JP2006115835A - 新規なパーキン結合タンパク質とその用途 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】上記の共通因子として機能する、新規なパーキン結合タンパク質(PBP)とその遺伝子並びに抗体を提供する。併せて、PBP、その遺伝子、及び抗体を用いる、次の疾患の診断剤、治療薬及び予防剤が提供される:ミトコンドリア機能障害をきたす変性疾患としての弧発性パーキンソン病、AR−JP、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、糖尿病等。
【選択図】図1
Description
としてのパーキンの利用(特許文献2)、パーキンの基質としてのパエル受容体を用いる治療薬のスクリーニング(特許文献3)等の技術が既に公知である。
更に最近、パーキン結合タンパク質として、HSP70とそのコ・シャペロンCHIPが報告された(非特許文献3)。この報告によれば、これ等の両タンパク質は、パーキンと共同し、ERストレス下で蓄積するパエル受容体をユビキチン化することにより、これを分解する。
前述した通り、弧発性パーキンソン病及びAR−JPは共に難病の特定疾患としてランクされている重要疾病であるので、かかる両者のブリッジとなり得る共通の因子あるいは原因と発症機構の解明、及びそこで得られた知見をこれ等の疾患の診断、治療及び予防に活用することは、全世界における急務の課題である。
(1)蛍光抗体法や免疫電顕を用いた検討により、パーキンが増殖期の神経系・筋系細胞のミトコンドリアに局在していることが確認された;
(2)パーキンのミトコンドリアへの局在は、パーキンをGFPベクターで導入した場合にも認められた;
(3)増殖期の細胞において、種々のミトコンドリア電子伝達系抑制剤及び細胞周期ブロッカーを添加した場合には、パーキンはミトコンドリアから遊離した。また、分化細胞では、パーキンはミトコンドリア外に局在していた。このことは、分化した細胞であるヒトや動物の中枢神経組織では、パーキンがミトコンドリアには存在しないという事実とも一致していた;
(4)パーキンを、神経芽細胞腫の細胞株でドーパミン産生細胞であるSH−SY5Yに過剰発現させた場合には、ミトコンドリアにコードされた遺伝子の転写・複製が増加した。しかし、核にコードされた遺伝子の転写・複製には変化が見られなかった。また、この細胞では、dsDNAプローブを用いた観察で、形態的にもミトコンドリアDNAの増加があり、電顕ではミトコンドリアの増殖が認められた;
(5)上記(4)とは逆に、内因性パーキンの発現をsiRNAで抑制した場合には、ミトコンドリアにコードされた遺伝子の転写・複製は選択的に減少していた。更に、これらの実験系でミトコンドリアの膜電位やアポトーシスを測定した結果、パーキンはミトコンドリアの転写を介して酸化的リン酸化などの機能を促進し、膜電位の形成・維持やアポトーシスの抑制を誘導することが明らかとなった;及び
(6)発明者らは、パーキンがミトコントリアでの遺伝子の転写と複製に関与しミトコンドリア機能を促進するという、パーキンの新しい機能を発見する共に、ミトコンドリアへの移行シグナルを持たないパーキンをミトコンドリアに運搬する未知のタンパク質としてPBPの存在が推論された。
(1)配列番号2から配列番号14に記載の合計13種のアミノ酸配列群から選ばれる少なくとも1種のアミノ酸配列。
(2)配列番号16から配列番号20に記載の合計5種のアミノ酸配列群から選ばれる少なくとも1種のアミノ酸配列。
(3)配列番号2から配列番号14に記載の合計13種のアミノ酸配列群から選ばれる少なくとも1種のアミノ酸配列を保有するタンパク質群から選ばれる少なくとも1種のタンパク質。
尚、この明細書にいう「タンパク質」とは、PBP、その活性ドメインそのもの、該ドメインをペプチド鎖全長の一部分として有する、PBP由来の断片、ポリペプチド及びペプチドをも併せて意味する。また、「アミノ酸配列を保有のタンパク質」とは、該アミノ酸配列からなるタンパク質以外に、該アミノ酸配列をペプチド鎖全長の一部分として有するタンパク質をも併せて意味する。
(4)配列番号16から配列番号20に記載の合計5種のアミノ酸配列群から選ばれる少なくとも1種のアミノ酸配列を保有するタンパク質群から選ばれる少なくとも1種のタンパク質。
(5)前記(3)及び(4)にそれぞれ記載のタンパク質の混合物。
(6)薬効を奏する量の、前記(3)又は(4)に記載のタンパク質、又は上記(5)に記載のタンパク質の混合物を含有する、ミトコンドリア機能障害をきたす変性疾患の治療薬。
(7)ミトコンドリア機能障害をきたす変性疾患が弧発性パーキンソンン病、家族性パーキンソンン病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、又は糖尿病である上記(6)に記載の治療薬。
(8)診断用反応、例えば、抗原抗体反応、リガンドや受容体との吸着あるいは結合反応等を呈する量の、前記(3)又は(4)に記載のタンパク質、又は前記(5)に記載のタンパク質の混合物を含有する、ミトコンドリア機能障害をきたす変性疾患の診断剤。
(9)前記(1)又は(2)に記載のアミノ酸配列をコードするDNA又はその断片。
(10)上記(9)に記載のDNA又はその断片を用いることにより構築される遺伝子発現体、例えば、発現ベクター、ゲノムへの遺伝子導入ベクター等により生産されるタンパク質。
(11)前記(9)に記載のDNA又はその断片を用いることにより構築される遺伝子治療剤、例えば、発現ベクター、ゲノムへの遺伝子導入ベクター等が有効成分として含有される。
(12)前記(9)に記載のDNA又はその断片の塩基配列に基づき設計される遺伝子診断剤、例えば、PCR用プライマー、マイクロアレイやDNAチップ用プローブ等が有効成分として含有される。
(13)前記(9)に記載のDNA又はその断片の塩基配列に相補的なRNA塩基配列に基づき設計される遺伝子発現調節剤、例えば、RNAi用のsiRNAやdsRNA等が有効成分として含有される。
(14)前記(3)又は(4)に記載のタンパク質、又は(5)に記載のタンパク質の混合物に対するポクローナル抗体及びモノクローナル抗体。例えば、Klokin1及び2の各完全長ポリペプチド(全分子)、その断片(全分子のサブユニット)、後述される実施例2に記載の合成ペプチド、GPGPPELGRDTGRFDRQ(Klokin1に係る配列番号2に記載の第196番−第212番アミノ酸配)、CPPVELPWAPRRGHRLSP(Klokin2に係る配列番号16に記載の第19番−第36番アミノ酸配列)等に対するポクローナル及びモノクローナル抗体。
(15)抗原抗体反応を呈する量の、上記(14)に記載の抗体を試薬として含有する診断剤。
尚、この発明では、アミノ酸残基の置換・欠失・付加によりパーキン結合能が増強される場合には、上述の配列番号2〜14に示す各アミノ酸配列における、少なくとも1アミノ酸残基と他種のアミノ酸残基との置換体、少なくとも1アミノ酸残基の欠失体、少なくとも1アミノ酸残基の付加体等を、それぞれ用いることができる。
更に、この発明では、アミノ酸残基の置換・欠失・付加によりパーキン結合能が増強される場合には、上述の配列番号16〜20に示す各アミノ酸配列における、少なくとも1アミノ酸残基と他種のアミノ酸残基との置換体、少なくとも1アミノ酸残基の欠失体、少なくとも1アミノ酸残基の付加体等を、それぞれ用いることができる。
上記PBPの用途として、ミトコンドリア機能障害をきたす変性疾患、例えば、弧発性パーキンソン病、家族性パーキンソン病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、糖尿病等々の治療薬、診断剤、予防剤等を上げることができる。
上記DNAの用途として、PBPの量産や遺伝子治療のためのPBP発現ベクター、遺伝子治療用のゲノムへのPBP遺伝子導入ベクター、診断用のプローブ、プライマー等を上げることができる。
上記RNAの用途として、PBP遺伝子調節用のsiRNA、dsRNA、アンチセンスRNA等を上げることができる。
(参考例1)
PBPの新規性:
GenBankデータベースの検索によれば、Klokin1はアクセッション番号、Acc.AK026331に、また、Klokin2は、Acc.BC002873にそれぞれ相当する。但し、Acc.AK026331の機能は不明である。また、Acc.BC002873にはヒト核タンパク質E3−3、transcipt variant1の記載が見られるが、その機能は不明である。以上の結果に基づき、この発明に係るKlokin1及びKlokin2のパーキン結合能はいずれも、新規な機能であり、逆に、これ等のタンパク質は、PBPとして新規物質であると判断された。
PBPの機能と作用効果:
Klokin1とKlokin2は共に、ミトコンドリアへの移行シグナルを有し、細胞内で発現させると単独でミトコンドリアに移行して同部に局在する。さらに通常の増殖状態にある細胞では、パーキンと結合した後、パーキンPBP複合体の形でミトコンドリア内部まで移行する。パーキンはミトコンドリアの転写・複製ならびに電子伝達系の機能を促進するが、パーキン単独ではミトコンドリアに移行できないことから、パーキンのミトコンドリアにおける機能発現にはKlokin1とKlokin2が不可欠である。以上の知見に基づき、PBP(Klokin)による増殖期細胞内パーキンのミトコンドリアへの移行のモデルを図1に示す。
図1の説明:細胞増殖期においては、PBP(Klokin)が出現し、Klokinと結合したパーキンはミトコンドリアに移行の後、ミトコンドア内膜内に侵入し、ミトコンドリア機能を促進する。他方、Klokinと結合できなかったパーキンはミトコンドリアに移行できず、細胞内で分解されるか、あるいはゴルジ複合体に局在し、ユビキチンリガーゼとして機能すると考えられる。尚、細胞分化期には、Klokinの発現が少ないため、パーキンはほとんどがゴルジ複合体あるいは細胞質に存在する。
PBPの パーキン非依存性の作用:
Klokin1とKlokin2は、これ等の遺伝子内にミトコンドリア移行シグナルを有し、細胞質で合成された後、単独でミトコンドリアに移行することができる。Klokin1とKlokin2は、ミトコンドリア内において、外膜、内膜を通過し、ミトコンドリアの転写調節や機能発現の調節に関与している。
PBPと疾患の病態との関連
(a)遺伝性パーキンソン病との関連:前述した通り、パーキンは常染色体劣性若年性パーキンソン病(AR−JP)の責任遺伝子であり、パーキン遺伝子の異常によりAR−JPが発症することが知られている(非特許文献1)。一方、Klokin1とKlokin2の両遺伝子に異常が起こった場合にも、パーキン遺伝子が変異する場合と同様に、パーキンソン病を発症することが考えられる。従って、Klokin1とKlokin2の両遺伝子は遺伝性パーキンソン病の責任遺伝子となりうるもので、この異常の有無を患者検体からスクリーニングすることは、同病の診断の有力な手段となり得る。
(b) 孤発性パーキンソン病との関連:パーキン遺伝子欠損症ではパーキン蛋白の発現は全ての組織で欠損しているが、孤発性パーキンソン病の組織においてパーキンの発現は正常組織と同様に保たれている。従ってパーキンは孤発性パーキンソン病の病態とは無関係である。孤発性パーキンソン病は黒質緻密層のドーパミン産生細胞のミトコンドリア機能障害をきたしていることが知られている。Klokin1とKlokin2は、ミトコンドリアの転写調節や機能発現の調節をおこなっていることから、黒質におけるKlokin1とKlokin2の発現の異常により、孤発性パーキンソン病が発症し得ることになる。従って、Klokin1とKlokin2の発現の異常につき、中枢神経系をはじめとする種々の臓器及び末梢血単核球で検討することは孤発性パーキンソン病の診断に有用な手段となる。
(c) その他の変性疾患との関連:ミトコンドリア機能障害は孤発性パーキンソン病のみならず、ミトコンドリア病、糖尿病、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病等、種々の変性疾患の病態に関連していることが知られている。これらの疾患においてもKlokin1とKlokin2の発現の異常につき、種々の臓器ならびに末梢血単核球で検討することは、これ等の変性疾患の診断における極めて有用な情報となり得る。
PBPと 疾患の治療との関連:
Klokin1とKlokin2は、パーキンと結合し、ミトコンドリアの転写調節や機能発現の調節をおこなっていることから、Klokin1とKlokin2の発見は、家族性および孤発性パーキンソン病、ミトコンドリア病、糖尿病、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病等、ミトコンドリア機能障害をきたす種々の変性疾患に係る治療の観点から、重要な意味をもたらす。即ち、Klokin1及びKlokin2とパーキンとの結合を増強する薬物、Klokin1及びKlokin2のミトコンドリアへの移行を促進する薬物、更に、Klokin1及びKlokin2の細胞内発現を促進する薬物はいずれも、上記の諸疾患の有力な治療薬となり得る。
yeast−two−hybridシステム(BD Matchmaker Two−hybrid System3、BD Bioscience Clontech社製)を用いて、PBP遺伝子を、cDNAライブラリーからスクリーニングした。cDNAライブラリーは、市販のヒト脳、骨格筋由来のもの及び神経芽細胞腫の細胞株であるSH−SY5Y細胞にパーキンをトランスフェクションし、誘導された遺伝子mRNAからcDNAライブラリーを新たに作成したものを用いた。1次スクリーニンクで得られた118クローンについて、シークエンスを行い、ミトコンドリア移行シグナルの有無について検索した結果、このシグナルを有すると思われる10クローンの遺伝子が得られた。
次に、これ等10クローンの遺伝子をレポーター・ベクター(pEGFP−C2、BD Bioscience Clontech社製)に挿入し、パーキン−His(使用ベクターはpcDNA4/HisWax、Invitrogen Corp.社製)のstable発現細胞であるRD(ヒトrhabdomyosarcoma由来)に導入し、抗GFP/His抗体による免疫沈降を行った。その結果を図2に示す。パーキンと結合する2つの新規なタンパク質、Klokin1とKlokin2が同定された。
図2の説明:Klokin1及び2の各遺伝子を挿入のレポーター・ベクターを導入後、培養した上記RD細胞を、1重量%TritonX−100で可溶化した。この可溶化細胞成分に抗His抗体(マウス・モノクローナル抗体)又は抗GFP抗体(ラット・ポリクローナル抗体)を添加混合の後、プロテインG−アガロースで沈降させた。次いで、抗His抗体又は抗GFP抗体を用いてウエスタン・ブロッティングを行った。
(a)写真上段は、抗His抗体添加→プロテインG−アガロース沈降→抗GFP抗体使用のウエスタン・ブロッティングの写真である。レーン1は抗His抗体添加、レーン2は正常マウス血清添加、及びレーン3は比較対照(免疫沈降なし)の可溶化細胞成分。レーン1と3に見られる分子量の同一性からパーキン−Hisと共に、Klokin1及びKlokin2が沈降したことは明白である。
(b)写真下段は、抗GFP抗体添加→プロテインG−アガロース沈降→抗His抗体使用のウエスタン・ブロッティングの写真である。レーン1は抗GFP抗体添加、レーン2は正常ウサギ血清添加、及びレーン3は比較対照(免疫沈降なし)の可溶化細胞成分。レーン1と3に見られる分子量の同一性から、Klokin1及びKlokin2と共に、パーキン−Hisが沈降したことは明白である。
更に、Klokin−GFPを培養細胞(COS−1)に発現させた。その結果を図2に示す。発現された2つのタンパク質、Klokin1及びKlokin2は共に、細胞質に検出された。このGFPシグナルはミトコンドリアに対する特異的プローブであるMitotracker Red CMXRos(100nM)添加のシグナルに一致していたことより、Klokin1及びKlokin2は共にミトコンドリアに選択的に局在することが明らかとなった。
図3の説明:写真上段はKlokin1−GFP、下段はKlokin2−GFPの発現をそれぞれ示す。Klokin−GFPとMitochondria両画像の重ね合わせ画像(Merge)に見られる通り、Klokin−GFPシグナルはミトコンドリアの前記Red CMXRosシグナルに一致していた。
<材料と方法>
(a)抗Klokin1及び2各抗体の作成
Klokin1及び2蛋白を構成する各完全長アミノ酸配列の部分配列、Klokin1:GPGPPELGRDTGRFDRQ(配列番号2に記載の第196番−第212番アミノ酸配列);及びKlokin2:CPPVELPWAPRRGHRLSP(配列番号16に記載の第19番−第36番アミノ酸配列)をそれぞれペプチド合成し、KLH(スカシガイヘモシアニン:keyhole limpet hemocyanin)コンジュゲートをJapanese White Rabbit(白ウサギ)に免疫し、7回免疫の後、全採血を行った。得られた血清を、免疫原ペプチド結合NHS−activated Sepharoseを用いてアフィニティー精製し、抗体として使用した。
(b)培養細胞、及びヒト末梢血における内因性蛋白の発現
イムノブロット:
健常者より採取した末梢単核球及び血漿、培養細胞であるRD細胞の細胞画分を採取し、抗Klokin1及び2各抗体を用いたイムノブロットを行った。
蛍光抗体法:
RD細胞、生検骨格筋細胞において、抗Klokin1及び2各抗体、抗パーキン抗体、抗ミトコンドリア抗体を用いた免疫蛍光2重染色を行った。
(c)ミトコンドリアへの移行性
Klokin1及び2の各遺伝子並びにパーキン遺伝子をそれぞれ個別にpET15bベクターに導入し、大腸菌BL21により大量培養した。大腸菌は6M塩酸グアニジン、0.5M NaCl及び1%(w/w)TritonX100を含む50mM Tris・HCl(pH7.4)バッファーで可溶化した後、Niキレートカラム、及びQ・Sepharoseカラムで精製した。また、ヒト横紋筋肉腫由来の培養細胞であるRD細胞のミトコンドリア分画を採取し、上記で得られたHisタグを有するKlokin1及び2、並びにパーキンを添加した。1mgミトコンドリア分画に対し、15−25μgのリコンビナント蛋白を添加し、25℃で20分間、放置した後、その一部をproteinaseK(2mg/ml、15分)で処理した。遠心(9,000g、10分)した後、得られたペレットにつき抗His抗体を用いてイムノブロット解析を行った。
<結果>
(a)培養細胞及びヒト末梢血における内因性蛋白の発現
イムノブロット:
筋細胞系培養細胞RDにおけるKlokin1及び2の各発現は共に、ミトコンドリアで認められた(図4)。尚、核分画ではKlokin2と共通のエピトープを有する別の複数の蛋白が検出された。末梢血単核球(PMBC)ではKlokin1の発現は認められたが、Klokin2の発現は見られなかった(図5)。また、血漿ではどちらの発現も認められなかった(図5)。
蛍光抗体法:
GFP−Klokin1及び2をそれぞれ個別に導入したCOS−1細胞を、抗Klokin1及び2各抗体で染色した結果、GFP−Klokin1及び2の各シグナルと、抗Klokin1及び2各抗体で検出されたシグナルは完全に一致した(図6)、これより、これ等の抗体はKlokin1及び2にそれぞれ特異的に反応したものと考えられた。
また、作成した抗体で検出された内因性Klokin1及び2の各シグナルは、ミトコンドリア電子伝達系複合体3のシグナルとほぼ同じ部位で検出された(図7)、これより、内因性Klokin1及び2がそれぞれミトコンドリアに局在することが示唆された。
(b)ミトコンドリアへの移行性(図8)
ミトコンドリア存在下あるいは非存在下でbufferにHisタグを付加したパーキン及びKlokin1と2をそれぞれ添加した後、遠心し、ペレットを抗His抗体でイムノブロットした結果は、次の通りであった:ミトコンドリア非存在下(lanes7−12)ではproteinaseK処理によりパーキン及びKlokin1と2は完全に分解された(lanes8−10)。ミトコンドリア存在下では、パーキン及びKlokin1と2は、proteinaseK処理にも拘わらず、バンドが検出されたことより(lanes1−3)、これらの蛋白がミトコンドリア内に移行したことが示唆された。パーキンのミトコンドリアへの移行性はKlokin1及び2の各存在で著明に増加した(lanes4−6)。
<結論>
以上の結果に基づき以下(a)〜(e)が明確になった。
(a)作成した抗体はそれぞれ特異的にKlokin1及び2と反応する;
(b)内因性Klokinはミトコンドリアに局在している;
(c)末梢血リンパ球でもKlokinは発現している;
(d)Klokin1及び2はミトコンドリアへ良好な移行性を示す;
(e)パーキンは単独でもミトコンドリア内に移行するが、Klokin1又は2の存在下ではさらに移行性が増強する。
換言すれば、パーキンは常染色体劣性若年性パーキンソン病の(AR−J)責任遺伝子であり、パーキン遺伝子の異常によりAR−JDが発症することが知られている。一方、Klokin1及びKlokin2各遺伝子に異常が起こった場合にも、パーキン遺伝子が変異する場合と同様に、パーキンソン病を発症することが考えられる。従って、Klokin1及びKlokin2各遺伝子は遺伝性パーキンソン病の責任遺伝子となりうるものある。また、孤発性パーキンソン病においてもKlokin1及び2各蛋白の発現異常が病態に関連している可能性があるので、上記の抗体を用い、この異常の有無を患者検体からスクリーニングすることば、同病の診断の有力な手段となり得るものと考えられる。
Claims (15)
- 配列番号2から配列番号14に記載の合計13種のアミノ酸配列群から選ばれる少なくとも1種のアミノ酸配列。
- 配列番号16から配列番号20に記載の合計5種のアミノ酸配列群から選ばれる少なくとも1種のアミノ酸配列。
- 配列番号2から配列番号14に記載の合計13種のアミノ酸配列群から選ばれる少なくとも1種のアミノ酸配列を保有するタンパク質群から選ばれる少なくとも1種のタンパク質。
- 配列番号16から配列番号20に記載の合計5種のアミノ酸配列群から選ばれる少なくとも1種のアミノ酸配列を保有するタンパク質群から選ばれる少なくとも1種のタンパク質。
- 請求項3及び請求項4にそれぞれ記載のタンパク質の混合物。
- 薬効を奏する量の、請求項3又は4に記載のタンパク質、又は請求項5に記載のタンパク質の混合物を含有する、ミトコンドリア機能障害をきたす変性疾患の治療薬。
- ミトコンドリア機能障害をきたす変性疾患が弧発性パーキンソン病、家族性パーキンソン病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、又は糖尿病である請求項6に記載の治療薬。
- 診断用反応を呈する量の、請求項3又は4に記載のタンパク質、又は請求項5に記載のタンパク質の混合物を含有する、ミトコンドリア機能障害をきたす変性疾患の診断剤。
- 請求項1又は2に記載のアミノ酸配列をコードするDNA又はその断片。
- 請求項9に記載のDNA又はその断片を用いることにより構築される遺伝子発現体により生産されるタンパク質。
- 請求項9に記載のDNA又はその断片を用いることにより構築される遺伝子治療剤。
- 請求項9に記載のDNA又はその断片の塩基配列に基づき設計される遺伝子診断剤。
- 請求項9に記載のDNA又はその断片の塩基配列に相補的なRNA塩基配列に基づき設計される遺伝子発現調節剤。
- 請求項3又は4に記載のタンパク質、又は請求項5に記載のタンパク質の混合物に対する抗体。
- 抗原抗体反応を呈する量の、請求項14に記載の抗体を試薬として含有する診断剤。
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