JP2006093642A - 断面試料の作製方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 断面試料の観察面に残存する加工ダメージ層を簡単かつ効果的に除去する手段を備え、半導体デバイスの断面に関する各種測定を精度よく実施することが可能な断面試料を作製する方法を提供すること。
【解決手段】 シリコン基板上に不純物を導入したシリコン層を有する半導体デバイスの断面試料片を作製する方法において、半導体デバイスの断面を露出させ、その断面を平坦化または薄膜化する加工を施した後、断面試料を過酸化水素とアンモニアと超純水とを含み、過酸化水素濃度がアンモニア濃度と等しいかまたはアンモニア濃度よりも高い処理液に浸漬させ、加工ダメージ層を除去し、加工ダメージ層が除去された断面表面に均一なシリコン酸化膜を形成する。
【選択図】 図7

Description

本発明は、シリコン基板上に不純物を導入したシリコン層を有する半導体デバイスの断面の分析または観察に適した断面試料を作製する方法に関する。より詳細には、本発明は、走査型プローブ顕微鏡または透過型電子顕微鏡を用いる測定を精度よく実施することが可能な半導体デバイスの断面試料を作製する方法に関する。
半導体デバイスの各種特性を評価する有効な手段として、半導体デバイスの断面を分析または観察する走査型プローブ顕微鏡または透過型電子顕微鏡が広く知られている。
走査型プローブ顕微鏡には、走査型キャパシタンス顕微鏡、および走査型拡がり抵抗顕微鏡などが含まれ、これらは半導体デバイス中の2次元キャリア分布を測定する手法として使用することができる。走査型キャパシタンス顕微鏡では、導電性の探針を断面試料の観察面に接触させ、試料との間に交流電圧を印加しながら探針を走査し、各点の静電容量を求めることによって、二次元キャリア分布を測定することができる。走査型キャパシタンス顕微鏡による測定原理の詳細については、例えば特許文献1に記載されている。また、走査型拡がり抵抗顕微鏡では、断面試料との間に直流電圧を印加しながら探針を走査し、各点の局所的拡がり抵抗を求めることによって、キャリア分布を測定することができる。走査型拡がり抵抗顕微鏡による測定原理の詳細については、例えば、非特許文献1に記載されている。
一方、走査透過型電子顕微鏡を含めた透過型電子顕微鏡は、半導体デバイスの内部構造などを観察する手法として使用することができる。透過型電子顕微鏡では、断面試料の観察面に電子線を照射し、透過または走査透過した電子線から物質の結晶構造の違いなどを反映した画像を形成することによって、内部構造を示すイメージが得られる。
上述のように、それぞれの手法による半導体デバイスの断面の分析または観察を精度よく実施するためには、観察面となる断面をそれぞれ適切に加工する必要がある。そのため、断面の加工に関する様々な検討がなされている。以下、半導体デバイスの断面試料を作製する代表的な方法を例示する。
最初に、走査型キャパシタンス顕微鏡測定用断面試料の作製方法について例示する。走査型キャパシタンス顕微鏡を使用する場合、測定すべき半導体デバイスの観察面を極限まで平坦化する必要がある。走査型キャパシタンス顕微鏡による測定に向けた、従来の断面試料の作製方法を図1に示す。断面試料の作製は、最初に、半導体デバイスをダイヤモンドラッピングフィルムなどによって機械研磨し、断面を露出させる(S101)。次に、砥粒径が0.05μm程度のコロイダルシリカとバフとを用いて化学機械研磨を実施し、観察面を鏡面に仕上げた試料(すなわち観察面を平坦化した試料)とする(S102)。最後に、試料を超純水で洗浄した後、イソプロピルアルコールなどの有機溶媒に浸漬して超音波洗浄を施し、次いで乾燥させる(S103)ことによって、断面試料が完成する。
上述の従来法によって作製した断面試料の構成を図2に示す。図2に示すように、多くの場合、作製された断面試料10には、観察すべき半導体デバイス20の上に加工ダメージ層30と、周囲の水分や酸素の影響によって形成された厚さ1nm未満のシリコン酸化膜40とが存在する。加工ダメージ層30は、主に、機械研磨(図1のS101)の際に形成される。鏡面化加工(図1のS102)では、先に形成された加工ダメージ層をある程度研磨することになるが、それでもなお、加工ダメージ層は最終的に20nm程度の厚さで残存することになる。
このような加工ダメージ層は、通常の単結晶シリコンと比較すると結晶性が悪く抵抗値が高いため、走査型キャパシタンス顕微鏡の出力信号を減衰させてしまう。また、従来法によって作製された断面試料の観察面に形成されたシリコン酸化膜は自然酸化膜であるため、膜厚や膜質のばらつきを有しており、加工ダメージ層と同様に走査型キャパシタンス顕微鏡の信号の安定性を損なうという問題がある。
そのため、加工ダメージによる問題を改善するための様々な検討がなされている。例えば、加工ダメージ層が生じないように、超高真空中で特定の面を劈開することによって観察面を出す方法がある(特許文献2を参照)。また、化学機械研磨で観察面を出した後に低速イオンビームもしくはプラズマエッチングを用いて加工ダメージ層を除去する方法がある(特許文献3を参照)。特許文献3による方法は、もともと走査型拡がり抵抗顕微鏡用の試料作製に向けたものであるが、加工ダメージ層の除去後に引き続き高純度酸素を導入するなどして、観察面に改めてシリコン酸化膜を形成すれば、走査型キャパシタンス顕微鏡用の試料として転用することも可能である。
また、走査型キャパシタンス顕微鏡測定用断面試料の作製方法には、断面試料の平坦化において、上記に示したような研磨法を用いる方法以外に、集束イオンビーム(以下「FIB」と称す)を用いる方法も存在する。上記のように、断面試料を化学機械研磨で切り出す場合、一般的に加工位置の確認を光学顕微鏡で行っているが、光学顕微鏡では加工位置精度が光の波長程度、すなわち数百nmに制限されてしまう。したがって、より高い加工精度が要求される場合には、FIBによる加工法が利用される。ここで、FIBによる従来の加工法を図3に模式的に例示する。当該加工法は、半導体デバイスを機械研磨して得られた試料表面上において、断面試料として切り出したい領域に、保護膜として機能するカーボンあるいはタングステンなどのデポ膜50を厚さ1μm程度予め堆積させておき、次いで、数十kVの高電圧に加速したガリウムイオンビーム52を試料に照射することによって、所望の断面試料10を切り出すというものである。この加工法によれば、加工位置精度は加速電圧30kVで100nm以下となる。また、FIBによる加工法は、加工面の平坦性が極めて高いこと、加工面への微小異物の付着をほぼ完全に排除できること(異物が存在しても加工時に削られて消滅する)などの利点も有している。
しかしながら、上述のFIBによる従来の加工法によって断面試料10の切り出しを行うと、加工面付近に一定厚さの加工ダメージ層30が形成される。当該加工方法による加工ダメージ層30は、FIBの入射によって試料の結晶構造が乱されたことによって生じたアモルファスな層である。結晶構造がアモルファスの場合、単結晶のシリコンと比べて抵抗率が非常に高くなってしまう。したがって、断面試料10の観察面にアモルファス層(加工ダメージ層30)を存在させたまま走査型キャパシタンス顕微鏡で測定を実施すると、検出される信号のS/N比を大きく低減させるという問題が生じる。
そのため、FIB加工によって生じる加工ダメージ層の問題を改善する様々な検討がなされている。上記問題を改善する方法としては、透過型電子顕微鏡観察用断面試料の作製方法を適用することができる。例えば、加工ダメージ層を低減させるために、低速のアルゴンビームを用いて加工ダメージ層の厚みを低減させる方法がある(特許文献4を参照)。さらに別法として、反応性ガスを用いる方法がある(特許文献5を参照)。この方法では、加工ダメージ層を物理的あるいは化学的に除去した後、加工装置のチャンバー内に高純度酸素を導入し、観察面に薄い酸化膜を形成して、試料を走査型キャパシタンス顕微鏡観察に適した状態にすることを開示している。
次に、透過型電子顕微鏡測定用断面試料の作製方法について例示する。透過型電子顕微鏡を使用する場合、測定すべき半導体デバイスの観察面は、極限まで薄くする必要がある。透過型顕微鏡による測定に向けた、従来の断面試料の作製方法を図4に示す。断面試料の作製は、最初に、ダイサーを用いて半導体デバイスの目的とする特定位置を切り出すか、または劈開する(S401)。次に、S401で得られた試料を、FIBによって測定に不要な部分を切り外し、そして観察部の残りの部分(試料の辺縁部などの透過型電子顕微鏡観察に使用されない部分)にカーボンやタングステンなどの薄膜(デポ膜と呼ばれる)を堆積させることにより、金属製メッシュに取り付けて固定する(S402a)。次に、メッシュに固定した断面試料を、FIBで加工し更に薄膜化する(S402b)。
上述の従来法によって作製した断面試料の構成を図5に示す。図5に示すように、多くの場合、作製された断面試料10には、観察すべき半導体デバイス20の他に、加工ダメージ層30が存在する。また場合によっては、周囲の水分や酸素の影響によって形成された厚さ1nm未満のシリコン酸化膜(図示せず)が存在することもある。なお、断面試料にはイオンビーム加工の保護膜であるデポ膜50が設けられている。加工ダメージ層30は、FIBによる加工時(図4のS402aおよびS402b)に形成される。加工ダメージ層30はアモルファスであり、それらの厚さは、FIBの加工条件にもよるが、例えば、FIB加工におけるGaイオンビームの加速電圧が30kVであるとき、約20nmの厚さの加工ダメージ層30が形成される(非特許文献3)。
このように、透過型電子顕微鏡測定用に作製された半導体デバイスの断面試料に加工ダメージ層が存在すると、透過型電子顕微鏡において高倍率(約200万〜300万倍)で観察を行なった場合、正常なシリコン基板の単結晶構造である結晶格子像が観察されない。また、低倍率(約10万〜50万倍)で観察を行なった場合、加工ダメージ層による異常な像コントラストが観察されてしまうという問題点がある。
そのため、加工ダメージ層による問題を改善するための様々な検討がなされている。例えば、加工ダメージ層を低減させるために、低加速のFIBで仕上げ加工を行う方法がある(特許文献6を参照)。この方法では、FIB加工装置におけるイオンビーム加速電圧を5kV〜15kVに下げて薄膜化することによって、加工ダメージ層が半分以下に低減され、シリコン結晶格子像を観察することが可能となることについても開示している。さらに、別法として、FIB加工装置に低加速電圧でダメージの少ないイオンミリング機構を取り付けた装置を使用する方法がある(特許文献4を参照)。
特公平7−32177号公報 特開2000−162112号公報 特開2002−214092号公報 特開平9−257670号公報 特開2002−277363号公報 特開2002−228562号公報 特開2000−208578号公報 R. J. Kline, J. F. Richards, and P. E. Russell, Mat. Res. Soc. Symp. Vol.610, 2000 Materials Research Society, pp. B.2.4.1-B.2.4.6。 K. Tanaka, M. Sakurai, S. Kamizuma and Y. Shimanuki: Extended Abstracts of the Electro-chemical Society (The Electrochemical Society, Pennington, NJ, 1990), 90-1, p.689。 鈴木直久、日本電子顕微鏡学会 第57回学術講演会予稿集 p.46(2001)。
上述のように、各種測定を精度よく実施するためには、加工ダメージ層の形成を低減させるか、または加工ダメージ層を除去する必要があり、それを実現するための様々な方法が検討されている。しかしながら、いずれの方法も、特殊な操作を必要とするか、あるいは専用の真空チャンバーおよび付帯設備といった特殊な装置を必要とするため、煩雑であり、しかもその効果は十分でない。例えば、走査型キャパシタンス顕微鏡測定用試料を劈開する方法によって、(111)面または(110)面以外の任意の平面を出すことは実質上不可能である。
また、走査型キャパシタンス顕微鏡測定用および透過型電子顕微鏡測定用の断面試料を作製する際に低加速電圧にしてFIBを実施する方法は、その加工時間が通常の3倍も長くなり効率が悪い。また、たとえFIBの加速電圧を慣用の30kVから5kVに低速化したとしても、加工ダメージ層の膜厚は、20〜30nmから10nm程度に留まり、十分に加工ダメージ層を除去することができない。
そのため、各種測定を精度よく実施するのに適切な断面試料を提供する簡単かつ効果的な方法が望まれており、本発明ではそのような方法を提供することを課題とする。特に、本発明では、加工ダメージ層を簡単かつ効果的に除去する手段を備えた、半導体デバイスの断面試料の作製方法を提供することを課題とする。
上述の課題は、断面試料の加工時に形成された加工ダメージ層を化学的に除去し、次いでその表面に均一な酸化膜を形成することによって解決される。そのため、本発明者らは加工ダメージ層を化学的に除去することが可能な処理液について鋭意検討した結果、過酸化水素とアンモニアと超純水とを含む処理液が効果的であることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明による断面試料の作製方法は、シリコン基板上に不純物を導入したシリコン層を有する半導体デバイスの断面試料を作製するためのものであり、(1)半導体デバイスの断面を露出させ、断面を有する試料を形成する工程、(2)上記試料の断面を加工することによって、上記断面を平坦化または薄膜化する工程、(3)上記工程(2)によって断面が加工された試料を、過酸化水素とアンモニアと超純水とを含む処理液に浸漬させることによって、上記工程(2)による加工時に断面に形成されたダメージ層を除去し、加工ダメージ層が除去された断面表面にシリコン酸化膜を形成する工程、および(4)上記工程(3)を施した試料を、超純水で洗浄し、次いで有機溶剤に浸漬させた後、乾燥させる工程を有し、上記工程(3)で使用する処理液における過酸化水素濃度が、アンモニア濃度と等しいかまたはアンモニア濃度よりも高いことを特徴とする。
ここで、工程(3)で使用する処理液において、過酸化水素対アンモニアの濃度比が、1:0.05〜1:1であることが好ましく、過酸化水素対アンモニアの濃度比が、1:0.5であることがより好ましい。
なお、本発明による断面試料の作製方法では、工程(2)において、研磨法または集束イオンビームによって断面を平坦化し、走査型キャパシタンス顕微鏡測定用断面試料を作製することが好ましい。あるいは、工程(2)において、集束イオンビームによって断面を薄膜化し、透過型電子顕微鏡測定用断面試料を作製することが好ましい。
本発明によれば、半導体デバイスの断面試料を加工する際に形成される加工ダメージ層が簡単かつ効果的に除去され、かつ観察面表面に均一なシリコン酸化膜が形成されるため、半導体デバイスの2次元キャリア分布測定およびその内部構造測定といった各種測定を精度よく実施することが可能となる。
以下、本発明の詳細について説明する。本発明は、シリコン基板上に不純物を導入したシリコン層を有する半導体デバイスの断面試料を作製する方法に関する。本発明による半導体デバイスの断面試料の作製方法は、(1)半導体デバイスの断面を露出させ、断面を有する試料を形成する工程、(2)上記試料の断面を加工することによって、上記断面を平坦化または薄膜化する工程、(3)上記(2)によって断面が加工された試料を、過酸化水素とアンモニアと超純水とを含む処理液に浸漬させることによって、上記(2)による加工時に断面に形成されたダメージ層を除去し、上記ダメージ層が除去された断面表面にシリコン酸化膜を形成する工程、および(4)上記工程(3)を施した試料を、超純水で洗浄し、次いで有機溶剤に浸漬させた後、乾燥させる工程を有し、上記工程(3)で使用する処理液における過酸化水素濃度がアンモニア濃度と等しいか、またはアンモニア濃度よりも高いことを特徴とする。
上述のように、本発明の方法によれば、処理液がエッチング作用と酸化作用とを併せ持つため、断面試料を処理液に任意時間にわたって浸漬するのみで、加工ダメージ層が化学的に除去され、かつ浸漬を終了した時点で観察面に均一な厚さのシリコン酸化膜が形成されることになる。その結果、特殊な操作あるいは特殊な装置を必要とすることなく、簡便な方法によって加工ダメージ層が除去され、かつ、その表面に均一なシリコン酸化膜が形成された、各種測定に適切な断面試料を提供することが可能となる。例えば、本発明は、半導体デバイスの取り扱いを行う施設において一般的に備え付けられている、テフロン(登録商標)ビーカーや酸・アルカリ対応ドラフトなどの装置によって実施することができる。また、特に限定されるものではないが、本発明の方法で得られた断面試料はその表面に均一なシリコン酸化膜が形成されるため、走査型キャパシタンス顕微鏡測定用断面試料として望ましいものとなる。
なお、工程(3)において、処理液により加工ダメージ層を除去するためには、処理液における過酸化水素濃度が、アンモニア濃度と等しいかまたはアンモニア濃度よりも高くなければならない。より具体的には、処理液において、過酸化水素対アンモニアの濃度比が1:0.05〜1:1であることが好ましく、より好ましくは過酸化水素対アンモニアの濃度比が1:0.5である。処理液における過酸化水素濃度がアンモニア濃度よりも低くなる(すなわち、過酸化水素濃度よりもアンモニア濃度の方が高くなる)と、加工ダメージ層を均一にエッチングするというよりは、むしろシリコン単結晶における微小欠陥部位がエッチピットとなって顕在化することになるため望ましくない。そのような特徴を利用した例として、アンモニア濃度が過酸化水素よりも極端に高い溶液を、シリコンウェハ表面の微小欠陥の検出に利用した報告がある(特許文献7を参照)。処理液は、例えば、超純水と、特定濃度の過酸化水素水と、特定濃度のアンモニア水をそれぞれ混合することによって調製することができ、所望の組成を有するように、使用する過酸化水素水およびアンモニア水の濃度および使用量を適宜調整する。
加工ダメージ層を処理液でエッチングする際の温度は、特に限定されるものではないが、温度は処理液の濃度とともにエッチング速度を決定する要因となるため、適切に設定することが好ましい。温度は、特に限定されるものではないが、加工ダメージ層の一般的な厚さから考えて、50℃〜80℃とすることが好ましい。なお、エッチング速度は、処理液の濃度と温度とを変化させることによって適切に設定することが可能である。例えば、30%過酸化水素水:29%アンモニア水:超純水の体積混合比が1:1:5、処理液温度80℃で実施した場合、エッチング速度は毎分1nm程度となることが知られている(非特許文献2を参照)。したがって、上述の処理液を使用した場合、加工ダメージ層の厚さが20nmであれば、20分以上の浸漬で加工ダメージ層を完全に除去できる計算になる。また、本願実施例において使用した、30%過酸化水素水:29%アンモニア水:超純水の体積混合比が1:0.5:5の処理液においては、処理液温度50℃で実施した場合には、エッチング速度は毎分0.15nm程度となり、処理液温度80℃で実施した場合には、エッチング速度は毎分0.80nm程度となった。したがって、処理液温度50℃において上記本願実施例の処理液を用いた場合には、加工ダメージ層の厚さが10nmであれば、80分程度の浸漬でこれを完全に除去できる計算になる。
なお、アンモニアと過酸化水素との濃度比を変えた場合や、処理液の温度を変えた場合のエッチング速度は、当業者であれば容易に求めることができる。例えば、無垢のシリコン基板の表面の一部だけを金の薄膜で覆い、所定温度および混合比既知の処理液に一定時間にわたり浸漬し、次いで王水を用いて金の薄膜を除去し、シリコン基板上に形成された段差を原子間力顕微鏡などで測定することによって求めることができる。あるいはまた、無垢のシリコン基板の一部をFIB加工で削り取って透過型電子顕微鏡観察用試料を作製し、まず、処理液への浸漬前の当該試料の加工ダメージ層の厚さを透過型電子顕微鏡で観察する。次いで、所定温度および混合比既知の処理液に当該試料を一定時間浸漬し、エッチングされた加工ダメージ層の厚さを透過型電子顕微鏡で観察して、浸漬前後の加工ダメージ層の厚さを比較することで処理液のエッチング速度を求めることができる。
本発明における工程(3)では、過酸化水素濃度が、アンモニア濃度と等しいかまたはアンモニア濃度よりも高い処理液を使用することを除き、温度、浸漬時間などの諸条件は特に限定されるものではない。本発明において使用する処理液は、水酸化カリウム水溶液などに見られる異方性エッチングの性質は殆どないため、断面試料が測定に耐え得る厚さを維持していれば、少々オーバーエッチングになっても問題にならない。
以下、本発明による断面試料の作製方法について、各種測定方法ごとに、より具体的に説明する。なお、以下の説明では、図6に示したような、単結晶シリコン基板20a上に、ホウ素をドープしたシリコン層(以下「p層」と称す)、およびリンをドープしたシリコン層(以下「n層」と称す)を交互に積層したエピタキシャル成長層20bを有する半導体デバイス20の断面試料を作製する場合について例示する。
(断面加工に研磨法を適用した走査型キャパシタンス顕微鏡測定用断面試料の作製)
断面加工に研磨法、特に化学機械研磨を適用した本発明による走査型キャパシタンス顕微鏡測定用断面試料の作製方法の一例を図7に示す。
先ず、ダイヤモンドラッピングフィルムを用いて、図6に示した半導体デバイスの積層方向に対して平行に機械研磨を行い断面を露出させる。その際、断面観察を実施したい特定の場所に研磨面が接近するに従い砥粒径を適宜小さくしていき、最終的には砥粒径が0.1μm程度の研磨を実施する(S701)。次に、砥粒径が0.05μm程度のコロイダルシリカとバフを用いて化学機械研磨を行い、観察面を鏡面仕上げする(S702)。
次に、アンモニアと過酸化水素と超純水とを含む処理液を調製し、観察面に残存する加工ダメージ層が消失するまで試料を任意時間にわたって浸漬する(S703)。なお、S703についての詳細は、工程(3)として先に説明したとおりである。最後に、試料を超純水で洗浄した後、イソプロピルアルコールなどの有機溶媒に浸漬させて超音波洗浄を施し、次いで乾燥させることによって走査型キャパシタンス顕微鏡測定用断面試料の作製が完了する(S704)。
上述の本発明による作製方法では、S703において、断面試料を特定の処理液に浸漬するだけで、観察面に形成された加工ダメージ層およびシリコン酸化膜のアンモニアによるエッチングと、過酸化水素によるシリコン層の酸化とが同時に進行することになる。その結果、観察面が常に一定の厚さのシリコン酸化膜に覆われた状態のまま、加工ダメージ層の除去が行われる。なお、本発明による作製方法では、S703の実施を除き、周知の技術を適宜適用することが可能である。
上述の方法によって作製された断面試料の模式的構造を図8に示す。作製された断面試料では、半導体デバイス20上に加工ダメージ層が存在せず、その表面には均一なシリコン酸化膜40のみが形成されている。通常、加工ダメージ層を全て除去し浸漬を終了した時点で、観察面には厚さ1nm未満のシリコン酸化膜が形成されることになる。そのため、走査型キャパシタンス顕微鏡測定に向けて、断面試料の表面にシリコン酸化膜を追加で設ける必要はない。
図9は、上述の方法に従って作製された断面試料10の2次元キャリア分布を、走査型キャパシタンス顕微鏡を用いて測定する様子を示す模式図である。走査型キャパシタンス顕微鏡は、静電容量センサー60に接続された導電性の探針62を有しており、観察は断面試料10の観察面に探針62を接触させ、交流電圧を印加しながら移動ステージ64を縦横に走査させて行う。同時に、観察面上の各点で、シリコン酸化膜40を介した半導体デバイス20と探針62との間の静電容量を静電容量センサー60で測定すると、半導体デバイス断面の静電容量振幅の2次元分布画像が得られる。測定された静電容量の振幅は、半導体デバイス20中のキャリア濃度によって変化する。一般的には、キャリア濃度1015〜1016cm−3の付近で極大となることが分かっており、信号に適切な変換を施してやれば2次元キャリア分布画像が得られることになる。本発明によって作製された断面試料は、加工ダメージ層が除去され、その表面には均一なシリコン酸化膜40が形成されている。そのため、上述の測定では、出力信号が低下することなく安定であり、精度良く測定が実施可能である。なお、走査型キャパシタンス顕微鏡の測定原理上、断面試料において観察面の反対側の面(以後「対向面」と称す)を、予め金属薄膜などで短絡させておくことが望ましい。ただし、観察面に露出している各々のキャリア分布領域が予め他の場所で短絡されている場合には、対向面における短絡を省略することができる。
(断面加工にFIBを適用した走査型キャパシタンス顕微鏡測定用断面試料の作製)
断面加工にFIBを適用した本発明による走査型キャパシタンス顕微鏡測定用断面試料の作製方法の一例を図10に示す。
先ず、ダイヤモンドラッピングフィルムを用いて、図6に示した半導体デバイスの積層方向に対して平行に機械研磨を行い断面を露出させる。その際、断面観察を実施したい特定の場所に研磨面が接近するに従い砥粒径を適宜小さくしていき、最終的には砥粒径が0.1μm程度の研磨を実施する(S1001)。
次に、FIB加工によって観察面および対向面の切り出しを実施する(S1002)。この際、各面の切り出し形状は、図11に示すように、観察面については平坦に(なお、この加工をボックス状加工と呼ぶこともある)、対向面についてはくさび状に加工することが好ましい。対向面をくさび状にする利点としては、(1)加工時間の短縮(FIBで削り取るシリコンの体積がボックス状加工の半分程度で済む)、(2)金属蒸着による対向面の短絡をより確実に実施できる(対向面をボックス状に加工した場合、試料と金属蒸着源との位置関係に応じて、金属の蒸着されない領域(死角)が生じる可能性がある)、などが挙げられる。ただし、観察面に露出している各々のキャリア分布領域が予め他の場所で短絡されている場合には、対向面の切り出しを省略することができる。なお、上記のFIB加工は、好ましくは、30kV〜40kVの高速のFIBを適用する大まかな加工と、10kV〜15kVの低速のFIBを適用する仕上げ加工とに、それぞれ分けて実施することが望ましい。この仕上げ加工は、最終的に残存する加工ダメージ層の厚さを極力小さく抑えることができる。
次に、アンモニアと過酸化水素と超純水とを含む処理液を調製し、観察面および対向面に残存する加工ダメージ層が消失するまで試料を任意時間にわたって浸漬する(S1003)。さらに、試料を超純水で洗浄した後、イソプロピルアルコールなどの有機溶媒に浸漬させて超音波洗浄を施して乾燥させる(S1004)。
最後に、蒸着などによって対向面に白金−パラジウム合金、金またはアルミのような反応性の比較的低い金属からなる金属薄膜を堆積させ、次いで、観察面および対向面の電位が互いに等しくなるように、観察面に露出している各々のキャリア分布領域を、当該金属薄膜を通じて短絡させて、走査型キャパシタンス顕微鏡測定用断面試料の作製が完了する(S1005)。なお上述のように、観察面に露出している各々のキャリア分布領域を予め他の場所で短絡させている場合には、このS1005の工程を省略することが可能である。
断面加工に研磨法を適用する上記の作製方法と同様、断面加工にFIBを適用する本発明の作製方法では、S1003において、断面試料を特定の処理液に浸漬するだけで、観察面に形成されたシリコン酸化膜および加工ダメージ層のアンモニアによるエッチングと、過酸化水素によるシリコン層の酸化とが同時に進行することになる。その結果、観察面が常に一定の厚さのシリコン酸化膜に覆われた状態のまま、加工ダメージ層の除去が行われる。なお、本発明による作製方法も、S1003の実施を除き、周知の技術を適宜適用することが可能である。
上述の方法によって作製された断面試料の模式的構造を図11(a)〜(c)に示す。なお、図11(a)はS1002の直後、図11(b)はS1003の直後、そして図11(c)はS1005の直後の状態を示している。図11(b)で示すように、浸漬が終了した時点で、加工ダメージ層30が全て除去されるとともに、観察面および対向面には厚さ1nm未満のシリコン酸化膜40が形成される。このため走査型キャパシタンス顕微鏡測定に向けて、断面試料の表面にシリコン酸化膜を追加で設ける必要はない。なお、本発明によって作製された断面試料の表面には、図11(c)に示すように、処理液洗浄によって観察面のみならず対向面にもシリコン酸化膜40が形成されている。つまり、金属薄膜54とシリコン基板とは直接接触していないので、これにより短絡を効率よく実施できない可能性が考えられる。しかしながら、走査型キャパシタンス顕微鏡の場合には、交流電圧を印加して測定を実施するため、1nm程度の厚みのシリコン酸化膜の影響は、実用上ほぼ皆無であると見なして構わない。
なお、上述の方法に従って作製した断面試料10の2次元キャリア分布を走査型キャパシタンス顕微鏡で測定する方法は、対向面を短絡させたことを除いて、上述の断面加工に研磨法を適用して作製した断面試料と同様な方法によって測定することができる。
(断面加工にFIBを適用した透過型電子顕微鏡測定用断面試料の作製)
本発明による透過型電子顕微鏡測定用断面試料の作製方法の一例を図12に示す。
先ず、ダイサーを用いて目的とする場所を切り出すか、目的とする場所が結晶面と関係なく割れる場合は、劈開する(S1201)。なお、大型の試料室を有するFIB加工装置では直接、目的とする場所をイオンビーム加工できるので、この操作は省略することが可能である。
次に、S1201で切り出して断面を露出させた試料をFIB加工装置の試料室に導入して、当該試料表面上の断面試料として切り出したい領域(以後「特定場所」と称す)の最表面にタングステンなどの金属薄膜(「デポ膜」と呼ばれる)を堆積させる。デポ膜の大きさは、例えば縦5μm×横20μm×厚さ1μm程度とする。このデポ膜は、FIB加工による特定場所の不要な損傷を防ぐ保護膜としての機能を有している。次に、特定場所の外周部分をFIBによってボックス状に深掘りする。特定場所の残しは、例えば、約5μm×横20μm×深さ(高さ)10μm程度とする。さらに、FIB加工装置にマイクロサンプリング法と呼ばれる機能が付属している場合には、特定場所の端部に細線状のプローブを付着させた後、デポ膜で固定してから特定場所の底面を切り離して吊り上げ、カーボンなどの過酸化水素水に侵されない物質からなるデポ膜で、半円状の金属製メッシュに固定する(S1202a)。なお、FIB加工装置にマイクロサンプリング機能が備わっていない場合には、試料室への導入前に試料を予め導電性エポキシ樹脂などで金属製メッシュに固定しておくという手段をとることで対応することが可能である。
次に、メッシュに固定した特定場所の試料を、FIBでデポ膜部分を中心にさらに薄く加工して、透過型電子顕微鏡による観察に用いられる断面試料の作製が完了する。断面試料は、例えば、0.1×10×10μm程度まで薄膜化する(S1202b)。
次に、FIB加工装置から薄膜化した試料を取り出して、アンモニアと過酸化水素と超純水とを含む処理液に浸漬し、観察面に残存する加工ダメージ層が消失するまで試料を任意時間にわたって浸漬する(S1203)。
最後に、試料を超純水で洗浄した後、イソプロピルアルコールなどの有機溶媒に浸漬させて、次いで乾燥させることによって透過型電子顕微鏡測定用断面試料の作製が完了する(S1204)。
上述の本発明による作製方法では、S1203のように断面試料を特定の処理液に浸漬するだけで、観察面に形成された加工ダメージ層のエッチングが進行し、加工ダメージ層が簡単かつ効率良く除去されることになる。なお、本発明による作製方法では、S1203を除き、周知の技術を適宜適用することが可能である。
上述の方法によって作製された断面試料の模式的構造を図13に示す。作製された断面試料10では、半導体デバイス20上に加工ダメージ層が存在せず、その表面には均一なシリコン酸化膜40が形成されている。走査型キャパシタンス顕微鏡による測定と異なり、透過型電子顕微鏡では試料の表面に形成された均一なシリコン酸化膜40を必須としない。しかし、それらは均一かつ厚さ1nm未満と極めて薄い膜であるため測定に何ら影響するものではなく、それらを断面試料の汚染を防止する保護膜として機能させることも可能である。
図14は、上述の方法に従って作製された断面試料10の内部構造を、透過型電子顕微鏡を用いて測定する様子を示す模式図である。透過型顕微鏡は、概ね、断面試料に照射する電子線の発生源70、断面試料を透過した電子線を検出する検出器72、画像観察用のCRT74から構成され、観察は断面試料10の観察面に電子線76を照射し、断面試料を透過または走査透過した電子線76’を検出器72で検出することによって、物質の結晶構造の違いといった断面試料の内部構造を反映した像を得ることによって実施される。本発明によって作製された断面試料によれば、加工ダメージ層が除去されることにより、電子線透過時の散乱が起こらず、単結晶シリコンの結晶格子が確認でき、またバランスの良い像コントラストが得られるため、高精度の測定が実現可能である。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、それらは本発明を限定するものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
(実施例1)
本実施例は、断面加工に研磨法を適用した場合の本発明による走査型キャパシタンス顕微鏡測定用の半導体デバイスの断面試料の作製に関する。測定を行なう半導体デバイスは先に図6として示したものとした。すなわち、半導体デバイスは、シリコン基板上に、ホウ素をドープしたシリコンの層(以下「p層」と称す)、およびリンをドープしたシリコンの層(以下「n層」と称す)を交互に3層ずつ有するものであり、各p層の厚さが1.74μm、各n層の厚さが2.07μm、各々のキャリア濃度が1.0×1016cm−3である。
上述の半導体デバイスの積層方向と平行にダイヤモンドラッピングフィルムで機械研磨を行なうことによって断面を露出させた。なお、機械研磨は砥粒径を15μm〜0.1μmに変化させながら実施した。次に、砥粒径が0.05μm程度のコロイダルシリカとバフを用いて化学機械研磨を行い、断面試料の観察面に鏡面仕上げを施した。
次に、先に鏡面化加工した断面試料を、予め調製した過酸化水素とアンモニアと超純水とを含む処理液に浸漬した。使用した処理液は、30%過酸化水素水:29%アンモニア水:超純水の体積混合比が1:0.5:5のものであり、湯せんによって処理液の温度を約80℃に維持した。エッチング速度は毎分0.8nm程度となるため、処理液に断面試料を40分にわたって浸漬させた。
次に、処理液から引き上げた断面試料を超純水で洗浄した後、イソプロピルアルコールに浸漬して超音波洗浄を施し、次いで大気中に放置し乾燥させることにより、断面試料を得た。
上述のようにして得た断面試料を使用し、図6に示した半導体デバイスの走査型キャパシタンス顕微鏡による測定を実施した。測定は、エピタキシャル成長層、すなわちp層およびn層を横切る形で実施し、コバルトがコーティングされた導電性カンチレバーを用いて、AC電圧0.2V、DC電圧0Vを印加して観察を行なった。その結果を図15に示す。なお、各層の極性を判別し易くするため、走査型キャパシタンス顕微鏡の出力信号には、断面試料と探針との間に印加した交流電圧の位相に対する静電容量変化の位相のずれを加味しており、p層は正の電圧、n層は負の電圧として出力されている。p層とn層との間に見られる出力信号の複雑な変化は、接合境界の空乏層の存在を反映している。
処理液を用いた加工ダメージ層の除去を行なわずに断面試料を作製した場合と比較すると(後述の比較例1および図16を参照)、本発明による断面試料では、印加した交流電圧が全く同じであるにもかかわらず、出力信号は明らかに増加していることが分かる。
(比較例1)
本実施例は、断面加工に研磨法を適用した場合の従来法による走査型キャパシタンス顕微鏡測定用の半導体デバイスの断面試料の作製に関する。断面試料は、鏡面化加工後に処理液への浸漬を実施しないことを除き、全て実施例1と同様にして作製した。すなわち、断面試料は加工ダメージ層およびその表面に形成された不均一なシリコン酸化膜を有する。
得られた断面試料を使用し、図6に示した半導体デバイスの走査型キャパシタンス顕微鏡による測定を実施例1と同じ条件下で実施した。その結果を図16に示す。図16では、実施例1と同じ条件下での観察であるにもかかわらず、出力信号は図15と比較して明らかに弱く、またp層とn層との間に見られる出力信号の変化もごく微弱なものとなっている。
(実施例2)
本実施例は、断面加工にFIBを適用した場合の本発明による走査型キャパシタンス顕微鏡測定用の半導体デバイスの断面試料の作製に関する。測定を行なう半導体デバイスは実施例1と同じである。
最初に、上述の半導体デバイスの積層方向と平行にダイヤモンドラッピングフィルムで機械研磨を行なうことによって断面を露出させた。なお、機械研磨は砥粒径を15μm〜0.1μmに変化させながら実施した。次に、40kVの高速のFIBによって、断面試料の観察面を平坦に、そして対向面をくさび状に大まかに切り出した。さらに、15kVの低速のFIBを使用して、上記観察面をより平坦に仕上げた。
次に、FIBによって加工された上記断面試料を、予め調製した過酸化水素とアンモニアと超純水とを含む処理液に浸漬した。使用した処理液は、30%過酸化水素水:29%アンモニア水:超純水の体積混合比が1:0.5:5のものであり、湯せんによって処理液の温度を約80℃に維持した。エッチング速度は毎分0.80nm程度となるため、処理液に断面試料を40分にわたって浸漬させた。
次に、処理液から引き上げた断面試料を超純水で洗浄した後、イソプロピルアルコールに浸漬して超音波洗浄を施し、次いで大気中に放置し乾燥させた。
最後に、真空蒸着によって対向面に厚さ100nmの白金−パラジウム合金の薄膜を堆積させて断面試料を得た。
上述のようにして得た断面試料の走査型キャパシタンス顕微鏡による測定は、対向面を短絡させたことを除いて、実施例1と同じ条件下で実施した。
処理液を用いた加工ダメージ層の除去を行なわずに断面試料を作製した場合と比較すると(後述の比較例2)、本発明による断面試料では、印加した交流電圧が全く同じであるにもかかわらず、出力信号が明らかに増加していることが分かった。
(比較例2)
本実施例は、断面加工にFIBを適用した場合の従来法による走査型キャパシタンス顕微鏡測定用の半導体デバイスの断面試料の作製に関する。断面試料は、FIB加工後に処理液への浸漬を実施しないことを除き、全て実施例2と同様にして作製した。すなわち、断面試料は加工ダメージ層およびその表面に形成された不均一なシリコン酸化膜を有する。
得られた断面試料を使用し、図6に示した半導体デバイスの走査型キャパシタンス顕微鏡による測定を実施例2と同じ条件下で実施した。その結果、比較例2による断面試料では、実施例2と同じ条件下での観察であるにもかかわらず、出力信号は実施例2の断面試料に比べて明らかに弱く、またp層とn層との間に見られる出力信号の変化もごく微弱なものとなっていた。
以上の結果から、本発明によれば、断面加工に研磨法またはFIBのどちらを使用したとしても、加工ダメージ層を十分に除去でき、従来の走査型キャパシタンス顕微鏡測定用の半導体デバイスの断面試料よりも優れた断面試料を作製できることが確認できた。
(実施例3)
本実施例は、本発明による透過型電子顕微鏡測定用の半導体デバイスの断面試料の作製に関する。測定を行なう半導体デバイスは実施例1と同じである。
最初に、半導体デバイスの特定の位置をダイサーによって約4mm四方の大きさに切り出した。
次に、切り出した試料をFIB加工装置内の試料室に導入して、当該試料表面上の特定場所の最表面にタングステンからなるデポ膜を堆積させた。デポ膜の大きさは縦5μm×横20μm×高さ(深さ)15μm程度とした。次に、特定場所の外周部分をFIBによってボックス状に深掘りして切り出し、縦5μm×横20μm×高さ(深さ)15μmの大きさの断面試料片を作製した。なお、FIBの加速電圧は30kV、電流量は20nAとした。さらに、特定場所の端部に細線状のプローブを付着させた後、デポ膜で固定してから特定場所の底面を切り離して吊り上げ、カーボンからなるデポ膜によって透過型電子顕微鏡観察用の銅製メッシュに固定した。
次に、デポ膜によって銅製メッシュに固定された断面試料を、FIBを使用してデポ膜部分を中心にさらに薄く加工した。その際、FIBの加速電圧は30kV、電流量は20nAであった。また試料の固定に使用したデポ膜まで削られないように、断面試料片の薄膜化は部分的に行うに留め、その大きさは縦0.1μm×横10μm×高さ(深さ)15μmと、元々の試料片の大きさよりもやや横幅を狭く取った。次に、FIB加工装置から薄膜化した試料を取り出して、予め調製した過酸化水素とアンモニアと超純水とを含む処理液に浸漬させた。使用した処理液は、30%過酸化水素水:29%アンモニア水:超純水の体積混合比が1:0.5:5であり、湯せんによって処理液の温度を約50℃に維持した。浸漬時間は実施例1と同様に40分とした。
次に、処理液から引き上げた断面試料を超純水で洗浄した後、イソプロピルアルコールに浸漬して、最後に大気中に放置し乾燥させることにより、断面試料を得た。
本実施例では、上述のようにして作製した断面試料における加工ダメージ層の厚さを定量的に評価するために、先の断面試料を横切るような形でさらにFIBによる加工を実施し追加の断面試料を作製した。本実施例で作製した各断面試料の模式図を図17に示す。図17(a)は先に実施例2に沿って作製した断面試料を示し、図17(b)は(a)の断面試料をさらに加工して作製した追加の断面試料を示す。図17(b)に示すような追加の断面試料に対して、本来の観察方向(図17(a)を参照)とは異なる向きから電子線を入射させて、透過型電子顕微鏡による測定を実施した。測定時の加速電圧は200kVとした。その結果を図18に示す。
図18によれば、処理液を用いた加工ダメージ層の除去を行なわずに作製した場合(後述の比較例3および図19を参照)と比較して、本発明による断面試料では、加工ダメージ層の厚さが5nm程度減少しており、毎分0.13nm程度のエッチング速度で加工ダメージ層が除去されたことが分かる。なお、浸漬時間をさらに延長するか、処理液の組成や温度を適宜調整することによって加工ダメージ層を完全に除去することが可能であることは当業者であれば容易に理解できるであろう。したがって、本発明によれば加工ダメージ層が減少または完全に除去されることによって、本来の観察方向から電子線を入射させたときに単結晶シリコンの結晶構造を確認することができ、またバランスの良い像コントラストが得られることになる。
(比較例3)
本実施例は、従来法による透過型電子顕微鏡測定用の半導体デバイスの断面試料の作製に関する。断面試料は、薄膜化加工後に処理液への浸漬および超純水や有機溶剤による洗浄を実施しないことを除き、全て実施例3と同様にして作製した。すなわち、断面試料の薄膜化加工時に形成された加工ダメージ層は全く除去されず、そのまま残存している。
得られた断面試料をもとに、実施例3と全く同様の手順で加工ダメージ層の厚さを定量的に評価した。その結果を図19に示す。加工ダメージ層の厚さは28nmに達し、本来の観察方向から透過型電子顕微鏡による観察を行なっても、単結晶シリコンの結晶構造は不明瞭となり、また像コントラストも不規則なものとなる。
断面加工に研磨法を適用した従来の走査型キャパシタンス顕微鏡測定用断面試料の作製方法を示すフローチャートである。 図1に示した従来法によって作製した断面試料の模式的構造を示す断面図である。 FIB加工による断面試料の切り出しを模式的に示す断面図である。 従来の透過型電子顕微鏡測定用断面試料の作製方法を示すフローチャートである。 図4に示した従来法によって作製した断面試料の模式的構造を示す断面図である。 本発明で使用する半導体デバイスの一例を示す模式的断面図である。 断面加工に研磨法を適用した本発明による走査型キャパシタンス顕微鏡測定用断面試料の作製方法を示すフローチャートである。 図7に示した本発明による方法によって作製した断面試料の模式的構造を示す断面図である。 走査型キャパシタンス顕微鏡による断面試料の測定を示す概念図である。 断面加工にFIBを適用した本発明による走査型キャパシタンス顕微鏡測定用断面試料の作製方法を示すフローチャートである。 (a)は図10に示した本発明による方法のS1002における断面試料の模式的構造を示す断面図であり、(b)は図10に示した本発明による方法のS1003における断面試料の模式的構造を示す断面図であり、(c)は図10に示した本発明による方法のS1005における断面試料の模式的構造を示す断面図である。 本発明による透過型電子顕微鏡測定用断面試料の作製方法を示すフローチャートである。 図12に示した本発明による方法によって作製した断面試料の模式的構造を示す断面図である。 透過型電子顕微鏡による断面試料の測定を示す概念図である。 実施例1における走査型キャパシタンス顕微鏡による測定結果を示すチャートである。 比較例1における走査型キャパシタンス顕微鏡による測定結果を示すチャートである。 (a)は実施例3に沿って先に作製した断面試料を示す模式図であり、(b)は(a)の断面試料をさらに加工して作製した追加の断面試料を示す模式図である。 実施例3における透過型電子顕微鏡による測定結果を示すチャートである。 比較例3における透過型電子顕微鏡による測定結果を示すチャートである。
符号の説明
10 断面試料
20 半導体デバイス
20a シリコン基板
20b 不純物が導入されたシリコン層(エピタキシャル成長層)
30 加工ダメージ層
40 シリコン酸化膜
50 デポ膜
52 ガリウムイオンビーム
54 金属薄膜
60 静電容量センサー
62 探針
64 移動ステージ
70 電子線の発生源
72 電子線を検出する検出器
74 画像観察用のCRT
76 電子線
76’ 断面試料を透過または走査透過した電子線

Claims (6)

  1. シリコン基板上に不純物を導入したシリコン層を有する半導体デバイスの断面試料を作製する方法であって、
    (1)半導体デバイスの断面を露出させ、断面を有する試料を形成する工程、
    (2)前記試料の断面を加工することによって、前記断面を平坦化または薄膜化する工程、
    (3)前記工程(2)によって断面が加工された試料を、過酸化水素とアンモニアと超純水とを含む処理液に浸漬させることによって、前記工程(2)による加工時に断面に形成されたダメージ層を除去し、前記ダメージ層が除去された断面表面にシリコン酸化膜を形成する工程、および
    (4)前記工程(3)を施した試料を、超純水で洗浄し、次いで有機溶剤に浸漬させた後、乾燥させる工程
    を有し、前記工程(3)で使用する処理液における過酸化水素濃度が、アンモニア濃度と等しいかまたはアンモニア濃度よりも高いことを特徴とする方法。
  2. 前記工程(3)で使用する処理液において、過酸化水素対アンモニアの濃度比が、1:0.05〜1:1であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 前記工程(3)で使用する処理液において、過酸化水素対アンモニアの濃度比が、1:0.5であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
  4. 前記工程(2)において、研磨法によって断面を平坦化することを特徴とする、走査型プローブ顕微鏡測定用断面試料を作製するための請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
  5. 前記工程(2)において、集束イオンビームによって断面を平坦化することを特徴とする、走査型プローブ顕微鏡測定用断面試料を作製するための請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
  6. 前記工程(2)において、集束イオンビームによって断面を薄膜化することを特徴とする、透過型電子顕微鏡測定用断面試料を作製するための請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
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JP2015041673A (ja) * 2013-08-21 2015-03-02 三菱電機株式会社 観察方法

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