JP2006063951A - 流体噴射ノズル - Google Patents

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Abstract

【課題】 固体毎で、流量特性のバラつきの発生を極力抑えることのできる流体噴射ノズルを提供することを目的とする。
【解決手段】 流体噴射ノズル(1)は、ノズルボディ(2)と、ニードル(3)とを備え、ニードル(3)がノズルボディ(2)内を昇降することにより噴孔面積が変化する。ノズルボディ(2)は、軸方向と平行な摺動シール面(10)、この摺動シール面(10)の上流側に軸方向との角度を有するように形成されると共に第一噴孔(6)が開口した第一シート面(8)と、摺動シール面(10)の下流側に軸方向との角度を有するように形成されると共に第二噴孔(7)が開口した第二シート面(11)とを有する。ニードル(3)は、少なくとも第一シート面(8)に着座して第一噴孔(6)を閉塞する第一シート部(3a)と、摺動シール面(10)の軸方向高さよりも低くなるように第一シート部(3a)の下流側に形成され摺動シール面(10)に摺接する摺動シール部(3c)とを有する。
【選択図】 図6

Description

本発明は、車両に搭載する内燃機関の燃料等の流体を噴射する流体噴射ノズル、特に、ノズルボディと当該ノズルボディの内部に収容されて昇降するニードルとを備え、当該ニードルの昇降量に応じて流体を噴射する噴孔面積が変化する流体噴射ノズルの改良に関する。
従来から、車両に搭載するエンジンには燃料噴射ノズルが装備されているが、例えば、直接噴射式エンジンにおいて、燃料噴射ノズルから噴射される燃料噴霧の形状及び噴射量の最適な状態は、エンジンの運転状態によって異なり、また、噴射初期と後期とでも異なるものである。エンジンの燃料噴射におけるこのような要請に応えるものとして、例えば、特許文献1に開示されたものがある。
図1乃至図3は、特許文献1に記載された燃料噴射ノズル51の先端部の拡大断面図である。燃料噴射ノズル51は、ノズルボディ52とニードル53とで構成されており、ノズルボディ52内でニードル53が昇降することにより、第一噴孔56、第二噴孔57が開閉するようになっている。図1は第一噴孔56と第二噴孔57のいずれもが閉じた状態、図2は第一噴孔56が開き、第二噴孔57は未だ閉じた状態、図3は第一噴孔56と第二噴孔57のいずれもが開いた状態を示している。
このような動作をする燃料噴射ノズル51のノズルボディ52には、軸方向に穿設されたガイド孔54と、このガイド孔54の下端部に内径が次第に小さくなる円錐状のシート面58が設けられ、更にシート面58の下流側に円筒内周面を有するサック室59が凹設されている。このような形状のノズルボディ52に穿設される噴孔は、第一噴孔56がシート面58に開口するように穿設され、第二噴孔57がサック室59の内周面に開口するように穿設されている。
一方、ニードル53は、その先端部にノズルボディ52に形成したシート面58に着座して第一噴孔56を閉じるシート部53aが設けられると共に、このシート部53aより先端側に第二噴孔57を開閉する摺動軸部62が設けられている。また、ニードル53には、燃料通路61からサック室59内へ燃料を供給するバイパス通路が、図に示すように設けられた円周溝部63、縦孔64、横孔65によって形成されている。
以上のような構成の燃料噴射ノズル51は、図1に示した第一噴孔56、第二噴孔57のいずれも閉じた状態からニードル53を徐々に上昇させると、図2に示すように第一噴孔56のみが開いた状態、図3に示すように第一噴孔56、第二噴孔57のいずれもが開いた状態となる。
ここで、ニードル53が上昇し、ニードル53のシート部53aがシート面58から離隔することによって第一噴孔56が開く。これは、ニードル53の移動方向に対してシート面58が角度を有する円錐状をなしているからであり、ニードル53が上昇してニードル53のシート部53aがシート面58から離隔すると、シート面58に位置する第一噴孔56の開口は、即座に全面に亘って開放される。
一方、第二噴孔57は、ニードル53の上昇に伴って、サック室59の内周面に位置する第二噴孔57の開口が徐々に開放される。すなわち、ニードル53の摺動軸部62の先端部62aがニードル53の上昇に伴って第二噴孔57の開口の下縁まで来ると第二の噴孔57は徐々に開き始め、第二噴孔57の開口の上縁まで移動すると第二噴孔57は完全に開く。
特開2004−11526号公報
しかしながら、特許文献1に記載されたような燃料噴射ノズル51は、以下のような問題点を有していた。
図4は、燃料噴射ノズル51の先端部をさらに拡大した断面図であるが、ノズルボディ52の内側に位置する第一噴孔56の開口、第二噴孔57の開口にはそれぞれR部56a、57aが形成されている。このようなR部56a、57aが形成されるのは以下の理由による。
燃料噴射ノズル51の製造工程において、第一噴孔56、第二噴孔57は、ノズルボディ52の内外に通じるように穿設した後、固体毎、すなわち燃料噴射ノズル51毎の最大流量(最大噴射量)のバラつきを無くすべく、流体研磨加工が行われる。この流体研磨加工は、予め穿設した噴孔に砥粒を混入した流体を流通させて行うが、この流体が噴孔の開口を通過するときに、開口の角部を切削してR部56a、57aが形成される。
このような流体研磨加工を行うことにより、燃料噴射ノズル51毎の最大流量は最小限のバラつきの範囲内とすることができる。ところが、第一噴孔56のR部56a、第二噴孔57のR部57aの大きさ、形状は、燃料噴射ノズル51毎に異なっている。
図5は、燃料噴射ノズル51の流量特性、すなわちニードルリフト量と流量との関係を示したグラフである。グラフ中、a点は、ニードル53が上昇を開始し、第一噴孔56が開く時点を示している。ここで、第一噴孔56は、前記のように、ニードル53が上昇してニードル53のシート部53aがシート面58から離隔すると、シート面58に位置する第一噴孔56の開口は、即座に全面に亘って開放される。従って、流量がR部56aの大きさ、形状の影響を受けにくく、この時点における流量特性に大きなバラつきは見られない。その後、ニードル53が上昇し、シート部53aとシート面58との距離が開くにつれて、第一噴孔56から噴出する流量は増加し、b点まで到達する。b点まで到達すると、流量はシート部53aとシート面58との距離の影響をあまり受けることがなくなり、b点〜c点間では、流量の増加は緩やかになる。このとき、b点も、a点の場合と同様にR部56aの大きさ、形状の影響を受けにくく、この時点における流量特性に大きなバラつきは見られない。
ニードル53が更に上昇し、c点(c1点、c2点、c3点)まで到達すると、第二噴孔57の開口が開き始め、流量が増加し始める。ここで、第二噴孔57の開口が開くのは、ニードル53の摺動軸部62の先端部62aが第二噴孔57の開口の下縁から徐々に上昇することによる。従って、第二噴孔57の開口が開き始めた当初は、サック室9内の燃料はR部57aに沿って第二噴孔57内に流出し、噴射されることになる。このため、燃料噴射ノズル51の流量特性はR部57aの大きさ、形状の影響を受け易く、図5に示すように、切替え位置がc1点であったり、c2点であったり、また、c3点であったりすることがある。
その後、ニードル53がさらに上昇し、第二噴孔57の開口の開放部分が広くなるのに伴って流量は増加し続け、最大流量にまで到達する。このとき、前記の流体研磨加工を行っていることから、最大流量自体は、ほぼバラつきが生じることはないが、最大流量に到達するまでのニードル53のリフト量がd1であったり、d2であったり、d3であったりして燃料噴射ノズル51毎に流量特性が異なることがある。
以上、説明したように特許文献1に記載された構成の燃料噴射ノズル51は、実際に製品とした際に、流体研磨加工による固体毎、燃料噴射ノズル51毎の最大流量の一致を図った場合、燃料の流量特性にバラつきが生じることがある。
このような流量特性のバラつきは、緻密な燃料噴射制御を行おうとする際に問題となる。
そこで、本発明は、固体毎で、最大流量のみならず、流量特性のバラつきの発生を極力抑えることのできる流体噴射ノズルを提供することを目的とする。なお、本発明の流体噴射ノズルは、種々の流体の噴射に用いることができるが、主として、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンといった内燃機関の燃料のシリンダ内への噴射に用いる燃料噴射ノズルである。
かかる目的を達成するための本発明の第一の流体噴射ノズルは、軸方向の異なる位置に開口する複数の噴孔が穿設されたノズルボディと、当該ノズルボディの内部に収容されて昇降するニードルとを備え、当該ニードルが昇降することにより流体を噴射する噴孔面積が変化する流体噴射ノズルであって、前記ノズルボディは、軸方向と平行な摺動シール面と、当該摺動シール面の上流側に軸方向との角度を有するように形成されると共に第一噴孔が開口した第一シート面と、前記摺動シール面の下流側に軸方向との角度を有するように形成されると共に第二噴孔が開口した第二シート面とを有し、前記ニードルは、少なくとも前記第一シート面に着座して前記第一噴孔を閉塞する第一シート部と、前記摺動シール面の軸方向高さよりも低くなるように前記第一シート部の下流側に形成され前記摺動シール面に摺接する摺動シール部と、を有することを特徴とする。
また、本発明の第二の流体噴射ノズルは、軸方向の異なる位置に開口する複数の噴孔が穿設されたノズルボディと、当該ノズルボディの内部に収容されて昇降するニードルとを備え、当該ニードルが昇降することにより流体を噴射する噴孔面積が変化する流体噴射ノズルであって、前記ノズルボディは、軸方向と平行な摺動シール面と、当該摺動シール面の上流側に軸方向との角度を有するように形成されると共に第一噴孔が開口した第一シート面とを有し、前記摺動シール面に凹部が形成されると共に当該凹部に第二噴孔が開口され、前記ニードルは、少なくとも前記第一シート面に着座して前記第一噴孔を閉塞する第一シート部と、当該第一シート部の下流側に形成され前記摺動シール面に摺接する摺動シール部と、を有することを特徴としている。
さらに、このような本発明の第二の流体噴射ノズルにおいて、前記ニードルが前記摺動シール部の内部を通って前記ニードルの下流側先端部に通路出口が開口するバイパス通路を備えた構成とすることができ、又は、前記ニードルが前記摺動シール面の軸方向高さよりも低くなるように前記第一シート部の下流側に形成され前記摺動シール面に摺接する摺動シール部を有する構成とすることもできる。このような本発明の第二の流体噴射ノズルでは、前記凹部が、前記ノズルボディの内部に嵌め込まれる嵌込部材に形成された構成とすることができ、さらに、このような嵌込部材は複数の部材から構成できる。すなわち、いくつかの部材に分割した構成とすることができる。
以上のような本発明の第一の流体噴射ノズル及び第二の流体噴射ノズルでは、前記第一シート面及び前記第一シート部の形状を円錐形状とした構成とすることができる。
本発明によれば、ノズルボディが有する軸方向と平行な摺動シール面の下流側に軸方向との角度を有するように形成される第二シート面に第二噴孔を開口させる構成、又は、ノズルボディが有する軸方向と平行な摺動シール面に凹部を形成し、当該凹部に第二噴孔を開口させる構成としたので、固体毎の最大流量のバラつきのみならず、流体噴射時の流量特性のバラつきをも低減することのできる流体噴射ノズルとすることができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面と共に詳細に説明する。
図6乃至図8は、それぞれ本実施例の流体噴射ノズル1の先端部の拡大断面図である。流体噴射ノズル1は、ノズルボディ2とニードル3とで構成されており、ノズルボディ2内でニードル3が昇降することにより、軸方向の異なる位置に開口するようにノズルボディ2に穿設された第一噴孔6、第二噴孔7が開閉するようになっている。図6は第一噴孔6と第二噴孔7のいずれもが閉じた状態、図7は第一噴孔6が開き、第二噴孔7も開いているが、未だ第二噴孔7からは流体が噴射されない状態、図8は第一噴孔6と第二噴孔7のいずれもが開き、双方の噴孔から流体が噴射される状態を示している。
このような動作をする流体噴射ノズル1のノズルボディ2には、サック室9が凹設され、このサック室9の円筒内周壁であり軸方向と平行な摺動シール面10と、この摺動シール面10の上流側に軸方向との角度を有するように形成される第一シート面8と、摺動シール面10の下流側に軸方向との角度を有するように形成される第二シート面11とを備えている。
より具体的には、ノズルボディ2は、ニードル3の案内の役割を果たすと共に燃料通路を形成する図示しないガイド孔が軸方向に穿設され、このガイド孔の下端部に内径が次第に小さくなる円錐状の第一シート面8が設けられ、更に第一シート面8の下流側にサック室9が凹設されている。このサック室9には、円筒内周面をなす軸方向と平行な摺動シール面10と、この摺動シール面10の下流側に第一シート面8と同様に内径が次第に小さくなる円錐状の第二シート面11が形成されている。
さらに、ノズルボディ2には、第一シート面8に開口する第一噴孔6と、第二シート面11に開口する第二噴孔7が穿設されている。これらの第一噴孔6、第二噴孔7の開口には、最大流量を統一するための流体研磨加工が施されており、その結果、開口にR部6a、7aが形成されている。
一方、ニードル3は、自身の上部がノズルボディ2に穿設したガイド孔に摺動自在に嵌合するものであり、図6に示すように、第一シート面8に着座して第一噴孔6を閉塞する第一シート部3a、第二シート面11に着座して第二噴孔7を閉塞する第二シート部3bが形成されている。さらに、図6、図7に示すように第二噴孔7から流体が噴射されない状態のときにノズルボディ2の摺動シール面10に摺接する摺動シール部3cが形成されている。ここで、この摺動シール部3cは、その高さが摺動シール面10の軸方向高さよりも低くなるように形成されており、この摺動シール部3cの下流側には、縮径部3dが形成されている。すなわち、摺動シール部3cは、図6に示すようにニードル3が最下流にまで下降しているときであっても、摺動シール面10の全面に亘って接触しているのではない。図9は、図6におけるA−A線断面図であるが、縮径部3dと摺動シール面10とは、縮径部3dの隅部3d1が摺動シール面10(ノズルボディ2)に接触し、他の部分には両者間に隙間12が形成されている。
以下、このように構成される流体噴射ノズル1の動作につき、各部の特徴と共に説明する。
〔第一噴孔6と第二噴孔7のいずれもが閉じた状態〕
図6に示すようにニードル3が完全に下降している場合は、第一シート部3aが第一シート面8に着座しており、第一噴孔6は閉塞されている。また、摺動シール部3cは、摺動シール面10と当接しており、第二噴孔7側へ流体が流入しないように該部を閉塞している。また、ニードル3の第二シート部3bも第二シート面11に着座している。ここで、第二シート部3bは、第二シート面11に着座することによって第二噴孔7を完全に閉塞する必要はない。これは、第二噴孔7から流体が噴射されないようにするためのシールは、第一シート部3aが第一シール面8に着座していること、摺動シール部3cが摺動シール面10に当接していることによって実現されているからである。但し、例えば、流体噴射ノズル1の外部の気圧が低下する等すると、サック室9内に残留している流体が第二噴孔7を通じて外部へ吸い出されること等も考えられるので、第二噴孔7はこのようなことを回避できる程度に閉塞されていることが望ましい。
〔第一噴孔6が開き、第二噴孔7も開いているが、未だ第二噴射孔からは流体が噴射されない状態〕
次に、図7に示すように、図6に示す状態からニードル3がわずかに上昇した状態について説明する。図7に示すようにニードル3が上昇すると、第一シート面8に着座していた第一シート部3aが第一シート面8から離れ、第一シート面8に位置する第一噴孔6の開口は、即座に全面に亘って開放される。このため、第一噴孔6における流量特性が、ノズルボディ2の内側に位置する第一噴孔6の開口に形成されたR部6aの大きさ、形状の影響を受けることがない。
一方、第二シート部11に着座していた第二シート部3bも第二シート面11から離れ、この時点で、第二噴孔7の開口も、全面に亘って開放される。但し、この時点で、摺動シール部3cが摺動シール面10へ当接した状態は解消されていないので、流体は、第二噴孔7側へ流入しておらず、従って、第二噴孔7からは流体は噴射されない。
〔第一噴孔6と第二噴孔7のいずれもが開き、双方の噴孔から流体が噴射される状態〕
次に、図8に示すように、図7に示す状態からさらにニードル3が上昇した状態について説明する。図8に示すようにニードル3が上昇すると、摺動シール部3cが摺動シール面10から外れ、流体が隙間12を通じて第二噴孔7側に流入できるようになる。第二噴孔7側に流入した流体は、第二噴孔7を通じて外部へ噴出される。このとき、第二噴孔7の開口は、図7に示した状態のときに既に全面に亘って開放されており、第二噴孔7側へ流入して行く流体は、このように全面に亘って開放されている開口から第二噴孔7内へ流入し、外部へ噴射されることとなる。このため、第二噴孔7の開口に形成されたR部7aの大きさ、形状の相違による流量特性のバラつきが生じにくい。すなわち、R部7aが形成された開口が徐々に開放され、徐々に開放されるその開口に流体が徐々に流入すると流体特性はR部7aの大きさ、形状の影響を受け易いが、本実施例のR部7aでは、そのような影響は少ない。
なお、摺動シール部3cが摺動シール部10から外れたときであっても、縮径部3dの隅部3d1は摺動シール面10に摺接しているので安定した状態でニードル3を昇降させることができる。すなわち、縮径部3dの断面形状は、摺動シール部3cが摺動シール面10から外れたときに流体を流通させる隙間12が形成される形状であればどのような形状であってもよいが(例えば、円柱状)、隅部3d1のように摺動シール面10に摺接でできる部分が形成されていることが望ましい。
次に、本発明の実施例2の流体噴射ノズル21について図10乃至図12に基づいて説明する。図10乃至図12は、それぞれ実施例2の流体噴射ノズル21の先端部の拡大断面図である。流体噴射ノズル21は、ノズルボディ22とニードル23とで構成されており、ノズルボディ22内でニードル23が昇降することにより、軸方向の異なる位置に開口するようにノズルボディ22に穿設された第一噴孔26、第二噴孔27が開閉するようになっている。図10は第一噴孔26と第二噴孔27のいずれもが閉じた状態、図11は第一噴孔26が開き、第二噴孔27が閉じた状態、図12は第一噴孔26と第二噴孔27のいずれもが開き、双方の噴孔から流体が噴射される状態を示している。
このような動作をする流体噴射ノズル21のノズルボディ22には、サック室29が凹設され、このサック室29の円筒内周壁であり軸方向と平行な摺動シール面30と、この摺動シール面30の上流側に軸方向との角度を有するように形成される第一シート面28とを有している。また、摺動シール面30には、凹部30aが形成されている。
より具体的には、ノズルボディ22は、ニードル23の案内の役割を果たすと共に燃料通路を形成する図示しないガイド孔が軸方向に穿設され、このガイド孔の下端部に内径が次第に小さくなる円錐状の第一シート面28が設けられ、更に第一シート面28の下流側にサック室29が凹設されている。このサック室29は、円筒内周面をなす軸方向と平行な摺動シール面30を有しており、この摺動シール面30に図に示すような凹部30aが形成されている。
さらに、ノズルボディ22には、第一シート面28に開口する第一噴孔26と、凹部30aに開口する第二噴孔27が穿設されている。これらの第一噴孔26、第二噴孔27の開口には、最大流量を統一するための流体研磨加工が施されており、その結果、開口にR部26a、27aが形成されている。
ここで、製造工程において、第二噴孔27に対する流体研磨加工は、凹部30aを形成した後に行うが、砥粒を含んだ流体は、流速が速くなるところにより効果的に作用するので、凹部30aのエッジ部30a1ではなく、第二噴孔27の開口にR部27aが形成される。また、凹部30a自体は、機械加工により形成するので、機械加工における誤差は生じるものの、流体研磨加工と比較するとほぼ目標とする形状のエッジ部30a1を形成することができる。
一方、ニードル23は、自身の上部がノズルボディ22に穿設したガイド孔に摺動自在に嵌合するものであり、図10に示すように、第一シート面28に着座して第一噴孔26を閉塞する第一シート部23aが形成されている。さらに、図10、図11に示すように第二噴孔27から流体が噴射されない状態のときにノズルボディ22の摺動シール面30に摺接する摺動シール部23cが形成されている。ここで、この摺動シール部23cは、図11に示すように第一噴孔26のみが開いた状態のときに、凹部30aを閉塞することができる程度の高さとなっている。
さらに、ニードル23は、摺動シール部23cの内部を通ってニードル23の下流側先端部23dに通路出口31cが開口するバイパス路31を備えている。このバイパス路31は、第一シート部23aの下側に形成された横孔31aとこの横孔31aと連通する縦孔31bとからなる。このようなバイパス路31は、図10に示すように第一噴孔27を閉じた状態で横孔31aが摺動シール面30に閉塞され、ニードル23が上昇し、図11に示すように第一噴孔26が開くと、時期をほぼ同じくして横孔31aが上流側の流体通路と連通するように形成されている。
以下、このように構成される流体噴射ノズル21の動作につき、各部の特徴と共に説明する。
〔第一噴孔26と第二噴孔27のいずれもが閉じた状態〕
図10に示すようにニードル23が完全に下降している場合は、第一シート部23aが第一シート面28に着座しており、第一噴孔26は閉塞されている。また、横孔31aは摺動シール面30によって閉塞されている。このため、サック室29内へ新たに流体が流入することはない。さらに、凹部30aは、摺動シール部23cによって閉塞されている。これにより、例えば、流体噴出ノズル21の外部の気圧が低下する等しても、サック室29内に残留している流体が第二噴孔27から吸い出されることはない。但し、摺動シール部23cによる凹部30a、すなわち、第二噴孔27の閉塞は、実施例1における第二シート面11と第二シート部3bとの関係とは異なり、確実に流体の流出を防止できるものとしている。これは、実施例2の流体噴射ノズル21では、摺動シール部23cによる凹部30aの開閉状態が、即、流量特性に影響を及ぼすものであり、わずかな漏れも防止すべきだからである。
〔第一噴孔26が開き、第二噴孔27が閉じた状態〕
次に、図11に示すように、図10に示す状態からニードル23がわずかに上昇した状態について説明する。図11に示すようにニードル23が上昇すると、第一シート面28に着座していた第一シート部23aが第一シート面28から離れ、第一シート面28に位置する第一噴孔26の開口は、即座に全面に亘って開放される。このため、第一噴孔26における流量特性が、ノズルボディ22の内側に位置する第一噴孔26の開口に形成されたR部26aの大きさ、形状の影響を受けることがない。
一方、第二噴孔27が開口する凹部30aは、未だ摺動シール部23cによって閉塞されているため、第二噴孔27からは流体が噴射されることはない。但し、図10に示す状態で摺動シール面30によって閉塞されていたバイパス路31の横孔31aは、ニードル23が上昇したことにより開放され、横孔31a内に上流側の流体が流入する。横孔31aに流入した流体は、横孔31aと連通する縦孔31bを通じ、通路出口31cからサック室29内に流入し、サック室29内に充満する。
〔第一噴孔26と第二噴孔27のいずれもが開き、双方の噴孔から流体が噴射される状態〕
次に、図12に示すように、図11に示す状態からさらにニードル3が上昇した状態について説明する。図11に示すようにニードル3が上昇し、摺動シール部23cの下端部23c1が凹部30aの下端に位置するエッジ部30a1よりも上側に移動すると、図11に示す状態でサック室29内に充満していた流体が先ず凹部30a内に流入する。このとき、流体は、摺動シール23cの下端部23c1と凹部30aの下端に位置するエッジ部30a1との間を流れることとなるが、エッジ部30a1は機械加工されたものであり、個体間(流体噴射ノズル21間)のバラつきが少なく、従って、個体間の流量特性のバラつきも少ない。
凹部30内に流入した流体は、第二噴孔27内へ流入し、外部へ噴射される。このとき、第二噴孔27の開口にはR部27aが形成されているが、第二噴孔27内に流入する流体は、上昇するニードル23の摺動シール部23cの下端部23cとR部27aとの間を流通するものではなく、一旦、凹部30a内を通過、又は、凹部30a内に貯留されたものであるから、流体特性はR部27aの大きさ、形状の影響を受けにくい。
実施例2の流体噴射ノズル21は、前記のように、摺動シール部23cの内部を通ってニードル23の下流側先端部23dに通路出口31cが開口するバイパス路31を備えた構成となっている。本発明の流体噴射ノズルは、このような構成に代えて実施例1に用いたニードル3の形状を応用した構成とすることもできる。すなわち、摺動シール面30の軸方向高さよりも低くなるように第一シート部28の下流側に形成され、摺動シール面30に摺接する摺動シール部23cを有する構成とすることもできる。このような構成とする場合、摺動シール部23cを凹部30の上側に位置させて、ニードル23を上昇させることにより、サック室29側へ流入する流体を一旦凹部30aを通過させ、又は、凹部30aに貯留させた後に第二噴孔27へ流入させ、外部へ噴射させることができる。これにより、R部27aに大きさ、形状の影響を少なくし、個体間での流量特性のバラつきを少なくすることができる。
次に本発明の実施例3について説明する。図13は、実施例3の流体噴射ノズル40の先端部を拡大した一部拡大断面図である。実施例3の流体噴射ノズル40が実施例2の流体噴射ノズル21と異なる点は、実施例2の流体噴射ノズル21のノズルボディ22は、一の材料から各部の形状を機械加工により各部の形状を所望の形状に仕上げているのに対し、実施例3の流体噴射ノズル40では、嵌込部材35を準備し、この嵌込部材35に凹部35aを形成し、これをノズルボディ41に嵌め込んでいる点である。
このように、嵌込部材35に凹部35aを形成し、これをノズルボディ41に嵌め込むようにしたのは、凹部35aを加工する際の作業性を考慮したものである。凹部はノズルボディの先端に形成されるものであり、さらに、ノズルボディの長さに対して凹部の径は非常に小さいものである。このような状況であるにも拘らず、例えば、実施例2の流体噴射ノズル21では、ノズルボディ22の基端側(図示しないガイド孔側)からノズルボディ22の先端側内側に凹部30aを形成しなければならない。このような作業は、困難を伴うものである。
そこで、本実施例では、凹部35aを形成する部分をノズルボディ41とは別体の嵌込部材35とし、この嵌込部材35に凹部35aを形成した後、ノズルボディ41に嵌め込むようにした。本実施例では、このようなノズルボディ41とは別体の嵌込部材35をさらに、3つの部分に分解した状態のものにそれぞれ凹部35aを形成する加工を施し、図14に示すようにこれらを組み合わせてノズルボディ41内に嵌め込むようにしている。凹部35a以外の形状、例えば、第一噴孔、第二噴孔、第一シート面については、ノズルボディ41に嵌め込んだ後に加工することができる。
ここで、凹部の形状としては、どのような形状であっても良く、例えば、図15に示したように断面形状が矩形となるように成形してもよいし、図16に示した嵌込部材36に施した凹部36aのように断面形状が三角形状となるように成形してもよい。さらに、図17に示した嵌込部材37に施した凹部37aのように断面形状が半円形となるように成形してもよい。
なお、このような凹部の形状は、ノズルボディに直接加工を施した実施例2の流体噴射ノズル1における凹部30aにも適用することができる。
上記実施例は本発明を実施するための例にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではなく、これらの実施例を種々変形することは本発明の範囲内であり、更に本発明の範囲内において、他の様々な実施例が可能であることは上記記載から自明である。
例えば、前記実施例では、第一シート面8(28)及び第一シート部3a(23a)の形状を円錐形状としたが、軸方向との角度を有する第一シート面を形成し、その第一シート面に第一噴孔を開口させ、その開口をニードルに形成した第一シート部で閉塞する構成となっていれば、どのような形状であってもよい。すなわち、ニードルが上昇することによって即座に開口が全面に亘って開放されるような形状であればよい。これは、実施例1における第二シート面11と第二シート部3bについても同様である。
従来の燃料噴射ノズルの先端部の拡大断面図であり、第一噴孔と第二噴孔のいずれもが閉じた状態を示すものである。 同じく、従来の燃料噴射ノズルの先端部の拡大断面図であり、第一噴孔が開き、第二噴孔57は未だ閉じた状態を示すものである。 同じく、従来の燃料噴射ノズルの先端部の拡大断面図であり、第一噴孔と第二噴孔のいずれもが開いた状態を示すものである。 図1乃至図3に示した燃料噴射ノズルの先端部をさらに拡大した断面図である。 従来の燃料噴射ノズルにおけるニードルリフト量と流量との関係(流量特性)を表したグラフである。 実施例1の流体噴射ノズルの先端部の拡大断面図であり、第一噴孔と第二噴孔のいずれもが閉じた状態を示すものである。 同じく、実施例1の流体噴射ノズルの先端部の拡大断面図であり、第一噴孔が開き、第二噴孔も開いているが、未だ第二噴孔からは流体が噴射されない状態を示すものである。 同じく、実施例1の流体噴射ノズルの先端部の拡大断面図であり、第一噴孔と第二噴孔のいずれもが開き、双方の噴孔から流体が噴射される状態を示すものである。 図6における、A−A線断面図である。 実施例2の流体噴射ノズルの先端部の拡大断面図であり、第一噴孔と第二噴孔のいずれもが閉じた状態を示すものである。 同じく、実施例2の流体噴射ノズルの先端部の拡大断面図であり、第一噴孔が開き、第二噴孔が閉じた状態を示すものである。 同じく、実施例2の流体噴射ノズルの先端部の拡大断面図であり、第一噴孔と第二噴孔のいずれもが開き、双方の噴孔から流体が噴射される状態を示すものである。 実施例3の流体噴射ノズルの先端部の拡大断面図である。 分割された嵌込部材を組み合わせる様子を説明する説明図である。 実施例3の流体噴射ノズルに用いられる嵌込部材の一例を示す断面図である。 同じく、実施例3の流体噴射ノズルに用いられる嵌込部材の一例を示す断面図である。 同じく、実施例3の流体噴射ノズルに用いられる嵌込部材の一例を示す断面図である。
符号の説明
1、21、40、51 流体噴射ノズル
2、22、52 ノズルボディ
3、23、53 ニードル
3a、23a 第一シート部
3b 第二シート部
3c、23c 摺動シール部
6、26、56 第一噴孔
6a、26a R部
7、27、57 第二噴孔
7a、27a R部
8、28 第一シート面
9、29、59 サック室
10、30 摺動シール面
11 第二シール面
12 隙間
30a 凹部
30a1 エッジ部
31 バイパス路
35、36、37 嵌込部材
35a、36a、37a 凹部

Claims (7)

  1. 軸方向の異なる位置に開口する複数の噴孔が穿設されたノズルボディと、当該ノズルボディの内部に収容されて昇降するニードルとを備え、当該ニードルが昇降することにより流体を噴射する噴孔面積が変化する流体噴射ノズルであって、
    前記ノズルボディは、軸方向と平行な摺動シール面と、当該摺動シール面の上流側に軸方向との角度を有するように形成されると共に第一噴孔が開口した第一シート面と、前記摺動シール面の下流側に軸方向との角度を有するように形成されると共に第二噴孔が開口した第二シート面とを有し、
    前記ニードルは、少なくとも前記第一シート面に着座して前記第一噴孔を閉塞する第一シート部と、
    前記摺動シール面の軸方向高さよりも低くなるように前記第一シート部の下流側に形成され前記摺動シール面に摺接する摺動シール部と、
    を有することを特徴とした流体噴射ノズル。
  2. 軸方向の異なる位置に開口する複数の噴孔が穿設されたノズルボディと、当該ノズルボディの内部に収容されて昇降するニードルとを備え、当該ニードルが昇降することにより流体を噴射する噴孔面積が変化する流体噴射ノズルであって、
    前記ノズルボディは、軸方向と平行な摺動シール面と、当該摺動シール面の上流側に軸方向との角度を有するように形成されると共に第一噴孔が開口した第一シート面とを有し、前記摺動シール面に凹部が形成されると共に当該凹部に第二噴孔が開口され、
    前記ニードルは、少なくとも前記第一シート面に着座して前記第一噴孔を閉塞する第一シート部と、
    当該第一シート部の下流側に形成され前記摺動シール面に摺接する摺動シール部と、
    を有することを特徴とした流体噴射ノズル。
  3. 請求項2記載の流体噴射ノズルにおいて、前記ニードルは前記摺動シール部の内部を通って前記ニードルの下流側先端部に通路出口が開口するバイパス通路を備えたことを特徴とする流体噴射ノズル。
  4. 請求項2記載の流体噴射ノズルにおいて、前記ニードルは前記摺動シール面の軸方向高さよりも低くなるように前記第一シート部の下流側に形成され前記摺動シール面に摺接する摺動シール部を有することを特徴とした流体噴射ノズル。
  5. 請求項2乃至4のいずれか一項記載の流体噴射ノズルにおいて、前記凹部は、前記ノズルボディの内部に嵌め込まれる嵌込部材に形成されたことを特徴とする流体噴射ノズル。
  6. 請求項5記載の流体噴射ノズルにおいて、前記嵌込部材を複数の部材から構成したことを特徴とする流体噴射ノズル。
  7. 前記第一シート面及び前記第一シート部の形状を円錐形状としたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項記載の流体噴射ノズル。
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