従来、マイクロ波帯無線通信システムとしては、図5に示すように、高周波無線送信装置100と高周波無線受信装置201とを備えたものがある(例えば、特開2003−258655号公報参照)。なお、ここで、マイクロ波帯とは、マイクロ波帯とミリ波帯とを含む周波数帯域をいう。
まず、図5に示す高周波無線送信装置100を説明する。この高周波無線送信機100は、第1のアップコンバータ(中間周波数変調器)と第2のアップコンバータ(マイクロ波帯変調器)とから構成される。
上記第1のアップコンバータは、局部発振器400と、ミキサ130と、フィルタ150と、増幅器160と、電力分配器260と、減衰器270(レベル調整器)と、電力合成器180とにより構成される。
高周波無線送信装置100に対して、変調波信号である第1のIF信号IF1が入力される。この第1のIF信号IF1は、例えば、直交マルチキャリア変調方式(OFDM変調方式)で変調された信号である。上記ミキサ130は、入力された上記第1のIF信号IF1と、基準信号源である局部発振器400から出力される第1のLO信号(局部発振信号)fLO1とを乗積し、第2のIF信号IF2を出力する。
さらに、ミキサ130の直後に設けられたフィルタ150は、主に第2のIF信号IF2の成分のみを取り出す。また、電力分配器260は局部発振器400が出力した第1のLO信号fLO1の一部を減衰器270に分配する。この減衰器270は分配された第1のLO信号fLO1のレベルを調整し、その後、電力合成器180は、第1のLO信号fLO1と第2のIF信号IF2とを合流させる。
以上により、第2のIF信号IF2(高周波信号fRF1)と基準信号である第1のLO信号fLO1との多重波信号すなわち中間周波数多重信号が生成される。この多重波信号は、増幅器160によって増幅され、増幅された多重波信号が第2のアップコンバータに入力される。
次に、第2のアップコンバータについて説明する。第2のアップコンバータは、第2の局部発振器800と、ミキサ170と、フィルタ900と、増幅器1000とで構成される。
ミキサ170は、高周波信号fRF1と第1のLO信号fLO1との多重波信号と、第2の局部発振器800から出力される第2のLO信号(局部発振信号)fLO2とを乗積し、無線信号へのアップコンバートを行なう。さらに、フィルタ900はアップコンバートされた上記無線信号の所望の周波数の信号のみを通過させ、増幅器1000は上記無線信号の上記所望の周波数の信号を増幅する。この増幅器1000で増幅された信号は、無線変調信号成分である(高周波信号fRF1+第2のLO信号fLO2)と、局部発振信号成分である(第1のLO信号fLO1+第2のLO信号fLO2)との多重信号である。
そして、送信アンテナ1100は、無線変調信号成分である(高周波信号fRF1+第2のLO信号fLO2)と、局部発振信号成分である(第1のLO信号fLO1+第2のLO信号fLO2)とを送信する。
次に、図5の高周波無線受信装置201を説明する。高周波無線受信装置201は、アンテナ1200と、フィルタ200と、増幅器210と、ミキサ220と、局部発振器230と、増幅器240と、電力分配器250と、フィルタ260と、フィルタ270と、ミキサ310と増幅器320とで構成される。
この高周波無線受信装置201は、高周波無線送信装置100が送信する信号72を受信する。前述のとおり、高周波無線送信機100が送信する信号72は、局部発振信号成分である(第1のLO信号fLO1+第2のLO信号fLO2)および無線変調信号成分(高周波信号fRF1+第2のLO信号fLO2)から成る。高周波無線受信機201は、受信した信号を元の変調波信号である第1のIF信号IF1にダウンコンバートする。以下に、その手順を説明する。
アンテナ1200は、高周波無線送信装置100より送信された信号72を受信する。フィルタ200は、受信した信号の不要波(例えば、帯域外妨害等)を除去する。増幅器210はフィルタ200を通過した信号を増幅する。ミキサ220は、上記増幅された信号と局部発振器230から出力される第2のLO信号(局部発振信号)fLO2とを乗積する。これにより、LO信号成分(fLO1+fLO2)と無線変調信号成分(fRF1+fLO2)は、中間周波数多重信号IFM2にダウンコンバートされる。すなわち、中間周波数多重信号IFM2=(第1のLO信号fLO1+高周波信号fRF1)である。また、この高調波信号fRF1は、(第1のIF信号IF1+第1のLO信号fLO1)である。
次に、増幅器240は中間周波数多重信号IFM2を増幅する。この中間周波数多重信号IFM2のうちの高周波信号fRF1は、高周波信号fRF1のみが通過できるフィルタ260を経由して、ミキサ310に入力される。一方、第1のLO信号fLO1は、第1のLO信号fLO1のみが通過できるフィルタ270を経由して、増幅器320によって増幅された後、ミキサ310に入力される。このミキサ310は上記高周波信号fRF1と第1のLO信号fLO1とを乗積する。これにより、高周波信号fRF1はダウンコンバートされ、第1のIF信号IF1へ復調される。
ところで、上記従来の無線通信システムにおける無線送信装置100には以下の問題点がある。
すなわち、従来の上記無線送信装置100は、高周波信号fRF1(第2のIF信号IF2)と第1のLO信号fLO1とを電力合成器180で合成して生成した中間周波数多重信号を増幅器160で増幅する構成となっている。このため、増幅器160は、高周波信号fRF1と第1のLO信号fLO1とをそれぞれ独立して増幅することができない。したがって、第1のLO信号fLO1のレベルは高周波信号fRF1のレベルよりも常に大きく、増幅器160の動作は非線形動作となってしまう。このため、高周波信号fRF1(第2のIF信号IF2)と第1のLO信号fLO1の信号成分は、不要波成分や、大きな歪み成分を含んでしまい、また、ミキサ130への逆流も発生する。以上により、従来の無線送信装置では、正常な第1のアップコンバージョン特性を得ることが困難である。
ここで、図6に、増幅器160の前後での入力側スペクトラムと出力側スペクトラムを示す。図6(A)は入力側スペクトルを示している。基準信号である第1のLO信号fLO1の出力レベルは、第2のIF信号IF2である高周波信号fRF1の総パワーと同等レベル以上である。図6(A)では概念的に第1のLO信号fLO1と高周波信号fRF1とのレベル比をΔPで示している。
一方、図6(B)は、増幅器160の出力側のスペクトルを示している。第1のLO信号fLO1と高周波信号fRF1(第2のIF信号IF2)とが増幅器160(利得をGとする)に入力されると、増幅器160は、第1のLO信号fLO1により歪み非線形動作を引き起こす(利得のコンプレッションをgで示している)。この非線形動作により、第1のLO信号fLO1の信号レベルは、ΔP+(G−g)となり、高周波信号fRF1(第2のIF信号IF2)は十分にレベルを増加することができず、かつスペクトラムも再成長が起こり広がってしまう。とりわけ、高周波信号fRF1が歪みに弱い変調方式(OFDM(直交マルチキャリア)変調方式、64QAM(直交振幅変調)等の多値変調方式等)の場合、増幅器160の歪みの影響は極めて大きくなる。
さらに、ミキサ130にて、第1のIF信号IF1と第1のLO信号fLO1とを乗積する場合、従来の無線送信装置では、第1のIF信号IF1またはミキサ130にて乗積される第1のLO信号fLO1のレベルを調整できる構成となっていない。このため、第1のIF信号IF1のレベルが大きすぎる場合、受信装置側で復調ができないという問題がおこる。逆に、第1のIF信号IF1のレベルが小さすぎる場合には、無線による伝送距離が短くなってしまうという問題がある。
特開2001−053640号公報
特開2003−258655号公報
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
図1に、この発明の実施形態としてのマイクロ波帯無線通信システムの概略構成を示す。このマイクロ波帯無線通信システムは、ミリ波帯無線送信装置9とミリ波帯無線受信装置10を有している。なお、ここで、マイクロ波帯とは、マイクロ波帯とミリ波帯とを含む周波数帯域をいう。また、このマイクロ波帯無線通信システムは、ミリ波帯無線送信装置9の入力端子IPに接続された周波数配列器5とミリ波帯無線受信装置10の出力端子500に接続された分波器190を備える。この分波器190には複数のTV受像機31が接続される。また、上記分波器190には、地上波放送用アンテナ1aと衛星放送用アンテナ1bが接続される。
また、上記マイクロ波帯無線通信システムは、上記ミリ波帯無線受信装置10と分波器190と衛星放送用/地上波放送用チューナ30とで構成される本発明の電子機器を含んでいる。
図1に示すように、この実施形態のマイクロ波帯無線通信システムが有する送信側のミリ波帯無線送信装置9は、周波数配列器5とこの周波数配列器5に接続される基準信号付加/電力レベル制御回路2と、周波数変換/送信回路3と、局部発振器7と、送信アンテナ4とを備えている。上記基準信号付加/電力レベル制御回路2が第1のアップコンバータを構成し、上記周波数変換/送信回路3が第2のアップコンバータを構成している。
まず、図1を参照して、送信側の周波数配列器5および上記ミリ波帯無線送信装置9の概略構成と概略動作を説明する。この送信側では、まず、最初のステップとして、周波数配列器5において、図3(A)に示すように、例えば、地上波放送用アンテナ1aからの入力変調波信号5aと衛星放送用アンテナ1bからの入力変調波信号5bは、夫々、増幅器51と52で、夫々の入力変調信号5a,5bの電力レベルが略等しくなるように調整され、混合器53で周波数配列され、一系列の入力信号5e(周波数fIF1e)が生成される。
次のステップとして、ミリ波帯無線送信装置9では、上記入力信号5eは、基準信号付加/電力レベル制御回路2に入力され、図3(B)に示すように、周波数軸上に配列された一系列の入力変調波信号5e(周波数fIF1e)は、第1の周波数変換がなされる。基準信号付加/電力レベル制御回路2では、この第1の周波数変換がなされた第1のIF信号71aは、レベル制御されると同時に、適正レベルの基準信号71cが付加され、中間周波数多重信号(周波数配列信号)である第1のIF多重信号71dが生成される。上記第1のIF信号71aは変調周波数信号である。
次のステップとして、上記基準信号付加/電力レベル制御回路2が出力した第1のIF多重信号71dは、周波数変換/送信回路3に入力される。そして、周波数変換/送信回路3では、第1のIF多重信号71dは、局部発振器7が出力する局部発振信号でもって、ミリ波帯に周波数変換されて増幅される。
図3(C)に示すように、上記周波数変換され増幅されて生成された無線多重信号72は、送信アンテナ4により無線信号として送信される。なお、図3(A)〜図3(C)において、白抜きの矢印記号は信号の配列方向を示している。
次に、図1を参照して、上記ミリ波帯無線受信装置10の概略構成と概略動作を説明する。このミリ波帯無線受信装置10は、送信側からの無線多重信号を受信する受信アンテナ14と、この受信アンテナ14からの無線多重信号73を受けて第1の周波数ダウンコンバートを行う周波数変換/受信回路11と、局部発振信号を供給する局部発振器8と、受信側の第2の周波数ダウンコンバートを行う基準信号再生/周波数変換回路12とを備えている。上記周波数変換/受信回路11が第1のダウンコンバータをなし、上記基準信号再生/周波数変換回路12が第2のダウンコンバータをなす。
このミリ波帯無線受信装置10は、その動作ステップにおいて、まず、最初のステップとして、図4(A)に示すように、送信側からの無線多重信号72を受信アンテナ14で受信し、この受信アンテナ14からの無線多重信号73を周波数変換/受信回路11で受けて第1の周波数ダウンコンバートを行う。つまり、周波数変換/受信回路11では、局部発振器8が供給する局部発振信号により、無線多重信号73を第2の中間周波数帯に変換し、図4(B)に示すように、中間周波数多重信号である第2のIF多重信号74を生成する。なお、図4(A)〜図4(C)において、白抜きの矢印記号は信号の配列方向を示している。
次のステップとして、上記第2のIF多重信号74は、基準信号再生/周波数変換回路12によって、第2の受信側周波数ダウンコンバートがなされた後、基準信号再生/周波数変換回路12によって、図4(C)に示すように、元の一系列の入力信号5e(周波数fIF1e)に相当する一系列の出力信号76(周波数fIF1e)が再生される。
すなわち、上記基準信号再生/周波数変換回路12は、図4(B)に示す第2のIF多重信号74の中から、後述するフィルタでもって基準信号74cを抽出して増幅し、この基準信号74cでもって、中間周波数多重信号である第2のIF多重信号74を周波数変換する。これにより、上記基準信号再生/周波数変換回路12は、図4(C)に示すように、送信側で入力された一系列の入力信号5e(周波数fIF1e)を1系列の出力信号76(周波数fIF1e)を再生する。
次に、この無線受信装置10の出力端子500から出力された上記出力信号76は、受信側の最後のステップとして、周波数逆配列/分離部190に入力される。この周波数逆配列/分離部190では、受信側で再生された入力信号5eに相当する1系列のシリアルな出力信号76(周波数fIF1e)の中から、地上波放送用の信号5aに対応する信号76aおよび衛星放送用の信号5bに対応する信号76bが再生される。この分波された信号76aと76bは、複数のTV受像機31中の夫々の複数の衛星放送用/地上波放送用チューナ30に入力される。
次に、図2を参照して、この第1の実施の形態のマイクロ波帯無線通信システムの詳細な構成を説明する。
図2に示すように、マイクロ波帯無線送信装置の一例としてのミリ帯無線送信装置9は、周波数配列部5に接続される中間周波数変換部である第1の周波数変換回路2aと、局部発振器である基準信号源2cと、多重信号生成部の一例である基準信号付加回路2dと、送信側周波数変換部であるミリ波周波数変換回路3aとを備えている。
上記第1の周波数変換回路2aと基準信号源2cと基準信号付加回路2dとが、第1のアップコンバータとしての上記基準信号付加/電力レベル制御回路2を構成している。また、上記ミリ波周波数変換回路3aは第2のアップコンバータとしての上記周波数変換/送信回路3と上記局部発振器7とを構成している。
上記基準信号付加/電力レベル制御回路2は、入力端子IPに接続された第1の周波数変換回路2aと、この第1の周波数変換回路2aに接続された基準信号付加回路2dと、この基準信号付加回路2dに接続された基準信号源2cとを有する。
上記第1の周波数変換回路2aは、上記入力端子IPに入力側が接続された増幅器203aと、この増幅器203aの出力側に入力ポートが接続された周波数混合器201を有する。この周波数混合器201のもう1つの入力ポートには、上記基準信号付加回路2dが有する電力分配器204bが接続されている。この電力分配器204bには、基準信号源2cが接続されている。
また、上記基準信号付加回路2dは、上記電力分配器204bに入力側が接続された基準信号レベル調整器であるレベル制御器95と、このレベル制御器95の出力側に入力ポートが接続された電力合成器204aを有する。この電力合成器204aのもう1つの入力ポートは、上記第1の周波数変換回路2aが有する増幅器203bの出力側に接続されている。この第1の周波数変換回路2aは、上記周波数変換器201の出力端子と上記増幅器203bの入力側との間に接続されたフィルタ202aを有する。なお、上記増幅器203aと203bは、入力信号レベル調整器をなし、レベル制御器を含んでいる。また、この送信装置9では、増幅器203aと203bの両方を備えたがいずれか一方のみを備えてもよい。
また、上記ミリ波周波数変換回路3aは、上記基準信号付加回路2dの電力合成器204aの出力側に入力ポートが接続された周波数ミキサ301と、この周波数ミキサ301のもう1つの入力ポートに接続された局部発振器7と、上記周波数ミキサ301の出力ポートに入力側が接続されたバンドパスフィルタ302と、このバンドパスフィルタ302の出力側に接続されたミリ波増幅器303とを有する。
上記ミリ波周波数変換回路3aの上記ミリ波増幅器303の出力側には、送信アンテナ4が接続される。
上記構成のミリ波帯無線送信装置9の動作を説明する。
上記周波数配列部5では、地上波放送用アンテナ1aからの入力変調波信号5aおよび衛星放送用アンテナ1bからの入力変調波信号5bが、夫々、増幅器51および増幅器52でもって電力レベルが調整される。これにより、各入力変調波信号5a,5bの電力レベルが略等しくなるように調整され、各入力変調波信号5a,5bは、さらに、混合器53で電力合成されると共に周波数配列される。これにより、図6(A)に例示する一系列の入力信号5e(周波数fIF1e)が生成される。ここで、入力変調信号5aと入力変調信号5bとが同じ周波数帯である場合には、両者を直接電力合成することはできないので、両者のうちのいずれかの入力変調信号を周波数変換した上で、夫々の信号が電力合成される。これにより、一系列の入力信号5e(周波数fIF1e)が生成される。また、ここでは、各入力変調信号5a,5bの電力レベルが略等しくなるように調整したが、各入力変調信号5a,5bの品質に応じて、各入力変調信号5a,5bの電力レベルを異なったレベルとして電力合成しても構わない。
次に、上記周波数軸上に配列された一系列の入力信号5e(周波数fIF1e)は、増幅器203aで、適当なレベルまで増幅され、周波数混合器201に入力されて、第1の周波数変換がなされる。この第1の周波数変換がなされた第1のIF信号71aは、フィルタ202aにより片側波帯信号のみが濾波され、増幅器203bによって適正レベルまで調整される。なお、この調整は、増幅器203bにアッテネータを適宜組み合わせて行ってもよい。
上記レベル調整の後の第1のIF信号71aは、電力合成器204aに入力される。一方、この電力合成器204aには、基準信号源2cから出力されて基準信号付加回路2dの電力分配器204bに入力され、レベル制御器95によって、適正レベルに調整された基準信号71cが入力される。
そして、この電力合成器204aでは、上記第1のIF信号71aに上記基準信号71cが付加されて、図3(B)に示すような中間周波数多重信号(周波数配列信号)としての第1のIF多重信号71dが生成される。
上述の如く、基準信号源2cから出力される周波数fLO1を有した基準信号71cは、電力分配器204bで2分配され、一方の基準信号71cは周波数混合器201に局部発振信号として入力される。また、電力分配された他方の基準信号71cは、レベル制御器95に入力され、後述する適当なレベル制御がなされた後、基準信号71cとして、電力合成器204aに入力される。そして、電力合成器204aにおいて、上述の如く、上記基準信号71cと第1のIF信号71aとが電力合成され、第1のIF多重信号71dが生成される。
ここで、上記第1のIF信号71aは、上記第1の周波数変換回路2aの周波数混合器201と増幅器203bとの間に接続されたフィルタ202aにより濾波され、増幅器203(もしくは増幅器203とアッテネータとの組み合わせ)でもって、増幅されレベル制御がなされた後、基準信号71cが付加される構成としている。
このように、上記第1のIF信号71aは、増幅器203b等で構成されたレベル制御手段によってレベル制御された後に、基準信号71cが付加される。したがって、増幅器203bは、第1のIF信号71aに比べてレベルの大きい基準信号71cによって歪むことがなく、レベルの小さい上記第1のIF信号71a信号のみを、効率よく線形に増幅することができる。
さらに、第1のIF多重信号71dが含む第1のIF信号71aの電力レベルと上記基準信号71cの電力レベルとを、増幅器203b(あるいはアッテネータとの組み合わせ)とレベル制御器95とで、それぞれ、独立に制御できる。したがって、第1のIF信号71aの電力レベルと上記基準信号71cの電力レベルとを各々独立に制御して両者の電力レベル配分比を制御できるから、送信側の周波数変換/送信回路3を、フルパワーで、より線形に駆動できる。
また、ミリ波帯無線受信装置10側における第2の周波数変換の際に、第2のIF多重信号74自体を、この第2のIF多重信号74中に含まれる基準信号74cでもって周波数ダウンコンバートする場合、所望信号と基準信号の電力配分比には最適な配分比が存在する。
したがって、あらかじめ送信側のミリ波帯無線送信装置9において、上記第1のIF多重信号71dを生成する段階で、(上記第のIF信号71aの電力)/(基準信号71cの電力)の設定を適当な比率に設定して、受信感度の高い最適の電力配分比にすることが望ましい。これにより、周波数変換効率(受信感度)を高め、無線伝送距離を拡大することを可能とする。
尚、この実施形態において、一例として、レベル制御器95や、増幅器203a,203bで使用されているレベル制御部のアッテネータを、チップ部品の抵抗でT型アッテネータやπ型アッテネータにより構成してもよい。また、上記基準信号付加回路2dが有する電力合成器204a,204bとしては、出力ポートが互いにアイソレーション特性を有したウイルキンソン型合成器とすることが望ましい。これにより、各電力合成器204a,204bの出力ポートに漏れこんでくる信号を抑制し、各機能回路を正常に動作させることができる。詳細には、このウイルキンソン型合成器で構成した電力合成器204a,204bと、増幅器203a,203bとによって、第1のIF信号71aが基準信号付加回路2d側へ漏れ込むことを防げる。さらに、付加された基準信号71cが、電力合成器204aから周波数混合器201へ逆流することを防ぐことが可能となる。
ここで、この周波数変換においては、下側波帯信号を用いることが望ましい。この下側波帯信号を用いることによって、周波数変換後の第1のIF信号71aは周波数特性が反転する。この周波数特性の反転によって、広帯域信号である第1のIF信号71aは、レベル制御機能を有する増幅器203や、次段以降のミリ波帯へのアップコンバート(送信機側)およびダウンコンバート(受信機側)における周波数変換/増幅特性の周波数特性(周波数平坦性)を改善できる。その理由を以下に説明する。
通常、準マイクロ波帯(UHF帯)以上の高周波数においては、無線送信装置9、無線受信装置10における周波数変換過程や増幅の過程で、一系列の信号の信号レベルは、周波数高域側よりも周波数低域側の方が、損失が小さくなる(増幅の場合は利得が大きくなる)。したがって、周波数低域側に比べて周波数高域側の方が、損失が大きくなる(増幅の場合は利得が小さくなる)。したがって、平坦な周波数特性を理想とするのに対して、上記一系列の信号の信号レベルは、横軸を周波数とし、縦軸を信号強度レベルとしたとき、右下がりの周波数特性となる。なお、この無線送信装置9に入力される入力信号5e(周波数fIF1e)自体も、一系列の多チャンネル映像信号の広帯域信号であるが故に、高域側と低域側でレベル差を有し、高域側がレベル低下した変調信号となっている。
したがって、周波数特性を改善して平坦な特性とするために、送信側の第1の周波数変換回路2aによる第1の周波数変換において、下側波帯を用いることにより(具体的にはフィルタ202aで下側波帯を選択することにより)、周波数変換後の周波数特性の高域側と低域側とを反転させることができる。つまり、第1の周波数変換回路2aにおけるフィルタ202a以後の信号処理過程では、周波数特性が低域側と高域側で反転された信号に対して、この信号の高域側で損失が大きく(利得が小さく)、低域側で損失が小さく(利得が大きい)という特性が付加されてゆく。これにより、上記入力時の上記入力信号5eの周波数特性が補償され、第1のIF多重信号71d,無線多重信号72において、より平坦な周波数特性を実現できる。
つまり、図3(A)に示す一系列の入力信号5eから図3(B)に示す第1のIF多重信号71dの生成過程において、信号の周波数配置が次に示すように変換される。
(信号) (周波数)
第1のIF基準信号71c : fLO1
第1のIF信号71a : fLO1−fIF1e
この反転された第1のIF信号71aに、上記第1の周波数変換で用いた基準信号源2cによる局部発振信号を電力分配器204bで分配された基準信号71cを付加する。このことにより、以後の処理過程(増幅、周波数変換)における周波数特性を改善できる。つまり、以後の周波数変換/増幅の過程では、入力信号5eに対して周波数配列が低域側と高域側で反転された第1のIF信号71aに対して、信号の高域側で損失が大きく(利得が小さく)、低域側で損失が小さい(利得が大きい)という特性が付加されて行く。このため、信号の周波数特性はより平坦な特性になってゆく。なお、上記無線送信装置9において入力信号5eに対して反転された信号は、後述の無線受信装置10側における基準信号74cを用いた第2の周波数ダウンコンバートでもって、自動的に元の正転した送信側の入力信号5e(周波数fIF1e)に戻った一系列の信号76(周波数fIF1e)となる。
図3(B)に示す第1のIF多重信号71dは、次に、図2に示すミリ波周波数変換回路3aに入力される。このミリ波周波数変換回路3aは、周波数ミキサ301とバンドパスフィルタ302とミリ波増幅器303が入力側から出力側に順に接続されている。また、周波数ミキサ301には局部発振器7が接続されている。
上記ミリ波周波数変換回路3aにおいて、第1のIF多重信号71dは、局部発振器7と周波数ミキサ301によってミリ波帯に周波数アップコンバートされた後、バンドパスフィルタ302で所望の多重信号が濾波される。このミリ波帯への周波数変換は、前述した周波数特性改善のために、上側波帯信号を用いる。そして、上記多重信号をミリ波増幅器303で増幅した後、送信アンテナ4によりミリ波帯の無線多重信号72として空間に放出される。ここで、送信アンテナ4とミリ波増幅器303とが送信手段を構成している。
なお、望ましい一例では、周波数ミキサ301としては偶高調波ミキサ等のN次(N:2以上の自然数)高調波ミキサを用いる。このN次高調波ミキサを用いることで、局部発振器7の局部発振周波数を1/Nに低減できる。具体的には、この一例では、2次の高調波ミキサを採用することによって、局部発振器7の局部発振周波数を1/2に低減できる。例えば、送信無線多重信号72および受信無線多重信号73が60GHz帯であるようなミリ波帯無線送信装置9およびミリ波帯無線受信装置10であれば、局部発振器7が出力する局部発振信号の周波数fL02は、25GHz〜30GHz帯でよい。したがって、局部発振器7を60GHz帯で直接発振させる必要がなくなり、周波数安定度の高いミリ波帯無線送信装置を、ワイヤボンディング等の容易な実装でもって簡易に製作できる。
なお、図3(B)に示す第1のIF多重信号71dから図3(C)に示す送信無線多重信号72の生成過程において、信号の周波数配置が次に示すように変換される。
(信号) (周波数)
無線基準信号72c : fLO1+fLO2
無線信号72a : fLO1+fLO2−fIF1e
次に、受信側について説明する。図2に示すように、マイクロ波帯無線受信装置の一例としてのミリ帯無線受信装置10は、受信アンテナ14と、第1のダウンコンバータとしての周波数変換/受信回路11と、局部発振器8と、第2のダウンコンバータとしての基準信号再生/周波数変換回路12とを備えている。
上記周波数変換/受信回路11は、入力側から出力側に順に接続された低雑音アンプ110、ミリ波バンドパスフィルタ111、周波数ミキサ112を有する。上記局部発振器8は周波数ミキサ112に接続されている。
また、上記基準信号再生/周波数変換回路12は、入力側から出力側に順に接続された中間周波数アンプ159、信号分配回路161、伝送線路162、周波数ミキサ部12a、増幅器195を有する。上記伝送線路162が第1の経路P1を構成している。また、上記信号分配回路161と上記周波数ミキサ部12aとの間には、第2の経路P2を構成する伝送線路163、バンドパスフィルタ171、増幅器180および伝送線路163が順に接続されている。
また、上記周波数ミキサ部12aはミキサMXとキャパシタ196を含んでいる。上記周波数ミキサ部12aの出力側に増幅器195の入力側が接続され、この増幅器195の出力側に出力端子500が接続されている。
このミリ波帯無線受信装置10の出力端子500には、分波器190が接続され、この分波器190にはTV受像機31が有する衛星放送用/地上波放送用チューナ30が接続される。
このミリ波帯無線受信装置10において、受信アンテナ14により受信されたミリ波帯無線多重信号73は、周波数変換/受信回路11に入力される。つまり、無線多重信号73は、一端、低雑音アンプ110により増幅される。次に、ミリ波帯バンドパスフィルタ111によって濾波された所望信号を、周波数ミキサ112でもって、局部発振器8からの局部発振信号(周波数fLO3)を用いて、第2の中間周波数帯に周波数ダウンコンバートして、中間周波数多重信号である第2のIF多重信号74を生成する。
なお、このミリ波帯の無線多重信号73に対する周波数ダウンコンバートは、図4(A),(B)に示すように、無線多重信号73を上側波帯として選択するダウンコンバートである。したがって、図3(C)に示す送信側の無線多重信号72よりも、図4(A)に示す受信側の局部発振周波数fLO3は、より低い周波数となる。なお、図3(C)に示すように、無線多重信号72は、無線基準信号72c(周波数(fLO1+fLO2))と、無線信号72a(周波数(fLO1+fLO2−fIF1e))とを含んでいる。また、図3,図4において、白抜きの矢印は信号の配列方向を示している。
さらに、望ましい一実施例では、周波数ミキサ112として、偶高調波ミキサ等のN次(Nは2以上の自然数)高調波ミキサを採用する。この場合、局部発振器8の局部発振周波数を1/Nとすることができる。具体的一例としては、周波数ミキサ112を2次の高調波ミキサとすることによって、局部発振器8の局部発振周波数を1/2とすることができる。したがって、周波数安定度の高い無線受信装置10を、ワイヤボンディング等の容易な実装でもって簡易に製作できる。このことは、前述した送信側の周波数変換/送信回路3と同様である。
図4(A)に示す受信無線多重信号73を、第2の中間周波数帯に周波数ダウンコンバートして、図4(B)に示す第2のIF多重信号74を生成する。この生成過程により、上記第2のIF多重信号74は、下記の周波数配置に変換される。
(信号) (周波数)
第2のIF基準信号74c:fLO1+fLO2−fLO3
第2のIF信号74a :(FLO1+FLO2−FLO3)−fIF1e
周波数変換/受信回路11から出力された第2のIF多重信号74は、一端、中間周波数アンプ159により増幅され、信号分配回路161で2分配される。上記信号分配器161は、各出力ポート間で例えば20dB程度のアイソレーション特性を有するウイルキンソン型2分配器で構成される。この信号分配器161によって、各出力ポートで不要な漏れ信号を抑制し、各回路を正常動作させることができる。尚、上記中間周波数アンプ159と信号分配器161の両方の機能を有する分岐アンプを採用しても構わない。この分岐アンプは、図示しないが、1つの入力部と2つの出力部から構成され、この2つの出力部の出力回路は、並列したトランジスタから2出力を取る。このため、2つの出力部の互いの出力ポート間は、非常に大きなポート間アイソレーションを確保することができる。
次に、第2のIF多重信号74は、信号分配回路161で、第1の経路P1をなす伝送線路162と第2の経路P2をなす伝送線路163とに分配され、第1の経路P1では、そのまま、周波数ミキサ部12aに入力される。一方、もう一方の第2の経路P2では、バンドパスフィルタ172が、上記第2のIF多重信号74のうちの基準信号74cである周波数(fLO1+fLO2−fLO3)の成分を帯域通過させる。この基準信号74cは、増幅器180によって増幅され、第2のIF多重信号74と同期した周波数ミキサ部12aの局部発振信号として動作する。すなわち、この基準信号74cは、周波数ミキサ部12aに入力され、周波数ミキサ部12aは第2のIF多重信号74を周波数ダウンコンバートして、送信側の入力信号5e(周波数fIFe)を出力信号76(周波数fIFe)として再生する。この再生された出力信号76(周波数fIFe)は、必要に応じて増幅器195で増幅され、出力端子500から出力される。この出力信号76は、一例として、分波器(または分配器)190によって分波または分配され、TV受像機31中の衛星放送波用/地上波放送用チューナ30に接続される。
ここで、第2のIF多重信号74から、複数の放送波を再生する信号処理のプロセスについて説明する。この第2のIF多重信号74が、この信号74に含まれる基準信号74cによって周波数ダウンコンバートされる。この周波数ダウンコンバートによって復調信号(周波数fIFe)としての出力信号76を生成するプロセスは、次のように表現できる。
すなわち、図4(B)に示す第2のIF多重信号74は、上記基準信号74cによって周波数ダウンコンバートされることで、基準信号74cの周波数(fLO1+fLO2−fLO3)から第1のIF信号74aの周波数((fLO1+fLO2−fLO3)−fIF1e)が減算され、図4(C)に示すように、周波数fIF1eの出力信号76が生成される。
以上のように、第2のIF多重信号74中に含まれる基準信号74cにより第2のIF多重信号を周波数ダウンコンバートする過程では、基準信号74cを増幅器180で増幅して電力レベルを高くする。これにより、周波数ミキサ部12aを線形動作させることができる。なお、この増幅器180は、比帯域10%以下の狭帯域増幅特性を有し、フィルタ171と組み合わせて、基準信号74cのみを抽出して増幅するような動作特性であればより望ましい。
また、上記基準信号再生/周波数変換回路12は、第2のIF多重信号74をこの第2のIF多重信号74中に含まれる基準信号74cで周波数ダウンコンバートする構成である。したがって、図4(C)に示すように、周波数ダウンコンバートされた出力信号76(周波数fIF1e)には、基準信号74cを基準信号74cで周波数変換されたことで発生するDC(直流)成分も含まれてしまう。このため、周波数変換ミキサ部12aは、DC成分をカットするキャパシタ196を含むことが望ましい。
なお、上記ウイルキンソン型分配器で構成した信号分配回路161においては、この分配回路161が起点となり第2のIF多重信号74は、同位相で2分配される。ここで、この分配回路161から周波数ミキサ部12aに至る第1,第2の2つの経路が存在する。つまり、第1の経路P1とは、分配回路161から、伝送線路162を経由してミキサMXに至る経路長L2の経路であり、第2の経路P2とは、伝送線路163とフィルタ171と増幅器180と伝送線路163とを経由して、ミキサMXに至る経路長L3の経路である。
この第1の経路P1の経路長L2と第2の経路P2の経路長L3との和である総経路長L1(=L2+L3)は、上記第2のIF多重信号74の最低周波数に対応する1波長λ以下であることが望ましい。この場合、上記第1の経路P1と第2の経路P2からなる総経路長L1のループは、1・λ以下となり寄生発振ループによる不要発振波が生じ難くなる。なお、ここで、上記経路長L2とL3は、正確には電気長であるが、物理長であっても構わない。
尚、上記実施形態のマイクロ波帯無線通信システムでは、入力信号5eを地上放送波5aと衛星放送波5bを有する信号として説明したが、この入力信号5eは、2つの衛星放送波や衛星放送波とCATV(Cable Television)信号等の組み合わせであっても構わないし、その他、例えば、無線LAN等のIF(中間周波数)段階またはRF(高周波)での変調波信号等を入力変調波信号としてもよい。また、上記実施形態では、ミリ波帯の無線信号を送受信する無線通信システムについて説明したが、無線信号はミリ波帯に限るものではなく、本発明はミリ波帯を含むマイクロ波の周波数帯域の無線信号を送受信するシステムにおいて適用できる。