〔第1の実施形態〕
本発明の一実施形態について図1ないし図16に基づいて説明すると以下の通りである。なお、詳細は後述するように、本発明は、他の液晶セルにも適用できるが、以下では、好適な一例として、例えば、放射状傾斜配向やマルチドメイン配向など、液晶分子の配向方向が画素中で互いに異なるように制御される液晶セルについて説明する。
本実施形態に係る液晶表示装置1は、図1に示すように、液晶セル11と、当該液晶セル11の両側に配された直線偏光フィルム(偏光素子)12a・12bとを有する液晶表示装置1であって、以下の手段を講じたことを特徴としている。すなわち、上記液晶セル11は、画素に対応する画素電極21a(図2参照)が設けられたTFT基板11a(第1基板)と、対向電極21b(図2参照)が設けられた対向基板11b(第2基板)と、当該両基板11a・11b間に設けられた液晶層11cとを備えている。さらに、上記液晶層11cは、上記画素電極21aと対向電極21bとの間の電圧が、少なくとも予め定められる値の場合に、例えば、図2中の矢印で示すように、液晶分子の配向方向が画素中で互いに異なるように制御される。
加えて、図1に示すように、上記液晶表示装置1は、上記各直線偏光フィルム12a・12bおよび液晶セル11の間にそれぞれ配されたλ/4板13a・13b(4分の1波長層)と、上記λ/4板13a・13bの少なくとも一方(この場合は、両方)および液晶セル11の間に配され、面内方向の主屈折率をnx1、ny1、法線方向の主屈折率をnz1としたとき、主屈折率nz1が最も小さい液晶補償板(位相差層;負フィルム)14a・14bと、上記直線偏光フィルム12a(12b)とλ/4板13a(13b)との間の少なくとも一方(この場合は、両方)に配され、面内方向の主屈折率をnx2、ny2、法線方向の主屈折率をnz2としたとき、主屈折率nz2が最も大きなRth補償フィルム(補償層)16a・16bとを備えている。
ここで、上記λ/4板13a(13b)は、面内方向のリターデーションが透過光の波長の4分の1波長に設定されていると共に、互いの遅相軸SLa(SLb)が直交し、かつ、隣接する上記直線偏光フィルム12a(12b)の吸収軸AAa(AAb)と遅相軸SLa(SLb)とが45度の角度をなすように設定されている。
上記構成の液晶表示装置1では、直線偏光フィルム12aから光が入射する場合を例にすると、直線偏光フィルム12aおよびλ/4板13aを通過した光が、液晶セル11に入射するので、液晶セル11には、円偏光が入射され、液晶セル11から出射した光は、λ/4板13bによって、4分の1波長の位相差が与えられた後、直線偏光フィルム12bを介して出射される。
ここで、電圧印加時、あるいは、電圧無印加時の初期配向状態など、画素電極21aと対向電極21bとの間の電圧が所定の電圧の場合には、液晶分子の配向方向が画素中で互いに異なるように制御される。この状態では、液晶セル11は、配向状態に応じた位相差を透過光に与えるので、円偏光は、楕円偏光に変換される。したがって、液晶セル11を透過した光は、λ/4板13bを透過しても直線偏光には戻らず、λ/4板13bの出射光の一部が直線偏光フィルム12bから出射される。これらの結果、印加電圧に応じて直線偏光フィルム12bからの出射光量を制御でき、階調表示が可能となる。
また、液晶分子の配向方向が画素中で互いに異なっているので、配向方向の互いに異なる液晶分子が存在する領域同士が、互いに光学的に補償し合うことができる。この結果、斜めから見た場合の表示品位を改善し、視野角を拡大できる。
ここで、上記液晶セル11では、広視野角確保のために液晶分子の配向方向を画素中で互いに異なるように制御した結果、配向状態の乱れが発生しやすい。したがって、液晶セルに直線偏光が入射され、液晶セルの出射光が検光子に入射される従来の液晶表示装置の場合は、液晶分子の配向に乱れが発生して、配向方向の面内成分が、偏光素子の吸収軸と一致すると、基板法線方向成分に拘らず、当該液晶分子は、透過光に位相差を与えることができなくなってしまう。したがって、当該液晶分子が存在する領域は、明るさ向上に寄与できず、ザラツキなどが発生してしまう。また、配向方向の面内成分が検光子の吸収軸と一致した液晶分子が明るさ向上に寄与できないので、光利用効率(実効開口率)が低下する。これらの結果、コントラスト比の確保が難しくなり、階調数の増加も困難になってしまう。
これに対して、本実施形態に係る液晶表示装置1では、略円偏光が液晶セル11に入射されるので、液晶セル11の配向方向についての異方性がなくなり、液晶分子の配向方向と透過光とが、面内成分と基板法線方向との双方で一致していない限り、液晶分子は、透過光に位相差を与えることができる。したがって、広視野角確保のために液晶分子の配向方向を画素中で互いに異なるように制御した結果、配向状態の乱れが発生しやすいにも拘らず、配向が乱れた液晶分子の配向方向が視角と一致していない限り、明るさ向上に寄与できる。この結果、広い視野角を保ちながら、高い光利用効率を確保できる。
一方、上記液晶セル11の液晶分子が基板法線方向(垂直)に配向していると、液晶セル11は、透過光に位相差を与えることができない。この結果、透過光は、略円偏光を維持したまま、出射される。当該出射光は、λ/4板13bで直線偏光に変換された後、直線偏光フィルム12bへ入力され、透過が制限される。したがって、液晶表示装置1は、黒表示できる。
ただし、液晶分子が垂直に配向していても、基板法線方向から極角だけ傾いた斜め方向から見た場合、液晶分子の配向方向と透過光の方向とが一致せず、液晶セル11は、極角に応じた位相差を透過光に与えてしまう。ところが、上記液晶補償板14a・14bは、主屈折率nz1が最も小さいので、液晶セル11が与える位相差とは逆の位相差を与えることができる。
さらに、上記構成では、厚み方向のリターデーションの正負が、上記液晶補償板14a・14bとは逆のRth補償フィルム16a・16bが、直線偏光フィルム12a・12bとλ/4板13a・13bとの間に配されている。したがって、例えば、直線偏光フィルム12a・12bの支持体など、負フィルムとして機能する部材が、偏光素子と4分の1波長層との間に介在したり、4分の1波長層が厚み方向のリターデーションを持っていたとしても、これらの部材のリターデーションを、上記補償層で打ち消すことができる。なお、負フィルムは、面内方向の主屈折率をnxおよびny、法線方向の主屈折率をnz、厚みをdとし、厚み方向のリターデーションRth={nz−(nx+ny)/2}・dと定義するとき、Rthが負の値を持つ位相差層である。
この結果、直線偏光フィルム12aから液晶セル11まで、および、液晶セル11から直線偏光フィルム12bまでにおける、厚み方向のリターデーションの合計が同じであったとしても、上記λ/4板13a(13b)を含み、上記直線偏光フィルム12a(12b)からλ/4板13a(13b)までの厚み方向のリターデーションを削減できる。これにより、Rth補償フィルム16a(16b)を持たない場合に比べて、液晶セル11の補償用のリターデーション(厚み方向)を、液晶セル11に近づけることができる。したがって、黒表示時の光漏れを防止でき、良好な黒表示が可能になる。
これらの結果、広視野角確保のために液晶分子の配向方向を画素中で互いに異なるように制御した結果、配向状態の乱れが発生しやすいにも拘らず、広い視野角で高いコントラスト比を維持可能な液晶表示装置を実現できる。
以下では、上記各部材の具体的な構成例および効果について、比較例と比較しながら詳細に説明する。すなわち、上記液晶セル11は、電圧無印加時には、液晶分子が基板に垂直に配向し、電圧印加時には、配向方向が連続的に変化する放射状傾斜配向を呈する垂直配向(VA)方式の液晶セルであって、薄膜トランジスタ素子(図示せず)と画素電極21aとをマトリクス状に配列したTFT基板11a、および、対向電極21bを有する対向基板11bの双方に、図示しない垂直配向膜を塗布した後、両基板を貼り合わせ、さらに、両基板の間隙に負の誘電率異方性を有するネマティック液晶を封入するなどして作成される。これにより、電圧無印加時には、液晶層11cの液晶分子が略垂直に配向すると共に、電圧印加時には、液晶分子が傾斜して水平に配向できる。
本実施形態では、一例として、液晶の屈折率異方性Δnは、0.1であり、セル厚は、3μmに設定している。この場合、厚み方向のリターデーションは、300nmとなる。なお、本実施形態では、上記屈折率異方性Δnは、例えば、常光屈折率no=1.5、異常光屈折率ne=1.6の素材を用いて実現されている。
さらに、本実施形態に係る液晶セル11では、図2に示すように、上記TFT基板11aに設けられた各画素電極21aに、円形のスリット22が形成されている。これにより、電圧を印加した際、画素電極21aの表面のうち、スリット22の直上の領域では、液晶分子を傾斜させる程の電界がかからない。したがって、この領域では、電圧印加時でも液晶分子は垂直に配向する。一方、画素電極21aの表面のうち、スリット22近傍の領域では、電界は、スリット22へ厚み方向で近づくに従って、スリット22を避けるように傾斜して広がる。ここで、液晶分子は、長軸が垂直な方向に傾き、液晶の連続性によって、スリット22から離れた液晶分子も同様の方向に配向する。したがって、画素電極21aに電圧を印加した場合、各液晶分子は、配向方向の面内成分が、図中、矢印で示すように、スリット22を中心に放射状に広がるように配向、すなわち、スリット22の中心を軸として軸対称に配向できる。ここで、上記電界の傾斜は、印加電圧によって変化するため、液晶分子の配向方向の基板法線方向成分(傾斜角度)は、印加電圧によって制御できる。なお、印加電圧が増加すると、基板法線方向に対する傾斜角が大きくなり、各液晶分子は、表示画面に略平行で、しかも、面内では放射状に配向する。
なお、例えば、40インチのような大型の液晶テレビを形成する場合、各画素のサイズは、1mm四方程度と大きくなり、画素電極21aに1つずつスリット22を設けただけでは、配向規制力が弱まり、配向が不安定になる虞れがある。したがって、配向規制力が不足する場合には、各画素電極21a上に複数のスリット22を設ける方が望ましい。
一方、図1に示す上記λ/4板13a(13b)は、例えば、一軸延伸した高分子フィルムで構成するなどして、正の一軸光学異方性を有している。当該フィルムは、複屈折異方性を有しているので、常光線と異常光線との光路差が入射光の4分の1波長になるように、厚み(基板法線方向の長さ)を設定することで、遅相軸SLaに対して45度の偏光方向を有する直線偏光を円偏光に変換できる。また、円偏光が入射された場合、λ/4板13bの遅相軸SLbに対して、45度の偏光方向を有する直線偏光に変換できる。本実施形態では、波長550nmにて、各λ/4板13a・13bの面内のリターデーションが、137.5nmになるように設定している。一例として、本実施形態では、面内方向の主屈折率を、それぞれ、nx、ny、法線方向の主屈折率をnzとしたとき、nx=1.501375、かつ、ny=nz=1.5で、厚みdが100μmの一軸延伸フィルムを使用している。この場合、面内方向のリターデーションは、波長550nmの光に対して、137.5nmとなり、厚み方向のリターデーションは、一軸延伸フィルムなので、−68.75nmとなる。
なお、液晶層11cを形成する際、特開2000−47217号公報(2000年2月18日公開)記載の液晶表示装置と同様に、ツイスト角が90度となるように、カイラル剤を添付して、TNモードの液晶表示装置と同様に、光の利用効率および白表示時の色バランスを最適化している場合は、液晶セル11でのツイスト角に応じて、λ/4板13a(13b)の光路差を、4分の1波長からズラす方が望ましい。
また、本実施形態に係る液晶表示装置1では、図1に示すように、直線偏光フィルム12aの吸収軸AAaと、直線偏光フィルム12bの吸収軸AAbとが互いに直交するように配されている。また、両λ/4板13a・13bの遅相軸SLa・SLbは、互いに直交するように配されている。さらに、隣接するλ/4板13a(13b)と直線偏光フィルム12a(12b)とは、遅相軸SLa(SLb)と吸収軸AAa(AAb)とが、それぞれ45度の角度をなすように配置される。
さらに、上記液晶補償板14a・14bは、面内方向の主屈屈折率をnx、ny、法線方向の主屈折率をnzとしたとき、nx=ny>nzのフィルムから形成されている。当該フィルムの厚み方向のリターデーションRthは、厚みをdとすると、Rth=d・{nz−(nx+ny)/2}と定義できるので、液晶補償板14a・14bの厚み方向のリターデーションRthが、それぞれ、−100nmになるように、フィルム材料や厚みを選択している。一例として、本実施形態では、nx=ny=1.502、nz=1.5のフィルムを、厚さd=50μmに設定することで、上記リターデーションRthを達成している。
一方、Rth補償フィルム16a・16bは、上記λ/4板13a・13bの厚み方向のリターデーションを打ち消すように、厚み方向のリターデーションRthを、それぞれ68.75nmに設定している。本実施形態では、一例として、各Rth補償フィルム16a・16bは、それぞれ、面内方向の主屈折をnx、ny、厚み方向の主屈折率をnzとしたとき、nx=ny<nzなる1軸性屈折率楕円体で特性が表されるフィルムで構成され、それぞれ、厚みd=100μm、面内方向の主屈折率nx=ny=1.5、法線方向の主屈折率nz=1.5006875に設定されている。なお、nx=nyなので、面内のリターデーションReは、0nmである。
上記構成では、画素電極21aと対向電極21bとの間に電圧を印加していない間、液晶セル11の液晶分子は、垂直配向状態にある。この状態(電圧無印加時)において、液晶表示装置1へ入射した光は、直線偏光フィルム12aを通り、偏光方向がλ/4板13aの遅相軸SLaに対して45度の直線偏光となる。さらに、当該直線偏光は、λ/4板13aを通過することで、円偏光に変換される。
ここで、液晶分子は、配向方向に平行な方向に入射する光に位相差を与えない。したがって、液晶セル11は、垂直に入射した光へ位相差を与えることができず、殆ど複屈折性を持たない。この結果、λ/4板13aを出射した円偏光は、偏光状態を維持したままで液晶セル11を通過し、λ/4板13bへ入射される。円偏光がλ/4板13bを通過すると、当該円偏光は、偏光方向がλ/4板13bの遅相軸SLbに対して45度の方向、すなわち、直線偏光フィルム12bの吸収軸AAbに沿った方向の直線偏光に変換される。したがって、当該直線偏光は、直線偏光フィルム12bで吸収され、液晶表示装置1は、電圧無印加状態で黒表示できる。
これに対して、上記画素電極21aと対向電極21bとの間に電圧を印加すると、液晶セル11の液晶分子は、スリット22を中心軸とした放射状に傾斜配向する。この状態であっても、液晶セル11までは、電圧無印加時と同様に偏光状態が変換され、液晶セル11へ円偏光が入射される。
ただし、電圧印加時には、液晶分子の配向方向が変化して、放射状に傾斜配向している。ここで、液晶分子は、配向方向に平行な方向に入射する光には位相差を与えないが、配向方向と入射方向とが異なっている場合には、両者の角度に応じた位相差を透過光へ与えることができる。
この結果、液晶セル11へ垂直に入射する光の場合、例えば、スリット22の真上の領域など、電圧印加時にも液晶分子が基板法線方向に配向している僅かな領域を除いて、液晶セル11は、透過光に位相差を与えることができ、透過光の偏光状態を変更できる。したがって、液晶セル11からの出射光は、一般には、楕円偏光に変化する。この楕円偏光は、λ/4板13bを通過しても、電圧無印加時とは異なり、直線偏光にならない。したがって、液晶セル11からλ/4板13bを介して直線偏光フィルム12bへ与えられる光のうち、一部は、直線偏光フィルム12bを透過できる。ここで、直線偏光フィルム12bを透過する偏光の量は、液晶セル11が与える位相差の大きさに依存する。したがって、画素電極21aへ印加する電圧を制御して、液晶分子の配向方向を調整することで、液晶表示装置1の各画素の出射光量を変更でき、階調表示が可能となる。
上記構成では、液晶セル11の液晶分子が放射状に傾斜配向するので、各液晶分子同士が光学的に補償し合う。したがって、ある面内方位から液晶表示装置1を見た場合、他の面内方位から見た場合と比較して、ある液晶分子を透過した光の出射光量が減少したとしても、当該液晶分子とは配向方向が異なる他の液晶分子の中には、出射光量を増加させるものも存在する。この結果、ある画素の表示に関連する液晶分子全体では、透過光に与える位相差が略同じになる。このように、各画素において、画素配向方向が互いに異なる液晶分子が存在する領域同士が、互いに光学的に補償し合うので、ある画素の表示に関連する全液晶分子が単一の特定方向に傾斜配向する場合に比べて、斜めから見た場合の表示品位を改善し、視野角を拡大できる。
ここで、比較例として図3に示す液晶表示装置101のように、広い視野角を確保するために、液晶セル111の液晶分子が放射状に傾斜配向する構成であっても、液晶セル111に直線偏光が入射される構成の場合には、配向方向の面内成分が、直線偏光の向きと一致する方向に傾斜配向する液晶分子群が存在する。ここで、これらの液晶分子群は、配向方向の法線方向成分に拘らず、透過光に位相差を与えることができないので、当該液晶分子群を透過した光は、垂直配向時と同様に出射側の直線偏光フィルム112bで吸収されてしまう。
この結果、スリットの位置を中心に、直線偏光の方向に沿った領域、および、それに垂直な方向に沿った領域の透過率が低下してしまう。したがって、透過率の低下が大きい場合には、例えば、図4に示すように、白表示の際、直線偏光フィルム112a・112bの吸収軸の方向(クロスニコル)に沿った黒い影が視認される虞れがある。
特に、上記液晶表示装置101のように、画素内の配向方向を別個に制御しようとすると、配向乱れが発生しやすいので、例えば、ソース信号線やゲート信号線などからの外部電界など、単一の配向方向の場合には問題にならなかったような僅かな要因によっても配向乱れが発生する。当該配向乱れは、箇所毎や画素毎に異なっているため、上記黒い影は、表示中のザラツキとして観測され、表示品位を低下させる虞れがある。
また、配向乱れが発生した箇所が暗くなると、全ての箇所で予定した透過率を維持する場合に比べて、画素全体の輝度も低下してしまう。この結果、液晶表示装置の光利用効率(実効開口率)も低下してしまう。
ここで、液晶表示装置の解像度や階調数は、年々、向上しており、1画素の面積が小さくなっても、より多くの階調を表示可能な液晶表示装置が求められている。ところが、上記配向乱れによって実効開口率が低下すると、白表示時の輝度が低下して階調数の向上が困難になってしまう。なお、画素面積を拡大すると輝度を向上できるが、解像度の向上が難しくなる。
これに対して、本実施形態の構成では、液晶セル11に円偏光が入射されているので、放射状に傾斜配向によって広い視野角を確保しているにも拘らず、透過光に位相差を与えることのできない液晶分子は、面内成分および法線方向成分の双方で視角と同一の方向に配向している液晶分子のみである。したがって、寄与できない液晶分子数が少なくなり、影を視認しにくくなる。さらに、影が視認される程度に透過率が低下するとしても、面内成分および法線方向成分の双方で視角と同一でなければ、位相差を与えることができる。したがって、影が表示される領域は、図5に示すように、スリット22の位置のみとなり、影が表示される領域を大幅に縮小できる。さらに、影が視認されるか否かに拘らず、透過光に位相差を与えることのできる液晶分子の数が多くなる。これらの結果、λ/4板13a・13bの無い従来の液晶表示装置101に比べて、透過率を約2倍に向上でき、光利用効率(実効開口率)および輝度を向上できる。
また、上記液晶表示装置1では、λ/4板13aの遅相軸SLaとλ/4板13bの遅相軸SLbとが互いに直交しているので、λ/4板13aおよび13bのそれぞれが有する屈折率異方性の波長分散が、互いに相殺し合う。この結果、黒表示状態において、より広い波長範囲の透過光を直線偏光フィルム12bが吸収でき、色付きのない良好な黒表示を実現できる。
ここで、黒表示の際には、液晶分子が垂直に配向しており、液晶セル11は、基板法線方向に入射した光に位相差を与えない。ところが、特に、透過型の液晶表示装置では、反射型の液晶表示装置に比べて、液晶セル11に対して斜め方向(基板法線方向から傾斜した方向)に入射する光の光量が多い。したがって、基板法線方向から見る場合であっても、基板法線方向の入射光だけではなく、斜め方向からの入射光も表示に関係する。
ここで、斜めの入射光は、垂直配向状態の液晶層11cによっても位相差が与えられる。したがって、比較例として、図6に示すように、図1に示す液晶表示装置1から液晶補償板14a・14bおよびRth補償フィルム16a・16bを省略した液晶表示装置51の場合は、位相差が与えられた光(楕円偏光)がλ/4板13bを通過しても直線偏光に戻らず、一部が直線偏光フィルム12bを通過してしまう。この結果、本来黒表示であるべき、垂直配向状態であるにも拘らず、光漏れが発生し、表示のコントラスト比が低下する虞れがある。
また、図7に示すように、液晶表示装置の表示面を斜め方向から見る場合は、基板に対して斜め方向からの入射光が、さらに大きく表示に寄与するので、より大きな光漏れが発生し、コントラスト比がさらに低下してしまう。この結果、例えば、基板法線方向に対する角度(極度)が60度の方向におけるコントラスト比は、図8に示すように、最大でも、10程度であり、4を下回っている方位も多い。なお、図8は、極度が60度の全ての方向におけるコントラスト比について、面内成分(方位)を変えながら描いている。
これに対して、本実施形態に係る液晶表示装置1では、液晶補償板14a・14bが設けられおり、垂直配向状態の液晶セル11が極度に応じて付加した位相差を、液晶補償板14a・14bで打ち消すことができる。
加えて、本実施形態に係る液晶表示装置1では、Rth補償フィルム16a・16bが設けられているので、λ/4板13a(13b)を含み、直線偏光フィルム12a(12b)からλ/4板13a(13b)までの範囲の厚み方向のリターデーションのうち、例えば、λ/4板13a・13b自体の厚み方向のリターデーションを相殺できる。これにより、厚み方向のリターデーションを有し、液晶セル11を光学補償するための液晶補償板14a・14bを、液晶セル11に近づけることができる。
特に、上記構成では、製造上の理由などによって、上記範囲に負フィルムが設けられている場合であっても、上記範囲のリターデーションRth1が略0になっているので、液晶セル11の補償に有効な厚み方向のリターデーションが、液晶セル11と接する負フィルム(14a・14b)のみに存在している場合と等価にできる。
これらの結果、図9に示すように、極度60度の全方位におけるコントラスト比は、50を超えた値となり、図6に示す液晶表示装置51よりも、視野角の広い液晶表示装置1を実現できる。
さらに、図9に示すように、本実施形態に係る液晶表示装置1では、90度おきの4方向に、特にコントラスト比の高い領域が現れており、それぞれのピーク値は、略同じ値になっている。したがって、4方向の視角特性のバランスのよい液晶表示装置1が実現されている。
ここで、直線偏光フィルム12aから液晶セル11までの厚み方向のリターデーションと、液晶セル11から直線偏光フィルム12bまでの厚み方向のリターデーションとの合計Sは、視角に応じて液晶セル11が不所望に与える位相差を打ち消すように設定する必要があり、変更できない。
したがって、液晶層の補償用のリターデーション(厚み方向)を、液晶セル11に近づけることの効果を確認するために、λ/4板13a(13b)を含み、直線偏光フィルム12a(12b)からλ/4板13a(13b)までの範囲における厚み方向のリターデーションRth1と、λ/4板13a(13b)を含まず、λ/4板13a(13b)から液晶セル11までの範囲における厚み方向のリターデーションRth2との比率Kを変化させながら、シミュレーションによってコントラスト比を求めた。
なお、上記リターデーションRth2は、厳密には、液晶層11cまでのリターデーションであって、液晶層11c自体のリターデーションを含まない。ただし、液晶セル11内であっても、各基板11a・11bや薄膜など、液晶層11cに至るまでの層で位相差が発生していれば、これらの層での位相差は、上記リターデーションRth2に含まれる。
このシミュレーション結果や各比較例との比較などによって、上記厚み方向のリターデーションとの合計Sが同じであっても、液晶補償板14a(14b)を液晶セル11に近づけた方がコントラスト比が向上することが判明した。
より詳細には、以下の式(1)に示すように、
K=Rth2/(Rth1+Rth2) ≧ 0.1 …(1)
を満たしていれば、コントラスト比の向上が認められた。さらに、比率Kは、1.0に近い程良く、1.0の場合、すなわち、Rth1=0の場合が、最も表示品位が高いことが判明した。
例えば、図10に示すように、本実施形態の変形例としての液晶表示装置1aでは、図1に示す構成からRth補償フィルム16a・16bが削除されており、液晶補償板14a・14bの厚み方向のリターデーションRthが、フィルム材料や厚みによって、それぞれ、−60nmに設定されている。この例でも、上記比率Kは、0.1以上であり、図11に示すように、極度60度の全方位におけるコントラスト比は、10を超えた値となる。したがって、図6に示す液晶表示装置51よりも、視野角の広い液晶表示装置が実現されている。
なお、上記では、液晶セル11の両側に液晶補償板14a・14bを配した場合を説明したが、厚み方向のリターデーションの合計Sが同じであれば、例えば、図12に示す液晶表示装置1bのように、厚み方向のリターデーションが2倍の液晶補償板14(例えば、Rth=200nm)を、液晶セル11の一方のみに配しても、本実施形態と略同様の効果が得られる。さらに、この場合であっても、負フィルム(液晶補償板)の挿入位置は、λ/4板13a(13b)と液晶セル11との間のように、液晶セル11に近づけた方がよく、上記比率Kを0.1以上に設定する方が好ましく、1.0の場合、すなわち、Rth1=0の場合が、最も表示品位が高いことが確認できた。
例えば、比較例として、図13に示す液晶表示装置52は、図6に示す液晶表示装置51の構成に加えて、液晶補償板14a(14b)が設けられている。ただし、液晶補償板14a(14b)は、図1のように、λ/4板13a(13b)と液晶セル11との間ではなく、λ/4板13a(13b)と直線偏光フィルム12a(12b)との間に配されている。加えて、Rth補償フィルム16a・16bが設けられていないので、液晶補償板14a(14b)の厚み方向のリターデーションは、λ/4板13a(13b)の分だけ、図1の構成よりも絶対値が小さく設定され、それぞれ−60nmに設定されている。
当該構成において、極度60度の全方位におけるコントラスト比を測定すると、図14に示すように、液晶補償板14a・14bを持たない液晶表示装置51に比べると、コントラスト比が向上しているが、図1に示す液晶表示装置1よりは、コントラスト比が低下しており、コントラスト比が5を下回っている方位も存在する。このように、液晶補償板14a(14b)の挿入位置は、λ/4板13a(13b)と直線偏光フィルム12a(12b)との間よりも、図1に示す液晶表示装置1のように、λ/4板13a(13b)と液晶セル11との方が、より広い視野角を確保できる。
また、別の比較例として、図1に示す液晶表示装置1のRth補償フィルム16a・16bをλ/4板13a・13bの内側に配した場合と比較すると、図1に示すように、Rth補償フィルム16a・16bを外側に配する方が極度60度の全方位におけるコントラスト比を向上できることも確認できた。
さらに、液晶層の補償用のリターデーション(厚み方向)を液晶セル11に近づける際の程度を、上述の式(1)で定義される比率Kではなく、Rth1の値自体に着目してシミュレーションによって確認すると、Rth1の絶対値がλ/8未満であれば、効果があり、比率Kで確認した場合と同様に、Rth1=0の場合が最も表示品位が高くなることが確認できた。また、λ/8未満の範囲の中でも、液晶層11cの両側におけるRth1の絶対値は、それぞれ、透過光の波長が550nmの場合で11nm未満の範囲、すなわち、それぞれ、波長の50分の1未満の範囲であれば、特に好ましいことが確認できた。
例えば、さらに他の比較例として、図15に示す液晶表示装置53では、図1と同様の直線偏光フィルム12a・12bの間に、負および正の光学活性を有する上記λ/4板13c・13dが配され、両λ/4板13c・13dの間に、図1と同様の液晶セル11が配されている。さらに、液晶セル11と、負の光学活性を有するλ/4板13cとの間には、図1と同様の液晶補償板14が配されている。ここで、上記両λ/4板13c・13dは、それぞれ、一軸光学異方性を有しており、厚み方向のリターデーションは、それぞれ、68.75nm、−68.75nmである。
当該構成では、両λ/4板13c・13dの厚み方向のリターデーションの正負が逆なので、互いに打ち消し合い、厚み方向のリターデーションとの合計Sは、図1の構成と同じである。ただし、上記比率Kは、λ/4板13d側で0に、λ/4板13c側で1を超えた値になっており、いずれも、0.1〜1.0の範囲から外れている。さらに、λ/4板13c・13dの厚み方向のリターデーションは、面内方向のリターデーションの半分、すなわち、λ/8であり、例えば、Rth補償フィルム16a・16bなど、リターデーションRth1をλ/8未満(最適値0)にするための手段が特に講じられていない。
この場合、例えば、基板法線方向に対する角度(極度)が60度の方向におけるコントラスト比は、図16に示すようになり、いずれの方位をとっても、図1の場合(図9参照)よりも下回っている。さらに、当該構成では、図9と異なって、コントラスト比の4つのピークの値が略同一ではなく、図16の例では、方位0度近傍および180度近傍のピーク値は、90度近傍および270度近傍のピーク値よりも大きく下回っている。これは、実用条件(ピーク値が上下方向または左右方向になるように配置する条件)において、上下と左右とのコントラスト比のバランスが悪いことを意味しており、例えば、「上下方向では、特にコントラスト比が高いのに、左右方向では、上下方向に比べて、余りコントラスト比が高くない」と、観察者に判断される虞れがある。
これに対して、図1に示す液晶表示装置1では、Rth補償フィルム16a・16bを配することで、厚み方向のリターデーションRth1がλ/4板13a側およびλ/4板13b側の双方で、略0(少なくともλ/8未満)に設定されている。したがって、図16に示すように、コントラスト比の4つのピーク値が略同一の値となり、上下および左右のコントラスト比のバランスのよい液晶表示装置を実現できる。
また、図15の構成では、正および負のλ/4板13c・13dは、異なる種類の位相差フィルムであり、生産条件や工程も異なるので、それぞれ独立した生産バラツキが発生してしまう。この結果、両者の面内方向のリターデーションを厳密に一致させることは、極めて難しい。この結果、黒表示でも光が漏れてしまい、特に、正面方向(極度0度)のコントラスト比を大きく低下させる虞れがある。
これに対して、図1の構成では、両λ/4板13a・13bが同じ種類の位相差フィルムであり、生産条件や工程を一致させることができる。この結果、生産バラツキが発生しても、両者の面内方向のリターデーションを厳密に一致させることができる。この結果、黒表示時の光漏れを抑制でき、正面のコントラスト比を向上できる。
なお、上記では、液晶補償板14a・14bを、nx=ny>nzの一軸延伸フィルムで形成した場合を例にして説明したが、液晶セル11の両側に液晶補償板14a・14bを配する場合は、面内の主屈折率nxおよびnyが等しくない負フィルムを用いてもよい。この場合は、互いのx軸およびy軸が直交するように配置することで、nxとnyとの不一致に起因する面内のリターデーションを互いに相殺できる。この結果、本実施形態と略同様の効果が得られる。
また、上記では、Rth補償フィルム16a・16bの厚み方向のリターデーションを、λ/4板13a・13bの厚み方向のリターデーションを相殺するように設定することで、上記厚み方向のリターデーションRth1を略0に設定する場合を例にして説明したが、λ/4板13a(13b)自体を含み、直線偏光フィルム12a(12b)から、λ/4板13a(13b)までの範囲に、厚み方向のリターデーションを有する部材として、例えば、直線偏光フィルム12a(12b)の支持体が存在する場合、Rth補償フィルム16a(16b)は、当該支持体の分も考慮して、上記厚み方向のリターデーションRth1が略0になるように設定される。例えば、直線偏光フィルム12a(12b)の支持フィルムとして、各主屈折率nx=ny<nzのトリアセチルセルロース(TAC)からなるフィルムがそれぞれ使用されており、当該フィルムの厚み方向のリターデーションが、−30nmの場合、各Rth補償フィルム16a・16bの厚み方向のリターデーションは、それぞれ、98.75nmに設定される。この場合も、上記厚み方向のリターデーションRth1が略0となるので、図1の構成と同様の効果が得られる。
〔第2の実施形態〕
本実施形態に係る液晶表示装置1cは、図17に示すように、図1に示す構成に加え、直線偏光フィルム12a(12b)とλ/4板13a(13b)との間に、直線偏光フィルム12a(12b)の吸収軸AAa(AAb)と直交するように遅相軸が配された偏光板補償フィルム(偏光素子補償層)15a・15b(15b)が設けられている。当該偏光板補償フィルム15a(15b)は、直線偏光フィルム12a・12bの支持体やλ/4板13a・13bと同様、Rth補償フィルム16a・16bと厚み方向のリターデーションの正負が逆であり、Rth補償フィルム16a・16bの厚み方向のリターデーションは、これらの支持体、偏光板補償フィルム15a(15b)の厚み方向のリターデーションおよびλ/4板13a(13b)の厚み方向のリターデーションを相殺するように設定されている。
具体的には、上記偏光板補償フィルム15a(15b)は、面内リターデーションが100nmである一軸延伸フィルムである。したがって、厚み方向のリターデーションは、−50nmとなる。
また、当該偏光板補償フィルム15a(15b)は、遅相軸Sa(Sb)が隣接する直線偏光フィルム12a(12b)の吸収軸AAa(AAb)と直交している。この結果、吸収軸AAa・AAbが互いに直交する直線偏光フィルム12a・12bを有する液晶表示装置を、吸収軸AAa(AAb)から45度方向の方位から、斜めに見た場合の光漏れを防止できる。
さらに、本実施形態では、上述の例と同様に、厚み方向のリターデーションが−30nmの支持フィルムで、直線偏光フィルム12a(12b)を支持している。また、Rth補償フィルム16a・16bの厚み方向のリターデーションは、それぞれ、148.75nmに設定されている。これにより、厚み方向のリターデーションRth1は、それぞれ略0に設定される。
この構成では、製造上の理由によって、上記λ/4板13a(13b)を含みλ/4板13a(13b)から直線偏光フィルム12a(12b)までの範囲に負フィルムが設けられているにも拘らず、厚み方向のリターデーションRth1が略0に設定されている。これにより、図18に示すように、極度60度の全方位におけるコントラスト比は、100を超えた値となり、全方位に渡って、図1の場合(図9参照)を上回っている。加えて、特に、コントラスト比が谷間(極小値)の部分で向上しており、さらに視野角の広い液晶表示装置を実現できる。
また、別の数値例として、偏光板補償フィルム15a・15bおよび両支持体の厚み方向のリターデーションを−30nm、液晶補償板14a・14bの厚み方向のリターデーションを−130nm、Rth補償フィルム16a・16bの厚み方向のリターデーションをそれぞれ90nmとした場合、極度60度におけるコントラスト比は、図19に示すようになり、図1の構成に比べて、さらに視野角の広い液晶表示装置が実現されている。
なお、上記では、液晶セル11の両側に液晶補償板14a・14bを挿入する場合について説明したが、液晶セル11の一方のみに、双方に挿入する場合の倍のリターデーションRthを有する液晶補償板14を挿入しても、略同様の効果が得られる。
〔第3の実施形態〕
ところで、図1や図17の構成では、厚み方向のリターデーションRth1を略0にするために、Rth補償フィルム16a・16bを設けているが、本実施形態では、Rth補償フィルム16a・16bを設けず、厚み方向のリターデーションが小さなλ/4板13a(13b)を使用する場合について説明する。
すなわち、図20に示すように、本実施形態に係る液晶表示装置1dでは、図1に示す構成から、Rth補償フィルム16a・16bが削除されており、λ/4板13a(13b)として、(nx+ny)/2=nzなる2軸性屈折率楕円体で、特性が表されるフィルムを用いている。
ここで、厚みをdとすると、厚み方向のリターデーションRthは、Rth=d・{nz−(nx+ny)/2}より、上記フィルムの厚み方向のリターデーションは、0nmになる。一方、面内方向のリターデーションReは、d・(nx−ny)なので、当該フィルムの厚みや材質を選択することで、4分の1波長、すなわち、Re=137.5nmに設定した。また、本実施形態では、液晶補償板14a・14bとして、厚み方向のリターデーションが−100nmのフィルムをそれぞれ使用している。
上記構成においても、極度60度における全方位のコントラスト比を測定すると、図9と同様の特性を示す。また、他の数値例として、液晶補償板14a・14bとして、厚み方向のリターデーションが−130nmのフィルムをそれぞれ使用した場合は、コントラスト比は、図21に示すようになる。いずれの場合であっても、全方位に渡って、10以上と、高いコントラスト比を確保できることが確認できた。加えて、いずれの場合であっても、コントラスト比の4つのピーク値が略同じ値となっており、上下方向および左右方向のコントラスト比のバランスのとれた液晶表示装置を実現できる。
このように、本実施形態では、λ/4板13a(13b)の厚み方向のリターデーションを抑制することで、厚み方向のリターデーションを液晶セル11に近づけ、より視野角の広い液晶表示装置を実現できる。
なお、上記では、液晶セル11の両側に液晶補償板14a・14bを挿入する場合について説明したが、液晶セル11の一方のみに、双方に挿入する場合の倍のリターデーションを有する液晶補償板14を挿入しても、略同様の効果が得られる。
ここで、上記第1ないし第3の実施形態では、スリット22によって、液晶分子を軸対称配向させる場合について説明したが、これに限るものではない。例えば、図22に示すように、スリット22に代えて、画素電極21a上に略半球状の突起23を設けてもよい。この場合、突起23の近傍では、液晶分子は、突起23の表面に垂直になるように配向する。加えて、電圧印加時において、突起23の部分の電界は、突起23の表面に平行になる方向に傾く。これらの結果、電圧印加時に液晶分子が傾斜する際、液晶分子は、面内方向で突起23を中心にした放射状に傾きやすくなり、液晶セル11の各液晶分子は、放射状に傾斜配向できる。なお、上記各突起23は、画素電極21a上に、光感応性樹脂を塗布し、フォトリソグラフィー工程で加工することで形成できる。
また、液晶分子の配向方向も、上述のように軸対称配向に限るものではなく、画素を複数の範囲(ドメイン)に分割し、各ドメインで液晶分子の配向方向が異なるように制御してもよい。例えば、図23の構成では、上記突起23に代えて、四角錐状の突起23aが設けられている。この構成でも、突起23aの近傍では、液晶分子が各斜面に垂直になるように配向する。加えて、電圧印加時において、突起23aの部分の電界は、突起23aの斜面に平行になる方向に傾く。これらの結果、電圧印加時において、液晶分子の配向角度の面内成分は、最も近い斜面の法線方向の面内成分(方向P1、P2、P3またはP4)と等しくなる。したがって、画素領域は、傾斜時の配向方向が互いに異なる、4つのドメインD1〜D4に分割される。この結果、あるドメイン側から液晶表示装置を見た場合、当該ドメインの透過率が低下したとしても、残余のドメインの透過率は低下せず、全体的な透過率の低下を抑制できる。これにより、液晶表示装置の明るさは、視角の面内方位に依存しにくくなる。
また、例えば、図24に示すように、法線方向の形状が山型で、面内の形状がジグザグと略直角に曲がるストライプ状の凸部24…を画素電極21aに設けると共に、対向基板11bの対向電極21bにも、同様形状の凸部25を設けて実現することもできる。これらの両凸部24・25の面内方向における間隔は、凸部24の斜面の法線と凸部25の斜面の法線とが一致するように配されている。また、上記各凸部24・25は、突起23などと同様に、上記画素電極21aおよび対向電極21b上に光感応性樹脂を塗布し、フォトリソグラフィー工程で加工することで形成できる。
上記構造では、凸部24のうち、角部C以外の線部L1(L2)では、線部近傍の領域D1・D2(D3・D4)の液晶分子が山型の両斜面に沿って配向する。なお、両線部L1・L2は、互いに直交している。この結果、各画素を、配向方向の互いに異なる複数のドメインD1・D2(D3・D4)に分割できる。
さらに、例えば、図25に示すように、対向基板11bの対向電極21b上にY字状のスリットを上下方向(面内で、略方形状の画素電極21aのいずれかの辺に平行な方向)に対称に連結してなる配向制御窓26を設けても、マルチドメイン配向を実現できる。
当該構成でも、スリット22を設けた場合と同様に、対向基板11bの表面のうち、配向制御窓26の直下の領域では、液晶分子を傾斜させる程の電界がかからず、液晶分子が垂直に配向する。一方、対向基板11bの表面のうち、配向制御窓26の周囲の領域では、対向基板11bに近づくに従って、配向制御窓26を避けて広がるような電界が発生する。この結果、液晶分子は、長軸が電界に垂直な方向に傾き、液晶分子の配向方向の面内成分は、図中、矢印で示すように、配向制御窓26の各辺に略垂直になる。
いずれの場合であっても、4分割のマルチドメイン配向では、配向方向の面内成分が限定されている。したがって、上述した放射状傾斜配向の場合と異なり、直線偏光を入射する場合であっても、上記方向P1〜P4と直線偏光の方向との角度が45度になるように設定することで、透過光に位相差を与えることのできない液晶分子数を削減できる。
ところが、このように設定したとしても、ドメイン間の境界領域(B12など)、あるいは、画素電極21aのうち、外周のエッジ領域では、液晶分子の配向状態が乱れやすいので、配向状態の乱れによって、直線偏光の方向と配向方向の面内成分とが一致し、透過光に位相差を与えることのできない液晶分子数が増大する虞れがある。
具体的には、境界領域では、液晶分子が両側のドメインに存在する液晶分子に支えられるように配向しているので、液晶分子の配向が固定されず、不安定な状態にある。この結果、ちょっとしたきっかけで、両側のドメインからの配向規制力のバランスが崩れると、境界領域の配向状態が変化(傾斜)してしまう。ここで、バランスは、製造工程における配向規制力の僅かなバラツキだけではなく、ゲート信号線やソース信号線に印加される電圧による横方向電界や経時劣化などによっても変化する。したがって、配向状態の変化は、境界領域内の各部分毎に異なるだけではなく、各絵素毎でも異なっている。この結果、直線偏光を入射すると、ザラツキとなって視認される虞れがある。例えば、図25に示す液晶セルに直線偏光を入射すると、配向制御窓26において、直線偏光フィルム12a(12b)の吸収軸の方向(クロスニコル)に沿ったディスクリネーションラインDLが発生し、場所毎および画素毎にディスクリネーションラインDLの状態が異なるため、ザラツキが視認される虞れがある。
また、エッジ領域では、配向状態が連続的に変化しており、画素電極21aの中央部に比べて、例えば、ソース信号線やゲート信号線からの電界など、外部の電界の影響を受けやすい。また、壁構造で配向を制御している場合には、立体的なひずみを受けやすい。このように、エッジ領域では、周囲の影響を受けやすいため、配向規制力が不均一になりやすく、液晶分子の配向状態が変化(傾斜)しやすい。この配向状態の変化も、境界領域内の各部分毎に異なるだけではなく、各画素毎でも異なっている。この結果、マルチドメイン構成の液晶層に直線偏光を入射すると、配向状態の乱れが、ザラツキとなって視認される虞れがある。
これに対して、上記各実施形態では、λ/4板13aによって、マルチドメイン配向の液晶セルに円偏光が入射される。この結果、液晶分子の配向状態が乱れたとしても、放射状傾斜配向の場合と同様に、液晶分子の配向方向および視角が面内成分だけではなく基板法線成分も一致しない限り、当該液晶分子Mは、表示に寄与できる。これにより、例えば、図25の液晶セルを用いた場合であっても、配向制御窓26には、ディスクリネーションラインDLが観察されにくくなる。この結果、広視野角確保のためにマルチドメイン配向の液晶層を用いた結果、画素電極21aのエッジ領域だけではなく、ドメインの境界領域が存在しているにも拘らず、ザラツキがなく、表示品位の高い液晶表示装置を実現できる。
また、上記では、液晶セルの一例として、負の誘電率異方性を有し、初期配向として、基板面に対して垂直に配向すると共に、電圧印加時に、画素内の液晶分子が複数方位に傾斜する液晶層を用いた場合を例にして説明したが、正の誘電率異方性を有するネマチック液晶やスメクチック液晶あるいはコレスティック液晶と水平配向膜とを組み合わせて、初期配向時には、基板面に対して水平かつ複数方位に配向するように液晶セル11を形成してもよい。
いずれの場合であっても、ある電圧を印加した状態で、各液晶分子の配向方向の面内成分が1画素内で互いに異なるように、配向方向が制御された液晶層を用いた液晶表示装置であれば、配向状態が乱れやすく、直線偏光を入射するとザラツキが目視しやすいので、本実施形態と略同様の効果が得られる。
さらに、画素内の液晶分子の配向方向が単一方向となるように、液晶分子の配向方向が制御された液晶層であっても、画素のエッジ部分では、例えば、ソース信号線やゲート信号線などのバス配線からの斜め電界によって、配向方向が乱れる虞れがある。また、壁構造で配向を制御しているような場合には、画素周辺に設けられる配線などによって、立体的なひずみが発生すると、配向状態が乱れ、ザラツキが発生する虞れがある。したがって、ある電圧を印加した状態で、各液晶分子の配向方向の面内成分が1画素内で互いに異なる液晶層を用いた液晶表示装置であれば、ある程度の効果が得られる。
ただし、マルチドメイン配向や放射状傾斜配向のように、ある電圧を印加した状態で、各液晶分子の配向方向の面内成分が1画素内で互いに異なるように、配向方向が制御された液晶層であれば、単一方向となるように配向方向が制御された液晶層に比べて、配向状態が乱れやすく、表示品位が低下しやすい。したがって、当該液晶層に円偏光を入射する方が表示品位をさらに大きく向上できる。
また、垂直配向方式の液晶セルは、TN(Twisted Nematic )方式の液晶セルに比べて、表示のコントラストが高く、白黒レベル応答速度が速い。さらに、放射状傾斜配向またはマルチドメイン配向を組み合わせることによって、視角の面内方位依存性を抑制できる。したがって、垂直配向方式で、マルチドメイン配向または放射状傾斜配向の液晶セルへ円偏光を入射することで、コントラスト、応答速度、視野角、視角の面内方位依存性および表示品位の全てを満たした液晶表示装置を実現できる。特に、放射状傾斜配向は、マルチドメイン配向と比べて、直線偏光と組み合わせた場合にザラツキが視認されやすいが、面内方位依存性が少ない。したがって、本実施形態のように、略円偏光を入射して、ザラツキを抑えることによって、表示品位を低下させることなく、面内方位依存性が少ない液晶表示装置を実現できる。
他の配向状態を示す構成例として、モノドメイン配向で垂直配向モードの液晶セルの場合、図26に示すように、図2・図22〜図25と異なり、画素電極21a・対向電極22bは、スリット22などが設けられず、それぞれ平坦に形成されている。なお、図26では、TFT基板11aおよび対向基板11b上に設けられた垂直配向膜27a・27bを図示している。
さらに、モノドメイン配向の液晶セルの場合、マルチドメイン配向や放射状傾斜配向の液晶セルとは異なり、製造工程にラビング工程が設けられており、液晶層11cの液晶分子のラビング方向が、両基板11a・11bで反平行となるように設定される。また、上記ラビング方向と、直線偏光フィルム12a・12bの吸収軸AAa(AAb)とが45度の角度になるように、液晶セル11や直線偏光フィルム12a・12bが配される。
上記構成では、電圧無印加時において、図26に示すように、基板法線方向(垂直)に配向していた液晶分子が、図27に示すように、画素電極21aおよび対向電極21b間の電圧印加に伴って傾斜する。ただし、この構成の場合は、モノドメイン配向なので、図28に示すように、画素内の各液晶分子は、基本的に一方向のみに配向する。なお、同図では、液晶分子の配向方向を、液晶分子の下がった方向が先端となる矢印で示している。
ただし、上記モノドメイン配向であっても、画素電極21aの周辺部分では、ソースバスライン28aやゲートバスライン28bからの影響によって、電界が歪み、電圧印加時の液晶分子の配向方向が乱れ、ラビング方向からズレる虞れがある。ここで、上述したように、λ/4板13a・13bを持たない構成では、上記吸収軸AAa(AAb)と液晶分子の配向方向とが、面内方向成分で一致すると、当該液晶分子の存在する領域が黒くなるので、図29に示すように、画素電極21aの周辺部分に黒い領域αが発生してしまう。
これに対して、本変形例に係る液晶表示装置では、λ/4板13a・13bが設けられているので、液晶分子の配向方向と吸収軸AAa(AAb)とが一致しないと黒くならず、図30に示すように、液晶分子の配向方向が互いに異なる領域間の境界領域で、液晶分子が基板に垂直のまま残っている領域のみが黒くなる。したがって、黒くなる領域αの面積を大幅に縮小できる。
さらに、上述の各実施形態と同様に、λ/4板13a(13b)を含み直線偏光フィルム12a(12b)からλ/4板13a(13b)までの範囲の厚み方向のリターデーションRth1が略0(少なくともλ/8未満)に設定されているので、上下左右の視角特性のバランスを損なうことなく、広い視野角を維持し、しかも、正面方向のコントラスト比の低下を防止可能な液晶表示装置を実現できる。
また、モノドメイン配向で水平配向モードの液晶表示装置の液晶セル11では、図31に示すように、液晶層11cに代えて、正の誘電率異方性を有する液晶からなる液晶層11dが用いられている。また、TFT基板11aおよび対向基板11bには、垂直配向膜27a・27bに代えて、水平配向膜27cおよび27dが設けられている。また、図25と同様に、画素電極21aや対向電極21bは、平坦に形成されており、ラビング方向は、両基板11a・11bで反平行(平行で向きが逆)となるように設定されている。
さらに、本変形例に係る液晶表示装置では、図32に示すように、上述の液晶補償板14a・14bまたは14に代えて、液晶補償板14c〜14fが設けられている。液晶補償板14c・14dは、正の一軸光学異方性を持つように(nx>ny=nz)形成されており、両者で、液晶セル11を挟むように配されている。また、液晶補償板14e・14fは、負の一軸光学異方性を持つように(nx=ny>nz)形成されており、上記両液晶補償板14c・14dをさらに挟むように配されている。さらに、各液晶補償板14c〜14fのy軸は、ラビング方向と一致するように配されている。
本変形例では、一例として、液晶層11dの屈折率異方性Δnが0.09、セル厚d=3.0μm、d・Δn=270nmの液晶セル11が使用されている。また、上記液晶補償板14c(14d)の面内方向のリターデーションは、黒表示を行う際(5Vを印加する際)に、液晶層11dの残留リターデーション値(15nm)を打ち消すことができるように、上記両部材14c・14dの合計で、d・(nx−ny)=15nmに設定されている。さらに、液晶補償板14e(14f)の厚み方向のリターデーションは、液晶セル11のd・Δn(270nm)の約70%程度のリターデーションを補償することで、良好な視野角が得られるため、両部材14e・14fの合計で、d(nx−nz)=100nmに設定されている。なお、この数値は、例えば、第3の実施形態のように、直線偏光フィルム12a・12bの支持体のリターデーション(例えば、それぞれ40nm)が補償されない場合であり、270×0.7−40×2が約100nmになることから決定した。
上記構成では、液晶層11dの液晶分子は、両電極21a・21b間に電圧が印加されていない場合、図31に示すように、ラビング方向に沿うように、基板11a・11bの面に沿った方向に配向している。ただし、図28と同様、図33に示すように、画素電極21aの周辺部分では、ソースバスライン28aやゲートバスライン28bからの影響によって、電界が歪み、配向方向がラビング方向からズレている。なお、垂直配向の場合と異なり、ラビング方向に沿っているため、ゲートバスライン28b近傍であっても、ラビング方向と逆に配向することはない。一方、両電極21a・21b間に電圧が印加されると、図34に示すように、液晶層11dの液晶分子が基板法線方向に傾斜する。このように、電圧に応じて液晶分子の傾斜方向が変化するので、垂直配向の場合と同様に、画素の明るさを制御できる。
この場合も、図29と同様、λ/4板13a・13bがないと、図35に示すように、画素電極21aの周辺部分など、液晶分子の配向が乱れる領域において、液晶分子の配向方向と直線偏光フィルム12a(12b)の吸収軸AAa(AAb)とが面内方向で一致すると、その液晶分子が存在する領域が黒くなってしまう。一方、λ/4板13a・13bを設けると、水平配向モードでは、電圧無印加時に垂直に配向している液晶分子が存在しないため、図36に示すように、黒くなる領域が存在しないが、厚み方向のリターデーションRth1によって、液晶補償用のリターデーション(厚み方向)を液晶セル11に十分に近づけることができず、視野角が制限される虞れがある。
これに対して、本変形例の液晶表示装置では、上記各実施形態と同様に、上記リターデーションRth1が略0(少なくともλ/8未満)に設定されているので、λ/4板13a・13bが設けられているにも拘らず、上下左右の視角特性のバランスを損なうことなく、広い視野角を維持し、しかも、正面方向のコントラスト比の低下を防止可能な液晶表示装置を実現できる。
なお、上記では、液晶補償板14c〜14fによって、水平配向モードの液晶セル11を光学補償する場合について説明したが、光学補償できれば、他の位相差層を用いてもよい。例えば、図37に示す構成では、上記液晶補償板14c〜14fに代えて、傾斜型の位相差フィルムからなる液晶補償板14g・14hが液晶セル11の両側に設けられている。
上記液晶補償板14g・14hは、元の屈折率楕円体を、na=nb>ncとし、ラビング直交方向(基板面内)をx軸、ラビング方向(基板面内)をy軸、基板方向をz軸とするとき、a軸がx軸と平行、b軸がy軸と所定の角度θをなすように形成されている。この場合、c軸とz軸との間の角度もθになる。この例では、例えば、na=nb=1.5、nc=1.497、θ=35度およびフィルム厚d=50μmの傾斜型位相差フィルムで、液晶補償板14g・14hのそれぞれを形成している。この場合でも、液晶補償板14g・14hによって液晶セル11が光学補償されるので、図32の構成と同様の効果が得られる。
また、さらに他の変形例として、OCB(Optically Compensated Bend:光学的補償ベンド)モードでモノドメイン配向の液晶セルを用いた場合を説明すると、図38に示すように、本変形例に係る液晶セル11は、図31と同様に、正の誘電率異方性を有する液晶層11dと、水平配向膜27c・27dとを備えている。ただし、図31とは異なり、液晶セル11は、ラビング方向が両基板11a・11bで平行になるように形成されている。
さらに、当該液晶セル11を用いる液晶表示装置では、図39に示すように、液晶補償板14c〜14fに代えて、液晶補償板14i・14jが液晶セル11の両側に配されている。上記両液晶補償板14i・14jは、いずれも2軸光学異方性を有する位相差層から構成されており、各主屈折率がnx>ny>nzに設定されている。この例では、液晶セル11の厚み方向のリターデーションを補償するために、d・((nx+ny)/2−nz)=230nmに設定されており、黒表示時の残留リターデーションを打ち消すために、d・(nx−ny)=40nmに設定されている。なお、これらの数値は、光学シミュレーションにより、液晶セル11の光学補償に最適となる値として導出した。また、液晶セル11および液晶補償板14i・14jは、液晶補償板14i・14jのy軸とラビング方向とが一致するように配される。
上記構成では、電圧無印加時において、液晶層11dの液晶分子は、厚み方向の中心位置からTFT基板11a側と、対向電極21b側とで、透過光に与えるリターデーションが相殺されるように配向し、水平配向モードの場合と同様に、白表示となる。なお、この場合も、水平配向モードの場合と同様に、画素電極21aの周辺部で液晶分子の配向乱れが発生する。一方、この液晶セル11へ電圧を印加すると、液晶層11dの液晶分子は、図40に示すように、両基板11a・11b近傍を除いて、垂直に配向し、水平配向モードの場合と同様に黒表示となる。
この場合でも、水平配向モードの場合と同様に、λ/4板13a・13bにより配向乱れにより黒くなる領域が発生せず、しかも、上記各実施形態と同様に、上記リターデーションRth1が略0(少なくともλ/8未満)に設定されている。したがって、上下左右の視角特性のバランスを損なうことなく、広い視野角を維持し、しかも、正面方向のコントラスト比の低下を防止可能な液晶表示装置を実現できる。
また、OCBモードの場合も水平配向モードの場合と同様に、図41に示すように、液晶補償板14i・14jに代えて、傾斜型の位相差フィルムからなる液晶補償板14k・14mで、液晶セル11を光学補償できる。この例では、光学シミュレーションによって、例えば、na=nb=1.5、nc=1.497、θ=35度およびフィルム厚d=110μmの傾斜型位相差フィルムで、液晶補償板14k・14mのそれぞれを形成している。この場合でも、液晶補償板14k・14mによって液晶セル11が光学補償されるので、図39の構成と同様の効果が得られる。
なお、上記では、入射光が円偏光となるように、λ/4板13a・13bのリターデーションを、透過光の波長の4分の1に設定しているが、これに限るものではない。完全に円偏光でなくても、明るさが余り低下せず、ザラツキが発生しない程度のズレであれば、面内方向のリターデーションを透過光の波長の略4分の1に設定し、略円偏光の楕円偏光を入射してもよい。一例として、最も視感度の高い波長(550nm)における明るさの変化率が10%以内であれば、すなわち、透過率が0.9以上であれば、明るさの低下が観察者に認識されにくく、ザラツキも視認されにくい。この条件を満たすリターデーションの範囲を、透過率の測定(シミュレーション)で導出すると、λ/4板13a・13bのリターデーションは、550nm付近の光に対して、135nmであれば、最適であり、95nm以上かつ175nm以内の範囲であれば、完全に円偏光でなくても、同様の効果が得られる。
以上のように、上記各実施形態のいずれかに記載の液晶表示装置は、液晶セルと、当該液晶セルの両側に配された偏光素子とを有する液晶表示装置であって、上記課題を解決するために、上記各偏光素子および液晶セルの間にそれぞれ配され、面内方向のリターデーションが透過光の波長の略4分の1波長に設定されている4分の1波長層と、上記4分の1波長層の少なくとも一方および液晶セルの間に配され、厚み方向のリターデーションを有し、上記液晶セルを光学補償する位相差層と、少なくとも上記液晶補償層が設けられた方の4分の1波長層および偏光素子の間に設けられた補償層とを備え、上記補償層の厚み方向のリターデーションの値は、上記4分の1波長層を含み上記偏光素子から4分の1波長層までの範囲における厚み方向のリターデーションのうち、上記補償層を除いた合計値と正負が逆に設定されていることを特徴としている。
また、上記各実施形態のいずれかに記載の液晶表示装置は、垂直配向モードの液晶セルと、当該液晶セルの両側に配された偏光素子とを有する液晶表示装置であって、上記課題を解決するために、上記各偏光素子および液晶セルの間にそれぞれ配され、面内方向のリターデーションが透過光の波長の略4分の1波長に設定されている4分の1波長層と、上記4分の1波長層の少なくとも一方および液晶セルの間に配され、面内方向の主屈折率をnx1、ny1、法線方向の主屈折率をnz1としたとき、主屈折率nz1が最も小さい位相差層と、少なくとも上記位相差層が設けられた方の4分の1波長層および偏光素子の間に設けられ、面内方向の主屈折率をnx2、ny2、法線方向の主屈折率をnz2としたとき、主屈折率nz2が最も大きな補償層とを備えていることを特徴としている。
さらに、上記各実施形態のいずれかに記載の液晶表示装置は、正の誘電異方性の液晶を含む液晶セルと、当該液晶セルの両側に配された偏光素子とを有する水平配向モードの液晶表示装置であって、上記課題を解決するために、上記各偏光素子および液晶セルの間にそれぞれ配され、面内方向のリターデーションが透過光の波長の略4分の1波長に設定されている4分の1波長層と、上記4分の1波長層の少なくとも一方および液晶セルの間に配された正の一軸性の位相差層と、上記4分の1波長層の少なくとも一方および液晶セルの間に配された負の一軸性の位相差層と、少なくとも上記位相差層のいずれかが設けられた方の4分の1波長層および偏光素子の間に設けられ、面内方向の主屈折率をnx2、ny2、法線方向の主屈折率をnz2としたとき、主屈折率nz2が最も大きな補償層とを備えていることを特徴としている。なお、上記正および負の一軸性の位相差層に代えて、上記4分の1波長層の少なくとも一方および液晶セルの間に、元の屈折率楕円体がna=nb>ncであり、上記na軸が面内のラビング直交方向に一致し、nc軸が法線方向から予め定める角度をなすように傾斜した傾斜型の位相差層を設けてもよい。
また、上記各実施形態のいずれかに記載の液晶表示装置は、正の誘電異方性の液晶を含む液晶セルと、当該液晶セルの両側に配された偏光素子とを有する光学的補償ベンドモードの液晶表示装置であって、上記課題を解決するために、上記各偏光素子および液晶セルの間にそれぞれ配され、面内方向のリターデーションが透過光の波長の略4分の1波長に設定されている4分の1波長層と、上記4分の1波長層の少なくとも一方および液晶セルの間に配され、面内方向の主屈折率をnx1、ny1、法線方向の主屈折率をnz1としたとき、nx1>ny1>nz1の位相差層と、少なくとも上記位相差層が設けられた方の4分の1波長層および偏光素子の間に設けられ、面内方向の主屈折率をnx2、ny2、法線方向の主屈折率をnz2としたとき、主屈折率nz2が最も大きな補償層とを備えていることを特徴としている。なお、上記位相差層に代えて、上記4分の1波長層の少なくとも一方および液晶セルの間に、元の屈折率楕円体がna=nb>ncであり、上記na軸が面内のラビング直交方向に一致し、nc軸が法線方向から予め定める角度をなすように傾斜した傾斜型の位相差層を設けてもよい。
これらの構成によれば、偏光素子および4分の1波長層を通過した光が液晶セルに入射するので、液晶セルには、略円偏光が入射され、液晶セルから出射した光は、4分の1波長層によって、略4分の1波長の位相差が与えられた後、偏光素子を介して出射される。
ここで、電圧印加時、あるいは、電圧無印加時の初期配向状態など、画素電極と対向電極との間の電圧が所定の電圧の場合には、液晶セルは、液晶分子の配向状態に応じた位相差を透過光に与えるので、円偏光は、楕円偏光に変換される。したがって、4分の1波長層を透過しても直線偏光には戻らず、4分の1波長層の出射光の一部が偏光素子から出射される。この結果、印加電圧に応じて偏光素子からの出射光量を制御でき、階調表示が可能となる。
さらに、略円偏光が入射されているので、液晶分子に配向乱れが発生しても、液晶分子の配向方向と透過光とが、面内成分と基板法線方向との双方で一致していない限り、液晶分子は、透過光に位相差を与えることができ、高い光利用効率を確保できる。
一方、上記液晶セルの液晶分子が基板法線方向(垂直)に配向していると、液晶セルは、透過光に位相差を与えることができない。この結果、透過光は、略円偏光を維持したまま、出射される。当該出射光は、4分の1波長層で直線偏光に変換された後、偏光素子へ入力され、透過が制限される。したがって、液晶表示装置は、黒表示できる。
ただし、液晶分子が垂直に配向していても、基板法線方向から極角だけ傾いた斜め方向から見た場合、液晶分子の配向方向と透過光の方向とが一致せず、液晶セルは、極角に応じた位相差を透過光に与えてしまう。ところが、上記各構成では、厚み方向のリターデーションを有する位相差層が設けられており、液晶セルを光学補償できる。したがって、広い視野角を保つことができる。
さらに、上記構成では、厚み方向のリターデーションの正負が、上記4分の1波長層や位相差層とは逆の補償層が、偏光素子と4分の1波長層との間に配されている。したがって、例えば、偏光素子の支持体など、位相差層と同傾向の光学活性に機能する部材が、偏光素子と4分の1波長層との間に介在したり、4分の1波長層が厚み方向のリターデーションを持っていたとしても、これらの部材のリターデーションを、上記補償層で打ち消すことができる。
この結果、偏光素子から液晶セルまで、および、液晶セルから偏光素子までにおける、厚み方向のリターデーションの合計が同じであったとしても、上記4分の1波長層を含み、上記偏光素子から4分の1波長層までの範囲の厚み方向のリターデーションの絶対値を小さくできるので、補償層を持たない場合に比べて、液晶セルの補償用のリターデーション(厚み方向)を、液晶セルに近づけることができる。したがって、黒表示時の光漏れを防止でき、良好な黒表示が可能になる。加えて、正負の光学活性を有する4分の1波長層を用いる場合と異なり、同じ種類の4分の1波長層を用いることができるので、両者の面内方向のリターデーションを容易に揃えることができ、正面方向のコントラスト比を向上できる。
また、上記範囲の厚み方向のリターデーション(絶対値)を削減できるので、法線方向から所定の角度のコントラスト比を面内方位全てに渡って測定した際、コントラスト比のピーク値を同様の値に維持でき、上下左右の視角特性のバランスを取りやすい。
なお、これらの構成の場合、4分の1波長層を2軸性屈折率楕円体で表される位相差フィルムにより作成し、上記負フィルムの特性を4分の1波長層に付加することで、4分の1波長層を負フィルムとして兼用できる。この場合であっても、液晶セルの補償用のリターデーション(厚み方向)を液晶セルに近づけることができるので、良好な黒表示が可能となる。
さらに、上記液晶セルの光学補償用の位相差層が設けられている構成に加えて、少なくとも上記位相差層が設けられた方の4分の1波長層および偏光素子の間には、厚み方向および面内方向のリターデーションを有し、面内方向のリターデーションで上記偏光素子を光学補償する偏光素子補償層が設けられている方が好ましい。また、主屈折率nz2が最も大きな補償層が設けられている構成の場合は、少なくとも上記位相差層が設けられた方の4分の1波長層および偏光素子の間には、面内方向の主屈折率をnx3、ny3、法線方向の主屈折率をnz3としたとき、nx3>ny3であり、上記液晶セルを基準に同じ側にある偏光素子の吸収軸とny3軸とが平行となるように設定された偏光素子補償層が設けられている方が望ましい。
これらの構成によれば、偏光素子補償層によって、偏光素子を光学補償できる。例えば、偏光素子の吸収軸と偏光素子補償層のy軸とを平行に配した場合、吸収軸が互いに直交する偏光素子を有する液晶表示装置を、上記吸収軸の45度の面内方位から斜めにみたときの光漏れを抑制できる。さらに、上記補償層にて、偏光素子補償層の厚み方向のリターデーションを打ち消すことができるので、偏光素子補償層が設けられているにも拘らず、液晶セルの補償用のリターデーション(厚み方向)を、液晶セルに近づけることができる。この結果、全ての面内方位において、黒表示時の光漏れを防止でき、良好に黒表示可能な液晶表示装置を実現できる。
また、主屈折率nz2が最も大きな補償層が設けられている構成の場合、上記補償層の各主屈折率は、nx2=ny2<nz2に設定されている方が望ましい。当該構成によれば、補償層の面内方向のリターデーションが0nmなので、面内方向のリターデーションが存在する場合に発生する色付き現象を防止でき、コントラスト比を高い値に維持できる。
さらに、上記各構成の補償層を設ける代わりに、上記4分の1波長層として、面内方向の主屈折率をnx4、ny4、法線方向の主屈折率をnz4としたとき、(nx4+ny4)/2が概ねnz4の4分の1波長層を用いてもよい。
当該構成では、4分の1波長層の厚み方向のリターデーションが略0に抑制される。したがって、上述の各液晶表示装置と同様に、偏光素子から液晶セルまで、および、液晶セルから偏光素子までにおける、厚み方向のリターデーションの合計が同じであったとしても、上記4分の1波長層を含み、上記偏光素子から4分の1波長層までの厚み方向のリターデーションを削減できる。これにより、液晶セルの補償用のリターデーション(厚み方向)を、液晶セルに近づけることができる。この結果、補償層を設けた場合と略同様に、上下左右の視角特性のバランスを損なうことなく、広い視野角を維持し、しかも、正面方向のコントラスト比の低下を防止可能な液晶表示装置を実現できる。
また、4分の1波長層の(nx4+ny4)/2が概ねnz4に設定されているか否かや、補償層の有無に拘らず、上記4分の1波長層を含み上記偏光素子から4分の1波長層までの範囲における厚み方向のリターデーションの絶対値は、いずれも上記透過光の波長の8分の1未満に設定されていてもよい。
当該構成でも、上述の各液晶表示装置と同様に、液晶セルの補償用のリターデーション(厚み方向)を、液晶セルに近づけることができる。したがって、上記各液晶表示装置と同様に、上下左右の視角特性のバランスを損なうことなく、広い視野角を維持し、しかも、正面方向のコントラスト比の低下を防止可能な液晶表示装置を実現できる。
さらに、上記範囲における厚み方向のリターデーションの絶対値は、いずれも略0に設定されている方が望ましい。当該構成によれば、液晶セルを光学補償するために有効な厚み方向のリターデーションを最も液晶セルに近づけることができ、さらに液晶表示装置の表示品位を向上できる。
また、上記各構成に加えて、上記液晶セルは、画素に対応する画素電極が設けられた第1基板と、対向電極が設けられた第2基板と、当該両基板間に設けられた液晶層とを有し、当該液晶層は、上記画素電極と対向電極との間の電圧が、少なくとも予め定められる値の場合に、液晶分子の配向方向が画素中で互いに異なるように制御される方が望ましい。
上記構成では、液晶分子の配向方向が画素中で互いに異なっているので、配向方向の互いに異なる液晶分子が存在する領域同士が、互いに光学的に補償し合うことができる。この結果、斜めから見た場合の表示品位を改善し、視野角を拡大できる。
ここで、上記液晶層では、広視野角確保のために液晶分子の配向方向を画素中で互いに異なるように制御した結果、配向状態の乱れが発生しやすい。したがって、液晶層に直線偏光が入射され、液晶層の出射光が検光子に入射される従来の液晶表示装置の場合は、液晶分子の配向に乱れが発生して、配向方向の面内成分が、偏光素子の吸収軸と一致すると、基板法線方向成分に拘らず、当該液晶分子は、透過光に位相差を与えることができなくなってしまう。したがって、当該液晶分子が存在する領域は、明るさ向上に寄与できず、ザラツキなどが発生してしまう。また、配向方向の面内成分が検光子の吸収軸と一致した液晶分子が明るさ向上に寄与できないので、光利用効率(実効開口率)が低下する。これらの結果、コントラスト比の確保が難しくなり、階調数の増加も困難になってしまう。
これに対して、上記構成の液晶表示装置では、略円偏光が液晶層に入射されるので、液晶層の配向方向についての異方性がなくなり、液晶分子の配向方向と透過光とが、面内成分と基板法線方向との双方で一致していない限り、液晶分子は、透過光に位相差を与えることができる。
したがって、広視野角確保のために液晶分子の配向方向を画素中で互いに異なるように制御した結果、配向状態の乱れが発生しやすいにも拘らず、配向が乱れた液晶分子の配向方向が視角と一致していない限り、明るさ向上に寄与できる。この結果、広い視野角を保ちながら、高い光利用効率を確保できる。
また、上記各構成に加えて、上記位相差層の各主屈折率nx1、ny1は、nx1=ny1に設定されている方が好ましい。当該構成によれば、位相差層の面内方向のリターデーションが0nmなので、面内方向のリターデーションが存在する場合に発生する色付き現象を防止でき、コントラスト比を高い値に維持できる。
一方、nx1=ny1に設定する代わりに、上記位相差層は、上記4分の1波長層および液晶セルの間の双方に配され、それぞれの主屈折率nx1、ny1は、互いに異なっており、上記両位相差層のnx1軸は、互いに直交していると共に、両位相差層のny1軸は、互いに直交していてもよい。
当該構成では、液晶セルの両側に配された位相差層は、互いのnx1軸およびny1軸がそれぞれ直交している。したがって、一方の位相差層で発生した面内方向のリターデーションは、他方の位相差層で打ち消される。この結果、上記色付き現象を防止でき、コントラスト比を高い値に維持できる。
また、上記各構成にくわえて、上記両4分の1波長層は、厚み方向のリターデーションの正負が互いに同一である方が望ましい。当該構成によれば、両4分の1波長層を同一の工程で製造できるので、生産バラツキが発生しても、双方の特性を容易に揃えることができる。この結果、厚み方向のリターデーションの正負が異なる4分の1波長層を用いる場合に比べて、液晶表示装置の生産性を向上できる。