発明の詳細な説明
[技術分野]
本発明は、新規な哺乳類シクロオキシゲナーゼ(COX)ポリペプチドをコードする新規な核酸及びその使用方法に関する。本発明はさらにCOXの活性を調節する化合物及びこのような化合物を同定する方法に関する。
[関連出願の相互参照]
本願は、以下の特許願:2001年9月28日付け出願の米国仮特許願第60/326,133号、2002年4月15日付け出願の同第60/373,225号、2002年4月16日付け出願の同第60/373,661号及び2002年9月16日付け出願の同第60/411,575号の優先権を主張するものである。なおこれら出願は本願に援用するものである。
[米国連邦政府が支援している研究に関する陳述]
本発明は、米国国立衛生研究所(NIH)が授与した助成第AR46688号による米国政府の支援によってなされた。米国政府は本特許願の発明に権利をもっている。
[背景]
真核細胞中の多不飽和脂肪酸は、以下の3種の一般系:1)植物、動物及び細菌中に確認されている病原体誘導オキシゲナーゼ(PIOX)を含むシクロオキシゲナーゼ(COX)と類縁脂肪酸オキシゲナーゼ、2)リポオキシゲナーゼ、及び3)シトクロムP−450によって酸素化される。現在、2種のCOXのアイソザイムすなわちCOX−1とCOX−2が知られている。ニワトリと哺乳類内でクローン化されたCOX−1の予想アミノ酸配列は、COX−2と比べてアミノ酸配列相同性が約60%である。
2種の形態のシクロオキシゲナーゼによって触媒されてアラキドン酸がシクロ酸素化されてプロスタグランジン類を生成し、次にそのプロスタグランジン類が、CAMPの生成に関与している受容体を活性化することによって神経刺激伝達及び免疫と炎症の応答を制御する(Goetzlら、FASEB J.、9巻1051頁1995年)。例えば炎症は、損傷細胞のプロスタグランジンの過剰産生によって、少なくとも部分的に開始され維持される。プロスタグランジンが炎症で演ずる主な役割は、多くの病的炎症状態を治療するのに最も有効なアスピリン様非ステロイド系抗炎症医薬(NSAID)がすべてプロスタグランジンの合成を阻害することによって作用するという事実によって強調されている。NSAIDは、COXアイソザイムのシクロオキシゲナーゼ活性部位のインヒビターとして作用する鎮痛性/抗炎症性/解熱性の薬剤である。個々のNSAIDのCOX活性部位に対する作用に、重要な機構の差が存在する。医療に使用されるNSAIDのうちアスピリンだけがCOX−1及びCOX−2の共有結合修飾剤である。
シクロオキシゲナーゼの活性を調節する化合物及びこのような化合物の同定法の開発に対する要望が増大している。したがって、分子レベルで、既存の抗炎症医薬の有効性を試験し及び可能性がある抗炎症剤の有効性を評価する方法の改良法並びにこのような方法に使用する試薬が要望されている。
[要約]
本発明は、少なくとも一部分は、新規な核酸分子及びこの核酸分子によってコードされ、本願でシクロオキシゲナーゼ1型(COX−1)変異体タンパク質と呼称するポリペプチドを発見したことに基づいている。COX−1変異体核酸分子としては、COX−1ゲノム配列由来でかつイントロン−1を有する核酸分子がある。同様に、COX−1変異体アミノ酸配列は、イントロン−1を含有するCOX−1変異体核酸配列がコードしている。COX−3(すなわちpCex−1)、PCOX−1a(すなわちpCOX−1△657)又はPCOX−1bは、本発明に含まれるCOX−1変異体の例である。さらにCOX−1変異体としては、hCOX−3(cc)(大脳皮質由来のヒトCOX−3)、hCOX−3(af)(肺細胞由来のヒトCOX−3)、hCOX−3(del10)(エキソン10が欠失した肺細胞由来のヒトCOX−3)及びhCOX−3(cs)(ヒトCOX−3の共通配列)がある。このような変異体は、COX−1変異体の活性を調節する化合物又は薬剤を同定するのに有用である。したがって、本発明は一つの側面で、COX−1変異体タンパク質又はその生物学的に活性の部分をコードする単離された核酸分子、及びCOX−1変異体をコードする核酸を検出するのに使用するプライマー又はハイブリッド形成プローブとして適切な核酸フラグメントを提供するものである。
一実施態様で、本発明のCOX−1変異体核酸分子は、シクロオキシゲナーゼ1型のイントロン−1又はそのフラグメントを含有している。一側面で、上記核酸分子はmRNAの転写産物である。別の側面で、この核酸分子はcDNAである。別の側面でその核酸分子は、脂肪酸ラジカルの環化反応及び/又は酸素化反応を触媒する少なくとも一つのドメイン、少なくとも一つの膜結合ドメイン及び少なくとも一つのヘム結合ドメインを含むポリペプチドをコードしている。さらに別の側面で、その核酸分子は、シクロオキシゲナーゼポリペプチド又はその天然に存在する対立遺伝子変異体をコードし、シクロオキシゲナーゼ1のイントロン−1又はそのフラグメントを含有している。
別の実施態様で、本発明は、シクロオキシゲナーゼ1のイントロン−1又はそのフラグメントがコードするアミノ酸配列を含有する単離されたCOX−1変異ポリペプチドを提供するものであり、このポリペプチドは脂肪酸の酸素化反応及び/又は環化反応を触媒する。一側面で、上記単離されたポリペプチドはさらに少なくとも一つの膜結合ドメインと少なくとも一つのヘム結合ドメインを含んでいる。
別の実施態様で、本発明のCOX−1変異体核酸分子は、配列番号:1、配列番号:3(すなわちCOX−3)を含むヌクレオチド配列(例えばそのヌクレオチド配列の全長)又はその相補鎖に対して少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%又は98%を超えて相同である。別の実施態様で、COX−1変異体核酸分子は、配列番号:4、配列番号:6(すなわちPCOX−1a)を含むヌクレオチド配列又はその相補鎖に対して60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%相同である。別の実施態様で、COX−1変異体核酸分子は、配列番号:7、配列番号:9(すなわちPCOX−1b)を含むヌクレオチド配列又はその相補鎖に対して60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%相同である。別の実施態様で、COX−1変異体核酸分子は、配列番号:10(すなわちhCOX−3(cc))を含むヌクレオチド配列又はその相補鎖に対して60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%相同である。別の実施態様で、COX−1変異体核酸分子は、配列番号:11(すなわちhCOX−3(af))を含むヌクレオチド配列又はその相補鎖に対して60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%相同である。別の実施態様で、COX−1変異体核酸分子は、配列番号:12(すなわちhCOX−3(del10))を含むヌクレオチド配列又はその相補鎖に対して60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%相同である。さらに別の実施態様で、COX−1変異体核酸分子は、配列番号:13(すなわちhCOX−3(cs))を含むヌクレオチド配列又はその相補鎖に対して60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%相同である。
一実施態様で、上記単離された核酸分子は、配列番号:1もしくは3で示されるヌクレオチド配列又はその相補鎖を含んでいる。別の好ましい実施態様で、上記単離された核酸分子は配列番号:1又は3で示されるヌクレオチド配列をもっている。
別の実施態様で、上記単離された核酸分子は、配列番号:4もしくは6で示されるヌクレオチド配列又はその相補鎖を含んでいる。別の好ましい実施態様で上記単離された核酸分子は配列番号:4又は6で示されるヌクレオチド配列をもっている。
さらに別の実施態様で、上記単離された核酸分子は配列番号:10で示されるヌクレオチド配列又はその相補鎖を含んでいる。別の実施態様で、上記単離された核酸分子は配列番号:10で示されるヌクレオチド配列をもっている。
さらに別の実施態様で、上記単離された核酸分子は、配列番号:11で示されるヌクレオチド配列又はその相補鎖を含んでいる。別の実施態様で、上記単離された核酸分子は、配列番号:11で示されるヌクレオチド配列をもっている。
さらに別の実施態様で、上記単離された核酸分子は、配列番号:12で示されるヌクレオチド配列又はその相補鎖を含んでいる。別の実施態様で、上記単離された核酸分子は配列番号:12で示されるヌクレオチド配列をもっている。
さらに別の実施態様で、上記単離された核酸分子は、配列番号:13で示されるヌクレオチド配列又はその相補鎖を含んでいる。別の実施態様で、上記核酸分子は配列番号:13で示されるヌクレオチド配列をもっている。
別の実施態様で、COX−1変異体核酸分子は、配列番号:2(すなわちCOX−3)、配列番号:5(すなわちPCOX−1a)、配列番号:14(hCOX−3(cs1))、配列番号:15(すなわちhCOX−3(cs2))及び配列番号:16(すなわちhCOX−3(cs3))のアミノ酸配列と相同のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含んでいる。一実施態様で、COX−1変異体核酸分子は、配列番号:2、配列番号:5、配列番号:14、配列番号15又は配列番号:16を含むアミノ酸配列(例えば配列番号:2、5、14、15又は16の全アミノ酸配列)を含むアミノ酸配列と少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、又は98%を超えて相同のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含んでいる。
一実施態様で、COX−1変異体のアミノ酸配列をコードする単離された核酸分子は、哺乳類源、例えば羊、ブタ、オオカミ又はイヌ由来である。別の実施態様で、COX−1変異体はニワトリ由来である。さらに別の実施態様で、COX−1変異体はヒト由来である。
本発明の別の実施態様が特徴的に提供するものは、COX−1変異体ポリペプチドをコードするCOX−1変異体核酸分子を、非COX−1変異体ポリペプチドをコードする核酸分子に対して特異的に検出する核酸分子好ましくはCOX−1変異体核酸分子である。例えば、一実施態様で、上記の核酸分子は、少なくとも50、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750又は800のヌクレオチドからなる長さの核酸分子であり、ストリンジェント条件下で、配列番号:1、配列番号:4、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12もしくは配列番号13で示されるヌクレオチド配列又はその相補鎖を含む核酸分子とハイブリッドを形成する。
他の好ましい実施態様で、上記核酸分子は、配列番号:2、配列番号:5、配列番号:14、配列番号:15又は配列番号:16のアミノ酸配列を含むポリペプチドの天然に存在する対立遺伝子変異体をコードし、そしてストリンジェント条件下、配列番号:1、配列番号:4、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12又は配列番号:13を含む核酸分子とハイブリッドを形成する。
本発明の別の実施態様は、COX−1変異体核酸分子に対しアンチセンスの単離された核酸分子、例えばCOX−1変異体核酸分子のコーディングストランドを提供する。
本発明の別の側面は、COX−1変異体核酸分子を含むベクターを提供する。特定の実施態様で、そのベクターは組み換え発現ベクターである。別の実施態様で、本発明は本発明のベクターを含有する宿主細胞を提供する。また本発明は、タンパク質又はポリペプチド、好ましくはCOX−1変異体のタンパク質又はポリペプチドの製造方法であって、そのタンパク質が産生されるように、組み換え発現ベクターを含有する本発明の宿主細胞例えば哺乳類の宿主細胞又は昆虫の細胞を適切な培地内で培養することによる製造方法を提供するものである。
本発明の別の側面が特徴的に提供するものは、単離されたCOX−1変異体又は組み換えCOX−1変異体のタンパク質とポリペプチドである。一実施態様で、その単離されたタンパク質好ましくはCOX−1変異体タンパク質(例えば、COX−3、PCOX−1a、hCOX−3(cc)、hCOX−3(af)、hCOX−3(del10)及びhCOX−3(cs))は、脂肪酸ラジカルの環化反応及び/又は酸素化反応を触媒するドメイン、膜結合ドメイン及びヘム結合ドメインそれぞれを少なくとも一つずつ含んでいる。別の実施態様で、上記単離されたタンパク質好ましくはCOX−1変異体タンパク質は、脂肪酸ラジカルの環化反応及び/又は酸素化反応を触媒するドメイン、膜結合ドメイン、ヘム結合ドメインそれぞれを少なくとも一つずつ含み、そして配列番号:2、配列番号:5、配列番号:14、配列番号:15又は配列番号:16を含むアミノ酸配列と、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%又は98%を超えて相同のアミノ酸配列をもっている。さらに別の実施態様で、上記単離されたタンパク質好ましくはCOX−1変異体タンパク質は、脂肪酸ラジカルの環化反応及び/又は酸素化反応を触媒するドメイン、膜結合ドメイン、ヘム結合ドメインそれぞれを少なくとも一つずつ含み、そして中枢神経系の細胞内で発現され及び/又は機能する。さらに別の実施態様で、上記単離されたタンパク質好ましくはCOX−1変異体タンパク質は、脂肪酸ラジカルの環化反応及び/又は酸素化反応を触媒するドメイン、膜結合ドメイン、ヘム結合ドメインそれぞれを少なくとも一つずつ有し、そして、細胞の成長に関連するシグナル伝達経路例えば細胞周期の調節に関連するシグナル伝達経路及び中枢神経系の機能での役割を果たす。別の実施態様で、上記単離されたタンパク質好ましくはCOX−1変異体タンパク質は、脂肪酸ラジカルの環化反応及び/又は酸素化反応を触媒するドメイン、膜結合ドメイン、ヘム結合ドメインそれぞれを少なくとも一つずつ有しそして、ストリンジェントハイブリッド形成条件下で、配列番号:1、配列番号:4、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12又は配列番号:13のヌクレオチド配列を含む核酸分子とハイブリッドを形成するヌクレオチド配列を有する核酸分子でコードされている。
別の実施態様で、上記単離されたタンパク質は、配列番号:2、配列番号:5、配列番号:14、配列番号:15又は配列番号:16のアミノ酸配列と相同のアミノ酸配列をもっている。一実施態様で、上記タンパク質は、配列番号:2、配列番号:5、配列番号:14、配列番号:15又は配列番号:16を含むアミノ酸配列(例えば配列番号:2、5、14、15又は16の全アミノ酸配列)を含むアミノ酸配列と少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%又は98%を超えて相同のアミノ酸配列を有している。別の実施態様で、本発明が特徴的に提供するものは、配列番号:2、配列番号:5、配列番号:14、配列番号:15又は配列番号:16のアミノ酸配列を有するタンパク質のフラグメントであって、配列番号:2、配列番号:5、配列番号:14、配列番号:15又は配列番号:16で示されるアミノ酸配列の少なくとも15個のアミノ酸(例えば連続アミノ酸)を含むフラグメントである。別の実施態様で、上記タンパク質は、配列番号:2、配列番号:5、配列番号:14、配列番号:15又は配列番号:16で示されるアミノ酸配列を有している。
本発明の別の実施態様が特徴的に提供するものは、配列番号:1、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:6、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12もしくは配列番号:13を含むヌクレオチド配列(例えばそのヌクレオチド配列の全長)又はその相補鎖と、少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%又は98%を超えて相同であるヌクレオチド配列を有する核酸分子がコードする単離されたタンパク質好ましくはCOX−1変異体タンパク質である。さらに本発明が特徴的に提供するものは、ストリンジェントハイブリッド形成条件下配列番号:1、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:6、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12もしくは配列番号13のヌクレオチド配列又はその相補鎖を含む核酸分子とハイブリッドを形成するヌクレオチド配列を有する核酸分子でコードされた単離されたタンパク質好ましくはCOX−1変異体タンパク質である。
本発明のタンパク質又はその生物学的に活性の部分は、非COX−1変異体ポリペプチド(例えば異種アミノ酸配列)に作動的に連結されて融合タンパク質を生成することができる。さらに本発明が特徴的に提供するものは、本発明のタンパク質、好ましくはCOX−1変異体タンパク質(例えば、COX−3、PCOX−1a、PCOX−1b、hCOX−3(cc)、hCOX−3(af)、hCOX−3(del10)又はhCOX−3(cs))に特異的に結合するモノクローナル抗体又はポリクローナル抗などの抗体である。さらに上記COX−1変異体タンパク質又はその生物学的に活性の部分は、医薬として許容できる担体を任意に含有する医薬組成物に組み入れることができる。
本発明は、別の実施態様で、COX−1変異体の核酸分子、タンパク質又はポリペプチドを検出することができて、それらが生物試料中に存在していることを検出する試薬と、生物試料を接触させることによって、COX−1変異体の核酸分子、タンパク質又はポリペプチドが生物試料中に存在していることを検出する方法を提供するものである。
別の実施態様で、本発明は、COX−1変異体の活性の指標(indicator)を検出することができてCOX−1変異体の活性が生物試料中に存在していることが検出される試薬と、生物試料を接触させることによって、COX−1変異体の活性が生物試料中に存在していることを検出する方法を提供するものである。
別の側面で、本発明は、COX−1変異体の活性を有するCOX−1変異体タンパク質を含有する指標組成物を提供し、その指標組成物を被検化合物と接触させて上記指標組成物中のCOX−1変異体の活性に対する上記被検化合物の作用を確認してCOX−1変異体タンパク質の活性を調節する化合物を同定することによって、COX−1変異体のタンパク質又は核酸の活性を調節する化合物を同定する方法を提供するものである。
別の側面で、本発明は、COX−1変異体を発現できる細胞をCOX−1変異体の活性を調節する試薬と接触させて細胞のCOX−1変異体活性を調節することを含んでなるCOX−1変異体活性の調節方法を提供するものである。一実施態様で、上記試薬はCOX−1変異体の活性を阻害する。別の実施態様では、上記試薬はCOX−1変異体の活性を刺激する。一実施態様で、上記試薬は、COX−1変異体タンパク質と特異的に結合する抗体である。一実施態様で、上記試薬は、COX−1変異体の遺伝子の転写又はCOX−1変異体のmRNAの転写を調節することによって、COX−1変異体の発現を調節する。さらに別の実施態様で、上記試薬は、COX−1変異体のmRNA又はCOX−1変異体の遺伝子のコードストラントに対してアンチセンスのヌクレオチド配列を有する核酸配列である。
一実施態様で、本発明の方法は、COX−1変異体の活性調節因子である試薬を、COX−1変異体のタンパク質又は核酸の異常な発現又は活性を特徴とする障害を有する被検者に投与することによって、このような被検者を治療するのに使用される。一実施態様で、COX−1変異体のモジュレーターはCOX−1変異体のタンパク質である。別の実施態様で、COX−1変異体のモジュレーターはCOX−1変異体核酸分子である。さらに別の実施態様で、COX−1変異体のモジュレーターは、ペプチドミメティック(peptidomimetic)又は他の小分子である。好ましい実施態様での、COX−1変異体のタンパク質又は核酸の異常な発現を特徴とする障害は、細胞増殖に関連する障害例えば新生物生成障害又は中枢神経系の障害例えばアルツハイマー病である。
また、本発明は(i)COX−1変異体タンパク質をコードする遺伝子の異常な修飾もしくは突然変異、(ii)その遺伝子の誤調節、及び(iii)COX−1変異体タンパク質の異常な翻訳後の一修飾のうちの少なくとも一つを特徴とする遺伝子の変化の有無を確認する診断検定法であって、その遺伝子の野生型がCOX−1変異体の活性を有するタンパク質をコードしている方法を提供するものである。診断検定法としては、例えばCOX−1変異体の有無又はCOX−1変異体の遺伝子の変化の有無を検出するアレーベースのシステムがある。
別の実施態様で、本発明は、本発明に記載の核酸によってコードされるCOX−1変異体の特異的阻害剤を医薬として許容できる担体に入れて投与することによって被検者の神経変性症状を改善する方法を提供する。
別の実施態様で、本発明は、COX−3、PCOX−1a、PCOX−1b、hCOX−3(cc)、hCOX−3(af)、hCOX−3(del10)又はhCOX−3(cs)の遺伝子産物の活性を選択して阻害する化合物を、かような治療を必要とする被検者に投与することによって、被検者のCOX−3、PCOX−1a、PCOX−1b、hCOX−3(cc)、hCOX−3(af)、hCOX−3(del10)又はhCOX−3(cs)の活性を選択して阻害する方法を提供する。
別の実施態様で、本発明は、COX−3、PCOX−1a、PCOX−1b、hCOX−3(cc)、hCOX−3(af)、hCOX−3(del10)又はhCOX−3(cs)の遺伝子産物を選択して阻害する非ステロイド化合物を、かような治療を必要とする被検者に投与することによって、被検者のCOX−3、PCOX−1a、PCOX−1b、hCOX−3(cc)、hCOX−3(af)、hCOX−3(del10)又はhCOX−3(cs)の活性を選択して阻害する方法であって、その非ステロイド化合物の活性が被検者に有意な毒性副作用をもたらさない方法を提供する。
さらに別の実施態様で、本発明は、かような治療を必要とする被検者に、COX−1変異体の遺伝子産物の活性を選択して阻害する非ステロイド化合物を投与することによって、被検者のCOX−1変異体の活性を選択して阻害する方法であって;COX−1変異体の遺伝子産物の活性を選択して阻害する非ステロイド化合物の性能が、例えばCOX−3、PCOX−1a、PCOX−1b、hCOX−3(cc)、hCOX−3(af)、hCOX−3(del10)又はhCOX−3(cs)を発現しCOX−1又はCOX−2を発現しない遺伝子工学的に処理された細胞を上記非ステロイド化合物と接触させ次にその細胞を予め定められた量のアラキドン酸に暴露し;COX−1又はCOX−2を発現しCOX−1変異体を発現しない遺伝子工学的に処理された細胞を上記非ステロイド化合物と接触させ次にその細胞を予め定められた量のアラキドン酸に暴露し;アラキドン酸の、そのプロスタグランジンの代謝生成物の変換率を測定し;次に上記非ステロイド化合物に暴露された各細胞が変換した変換アラキドン酸の量を、上記非ステロイド化合物に暴露されなかった対照細胞が変換したアラキドン酸の量と比較して、COX−1変異体の活性を阻害しCOX−1又はCOX−2の活性を阻害しない化合物を同定することによって確認される方法を提供するものである。
本発明の1以上の実施態様の詳細を、添付図面と下記説明で述べる。本発明の他の特徴、目的及び利点は下記説明と図面及び請求項から明らかになるであろう。
[詳細な説明]
本発明は、脳や他の組織内で細胞プロセスと関連するシグナル経路で役割を演じるすなわち機能する、本願で、「シクロオキシゲナーゼ1型変異体」すなわち「COX−1変異体」又は「COX−1変異体の核酸とポリペプチドの分子」と呼称される新規分子の発見に、少なくとも一部分基づいている。本発明の代表的なCOX−変異体としては、COX−3、PCOX−1a、PCOX−1b、hCOX−3(cc)、hCOX−3(af)、hCOX−3(del10)及びhCOX−3(cs)がある。一実施態様で、COX−1変異体の分子は、細胞の成長又は分化に関係する1又は2以上のタンパク質の活性を調節する。別の実施態様で、本発明のCOX−1変異体の分子は中枢神経系の機能を調節することができる。
シクロオキシゲナーゼのアイソザイムは、医薬として重要な治療剤の例えばアスピリン、イブプロフェン及びナプロキセンを含む非ステロイド系抗炎症医薬(NSAID)の細胞標的である。本発明は新規なCOX−1変異体の酵素を提供するものである。脂肪酸オキシゲナーゼの活性は、シクロオキシゲナーゼによるプロスタグランジン、トロンボキサン、ヒドロキシー及びヒドロペルオキシ脂肪酸の産生が主要なものであり、そして病原体誘発性脂肪酸オキシゲナーゼ(PIOX)と呼称される、植物中の酵素の類縁グループによって共有されている。現在のデータは、PIOX様酵素が自然に広く見られることを示している。PIOXはヒドロペルオキシ脂肪酸とその誘導体を生成する。したがって、本発明のCOX−1変異体は、PIOXと同様に、脳及び他の組織の中で、重要な酸素化脂肪酸由来のメッセンジャーを合成するために必要な重要なアミノ酸残基を含んでいる。
先に述べたように、シクロオキシゲナーゼは、プロスタグランジンの合成反応で役割を演じている。細胞の成長に関連するシグナル経路に関係するシクロオキシゲナーゼの活性が阻害されるか又は過剰に刺激されると、細胞成長が混乱するようになることがあり、続いて細胞成長が関連する障害になることがある。用語「細胞成長が関連する障害」は本願で使用する場合、細胞成長のディレギュレーション(deregulation)例えばアップレギュレーション(upregulation)又はダウンレギュレーション(downregulation)を特徴とする障害、病気又は症状を含んでいる。細胞成長のディレギュレーションは、細胞増殖、細胞周期のプログレッション(progression)、細胞分化及び/又は細胞肥大のディレギュレーションが原因である。細胞成長が関連する障害の例としては、癌例えば黒色腫、前立腺癌、子宮頸癌、乳癌、結腸癌又は肉腫などの障害がある。細胞成長が関連する障害としてはさらに、無調節の(unregulated)又は調節不全の(dysregulated)アポトーシス(すなわちプログラムされた細胞死)に関係する障害がある。アポトーシスは、損傷細胞又は有害細胞が、多細胞生物から排除される細胞自殺プロセスである。アポトーシスを受けている細胞は、細胞の収縮、細胞膜の成熟、クロマチンの凝縮、アポトープ体(apoptotic body)の生成とフラグメンテーションを含む明確な形態の変化をしている。この細胞自殺プログラムは、動物と植物の種に進化の過程で保存されている。アポトーシスは、後生動物の発生とホメオスタシスで重要な役割を演じ、また昆虫の幼虫の発生と変態でも重要である。さらに、アポトーシスは宿主防衛機構として作用する。例えば致命的に感染した細胞は、アポトーシスによって排除されてウィルスの増殖が制限される。アポトーシスの機構は、生物及び非生物の傷害に至る植物反応に関連している。アポトーシスの調節不全は、癌、神経変性障害及び自己免疫疾患を含む各種のヒト疾患に関連している。したがって、アポトーシスを操作する新規の機序が確認されると、そのプロセスを研究し操作する新しい手段が提供される。
本発明は、少なくとも一部分が、特定の保存された構造及び機能の特徴を有する分子のファミリーを有する、COX−1変異体のタンパク質と核酸の分子と呼称される新規な分子の発見に基づいている。用語「ファミリー」は、本発明のタンパク質と核酸の分子を意味する場合、本願で定義するように、共通の構造ドメイン又は構造モチーフを有しかつアミノ酸又はヌクレオチドの配列の十分な相同性を有する2種以上のタンパク質又は核酸分子を意味するものである。このようなファミリーのメンバーは、天然に生成するか又は非自然的に生成し、同一種又は異なる種から生成する。例えば、ファミリーは、ヒト起源の第一タンパク質及びヒト起源の他の異なるタンパク質を含んでいることがあり、あるいは非ヒト起源の特定の同族体を含んでいることもある。また、ファミリーのメンバーは、共通の機能特性を有していることもある。本発明の一実施態様は、COX−3、PCOX−1a、PCOX−1b、hCOX−3(cc)、hCOX−3(af)、hCOX−3(del10)及びhCOX−3(cs)を含む代表的なCOX−1変異体を特徴的に提供する。本発明の核酸とタンパク質の分子を、下記のサブセクションでより詳細に説明する。
一実施態様で、本発明のCOX−1変異体の核酸分子はシクロオキシゲナーゼ1型のイントロン−1又はそのフラグメントを含有している。一側面で上記核酸分子はmRNAの転写産物である。別の側面で上記核酸分子はcDNAである。別の側面で、上記核酸分子は、脂肪酸ラジカルの環化反応及び/又は酸素化反応を触媒するドメインを少なくとも一つ、膜結合ドメインを少なくとも一つ及びヘム結合ドメインを少なくとも一つ含むポリペプチドをコードしている。さらに別の側面で、上記核酸分子は、シクロオキシゲナーゼ1のイントロン−1又はそのフラグメントを含有するシクロオキシゲナーゼポリペプチド又はその天然に存在する対立遺伝子変異体をコードしている。
本発明は、シクロオキシゲナーゼのイントロン−1を含有するCOX−1変異体の核酸分子とポリペプチドを提供するものである。これらのmRNA転写産物とcDNA中にイントロン−1が保持されるとそのタンパク質のシグナルペプチドが破壊されるので、これらのmRNA転写産物及びそれら転写産物由来のcDNAによってコードされるタンパク質の細胞レベル以下の配置が変化すると考えられる。これらタンパク質の細胞レベル以下の配置が、COX−1が通常見られる小胞体内腔からサイトゾル又は他の部位に変わると、我々のcDNAがコードするタンパク質の翻訳後修飾、レドックス状態及びタンパク質−タンパク質間の相互作用を変える。これらの変化は、上記タンパク質の酵素活性に有意に影響しその作用によってこれらのタンパク質はCOX−1とは別個の新規な医薬標的になると予想される。
本願で提供されるノーザンブロットとRT−PCRのデータは、類似の配列がヒトに存在していることを示唆している。これらのデータは、ヒト組織が、イントロン−1の配列を有するCOX−1遺伝子からコードされるmRNAを含有していることを示している。シクロオキシゲナーゼのイントロン−1はすでに配列が決定されているが、本願に開示されている発明は、イントロン−1の配列が成熟シクロオキシゲナーゼ転写産物内に含まれているという最も重要な証拠を提供している。これら配列のアラインメントは、各々の種におけるイントロン−1が短く(90〜102nt)、その配列の長さは3の倍数でありそしてその配列は進化の過程で保存されている。その配列は3の倍数であるから、その配列がCOX−1のmRNAに保存されている場合、イントロン−1はインフレーム挿入体(in-frame insertion)を構成している。その配列の進化の過程での保存は、イントロン−1の5’末端がコードしている保存配列が三つの種のすべてに存在していることを予想させ、前記タンパク質を細胞レベルにおいて、標的とする部位に送るのに重要である。
代表的なCOX−1変異体としてはCOX−3がある。イントロン−1に対してアンチセンスのオリゴヌクレオチドプローブを使用して行うヒト組織由来の(ポリA)RNAのノーザンブロット分析の結果は、約5.2KbのmRNA及び場合によってはこれより小さいmRNAが上記プローブによって明確に検出されることを示している。このヒトの約5.2Kbのイントロン−1ハイブリッド形成RNAの発現は脳皮質で最大であったが、イヌの同じ組織が多量のイントロン−1含有COX−1mRNAを含有している。COX−3が発現される約5.2KbのRNAが、脳の他の部分や心臓又は筋肉などの他の組織に存在していることも発見された。イントロン−1に対して特異的なセンスプライマー及びCOX−1のオープンリーディングフレームの終止コドンの領域に対してアンチセンスのプライマーからなるプライマー対を使用する逆転写PCR(RT−PCR)を、ヒト脳RNAを鋳型として使用して実施した。この実験によって1.8Kbのフラグメントが生成したが、これはイントロン−1を含有するヒトCOX−1cDNAを増幅するのに適切な大きさである。さらにこのプロットをネズミのCOX−1cDNAとハイブリッドを形成させると、上記増幅されたフラグメントと、高いストリンジェンシィで強くハイブリッドが形成された。これは、このフラグメントがヒトCOX−1cDNAを含有していることを示している。
一実施態様で、単離されたCOX−1変異体のタンパク質又はポリペプチドは、脂肪酸ラジカルの環化反応及び/又は酸素化反応を触媒するドメインが少なくとも一つ、膜結合ドメインが少なくとも一つ及びヘム結合ドメインが少なくとも一つ存在していることに基づいて同定される。
本発明の単離されたタンパク質は、COX−3、PCOX−1a、hCOX−3(cc)、hCOX−3(af)、hCOX−3(del10)及びhCOX−3(cs)のアミノ酸配列に相同のアミノ酸配列を有しているか、又は配列番号:1、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:6、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12又は配列番号:13に相同のヌクレオチド配列によってコードされている。用語「相同の」は、本明細書で使用する場合、第一のアミノ酸もしくはヌクレオチドの配列と第二のアミノ酸もしくはヌクレオチドの配列が共通の構造ドメインもしくは構造モチーフ及び/又は共通の機能活性を共有するように、第二のアミノ酸もしくはヌクレオチドの配列に対して十分な又は最小の数の同一もしくは同等のアミノ酸の残基(例えば類似の側鎖を有するアミノ酸残基)もしくはヌクレオチドを含有する第一のアミノ酸もしくはヌクレオチドの配列を意味する。例えば、共通の構造ドメインを共有し、それらドメインのアミノ酸配列が少なくとも30%、40%もしくは50%相同であり、好ましくは60%、より好ましくは70%〜80%さらにより好ましくは90〜95%相同でありそして少なくとも一つの好ましくは少なくとも二つの構造ドメインもしくは構造モチーフを含有するアミノ酸もしくはヌクレオチドの配列は、本願では十分に相同であると定義される。さらに、少なくとも30%、40%もしくは50%、好ましくは60%より好ましくは70〜80%もしくは90〜95%相同でありそして共通の機能活性を共有するアミノ酸もしくはヌクレオチドの配列は、本願では十分に相同であると定義される。
本願で相互に置きかえて使用する場合、用語「COX−3活性」、「COX−3の生物活性」又は「COX−3の機能活性」は、標準の方法で生体内又は生体外で測定されるような、COX−3応答細胞又はCOX−3タンパク質の基質に対しCOX−3のタンパク質、ポリペプチド又は核酸分子が発揮する活性を意味する。COX−3の生物活性はここで説明する。同様に、用語「PCOX−1aの活性」、「PCOX−1aの生物活性」又は「PCOX−1aの機能活性」は、標準の方法で生体内又は生体外で測定されるような、PCOX−1a応答細胞又はPCOX−1aタンパク質の基質に対しPCOX−1aのタンパク質、ポリペプチド又は核酸分子によって発揮される活性を意味する。PCOX−1aの生物活性はここで説明する。先に述べた用語は、PCOX−1b、hCOX−3(cc)、hCOX−3(af)、hCOX−3(del10)及びhCOX−3(cs)を含む、ここで説明する代表的なCOX−1変異体すべてに適用することができる。
単離されたCOX−3cDNAのヌクレオチド配列とCOX−3ポリペプチドの予測アミノ酸配列それぞれを、図9A(配列番号:1)と図9B(配列番号:2)に示す。単離されたPCOX−1aのcDNAヌクレオチド配列とPCOX−1aポリペプチドの予測アミノ酸配列それぞれを図9D(配列番号:4)と図9E(配列番号:5)に示す。hCOX−3(cc)、hCOX−3(af)及びhCOX−3(del10)のcDNAの共通ヌクレオチド配列を図16(配列番号:13)示す。単離されたhCOX−3(cc)のcDNAのヌクレオチド配列を図17(配列番号:10)に示す。単離されたhCOX−3(af)のcDNAのヌクレオチド配列を図18(配列番号:11)に示す。単離されたhCOX−3(del10)のcDNAヌクレオチド配列を図19(配列番号:12)に示す。上記共通配列由来のアミノ酸配列を図20A〜20F(配列番号:14、配列番号:15及び配列番号:16)に示す。
COX−3、PCOX−1a、hCOX−3(cc)、hCOX−3(af)、hCOX−3(del10)及びhCOX−3(cs)をコードするヌクレオチド配列を含有するプラスミドを、★★★付けでかつ指定受託番号★★★にて、米国バージニア州20110−2209、マナッサス10801所在のブールバード大学のAmerican Type Culture Collection(ATCC)に寄託した。これらの寄託物は、特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブタペスト条約の条件下で保管される。これらの寄託は、単に当業者の便宜のために行ったのであり、寄託が米国特許法112条に基づいて要求されるということを認めたわけではない。
本発明の一実施態様は、タンパク質もしくはその生物学的に活性の部分をコードする単離された核酸分子とCOX−1変異体(すなわちCOX−3、PCOX−1a、hCOX−3(cc)、hCOX−3(af)、hCOX−3(del10)及びhCOX−3(cs)をコードする核酸(例えばmRNA))を同定するためハイブリッド形成プローブとして使用するのに十分な核酸フラグメント及び核酸分子の増幅又は突然変異のためPCRプライマーとして使用するフラグメントに関する。用語「核酸分子」は、本明細書で使用する場合、DNA分子(例えばcDNA又はゲノムDNA)とRNA分子(例えばmRNA)及びヌクレオチド類似体を使用して生成される前記DNAもしくはRNAの類似体を含むものである。その核酸分子は、一本鎖又は二本鎖であってもよいが、二本鎖DNAが好ましい。
「単離された」核酸分子は、その核酸の自然源中に存在する他の核酸分子類から分離された核酸分子である。例えば、ゲノムDNAについては、用語「単離された」は、そのゲノムDNAが自然に連結している染色体から分離された核酸分子を含んでいる。好ましくは、「単離された」核酸には、その核酸が誘導される生物のゲノムDNA中のその核酸に自然に隣接している配列(すなわちその核酸の5’末端と3’末端に位置している配列)がない。例えば、各種の実施態様で、上記単離された核酸分子は、その核酸が誘導される細胞のゲノムDNA中のその核酸分子に自然に隣接しているヌクレオチド配列であって、約5Kb、4Kb、3Kb、2Kb、1Kb、0.5Kb又は0.1Kb小さいヌクレオチド配列を含有していてもよい。さらに、COX−1変異体のcDNA分子などの「単離された」核酸分子は、組み換え法で製造される場合は他の細胞物質又は培地を実質的に含有しないか又は化学的に、合成される場合は科学的前駆物質もしくは他の化学薬剤を実質的にしていない。
本発明の核酸分子、例えば配列番号:1、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:6、配列番号:★、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12又は配列番号:13又はその一部のヌクレオチド配列を有するヌクレオチド配列は、標準の分子生物学の方法及び本明細書で提供される配列の情報を利用して単離することができる。例えば、配列番号:1の核酸配列又は配列番号:3のヌクレオチド配列の全部又は一部を、ハイブリッド形成プローブとして使用し、標準のハイブリッド形成法とクローニング法(例えばSambrook、J.、Fritsh、E.E.及びManiatis、T.著「Molecular cloning: A Laboratory Mannual」第2版、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor Laboratory Press、米国ニューヨーク州コールドスプリングハーバー1989年に記載されているような方法)を利用することによって、核酸分子を単離することができる。
さらに、配列番号:1、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:6、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12又は配列番号:13の全部又は一部を含有する核酸分子は、配列番号:1、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:6、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12又は配列番号:13の配列に基づいて設計された合成のオリゴヌクレオチドプライマーを使用しポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって単離することができる。
本発明の核酸は、標準のPCR増幅法にしたがって、鋳型としてcDNA、mRNA又は代わりにゲノムDNAを使用しかつ適当なオリゴヌクレオチドのプライマーを使用して増幅することができる。このようにして増幅された核酸は適当なベクター中にクローン化され次にDNA配列分析法によって特性を決定することができる。さらに、標準の合成法によって、例えば自動DNA合成機を使用して、COX−1変異体ヌクレオチドの配列に相当するオリゴヌクレオチドを製造することができる。
各種の実施態様で、本発明の単離された核酸分子は、COX−3、PCOX−1a、PCOX−1b、hCOX−3(cc)、hCOX−3(af)、hCOX−3(del10)及びhCOX−3(cs)それぞれのコーディング領域に相当する、配列番号:1、配列番号:4、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12又は配列番号:13で示されるヌクレオチド配列を含んでいる。
他の好ましい実施態様で、本発明の単離された核酸分子は、配列番号:1、配列番号:4、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12もしくは配列番号:13で示されるヌクレオチド配列又はこれらヌクレオチド配列のいずれかの一部の相補鎖である核酸分子を含んでいる。配列番号:1、配列番号:4、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12もしくは配列番号:13で示されるヌクレオチド配列に相補性の核酸分子はそれぞれ、配列番号:1、配列番号:4、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12もしくは配列番号:13で示されるヌクレオチド配列とハイブリッドを形成して安定な二重らせん体を形成することができるように、配列番号:1、配列番号:4、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12もしくは配列番号:13で示されるヌクレオチド配列に対して十分に相補性の核酸分子である。
さらに別の好ましい実施態様で、本発明の単離された核酸分子は、配列番号:1、配列番号:4、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12もしくは配列番号:13で示されるヌクレオチド配列(例えばそのヌクレオチド配列の全長)又はこれらのヌクレオチド配列のいずれかの一部分と少なくとも約50%、54%、55%、60%、62%、65%、70%、75%、78%、80%、85%、86%、90%、97%、98%もしくは98%を超えて相同性であるヌクレオチド配列を含んでいる。
さらに、本発明の核酸分子は、配列番号:1、配列番号:4、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12又は配列番号:13の核酸配列の一部分だけ例えばプローブもしくはプライマー又はタンパク質の生物学的に活性の部分をコードするフラグメントとして使用できるフラグメントだけを含有していてもよい。COX−1変異体の転写産物のクローン化によって確認されるヌクレオチド配列は、他のCOX−1変異体のファミリーのメンバー及び他の種由来の同族体を同定及び/又はクローン化するのに使用するように設定されたプローブ及びプライマーを生成することができる。上記プローブ/プライマーは通常、実質的に精製されたオリゴヌクレオチドを含有している。上記オリゴヌクレオチドは通常、配列番号:1、配列番号:4、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12もしくは配列番号:13のセンス配列;配列番号:1、配列番号:4、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12もしくは配列番号:13のアンチセンス配列;又は配列番号:1、配列番号:4、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12もしくは配列番号:13の天然に存在する対立遺伝子の変異体もしくは突然変異体の少なくとも約12もしくは15個の、好ましくは約20もしくは25個の、より好ましくは約30、35、40、45、50、55、60、65もしくは75個の連続ヌクレオチドとストリンジェント条件下ハイブリッドを形成するヌクレオチド配列の領域をもっている。代表的な実施態様で、本発明の核酸分子は、少なくとも350、400、450、500、550、600、650、700、750もしくは800個のヌクレオチドの長さでありそして配列番号:1、配列番号:4、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12もしくは配列番号:13の核酸分子とストリンジェントハイブリッド形成条件下でハイブリッドを形成するヌクレオチド配列を含んでいる。
本明細書で定義するように、ストリンジェント条件下、互いにハイブリッドを形成しない核酸は、互いに実質的に同一であるポリペプチドをコードしている場合、やはり互いに実質的に相同である。これは、例えば、核酸が、遺伝暗号の重複性によって可能になるような高いコドン縮重を利用して合成又は組み換えによってつくられるときに起こる。
COX−1変異体のヌクレオチド配列に基づいたプローブを使用して、同じか又は相同のタンパク質をコードする転写産物又はゲノム配列を検出できる。好ましい実施態様で、上記プローブは、さらにそれに添付される標識基を含んでおり、その標識基としては例えば放射性同位元素、蛍光化合物、酵素又は酵素コファクターがある。このようなプローブは、例えば被検者由来の細胞の試料中のCOX−1変異体をコードする核酸のレベルを測定することによって例えばCOX−1変異体のmRNAのレベルを検出することによって、COX−1変異体のタンパク質を誤発現(misexpress)する細胞又は組織を同定するための診断試験キットの一部品として使用できる。
「COX−1変異体のタンパク質の生理的に活性の部分」をコードする核酸フラグメントは、生理活性を有するポリペプチド(そのタンパク質の生理活性は本明細書で述べる)をコードする配列番号:1、配列番号:4、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12又は配列番号:13のヌクレオチド配列の一部を単離し、そのタンパク質のコードされた部分を発現させ(例えば生体外での組み換え発現によって)、次いでそのタンパク質のコードされた部分の活性を評価することによって調製することができる。
本発明さらに、遺伝暗号が縮重しているため配列番号:1、配列番号:4、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12又は配列番号:13で示されるヌクレオチド配列とは異なっていて、配列番号:1、配列番号:4、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12又は配列番号:13で示されるヌクレオチド配列でコードされているのと同じタンパク質をコードする核酸分子を含んでいる。別の実施態様で、本発明の単離された核酸分子は、配列番号:2、配列番号:5、配列番号:14、配列番号:15又は配列番号:16で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列を有している。
配列番号:1、配列番号:4、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12又は配列番号:13で示されるCOX−1変異体のヌクレオチド配列に加えて、タンパク質のアミノ酸配列を変化させるDNA配列の多型性が母集団(例えばヒトの母集団)中に存在しているかもしれないことは当業者は分かっているであろう。このような遺伝多型性は、天然の対立遺伝子の変化によって、母集団中の個体間に存在しているかもしれない。用語「遺伝子」と「組み換え遺伝子」は、本明細書で使用する場合、COX−1タンパク質好ましくは哺乳類のタンパク質をコードするオープンリーディングフレームを含みさらに非コード制御配列及びイントロンを含んでいることもある核酸分子を意味する。天然対立遺伝子の変異はCOX−1遺伝子に起こるので、COX−1変異体ポリペプチドをコードする変異mRNA転写産物は、このような対立遺伝子の変異を含んでいることがある。天然の対立遺伝子の変異によって起こりかつCOX−1変異体タンパク質の機能活性を変えないCOX−1変異体遺伝子中のかようなヌクレオチドの変異とその結果生じるアミノ酸多型性のいずれか及びすべては本発明の範囲内にあるものである。
さらに、他のCOX−1ファミリーのメンバーをコードし、したがって配列番号:1、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:6、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12又は配列番号:13の配列とは異なるヌクレオチド配列を有する核酸分子は、本発明の範囲内に入っている。例えば、別のCOX−1変異体のcDNAは、開示されたヒト、イヌ又はニワトリの配列のヌクレオチド配列に基づいて同定することができる。さらに、異なる種由来の本発明のタンパク質をコードし、したがって配列番号:1、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:6、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12又は配列番号:13の開示された配列とは異なるヌクレオチド配列を有する核酸分子は、本発明の範囲内に含まれている。例えば、マウスのCOX−1変異体のcDNAは、ヒト、イヌ又は羊のヌクレオチド配列に基づいて同定することができる。
本発明のcDNAの天然対立遺伝子の変異体と相同体に相当する核酸分子は、それら核酸分子の、本願に開示されているCOX−1変異体の核酸に対する相同性に基づいて、本願に開示されているcDNA又はその一部分をハイブリッド形成プローブとして使用し、ストリンジェントハイブリッド形成条件下、標準のハイブリッド形成法にしたがって単離することができる。
したがって、別の実施態様で、本発明の単離された核酸分子は、少なくとも15、20、25、30個又はそれを超える長さのヌクレオチドであり、そしてストリンジェント条件下で、配列番号:1、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:6、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12又は配列番号:13のヌクレオチド配列を含む核酸分子とハイブリッドを形成する。他の実施態様で、上記核酸は、少なくとも30、50、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550又は600個のヌクレオチドの長さである。用語「ストリンジェント条件下でハイブリッドを形成する」は、本明細書で使用する場合、互いに少なくとも30%、40%、50%又は60%相同であるヌクレオチド配列が互いにハイブリッドを形成したままであるハイブリッド形成と洗浄の条件を意味するものである。好ましくは、その条件は、互いに少なくとも約70%、より好ましくは少なくとも約80%、さらに一層好ましくは少なくとも約85%又は90%相同である配列が一般に互いにハイブリッドを形成したままであるような好ましい。このようなストリンジェント条件は、当業者には知られており、「Current Protocols in Molecular Biology」John Wiley & Sons、米国ニューヨーク1989年の6.3.1〜6.3.6に見ることができる。ストリンジェントハイブリッド形成条件の好ましい例は、限定されないが、約45℃にて6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中でハイブリッドを形成し、続いて、50〜65℃にて0.2×SSC、0.1%SDS中で1回以上洗浄する条件である。好ましくは、ストリンジェント条件下で、配列番号:1、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:6、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12又は配列番号:13の配列とハイブリッドを形成する本発明の単離された核酸分子は、天然に存在する核酸分子と同じである。用語「天然に存在する」核酸分子は、本明細書で使用する場合、天然に存在する(例えば天然のタンパク質をコードする)ヌクレオチド配列を有するRNA又はDNAの分子を意味する。
母集団中に存在することがある配列の天然に存在する対立遺伝子変異体に加えて、当業者はさらに、配列番号:1、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:6、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12又は配列番号:13のヌクレオチド配列を突然変異で変化させて、コードされるタンパク質のアミノ酸配列を、そのタンパク質の機能性能を変えることなく変化させることができることが分かるであろう。例えば、「非必須」アミノ酸残基のアミノ酸置換を行うヌクレオチド置換は、配列番号:1、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:6、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12又は配列番号:13の配列で行うことができる。「非必須」アミノ酸の残基は、生理活性を変えることなく(例えば配列番号:2、配列番号:5、配列番号:14、配列番号:15又は配列番号:16の配列)の野生型配列から変えることができる残基であり、一方「必須」アミノ酸残基は生理活性のために必要である。例えば、本発明のCOX−3、PCOX−1a、PCOX−1b、hCOX−3(cc)、hCOX−3(af)、hCOX−3(del10)及びhCOX−3(cs)のタンパク質の間に保存されているアミノ酸残基は、特に容易に変えることができないと考えられる。さらに、本発明のタンパク質との他のファミリーメンバーの間に保存されている追加のアミノ酸残基は容易には変えられないようである。
したがって、本発明の別の側面は、活性を得るために不可欠なものではないアミノ酸残基の変化を含む本発明のタンパク質をコードする核酸分子に関する。このようなタンパク質は、アミノ酸配列が配列番号:2、配列番号:5、配列番号:14、配列番号:15又は配列番号:16とは異なるが生理活性を保持している。一実施態様で、単離された核酸分子は、配列番号:2、配列番号:5、配列番号:14、配列番号:15又は配列番号:16のアミノ酸配列と少なくとも約41%、42%、45%、50%、55%、59%、60%、65%、70%、75%、80%、81%、85%、90%、95%、98%又は98%を超えて相同のアミノ酸配列(例えば配列番号:2、配列番号:5、配列番号:14、配列番号:15又は配列番号:16の全アミノ酸配列)を含有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含有している。
配列番号:2、配列番号:5、配列番号:14、配列番号:15又は配列番号:16のタンパク質に相同の本発明のタンパク質をコードする単離された核酸分子は、1又は2以上のアミノ酸の置換、付加又は削除がコードされているタンパク質に導入されるように、1又は2以上のヌクレオチドの置換、付加又は削除を、配列番号:1、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:6、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12又は配列番号:13のヌクレオチド配列中に導入することによってつくることができる。標準の方法、例えば部位特異的突然変異誘発法及びPCR仲介突然変異誘発法によって、突然変異を、配列番号:1、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:6、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12又は配列番号:13に導入できる。同類アミノ酸置換(conservative amino acid substitution)を1又は2以上の予想非必須アミノ酸残基で行うことが好ましい。「同類アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置換される置換である。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは当該技術分野で定義されている。これらのファミリーとしては、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えばリシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、無電荷の極性側鎖を有するアミノ酸(グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分枝側鎖を有するアミノ酸(例えばトレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えばチロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)のファミリーがある。したがって、本発明のタンパク質の予想非必須アミノ酸残基は、好ましくは、同じ側鎖のファミリー由来の別のアミノ酸残基で置換される。代わりに、別の実施態様で、例えば飽和突然変異誘発法によって、COX−1変異体のコード配列のすべて又は一部分にそってランダムに突然変異誘発を導入することができ、そして生成した突然変異体をCOX−1変異体の生理活性についてスクリーニングして、活性を保持する突然変異体を同定できる。配列番号:1、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:6、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12又は配列番号:13の突然変異誘発を行った後、コードされたタンパク質は組み換えによって発現することができかつそのタンパク質の活性を確認することができる。
上記のCOX−3、PCOX−1a、hCOX−3(cc)、hCOX−3(af)、hCOX−3(del10)及びhCOX−3(cs)のタンパク質をコードする核酸分子に加えて、本発明の別の側面は、上記核酸分子に対してアンチセンスの単離された核酸分子に関する。「アンチセンス」核酸は、タンパク質をコードする「センス」核酸に対し相補性であるヌクレオチド配列、例えば二本鎖cDNA分子のコーディングストランドに対し相補性であるか又はmRNA配列に対して相補性のヌクレオチド配列で構成されている。したがって、アンチセンス核酸はセンス核酸と水素結合をすることができる。そのアンチセンス核酸は、COX−1変異体のコーディングストランドに対し相補性であることもあり又はその一部分だけと相補性のこともある。一実施態様で、アンチセンス核酸分子は、COX−1変異体をコードするヌクレオチド配列のコーディングストランドの「コーディング領域」に対しアンチセンスである。用語「コーディング領域」は、アミノ酸残基に翻訳されるコドンを含むヌクレオチド配列の領域を意味する。別の実施態様で、上記アンチセンス核酸分子は、本発明のタンパク質をコードするヌクレオチド配列のコーディングストランドの「非コーディング領域」に対しアンチセンスである。用語「非コーディング領域」は、コーディング領域に隣接する、アミノ酸に翻訳されない5’と3’の配列(すなわち5’と3’の非翻訳領域とも呼称される)を意味する。
本明細書に開示されている、COX−3、PCOX−1a、PCOX−1b、hCOX−3(cc)、hCOX−3(af)、hCOX−3(del10)及びhCOX−3(cs)をコードするコーディングストランド配列が与えられると、本発明のアンチセンス核酸はワトソンとクリック型塩基対の法則にしたがって設計することができる。上記アンチセンス核酸分子は、mRNAの全コーディング領域に相補性であってもよいが、より好ましくは、mRNAのコーディング領域又は非コーディング領域の一部のみに対してアンチセンスのオリゴヌクレオチドである。例えば、そのアンチセンスオリゴヌクレオチドは、mRNAの翻訳開始部位を囲む領域に相補性であってもよい。アンチセンスオリゴヌクレオチドは例えば約5、10、15、20、25、30、35、40、45又は50個のヌクレオチドの長さでもよい。本発明のアンチセンス核酸は、当該技術分野で公知の方法を利用し、化学合成法や酵素による連結反応を使用して構築することができる。例えば、アンチセンス核酸(例えばアンチセンスオリゴヌクレオチド)は、天然に存在するヌクレオチド、又は分子の生物学的安定性を増大するように又はアンチセンス核酸とセンス核酸とで形成される二重らせん体の物理的安定性を増大するように設計された種々修飾されたヌクレオチドを使用して化学的に合成することができ、例えばホスホロチオエート誘導体及びアクリジン置換のヌクレオチドを使用できる。アンチセンス核酸を生成させるのに使用できる修飾ヌクレオチドの例としては、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−クロロウラシル、5−ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4−アセチルシトシン、5−(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、β−D−ガラクトシルキューオシン、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2、2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−アデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、β−D−マンノシルキューオシン、5’−メトキシカルボキシメチルウラシル、5’−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸(V)、ワイブトキソシン(wybutoxosine)、プソイドウラシル、キューオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸(V)、5−メチル−2−チオウラシル、3−(3−アミノ−3−N−2−カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3)W及び2、6−ジアミノプリンがある。あるいは、アンチセンス核酸は、核酸がアンチセンス配向でサブクローン化されている発現ベクターを使用して生物学的に製造することができる(すなわち挿入された核酸から転写されたRNAは対象の標的核酸に対してアンチセンス配向になっている。これについては以下のサブセクションでさらに説明する。)
本発明のアンチセンス核酸分子は一般に、それら分子がタンパク質をコードする細胞mRNA及び/又はゲノムDNAとハイブリッドを形成するか又は結合して、そのタンパク質の発現を例えば転写及び/又は翻訳を阻害することによって阻害するように、被検者に投与されるか又は生体内で生成される。上記のハイブリッド形成反応は、安定な二重らせん体を生成する通常のヌクレオチド相補性で行うことができ、又は例えばDNA二重らせんに結合するアンチセンス核酸分子の場合は、その二重らせんの主溝における特異的相互作用によって行うことができる。本発明のアンチセンス核酸分子の投与経路の一例は組織部位への直接注射である。あるいは、アンチセンス核酸分子を修飾し選択された細胞を標的として全身的投与を行うことができる。例えば、アンチセンス分子は全身的投与を行う場合、そのアンチセンス核酸分子は、その分子が選択された細胞表面に発現された受容体又は抗原に特異的に結合するように、例えばそのアンチセンス核酸分子を細胞表面の受容体又は抗原に結合するペプチド又は抗体に結合させることによって修飾できる。また、そのアンチセンス核酸分子は、本明細書に記載されているベクターを使用して細胞に送達することもできる。そのアンチセンス分子の十分な細胞内濃度を達成するため、そのアンチセンス核酸分子が強力なポルII又はポルIIIのプロモーターの制御下におかれているベクター構造体が好ましい。
さらに別の実施態様で、本発明のアンチセンス核酸はリボザイムである。リボザイムは、それが相補的領域を有するmRNAなどの一本鎖核酸を開裂できるリボヌクレアーゼ活性を有する触媒RNA分子である。したがって、リボザイム(例えばハンマーヘッドリボザイム(Haselhoff及びGerlach、Nature、334巻585〜591頁1988年に記載されている))を使用して、触媒反応でCOX−1変異体のmRNA転写産物を開裂しmRNAの翻訳を阻害することができる。−インコーディング核酸に対して特異性を有するリボザイムは、本明細書に開示されているCOX−1変異体cDNAのヌクレオチド配列(すなわち、配列番号:1、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:6、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12又は配列番号:13)に基づいて設計することができる。例えば、その活性部位のヌクレオチド配列が、−インコーディングmRNA内で開裂されるヌクレオチド配列に相補性であるTetrahymena L−19 IVS RNAの誘導体を構築することができる(例えば、Cechらの米国特許第4,987,071号及びCechらの米国特許第5,116,742号を参照)あるいは、mRNAを使用して、特異的なリボヌクレアーゼ活性を有する触媒RNAを、RNA分子のプールから選択することができる(例えばBartel、D.及びSzostak、J.W.、Science261巻1411〜1418頁1993年を参照)。
あるいは、COX−1変異体遺伝子の発現は、(例えばプロモーター及び/又はエンハンサー)の調節領域に相補性のヌクレオチド配列を標的として、標的細胞内の前記遺伝子の転写を阻止する三重らせん構造を形成させることによって阻害することができる(一般に、Helene、C.、Anticancer Drug Des.6(6)巻569〜584頁1991年、Helene、C.ら、Ann.N.Y.Acad.Sci.660巻27〜36頁1992年及びMaher、L.J.、Bioassays14(12)巻807〜815頁1992年を参照)。
さらに別の実施態様で、本発明の核酸分子は、塩基部分、糖部分又はリン酸骨格を修飾して、その分子の安定性、ハイブリッド形成性又は可溶性を改善することができる。例えば、本発明の核酸分子のデオキシリボースリン酸骨格を修飾してペプチド核酸をつくることができる(Hyrup B.らのBioorganic & Medecinal Chemistry 4(1)巻5〜23頁1996年参照)。用語「ペプチド核酸」すなわち「PNA」は、本明細書で使用する場合、そのデオキシリボースリン酸骨格がプソイドペプチド骨格によって置換され4個の天然の核酸塩基しか保持されていない核酸擬態(nucleic acid mimic)例えばDNA擬態を意味する。PNAの中性骨格は、低イオン強度の条件下で、DNA及びRNAと特異的にハイブリッドを形成できることがわかっている。PNAオリゴマーは、Hyrup、B.らの1996年の前掲論文;Perry−O’keefeら、Proc.Natl.Acad.Sci.93巻14670〜14675頁1996年に記載されているような標準の固相ペプチド合成プロトコルを利用して合成することができる。
本明細書に開示されている核酸分子のPNAは治療と診断の用途に使用できる。例えばPNAは、例えば転写もしくは翻訳の停止を誘発するか又は置換を阻害することによって、遺伝子発現の配列特異的調節を行うためのアンチセンス剤又は抗原剤として使用することができる。また本発明の核酸分子のPNAは、遺伝子の単一塩基対の突然変異を分析するときに(例えばPNA特異的PCRクランピング法によって)、他の酵素と組み合わせて使用する場合、「人工制限酵素」として使用することができ(例えばS1ヌクレアーゼ(Hyrup B.の1996年の前掲論文))、又はDNAの配列決定もしくはハイブリッド形成を行うためのプローブもしくはプライマーとして使用することができる(Hyrup B.らの1996年の前掲論文、Perry−O’keefeの前掲論文)。
別の実施態様で、COX−1変異体のPNAは、親油性基又は他のヘルパー基をPNAに結合させることによって、PNA−DNAキメラを製造することによって、又は当該技術分野で公知のリポソーム又は他の薬剤送達法を利用することによって、(例えばその安定性又は細胞の摂取を高めるために)修飾することができる。例えば、PNAとDNAの有利な特性を兼ね備えた、COX−1変異体核酸分子のPNA−DNAキメラを製造することができる。このようなキメラは、DNA認識酵素(例えばRNアーゼH及びDNAポリメラーゼ)をDNA部分と相互に作用させて、そのPNA部分は高い結合のアフィニティと特異性を提供できる。PNA−DNAキメラは、塩基のスタッキング、ヌクレオベース間の結合の数及び配向の観点から選択した適切な長さのリンカーを使用して連結することができる(Hyrup B.の1996年の前掲論文)。PNA−DNAキメラは、Hyrup B.の1996年の前掲論文及びFinn P.J.ら、Nucleic Acid Res.24(17)巻3357〜3363頁1996年に記載されているようにして合成することができる。例えば、DNA連鎖は、標準のホスホロアミダイト連結化学法を利用して固体支持体上に合成することができ、そして修飾ヌクレオシド類似体、例えば5’−(4−メトチシトリチル)アミノ−5’−デオキシ−チミジンホスホロアミダイトをPNAとDNAの5’末端との間に使用できる(Mag、M.らNucleic Acid Res.17巻5973〜5988頁1989年)。次にPNAモノマーを段階的に連結して、5’PNAセグメント及び3’DNAセグメントとのキメラ分子を製造する(Finn P.J.らの1996年の前掲論文)。あるいは、キメラ分子は、5’DNAセグメントと3’PNAセグメントで合成することができる(Peterser、K.H.ら、Bioorganic Med.Chem.Lett.5巻1119〜11124頁1975年)。
他の実施態様で、上記オリゴヌクレオチドは、以下のような別の基が付加されている。例えばペプチド(例えば生体内の宿主細胞受容体を標的とするため)、又は細胞膜を横切る輸送を容易にする薬剤(例えばLetsingerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA86巻6553〜6556頁1989年;Lemaitreら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA84巻648〜652頁1987年;国際特許願公開第WO88/09810号参照)もしくは血液脳関門を横切る輸送を容易にする薬剤(例えば国際特許願公開第WO89/10134号参照)の基がある。さらに、前記オリゴヌクレオチドは、ハイブリッド形成でトリガーされる開裂剤(例えばKrolら、Bio−Techniques6巻958〜976頁1988年参照)又はインターカレーション剤(例えばZon、Pharm.Res.5巻539〜549頁1988年参照)で修飾することができる。この目的のために、上記オリゴヌクレオチドは他の分子(例えばペプチド、ハイブリッド形成でトリガーされる架橋剤、輸送剤又はハイブリッド形成でトリガーされる開裂剤)と結合させることができる。
本発明の別の側面は、抗COX−1変異体の抗体を生成させる免疫原として使用するのに適した単離されたCOX−1変異体タンパク質とその生理活性部分及びポリペプチドフラグメントに関する。一実施態様で、未変性のPCOX−1並びにCOX−3、PCOX−1a、PCOX−1b、hCOX−3(cc)、hCOX−3(af)、hCOX−3(del10)及びhCOX−3(cs)のタンパク質は、標準タンパク質精製技術を使用する適切な精製方式で、細胞又は組織の資源から単離することができる。別の実施態様で、COX−3、PCOX−1a、PCOX−1b、hCOX−3(cc)、hCOX−3(af)、hCOX−3(del10)及びhCOX−3(cs)のタンパク質は、組み換えDNA法で製造される。COX−3、PCOX−1a、PCOX−1b、hCOX−3(cc)、hCOX−3(af)、hCOX−3(del10)及びhCOX−3(cs)のタンパク質又はポリペプチドは、組み換え発現法の代わりに、標準のペプチド合成法を利用して化学的に合成することができる。
「単離された」か又は「精製された」タンパク質又はその生理活性部分は、COX−1変異体タンパク質が誘導される細胞又は組織の資源由来の細胞物質又は他の汚染タンパク質を実質的に含有していないか、又は化学的に合成される場合、化学的前駆体又は他の化学薬剤を実質的に含有していない。用語「細胞物質を実質的に含有していない」は、上記タンパク質が単離されるか又は遺伝子組み換えによって製造される細胞の細胞成分から分離されたCOX−1変異体タンパク質の製剤を含んでいる。一実施態様で、用語「細胞物質を実質的に含んでいない」は、非タンパク質(本明細書では「汚染タンパク質」とも呼称する)の含有量が約30乾燥重量%未満、より好ましくは約20乾燥重量%未満、さらに一層好ましくは約10乾燥重量%未満そして最も好ましくは約5乾燥重量%未満であるCOX−1変異体タンパク質の製剤を含んでいる。COX−1変異体タンパク質又はその生理活性部分は、遺伝子組み換え法で製造する場合、培地を実質的に含有していないことが好ましく、すなわち、培地はタンパク質製剤の約20容量%未満であり、より好ましくは約10容量%未満でありそして最も好ましくは約5容量%未満である。
用語「化学的前駆体又は他の化学薬剤を実質的に含有していない」は、本発明のタンパク質の合成にかかわっている化学的前駆体又は他の化学薬剤から分離された本発明のタンパク質の製剤を含んでいる。一実施態様で、用語「化学的前駆体又は他の化学薬剤を実質的に含有していない」は、化学的前駆体又は非化学薬剤の含有量が約30%乾燥重量%未満であり、より好ましくは約20乾燥重量%未満であり、さらに一層好ましくは約10乾燥重量%未満であり、そして最も好ましくは約5乾燥重量%未満であるCOX−3、PCOX−1a、PCOX−1b、hCOX−3(cc)、hCOX−3(af)、hCOX−3(del10)又はhCOX−3(cs)のタンパク質の製剤を含んでいる。
COX−1変異体タンパク質の生理活性部分は、COX−1変異体タンパク質のアミノ酸配列に対し十分に相同であるか又はそのアミノ酸配列由来のアミノ酸配列例えばCOX−1変異体に示されるアミノ酸配列を含み、そして全長のタンパク質より短いアミノ酸を含みかつタンパク質の少なくとも一つの活性を示すペプチドを含んでいる。一般に生理活性部分は、COX−1変異体タンパク質の少なくとも一つの活性を有するドメイン又はモチーフを含んでいる。タンパク質の生理活性部分は、例えば少なくとも10、25、50、100又は100個を超えるアミノ酸の長さを有するポリペプチドである。
好ましい実施態様で、COX−1変異体タンパク質は、配列番号:2、配列番号:5、配列番号:14、配列番号:15又は配列番号:16で示されるアミノ酸配列を有している。他の実施態様で、COX−1変異体タンパク質は、配列番号:2、配列番号:5、配列番号:14、配列番号:15又は配列番号:16と実質的に相同であり、配列番号:2、配列番号:5、配列番号:14、配列番号:15又は配列番号:16のタンパク質の機能活性を保持しているが、上記サブセクションIで詳細の述べたように、天然対立遺伝子の変化又は突然変異誘発のためアミノ酸配列が異なっている。したがって、別の実施態様で、上記COX−1変異体タンパク質は、配列番号:2又は配列番号:5のアミノ酸配列に対し少なくとも約50%、55%、59%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%又は98%を超えて相同のアミノ酸配列(例えば配列番号:2、配列番号:5、配列番号:14、配列番号:15又は配列番号:16の全アミノ酸配列)を含有するタンパク質である。
二つのアミノ酸配列又は二つの核酸配列の同一性比率を確認するため、これらの配列は最適の比較を行うために並べられる(例えば最適に並べるため、ギャップを第一と第二のアミノ酸又は核酸の配列の一方又は両方に導入することができそして比較するために非相同の配列を無視することができる)。好ましい実施態様で、比較するために調整された参照配列の長さは、その参照配列の長さの少なくとも30%であり、好ましくは少なくとも40%であり、より好ましくは少なくとも50%であり、さらにより好ましくは少なくとも60%でありそしてさらに一層好ましくは少なくとも70%、80%又は90%である。次に、対応するアミノ酸の位置又はヌクレオチドの位置におけるアミノ酸残基又はヌクレオチドを比較する。第一配列の位置が、第二配列の対応する位置と同じアミノ酸残基又はヌクレオチドで占められている場合、それらの分子はその状態で同一である(アミノ酸又は核酸の「同一性」は本明細書で使用する場合、アミノ酸又は核酸の「相同性」に等しい)。二つの配列間の同一性比率は、その二つの配列を最適に調整するため導入する必要があるギャップの数と各ギャップの長さを考慮する、これら配列が共有している同じ位置の数の関数である。
二つの配列の配列の比較及び同一性比率の測定は、数学アルゴリズムを利用して達成できる。好ましい実施態様で、二つのアミノ酸配列間の同一性比率は、GCSソフトウェアパッケージのGAPプログラム(http://www.gcg.comで入手できる)を使用し、Blossom62マトリックス又はPAM250マトリックス及びギャップウェイト16、14、12、10、8、6もしくは4と長さウェイト1、2、3、4、5もしくは6を使用して測定される。さらに別の好ましい実施態様で、二つのヌクレオチド配列間の同一性比率は、GCGソフトウェアパッケージのGAPプログラム(http://www.gcg.comで入手できる)を使用し、NWSgapdna.CMPマトリックス及びギャップウェイト40、50、60、70もしくは80と長さウェイト1、2、3、4、5もしくは6を使用して測定される。
本発明の核酸とタンパク質の配列をさらに、「質問配列(query sequence)」として使用して、公開データベースをサーチして例えば他のファミリーメンバー又は類縁配列を同定することができる。このようなサーチは、Altschalら、J.Mol.Biol.215巻403〜410頁1990年のNBLASTとXBLASTプログラム(バージョン2.0)を使用して実施できる。BLASTのヌクレオチドサーチを、NBLASTプログラム、スコア=100、語長=12で実施して本発明の核酸分子に相同のヌクレオチド配列を得ることができる。BLASTタンパク質のサーチを、XBLASTプログラム、スコア=50、語長=3で実施して本発明のタンパク質分子に相同のアミノ酸配列を得ることができる。比較するためギャップを設けた調整を行うため、Gapped BLASTを、Altschulら、Nucleic Acids Res.25(17)巻3389〜3402頁1997年に記載されているように利用できる。BLASTプログラムとGapped BLASTプログラムを使用するとき、それぞれのプログラム(例えばXBLAST及びNBLAST)の省略時パラメータを使用できる(http://www.ncbi.nlm.nih.gov参照)。
また本発明はCOX−1変異体のキメラタンパク質又は融合タンパク質を提供するものである。用語「キメラタンパク質」又は「融合タンパク質」は、本明細書で使用する場合、非COX−1変異体ポリペプチドに作動的に連結されたCOX−1変異体ポリペプチドを含んでいる。「COX−1変異体ポリペプチド」はCOX−3、PCOX−1a、PCOX−1b、hCOX−3(cc)、hCOX−3(af)、hCOX−3(del10)又はhCOX−3(cs)を含むCOX−1変異体に相当するアミノ酸配列を有するポリペプチドを意味し、一方「非COX−1変異体ポリペプチド」は、本発明のタンパク質と実質的に相同でないタンパク質、例えばCOX−3、PCOX−1a、PCOX−1b、hCOX−3(cc)、hCOX−3(af)、hCOX−3(del10)又はhCOX−3(cs)のタンパク質とは異なりかつ同じか又は異なる生物由来のタンパク質に相当するアミノ酸配列を有するポリペプチドを意味する。COX−1変異体の融合タンパク質内のCOX−1変異体ポリペプチドはタンパク質のすべて又は一部分と一致していればよい。好ましい実施態様で、COX−1変異体の融合タンパク質はCOX−1変異体タンパク質の少なくとも一つの生理活性部分を含有している。別の好ましい実施態様で、COX−1変異体融合タンパク質はCOX−1変異体タンパク質の少なくとも二つの生理活性部分を含んでいる。融合タンパク質内の、用語「作動的に連結されている」は、COX−1変異体ポリペプチドと非ポリペプチドがインフレーム(in-frame)で融合されていることを示すものである。前記非ポリペプチドは、COX−1変異体ポリペプチドのN末端又はC末端に融合することができる。
例えば一実施態様の融合タンパク質は、その配列がGSI配列のC末端に融合されているGST−融合タンパク質である。このような融合タンパク質によって組み換えCOX−1変異体の精製が容易になる。
別の実施態様の融合タンパク質は、そのN末端に異種のシグナル配列を有するCOX−1変異体タンパク質である。特定の宿主細胞(例えば哺乳類の宿主細胞)におけるCOX−1変異体の発現及び/又は分泌は異種のシグナル配列を使用することによっても増大させることができる。
本発明の融合タンパク質は、医薬組成物に組み込んで被検者の生体内に投与することができる。本発明の融合タンパク質を使用してCOX−1変異体の基質の生物学的利用率に影響を与えることができる。細胞成長に関連する障害又は神経変性疾患に関連する障害を治療するのにCOX−1変異体の融合タンパク質を使用することは治療上有用である。さらに本発明のCOX−1変異体の融合タンパク質は、被検者内に抗COX−1変異体抗体を生成させるための免疫源として使用することができ、リガンドを精製するために使用することができ、そしてスクリーニング検定法で酵素と基質の相互作用を阻害する分子を同定するために使用できる。
好ましくは、本発明のキメラタンパク質又は融合タンパク質は標準の組み換えDNA法によって製造される。例えば、異なるポリペプチド配列をコードするDNAフラグメントは、従来の方法にしたがって、例えば望ましくない接合と酵素による連結を避けるため、連結のために平滑末端又は粘着末端を利用し、適切な末端を準備するため制限酵素による消化を利用し、適切なアルカリホスファターゼ処理のような粘着末端のフィリングイン(filling-in)を利用することによって、インフレームで連結される。別の実施態様で、融合遺伝子は自動DNA合成機を含む従来の技法で合成することができる。あるいは、遺伝子フラグメントのPCR増幅は、二つの連続遺伝子フラグメント間に相補的オーバーハングを生じさせるアンカープライマーを使用して実施することができ、それらフラグメントは続いてアニールされ次に再増幅されてキメラ遺伝子配列を生成することができる(例えば、Ausubelら編集、「Current Protocols in Molecular Biology」John Wiley&Sons1992年参照)。さらに、融合部分(例えばGSTポリペプチド)をすでにコードしている多数の発現ベクターが常販されている。コードしている核酸は、かような発現ベクター中にクローン化することができ、その結果、融合部分はインフレームでタンパク質に連結される。
また本発明は、COX−1変異体アゴニスト(ミメティック)又はCOX−1変異体アンタゴニストとして機能するCOX−1変異体タンパク質の変異体に関する。COX−1変異体タンパク質の変異体は、COX−1変異体タンパク質の突然変異誘発、例えば不連続の点変異又はトランケーション(truncation)によってつくることができる。上記タンパク質類のアゴニストは、天然に存在する形態のタンパク質の生理活性と実質的に同じ生理活性又はそのサブセットを保持することができる。本発明のタンパク質のアンタゴニストは、例えばタンパク質の心臓血管系活性を、競合して調節することによって、本発明の天然に存在する形態のタンパク質の1又は2種以上の活性を阻害することができる。したがって、限定された機能を有する変異体で治療することによって特異的な生物学的効果を引き出すことができる。一実施態様で、天然に存在する形態のタンパク質の生理活性のサブセットを有する変異体で被検者を治療する場合、天然に存在する形態のタンパク質で治療するのと比べて被検者に対する副作用が少ない。
ポリペプチドの「突然変異タンパク質」は、その配列が、未変性のすなわち野生型タンパク質のアミノ酸配列と比べて、1又は2以上のアミノ酸の置換、挿入又は欠失を含んでいるポリペプチドを意味する。突然変異タンパク質は、野生型タンパク質に対する配列相同性が少なくとも50%であり、好ましくは60%であり、より好ましくは70%である。最も好ましいのは、野生型タンパク質に対する配列相同性が80%、90%又は95%の突然変異タンパク質であり、その配列相同性は、通常の配列分析アルゴリズム例えばGap又はBestfitによって測定される。
用語「誘導体」は、一次構造の配列が実質的に相同であるが、例えば生体内もしくは生体外での化学的修飾と生化学的修飾を含み又は特異的なアミノ酸を取り入れているポリペプチド又はそのフラグメントを意味する。このような修飾としては、限定されないが、当業者であれば容易に分かるように、例えばアセチル化、カルボキシル化、リン酸化、グリコシル化、ユビキチン化、例えば放射性核種による標識化、及び各種の酵素による修飾もしくは保存的置換がある。ポリペプチドに標識をつける各種の方法及びその目的のため有用な置換基又は標識は当該技術分野でよく知られており、125I、32P、35S及び3Hなどの放射性同位元素、標識をつけた抗リガンドに結合するリガンド(例えば抗体)、発蛍光団、化学発光剤、酵素及び標識を付けたリガンドに対する特異的結合対のメンバーとして働くことができる抗リガンドがある。標識は、要求される感度、プライマーとの接合の容易さ、安定性の要求度及び利用できる手段に基づいて選択される。ポリペプチドに標識する方法は当該技術分野でよく知られている(Ausubelらの1992年の論文参照)。
一実施態様で、COX−1変異体のアゴニスト(ミメティック)又はCOX−1変異体のアンタゴニストとして機能する修飾COX−1変異体タンパク質は、COX−1変異体タンパク質(例えばCOX−3、PCOX−1a、PCOX−1b、hCOX−3(cc)、hCOX−3(af)、hCOX−3(del10)又はhCOX−3(cs))のアゴニスト又はアンタゴニストの活性の突然変異体例えばトランケーション突然変異体のコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングすることによって同定することができる。一実施態様で、修飾COX−1変異体の斑入りライブラリーが、コンビナトリアル突然変異誘発によって核酸レベルでつくられ、そして斑入り遺伝子ライブラリーによってコードされている。修飾COX−1変異体の斑入りライブラリーは、例えば合成オリゴヌクレオチドの混合物を酵素によって遺伝子配列に連結することによって製造することができ、その結果、可能性があるCOX−1変異体配列の縮重セットが個々のポリペプチドとして、又は代わりにその中にCOX−1変異体配列のセットを含有するより大きな融合タンパク質のセットとして(例えばファージディスプレイの場合)発現可能になる。
可能性がある修飾COX−1変異体のライブラリーを縮重オリゴヌクレオチド配列からつくるのに利用できる各種の方法がある。縮重遺伝子配列は、自動DNA合成機で化学合成し次に適当な発現ベクターに連結することができる。遺伝子の縮重セットを使用すると、一つの混合物に、可能性がある配列の望ましいセットをコードするすべてのセットを提供することができる。縮重オリゴヌクレオチドの合成法は当該技術分野で公知である(例えば、Narang、S.A.Tetrahedron39巻3頁1983年:Itakuraら、Annu.Rev.Biochem.、53巻323頁1984年;Itakuraら、Science、198巻1056頁1984年、Ikeら、Nucleic Acid Res.11巻477頁1983年参照)。
さらに、COX−1変異体タンパク質をコードする配列のフラグメントのライブラリーを使用して、修飾COX−1変異体タンパク質をスクリーニングして次に選別するためのCOX−1変異体フラグメントの斑入り集団をつくることができる。一実施態様で、コーディング配列のフラグメントのライブラリーは、COX−1変異体をコードする配列の二本鎖PCRフラグメントを、ニッキングが一分子当り約一回だけ起こる条件下でヌクレアーゼで処理し、その二本鎖DNAを変性し、そのDNAを復元して異なるニック産物由来のセンス/アンチセンス対を含むことができる二本鎖DNAを生成させ、S1ヌクレアーゼで処理することによってリフォームされた二重らせん体から一本鎖部分を除き、そして生成したフラグメントライブラリーを発現ベクターに連結することによってつくることができる。この方法によって、タンパク質の各種大きさのN末端、C末端及び内部フラグメントをコードする発現ライブラリーを誘導することができる。
点変異又は点トランケーションでつくられたコンビナトリアルライブラリーの遺伝子産物をスクリーニングする方法及び選択された特性を有する遺伝子産物についてcDNAライブラリーをスクリーニングするいくつもの方法が当該技術分野で知られている。このような方法は、COX−1変異体タンパク質のコンビナトリアル突然変異誘発によって得た遺伝子ライブラリーを迅速にスクリーニングするのに適応できる。高処理量の分析に適用できる、大遺伝子ライブラリーをスクリーニングするのに最も広く使用されている方法は、一般に、遺伝子ライブラリーを複製可能な発現ベクターにクローン化し、得られたベクターのライブラリーで適当な細胞を形質転換し、次いで所望の活性が検出されると産物が検出された遺伝子をコードするベクターが単離しやすくなる条件下で、前記コンビナトリアル遺伝子を発現させることを含んでいる。リクルーシーブアンサンブル突然変異誘発(recrusive ensamble mutagenesis)(REM)すなわちライブラリー中の機能突然変異体の頻度を高める新しい方法を上記スクリーニング検定法と組み合わせて使用して修飾COX−1変異体を同定することができる(Arkin及びYourvan、Proc.Natl.Acad.Sci.USA89巻7811〜7815頁1992年;Delgraveら、Protein Engineering 6(3)巻327〜331頁1993年)。
単離されたCOX−1変異体タンパク質又はその一部分又はフラグメントを、免疫原として使用し、ポリクローナルとモノクローナルの抗体を調製する標準方法を利用して本明細書に開示されているCOX−1変異体に結合する抗体をつくることができる。免疫原として使用するため、完全長のタンパク質を利用することができ又は代わりに本発明は、例えばCOX−3、PCOX−1a、PCOX−1b、hCOX−3(cc)、hCOX−3(af)、hCOX−3(del10)及びhCOX−3(cs)の抗原的ペプチドフラグメントを提供するものである。COX−1変異体の前記抗原的ペプチドは、配列番号:2、配列番号:5、配列番号:8、配列番号:14、配列番号:15又は配列番号:16で示されるアミノ酸配列の少なくとも8個のアミノ酸残基を含有し、かつそのペプチドに対して生成した抗体が特別の免疫複合体を形成するエピトープを含んでいる。好ましくは上記抗原的ペプチドは、少なくとも10個のアミノ酸残基を含有し、より好ましくは少なくとも15個のアミノ酸残基を含有し、さらに一層好ましくは少なくとも20個のアミノ酸残基を含有し、そして最も好ましくは少なくとも30個のアミノ酸残基を含有している。
抗原的ペプチドが含有している好ましいエピトープは、そのタンパク質の表面に位置するCOX−1変異体の領域例えば親水性領域である。
一般に、COX−1変異体の免疫原を使用し、その免疫原で適切な実験動物(例えばウサギ、ヤギ、マウスなどの哺乳動物)を免疫化することによって抗体が調製される。適当な免疫原製剤は、例えば組み換えて発現されたタンパク質又は化学合成されたCOX−1変異体のポリペプチドを含んでいてもよい。この製剤はさらに、フロイント完全アジュバントもしくはフロイント不完全アジュバントなどのアジュバント又は類似の免疫刺激剤を含有していてもよい。適切な実験動物を免疫原のCOX−1変異体の製剤で免疫化するとポリクローナル抗−抗体反応を誘発する。
したがって、本発明の別の側面は抗抗体に関する。用語「抗体」は、本明細書で使用する場合、免疫グロブリン分子及び免疫グロブリン分子の免疫学的に活性の分子すなわちCOX−1変異体などの抗原と特異的に結合する(免疫反応する)抗原結合部位を含有する分子を意味する。免疫グロブリン分子の免疫学的に活性の部分の例としては、ペプシンなどの酵素で抗体を処理することによってつくることができるF(ab)フラグメントとF(ab’)2フラグメントがある。本発明はCOX−1変異体に結合するポリクローナル抗体とモノクローナル抗体を提供するものである。用語「モノクローナル抗体」又は「モノクローナル抗体組成物」は、本明細書で使用する場合、COX−1変異体の特定のエピトープと免疫反応することができる抗原結合部位の唯一の種を含有する抗体分子の集団を意味する。したがってモノクローナル抗体組成物は一般にそれが免疫反応する特定のCOX−1変異体タンパク質に対する単一の結合アフィニティを示す。
ポリクローナル抗−抗体は、適切な実験動物をCOX−1変異体免疫原で免疫化することによって上記のように調製することができる。免疫化された実験動物の抗−抗体の力価は、標準の方法例えば固定化されたCOX−1変異体を使用する酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)で時間の経過とともに監視することができる。必要に応じて、COX−1変異体に対する抗体分子は上記哺乳類から(例えばその血液から)単離し、さらに周知の方法、例えばIgGフラクションを得るためのプロテインAクロマトグラフィによって精製することができる。免疫化後の適切な時点で、例えば抗−抗体の力価が最大になったとき、抗体産生細胞を実験動物から得て、その細胞を使用して、当初Kohler及びMilstein、Nature256巻495〜497頁1975年に記載されたハイブリドーマ法(また、Brownら、J.Immunol.、127巻539〜546頁1981年、Brownら、J.Biol.Chem.225巻4980〜4983頁1990年、Yehら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、76巻2927〜2931頁1976年、及びYehら、Int.J.Cancer、29巻269〜275頁1982年参照);一層新しいヒトB細胞ハイブリドーマ法(Kozborら、Immunol Today 4巻72頁1983年);EBJハイブリドーマ法(Coleら著「Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy」Alan R.Liss、Inc.77〜96頁1985年)又はトリオーマ法などの標準の方法によってモノクローナル抗体を調製することができる。モノクローナル抗体のハイブリドーマを製造する技術は周知である(一般に、R.H.Kenneth著「Monoclonal Antibodies: A New Dimension In Biological Analyses」Plenum Publishing Corp.、米国ニューヨーク州ニューヨーク1980年;E.A.Lerner、Yale J.Biol.Med.54巻387〜402頁1981年;M.L.Gefterら、Somatic Cell Genet.3巻231〜236頁1977年参照)。手短に述べると、不死細胞条(一般に骨髄腫)を、上記のように免疫原で免疫化した哺乳類由来のリンパ系細胞(一般に脾細胞)に融合させ、生成したハイブリドーマ細胞の培養上澄液をスクリーニングして、結合するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを同定する。
抗−モノクローナル抗体をつくるために、リンパ球と不死化細胞系を融合するのに利用される多くの周知のプロトコルのどれかを適用することができる(例えば、G.GalfreらNature266巻550〜552頁1977年;Gefterら、Somatic Cell Genet.の前掲論文;Lerner、Yale J.Biol.Med.の前掲論文;Kenneth、Monoclonal Antibodies、前掲論文参照)。さらに当業者は、有用なかような方法の多くの変形があることは分かるであろう。一般に、上記不死細胞系(例えば黒色腫細胞系)は上記リンパ球と同じ哺乳類の種から誘導される。例えばネズミのハイブリドーマは、本発明の免疫原製剤で免疫化したマウス由来のリンパ球と不死化マウス細胞系と融合させることによってつくることができる。好ましい不死細胞系は、ヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジンを含有する培養培地(「HAT培地」)に感受性のマウスの黒色腫細胞系である。多数の黒色腫細胞系、例えばP3−NS1/1−Ag4−1、P3−x63−Ag8.653又はSp2/0−Ag14黒色腫細胞系などのどれかを、標準の方法にしたがって、融合のパートナーとして使用することができる。これらの黒色腫細胞系はATCCから入手できる。一般に、HAT感受性マウス黒色腫細胞は、ポリエチレングリコール(「PEG」)を使用してマウス脾細胞に融合される。上記融合によって生成したハイブリドーマ細胞は、次いで融合しなかった黒色腫細胞と非生産的に融合した黒色腫細胞を殺すHAT培地を使用して選別される(融合しなかった脾細胞は癌化されないので数日後に死ぬ)。本発明のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞は、例えば標準のELISA検定法を利用して、ハイブリドーマ培養物の上澄み液を、結合する抗体についてスクリーニングすることによって検出される。
モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを調製する代わりに、組み換えコンビナトリアル免疫グロブリンライブラリー(例えば抗体ファージディスプレイライブラリー)をCOX−1変異体でスクリーニングしてCOX−1変異体と結合する免疫グロブリンライブラリーのメンバーを単離することによって、モノクローナル抗−抗体を同定し単離することができる。ファージディスプレイライブラリーをつくってスクリーニングするのに使用するキットが市販されている(例えばthe Pharmacia Recombinant Phage Antibody System、Catalog No.27−9400−01;及びStratagene SurfZAPTM Phage Display Kit、Catalog No.240612)。さらに抗体ディスプレイライブラリーをつくってスクリーニングする際に特に適用できる方法と試薬の例は、例えばLadnerらの米国特許第5,223,409号;Kangら国際特許願公開第WO92/18619号;Dowerらの国際特許願公開第WO91/17271号;Winterらの国際特許願公開第WO92/20791号;Marklandらの国際特許願公開第WO92/15679号;Breitlingらの国際特許願公開第WO93/01288号;McCaffertyらの国際特許願公開第WO92/01047号;Garrardらの国際特許願公開第WO92/09690号;Ladnerらの国際特許願公開第WO90/02809号;Fuchsら、Bio/Technology 9巻1370〜1372頁1991年;Hayら、Hum.Antibod.Hybridomas3巻81〜85頁1992年;Huseら、Science246巻1275〜1281頁1989年;Griffithsら、EMBOJ 12巻725〜734頁1993年;Hawkinsら、J.Mol.Biol.226巻889〜896頁1992年;Clarksonら、Nature352巻624〜628頁1991年;Gramら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA89巻3576〜3580頁1992年;Garradら、Bio/Technology9巻1373〜1377頁1991年;Hoogenboomら、Nuc.Acid Res.19巻4133〜4137頁1991年;Barbasら、Proc.Natl.Acid.Sci.USA88巻7978〜7982頁1991年;及びMcCafferyら、Nature348巻552〜554頁1990年に見つけることができる。
さらにヒトタンパク質及び非ヒトタンパク質の両方を含有し、標準の組み換えDNA法を利用して製造できるキメラのヒト化モノクローナル抗体などの組み換え抗−COX−1変異体抗体は、本発明の範囲内に入っている。このようなキメラのヒト化モノクローナル抗体は、当該技術分野で知られている組み換えDNA法例えば以下の方法を利用して製造することができる。すなわちRobinsonらの国際特許願公開第PCT/US86/02269号;Akiraら、欧州特許願第184,187号;Taniguchi、M.、欧州特許願第171,496号;Morrisonら、欧州特許願第173,494号;Neubergerら、国際特許願公開第WO86/01533号;Cabillyらの米国特許第4,816,567号;Cabillyら欧州特許願第125,023号;Betterら、Science240巻1041〜1043頁1988年;Liuら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA84巻3439〜3443頁1987年;Liuら、J.Immunol.139巻3521〜3526頁1987年、Sunら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA84巻214〜218頁1987年:Nishimuraら、Canc.Res.47巻999〜1005頁1987年;Woodら、Nature314巻446〜449頁1985年;Shawら、J.Natl.Cancer Inst.80巻1553〜1559頁1988年;Morrison、S.L.、Science229巻1202〜1207頁1985年;Oiら、Bio Technique4巻214頁1986年;Winterの米国特許願第5,225,539号;Jonesら、Nature321巻552〜525頁1986年;Verhoeyanら、Science239巻1534頁1988年;及びBeidlerら、J.Immunol.141巻4053〜4060頁1988年に記載の方法である。
抗−COX−1変異体抗体(例えばモノクローナル抗体)を使用して、標準の技法、例えばアフィニティクロマトグラフィ又は免疫沈降法などによって、追加のCOX−1変異体、特にCOX−1遺伝子のイントロン−1を保持するタンパク質を単離することができる。抗−COX−1変異体抗体によって、細胞由来の天然COX−1変異体及び宿主細胞で発現される、組み換え法で製造されたCOX−1変異体は精製しやすくなる。さらに、抗−抗体は、COX−1変異体タンパク質の発現のアバンダンス(abundance)とパターンを評価するためCOX−1変異体タンパク質(例えば細胞破壊液又は細胞上澄み液中の)を検出するのに使用できる。抗−COX−1変異体抗体を診断に使用し、臨床試験法の一部として組織内のタンパク質のレベルを監視して例えば既定の治療法の有効性を確認することができる。抗体を検出可能な物質に連結する(すなわち物理的に連結する)ことによって、検出しやすくすることができる。検出可能な物質の例としては、各種の酵素、接合団、蛍光物質、発光物質、生物発光物質及び放射性物質がある。適切な酵素の例としては、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ガラクトシダーゼ又はアセチルコリンエステラーゼがあり、適切な接合団複合体の例としては、ストレプタビジン/ビオチン及びアビジン/ビオチンがあり、適切な蛍光物質の例としてはウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリド又はフィコエリトリンがあり、発光物質の例としてはルミノールがあり、生物発光物質の例としてはルシフェラーゼ、ルシフェリン及びエクオリンがあり、そして適切な放射性物質の例としては125I、131I、35S又は3Hがある。
本発明の別の側面は、COX−1変異体タンパク質(又はその一部)をコードする核酸を含有するベクター好ましくは発現ベクターに関する。用語「ベクター」は、本明細書で使用する場合、別の核酸分子に連結されてその別の核酸分子を輸送することができる核酸分子を意味する。ベクターの一種は「プラスミド」であり、そのプラスミドは、追加のDNAセグメントを連結できる円形二本鎖DNAループを意味する。別のタイプのベクターはウィルスベクターであり、追加のDNAセグメントをウィルスのゲノムに連結することができる。特定のベクターは、それらベクターが導入された宿主細胞内で自律複製することができる(例えば、細菌の複製起点を有する細菌ベクター及び哺乳類のエピソームベクター)。他のベクター(例えば哺乳類の非エピソームベクター)は、宿主細胞中に導入される際、宿主細胞のゲノム中に組み込まれて宿主ゲノムとともに複製される。さらに特定のベクターは、それらが作動的に連結されている遺伝子の発現を指示することができる。このようなベクターは、本明細書では「発現ベクター」と呼称される。一般に、組み換えDNA法で有用な発現ベクターはプラスミドの形態のものが多い。本明細書では、用語「プラスミド」と「ベクター」は、プラスミドがベクターの最も一般的に使用される形態であるから互換的に使用できる。しかし本発明は、同等の機能を提供するウィルスベクター(例えば複製欠損レトロウィルス、アデノウィルス及びアデノ随伴ウィルス)などの他の形態の発現ベクターを含むものである。
本発明の組み換え発現ベクターは、宿主細胞内で本発明の核酸を発現するのに適切な形態で、本発明の核酸を含有している。このことは、本発明の組み換え発現ベクターが、発現のために使用すべき宿主細胞に基づいて選択されそして発現すべき核酸配列に作動的に連結されている1又は2以上の制御配列を含有していることを意味する。組み換え発現ベクター内に「作動可能に連結されている」ということは、対象のヌクレオチド配列が、(例えばベクターが宿主細胞中に導入されたとき、生体外の転写/翻訳系内又は宿主細胞で)ヌクレオチド配列を発現できる方式で、1又は2以上の制御配列に連結されていることを意味するものである。用語「制御配列」には、プロモーター、エンハンサー及び他の発現制御要素(例えばポリアデニル化シグナル)が含まれている。このような制御配列は、例えばGoeddel著「Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185」、Academic Press、米国カリフォルニア州サンディエゴ1990年に記載されている。制御配列としては、多種の宿主細胞内でヌクレオチド配列の構成発現と指示する配列及び特定の宿主細胞内のヌクレオチド配列だけの発現を指示する配列(例えば組織特異的制御配列)がある。発現ベクターの設計が、形質転換すべき宿主細胞の選択、所望のタンパク質の発現のレベルなどの要因によって決まることは当業者には分かっているであろう。本発明の発現ベクターは、宿主細胞内に導入して、本明細書に記載されている核酸がコードする、融合タンパク質又は融合ペプチドを含むタンパク質又はペプチド(例えば、COX−1変異体タンパク質、修飾された形態のCOX−1変異体タンパク質、融合タンパク質など)を製造することができる。
本発明の組み換え発現ベクターは、原核細胞内又は真核細胞内でCOX−1変異体タンパク質を発現するように設計することができる。例えば、COX−1変異体タンパク質は、イー.コリ(E.coli)などの細菌細胞、昆虫細胞(バキュロウィルスの発現ベクターを使用する)、酵母細胞又は哺乳類の細胞の中で発現させることができる。適切な宿主細胞については、Goeddel著「Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185」、Academic Press、米国カリフォルニア州サンディエゴ1990年にさらに詳しく考察されている。あるいは組み換え発現ベクターは、例えばT7プロモーター制御配列及びT7ポリメラーゼを使用して生体外で転写し翻訳することができる。
原核細胞内でのタンパク質の発現は、融合タンパク質又は非融合タンパク質の発現を指示する構成プロモーター又は誘導プロモーターを含有するベクターを有するイー.コリ(E.coli)内で行うことが最も多い。融合ベクターは、その中にコードされているタンパク質に、通常、組み換えタンパク質のアミノ末端に複数のアミノ酸を付加する。このような融合ベクターは、一般に以下の三つの目的すなわち1)組み換えタンパク質の発現を増大すること、2)その組み換えタンパク質の溶解度を増大すること、及び3)アフィニティ精製を行う場合にリガンドとして作用することによって組み換えタンパク質の精製を促進することを達成するのに役立つ。融合発現ベクター中に、タンパク質分解開裂部位を、融合部分と組み換えタンパク質の結合部分に導入して、組み換えタンパク質を融合部分から分離して融合タンパク質を精製できるようにすることが多い。このような酵素及びそれらのコグネイト認識配列としては、Xa因子、トロンビン及びエンテロキナーゼがある。典型的な融合発現ベクターとしては、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)、マルトースE結合タンパク質又はプロテインAそれぞれを標的の組み換えタンパク質に融合する、PGEX(Pharmacia Biotech Inc.、Smith、D.B.及びJohnson、K.S.、Gene67巻31〜40頁1988年)pMAL(New England Biolabs、米国マサチューセッツ州ビバリー)及びpRITS(Pharmacia、米国ニュージャージー州ピスカタウェイ)がある。
精製された融合タンパク質は、COX−1変異体の活性検定法(例えば以下に詳細に述べる直接検定法又は競合検定法)で又はCOX−1変異体タンパク質に特異的な抗体を生成させるのに使用することができる。
適切な誘導可能な非融合イー.コリ発現ベクターとしては、pTrc(Amannら、Gene、69巻301〜315頁1988年)及びpET11d(Studierら著、「Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185」、Academic Press、米国カリフォルニア州サンディエゴ1990年60〜89頁)がある。pTrcベクターからの標的遺伝子発現は、ハイブリッドtrp−lac融合プロモーターからの宿主RNAポリメラーゼの転写によって行われる。pET11dベクターからの標的遺伝子の発現は、共発現されたウィルスRNAポリメラーゼによって仲介されたT7gn10−lac融合プロモーター(T7gnl)からの転写に依存している。このウィルスポリメラーゼは、lacUV5プロモーターの転写制御下で、T7gnlを内蔵する常在性プロファージ由来の宿主株BL21(DE3)又はHMS174(DE3)によって供給される。
イー.コリ内で組み換えタンパク質を最大限に発現する一方策は、その組み換えタンパク質をタンパク質分解反応で開裂する能力が低い宿主細胞内でそのタンパク質を発現する方法である(Gottesman、S.著「Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185」、Academic Press、米国カリフォルニア州サンディエゴ119〜128頁1990年)。別の方策は、各アミノ酸に対する個々のコドンがイー.コリ内で優先的に利用されるコドンであるように、発現ベクター中に挿入される核酸の核酸配列を変える方法である(Wadaら、Nucleic Acids Res.20巻2111〜2118頁1992年)。本発明の核酸配列のこのような変更は、標準のDNA合成法によって実施できる。
別の実施態様で、COX−1変異体の発現ベクターは酵母の発現ベクターである。酵母のエス・セレビシエ(S.cerevisiae)の発現ベクターの例としては、pYepSec1(Baldariら、Embo J.6巻229〜234頁1987年)、pMFa(Kurjan及びHerskowitz、Cell 30巻933〜934頁1982年)、pJRY88(Schltsら、Gene 54巻113〜123頁1987年)、pYES2(Invitrogen Corporation、米国カリフォルニア州サンディエゴ)及びpicZ(Invitrogen Corporation、米国カリフォルニア州サンディエゴ)がある。
代わりに、COX−1変異体タンパク質を、バキュロウィルスの発現ベクターを使用して昆虫細胞内で発現することができる。培養昆虫細胞(例えばsf9細胞)内でタンパク質を発現するのに利用できるバキュロウィルスベクターとしては、pAcシリーズ(Smithら、Mol.Cell Biol.3巻2156〜2165頁1983年)及びpVLシリーズ(Lucklow及びSummers、Virology 170巻31〜39頁1989年)がある。
さらに別の実施態様で、本発明の核酸は、哺乳類の発現ベクターを使用して哺乳類の細胞内で発現される。哺乳類の発現ベクターの例としては、pCDM8(Seed、B.、Nature 329巻840頁1987年)及びpMT2PC(Kaufmanら、EMBO J.6巻187〜195頁1987年)がある。発現ベクターの制御機能は、哺乳類の細胞内で使用される場合、ウィルスの制御要素によって提供されることが多い。例えば、通常使用されるプロモーターは、ポリオーマ、アデノウィルス2、サイトメガロウィルス及びシミアンウィルス40から誘導される。原核細胞と真核細胞の両者に用いる他の適切な発現系については、Sambrook、J.、Fritsh、E.F.及びManiatis、T.著、「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」第2版Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor Laboratory Press、米国ニューヨーク州コールドスプリングハーバー1989年の16〜17章を参照されたい。
別の実施態様で、哺乳類の組み換え発現ベクターは、特定の細胞型内で優先的に核酸の発現を指示することができる(例えば組織特異的制御要素を使って核酸を発現させる)。組織特異的制御要素は当該技術分野で知られている。適切な組織特異的プロモーターの非限定的例としては、アルブミンプロモーター(肝臓特異的;Pinkertら、Genes Dev.1巻268〜277頁1987年)、リンパ特異的プロモーター(Calame及びEaton、Adv.Immunol.43巻235〜275頁1988年)特にT細胞受容体のプロモーター(Winoto及びBaltimore、EMBO J.8巻729〜733頁1989年)と免疫グロブリン(Banerjiら、Cell 33巻729〜740頁1983年;Queen及びBaltimore、Cell 33巻741〜748頁1983年)、ニューロン特異的プロモーター(例えば、ニューロフィラメントプロモーター;Byrne及びRuddle、Proc.Natl.Acad.Sci.USA86巻5473〜5477頁1989年)、脾臓特異的プロモーター(EdlundらScience230巻912〜916頁1985年)、並びに乳腺特異的プロモーター(例えばミルクホエープロモーター;米国特許願第4,873,316号及び欧州特許願公開第264,166号)がある。個体の成長中に制御されるプロモーター例えばマウスのホックスプロモーター(Kessel及びGruss、Science249巻374〜379頁1990年)並びにα−フェトプロテインプロモーター(Campes及びTilghman、Genes Dev.3巻537〜546頁1989年)も含まれる。
本発明はさらに発現ベクター中に、アンチセンス配向でクローン化された本発明のDNA分子を含む、組み換え発現ベクターを提供するものである。すなわち、上記DNA分子は、COX−1変異体mRNAに対しアンチセンスのRNA分子を発現できる(DNA分子の転写によって)方式で制御配列に作動的に連結されている。アンチセンス配向でクローン化された核酸に作動的に連結されそして各種の細胞型の中でアンチセンスRNA分子の連続発現を指示する制御配列を選択することができ、例えば、アンチセンスRNAの構成性発現、組織特異的発現又は細胞型特異的発現を指示するウィルスプロモーター及び/又はエンハンサー又は制御配列を選択することができる。上記アンチセンス発現ベクターは組み換えプラスミド、ファージミド又は弱毒ウィルスの形態であってもよく、これらベクター中で、アンチセンス核酸が高効率の制御領域の制御下で産生され、その核酸の活性はそのベクターが導入されている細胞型によって決定される(アンチセンス遺伝子を使用して行う遺伝子発現の制御の考察については、Weintraub、H.ら、「Antisense RNA as a molecular tool for genetic analysis」、Reviews−Trends in Genetics1(1)巻1986年を参照)。
本発明の別の側面は、本発明の組み換え発現ベクターを導入された宿主細胞に関する。用語「宿主細胞」と「組み換え宿主細胞」は本明細書では交換して使用される。このような用語は、特定の被検者の細胞のみならずこのような細胞の子孫又は可能性のある子孫を意味すると解される。特定の修飾が、突然変異又は環境の影響のため後に続く世代に起こることがあるので、このような子孫は、実際に親細胞と同一でないこともあるが、本明細書で使用するときのその用語の範囲に含まれている。
宿主細胞は原核細胞又は真核細胞であってもよい。例えば、COX−1変異体タンパク質は、イー.コリなどの細菌の細胞、昆虫細胞、酵母又は哺乳類の細胞(例えばチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)又はCOS細胞)内で発現させることができる。他の適切な宿主細胞は当業者に知られている。
ベクターDNAは、通常の形質転換法又はトランスフェクション法によって原核細胞又は真核細胞に導入することができる。用語「形質転換」及び「トランスフェクション」は、本明細書で使用する場合、リン酸カルシウム共沈法もしくは塩化カルシウム共沈法、DEAE−デキストラン仲介トランスフェクション法、リポフェクション法又はエレクトロポレーション法を含む外来核酸(例えばDNA)を宿主細胞に導入する、当該技術分野で知られている各種の方法を意味するものである。宿主細胞を形質転換又はトランスフェクトする適切な方法は、Sambrookら、(Molecular Cloning:A Laboratory Manual)第2版、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor Laboratory Press、米国ニューヨーク州コールドスプリングハーバー1989年)や他の研究所のマニュアルに見つけることができる。
哺乳類の細胞の安定したトランスフェクションを行うため、利用される発現ベクター及びトランスフェクション法によっては、細胞のごく小さなフラクションがそのゲノムに外来DNAを組み込むことができることが知られている。これらのインテグラントを同定し選択するため、一般に選択可能なマーカー(例えば抗生物質に対し耐性のマーカー)をコードする遺伝子が、対象の遺伝子とともに宿主細胞中に導入される。好ましい選択可能なマーカーとしては、医薬に対する耐性を付与するマーカー例えばG418、ヒグロマイシン及びメトトレキセートなどがある。選択可能なマーカーをコードする核酸は、pCOX−1タンパク質又はpCOX−1△657タンパク質をコードするベクターと同じベクターで又は別のベクターで宿主細胞に導入することができる。導入された核酸で安定してトランスフェクトされた細胞は、医薬選択法で同定することができる(例えば選択可能なマーカー遺伝子を組み込まれた細胞は生き残るが、その他の細胞は死ぬ)。
本発明の宿主細胞、例えば培養中の原核細胞又は真核細胞を使用して、COX−1変異体タンパク質を産生させる(すなわち発現させる)ことができる。したがって、本発明はさらに、本発明の宿主細胞を使用してCOX−1変異体タンパク質を産生させる方法を提供するものである。一実施態様で、この方法は、本発明の宿主細胞(COX−1変異体タンパク質をコードする組み換え発現ベクターが導入されている)を適切な培地で培養して、COX−1変異体タンパク質を産生させることを含んでなる方法である。別の実施態様で、この方法はさらに、COX−変異体タンパク質を培地又は宿主細胞から単離することを含んでいる。
本発明の宿主細胞は、非ヒトトランスジェニック動物をつくるのにも使用できる。例えば、一実施態様で、本発明の宿主細胞は、−コーディング配列が導入された受精卵母細胞又は胚性幹細胞である。次にこのような宿主細胞を使用して、外因性COX−1変異体配列がそのゲノムに導入された非ヒトトランスジェニック動物又は内因性COX−1変異体配列を変えられた相同組み換え動物をつくることができる。このような動物は、COX−3、PCOX−1a、PCOX−1b、hCOX−3(cc)、hCOX−3(af)、hCOX−3(del10)及びhCOX−3(cs)などのCOX−1変異体の機能及び/又は活性を試験したり、それらの活性のモジュレーターを同定及び/又は評価するのに有用である。本発明のトランスジェニック動物には、1種のCOX−1変異体タンパク質だけを発現するように(COX−1及びCOX−1変異体類の共発現とは対照的に)修飾された動物が含まれている。用語「トランスジェニック動物」は、本明細書で使用する場合、その動物の1又は2以上の細胞が導入遺伝子を含んでいる非ヒト動物であり、好ましくは哺乳動物であり、より好ましくはラットもしくはマウスなどのげっ歯類である。トランスジェニック動物のその他の例としては、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ウシ、ヤギ、ニワトリ、両生類などがある。導入遺伝子は、トランスジェニック動物が成長する細胞のゲノム中に組み込まれて成熟動物のゲノム中にとどまりそしてそのトランスジェニック動物の1又は2以上の細胞型又は組織中に、コードされた遺伝子産物を発現することを指示する外因性DNAである。用語「相同組み換え動物」は、本明細書で使用する場合、内因性COX−1変異体遺伝子が、内因性遺伝子と、その動物が成長する前に動物の細胞例えば動物の胚性細胞中に導入された外因性DNA分子との間の相互的組み換えによって変えられた非ヒト動物であり、好ましくは哺乳動物でありより好ましくはマウスである。
本明細書に記載されている核酸分子、タンパク質、タンパク質相同体及び抗体は、以下の方法:1)スクリーニング検定法;2)予測医療(例えば診断検定法、予後検定法、監視臨床試験及び薬理遺伝学);及び3)処置法(例えば治療法及び予防法)の1又は2以上に使用することができる。本発明の単離された核酸分子を使用して、例えばCOX−1変異体タンパク質を(例えば宿主細胞内の組み換え発現ベクターによって)COX−1変異体タンパク質を発現させ、COX−1変異体mRNA(例えば生物試料中の)を検出し、プロスタグランジンの活性を調節し、そしてCOX−1変異体の活性を修飾する化合物を同定することができる。例えばCOX−1変異体タンパク質を使用して、基質の不十分なもしくは過剰な産生又はCOX−1変異体インヒビターの不十分なもしくは過剰な産生を特徴とする障害を治療することができる。さらに本発明のタンパク質を使用して、天然に存在するシクロオキシゲナーゼの基質をスクリーニングし、COX−1変異体の活性を調節する医薬又は化合物をスクリーニングし、及びCOX−変異体タンパク質の不十分な又は過剰な産生を特徴とする障害を治療することができる。さらに、本発明の抗−COX−1変異体抗体を使用して、COX−1変異体タンパク質を検出して単離し、COX−1変異体タンパク質の生物学利用率を調節しそしてCOX−1変異体の活性を調節することができる。
本発明は、COX−1変異体タンパク質(COX−3、PCOX−1a、PCOX−1b、hCOX−3(cc)、hCOX−3(af)、hCOX−3(del10)又はhCOX−3(cs))に結合し、例えばCOX−1変異体の発現又はCOX−1変異体の活性に対して刺激作用もしくは阻害作用を有し、又は例えばCOX−1変異体の基質の発現又は活性に対し刺激作用もしくは阻害作用を有するモジュレーターすなわち候補物質(candidate)又は試験化合物もしくは試験薬剤(例えばペプチド、ペプチドミメティッィク、小分子又は他の医薬)を同定する方法(本明細書では「スクリーニング検定法」とも呼称される)を提供するものである。COX−1変異体の活性を調節する化合物を同定する(すなわちスクリーニングする)プロセスと方法は、同定される化合物を製造することを含んでいると解される。したがって、本発明は、COX−1変異体をコードするDNAでトランスフェクトされた細胞を提供することによってCOX−1変異体の活性を調節する化合物を製造する方法であって;上記細胞が上記変異体を発現し;前記細胞を、無傷の又は破壊された状態で試験化合物と接触させ、次いでCOX−1変異体の活性が前記試験化合物の存在下で減少するか又は増加するかを確認し、そして前記COX−1の活性の減少又は増加は、前記試験化合物がCOX−1の活性を調節し、同定された化合物を製造する指標である方法を目的としている。
一実施態様で、本発明は、COX−1変異体のタンパク質もしくはポリペプチド又はその生理活性部分の基質である候補物質又は試験化合物をスクリーニングする検定法を提供するものである。別の実施態様で、本発明は、COX−1変異体のタンパク質もしくはポリペプチド又はその生理活性部分に結合するか、又はそれらの活性を調節し例えばCOX−1変異体のそのコグネイトリガンドと相互に作用する機能を調節する候補物質又は試験化合物をスクリーニングする検定法を提供するものである。本発明の試験化合物は、生物学的ライブラリー;立体的にアドレス可能で平行の(spatially addressable parallel)固相もしくは溶液相のライブラリー;解析を必要とする合成ライブラリー法;1ビード1化合物ライブラリー法;及びアフィニティクロマトグラフィによる選択を利用する合成ライブラリー法を含む、当該技術分野で既知のコンビナトリアルライブラリー法の多数の方法のいずれか、を使用して得ることができる。上記生物学的ライブラリー法はペプチドライブラリーに限定されるが、その他の四方法は化合物のペプチド、非ペプチドオリゴマー又は小分子のライブラリーに適用できる(Lam、K.S.、Anticancer Drug Des.12巻145頁1997年)。コンビナトリアルライブラリーについては以下に詳細に説明する。
別の実施態様の検定法は、COX−1変異体の標的分子(例えばアラキドン酸)を発現する細胞を試験化合物と接触させて、COX−1変異体の標的分子の活性を調節する(例えば刺激又は阻害する)試験化合物の性能を測定することを含む細胞ベースの検定法である。標的分子に対するCOX−1変異体の活性を調節する試験化合物の性能は、例えば標的化合物分子と結合するか又は相互に作用するCOX−1変異体タンパク質の性能を測定するか、又は試験分子を修飾するCOX−1変異体タンパク質の性能を測定することによって測定することができる。
標的分子と結合するか又は相互に作用するCOX−1変異体タンパク質の性能は、直接結合性を測定することによって測定できる。COX−1変異体標的分子と結合するか又は相互に作用するCOX−1変異体タンパク質の性能の測定は、例えばCOX−1変異体タンパク質に放射性同位元素又は酵素の標識を結合させて、COX−1変異体タンパク質のCOX−1変異体の標的分子に対する結合性を複合体の標識付きCOX−1変異体タンパク質を検出することによって測定できるようにすることによって達成できる。例えば、COX−1変異体分子、例えばCOX−1変異体タンパク質は、125I、35S、14C又は3Hで直接又は間接的に標識化し、次いでその放射性同位元素を、放射線放出の直接カウンティング又はシンチレーションカウンティングによって検出することができる。あるいは、COX−1変異体分子は例えば西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファーゼ又はルシフェラーゼで酵素標識化して、その酵素標識を、適当な基質の産生物への変換を測定することによって検出することができる。
COX−1変異体とその標的分子の間の相互作用を調節する化合物の性能を、これら相互作用物のどれも標識化することなく、測定することも本発明の範囲内に入る。例えば、マイクロフィジオメーター(micro-physiometer)を使用して、COX−1変異体とその標的分子の相互作用を、COX−1変異体又は標的分子を標識することなしに検出することができる(McConnel、H.M.ら、Science257巻1906〜1912頁1992年)。用語「マイクロフィジオメーター」(例えばCytosensor)は、本明細書で使用する場合、細胞がその環境を酸性化する速度を、ライトアドレサブルポテンシオメトリックセンサ(light-addressable
potentio metric sensor)(LAPS)を使用して測定する分析装置を意味する。この酸性化速度の変化は、化合物と受容体の間の相互作用の指標として利用できる。
好ましい実施態様で、COX−1変異体の標的分子と結合するか又は相互に作用するCOX−1変異体タンパク質の性能の測定は、標的分子の活性を測定することによって達成できる。例えば標的分子の活性は、標的の細胞第二メッセンジャー(cellular second messenger)(例えば細胞内Ca2+、ジアシルグリセロール、IP3など)の誘発を検出するか、適切な基質に対する標的の触媒/酵素活性を検出するか、レポーター遺伝子(検出可能なマーカー例えばクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼをコードする核酸に作動的に連結された標的応答制御要素(target-responsive
regulatory element)を含んでいる)の誘発を検出するか、又は標的制御細胞応答を検出することによって測定できる。
COX−1変異体タンパク質の活性を調節する化合物をスクリーニングする簡単な生体外のシステムの一例として、生細胞、又は培養細胞から調製したミクロソーム抽出物に対し実施される検定法がある。本明細書に開示されるCOX−1変異体−合成細胞系は、COX−1変異体の活性に対する化合物の活性を、例えばCOX−1又はCOX−2に対する同じ化合物の活性と比較して評価するのに有用である。
したがって、本明細書は、COX−1変異体又はCOX−1又はCOX−2の活性を選択して阻害ししたがって例えば炎症を起こした哺乳類の組織好ましくはヒトの組織に関連しているか又は哺乳類宿主好ましくはヒト宿主の生理的又は病的状態でのCOX−1変異体の活性を特異的に阻害する化合物の関連阻害活性を評価する方法を提供するものである。このような検定法は、次のステップで構成されている。すなわちCOX−1変異体を発現する細胞系又はそのミクロソーム抽出物を、適切な培地又は緩衝液中で、予め選択された量の前記化合物と接触させ、その混合物に基質(例えばアラキドン酸)を添加し、次いでCOX−1変異体によるアラキドン酸代謝産物の合成レベル又は前記の細胞系もしくはミクロソーム抽出物による、シクロオキシゲナーゼ経路に独特の他の代謝産物の合成のレベルを、前記化合物が存在しない対照の細胞系又はミクロソーム抽出物の一部と比較して測定するステップで構成されている。その化合物は、COX−1変異体又はCOX−1又はCOX−2を選択して阻害するその活性を、上記ステップを採用してCOX−1及び/又はCOX−2の発現細胞系で、平行して第二の検定法を実施することによって評価できる。
さらに別の実施態様の本発明の検定法は、COX−1変異体タンパク質又はその生理的活性部分を試験化合物と接触させ次いで試験化合物がCOX−1変異体タンパク質又はその生理的活性部分と結合する性能を測定する無細胞検定法である。試験化合物のCOX−1変異体タンパク質との結合は、上記のように直接又は間接的に測定できる。好ましい実施態様で、上記検定法は、COX−1変異体タンパク質又はその生理的活性部分を、COX−1変異体と結合する既知の化合物と接触させて検定混合物を生成させ、その検定混合物を試験化合物と接触させ、次いで試験化合物のCOX−1変異体タンパク質と相互に作用する性能を測定するステップを含み、そして試験化合物のCOX−1変異体タンパク質と相互に作用する性能の測定法は、試験化合物のCOX−1変異体タンパク質又はその生理的活性部分と優先的に結合する性能を、既知の化合物と比較して測定することを含んでいる。
例えば、本発明の試験によって、アセトアミノフェン、フェナセチン、アンチピリン及びジピロンなどの鎮痛/解熱化合物を含む、COX−1又はCOX−2に対する阻害活性がほとんどないか又は全くない化合物によって阻害されるCOX−1変異体が同定された(表1と図13参照)。本明細書に記載のスクリーニング法は、このような化合物の誘導体を、COX−1変異体の活性を選択して阻害するこれら誘導体の特性について確認できる手段を提供する。このような化合物は、被検者のCOX−1変異体関連の障害を治療するのに有用である。例えば、アセトアミノフェノンは、臨床診療及び動物モデルでは、ほとんど抗炎症活性がないにもかかわらず、非ステロイド系の抗炎症医薬(NSAID)として類別されることが多い。しかし、アセトアミノフェンは、NSAIDのように、痛みと熱を抑制する。アセトアミノフェンは、一般に、イヌの脳のホモジネートのCOX活性を、脾臓由来のホモジネートのCOX活性より阻害することが分かっている(Flower及びVane、Nature240巻410〜411頁1972年)。しかし以前の及び現在の研究論文が示すように、COX−1又はCOX−2は、全細胞又はホモジネート中にて生理学的濃度のアセトアミノフェンによって阻害されないが(Botting、Clin.Infect.Dis.31巻8202〜8210頁2000年)、このことはアイソザイムがアセトアミノフェンの作用する部位に対する優れた候補物質でないことを示唆している。この研究論文は、COX−1変異体はイヌの脳で明らかに増大しそしてヒトの5.2Kbの転写産物は脳皮質に最も多く含まれていることを示している。さらに、疫学的証拠は、NSAIDを使用することがアルツハイマー病(AD)の発生又は危険が低下することと関連があることを示している。骨関節症、リウマチ様関節炎にかかっているか又は他の目的のためNSAIDを使用している患者のケースコントロールド試験(case-controlled study)では、NSAID(特にアスピリン)の使用とADの発病との間に逆の関係が見られる。3年以上の間隔をおいてADを発症した50才代の双子のコツインコントロールスタディ(co-twin
control study)で、類似の逆の相関関係が見られた。計画的なBaltimore Longitudinal Study of Agingで、NSAID使用者にADの危険性が低下するとともにNSAIDの使用期間が増えるとADの危険性が低下することが発見され、そして1年間のRotterdam Studyでは認知衰弱症の減少がNSAIDの使用と関連があった。
別の実施態様の検定法は、COX−1変異体タンパク質又はその生理活性部分を試験化合物と接触させて、COX−1変異体タンパク質又はその生理活性部分の活性を調節する(例えば刺激するかは又は阻害する)試験化合物の性能を測定する無細胞検定法である。COX−1変異体タンパク質の活性を調節する試験化合物の性能の測定は、例えばCOX−1変異体の標的分子の結合するCOX−1変異体タンパク質の性能を、直接結合を測定する上記方法のうちの一つで測定することによって達成することができる。またCOX−1変異体の標的分子に結合するCOX−1変異体タンパク質の性能の測定は、リアルタイム Biomolecular Interaction Analysis(BIA)などの方法を使用して達成できる(Sjolander,S.及びUrbaniczky,C.、Anal.Chem.63巻2338〜2345頁1991年並びにSzaboら、Curr.Opin.Struct.Biol.5巻699〜705頁1995年)。用語「BIA」は、本明細書で使用する場合、いずれの反応物にも標識をつけずに、リアルタイムで生物特異的相互作用を研究する技法である(例えばBIAcore)。表面プラズモン共鳴(SPR)の光現象の変化は、生物分子間のリアルタイム反応の指標として使用することができる。
さらに別の実施態様で、前記無細胞検定法は、COX−1変異体タンパク質又はその生理活性部分を、COX−1変異体タンパク質に結合する既知の化合物と接触させて検定混合物を生成させ、その検定混合物を試験混合物と接触させ、次いでその試験化合物がCOX−1変異体タンパク質と相互に作用する性能を測定することを含み、その試験化合物がCOX−1変異体タンパク質と相互に作用する性能の測定が、そのタンパク質が優先的に標的分子に結合するか又は標的分子の活性を調節する性能を測定することで構成されている。
本発明の上記検定法の2以上の実施態様で、COX−1変異体又はその標的分子を固定化して、それらタンパク質の一方又は両方の複合体を未複合体から分離しやすくするとともに、検定法を自動化できるようにすることが望ましい。候補化合物の存在している場合と存在していない場合に、試験化合物とCOX−1変異体タンパク質の結合又はCOX−1変異体タンパク質と標的分子の相互作用は、それら反応物が入っている適切な容器で行うことができる。このような容器の例としては、マイクロタイタープレート(microtitre plate)、試験管及び微小遠心分離管がある。一実施態様で、それらタンパク質の一方又は両者をマトリックスに結合させるドメインを付加する融合タンパク質を提供することができる。例えば、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ/COX−1変異体融合タンパク質又はグルタチオン−S−トランスフェラーゼ/標的融合タンパク質は、グルタチオンセファロースビーズ(Sigma Chemical、米国ミズーリ州セントルイス)又はグルタチオン被覆マイクロタイタープレートに吸着され、次いで試験化合物と結合させ又は試験化合物と吸着されない標的タンパク質もしくはCOX−1変異体タンパク質とを結合させそして生成した混合物が、複合体生成をうながす条件下(例えば塩及びpHについての生理的条件で)でインキュベートされる。インキュベーションを行った後、前記のビーズ又はマイクロタイタープレートのウェルを洗浄して未結合成分を除去し、ビーズの場合、マトリックスが固定化され、例えば上記のようにして複合体が直接もしくは間接的に測定される。あるいは、前記複合体をマトリックスから解離させ次いでCOX−1変異体の結合性又は活性のレベルを標準の方法を利用して測定できる。
別の実施態様で、COX−1変異体発現のモジュレーターが、細胞を候補化合物と接触させ次にその細胞内でCOX−1変異体のmRNA又はタンパク質の発現を確認する方法で同定される。候補化合物の存在下でのCOX−1変異体のmRNA又はタンパク質の発現のレベルを、候補化合物が存在しないときのCOX−1変異体のmRNA又はタンパク質の発現レベルと比較する。次に、この比較に基づいて、この候補化合物をCOX−1変異体発現のモジュレータとして同定することができる。例えば、COX−1変異体のmRNA又はタンパク質の発現が、候補化合物の存在下の方が候補化合物が存在しない場合より多い(統計的に有意に多い)場合、その候補化合物は、COX−1変異体のmRNA又はタンパク質の発現の刺激物質と判定される。あるいは、COX−1変異体のmRNA又はタンパク質の発現が候補化合物の存在下の方が候補化合物が存在しない場合より少ない(統計的に有意に少ない)場合、その候補化合物は、COX−1変異体のmRNA又はタンパク質の発現のインヒビターと判定される。COX−1変異体のmRNA又はタンパク質の細胞内での発現のレベルは、COX−1変異体のmRNA又はタンパク質を検出する、本明細書に記載の方法によって測定できる。
別の実施態様で、本明細書に開示されている核酸及びポリペプチドの配列は、試験化合物の存在下又は非存在下でのCOX−1変異体酵素の挙動に関する構造ベースの予測を行う方法を提供するものである。このようなコンピュータによる方法は、ポリペプチドの一次アミノ酸の構造に一部基づいた各種の構造情報を処理する数学的アルゴリズムに基づいている。相同のタンパク質又は部分的に相同のタンパク質から得られる追加の情報は、アミノ酸の構造の情報を増大するため前記方法に組み入れることができる。したがって、新規のCOX−1変異体タンパク質について本明細書に開示されているポリペプチド配列の情報を、COX−1とCOX−2の研究論文から入手できる構造の情報とともに利用して、どの化合物又はどの化合物のファミリーがCOX−1変異体タンパク質と特異的に相互作用を行うか予測することができる。その全プロセスは、当業者に知られているアルゴリズムを利用しコンピュータによって達成することができる。
例えば、COXの構造モチーフと機能活性に対する作用に関する情報をかなり入手することができる。COX−1及びCOX−2の二量体が、各単量体の二量体化ドメインがかかわる分子相互作用によって連結されている。COX−1及びCOX−2のサブユニットのヘテロ二量体化は起こらない。上記二量体ドメインは、タンパク質分解反応で処理されたタンパク質のアミノ末端の近くの約50個のアミノ酸でコードされている。3個のジスルフィド結合が、このドメインを、上皮成長因子(EGF)を連想させる構造に連結している。第四のジスルフィド結合が、前記二量体化ドメインを、球状触媒ドメインと連結している。生成するのに酸化環境を必要とするジスルフィド結合が存在していることは、サイトゾルよりも有意に低く還元される酸化還元状態にある核膜の内腔、ER、又はゴルジの中にCOX−1とCOX−2が位置するという概念と一致している。
COXアイソザイムは、ミクロソーム膜の内腔表面と特異な方式で会合している。COXアイソザイムは、連結するため貫通膜橋かけ配列又は共有結合脂質を利用しないで、脂質二分子層の疎水性コアの内腔側に入りこんだ疎水性表面をつくる四つの両親媒性ヘリックスのタンデムシリーズを含有している。これらのヘリックスは、前記二量体化ドメインの塊のすぐカルボキシ末端側に見られる約50個のアミノ酸によってコードされている。これらのヘリックスは、COX二量体を、ER/核膜の内腔の内側面に連結させ、そのタンパク質の大部分はこれらのコンパートメントの内腔空間中に突き出ている。その膜結合ドメインは、シクロオキシゲナーゼの活性部位である狭い疎水性チャネルの口も形成している。
COX一次構造の膜結合ドメインのカルボキシ末端側に触媒ドメインがあり、このドメインはそのタンパク質の80%(約480個のアミノ酸)を構成し二つの明白な酵素活性部位を含有している。その第一部位はペルオキシターゼ(POX)活性部位である。COXアイソザイムの全触媒ドメインは球形で二つの明白な絡みあったローブ(lobe)をもっている。これらローブの界面は、ペルオキシダーゼ活性部位が配置されそしてヘムが結合されている該酵素の上面(すなわち前記膜から最も離れている面)に浅いクレフトをつくっている。上記ヘムの配位は、ヒツジCOX−1のHis388を含む鉄−ヒスチジン結合によって行われる。また、プロトポルフィリン間の他の重要な相互作用が起こり、PGG2を配位する際に機能する特異的アミノ酸が確認されている。ヘム結合の形態は、PGG2及び他の過酸化脂質と相互に作用するペルオキシダーゼ活性部位の開放クレフトに暴露されたヘムの一方の側の大部分を残している。
触媒ドメインの第二の明白な酵素活性部位は、シクロオキシゲナーゼ(COX)活性部位である。そのシクロオキシゲナーゼ活性部位は、ほとんど疎水性の長くて狭窄したゆきどまりチャネルであり、その入口は膜結合ドメインの四つの両親媒性ヘリックスによって縁どられている。そのチャネルは前記球形触媒ドメイン中に約25オングストローム延出しかつ平均幅が約8オングストロームである。しかし、COX活性部位に見られる二つだけのイオン性残基のうちの一方のアルギニン120が上記チャネル中に突出してグルタミン酸524(上記チャネルの他方のイオン性残基)及びチロシン355と水素結合ネットワークを形成する。アルギニン120は、COX−1内で基質が結合するのに不可欠であるが、COX−2内では有意に重要ではない。またアルギニン120は、COX−1活性部位がカルボキシレート含有NSAIDと結合するのに明らかに重要であるが、AA結合と同様に、COX−2内にこれらNSAIDを配位させるのに有意に重要ではない。
前記チャネルの上部すなわち触媒ポケットは、チロシルラジカルを形成し、AAの炭素13のプローS側から水素を引き抜き、次いで環化反応及び/又は酸素化反応を受ける活性化脂肪酸ラジカルを生成するチロシン385を含有している(図3参照)。また上記疎水性ポケットにはSer530があり、これはアスピリンによってトランスアセチル化される。セリン530それ自体のヒドロキシルは触媒反応に対して不可欠なものではない。しかしそのアセチル化は、AAが活性部位で産生的に結合するのを立体的に防止することによって、COX−1内のAAから水素の引抜きを防止する。対照的に、水素の引抜きがアセチル化COX−2で起こるが、脂肪酸ラジカルの環化とエンド過酸化物の生成は起こらず、COX−2ではなく15−R−ヒドロキシエイコサテトラエン酸(15R−HETE)を生成する。
COX−1とCOX−2の活性部位の間の構造の差は、COX−2ではバリンが使用されている代わりにCOX−1ではイソロイシン523が使用されていることである。この単一の差によって、いくつかのCOX−2選択医薬がアクセスできるCOX−2の疎水性アウトポケッティングが開く。COX活性部位の近くであるがこの部位に並んでいない残基いわゆる第二シェル残基に別の変化があり、その変化は微妙な変化でありCOX−2活性部位がCOX−1に対してわずかに大きくなる。
先に述べたように、NSAIDは、COXアイソザイムのシクロオキシゲナーゼ活性部位のインヒビターとして作用する鎮痛/抗炎症/解熱医薬である。個々のNSAIDとCOX活性部位の作用に重要な機構の差がある。医療に使用するNSAIDのうちアスピリンだけがCOX−1とCOX−2の共有結合修飾因子(covalent modifer)である。Garavitoと同僚の結晶学的研究は、この医薬がCOX−1のセリン530を非常に効率的にアセチル化する理由を示した(Lollの1995年の論文に引用)。他のNSAIDと同様に、アスピリンは、前記チャネルの口を通じて酵素のCOX活性部位中に拡散して、前記チャネル上を横切って、Arg120、Tyr355及びGlu524によって形成された狭窄点に至る。前記チャネルの上記狭窄点において、アスピリンのカルボキシル基が、Arg120の側鎖と弱いイオン結合を形成する。これによって、アスピリンが、Ser530に対し5オングストロームだけ下方に、トランスアセチル化を行うための正しい配向で配置される。前記チャネルの触媒ポケットは、COX−1よりCOX−2の方がいくぶん大きいのでSer530を攻撃するアスピリンの配向はCOX−2の場合良くないのでトランスアセチル化の効率は低下する。これが、COX−2のアスピリンに対する感受性がCOX−1と比べて1/10〜1/100である理由である。
アスピリンに加えて他のNSAIDは、AAと競合してCOXの活性部位と結合することによって、COX−1とCOX−2を阻害する。しかしNSAIDは、COX活性部位に、時間に依存した方式又は時間に依存しない方式で結合するかどうかという点で互いに有意に異なっている。例えば、NSAIDは、どのくらい速くCOX活性部位に生産的に結合するのか、及びどのくらい速くCOXチャネルから出るのかについては劇的に異なっている。イブプロフェンなどの何種類ものNSAIDはオンレート(on rate)とオフレート(off rate)が非常に速い。これらNSAIDは、これを添加した後ほとんど瞬間的にCOX活性を阻害し、そして酵素の環境から取り出されるとCOX活性部位から容易に流れ落ちる。対照的に、インドメタシンセジクロフェナクなどの多くのNSAIDは時間依存性である。これらのNSAIDは、COX活性部位に結合するのに一般に数秒間〜数分間かかる。しかし、これらの医薬は、一旦結合されると、一般に、オフレートが低く、NSAIDが活性部位から流れ落ちるのに何時間もの長時間が必要である。時間依存性のNSAIDは、COX活性の即時検定法においてAAとの競合性が非常に劣っている。カルボキシル含有NSAIDのCOX結合部位における正確な結合相互作用を定義するコクリスタリゼーション(co-crystallization)の研究を、インドメタシンとCOX−1のみならずフルルビプロフェンとCOX−1及びフルルビプリフェンとCOX−2について実施した。
NS398は、市販されているので薬理学の研究に広く使用されている特に重要なCOX−2阻害剤である。セレコキシブ(celecoxib)、ロフェコキシブ(rofecoxib)及びNS398はCOX−2とコクリスタライズされた。セレコキシブとロフェコキシブはそれぞれ、カルボキシル基を含有せずにスルホンアミドとメチルスルホンを含有するジアリール化合物である。したがって、COXアイザイムが同定された結果、セレコキシブ、ロフェコキシブの形態のNSAIDを最終的に合成して試験することが可能になり、これらが重要な治療剤になったのである。
COX−1とCOX−2について入手可能な構造の情報を、本明細書に開示したCOX−1変異体の新規な配列の情報及び本明細書に開示した化合物の阻害の研究論文を組み合わせることによって、当業者は、COX−1変異体の三次元構造を予測してCOX−1変異体の可能性がある阻害剤を選択することができる。したがって、本発明は、原子の配位によって定義されるようなCOX−1変異体の三次元構造を提供し次いでその三次元構造を採用して可能性がある阻害剤を設計又は選択することによって、COX−1変異体に対する可能性がある阻害剤を同定する方法を含んでいる。上記方法はさらに、上記可能性のある阻害剤を合成し、その可能性のある阻害剤を、COX−1変異体の基質の存在下又は非存在下で、COX−1変異体と接触させて、酵素Zを阻害する前記可能性のある阻害剤の性能を確認することを含んでいる。
本発明は、さらに、阻害剤がCOX−1変異体と結合するときの阻害剤の三次元配位を提供し、その阻害剤がCOX−1変異体と結合するときの阻害剤の三次元配位を、化合物構造のデータベースの化合物の三次元配位と比較して、その阻害剤がCOX−1変異体と結合するときの阻害剤に構造が類似している少なくとも一つの化合物を前記データベースから選択することによって、COX−1変異体の可能性のある阻害剤を同定する方法を提供するものである。
本発明は、さらに、阻害剤がCOX−1変異体と結合するときの阻害剤Iの原子の三次元配位および同一性を提供し、阻害剤のCOX−1変異体との相互作用を支配するその阻害剤の原子のサブセットを選択し、その阻害剤の原子の選択されたサブセットの三次元配位を、化合物構造のデータベースの化合物の三次元配位と比較して、そのデータベースから、阻害剤の原子の選択されたサブセットの三次元配位と同一の三次元配位を含む少なくとも一つの化合物を選択することによって行われ、その選択された化合物がCOX−1変異体の可能性のある阻害剤である、COX−1変異体の可能性のある阻害剤を同定する方法を提供するものである。
別の実施態様で、本発明の新規なポリペプチドは、試験化合物の存在下又は非存在下で発現させて結晶化させることができる。結晶化させると、COX−1変異体ポリペプチドの三次元構造は多くの方法で測定することができる。多くの最も正確な方法はX線結晶回折法(総説については、Van Holde著「Physical Biochemistry」221〜239頁1971年、米国ニュージャージー州Prentice−Hall参照。なおこの文献は本願に援用するものである)を利用する。この技法は、結晶格子がX線などの放射線を回折する性能に基づいている。巨大分子の三次元構造を決定するのに適切な回折試験は一般に高品質の結晶を必要とする。結晶タンパク質及び結晶ポリペプチドの各種製造方法が当該技術分野で公知である(例えば、Mcphersonら、「Preparation and Analysis of Protein Crystals」、A.McPherson,Robert E.Krieger Publishing Company、米国フロリダ州マラバル1989年;Weber、Advancesin Protein Chemistry 41巻1〜36頁1991年;米国特許第4,672,108号;及び米国特許第4,833,233号参照。なおこれらはいずれも本願に援用するものである)。
本発明はさらに、上記スクリーニング検定法で同定された新規な薬剤又は化合物に関する。したがって、さらに、本明細書に記載されているようにして同定された化合物を適切な動物モデルに使用することは本発明の範囲内に含まれている。例えば、本明細書に記載されているようにして同定された化合物(例えばCOX−1変異体を調節する化合物、アンチセンスCOX−1変異体核酸分子、COX−1変異体に対する抗体又はCOX−1変異体結合パートナー)を動物モデルに使用して、このような化合物による治療の効能、毒性又は副作用を確認することができる。あるいは、本明細書に記載されているようにして同定された化合物を動物モデルに使用して、このような化合物の作用の機構を確認することができる。さらに本発明は、上記スクリーニング検定法で同定された新規化合物の、本明細書に記載されているような治療を行うための使用に関する。
本発明はさらに、本発明のCOX−1変異体の活性を調節する候補化合物を同定するための高処理量のスクリーニング法の使用を目的としている。従来、有用な特性を有する新しい化学物質は、何らかの望ましい特性又は活性を有する化学化合物(「リード化合物」と呼称される)を同定し、そのリード化合物の変異体をつくり、次いでその変異体化合物の特性と活性を評価することによって製造されている。しかし、現在の趨勢は、医薬発見のすべての面で所要時間を短くすることである。多数の試料を迅速にかつ効率的に試験できるので、高処理量スクリーニング(ハイスループットスクリーニング(HTS))法が従来のリード化合物を同定する方法にとって変わりつつある。
好ましい一実施態様の高処理量スクリーニング法は、多数の可能性がある治療化合物(候補化合物)を含むライブラリーを提供するステップを含んでいる。次に、このような「コンビナトリアルケミカルライブラリー」を本明細書に記載されているように、1又は2以上の検定法でスクリーニングして、望ましい特徴活性を示すそれらライブラリーのメンバー(特別の化学種又はサブクラス)を同定する。このように同定された化合物は、従来の「リード化合物」として役立てることができ又はそれ自体可能性のある治療薬もしくは実際の治療薬として使用できる。
コンビナトリアルケミカルライブラリーは、新しいリード化学化合物の製造を助けるのに好ましい手段である。コンビナトリアルケミカルライブラリーは、試薬などの多数の化学的「ビルディングブロック」を組み合わせることによる化学合成又は生物学的合成によって製造される多様な化学化合物のコレクションである。例えばポリペプチドライブラリーなどの線形のコンビナトリアルケミカルライブラリーは、与えられた化合物の長さ(すなわち一ポリペプチド化合物のアミノ酸の数)に対して、化学的ビルディングブロックと呼称されるアミノ酸のセットを、あらゆる可能な方法で組み合わせることによって製造される。化学的ビルディングをこのようにコンビナトリアル混合することによって、何百万種もの化合物を合成することができる。例えば一解説者は、100種の相互交換可能な化学的ビルディングブロックを系統的にコンビナトリアル混合すると、1億種の四量体化合物又は100億種の五量体化合物が理論的に合成されると考察している(Gsllopら、37(9)巻1233〜1250頁1994年)。
コンビナトリアルケミカルライブラリーの調製とスクリーニングは当業者によく知られている。このようなコンビナトリアルケミカルライブラリーとしては、限定されないがペプチドライブラリーがある(例えば、米国特許第5,010,175号;Furka、Int.J.Pept.Prot.Res.37巻487〜493頁1991年;Houghtonら、Nature354巻84〜88頁1991年参照)。ペプチドの合成は、本発明での使用が予想され意図される唯一の方法ではない。化学的に多様なライブラリーを生成する他の化学物質も使用できる。このような化学物質としては、限定されないがペプトイド類(国際特許願公開第WO91/19735号1991年12月26日);コードされたペプチド類(国際特許願公開第WO93/20242号1993年10月14日);ランダム生物オリゴマー類(国際特許願公開第WO92/00091号1992年1月9日);ベンゾジアゼピン類(米国特許第5,288,514号);ヒダントイン類、ベンゾジアゼピン類及びジペプチドなどのダイバーソマー類(diversomer)(Hobbsら、Proc.Nat.Acad.Sci.USA90巻6909〜6913頁1993年);ビニロガス(vinylogous)ポリペプチド類(Hagiharaら、J.Amer.Chem.Soc.114巻6568頁1992年);β−D−グルコース骨格を有する非ペプチドのペプチドミメティック類(Hirschmannら、J.Amer.Chem.Soc.114巻9217〜9218頁1992年);小化合物ライブラリーの類の類似有機合成(Chenら、J.Amer.Chem.Soc.116巻2661頁1994年);オリゴカルバメート類(Choら、Science261巻1303頁1993年);及び/又はペプチジルホスホネート類(Cambellら、J.Org.Chem.59巻658頁1994年)がある[下記文献を参照。一般にGordonら、J.Med.Chem.37巻1385頁1994年;核酸ライブラリー、ペプチド核酸ライブラリー(例えば米国特許第5,539,083号参照);抗体ライブラリー(例えばVaughnら、Nature Biotechnology 14(3)巻309〜314号1996年及び国際特許願第PCT/US96/10287号参照);炭水化物ライブラリー(例えばLiangら、Science 274巻1520〜1522頁1996年及び米国特許第5,593,853号参照);並びに小有機分子ライブラリー(例えばベンゾジアゼピン類、Baum C&EN 1993年1月18日33頁、イソプレノイド類米国特許第5,569,588号、チアゾリジノン類及びメタチアザノン類米国特許第5,549,974号、ピロリジン類米国特許第5,525,735号と同第5,519,134号、モルホリノ化合物類米国特許第5,506,337号、ベンゾジアゼビン類米国特許第5,288,514号などを参照)]。
コンビナトリアルライブラリーの製造装置は市販されている(例えば、357MPS、390MPS、Advanced Chem Tech、Louisville KY、Symphony、Rainin、米国マサチューセッツ州ウーバン;433A、Applied Biosystems、米国カリフォルニア州フォスターシティ;9050Plus、Millipore、米国マサチューセッツ州ベッドフォード参照)。また溶液相化学反応用に、多数の公知のロボットシステムが開発されている。これらのシステムは、武田薬品工業(株)(日本、大阪)が開発した自動合成装置のような自動ワークステーション及び化学者が行う手作業の合成操作を模倣するロボットアームを利用する多数のロボットシステムを備えている。上記装置はいずれも本発明で使用するのに適している。これらの装置が本明細書で考察されるように作動できるようにこれらの装置になされる変更の性質と実行は(もしあるならば)、関連する技術分野の当業者には分かるであろう。さらに、多種類のコンビナトリアルライブラリーがそれ自体市販されている(例えばComGenex、米国ニュージャージー州プリンストン;Asinex、ロシア、モスクワ;Tripos,Inc.米国ミズーリ州セントルイス;Chemster,Ltd.ロシア、モスクワ;3DPharmacuticals、米国ペンシルベニア州エクストン;Martek Biosciences、米国メリーランド州コロンビアなど参照)。
本明細書に記載のCOX−1変異体の活性を調節できる化合物の検定法はいずれも高処理量のスクリーニングに適用できる。高処理量スクリーニングシステムは市販されている(例えばZymark Corp.、米国マサチューセッツ州ホプキントン;Air Technical Industries 米国オハイオ州メントル;Beckman Instruments,Inc.米国カリフォルニア州フラトン;Precision Systems,Inc.米国マサチューセッツ州ナティックなど参照)。これらのシステムは一般に、すべての試料と試薬のピペッティング、液体の小出し、時限インキュベーション及び検定法に適した単一又は複数の検出器のマイクロプレートの最終の読取りを含む全作動が自動化されている。これらの適合性のあるシステムは、高度な融通性と特注製造性のみならず高い処理量と速い起動性を備えている。このようなシステムのメーカーは各種の高処理量の詳細なプロトコルを提供している。したがって、例えばZymark Corp.は、遺伝子の転写、リガンドの結合などの調節を検出するスクリーニングシステムを説明する技術報告書を提供している。
本願で同定された新規なCDNA配列の一部分またはフラグメントは、ポリヌクレオチド試薬として多くの方式で使用することができる。例えばこれらの配列を使用して(i)それら配列それぞれの遺伝子を染色体にマップして遺伝子疾患に関連がある遺伝子領域の位置を突き止め;(ii)個体をごく少量の生物試料から同定し(組織タイピング);そして(iii)生物試料の法医学上の同定を助けることができる。
COX−1変異体タンパク質の発現又は活性に対する薬剤(例えば医薬又は化合物)の影響を監視することは、基本的な医薬のスクリーニングに利用できるだけでなく臨床試験にも利用できる。例えば本明細書に記載されているようなスクリーニング検定法で測定される、COX−1変異体の遺伝子発現、タンパク質のレベルを増大するか又はCOX−1変異体の活性を高める薬剤の効力は、COX−1変異体の転写産物の発現、タンパク質レベルの減少又はCOX−1変異体の活性の低下を示す被検者の臨床試験で監視することができる。あるいは、スクリーニング検定法によって測定される、COX−1変異体の遺伝子発現、タンパク質レベルを低下させるか又はCOX−1変異体の活性を下げる薬剤の効力は、COX−1変異体の遺伝子の発現、タンパク質のレベルの増大又はCOX−1変異体の活性の増大を示す被検者の臨床試験で監視することができる。このような臨床試験では、遺伝子好ましくは障害に関与している他の遺伝子の発現又は活性を、特定の細胞の表現型の「リードアウト(read out)」又は標識として使用することができる。
好ましい実施態様で、本発明は、(i)薬剤を投与する前に、被検者から投与前試料を入手し、(ii)その投与前試料中のCOX−1変異体のタンパク質、mRNAの発現レベルを検出し;(iii)被検者から投与後の単一又は複数の試料を入手し;(iv)その投与後試料中のタンパク質又はmRNAの発現又は活性のレベルを検出し;(v)上記投与前試料のタンパク質又はmRNAの発現又は活性のレベルを、上記投与後の単一又は複数の試料中のタンパク質又はmRNAと比較し;次いで(vi)その比較結果に応じて被検者に対する薬剤の投与を変更するステップを含んでなる、薬剤(例えば、本明細書に記載のスクリーニング検定法で同定されるアゴニスト、アンタゴニスト、ペプチドミメティック、タンパク質、ペプチド、核酸、小分子又は他の医薬候補物質)による被検者の治療の効力を監視する方法を提供するものである。例えば、COX−1変異体の発現又は活性を検出されたレベルより高く増大するためすなわち薬剤の効力を増大するためには、薬剤の投与を増大することが望ましい。あるいは、COX−1変異体の発現又は活性を検出されたレベルより低く低下させるため、すなわち薬剤の効力を減少させるためには、薬剤の投与を減らすことが望ましい。このような実施態様によって、COX−1変異体の発現又は活性は、観察可能な表現型の応答がなくても、薬剤効力の指標として使用できる。
本発明は、異常なCOX−1変異体の発現又は活性に関連する障害を受ける危険がある(その障害に冒されやすい)か又はこのような障害がある被検者の予防処置法と治療処置法の両者を提供するものである。予防処置法と治療処置法について、このような処置は、薬理ゲノミクスの分野から得られる知識に基づいて特異的に適応させるか又は調整することができる。用語「薬理ゲノミクス」は、本明細書で使用する場合、遺伝子配列の決定、統計的遺伝子学及び遺伝子発現の分析などのゲノミックスの技法を、臨床開発中及び市場の医薬に適用することを意味する。さらに具体的に述べると、この用語は、患者の遺伝子が、医薬に対する男性又は女性の患者の応答をどのように決定するか(例えば患者の「医薬反応の表現型」又は「医薬反応の遺伝子型」)の研究を意味する。したがって、本発明の別の側面は、個体の医薬応答遺伝子型にしたがって、本発明のCOX−1変異体分子又はモジュレータによって行う個体の予防処置又は治療処置を仕立てる方法を提供するものである。薬理ゲノミクスによって、臨床医又は医師は、処置を受けて最も利益を受ける患者に対して予防又は治療の処置を行って、患者が有毒な医薬の関連する副作用を被る処置を避けることができる。
したがって、本発明は、(i)COX−1変異体タンパク質をコードする遺伝子の異常な修飾又は突然変異;(ii)遺伝子の誤調節;及び(iii)COX−1変異体タンパク質の翻訳後の異常な修飾のうちの少なくとも一つを特徴としてそしてその遺伝子の野生型がCOX−1変異体の活性を有するタンパク質をコードしている、遺伝子の変化の有無を判定する診断検定法も提供するものである。本発明は、さらにCOX−1もしくはCOX−2の転写産物又はポリペプチドに対するCOX−1変異体の転写産物又はポリペプチドの相対発現レベルを測定する診断検定法を提供する。診断検定法としては、COX−1変異体が存在しているかもしくは存在していないか又はCOX−1変異体の遺伝子の変化があるかもしくは無いかを検出するアレーベースのシステムがある。アレーベースシステムには、a)ビードアレー、ビードベースアレー、バイオアレー、バイオエレクトロニックアレー、cDNAアレー、細胞アレー、DNAアレー、コードされたビードアレー、ゲルパッドアレー、遺伝子アレー、遺伝子発現アレー、ゲノムアレー、ゲノミックアレー、高密度オリゴヌクレオチドアレー、高密度タンパク質アレー、ハイブリッド形成アレー、insituアレー、低密度アレー、マイクロエレクトロニックアレー、マルチプレックスDNAハイブリッド形成アレー、ナノアレー、ナイロンマクロアレー、オリゴアレー、オリゴヌクレオチドアレー、オリゴ糖アレー、ペプチドアレー、プラナーアレー、タンパク質アレー、溶液アレー、スポットアレー、組織アレー、エキソンアレー、フィルターアレー、マクロアレー、小分子ミクロアレー、懸濁液アレー、テーマアレー、傾斜アレー、又は転写産物アレーが組み込まれている。
例えば、本発明の核酸、タンパク質もしくはポリペプチド又は本発明の核酸、タンパク質もしくはポリペプチドと相互に作用する分子を含むアレーは、検出試験法、診断検定法及び臨床試験中の化合物の作用を監視する検定法に使用することができる。したがって、このようなアレーは、本発明の核酸、タンパク質もしくはポリペプチド、又はCOX−3、PCOX−1a、PCOX−1b、hCOX−3(cc)、hCOX−3(af)、hCOX−3(del10)もしくはhCOX−3(cc)を含む本明細書に開示されている核酸、タンパク質もしくはポリペプチドと相互に作用する分子を含んでいてもよい。
本発明は、一側面で、COX−1変異体、又はCOX−1変異体の発現もしくは少なくとも1種のCOX−1変異体の活性を調節する化合物を被検者に投与することによって、COX−1変異体の異常な発現又は活性に関連する患者の疾病もしくは症状を予防する方法を提供するものである。COX−1の異常な発現又は活性によって起こるか又はこれが原因になっている疾病になる危険がある被検者は、例えば本願に記載されているような診断検定法又は予後検定法を組み合わせることによって判定できる。COX−1変異体の異常を特徴とする症状が現れる前に予防薬剤を投与して、疾病又は障害を予防するか又はその進行を遅らせることができる。COX−1変異体の異常のタイプによって、例えばCOX−1変異体、アゴニスト薬剤又はアンタゴニスト薬剤を被検者の治療に使用することができる。適切な薬剤は、本明細書に記載のスクリーニング検定法に基づいて決定できる。
したがって、本発明は、患者からの試料の被検者発言プロファイルを提供し;治療法に各々関連する複数の参照プロファイルを提供することによって患者に対する治療法を選択する方法であって、被検者の発現プロファイルと各参照プロファイルが複数の値を有し、その値が各々COX−1変異体の転写産物又はポリペプチドの発現レベルを示し;次いで前記被検者の発現プロファイルに最も類似している参照プロファイルを選択して、前記患者の治療法を選択する方法を提供するものである。
本発明はさらに、複数のアドレスを有する基質を含むアレーであって、各アドレスが、COX−1変異体の核酸に特異的に結合できる捕獲プローブを基質に配置しているアレーを提供するものである。上記核酸は、COX−1変異体の配列番号:1、配列番号:4、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、又は配列番号:13からなる群から選択することができる。上記基質は、各々が独特のCOX−1変異体の配列に対応するアドレスの範囲を有している。アドレスの範囲は、アレーの密度に応じて5〜10,000含んでいる。
本発明はさらに、各々治療法に関連する複数の参照発現プロファイルを提供し;患者から得た核酸を提供し;その核酸を、複数のアドレスを有する基質を含むアレーに接触させ、各アドレスはその上にCOX−1変異体核酸に特異的に結合できる捕獲プローブを配置されており;複数のアドレスの各アドレスへの前記核酸の結合を検出して被検者の発現プロファイルを提供し;次いでその被検者の発現プロファイルに最も類似している参照プロファイルを選択して前記患者に対する治療法を選択することによって、患者の治療法を選択する方法を提供するものである。
本発明はさらに、医薬組成物がCOX−1変異体と有効に相互に作用するかどうかを評価する方法を提供するものである。この方法は、複数のアドレスを含む基質を有しかつその各アドレスがCOX−1変異体核酸に特異的に結合できる捕獲プローブを基質に配置しているアレー;及びディジタルにコードされた発現プロファイルを複数有しかつその複数の各プロファイルが複数の値を有し各値がアレーによって検出されるCOX−1変異体核酸の発現を示すコンピュータ読取り可能媒体を利用できる。
本発明はさらに、介護者から被検者試料を入手し;その被検者試料から核酸を得;その核酸から被検者の発現プロファイルを確認し;複数の参照プロファイルから前記被検者発現プロファイルに最も類似しているマッチング参照プロフィルを選択し、そしてその参照プロファイルと被検者発現プロファイルが複数の値を有しその値が各々COX−1変異体の発現レベルを表し、前記複数の参照プロファイルの各参照プロファイルが治療に関連があり;次いで前記マッチング参照プロファイルと関連がある治療法の記述語を介護者に伝えて前記被検者に対する治療法を選択することによって、被検者に対する治療法を選択する方法を含んでいる。
本発明はさらに、上記のようなアレー及び複数の発現プロファイルを有するコンピュータ読取り可能媒体を備え、その複数の各プロファイルが複数の値を有し、各値が前記アレーによって検出されたCOX−1変異体核酸の発現を示す、医薬組成物を評価するキットを提供するものである。
本発明の別の側面は、治療を目的としてCOX−1変異体の発現又は活性を調節する方法に関する。したがって、代表的実施態様の本発明の調節方法は、細胞を、COX−1変異体又はその細胞と関連するCOX−1変異体タンパク質の活性の1又は2種以上を調節する薬剤と接触させることを含んでいる。COX−1変異体タンパク質の活性を調節する化合物又は薬剤は、本明細書に記載されているような薬剤、例えば核酸もしくはタンパク質、COX−1変異体タンパク質の天然に存在している標的分子、COX−1変異体の抗体、COX−1変異体のアゴニストもしくはアンタゴニスト、COX−1変異体のアゴニストもしくはアンタゴニストのペプチドミメティック又は他の小分子であってもよい。一実施態様で、前記薬剤は1又は2種以上のCOX−1変異体の活性を刺激する。このような刺激薬剤の例としては、活性COX−1変異体タンパク質、及び細胞中に導入されたCOX−1変異体をコードする核酸分子がある。別の実施態様で、前記薬剤は1又は2種以上COX−1変異体の活性を阻害する。このような阻害化合物又は薬剤の例としては、アンチセンスのCOX−1変異体核酸分子、抗COX−1変異体抗体及びCOX−1変異体の阻害剤がある。これらの調節法は、生体外で(例えば細胞を前記薬剤とともに培養することによって)実施するか又はあるいは別のところで述べたように生体内で(例えば薬剤を被検者に投与することによって)もしくはコンピュータ内でさえ実施することができる。したがって、本発明は、COX−1変異体のタンパク質又は核酸分子の異常な発現もしくは活性を特徴とする疾病もしくは障害にかかっている個体の治療方法を提供するものである。
本発明のCOX−1変異体核酸分子、COX−1変異体タンパク質、COX−1変異体の活性を調節すると判定された化合物、及び抗−COX−1変異体抗体(本明細書では「活性化合物」とも呼称される)は、投与するのに適した医薬組成物に組み入れることができる。このような組成物は、一般に、核酸分子、タンパク質、化合物又は抗体及び医薬として許容できる担体を含有している。用語「医薬として許容できる担体」は、本明細書で使用する場合、医薬の投与に適合する溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤、抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤などのいずれか又はすべてを含むものである。医薬として活性の物質に対してこのような媒体及び薬剤を使用することは当該技術分野では周知のことである。従来の媒体又は薬剤が前記活性化合物と適合しない場合を除いて、医薬組成物にそれらを使用することが考えられる。補助活性化合物も前記組成物に組入れることができる。
例えば疫学データと臨床データは、非ステロイド抗炎症医薬(NSAID)を使用するとアルツハイマー疾患の発症が遅くなりかつADの病的症状の進行が低下することを示唆している(McGeer及びMcGeer, Brain Res. Rev. 21巻195頁1995年)。アスピリンは、大部分のNSAIDと同様に、COX−1酵素とCOX−2酵素の両者を阻害することによって、炎症と痛みを防止する。レスベラトロール(Resveratrol)(ぶどう中に発見されたフェノール系抗酸化剤でかつCOX阻害剤である)は、プロストグランジンの産生を阻害しかつ抗癌性と抗炎症性をもっている(Jangら、Science
275巻218頁1997年)。アルツハイマー病(AD)は老化による最も一般的な神経変性障害であり、進行性の痴呆と人格障害が特徴である。変性している神経細胞の近傍におけるアミロイドプラークの異常な蓄積及び反応性星状膠細胞がADの病的特徴である。本発明はさらに、各種の神経疾患と神経変性障害を治療するのに用いる組成物及びこれら障害の治療法に関する。例えば、本発明のCOX−1変異体を調節する組成物は、アミロイド前駆体タンパク質(APP)の過多に関連する神経変性疾患を治療するのに使用できる。細胞リン脂質からアラキドン酸を放出する細胞質ホスホリパーゼA2は、ADの脳中に一過性の全般的虚血の後、増大する。2形態のシクロオキシゲナーゼ(COX)、COX−1とCOX−2によって触媒されるアラキドン酸のシクロ酸素化反応(cyclooxygenation)は、プロスタグランジンを産生し、次に、そのプロスタグランジンは、cAMPの生成に関与している受容体を活性化することによって、神経伝達、免疫応答及び炎症応答を調節する。神経伝達受容体の活性化によって起こるcAMPの増大によって、星状膠細胞におけるAPPmRNAとホロタンパク質の産生が増大した。
したがって、本明細書に開示されているスクリーニング検定法で同定された活性化合物は、COX−1変異体が関連する障害、例えば神経変性の症状又は疾病などを改善するため医薬組成物に入れることができる。被検者の上記症状は、医薬として許容できる担体に入れた本発明に開示されているようなCOX−1変異体活性の特異的阻害剤を投与することによって治療することができる。本発明のさらなる目的は、本発明に開示されているようなCOX−1変異体活性の特異的阻害剤の有効量を投与することによって被検者のアルツハイマー病を予防又は治療する方法を提供することである。
本発明はさらに、この開示で提供されるようなCOX−1変異体の特異的阻害剤を投与することによって、被検者の神経変性症状と関連する免疫症状又は炎症症状を治療する方法を提供する。本発明は、本発明のCOX−1変異体のアンタゴニストの有効量を投与することによって、被検者におけるアミロイド前駆体タンパク質(APP)の発現、産生又は形成を調節する方法を含んでいる。そのアンタゴニストは、例えば、医薬として許容できる担体中の、COX−1変異体活性の特異的阻害剤である非ステロイド抗炎症剤である。したがって本発明は、中枢神経系内でのAPP遺伝子産物の発現及びAPP遺伝子の転写又は翻訳を含む、患者におけるAPPの産生又は形成を調節又は制御できる方法と組成物を提供するものである。例えば、哺乳類の細胞、特に脳の細胞によるAPPの産生は増減させることができる。この目的を達成するための本発明の目的は、過剰のアミロイドの形成を阻害し、神経突起ジストロフィーを予防し、そしてAPPの不適切に発現され、産生され又は形成された量の悪影響から起こる神経変性又は認知欠損などの病的症状を改善することである。
したがって、本発明は、疾病の治療又は改善を行うのに有用であり、特に、神経学的疾病又は神経変性障害に関連する障害、例えば水腫、損傷又は外傷から起こる中枢神経系又は末梢神経系の損傷、不全又は合併症はいうまでもなく、少数の病名をあげればアルツハイマー病、パーキンソン病、ルー・ゲーリグ病又は多発性硬化症の治療又は改善を行うのに有用である。このような損傷、不全又は合併症は、明白な神経学的、神経変性的、生理的、心理的又は行動の異常が特徴であり、それら異常の症状は本発明の活性化合物又は活性物質の有効量を投与することによって減退させることができる。
一実施態様で、本発明のCOX−1変異体の活性を調節する組成物の有効量を投与して、増大したcAMP活性の作用を抑制し、阻害し又は中和することができる。なお、cAMP活性が抑制されないとAPPが過剰に産生される。各種の非ステロイド抗炎症薬剤(NSAID)が、cAMP、その誘導体、cAMPの細胞レベルに関与している受容体のリガンド、アゴニストもしくはアンタゴニスト、又はcAMPの核作用を高める化合物の刺激作用を打ち消すのに適していることが発見されている。適切なNSAIDの例としては、限定されないが、アドビル(Advil)、アスピリン、アレブ(Aleve)、アナプロックス(Anaprox)、ジクロフェナク、ドコサヘキサエン酸、ドロビット(Dolobid)、エトドラク(Etodolac)、フェルデン(Feldene)、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトロラク、トロメタミン、ロジン(Lodine)、メクロフェナメート、6−MNA、モトリン(Motrin)、ナルフォン(Nalfon)、ナプロシン(Naprosyn)、ヌプリン(Nuprin)、オルディス(Orudis)、フェニルブタゾン、ピロキシカム、フェニルブタゾン、ポンステル(Ponstel)、レラフェン(Relafen)、サリチル酸、スリンダクスルフィド、トレクチン(Tolectin)、トラドール(Toradol)、ボルタレン(Voltaren);また5−リポキシゲナーゼ阻害剤類、ホスホジエステラーゼ阻害剤類又はシクロオキシゲナーゼ阻害剤類(例えばシクロサリチルアゾスルファピリジン、アズールファサラジン(azulfasalazine)、DFU(5,5−ジメチル−3−(3−フルエロフェニル)−4−(4−メチルスルホニル)フェニル−2(5H)−フラノン)、又はDFP(5,5−ジメチル−3−イソプロピルオキシ−4−(4’−メチルスルホニルフェニル)−2(5H)−フラノン)がある。
用語「中枢神経系」は、本明細書で使用する場合、硬膜の内側のすべての構造を意味する。このような構造としては限定されないが脳及び脊髄がある。
用語「アルツハイマー病にかかっている被検者」、「炎症要素を有する疾病にかかっている被検者」及び「中枢神経系の損傷を受けている被検者」はそれぞれ、本明細書で使用する場合、特定の疾病、損傷又は症状をもっているか又はおそらく持っていると判定された被検者を意味する。用語「アルツハイマー病に冒されやすい被検者」及び「炎症要素を有する疾病に冒されやすい被検者」はそれぞれ、本明細書で使用する場合、特定の疾病、損傷又は症状になるか又はこれらを発生する危険があると判定された被検者を意味する。用語「炎症要素を有する疾病」は本明細書で使用する場合、炎症要素と関連する疾病及び症状を意味する。炎症要素は、前記疾病又は症状に関連する兆候、副作用又は原因事象を含んでいる。炎症要素を有する疾病としては、限定されないが、卒中発作、神経系に対する虚血性損傷、神経外傷(例えば衝撃による脳の損傷、脊髄の損傷及び神経系に対する外傷)、多発性硬化症及び他の免疫仲介神経障害[例えばギラン・バレー症候群とその変形、急性運動軸索性神経障害(acute motor axonal neuropathy)、急性炎症性脱髄多発性神経障害(acute inflammatory demyelinating polyneuropathy)及びフィッシャー症候群]、HIV/AID痴呆複合症及び細菌とウイルスによる髄膜炎がある。このような疾病としては、さらに、退行変性疾患、例えばアルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ハンチントン病(HD)、ピック病、進行性核上麻痺、線状体黒質変性症、大脳皮質基底核変性症、オリーブ橋小脳萎縮症、リー病、小児壊死性脳脊髄障害、ハンター病(Hunter's disease)、ムコ多糖体沈着症、各種の白質萎縮(例えばクラッベ病、ペリツェーウス−メルツバッヒャー病など)、黒内障性(家核性)白痴、クッフス病、シュピールマイアー−フォークト病、タイサックス病(Tay Sachs disease)、バッテン病、ヤンスキー−ビールショースキー病、ライ病、脳性運動失調症、慢性アルコール中毒、脚気、ハラ−ホルデン−スパッツ症候群、小脳変性などがある。
用語「神経欠陥」は、本明細書で使用する場合、前記神経系に関連する欠陥を意味する。いくつかの神経欠陥は、神経系の欠陥組織又は欠陥細胞によって起こるが、その外の欠陥は神経系を冒す欠陥組織又は欠陥細胞によって起こる。用語「神経欠陥哺乳類」は本明細書で使用する場合、1又は2種以上の神経欠陥を有する哺乳類を意味する。神経欠陥が「改善されると」、宿主の症状は改善される。例えば、欠陥組織が部分的に又は全体が正常状態に戻ると改善が起こる。しかし、改善は、組織が正常以下のままであっても起こるが、他の方法で、宿主が有利になるように変えられる。用語「病変(lesion)」は、創傷もしくは損傷又は組織の病的変化を意味する。
本発明の医薬組成物は、本発明の意図する投与経路に適合するように配合される。投与経路の例としては、非経路投与、例えば静脈内、皮内、皮下;経口(例えば吸入);経皮(局所);経粘膜及び直腸の投与がある。非経口、皮内又は皮下の用途に使用される溶液又は懸濁液は、以下の成分、すなわち滅菌希釈剤例えば注射用水、食塩水、固定油類、ポリエチレングリコール類、グリセリン、プロピレングリコール又は他の合成溶媒類;抗菌剤例えばベンジルアルコール又はメチルパラベン類;抗酸化剤例えばアスコルビン酸又は亜硫酸水素ナトリウム;キレート化剤例えばエチレンジアミン四酢酸;緩衝材例えば酢酸塩類、クエン酸塩類又はリン酸塩類;並びに張度調節剤例えば演歌ナトリウム又はデキストロースを含有させることができる。pHは、酸類又は塩基類例えば塩酸又は水酸化ナトリウムで調節することができる。非経口製剤は、ガラス又はプラスチックで製造されたアンプル、使い捨てシリンジ又は多人数投与用バイアルの中に封入することができる。
注射用に適切な医薬組成物としては、滅菌の水溶液(水溶性の場合)又は分散液及び滅菌の注射溶液もしくは注射分散液の即席製剤用の滅菌粉末がある。静脈内投与の場合に適切な担体としては、生理食塩水、静菌水、Cremophor EL(商標)(BASF、米国ニュージャージー州パーシパニー)又はリン酸緩衝食塩水(PBS)がある。すべての場合、その組成物は滅菌されていなければならず、かつ容易に注入できる程度に流体でなければならない、また組成物は、製造及び貯蔵の条件下で安定でなければならずかつ、細菌及び真菌などの微生物の汚染作用を受けないように保存されなければならない。担体は溶媒又は分散媒体であり、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセリン、ポリエチレングリコール及び液体ポリエチレングリコールなど)並びにそれらの適切な混合物がある。例えばレシチンなどのコーティングを使用し、分散液の場合は必要な粒径を保持し、及び界面活性剤を使用して、適正な流動性を維持することができる。微生物の作用は、各種の抗菌剤と抗真菌剤例えばパラベン類、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどで防止することができる。多くの場合、等張剤例えば砂糖類;マンニトール、ソルビトールなどのポリアルコール類;塩化ナトリウムを組成物に含有させることが好ましい。注射用組成物に、吸収を遅らせる薬剤例えばモノステリン酸アルミニウム及びゼラチンを含有させることによって、注射用組成物の吸収時間を延長することができる。
滅菌注射溶液は、必要量の活性化合物を、適切な溶媒中に、必要に応じて上記成分の1種又は組合わせとともに組み入れ、続いて濾過滅菌することによって製造できる。一般に分散液は、活性化合物を、基本分散媒体と上記成分中の必要な他の成分とを含有する滅菌媒体中に組み入れることによって製造される。滅菌注射溶液を製造するのに使用する滅菌粉末の場合、好ましい製造方法は、予め滅菌濾過した溶液から、活性成分プラス追加の所望の成分の粉末を生成する、減圧乾燥して凍結乾燥する方法である。
経口組成物は一般に不活性の希釈剤又は食べられる担体を含んでいる。経口組成物は、ゼラチンカプセル内に密封するか又は圧縮して錠剤にすることができる。治療のため経口投与するため、活性化合物は添加剤と混合して、錠剤、トローチ剤又はカプセル剤の形態で使用できる。また、うがい剤として使用する経口組成物を流体担体を使って製造できるが、この場合、その流体担体中の化合物を経口で利用しうがいし次いで吐き出すか又は飲み込む。医薬として適合できる結合剤及び/又はアジュバンド物質を組成物の一部として含有させることできる。前記錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤などは、以下の成分又は類似の性質の化合物のいずれかを含有させることができる。すなわち、結合剤例えば結晶セルロース、トラガントガムもしくはゼラチン;添加剤例えばデンプンもしくはラクトース;崩壊剤例えばアルギン酸、プリモゲル(primogel)もしくはトウモロコシデンプン;滑沢剤例えばステアリン酸マグネシウムもしくはステロート類(sterotes);グライダント(glidant)例えばコロイド二酸化ケイ素;甘味剤例えばスクロースもしくはサッカリン;又は芳香剤例えばペパーミント、サリチル酸メチルもしくはオレンジ香料を含有させることができる。
吸入によって投与する場合、化合物は、適切な噴射剤たとえば二酸化炭素のようなガスが入っている加圧容器もしくは加圧ディスペンサー、又はネブライザーからエーロゾルスプレーの形態で送られる。
また、全身投与は、経粘膜もしくは経皮の方法で行うことができる。経粘膜又は経皮の投与を行う場合、浸透すべきバリアーに対して適切な浸透剤が処方に使用される。このような浸透剤は当該技術分野では広く知られており、例えば経粘膜投与用として、界面活性剤類、胆汁酸塩類及びフシジン酸誘導体がある。経粘膜投与は鼻腔内スプレー又は坐剤を使用することによって達成できる。経皮投与を行う場合、活性化合物は、当該技術分野で広く知られているように、軟膏、膏薬、ゲル剤又はクリーム剤に配合される。
またこれらの化合物は、坐剤(例えばカカオバター及び他のグルセリド類などの通常の坐剤ベースを含有する)又は直腸送達用保持浣腸剤の形態で製剤することができる。
一実施態様で、前記活性化合物は、インプラント(implant)及びマイクロカプセル化送達システムを含む放出制御配合物のような、活性化合物が身体から速く排泄されないように保護する担体で製剤される。生物分解性で生体適合性のポリマー例えばエチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物類、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル類及びポリ乳酸を使用できる。このような配合物の製造方法は当業者にとっては明らかであろう。またこれらの物質は、Alza Corporation 及び Nova Pharmaceuticals,Inc.から商業的に入手することができる。リポソーム懸濁液(ウィルス抗原に対するモノクロラーナル抗体に感染した細胞を標的とするリポソームを含む)も、医薬として許容できる担体として使用できる。これらは当業者に知られている方法、例えば米国特許第4,522,811号に記載されている方法で製造できる。
投与しやすくかつ投与量を均一にするため投与量単位(dosageunit)の形態で経口又は非経口の組成物を配合することが特に有利である。用語「投与量単位の形態」は、本明細書で使用する場合、治療すべき被検者に対して単位投与量として適切な物理的に分離された単位を意味し、各単位は、必要な医薬担体と共に所望の治療効果をあげるように計算された予め定められた量の活性化合物を含有している。本発明の投与量単位形態の仕様は、活性化合物の独特の特性及び達成すべき特定の治療効果及び個体を治療するためこのような活性化合物を混合する当該技術分野固有の制限によって直接決まる。
このような化合物の毒性と治療効力は、例えばLD50(母集団の50%が死亡すると推定される投与量)及びED50(母集団の50%に治療効果があると推定される投与量)を測定するための、細胞培養又は実験動物による標準の薬学的方法によって測定することができる。毒作用と治療作用の間の投与量比は治療指数であり、LD50/ED50比で表すことができる。治療指数の大きい化合物が好ましい。毒性副作用を示す化合物は使用できるが、未感染の細胞に起りうる損傷を最小限にして副作用を減らすため、冒された組織の部位にこのような化合物を向わせる送達システムは、注意深く設計しなければならない。
細胞培養による検定及び動物実験で得たデータは、ヒトに使用する投与量の範囲を処方するのに使用できる。このような化合物の投与量は、毒性がほとんどないか又は全くなくED50を含有する循環濃度の範囲内が好ましい。その投与量は、採用される剤形及び利用される投与経路に応じて上記範囲内で変えることができる。本発明の方法で使用される化合物について、治療効果のある投与量は最初、細胞培養検定法で推定される。細胞培養で測定されるIC50(すなわち症状を最高50%抑制する試験化合物の濃度)を含有する循環血漿中濃度範囲を達成する投与量は動物モデルで処方できる。このような情報は、ヒトに対する有用な投与量をより正確に決定するために使用できる。血漿中の濃度は、例えば高速液体クロマトグラフィで測定することができる。
本発明の核酸分子は、ベクターに挿入して遺伝子治療ベクターとして使用できる。遺伝子治療ベクターは、例えば静脈注射、局所投与(米国特許第5,328,470号参照)又は定位注射(例えばChenら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA91巻3054〜3057頁1994年)によって被検者に送達できる。前記遺伝子治療ベクターの医薬製剤は、許容可能な希釈剤中に遺伝子治療ベクターを含有しているか、又は遺伝子送達媒体が埋包された徐放性マトリックスを含有している。あるいは、完全な遺伝子送達ベクター例えばレトロウイルスベクターを組換え細胞から無傷で産生できる場合、その医薬製剤は、遺伝子送達システムを産生する1又は2以上の細胞を含有することができる。
また本発明は、本発明の方法で同定された化合物を含有し、容器に入れてCOX−1変異体に対する特異的インヒビターとして使用するための説明付きラベルをはられた医薬組成物を含んでいる。この医薬組成物は、COX−1変異体が関連する障害を治療する際にこの組成物を使用するための説明付きのキットに入れることができる。このキットにはさらに用量を使用する場合の説明書が入っている。したがって、本発明は、包装材料を含み、その包装材料中に、COX−1変異体の活性を調節する例えばCOX−3などの化合物を入れた製品であって、その包装材料は前記化合物がCOX−1変異体の活性を調節するので被検者の(痛み/炎症)を治療するのに使用することができることを示すラベル又は添付文書を含んでいる製品を提供するものである。本発明はさらに、包装材料を含み、その包装材料中に、COX−1変異体の活性をCOX−1とCOX−2と比較して優先的に調節する化合物を入れた製品であって、その包装材料は、前記化合物がCOX−1変異体の活性を調節するので被検者の(痛み/炎症)を治療するのに使用することができることを示すラベル又は添付文書を含んでいる製品を提供するものである。
[実施例]
最近の研究は、COX−1が二量化、膜結合及び触媒作用をもたらす少なくとも三つの別個のドメインを持っていることを示した。第四のドメインすなわちN末端シグナルペプチドは、一次構造のCOX−1には明白に見られるが、この配列は一般にミクロソームのシグナルペプチダーゼによって初期のポリペプチドから翻訳と同時に開裂されるので観察されなかった。前記アミノ末端のシグナルペプチドは、COXアイソザイムを小胞体/核膜の内腔中に合成させる。アミノ末端の疎水性シグナルペプチドは、初期ポリペプチドから開裂されるが、COX−1とCOX−2では大きさが異なり、このことは、本発明以前では未知の生物学的意味をもっていた。COX−1のシグナルペプチドは一般に、4個以上のロイシン又はイソロイシンを含有する大きい疎水性コアを有する22〜29個のアミノ酸からなる長さのペプチドである。この配列はCOX−1遺伝子のエキソン1と2でコードされている。COX−1のエキソン2は、末端が正確に前記シグナルペプチドの開裂部位である。COX−1とは対照的に、COX−2のシグナルペプチドはすべての種で17個のアミノ酸の長さであり、全体がCOX−2遺伝子のエキソン1によってコードされており、そして末端が正確にそのシグナルペプチドの開裂部位である。したがって、前記疎水性シグナルペプチドは、COX−1のエキソン1と2及びCOX−2遺伝子のエキソン1だけで正確にコードされている。COX−1遺伝子のイントロン−1は、COX−2遺伝子には欠けている。これはCOX−1とCOX−2の遺伝子の構造に大きな差があることを示している。
生体外(in vitro)の翻訳実験によれば、COX−1はイヌの膵臓ミクロソームの内腔中に迅速に転位(translocate)されるが、一方COX−2の転位は非能率的であることがわかった(Xieら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA88巻2692〜2696頁1991年)。今のところ、これが、シグナルペプチドの長さの上記の差によって影響を受ける、COX−1とCOX−2のアイソザイムの唯一わかっている生化学的特性である。しかし、本明細書に記載の発見は、この重要なシグナル配列の、COX−1内のイントロン保持による制御が脳などの組織に起こってCOXアイソザイムの独特の変異体(すなわちCOX−1変異体)をつくることを示している。
したがって、COX−1変異体タンパク質(例えばCOX−3、PCOX−1a、hCOX−3(cc)、hCOX−3(af)、hCOX−3(del10)及びhCOX−3(cs))をコードする新規のmRNAは哺乳類の組織で発現されて提供される。例えばイヌ及びヒトの大脳皮質はCOX−1変異体のmRNAを発現する。さらにヒトCOX−3mRNA(約5.2kbの転写産物)は心臓組織から同定された。イントロン−1は、哺乳類COX−1遺伝子中に、長さと配列が保存されている。このイントロンは、COX−1を小胞体の内腔と核膜中に導く疎水性シグナルペプチドの中に、哺乳類の種に対して30〜34個のアミノ酸を挿入させるオープンリーディングフレームを含有している。また本発明は、昆虫の細胞内で膜結合タンパク質として有効に発現されるCOX変異体タンパク質を提供するものである。COX−3とPCOX−1aは本明細書に記載されているCOX−1変異体の例である。COX−3とPCOX−1aの発現と活性については具体的に述べてあるが、このような発現は本明細書に開示されているどのCOX−1変異体にも適用できるといえる。したがって、PCOX−1b、hCOX−3(cc)、hCOX−3(af)、hCOX−3(del10)又はhCOX−3(cs)の発現は、本明細書に記載の技法及び分子生物学の技術分野の当業者の知識によって容易に達成することができる。
代表的なCOX−3(しかしPCOX−1aではない)はシクロオキシゲナーゼ活性を有し、この活性はグリコシル化されている酵素に依存している。COX−1変異体を選択して阻害する化合物のスクリーニング法も提供される。例えばCOX−1変異体の活性は、アセトアミノフェン、フェナセチン、アンチピリン、ジピロン及びNSAID類などの鎮痛/解熱剤によって阻害できる。したがって、例えば中枢神経系の障害を治療する(例えば痛み及び/又は熱を低下させる)のに有用な化合物を同定する方法が提供される。
本発明は、限定するのではなく例示だけを目的として、COX−1変異体を標的として阻害する特異的化合物を提供するものである。このような化合物の誘導体の製造方法は、生化学の技術分野の当業者には周知の方法である。したがって、本発明は、COX−1変異体を阻害する活性を有していると同定された本明細書に開示されている化合物の誘導体を含んでいる。COXインヒビターの例としては、COX−2選択性インヒビターとして開発されたセレコキシブ[Celebrex(登録商標)]及びロフェコキシブ(rofecoxib)[Vioxx(登録商標)]がある。メロキシカム(meloxicam)[Mobic(登録商標)]、ニメスリド(nimesulide)及びエトドラク(etodolac)[Lodine(登録商標)]を含む他のNSAIDも、COX−2の優先的なインヒビターとして同定された。本発明は、COX−1及び/又はCOX−2よりCOX−1変異体を優先的に阻害する上記化合物の変異体を同定する方法を提供するものである。
各種のイヌ組織から単離したCOXmRNAのノーザンブロットによる分析結果は、すべてのRNA試料が、脳(皮質)由来の試料を除いて、イヌのCOX−1cDNAプローブとハイブリッドを形成する単一の2.6KbのmRNAを主として含有していることを示した。このイヌのプローブは、大きさが約1.0KbpでかつCOX−1mRNAのコーディング領域につくられた。これらの実験で使用されるこのプローブは、COXアイソザイムの保存配列につくられた縮重オリゴヌクレオチドを使用して逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)によって調製した。上記プローブの同定は、DNAの配列を決定することによって行われた。他の組織で観察されたものとは対照的に、このプローブは脳組織から単離された全RNA中の新規なCOX−1mRNAを検出した(図5、パネルA)。この新規なRNAは、イヌのCOX−1をコードする2.6KbのmRNAとは対照的に大きさが約1.9Kbであった。類似の大きさのメッセージがニワトリの脳のmRNA中に検出された(図5パネルb)。
さらなるノーザンブロットの実験結果は、上記1.9KbのmRNAがRNAのポリAフラクションに豊富に存在していたので、プロセスされていないRNA転写産物の切断産物ではないことを示した(図5、パネルc)。さらに(RT−PCR)の実験結果は、この新規な1.9KbのCOX−1関連mRNAが、COX−1RNAの3’非翻訳領域の長さを変えるがそれ以外はコーディング領域を変化させずに残す別のポリアデニル化プロセスの産物ではないことを示した。このことは、前記メッセージの3’非翻訳領域に対して特異的なプローブを使用してPCRでつくったフラグメントのサザーンブロット分析で確認された。これらの実験で、同じ3’非翻訳領域が2.0Kbと2.8KbのCOX−1RNAの両方に存在していることが発見された。したがって、前記1.9KbのRNAは、COX−1mRNA又は高度に関連があるmRNAのコーディング領域の変化を反映しているようである。
前記1.9KbのRNA中に存在しているコーディング領域の変化を確認するため、Gibco BRLとStratagene それぞれから購入したλZIPLOX(登録商標)とλZAP(登録商標)の両者のクローニングベクター中に、cDNAライブラリーをつくった。cDNAの合成、ベクターの連結及びファージの繁殖の方法は当業者に知られている。ZIPLOX(登録商標)ライブラリー由来の約45,000個の組換え体としてλZAP(登録商標)ライブラリー由来の約149,000個も組換え体を、イヌの1.0KbのCOX−1cDNAフラグメントでプルーブし、α32PCTPで放射能標識を行い、次いで2×106cpm/mlの濃度でハイブリッドを形成させた。
前記イヌのCOX−1クローンと強くハイブリッドを形成した11個のクローンを単離して、自動DNA配列決定法によってDNAの配列を決定した。これらのクローンはすべて、イヌCOX−1cDNAとほぼ同一のある種のDNA配列を含有していた。しかし3個のクローンは、それらそれぞれのcDNAの5’末端に又はその近くに、90個のヌクレオチドのエキストラ配列(extra sequence)の挿入体を含有していた。この挿入された配列を分析した結果、その挿入配列は、イヌCOX−1遺伝子のイントロン−1が、マウスとヒトのCOX−1遺伝子中のこのイントロンの位置に基づいて、位置していると予測される位置に位置していることが分かった。さらに、これらの三つのイヌcDNAに保持されている90個のヌクレオチドの配列が、ヒトとマウスのCOX−1遺伝子のイントロン−1と顕著な配列類似性を示しかつ保持されたイントロンを示す5’と3’の共通スプライス部位を含有していることが確認された。この試験は、これらの新規な転写産物が、これらのcDNAによってコードされているCOX関連タンパク質の生化学的特性に有意な変化が起こっていると予測される、イントロン−1のmRNA中のインフレーム保持を反映していることを示している。
確認された上記三つのイントロン−1含有クローンのうちの一つは、前記90個のヌクレオチドの挿入体に加えて約657bpがインフレーム欠失していることが見出された。このインフレーム欠失は、COX−1メッセージのエキソン5〜8が除去されたことにほぼ相当する。その上に、一つのコドンがエキソン4の5’末端から削除されて別のコドンがエキソン8の3’末端に付加されているようである。この欠失によって、ペルオキシダーゼの活性を低下させかつこの酵素がコードするその酵素の脂肪酸の酸素化活性を変えるが破壊はしない触媒ドメインの部分が除かれると予想される。
COX−1変異体(例えばCOX−3、PCOX−1a、hCOX−3(cc)、hCOX−3(af)、hCOX−3(del10)及びhCOX−3(cs))はイントロン−1のインフレーム挿入体を含有している。この配列をこれらRNA中に挿入すると、そのタンパク質の出発メチオニンの下流に2個のアミノ酸残基が生じて、シグナルペプチドに約30個のアミノ酸が付加される。この付加によって、細胞内のこの酵素の細胞レベル以下の位置が変わる。特に、このタンパク質は、小胞体、核膜、脂質体などの特定のオルガネラ、又は酵素が、細胞膜のサントゾル表面に、その保持されている膜結合ドメインによって結合する細胞質内の膜構造体の特定のオルガネラを標的としていると予測される。細胞膜又は脂質体のサイドゾル表面に対しこれらの酵素を配置すると、そのタンパク質の折りたたみを変化させると予測される。というのは、酵素がミクロソーム酵素が提供するグリコシル化反応を欠いているからである。またその酵素は、このタンパク質には通常存在しない約60個のアミノ酸をそのアミノ末端に含有している。この付加はそれ自体、折りたたみを変化させてニ量体化を防止するようである。本明細書のデータは、COX−1変異体タンパク質が、COX−1配列のすべての又は重要な部分を含有しているがCOX−1タンパク質とは異なる酵素特性を有していることを示している。
COX−1変異体の1例として、そのアミノ末端にイントロン−1が挿入されているのに加えて重要な(219個のアミノ酸)が欠失しているのを示すPCOX−1aがある。この酵素は、ヘムに結合し、ペルオキシダーゼ活性を有しそしてPIOX類と同様に脂肪酸を酵素化する構造モチーフをもっている。このことは、COX−1及びCOX−2とは異なり、PCOX−1aがシクロペンタンリングを含有するプロスタグランジン類などの産物を産生しそうにないことを意味する。というのは、このような産物が生成するには、脂肪酸と、PCOX−1aには欠失している疎水性残基との相互作用が必要だからである。代わりに、PCOX−1aはPIDX類と同様に脂肪酸のモノ酵素化されたヒドロペルオキシ誘導体又はヒドロキシ誘導体を生成するようである。
ヒトとマウスのCOX−1遺伝子の構造は知られている。これらの種のイントロン−1の構造の分析結果は、これら両方の生物が、イヌのイントロン−1と大きさが類似しているイントロン−1を含有し、そのイントロン−1は、保持されると、そのタンパク質をコードするシグナルペプチド中にインフレーム挿入されることを示している(図7)。前記三つの種すべての上記イントロンのアミノ末端に4個のアミノ酸(ArgGluXAspPro)が保存されている。RNAは、イントロン−1に特異的なオリゴヌクレオチドアンチセンスプローブを使用するノーザンブロットで分析された。イヌの組織を、イントロン−1に見出されるオリゴヌクレオチド(長さが50bp)について分析した。広範囲に脳内を含めて各種の組織内に、このイントロンを含有する特異的RNAの種が検出された(図8)。各種のヒト組織から単離されたRNAを、イントロン−1に対して、アンチセンスのオリゴ(長さが50個のヌクレオチド)を使用してノーザンブロットによって分析した。このブロットの洗浄条件は、プローブの計算された溶融温度(Tm)より約20℃低い温度で30分間、2回洗浄する条件であった。続いて、前記計算された溶融温度より4℃低い温度で10分間、1回洗浄した。この高度のストリンジェンシィによって、プローブと相互作用RNAとの非特異的相互作用ではなくて標準の相互作用が予測される。5.2KbのRNAが、心臓、筋肉、肝臓、胎盤、腎臓及び膵臓のみならず前脳特に皮質のヒト組織の中に、イントラン−1特異的オリゴヌクレオチドプローブによって検出された、扁桃、海馬、全脳及び肺臓などの組織はRNAの発現が低かった。前記5.2Kbの転写産物に加えて、約2〜2.8Kbのより小さいRNAがいくつか、脳の皮質などの領域内に、前記プローブによって検出された。
COX−1転写産物を含有するイントロン−1がヒトに存在していることをさらに保証するために、逆転写PCRを、ヒトの細胞と組織由来のRNAを使用して実施した。予測される約1.8Kbのフラグメントの増幅が、ヒト遺伝子のイントロン−1に配置されたフォーワードプライマー(forward primer)及びメッセージの予測ストップコドンのすぐ3’側に配置されたリベースプライマー(reverse primer)を用いて達成された。このアンプリコンは、サザーンブロット法で、イヌのCOX−1cDNAとハイブリッドを形成した。このサザーンブロット法では、そのブロットを、2xSSC内で65℃にて数回洗浄した。
ヒトとイヌのシクロオキシゲナーゼ(COX)−1遺伝子の第一イントロンに対してアンチセンスのオリゴヌクレオチドを合成し、(γ−32P)−dATPを使って末端に標識を付けた。イヌの大脳皮質のcDNAライブラリーのスクリーニングを、約1.0KbのイヌCOX−1フラグメントを使用し逆転写PCR(RT−PCR)によって行った。このライブラリーはまた32Pで標識したイヌCOX−1イントロン−1に対してアンチセンスのオリゴヌクレオチドでスクリーニングした。二つの全長のクローンを単離し、完全に配列を決定してCOX−3及びPCOX−1aと命名した。これら両者はイヌのCOX−遺伝子から誘導されたがイントロン−1を保持している。また、PCOX−1aは、エキソン5〜8に及ぶ657bpのインフレーム欠失部分がある。
イヌの大脳皮質のcDNAを合成し、そしてPCR増幅を行うためプライマーを設計した。そのセンスプライマー[5’−CGGATCCGCCGCCCAGAGCTATGAG−3’(配列番号:7)]は、イヌCOX−3配列のヌクレオチド15−32(GenBankに受託番号AF535138で提出した)と同じであり、そのプライマーの3’末端は前記開始メチオニンから2個のヌクレオチドだけ下流に位置している。そのアンチセンスプライマー[5’−CGCCATCCTGGTGGGGGTCAGGCACACGGA−3’(配列番号:8)]は、ヌクレオチド1865〜1894と同じであり、ストップコドンから32個のヌクレオチドだけ上流に位置している。
ヒト組織をイントロン−1プローブでノーザンブロット分析したところ約5.2KbのmRNAが検出された。Marathon−readyTMヒト大脳皮質cDNA(clontech)を5’プライマーと3’プライマーを使ってPCR[Clontech−Advantage(登録商標)2PCR酵素システム]で増幅して、約4.2Kbの増幅されたフラグメントが発見され、イントロン−1が保持されたヒトCOX−1の全コーディング領域を含んでいることが分かった。
COX−3とPCOX−1aの両者を、バキュロウイルスの発現ベクターpBlueBac4.5/V5−His(invitrogen)中にクローン化した。COX−3、PCOX−1a、マウスCOX−1及びマウスCOX−2を発現するため、Sf9細胞(約1×106)を、ウイルス株に、感染多重度(MOI)3で感染させた。
ヒト大動脈由来の全タンパク質(20μg)を、COX−1モノクローナル抗体(MAb)(Cayman Chemical、米国ミシガン州アンアーバー)とCOX−3抗−ペプチドポリクローナル抗体(PAb)を使用しウエスタンブロッティングで分析した。一次抗体を、ヒトとマウスのCOX−1イントロン−1ペプチドの混合物(以下に説明する)とともに4℃で1hrプレインキュベートするか又はブロックされないままにしておいた。Sigmaから入手した適切なウサギ−抗マウス二次抗体(1:2000)又はヤギ抗ウサギ二次抗体(1:10,000)でプロセスした。放射線写真画像の濃度測定を、AlphaImager(商標)2000DocumentationとAnalysisSystem(Alpha Innotech Corporation)を使って実施した。
昆虫細胞にバキュロウイルス構造体を感染させてから1hr後、ツニカマイシン(Tunicamycin)を最終濃度10μg/mlまで添加した。その細胞を培養し48hr後に収穫した。無傷の細胞のCOX活性を放射線免疫検定法(RIA)(Salmonの1978年の論文)で測定した。Tuで処理した無傷の細胞のCOX活性を、適当なウイルスを感染させた(MOI=3)未処理細胞の活性と比較した。
Sf9細胞に高タイターのウイルス株をMOI3で感染させて48hr培養した。COX−3を発現する感染細胞を試験管に分取し(約1.5×106個の細胞)、次いで遠心分離した(1000×g、5min)。上澄液を排棄し、生成した細胞ペレットを、被検医薬を含有する無血清培地100μl中に再懸濁し次いで室温にて30分間プレインキュベートした。次にアラキドン酸(100μl、最終濃度5又は30μM)を添加し、混合し、次いでインキュベートした(37℃にて10分間)。次に試料を遠心分離し、上澄液100μlについてPGE2をRIAで測定してCOX活性を検定した。検定は3度ずつ複数回行った。阻止カーブをつくって、IC50値を、Prism(登録商標)3.0(Graphad、米国サンディエゴ)を使用して測定した。
ゲノムクローン配列によって予想される、ヒトとマウスのCOX−3一次配列の最初の13個のアミノ酸に相当するペプチドを合成してキーホールリンペットヘモシアニンに結合させた。ヒト[MSRECDPGARWGC(配列番号:20)]とマウス[MSREFDPEAPRNC(配列番号:21)]のペプチドを、ニュージーランド白ウサギに注射した。生成したポリクローナル抗体を、製造メーカーの説明にしたがって、Sultolink(商標)カップリングゲル(Pierce)に固定化した上記ペプチドを使用して親和性精製を行った。
ノーザンブロット分析を行ったところ、イントロン−1を含有する約5.2KbのmRNAを検出した(図10のパネルB)。アンチセンスプライマー[HCLE:5’−CGGATCCTGGAATAGGCCACCGGATGGAAGGA−3’(配列番号:9)]を公表されている配列の3’末端から設計し、そしてセンスプライマー[HCF:5’−CGGATCCTGCGTCCCGCACCCCAGCA−3’(配列番号:17)]をヒトCOX−1遺伝子(Gen−Bank、受託番号L08404)の開始コドンの上流の部位の5個のヌクレオチドから設計した。これらのプライマーは、クローン化を促進するため、それらの5’末端のBamHI認識配列で設計した。
Marathon−ready(商標)ヒト大脳皮質cDNA(Clontech)を、上記プライマーを使ってPCR[Clontech-Advantage(登録商標)2PCR酵素システム]で増幅した。生成した約4.2Kbの増幅フラグメントを低融点アガロースから回収し次いでネステッドプライマー(nested
primer)を使って再増幅した[センス、HCEI:5’−CGGATCCGCGCCATGAGCCGTGA−3’(配列番号:18);アンチセンス、HCS:5’−CGGATCCTCAGAGCTCTGTGGATGGTCGCT−3’(配列番号:19)]。ヒトのCOX−1の全コーディング領域(イントロン−1が保持されている)を含有する生成したフラグメント(約2.0Kb)を次いで、プラスミドBluescript内にクローン化して配列を決定した。
単離したRNAを利用して、イヌの大脳皮質からイヌCOX−1コーディング領域cDNAプローブで、ノーザンブロットにて、二つの別個のmRNAの種(約2.6kbと約1.9kb)を検出した(図10、パネル10、レーン1)。これらの転写産物をさらに調べるため、イヌの大脳皮質cDNAライブラリーを構築し次にその非増幅ライブラリーを上記のようにしてスクリーニングした。11個のクローンを単離し、続いて自動DNA配列決定法によって特性を決定した。これら11個のクローンはすべて、イヌCOX−1cDNA配列を含有していることが見出された。しかし三つのクローンは、それらクローンそれぞれのcDNAの5’末端又はその近くに90個のヌクレオチドが挿入されていたが、これはヒト又はマウスのCOX−1遺伝子のイントロン−1に対して75%の配列相同性を示した。またこの追加配列は、イントロンが保持されていることを示す5’と3’の共通スプライス部位を含有していた。前記三つのクローンのうち一つは、イントロン−1を保持していることに加えて、COX−1メッセージのエキソン5〜8に相当する657bpのインフレーム欠失部分をもっていた。
先に検出した二つのCOXmRNA転写産物(すなわち約2.6Kbと約1.9Kbのもの)がイントロン−1を保持しているかどうかを確認するため、放射能標識をつけたアンチセンスイヌCOX−1イントロン−1特異的オリゴヌクレオチドプローブ(CCI)を利用してノーザンブロット試験を繰り返した(図10パネルAレーン2)。重要なことは、新規なCOX−1mRNAスプライス変異体がイヌ大脳皮質で確かに発現されたことを示唆する前記約1.9KbのmRNA転写産物と前記約2.6Kbの転写産物が検出されたことである。したがって、非スプライスイントロン−1を保持して前記約2.6KbのmRNA転写産物に相当する新規なCOXcDNAクローンをCOX−3と命名した。さらに、イントロン−1を保持し、エクソン5〜8を欠いて前記約1.9KbのmRNA転写産物に相当する新規なCOXcDNAクローンは、部分COX−1aすなわちPCOX−1aと命名した(図11)。
イヌ大脳皮質RNAの逆転写PCR及びノーザンブロット分析によって、COX−3mRNAが、上記大脳の領域に、COX−1mRNAの約5%のレベルで存在していることが分かった(図10、パネルA)。興味深いことには、これらの分析結果は、PCOX−1aに相当する前記約1.9KbのmRNAが実際は、約90個のヌクレオチドの大きさの差を有する2種のmRNAの混合物であることを示した(図10、パネルB)。これらmRNAのうちの一方はPCOX−1でありそして残りの方(PCOX−1b)は、イントロン−1を欠いていることを除いてPCOX−1aと同一であった。PCOX−1aとPCOX−1bは大脳皮質中等しい量で発現される(図10、パネルB)。
新規なCOX−1関連mRNA転写産物がヒト組織中でも発現されるかどうかを確認するため、ヒトノーザンブロット実験を、ヒトイントロン−1特異的(HCI)プローブを利用して実施した。重要なことは、これらの実験結果が、新規な約5.2Kbと約2.8KbのmRNA転写産物の存在していることを示したことである(図10、パネルC)。約1.9Kbの弱いハイブリッド形成シグナルも見られた。HCIと前記約5.2Kb形とのハイブリッド形成は、組織特異的であり、大脳皮質内に最高レベルで存在し、続くレベルで心臓に存在していた。これらの観察結果は、COX−1mRNAの特性決定された発現パターンとは異なっている。
COX酵素は、小胞体の内腔内レジデントであり、適切な折りたたみと活性を得るためN−連結グリコシル化反応に依存している。イントロン−1を保持すると、これらのmRNAを核から放出することを防止するか、又はこれらのタンパク質を他の細胞レベル以下のコンパートメントに向かわせることによって、COX−3とPCOX−1の発現を防止してグリコシル化反応を防止できる。したがって、昆虫細胞(Sf9)に、COX−3、PCOX−1及びCOX−1を発現する組換えバキュロウイルスを感染させ、次いで細胞ホモジネートを、ウェスタンブロット法でタンパク質発現について検定した。哺乳類の、イントロン−1によってコードされていると予想される保存アミノ酸配列(MSREXDPXA)に対する抗体を使用して、COX−3、PCOX−1a及びPCOX−1bにプローブした。この分析結果は、COX−3とPCOX−1がともに昆虫細胞内に有効に発現されていることを示した。スプライシングによってイントロン−1を除くことから得られる検出可能な産物は、免疫学的に又は感染させたSf9細胞から抽出したRNAのPT−PCR分析によっても全く検出されなかった。さらに、COX−3及び/又はPCOX−1aもしくはPCOX−1a中の、イントロン−1がコードしている追加の配列を含有しているシグナルペプチドは、シグナルペプチターゼがCOX−1とCOX−2の中に存在しているときと同様にシグナルペプチターゼによって除去されなかった。
COX−3とPCOX−1の翻訳後のN連結グリコシル化反応を、コアのグリコシル化反応を阻害するツニカマイシンを使って、COX−1の上記反応と比較した。免疫ブロット分析の結果は、COX−3、PCOX−1及びCOX−1のグリコシル化された形態の減少又は消失を示した(これらCOXそれぞれを図12の上部の左、中央及び右のパネルに示す)。次に発現系を、全昆虫細胞内でのPGE2の産生量を測定することによって、シクロオキシゲナーゼの活性について検定した。COX−3の活性は、COX−1とPCOX−1の活性の約20%であることが見出され、検出可能なCOX活性を完全に欠いていた(図12の下部パネル)。ツニカマイシンで処理した細胞のCOX活性はこの医薬で有意に減少するか又は排除されることが分かったが、これはCOX−3がCOX活性を得るにはN連結グリコシル化反応が必要なことを示している。
ヒト組織中のRNAの試験結果が、最高レベルのCOX−3のメッセージが大脳皮質と心臓内にあることを示した。COX−1モノクローナル抗体又はCOX−3抗ペプチドポリクローナル抗体を使って行うヒト大動脈のウェスタンブロット分析(図15)によって、別個の65KDaと53KDaのCOX−1関連タンパク質が存在していることが検出された。さらに、COX−1の抗体は、グリコシル化COX−1に相当する69KDaのタンパク質、及びCOX−1又はPCOX−1bのタンパク質分解フラグメントを示す50KDaのタンパク質を検出したがCOX−3抗体は検出しなかった。
上記の65KDaと53KDaのタンパク質両者の検出は、抗ペプチド血清をそのコグネイトペプチド(cognate peptide)とともにプレインキュベートすることによって選択的に減少したが、COX−1モノクローナル抗体によるこれらタンパク質の検出はこの処理によって影響を受けなかった。
鎮痛/解熱薬とNSAIDがCOX−3のCOX活性を阻害する性能とそれらがCOX−1とCOX−2を阻害する性能とを試験して比較した。外因的に30μMと5μMの濃度で添加したアラキドン酸の存在下で分析を行った。基質濃度が高い場合、COX−3だけがアセトアミノフェンによって阻害された(図13、パネルA)。さらに基質濃度が低い場合、COX−3はCOX−1又はCOX−2よりアセトアミノフェンに対し有意に一層感受性であることが分かった(図13、パネルB)。アセトアミノフェンは、5μMのアラキドン酸の存在下で試験したとき、IC50値64μMでCOX−3を阻害したが、一方COX−1及びCOX−2それぞれのIC50値は2.1倍と92.4倍であった。
アセトアミノフェンは、メトヘモグロビン血症、腎臓毒障害及び発癌の疑いがある腎臓と膀胱の症状を起こすためにもはや広く使用されていないが、かつては一般に広く使われていた鎮痛/解熱剤であるフェナセチンの活性代謝産物であるとみなされている。フェナセチンは、身体内で迅速に0−脱エチル化されてアセトアミノフェンを形成しさらに代謝され他の小さいが毒性の化合物になる。したがってごく小濃度のフェナセチンしか血液循環しない。興味深いことには、フェナセチンは、COX−3を阻害する場合、アセトアミノフェンよりはるかに強力であった(図13、パネルC)。基質条件30μMで、フェナセチンは、同じ条件下で試験したアセトアミノフェンの場合IC50が460μMであったのと対照的にIC50値102μMでCOX−3を阻害した。アセトアミノフェンと同様に、フェナセチンはCOX−3を優先的に阻害した。
別の鎮痛/解熱医薬ジピロンも、COX−1又はCOX−2より、COX−3を有意に一層強力に阻害した(図13、パネルD)。ジピロンは、COX−3をIC50値52μMで阻害しそしてCOX−1を6.6倍の濃度で阻害した。ジピロンによるCOX−2の検出可能な阻害は、1mMより低い濃度では観察されなかった。ジピロンは、水溶液中で自然に分解して、鎮痛/解熱剤として効力が異なる類縁構造の各種ピラゾール化合物になるプロドラッグである。アンチピリンとジメチルアミノピレンは、ジピロンの二つの分解生成物と類似していて、治療効力は著しく低くかつ同様に、COX−3を阻害する作用はジピロンに比べて顕著に低い(表1)。しかしこれらの化合物は、他の鎮痛/解熱剤と同様に、COX−3を優先的に阻害する。
またCOX−3は、NSAIDを選択することによって、阻害に対する感度が異なることが分かった。ジクロフェナクは、試験したCOX−3阻害剤のうち最も強力な阻害剤であり、そしてジクロフェナク、アスピリン及びイブプロフェンは、COX−1及びCOX−2より優先的にCOX−3を阻害した。これら医薬のIC50値は表に示してある(表1)。重要なのは、全結果が、COX−3はCOX−1とCOX−2の両者とは薬理学的に異なるCOX活性をもっていることを示していることである。
COX−3とPCOX−1aの両者はイントロンを所持して形成されている。我々は、ニワトリのCOX−2がCOX−3で見られるのと同様にイントロン−1保持によって制御されることを先に示した。スプライスされていないmRNAは大部分核内に保持されている。ニワトリのCOX−2の場合、イントロン−1の保持は、mRNAの翻訳と核外輸送を防止する。しかし、昆虫細胞のCOX−3とPCOX−1a両者のmRNAはイントロン−1を保持し、核から輸送され次いで翻訳される(図12)。COX−3とPCOX−1aから産生されるポリペプチドは、イントロン−1がコードする配列を含みそして十分にスプライスされたCOX−1とは機能が異なっている。したがって、イントロン−1の保持によって、新規なCOX酵素COX−3を細胞及び組織で産生できる機構が提供される。イントロン−1の保持がCOX−3及び/又は制御COX−1をつくる際に重要であるという概念は、イヌ、ヒト及びマウスのCOX−1遺伝子由来のイントロン−1のDNA配列が高い保存度(high degree of conservation)を示すという知見と一致している。このことは、イントロン−1の5’領域と中央領域で最も明らかである。全イントロン−1は、高度に保存されているイントロンの中央領域の配列5’−GCCTCNGGNGGAGCCTYGAAYGCYAG−3’(配列番号:44)を有する三つの種すべての間で41%の配列同一性を示す。実際に、イントロン−1は、これらの種に、エキソン1よりよく保存されており、これは、イントロン−1が哺乳類で重要かつ類似の役割を演じていることを示唆している。また、イントロン−1の高度に保存された要素は、その保持を制御する役割も演じている。さらに、イントロン−1がCOX−3の発現を制御するのに重要な役割を演じているという概念を支えているのは、COX−1とCOX−2の遺伝子の構造が、それらの中のイントロン−1の配置だけが異なっているという事実である。COX−1は、10個のイントロンをもっているがCOX−2は9個もっている。COX−1遺伝子中の追加イントロンはイントロン−1であり、そのイントロンはCOX−3に保持されている。
COX−3は、COX−1とCOX−2のすべての触媒としての特徴と重要な構造上の特徴を共有している。しかし、イントロン−1を、開始メチオニンから2個のアミノ酸だけ下流に挿入するとシグナルペプチドに30個のアミノ酸を追加することになる。COX−3は、シグナルペプチド及びイントロン−1がコードする配列を保持しているにもかかわらず、SDS−PAGEゲルにおいてCOX−1と同時に泳動する。またCOX−3は、グリコシル化されて、そのグリコシル化反応が活性を必要としている場合、小胞体に入るようである。昆虫細胞において、COX−3は、COX−1の活性の約20%の活性を示し、一方COX−1はCOX−2の活性の約20%を示す。COX−1、COX−2、COX−3及びPCOX−1aはすべて、我々のバキュロウィルス系で等しい発現を示し、そして昆虫細胞が活性COX−1を発現する性能がCOXを発現する性能と比べて低いのは、昆虫細胞が翻訳後にCOX−1を正しくプロセスすることができないためであろう。企画遠心分離法で行った細胞レベル以下の局在化の試験は、COX−3又はPCOX−1aが細胞質型でないことを示している。両タンパク質が膜に結合することは、両者が膜結合ドメインを保持しかつ小胞体の内腔に入るようであるという事実から予想される。イントロン−1の保持によって、折りたたみが変化することがありかつ二量体化と活性部位に影響することもある。これらの作用は、構造の変化又は変化したタンパク質のターゲッティングによって生じる。Cys313又はCys540のCOX−1部位特異的突然変異誘発は、両者ヘム鉄から25Aを超えて位置しているが、酵素の活性を80〜90%減少させることが観察されている。したがってCOX−3はすべてのCOX−1配列を含有しているが、保持されているイントロンの配列はその酵素特性を有意に変えることができる。COX−3に関するこの阻害性の試験は上記のことが事実であることを示している。
この試験は、COX−1変異体のCOX−3が、鎮痛/解熱医薬に対して感受性であるが抗炎症活性が低いことを示している。痛みと熱は、複雑な細胞経路と生化学的経路をとる多くの発痛因子をもっている。COX−3が鎮痛/解熱医薬に感受性であるという知見は、COX−1遺伝子が痛み及び/又は熱に不可欠の役割を演じていることを示唆している。生理的背景に応じて、痛みの経路はCOX−1遺伝子又はCOX−2遺伝子由来の産物を含んでいる。例えばCOX−2選択性医薬は、ヒトの炎症性疼痛を抑制するのに臨床面で有用であり、そしてげつ歯動物のいくつかの足炎症検定法の親炎症性薬剤(pro-inflammatory agent)(例えばカラゲナン)によって誘発される痛みを抑制する場合、COX−1選択性NSAIDより強力である。COX−1選択性医薬は、対照的に、各種の化学的な痛み刺激剤によって起こる内臓侵害受容(viscero nocicepion)を抑制する場合、COX−2選択性薬剤により優れている。さらに、Ballouら(Proc.Natl.Acad.Sci.USA97巻10272頁2000年)は、内臓侵害受容がCOX−1の場合大きく低下するがCOX−2ノックアウトマウスの場合低下しないことを見出した。一方、COX−1とCOX−2の両者は、ホルマリン試験や尿酸塩結晶試験などの腸の外側の痛覚消失を測定する侵害受容モデルに関連している。痛みにおけるCOX−1の役割は、さらにCOX−1選択性NSAID(例えばアスピリン、ケトロラク、ケトプロフェン、イブプロフェン及びスプロフェン)が臨床的に重要なヒトや動物の鎮痛剤であるという事実によって裏付けられている。これらの医薬は、脳から相対的に締め出されているにもかかわらず、脳内のCOX−3に作用するのに十分な濃度に到達できる。さらに、これら医薬の鎮痛作用は、炎症を抑制するのに必要な投与量より有意に低い投与量で起こることが多い。COX−1と痛みの臨床上及び実験での関連は、COX−1が、脊髄後根神経節の推定侵害受容ニューロン(putative
nociceptor neuron)の部分集団のマーカーであるという知見によって機能的に説明することができる。
発熱(pyresis)については、COX−2ノックアウトマウスはLPS−誘発熱及びインターロイキン誘発熱の低下を示すがCOX−1ノックアウトマウスは示さず、そしていくつかの新しいCOX−1選択性阻害剤例えばSC−560は、動物モデルのLPS誘発熱を抑制するのに効果がないことが分かった。COX−2選択性阻害剤のロフェコキシブ(rofecoxib)は、動物モデルで、臨床的に、自然発熱(naturally
occurring fever)を抑制し発熱の持続も抑制する。COX−1を優先的に阻害するアスピリンは、最も有効な解熱NSAIDであり、5〜15mg/kgの範囲内の投与量で発熱を抑制し、この投与量は炎症性疾病を治療するのに使用される60〜80mg/kgよりはるかに少ない。さらに、COX−2の優先的阻害剤のニメスリド(nimesulide)は、COX−1も阻害する血漿濃度でイヌだけを解熱することが分かった。したがって、発熱時のCOX−1に対する役割が存在している。
アセトアミノフェンの作用の機構は、分かっておらず、まだ確認されていない脳COXの阻害によると仮定されている。ノーザンブロット分析とcDNAのクローニングは、COX−3がイヌの脳内で発現されることを示している。また、COX−3は、ノーザンブロット試験(図10)から、ヒトの脳の特定の領域、特に大脳皮質で発現されるようである。さらに、昆虫細胞中に異所発現したCOX−3を使用する我々の試験は、COX−3が、アセトアミノフェンに対して、COX−1やCOX−2より有意に感受性であることを示している。定常状態のアセトアミノフェンの濃度が約100μMに到達し、かつ避難アラキドン酸の濃度が1−5μMである生理的条件下では、COX−3だけがかなり阻害されると予測される。これらの知見は、脳及び脊髄のCOX−3を阻害することが、永年にわたって探求されているアセトアミノフェンの目標であることを示唆している。
また、アセトアミノフェンがCOX−3を阻害する作用の提案されている機構は、ジピロン及び類縁化合物のアミノピリンとアンチピリンなどのピラゾロン医薬まで広がるようである。ジピロンは、強力な鎮痛/解熱医薬であり、アセトアミノフェンと同様に、抗炎症活性を欠いている。しかし、ジピロンは、構造はアセトアミノフェンと類縁の構造ではない。これらの構造が類似していない薬剤がCOX−3を優先的に阻害しかつそれらの治療効力がCOX−3を阻害するそれらの性能にのっとっているという知見は、COX−3が鎮痛解熱医薬の標的であることと一致している。IC50値は次のとおりである。すなわちジピロンは52μM、4−ジメチルアミノアンチピリンは688μMそしてアンチピリンは862μMである。ジピロンだけが、鎮痛/解熱医薬として治療するのに有効である。その活性分解生成物である4−メチルアミノアンチピリンは、血漿中と中枢神経系中それぞれの濃度は104μMと86μMに到達する。このように、COX−3の阻害は、アセトアミノフェンのみならずピララゾン(pyralazone)医薬の既知の生理学的濃度で起こる。さらに、COX−3の阻害は、他の系では要求されるグルタチオン、エピネフリンなどの外因的に添加される「コファクター」を添加することを必要としない。
鎮痛/解熱医薬は、標準NSAIDより高い濃度でCOX−3の活性を阻害する。治療の観点から、上記のことは、これらの医薬が血漿脳関門を十分に貫通してCOX−3を阻害するのに十分に高い濃度でCNS中に蓄積する事実によって合理的に説明することができる。アセトアミノフェンのような鎮痛/解熱医薬は、作用の中心機構を有していると永年にわたって仮定されてきた。一方、カルボキシレート含有NSAIDは、血液脳関門をわずかに横切りそして侵害受容器を敏感にするプロスタグランジンの合成を減らすことによって末梢の痛みを減らす明確な性能をもっている。また、COX−3によって行われている可能性がある脳又は脊髄におけるプロスタグランジンの合成を阻害することがNSAIDの鎮痛作用に寄与しているという、NSAIDの作用の中枢での鎮痛機構がいくつも提案されている。したがってNSAIDの身体における作用は、末梢での作用(COX−1、COX−2及びCOX−3)のみならず中枢での作用(COX−3)があるようである。CNSにおけるCOX−1変異体は鎮痛/解熱剤及び標準NSAIDの両者の本質的な標的である。
これらの試験における鎮痛/解熱剤とNSAIDによるCOX−3の阻害の比較(図13と表1)は、両タイプの医薬がCOX変異体の活性(例えばCOX−3)を調節できることを示唆している。表1は選択された鎮痛解熱医薬とNSAIDのIC50値を示す。COX−3に対する優先的阻害を示す関連阻害比COX−1/COX−3及びCOX−2/COX−3も示してある。検定はすべて30μMのアラキドン酸で実施した。表1中のアステリスクは次の表示を示す。*、4−ジメチルアミノアンチピリン;**、1mMで阻害は検出できなかった;***、適用できない比率。
COX−1、COX−2及びCOX−3を比較すると、COX−3はNSAIDに対する感度がCOX−1に最も類似しているが、COX−1又はCOX−2より、ジクロフェナク及びイブプロフェンなどの多くの医薬に対し有意に感受性が高くそしてサリチル酸ナトリウムのような他の医薬に対して感受性が低いことを示している。COX−3は、NSAIDによる阻害に対する感受性が高いので血液脳関門を横切る低濃度のNSAIDによってCNSにおいて優先的に阻害することができる。さらにCOX−3の鎮痛/解熱医薬とNSAIDに対する格差のある感受性は、COX−3に対して高度に選択性のインヒビターを製造できることを示唆している。
ヒトCOX−3は、主に約5.2KbのmRNAとして発現され発現の組織特異的パターンを有している(図10、パネルC)。この約5.2KbのmRNAは、二者択一的にポリアデニル化されたヒトCOX−1のメッセージであり、これは先に報告され、その3’領域が部分的に確認されたものである(5)。したがって、イントロン−1が保持されるとmRNAがポリアデニル化されるサイトに影響するようである。この知見は、そのmRNAの3’非翻訳領域が、COX−3及びおそらくはPCOX−1aを発現する際に機能的役割を演じることを示唆している。イントロンの保持と二者択一的なポリアデニル化を調和させる機能の意義と機構は解明する必要がある。また、前記約5.2KbのmRNAが制御可能であることが分かったので(36)生理的刺激やシグナルの伝達に応答して制御されるということは興味深いことである。実際に、COX−3mRNAのヒトやイヌの大脳皮質におけるレベルは比較的低い。このことは、例えば推定侵害受容ニューロンの副集団中のCOX−1免疫反応性タンパク質について示されている細胞型特異的発現が原因である(23)。しかし、ヒトのCOX−3は、公表されている配列のいくつかがイントロン−1と1個のヌクレオチドだけ異なっているのでアウトオブフレーム(out of frame)であるから、さらなる試験が必要である。これらは真性の多型性又は配列決定のエラーを形成するかもしれない。あるいはイントロン−1はヒトの場合、アウトオブフレームであり、機能性COX−3タンパク質を産生するためシフトするリボソームフレームなどの他の機構を必要とするかもしれない。
この試験によって、ヒト大動脈中の約65KDaのCOX−3タンパク質、及び約53KDaのPCOX−1aタンパク質を含む新規なCOX−1変異体が確認された。これらのタンパク質は、COX−3抗ペプチドポリクローナル抗体及びCOX−1モノクローナル抗体の両者によって検出され、COX−1の約25%レベルで存在しているようである。前記65KDaのタンパク質は、COX−1と同程度にグリコシル化されている場合に予想されるより小さいが、これは、ヒポグリコシル化又は他の差異が65KDaのタンパク質とCOX−1の間に存在していることを示唆している。前記53KDaのタンパク質は二量体(doublet)として存在していて、PCOX−1aタンパク質の一次配列で予想されるより大きい分子量のタンパク質である。このことは、昆虫細胞内で発現されるイヌPCOX−1aと同様に、上記ヒトタンパク質はグリコシル化されうること及び異なるグリコシル化状態が存在して、観察された前記ダブレットを生じることを示唆している。また50KDaのタンパク質がCOX−1モノクローナル抗体によってのみ検出され、PCOX−1bの候補物質である。これはCOX−1の約15%のレベルで存在しているようである。
PCOX−1aは、COX−3タンパク質の、エキソン5〜8に相当する触媒ドメイン中の219個のアミノ酸が欠失していることを除いてCOX−3と同一である。PCOX−1aは、アラキドン酸からプロスタグランジン類をつくることができないことによって分かるように、検出可能なシクロオキシゲナーゼ活性を欠いている。その欠失部分は、COX−1とCOX−2に形成されている構造へリックスHE、H1、H2、H3、H5及びH6の一部を含んでいる。これらへリックスのうちのH2とH5は、コアペルオキシダーゼの触媒部位の一部を形成している。PCOX−1は、H2とH5を欠いているので検出可能なペルオキシタダーゼ活性を欠いている可能性が大きい。このように、PCOX−1は、ペルオキシダーゼ活性を欠いている植物のPIOX酵素類及びギューマノミセス・グラミニス(Gaeumannomyces graminis)のリノレエートジオールシンターゼ(LDS)に類似している。しかしこれらの酵素は、機構がシクロオキシゲナーゼのオキシゲナーゼ活性に類似している脂肪酸オキシゲナーゼの活性を有し、COX−1とCOX−2に見られるのと類似の配列を含有している。図14は、PIOX類とLDSを有するCOX−1とCOX−2の共通配列由来のH2、H5及びH8(Tyr385と近似ヒスチジンを含有するへリックス)のアラインメントを示す。
シクロオキシゲナーゼのペルオキシダーゼ活性は、シクロオキシゲナーゼの反応に使用されるタンパク質ラジカルをつくる必要があるが、連続するペルオキシダーゼ活性は連続するシクロオキシゲナーゼ活性に対して不可欠なものではない。シクロオキシゲナーゼは、一回のペルオキシダーゼ反応によって活性化された後、基質の酵素化反応を触媒し続けることができる。というのはチロシンラジカルが各酵素化反応の後、再生されるからである。また、シクロオキシゲナーゼに対するこの活性化機構はPIOX類とLDSによって働くようである。シクロオキシゲナーゼの活性部位のチロシンと近似ヒスチジンはPIOX類とLDS内に保存されている。これらの酵素は、シクロオキシゲナーゼと類似していることから、COXに類似した反応機構をもっていると考えられる。したがって、これらの酵素類は、検出できないけれどもシクロオキシゲナーゼ類を活性化してオキシゲナーゼ活性を生成するのに十分な低レベルのペルオキシダーゼ活性を保持しているようである。
COX−1とCOX−2にシクロオキシゲナーゼ活性を得るためにペルオキシダーゼ活性部位の代謝回転(turnover)は一回しか必要でないので、PCOX−1タンパク質中に、それらタンパク質を活性化するのに十分な残留ペルオキシダーゼ活性がある。しかし、我々はPCOX−1aがシクロオキシゲナーゼ活性をもっていないことを示した。PIOX類との比較に基づいて、PCOX−1タンパク質が、PIOX類の脂質オキシゲナーゼ活性に類似の脂質オキシゲナーゼ活性を保持している可能性がある。PCOX−1タンパク質の基質が何であるか確認するにはさらなる試験が必要である。
PCOX−1aとPCOX−1bは、その触媒ドメインのかような大きい部分を欠いているので、触媒として活性にするため他のタンパク質と結合させることを必要とすることがある。我々は、シクロオキシゲナーゼ類がヌクレオビンディン(nucleo bindin)に結合することを以前に発見している(Ballifの1996年の論文)。ヌクレオビンディンもPCOX−1タンパク質に結合する候補物質である。さらに、培養内皮細胞のフィラメント状構造体中に、一形態のCOX−1が、プロスタサイクリンシンターゼとともに共存していることが述べられている。このフィラメント状形態のCOX−1はシクロオキシゲナーゼ活性を全くもっておらず、PCOX−1タンパク質の候補物質である。
ヒトCOX−3は、主として約5.2KbのmRNAとして発現されて組織特異的パターンの発現を行う(図10、パネルC)。この約5.2KbのmRNAは二者択一的にポリアデニル化されるヒトCOX−1メッセージであり、その3’領域の特徴が一部分明らかになっている。本明細書に提供されるデータは、イントロン−1の保持がmRNAがポリアデニル化される部位に影響することを示している。イントロンの保持と二者択一的なポリアデニル化が整合される機能の意義及び機構は解明する必要がある。上記約5.2KbのmRNAは、生理的刺激とシグナルの伝達に応答して、誘発されることが分かっておりかつ制御されることは興味深い。実際に、ヒトとイヌの大脳皮質内のCOX−3mRNAのレベルは比較的低く、これは細胞型変異的発現は特定のシグナルを必要とするためであろう。しかしヒトのCOX−3は、公表されている配列のいくつかが、イントロン−1内の一つのヌクレオチドが異なっていてアウトオブフレームなのでさらに実験する必要がある。これらは真性の多型性又は配列決定のエラーを構成している。あるいは、イントロン−1は、ヒトではアウトオブフレームであって、機能性COX−3タンパク質を産生するためシフトするリボソームフレームなどの他の機構を必要とするかもしれない。イントロン−1の保持が二者択一的ポリアデニル化と同等に連携しているという知見は、前記mRNAの3’非翻訳領域が発現する際の機能的役割を演じることができることを示唆している。
本発明の多数の実施態様を説明してきたが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく各種の変形を行うことができると解される。
既知のCOX−2配列のアラインメントを示す。「Guinea」はモルモットを意味し、「Rainbow」はニジマスを意味しそして「Brook」はカワマスを意味する。アステリスク(*)が、ジスルフィド結合に関与していることが分かっているシステイン残基の上に配置され、そして配列中のギャップはダッシュ(−)で表してある。これらのアラインメント中のすべての番号付けは羊の配列を基準として使用している。ドメインを示してある。
既知のCOX−2配列のアラインメントを示す。「Guinea」はモルモットを意味し、「Rainbow」はニジマスを意味しそして「Brook」はカワマスを意味する。アステリスク(*)が、ジスルフィド結合に関与していることが分かっているシステイン残基の上に配置され、そして配列中のギャップはダッシュ(−)で表してある。これらのアラインメント中のすべての番号付けは羊の配列を基準として使用している。ドメインを示してある。
既知のCOX−2配列のアラインメントを示す。「Guinea」はモルモットを意味し、「Rainbow」はニジマスを意味しそして「Brook」はカワマスを意味する。アステリスク(*)が、ジスルフィド結合に関与していることが分かっているシステイン残基の上に配置され、そして配列中のギャップはダッシュ(−)で表してある。これらのアラインメント中のすべての番号付けは羊の配列を基準として使用している。ドメインを示してある。
既知のCOX−1アミノ酸配列のアラインメントであって、ヒトのもの(配列番号:22)、羊のもの(配列番号:23)、イヌのもの(配列番号:24)、ウシのもの(配列番号:25)、ウマのもの(配列番号:26)、ウサギのもの(配列番号:27)、モルモットのもの(配列番号:28)、マウスのもの(配列番号:29)、ラットのもの(配列番号:30)、ミンクのもの(配列番号:30)、ニワトリのもの(配列番号:31)、ニジマスのもの(配列番号:32)及びカワマスのもの(配列番号:33)を示す。アステリスク、ダッシュ及びアラインメントは図1Aに示したのと同じである。ドメインを示してある。
既知のCOX−1アミノ酸配列のアラインメントであって、ヒトのもの(配列番号:22)、羊のもの(配列番号:23)、イヌのもの(配列番号:24)、ウシのもの(配列番号:25)、ウマのもの(配列番号:26)、ウサギのもの(配列番号:27)、モルモットのもの(配列番号:28)、マウスのもの(配列番号:29)、ラットのもの(配列番号:30)、ミンクのもの(配列番号:30)、ニワトリのもの(配列番号:31)、ニジマスのもの(配列番号:32)及びカワマスのもの(配列番号:33)を示す。アステリスク、ダッシュ及びアラインメントは図1Aに示したのと同じである。ドメインを示してある。
既知のCOX−1アミノ酸配列のアラインメントであって、ヒトのもの(配列番号:22)、羊のもの(配列番号:23)、イヌのもの(配列番号:24)、ウシのもの(配列番号:25)、ウマのもの(配列番号:26)、ウサギのもの(配列番号:27)、モルモットのもの(配列番号:28)、マウスのもの(配列番号:29)、ラットのもの(配列番号:30)、ミンクのもの(配列番号:30)、ニワトリのもの(配列番号:31)、ニジマスのもの(配列番号:32)及びカワマスのもの(配列番号:33)を示す。アステリスク、ダッシュ及びアラインメントは図1Aに示したのと同じである。ドメインを示してある。
二つの種のサンゴであるゲルセミア・フルチコサ(Gersemia fruticosa)(配列番号:36)とプレクサウラ・ホモマラ(Plexaura homomalla)(配列番号:37)の配列を含有するCOX−1(配列番号:34)とCOX−2(配列番号:35)の共通アミノ酸配列のアラインメントを示す。ピリオドは、明確な共通性(50以上%の共通性)がみられない残基を示す。
二つの種のサンゴであるゲルセミア・フルチコサ(Gersemia fruticosa)(配列番号:36)とプレクサウラ・ホモマラ(Plexaura homomalla)(配列番号:37)の配列を含有するCOX−1(配列番号:34)とCOX−2(配列番号:35)の共通アミノ酸配列のアラインメントを示す。ピリオドは、明確な共通性(50以上%の共通性)がみられない残基を示す。
米(コメ)(配列番号:38)、エイ.サリアナ(A. Thaliana)(配列番号:39)及びタバコ(配列番号:40)から単離された3種の植物のPIOXを含有する共通シクロオキシゲナーゼ配列の一次配列アラインメントを示す。シクロオキシゲナーゼに対するドメインを示してある。ピリオドは共通性のない残基(その残基の共通性が既知配列の50%未満である)を示す。シグナルペプチド、EGF様ドメイン、結合ドメイン及び二量体化ドメインはPIOX配列には存在しない。さらに、遠位ヒスチジンはPIOX配列には存在しない。「REHN」配列はシクロオキシゲナーゼのペルオキシダーゼ触媒ドメインの一部であり、すべての既知シクロオキシゲナーゼ類に絶対保存されている9個のアミノ酸のストレッチを表す。この配列はPIOX中に縮重されている。活性部位チロシンと近位ヒスチジンヘムリガンドはすべてのPIOX配列中に保存されている。
米(コメ)(配列番号:38)、エイ.サリアナ(A. Thaliana)(配列番号:39)及びタバコ(配列番号:40)から単離された3種の植物のPIOXを含有する共通シクロオキシゲナーゼ配列の一次配列アラインメントを示す。シクロオキシゲナーゼに対するドメインを示してある。ピリオドは共通性のない残基(その残基の共通性が既知配列の50%未満である)を示す。シグナルペプチド、EGF様ドメイン、結合ドメイン及び二量体化ドメインはPIOX配列には存在しない。さらに、遠位ヒスチジンはPIOX配列には存在しない。「REHN」配列はシクロオキシゲナーゼのペルオキシダーゼ触媒ドメインの一部であり、すべての既知シクロオキシゲナーゼ類に絶対保存されている9個のアミノ酸のストレッチを表す。この配列はPIOX中に縮重されている。活性部位チロシンと近位ヒスチジンヘムリガンドはすべてのPIOX配列中に保存されている。
COXとPIOXに保存されているTyr385−アミノ酸残基の重要な役割を示すCOX酵素によるアラキドン酸の活性化を示す。ステップ1:アラキドン酸イオンが、広げられたL字形でCOX活性部位に配位され、そのカルボキシル基がARG120とTYR355によって配位されている。炭素13からプローS水素がTyr385によって引き抜かれてアラキドニルラジカルが形成される。ステップ2:チャネルの口を通じてCOX活性部位中に拡散したと推測される酸素が、エンドペルオキシルのシクロペンタンリングを形成するアラキドニル残基を攻撃する。ステップ3:前記エンドペルオキシルラジカルは、炭素15における第二の酸素分子によって攻撃される。ステップ4:Tyr385はその水素を供与してPGG2を形成してTyr385にそのラジカルを再生する。
COXとPIOXに保存されているTyr385−アミノ酸残基の重要な役割を示すCOX酵素によるアラキドン酸の活性化を示す。ステップ1:アラキドン酸イオンが、広げられたL字形でCOX活性部位に配位され、そのカルボキシル基がARG120とTYR355によって配位されている。炭素13からプローS水素がTyr385によって引き抜かれてアラキドニルラジカルが形成される。ステップ2:チャネルの口を通じてCOX活性部位中に拡散したと推測される酸素が、エンドペルオキシルのシクロペンタンリングを形成するアラキドニル残基を攻撃する。ステップ3:前記エンドペルオキシルラジカルは、炭素15における第二の酸素分子によって攻撃される。ステップ4:Tyr385はその水素を供与してPGG2を形成してTyr385にそのラジカルを再生する。
COXとPIOXに保存されているTyr385−アミノ酸残基の重要な役割を示すCOX酵素によるアラキドン酸の活性化を示す。ステップ1:アラキドン酸イオンが、広げられたL字形でCOX活性部位に配位され、そのカルボキシル基がARG120とTYR355によって配位されている。炭素13からプローS水素がTyr385によって引き抜かれてアラキドニルラジカルが形成される。ステップ2:チャネルの口を通じてCOX活性部位中に拡散したと推測される酸素が、エンドペルオキシルのシクロペンタンリングを形成するアラキドニル残基を攻撃する。ステップ3:前記エンドペルオキシルラジカルは、炭素15における第二の酸素分子によって攻撃される。ステップ4:Tyr385はその水素を供与してPGG2を形成してTyr385にそのラジカルを再生する。
COXとPIOXに保存されているTyr385−アミノ酸残基の重要な役割を示すCOX酵素によるアラキドン酸の活性化を示す。ステップ1:アラキドン酸イオンが、広げられたL字形でCOX活性部位に配位され、そのカルボキシル基がARG120とTYR355によって配位されている。炭素13からプローS水素がTyr385によって引き抜かれてアラキドニルラジカルが形成される。ステップ2:チャネルの口を通じてCOX活性部位中に拡散したと推測される酸素が、エンドペルオキシルのシクロペンタンリングを形成するアラキドニル残基を攻撃する。ステップ3:前記エンドペルオキシルラジカルは、炭素15における第二の酸素分子によって攻撃される。ステップ4:Tyr385はその水素を供与してPGG2を形成してTyr385にそのラジカルを再生する。
COX類とPIOX類に保存されているTyr385−アミノ酸残基の活性化に関与する触媒回路の線図を示す。内因性の酸化体がペルオキシダーゼ活性部位に結合して、第二鉄ヘムを酸化しフェリル−オキソ−ポルフィリンラジカルを生成させ、次に、このラジカルが水素をTyr385から引き抜いてチロシルラジカルを生成させる。前記ペルオキシダーゼを活性化するのに、その酸素における酸化事象が1回しか必要でない。というのはTyr385ラジカルが各シクロオキシゲナーゼ回路で再生されるからである。
パネルAは、イヌ組織におけるCOX−1の分布のノーザンブロット分析結果を示す。矢印は脳組織における追加のCOX−1転写産物を示す。S=胃;d=十二指腸;i=回腸;j=空腸;c=結腸;l=肝臓;s=脾臓;b=脳;lu=肺臓;o=卵巣;k=腎臓;m=MDKC細胞(ind)。上記ブロットを、32P標識化イヌCOX−1DNA(比活性8.8×108cpm/μg,6×106cpm/ml)とハイブリッドを形成させた。ハイブリッド形成を行った後、約65℃にて、2×SSC/0.5%SDS内で、3〜4回変えて使って3hr洗浄を行った。
パネルBは、ニワトリ組織中のCOX−1の分布のノーザンブロット分析の結果を示す。矢印は脳組織内の追加のCOX−1転写産物を示す。v=精のう;p=膵臓;t=精巣;h=心臓;ly=滑液リンパ。このブロットは図5パネルAで述べたようにしてハイブリッドを形成させた。
パネルCは、PCOX−1(すなわちCOX−3)及びPCOX−1Δ657(すなわちPCOX1a)のRNAのノーザンブロット分析の結果を示す。
イヌのCOX−1、PCOX−1(すなわちCOX−3)及びPCOX−1Δ657(すなわちPCOX1a)の核酸配列アラインメント並びに共通配列を示す。
イヌのCOX−1、PCOX−1(すなわちCOX−3)及びPCOX−1Δ657(すなわちPCOX1a)の核酸配列アラインメント並びに共通配列を示す。
イヌのCOX−1、PCOX−1(すなわちCOX−3)及びPCOX−1Δ657(すなわちPCOX1a)の核酸配列アラインメント並びに共通配列を示す。
イヌのCOX−1、PCOX−1(すなわちCOX−3)及びPCOX−1Δ657(すなわちPCOX1a)の核酸配列アラインメント並びに共通配列を示す。
イヌのCOX−1、PCOX−1(すなわちCOX−3)及びPCOX−1Δ657(すなわちPCOX1a)の核酸配列アラインメント並びに共通配列を示す。
共通配列と比較して示したイヌのCOX−1、PCOX−1(すなわちCOX−3)及びPCOX−1Δ657(すなわちPCOX1a)の予想アミノ酸配列を示す。
イヌ(配列番号:43)と比較して示したヒト(配列番号:41)及びマウス(配列番号:42)のイントロン−1の構造の分析結果を示す。ヒトとマウスの配列は、イヌの配列と大きさが類似しているイントロン−1を含有し、保持されると、タンパク質をコードするシグナルペプチド中へのインフレーム挿入体を提供する。
イヌのCOX−1の第一イントロン内から設計した32P末端標識化オリゴ(50量体)でプローブしたイヌ全RNA(25μg)のノーザンブロット分析結果を示す。そのブロットはTm−4の最終ストリンジェンシー(final stringency)(Tm=計算溶融温度)で洗浄した。S=胃;D=十二指腸;I=回腸;J=空腸;C=結腸;L=肝臓;Sp=脾臓;Bm=脳(大脳皮質)−mRNA(2.5μg);Bt=脳(大脳皮質)−全RNA;Lu=肺臓;O=卵巣;K=腎臓;Cl=CCl34細胞。パネルA、B及びCで検出された5.2KbのmRNAは図8に矢印で示してある。
COX−3のヌクレオチドコーディング配列を示す。
COX−3のヌクレオチドコーディング配列を示す。
COX−3ポリペプチドのアミノ酸配列を示す。
COX−3転写産物のcDNA配列を示す。
COX−3転写産物のcDNA配列を示す。
PCOX−1aのヌクレオチドコーディング配列を示す。
PCOX−1aポリペプチドのアミノ酸配列を示す。
PCOX−1b転写産物のcDNA配列を示す。
PCOX−1b転写産物のcDNA配列を示す。
パネルAは、1)32P標識化イヌCOX−1cDNAフラグメント、2)32P標識化したイヌのイントロン−1に対してアンチセンスのオリゴヌクレオチド(CCI)でプローブしたイヌ大脳皮質ポリ(A)RNA(レーン1、5.0μg;レーン2、2.5μg)のノーザンブロット分析結果とRT−PCRを示す。
パネルBは、イヌの大脳皮質内のPCOX−1のPCR増幅を示す。レーン1:イントロン−1を含有するPCOX−1a(上方バンド)及びイントロン−1を欠いたPCOX−1b(下方バンド)に対応する増幅産物の臭化エチジウム染色ゲル;レーン2:イントロン−1に対しアンチセンスのオリゴヌクレオチド(CCI)でプローブした増幅産物のサザーンブロット;及びレーン3:COX−3cDNAをプローブとして使用したサザーンプロット。
パネルCは、イントロン−1に対してアンチセンスの、32Pで標識したヒトオリゴヌクレオチド(HCI)でプローブしたヒトのMultiple Tissue Northern blot(MTNR)を示す。約5.2KbのmRNAが、ブロット1−3(成人組織)及び4(胎児組織)に検出された。略語:Am=扁桃;B=脳;C=小脳;Cc=大脳皮質;Fl=前頭葉;H=海馬;Ht=心臓;K=腎臓;L=肺臓;Li=肝臓;M=骨格筋;Md=髄;N=尾状核;Op=後頭極;P=胎盤;Pn=膵臓;Pu=被殻;Sc=脊髄;T=視床;Tl=側頭葉;X=脳梁。
COX−1と比較したCOX−3とPCOX−1のドメインの模式図である。略語:S=シグナルペプチド;d1=二量体化ドメイン/EGF様ドメイン1;d2=二量体化ドメイン2;m=膜結合ドメイン;c=触媒ドメイン;i=イントロン−1がコードしている90bpの配列。
ツニカマイシンで処理した(+)及び処理していない(−)昆虫細胞中でのCOX−3、PCOX−1a及びCOX−1の発現を示すウェスタンブロットを示す(頂部パネル)。矢印はツニカマイシンで処理された細胞内には存在していないグリコシル化された形態のCOX−1を示す。ヒトとマウスのCOX−1イントロン−1配列に対するポリクローナル抗体を使ってCOX−3とPCOX−1aのブロットをプローブし、一方、羊のCOX−1に対するモノクローナル抗体(Cayman)を使ってマウスCOX−1のブロットをプローブした。COX−3、PCOX−1a及びCOX−1を発現する昆虫細胞中のCOX活性。細胞はツニカマイシンで処理したもの(+)と処理したものがある(底部パネル)。
昆虫細胞におけるCOX−1(◆)、COX−2(●)及びCOX−3(■)の活性に対するアセトアミノフェン(パネルAとパネルB)、フェナセチン(パネルC)及びジピロン(パネルD)の作用を示す医薬阻害試験の線グラフを示す。COX活性は、外因性アラキドン酸[5μM(A)又は30μM(B、C、D)]に10分間曝露した後のPGF2の生成によって測定した。データは平均値±SEM(n=6〜9)で表してある。
昆虫細胞におけるCOX−1(◆)、COX−2(●)及びCOX−3(■)の活性に対するアセトアミノフェン(パネルAとパネルB)、フェナセチン(パネルC)及びジピロン(パネルD)の作用を示す医薬阻害試験の線グラフを示す。COX活性は、外因性アラキドン酸[5μM(A)又は30μM(B、C、D)]に10分間曝露した後のPGF2の生成によって測定した。データは平均値±SEM(n=6〜9)で表してある。
昆虫細胞におけるCOX−1(◆)、COX−2(●)及びCOX−3(■)の活性に対するアセトアミノフェン(パネルAとパネルB)、フェナセチン(パネルC)及びジピロン(パネルD)の作用を示す医薬阻害試験の線グラフを示す。COX活性は、外因性アラキドン酸[5μM(A)又は30μM(B、C、D)]に10分間曝露した後のPGF2の生成によって測定した。データは平均値±SEM(n=6〜9)で表してある。
昆虫細胞におけるCOX−1(◆)、COX−2(●)及びCOX−3(■)の活性に対するアセトアミノフェン(パネルAとパネルB)、フェナセチン(パネルC)及びジピロン(パネルD)の作用を示す医薬阻害試験の線グラフを示す。COX活性は、外因性アラキドン酸[5μM(A)又は30μM(B、C、D)]に10分間曝露した後のPGF2の生成によって測定した。データは平均値±SEM(n=6〜9)で表してある。
植物のPIOXとLDSを有する構造ヘリックスH2、H5及びH8に相当するCOX−1、COX−2及びサンゴCOX(coral COX)の共通配列のアラインメントを示す。上記PIOXは、オリザ・サチバ(Oryza Sativa)(米)、アラビドプシス・サリアナ(Arabidopsisthaliana)(シロイヌナズナ)及びニコチアナ・タバクム(Nicotiana tabacum)(タバコ)由来のものである。ゲウマンノマイセス・グラミニス(Gaeumannomycesgraminis)リノレエートジオールシンターゼ(LDS)も整列化した。共通配列は、>50%相同の場合は小文字で示し、100%相同の場合は大文字で示してある。ピリオドは<50%相同であることを示す。
パネルAは、COX−1抗体及びCOX−3抗体でプローブしたヒト大動脈溶解産物のウェスタンブロットを示す。このブロット(レーン3〜8、各レーンの全大動脈溶解産物は20μg)は、表示されているように一次抗体、二次抗体又はブロックされた抗体でプローブした。黒の太い水平矢印は65KDaのタンパク質を示し、白の太い矢印は53KDaのタンパク質を示し、そして斜め上方に向いた黒矢印は50KDaのタンパク質を示す。シングルアステリスク(*)は未グリコシル化イヌCOX−3を示しそしてダブルアステリスク(**)は未グリコシル化イヌPCOX−1aを示す。
パネルBは、65、53及び50KDaのタンパク質のデンシトメーターによる分析結果を示す。パーセントリラティブデンシトメトリックユニット(percent relative densitometric unit)(%rdu)を、ブロックされていない一次抗体由来のシグナルと比較することによって計算した。上記50KDaのタンパク質はブロックされていないCOX−3PAb又はブロックされたCOX−3PAbによって検出されていない(n/d)。
hCOX−3(cc)、hCOX−3(af)及びhCOX−3(del10)のcDNAを比較した結果を示し、hCOX−3(af)、hCOX−3(cc)及びhCOX−3(del10)の共通配列であるhCOX−3(cs)共通配列(配列番号:13)を提示する。
hCOX−3(cc)、hCOX−3(af)及びhCOX−3(del10)のcDNAを比較した結果を示し、hCOX−3(af)、hCOX−3(cc)及びhCOX−3(del10)の共通配列であるhCOX−3(cs)共通配列(配列番号:13)を提示する。
hCOX−3(cc)、hCOX−3(af)及びhCOX−3(del10)のcDNAを比較した結果を示し、hCOX−3(af)、hCOX−3(cc)及びhCOX−3(del10)の共通配列であるhCOX−3(cs)共通配列(配列番号:13)を提示する。
hCOX−3(cc)、hCOX−3(af)及びhCOX−3(del10)のcDNAを比較した結果を示し、hCOX−3(af)、hCOX−3(cc)及びhCOX−3(del10)の共通配列であるhCOX−3(cs)共通配列(配列番号:13)を提示する。
hCOX−3(cc)転写産物のcDNA配列(配列番号:10)を示す。
hCOX−3(cc)転写産物のcDNA配列(配列番号:10)を示す。
hCOX−3(af)転写産物のcDNA配列(配列番号:11)を示す。
hCOX−3(af)転写産物のcDNA配列(配列番号:11)を示す。
hCOX−3(del10)転写産物のcDNA配列(配列番号:12)を示す。
hCOX−3(del10)転写産物のcDNA配列(配列番号:12)を示す。
hCOX−3(cs)(配列番号:13)の異なる読取り枠に対する共通アミノ酸配列(配列番号:14、配列番号:15及び配列番号:16)を示す。
hCOX−3(cs)(配列番号:13)の異なる読取り枠に対する共通アミノ酸配列(配列番号:14、配列番号:15及び配列番号:16)を示す。
hCOX−3(cs)(配列番号:13)の異なる読取り枠に対する共通アミノ酸配列(配列番号:14、配列番号:15及び配列番号:16)を示す。
hCOX−3(cs)(配列番号:13)の異なる読取り枠に対する共通アミノ酸配列(配列番号:14、配列番号:15及び配列番号:16)を示す。
hCOX−3(cs)(配列番号:13)の異なる読取り枠に対する共通アミノ酸配列(配列番号:14、配列番号:15及び配列番号:16)を示す。
hCOX−3(cs)(配列番号:13)の異なる読取り枠に対する共通アミノ酸配列(配列番号:14、配列番号:15及び配列番号:16)を示す。 なお、上記各種図面の同じ参照記号は同じ要素を示す。