JP2006003372A - Ccdカメラによる正反射式表面性状測定方法及びその装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 正反射を起こす面を有する粗面物体の機能的表面性状を定量的に、かつ簡易に測定する。
【解決手段】 粗面物体の表面性状を測定する方法において、主として正反射を起こす面を有する粗面物体の表面に基準パターンを投影して該基準パターンの反射像のゆらぎを結像し、該反射像のゆらぎをCCDカメラで撮影し、該CCDカメラの映像信号を画像処理することにより前記反射像のゆらぎの輝度分布および該反射像のゆらぎの大きさを算出し、その値から粗面物体の表面性状を求める。反射像のゆらぎの大きさとして、輝度の振幅の標準偏差を用いることができる。
【選択図】 図1
【解決手段】 粗面物体の表面性状を測定する方法において、主として正反射を起こす面を有する粗面物体の表面に基準パターンを投影して該基準パターンの反射像のゆらぎを結像し、該反射像のゆらぎをCCDカメラで撮影し、該CCDカメラの映像信号を画像処理することにより前記反射像のゆらぎの輝度分布および該反射像のゆらぎの大きさを算出し、その値から粗面物体の表面性状を求める。反射像のゆらぎの大きさとして、輝度の振幅の標準偏差を用いることができる。
【選択図】 図1
Description
この発明は、主として正反射を起こす面を有する粗面物体の表面性状測定方法及びその装置に関し、さらに詳しくはステンレス鋼板仕上げ面の機能的表面性状を定量的に、かつ簡易に測定する技術に関する。
ステンレス鋼板は、その表面装飾性、耐食性、加工性等に優れているため、建築用内外装材、食品・化学・薬品製造プラント、厨房機器、洋食器、食品用設備などに広く使用されているが、その機能表面性状、すなわち機能を発揮する凹凸の微細形状などを定量的に測定・評価する方法は未だ確立されていない。特に、鋼板の商取引市場における検査・評価方法としては、例えば、試験片を基準片と蛍光灯などの下で反射像の写り具合(ゆらぎ・ぼけの程度)や色調、輝度、傷などを視覚的に比較・判断するといった、いわゆる目視外観検査法が用いられている。
そのため目視検査(定性的評価)という人間の官能に依存した判断基準のあいまいさに起因するトラブルが多発しており、取引業界では定量化できる測定・評価装置の開発が強く望まれている。
また、鋼板製造ライン及び鋼板仕上げ加工業界においても、同じく、製造または加工工程における検査の自動化、効率化、省人化のために、これら鋼板の表面性状を自動的に、定量的に、精度良く測定する方法及び装置の開発が望まれている。
従来から粗面物体の表面の性状、すなわち表面の幾何学的形状を直接測定する方法としては、先端の尖った触針で表面をなぞって(走査)粗さを測定する触針式表面粗さ測定法が最も一般に用いられている。この触針式は、断面曲線を迅速、正確に求めるのに最も適しているばかりか、最近では、おおむね信号の計算処理装置を粗さ計に内蔵しているので、大部分の粗さ測定器はこの種触針式で占められている。触針は、先端曲率半径1〜10μm程度のものが使用されている。
また、光を用いた非接触タイプの表面粗さ測定法として、JIS B 0652−1973に規定されている、標準反射鏡面と試料面とからの反射光の光路程の光干渉を利用した「光波干渉式表面粗さ測定法」があり、机上検査方法として一般的に用いられている。この光波干渉式は、鏡面や軟質物体など、触針式が不適当な場合をカバーし、触針式とともに、粗さ測定法として不可欠な存在となっている。
その他に、基準の焦点位置からの変位として光学的に計測する全反射臨界法、三角測定原理により表面凹凸を精密に計測する電子顕微鏡立体写真法などが知られている。
一方、光の反射散乱光パターンを統計的に解析して表面粗さを求める光散乱法として、散乱光の角度分布から求めるARS法(Angle−Resolved Scattering)やTIS法(Total Integrated Scattering)が用いられている。図15はARS法の測定原理を示す。同図(A)は、比較的滑らかな表面を有する粗面物体1の表面にレーザ光3aを照射し、その散乱光強度I(θ)のガウス型角度分布を得た後、角度分布の標準偏差に相当する、角度θの平均値θ=0近傍の散乱光強度から表面のZ(縦)方向の自乗平均平方根粗さRrms(<h2>1/2)を、Y(横)方向(図示せず)のそれR′rmsはスカラー理論から導かれた散乱光強度I(θ)の分散値SN=4/(KR′rms)2から求められる。同図(B)のものは、表面が比較的粗い粗面物体表面から得られたガウス型角度分布であって、同様に、Rrms(縦方向)及び分散光SN=8/(Rrms/R′rms)2からR′rmsを求めることができる。
これらの散乱光の角度分布は、現場では、被測定物の表面をリニアイメージセンサで電気的に測定したり、または、小さな開口を有する受光素子(Si光検出器)を被測定物を回転中心軸として、その表面領域を走査して測定することなどで得られている。
図16はTIS法の測定原理図を示す。この原理は、照明レーザ光の正反射光成分と散乱光成分を光学的に分離し、散乱光のみを検出して表面粗さを求める。この測定装置はレーザ光源3a、回転鏡M、被測定物表面からの全散乱光を集光するための積分球Sと2個の検出器D1、D2からなる。検出器D1で被測定物表面からの全散乱光強度RDを、検出器D2で光源の強度RD=RS+RDを、それぞれ測定する。これからRS/RDが求められるので、試料面の凹凸のRrmsを得ることができる。この方法は、Rrmsに直接比例した量が得られるという長所がある。測定範囲としてはRrms<0.01μmの非常に滑らかな面の測定に有効である。
その他に、スペックルのコントラスト変化を計るスペックル・コントラスト法、スペックルのサイズ変化を計るモーメント法、2光束照明によるスペックルの強度相関を計るスペックル相関法などがある。これらの方法は、表面の微細形状に類似性があれば、高精度に測定可能である。
他方、人間の視感により表面性状を識別・合否判定する目視検査法は、ステンレス鋼板などの鋼材の外観検査に原則として用いられている。この目視検査方法としては、商取引市場または表面研磨加工の現場では、例えば鋼板試験片と基準片とを太陽光、蛍光灯などの下で比較観察して合否判定する方法が多く用いられている。
また製造ラインでは検査員の目視により合否選別するなどの方法が用いられている。
また製造ラインでは検査員の目視により合否選別するなどの方法が用いられている。
しかしながら、触針式表面粗さ測定法では、被測定物表面に微細な傷をつけること、触針の先端曲率半径以下の粗さピッチ(波長)成分がカットされること、測定時間も長く、一次元測定しかできないなどの欠点がある。
また、JIS B 0652-1973に基づく光波干渉式表面粗さ測定法は、顕微鏡を使用するため視野の大きさに制限があること、測定可能な最大粗さが数μmRy以内に制約されること、スペクトル幅のやや広い光源を用いた場合、干渉縞を出すまでに調整がなかなか難しいといった欠点がある。
その他、全反射臨界法、電子顕微鏡立体写真法などは、その性能を発揮させるためには、測定時の入念、精密な調整や確実な測定環境の整備を行わねばならないこと、機械構成が精密光学部品からなり大型装置であること、測定に多くの時間を要することなどの欠点がある。
ARS法やTIS法などの光散乱法は、光による物体表面からの散乱光情報の統計的解析により表面粗さ、主として自乗平均平方根粗さRrmsも得るものであるが、正反射光成分の多い表面を有する粗面物体、すなわち、ステンレス鋼板表面のように鏡面性の高い材料に対しては適用できないという欠点がある。
目視検査法は、目視という人間の官能に頼って判別するため、判別の基準があいまいであること、検査員の個人差による判定のばらつきがあること、生理的に、心理的に周囲環境からの影響を受けやすいことなどの欠点がある。また単純な検査にたいしても、高速・連続といった状態には耐えられないことや疲れやすいという欠点のために、機械による自動外観検査の実現が望まれている。
一方、近年におけるステンレス鋼板市場における需要の多様化から、JIS G4305に規定された表面処理のステンレス鋼板に加え、商品としての付加価値を求める目的で、加飾研磨によってより高いレベルの艶・光沢、しゅす仕上げや梨地仕上げなどの質感、筋目模様、スクラッチパターンやヘアラインなどの装飾研磨仕上げ等が付与された鋼板が上市されるようになった。
このようなステンレス鋼板の多様な表面性状を測定する方法として、上述した各種の測定法では、Ra、Ry、Rz、Rrmsなどの表面凹凸情報のパラメータを得るにとどまり、これら鋼板の多様化した機能的表面性状を知ることは不可能であって、さらに適切な測定手段の開発が待たれている。
他方、生産面からみても、生産工程は、加工・組立ともに自動化分野の進歩は著しく、人間の目視による検査の介在が全体として流れに支障をきたす場合も少なくなく、自動外観検査装置の開発が強く望まれている。
本発明は、前記従来の問題点を除くためになされたものであって、主として正反射を起こす面を有する粗面物体、特に商取引市場および生産・加工・組立段階にあるステンレス鋼板の多様な機能的表面性状を、より具体的には、従来の表面凹凸のパラメータに加えて、表面の凹凸の振幅、方向性、傾斜分布、色調、むら、光沢、傷などを精度良く、定量的、かつ簡易に測定可能な表面性状測定方法及びその装置を提供することを目的とする。
本発明者らは、目視検査法の改良法として、ステンレス鋼板の表面反射率や光沢、表面粗さの異なる多数のサンプルを用いて、その表面に基準となるパターン(明暗の縞)を映し、その反射像のゆらぎとサンプルの表面粗さとの関係について鋭意種々の検討を行った。その結果、図14(B)に示すように、局所的には極めて滑らかで、鏡面反射(正反射)を起こす凹凸の長波長成分の大きい面をもつ鋼板では、その表面に映された基準パターンの反射像のゆらぎの状態を電気信号として取り出して、縦軸に明暗の強度、横軸に虚像面の位置を示す明暗の強度分布に変換し、さらに明暗の強度の統計量として、例えば、振幅をとり、その標準偏差を算出すると、この輝度値振幅の標準偏差と表面粗さRaの値の間に強い相関があることを見い出した。
さらに、本発明者らは、上記光の正反射を基本とした測定実験を、コンピュータ・シミュレーションにより行い、実験と同様の反射像が得られるかどうかを確認した。上記実験装置と同じ粗面物体やパターンなどからなる装置モデルを設定し、粗面物体の表面は微小ミラーの集合体と見做し、かつサイン波形の凹凸が存在するものと仮定して幾何光学のみを用いて計算を行い、反射像(虚像)の強度分布および標準偏差を求めた。
その結果、図13に示すように、反射像の強度分布は実験結果(図8の8a)と同様に振幅が減衰する現象がみられた。
その結果、図13に示すように、反射像の強度分布は実験結果(図8の8a)と同様に振幅が減衰する現象がみられた。
このように、シミュレーションによりステンレス鋼板の表面凹凸の反射像とそのゆらぎの関係を理論的に解析して本発明測定方法の妥当性を確認した。
すなわち、本発明の方法は、粗面物体の表面性状を測定する方法において、主として正反射を起こす面を有する粗面物体の表面に基準パターンを投影して反射像のゆらぎを結像させ、該反射像のゆらぎをCCDカメラで撮影し、該CCDカメラの映像信号を画像処理することにより前記反射像のゆらぎの輝度分布および該反射像のゆらぎの大きさを算出し、その値から粗面物体の表面性状を求めることを特徴とする。
また、本発明を実施するための装置は、粗面物体の表面に角度θで設けられた基準パターンと、該基準パターンを照明するための光源と、該反射像のゆらぎを撮影するためのCCDカメラと、該CCDカメラの映像信号を画像処理するためのコンピュータとを備えたことを特徴とする。
本発明の光の正反射を基本とした測定方法によれば、基準パターン(図形)の反射像を映した粗面物体の表面性状を、まず撮像素子で捉えることにより目視と同一の精度で把握することができ、次にこれらの撮像素子からの輝度分布の統計量を画像処理することにより反射像のゆらぎの大きさ(実施例では反射像の輝度分布の標準偏差)として得ることができるので、この値から上記粗面物体表面の機能的表面性状、すなわち表面凹凸粗さのみならず、表面凹凸の方向性、表面反射率などを非接触で、定量的、高精度かつ簡易に測定できる。
また、本発明の装置によれば、基準パターン、光源、CCDカメラ、コンピュータなどで構成することにより、小容積かつ可搬性の装置が得られる。
本発明が適用できる粗面物体1としては、図14(B)に示すように、局所的に極めて滑らかで、鏡面反射(正反射)を起こす凹凸の長波長成分12の大きい面を持つもの、例えば、ステンレス鋼板、各種金属板、プラスチック成型品、セラミック製品(タイルなど)、ガラス製品、塗装製品、メッキ製品などが好適である。その他、主として正反射を起こす表面を有する物、例えば、平面、曲面、球面などを有する板、円筒、球面体などがあげられる。また、本発明は液面のゆらぎ現象への適用も可能である。
本発明に使用する基準パターン2としては、その反射像4のゆらぎが確認できるものであればよく、例えば直線、曲線、円、楕円、三角形、三つ葉、四角形、菱形、六角形、星形、凹凸形などおよびそれらの組み合わせなどから得られる任意の図形・形状のものを用いることができる。
基準パターン2は、図1又は図3に示すように、粗面物体1の表面にその反射像4のゆらぎが映るように、その表面となす角度θで設置される。この角度θは、CCDカメラ5の撮影方向により広い範囲にとることができる。
また、基準パターン2は、図3に示すように、粗面物体1の表面に、例えば、ステンレス鋼板ヘアライン仕上げ面のように、直線的筋目1lがあるような場合には、その筋目1lと基準パターン2の図形が直交、または平行になるように調節できるようになっている(図4)。これらの基準パターン2は、歪みのない平滑外面を有する剛直な板材料の表面に加工、または印刷などにより製作することができる。
本発明に使用する光源3としては、基準パターン2の反射像4のゆらぎに対して間接的に適切な照明を与える照明器であればよく、タングステン電球やハロゲン電球などの一般白熱電球、白色蛍光ランプ、演色改善形(白色)や3波長域発光形(昼白色)などの蛍光ランプ、蛍光水銀ランプ、高圧水銀ランプ、メタルハイドランプ、高圧ナトリウムランプなどの大型放電ランプなどがあげられる。
光源3は、図1に示すように水平方向から基準パターン2を照らし、粗面物体1の表面に映っている、その反射像4のゆらぎに十分な明るさを与える役割をする。
本発明に使用するCCDカメラ5としては、適切な照明条件を与えられた基準パターン2の反射像4のゆらぎをレンズ系により撮像素子面に集光し、これを光電変換し、電気信号(映像信号6)として取り出せるものであればよく、反射像のゆらぎを明瞭に捉える解像力の点から高画素数のものが好ましい。例えば、市販の130万画素とか200万画素といった高画素数のCCDカメラを適宜使用することができる。また、基準像パターン2の代わりに液晶ディスプレイを用いることもできる。しかし、この場合には、光源3は不要となる。
CCDカメラ5は、粗面物体1の表面の背後の対象位置に結像された基準パターン2の虚像4にピントを合わせ撮影できるように、粗面物体1が視野に入る位置に調節し、設置される。粗面物体1の虚像からの光学的情報は、CCDカメラ5のレンズにより撮像素子上に結像され、各画素ごとにその場所の明るさ(輝度)に応じたレベルの映像信号6としてコンピュータ8に取り込まれる。
本発明に使用するコンピューター8としては、CCDカメラからの映像信号を特定の画像処理および演算処理を施すことにより目的の画像パターンやその画像パターンより導かれる定量的な量を出力できるものであればよく、市販のコンピューターやマイクロコンピュータも適宜使用できる。
CCDカメラからの明暗のアナログ信号であるビデオ信号6はインターフェースによりA/D変換されデジタル信号としてコンピュータ8に送り込まれる。コンピュータ8は、縦軸に明暗の強度、すなわち輝度の大きさを横軸に、虚像面の座標を示す輝度分布8a(図1・図8)に変換する。さらに、この輝度分布8aの統計量として輝度値の振幅をとり、この振幅量の標準偏差を算出する。そして、この標準偏差を縦軸に、予め計測した同種類の粗面物体1、例えば、ステンレス鋼板の表面粗さRaの値を横軸にプロットとして両者の相関線図を描画する。
以下、図面に基づいて、本発明の一実施例を詳細に説明する。図1は本発明の粗面物体の表面性状測定方法の測定原理およびその実施をする装置の構成を示す図である。
すなわち、この測定装置は、基準パターン2、光源3、CCDカメラ5およびコンピュータ8とから構成され、これを用いた測定方法は、主として正反射を起こす面を有する粗面物体1の表面に基準パターン2を反射させ、反射面の凹凸による反射角度のゆらぎを虚像4の面上の虚像パターンのゆらぎに変換させ、この虚像パターンをCCDカメラ5で撮影し、映像信号6をコンピュータ8で画像処理して、まず、虚像パターン4の輝度分布8aを求め、次に、この輝度分布8aの標準偏差を求めてこれと粗面物体の表面粗さRaとから強い相関線図8bを得るものである。したがって、本発明の方法により同種の他の粗面物体1の輝度分布8aの標準偏差を測定すれば、上記線図8bからその表面粗さRaを直読することができる。
本発明の測定方法は、図1に示すように、まず、光源3により基準パターン2を照射し、粗面物体1の表面に映っている基準パターン2の反射像4(虚像)を間接的に照明する。そしてCCDカメラ5を用いて虚像4にピントを合わせて反射像4を撮影する。
次に、測定対象である、主として正反射を起こす面を有する粗面物体1の表面に、それとなす角度θで設けられた基準パターン2を投影して、その背後の対称位置に正反射による虚像4を結像する。この基準パターン2の虚像4は、粗面物体1固有の表面微細性状に密接に関係し、表面が滑らかであれば、基準パターン2に近い像が得られ、表面が粗く、すなわち凹凸が粗くなるにしたがって、基準パターン2が反射角度のばらつきによってぼけが進み、輪郭が不鮮明な像、すなわち虚像4のゆらぎ(図5)が得られる。
続いて、CCDカメラ5からの映像信号6(ビデオ信号)はインターフェース7を介してコンピュータ8に取り込まれる。コンピュータ8により上記の反射像4のゆらぎを形成する撮像素子が受けた光の強度(映像信号6)を画像処理することにより図1・8aおよび図8に示すように、反射像4のゆらぎを示す輝度分布8aを算出・描画させる。
さらに、画像処理により得られた上記輝度分布8aの統計量として、図8に示す、輝度値の振幅量最大値と最小値の差をとり、それらから標準偏差を算出する。この場合の標準偏差は、各輝度値をX軸方向に入力演算して得られる。
このようにして得られた標準偏差を縦軸に、予め計測した同種の粗面物体1の表面粗さRa(中心線平均粗さ)の値を横軸にとって画像処理すれば、図1・8b及び図9に示すように、両者の間に強い相関関係を示す線図8bが得られる。この場合の近似直線は、回帰分析により容易に得られる。
なお、上記の場合、反射像4のゆらぎ、すなわち輝度分布の統計量として、輝度値の振幅量の標準偏差を用いたが、このゆらぎの大きさを定量化する方法としては、標準偏差以外の種々の評価関数が考えられ、これを使用することができる。
〔実施例1〕
主として正反射を起こす面を有する粗面物体は、表面仕上げされたステンレス鋼板(日新製鋼製品,商品名月星印ステンレス,AISI番号SUS304・SUS430,サンプルサイズ80×50×0.49mm)として、表面光沢の優れたNo.8仕上げ・BA仕上げ(SUS430)・No2B仕上げ(SUS430)・No.7仕上げ・BA仕上げと、直線的(研磨)筋目があり、方向性が強いHL(ヘアライン)仕上げ・ファインカラ仕上げ・No4仕上げと、表面凹凸が大きく、光沢の弱いNo.2DR−2仕上げ・スターライトエンボスの10種類を用いた。
主として正反射を起こす面を有する粗面物体は、表面仕上げされたステンレス鋼板(日新製鋼製品,商品名月星印ステンレス,AISI番号SUS304・SUS430,サンプルサイズ80×50×0.49mm)として、表面光沢の優れたNo.8仕上げ・BA仕上げ(SUS430)・No2B仕上げ(SUS430)・No.7仕上げ・BA仕上げと、直線的(研磨)筋目があり、方向性が強いHL(ヘアライン)仕上げ・ファインカラ仕上げ・No4仕上げと、表面凹凸が大きく、光沢の弱いNo.2DR−2仕上げ・スターライトエンボスの10種類を用いた。
まず、上記各種のステンレス鋼板の表面粗さRa(中心線平均粗さ)を触針式粗さ計(東京精密製、SURFCOM570A)を用いて測定した。直線的筋目のある鋼板は、それに対し直交する方向で表面粗さRaを求め、どの種類の鋼板からも、図6に示すような局所的に滑らかな面をもつ断面形状(拡大図)が得られた。
次に、上記ステンレス鋼板を水平な台盤(図示せず)上に戴せ、この表面に、図2に示す線パターン(サイズ80×60×3mm)を角度θ=45°で設置した。そして、線パターンは鋼板の直線的筋目と直交、または平行に映るようにした。この線パターンは、線幅0.35,0.70,1.05,1.40,1.75および2.10mm(0.35mm刻み)の6種類で、線間隔は線幅の2倍とした。この線パターンは、アクリル板(厚さ3mm)の表面に図2の図案をプリントした紙を貼り付けて製作した。
続いて、3個のクリプトンランプ(5.2V×0.3A)を水平方向から線パターンに照らし、鋼板表面に映っている線パターンの反射像のゆらぎを、十分な明るさにしてから、CCDカメラ(KOCOM社製KCC−310ND)で撮影し、表面粗さ(Ra値)の違い(図5)や筋目の方向性(図7)によって反射像のゆらぎ(像の鮮明さ、または像のぼけによる不鮮明さ)の大きさの異なる撮影像が得られた。
さらに、この映像信号をコンピュータに取り込み、画像処理として縦軸に輝度の強さを、横軸に像面上の位置を描画させて、輝度分布(図8)を得た。さらに加えて、この輝度分布の輝度値の振幅量をとり、その標準偏差を算出した。この標準偏差を縦軸に、予め計測した鋼板の表面粗さRaの値を横軸にとって、標準偏差は輝度値の平均で除して正規化し、表面粗さRa値は対数で表わし、描画した相関線図(点線)を回帰分析することにより対数回帰直線を得た。
図5は、表面粗さRaが異なる2種類のステンレス鋼板表面に映した線パターン反射像のゆらぎの状態を示す写真である。図6は、それらの鋼板の計測された表面凹凸と微小部分を拡大した図である。図5から表面粗さが大きい(Ra=0.233μm(HL仕上げ))鋼板は、小さい〔Ra=0.113μm(No.8仕上げ)〕ものに比べて、図14(A)に示す反射光の散乱・回析・干渉などによって、像がボケて不鮮明になること、すなわち反射像が光学的にゆらぎ4aを生じていることが観察される。特に、図7に示すように、直線的筋目のある鋼板の場合には、その直線的筋目のある方向に対し平行となるように線パターンを配置すれば〔図4(b)〕、ゆらぎが大きすぎて、まったく不鮮明になってしまう〔図5(d)〕。このように、粗面物体表面の微細凹凸の形状や配置・配列などの諸特性を正反射の反射像(虚像)のゆらぎとしてとらえることが、この統計量に包含される多くの表面性状に関する情報を、より詳細に、具体的に抽出しようとする本発明の基本要件である。
図8は、図5の表面粗さの異なる2種のステンレス鋼板表面に映し出された線パターン反射像のゆらぎの輝度分布である。すなわち、反射像のゆらぎ4aを構成する線(暗部の縞)と白地(明部の縞)の各位置からくる明るさに応じた反射光の強さを、CCDカメラで捉え、これを輝度値に評価・換算して輝度分布グラフで表したものである。
図5の反射像の鮮明な場合〔(a)、(b)〕及び不鮮明で筋目のある場〔(c)、(d)〕を参照すれば、図8からは(1)〔(a)、(b)〕のように、反射像が鮮明であるような表面の輝度分布は高い輝度値から低いそれへ移行する勾配が顕著であり〔図8(a)〕、明暗の縞からの輝度の差が大きいときは光沢感が強く、反対に〔(c)、(d)〕のように反射像が不鮮明である場合は、勾配は鈍く〔図8(b)〕、輝度の差が小さいと、光沢感が弱く観察されること、(2)Raの値が小さい鋼板は輝度値の振幅が大きく〔図8(a)〕、Ra値が大きいものは輝度値の振幅が小さくなる〔図8(b)〕こと、(3)鋼板表面に筋目の方向性がある鋼板は線パターンを映す方向によって、その輝度分布が異なり、直交の場合は輝度値の振幅が大きいが、平行の場合は輝度の振幅がかなり小さくなっていることなどが観察され、粗さとの方向性も検出できる。
図9は、各種鋼板とのRa値とその輝度振幅の標準偏差との間に強い相関があることを示している。すなわち、本発明の正反射情報を基にした表面性状測定法で測定すれば、Ra値が0.01から5μm程度まで直読式表面粗さ測定装置の製作が可能であることを示唆している。
このように輝度分布は、肉眼で感知できる反射像のゆらぎの定性的情報を、明るさの基準である輝度の定量的情報に変換したものである。すなわち、この輝度分布は、その具体的な表面微細性状を明示するものではないが、その表面性状に支配された多くの反射光情報を数値(定量)的に表したものであり、具体的表面性状を知る重要な手がかりを与えるものである。
従来法が表面の幾何学的性状を高精度に把握することに主眼が置かれていたのに対し、産業界ではこの幾何学性状以外に二次元(面)的なむら(不均質性)、ならびに機能的表面性状、すなわち、色調、方向性、光沢、輝度などの特性を総合的に判断することが求められている。CCDカメラは、本質的に色調、光沢、輝度などの機能的性状に関しては、これらの特性を測定・評価しうる機能を有するものであって、唯一未解決なのは表面粗さに関する幾何学的性状評価の問題であった。本発明はこの問題を解決し、産業界が要望する表面性状の総合判断の可能性を示唆するものである。
〔参考例〕
以下、図面を参照して、本発明方法のシミュレーションによる実験を詳細に説明する。図10〜図12は、本発明方法のシミュレーションの解析モデルを示す図である。
同図において、装置モデルは、実施例と同じく、基準パターンをステンレス鋼板の表面に対し、45°斜めに設け、その他光源(図示せず)およびCCDカメラで構成した。ステンレス表面は傾きの異なる微小ミラー群からなり、かつ、サイン波形の凹凸を有するものと仮定した。基準パターンは、まず、光源で照明されたパターン面上の微小部分としての点光源を考え、次に線パターンを採用した。座標などに関する計算は幾何学によった。
以下、図面を参照して、本発明方法のシミュレーションによる実験を詳細に説明する。図10〜図12は、本発明方法のシミュレーションの解析モデルを示す図である。
同図において、装置モデルは、実施例と同じく、基準パターンをステンレス鋼板の表面に対し、45°斜めに設け、その他光源(図示せず)およびCCDカメラで構成した。ステンレス表面は傾きの異なる微小ミラー群からなり、かつ、サイン波形の凹凸を有するものと仮定した。基準パターンは、まず、光源で照明されたパターン面上の微小部分としての点光源を考え、次に線パターンを採用した。座標などに関する計算は幾何学によった。
まず、図10に示すように、ある点光源(Px,Py)からでた光が角度θだけ傾いた微小ミラーの表面に投射されると、光は反射してその背後の対称位置(fx,fy)に虚像を結像する。その虚像の座標(fx,fy)は、微小ミラー表面の直線の式(I)、そ
れと垂直な式(II)および、それらの直交中点(Zx,Zy)などの関係から、幾何学に
より
として求められる。
れと垂直な式(II)および、それらの直交中点(Zx,Zy)などの関係から、幾何学に
より
として求められる。
次いで、図11に示すように、パターン面をステンレス表面に対し角度45°斜めに設定し、微小ミラーを角度θだけ傾けてステンレス表面上に設定すれば、微小ミラーの座標は(Mx,O)、点光源のそれは〔Px,Px(=Py)〕となる。さらに、θ≪1とすると、
よって虚像の座標(fx,fy)は、
として得られる。
よって虚像の座標(fx,fy)は、
として得られる。
上記虚像の明るさ、すなわち、点光源の虚像の光強度は、点光源によって微小ミラーで反射する光の強度と等しく、微小長さdlと点光源とで形成される立体角φに比例する。点光源(Px,Px)から微小ミラーの中心(Mx,O)までの距離をLとし(図12)、dlが十分に小さいとすると、φも十分小さくなるので、以下の式が成り立つ。
ゆえに
よって、微小長さdlで反射する光の強度Ipは
として得られる。
ゆえに
よって、微小長さdlで反射する光の強度Ipは
として得られる。
しかし、実際にCCDカメラのレンズに入る光I(虚像の光強度)は、上記、点光源による微小長さdlについての光強度Ipだけでなく、パターン全面にわたる無数の点光源からの光がステンレス表面を構成する微小ミラー群の面で反射する、絡み合った光の集合体と見なすことができる。すなわち、パターン反射像の強度Iは、上記微小長さdlについての点光源の光強度Ipをパターン全面積およびステンレス全表面積について積分した値として得られる。
細かな計算手順は省略するが上記の積分を数値計算で求めた結果の一例を図に示す。ただしステンレス面の粗さは図8で示した資料の粗さをsinカーブで近似したものを用いた。
図19(b)から明らかなように、HL仕上げなどステンレス表面が粗くなると、表面は定性的には微小ミラーによるサイン波形と見做してはいるが、その反射像の輝度値振幅がパターン面との距離が遠くなるにつれて減衰していく傾向は、実験結果〔図8(b)〕と酷似している。これは、光の正反射を基本とした本発明の考え方が基本的に正しいことを証明するものである。
以上、説明したように、本発明によれば、主として正反射を起こす面を有する粗面物体、例えばステンレス鋼板の表面性状のCCDカメラによる映像(定性)を、輝度の分布統計量(定量)に変換してその統計量から、粗さRaという表面性状の一つを得ることにとどまらず、凹凸の振幅、方向性および、その二次元的な面における粗さのむらも得ることができ、さらには色調、色調のむら、光沢、輝度などの測定の可能性を示唆したことである。
また、本発明の装置は、従来の測定装置と比較して、基準パターン、光源、CCDカメラ、マイクロコンピュータなどで構成した携帯型装置としたため、低価格かつ小容積、小専有面積という、経済的かつ簡易にして軽量可搬な諸効果を奏する。
1 粗面物体
1l ステンレス鋼板の直線的筋目
1s ステンレス鋼板
2 基準パターン
2a 線パターン
3 光源
3a レーザー光
3b 入射光
4 反射像(虚像)
4a ゆらぎ
5 CCDカメラ
5a レンズ
6 映像信号
7 インターフェイス
8 コンピュータ
8a 輝度分布
8b 相関線図
9 正反射光
10 散乱光
11 散乱光パターン
12 凹凸波長成分
13 ガウス型角度分布
d 線間幅
dl 微小ミラーの微小長さ
fx,fy 虚像の座標
h 中心線からの表面までの高さ
w 線幅
x 表面の縦方向の座標
z 表面の高さ方向の座標
A アパーチュア
D1,D2 検出器
I(θ) 散乱光強度
I 光の強度
Ip 微小長さあたりの光強度
L 点光源から微小ミラーまでの距離
M 回転鏡
Mx,My 微小ミラーの中心座標
Px,Py 点光源の座標
Ra 中心線平均粗さ
Rrms,R′rms 自乗平均平方根粗さ
Ry 最大高さ粗さ
S 積分球
α,θ 角度
φ 立体角
1l ステンレス鋼板の直線的筋目
1s ステンレス鋼板
2 基準パターン
2a 線パターン
3 光源
3a レーザー光
3b 入射光
4 反射像(虚像)
4a ゆらぎ
5 CCDカメラ
5a レンズ
6 映像信号
7 インターフェイス
8 コンピュータ
8a 輝度分布
8b 相関線図
9 正反射光
10 散乱光
11 散乱光パターン
12 凹凸波長成分
13 ガウス型角度分布
d 線間幅
dl 微小ミラーの微小長さ
fx,fy 虚像の座標
h 中心線からの表面までの高さ
w 線幅
x 表面の縦方向の座標
z 表面の高さ方向の座標
A アパーチュア
D1,D2 検出器
I(θ) 散乱光強度
I 光の強度
Ip 微小長さあたりの光強度
L 点光源から微小ミラーまでの距離
M 回転鏡
Mx,My 微小ミラーの中心座標
Px,Py 点光源の座標
Ra 中心線平均粗さ
Rrms,R′rms 自乗平均平方根粗さ
Ry 最大高さ粗さ
S 積分球
α,θ 角度
φ 立体角
Claims (5)
- 粗面物体の表面性状を測定する方法において、主として正反射を起こす面を有する粗面物体の表面に基準パターンを投影して該基準パターンの反射像のゆらぎを結像し、該反射像のゆらぎをCCDカメラで撮影し、該CCDカメラの映像信号を画像処理することにより前記反射像のゆらぎの輝度分布および該反射像のゆらぎの大きさを算出し、その値から粗面物体の表面性状を求めることを特徴とする粗面物体の表面性状測定方法。
- 反射像のゆらぎの大きさが、輝度値の振幅量の標準偏差である請求項1記載の粗面物体の表面性状測定方法。
- 粗面物体がステンレス鋼板である請求項1記載又は請求項2記載の粗面物体の表面性状測定方法。
- 主として正反射を起こす面を有する粗面物体の表面にその反射像のゆらぎを映すために角度θで設けられた基準パターンと、該基準パターンを照明するための光源と、前記粗面物体表面に映された反射像のゆらぎを撮影するためのCCDカメラと、該CCDカメラからの映像信号を画像処理するためのコンピュータとを備えたことを特徴とする粗面物体の表面性状測定装置。
- 粗面物体がステンレス鋼板である請求項4記載の粗面物体の表面性状測定装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2005256408A JP2006003372A (ja) | 2005-09-05 | 2005-09-05 | Ccdカメラによる正反射式表面性状測定方法及びその装置 |
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---|---|---|---|---|
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-
2005
- 2005-09-05 JP JP2005256408A patent/JP2006003372A/ja active Pending
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