JP2006036553A - 窒化けい素焼結体およびその製造方法 - Google Patents

窒化けい素焼結体およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】純度が低く安価な窒化けい素原料粉末を使用して形成した場合であっても、助剤成分の分散状態を制御することが可能であり、従来の窒化けい素焼結体と同等以上の機械的強度、耐磨耗性、転がり寿命特性に加え、加工性に優れた転がり軸受け部材として好適な窒化けい素焼結体およびその製造方法を提供する。
【解決手段】焼結助剤成分として希土類元素を5質量%以下、Al元素を5質量%以下、Ti,Zr,Hf,W,Mo,Ta,NbおよびCrからなる群より選択される少なくとも1種の元素を5質量%以下含有し、気孔率が1%以下であることを特徴とする窒化けい素焼結体である。
【選択図】 なし

Description

本発明は窒化けい素を主成分とする耐摩耗性部材およびその製造方法に係り、特に結晶組織が均質であり、ベアリングボール等の軸受け転動体,切削工具,圧延治具,摺動部材等の構成材として使用した場合に、優れた機械的強度、耐摩耗性、転がり寿命特性を発揮し得る窒化けい素焼結体およびその製造方法に関する。
従来、回転軸を支持するベアリング(軸受)部材として、特にベアリングボールの構成材として、軸受鋼等の金属材料が一般に使用されていた。しかしながら、軸受鋼等の金属材料では耐摩耗性が十分ではないことから、例えば電子機器等のように5,000rpm以上の高速回転が要求される製品分野においては、軸受けの寿命のばらつきが大きくなり信頼性のある高速回転駆動が安定して得られないという問題点があった。
上記のような問題点を解決する一手段として、近年になってベアリングボールの構成材として窒化珪素焼結体を用いることが試行されている。窒化珪素焼結体はセラミックスの中でも摺動特性に優れることから、一部の使用態様において耐摩耗性は十分であり、高速回転を行った場合においても信頼性が高い回転駆動をある程度の期間にわたって実現できることが確認されている。
従来の窒化けい素焼結体の焼結組成としては窒化けい素−希土類酸化物−酸化アルミニウム系、窒化けい素−酸化イットリウム−酸化アルミニウム−窒化アルミニウム−チタニウム系等が知られている。上記焼結組成における酸化イットリウム(Y)などの希土類酸化物等の焼結助剤は、従来から焼結助剤として一般に使用されており、焼結性を高めて焼結体を緻密化し高強度化するために添加されている。
また、耐摩耗性、特に優れた摺動特性を必要とする転がり軸受け部材に使用される従来の窒化けい素焼結体として、例えば所定量の希土類酸化物,MgAlスピネル,炭化けい素,Ti,Zr,Hf等の酸化物を含有し、気孔率が1%以下であり、三点曲げ強度が900MPa以上であり、破壊靭性値が6.3MPa・m1/2以上である窒化けい素焼結体から成る耐摩耗性部材が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、特に不純物を低減して耐摩耗性を損なう欠陥の発生が少なく均質な焼結体を形成するために、従来の焼結体は、一般的に原料粉末として例えばイミド熱分解法で合成した高純度窒化けい素微粉末を使用して製造されている。
特開2003−34581号公報
しかしながら、ベアリングボールの摺動特性は焼結体の表面精度により大きく影響されることが本発明者らの研究により明確になっている。従来の窒化珪素製ベアリングボールでは表面精度に影響を及ぼす助剤成分の偏析の大きさを抑制制御するため、高純度の窒化けい素原料を用いる必要があった。
また、転がり軸受け部材に使用される従来の窒化けい素焼結体は、上記したイミド熱分解法で合成した高価な原料粉末を使用して製造されている上に、機械的強度や破壊靭性値が高過ぎるため、焼結後の加工性が悪く、耐摩耗性部材製品の製造コストの上昇が不可避となる問題点があった。
また、上記従来方法によって製造された窒化けい素焼結体では、曲げ強度や破壊靭性値、耐摩耗性が向上している反面、特に軸受け部材として必要な転がり特性および耐久性については不十分であり、さらなる改良が要請されている。
近年、精密機器用部材としてのセラミックス材料の需要が増加しており、このような用途においては、高硬度で軽量かつ耐摩耗性が優れるというセラミックスの特長が、高耐食性と低熱膨張性という性質とともに利用されている。特に、高硬度性と耐摩耗性との観点から、軸受などの摺動部を構成する耐摩耗性部材としての用途も急速に拡大している。
しかしながら、軸受などの転動ボールをセラミックス製耐摩耗性部材で構成した場合、転動ボールが高い応力レベルで繰り返し接触しながら転動したときに、耐摩耗性部材の転がり寿命が未だ十分ではなく、短期間の運転により耐摩耗性部材の表面が剥離したり、割れを生じてしまうため、軸受を装着した機器に振動を生じたり、損傷を引き起こす事故が発生し易く、いずれにしても機器構成部品材料としての耐久性および信頼性が低いという問題点があった。
本発明は上記のような課題要請に対処するためになされたものであり、特に金属窒化法で製造された窒化けい素粉末のように純度が低く安価な窒化けい素原料粉末を使用して形成した場合であっても、助剤成分の分散状態を制御することが可能であり、従来の窒化けい素焼結体と同等以上の機械的強度、耐磨耗性、転がり寿命特性に加え、加工性に優れた転がり軸受け部材として好適な窒化けい素焼結体およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は上記目的を達成するため、従来の窒化けい素焼結体を製造する際に、一般的に使用されていた窒化けい素原料粉末の種類、不純物量、焼結助剤や添加物の種類および添加量、および原料粉末の混合条件、焼成条件を種々変えて、それらの要素が焼結体の特性に及ぼす影響を実験により確認した。
その結果、金属窒化法等で合成した安価で微細な窒化けい素原料粉末に希土類酸化物と,酸化アルミニウムや窒化アルミニウムなどのアルミニウム成分と,Ti,Hf,Zr,W,Mo,Ta,Nb,Crから成る群より選択される少なくとも1種とを所定量ずつ添加した原料混合体を均一に混合した後に成形・焼結したときに、さらには焼結した後に所定の条件で熱間静水圧プレス(HIP)処理したときに、従来の窒化けい素焼結体と同等以上の緻密性,機械的強度,耐摩耗性,転がり寿命特性に加えて、特に加工性に優れた転がり軸受部材として好適な窒化けい素焼結体が得られるという知見が得られた。
特に、1ロット分の原料粉末を予め複数に分割し、各分割した原料粉末を個別に十分に混合した後に、各原料粉末を合体して一つの原料体として、さらに十分に混合した原料粉末を成形・焼結したときに、焼結助剤粉末同士の凝集が抑制され、均質な組織を有する窒化けい素焼結体が得られた。特に窒化珪素焼結体中に存在する焼結助剤成分の偏析凝集部の径を20μm以下にでき、表面欠陥が少なく耐摩耗性に優れた焼結体が得られるという知見も得られた。
本発明は上記知見に基づいて完成されたものである。
すなわち、本発明に係る窒化けい素焼結体は、焼結助剤成分として希土類元素を5質量%以下、Al元素を5質量%以下、Ti,Zr,Hf,W,Mo,Ta,NbおよびCrからなる群より選択される少なくとも1種の元素を5質量%以下含有し、気孔率が1%以下であることを特徴とする。
また、上記窒化けい素焼結体において、酸素含有量が5質量%以下であることが好ましい。焼結体の酸素含有量が5質量%を超えるように過量となると、酸素やSiO等のガス成分に起因するポアや亀裂などの欠陥が発生しやすくなる。
なお、焼結体中の酸素量(全酸素量)は不活性ガス融解−赤外線吸収法に準ずる酸素分析計により求めた値とし、窒化けい素焼結体を構成している酸素の全量を質量%で示したものである。従って、酸素が窒化けい素焼結体中に金属酸化物や酸窒化物などとして存在している場合は、その金属酸化物(および酸窒化物)量ではなく、金属酸化物(および酸窒化物)の酸素量に着目したものである。
上記焼結体中の酸素量を調整低減するためには、焼結助剤として用いる希土類成分やアルミニウム成分として酸化物ではなく、窒化物等を用いたり、焼結途中で成形体を真空雰囲気中で加熱して気体成分の脱ガス処理したりすることによって可能である。
さらに、前記窒化けい素焼結体を構成する窒化けい素結晶粒子の最大長さが40μm以下であることことが好ましい。
上記窒化けい素結晶粒子の最大長さが40μmを超えるように長大に異常に粒成長した窒化けい素結晶粒子は焼結体の表面性状を悪化させて耐摩耗性および摺動特性を低下させる原因となるため、上記窒化けい素結晶粒子の最大長さは40μm以下にすることが好ましい。
上記窒化けい素結晶粒子の最大長さは、焼結体組織の拡大写真上で任意の測定領域(100μm×100μm)を3箇所選出し、各領域における結晶粒子の最大長さの平均値として測定される。
上記窒化けい素結晶粒子の最大長さは、異常粒成長を防止する前記希土類元素,アルミニウム成分量および焼結条件を適正化することにより調整できる。
さらに、上記窒化けい素焼結体において、前記窒化けい素焼結体の結晶組織における助剤成分の偏析凝集部の最大径が20μm以下であることが好ましい。
ここで上記偏析凝集部の最大径とは、隣接する窒化珪素結晶粒子の間の粒界相に形成される焼結助剤成分の偏析部または凝集部の最大長さを言い、窒化けい素焼結体の表面または断面について、倍率が2000倍(50μmを10cmで表示する)程度以上の拡大写真において、偏析部または凝集部における最も長い対角線として定義される。
上記偏析凝集部は脆弱であり破壊の起点になり易く、摺動性および耐摩耗性を低下させる。そのため、本発明において助剤成分の偏析凝集部の最大径は20μm以下とされるが、10μm以下、さらには5μm以下であることがより好ましい。さらに高機能の耐摩耗性部材を構成するためには上記偏析凝集部の最大径が0.1〜1.5μmの範囲であることがさらに好ましい。
なお上記拡大写真については特に限定されるものではないが、金属顕微鏡、電子顕微鏡、XDS、EPMAなどが一般的でありカラーマッピング処理を行うと助剤成分を判断し易くなる。なお、拡大写真にて組織状態を判断する際に、ベアリングボールのように球面状部を写真にとると写真の端部が湾曲して写るため正確に表面の助剤成分の存在状態を示さないことが考えられるが、単位面積が50μm×50μmのように微小な範囲を撮影する場合には上記の撮影像の歪みは少なく実質的に問題は生じない。
なお上記偏析凝集部の最大径を低減するためには、助剤成分粉末の凝集を防止し原料窒化けい素粉末と焼結助剤粉末との均一な混合を達成することが重要である。助剤成分の凝集が起きると最大径が20μm以上の偏析凝集部が形成され易くなる。
そのためには、後述するように例えば、1ロット分(総量約5kg)の原料粉末を混合するに際し、原料粉末をそれぞれ2分割以上、好ましくは3〜5分割して比較的少量ずつ混合したものを最終的に1つに混ぜ合わせ均質化する方法が有効である。
なお、1ロット分で助剤成分粉末の凝集粒子の少ない混合粉末が得られれば特に問題ではないが、このような場合において凝集粒子の少ない均一な混合状態を得ようとすると混合時間が必要以上に長くなってしまうことが多く、必ずしも製造性が良いとは言えない。また、1度に大量に各原料粉末を混ぜ合わせると最終的な窒化けい素焼結体としたときに助剤成分の大きさが20μmを超える部位が生成し易くなる。
さらに他の混合方法として、まず窒化けい素粉末および複数種類の焼結助剤を混合する。その混合粉の中に特に分散性の悪い焼結助剤粉末は分割して順次添加する方法が有効である。例えば、分散性の悪い焼結助剤成分粉末の添加量を2分割以上、好ましくは3〜5分割し、1回目の添加を行い所定時間(30分以上が好ましい。)経過した後に2回目以降分を順に添加する方法である。
このような方法によって原料粉末を均一に混合すれば、焼結助剤粉末同士の凝集を効果的に抑制することができるので、仮に偏析部や凝集部が存在したとしても窒化けい素焼結体中での助剤成分の偏析凝集部の最大径を20μm以下、好ましくは5μm以下にすることが可能となる。
また、上記窒化けい素焼結体において、前記窒化けい素焼結体が不純物としてFeを10〜3500ppm含有するとともに、Caを10〜1000ppm含有していることが好ましい。焼結助剤としてアルミニウム成分を含有する場合、鉄およびカルシウム成分を微量に含有させることにより、窒化けい素から成る耐摩耗性部材の摺動性能を向上させることができる。不純物としての鉄の含有量が3500ppm以下であれば、耐摩耗性部材の摺動性能が良好である一方、鉄の含有量が10ppm以上であっても、強度や摺動性能の低下等の不都合を生じない。
また、耐摩耗性部材においてカルシウムの含有量が1000ppm以下であれば、耐摩耗性部材の摺動性能が良好である一方、カルシウムの含有量が10ppm以上であっても、強度や摺動性能の低下等の不都合を生じない。なお、上記窒化けい素焼結体中のFe含有量およびCa含有量は、加圧分解―ICP発光分析法により測定できる。
さらに、上記窒化けい素焼結体において、前記窒化けい素焼結体のビッカース硬度Hvが1300〜1500であることが好ましい。
耐摩耗性部材を構成する窒化けい素焼結体に要求される硬度に関しては、ビッカース硬さでHv1300以上の特性を有することが好ましい。窒化けい素焼結体の硬度がビッカース硬さでHv1300未満となると、耐摩耗性の低下が著しくなる。特に、ベアリングボールなどに求められる摺動特性(転がり寿命特性)を十分に満足させることができなくなる。窒化けい素焼結体のビッカース硬さはHv1400以上であることがより好ましい。なお、上記ビッカース硬度Hvが1500を超えるように過大になると、相手材に対する攻撃性が顕著になるため、上記ビッカース硬度Hvは1300〜1500の範囲が好ましい。
また、前記窒化けい素焼結体の破壊靭性値が6MPa・m1/2以上であることが好ましい。さらに、前記窒化けい素焼結体の抗折強度が600MPa以上であることが好ましい。
また上記窒化けい素焼結体において、前記窒化けい素焼結体が切削工具または軸受けの転動体であることが好ましい。さらに、上記窒化けい素焼結体で圧延治具を形成することも可能である。また、前記窒化けい素焼結体が軸受けの球状転動体であるである場合には、前記窒化けい素焼結体の圧砕強度が150N/mm以上であることが好ましい。この圧砕強度が150N/mm未満であると、軸受けの球状転動体の転がり寿命特性が低下してしまう。
なお、上記ビッカース硬度HvはJIS−R−1610で規定された測定法に準拠し試験荷重198.1Nで室温(25℃)にて測定した。また破壊靭性値(K1C)はJIS−R−1607で規定されたIF法に基づき測定し、Niiharaの式により算出したものである。圧砕強度は旧JIS規格B1501に準じた測定法により、インストロン型試験機で圧縮加重をかけ、破壊時の荷重を測定することにより測定した。さらに抗折強度はJIS−R−1601で規定された3点曲げ強さ試験に準じた測定法により測定した。
本発明に係る窒化けい素焼結体の製造方法は、酸素を1.5質量%以下、α相型窒化けい素を80質量%以上含有し、平均粒径が1μm以下の窒化けい素粉末に、焼結助剤成分として希土類元素を5質量%以下、Al元素を5質量%以下、Ti,Zr,Hf,W,Mo,Ta,NbおよびCrからなる群より選択される少なくとも1種の元素を5質量%以下添加し、得られた原料混合体を複数に分割し、分割した各原料混合体をそれぞれ個別に十分に混合した後に、一つの原料混合体として合体して、さらに十分に混合し得られた原料混合体を成形して成形体を調製し、この成形体を非酸化性雰囲気中で焼結することを特徴とする。
また、上記窒化けい素焼結体の製造方法において、焼結後、非酸化性雰囲気中で前記窒化けい素焼結体に対し、圧力30MPa以上の熱間静水圧プレス(HIP)処理を実施することが好ましい。
上記製造方法によれば、安価な窒化けい素原料粉末に希土類元素,アルミニウム元素,Ti,Hf,Zr等の成分を添加し、これらの成分と窒化けい素成分とが十分均一に混合されているため、これらの成分が希土類元素と共に窒化けい素原料粉末とむら無く反応して液相を生成して焼結促進剤として機能し、焼結体の緻密化を可能とするとともに結晶組織において粒成長を抑止する機能を果し、窒化けい素焼結体の機械的強度,耐摩耗性,転がり寿命特性に加えて、特に均一性および加工性に優れた窒化けい素焼結体が得られる。
本発明方法において使用され、耐摩耗性部材等を構成する窒化けい素焼結体の主成分となる窒化けい素粉末としては、例えば金属窒化法で製造された安価な窒化けい素原料粉末等を使用することができるが、焼結性、曲げ強度および破壊靭性値を考慮して、酸素含有量が1.5質量%以下、好ましくは0.9〜1.2質量%であるα相型窒化けい素を80質量%以上、好ましくは90〜97質量%含有し、平均粒径が0.2〜3μm、好ましくは1μm以下、さらに好ましくは0.2〜0.9μm程度の窒化けい素粉末を使用することが好ましい。
なお、窒化けい素原料粉末としてはα相型のものとβ相型のものとが知られているが、α相型の窒化けい素原料粉末では焼結体とした場合に強度が不足し易い傾向がある一方、β相型の窒化けい素原料粉末では、アスペクト比が高い窒化けい素結晶粒子が複雑に入り組んだ高強度の焼結体が得られる。
本発明方法において、α相型窒化けい素粉末の配合量を80質量%以上の範囲に限定した理由は、80質量%以上の範囲で焼結体の曲げ強度、破壊靭性値および転がり寿命が格段に向上し、窒化けい素の優れた特性が顕著となるためである。一方、焼結性を考慮すると、97質量%までの範囲とする。好ましくは90〜95質量%の範囲とすることが好ましい。
その結果、窒化けい素の出発原料粉末としては、焼結性、曲げ強度、破壊靭性値、転がり寿命を考慮して、酸素含有率が1.5質量%以下,好ましくは0.9〜1.2質量%であり、α相型窒化けい素を80質量%以上含有し、平均粒径が1μm以下、好ましくは0.6〜0.9μm程度の窒化けい素粉末を使用することが好ましい。
特に平均粒径が0.8μm以下の微細な原料粉末を使用することにより、少量の焼結助剤であっても気孔率が1%以下の緻密な焼結体を形成することが可能である。この焼結体の気孔率はアルキメデス法により容易に計測できる。
上記窒化けい素原料粉末に焼結助剤として添加する希土類元素としては、Y,Ho,Er,Yb,La,Sc,Pr,Ce,Nd,Dy,Sm,Gdなどの酸化物もしくは焼結操作により、これらの酸化物となる物質が単独で、または2種以上の酸化物を組み合せたものを含んでもよい。これらの焼結助剤は、窒化けい素原料粉末と反応して液相を生成し、焼結促進剤として機能する。焼結助剤の平均粒径は3μm以下が好ましい。
上記焼結助剤の添加量は、元素換算で原料粉末に対して5質量%以下の範囲とする。この添加量が5質量%未満の場合は、焼結体の緻密化あるいは高強度化が不十分であり、特に希土類元素がランタノイド系元素のように原子量が大きい元素の場合には、比較的低強度の焼結体が形成される。一方、添加量が5質量%を超える過量となると、過量の粒界相が生成し、気孔の発生量が増加したり、強度が低下し始めるので上記範囲とする。特に同様の理由により2〜4質量%とすることが望ましい。
また、アルミニウム成分は酸化アルミニウム(Al)や窒化アルミニウム(AlN)などとして添加され、その添加量は元素換算で5質量%以下の範囲である。具体的には、Alは希土類元素の焼結促進剤の機能を促進し、低温での緻密化を可能にし、結晶組織において粒成長を制御する機能を果たし、Si焼結体の曲げ強度をおよび破壊靭性値などの機械的強度を向上させるために5質量%以下の範囲で添加される。しかしながら、その添加量が1質量%未満の場合においては添加効果が不充分である一方、5質量%を超える過量となる場合には酸素含有量の上昇が起こり、これによる粒界相中の成分分布のむらが発生し転がり寿命が低下するので、Alの添加量は1〜5質量%の範囲とされるが、好ましくは1〜4質量%の範囲とすることが望ましい。
一方、AlNは焼結過程における窒化けい素成分の蒸発等を抑制するとともに、希土類元素の焼結促進剤としての機能をさらに助長する役目を果たすものであり、窒化物換算で3質量%以下の範囲で添加されることが望ましい。但し、その添加量が1質量%未満となると、上記機能が不十分となる一方、添加量が3質量%を超えるように過量となると、焼結体の機械的強度や耐摩耗性部材としての転がり寿命特性が低下するため、その添加量は窒化物換算で1〜3質量%の範囲とされる。
なお、前記窒化けい素粉末に、2〜4質量%のAlと1〜3質量%のAlNとを共に添加すると、焼結体の機械的特性をより効果的に高めることができるが、両者の合計量が過大になると、耐摩耗性部材としての転がり寿命特性が低下するため、原料混合体中におけるアルミニウム成分の合計含有量は酸化物換算で6質量%以下とすることが好ましい。
一方、Ti,Hf,Zr,W,Mo,Ta,Nb,Crの酸化物、炭化物、窒化物、珪化物、硼化物から成る群から選択される少なくとも1種の化合物は、上記の希土類酸化物等の焼結促進剤としての機能を促進するとともに、結晶組織において分散強化の機能を果し窒化けい素焼結体の機械的強度や転がり寿命を向上させるために元素換算で5質量%以下の範囲で含有される。特にTi,Mo,Hf化合物が好ましい。これらの化合物の添加量が元素換算で0.5質量%未満では添加効果が不十分である一方、5質量%を超える過量となる場合には焼結体の強度や転がり寿命の低下が起こるため、添加量は5質量%以下の範囲とする。特に0.5〜4質量%とすることが望ましい。
また、上記Ti,Hf,Zr,W,Mo,Ta,Nb,Crなどの化合物は、前記SiCと同様に結晶組織において分散強化の機能を果し、窒化けい素焼結体の機械的強度を向上させる。その結果、窒化けい素結晶組織中に希土類元素等を含む微細な粒界相が形成され、その粒界相中に形成される凝集偏析部の幅の最大値が20μm以下となり、さらには気孔率が1%以下、抗折強度が室温で600MPa以上であり、破壊靭性値が6MPa・m1/2以上であり、圧砕強度が150MPa以上である機械的特性に優れた窒化けい素焼結体が得られる。
なお前記Ti,Zr,Hf等の化合物は窒化けい素焼結体を黒色系に着色し不透明性を付与する遮光剤としても機能する。
また焼結体の気孔率は耐摩耗性部材の転がり寿命および曲げ強度に大きく影響するため1%以下となるように製造する。気孔率が1%を超えると、疲労破壊の起点となる気孔が急増して耐摩耗性部材の転がり寿命が低下するとともに、焼結体の強度低下が起こる。より好ましい気孔率は0.5%以下である。この気孔率は、前記各種の焼結助剤の選択による焼結性、成形圧力、焼成条件、焼結後のHIP処理条件等を制御することにより調整できる。
本発明に係る窒化けい素焼結体は、例えば以下のようなプロセスを経て製造される。すなわち前記所定の微細粒径を有し、また酸素含有量が少ない微細な窒化けい素粉末に対して所定量の焼結助剤、AlやAlNなどのアルミニウム成分,有機バインダ等の必要な添加剤およびTi等の化合物を加えて原料混合体を調製する。
ここで、上記原料混合体の調製工程においては、焼結助剤成分の凝集を防止するため、各原料粉末すなわち焼結助剤粉末および窒化珪素粉末をあらかじめ分割して1回で混合処理する原料粉末重量を制限し、それらの分割された焼結助剤粉末と窒化珪素粉末とを十分に混合する。分割した他の原料粉末についても同様に混合して複数の混合粉末を調製する。そしてこれらの分割した均一な混合粉末を一つに統合してさらに十分に混合して原料粉末を調製し、成形後、脱脂工程を経て、焼結して窒化けい素焼結体を製造する方法を採用することを特徴としている。
例えば、1ロット分(総量5kg)の原料粉末を混合するにあたり、原料粉末をそれぞれ2分割以上、好ましくは3〜5分割して比較的少量ずつ均一に混合した後に、さらに最終的に1つの原料混合体として合体して、さらに十分に混合する。
このように焼結助剤と窒化けい素原料粉末との配合体を少なくとも2分割してそれぞれ混合した後に、1つに統合して混合する製造方法とすることにより、より均質な原料混合体を得ることが可能となる。
次に得られた原料混合体を成形して所定形状の成形体を得る。原料混合体の成形法としては、汎用の金型プレス法やCIP(冷間静水圧プレス)法などが適用できる。特に球状のベアリングボールを製造する際には、冷間静水圧プレス(CIP)成形法が好適である。
上記金型プレス法やCIP成形法で成形体を形成する場合において、特に焼結後において気孔が発生し難い粒界相を形成するためには、原料混合体の成形圧力を120MPa以上に設定することが必要である。この成形圧力が120MPa未満である場合には、主として粒界相を構成する成分となる希土類元素化合物が凝集した箇所が形成され易い上に、十分に緻密な成形体となり得ず、クラックの発生が多い焼結体しか得られない。
上記粒界相において助剤成分が凝集した箇所(偏析凝集部)は疲労破壊の起点となり易いため、耐摩耗性部材の寿命耐久性が低下してしまう。一方、200MPaを超えるように成形圧力を過大にした場合、成形型の耐久性が低下してしまうので、必ずしも製造性が良いとは言えない。そのため、上記成形圧力は120〜200MPaの範囲が好ましい。
上記成形操作に引き続いて、成形体を非酸化性雰囲気中で温度600〜800℃、または空気中において温度400〜500℃で1〜2時間加熱して、予め添加していた有機バインダ成分を十分に除去し、脱脂する。
次に脱脂処理された成形体を窒素ガス、水素ガスやアルゴンガスなどの不活性ガスを充填した非酸化性雰囲気中で1600〜1900℃の温度で0.5〜10時間、常圧焼結または加圧焼結を行う。加圧焼結法としては、雰囲気加圧焼結、ホットプレス、熱間静水圧プレス(HIP)焼結など各種の加圧焼結法が用いられる。窒化けい素焼結体から成るベアリングボールを製造する際は常圧焼結または加圧焼結を実施した後にHIP焼結を行うことが好ましい。
また上記通常の焼結後、得られた窒化けい素焼結体に対し、さらに非酸化性雰囲気中で、30MPa以上の加圧力で熱間静水圧プレス(HIP)処理を実施することにより、疲労破壊の起点となる焼結体の気孔の影響をより低減できるため、さらに改善された耐摩耗特性および転がり寿命特性を有する窒化けい素焼結体が得られる。
上記製法によって製造された窒化けい素焼結体は全酸素量が5質量%以下で気孔率が1%以下、また抗折強度が常温で600MPa以上であり機械的特性にも優れている。
また、圧砕強度が150MPa以上であり、破壊靭性値が6MPa・m1/2以上である窒化けい素焼結体を得ることができる。
本発明に係る耐摩耗性部材およびその製造方法によれば、安価な窒化けい素原料粉末に所定量の希土類元素,AlやAlNなどのアルミニウム成分,Ti,Hf,Zr,等の元素を添加して原料混合体を調製しているため、焼結性が大幅に改善され、従来の窒化けい素焼結体と同等以上の緻密性および高い機械的強度に加えて、優れた耐摩耗性、特に転がり寿命特性および加工性が優れた転がり軸受部材として好適な窒化けい素焼結体が得られる。
そのため、この窒化けい素焼結体を転がり軸受部材として使用して軸受部を調製した場合には、長期間に亘って良好な転動特性を維持することが可能であり、動作信頼性および耐久性に優れた回転機器を安価に提供することができる。また、他の用途としては、切削工具、圧延治具、弁のチェックボール、エンジン部品、各種治工具、各種レール、各種ローラなど耐摩耗性を要求される様々な分野に適用可能である。
以上説明の通り、本発明に係る窒化けい素焼結体およびその製造方法によれば、安価な窒化けい素原料粉末に、所定量の希土類元素,Alなどのアルミニウム成分,Ti,Hf,Zr,等の元素を添加して原料混合体を調製しているため、焼結性および加工性が大幅に改善され、従来の窒化けい素焼結体と同等以上の緻密性および高い機械的強度に加えて、優れた耐摩耗性が得られ、特に転がり寿命特性が優れた転がり軸受部材として好適な窒化けい素焼結体を安価に提供できる。
また、気孔の発生が抑制され、粒界相中における成分の分布むらが解消されるため、転がり寿命特性および耐久性が優れた窒化けい素焼結体が得られる。そのため、この窒化けい素焼結体を転がり軸受部材として使用して軸受部を調製した場合には、長期間に亘って良好な転動特性を維持することが可能であり、動作信頼性および耐久性に優れた回転機器を提供することができる。
次に本発明の実施形態を以下に示す実施例を参照して具体的に説明する。
[実施例1〜12]
金属窒化法で製造された窒化けい素原料粉末であり、酸素含有量が1.3質量%であり、α相型窒化けい素85%を含む平均粒径0.7μmのSi(窒化けい素)原料粉末と、焼結助剤として平均粒径0.8μmのY(酸化イットリウム)粉末と、アルミニウム成分として平均粒径0.9μmのAl粉末および平均粒径0.9μmのAlN粉末と、平均粒径0.8μmの酸化ハフニウム(HfO)等の希土類元素酸化物と、平均粒径1μmのTiO(酸化チタニウム)粉末、平均粒径1μmのMoC(炭化モリブデン)粉末等の耐火金属化合物粉末とを用意した。
上記窒化けい素原料粉末に対して、希土類元素量、アルミニウム元素量および耐火金属元素量が、表1に示す値になるように上記焼結助剤を所定量ずつ添加配合して各原料粉末を1ロット分(5Kg)ずつ調製した。次に、各原料粉末を表1に示す分割数で分割し、エチルアルコール中で粉砕媒体として窒化けい素製ボールを用いてボールミルにより24時間湿式混合した後に乾燥して原料体をそれぞれ調製した。そして分割して混合した複数の原料体を合体してさらに48時間混合することにより、助剤成分が凝集することなく均一に分散した各原料粉末を製造した。
この各原料粉末を150MPaの成形圧力で冷間静水圧プレス法(CIP法)により成形し、得られた成形体を不活性ガス雰囲気中において表1に示す焼結条件(圧力、温度、時間)で焼成し、さらに必要に応じて表1に示す条件(圧力、温度、時間)で熱間静水圧プレス(HIP)処理を実施することにより、表1に示すような各実施例に係る窒化けい素焼結体を作製した。
なお、各実施例および比較例に係る窒化けい素焼結体は、寸法が3×3×10mmである強度測定用の四角柱状の試料と、直径が2mmであるベアリングボール試料とに加工した。さらにベアリングボール試料には、日本工業規格(JIS)で規定されたベアリングボールのグレード3に相当する表面研磨加工を施した。
[比較例1〜7]
比較例1として、1ロット分(5Kg)の原料混合体を分割せずにそのままボールミルにより24時間湿式混合した点以外は、実施例1と同様に成形・脱脂・焼結して比較例1に係る棒状および球状の窒化けい素焼結体を調製した。
比較例2としてアルミニウム成分を添加しない点以外は実施例1と同一条件で処理することにより比較例2に係る棒状および球状の窒化けい素焼結体を調製した。
比較例3として希土類元素を過量に添加した点以外は実施例1と同一条件で処理することにより比較例3係る棒状および球状の窒化けい素焼結体を調製した。
また、比較例4として比較例1で得られた焼結体を温度1700℃の窒素ガス雰囲気中で100MPaの加圧力を作用させるHIP処理を1時間実施することにより、比較例4に係る棒状および球状の窒化けい素焼結体を調製した。
さらに比較例5として、金属窒化法で製造された窒化けい素粉末であり、酸素含有量が1.7質量%でα相型窒化けい素を70%含有する平均粒径1.5μmのSi原料粉末を使用した点以外は実施例2と同一条件で処理して比較例5に係る棒状および球状の窒化けい素焼結体を調製した。
さらに、比較例6としてイミド熱分解法で合成された窒化けい素原料粉末を使用した点および酸化ハフニウム(HfO)を使用した点以外は実施例2と同一条件で処理することにより比較例6に係る棒状および球状の窒化けい素焼結体を調製した。
比較例7としてアルミニウム成分を過量に添加した点以外は実施例1と同一条件で処理することにより比較例7係る棒状および球状の窒化けい素焼結体を調製した。
こうして得られた各実施例および比較例に係る各窒化けい素焼結体について、酸素含有量、Fe含有量、Ca含有量、助剤成分の偏析凝集部の最大径、窒化けい素結晶粒子の最大長さ、気孔率、ビッカース硬度Hv、マイクロインデンテーション法における新原方式による破壊靭性値(K1C)、室温での抗折強度の最小値、圧砕強度、熱伝導率、およびベアリングボールとしての不具合の有無を測定して表1および表2に示す結果を得た。
なお、上記酸素含有量は不活性ガス融解−赤外線吸収法により測定した。また、Fe含有量およびCa含有量は、加圧分解―ICP発光分析法により測定した。また助剤成分の偏析凝集部の最大径は、各焼結体の表面2ヶ所、断面2ヶ所の合計4ヶ所について任意に観察領域(面積50μm×50μmに相当する領域)を設定し、各領域における偏析凝集部の最大径を測定し該4ヶ所の平均値で示した。また上記窒化けい素結晶粒子の最大長さは、焼結体組織の拡大写真上で任意の測定領域(100μm×100μm)を3箇所選出し、各領域における結晶粒子の最大長さの平均値として測定した。
なお、SEM等の拡大写真で焼結体組織を確認すると、偏析凝集部は通常の粒界相より色が濃く映し出される(例えば、白黒写真の場合、窒化けい素結晶粒子が黒色、粒界相が白色に映し出され、偏析凝集では白色が濃く映し出される)ので区別は可能である。また、必要に応じてEPMAにて希土類元素および耐火金属の存在を確認すると希土類元素の濃度が通常の粒界相より色濃く映し出されるので、この方法によっても区別可能である。
さらに各焼結体の気孔率はアルキメデス法によって測定した。またビッカース硬度HvはJIS−R−1610に準拠して測定し、破壊靭性値(K1C)は、マイクロインデンテーション法における新原方式により測定し、熱伝導率はレーザーフラッシュ法により測定した。
なお、各測定値において、本実施例では便宜的に試料形状を四角柱状としたが、例えば真球状のベアリングボールについて各特性を測定する場合でも同様にラップ加工を施すことにより対応可能である。
またベアリングボールとしての不具合の有無は、下記のように評価した。すなわち、各実施例および比較例に係る窒化けい素焼結体を使用して直径2mmのベアリングボールを作製し、各ベアリングボール表面を研磨加工してグレード3の状態とした。
各ベアリングボールを、ハードディスクドライブを回転駆動させるためのスピンドルモータのベアリング部材として組込んだ。なお、その他のベアリング部材の構成材としては、軸受鋼(SUJ2)製の回転軸部並びにボール受け部を使用した。
そして上記スピンドルモータを8000rpmの回転速度で200時間連続稼動させたときの不具合発生の有無を調査した。ここで不具合の有無とは、200時間の連続稼動後にハードディスクドライブが正常に稼動するか否かにより判定した。それらの結果を表1〜表2にまとめて示す。
Figure 2006036553
Figure 2006036553
上記表1および表2に示す結果から明らかなように各実施例に係る窒化けい素焼結体およびその焼結体から形成された耐摩耗性部材としてのベアリングボールにおいては、均質な組成を有し所定の添加成分が含有されて形成されているため、気孔の発生が抑制されており、粒界相中における助剤成分の偏析凝集部の最大径が小さく、成分の分布むらは観察されず、強度特性についてはやや比較例よりも低いものがあるが、転がり寿命および耐久性に優れた窒化けい素製耐摩耗性部材が得られた。具体的には各実施例に係る窒化けい素焼結体で形成したベアリングボールを長時間高速稼動させた場合においても、不具合は全く発生しないことが判明した。それに対し、偏析凝集部の最大径が大きい比較例1等においては不具合が発生し転がり寿命および耐久性が低いことが確認された。
また、粒界相中における助剤成分の偏析凝集部の最大径が20μm以下である場合には、窒化けい素焼結体の抗折強度の最小値は900MPa以上と成り、優れた構造強度を有することが判明した。また、熱伝導率はいずれも40W/m・K以上であった。これに対して、偏析凝集部の最大径が50μm程度と大きくなる場合には、抗折強度の最低値が600MPaを下回ってしまった。また、表1および表2には示されていないが、各実施例に係る耐摩耗性部材の粒界相中における最大気孔径は0.4μm以下であった。
一方、原料粉末混合段階において原料粉末を分割せずに一度に混合した比較例1においては、液相成分の凝集偏析が大きくなり、粒界相中の成分の分布むらが大きく、強度特性および転がり寿命が低下した。
また、アルミニウム成分を含有しない比較例2においては、液相成分の凝集偏析が大きくなり、粒界相中の成分の分布むらが大きく、強度特性および転がり寿命が低下した。
さらに希土類成分を過量に添加した比較例3においても、液相成分の凝集偏析が大きくなり、粒界相中の成分の分布むらが大きく、強度特性および転がり寿命が低下した。
一方、比較例4のように原料粉末を分割せずに一度に混合した原料で形成した焼結体にHIP処理を実施しても、三点曲げ強度は高いが、粒界相中における成分の分布むらの低減効果が十分ではなく、転がり寿命が低下した。
また、金属窒化法で合成された原料粉末を使用してもα型窒化けい素の割合が低い(70%)窒化けい素原料粉末を使用した比較例5においては、粒界相中の成分の分布むらが大きくなるため、転がり寿命が低下することが判明した。
さらにイミド熱分解法で合成された窒化けい素粉末を使用した比較例6においては、気孔率,抗折強度,破壊靭性値,粒界相中の偏析凝縮部の最大径,および転がり寿命の全ての特性について良好であったが、加工性に難点があり、また高価な原料粉末であるため、製造コストが大幅に増加することが再確認できた。
また、アルミニウム成分を過量に添加した比較例7においては、強度特性および転がり寿命が低下した。
このように本実施例に係る窒化けい素焼結体において、特に助剤成分の偏析凝集部の最大径を20μm以下とした窒化けい素焼結体でベアリングボール等の耐摩耗部材を構成した場合には、窒化けい素が有する優れた摺動特性をさらに向上させることができ、ハードディスクドライブなどの電子機器に用いた場合に生じ易い不具合を大幅に低減することが可能となった。
以上の実施例においては本発明に係る窒化けい素焼結体を軸受けの転動体(ベアリングボール)に適用した場合を例にとって説明したが、本発明に係る窒化けい素焼結体は上記用途に限定されるものではなく、切削工具や圧延治具等の構成材として使用した場合にも優れた耐摩耗性,耐久性を発揮させることができる。ちなみに、実施例1に係る窒化けい素焼結体を用いて圧延用ロールを形成したところ、超硬材で形成した同一寸法の圧延用ロールと比較して、圧延痕や成形不良を生じるまでの耐用寿命を2.6〜3.1倍まで延伸することが可能であった。また、超硬材で形成した同一寸法の切削工具と比較して、切れ味の持続期間を2.1〜2.8倍まで延ばすことができ、優れた耐久性が確認された。

Claims (14)

  1. 焼結助剤成分として希土類元素を5質量%以下、Al元素を5質量%以下、Ti,Zr,Hf,W,Mo,Ta,NbおよびCrからなる群より選択される少なくとも1種の元素を5質量%以下含有し、気孔率が1%以下であることを特徴とする窒化けい素焼結体。
  2. 請求項1記載の窒化けい素焼結体において、酸素量が5質量%以下であることを特徴とする窒化けい素焼結体。
  3. 請求項1記載の窒化けい素焼結体において、前記窒化けい素焼結体を構成する窒化けい素結晶粒子の最大長さが40μm以下であることを特徴とする窒化けい素焼結体。
  4. 請求項1記載の窒化けい素焼結体において、前記窒化けい素焼結体の結晶組織における助剤成分の偏析凝集部の最大径が20μm以下であることを特徴とする窒化けい素焼結体。
  5. 請求項1記載の窒化けい素焼結体において、前記窒化けい素焼結体が不純物としてFeを10〜3500ppm含有するとともに、Caを10〜1000ppm含有していることを特徴とする窒化けい素焼結体。
  6. 請求項1記載の窒化けい素焼結体において、前記窒化けい素焼結体のビッカース硬度Hvが1300〜1500であることを特徴とする窒化けい素焼結体。
  7. 請求項1記載の窒化けい素焼結体において、前記窒化けい素焼結体の破壊靭性値が6MPa・m1/2以上であることを特徴とする窒化けい素焼結体。
  8. 請求項1記載の窒化けい素焼結体において、前記窒化けい素焼結体の抗折強度が600MPa以上であることを特徴とする窒化けい素焼結体。
  9. 請求項1記載の窒化けい素焼結体において、前記窒化けい素焼結体が切削工具であることを特徴とする窒化けい素焼結体。
  10. 請求項1記載の窒化けい素焼結体において、前記窒化けい素焼結体が軸受けの転動体であることを特徴とする窒化けい素焼結体。
  11. 請求項10記載の窒化けい素焼結体において、前記窒化けい素焼結体の圧砕強度が150N/mm以上であることを特徴とする窒化けい素焼結体。
  12. 請求項1記載の窒化けい素焼結体において、前記窒化けい素焼結体が圧延治具であることを特徴とする窒化けい素焼結体。
  13. 酸素を1.5質量%以下、α相型窒化けい素を80質量%以上含有し、平均粒径が1μm以下の窒化けい素粉末に、焼結助剤成分として希土類元素を5質量%以下、Al元素を5質量%以下、Ti,Zr,Hf,W,Mo,Ta,NbおよびCrからなる群より選択される少なくとも1種の元素を5質量%以下添加し、得られた原料混合体を複数に分割し、分割した各原料混合体をそれぞれ個別に混合した後に、一つの原料体として合体して、さらに混合し得られた原料粉末を成形して成形体を調製し、この成形体を非酸化性雰囲気中で焼結することを特徴とする窒化けい素焼結体の製造方法。
  14. 焼結後、非酸化性雰囲気中で前記窒化けい素焼結体に対し、圧力30MPa以上の熱間静水圧プレス(HIP)処理を実施することを特徴とする請求項13記載の窒化けい素焼結体の製造方法。
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