JP2006060053A - 鉄心 - Google Patents
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Abstract
【課題】磁性材料とコイルと絶縁材料と固定用部材などで構成されるリアクトルにおいて,直流重畳特性に優れ,発音の少ないリアクトル用鉄心を低価格で供給可能とする。また従来HCT用鉄心は,方向性珪素鋼板を角型の巻鉄心に成形したもので供給されていたが,生産性の優れた打抜き鉄心方式で安価に供給することを可能とする。
【解決手段】台形形状の複数の方向性珪素鋼板またはPEパーマロイ製積み鉄心ブロック1を組み合わせることにより直流重畳特性の優れた,そしてこれを必要に応じ繋止部,固定足などを有する形の絶縁体2で包含し発音の少ない,またこれに巻線を施し2個組み合わせることにより組立性の良い安価なリアクトルを供給できるようにした。全部または一部が台形形状の方向性珪素鋼板の積み鉄心ブロックを組み合わせることにより,1次電流に対するギャップ部の磁束の高いかつ直線性のよいHCT用鉄心を安価に供給できるようにする。
【選択図】図2
【解決手段】台形形状の複数の方向性珪素鋼板またはPEパーマロイ製積み鉄心ブロック1を組み合わせることにより直流重畳特性の優れた,そしてこれを必要に応じ繋止部,固定足などを有する形の絶縁体2で包含し発音の少ない,またこれに巻線を施し2個組み合わせることにより組立性の良い安価なリアクトルを供給できるようにした。全部または一部が台形形状の方向性珪素鋼板の積み鉄心ブロックを組み合わせることにより,1次電流に対するギャップ部の磁束の高いかつ直線性のよいHCT用鉄心を安価に供給できるようにする。
【選択図】図2
Description
本発明は,省エネ化を図るエアコン,冷蔵庫,洗濯機などの家電製品全般のモータ用インバータや太陽光発電などの直流から交流に変換するインバータ,または自動車の昇圧用コンバータ,インバータ及びOA機器・産業用機器などに用いられるリアクトルあるいはチョークコイルに使われる鉄心に関するものである。またギャップ付き環状鉄心のギャップ部にホール素子を挿入し,この環状鉄心の内径部に貫通する一次導体に流れる電流をホール電圧として検出するホールCT(ホール素子を使った変流器,以後HCTと表記する)に使われる鉄心に関するものである。
現在日本では,温室効果ガスの排出量を大幅に低減する為に省エネ法を改正してこれに取り組んでいる。その中で自動車,家電,OA機器等にかかわる措置として,私たちの生活に身近な家電機器において,エネルギーの消費効率が現在商品化されている製品のうち最も優れている機器の性能以上にするというトップランナー方式の考え方が導入されている。こうした背景から,エアコン,冷蔵庫,洗濯機等を中心に,省エネ化,高付加価値化を実現する上でモータ・インバータの改善等が著しく進んできている。これに伴い,インバータに使われるリアクトルなどのコイル類も高性能化,小型化,低価格化が要求されている。また,太陽光発電も,太陽電池の技術進歩とともに広く採用され普及が進んできている。太陽電池は直流で発電される為に,これを使いやすい交流に変換する必要があり,この変換に効率の良いインバータが使われる。このインバータに用いられるリアクトルは,家電機器と同様に高性能化,小型化,低価格化が要求されている。また自動車用ではハイブリッドカーや燃料電池車の実用化が進んできており,その燃費改善にもモータの採用が大きく寄与しており,このモータの省エネ制御に昇圧コンバータが使われ,これに内蔵されるリアクトルも高性能化,小型化,低価格化が要求されている。
また,現在自動車の電子化の進歩も非常に著しく,搭載電子部品の増大,モータの搭載数量の増加などが進んできている。さらに最近は車のハイブリッド化,燃料電池車の実用化などと,電流の大容量化も進んできている。こうした中で,モータの制御能力のアップやバッテリーの残量測定などに変流器の搭載が増加している。自動車の場合は,当然ながら直流電流を扱うことが多いので,一般の交流用の変流器は使えず,直流電流を測定できるいわゆるホールCTを使用することが多い。また,太陽光発電や,小型ガスタービン発電技術が進歩し,これらの電流を検出したり制御したりすることが多くなってきている。これらに流れる電流は,直流であったり高周波であったりすることが多いので,従来の交流用の変流器は使えない。
従来,家電機器等に使われる比較的小型のリアクトルの鉄心材料には,重畳される電流の周波数が比較的大きい場合(10〜20KHz)は,鉄やセンダストや50%パーマロイあるいは最近は6.5%珪素鋼板などの金属粉末をプレスで固めたいわゆる圧粉磁心や,6.5%の薄板珪素鋼板の打抜き鉄心や鉄系アモルファスの薄板の巻鉄心にギャップを入れた鉄心が使用されている。重畳される電流の周波数が比較的低い場合は,無方向性珪素鋼板のEEやEI型のギャップ付き鉄心が使用されている。
圧粉磁心の場合は,金属粉末と無機系あるいは樹脂系の絶縁粉末を混合して一般的にはリング状の環状鉄心を形成する。粉末自体が絶縁されているので,ミクロのギャップが多数形成されていることになり,すぐに飽和することはないのでこのまま使われることが多い。しかし,圧粉磁心のインダクタンスの直流重畳特性を測定すると電流が上がるにつれてだらだらと下がってくる場合が多い。また,鉄心の大きさが比較的小さい場合は,プレスが自動で高速生産が可能となるのでかなり安く作れるが,大電流のエアコンなどに使われる場合は鉄心が大きくなるので大型プレスを必要としかつプレス時間も延び,製造歩留も低下するのでその価格はわりと高くなってくるという問題があった。また,コイルを巻く時には,比較的太い線を手作業で多数巻くので,海外で巻線する場合でもそのコストはけっこうかかるという問題があった。
6.5%の薄板珪素鋼板の打抜きの場合は,歩留を良くするために鉄心の必要長さの幅にスリットした材料を,鉄心の幅に切断して使うことが多い。一般に圧延方向と磁路の通る方向は90度の直角方向になっている。鉄心の飽和を防ぐ為に,一般的にこの切断した鉄心4本をそれぞれの間にギャップ材を挿入接着して磁路を構成している。6.5%の薄板珪素鋼板は,約3%珪素鋼板を0.1mmに圧延し,この後表面からシリコンをCVD法で蒸着拡散させて6.5%の珪素鋼板としている。こうした製法から,材料としては圧延方向に透磁率が高くなるという方向性が付与されない残留磁束密度の低いいわゆる無方向性の鉄心材料に仕上がっている。この製法から来る低残留磁束密度の特性と,またこれらを切断する時に圧延方向と磁路の方向が直角になっていることもあり,4本の鉄心にギャップを入れて組み立てた時,このインダクタンスの直流重畳特性は,圧粉磁心と同様に電流が上がるにつれてだらだらと下がってくる傾向を示す。また,0.1mmくらいまでの薄板に圧延加工するのと,CVDでシリコンを拡散させるのに時間がかかるのでその材料は方向性珪素鋼板に比べかなり高価格となっている。コイルの巻線は,空芯のボビン巻線になるので比較的安く作れるが,空芯コイルと鉄心の絶縁を強化する為の部材を必要とするし,その組立に他の製法に比べて工数を要する。また,鉄心4本の間にギャップ材を入れて接着する時に,接着が甘いと電磁振動により発音するという問題がある。これらの製造法を改良したものに,特許公開平11−204343があり,そのカタログも発行されている。ここでは,従来の製造法の問題点と,それらを解決するために特にギャップ部の構造について詳細に述べられている。しかしこの方法だと,本発明に比べてまだ使用部材の点数が多く,組み立てに多くの時間がかかるという欠点が残っている。
鉄系アモルファスの薄板の巻鉄心にギャップを入れた鉄心の場合,ギャップが通常一箇所のためにそのインダクタンスの直流重畳特性は,圧粉磁心,6.5%薄板珪素鋼板と同様にあまり良くない。またコイル巻きする場合には,圧粉磁心と同様に手巻になるのでかなりの工数になり割高になる。ギャップ接着が甘いと6.5%の薄板珪素鋼板と同様発音するという問題があった。直流重畳特性を改善する方法として,鉄心を2分割,4分割にする方法があるが,この方法だとギャップも2または4に増えるので,接着工数が増えるとともに接着不良による発音クレームの危険性が増加する。また,安全にギャップ数を増やす方法としては,4分割鉄心の発音クレームを低減した改善発明である特願2003−135989がある。しかしこの方法は一体となった環状鉄心であるので,前述したように巻数が多い場合コイル巻のコストを下げるのが困難である。
また従来のHCTには方向性珪素鋼板の巻鉄心が使われることが多い。形状は一般的に丸型と角型がある。貫通電線が丸の場合は丸型が使われ,板状のいわゆるバーと呼ばれる導体が使われる場合には角型が使われることが多い。方向性珪素鋼板がもっとも適している理由は,飽和磁束密度及び残留磁束密度が高いと言うことが上げられる。飽和磁束密度及び残留磁束密度が高いと,ギャップを入れた場合にその一次電流とギャップ部の磁束の関係が直線的になりより大電流まで使えることになる。無方向性の珪素鋼板などを使うと,元々の残留磁束密度が低いのでその分直線性が悪く,低い電流までしか使えないという問題があった。
方向性珪素鋼板の場合,その特性が圧延方向に優れているがゆえに従来は巻鉄心でしか使われていなかった。しかし,珪素鋼板の角型の巻鉄心を作るのはそう簡単ではない。巻鉄心を成形する場合,丸型の場合には比較的高速で巻き取ることが出来るが,角型の場合は角部があるため速度を落とさざるを得ない。また,鉄心を巻き取る内径側の巻芯も,鉄心からはずしてしまうと角型巻鉄心の寸法が変わってしまうため,巻芯ごと成形機から取り外す必要がある。丸型の場合は巻芯ごと取り外す必要はなく,鉄心のみを取り外せば良い。そのため角型の場合は,生産量を増やそうとしたらその数に比例して巻芯を作り足さなければならない。成形が終ったあとには,歪取りのための熱処理が必要である。この時も角型鉄心は,寸法を出す為に外径側から内径側に巻芯と共に鉄心をおさえる治具に入れて締めこんだ状態で熱処理することが多い。丸型の場合はこうした治具も作業も不要である。またギャップ加工するために,鉄心を接着剤で含浸硬化させる工程も必要である。したがって結果として,コストが高くなり大量生産も困難であるという問題があった。またプレスで製造する方法を先に発明した,特願2004−147416があるが,この方法は方向性珪素鋼板製の角型巻鉄心タイプよりもギャップ部の磁束が低下するという問題があったが,本発明ではほとんど同等の特性が得られている。
本発明は,主にエアコンなどの家電機器や太陽光発電などのインバータあるいは自動車用の昇圧コンバータに使われるリアクトルやチョークコイルの鉄心に関するものである。また重畳される電流の周波数は比較的大きい場合(10〜20KHz)のリアクトルに関するものである。上記したように,従来の方法だと,そのインダクタンスの直流重畳特性は皆比較的だらだらと下がってきており,決して満足いけるものではなかった。またそのコイル巻については,圧粉磁心やアモルファスの巻鉄心などの円形の環状鉄心の場合は,巻線が完全な手巻となるので工数がかかるので高コストになりやすかった。また要求される量が多いと,人員を大幅に増やす必要があり生産性に劣っていた。また接着工程が入る場合は,接着が甘いと電磁振動による発音という問題が発生しやすいという欠点があった。
また,HCTの場合は方向性珪素鋼板の角型巻鉄心が使われることが多かったが,この生産性が悪いという問題があった。
本発明は、上記したような問題点を解決するものである。
本発明のリアクトル用鉄心は,直流重畳特性を大幅に改善し,巻線を機械巻き可能な構造とすることにより低コストでこれを供給可能とし,発音クレームのないものを供給するものである。またHCT用鉄心の場合は,1次電流とギャップ部の磁束との関係が直線性であり,ギャップ部の磁束の大きさが角形巻鉄心製と同等であり,かつその生産性を著しく向上するものである。
本発明では,リアクトル用鉄心の鉄心特性と直流重畳特性の関係を考察し,これを見直した。この中でギャップを入れる前の直流B−H特性で,飽和磁束密度と残留磁束密度が非常に高いことが直流重畳特性を向上させることを見出した。この観点で鉄心材料を見直すと,方向性珪素鋼板と方向性の50%PEパーマロイしかないことが分った。飽和磁束密度と価格で比較すると方向性珪素鋼板のほうが優れているが,高周波で使用する場合にはより周波数特性の良いPEパーマロイを使えばよい。また高周波で使う場合,渦電流を小さくするために材料の板厚を薄くする必要があるが,方向性珪素鋼板で薄板材料を作るのは非常に難しくなるが,圧延性に優れるPEパーマロイは比較的に容易である。
本発明では,次に磁気回路を見直した。直流重畳特性は,磁気回路中の鉄心の長さとギャップ長さとその数で決まってくることが一般に知られている。エアコンに使われるリアクトルの電流と要求インダクタンスで一番数量の多い所は,20Aで500μH近辺である。一般にはこの一点で特性の取り決めを行うが,最近では30Aの時,20Aのインダクタンスの92%以上を要求される場合が出てきている。この要求を満足させる為には,鉄心は4本とし,ギャップ幅は約1mm前後の4箇所でよいことが分かった。これ以上に鉄心の数を増やしても良いがコストがアップする。また例えば2本に減らすと直流重畳特性を満足させるのが難しくなる。これを例えば,方向性珪素鋼板の巻鉄心の4分割鉄心で満足させることは可能であるが,4分割するとそのギャップ接着が必要となり発音クレームを皆無にするのが困難となる。
上記から,従来の6.5%薄板珪素鋼板と同様に長方形の鉄心を4本組み合わせたリアクトルを作りこの直流重畳特性を測定した。この時の鉄心は,鉄心の長手方向の透磁率を上げる為に鉄心の長手方向に圧延方向をそろえた。その結果,低電流領域でインダクタンスが小さくなることが分かった。そこで,磁気回路の見直しを再度行った。方向性珪素鋼板の透磁率は圧延方向には非常に高いが,その方向から外れると極端に低くなり,直角方向で最も低くなる。上記製品はこの組み合わせになっている。これを改善する為に,本発明では鉄心の形状を台形とした。台形の両端の三角形の部分をそれぞれ突き当てると,磁界の通りやすい方向にそろうことがわかる。こうした鉄心を作りその直流重畳特性を測定した結果,低電流領域でインダクタンスが低下することがなくなった。
次に,台形鉄心を二本絶縁体に直角に入れて必要なギャップを設けてこれを樹脂でポッティングして固めた。この鉄心の上に巻線を施し,これを2個組み合わせることにより環状鉄心とし,必要なリアクトルとした。絶縁体には,巻線を巻きやすくする為の巻鍔を設けた。こうすることにより,ボビン巻線機に取り付けて巻線することが可能になり,巻線の生産性が上がり巻線コストを下げることが可能になった。また2個の鉄心を組み合わせた時にお互いがずれず,外れないように繋止部を設けた。また,2個一組とした時に,基板や板金に固定しやすくする為の固定用部材を設けた。こうして絶縁体に入れて,樹脂で固定することにより電磁振動による発音の発生を抑えることが出来た。この場合,絶縁体に入れて樹脂でポッティングし固定したが,鉄心を金型に入れて樹脂を射出成形する,いわゆるインサート成形しても効果は同様である。インサート成形した方がコストを下げることが可能である。あるいは,自動車用などの場合に,2個一組で使う方式が嫌われる場合には,これを一体に仕上げて生産性は劣るが手巻すればよい。自動車用の場合,電流が大きくなるので平角線のフラットワイズの多層巻きにするとか,リッツ線巻きするとかすれば良い。
HCT用鉄心の場合はホール素子を入れる部分のギャップ部の鉄心は台形形状の一方の端面を平面とし,その他の鉄心は台形形状とした。こうした構成をとることにより,鉄心を従来の巻鉄心からプレス抜き積み鉄心方式に変更でき,その生産性を著しく向上することができた。巻鉄心からプレス抜き鉄心方式の変更は,すでに特願2004−147416に述べてあるが,直線性は改善されるがギャップ部の磁束が小さくなるという欠点を持っていた。特願2004−147416の場合,直線性を改善するために各鉄心ブロック間のギャップをある程度広げていたが,本発明では方向性珪素鋼板を用いたのでそのギャップをほぼ零にしても直線性が確保されかつギャップ部の磁束の低下が非常に少ないHCT用鉄心が得られた。
本発明では,従来積み鉄心タイプでは使われなかった方向性珪素鋼板の磁気回路形状を見直して,リアクトルの場合直流重畳特性を大幅に改善し,またその組立構造を改善し,発音クレームのないかつ巻線の生産性が良い低コストのリアクトルを供給できるようにした。またHCT用鉄心の場合は従来使われていなかった方向性珪素鋼板を磁気回路の改善により打抜きプレス品で使用できるようにしその生産性を大幅に向上した。いずれの場合もその鉄心はプレス加工で作ることになるが,必要な積層枚数分だけを金型内でカシメ固定してもあるいは接着固定してもその特性効果は同じである。金型代は上がるがプレス後の積層作業が不要になり,その生産性はさらに向上する。
図1は、本発明の1実施例の平面図及び正面図であり、1は薄板(例えば0.23mm)の方向性珪素鋼板を打ち抜き,必要な積み厚になるまでこれを重ね鉄心ブロックとした鉄心,2は絶縁体全体,3は対となる絶縁体を繋止するための繋止爪,4は繋止爪を止めるための繋止突起,5はギャップ幅を確保する為のスペーサ部,6は板金等への固定時の固定足,7は対となる絶縁体が上方向にずれるのを防ぐ勘合突起,8は巻線を巻くときの巻鍔,9は巻線部である。図2は,図1のものを2個組み合わせた状態の平面図及び正面図である。記号は図1と同様である。図3は,台形鉄心同士が突き当たる部分を説明するものであり,10は台形形状そのものの台形形状部であり,11は台形の先端にアールをとった場合の変形形状部例である。効果はそれ程変わらないが,10の形状のほうが,コア同士が突き当たる部分の断面積が大きくなる分だけ磁気抵抗が小さくなるので直流重畳特性的には有利である。台形形状の鉄心の角部には必ずアールを設けなければならない。アールがないと樹脂でモールドした時にそこからクラックが入りやすくなる。12は鉄心の中を通る磁束線を表している。台形の斜めの部分同士が突き当たるように組み合わせているので,磁気抵抗が小さくなり磁束線がスムースに通るようになり,低電流領域での直流重畳特性が改善された。この台形両端部の角度は45度としてあるが,この角度を変えると角度が小さくなった方の鉄心の幅が狭くなるので,要求特性によっては使えるが好ましくない。また,図示はしなかったが,外部リード線との接続を容易にする為の接続端子台を絶縁体にあわせて成形しても良い。
図1に示すように,絶縁体に鉄心を入れこの空隙部に液状の樹脂を注型し硬化させる。こうすると,鉄心と鉄心の間のギャップ部間に樹脂が入り硬化するので発音を防止してくれるとともに,鉄心とコイル間の絶縁を完全に確保することが出来る。また,勘合・繋止部を持っているので,分離された二つの鉄心ブロックをそれぞれボビン巻線機で巻線した後に容易に組み立てることが出来る。
磁性材料からなる鉄心の材質は,方向性珪素鋼板が最も優れている。その他の磁性材料を使用すると飽和磁束密度,残留磁束密度が低下するので直流重畳特性が悪くなる。JISで規定されているPEパーマロイがこの特性に匹敵するが,原材料に高価なニッケルを約50%含んでいるので価格が高くなってしまう。しかしより高周波数で使う場合にはPEパーマロイのほうが優れている。特性の比較例を図7に示す。図中,13は台形形状の方向性珪素鋼板の直流重畳特性,14は6.5%珪素鋼板の長方形形状の直流重畳特性,15は長方形形状の方向性珪素鋼板の直流重畳特性である。縦軸はインダクタンスで,単位は[μH]である。横軸は直流電流であり,単位は[A]である。
絶縁体は,要求される耐熱性などに適合した一般の樹脂材料であればなんでも良いが,可能な限り中に包含される鉄心の熱膨張係数に出来るだけ近いものが,ヒートサイクルなどの環境試験の観点からは一番良い。形状的には,図1ではあらかじめ樹脂で成形した絶縁体に鉄心を入れて,後から液状の樹脂を空間部に流し込んだ後硬化させる方式で説明したが,金型の中に鉄心を入れて後から樹脂を射出するいわゆるインサート成形方式で作っても良い。この場合,ポッティングなどの作業が不要になるので,コストを下げることが出来る。
図1は,2個の鉄心ブロックを絶縁体で包含一体化し,これを2個組み合わせることで一つのリアクトルを構成するようにしたものである。図4は14個の鉄心ブロックを絶縁体で包含一体化し,これを単独で使うようにした場合の一例でその平面図ある。図1で示した,繋止爪,繋止突起,固定足,勘合突起などは省略してある。自動車用などでは数百アンペアの電流が流れるので,鉄心の分割数を多くしないと鉄心が飽和して使えなくなる。こうした鉄心の数が多い場合でも,図1と同様に2分割として製作することはもちろん可能である。
図5は,HCT用鉄心の組み立ての一例である。1a,1b,1cはそれぞれ寸法の違う鉄心ブロックである。ホール素子が入る部分に使われる1cの片側は,ギャップ部に均等な磁束が表れるようにするために平面にしてある。図6は図5の変形例であり,ホール素子が入るところの面を絞ってあり,ギャップ部の磁束を高くすることが可能である。
材料に打ち抜きの方向性珪素鋼板またはPEパーマロイを用い,形状を台形としてこれを組み合わせたので,直流重畳特性に優れたリアクトルを得ることができる。またこれらの鉄心を絶縁体で包含一体構造とし,この絶縁体に巻線の巻鍔,お互いの繋止部,基板や板金に固定しやすくする為の固定用足を設けたので,電磁振動による発音クレームのない,かつ生産性がよく低コストのリアクトルを得ることができる。
1,1a,1b,1c 鉄心
2 絶縁体
3 繋止爪
4 繋止突起
5 ギャップ幅を確保する為のスペーサ部
6 固定足
7 勘合突起
8 巻鍔
9 巻線部
10 台形形状部
11 台形の先端にアールをとった場合の変形形状部
12 鉄心の中を通る磁束線
13 台形形状の方向性珪素鋼板の直流重畳特性
14 6.5%珪素鋼板の長方形形状の直流重畳特性
15 長方形形状の方向性珪素鋼板の直流重畳特性
2 絶縁体
3 繋止爪
4 繋止突起
5 ギャップ幅を確保する為のスペーサ部
6 固定足
7 勘合突起
8 巻鍔
9 巻線部
10 台形形状部
11 台形の先端にアールをとった場合の変形形状部
12 鉄心の中を通る磁束線
13 台形形状の方向性珪素鋼板の直流重畳特性
14 6.5%珪素鋼板の長方形形状の直流重畳特性
15 長方形形状の方向性珪素鋼板の直流重畳特性
Claims (1)
- 形状を全部または一部を台形形状にした,方向性珪素鋼板またはPEパーマロイ製積み鉄心ブロック材料からなる複数の鉄心を定められたギャップ間隔を保つようにして,必要に応じて繋止部,固定足,巻線用巻鍔,リード端子台を有する形の絶縁体で包含し一体となるようにし,これを単独で使うか複数組み合わせて使うことを特徴とする鉄心。
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