本発明のインクジェット記録媒体は、支持体上に少なくとも二層以上の層を有するインクジェット記録媒体において、前記層のうち最表層が微粒子と水溶性樹脂を主成分とし、前記支持体に近い側に設けられた最下層が中空粒子を主成分とすることを特徴としている。
本発明において、支持体上に近い側に設けられる最下層(以後、支持体側層ともいう)は中空粒子を主成分とし、好ましくはさらにバインダーを含有する。
−支持体側層−
(中空粒子)
中空粒子本発明に使用しうる中空粒子は、粒子内部に1または複数の空隙(中空)部を有する粒子を指し、その材質は有機中空粒子であれば特に限定されないが、インクの吸収性を向上させ、さらにインクの滲みを小さくするためには、その殻[空隙(中空)部を取囲む密実な壁部]が熱可塑性樹脂からなるものが好ましい。
熱可塑性樹脂を殻とする中空粒子としては、ポリスチレン、ポリ−β−メチルスチレン等のスチレン系樹脂;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸イソプロピル、ポリメタクリル酸イソブチル、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリロニトリル等のアクリル系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニルアルコール、ポリ−o−ビニルベンジルアルコール、ポリ−m−ビニルベンジルアルコール、ポリ−p−ビニルベンジルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール、ポリビニルプロピオナール、ポリビニルブチラール、ポリビニルイソブチラール、ポリビニルターシャリーブチルエーテル、ポリビニルピロリドンポリビニルカルバゾール、酢酸セルロース、三酢酸セルロース、ポリカーボネート等の各種のものを例示することができる。また、上記各重合体に使用する単量体を様々に組み合わせて得られる共重合体等を殻とするものを使用することができる。
また、これらの樹脂が多層構造を形成している中空粒子であってもよい。これらの熱可塑性樹脂を殻とする中空粒子は、その製造方法により限定されない。
これら中空粒子の中でも、ポリスチレン系重合体粒子/ポリ(メタ)アクリル酸エステル系重合体で多層構造を形成している中空重合体粒子が、高い空隙率を得られるので好ましい。
本発明に好適に用いることのできる中空重合体粒子は、酸性基含有単量体及びこれと共重合可能な単量体を用いて、例えば、特開昭64−1704号公報、特開平5−279409号公報、特開平6−248012号公報、特開平10−110018号公報に記載されている方法に従って製造することができる。
本発明に用いる中空粒子の空隙率は(全粒子体積に占める内部の空隙部体積の比率)は、特に限定されないが、30%以上であり、好ましくは40%以上、さらに好ましくは50%以上である。空隙率が低すぎるとインクの吸収性が低下する。空隙率が大きい程、インクの吸収性が向上すると考えられ、製造上可能な範囲で90%以上がより好ましい。
中空粒子の大きさも、また、特に限定されないが、粒子外径が0.1μm以上であることが好ましく、0.4μm以上のものが更に好ましい。粒子外径が0.1μm以下のものはインクの吸収性が低下するほか、インクの滲みが大きくなる。
また、中空粒子としてはセラミックバルーンのような無機質のものも知られているが、このような無機質の中空粒子を、本発明の効果が損なわれない範囲において、有機中空粒子に併用することも可能である。
(支持体側のバインダー)
支持体側の用いられるバインダーとしては、特に制約はないが、塗布液の粘度等の点からウレタン系のポリマーまたはラテックスが好ましい。ラテックスには、ビニルポリマー系ラテックスや合成ゴム系ラテックス等が挙げられる。ビニルポリマー系ラテックスとしては、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル等の単独重合体やアクリル、酢酸ビニル、塩化ビニル等の共重合体が挙げられ,また、合成ゴム系ラテックスとしては、ポリイソブチレン、クロロプレンゴム、ポリブタジエンゴム等の単独重合体やスチレン・ブタジエン、アクリロニトリル・ブタジエン、メチルメタクリレート・ブタジエン、アクリル酸エステル等の共重合体が挙げられる。本発明におけるラテックスにはさらにこれら各種重合体をカルボキシル基等の官能基で修飾して変性したものも含まれる。
支持体側層における中空粒子、バインダーの比率は、中空粒子によっても異なるが、質量比率で中空粒子/バインダー=5以上が好ましく、より好ましくは10以上である。
支持体側層には、中空粒子、バインダーの他に必要に応じて顔料等を添加することもできる。
−最表層−
本発明において、支持体上に設けられる層中、最表層は、微粒子と水溶性樹脂とを主成分とする。
(微粒子)
微粒子は、有機微粒子および無機微粒子のいずれでもよく、有機微粒子としては、メタクリレート系の架橋微粒子が挙げられるが、インク吸収性の点から無機微粒子が好ましい。
(無機微粒子)
無機微粒子としては、例えば、気相法シリカや含水シリカ微粒子などのシリカ微粒子、コロイダルシリカ、二酸化チタン、硫酸バリウム、珪酸カルシウム、ゼオライト、カオリナイト、ハロイサイト、雲母、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、ベーマイト、擬ベーマイト等が挙げられる。これらは単独で用いるほか、二種以上を併用することができる。これら無機微粒子は、カチオン性樹脂によって分散して用いることが好ましい。
前記無機微粒子の中でも特に気相法シリカが好ましく、該気相法シリカと上記他の無機微粒子とを併用することもできる。併用する場合の無機微粒子の全質量に占める気相法シリカの量としては、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましい。
シリカ微粒子は、通常その製造法により湿式法粒子と乾式法(気相法)粒子とに大別される。湿式法では、ケイ酸塩の酸分解により活性シリカを生成し、これを適度に重合させ凝集沈降させて含水シリカを得る方法が主流である。一方、気相法では、ハロゲン化珪素の高温気相加水分解による方法(火炎加水分解法)、ケイ砂とコークスとを電気炉中でアークによって加熱還元気化し、これを空気で酸化する方法(アーク法)によって無水シリカを得る方法が主流であり、前記「気相法シリカ」は気相法によって得られた無水シリカ微粒子を意味する。
気相法シリカは、含水シリカと表面のシラノール基の密度、空孔の有無等に相違があり、異なった性質を示すが、空隙率が高い三次元構造を形成するのに適している。この理由は明らかではないが、含水シリカの場合には、微粒子表面におけるシラノール基の密度が5〜8個/nm2で多く、シリカ微粒子が密に凝集(アグリゲート)し易く、一方、気相法シリカの場合には、微粒子表面におけるシラノール基の密度が2〜3個/nm2であり少ないことから疎な軟凝集(フロキュレート)となり、その結果、空隙率が高い構造になるものと推定される。
気相法シリカは、比表面積が特に大きいので、インクの吸収性、保持の効率が高く、また、屈折率が低いので、適切な粒子径まで分散を行なったときにはインク受容層に透明性を付与でき、高い色濃度と良好な発色性を得ることができる。受容層が透明であることは、フォト光沢紙等の用途に適用する場合でも高い色濃度と良好な発色性光沢を得る観点で重要である。
前記気相法シリカの平均一次粒子径としては、20nm以下が好ましく、10nm以下がより好ましく、3〜10nmが特に好ましい。気相法シリカは、シラノール基による水素結合によって粒子同士が付着しやすいため、平均一次粒子径が20nm以下の場合に空隙率の大きい構造を形成することができ、インク吸収特性を効果的に向上させることができると共に、インク受容層の透明性および表面光沢性を高めることができる。なお、気相法シリカは、一次粒子のまま用いるほか、二次粒子を形成した状態で含有してもよい。
気相法シリカは分散状態で用いることが好ましい。気相法シリカの分散は、分散剤(凝集防止剤)としてカチオン性樹脂を用いることによって行なえ、気相法シリカ分散物として用いることができる。このカチオン性樹脂には特に限定はないが、後述する他の媒染剤成分の例など、第1級〜第3級アミノ基及びその塩、第4級アンモニウム塩基を有するカチオンポリマーが好適である。また、分散剤としてシランカップリング剤を用いることも好ましい。具体的には、水溶性または水性エマルションタイプなどを好適に使用でき、例えば、ジシアンジアミド−ホルマリン重縮合物に代表されるジシアン系カチオン樹脂、ジシアンアミド−ジエチレントリアミン重縮合物に代表されるポリアミン系カチオン樹脂、エピクロルヒドリン−ジメチルアミン付加重合物、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド−SO2共重合物、ジアリルアミン塩−SO2共重合物、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合物、アリルアミン塩の重合物、ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート4級塩重合物、アクリルアミド−ジアリルアミン塩共重合体等のポリカチオン系カチオン樹脂などが挙げられる。
中でも特に、BET法による比表面積が200m2/g以上の気相法シリカが好ましい。気相法シリカを含有することによって、多孔質構造が得られ、インクの吸収性能を向上させることができると共に、さらに比表面積を200m2/g以上とすることによってインク吸収性が向上し、速乾性、インク滲みが良化して画質および印画濃度を高めることができる。
ここで、BET法とは、気相吸着法による粉体の表面積測定法の一つであり、吸着等温線から1gの試料の持つ総表面積、すなわち比表面積を求める方法である。通常吸着気体として窒素ガスが用いられ、吸着量を被吸着気体の圧又は容積の変化から測定する方法が一般的である。多分子吸着の等温線を表す著名なものとして、Brunauer Emmett、Tellerの式(BET式)があり、これに基づき吸着量を求め、吸着分子1個が表面で占める面積を掛けて表面積が得られる。
(水溶性樹脂)
水溶性樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルアセタール、セルロース系樹脂〔メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等〕、キチン類、キトサン類、デンプン;エーテル結合を有する樹脂であるポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリプロピレンオキサイド(PPO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルエーテル(PVE);アミド基またはアミド結合を有する樹脂であるポリアクリルアミド(PAAM)、ポリビニルピロリドン(PVP)、並びに、解離性基としてカルボキシル基を有する、ポリアクリル酸塩、マレイン酸樹脂、アルギン酸塩、ゼラチン類、等が挙げられる。これらの水溶性樹脂は、単独のみならず二種以上を併用することができる。
上記の中でも、ポリビニルアルコールが好ましく、該ポリビニルアルコールと上記他の水溶性樹脂とを併用することもできる。併用する場合の水溶性樹脂の全質量に占めるポリビニルアルコールの量としては、90質量%以上が好ましく、95質量%以上が更に好ましい。
前記ポリビニルアルコールには、ポリビニルアルコール(PVA)のほか、カチオン変性ポリビニルアルコール、アニオン変性ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、及びその他ポリビニルアルコール誘導体も含まれる。ポリビニルアルコールは一種単独のみならず二種以上を併用することもできる。
前記ポリビニルアルコール(PVA)は、その構造単位に水酸基を有するが、この水酸基とシリカ微粒子表面のシラノール基とが水素結合を形成して、シリカ微粒子の二次粒子を鎖単位とする三次元網目構造を形成しやすくする。これは三次元網目構造の形成によって、空隙率の高い多孔質構造のインク受容層を形成し得るものと考えられる。
このように多孔質構造に構成されたインク受容層は、インクジェット記録の際に毛細管現象によって急速にインクを吸収し、インク滲みのない真円性の良好なドットを形成することができる。
前記水溶性樹脂(特にポリビニルアルコール)の含有量としては、量の過少による膜強度の低下や乾燥時のひび割れを防止すると共に、量の過多により空隙が樹脂によって塞がれ易くなり、空隙率が低下することでインク吸収性が低下するのを防止する観点から、インク受容層を形成したときの該層の全固形分質量に対して、9〜40質量%が好ましく、12〜33質量%がより好ましい。
前記ポリビニルアルコール(PVA)の数平均重合度としては、ひび割れ防止の観点から1800以上が好ましく、2000以上がより好ましい。また、透明性やインク受容層形成用の塗布液の粘度の観点から、鹸化度88%以上のPVAが好ましく、鹸化度95%以上のPVAが特に好ましい。
(無機微粒子と水溶性樹脂との含有比)
無機微粒子(i)と水溶性樹脂(p)との含有比〔PB比(i:p);水溶性樹脂1質量部に対する無機微粒子の質量〕は、層形成したときの膜構造に大きな影響を与える。すなわち、PB比が大きくなると、空隙率、細孔容積、表面積(単位質量当り)が大きくなる。具体的には、前記PB比としては、該PB比が大きすぎることに起因する膜強度の低下や乾燥時のひび割れを防止すると共に、PB比が小さすぎることにより空隙が樹脂によって塞がれ易くなり、空隙率が減少することでインク吸収性が低下するのを防止する観点から、1.5:1〜10:1が好ましい。
インクジェット記録媒体がインクジェットプリンタの搬送系を通過するときには応力が加わることがあるので、インク受容層は十分な膜強度を有している必要がある。更にシート状に裁断加工する場合、インク受容層の割れや剥がれ等を防止する上でもインク受容層は十分な膜強度を有していることが必要である。かかる観点からは、前記PB比として5:1以下が好ましく、インクジェットプリンタで高速インク吸収性をも確保する観点からは2:1以上であることが好ましい。
例えば、平均一次粒子径が20nm以下の気相法シリカと水溶性樹脂とをPB比2:1〜5:1で水溶液中に完全に分散した塗布液を支持体上に塗布し、該塗布層を乾燥させた場合、シリカ微粒子の二次粒子を鎖単位とする三次元網目構造が形成され、平均細孔径が30nm以下、空隙率が50%〜80%、細孔比容積0.5ml/g以上、比表面積が100m2/g以上の、透光性の多孔質膜を容易に形成することができる。
支持体上の最表層における微粒子と水溶性樹脂との含有量は、最表層中の主成分を構成するものであって、少なくとも最表層中に50重量%以上、好ましくは70重量%以上である。
本発明において、最表層はインク受容層として機能し、このインク受容層は,好ましくは下記の方法で形成される。
すなわち、無機微粒子、水溶性樹脂、架橋剤、及び第1の金属化合物を含有する第1液を支持体上に塗布して塗布層を形成する工程と、前記塗布層に、(1)前記第1液を塗布すると同時、(2)前記第1液を塗布して形成された塗布層の乾燥途中であって該塗布層が減率乾燥を示す前、のいずれかのときに、第2の金属化合物を含有する第2液を付与し、前記塗布層の架橋硬化を行なう工程と、を有し、支持体上に前記塗布層が架橋硬化されてなるインク受容層を形成する。
この受容層の製造方法は、無機微粒子、水溶性樹脂、架橋剤、及び第1の金属化合物を含有する第1液(以下、「インク受容層用塗布液」ということがある。)を支持体上に塗布して塗布層を形成する工程(塗布工程)と、前記塗布層に、(1)前記第1液を塗布すると同時、(2)前記第1液を塗布して形成された塗布層の乾燥途中であって該塗布層が減率乾燥を示す前、のいずれかのときに、第2の金属化合物を含む第2液(以下、「塩基性溶液」ということがある。)を付与し、前記塗布層の架橋硬化を行なう工程(硬化工程)と、で構成される方法(Wet−On−Wet法《WOW法》)であり、前記塗布工程において支持体上に塗設された塗布層を硬化工程で架橋硬化させることによって、塗布層が架橋硬化されたインク受容層が形成される。
本発明において、予め第1の金属化合物を含む第1液で構成される塗布層を塗設しておき、該塗布層にさらに第2の金属化合物を含む第2液を付与することにより、硬膜を充分に行ない得る良好な造膜性が得られ、第1の金属化合物及び第2の金属化合物(及び他の媒染剤成分)が媒染剤として作用し、インク、特に染料が充分に媒染されて画像の印画濃度と光沢感に優れ、画像の経時滲みが少ないインクジェット記録媒体が得られる。
第1液に含有される第1の金属化合物としては、酸性の金属化合物が好ましく、多価の水溶性金属塩や疎水性金属塩化合物が挙げられる。具体例としては、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、マンガン、鉄、ニッケル、ジルコニウム、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ストロンチウム、イットリウム、モリブデン、インジウム、バリウム、ランタン、セリウム、プラセオジミウム、ネオジミウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、ジスロプロシウム、エルビウム、イッテルビウム、ハフニウム、タングステン、ビスマスから選択される金属の塩又は錯体が挙げられる。
具体的には例えば、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、ギ酸カルシウム、酢酸ジルコニウム、四塩化ジルコニウム、硫酸カルシウム、酢酸バリウム、硫酸バリウム、リン酸バリウム、塩化マンガン、酢酸マンガン、ギ酸マンガンニ水和物、硫酸マンガンアンモニウム六水和物、塩化第二銅、塩化アンモニウム銅(II)二水和物、硫酸銅、塩化コバルト、チオシアン酸コバルト、硫酸コバルト、硫酸ニッケル六水和物、塩化ニッケル六水和物、酢酸ニッケル四水和物、硫酸ニッケルアンモニウム六水和物、アミド硫酸ニッケル四水和物、硫酸アルミニウム、アルミニウムミョウバン、塩基性ポリ水酸化アルミニウム、亜硫酸アルミニウム、チオ硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム九水和物、塩化アルミニウム六水和物、臭化第一鉄、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、フェノールスルホン酸亜鉛、臭化亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛六水和物、硫酸亜鉛、酢酸亜鉛アンモニウム、亜鉛アンモニウムカーボネート、四塩化チタン、テトライソプロピルチタネート、チタンアセチルアセトネート、乳酸チタン、酢酸クロム、硫酸クロム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム六水和物、クエン酸マグネシウム九水和物、りんタングステン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムタングステン、12タングストリん酸n水和物、12タングストけい酸26水和物、塩化モリブデン、12モリブドリん酸n水和物、硝酸ガリウム、硝酸ゲルマニウム、硝酸ストロンチウム、酢酸イットリウム、塩化イットリウム、硝酸イットリウム、硝酸インジウム、硝酸ランタン、塩化ランタン、酢酸ランタン、安息香酸ランタン、塩化セリウム、硫酸セリウム、オクチル酸セリウム、硝酸プラセオジミウム、硝酸ネオジミウム、硝酸サマリウム、硝酸ユーロピウム、硝酸ガドリニウム、硝酸ジスプロシウム、硝酸エルビウム、硝酸イッテルビウム、塩化ハフニウム、硝酸ビスマス等が挙げられる。中でも、硫酸アルミニウム、アルミニウムミョウバン、塩基性ポリ水酸化アルミニウム、亜硫酸アルミニウム、チオ硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム九水和物、塩化アルミニウム六水和物、硝酸ジルコニウム、四塩化ジルコニウムが好ましい。
以上の第1の金属化合物は、第1液中に2種類以上含有させることが好ましい。金属化合物は、その種類に応じて媒染する染料が異なるため、第1の金属化合物を2種類以上使用することにより媒染能を高めることができる。従って、より具体的には、媒染される2種以上の染料に対応する金属化合物を含有させることが好ましい。染料に対応する金属化合物として、色々な組み合わせが考えられるが、例えば、一般的なインクの黒染料にはジルコニウム化合物が有効である。
前記第1の金属化合物の第1液中の含有量としては、第1液の全質量に対し、0.01〜1質量%が好ましく、より好ましくは0.05〜0.8質量%である。第1の金属化合物の含有量を特に上記範囲とすることにより、低湿条件下でのカールが悪化することなく画像の経時ニジミが少ないインクジェット記録媒体を作製することができる。なお、後述の他の媒染剤成分を併用する場合には、総量が上記範囲内であって、本発明の効果を損なわない範囲で含有することができる。
第2液に含有される第2の金属化合物としては、塩基性下で安定なものを制限なく使用でき、該金属化合物は、金属塩でも、金属錯体化合物でも、また無機オリゴマー、無機ポリマーでもよい。前記金属化合物としては、後述の無機媒染剤として挙げるものが好ましく用いられる。中でも、ジルコニウム化合物やアルミニウム化合物や亜鉛化合物が好ましく、特にジルコニウム化合物が好ましい。例えば、炭酸ジルコニウムアンモニウム、硝酸ジルコニウムアンモニウム、炭酸ジルコニウムカリウム、クエン酸ジルコニウムアンモニウム、ステアリン酸ジルコニル、オクチル酸ジルコニル、硝酸ジルコニル、オキシ塩化ジルコニウム、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、等が挙げられ、特に炭酸ジルコニウムアンモニウムが好ましい。また、第2液には、必要に応じて後述する他の媒染剤成分を併用してもよい。
また、金属錯体化合物としては、日本化学会編「化学総説 No32 1981年」に記載の金属錯体及び「コーディネーション・ケミストリー・レビュー(Coordination Chemistry Review)」、第84巻、85〜277頁(1988年)及び特開平2−182701号に記載のルテニウム等の遷移金属を含有する遷移金属錯体が使用可能である。
前記第2の金属化合物の第2液中の含有量としては、第2液の全質量に対し、0.1〜0.8質量%が好ましく、より好ましくは0.2〜0.5質量%である。第2の金属化合物の含有量を特に上記範囲とすることにより、ブロンジングを悪化させることなく光沢を向上させることができる。なお、後述の他の媒染剤成分を併用する場合には、総量が上記範囲内であって、本発明の効果を損なわない範囲で含有することができる。
次に、第2液に含有する塩基性化合物について説明する。塩基性化合物としては、弱酸のアンモニウム塩、弱酸のアルカリ金属塩(炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムなど)、弱酸のアルカリ土類金属塩(炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸バリウムなど)、アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物、ヒドロキシアンモニウム、アンモニア、1〜3級アミン(エチルアミン、ジメチルアミン、トリエチルアミン、ポリアリルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリヘキシルアミン、ジブチルアミン、ブチルアミン、N−エチル−N−メチルブチルアミンなど)、1〜3級のアニリン(ジエチルアニリン、ジブチルアニリン、エチルアニリン、アニリンなど)、置換基を有してもよいピリジン(2−アミノピリジン、3−アミノピリジン、4−アミノピリジン、4−(2−ヒドロキシエチル)−アミノピリジンなど)が挙げられるが、弱酸のアンモニウム塩が特に好ましい。
前記弱酸とは、化学便覧基礎編II(丸善株式会社)等に記載の無機酸および有機酸でpKaが2以上の酸である。前記弱酸のアンモニウム塩としては、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、硼酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、等が挙げられる。但し、これらに限定されるものではない。中でも、好ましくは炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、カルバミン酸アンモニウムであり、乾燥後において層中に残存せずインク滲みを低減できる点で効果的である。なお、塩基性化合物は2種以上を併用してもよい。
前記塩基性化合物の第2液中の含有量としては、第2液の溶媒を含む全質量に対し、0.5〜10質量%が好ましく、より好ましくは1〜5質量%である。塩基性化合物の含有量を特に上記範囲とすると、充分な硬化度が得られ、またアンモニア濃度が高くなりすぎて作業環境を損なうこともない。
塗布工程における第1液として、例えば、気相法シリカとポリビニルアルコール(PVA)と硼酸とカチオン性樹脂とノニオン性もしくは両性界面活性剤と高沸点有機溶剤とを含むインク受容層用塗布液は、以下のようにして調製することができる。なお、第1液を構成する各成分の詳細については後述する。
すなわち、気相法シリカを水中に添加し、カチオン性樹脂を更に添加して高圧ホモジナイザーやサンドミル等により分散した後、これに硼酸を加え、PVA水溶液(例えばPVA量が気相法シリカの1/3程度の質量となるように)を加え、更にノニオン性若しくは両性界面活性剤および高沸点有機溶剤を加えて攪拌することで調製できる。得られた塗布液は均一ゾルであり、これを以下の塗布方法で支持体上に塗布することで塗布層が得られ、三次元網目構造を有する多孔質性のインク受容層を形成することができる。このとき、上記のように、硼酸を薄めた後にPVAを加えることにより、PVAの部分的なゲル化を防止することができる。
第1液(インク受容層用塗布液)は、分散機を用いて細粒化することで平均粒子径10〜300nmの水分散液とすることができる。該水分散液を得るために用いる分散機としては、高速回転分散機、媒体撹拌型分散機(ボールミル、サンドミルなど)、超音波分散機、コロイドミル分散機、高圧分散機等従来公知の各種の分散機を使用することができるが、形成されるダマ状微粒子の分散を効率的に行なうという点から、媒体撹拌型分散機、コロイドミル分散機または高圧分散機が好ましい。
本発明において、第1液は酸性溶液であることが好ましく、第1液のpHとしては6.0以下であることが好ましく、5.0以下であることがより好ましく、4.0以下であることが更に好ましい。このpHは、前記カチオン性樹脂の種類や添加量を適宜選定することで調整することができる。また、有機又は無機の酸を添加して調整してもよい。第1液のpHが6.0以下であると、第1液中における架橋剤(特にホウ素化合物)による水溶性樹脂の架橋反応をより充分に抑制することができる。
塗布工程における第1液(インク受容層用塗布液)の塗布は、例えば、エクストルージョンダイコーター、エアードクターコーター、ブレッドコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、リバースロールコーター、バーコーター等を用いた公知の塗布方法によって行なうことができる。
硬化工程において、第2液(塩基性溶液)はインク受容層用塗布液(第1液)の塗布後に付与することができるが、該付与は塗布層が減率乾燥を示すようになる前に好適に行なわれる。すなわち、第1液の塗布後、この塗布層が恒率乾燥を示す間に第2液を導入することで好適に製造される。
前記第2液は、必要に応じて架橋剤、他の媒染剤成分を含有することができる。第2液は、アルカリ溶液として用いることで硬膜を促進でき、pH7.1以上に調整されるのが好ましく、より好ましくはpH7.5以上であり、特に好ましくはpH7.9以上である。前記pHが酸性側に近すぎると、架橋剤によって第1液に含まれる水溶性高分子の架橋反応が十分に行なわれず、ブロンジングの発生や、インク受容層にひび割れ等の欠陥を来すことがある。
前記第2液は、例えば、イオン交換水に、金属化合物(例えば1〜5%)および塩基性化合物(例えば1〜5%)と、必要に応じてパラトルエンスルホン酸(例えば0.5〜3%)とを添加し、十分に攪拌することで調製することができる。なお、各組成物の「%」はいずれも固形分質量%を意味する。
また、各液の調製に用いる溶媒には、水、有機溶媒、またはこれらの混合溶媒を用いることができる。塗布に用いることができる有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、メトキシプロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、酢酸エチル、トルエン等が挙げられる。
硬化工程における「塗布層が減率乾燥を示すようになる前」とは、通常、インク受容層用塗布液の塗布直後から数分間の過程を指し、この間においては、塗布された塗布層中の溶剤(分散媒体)の含有量が時間に比例して減少する「恒率乾燥」の現象を示す。この「恒率乾燥」を示す時間については、例えば、化学工学便覧(頁707〜712、丸善(株)発行、昭和55年10月25日)に記載されている。
上述の通り、インク受容層用塗布液(第1液)の塗布後、第1液による塗布層が減率乾燥を示すようになるまで乾燥されるが、この乾燥は一般に40〜180℃(好ましくは50〜120℃)で0.5〜10分間(好ましくは、0.5〜5分間)行なわれる。この乾燥時間は、当然塗布量により異なるが、通常は上記範囲が適当である。
前記塗布層が減率乾燥を示すようになる前に付与する方法としては、(1)第2液を塗布層上に更に塗布する方法、(2)スプレー等の方法により噴霧する方法、(3)第2液中に該塗布層が形成された支持体を浸漬する方法、等が挙げられる。
前記方法(1)において、第2液を塗布する塗布方法としては、例えば、カーテンフローコーター、エクストルージョンダイコーター、エアードクターコーター、ブレッドコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、リバースロールコーター、バーコーター等の公知の塗布方法を利用することができる。しかし、エクストリュージョンダイコーター、カーテンフローコーター、バーコーター等のように、既に形成されている塗布層にコーターが直接接触しない方法を利用することが好ましい。
第2液の付与後は、一般に40〜180℃で0.5〜30分間加熱され、乾燥および硬化が行なわれる。中でも、40〜150℃で1〜20分間加熱することが好ましい。
上記の塗布工程と硬化工程とを同時に行なうこともできる。すなわち、第2液(塩基性溶液)を、第1液(インク受容層用塗布液)を塗布すると同時に付与することも好適に行なえ、かかる場合には第1液および第2液を、該第1液が支持体と接触するようにして支持体上に同時塗布(重層塗布)し、その後乾燥硬化させることによりインク受容層を形成することができる。
前記同時塗布(重層塗布)は、例えば、エクストルージョンダイコーター、カーテンフローコーターを用いた塗布方法により行なうことができる。同時塗布の後、形成された塗布層は乾燥されるが、この場合の乾燥は、一般に塗布層を15〜150℃で0.5〜10分間加熱することにより行なわれ、好ましくは、40〜100℃で0.5〜5分間加熱することにより行なわれる。
前記同時塗布(重層塗布)を、例えば、エクストルージョンダイコーターにより行なった場合、同時に吐出される二種の塗布液は、エクストルージョンダイコーターの吐出口附近で、すなわち支持体上に移る前に重層形成され、その状態で支持体上に重層塗布される。塗布前に重層された二層の塗布液は、支持体に移る際、既に二液の界面で架橋反応を生じ易いことから、エクストルージョンダイコーターの吐出口付近では、吐出される二液が混合して増粘し易くなり、塗布操作に支障を来す場合がある。したがって、上記のように同時塗布する際は、第1液および第2液の塗布と共に、バリアー層液(中間層液)を上記二液間に介在させて同時三重層塗布することが好ましい。
前記バリアー層液は、特に制限なく選択できる。例えば、水溶性樹脂を微量含む水溶液や水等を挙げることができる。前記水溶性樹脂は、増粘剤等の目的で、塗布性を考慮して使用されるもので、例えば、セルロース系樹脂(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロ−ス、メチルセルロ−ス、ヒドロキシエチルメチルセルロ−ス等)、ポリビニルピロリドン、ゼラチン等のポリマーが挙げられる。なお、バリアー層液には媒染剤を含有させることもできる。
支持体上にインク受容層を形成した後、該インク受容層は、例えば、スーパーカレンダー、グロスカレンダー等を用い、加熱加圧下にロールニップ間を通してカレンダー処理を施すことにより、表面平滑性、光沢度、透明性および塗膜強度を向上させることが可能である。しかしながら、該カレンダー処理は、空隙率を低下させる要因となることがあるため(すなわちインク吸収性が低下することがあるため)、空隙率の低下が少ない条件を設定して行なう必要がある。
カレンダー処理を行なう場合のロール温度としては、30〜150℃が好ましく、40〜100℃がより好ましい。また、カレンダー処理時のロール間の線圧としては、50〜400kg/cmが好ましく、100〜200kg/cmがより好ましい。
インク受容層の層厚としては、インクジェット記録の場合では、液滴を全て吸収するだけの吸収容量をもつ必要があるため、層中の空隙率との関連で決定する必要がある。例えば、インク量が8nL/mm2で、空隙率が60%の場合であれば、層厚が約15μm以上の膜が必要となる。この点を考慮すると、インクジェット記録の場合には、インク受容層の層厚としては、10〜50μmが好ましい。
また、インク受容層の細孔径は、メジアン径で0.005〜0.030μmが好ましく、0.01〜0.025μmがより好ましい。
上記の空隙率および細孔メジアン径は、水銀ポロシメーター(商品名:ボアサイザー9320−PC2、(株)島津製作所製)を用いて測定することができる。
また、インク受容層は、透明性に優れていることが好ましいが、その目安としてインク受容層を透明フィルム上に形成したときのヘイズ値が30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましい。ヘイズ値は、ヘイズメーター(HGM−2DP:スガ試験機(株)製)により測定することができる。
以下、前記第1液または第2液を構成する各成分について詳述する。
(架橋剤)
架橋剤は、前記第1液に含有され、さらに前記第2液に含有させてもよい。
架橋剤は、上記の水溶性樹脂を架橋し得るものであり、該架橋剤を含むことによって該架橋剤と水溶性樹脂との架橋反応で硬化された多孔質層を形成することができる。
上記の水溶性樹脂、特にポリビニルアルコール系樹脂の架橋には、ホウ素化合物が好ましい。該ホウ素化合物としては、例えば、硼砂、硼酸、硼酸塩(例えば、オルト硼酸塩、InBO3、ScBO3、YBO3、LaBO3、Mg3(BO3)2、Co3(BO3)2、二硼酸塩(例えば、Mg2B2O5、Co2B2O5)、メタ硼酸塩(例えば、LiBO2、Ca(BO2)2、NaBO2、KBO2)、四硼酸塩(例えば、Na2B4O7・10H2O)、五硼酸塩(例えば、KB5O8・4H2O、Ca2B6O11・7H2O、CsB5O5)等を挙げることができる。中でも、速やかに架橋反応を起こすことができる点で、硼砂、硼酸、硼酸塩が好ましく、特に硼酸が好ましい。
また、ホウ素化合物以外の下記化合物を使用することもできる。例えば、ホルムアルデヒド、グリオキザール、グルタールアルデヒド等のアルデヒド系化合物;ジアセチル、シクロペンタンジオン等のケトン系化合物;ビス(2−クロロエチル尿素)−2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジクロロ−6−S−トリアジン・ナトリウム塩等の活性ハロゲン化合物;ジビニルスルホン酸、1,3−ビニルスルホニル−2−プロパノール、N,N’−エチレンビス(ビニルスルホニルアセタミド)、1,3,5−トリアクリロイル−ヘキサヒドロ−S−トリアジン等の活性ビニル化合物;ジメチロ−ル尿素、メチロールジメチルヒダントイン等のN−メチロール化合物;メラミン樹脂(例えば、メチロールメラミン、アルキル化メチロールメラミン);エポキシ樹脂;
1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート系化合物;米国特許明細書第3017280号、同第2983611号に記載のアジリジン系化合物;米国特許明細書第3100704号に記載のカルボキシイミド系化合物;グリセロールトリグリシジルエーテル等のエポキシ系化合物;1,6−ヘキサメチレン−N,N’−ビスエチレン尿素等のエチレンイミノ系化合物;ムコクロル酸、ムコフェノキシクロル酸等のハロゲン化カルボキシアルデヒド系化合物;2,3−ジヒドロキシジオキサン等のジオキサン系化合物;乳酸チタン、硫酸アルミ、クロム明ばん、カリ明ばん、酢酸ジルコニル、酢酸クロム等の金属含有化合物、テトラエチレンペンタミン等のポリアミン化合物、アジピン酸ジヒドラジド等のヒドラジド化合物、オキサゾリン基を2個以上含有する低分子又はポリマー等である。上記の架橋剤は、一種単独でも二種以上を組合わせて用いてもよい。
架橋剤は、インク受容層用塗布液を塗布する際に、インク受容層用塗布液中および/またはインク受容層の隣接層を形成するための塗布液中に添加してもよく、あるいは予め架橋剤を含む塗布液を塗布した支持体上に、前記インク受容層用塗布液を塗布する、架橋剤含有もしくは架橋剤非含有のインク受容層用塗布液を塗布・乾燥後に第2液(例えば架橋剤溶液)をオーバーコートする、等してインク受容層に架橋剤を供給することができる。
例えば、以下のようにして好適に架橋剤を付与することができる。ここでは、ホウ素化合物を例に説明する。すなわち、インク受容層がインク受容層用塗布液(第1液)を塗布した塗布層を架橋硬化させた層である場合、架橋硬化は、(1)前記第1液を塗布して塗布層を形成すると同時、(2)前記第1液を塗布して形成された塗布層の乾燥塗中であって該塗布層が減率乾燥を示す前、のいずれかのときに、既述の第2液を前記塗布層に付与することによって行なわれるが、架橋剤であるホウ素化合物は、第1液又は第2液のいずれかに含有すればよく、これら両液に含有させておいてもよい。インク受容層が二層以上に構成されるときは、二以上の塗布液を重層塗布することができ、重層形成された層上から第2液を付与すればよい。
架橋剤の使用量は、水溶性樹脂の質量に対して、1〜50質量%が好ましく、5〜40質量%がより好ましい。
(界面活性剤)
第1液には界面活性剤を含有させることが好ましい。界面活性剤としては、カチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性、フッ素系、シリコーン系界面活性剤のいずれも使用可能である。また、これら界面活性剤は、単独も二種以上を併用してもよい。
前記ノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル及びポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル類(例えば、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリーコールジエチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等)、オキシエチレン・オキシプロピレンブロックコポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル類(例えば、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレート、ソルビタントリオレート等)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレート等)、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル類(例えば、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット等)、グリセリン脂肪酸エステル類(例えば、グリセロールモノオレート等)、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル類(モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリン、モノオレイン酸ポリオキシエチレングリセリン等)、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノオレート等)、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アセチレングリコール類(例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、及び該ジオールのエチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物等)等が挙げられ、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類が好ましい。該ノニオン系界面活性剤は、インク受容層用塗布液に含有してもよい。
前記両性界面活性剤としては、アミノ酸型、カルボキシアンモニウムベタイン型、スルホンアンモニウムベタイン型、アンモニウム硫酸エステルベタイン型、イミダゾリウムベタイン型等が挙げられ、例えば、米国特許第3,843,368号明細書、特開昭59−49535号公報、同63−236546号公報、特開平5−303205号公報、同8−262742号公報、同10−282619号公報等に記載されているものを好適に使用できる。該両性界面活性剤としては、アミノ酸型両性界面活性剤が好ましく、該アミノ酸型両性界面活性剤としては、特開平5−303205号公報に記載されているように、例えば、アミノ酸(グリシン、グルタミン酸、ヒスチジン酸等)から誘導体化されたものであり、長鎖のアシル基を導入したN−アミノアシル酸及びその塩が挙げられる。
前記アニオン系界面活性剤としては、脂肪酸塩(例えばステアリン酸ソーダ、オレイン酸カリ)、アルキル硫酸エステル塩(例えばラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン)、スルホン酸塩(例えばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)、アルキルスルホコハク酸塩(例えばジオクチルスルホコハク酸ナトリウム)、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、アルキルリン酸塩等が挙げられる。
前記カチオン系界面活性剤としては、アルキルアミン塩、第4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリウム塩などが挙げられる。
前記フッ素系界面活性剤としては、電解フッ素化、テロメリゼーション、オリゴメリゼーションなどの方法を用いてパーフルオロアルキル基を持つ中間体を経て誘導される化合物が挙げられる。例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルトリアルキルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル基含有オリゴマー、パーフルオロアルキルリン酸エステルなどが挙げられる。
前記シリコーン系界面活性剤としては、有機基で変性したシリコーンオイルが好ましく、シロキサン構造の側鎖を有機基で変性した構造、両末端を変性した構造、片末端を変性した構造をとり得る。有機基変性として、アミノ変性、ポリエーテル変性、エポキシ変性、カルボキシル変性、カルビノール変性、アルキル変性、アラルキル変性、フェノール変性、フッ素変性等が挙げられる。
前記界面活性剤のインク受容層用塗布液における含有量としては、0.001〜2.0%が好ましく、0.01〜1.0%がより好ましい。
上記のように、前記の方法によって作製されたインクジェット記録媒体は、支持体上に少なくとも一層のインク受容層が設けられて構成され、このインク受容層は、金属化合物と水溶性樹脂と架橋剤とを含んでなり、また必要に応じ、他の媒染剤成分、その他成分を更に含有することができる。
−支持体−
本発明に使用可能な支持体としては、プラスチック等の透明材料よりなる透明支持体、紙等の不透明材料で構成される不透明支持体のいずれをも使用することができる。特にインク受容層の透明性を生かす上では、透明支持体又は高光沢性の不透明支持体を用いることが好ましい。また、CD−ROM、DVD−ROM等の読み出し専用光ディスク、CD−R、DVD−R等の追記型光ディスク、更には書き換え型光ディスクを支持体として用い、レーベル両側にインク受容層を設けることもできる。
前記透明支持体に使用可能な材料としては、透明性で、OHPやバックライトディスプレイで使用される時の輻射熱に耐え得る性質を有する材料が好ましい。該材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル類;ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリアミド等を挙げることができる。中でも、ポリエステル類が好ましく、特にポリエチレンテレフタレートが好ましい。
前記透明支持体の厚みとしては、特に制限はないが、取り扱い易い点で、50〜200μmが好ましい。
高光沢性の不透明支持体としては、インク受容層の設けられる側の表面が40%以上の光沢度を有するものが好ましい。前記光沢度は、JIS P−8142(紙及び板紙の75度鏡面光沢度試験方法)に記載の方法に従って求められる値である。具体的には、下記支持体が挙げられる。
例えば、アート紙、コート紙、キャストコート紙、銀塩写真用支持体等に使用されるバライタ紙等の高光沢性の紙支持体;ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル類、ニトロセルロース,セルロースアセテート,セルロースアセテートブチレート等のセルロースエステル類、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリアミド等のプラスチックフィルムに白色顔料等を含有させて不透明にした(表面カレンダー処理が施されていてもよい。)高光沢性のフィルム;或いは、前記各種紙支持体、前記透明支持体若しくは白色顔料等を含有する高光沢性のフィルムの表面に、白色顔料を含有若しくは含有しないポリオレフィンの被覆層が設けられた支持体等が挙げられる。白色顔料含有発泡ポリエステルフィルム(例えば、ポリオレフィン微粒子を含有させ、延伸により空隙を形成した発泡PET)も好適に挙げられる。
前記不透明支持体の厚みについても特に制限はないが、取り扱い性の点で、50〜300μmが好ましい。
また、前記支持体の表面には、濡れ特性及び接着性を改善するために、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、紫外線照射処理等を施したものを使用してもよい。
次に、前記紙支持体に用いられる原紙について詳述する。
原紙としては、木材パルプを主原料とし、必要に応じて木材パルプに加えてポリプロピレンなどの合成パルプ、あるいはナイロンやポリエステルなどの合成繊維を用いて抄紙される。前記木材パルプとしては、LBKP、LBSP、NBKP、NBSP、LDP、NDP、LUKP、NUKPのいずれも用いることができるが、短繊維分の多いLBKP、NBSP、LBSP、NDP、LDPをより多く用いることが好ましい。但し、LBSP及び/又はLDPの比率としては、10質量%以上、70質量%以下が好ましい。前記パルプは、不純物の少ない化学パルプ(硫酸塩パルプや亜硫酸パルプ)が好ましく用いられ、漂白処理を行なって白色度を向上させたパルプも有用である。
原紙中には、高級脂肪酸、アルキルケテンダイマー等のサイズ剤、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタン等の白色顔料、スターチ、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の紙力増強剤、蛍光増白剤、ポリエチレングリコール類等の水分保持剤、分散剤、4級アンモニウム等の柔軟化剤などを適宜添加することができる。
抄紙に使用するパルプの濾水度としては、CSFの規定で200〜500mlが好ましく、また、叩解後の繊維長が、JIS P−8207に規定される24メッシュ残分質量%と42メッシュ残分の質量%との和が30〜70%が好ましい。尚、4メッシュ残分の質量%は20質量%以下であることが好ましい。原紙の坪量としては、30〜250gが好ましく、特に50〜200gが好ましい。原紙の厚さとしては、40〜250μmが好ましい。原紙は、抄紙段階又は抄紙後にカレンダー処理して高平滑性を与えることもできる。原紙密度は0.7〜1.2g/m2(JIS P−8118)が一般的である。更に、原紙剛度としては、JIS P−8143に規定される条件で20〜200gが好ましい。
原紙表面には表面サイズ剤を塗布してもよく、表面サイズ剤としては、前記原紙中添加できるサイズと同様のサイズ剤を使用できる。原紙のpHは、JIS P−8113で規定された熱水抽出法により測定された場合、5〜9であることが好ましい。
原紙の両側の表面は、一般にポリエチレンで被覆することができる。ポリエチレンは、主として低密度のポリエチレン(LDPE)及び/又は高密度のポリエチレン(HDPE)であるが、他のLLDPEやポリプロピレン等も一部使用することができる。
特に、インク受容層を形成する側のポリエチレン層は、写真用印画紙で広く行なわれているように、ルチル又はアナターゼ型の酸化チタン、蛍光増白剤、群青をポリエチレン中に添加し、不透明度、白色度及び色相を改良したものが好ましい。ここで、酸化チタン含有量としては、ポリエチレンに対して、概ね3〜20質量%が好ましく、4〜13質量%がより好ましい。ポリエチレン層の厚みは特に限定はないが、表裏面層とも10〜50μmが好適である。さらにポリエチレン層上にインク受容層との密着性を付与するために下塗り層を設けることもできる。該下塗り層としては、水性ポリエステル、ゼラチン、PVAが好ましい。また、該下塗り層の厚みとしては、0.01〜5μmが好ましい。
ポリエチレン被覆紙は、光沢紙として用いることも、また、ポリエチレンを原紙表面上に溶融押し出してコーティングする際に、いわゆる型付け処理を行なって通常の写真印画紙で得られるようなマット面や絹目面を形成したものも使用できる。
次に、他の媒染剤成分およびその他成分等について詳述する。
−他の媒染剤成分−
本発明においては、既述の金属化合物と共に、画像の経時滲みおよび耐水性をより向上させる目的で、更に他の媒染剤成分を含有することができる。
前記他の媒染剤成分としては、カチオン性ポリマー(カチオン性媒染剤)等の有機媒染剤、及び水溶性金属化合物等の無機媒染剤が挙げられる。カチオン性媒染剤は、カチオン性の官能基として、第1級〜第3級アミノ基、又は第4級アンモニウム塩基を有するポリマー媒染剤が好適であるが、カチオン性の非ポリマー媒染剤も使用できる。
ポリマー媒染剤としては、第1級〜第3級アミノ基およびその塩、又は第4級アンモニウム塩基を有する単量体(媒染剤モノマー)の単独重合体や、該媒染剤モノマーと他の単量体(非媒染剤モノマー)との共重合体又は縮重合体として得られるものが好ましい。また、これらのポリマー媒染剤は、水溶性ポリマー又は水分散性ラテックス粒子のいずれの形態でも使用できる。
前記媒染剤モノマーとしては、例えば、トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、トリメチル−m−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、トリエチル−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、トリエチル−m−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−n−プロピル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−n−オクチル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−ベンジル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−ベンジル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−(4−メチル)ベンジル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−フェニル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド;
トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムブロマイド、トリメチル−m−ビニルベンジルアンモニウムブロマイド、トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムスルホネート、トリメチル−m−ビニルベンジルアンモニウムスルホネート、トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムアセテート、トリメチル−m−ビニルベンジルアンモニウムアセテート、N,N,N−トリエチル−N−2−(4−ビニルフェニル)エチルアンモニウムクロライド、N,N,N−トリエチル−N−2−(3−ビニルフェニル)エチルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−2−(4−ビニルフェニル)エチルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−2−(4−ビニルフェニル)エチルアンモニウムアセテート;
N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドのメチルクロライド、エチルクロライド、メチルブロマイド、エチルブロマイド、メチルアイオダイド若しくはエチルアイオダイドによる4級化物、又はそれらのアニオンを置換したスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、酢酸塩若しくはアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。
具体的な化合物としては、例えば、モノメチルジアリルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、トリエチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(アクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、トリエチル−2−(アクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、トリメチル−3−(メタクリロイルオキシ)プロピルアンモニウムクロライド、トリエチル−3−(メタクリロイルオキシ)プロピルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(メタクリロイルアミノ)エチルアンモニウムクロライド、トリエチル−2−(メタクリロイルアミノ)エチルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(アクリロイルアミノ)エチルアンモニウムクロライド、トリエチル−2−(アクリロイルアミノ)エチルアンモニウムクロライド、トリメチル−3−(メタクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、トリエチル−3−(メタクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、トリメチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、トリエチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド;
N,N−ジメチル−N−エチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−メチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−エチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムブロマイド、トリメチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムブロマイド、トリメチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムスルホネート、トリメチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムアセテート等を挙げることができる。その他、共重合可能なモノマーとして、N―ビニルイミダゾール、N―ビニル−2−メチルイミダゾール等も挙げられる。また、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミドなどの重合単位を用い、重合後に加水分解によってビニルアミン単位とすること、及びこれを塩にしたものも利用できる。
前記非媒染剤モノマーとは、第1級〜第3級アミノ基およびその塩、又は第4級アンモニウム塩基等の塩基性あるいはカチオン性部分を含まず、インクジェット用インク中の染料と相互作用を示さない、あるいは相互作用が実質的に小さい単量体をいう。例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;(メタ)アクリル酸フェニル等の(メタ)アクリル酸アリールエステル;(メタ)アクリル酸ベンジル等のアラルキルエステル;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のビニルエステル類;酢酸アリル等のアリルエステル類;塩化ビニリデン、塩化ビニル等のハロゲン含有単量体;(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル;エチレン、プロピレン等のオレフィン類、等が挙げられる。
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル部位の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、具体的には例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。これらの中でも、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタアクリレート、エチルメタアクリレート、ヒドロキシエチルメタアクリレートが好ましい。前記非媒染剤モノマーも、一種単独で又は二種以上を組合せて使用できる。
更に、前記ポリマー媒染剤として、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ポリメタクリロイルオキシエチル−β−ヒドロキシエチルジメチルアンモニウムクロライド、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン及びその変性体、ポリアリルアミン塩酸塩、ポリアミド−ポリアミン樹脂、カチオン化でんぷん、ジシアンジアミドホルマリン縮合物、ジメチル−2−ヒドロキシプロピルアンモニウム塩重合物、ポリアミジン、ポリビニルアミン、特開平10−86505号公報に記載のカチオン性ポリウレタン樹脂、等も好ましいものとして挙げられる。
前記ポリアリルアミン変性体は、アクリルニトリル、クロロメチルスチレン、TEMPO、エポキシヘキサン、ソルビン酸等をポリアリルアミンに2〜50mol%付加したものであり、好ましくは、アクリルニトリル、クロロメチルスチレン、TEMPOの5〜10mol%付加物であり、特にポリアリルアミンの5〜10mol%TEMPO付加物が、オゾン褪色防止効果を発揮する観点から好ましい。
上記の媒染剤の分子量としては、重量平均分子量で2000〜300000が好ましい。分子量が上記範囲にあると、耐水性及び耐経時ニジミ性を向上させることができる。
本発明は、支持体上に少なくとも2層以上の層を有し、前記最表層、前記支持体側層との間に任意の層を有していてもよい。
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例ではインクジェット記録媒体の一例としてインクジェット記録用シートを作製するものとし、また、実施例中の「部」および「%」は特に指定しない限り質量基準を表すものとする。
[実施例1]
(支持体の作製)
アカシアからなるLBKP50部及びアスペンからなるLBKP50部をそれぞれディスクリファイナーによりカナディアンフリーネス300mlに叩解しパルプスラリーを調製した。
ついで前記で得られたパルプスラリーに、対パルプ当り、カチオン性でんぷん(日本NSC製 CATO 304L)1.3%、アニオン性ポリアクリルアミド(星光化学製 ポリアクロンST−13)0.15%、アルキルケテンダイマー(荒川化学製 サイズパインK)0.29%、エポキシ化ベヘン酸アミド0.29%、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン(荒川化学(株)製:アラフィックス100)0.32%を加えた後、消泡剤0.12%を加えた。
前記のようにして調製したパルプスラリーを長網抄紙機で抄紙し、ウェッブのフェルト面をドラムドライヤーシリンダーにドライヤーカンバスを介して押し当てて乾燥する工程において、ドライヤーカンバスの引張り力を1.6kg/cmに設定して乾燥を行なった後、サイズプレスにて原紙の両面にポリビニールアルコール((株)クラレ製:KL−118)を1g/m2 塗布して乾燥し、カレンダー処理を行った。なお、原紙の坪量は166g/m2で抄造し、厚さ160μmの原紙(基紙)を得た。
得られた基紙のワイヤー面(裏面)側にコロナ放電処理を行なった後、溶融押出機を用いて高密度ポリエチレンを厚さ25μmとなるようにコーティングし、マット面からなる熱可塑性樹脂層を形成した(以下、この熱可塑性樹脂層面を「裏面」と称する。)。この裏面側の熱可塑性樹脂層に更にコロナ放電処理を施し、その後、帯電防止剤として、酸化アルミニウム(日産化学工業(株)製の「アルミナゾル100」)と二酸化ケイ素(日産化学工業(株)製の「スノーテックスO」)とを1:2の質量比で水に分散した分散液を、乾燥質量が0.2g/m2となるように塗布した。
更に、樹脂層の設けられていない側のフェルト面(表面)側にコロナ放電処理を施した後、アナターゼ型二酸化チタン10%、微量の群青、及び蛍光増白剤0.01%(対ポリエチレン)を含有し、MFR(メルトフローレート)3.8の低密度ポリエチレンを、溶融押出機を用いて、厚み25μmとなるように押し出し、高光沢な熱可塑性樹脂層を基紙の表面側に形成し(以下、この高光沢面を「オモテ面」と称する。)、支持体とした。
(最下層塗布液の作製法)
前記支持体のオモテ面にコロナ放電処理を行った後、ローペイクHP−433J(日本ゼオン(株)製)20部にタケラックW6020(三井武田ケミカル(株))0.75部を混ぜた後、19cc/m2で塗布し、乾燥させた。
第一塗布液の作製法
下記組成中の(1)気相法シリカ微粒子と(2)イオン交換水と(3)「シャロールDC−902P」と(4)「ZA−30」を混合し、ビーズミル(例えば、KD−P((株)シンマルエンタープライゼス製))を用いて、分散させた後、分散液を45℃に加熱し20時間保持した。その後これに下記(5)ホウ酸と(6)ポリビニルアルコール溶解液と(7)「スーパーフレックス600B」と(8)ポリオキシエチレンラウリルエーテルと(9)エタノールを30℃で加え、インク受容層用塗布液Aを調製した。
シリカ微粒子と水溶性樹脂との質量比(PB比=(1):(6))は、4.5:1であり、インク受容層用塗布液AのpHは、3.9で酸性を示した。
<インク受容層塗布液の組成>
(1)気相法シリカ微粒子(無機微粒子) 10.0部
(AEROSIL300SF75 日本アエロジル(株)製)
(2)イオン交換水 64.8部
(3)「シャロールDC−902P」(51.5%水溶液) 0.87部
(分散剤、第一工業製薬(株)製)
(4)「ZA−30」 0.54部
(第一稀元素化学工業(株)製)
(5)ホウ酸(架橋剤) 0.37部
(6)ポリビニルアルコール(水溶性樹脂)溶解液 29.4部
溶解液の組成
(株)クラレ製の「PVA235」、鹸化度88%、重合度3500
2.03部
ポリオキシエチレンラウリルエーテル(界面活性剤) 0.03部
下記化合物1 0.06部
ジエチレングリコールモノブチルエーテル
(ブチセノール20P、協和発酵(株)製) 0.68部
イオン交換水 26.6部
(7)「スーパーフレックス600B」 1.24部
(第一工業製薬(株)製)
(8)ポリオキシエチレンラウリルエーテル(界面活性剤) 0.49部
(「エマルゲン109P」(10%水溶液)、HLB値13.6、花王(株)製)
(9)エタノール 2.49部
記録媒体の作製法
最下層塗布液の塗布を行った後、120cc/m2になるよう流した第一塗布液に5倍希釈ポリ塩化アルミ水溶液(ポリ塩化アルミは、アルファイン83(大明化学工業株式会社製))7.7cc/分の速度でインライン塗布した(塗布工程)。熱風乾燥機にて80℃で(風速3〜8m/秒)で塗布層の固形分濃度が20%になるまで乾燥させた。この塗布層は、この間は恒率乾燥速度を示した。その直後、下記組成の第二塗布液に3秒間浸漬して上記塗布層上にその13g/m2を付着させ(媒染剤溶液を付与する工程)、更に80℃下で10分間乾燥させた(乾燥工程)。これにより乾燥膜厚が32μmのインク受像層が設けられた本発明のインクジェット記録媒体を作製した。
<第二塗布液の組成>
(1)ホウ酸 0.65部
(2)炭酸ジルコニウムアンモニウム 2.5部
(ジルコゾールAC−7(28%水溶液);第一稀元素化学工業(株)製)
(3)炭酸アンモニウム 3.5部
(1級:関東化学(株)製)
(4)イオン交換水 63.3部
(5)ポリオキシエチレンラウリルエーテル(界面活性剤) 30.0部
(花王(株)製「エマルゲン109P」(2%水溶液)、HLB値13.6)
[実施例2]
実施例1において、最下層塗布液の作製法を下記処方に変更した以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録媒体を作製した。
(最下層塗布液の作製法)
前記支持体のオモテ面にコロナ放電処理を行った後、MH5055(日本ゼオン(株)製)20部にタケラックW6020(三井武田ケミカル(株))0.6部を混ぜた後、24cc/m2で塗布し、乾燥させた。
[実施例3]
実施例1において、最下層塗布液の作製法を下記処方に変更した以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録媒体を作製した。
(最下層塗布液の作製法)
前記支持体のオモテ面にコロナ放電処理を行った後、ローペイクHP−1055(日本ゼオン(株)製)20部にタケラックW6020(三井武田ケミカル(株))0.53部を混ぜた後、26.8cc/m2で塗布し、乾燥させた。
[実施例4]
実施例1において、最下層塗布液の作製法を下記処方に変更した以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録媒体を作製した。
(最下層塗布液の作製法)
前記支持体のオモテ面にコロナ放電処理を行った後、ローペイクHP−1055(日本ゼオン(株)製)20部にタケラックW6020(三井武田ケミカル(株))3.5部を混ぜた後、31.lcc/m2で塗布し、乾燥させた。
[比較例1]
実施例1において、中空粒子を含んだ最下層をなくし、第一塗布液の流量を172cc/m2にした以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録媒体を作製した。
[比較例2]
実施例1において、最下層塗布液の作製法を下記処方に変更し、微粒子を含有した層を塗布せずに、インクジェット記録媒体を作製した。
(最下層塗布液の作製法)
前記支持体のオモテ面にコロナ放電処理を行った後、MH5055(日本ゼオン(株)製)20部にタケラックW6020(三井武田ケミカル(株))0.6部を混ぜた後、77cc/m2で塗布し、乾燥させた。
[比較例3]
実施例1において、最下層塗布液の作製法を下記処方に変更し、インクジェット記録媒体を作製した。
(最下層塗布液の作製法)
前記支持体のオモテ面にコロナ放電処理を行った後、ローペイクOP−84J(空隙率25%)20部にタケラックW6020(三井武田ケミカル(株))0.6部を混ぜた後、77cc/m2で塗布し、乾燥させた。
[比較例4]
実施例1において、最下層塗布液の作製法を下記処方に変更し、インクジェット記録媒体を作製した。
(最下層塗布液の作製法)
前記支持体のオモテ面にコロナ放電処理を行った後、フロービーズLE1080(住友精化(株)製 空隙率0%)5.3部、エマルゲン109P10%溶液15部、(花王(株)製)にタケラックW6020(三井武田ケミカル(株))0.6部を混ぜた後、77cc/m2で塗布し、乾燥させた。
[比較例5]
実施例1において、最下層塗布液の作製法を下記処方に変更し、インクジェット記録媒体を作製した。
(最下層塗布液の作製法)
前記支持体のオモテ面にコロナ放電処理を行った後、スノーテックスST−ZL(日産化学(株)製 空隙率0%)13.3部、イオン交換水6.7部、にタケラックW6020(三井武田ケミカル(株))0.6部を混ぜた後、77cc/m2で塗布し、乾燥させた。
[評価]
(1)光沢感の評価
インクジェットプリンター(セイコーエプソン(株)製、「PM970C」)を用いて、各インクジェット記録媒体上にブラックのベタ印画した。その後、デジタル変角光沢計(スガ試験機(株)UGV−5D 測定孔8mm)を用い、入射角60度、受光60度でブラックのベタ画像部分の光沢度を測定した。
(2)滲みの評価
インクジェットプリンター(セイコーエプソン(株)製、「PM−970C」)を用いて、各インクジェット記録媒体上にマゼンタインクとブラックインクとを隣り合わせにした格子状の線状パターン(線幅0.28mm)を印画した。印画直後、印画済みのインクジェット記録媒体を透明PP製ファイルに挿入し、35℃・相対湿度80%の環境下で3日間保存した。その後、線状パターンの黒線の幅を測定し、測定値と別途求めておいた印画直後の黒線の幅とから、下記式によって経時滲み(%)を算出した。
経時滲み(%)=(35℃80%の環境下3日間保存した線状パターンの黒線の幅)/(印画直後の黒線の幅)×100
(3)印画直後の吸収性
インクジェットプリンター(セイコーエプソン(株)製、「PM−970C」)を用いて、各インクジェット記録媒体上にインクを打滴した直後、インク打滴面に紙を手で密着させた後にインクが転写されるか否かを目視で判断した。
○:インク転写はない。
△:僅かにインク転写は認められる。
×:インク転写は認められる。
実施例1〜実施例4の結果を表1に、比較例1〜比較例5の結果を表2に示す。
表1及び表2より、実施例1〜実施例4のインクジェット記録媒体は、光沢感、滲み、印画直後の印刷性(転写)のすべてを同時に満足する結果が得られたのに対して、比較例1〜比較例5は、光沢感、滲み、印画直後の吸収性(転写)のいずれかが劣っていた。