JP2006079735A - 光記録媒体の初期化方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 最高記録線速が10.5m/sから35m/sの間にある高線速で書換えが可能で、繰り返し初期の記録特性劣化がなく、かつ全てのデータ領域において特性の変動がない光記録媒体の製造方法としての初期化方法の提供。
【解決手段】 円盤状の光ディスクの半径方向に長い長方形もしくは楕円状のレーザビームを照射しながら、特定の線速度で光ディスクを回転させ、更に該レーザビームを長軸方向のスポットサイズ(半値幅)よりも短い幅で半径方向に移動させながら徐々に結晶化する初期化方法において、該レーザビームの長軸方向の光強度分布がビームの移動方向(半径方向)に対し後端側にビーム強度のピークを有することを特徴とする初期化方法。
【選択図】 図5

Description

本発明は、最高記録線速がDVD3倍速〜10倍速、即ち、10.5m/sから35m/sの間にある高線速での書換えが可能な光記録媒体において、繰り返し初期の記録特性劣化がなく、かつ全てのデータ領域において特性の変動がない光記録媒体(以下、「相変化光記録媒体」、「相変化光ディスク」と称することがある)の製造方法としての初期化方法に関する。
近年、情報量の増加に伴い高密度でかつ高速に大量のデータの記録・再生ができる記録媒体が求められている。光ビームを照射し情報の記録・再生を行う相変化光記録媒体、特に相変化光ディスクは、信号品質に優れ高密度化が可能であり、また1ビームオーバーライトが容易なことから高速アクセス性に優れた記録媒体である。
このような相変化光ディスクは、一般的にレーザ光の走査を案内する凹状の案内溝が形成された光透過性基板上に、少なくとも第一保護層、非晶質相と結晶相の可逆的相変化をする相変化記録層、第二保護層、金属からなる反射層がこの順に設けられ、更に反射層上に樹脂保護層が設けられた構造となっている。また、貼り合わせ型光ディスクの場合においては前記構造を一方に用いるか、又は両方に用いて、接着層を介し貼り合わせた構造となっている。
信号記録/及び再生方法は以下の通りである。
前記光記録媒体をモーター等の手段により線速度一定、或いは回転速度(角速度)一定で回転させ、この媒体の記録層上に強度変調した集束レーザ光を照射する。このとき記録層はレーザ光の照射条件により結晶/非晶質間で相状態が変化し、その相状態の差として形成されたパターンが信号パターンとなる。また再生は相状態の違いにより生じた反射率差を検出することで行われている。
集束レーザ光の強度変調は、3つの出力レベル間で行われる。この際、最も高い出力レベル(以下、記録パワーと称する)は記録層の溶融に使用される。中間の出力レベル(以下、消去パワーと称する)は融点直下で結晶化温度よりも高い温度まで記録層を加熱するのに使用される。そして最も低いレベルは記録層の加熱又は冷却の制御に使用される。
記録パワーのレーザ光により溶融した記録層は、続く急冷により非晶質ないしは微結晶となって反射率の低下が起こり、記録マーク(非晶質マーク)となる。また、消去パワーのレーザ光では全て結晶質となり消去が可能となる。このように、3つの出力レベル間でレーザ光を強度変調することにより、記録層上に交互に結晶領域と非晶質領域が形成され、情報が記憶される。
前記記録媒体は、一般にスパッタリング法、真空蒸着法などによる真空プロセスを経て成膜される。そして、このようにして成膜される記録層の成膜直後の状態(as−depo.状態)は、少なくとも一部分が非晶質状態となっているか、又は準安定な結晶状態となっていることが多い。as−depo.状態は通常反射率が低く、CDやDVD系のドライブシステムにおけるオートフォーカス機能やトラッキングの動作が不安定になり易いため、記録を行う前に予め記録層を結晶化する工程、即ち初期化工程(以下、初期化と称する)が設けられている。
相変化現象を利用したDVD系の光記録媒体においては、現在までに最大で4.0倍速(線速14.0m/s)の記録が可能な書換え型光記録媒体が実現されている。しかしながら、更なるデータ記録時間の短縮を目的とし、より高速記録が可能な書換え型光記録媒体の開発が望まれている。
高速記録を実現する方法としては、記録層として用いる相変化材料の結晶化速度が十分速く、高速記録でも結晶状態が得られる事が要求される。
本発明者らはこれまでに、そのような相変化材料としてGa−Sb系の材料を見出し、Ga−Sb合金をベースとしたGa−Sb−Sn系材料や、Ga−Sb−Sn−Ge系材料に関する報告を行った(特願2004−029923号)。
しかし、その後、高速記録を実現する方法として、相変化材料の結晶化速度を調整する(速める)だけでは不充分であることが明らかになった。即ち、結晶化速度の高速化に伴い、「繰り返し記録初期の記録特性の劣化」が顕著となると共に、従来の方法(後述)で初期化を行うと初期化の光源の形状に依存する「初期化むら」が顕著となり記録個所によって特性が大きくばらついてしまうという問題が生じることが分った。
ここで「繰り返し記録初期の記録特性の劣化」とは、具体的には記録回数が2回(以下、「オーバーライト1回」、「DOW1」と称する)から10回程度までの消去率が低く、何回か書換えを繰り返さなければ安定した消去率を得ることができない状態を意味する。
このような消去率低下は、初期化後の結晶状態とマーク(非晶質)をオーバーライトして再形成した結晶状態とが異なるため、媒体の反射率が不均一となることで起きると考えられており、そのため初期化の最適条件はオーバーライト時の消去条件と同じ条件であることが理想とされている。
また「初期化むら」とは、初期化後の媒体の反射率が記録個所によってばらつき、反射率分布を持つ状態を意味する。図1(a)に、非晶質化が起る直前の反射率信号(均一な反射率)を示し、図1(b)に、図1(a)の状態からパワー密度を20%下げた時(初期化抜け)の反射率信号を示し、図1(c)に、図1(a)の状態からパワー密度を上げたり線速を遅くした場合(初期化むら)の反射率信号を示す。そして、このような「初期化むら」は記録特性の変動の原因となり、結果として全てのデータ領域において均一で良好な記録特性を得ることが困難となってしまうことが分った。
一方、現在一般的な(従来の)初期化方法は以下の通りとなっている。
光記録媒体が円盤状のディスクである場合は、半径方向に長い楕円状のレーザビームを照射しながら特定の線速度でディスクを回転させ(以下、回転線速度と称する)、楕円状ビームを長軸方向のスポットサイズ(半値幅)よりも短い幅で半径方向に移動させながら徐々に結晶化する方法が広く利用されており、また、初期化に用いる光源は、半導体レーザ、ガスレーザ等の各種光源のうち、生産性の点で優れる大型LDの光源が特に好まれ、広く利用されている。
初期化後の結晶状態とオーバーライト後の結晶状態を同一にするためには、単純には、記録線速(オーバーライト線速)と同じ線速度で、かつ、前記のような大型LDを用いずに記録系で使用する光源(と同じサイズの光源)を用いて、トラック毎に初期化を行えばよいことになる。このような初期化を行えば、前記「初期化の光源の形状に依存する初期化むら」も無くなり、全てのデータ領域において、均一で良好な記録特性を得ることができる。しかし、このような記録系の光源を用いて初期化を行う場合、初期化に要する時間が長くなり生産性が低下するため好ましくないばかりか、冒頭で述べたように成膜直後のas−depo.状態は記録系システムにおけるオートフォーカス機能やトラッキングの動作が不安定になり易いため、初期化不良となる確率が高い。
こうした中、特許文献1〜4において前記「繰り返し初期の記録特性劣化」或いは「初期化むら」の改善を目的とした提案がなされている。しかしながら、何れの初期化方法においても前記課題を解決し得るものはなく、また本発明とは初期化の方法も異なる。
特開平10−112065号公報 特開平11−273071号公報 特開2000−195112号公報 特開2002−92887号公報
本発明は、前述のような相変化光記録媒体の初期化技術の現状に鑑み、従来技術における問題点を解決した、最高記録線速がDVD3倍速〜10倍速、即ち、10.5m/sから35m/sの間にあって高線速での書換えが可能で、繰り返し初期の記録特性劣化がなく、かつ全てのデータ領域において特性の変動がない光記録媒体の製造方法としての初期化方法の提供を目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため、最高記録線速が10.5m/sから35m/sの間にある高速記録に適した相変化材料と、その初期化後の結晶状態、及び記録特性の変動との関係に着目し鋭意検討を重ねた結果、相変化材料を、半径方向に特殊なビームプロファイルを有するレーザビームを用いて、ある特定の初期化条件で初期化することにより、繰り返し初期の記録特性劣化がなく、かつ全てのデータ領域において特性の変動がない光記録媒体を提供できることを知見した。
本発明はこの知見に基づくものであり、上記課題は次の1)〜4)の発明(以下、本発明1〜4という)によって解決できる。
1) ディスク状光記録媒体の半径方向に長い長方形もしくは楕円状のレーザビームを照射しながら、特定の線速度でディスクを回転させ、更に該レーザビームを長軸方向のスポットサイズ(半値幅)よりも短い幅で半径方向に移動させながら徐々に結晶化させる初期化方法において、該レーザビームの長軸方向の光強度分布がビームの移動方向(半径方向)に対し後端側にビーム強度のピークを有することを特徴とする初期化方法。
2) ビーム強度のピークが後端にあることを特徴とする1)記載の初期化方法。
3) レーザビームの長軸方向の光強度分布が、ビームの移動方向(半径方向)に対し前方側に向かって、徐々にビーム強度が減衰するプロファイルを有することを特徴とする1)又は2)記載の初期化方法。
4) 基板上に少なくとも第一保護層、非晶質相と結晶相の間で可逆的相変化をする記録層、第二保護層及び反射層を有し、最高記録線速が10.5m/sから35m/sの間にあるディスク状光記録媒体に対し、線速度14〜28m/sの一定線速下で、パワー密度10〜35mW/μmのレーザビームを照射して初期化することを特徴とする1)〜3)の何れかに記載の初期化方法。
以下、上記本発明について詳しく説明する。
本発明者らは、〔背景技術〕で述べた高速記録時の「オーバーライト後の結晶状態」について研究を重ね、「オーバーライト後の結晶状態」とは「非晶質化が起る直前の結晶状態」であることを知見した。この「非晶質化が起る直前の結晶状態」とは、該結晶状態が、ある回転線速度A[m/s]及び、ある特定のパワー密度aで初期化した時に得られる結晶状態であるとすると、速度Aにおいて、パワー密度aよりも20〜30%程度低い0.7a〜0.8aのパワー密度で初期化した媒体から得られる信号に、「初期化抜け」の信号が検出される結晶状態のことを意味する〔図1(a)(b)参照〕。
そして初期化の回転線速度を高速にし、かつ、「非晶質化が起る直前の結晶状態」を実現できるように比較的弱い初期化パワーを照射してみたところ、従来の初期化方法においても、生産性を低下させることなく擬似的に「オーバーライト後の結晶状態」が実現できることを知見した。
最高記録線速が10.5m/sから35m/sの間にある高線速記録が可能な相変化材料のオーバーライトは、該相変化材料の結晶化速度が非常に速く非晶質マークの形成がより困難であることから、マーク形成を容易にするべく、非常に急速な冷却過程環境(以下、急冷構造、急冷過程と称すことがある)を実現した上でオーバーライトが行われている。具体的には反射層にAg又はAg合金を用いて媒体の構造そのものを急冷構造化したり、また記録過程においては、記録パワーの出力は高く設定し、消去パワーの出力は記録直後の非晶質マークの再結晶化を促進させないため低く設定するように工夫されており、媒体には熱が篭らないような強度変調(以下、ストラテジーと称することがある)でオーバーライトが行われている。
従来の光源を利用した初期化方法においては、初期化時に媒体の広い範囲に渡って余分な熱が蓄積することが予想されるため、前記「急冷環境」と同じ環境を実現することが比較的困難となり、従って「オーバーライト後の結晶状態」を実現する初期化条件のマージンは狭くなっている。しかし、本発明で規定するビーム形状を有する光源を用いて初期化を行えば、生産性を低下させることなく、初期化後の結晶状態がオーバーライト後の結晶状態と同一な結晶状態が実現し易い。
本発明の初期化方法においては、前記長方形もしくは楕円状レーザビームの長軸方向のビーム強度分布がビームの移動方向(半径方向)に対し後端側にビーム強度のピークを有するレーザビームを用いることを特徴としている。そして、このようなビーム形状を有する光源を用いて初期化された媒体は、次の(1)〜(3)ような特徴を持っている。
(1)初期化レーザビームの尖頭は従来の大口径の光源と比較すると小さくなり、オーバーライト時と同様、所望の初期化パワーが媒体の比較的狭い領域にのみ照射されるため、媒体に余分な熱が篭ることはなく、オーバーライト時と同様の急冷環境を実現し易い。
従って初期化後の結晶状態とオーバーライト後の結晶状態を同一にできるため、繰り返し初期の記録特性劣化が小さくなる。
(2)媒体には熱が篭り難くなることから初期化条件のマージンが広くなる。特に、媒体に熱が篭り易くなる低線速領域や、高パワーが必要とされる高線速領域においても、媒体への熱負荷(ダメージ)を小さくできるため、所望の結晶状態を実現し易い。
(3)従来の大口径光源による初期化と同様に、生産性を低下させることなく初期化が可能となる。
また本発明者らは、〔背景技術〕で述べた初期化の光源形状に依存する「初期化むら」について、次のような知見を得た。
即ち、初期化後のディスクの構造差を調べるため光学顕微鏡(10×50倍)を用いて後述する実施例1及び比較例1の光ディスクの初期化後の記録層を観察したところ、比較例1では初期化の送り幅にほぼ一致した未初期化部分と思われる「縞模様」が観察されたのに対し、実施例1では該模様は観察されず、均一な初期化が施されていることが分った(図12、図13参照)。同様に、ビームプロファイルの中心よりも前方側にビーム強度のピークを有するレーザビームを用いた比較例4の光ディスクの初期化後の記録層を観察したところ、比較例1と同様に縞模様が観察された(図14参照)。
Ga−Sb系の相変化材料に代表される高速記録が可能な相変化材料は、一般に結晶化温度が高いため初期化が困難となり、高出力の初期化パワーを必要する場合が多い。
本発明者らの研究によると、このような初期化の光源形状(具体的には、送り幅)に依存する「むら」は、初期化の走査速度が高速になるほど、また媒体に照射される初期化パワーが大きいほど顕著となることが分かっており、その原因については明らかでないが、本発明者らは以下のように考察している。
前述のように従来の初期化方法においては、ディスク半径方向に長い長方形又は楕円状のレーザビームを用いており、前記ビームの短軸方向を円周方向(トラック方向)と一致させ特定の線速度でディスクを回転すると共に、1周(1回転)毎に、前記ビームの長軸方向のスポットサイズ(半値幅)よりも短い幅でディスク半径方向に移動させながら、徐々に結晶化する方法を採用している。
長軸方向のスポットサイズ(半値幅)よりも短い幅でレーザーをディスク半径方向に操作する理由は、初期化抜けが起らないようにするためであり、例えば75μm径のレーザヘッドの場合、その2/3程度にあたる50μm/rに設定している。
そのため、重複してビームが照射される半径部分(図15の、真中の黒色部分)が生じることになるが、2回目にビームが通過する際には、重複部分は既に結晶化しているため、隣接する未初期化部分に比べて吸収率が小さくなっており、照射部分において初期化条件のバランスが崩れることが予想される。その結果、重複部分と新たに初期化される未初期化部分との境界で不連続性が生じ、図14のような縞模様が観察されたものと推測している。
ビームが重複する部分と未初期化部分の初期化を一様の初期化条件で行うためには、吸収率の小さい重複部分(即ちビームの後端)のパワーを高くする必要があると考えられるが、本発明によるレーザ光のビーム整形が類似の効果を有するため、初期化むらが低減されたものと考察している。
そして、このような初期化方法により初期化が行われた光記録媒体は、全ての領域において特性の変動がなく良好で安定した特性を有する。
本発明4によれば、本発明1〜3よりも更に記録特性の優れた光記録媒体を得ることができる。
本発明者らは、最高記録線速が10.0m/sから35m/sの間にある高速記録に適した相変化材料と、本発明の初期化方法における最適条件との関係に着目して検討を重ねた結果、走査速度が14〜28m/sの速度領域において初期化された光記録媒体の記録特性が特に優れていることを知見した。
図3は、初期化パワー密度をディスクの各回転線査速度において前記「非晶質化が起る直前の結晶状態」に最適化した時の、「データ領域中のDOW1ジッターの平均値(黒三角)」と「そのトラック間分布のばらつき(標準偏差σ)(◆)」の関係を示すものである。
図3を見ると、前記速度範囲外において、DOW1ジッターの平均値が良好な値を示すものであっても、DOW1ジッターのばらつきが大きくなり、従ってトラック位置によっては記録特性が劣化してしまうことが分かる。
また図4は、前記速度範囲内において、図3で最適化した初期化パワー密度の値をプロットしたものである。即ち、光記録媒体を14〜28m/sの一定回転線速度で回転させ、パワー密度が10〜35mW/μmの強度ピークを有するレーザビームを用いて、初期化を行うことにより、記録特性の特に優れた光記録媒体を得ることができる。
本発明の初期化方法は、前記長方形もしくは楕円状レーザビームの長軸方向のレーザ光強度分布が、ビームの移動方向(半径方向)に対し後端側に強度ピークを有するレーザビームを用いることを特徴としている。この点について更に詳しく説明する。
光記録媒体が円盤状のディスクである場合、初期化はディスクの半径方向に長い長方形もしくは楕円状のレーザビームを照射しながら、特定の線速度で回転させ、更に該長方形もしくは楕円状のレーザビームの、長軸方向のスポットサイズ(半値幅)よりも短い幅で、ビームを半径方向に移動させながら徐々に初期化(結晶化)する方式を採用する。
「ビームの移動方向(半径方向)に対し後端側に強度ピークを有するレーザビーム」の例として、媒体に照射される半径方向のビーム強度プロファイルを図5に示した。なお、本発明においては「後端側」の定義として、プロファイルの中心に強度ピークを有する(f)も含まれることとする。
一方、ピーク強度に対する減衰率に関しては50%以上であることが好ましく、より好ましくは60%以上である。減衰率が50%未満では、安定したピーク強度を得ることが困難となる場合がある。
初期化に用いる光源としては、膜の均質性、ディスク信号特性、生産性の点で優れる大型LDを用いる。この場合、現在開発されているLDの最大出力限界値が4.0W程度であることを考慮すると、本発明4で規定するパワー密度を安定に維持して初期化を行うためには、初期化に用いる光源のサイズ(面積)は200μm以下とすることが望ましく、より望ましくは100μm以下である。光源サイズの下限は特に限定されないが、小さ過ぎると初期化に要する時間が長くなり生産性が低下するため、LDの出力に応じた適当なサイズを選択することが望ましい。
このような大口径の光源を用いて「ビームの移動方向(半径方向)に対し後端側に強度ピークを有するレーザビーム」を整形する方法としては、例えばビーム出射面と媒体の間の何れかの場所において遮蔽板やフィルターを設ける方法、或いは光源そのものを媒体面に対し傾ける方法等が考えられるが、他の方法でも構わない。
レーザ光の円周方向(トラック方向)の走査速度に関しては、14〜28m/sの線速度であれば、媒体の全データ領域にあるトラック毎のDOW1ジッターの標準偏差を更に小さくすることができ、従って媒体全ての記録個所において均一で良好な記録特性を保証することができるので望ましい。
パワー密度に関しては、10〜35mW/μmの強度ピークを有するレーザビームを用いて非晶質化が起る直前の結晶状態を実現することが望ましい。35mW/μmを超えると、媒体の温度が必要以上に上がってディスク全体に熱ダメージを与える恐れがあり、また、10mW/μmより低いと、図1(b)で見られるような「初期化抜け」が起る可能性がある。
レーザ光の半径方向の移動量(以下、送り幅)については、前記長方形もしくは楕円状ビームの短軸方向を円周方向(トラック方向)と一致させ、ディスクを回転させながら短軸方向に走査すると共に、1周(1回転)毎に長軸方向に移動させて全面の初期化を行う。この場合、ディスク1回転当りの送り幅は、「初期化抜け」が起らないようにビームの長軸よりも短かく設定する必要があるが、ディスクの同一半径部分があまり複数回重複して照射されないようにすると、生産性が向上するだけでなく、ディスク半径方向のエネルギー分布に由来する初期化の不均一性が回避できる。また、本発明者らの以前の研究によれば、パワー密度が一定の場合に繰り返し初期の記録特性が改善されることが分っている。
ディスクの同一半径部分を重複して照射せずに初期化を行うためには、送り幅とビーム長軸を等しくする必要があるが、実際は照射光ビームがビームプロファイルを持つため、ビーム端で充分な照射光パワー密度が得られず初期化抜けが起ることが懸念される。そのため、好ましくは長方形もしくは楕円状のビーム形を有する初期化用照射光ビーム送り幅を、nを整数として、長方形の長辺方向もしくは楕円長軸方向のレーザスポットサイズ(半値幅)の1/n以上、(n−1)/n以下に設定し、nを2〜10程度に設定すると良い。なお、「ビーム長軸長の整数分の1」を基準とするに当り、文字通り整数分の1である必要はなく、整数分の1からビーム長軸長に対して±5%程度の誤差はあっても差し支えない。
一方、円盤状ディスク以外の形状の場合も同様に同一部分があまり多数回重複して照射されないよう初期化を行うとよいが、円盤状ディスク以外の形状の場合は、その形状により適宜工夫する必要がある。
本発明の対象となる光記録媒体としては、基板上に少なくとも第一保護層、記録層、第二保護層及び反射層をこの順又は逆順に積層し、更に必要に応じてその他の層を設けたものが挙げられる。この場合、記録再生は、第一保護層側からレーザ光を照射して行われる。
図6は、その一例を示す概略断面図である。この光記録媒体は、レーザ光の案内溝が設けられた透明な基板1の上面に、第一保護層2、非晶質相と結晶相の間で可逆的相変化をする記録層3、第二保護層4、第三保護層5、反射層6、樹脂保護層7を備え、最後に基板1と同様な貼り合わせ用基板8を貼り合わせた層構成となっている。
以下、各層について具体的に説明する。
<記録層>
記録層3には種々の相変化材料を用いることができるが、好ましいのはGa、Sb、Sn、及びGeを含有する材料である。中でも、その組成式をGaαSbβSnγGeδとして、2≦α≦20、40≦β≦80、5≦γ≦25、2≦δ≦20〔但し、α、β、γ、δはそれぞれの元素の組成比(原子%)であり、α+β+γ+δ=100である〕の範囲にあるものが好ましい。Snが5%未満では融点が高くなり感度が悪くなり、Snが25%を超えると結晶化速度が速くなりすぎ非晶質化が困難となるため好ましくない。またSbが40%未満では融点が高くなり記録感度が悪化し、Sbが80%を超える場合は保存信頼性が劣化するため好ましくない。またGa及びGeについては、2%未満で保存信頼性が劣化し、20%を超えると結晶化温度が高くなりすぎ、初期化が困難となる。
また、記録層には、更に、In、Te、Al、Zn、Mg、Tl、Pb、Bi、Cd、Hg、Se、C、N、Au、Ag、Cu、Mn及び希土類元素から選択される少なくとも1種の元素を、合計含有量0.1〜10原子%含有することが好ましい。より好ましくは0.5〜8原子%である。
Inは高速記録材料における初期化不良を改善する効果がある。しかし、Inの過剰な添加は再生光劣化を引き起こし、また反射率低下の原因となるため10原子%未満とすることが好ましい。またTl、Pb、Bi、Al、Mg、Cd、Hg、Mn又は希土類元素には結晶化速度を速くする効果があり、これらの元素のうちSbと同じ価数を取り易いBiはより好ましい。しかし添加量が多すぎると再生光劣化や初期ジッターの劣化を引き起すため、組成範囲は何れも10原子%以下である必要がある。
また、保存信頼性に関しては、Ge以外にTe、Al、Zn、Se、C、N、Se及びAu、Ag、Cuの添加によっても改善できる。このうちAl、Seの場合は高速結晶化を更に向上させ、またSeは記録感度の向上にも効果がある。Au、Ag、Cuは保存信頼性に優れ、かつ高速記録材料の初期化不良を改善する有効な元素であるが、反面、結晶化速度を低下させ、高速記録特性を妨げる特性も備えている。そのためAu、Ag、Cuの合計添加量の上限は10原子%が好ましい。一方、少なすぎると添加効果が不明瞭となってしまうため、Au、Ag及びCuの添加量の下限は0.1原子%が好ましい。
更にMnや希土類元素も、Inと同様の効果を奏することが判り、特にMnはGe添加量をそれほど増やす必要のない保存信頼性にも優れた添加元素である。最適Mn添加量は1〜5原子%である。1原子%より低いと結晶化速度を速くする効果が現われず、多すぎると未記録状態(結晶状態)の反射率が低くなり過ぎるからである。
このように、Ga−Sb−Sn−Ge系材料と上記添加元素とを適当に組み合わせることにより、最高記録線速が10.5m/sから35m/sの間にある高速記録に適した記録特性を有し、初期化不良がなく、かつ保存信頼性に優れた光記録媒体を設計することができる。
記録層の膜厚は6〜20nmが好ましく、8〜17nmがより好ましい。6nmよりも薄いと繰り返し記録による記録特性の劣化が著しくなることがあり、20nmよりも厚いと初期化不良が起り易くなる。なお、結晶と非晶質の吸収率差をなるべく小さくして消去特性を向上させるためには記録層の厚さは薄い方が好ましい。
<第一保護層及び第二保護層>
第一保護層2及び第二保護層4は、記録層の劣化変質を防ぎ、記録層の接着強度を高め、かつ記録特性を高めるなどの作用効果を有し、その材料としては、SiO、SiO、ZnO、SnO、Al、TiO、In、MgO、ZrOなどの金属酸化物;Si、AlN、TiN、BN、ZrNなどの窒化物;ZnS、In、TaSなどの硫化物;SiC、TaC、BC、WC、TiC、ZrCなどの炭化物;ダイヤモンド状カーボン;或いは、それらの混合物が挙げられる。中でも、ZnSとSiOの混合物は、耐熱性、低熱伝導率性、化学的安定性に優れており、膜の残留応力が小さく、記録/消去の繰り返しによっても記録感度、消去比などの特性劣化が起き難く、記録層との密着性にも優れているので好ましい。
第一保護層、第二保護層の形成方法としては、各種気相成長法、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、プラズマCVD法、光CVD法、イオンプレーティング法、電子ビーム蒸着法などが用いられる。中でもスパッタリング法が、量産性、膜質等に優れている。
第一保護層、第二保護層の厚みは特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、反射率、記録パワーマージン、ジッターや繰り返し記録の信号安定性などの記録特性、高温高湿保存、ヒートサイクル試験などの品質特性により決定される。通常、第一保護層は50〜80nmが好ましく、第二保護層は3〜20nmが好ましい。第二保護層の膜厚については、記録層の冷却に関係し直接的な影響が大きいため、良好な消去特性・繰り返し記録耐久性を得るために4nm以上は必要である。これより薄いとクラック等の欠陥を生じ繰り返し記録耐久性が低下するほか、記録感度が悪くなるため好ましくない。また、20nmを超えると記録層の冷却速度が遅くなるためマークが形成し難くなり、マーク面積が小さくなってしまうので好ましくない。
<低熱伝導率層>
本発明の対象となる光記録媒体は、第一保護層と記録層の間に熱伝導率が10.0(W/m・K)以下の低熱伝導率層(図示せず)を設けることにより、初期化及び記録時の保護層の熱負荷(熱ダメージ)を低減し、かつ記録材料の感度を高めることができる。
低熱伝導率層の材料としてはSiOを主成分とするものが好ましい。ここで主成分とは、材料全体の50モル%以上を占めることを意味する。SiOは熱伝導率が約1.6W/m・Kであり、その低熱伝導性から低熱伝導率層の主要構成材料となるばかりでなく、ZrO(約2.0W/m・K)のような結晶性の性質を持たないことから、最高記録線速が10.5m/sから35m/sの間にある高速記録に適した結晶化速度が非常に速い記録材料と接して設けても、保存信頼性を損なうことなく繰り返し記録特性の改善に貢献できる。
また、熱伝導率が10.0W/m・K以上の材料であっても、SiOを主成分とする混合物とすることによって、熱伝導率が10.0W/m・K以下で、かつ機械特性/化学的耐久性に特に優れた低熱伝導率材料を実現することができる。
例えば硬質材料酸化物の一つであるTiO(≒6.5W/m・K)を混合すると、層の高温粘性を低くし溶融性を改善できるため、安定化、耐久性の向上した材料を実現することができる。またTiOを混合すると、添加量の調整によって光学特性の調整も可能である。またY(≒27W/m・K)を代表とする希土類酸化物や、ベリリウムを除くIIa族の酸化物又は複合酸化物を混合すると、材料の温度に対する体積変化を小さくするため、初期化や記録時の温度変化に対する安定性を向上させ、またスパッタリングで使用するターゲットの割れを防ぐなどの効果があり、更に耐久性及び高温溶融性を改善することも可能である。また特にAl(≒27W/m・K)は、混合により高耐熱性と高耐久性に寄与し、剛性度を高めることができるので重要である。また、Alの中間酸化物と組み合せると、剛性率などの機械的物性や耐熱性が向上する。
TiO、希土類酸化物、又はベリリウムを除くIIa族の酸化物又は複合酸化物を、SiOに添加する際の添加量は、TiOの場合、構成材料全体に対して50モル%未満、希土類酸化物、又はベリリウムを除くIIa族の酸化物又は複合酸化物の場合、10モル%未満とすることが望ましい。混合割合は必ずしもこの範囲に限定はされないが、上記範囲を超えると熱伝導率が10.0W/m・K以下の低熱伝導率材料の形成が困難となるため上記範囲が適している。特にTiOはSiOと比べると屈折率が大きく、混合割合を増やすと材料全体の屈折率が低下し繰り返し記録特性の改善の効果が不充分となる恐れがあるため、50モル%未満とする。一方、希土類酸化物、ベリリウムを除くIIa族の酸化物又は複合酸化物としてYが例示できるが、少量の添加は比弾性率の向上及び材料の均質化に寄与するため、10モル%未満が適している。
また低熱伝導率層を構成する材料に、金属及び/又は半金属の炭化物及び/又は窒化物を含有させると、低熱伝導率層と保護層及び記録層との密着性を向上させることができる。このような物質の具体例としては、Si、Ge、Ti、Zr、Ta、Nb、Hf、Al、Y、Cr、W、Zn、In、Sn、Bなどの炭化物や窒化物が挙げられる。しかし、これらの物質の配合量が10モル%を越えると、結晶化促進効果が現れ、保存信頼性が損なわれたり低熱伝導率性の性質が実現されなくなる可能性があるため好ましくない。配合量の下限は特に無いが、効果を発揮させるには1モル%以上配合することが望ましい。
低熱伝導率層の厚さは、熱的/光学的な条件から0.5〜10nmであることが好ましい。厚さが0.5nm未満では低熱伝導率層を均一な厚さで基板上に積層することが困難となるばかりか、低熱伝導率層を設けた効果が得られないためである。繰り返し記録における長期安定性を維持する点から、より好ましい厚さは2〜8nmである。
<反射層>
反射層6には、例えば、Al、Au、Ag、Cu、Taなどの金属材料、又はこれらの合金などを用いることができる。また、これら金属材料への添加元素としてCr、Ti、Si、Cu、Ag、Pd、Taなどが使用できる。これらの中でも、Ag又はAg合金を含有することが好ましい。これは、本発明の光記録媒体の反射層は、通常、記録時に発生する熱の冷却速度を調整する「熱伝導性」の観点と、干渉効果を利用して再生信号のコントラストを改善する「光学的」な観点から、「高熱伝導率/高反射率の金属」が望ましく、Agの熱伝導率が427W/m・Kと極めて高いことから、純Ag又はAg合金を用いると、記録時に記録層が高温に達したあと直ぐに、非晶質マーク形成に適した急冷構造を実現できるからである。
なお、このように高熱伝導率性を考慮すると純銀が最良であるが、耐食性を考慮しCuを添加しても良い。この場合Agの特性を損なわないためには銅の添加量範囲は0.1〜10原子%程度が好ましく、特に0.5〜3原子%が好適である。過剰の添加は逆にAgの耐食性を劣化させてしまう。
反射層6は、各種気相成長法、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、プラズマCVD法、光CVD法、イオンプレーティング法、電子ビーム蒸着法などによって形成できる。中でも、スパッタリング法が、量産性、膜質等に優れている。
反射層6の厚みは特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、通常、一層記録の場合には、100〜200nmである。
<第三保護層>
純Ag又はAg合金を反射層に用いると、ZnSとSiOの混合物のような硫黄を含む保護層を用いた場合、硫黄がAgへ拡散してディスク欠陥となる不具合が生じてしまう(Agの硫化反応)。従って、第二保護層4と反射層6の間に、Agの硫化防止用の第三保護層5を設けることが好ましい。
第三保護層の材料としては、(1)Agの硫化反応を防ぐバリア能力があること、(2)レーザ光に対して光学的に透明であること、(3)非晶質マーク形成のため熱伝導率が低いこと、(4)保護層や反射層と密着性が良いこと、(5)形成が容易であること、などの観点から適切な材料を選定することが望ましく、上記要件を満たす酸化物、炭化物及び窒化物が好ましい。
第三保護層の厚みは、通常、3〜10nmである。
<樹脂保護層>
樹脂保護層7は、工程内及び製品となった時点で光記録媒体の薄膜積層構造保護の作用効果を有し、通常、紫外線硬化性の樹脂により形成する。膜厚は2〜5μmである。
<基板>
基板1の材料としては、通常、ガラス、セラミックス、樹脂などが用いられるが、成形性、コストの点から樹脂製基板が好適である。樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ABS樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。中でも成形性、光学特性、コストの点から、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂が好ましい。
基板1の厚みは特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、通常使用するレーザの波長やピックアップ・レンズの集光特性により決定される。波長650〜665nmのDVD系では0.6mmの板厚の基板が用いられている。
基板としては、例えば、溝ピッチ0.74±0.03μm、溝深さ22〜40nm、溝幅0.2〜0.4μmの蛇行溝を有するものが好ましい。溝を蛇行させることによって、未記録の特定トラックにアクセスさせることや、基板を一定線速度で回転させることができる。
<接着層>
接着層は、情報信号が書き込まれる基板1と貼り合せ用基板8とを貼り合わせるために用い、ベースフィルムの両側に粘着剤を塗布した両面粘着性のシート、熱硬化性樹脂又は紫外線硬化樹脂により形成する。接着層の膜厚は、通常50μm程度である。
<貼り合せ用基板>
貼り合せ用基板(ダミー基板)8は、接着層として粘着性シート又は熱硬化性樹脂を用いる場合は透明である必要はないが、接着層に紫外線硬化樹脂を用いる場合は紫外線を透過する透明基板とする。貼り合せ用基板の厚みは、通常、情報信号を書き込む側の透明基板1と同じ0.6mmのものが用いられている。
また、本発明の対象となる光記録媒体は、多層型光記録媒体でもよい。例えば、図7は、二層構造光記録媒体の概略断面図であり、この光記録媒体は、第1基板10の上に、第1情報層18、中間層20、第2情報層28、及び第2基板25をこの順に積層してなり、更に必要に応じてその他の層を有する。
第1情報層18は、接着層11、第1下部保護層12、第1記録層13、第1上部保護層14、第1反射層15、及び熱拡散層16からなり、第2情報層28は、第2下部保護層21、第2記録層22、第2上部保護層23、及び第2反射層24からなる。
なお、第1上部保護層14と第1反射層15との間、及び第2上部保護層23と第2反射層24との間にバリア層を設けても構わない。
本発明においては、例えば第2情報層を本発明の初期化方法によって初期化後、第1情報層を形成することになる。
この多層構造の光記録媒体によれば、更なる大容量の記録が可能となる。
以上、本発明の対象となる光記録媒体について詳細に説明したが、他の種々の光記録媒体、例えば、図8に示すような、基板1の上面に、第一保護層2、記録層3、第二保護層4、反射層6、貼り合せ用基板8を貼り合わせた層構成を有する一般的なBlu−Ray(青色波長)ディスク型の光記録媒体にも、全く同様に適用できる。
本発明によると、高線速記録が可能な光記録媒体において問題となる「繰り返し記録初期の記録特性劣化」と「特性の変動」の問題を同時に解消することができ、最高記録線速が10.5m/sから35m/sの間にある高線速で書換えが可能な光記録媒体において、繰り返し初期の記録特性劣化がなく、かつ媒体の全てのデータ領域において特性の変動がない光記録媒体を提供できる。
以下、実施例及び比較例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例により何ら限定されるものではない。
実施例1〜6、比較例1〜4
<光記録媒体の作製>
直径12cm、厚さ0.6mmで、トラックピッチ0.74μm、溝深さ27nm、溝幅0.27μmの蛇行溝付きポリカーボネート樹脂製基板1上に、スパッタ装置(ユナクシス社製、Big Sprinter)を用いて、第一保護層2としてのZnS(80モル%)−SiO(20モル%)を厚みが65nmになるように成膜し、その上に記録層3としてのGaSb65Sn20Ge10を厚みが18nmになるように成膜し、その上に第二保護層4としてのZnS(80モル%)−SiO(20モル%)を厚みが10nmとなるように成膜し、その上に第三保護層5としてのSiCを厚みが4nmとなるように成膜し、その上に反射層6としての純Agを厚みが160nmとなるように成膜したのち、スパッタ装置から取り出した。
スパッタ成膜終了後、反射層上にスピンコート法により樹脂保護層7(大日本インキ化学工業株式会社製、SD318)をコートし、最後に基板1と同一の直径12cm、厚さ0.6mmのポリカーボネート樹脂製の貼り合せ用基板8を紫外線硬化により貼り合せ、図6に示した構成層の、実施例1〜実施例6の光ディスクを作製した。
比較例1〜比較例4には、実施例1と同じ光ディスクを用いた。
上記実施例1〜6及び比較例1〜4の各光ディスクについて、次のようにして、初期化方法、初期化後のディスク評価、記録特性の評価、及び保存信頼性の評価を行った。
<初期化方法>
初期化装置(日立コンピュータ機器株式会社製、PCR DISK INITIALIZER)を使用し、各光ディスクを半径方向に長い楕円状のレーザビームを照射しながら10m/s以上35m/s以下の線速度でディスクを回転させ、更に該楕円状のレーザビームを長軸方向のスポットサイズ(半値幅)よりも短い幅で半径方向に移動させながら徐々に結晶化する初期化方法を用い、かつ該楕円状のレーザビームの長軸方向の光強度分布が、ビームの移動方向(半径方向)に対し後端側にビーム強度のピークを有し、最大ビーム強度に対する最小ビーム強度の割合が50%以上100%未満であり、パワー密度が10〜35mW/μmの強度ピークを有するレーザビームを照射することで初期化を行った。但し、比較例1〜3ではビーム強度のピークを有しないレーザビームを、比較例4では、ビームの移動方向(半径方向)に対し前方側にビーム強度のピークを有するレーザビームをそれぞれ照射することで初期化を行った。
各実施例及び比較例の初期化条件の詳細を表1に示したが、表中の「図5及び図11におけるプロファイルの形態」の項のa〜hは、それぞれ図5及び図11中の(a)〜(h)を指す。
<記録特性の評価>
記録特性の評価は、波長660nm、NA0.65のピックアップを有する光ディスク評価装置(パルステック社製、DDU−1000)を用いて、記録線速度28m/s(DVDの8倍速に相当)、線密度0.267μm/bitの条件で、光ディスクの全データ領域内においてEFM+変調方式により3T〜14Tのランダム信号の繰り返し記録を行い、繰り返し初期の記録特性劣化が最も顕著となる繰り返し記録2回目(DOW1ジッターの平均値σ)を評価した。評価は、経時劣化前に行うことが好ましく、本発明のような高速記録媒体のDOW1特性は、経時劣化が特に起こり易いため、初期化後直ぐに(数時間内)評価を行った。評価時の再生線速度は3.5m/s、再生光パワー0.7mWとした。なお、前記「ジッター」はdata to clock jitterであり、σを検出窓幅Twで規格化した値である。
評価結果を表2に示すが、評価については、書換え型の光ディスクシステムを実現する場合、前記ジッターは少なくとも10%以下であることが必要であり、9%以下であれば安定したシステムが実現できることから、σについて次のような基準で評価した。
「×」:光ディスクの全データ領域にあるトラック毎のDOW1ジッターの平均値が、10%を超える場合
「△」:光ディスクの全データ領域にあるトラック毎のDOW1ジッターの平均値が、9%を超えるが、10%以下の場合
「○」:光ディスクの全データ領域にあるトラック毎のDOW1ジッターの平均値が、8%を超えるが、9%以下の場合
「◎」:光ディスクの全データ領域にあるトラック毎のDOW1ジッターの平均値が、8%以下の場合
<記録特性の変動に関する評価>
記録特性の変動は、光ディスクの全データ領域内におけるトラック毎のDOW1ジッターの標準偏差(σ′)を評価した。評価は前記光ディスク評価装置を用い、再生速度3.5m/s、リードパワー0.7mWの条件で行った。評価結果を表2に示す。
評価については、媒体の全データ領域にあるトラック毎のDOW1ジッターの標準偏差を0.15以下に規定することで、媒体全ての記録個所において均一で良好な記録特性を保証することができることから、次のような基準で評価した。
「○」:σ′が0.15以下の場合
「×」:σ′が0.15を超える場合
<保存信頼性の評価>
実施例及び比較例の光ディスクについて、80℃−85%RH恒温槽に300時間放置した後のDOW1ジッターを測定し、次のような基準により保存信頼性の評価を行った。評価結果を表2に示す。
「×」:DOW1ジッターが10%を超える場合
「○」:9%を超えるが、10%以下の場合
「◎」:9%以下の場合
なお、未評価のものについては「−」の記号を付与した。
更に、実施例1〜3及び比較例1〜4のトラック毎のDOW1ジッターの平均値(σ/Tw)と標準偏差(σ′)を、図9と図10に示した。図の横軸は最高記録線速である。
図から実施例の方が優れていることは明らかである。
a:非晶質化が起る直前の反射率信号(均一な反射率)を示す図。b:aの状態からパワー密度を20%下げた時(初期化抜け)の反射率信号を示す図。c:aの状態からパワー密度を上げたり線速を遅くした場合(初期化むら)の反射率信号を示す図。 a:初期化後の未記録部反射率(均一な反射率)の様子を示す図。b:DOW1ジッターのトラック間分布の様子を示す図。 初期化パワー密度を各走査速度において「非晶質化が起る直前の結晶状態」に最適化した時の、「全データ領域にあるトラック毎の繰り返し初期の記録特性(DOW1ジッター)の平均値(黒三角)」と「媒体の全データ領域にあるトラック毎のDOW1ジッターのばらつき(標準偏差σ)(◆)」の関係を示す図。 図3で最適化した初期化パワー密度の値をプロットした図。 ビームの移動方向(半径方向)に対し後端側に強度ピークを有するレーザビームのビーム強度プロファイルの例を示す図。 本発明の対象となる光記録媒体の一例を示す概略断面図。 本発明の対象となる二層構造光記録媒体の概略断面図。 Blu−Ray(青色波長)ディスク型の光記録媒体の層構造を示す図。 実施例1〜3及び比較例1〜3のトラック毎のDOW1ジッターの平均値(σ/Tw)と標準偏差(σ′)を示す図。 実施例1及び比較例4のトラック毎のDOW1ジッターの平均値(σ/Tw)と標準偏差(σ′)を示す図。 比較例で用いたビーム強度プロファイルの形態を示す図。 実施例1の光ディスクの初期化後の記録層の光学顕微鏡写真を示す図。 比較例1の光ディスクの初期化後の記録層の光学顕微鏡写真を示す図。 比較例4の光ディスクの初期化後の記録層の光学顕微鏡写真を示す図。 縞模様の出現についての説明図。
符号の説明
1 基板
2 第一保護層
3 記録層
4 第二保護層
5 第三保護層
6 反射層
7 樹脂保護層
8 貼り合わせ用基板

Claims (4)

  1. ディスク状光記録媒体の半径方向に長い長方形もしくは楕円状のレーザビームを照射しながら、特定の線速度でディスクを回転させ、更に該レーザビームを長軸方向のスポットサイズ(半値幅)よりも短い幅で半径方向に移動させながら徐々に結晶化させる初期化方法において、該レーザビームの長軸方向の光強度分布がビームの移動方向(半径方向)に対し後端側にビーム強度のピークを有することを特徴とする初期化方法。
  2. ビーム強度のピークが後端にあることを特徴とする請求項1記載の初期化方法。
  3. レーザビームの長軸方向の光強度分布が、ビームの移動方向(半径方向)に対し前方側に向かって、徐々にビーム強度が減衰するプロファイルを有することを特徴とする請求項1又は2記載の初期化方法。
  4. 基板上に少なくとも第一保護層、非晶質相と結晶相の間で可逆的相変化をする記録層、第二保護層及び反射層を有し、最高記録線速が10.5m/sから35m/sの間にあるディスク状光記録媒体に対し、線速度14〜28m/sの一定線速下で、パワー密度10〜35mW/μmのレーザビームを照射して初期化することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の初期化方法。
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