JP2006057085A - ガスバリア性付与剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】 ガスバリア性に優れているだけでなく、重合体に添加した場合、透明性が低下したり着色したりすることがない、ガスバリア性付与剤を提供する。
【解決手段】 バーミキュライトを硫酸や硝酸等の無機酸で処理処理することにより得られた非晶質シリカをステアリン酸などの表面処理剤で処理した非結晶性シリカからなることを特徴とする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、バーミキュライトを出発原料として得られるガスバリア性付与剤に関するものであり、より詳細には、重合体に添加してフィルム、チューブ、容器等に成形することにより、優れたガスバリア性(ガス遮断性)を付与するガスバリア性付与剤に関するものである。
ポリエチレンテレフタレート(PET)に代表されるポリエステルやポリオレフィンなどの熱可塑性プラスチックは、成形性、軽量性、透明性に優れており、ガラスや金属に代わる包装材料として広く使用されているが、本質的に、ガラスや金属に比してガスバリア性に劣っているため、ガスバリア性を向上するために種々の手段が講じられている。例えば、エチレン−ビニルアルコール共重合体の如きガスバリア性(特に酸素バリア性)に優れたガスバリア性プラスチックを、上記の熱可塑性プラスチックの層に積層させて多層構造とすることが一般に行われている。しかしながら、このようなガスバリア性プラスチックは、一般に、高湿度下でガスバリア性が低下するという欠点があり、また、そのガスバリア性も当然のことながら、ガラスや金属に比して劣っていることは否めない。
また、エアコンなどの冷媒として検討されている炭酸ガスや燃料電池用として使用される水素、酸素や空気をシールするガスケット或いはこれらを輸送するためのチューブに対してガスバリア性の向上が求められている。
そこで、近年では、上記のようなガスバリア性重合体に代えて或いはガスバリア性重合体と共に、無機化合物を使用してガスバリア性を高めることが種々提案されている。即ち、無機化合物によるガスバリア性は、物理的に気体の透過を遮断するものであり、高湿度下でガスバリア性が低下することがなく、また、ガスバリア性に優れた重合体に比しても高いガスバリア性を得ることができる。
例えば、特許文献1には、酸化ケイ素や酸化アルミニウムの蒸着膜を熱可塑性樹脂フィルム表面に形成することが提案されており、また、特許文献2には、平板状シリカを、フィルムを形成する熱可塑性樹脂に配合することが提案されている。
特公昭63−43075号公報 特開2002−327129号公報
しかしながら、特許文献1では、高いガスバリア性を得ることができるものの、蒸着を必要とするため、高コストとなってしまう。また、蒸着されたフィルムは可撓性が乏しく、曲げ等により蒸着層にクラックが生じ、ガスバリア性が低下してしまうという問題があった。
また、特許文献2の平板状シリカは、厳密に言うとシリカではなく、ケイ酸塩化合物であり、モンモリロナイトやバーミキュライトなどの層状粘土鉱物が有する層間のナトリウムイオンを第4級アンモニウム塩で置換し、物理的な剪断力で劈開したものである。このような平板状シリカは、第4級アンモニウム塩を使用しているため、包装材、特に食品関係の包装材としては好ましくないばかりか、ガスバリア性も十分に向上させることは困難であった。さらには、天然の粘土鉱物を用いているため、重合体に対する着色の問題もある。
従って本発明の目的は、ガスバリア性に優れているだけでなく、重合体に添加した場合、透明性が低下したり着色したりすることがなく、且つ食品関係の包装材、或いはシール材に使用することが可能な無機化合物系のガスバリア性付与剤を提供することにある。
本発明によれば、バーミキュライトの酸処理によって得られた非晶質シリカからなることを特徴とするガスバリア性付与剤が提供される。
本発明によれば、また、上記ガスバリア性付与剤が重合体に配合されていることを特徴とするガスバリア性重合体組成物が提供される。
さらに、前記重合体として熱可塑性プラスチックを用いたガスバリア性重合体組成物(プラスチック組成物)からなる包装用フィルム、及び前記重合体としてエラストマーを用いたガスバリア性重合体組成物(エラストマー組成物)からなるシール材が提供される。
本発明のガスバリア性付与剤においては、
(1)前記非晶質シリカが、29Si−NMR測定で、Q構造を示す化学シフトのピーク面積とQ構造を示す化学シフトのピーク面積との比Q/Qが0.25以上であること、
(2)前記非晶質シリカが、レーザ回折法で測定して中位径(D50)が1乃至30μm、面方向最大径/厚みで表されるアスペクト比が2乃至20の板状粒子形状を有し、85%以上の白色度、BET比表面積が200乃至600m/g、シリカ(SiO換算)含量が82重量%以上、OH基量が5mmol/g以上であり、且つ110℃乾燥物における灼熱減量(1050℃)が4.0乃至8.0重量%の範囲にあること、
が好ましい。
また、本発明のガスバリア性重合体組成物においては、
(1)重合体が熱可塑性プラスチックであり、前記ガスバリア性付与剤が熱可塑性プラスチック100重量部当り0.1乃至50重量部の量で配合されていること、
(2)重合体がエラストマーであり、前記ガスバリア性付与剤がエラストマー100重量部当り1乃至100重量部の量で配合されていること、
が好ましい。
本発明のガスバリア性付与剤は、バーミキュライトを酸処理することにより得られた非晶質シリカからなるものであり、葉片状または鱗片状と呼ばれる形状を有している。図6は、このシリカが非晶質であることを示すX線回折図である。図1は、この非晶質シリカ(実施例1)の電子顕微鏡写真を示している。本発明のガスバリア性付与剤として使用される非晶質シリカは、層状シリカが層として独立した挙動を示すという特性(即ち劈開性)を示し、従来公知のシリカに見られない性質を有している。従って、かかる非晶質シリカを重合体に配合し、フィルム等の包装材やガスケットなどのシール材に成形した場合、該粒子が層状に分布し、このような層状分布構造によってガスの透過を有効に遮断することが可能となるものである。例えば、図2と3は、実施例1の非晶質シリカをポリエチレンフィルムに成形した時の、非晶質シリカの粒子分布状態(図2)とケイ素分布状態(図3)を示す顕微鏡写真であるが、かかる図2と3から、非晶質シリカが層状に分布していることが判る。
また、本発明のガスバリア性付与剤として使用される非晶質シリカは、酸処理によって多孔質になっており、且つ29Si−NMR測定で、Q構造を示す化学シフトのピーク面積とQ構造を示す化学シフトのピーク面積との比Q/Qが0.25以上に高められている。即ち、Q構造は、Siの結合手の一つにOH基が結合し、残りの3つの結合手にOを介してSi原子が結合した構造を示し、Q構造は、Siの4つの結合手全てにOを介してSi原子が結合した構造を示し、Q/Q比が上記範囲にあることは、粒子に比較的多くのシラノール基が存在していることを意味する。
このように本発明のガスバリア性付与剤は、バーミキュライトの酸処理物を用いることにより、極めて高いガスバリア性向上効果を示し、しかも酸処理が行われたことで、着色成分が除去され、高い白色度を示し、重合体に配合した場合の着色が抑えられる。かかるガスバリア性付与剤は、蒸着等のコストのかかる手段を必要とせず、単に重合体に混合してフィルム等の包装材とするのみで、高いガスバリア性を付与することができ、経済的なメリットが極めて大きい。
また、本発明のガスバリア性付与剤を配合した重合体組成物から得られる包装用フィルムは、非晶質シリカが特定の方向に層状に配向して分散するため、このような配向方向に沿って容易に引き裂き可能であり、例えば袋状の容器とした場合など、ガスバリア性以外にも、優れた開封性を示すという利点もある。
[バーミキュライト]
本発明のガスバリア性付与剤の原料として使用されるバーミキュライト(vermiculite)は、バーミキュライト群粘土鉱物あるいは雲母群粘土鉱物に分類される加水雲母を主成分とする鉱物であり、蛭石とも呼ばれている。この鉱物を一定温度以上に急熱すると、面指数(001)の面に垂直な方向(C軸方向)に著しく延び、蛭に似た形態になるのが名前の由来となっている。このバーミキュライトには、基本的に下記式(1)で表わされる化学構造を有する3八面体型のものと、下記式(2)で表わされる化学構造を有する2八面体型のものとがあり、何れも使用することができる。
{E0.6〜0.8・4〜5HO}(Mg,Fe3+,Fe2+,Al)3
・[Si,Al]10(OH) …(1)
{E0.6〜0.8・nHO}(Al,Fe,Mg)・[Si,Al]
・O10(OH) …(2)
尚、上記式中、Eは層間イオンであり、主としてKやMgからなる。
また、バーミキュライトの化学的組成は、産地等によっても相違するが、代表的な組成は以下の通りである。
SiO 35〜45重量%
Al 10〜20重量%
MgO 7〜30重量%
Fe 5〜22重量%
CaO 0〜3重量%
NaO 0〜1重量%
O 0〜10重量%
Fe以外の重金属含量(Pb,Cr,Cd等) 0.2重量%以下
灼熱減量(1050℃)3〜25重量%
(製造方法)
本発明のガスバリア性付与剤は、上記のようなバーミキュライトを酸処理することにより得られる。このような酸処理を行うことにより、結晶構造が破壊され、且つ有色成分が除去され、重合体に配合した場合の着色が抑えられるだけでなく、特に重合体の透明性の低下も抑えることができる。
酸処理に使用される酸としては、硫酸、塩酸、硝酸等の鉱酸が使用され、その使用量は、バーミキュライト中のFeを含む塩基性成分に対して過剰量である。また、酸濃度は、一般に、15乃至40重量%、特に20乃至35重量%とするのがよく、酸処理温度は、10乃至110℃の範囲とするのがよい。特に処理温度の高いほうが酸濃度を低くしても処理が短時間で行える。酸処理時間は、酸濃度や酸の使用量、温度等によっても異なり、一概に規定することはできないが、酸処理によって、シリカ(SiO換算)含量が、82重量%以上、特に85重量%以上、白色度が85%以上、特に88%以上に高められる程度の時間、酸処理を行うのがよく、通常、6乃至48時間程度である。
また、酸処理に先立って、200乃至500℃の温度で加熱処理を行うこともできる。この加熱処理は、膨積処理と呼ばれるものであり、バーミキュライトの層状構造をバラバラにするために行われ、特にアスペクト比の高い非晶質シリカを得るために有効である。
このようにバーミキュライトを、必要により加熱処理した後、酸処理し、水洗、乾燥し、粉砕、分級することにより、図1に示すような非晶質シリカ薄層の積層体粒子からなる本発明のガスバリア性付与剤が得られる。
尚、上記のような酸処理に先立って、必要により、夾雑する脈石の分離を行うのが好ましい。この分離は、水簸、液体サイクロンなどによる湿式分級方法および風簸、サイクロン、ミクロンセパレータなどによる乾式分級方法が一般に適用できる。
(非晶質シリカ)
上記のような酸処理によって得られる非晶質シリカは、29Si−NMR測定で、Q構造を示す化学シフトのピーク面積とQ構造を示す化学シフトのピーク面積との比Q/Qが0.25以上に高められている。
また、上記の非晶質シリカは、原料バーミキュライトに由来して板状粒子形状を有するが、レーザ回折法で測定して中位径(D50)が1乃至30μm、特に1乃至20μmの範囲にあり、且つ面方向最大径/厚みで表されるアスペクト比が2乃至20の範囲にあることが、良好なガスバリア性を発揮する上で好適である。
また、この非晶質シリカは、85%以上の白色度を有し、BET比表面積が200乃至600m/g、シリカ(SiO換算)含量が82重量%以上、OH基量が5mmol/g以上であり、且つ110℃乾燥物における灼熱減量(1050℃)が4.0乃至8.0重量%の範囲にある。即ち、酸処理により、Al、重金属やアルカリ分が著しく低減されているため、高い白色度(85%以上、特に88%以上)を示し、重合体の着色を抑えることができるという点で、包装材等としての使用に極めて適している。
上述した非晶質シリカは、それ単独でガスバリア性付与剤として、そのまま、重合体に配合することができるが、他の無機或いは有機の表面改質剤で処理して、ガスバリア性付与剤として使用に供することもできる。このような表面改質剤は、非晶質シリカ当り0.5乃至30重量%、特に1乃至25重量%の量で用いるのが良い。
無機の表面改質剤としては、エアロジル、疎水処理エアロジル等の微粒子シリカ、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム等のケイ酸塩、カルシア、マグネシア、亜鉛華、酸化鉄、チタニア等の金属酸化物、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物、炭酸カルシウム等の金属炭酸塩、A型、P型、ZSM−5等の合成ゼオライト及びその酸処理物もしくはその金属イオン交換物、ハイドロタルサイトなどがあり、これらは、その用途に応じて、適宜ブレンドして、まぶして或いは被覆して使用することができる。
また、有機の表面改質剤としては、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸等の脂肪酸、脂肪酸のカルシウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、バリウム塩等の金属石鹸、シランカップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、チタン系カップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤、シリコーンオイル、各種ワックス類、未変性乃至変性の各種樹脂(例えばロジン、石油樹脂等)等があり、その用途に応じて、このような表面改質剤を被覆して使用に供することができる。
(ガスバリア性重合体組成物)
上述した非晶質シリカからなる本発明のガスバリア性付与剤は、種々の熱可塑性プラスチック或いはエラストマーに配合してガスバリア性重合体組成物とし、公知の方法によってフィルム、シート、容器や蓋等に成形加工することにより、ガスバリア性に優れた包装材として使用に供せられる。また、上記非晶質シリカは、ガスバリア性向上機能とともに、燃焼時の煙の発生やドリップを抑制するなど、難燃助剤としても優れた特性を示す。
本発明のガスバリア性付与剤が配合される重合体としては、プラスチックとエラストマーがある。
プラスチックの中で熱可塑性プラスチックとしては、特に制限されず、包装材の分野で使用されている任意のものを使用することができ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソプレン、脂環式構造を有するポリオレフィンなどのオレフィン樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのエステル樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12などのアミド樹脂;ポリヒドロキシブチレート、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリグリコール酸、ポリアリキレンカーボネートなどの生分解性樹脂;ポリメチルメタクリレートなどのアクリル樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体;ポリビニルアルコール;エチレン−ビニルアルコール共重合体;ポリスチレン;ポリスルホン、セロファン;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;ポリカーボネート;ポリアクリロニトリル;塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、軟質塩化ビニル;などを例示することができる。
このような熱可塑性プラスチックに対するガスバリア性付与剤の配合量は、優れたガスバリア性が付与される限り、特に制限されないが、熱可塑性プラスチック100重量部当り0.1乃至50重量部、特に1乃至30重量部の量で配合されていることが、熱可塑性プラスチックの特性を損なわず、ガスバリア性を発現できる点で好適である。
またエラストマーの中でゴムとしては、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンーブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ニトリル−ブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレンープロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、アクリルゴム、多硫化ゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴムなどを例示することができる。
熱可塑性エラストマーとしては、スチレン系、オレフィン系、塩ビ系、ウレタン系、エステル系、アミド系などを例示することができる。
このようなエラストマーに対するガスバリア性付与剤の配合量は、エラストマー100重量部当り1乃至100重量部、特に10乃至80重量部の量で配合されていることが好適である。
また、上記のガスバリア性重合体組成物は、フィルムやシート等の成形体中でガスバリア層を形成するために使用することも勿論可能である。成形体は、一軸延伸や二軸延伸等の延伸処理されたものであってもよい。
特に本発明のガスバリア性付与剤は、フィルムやシートなどへの成形に際して加わる剪断方向(例えば押出方向、射出方向、或いは延伸方向)に沿って層状に分布し、優れたガスバリア性を示すが、特にフィルムとして用いた場合には、その層状の配向方向に沿って引き裂き性が高められるため、特に袋状容器などを構成する包装フィルムとして極めて好適に使用される。
以下に本発明を実施例により詳細に説明する。尚、実施例における測定方法は以下の通りである。
(1)NMRの測定
各試料の29Si−MASNMRの測定は日本電子(株)製のJEOL EX270型のNMR装置を用いた。
観測周波数 53.54MHz
パルスディレイ 100.000sec
パルス幅 2.9μsec(90°)
標準試料 ポリジメチルシラン −33.8ppm
積算回数 200
(2)中位径(D50
Malvern社製Mastersizer2000を使用して、レーザ回折散乱法で測定した。
(3)アスペクト比
日立(株)製走査電子顕微鏡S−570を用いて、制限視野像中の粒子について、面方向の最大径と、厚みをそれぞれ測り、面方向最大径/厚みを算術計算し、平均値をアスペクト比とした。
(4)白色度測定
JIS L−1015 7.17C法に準じて、日本電色(株)製測色色差計ZE−2000型を用いて測定した。
(5)BET比表面積
カルロエルバ社製Sorptomatic Series 1900を使用し、窒素吸着等温線を測定した。比圧0.2以下の吸着枝側窒素吸着等温線からBET法で求めた。
(6)シリカ含量および灼熱減量(1050℃)
JIS M 8853に準拠して測定した。なお、測定試料は110℃乾燥物を基準とした。
(7)OH基量
灼熱減量が脱水によってのみ生じたと仮定し、算出した。
(8)XRD測定
日本フィリップス(株)製のX線回折装置PW1830を用いて、Cu−Kαで測定した。
ターゲット Cu
フィルター Ni
検出器 プロポーショナルカウンター
電圧 40KVP
電流 30mA
走査速度 1°/min
スリット DS:1° RS:0.2mm SS:1°
なお、X線回折図の横軸は、逆格子の長さd−1で示した。
(9)分析SEM
日本電子(株)製の分析走査電子顕微鏡JSM-5600LV+JED-2200型を用いてフィルム断面を観察した。
(10)PVCフィルムの作成
PVCフィルムの作成は、次のように行った。下記配合組成物を、155℃に加熱した4インチロールで5分間混練した後に、約50μmの軟質PVCフィルムを作成した。
配合
PVC(重合度=1,000) 100部
可塑剤(DOP) 50部
Ca−Zn系安定剤 1部
ガスバリア性付与剤 10部
(11)PEフィルムの作成
PEフィルムの作成は、次のように行った。下記配合組成物を、120℃に加熱した4インチロールで5分間混練した後に、約60μmのポリエチレンフィルムを作成した。
配合
LLDPE(MFR=3.8g/10min) 88.8wt%
滑剤(ステアリン酸アミド) 0.8wt%
酸化防止剤 0.4wt%
ガスバリア性付与剤 10.0wt%
(12)ゴムシートの作成
ゴムシートの作成は、JIS−K−6299に準拠して次のように行った。下記配合組成物を4インチロールで既定の条件で混練し、加硫プレスは160℃で30分間行い、プレス後シートを水冷し、厚さ2mmのゴムシートを得た。
配合
原料ゴム(SBR1500) 100部
酸化亜鉛 3.0部
硫黄 1.75部
ステアリン酸 1.0部
加硫促進剤 1.0部
ガスバリア性付与剤 50.0部
(13)EVAフィルムの作成
EVAフィルムの作成は、次のように行った。下記配合組成物を、130℃に加熱した4インチロールで5分間混練した後に、約70μmのEVAフィルムを作成した。
配合
EVA(酢酸ビニル含有量15wt%) 66.3wt%
滑剤(ステアリン酸アミド) 2.5wt%
ステアリン酸 1.2wt%
ガスバリア性付与剤 30.0wt%
(14)気体透過度測定
気体透過度は、得られたフィルム或いはシートについてJIS−K−7126 A法に準拠し、PVCとSBRの場合は二酸化炭素、PEとEVAの場合は酸素を試験気体として測定した。
(15)気体透過係数
気体透過度にフィルム或いはシートの平均厚さの値を掛けて求めた。値が低いほど、ガスバリア性に優れている。
(実施例1)
南アフリカ産バーミキュライト原石1.0kgに水5.2kgと98%硫酸2.3kgを加え、95℃で20時間加熱した。次いで、ろ過、水洗、150℃で乾燥し、粉砕、分級して中位径6.0μm、アスペクト比17の非晶質シリカからなる本発明のガスバリア性付与剤を得た。得られたガスバリア性付与剤の物性を表1に示す。また、このガスバリア性付与剤の電子顕微鏡写真を図1に、X線回折図を図6に、NMRスペクトルを図7にそれぞれ示す。
このガスバリア性付与剤を添加したプラスチックフィルムの、気体透過度を測定した。結果を表2及び3に示す。なお、表中の平均厚さはフィルムの厚さである。また、ガスバリア性付与剤を添加したPEフィルムの断面構造を示す電子顕微鏡写真を図2と3に示す。
(比較例1)
ガスバリア性付与剤を添加しなかったこと以外は実施例1と同様にフィルムを作成した。なお、PEフィルムに関しては、LLDPEを98.8wt%に変更した。得られたフィルムの気体透過度の測定を行った。結果を表2及び3に示す。
(比較例2)
市販の非晶質シリカ(水澤化学製ミズカシルP−78A;形状は不定形、中位径6.0μm)をガスバリア性付与剤の代わりに添加したこと以外は実施例1と同様にフィルムを作成した。得られたフィルムの、気体透過度の測定を行った。結果を表2及び3に示す。また、非晶質シリカの物性を表1に、非晶質シリカを添加したPEフィルムの断面構造を示す電子顕微鏡写真を図4と5に示す。
(比較例3)
市販のタルクをガスバリア性付与剤の代わりにフィルムに添加したこと以外は実施例1と同様にフィルムを作成した。得られたフィルムの、気体透過度の測定を行った。結果を表2及び3に示す。また、タルクの物性を表1に示す。なお、NMR測定ではQのピークが観測されなかったため、不能とした。
(比較例4)
実施例1で用いた南ア産バーミキュライト原石をそのまま粉砕分級して得られた試料を、ガスバリア性付与剤の代わりに添加したこと以外は、実施例1と同様にフィルムを作成した。得られたフィルムは、黒褐色に変色し、実用に適さない物であった。バーミキュライトの物性を表1に示す。ただし、磁性元素の影響により、NMRスペクトルが得られなかったため、Q/Qは測定不能であった。
(比較例5)
市販の結晶質鱗片状シリカ(洞海化学製サンラブリーC;中位径4.1μm)を、ガスバリア性付与剤の代わりに添加したこと以外は実施例1と同様にしてPVC及びPEフィルムを作成しようと試みたが、分散不良であった。結晶質鱗片状シリカの物性を表1に示し、X線回折図を図6に、NMRスペクトルを図7にそれぞれ示す。
Figure 2006057085
Figure 2006057085
Figure 2006057085
(実施例2)
実施例1で用いたガスバリア性付与剤をゴムに添加した。得られたゴムシートについて気体透過度の測定を行った。結果を表4に示す。さらに、ガスバリア性付与剤を添加したSBRシートの断面構造を示す電子顕微鏡写真を図8に示す。
(比較例6)
比較例3で用いた市販のタルクをガスバリア性付与剤の代わりにゴムに添加したこと以外は、実施例2と同様にゴムシートを作成した。得られたシートについて気体透過度の測定を行った。結果を表4に示す。
(比較例7)
市販の非晶質シリカ(東ソー・シリカ製ニップシルVN−3;形状は不定形、中位径31.5μm、BET比表面積200m/g)をガスバリア性付与剤の代わりに添加したこと以外は、実施例2と同様にしてゴムシートを作成した。得られたシートについて気体透過度の測定を行った。結果を表4に示す。さらに、該非晶質シリカを添加したSBRシートの断面構造を示す電子顕微鏡写真を図9に示す。
Figure 2006057085
(参考例1)
本発明の非晶質シリカを中位径0.8μmに変更した以外は、実施例1と同様にして行った。得られたガスバリア性付与剤をEVAに添加し、作成したEVAフィルムについて気体透過度の測定を行った。結果を表5に示す。
(実施例3)
本発明の非晶質シリカを中位径3.3μmに変更した以外は、実施例1と同様にして行った。得られたガスバリア性付与剤をEVAに添加し、作成したEVAフィルムについて気体透過度の測定を行った。結果を表5に示す。
(実施例4)
ガスバリア性付与剤に実施例1で得た中位径6.0μmの本発明の非晶質シリカを用い、EVAに添加した。得られたEVAフィルムについて気体透過度の測定を行った。結果を表5に示す。
(実施例5〜6)
本発明の非晶質シリカの中位径16.4μm(アスペクト比16.7)、24.6μm(アスペクト比12.6)にそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして行った。得られたガスバリア性付与剤をそれぞれEVAに添加し、作成したEVAフィルムについてそれぞれ気体透過度の測定を行った。結果を表5に示す。
(実施例7)
実施例1において、濾過、水洗後の非晶質シリカのケーキ1.6kg(固形分31%)を3.4Lの水に分散し、水酸化マグネシウムの25%水懸濁液100gを注下して30分間撹拌後、90℃に昇温して6時間加熱反応した。次に、ろ過、乾燥、粉砕、分級して、中位径5.7μmのMg被覆シリカ粒子を得た。該粒子をガスバリア性付与剤として、EVAに添加し、作成したEVAフィルムについて気体透過度の測定を行った。結果を表5に示す。
(実施例8)
中位径が15.0μmにした以外は、実施例7と同様にして行い、Mg被覆シリカ粒子を得た。該粒子をガスバリア性付与剤として、EVAに添加し、作成したEVAフィルムについて気体透過度の測定を行った。結果を表5に示す。
(比較例8)
ガスバリア性付与剤に中位径8.4μmのタルクを用いた以外は実施例3と同様にして行った。得られたEVAフィルムの気体透過度の測定を行った。結果を表5に示す。
Figure 2006057085
本発明のガスバリア性付与剤を構成するバーミキュライト酸処理物である非晶質シリカ(実施例1)の電子顕微鏡写真(倍率:5000倍)である。 実施例1のガスバリア性付与剤をポリエチレンに分散させてフィルムとしたときの断面構造を示す電子顕微鏡写真(倍率:1000倍)である。 図2電子顕微鏡写真でのケイ素の分布状態を示す分析SEM写真である。 市販の非晶質シリカ(比較例2)をポリエチレンに分散させてフィルムとしたときの断面構造を示す電子顕微鏡写真(倍率:1000倍)である。 図4の電子顕微鏡写真でのケイ素の分布状態を示す分析SEM写真である。 本発明のガスバリア性付与剤(実施例1)と比較例5で使用したシリカのX線回折図である。 本発明のガスバリア性付与剤(実施例1)と比較例5で使用したシリカのNMRスペクトルである。 本発明のガスバリア性付与剤(実施例1)をSBRに添加したシートの断面構造を示す電子顕微鏡写真(倍率:1000倍)である。 比較例7のシリカをSBRに添加したシートの断面構造を示す電子顕微鏡写真(倍率:1000倍)である。

Claims (8)

  1. バーミキュライトの酸処理によって得られた非晶質シリカからなることを特徴とするガスバリア性付与剤。
  2. 前記非晶質シリカが、29Si−NMR測定で、Q構造を示す化学シフトのピーク面積とQ構造を示す化学シフトのピーク面積との比Q/Qが0.25以上である請求項1に記載のガスバリア性付与剤。
  3. 前記非晶質シリカが、レーザ回折法で測定して中位径(D50)が1乃至30μm、面方向最大径/厚みで表されるアスペクト比が2乃至20の板状粒子形状を有し、85%以上の白色度、BET比表面積が200乃至600m/g、シリカ(SiO換算)含量が82重量%以上、OH基量が5mmol/g以上であり、且つ110℃乾燥物における灼熱減量(1050℃)が4.0乃至8.0重量%の範囲にある請求項1または2に記載のガスバリア性付与剤。
  4. 請求項1乃至3の何れかに記載のガスバリア性付与剤が重合体に配合されていることを特徴とするガスバリア性重合体組成物。
  5. 前記重合体が熱可塑性プラスチックであり、前記ガスバリア性付与剤が該熱可塑性プラスチック100重量部当り0.1乃至50重量部の量で配合されている請求項4に記載のガスバリア性重合体組成物。
  6. 請求項5に記載のガスバリア性重合体組成物からなる包装用フィルム。
  7. 前記重合体がエラストマーであり、前記ガスバリア性付与剤が該エラストマー100重量部当り1乃至100重量部の量で配合されている請求項5に記載のガスバリア性重合体組成物。
  8. 請求項7に記載のガスバリア性重合体組成物からなるシール材。
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