JP2006083494A - 一重巻きのコイル状炭素繊維、その製造方法及びそれを用いた触覚センサ素子 - Google Patents

一重巻きのコイル状炭素繊維、その製造方法及びそれを用いた触覚センサ素子 Download PDF

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Abstract

【課題】 一重巻きのコイルに基づく弾力性等の特性を発揮することができる一重巻きのコイル状炭素繊維、及びその収率の高い製造方法並びにそれを用いた検出感度の高い触覚センサ素子を提供する。
【解決手段】 一重巻きのコイル状炭素繊維10は、コイル11の直径Dが0.01〜50μm、コイル11のピッチPが0.01〜10μm及びコイル11の長さXが0.1〜10mmである。この一重巻きのコイル状炭素繊維10は、鉄系金属をセラミック基板に摺り付けて鉄系金属の粒子をセラミック基板上に密着させたものを触媒として用い、該触媒を反応容器中に配置し、同反応容器中に熱分解して炭素を生成する原料ガス及び反応促進用ガスを供給し、加熱して熱分解反応を行うことにより得られる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、例えば微小なカテーテルの先端に取付けられ、腹腔鏡手術を行うために用いられる触覚センサの材料となる一重巻きのコイル状炭素繊維、その製造方法及びそれを用いた触覚センサ素子に関するものである。
従来、コイル状炭素繊維は、次のような方法で製造されている(例えば、特許文献1を参照)。すなわち、その製造方法は、ニッケル(Ni)金属が存在する系内にて、アセチレンガスと水素ガス又は希釈ガスを含む混合ガスを400〜900℃で気相熱分解反応させることにより、炭素繊維を析出させるものである。
一方、触圧を検出する触覚センサとしては、次のような構成のものが知られている(例えば、特許文献2を参照)。すなわち、触覚センサは、コイルとコンデンサとが直列接続されているLC直列共振回路を複数備えている。このLC直列共振回路には外部発振器及びスペクトルアナライザが接続され、外部発振器により掃引電気信号等の入力信号がLC直列共振回路に入力された後にスペクトルアナライザに出力されるようになっている。LC直列共振回路はコイルの固有の周波数に基づく共振周波数を有し、スペクトルアナライザに出力される信号はLC直列共振回路の共振周波数に対応する周波数において信号強度が低下する。
そして、触覚センサに触圧が加わったときには触圧によりコイルのピッチ(巻線間隔)や面積が変化し、この変化に伴いコイルのインダクタンスが変化する。ここで、LC直列共振回路の共振周波数はコイルのインダクタンスの変化に伴い変動する。よって、スペクトルアナライザに出力された信号において、信号強度が低下する位置はLC直列共振回路の共振周波数の変動に伴い変位するために、LCR直列共振回路の共振周波数の変動を検知することができる。このため、触覚センサにより触圧を検出できるようになっている。
特許第2721557号公報(第1頁〜第3頁) 特開2002−236059号公報(第2頁〜第5頁)
ところが、前記特許文献1に記載の製造方法で得られるコイル状炭素繊維は、2つの炭素繊維が密着した状態で緻密に螺旋状をなして延びる二重巻きのものである。このような二重巻きのコイル状炭素繊維は、ほぼ円筒状をなしていることから弾力性(伸縮性)等の物性が制限される。そのため、二重巻きのコイル状炭素繊維を用いて触覚センサ等を構成した場合、加えられる触圧(応力)に対する変位が十分ではなく、感度が不足する。更に、コイル状炭素繊維をマトリックス樹脂に分散させて触覚センサを構成するときには円筒状のコイル内に気泡が残るため機械的、電気的な物性が低下するという問題があった。
一方、特許文献2に記載の触覚センサは、コイルとコンデンサとが直列に接続されてLC直列共振回路が構成されているために、その構成が複雑であるという問題があった。更にLC直列共振回路は、コイルのインダクタンスの変化のみによりその共振周波数が変動する。このため、例えば触覚センサに微弱な触圧が加わることによりコイルのインダクタンスがほとんど変化しないときには、LC直列共振回路の共振周波数はほとんど変動しない。よって、触覚センサは、コイルのインダクタンスがほとんど変化しない微弱な触圧を検出することができず、検出感度が低いという問題があった。
本発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、一重巻きのコイルに基づく弾力性等の特性を十分に発揮することができる一重巻きのコイル状炭素繊維、及びその収率の高い製造方法並びにそれを用いた検出感度の高い触覚センサ素子を提供することにある。
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明の一重巻きのコイル状炭素繊維は、コイルの直径が0.01〜50μm、コイルのピッチが0.01〜10μm及びコイルの長さが0.1〜10mmであって、一重巻きで螺旋状に延びるように構成されていることを特徴とするものである。
請求項2に記載の発明の一重巻きのコイル状炭素繊維の製造方法は、鉄系金属をセラミック基板に摺り付けて鉄系金属の粒子をセラミック基板上に密着させたものを触媒として用い、該触媒を反応容器中に配置し、その状態で反応容器中に熱分解して炭素を生成する原料ガスを供給し、加熱して原料ガスの熱分解反応を行うことを特徴とするものである。
請求項3に記載の発明の一重巻きのコイル状炭素繊維の製造方法は、請求項2に記載の発明において、前記鉄系金属はクロムを含有する合金であることを特徴とするものである。
請求項4に記載の発明の一重巻きのコイル状炭素繊維の製造方法は、請求項2又は請求項3に記載の発明において、前記セラミック基板は、アルミナ又は二酸化珪素の基板であることを特徴とするものである。
請求項5に記載の発明の一重巻きのコイル状炭素繊維の製造方法は、請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の発明において、前記セラミック基板表面のJIS B 0601(1994)に基づく算術平均粗さ(Ra)は5〜20μmであることを特徴とするものである。
請求項6に記載の発明の触覚センサ素子は、マトリックス樹脂に、請求項1に記載の一重巻きのコイル状炭素繊維が配合されて構成されていることを特徴とするものである。
本発明によれば、次のような効果を発揮することができる。
請求項1に記載の発明の一重巻きのコイル状炭素繊維は、コイルの直径が0.01〜50μm、コイルのピッチが0.01〜10μm及びコイルの長さが0.1〜10mmであって、一重巻きで螺旋状に延びるように構成されている。このため、一重巻きのコイルに基づく弾力性等の特性を十分に発揮することができる。
請求項2に記載の発明の一重巻きのコイル状炭素繊維の製造方法では、鉄系金属をセラミック基板に摺り付けて鉄系金属の粒子をセラミック基板上に密着させたものを触媒として用いる。そして、該触媒を反応容器中に配置し、同反応容器中に熱分解して炭素を生成する原料ガス及び反応促進用ガスを供給し、加熱して熱分解反応を行うことにより一重巻きのコイル状炭素繊維が得られる。鉄系金属の触媒活性が高く、しかも鉄系金属の粒子がセラミック基板上に密着されている。このため、一重巻きのコイル状炭素繊維を収率良く、かつ容易に得ることができる。
請求項3に記載の発明のコイル状炭素繊維の製造方法においては、鉄系金属はクロムを含有する合金である。このため、触媒に含まれるクロムにより触媒機能を高めることができ、請求項2に係る発明の効果を向上させることができる。
請求項4に記載の発明のコイル状炭素繊維の製造方法においては、セラミック基板は、アルミナ又は二酸化珪素の基板である。このアルミナ又は二酸化珪素の基板は、触媒である鉄系金属より硬く、鉄系金属をセラミック基板に摺り付けて金属粒子をセラミック基板上に容易に密着させることができる。従って、請求項2又は請求項3に係る発明の効果を向上させることができる。
請求項5に記載の発明のコイル状炭素繊維の製造方法では、セラミック基板表面のJIS B 0601(1994)に基づく算術平均粗さ(Ra)は5〜20μmに設定されている。このため、鉄系金属をセラミック基板に摺り付けるとき、鉄系金属を容易に粒子状にでき、セラミック基板表面に対する鉄系金属の粒子の密着性を高めることができ、請求項2から請求項4のいずれか一項に係る発明の効果を向上させることができる。
請求項6に記載の発明の触覚センサ素子は、マトリックス樹脂に、請求項1に記載の一重巻きのコイル状炭素繊維が配合されて構成されている。このため、一重巻きのコイル状炭素繊維の特性に基づいて触覚センサの感度を向上させることができる。
以下、本発明の実施形態につき、図面を用いて詳細に説明する。
本実施形態の一重巻きのコイル状炭素繊維10は、図1(a)に示すように一重螺旋構造を有し、1本のコイル11の直径Dが0.01〜50μm、コイル11のピッチPが0.01〜10μm及びコイル11の長さXが0.1〜10mmとなるように構成されている。製造の容易性等の観点から、コイル11の直径Dは0.1〜10μmであることが好ましく、ピッチPは0.1〜10μmであることが好ましい。このコイル状炭素繊維10は、一定の太さを有するコイル11が一定のピッチP(間隔)をおいて一重巻きで螺旋状に延びるように形成されている。このため、一重巻きのコイル状炭素繊維10は、弾力性に優れ、あらゆる方向からの応力(触圧)に対して容易に変形し、従って微小ばねとして作用し、あらゆる方向からの応力を高感度で検出することができる。尚、コイル11の巻き方向は、コイル11の軸線を中心として時計方向(右巻き)又は反時計方向(左巻き)のいずれであってもよい。
一方、図1(b)に示すように、従来の二重巻きのコイル状炭素繊維30の場合には、2本のコイル31a,31bが交互に密接した状態で螺旋状に延び、すなわち二重螺旋構造を有し、従って全体としてほぼ円筒状をなし、中心には空洞が形成されている。従って、二重巻きのコイル状炭素繊維30は弾力性に乏しく、応力を受けたときに変位しにくく、応力を検出する感度が低くなる。
一重巻きのコイル状炭素繊維10は、次のようにして製造される。すなわち、鉄系金属をセラミック基板に摺り付けて鉄系金属の粒子をセラミック基板上に密着させたものを触媒として用い、該触媒を反応容器中に配置し、その状態で反応容器中に熱分解して炭素を生成する原料ガスを供給し、加熱して原料ガスの熱分解反応を行うことにより製造される。
次に、反応原料及び反応装置について説明する。
触媒として用いられる鉄系金属は、鉄を含有し、その粒子が触媒機能を発揮する金属を意味するが、触媒機能を高める点からクロムを含有する合金であることが好ましい。具体的には、SUS304、SUS316、SUS410、SUS430等のステンレス鋼が望ましい。クロムの含有量は、10〜20質量%であることが好ましい。クロムの含有量が10質量%未満の場合には触媒機能を十分に発揮することができず、20質量%を越える場合には鉄等の含有量が低下し、成分のバランスが変化して触媒機能が低下する傾向を示す。また、鉄系金属は触媒機能を高めるためにニッケルを含有する合金であることが好ましく、その含有量はクロムと同様の理由から1〜50質量%であることが好ましい。
触媒を構成するセラミック基板としては、二酸化珪素(SiO2)、アルミナ(Al23)、ジルコニア(ZrO2)等の基板が用いられる。セラミックは不純物を含まない高純度のものが好ましい。セラミック基板は、一重巻きのコイル状炭素繊維が成長する場所となるものである。セラミック基板の表面は、鉄系金属をセラミック基板に摺り付けて鉄系金属の粒子をセラミック基板上に密着させるために、JIS B 0601(1994)に基づく算術平均粗さ(Ra)が5〜20μmであることが望ましい。この算術平均粗さが5μm未満又は20μmを越えるの場合には、いずれも鉄系金属の粒子をセラミック基板表面に十分に密着させることができなくなる。
触媒は、セラミック基板上に鉄系金属をセラミック基板表面が金属色になるまで擦り付け、鉄系金属をセラミック基板表面に密着性良く分散させることにより得られる。セラミック基板上における鉄系金属の粒子は、その平均粒子径が1〜10nmであることが好ましい。また、鉄系金属の粒子はセラミック基板上で層をなして密着し、その層の数は1〜5層程度であることが望ましい。更に、セラミック基板表面に対する鉄系金属の密着量は、0.1〜0.3mg/cm2であることが好ましい。この密着量が0.1mg/cm2未満の場合には、セラミック基板表面に密着される鉄系金属の存在量が少なく、触媒の活性が不足して一重巻きのコイル状炭素繊維10の収率が低下する傾向となる。一方、密着量が0.3mg/cm2を越える場合には、触媒の活性をそれ以上高めることが難しく、無駄になりやすい。従来のように、金属の粉末又は水溶液を用いてセラミック基板上に金属を分散させた場合には、得られる炭素繊維はほとんど二重巻きのコイル状炭素繊維30であって、一重巻きのコイル状炭素繊維10は得られない。鉄系金属の粒子に含まれている酸素の量(酸素含有量)は、2〜30質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましく、10〜15質量%が最も好ましい。
反応容器としては例えば円管状に形成された横型熱化学気相合成装置が用いられ、コイル状炭素繊維をその中で成長させることができるようになっている。この反応容器はステンレス鋼、インコネル等の金属材料、セラミック、アルミナ、石英等のセラミック系材料により形成されている。反応容器の材質は、触媒活性や内部観察の点から透明石英が好ましい。反応容器の両端の開口部は、絶縁ゴム栓等により閉塞され、反応容器内が電気的に絶縁状態に保持される。
流入口は、反応容器の中央部に形成され、原料ガスとして炭化水素ガス又は一酸化炭素ガス、更に周期律表の第15族及び第16族元素を含むガス及び水素ガスを反応容器内に流入させるようになっている。前記炭化水素ガスとしてアセチレン、メタン、プロパン等の炭素原子を含むガス又は一酸化炭素ガスが使用される。炭素繊維をコイル状に形成するために、各結晶面での触媒活性の異方性を有する点から原料ガスとしてアセチレンが好ましい。前記周期律表の第15族及び第16族元素としては、硫黄、チオフェン、メチルメルカプタン、硫化水素等の硫黄原子を含む化合物又は、リン、3塩化リン等のリン原子を含む化合物が使用される。
また、注入口は、反応容器の両端部に形成され、シールガスを反応容器内に注入させるようになっている。このシールガスは窒素ガス、ヘリウムガス等の化学的に不活性で、系の物質と反応しない不活性ガスが使用される。シールガスが反応容器内に注入されると、反応容器内で、酸素ガス等による余分な、或いは有害な影響が反応系に加えられるのを防止できるようになっている。更に、流出口は、反応容器の中央部に、前記流入口に対向するように形成され、反応容器内を流通した炭化水素ガス、一酸化炭素ガス、シールガス、周期律表の15族又は16族の化合物のガス、水素ガス及び分解反応により生成したガスを流出するようになっている。
加熱器は反応容器の中央に、前記流入口及び流出口を挟むように円環状に取り付けられ、反応容器内を一定温度にまで上昇させるようになっている。反応温度は、600〜950℃に設定されるのが望ましく、700〜850℃に設定されるのが更に望ましい。反応温度が600℃未満又は950℃を越えると一重巻きのコイル状炭素繊維の収率が急激に低下する。
また、コイル状炭素繊維のコイル径、コイルピッチ及びコイル長さは、鉄系金属の粒子の結晶面の異方性や粒径に依存している。そのため、水素ガス等により結晶面の異方性が変化すると、コイル径、コイルピッチ及びコイル長さも変化する。例えば、鉄系金属の粒子の粒径が小さくなるとコイル径は小さくなる。鉄系金属の粒子の結晶面の異方性を大きくすることにより、コイル径の小さいコイル状炭素繊維が得られ、異方性を小さくすることにより、コイル径の大きいコイル状炭素繊維が得られる。このため、コイル状炭素繊維のコイル径の大きさを制御することができる。
次に、一重巻きのコイル状炭素繊維10の製造方法について説明する。
鉄系金属の粒子が密着されたセラミック基板が反応容器内に配設され、反応容器の両端開口部が絶縁ゴム栓により閉塞される。続いて、流入口よりアセチレン、硫化水素及び水素ガスが反応容器内に流入される。これらアセチレン、硫化水素及び水素ガスは、反応容器内のセラミック基板に接触しながら流れ、流出口から外部へ流出される。また、注入口から窒素ガスが注入され、セラミック基板上で、酸素ガス等による余分な、或いは有害な影響が反応系に加えられるのが防止される。更に、加熱器により反応容器内が600〜950℃まで加熱される。
その結果、アセチレンが鉄系金属の粒子による接触的な触媒作用に基づいて熱分解され、炭化鉄の単結晶が形成され、更に炭化鉄の単結晶が鉄と炭素に分解され、結晶面において粒子内及び粒界拡散が生じ、セラミック基板上に炭素繊維が形成される。このとき、鉄粒子の結晶面の異方性より、触媒活性の大きい結晶面から成長した炭素繊維は成長が大きく、触媒活性の小さい結晶面から成長した炭素繊維の外側になるようにカールしながら成長する。そのため、炭素繊維はコイルを形成しながら成長する。このような製造方法を採ることによって、一重巻きのコイル状炭素繊維10を好ましくは85%以上、より好ましくは95%以上の収率で得ることができる。
次に、一重巻きのコイル状炭素繊維10が配合された触覚センサ素子を備える触覚センサについて説明する。図2に示すように、一対の細長い板状をなす電極12a,12bが一定の間隔sをおいて配置され、それら電極12a,12b上には円柱状をなす触覚センサ素子13が電気的に導通されるように配置されている。各電極12a,12bには第1接続線14及び第2接続線15の各一端が接続され、それらの第1接続線14及び第2接続線15の他端がLCR測定装置16に接続されている。LCR測定装置16には第3接続線17及び第4接続線18を介して交流電源19が接続されている。尚、交流電源19は直流電源であってもよい。更に、LCR測定装置16は第5接続線20及び第6接続線21を介して表示装置としてのデジタルオシロスコープ22に接続され、電気特性としてインダクタンス(L、誘導係数)、静電容量(C、キャパシタンス)及び電気抵抗(R、レジスタンス)の波形を見ることができるようになっている。これらの触覚センサ素子13、電極12a,12b、LCR測定装置16、交流電源19、デジタルオシロスコープ22等により触覚センサが構成されている。
このように触覚センサは、マトリックス樹脂に、前記一重巻きのコイル状炭素繊維10を配合して形成された触覚センサ素子13を備えている。マトリックス樹脂は誘電体であって、静電容量(C)を有し、コンデンサとして作用する。マトリックス樹脂としては、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、スチレンと熱可塑性エラストマーとの共重合樹脂等が用いられる。具体的には、スチレンと熱可塑性エラストマーとの共重合樹脂として、(株)クラレの商品名、セプトン樹脂、液状エポキシ樹脂として大日本インキ化学工業(株)の商品名、EXA-5850-150、更に大場機工(株)の商品名、ゲル-OK-パッキング等が挙げられる。マトリックス樹脂の硬さは触覚センサの感度を向上させる上で重要であり、JIS A硬度(JIS K6301)で10〜100が好ましく、15〜50がより好ましい。その硬さがJIS A硬度で10未満の場合には、マトリックス樹脂が軟らかくなり過ぎて、ノイズの検出が大きくなって好ましくない。一方、JIS A硬度が100を越える場合には、マトリックス樹脂が硬くなり過ぎて、応力の伝播性が悪く、検出感度が低下する。
一重巻きのコイル状炭素繊維10は、その伸縮性に起因するコイル11の長さ等の変動が、電気的なLCR共振回路におけるインダクタンス(L)、静電容量(C)及び電気抵抗(R)の変動に変換される。この一重巻きのコイル状炭素繊維10の配合量は、マトリックス樹脂中に0.1〜50質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることがより好ましい。この配合量が0.1質量%未満の場合には、マトリックス樹脂中における一重巻きのコイル状炭素繊維10の割合が少なく、コイル状炭素繊維10に基づく触覚センサの感度が低下する。一方、配合量が50質量%を越える場合には、マトリックス樹脂中における一重巻きのコイル状炭素繊維10の割合が多くなり過ぎて成形性等が悪くなる傾向を示す。
前記のように、一重巻きのコイル状炭素繊維10は、コイル11のピッチPが大きいため、微小な触圧(応力)でも変形し、またあらゆる方向からの触圧で変形し、それらによる変位に基づいてインダクタンス(L)、静電容量(C)及び電気抵抗(R)等の電気特性が変化し、高い感度で触圧を検出することができる。このような微小な触圧に対する検出感度は、従来の二重巻きのコイル状炭素繊維30を用いた触覚センサに比べて2〜100倍高い。また、一重巻きのコイル状炭素繊維10を用いた触覚センサ素子13の表面に対して斜め方向又は平行方向の触圧に対する検出感度は、二重巻きのコイル状炭素繊維30を用いた触覚センサに比べて5〜50倍高い。更に、一重巻きのコイル状炭素繊維10を用いた触覚センサで、触圧方向にコイル軸を配向させたときの最小検出感度は、二重巻きのコイル状炭素繊維30を用いた触覚センサに比べて10〜500倍高い。
さて、一重巻きのコイル状炭素繊維10を製造するには、鉄系金属をセラミック基板に摺り付けて鉄系金属の粒子をセラミック基板上に密着させたものを触媒として用いる。そして、該触媒を反応容器中に配置した状態で、反応容器中に熱分解して炭素を生成する原料ガス及びその他の反応促進用ガスを供給し、600〜950℃の温度に加熱して原料ガスの熱分解反応を行う。これにより、一重巻きのコイル状炭素繊維10がほぼ定量的に得られる。
一重巻きのコイル状炭素繊維10が得られる理由は、次のように推測される。すなわち、熱分解反応中には、気相中の炭素成分が鉄系金属の粒子よりなる触媒中に拡散、浸透し、これが微細な炭素粒子となって析出し、コイル形状を作りながら成長する。このとき、コイルは触媒粒子を頭に持ち上げながら成長するが、触媒がセラミック基板と密着しているため、全部が均一に持ち上がらず、片方だけが持ち上がる結果、1個の触媒からは最初1本の炭素繊維しか成長しない。従って、1本の炭素繊維のみからなる一重巻きのコイル状炭素繊維が成長するものと推測される。これに対して、従来のように金属粉末を基板上に分散させただけであると、基板に対する触媒粒子の密着性が低い。このため、触媒粒子はコイルの先端に均等に持ち上がり、1個の触媒から2本の炭素繊維が均等に成長し、これが互いに絡み合いながら成長し、2本の炭素繊維からなる二重巻きのコイルが成長するものと推測される。
得られた一重巻きのコイル状炭素繊維10は、コイル11の直径Dが0.01〜50μm、コイル11のピッチPが0.01〜10μm及びコイル11の長さXが0.1〜10mmに形成され、自在に伸縮が可能である。
このようにして得られた一重巻きのコイル状炭素繊維10を、シリコーン樹脂等のマトリックス樹脂に配合することにより触覚センサ素子13が形成される。触覚センサ素子13に触圧が加わったとき、一重巻きのコイル状炭素繊維10はどの方向からの触圧に対しても容易に変位することができる。このとき、触覚センサ素子13は、LCR共振回路として作用し、機械力学的変動が電気的変動に変換される。このため、LCR共振回路の電圧等が変動し、その変動がLCR測定装置16で測定され、デジタルオシロスコープ22に表示される。このように、触覚センサ素子13は、微小な応力やどの方向からの触圧も十分に検出することができ、最小検出感度及び斜め方向や横方向の感度を向上させることができる。
以上の実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
・ 本実施形態の一重巻きのコイル状炭素繊維10は、コイル11の直径Dが0.01〜50μm、コイル11のピッチPが0.01〜10μm及びコイル11の長さXが0.1〜10mmに形成されている。一重巻きのコイル状炭素繊維10は、一定のピッチPをおいて螺旋状に延びていることから、伸縮性が自在で全方向からの応力に対して容易に変形する。このため、一重巻きのコイル11に基づく弾力性等の特性を十分に発揮することができる。
・ 係る一重巻きのコイル状炭素繊維10は、鉄系金属をセラミック基板に摺り付けて鉄系金属の粒子をセラミック基板上に密着させたものを触媒として用い、該触媒を反応容器中に配置した状態で、反応容器中に熱分解して炭素を生成する原料ガス及び反応促進用ガスを供給し、加熱して熱分解反応を行うことにより製造される。このため、一重巻きのコイル状炭素繊維10を選択的にかつ収率良く、しかも1段階の反応操作で容易に得ることができ、量産化が可能である。
・ コイル状炭素繊維10の製造方法において、鉄系金属としてクロムを含有する合金を用いることにより、クロムの触媒作用に基づいて上記の効果に加え触媒機能を高めることができる。
・ 更に、コイル状炭素繊維10の製造方法において、セラミック基板としてアルミナ又は二酸化珪素の基板を用いることにより、該アルミナ又は二酸化珪素の基板は、触媒である鉄系金属より硬く、鉄系金属をセラミック基板に摺り付けて金属粒子をセラミック基板上に容易に密着させることができる。従って、前記の効果を一層向上させることができる。
・ コイル状炭素繊維10の製造方法では、セラミック基板表面の前記セラミック基板表面のJIS B 0601(1994)に基づく算術平均粗さ(Ra)が5〜20μmに設定されているため、セラミック基板表面に対する鉄系金属の密着性を高めることができ、前記の効果を向上させることができる。
・ 触覚センサ素子13は、マトリックス樹脂に、前記一重巻きのコイル状炭素繊維10が配合されて構成されているため、一重巻きのコイル状炭素繊維10の特性に基づいて触覚センサの感度を向上させることができる。すなわち、触覚センサは、あらゆる方向からの触圧を高感度で検出することができる。従って、この微小な触覚センサを例えばカテーテル等の医療器具に装着して使用することにより、手術を容易かつ精度良く行うことができる。
以下、実施例及び比較例を挙げて、前記実施形態を更に具体的に説明する。
(実施例1、一重巻きのコイル状炭素繊維の製造)
鉄系金属として厚さ2mmのステンレス鋼板(SUS304、ニッケル8質量%、クロム18質量%、残り鉄)を、セラミック基板として外径30mmの透明石英管の表面に擦り付けて鉄系金属の粒子をセラミック基板上に密着させたものを触媒として用いた。透明石英管は、予め平均粒子径50μmのアルミナ粉末を表面が不透明になるまでサンドブラスト装置により吹き付け、算術平均粗さ(Ra)が5〜20μmのものを使用した。セラミック基板表面への触媒の添加量は0.1〜0.3mg/cm2とした。
これを内径60mmの石英製の反応管中に挿入、配置し、そこへアセチレン、水素、窒素及び硫化水素の原料ガスを供給し、750℃で2時間熱分解反応を行った。その間に供給した各原料ガスの供給量は、毎分アセチレン60ml、水素200ml、窒素100ml及び硫化水素0.5mlとした。その結果、セラミック基板上に2.5gのコイル状炭素繊維を得た。このコイル状炭素繊維は、全て一重巻きのコイル状炭素繊維であった。このコイル状炭素繊維のコイルの直径は3〜6μm、コイルのピッチが1〜5μm及びコイルの長さが0.2〜3mmであった。
(実施例2)
鉄系金属としてステンレス鋼板(SUS316、ニッケル8質量%、クロム18質量%、モリブデン3質量%、残り鉄)を用いたほかは、実施例1と同様にして触媒を調製し、アセチレンの熱分解反応を行った。その結果、セラミック基板上には1.5gのコイル状炭素繊維を得た。このコイル状炭素繊維は、全て一重巻きのコイル状炭素繊維であった。このコイル状炭素繊維のコイルの直径は1〜10μm、コイルのピッチが0.3〜3μm及びコイルの長さが0.5〜5mmであった。
(実施例3)
鉄系金属としてステンレス鋼板(SUS410、クロム12質量%、残り鉄)を用いたほかは、実施例1と同様にして触媒を調製し、アセチレンの熱分解反応を行った。その結果、セラミック基板上には0.5gのコイル状炭素繊維を得た。このコイル状炭素繊維には、一重巻きのコイル状炭素繊維が95%含まれていた。このコイル状炭素繊維のコイルの直径は0.2〜3μm、コイルのピッチが0.2〜4μm及びコイルの長さが0.4〜3mmであった。
(実施例4)
鉄系金属としてステンレス鋼板(SUS430、クロム16質量%、微量のマンガン及び珪素、残り鉄)を用いたほかは、実施例1と同様にして触媒を調製し、アセチレンの熱分解反応を行った。その結果、セラミック基板上には0.3gのコイル状炭素繊維を得た。このコイル状炭素繊維は、全て一重巻きのコイル状炭素繊維であった。このコイル状炭素繊維のコイルの直径は0.5〜5μm、コイルのピッチが0.3〜5μm及びコイルの長さが0.2〜2mmであった。
(実施例5)
セラミック基板としてアルミナ板(アルミナ分99質量%)を用いたほかは、実施例1と同様にして触媒を調製し、アセチレンの熱分解反応を行った。その結果、セラミック基板上には1.8gのコイル状炭素繊維を得た。このコイル状炭素繊維は、全て一重巻きのコイル状炭素繊維であった。このコイル状炭素繊維のコイルの直径は0.2〜2μm、コイルのピッチが0.1〜4μm及びコイルの長さが0.2〜1mmであった。
(実施例6)
セラミック基板としてムライト板(アルミナ46質量%、シリカ50質量%及びアルカリ4質量%)を用いたほかは、実施例1と同様にして触媒を調製し、アセチレンの熱分解反応を行った。その結果、セラミック基板上には1.8gのコイル状炭素繊維を得た。このコイル状炭素繊維には、一重巻きのコイル状炭素繊維が85質量%含まれていた。このコイル状炭素繊維のコイルの直径は0.3〜5μm、コイルのピッチが0.3〜3μm及びコイルの長さが0.3〜3mmであった。
(実施例7)
鉄系金属として鉄板を用いたほかは、実施例1と同様にして触媒を調製し、アセチレンの熱分解反応を行った。その結果、セラミック基板上には実施例1の1/2〜1/5という少量のコイル状炭素繊維を得た。このコイル状炭素繊維は、全て一重巻きのコイル状炭素繊維であった。このコイル状炭素繊維のコイルの直径は0.5〜5μm、コイルのピッチが0.3〜5μm及びコイルの長さが0.2〜2mmであった。
(比較例1)
表面をエメリーペーパー(紙やすり、#500)で磨いた厚さ2mmのステンレス鋼板(SUS304、ニッケル8質量%、クロム18質量%、残り鉄)をそのまま触媒を兼用する基板として用いたほかは、実施例1と同様にしてアセチレンの熱分解反応を行った。その結果、コイル状炭素繊維の収量は0.5gであった。得られたコイル状炭素繊維は、ほとんど二重巻きのコイル状炭素繊維又は直線状の炭素繊維であり、一重巻きのコイル状炭素繊維はほとんど見られなかった。
(比較例2)
触媒粉末としてステンレス鋼板(SUS304、ニッケル8質量%、クロム18質量%、残り鉄、平均粒子径5μm)の粉末をアルミナ基板上に分散させて用いたほかは、実施例1同様にしてアセチレンの熱分解反応を行った。触媒粉末のセラミック基板上への添加量は、0.2〜0.3mg/cm2とした。その結果、コイル状炭素繊維の収量は1.5gであったが、そのほとんどが二重巻きのコイル状炭素繊維であり、直線状の炭素繊維も観察された。二重巻きのコイル状炭素繊維のコイル径は2〜5μm、コイル間の隙間はなく、互いに密着していた。また、コイルの中心には内径1〜2μmの空洞がコイルの軸線方向に延びていた。
(比較例3)
ステンレス鋼板(SUS304)と同じ組成となるように、硝酸鉄、塩化ニッケル及び塩化クロムの水溶液を調製し、この溶液をアルミナ基板上に滴下した後、乾燥し、700℃で1時間水素気流中で還元した。これを用い、実施例1と同様にしてアセチレンの熱分解反応を行った。その結果、得られたコイル状炭素繊維は、二重巻きのコイル状炭素繊維が60%で、直線状の炭素繊維が40%であり、一重巻きのコイル状炭素繊維はほとんど見られなかった。
(比較例4)
ステンレス鋼板に代えてニッケル板を用いたほかは、実施例1と同様にしてアセチレンの熱分解反応を行った。その結果、得られたコイル状炭素繊維は、全て二重巻きのコイル状炭素繊維で、一重巻きのコイル状炭素繊維は全く見られなかった。二重巻きのコイル状炭素繊維の収量は1.5gであった。
(比較例5)
ステンレス鋼板に代えてクロム板を用い、反応温度を700℃及び760℃としたほかは、実施例1と同様にしてアセチレンの熱分解反応を行った。その結果、いずれの反応温度でもコイル状炭素繊維は得られず、直線状の炭素繊維のみであった。
(比較例6)
ステンレス鋼板に代えてマンガン板を用いたほかは、実施例1と同様にしてアセチレンの熱分解反応を行った。その結果、コイル状炭素繊維は得られず、直線状の炭素繊維のみであった。
(実施例8、触覚センサ)
マトリックス樹脂としてのシリコーン樹脂(信越化学(株)製、KE103、JIS A硬度が16)中に一重巻きのコイル状炭素繊維を5質量%添加して触覚センサ素子(縦10mm、横10mm、厚さ3mm)を調製し、触覚センサを構成した。その触覚センサについて、荷重0.001〜10mN(gf)でインダクタンス(L)、静電容量(C)及び電気抵抗(R)を測定した。測定にはアジレントテクノロジー社の精密インピーダンスアナライザー、E-4991Aを用いた。電極間距離は2.5mm、触覚センサ素子は直径10mm、厚さ3mmの円盤状とした。触圧は直径3mmの木製の棒で触覚センサ素子表面に垂直に印加した。微小応力の場合には微小分銅を用い、これを触覚センサ素子上に置いて荷重を加えた。いずれの場合も触圧の大きさは電子天秤で測定した。
それらの結果を図3、図4及び表1に示した。尚、一重巻きのコイル状炭素繊維はマトリックス樹脂中に3次元的に均一分散していた。触覚センサ素子に0.1mNの荷重を印加したときのインダクタンス、静電容量及び電気抵抗を測定し、図3(a)〜(c)に示した。図3(a)において、縦軸のインダクタンスの1目盛りは1mHを表し、図3(b)において、縦軸の静電容量の1目盛りは0.1pFを表し、図3(c)において、縦軸の電気抵抗の1目盛りは0.1kΩを表す。
図3(a)に示したように、触圧を加えるとインダクタンスの変化がパルス状のピークとして現れ、触圧を十分に検出することができた。図3(b)に示したように、触圧を加えると静電容量の変化もパルス状のピークとして現れ、触圧を十分に検出することができた。図3(c)に示したように、触圧を加えると電気抵抗の変化もパルス状のピークとして現れ、触圧を十分に検出することができた。
また、微小触圧(0.2〜0.001mN)を印加したときの静電容量の変化を図4に示した。図4において、縦軸の静電容量の1目盛りは0.2pFを表す。図4に示すように、触圧を0.2mNから次第に小さくし、0.001mNに到っても静電容量の変化を認めることができ、最小検出感度に優れていることがわかった。
表1に示したように、触圧を0.01〜10mNに変化させたとき、LCR成分のいずれも検出可能であった。また、最小検出感度は1.0mNであった。
(実施例9)
前記シリコーン樹脂中に一重巻きのコイル状炭素繊維を10質量%添加したほかは、実施例8と同様にして最小検出感度を測定した。表1に示したように、触圧を0.01〜10mNに変化させたとき、LCR成分のいずれも検出可能であった。また、最小検出感度は0.001mNであった。
(実施例10)
前記シリコーン樹脂中に一重巻きのコイル状炭素繊維を20質量%添加したほかは、実施例8と同様にして最小検出感度を測定した。最小検出感度は0.3×10-3mNであった。
(実施例11)
前記シリコーン樹脂中に一重巻きのコイル状炭素繊維を0.2質量%添加したほかは、実施例8と同様にして最小検出感度を測定した。最小検出感度は5×10-3mNであった。
(比較例7)
実施例8において、コイル状炭素繊維として二重巻きのコイル状炭素繊維を用いたほかは、実施例8と同様にして最小検出感度を測定した。表1に示したように、触圧が0.01mNのときには、C成分について検出することができず、また最小検出感度は0.1mNであった。
(実施例12)
コイル状炭素繊維はアスペクト比(長さ/直径比)が大きいため、触覚センサ素子の厚さを薄くすると、触覚センサの厚み方向に配向する傾向がある。触覚センサ素子の厚さを0.1mmとしたときの一重巻きのコイル状炭素繊維の荷重によるC成分(静電容量成分)の変化を測定した。触覚センサ素子の厚さが0.1mmの場合、いずれのコイルでもコイル軸は触覚センサ素子表面にほぼ平行に配向していた。この場合、触圧はコイル軸方向に垂直に印加されることになる。そして、この触覚センサにより、0.001mNという微小な荷重によっても信号を観察することができた。
(比較例8)
実施例12において、コイル状炭素繊維として二重巻きのコイル状炭素繊維を用いたほかは、実施例12と同様にしてLCR成分及び最小検出感度を測定した。その結果、表1に示したように、触覚センサ素子の厚さが0.1mm及び0.3mmでは触圧が1mNまでは、C成分について検出することができず、触覚センサ素子の厚さが0.5mmでは触圧が0.01mNで、C成分について検出することができなかった。また、最小検出感度は0.1〜3.0mNであった。二重巻きのコイルは円筒状の中空パイプであることから、パイプの上から応力を加えても変形しにくく、従って信号が出にくいものと考えられる。
Figure 2006083494
(実施例13)
厚さ0.5mmの触覚センサ素子に荷重を加える際、触覚センサ素子の表面に垂直方向から水平方向まで触圧の印加方向を変化させ、信号量及びC成分の変化を測定し、触圧の印加角度の影響を検討した。それらの結果を表2及び図5(a)、(b)に示した。図5(a)、(b)において、縦軸の静電容量の1目盛りは0.1pFを表す。図5(a)に示すように、触圧印加角度が45度の場合、及び図5(b)に示すように、触圧印加角度が80度の場合のいずれの場合にも認識可能な信号が検出された。表2に示したように、触圧印加角度を0〜90度まで変化させ、触圧を0.01〜10mNに変化させたとき、C成分について検出可能であった。また、最小検出感度は0.0001〜0.002mNであった。
(比較例9)
実施例13において、コイル状炭素繊維として二重巻きのコイル状炭素繊維を用いたほかは、実施例13と同様にしてC成分及び最小検出感度を測定した。それらの結果を表2及び図6(a)、(b)に示した。図6(a)、(b)において、縦軸の静電容量の1目盛りは0.02pFを表す。図6(a)に示すように、触圧印加角度が45度の場合、及び図6(b)に示すように、触圧印加角度が80度の場合のいずれの場合にも、二重巻きのコイル状炭素繊維を用いたため、認識できる信号はほとんど得られないという結果であった。また、斜め方向の触圧の最小検出感度は、一重巻きのコイル状炭素繊維の場合の約1/50であった。
表2に示したように、触圧印加角度を0から90度に変化させるに従い、C成分について触圧の検出感度が低下した。また、最小検出感度は0.05〜7.0mNであった。
Figure 2006083494
(実施例14)
マトリックス樹脂としてセプトン樹脂〔(株)クラレ製、#4055、JIS Aで規定された硬さが76〕を用いたほかは、実施例8と同様にしてLCR成分及び最小検出感度を測定した。この場合、セプトン樹脂は熱可塑性であるため、約200℃に加熱溶融させた樹脂中に一重巻きのコイル状炭素繊維を添加し、撹拌、脱泡させた後、鋳型に入れてプレスし、冷却して硬化させた。その結果、触覚センサの最小検出感度はシリコーンマトリックスの場合よりもかなり悪く、0.2mNであった。
(比較例10)
実施例14において、コイル状炭素繊維として二重巻きのコイル状炭素繊維を用いたほかは、実施例14と同様にして最小検出感度を測定した。その結果、最小検出感度は一重巻きのコイル状炭素繊維の場合の1/400で、50mNであった。
尚、前記実施形態は、次のように変更して実施することも可能である。
・ 鉄系金属として、予め酸化処理又は硫化処理したものを使用することもできる。
・ セラミック基板を形成するセラミックとして、マグネシア、ゼオライト、窒化ホウ素等を用いることもできる。
・ 原料ガスの熱分解反応を高電圧静電場発生装置により静電場を印加して行うこともできる。静電場を印加することにより、原料ガスの熱分解を促して、一重巻きのコイル状炭素繊維の成長を促進させ、その収率を向上させることができる。
・ 触覚センサ素子13により触覚センサを構成する場合、電極12a,12bを上下に配置したり等することもできる。
・ 触覚センサ素子13を調製する場合、一重巻きのコイル状炭素繊維をマトリックス樹脂に配合し、電磁場の印加等の手段によりコイル状炭素繊維を一定方向に配向させるように構成することもできる。
・ 一重巻きのコイル状炭素繊維に二重巻きのコイル状炭素繊維を所定量含有させ、触覚センサ等に使用することもできる。
・ 一重巻きのコイル状炭素繊維をアンテナ素子、電磁波吸収剤、生物活性化剤、発熱剤、複合材料用強化材等の用途に使用することも可能である。
更に、前記実施形態より把握できる技術的思想について以下に記載する。
・ 前記クロムを含有する合金はステンレス鋼である請求項3から請求項5のいずれか一項に記載の一重巻きのコイル状炭素繊維の製造方法。この製造方法によれば、ステンレス鋼により触媒機能を一層向上させることができる。
・ 前記鉄系金属はセラミック基板上で粒子として存在し、その粒子の平均粒子径は1〜10nmである請求項2から請求項5のいずれか一項に記載の一重巻きのコイル状炭素繊維の製造方法。この製造方法によれば、一重巻きのコイル状炭素繊維の収率を向上させることができる。
・ 前記セラミック基板表面に対する鉄系金属の密着量は、0.1〜0.3mg/cm2である請求項2から請求項5のいずれか一項に記載の一重巻きのコイル状炭素繊維の製造方法。この製造方法によれば、鉄系金属による触媒活性を高め、一重巻きのコイル状炭素繊維の収率を向上させることができる。
・ 鉄系金属をセラミック基板に摺り付けて鉄系金属の粒子をセラミック基板上に密着させたものを触媒として用い、該触媒を反応容器中に配置し、その状態で反応容器中に熱分解して炭素を生成する原料ガスを供給し、加熱して原料ガスの熱分解反応を行うことにより得られることを特徴とする一重巻きのコイル状炭素繊維。このように構成した場合、一重巻きのコイルに基づく弾力性等の特性を十分に発揮することができる。
(a)は実施形態における一重巻きのコイル状炭素繊維を示す正面図、(b)は二重巻きのコイル状炭素繊維を示す正面図。 触覚センサの電気的特性を測定する装置を示す概略説明図。 (a)はインダクタンスと時間との関係を示すグラフ、(b)は静電容量と時間との関係を示すグラフ、(c)は電気抵抗と時間との関係を示すグラフ。 最小検出感度を測定するための静電容量と時間との関係を示すグラフ。 (a)は触覚センサ素子の斜め45度方向から触圧を印加した場合の静電容量と時間との関係を示すグラフ、(b)は触覚センサ素子の斜め80度方向から触圧を印加した場合の静電容量と時間との関係を示すグラフ。 二重巻きコイルを用いた触覚センサについて、(a)は触覚センサ素子の斜め45度方向から触圧を印加した場合の静電容量と時間との関係を示すグラフ、(b)は触覚センサ素子の斜め80度方向から触圧を印加した場合の静電容量と時間との関係を示すグラフ。
符号の説明
10…一重巻きのコイル状炭素繊維、11…コイル、13…触覚センサ素子、D…直径、P…ピッチ、X…長さ。

Claims (6)

  1. コイルの直径が0.01〜50μm、コイルのピッチが0.01〜10μm及びコイルの長さが0.1〜10mmであって、一重巻きで螺旋状に延びるように構成されていることを特徴とする一重巻きのコイル状炭素繊維。
  2. 鉄系金属をセラミック基板に摺り付けて鉄系金属の粒子をセラミック基板上に密着させたものを触媒として用い、該触媒を反応容器中に配置し、その状態で反応容器中に熱分解して炭素を生成する原料ガスを供給し、加熱して原料ガスの熱分解反応を行うことを特徴とする請求項1に記載の一重巻きのコイル状炭素繊維の製造方法。
  3. 前記鉄系金属はクロムを含有する合金であることを特徴とする請求項2に記載の一重巻きのコイル状炭素繊維の製造方法。
  4. 前記セラミック基板は、アルミナ又は二酸化珪素の基板であることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の一重巻きのコイル状炭素繊維の製造方法。
  5. 前記セラミック基板表面のJIS B 0601(1994)に基づく算術平均粗さ(Ra)は5〜20μmであることを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の一重巻きのコイル状炭素繊維の製造方法。
  6. マトリックス樹脂に、請求項1に記載の一重巻きのコイル状炭素繊維が配合されて構成されていることを特徴とする触覚センサ素子。
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