられる位置決め制御ループを示したものが図4である。
図4において、位置制御ブロック(27)は、モータに接続されたエンコーダ等によって検出されるモータ回転速度ωを積分要素(25)で積分したモータ位置θ(24)を、位置指令θcom(23)から減算し、位置ゲインKPP(26)を乗じて速度指令ωcom(28)を生成する。
Figure 2006116631
速度制御ブロック(31)は、速度指令ωcom(28)とモータ回転速度ωより下記式で、モータ電流指令icom0(32)を生成する。
Figure 2006116631
図4で示す通常の位置制御ループでは、負荷速度ω(12)や減速機ねじれ角θs(20)を無視し、モータ速度ω(11)のみを観測して位置制御を行うため、減速機のバネ成分による負荷速度ω(12)の振動を抑制することは出来なかった。
そこで、負荷速度ω(12)や減速機ねじれ角θs(20)を計測し、その計測値を用いてフィードバック(以下FBと省略)制御を行うことで、減速機のバネ成分による振動を抑制する方式が考えられるが、負荷速度ω(12)や減速機ねじれ角θs(20)の計測機能を付加することにより、装置コストや負荷質量の増大を招くので、製品化するにはデメリットが大きい。
上記課題を解決するために、図5では図4で示した通常の位置制御ループに、状態FBブロック(39)を加えている。
状態FBブロックにおいては、電流指令icom(13)とモータ速度ω(11)の値を用いて、状態オブザーバ(33)により、負荷速度推定値ωLo(34)や減速機ねじれ角推定値θso(35)を推定する。これらの推定値とモータ回転速度ω(11)にゲイン(36)〜(38)を乗じ、速度制御ブロックより生成された電流指令icom0(32)から減じて、新たに電流指令icom(13)を生成する。
Figure 2006116631
このように構成することにより、状態FBゲイン(36)〜(38)を調整することで、減速機のバネ成分による負荷速度ω(12)振動を抑制する制御特性の実現が可能になる。
図6は図5における状態オブザーバ(33)を最小次元オブザーバで構成した場合の内部構造を示したもので、パラメータ61〜70を以下の式で計算することにより構成する。
Figure 2006116631
において、k1、k2(図6では69、70)は、オブザーバの応答性と安定性を決定するゲインで、オブザーバの応答性と安定性を決定する極をα1、α2と指定すると以下の式で計算される。
Figure 2006116631
一方、状態FBゲインKf1〜3(36)〜(38)の決定方法は最適レギュレータ等様々あるが、速度指令ωcom(23)からモータ速度ω(11)までの伝達関数の極を指定する方式を図5の制御系で採用した場合は以下のようになる。
指定する極をβ1〜4とすると
Figure 2006116631
ところで、垂直多間接ロボットにおいては、ロボット自身の姿勢や、アームに取り付けられる負荷が変化すると、負荷イナーシャJは変動する。
そこで、負荷イナーシャJを計算し、その値に基づいて、(数5)〜(数7)の式(6)〜(9)で示す状態オブザーバと状態FBのパラメータを再計算すれば良いことが公知技術として知られている。
しかし、近年の高応答性を要求されるロボットにおいては、図5で示す位置ループ制御の全軸分の演算を数ミリ秒以内のサンプリングで行う必要があり、数値演算が速いデジタルシグナルプロセッサ(以後DSPと略す)を用いたとしても、負荷イナーシャJの演算と(数5)〜(数7)の式(6)〜(9)の演算を位置制御ループサンプリングの余り時間で処理する事は困難である。また、(数5)〜(数7)の式(6)〜(9)にはDSPが不得意とする除算が多く含まれている。
以上の問題に対し、従来は状態方程式の離散化を1次で終了させて演算時間を短縮する方式が示されている(例えば特許文献1参照)。
特開平8−123508号公報
しかし、従来のオブザーバ制御演算装置では短縮したとは言え、ロボット自身の姿勢や、アームに取り付ける負荷に変化が発生すると、依然として負荷イナーシャJ、状態オブザーバ、状態FBパラメータの演算が必要であり、また、DSPが不得意とする除算が含まれていることには変わりない。
最近のロボットにおいては、溶接や力制御のアプリケーションに適応した制御や、センサレス衝突検出に代表される安全性を高める制御等にも演算時間を割かねばならず、ますます演算処理の負荷が重くなってきている。
本発明は、上記課題を解決するものであり、従来のオブザーバ制御演算装置法が有していた、負荷イナーシャ、状態オブザーバ、状態FBのパラメータ演算に要する時間を、十分な振動抑制効果が得られる状態で、削減することができるロボットの制御方法の提供を目的とする。
上記目的を達成するために本発明の多関節型ロボットの制御方法は、減速機のバネ成分による振動が発生しやすい姿勢で、アームに取り付けられる複数の負荷に対応して予め調整されたパラメータを持つ複数の状態オブザーバ並びに状態FBの演算を同時に行い、アームに取り付けられる負荷情報に基づいて、それぞれの状態FB値のモータ電流指令への加算量を調整する手段を備えることを特徴とする。
以上のように、本発明の多関節型ロボットの制御方法においては、リアルタイムで負荷イナーシャ、状態オブザーバ、状態FBのパラメータ演算を行う必要はなく、DSPが得意とする積和演算で構成される複数の状態オブザーバ、状態FBの演算をするのみで良いので、十分な振動抑制効果が得られる状態で、演算時間を削減することができる。
(実施の形態)
以下、本発明の実施の形態について、図1〜3及び図7〜8を用いて説明する。
図7(a)は本発明の実施の形態での制御対象とする垂直多関節ロボットを示している。
通常の垂直多関節ロボットは基本3軸と手首3軸で構成されており、図7(a)は基本3軸のみを示している。
図5等に示す、角軸の負荷速度ω(12)をアーム先端の線速度vに換算する式は以下の様になる。
Figure 2006116631
手首3軸はアーム長が基本3軸に比べ短いため、回転半径rが小さく、軸回りの速度ωに振動成分が乗っていても、アーム先端速度vへの影響は少ないので無視することができる。
図7(a)において、(101)は水平面で回転する第1軸、(102)は第1軸に取り付けられ垂直面で回転する第2軸、(103)は第2軸に取り付けられ垂直面で回転する第3軸である。(104)は第1軸の角速度ω1、(105)は第2軸の角速度ω2、(106)は第3軸の角速度ω3である。
図7(b)は(数8)の式(10)が最大となる姿勢を示している。ただし、第3軸は回転中心軸とアーム先端までの距離は手首軸を無視すれば、姿勢によらず一定である。
(107)と(108)は、それぞれ第1軸と第2軸の回転半径r1、r2であり、第1軸と第2軸の回転中心がオフセットしていなければ一致し、図7(b)の姿勢で最大となる。
また、この姿勢では、アームも含めた負荷イナーシャJが最大となるので、振動周波数が最も低く、制御性能に悪影響を与える。さらに、図2で示す減速機(3)のバネ(8)から先の負荷が大きくなるので、振動が始めると静止させにくくなる。
逆に図7(c)(d)はアームをおりたたんだ姿勢であり、図7(c)に第1軸の回転半径r1(107)、図7(d)に第2軸の回転半径r2(108)を示している。
いずれにしても、図7(b)に比べると回転半径rが小さく、アームも含めた負荷イナーシャJも小さくなるので、振動周波数が高くなり、振動の抑制も容易である。
つまり、図7(b)で示す姿勢近傍が最も振動が大きく、止めにくいことが考えられるので、図7(b)近傍で状態オブザーバと状態FBのパラメータを予め調整しておく。
しかし、アームに取り付けられる負荷は一定ではなく、移載作業等ではロボットが動作中にも変わる。そこで、数種の負荷に対応したパラメータを図7(b)近傍で状態オブザーバと状態FBのパラメータを予め調整しておく。
以下の説明では、説明を簡単にするために2種類の負荷に対応した場合を用いる。
図1は本発明の実施の形態における位置制御ループを示すものである。
図5の従来の位置制御ループにおいて状態FBブロック(39)が単一だったことに対し、図1においては2種類の負荷に対応した状態FBブロック1、2(47、57)と状態FB比率ゲインRK1、RK2(48、58)を有する。
状態FBブロック1、2(47、57)においては、DSPが得意とする積和演算のみで構成される。
状態FBブロック1、2(47、57)中の状態オブザーバと状態FBのパラメータは、それぞれの負荷に対応し、図7(b)の姿勢の近傍で予め調整された値を用いる。
ロボット動作プログラムにより、アームに取り付けられる負荷が、状態FBブロック1(47)で調整した負荷から状態FBブロック2(57)で調整した負荷へ切り替わったことが知らされると、図1の状態FB比率ゲインRK1、RK2(48、58)は図8で示すグラフで変化させる。
状態FB比率ゲインRK1、RK2(48、58)の関係は以下の式で定める。
Figure 2006116631
図8では、時刻0ではRK1=1、RK2=0であった状態FB比率ゲインは、時刻0.2で負荷切替が知らされると、RK1を0になるまで減少させる。RK2は(数9)の式(11)の関係を保つので、時刻0.7でRK2=1に増加し、負荷切替対応を完了する。
もし、図8で示す切替シーケンスを行わずに、時刻0.2でRK1=0、RK2=1として切り替えると、状態FB量が不連続となり、電流指令icom(13)も不連続となって、アームに振動を発生させる可能性がある。
その理由は、以下の通りである。
状態オブザーバ1(41)と状態オブザーバ2(51)はそれぞれの負荷に対応して負荷速度ωLO1、ωLO2(42、52)、減速機ねじれ角θLO1、θLO2(43、53)を演算しており、状態FBゲインKf11〜Kf31(44〜46)とKf12〜Kf32(54〜56)も異なるので、それぞれの状態FB量SFB1、SFB2(49、59)も異なる。
つまり、時刻0.2で時間経過無しに状態FB比率ゲインRK1、RK2(48、58)を切り替えると、状態FB量が不連続となり、電流指令icom(13)も不連続となってしまう。
一方、状態オブザーバは(数6)の式(7)で指定した極α1、α2で決定される推測の収束時定数を持つ。図5の状態FBブロック(39)が単一である従来の位置制御ループにおいて、状態オブザーバ(33)内のパラメータを不連続に切り替えると、収束遅れの影響で負荷速度ωLO(34)、減速機ねじれ角θLO(35)に乱れが生じる。
また、状態FBゲインKf1〜Kf3(36〜38)も不連続となるので、状態FB量SFB(40)も不連続となる。
つまり、図5の状態FBブロック(39)が単一である従来の位置制御ループにおいては、状態FBブロック39内のパラメータを連続的に変化させる必要があり、従来のオブザーバ制御演算装置の様に、負荷イナーシャJ、状態オブザーバ、状態FBのパラメータ演算を常に行う必要がある。
本発明の説明では、2種類のアームに取り付けられる負荷に対応した場合を説明したが、3種類以上でも同様の手法を用いることが出来るのは言うまでもない。
本発明の多関節型ロボットの制御方法は、従来のオブザーバ制御演算装置法が有していた、負荷イナーシャ、状態オブザーバ、状態FBのパラメータ演算に要する時間を、十分な振動抑制効果が得られる状態で、さらに削減することができ、溶接や力制御のアプリケーションに適応した制御や、センサレス衝突検出に代表される安全性を高める制御等にも演算時間を割くことができるので産業上有用である。
本発明の実施の形態における位置制御ループを示すブロック図 ロボットの減速機のバネ成分を示す概略構成図 ロボットの減速機のバネ成分をモデル化したブロック図 従来技術の形態における位置制御ループを示すブロック図 従来技術の形態におけるオブザーバ制御を用いた位置制御ループを示すブロック図 状態オブザーバの構成を示すブロック図 ロボット姿勢とアーム先端振動の関係を示す概略図 本発明の実施の形態における状態FB比率ゲインの切替方法を示すグラフ
符号の説明
1 モータ取り付けベース(アーム1)
2 モータ
3 減速機
4 ベアリング
5 モータ内ロータ
6 減速機1次側
7 減速機2次側
8 減速機バネ
9 負荷(アーム2)
10 モータ回転軸
11 モータ回転速度 ω
12 負荷回転速度 ω
13 モータ電流指令 icom
14 モータトルク定数 Kt
15 減速比逆数
16 減速比逆数
17 モータ伝達関数
18 負荷伝達関数
19 バネ定数 Ks
20 減速機ねじれ角 θs
21 積分要素
22 負荷(アーム2)に加わる外力 Td
23 モータ位置指令 θcom
24 モータ位置FB θ
25 積分要素
26 位置比例ゲイン KPP
27 位置制御ブロック
28 モータ速度指令 ωcom
29 速度比例ゲイン KP
30 速度積分ゲイン KI
31 速度ループブロック
32 電流指令(速度ループブロック出力) icom0
33 状態オブザーバブロック
34 モータ回転速度推定値 ωMO
35 減速機ねじれ角推定値 θso
36 状態FBゲイン1 Kf1
37 状態FBゲイン2 Kf2
38 状態FBゲイン3 Kf3
39 状態FBブロック
40 状態FB量 SFB
41 状態オブザーバブロック1
42 モータ回転速度推定値 ωMO
43 減速機ねじれ角推定値 θso1
44 状態FBゲイン1 Kf11
45 状態FBゲイン2 Kf21
46 状態FBゲイン3 Kf31
47 状態FBブロック1
48 状態FB比率ゲイン1
49 状態FB量 SFB1
51 状態オブザーバブロック2
52 モータ回転速度推定値 ωMO
53 減速機ねじれ角推定値 θso2
54 状態FBゲイン1 Kf12
55 状態FBゲイン2 Kf22
56 状態FBゲイン3 Kf32
57 状態FBブロック2
58 状態FB比率ゲイン2
59 状態FB量 SFB2
61〜70 状態オブザーバパラメータ

Claims (2)

  1. モータで駆動する回転軸を中心に回転し、負荷の装着と離脱が可能なアームを複数有し、アームへの負荷の装着と離脱の動作を含む予め記憶された動作プログラムによって動作し、前記モータの電流、および回転位置情報を元に前記モータのフィードバック制御ループを構成し、状態オブザーバで推定した前記モータに接続する前記アームの速度およびねじれ量の推定量を前記フィードバック制御ループに付加させる状態フィードバックブロックを負荷に応じて複数個備えた前記モータの動作を制御する多関節型ロボットの制御方法であって、前記プログラムによる動作中に前記アームへの負荷の装着または離脱が実行されて負荷変動が発生する負荷変動発生時に、負荷に応じて状態フィードバックブロックを切り替えることを特徴とする多関節型ロボットの制御方法。
  2. 複数個の状態フィードバックブロックから得られた状態フィードバック量に変更可能な乗算係数を乗算し、前記モータのフィードバック制御ループに付加させる状態フィードバック量を決定する請求項1記載の多関節型ロボットの制御方法。
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