JP2006057777A - 摺動部材用オーバーレイ及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 摺動部材の初期なじみ性と初期焼付き防止性能の双方を向上する。
【解決手段】 ライニング材12表面に形成される摺動部材用オーバーレイ13であって、このオーバーレイ13が軟質金属からなり、この軟質金属の結晶学的な容易すべり面の法線が上記ライニング材表面の法線に一致して上記容易すべり面が摺動方向と平行になるように配向制御されたことを特徴とする。オーバーレイ13は、ライニング材12表面に容易せん断面が摩擦方向と平行に配向するように形成された厚さ(A)1〜100nmのオーバーレイ下地膜13aと、このオーバーレイ下地膜上にオーバーレイ下地膜と同一金属によりオーバーレイ下地膜と同一に配向するように形成された厚さ(B)50〜5000nmのオーバーレイ成長膜13bとを備える。
【選択図】 図1
【解決手段】 ライニング材12表面に形成される摺動部材用オーバーレイ13であって、このオーバーレイ13が軟質金属からなり、この軟質金属の結晶学的な容易すべり面の法線が上記ライニング材表面の法線に一致して上記容易すべり面が摺動方向と平行になるように配向制御されたことを特徴とする。オーバーレイ13は、ライニング材12表面に容易せん断面が摩擦方向と平行に配向するように形成された厚さ(A)1〜100nmのオーバーレイ下地膜13aと、このオーバーレイ下地膜上にオーバーレイ下地膜と同一金属によりオーバーレイ下地膜と同一に配向するように形成された厚さ(B)50〜5000nmのオーバーレイ成長膜13bとを備える。
【選択図】 図1
Description
本発明は、すべり軸受等の摺動部材に用いられるオーバーレイ及びその製造方法に関する。更に詳しくは摺動部材の初期なじみ性と初期焼付き防止性能の双方を向上し得る摺動部材用オーバーレイ及びその製造方法に関するものである。
摺動部材として代表的な流体潤滑領域で使用されるすべり軸受は、通常の潤滑状態の時には油や水等の流体潤滑膜を介して回転軸とすべり運動をする。例えば、図5に示すように、自動車用エンジンのクランクシャフト1のシャフトピン1aは、シリンダブロック側に取付けられたすべり軸受であるメーンベアリング2との間でエンジンオイルによる油膜を介してすべり運動をする。図5において、符号3はピストン、符号4はコンロッド、符号6はコンロッドベアリングである。コンロッド4はコンロッドベアリング6及びメーンベアリング2を介してシャフトピン1aに取付けられる。エンジンオイルによる流体潤滑膜が十分に形成される場合にはクランクシャフトピン1aとメーンベアリング2は直接接触しないので焼付きなどは生じないけれども、初期なじみが不十分な段階ではクランクシャフトピン1aとメーンベアリング2表面との局所的な直接接触が生じる。その場合にはメーンベアリング表面に成膜されたオーバーレイが作用してクランクシャフトとメーンメタルの焼付きを防止し、良好な初期なじみ状態を形成する。
図2にすべり軸受の例として下側のメーンベアリング2を拡大した断面構造を示す。メーンベアリング2は、バックメタル7と、この表面に形成されたライニング材8と、この表面に成膜されたオーバーレイ9とにより構成される。このすべり軸受のオーバーレイ9の材料として、従来、Sn等の軟質金属膜や、MoS2等の固体潤滑材を樹脂材料で保持した膜などが用いられている(例えば、特許文献1参照。)。
特開2003−56566号公報([0002]、[0004])
しかし、従来用いられているオーバーレイは、結晶学的な容易すべり面の配向性制御がされていない多結晶膜であり、オーバーレイ自体の摩擦係数は概ね0.1〜0.5の値を示し、固体表面間の直接接触が生じた場合の焼付きの直接要因となる摩擦熱抑制の観点からは更なる摩擦係数低減が求められている。
本発明の目的は、摺動部材の初期なじみ性と初期焼付き防止性能の双方を向上し得る摺動部材用オーバーレイ及びその製造方法を提供することにある。
本発明の目的は、摺動部材の初期なじみ性と初期焼付き防止性能の双方を向上し得る摺動部材用オーバーレイ及びその製造方法を提供することにある。
本願請求項1に係る発明は、図1に示すように、ライニング材12表面に形成される摺動部材用オーバーレイ13であって、このオーバーレイ13が軟質金属からなり、この軟質金属の結晶学的な容易すべり面の法線が上記ライニング材表面の法線に一致して上記容易すべり面が摺動方向と平行になるように配向制御されたことを特徴とする。
本願請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明であって、ライニング材12がPbを50%以上含む鉛合金、Cuを50%以上含む銅合金又はAlを50%以上含むアルミニウム合金である摺動部材用オーバーレイである。
本願請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明であって、ライニング材12がPbを50%以上含む鉛合金、Cuを50%以上含む銅合金又はAlを50%以上含むアルミニウム合金である摺動部材用オーバーレイである。
本願請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る発明であって、軟質金属がAg、Au、Pb、Sn又はBiである摺動部材用オーバーレイである。
本願請求項4に係る発明は、請求項1ないし3いずれか1項に係る発明であって、オーバーレイ13が、ライニング材12表面に容易せん断面が摩擦方向と平行に配向するように形成された厚さ1〜100nmのオーバーレイ下地膜13aと、このオーバーレイ下地膜上にオーバーレイ下地膜と同一金属によりオーバーレイ下地膜と同一に配向するように形成された厚さ50〜5000nmのオーバーレイ成長膜13bとを備えた摺動部材用オーバーレイである。
本願請求項4に係る発明は、請求項1ないし3いずれか1項に係る発明であって、オーバーレイ13が、ライニング材12表面に容易せん断面が摩擦方向と平行に配向するように形成された厚さ1〜100nmのオーバーレイ下地膜13aと、このオーバーレイ下地膜上にオーバーレイ下地膜と同一金属によりオーバーレイ下地膜と同一に配向するように形成された厚さ50〜5000nmのオーバーレイ成長膜13bとを備えた摺動部材用オーバーレイである。
本願請求項5に係る発明は、ライニング材12の表面粗さを0.1μm以下に鏡面研磨する工程と、この鏡面研磨したライニング材12の表面に1〜100nmの厚さに軟質金属からなるオーバーレイ下地膜13aを形成する工程と、このオーバーレイ下地膜13aを表面粗さが50nm以下の平滑であってかつオーバーレイ下地膜と固溶しない材料からなる球面で摩擦することにより上記軟質金属の結晶学的な容易すべり面の法線が上記ライニング材表面の法線に一致して容易せん断面が摩擦方向と平行になるようにオーバーレイ下地膜13aを配向させる工程と、この配向したオーバーレイ下地膜13aの上にオーバーレイ下地膜と同一金属によりオーバーレイと同一に配向するように50〜5000nmの厚さにオーバーレイ成長膜13bを形成する工程とを含む摺動部材用オーバーレイの製造方法である。
本願請求項6に係る発明は、請求項5に係る発明であって、軟質金属がAg、Au、Pb、Sn又はBiである摺動部材用オーバーレイの製造方法である。
本願請求項7に係る発明は、請求項5又は6に係る発明であって、オーバーレイ下地膜13a及びオーバーレイ成長膜13bがそれぞれ真空蒸着法、スパッタリング法、分子線エピタキシャル成長法又は湿式メッキ法により形成される摺動部材用オーバーレイの製造方法である。
本願請求項7に係る発明は、請求項5又は6に係る発明であって、オーバーレイ下地膜13a及びオーバーレイ成長膜13bがそれぞれ真空蒸着法、スパッタリング法、分子線エピタキシャル成長法又は湿式メッキ法により形成される摺動部材用オーバーレイの製造方法である。
本発明のライニング材表面に形成される摺動部材用オーバーレイは、軟質金属固体潤滑材であって、その配向を軟質金属の結晶学的な容易すべり面の法線が上記ライニング材表面の法線に一致して上記容易すべり面が摺動方向と平行になるように制御しているので、摺動部材表面と摺動相手部材との間に局所的な直接接触が生じた場合に、その摩擦係数を低減させることができ、これにより摩擦熱の発生を抑制し、耐焼付性の向上及び初期なじみ性向上を実現することができる。
本発明のライニング材として、Pbを50%以上含む鉛合金、Cuを50%以上含む銅合金又はAlを50%以上含むアルミニウム合金を用いると、初期なじみ後の局所面圧を低減する効果があり好ましい。
本発明のオーバーレイを構成する軟質金属として、Ag、Au、Pb、Sn又はBiを用いると、局所的な直接接触が生じた場合の摩擦低減効果があり好ましい。
本発明のオーバーレイを構成する軟質金属として、Ag、Au、Pb、Sn又はBiを用いると、局所的な直接接触が生じた場合の摩擦低減効果があり好ましい。
本発明のオーバーレイをライニング材表面に容易せん断面が摩擦方向と平行に配向する厚さ1〜100nmのオーバーレイ下地膜の上にオーバーレイ下地膜と同一金属によりオーバーレイ下地膜と同一に配向する厚さ50〜5000nmのオーバーレイ成長膜を形成することにより、摺動部材用オーバーレイとして、所望の厚さを得ることができる。
本発明のオーバーレイ下地膜及びオーバーレイ成長膜をそれぞれ真空蒸着法、スパッタリング法、分子線エピタキシャル成長法又は湿式メッキ法により形成することにより、均一な膜を所望の厚さで形成することができ、特にオーバーレイ成長膜にあっては、オーバーレイ下地膜と同一の配向が容易に得られる。
以下、本発明の最良の実施の形態について説明する。
図1に示すように、この実施の形態では摺動部材はすべり軸受10である。すべり軸受としては、自動車用エンジンのクランクシャフトのシャフトピンに取付けられるメーンベアリング、コンロッドベアリング等が挙げられる。オーバーレイは、上記すべり軸受以外にディーゼルエンジン用のピストンリングとライナーの摺動部、乾式ライナーとシリンダーブロックの摺動部、カムとシム又はローラの摺動部、バルブリフターとシリンダーヘッドの摺動部、バルブステムとバルブガイドの摺動部、ピストンピン摺動部、ピストンスカート摺動部等に用いられる。また車両用変速機のメインシャフトとカウンタシャフトの摺動部、シフトフォークレールの摺動部、変速機ギヤ歯面の摺動部、スプライン部の摺動部等に用いられる。更に車両ボディーのドアヒンジ摺動部、ワイパー摺動部、操作ペダル摺動部、操作レバー摺動部に用いられる。すべり軸受10は、バックメタル11とこのバックメタル11の内面に形成されたライニング材12を有し、このライニング材12の表面に本発明の軟質金属からなる固体潤滑材であるオーバーレイ13が形成される。オーバーレイの厚さは0.05〜5μmの範囲にある。
ライニング材12としては、Pbを50%以上含む鉛合金、Cuを50%以上含む銅合金又はAlを50%以上含むアルミニウム合金が用いられる。面圧に対する耐久性を向上させるために、これらの合金はPbを55%以上、Cuを60%以上、Alを60%以上含むことが好ましい。オーバーレイ13を構成する軟質金属は、摩擦係数を低減させるためにAg、Au、Pb、Sn又はBiであることが好ましい。特にAg、Snが好ましい。
図1に示すように、この実施の形態では摺動部材はすべり軸受10である。すべり軸受としては、自動車用エンジンのクランクシャフトのシャフトピンに取付けられるメーンベアリング、コンロッドベアリング等が挙げられる。オーバーレイは、上記すべり軸受以外にディーゼルエンジン用のピストンリングとライナーの摺動部、乾式ライナーとシリンダーブロックの摺動部、カムとシム又はローラの摺動部、バルブリフターとシリンダーヘッドの摺動部、バルブステムとバルブガイドの摺動部、ピストンピン摺動部、ピストンスカート摺動部等に用いられる。また車両用変速機のメインシャフトとカウンタシャフトの摺動部、シフトフォークレールの摺動部、変速機ギヤ歯面の摺動部、スプライン部の摺動部等に用いられる。更に車両ボディーのドアヒンジ摺動部、ワイパー摺動部、操作ペダル摺動部、操作レバー摺動部に用いられる。すべり軸受10は、バックメタル11とこのバックメタル11の内面に形成されたライニング材12を有し、このライニング材12の表面に本発明の軟質金属からなる固体潤滑材であるオーバーレイ13が形成される。オーバーレイの厚さは0.05〜5μmの範囲にある。
ライニング材12としては、Pbを50%以上含む鉛合金、Cuを50%以上含む銅合金又はAlを50%以上含むアルミニウム合金が用いられる。面圧に対する耐久性を向上させるために、これらの合金はPbを55%以上、Cuを60%以上、Alを60%以上含むことが好ましい。オーバーレイ13を構成する軟質金属は、摩擦係数を低減させるためにAg、Au、Pb、Sn又はBiであることが好ましい。特にAg、Snが好ましい。
図1の拡大図に示すように、オーバーレイ13は、ライニング材表面に形成されるオーバーレイ下地膜13aと、このオーバーレイ下地膜上に形成されるオーバーレイ成長膜13bとにより構成される。オーバーレイ下地膜13aの厚さAは1〜100nm、好ましくは5〜50nmであり、オーバーレイ成長膜の厚さBは50〜5000nm、好ましくは100〜1000nmである。オーバーレイ下地膜の厚さが下限値未満では早期に摩耗する不具合があり、上限値を超えると配向性が揃わない不具合がある。またオーバーレイ成長膜の厚さが下限値未満では早期に摩耗する不具合があり、上限値を超えると荷重に対しての耐久性が減少する不具合がある。オーバーレイ下地膜13aは軟質金属の結晶学的な容易すべり面の法線がライニング材表面の法線に一致して容易せん断面が摩擦方向と平行に配向するように形成され、オーバーレイ成長膜13bはオーバーレイ下地膜上にオーバーレイ下地膜と同一金属によりオーバーレイ下地膜と同一に配向するように形成される。
またオーバーレイの結晶学的容易すべり面は、Ag、Au等のようにその結晶構造が体心立方格子構造をとる金属の場合には、ミラー指数が(111)面であり、Sn、Pb等のように六方最密格子構造をもつ金属の場合には、ミラー指数が(1000)面である。
またオーバーレイの結晶学的容易すべり面は、Ag、Au等のようにその結晶構造が体心立方格子構造をとる金属の場合には、ミラー指数が(111)面であり、Sn、Pb等のように六方最密格子構造をもつ金属の場合には、ミラー指数が(1000)面である。
次に本発明のオーバーレイの製造方法について説明する。
先ず、厚さ0.1〜10mmのライニング材の表面粗さを0.1μm以下に鏡面研磨する。ライニング材表面を中心線平均粗さ0.1μm以下に研磨する方法は、砥石若しくは砥粒による機械式研磨法を用いるか、或いはエッチング液による化学式研磨又は電解研磨のうちのいずれの方法を用いてもよい。また、それらの研磨方法を2種類以上組み合わせて行ってもよい。次いでこの鏡面研磨したライニング材の表面に1〜100nmの厚さに軟質金属からなるオーバーレイ下地膜を形成する。オーバーレイ下地膜は真空蒸着法、スパッタリング法、分子線エピタキシャル成長法又は湿式メッキ法により形成されることが好ましい。
先ず、厚さ0.1〜10mmのライニング材の表面粗さを0.1μm以下に鏡面研磨する。ライニング材表面を中心線平均粗さ0.1μm以下に研磨する方法は、砥石若しくは砥粒による機械式研磨法を用いるか、或いはエッチング液による化学式研磨又は電解研磨のうちのいずれの方法を用いてもよい。また、それらの研磨方法を2種類以上組み合わせて行ってもよい。次いでこの鏡面研磨したライニング材の表面に1〜100nmの厚さに軟質金属からなるオーバーレイ下地膜を形成する。オーバーレイ下地膜は真空蒸着法、スパッタリング法、分子線エピタキシャル成長法又は湿式メッキ法により形成されることが好ましい。
本発明のオーバーレイの結晶配向性を金属学的容易すべり面が摺動方向と平行になるように制御するためには、先ずオーバーレイ下地膜の結晶配向性を揃える。このために、オーバーレイ下地膜と固溶しない摺動相手材料を用意し、この材料の一部に形成された表面粗さが50nm以下の平滑な球面により、1×10-4Pa以下の真空雰囲気下、オーバーレイ下地膜を1回〜100回摩擦する。その時の摩擦条件は、接触面圧が500MPa以下、摺動速度が0.05〜50mm/sであり、摺動速度は0.1〜5mm/sであることが好ましい。
上記方法とは別に、面心立方格子構造をもつ軟質金属からなるオーバーレイの場合、ライニング材表面が単結晶であって、その結晶面がオーバーレイ材料の結晶学的容易せん断面と同じ結晶面であれば、オーバーレイの結晶配向性を金属学的容易すべり面が摺動方向と平行になるように制御することができる。
上記方法とは別に、面心立方格子構造をもつ軟質金属からなるオーバーレイの場合、ライニング材表面が単結晶であって、その結晶面がオーバーレイ材料の結晶学的容易せん断面と同じ結晶面であれば、オーバーレイの結晶配向性を金属学的容易すべり面が摺動方向と平行になるように制御することができる。
上記方法により、軟質金属の結晶学的な容易すべり面の法線がライニング材表面の法線に一致して容易せん断面が摩擦方向と平行になるように実現できる。オーバーレイ下地膜がAg、Au等のようにその結晶構造が体心立方格子構造をとる金属の場合には(111)面法線がライニング材表面の法線と一致するように配向させ、Sn、Pb等のように六方最密格子構造をもつ金属の場合には(1000)面法線がライニング材表面の法線と一致するように配向させる。
続いて、オーバーレイ下地膜上にオーバーレイ成長膜を真空蒸着法、スパッタリング法、分子線エピタキシャル成長法又は湿式メッキ法により形成する。これによりオーバーレイ成長膜はオーバーレイ下地膜と同じ配向をするようになる。
続いて、オーバーレイ下地膜上にオーバーレイ成長膜を真空蒸着法、スパッタリング法、分子線エピタキシャル成長法又は湿式メッキ法により形成する。これによりオーバーレイ成長膜はオーバーレイ下地膜と同じ配向をするようになる。
次に本発明の実施例を比較例とともに説明する。
<実施例1>
Si(111)ウェーハを模擬的にライニング材とし、ライニング材の表面に真空蒸着法により膜厚5nmと57nmのAg単結晶膜を形成した。これらのAg単結晶膜に対して、4×10-8Paの超高真空雰囲気下、Agと固溶しない曲率半径3.0mmのダイヤモンド球(表面粗さ0.6〜2.6nm)を用いて垂直荷重250mNで摺動速度1mm/秒の条件で10回摩擦を繰返した。
<実施例1>
Si(111)ウェーハを模擬的にライニング材とし、ライニング材の表面に真空蒸着法により膜厚5nmと57nmのAg単結晶膜を形成した。これらのAg単結晶膜に対して、4×10-8Paの超高真空雰囲気下、Agと固溶しない曲率半径3.0mmのダイヤモンド球(表面粗さ0.6〜2.6nm)を用いて垂直荷重250mNで摺動速度1mm/秒の条件で10回摩擦を繰返した。
<比較例1>
Si(111)ウェーハを模擬的にライニング材とし、その表面をAg原子で修飾して不活性化した表面に真空蒸着法により膜厚5nmと57nmのAg多結晶膜を形成した。これらのAg多結晶膜に対して、実施例1と同じ条件で、曲率半径3.0mmのダイヤモンド球により10回摩擦を繰返した。
Si(111)ウェーハを模擬的にライニング材とし、その表面をAg原子で修飾して不活性化した表面に真空蒸着法により膜厚5nmと57nmのAg多結晶膜を形成した。これらのAg多結晶膜に対して、実施例1と同じ条件で、曲率半径3.0mmのダイヤモンド球により10回摩擦を繰返した。
<比較評価その1>
図3に示すように、実施例1の膜厚5nmと57nmの摩擦後のAg単結晶膜は、従来報告されている摩擦係数よりも1桁低い摩擦係数が得られ、その値は0.007〜0.02であった。これに対して比較例1の膜厚5nmと57nmのAg多結晶膜は、実施例1のAg単結晶膜の場合と比較して、その摩擦係数は3〜4倍高い値になった。
図3に示すように、実施例1の膜厚5nmと57nmの摩擦後のAg単結晶膜は、従来報告されている摩擦係数よりも1桁低い摩擦係数が得られ、その値は0.007〜0.02であった。これに対して比較例1の膜厚5nmと57nmのAg多結晶膜は、実施例1のAg単結晶膜の場合と比較して、その摩擦係数は3〜4倍高い値になった。
<実施例2>
Si(111)ウェーハを模擬的にライニング材とし、その表面をAg原子で修飾して不活性化した表面に真空蒸着法により膜厚5nmのAg多結晶膜を形成した。このAg多結晶膜に対して、4×10-8Paの超高真空雰囲気下、Agと固溶しないダイヤモンド球(表面粗さ0.6〜2.6nm)を用いてヘルツ面圧400MPaで10回摩擦した。摩擦前のAg多結晶膜と摩擦後のAg多結晶膜の結晶配向性について、反射高速電子線回折で調べた。図4(a)に示すように、摩擦前では配向していなかったものが、図4(b)に示すように、摩擦後ではAgの結晶学的容易せん断面である(111)面が摩擦方向に対して平行に配向することが確かめられた。
図4(b)に示す摩擦後のAg多結晶膜表面に再度Ag蒸着を行ったところ、Ag(111)面からの回折斑点が認められ、下地膜の配向性に倣ってその後の膜成長が起きることが確かめられた。
Si(111)ウェーハを模擬的にライニング材とし、その表面をAg原子で修飾して不活性化した表面に真空蒸着法により膜厚5nmのAg多結晶膜を形成した。このAg多結晶膜に対して、4×10-8Paの超高真空雰囲気下、Agと固溶しないダイヤモンド球(表面粗さ0.6〜2.6nm)を用いてヘルツ面圧400MPaで10回摩擦した。摩擦前のAg多結晶膜と摩擦後のAg多結晶膜の結晶配向性について、反射高速電子線回折で調べた。図4(a)に示すように、摩擦前では配向していなかったものが、図4(b)に示すように、摩擦後ではAgの結晶学的容易せん断面である(111)面が摩擦方向に対して平行に配向することが確かめられた。
図4(b)に示す摩擦後のAg多結晶膜表面に再度Ag蒸着を行ったところ、Ag(111)面からの回折斑点が認められ、下地膜の配向性に倣ってその後の膜成長が起きることが確かめられた。
10 すべり軸受
11 バックメタル
12 ライニング材
13 オーバーレイ
13a オーバーレイ下地膜
13b オーバーレイ成長膜
11 バックメタル
12 ライニング材
13 オーバーレイ
13a オーバーレイ下地膜
13b オーバーレイ成長膜
Claims (7)
- ライニング材(12)表面に形成される摺動部材用オーバーレイ(13)において、
前記オーバーレイが軟質金属からなり、前記軟質金属の結晶学的な容易すべり面の法線が前記ライニング材表面の法線に一致して前記容易すべり面が摺動方向と平行になるように配向制御されたことを特徴とする摺動部材用オーバーレイ。 - ライニング材(12)がPbを50%以上含む鉛合金、Cuを50%以上含む銅合金又はAlを50%以上含むアルミニウム合金である請求項1記載の摺動部材用オーバーレイ。
- 軟質金属がAg、Au、Pb、Sn又はBiである請求項1又は2記載の摺動部材用オーバーレイ。
- オーバーレイ(13)が、ライニング材(12)表面に容易せん断面が摩擦方向と平行に配向するように形成された厚さ1〜100nmのオーバーレイ下地膜(13a)と、前記オーバーレイ下地膜上に前記オーバーレイ下地膜と同一金属により前記オーバーレイ下地膜と同一に配向するように形成された厚さ50〜5000nmのオーバーレイ成長膜(13b)とを備えた請求項1ないし3いずれか1項に記載の摺動部材用オーバーレイ。
- ライニング材(12)の表面粗さを0.1μm以下に鏡面研磨する工程と、
前記鏡面研磨したライニング材(12)の表面に1〜100nmの厚さに軟質金属からなるオーバーレイ下地膜(13a)を形成する工程と、
前記オーバーレイ下地膜(13a)を表面粗さが50nm以下の平滑であってかつ前記オーバーレイ下地膜と固溶しない材料からなる球面で摩擦することにより前記軟質金属の結晶学的な容易すべり面の法線が前記ライニング材表面の法線に一致して容易せん断面が摩擦方向と平行になるように前記オーバーレイ下地膜(13a)を配向させる工程と、
前記配向したオーバーレイ下地膜(13a)の上に前記オーバーレイ下地膜と同一金属により前記オーバーレイと同一に配向するように50〜5000nmの厚さにオーバーレイ成長膜(13b)を形成する工程と
を含む摺動部材用オーバーレイの製造方法。 - 軟質金属がAg、Au、Pb、Sn又はBiである請求項5記載の摺動部材用オーバーレイの製造方法。
- オーバーレイ下地膜(13a)及びオーバーレイ成長膜(13b)がそれぞれ真空蒸着法、スパッタリング法、分子線エピタキシャル成長法又は湿式メッキ法により形成される請求項5又は6記載の摺動部材用オーバーレイの製造方法。
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