JP2006104148A - シアノ化合物の安全かつ効率的な製造方法 - Google Patents

シアノ化合物の安全かつ効率的な製造方法 Download PDF

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【課題】1炭素増炭型3成分連結反応に有用なシアノ化合物を短工程にかつ爆発危険性を回避した、安全で大量合成に応用可能な合成法を実現することを目的とする。
【解決手段】下記一般式(1)
Figure 2006104148

(式中、Rは1価の有機基または有機金属基を示す。)の化合物の製造方法であって、下記一般式(2)で示される化合物
Figure 2006104148

(式中、R”は、アルキル基又はアリール基を示す。)に過酸化水素水を加え酸化的開裂反応を行い得られた粗生成物中の水酸基に保護試薬を加えて保護化反応させることを特徴とする化合物の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、有機合成反応における1炭素増炭型3成分連結反応に有用なシアノ化合物の大量合成に応用可能な効率的かつ安全な製造方法に関する。
下記一般式(1)で表される化合物は一つの炭素上に求電子機能と求核機能を持たせており、穏和条件で一炭素増炭反応と続く求核付加反応を一段階で高収率に行うことができるため、医薬品・機能性材料等の有機合成において他に類を見ないきわめて重要な試薬である(根本尚夫、MAC反応剤 -簡便な1炭素増炭型3成分連結反応- 有機合成化学協会誌, 2004,4,347)。
Figure 2006104148
化合物(1)の製造方法については、マロン酸ジエチルから6段階にて合成する下記の合成法が知られている(Hisao Nemoto, et. al, J. Org. Chem., 1990, 55, 4516)。
Figure 2006104148
しかしながら、上記合成法は、6段階もの工程を必製とし、2週間以上の反応時間を必要とするを必要とする工程(5段階目)を含み、また高価な縮合剤を必要とする(6段階目)と共に、総収率も十分でない(10%程度)という問題があり、その改善が求められていた。
また化合物(1)の製造方法として、既知の化合物(2)の酸化開裂とそれに続く化合物(3)の水酸基の保護の2段階にて合成する下記の合成法が知られている。(特願2001-326484)
Figure 2006104148
この合成方法は化合物(2)でR'がメチル基の場合、安価なマロン酸ニトリルから簡便に合成できることにより比較的安価にかつ短工程で化合物(1)を合成する事ができる手法として有用ではあるが、その製造工程において爆発性の非常に高い過酢酸を含む溶液を濃縮する工程を含むため、工業プロセスに用いる際には非常に危険であることが容易に推測され、改善が求められていた。
また、発明者らの知見では、この合成方法の酸化開裂の段階において、反応が進行するに伴い反応速度が急激に加速し反応系中の温度上昇が起こるため、グラムスケールで反応を行った際は温度上昇に伴う化合物の分解が起こるという問題点があった。
本発明は上記の製法が有していた問題を解決しようとするものであり、1炭素増炭型3成分連結反応に有用なシアノ化合物を短工程にかつ爆発危険性を回避した、安全で大量合成に応用可能な合成法を実現することを目的とするものである。
本発明者は、上記課題を解決すべく、下記一般式(1)
Figure 2006104148
(式中、Rは1価の有機基または有機金属基を示す。)
の化合物の製造方法において、下記一般式(2)で示される化合物
Figure 2006104148
(式中、R"は、アルキル基又はアリール基を示す。)
に過酸化水素水、NaIO、NaClO、Oxone(登録商標)等の爆発性の危険が低いことが知られている酸化剤を用いて酸化的開裂反応を行い得られた粗生成物中の水酸基に保護試薬を加えて保護化反応させることにより、短工程かつ爆発の危険性のある工程を回避した一般式化合物(1)の製造が可能であることを見いだした。
本発明の化合物の製造方法は、酸化開裂反応において、爆発の危険性が低いことが知られている酸化剤を用いて反応を行うことにより、爆発の危険性のある工程を回避することができ、短工程で一般式化合物(1)を合成することが可能となる。また、酸化開裂反応の工程において酸触媒を付加することにより、反応中の急激な温度上昇に伴う化合物の分解等を防ぐ事が可能となる。従って、本発明の化合物の製造方法は、有機合成反応における1炭素増炭型3成分連結反応に有用なシアノ化合物(1)を工業スケールで大量合成する際の問題点を解決することができる点で、非常に有用である。
以下に本発明を詳細に説明する。本発明は化合物(2)を出発原料として2段階の工程により、目的とする一般式(1)で表される化合物を効率的かつ安全に大量合成に適用可能な方法にて製造することを目的とする。
本発明の製造方法における反応式は以下の様に表される。
Figure 2006104148
本発明の出発原料である一般式(2)において、R'は、アルキル基またはアリール基を広く用いることができるが、入手の容易さからCH基、Ph基、NO2-Phが好ましく、特にCH基が好適に使用できる。
一般式(2)においてR'がメチルである化合物(4)の合成法は、Hori et. al, Sci.Papers Inst.Phys.Chem.Res., 1962, 216やMichael et.al, J.Org.Chem.,1985, 50, 2622にその合成法が記載されており、以下、本発明ではこれを出発原料とした例につき説明する。
Figure 2006104148
まず、化合物(4)に過酸化水素水もしくはNaIO、NaClO、Oxone(登録商標)等の爆発性の低いと考えられる過酸化物を加え、攪拌を行い酸化的開裂を行う。反応後、中和剤を加え過酸化物の中和を行う。中和後、水−有機溶媒系で生成物の抽出、溶媒の留去を行い生成物(3)を得る。
この酸化的開裂の段階で用いる溶媒としては、水溶媒もしくは水溶媒とメタノール等の有機溶媒の混合溶媒を広く用いることができる。加える過酸化水素水もしくは爆発性の低いと考えられる過酸化物の量は化合物(4)に対して1モル等量〜5モル等量、好ましくは1.2モル〜2モル等量である。反応温度は特に限定される物ではないが、好ましくは10度〜30度の室温下で行う事が望ましい。攪拌時間は2〜10時間、より好ましくは3〜5時間攪拌する。中和剤は硫化ジメチル等を好適に使用でき、加える量はKI試験紙にて過酸消失が確認できる程度に適量加える物とする。
また、この酸化的開裂の段階で反応の初期段階より酸触媒を付加することにより反応速度が急激に加速することに伴う反応系中の温度上昇を防ぐことができる。この酸触媒を付加していない段階での温度上昇は、反応開始当初は酸化的開裂反応は非常に遅く進行するが、酸化的開裂反応が進行するに従って反応系中に酸(R'がメチルの際は酢酸)が発生し、これが触媒となって反応が加速的に進行するため、特に大量合成においては急激な温度上昇が引き起こされるためと推測される。
酸触媒は、一般的に知られている無機酸、有機酸を広く用いることができ、好ましくは、硫酸、蟻酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、メタンスルホン酸、4-トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、2,4,6-トリニトロフェノール、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、リン酸などを使用できる。
反応の初期段階とは、出発原料(2)と過酸化物との混合開始段階のことをいい、試薬を加える順番によらない。好ましくは酸化物の混合後10分程度までである。
得られた化合物(3)は蒸留に伴う熱やシリカゲルカラムの酸性条件に不安定であるため化合物の精製が行う事ができない。よって水酸基の保護を行い目的化合物(4)を得ることにより精製を行う事ができ化合物の製造が完結する。
本発明における「保護基」とは、水酸基を保護することが知られている保護基を広く用いることができ、好ましくはシリル系保護基、エーテル系保護基、アシル系保護基を用いることができ、より好ましくはトリメチルシリル(TMS)基、トリエチルシリル(TES)基、t-ブチルジメチルシリル(TBS)基、メトキシメチル(MOM)基、エトキシエチル(EE)基、アセチル(Ac)基、ベンゾイル基、トリデカノイル基、トリイソプロピルシリル(TIPS)基、t-ブチルジフェニルシリル(TBDPS)基、2-テトラヒドロピラニル(THP)基、ベンジロキシメチル(BOM)基、t-ブチロキシカルボニル(Boc)基、ベンジロキシカルボニル(Cbz)基、3,3,3-トリクロロプロピオニルオキシカルボニル(Tco)基、アリルオキシカルボニル(Alloc)基等を好的に使用できるが、これに限定されない。保護反応は一般的に知られている条件を広く用いることができる。
以下に、実施例を示すことによって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
実施例で用いた化合物および反応式は次である。
Figure 2006104148
実施例1
(i)過酸化水素を用いた合成法
(4)(0.54g,5mmol)を過酸化水素水(30%水溶液0.68ml,6mmol相当)に溶かし室温で5時間撹拌した。硫化ジメチル(0.1ml,0.7mmol相当)を加えKI試験紙で過酸消失を確認後、水(10ml)を加えエーテル(10ml×3)で抽出、brine(5ml)で洗浄後、有機層を硫酸マグネシウム(0.5g)で乾燥した。硫酸マグネシウムをろ過後、溶媒を留去するとcrudeの(3)(0.41g)を得た。Rf = 0.275 (Hexane/AcOEt = 3/1)。得られた粗精製物(3)に、無水酢酸(1.5ml,15mmol)、ピリジン(0.21ml,2.5mmol相当)、ジメチルアミノピリジン(65mg,0.5mmol)の順に加え0℃で10分間撹拌した。5%KHSO4(10ml)を加えエーテル(10ml×3)で抽出し、有機層を硫酸マグネシウム(0.5g)で乾燥した。硫酸マグネシウムをろ過後、溶媒を留去し、得られた残留物を減圧下蒸留を用いて精製し、無色油状の(5)(0.30g,2.4mmol)を2段階収率47%で得た。1H NMR(300MHz, CDC13):δ2.29(s,3H)、6.lO(s,1H); 13CNMR(75MHz, CDCl3):δ167.1, l09.2, 47.5, 19.7; IR(neat):2261.1784cm-1
実施例2
(ii)その他の酸化剤を用いた合成法
(4)(108mg,1mmol)を水6ml、過酸化物(1.2mmol相当)に溶かし室温で撹拌した。硫化ジメチル(0.1ml,0.7mmol相当)を加えKI試験紙で過酸消失を確認後、無水酢酸(0.3ml,3mmol)、ピリジン(0.04ml,0.5mmol相当)、ジメチルアミノピリジン(13mg,0.1mmol)を加え0℃で10分間撹拌した。5%KHSO4(10ml)を加えエーテル(10ml×3)で抽出し、有機層を硫酸マグネシウム(1g)で乾燥した。ろ過した後に、溶媒を留去し、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィ−(ヘキサン:酢酸エチル=4:1,シリカゲル8g,2cm id×12cm)を用いて精製し、無色油状の(5)を得た。
Figure 2006104148
実施例3
(iii)酸触媒存在下、過酸化水素を用いた合成法
(4)(5.4g,50mmol)を過酸化水素水(30%水溶液6.8ml,60mmol相当)、酸触媒(0.5mol%)に溶かし室温で撹拌した。この際、発熱は見られなかった。硫化ジメチル(1ml,7mmol相当)を加えKI試験紙で過酸消失を確認後、水(100ml)を加えエーテル(100ml×3)で抽出、Brine(50ml)で洗浄後、有機層を硫酸マグネシウム(5g)で乾燥した。硫酸マグネシウムをろ過後、溶媒を留去するとcrudeの(3)を得た。(3)を無水アセトニトリル10mlに溶かし無水酢酸(15ml,150mmol)、無水塩化コバルト(0.04g,0.3mmol相当)で60℃で40時間撹拌した。セライトろ過した後に、溶媒を留去し、得られた残留物を減圧下蒸留を用いて精製し、無色油状の(5)を得た。
Figure 2006104148


Claims (5)

  1. 下記一般式(1)
    Figure 2006104148
    (式中、Rは1価の有機基または有機金属基を示す。)
    の化合物の製造方法であって、下記一般式(2)で示される化合物
    Figure 2006104148
    (式中、R"は、アルキル基又はアリール基を示す。)
    に過酸化水素水を加え酸化的開裂反応を行い得られた粗生成物中の水酸基に保護試薬を加えて保護化反応させることを特徴とする化合物の製造方法。
  2. 下記一般式(1)
    Figure 2006104148
    (式中、Rは1価の有機基または有機金属基を示す。)
    の化合物の製造方法であって、下記一般式(2)で示される化合物
    Figure 2006104148
    (式中、R"は、アルキル基又はアリール基を示す。)
    にNaIO、NaClO、Oxone(登録商標)より選ばれる酸化剤を加え酸化的開裂反応を行い、得られた粗生成物中の水酸基に保護試薬を加えて保護化反応させることを特徴とする化合物の製造方法。
  3. 酸化的開裂反応の工程において反応の初期段階に反応系中に酸触媒を添加する、請求項1〜2記載の化合物の製造方法。
  4. 一般式(1)におけるRが、RSi−、RO−CR−、またはRCO−(R、R、Rは1価の炭化水素基)である請求項1〜3記載の化合物の製造方法。
  5. 添加する酸触媒が酢酸、蟻酸、または硫酸である請求項1〜4記載の化合物の製造方法。
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