JP2006056475A - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 ステアリング機構を構成する部品の特性のばらつき等が存在しても、良好な操舵フィーリングと高い操安性能を得ることができる電動パワーステアリング装置を提供する。
【解決手段】 本発明の電動パワーステアリング装置は、舵角センサを有することなく、ドライバがハンドルを切り戻した領域を電動モータの回転方向から推定する操舵領域推定手段と、この操舵領域における電動モータの回転角度に対するトルクセンサ値と予め記憶された電動モータの回転角度に対する目標トルクセンサ値との偏差を算出する偏差算出手段と、この偏差が所定値以上の場合、制御マップを補正する補正手段と、を有する。
【選択図】 図14
【解決手段】 本発明の電動パワーステアリング装置は、舵角センサを有することなく、ドライバがハンドルを切り戻した領域を電動モータの回転方向から推定する操舵領域推定手段と、この操舵領域における電動モータの回転角度に対するトルクセンサ値と予め記憶された電動モータの回転角度に対する目標トルクセンサ値との偏差を算出する偏差算出手段と、この偏差が所定値以上の場合、制御マップを補正する補正手段と、を有する。
【選択図】 図14
Description
本発明は、電動パワーステアリング装置に係り、特に、舵角センサを有することなく、少なくとも車速及び操舵トルクに基づいて、目標操舵力特性になるように、電動モータを制御してステアリング機構を駆動する電動パワーステアリング装置に関する。
最近、例えば、特開平8−332964号公報等に示されているような、電動機の動力をステアリング系に作用させて操作力の低減を図るようにした電動パワーステアリング装置が使用されるようになってきている。この電動パワーステアリング装置は、操舵力検出手段を備え、この操舵力検出手段により運転者の操舵力(操舵トルク)を検出すると共に、同時に車速に基づき所定補正トルクを発生させるように電動機への駆動電流を制御し、運転者の操舵力の軽減を図っている。
このような電動パワーステアリング装置においては、良好な操舵フィーリングと高い操安性能を得るために、トーションバーやパワーアシストなどのステアリング機構を構成する個々の部品の特性をチューニングして、操舵角に対する操舵力の特性(以下「操舵力特性」という)を所望の操舵力特性(目標操舵力特性)となるように設定する必要がある。
しかしながら、目標操舵力特性を得るように、ステアリング機構の個々の部品を設計しても(設計時には目標操舵力特性を得ることは可能)、車両量産時には、ステアリング機構を構成する個々の部品(機械系部品及び電気系部品)の特性のばらつき、具体的には、ラバーカップリングのばらつき、部品のフリクションのばらつき、部品自体のばらつき、締付力のばらつき、モータ特性のばらつき等から、実際の操舵力特性は、目標操舵力特性と大きく異なり、ステアリング制御性能が低下し、その結果、操安フィールが理想フィールと大きく異なる場合がある。また、ステアリング機構を構成する部品の特性ばらつき以外に、負荷の変動(タイヤから受ける外力の変動)や経時変化もあり、目標操舵力特性が得られない場合がある。
しかしながら、目標操舵力特性を得るように、ステアリング機構の個々の部品を設計しても(設計時には目標操舵力特性を得ることは可能)、車両量産時には、ステアリング機構を構成する個々の部品(機械系部品及び電気系部品)の特性のばらつき、具体的には、ラバーカップリングのばらつき、部品のフリクションのばらつき、部品自体のばらつき、締付力のばらつき、モータ特性のばらつき等から、実際の操舵力特性は、目標操舵力特性と大きく異なり、ステアリング制御性能が低下し、その結果、操安フィールが理想フィールと大きく異なる場合がある。また、ステアリング機構を構成する部品の特性ばらつき以外に、負荷の変動(タイヤから受ける外力の変動)や経時変化もあり、目標操舵力特性が得られない場合がある。
一方、舵角センサにより操舵角を検出し、操舵角に対する操舵力の特性が目標操舵力特性となるように、フォードバック制御すれば、このような部品の特性のばらつきの問題をある程度は解決することができるが、そのためには、高価な舵角センサが必要となり、好ましくない。
このように、高価な舵角センサを設けなくても、ステアリング機構を構成する部品の特性のばらつきに起因する問題を解決して、目標操舵力特性となる電動パワーステアリング装置が要望されている。
このように、高価な舵角センサを設けなくても、ステアリング機構を構成する部品の特性のばらつきに起因する問題を解決して、目標操舵力特性となる電動パワーステアリング装置が要望されている。
そこで、本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、ステアリング機構を構成する部品の特性のばらつき等が存在しても、良好な操舵フィーリングと高い操安性能を得ることができる電動パワーステアリング装置を提供することを目的としている。
本発明は、舵角センサを有することなく、少なくとも車速及び操舵トルクに基づいて、目標操舵力特性になるように、電動モータを制御してステアリング機構を駆動する電動パワーステアリング装置であって、操舵トルクを検出するトルクセンサと、目標操舵力特性を制御マップにより規定した制御マップ手段と、電動モータの電流と電圧から電動モータの回転角速度及び回転角度を推定する回転角度推定手段と、ドライバがハンドルを切り戻した領域(特定操舵領域)を電動モータの回転方向から推定する操舵領域推定手段と、特定操舵領域における電動モータの回転角度に対するトルクセンサ値と予め記憶された電動モータの回転角度に対する目標トルクセンサ値との偏差を算出する偏差算出手段と、この偏差が所定値以上の場合、制御マップを補正する補正手段と、を有することを特徴としている。
このように構成された本発明においては、操舵領域推定手段がドライバがハンドルを切り戻した領域(特定操舵領域)を電動モータの回転方向から推定し、偏差算出手段が特定操舵領域における電動モータの回転角度に対するトルクセンサ値と予め記憶された電動モータの回転角度に対する目標トルクセンサ値との偏差を算出し、補正手段が偏差が所定値以上の場合、制御マップを補正するようにしているので、ステアリング機構の構成部品のばらつき等が存在しても、電動モータを制御して、目標操舵力特性となるように、ステアリング機構を駆動することができ、その結果、良好な操舵フィーリングと高い操安性を得ることが出来る。
このように構成された本発明においては、操舵領域推定手段がドライバがハンドルを切り戻した領域(特定操舵領域)を電動モータの回転方向から推定し、偏差算出手段が特定操舵領域における電動モータの回転角度に対するトルクセンサ値と予め記憶された電動モータの回転角度に対する目標トルクセンサ値との偏差を算出し、補正手段が偏差が所定値以上の場合、制御マップを補正するようにしているので、ステアリング機構の構成部品のばらつき等が存在しても、電動モータを制御して、目標操舵力特性となるように、ステアリング機構を駆動することができ、その結果、良好な操舵フィーリングと高い操安性を得ることが出来る。
本発明において、好ましくは、制御マップ手段の制御マップは摩擦補償ゲインを含み、補正手段は摩擦補償ゲインを補正する。
このように構成された本発明は、制御マップの摩擦補償ゲインを補正するので、簡易且つ効果的に目標操舵力特性を得ることができる。
本発明において、好ましくは、偏差算出手段は、電動モータの電流の値がほぼ一定となったときのトルクセンサ値を使用する。
本発明によれば、特性操舵領域を簡易且つ容易に推定することができる。
このように構成された本発明は、制御マップの摩擦補償ゲインを補正するので、簡易且つ効果的に目標操舵力特性を得ることができる。
本発明において、好ましくは、偏差算出手段は、電動モータの電流の値がほぼ一定となったときのトルクセンサ値を使用する。
本発明によれば、特性操舵領域を簡易且つ容易に推定することができる。
本発明において、好ましくは、操舵領域推定手段は、車速が所定の車速帯域のときに、特定操舵領域を推定する。
このように構成された本発明によれば、所定の車速帯域のとき特定操舵領域を推定し、この所定の車速帯域における制御マップを補正し、目標操舵力特性を得ることができる。
本発明において、好ましくは、操舵領域推定手段は、ワイパーが作動していないときに、操舵領域を推定する。
このように構成された本発明によれば、ワイパーが作動していないときに、特定操舵領域を推定するようにしているので、路面μの影響を受けない安定走行状態で、トルクセンサ値を算出することができる。
このように構成された本発明によれば、所定の車速帯域のとき特定操舵領域を推定し、この所定の車速帯域における制御マップを補正し、目標操舵力特性を得ることができる。
本発明において、好ましくは、操舵領域推定手段は、ワイパーが作動していないときに、操舵領域を推定する。
このように構成された本発明によれば、ワイパーが作動していないときに、特定操舵領域を推定するようにしているので、路面μの影響を受けない安定走行状態で、トルクセンサ値を算出することができる。
本発明において、好ましくは、操舵領域推定手段は、走行開始からの、走行時間、走行距離、及び/又は、エンジン水温が、それぞれ所定値以上のとき、特定操舵領域を推定する。
このように構成された本発明によれば、車両が走行開始後十分な時間が経過した後、特定操舵領域を推定するようにしているので、ステアリング機構を構成する部品の特性が安定する状態で、トルクセンサ値を算出することができる。
本発明において、好ましくは、操舵領域判定手段は、4輪の車輪速センサの変動幅が所定範囲内であるとき、特定操舵領域を推定する。
このように構成された本発明によれば、4輪の車輪速センサの変動幅が所定範囲内であるときは、路面が平らで、直進状態であるので、安定走行状態で、トルクセンサ値を算出することができる。
このように構成された本発明によれば、車両が走行開始後十分な時間が経過した後、特定操舵領域を推定するようにしているので、ステアリング機構を構成する部品の特性が安定する状態で、トルクセンサ値を算出することができる。
本発明において、好ましくは、操舵領域判定手段は、4輪の車輪速センサの変動幅が所定範囲内であるとき、特定操舵領域を推定する。
このように構成された本発明によれば、4輪の車輪速センサの変動幅が所定範囲内であるときは、路面が平らで、直進状態であるので、安定走行状態で、トルクセンサ値を算出することができる。
本発明において、好ましくは、操舵領域推定手段は、ターンスイッチが作動した状態で、特定操舵領域を推定する。
このように構成された本発明によれば、ターンスイッチが作動した状態は、高速道路でレーンチェンジしているような走行状態なので、安定走行状態で、トルクセンサ値を算出することができる。
本発明において、好ましくは、操舵領域判定手段は、車両に搭載されたナビゲーション装置からの信号により、以前に特定操舵領域であると判定した道路と同じ道路を走行中であると判断したとき、特定操舵領域を推定する。
このように構成された本発明によれば、以前に特定操舵領域であると推定した道路と同じ道路を走行中であると判断したとき、特定操舵領域を推定するので、経時変化等により操舵力特性が変化し、補正するような場合には有効である。
このように構成された本発明によれば、ターンスイッチが作動した状態は、高速道路でレーンチェンジしているような走行状態なので、安定走行状態で、トルクセンサ値を算出することができる。
本発明において、好ましくは、操舵領域判定手段は、車両に搭載されたナビゲーション装置からの信号により、以前に特定操舵領域であると判定した道路と同じ道路を走行中であると判断したとき、特定操舵領域を推定する。
このように構成された本発明によれば、以前に特定操舵領域であると推定した道路と同じ道路を走行中であると判断したとき、特定操舵領域を推定するので、経時変化等により操舵力特性が変化し、補正するような場合には有効である。
本発明の電動ステアリング装置によれば、ステアリング機構を構成する部品の特性のばらつき等が存在しても、良好な操舵フィーリングと高い操安性能を得ることができる。
先ず、図1乃至図9により、本発明の第1実施形態による電動パワーステアリング装置を説明する。
図1は、本発明が適用される自動車の電動パワーステアリング装置の一例を示す斜視図である。図1に示すように、自動車の電動パワーステアリング装置1は、ハンドル(ステアリングホィール)2を備え、このハンドル2は、ステアリングシャフト4の上端に連結されており、ハンドル2を操作する操舵力がステアリングシャフト4に伝達されるようになっている。このステアリングシャフト4の下端部には自在継手を介して中間シャフト6の上端が連結され、この中間シャフト6の下端部には車両応答可変機構であるVGR装置8が連結され、ハンドル舵角に対する前輪操舵の伝達比を変化させることができるようになっている。このVGR装置8の下端部には、中間シャフト10が連結され、この中間シャフト10の下端部には、ステアリングギヤボックス12が設けられている。このステアリングギヤボックス12の両側にはタイロッド14が連結されており、これらの各タイロッド14にはタイヤ(車輪)16が取り付けられている。
図1は、本発明が適用される自動車の電動パワーステアリング装置の一例を示す斜視図である。図1に示すように、自動車の電動パワーステアリング装置1は、ハンドル(ステアリングホィール)2を備え、このハンドル2は、ステアリングシャフト4の上端に連結されており、ハンドル2を操作する操舵力がステアリングシャフト4に伝達されるようになっている。このステアリングシャフト4の下端部には自在継手を介して中間シャフト6の上端が連結され、この中間シャフト6の下端部には車両応答可変機構であるVGR装置8が連結され、ハンドル舵角に対する前輪操舵の伝達比を変化させることができるようになっている。このVGR装置8の下端部には、中間シャフト10が連結され、この中間シャフト10の下端部には、ステアリングギヤボックス12が設けられている。このステアリングギヤボックス12の両側にはタイロッド14が連結されており、これらの各タイロッド14にはタイヤ(車輪)16が取り付けられている。
上述したステアリングギヤボックス12の内部には、ラック・ピニオン機構(図示せず)が設けられており、このピニオンには、中間シャフト10の下端が連結されている。一方、ラックの両側部には上述したようにタイロッド14を介してタイヤ16が連結されている。
ステアリングギヤボックス12には、減速ギヤ(図示せず)を介してピニオン側に力を付与する電動モータ18が設けられ、さらに、減速ギヤと中間シャフト10の間にはトルクセンサ(図示せず)が配置されている。このトルクセンサは、中間シャフト10に作用している操舵力(操舵トルク)を検出するためのものである。
これらのVGR装置8、電動モータ(DCモータ)18及びトルクセンサは、それぞれ制御ユニット20に接続されている。
ステアリングギヤボックス12には、減速ギヤ(図示せず)を介してピニオン側に力を付与する電動モータ18が設けられ、さらに、減速ギヤと中間シャフト10の間にはトルクセンサ(図示せず)が配置されている。このトルクセンサは、中間シャフト10に作用している操舵力(操舵トルク)を検出するためのものである。
これらのVGR装置8、電動モータ(DCモータ)18及びトルクセンサは、それぞれ制御ユニット20に接続されている。
次に、図2及び図3により、本発明の第1実施形態により得られる目標操舵力特性について説明する。図2は、目標操舵操舵力特性の一例(高車速域(100km/h程度)の目標操舵力特性)を示す線図であり、図3は、目標操舵力特性を得るための基本アシスト制御マップを示している。
先ず、本実施形態の目標操舵力特性は、高車速且つほぼ直進状態の走行時の特性を表すものである。具体的には、高車速とは、50km/h程度以上の速度であり、ほぼ直進状態とは、ハンドルをゆっくりと操作する状態、具体的には、0.2Hz以下の周波数でハンドルを繰り返し操作し横加速度(横G)が0.2G以下となるような操舵状態を想定しており、このような走行状態を「センターフィール感応域」と呼ぶ。
先ず、本実施形態の目標操舵力特性は、高車速且つほぼ直進状態の走行時の特性を表すものである。具体的には、高車速とは、50km/h程度以上の速度であり、ほぼ直進状態とは、ハンドルをゆっくりと操作する状態、具体的には、0.2Hz以下の周波数でハンドルを繰り返し操作し横加速度(横G)が0.2G以下となるような操舵状態を想定しており、このような走行状態を「センターフィール感応域」と呼ぶ。
次に、本実施形態においては、最大操舵力及び操舵に伴ってドライバが感じる「切り込み時の抜け感」という指標により、所望の操舵フィーリング(目標操舵フィーリング)が得られるようになっている。ここで、「切り込み時の抜け感」は、ドライバが、直進状態からハンドルを切り込むとき、操舵力が抜けるように感じる操舵フィーリングである。
図2に示すように、ドライバが直進状態からハンドルを切り込むとき、ハンドルの切り込みの開始から操舵力は増大し(領域A)、操舵力が所定値(点B)以上となったとき(領域C)、ドライバの負担を軽減するために、電動モータ18を駆動して、操舵力の増加の割合がそれ以前よりも小さくなるようにしているが、その操舵力の増加の割合が小さくなりすぎると、ドライバはハンドルの切込量(操舵量)が十分でないと感じてハンドルを切りすぎたり、狙ったコースを通れずに余計な修正操舵が必要になる。一方、この操舵力の増加の割合の減少量が適切であれば、操舵力が抜ける感じが良好となり、安全性が向上し、ドライバは、不安感のない操舵フィーリングを感じることができる。
このため、本実施形態では、「ハンドルの切り込みの開始から所定の操舵力となるまでの領域Aにおける操舵角の増加に対する操舵力の増加の割合」に対する「所定の操舵力以上となる領域Cにおける操舵角の増加に対する操舵力の増加の割合」の比率(これを「操舵力変化率」と言う)が、所定の比率(0.3〜0.5)となるように、設定されている。
また、ドライバが、ハンドルの切込量(操舵量)が最大となったとき(点D)に感じる最大操舵力の値も、所望の値となるように設定されている。
図2に示すように、ドライバが直進状態からハンドルを切り込むとき、ハンドルの切り込みの開始から操舵力は増大し(領域A)、操舵力が所定値(点B)以上となったとき(領域C)、ドライバの負担を軽減するために、電動モータ18を駆動して、操舵力の増加の割合がそれ以前よりも小さくなるようにしているが、その操舵力の増加の割合が小さくなりすぎると、ドライバはハンドルの切込量(操舵量)が十分でないと感じてハンドルを切りすぎたり、狙ったコースを通れずに余計な修正操舵が必要になる。一方、この操舵力の増加の割合の減少量が適切であれば、操舵力が抜ける感じが良好となり、安全性が向上し、ドライバは、不安感のない操舵フィーリングを感じることができる。
このため、本実施形態では、「ハンドルの切り込みの開始から所定の操舵力となるまでの領域Aにおける操舵角の増加に対する操舵力の増加の割合」に対する「所定の操舵力以上となる領域Cにおける操舵角の増加に対する操舵力の増加の割合」の比率(これを「操舵力変化率」と言う)が、所定の比率(0.3〜0.5)となるように、設定されている。
また、ドライバが、ハンドルの切込量(操舵量)が最大となったとき(点D)に感じる最大操舵力の値も、所望の値となるように設定されている。
次に、図2に示された目標操舵力特性は、図3に示された基本アシスト制御マップにより得ることが出来るようになっている。即ち、図2及び図3に示すように、ハンドルの切り込みの開始から操舵力が増大する領域Aでは、電動モータ18にモータ電流は供給されず不感帯領域となっており、所定の操舵力となった点Bにおいて、電動モータ18へのモータ電流の供給が開始される。この図2の点Bに相当するのが、図3のアシスト開始ポイント(Pas)である。この点Bからさらにハンドルが切られたとき、電動モータ18に、モータ電流が、アシストゲイン(Ka)で決まる電流増加率により供給される。
ここで、アシストゲイン(Ka)の値を補正することにより、上述した操舵力変化率を調整することができる。
また、このアシストゲインKaにより操舵力変化率を調整後に、アシスト開始ポイント(Pas)の値を補正することにより、最大操舵力の値を調整することができる。
ここで、アシストゲイン(Ka)の値を補正することにより、上述した操舵力変化率を調整することができる。
また、このアシストゲインKaにより操舵力変化率を調整後に、アシスト開始ポイント(Pas)の値を補正することにより、最大操舵力の値を調整することができる。
本実施形態においては、詳細は後述するように、この基本アシスト制御マップのアシストゲイン(Ka)及びアシスト開始ポイント(Pas)の値を補正することにより、車両量産時において、ステアリング機構を構成する部品の特性ばらつきにより、この目標操舵力特性と異なる特性になっていても、設計時の目標操舵力特性を得ることができるようになっている。
なお、操舵力特性は、ステアリング機構の構成部品の特性ばらつき以外に、タイヤから受ける負荷の変動や経時変化によっても変化するので、一度の補正で終わるのでなく、所定のタイミングで補正する必要がある。
なお、操舵力特性は、ステアリング機構の構成部品の特性ばらつき以外に、タイヤから受ける負荷の変動や経時変化によっても変化するので、一度の補正で終わるのでなく、所定のタイミングで補正する必要がある。
図4は、本発明の第1実施形態による制御ユニットを示すブロック図である。図4に示されているように、制御ユニット20は、車速センサ22からの車速信号及びトルクセンサ24からの操舵トルク信号を入力とする基本アシスト制御部26、電動モータ18からの電圧信号及び電流信号を入力とするモータ回転角速度推定部28、イグニッション(IG)30、設計時のステアリング剛性を記憶するメモリ部32、ステアリング剛性推定部34、各種センサ類(ナビゲーション装置36、ワイパSW38、エンジン水温センサ40、車輪速センサ42、ターンSW44)、ステアリング剛性推定部34からの信号を入力とする判定&補正部46、収斂性を上げるためのダンピング制御部(Function(A))48、ハンドルの戻しを良くするためのフリクション制御部(Function(B))50、及び、PI制御を行うモータ電流制御部52を有している。
ここで、目標モータ電流I0 は、以下の式により表される。
目標モータ電流I0 =Ka(Ts‐Pas)+F(A)+F(B)
ただし、Kaはアシストゲイン(モータ電流変化率)、Tsはトルクセンサ値、Pasはアシスト開始ポイントのトルク値、F(A)はダンピング制御を行うための電流値、F(B)はフリクション制御を行うための電流値である。なお、電動モータの特性により、モータ電流と発生トルクとの間には一定の関係がある。
このように、本実施形態では、制御ユニット20により、トルクセンサ値(操舵トルク)及び車速等に基づき、トルクセンサ値が小さくなるように基本アシスト制御を行う共に、判定&補正部46により、ステアリング機構の部品の特性のばらつき等によるステアリング剛性の変化を判定し、その変化量に応じて記憶されている基本アシスト制御マップを補正し、それにより、電動モータ18が制御され、その結果、設計時の目標操舵力特性を実現することができるようになっている。
目標モータ電流I0 =Ka(Ts‐Pas)+F(A)+F(B)
ただし、Kaはアシストゲイン(モータ電流変化率)、Tsはトルクセンサ値、Pasはアシスト開始ポイントのトルク値、F(A)はダンピング制御を行うための電流値、F(B)はフリクション制御を行うための電流値である。なお、電動モータの特性により、モータ電流と発生トルクとの間には一定の関係がある。
このように、本実施形態では、制御ユニット20により、トルクセンサ値(操舵トルク)及び車速等に基づき、トルクセンサ値が小さくなるように基本アシスト制御を行う共に、判定&補正部46により、ステアリング機構の部品の特性のばらつき等によるステアリング剛性の変化を判定し、その変化量に応じて記憶されている基本アシスト制御マップを補正し、それにより、電動モータ18が制御され、その結果、設計時の目標操舵力特性を実現することができるようになっている。
具体的には、基本アシスト制御部20は、車速センサ22からの車速信号及びトルクセンサ24からの操舵トルク信号に基づき、トルクセンサ値が小さくなるように電動モータ18を制御し、目標操舵力特性となるようにするためのものである。
次に、モータ回転角速度推定部28は、電動モータの回転角速度及び回転角度を推定するためのものである。電動モータ18は、直流モータ(DCモータ)であり、その電磁気モデル(パラメータとして電動モータの電流と電圧を含む)により、モータ回転角速度を推定することができ、これを積分することによりモータ回転角度を得る。ここで、モータ回転角度にモータ減速機の減速比をかけたものが、操舵角にほぼ相当すると考えてよい。
次に、モータ回転角速度推定部28は、電動モータの回転角速度及び回転角度を推定するためのものである。電動モータ18は、直流モータ(DCモータ)であり、その電磁気モデル(パラメータとして電動モータの電流と電圧を含む)により、モータ回転角速度を推定することができ、これを積分することによりモータ回転角度を得る。ここで、モータ回転角度にモータ減速機の減速比をかけたものが、操舵角にほぼ相当すると考えてよい。
ステアリング剛性推定部34を図2及び図5により説明する。ステアリング剛性推定部34は、操舵角センタ近傍領域(図2及び図5の領域A)における、ステアリング機構のステアリング剛性を推定するためのものである。操舵角センタ近傍領域(図2及び図5の領域A)では、電動モータによるアシスト制御は行われていない(電動モータに電流は供給されていない)ので、ステアリング機構自体が持つ機械的ステアリング剛性を検出することができる。
ここで、ステアリング剛性とは、操舵角の変化に対する操舵トルクの変化量、即ち、Δトルクセンサ値/Δ(モータ回転角度×減速比)で表される。
ステアリング剛性推定部34は、モータ電流(Io)が供給されていないことにより、操舵角センタ近傍領域(図2及び図5の領域A)であると判定し、次に、モータの電磁気モデルからモータ回転角速度を推定してモータ回転角度を算出し、さらに、このモータ回転角度とトルクセンサからのトルクセンサ値とにより、ステアリング剛性を推定する。
具体的には、ステアリング剛性推定部34は、図5に示されたように、ステアリング剛性の値(推定値)を検出し、この図5では、記憶値(目標値)とは異なった値となっている。
ここで、ステアリング剛性とは、操舵角の変化に対する操舵トルクの変化量、即ち、Δトルクセンサ値/Δ(モータ回転角度×減速比)で表される。
ステアリング剛性推定部34は、モータ電流(Io)が供給されていないことにより、操舵角センタ近傍領域(図2及び図5の領域A)であると判定し、次に、モータの電磁気モデルからモータ回転角速度を推定してモータ回転角度を算出し、さらに、このモータ回転角度とトルクセンサからのトルクセンサ値とにより、ステアリング剛性を推定する。
具体的には、ステアリング剛性推定部34は、図5に示されたように、ステアリング剛性の値(推定値)を検出し、この図5では、記憶値(目標値)とは異なった値となっている。
判定&補正部46は、ステアリング剛性推定部34で推定されたステアリング剛性が、安定した走行状態で推定されたものであることを判定すると共に記憶されている目標ステアリング剛性との差異が所定値以上の場合には、記憶されている基本アシスト制御マップを補正するためのものである。
ここで言うステアリング剛性は、ステアリング機構を構成する部品の特性ばらつきだけでなく、タイヤの影響や路面の影響を含むものである。そのため、ステアリング剛性は、路面μ、タイヤの空気圧等の状態、フリクション、車重量、車速、経年変化等により、変化する。
よって、本実施形態では、判定&補正部46が、車両の走行状態が安定している状態、例えば、路面μが大きく(ドライ路面で)、所定の車速帯域で、ターンSW(ウインカ)を作動させてレーンチェンジするような、ハンドルの操舵速度が安定した状態の下で、推定されたステアリング剛性を推定することにより、ステアリング剛性変化判定の精度を向上させている。判定&補正部46は、さらに、この推定されたステリング剛性と記憶されているステアリング剛性との差異が所定値以上であるか否かを判定し、差異が所定値以上の場合には、後述するように、アシストゲイン(Ka)及びアシスト開始ポイント(Pas)の値を補正して、設計時の目標操舵力特性となるようにしている。
ここで言うステアリング剛性は、ステアリング機構を構成する部品の特性ばらつきだけでなく、タイヤの影響や路面の影響を含むものである。そのため、ステアリング剛性は、路面μ、タイヤの空気圧等の状態、フリクション、車重量、車速、経年変化等により、変化する。
よって、本実施形態では、判定&補正部46が、車両の走行状態が安定している状態、例えば、路面μが大きく(ドライ路面で)、所定の車速帯域で、ターンSW(ウインカ)を作動させてレーンチェンジするような、ハンドルの操舵速度が安定した状態の下で、推定されたステアリング剛性を推定することにより、ステアリング剛性変化判定の精度を向上させている。判定&補正部46は、さらに、この推定されたステリング剛性と記憶されているステアリング剛性との差異が所定値以上であるか否かを判定し、差異が所定値以上の場合には、後述するように、アシストゲイン(Ka)及びアシスト開始ポイント(Pas)の値を補正して、設計時の目標操舵力特性となるようにしている。
次に、図6により、第1実施形態による制御フローを説明する。図6において、Sは、各ステップを示す。
この制御フローは、ステアリング剛性を推定して、予め記憶されている設計時の目標ステアリング剛性(記憶値)と比較して、大きく変化している場合には、制御マップ(Ka,Pas)を補正するためのものである。
ここで、予め記憶されている目標ステアリング剛性(記憶値)は、所定の条件(操舵量、操舵速度、車速帯域、路面状態等)で理想の操舵フィールが出るように設定したものであり、それゆえ、ほぼ同じ条件で、車両のステアリング剛性を推定し、記憶値と比較する必要がある。ここで、これらの条件を満たしていることを判断するためのセンサ類の全ては、車両に既設のものであり、本実施形態のために新たなセンサを設ける必要はないようになっている。
この制御フローは、ステアリング剛性を推定して、予め記憶されている設計時の目標ステアリング剛性(記憶値)と比較して、大きく変化している場合には、制御マップ(Ka,Pas)を補正するためのものである。
ここで、予め記憶されている目標ステアリング剛性(記憶値)は、所定の条件(操舵量、操舵速度、車速帯域、路面状態等)で理想の操舵フィールが出るように設定したものであり、それゆえ、ほぼ同じ条件で、車両のステアリング剛性を推定し、記憶値と比較する必要がある。ここで、これらの条件を満たしていることを判断するためのセンサ類の全ては、車両に既設のものであり、本実施形態のために新たなセンサを設ける必要はないようになっている。
先ず、S1において、上述したセンサの入力値を更新し、S2において、モータ回転角速度及びモータ回転角度を推定する。次に、S3において、車速及びモータ回転角速度が所定範囲内か否かを判定する。ここで、車速は、高車速域(100km/h程度)であり、回転角速度は、ゆっくり操舵していることを意味している。
次に、S3においてYESの場合には、S4に進み、操舵が直線からの切り込みであるか否かを判定する。この判定条件は、モータ回転角度が変化したときにトルク値が所定値以上変化し(条件1)、且つ、目標モータ電流(Io)=0(条件2)である。条件1は、トルクセンサとモータ回転角度とにより推定する。ここで、図4に示されているように、ステアリング剛性推定部34に入力される目標モータ電流の値から条件2を判定する。
次に、S3においてYESの場合には、S4に進み、操舵が直線からの切り込みであるか否かを判定する。この判定条件は、モータ回転角度が変化したときにトルク値が所定値以上変化し(条件1)、且つ、目標モータ電流(Io)=0(条件2)である。条件1は、トルクセンサとモータ回転角度とにより推定する。ここで、図4に示されているように、ステアリング剛性推定部34に入力される目標モータ電流の値から条件2を判定する。
次に、S4においてYESの場合には、S5に進み、ターンSW(ウインカ)がオンであるか否かを判定する。これにより、高速道路でレーンチェンジをしているような状況を判定する。
次に、S5においてYESの場合には、S6に進み、ワイパSWがオフであるか否かを判定する。これにより、路面状態(μ)を推定し、路面がウエットの場合には、タイヤが受ける負荷が記憶値(路面がドライの場合に設定)の場合と異なるので、この場合は、補正を行なわないようになっている。
次に、S6においてYESの場合には、S7に進み、4輪の車輪速センサの変動幅が所定範囲内か否かを判定する。これは、路面が平らであることを判定するためのものである。不整路面の場合には、4輪の車輪速の変動幅が大きくなるので補正は行なわないようになっている。
次に、S5においてYESの場合には、S6に進み、ワイパSWがオフであるか否かを判定する。これにより、路面状態(μ)を推定し、路面がウエットの場合には、タイヤが受ける負荷が記憶値(路面がドライの場合に設定)の場合と異なるので、この場合は、補正を行なわないようになっている。
次に、S6においてYESの場合には、S7に進み、4輪の車輪速センサの変動幅が所定範囲内か否かを判定する。これは、路面が平らであることを判定するためのものである。不整路面の場合には、4輪の車輪速の変動幅が大きくなるので補正は行なわないようになっている。
次に、S7においてYESの場合には、S8に進み、前回判定時と同じ道路を走行しているか否かを判定する。NAVI情報から、前回判定時と同じ道路を走行しているか否かを判定することができる。経時劣化やタイヤ交換後などにおいて、ステアリング剛性を推定する場合には、有効である。なお、初めてステアリング剛性を判定する場合には、このステップでの判定は省略される。
次に、S8においてYESの場合には、S9に進み、エンジン水温が所定値以上であるか否かを判定する。これは、ステアリング剛性は、ある程度の距離を走行してタイヤが温まっている走行状況で推定する必要があるからである。また、ステアリング機構のハード系は温度でさほど変わらないが、ラバーカップリングの硬さ等がエンジンの熱による雰囲気温度で変わる場合には、この状況も判断することができる。
次に、S9においてYESの場合には、S10に進み、所定時間または所定距離以上経過しているか否かを判定する。このステップは、S9と同様な理由により実行される。
次に、S8においてYESの場合には、S9に進み、エンジン水温が所定値以上であるか否かを判定する。これは、ステアリング剛性は、ある程度の距離を走行してタイヤが温まっている走行状況で推定する必要があるからである。また、ステアリング機構のハード系は温度でさほど変わらないが、ラバーカップリングの硬さ等がエンジンの熱による雰囲気温度で変わる場合には、この状況も判断することができる。
次に、S9においてYESの場合には、S10に進み、所定時間または所定距離以上経過しているか否かを判定する。このステップは、S9と同様な理由により実行される。
次に、S10においてYESの場合には、S11に進み、S11において、ステアリング剛性(Δトルクセンサ値/(Δモータ回転角度×減速比))を推定する。このステアリング剛性は、レーンチェンジ毎に推定する。
次に、S12において、予め記憶されているステアリング剛性(記憶値)とS11において推定されたステアリング剛性の推定値との差の絶対値が所定値より大きいか否かを判定する。
次に、S12においてYESの場合には、S13に進み、基本アシスト制御マップ(具体的には、KaとPasの値)を補正する。この補正方法は、後で、図7により詳細に説明する。
ここで、ステアリング剛性の判定は、複数回行なわれ、また、記憶値と推定値との差も、複数個となり、それらの値は一旦記憶され、これらの値にばらつきが少ない場合のみ、ドライバが違和感を感じないように、低車速時又は車両停車中に、制御マップが補正される。
また、上述したS5〜S10における判定は、省略しても良い。また、S5〜S10の任意のステップのみの判定を行なっても良い。
次に、S12において、予め記憶されているステアリング剛性(記憶値)とS11において推定されたステアリング剛性の推定値との差の絶対値が所定値より大きいか否かを判定する。
次に、S12においてYESの場合には、S13に進み、基本アシスト制御マップ(具体的には、KaとPasの値)を補正する。この補正方法は、後で、図7により詳細に説明する。
ここで、ステアリング剛性の判定は、複数回行なわれ、また、記憶値と推定値との差も、複数個となり、それらの値は一旦記憶され、これらの値にばらつきが少ない場合のみ、ドライバが違和感を感じないように、低車速時又は車両停車中に、制御マップが補正される。
また、上述したS5〜S10における判定は、省略しても良い。また、S5〜S10の任意のステップのみの判定を行なっても良い。
次に、図7乃至図9により、図6のS13における制御マップ補正について詳細に説明する。図7は、図6のS13のサブルーチンを示す制御フローであり、図8はアシストゲインKaを増加補正する場合の操舵力特性を示す線図であり、図9はアシストゲインKaを減少補正する場合の操舵力特性を示す線図である。図7において、Sは各ステップを示す。
上述したように、第1実施形態では、推定されたステアリング剛性と予め記憶されている目標ステアリング剛性(目標値,記憶値)との差が大きい場合には、「最大操舵力」と「切り込み時の抜け感」(=操舵力変化率)が、記憶されている目標値と出来る限り同じとなるように、アシストゲインKaとアシスト開始ポイントPasを補正している。その結果、ドライバーは、常に、良好な操舵フィール(目標操舵フィール)を得ることができる。
上述したように、第1実施形態では、推定されたステアリング剛性と予め記憶されている目標ステアリング剛性(目標値,記憶値)との差が大きい場合には、「最大操舵力」と「切り込み時の抜け感」(=操舵力変化率)が、記憶されている目標値と出来る限り同じとなるように、アシストゲインKaとアシスト開始ポイントPasを補正している。その結果、ドライバーは、常に、良好な操舵フィール(目標操舵フィール)を得ることができる。
図7に示すように、先ず、S21において、「記憶値−推定値」が負の値か否かを判定し、アシストゲインを増加補正すべきか減少補正すべきかを判定する。
記憶値−推定値が負の値の場合には、推定されたステアリング剛性が記憶値(目標値)よりも大きい場合であり、その場合には、図8(A)に示すように、最大操舵力が大きくなり(ハンドルが重くなり)、さらに、操舵力変化率も小さくなる(α1>α0)、即ち、切り込み時の抜け感が小さくなる。
この場合には、S22に進み、図8(B)に示すように、アシストゲインKaを増加補正し、操舵力変化率を目標値に合わせる(α1→α0)。アシストゲインKaを最初に補正するのは、アシストゲインKaは、操舵力変化率及び最大操舵力の両方の値に影響があるからである。
次に、S23に進み、アシストゲインKaを増加補正することにより得られた操舵力変化率が目標範囲内か否かを判定し、YESの場合には、S24に進む。
記憶値−推定値が負の値の場合には、推定されたステアリング剛性が記憶値(目標値)よりも大きい場合であり、その場合には、図8(A)に示すように、最大操舵力が大きくなり(ハンドルが重くなり)、さらに、操舵力変化率も小さくなる(α1>α0)、即ち、切り込み時の抜け感が小さくなる。
この場合には、S22に進み、図8(B)に示すように、アシストゲインKaを増加補正し、操舵力変化率を目標値に合わせる(α1→α0)。アシストゲインKaを最初に補正するのは、アシストゲインKaは、操舵力変化率及び最大操舵力の両方の値に影響があるからである。
次に、S23に進み、アシストゲインKaを増加補正することにより得られた操舵力変化率が目標範囲内か否かを判定し、YESの場合には、S24に進む。
S24では、図8(C)に示すように、アシスト開始ポイントPasを減少補正し、最大操舵力を目標値に合わせる。
次に、S25に進み、アシスト開始ポイントPasを減少補正することにより得られた最大操舵力が目標範囲内か否かを判定し、YESの場合には、S26に進む。
ここで、推定されたステアリング剛性の操舵フィールに与える影響は、他の車速域でも同様であるため、ここで得られた高車速域(100km/h程度)における制御パラメータであるアシストゲインKa及びアシスト開始ポイントPasの補正量を、他の車速域である、低速側域(60km/h〜100km/h)及び高速側域(100km/h〜120km/h)の制御パラメータにも、線形補間等により、適用する。
次に、S25に進み、アシスト開始ポイントPasを減少補正することにより得られた最大操舵力が目標範囲内か否かを判定し、YESの場合には、S26に進む。
ここで、推定されたステアリング剛性の操舵フィールに与える影響は、他の車速域でも同様であるため、ここで得られた高車速域(100km/h程度)における制御パラメータであるアシストゲインKa及びアシスト開始ポイントPasの補正量を、他の車速域である、低速側域(60km/h〜100km/h)及び高速側域(100km/h〜120km/h)の制御パラメータにも、線形補間等により、適用する。
また、S25において、最大操舵力が目標範囲内でないと判定された場合には、S27に進み、アシスト開始ポイントPasが下限値に達しているか否かを判定し、下限値に達していない場合には、S24に戻り、さらに、アシスト開始ポイントを減少補正する。
下限値に達している場合には、S28に進み、図8(D)に示すように、アシストゲインKaを更に増加補正する(α2<α0)。これは、重さが適当な方が操舵フィールが良いため、操舵力変化率よりも、最大操舵力を目標値に合わせるのを優先させるためである。
次に、S29に進み、最大操舵力が目標範囲内か否かを判定する。目標範囲内でない場合には、S28に戻り、さらに、アシストゲインKaを増加補正する。
ここで、アシスト開始ポイントPasに下限値を設定しているのは、操舵開始直後からアシストが開始されると車両が不安定となる可能性があり、良好な操舵フィールが得られないからである。
下限値に達している場合には、S28に進み、図8(D)に示すように、アシストゲインKaを更に増加補正する(α2<α0)。これは、重さが適当な方が操舵フィールが良いため、操舵力変化率よりも、最大操舵力を目標値に合わせるのを優先させるためである。
次に、S29に進み、最大操舵力が目標範囲内か否かを判定する。目標範囲内でない場合には、S28に戻り、さらに、アシストゲインKaを増加補正する。
ここで、アシスト開始ポイントPasに下限値を設定しているのは、操舵開始直後からアシストが開始されると車両が不安定となる可能性があり、良好な操舵フィールが得られないからである。
さらに、S23において、操舵力変化率が目標範囲内でないと判定された場合には、S30に進み、アシストゲインKaが上限値に達しているか否かを判定し、上限値に達していない場合には、S22に戻り、さらに、アシストゲインを増加補正する。
上限値に達している場合には、S31に進み、補正を中止する。
ここで、アシストゲインKaに上限値を設けているのは、アシストゲインKaが大きすぎると、切り込み時の抜け感が大きくなりすぎ、操舵フィールが悪化し、運転しづらくなるからである。
また、アシストゲインが上限値に達した場合、補正を中止するのは、アシストゲイン最大にて、さらにアシスト開始ポイントを減少補正すると、車両が不安定となる可能性があり、良好な操舵フィールが得られないからである。
上限値に達している場合には、S31に進み、補正を中止する。
ここで、アシストゲインKaに上限値を設けているのは、アシストゲインKaが大きすぎると、切り込み時の抜け感が大きくなりすぎ、操舵フィールが悪化し、運転しづらくなるからである。
また、アシストゲインが上限値に達した場合、補正を中止するのは、アシストゲイン最大にて、さらにアシスト開始ポイントを減少補正すると、車両が不安定となる可能性があり、良好な操舵フィールが得られないからである。
さらに、S21において、「記憶値−推定値」が負の値でないと判定された場合には、推定されたステアリング剛性が記憶値(目標値)よりも小さい場合であり、その場合には、図9(A)に示すように、最大操舵力が小さくなり(ハンドルが軽くなり)、さらに、操舵力変化率も大きくなる(α3<α0)、即ち、切り込み時の抜け感が大きくなる。
この場合には、S32に進み、図9(B)に示すように、アシストゲインKaを減少補正し、操舵力変化率を目標値に合わせる(α3→α0)。
次に、S33に進み、アシストゲインKaを減少補正することにより得られた操舵力変化率が目標範囲内か否かを判定し、目標範囲内でない場合には、S34に進み、アシストゲインKaが下限値(Ka=0)か否かを判定する。S34において、NOの場合には、S32に戻り、さらに、アシストゲインKaを減少補正し、YESの場合には、S26に進む。
この場合には、S32に進み、図9(B)に示すように、アシストゲインKaを減少補正し、操舵力変化率を目標値に合わせる(α3→α0)。
次に、S33に進み、アシストゲインKaを減少補正することにより得られた操舵力変化率が目標範囲内か否かを判定し、目標範囲内でない場合には、S34に進み、アシストゲインKaが下限値(Ka=0)か否かを判定する。S34において、NOの場合には、S32に戻り、さらに、アシストゲインKaを減少補正し、YESの場合には、S26に進む。
また、S33において、YESの場合には、S35に進み、図9(C)に示すように、アシスト開始ポイントPasを増加補正し、最大操舵力を目標値に合わせる。
次に、S36に進み、アシスト開始ポイントPasを増加補正することにより得られた最大操舵力が目標範囲内か否かを判定し、YESの場合には、S26に進む。
また、S36において、NOと判定された場合には、S37に進み、アシスト開始ポイントPasが上限値に達しているか否かを判定し、上限値に達していない場合には、S35に戻り、さらに、アシスト開始ポイントを増加補正する。上限値に達している場合には、S31に進み、補正を中止する。ここで、アシスト開始ポイントPasが上限値に達した場合、補正を中止するのは、「センターフィール感応域」の操舵フィールの調整が不要であるからである。
次に、S36に進み、アシスト開始ポイントPasを増加補正することにより得られた最大操舵力が目標範囲内か否かを判定し、YESの場合には、S26に進む。
また、S36において、NOと判定された場合には、S37に進み、アシスト開始ポイントPasが上限値に達しているか否かを判定し、上限値に達していない場合には、S35に戻り、さらに、アシスト開始ポイントを増加補正する。上限値に達している場合には、S31に進み、補正を中止する。ここで、アシスト開始ポイントPasが上限値に達した場合、補正を中止するのは、「センターフィール感応域」の操舵フィールの調整が不要であるからである。
次に、図10乃至図13により、本発明の第2実施形態を説明する。図10は、本発明の第2実施形態による電動パワーステアリング装置の制御ユニットを示すブロック図、図11は、目標操舵力特性と算出操舵力特性を示す線図、図12は、目標操舵力特性を得るための摩擦補償制御マップ(摩擦補償ゲインKc)を示し、図13は第2実施形態による制御フローを示す。
この第2実施形態は、上述した第1実施形態において、制御マップ補正する際、アシストゲインKa及びアシスト開始ポイントPasを、何らかの条件下で、又は、他の制約等により、調整できない場合、或いは、Ka及びPasのみ調整したのでは、目標操舵力特性を得ることができない場合に、摩擦補償ゲインKcを調整するようにしたものである。
第2実施形態による摩擦補償制御(摩擦補償ゲインKcの調整)は、直進から切り込んだときの操舵力の立ち上がり値を判定し、この立上り値が記憶値(目標値)より大きい場合には、ステアリング系のハンドルまわりの等価摩擦が大きいことを意味し、それゆえ、電動モータのアシスト量を増大させる必要があるため、摩擦補償ゲインを増加補正し、逆に、立上り値が記憶値(目標値)より小さい場合には、電動モータのアシスト量を減少させる必要があるため、摩擦補償ゲインを減少補正し、目標とする最大操舵力を感じるようにしたものである。
この第2実施形態は、上述した第1実施形態において、制御マップ補正する際、アシストゲインKa及びアシスト開始ポイントPasを、何らかの条件下で、又は、他の制約等により、調整できない場合、或いは、Ka及びPasのみ調整したのでは、目標操舵力特性を得ることができない場合に、摩擦補償ゲインKcを調整するようにしたものである。
第2実施形態による摩擦補償制御(摩擦補償ゲインKcの調整)は、直進から切り込んだときの操舵力の立ち上がり値を判定し、この立上り値が記憶値(目標値)より大きい場合には、ステアリング系のハンドルまわりの等価摩擦が大きいことを意味し、それゆえ、電動モータのアシスト量を増大させる必要があるため、摩擦補償ゲインを増加補正し、逆に、立上り値が記憶値(目標値)より小さい場合には、電動モータのアシスト量を減少させる必要があるため、摩擦補償ゲインを減少補正し、目標とする最大操舵力を感じるようにしたものである。
ここで、図10に示す制御ユニットにおいて、図4に示す第1実施形態の制御ユニット20と同一部分には同一符号を付し説明は省略する。
図10に示されているように、制御ユニット60は、車速センサ22からの車速信号及びトルクセンサ24からの操舵トルク信号を入力とする基本アシスト制御部26、電動モータ18からの電圧信号と電流信号を入力とするモータ回転角速度推定部28、イグニッション(IG)30、設計時のステアリング摩擦を記憶するメモリ部32、操舵力立上値算出部62、ターンSW(ウインカ)44、操舵力立上値算出部62からの信号を入力とする判定&補正部64、収斂性を上げるためのダンピング制御部(Function(A))48、ハンドルの安定性を向上させるための摩擦補償制御部66、及び、PI制御を行うモータ電流制御部52を有している。
図10に示されているように、制御ユニット60は、車速センサ22からの車速信号及びトルクセンサ24からの操舵トルク信号を入力とする基本アシスト制御部26、電動モータ18からの電圧信号と電流信号を入力とするモータ回転角速度推定部28、イグニッション(IG)30、設計時のステアリング摩擦を記憶するメモリ部32、操舵力立上値算出部62、ターンSW(ウインカ)44、操舵力立上値算出部62からの信号を入力とする判定&補正部64、収斂性を上げるためのダンピング制御部(Function(A))48、ハンドルの安定性を向上させるための摩擦補償制御部66、及び、PI制御を行うモータ電流制御部52を有している。
ここで、第2実施形態では、目標モータ電流I0 は、以下の式により表される。
目標モータ電流I0 =Ka(Ts‐Pas)+F(A)+Kc*sign(θ’)
ただし、Kaはアシストゲイン(モータ電流変化率)、Tsはトルクセンサ値、Pasはアシスト開始ポイントのトルク値、F(A)はダンピング制御を行うための電流値、Kcは摩擦補償ゲイン、θ’はモータ回転角速度である。なお、電動モータの特性により、モータ電流と発生トルクとの間には一定の関係がある。
このように、本実施形態では、制御ユニット60により、トルクセンサ値(操舵トルク)及び車速等に基づき、トルクセンサの検出値が小さくなるようにすると共に、判定&補正部64により、ステアリング機構の部品の特性のばらつき等に起因するステアリング系のハンドルまわりの等価摩擦の変化を判定し、その変化量に応じて摩擦補償制御マップ(摩擦補償ゲインKc)を補正し、それにより、電動モータ18が制御され、その結果、目標操舵力特性を実現することができるようになっている。
目標モータ電流I0 =Ka(Ts‐Pas)+F(A)+Kc*sign(θ’)
ただし、Kaはアシストゲイン(モータ電流変化率)、Tsはトルクセンサ値、Pasはアシスト開始ポイントのトルク値、F(A)はダンピング制御を行うための電流値、Kcは摩擦補償ゲイン、θ’はモータ回転角速度である。なお、電動モータの特性により、モータ電流と発生トルクとの間には一定の関係がある。
このように、本実施形態では、制御ユニット60により、トルクセンサ値(操舵トルク)及び車速等に基づき、トルクセンサの検出値が小さくなるようにすると共に、判定&補正部64により、ステアリング機構の部品の特性のばらつき等に起因するステアリング系のハンドルまわりの等価摩擦の変化を判定し、その変化量に応じて摩擦補償制御マップ(摩擦補償ゲインKc)を補正し、それにより、電動モータ18が制御され、その結果、目標操舵力特性を実現することができるようになっている。
ここで、図11において、実線は記憶された目標値である目標操舵力特性を示し、破線は今回算出された算出値である操舵力特性を示している。
操舵力立上値算出部62を図11により説明する。ドライバが直進状態からハンドルを切り込んだとき、図11に示すように、操舵力が立ち上がる。E,E’は、操舵力の立ち上り値を示している。この立ち上がり値は、モータ回転角度が変化したときにトルク値が所定値以上変化したとき、算出する。
判定&補正部64は、算出された操舵力立上値E’が、目標値の立上値Eに対し、所定値以上相違するか否かを判定し、目標値Eより大きい場合には、摩擦補償ゲインKcを増加補正し、目標値Eより小さい場合には、摩擦補償ゲインKcを減少補正するようになっている。
図11及び図12は、算出された操舵力立上値E’が目標値Eよりも大きいので、摩擦補償ゲインKcを増加補正(Kc1→Kc2)して、操舵力特性が目標操舵力特性と同じになるようにした例を示している。
操舵力立上値算出部62を図11により説明する。ドライバが直進状態からハンドルを切り込んだとき、図11に示すように、操舵力が立ち上がる。E,E’は、操舵力の立ち上り値を示している。この立ち上がり値は、モータ回転角度が変化したときにトルク値が所定値以上変化したとき、算出する。
判定&補正部64は、算出された操舵力立上値E’が、目標値の立上値Eに対し、所定値以上相違するか否かを判定し、目標値Eより大きい場合には、摩擦補償ゲインKcを増加補正し、目標値Eより小さい場合には、摩擦補償ゲインKcを減少補正するようになっている。
図11及び図12は、算出された操舵力立上値E’が目標値Eよりも大きいので、摩擦補償ゲインKcを増加補正(Kc1→Kc2)して、操舵力特性が目標操舵力特性と同じになるようにした例を示している。
次に、図13により、第2実施形態による制御フローを説明する。図13において、Sは、各ステップを示す。
この制御フローは、操舵力立上値を算出し、この算出値と、予め記憶されている操舵力立上値(記憶値)と比較して、大きく変化している場合には、摩擦補償制御パラメータである摩擦補償ゲインKcを補正するためのものである。
先ず、S41において、上述したセンサの入力値を更新し、S42において、ターンSW(ウインカ)がオフからオンに移行し、且つ、車速が所定範囲内か否かを判定する。具体的には、高速道路でレーンチェンジをしているような状況を判定する。ここで、車速は、高車速域(100km/h程度)である。
ここで、第1実施形態では、図6のS6〜S10(S5を除く)において、他の条件により、車両の操舵状態及び走行状態を判定するようにしているが、第2実施形態においても、同様な条件で、又は、これらの条件の任意の組合せにより、操舵状態及び走行状態を判定するようにしても良い。
この制御フローは、操舵力立上値を算出し、この算出値と、予め記憶されている操舵力立上値(記憶値)と比較して、大きく変化している場合には、摩擦補償制御パラメータである摩擦補償ゲインKcを補正するためのものである。
先ず、S41において、上述したセンサの入力値を更新し、S42において、ターンSW(ウインカ)がオフからオンに移行し、且つ、車速が所定範囲内か否かを判定する。具体的には、高速道路でレーンチェンジをしているような状況を判定する。ここで、車速は、高車速域(100km/h程度)である。
ここで、第1実施形態では、図6のS6〜S10(S5を除く)において、他の条件により、車両の操舵状態及び走行状態を判定するようにしているが、第2実施形態においても、同様な条件で、又は、これらの条件の任意の組合せにより、操舵状態及び走行状態を判定するようにしても良い。
次に、S43に進み、操舵力の立ち上り値を算出する。S42で判定した状態、即ち、直進状態からハンドルを切ったとき、モータ回転角度が変化しトルク値が所定値以上変化したとき、そのトルク値が、操舵力の立ち上り値として算出される。
次に、S44に進み、操舵力立ち上り値の記憶値(目標値)と算出値との差の絶対値が所定値より大きいか否かを判定する。
大きい場合には、S45に進み、摩擦補償制御パラメータである摩擦補償ゲインKcを補正する(図12参照)。なお、S45では、さらに、操舵力の立ち上り値の記憶値と算出値の大小を判定し、算出値が記憶値よりも大きい場合には、摩擦補償ゲインKcを増加補正し、算出値が記憶値よりも小さい場合には、摩擦補償ゲインKcを減少補正する。
次に、S44に進み、操舵力立ち上り値の記憶値(目標値)と算出値との差の絶対値が所定値より大きいか否かを判定する。
大きい場合には、S45に進み、摩擦補償制御パラメータである摩擦補償ゲインKcを補正する(図12参照)。なお、S45では、さらに、操舵力の立ち上り値の記憶値と算出値の大小を判定し、算出値が記憶値よりも大きい場合には、摩擦補償ゲインKcを増加補正し、算出値が記憶値よりも小さい場合には、摩擦補償ゲインKcを減少補正する。
ここで、操舵力の立ち上り値の判定は、複数回行なわれ、また、記憶値と推定値との差も、複数個となり、それらの値は一旦記憶され、これらの値にばらつきが少ない場合のみ、ドライバが違和感を感じないように、低速時又は車両停車中に、摩擦補償制御マップ(摩擦補償ゲインKc)が補正される。
次に、S46に進む。S43で算出された操舵力の立ち上り値の傾向は、他の車速域でもほぼ同じであるため、ここで得られた高車速域(100km/h程度)における増加補正された摩擦補償ゲインKcを、他の車速域である、低速側域(60km/h〜100km/h)及び高速側域(100km/h〜120km/h)にも、線形補間等により、適用する。
次に、S46に進む。S43で算出された操舵力の立ち上り値の傾向は、他の車速域でもほぼ同じであるため、ここで得られた高車速域(100km/h程度)における増加補正された摩擦補償ゲインKcを、他の車速域である、低速側域(60km/h〜100km/h)及び高速側域(100km/h〜120km/h)にも、線形補間等により、適用する。
次に、図14乃至図17により、本発明の第3実施形態を説明する。図14は、本発明の第3実施形態による電動パワーステアリング装置の制御ユニットを示すブロック図、図15は、目標操舵力特性の一例を示す線図、図16は第3実施形態による摩擦補償制御マップ(摩擦補償ゲインKc)を示す線図、図17は第3実施形態による制御フローである。
この第3実施形態は、上述した第1実施形態及び/又は第2実施形態の制御マップの補正では目標操舵力特性を得ることができない場合に、更なる摩擦補償制御を実行するようにしたものである。
第3実施形態による摩擦補償制御は、ドライバがハンドルを切り戻したときのトルクセンサ値(切り戻し時のステアリング系のハンドルまわりの等価摩擦)を算出し、このトルクセンサ値と予め記憶されている切り戻し時のトルクセンサ値(目標値)との偏差が大きい場合には、摩擦補償制御マップ(摩擦補償ゲインKc)を補正して、目標操舵力特性を得るようにしたものである。
この第3実施形態は、上述した第1実施形態及び/又は第2実施形態の制御マップの補正では目標操舵力特性を得ることができない場合に、更なる摩擦補償制御を実行するようにしたものである。
第3実施形態による摩擦補償制御は、ドライバがハンドルを切り戻したときのトルクセンサ値(切り戻し時のステアリング系のハンドルまわりの等価摩擦)を算出し、このトルクセンサ値と予め記憶されている切り戻し時のトルクセンサ値(目標値)との偏差が大きい場合には、摩擦補償制御マップ(摩擦補償ゲインKc)を補正して、目標操舵力特性を得るようにしたものである。
ここで、図14に示す制御ユニットにおいて、図4に示す第1実施形態の制御ユニット20と同一部分には同一符号を付し説明は省略する。
図14に示されているように、制御ユニット70は、車速センサ22からの車速信号及びトルクセンサ24からの操舵トルク信号を入力とする基本アシスト制御部26、電動モータ18からの電圧信号及び電流信号を入力とするモータ回転角速度推定部28、イグニッション(IG)30、設計時のハンドル切り戻し時のステアリング摩擦を記憶するメモリ部32、各種センサ類(ナビゲーション装置36、ワイパSW38、エンジン水温センサ40、車輪速センサ41、ターンSW44)、ステアリング摩擦算出部72、ステアリング摩擦算出部72からの信号を入力とする判定&補正部74、収斂性を上げるためのダンピング制御部(Function(A))48、摩擦補償制御部76、及び、PI制御を行うモータ電流制御部52を有している。
図14に示されているように、制御ユニット70は、車速センサ22からの車速信号及びトルクセンサ24からの操舵トルク信号を入力とする基本アシスト制御部26、電動モータ18からの電圧信号及び電流信号を入力とするモータ回転角速度推定部28、イグニッション(IG)30、設計時のハンドル切り戻し時のステアリング摩擦を記憶するメモリ部32、各種センサ類(ナビゲーション装置36、ワイパSW38、エンジン水温センサ40、車輪速センサ41、ターンSW44)、ステアリング摩擦算出部72、ステアリング摩擦算出部72からの信号を入力とする判定&補正部74、収斂性を上げるためのダンピング制御部(Function(A))48、摩擦補償制御部76、及び、PI制御を行うモータ電流制御部52を有している。
ここで、第3実施形態では、目標モータ電流I0 は、以下の式により表される(第2実施形態の式と同じである)。
目標モータ電流I0 =Ka(Ts‐Pas)+F(A)+Kc*sign(θ’)
ただし、Kaはアシストゲイン(モータ電流変化率)、Tsはトルクセンサ値、Pasはアシスト開始ポイントのトルク値、F(A)はダンピング制御を行うための電流値、Kcは摩擦補償ゲイン(トルク値)、θ’はモータ回転角速度である。なお、電動モータの特性により、モータ電流と発生トルクとの間には一定の関係がある。
このように、本実施形態では、制御ユニット70により、トルクセンサ値(操舵トルク)及び車速等に基づき、トルクセンサの検出値が小さくなるようにすると共に、判定&補正部74により、ステアリング機構の部品の特性のばらつき等に起因するハンドル切り戻し時のステアリング摩擦の変化を判定し、その変化量に応じて摩擦補償ゲインKcを補正し、それにより、電動モータ18が制御され、その結果、目標操舵力特性を実現することができるようになっている。
目標モータ電流I0 =Ka(Ts‐Pas)+F(A)+Kc*sign(θ’)
ただし、Kaはアシストゲイン(モータ電流変化率)、Tsはトルクセンサ値、Pasはアシスト開始ポイントのトルク値、F(A)はダンピング制御を行うための電流値、Kcは摩擦補償ゲイン(トルク値)、θ’はモータ回転角速度である。なお、電動モータの特性により、モータ電流と発生トルクとの間には一定の関係がある。
このように、本実施形態では、制御ユニット70により、トルクセンサ値(操舵トルク)及び車速等に基づき、トルクセンサの検出値が小さくなるようにすると共に、判定&補正部74により、ステアリング機構の部品の特性のばらつき等に起因するハンドル切り戻し時のステアリング摩擦の変化を判定し、その変化量に応じて摩擦補償ゲインKcを補正し、それにより、電動モータ18が制御され、その結果、目標操舵力特性を実現することができるようになっている。
ここで、ドライバのハンドルの切り戻し時(図15の点Dと点F)には、モータ回転角度(操舵角)は同一で、モータ電流値は変化せず(図15の領域G)、このとき、モータ電流値は一定であっても、切り戻り領域(図15の点F近傍)におけるステアリング摩擦(ステアリング系のハンドルまわりの等価摩擦)の大きさは異なる。
よって、本実施形態では、舵角センサを設けなくても、ステアリング摩擦算出部72が、「モータ電流変化≒0」及び「電動モータの回転方向が反転」という条件により、ハンドルの切り戻し時点を判断し、そのときのステアリング摩擦をトルクセンサ値から求め、判定&補正部74が、この算出されたステアリング摩擦(算出値)と予め記憶されているステアリング摩擦(設計値、記憶値)との偏差を判定し、偏差が大であるときは、摩擦補償ゲインKcを補正するようにしたものである。
さらに、第3実施形態では、第1実施形態と同様に、記憶値(目標値)は、所定の条件(車速、路面等)で理想の操舵フィールが出るように設定したものであり、それゆえ、ほぼ同じ条件で、ステアリング摩擦を算出し、予め記憶されている値(設計値、目標値、記憶値)と比較するようにしている。
よって、本実施形態では、舵角センサを設けなくても、ステアリング摩擦算出部72が、「モータ電流変化≒0」及び「電動モータの回転方向が反転」という条件により、ハンドルの切り戻し時点を判断し、そのときのステアリング摩擦をトルクセンサ値から求め、判定&補正部74が、この算出されたステアリング摩擦(算出値)と予め記憶されているステアリング摩擦(設計値、記憶値)との偏差を判定し、偏差が大であるときは、摩擦補償ゲインKcを補正するようにしたものである。
さらに、第3実施形態では、第1実施形態と同様に、記憶値(目標値)は、所定の条件(車速、路面等)で理想の操舵フィールが出るように設定したものであり、それゆえ、ほぼ同じ条件で、ステアリング摩擦を算出し、予め記憶されている値(設計値、目標値、記憶値)と比較するようにしている。
次に、図17により、第3実施形態による制御フローを説明する。図17において、Sは、各ステップを示す。
この制御フローは、ハンドルの切り戻し時のステアリング摩擦を算出して、予め記憶されている値(記憶値)と比較して、大きく変化している場合には、摩擦補償制御マップ(摩擦補償ゲインKc)を補正するためのものである。
先ず、S51において、上述したセンサの入力値を更新し、S52において、車速が所定範囲内、かつ、目標モータ電流変化≒0(電流の値がほぼ一定)、かつ、モータ回転方向反転であるか否かを判定する。ここで、車速は、高車速域(100km/h程度)である。
次に、S52においてYESの場合には、S53に進み、ターンSW(ウインカ)がオンであるか否かを判定する。これにより、高速道路でレーンチェンジをしているような状況を判定する。
次に、S53においてYESの場合には、S54に進み、ワイパSWがオフであるか否かを判定する。これにより、路面状態μを推定し、路面がウエットの場合には、タイヤが受ける負荷が記憶値(路面がドライの場合に設定)の場合と異なるので、この場合は、補正を行なわないようになっている。
この制御フローは、ハンドルの切り戻し時のステアリング摩擦を算出して、予め記憶されている値(記憶値)と比較して、大きく変化している場合には、摩擦補償制御マップ(摩擦補償ゲインKc)を補正するためのものである。
先ず、S51において、上述したセンサの入力値を更新し、S52において、車速が所定範囲内、かつ、目標モータ電流変化≒0(電流の値がほぼ一定)、かつ、モータ回転方向反転であるか否かを判定する。ここで、車速は、高車速域(100km/h程度)である。
次に、S52においてYESの場合には、S53に進み、ターンSW(ウインカ)がオンであるか否かを判定する。これにより、高速道路でレーンチェンジをしているような状況を判定する。
次に、S53においてYESの場合には、S54に進み、ワイパSWがオフであるか否かを判定する。これにより、路面状態μを推定し、路面がウエットの場合には、タイヤが受ける負荷が記憶値(路面がドライの場合に設定)の場合と異なるので、この場合は、補正を行なわないようになっている。
次に、S54においてYESの場合には、S55に進み、4輪の車輪速センサの変動幅が所定範囲内か否かを判定する。これは、路面が平らであることを判定するためのものである。路面が荒れている場合には、4輪の車輪速の変動幅が大きくなるので、このような走行状態では、補正は行なわないようになっている。
次に、S55においてYESの場合には、S56に進み、前回判定時と同じ道路を走行しているか否かを判定する。NAVI情報から、前回判定時と同じ道路を走行しているか否かを判定することができる。経時劣化やタイヤ交換後などにおいて、ステアリング摩擦を推定する場合には、有効である。なお、初めてステアリング摩擦を判定する場合には、このステップでの判定は省略される。
次に、S56においてYESの場合には、S57に進み、エンジン水温が所定値以上であるか否かを判定する。これは、ステアリング摩擦は、ある程度の距離を走行してタイヤが温まっている走行状況で推定する必要があるからである。また、ステアリング機構のハード系は温度でさほど変わらないが、ラバーカップリングの硬さ等がエンジンの熱による雰囲気温度で変わる場合には、この状況も判断することができる。
次に、S57においてYESの場合には、S58に進み、所定時間または所定距離以上経過しているか否かを判定する。このステップは、S57と同様な理由により実行される。
次に、S55においてYESの場合には、S56に進み、前回判定時と同じ道路を走行しているか否かを判定する。NAVI情報から、前回判定時と同じ道路を走行しているか否かを判定することができる。経時劣化やタイヤ交換後などにおいて、ステアリング摩擦を推定する場合には、有効である。なお、初めてステアリング摩擦を判定する場合には、このステップでの判定は省略される。
次に、S56においてYESの場合には、S57に進み、エンジン水温が所定値以上であるか否かを判定する。これは、ステアリング摩擦は、ある程度の距離を走行してタイヤが温まっている走行状況で推定する必要があるからである。また、ステアリング機構のハード系は温度でさほど変わらないが、ラバーカップリングの硬さ等がエンジンの熱による雰囲気温度で変わる場合には、この状況も判断することができる。
次に、S57においてYESの場合には、S58に進み、所定時間または所定距離以上経過しているか否かを判定する。このステップは、S57と同様な理由により実行される。
次に、S58においてYESの場合には、S59に進み、S52で判定されたハンドルの切り戻し時のステアリング摩擦(操舵トルク)をトルクセンサ値から推定する。このトルクセンサ値として、モータ電流がほぼ一定となったときのトルクセンサ値を使用する。つまり、このS59においては、ステアリング摩擦を、電動モータの電流の値がほぼ一定となっているとき(目標モータ電流変化≒0)のトルクセンサ値(図15の領域Gにおける減少量)から推定する。なお、ハンドル切り込み時とハンドル切り戻し時における同じ操舵角のとき(モータ電流が同じとき)のそれぞれのトルク値の差を、ステアリング摩擦として推定しても良い。このステアリング摩擦は、レーンチェンジ毎に推定する。
次に、S60において、ステアリング摩擦の予め記憶されている記憶値(目標値)とS59において算出されたステアリング摩擦の算出値との差の絶対値が所定値より大きいか否かを判定する。
次に、S60においてYESの場合には、S61に進み、摩擦補償ゲインKcを補正する。
具体的には、ステアリング摩擦に関し、算出値が記憶値よりも大きい場合には、図16に示す摩擦補償ゲインKcの値を増加補正し、算出値が記憶値よりも小さい場合には、摩擦補償ゲインKcの値を減少補正する。
次に、S60において、ステアリング摩擦の予め記憶されている記憶値(目標値)とS59において算出されたステアリング摩擦の算出値との差の絶対値が所定値より大きいか否かを判定する。
次に、S60においてYESの場合には、S61に進み、摩擦補償ゲインKcを補正する。
具体的には、ステアリング摩擦に関し、算出値が記憶値よりも大きい場合には、図16に示す摩擦補償ゲインKcの値を増加補正し、算出値が記憶値よりも小さい場合には、摩擦補償ゲインKcの値を減少補正する。
ここで、ステアリング摩擦の算出は、複数回行なわれ、また、記憶値と推定値との差も、複数個となり、それらの値は一旦記憶され、これらの値にばらつきが少ない場合のみ、車両停車中に、摩擦補償制御マップ(摩擦補償ゲインKc)が補正される。走行中に補正したのでは、走行中に操舵力特性が変化するのでドライバが違和感を感じるので、好ましくない。
また、上述したS53〜S58における判定は、省略しても良い。また、S53〜S58の任意のステップのみの判定を行なっても良い。
ここで、S59で算出されたステアリング摩擦の傾向は、他の車速域でも同様であるため、ここで得られた高車速域(100km/h程度)における制御パラメータである摩擦補償ゲインKcの補正量を、他の車速域である、低速側域(60km/h〜100km/h)及び高速側域(100km/h〜120km/h)の制御パラメータにも、線形補間等により、適用する。
また、上述したS53〜S58における判定は、省略しても良い。また、S53〜S58の任意のステップのみの判定を行なっても良い。
ここで、S59で算出されたステアリング摩擦の傾向は、他の車速域でも同様であるため、ここで得られた高車速域(100km/h程度)における制御パラメータである摩擦補償ゲインKcの補正量を、他の車速域である、低速側域(60km/h〜100km/h)及び高速側域(100km/h〜120km/h)の制御パラメータにも、線形補間等により、適用する。
次に、図18乃至図23により、本発明の第4実施形態を説明する。図18は本発明の第4実施形態による電動パワーステアリング装置の制御ユニットを示すブロック図、図19は操舵力特性を示す線図、図20は目標操舵力特性を得るための基本アシスト制御マップ(アシストゲインKa、アシスト開始ポイントPas)、図21は目標操舵力特性を得るための摩擦補償制御マップ(摩擦補償ゲインKc)、図22は第4実施形態による制御フロー、図23は目標操舵力特性を得るための他の制御マップを示している。
この第4実施形態は、車速が所定値範囲内(所定の高車速域)で、且つ、ゆっくりしたレーンチェンジが行われたとき、トルクセンサから最大操舵力を、ターンSW(ウインカ)オン以降のモータ回転角度とトルクセンサとの関係から操舵力変化率を、ターンSWがオンからオフに変ったとき(ON→OFF時)のトルクセンサから操舵力ヒス(≒摩擦)をそれぞれ算出し、これらの算出値がそれぞれの予め記憶された値(目標操舵力特性)との偏差が大きいときには、この偏差に応じて、最大操舵力に関してはアシスト開始ポイントを、操舵力変化率に関してはアシストゲインを、操舵力ヒスに関しては摩擦補償ゲインをそれぞれ主に補正するようにしたものである。
この第4実施形態は、車速が所定値範囲内(所定の高車速域)で、且つ、ゆっくりしたレーンチェンジが行われたとき、トルクセンサから最大操舵力を、ターンSW(ウインカ)オン以降のモータ回転角度とトルクセンサとの関係から操舵力変化率を、ターンSWがオンからオフに変ったとき(ON→OFF時)のトルクセンサから操舵力ヒス(≒摩擦)をそれぞれ算出し、これらの算出値がそれぞれの予め記憶された値(目標操舵力特性)との偏差が大きいときには、この偏差に応じて、最大操舵力に関してはアシスト開始ポイントを、操舵力変化率に関してはアシストゲインを、操舵力ヒスに関しては摩擦補償ゲインをそれぞれ主に補正するようにしたものである。
ここで、図18に示す制御ユニットにおいて、図4に示す第1実施形態の制御ユニット20と同一部分には同一符号を付し説明は省略する。
図18に示されているように、制御ユニット80は、車速センサ22からの車速信号及びトルクセンサ24からの操舵トルク信号を入力とする基本アシスト制御部26、電動モータ18からの電圧信号及び電流信号を入力とするモータ回転角速度推定部28、イグニッション(IG)30、目標操舵力特性を記憶するメモリ部32、ターンSW44、操舵力特性算出部(操舵力特性:最大操舵力、操舵力変化率、操舵力ヒス)82、操舵力特性算出部からの信号を入力とする判定&補正部84、収斂性を上げるためのダンピング制御部(Function(A))48、摩擦補償制御部86、及び、PI制御を行うモータ電流制御部52を有している。
図18に示されているように、制御ユニット80は、車速センサ22からの車速信号及びトルクセンサ24からの操舵トルク信号を入力とする基本アシスト制御部26、電動モータ18からの電圧信号及び電流信号を入力とするモータ回転角速度推定部28、イグニッション(IG)30、目標操舵力特性を記憶するメモリ部32、ターンSW44、操舵力特性算出部(操舵力特性:最大操舵力、操舵力変化率、操舵力ヒス)82、操舵力特性算出部からの信号を入力とする判定&補正部84、収斂性を上げるためのダンピング制御部(Function(A))48、摩擦補償制御部86、及び、PI制御を行うモータ電流制御部52を有している。
ここで、第3実施形態では、目標モータ電流I0 は、以下の式により表される(第2実施形態及び第3実施形態の式と同じである)。
目標モータ電流I0 =Ka(Ts‐Pas)+F(A)+Kc*sign(θ’)
ただし、Kaはアシストゲイン(モータ電流変化率)、Tsはトルクセンサ値、Pasはアシスト開始ポイントのトルク値、F(A)はダンピング制御を行うための電流値、Kcは摩擦補償ゲイン(トルク値)、θ’はモータ回転角速度である。なお、電動モータの特性により、モータ電流と発生トルクとの間には一定の関係がある。
このように、本実施形態では、制御ユニット80により、トルクセンサの検出値(操舵トルク)及び車速等に基づき、トルクセンサの検出値が小さくなるようにすると共に、判定&補正部84により、ステアリング機構の部品の特性のばらつき等に起因して変化する最大操舵力、操舵力変化率、操舵力ヒスの値を判定し、その変化量に応じてアシスト開始ポイントPas、アシストゲインKa、摩擦補償ゲインKcを補正し、それにより、電動モータ18が制御され、その結果、目標操舵力特性を実現することができるようになっている。
目標モータ電流I0 =Ka(Ts‐Pas)+F(A)+Kc*sign(θ’)
ただし、Kaはアシストゲイン(モータ電流変化率)、Tsはトルクセンサ値、Pasはアシスト開始ポイントのトルク値、F(A)はダンピング制御を行うための電流値、Kcは摩擦補償ゲイン(トルク値)、θ’はモータ回転角速度である。なお、電動モータの特性により、モータ電流と発生トルクとの間には一定の関係がある。
このように、本実施形態では、制御ユニット80により、トルクセンサの検出値(操舵トルク)及び車速等に基づき、トルクセンサの検出値が小さくなるようにすると共に、判定&補正部84により、ステアリング機構の部品の特性のばらつき等に起因して変化する最大操舵力、操舵力変化率、操舵力ヒスの値を判定し、その変化量に応じてアシスト開始ポイントPas、アシストゲインKa、摩擦補償ゲインKcを補正し、それにより、電動モータ18が制御され、その結果、目標操舵力特性を実現することができるようになっている。
ここで、図19により、操舵力変化率、最大操舵力及び操舵力ヒスについて説明する。第4実施形態において、「操舵力変化率」は、上述した第1実施形態の場合と同じであり、図19に示すように、「ハンドルの切り込みの開始から所定の操舵力となるまでの領域Aにおける操舵角の増加に対する操舵力の増加の割合」に対する「所定の操舵力以上となる領域Cにおける操舵角の増加に対する操舵力の増加の割合」の比率であり、所定の比率(0.3〜0.5)となるように、設定されている。
「最大操舵力」も、第1実施形態と同じであり、図19に示すように、ドライバが、ハンドルの切込量(操舵量)が最大となったとき(点D)に感じる操舵力であり、この最大操舵力の値も、所望の値となるように設定されている。
「操舵力ヒス」は、図19に示すように、ドライバがハンドルを切り戻すとき(領域G)のステアリング摩擦(ステアリング系のハンドルまわりの等価摩擦)である。ステアリング摩擦が大きいと、領域Gにおける操舵トルクの減少量は大きくなる。よって、操舵力ヒスが大き過ぎる(領域Gにおける操舵トルクの減少量が大きすぎる)とハンドルの戻りが悪いと感じる。
「最大操舵力」も、第1実施形態と同じであり、図19に示すように、ドライバが、ハンドルの切込量(操舵量)が最大となったとき(点D)に感じる操舵力であり、この最大操舵力の値も、所望の値となるように設定されている。
「操舵力ヒス」は、図19に示すように、ドライバがハンドルを切り戻すとき(領域G)のステアリング摩擦(ステアリング系のハンドルまわりの等価摩擦)である。ステアリング摩擦が大きいと、領域Gにおける操舵トルクの減少量は大きくなる。よって、操舵力ヒスが大き過ぎる(領域Gにおける操舵トルクの減少量が大きすぎる)とハンドルの戻りが悪いと感じる。
次に、目標操舵力特性(操舵力変化率及び最大操舵力)は、図20に示された基本アシスト制御マップにより、得ることが出来るようになっている。即ち、図19及び図20に示すように、ハンドルの切り込みの開始から操舵力は増大する領域Aでは、電動モータ18にモータ電流は供給されず不感帯領域となっており、所定の操舵力となった点Bにおいて、電動モータ18へのモータ電流の供給が開始される。この図19の点Bに相当する図20の点が、アシスト開始ポイント(Pas)である。この点Bからさらにハンドルが切られたとき、電動モータ18には、モータ電流がアシストゲイン(Ka)で決まる電流増加率により供給される。アシストゲイン(Ka)の値を補正することにより、操舵力変化率を調整することができる。
また、このアシストゲインKaにより操舵力変化率を調整後に、アシスト開始ポイントPasの値を補正することにより、最大操舵力の値を調整することができる。
また、このアシストゲインKaにより操舵力変化率を調整後に、アシスト開始ポイントPasの値を補正することにより、最大操舵力の値を調整することができる。
次に、目標操舵力特性(操舵力ヒス)は、図21に示された摩擦補償制御マップにより、得ることができるようになっている。即ち、操舵力ヒスが記憶値(目標値)より大きい場合には、電動モータのアシスト量を増大させる必要があるため、摩擦補償ゲインKcを増加補正し、逆に、操舵力ヒスが記憶値(目標値)より小さい場合には、電動モータのアシスト量を減少させる必要があるため、摩擦補償ゲインを減少補正し、ハンドルの戻りが良いと感じるようにしている。
なお、操舵力特性(最大操舵力、操舵力変化率、操舵力ヒス)は、ステアリング機構の部品の特性ばらつき以外に、負荷の変動や経時変化により、変化するので、一度の補正で終わるのでなく、所定のタイミングで補正する必要がある。
なお、操舵力特性(最大操舵力、操舵力変化率、操舵力ヒス)は、ステアリング機構の部品の特性ばらつき以外に、負荷の変動や経時変化により、変化するので、一度の補正で終わるのでなく、所定のタイミングで補正する必要がある。
次に、図22により、第4実施形態による制御フローを説明する。図22において、Sは、各ステップを示す。
この制御フローは、車速が所定値範囲内で、且つ、ゆっくりしたレーンチェンジが行われたとき、最大操舵力、操舵力変化率、及び、操舵力ヒスをそれぞれ算出し、これらの算出値が予め記憶された目標値(記憶値)と偏差が大きいときには、偏差の大きさに応じて、アシスト開始ポイントPas、アシストゲインKa、摩擦補償ゲインKcを補正して、目標操舵力特性を得るためのものである。
先ず、S71において、上述したセンサの入力値を更新し、S72において、車速が所定範囲内か否かを判定する。具体的には、車速は、高車速域(100km/h程度)である。
この制御フローは、車速が所定値範囲内で、且つ、ゆっくりしたレーンチェンジが行われたとき、最大操舵力、操舵力変化率、及び、操舵力ヒスをそれぞれ算出し、これらの算出値が予め記憶された目標値(記憶値)と偏差が大きいときには、偏差の大きさに応じて、アシスト開始ポイントPas、アシストゲインKa、摩擦補償ゲインKcを補正して、目標操舵力特性を得るためのものである。
先ず、S71において、上述したセンサの入力値を更新し、S72において、車速が所定範囲内か否かを判定する。具体的には、車速は、高車速域(100km/h程度)である。
次に、車速が所定範囲内の場合は、S73に進み、ドライバの操舵状態がゆっくりしたレーンチェンジか否かを判定する。具体的には、ターンSWのOFF→ON→OFFの時間が所定時間内で、モータ回転角速度がゆっくりした操舵速度で、さらに、モータ回転角変化総量から算出されるレーンチェンジの幅が所定値以内の場合には、ゆっくりしたレーンチェンジであると判定する。
次に、S73においてYESの場合は、S74に進み、最大操舵力、操舵力変化率、操舵力ヒスを算出する。最大操舵力は、トルクセンサ値から算出する(図19の点Dのトルクセンサ値)。操舵力変化率は、モータ回転角度とトルクセンサ値から算出する(図19の領域A及びC)。操舵力ヒスは、トルクセンサ値から算出する(図19の領域G)。
次に、S73においてYESの場合は、S74に進み、最大操舵力、操舵力変化率、操舵力ヒスを算出する。最大操舵力は、トルクセンサ値から算出する(図19の点Dのトルクセンサ値)。操舵力変化率は、モータ回転角度とトルクセンサ値から算出する(図19の領域A及びC)。操舵力ヒスは、トルクセンサ値から算出する(図19の領域G)。
次に、S75に進み、操舵力ヒスの記憶値と算出値の差の絶対値(|記憶値‐算出値|)が所定値より大きいか否かを判定する。
S75においてYESの場合には、S76に進み、摩擦補償ゲインKcを比例補正する。具体的には、操舵力ヒスの算出値が予め記憶されている目標値(記憶値)より所定値以上大きい場合、摩擦補償ゲインKcを増加補正し、目標操舵力ヒスを得るようにする。逆に、操舵力ヒスの算出値が予め記憶されている目標値(記憶値)より所定値以上小さい場合には、摩擦補償ゲインKcを減少補正し、目標操舵力ヒスを得るようにする。
S75においてYESの場合には、S76に進み、摩擦補償ゲインKcを比例補正する。具体的には、操舵力ヒスの算出値が予め記憶されている目標値(記憶値)より所定値以上大きい場合、摩擦補償ゲインKcを増加補正し、目標操舵力ヒスを得るようにする。逆に、操舵力ヒスの算出値が予め記憶されている目標値(記憶値)より所定値以上小さい場合には、摩擦補償ゲインKcを減少補正し、目標操舵力ヒスを得るようにする。
次に、S77に進み、操舵力変化率の記憶値と算出値の差の絶対値(|記憶値‐算出値|)が所定値より大きいか否かを判定する。
S77において、YESの場合、アシストゲインKaを反比例補正する。具体的には、操舵力変化率の算出値が予め記憶されている目標値(記憶値)より所定値以上大きい場合、アシストゲインKaを減少補正し、目標操舵力変化率を得るようにする。逆に、操舵力変化率の算出値が予め記憶されている目標値(記憶値)より所定値以上小さい場合には、アシストゲインKaを増加補正し、目標操舵力変化率を得るようにする。また、アシストゲインKaには予め上限値を設定し、アシストゲインKaがこの上限値よりも大きくなる場合には、アシストゲインKaの補正は行わない。アシストゲインKaが大きすぎると、車両が不安定となる可能性があり、良好な操舵フィールが得られないからである。
S77において、YESの場合、アシストゲインKaを反比例補正する。具体的には、操舵力変化率の算出値が予め記憶されている目標値(記憶値)より所定値以上大きい場合、アシストゲインKaを減少補正し、目標操舵力変化率を得るようにする。逆に、操舵力変化率の算出値が予め記憶されている目標値(記憶値)より所定値以上小さい場合には、アシストゲインKaを増加補正し、目標操舵力変化率を得るようにする。また、アシストゲインKaには予め上限値を設定し、アシストゲインKaがこの上限値よりも大きくなる場合には、アシストゲインKaの補正は行わない。アシストゲインKaが大きすぎると、車両が不安定となる可能性があり、良好な操舵フィールが得られないからである。
次に、S79に進み、最大操舵力の記憶値と算出値の差の絶対値(|記憶値‐算出値|)が所定値より大きいか否かを判定する。
S79において、YESの場合、アシスト開始ポイントPasを反比例補正する。具体的には、最大操舵力の算出値が予め記憶されている目標値(記憶値)より所定値以上大きい場合、アシスト開始ポイントPasを減少補正し、目標の最大操舵力を得るようにする。逆に、最大操舵力の算出値が予め記憶されている目標値(記憶値)より所定値以上小さい場合には、アシスト開始ポイントPasを増加補正し、目標の最大操舵力を得るようにする。また、アシスト開始ポイントPasには予め下限値を設定し、アシスト開始ポイントPasがこの下限値よりも小さくなる場合には、アシスト開始ポイントの減少補正を停止し、代わってアシストゲインKaを増加させる。
S79において、YESの場合、アシスト開始ポイントPasを反比例補正する。具体的には、最大操舵力の算出値が予め記憶されている目標値(記憶値)より所定値以上大きい場合、アシスト開始ポイントPasを減少補正し、目標の最大操舵力を得るようにする。逆に、最大操舵力の算出値が予め記憶されている目標値(記憶値)より所定値以上小さい場合には、アシスト開始ポイントPasを増加補正し、目標の最大操舵力を得るようにする。また、アシスト開始ポイントPasには予め下限値を設定し、アシスト開始ポイントPasがこの下限値よりも小さくなる場合には、アシスト開始ポイントの減少補正を停止し、代わってアシストゲインKaを増加させる。
ここで、操舵力ヒス、操舵力変化率、最大操舵力の算出は、複数回行なわれ、また、記憶値と推定値との差も、複数個となり、それらの値は一旦記憶され、これらの値にばらつきが少ない場合のみ、ドライバが違和感を感じないように、低車速又は車両停車中に、制御マップ(摩擦補償ゲインKc、アシストゲインKa、アシスト開始ポイントPas)が補正される。
次に、S81に進み、他の車速域のパラメータ修正を行う。S74で算出された操舵力ヒス、操舵力変化率、最大操舵力の傾向は、他の車速域でも同様であるため、ここで得られた高車速域(100km/h程度)における制御パラメータ(Kc、Ka、Pas)の補正量を、他の車速域である、低速側域(60km/h〜100km/h)及び高速側域(100km/h〜120km/h)にも、線形補間等により、適用する。
ここで、図22に示す制御フローでは、摩擦補償ゲインKc(操舵力ヒス)、アシストゲインKa(操舵力変化率)、アシスト開始ポイントPas(最大操舵力)の順で補正しているが、アシストゲインKa(操舵力変化率)、摩擦補償ゲインKc(操舵力ヒス)、アシスト開始ポイントPas(最大操舵力)の順で補正するようにしても良い。
次に、S81に進み、他の車速域のパラメータ修正を行う。S74で算出された操舵力ヒス、操舵力変化率、最大操舵力の傾向は、他の車速域でも同様であるため、ここで得られた高車速域(100km/h程度)における制御パラメータ(Kc、Ka、Pas)の補正量を、他の車速域である、低速側域(60km/h〜100km/h)及び高速側域(100km/h〜120km/h)にも、線形補間等により、適用する。
ここで、図22に示す制御フローでは、摩擦補償ゲインKc(操舵力ヒス)、アシストゲインKa(操舵力変化率)、アシスト開始ポイントPas(最大操舵力)の順で補正しているが、アシストゲインKa(操舵力変化率)、摩擦補償ゲインKc(操舵力ヒス)、アシスト開始ポイントPas(最大操舵力)の順で補正するようにしても良い。
次に、図23により、第4実施形態の変形例を説明する。図23は第4実施形態の変形例による目標モータ電流Ioとトルクセンサ値との関係を示す制御マップ(ハンドル戻し補償ゲインKw)である。この変形例では、図20及び図21に示す制御マップの代わりに、図23に示す制御マップを用いている。
図23に示すように、この制御マップでは、ハンドルを切り込んで(領域J)から切り戻す(領域M)とき(点Kと点L)、目標モータ電流Ioをオフセット(Kw:ハンドル戻し補償ゲイン)させている。このオフセットにより、ハンドルを切り戻すとき、制御している目標モータ電流Ioはゼロにならず、操舵力ヒスが変化する。
このため、この変形例では、操舵力ヒスの記憶値と算出値の差の絶対値(|記憶値‐算出値|)が所定値より大きい場合には、ハンドル戻し補償ゲインKwを比例補正する。
さらに、第4実施形態の他の変形例として、操舵力ヒスが目標値よりも大きく異なるときは、トルクセンサから制御ユニット80に入力されるトルク値の入力特性にヒス(入力処理のヒス)を持たせ、そのトルクセンサヒス(入力処理のヒス)を反比例補正するようにしても良い。
図23に示すように、この制御マップでは、ハンドルを切り込んで(領域J)から切り戻す(領域M)とき(点Kと点L)、目標モータ電流Ioをオフセット(Kw:ハンドル戻し補償ゲイン)させている。このオフセットにより、ハンドルを切り戻すとき、制御している目標モータ電流Ioはゼロにならず、操舵力ヒスが変化する。
このため、この変形例では、操舵力ヒスの記憶値と算出値の差の絶対値(|記憶値‐算出値|)が所定値より大きい場合には、ハンドル戻し補償ゲインKwを比例補正する。
さらに、第4実施形態の他の変形例として、操舵力ヒスが目標値よりも大きく異なるときは、トルクセンサから制御ユニット80に入力されるトルク値の入力特性にヒス(入力処理のヒス)を持たせ、そのトルクセンサヒス(入力処理のヒス)を反比例補正するようにしても良い。
次に、図18、図24及び図25を参照して本発明の第5実施形態を説明する。第5実施形態の制御ユニットは図18に示す第4実施形態の制御ユニットと同じである。また、図24及び図25は第5実施形態による制御フローを示す。
本発明の第5実施形態は、先ず、車両出荷時における工場の検査工程で、ステアリング機構の操舵力特性の変化を推定(算出)し、この推定値と目標操舵力特性(目標値、即ち、設計値)との偏差に応じて制御マップの制御パラメータ(アシストゲイン、アシスト開始ポイント、摩擦補償ゲイン)を補正し、さらに、出荷後、車速が所定値範囲内(所定の高車速域)で、且つ、ゆっくりしたレーンチェンジが行われたとき、目標操舵力特性(目標値)との偏差に応じて制御マップの制御パラメータ(アシストゲイン、アシスト開始ポイント、摩擦補償ゲイン)を、所定のタイミング(車両停車時等)で補正するようにしたものである。ここで、実際の操舵力特性は、設計時の目標操舵力特性(目標値)に対し、車両量産時のステアリング構成部品の特性ばらつき、ステアリング機構に作用する負荷の変動、及び、経時変化等により大きく異なるが、第5実施形態によれば、ステアリング構成部品の特性ばらつきによる変化(偏差)は、主に検査工程で補正され、負荷の変動と経時変化による変化(偏差)は、主に出荷後の所定のタイミングで補正され、設計時の目標操舵力特性を得られるようになっている。
本発明の第5実施形態は、先ず、車両出荷時における工場の検査工程で、ステアリング機構の操舵力特性の変化を推定(算出)し、この推定値と目標操舵力特性(目標値、即ち、設計値)との偏差に応じて制御マップの制御パラメータ(アシストゲイン、アシスト開始ポイント、摩擦補償ゲイン)を補正し、さらに、出荷後、車速が所定値範囲内(所定の高車速域)で、且つ、ゆっくりしたレーンチェンジが行われたとき、目標操舵力特性(目標値)との偏差に応じて制御マップの制御パラメータ(アシストゲイン、アシスト開始ポイント、摩擦補償ゲイン)を、所定のタイミング(車両停車時等)で補正するようにしたものである。ここで、実際の操舵力特性は、設計時の目標操舵力特性(目標値)に対し、車両量産時のステアリング構成部品の特性ばらつき、ステアリング機構に作用する負荷の変動、及び、経時変化等により大きく異なるが、第5実施形態によれば、ステアリング構成部品の特性ばらつきによる変化(偏差)は、主に検査工程で補正され、負荷の変動と経時変化による変化(偏差)は、主に出荷後の所定のタイミングで補正され、設計時の目標操舵力特性を得られるようになっている。
ここで、図18に示されているように、第5実施形態の制御ユニット80は、車速センサ22からの車速信号及びトルクセンサ24からの操舵トルク信号を入力とする基本アシスト制御部26、電動モータ18からの電圧信号及び電流信号を入力とするモータ回転角速度推定部28、イグニッション(IG)30、目標操舵力特性を記憶するメモリ部32、ターンSW44、操舵力特性算出部(操舵力特性:最大操舵力、操舵力変化率、操舵力ヒス)82、操舵力特性算出部からの信号を入力とする判定&補正部84、収斂性を上げるためのダンピング制御部(Function(A))48、摩擦補償制御部86、及び、PI制御を行うモータ電流制御部52を有している。
ここで、第5実施形態においても、目標モータ電流I0 は、以下の式により表される(第2乃至4実施形態の式と同じである)。
目標モータ電流I0 =Ka(Ts‐Pas)+F(A)+Kc*sign(θ’)
ただし、Kaはアシストゲイン(モータ電流変化率)、Tsはトルクセンサ値、Pasはアシスト開始ポイントのトルク値、F(A)はダンピング制御を行うための電流値、Kcは摩擦補償ゲイン(トルク値)、θ’はモータ回転角速度である。なお、電動モータの特性により、モータ電流と発生トルクとの間には一定の関係がある。
このように、本実施形態では、制御ユニット80により、トルクセンサの検出値(操舵トルク)及び車速等に基づき、トルクセンサの検出値が小さくなるようにすると共に、判定&補正部84により、ステアリング機構の部品の特性のばらつき等に起因して変化する最大操舵力、操舵力変化率、操舵力ヒスの値を判定し、アシスト開始ポイントPas、アシストゲインKa、摩擦補償ゲインKcを補正し、それにより、電動モータ18が制御され、その結果、目標操舵力特性を実現することができるようになっている。
目標モータ電流I0 =Ka(Ts‐Pas)+F(A)+Kc*sign(θ’)
ただし、Kaはアシストゲイン(モータ電流変化率)、Tsはトルクセンサ値、Pasはアシスト開始ポイントのトルク値、F(A)はダンピング制御を行うための電流値、Kcは摩擦補償ゲイン(トルク値)、θ’はモータ回転角速度である。なお、電動モータの特性により、モータ電流と発生トルクとの間には一定の関係がある。
このように、本実施形態では、制御ユニット80により、トルクセンサの検出値(操舵トルク)及び車速等に基づき、トルクセンサの検出値が小さくなるようにすると共に、判定&補正部84により、ステアリング機構の部品の特性のばらつき等に起因して変化する最大操舵力、操舵力変化率、操舵力ヒスの値を判定し、アシスト開始ポイントPas、アシストゲインKa、摩擦補償ゲインKcを補正し、それにより、電動モータ18が制御され、その結果、目標操舵力特性を実現することができるようになっている。
次に、図24により、第5実施形態の第1例による制御フローを説明する。この第5実施形態の第1例は、工場の検査工程で操舵力特性を算出して制御マップを補正し、さらに、車速所定範囲内で且つゆっくりしたレーンチェンジで操舵力特性を算出して車両停車時に制御マップを補正するようにしたものである。図24において、Sは、各ステップを示す。
先ず、S91において、上述したセンサの入力値を更新し、S92において、車両出荷時の検査工程であるか否かを判定する。この検査工程は、車両出荷時以外に、車両出荷後のサービスステーション等における検査工程でもよい。
検査工程であれば、S93に進み、操舵力特性を算出する。算出する操舵力特性は、第4実施形態で説明した、操舵ヒス、操舵力変化率、最大操舵力である。検査工程では、検査信号入力をして、操舵力特性をモータ回転角度とトルクセンサ値から推定(算出)する。具体的には、最大操舵力は、トルクセンサ値から算出する(図19の点Dのトルクセンサ値)。操舵力変化率は、モータ回転角度とトルクセンサ値から算出する(図19の領域A及びC)。操舵力ヒスは、トルクセンサ値から算出する(図19の領域G)。
先ず、S91において、上述したセンサの入力値を更新し、S92において、車両出荷時の検査工程であるか否かを判定する。この検査工程は、車両出荷時以外に、車両出荷後のサービスステーション等における検査工程でもよい。
検査工程であれば、S93に進み、操舵力特性を算出する。算出する操舵力特性は、第4実施形態で説明した、操舵ヒス、操舵力変化率、最大操舵力である。検査工程では、検査信号入力をして、操舵力特性をモータ回転角度とトルクセンサ値から推定(算出)する。具体的には、最大操舵力は、トルクセンサ値から算出する(図19の点Dのトルクセンサ値)。操舵力変化率は、モータ回転角度とトルクセンサ値から算出する(図19の領域A及びC)。操舵力ヒスは、トルクセンサ値から算出する(図19の領域G)。
次に、S94に進み、S93で算出した算出値と、目標操舵力特性(設計値)である目標値との偏差の絶対値(|目標値‐算出値|)が第1所定値以上で第2所定値以下であるか否かを判定する。第1所定値未満であれば、補正の必要がなく、さらに、第2所定値より大きければ、部品の特性ばらつきが想定した値以上であるから、部品交換等を行う必要があるからである。
S94において、YESの場合には、S95に進み、制御マップのアシストゲイン、アシスト開始ポイント、摩擦補償ゲインを補正する。この補正方法は、第4実施形態と同様である。また、後述する車両停車時に補正する場合には、補正量に上限値を規定し(S106参照)、1回の補正量がこの上限値を越えないように補正しているが、S95においては、上限値を設ける必要はなく、1回で補正するようにしている。検査工程中での補正でるあるから、補正量が大きくても、後述するような問題(1回の補正量が大きいとドライバは違和感を感じる)は生じない。
なお、上述したS93の検査工程において、検査信号入力で、電動モータによるアシスト制御を中止し、第1実施形態と同様に、ステアリング機構の部品の特性のばらつき等によるステアリング剛性の変化を判定し、その変化量に応じて記憶されている基本アシスト制御マップ(アシストゲインKa、アシスト開始ポイントPas)を補正するようにしても良い。
S94において、YESの場合には、S95に進み、制御マップのアシストゲイン、アシスト開始ポイント、摩擦補償ゲインを補正する。この補正方法は、第4実施形態と同様である。また、後述する車両停車時に補正する場合には、補正量に上限値を規定し(S106参照)、1回の補正量がこの上限値を越えないように補正しているが、S95においては、上限値を設ける必要はなく、1回で補正するようにしている。検査工程中での補正でるあるから、補正量が大きくても、後述するような問題(1回の補正量が大きいとドライバは違和感を感じる)は生じない。
なお、上述したS93の検査工程において、検査信号入力で、電動モータによるアシスト制御を中止し、第1実施形態と同様に、ステアリング機構の部品の特性のばらつき等によるステアリング剛性の変化を判定し、その変化量に応じて記憶されている基本アシスト制御マップ(アシストゲインKa、アシスト開始ポイントPas)を補正するようにしても良い。
次に、S92において、NOの場合には、S96に進み、イグニッションがオンしたか否かを判定する。YESの場合には、車両走行中であるので、S97に進み、車速が所定範囲内か否かを判定する。具体的には、車速は、高車速域(100km/h程度)である。
S97で、YESの場合には、S98に進み、ドライバの操舵状態がゆっくりしたレーンチェンジか否かを判定する。具体的には、ターンSWのOFF→ON→OFFの時間が所定時間内で、モータ回転角速度がゆっくりした操舵速度で、さらに、モータ回転角変化総量から算出されるレーンチェンジの幅が所定値以内の場合には、ゆっくりしたレーンチェンジであると判定する。
車速が所定範囲内で且つゆっくりしたレーンチェンジである場合には、S99に進み、操舵力特性(最大操舵力、操舵力変化率、操舵力ヒス)を算出する。さらに、S100に進み、この算出した操舵力特性を記憶値として記憶する。
ここで、S96からS100は、車両走行中に、複数回実行され、数個の記憶値が記憶されることになる。
S97で、YESの場合には、S98に進み、ドライバの操舵状態がゆっくりしたレーンチェンジか否かを判定する。具体的には、ターンSWのOFF→ON→OFFの時間が所定時間内で、モータ回転角速度がゆっくりした操舵速度で、さらに、モータ回転角変化総量から算出されるレーンチェンジの幅が所定値以内の場合には、ゆっくりしたレーンチェンジであると判定する。
車速が所定範囲内で且つゆっくりしたレーンチェンジである場合には、S99に進み、操舵力特性(最大操舵力、操舵力変化率、操舵力ヒス)を算出する。さらに、S100に進み、この算出した操舵力特性を記憶値として記憶する。
ここで、S96からS100は、車両走行中に、複数回実行され、数個の記憶値が記憶されることになる。
次に、S96でNOの場合、車両停車中であるので、S101に進み、S100で記憶した複数の記憶値のばらつきが所定値以下か否かを判定する。所定値以下であれば、S102に進み、複数の記憶値の平均値を算出する。
次に、S103に進み、この操舵力特性の平均値である記憶値と目標値の偏差の絶対値(|目標値‐記憶値|)が第1所定値以上で第2所定値以下であるか否かを判定する。第1所定値未満であれば、補正の必要がなく、さらに、第2所定値より大きければ、不整路面走行により負荷の変動が想定した値以上である等のため、補正するのが好ましくないからである。
S103においてYESの場合には、S104に進み、前回記憶値(前回補正された制御マップの値)と記憶値(今回算出された記憶値の平均値)との偏差(|前回記憶値‐記憶値|)が所定値以下であるか否かを判定する。両者の偏差が所定値より大きい場合には、記憶値(今回算出された記憶値の平均値)が想定していない走行状態で算出された可能性があり、このような記憶値により制御マップを補正したのでは、目標値を得ることが出来ないと考えられるからである。
次に、S103に進み、この操舵力特性の平均値である記憶値と目標値の偏差の絶対値(|目標値‐記憶値|)が第1所定値以上で第2所定値以下であるか否かを判定する。第1所定値未満であれば、補正の必要がなく、さらに、第2所定値より大きければ、不整路面走行により負荷の変動が想定した値以上である等のため、補正するのが好ましくないからである。
S103においてYESの場合には、S104に進み、前回記憶値(前回補正された制御マップの値)と記憶値(今回算出された記憶値の平均値)との偏差(|前回記憶値‐記憶値|)が所定値以下であるか否かを判定する。両者の偏差が所定値より大きい場合には、記憶値(今回算出された記憶値の平均値)が想定していない走行状態で算出された可能性があり、このような記憶値により制御マップを補正したのでは、目標値を得ることが出来ないと考えられるからである。
S104でYESの場合には、S105に進み、制御マップの変更量を算出する。具体的には、操舵力特性の制御パラメータである、最大操舵力、操舵力変化率、操舵力ヒスの変更量を算出する。
次に、S106に進み、制御マップの変更量の絶対値が上限値以上であるか否かを判定する。YESの場合には、S107に進み、補正量として上限値を適用し、S109で、制御マップを上限値だけ補正する。また、S106において、NOの場合には、S108に進み、補正量として変更量である算出値を適用し、S109で、制御マップを変更量だけ補正する。ここで、上限値を設けたのは、1回に補正する補正量が大きいと、ドライバは操舵フィールに違和感を感じるので、それを防止するため、上限値をドライバが違和感を感じない程度の値に設定し、制御マップの制御パラメータを補正するようにしている。
次に、S106に進み、制御マップの変更量の絶対値が上限値以上であるか否かを判定する。YESの場合には、S107に進み、補正量として上限値を適用し、S109で、制御マップを上限値だけ補正する。また、S106において、NOの場合には、S108に進み、補正量として変更量である算出値を適用し、S109で、制御マップを変更量だけ補正する。ここで、上限値を設けたのは、1回に補正する補正量が大きいと、ドライバは操舵フィールに違和感を感じるので、それを防止するため、上限値をドライバが違和感を感じない程度の値に設定し、制御マップの制御パラメータを補正するようにしている。
次に、図25により、第5実施形態の第2例による制御フローを説明する。この第5実施形態の第2例は、工場の検査工程で操舵力特性を算出して制御マップを補正し、さらに、車速所定範囲且つゆっくりしたレーンチェンジで操舵力特性を算出して車両走行時に制御マップを補正するようにしたものである。図25において、Sは、各ステップを示す。
図25の制御フローでは、図24に示された検査工程における制御マップの補正に関連するステップは省略されている。
先ず、S111において、上述したセンサの入力値を更新し、S112において、車速が所定値より大きいか否かを判定し、その判定により、車両が所定の低車速域で走行しているか否を判定する。ここで、所定値は、30km/hである。
S112において、車速が所定値より大きい場合には、S113に進み、車速が所定範囲内か否かを判定する。具体的には、車速は、高車速域(100km/h)である。
S113で、YESの場合には、S114に進み、上述した方法によりドライバの操舵状態がゆっくりしたレーンチェンジか否かを判定する。
車速が所定範囲内で且つゆっくりしたレーンチェンジである場合には、S115に進み、操舵力特性(最大操舵力、操舵力変化率、操舵力ヒス)を算出する。さらに、S116に進み、この算出した操舵力特性を記憶値として記憶する。ここで、S113からS116は、車両走行中に、複数回実行され、数個の記憶値が記憶されることになる。
図25の制御フローでは、図24に示された検査工程における制御マップの補正に関連するステップは省略されている。
先ず、S111において、上述したセンサの入力値を更新し、S112において、車速が所定値より大きいか否かを判定し、その判定により、車両が所定の低車速域で走行しているか否を判定する。ここで、所定値は、30km/hである。
S112において、車速が所定値より大きい場合には、S113に進み、車速が所定範囲内か否かを判定する。具体的には、車速は、高車速域(100km/h)である。
S113で、YESの場合には、S114に進み、上述した方法によりドライバの操舵状態がゆっくりしたレーンチェンジか否かを判定する。
車速が所定範囲内で且つゆっくりしたレーンチェンジである場合には、S115に進み、操舵力特性(最大操舵力、操舵力変化率、操舵力ヒス)を算出する。さらに、S116に進み、この算出した操舵力特性を記憶値として記憶する。ここで、S113からS116は、車両走行中に、複数回実行され、数個の記憶値が記憶されることになる。
次に、S112でNOの場合、車両が所定の低車速域で走行しているので、S117に進み、S116で記憶した複数の記憶値のばらつきが所定値以下か否かを判定する。所定値以下であれば、S118に進み、複数の記憶値の平均値を算出する。
次に、S119に進み、この操舵力特性の平均値である記憶値と目標値の偏差の絶対値(|目標値‐記憶値|)が第1所定値以上で第2所定値以下であるか否かを判定する。
S119においてYESの場合には、S120に進み、前回記憶値(前回補正された制御マップの値)と記憶値(今回算出された記憶値の平均値)との偏差(|前回記憶値‐記憶値|)が所定値以下であるか否かを判定する。
S120でYESの場合には、S121に進み、制御マップの変更量を算出する。次に、S122に進み、制御マップの変更量の絶対値が上限値以上であるか否かを判定する。YESの場合には、S123に進み、補正量として上限値を適用する。一方、S122において、NOの場合には、S124に進み、補正量として変更量である算出値を適用する。
次に、S125に進み、電動パワーステアリング装置が非制御状態か否か(電動モータによるアシスト制御が行われているか否か)を判定し、非制御状態の場合には、S126に進み、制御マップを上限値又は算出値だけ補正する。ここで、電動パワーステアリング装置が非制御状態のときに、制御マップを補正するのは、電動パワーステアリング装置が制御状態のときに制御マップを補正して操舵力特性を変更したのでは、ドライバがその変更を感じてしまい、違和感が生じるので、それを防止するためである。
次に、S119に進み、この操舵力特性の平均値である記憶値と目標値の偏差の絶対値(|目標値‐記憶値|)が第1所定値以上で第2所定値以下であるか否かを判定する。
S119においてYESの場合には、S120に進み、前回記憶値(前回補正された制御マップの値)と記憶値(今回算出された記憶値の平均値)との偏差(|前回記憶値‐記憶値|)が所定値以下であるか否かを判定する。
S120でYESの場合には、S121に進み、制御マップの変更量を算出する。次に、S122に進み、制御マップの変更量の絶対値が上限値以上であるか否かを判定する。YESの場合には、S123に進み、補正量として上限値を適用する。一方、S122において、NOの場合には、S124に進み、補正量として変更量である算出値を適用する。
次に、S125に進み、電動パワーステアリング装置が非制御状態か否か(電動モータによるアシスト制御が行われているか否か)を判定し、非制御状態の場合には、S126に進み、制御マップを上限値又は算出値だけ補正する。ここで、電動パワーステアリング装置が非制御状態のときに、制御マップを補正するのは、電動パワーステアリング装置が制御状態のときに制御マップを補正して操舵力特性を変更したのでは、ドライバがその変更を感じてしまい、違和感が生じるので、それを防止するためである。
ここで、上述した第5実施形態の第1例(S106〜S109)及び第2例(S122〜S126)において、制御マップの補正は、上限値以下の範囲で補正し、この上限値以下の補正を目標値となるまで繰り返すことになるが、万一、その途中で、新たな操舵力特性を算出した場合には、その途中の補正済みの制御マップを基準にして、両者の偏差が計算され、その偏差に基づいて、制御マップの補正がなされるようになっている。なお、本実施形態では、制御マップを上限値以下の範囲で補正し、この上限値以下の補正を目標値となるまで繰り返して行い、この繰り返しの補正が終了するまで、新たな操舵力特性を算出しないようにしても良い。
また、第5実施形態の第1例においては、図24のS106〜S109において、車両停車時において、制御マップを上限値以下の範囲で補正しているが、上限値を越えて1回で又は複数回で補正するようにしても良い。この場合には、補正後に車両が走行したとき、ドライバは、操舵の際違和感を感じることになるが、操舵中に制御マップを変更する場合に比べれば、感じる違和感は小さい。
さらに、第5実施形態の第2例において、電動パワーステアリング装置が非制御状態のとき(電動モータによるアシスト制御が行われていないとき)に、制御マップを補正するようにしているが、具体的には、ドライバがハンドルを操舵する毎、即ち、ハンドルを切り込んで切り戻した後毎に補正するようにするのが好ましい。操舵する毎に、少しづつ(上述した上限値の範囲内の補正を行うことにより)操舵力特性が変化しているので、ドライバーは操舵フィールに違和感を感じることがない。
さらに、第5実施形態の第2例において、電動パワーステアリング装置が非制御状態のとき(電動モータによるアシスト制御が行われていないとき)に、制御マップを補正するようにしているが、具体的には、ドライバがハンドルを操舵する毎、即ち、ハンドルを切り込んで切り戻した後毎に補正するようにするのが好ましい。操舵する毎に、少しづつ(上述した上限値の範囲内の補正を行うことにより)操舵力特性が変化しているので、ドライバーは操舵フィールに違和感を感じることがない。
ここで、第5実施形態の図24に示す第1例及び第2例では、工場での検査工程における操舵力特性の補正及び走行中又は停車時での操舵力特性の補正の両方を実行するようになっている。しかしながら、この第5実施形態の第1例(図24のS91及びS96〜S109)及び第2例(図25のS111〜S126)における走行中又は停車時での補正タイミングは、第1実施形態乃至第4実施形態における補正マップの補正を行う際の補正タイミングとして適用可能である。
次に、図26乃至図30により、本発明の第6実施形態を説明する。図26は第6実施形態の制御ユニットを示し、図27はVGR装置を示す全体構成図であり、図28は図27のA‐A線に沿って見た部分側面図であり、図29は図27のB‐B線に沿って見た部分側面図であり、図30は第6実施形態による制御フローを示す。
従来技術として、夜間走行時等の視覚情報が少ない走行状態において、アシスト力を低減させてハンドルを重くして、操舵力特性を安定方向に変更するものが知られていた。
しかしながら、視覚情報が少ない走行状態(夜間走行、雨天走行、霧中走行等)で、ドライバが感じる操舵力応答感度は上がり、車両応答感度は低下する。即ち、操舵力に対する車両応答の位相遅れが生じ、操舵フィールが低下するので、ドライバは、不安に感じることになる。一方、従来技術とは逆に、操舵力に対する車両応答の位相の遅れを小さくした場合、車両応答の感度が高くなり、一般的に言って好ましくないが、例えば、高車速域で小舵角の領域(センターフィール領域)に限れば、操舵力に対する車両応答の位相の遅れを小さくした方が、操舵フィールは向上する。よって、第6実施形態では、所定の運転状態において、視覚情報が少ない走行状態では、操舵力に対する車両応答の位相遅れを小さくするように、操舵力特性の制御パラメータであるアシストゲインKaを増加補正し、及び/又は、車両応答可変機構の制御ゲインを増加補正し、良好な操舵フィールを得るようにしたものである。
従来技術として、夜間走行時等の視覚情報が少ない走行状態において、アシスト力を低減させてハンドルを重くして、操舵力特性を安定方向に変更するものが知られていた。
しかしながら、視覚情報が少ない走行状態(夜間走行、雨天走行、霧中走行等)で、ドライバが感じる操舵力応答感度は上がり、車両応答感度は低下する。即ち、操舵力に対する車両応答の位相遅れが生じ、操舵フィールが低下するので、ドライバは、不安に感じることになる。一方、従来技術とは逆に、操舵力に対する車両応答の位相の遅れを小さくした場合、車両応答の感度が高くなり、一般的に言って好ましくないが、例えば、高車速域で小舵角の領域(センターフィール領域)に限れば、操舵力に対する車両応答の位相の遅れを小さくした方が、操舵フィールは向上する。よって、第6実施形態では、所定の運転状態において、視覚情報が少ない走行状態では、操舵力に対する車両応答の位相遅れを小さくするように、操舵力特性の制御パラメータであるアシストゲインKaを増加補正し、及び/又は、車両応答可変機構の制御ゲインを増加補正し、良好な操舵フィールを得るようにしたものである。
図26により、第6実施形態による制御ユニットを説明する。この制御ユニット90は、図18に示すものを全て含み、モータ回転角速度推定部28、イグニッション(IG)30、メモリ部32、操舵力特性算出部82、判定&補正部84、摩擦補償制御部86は、図示が省略されている。
制御ユニット90には、更に、視覚情報量を検出するために、ヘッドランプSW92、ワイパーSW94、フォグSW96が設けられており、これらの検出情報は、視覚情報量判定部98に入力されるようになっている。また、車両応答可変機構100が設けられており、車両応答を変更できるようになっている。
本実施形態では、車両応答可変機構100として、ハンドル舵角に対して前輪操舵の伝達比を変化させるVGR装置8を使用しているが、その他、後輪操舵角の伝達比を変化させる4WS装置、SBW(ステアバイワイヤ装置)等を使用しても良い。
制御ユニット90には、更に、視覚情報量を検出するために、ヘッドランプSW92、ワイパーSW94、フォグSW96が設けられており、これらの検出情報は、視覚情報量判定部98に入力されるようになっている。また、車両応答可変機構100が設けられており、車両応答を変更できるようになっている。
本実施形態では、車両応答可変機構100として、ハンドル舵角に対して前輪操舵の伝達比を変化させるVGR装置8を使用しているが、その他、後輪操舵角の伝達比を変化させる4WS装置、SBW(ステアバイワイヤ装置)等を使用しても良い。
次に、図27乃至図29により、車両応答可変機構であるVGR装置8を説明する。このVGR装置8は、ハンドル2の操舵角(θ)と車輪16の車輪舵角(θw)の比(伝達比:R=θ/θw)を変化させるためのものである。
VGR装置8は、中間軸10と同一軸線上に対向配置された入力軸134を有し、この入力軸134に、中間シャフト6の回転が一体の入力ギヤ135,136を介して入力されるようになっている。
VGR装置8は、中間軸10と同一軸線上に対向配置された入力軸134を有し、この入力軸134に、中間シャフト6の回転が一体の入力ギヤ135,136を介して入力されるようになっている。
この入力軸134と中間軸10との間には遊星歯車機構137が設けられており、この遊星歯車機構137は、入力軸134上に固着されたサンギヤ138と、このサンギヤ138上に配置された複数のピニオンギヤ139と、これらのピニオンギヤ139の外側に配置され且つ中間軸10に固着されたリングギヤ140と、入力軸134上に相対回転自在に嵌合支持されて、ピニオンシャフト141を介して各ピニオンギヤ139を支持するキャリヤ142とで構成されている。
このキャリヤ142に一体的にセクタギヤ143が設けられ、このセクタギヤ143にステッピングモータ130の回転軸130aに固着されたピニオンギヤ145が噛み合されている。
このキャリヤ142に一体的にセクタギヤ143が設けられ、このセクタギヤ143にステッピングモータ130の回転軸130aに固着されたピニオンギヤ145が噛み合されている。
ハンドル2の操舵時に、ステッピングモータ130が制御ユニット90からの出力信号に応じて回転駆動されることにより、遊星歯車機構137においてはサンギヤ138が操舵角θに対応する量だけ回転されると同時に、キャリヤ142がステッピングモータ130の回転に応じて回転され、これにより車輪舵角θwに対応するリングギヤ140ないし中間軸10の回転量が増減されて、車輪舵角θwに対する操舵角θの伝達比Rが可変制御されるようになっている。
次に、図30により、第6実施形態による制御フローを説明する。
先ず、S131において、ヘッドランプSW92、ワイパーSW94及びフォグSW96の各センサの入力値を更新し、S132において、ヘッドランプSW92、ワイパーSW94、フォグSW96のいずれかのスイッチがオンとなっているか否かを判定する。オンとなっている場合には、視覚情報が少ない走行状態(夜間走行、雨天走行、霧中走行等)であるので、次のS133に進む。
S133において、高速域のアシストゲインKaを増加補正すると共に車両応答可変機構の制御ゲインを増加補正する。なお、高速域のアシストゲインKa又は車両応答可変機構の制御ゲインの何れか一方のみを増加補正するようにしても良い。さらに、アシスト開始ポイントPasを減少補正するようにしても良い。
このように、高速域において、制御マップのアシストゲインKaを増加補正、アシスト開始ポイントを減少補正、車両応答可変機構の制御ゲインを増加補正することにより、操舵力に対する車両応答の位相の遅れを小さくするようにしているので、良好な操舵フィールを得ることができる。
先ず、S131において、ヘッドランプSW92、ワイパーSW94及びフォグSW96の各センサの入力値を更新し、S132において、ヘッドランプSW92、ワイパーSW94、フォグSW96のいずれかのスイッチがオンとなっているか否かを判定する。オンとなっている場合には、視覚情報が少ない走行状態(夜間走行、雨天走行、霧中走行等)であるので、次のS133に進む。
S133において、高速域のアシストゲインKaを増加補正すると共に車両応答可変機構の制御ゲインを増加補正する。なお、高速域のアシストゲインKa又は車両応答可変機構の制御ゲインの何れか一方のみを増加補正するようにしても良い。さらに、アシスト開始ポイントPasを減少補正するようにしても良い。
このように、高速域において、制御マップのアシストゲインKaを増加補正、アシスト開始ポイントを減少補正、車両応答可変機構の制御ゲインを増加補正することにより、操舵力に対する車両応答の位相の遅れを小さくするようにしているので、良好な操舵フィールを得ることができる。
1 電動パワーステアリング装置
2 ハンドル
4 ステアリングシャフト
8 VGR装置
16 タイヤ(車輪)
18 電動モータ
20,60,70,80,90 制御ユニット
22 車速センサ
24 トルクセンサ
26 基本アシスト制御部
28 モータ回転角速度推定部
30 イグニッション
32 メモリ部
34 ステアリング剛性推定部
36 ナビゲーション装置
38 ワイパSW
40 エンジン水温センサ
42 車輪速センサ
44 ターンSW
46,64,74,84 判定&補正部
62 操舵力立上値算出部
66 摩擦補償制御部
72 ステアリング摩擦算出部
82 操舵力特性算出部
92 ヘッドランプSW
94 ワイパーSW
96 フォグSW
98 視覚情報量判定部
100 車両応答可変機構
2 ハンドル
4 ステアリングシャフト
8 VGR装置
16 タイヤ(車輪)
18 電動モータ
20,60,70,80,90 制御ユニット
22 車速センサ
24 トルクセンサ
26 基本アシスト制御部
28 モータ回転角速度推定部
30 イグニッション
32 メモリ部
34 ステアリング剛性推定部
36 ナビゲーション装置
38 ワイパSW
40 エンジン水温センサ
42 車輪速センサ
44 ターンSW
46,64,74,84 判定&補正部
62 操舵力立上値算出部
66 摩擦補償制御部
72 ステアリング摩擦算出部
82 操舵力特性算出部
92 ヘッドランプSW
94 ワイパーSW
96 フォグSW
98 視覚情報量判定部
100 車両応答可変機構
Claims (9)
- 舵角センサを有することなく、少なくとも車速及び操舵トルクに基づいて、目標操舵力特性になるように、電動モータを制御してステアリング機構を駆動する電動パワーステアリング装置であって、
操舵トルクを検出するトルクセンサと、
目標操舵力特性を制御マップにより規定した制御マップ手段と、
電動モータの電流と電圧から電動モータの回転角速度及び回転角度を推定する回転角度推定手段と、
ドライバがハンドルを切り戻した領域を電動モータの回転方向から推定する操舵領域推定手段と、
上記操舵領域における電動モータの回転角度に対するトルクセンサ値と予め記憶された電動モータの回転角度に対する目標トルクセンサ値との偏差を算出する偏差算出手段と、
この偏差が所定値以上の場合、上記制御マップを補正する補正手段と、
を有することを特徴とする電動パワーステアリング装置。 - 上記制御マップ手段の制御マップは摩擦補償ゲインを含み、上記補正手段は摩擦補償ゲインを補正する請求項1記載の電動パワーステアリング装置。
- 上記偏差算出手段は、上記電動モータの電流の値がほぼ一定となったときのトルクセンサ値を使用する請求項1記載の電動パワーステアリング装置。
- 上記操舵領域推定手段は、車速が所定の車速帯域のときに、上記操舵領域を推定する請求項1記載の電動パワーステアリング装置。
- 上記操舵領域推定手段は、ワイパーが作動していないときに、上記操舵領域を推定する請求項1記載の電動パワーステアリング装置。
- 上記操舵領域推定手段は、走行開始からの、走行時間、走行距離、及び/又は、エンジン水温が、それぞれ所定値以上のとき、上記操舵領域を推定する請求項1記載の電動パワーステアリング装置。
- 上記操舵領域判定手段は、4輪の車輪速センサの変動幅が所定範囲内であるとき、上記操舵領域を推定する請求項1記載の電動パワーステアリング装置。
- 上記操舵領域推定手段は、ターンスイッチが作動した状態で、上記操舵領域を推定する請求項1記載の電動パワーステアリング装置。
- 上記操舵領域判定手段は、車両に搭載されたナビゲーション装置からの信号により、以前に上記操舵領域であると判定した道路と同じ道路を走行中であると判断したとき、上記操舵領域を推定する請求項1記載の電動パワーステアリング装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2004242959A JP2006056475A (ja) | 2004-08-23 | 2004-08-23 | 電動パワーステアリング装置 |
Applications Claiming Priority (1)
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Family
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Family Applications (1)
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2012066942A1 (ja) * | 2010-11-18 | 2012-05-24 | カヤバ工業株式会社 | 電動パワーステアリング装置の調整装置及び調整方法 |
JP2014080097A (ja) * | 2012-10-16 | 2014-05-08 | Toyota Motor Corp | 電動パワーステアリング装置 |
CN112109804A (zh) * | 2020-06-30 | 2020-12-22 | 上汽通用五菱汽车股份有限公司 | 车辆方向盘角度修正方法、车辆及可读存储介质 |
-
2004
- 2004-08-23 JP JP2004242959A patent/JP2006056475A/ja active Pending
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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