JP2006095792A - ノズル形成部材、液体噴射装置、及び、液体噴射ヘッドの製造方法 - Google Patents

ノズル形成部材、液体噴射装置、及び、液体噴射ヘッドの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 ノズル開口から吐出される液滴の吐出方向を比較的簡単な加工で調整可能な、ノズル形成部材、液体噴射装置、及び、液体噴射ヘッドの製造方法を提供する。
【解決手段】 記録ヘッドの各ノズル開口27から吐出されるインク滴の目標としている着弾位置である目標着弾位置からのズレを検査するアライメント検査工程と、このアライメント検査工程の検査結果に応じて、ノズル開口27の周囲の撥液被膜層36の一部に非撥液部40を形成する非撥液部形成工程とを行い、非撥液部40により、吐出するインク滴の目標着弾位置からのズレを修正する。
【選択図】図8

Description

本発明は、複数のノズル開口が開設されたノズル形成部材、このノズル形成部材を有する液体噴射ヘッドを備えた液体噴射装置、及び、液体噴射ヘッドの製造方法に関する。
液体噴射装置は、液体を液滴として吐出可能な液体噴射ヘッドを備え、この液体噴射ヘッドから各種の液体を吐出する装置である。この液体噴射装置の代表的なものとして、例えば、液体状のインクをインク滴として吐出するインクジェット記録ヘッド(液体噴射ヘッドの一種:以下、記録ヘッドという)を備え、吐出対象物(記録媒体)としての記録紙の幅方向である主走査方向への記録ヘッドの移動と、主走査方向に直交する副走査方向への記録紙の搬送とを繰り返しながら記録ヘッドから液滴を吐出させて記録を行うインクジェット式プリンタ(以下、プリンタという)等の画像記録装置を挙げることができる。
上記記録ヘッドは、複数のノズル開口を列設してなるノズル列が形成されたノズル形成部材としてのノズルプレート、共通液体室(リザーバ)から圧力室を経てノズル開口に至る一連の流路を形成した流路形成基板、及び、圧力室の容積を変動させ得る圧力発生素子等を積層した状態で備え、圧力発生素子の作動により圧力室内のインクに圧力変動を励起させて液体状のインクをインク滴としてノズル開口から吐出可能に構成されている。
ところで、このノズル開口の周囲のインクの濡れの状態によっては、吐出したインク滴に飛行曲がりが生じることがある。インク滴の飛行曲がりが生じると、吐出対象物である記録紙上においてインク滴が目標とする着弾位置(以下、目標着弾位置という。)からずれた位置に着弾してしまい、その結果、バンディング(筋状のノイズ)や色斑が発生したり、粒状感が大きくなる等、記録画像の画質の低下を招いてしまう。
このようなインク滴の飛行曲がりを防止するために、この種のノズルプレートの表面(インク滴吐出側の面)には、撥液被膜層が形成されており、この撥液被膜層によってノズル開口の周囲のインクの濡れを可及的に抑えるようにしている。
ところが、この撥液被膜層を形成したときに撥液被膜層がノズル開口の内部(内周面)に不均一に入り込んでしまうことがあり、この不均一に入り込んだ撥液被膜層に起因してインク滴の飛行曲がりが生じる虞がある。
そのため、ノズル開口の内部に入り込まないようにノズルプレートの表面のみに撥液被膜層を形成する方法も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開平6−246921号公報
しかしながら、上記特許文献1に開示されている方法は、比較的多くの工程を経る必要があり、量産には不利となるという問題があった。
また、ノズル開口の内部に入り込まないようにノズルプレートの表面のみに撥液被膜層を形成できたとしても、ノズル開口は数10μmという極めて微細な孔であるので、ノズル開口周囲において濡れの状態を均一にするには限界があり、依然として飛行曲がりは生じてしまう。
本発明はこのような問題に鑑みてなされたもので、その目的は、ノズル開口から吐出される液滴の吐出方向を比較的簡単な加工で調整可能な、ノズル形成部材、液体噴射装置、及び、液体噴射ヘッドの製造方法を提供することにある。
本発明は、上記目的を達成するために提案されたものであり、複数のノズル開口を列設してなるノズル形成面を備え、該ノズル形成面の表面を撥液被膜層で被覆したノズル形成部材であって、
ノズル開口の周囲の撥液被膜層の一部に非撥液部を形成し、該非撥液部により、当該ノズル開口から吐出される液滴の吐出方向を調整可能としたことを特徴とするノズル形成部材である。
上記構成によれば、ノズル開口の周囲の撥液被膜層の一部に非撥液部を形成し、該非撥液部により、ノズル開口から吐出される液滴の吐出方向を調整可能としたので、高精度な加工技術を要することなく簡単な構成で、液滴を然るべき方向に吐出させることが可能なノズル形成部材を容易に実現することができる。
また、上記構成によれば、非撥液部の形成位置に応じて液滴の吐出方向を任意に調整することが可能である。
なお、「ノズル開口の周囲」とは、非撥液部に付着する液体が、ノズル開口から吐出される液滴に対して引力(例えば、クーロン力や表面張力)を発揮することが可能な、非撥液部の形成位置の範囲を示す概念である。
また、上記「除去」とは撥液被膜を取り去ることを意味し、「損傷」とは撥液被膜を取り去ることまではいかず、撥液性を消失させる程度のことを意味する。
上記構成において、前記非撥液部を、前記ノズル開口と非撥液部との間に撥液被膜層を残した状態で形成することが望ましい。
この構成によれば、ノズル開口と非撥液部との間に撥液被膜層を残して非撥液部を形成するので、ノズル開口の開口周縁に連続させた状態で非撥液部を形成するといった高い精度が求められる加工を行う必要が無い。
また、この構成によれば、非撥液部が、ノズル開口の周縁(エッジ)の形状のばらつきの影響を抑えることができ、液滴の吐出方向を安定して調整することが可能となる。これにより、ノズル形成部材の品質をより安定させることが可能となる。
また、本発明の液体噴射装置は、上記各構成のノズル形成部材と、圧力発生素子の作動によってノズル開口から液滴を吐出して吐出対象物上にドットを形成可能な液体噴射ヘッドと、を備えたことを特徴とする。
この構成によれば、液滴を然るべき方向に吐出させることが可能なノズル形成部材を備えているので、液滴の吐出方向に関し、装置の用途や必要性に応じてより最適な吐出方向が得られる液体噴射装置を提供することが可能となる。
また、本発明の液体噴射ヘッドの製造方法は、複数のノズル開口を列設してなるノズル形成面を備え、該ノズル形成面の表面は撥液被膜層が形成されており、圧力発生素子の作動によってノズル開口から液滴を吐出して吐出対象物上にドットを形成可能な液体噴射ヘッドの製造方法であって、
前記液体噴射ヘッドの各ノズル開口から吐出される液滴の目標としている着弾位置である目標着弾位置からのズレを検査するアライメント検査工程と、
前記アライメント検査工程の検査結果に応じて、ノズル開口の周囲の撥液被膜層の一部に非撥液部を形成する非撥液部形成工程とを含み、
前記非撥液部により、吐出する液滴の目標着弾位置からのズレを修正することを特徴とする。
上記製造方法によれば、アライメント検査工程の検査結果に応じて、ノズル開口の周囲の撥液被膜層の一部に非撥液部を形成し、この非撥液部により、吐出する液滴の目標着弾位置からのズレを修正するので、従来、液滴の実際の着弾位置が目標着弾位置からずれていることを原因として不良品としていた液体噴射ヘッドについても、良品とすることができる。したがって、歩留りを向上させることができる。
また、各液体噴射ヘッド毎にアライメント検査工程を行い、その結果に基づいて非撥液部を形成するので、圧力発生素子等のヘッド構成部材の個体差の影響を排除することができる。これにより、液体噴射ヘッドの個体差に関係なく、液滴を然るべき方向に液滴を吐出させることが可能となる。
上記の前記非撥液部形成工程で、所定温度以上の熱を与えることで撥液被膜層の一部を除去乃至損傷して非撥液部を形成することができる。
なお、「所定温度以上」とは、撥液被膜層を損傷可能な温度、例えば、300℃以上である。なお、このときの温度は、ノズル形成部材への影響を考慮して、400℃以下であることが望ましい。
この構成において、撥液被膜層の一部にイオンビームや電子ビーム等のビーム照射により所定温度以上の熱を与えることで非撥液部を形成することができる。
上記構成によれば、ビームの照射には既存の装置を利用することができ、非撥液部を容易に形成することができる。したがって、複雑な装置や処理が不要であり、量産に適する。
また、非撥液部形成工程において、撥液被膜層の一部に紫外線を照射することにより非撥液部を形成してもよい。
さらには、非撥液部形成工程において、撥液被膜層の一部にプラズマを照射することにより非撥液部を形成してもよい。
上記の前記非撥液部形成工程で、ノズル開口の周囲の撥液被膜層の一部に親液材を付加することにより非撥液部を形成することも可能である。
以下、本発明を実施するための最良の形態を、添付図面等を参照して説明する。なお、以下に述べる実施の形態では、本発明の好適な具体例として種々の限定がされているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、以下の説明は、代表的な液体噴射装置であるインクジェット式記録装置(以下、単にプリンタという)を例に挙げて行う。
図1はプリンタ1の構成を示す斜視図である。このプリンタ1は、記録ヘッド2が取り付けられると共に、インクカートリッジ3が着脱可能に取り付けられるキャリッジ4と、記録ヘッド2の下方に配設されたプラテン5と、キャリッジ4(記録ヘッド2)を吐出対象物の一種としての記録紙6の紙幅方向、即ち、主走査方向に往復移動させるキャリッジ移動機構7と、主走査方向に直交する方向である副走査方向に記録紙6を搬送する紙送り機構8とを備えて概略構成されている。
キャリッジ4は、主走査方向に架設されたガイドロッド9に軸支された状態で取り付けられており、キャリッジ移動機構7の作動により、ガイドロッド9に沿って主走査方向に移動するように構成されている。キャリッジ4の主走査方向の位置は、リニアエンコーダ10によって検出され、その検出信号、即ち、エンコーダパルスがプリンタコントローラの制御部(図示せず)に送信される。これにより、制御部はこのリニアエンコーダ10からのエンコーダパルスに基づいてキャリッジ4(記録ヘッド2)の走査位置を認識しながら、記録ヘッド2による記録動作(吐出動作)等を制御することができる。
キャリッジ4の移動範囲内における記録領域よりも外側(図1における右側)の端部領域には、走査の基点となるホームポジションが設定されている。本実施形態におけるホームポジションには、記録ヘッド2のノズル形成部材(ノズルプレート21:図2参照)を封止するキャッピング部材11と、ノズル形成面を払拭するためのワイパー部材12とが配置されている。そして、プリンタ1は、このホームポジションから反対側の端部へ向けてキャリッジ4(記録ヘッド2)が移動する往動時と、反対側の端部からホームポジション側にキャリッジ4が戻る復動時との双方向で記録紙6上に文字や画像等を記録する所謂双方向記録が可能に構成されている。
図2は、上記記録ヘッド2の構成を説明する要部断面図である。この記録ヘッド2は、ケース13と、このケース13内に収納される振動子ユニット14と、ケース13の底面(先端面)に接合される流路ユニット15等を備えている。上記のケース13は、例えば、エポキシ系樹脂等の合成樹脂により作製され、その内部には振動子ユニット14を収納するための収納空部16が形成されている。振動子ユニット14は、圧力発生素子の一種として機能する圧電振動子17と、この圧電振動子17が接合される固定板18と、圧電振動子17に駆動信号を供給するためのフレキシブルケーブル19とを備えている。圧電振動子17は、圧電体層と電極層とを交互に積層した圧電板を櫛歯状に切り分けることで作製された積層型であって、積層方向に直交する方向に伸縮可能な縦振動モードの圧電振動子である。
流路ユニット15は、流路形成基板20の一方の面にノズルプレート21を、流路形成基板20の他方の面に弾性板22をそれぞれ接合して構成されている。この流路ユニット15には、リザーバ23と、インク供給口24と、圧力室25と、ノズル連通口26と、ノズル開口27とが形成されている。そして、インク供給口24から圧力室25及びノズル連通口26を経てノズル開口27に至る一連のインク流路が、ノズル開口27毎に対応して形成されている。
上記ノズルプレート21は、本発明におけるノズル形成部材の一種であり、ドット形成密度に対応したピッチ(例えば180dpi)で複数のノズル開口27が開設されたステンレス等の金属製の薄いプレートである。このノズルプレート21には、ノズル開口27の列(ノズル列)が複数設けられており、1つのノズル列は、例えば180個のノズル開口27によって構成される。このノズルプレート21の詳細については、図3を用いて後述する。
上記弾性板22は、支持板28の表面に弾性体膜29を積層した二重構造である。本実施形態では、金属板の一種であるステンレス板を支持板28とし、この支持板28の表面に樹脂フィルムを弾性体膜29としてラミネートした複合板材を用いて弾性板22を作製している。この弾性板22には、圧力室25の容積を変化させるためのダイヤフラム部30が設けられている。また、この弾性板22には、リザーバ23の一部を封止するコンプライアンス部31が設けられている。
上記のダイヤフラム部30は、エッチング加工等によって支持板28を部分的に除去することで作製される。即ち、このダイヤフラム部30は、圧電振動子17の先端面が接合される島部30aと、この島部30aを囲う薄肉弾性部30bとからなる。上記のコンプライアンス部31は、リザーバ23の開口面に対向する領域の支持板28を、ダイヤフラム部30と同様にエッチング加工等によって除去することにより作製され、リザーバ23に貯留された液体の圧力変動を吸収するダンパーとして機能する。
そして、上記の島部30aには圧電振動子17の先端面が接合されているので、この圧電振動子17を作動してその自由端部を伸縮させることで、圧力室25の容積を変動させることができる。この容積変動に伴って圧力室25内のインクに圧力変動が生じる。そして、記録ヘッド2は、この圧力変動を利用してノズル開口27からインク滴(液滴の一種)を吐出させるようになっている。
図3は、本実施形態におけるノズルプレート21の構成を説明する平面図である。このノズルプレート21の基材(以下、ノズルプレート基材33という。)としては、例えばステンレス鋼等の金属製の板材が用いられる。このノズルプレート21には、複数のノズル開口27を副走査方向に列設して1つのノズル列34が形成されている。本実施形態において、上記記録ヘッド2は、互いに異なる色のインク(本発明における液体の一種)を貯留する4つのインクカートリッジ3を装着可能に構成されており、これらの色に対応させて合計4列のノズル列34がノズルプレート21に形成されている。
図4は、上記ノズルプレート21におけるノズル開口27の周辺の拡大断面図である。同図に示すように、本実施形態におけるノズル開口27は、圧力室25側からインク滴吐出側に向けてロート状に次第に縮径するテーパー部27aと、このテーパー部27aに連続して形成され、円筒状のストレート部27bとから構成されており、例えばプレス加工によって穿設される。また、ノズルプレート基材33の表面、即ち、インク滴吐出側の面(図4における上側の面)には、撥液被膜層36が形成されている。即ち、ノズルプレート21の表面は、この撥液被膜層36によって被覆されている。この撥液被膜層36としては、例えば、共析メッキが使用される。具体的には、ニッケルイオン等の金属イオンとフッ素樹脂等の撥液性高分子樹脂の粒子を含む電解質溶液中に、電極に接続したノズルプレート21を浸漬し、その表面にメッキを付着させた後、荷重を加えて反りを抑えながら加熱処理することで撥液被膜層36が得られる。
この撥液被膜層36は、ノズルプレート21の表面、特に、ノズル開口27の周辺を撥液性にすることで、インクが付着するのを極力防止し、インクの濡れによる吐出インク滴の飛行曲がりを防止するためのものである。しかしながら、この撥液被膜層36を形成したときに撥液被膜層36がノズル開口27の内部(内周面)に不均一に入り込んでしまうことがあり、この不均一に入り込んだ撥液被膜層36に起因してインク滴の飛行曲がりが生じる虞がある。或いは、撥液被膜層36がノズル開口27の周囲に均一に形成されたとしても、記録ヘッド2の各構成部材(振動子ユニット14、流路ユニット15)の寸法精度や組立精度のばらつきによって、インク滴の飛行曲がりが生じることも考えられる。
そのため、本実施形態では、記録ヘッド2をプリンタ1に組み付けた状態、即ち、完成品の状態で、記録ヘッド2からインク滴を実際に吐出することで、記録紙6に検査パターンを印刷し、この検査パターンに基づいてインク滴の飛行曲がり(着弾ドットのズレ)を検査するアライメント検査工程を実施する。そして、このアライメント検査工程の結果に応じて、飛行曲がりが生じているノズル開口27について、吐出インク滴が然るべき方向へ飛翔するように調整を行う。インク滴の吐出方向の調整には、ノズルプレート21におけるノズル開口27周囲の撥液被膜層36の一部に非撥液部40(図8参照)を形成し、この非撥液部40に付着するインクの表面張力等の引力を利用する。
以下、アライメント検査工程について説明する。なお、本実施形態においては、ノズル開口27から吐出されるインク滴の吐出方向に関し、主走査方向(ノズル列34とは直交する方向)の調整を行う場合を例示する。
本実施形態におけるアライメント検査工程では、例えば、図5に示すような検査パターンが作成される。なお、図5(a)は検査パターンとして記録紙6に記録された縦罫線(一部)を示す図、図5(b)は(a)おける領域Aの拡大図である。図5(a)において、Rで示す4本の縦罫線は、夫々、各ノズル列34に対応している。つまり、ノズル列34を構成している全ノズル開口27からインク滴を一度に吐出して記録紙6上に形成した副走査方向の着弾ドットの列が縦罫線Rとなる。そして、図5(b)において、L1で示す線が、各着弾ドットの副走査方向の目標着弾位置を示す仮想線であり、L2で示す線は、一例として着弾ドットDの副走査方向の実際の着弾位置を示す仮想線である。
上記のような検査パターンを印刷したならば、この検査パターンについてコンピュータ等による解析を行う。即ち、この検査パターンを、例えばスキャナ等の光学的読取手段を用いて読み取り、読み取った画像をコンピュータに出力する。そして、このコンピュータを用いて、読み取った画像における仮想線L1と仮想線L2との間の距離を計測することで、各着弾ドットについて仮想線L1からの着弾ズレ量とその方向(ズレ方向)を取得する。例えば、上記着弾ドットDの場合、図5(b)に示すように、仮想線L1から着弾ズレ量Xだけ右方向にずれているという情報(以下、着弾ズレ情報という)を得る。
上記アライメント検査工程によって、各ノズル開口27について着弾ズレ情報、即ち、着弾ズレ量とそのズレ方向を取得したならば、取得した着弾ズレ情報に基づいて、ノズル開口27の周囲の撥液被膜層36の一部に、撥液性の低い(親液性を呈する)非撥液部40を形成する非撥液部形成工程を行い、この非撥液部40によって、着弾ドットの着弾ズレが無くなるようにインク滴の吐出方向(飛翔方向)を調整する。この非撥液部40は、撥液被膜層36に所定温度以上の熱を局部的に与え、この部分の撥液被膜層36を除去乃至損傷することで形成することが可能である。本実施形態においては、図6に示すように、電子銃41による電子ビームを用いて非撥液部40を形成する。以下、非撥液部形成工程、及び、非撥液部40による吐出方向の調整についてより詳細に説明する。
図7は、上記着弾ドットDに対応するノズル開口27の周辺を拡大した図(非撥液部40が形成されていない状態)であり、(a)はノズル開口27周辺の表面側(インク滴吐出側)の平面図、(b)は(a)におけるA−A線断面図である。なお、図7(a)では、上下方向がノズル列方向、即ち、副走査方向となっている。上記のアライメント検査工程において、着弾ドットDに関し、記録紙6上において目標とする着弾位置から着弾ズレ量Xだけ右方向にずれていることが分かった。したがって、ノズル開口27から吐出されるインク滴は、目標とする吐出方向(インク滴が目標着弾位置に着弾する方向/破線で示す方向)に対し、実際には図7において左側にずれた方向(実線で示す方向)に飛翔していることになる。
そこで、ノズル開口27より吐出されるインク滴の吐出方向を目標とする吐出方向に一致させて、このインク滴を目標着弾位置に着弾させるべく、図8に示すように、非撥液部形成工程において、ノズル開口27の中心軸Cに対してズレ方向と反対側(上記の例では図8において右側)の撥液被膜層36の一部に電子ビームを照射して熱を与え、この部分の撥液被膜層36を除去乃至損傷させて非撥液部40を形成する。
具体的には、電子銃41の加速電圧を5kV〜10kV、エミッション電流を20μAに設定して電子ビームを照射し、例えば、300℃以上の熱を1〜2分間与えることで撥液被膜層36を除去或いは損傷させる。撥液被膜層36を除去乃至損傷して形成された非撥液部40は、下地つまりノズルプレート基材33が現れて撥液性が低下するので、インクが付着し易くなる。即ち、図8(b)に示すように、非撥液部40に付着するインクiの表面張力等を利用して、ノズル開口27から吐出されるインク滴の吐出方向を調整し、これを目標とする吐出方向、即ち、然るべき方向に一致させるのである。
上記電子ビームの照射には既存の装置を利用することができ、非撥液部40を容易に形成することができる。したがって、複雑な装置や処理が不要であり量産に適する。なお、電子ビーム以外にも、例えば、イオンビーム(FIB(Focused Ion Beam))、半導体レーザー、プラズマ処理等、撥液被膜層36に対して所定温度以上の熱を与えることが可能なものを用いることができる。
ここで、本実施形態では、図8(a)に示すように、非撥液部40を、ノズル開口27との間に撥液被膜層36を残した状態でノズル開口27から距離(離隔距離)Zだけ離れた位置に形成している。このように非撥液部40をノズル開口27からある程度離隔させても、この非撥液部40に付着したインクiが吐出インク滴に対し表面張力等の引力を発揮する、つまり、インク滴の吐出方向を調整できることが実験的に分かった。また、ノズル開口27から離隔した位置に非撥液部40を形成した場合、ノズル開口27の内周部に形成するよりも、より効果的に吐出方向の調整ができることが判明した。そして、このように非撥液部40をノズル開口27から離隔させて形成すると、ノズル開口27の周縁(エッジ)の形状のばらつき(歪み)の影響を抑えることができ、液滴の吐出方向を安定して調整することが可能となる。また、ノズル開口27の周縁に連続させた状態で非撥液部40を形成するといった高い精度が求められる加工を行う必要が無い。
なお、ノズル開口27と非撥液部40との離隔距離Zの値は、ノズル開口27のエッジの形状の影響を受けず、且つ、非撥液部40に付着したインクiが吐出インク滴に対し表面張力等の引力を発揮し得る範囲、具体的には、1μm〜8μmであることが望ましい。
インク滴の吐出方向の調整量は、上記離隔距離Z、及び、非撥液部40の大きさ(面積)によって定めることができる。これらは、アライメント検査工程で得られた着弾ズレ量に応じて設定する。例えば、上記着弾ドットDの着弾ズレ量Xが5μmである場合、離隔距離Zを2μm、非撥液部40の大きさを約9〜10μmに設定することで、吐出方向のズレ分を調整することが可能である。なお、非撥液部40の形状に関し、本実施形態においては、方形状の非撥液部40を例示したが、これには限らない。例えば、非撥液部40を、円形等の他の形状にすることもできる。
また、本実施形態では、ノズル開口27から吐出されるインク滴が、ノズルプレート21の表面に対して垂直に飛翔するように吐出方向を調整する例を示したが、非撥液部40の形成位置を調整することで、インク滴の吐出方向を任意の方向に設定することも可能である。例えば、意図的にインク滴がノズルプレート21の表面に対して斜めに吐出されるように調整することもできる。
以上のように、ノズル開口27の周囲の撥液被膜層36の一部に非撥液部40を形成し、この非撥液部40により、当該ノズル開口27から吐出されるインク滴の吐出方向を調整するので、高精度な加工技術を要することなく簡単な構成で、然るべき方向に液滴を吐出させることが可能となる。また、アライメント検査工程の検査結果に応じて、ノズル開口27の周囲の撥液被膜層36の一部に非撥液部40を形成し、この非撥液部40により、吐出するインク滴の目標着弾位置からのズレを修正するので、従来、インク滴の実際の着弾位置が目標着弾位置からずれていることを原因として不良品としていた記録ヘッド2についても、良品とすることができ、歩留りを向上させることができる。さらには、記録ヘッド2毎にアライメント検査工程を行い、その結果に基づいて非撥液部40を形成するので、圧電振動子17等のヘッド構成部材の個体差の影響を排除することができる。これにより、構成部材の個体差に関係なく、記録画像の画質の低下の抑えた記録ヘッド2を提供することが可能となる。
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図9は、本実施形態におけるノズルプレート21´の構成を説明する断面図である。このノズルプレート21´は、図9(a)に示すように、ノズルプレート基材33の表面に、珪素化合物である下地膜44をプラズマ重合によって形成し、この下地膜44の表面にフッ素樹脂等の撥液性高分子を含む撥液被膜層36を形成して構成されている。したがって、上記第1実施形態のようにメッキ処理を行わずに撥液被膜層36を形成することができるので、環境への影響を配慮したノズルプレート21´を製造することができる。
本実施形態におけるノズルプレート21´に非撥液部40を形成するには、先ず、図9(b)に示すように、撥液被膜層36において非撥液部40を形成する領域以外をマスキング材45によって被覆する。そして、非撥液部40を形成する領域に、紫外線ランプ等を用いて紫外光(UV)を照射する。これにより、この領域の下地膜44と撥液被膜層36のシロキサン結合が破壊されて、図9(c)に示すように、撥液被膜層36の一部を除去することができる。そして、撥液被膜層36を除去して親液性の下地膜44が現れた部分が非撥液部40となる。なお、紫外線を収束可能な装置を用いれば、マスキング材45を使用せずに非撥液部40を形成することも可能である。
このように、本実施形態におけるノズルプレート21´を用いる場合においても、紫外線を照射するという非常に簡単な方法で非撥液部40を形成することができる。なお、他の工程については上記実施形態と同様であるので、その説明は省略する。
ところで、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて種々の変形が可能である。
例えば、ノズル開口27から吐出されるインク滴の吐出方向に関し、上記実施形態においては、アライメント検査工程において縦罫線Rを記録した検査パターンを検査することで、主走査方向(ノズル列34とは直交する方向)の調整を行う場合を例示したが、このアライメント検査工程で横罫線を記録し、これに基づいて副走査方向(ノズル列方向)の調整を行うこともできる。
また、上記各実施形態では、電子ビームや紫外線等を照射することで、撥液被膜層36を除去乃至損傷させて非撥液部40を形成する例を示したが、これには限らない。例えば、親液材を付加(塗布)してその部分を非撥液部40としても良い。この親液材としては、例えば、アルミナ、シリカ、酸化チタン、酸化セリウム等の金属の酸化物や窒化物等の親液性化合物の微粒子、アクリル酸やメタクリル酸の単独或いは共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミドの単独或いは共重合体に代表される親液性高分子が、架橋によって液に不溶となった微粒子等を使用することができる。
また、ノズル形成部材を備えているものであれば、例示したプリンタには限らず、例えば、液晶ディスプレー等のカラーフィルタの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレー、FED(面発光ディスプレー)等の電極形成に用いられる電極材噴射ヘッド、バイオチップ(生物化学素子)の製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等、他の液体噴射ヘッドにも本発明を適用することができる。これにより、用途や必要性に応じてより最適な吐出方向が得られる液体噴射装置を提供することが可能となる。
プリンタの構成を説明する斜視図である。 記録ヘッドの構成を説明する要部断面図である。 ノズルプレートの構成を説明する平面図である。 ノズルプレートにおけるノズル開口周辺の拡大断面図である。 (a)は検査パターンの一例を示す図、(b)は(a)における領域Aの拡大図である。 電子ビームを用いて非撥液部を形成する様子を示した図である。 ノズル開口の周辺を拡大した図(非撥液部が形成されていない状態)であり、(a)はノズル開口周辺の表面側の平面図、(b)は(a)におけるA−A線断面図である。 ノズル開口の周辺を拡大した図(非撥液部が形成された状態)であり、(a)はノズル開口周辺の表面側の平面図、(b)は(a)におけるA−A線断面図である。 第2実施形態におけるノズルプレートの構成を説明する断面図であり、(a)は非撥液部が形成されていない状態、(b)は非撥液部の形成領域に紫外線を照射している状態、(c)は非撥液部が形成された状態を示す図である。
符号の説明
1 プリンタ,2 記録ヘッド,3 インクカートリッジ,4 キャリッジ,5 プラテン,6 記録紙,7 キャリッジ移動機構,8 紙送り機構,9 ガイドロッド,10 リニアエンコーダ,11 キャッピング部材,12 ワイパー部材,13 ケース,14 振動子ユニット,15 流路ユニット,16 収納空部,17 圧電振動子,18 固定板,19 フレキシブルケーブル,20 流路形成基板,21 ノズルプレート,22 弾性板,23 リザーバ,24 インク供給口,25 圧力室,26 ノズル連通口,27 ノズル開口,28 支持板,29 弾性体膜,30 ダイヤフラム部,31 コンプライアンス部,33 ノズルプレート基材,34 ノズル列,36 撥液被膜層,40 撥液部,41 電子銃,44 下地膜

Claims (9)

  1. 複数のノズル開口を列設してなるノズル形成面を備え、該ノズル形成面の表面を撥液被膜層で被覆したノズル形成部材であって、
    ノズル開口の周囲の撥液被膜層の一部に非撥液部を形成し、該非撥液部により、当該ノズル開口から吐出される液滴の吐出方向を調整可能としたことを特徴とするノズル形成部材。
  2. 前記ノズル開口と前記非撥液部との間に撥液被膜層を残して前記非撥液部を形成したことを特徴とする請求項1に記載のノズル形成部材。
  3. 請求項1または2に記載のノズル形成部材と、圧力発生素子の作動によってノズル開口から液滴を吐出して吐出対象物上にドットを形成可能な液体噴射ヘッドと、を備えたことを特徴とする液体噴射装置。
  4. 複数のノズル開口を列設してなるノズル形成面を備え、該ノズル形成面の表面は撥液被膜層が形成されており、圧力発生素子の作動によってノズル開口から液滴を吐出して吐出対象物上にドットを形成可能な液体噴射ヘッドの製造方法であって、
    前記液体噴射ヘッドの各ノズル開口から吐出される液滴の目標としている着弾位置である目標着弾位置からのズレを検査するアライメント検査工程と、
    前記アライメント検査工程の検査結果に応じて、ノズル開口の周囲の撥液被膜層の一部に非撥液部を形成する非撥液部形成工程とを含み、
    前記非撥液部により、吐出する液滴の目標着弾位置からのズレを修正することを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法。
  5. 前記非撥液部形成工程で、所定温度以上の熱を与えることで撥液被膜層の一部を除去乃至損傷して非撥液部を形成することを特徴とする請求項4に記載の液体噴射ヘッドの製造方法。
  6. 前記非撥液部形成工程で、イオンビームや電子ビーム等のビーム照射することで所定温度以上の熱を与えて、前記非撥液部を形成することを特徴とする請求項5に記載の液体噴射ヘッドの製造方法。
  7. 前記非撥液部形成工程で、撥液被膜層の一部に紫外線を照射することにより非撥液部を形成することを特徴とする請求項4に記載の液体噴射ヘッドの製造方法。
  8. 前記非撥液部形成工程で、撥液被膜層の一部にプラズマを照射することにより非撥液部を形成することを特徴とする請求項4に記載の液体噴射ヘッドの製造方法。
  9. 前記非撥液部形成工程で、ノズル開口の周囲の撥液被膜層の一部に親液材を付加することにより非撥液部を形成することを特徴とする請求項4に記載の液体噴射ヘッドの製造方法。

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