第1の発明のインクジェットプリンタは、記録媒体に記録するインクジェットヘッドと、このインクジェットヘッドに供給される複数種類のインクを混合可能なインク混合装置と、このインク混合装置を制御する混合制御手段とを備え、前記インク混合装置は、前記複数種類のインクが夫々流入する複数のインク流入口と、前記インクジェットヘッドのインク供給口に連通する複数のインク流出口と、前記複数のインク流入口から前記複数のインク流出口に至る複数の経路上に並べて配置された複数の第1の電極と、これら複数の第1の電極に対して選択的に電圧を印加する電圧印加手段と、前記複数の第1の電極上に設けられ、前記電極に電圧が印加されたときに、電圧が印加されていない状態よりも撥液性が低下する絶縁膜とを備え、前記混合制御手段は、複数の第1の電極に対して所定の前記経路に沿って順に電圧を印加するように前記電圧印加手段を制御して、前記複数のインク流入口の1つから流入したインクを前記所定の経路上で移動させて、前記複数のインク流出口の1つから流出させるように構成されていることを特徴とするものである。
このインクジェットプリンタのインク混合装置においては、複数のインク流入口から複数のインク流出口に至る複数の経路が設けられており、各経路には、複数の第1の電極が並べて配置されている。また、各経路において、複数の第1の電極の表面には絶縁膜が設けられている。ここで、電圧印加手段により所定の第1の電極に電圧が印加されると、この第1の電圧の絶縁膜の表面におけるインクの接触角が小さくなり、第1の電極に電圧が印加されていない状態に比べて絶縁膜の撥液性が低下する(エレクトロウェッティング現象)。従って、所定の第1の電極に電圧が印加された状態では、その表面の絶縁膜にインクが移動することができるようになる。そして、混合制御手段により電圧印加手段を制御して、所定の経路に沿って複数の第1の電極に対して順に電圧を印加させることにより、複数のインク流入口の1つから前記所定の経路にインクが流入させ、このインクをその所定の経路を介して複数のインク流出口の1つまで移動させることができる。尚、このインクジェットプリンタにおいては、インク混合装置の経路上で複数種類のインクを同時に移動させながらその途中で複数種類のインクを混合させるようにしてもよいし、あるいは、ある種類のインクを所定の経路からインク流出口へ移動させた後、別の種類のインクを別の経路から同じインク流出口へ異なるタイミングで移動させて、複数種類のインクを混合させるようにしてもよい。
第2の発明のインクジェットヘッドは、前記第1の発明において、前記混合制御手段は、前記複数のインク流入口から夫々流入した複数種類のインクが前記複数の経路上を移動する途中で混合するように前記電圧印加手段を制御することを特徴とするものである。従って、経路上で複数種類のインクを混合させてから、その混合されたインクをインク流出口から流出させることができるため、複数種類のインクが確実に混合する。
第3の発明のインクジェットプリンタは、前記第1又は第2の発明において、前記インク流出口の数は、前記インク流入口よりも多いことを特徴とするものである。従って、インク混合装置により複数種類のインクを種々の混合比で混合して、より多くの種類のインクを生成することができる。
第4の発明のインクジェットプリンタは、前記第1〜第3の何れかの発明において、所定の一定電位に保持され且つ前記経路上の前記インクと接触する第2の電極を有することを特徴とするものである。従って、第1の電極に電圧が印加されたときに、第1の電極と所定の一定電圧に保持された第2の電極に接触するインクとの間の絶縁膜に、確実に電位差が生じるため、その部分の絶縁膜の撥液性を確実に低下させることができる。
第5の発明のインクジェットプリンタは、前記第4の発明において、前記絶縁膜の表面において、前記第2の電極が前記経路に沿って延在していることを特徴とするものである。従って、絶縁膜上に第2の電極を一度に形成することができるため、第2の電極を容易に形成することができる。
第6の発明のインクジェットプリンタは、前記第1〜第5の何れかの発明において、前記複数の経路は、前記複数のインク流入口から夫々延びる複数のインク流入経路と、これら複数のインク流入経路が合流する合流部と、この合流部から分岐して複数のインク流出口へ夫々延びる複数のインク流出経路とを有することを特徴とするものである。従って、複数のインク流入経路を介して複数種類のインクを合流部に移動させ、さらに、合流部で混合させた後に複数のインク流出経路を介してインク流出口に混合されたインクを移動させることができるため、インクが経路上移動する途中で複数種類のインクを確実に混合させることが可能になる。
第7の発明のインクジェットプリンタは、前記第6の発明において、各インク流入経路に配置された複数の前記第1の電極は、全て同一の面積を有することを特徴とするものである。従って、電圧印加手段により電圧を印加する第1の電極の枚数を変えることにより、インク流入流路に流れ込むインクの量を調整することができるため、複数種類のインクを所望の割合で混合させることができる。
第8の発明のインクジェットプリンタは、前記第6又は第7の発明において、前記複数のインク流出経路に夫々配置された前記第1の電極の数は等しく、前記複数のインク流出経路に関して、前記合流部に隣接した前記第1の電極以外の、前記合流部からの配置順が等しい前記第1の電極同士が互いに電気的に接続されており、前記電圧印加手段は電気的に接続されたこれら第1の電極に対して同時に電圧を印加するように構成されていることを特徴とするものである。合流部から複数のインク流出経路のうちの何れか1つにインクを流出させるために、複数のインク流出経路に配置された第1の電極のうち、合流部に隣接した第1の電極に対しては、個別に電圧が印加される必要がある。一方、それ以外の第1の電極は、合流部からの配置順が等しい第1の電極同士が電気的に接続されており、1つの接点を介してこれら第1の電極に対して電圧を印加することができるため、第1の電極に電圧を印加するための配線及び接点の数を減らすことができる。
第9の発明のインクジェットプリンタは、前記第1〜第5の何れかの発明において、前記複数の経路は、その途中部において合流及び分岐することなく前記複数のインク流入口から前記複数のインク流出口まで延びて、前記インク流出口において合流していることを特徴とするものである。従って、経路の構成が簡単なものになり、インク混合装置の構成を簡略化することが可能になる。
第10の発明のインクジェットプリンタは、前記第9の発明において、各経路に配置された複数の前記第1の電極は、全て同一の面積を有することを特徴とするものである。従って、電圧を印加する第1の電極の枚数を変えることにより、インク流入口から所定の経路を介してインク流出口へ流出させるインクの流量を調整することができるため、複数種類のインクを所望の割合で容易に混合させることができる。
第11の発明のインクジェットプリンタは、前記第1〜第10の何れかの発明において、前記インク混合装置は、前記インクジェットヘッドにおけるインクの消費量に応じてインクを前記インクジェットヘッドに供給するように構成されていることを特徴とするものである。従って、必要に応じて効率的にインクを混合させることが可能になる。
第12の発明のインクジェットプリンタは、前記第1〜第11の何れかの発明において、前記混合制御手段は、前記インク混合装置の所定の前記経路に流入させるインクの量を決定する流入インク量決定手段と、前記所定の経路上に配置され且つ前記インク流入口に最も近接する電極を含む1又は互いに隣接する複数の前記第1の電極であって、前記電圧印加手段により同時に電圧が印加される前記第1の電極の枚数を、前記流入インク量決定手段により決定されたインクの量に基づいて決定する第1印加枚数決定手段とを有することを特徴とするものである。従って、同時に電圧が印加される第1の電極の枚数を調整することにより、所望の量のインクを所定の経路に流入させることが可能になる。
第13の発明のインクジェットプリンタは、前記第1〜第12の何れかの発明において、前記混合制御手段は、前記インク混合装置の所定の前記経路に流入させるインクの量を決定する流入インク量決定手段と、この流入インク量決定手段により決定されたインクの量に基づいて、前記所定の経路上に配置され且つ前記インク流入口に最も近接する電極に対して電圧を印加する電圧印加時間を決定する印加時間決定手段とを有することを特徴とするものである。従って、インク流入口に最も近接する第1の電極に対する電圧印加時間を制御することにより、この第1の電極の表面に導き出すインクの量を調整できるため、所望の量のインクを所定の経路に流入させることができる。
第14の発明のインクジェットプリンタは、前記第1〜第13の何れかの発明において、前記混合制御手段は、前記インク混合装置の所定の前記経路を移動させるインクの量を決定する移動インク量決定手段と、この移動インク量決定手段により決定されたインクの量に基づいて、前記所定の経路上に配置されて前記電圧印加手段により同時に電圧が印加される前記第1の電極の枚数を決定する第2印加枚数決定手段とを有することを特徴とするものである。従って、特に、経路上で複数種類のインクが混合する場合など、経路上でインクの流量が変化する場合でも、同時に電圧が印加される第1の電極の枚数を調整することにより、所望の量のインクを経路上で確実に移動させることができる。
第15の発明のインクジェットプリンタは、前記第1〜第14の何れかの発明において、前記混合制御手段は、前記電圧印加手段により電圧が印加される前記第1の電極を前記経路に沿って順に切換える印加電極切換手段を有することを特徴とするものである。このように、電圧が印加される第1の電極を経路に沿って順に切換えることにより、インクをインク流入口から経路に沿ってインク流出口まで移動させることができる。
第16の発明のインクジェットプリンタは、前記第1〜第15の何れかの発明において、前記複数種類のインクには、無色の希釈インクが含まれていることを特徴とするものである。従って、インク混合装置により、有色インクを希釈インクにより希釈して、種々の濃度のインクを生成することが可能になる。
第17の発明のインクジェットプリンタは、前記第16の発明において、前記複数種類のインクのうち前記希釈インク以外のインクは有色のインクであり、これら有色のインクに夫々前記希釈インクを混合させて有色のインクを希釈する、前記有色のインクと同数の前記インク混合装置を備え、これらインク混合装置には、前記希釈インクを貯留する共通のインクカートリッジから夫々前記希釈インクが供給されることを特徴とするものである。従って、希釈インクを貯留するインクカートリッジが1つで済むため、インクジェットプリンタの構成を簡略化でき、さらには、小型化することも可能になる。また、インクカートリッジの交換回数を少なくすることができ、交換作業の煩雑さを軽減できる。
本発明の実施の形態について説明する。図1に示すように、本実施形態のインクジェットプリンタ1は、記録媒体である用紙に対してインクを吐出する複数のノズル(図示省略)を備えたインクジェットヘッド2と、このインクジェットヘッド2に供給される複数種類のインクを混合するインク混合装置3と、インクジェットプリンタ1全体の制御を司る制御装置4(図5参照)とを備えている。
インクジェットヘッド2の下面は、下方へ開口した複数のノズルが配置されたインク吐出面となっている。一方、インクジェットヘッド2の上面には、4種類のインクが夫々供給される4つのインク供給口2aが形成されている。ここで、インクジェットヘッド2に供給される4種類のインクは、有色インクと、この有色インクと希釈インクとを所定の混合比で混合させて生成した3種類の低濃度インクである。また、インクジェットヘッド2の内部には、4つのインク供給口2aから複数のノズルに夫々至る複数のインク流路(図示省略)が形成されている。さらに、このインクジェットヘッド2は、複数のインク流路内のインクに圧力を付加してノズルからインクを吐出させるアクチュエータユニット27(図5参照)を有する。このアクチュエータユニット27は、例えば、複数のノズルに夫々対応する複数の圧電素子を有し、ドライバIC26(図5参照)から複数の圧電素子に対して選択的に駆動信号が供給されたときに、その駆動信号が供給された圧電素子によりインク流路に圧力を付加して、ノズルからインクを吐出させるように構成されている。
次に、インク混合装置3について説明する。
図1〜図4、図8〜図11に示すように、インク混合装置3は、有色インクIaと希釈インクIbとが夫々流入する2つのインク流入口10aを有するインク流入部10と、これら有色インクIaと希釈インクIbとを混合して4種類のインクを生成するインク混合部11と、インク混合部11で混合された4種類のインクを夫々インクジェットヘッド2へ流出させる4つのインク流出口12aを有するインク流出部12とを有する。尚、インク混合装置3に流入する有色インクIa及び希釈インクIbは、共に導電性を有するインクである。
インク流入部10の内部には、有色インクIaを貯留するインクカートリッジ5aと希釈インクIbを貯留する2つのインクカートリッジ5bに夫々接続され且つ互いに独立した2つのインク室10bが形成されており、これら2つのインク室10bは2つのインク流入口10aを介して夫々インク混合部11に連通している。
インク流出部12の内部には、4つのインク流出口12aを介して夫々インク混合部11に連通し、互いに独立した4つのインク室12b(図8〜図11参照)が形成されている。そして、これら4つのインク室12bには、インク混合部11により有色インクIaと希釈インクIbとが異なる混合比で混合されて生成された4種類のインクImが夫々貯留される。さらに、これら4つのインク室12bは、インクジェットヘッド2の4つのインク供給口2aに夫々接続されている。
インク混合部11は、ポリイミド等で形成され絶縁性を有する基板13と、この基板13の表面において、2つのインク流入口10aから4つのインク流出口12aに至る複数の経路14上に配置された複数の移送電極15,16,17(第1の電極)と、制御装置4からの信号に基づいてこれら複数の移送電極15〜17に対して選択的に電圧を印加する電圧印加部18(図5参照)と、複数の移送電極15〜17の表面に形成された絶縁膜19と、絶縁膜19の表面において複数の経路14に沿って夫々延在する複数の共通電極20(第2の電極)とを有する。
図2〜図4に示すように、2つのインク流入口10aから4つのインク流出口12aに至る複数の経路14は、インク流出口12aから延びる2つのインク流入経路21(21a,21b)と、これら2つのインク流入経路21が合流する合流部22と、この合流部22から分岐して4つのインク流出口12aへ夫々延びる4つのインク流出経路23(23a,23b,23c,23d)からなる。そして、各インク流入経路21に沿って4つの移送電極15が配置されており、2つのインク流入経路21に配置された4列、計8個の移送電極15は、全て同一の面積を有する。また、合流部22には、2つのインク流入経路21及び4つのインク流出経路23に亙って形成された表面積の広い移送電極16が配置されている。さらに、合流部22から各インク流出経路23に沿って4つの移送電極17が配置されており、4つのインク流出経路23に配置された4列、計16個の移送電極17は、全て同一の面積を有する。尚、移送電極15〜17は、スクリーン印刷、蒸着法、あるいは、スパッタ法等により基板13の表面に形成される。
複数の移送電極15〜17には夫々配線部24が接続されており、複数の移送電極15〜17には、配線部24を介して、制御装置4の混合制御部40(図5参照)からの信号に基づいて電圧印加部18により選択的に電圧が印加される。尚、図3、図4、図8〜図11において、接点部の“+”は接続された移送電極15〜17に電圧が印加されている状態を示し、“GND”は移送電極15〜17に電圧が印加されていない状態を示す。ところで、各インク流入経路21に配置された4つの移送電極15には、夫々4本の配線部24が接続されており、後述するように、各インク流入経路21に関して電圧が印加される移送電極15の枚数を調整して、インク流入経路21から合流部22に流入するインクの量を調整できるようになっている。また、合流部22に配置された移送電極16にも1本の配線部24が接続されている。
また、4つのインク流出経路23において、合流部22に隣接して配置された第1列の4つの移送電極17には、夫々4本の配線部24が接続されており、これら4つの移送電極17に個別に電圧が印加されるようになっている。これは、第1列の移送電極17の何れか1つに電圧を印加することにより、合流部22で混合されたインクを4つのインク流出経路23の何れか1つにのみ流出させる必要があるためである。一方、それ以外の第2列、第3列及び第4列の移送電極17に関しては、合流部22からの配置順が等しい移送電極17同士が互いに電気的に接続されており、これら電気的に接続された4つの移送電極17には1本の配線部24が接続されている。従って、電気的に接続された4つの移送電極17に対して1つの接点及び1本の配線部24を介して電圧を印加することができるため、配線部24と接点の数を少なくすることができる。
複数の移送電極15〜17の表面には、これら移送電極15〜17に亙って連続的に絶縁膜19が形成されている。この絶縁膜19は、例えば、化学蒸着法(CVD)により形成されたパレリン膜等であり、その膜厚は0.1μm程度である。尚、本実施形態においては、絶縁膜19は、移送電極15〜17の表面だけでなく、基板13の表面の全面に亙って形成されている。
図2、図4に示すように、複数の共通電極20は、絶縁膜19の表面において複数の経路14に沿って移送電極15〜17の両側に夫々形成されている。これら複数の共通電極20は、スクリーン印刷等により絶縁膜19上に一度に形成することができる。そして、複数の共通電極20は配線部25を介して夫々接地されてグランド電位に保持されている。また、インクが経路14上に存在する状態では、絶縁膜19の表面の導電性を有するインクは、移送電極15〜17の両側の共通電極20に接触しているため、このインクIはグランド電位に保持されている。
そして、配線部24を介して複数の移送電極15〜17に対して選択的に電位が印加されると、電圧が印加された移送電極15〜17と、絶縁膜19により移送電極15〜17から絶縁されグランド電位に保持されたインクIとの間で電位差が発生して、絶縁膜19の表面におけるインクIの接触角が小さくなり、移送電極15〜17に電圧が印加されていない状態に比べて絶縁膜19の撥液性が低下する(エレクトロウェッティング現象)。また、インクIの滴は、その一部分が撥液性の高い領域に接触し、残りの部分が撥液性の低い領域に接触する状態になったときに、撥液性の低い領域にのみ位置するように移動しようとする。そのため、電圧印加部18により所定の移送電極15〜17に電圧が印加された状態では、電圧が印加された移送電極15〜17の表面の絶縁膜19にインクIが移動できるようになる。
次に、制御装置4の電気的な構成について図5のブロック図を参照して説明する。
この制御装置4は、中央処理装置であるCPU(Central Processing Unit)と、インクジェットプリンタ1の全体動作を制御する為の各種プログラムやデータ等が格納されたROM(Read Only Memory)と、CPUで処理されるデータ等を一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)等を備えている。また、制御装置4は、インクジェットヘッド2によるインク吐出動作を制御する吐出制御部30と、インク混合装置3のインク混合動作を制御する混合制御部40(混合制御手段)とを有する。これら吐出制御部30と混合制御部40は、制御装置4内のCPU、ROM及びRAM等で構成されている。
図5に示すように、吐出制御部30は、パーソナルコンピュータ(PC)50から入力された印字データを記憶する印字データ記憶部31と、この印字データ記憶部31に記憶された印字データに基づいてアクチュエータユニット27の圧電素子を駆動するための駆動信号を生成して、ドライバIC26に供給する駆動信号生成部32と、この駆動信号生成部32で生成された駆動信号に基づいてインクの消費量を積算するインク消費量積算部33と、このインク消費量積算部33で積算されたインク消費量に基づいてインクジェットヘッド2内及びインク混合装置3のインク室12b(図8〜図11参照)に貯留されたインク残量を算出するインク残量算出部34とを有する。そして、吐出制御部30は、インク残量算出部34により算出されたインク残量が不足していると検出されたときには、混合制御部40に対してインクの補充を指令する信号を出力する。
ここで、この吐出制御部30により実行されるインク残量不足検出処理について図6のフローチャートを参照して説明する。このインク残量不足検出処理は、インクジェットプリンタ1に対して電源が投入されている状態で常時実行されている。そして、印字が開始された場合(S10:Yes)、あるいは、ノズルの目詰まりを防止するためにノズルから強制的にインクを噴射させるパージ処理が開始された場合(S11:Yes)、インク消費量積算部33により印字動作又はパージ動作によるインク消費量が積算される(S12)。ここで、インク消費量積算部33は、駆動信号生成部32により生成された駆動信号に基づいて、1回の吐出インク量及びインクの吐出回数を算出することにより、インク消費量を積算する。
さらに、インク残量算出部34によりインクジェットヘッド2及びインク混合装置3の4つのインク室12bに貯留された4種類のインクの残量が夫々算出される(S13)。ここで、インク残量算出部34は、RAM等に記憶された印字動作前のインク残量データとインク消費量積算部33により積算されたインク消費量から4種類のインクの夫々についてインク残量を算出する。そして、4種類のインクの何れかのインク残量が予め定められた所定のインク量よりも少ないために、インク残量不足と検出されたときには(S14:Yes)、吐出制御部30は混合制御部40に対してインクの補充を指令する信号を出力する(S15)。このように、インクジェットヘッド2におけるインクの消費量に応じてインク混合装置3によりインクを混合させて、混合されたインクをインクジェットヘッド2に供給するため、必要に応じて効率的にインクを混合させることが可能になる。
図5に示すように、混合制御部40は、インク残量不足の状態が検出されたときに、インク混合装置3のインク混合部11内に有色インクIa及び希釈インクIbを流入させてインクジェットヘッド2に対して不足しているインクを補充するように、インク混合装置3を制御する。この混合制御部40は、有色インクIaと希釈インクIbの混合比に基づいてインク混合部11に流入させるインクの流入インク量、及び、経路14上で移動させるインクの移動インク量(特に、合流部22からインク流出経路23へ流出させる混合後のインクImの流量)を決定するインク流量決定部41と、このインク流量決定部41で決定されたインク流量に基づいて電圧を印加する移送電極15〜17の枚数を決定する印加枚数決定部42と、印加枚数決定部42で決定された移送電極15〜17の枚数に基づいて、電圧印加部18により電圧が印加される移送電極15〜17を決定する印加電極決定部43とを有する。
この混合制御部40により行われるインク混合処理について、図7のフローチャートと図8の説明図を参照して説明する。ここで、図8は、有色インクIaと希釈インクIbとを1対1の割合で混合させる場合のインク混合装置3によるインク混合動作の説明図である。
図7に示すように、混合制御部40に吐出制御部30からある種類のインクの補充を指令する信号が入力された場合には(S20:Yes)、インク流量決定部41により、要求されたインクに対応する、有色インクIaと希釈インクIbの混合比から有色インクIaと希釈インクIbの流入インク量Fa,Fbを夫々決定する(S21)。図8のように、両者の混合比が1対1の場合にはFa=Fbとなる。
次に、印加枚数決定部42により、S21で決定された流入インク量Fa,Fbから、2つのインク流入経路21a,21bにおいて夫々電圧が印加される移送電極15の枚数Na,Nbを決定する(S22)。ここで、各インク流入経路21に配置された4枚の移送電極15は夫々同一の面積を有するため、4枚の移送電極15に関して、電圧が印加されたときにその表面の絶縁膜19上に移動してくるインクIa,Ibの量は等しい。そのため、S21で決定された流入インク量Fa,Fbと電圧が印加されるべき移送電極15の枚数は比例する。そこで、印加枚数決定部42は、流入インク量Fa,Fbを、1枚の移送電極15で移送できるインクの量で除することにより移送電極15の枚数Na,Nbを算出する。混合比が1対1である図8においては、例えば、Na=Nb=2となっている。
次に、印加電極決定部43により電圧が印加される移送電極15を決定し、決定された移送電極15に対して電圧印加部18により電圧を同時に印加する(S23)。インク流入口10aからインク流入経路21にインクを流入させるためには、インク流入経路21a,21bに配置された4つの移送電極15のうち、インク流入口10aに最も近接する第1列の移送電極15には電圧が印加される必要がある。従って、印加電極決定部43により決定される移送電極15は、この第1列の移送電極15を含み且つ互いに隣接するNa枚、あるいは、Nb枚の移送電極15となる。例えば、印加枚数NaとNbが共に2である場合には、図8(a)に示すように、第1列と第2列の移送電極15に対して同時に電圧が印加される。すると、第1列と第2列の移送電極15の表面の絶縁膜19の撥液性が低下するため、インク流入口10aから電圧が印加された第1列の移送電極15と第2列の移送電極15の表面にインクIa,Ibが導き出される。尚、図8(a)に示すように、第3列の移送電極15には電圧が印加されておらず、この第3列の移送電極15の表面の絶縁膜19の撥液性は高いため、第1列と第2列の移送電極15の表面に導き出されたインクIa,Ibは第3列の移送電極15の表面には移動しない。また、絶縁膜19は、インク流入経路21a,21bから外れたギャップ領域にも形成されているが、このギャップ領域の撥液性は高いままであるため、第1列と第2列の移送電極15の表面に導き出されたインクIa,Ibがギャップ領域に移動することはない。
そして、印加電極決定部43により、次に電圧が印加される移送電極15を、前回電圧が印加された移送電極15からインク流入経路21a,21bに沿って1つずつずれた位置に配置された移送電極15に決定し、決定された移送電極15に対して電圧印加部18により電圧を同時に印加する。そして、これをインク流入経路21a,21bに沿って合流部22まで繰り返し行ってインクIa,Ibを合流部22に移動させる(S24)。具体的には、図8(a)に示すように、第1列と第2列の移送電極15に電圧が印加されている状態から、電圧が印加される移送電極15を切り換えて、第2列と第3列の移送電極15に同時に電圧を印加し、次に、第3列と第4列の移送電極15に同時に電圧を印加し(図8(b))、さらに、第4列の移送電極15と合流部22の移送電極16に対して同時に電圧を印加して、インクIa,Ibを合流部22に向けて移動させる。さらに、図8(c)に示すように、合流部22の移送電極16にのみ電圧を印加することにより、インクIa,Ibの合流部22の方向以外の行き場を失わせるように電圧が印加される移送電極15を切り換えて、インクIa,Ibを合流部22に移動させる。2つのインク流入経路21から夫々合流部22に流入した有色インクIaと希釈インクIbを合流部22で混合させ、インクImを生成する。このとき、インク流出経路23の移送電極17には電圧が印加されていないため、合流部22のインクImがインク流出経路23に流出しない。
次に、インク流量決定部41により、合流部22からインク流出経路23へ流出させるインクImの流量を決定する(S26)。この流出インク量Fmは、有色インクIaの流入量Faと希釈インクIbの流入量Fbの和により算出される。そして、印加枚数決定部42により、流出インク量Fmに基づいて電圧が印加される移送電極の枚数Nmを決定する(S27)。ここで、各インク流出経路23に配置された4枚の移送電極17は夫々同一の面積を有するため、S26で決定された流出インク量Fmと電圧が印加される移送電極17の枚数は比例する。そこで、印加枚数決定部42は、流出インク量Fmを、1枚の移送電極17で移送できるインクの量で除することにより移送電極の枚数Nmを算出する。例えば、図8においては、Nm=4となっている。
次に、印加電極決定部43により電圧が印加される移送電極17を決定し、決定された移送電極17に対して電圧印加部18により電圧を同時に印加する(S28)。ここで、合流部22から、混合比に対応する所定のインク流出経路23(23c)にインクを流出させるために、その所定のインク流出経路23cの第1列の移送電極17には電圧が印加される必要がある。従って、印加電極決定部43により決定される移送電極17は、この第1列の移送電極17を含み、互いに隣接するNm枚の移送電極17となる。具体的には、図8に示すように、印加枚数Nmが4である場合には、第1列〜第4列の移送電極17に対して同時に電圧が印加される。すると、合流部22から第1列の移送電極17の表面にインクが導き出されて、さらに、電圧が印加された第1列〜第4列の移送電極17の表面にインクが移動する。
そして、印加電極決定部43により、次に電圧が印加される移送電極17が、前回電圧が印加された移送電極17からインク流出経路23cに沿って1つずつずれた位置に配置された移送電極17に決定され、決定された移送電極17に対して電圧印加部18により電圧を同時に印加する。これをインク流出経路23cに沿って順次行ってインクImをインク流出口12aへ移動させる(S29)。具体的には、図8(d)に示すように、第1列〜第4列の移送電極17に同時に電圧が印加された状態から、第2列〜第4列の移送電極17に同時に電圧を印加し、次に、第3列と第4列の移送電極17に同時に電圧を印加し、最後に、第4列の移送電極17にのみ電圧を印加するようにして、インクImのインク流出口12aの方向以外の行き場を失わせるように電圧が印加される移送電極17を切り換えて、インク流出経路23cに沿ってインクをインク流出口12aまで移動させる。
尚、以上の説明において、インク流量決定部41が、本願の流入インク量決定手段及び移動インク量決定手段に相当する。また、印加枚数決定部42が、本願の第1印加枚数決定手段及び第2印加枚数決定手段に相当する。さらに、印加電極決定部43が、本願の印加電極切換手段に相当する。
以上、有色インクIaと希釈インクIbとを1対1の混合比で混合させる場合を例にして説明したが、他の混合比でこれら2種類のインクIa,Ibを混合させることもできる。例えば、有色インクIaと希釈インクIbとを3対1の割合で混合させる場合には、有色インクIaの流入インク量Faが希釈インクIbの流入インク量Fbの3倍であるため、印加枚数決定部42により、有色インクIaのインク流入経路21aにおいて印加される移送電極15の枚数Naが3、希釈インクIbのインク流入経路21bにおいて印加される移送電極15の枚数Nbが1に決定される。そして、図9(a)に示すように、有色インクIaのインク流入経路21aの第1列〜第3列の移送電極15と、希釈インクIbのインク流入経路21bの第1列の移送電極15とに対して、同時に電圧を印加することにより、所定量Faの有色インクIaをインク流入経路21aに導き出すとともに、所定量Fbの希釈インクIbをインク流入経路21bに導き出す。さらに、図9(b)に示すように、電圧を印加する移送電極15をインク流入経路21a,21bに沿って1つずつずらしながら、有色インクIaと希釈インクIbとを合流部22まで移動させて、図9(c)に示すように、これら2種類のインクIa,Ibを合流部22で混合させる。次に、図9(d)に示すように、所定のインク流出経路23bの第1列〜第4列の移送電極17に電圧を印加して、合流部22で混合されたインクImをこのインク流出経路23bから流出させる。そして、電圧を印加する移送電極17をインク流出経路23bに沿って1つずつずらしながら、混合されたインクをインク流出口12aに流出させる。
また、逆に、有色インクIaと希釈インクIbとを1対3の割合で混合させる場合には、希釈インクIbの流入インク量Fbが有色インクIaの流入インク量Faの3倍であるため、印加枚数決定部42により、有色インクIaのインク流入経路21aにおいて印加される移送電極15の枚数Naが1、希釈インクIbのインク流入経路21bにおいて印加される移送電極15の枚数Nbが3に決定される。そして、図10(a)に示すように、有色インクIaのインク流入経路21aの第1列の移送電極15と、希釈インクIbのインク流入経路21bの第1列〜第3列の移送電極15とに対して、同時に電圧を印加することにより、所定量Faの有色インクIaをインク流入経路21aに導き出すとともに、所定量Fbの希釈インクIbをインク流入経路21bに導き出す。さらに、図10(b)に示すように、電圧を印加する移送電極15をインク流入経路21a,21bに沿って1つずつずらしながら、有色インクIaと希釈インクIbとを合流部22まで移動させて、図10(c)に示すように、これら2種類のインクIa,Ibを合流部22で混合させる。次に、図10(d)に示すように、所定のインク流出経路23dの第1列〜第4列の移送電極17に電圧を印加して、合流部22で混合されたインクImをこのインク流出経路23dから流出させる。そして、電圧を印加する移送電極17をインク流出経路23dに沿って1つずつずらしながら、混合されたインクImをインク流出口12aに流出させる。
さらに、有色インクIaに希釈インクIbを混合させず、有色インクIaをそのままインク流出口12aに移動させることもできる。この場合には、印加枚数決定部42により、有色インクIaのインク流入経路21aにおいて印加される移送電極15の枚数Naが、予め定められた所定の枚数(図11においては3枚)に決定される。一方、希釈インクIbがインク混合部11に流入しないように、希釈インクIbのインク流入経路21bにおいて印加される移送電極15の枚数Nbは0となる。そして、図11(a)に示すように、有色インクIaのインク流入経路21aの第1列〜第3列の移送電極15に対して、同時に電圧を印加することにより、所定量Faの有色インクIaをインク流入経路21aに導き出す。さらに、図11(b)に示すように、電圧を印加する移送電極15をインク流入経路21aに沿って1つずつずらしながら、図11(c)に示すように、有色インクIaを合流部22まで移動させる。次に、図11(d)に示すように、所定のインク流出経路23aの第1列〜第4列の移送電極17に電圧を印加して、合流部22に移動した有色インクIaをこのインク流出経路23aから流出させる。そして、電圧を印加する移送電極17をインク流出経路23aに沿って1つずつずらしながら、有色インクIaをインク流出口12aに流出させる。
以上説明したインクジェットプリンタ1においては、次のような効果が得られる。
インク混合装置3により、有色インクIaを希釈インクIbで希釈して4種類のインクを生成できるため、インクジェットプリンタ1に装着されるインクカートリッジは、有色インクIaと希釈インクIbとを夫々貯留する2つのインクカートリッジ5a,5bだけでよく、インクカートリッジの交換が簡単になる。
所定の経路14に配置された第1列の移送電極15〜17に対して電圧を印加することにより、この経路14にインクIa,Ibを流入させ、さらに、経路14に沿って電圧が印加される移送電極15〜17を順に切換えていくことにより、インクIa,Ibを経路14に沿って移動させることができる。また、2つのインク流入経路21a,21bから有色インクIaと希釈インクIbを夫々合流部22に流入させ、合流部22で2種類のインクIa,Ibを混合させてから、所定のインク流出経路23に混合されたインクImを流出させる。このように、インクが経路14上を移動する途中で2種類のインクIa,Ibを混合させるため、インクIa,Ibがより確実に混合する。
各インク流入経路21の4つの移送電極15は全て同一の面積を有し、さらに、2種類のインクIa,Ibの混合比から決定された流入インク量Fa,Fbに基づいて、各インク流入経路21において、印加枚数決定部42により同時に電圧が印加される移送電極15の枚数が決定される。つまり、電圧を印加する移送電極15の枚数を変えることにより、インク流入経路21に流れ込むインクIa,Ibの量を調整することができ、2種類のインクIa,Ibを所望の割合で容易に混合させることができる。また、各インク流出経路23の4つの移送電極17も全て同一の面積を有し、さらに、混合されたインクImの量に基づいて、各インク流出経路23において、印加枚数決定部42により同時に電圧が印加される移送電極17の枚数が決定される。従って、電圧が印加される移送電極17の枚数を変えることにより、合流部22から所定量のインクImをインク流出経路23に流出させることができる。
次に、前記実施形態に種々の変更を加えた変更形態について説明する。但し、前記実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
1]インク残量算出部34(図5参照)によりインク残量を算出する代わりに、インク室12b等に設けられたインク残量センサによりインクジェットヘッド2内やインク混合装置3のインク室12b内に貯留されたインクの残量を検出するようにしてもよい。このインク残量センサとしては、フロート式や光透過式など、種々の型式のものを使用できる。
2]前記実施形態のインク混合装置3においては、2つのインク流入経路21に配置された移送電極15の枚数は等しいが、2つのインク流入経路21における移送電極15の枚数が異なっていてもよい。さらには、一方のインク流入経路21に配置された移送電極15の面積と、他方のインク流入経路21に配置された移送電極15の面積とが異なっていてもよい。この場合、有色インクIaに対して多量の希釈インクIbを混合させるとき、あるいは、逆に、有色インクIaに僅かな量の希釈インクIbを混合させるときに、流入インク量が少ないインク流入経路21においては、移送電極15の面積を小さくするとともに枚数を多くし、流入インク量が多いインク流入経路21においては、移送電極15の面積を大きくするとともに枚数を少なくするなど、流入インク量の大小に応じてインク流量を適切に調整することが可能になる。
3]前記実施形態のインク混合装置3は、流入インク量に基づいて、印加枚数決定部42により電圧を印加する移送電極15の枚数を調整することにより、所望の量のインクをインク流入経路21に流入させるように構成されているが、以下に説明するように、インク流入経路21の第1列の移送電極15に対する電圧印加時間を制御することにより、流入インク量を調整するように構成されていてもよい。
図12に示すように、この変更形態においては、制御装置4の混合制御部60は、インク流量決定部61、印加枚数決定部63、印加電極決定部64に加えて、さらに、流入インク量に基づいてインク流入経路21の第1列の移送電極15に対する電圧印加時間を決定する印加時間決定部62(印加時間決定手段)を備えている。この混合制御部60によるインク混合処理について、図13のフローチャートを参照して説明する。
図13に示すように、混合制御部60に吐出制御部30からインクの補充を指令する信号が入力された場合には(S40:Yes)、インク流量決定部61により、有色インクIaと希釈インクIbの混合比から有色インクIaと希釈インクIbの流入インク量Fa,Fbを夫々決定する(S41)。次に、印加時間決定部62により、S41で決定された流入インク量Fa,Fbから、2つのインク流入経路21の第1列の移送電極15に対して、電圧が印加される電圧印加時間Ta,Tbを算出する。ここで、この電圧印加時間Ta,Tbは、流入インク量Fa,Fbに比例した値に決定される。そして、印加電極決定部64により、電圧が印加される移送電極15を第1列の移送電極15に決定して、第1列の移送電極15に対して電圧印加部18により電圧印加時間Ta,Tbの間電圧を印加し、インク流入口10aから第1列の移送電極15の表面の絶縁膜19にインクIa,Ibを移動させる(S43)。このように、電圧印加時間Ta,Tbを調整することにより、インク流入口10aから第1列の移送電極15に所望の量のインクを導き出すことができる。
その後、前記実施形態と同様にして、インク流入経路21に沿って合流部22まで電圧印加電極を1つずつずらして電圧を印加していき(S44)、最終的には合流部22の電極16にのみ電圧を印加して(S45)、合流部22において2種類のインクIa,Ibを混合させる。さらに、インク流量決定部61により流出インク量Fmを算出し(S46)、印加枚数決定部63により流出インク量Fmから所定のインク流出経路23における印加枚数Nmを決定する(S47)。そして、所定のインク流出経路23においてNm枚の移送電極17に対して同時に電圧を印加して合流部22から所定のインク流出経路23にインクを流出させ(S48)、このインク流出経路23に沿って電圧印加電極を1つずつずらして電圧を印加し(S49)、インクImをインク流出口12aに流出させる。
以上の説明では、有色インクIaと希釈インクIbとを夫々流入させる2つのインク流入経路21の両方において、第1列の移送電極15に対する電圧印加時間を調整するようにしているが、有色インクIaに対して多量の希釈インクIbを混合させる場合、あるいは、逆に、有色インクIaに僅かな量の希釈インクIbを混合させる場合には、流入インク量が少ないインク流入経路21においては、第1列の移送電極15に対する電圧印加時間を調整することにより、少量のインクを流入させるようにし、流入インク量が多いインク流入経路21においては、前記実施形態と同様に、電圧が印加される移送電極15の枚数を調整することにより、比較的多量のインクを流入させるようにしてもよい。
4]前記実施形態においては、1つのインク混合装置3により1種類の有色インクを希釈インクで希釈する場合の一例を説明したが、図14に示すように、インクジェットプリンタ1Aが、4種類の有色インク(例えば、ブラック、イエロー、シアン及びマゼンタ)を夫々希釈インクで希釈する4つのインク混合装置3を備えていてもよい。この場合、4つのインク混合装置3には、夫々4種類の有色インクを貯留する4つのインクカートリッジ70a,70b,70c,70dと希釈インクを貯留するインクカートリッジ70eとが接続されている。さらに、4つのインク混合装置3は1つのインクジェットヘッド2に接続されている。ここで、希釈インクを貯留するインクカートリッジ70eを4つのインク混合装置3に関して共通にすれば、希釈インクを貯留するインクカートリッジ70eが1つで済み、インクジェットプリンタ1Aの構成を簡略化でき、小型化することも可能になる。また、インクカートリッジの交換回数を少なくすることができ、交換作業の煩雑さを軽減できる。
5]図15〜図17に示すように、インク混合装置3Bにおいて、共通電極71がインク混合部12の全域に亙って形成されていてもよい。この共通電極71は、絶縁膜19の上方において、インク流入口10aからインク流出口12aに至る複数の経路を移動するインクIに、絶縁膜72を介して接触するように設けられており、共通電極71は配線部73を介してグランド電位に保持されている。そして、所定の移送電極15〜17に電圧が印加されたときには、共通電極71と同じくグランド電位に保持されたインクIと移送電極15〜17との間に電位差が生じ、移送電極15〜17の表面の絶縁膜19の撥液性が低下して、インクIが移動する。
6]前記実施形態のインク混合装置3のように、インク流入口10aからインク流出口12aに至る経路14上で2種類のインクIa,Ibを混合させる必要は必ずしもなく、インク流入口からインクが直接インク流出口に移動するようにインク混合装置が構成されていてもよい。例えば、図18に示すように、このインク混合装置3Cは、2つのインク流入口80と、2つのインク流入口80の間に位置する4つのインク流出口81と、2つのインク流入口80の一方から途中で合流及び分岐することなく4つのインク流出口81の何れかに至る8本の経路82を有し、各経路82には、4つの移送電極83がその経路に沿って配置されている。そして、各経路82の4つの移送電極83に対して経路82に沿って電圧を印加することにより、インク流入口80から所定量のインクをインク流出口81へ移動させることができる。尚、このインク混合装置3Cにおいては、2つのインク流入口80から同時にインクを流入させて、インク流出口81付近において2種類のインクを混合させるようにしてもよいが、2つのインク流入口80からの流入タイミングをずらし、別々のタイミングで2種類のインクをインク流出口81まで移動させて、インク流出口81付近に設けられたインク室(図示省略)や、さらにその下流のインクジェットヘッド2内のインク流路において、2種類のインクを混合させるようにしてもよい。
7]インク混合装置で混合させるインクは、有色インクと希釈インクの組み合わせに限るものではなく、有色インク同士を混合させることもできる。また、3種類以上のインクを混合させることも可能である。