〔1.色修整装置の構成〕
本発明の一実施形態に係る色修整装置の構成について、図1を用いて説明する。本実施形態の色修整装置1は、図1に示すように、色空間変換部2と、色指定部3と、色修整部4と、ガマットマッピング部5と、色補正テーブル生成部(色補正テーブル生成手段)6とを備えている。
色空間変換部2は、スキャナやデジタルカメラ等の画像入力装置の入力特性(入力プロファイル)に基づいて、たとえばRGBデータからなる入力画像データをデバイスに依存しない色表色系に変換する。
そのような色表色系としては、たとえば、CIE(Commission International de l’Eclairage:国際照明委員会)により定められたL*a*b*表色系(L*:明度、a*・b*:色度)、L*u*v*表色系(L*:明度、u*・v*:色度)、IPT表色系(I:Intensity(強度、明るさの次元)、P:Protan(赤色−緑色の次元)、T:Tritan(黄色−青色次元))などを用いることができる。入力画像データをこのような表色系に変換する方法では、下記の入力プロファイルを用いる。
入力プロファイルとは、入力デバイス(スキャナ、デジカメなどの画像入力装置)の色再現領域特性を表したものであり、入力画像データをデバイスに依存しない表色系に変換するためのテーブルが含まれている。入力プロファイルは、たとえば下記の(1)〜(3)の手順を踏むことにより作成する。
(1)カラーチャート原稿における各色のパッチを測色器で測色し、L*a*b*値を求める。これにより、入力画像データから、L*a*b*表色系のデータが求められる。
(2)測色に用いたカラーチャート原稿をカラー画像入力装置から読み取り、カラーチャート原稿のRGB値を得る。
(3)測色したL*a*b*値と、カラー画像入力装置から読み取ったRGB値とを対応付けるため、ニューラルネットワークやマスキング演算係数決定法により、L*a*b*値とRGB値との間の係数を求め、カラー画像入力装置の入力特性を定義する。
色指定部3は、修整色設定部7と、目標色設定部8と、修整色領域設定部(修整色領域設定手段)9と、修整周辺領域設定部(修整周辺領域設定手段)10とを備えている。
修整色設定部7は、ユーザーあるいはサービスマンが、色修整したい色(修整前の色、修整色)を設定するためのものである。また、目標色設定部8は、色修整したい色を修整する際に、修整の目標となる色(目標色)をユーザー等が設定するためのものである。また、修整色領域設定部9は、修整したい色と同様の色修整が行われる色空間上の領域(修整色領域)を、ユーザー等が設定するためのものである。また、修整周辺領域設定部10は、色修整の影響を及ぼす色空間上の領域(修整周辺領域)を、ユーザー等が設定するためのものである。
色指定部3は、上記構成により、色修整部4が色修整のために用いるパラメーターとして、色修整したい色、目標色、修整したい色と同様の色修整を行う領域、および色修整の影響を及ぼす色空間上の領域を生成する。なお、色指定部3を構成する各ブロックは、タッチペン、タッチパネル、またはキーボード等のユーザー入力を受け付けるハードウェア資源により実現することができる。
色修整部4は、色指定部3における各ブロックで生成されたパラメーターに基づいて、デバイスに依存しない表色系、たとえばL*a*b*表色系における所定領域に対して、色修整を行う。色修整の方法に関しては、後に詳細を記載する。
ガマットマッピング部5は、入力デバイスの色再現領域を、出力デバイスの色再現特性(出力プロファイル)に基づいて、出力デバイスの色再現領域に整合させる処理(ガマットマッピング)を実行するためのものである。なお、ガマットマッピングの方法としては、たとえば、下記の(1)〜(4)に示す方法を用いることができる。
(1)absolute colorimetric法
absolute colorimetric法では、入力画像データにより示される色空間上の位置が、画像出力装置の色再現領域外にある場合、入力画像データの示す色空間上の位置と最も近い位置にある色再現領域の外縁部が、その入力画像データの示す色空間上の位置となるように、入力画像データを圧縮する。このabsolute colorimetric法では、目標色(入力された色)に最も近いCMY値を出力することができるため、正確な色再現を行うことが可能となる。
ただし、absolute colorimetric法では、色空間上の位置が色再現領域外となる入力画像データの全てが圧縮されてしまうため、色再現領域の外縁部付近の色で階調性が低下する場合がある。
(2)relative colorimetric法
上述のabsolute colorimetric法では、色再現の正確さは得られるものの、階調性の低下が生じるため、その階調性低下を抑制しようとするのがrelative colorimetric法である。すなわち、relative colorimetric法では、入力画像データにより示される色空間上の位置が色再現領域外となる場合、その入力画像データの示す位置が色再現領域の外縁部周辺の狭い領域に収まるように入力画像データを圧縮することで、階調性低下を抑制している。
したがって、relative colorimetric法では、階調の飽和が発生しやすい色再現領域の外縁部付近の色についても、階調性を維持した色再現を行うことが可能となる。
(3)perceptual法
perceptual法は、色相を維持して彩度圧縮を行う方法である。perceptual法では、広い色域を持つ印画紙写真のような原稿でも、階調を飽和させることなく色再現を行うことができる。
(4)saturation法
saturation法は、できるだけ彩度が維持されるように入力画像データの圧縮を行う方法である。
なお、ガマットマッピングは、色再現領域全体に対して行ってもよいし、色修整した部分のみに行ってもよい。
ここで、出力プロファイルについて説明する。出力プロファイルは、電子写真方式やインクジェット方式を用いた画像出力装置(出力デバイス)の色再現領域特性を表したものである。出力プロファイルには、デバイスに依存しない表色系を出力画像データ(たとえば、CMYK色からなる画像データ)に変換するためのテーブルが含まれている。
また、出力プロファイルは、たとえば以下の(1),(2)の手順を踏むことにより作成することができる。
(1)カラー画像出力装置で出力可能な色座標を示すカラー画像データ(CMYK色の画像データ)を、たとえば原稿に出力し、その原稿における色を測色器で測定する。これによって、画像データに対応するL*a*b*表色系のデータが得られる。
(2)測色したL*a*b*値と、上記カラー画像データとを対応付けるべく、ニューラルネットワークやマスキング演算係数決定法によりL*a*b*値とCMYK値との間の係数を求めることによって、カラー画像出力装置の出力特性が定義される。
色補正テーブル生成部6は、色修整部4で実行された色修整処理の結果に基づき、入力画像データと出力画像データとが対応付けられたルックアップテーブル、もしくは、ICC(International Color Consortium)プロファイルを生成するものである。入力画像データは、たとえばRGB色からなるデータであり、出力画像データは、たとえばCMY色やCMYK色からなるデータである。また、出力装置がディスプレイならば、出力画像データとしては、たとえばRGB色からなる画像データを用いることができる。
また、色補正テーブルは、特定の機器における色補正テーブルデータしか書き込まれていないものがある。一方、ICCプロファイルは、入出力機器固有の色特性を補正するカラーマネージメントシステム等の各社各様の規格を統一したものであり、モニターやプリンタなどの各機器の情報もタグとして書き込まれているものである。ICCプロファイルについても、広義の意味では、「色補正テーブル」の文言に含まれるものである。
〔2.色修整方法〕
本発明の一実施形態に係る色修整方法について以下に説明する。
先ず、ユーザーまたはサービスマンの指定により、以下のパラメーターが予め設定される。すなわち、ユーザー等の修整したい色が、図2に示すように、色空間上の点Aにより設定される。なお、点Aの設定は、修整色設定部7(図1)からのユーザー入力により行われる。
また、点Aにより示される色を修整する際に目標となる色(目標色)が、色空間上の点A’により設定される。なお、点A’の設定は、目標色設定部8(図1)からのユーザー入力により行われる。
さらに、点Aにより示される色と同様の色修整が行われる色空間上の領域が、色空間上の球体Sにより設定される。なお、球体Sの設定は、修整色領域設定部9(図1)からのユーザー入力により行われる。また、点Aにより示される色と同様の色修整が行われる領域は、必ずしも球体Sにより設定される必要はない。
ここで、球体Sは、点Aを中心とする半径rの球体である。なお、半径rは、色修整したい色を含めてどの範囲のものを最も色修整の対象にしたいかを設定するものである。たとえば単純に肌色といっても、色空間上である程度の大きさを有する領域に含まれる色は「肌色」と表現される。したがって、たとえば球体Sを設定することにより、ある程度の大きさを有する範囲を、色修整の対象とする必要がある。
半径rは、たとえば以下のように設定することができる。すなわち、色修整したい画像を表示するタッチパネル式のモニターにおいて、ペンなどで色修整したい色の領域を指定することで肌色の一部を抽出し、抽出された肌色の色座標の平均値を、修整したい色の座標、すなわち点Aの座標として設定してもよい。さらに、その抽出された領域における色座標のばらつきを表す標準偏差、半径rとして設定してもよい。なお、点A、点A’、および半径rは、予め定められているものであっても構わない。たとえば、CIEL*a*b*空間において、色差の値が2や3の場合、視覚的に等色と感じられることから、2や3という値を半径rにしてもよい。
さらに、色修整の影響を及ぼす色空間上の領域を、たとえば楕円体Eにより設定する。なお、楕円体Eの設定は、修整周辺領域設定部10(図1)からのユーザー入力により行われる。また、色修整の影響を及ぼす色空間上の領域は、必ずしも楕円体により設定される必要はない。色修整の影響を及ぼす空間上の領域は、点Aにより示される色と同様の色修整が行われる領域を含むように設定されればよい。
以下の説明では、色修整により球体Sが移動する方向(詳細は後述する)に関する、楕円体Eの中心と楕円体Eの端部との距離をaとする。また、色修整により球体Sが移動する方向に垂直な方向に関する、楕円体Eの中心と楕円体Eの端部との距離をbとする。なお、a=bであれば、楕円体Eは球体になる。また、点Aと点A’が指定されれば、その領域に応じて自動的に球体Sと楕円体Eが設定されるようにしてもよい。
このように、色修整の影響を及ぼす領域を楕円体として設定することにより、その領域を幾何学的に数式化し、容易なアルゴリズムで記述することが可能となる。また、色修整により球体Sが移動されることで影響が及ぼされる領域を、感覚的に容易に把握することができる。
なお、楕円体Eは、球体Sに含まれる色を修整することにより影響を受ける領域の許容範囲としても表現できる。
また、視覚的に色の階調性が損なわれないように、修整したい色の座標と目標色の座標との距離に応じて、a、bの値を決定する必要がある。このようにa、bの値を決定する方法について、図3を用いて説明する。
すなわち、色修整後の目標色である点A’を中心とする球体S’の表面と楕円体Eの境界との間の最短距離dと、修整前の色である点Aと目標色である点A’との間の距離Dとの比率d/Dが、視覚的に色の階調性が保たれるある一定値以上になればよい。比率d/Dが大きければ、色修整による色の変化が距離Dに対し急峻にならないため、階調性が保たれるためである。なお、色の階調性が保たれる一定値に関しては、種々の画像サンプルを用いて適切な値を定めればよい。
また、点Aと点A’を楕円体Eの焦点にすることによって、自動的に球体Sと楕円体Eの大きさを決めるようにしてもよい。
次に、本実施形態における色修整方法について、さらに具体的に説明する。先ず、球体S内の色は、点Aにより示される修整したい色と同様の色変換処理が行われる。この色変換処理は、3次元の色空間において行われるものであるが、説明の便宜上、2次元平面内の色変換処理に置き換えて図4を用いて説明する。
たとえば、点Aの座標がx=10、y=10で、点A’の座標がx=25、y=10であり、円Cの半径をr=6とする。なお、円Cは、球体Sを2次元平面に投影したものである。
この場合、修整したい色の変換量は、点A’から点Aを引いた差分として表現される。すなわち、この差分を変化量(Δx,Δy)として表現した場合、Δx=25−10=15、Δy=10−10=0である。
そして、円Cの中に含まれる色は、すべて同等の変化量が適用される。ゆえに、円C内に含まれる点B(x=15、y=8)は、各xy成分に対して、変化量Δx、Δyを加算することで、点B’(x=30、y=8)に変換されることになる。このように、円Cに含まれる色については、同様の変化量を適用することによって色修整処理が行われる。この色修整処理が、3次元の色空間にも拡張適用される。
つまり、実際に修整の対象となる色は、色空間上においてある程度の大きさを有する範囲に含まれるので、その色の範囲全体を移動させることで、本実施形態の色修整が行なわれる。すなわち、球体Sに含まれる色が修整の対象となり、その球体S全体を移動させることで、球体Sに含まれる色を正確にかつ確実に修整することが可能になる。これにより、色再現の精度を向上させることができる。
また、本実施形態の色修整方法によれば、入出力装置における色再現性のばらつきがあったとしても、より正確に目標色に色修整が行われる。つまり、実際に入出力装置等の色特性は、製品ごとやその装置自体の経年変化によって一定でないことが多い。しかし、本実施形態の色修整方法では、修整前の色から所定の色差を有する範囲(球体S)に含まれる色に対して同一の修整を施すので、製品のばらつきや経年変化により色再現性に変化が生じたとしても、適格な色修整を行うことができる。
また、図5(a)および図5(b)に示すように点Aを中心とする球体Sを、点A’を中心とする球体に移動した際に、楕円体E内の色空間は、図5(b)に示すように、球体Sが移動した方向に関しては圧縮され、球体が移動した方向と反対方向に関しては伸張される。
また、球体Sに近いほど修整度合い(楕円体内の点移動量)は大きく、球体Sから離れれば離れるほど修整度合いは連続的に小さくなる。また、色修整により影響が及ぼされる領域の境界、すなわち楕円体の境界およびその領域外では色修整されない。
このような色修整の前後において色空間が変化する状態について、説明の便宜上、球体Sおよび楕円体Eのそれぞれを2次元平面に投影して得られる円Cおよび楕円を用いて説明する。
つまり、図6(a)に示すように、色修整の対象となる領域が円Cとして設定され、色修整の影響を及ぼす領域が楕円により設定されているとする。この円Cを、点Aにより示される色の目標色を示す点A’を中心とする円に移動させる場合、図6(b)に示すように、円Cより右側の色空間は圧縮され、円Cより左側の色空間は伸張される。さらに、楕円の境界上の色は色修整されないので、色修整の前後においてその座標が固定されたままである。
このような色修整による色空間の圧縮/伸張状態は、楕円内に格子座標を想定することにより容易に理解することができる。すなわち、図6(a)に示すように、色修整の前においては、楕円内に格子座標が規則正しく設定される。
そして、色修整後においては、図6(b)に示すように、円Cの右側の格子は圧縮され、円Cの左側の格子は伸張された状態となる。
このような色修整処理を行うにあたっては、座標変換関数を用いて、楕円内にあるすべての点(色)を再計算し、色修整を行う。その座標変換関数の一例を以下に説明する。
点Aと点A’の線上の点に対して座標変換関数を用いて新たな点xを導出する場合において、線分AA’と円Cの交点をx0とすると、xとx0との距離Lを求める関数f(x)は以下のようになる。
f(x)=L=|x−x0|
また、線分AA’の延長線と楕円との交点をx1とし、線分AA’の距離をDとすると、移動量(修整量)は、距離Lに応じた関数g(L)により導出された重み係数wを距離Dに乗算することにより求められる。
関数g(L)としては、たとえば図7に示すように、距離Lが0のときに重み係数wを1に設定する一方、距離L1(=x1−x0)のときに重み係数wを0に設定する関数であることが望ましい。さらに、関数g(L)は、距離Lが0からL1の間にある場合は、重み係数wが単調減少する関数であることが望ましい。
このように関数g(L)を設定すれば、点xが円Cに近い程重み係数wが大きくなるので、移動量(色修整量)は距離Dに近づく。また、点xと円Cとの間における距離がL1(楕円の境界)になると重み係数wは0になるため色修整されない。最終的に、新たな点x’は以下のように求められる。
x’=x+D・W
=x+D・g(L)
=x+D・g(f(x))
そして、この2次元平面における色修整処理は、3次元空間に拡張して実行される。3次元に拡張する方法の一例としては、以下の方法が考えられる。
まず、図8に示すように、色修整の影響を及ぼす領域である楕円体Eを色空間から抽出し、その楕円体Eの中心が原点になるように、平行移動および2度の回転処理を楕円体に対して行う。そして、修整したい色(点A)から目標点(点A’)に向かう向きが常に同じになるようにする。
その結果、線分AA’を常にX軸上に位置するよう設定できるため、楕円体EをX−Y平面と平行な複数の平面で切断し、その各平面に対して、前述の2次元平面内での色修整方法を用いて、色修整を行う。これにより、楕円体E内の全点についての色修整が終了したら、前述の平行移動および2度の回転処理の逆処理を楕円体Eに対して行い、楕円体Eを元の位置に戻す。なお、2度の回転処理は1度の回転処理で済ませてもよく、平行移動と回転処理の順番は任意に選択可能である。
以上の方法により、2次元の色修整方法を容易に3次元に拡張することが可能となり、アルゴリズムの簡易化が図れ、処理の高速化が可能となる。
さらに、上述のような色修整処理を行うことにより、修整後の色が色空間内で連続的に変化するので、トーンギャップや色とびが生じないことになる。また、球体Sおよび楕円体Eを適切に設定すれば、画像において色修整したい部分のみ修整できるので、必要最小限に色が修整される。
また、ユーザー(またはサービスマン)の設定により、目標色や色修整の影響が及ぼされる領域が出力デバイスのガマット(色再現域)外である場合、色修整後のガマットマッピングのアルゴリズムに基づいて、出力デバイスで色再現可能な領域に変換される。これを行うことで、ユーザーが目標色をガマット外に設定しても、できるだけ目標色に近い色の再現ができるようになる。
また、色修整の対象とする領域、および色修整の影響を及ぼす領域については、図9に示すように、複数設定することも可能である。このように複数の領域を設定することには、以下の意義がある。
すなわち、自然画像において、肌色、空の色、および芝の緑色などは、ある色相にあるものの広範囲かつ不規則に分布している。したがって、色修整の影響を及ぼす領域を大きく設定しすぎると、色修整の必要のないところまで色修整の影響を及ぼしてしまう場合がある。その反面、色修整の影響を及ぼす領域を1箇所設定するだけでは、十分な色修整が行えない場合がある。
そこで、色修整の対象とする領域、および色修整の影響を及ぼす領域のそれぞれを複数設定し実行することで、上記の場合にでも色修整が可能になる。
なお、色修整を行う領域のそれぞれに対しては、上述した本実施形態の色修整方法に基づいて色修整される。また、複数の楕円体Eが重なる領域に関しては、それぞれの領域における色修整量の平均値、中間値、最多値などを用いて、色修整を行う。
たとえば、複数の領域A,B,Cにおいて、色修整の対象となる点aが重なっている場合、それぞれの領域における色修整量が10、5、2であれば、その平均値((10+5+2)/3=5.7)が点aの修整量とされる。
また、本実施形態の色修整方法においては、グレーバランスを保ちながら、所望の色修整を行うことも可能である。そのためには、色空間のL*軸からある一定の距離を有する領域については色修整を行わず、それ以外の領域はL*軸からの距離(彩度)に応じて色修整の度合いを変える必要がある。
色修整を行わない領域(グレー成分領域)は、たとえば図10(a)に示すように、L*軸を中心とする半径r2の円柱領域として設定できる。なお、r2の値は、種々の画像サンプルに基づいて適切な値を求めればよい。また、色修整を行わない領域においては、たとえば無彩色(グレースケール)を再現することができる。
色修整を行わない領域を図10(a)に示すように設定した場合、ある色修整する色の彩度がr2より高ければ高いほど、色修整量の大きさが大きく設定される。そのように色修整量の大きさを設定するためには、たとえば図10(b)に示すような修整量重み係数を導出するための関数を用いればよい。
この修整量重み係数を導出するための関数は、横軸に彩度が設定され、彩度に対応する修整量の重み係数が縦軸に設定されている関数である。具体的に説明すると、この関数は、図10(b)に示すように、彩度が0からr2の範囲にあれば、重み係数として0を出力し、彩度がr2より大きければ、重み係数が単調増加する関数である。さらに、図10(b)に示すように、修整量の重み係数を導出するための関数では、彩度が所定値以上になると、重み係数が定常的に1になるように設定されている。この関数により導出された修整量重み係数に色修整の修整量を乗算することで、最終的な修整量を求め、それを色修整前のL*a*b*値に加算することで色修整を行う。
このように関数を設定することにより、グレー軸(L*軸)付近(0≦x≦r2の範囲)は、重み係数が0であるため、色修整は行われないため、グレーバランスが保たれる。そして、入力値とr2との差が大きくなることにより、重み係数を単調増加させることで、本来色修整したい量を反映していくことができ、色修整の連続性を保つことが可能となる。そして、重み係数が定常的に1となる状態では、色修整したい量が完全に反映される。よって、上記のような関数を用いることにより、グレーバランスと色修整の連続性を保ちながら、色修整を行うことが可能となる。
たとえば、入力されたL*a*b*値の彩度がr2以下である場合、図10(b)の関数から修整量の重み係数が0として導出されるので、重み係数を乗算する前の色修整量がどのような値であるかに係わらず、最終的な修整量は0になり、色修整はされない。
すなわち、彩度がr2以下では、L*a*b*値は変更されないため、グレーバランスは保存されることになる。また、入力L*a*b*値の彩度がr2より大きい場合、たとえば、図10(b)において彩度がC2の場合、対応する修整量の重み付けは0.5であるため、重み係数を乗算する前に算出された色修整量が2であれば、最終的な色修整量は2×0.5で1になる。したがって、入力L*a*b*値に1を加算した値が、最終的に色修整された値となる。このようにして修整量に重み付けを行うことにより、グレーバランスを保ちながら、所望の色修整を行うことができる。
〔3.色修整方法の処理フロー〕
次に、本実施形態の色修整方法を実現するソフトウェアプログラムにより、リアルタイムで入力デバイスからの入力画像を出力デバイスの出力画像に変換する場合における処理フローを、図11のフローチャートに基づき説明する。
なお、この処理フローは、コンピュータシステムで行ってもよいし、出力デバイスの操作パネルからのユーザー入力に応じて行われてもかまわない。ここで、出力デバイスの操作パネルは、液晶ディスプレイ等の表示部、画像の表示モード等を設定する設定キー、およびテンキーなどにより構成されるものである。また、本実施形態の色修整方法を実現するソフトウェアプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納されて提供されてもよい。
先ず、本実施形態の色修整方法の処理フローでは、入力デバイスにより、入力画像データが読み込まれる(ステップ1、以下「ステップ」は単に「S」と記載する)。S1における入力画像データの読み込みは、たとえば入力原稿をRGB色の画像データとして読み込むことにより行われる。
その後、入力画像データの表色系から、デバイスに依存しない表色系(たとえば、L*a*b*表色系)に変換するためのテーブルが含まれた入力プロファイルが、色空間変換部2(図1参照)により読み込まれる(S2)。
さらに、S2で読み込まれた入力プロファイルを元に、色空間変換部2により、入力画像データがデバイスに依存しない表色系に変換される(S3)。デバイスに依存しない表色系としては、CIEL*a*b*表色系、L*u*v*表色系、IPT表色系などを用いることができる。
その後、色修整をしたい色が指定されているか否かが判断される(S4)。S4における判断は、たとえば、液晶ディスプレイ等のタッチパネル式のモニターに表示された画像について、色修整をしたい色をユーザーがタッチペンなど用いて指定しているか否かが、コンピュータの制御部により判断されることによって実現される。
S4において色指定がされていると判断された場合、後述するS5において目標色等が設定された後、S6において色修整が行われる。一方、S4において色指定がされていないと判断された場合、後述するS7の出力プロファイル読み込み処理、S8のガマットマッピング処理、S9の色空間変換処理が実行される。
S5の処理について説明する。S5においては、色修整に用いる各種パラメーター、すなわち、ユーザーが修整したい色(修整色)、修整色に対する目標色、修整色と同様の色修整が行われる色空間上の領域、および色修整の影響を及ぼす色空間上の領域等のパラメーターの設定が、修整色設定部7、目標色設定部8、修整色領域設定部9、および修整周辺領域設定部10のそれぞれを介したユーザー入力により行われる。
S5における設定を行う方法としては、以下の(a)〜(d)に示す方法があり、これらの方法のうちいずれか1つの方法、または、複数の方法を組み合わせて、S5の設定を行うことができる。
(a)デバイスに依存しない表色系での数値(たとえば、L*・a*・b*値)を、色修整に用いるパラメーターとして、キーボード、タッチパネル等の入力デバイスから入力する。
(b)入力画像をタッチパネル式のモニターに表示し、その画像の一部を色修整に用いるパラメーターとしてタッチペンなどで指定することで入力する。
(c)デバイスに依存しない表色系の空間をタッチパネル式のモニターに表示して、タッチペンなどで上記パラメーターを指定、もしくは、L*・a*・b*値をモニターに表示されたスライドバーで移動させる、または直接数値をキーボードから入力することにより、パラメーターを設定する。
(d)モニターに表示された明度、彩度、色相のパラメータバーをスライドさせる、または、数値を入力することにより、パラメーターを設定する。
なお、彩度C*、色相hは下記の式で表される。
C*=√(a*2+b*2) h=tan-1(b*/a*)
(a)〜(d)の方法のいずれを用いた場合にも、修整色として設定した色がモニターのウィンドウに表示され、ユーザーがそれを確認し、修整色として決定することにより、修整色が入力される。もしウィンドウに表示された色が修整したい色でないならば、修整色を再設定することが可能である。また、色修整したくない場合はキャンセルも可能である。
S5の後、色修整部4(図1参照)により、色修整処理が実行される(S6)。S6の色修整処理では、S5にて設定された各種パラメーターに基づき、デバイスに依存しない表色系において該当する領域に対して、色修整部4(図1参照)により色修整が行われる。S6における色修整処理が終了したら、再度S4の処理に戻る。
また、S4において色指定がされていないと判断された場合、出力プロファイルの読み込み処理が、ガマットマッピング部5(図1参照)により行われる(S7)。なお、出力プロファイルとは、上述したとおり、デバイスに依存しない表色系を出力画像データに変換するためのテーブルが含まれたものである。
S7における出力プロファイルの読み込み処理の後、ガマットマッピング処理が、ガマットマッピング部5(図1参照)により実行される(S8)。ガマットマッピング処理は、上述したように、デバイスに依存しない表色系、たとえば、L*a*b*表色系において、入力画像データが出力デバイスで再現できない領域にある場合に、出力プロファイルに基づいて入力画像データを出力デバイスの再現できる領域に圧縮する処理である。なお、ガマットマッピングには、上記したabsolute colorimetric法,relative colorimetric法,perceptual法,saturation法等を用いることができる。また、このガマットマッピングは、色再現領域全体に対して行ってもよいし、色修整した部分のみに行っても構わない。
S8の後、色空間変換処理が、図示しない制御部により実行される(S9)。S9の色変換処理では、S8で読み込まれた出力プロファイルを元に、デバイスに依存しない表色系を出力画像データ(RGB、CMY、CMYK)に変換する。なお、出力画像データがCMY表色系からなる場合は、墨生成が行われ、そのデータがCMYK表色系のデータに変換される。
〔4.色修整の具体例〕
次に、色修整を適用する分野の具体例について説明する。
(1)印刷業界における特色インキによる特定色の色再現
特色インキによって印刷業界で再現される色は、業者により異なる。特色インキの代表的なものには、大日本インキ化学工業のDIC(ディック、登録商標)、東洋インキ製造のTOYO(トーヨー、登録商標)、パントーン社のPANTONE(パントーン、登録商標)などがある。また、印刷業界では色見本帳、カラーガイド、カラーチップなどが発行されており、カラー番号において管理されている。ユーザーは、特色インキによる特定色と同じ色再現を得たい場合があるため、忠実な色再現における色修整が必要になる。
この場合、以下の(a)〜(e)の手順を踏むことにより、忠実な色再現を行うことができる。
(a)特色インキによる特定色のカラーチップをスキャナで読み込み、スキャナで読み込まれた画像を出力デバイスにて出力する。なお、このときの色補正テーブルは修整前のものが用いられている。また、出力デバイスによる画像出力の態様としては、印刷による画像出力、画像表示による出力等を挙げることができる。
(b)上記出力デバイスの出力結果と、特色インキによる特定色のカラーチップとを測色器で測色し、特色インキによる特定色のカラーチップの測色値を目標色、出力デバイスの出力結果から得られた測色値を修整前の色とする。
または、予めカラーチップの測色データをデータベースに格納しておき、印刷会社とカラー番号とを指定することにより特定色を指定し、測色データをデータベースから読み出すようにしてもよい。
(c)特色インキによる特定色のための色修整を行う際、色空間において色修整が行われる領域以外の領域において、視覚的に色の階調性が損なわれないように、修整前の色と目標色との間における修整量に応じて、楕円体E(図5等参照)の大きさを決定する。また、球体S(図5等参照)の半径は、たとえば視覚的に色の違い生じる色差である約2の大きさに設定する。
そして、修整色、目標色、楕円体E、球体S等の色修整に用いる各種パラメーターを色指定部3(図1参照)に入力する。楕円体Eの大きさを決定する方法としては、図3に示すように、たとえば、色修整後の目標色を中心とする球体S’の表面と、楕円体の境界間の最短距離(d)と修整前の色と目標色の移動距離(D)との比率(d/D)が視覚的に色の階調性が保つある一定値以上になるようにa、bの値を決める。
比率(d/D)が大きければ、色の変化が移動距離に対し急峻にならないため、階調性が保たれるためである。
(d)色修整部4において、色修整の対象となる色のみ色修整が行われ、色補正テーブル生成部6により修整された色補正テーブルが出力される。
(e)ROM等の記憶媒体に記憶された色補正テーブルを、修整後の色補正テーブルに書き換える。
(2)自然画像の好みの色再現における色修整の場合
自然画像に関しては、経験から生じるユーザーに好みの色があり、これを記憶色という。この場合は、ユーザーが所望する色を目標色として設定する。この場合の色修整は、以下の(a)〜(d)の手順を踏むことにより行われる。
(a)入力画像(入力デバイスによる取り込み画像)を色空間変換部2(図1参照)において、デバイスに依存しない色空間(たとえばL*a*b*表色系)に変換する。
(b)色指定部3において、入力画像から好みの色再現したい領域を指定し、デバイスに依存しない色空間における修整前の色を抽出する。修整前の色の抽出は、指定した領域における明度や色度の平均値、中間値、最多値などを算出することにより実現できる。
そして、ユーザー好みの色再現したい色を目標色として設定する。たとえば、ユーザーの主観評価により好みの肌色として数値化されている色を目標色に設定する。色修整の範囲に関しては、視覚的に色の階調性が損なわれないように、修整前の色と目標色との間における移動量に応じて、楕円体Eの大きさを決定すればよい。楕円体の大きさを決定する方法としては、上記と同様の方法を用いれば良い。
また、球体Sの大きさは、色修整する色が色空間においてある程度の広がりを有している。したがって、たとえば、色修整したい画像を表示するタッチパネル式のモニターにおいて、タッチペンなどで色修整したい色の領域を指定し、その指定された領域における明度や色度の標準偏差を、球体Sの半径とすればよい。そして、このように決定された色修整に用いる各種パラメーターを、色修整部4に入力する。
(c)色修整部4において、色修整の対象となる色のみ色修整が行われ、色補正テーブル生成部6により修整された色補正テーブルが出力される。
(d)ROM等の記憶媒体に記憶された色補正テーブルを、修整後の色補正テーブルに書き換える。
色補正テーブルとしては、たとえば、全ての入力画像データの組合せに対する出力画像データ(色補正データまたは色変換データ)を予め計算して格納しておく直接変換法を用いて作成されたものを用いることができる。または、選択された一部の入力画像データの組合せに対する予め計算されたテーブル値を色補正テーブルに格納し、色補正テーブルにテーブル値が格納されている入力画像データの近傍の入力画像データについては、色補正テーブルに格納されているテーブル値を用いて補間演算により出力画像データを算出する構成であってもよい。
また、色補正方法の形態としては、RGB表色系の画像データをR’G’B’表色系の画像データに変換する形態(ディスプレイの場合)、RGB表色系の画像データをCMYやCMYK表色系の画像データに変換する形態を挙げることができる。なお、色補正テーブルは、デジタル複写機やプリンタに好適に用いられるものである。
〔5.画像形成装置への適用例〕
次に、本実施形態の色修整装置1を適用可能な画像形成装置の一例であるデジタルカラー複写機の構成について、図12を用いて説明する。
図12に示すように、デジタルカラー複写機(画像形成装置)11は、カラー画像入力装置12と、カラー画像処理装置13と、カラー画像出力装置14と、操作パネル15とを備えている。
カラー画像入力装置12は、たとえばCCD(Charge Coupled Device )を備えたスキャナ部より構成され、原稿からの反射光像を、RGB(R:赤・G:緑・B:青)のアナログ信号としてCCDにて読み取って、カラー画像処理装置に入力するものである。
カラー画像処理装置13は、A/D変換部16、シェーディング補正部17、入力階調補正部18、領域分離処理部19、色補正部20、黒生成下色除去部21、空間フィルタ処理部22、出力階調補正部23、および階調再現処理部24とから構成されている。これらのカラー画像入力装置12を構成する各ブロックの機能については後述する。
カラー画像出力装置14は、画像データを記録媒体(たとえば紙等)上に出力するもので、たとえば、電子写真方式やインクジェット方式を用いた出力装置等であるが、特にこれらの出力装置に限定されるものではない。
操作パネル15は、デジタル複写機の動作モードを設定する設定ボタンやテンキー、液晶ディスプレイなどの表示部より構成されるものである。
次に、カラー画像処理装置13を構成する各ブロックの機能について説明する。
A/D変換部16は、RGBのアナログ信号をデジタル信号に変換するもので、シェーディング補正部17は、A/D変換部16より送られてきたデジタルのRGB信号に対して、カラー画像入力装置の照明系、結像系、撮像系で生じる各種の歪みを取り除く処理を施すものである。
入力階調補正部18は、シェーディング補正部17にて各種の歪みが取り除かれたRGB信号(RGBの反射率信号)に対して、カラーバランスを整えると同時に、濃度信号など、カラー画像処理装置に採用されている画像処理システムの扱い易い信号に変換する処理を施すものである。
領域分離処理部19は、RGB信号より、入力画像中の各画素を、文字領域、網点領域、および写真領域のいずれかに分離するものである。領域分離処理部19は、分離結果に基づき、画素がどの領域に属しているかを示す領域識別信号を、黒生成下色除去部21、空間フィルタ処理部22、および階調再現処理部24へと出力すると共に、入力階調補正部18より出力された入力信号をそのまま後段の色補正部20に出力する。
色補正部20は、色再現の忠実化実現のために、不要吸収成分を含むCMY(C:シアン・M:マゼンタ・Y:イエロー)色材の分光特性に基づいた色濁りを取り除く処理を行うものである。そして、色補正部20においては、上述した色修整装置1による色修整方法により作成された色補正テーブルを用いる色補正を実行することが可能である。これにより、色再現の精度を向上させることができる。
黒生成下色除去部21は、色補正後のCMYの3色信号から黒(K)信号を生成する黒生成を行うものであって、CMYの3色信号はCMYKの4色信号に変換される。
黒生成処理の一例として、スケルトンブラックによる黒生成を行う方法がある。この方法では、スケルトンカーブの入出力特性をy=f(x)、入力されるデータをC,M,Y,出力されるデータをC',M',Y',K'、UCR(Under Color Removal)率をα(0<α<1)とすると、黒生成下色除去処理は以下の式1で表わされる。
K'=f{min(C,M,Y)}
C'=C−αK'
M'=M−αK'
Y'=Y−αK'
空間フィルタ処理部22は、黒生成下色除去部21より入力されるCMYK信号の画像データに対して、領域識別信号を基にデジタルフィルタによる空間フィルタ処理を行い、空間周波数特性を補正することによって出力画像のぼやけや粒状性劣化を防ぐように処理するものである。なお、階調再現処理部24も、空間フィルタ処理部22と同様に、CMYK信号の画像データに対して、領域識別信号を基に所定の処理を施すものである。
たとえば、領域分離処理部19にて文字に分離された領域は、特に黒文字あるいは色文字の再現性を高めるために、空間フィルタ処理部22による空間フィルタ処理における鮮鋭強調処理で高周波数の強調量が大きくされる。同時に、階調再現処理部24においては、高域周波数の再現に適した高解像度のスクリーンでの二値化または多値化処理が選択される。
また、領域分離処理部19にて網点に分離された領域に関しては、空間フィルタ処理部22において、入力網点成分を除去するためのローパス・フィルタ処理が施される。そして、出力階調補正部23では、濃度信号などの信号をカラー画像出力装置の特性値である網点面積率に変換する出力階調補正処理を行った後、階調再現処理部24で、最終的に画像を画素に分離してそれぞれの階調を再現できるように処理する階調再現処理(中間調生成)が施される。領域分離処理部19にて写真に分離された領域に関しては、階調再現性を重視したスクリーンでの二値化または多値化処理が行われる。
〔6.プリンタドライバへの適用例〕
本実施形態の色修整方法は、ソフトウェア(アプリケーションプログラム)として実現してもかまわない。この場合、色修整処理を実現するソフトウェアを組み込んだプリンタドライバを、以下に説明するようにコンピュータに設けることができる。
図13に示すように、コンピュータ30は、プリンタドライバ31、通信ポートドライバ32、および通信ポート33が組み込まれている。また、プリンタドライバ31は、色補正部34、階調再現処理部35、およびプリンタ言語翻訳部36を有している。また、コンピュータ30は、プリンタ(画像出力装置)37と接続されており、プリンタ37は、コンピュータ30から出力された画像データに応じて画像出力するようになっている。なお、プリンタ37は、プリンタ機能の他に、コピー機能およびファックス機能を有するデジタル複合機であってもよい。
コンピュータ30において各種のアプリケーションプログラムを実行することにより生成された画像データは、色補正部34および階調再現処理部35のそれぞれで、上述の色補正部20および階調再現処理部24と同様の処理がなされる。なお、この場合、色補正部34にて黒生成/下色除去処理を実行するようにしてもよい。
すなわち、色補正部34においては、上述した色修整方法により作成された色補正テーブルを用いる色補正を実行することが可能である。これにより、色再現の精度を向上させることができる。
上記処理がなされた画像データは、プリンタ言語翻訳部36にてプリンタ言語に変換され、通信ポートドライバ32、および通信ポート33(たとえばRS232C・LAN等)を介してプリンタに入力される。
〔7.ソフトウェア・コンピュータ読み取り可能な記録媒体への適用〕
本実子形態の色修整方法は、コンピュータにて実行されるプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体に、プログラムとして記録することもできる。この結果、本実施形態の色修整方法を行うプログラムを記録した記録媒体を持ち運び自在に提供することができる。
記録媒体としては、マイクロコンピュータで処理が行われるために図示しないメモリ、たとえばROMのようなプログラムメディアであってもよく、図示しない外部記憶装置としてのプログラム読取装置が設けられ、そこに記録媒体を挿入することで読み取り可能なプログラムメディアであってもよい。
いずれの場合においても、格納されているプログラムはマイクロプロセッサがアクセスして実行させる構成であってもよいし、プログラムを読み出し、読み出されたプログラムは、マイクロコンピュータの図示されていないプログラム記憶エリアにダウンロードされて、そのプログラムが実行される方式であってもよい。この場合、ダウンロード用のプログラムは予め本体装置に格納されているものとする。
ここで、上記プログラムメディアは、本体と分離可能に構成される記録媒体であり、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フロッピー(登録商標)ディスクやハードディスク等の磁気ディスク並びにCD−ROM/MO/MD/DVD等の光ディスクのディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、フラッシュROM等による半導体メモリを含めた固定的にプログラムを担持する媒体であってもよい。
また、この場合、インターネットを含む通信ネットワークを接続可能なシステム構成であることから、通信ネットワークからプログラムをダウンロードするように流動的にプログラムを担持する媒体であってもよい。なお、このように通信ネットワークからプログラムをダウンロードする場合には、そのダウンロード用のプログラムは予め本体装置に格納しておくか、あるいは別の記録媒体からインストールされるものであってもよい。
上記記録媒体は、デジタルカラー画像形成装置やコンピュータシステムに備えられるプログラム読み取り装置により読み取られることで上述した色修整方法が実行される。
なお、上記コンピュータシステムは、フラットベッドスキャナ・フィルムスキャナ・デジタルカメラなどの画像入力装置、所定のプログラムがロードされることにより上記画像処理方法など様々な処理が行われるコンピュータ、コンピュータの処理結果を表示するCRTディスクプレイ・液晶ディスプレイなどの画像表示装置およびコンピュータの処理結果を紙に出力するプリンタより構成される。さらには、ネットワークを介してサーバーなどに接続するための通信手段としてのネットワークカードやモデムなどが備えられてもよい。
このように、本実施形態の色修整装置1は、3つの色成分よりなるRGB表色系の画像データをCMY表色系の画像データに変換するための色補正テーブルを生成するものであって、色修整の対象とする修整色と同じ色修整が行われる色空間内の領域を修整色領域として設定する修整色領域設定部9と、色修整の影響が及ぼされる色空間内の領域を修整周辺領域として設定する修整周辺領域設定部10と、上記修整色領域を上記修整周辺領域内で移動させて得られる修整周辺領域内の色を、色修整後の色に設定して、上記色補正テーブルを生成する色補正テーブル生成部6とを備えているものである。
上記構成によれば、修整色を1つ設定すれば、その修整色と同様の色修整が行われる修整色領域が修整色領域設定部9により設定される。そして、色補正テーブル生成部6においては、その修整色領域を移動させて得られる修整周辺領域内の色を修整後の色に設定するので、色空間内である程度の広がりを有する範囲に対して色修整を実行することができる。これにより、製品毎のバラツキや装置自体の経年変化による色再現性の変化を、上記修整色領域内に吸収して色修整を行うことができるので、色再現の精度を向上させることができる。
なお、色空間内において修整色領域として設定する領域にある程度の制限を設けないと、画像全体の色合いが色修整の影響を受けて変化する場合がある。そこで、上記構成では、修整周辺領域設定部10により設定された修整周辺領域内の色に限定して色修整が行われるよう、色補正テーブル生成部6により色補正テーブルが生成される。したがって、修整周辺領域外の色に関しては色修整により影響されないので、画像全体の色合いが色修整の影響を受けて変化してしまうことも防止できる。
さらに、本実施形態の色修整装置1は、修整色領域設定部9が、修整色領域を、修整色を示す色座標を中心とした球体Sとして設定するものである。この構成によれば、修整色領域を球体Sとして設定するので、修整色領域を容易なアルゴリズムで記述することが可能となる。また、球体は人間の感覚でも把握しやすい領域であるので、修整色領域を、感覚的に容易に把握することが可能となる。
さらに、本実施形態の色修整装置1は、修整周辺領域設定部10が、修整周辺領域を、修整色を示す色座標と、その修整色を色修整する際の目標とする目標色を示す色座標とを焦点とする楕円体Eとして設定するものである。
上記構成によれば、修整色を示す色座標からの距離(色差A)と、目標色を示す色座標からの距離(色差B)との和が所定値となる色座標の軌跡、すなわち楕円体により、修整周辺領域が画定される。この色差Aと色差Bとの和を、視覚的に階調性が保たれる所定値とすれば、修整周辺領域は、修整前後の色差が人間の視覚に影響を与えない領域として設定される。
したがって、上記構成によれば、修整前後の色差が人間の視覚に影響を与えない領域内で色修整が行われるので、人間の視覚に対応した色修整が可能となる。
さらに、本実施形態の色修整装置1は、色補正テーブル生成部6が、修整周辺領域の境界となる色については色修整されず、修整周辺領域内の色空間が、上記修整色領域を移動させる方向に関しては圧縮され、上記修整色領域を移動させる方向の反対方向に関しては伸張されるように、上記色補正テーブルを生成するものである。
上記構成によれば、修整周辺領域内の色空間が、修整色領域の移動方向に対応して圧縮/伸張されるので、色修整後の色をその色空間内で連続的に変化する色として設定できる。これにより、色修整された後の画像において、トーンギャップや色とびが発生することを防止できる。
さらに、本実施形態の色修整装置1は、色補正テーブル生成部6が、上記修整周辺領域内にグレー成分が含まれる場合、グレー成分を示す領域として色空間内に予め定められるグレー成分領域内の色については色修整されず、上記グレー成分領域外の色については、その色を示す座標と上記グレー成分領域との距離に応じて、色修整が行われるように、上記色補正テーブルを生成するものである。この構成によれば、グレー成分領域内の色に対しては色修整を行わないので、色修整の前後においてグレーバランスを保つことができる。
なお、グレー成分領域内の色に対して色修整を行わないと、グレー成分領域内の色と、グレー成分領域外の色との間における色差に関して、色修整の前後で連続性が保たれなくなり、色修整後の画像の色合いが崩れる場合がある。
そこで、色補正テーブル生成部6は、グレー成分領域との距離が大きくなるのに応じて、色修整量が大きくなるように設定する。これにより、色修整の前後においてグレー成分領域内の色とグレー成分領域外の色との間における色差の連続性を維持し、画像の色合いが色修整の前後で極端に変化しないようにすることができる。
また、本実施形態のデジタルカラー複写機11は、上記構成の色修整装置1を備えているものである。この構成によれば、色修整精度を向上させることができるので、品質の良い画像を出力することができる。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。