JP2006029965A - Nmr装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】NMR測定時に前置増幅器内蔵送受信切換部の動作モードが切り換わっても、前置増幅器内蔵送受信切換部の特性がほとんど変化しないNMR装置を提供する。
【解決手段】NMR検出部に高周波を送信するとともに、NMR検出部で検出したNMR信号を受信して前置増幅器で増幅するように構成された前置増幅器内蔵送受信切換部の近傍にヒータを配置し、該前置増幅器内蔵送受信切換部を低温に冷却しながら該ヒータで加熱し、該前置増幅器内蔵送受信切換部の温度をほぼ一定の低温に保つことにより、該前置増幅器内蔵送受信切換部のNFを改善するようにしたNMR装置において、前置増幅器内蔵送受信切換部の動作モードが切り換わるタイミングで、前置増幅器内蔵送受信切換部を加熱するヒータの電力を制御するようにした。
【選択図】 図5

Description

本発明は、NMR装置に関し、特に、検出部を低温ヘリウムガスで極低温に冷却することによって、NMR信号の検出感度を高めるようにしたNMR装置に関する。
NMR装置は、試料に強力な静磁場を印加して、試料中の核スピンを持った原子核の磁気モーメントに静磁場方向を軸とする歳差運動を惹起させた上で、静磁場方向に直交する向きの高周波磁場を送信・印加して、原子核の磁気モーメントの歳差運動を励起し、その後、原子核の磁気モーメントの歳差運動が励起状態から基底状態に戻る際に放出されるNMR信号を、試料に固有な周波数を持った高周波磁界として受信・観測する装置である。
NMR信号は、通常、きわめて微弱であるため、その検出感度を高めるため、検出部が組み込まれたNMRプローブに、低温ガスを循環させる配管を設け、検出部を極低温に冷却することによって、NMR装置の熱雑音を減らし、NMR装置を高感度化することが行なわれている(特許文献1〜3)。
特開平10−307175号公報 特開平10−332801号公報 特開2001−153938号公報 従来のNMRプローブと、静磁場を発生する超伝導磁石との位置関係を、図1に示す。図中、Aは超伝導磁石である。超伝導磁石Aの内部には、超伝導線により、主コイルBが巻回されている。主コイルBは、通常、液体ヘリウム等を蓄えることができる図示しない断熱容器中に置かれ、極低温に冷却されている。核磁気共鳴プローブCは、このような磁石の外側に配置される鍔状のベース部と、磁石の内側に挿入される筒状部とで構成され、筒状部は、通常、この超伝導磁石Aの中心軸に沿って貫通された筒状の穴Dの内部に向けて、下側の開口部から上方向に向けて挿入される。
次に、従来のNMRプローブの構造を図2に示す。この例は、冷却プローブと呼ばれる、低温プローブの場合を示している。図中、8は、プローブ容器である。プローブ容器8は、冷凍機14と、トランスファーライン9で接続されている。それぞれは、外部との断熱のため、内部を真空排気されている。プローブ容器8の内部には、検出コイルおよび同調整合回路から成る検出部1が置かれている。検出部1は、熱交換器2と熱接触されており、冷却可能な構成となっている。検出部1の温度制御を行なうため、検出部1の近傍には、ヒータ100が設けられている。
検出部1で検出された核磁気共鳴の検出信号は、ケーブル6で前置増幅器内蔵送受信切換部3に入力され、増幅される。増幅された信号(ヘッドアンプ出力)は、ケーブル7により、図示しない分光器に送られる。前置増幅器内蔵送受信切換部3は、熱交換器4と熱接触されており、冷却可能な構成となっている。前置増幅器内蔵送受信切換部3の温度制御を行なうため、前置増幅器内蔵送受信切換部3の近傍には、ヒータ5が設けられている。
検出部1には、プローブ容器8の外部から試料を入れる構造があるが、冷却方式の説明には必要ないので、図示していない。
冷凍機14には、第1冷却ステージ20、第2冷却ステージ22を持つ、例えば、ギフォード−マクマホン(GM)方式などの冷凍機本体19が取り付けられている。第1冷却ステージ20と第2冷却ステージ22には、それぞれ熱交換器21、熱交換器23が設けられている。また、配管15と配管16の途中には、熱交換器24、熱交換器25が設けられている。また、冷凍機本体19には、作業ガス供給用の配管17、配管18が接続されている。また、トランスファーライン9の内部には、配管10、配管11、配管12、配管13があり、それぞれ熱交換器2、熱交換器4に接続されている。
次に、動作を説明する。図示されていない外部のコンプレッサーから、配管17、配管18を介して、作業ガス(ヘリウムガス)が供給されて、冷凍機本体19が作動する。それとは別に、配管16から冷媒のヘリウムガスが供給されて、熱交換器24を通過して、第1冷却ステージ20の熱交換器21で冷却される。更に、熱交換器25を通過して、第2冷却ステージ22の熱交換器23で、ヘリウムガスは、一層冷却される。このときのガス温度は、10Kである。
冷却されたヘリウムガスは、トランスファーライン9内の配管10で熱交換器2に供給されて、検出部1を冷却する。熱交換器2に入る直前のガス温度は、15K、熱交換器2を出た直後のガス温度は、23Kである。この温度上昇は、検出部1の熱を受け取ったためであると同時に、検出部1の温度制御のため、ヒータ100が作動して、ヒータ100により、熱せられたためでもある。
検出部1に収められた検出コイルおよび同調整合回路が冷却されることにより、Q値の向上と熱雑音の低減が起こり、感度が向上する。ヘリウムガスは、配管11を経由して、冷凍機14に戻り、熱交換器25で往路のヘリウムガスを予冷し、ガス温度が40Kに上昇させられた後、配管12により、熱交換器4に供給されて、前置増幅器内蔵送受信切換部3を冷却して、前置増幅器内蔵送受信切換部3のNF(noise figure)を向上させる。
これにより、検出部1からの検出信号を、ケーブル7経由で、S/Nを劣化させることなく、図示しない分光器に伝えることができる。
前置増幅器内蔵送受信切換部3は、ヒータ5で、適度な温度に保たれる。熱交換器4に入る直前のガス温度は、40K、熱交換器4を出た直後のガス温度は、90Kである。この温度上昇は、前置増幅器内蔵送受信切換部3の熱を受け取ったためであると同時に、前置増幅器内蔵送受信切換部3の温度制御のため、ヒータ5が作動して、ヒータ5により、熱せられたためでもある。
ヘリウムガスは、トランスファーライン9内の配管13で冷凍機14に戻り、熱交換器24で往路のヘリウムガスを予冷した後、配管15を通って、外部の図示しないコンプレッサーに戻り、循環される。
ところで、従来の低温冷却型NMRプローブには、1つの問題点があった。それは、NMR装置においては、NMR測定時、前置増幅器内蔵送受信切換部の動作モードによって、前置増幅器内蔵送受信切換部の消費電力が異なるため、前置増幅器内蔵送受信切換部自身の温度が、動作モード毎に変動してしまうことであった。
図3は、NMRのRFパルスシークエンスと、前置増幅器内蔵送受信切換部の動作モードとの関係を、概念的に表わしたものである。図中26は、試料を励起する1H核観測用RFパルス、27は、1H核観測用RFパルス印加後、試料から放出されるFIDである。通常のNMR測定では、この26と27を交互に繰り返すことにより、NMRスペクトルの取り込みが行なわれる。
このとき、前置増幅器内蔵送受信切換部は、1H核観測用RFパルス26が試料に印加されるタイミングで送信(transmit)モードになり、その後、試料からFIDが放出されるタイミングで受信(receive)モードに切り換わる。
図4は、前置増幅器内蔵送受信切換部の動作概念図である。前置増幅器内蔵送受信切換部28は、送信モードの時には、分光計の図示しないパワーアンプから供給されたパルス信号を、PAポート29からデュプレクサ30経由で、PROBEポート31へ導いて、1H核観測用RFパルスを図示しないプローブ側へ伝達する。
一方、前置増幅器内蔵送受信切換部28は、受信モードの時には、図示しないプローブ検出部が検出したNMR信号を、PROBEポート31より受け取り、デュプレクサ30経由で、前置増幅器内蔵送受信切換部28に内蔵された、第1の前置増幅器(1stアンプ)32と第2の前置増幅器(2ndアンプ)33で増幅した後、HAポート34から分光計へ伝達する。
このとき、実は、回路設計上の理由から、前置増幅器内蔵送受信切換部の動作モード毎の発熱量には、それぞれ差がある。通常、前置増幅器内蔵送受信切換部の発熱量は、送信モード>受信モードなので、前置増幅器内蔵送受信切換部の動作モードが切り換わる毎に、熱の変化によって回路の特性が変化し、精密な測定を行なう際に、悪影響を及ぼしかねない。
本発明の目的は、上述した点に鑑み、NMR測定時に前置増幅器内蔵送受信切換部の動作モードが切り換わっても、前置増幅器内蔵送受信切換部の特性がほとんど変化しないNMR装置を提供することにある。
この目的を達成するため、本発明にかかるNMR装置は、
NMR検出部に高周波を送信するとともに、NMR検出部で検出したNMR信号を受信して前置増幅器で増幅するように構成された前置増幅器内蔵送受信切換部の近傍にヒータを配置し、該前置増幅器内蔵送受信切換部を低温に冷却しながら該ヒータで加熱し、該前置増幅器内蔵送受信切換部の温度をほぼ一定の低温に保つことにより、該前置増幅器内蔵送受信切換部のNFを改善するようにしたNMR装置において、
前置増幅器内蔵送受信切換部の動作モードが切り換わるタイミングで、前置増幅器内蔵送受信切換部を加熱するヒータの電力を制御するようにしたことを特徴としている。
また、前記前置増幅器内蔵送受信切換部の動作モードは、送信モードと受信モードであって、送信モードの時のヒータ電力よりも、受信モードの時のヒータ電力の方が大きくなるように制御するようにしたことを特徴としている。
本発明のNMR装置によれば、
NMR検出部に高周波を送信するとともに、NMR検出部で検出したNMR信号を受信して前置増幅器で増幅するように構成された前置増幅器内蔵送受信切換部の近傍にヒータを配置し、該前置増幅器内蔵送受信切換部を低温に冷却しながら該ヒータで加熱し、該前置増幅器内蔵送受信切換部の温度をほぼ一定の低温に保つことにより、該前置増幅器内蔵送受信切換部のNFを改善するようにしたNMR装置において、
前置増幅器内蔵送受信切換部の動作モードが切り換わるタイミングで、前置増幅器内蔵送受信切換部を加熱するヒータの電力を制御するようにしたので、NMR測定時に前置増幅器内蔵送受信切換部の動作モードが切り換わっても、前置増幅器内蔵送受信切換部の特性がほとんど変化しないNMR装置を提供することが可能となる。
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
図5は、本発明にかかるNMR装置の一実施例である。図中、8は、プローブ容器である。プローブ容器8は、図示しない冷凍機と、トランスファーライン9で接続されている。プローブ容器8とトランスファーライン9は、外部との断熱のため、内部を真空排気されている。トランスファーライン9の内側には、低温のヘリウムガスを流通させる配管10、11が設けられている。
プローブ容器8の内部には、検出コイルおよび同調整合回路から成る検出部1が置かれている。検出部1は、熱交換器2と熱接触されており、冷却可能な構成となっている。尚、検出部1には、プローブ容器8の外部から試料を入れる構造があるが、冷却方式の説明には必要ないので、図示していない。
検出部1で検出されたNMRの検出信号は、ケーブル6で前置増幅器内蔵送受信切換部3に入力され、増幅される。増幅された信号(ヘッドアンプ出力)は、ケーブル7により、図示しない分光器に送られる。前置増幅器内蔵送受信切換部3は、熱交換器4と熱接触されており、冷却可能な構成となっている。前置増幅器内蔵送受信切換部3の温度制御を行なうため、前置増幅器内蔵送受信切換部3の近傍には、主ヒータ5と副ヒータ5が設けられている。
尚、主ヒータ5と副ヒータ5については、主ヒータ5の方には、消費電力が大きい代わりに、オンオフの時定数が必ずしも小さくないものを用い、副ヒータ5の方には、消費電力が小さい代わりに、オンオフの時定数がきわめて小さなものを用いる。そして、副ヒータ5の方は、主ヒータ5よりも、前置増幅器内蔵送受信切換部3に対する熱抵抗を小さくしておく。
各部の動作は、以下の通りである。まず、配管10を通って移送されてきた低温のヘリウムガスが、熱交換器2を介して、検出部1を低温に保つ。検出部1を冷却した低温のヘリウムガスは、戻りの配管11の途中に設置された熱交換器4を介して、前置増幅器内蔵送受信切換部3を冷却する。そして、主ヒータ5が、前置増幅器内蔵送受信切換部3の温度を予め設定された温度に保つ。
このときのNMRシークエンス、前置増幅器内蔵送受信切換部動作モード、ヒータ動作の関係は、図6のようである。まず、前置増幅器内蔵送受信切換部3の発熱は、送信モード>受信モードであるので、送信モードで1H核観測用RFパルス26をプローブに送信するときには、副ヒータ5の電力を切っておく。一方、受信モードでFID27を受信するときには、副ヒータ5を点火して、前置増幅器内蔵送受信切換部3を加熱するようにした。この間、主ヒータ5は、常時、点火しておく。その結果、副ヒータ5の熱が、前置増幅器内蔵送受信切換部3の送信モードと受信モードの発熱量の差を打ち消す働きをする。これにより、送信モードの時のヒータ電力よりも、受信モードの時のヒータ電力の方が大きくなるように制御されるので、送信モードと受信モードの発熱量の差が補完され、前置増幅器内蔵送受信切換部3の熱平衡が維持される。
図7は、本発明にかかるNMR装置の一実施例である。図中、8は、プローブ容器である。プローブ容器8は、図示しない冷凍機と、トランスファーライン9で接続されている。プローブ容器8とトランスファーライン9は、外部との断熱のため、内部を真空排気されている。トランスファーライン9の内側には、低温のヘリウムガスを流通させる配管10、11が設けられている。
プローブ容器8の内部には、検出コイルおよび同調整合回路から成る検出部1が置かれている。検出部1は、熱交換器2と熱接触されており、冷却可能な構成となっている。尚、検出部1には、プローブ容器8の外部から試料を入れる構造があるが、冷却方式の説明には必要ないので、図示していない。
検出部1で検出されたNMRの検出信号は、ケーブル6で前置増幅器内蔵送受信切換部3に入力され、増幅される。増幅された信号(ヘッドアンプ出力)は、ケーブル7により、図示しない分光器に送られる。前置増幅器内蔵送受信切換部3は、熱交換器4と熱接触されており、冷却可能な構成となっている。前置増幅器内蔵送受信切換部3の温度制御を行なうため、前置増幅器内蔵送受信切換部3の近傍には、ヒータ5が設けられている。
各部の動作は、以下の通りである。まず、配管10を通って移送されてきた低温のヘリウムガスが、熱交換器2を介して、検出部1を低温に保つ。検出部1を冷却した低温のヘリウムガスは、戻りの配管11の途中に設置された熱交換器4を介して、前置増幅器内蔵送受信切換部3を冷却する。そして、ヒータ5が、前置増幅器内蔵送受信切換部3の温度を予め設定された温度に保つ。
このときのNMRシークエンス、前置増幅器内蔵送受信切換部動作モード、ヒータ動作の関係は、図8のようである。まず、前置増幅器内蔵送受信切換部3の発熱は、送信モード>受信モードであるので、送信モードで1H核観測用RFパルス26をプローブに送信するときには、ヒータ5の出力を、適切な値まで低下させる。一方、受信モードでFID27を受信するときには、送信モードのときと同じ温度になるように、ヒータ5の出力を上げて、前置増幅器内蔵送受信切換部3を加熱するようにした。これにより、送信モードの時のヒータ電力よりも、受信モードの時のヒータ電力の方が大きくなるように制御されるので、送信モードと受信モードの発熱量の差が補完され、前置増幅器内蔵送受信切換部3の熱平衡が維持される。
冷却プローブを備えたNMR装置に、広く利用できる。
従来のNMR装置を示す図である。 従来のNMR低温プローブの構造を示す図である。 従来のNMR装置の動作モードの一例を示す図である。 従来のNMR装置の前置増幅器内蔵送受信切換部の構造を示す図である。 本発明にかかるNMR装置の一実施例を示す図である。 本発明にかかるNMR装置の動作モードの一実施例を示す図である。 本発明にかかるNMR装置の別の実施例を示す図である。 本発明にかかるNMR装置の動作モードの別の実施例を示す図である。
符号の説明
A:超伝導磁石、B:主コイル、C:核磁気共鳴プローブ、D:穴、1:検出部、2:熱交換器、3:前置増幅器内蔵送受信切換部、4:熱交換器、5:ヒータ(主ヒータ)、5:副ヒータ、6:ケーブル、7:ケーブル、8:プローブ容器、9:トランスファーライン、10:配管、11:配管、12:配管、13:配管、14:冷凍機、15:配管、16:配管、17:配管、18:配管、19:冷凍機本体、20:第1冷却ステージ、21:熱交換器、22:第2冷却ステージ、23:熱交換器、24:熱交換器、25:熱交換器、26:1H核観測用RFパルス、27:FID、28:前置増幅器内蔵送受信切換部、29:PAポート、30:デュプレクサ、31:PROBEポート、32:1stアンプ、33:2ndアンプ、34:HAポート

Claims (2)

  1. NMR検出部に高周波を送信するとともに、NMR検出部で検出したNMR信号を受信して前置増幅器で増幅するように構成された前置増幅器内蔵送受信切換部の近傍にヒータを配置し、該前置増幅器内蔵送受信切換部を低温に冷却しながら該ヒータで加熱し、該前置増幅器内蔵送受信切換部の温度をほぼ一定の低温に保つことにより、該前置増幅器内蔵送受信切換部のNFを改善するようにしたNMR装置において、
    前置増幅器内蔵送受信切換部の動作モードが切り換わるタイミングで、前置増幅器内蔵送受信切換部を加熱するヒータの電力を制御するようにしたことを特徴とするNMR装置。
  2. 前記前置増幅器内蔵送受信切換部の動作モードは、送信モードと受信モードであって、送信モードの時のヒータ電力よりも、受信モードの時のヒータ電力の方が大きくなるように制御するようにしたことを特徴とする請求項1記載のNMR装置。
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