JP2005535609A - カロテノイド結晶の生成および単離方法 - Google Patents

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Abstract

カロテノイド含有植物のオレオレジンから、カロテノイド結晶を製造する方法であって、(a)前記オレオレジンを、有機溶媒、アルコールおよび塩基に対して、該有機溶媒の還流温度下で導入して、けん化反応混合物を調製する第一工程;(b)前記けん化反応混合物を、けん化反応を完了させるのに十分な時間保持して、けん化反応生成物を生産する工程;(c)得られたけん化反応生成物を、有機相および水相を含む2相に分離させる工程;(d)各相を分離し、前記水相を抜き取る工程;(e)前記有機相を蒸留してカロテノイド結晶を得る工程、を含む方法。

Description

本発明は、カロテノイド化合物の生成および単離方法に関し、特に、マリーゴールドの花から、キサントフィル結晶を単離する方法に関する。
カロテノイドは自然界に豊富に存在し、果物、野菜、葉、微生物あるいは海洋生物中に見出される。カロテノイドは、抗酸化物あるいは食品着色料として、また、ガン予防において用いられる。このような化合物は天然原料から、例えば特許文献1に開示されているような古典的な抽出手法を用いて容易に抽出されうる。このような抽出においては、溶剤を除去して粗オレオレジンが得られる。結果的なカロテノイド濃度は、この粗オレオレジンをそのままヒトの摂取用に用いるには不十分である。
カロテノイドを生成、単離および精製する別の化学的方法が知られており、例えば特許文献2において開示されているような方法がある。この方法を工業スケールで適用すると、得られるキサントフィル結晶の量は多くはなく、典型的には収率59%、純度79%である。同様に、特許文献3において開示されている方法によると、収率が80%、純度が70−51%となる。特許文献4から7で開示されている方法においても、同様の問題が発生する。
さらに、引用した先行技術における方法では、アルカリ金属(多くの場合、水酸化カリウム)、あるいは、水に混和性の有機溶媒(多くの場合1,3-プロパンジオール)で非常に汚染された廃液が大量に出ると思われる。そこで、生成物について処理を行わなければならず、よって製造過程において、コストの高い追加工程が必要となる。さらに、これらの方法において、結晶化したカロテノイドの単離は、おそらく原料反応混合物の粘度が高いことが理由で、遠心分離工程を経て行われ、したがって高価な設備および投資が必要となる。
特許US 6191293 US 5,648,564 WO 01/94279 WO 01/28966 ES 2 099 683 WO 99/20587 EP 0,732,378
我々は、先行技術において発生する前述の問題を克服するような方法を創出した。すなわち本発明は、カロテノイド含有植物のオレオレジンから、カロテノイド結晶を製造する方法であって、(a)前記オレオレジンを、有機溶媒、アルコールおよび塩基に対して、該有機溶媒の還流温度下で導入して、けん化反応混合物を調製する第一工程;(b)前記けん化反応混合物を、けん化反応を完了させるのに十分な時間保持して、けん化反応生成物を生産する工程;(c)得られたけん化反応生成物を、有機相および水相を含む2相に分離させる工程;(d)各相を分離し、前記水相を抜取り抜き取る工程;(e)前記有機相を蒸留してカロテノイド結晶を得る工程、を含む方法を提供する。
本発明の方法は、既知の先行技術の方法に対して、結果的な産物が、より高い収率および純度をもって得られるという利点を示す。得られた結晶を精製する必要はない。
さらに、本発明は、純粋なカロテノイド、例えばカロチン類やキサントフィル類を、すべてトランス配座の形態で製造する方法を提供する。シス型異性体の異性化が、蒸留工程中に起こる。このように、本発明の方法によって得られる生成物は、そのままで、ヒトの摂取や栄養補助食品への使用に適切なものである。本発明のさらなる利点は、方法によって発生する廃液の量が、これまで知られている方法に比して、2から32倍少ないということである。使用される溶媒は方法の最後で留去されるので、再利用することができ、したがって、カロテノイドの、環境上優良な製造手段が提供される。さらに、本方法で用いられる設備は単純であり、また、遠心分離や凍結乾燥用の装置が不要である。したがって、工業スケールでの製造において魅力的な選択肢が提供される。
本発明の方法は、カロテノイドの結晶をカロテノイド含有植物から抽出する方法に関する。本発明の方法によって得られるカロテノイドは、例えばルテイン、ゼアキサンチン、カプソルビン、カプサンチン、アスタキサンチンおよびカタキサンチンなどのキサントフィル類;ベータ‐カロチンおよびリコピンなどのカロチン類を包含する。カロテノイド含有植物として好ましいものは、所望のカロテノイドのエステルを高濃度に含有することが知られているものであり、例えばマリーゴールドの花や種子が挙げられる。オレオレジンは、本技術分野において知られている手法を用いて抽出される。
本発明の方法の第一工程においては、オレオレジンを、有機溶媒、アルコールおよび塩基と混合して、けん化反応混合物を調製する。前記有機溶媒として適当なものは、水に対し非混和性の有機溶媒であり、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンおよびトルエン等の炭化水素;ジイソプロピルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)、ジエチルエーテル等のエーテル;ジクロロメタン、ジクロロエタン、モノクロロベンゼン(MCB)等の塩素化溶媒、などである。溶媒の濃度は、0.5から10 l/kgオレオレジン であってよく、1から4 l/kg オレオレジンであることが好ましい。
アルコールについては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、tert-ブタノールおよびブタノールから選択してもよい。好ましいアルコールは、イソプロパノールまたはプロパノールである。アルコールの存在する濃度は、0.5から10 l/kgオレオレジン であってよく、1から4 l/kgオレオレジン であることが好ましい。
塩基については、適当な塩基として、例えばリチウム、ナトリウムまたはカリウム水酸化物などの、アルカリ水酸化物;例えばリチウム、ナトリウムまたはカリウム炭酸塩などの、アルカリ炭酸塩、が包含される。好ましい塩基は、ナトリウムまたはカリウムの水酸化物である。
本発明の前記第一工程は、前記溶媒の還流温度で行われる。反応物を、該還流温度において、けん化反応を完了させるのに十分な時間保持する。得られるけん化反応生成物は、二つの相、すなわち有機相および水相を含んでいる。これら2相を互いに分離させ、水相を反応系から除去する。次いで、残留した有機相を、残留溶媒分を除去するために蒸留し、これによってカロテノイド結晶が提供される。本方法におけるこの工程は、温度50から100℃で行うことが適当であり、80から85℃が好ましい。蒸留工程を行っている間、液量を維持するために、系に水を連続的に導入することが好ましい。
生成した結晶を、ろ過によって分離しても構わない。ろ過は、温度50から100℃で行うことができる。単離された結晶を、その後洗浄してもよい。洗浄は、水、または、アセトニトリルもしくはアルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールまたは同様のもの)などの適当な溶媒、を用いて行うことができる。水を用いることが望ましい場合、この段階は温度50から100℃で行ってよく、80から85℃が好ましい。アセトニトリルやアルコールのような、溶媒を用いることが望ましい場合、この段階はマイナス5℃から40℃で行ってよく、20から25℃が好ましい。
水の分量は、1から20 l/kgが適当であり、5から10 l/kgが好ましい。
生成した結晶は、高純度をもって得られ、純度は典型的には85から99%の間であり、一般に95%超である。産物の収率は、典型的には40から90%の間であり;一般に70から80%の間である。
ここで本発明を、以下の実施例に関して詳細に説明する。
実施例1:
72.8gのマリーゴールドオレオレジン(Naturex,France,から入手、オレオレジンキログラムあたりカロテノイド含量128g)を、150mlのヘキサンおよび150mlのイソプロパノール中に、還流下で溶解した。次いで、150mlの水酸化ナトリウム水溶液(30%wt)を導入し、原料反応混合物を、還流、激しい攪拌、窒素ガス条件下で、けん化が完了するまで(2.5h、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)測定による反応率>97%)保持した。この時点で攪拌を停止し、混合物を速やかに2相(上相の有機相および下相の水相)に分離させた。下相の水相を除去した。500mlの、予め昇温された水(90℃)を、流出量とおおむね等量の流入量で導入して、液相の総体積が600mlを超えないようにしながら、上記の有機溶媒(ヘキサンおよびイソプロパノール)を留去した。蒸留の終わりに、水性の液相および結晶化したカロテノイドを含有する粗混合物を、結晶化したカロテノイドを単離するためにろ過した。ろ過ケーキを、150mlの温水を3回に分けて加え、次に、150mlの室温のアセトニトリルを3回に分けて加え、その次に、150mlの室温のヘキサンを加えることで洗浄した。残留溶媒分を、減圧下、室温で除去した。6.76gの、オレンジ/赤色の純キサントフィル結晶が回収された(収率:総カロテノイドに対して72.3%)。結晶を、HPLCで分析した:全てトランス型のルテインが91.2%、全てトランス型のゼアキサンチンが8.8%であり、シス型異性体および他のカロテノイド類は検出されず、カロテノイド総収率は95%超であった。
実施例2:
82.5gのマリーゴールドオレオレジン(Plant Lipids Limited, India,から入手、オレオレジンキログラムあたりカロテノイド含量100g)を、150mlのヘキサンおよび150mlのイソプロパノール中に、還流下で溶解した。次いで、150mlの水酸化ナトリウム水溶液(30%wt)を導入し、原料反応混合物を、還流、激しい攪拌、Nガス条件下で、けん化が完了するまで(2.5h、HPLC測定による反応率>97%)保持した。この時点で攪拌を停止し、混合物を速やかに2相(上相:有機相、下相:水相)に分離させた。下相(水相)を除去した。500mlの、予め昇温された水(90℃)を、流出量とおおむね等量の流入量で導入して、液相の総体積が600mlを超えないようにしながら、上記の有機溶媒(すなわちヘキサンおよびイソプロパノール)を留去した。蒸留の終わりに、粗混合物(水性の液相および結晶化したカロテノイドを含有する)を、結晶化したカロテノイドを単離するためにろ過した。ろ過ケーキを、150mlの温水を3回に分けて加え、次に、150mlの室温のエタノールを加えることで洗浄した。残留溶媒分を、減圧下、室温で除去した。6.45gの、オレンジ/赤色の純キサントフィル結晶が回収された(収率:総カロテノイドに対して78.2%)。この結晶を、HPLCで分析した:全てトランス型のルテインが91.2%、全てトランス型のゼアキサンチンが8.8%であり、シス型異性体および他のカロテノイド類は検出されず、カロテノイド総収率は95%超であった。
実施例3:
56.1gのマリーゴールドオレオレジン(Naturex,France,から入手、オレオレジンキログラムあたりカロテノイド含量128g)を、150mlのヘキサンおよび150mlのイソプロパノール中に、還流下で溶解した。次いで、150mlの水酸化ナトリウム水溶液(30%wt)を導入し、原料反応混合物を、還流、激しい攪拌、窒素ガス条件下で、けん化が完了するまで(2.5h、HPLC測定による反応率>97%)保持した。この時点で攪拌を停止し、混合物を速やかに2相、すなわち上相の有機相および下相の水相に分離させた。下相の水相を除去した。有機相を、500mlの予め昇温された水(90℃)に、ゆっくりと注ぎ、有機溶媒をただちに留去した。このとき流入量は、内容量が600ml以下に維持されるように調整した。この添加の終わりに、有機溶媒の蒸留が完了するまで加熱を継続し、その後、カロテノイド結晶をろ過によって回収した。ろ過ケーキを、150mlの温水を3回に分けて加え、次に、150mlの室温のヘキサンを3回に分けて加えることで洗浄した。残留溶媒分を、減圧下、室温で除去した。3.5gの、オレンジ/赤色の純キサントフィル結晶が回収された(収率:総カロテノイドに対して51%、カロテノイド含有量92%)。この結晶を、HPLCで分析した:全てトランス型のルテインが93%、全てトランス型のゼアキサンチンが7%であり、シス型異性体および他のカロテノイド類は検出されず、カロテノイド総収率は95%超であった。
実施例4−17:
市販の「マリーゴールドオレオレジン」を、45℃で10mlのヘプタン、2.5mlのブタノールおよび2mlの水酸化ナトリウム水溶液(30%wt)中に溶解した。反応混合物を、攪拌、不活性ガス条件下で5時間保持した。その後、攪拌を停止し、混合物を速やかに2相に分離させた。この2相の分離およびその後の処理は、実施例1と同様に行った。生成物の収率を、下記の表1に記した。
Figure 2005535609
実施例18−23:
1gのオレオレジン(Plant Lipids Limitedから入手、kgあたりカロテノイド100g)を、下記の表2に挙げた各種の溶媒に溶解し、アルコールを添加し、その後3mlのアルカリ水酸化物を加えた。反応混合物を、反応完了まで、攪拌、不活性ガス条件下に維持した。
Figure 2005535609

Claims (8)

  1. カロテノイド含有植物のオレオレジンから、カロテノイド結晶を製造する方法であって、(a)前記オレオレジンを、有機溶媒、アルコールおよび塩基に対して、該有機溶媒の還流温度下で導入して、けん化反応混合物を調製する第一工程;(b)前記けん化反応混合物を、けん化反応を完了させるのに十分な時間保持して、けん化反応生成物を生産する工程;(c)得られたけん化反応生成物を、有機相および水相を含む2相に分離させる工程;(d)各相を分離し、前記水相を抜取り抜き取る工程;(e)前記有機相を蒸留してカロテノイド結晶を得る工程、を含む方法。
  2. 前記有機溶媒が、水に対し非混和性の有機溶媒である請求項1に記載の方法。
  3. 前記有機溶媒が、炭化水素、エーテルまたは塩素化溶媒である請求項2に記載の方法。
  4. 前記有機溶媒が、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンおよびトルエンから選択される炭化水素である請求項3に記載の方法。
  5. 前記アルコールが、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、tert-ブタノールおよびブタノールから選択される請求項1ないし4のいずれかに記載の方法。
  6. 前記塩基が、アルカリ水酸化物またはアルカリ炭酸塩である請求項1ないし5のいずれかに記載の方法。
  7. 前記塩基が、リチウム、ナトリウムまたはカリウムの水酸化物である請求項6に記載の方法。
  8. 前記有機相を蒸留する間、系に水を連続的に導入する請求項1ないし7のいずれかに記載の方法。
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