JP2006055418A - ステント及びその製造方法 - Google Patents

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賢一 下平
Akira Shinjo
明 新城
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Abstract

【課題】薬剤などの放出量、放出速度及び放出部位を、精密に制御し得るステント及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明のステント1は、生体の管状器官の内腔部に挿入・留置して使用され、網目構造を有すると共に全体として筒状をなすものであり、第1の金属を主材料とする緻密質体で構成された第1の層11Aと、第1の層11Aに接合され、第2の金属を主材料とする多孔質体で構成された第2の層11Bとを有する。前記多孔質体は、その空孔率が10%以上80%以下であることが望ましい。
【選択図】図2

Description

本発明は、医療用のステント、特に、血管などの管状器官に挿入・留置して使用されるステント及びその製造方法に関するものである。
従来から、生体の管状器官(例えば、血管、気管、食道、胆管など)の内腔部に挿入・留置し、管状器官を内側から支持するためのステントが知られている。
ステントは、通常、全体として円筒形状をなしており、縮径状態として管状器官の内腔部に導入され、内腔部を移動させた後、留置部位において拡径状態とすることにより固定(装着)される。
このようなステントを利用した治療方法の一つとして、ステントに薬剤を担持させ、このステントを管状器官の治療部位に装着し、薬剤を放出させることによって、局所的な薬理学的治療を行うことが考えられている。
このような治療を行うステントとしては、例えば、特許文献1などに記載の構成のもの、すなわち、緻密な金属のみで構成されたステント本体に、薬剤を含浸させるためのポリマーを被覆させたものが提案されている。
この種のステントでは、ステントが管状器官の内腔部に装着されると、ポリマーに含浸させた薬剤が徐々に体液中に放出され、その治療効果が一定期間持続する。
特開2002−345972号公報
しかしながら、ポリマーからの薬剤の放出は、ポリマーに含浸させた薬剤が体液に拡散することによって生じるものであり、その放出箇所を微少部分に限定したり、薬剤の放出量や放出速度を精密に制御するのが難しい。このため、このポリマーを使用したステントでは、十分な治療効果が得られないといった問題がある。また、このポリマーを、薬剤放出後に長期に亘って管状器官の内腔部に放置するのは、生体適合性の観点からあまり好ましくない。
また、ステント本体が緻密な金属のみで構成され、これに比較的強度の低いポリマーが被覆されているに過ぎないため、その弾性や強度等の機械的特性を調整するためには、ステント本体の寸法や金属の種類を変えなければならず、その結果、所望のステントを得ることが難しかった。
そこで、本発明は、上記問題点を解決するものであり、その課題は、薬剤などの放出量、放出速度及び放出部位を、精密に制御し得ると共に、優れた生体適合性を有しつつ、所望の機械的特性を容易に得ることができるステント及びその製造方法を提供することにある。
上記問題点を解決するために、本発明のステントは、生体の管状器官の内腔部に挿入・留置して使用され、網目構造を有すると共に全体として筒状をなすステントであって、
第1の金属を主材料とする緻密質体で構成された第1の部分と、前記第1の部分に接合され、第2の金属を主材料とする多孔質体で構成された第2の部分とを有することを特徴とする。この発明によれば、多孔質体の空孔内に薬剤等の充填物を充填すると、ステントの使用状態時に、その充填物を前記空孔からステントの外部へ徐々に放出させることができる。
また、多孔質体の形態に応じて、薬剤等の充填物の放出量、放出速度、及び放出部位や、ステントの弾性や強度などの特性を調整できる。特に、緻密質体と多孔質体とが組み合わされているので、これらの位置関係によって、放出部位を調整することができる。さらに、多孔質体が金属を主材料とするものであるので、長期に亘って優れた生体適合性を発揮させることができる。また、第1の部分によって第2の部分が補強されるため、多孔質体のみでステントを構成するよりも、優れた強度、弾性等の機械的特性を発揮することができる。
また、ステントの外表面に空孔による凹凸が形成されるので、ステントの使用状態時に、管状器官の内面に対する滑りが防止され、ステントを管状器官の内腔部に、より確実に固定することができる。
本発明において、前記多孔質体は、その空孔率が10%以上80%以下の範囲であることが望ましい。この発明によれば、ステントの使用時に必要な強度を確保しながら、必要十分な量の薬剤等の充填物を多孔質体の空孔に充填することができる。
本発明において、前記第1の部分及び前記第2の部分は、それぞれステントの周面に沿うように層状をなし、互いに接合されていることが望ましい。この発明によれば、第2の部分からステントの内方又は外方に向け限定的に薬剤等の充填物を放出させることができる。
本発明において、前記第2の部分は、ステントの最外層を構成することが望ましい。この発明によれば、第2の部分を構成する多孔質体の空孔内に薬剤等の充填物を充填すると、ステントの使用状態時に、管状器官の内腔部の壁面に充填物をより確実に付与することができる。
本発明において、前記第2の部分は、ステントの最内層を構成することが望ましい。この発明によれば、第2の部分を構成する多孔質体の空孔内に薬剤等の充填物を充填すると、ステントの使用状態時に、管状器官の内腔部の内部に充填物をより確実に付与することができる。
本発明において、前記第2の部分に前記第1の部分と反対側で接合され、第3の金属を主材料とする緻密質体で構成された第3の部分を有することが望ましい。この発明によれば、第2の部分を構成する多孔質体の空孔内に薬剤等の充填物を充填すると、多孔質体の露出部位によって、ステントの使用状態時に、管状器官の内腔部の所望位置で充填物を放出させることができる。
本発明において、前記第2の部分には、充填物が含浸されていることが望ましい。この発明によれば、充填物を前記空孔からステントの外部へ徐々に放出させることができる。
本発明において、前記第2の金属として、前記第1の金属よりも高い濡れ性を有するものを用いていることが望ましい。この発明によれば、ステントの強度を高いものとしながら、多孔質体の空孔からステントの外部へ充填物をより低い放出速度で放出させることができる。
本発明において、前記多孔質体は、隣接する空孔同士が連通していることが望ましい。この発明によれば、多孔質体の空孔内に薬剤等の充填物をより多く充填できると共に、ステントの使用状態時に、空孔内に充填された充填物をより確実にステントの外部に放出させることができる。
本発明において、前記第1の部分と前記第2の部分とは、互いに拡散接合されていることが望ましい。これにより、第1の部分と第2の部分とが強固に接合(一体化)するため、ステントの強度を優れたものとすることができる。
本発明において、前記第1の金属及び前記第2の金属の少なくとも一方は、Au、Pt、Ta、Rh、Ru、Pd、Nb、Os、Ir、Agよりなる群から選択された少なくとも1種又はこれらのうち少なくとも1種を含む合金であることが望ましい。この発明によれば、バルーン型ステントに好適に適用できると共に、留置後の生体適合性にも優れ、生体内における特性低下・分解を最少化できる。
本発明において、前記第1の金属及び前記第2の金属の少なくとも一方は、Ni・Ti合金であることが望ましい。この発明によれば、自己拡張型ステントに好適に適用できると共に、留置後の生体組織適合性にも優れ、生体内における特性低下・分解を最少化できる。
本発明において、前記多孔質体は、金属粉末を焼結して得られたものであることが望ましい。この発明によれば、金属粉末の組成や特性等を調整することで、所望の強度、弾性等の特性を有するステントを比較的簡単に得ることができるので、ステントの設計自由度をより高いものとすることができる。
また、本発明のステントの製造方法は、生体の管状器官の内腔部に挿入・留置して使用され、網目構造を有すると共に全体として筒状をなすステントを製造する方法であって、第1の金属を主材料とする緻密質体で構成された第1の層と、第2の金属を主材料とする多孔質体で構成された第2の層とが互いに接合されたステントを製造するに際し、前記第1の層に、前記第2の金属を主材料とする金属粒子を含む組成物で構成された組成物層を積層して、積層体を得る工程と、前記積層体を、前記網目構造に対応するパターン形状に加工する工程と、前記積層体に少なくとも1回の熱処理を施すことにより、前記組成物層を多孔質体として前記第2の層とすると共に、前記第1の層と前記第2の層との接合部を拡散接合して、接合体を得る工程とを有することを特徴とする。この発明によれば、得られるステントは、多孔質体の形態に応じて、薬剤等の充填物の放出量、放出速度、及び放出部位を調整できるステントを得ることができる。特に、熱処理前の積層体に対してパターン形状加工を行うため、比較的容易に加工を行うことができる。
また、本発明のステントの製造方法は、生体の管状器官の内腔部に挿入・留置して使用され、網目構造を有すると共に全体として筒状をなすステントを製造する方法であって、第1の金属を主材料とする緻密質体で構成された第1の層と、第2の金属を主材料とする多孔質体で構成された第2の層とが互いに接合されたステントを製造するに際し、前記第1の層に、前記第2の金属を主材料とする金属粒子を含む組成物で構成された組成物層を積層して、積層体を得る工程と、前記積層体に少なくとも1回の熱処理を施すことにより、前記組成物層を多孔質体にして前記第2の層とすると共に、前記第1の層と前記第2の層との接合部を拡散接合して、接合体を得る工程と、前記接合体を、前記網目構造に対応するパターン形状に加工する工程とを有することを特徴とする。この発明によれば、得られるステントは、多孔質体の形態に応じて、薬剤等の充填物の放出量、放出速度、及び放出部位を調整できるステントを得ることができる。特に、熱処理後の積層体、すなわち接合体に対してパターン形状加工を行うため、比較的高精度に加工を行うことができる。
また、本発明のステントの製造方法は、生体の管状器官の内腔部に挿入・留置して使用され、網目構造を有すると共に全体として筒状をなすステントを製造する方法であって、第1の金属を主材料とする緻密質体で構成された第1の層と、第2の金属を主材料とする多孔質体で構成された第2の層とが互いに接合されたステントを製造するに際し、前記第1の層を前記網目構造に対応するパターン形状とし、これに、前記第2の金属を主材料とする金属粒子を含む組成物で構成された組成物層を積層して、積層体を得る工程と、前記積層体に少なくとも1回の熱処理を施すことにより、前記組成物層を多孔質体にして前記第2の層とすると共に、前記第1の層と前記第2の層との接合部を拡散接合して、接合体を得る工程とを有することを特徴とする。この発明によれば、得られるステントは、多孔質体の形態に応じて、薬剤等の充填物の放出量、放出速度、及び放出部位を調整できるステントを得ることができる。特に、予めパターン形状をなすように第1の層を形成するため、積層体に対する加工の手間を省くことができる。
また、本発明のステントの製造方法は、生体の管状器官の内腔部に挿入・留置して使用され、網目構造を有すると共に全体として筒状をなすステントを製造する方法であって、第1の金属を主材料とする緻密質体で構成された第1の層と、第2の金属を主材料とする多孔質体で構成された第2の層とが互いに接合されたステントを製造するに際し、前記第2の金属を主材料とする金属粒子を含む組成物で構成され、前記網目構造に対応するパターン形状をなす組成物層を形成し、これに前記第1の層を積層して、積層体を得る工程と、前記積層体に少なくとも1回の熱処理を施すことにより、前記組成物層を多孔質体にして前記第2の層とすると共に、前記第1の層と前記第2の層との接合部を拡散接合して、接合体を得る工程とを有することを特徴とする。この発明によれば、得られるステントは、多孔質体の形態に応じて、薬剤等の充填物の放出量、放出速度、及び放出部位を調整できるステントを得ることができる。特に、予めパターン形状をなすように組成物層を形成するため、積層体に対する加工の手間を省くことができる。
また、本発明のステントの製造方法は、生体の管状器官の内腔部に挿入・留置して使用され、網目構造を有すると共に全体として筒状をなすステントを製造する方法であって、第1の金属を主材料とする緻密質体で構成された第1の層と、第2の金属を主材料とする多孔質体で構成された第2の層とが互いに接合されたステントを製造するに際し、前記第2の金属を主材料とする金属粒子を含む組成物で構成された組成物層を形成する工程と、前記組成物層に少なくとも1回の熱処理を施すことにより、前記組成物層を多孔質体として前記第2の層とする工程と、前記第2の層に、前記第1の層を接合して、接合体を得る工程とを有することを特徴とする。この発明によれば、得られるステントは、多孔質体の形態に応じて、薬剤等の充填物の放出量、放出速度、及び放出部位を調整できるステントを得ることができる。特に、熱処理後の組成物層、すなわち第2の層に対して第1の層を接合するため、第2の部分を構成する多孔質体の露出部位、すなわち薬剤等の充填物の放出位置を比較的容易に調整することができる。
本発明において、前記第1の層は、イオンプレーティング法、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法、メッキ法のうち1種または2種以上を組み合わせて形成されたものであることが望ましい。この発明によれば、均一な緻密質体を比較的容易に得ることができる。
本発明において、前記金属粉末の平均粒径は、0.1μm以上50μm以下であることが望ましい。この発明によれば、得られるステントの使用時に必要な強度を確保しながら、必要十分な量の薬剤等の充填物を充填可能な空孔を形成することができる。
本発明において、前記金属粉末は、組成又は特性の異なる2種以上の金属粉末からなることが望ましい。この発明によれば、組成又は特性の異なる2種以上の金属粉末を合金化させて、所望の特性を有するステントを得ることができる。また、組成又は特性の異なる2種以上の金属粉末の性質をそれぞれ残して、所望の特性を有するステントを得ることもできる。
本発明において、前記金属粉末は、粒径の異なる2種以上の金属粉末からなることが望ましい。この発明によれば、粒径の異なる2種以上の金属粉末の比率に応じて、容易に所望の空孔率の多孔質体を形成することができる。
本発明において、前記金属粉末は、Au、Pt、Ta、Rh、Ru、Pd、Nb、Os、Ir、Agよりなる群から選択された少なくとも1種、又はこれらのうち少なくとも1種を含む合金を主材料として構成されていることが望ましい。この発明によれば、優れた生体適合性を有するステントを得ることができる。
本発明において、前記組成物は、樹脂バインダーを含むものであることが望ましい。この発明によれば、積層体の形状をより確実に維持できるので、より高精度の接合体を得ることができる。
本発明において、前記組成物は、ペースト状をなしていることが望ましい。この発明によれば、積層体を成形するに際し、組成物の取り扱い性がより優れたものとなる。
本発明によれば、薬剤などの放出量、放出速度及び放出部位を、精密に制御し得ると共に、優れた生体適合性を有しつつ、所望の機械的特性を容易に得ることができるステント及びその製造方法を提供できる。
以下、添付図面を参照して本発明に係るステント及びその製造方法の実施形態について詳細に説明する。
<第1実施形態>
先ず、本発明のステントの第1実施形態を説明する。
図1において、ステント1は、生体の管状器官の内腔部に挿入・留置して使用されるものであり、全体形状がほぼ筒状をなしている。
このようなステント1は、ステント1の外径を収縮(縮径)させた状態(以下、「縮径状態」と称す。)で、管状器官の内腔部の目的部位まで移送(搬送)される。そして、この目的部位において、ステント1自体の復元力により、又は外力を付与することにより、ステント1の外径が、縮径状態の外径より大きくなるように拡大(拡径)し、この状態(以下、「拡径状態」と称す。)で目的部位に固定(装着)される。
ステント1は、平板状の線状部11を複数連結して構成したような網状構造を有している。そして、複数の線状部11で囲まれる部分に開口10が形成されている。
線状部11同士は、180°未満の角度で互いに連結され、これにより、各開口10は、多角形形状(この実施形態では、4つの線状部11で囲まれることにより菱形形状)をなしている。この構成により、ステント1は、十分な剛性や強度を確保しながら、径方向の柔軟性に優れたものとなる。また、十分な剛性や強度を確保できることから、ステント1は、放射支持力に優れたものとなる。
ここで、本明細書中、「径方向の柔軟性」とは、図2(a)中の矢印方向、すなわち、中心軸から外側に向かう方向における柔軟性のことを言う。また、「放射支持力」とは、拡径状態において管状器官の形状を保持する力のことを言う。
ここで、本明細書中、「軸方向の柔軟性」とは、図1中の矢印方向への柔軟性(撓み易さ、すなわち可撓性)のことを言う。
線状部11の平均横断面積は、ステント1の構成材料などによっても若干異なるが、1×10-5mm2以上0.1mm2以下の範囲であることが望ましく、1×10-4mm2以上0.01mm2以下の範囲であることがより望ましい。線状部11の横断面積が小さ過ぎる(線状部11が細すぎる)と、ステント1の剛性が低下する場合があり、線状部11の横断面積が大き過ぎる(線状部11が太過ぎる)と、ステント1の軸方向の柔軟性(可撓性)が低下する場合がある。
また、線状部11の横断面形状は、ステント1の各部において異なっていてもよいが、図1に示すように、ステント1のほぼ全体に亘って、ほぼ一定であることが望ましい。これにより、ステント1の軸方向の柔軟性が各部において不均一となるのを防止できる。
なお、線状部11の横断面形状は、図2に示すような四角形(直方形)の他、例えば、円形、楕円形、正方形、菱形、三角形、五角形、六角形などの多角形でもよい。
図示されていないが、ステント1(線状部11)の縁部は、丸みを帯びていることが望ましい。これにより、ステント1の留置操作時や留置後などにおいて、管状器官の内壁を不本意に傷付けてしまうのを防止できる。また、ステント1を血管内留置ステントに適用した場合には、血栓形成を防止するのにも役立つ。
このようなステント1は、後述するような方法により、各線状部11が一体的に形成されている。これにより、ステント1の全体としての強度がより向上する。
そして、線状部11は、図2(b)(図2(a)の拡大図)で示すように、金属を主材料とする緻密質体で構成された第1の層11Aと、金属を主材料とする多孔質体で構成された第2の層11Bとを有する。言い換えすれば、ステント1は、金属を主材料とする緻密質体で構成された第1の部分として第1の層11A、金属を主材料とする多孔質体で構成された第2の部分として第2の層11Bを有し、これらが積層されて筒状をなしている。
また、第1の層11A(第1の部分)と第2の層11B(第2の部分)とは、互いに拡散接合されている。これにより、第1の層11Aと第2の層11Bとが強固に接合(一体化)するため、ステント1の強度を優れたものとすることができる。
特に、第2の層11Bを構成する多孔質体は、金属粒子を焼結して得られたものであって、多数の空孔13が形成されている。
この空孔13は、薬剤などの充填物を収容する収容部とすることができる。ステント1が管状器官の内腔部に挿入・留置されると、この空孔13に収容された薬剤などの充填物が、ステント1の外部、すなわち管状器官の内腔部に徐々に放出される。
このような空孔13を有するステント1では、薬剤などの充填物の放出量及び放出速度や、ステントの弾性や強度などの特性が、空孔13の容積及び形状等の形態を調整することによって精密にコントロールできる。特に、第1の層11Aと第2の層11Bとが組み合わされ、すなわち緻密質体と多孔質体とが組み合わされているので、これらの位置関係によって、充填剤の放出部位を調整することができる。さらに、多孔質体が金属を主材料とするものであるので、長期に亘って優れた生体適合性を発揮させることができる。また、第1の層11Aによって第2の層11Bが補強されるため、多孔質体のみでステントを構成するよりも、優れた機械的特性を発揮することができる。また、ステント1の装着部位を調整することによって、薬剤などの充填物の放出部位を特定の部位に限定できる。
また、本実施形態では、ステント1は、金属を主材料とする緻密質体で構成された第1の層11Aが、ステント101の最内層となるように、金属を主材料とする多孔質体で構成された第2の層11Bに接合されている。これにより、第2の層11Bを構成する多孔質体の空孔13内に薬剤等の充填物を充填すると、ステント1の使用状態時に、管状器官の内腔部の壁面に充填物をより確実に付与することができる。
さらに、多孔質体の空孔13によりステント1の外表面に凹凸が形成されるので、ステント1の使用状態時に、管状器官の内面に対する滑りが防止され、ステント1を管状器官の内腔部により確実に固定することができる。従って、治療目的とする部位において高い治療効果などが得られる。
このように、このステント1の充填物の放出量及び放出速度は、空孔13の大きさ及び形状などの形態と、空孔13の位置と空孔率によって制御される。従って、空孔13のこれらパラメータは、薬剤などの所望の放出量及び放出速度に応じて適宜設定されるが、以下に示すような範囲とするのが望ましい。
本実施形態では、空孔13の存在量、すなわちステント1を構成する多孔質の空孔率は、ステント1のほぼ全体に亘って、ほぼ一定となっている。これにより、ステント1の軸方向の柔軟性(可撓性)が、各部において不均一となるのを防止できる。なお、空孔13の存在量は、ステント1の各部において異なっていてもよい。
なお、ステント1が薬液等を所望の放出量、放出速度、及び放出位置で放出できるものであれば、空孔13は、第2の層11Bの少なくとも一部に形成されていればよく、第2の層11Bの全体に亘って形成されていても、第2の層11Bの一部にのみ形成されていても構わない。すなわち、ステント1は、第2の層11Bの少なくとも一部が多孔質体であればよく、第2の層11Bの全体が多孔質体であっても、第2の層11Bの一部のみが多孔質体であっても構わない。
また、前記多孔質体は、隣接する空孔13同士が連通している。これにより、多孔質体の空孔13内により多くの充填物を充填できると共に、ステント1の使用状態時に、空孔13内に充填された充填物をより確実にステント1の外部に放出させることができる。なお、隣接する空孔13同士が連通していなくともよい。この場合、第2の層11Bの内部に位置する空孔13は、薬剤等を充填できなくても、ステント1の軽量化に役立つ。
また、第2の層11Bを構成する多孔質体の空孔13の存在率、すなわち空孔率が10%以上80%以下であるのが望ましく、30%以上80%以下であるのがより望ましく、50%以上70%以下であるのがさらに望ましい。このようにすることにより、ステント1の使用時に必要な強度を確保しながら、必要十分な量の薬剤等の充填物を多孔質体の空孔13に充填することができる。
これに対し、前記空孔率が小さすぎると、ステント1の治療目的等によっては、ステント1の空孔13内に充填される薬剤等の量が不十分となる場合がある。一方、前記空孔率が大きすぎると、ステント1を構成する材料の種類や、第2の層11Bの厚さなどによっては、ステント1の強度不足を招くおそれがある。
なお、本明細書において、緻密質体とは、実質的に空孔の存在しないものであって、より具体的には、空孔の存在率、すなわち空孔率が望ましくは10%未満、より望ましくは5%未満のものを言う。
また、第2の層11Bの厚さは、使用目的等に応じて選択されるものであり、特に限定されないが、第1の層11Aの厚さに対して、50%以上500%以下の範囲であるのが望ましく、100%以上300%以下の範囲であるのがより望ましい。このようにすることにより、ステント1の使用に必要な強度を確保しながら、第2の部分を構成する多孔質体により多くの充填剤を含浸させることができる。
第1の層11Aを構成する緻密質体と、第2の層11Bを構成する多孔質体とは、それぞれ、金属を主材料として構成されている。ステント1の構成材料、すなわちステント1を構成する緻密質体及び多孔質体の構成材料には、ステント1の種類に応じて、次のようなものを使用することが望ましい。以下、第1の層11Aを構成する緻密質体の構成金属を第1の金属、第2の層11Bを構成する多孔質体の構成金属を第2の金属とも言う。
ステント1をバルーン拡張型ステントに適用する場合、ステント1は、拡径状態において、管状器官から受ける圧縮応力に対して変形しない必要がある。このため、第1の層11A及び第2の部分のうち少なくとも一方の構成材料には、拡張による塑性変形により加工硬化し、拡張後、比較的剛性が高くなる材料を使用することが望ましい。また、生体組織適合性や化学的安定性の高い材料を使用することが望ましい。
このような材料としては、Au、Pt、Ta、Rh、Ru、Pd、Nb、Os、Ir、Ag又はこれらを含む合金などが使用できる。
これらの中でも、特に、Au、Pt、Ta、Rh、Ru、Nb、Os、Ir又はこれらを含む合金を主とするものが望ましく、Au、Pt、Rh、Ru、Ir又はこれらを含む合金を主とするものがより望ましい。これらの合金は、拡張による塑性変形により加工硬化する特性(加工硬化性)を付与することが添加成分により可能であり、また、生体組織適合性やX線造影性にも優れる。また、組成比により、加工硬化性を容易に制御できるという利点がある。
このため、これらの材料で第1の層11A及び第2の部分のうち少なくとも一方を構成することにより、例えば、ステント1を血管内留置ステントに適用した場合には、血栓形成を効果的に防止できる。また、ステント1を管状器官の内腔部内に留置する操作をX線透視下にて行えるので、その留置操作をより円滑且つ正確に行える。
一方、ステント1を自己拡張型ステントに適用する場合、ステント1は、その形状を自発的に復元し得る必要がある。このため、第1の層11A及び第2の部分のうち少なくとも一方の構成材料には、超弾性合金、形状記憶合金や比較的弾性の高い材料を使用することが望ましい。
このような材料としては、例えば、Ni・Ti合金、Cu・Zn合金、Ni・Al合金、Cu・Cd合金、Au・Cd合金、Au・Cd・Ag合金、Ti・Al・V合金などが使用できる。
これらの中でも、特に、Ni・Ti合金を主とするものが望ましい。これは、特に高い弾性を示し、さらに形状記憶特性にも優れる材料だからである。
また、これらの材料は、生体組織適合性に優れると共に、X線造影性にも優れる。このため、これらの材料でステント1を構成することにより、例えば、ステント1を血管内留置ステントに適用した場合には、血栓形成を効果的に防止できる。また、ステント1を管状器官の内腔部内に留置する操作をX線透視下にて行えるので、その留置操作をより円滑且つ正確に行える。
第2の層11Bを構成する金属(第2の金属)として、第1の層11Aを構成する金属(第1の金属)よりも高い濡れ性を有するものを用いているのが望ましい。このようにすることにより、ステント1の強度を高いものとしながら、第2の層11Bを構成する多孔質体の空孔13からステント1の外部へ充填物をより低い放出速度で放出させることができる。
第2の層11Bには、充填物が含浸されているのが望ましい。すなわち、第2の層11Bを構成する多孔質体の空孔13内に充填物が充填されているのが好ましい。これにより、充填物を空孔13からステント1の外部へ徐々に放出させることができる。
空孔13に収容する充填物としては、薬剤、細胞、及び生物由来物質のうちの少なくとも1つが使用できる。
空孔13に収容する薬剤としては、ステント1を留置する管状器官の種類などに応じて選択されるが、例えば、抗血栓剤、鎮痛・鎮静剤、抗増殖剤、抗癌剤、免疫抑制剤などが使用できる。このような薬剤は、空孔13内に収容され、ステント1の使用状態時に、徐々にステント1の外部へ放出され、各種治療効果を発揮する。
抗血栓剤としては、例えば、ヘパリンナトリウム、ヘパリンカルシウム、低分子量ヘパリン、ヘパリン様物質(低分子デキストラン)、ヒルジン、組み換えヒルジン、アルガトロバン、フォルスコリン、バピプロスト、プロスタグランジンE1、プロスタサイクリン、プロスタサイクリン同族体、アスピリン、スルピリン、ジピリダモール、アンチトロンビンIII、ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ、組織プラスミノーゲンアクチベータ、プロウロキナーゼなどが使用できる。
鎮痛・鎮静剤としては、例えば、ペンタゾシン、塩酸ブプレノルフィン、酒石酸ブトルファノール、塩酸トラマドール、塩酸アヘンアルカロイド、塩酸モルヒネ、塩酸ペチジン、ペチジン・レバロルファン、クエン酸フェンタニール、フェンタニール・ドロペリドールなどが使用できる。
また、抗増殖剤としては、例えば、ソマトスタチン又はその同族体、ニトロプルシド、コルヒチン、魚油(ω3系脂肪酸)、ステロイド剤、セロトニン拮抗剤、カルシウム溝阻止抗体、ヘスタミン拮抗剤、酵素阻害剤(例えば、アンギオテンシン変換酵素阻害剤、プロスタグランジン合成酵素阻害剤、HMG-CoA還元酵素阻害剤、ホスホジエステラーゼ阻害剤、チオールプロテアーゼ阻害剤、メトトレキサート)、増殖因子拮抗剤(例えば、繊維芽細胞増殖因子拮抗剤、血小板由来増殖因子拮抗剤)、酸化窒素などが使用できる。
また、抗癌剤としては、例えば、メクロルエタミン、ナイトロジェンマスタード N-オキシド(ナイトロミン)、シクロフォスファミド、メルファラン、クロラムブシルなどのナイトロジェンマスタード類、トリエチレンチオホスホラミド、カルボコン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミドなどのエチレンイミン類、ブスルファンなどのアルキルスルフォン酸類、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、ニムスチンなどのニトロソ尿素類、ダカルバジンなどのトリアゼン類、8-アザグアニン、6-チオグアニン、6-メルカプトプリン、6-メルカプトプリン リボシッド、6-クロロプリン、アザチオプリンなどのプリン代謝拮抗物質、5-フルオロウラシル、5-フルオロデオキシウラシル、テガフール、シタラビン、アンシタビン、アザウリジンなどのピリミジン代謝拮抗物質、メトトレキサート、アミノプテリンなどの葉酸代謝拮抗物質、アザセリン、DON(6-アジド-5-オキソ-L-ノルレウシン)などのグルタミン代謝拮抗物質、ビンブラスチン、ビンクリスチンなどのビンカアルカロイド、VM26、VP16-213などのエピポドフィロトキシン誘導体、コルヒチン、デメコルチンなどのコルヒチン誘導体、アクチノマイシンD、マイトマイシンC、クロモマイシンA3、ブレオマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシンなどの抗生物質などが使用できる。
また、免疫抑制剤としては、例えば、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、ヒドロコルチゾンなどの副腎皮質ステロイド類、シクロフォスファミド、ブスルファン、クロランブシルなどのアルキル化剤、6-メルカプトプリル、アザチオプリンなどのプリン代謝拮抗物質、ペントスタチンなどのアデノシン脱アミノ酵素抑制薬、6-アザウラシルなどのピリミジン代謝拮抗物質、メトトレキサートなどの葉酸代謝拮抗物質、アゾトマイシンなどのグルタミン酸代謝拮抗薬、ダウノマイシン、アドリアマイシン、ミタラマイシンなどの抗生物質、サイトカラシンBなどの細胞分裂阻止物質などが使用できる。
空孔13に収容する細胞としては、例えば、適用する管状器官の内壁を構成する細胞、又は、この細胞に分化する前の幹細胞、組み換えプラスミド(組み換えベクター)が導入された宿主細胞などが使用できる。
空孔13に収容する生物由来物質としては、例えば、ヌクレオチド、cDNA、RNAなどの核酸、アミノ酸、ペプチド、タンパク質などが使用できる。
次に、このステント1の使用方法について、バルーン拡張型ステントを、血管の狭窄部に適用する場合を一例に説明する。
(I) まず、血管(管状器官の内腔部)内に、周知のセルディンガー法により、案内カテーテルを経皮的に挿入し、その先端部を狭窄部(目的部位)の近傍に到達させる。
(II) そして、バルーン付カテーテル先端部のバルーンの外周に、ステント1を縮径状態で装着しておき、このバルーン付カテーテルを上記案内カテーテルを通して血管内に導く。
(III) 次に、バルーン付カテーテル内に挿入したガイドワイヤをガイドにして、バルーン付カテーテルをさらに押し進め、その先端部に装着したステント1を狭窄部にまで移送し、配置する。
このとき、ステント1には、空孔13を設けたことにより、軸方向の高い柔軟性が付与されているため、複雑に屈曲又は湾曲、若しくは分岐した血管に沿って、ステント1を狭窄部にまで容易かつ確実に移送できる。
(IV) この状態で、バルーン付カテーテルを通して生理食塩水などの液体をバルーン内に注入し、バルーンを膨らませる。これにより、ステント1の外径が徐々に拡径していく。
(V) さらに、バルーンを膨らませ拡張させると、ステント1は、その外径がさらに拡径し(拡径状態に至り)、血管の内壁に当接し、内壁を押圧する。
(VI) ステント1を十分に拡径させた後、バルーン内の液体を抜き出してバルーンを萎ませ、バルーン付カテーテルをステント1の内周から引き抜く。これにより、ステント1を血管内に留置できる。
このとき、ステント1には、その外面側に空孔13により凹凸が形成されているので、狭窄部により確実に固定できる。
以上のようにして、ステント1により血管の狭窄部を拡張させて、心筋梗塞や脳梗塞などの予防や、治療を行える。その際、空孔13内に薬剤が収容されていると、空孔13から血管内壁へ薬剤が溶出するので、より効果的に治療を行える。
次に、ステント1の製造方法の一例を説明する。
(A) まず、図3に示すように、ほぼパイプ状の芯材3を用意する。なお、芯材3はほぼ円柱状をなすものでもよい。
芯材3は、比較的硬質であり、且つ、後述の工程(F)にて比較的容易に除去できるものが望ましい。
この芯材3の構成材料としては、ステント1の構成材料などに応じて選択されるが、例えば、ポリオレフィン(例えば、PE、PPなど)、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリカーボネイト、ポリメチルメタクリレート、ポリエーテル、ポリアセタールのような樹脂材料や、その他、Ni及びNi合金、Cu及びCu合金、Fe及びFe合金などのステント1を構成する金属材料と比較して、自然電極電位的に卑な金属材料などが使用できる。
この芯材3の横断面(一部横断面)は、図4(a)に示すような状態となる。
(B) 次に、図4(b)に示すように、芯材3の周面に、金属を主材料として構成された金属層4(第1の層11A)を形成する。
金属層4の形成方法としては、ステント1の構成材料(本体材料)などに応じて適宜選択されるが、例えば、イオンプレーティング法、真空蒸着法、スパッタリング法などのPVD法(物理気相成膜法)、又、熱CVD法、プラズマCVD法などのCVD法(化学気相成膜法)、更に、電解メッキ、無電解メッキなどのメッキ法、又、金属材料を含む液状材料(溶液又は分散液)の付与(塗布)による方法のような液体成膜法などのうちの1種又は2種以上が使用できる。これらの中でも、特に、イオンプレーティング法、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法、メッキ法のうち1種又は2種以上を組み合わせて用いるのが好ましい。これにより、均一な緻密質体を比較的容易に得ることができる。
又、金属層4を構成する金属は、前述した第1の層11Aを構成する金属(第1の金属)に応じて適宜選択されるが、Au、Pt、Ta、Rh、Ru、Pd、Nb、Os、Ir、Agよりなる群から選択された少なくとも1種、又はこれらのうち少なくとも1種を含む合金を主材料として構成されているのが望ましい。これにより、優れた生体適合性を有するステント1を得ることができる。
(C) 次に、図4(c)に示すように、金属層4の周面に、金属粉末を含む組成物を付与して、組成物層5を成形する。
前記金属粉末の平均粒径は、0.5μm以上50μm以下であるのが望ましく、2μm以上30μm以下であるのがより望ましい、5μm以上15μm以下であるのがさらに望ましい。これにより、得られるステント1の使用時に必要な強度を確保しながら、必要十分な量の薬剤等の充填物を充填可能な空孔13を形成することができる。
また、前記金属粉末は、組成又は特性の異なる2種以上の金属粉末からなるのが望ましい。これにより、後述する工程(H)で、組成又は特性の異なる2種以上の金属粉末を合金化させて、所望の特性を有するステント1を得ることができる。また、後述する工程(H)で、合金化することが困難な2種以上の金属であっても、組成又は特性の異なる2種以上の金属粉末の性質をそれぞれ残して、それぞれの金属の特性を生かした所望の特性を有するステント1を得ることもできる。
また、前記金属粉末は、粒径の異なる2種以上の金属粉末からなるのが望ましい。これにより、粒径の異なる2種以上の金属粉末の比率に応じて、容易に所望の空孔率の多孔質体を形成することができる。
また、前記金属粉末を構成する金属は、前述した第2の層11Bを構成する金属(第2の金属)に応じて適宜選択されるが、Au、Pt、Ta、Rh、Ru、Pd、Nb、Os、Ir、Agよりなる群から選択された少なくとも1種、又はこれらのうち少なくとも1種を含む合金を主材料として構成されているのが望ましい。これにより、優れた生体適合性を有するステント1を得ることができる。なお、第2の金属は、第1の金属と同種であっても異種であってもよく、ステント1の特性に応じて適宜選択することができる。また、第2の金属は、使用する薬剤との濡れ性を考慮して、選択することもできる。
また、前記組成物は、樹脂バインダーを含むものであるのが望ましい。これにより、組成物層4の形状をより確実に維持できるので、後述する工程で、より高精度のステント1を得ることができる。また、前記組成物中における樹脂バインダーの含有量に応じて、得られるステント1を構成する多孔質の空孔率を所望のものに容易に調整することができる。
樹脂バインダーとしては、前述した効果を得ることができるもの、例えば、各種熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂などが使用できる。
使用可能な熱可塑性樹脂の具体例としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−4−メチルペンテン−1、アイオノマー、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、ポリビニルアルコール、ニトロセルロース、メチルセルロース、ポリアミド樹脂、ポリアセタール、ポリカーボネイト、ポリスチレン、ポリイミド、ポリアミドイミド、アクリル系樹脂、ポリメチルメタクリレート、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリオキシメチレン、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンテレフタレート、ポリエーテル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、芳香族ポリエステル、フッ素系樹脂、スチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、トランスポリイソプレン系熱可塑性エラストマー、フッ素ゴム系熱可塑性エラストマー、塩素化ポリエチレン系熱可塑性エラストマーなどがある。
使用可能な熱硬化性樹脂の具体例としては、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、フェノール樹脂、ポリウレタン、シリコーン樹脂などがある。
また、樹脂バインダとしては、前述したような熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂の中から、1種を選択し単独で使用しても、2種以上を選択し組み合わせて使用してもよい。前述したような熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂のうち2種以上を組み合わせて用いる場合には、共重合体、ブレンド体、アロイ等の形態とすることができる。
中でも、特に、樹脂バインダーとしては、熱硬化性樹脂を用いるのが望ましい。これにより、後述する工程[D]で得られる焼成体5はその形状をより確実に保持することができる。
また、組成物中における樹脂バインダーの含有率は、得られるステント1の第2の層11Bを構成する多孔質体の空孔率などに応じて決定されるが、20vol%以上90vol%以下であるのが望ましく、30vol%以上70vol%以下であるのがより望ましい。
また、前記組成物の形態は、組成物層5を形成できるものであれば、特に限定されず、例えば、粉状、ペースト状、スラリー等が挙げられる。特に、前記組成物は、ペースト状をなしているのが望ましい。これにより、組成物層5を成形するに際し、組成物の取り扱い性がより優れたものとなる。
(D) 次に、必要に応じて、金属層4と組成物層5とが積層したものに対し、熱処理により、硬化処理(焼成処理)を施して、図4(d)に示すように、第1の積層体6(焼成済みの組成物層5Aが金属層4に積層したもの)を得る。
この熱処理を行う場合には、加熱雰囲気は非酸化性雰囲気、すなわち、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気などの不活性雰囲気、又は水素、アンモニア分解ガス等の還元性雰囲気であるのが望ましい。また、加熱温度は30℃以上700℃以下の範囲であるのが望ましく、200℃以上600℃以下の範囲であるのがより望ましい。また、加熱時間は0.5時間以上3時間以下の範囲であるのが望ましく、1.0時間以上2時間以下の範囲であるのがより望ましい。このような条件で熱処理を行うことにより、金属粉末の酸化を防止しながら、より確実に、組成物層5の形状を保持して、第1の積層体6を得ることができる。
(E) 次に、図5(e)に示すように、第1の積層体6の一部を除去して開口10を形成する。これにより、第1の積層体6が網目構造を有するようにパターン形成される。
この開口10の形成方法(第1の積層体6の除去方法)としては、例えば、ドライエッチング法、ウェットエッチング法、レーザー加工、マシニングセンターなどによる機械加工、彫刻機などによる彫刻加工などのうちの1種又は2種以上が使用できる。
(F) 次に、図5(f)に示すように、芯材3を除去する。
この芯材3の除去方法としては、芯材3の構成材料などによって適宜選択されるが、例えば、加熱により焼失させる方法(焼き飛ばす方法)、ステント1を溶解又は膨潤させず、芯材3を選択的に溶解可能な溶剤に溶解させる方法、ケミカルエッチング又は、電気化学的手法により芯材3を選択的に溶出させる方法などが使用できる。
なお、加熱により焼失させる方法(焼き飛ばす方法)、すなわち熱処理により芯材3を除去する場合には、前述した工程(D)を省略し、本行程により組成物層5を焼成するようにしてもよい。
(G) 次に、必要に応じて、第1の積層体6に対し、熱処理等により、脱脂処理(脱樹脂バインダー処理)を施して、図5(g)に示すように、第2の積層体7(脱脂済みの組成物層5Bを金属層4に積層したもの)を得る。
この脱脂処理を熱処理により行う場合には、加熱雰囲気は非酸化性雰囲気、すなわち、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気などの不活性雰囲気、又は水素、アンモニア分解ガス等の還元性雰囲気であるのが望ましい。また、加熱温度は300℃以上1000℃以下の範囲であるのが望ましく、400℃以上800℃以下の範囲であるのがより望ましい。また、加熱時間は0.5時間以上3時間以下の範囲であるのが望ましく、1.0時間以上2時間以下の範囲であるのがより望ましい。このような条件で熱処理を行うことにより、金属粉末の酸化を防止しながら、より確実に、第1の積層体6の形状を保持して、第2の積層体7を得ることができる。
なお、芯材3の材質と組成物層5中(組成物中)の樹脂バインダー成分との種類によっては、前述したような焼成工程(D)や芯材除去工程(F)を工程(G)に統合し、組成物層5中の溶剤及び樹脂バインダー成分の除去、芯材3の除去、脱脂処理を工程(G)で一括して行うことができる。すなわち、工程(D)、(F)、(G)を別々の工程としなくとも、工程(G)が工程(D)、(F)を兼ねるようにして、組成物層5中の溶剤及び樹脂バインダー成分の除去、芯材3の除去、脱脂処理を1工程で行うことができる。これにより、ステント1の製造工程の短縮を図ることができる。
(H) 次に、第2の積層体7に対し、熱処理により、焼結処理を施して、脱脂済みの組成物層5B中の金属粉末同士を拡散接合させて多孔質体とすると共に、この多孔質体と金属層4とを拡散接合させて、図5(h)に示すように、接合体8、すなわちステント1を得る。
この熱処理を行う場合には、加熱雰囲気は非酸化性雰囲気、すなわち、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気などの不活性雰囲気、又は水素、アンモニア分解ガス等の還元性雰囲気であるのが望ましい。また、加熱温度は300℃以上1500℃以下の範囲であるのが望ましく、500℃以上1300℃以下の範囲であるのがより望ましい。また、加熱時間は0.5時間以上3時間以下の範囲であるのが望ましく、1.0時間以上2時間以下の範囲であるのがより望ましい。このような条件で熱処理を行うことにより、金属粉末の酸化を防止しながら、より確実に、組成物層5(脱脂済みの組成物層5B)の形状を保持して、接合体8を得ることができる。
なお、組成物層5中(組成物中)の樹脂バインダー成分の種類によっては、第1の積層体6の脱脂工程(G)を焼結工程(H)に統合し、第1の積層体6の脱脂処理を工程(H)で一括して行うことができる。すなわち、工程(G)、(H)を別々の工程としなくとも、工程(H)が工程(G)を兼ねるようにして、第1の積層体6の脱脂処理と第2の積層体7の焼結処理とを1工程で行うことができる。これにより、ステント1の製造工程の短縮を図ることができる。
その後、必要に応じて、ステント1の縁部に丸みを付ける加工を施してもよい。
この加工方法としては、例えば、研磨加工、バレル研磨、電解研磨、化学研磨、ホーニング加工、電磁バレル研磨などが使用できる。
以上のようにして、図1、2に示すステント1が得られる。
なお、前述の説明では、第1の積層体6(焼成済みの組成物層5Aを金属層4に積層したもの)に対し開口10(ステント1の網目構造のパターン形状)を形成したが、開口10の形成は、焼成前の組成物層5と金属層4とを積層したもの、焼成した組成物層5Aと金属層4とを積層したもの(第1の積層体6)、脱脂した組成物層5Bと金属層4とを積層したもの(第2の積層体7)、焼結した組成物層(第2の層11B)と金属層4(第1の層11A)とを積層したもの(接合体8)のいずれに対し行ってもよい。
焼結前の積層体、すなわち、焼成前の組成物層5と金属層4とを積層したもの、焼成した組成物層5Aと金属層4とを積層したもの(第1の積層体6)、脱脂した組成物層5Bと金属層4とを積層したもの(第2の積層体7)に対し開口10の形成を行った場合、比較的容易に加工を行うことができる。
焼結した組成物層と金属層4とを積層したもの、すなわち接合体8に対し開口10の形成を行った場合、比較的高精度に加工を行うことができる。
又、金属層4(第1の層11A)を予め網目構造に対応するパターン形状とし、これに、組成物層5を積層して積層体を得るようにしてもよい。これにより、第1の積層体6に対する加工の手間を省くことができる。
又、本実施形態では、芯材3の周面に金属層4を形成したが、金属層の形成方法は、前述したものに限定されない。例えば、芯材3を用いずに、予め金属層4と同様の形状をなす筒状体を用い、その周面に組成物層5を形成し、開口10を形成することにより、図5(f)に示すような第1の積層体6を得ることができる。
<第2実施形態>
次に、本発明のステントの第2実施形態を図6及び図7に基づき説明する。なお、前述した第1実施形態と同様の構成に関しては、その説明を省略する。
本実施形態のステント101は、図6に示すように、金属を主材料とする緻密質体で構成された第1の層11Cが、ステント101の最外層となるように、金属を主材料とする多孔質体で構成された第2の層11Bに接合されている。すなわち、ステント101は、その外周側に第1の層11C、内側に第2の層11Bが形成された2層構造をなしている。
このようなステント101は、第2の層11Bを構成する多孔質体の空孔13内に薬剤等の充填物を充填すると、ステント101の使用状態時に、管状器官の内腔部の内部に充填物をより確実に付与することができる。
このようなステントの製造方法としては、特に限定されないが、例えば、次のような方法を用いることができる。
具体的には、前述した第1実施形態におけるステント1の製造方法の工程(A)〜(E)に代えて、図7に示すような工程(I)〜(M)を経て、ステント101を製造することができる。
すなわち、芯材3の周面に、組成物層、金属層をこの順で形成して、第1の積層体6Aを得る。
(I) より具体的には、まず、図7(a)に示すように、前述した工程(A)と同様、ほぼパイプ状の芯材3を用意する。
(J) 次に、図7(b)に示すように、芯材3の周面に、前述した工程(C)と同様に、金属粉末を含む組成物を付与して、組成物層5’を成形する。
(K) 次に、必要に応じて、組成物層5’に対し、前述した工程(D)と同様の熱処理により、硬化処理(焼成処理)を施して、図7(c)に示すように、焼成済みの組成物層5A’を得る。
(L) 次に、図7(d)に示すように、焼成済みの組成物層5A’の周面に、前述した工程(B)と同様に、金属を主材料として構成された金属層4’を形成して、第1の積層体6’を得る。
(M) 次に、図7(e)に示すように、前述した工程(E)と同様に、第1の積層体6’の一部を除去して開口10を形成する。これにより、第1の積層体6’が網目構造を有するようになる。
この第1の積層体6’を、前述したような工程(F)〜(H)に供することにより、図6に示すようなステント101が得られる。
なお、前述の説明では、第1の積層体6’(焼成済みの組成物層5A’に金属層4’を積層したもの)に対し開口10(ステント101の網目構造のパターン形状)を形成したが、開口10の形成は、焼成前の組成物層5’、焼成した組成物層5A’と金属層4’とを積層したもの(第1の積層体6’)、脱脂した組成物層と金属層4’とを積層したもの、焼結した組成物層と金属層4’とを積層したもののいずれに対し行ってもよい。
焼成前の組成物層5’や、焼結前の積層体、すなわち、焼成した組成物層5A’と金属層4’とを積層したもの、脱脂した組成物層と金属層4’とを積層したものに対し開口10の形成を行った場合、比較的容易に加工を行うことができる。
焼結した組成物層と金属層4’とを積層したものに対し開口10の形成を行った場合、比較的高精度に加工を行うことができる。
又、組成物層5’を予め網目構造に対応するパターン形状とし、これに、金属層4’を積層して積層体を得るようにしてもよい。これにより、第1の積層体6’に対する加工の手間を省くことができる。
又、前述した実施形態では、焼成済みの組成物層5A’と金属層4’とを積層してなる第1の積層体6’に熱処理を施すことにより、ステント1(接合体8)を得たが、金属層4’を積層せずに組成物層5’のみを熱処理により多孔質体にして第2の層11Bを形成し、これに第1の層11C(金属膜)を形成して、ステント1(接合体8)を得るようにすることができる。これにより、熱処理後の組成物層、すなわち第2の層11Bに対して第1の層を接合するため、第2の層11Bを構成する多孔質体の露出部位、すなわち薬剤等の充填物の放出位置を比較的容易に調整することができる。尚、この場合、第1の層11Cを形成するに際して、少なくとも第2の層11Bの空孔13が第1の金属により埋められればよい。
<第3実施形態>
次に、本発明のステントの第3実施形態を図8に基づき説明する。なお、前述した第1実施形態と同様の構成に関しては、その説明を省略する。
本実施形態のステント201は、図8に示すように、金属を主材料とする緻密質体で構成された第1の層11Aと第3の部分11Cとの間に、金属を主材料とする多孔質体で構成された第2の層11Bが介在している。言い換えすれば、ステント201は、金属を主材料とする緻密質体で構成された第1の層11Aと、第1の層11Aに接合され、金属を主材料とする多孔質体で構成された第2の層11Bと、第1の層11Aに第2の層11Bと反対側で接合され、金属を主材料とする緻密質体で構成された第3の部分11Cとを備えている。
このようなステント201は、ステント201の強度を高いものとしながら、多孔質体の空孔からステント201の外部へ充填物をより低い放出速度で放出させることができる。
このようなステントの製造方法としては、特に限定されないが、例えば、次のような方法を用いることができる。
具体的には、前述した第1実施形態におけるステント1の製造方法の工程(C)の後に、前述した第2実施形態における工程(K)と同様に、組成物層5’の周面に金属層を形成し、その後、前述した工程(D)〜(H)と同様の処理を施すことにより、ステント201を製造することができる。
なお、本発明のステント及びその製造方法は、上述の第1〜3実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは無論である。
第1の金属を主材料とする緻密質体で構成された第1の部分と、第2の金属を主材料とする多孔質体で構成された第2の部分とが互いに接合されていれば、これらの位置関係は、前述した実施形態のものに限定されず、任意である。例えば、第1の部分の周囲を第2の部分が囲むようになっていても、第2の部分の周囲を第1の部分が囲むようになっていてもよい。第2の部分の周囲を第1の部分が囲むようになっている場合、第1の部分に第2の部分に連通する孔を形成したり、第1の部分を特定方向に開放したような形状とすることにより、放出位置を調整することができる。
まず、芯材として長さ40mm、外径800μmのSK-5製の円柱材を用意した。
次に、この円柱材の周面に、湿式電解メッキにより、金属層(第1の層)として厚さ45μmのAu-25Cu合金メッキ層を形成した。
次に、このAu-25Cu合金メッキ層の周面に、金属粉末を含有するペースト状の組成物を厚さ約45μmで塗布して、組成物層を形成した。すなわち、Au-25Cu合金メッキ層と疎性物層とが積層されてなる積層体を得た。
前記組成物は、金属粉末としてAu粉末(平均粒径:5μm)を85wt%含み、樹脂バインダーとして熱硬化性樹脂(不飽和ポリエステル)を10wt%(75vol%)含み、溶媒としてエチルエーテルを5wt%含んでいた。
この積層体に対し、250℃、1.5時間の熱処理(焼成)を施して、前記組成物中の溶媒を除去すると共に前記組成物中の熱硬化性樹脂を硬化させて、組成物層が焼成された積層体を得た。このとき、組成物層の平均厚さは、約40μmであった。
組成物層が焼成された焼成体に対し、UVレーザーを用いて、図1に示すようなステント形状に加工した。このとき、レーザーを前記円柱材の中心軸に向けてこの中心軸に対して直角の方向で照射した。また、レーザーが円柱材に達するような条件で、レーザーの照射を行った。
その後、前記円柱材と前記積層体とからなる構造体に対し、前記円柱材を溶出させて、積層体のみとした。このとき、前記構造体を、常温で、超音波振動を与えながら、4wt%希硫酸溶液中に浸漬した。
次に、積層体に対し、水素ガス雰囲気中にて、550℃、1.5時間の熱処理による脱脂処理を施した。これにより、成形体中に残留している有機物を分解・焼失させて、組成物層が脱脂された積層体を得た。
次に、積層体に対し、組成物層中のAu粉末同士と、組成物層中のAu粉末とAu-25Cu合金メッキ層とを拡散接合させるため、前記積層体に水素ガス雰囲気のもとで850℃、1.5時間の熱処理を施して、ステントを得た。
このようにして得られたステントを切断して、その断面を観察したところ、微小な空孔が多数形成されているのを確認することができた。すなわち、得られたステントの外周側部(第2の層)は多孔質体で構成されていた。
また、得られたステントの外周側部に薬剤を含浸させ、これを人工血管内に挿入・留置したところ、ステントから薬剤が徐々に放出されているのが確認された。
なお、使用する金属粉末の粒径を大きくして、前述と同様にして、ステントを製造し、得られたステントを切断して、その断面を観察したところ、前述したステントの空孔よりも大きな空孔が形成されているのを確認することができた。このステントに薬剤を含浸させ、これを人工血管内に挿入・留置したところ、ステントからの薬剤の放出速度が大きくなっているのが確認された。
また、組成物中の樹脂バインダーの含有量を大きくして、前述と同様にして、ステントを製造し、得られたステントを切断して、その断面を観察したところ、前述したステントの空孔率よりも大きな空孔率で、空孔が形成されているのを確認することができた。このステントに薬剤を含浸させ、これを人工血管内に挿入・留置したところ、ステントからの薬剤の放出速度が大きくなっているのが確認された。このとき、ステントにより多くの薬剤を量することができた。
本発明に係るステントの第1の実施形態を示す側面図。 図1中に示すA-A線での断面図。 図1に示すステントの製造方法を説明する図。 図1に示すステントの製造方法を説明する図。 図1に示すステントの製造方法を説明する図。 本発明に係るステントの第2の実施形態を示す側面図。 図6に示すステントの製造方法を説明する図。 本発明に係るステントの第3の実施形態を示す側面図。
符号の説明
1……ステント
10……開口
11……線状部(線材)
11A……第1の層(第1の部分)
11B……第2の層(第2の部分)
11C……第1の層(第3の部分)
13……空孔
3……芯材
4、4’……金属層
5、5’5A……組成物層
6、6’6A……第1の積層体
7……第2の積層体
8……接合体
111……交点

Claims (25)

  1. 生体の管状器官の内腔部に挿入・留置して使用され、網目構造を有すると共に全体として筒状をなすステントであって、
    第1の金属を主材料とする緻密質体で構成された第1の部分と、
    前記第1の部分に接合され、第2の金属を主材料とする多孔質体で構成された第2の部分とを有することを特徴とするステント。
  2. 前記多孔質体は、その空孔率が10%以上80%以下の範囲であることを特徴とする請求項1に記載のステント。
  3. 前記第1の部分及び前記第2の部分は、それぞれステントの周面に沿うように層状をなし、互いに接合されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のステント。
  4. 前記第2の部分は、ステントの最外層を構成することを特徴とする請求項3に記載のステント。
  5. 前記第2の部分は、ステントの最内層を構成することを特徴とする請求項3または4に記載のステント。
  6. 前記第2の部分に前記第1の部分と反対側で接合され、第3の金属を主材料とする緻密質体で構成された第3の部分を有することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のステント。
  7. 前記第2の部分には、充填物が含浸されていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のステント。
  8. 前記第2の金属として、前記第1の金属よりも高い濡れ性を有するものを用いていることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載のステント。
  9. 前記多孔質体は、隣接する空孔同士が連通していることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載のステント。
  10. 前記第1の部分と前記第2の部分とは、互いに拡散接合されていることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載のステント。
  11. 前記第1の金属及び前記第2の金属の少なくとも一方は、Au、Pt、Ta、Rh、Ru、Pd、Nb、Os、Ir、Agよりなる群から選択された少なくとも1種又はこれらのうち少なくとも1種を含む合金であることを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載のステント。
  12. 前記第1の金属及び前記第2の金属の少なくとも一方は、Ni・Ti合金であることを特徴とする請求項1乃至請求項11のいずれか1項に記載のステント。
  13. 前記多孔質体は、金属粉末を焼結して得られたものであることを特徴とする請求項1乃至請求項12のいずれか1項に記載のステント。
  14. 生体の管状器官の内腔部に挿入・留置して使用され、網目構造を有すると共に全体として筒状をなすステントを製造する方法であって、
    第1の金属を主材料とする緻密質体で構成された第1の層と、第2の金属を主材料とする多孔質体で構成された第2の層とが互いに接合されたステントを製造するに際し、
    前記第1の層に、前記第2の金属を主材料とする金属粒子を含む組成物で構成された組成物層を積層して、積層体を得る工程と、
    前記積層体を、前記網目構造に対応するパターン形状に加工する工程と、
    前記積層体に少なくとも1回の熱処理を施すことにより、前記組成物層を多孔質体として前記第2の層とすると共に、前記第1の層と前記第2の層との接合部を拡散接合して、接合体を得る工程とを有することを特徴とするステントの製造方法。
  15. 生体の管状器官の内腔部に挿入・留置して使用され、網目構造を有すると共に全体として筒状をなすステントを製造する方法であって、
    第1の金属を主材料とする緻密質体で構成された第1の層と、第2の金属を主材料とする多孔質体で構成された第2の層とが互いに接合されたステントを製造するに際し、
    前記第1の層に、前記第2の金属を主材料とする金属粒子を含む組成物で構成された組成物層を積層して、積層体を得る工程と、
    前記積層体に少なくとも1回の熱処理を施すことにより、前記組成物層を多孔質体にして前記第2の層とすると共に、前記第1の層と前記第2の層との接合部を拡散接合して、接合体を得る工程と、
    前記接合体を、前記網目構造に対応するパターン形状に加工する工程とを有することを特徴とするステントの製造方法。
  16. 生体の管状器官の内腔部に挿入・留置して使用され、網目構造を有すると共に全体として筒状をなすステントを製造する方法であって、
    第1の金属を主材料とする緻密質体で構成された第1の層と、第2の金属を主材料とする多孔質体で構成された第2の層とが互いに接合されたステントを製造するに際し、
    前記第1の層を前記網目構造に対応するパターン形状とし、これに、前記第2の金属を主材料とする金属粒子を含む組成物で構成された組成物層を積層して、積層体を得る工程と、
    前記積層体に少なくとも1回の熱処理を施すことにより、前記組成物層を多孔質体にして前記第2の層とすると共に、前記第1の層と前記第2の層との接合部を拡散接合して、接合体を得る工程とを有することを特徴とするステントの製造方法。
  17. 生体の管状器官の内腔部に挿入・留置して使用され、網目構造を有すると共に全体として筒状をなすステントを製造する方法であって、
    第1の金属を主材料とする緻密質体で構成された第1の層と、第2の金属を主材料とする多孔質体で構成された第2の層とが互いに接合されたステントを製造するに際し、
    前記第2の金属を主材料とする金属粒子を含む組成物で構成され、前記網目構造に対応するパターン形状をなす組成物層を形成し、これに前記第1の層を積層して、積層体を得る工程と、
    前記積層体に少なくとも1回の熱処理を施すことにより、前記組成物層を多孔質体にして前記第2の層とすると共に、前記第1の層と前記第2の層との接合部を拡散接合して、接合体を得る工程とを有することを特徴とするステントの製造方法。
  18. 生体の管状器官の内腔部に挿入・留置して使用され、網目構造を有すると共に全体として筒状をなすステントを製造する方法であって、
    第1の金属を主材料とする緻密質体で構成された第1の層と、第2の金属を主材料とする多孔質体で構成された第2の層とが互いに接合されたステントを製造するに際し、
    前記第2の金属を主材料とする金属粒子を含む組成物で構成された組成物層を形成する工程と、
    前記組成物層に少なくとも1回の熱処理を施すことにより、前記組成物層を多孔質体として前記第2の層とする工程と、
    前記第2の層に、前記第1の層を接合して、接合体を得る工程とを有することを特徴とするステントの製造方法。
  19. 前記第1の層は、イオンプレーティング法、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法、メッキ法のうち1種または2種以上を組み合わせて形成されたものであることを特徴とする請求項14乃至請求項18のいずれか1項に記載のステントの製造方法。
  20. 前記金属粉末の平均粒径は、0.1μm以上50μm以下であることを特徴とする請求項14乃至請求項19のいずれか1項に記載のステントの製造方法。
  21. 前記金属粉末は、組成又は特性の異なる2種以上の金属粉末からなることを特徴とする請求項14乃至請求項20のいずれか1項に記載のステントの製造方法。
  22. 前記金属粉末は、粒径の異なる2種以上の金属粉末からなることを特徴とする請求項14乃至請求項21のいずれか1項に記載のステントの製造方法。
  23. 前記金属粉末は、Au、Pt、Ta、Rh、Ru、Pd、Nb、Os、Ir、Agよりなる群から選択された少なくとも1種、又はこれらのうち少なくとも1種を含む合金を主材料として構成されていることを特徴とする請求項14乃至請求項22のいずれか1項に記載のステントの製造方法。
  24. 前記組成物は、樹脂バインダーを含むものであることを特徴とする請求項14乃至請求項23のいずれか1項に記載のステントの製造方法。
  25. 前記組成物は、ペースト状をなしていることを特徴とする請求項14乃至請求項24のいずれか1項に記載のステントの製造方法。
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