JP2006077180A - 予混合圧縮自己着火方式・火花点火方式併用エンジン用燃料 - Google Patents

予混合圧縮自己着火方式・火花点火方式併用エンジン用燃料 Download PDF

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Abstract

【課題】予混合圧縮自己着火方式・火花点火方式併用エンジン用燃料を提供する。
【解決手段】リサーチ法オクタン価93を超え97以下、パラフィン分75容量%以上、アロマ分、ナフテン分及びオレフィン分がそれぞれ15容量%以下、ノルマルペンタン、ノルマルヘキサン及びノルマルヘプタンの合計量が3容量%以上、イソオクタン10容量%以上含有し、少なくとも4種類以上の炭化水素(異性体はまとめて1種類とカウント)から構成され、燃料全量に対し2容量%以上含有する炭化水素が3種類以上存在し(異性体はまとめて1種類とカウント)、かつ下記炭化水素式(1)の要件を具備する予混合圧縮自己着火方式・火花点火方式併用エンジン用燃料。 (1)−66≦−0.66×ノルマルパラフィン分(容量%)−0.18×イソパラフィン分(容量%)+0.16×オレフィン分(容量%)+0.25×ナフテン分(容量%)+0.49×アロマ分(容量%)≦−15
【選択図】 なし

Description

本発明は、一つのエンジンで予混合圧縮自己着火方式と火花点火方式をエンジンの負荷と回転数に応じて切り替えるタイプのエンジンにおいて、燃料により予混合圧縮自己着火燃焼時のエンジン出力並びにエンジン回転領域をできるだけ広げ、エンジン熱効率の向上と触媒未装着状態で10質量ppm以下のNOx排出レベルを達成し、さらに火花点火燃焼時に従来のエンジン性能を維持できる予混合圧縮自己着火方式・火花点火方式併用エンジン用燃料に関する。
今日、自動車用内燃機関としては、火花点火式ガソリンエンジンと圧縮自己着火式ディーゼルエンジンの二種類が広く使用されている。
火花点火式ガソリンエンジンは、吸気ポートあるいは燃焼室内に燃料を噴射して燃料と空気の予混合気を形成させ、スパークプラグによる電気放電で強制的に点火、燃焼させる方式であり、燃料特性として、蒸発しやすいこと、自己着火し難いこと、点火後は火炎伝播がスムーズに行われること等が求められる。火花点火式ガソリンエンジンにおいては、窒素酸化物(NOx)、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)が排出されるため、これらの浄化に三元触媒等が広く使用されている。しかし、三元触媒による排出ガス浄化システムは、燃料と空気との割合が理論空燃比近傍になる範囲にしか適用できないため、圧縮自己着火式ディーゼルエンジンと比較すると熱効率、燃費が著しく劣るという欠点がある。
一方、圧縮自己着火式ディーゼルエンジンは、圧縮工程でのピストン上昇により燃焼室内の空気が圧縮されて温度が上昇し、軽油の臨界温度以上に達したところに燃料を噴霧し自己着火燃焼させる方式であり、燃料特性には自己着火しやすいことが求められる。圧縮自己着火式ディーゼルエンジンは、燃費及び熱効率面に優れるものの燃料噴霧を圧縮上死点前30クランク角度から圧縮上死点後10クランク角度付近で行うため、燃焼時の温度分布に濃淡が生じ、NOx及び煤の排出量が著しく高くなるという欠点がある。また圧縮自己着火式ディーゼルエンジンでは、排出ガス浄化のための触媒があまり普及しておらず、NOxが100〜1200質量ppmと非常に高いレベルで大気中に放出されるケースもある。
このように、従来の火花点火式ガソリンエンジンは、排出ガスの浄化はある程度できるが燃費や熱効率の面に課題があり、一方、圧縮自己着火式ディーゼルエンジンは、低燃費、高熱効率であるが、NOx等の排出ガスの面に課題がある。このため、低NOx排出ガス、低燃費及び高熱効率を同時に達成するという課題を解決すべく予混合圧縮自己着火式エンジンが現在検討されている。
予混合圧縮自己着火式エンジンは、燃料の噴射圧力レベルが20MPa以下と圧縮自己着火式ディーゼルエンジンにおける噴射圧力に比べると著しく低い燃料噴射圧力にて燃料を吸気ポート又は燃焼室内に噴射し、そのサイクルで燃焼する燃料噴射を圧縮上死点前60クランク角度以前に終了するシステムであって、燃料と空気との予混合気をスパークプラグによる強制点火ではなく、自己着火で燃焼させるエンジンである。予混合圧縮自己着火式エンジンは、従来の圧縮自己着火式ディーゼルエンジンに比べて燃料が噴射されてから燃焼の始まるまでの時間が長く、燃料が燃料室内で均一に混合されるため、燃焼時に局部的に温度の高い領域ができず、NOx排出レベルを触媒未装着状態で10質量ppm以下に抑えることが可能となり、かつ燃費及び熱効率を圧縮自己着火式ディーゼルエンジン並みの低燃費、高効率にすることが可能である。
現在の研究レベルにおいてはエンジン負荷やエンジン回転数に応じて予混合圧縮自己着
火方式と火花点火方式を切り替えるタイプのエンジンが開発されており(例えば、非特許文献1、2参照。)、このような新しいエンジンに適した専用の燃料の開発が望まれている。
エイ・フォイエルハプター(A. Fuerhapter), 「AVLの新CSIエンジン−多気筒エンジンの予混合圧縮自己着火式オペレーション(The New AVL CSI Engine-HCCI Operation on a Multi Cylinder Gasoline Engine)」, エス・エー・イー テクニカル ペーパー(SAE Technical Paper),2004−01−0551,2004年 ヤマオカ シロウ(Shiro Yamaoka), 「ガソリンHCCIエンジンの自己着火および燃料をコントロールする研究(A Study of Controlling the Auto-Ignition and Combustion in a Gasoline HCCI Engine)」, エス・エー・イー テクニカル ペーパー(SAE Technical Paper),2004−01−0942,2004年
本発明の目的は、一つのエンジンで予混合圧縮自己着火方式と火花点火方式をエンジンの負荷と回転数に応じて切り替えるタイプのエンジンにおいて、燃料により予混合圧縮自己着火燃焼時のエンジン出力並びにエンジン回転領域をできるだけ広げ、エンジン熱効率の向上と触媒未装着状態で10質量ppm以下のNOx排出レベルを達成し、さらに火花点火燃焼時に従来のエンジン性能を維持できる予混合圧縮自己着火方式・火花点火方式併用エンジン用燃料を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意研究を重ねた結果、特定のリサーチ法オクタン価、特定の組成を有し、かつ特定の要件を具備した燃料が予混合圧縮自己着火方式・火花点火方式併用エンジンの燃料に適していることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、リサーチ法オクタン価が93を超え97以下であり、パラフィン分が75容量%以上で、アロマ分、ナフテン分、オレフィン分がそれぞれ15容量%以下であり、ノルマルペンタン、ノルマルヘキサンおよびノルマルヘプタンの合計量が3容量以上であり、イソオクタン(異性体はまとめて1種類とカウントする)を10容量%以上含有し、少なくとも4種類以上の炭化水素(異性体はまとめて1種類とカウントする)から構成され、燃料全量に対し2容量%以上含有する炭化水素が3種類以上存在し、かつ下記炭化水素式(1)で示される要件を具備することを特徴とする予混合圧縮自己着火方式・火花点火方式併用エンジン用燃料に関する。
(1) −66≦−0.66×ノルマルパラフィン分(容量%)−0.18×イソパラ
フィン分(容量%)+0.16×オレフィン分(容量%)+0.25×ナフテ
ン分(容量%)+0.49×アロマ分(容量%)≦−15
また本発明は、15℃における密度が0.65g/cm以上0.75g/cm以下、初留点が25℃以上50℃以下、50容量%留出温度が70℃以上110℃以下、90容量%留出温度が100℃以上140℃以下、リード蒸気圧が40kPa以上68kPa以下であることを特徴とする前記記載の予混合圧縮自己着火方式・火花点火方式併用エンジン用燃料に関する。
本発明の燃料は、特定のリサーチ法オクタン価、特定の組成を有し、かつ特定の要件を具備しているので、一つのエンジンで予混合圧縮自己着火方式と火花点火方式をエンジンの負荷と回転数に応じて切り替えるタイプのエンジンにおいて、燃料により予混合圧縮自己着火燃焼時のエンジン出力並びにエンジン回転領域をできるだけ広げ、エンジン熱効率の向上と触媒未装着状態で10質量ppm以下のNOx排出レベルを達成し、さらに火花点火燃焼時でも従来のエンジン性能を維持することができる。また、本発明の燃料は、予混合圧縮自己着火方式・火花点火方式併用エンジンと、電気モータ等を組み合わせたハイブリッド式エンジン等の燃料にも利用可能である。
以下に本発明を詳述する。
本発明における燃料は、一つのエンジンで予混合圧縮自己着火方式と火花点火方式をエンジンの負荷と回転数に応じて切り替えるタイプのエンジンに適した燃料である。ここで予混合圧縮自己着火方式とは、下記(A)、(B)及び(C)の条件下に燃料を噴射させ、自己着火により燃焼を行わせる燃焼形態をいう。
(A)燃料噴射圧力:20MPa以下
(B)燃料噴射位置:吸気ポート及び/又は燃焼室内部
(C)燃料噴射終了時期:圧縮上死点前60クランク角度以前。
予混合圧縮自己着火方式は、従来のディーゼルエンジンなどにみられる圧縮自己着火方式と比較し、(A)の燃料噴射圧力が著しく低く、(C)の燃料噴射終了時期、即ち、燃料が噴射されてから燃焼が始まるまでの時間がかなり長い。従って、予混合圧縮自己着火方式においては、燃料が燃焼室内で均一に混合されるため、燃焼室内において局部的に温度の高い領域ができず、窒素酸化物の排出量を触媒未装着状態で10質量ppm以下にすることができる。
なお、予混合圧縮自己着火方式は、HCCI(Homogeneous Charge Compression Ignition)、PCCI(Premixed Charge Compression Ignition)、PCI(Premixed Compression Ignition)、CAI(Controlled Auto-Ignition)、AR(Active Radical (Combustion) )と呼ばれることもある。
本発明の燃料は、予混合圧縮自己着火方式・火花点火方式併用エンジンに適した燃料であるが、該予混合圧縮自己着火方式・火花点火方式併用エンジンと、電気モータ等を組み合わせたハイブリッド式エンジンに対しても適用することができる。
本発明の予混合圧縮自己着火方式・火花点火方式併用エンジン用燃料(以下、本発明の燃料ともいう。)は、リサーチ法オクタン価(RON)が93を超え97以下であることが必要である。予混合圧縮自己着火方式では高圧縮比化により出力向上を期待できるが、エンジンに可変動弁機構が付随していない場合には火花点火燃焼時のノッキングを回避するためオクタン価の高い燃料が望まれる。このことからRONは93を超えることが必要であり、94以上が好ましい。また一方、安定した予混合圧縮自己着火燃焼を得るために、上限は97以下が必要であり、96以下が好ましい。
なお、ここでRONは、JIS K2280「石油製品−燃料油−オクタン価試験方法及びセタン価試験方法並びにセタン指数算出方法」により測定されるリサーチ法オクタン価の値である。
本発明の燃料のパラフィン分は、75容量%以上であることが必要である。予混合圧縮自己着火方式で安定した燃焼を得るためには、燃料を構成するパラフィン分の割合が多くなるほど好ましい。かかる理由から、パラフィン分は85容量%以上が好ましく、90容量%以上がさらに好ましい。
なお、ここでいうパラフィン分とは、JIS K2536「石油製品−成分試験方法」に準拠してガスクロマトグラフを利用して測定される値であり、イソパラフィン分とノルマルパラフィン分の合計含有量を意味する。
アロマ分、オレフィン分およびナフテン分は、予混合圧縮自己着火燃焼をする際の低温酸化反応を小さくする働きがあり、本発明の燃料では、それぞれ15容量%以下であることが必要である。またエンジンの負荷と回転数に対して熱効率の高い予混合圧縮自己着火燃焼の領域をさらに広げるためにはそれぞれ10容量%以下であることが好ましい。
なお、ここでいうアロマ分、オレフィン分およびナフテン分のそれぞれの含有量は、JIS K2536「石油製品−成分試験方法」に準拠してガスクロマトグラフを利用して測定される値である。
本発明の燃料は、ノルマルペンタン、ノルマルヘキサンおよびノルマルヘプタンの合計含有量が3容量%以上であることが必要である。ノルマルペンタン、ノルマルヘキサンおよびノルマルヘプタンは着火性のよい炭化水素であり、揮発性も高く、HCCIエンジンの運転性向上のためには不可欠であることから、これらの炭化水素の合計含有量は5容量%以上が好ましく、8容量%以上がさらに好ましい。
なお、ここでいうノルマルペンタン、ノルマルヘキサンおよびノルマルヘプタンのそれぞれの含有量とは、JIS K2536「石油製品−成分試験方法」に準拠してガスクロマトグラフを利用して測定される値である。
本発明の燃料中のイソオクタンは、予混合圧縮自己着火方式・火花点火方式併用エンジンにおける火花点火燃焼をする際に、すばやく予混合気を形成し、さらにノッキングを回避するための観点から10容量%以上燃料中に含有していることが必要であり、15容量%以上が好ましく、20容量%以上がさらに好ましい。ただし、ここでいうイソオクタンとは、2,2,4−トリメチルペンタン、2,2,3−トリメチルペンタン、2,3,4−トリメチルペンタン、2,3,3−トリメチルペンタン、2,3−ジメチルヘキサン、2,4−ジメチルヘキサン、2,5−ジメチルヘキサンなどで代表されるすべてのイソオクタン類異性体の総称であり、イソオクタンとしてはこれらの異性体をまとめて1種類としてカウントする。
なお、ここでいうイソオクタンの含有量は、JIS K2536「石油製品−成分試験方法」に準拠してガスクロマトグラフを利用して測定される値である。
本発明の燃料は、蒸留性状や着火性のバランスが重要であるため、少なくとも4種類以上の炭化水素から構成されることが必要である。ただし、炭素数が同じでも直鎖の炭化水素は直鎖の炭化水素で1種類の炭化水素としてカウントし、分岐の炭化水素は分岐の炭化水素として各異性体を含めて1種類の炭化水素としてカウントするものとする。例えば、オクタンについていえば、n−オクタンで1種類とし、2,2,4−トリメチルペンタン、2,2,3−トリメチルペンタン、2,3,4−トリメチルペンタン、2,3,3−トリメチルペンタン、2,3−ジメチルヘキサン、2,4−ジメチルヘキサン、2,5−ジメチルヘキサンなどの各異性体はこれらを総称してイソオクタン(分岐の炭化水素)として1種類とカウントする。従って、この場合は、n−オクタンとイソオクタンの2種類の炭化水素としてカウントする。
また本発明の燃料は、2容積%以上の炭化水素が3種類以上燃料中に存在していることが必要である。この場合も、前述と同様に炭素数が同じ場合、直鎖の炭化水素は直鎖の炭化水素で1種類とカウントし、分岐の炭化水素は分岐の炭化水素として異性体を含めて1種類とカウントするものとする。
本発明の燃料は、「−0.66×ノルマルパラフィン分(容量%)−0.18×イソパラフィン分(容量%)+0.16×オレフィン分(容量%)+0.25×ナフテン分(容量%)+0.49×アロマ分(容量%)」の炭化水素式で表されるパラメーターが−66以上−15以下であることが必要である。
前記炭化水素式は、燃料の予混合圧縮自己着火特性試験より求められたものであり、低温酸化反応の起こしやすさを指標化したものである。予混合圧縮自己着火方式の着火のし易さと関係のある低温酸化反応は、ノルマルパラフィン系炭化水素、イソパラフィン系炭化水素、オレフィン系炭化水素、ナフテン系炭化水素、芳香族系炭化水素の順に起こりやすく、ナフテン系炭化水素、芳香族系炭化水素は、HCCI燃焼に不向きであるだけでなく、予混合圧縮自己着火燃焼時にベンゼン等を生成し易く、排出ガスの面でも好ましくない。上述の炭化水素式の値は、小さいほど予混合圧縮自己着火燃焼に適しており、好ましくは、−66以上−20以下、より好ましくは−60以上−30以下、さらに好ましくは−40以上−30以下である。
なお、ここでいうノルマルパラフィン分(容量%)、イソパラフィン分(容量%)、オレフィン分(容量%)、ナフテン分(容量%)およびアロマ分(容量%)は、JIS K2536「石油製品−成分試験方法」に準拠してガスクロマトグラフを利用して各々測定される値である。
本発明の燃料の15℃における密度については特に制限はないが、アクセルレスポンスが鈍くなる観点から、0.75g/cm以下であることが好ましく、より好ましくは0.73g/cm以下であり、ベーパーロックなどの問題から、0.65g/cm以上であることが好ましく、より好ましくは0.68g/cm以上である。
なお、ここでいう密度とは、JIS K2249「原油及び石油製品の密度試験方法並びに密度・質量・容量換算表」により測定される値である。
本発明の燃料は、初留点(IBP)が25℃以上50℃以下、50容量%留出温度(T50)が70℃以上110℃以下、90容量%留出温度(T90)が100℃以上140℃以下であることが好ましい。
前記IBPは、予混合圧縮自己着火方式における燃料の蒸発特性が悪化し、所望の熱効率及び燃費が得られ難くなることから、50℃以下であることが好ましく、45℃以下がより好ましく、40℃以下がさらに好ましい。一方、燃料中の軽質留分の蒸発ガスが燃料タンクから漏れ出して大気中に放出されるのを防ぐという観点から、IBPは25℃以上であることが好ましい。
前記T50は、軽質留分とのバランスが崩れ、予混合圧縮自己着火燃焼時における熱効率が悪化することを防止するために、110℃以下であることが好ましく、100℃以下がより好ましく、90℃以下がさらに好ましい。一方、T50の下限は、燃料の蒸発が及ぼす空気の充填効率が悪化する恐れがあるため、70℃以上であることが好ましく、75℃以上がより好ましい。
前記T90は、予混合燃焼方式並びに火花点火燃焼方式の両燃焼方式において、着火前に完全に予混合気が気化していることが必要であることから、140℃以下であることが好ましく、120℃以下がさらに好ましい。一方、下限は良い燃費を得るという観点から100℃以上であることが好ましい。
ここで、IBP、T50およびT90は、JIS K2254「石油製品−蒸留試験方法−常圧法蒸留試験方法」によって測定される値である。
本発明の燃料のリード蒸気圧(RVP)は、40kPa以上68kPa以下であることが好ましい。ベーパーロックなどによる運転性の不具合の防止等から40kPa以上64kPa以下がさらに好ましい。
ここでいう蒸気圧(RVP)とは、JIS K 2258「原油及び燃料油蒸気圧試験方法(リード法)」により測定される値である。
本発明の燃料において、硫黄分の含有量は特に限定されないが、10質量ppm以下であることが好ましい。10質量ppmを超えると、エンジンに装着した排出ガス浄化のための触媒が硫黄により被毒され、排出ガス浄化能力が低下する問題が生じ好ましくない。燃料における硫黄分は、触媒の性能維持の点から5質量ppm以下がより好ましく、1質量ppm以下が最も好ましい。
ここで、硫黄分とは、JIS K2541「原油及び石油製品一硫黄分試験方法」により測定される値である。
本発明の燃料は、主成分として炭化水素を含むが、その他に、エーテル、アルコール、ケトン、エステル、グリコール等の含酸素化合物を含有していてもよい。
含酸素化合物としては、例えば、メタノール、エタノール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ノルマルブチルアルコール、イソブチルアルコール、ジメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルターシャリーブチルエーテル(MTBE)、エチルターシャリーブチルエーテル(ETBE)、ターシャリーアミルメチルエーテル(TAME)、ターシャリーアミルエチルエーテル等が挙げられる。
本発明の燃料は、前記含酸素化合物を含有することにより、排出ガス中のHC量を低減することができるが、NOx量は増加する。従って、含酸素化合物の含有割合は、酸素元素換算(酸素含有量)で燃料全量に対し20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、3質量%以下が最も好ましい。
本発明の燃料は、上述の通り所定の性状を有する燃料を得られさえすれば、その基材については特に制限されるものではなく、例えば、原油蒸留装置、ナフサ改質装置、アルキレーション装置等から得られるプロパンを中心とした直留系プロパン留分、ブタンを中心とした直留系ブタン留分、それらを脱硫した直留系脱硫プロパン留分、直留系脱硫ブタン留分、接触分解装置等から得られるプロパン・プロピレンを中心とした分解系プロパン留分、ブタン・ブテンを中心とした分解系ブタン留分、原油を常圧蒸留して得られるナフサ留分(フルレンジナフサ)、ナフサの軽質留分(軽質ナフサ)、ナフサの重質留分(重質ナフサ)、フルレンジナフサを脱硫した脱硫フルレンジナフサ、軽質ナフサを脱硫した脱硫軽質ナフサ、重質ナフサを脱硫した脱硫重質ナフサ、軽質ナフサを異性化装置でイソパラフィンに転化して得られる異性化ガソリン、イソブタン等の炭化水素化合物に低級オレフィンを付加(アルキル化)することによって得られるアルキレート、接触改質法で得られる改質ガソリン、改質ガソリンから芳香族分を抽出した残分であるラフィネート、改質ガソリンの軽質留分、改質ガソリンの中重質留分、改質ガソリンの重質留分、接触分解法、水素化分解法等で得られる分解ガソリン、分解ガソリンの軽質留分、分解ガソリンの重質留分、及び天然ガス等を一酸化炭素と水素とに分解した後にF−T(Fischer−Tropsch)合成で得られるGTL(Gas to liquids)の軽質留分等の基材を1種又は2種以上混合して調製することができる。
本発明の燃料においては、必要に応じて摩耗調整剤を適量配合し、得られる燃料の潤滑性を向上させることができる。主な摩耗調整剤としては、例えば、高級アルコール;ヒドロキシル基を1〜4個有する炭素数1〜30のアルコール化合物;高級カルボン酸;高級モノカルボン酸と、グリコール又は3価アルコールとの反応物であるヒドロキシル基含有エステル;高級ポリカルボン酸と多価アルコールとのエステル;>NR(Rは炭素原子数5〜40の炭化水素基である)を含む組成を示し、1以上の置換基を有する少なくとも1個の窒素化合物とを組み合わせた多価アルコールのエステル;高級カルボン酸とアルコールアミンとのアミド化合物等が挙げられる。これらは、単独又は混合物として用いることができる。
これらのうちでは、炭素数10〜25の高級モノカルボン酸と、グリコール又は3価アルコールとの反応物であるヒドロキシル基含有エステル及び/又は炭素数5〜25の高級カルボン酸とアルコールアミンとのアミド化合物が好ましく、炭素数10〜25の高級モノカルボン酸とグリセリンエステル及び/又は炭素数5〜25の高級モノカルボン酸とジエタノールアミンとのアミド化合物が最も好ましい。
摩耗調整剤の添加量は特に制限はないが、十分な燃費及び出力改善効果を発揮させ、一方、それ以上添加しても効果の向上が期待できない等の点から本発明の燃料1リットルあたり通常10〜300mg、好ましくは30〜250mgの含有割合となるように添加することが好ましい。
なお、摩耗調整剤と称して市販されている商品は、耐摩耗性に寄与する有効成分が適当な溶剤で希釈されていることがあるため、こうした市販品を本発明の燃料に添加する場合にあたっては、上記の添加量は、有効成分としての添加量を意味している。
(その他の添加剤)
本発明の燃料は、必要に応じて摩耗調整剤等以外の他の燃料油添加剤を含有していても良い。他の燃料油添加剤としては、例えば、コハク酸イミド、ポリアルキルアミン、ポリエーテルアミン等の清浄分散剤、N,N’−ジイソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジイソブチル−p−フェニレンジアミン、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、ヒンダードフェノール類等の酸化防止剤;N,N’−ジサリチリデン−1,2−ジアミノプロパン等のアミンカルボニル縮合化合物等の金属不活性化剤、有機リン系化合物等の表面着火防止剤、多価アルコール及びそのエーテル等の氷結防止剤、有機酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、高級アルコール硫酸エステル等の助燃剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤等の帯電防止剤、アゾ染料等の着色剤、有機カルボン酸及びそれらの誘導体類、アルケニルコハク酸エステル等の防錆剤、ソルビタンエステル類等の水抜き剤、キニザリン、クマリン等の識別剤等の着臭剤等が挙げられる。これらの添加剤は、単独若しくは混合物として添加することができ、これら添加剤全量が、燃料全量基準で0.1質量%以下となるような割合で添加することが好ましい。なお、ここでいう添加剤全量とは、添加剤の有効成分としての添加量を意味している。
以下に、実施例及び比較例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
(実施例1〜4および比較例1〜2)
表1に示す組成に従って本発明の燃料(実施例1〜4)及び比較用の燃料(比較例1〜2)を常法により調製した。得られた各燃料の炭化水素化合物の含有割合、並びに蒸留性状、密度、硫黄分の測定結果を表2に示す。
また、得られた各燃料を下記の予混合圧縮自己着火式エンジンを用いて、以下の試験を行い燃料の評価を実施した。結果を表3に示す。
(エンジン諸元)
エンジン種類:直列6気筒予混合圧縮自己着火式エンジン
排気量:2000cc
圧縮比:14
燃料噴射圧力:8MPa
(エンジン試験)
<ケース1>・・・予混合圧縮自己着火方式のときの運転性能比較
下記の手順でエンジンを運転して回転−出力曲線図(マップ)を作成し、運転可能最大回転数、最大トルク、窒素酸化物量、エンジン始動時間を求めた。
(1)動力計(明電舎社製DC95:220kWの直流動力計)を回転−吸気圧制御にし、所定の回転数でエンジンをモータリング駆動する。
(2)燃料を噴射し、徐々に噴射量を増量する。
(3)自己着火燃焼を始めたら、燃料噴射量に対応する出力、燃料消費量、排出ガス、ノッキングレベルを計測する。
(4)運転できなくなるまで燃料噴射量を増量し、(3)の作業を継続する。
(5)回転数を変化させて(2)〜(4)を繰り返す。
窒素酸化物排出量は、エンジン回転数1000rpm時の各最大トルク時にエンジン排気管より燃焼排出ガスをサンプリングし、排出ガス分析計(堀場製作所社製MEXA9100)にて計測を行った。
(エンジン始動時間)
エンジンを−15℃の状態で48時間放置することで十分に冷却させた後、スタータを始動させてから第1気筒が初爆(スタータを始動した後、初めて気筒内の予混合気が着火すること)するまでに要する時間を計測した。この時間が長いほどエンジンの始動性が悪いことを表す。
表3の結果から、本発明の燃料(実施例1〜4)を用いた場合には、比較例1〜2の燃料に比べて、最大トルク、最大回転数を大きく取れることがわかる。また、窒素酸化物排出量を少なく、エンジン始動時間も短くすることができることがわかる。
<ケース2>・・・火花点火方式のときの運転性能比較
3000rpm、4000rpmおよび5000rpmの各エンジン回転数において、スロットル全開(WOT)出力性能試験を行い、各回転数での最大出力を比較した(単位は馬力)。
さらに走行負荷を動力計に掛け、エンジン回転数3000rpmから5000rpmまでの加速試験を行い、3000rpmから5000rpmに到達するまでの時間を計測した。
表3の結果から、本発明の燃料(実施例1〜4)を用いた場合は比較例1〜2の燃料に比べて最大出力、加速時間ともに同等以上の性能を有していることがわかる。
Figure 2006077180
Figure 2006077180
Figure 2006077180

Claims (2)

  1. リサーチ法オクタン価が93を超え97以下であり、パラフィン分が75容量%以上で、アロマ分、ナフテン分およびオレフィン分がそれぞれ15容量%以下であり、ノルマルペンタン、ノルマルヘキサンおよびノルマルヘプタンの合計量が3容量%以上であり、イソオクタン(異性体はまとめて1種類とカウントする)を10容量%以上含有し、少なくとも4種類以上の炭化水素(異性体はまとめて1種類とカウントする)から構成され、燃料全量に対し2容量%以上含有する炭化水素が3種類以上存在し(異性体はまとめて1種類とカウントする)、かつ下記炭化水素式(1)で示される要件を具備することを特徴とする予混合圧縮自己着火方式・火花点火方式併用エンジン用燃料。
    (1) −66≦−0.66×ノルマルパラフィン分(容量%)−0.18×イソパラ
    フィン分(容量%)+0.16×オレフィン分(容量%)+0.25×ナフテ
    ン分(容量%)+0.49×アロマ分(容量%)≦−15
  2. 15℃における密度が0.65g/cm以上0.75g/cm以下、初留点が25℃以上50℃以下、50容量%留出温度が70℃以上110℃以下、90容量%留出温度が100℃以上140℃以下、リード蒸気圧が40kPa以上68kPa以下であることを特徴とする請求項1記載の予混合圧縮自己着火方式・火花点火方式併用エンジン用燃料。
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