JP2006049491A - プリパルス除去による主パルスレーザー発生装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】短パルスレーザーを高出力化するにつれて 主パルスの先行部に自発光増幅作用などによる高ピーク出力部の主パルスに付随した低ピークパルス部のプリパルスの発生が見られるようになる。これは主パルスと同軸上に発せられるので このプリパルスの効果的な除去法を提供する。
【解決手段】本発明は、可飽和色素溶液を薄膜状のジェット流にノズルにより形成し、薄膜溶液中を薄膜に交差する方向にパルスを通過させることで、可飽和色素にプリパルス部だけを選択的に吸収させる装置により実現した。薄膜の厚さをプリパルス部のエネルギーに合わせて制御するようにしたので、プリパルスの含有度合いに応じて主パルスだけの選択放射を可能にできた。これにより、短パルスの加工分野での加工精度向上や加工能率向上を図ることが可能になった。
【選択図】 図1
【解決手段】本発明は、可飽和色素溶液を薄膜状のジェット流にノズルにより形成し、薄膜溶液中を薄膜に交差する方向にパルスを通過させることで、可飽和色素にプリパルス部だけを選択的に吸収させる装置により実現した。薄膜の厚さをプリパルス部のエネルギーに合わせて制御するようにしたので、プリパルスの含有度合いに応じて主パルスだけの選択放射を可能にできた。これにより、短パルスの加工分野での加工精度向上や加工能率向上を図ることが可能になった。
【選択図】 図1
Description
本発明は、波形制御機能を有する短パルスレーザー発生装置に関し、特に短パルス波形を制御し、立ち上がりの急峻なパルス波形を実現し、加工能率を向上させた加工用短パルスレーザー装置を提供する装置に関するものである。
従来、ナノテクノロジの研究とともに超短時間パルスを用いたレーザー加工の微細加工に適する特性を用いることが盛んになってきた。例えば、パルス幅10fs、エネルギー10J、集光後の直径3μmのような超短パルスレーザーを集光するとパワー密度は約1022W/cm2に達する。これにより、微細加工、プラズマ発生、軟X線発生などに用いられてきた。高強度パルスは、モード同期パルスのパルス幅を拡張してピーク出力を低下させ、チャープトパルス再生増幅器に入射して増幅し、その後、増幅されたパルスエネルギーをパルス幅圧縮することにより、パルス幅の短縮とピーク出力の増大を図る手法が採用されている。
しかし、非線形光学効果によるプリパルスや、増幅器の自発光増幅(ASE増幅)によるプリパルスが主パルスの周辺に発生することが知られている。この主パルスに先立ってピーク値の低いプリパルスを有する超短パルスをレーザー加工に用いると、主パルスのピーク出力の高い特性が加工に有効に十分使用されないことになる。この原因はこのプリパルスが加工対象物に先ず照射され、このプリパルス部分のレーザーエネルギーで加工対象物表面がアブレーションを起こし、表面にプラズマ雲を発生させるためである。このプラズマ雲は、プリパルスに引き続く主パルスに対し、反射体あるいは散乱体の作用を持ち、主パルスのエネルギーが加工対象物に入射し、対象物と相互作用を起こす本来の加工に必要なビーム吸収作用が十分行われず、結果として能率的な加工が妨げられる。
このプリパルスの加工への悪影響は、増幅器の性能が向上し、超短パルスの出力エネルギーが大きく、ピーク出力が強くなればなるほど実用上解決しなければならない大きな課題となる。このプリパルスを除去する方法としては、Optics Letters /vol. 18, No.2, page 134, 1993に発表された方法を応用することが提案されている。レーザーと被加工物の間に有機膜を設けることにより、プリパルスを除去する方法である。
この方法では、液体のエチレングリコールをジェットとして噴射して膜を形成する。その膜にビームを照射し、弱いビーム強度に対しては、通常の液体として透過媒体として働くが、強いビーム強度に対しては、ビームによって生成された液体分子に起因して表面近傍に発生するプラズマ状態が金属的なミラーとして機能し、プラズマ発生時点以降の入射ビームを反射する性質を利用する。つまり、弱い強度のプリパルスはプラズマの発生時点前に液体を通過し、プラズマ発生の後に入射されるメインパルスのみを液体表面に形成されたプラズマで反射することとなり、この反射光はプリパルスが液体を透過した後の主パルスだけで構成されるので、これを利用することはプリパルスを除去した立ち上がりの急峻なパルス波形を利用することになる。
この方法には以下のような課題がある。すなわち、プラズマ状態をつくり出すためには、非常に光密度を高強度にする必要がある。よって、レンズ等によりビームを液体膜表面に絞り込むことが必要になり、かつ、効率的にプリパルスを除去するためには、液体膜内部ではなく、表面上でプラズマ状態をつくり出す必要があるため、入射ビームウェストと液体膜の相対的な位置関係を微調整する必要がある。さらに、光密度をあげると、エチレングリコールのプラズマ状態が発生する前に、空気のプラズマ状態が発生してしまうため、液体膜の形成は低真空雰囲気の中で行われなければならない。このことは、液体が流れている中で真空状態を維持する必要があり、非常に複雑な装置構成となり、かつ実用上は保守性の悪い装置となることを意味する。
さらに、プリパルスだけを除去するには、集光条件を、主パルスの直前の集光状態によって丁度液体表面にプラズマが発生するようなパワー密度条件に設定する必要がある。このため、集光スポット径を制御する必要があるが、本質的にはレンズ等の集光素子の焦点距離を変化させる必要性のため、制御性のよい構成でなくなる欠点がある。さらに、このプラズマで反射させる方法は低パワーのパルスレーザービームからのプリパルス除去は、プラズマ発生が行われないレベルのパワーには適用できない大きな欠点があった。
別のプリパルスを除去する方法として、Optics Letters /vol. 18, No.2, page 134, 1993の論文に記述された可飽和吸収体を用いる方法が示唆されている。しかし、この方法はパルスが液体を通過する欠点があるので液体の影響を受けるとされている。従来は、液体の薄膜形成技術が低レベル技術であったので、透過用の液体膜厚さが不均一で可飽和特性が不安定となり、プリパルス部分だけを再現性よく吸収することが不可能であったと認識される。
Optics Letters /vol. 18, No.2, p.134, 1993
本発明によって解決しようとする課題は、短パルスレーザーの発生において、パルス立ち上がり部の急峻な波形を実現することである。この目的を達成するために、可飽和色素溶液を均一な厚さで、安定に発生し、プリパルス部のパワーに応じて液薄膜の厚さを制御し、プリパルス部を吸収させたところで主パルスを透過させることにより、パルスパワーレベルの広い範囲に亘って急峻な立ち上がり波形を有するプリパルス除去のパルスレーザー出力を発生する。
本発明は、プリパルスを有するパルス出力を可飽和吸収色素溶液の薄膜ジェット流の膜厚方向に照射する。それによりパルスを構成するパルス先頭部分のプリパルス部は、色素によって弱い部分のエネルギーが吸収され、主パルスの強いエネルギーのピーク出力の大きなパルス部を透過し、プリパルスが除去された波形の主パルスを得ることができる。この可飽和吸収色素の溶液は、液体(エチレングリコール他)に可飽和色素を溶解させ本装置のノズルを用いて光学的な面を持った液体ジェットシートをつくり出す。この液体ジェットシートをレーザービームが通過することで、可飽和吸収により、プリパルスを吸収させ主パルスを透過させることが可能となる。
さらに、本装置のノズルは、圧力の調整により、液体ジェットシートの膜厚を制御することを可能な構造としたので、これにより可飽和吸収の度合い(可飽和色素濃度と膜厚の積に比例的)を変化させることができ、プリパルス除去の最適化のための微調整が可能となる。この膜厚調整を導入することで可飽和色素薄膜を利用してプリパルスを再現性よく安定に除去できる大きな特徴が得られた。さらに、この液体ジェットシートは、液体の表面と裏面で干渉縞が観測できるほど光学的な面精度に優れているため、通過するレーザービームの波面への影響が少ない。
従来のジェットシートは、液面にジェットノズルの加工に起因する筋状のひずみが多く分布するため、この歪みを十分に回避できる程度まで、ビームを集光する必要があった。このことは、光密度を上昇させて可飽和吸収体にビームを導入するという点では効率的であるが、ビームの強度そのものが極めて大きい加工用レーザーの場合には、集光は別の課題を生じるため、少なくとも直径500ミクロン以下には集光しないで通過させることができる、波面歪を液体面から受けないジェットシートが望まれていた。また、この液体ジェットシートは5ミクロンメートル程度まで薄くすることが可能なため、液体によるフェムト秒パルスに対する群速度分散を極力抑えることが可能となる。
このことによって、フェムト秒パルスのパルス幅を広げる効果を抑え、分散の影響を実質的になくすることが可能となる。また、可飽和吸収の特性を発現させるレーザー強度は、レーザービームをエチレングリコールの液体に照射しプラズマ状態を作り出す光強度より小さな強度で十分なため、レーザービームを集光する手段を用いなくとも良い。よって、Optics Letters /vol. 18, No.2, p.134, 1993の論文で紹介されている方法に比べ、集光手段が不要になり、かつ、空気のプラズマ状態を回避するための真空容器も不要となり、装置が簡素化される。
本発明の効果として、今後ますます強度が増大するフェムト秒加工機において、プリパルスの処理はますます重要となる。この状況下において、ノズル構造に、ステンレス等の金属を用いて製造できる本ジェットノズルを用いた、プリパルス除去用の液体ジェットシステムは、低コストでかつ堅牢であり、ガラスや結晶などを素材としたノズルより、工業製品として適している。液面の面精度は表面と裏面で干渉縞を観測できるほど高品質であるため、通過させるレーザービームの波面を大きく歪ませることが無い。
液体薄膜に可飽和色素溶液を用いたのでプラズマが発生するより十分低い照射パワー密度条件でプリパルスビームの透過遮光と主パルスの透過の選択スイッチ特性を達成できるので、透過主パルスビームの品質の劣化がなく、したがって微細加工用に微小スポットに集光することが可能である。プリパルスが除去されているので、加工表面に直接高いパワー密度で集光できるから加工対象物に十分なエネルギーの吸収を起こさせ、従来のプリパルスによるプラズマ遮蔽作用による集光スポットの乱れもなくなり、集光スポットサイズに対応した形状で加工形状の鋭利な加工ができ、さらに加工能率を向上できる。
この発明の実施形態を図1、図2に基づいて説明する。パルスレーザー装置例えば超短パルスレーザー発振装置においてモード同期用の光共振器の中でチタン添加のサファイヤ結晶にNd:YAGレーザーの第2高調波発生になる緑色のパルスレーザーを励起光として用いて励起し、広帯域のスペクトルにおいて光増幅作用をもたせ、共振器からモード同期のパルスレーザー出力を高繰り返し動作で発振させる。この出力パルスの一部を切り出して、パルスストレッチを行い、再生増幅により出力エネルギーの増大を図り、そのパルスを必要に応じてパルス圧縮するなどの方法において、高ピークで短パルス出力を得ることが実用化されている。このようなパルスには主パルス波形の先行部にプリパルスと称するピーク出力の比較的低い裾野状のパルスが再生増幅媒体などから自発光増幅(ASE増幅)により発生することが多い。
このプリパルスを除去する方法として、本発明では発振器1からの出力ビーム2の光路に可飽和色素の薄膜4をレーザービームに対する入射角がブリュースター角となるように設置し、この薄膜4を通過させることでプリパルス部を切除したレーザービームを安定に得ることができる。加工対象物18に照射するレーザービームはプリパルスの除去されたパルスの立ち上がりの急峻な主パルスからなるレーザービームだけを照射に利用できる。可飽和色素溶液はエチレングリーコールなどの溶媒に可飽和色素を溶質として用いこれを用いる。溶液をリザーバ装置11に入れ、このリザーバ装置の出口から専用循環ポンプユニット9に送り専用循環ポンプユニット9から配管13経由で送圧調整装置8に送り、配管14経由で気泡除去フィルタ7に送る。ここで気泡が含まない圧縮圧の印加された液体となりジェットノズル装置5のノズル部から大気中に噴射される。
ジェットノズルから噴射された液体の膜厚が所定の値になるように送圧を調整調整装置8で設定する。この液体ジェットの膜厚は、透過パルス波形を観察して、プリパルス部が除去される様子を観察することで調整することができる。プリパルスが含まれている場合には送圧を低下させ、薄膜厚さを増加させる。このことでプリパルスを十分吸収させ、その後に来る主パルスだけを可飽和現象により減衰を起こさないで通過させる。このノズルの出射形状は、周知の形状、例えば台形溝の平行辺の短い辺で形成する部分V型溝の底を、円錐形の先端部を上記台形の短い辺の長さより若干長くなるような円錐の部分で軸に垂直に切除した面が、上記台形溝の溝底と当接するような構造の形状がその一例であり、V型溝側を配管内に向けて設置し、部分円錐の開いた底面部から液を噴射する。
このノズルの詳細はOptics Communications, vol.71, No.5, page 301, 1989, A new nozzle producing ultra thin liquid sheets for femto−second pulse dye lasers, A. Watanabe, et al.に記載されている。このノズルから放出される液体ジェットの薄膜の厚さは、液体の圧力に依存して図2に示すような液体圧力と膜厚の関係を得ることが実験的に証明できる。すなわち圧力が高くなるにつれて、膜厚は約5μm〜200μmの範囲で変化できる。しかも、この膜の面は光学的に平坦面が得られるので、レーザービームの透過による波面の乱れは小さい。また、液体薄膜を薄くできるので、フェムト秒パルスに対する群速度分散の影響を小さくすることができる。
ジェットノズルから放出された液体はリザーバ装置11に回収され、再び循環に供される。このような構成において、レーザーパルスのプリパルスは液体ジェットからの薄膜の厚さを調整することで、プリパルス部のビームエネルギーを可飽和色素でほぼ全部吸収したところで色素の飽和が起きるような厚さに調整し、それ以降の主パルス部での光吸収は激減することで主パルス部は可飽和色素による吸収で減衰することないように膜厚を調整する。これには、循環ポンプユニットに使用するギアポンプの出力調整や送圧調整バルブの調整によってノズルに導入する液体圧力を調整することで図2のノズル特性にしたがって液体膜厚調整する。
本発明の活用例として、チタンサファイヤレーザーのモードロックパルスレーザーのパルス出力をこの可飽和色素ジェットによる薄膜を通過させることによりプリパルスが切除でき、立ち上がりの急峻な短パルスを得る波形制御が行え、レーザー加工などの応用に際して加工特性の高度化が図れる。レーザービームをターゲットに照射し、X線を発生する用途に本発明の超短パルスレーザーを用いると、ターゲットに瞬間的に高パワー密度のエネルギーの投入が可能になりプラズマ発生効率の向上が図れる。
1…短パルス(フェムト秒)レーザー発振器、2…短パルスレーザービーム、3…プリパルス除去短パルスビーム、4…膜厚が制御された液体ジェット(光学)薄膜、5…ジェットノズル装置、7…気泡除去フィルタ、8…送圧調整装置、9…専用循環ポンプユニット、10…超高精度液体薄膜発生装置、11…液体リザーバ、12…プリパルス除去装置、13、14,15,17…配管、18…加工対象物。
Claims (4)
- 短パルスレーザー発振器と、該発振器からの出力ビームを通過させる可飽和色素溶液薄膜を形成する噴射ノズルを有する薄膜発生装置と、上記可飽和色素溶液の薄膜の厚さを制御する可変圧力制御装置とを備えたプリパルス除去による主パルスレーザー発生装置。
- 可飽和色素溶液の厚さがプリパルスのエネルギーに応じて制御されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
- 可飽和色素溶液の噴射ノズルは、ノズル圧力と液体薄膜厚さが、所定の圧力範囲において実質的に反比例の関係にあるノズル特性を有するノズルを用いた請求項1又は2に記載の装置。
- 短パルスレーザー発振器出力ビームが液体薄膜を通過するとき、レーザービーム径を液体薄膜面内の光学的歪分布以下に集光することなく、通過させることを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載の装置
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JP2004226854A JP2006049491A (ja) | 2004-08-03 | 2004-08-03 | プリパルス除去による主パルスレーザー発生装置 |
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WO2016199903A1 (ja) * | 2015-06-10 | 2016-12-15 | 古河電気工業株式会社 | パルスレーザ装置 |
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2004
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