(第1の実施の形態)
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
第1の実施の形態において、生体採取手術システムを使った血管採取手術方法、生体採取手術システムの構成及び本発明の生体組織切断用器具であるハーベスタの順に説明する。
先ず、生体採取装置を使った採取対象組織である静脈摘出手術方法について、図1から図6を用いて、血管の採取の手術の方法を説明する。
図1は、皮下血管を牽引して採取する手術方法を説明するためのフローチャートである。図2から図6は、その手術方法を説明するための図である。図1に従って、図2から図6を用いて、血管の採取の手術の方法を説明する。
心臓のバイパス手術において、下肢の採取対象組織である血管がバイパス血管用に利用される。そのバイパス用に用いられる、採取対象血管である下肢の大腿部から足首に亘る大伏在静脈(以下、単に、血管ともいう)を全長に亘って採取する場合について説明する。なお、その採取に用いられる器具である、ダイセクタ31、トロッカ21、ハーベスタ41の詳細な構成は、後述する。さらに、ダイセクタ31とハーベスタ41には、内視鏡が挿通できるようになっており、術者は、その内視鏡画像を見ながら、血管の採取を行うことができる。内視鏡は、後述する図7に示す硬性内視鏡51であり、接眼部に接続されたテレビカメラヘッドを介して、テレビモニタ102に接続され、テレビモニタ102の画面上に内視鏡画像が表示される。硬性鏡の先端部からは照明光が照射され、皮下の組織、血管11を照明することができる。
図2に示すように、採取対象血管11は、下肢12の鼠径部13と、足首14との間に存在する。採取する血管11は、例えば60cmの長さであるとする。
まず、術者は、その血管11の位置を特定する(ステップ(以下、Sと略す)1)。血管11の位置は、術者の触感によって、あるいはソナーなどの機器を用いて、特定する。次に、その血管11の管の方向に略沿って、特定した血管11の直上であって、膝15の少し下に、術者は、メス等によって一箇所、例えば切り口の長さが2.5cmの皮切部16を設ける(S2)。続いて、皮切部16において、その血管11を露出させ、血管11の周辺の組織を剥離する(S3)。
次に、ダイセクタ31を用いて血管11の全長にわたって周辺の組織の剥離が行われる(S4)。具体的には、術者は、皮切部16にトロッカ21をセットし、ダイセクタ31を、トロッカ21の案内管部22に通して、内視鏡画像を見ながら、皮切部16から鼠径部13の方向(矢印A1で示す)に徐々に挿入して、血管11を周辺の組織から鈍的に剥離していく。内視鏡画像は、術者が血管11に沿って周辺組織を剥離していくために、術者にとって必要なものである。
血管11の周辺組織を剥離するとき、例えば、血管11に対して皮膚表面方向を上とすれば、術者は、血管11の上下方向を剥離し、さらに左右方向を剥離することによって、血管11の全周に渡って周辺組織を完全に剥離することができる。血管11の全周に渡って剥離することによって、血管11の側枝が内視鏡画像において良く見えるようになる。
鼠径部13の方向における、血管11の周辺組織からの剥離が終わると、ダイセクタ31をトロッカ21から引き抜く。次に、皮切部16のトロッカの向きを変え、皮切部16から、ダイセクタを、足首14の方向に(矢印A2で示す)徐々に挿入して、内視鏡画像を見ながら、血管11を周辺の組織からの剥離を行う。
図3は、ダイセクタが、鼠径部13方向に皮切部16からトロッカ21を介して下肢12の皮下へ挿入された状態を示す断面図である。トロッカ21は、ダイセクタ31の挿入部32を挿通させるための筒状の案内管部22と、シール部23と、皮膚に固定するための固定部24とからなる。トロッカ21を皮切部16にセットするときは、案内管部22を、皮切部16から鼠径部方向に挿入し、固定部24によって皮膚に固定する。ダイセクタ31の挿入部32は、固定部24によって皮切部16に固定されたトロッカ21の案内管部22を通して、下肢12の皮下に挿入されている。後述するように、挿入部32の中には、内視鏡挿入部が挿入されている。ダイセクタ31の挿入方向は、血管11の方向に沿っているので、術者は、内視鏡画像を見ながら、血管11の周辺の組織を血管11から剥離するように徐々に挿入していく。すなわち、その挿入は、皮切部16から血管11に沿っていきなり鼠径部13の下まで行われない。ダイセクタ31を挿入方向に沿って進退させながら、徐々に鼠径部13までの血管11と、足首14までの血管11の剥離が行われる。
このとき、ダイセクタ31に設けられた送気コネクタにより、所定の気体、例えば、二酸化炭素ガスが、ダイセクタ31の把持部33に接続された送気チューブ34から送り込まれ、挿入部32の先端部に設けられた開口部35aから噴き出る。従って、血管11が周辺の組織から剥離されると共に、所定の気体、例えば、二酸化炭素ガスが剥離した組織と血管の間に介在するようになるので、内視鏡の術野が広がって、視認性が良くなり、術者は、剥離作業がし易くなる。
次に、ダイセクタ31を、トロッカ21から抜き取り、トロッカ21はそのままにして、ハーベスタ41(図5参照)を挿入して、皮切部16から足首14までの間の血管11の側枝の切断が行われる(S5)。
なお、側枝11Aの切断は、ハーベスタ41を皮切部16からまず足首14の下まで挿入して、足首14から皮切部16に向かって、血管11の側枝11Aを1本ずつ切断していく。
その側枝11Aの切断は、ハーベスタ41の挿入部42の先端部に設けられた電気メスであるバイポーラカッタ43によって行われる。バイポーラカッタ43によって切断された側枝11Aは、切断部は、略止血された状態となる。ハーベスタ41を用いて、足首14までの間の血管11の側枝11Aの全てが切られる。
ハーベスタ41の構成については後述するが、ここでは簡単にその構成について説明する。血管11はハーベスタ41の先端に設けられた血管保持部であるベインキーパ45に引掛けられるようになっている。血管11をベインキーパ45に引掛けるときは、ベインキーパ45の一部を開け、開いた場所に血管11を引掛け、引掛けた後に、その開けた一部を閉じるような機構を、ハーベスタ41のベインキーパ45は有している。さらに、ベインキーパ45は、ハーベスタ41の軸方向に可動式であり、内視鏡の先端部からベインキーパ45を離す方向に動かすことができるので、引掛けた血管11を、内視鏡画像において見易くすることができる。
また、バイポーラカッタ43の先端部には、0.5mm幅の溝が形成されており、側枝11Aを切断するときは、側枝11Aを押し込むようにその溝に入れることによって、側枝11Aは圧縮された状態において切断される。さらにまた、ハーベスタ41の先端には、ワイパーガード部によって囲まれた内側に硬性鏡の先端部の窓部に付着した付着物を拭き取るためのワイパーが設けられている。そして、円筒形状のワイパーガード部の一部には、ワイパーによって拭き取られた付着物を外に掃き出すための掃き出し孔が設けられている。その付着物としては、血液、脂肪、電気メスによる煙等がある。
ハーベスタ41にも送気コネクタが設けられており、二酸化炭素のガスが、ハーベスタ41の把持部400に接続された送気チューブ44から送り込まれ、挿入部42の先端部に設けられた開口部(図示せず)から噴き出る。従って、血管11の側枝11Aの切断処置がし易くなる。
なお、側枝11Aは、血管11に複数存在するので、術者は、ハーベスタ41の挿入部42の先端における内視鏡画像を見ながら、ハーベスタ41の先端部のベインキーパ45を操作して血管11を保持し、側枝11Aを一つ一つ確認しながら、バイポーラカッタ43によって側枝11Aを切る。ベインキーパ45の構造についても後で詳述する。
次に、足首14に、例えば切り口の長さが1cm以下の小さな皮切を施し、その皮切部17から血管11の末端部を引き出して、糸をかけるか、鉗子を留置し、末端部の処置を行う(S6)。この場合、皮切部16の近傍にあるハーベスタ41を再度足首14の皮下まで挿入し、術者は、内視鏡によって、皮切部17の皮下の血管11と鉗子を見ながら、鉗子で血管11をつまんで、皮切部17から血管11を引き出す。
図4にその血管11の末端部の処置を説明するための図である。血管11の末端部の処置は、血管11の一部を糸で結び、その結び目11aよりも膝15側の位置11bにおいて血管11を切る。なお、皮切部17における皮切は、その後、術者等は、テープ等で皮切部17を閉じることによって行われる。
血管11の末端部の処置において、術者は、内視鏡によって、皮切部17の皮下の血管を見ながら、皮切部17から血管11を引き出す。
続いて、ハーベスタ41を、トロッカ21から抜き取り、皮切部16のトロッカ21の案内管部22の向きを鼠径部13の方向に変え、ハーベスタ41を挿入して、皮切部16から鼠径部13までの間の血管11の側枝の切断が行われる(S7)。S6で行ったように、術者は、内視鏡画像を見ながら、皮切部16から鼠径部13までの血管11の側枝11Aを切断する。
なお、ここでも、側枝11Aの切断は、ハーベスタ41を皮切部16からまず鼠径部13の下まで挿入して、鼠径部13から皮切部16に向かって、血管11の側枝11Aを1本ずつ切断していく。
図5は、ハーベスタが、皮切部16からトロッカ21を介して下肢12の皮下へ挿入された状態を示す断面図である。ハーベスタ41の挿入部42は、固定部24によって皮切部16に固定されたトロッカ21の案内管部22を通して、下肢12の皮下に挿入されている。後述するように、挿入部42の中には、内視鏡挿入部が挿入されている。ハーベスタ41の挿入方向は、血管11の方向に沿っているので、術者は、内視鏡画像を見ながら、血管11の側枝11Aを切断する。
血管11の側枝11Aの切断が終了すると、図4に示すように、鼠径部13に、例えば切り口の長さが1cm以下の小さな皮切を施し、その皮切部18から血管11の末端部を引き出して、糸をかけるか、鉗子を留置し、末端部の処置を行う(S8)。この場合も、皮切部16の近傍にあるハーベスタ41を再度鼠径部13の皮下まで挿入し、術者は、内視鏡によって、皮切部18の皮下の血管11と鉗子を見ながら、鉗子で血管11をつまんで、皮切部18から血管11を引き出す。足首14の皮切部17において処置したように、血管11の末端部の処置は、血管11の一部を糸で結び、その結び目11cよりも膝15側の位置11dにおいて血管11を切る。なお、皮切部18における皮切も、その後、術者等は、テープ等で皮切部18を閉じることによって行われる。
そして、術者は、図6に示すように皮切部16から、例えば60cmの血管11を摘出する(S9)。図6は、皮切部16から血管11を摘出する状態を説明するための図である。血管11の摘出が終わると、続いて、摘出された血管11に孔が開いていると、バイパス用の血管としては利用できないので、術者は、血管11の漏れ検査を行う(S10)。
漏れ検査を行いながら、術者は、血管11の全ての側枝11Aの部分に糸結びを施し、先端が切断された側枝11Aの先端部から血液が漏れることのないようにする。このように、全ての側枝11Aの部分に糸結びが施された状態において、血管11内の弁の方向を考慮して、血管11の一端にシリンジを付けて、生理食塩水を血管11内に通し、生理食塩水が漏れ出す孔があるか否かによって、術者は、血管11の漏れ検査を行う。
生理食塩水が漏れ出している箇所があれば、その箇所の孔を縫合する(S11)。最後に、皮切部16の縫合を行う(S12)。
以上のように、従来の、下肢12の鼠径部13から足首14まで血管11が全て見えるように、下肢12の所定の部位の組織を切開するという手術に比べ、上述した内視鏡を用いて血管を摘出する方法は、例えば、皮切部が3つだけであり、患者に対して低侵襲である。例えば、手術後、患者が歩行できるようになるまでの期間を短縮できる可能性がある。
次に、図7を用いて、生体採取手術システムを説明する。
図7は、上述した手術に用いられる装置、器具等からなる生体採取手術システムの構成を示す構成図である。生体採取手術システム(以下、単に手術システムと略記する。)101は、上述したトロッカ21、生体剥離用機器であるダイセクタ31、生体組織切断用器具であるハーベスタ41及び内視鏡である硬性内視鏡51を含む。手術システム101は、さらに、表示装置であるテレビモニタ102と、カメラコントロールユニット(以下、CCUという)103と、テレビカメラ装置104と、光源装置105と、ライトガイドケーブル106と、電気メス装置107と、送気装置108とを含む。
硬性内視鏡51のライトガイドコネクタ部52には、ライトガイドケーブル106の一端が接続される。ライドガイドケーブル106の他端は、光源装置105に接続される。硬性内視鏡51には、光ファイバのライトガイドが挿通されたライトガイドケーブル106を介して、光源装置105からの光が供給され、硬性内視鏡51の先端部から、被写体への照明が行われる。硬性内視鏡51の基端側の接眼部53には、テレビカメラ装置104のテレビカメラヘッド部が接続される。テレビカメラ装置104は、CCU103に接続され、硬性内視鏡51によって得られた被写体の画像が、接続されたテレビモニタ102の画面上に表示される。
硬性内視鏡51の先端挿入部54は、ダイセクタ31の基端側からダイセクタ31の硬性鏡挿入チャネル36に挿入することができる。同様に、硬性内視鏡51の先端挿入部54は、ハーベスタ41の基端側からハーベスタ41の後述する挿入部42内に挿通する硬性鏡挿入チャネル46に挿入することができる。
ダイセクタ31の送気チューブ34は、送気装置108に接続され、送気装置108からの所定の気体、例えば、二酸化炭素ガスの供給を受け、送気出口である開口部35aから放出する。
ハーベスタ41の送気チューブ44も、送気装置108に接続され、送気装置108からの所定の気体、例えば、二酸化炭素ガスの供給を受け、送気出口である開口部(図7では図示せず)から放出する。
また、ハーベスタ41は、バイポーラカッタ43用の電気的ケーブル47を有し、その電気的ケーブル47の基端端に設けられたコネクタによって、電気メス装置107に接続される。
このような構成を有する手術システム101を利用して、術者は、上述した手術を行うことができる。
次に、図8から図18を用いて、本発明の生体組織切断用器具であるハーベスタについて説明する。
図8は、ハーベスタ41の側面図である。ハーベスタ41の金属製の挿入部42の先端には、上部にはバイポーラカッタ43が、また下部内側には保持子であるベインキーパ45が設けられており、挿入部42の基端に連設された把持部400に設けられているバイポーラカッタレバー401及びベインキーパレバー402を長手軸に沿って進退させると、この進退に連動してバイポーラカッタ43及びベインキーパ45を挿入部42の前方に進退させることができるようになっている。
図9は、ハーベスタ41の基端側の構成を説明する部分斜視図である。ハーベスタ41の基端側の構成は、図9に示すように硬性内視鏡51をハーベスタ41の基端部に容易にかつ確実に固定するために、ハーベスタ41の基端部400aの内周面には、案内溝400bが、ハーベスタ41の軸方向に沿って設けられている。さらに、その案内溝400bには、固定部材400cがネジによって固定されている。固定部材400cは、金属の板状部材をコの字形状に折り曲げられ、さらに、コの字の両端部は、コの字の内側に向かって凸状部を有するように折り曲げられている。一方、硬性内視鏡51の接眼部53の先端側には、図示しない凸部が設けられている。
さらに、基端部400aには、切欠き部400dが設けられ、ライトガイドコネクタ部52が、切欠き部400dに沿って移動できるようになっている。
硬性内視鏡51をハーベスタ41の基端部から挿入するとき、その硬性内視鏡51の凸部が図9に示す基端部400aの内周面に設けられた案内溝400bに沿って、かつライトガイドコネクタ部52が切欠き部400dに沿って、入るように、ハーベスタ41の基端部に硬性内視鏡51を挿入する。硬性内視鏡51をハーベスタ41の基端部から挿入していくと、硬性内視鏡51の凸部は、案内溝400bの内側に沿って移動し、固定部材400cの弾性力に抗して金属の固定部材400cの凸状部を、越える。このとき、ライトガイドコネクタ部52も、基端部400aに設けられた切欠き部400dに沿って、移動する。
従って、ハーベスタ41の基端部から硬性内視鏡51を挿入するときは、ライトガイドコネクタ部52を切欠き部400dに入るようにし、かつ硬性内視鏡51の凸部を案内溝400bに入るように、ハーベスタ41と硬性内視鏡51の位置関係をセットしてから、硬性内視鏡51をハーベスタ41に挿入する。硬性内視鏡51をハーベスタ41に挿入していくと、途中で硬性内視鏡51の凸部が、固定部材400cによって挟まれるように係合して固定され、かつ固定部材400cの弾性力によって容易には抜け落ちないようになる。
また、係合して固定される際に、係合された硬性内視鏡51とハーベスタ41との間で、「カチッ」という音が生じるため、使用者は、セットされたことを音で確認することができる。
図10はハーベスタ41の先端の構成を示す部分斜視図、図11は図10のロック軸414の作用を説明する図、図12は図10の矢印Aから見た矢視図である。
図10に示すように、ハーベスタ41のベインキーパ45は、略コの字形状の血管保持台411を長手軸方向に進退可能に保持するベインキーパ軸412と、ベインキーパ軸412に平行で略コの字形状の血管保持台411に血管を収納する閉空間413を形成する血管保持台411に対して長手軸方向に進退可能なロック軸414とから構成され、該ロック軸414は、図10の状態では、ベインキーパ軸412と同様に血管保持台411にロックされた状態で空間413を形成するが、該ロック軸414のロック状態を解除することにより図11に示すように閉空間413を解放し閉空間413内に血管11を収納可能に進退できるようになっている。
バイポーラカッタ43が設けられる挿入部42の先端側面は切り欠き415が設けられ、バイポーラカッタ43を進退させるカッタ軸(後述)が切り欠き415を経て挿入部42を内挿されている。切り欠き415の内壁面には断面が円弧形状のガード部416が設けられ、また挿入部42の先端内面には硬性内視鏡51の先端部の窓部に付着した付着物を拭き取るためのワイパー417が設けられている。そして、ワイパー417の一端を軸としてワイパー417の他端がガード部416内側をスイープすることで、ワイパーガード部が形成されている。そして、円筒形状のワイパーガード部の一部には、ワイパー417によって拭き取られた付着物418(図12参照)を外に掃き出すための掃き出し孔419aが設けられている。その付着物418としては、血液、脂肪、電気メスによる煙等がある。
なお、ワイパー417は、ワイパー軸(図示せず:図16参照)を介してワイパーレバー419(図8参照)によりスイープする。
図10の矢印Aから見た矢視図である図12に示すように、挿入部42の先端面より所定の内側に硬性内視鏡51が挿通する硬性鏡挿入チャネル420の開口部と送気を行う送気チャネル421の開口部が隣接して設けられている。
図13はハーベスタ41の作動構成を示す長軸方向の断面図であり、図14は図13の矢印Aから見たベインキーパレバー402の取り付け概念図である。
図13に示すように、ハーベスタ41の軸方向に沿って、硬性鏡挿入チャネル420を形成する金属の管部材420aが、把持部400の基端側から挿入部42の先端部までハーベスタ41の内部に挿通されている。バイポーラカッタ43は、把持部400に設けられているバイポーラカッタレバー401と挿入部42を挿通するバイポーラ軸450により連結されており、バイポーラカッタレバー401を長手軸に沿って進退させると、この進退力がバイポーラ軸450を介してバイポーラカッタ43に伝達され、バイポーラカッタ43を挿入部42の前方に進退させることができるようになっている。
同様に、ベインキーパ45は、把持部400に設けられているベインキーパレバー402と挿入部42を挿通するベインキーパ軸412により連結されており、ベインキーパレバー402を長手軸に沿って進退させると、この進退力がベインキーパ軸412を介してベインキーパ45に伝達され、ベインキーパ45を挿入部42の前方に進退させることができるようになっている。
ベインキーパレバー402とベインキーパ軸412は、把持部400の内面をピン押圧するクリック機構451により把持部400の内面を一体的に移動可能であって、クリック機構451が把持部400の内面に設けられた例えば3つのクリック溝452のいずれかに位置すると、その位置にベインキーパレバー402及びベインキーパ軸412を安定して保持することができ、また、長手軸に力を作用させることで、容易にクリック機構451をクリック溝452から脱出させることができるようになっている。
ベインキーパレバー402はロックレバー453と着脱自在に連結されており、ロックボタン454を押下することで、ベインキーパレバー402はロックレバー453とを分離することができるようになっている。このロックレバー453は、ロック軸414と連結されており、ベインキーパレバー402と分離された状態でロックレバー453を進退させることで、閉空間413内に血管11を収納可能に進退できるようになっている(10及び図11参照)。
なお、図14に示すように、ベインキーパレバー402はネジ460と接着によりベインキーパ軸412に強固に固定されている。
図15はハーベスタ41の送気構成を示す長軸方向の断面図であり、図16は図15のA−A線断面を示す断面図である。
図15に示すように、ハーベスタ41の軸方向に沿って、送気チャネル421を形成する金属の送気パイプ461が、把持部400の基端側から挿入部42の先端部までハーベスタ41の内部に挿通されている。把持部400の基端側の送気パイプ461の一端には把持部400内において送気チューブ44が嵌入され、送気チューブ44の基端には、送気コネクタ44aが設けられており、送気コネクタ44aは、送気装置108に接続されたチューブのコネクタに接続される。
上述したように、本実施形態では、図17に示すように、ベインキーパレバー402を進退させることで、ベインキーパ45を先端において進退させることができるため、例えば、側枝11Aの切断時の内視鏡画象が図18に示すような画像で側枝11Aの状態が確認しにくい場合は、図19にようにベインキーパレバー402を長手軸方向に前進させることで、ベインキーパ45も先端より前進し、図19に示すように側枝11Aの状態の確認に適した内視鏡画象を視認することができる。
次に、図20から図24に基づいて、ハーベスタ41の内部に挿通されているバイポーラカッタ43について説明する。
図20は、バイポーラカッタ43の先端部分の分解斜視図、図21はバイポーラカッタ43を上面から見た上面図、図22は、バイポーラカッタ43を下面から見た下面図、図23は図21のA−A線断面を示すバイポーラカッタ43の断面図、図24は図21のB−B線断面を示すバイポーラカッタ43の断面図、図25は組織挟持部423を下面から見た図、図26は図25のC−C線断面を示す組織挟持部423の断面図、図27は図25のD−D線断面を示す組織挟持部423の断面図である。
図20から図25に示すように、バイポーラカッタ43は、例えばポリカーボネイトなどの透明な絶縁部材である合成樹脂からなるカッタ本体422と、先端部の略中央に配設される耐熱部材であるセラミックスからなる組織挟持部423と、バイポーラの一方となる第1の電極である印加電極425と、バイポーラの他方となる第2の電極である帰還電極424と、2本のリード線428(印加側リード線428a,帰還側リード線428b)と、リード線カバー426とを有して構成されている。
カッタ本体422は、長手方向の軸から見たときに、ハーベスタ41の切り欠き415(図10参照)の円弧状の内周面に沿うように横断面が円弧状に湾曲した形状(図24参照)をしている。また、カッタ本体422は、先端に形成されるV字溝436と、後述する組織挟持部423が嵌入される溝である嵌入部435と、印加側リード線428a及び帰還側リード線428bが夫々絶縁状態に配置され、リード線カバー431が嵌着される溝部422jと、帰還電極424が配置される凹部422lとを有している。なお、溝部422jの底面には、印加側リード線428a及び帰還側リード線428bの絶縁を保つため全長に渡って、さらに、2本の長溝が形成されている。
嵌入部435は、カッタ本体422の先端のV字溝436からスリット状に形成される第1の溝部435aと、基端側が上方向から見たときに、略円形状に形成された第2の溝部435bを有して構成されている。
また、カッタ本体422は、嵌入部435が形成される内周側に内向フランジとなる段部422a(図21及び図24参照)が形成されており、組織挟持部423の基端部に対応する位置に勘合用凹部422b(図20及び図23参照)が形成されている。
溝部422jの印加側リード線が配接される溝には、その先端側に印加電極425のリード線接続部425aが挿通される貫通部422e(図21及び図22参照)が形成されている。従って、カッタ本体422の下面側に配設される印加電極425は、リード線接続部425aが貫通部422eに挿通され、そのリード線接続部425aの端部と溝部422jの上面に配置される印加側リード線428aとが電気的に接続可能となる。
また、カッタ本体422は、その上面及び下面に、ここでは、合計3つの留部422cを有し、そのうちの2つの留部422cが凹部422lの先端側において上方に突起し、残り1つの留部422cが下方へ突起している。これらの留部422cが印加電極425及び帰還電極424に穿設される孔部425b、424aに挿通され、熱カシメにより融解された後、外向フランジ状(図23及び図24参照)に凝固形成されることによって、帰還電極424及び印加電極425は、カッタ本体422の上下面において夫々固着される。
帰還電極424は、カッタ本体422の凹部422lの上面に沿って、長手軸方向から見たときの横断面が湾曲形状の金属板である。この帰還電極424は、カッタ本体422と組織挟持部423の上面における境目、つまり、夫々の境界線に略沿うように上方から見たときに前方後円形状に切り欠き形成された切り欠き部と、先端側に前述の2つの孔部424aとを有している。また、帰還電極424は、基端部分に帰還側リード線と溶着により電気的に接続されるリード線接続部424bと、このリード線接続部424bと並設され、カッタ本体422の溝部422jに嵌入保持される突起部424cとを有している。
リード線接続部424b及び突起部424cは、夫々、下方に略直角に折り曲げられ、さらに、基端側へ延出するように略直角に折り曲げられている。リード線接続部424bは、その基端側への延出長が突起部424cの延出長よりも長く、帰還側リード線と十分な溶着接続ができる長さを有している。
なお、突起部424cは、その基端側への延出長がカッタ本体422の凹部422lの基端から溝部422jの貫通部422eまでの長さよりも短い長さを有している。これにより、突起部424cと印加電極425のリード線接続部425a及び印加側リード線428aが接触することなく絶縁が保たれるため、帰還電極424と印加電極425との絶縁も保たれる。
印加電極425は、カッタ本体422と組織挟持部423の下面側に配置され、前述した孔部425bを有する略四角形の金属板である。この印加電極425からは、前述したように、印加側リード線428aと溶着により電気的に接続されるリード線接続部425aが基端側へ延出している。
このリード線接続部425aは、延出方向の端部分が上方に略直角に折り曲げられており、さらに、その端部が延出方向側へ略直角に折り曲げられている。
印加側リード線428a及び帰還側リード線428bは、カッタ本体422の溝部422jの底面に形成された2つの長溝に夫々、絶縁状態となるように平行して配設され、外部の電気メス装置107(図7参照)と電気的に接続される。
組織挟持部423は、図25から図27に示すように、基端部分が略円柱形状をしている円柱形状部423Aと、その円柱形状部423Aの側周面から延びる略四角柱形状であって、スリット溝427が形成された四角柱形状部423Bとを有する、いわゆる前方後円墳形状をしている。なお、図24の組織挟持部423は、カッタ本体422に嵌入された時に下面側となる面を示している。
この組織挟持部423は、図24に示すように、長手軸方向に沿って長く延び、四角柱形状部423Bの両側面から夫々外側へ突起する2つの腕部423aと、円柱形状部423Aの基端部分の側周面から基端側に向けて突起する凸部423bを有している。
この組織挟持部423は、カッタ本体422の嵌入部435に嵌入され、2つの腕部423aが第1の溝部435aの段部422aに保持され、凸部423bがカッタ本体422の勘合用凹部422bに嵌入し保持されることによって、カッタ本体422に嵌着される。
また、組織挟持部423は、円柱形状部423Aに略円周形状の溝部440が形成されている。この溝部440は、図22に示すように、スリット溝427の基端部分を覆う印加電極425の略先端部分から所定の距離だけ離され、円を描くように印加電極425の先端部分を囲み、例えば0.5mm程度の幅及び深さ1〜2mm程度に形成される有底溝である。なお、この溝部440は、略円周形状に限ることなく、スリット溝427の基端部分を覆う印加電極425の先端部分から所定に離れていれば、いかなる形状、例えば、四角形、三角形などの多角形を描く溝であっても良い。さらに、溝部440の幅寸法及び深さ寸法は、組織挟持部423が所定の強度が保てるように設定される。
また、スリット溝427は、四角柱形状部423Bの先端側中央部から円柱形状部423Aの略中央部にかけて、組織挟持部423の長手軸方向において、例えば0.5mm幅に溝切りされている。
なお、この組織挟持部423は、高耐熱性のセラミックス構造材である、例えばジルコニア、アルミナなどの材料によって形成されている。
また、組織挟持部423の下面には、印加電極425の先端部分を位置決めするため、基端側に向けて切り欠かれた段部430が形成されている。
以上のように構成されたハーベスタ41のバイポーラカッタ43による側枝11Aの切断について図1及び、図28から図30を用いて説明する。
図28及び図29は、バイポーラカッタ43による側枝11Aの切断を説明するための図、図30は側枝11Aを切断時の組織挟持部423を下面から見た図である。
図1のフローチャート図に基づいて説明した、ダイセクタ31を用いて血管11の全長にわたって周辺の組織の剥離(S4)が行われた後、ダイセクタ31がトロッカ21から抜き取られ、トロッカ21がそのままにされ、ハーベスタ41が挿入されて、皮切部16から足首14までの間の血管11の側枝11Aの切断が行われる(S5)。
このとき、術者は、内視鏡画像を確認しながら、カッタ本体422のV字溝426に側枝11Aが入り込むようにハーベスタ41のバイポーラカッタレバー401をバイポーラカッタ43が前進する方向へスライド操作する。そして、側枝11Aは、V字溝426によって組織挟持部423のスリット溝427へと案内される。
術者は、側枝11Aがスリット溝427内に入りこみ、図28に示すように、側枝11Aが印加電極425に接触したことを内視鏡画像により確認して、電気メス装置107から高周波電流を流す。このとき、印加電極425から放電される高周波電流は、側枝11Aを介して帰還電極424へ放電される。
組織挟持部423のスリット溝427内の側枝11Aは、印加電極425からの放電により。印加電極425と接触している部分に熱量が発生し、図29に示すように凝固して切断される。
ここで、図30に基づいて、印加電極425からの高周波電流を受けた側枝11Aに発生した熱量が組織挟持部423に伝播される熱の流れについて説明する。
なお、以下の説明において、組織挟持部423の内周側の溝部440の側面を壁面440aとし、外周側の側面を壁面440bとし、印加電極425と側枝11Aが接触する部分を熱量発生部450として示す。
上述のように、側枝11Aに発生した熱量は、組織挟持部423に放射状に伝わり、溝部440まで熱伝播される。この溝部440まで熱伝播される熱量は、組織挟持部423及び溝部440の熱伝導率λに依存する。
熱量発生部450から壁面440aまでの組織挟持部423の熱流束qaは、次の式(1)により算出することができる。
qa=λa(th−twh)/δ1・・・(1)
qa:熱流束
λa:組織挟持部423の熱伝導率
th:組織挟持部423(スリット溝427)と側枝11Aの境界面の温度
twh:壁面440aと空気の境界面の温度
δ1:側枝11Aと接触するスリット溝427から壁面440aまでの距離
一方、組織挟持部423の壁面440a,440b間の溝部440の熱流束qbは、
次の式(2)により算出することができる。
qb=λair(twh−tc)/δ2・・・(2)
λair:空気の熱伝導率
tc:壁面440bと空気の境界面の温度
δ1:壁面440aから壁面440bまでの距離
以上の式(1)及び式(2)からも分かるように、積値となる熱伝導率λの値により、熱流束qの値が依存する。すなわち、セラミックスから形成される組織挟持部423の熱伝導率λaに比べて空気の熱伝導率λairは、きわめて小さい値である。そのため、溝部440における熱流束qbは、積値である空気の熱伝導率λairの値に依存し、組織挟持部423の熱流束qaに比べて、きわめて小さい値となる。
上述の結果、組織挟持部423は、印加電極425から熱量を受ける側枝11Aを挟持している熱量発生部450(スリット溝427の一部分)から溝部440までの部分において、消費熱量が多くなる。換言すると、組織挟持部423は、溝部440により、急激な熱伝播が抑制され、熱量発生部450から溝部440までの部分のみが高温となる。従って、側枝11Aは、消費熱量が多くなるため、その止血性が向上される。
また、上述の効果に加え、組織挟持部423は、溝部440を設けられたことにより、溝部440から外周側の部分への熱伝播がされ難くなる。その結果、組織挟持部423の溝部440から外周側の部分は、急激な温度上昇が抑制される。これにより、組織挟持部423が嵌入されるカッタ本体422の温度上昇も抑えることができ、使用温度の低い合成樹脂によりカッタ本体422を形成しても、熱耐久性を確保することができる。
その結果、バイポーラカッタ43のカッタ本体422は、ポリカーボネイトなどの合成樹脂が使われ、全体がセラミックスによって形成される場合に比べて、加工性が良く安価となる。
また、溝部440は、印加電極425が配設される組織挟持部423の面(本実施形態では下面)から溝切り形成されている。そのため、側枝11Aと接触する印加電極425付近に集中する熱量は、組織挟持部423への熱伝播が溝部440に抑制される。従って、組織挟持部423が消費する熱量により印加電極425の近傍が最も高温となり、上述したように、側枝11Aを止血切断するための必要な熱量が確保される。
以上の結果、本実施形態における切断手段であるハーベスタ41のバイポーラカッタ43は、熱耐久性に優れ、生体組織である採取血管11の側枝11Aを確実に止血しながら切断することができる。
なお、上述したように、耐電圧のための沿面距離を保つため、スリット溝427の基端側に位置する印加電極425の先端部分、すなわち熱量発生部450から帰還電極424までの距離が略等しくなるように、帰還電極424の中央部は、スリット溝427の基端部分を略中心とした略円形状に切り欠き形成されている。
従って、帰還電極424の略円形状に対応する組織挟持部423の帰還電極424側の表面を略円形状、すなわち、組織挟持部423の円柱形状部423Aの表面形状に合わせることにより、印加電極425で発生する熱が組織挟持部423へ略均等に伝わる。
その結果、カッタ本体422と帰還電極424、印加電極425との接合面となる組織挟持部423の上面側においては、局部的に高温になる部分を抑えることができる。すなわち、熱量発生部450において発生する熱が組織挟持部423の上面において、均一に拡がるため、カッタ本体422及び組織挟持部423の高熱化を防止することができる。
また、上述したように、生体組織である側枝11Aを止血切断するため、印加電極425から帰還電極424へ放電される高周波電流によって発生する熱量は、溝部440が形成された組織挟持部423により印加電極425付近の組織挟持部423に集中する。しかし、印加電極425と帰還電極424の間に高耐熱性のセラミックスによって形成される組織挟持部423を使うことにより、本実施形態のバイポーラカッタ43は、熱耐久性に優れた構成とすることができる。
なお、本実施形態においては、カッタ本体422の先端中央部分に溝部440が形成されたセラミックスからなる組織挟持部423を設けたが、帰還電極424と印加電極425の間におけるカッタ本体422の全ての先端部分が溝部440を有するセラミックス部材により構成されていても良い。
さらに、空気の熱伝導率λairは、雰囲気温度により、その値が影響される。しかし、側枝11Aに対する消費熱量が多くなるため、印加電極425から帰還電極424への高周波電流の放電時間を短くすることができる。
本発明は、以上述べた実施形態のみに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能である。