以下、添付図面に基づいて、本発明を実施するための形態について、説明する。
図1は、本発明の実施形態である電子内視鏡システムの構成図である。本実施形態の電子内視鏡システムは、電子内視鏡10,本体装置20,及び、表示装置30を、備えている。
電子内視鏡10は、光の届かない体腔内を観察するための器具である。図2は、電子内視鏡10の構成図である。電子内視鏡10は、挿入部11,操作部12,ケーブル部13,及び、接続部14に、区分される。
挿入部11は、体腔内に挿入される部分であり、樹脂製の被覆管とこの被覆管に覆われた管状の骨格構造とを主要な構成としている。その骨格構造は、与えられた外力に応じて柔軟に屈曲するとともに、体腔壁を傷つけない程度に屈曲の状態を維持できる剛性を保有する。挿入部11の内部の構成については後述する。
操作部12は、各種スイッチ121,アングルノブ122,鉗子口123,ホース継手124などを備えた部分であり、挿入部11の基端に接続されている。アングルノブ122は、挿入部11におけるその先端から基端に向かって所定の長さの部分に組み込まれた湾曲機構を遠隔操作するための把手であり、このアングルノブ122が操作されると、挿入部11の先端部分の湾曲状態が変化する。鉗子口123は、挿入部11の内部に鉗子チャンネルとして引き通された細管101へ、鉗子や剪刀や凝固電極などの処置具を挿入するための開口である。但し、図1では、鉗子口123には蓋がされている。ホース継手124は、挿入部11の内部に送気送水チャンネルとして引き通された細管102と図示せぬ送気送水装置から延びるホースとを接続するための口金であり、操作部12においてアングルノブ122がある側とは反対側に備えられている。
ケーブル部13は、各種の信号線103〜106とそれら信号線103〜106を覆う樹脂製の管とを備えた電纜であり、その先端は、操作部12の側面に接続されている。ケーブル部13内に引き通された信号線103〜106のうち、信号線103は、操作部12の各種スイッチ121に接続された信号線である。残りの信号線104〜106については後述する。
接続部14は、ケーブル部13の基端を本体装置20に着脱自在に装着するためのいわゆるコネクタである。接続部14は、本体装置20に装着された際に本体装置20に当接する装着面に、端子141を備えている。この端子141の各電極には、ケーブル部13内に引き通された信号線103〜106のうち、信号線103〜105の端部が接続されている。
これら各部11〜14に区分される電子内視鏡10は、更に、束ねられた多数の光ファイバからなるライトガイド107を内蔵している。ライトガイド107は、接続部14,ケーブル部13,操作部12,及び、挿入部11内に順に引き通されており、ライトガイド107の基端は、接続部14における上記の装着面から突出する金属管142内に固定されている。ライトガイド107の先端部分は、それを構成する多数の光ファイバが二つの束に分けられてそれぞれ別個に束ねられることによって、二股に分岐しており、束ねられてなる各枝部の先端は、双方とも、挿入部11の先端に固定されている。
図3は、挿入部11の先端面の正面図である。挿入部11の先端面には、五個の貫通孔が形成されている。そのうちの二個の貫通孔には、鉗子チャンネルとしての細管101,及び、送気送水チャンネルとしての細管102が接続されており、双方の貫通孔は、鉗子チャンネルの開口端111,及び、送気送水チャンネルの開口端112として機能する。なお、送気送水チャンネルの開口端112には、送られてきた液体や気体を対物光学系114の表面に向けて噴出するための図示せぬノズルが、装着されている。
また、残りの三個の貫通孔のうち、二個の貫通孔には、配光レンズ113,113が嵌め込まれている。図2に示されるように、二個の配光レンズ113,113には、それぞれ、ライトガイド107の先端部分に形成された各枝部の先端面が対向している。
そして、配光レンズ113,113が嵌め込まれている二個の貫通孔に挟まれた残りの一個の貫通孔には、第1レンズ114aが嵌め込まれている。第1レンズ114aは、挿入部11内に配置された第2レンズ114b及び第3レンズ114cとともに、対物光学系114を構成する。対物光学系114は、挿入部11の先端に対向した被写体の像を形成する光学系である。第1レンズ114aと第2レンズ114bとの間には、明るさ絞り115が配置されている。明るさ絞り115は、第1レンズ114aと第2レンズ114bとの間を通過する光の量を制限する光学素子である。
挿入部11は、更に、回転フィルタ116を内蔵している。図4は、回転フィルタ116の正面図である。回転フィルタ116は、同じ大きさで略半円形の二個の貫通孔が穿たれた円板であり、各貫通孔の円弧の中心は、回転フィルタ116の外周円の中心に一致している。一方の貫通孔には、透明な平行平面板116aが嵌め込まれており、他方の貫通孔には、この平行平面板116aと同じ大きさの励起光除去フィルタ116bが嵌め込まれている。なお、平行平面板116aの重さは、励起光除去フィルタ116bとほぼ同じであり、これにより、回転フィルタ116の重心が大幅に偏心するのが防止されている。
励起光除去フィルタ116bは、所定の波長帯域の光を遮蔽してその他の波長帯域の光を透過させる光学素子である。この励起光除去フィルタ116bが除去できる光の波長帯域は、励起光の波長帯域に一致するように選択されている。励起光は、蛍光の放射という現象を生体組織において引き起こさせるための光である。本実施形態では、励起光は、可視帯域の一部の波長帯域、例えば400nm〜450nmの一部の波長帯域を持つ光となっている。
回転フィルタ116は、明るさ絞り115と第2レンズ114bとの間において、対物光学系114の光軸に対して直交しており、対物光学系114を透過する光は、回転フィルタ116の偏心位置に入射する。この回転フィルタ116の中心は、モータ117の駆動軸の先端に固定されている。回転フィルタ116は、モータ117によって回転されると、対物光学系114を透過する光の光路に対し、平行平面板116aと励起光除去フィルタ116bとを繰り返し交互に挿入する。
なお、図2には、回転フィルタ116における対物光学系114に挿入されていない部分が配光レンズ113と第1レンズ114aとの間の間隙に配置されている状態が、図示されている。この間隙は、回転フィルタ116がモータ117の駆動軸に固定されていることを説明するために、便宜的に形成したものである。実際には、図3の破線にて示されるように、挿入部11の先端面に直交する方向から見ると、回転フィルタ116は、各チャンネルの開口端111,112と各配光レンズ113,113との間において、これらに干渉しないように、且つ、その一部が第1レンズ114aに重なるように、配置されている。
ところで、図3からも明らかなように、回転フィルタ116の直径が大きくなると、挿入部11の直径を大きくしなければならない。これを防ぐため、本実施形態では、回転フィルタ116は、図2に示されるように、明るさ絞り115の近傍に配置されている。これは、明るさ絞り115の近傍では、光束の有効径が小さいため、平行平面板116aや励起光除去フィルタ116bの大きさを抑えることができ、その結果として、回転フィルタ116全体を小さくすることができるからである。
挿入部11は、更に、撮像素子118を内蔵している。撮像素子118は、二次元的に配列された多数の画素により構成される撮像面を有する単板のエリアイメージセンサであり、その撮像面上にはカラーフィルタがオンチップされている。撮像素子118は、その撮像面が対物光学系114の像面に一致する位置に、配置されている。
ケーブル部13内に引き通された信号線103〜106のうち、信号線104〜106は、更に挿入部11に引き通されており、前述したモータ117及び撮像素子118に接続されている。これら信号線104〜106のうち、モータ117に接続された信号線104,及び、撮像素子118の出力側の信号線105は、前述したように、接続部14の端子141の電極に直接接続されている。その一方、撮像素子118の入力側の信号線106は、接続部14内に配置されたドライバ143に接続されており、このドライバ143の入力側の信号線144が、端子141の電極に接続されている。
ドライバ143は、撮像素子118の駆動を制御するための回路である。本実施形態のドライバ143は、2フィールド:1フレームの飛越走査方式にて蓄積電荷を読み出させるように撮像素子118を制御する。
本体装置20は、電子内視鏡10を制御するためのプロセッサである。本体装置20は、制御部21,光源部22,及び、画像処理部23に、区分される。
制御部21は、本体装置20全体を制御するための機器であり、図示されてはいないが、各種の基準信号を生成してその信号の出力を制御するタイミングジェネレータを備えている。制御部21に接続されたモータ117,ドライバ143,光源部22,及び、画像処理部23は、これら基準信号に従って各種の処理を進行する。
この制御部21は、図示されてはいないが、電子内視鏡10の接続部14が本体装置20に装着されると、接続部14の端子141,及び、信号線103,104,144を介して、接続部14内のドライバ143,操作部12の各種スイッチ121,及び、挿入部11内のモータ117に接続される。
そして、制御部21は、ドライバ143に接続されている状態では、そのドライバ143に基準信号を送出し続け、ドライバ143を通じて撮像素子118の駆動を制御する。
また、制御部21は、操作部12の各種スイッチ121のうちの一つが操作されると、観察モードを、通常観察モード及び特殊観察モードの何れか一方に、切り替えるとともに、光源部22及び画像処理部23の動作状態を、切替後の観察モードに対応した動作状態へ変化させる。
さらに、制御部21は、モータ117に接続されている状態では、そのモータ117の駆動の開始又は停止を制御するとともに、モータ117の駆動中には基準信号に従って回転位相を制御する。
具体的には、制御部21は、通常観察モード下では、モータ117を制御することによって回転フィルタ116の平行平面板116aを、対物光学系114を通過する光の光路に挿入する。従って、通常観察モード下では、対物光学系114へ入射した光は、対物光学系114をそのまま透過することとなる。
他方、特殊観察モード下では、制御部21は、モータ117を制御することによって回転フィルタ116を回転させる。このとき、制御部21は、1フレーム中の第1フィールドの画像データに相当する電荷を撮像素子118が蓄積する間、対物光学系114内の光路に平行平面板116aを挿入し、1フレーム中の第2フィールドの画像データに相当する電荷を撮像素子118が蓄積する間、対物光学系114内の光路に励起光除去フィルタ116bを挿入する。従って、特殊観察モード下では、対物光学系114をそのまま通過した光によって形成された像が、撮像素子118によって第1フィールドの画像データに変換され、対物光学系114に入射した光のうち励起光と同じ波長成分が除去された光によって形成される像が、撮像素子118によって第2フィールドの画像データに変換される。
光源部22は、電子内視鏡10のライトガイド107の基端面に光を供給するための機器である。なお、図示されてはいないが、電子内視鏡10の接続部14が本体装置20に装着されると、接続部14の金属管142が、光源部22内に挿入され、ライトガイド107の基端が、光源部22内に固定される。
図5は、光源部22及び画像処理部23の構成図である。光源部22は、白色光源221,光束径縮小光学系222,回転遮蔽板223,励起光源224,ダイクロイックミラー225,及び、集光レンズ226から、構成されている。
白色光源221は、白色光を平行光として射出する装置であり、焦点から放射される光を平行光として反射する放物面鏡と、放物面鏡の焦点に発光点が配置されたショートアークランプとを、主要な構成としている。光束径縮小光学系222は、一対の凸レンズ222a,222bからなるケプラー型のアフォーカル光学系であり、白色光源221から平行光として射出される白色光の光束径を縮小する。
回転遮蔽板223は、図示せぬ略半円形の開口が一つだけ穿たれた円板である。その開口の円弧の中心は、回転遮蔽板223の外周円の中心に一致しており、回転遮蔽板223の中心は、モータ223aの駆動軸の先端に固定されている。また、回転遮蔽板223は、光束径縮小光学系222における凸レンズ222a,222bの間の焦点位置において、光束径縮小光学系222の光軸に対して直交しており、白色光は、回転遮蔽板223の偏心位置に入射する。このため、回転遮蔽板223が、モータ223aによってその駆動軸を回転中心として回転されると、光束径縮小光学系222を透過する白色光の光路には、図示せぬ開口が繰り返し挿入され、光束径縮小光学系222からは、白色光が周期的に射出される。
励起光源224は、前述した励起光を平行光として射出する装置であり、励起光を発光点から放射するレーザー発光ダイオードと、このレーザー発光ダイオードから放射される励起光を平行光に変換するコリメートレンズとを、主要な構成としている。励起光源224から平行光として射出される励起光の光路は、光束径縮小光学系222から平行光として射出される白色光の光路と直交している。
ダイクロイックミラー225は、白色光を透過させるとともに励起光を反射する光学素子である。ダイクロイックミラー225は、白色光の光路と励起光の光路とが交差する位置に配置されており、白色光の光路に対して45°傾いているとともに、励起光の光路に対しても45°傾いている。そして、光束径縮小光学系222から平行光として射出された白色光が、ダイクロイックミラー225を透過するとともに、励起光源224から平行光として射出された励起光が、ダイクロイックミラー225によって直角に反射されることにより、白色光と励起光とが同一の光路上を同じ方向へ進む。従って、ダイクロイックミラー225は、光路合成素子として機能する。
このダイクロイックミラー225は、物体を一方向に沿って平行移動させるための図示せぬステージ上に、設置されている。この図示せぬステージが駆動されると、ダイクロイックミラー225は、光束径縮小光学系222から平行光として射出される白色光の光路と励起光源224から平行光として射出される励起光の光路とが交差する位置から、引き抜かれる。図5には、引き抜かれた後の位置にあるダイクロイックミラー225が、一点鎖線にて、便宜的に示されている。また、この図示せぬステージがそれとは逆方向に駆動されると、ダイクロイックミラー225は、白色光の光路と励起光の光路とが交差する位置に、戻される。
集光レンズ226は、平行光を収斂させるためのコンデンサレンズである。集光レンズ226は、ダイクロイックミラー225を透過した白色光の光路(すなわち当該ミラー225にて反射された励起光の光路)上に配置されており、電子内視鏡10の接続部14の金属管142内に固定されているライトガイド107の基端面に向けて、これら光を収斂させる。従って、ライトガイド107の基端面は、入射端面として機能し、挿入部11の先端に配置されるライトガイド107の先端面は、射出端面として機能する。
以上に説明した光学構成を有する光源部22は、図示されてはいないが、白色光源221及び励起光源224の駆動の開始又は停止,ダイクロイックミラー225が設置された図示せぬステージの駆動,回転遮蔽板223のモータ223aの駆動の開始又は停止,及び、回転遮蔽板223の回転位相を制御するためのシステムコントローラを、備えている。
具体的には、光源部22の図示せぬシステムコントローラは、観察モードが通常観察モードへ切り替えられると、白色光源221に対して白色光の射出を開始させ、モータ223aを制御することによって回転遮蔽板223の図示せぬ貫通孔を白色光の光路に挿入させ、さらに、図示せぬ駆動機構を制御して図示せぬステージを移動させることによって、白色光の光路と励起光の光路とが交差する位置からダイクロイックミラー225を引き抜く。これにより、白色光のみが集光レンズ226に入射するようになるので、電子内視鏡10の金属管142内のライトガイド107の入射端面には、白色光が連続して入射し、ライトガイド107の射出端面から挿入部11の先端の前方に向けて、白色光が連続して射出される。
他方、観察モードが特殊観察モードへ切り替えられると、図示せぬシステムコントローラは、白色光源221に対して白色光の射出を開始させ、モータ223aを制御することによって回転遮蔽板223を回転させ、励起光源224に対して励起光の周期的な射出を開始させ、さらに、図示せぬ駆動機構を制御して図示せぬステージを移動させることによって、白色光の光路と励起光の光路とが交差する位置にダイクロイックミラー225を配置させる。このとき、図示せぬシステムコントローラは、1フレーム中の第1フィールドの画像データに相当する電荷を撮像素子118が蓄積する間は、集光レンズ226に白色光を入射させ、1フレーム中の第2フィールドの画像データに相当する電荷を撮像素子118が蓄積する間は、集光レンズ226に励起光を入射させる。これにより、電子内視鏡10の金属管142内のライトガイド107の入射端面には、白色光と励起光とが交互に入射するようになるので、ライトガイド107の射出端面から挿入部11の先端に向けて、白色光と励起光とが交互に射出される。
画像処理部23は、電子内視鏡10の挿入部11内の撮像素子118が生成する画像データに所定の処理を施してビデオ信号に変換するための機器である。なお、図示されてはいないが、電子内視鏡10の接続部14が本体装置20に装着されると、画像処理部23は、接続部14の端子141,及び、電子内視鏡10の各部11〜14内の信号線105を介して、挿入部11の先端内の撮像素子118に接続される。
図5に示されるように、画像処理部23は、前段処理回路231,Rメモリ232r,Gメモリ232g,Bメモリ232b,マトリックス回路233,Cメモリ234c,Fメモリ234f,演算回路235,合成回路236,及び、後段処理回路237から、構成されている。
前段処理回路231は、電子内視鏡10の挿入部11内の撮像素子118がアナログ信号の電送形態で出力した画像データのデータ形式を以後の処理に適切なデータ形式へと変換するための回路である。具体的には、前段処理回路231は、撮像素子118から繰り返し入力される画像データに対し、色分離,デジタル化,色空間変換,及び、カラーバランス等の一般的な処理を施す。前段処理回路231は、Rメモリ232r,Gメモリ232g,及び、Bメモリ232bに接続されているとともに、マトリックス回路233にも接続されており、前述した処理が施されてなるRGBの色成分毎の画像データを、順次、各メモリ232r,232g,232bとマトリックス回路233とにそれぞれ出力する。
Rメモリ232r,Gメモリ232g,及び、Bメモリ232bは、何れも、画像データを一時的に記録しておくための記憶装置である。なお、前述したRGBの色成分毎の画像データは、前段処理回路231からその色成分に対応するメモリ232r,232g,232bへ順次出力されるが、各メモリ232r,232g,232bが画像データを保存するか否かは、図示せぬメモリコントロール回路によって制御される。また、各メモリ232r,232g,232bに保存された画像データを出力するタイミングも、図示せぬメモリコントロール回路によって制御される。
具体的には、図示せぬメモリコントロール回路は、通常観察モードの時には、RGBの色成分毎の画像データを、前段処理回路231から送られてくるたびに、各メモリ232r,232g,232bに記録させ、後述の後段処理回路237が1フィールド分の画像データについての処理を開始するタイミングにて、出力させる。
他方、特殊観察モードの時には、図示せぬメモリコントロール回路は、1フレーム中の第1フィールドの画像データを各メモリ232r,232g,232bに記録させ、1フレーム中の第2フィールドの画像データを各メモリ232r,232g,232bに記録させない。そして、図示せぬメモリコントロール回路は、各メモリ232r,232g,232bに記録されているRGBの色成分毎の画像データを、後述の後段処理回路237が第1フィールドの画像データについて処理を開始するタイミングにて出力させるとともに、同じ画像データを、後段処理回路237が第2フィールドの画像データについて処理を開始するタイミングにても出力させる。
マトリックス回路233は、RGB画像データから輝度成分(Y成分)の画像データを生成するための回路である。Cメモリ234c及びFメモリ234fは、何れも、画像データを一時的に記録しておくための記憶装置である。なお、前述した輝度成分の画像データは、マトリックス回路233からCメモリ234c及びFメモリ234fへ順次出力されるが、各メモリ234c,234fが画像データを保存するか否かは、図示せぬメモリコントロール回路によって制御される。また、これら各メモリ234c,234fに保存された画像データを出力するタイミングも、図示せぬメモリコントロール回路によって制御される。
具体的には、図示せぬメモリコントロール回路は、通常観察モードの時には、Cメモリ234c及びFメモリ234fの何れに対しても、マトリックス回路233から出力される画像データを記録させない。
他方、特殊観察モードの時には、図示せぬメモリコントロール回路は、1フレーム中の第1フィールドの画像データの輝度成分をCメモリ234cに記録させ、1フレーム中の第2フィールドの画像データの輝度成分をFメモリ234fに記録させる。
なお、特殊観察モードにおける第1フィールドの画像データは、挿入部11の先端の前方にある体腔壁の表面に入射した白色光のうちその表面で反射された光によって形成される像に基づいて、撮像素子118により生成されたものである。以下、この画像データを、便宜上、「参照画像データ」と表記する。
また、特殊観察モードにおける第2フィールドの画像データは、励起光が照射された体腔壁下の生体組織から放射される蛍光によって形成される像に基づいて、撮像素子118により生成されたものである。以下、この画像データを、便宜上、「蛍光画像データ」と表記する。
つまり、特殊観察モードでは、撮像素子118は、参照画像データと蛍光画像データとを交互に生成するので、マトリックス回路233からは、参照画像データの輝度成分と蛍光画像データの輝度成分とが、交互に出力される。そして、Cメモリ234cには、参照画像データの輝度成分が記録され、Fメモリ234fには、蛍光画像データの輝度成分が記録される。
演算回路235は、参照画像データの輝度成分と蛍光画像データの輝度成分とに基づいて新たな画像データを生成するための回路である。この演算回路235が行う処理内容を具体的に説明すると、まず、演算回路235は、1フレーム分の参照画像データ及び蛍光画像データの各輝度成分がCメモリ234c及びFメモリ234fにそれぞれ記録されると、双方の画像データの輝度成分を、最大輝度値と最小輝度値との間の階調数が互いに等しくなるようにそれぞれ規格化する。続いて、演算回路235は、参照画像データの規格化後の輝度成分から蛍光画像データの規格化後の輝度成分を減算する(同一の座標における輝度値の差分を全座標のそれぞれについて算出する)。その後、演算回路235は、その減算の結果得られる差分データを、患部画像データとして、後述の後段処理回路237が第1フィールドの画像データについて処理を開始するタイミングにて出力するとともに、同じ患部画像データを、後述の後段処理回路237が第2フィールドの画像データについて処理を開始するタイミングにても出力する。
合成回路236は、画像データ同士を合成するための回路であり、Gメモリ232gと演算回路235とに接続されている。通常観察モードでは、Gメモリ232gからはG成分の画像データが入力されるが、演算回路235からは患部画像データが入力されない。そのため、合成回路236は、通常観察モードでは、G成分の画像データに何の処理を施すこともなくそのままこれを出力する。一方、特殊観察モードでは、合成回路236は、Gメモリ232gからG成分の画像データが入力されるとともに、演算回路235から患部画像データが入力される。そして、合成回路236は、G成分の画像データの画素群のうち、患部画像データにおける1以上の輝度値を有する画素と同じ位置の画素群を、患部画像データのもので置換することによって、G成分の画像データに患部画像データを合成し、合成後の画像データを出力する。なお、この合成により、G成分の画像には、患部画像がオーバーレイされることとなる。
後段処理回路237は、RGBの色成分毎の画像データのデータ形式を外部装置へ出力するのに適切なデータ形式へと変換するための回路である。具体的には、後段処理回路237は、Rメモリ232r及びBメモリ232bから出力されるRBの色成分毎の画像データと、合成回路236から出力される画像データとに対し、アナログ化及びエンコーディング等の一般的な処理を施すことによって、飛越走査方式に準拠した例えばNTSC信号などのビデオ信号を生成する。後段処理回路237は、生成したビデオ信号を、外部出力端子へ出力する。
表示装置30は、画像を画面に表示するための装置である。表示装置30は、本体装置20の外部出力端子に接続されており、本体装置20の画像処理部23からビデオ信号の電送形態で出力された画像データに基づいて、画像を表示する。
以上のように構成されるので、本実施形態の電子内視鏡システムは、以下に記述するように、作用する。
電子内視鏡システムを使用して被験者に対して施術を行う術者は、表示装置30と本体装置20とを接続してそれぞれの主電源を投入した後、電子内視鏡10の接続部14を本体装置20に接続し、操作部12のスイッチ121を操作することによって通常観察モードに切り替える。すると、前述したように、挿入部11先端の対物光学系114内の光路に回転フィルタ116の平行平面板116aが挿入された状態になる。また、白色光源221からは白色光が射出されるようになり、光源部22の光束径縮小光学系222内の光路には、回転遮蔽板223の図示せぬ開口が挿入され、光束径縮小光学系222から射出される白色光の光路と励起光源224から射出される励起光の光路とが交差する位置からは、ダイクロイックミラー225が引き抜かれる。これにより、電子内視鏡10の挿入部11の先端からは、白色光が連続的に射出されるようになる。
術者が、白色光を射出している挿入部11の先端を被験者の体腔内に挿入すると、白色光が体腔内に照射されるようになり、体腔壁の表面に入射した白色光のうちその表面で反射された光の一部が、対物光学系114に入射する。対物光学系114に入射した光は、回転フィルタ116の平行平面板116aに入射することにより何れの波長成分も除去されることなくそのまま撮像素子118の撮像面に入射する。対物光学系114を透過した光によって撮像面上に形成された体腔壁の像は、撮像素子118によって画像データに変換され、画像処理部23において前述の処理が施された画像データとして表示装置30へ出力され、最終的に、カラーの通常観察画像として表示装置30に映し出される。術者は、この通常観察画像を見ることにより、体腔壁の状態を観察することができる。
次に、術者は、カラーの通常観察画像の観察を通じて選択した部位に対して、励起光を利用する特殊観察を行う場合、電子内視鏡10の操作部12のスイッチ121を操作することによって特殊観察モードに切り替える。すると、前述したように、挿入部11の先端の対物光学系114内の光路に回転フィルタ116の平行平面板116aと励起光除去フィルタ116bとが交互に挿入されるようになる。また、励起光源224からは励起光が周期的に射出されるようになり、光源部22の光束径縮小光学系222内の光路には、回転遮蔽板223の図示せぬ開口が繰り返し挿入されるようになり、光束径縮小光学系222から射出される白色光の光路と励起光源224から射出される励起光の光路とが交差する位置には、ダイクロイックミラー225が配置される。これにより、電子内視鏡10の挿入部11の先端からは、白色光と励起光とが交互に射出されるようになる。
これにより、白色光が挿入部11の先端から射出される期間では、体腔壁の表面に入射した白色光のうちその表面で反射された光の一部が、対物光学系114へ入射し、対物光学系114へ入射した光は、回転フィルタ116の平行平面板116aに入射することによって何れの波長成分も除去されることなくそのまま撮像素子118の撮像面に入射する。対物光学系114を透過した光によって撮像面上に形成された体腔壁の像は、撮像素子118によって参照画像データに変換され、画像処理部23へ出力される。
一方、励起光が挿入部11の先端から射出される期間では、励起光が照射された体腔壁下の生体組織が放射した蛍光の一部と、体腔壁の表面に入射した励起光のうちその表面で反射された励起光の一部とが、対物光学系114へ入射する。対物光学系114へ入射した光からは、回転フィルタ116の励起光除去フィルタ116bに入射することによって励起光と同じ波長成分が除去される。つまり、蛍光だけが、対物光学系114を透過する。そして、対物光学系114を透過した蛍光によって撮像面上に形成された体腔壁の像は、撮像素子118によって蛍光画像データに変換され、画像処理部23へ出力される。
画像処理部23は、参照画像データと蛍光画像データとが一組入力される毎に、双方の画像データの輝度成分に基づいて患部画像データを生成し、患部画像データと参照画像データとを合成してなる画像データを、特殊観察画像データとして、表示装置30へ出力する。表示装置30は、ビデオ信号の形態で特殊観察画像データが入力されると、その特殊観察画像データに基づいて、参照画像に患部画像がスーパーインポーズされてなる特殊観察画像を映し出す。
術者は、このカラーの特殊観察画像を見ることにより、参照画像を通じて体腔壁の輪郭や凹凸を特定できるとともに、その参照画像の中において斑点状や塊状として緑色にて示された部分(患部画像中の輝度値が1以上の部分)により、相対的に弱い蛍光を発する生体組織の集合体、すなわち、腫瘍や癌などの病変が生じている可能性の高い部位を、認識することができる。
以上に説明したように、本実施形態の電子内視鏡システムは、電子内視鏡10の挿入部11の先端から励起光を射出した時だけ、対物光学系114内に励起光除去フィルタ116bを挿入するようにしている。そのため、特殊観察モードにおいては、対物光学系114に入射した光の中から、励起光の波長帯域と同じ可視帯域の光のみを除去することができ、通常観察モードにおいては、対物光学系114に入射した光の中から、何れの波長成分も除去されることがない。この結果、励起光除去フィルタ116bが挿入部11内に配置されていたとしても、通常観察モードにおける通常観察画像の色再現性が損なわれることが、防止されることとなる。
ところで、前述した本実施形態の電子内視鏡システムは、白色光と励起光とを交互に射出して特殊観察画像データを生成する特殊観察モードを、備えていたが、さらに、励起光のみを射出して蛍光画像データを生成する蛍光観察モードを、備えていても良い。
なお、この蛍光観察モードへ切り替えられた時の電子内視鏡システムの動作を簡単に説明すると、回転フィルタ116の励起光除去フィルタ116bは、挿入部11の先端の対物光学系114内の光路に挿入された状態になり、励起光源224からは励起光が連続的に射出されるようになり、白色光源221の駆動及び回転遮蔽板223の回転が停止される。これにより、電子内視鏡10の挿入部11の先端からは、励起光が連続的に射出されるようになる。
そして、挿入部11内の対物光学系114には、励起光が照射された体腔壁下の生体組織が放射した蛍光の一部と、体腔壁の表面に入射した励起光のうちその表面で反射された励起光の一部とが入射し、対物光学系114へ入射した光からは、回転フィルタ116の励起光除去フィルタ116bに入射することよって励起光と同じ波長成分が除去される。対物光学系114を透過した蛍光によって撮像面上に形成された体腔壁の像は、撮像素子118によって蛍光画像データに変換され、画像処理部23へ出力される。画像処理部23は、通常観察モード下と同じように、マトリックス回路233を使用しない通常の処理を各画像データに施して、各画像データを表示装置へ出力する。これにより、カラーの蛍光画像が表示装置30に映し出される。術者は、この蛍光画像をみることにより、白色光照明による観察とは別の観点から、体腔壁の状態を観察することができる。
このような蛍光観察モードを備えた電子内視鏡システムは、蛍光観察モード下では、対物光学系114内に励起光除去フィルタ116bが常時挿入された状態にするものの、通常観察モードの時には、対物光学系114内の光路から、励起光除去フィルタ116bを引き抜くので、やはり、通常観察画像の色再現性が損なわれることが防止されることとなる。
また、前述した本実施形態の電子内視鏡では、励起光除去フィルタ116bを対物光学系114内に挿入するために、円形の回転フィルタ116が用いられていたが、そうでなくても良く、例えば、図6に示されるような半円フィルタ116’であっても良い。
半円フィルタ116’は、頂角が90度の扇形の貫通孔が二つ穿たれた半円形の平板であり、各貫通孔の円弧の中心は、半円フィルタ116’の外縁の円弧の中心に一致している。一方の貫通孔には、平行平面板116aが嵌め込まれ、他方の貫通孔には、励起光除去フィルタ116bが嵌め込まれている。この半円フィルタ116’の外縁の円弧の中心は、モータ117の駆動軸の先端に固定されており、半円フィルタ116’は、特殊観察モードの時には、90度の範囲内で往復回転運動するようにモータ117に駆動される。その往復回転の位相は、挿入部11の先端から白色光が射出される期間に平行平面板116aが対物光学系114内に挿入されるとともに、挿入部11の先端から励起光が射出される期間に励起光除去フィルタ116bが対物光学系114内に挿入されるように、制御される。また、通常観察モードの時には、平行平面板116aは、対物光学系114内に配置される。さらに、励起光のみを射出して蛍光画像データを生成する蛍光観察モードの時には、半円フィルタ116’の励起光除去フィルタ116bは、挿入部11の先端の対物光学系114内の光路に挿入された状態で配置される。
このような半円フィルタ116’を備えた電子内視鏡システムによっても、電子内視鏡10の挿入部11の先端から励起光を射出した時だけ、対物光学系114内に励起光除去フィルタ116bが挿入されるので、特殊観察モードにおいては、対物光学系114に入射した光の中から、励起光の波長帯域と同じ可視帯域の光のみを除去することができ、通常観察モードにおいては、対物光学系114に入射した光の中から何れの波長成分も除去することがない。
また、前述した本実施形態の電子内視鏡システムでは、挿入部11に組み込まれる回転フィルタ116は、励起光除去フィルタ116bの釣り合い錘として、平行平面板116aを備えていたが、励起光除去フィルタ116bが非常に軽い場合や、釣り合い錘となる別の手段を回転フィルタ116に取り付けることができるならば、平行平面板116aは回転フィルタ116になくても良い。