以下、本発明に係る自転車シミュレーション装置について実施例の形態を挙げ、添付の図1〜図19を参照しながら説明する。
図1に示すように、本実施の形態に係る自転車シミュレーション装置10は模擬自転車12と、該模擬自転車12の運転に応じた情景を画面14aに表示するモニタ14と、運転者に対して音声指示を与えるとともに模擬音を発生するスピーカ15と、運転者が乗降する位置に設けられたマットスイッチ16と、自転車シミュレーション装置10の全体的な制御を行う主制御部18とを有する。主制御部18は模擬自転車12の前方に配置され、モニタ14及びスピーカ15は主制御部18の上部で模擬自転車12の運転者から視認性の良い位置に配置されている。
主制御部18、モニタ14及びスピーカ15は4本の支柱21によって昇降可能に支持されており、運転者の体型に合わせて高さの調整が可能である。モニタ14は、例えば、ハンドル28の上部に設けられる小型のものであってもよい。
次に、模擬自転車12について説明する。以下、模擬自転車12において左右に1つずつ設けられた機構については、左のものの番号符号に「L」を付し、右のものの番号符号に「R」を付すことにより区別して説明する。
模擬自転車12は、フレーム20と、該フレーム20にシートピラーを介して接続されたサドル24と、フレーム20のヘッドチューブ26を支軸として回動可能なハンドル28と、ヘッドチューブ26を固定支持するスタンドとしての2本のフロントフォーク29と、フレーム20の後端部を支えるバックスタンド32とを有する。バックスタンド32の代わりに実際の後輪タイヤを用いてフレーム20の後端部を支えるようにしてもよい。サドル24及びハンドル28は運転者の体型に合わせて高さの調整が可能である。
図1及び図2に示すように、模擬自転車12は、クランク軸34の左右に連結された一対のクランク36L及び36Rと、該クランク36L及び36Rの先端に設けられたペダル38L及び38Rと、クランク軸34に負荷を加える負荷ユニット42とを有する。負荷ユニット42はクランク軸34を含み、サドル24の下方の位置設けられ、フレーム20に固定されている。
さらに、模擬自転車12は、電気的な機構として、負荷ユニット42で発生する負荷を調整するための制動指示部44(図7参照)と、クランク36L及び36Rの回転位置を検出するクランク位置検出部48と、ハンドル28の舵角θHを検出する舵角センサ(ハンドル操作検出部)50(図7参照)と、運転者の声を入力するためのマイクロホン52とを有する。また、模擬自転車12には、これらの電気的な機構から信号を受信するとともに所定の制御を行うための副制御部58が設けられており、該副制御部58と主制御部18とはリアルタイムの相互通信が可能である。
図2〜図4に示すように、負荷ユニット42には、クランク軸34及び発電機76が設けられている。図4に示すように、クランク軸34の回転を伝える動力伝達部として、クランク軸34と平行な第1中間軸70、第2中間軸72及び発電機軸74が設けられており、各軸はそれぞれベアリングで軸支されている。クランク軸34にはワンウェイクラッチ69を介して第1駆動ギア34aが設けられている。
第1中間軸70には、第1駆動ギア34aと噛合して増速回転される第1従動ギア70aと、第2中間軸72に回転を伝える第2駆動ギア70bとが設けられている。第2中間軸72には、第2駆動ギア70bと噛合して増速回転される第2従動ギア72aと、発電機軸74に回転を伝える第3駆動ギア72bとが設けられている。発電機軸74には、第3駆動ギア72bと噛合して増速回転される第3従動ギア74aと、発電機76とが設けられている。
クランク軸34の回転は、ワンウェイクラッチ69の作用により、正方向の回転駆動力のみが第1中間軸70に伝達される。従って、クランク軸34が逆方向に回転する場合、又は発電機軸74が慣性により一方向に回転している最中にクランク軸34の回転を停止又は減速させた場合には、発電機軸74はクランク軸34と無関係にその時点の回転状態(一方向への回転又は停止)が維持される。
これにより、ペダリングを減速、停止又は逆回転させたときに、第1中間軸70、第2中間軸72及び発電機軸74の慣性力によってペダル38L、38Rが強制的に回転させられることが防止される。また、ペダル38L、38Rを逆方向に回転させる場合には、発電機軸74による負荷や第1中間軸70、第2中間軸72及び発電機軸74の慣性力がなく、極めて軽く回転可能となる。このような特性は、実際の自転車と同様であって現実感が高い。
発電機76は、汎用の直流モータが発電用に用いられている。発電機76のプラス端子76a及びマイナス端子76bは副制御部58に接続されている。第3従動ギア74aの近傍には、正面を通過する第3従動ギア74aの歯を検出する速度ピックアップ78が設けられている。
発電機軸74は実際の自転車における後輪に相当し、副制御部58において、速度ピックアップ78の検出信号に基づいて発電機軸74の回転速度を検出することにより模擬自転車12における模擬的な走行速度Vが得られる。
図5に示すように、副制御部58における負荷制御部としてのチョッパ回路77は、コネクタ80を介して発電機76のプラス端子76a及びマイナス端子76bと接続されており、プラス端子76a及びマイナス端子76bは、プラスライン82及びマイナスライン84と導通している。プラスライン82は、NPN型のトランジスタ86のコレクタ端子に接続されるとともにダイオード88によって保護されている。また、プラスライン82はバイアス抵抗90を介して電源Pに接続されている。マイナスライン84はグランドGに接続されている。
トランジスタ86のベース端子とグランドGとの間には、保護抵抗92及び保護コンデンサ94が設けられ、ベース端子は入力抵抗96を介してコマンド部98に接続されている。トランジスタ86のエミッタ端子はグランドGに接続されており、エミッタ接地回路を構成する。
コマンド部98がハイレベルの信号を出力するときトランジスタ86はオンとなり、発電機76のプラス端子76aとマイナス端子76bはショートする。このとき、クランク軸34及び発電機軸74が回転しているとその回転数に応じて発電機76が発電し、発生した電力が電流として流れて、発電機76は電流に応じた負荷をクランク軸34に与えることができる。また、コマンド部98がローレベルの信号を出力するときトランジスタ86はオフとなり、発電機76のプラス端子76aとマイナス端子76bは絶縁される。このとき、発電機76は電流を流すことができず、負荷が発生しない。
実際上、コマンド部98は、高周波数のPWM(Pulse With Modulation)波形の信号Comを出力し、そのデューティ比(一周期あたりのオン時間の比)に応じて発電機76の負荷を調整するチョッパ駆動を行う。具体的には、図6に示すように、所定の判断により軽負荷時であると判断された区間T1においては、デューティ比を0%とし、中負荷であると判断された区間T2においては、デューティ比を小さく設定する。また、高負荷であると判断された区間T3においては、デューティ比を大きく設定する。運転者は、このデューティ比及びペダリングの回転数に応じてペダル38L、38Rが重く感じられ、実際の自転車を運転している現実感が得られる。
なお、プラスライン82がバイアス抵抗90を介して電源Pに接続されていることにより、発電機76で発生する負荷を軽くすることができるが、必要とされる負荷の大きさに応じて、バイアス抵抗90を省略してもよい。
負荷ユニット42によって発生する負荷は制動力としても作用し、負荷ユニット42は制動手段を兼ねる。負荷ユニット42では、制動のための摺動部がないことから、機械制動により負荷を発生させる型式では必要としていたブレーキパッド等の部品交換が不要である。
さらに、想定されるギア段が高い場合であってペダル38L、38Rを漕いでいるときには、デューティ比を大きく設定することにより運転者に対してペダル38L、38Rの操作を重く感じさせることができ、図示しないシフトレバーの操作に基づいて、模擬的なギアチェンジを行うことができる。この場合、ペダル38L、38Rを漕いでいないときにはデューティ比を0%とし、不自然な制動が行われないようにするとよい。ペダル38L、38Rを漕いでいるか否かは、後述する左近接センサ132L及び右近接センサ132Rから得られる信号に基づいて判断することができる。
図7に示すように、制動指示部44は、ハンドル28に設けられた2つのブレーキレバー100L及び100Rと、ハンドル28からフロントフォーク29に渡るブレーキワイヤ102a、102bと、弾性的に回転可能なプーリ104L及び104Rと、回転センサ106L及び106Rとを有する。ブレーキワイヤ102aとブレーキワイヤ102bは途中でクロスし、両端がそれぞれブレーキレバー100L、100R及びプーリ104R、104Lに接続されている。
ブレーキレバー100L及び100Rが引かれていないときには、プーリ104L及び104Rは凸部108L及び108Rが上方を向くようにスプリング(図示せず)により弾性付勢されている。このとき、ブレーキレバー100L、100Rは、プーリ104L及び104Rにより弾性付勢されて、ハンドル28から離間している。
ブレーキレバー100L、100Rをハンドル28の方向へ引くことによりプーリ104L、104Rは弾性的に回転し、凸部108L及び108Rは下方を向く。プーリ104L、104Rは、凸部108L、108Rがストッパ110L、110Rに当接するまで回転可能である。
プーリ104L、104Rの回転角度は回転センサ106L及び106Rにより検出可能であり、検出された角度信号はそれぞれ副制御部58へ供給される。副制御部58では、検知されたプーリ104L及び104Rの回転角度信号、換言すればブレーキレバー100L及び100Rの操作(以下、ブレーキ操作という)の量に応じた信号に基づいて負荷ユニット42を制御してクランク軸34に制動力を与える。例えば、プーリ104Lの回転角度とプーリ104Rの回転角度の加算値に比例してデューティ比を増大させ、この加算値が最大値となるときに、デューティ比を100%とする。ブレーキ操作がなされていないときには、デューティ比を0%とする。
制動指示部44では、ブレーキ操作が回転センサ106L及び106Rによって電気信号に変換されることから、この操作量が副制御部58で認識可能であって、これに対応した綿密な処理や調整が可能であるとともに、電気的に駆動される負荷ユニット42をブレーキとして兼用することができる。
また、舵角センサ50はヘッドチューブ26の下端部に設けられており、ハンドル28を支持するステム28aの回動角度を検出する。マイクロホン52はハンドル28上に設けられており、運転者の顔に近いことから運転者の声が明瞭に入力される。舵角センサ50、マイクロホン52は副制御部58に接続されており、舵角θBの角度信号及び音声信号を供給する。
図2、図4及び図8に示すように、クランク位置検出部48は、クランク軸34の中心から左右等距離位置に設けられた被検出突起130L及び130Rと、左近接センサ132L及び右近接センサ132Rとを有する。左近接センサ132L及び右近接センサ132Rは、ステー133を介してクランク軸34の近傍に設けられており、検出部の正面近傍をそれぞれ被検出突起130L及び130Rが通過するように配置されている。左近接センサ132L及び右近接センサ132Rは、フレーム20又は所定のケーシングに直接取り付けてもよい。
左近接センサ132L及び右近接センサ132Rは、例えば、ホール素子を用いたセンサであり、被検出物である被検出突起130L及び130Rが検出部の正面にあるときにオンとなる。クランク位置検出部48に左近接センサ132L及び右近接センサ132Rを用いることによって、廉価な構成で且つ簡便にクランクの回転位置を検出できる。
被検出突起130L及び130Rは、それぞれクランク軸34を中心として60°の扇形の突起である。クランク36Lが下方、クランク36Rが上方をそれぞれ向いているとき、被検出突起130Lは、図2における鉛直下方から時計方向に45°の角度(以下、基準角度と呼ぶ)を向き、被検出突起130Rは、基準角度から180°の方向を向くように取り付けられている。
左近接センサ132L及び右近接センサ132Rは、基準角度においてそれぞれ被検出突起130L及び130Rを検出可能な位置に設けられている。つまり、左近接センサ132Lは、クランク軸34が回転する際、被検出突起130Lの中心が基準角度を中心として±30°であるときオンとなり、それ以外のときにはオフとなる。一方、右近接センサ132Rは、クランク軸34が回転する際、被検出突起130Rの中心が基準角度を中心として±30°であるときオンとなり、それ以外のときにはオフとなる。すなわち、左側のクランク36L及びペダル38Lが下方を中心として±30°であるときに左近接センサ132Lがオンとなり、右側のクランク36R及びペダル38Rが下方を中心として±30°であるときに右近接センサ132Rがオンとなる。左近接センサ132L右近接センサ及び132Rで検出されたオン・オフの信号は副制御部58に供給される。
また、図8の二点鎖線で示すように、基準角度から時計方向に90°の位置に被検出突起130Lを検出する左近接センサ133Lと、被検出突起130Rを検出する右近接センサ133Rを設けるようにしてもよい。これにより、左近接センサ133Lがオンとなるときに、クランク36Lが水平前方を向いていることを検出することができ、右近接センサ133Rがオンとなるときに、クランク36Rが水平前方を向いていることを検出することができる。これによって、例えば、画面14aに表示される自転車のクランクの画像及び、運転者の足の画像を実際のクランク36L及び36Rの角度に応じて段階的に変化させてアニメーションのように表示させることができ、より現実的な画像が得られる。
図1に示すように、マットスイッチ16は、独立した左スイッチ150Lと右スイッチ150Rとからなり、運転者が降車したときにフレーム20のフロントチューブ20aを跨いで両足で踏むことができる位置に配置されている。つまり、左足は左スイッチ150Lを踏み、右足は右スイッチ150Rを踏む。左スイッチ150L及び右スイッチ150Rは踏まれることによってオンとなり、該オンの信号を副制御部58へ供給する。
図9に示すように、左スイッチ150Lは、薄いマット状であり、内部には複数の縦電極線162と横電極線166が交差するように設けられている。左スイッチ150Lは足で踏むことによって弾性変形し、縦電極線162と横電極線166がその交差部で接触する。これにより、2本の端子は導通し、オンとなる。また、足を放せば縦電極線162と横電極線166は離間して、オフとなる。
左スイッチ150Lの表面には左足の足形と「LEFT」の文字がプリントされている。右スイッチ150Rは、構造上は左スイッチ150Lと同じであり、表面に右足の足形と「RIGHT」の文字がプリントされている。
このように、左スイッチ150L及び右スイッチ150Rは、運転者の足の荷重を検知する感圧式であるが、運転者が足を着いたことを検知するものであれば、感温式、赤外線式、光学式、静電容量式等のスイッチであってもよい。
図10に示すように、副制御部58は、入力インタフェース部170と、第1通信部174と、負荷制御部としての前記のチョッパ回路77とを有し、主として、模擬自転車12の電気的な機構と主制御部18との間のインタフェース的な作用及び負荷制御作用を奏する。入力インタフェース部170は、マイクロホン52及びの各種センサと接続されており、アナログ信号及びデジタル信号の入力を行う。第1通信部174は、主制御部18との間で各種のデータの授受を行う。
主制御部18は、模擬運転の状況を設定する状況設定部180と、走行状況に応じた演算処理を行う演算処理部182と、モニタ14の表示制御を行う表示制御部184と、スピーカ15の音声出力を行う音声ドライバ186と、運転者に対して所定の警告を行う警告部188と、マイクロホン52から入力された音声を認識する音声認識部190と、第1通信部174との通信制御を行う第2通信部192とを有する。
実際上、主制御部18は制御主体のCPU(Central Processing Unit)、と記憶部としてのROM(Random Access Memory)、RAM(Read Only Memory)、HD(Hard Disk)等を有しており、図10に示す主制御部18の各機能部は、CPUがHDに記録されたプログラムを読み込み、該プログラムをROM、RAM及び所定のハードウェアと協動しながら実行することにより実現される。また、主制御部18は大容量の記憶部194と接続されており、種々のデータの書き込み及び読み取りが可能である。
次に、このように構成される自転車シミュレーション装置10を用いて、自転車の模擬運転を行う方法について図11〜図19を参照しながら説明する。以下の説明は、所定の電源スイッチをオンとして主制御部18及び副制御部58を起動した後に主制御部18と副制御部58が協動的に行う処理に関するものである。また、主制御部18の処理と副制御部58の処理を区別しないで説明し、断りのない限り表記したステップ番号順に処理が実行されるものとする。
図11のステップS1において、マットスイッチ16がオンとなったか否かを確認する。つまり、マットスイッチ16の左スイッチ150L又は右スイッチ150Rの少なくとも一方がオンとなったときにはステップS2へ移り、双方ともオフであるときにはステップS1で待機する。つまり、運転者がマットスイッチ16上に立つと、自動的にステップS2へ移ることとなり、それまでの間はステップS1で待機して所定の省電力モード(例えば、モニタ14をオフにする)にしておくことができる。
ステップS2において、模擬運転を開始し画面14a上に所定の開始画面(図12参照)を表示する。この開始画面では、停止した自転車の画像と該自転車の横に起立した運転者である人物の画像を表示する。また、この画面14aに、「模擬運転を開始します。サドルに座ってペダルを漕いでください。」という文字を表示させ、又は同様の言葉の音声をスピーカ15から発する(以下、まとめて「指示を行う」という)。さらに、「子供用体験コースはハンドルを左に、大人用体験コースはハンドルを右に操作してください。」という指示を行う。
このように、マットスイッチ16を踏むことにより模擬運転を自動的に開始することができ、複雑な操作が不要であって違和感なく模擬運転を開始することができる。また、運転者は、画面14a又はスピーカ15から発せられる指示に従って操作を行えばよく、マニュアル等が不要で容易な操作が可能であり、子供でも模擬運転を行うことができる。
ステップS3において、マットスイッチ16がオフとなったか否かを確認する。つまり、左スイッチ150L又は右スイッチ150Rの双方がオフとなったときにはステップS4へ移り、少なくとも一方がオンであるときにはステップS3で待機する。
すなわち、運転者がサドル24に跨って、マットスイッチ16から足を離すと、自動的にステップS4へ移って、模擬運転における実際の走行を開始することができる。このとき、開始画面を終了するとともに、自転車の画像と該自転車に乗った人物の画像を表示する。
この際、舵角センサθHの信号に基づき、ハンドル28が左に操作されていると認識される場合には子供用体験コースであって、運転者は子供であると判定される。また、右に操作されていると認識される場合には大人用体験コースであって、運転者は大人であると判定され、それぞれコースに応じた所定のフラグをセットする。子供用体験コースと大人用体験コースとでは、音声認識辞書や模擬走行コースが区別される。
ステップS4において、所定の走行条件が成立しているか否かを確認する。走行条件が成立しているときにはステップS5の走行モードへ移り、走行条件が不成立であるときにはステップS6へ移る。
ステップS6において、模擬運転の状況が停止、一時停止又は信号が赤の状況であるか否かを確認する。停止、一時停止又は信号が赤である場合にはステップS7の足つきモードへ移り、それ以外の場合にはステップS8へ移る。
ステップS8において、模擬運転の状況が、横断歩道等の歩行者優先路又は歩道等の歩行者専用路を通過する場合であるか否かを確認する。歩行者優先路又は歩行者専用路を通過する場合には、ステップS9の歩行モードへ移り、それ以外の場合にはステップS10へ移る。歩行モードとは、歩行者専用路等で自転車を押し歩くためのモードであり、例えば、他の歩行者等の迷惑とならないような押し歩きを習得するためのモードである。
ステップS10において、模擬運転の状況が自転車を後退させる状況であるか否かを確認する。後退させる場合にはステップS11の後退モードへ移り、それ以外の場合にはステップS12へ移る。後退モードとは、降車した運転者が自転車を押しながら後退するモードであり、例えば、二段階右折で進行方向を変更する際に交差点の停止位置までやや後退する場合や、狭い路地において自転車の前方の模擬障害物に接近しすぎた場合や、駐輪場への自転車の出し入れ時等の後退動作を行うモードである。
ステップS12において、所定の終了条件が成立しているか否かを確認する。終了条件が成立している場合には模擬運転を終了し、条件が不成立である場合にはステップS2へ戻り模擬運転を続行する。また、ステップS5、S7及びS9の処理の終了後においてもステップS2へ戻る。
模擬運転を終了する場合には、ステップS1と同様に、マットスイッチ16がオンとなったか否かを確認する。この場合、マットスイッチ16がオンとなったことにより、運転者が模擬自転車12から降車したことを検出することができ、これに基づいて模擬運転を終了し、所定の省電力モード等のスタンバイ状態に戻る。なお、ステップS2において、マットスイッチ16がオフとなった後の所定の期間に、模擬自転車12の操作が全くなされない場合には、運転者がマットスイッチ16を一旦踏んだが模擬自転車12に乗ることなく立ち去ったと考えられることから、この場合においてもスタンバイ状態に戻るとよい。
次に、走行モードについて説明する。走行モードとは、運転者がサドル24に座りながらペダル38L及び38Rを漕ぐとともにハンドル28を操作して、模擬走行を行うためのモードである。
図13に示すように、走行モード(図11のステップS5)では、先ず、ステップS101において、データ入力処理を行う。この入力処理では舵角センサ50、回転センサ106L、106R、速度ピックアップ78、左近接センサ132L、右近接センサ132Rの信号を読み取る。このうち、アナログ信号については所定のAD変換を行い、デジタル化したデータを読み込む。
また、この入力処理では、速度ピックアップ78から入力されるデータをFV変換して模擬的な走行速度Vを求める。この際、想定されるギア段が高いときには、FV変換により求められた発電機軸74の回転速度に対してギア段に対応した速度係数を乗算して走行速度Vを求める。
さらに、必要に応じて走行距離、最大速度、平均速度、走行時間等を求め、画面14aに表示するとよい。さらにまた、必要に応じて左近接センサ132L、右近接センサ132Rからクランク軸34の回転数を求めて、画面14aに表示してもよい。このクランク軸34の回転数に応じて、画面14a上の運転者の足の回転速度を変えて表示すると、より現実的な画像が得られる。クランク軸34の回転数を適当な値に保持することは自転車の長距離走行時において身体的に重要なことであり、クランク軸34の回転数を画面14a上に表示するとトレーニングの用途として好適である。
走行速度Vは、必ずしも速度ピックアップ78により求められるものでなくても、運転者がペダル38L及び38Rを漕ぐことによって発生するパラメータに基づくものであればよく、例えば、クランク軸34の回転数とブレーキ操作の量を示す回転センサ106L及び106Rの信号から推定するようにしてもよい。
ステップS102において、音声認識部190の作用下に音声入力処理を行い、マイクロホン52から入力された運転者の音声を認識する。
ステップS103において、クランク軸34に対する負荷制御を行う。この負荷制御では、模擬運転の状況が加速時又は登坂時である場合には負荷を増大させ、平坦走行時又は下り走行時である場合には負荷を軽減させる。また、回転センサ106Lの信号と回転センサ106Rの信号の加算値に略比例させて負荷を増大させる。回転センサ106L及び106Rの信号はブレーキ操作と連動することから、これらのブレーキ操作により負荷が増大して制動作用を奏する。
クランク軸34に対する負荷制御は、前記のとおりチョッパ回路77におけるトランジスタ86の微小時間毎のオン、オフ切換動作により、発電機76の発電電流が変化することにより行われる。
ステップS104において、走行状況がコーナリング(曲がり角の走行及びUターン等を含む)中である場合のコーナ制御を行う。このコーナ制御は、例えば、走行速度V、バンク角θB及びクランク36L又は36Rの向きを考慮して、クランク36Lの先端に設けられたペダル38L又はクランク36Rの先端に設けられたペダル38Rが路面と擦れているか否かを判断する処理を行う。ペダル38L又は38Rが路面と擦れていると想定される場合には警告を発することにより、運転者に対して不正確な運転をしないように自転車の基礎的な運転方法を習得させることができる。
この警告の方法は選択的にしてもよく、例えば、電子的な警告音を発したり、音声又は文字表示で「ペダルが路面と擦れています。」と知らせるようにしてもよい。また、自転車シミュレーション装置10をゲーム用として使用する場合には、スコアの減点処理を行うとよい。
ステップS105においては、所定の条件を調べることにより走行モードを終了するか否かを判断する。続行する場合にはステップS101へ戻る。
なお、この走行モードの実行中においては、マットスイッチ16の信号を調べ、走行速度Vが0でない走行中に、マットスイッチ16がオンとなったときには、「走行中に足を着かないでください。」という指示を行うとよい。自転車シミュレーション装置10の模擬運転を終了する際には、運転者はマットスイッチ16を踏むだけで足り、特別な操作を行う必要がない。
一方、図13に示した走行モードの処理とは別に、マルチタスク処理によって表示制御部184の処理が同時並行的に実行される。この表示制御部184では、走行モードの実行部とデータの授受を行いながら実行され、画面14aに表示する情景を変更するための制御を行う。この表示制御では、ステップS101で求めた走行速度V及び、舵角センサ50により検出されるハンドル28の舵角θHに基づいて画面14aに表示する情景をリアルタイムで変更する。
また、画面14aに表示される情景の視点は、ステップS102で得られた音声に基づいて変更され、該音声が「ひだり」であるときには、運転者の左方と想定される情景を表示し、「みぎ」であるときには、右方と想定される情景を表示する。音声が「まえ」であるときには、前方の表示に戻す。
さらに、音声が「うえ」であるときには、斜め後方から鳥瞰視点で前方をみた情景を自転車の画像及び該自転車に搭乗した人物の画像とともに表示させる。音声が「した」であるときには、運転者自身の視点で前方をみた情景を表示させる。音声が「こうほう」(後方)であるときには、後方を走る仮想車両から前方をみた情景を表示させる。
この表示制御部184は、足着きモード、歩行モード及び後退モードにおいてもマルチタスクとして同時並行的に実行され、画面14aの表示をリアルタイムで行う。
次に、足着きモードについて説明する。足着きモードとは、運転者に対して、一時停止箇所等で停止させるとともに足を路面に着かせて、安全確認等の動作を行わせるためのモードである。
図14に示すように、足着きモード(図11のステップS7)では、ステップS201及びステップS202において、ステップS101及びステップS102(図13参照)と同様のデータ入力処理及び音声入力処理を行う。
次いで、ステップS203において、走行速度Vが0であるか否かを確認する。走行速度Vが0でないときには、ステップS204において警告処理を行い、その後ステップS201へ戻る。つまり、走行速度Vが0となるまでステップS201〜S204を連続的に行いながら待機する。走行速度Vが0であるときには次のステップS205へ移る。
ステップS204における警告処理とは、例えば、「ブレーキをかけて停止して下さい。」等の指示を行う。また、模擬運転の状況が、交差点等における停止線をオーバしたと判断されたときには、より高レベルの警告として、大きい音量の警告や、より強調された表示の警告を行い、又は模擬運転を中断するようにしてもよい。
ステップS205において、ステップS1と同様に、マットスイッチ16がオン(つまり、左スイッチ150L、右スイッチ150Rの少なくとも一方がオン)となったか否かを確認する。マットスイッチ16がオンとなったときにはステップS207へ移り、オフであるときにはステップS208へ移る。
ステップS206において、表示制御部184により自転車の画像と該自転車のサドルに着座したまま路面に足を着いた人物の画像(図15参照)を画面14aに表示する。また、画面14aに「左右の安全確認をして下さい。」という指示を行う。
このステップS206では、例えば、確実に左右を確認させるために、運転者に「左」、「右」と発声させるようにしてもよい。この場合、音声を音声認識部190で認識し、一時停止箇所における左右の画像を画面14aに表示させ、これらの画像に接近する車両が表示されているときには、再発進を禁止するようにするとよい。
ステップS207において、足着きモードが解除されたか否かを確認し、非解除であるときにはステップS201へ戻り足着きモードの処理を続行し、解除されたときには足着きモードの処理を終了する。足着きモードは、例えば、模擬運転の状況上、信号が赤から青に変わったとき、又は、左右の安全確認が確実になされたときに解除される。
一方、ステップS208では、走行速度が0となっているが運転者が足を着いていない状態であり、マットスイッチ16の信号に基づいて足着き警告を行う。このように足着き警告を行うことにより、減速するだけ、又は一瞬停止して足を着かずに再発進するようなことを抑制して、一時停止の標識のある箇所では足を着いて確実に停止することを習得することができる。
この足着き警告は、図16に示すように、表示制御部184において、自転車及び自転車に搭乗した人物が傾斜する画像を画面14aに表示させ、「警告」、「完全に停止して足を着いて下さい。」等の指示を行うとよい。この場合、運転者がマットスイッチ16に足をついたときには、自転車の画像を正立させて警告を解除する(図15参照)。
ステップS209において、ステップS207と同様に、足着きモードが解除されたか否かを確認し、解除されたときには足着きモードの処理を終了し、非解除であるときにはステップS205へ戻る。
上記したように、本実施の形態に係る自転車シミュレーション装置10によれば、ペダル38L、38Rを漕ぐことによって発電機76が回転、発電し、得られた電力は副制御部58に供給され、想定されている状況(走行路の傾斜やブレーキ操作)やモードに応じて、チョッパ回路77により抑制されながら電流として通電される。従って、運転者のペダリングに応じた負荷を発生させることができる。また、発電機76は汎用の小型のモータであることから、自転車シミュレーション装置10を小型軽量且つ廉価に実現することができる。
発電機76は、負荷によって摩耗する部分がなくメンテナンス性に優れ、しかも、機械的騒音の少ない静粛な運転が可能である。
さらに、発電機76は負荷を発生させるための電力が不要であり、逆に発電するため省エネルギ化が図られる。発電した電力は所定の二次電池等に蓄えることによりモニタ14、主制御部18、副制御部58等に供することができる。また、発電機76で発生する負荷は制動手段を兼ねるため、摩擦式ブレーキ機構が不要である。
クランク軸34の回転は増速されて発電機76に伝達されている。発電機76が発生するトルクは回転数に応じて増大することから、発電機76は小型で廉価のもので足り、負荷ユニット42の小型軽量化が図られる。
また、発電機76は、クランク軸34の後斜め下方に設けられており、サドル24下のデッドスペースが有効に利用されるとともに、運転者の視界に入ることがなく違和感を与えることがない。クランク軸34の回転は歯車機構である第1中間軸70、第2中間軸72及び発電機軸74により発電機76に伝達されており、クランク軸34と発電機76との距離が近く設定され、しかも回転を伝達するための後輪が不要であることから、チェーン等の遠距離用動力伝達手段が不要でコンパクト且つ廉価である。負荷ユニット42内においては、駆動力の伝達機構に歯車機構を用いているため、チェーンを用いる場合の伸び調整が不要で、メンテナンス性に優れる。
次に、前記のチョッパ回路77に代えて用いられる負荷制御部としてのコンデンサ制御回路200(図17参照)及び抵抗制御回路210(図19参照)について説明する。
図17に示すように、コンデンサ制御回路200は、コネクタ80を介して発電機76のプラス端子76a及びマイナス端子76bと接続されており、プラス端子76a及びマイナス端子76bは、プラスライン82及びマイナスライン84と導通している。プラスライン82は大容量コンデンサ202を介してグランドGに接続され、マイナスライン84は直接的にグランドGに接続されている。つまり、プラス端子76aとマイナス端子76bとの間に大容量コンデンサ202が接続されている。このように、コンデンサ制御回路200は、プログラム動作する部分がなく、しかも部品点数が少ない簡便且つ廉価な回路である。
コンデンサ制御回路200を負荷制御部として用いる場合には、図18に示すように、漕ぎだし時の時刻t0においては大容量コンデンサ202は放電されており、充電電圧Vcは略0であって大電流が通電可能である。従って、時刻t0においてペダル38R、38Lに発生する負荷Lは大きい。ペダル38R、38Lを漕ぎ始めると充電電圧Vcは一次遅れ応答の波形で上昇し、漕ぐ力が一定であるときには、次第に一定値に収束する。このとき、負荷Lは充電電圧Vcと同じ波形に沿って減少し、ペダル38R、38Lは軽く感じられるようになる。すなわち、コンデンサ制御回路200によれば、実際の自転車と同様に、漕ぎ出しの加速時にはペダル38R、38Lが重く感じられ、加速するにともなって次第にペダル38R、38Lが軽く感じられるようになり、より現実感が得られる。
また、ペダル38R、38Lを漕ぐことを停止した時刻t1以降は、大容量コンデンサ202に充電された電力は、発電機76内のコイルに流れ込んで次第に放電する。この放電にともなって、充電電圧Vcは減少し、再びペダル38R、38Lを漕ぎ始めるときの負荷Lが大きくなる。
なお、図18における負荷Lの軸は上方が小となるように設定している。また、充電電圧Vcを計測して定数倍し、模擬的な走行速度Vとして用いてもよい。
次に、抵抗制御回路210について説明する。図19に示すように、抵抗制御回路210は、コネクタ80を介して発電機76のプラス端子76a及びマイナス端子76bと接続されており、プラス端子76a及びマイナス端子76bは、プラスライン82及びマイナスライン84と導通している。プラスライン82は、第1負荷抵抗212を介して第1スイッチング素子214の開閉部214aの一端に接続されるとともに、第2負荷抵抗216を介して第2スイッチング素子218の開閉部218aの一端に接続されている。開閉部214a及び218aの他端はグランドGに接続されている。第1スイッチング素子214及び第2スイッチング素子218は、それぞれコマンド部220に接続されており、該コマンド部220の作用下に開閉部214a及び218aが開閉される。第1負荷抵抗212の抵抗値は第2負荷抵抗216の抵抗値より大きい値に設定されている。第1スイッチング素子214及び第2スイッチング素子218は、例えば、リレーを挙げることができる。
抵抗制御回路210を負荷制御部として用いる場合には、ペダル38R、38Lを漕ぎだす際に、コマンド部220の作用下に第1開閉部214a及び第2開閉部218aをそれぞれ閉じておき、発電機76で発生した電流が第1負荷抵抗212及び第2負荷抵抗216を通ってグランドGに流れるようにする。これにより、大電流が通電可能であって、ペダル38R、38Lに発生する負荷は大きくなる。
次に、第1開閉部214aを開き、第2負荷抵抗216のみを通電可能とすることにより通電容量をやや抑制し、負荷を減少させる。
次いで、第1開閉部214aを閉じるとともに、第2開閉部218aを開き、第1負荷抵抗212のみを通電可能とする。第1負荷抵抗212の抵抗値は第2負荷抵抗216の抵抗値より大きいため、通電容量がさらに抑制され、負荷はより減少する。
さらに、第1開閉部214a及び第2開閉部218aをそれぞれ開き、プラスライン82とグランドGとを遮断する。これにより、通電がなくなり負荷は非常に軽くなる。結局、抵抗制御回路210によれば、漕ぎ始め時から負荷は段階的に減少してペダル38R、38Lが次第に軽く感じられるようになり、実際の自転車と略同じ負荷変動が得られる。また、抵抗制御回路210は、抵抗やリレー等の汎用部品によって簡便且つ廉価に構成可能である。
抵抗制御回路210では2つの負荷抵抗を設けているが、n個の負荷抵抗とそれに対応するスイッチング素子とを設け、組合せにより2n通りの通電状態を実現し、負荷をより細かく制御してもよい。
負荷制御部は、チョッパ回路77(図5参照)、コンデンサ制御回路200(図17参照)及び抵抗制御回路210(図19参照)に限らず、例えば、これらの回路を組合せた複合的な回路にしてもよい。
自転車シミュレーション装置10で模擬運転上の対象となる自転車は、三輪式自転車又はモータアシストサイクル等でもよく、少なくともハンドル、ペダル及びクランク等の自転車の基礎的構成部分を有するものであればよい。
発電機76は直流モータに限らず、例えば、三相交流モータを用いてもよい。
本発明に係る自転車シミュレーション装置は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。