JP2006034211A - 酸性条件で膜融合を促進するペプチド誘導体 - Google Patents
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Abstract
【課題】 本発明は、エンドソーム内で膜融合を促進させるペプチド誘導体を提供するものである。
【解決手段】 融合ペプチドとコイルドコイルドメインと膜貫通ドメインからなるペプチド誘導体であって、融合ペプチドはトリプトファン残基であり、コイルドコイルドメインは中性(pH7.5、実線)でランダム構造、酸性(pH4.5、点線)でコイルドコイル構造をとり、膜貫通ドメインはステアリン酸を有するペプチド誘導体を用いることにより、上記課題の解決を図る。
【選択図】 図1
【解決手段】 融合ペプチドとコイルドコイルドメインと膜貫通ドメインからなるペプチド誘導体であって、融合ペプチドはトリプトファン残基であり、コイルドコイルドメインは中性(pH7.5、実線)でランダム構造、酸性(pH4.5、点線)でコイルドコイル構造をとり、膜貫通ドメインはステアリン酸を有するペプチド誘導体を用いることにより、上記課題の解決を図る。
【選択図】 図1
Description
本発明は、酸性条件で膜融合を促進するペプチド誘導体に関する。
血中に薬物が投与された場合、その薬物は細胞に到達すると、細胞膜に付着して、エンドサイトーシスや膜内への自然浸透で細胞質に入る。より効果的に薬物を細胞に導入するには細胞膜と相互作用する物質を薬物に修飾させるか、またはその物質で修飾されたカプセルの中に薬物に入れる方法がとられる。
この際、細胞膜と相互作用する物質としては、コレステロールなどの疎水性物質やポリリジンなどの塩基性の物質が用いられる。細胞内に送られた薬物はエンドソームに送られ自然浸透で細胞質に移行する。
さて、本願の発明者らは、疎水性部のアミノ酸を選択することで幾つかの新しいコイルドコイルペプチドを報告している(例えば、非特許文献1)。非特許文献1では、酸性条件下では三本鎖コイルドコイル構造、中性条件下ではランダム構造というpH依存的構造変化を有するペプチドが報告されている。
Kazuo Suzuki,Tomoko Yamada,Toshiki Tanaka "Role of the Buried Glutamate in the a−Helical Coiled Coil Domain of the Macrophage Scavenger Receptor" Biochemistry,38,1751−1756(1999)
Kazuo Suzuki,Tomoko Yamada,Toshiki Tanaka "Role of the Buried Glutamate in the a−Helical Coiled Coil Domain of the Macrophage Scavenger Receptor" Biochemistry,38,1751−1756(1999)
上述の通り、細胞内に薬物を導入する際には、細胞の外膜との相互作用にのみ注目されてきた。外膜と相互作用する化合物を用いることで薬物の細胞への取り込みに向上が見られるが、効果を出させるためには多量に薬物を使用する必要がある。
一方、エンドソームから細胞質への取り込みについては注目がされてこなかった。そこで、本発明ではエンドソームから細胞質への輸送も、薬物を効率良く細胞質に移行させるのに大事であると考えた。インフルエンザウイルスは細胞に感染すると効率良く自身のRNAを細胞内に注入する。これに関与しているのがヘマグルチニンと呼ばれるタンパク質である。ヘマグルチニンのアミノ末端部には融合ペプチドと呼ばれる疎水的部分がある。
しかし、pH7の血液中などの中性条件では融合ペプチドはタンパク質の構造内に覆われており、そのヘマグルチンは外部に露出していない。一方、ウイルスがエンドサイトーシスで細胞に入り、pH5のエンドソームに送られるとヘマグルチニンに構造変化が起こり、融合ペプチドが外に現れ、ウイルスと標的膜との融合が容易に起こり得る。これに似た例としてAIDSウイルスの膜融合の際にも起こっている。
この系を応用し、エンドソームに入ったときに膜融合を促進させることで薬物の細胞質内への投与を促進させるのに有用となる。外膜と相互作用する化合物と共に用いることで、薬物の細胞への移行を効果的に行なうことが期待できる。
上記課題は、特許請求の範囲の請求項1に記載の発明によれば、融合ペプチドとコイルドコイルドメインと膜貫通ドメインからなるペプチド誘導体であって、前記融合ペプチドは、疎水性ペプチドであり、前記コイルドコイルドメインは、中性でランダム構造となり、酸性でコイルドコイル構造となり、膜貫通ドメインは、C15〜C20の飽和若しくは不飽和脂肪酸、またはコレステロール誘導体であることを特徴とするペプチド誘導体を提供することによって達成できる。
このように構成することによって、酸性条件で膜融合を促進することができる。
上記課題は、特許請求の範囲の請求項2に記載の発明によれば、前記膜貫通ドメインは、ステアリン酸であることを特徴とする請求項1に記載のペプチド誘導体を提供することによって達成できる。
上記課題は、特許請求の範囲の請求項2に記載の発明によれば、前記膜貫通ドメインは、ステアリン酸であることを特徴とする請求項1に記載のペプチド誘導体を提供することによって達成できる。
このように構成することによって、膜貫通ドメインはより膜内に安定に存在することができる。
上記課題は、特許請求の範囲の請求項3に記載の発明によれば、前記疎水性ペプチドは、ロイシン、フェニルアラニン、または疎水性の膜融合ペプチドで修飾されていることを特徴とする請求項1に記載のペプチド誘導体を提供することによって達成できる。
上記課題は、特許請求の範囲の請求項3に記載の発明によれば、前記疎水性ペプチドは、ロイシン、フェニルアラニン、または疎水性の膜融合ペプチドで修飾されていることを特徴とする請求項1に記載のペプチド誘導体を提供することによって達成できる。
このように構成することによって、ロイシン、フェニルアラニンの疎水性の高い残基や疎水性の膜融合ペプチドをトリプトファンの先に修飾させて膜融合の効率を高めることができる。
上記課題は、特許請求の範囲の請求項4に記載の発明によれば、細胞と、予め遺伝子または薬剤が内包されているリポソームとを共存させた後に、請求項1に記載のペプチド誘導体を加えることを特徴とする細胞への遺伝子導入方法を提供することによって達成できる。
このように構成することによって、血中等中性条件では膜とは作用せず、エンドソーム内で膜融合を引き起こし、薬物または遺伝子を効果的に細胞内に導入することができる。
上記課題は、特許請求の範囲の請求項5に記載の発明によれば、細胞融合の対象となる2つの細胞を混合させ、請求項1に記載のペプチド誘導体を混合させることを特徴とする細胞融合法を提供することによって達成できる。
上記課題は、特許請求の範囲の請求項5に記載の発明によれば、細胞融合の対象となる2つの細胞を混合させ、請求項1に記載のペプチド誘導体を混合させることを特徴とする細胞融合法を提供することによって達成できる。
このように構成することによって、ハイブリドーマ作成の際の細胞融合促進剤として用いることができる。
本発明は、エンドソーム内で膜融合を促進させる新規ペプチド誘導体を提供するものである。かかるペプチドは血中等中性条件では膜とは作用せず、エンドソーム内で膜融合を引き起こし、薬物を効果的に細胞内に導入することができる。したがって、薬物の拡散を防ぎ、効果的に細胞内薬物の注入に利用できる。
インフルエンザウイルスの膜融合にかかわるヘマグルチニンタンパク質は、三量体を形成する巨大分子である。そのため全体を用いることは困難である。本発明は、インフルエンザウイルスの膜融合と類似の構造変化を起こす低分子化合物を提供するものである。
インフルエンザウイルスの膜融合にかかわる細胞外部分としてα−ヘリカルコイルドコイル構造と融合ペプチドが存在している。X線結晶構造解析の結果、α−ヘリカルコイルドコイル構造は中性では折れ曲がった構造で融合ペプチドをタンパク質の中に覆い、酸性条件下で伸びたコイルドコイル構造となり融合ペプチドを外に出す。外に出た融合ペプチドは容易に標的細胞に結合し膜融合を促進させる。従って、膜融合に関係するドメインは膜貫通ドメイン、コイルドコイルドメイン、融合ペプチドと考えられる。
膜貫通ドメインとして膜内に安定に存在できる脂溶性物質であるステアリン酸を使った。膜と相互作用するものであればステアリン酸以外の化合物を使うことも可能である。例えば、C15〜C20の飽和または不飽和脂肪酸を用いてもよい。
コイルドコイルドメインは、中性でランダム構造、酸性でコイルドコイル構造となるペプチドとした。
融合ペプチドとして膜と相互作用すると考えられているトリプトファン残基を用いた。さらに、トリプトファンよりも疎水性の高い残基、例えばロイシン、フェニルアラニンなどや疎水性の膜融合ペプチドをこのトリプトファン残基の先に修飾させて膜融合の効率を高めることができる。また、既存の融合ペプチドを用いることもできる。
融合ペプチドとして膜と相互作用すると考えられているトリプトファン残基を用いた。さらに、トリプトファンよりも疎水性の高い残基、例えばロイシン、フェニルアラニンなどや疎水性の膜融合ペプチドをこのトリプトファン残基の先に修飾させて膜融合の効率を高めることができる。また、既存の融合ペプチドを用いることもできる。
このように3つのドメインを繋ぎあわせたペプチドを考えた。この構造を合成するため、樹脂にリジンを結合させ、リジン残基の側鎖アミノ基に脂溶性のステアリン酸を結合させた。その後、ペプチドの伸長は通常のペプチドの固相合成法で行なった。この方法によりカルボキシ末端側に脂溶性のステアリン酸が結合したペプチドを収率、純度よく合成できる。
<長鎖アルキル基修飾ペプチドの合成>
以下に示すペプチド誘導体(1)を合成した。Rはステアリン酸を用いた例を示す。
以下に示すペプチド誘導体(1)を合成した。Rはステアリン酸を用いた例を示す。
次に、固相合成における第1アミノ酸となるFmoc−Lys(Mtt)(NOVA BIO CHEM社製)を、HBTU・HOBT(0.5M DMF溶液)(NOVA BIO CHEM社製)を縮合剤に用いて、上記で処理したリンクアミド樹脂と30分間縮合反応させた。
その後、リジン側鎖アミノ基の保護基であるMtt基を除去するため、この反応物に塩化メチレン中2%トリフルオロ酢酸を加えて30分間震盪させた。この操作を2回行った。
次に、ステアリン酸をリジンの側鎖アミノ基にHBTU・HOBT(0.5M DMF溶液)を用いて上記と同様な方法により縮合した。
引き続き、主鎖アミノ基の保護基であるFmoc基をピペリジンで処理して脱保護し、その後は通常のFmoc固相合成法に従って目的のペプチド誘導体(1)を合成した。
引き続き、主鎖アミノ基の保護基であるFmoc基をピペリジンで処理して脱保護し、その後は通常のFmoc固相合成法に従って目的のペプチド誘導体(1)を合成した。
ペプチド誘導体の樹脂からの切り出しは、固相合成を行った樹脂(100mg)をトリフルオロ酢酸−水(95:5)(2ml)中で1.5時間震盪反応させることによって行った。
反応液を冷ジエチルエーテルに加えてペプチド誘導体(1)を沈殿化させ、得られた沈澱をさらにジエチルエーテルで3回洗浄後、20%酢酸水に一旦溶かして高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による精製を行った。なお、HPLCカラムにはYMC−Pack ODS−A column(10mm i.d.× 250mm,5μm)を用い、溶離液としては0.1%トリフルオロ酢酸を含むアセトニトリル、水の混合溶媒を用いた。アセトニトリルの割合が30分で50%−60%となる濃度勾配条件で用い、流速は4ml/分とした。
この化合物の同定はマススペクトルで行った。マススペクトルはアプライドバイオシステムズ社MALDI−トフマスを用いた。
マススペクトル 実測値:4124.76 理論値:4121.87
マススペクトル 実測値:4124.76 理論値:4121.87
<ペプチド誘導体(1)のCDスペクトル>
NaCl(100mM)を含む10mMリン酸緩衝液(pH7又はpH4.5)にペプチド誘導体(1)を20μMの濃度で溶かして、CDスペクトルを調べた(図1)。このペプチド誘導体(1)のpH7でのCDスペクトル(図1の実線)は200nm以下に負のピークを示すことからランダム構造であったのに対し、pH4.5でのCDスペクトル(図1の点線)は202nmと208nmに負のピークを示すことからα-へリックスの構造を取っていることが分かった。
NaCl(100mM)を含む10mMリン酸緩衝液(pH7又はpH4.5)にペプチド誘導体(1)を20μMの濃度で溶かして、CDスペクトルを調べた(図1)。このペプチド誘導体(1)のpH7でのCDスペクトル(図1の実線)は200nm以下に負のピークを示すことからランダム構造であったのに対し、pH4.5でのCDスペクトル(図1の点線)は202nmと208nmに負のピークを示すことからα-へリックスの構造を取っていることが分かった。
従って、このペプチド誘導体(1)はpHの変化により構造変化を起こすことが確認された。CDスペクトルは、JASCO J−820 spectropolarimeterを用いて測定した。
<リポソームの作成>
EggPC(卵黄由来ホスファチジルエタノールアミン、平均分子量700)(14mg)をクロロホルム(1ml)に溶解し、これを50mlナス型フラスコに入れて減圧留去することにより薄膜状にする。ここへ脂質濃度が5mMになるように10mMリン酸緩衝液(pH7.5)を2.8ml加え、凍結させた後に融解させた。この凍結融解の操作を3回行った。
EggPC(卵黄由来ホスファチジルエタノールアミン、平均分子量700)(14mg)をクロロホルム(1ml)に溶解し、これを50mlナス型フラスコに入れて減圧留去することにより薄膜状にする。ここへ脂質濃度が5mMになるように10mMリン酸緩衝液(pH7.5)を2.8ml加え、凍結させた後に融解させた。この凍結融解の操作を3回行った。
この溶液をさらに10分間超音波処理することにより単層膜のリポソームを調製し、これを10mMリン酸衝液(pH7.5)を溶離液として用いてセファデックスG−50fine(1cm×30cm)にかけ、最初の画分をリポソーム画分として集めた。
<ペプチド誘導体(1)の脂質融合の実験(濁度の測定)>
実施例3で作成したリポソーム溶液(脂質濃度が約1mM)2mlを10mMリン酸緩衝液(pH7.5)で希釈し12mlとした。その半量(6ml)にペプチド誘導体(1)を約20μMになるように加え、ペプチド誘導体(1)が脂質膜中に導入されたリポソームの調製を行った。
実施例3で作成したリポソーム溶液(脂質濃度が約1mM)2mlを10mMリン酸緩衝液(pH7.5)で希釈し12mlとした。その半量(6ml)にペプチド誘導体(1)を約20μMになるように加え、ペプチド誘導体(1)が脂質膜中に導入されたリポソームの調製を行った。
この操作により全てのペプチド誘導体(1)が脂質に取り込まれたことを、SephadexG−50 fineにより確認した。その後、溶液を酸性にする場合は、0.1N塩酸を直接溶液に加えることにより行い、実際にpHを4.5に調整した。
次に、サンプルを室温で静置し、4,8,16,24時間後の500nmにおける吸光度の測定に基づいて、溶液の濁度評価を行った(図2)。膜融合が起こった場合には、リポソーム粒径の上昇に伴う有意な濁度上昇が期待できる。
図2に基づく評価の結果、ペプチド誘導体(1)を含まないリポソームにおいては、pH7でも4.5においても濁度はほとんど増加せず、膜融合は観測されなかった。一方で、ペプチド誘導体(1)を添加したリポソームの場合には、pH7.5では濁度の増加は観測されなかった(膜融合の促進はなかった)が、pH4.5では16時間後から顕著な増加が見られた。このことから今回設計を行ったペプチド誘導体(1)はpH7では膜融合の能力はないが、pH4.5の酸性条件で膜融合を促進することが分かった。
<ペプチド誘導体(1)の脂質融合の実験(蛍光のエネルギー移動の測定)>
EggPC(14mg)を用いてリポソームを作る際に、蛍光プローブとして、ローダミン(Rh)をEggPCの親水部アミノ基に修飾したものと、ニトロベンゾキサジオール(NBD)をEggPCの親水部アミノ基に修飾したものとを、それぞれ61μg、77μg添加し、上記と同様のリポソーム合成法により、蛍光プローブが膜表面に導入されたリポソームを作成した。
EggPC(14mg)を用いてリポソームを作る際に、蛍光プローブとして、ローダミン(Rh)をEggPCの親水部アミノ基に修飾したものと、ニトロベンゾキサジオール(NBD)をEggPCの親水部アミノ基に修飾したものとを、それぞれ61μg、77μg添加し、上記と同様のリポソーム合成法により、蛍光プローブが膜表面に導入されたリポソームを作成した。
RhとNBDは、相互間の距離がある一定の距離以下に近付くことにより蛍光エネルギー移動(FRET)が観測できることが知られており、例えばRhの励起波長である460nmの光を照射した際には、Rh由来の蛍光スペクトルと共に、NBD由来の蛍光スペクトルも観測される。
この各々の蛍光スペクトルの割合が、互いの距離に大きく依存することから、それぞれの蛍光スペクトル強度の比から、互いの平均距離が推定できる。そこで、もしこの蛍光プローブを導入したリポソームと、ペプチド誘導体(1)の導入されたリポソームが膜融合を起こした場合には、1つのリポソームを構成する脂質分子数の上昇から蛍光プローブ同士の平均距離が上昇(すなわちリポソーム膜内での蛍光プローブの濃度の減少)することから、Rh由来、NBD由来の蛍光スペクトルの比が変化する(Rh由来の蛍光スペクトルの割合の上昇)ことを期待した。
そこで、前記の方法により調製された、ペプチド誘導体(1)の導入されたリポソームを、蛍光プローブの導入されたリポソームと混合し、溶液のpHを変化させることによる蛍光強度比の評価を、FRETを利用して行った。FRETを利用して、4,16,24時間後に460nmで励起したときの、溶液の蛍光スペクトルを測定した(図3A〜図3D)。
図3Aは、溶液のpHをpH7.5とし、ペプチド誘導体(1)を用いていない場合の溶液の蛍光スペクトルを示す。図3Bは、溶液のpHをpH4.5とし、ペプチド誘導体(1)を用いていない場合の溶液の蛍光スペクトルを示す。図3Cは、溶液のpHをpH7.5とし、ペプチド誘導体(1)を用いた場合の溶液の蛍光スペクトルを示す。図3Dは、pH4.5とし、ペプチド誘導体(1)を用いた場合の溶液の蛍光スペクトルを示す。それでは、各グラフについてさらに詳述する。
図3A,図3Cでは、pH7.5における評価を行ったが、ペプチド誘導体(1)の有無にかかわらず蛍光スペクトルに顕著な変化は見られなかった。このことから中性条件では膜融合は起こらないことが分かった。
なお、膜融合を誘発することが知られているポリエチレングリコール(PEG)を用いた場合には、PEG添加によりNBD由来の590nmの蛍光強度が下がり、Rh由来の530nmの蛍光強度が増加することから膜融合が促進される。
一方で、図3Bにおいては、ペプチド誘導体(1)を含まないリポソームの溶液pHを4.5に調整した場合の結果である。24時間後には590nmの蛍光強度が下がったが、一方で530nmには変化が見られなかった。この結果、酸性条件下では、EggPCを用いたリポソームにおいては、ペプチド誘導体(1)が無くとも若干膜融合する性質があると考えられる。
図3Dにおいては、今回設計したペプチド誘導体(1)を含むリポソームのpH4.5における結果である。PEGを添加した場合と同様に、590nmの蛍光強度が下がり、一方で530nmの蛍光強度の増加が見られた。この結果は、今回のペプチド誘導体(1)が酸性条件において有為に膜融合を促進する性質があることを示している。
図4は、530nmと590nmの蛍光強度の比を時間に対してプロットしたものである。同図において、「○」は、pH7.5で、ペプチド誘導体(1)がない場合の蛍光強度の比を示す。「△」は、pH4.5で、ペプチド誘導体(1)がない場合の蛍光強度の比を示す。「□」は、pH7.5で、ペプチド誘導体(1)がある場合の蛍光強度の比を示す。pH4.5で、ペプチド誘導体(1)がある場合の蛍光強度の比を示す。
このとき、ペプチド誘導体(1)を導入したリポソームにおいてのみ、pH4.5の条件で顕著な増加が観測された(図4の「×」参照)。
このように、今回設計したペプチド誘導体(1)は、pH7では膜融合の能力はないが、pH4.5の酸性条件で膜融合を促進することが、蛍光エネルギー移動の測定からも確認された。
このように、今回設計したペプチド誘導体(1)は、pH7では膜融合の能力はないが、pH4.5の酸性条件で膜融合を促進することが、蛍光エネルギー移動の測定からも確認された。
以上より、本発明にかかるペプチド誘導体を用いることで、細胞への遺伝子導入の際に予め遺伝子を内包させたリポソームと細胞とを共存させ、その系にペプチド誘導体(1)を加えることで、遺伝子の細胞への導入が期待できる。
また、一般にモノクロナール抗体の作成には、目的抗原に対する抗体の提示されたB細胞とミエローマ細胞を融合させたハイブリドーマを作製し、この細胞に産出させる手法をとる。ここで、融合細胞の作成が必要となってくるが、この方法には、電気融合法、PEG法、センダイウイルス法が知られている。このうち、PEG(ポリエチレングリコール)法は安価で簡便な操作で行うことができ、実際にキットとしても販売されている。本発明にかかる膜融合ペプチド誘導体は、濁度変化、FRETの測定等によりPEGと同様な膜融合挙動を示すことが明らかであり、このことから、同様な応用が可能であることが期待できる。
Claims (5)
- 融合ペプチドとコイルドコイルドメインと膜貫通ドメインからなるペプチド誘導体であって、
前記融合ペプチドは、疎水性ペプチドであり、
前記コイルドコイルドメインは、中性でランダム構造となり、酸性でコイルドコイル構造となり、
膜貫通ドメインは、C15〜C20の飽和若しくは不飽和脂肪酸、またはコレステロール誘導体である
ことを特徴とするペプチド誘導体。 - 前記膜貫通ドメインは、ステアリン酸であることを特徴とする請求項1に記載のペプチド誘導体。
- 前記疎水性ペプチドは、ロイシン、フェニルアラニン、または疎水性の膜融合ペプチドで修飾されていることを特徴とする請求項1に記載のペプチド誘導体。
- 細胞と、予め遺伝子が内包されているリポソームとを共存させた後に、請求項1に記載のペプチド誘導体を加えることを特徴とする細胞への遺伝子導入方法。
- 細胞融合の対象となる2つの細胞を混合させ、請求項1に記載のペプチド誘導体を混合させることを特徴とする細胞融合法。
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WO2016013660A1 (ja) * | 2014-07-24 | 2016-01-28 | 凸版印刷株式会社 | 脂質膜構造体、脂質膜構造体固定化担体、及び胞体の融合方法 |
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