JP2005535565A - アルツハイマー病の症状を治療することが可能な化合物を決定する際に有用なスフェロン構成要素、並びに該構成要素から産生される治療および動物モデル - Google Patents

アルツハイマー病の症状を治療することが可能な化合物を決定する際に有用なスフェロン構成要素、並びに該構成要素から産生される治療および動物モデル Download PDF

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Abstract

本発明は、アルツハイマー病および/または脳アミロイドーシスに関連する痴呆の症状を防止し、そして/または改善することが可能な化合物を同定する際に有用な、スフェロンのタンパク質構成要素に関する。本発明はまた、該方法によって同定された化合物、並びにアルツハイマー病および/または脳アミロイドーシスに関連する痴呆の症状を治療し、そして/または改善する方法にも関する。本発明はまた、アルツハイマー病または脳アミロイドーシスに関連する痴呆の動物モデルまたは試験動物を作成する方法、該方法で産生された動物モデル、および該動物モデルを用いて、有効な療法をスクリーニングする方法にも関する。

Description

発明の背景
1.発明の分野
[0001]本発明は、脳アミロイドーシス、痴呆またはアルツハイマー病に関連する症状を防止し、そして/または改善することが可能な化合物をスクリーニングする際に有用な、スフェロンの精製タンパク質構成要素に関する。本発明はまた、アルツハイマー病または痴呆動物モデルを作成する方法、該方法で産生された動物モデル、および該動物モデルを用いて、有効なアルツハイマー病療法をスクリーニングする方法にも関する。本発明はさらに、脳におけるプロSAASタンパク質もしくはその断片の遊離を防止するか、またはその濃度を減少させるか、あるいはプロSAASタンパク質もしくはその断片量の増加の影響を遮断するか、それと競合するか、またはそれを減弱させる方法および組成物に関する。
2.関連技術の説明
[0002]項目「アミロイドーシス」に分類されるのは、細胞外空間における異常な原線維(「アミロイド原線維」)の沈着に特徴付けられる、いくつかの病的状態である。アミロイド原線維は、言い換えると、多様なアレイのタンパク質の最終的な共通の経路に相当する。しかし、その生化学的構成にかかわりなく、すべての種類のアミロイド原線維は、(a)_ひだ状シート構造、(b)コンゴレッド色素染色後の偏光下の緑色複屈折、および(c)電子顕微鏡で典型的な外見を有する原線維形態を共有する。
[0003]アミロイド原線維の沈着は、家族性地中海熱、家族性アミロイドポリニューロパシーおよび全身性アミロイドーシスに例示される全身型障害では、いくつかの臓器に影響を及ぼしうるし、または局所型では、1つの臓器に限定されうる。後者の中に、項目「脳アミロイドーシス」に分類される状態があり、これは、アルツハイマー疾患群、すなわちアルツハイマー病(初老期痴呆、老年性痴呆);ダウン症候群に関連するアルツハイマー病;パーキンソン障害などの他の中枢神経系の疾患と関連するアルツハイマー病;およびコンゴ好染血管障害(アルツハイマー病に関連するかまたは関連しない)を含む。一般に、アルツハイマー病は、世界中の中年層および老年層に影響を及ぼす不治の脳疾患である。最近の概算によると、アルツハイマー病は、北米人の死因の4番目または5番目であり、そして概算不能な個人的および社会的悲劇、生産性の損失、および看護する社会の重荷の原因となっている。現在、アルツハイマー病の広く受け入れられる有効な治療はない。
[0004]アルツハイマー病の主な症状(徴候)は、記憶の損失および「痴呆」と称される行動によって類型化される、高次の精神的機能の損失である。痴呆は、脳卒中、脳炎および代謝疾患などの、アルツハイマー病以外の多くの脳疾患で見られうる症状または症候群である。記憶の損失および痴呆は、比較的、非特異的な症状であり、アルツハイマー病の特定の、そして特異的な定義は、Marinesco, Alzheimerらに最初に記載された、脳の特徴的な顕微鏡状態に基づく。Alzheimer, A., Allegemeine Zeitschrift fur Psychiatrie 64:146−148(1907);Marinesco, G., Comptes Rendus des Seances de la Societe de Biologie et ses Filiales 70:606−608(1911)を参照されたい。
[0005]アルツハイマー病の認められた指標であり、そしてアルツハイマー病を痴呆の他の原因と区別する、特有の顕微鏡上の特徴は、老人斑またはアミロイド斑および神経原線維変化と称される多数の脳病変の集積である。老人斑またはアミロイド斑は、球状で、直径10〜200_mの範囲であり、そして、老齢の成人脳皮質にはときどきしか見られないが、アルツハイマーに罹患した皮質に多数見られる。これらの病変は、脳試料中に適切な量で見出された場合、アルツハイマー病診断の定義の基準となる。
[0006]多量のアミロイド斑は、本質的に、アルツハイマー疾患群にしか見られず、一方、神経原線維変化は非特異的であり、そして少なくとも10の他の神経疾患に見られる。Corsellis, J.A.N., GREENFIELD’S NEUROPATHOLOGY 951−1025(第4版、1984)(Edward Arnold、ロンドン)を参照されたい。個々のアミロイド斑は、個々の神経原線維変化のおよそ1000倍の体積を有する。脳アミロイド斑総量および神経原線維総量の正確な測定は利用可能でないが、上に基づいて、アミロイド斑が占める異常な脳組織の体積は、神経原線維変化の数百倍であるようである。アミロイド斑の本質的な特徴は、アミロイド原線維の存在であり、これは、コンゴ好染赤緑複屈折微小線維成分である。Corsellis、前掲。
[0007]濃密小球体(DMS)と称される顕微鏡的構造が、正常な脳およびアルツハイマー病に罹患した脳に存在することが知られる。Averback, Acta Neuropathol. 61:148−52(1983)を参照されたい;結果は、Hara, J. Neuropath. Exp. Neurol. 45(2):169−178(1986)に確認された。DMSは、より最近は、「スフェロン」と呼ばれている。したがって、本発明の文脈において、「スフェロン」は、DMSと同一のものを意味し、そして正常な脳に存在する球状の顕微鏡的構造を指すであろう。
[0008]何人かの専門家は、スフェロンは、アルツハイマー病および関連状態に特徴的な脳アミロイドの供給源として、または前駆体として、脳アミロイド斑に関連すると考えている。スフェロンが存在する証拠は、固定された脳組織全体の顕微鏡的組織学的切片研究から得られる。スフェロンは、〜102/mm3の数のランダムに分散している、非常にまれな構造として観察される。
[0009]スフェロン(例えば「DMS」)の多様な構成要素が、先に同定されている。脳実質組織のスフェロンの分解は、アルツハイマー病および関連状態に特徴的な脳アミロイド斑形成の開始および進行と関連することが知られる。より具体的には、スフェロンの分解が、タンパク質構成要素および非タンパク質構成要素、またはタンパク質構成要素および非タンパク質構成要素の混合物を遊離させる。スフェロン構成要素の一部は脳アミロイド斑を形成し、一方、他の一部は、脳に留まるか、または脳脊髄液、血清等を含む、循環体液を介して、脳実質組織から取り除かれる。
[0010]スフェロンは、スフェロン破裂、およびそれに続く脳傷害の激変するカスケードをもたらす、成長および破裂サイクルを経るとも考えられている。本明細書に完全に援用される、米国特許第6,130,221号に開示されるように、個々のスフェロンが個々の脳アミロイド斑に破壊され、変性し、そして発展して、それが繰り返し発生して押し寄せ、他のスフェロン群または他のスフェロン領域が破壊され、変性し、そして発展する刺激を提供する、独特の自己触媒性現象を伴う、スフェロン破壊の開始および促進の重要な機構が発見されている。このチェックされていない自己触媒現象は、指数関数的成長パターンを引き起こす:in situで破壊されたスフェロンの最初の数がわずかに、おそらく統計的に有意でなく異なる(個々の脳の間で)ことが、何回かのサイクル後、統計的に有意な相異に発展する。例えば、他の要因がすべて等しいならば、最初に100のスフェロン破裂群を有する被験者は、最初に98のスフェロン破裂群を有する第二の被験者と、統計的にまたは症状的に異ならないであろう。しかし、やがて、最初のスフェロンが次に10のスフェロンの破壊を開始するならば、続いて、各々が次に10のスフェロン破壊を開始し、その後、20回のサイクル後、群1は、群2より2x1020多い破壊スフェロンを有することになり、これは有意である。
[0011]既知の化合物、系、方法および装置のいかなる不都合な点を本明細書に記載しても、これは本発明を限定することをまったく意図しない。実際、本発明は、既知の不都合な点に苦しむことなく、1以上の既知の化合物、系、方法および装置を使用することが可能である。
発明の概要
[0012]当該技術分野には、神経伝達物質欠損またはアミロイド斑形成に直接起因しないADの症状を治療する新規治療に関する必要性がいまだある。また、こうした症状を治療する際に有用な療法を同定する方法とともに、これらの症状を治療する際に有用な療法をスクリーニングする際に有用な動物モデルを開発する必要性も存在する。本発明はこれらの必要性を満たす。
[0013]本発明は、部分的に、アミロイド斑形成に直接起因しないスフェロン構成要素に対応するアミノ酸配列を含有するペプチドが、神経細胞に対して毒性であり、そして神経機能不全を含む他の有害な影響を引き起こすと考えられる、驚くべき発見を根拠としている。本発明はまた、部分的に、これらの特定の構成要素は、スフェロンから遊離した際に、アミロイドが生じる影響と区別可能な方式で、脳に損傷を与えるという発見を前提としている。
[0014]本発明はまた、スフェロンから遊離した際に存在する濃度のこれらの特定の構成要素が、プロタンパク質コンバターゼ1(PC1)阻害およびフューリンに対して非常に増加した活性(それとともにプロタンパク質コンバターゼPC2〜PC8に対する増加した活性)を提供して、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、インスリン、_MSH、_エンドルフィン、およびエンケファリン産生の減少を導くとともに、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRF)、ダイノルフィン、プロインスリン、プログルカゴン、プログルカゴン様ペプチド(GLP)、プロソマトスタチン、プロ膵ペプチド、プロGHRH、神経ペプチド・メラミン濃縮ホルモン、NEI、ニューロテンシン、オピオイドペプチド、および他のペプチドの減少または別の方式での改変、並びに神経機能不全を導くという発見を前提としている。これらの構成要素はまた、プロSAASドメインからの神経ペプチドの増加も提供する。上記すべてが、限定されるわけではないが、グルコース産生の撹乱(インスリンおよびACTH)、コルチコステロイド経路の撹乱(ACTH)、甲状腺経路の撹乱(TRH)、エンケファリンの撹乱、他の重要な生物活性脳分子および分子経路の撹乱とともに、グルカゴン、GLP、ソマトスタチン、膵ペプチド、GHRH、神経ペプチド・メラミン濃縮ホルモン、NEI、ニューロテンシン、およびオピオイドペプチドの撹乱を含む、影響のカスケードを生じると考えられる。さらに、プロタンパク質コンバターゼ阻害に対する活性が非常に増加すると、アミロイド前駆体タンパク質(APP)の翻訳後プロセシング、修飾および切断に関与する、プロBACE(ベータ部位APP切断酵素、ベータ−セクレターゼとしても知られる)などのプロ酵素の翻訳後プロセシングに影響を及ぼすであろう。これらの上記の多様な生化学的経路の不均衡が疾患を生じ、そして症状を生じることが周知である。これらの不均衡は、行動、精神、および認知の症状を生じることが周知であり、後者は、痴呆、並びに多様な種類の疾患およびアルツハイマー病に関連する痴呆などの神経変性障害に見られるものと類似である。
[0015]本発明の態様の特徴にしたがって、脳損傷および/または上述の障害のいずれかを治療するかまたは改善する方法であって、アミロイド斑形成に直接関与するスフェロン構成要素以外のスフェロン構成要素ペプチドの細胞毒性の影響(および本明細書に記載するか、または後に発見されるであろう、他の有害な影響)を防止する化合物を、こうした投与が必要な動物に投与することを含んでなり、スフェロン構成要素ペプチドが:
Figure 2005535565
から選択される1以上の構成要素である、前記方法を提供する。
[0016]本発明の態様の別の特徴にしたがって、アミロイド斑形成に関与するスフェロン構成要素以外のスフェロン構成要素ペプチドの細胞毒性の影響(および本明細書に記載するか、または後に発見されるであろう、他の有害な影響)を防止する化合物を含んでなる組成物であって、スフェロン構成要素ペプチドが上記群より選択される1以上の構成要素である、前記組成物を提供する。該化合物は、プロタンパク質コンバターゼ(PC1〜PC8)、フューリン、または:
Figure 2005535565
からなる群より選択される、PC1上の1以上の活性部位のいずれかであることが可能である。
[0017]本発明の態様のさらに別の特徴にしたがって、脳損傷または上述の他の障害のいずれかを治療するかまたは改善する際に有用な化合物をスクリーニングする方法であって、まず、再生可能細胞を培養することを含んでなる、前記方法を提供する。該方法はまた、アミロイド斑形成に関与するスフェロン構成要素以外のスフェロン構成要素ペプチドを、改変された細胞培養を形成する(例えば細胞の生存度を減少させることによって、プロホルモン(prophormone)コンバターゼPC1〜PC8阻害に対する細胞の活性を増加させることによって等)のに十分な濃度で、細胞に添加し、そしてその後、改変された細胞培養のいくつかに試験化合物を投与することも含む。試験化合物を投与していない対照に比較して、スフェロン構成要素に引き起こされる、改変された影響を減少させるかまたは改善するのに有効な試験化合物は、脳損傷または上述の他の障害いずれかを治療するかまたは改善する際に有用である。スフェロン構成要素ペプチドは、好ましくは:
Figure 2005535565
から選択される1以上の構成要素である。
[0018]本発明の態様の別の特徴にしたがって、アルツハイマー病症状の動物モデルまたは試験動物、動物モデルまたは試験動物を作成する方法、並びに動物モデルまたは試験動物を用いて、アミロイド斑形成に直接関与するスフェロン構成要素以外のスフェロン構成要素に引き起こされる脳損傷を治療するかまたは改善する有効な療法をスクリーニングする方法を提供する。動物モデルは、脳に挿入された遺伝子を有し、それによって、該遺伝子が上に定義する群から選択される1以上のスフェロン構成要素ペプチドを過剰発現する動物を含んでなる。試験動物は、上に定義する群から選択される1以上のスフェロン構成要素ペプチドを投与された動物を含んでなり、それによって、投与は、くも膜下腔内、静脈内、脳室内、または他の投与経路によることが可能である。したがって、動物モデルを作成する方法は、上に定義する群から選択される1以上のスフェロン構成要素ペプチドを発現する遺伝子を調製し、該遺伝子を動物の脳に取り込み(例えば当該技術分野に周知の方法にしたがった、トランスジェニック機構による)、そして該遺伝子を誘導して、スフェロン構成要素ペプチドを過剰発現させることを含む。試験動物を作成する方法は、上に定義する群から選択される1以上のスフェロン構成要素ペプチドを動物に投与することを含む。
[0019]動物モデルまたは試験動物を用いる方法は、試験動物群を用意するか、または上に定義する群から選択される1以上のスフェロン構成要素ペプチドを過剰発現する遺伝子を脳に有する動物群を用意し、そしてその後、該遺伝子を誘導して、スフェロン構成要素ペプチドを過剰発現させることを含む。該方法は、選択した動物群に試験化合物を投与し、動物を屠殺し、そしてその後、屠殺した動物の脳に存在する単離スフェロン構成要素ペプチドの量を測定し、そして/または遺伝子の位置で、またはその周囲で、生存細胞の割合を測定し、そして/または遺伝子過剰発現に関連した脳の傷害を測定し、そして/または動物における、改変された脳機能、行動等のいずれかを測定することを含む。対照に比較して、単離スフェロン構成要素ペプチドの量を減少させる試験化合物を選択することによって、そして/または試験化合物を投与していない対照に比較して、遺伝子の位置で、またはその周囲で、より高い割合の生存細胞を生じる試験化合物を選択することによって、そして/または対照に比較して、遺伝子過剰発現に関連する脳傷害をより少なくする試験化合物を選択することによって、そして/または対照に比較して、改善された脳機能、行動等を生じる試験化合物を選択することによって、該方法は完結する。
[0020]本発明の多様な態様のこれらの特徴および他の特徴は、実施例を含む本発明の詳細な説明を概観すると、一般の当業者には、容易に明らかであろう。
好ましい態様の詳細な説明
[0021]本明細書に用いる用語および句は、別に明記しない限り、以下に示すように定義される。別に定義しない限り、本明細書で用いる、すべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の一般の当業者に一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載するものと類似かまたは同等の方法および材料いずれも、本発明の実施または試験に使用可能であるが、好ましい方法、装置、および材料をここに記載する。本明細書に言及する刊行物はすべて、該刊行物に報告され、そして本発明と関連して使用可能な化合物、分子、細胞株、ベクター、および方法論を記載し、そして開示する目的のために引用される。本明細書のいかなるものも、本発明が、先行する発明に基づくこうした開示に先行する権利を与えられないことを承認したとみなしてはならない。
[0022]本説明全体で、句「アルツハイマー病および関連状態」は、項目「脳アミロイドーシス」に分類される状態を意味する。こうした状態には、限定されるわけではないが、アルツハイマー病(初老期痴呆、老年性痴呆);ダウン症候群に関連するアルツハイマー病;パーキンソン障害などの他の中枢神経系の疾患に関連するアルツハイマー病;コンゴ好染血管障害(アルツハイマー病に関連するかまたは関連しない)、および前頭側頭痴呆(FTD)などの他の痴呆、軽度認知障害等が含まれる。本説明全体で、句「DMS構成要素」または「スフェロン構成要素」は、DMSの内部領域または中央領域から、あるいは外膜部分から得られる、DMSの構成要素いずれか、タンパク質、非タンパク質、またはタンパク質および非タンパク質の混合物を意味する。本説明全体で、句「破壊」または「DMSを含んでなる懸濁物の消化」は、DMSがDMS構成要素に分解されるいかなるプロセスも意味する。
[0023]「スフェロン構成要素」は、本明細書において、スフェロン(以前のDMS)の構成要素を指し、そして本明細書に特に記載されるものとともに、その開示が本明細書に完全に援用される米国特許第6,309,892号および第5,525,339号に記載されるあらゆる構成要素を含む。
[0024]本明細書および付随する請求項において、単数形“a”、“an”および“the”は、文脈が明らかに別に指示しない限り、複数形の言及も含む。したがって、例えば「(単数の)宿主細胞」への言及は、複数のこうした宿主細胞も含み、そして「(単数の)抗体」への言及は、当業者に知られる1以上の抗体およびその同等物への言及であるなどである。
[0025]本明細書に記載するアミノ酸およびアミノ酸残基は、以下の表に提供する、認められた一文字暗号または三文字暗号にしたがって言及される可能性がある。別に明記しない限り、これらのアミノ酸またはアミノ酸残基は、天然存在Lステレオ異性体型のものである。
Figure 2005535565
[0026]用語「断片」は、本明細書において、対象アミノ酸配列または対象分子の連続した下位配列からなるタンパク質またはポリペプチドを指し、そしてスプライシング変異体および天然存在in vivoプロテアーゼ活性から生じる断片などの天然存在断片を含む。「対象アミノ酸配列」および「対象分子」は、本明細書において、断片化されているか、または別の方式で修飾されているアミノ酸配列または分子を意味する。こうした断片は、アミノ末端、カルボキシ末端、および/または内部で(天然スプライシングによるなど)一部切除(truncated)されていることが可能である。こうした断片は、アミノ末端メチオニンを含みまたは含まずに調製可能である。用語「断片」は、同一であれ、別個のものであれ、対象アミノ酸配列由来の断片を含み、共通のまたは共通でない連続アミノ酸配列が、直接、またはリンカーを通じて、ともに連結されている。
[0027]用語「変異体」は、対象アミノ酸配列または対象分子に比較した際、1以上のアミノ酸置換、欠失、および/または挿入が存在するタンパク質またはポリペプチドを指し、そしてその天然存在アレル変異体または選択的スプライシング変異体を含む。用語「変異体」は、ペプチド配列中の1以上のアミノ酸と、類似アミノ酸(単数または複数)または相同アミノ酸(単数または複数)あるいは類似でないアミノ酸(単数または複数)の交換を含む。アミノ酸を類似または相同と位置付けることが可能な多くの尺度がある(Gunnar von Heijne, Sequence Analysis in Molecular Biology, p.123−39(Academic Press, ニューヨーク州ニューヨーク 1987))。好ましい変異体には、1以上のアミノ酸位でのアラニン置換が含まれる。他の好ましい置換には、タンパク質全体の純電荷、極性、または疎水性にほとんどまたはまったく影響を持たない保存的置換が含まれる。保存的置換を以下の表1に示す。
表1
保存的アミノ酸置換
Figure 2005535565
表2は、アミノ酸置換の別のスキームを示す:
表2
Figure 2005535565
[0028]他の変異体は、より保存されていないアミノ酸置換からなることが可能であり、例えば、(a)例えばシートまたはらせんコンホメーションとしての、置換領域のポリペプチド主鎖の構造、(b)ターゲット部位での分子の電荷または疎水性、あるいは(c)側鎖の大きさ、の維持に対して、より有意に異なる影響を持つ残基を選択することが可能である。一般的に、機能に対して、より有意な影響を有すると期待される置換は、(a)グリシンおよび/またはプロリンが別のアミノ酸に置換されるか、あるいは欠失されるかまたは挿入されるもの;(b)親水性残基、例えばセリルまたはスレオニルが、疎水性残基、例えばロイシル、イソロイシル、フェニルアラニル、バリル、またはアラニルに対して(によって)置換されるもの;(c)システイン残基が別の残基いずれかに対して(によって)置換されるもの;(d)陽性側鎖を有する残基、例えばリジル、アルギニル、またはヒスチジルが、陰性電荷を有する残基、例えばグルタミルまたはアスパルチルに対して(によって)置換されるもの;あるいは(e)大きな側鎖を有する残基、例えばフェニルアラニンが、こうした側鎖を持たないもの、例えばグリシンに対して(によって)置換されるものである。
[0029]他の変異体には、新規グリコシル化部位(単数または複数)および/またはリン酸化部位(単数または複数)を生成するように設計されたもの、あるいは存在するグリコシル化部位(単数または複数)および/またはリン酸化部位(単数または複数)を欠失させるように設計されたものが含まれる。変異体には、グリコシル化部位、タンパク質分解的切断部位および/またはシステイン残基での少なくとも1つのアミノ酸置換が含まれる。変異体にはまた、リンカーペプチド上、対象実体の前または後に、さらなるアミノ酸残基を含む、対象アミノ酸配列または対象分子も含まれる。例えば、ジスルフィド結合形成による環化を可能にするため、アミノ末端およびカルボキシ末端両方に、システイン残基を付加することが可能である。用語「変異体」はまた、対象実体の3’端または5’端いずれかに隣接した、少なくとも1つで、そして25までまたはそれより多いさらなるアミノ酸を持つ対象アミノ酸配列または対象分子のアミノ酸配列を有するポリペプチドも含む。
[0030]用語「誘導体」は、プロセシングおよび他の翻訳後修飾などの天然プロセスによるだけでなく、例えば1以上のポリエチレングリコール分子、糖、ホスフェート、および/または他のこうした分子が、野生型対象アミノ酸配列または対象分子に天然に付着していない場合、こうした単数または複数の分子の付加によるなどの、化学的修飾技術によって化学的に修飾された、化学的修飾タンパク質またはポリペプチドを指す。誘導体には塩が含まれる。こうした化学的修飾は、基本的教科書に、そしてより詳細にはモノグラフに、それとともに多量の研究文献によく記載され、そして当業者に周知である。同じ種類の修飾が、既定のタンパク質またはポリペプチドのいくつかの部位に同じ度合いでまたは異なる度合いで存在することが可能であることが認識されるであろう。また、既定のタンパク質またはポリペプチドが、多くの種類の修飾を含有することが可能である。
[0031]修飾は、タンパク質またはポリペプチドのどこで生じることも可能であり、これには、ペプチド主鎖、アミノ酸側鎖、およびアミノ末端またはカルボキシ末端が含まれる。修飾には、例えば、アセチル化、アシル化、ADP−リボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質または脂質誘導体の共有結合、ホスファチジルイノシトールの共有結合、架橋、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有架橋の形成、システインの形成、ピログルタメートの形成、ホルミル化、ガンマ−カルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨード化、メチル化、ミリストイル化、酸化、タンパク質分解プロセシング、ホスホリル化、プレニル化、ラセミ化、グリコシル化、脂質付着、硫酸化、グルタミン酸残基のガンマ−カルボキシル化、ヒドロキシル化およびADPリボシル化、セレノイル化、硫酸化、トランスファーRNAが仲介するアルギニル化などのタンパク質へのアミノ酸の付加、およびユビキチン化が含まれる。例えばProteins−−Structure And Molecular Properties, 第2版, T.E. Creighton, W.H.Freeman and Company, ニューヨーク(1993)およびWold, F., “Posttranslational Protein Modifications:Perspectives and Prospects,” Posttranslational Covalent Modification Of Proteins中, 1〜12ページ, B.C. Johnson監修, Academic Press, ニューヨーク(1983);Seifterら, Meth. Enzymol. 182:626−646(1990)およびRattanら, “Protein Synthesis:Posttranslational Modifications and Aging,” Ann. N.Y. Acad. Sci. 663:48−62(1992)を参照されたい。用語「誘導体」には、分枝する、あるいは分枝して環状に、または分枝せずに環状になる、タンパク質またはポリペプチドを生じる化学的修飾が含まれる。環状、分枝および分枝環状タンパク質またはポリペプチドは、翻訳後天然プロセスから生じる可能性があり、そしてまた、完全に合成的な方法で作成することも可能である。
[0032]用語「相同体」は、2つのポリペプチドのアミノ酸の位における類似性を比較するのに一般的に用いられる標準法によって決定されるように、アミノ酸配列が少なくとも60%同一であるタンパク質またはペプチドを指す。2つのタンパク質の類似性または同一性の度合いは、限定されるわけではないが、Computational Molecular Biology, Lesk, A.M.監修, Oxford Unversity Press, ニューヨーク, 1988;Biocomputing:Informatics and Genome Projects, Smith, D.W.監修, Academic Press, ニューヨーク, 1993;Computer Analysis of Sequence Data, 第1部, Griffin, A.M.およびGriffin, H.G.監修, Humana Press, ニュージャージー州, 1994;Sequence Analysis in Molecular Biology, von Heinje, G., Academic Press, 1987;Sequence Analysis Primer, Gribskov, M.およびDevereux, J.監修, M Stockton Press, ニューヨーク, 1991;並びにCarillo H.およびLipman, D., SIAM, J. Applied Math., 48:1073(1988)に記載されるものを含む、既知の方法によって、容易に計算可能である。同一性を決定する好ましい方法は、試験する配列間で最大のマッチを生じさせるように設計される。同一性および類似性を決定する方法は、公的に利用可能なコンピュータプログラムに体系化されている。
[0033]2つの配列間の同一性および類似性を決定する際に有用な好ましいコンピュータプログラム法には、限定されるわけではないが、GCGプログラムパッケージ(Devereux, J.ら, Nucleic Acids Research, 12(1):387(1984))、BLASTP、BLASTN、およびFASTA、Atschul, S.F.ら, J. Molec. Biol., 215:403−410(1990)が含まれる。BLAST Xプログラムは、NCBIおよび他の供給源から公的に入手可能である(BLAST Manual, Altschul, S.ら, NCBI NLM NIH Bethesda, Md. 20894;Altschul, S.ら, J. Mol. Biol. 215:403−410(1990))。例えば、GAP(ウィスコンシン大学遺伝子コンピュータグループ、ウィスコンシン州マディソン)などのコンピュータアルゴリズムを用いて、配列同一性パーセントを決定しようとする2つのタンパク質またはポリペプチドを、各アミノ酸が最適にマッチするように、並列させる(アルゴリズムに決定されるような「マッチスパン」)。
[0034]ギャップオープニングペナルティ(平均対角の3倍として計算;「平均対角」は、用いる比較マトリックスの対角の平均であり;「対角」は、特定の比較マトリックスによる、各完全アミノ酸に割り当てられたスコアまたは数字である)およびギャップ伸長ペナルティ(通常、ギャップオープニングペナルティの1/10)とともに、PAM250またはBLOSUM62などの比較マトリックスを、アルゴリズムと組み合わせて用いる。標準比較マトリックス(PAM250比較マトリックスに関しては、Dayhoffら:Atlas of Protein Sequence and Structure, vol.5, supp.3[1978]を参照されたい;BLOSUM62比較マトリックスに関しては、Henikoffら, Proc. Natl. Acad. Sci USA, 89:10915−10919[1992]を参照されたい)もまた、アルゴリズムに使用可能である。その後、アルゴリズムによってパーセント同一性が計算される。相同体は、典型的には、対象アミノ酸配列または対象分子と比較して、1以上のアミノ酸置換、欠失、および/または挿入を有するであろう。
[0035]用語「組み合わせ」は、本明細書に記載するペプチドの組み合わせに言及する場合、2以上のペプチドの多様な順列および組み合わせを意味する。例えば、組み合わせは、先頭部分から最後尾まで結合した配列番号1〜4の組み合わせ、または配列番号1の最後の7アミノ酸と配列番号2の最初の5アミノ酸の組み合わせ等を含むことが可能である。
[0036]用語「ペプチド模倣体(mimetic)」または「模倣体」は、ペプチドまたはタンパク質の生物学的活性を模倣するが、もはや化学的性質はペプチド性でない、すなわちもはやペプチド結合(すなわちアミノ酸間のアミド結合)をまったく含有しない、生物学的活性化合物を指す。本発明の文脈において、ペプチド模倣体という表現は、より広い意味で用いられ、事実上、もはや完全にペプチド性でない分子、例えばシュードペプチド、半ペプチドおよびペプトイドなどが含まれる。この、より広い意味でのペプチド模倣体の例(ペプチドの一部が、ペプチド結合を欠く構造と交換されている場合)を以下に記載する。完全な非ペプチドであれ、部分的な非ペプチドであれ、本発明記載のペプチド模倣体は、そのペプチド模倣体の基となる対象アミノ酸配列または対象分子の活性基の三次元配置を緊密に真似る、反応性化学部分の空間的配置を提供する。この類似の活性部位の幾何学的形状の結果、ペプチド模倣体は、対象実体の生物学的活性に似た、生物学的系に対する影響を有する。
[0037]本発明のペプチド模倣体は、好ましくは、三次元形状および生物学的活性両方において、本明細書記載の対象実体に実質的に類似である。当該技術分野に知られるペプチドを構造的に修飾してペプチド模倣体を生成する方法の例には、D−アミノ酸残基構造を導く、主鎖キラル中心の反転が含まれ、D−アミノ酸残基構造は、特にN末端で、不都合に影響を及ぼす活性を伴わずに、タンパク質分解的分解に対して、増進した安定性を導く。この例は、論文“Tritriated D−ala1−Peptide T Binding”, Smith C.S.ら, Drug Development Res., 15, pp.371−379(1988)に記載される。第二の方法は、NからCの鎖間イミドおよびラクタムなどの、安定性のための環状構造の改変である(Edeら, SmithおよびRivier(監修)“Peptides:Chemistry and Biology”, Escom, Leiden(1991)中, pp.268−270)。この例は、その開示が本明細書に完全に援用される、米国特許第4,457,489号(1985)、Goldstein, G.らに開示されるものなどの、コンホメーション的に制限されたチモペンチン様化合物に提供される。第三の方法は、対象実体のペプチド結合を、タンパク質分解に耐性を与えるシュードペプチド結合によって置換することである。
[0038]ペプチド構造および生物学的活性に概して影響を与えない、いくつかのシュードペプチド結合が記載されている。このアプローチの1つの例は、レトロ−インバーソ(retro−inverso)シュードペプチド結合で置換することである(“Biologically active retroinverso analogues of thymopentin”, Sisto A.ら, Rivier, J.E.およびMarshall, G.R.(監修)“Peptides, Chemistry, Structure and Biology”, Escom, Leiden(1990)中, pp.722−773およびDalpozzoら(1993), Int. J. Peptide Protein Res., 41:561−566、本明細書に援用される)。この修飾にしたがって、ペプチドのアミノ酸配列は、1以上のペプチド結合が、レトロ−インバーソ シュードペプチド結合と交換されていることを除いて、本明細書記載の対象アミノ酸配列または対象分子の配列と同一であることが可能である。好ましくは、最もN末端のペプチド結合が置換されており、これはこうした置換が、N末端に作用するエキソペプチダーゼによるタンパク質分解に対して、耐性を与えるであろうためである。アミノ酸の化学基を、類似の構造の他の化学基と交換することによって、さらなる修飾もまた、作成可能である。生物学的活性をまったく損失させないか、またはほとんど損失させずに、酵素的切断に対する安定性を増進させることが知られる、別の適切なシュードペプチド結合は、還元アイソスター・シュードペプチド結合である(Couderら(1993), Int. J. Peptide Protein Res., 41:181−184、本明細書に完全に援用される)。
[0039]したがって、これらのペプチドのアミノ酸配列は、1以上のペプチド結合が、アイソスター・シュードペプチド結合と交換されていることを除いて、対象アミノ酸配列の配列と同一であることが可能である。表現「アミノ酸配列(単数または複数)」は、好ましくは、本明細書において、少なくとも2つのアミノ酸、好ましくは少なくとも4つのアミノ酸、そしてさらに好ましくは少なくとも5つのアミノ酸の配列を意味するよう用いられる。好ましくは、最もN末端のペプチド結合が置換されており、これはこうした置換が、N末端に作用するエキソペプチダーゼによるタンパク質分解に対して、耐性を与えるであろうためである。1以上の還元アイソスター・シュードペプチド結合を持つペプチドの合成が当該技術分野に知られる(Couderら(1993)、上記引用)。他の実施例には、ペプチド結合を置換する、ケトメチレン結合またはメチルスルフィド結合の導入が含まれる。
[0040]対象アミノ酸配列および対象分子のペプトイド誘導体は、生物学的活性の重要な構造的決定基を保持するが、ペプチド結合が取り除かれ、それによってタンパク質分解に対する耐性が与えられた、別の種類のペプチド模倣体に相当する(Simonら, 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:9367−9371、本明細書に完全に援用される)。ペプトイドは、N−置換グリシンのオリゴマーである。いくつかのN−アルキル基が記載されており、各々は天然アミノ酸の側鎖に対応する(Simonら(1992)、上記引用)。対象アミノ酸配列のアミノ酸のいくつかまたはすべてを、置換アミノ酸に対応するN−置換グリシンと交換することが可能である。
[0041]「既定の分子を含んでなる組成物」(例えば抗体、二特異性抗体、または二重特異性抗体(diabody))または「既定のアミノ酸配列を含んでなる組成物」は、本明細書において、広く、既定の分子、ポリヌクレオチドまたはアミノ酸配列を含有する、いかなる組成物も指す。組成物は、乾燥配合物、水性溶液、非水性溶媒中の溶液、または無菌組成物を含んでなることが可能である。組成物を凍結乾燥型で保存することが可能であり、そして炭水化物などの安定化剤と会合させることが可能である。ハイブリダイゼーションおよび他の適用において、組成物は、塩、例えばNaCl、界面活性剤、例えばドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、および他の構成要素、例えばデンハルト溶液、粉乳、サケ精子DNAなどを含有する水性溶液中に分散していることが可能である。
[0042]本説明および付随する請求項全体で、「ペプチド」、「スフェロン構成要素ペプチド」および特定のアミノ酸配列への言及は、具体的に同定されたこれらの配列を含み、そしてその断片、変異体、誘導体、相同体、組み合わせ、および模倣体を含む。
[0043]本説明全体で、表現「特異的結合」または「特異的に結合している」、「結合している」、「結合する」および/または「認識する」は、分子、タンパク質またはペプチドと、アゴニスト、抗体、またはアンタゴニスト間の相互作用をさす。該相互作用は、結合分子に認識される、タンパク質の特定の構造、例えば抗原決定基またはエピトープの存在に依存する。例えば、抗体がエピトープ「A」に特異的であるならば、未結合標識Aおよび抗体を含有する反応において、エピトープAを含有するポリペプチドが存在するか、または未結合未標識Aが存在すると、抗体に結合する標識Aの量が減少するであろう。
[0044]本発明の発明者らは、アミロイド斑形成に直接起因するスフェロン構成要素ペプチドでない特定のスフェロン構成要素ペプチドが、とりわけ細胞毒性であることを見出した。本発明の発明者らは、これらの特定のスフェロン構成要素ペプチドが、脳細胞の生存度を減少させることを見出した。これらのスフェロン構成要素ペプチドが動物の脳において遊離した際の細胞毒性の影響は、脳損傷、神経機能不全、およびアミロイドが生じる影響と区別可能なアルツハイマー病の症状を引き起こすと考えられる。この発見に基づいて、そして産生または作動のいかなる理論にも縛られることを意図せずに、本発明の発明者らは、スフェロン構成要素ペプチドの細胞毒性および/または神経機能不全を減少させ、そして/または防止すれば、アルツハイマー病、または脳アミロイドーシスに関連する痴呆の少なくとも1以上の症状が防止され、そして/または改善されるであろうと考えている。
[0045]本発明の発明者らはまた、これらの特定のスフェロン構成要素が、スフェロンから遊離する濃度で存在するならば、多くの他の副作用の原因となる可能性があるとも考えている。本明細書記載のスフェロン構成要素ペプチドは、プロSAASと称され、グラニン様神経内分泌ペプチド前駆体として知られるタンパク質の部分と類似であり、そして一致する。プロSAASは、1nMの組織濃度で活性である。スフェロン由来のプロSAASは、脳において、1nMよりはるかに高い濃度で、脳のスフェロン中に存在する。これらの選択された濃度では、本明細書記載のプロSAASおよびスフェロン構成要素ペプチドは、プロタンパク質コンバターゼ1(PC1)阻害およびフューリンに対して非常に増加した活性(それとともにプロタンパク質コンバターゼPC2〜PC8に対する増加した活性)を提供して、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、インスリン、_MSH、_エンドルフィン、およびエンケファリン産生を減少させるとともに、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRF)、ダイノルフィン、プロインスリン、プログルカゴン、プログルカゴン様ペプチド(GLP)、プロソマトスタチン、プロ膵ペプチド、プロGHRH、神経ペプチド・メラミン濃縮ホルモン、NEI、ニューロテンシン、オピオイドペプチド、および他のペプチドの減少または別の方式での改変、並びに神経機能不全を導く。さらに、プロタンパク質コンバターゼ阻害に対する活性が非常に増加すると、アミロイド前駆体タンパク質(APP)の翻訳後プロセシング、修飾および切断に関与する、プロBACE(ベータ部位APP切断酵素、ベータ−セクレターゼとしても知られる)などのプロ酵素の翻訳後プロセシングに影響を及ぼすであろう。これらの構成要素はまた、プロSAASドメイン由来の神経ペプチドの増加も提供する。上記すべてが、限定されるわけではないが、グルコース産生の撹乱(インスリンおよびACTH)、コルチコステロイド経路の撹乱(ACTH)、甲状腺経路の撹乱(TRH)、エンケファリンの撹乱、他の重要な生物活性脳分子および分子経路の撹乱とともに、グルカゴン、ソマトスタチン、膵ペプチド、GHRH、神経ペプチド・メラミン濃縮ホルモン、NEI、ニューロテンシン、およびオピオイドペプチドの撹乱を含む、影響のカスケードを導くと考えられる。これらの上記の多様な生化学的経路の不均衡が疾患を生じ、そして症状を生じることが周知である。これらの不均衡は、行動および精神および認知の症状を生じることが周知であり、後者は、多様な種類の痴呆およびアルツハイマー病などの神経変性障害に見られるものと類似である。
[0046]したがって、本発明の発明者は、脳において、異常に上昇した量のプロSAASの有害な影響を改善するかまたは減弱するのに有効であろう化合物によって、スフェロン由来の異常に上昇したプロSAAS濃度が薬理学的に遮断されるであろうと考えている。スフェロンに関連して、脳において、異常に上昇した量のプロSAASによってもたらされる、プロ−オピオメラノコルチン(POMC)の分解減少の有害な影響を改善するかまたは減弱するのに有効であろう化合物によって、スフェロン由来の異常に上昇したプロSAAS濃度が薬理学的に遮断されるであろうことが、さらに予想される。脳において、異常に上昇した量のプロSAASによってもたらされる、ACTH、インスリンおよびエンケファリンに関連する分子および経路のレベル上昇の有害な影響を改善するかまたは減弱するのに有効であろう化合物によって、スフェロン由来の異常に上昇したプロSAAS濃度が薬理学的に遮断されるであろうことが、さらに予想される。
[0047]本発明の発明者らはまた、生存組織に、プロSAASの部分と類似であり、そして一致するスフェロン構成要素ペプチドが存在することが、先に報告されたように、スフェロン破壊の指標であり、そしてしたがって脳アミロイドーシス開始の指標であるだけでなく、他の生存組織細胞死を引き起こす場合、毒性でもあると考えている。これらのスフェロン構成要素ペプチドの存在はまた、PC1阻害およびPC2阻害に対する活性を非常に増加させ、ACTH、インスリン、およびエンケファリン産生の減少;それとともに、TRF、ダイノルフィン、および他のペプチドの減少を導く。これらの濃度でプロSAASまたはその断片が存在すると、プロSAASドメイン由来の神経ペプチドの増加も導くであろう。
[0048]本発明の発明者は、生存哺乳動物脳組織に存在するスフェロン構成要素ペプチドが、脳アミロイドーシスのマーカーであり、そしてスフェロン構成要素ペプチドが存在する生存組織において、細胞壊死を引き起こすことによって、脳アミロイドーシスを悪化させると考えている。したがって、哺乳動物が脳アミロイドーシスに罹患すると、スフェロンが破壊され始め、破裂し、そして/または別の方式で分解し、それによってスフェロン構成要素ペプチドを生じると考えられる。本発明の発明者は、こうして産生されたスフェロン構成要素ペプチドのあるものが、有害なアミロイドタンパク質の前駆体であり、一方、他のスフェロン構成要素ペプチドは、スフェロン構成要素の近傍で、アミロイドを形成することなく、他の生存組織(例えば他の神経細胞および脳組織)を破壊し始め、従って疾患の経過を悪化させると考えている。これらの状態は、スフェロンから遊離したと考えられる、プロSAASまたはその断片の異常に高く増加した濃度に引き起こされる、上述の他の状態に加えられる。
[0049]したがって、本発明は、脳損傷および他の障害を治療するかまたは改善する方法であって、アミロイド斑形成に直接関与するスフェロン構成要素以外のスフェロン構成要素ペプチドの細胞毒性の影響(および本明細書に記載するか、または後に発見されるであろう、他の有害な影響)を防止する化合物を、こうした投与が必要な動物に投与することを含んでなり、スフェロン構成要素ペプチドが:
Figure 2005535565
から選択される、1以上の構成要素とともに、その変異体、誘導体、相同体、およびペプチド模倣体である、前記方法に関する。
[0050]本発明の方法および組成物は、アルツハイマー病、脳血管性痴呆または多発脳梗塞性痴呆、レビー小体痴呆、パーキンソン病、ピック病、前頭側頭型痴呆(FTP)、および軽度認知障害を含む障害を治療するのに有効である。したがって、本発明の組成物には、脳におけるスフェロンからのプロSAASまたはそのペプチド断片の遊離の影響を相殺する、薬学的に有効な量の化合物が含まれる。こうしたスフェロン構成要素の影響の相殺は、多くの方法で達成可能であるが、最終的な結果は、1つの型または別の型のこうしたスフェロン構成要素を不活性にする(またはその有害な影響を相殺する)ことである。該構成要素は、好ましくは:(i)脳におけるスフェロンからのプロSAASまたはそのペプチド断片の遊離によって引き起こされる、脳または他の神経内分泌組織におけるプロタンパク質コンバターゼ1〜8(PC1〜PC8)およびフューリンの異常に阻害された活性;(ii)脳におけるスフェロンからのプロSAASまたはそのペプチド断片の遊離によって引き起こされる、異常に減少した副腎皮質刺激ホルモン(ACTH);(iii)脳におけるスフェロンからのプロSAASまたはそのペプチド断片の遊離によって引き起こされる、異常に減少したインスリン;(iv)脳におけるスフェロンからのプロSAASまたはそのペプチド断片の遊離によって引き起こされる、異常に減少したエンケファリン;(v)脳におけるスフェロンからのプロSAASまたはそのペプチド断片の遊離によって引き起こされる、異常に減少した甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH);(vi)脳におけるスフェロンからのプロSAASまたはそのペプチド断片の遊離によって引き起こされる、異常に減少したダイノルフィン;および(vii)異常に増加した、本明細書記載の他のプロSAAS断片によって引き起こされる、異常に増加したニューロテンシンの影響および細胞シグナル伝達の影響などの影響を相殺する。
[0051]本発明の組成物、方法、および化合物はまた、脳におけるスフェロンからのプロSAASまたはそのペプチド断片の遊離によって引き起こされる、PC1または他のコンバターゼ(例えばPC2〜PC8、SPC3)およびフューリンの阻害を減少させるかまたは相殺するのにも有効である。本発明の化合物、組成物、および方法は:(i)脳ACTH;(ii)脳インスリン;(iii)脳エンケファリン;(iv)脳TRH;(v)脳ダイノルフィン;(vi)脳_MSHおよび脳_エンドルフィン;(vii)脳プロインスリン;(viii)脳プログルカゴン;(ix)脳プロソマトスタチン;(x)脳プロ膵ペプチド;(xi)脳プロGHRH;(xii)脳神経ペプチド・メラミン濃縮ホルモン;(xiii)脳NEI;(xiv)脳ニューロテンシン;および(xv)脳オピオイドペプチド等を増加させるかまたは別の方式で改変することによって、脳におけるスフェロンからのプロSAASまたはそのペプチド断片の遊離の影響を相殺することが好ましい。
[0052]上述のレベルは、上に列挙する特定の構成要素を添加することによって増加させることが可能であり、そしてその結果、本発明の組成物および方法は、プロタンパク質コンバターゼ、その断片、ドメインまたはサブユニットなどの、上に列挙する構成要素を1以上含み、それによって、プロタンパク質コンバターゼは、脳においてスフェロンから遊離するプロSAASまたはそのペプチド断片(例えば配列番号1〜23)に対する親和性を有する。該組成物はまた、脳においてスフェロンから遊離するプロSAASまたはそのペプチド断片(例えば配列番号1〜23)に対する親和性を有する抗体、抗体断片または短鎖抗体を含むことも可能である。さらに、本発明の組成物は、PC1、または:
Figure 2005535565
からなる群より選択されるPC1の1以上の活性部位の添加によって、PC1の阻害を相殺する化合物を含むことが可能である。
[0053]先に言及したように、上に列挙するスフェロン構成要素ペプチドは、プロSAASと称され、グラニン様神経内分泌ペプチド前駆体として知られるタンパク質のすべてまたは一部と類似であり、そして一致する。プロSAASの同定および性質決定は、Fricker, L.D.ら, “Identification and Characterization of pro−SAAS, a Granin−Like Neuroendocrine Peptide Precursor that Inhibits Prohormone Processing”, J. Neurosci, 20(2):639−648(2000)に記載される。プロSAASは動物の肥満に関連すると考えられている。従来、プロSAASまたはプロSAASの一部を形成しうるペプチドのいずれかが、スフェロンと何らかの関連を有するか、あるいは脳細胞に対して何らかの細胞毒性の影響を有するか、あるいはアルツハイマー病、痴呆、または脳アミロイドーシスに何らかの関連を有することは知られていなかった。また、従来、プロSAASのすべてまたは一部を形成しうるペプチドのいずれかが、いくつかの有害な影響いずれかを引き起こすのに十分に高い濃度で、スフェロンから遊離するか、または別の方式で得られることも知られていなかった。
[0054]本発明の態様の別の特徴にしたがって:(i)スフェロンからのプロSAASまたはそのペプチド断片の遊離を妨害するかまたは防止する;(ii)スフェロンから遊離したプロSAASまたはそのペプチド断片に結合するか、これらを阻害するか、これらに拮抗するか、または競合する;あるいは(iii)スフェロンから遊離したプロSAASまたはそのペプチド断片の細胞毒性の影響または他の有害な影響を減少させるかまたは防止するか、の1以上を行う化合物を含んでなる組成物であって、ここで、プロSAASまたはそのペプチド断片が、アミロイド斑形成に関与するスフェロン構成要素以外のスフェロン構成要素ペプチドであり、スフェロン構成要素ペプチドが上記群から選択される1以上の構成要素である、前記組成物を提供する。
[0055]既知であり、そして上述の論文に記載される技術とともに、米国特許第5,525,339号および第6,309,892号に記載される技術を用いて、上述のスフェロン構成要素ペプチドを単離し、そして精製することが可能である。スフェロンは、哺乳動物脳組織から得ることが可能であり、そして直径約0.1_m〜約15_mの範囲によって、そして特定の染色可能特性によって、本質的に均質な形で、性質決定することが可能である。これに関連して、「均質」は、光学顕微鏡レベルで、対象組成物中、スフェロンが唯一の識別可能な構造に相当することを意味する。例えば、本発明の微小球体は、オスミウムおよび鉛で染色すると、均質に電子密度が高く、そして薄切片電子顕微鏡によって視覚化可能であり;光学顕微鏡検査では、エオシン好染およびフロキシン好染のようであり、そしてコンゴレッドで染色した際、非複屈折性である。本発明の微小球体が破壊されるか、または分解されるか、または消化されると、コンゴ好染複屈折を示す物質が生じる;すなわちコンゴレッドで染色すると、この物質は、入射光波が相互に垂直な振動平面を持つ2つの波に分かれる度合いまで、光学的に異方性になる。免疫学的標識法によって、スフェロン中のアミロイドタンパク質もまた、検出可能である。
[0056]球状の細胞内スフェロンは、典型的には、ヒトおよび他の哺乳動物脳において、灰白質神経網中に見られ、灰白質神経網では、球状構造は、小さい神経細胞性の突起に取り囲まれている。スフェロンは、通常、単独であり、周核体にはなく、そして集密ではなく、そして小脳または白質には容易には見られない。スフェロン間の距離に関しては、灰白質領域におけるスフェロンの空間分布はランダムである。本明細書にその内容が完全に援用される米国特許第4,816,416号および第5,231,170号に記載される方法にしたがって、球体の均質な試料を産生する抽出によって、均質な型のスフェロンの組成物を産生可能である。スフェロンはアミロイドを含有する。
[0057]前述の米国特許第4,816,416号および第5,231,170号に記載する方法によって、上述の方法にしたがって調製したスフェロンの均質な組織物を破壊し、そしてその後、示差勾配遠心分離に供することが可能である。別個の沈降層に分離された物質をコンゴレッドで染色する。本発明の発明者は、スフェロン構成要素が、脳アミロイド斑形成に主に関与していると考えている。慣用的な抽出法によって、スフェロン膜のタンパク質構成要素を単離することが可能である。スフェロン構成要素の抽出によって、そして一般の当業者に周知のクロマトグラフィーなどの慣用法によって、スフェロン構成要素のさらなる解析が達成可能である。
[0058]多様な方法によってスフェロンを処理して、本発明にしたがって使用するのに適したスフェロン構成要素を得ることが可能である。これらの方法の典型的なものは:(a)TRIS、グリセロール、ベータ−メルカプトエタノール、ブロモフェノールブルーおよびドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含むPAGE緩衝溶液、(b)超音波および(c)0.25M酢酸、6MグアニジンHCl、ギ酸、6M尿素、ペプシンおよび臭化シアンの多様な組み合わせで処理するなどの他のタンパク質分解処理である。ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)によって分子量にしたがって、または逆相高性能液体クロマトグラフィー(rpHPLC)によって疎水性の度合いにしたがって、構成要素を分離することによって、生じたスフェロン構成要素の均質な組成物をさらに精製することが可能である。別個の移動構成要素、または非移動構成要素のいずれかとして、PAGEによって分離されたスフェロン構成要素をさらに性質決定することが可能である。スフェロン構成要素はまた、上述の抽出法を用いて、脳脊髄液および他の体液からも抽出可能である。
[0059]本明細書に概説する方法にしたがって抽出される多くのスフェロン構成要素のうち、組織培養において細胞毒性であり、そしてin vivoで細胞毒性であると考えられる、特定のスフェロン構成要素ペプチドを以下に列挙する:
[0060]スフェロン構成要素ペプチド #1(配列番号1)
Figure 2005535565
[0061]スフェロン構成要素ペプチド #2(配列番号2)
Figure 2005535565
[0062]スフェロン構成要素ペプチド #3(配列番号3)
Figure 2005535565
[0063]スフェロン構成要素ペプチド #4(配列番号4)
Figure 2005535565
[0064]スフェロン構成要素ペプチド #5(配列番号5)
Figure 2005535565
[0065]スフェロン構成要素ペプチド #6(配列番号6)
Figure 2005535565
[0066]スフェロン構成要素ペプチド #7(配列番号7)
Figure 2005535565
[0067]スフェロン構成要素ペプチド #8(配列番号8)
Figure 2005535565
[0068]スフェロン構成要素ペプチド #9(配列番号9)
Figure 2005535565
[0069]スフェロン構成要素ペプチド #10(配列番号10)
Figure 2005535565
[0070]スフェロン構成要素ペプチド #11(配列番号11)
Figure 2005535565
[0071]スフェロン構成要素ペプチド #12(配列番号12)
Figure 2005535565
[0072]スフェロン構成要素ペプチド #13(配列番号13)
Figure 2005535565
[0073]スフェロン構成要素ペプチド #14(配列番号14)
Figure 2005535565
[0074]スフェロン構成要素ペプチド #15(配列番号15)
Figure 2005535565
[0075]スフェロン構成要素ペプチド #16(配列番号16)
Figure 2005535565
[0076]スフェロン構成要素ペプチド #17(配列番号17)
Figure 2005535565
[0077]スフェロン構成要素ペプチド #18(配列番号18)
Figure 2005535565
[0078]スフェロン構成要素ペプチド #19(配列番号19)
Figure 2005535565
[0079]スフェロン構成要素ペプチド #20(配列番号20)
Figure 2005535565
[0080]スフェロン構成要素ペプチド #21(配列番号21)
Figure 2005535565
[0081]スフェロン構成要素ペプチド #22(配列番号22)
Figure 2005535565
[0082]スフェロン構成要素ペプチド #23(配列番号23)
Figure 2005535565
[0083]上述のスフェロン構成要素ペプチドを用いて、脳において、これらのペプチドの影響を防止するかまたは減少させる際に有用な化合物またはその組み合わせおよび混合物を同定することが可能である。これらのスフェロン構成要素ペプチドの影響を防止するかまたは減少させると、アルツハイマー病と関連する同一症状であると考えられるが、アミロイド斑形成によってもたらされるのではない症状を治療し、そして/または改善するように働くであろう。また、これらのスフェロン構成要素ペプチドの影響を防止するかまたは減少させると、スフェロンの位置で、またはその近傍で、脳においてこうした高濃度のこれらのスフェロン構成要素の存在によってもたらされる、アルツハイマー病および他の障害の多くの他の症状を治療し、そして/または改善するように働くであろう。
[0084]本発明の1つの側面は、再生可能細胞、好ましくは腫瘍形成細胞、より好ましくは神経膠腫細胞および神経芽細胞腫細胞を培養し、細胞培養に少なくとも1つのスフェロン構成要素ペプチドを添加し、そしてその後、細胞培養のいくつかに試験化合物を添加することによって、上述の症状を治療し、そして/または改善する際に有用な化合物を同定する方法を伴う。該方法は、その後、生存細胞の割合を測定し、そしてその後、試験化合物を添加した細胞培養に見られる生存細胞の割合を、試験化合物を添加していない対照細胞培養に見られる生存細胞の割合に比較することを伴う。上述の例に用いた化合物であって、それによって培養が対照(例えば投与化合物なし)よりも統計的に有意に多い数の生存細胞を有する化合物として、有用な試験化合物を同定する。
[0085]有用な化合物を同定する別の方法は、脳ACTH、脳インスリン、脳エンケファリン、脳TRH、脳ダイノルフィン、脳_MSHおよび脳_エンドルフィン、脳プロインスリン、脳プログルカゴン、脳プログルカゴン様ペプチド、脳プロソマトスタチン、脳プロ膵ペプチド、脳プロGHRH、脳神経ペプチド・メラミン濃縮ホルモン、脳NEI、脳ニューロテンシン、および脳オピオイドペプチドから選択される1以上の脳構成要素を発現可能な、再生可能細胞を培養し、そしてその後、細胞培養に少なくとも1つのスフェロン構成要素ペプチドを添加することである。その後、試験化合物を細胞培養に添加し、そして上に列挙される各脳構成要素の量を測定することが可能である。上述の例で用いた化合物であって、それによって試験化合物が添加されている培養において、該化合物がまったく添加されていない対照培養に比較した際、脳ACTH、脳インスリン、脳エンケファリン、脳TRH、脳ダイノルフィン、脳_MSHおよび脳_エンドルフィン、脳プロインスリン、脳プログルカゴン、脳プロソマトスタチン、脳プロ膵ペプチド、脳プロGHRH、脳神経ペプチド・メラミン濃縮ホルモン、脳NEI、脳ニューロテンシン、および脳オピオイドペプチドが増加した化合物として、有用な試験化合物を同定する。
[0086]有用な試験化合物はまた:(i)スフェロンからのプロSAASまたはそのペプチド断片の遊離を妨害するかまたは防止する;(ii)スフェロンから遊離したプロSAASまたはそのペプチド断片に結合するか、これらを阻害するか、これらに拮抗するか、または競合する;あるいは(iii)スフェロンから遊離したプロSAASまたはそのペプチド断片の細胞毒性の影響を減少させるかまたは防止する化合物であろう。当業者は、本明細書に記載する単離体スフェロン構成要素を利用し、本明細書に提供する指針を用いて、有用な化合物をアッセイすることが可能であろう。
[0087]本発明の多様な態様はまた、スフェロン構成要素ペプチドに引き起こされる神経学的状態を治療するかまたは改善する際に有用な化合物を同定する方法であって、再生可能細胞を培養し、そしてその後、培養した再生可能細胞を形質転換するか、トランスフェクションするか、感染させるか、または別の方式で誘導して、プロSAASあるいはそのペプチド断片、変異体、誘導体、相同体、または模倣体を発現させることを含む、前記方法にも関する。その後、該方法は、培養細胞に試験化合物を投与し、そしてその後、試験化合物が、対照に比較して、プロSAASあるいはそのペプチド断片、変異体、誘導体、相同体、または模倣体の影響を改善するか、取り除くか、または減少させるかどうかを決定することを含む。
[0088]本発明の別の側面は、スフェロン構成要素ペプチドの影響を防止するかまたは減少させることが可能な、少なくとも1つの化合物を含んでなる組成物を含む。組成物は、アミロイド斑形成に関与するスフェロン構成要素以外のスフェロン構成要素ペプチドに結合するか、拮抗するかまたは競合する、少なくとも1つの単離ポリペプチドまたは他の化合物を含むことが可能である。上に簡単に記載し、そして以下により詳細に記載する試験プロトコルを用いて、これらの単離ポリペプチドまたは他の化合物を同定することが可能である。当業者は、本明細書に提供する指針を用いて、上述のスフェロン構成要素に結合するか、拮抗するかまたは競合するポリペプチドまたは他の化合物を製造し、そして単離することが可能である。
[0089]本発明はまた、スフェロン構成要素ペプチド、プロSAASまたはそのペプチド断片、ドメインおよびサブユニットに対する抗体であるポリペプチドも含む。当業者は、スフェロン構成要素ペプチド、プロSAASまたはそのペプチド断片、ドメインおよびサブユニットに結合するポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を生成可能である。当業者は、こうした抗体を用いて、類似かまたはより優れた結合特性を有するが、減少した抗原性、より優れた生物学的利用能、より容易な製造およびより優れた血液脳関門浸透などの、より好ましい薬理学的特性を有する、短鎖抗体を含む抗体断片、およびキメラ抗体またはヒト化抗体を生成することが可能である。
[0090]本発明はまた、スフェロン構成要素ペプチド、プロSAASまたはそのペプチド断片、ドメインおよびサブユニットが結合するタンパク質受容体の下位配列または断片であるポリペプチドも含む。当該タンパク質は、PC1/3、PC2、PC4、PACE4、PC5/6、PC7およびフューリンなどのプロタンパク質コンバターゼを含めて指す。こうしたポリペプチドは、スフェロン構成要素ペプチド、プロSAASまたはそのペプチド断片、ドメインおよびサブユニットに結合し、そしてそれによって、タンパク質基質または受容体と競合する能力に基づいて選択されるであろう。本発明はまた、こうしたポリペプチドの変異体、相同体、融合タンパク質およびペプチド模倣体、並びに、例えばリジル・クロロメチルケトンまたはアルギニル・クロロメチルケトンなどのクロロメチルケトン誘導体を取り込むことによって、スフェロン構成要素ペプチド、プロSAASまたはそのペプチド断片、ドメインおよびサブユニットに対する該ポリペプチドの結合を増加させるような、こうしたポリペプチドの修飾も含む。これに関連して有用なさらなる化合物には、プロタンパク質コンバターゼPC1、および:
Figure 2005535565
からなる群より選択される活性部位が含まれる。
[0091]組成物はまた、好ましくは、アミロイド斑形成に関与するスフェロン構成要素以外のスフェロン・プロSAASまたはそのペプチド断片からの遊離を妨害するかまたは防止する、少なくとも1つの単離ポリペプチドまたは化合物も含む。上に簡単に記載し、そして以下により詳細に記載する試験プロトコルを用いて、これらの単離ポリペプチドまたは化合物を同定することが可能である。さらに、本発明の組成物は、好ましくは、アミロイド斑形成に関与するスフェロン構成要素以外のスフェロン構成要素ペプチドの細胞毒性の影響または他の有害な影響を減少させるかまたは防止する、少なくとも1つの単離ポリペプチドまたは化合物を含む。上に簡単に記載し、そして以下により詳細に記載する試験プロトコルを用いて、これらの単離ポリペプチドを同定することが可能である。
[0092]治療の必要がある動物、例えば細胞毒性がある量で、神経灰白質に少なくとも1つのスフェロン構成要素ペプチドを有する動物に、療法的有効量の組成物を投与することが可能である。本発明記載の組成物を投与する方法には、限定されるわけではないが、組成物の筋内投与、経口投与、静脈内投与、腫瘍内投与、くも膜下腔内投与、鼻内投与、局所投与、経皮投与、エアロゾルを介した投与などが含まれる。
[0093]経口投与の固体投薬型には、カプセル、錠剤、丸薬、粉末、および顆粒が含まれる。こうした固体投薬型において、活性化合物を、少なくとも1つの以下:(a)クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウムなどの1以上の不活性賦形剤(またはキャリアー);(b)デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、およびケイ酸などの充填剤または増量剤;(c)カルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースおよびアラビアゴムなどの結合剤;(d)グリセロールなどの保湿剤;(e)寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモデンプンまたはタピオカデンプン、アルギン酸、特定の複合体シリケート、および炭酸ナトリウムなどの崩壊剤;(f)パラフィンなどの溶液凝固遅延剤;(g)第四級アンモニウム化合物などの吸収加速剤;(h)アセチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロールなどの湿潤剤;(i)カオリンおよびベントナイトなどの吸着剤;並びに(j)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、またはその混合物などの潤滑剤と混合する。カプセル、錠剤、および丸薬用には、投薬型はまた、緩衝剤も含んでなることが可能である。
[0094]経口投与用の液体投薬型には、薬学的に許容しうるエマルジョン、溶液、懸濁物、シロップ、およびエリキシル剤が含まれる。活性化合物に加えて、液体投薬型は、水または他の溶媒、可溶化剤、および乳化剤などの、当該技術分野に一般的に用いられる不活性希釈剤を含んでなることが可能である。典型的な乳化剤は、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、綿実油、ラッカセイ油、トウモロコシ胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油などの油、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、ソルビタンの脂肪酸エステル、またはこれらの物質の混合物等である。
[0095]こうした不活性希釈剤に加えて、組成物はまた、湿潤剤、乳化剤および懸濁剤、甘味料、フレーバー剤、ならびに香料などの佐剤(adjuvant)を含むことも可能である。
[0096]本発明の組成物を投与する別の方法は、経皮経路または皮膚を通した経路による。こうした態様の1つの例は、パッチの使用である。特に、例えばジメチルスルホキシド(DMSO)、または綿実油とDMSOの混合物中の組成物の細かい懸濁物を含むパッチを調製し、そして腫瘍を持つ哺乳動物の皮膚とパッチを、腫瘍部位から離れた皮膚のたるみの中で接触させることが可能である。他の溶媒および固体支持体を含む他の培体またはその混合物もまた、同等に働くであろう。パッチは、溶液または懸濁物の形で、上述の試験化合物の1以上を含有することが可能である。その後、例えば、縫い目、クリップまたは他の保持装置によって、皮膚をともに折り畳むかまたは保持することによって形成する患者の皮膚のたるみに、パッチを挿入することによって、患者皮膚に適用することが可能である。このたるみは、哺乳動物に支障を与えずに、皮膚との連続した接触が保証されるような方式で、使用されなければならない。皮膚のたるみを用いるのに加えて、皮膚と接触したパッチのしっかりした配置を確実にする、いかなる装置も使用可能である。例えば、絆創膏を用いて、皮膚上の所定の位置にパッチを保持することが可能である。
[0097]本発明の組成物中の活性成分の実際の投薬レベルは、特定の組成物および投与法に関して、望ましい療法反応を得るのに有効な1以上の試験化合物の量を得るため、多様である可能性がある。したがって、選択される投薬レベルは、望ましい療法効果、投与経路、望ましい治療期間、治療される動物の大きさ、および他の要因に応じる。
[0098]ヒトを含む哺乳動物では、有効量は、体表面積に基づいて投与することが可能である。多様な大きさ、種の動物、およびヒトに関する投薬量の相互関係(mg/体表面積M2に基づく)は、E.J. Freireichら, Cancer Chemother. Rep., 50(4):219(1966)に記載されている。体表面積は、個体の高さおよび重さから、おおよそ決定することが可能である(例えばScientific Tables, Geigy Pharmaceuticals, Ardsley, N.Y. pp.537−538(1970)を参照されたい)。
[0099]宿主への組成物の1日総用量は、単回用量または分割用量であることが可能である。投薬単位組成物は、1日用量を構成するのに使用可能であるような、その約数の量を含有することが可能である。しかし、特定の患者いずれかに対する特別の用量レベルは、体重、全身の健康状態、性別、食餌、投与時間および投与経路、投与した薬剤の強度、吸収速度および排出速度、他の薬剤との組み合わせ、並びに治療中の特定の疾患の重症度を含む、多様な要因に応じるであろう。
[00100]組成物は、脳における、望ましくない細胞毒性の影響および他の有害な影響を防止することを標的とするため、投与法は、試験化合物が血液脳関門を横断することを可能にする剤を、組成物がさらに含有するように配合することを含みうる。こうした投与法は、例えば米国特許第5,008,257号、第4,824,850号、第4,479,932号、第4,727,079号、第4,622,218号および第4,540,564号に記載され、これらの開示は完全に本明細書に援用される。
[00101]動物または患者において、神経系の機能または機能不全に影響を及ぼす薬剤を投与することによって、神経系の障害または他の脳関連障害の治療を達成可能である。典型的には、経口経路または全身経路いずれかを介して、末梢適用することによって、こうした薬剤を投与する。ある薬剤は、血液脳関門(bbb)を横断することが可能であるが、他のものはbbbを効率的に通過しないか、またはまったく通過せず、そして脳に直接投与した場合にのみ有効である。用語「血液脳関門」または「bbb」は、本明細書において、厳密な意味でのbbbとともに、血液脊髄関門も指す。脳血管内皮、基底膜および神経膠細胞からなる血液脳関門は、物質が脳に浸透するのを制限するように作用する。ときに、bbbの構造は、2つの構成要素:内皮関門または毛細管関門および上皮(ependymal)関門にさらに分割される。Banks, W.A., Kastin, A.J., Barrera, “Delivering peptides to the central nervous system:Dilemmas and strategies,” Pharm. Res. 8:1345−1350(1991)。
[00102]bbbを通じた物質浸透の性質は、なお決定されていないが、サイトカイン、トランスフェリン、エンセファリン(encephalins)およびエンドルフィンなどの脳機能の制御因子の多くが、bbbを通じて、血管から脳へ通過しうることが知られている。Raeissi, S., Audus, J., “In vitro characterization of blood−brain barrier permeability to delta sleep−inducing peptide.” J. Pharm. Phy. 41:848−852(1989);Zlokovich, B., Susie, V.T., Davson, H. Begley, D.J., Jankov, R.M., Mitrivic, B.M., Lipovac, M.N., “Saturable mechanism for delta sleep−inducing peptide(DSIP) at the blood−brain barrier of the vascularly perfused guinea pig brain.” Peptides 10:249−254(1989);およびZlokovich, B., “In vivo approaches for studying peptide interaction at the blood−brain barrier.” J. Control. Rel. 13:185−201(1990)。しかし、アデノシン、β−エンドルフィン、内因性ペプチドの合成類似体などの、中枢神経系(またはCNS)に影響を及ぼしうる多くの物質(Houghten, R.A. Swann, R.W., Li, C.H., “β−Endorphin:Stability, cl
earance behaviour and entry into the central nervous system after intravenous injection of the tritiated peptide in rats and rabbits.”Proc. Natl.Acad. Sci. USA
77:4588−4591(1980);Levin, E.R., Frank, H.J.K., Weber, M.A., Ismail, M., Mills M., “Studies on penetration of the blood−b
rain barrier by atrial natriuretic factor.” Biochem. Biophys. Res. Commun. 147:1
226−1231(1987) Sakane, T., Tanaka, C., Yamamoto, A., Hashida, M., Sesaki, H., Ueda, H., Takagi, H., “The effect of polys
orbate 80 on brain uptake and analgesic effect of D−kyoto.” Int. J. Pharm. 57:77
−83(1989))とともに、いくつかの興奮性アミノ酸および阻害性アミノ酸および栄養因子は、bbbを少量しか通過しないか、またはまったく通過しない。現在、bbb浸透がまったくないか、または少量しかbbb浸透しない薬剤は、直接CNS注入によって、または徐放ポリマーの移植によってのみ投与可能である(例えば米国特許第4,883,666号、Sabelらを参照されたい)。
[00103]伝統的な薬剤療法の限界のいくつかを克服する1つの方法は、bbbを通過する薬剤の相対量を増加させることである。もし、既定の薬剤または診断物質の末梢用量を減少させつつ、bbbを横断する薬剤量を増加させることが可能であれば、薬剤の末梢での副作用もまた、より重症でなくなる一方、同時に、脳における望ましい影響は維持されると考えられる。いくつかのアプローチが、bbbを通じた薬剤浸透を増加させるのに有効であると記載されてきている。
[00104]1つのアプローチは、bbb自体の機能を改変することであった。例えば、浸透剤を末梢に投与する(静脈内注射によるなど)と、bbbが開かれる。さらに、CNSに作用するいくつかの薬剤は、他の物質に対するbbbの浸透性を変化させることが可能である;例えば、コリン様作用剤、アレコリンは、bbbを通じた薬剤浸透の変化を誘導すると報告されている。Saija, A., Princi, P., De Pasquale, R., Costa,G., “Arecoline but n
othaloperidol produces changes in the permeability of the blood−brain barrier in the rat.” J. Pharm. Pha. 42:135−138(199
0)。
[00105]bbbの浸透性を改変するために投与可能な他の薬剤が、米国特許第5,059,415号および第5,124,126号に開示され、これら特許はどちらもE.A. Neuweltに発行されている。ブラジキニンは、こうした効果を持つ、1つの特別な薬剤である(Malfroy−Camineに発行された米国特許第5,112,596号)。別の方法は、A−7またはそのコンホメーション類似体などの浸透剤ペプチドを投与することを含んでなる。(WO92/18529、J.W. Kozarichらの出願)。相対的に侵襲性である方法が、A. TomaszおよびE. Tuomanen(WO91/16064)に提唱されており、彼らは肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)などの真正細菌の精製細胞壁または細胞壁断片を非経口注射で投与してbbbを開いている。
[00106]L.L. Rubinらに発行された米国特許第5,260,210号は、サイクリックAMP濃度を減少させるかまたはそれに干渉する剤、あるいはサイクリックGMP濃度を増加させる剤を投与することによって、血液脳関門の浸透性を増加させる方法を開示する。
[00107]別のアプローチは、薬剤分子自体の修飾である。例えば、タンパク質などの巨大分子は、bbbをまったく通過しないか、あるいは辛うじて通過するか、またはタンパク質有効性に不都合に影響を及ぼす改変がなされて通過する。例えば、まず、巨大分子活性部位、すなわち生物学的に望ましい事象を誘引する分子部分を単離し、そしてその後、この活性部位のみを使用することが可能である。サイズは、bbbの浸透性を可能にする要因の1つであるため、減少したサイズを使用可能であり、こうすれば、より小さい分子がbbbを通過可能である。巨大分子がbbbを通過するように試みる他の修飾は、タンパク質を糖化し、それによって、bbbの浸透性を増進するか、またはプロドラッグを形成することを含む。J.F. PodusioおよびG.L. Curranに発行された米国特許第5,260,308号は、タンパク質の糖化を論じ、一方、どちらもV.E. Shashouaの出願である、米国特許第4,933,324号およびWO89/07938は、プロドラッグの形成を開示する。これらのプロドラッグは、脂肪酸キャリアーおよびそれ自体ではbbbを通過不能な神経刺激性薬剤から形成される。類似の系がWO89/07938に開示される。
[00108]さらに別のアプローチは、マトリックス系から活性成分を直接神経組織に遊離させる、徐放ポリマーの移植である。しかし、このアプローチは侵襲性であり、そして脳または脊髄に直接移植する場合は、外科的介入を必要とする(Sabelら、米国特許第4,883,666号;およびSabelら、米国特許出願第07/407,930号を参照されたい)。本明細書に完全に援用される米国特許第5,800,390号に開示されるように、脳の内部部分に、組成物を直接投与することも知られる。これらの方法は、脳組織への持続放出固体調製および半固形調製の搬送を可能にする。
[00109]これらの限界を克服するため、リポソーム、赤血球ゴースト、抗体コンジュゲート、およびモノクローナル抗体コンジュゲートなどの薬剤キャリアー系を用いる、別のアプローチが試みられてきている。ターゲティング化薬剤搬送の主な問題の1つは、迅速にオプソニン化され、そして細網内皮系(RES)によって、特に肝臓および脾臓のマクロファージによって、注入したキャリアーが取り込まれてしまうことである。この障害は、リポソームの場合、ホスファチジルイノシトール、モノシアロガングリオシド、またはスルホガラクトシルセラミドなどのいわゆる「ステルス」脂質を取り込むことによって、部分的に克服可能である。
[00110]どちらもP.M. Fridenに発行された米国特許第5,182,107号および第5,154,924号は、トランスフェリン受容体と反応する抗体と薬剤をコンジュゲート化する方法を解説する。トランスフェリン受容体は、脳毛細管内皮細胞上に位置し、したがって、bbbを越えて、神経増殖因子などの薬剤を輸送することが可能である。米国特許第5,004,697号(Pardridgeに発行)は、カチオン化抗体に、特定の等電点を提供することによって、こうした抗体コンジュゲート法を改善する(PardridgeによるWO89/01343も参照されたい)。
[00111]別のアプローチは、活性剤をコンジュゲート化した、キメラペプチドを生成することである(やはりPardridgeに発行された米国特許第4,801,575号)。こうした系は、PardridgeおよびSchimmelに発行された米国特許第4,902,505号にさらに論じられ、該特許において、ヒストンなどのキメラペプチドは、トランスサイトーシスによって、bbbを横断可能である。
[00112]どちらもN.S. Bodorに発行された、米国特許第5,187,158号および第5,017,566号は、ジヒドロピリジン反応−ピリジン塩レドックスキャリアーの生体酸化可能な還元された類脂質性型とともにドーパミンなどの中枢作用薬剤を投与する、脳特異的薬剤搬送法を開示する(やはりBodorに発行された米国特許第4,880,816号もまた参照されたい)。
[00113]脳に遺伝物質を搬送するには、かなり侵襲性のアプローチが取られている。これは、例えば、bbbを化学的に破壊し、そしてその後、ウイルスを用いて、bbbを越えて遺伝子を搬送することによって行われる。(例えばE.A. Neuweltに発行された米国特許第4,866,042号を参照されたい)。ここでは、矯正用の遺伝物質をウイルスに取り込み、そしてその後、ウイルスを血流に注射する。
[00114]最後に、bbbを越えて薬剤を搬送する、さらに別のキャリアー系は、F.D. CollinsおよびR.C. Thompson(WO91/04014)に開示されるようなリポソームの使用である。ここでは、bbbを越えて特定のリガンドを輸送する、特定の内因性脳輸送系にリポソームをターゲティングする。
[00115]別のアプローチがKreuterらに対する米国特許第6,117,454号に開示される。Kreuter特許の主題には、bbbを越える、薬剤または診断剤の浸透を増進するため、広範囲の薬剤用の薬剤キャリアー(またはターゲティング分子)として、界面活性剤をコーティングしたナノ粒子を用いる方法、組成物および薬剤ターゲティング系が含まれる。これらの方法はいずれも、本発明において、脳中に、上に論じるスフェロン構成要素ペプチドの細胞毒性の影響を防止しうる構成要素(例えば化合物、組成物、ペプチド、遺伝子など)を投与するのに使用可能である。
[00116]本発明の別の態様は、アルツハイマー病症状の動物モデル、動物モデルを作成する方法、および動物モデルを用いて、アミロイド斑形成に直接関与するもの以外のスフェロン遊離構成要素ペプチドによって引き起こされる脳損傷あるいは他の障害または疾病を治療するかまたは改善するのに有効な療法を同定する方法を含む。動物モデルは、脳に挿入された遺伝子を有し、それによって該遺伝子がプロSAAS、または上に定義する群から選択される1以上のスフェロン構成要素ペプチド、あるいはその変異体、誘導体、相同体、またはペプチド模倣体を発現する動物を含んでなる。したがって、動物モデルを作成する方法は、プロSAASまたは上に定義する群から選択される1以上のスフェロン構成要素ペプチドを過剰発現する遺伝子を調製し、該遺伝子を動物の脳に取り込み(例えばウイルスベクターを用い、該遺伝子を中枢神経系に挿入して、トランスジェニック動物を作成することによって、または当該技術分野に知られる他の方法によって)、そして該遺伝子を誘導して、プロSAASまたはスフェロン構成要素ペプチドを過剰発現させることを含む。
[00117]動物モデルを用いる方法は、プロSAASまたは上に定義する群から選択される1以上のスフェロン構成要素ペプチドを過剰発現する、単数または複数の遺伝子を脳に有する動物群を用意し、そしてその後、該遺伝子を誘導して、プロSAASまたはスフェロン構成要素ペプチドを過剰発現させることを含む。該方法は、選択した動物群に試験化合物を投与し、動物を屠殺し、そしてその後、屠殺した動物の脳に存在する単離スフェロン構成要素ペプチドの量を測定し、そして/または遺伝子の位置で、またはその周囲で、生存細胞の割合を測定することによって、そして/またはタンパク質発現に関連した脳の傷害を測定し、そして/または行動パラメーターまたは他の脳機能パラメーターを測定することを含む。対照に比較して、単離スフェロン構成要素ペプチドの量を減少させる試験化合物を選択することによって、そして/または試験化合物を投与していない対照に比較して、遺伝子の位置で、またはその周囲で、より高い割合の生存細胞を生じる試験化合物を選択することによって、そして/またはタンパク質発現に関連する傷害を減少させる試験化合物を選択することによって、そして/または対照に比較して、脳機能または行動等を改善する試験化合物を選択することによって、該方法は完結する。
[00118]動物モデルを用いて、有効な試験化合物をスクリーニングする方法はまた、上述のような動物モデルを用意し、そしてその後、遺伝子を誘導して、プロSAASまたは上に定義する群から選択される1以上のスフェロン構成要素ペプチド、あるいはその変異体、誘導体、相同体、またはペプチド模倣体を過剰発現させることも含む。該方法はさらに、試験化合物を動物の選択群に投与し、動物を屠殺し、そしてその後、1以上の以下:(i)脳ACTH;(ii)脳インスリン;(iii)脳エンケファリン;(iv)脳TRH;(v)脳ダイノルフィン;または(vi)グルカゴン、GLP、ニューロテンシン等の、先に記載した他の構成要素いずれか、の量を測定することを含む。試験化合物をまったく投与しなかった対照動物に比較して、投与した際に、5つの構成要素のいずれか1つのレベルが増加する化合物を選択することによって、該方法は完結する。
[00119]1コピー以上のプロSAASまたはスフェロン構成要素ペプチドを動物に導入することは、まず、上述の各ペプチド(単数または複数)を発現する遺伝子、またはペプチド(単数または複数)を発現するように誘導可能な遺伝子を作成することを伴う。その後、当該技術分野に知られるトランスジェニック動物技術によって、動物の脳に該遺伝子を導入することが可能である。その後、該遺伝子はスフェロン構成要素ペプチド(単数または複数)を発現するだろうし、または該遺伝子を誘導してスフェロン構成要素ペプチド(単数または複数)を過剰発現させることが可能である。本明細書に提供する指針を用いて、当業者は、過度の実験を行わずに、1以上の上述のペプチドを発現する遺伝子を作成可能である。細胞または組織に遺伝子を搬送する手段には、裸のDNAの直接注入、弾道法、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ポックスウイルスまたは単純ヘルペスウイルスなどのウイルスベクターの使用、DNA−タンパク質コンジュゲートの使用およびリポソームの使用が含まれる。パーキンソン病などの脳障害を治療するため、ウイルスベクターを用いて、中枢神経系に遺伝子を導入する例が、米国特許第6,248,320号に開示され、その開示は本明細書に完全に援用される。
[00120]好ましいスフェロン構成要素ペプチドは、アミロイド斑形成に直接関与しないものであり、そしてより好ましくは、配列番号1〜23として上に列挙されるものである。しかし、上述のスフェロン構成要素ペプチドと同一のタンパク質またはタンパク質ファミリーの他の分子の部分または断片に基づく、他のスフェロン構成要素ペプチドの使用もまた、表現「スフェロン構成要素ペプチド」の範囲内に包含され、そして含まれる。さらに、本発明は、好ましくはスフェロン構成要素ペプチドと同一の、類似の、または増進した生物活性を所持する、上述のスフェロン構成要素ペプチドいずれかのすべてまたは一部を含有する他のタンパク質を含む。
[00121]当業者には、上記ペプチドのより小さい他の断片を選択可能であり、そしてこれらのペプチドが同一かまたは類似の生物学的活性を所持するであろうことが明らかであろう。当業者は、これらのペプチドが同一かまたは類似の生物学的活性を所持するように、他の断片を選択可能である。本発明のペプチドは、これらの他の断片、種、およびタンパク質を含む。一般的に、本発明のペプチドは、少なくとも6アミノ酸、好ましくは少なくとも5アミノ酸、そしてより好ましくは少なくとも4アミノ酸を有する。
[00122]本発明はまた、スフェロン構成要素ペプチドが由来するスフェロンの種(単数または複数)の配列において、2以上のペプチドの配列が連続していないとしても、2以上の該スフェロン構成要素ペプチドがともに連結されている、ペプチドの「組み合わせ」も含む。スフェロン構成要素ペプチドが望ましい生物学的活性を有する限り、スフェロン構成要素ペプチドが由来するスフェロンの種(単数または複数)のアミノ酸配列内で、これらの部分が連続していないとしても、2つのこうしたペプチドもまた、望ましい生物学的活性を所持することになる。
[00123]本発明はまた、スフェロン構成要素ペプチドのアミノ酸配列に基づく逆Dペプチドも含んでなる。句「逆Dペプチド」は、L−アミノ酸を含有するペプチドに比較して、逆配列で配置されるD−アミノ酸を含有するペプチドを指す。したがって、L−アミノ酸ペプチドのC末端残基は、D−アミノ酸ペプチドのN末端になり、以下同様である。
[00124]本発明はまた、リンカーペプチド上、スフェロン構成要素ペプチド配列の前または後に、さらなるアミノ酸残基を持つスフェロン構成要素ペプチドを含んでなるペプチドも含む。さらなるアミノ酸残基またはリンカーペプチドは、スフェロン構成要素ペプチド配列の前および後のスフェロン配列に見られるものであることが可能であるし、あるいは他のアミノ酸またはリンカーペプチドを含んでなることが可能である。例えば、ジスルフィド結合形成によるスフェロン構成要素ペプチドの環化を可能にするため、スフェロン構成要素ペプチドのアミノ末端およびカルボキシ末端両方に、システイン残基を付加することが可能である。
[00125]本発明はまた、スフェロン構成要素ペプチドが、場合によってペプチドリンカーにより連結され、別のタンパク質と融合する、融合タンパク質も含む。こうした融合タンパク質は、注入された体または結果物(issue)におけるスフェロン構成要素ペプチドの生物活性または生物学的利用能を増加させることが可能である。
[00126]本発明はまた、スフェロン構成要素断片の相同体および変異体も含む。1つのアミノ酸を別のものに置換することによって、ペプチド配列を変化させることが一般的である。アミノ酸を変化させる目的に応じて、アミノ酸を類似のアミノ酸または相同のアミノ酸、あるいは類似でないアミノ酸と交換することが可能である。アミノ酸を類似または相同と位置付けることが可能な多くの尺度がある(Gunnar von Heijne, Sequence Analysis in Molecular Biology, p.123−39(Academic Press, ニューヨーク州ニューヨーク 1987))。
[00127]一般の当業者に知られる慣用的なペプチド合成技術を用いて、スフェロン構成要素ペプチドおよびその相同体、変異体、誘導体、組み合わせおよび塩を作成可能である。これらの技術には、化学的カップリング法(Wunsch, E:“Metho
den der organischen Chemie”, Volume 15,
Band 1+2, Synthese von Peptiden, thime Verlag, Stuttgart(1974)、およびBarrany, G.;Marrifield, R.B.:“The Peptides”, E. Gross,
J. Meienhofer監修, Volume 2, Chapter 1, pp.1−284, Academic Press(1980)を参照されたい)、酵素カップリング法(Widmer, F. Johansen, J.T., Carlsberg Res. Commun., Vol. 44, pp.37−46(1979)、およびKullmann, W.:“Enzymatic Peptide Sy
nthesis”CRC Press Inc. フロリダ州ボカラトン(1987)、
およびWidmer, F., Johansen, J.T.“Synthetic
Peptides in Biology and Medicines中:Alitalo, K., Partanen, P., Vatieri, A.監修, pp.79−86, Elsevier, アムステルダム(1985)を参照されたい)、またはプロセス設計に好都合であり、そして経済的に好都合である場合、化学的方法および酵素的方法の組み合わせが含まれる。当業者は、本明細書に提供する指針を用いて、スフェロン構成要素ペプチドのペプチド配列を変化させ、元来の、または天然のスフェロン構成要素ペプチドと同一かまたは類似の生物学的活性(生物活性)を有する相同体を作成することが可能である。
[00128]本発明はまた、スフェロン構成要素ペプチドに基づくペプチド模倣体、および生じた化合物が化学的反応性を保持し、そしてしたがってスフェロン構成要素ペプチドと同一の生物学的活性を保持するような、スフェロン構成要素ペプチドの構造修飾も含む。ペプチド模倣体は、ペプチドの生物学的活性を模倣するが、もはや化学的性質上はペプチドでなく、すなわちもはやいかなるペプチド結合(すなわちアミノ酸間のアミド結合)をも含有しない化合物である。ここで、用語、ペプチド模倣体は、より広い意味で、シュードペプチド、半ペプチドおよびペプトイドなどの、性質上はもはや完全にペプチド性でない分子も含むように用いられる。この、より広い意味でのペプチド模倣体(ペプチドの一部が、ペプチド結合を欠く構造と交換されている場合)の例を以下に記載する。完全な非ペプチドであれ、部分的な非ペプチドであれ、本発明記載のペプチド模倣体は、そのペプチド模倣体の基となるスフェロン構成要素ペプチドの活性基の三次元配置を緊密に真似る、反応性化学部分の空間的配置を提供する。この類似の活性部位の幾何学的形状の結果、ペプチド模倣体は、ペプチドの生物学的活性に類似の、生物学的系に対する影響を有する。
[00129]本発明はまた、本発明の方法にしたがって、トランスフェクションされたか、形質転換されたか、または感染した、多様な細胞株も含む。これらの細胞株は、好ましくは、プロSAAS、あるいはそのペプチド断片、変異体、誘導体、相同体、または模倣体をコードする核酸配列を発現する、組換え細胞を含む。細胞株が、配列番号1〜14から選択されるアミノ酸配列をコードする核酸配列、またはその組み合わせを発現する組換え細胞を含むことが最も好ましい。
[00130]本発明を例示するため、以下の例を提供する。しかし、本発明は、これらの実施例に記載する特定の条件または詳細に限定されるものではないことを理解しなければならない。明細書全体で、米国特許を含めて、公的に入手可能な文書に対するあらゆる言及は、本明細書に特に援用される。
実施例
(実施例1)
[00131]米国特許第6,309,892号および第5,525,339号の方法にしたがって、ヒト脳からスフェロンを抽出し、そして均質に精製した。米国特許第6,309,892号および第5,525,339号に列挙される標準法にしたがって、ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって、均質なスフェロンの試料を分離した。当該技術分野に周知の標準法によって、ゲル上のバンドをニトロセルロースブロットにトランスファーした。高速液体クロマトグラフィーおよびアミノ酸微量配列決定解析によって、これらのバンドをさらに解析した。
[00132]精製した均質な濃い微小球体調製から検出されたものの中に、以下の配列があった:
Figure 2005535565
[00133]これらの配列は、プロSAASと称され、そしてまた、グラニン様神経内分泌ペプチド前駆体としても知られるタンパク質のすべてまたは一部と一致する。
(実施例2)
[00134]実施例1で配列決定したスフェロン構成要素ペプチドに対応するポリペプチドを合成し、そして神経細胞培養中で試験した。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中のスフェロン構成要素ペプチドを、単独で、そして組み合わせて、神経膠腫細胞培養および神経芽細胞腫細胞培養中でインキュベーションした。
1)スフェロンの均質試料、0.1〜10mgタンパク質/ml;
2)リン酸緩衝の通常の生理食塩水のみ;
3)タモキシフェン、100μM;
4)DMSO;および
5)ウシ血清アルブミン、5mg/ml
の対照もまた、培養中で試験した。
細胞培養:
[00135]アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)、バージニアから凍結保存神経膠腫細胞および神経芽細胞腫細胞を得た。細胞を融解し、そして懸濁培地で希釈して、そして700rpm、4℃で7分間、遠心分離した。その後、細胞ペレットをCACO−2培地に再懸濁し、そしてほぼ集密になるまで、標準的な75cm2または175cm2フラスコ中、37℃、5%CO(2)で培養した。その後、細胞をトリプシン処理し、そしてCACO−2培地に再懸濁して、最終細胞密度を1.5x105細胞/mlにした。その後、試料あたり50μlアリコットを96ウェルプレートのウェルあたりに添加した。
投薬:
[00136]実験Iでは、50μlのPBS(リン酸緩衝溶液)(陰性対照)、リン酸緩衝生理食塩水PBS中の100μMのタモキシフェン(陽性対照)、または試験物品を各試料培養に添加した。
[00137]実験IIでは、DMSO(ジメチルスルホキシド)中の1mMタモキシフェンをCACO−2培地中で100μM濃度に希釈し、そしてウェルあたり100μlを陽性対照ウェルに添加した。CACO−2培地中の1%DMSOからなるビヒクル対照もまた、本実験に加えた。他の陰性対照は、ヒトおよびウシ血清アルブミンからなった。
MTTアッセイ:
[00138]MTTアッセイは、テトラゾリウム塩3,[4,5−ジメチルチアゾール−2−イル]−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)の還元に基づいて、細胞増殖を測定するための高感度アッセイである。対照物質または試験物質とインキュベーションした後、培地を吸引し、そして100μlのMTTを各ウェルに添加した。その後、プレートを37℃、5%CO(2)で3時間インキュベーションした。その後、MTTを酸性化イソプロパノール(0.4N HCl)と交換し、そしてプレートを覆って、4℃で一晩保存した。その後、回転震蘯装置上で、プレートを1分間穏やかに攪拌し、そして570nmの発光吸光度と650nmの背景吸光度の差を、自動化プレート読み取り装置上、分光光度法で測定した。
結果:
実験I:
[00139]試験物質または対照溶液で処理した後、神経膠腫細胞を24時間および96時間インキュベーションした。この時点で、MTTをすべての培養に添加した。結果を平均吸光度相異として表し、そして陰性対照のパーセントとして表し、そして表3および表4に示す(神経膠腫細胞における細胞毒性)。
表3:神経膠腫細胞における細胞毒性:24時間
Figure 2005535565
略語:ABS、吸光度;NC、陰性対照;PC、陽性対照;SD、標準偏差;VC、ビヒクル対照。
表4:神経膠腫細胞における細胞毒性:4日間
Figure 2005535565
略語:ABS、吸光度;NC、陰性対照;PC、陽性対照;SD、標準偏差;VC、ビヒクル対照。
実験II:
[00140]この実験には、神経芽細胞腫細胞を用いた。対照または試験溶液と24時間および96時間インキュベーションした後、プレートにMTTを添加した。他のプレートには新鮮な培地、対照、または試験溶液を24時間目に補充し、そしてその後、3日後に読み取った。結果を平均吸光度相異として、そして陰性対照のパーセントとして表し、そして表5に示す。96時間でも類似の結果が見られた。
表5:神経芽細胞腫細胞:24時間インキュベーション
Figure 2005535565
略語:ABS、吸光度;NC、陰性対照;PC、陽性対照;SD、標準偏差;VC、ビヒクル対照。
結論:
[00141]スフェロンおよびスフェロン由来の合成スフェロン構成要素ペプチドタンパク質とインキュベーションした、神経膠腫細胞および神経芽細胞腫細胞に対する有意な細胞毒性の影響は24時間で明らかであり、そして神経膠腫細胞において、96時間で明らかである。
(実施例3)
[00142]実施例2の合成ペプチドを、1〜5mg/mlで、リン酸緩衝生理食塩水に希釈し、12の正常ラットの脳皮質に接種した。対照ラットにはリン酸緩衝生理食塩水を投与した。動物を観察し、そして1日、4日、および10日の間隔で、苦痛を与えずに屠殺した。ラット脳を10%ホルマリンで固定し、パラフィンに包埋し、切片作成し、そしてヘマトキシリン−エオジンで染色し、そして光学顕微鏡で調べた。すべての例で、極端なミクログリア反応を伴う急性炎症反応が観察された。この度合いのグリオーシスおよび炎症は、対照には見られなかった。
(実施例4)
[00143]スフェロンの遺伝子およびそのスフェロン構成要素ペプチド断片の遺伝子を神経細胞株にトランスフェクションし、そして遺伝子の発現を促進する。異常な細胞損失および異常な病的変化の徴候に関して、神経細胞を調べる。
(実施例5)
[00144]スフェロンの遺伝子およびそのスフェロン構成要素ペプチド断片の遺伝子を実験動物の脳にトランスフェクションし、そして遺伝子の発現を促進する。異常な行動に関して、実験動物を観察し、そして組織病理学的異常の徴候に関して、実験動物の脳を調べる。
[00145]当業者には、本発明の精神または範囲から逸脱することなく、本発明の方法および組成物に多様な修飾および変動を加えうることが明らかであろう。したがって、本発明は、本発明の修飾および変動を含むと意図される。

Claims (50)

  1. アミロイド斑形成に関与するスフェロン構成要素以外のスフェロン構成要素ペプチドと結合するか、拮抗するか、または競合する、少なくとも1つの化合物を含んでなる組成物であって、前記スフェロン構成要素ペプチドが:
    Figure 2005535565
    からなる群の1以上から選択される、前記組成物。
  2. 薬学的に許容しうる緩衝剤、希釈剤、アジュバント、キャリアーまたはその組み合わせをさらに含んでなる、請求項1記載の組成物。
  3. 患者に投与した際、血液脳関門を横断することが可能である、請求項1記載の組成物。
  4. スフェロン構成要素ペプチドが配列番号1である、請求項1記載の組成物。
  5. スフェロン構成要素ペプチドが配列番号2である、請求項1記載の組成物。
  6. スフェロン構成要素ペプチドが配列番号3である、請求項1記載の組成物。
  7. スフェロン構成要素が配列番号4である、請求項1記載の組成物。
  8. スフェロン構成要素ペプチドが配列番号5である、請求項1記載の組成物。
  9. スフェロン構成要素ペプチドが配列番号6である、請求項1記載の組成物。
  10. スフェロン構成要素ペプチドが配列番号7である、請求項1記載の組成物。
  11. スフェロン構成要素が配列番号8である、請求項1記載の組成物。
  12. 痴呆または認知障害を治療する組成物であって:
    a)スフェロンからのプロSAAS、あるいはそのペプチド断片、変異体、誘導体、相同体、または模倣体(mimetics)の遊離を妨害するかまたは防止する方式;
    b)スフェロンから遊離するプロSAAS、あるいはそのペプチド断片、変異体、誘導体、相同体、または模倣体に結合するか、これらを阻害するか、これらに拮抗するかまたは競合する方式;
    c)スフェロンから遊離するプロSAAS、あるいはそのペプチド断片、変異体、誘導体、相同体、または模倣体の細胞毒性の影響を減少させるかまたは防止する方式;および
    d)スフェロン構成要素からのプロSAAS、あるいはそのペプチド断片、変異体、誘導体、相同体、または模倣体の遊離の影響を相殺する方式;
    からなる群より選択される方式で機能する化合物の薬学的有効量を含んでなる、前記組成物。
  13. プロSAASのペプチド断片が:
    Figure 2005535565
    からなる群より選択される1以上のペプチドである、請求項12の組成物。
  14. 薬学的に許容しうる緩衝剤、希釈剤、アジュバント、キャリアーまたはその組み合わせをさらに含んでなる、請求項13記載の組成物。
  15. 患者に投与した際、血液脳関門を横断することが可能である、請求項13記載の組成物。
  16. a)脳におけるスフェロンからのプロSAAS、あるいはそのペプチド断片、変異体、誘導体、相同体、または模倣体の遊離によって引き起こされる、脳または他の神経内分泌組織における異常に阻害された1以上のプロタンパク質コンバターゼの活性;
    b)脳におけるスフェロンからのプロSAAS、あるいはそのペプチド断片、変異体、誘導体、相同体、または模倣体の遊離によって引き起こされる、異常に減少した副腎皮質刺激ホルモン(ACTH);
    c)脳におけるスフェロンからのプロSAAS、あるいはそのペプチド断片、変異体、誘導体、相同体、または模倣体の遊離によって引き起こされる、異常に減少したインスリン;
    d)脳におけるスフェロンからのプロSAAS、あるいはそのペプチド断片、変異体、誘導体、相同体、または模倣体の遊離によって引き起こされる、異常に減少したエンケファリン;
    e)脳におけるスフェロンからのプロSAAS、あるいはそのペプチド断片、変異体、誘導体、相同体、または模倣体の遊離によって引き起こされる、異常に減少した甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH);および
    f)脳におけるスフェロンからのプロSAAS、あるいはそのペプチド断片、変異体、誘導体、相同体、または模倣体の遊離によって引き起こされる、異常に減少したダイノルフィン;
    からなる群より選択される1以上の影響を相殺することによって、化合物が、スフェロン構成要素からのプロSAAS、あるいはそのペプチド断片、変異体、誘導体、相同体、または模倣体の遊離の影響を相殺する、請求項12記載の組成物。
  17. 化合物が、PC1〜PC8、およびフューリンからなる群より選択されるプロタンパク質コンバターゼの阻害を減少させるかまたは相殺する、請求項16記載の組成物。
  18. 脳ACTH、脳インスリン、脳エンケファリン、脳TRH、脳ダイノルフィン、脳_MSHおよび脳_エンドルフィン、脳プロインスリン、脳プログルカゴン、脳グルカゴン様ペプチド(GLP)、脳プロソマトスタチン、脳プロ膵ペプチド、脳プロGHRH、脳神経ペプチド・メラミン濃縮ホルモン、脳NEI、脳ニューロテンシン、および脳オピオイドペプチドからなる群より選択される、少なくとも1つの構成要素を増加させるか、または別の方式で改変することによって、化合物が、脳におけるスフェロンからのプロSAAS、あるいはそのペプチド断片、変異体、誘導体、相同体、または模倣体の遊離による影響を相殺する、請求項12記載の組成物。
  19. 神経学的状態を治療するかまたは改善する際に有用な化合物を同定する方法であって:
    細胞を形質転換するか、トランスフェクションするか、または感染させ、ここで該形質転換細胞、該トランスフェクション細胞または該感染細胞は:
    (a)アミロイド斑形成に関与するスフェロン構成要素以外のスフェロン構成要素ペプチド;
    (b)アミロイド斑形成に関与するスフェロン構成要素以外のスフェロン構成要素ペプチドをコードするポリヌクレオチド;または
    (c)ストリンジェントな条件下で、(b)にハイブリダイズするポリヌクレオチド
    を含んでなり;
    試験化合物を、該形質転換細胞、該トランスフェクション細胞または該感染細胞に投与し;そして
    アミロイド斑形成に関与するスフェロン構成要素以外のスフェロン構成要素の影響を改善する化合物を同定する;
    ことを含んでなる、前記方法。
  20. アミロイド斑形成に関与するスフェロン構成要素以外のスフェロン構成要素が:
    Figure 2005535565
    からなる群より選択される、請求項19の方法。
  21. 形質転換細胞、トランスフェクション細胞または感染細胞中のスフェロン構成要素ペプチド濃度が、細胞の生存度を減少させるのに十分である、請求項20の方法。
  22. 形質転換細胞、トランスフェクション細胞または感染細胞をin vitroで培養する、請求項20の方法。
  23. 形質転換細胞、トランスフェクション細胞または感染細胞をin vivoで培養する、請求項20の方法。
  24. 形質転換細胞、トランスフェクション細胞または感染細胞でトランスフェクションしておいた動物に、試験化合物を投与する、請求項20の方法。
  25. アミロイド斑形成に関与するスフェロン構成要素以外の1以上のスフェロン構成要素ペプチドを発現する遺伝子、またはスフェロン構成要素ペプチドのいずれかを、動物の脳に注入することによって、動物モデルを用意し;そして
    該遺伝子を誘導して、スフェロン構成要素ペプチドを発現させる
    ことをさらに含んでなる、請求項24の方法。
  26. 遺伝子を、ベクターとともに動物の脳に注入する、請求項25の方法。
  27. 請求項20の方法にしたがって選択した化合物を含んでなる組成物。
  28. 動物モデル群を用意し、ここで、各動物モデルは:(i)脳において、アミロイド斑形成に関与するスフェロン構成要素以外の1以上のスフェロン構成要素ペプチドを発現する遺伝子;または(ii)脳に注入されたスフェロン構成要素ペプチド;のいずれかを有し;
    存在するならば、スフェロン構成要素ペプチドを発現するように遺伝子を誘導し;
    試験化合物を動物モデル群に投与し;
    動物を屠殺し;
    屠殺した動物の脳に存在する、単離スフェロン構成要素ペプチドの量を測定し、そして/または遺伝子または挿入されたスフェロン構成要素ペプチドの位置で、またはその周囲で、生存細胞の割合を測定し;そして
    対照に比較して、単離スフェロン構成要素ペプチドの量を減少させる試験化合物を選択し、そして/または試験化合物を投与しなかった対照に比較して、遺伝子の位置で、またはその周囲で、より高い割合の生存細胞を生じる試験化合物を選択する
    ことをさらに含んでなる、請求項25の方法。
  29. 請求項28の方法にしたがって選択した試験化合物を含んでなる組成物。
  30. 神経学的状態を治療するかまたは改善する方法であって:
    a)スフェロンからのプロSAAS、あるいはそのペプチド断片、変異体、誘導体、相同体、または模倣体の遊離を妨害するかまたは防止する方式;
    b)スフェロンから遊離するプロSAAS、あるいはそのペプチド断片、変異体、誘導体、相同体、または模倣体に結合するか、これらを阻害するか、これらに拮抗するかまたは競合する方式;
    c)スフェロンから遊離するプロSAAS、あるいはそのペプチド断片、変異体、誘導体、相同体、または模倣体の細胞毒性の影響を減少させるかまたは防止する方式;および
    d)スフェロン構成要素からのプロSAAS、あるいはそのペプチド断片、変異体、誘導体、相同体、または模倣体の遊離の影響を相殺する方式;
    からなる群より選択される方式で機能する化合物を、こうした投与が必要な動物に投与する
    ことを含んでなる、前記方法。
  31. プロSAASのペプチド断片が:
    Figure 2005535565
    からなる群より選択される1以上のペプチドである、請求項30の方法。
  32. 神経学的状態が、アルツハイマー病、脳血管性痴呆、レビー小体痴呆、パーキンソン病、ピック病、前頭側頭型痴呆(FTP)、および軽度認知障害からなる群より選択される、請求項30の方法。
  33. a)脳におけるスフェロンからのプロSAAS、あるいはそのペプチド断片、変異体、誘導体、相同体、または模倣体の遊離によって引き起こされる、脳または他の神経内分泌組織における異常に阻害されたプロタンパク質コンバターゼPC1〜PC8およびフューリンの活性;
    b)脳におけるスフェロンからのプロSAAS、あるいはそのペプチド断片、変異体、誘導体、相同体、または模倣体の遊離によって引き起こされる、異常に減少した副腎皮質刺激ホルモン(ACTH);
    c)脳におけるスフェロンからのプロSAAS、あるいはそのペプチド断片、変異体、誘導体、相同体、または模倣体の遊離によって引き起こされる、異常に減少したインスリン;
    d)脳におけるスフェロンからのプロSAAS、あるいはそのペプチド断片、変異体、誘導体、相同体、または模倣体の遊離によって引き起こされる、異常に減少したエンケファリン;
    e)脳におけるスフェロンからのプロSAAS、あるいはそのペプチド断片、変異体、誘導体、相同体、または模倣体の遊離によって引き起こされる、異常に減少した甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH);
    f)脳におけるスフェロンからのプロSAAS、あるいはそのペプチド断片、変異体、誘導体、相同体、または模倣体の遊離によって引き起こされる、異常に減少したダイノルフィン;および
    g)脳におけるスフェロンからのプロSAAS、あるいはそのペプチド断片、変異体、誘導体、相同体、または模倣体の遊離によって引き起こされる、異常に減少した脳_MSHおよび脳_エンドルフィン、脳プロインスリン、脳プログルカゴン、脳プロソマトスタチン、脳プロ膵ペプチド、脳プロGHRH、脳神経ペプチド・メラミン濃縮ホルモン、脳NEI、脳ニューロテンシン、ならびに脳オピオイドペプチド;
    からなる群より選択される1以上の影響を相殺することによって、化合物が、スフェロン構成要素からのプロSAAS、あるいはそのペプチド断片、変異体、誘導体、相同体、または模倣体の遊離の影響を相殺する、請求項30の方法。
  34. 化合物がPC1〜PC8およびフューリンの阻害を減少させるかまたは相殺する、請求項33記載の方法。
  35. 化合物が、脳ACTH、脳インスリン、脳エンケファリン、脳TRH、脳ダイノルフィン、脳_MSH、脳_エンドルフィン、脳プロインスリン、脳プログルカゴン、脳プロソマトスタチン、脳プロ膵ペプチド、脳プロGHRH、脳神経ペプチド・メラミン濃縮ホルモン、脳NEI、脳ニューロテンシン、および脳オピオイドペプチドからなる群より選択される、少なくとも1つの構成要素を増加させることによって、脳におけるスフェロンからのプロSAAS、あるいはそのペプチド断片、変異体、誘導体、相同体、または模倣体の遊離による影響を相殺する、請求項30記載の方法。
  36. 脳に挿入された遺伝子を有し、それによって、該遺伝子がプロSAASまたはアミロイド斑形成に直接関与するスフェロン構成要素以外の1以上のスフェロン構成要素ペプチドを発現する動物を含んでなる動物モデル。
  37. アミロイド斑形成に関与するスフェロン構成要素以外のスフェロン構成要素が:
    Figure 2005535565
    からなる群より選択される、請求項36の動物モデル。
  38. プロSAASまたはアミロイド斑形成に直接関与するスフェロン構成要素以外の1以上のスフェロン構成要素ペプチドを発現する遺伝子を調製し;
    動物の脳に遺伝子を注入し;そして
    遺伝子を誘導して、プロSAASまたはアミロイド斑形成に直接関与するスフェロン構成要素以外の1以上のスフェロン構成要素ペプチドを発現させる;
    ことによって産生する、請求項36の動物モデル。
  39. プロSAASまたはアミロイド斑形成に関与するスフェロン構成要素以外のスフェロン構成要素ペプチドをコードする核酸配列を発現する組換え細胞を含んでなる、形質転換細胞株、トランスフェクション細胞株または感染細胞株。
  40. アミロイド斑形成に関与するスフェロン構成要素以外のスフェロン構成要素が:
    Figure 2005535565
    からなる群より選択される、請求項39の細胞株。
  41. 核酸配列が:
    (a)配列番号1〜23のいずれかをコードする、少なくとも1つのポリヌクレオチド;または
    (b)ストリンジェントな条件下で(a)にハイブリダイズする、少なくとも1つのポリヌクレオチド
    を含んでなる、請求項39の細胞株。
  42. 化合物が、プロSAAS、あるいはそのペプチド断片、ドメインまたはサブユニットに親和性を持つ、抗体、抗体断片または短鎖抗体である、請求項1記載の組成物。
  43. 化合物が、プロSAAS、あるいはそのペプチド断片、ドメインまたはサブユニットに親和性を持つ、プロタンパク質コンバターゼ1(PC1)のペプチド断片、ドメインまたはサブユニットである、請求項1記載の組成物。
  44. プロタンパク質コンバターゼが、PC1(PC3とも称される)、PC2、PC4、PC6(PC5とも称される)、PACE4、LPC(PC7またはPC8とも称される)およびフューリンを含んでなるプロタンパク質コンバターゼ群から選択される、請求項43記載の組成物。
  45. 化合物が、プロSAAS、あるいはそのペプチド断片、ドメインまたはサブユニットに親和性を持つ、抗体、抗体断片または短鎖抗体である、請求項12記載の組成物。
  46. 化合物が、プロSAAS、あるいはそのペプチド断片、ドメインまたはサブユニットに親和性を持つ、プロタンパク質コンバターゼ1(PC1)のペプチド断片、ドメインまたはサブユニットである、請求項12記載の組成物。
  47. プロタンパク質コンバターゼが、PC1(PC3とも称される)、PC2、PC4、PC6(PC5とも称される)、PACE4、LPC(PC7またはPC8とも称される)およびフューリンを含んでなるプロタンパク質コンバターゼ群から選択される、請求項46記載の組成物。
  48. 脳におけるスフェロンからのプロSAAS、あるいはそのペプチド断片、ドメインまたはサブユニットの遊離の影響が、アミロイド前駆体タンパク質(APP)またはその断片の異常なプロセシング、翻訳後修飾またはタンパク質分解的切断である、請求項12記載の組成物。
  49. 化合物が、プロSAAS、あるいはそのペプチド断片、ドメインまたはサブユニットに親和性を持つ、プロタンパク質コンバターゼ1(PC1)のペプチド断片、ドメインまたはサブユニットであり、該化合物は:
    Figure 2005535565
    からなる群より選択される活性部位である、請求項1記載の組成物。
  50. 化合物が、プロSAAS、あるいはそのペプチド断片、ドメインまたはサブユニットに親和性を持つ、プロタンパク質コンバターゼ1(PC1)のペプチド断片、ドメインまたはサブユニットであり、該化合物は:
    Figure 2005535565
    からなる群より選択される活性部位である、請求項12記載の組成物。

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