JP2006081512A - フィコリンa遺伝子機能欠損非ヒト動物 - Google Patents

フィコリンa遺伝子機能欠損非ヒト動物 Download PDF

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Abstract

【課題】
本発明は、フィコリンA遺伝子を欠損した非ヒト動物を提供し、自然免疫におけるフィコリンAの役割や未知の生理活性を明らかにすることを目的とする。
【解決手段】
すなわち、本発明は、フィコリンA遺伝子機能が染色体上で欠損した非ヒト動物および該非ヒト動物を用い、生体防御機能の促進または抑制を測定することを特徴とする、生体防御機能の促進または抑制剤のスクリーニング方法等を提供する。
【選択図】なし

Description

本発明は、フィコリンA遺伝子機能が染色体上で欠損した生体防御機能に欠陥を有する自然免疫異常モデル非ヒト動物および該動物を用いた生体防御機能の促進または抑制剤のスクリーニング方法等に関する。
補体系は、多くのタンパク質の分解と集合の連鎖反応の結果、病原微生物を破壊する免疫システムである。3種類の補体活性化経路が知られている。抗体に第一成分C1が結合して活性化される古典的経路、抗体の関与無しに直接微生物上で活性化が起こる第二経路およびレクチン経路である。これらのうち、レクチン経路においては、マンノース結合レクチン(MBL)やフィコリンが認識分子として侵入微生物の糖鎖に結合し、活性化されたセリンプロテアーゼMASPがC3あるいはC4を活性化することにより、補体系の活性化が起こり、自然免疫に働いている。
フィコリンはコラーゲン様ドメインとフィブリノーゲン様ドメインからなるタンパク質である。ヒト、げっ歯類、ブタ、ハリネズミなどの哺乳動物でフィコリンは同定されており、組織特異的な分布を示す。また、ホヤなどの無脊椎動物でも見出されており、フィコリンの関与する生理機能が系統発生的に古くから存在していると考えられる。フィコリンのコラーゲン様構造はオリゴマーの形成に、フィブリノーゲン様ドメインは機能ドメインとして働いており、N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)を認識するレクチン活性を有する。マンノース結合レクチン(MBL)も類似した構造を有しているが、そのC末端は糖鎖認識ドメインとして機能し、マンノースおよびGlcNAcを認識することがフィコリンとは異なっている。
現在、ヒトではL、M、H3種類のフィコリンが知られており、このうち、LとHフィコリンは血清レクチンとして存在し、自然免疫において補体レクチン経路の認識分子として作用する。Mフィコリンは血清には存在せず、モノサイトの膜表面にあってレセプターとして働き食作用などを介在するとの報告もあるが、その機能については明らかではない。一方、マウスでは2種類のフィコリンが知られており、フィコリンAはヒトのLフィコリンに相当し、自然免疫において非自己の認識分子として作用していると考えられている(非特許文献1:Fujimoriら、Biochem. Biophys. Res. Commun., 244:796-800 (1998))。フィコリンBはMフィコリンに相当していると考えられているが、その働きについては不明である。
フィコリンAはまた補体活性化経路の一つであるレクチン経路においてセリンプロテアーゼMASPと結合していることが知られている(非特許文献2:松下操ら、第41回補体シンポジウム抄録集、P29 (2004))が、その機構の詳細は明らかではない。フィコリンAあるいはレクチン経路の生理作用を調べる上で、フィコリンAを合成できない動物を用いることができればよいが、これまでそのような動物を作製したという報告はない。
Fujimoriら、Biochem. Biophys. Res. Commun., 244:796-800 (1998) 松下操ら、第41回補体シンポジウム、P29 (2004)
本発明は、フィコリンA遺伝子を欠損した非ヒト動物を提供し、自然免疫におけるフィコリンAの役割や未知の生理活性を明らかにすることを目的とする。
本発明者らは、マウスのフィコリンA遺伝子を特定のベクターと相同組換えを起こさせることにより、フィコリンA遺伝子を欠損した非ヒト動物を作製できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)フィコリンA遺伝子機能が染色体上で欠損した非ヒト動物;
(2)フィコリンA遺伝子の全部または一部が欠損または他の遺伝子により置換された、上記(1)に記載の非ヒト動物;
(3)非ヒト動物がげっ歯目動物である、上記(1)または(2)に記載の非ヒト動物;
(4)げっ歯目動物がマウスである、上記(1)から(3)のいずれかに記載の非ヒト動物;
(5)自然免疫異常モデルである、上記(1)から(4)のいずれかに記載の非ヒト動物;
(6)以下の工程を含む上記(1)から(5)のいずれかに記載の非ヒト動物の作製法:(i)フィコリンA遺伝子におけるコード領域が改変されているDNA分子を得る工程、(ii)工程(i)で得られたDNA分子をマウス胚性幹細胞内でフィコリンA遺伝子と相同的組換えをおこさせる工程、および(iii)工程(ii)により相同的組換えをおこさせたマウス胚性幹細胞を発生させマウス個体を得る工程;
(7)上記(6)に記載の非ヒト動物の作製法の作出方法において、工程(iii)で得られるマウス個体が、相同的組換えをおこした細胞を体内の一部に含むキメラマウスであって、該工程(iii)に引き続く以下の工程をさらに含む上記(6)に記載の非ヒト動物の作製法:(a)雄性キメラマウスと雌性野生型マウスを交配して、F1世代のヘテロ接合体マウスを産出させる工程、及び(b)工程(a)で得られた雄性及び雌性のヘテロ接合体マウスを交配して、F2世代の、破壊されたフィコリンA遺伝子のホモ接合体マウスを得る工程;
(8)上記(5)に記載の非ヒト動物を用い、生体防御機能の促進または抑制を測定することを特徴とする、生体防御機能の促進または抑制剤のスクリーニング方法;を提供する。
本発明の非ヒト動物は、非自己認識の異常、レクチン経路の異常などにより生じる疾患の研究に有用であり、実験動物として生体防御機能の促進または抑制剤のスクリーニング等に利用できる。
本発明は、フィコリンA遺伝子機能が染色体上で欠損した非ヒト動物に関するものである。本発明におけるフィコリンA遺伝子とは、フィコリンAをコードするmRNAに対応する、イントロンを含む染色体上の領域を意味する。本発明が提供するフィコリンA遺伝子機能が染色体上で欠損した非ヒト動物は、染色体上のひとつの遺伝子座にあるフィコリンA遺伝子が活性あるフィコリンAを発現しないように破壊されてなるものである。この発明が対象とするフィコリンA遺伝子は、上記の定義にしたがって、フィコリンAをコードするmRNAに対応する、イントロンを含む染色体上の領域であり、特定の構造、例えば、特定の塩基配列やイントロン−エクソン構造に限定されるものではない。
本発明が対象とするフィコリンA遺伝子としては、例えば、配列番号:1で表されるアミノ酸配列をコードする塩基配列をコード領域として含むものが挙げられる。また、配列番号:1のアミノ酸配列と相同でありながら、一部のアミノ酸の置換、欠失および/または付加によって配列番号:1とは完全には一致しないアミノ酸配列を有する場合もフィコリンA遺伝子に含まれる。具体的には、配列番号:1で表されるアミノ酸配列と80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上の相同性を示すポリペプチドをコードするものも含まれる。
本発明が対象とするフィコリンA遺伝子のより詳細な具体例としては、配列番号:2に示す塩基配列を含有するものが挙げられる。この塩基配列は、配列番号:1のアミノ酸配列をコードするmRNAに対応するcDNAの塩基配列である。本発明が対象とするフィコリンA遺伝子は通常、この配列番号:2の塩基配列を含有し、かつ、この塩基配列がイントロンにより分断された構造、すなわちイントロン−エクソン構造を有している。配列番号:2に対応するフィコリンA遺伝子上の個々の領域を、5’末端から順に「エクソン1」、「エクソン2」、「エクソン3」等と称することとする。
本発明におけるフィコリンA遺伝子機能が染色体上で欠損した非ヒト動物とは、フィコリンAをコードする非ヒト動物の内在性遺伝子が破壊・欠損・置換等により不活性化され、フィコリンAを発現する機能を失った非ヒト動物をいい、また非ヒト動物とは、ヒト以外の哺乳動物、特にマウス、ラット等のげっ歯目動物を具体的に挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
本発明における野生型の非ヒト動物とは、上記フィコリンA遺伝子機能が欠損した非ヒト動物と同種の動物を意味し、同腹の動物が好ましい。そして、フィコリンA遺伝子機能が欠損した非ヒト動物としては、メンデルの法則に従い出生してくるものが、フィコリンA欠損型と同腹の野生型を得ることができ、これらを用いて正確な比較実験をすることができる点で好ましい。そして、フィコリンAノックアウトマウスを、野生型マウスとしては該ノックアウトマウスと同腹の野生型マウスを、それぞれ具体的に挙げることができる。以下、非ヒト動物がマウスの場合を例にとって説明する。
フィコリンAノックアウトマウスの作製法としては、フィコリンAを発現する機能を失ったノックアウトマウスを作製することができるものであればどのような作製法でもよい。フィコリンA遺伝子の破壊の様式は、該遺伝子が活性あるフィコリンAを発現するという本来の機能を消失している限り特に制限はなく、例えば該遺伝子における塩基の置換、欠失および/または付加による塩基配列の変化が挙げられる。塩基配列の変化の部位についても、該遺伝子本来の機能の消失に至るものである限り特に制限はないが、エクソンの塩基配列に変化を有するものが望ましい。具体的には、フィコリンAをコードするcDNAをプローブとして、マウスのゲノムDNAライブラリーをスクリーニングし、ゲノムDNAのフィコリンA遺伝子を単離し、いくつかのエクソン部分とその周囲のイントロンを、例えば抗生物質耐性遺伝子等のマーカー遺伝子に置換してターゲットベクターを作製し、作製されたターゲットベクターをエレクトロポレーション法によってES細胞に導入し、相同的組換えを起こしたES細胞を選択し、このES細胞系を用いて生殖系列のキメラマウスを作製し、野生型マウスと交配させることによって得られるヘテロ接合体マウス(F1:雑種第一代)同士を交配させることによって、メンデルの法則に従い産生するフィコリンAノックアウトマウスと同腹の野生型マウスを作製することができる。
遺伝子の破壊を確認するには、染色体上の該当部分(フィコリンA遺伝子座)の物理的解析、例えば、PCRによる増幅断片の鎖長の測定、サザンブロッティング、塩基配列の解読などによる結果を、野生型の遺伝子型を有するマウスの場合と比較すればよい。また、フィコリンAに関する表現型の解析、例えば、血清試料をウェスタンブロットや免疫沈降法で測定し、所期の活性が検出されないことによりフィコリンA遺伝子の破壊を確認することもできる。
以下、さらに詳細にフィコリンAノックアウトマウスの作製法を説明する。
本発明のノックアウトマウスの作製法は、基本としては(1)塩基の置換、欠失および/または付加により、フィコリンA遺伝子におけるコード領域が改変されているDNA分子を得る工程、(2)工程(1)により変異させたDNA分子をマウス胚性幹細胞内(以下、「胚性幹細胞」を「ES細胞」という)でフィコリンA遺伝子と相同的組換えをおこさせる工程、および(3)工程(2)により相同的組換えをおこさせたマウスES細胞を発生させマウス個体を得る工程、を含むことを特徴とする。
上記の工程(1)を実施するには、先ず、この発明が開示するフィコリンA遺伝子の構造に関する情報をもとにして、該遺伝子の全部又はその断片を含むDNA分子を単離する。該DNA分子の単離は、PCRや遺伝子ライブラリーのスクリーニングなど、公知の方法にしたがえばよい。工程(2)における相同的組換えを目的通りに達成するためには通常、2ケ所(1ケ所は6kb以上、もう1ケ所は1−2kb程度)の鎖長のDNA分子を単離することが望ましい。次に、得られたDNA分子におけるコード領域の塩基配列を、塩基の置換、欠失および/または挿入により改変したDNA分子を調製する。塩基配列の改変は、PCRによる増幅DNA分子の連結や、部位特異的変異など公知の組換えDNA技術によればよい。本発明は、以上のようにして調製される、コード領域の塩基配列が改変された、単離されたDNA分子をも提供する。
相同的組換えによって所期の遺伝子を破壊するためのDNA分子は一般に「ターゲティングベクター」と呼ばれる。ターゲティングベクターとしては、次の工程(2)におけるES細胞の選択をより容易にするために、陽性選択マーカーおよび/または陰性選択マーカーとしての配列をさらに含んでいるものが望ましい。陽性選択マーカーとしてはネオマイシン耐性遺伝子やβ−ガラクトシダーゼ遺伝子などが、陰性選択マーカーとしては単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼ遺伝子やジフテリア毒素Aフラグメント遺伝子などがそれぞれ具体例として挙げられる。なお、以上のようなターゲティングベクターを構築する際に、ターゲティングベクター構築用として市販されているプラスミドベクターを利用することもできる。
上記の工程(2)を実施するには、上記のターゲティングベクターをエレクトロポレーション法やリポフェクション法等の動物細胞への慣用のDNA導入法によりマウスのES細胞に導入する。ターゲティングベクターが導入された細胞内で相同的組換えが起こると、該細胞が本来有するフィコリンA遺伝子は、その一部が、ターゲティングベクターにおける改変された塩基配列と置換され、破壊されることとなる。ターゲティングベクター導入後の細胞を、細胞内での相同的組換えを確認するサザンブロッティング、PCR法等の常法により検索すれば、所期の相同的組換えをおこしたES細胞(以下、「組換えES細胞」という。)が得られる。
そして次に、上記の工程(3)として、得られた組換えES細胞を発生させてマウス個体を得る。組換えES細胞を発生させるには、公知のマイクロインジェクション法や凝集法にしたがって正常なマウス胚とともに、擬妊娠状態にある雌性マウスの子宮内に移植し、該移植マウスを通常通り飼育してマウス仔を出産させ、個体にまで飼育すればよい。このようにして得られるマウスは、通常、生体を構成する細胞として、組換えES細胞由来の細胞とともに正常細胞を含むキメラマウスである。このようなキメラマウスを、引き続いて、下記の工程にしたがって交配すれば、本発明のノックアウトマウスを作出することができる。なお、キメラマウスを以下の工程にしたがって交配させて所期のノックアウトマウスを作出するためには、キメラマウスにおける生殖系列に組換えES細胞由来の細胞が含まれる必要がある。このようなキメラマウスを得る効率を高めるために、組換えES細胞と発生をともにする正常なマウス細胞との組合わせを考慮する必要がある。例えば、組換えES細胞の起源マウスとは異なる体毛色のマウスからの正常細胞を組み合わせれば、生まれたキメラマウスの体毛色を観察することにより、生体における組換えES細胞の占める割合の高いキメラマウスの選択が容易となり、結果として、生殖系列に組換えES細胞由来の細胞を含むキメラマウスの獲得の効率を高めることができる。
上記のようにして得られたキメラマウスから本発明のノックアウトマウスを得るには、雄性キメラマウスと雌性野生型マウスとを交配して、F1世代のヘテロ接合体マウスを産出させ、生まれた雄性及び雌性のヘテロ接合体マウスを交配して、F2世代の、破壊されたフィコリンA遺伝子のホモ接合体マウスを選択すればよい。F1及びF2の各世代において所期の遺伝子型が達成されているか否かは、組換えES細胞の検索と同様に、サザンブロッティング、PCR、塩基配列の解読等の常法によればよい。
このようにして作出した本発明のノックアウトマウスを、雄性・雌性の組合わせとして一旦得ておけば、それ以降は、必要に応じて適宜繁殖させることにより、容易に同じ遺伝子型のノックアウトマウスを必要数得ることができる。本発明のノックアウトマウスは、哺乳類の生体内でのフィコリンAの生理学的役割を個体レベルで解析するためのモデル動物や、フィコリンAの欠損ないしは不全に関連する疾患の発症や進行のメカニズムの解析のための実験動物、また、このような疾患に対する治療・予防・診断剤の検索用の動物などとしてとりわけ有用である。
本発明はまた、生体防御機能の促進または抑制剤のスクリーニング方法を提供する。本発明の生体防御機能の促進または抑制剤のスクリーニング方法における生体防御機能の促進または抑制剤とは、感染症予防治療剤、免疫抑制剤、抗ウィルス剤、抗細菌剤、表面にGlcNAcを有する病原体などを挙げることができるが、これらに限定されるものではなく、生体防御機能の促進または抑制剤は、フィコリンAノックアウトマウスに試験化合物を投与し、感染症などの症状の有無、致死率等を同腹の野生型マウスの場合と比較評価することによりスクリーニングすることができる。
以下に、実施例を挙げてこの発明を更に具体的に説明するが、この発明の技術的範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
フィコリンAノックアウトマウスの作出
野生型のフィコリンA遺伝子を図1に示す。ターゲッティングベクターを用いて、相同組み換えにより第1から第3エクソン(図中、FcnAの領域の黒のバーで示す部分がエクソンであり、5’末端から順に「エクソン1」、「エクソン2」、「エクソン3」とする)をネオマイシン耐性遺伝子と置き換えることによって遺伝子を改変した(targeted allele:改変遺伝子)。ターゲティングベクターの構築は、まずpBluescript IIプラスミドのなかで、ネオマイシン耐性遺伝子の3’側に1.7 Kb、5’側に3.4 KbのフィコリンA遺伝子DNAを連結した。さらに、1.7 KbゲノムDNAの5’側に逆向きにジフテリアトキシンAフラグメントを連結した。この全体のプラスミドを制限酵素NotIで切断して、直鎖DNAとした。このターゲティングベクターをマウス129系統由来のES細胞に導入し、得られたネオマイシン耐性クローンをさらにPCR法により選択した。その結果、5個のESクローンを得た。
遺伝子改変によって得られた5個の組換えESクローンに対してサザンブロット解析を行い、図2に示したように、予想されるサイズのバンドを示したクローン2と5を選択し、卵細胞(マウスC57BL/6系統由来)へのインジェクションに用いた。その結果、1nと2nと命名した2系統のマウスを得た。
ノックアウトマウスの解析
実施例1で得られた子マウスの遺伝子型を解析した。1nの系統ではホモマウスは生まれていないので、2nの系統を用いた。ヘテロとヘテロの交配から生まれた子マウス遺伝子型は+/+:+/−:−/−が27:46:20(約1:2:1)の割合であった。2nのホモマウスの表現型は、野生型マウスと比較し、外観や体重に差はないように見えた。しかし組織学的には脾臓に異常が観察された。
血清を用いたノックアウトマウスの生化学的解析
自然免疫に働くとされる補体レクチン経路の異常について、血清を用いた生化学的解析を行った。対照として野生型マウスを用い、ホモマウスについてフィコリンAの発現を調べた。図3に示すように、肝臓のノーザンブロット解析、RT−PCRさらに血清のウェスタンブロット解析においてホモマウスにフィコリンAのバンドは全く観察されなかった。
ホモマウスにおける補体レクチン経路成分の分布
ヒトLおよびHフィコリンは補体レクチン経路の認識分子として働き、セリンプロテアーゼMASPやその短縮型タンパク質であるsMAPと複合体を形成していることが報告されている。そこで実施例2で得られたホモマウスにおいてこれら補体レクチン経路の成分がどのように分布しているかをウェスタンブロット解析により調べた。MblとフィコリンAの画分を分離するために、マウス血清をGlcNAcアガロースとインキュベートし、その後遠心して結合しなかった素通り画分を分け、さらに結合画分をマンノースで溶出し、次にGlcNAcで溶出した。野生型マウスではGlcNAc分画にほとんどのフィコリンAが溶出されるが、ホモマウスではどの画分にもフィコリンAは検出されなかった。一方、マンナンとGlcNAc両者に親和性のあるMblはマンノース画分に溶出された。マンノース画分にはMblと複合体を形成していると考えられるMasp−1、Masp−2、およびsMAPが多量存在するが、その量はホモマウスと野生型マウスでほとんど差はなかった。さらに、野生型マウスのGlcNAc画分には少量のMaspおよびsMAPが確認できたが、ホモマウスのGlcNAc画分にはMaspおよびsMAPは全く検出できなかった。この結果は、野生型マウスではフィコリンAがMaspおよびsMAPと複合体を形成しているのに対し、ホモマウスではこれらの複合体が存在しないことを示している。
ホモマウスの補体活性化能
実施例2で得られたホモマウスの補体活性化能をGlcNAc結合プレート上でのC4沈着により検討した。マウス血清をGlcNAcアガロースとインキュベート後、マンノース溶出画分とGlcNAc溶出画分に分け、それぞれの画分の活性を測定した。マンノース溶出画分はMbl/Masp/sMAP複合体を含んでいたが、ホモマウスと野生型マウスで有為な差はなかった。一方、GlcNAc画分の活性は、野生型マウスと比較し、ホモマウスで有為に低下している結果を示した。
組換え型フィコリンの製造
レクチン経路の再構成を行うために、組換え型フィコリンをショウジョウバエの発現システムを用いて作成した。cDNAをベクターに組み込み、ショウジョウバエS2細胞で分泌型タンパク質として発現させた。培地中に分泌された組換え型フィコリンをGlcNAcアガロースを用いて精製した。
組換え型フィコリンのレクチン活性を調べた結果、組換え型フィコリンはGlcNAcにのみ結合することが明らかとなった。この結果に基づいて、GlcNAcアガロースカラムを用いて組換え型フィコリンを精製した。
フィコリンA複合体の再構築と補体活性化能の回復
ホモマウスにおけるフィコリンA/Masp/sMap複合体の再構築を試みた。図4に示したように、血清に組換え型フィコリンAを添加後、4℃で一晩放置し、その後GlcNAcアガロースに吸着させ、マンノース溶出画分とGlcNAc画分に分けた。フィコリンAの添加量が増えるにつれてGlcNAc画分にMaspおよびsMapが出現した。
この結果は、フィコリンA/Masp/sMap複合体がホモマウス血清中で再構築されたことを示している。また、これとともにGlcNAc画分のC4沈着活性も回復し、この実験では過剰量(約25倍量)のフィコリンA添加により、野生型マウスよりも高い活性が観察された。組換え型フィコリンAの代わりに組換え型フィコリンBを用いた検討では、再構成の効果はなかった。これらの結果は、フィコリンAが、レクチン経路の認識分子として特異的に作用し、補体の活性化に働いていることを示している。
本発明の非ヒト動物は、非自己認識の異常、レクチン経路の異常などにより生じる疾患の研究に有用であり、実験動物として上記疾患の予防・治療物質のスクリーニング等に利用できる。
フィコリンA遺伝子を欠損させる手順を示す。 フィコリンA遺伝子をノックアウトしたESクローンのサザンブロット解析の結果を示す。 フィコリンA遺伝子欠損マウスに対するノーザンブロット解析、RT−PCRおよびウェスタンブロット解析の結果を示す。 ホモマウス血清におけるレクチン経路への組換え型フィコリンの効果を示す。

Claims (8)

  1. フィコリンA遺伝子機能が染色体上で欠損した非ヒト動物。
  2. フィコリンA遺伝子の全部または一部が欠損または他の遺伝子により置換された、請求項1に記載の非ヒト動物。
  3. 非ヒト動物がげっ歯目動物である、請求項1または2に記載の非ヒト動物。
  4. げっ歯目動物がマウスである、請求項1から3のいずれかに記載の非ヒト動物。
  5. 自然免疫異常モデルである、請求項1から4のいずれかに記載の非ヒト動物。
  6. 以下の工程を含む請求項1から5のいずれかに記載の非ヒト動物の作製法:(1)フィコリンA遺伝子におけるコード領域が改変されているDNA分子を得る工程、(2)工程(1)で得られたDNA分子をマウス胚性幹細胞内でフィコリンA遺伝子と相同的組換えをおこさせる工程、および(3)工程(2)により相同的組換えをおこさせたマウス胚性幹細胞を発生させマウス個体を得る工程。
  7. 請求項6に記載の非ヒト動物の作製法の作出方法において、工程(3)で得られるマウス個体が、相同的組換えをおこした細胞を体内の一部に含むキメラマウスであって、該工程(3)に引き続く以下の工程をさらに含む請求項6に記載の非ヒト動物の作製法:(a)雄性キメラマウスと雌性野生型マウスを交配して、F1世代のヘテロ接合体マウスを産出させる工程、及び(b)工程(a)で得られた雄性及び雌性のヘテロ接合体マウスを交配して、F2世代の、破壊されたフィコリンA遺伝子のホモ接合体マウスを得る工程。
  8. 請求項5に記載の非ヒト動物を用い、生体防御機能の促進または抑制を測定することを特徴とする、生体防御機能の促進または抑制剤のスクリーニング方法。
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