JP2005532355A - ステルス脂質ナノカプセル、その製造方法、およびその、活性要素用キャリヤーとしての使用 - Google Patents

ステルス脂質ナノカプセル、その製造方法、およびその、活性要素用キャリヤーとしての使用 Download PDF

Info

Publication number
JP2005532355A
JP2005532355A JP2004510937A JP2004510937A JP2005532355A JP 2005532355 A JP2005532355 A JP 2005532355A JP 2004510937 A JP2004510937 A JP 2004510937A JP 2004510937 A JP2004510937 A JP 2004510937A JP 2005532355 A JP2005532355 A JP 2005532355A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
lipid
nanocapsules
nanocapsule
stealth
peg
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2004510937A
Other languages
English (en)
Inventor
ディディエ、オアロー
パスカル、デルマ
ジャン‐クリストフ、ルロー
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Ethypharm SAS
Original Assignee
Ethypharm SAS
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Priority claimed from FR0207175A external-priority patent/FR2840532B1/fr
Application filed by Ethypharm SAS filed Critical Ethypharm SAS
Publication of JP2005532355A publication Critical patent/JP2005532355A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K9/00Medicinal preparations characterised by special physical form
    • A61K9/48Preparations in capsules, e.g. of gelatin, of chocolate
    • A61K9/50Microcapsules having a gas, liquid or semi-solid filling; Solid microparticles or pellets surrounded by a distinct coating layer, e.g. coated microspheres, coated drug crystals
    • A61K9/51Nanocapsules; Nanoparticles
    • A61K9/5107Excipients; Inactive ingredients
    • A61K9/5123Organic compounds, e.g. fats, sugars
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K9/00Medicinal preparations characterised by special physical form
    • A61K9/0012Galenical forms characterised by the site of application
    • A61K9/0019Injectable compositions; Intramuscular, intravenous, arterial, subcutaneous administration; Compositions to be administered through the skin in an invasive manner
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K9/00Medicinal preparations characterised by special physical form
    • A61K9/48Preparations in capsules, e.g. of gelatin, of chocolate
    • A61K9/50Microcapsules having a gas, liquid or semi-solid filling; Solid microparticles or pellets surrounded by a distinct coating layer, e.g. coated microspheres, coated drug crystals
    • A61K9/51Nanocapsules; Nanoparticles
    • A61K9/5107Excipients; Inactive ingredients
    • A61K9/513Organic macromolecular compounds; Dendrimers
    • A61K9/5146Organic macromolecular compounds; Dendrimers obtained otherwise than by reactions only involving carbon-to-carbon unsaturated bonds, e.g. polyethylene glycol, polyamines, polyanhydrides
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K9/00Medicinal preparations characterised by special physical form
    • A61K9/48Preparations in capsules, e.g. of gelatin, of chocolate
    • A61K9/50Microcapsules having a gas, liquid or semi-solid filling; Solid microparticles or pellets surrounded by a distinct coating layer, e.g. coated microspheres, coated drug crystals
    • A61K9/51Nanocapsules; Nanoparticles
    • A61K9/5192Processes
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P29/00Non-central analgesic, antipyretic or antiinflammatory agents, e.g. antirheumatic agents; Non-steroidal antiinflammatory drugs [NSAID]
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P31/00Antiinfectives, i.e. antibiotics, antiseptics, chemotherapeutics
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P35/00Antineoplastic agents
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K47/00Medicinal preparations characterised by the non-active ingredients used, e.g. carriers or inert additives; Targeting or modifying agents chemically bound to the active ingredient
    • A61K47/06Organic compounds, e.g. natural or synthetic hydrocarbons, polyolefins, mineral oil, petrolatum or ozokerite
    • A61K47/08Organic compounds, e.g. natural or synthetic hydrocarbons, polyolefins, mineral oil, petrolatum or ozokerite containing oxygen, e.g. ethers, acetals, ketones, quinones, aldehydes, peroxides
    • A61K47/10Alcohols; Phenols; Salts thereof, e.g. glycerol; Polyethylene glycols [PEG]; Poloxamers; PEG/POE alkyl ethers

Abstract

ステルス脂質ナノカプセル、その製造方法、およびその、活性要素用キャリヤーとしての使用。本発明は、周囲温度で液体または半液体である実質的に脂質のコア、および外側の、本来脂質である少なくとも一種の親水性界面活性剤、本来脂質である少なくとも一種の親油性界面活性剤、および少なくとも一種の両親媒性ポリ(エチレングリコール)誘導体を含んでなる脂質外被からなり、ポリ(エチレングリコール)成分の分子量が1000g/モル以上、好ましくは2000g/モル以上である、ステルス脂質ナノカプセル、それらの製造方法、およびそれらの、活性要素用のキャリヤーとしての使用に関する。

Description

本発明の課題は、ナノカプセルに関し、該ナノカプセルは、活性要素用のキャリヤーとして、充実性腫瘍または循環癌性腫瘍の処置に使用でき、溶液中の遊離薬物と比較して毒性が低く、該ナノカプセルを投与するホストの免疫系に対してステルス特性を示し、腫瘍中に浸出できるのみならず、その内容物を放出することもできる。本発明のこの新規なキャリヤーは、ポリ(エチレングリコール)分子と会合したリン脂質分子を表面に有する脂質ナノカプセルの注射可能なコロイド状懸濁液の形態にあるのが有利である。
本発明は、これらのステルス脂質ナノカプセルの製造方法に、特にポリ(エチレングリコール)基を有する該分子を、予め形成されたナノカプセルの脂質外被中に挿入する方法にも関する。最後に、本発明は、そのようなキャリヤーの、血液を経由して活性要素を送達するための、特にヒトにおける充実性または循環癌性腫瘍を処置するための使用に関するが、炎症または他の、血管透過性の増加が観察される病理学的状態(炎症区域、感染箇所)を処置するための使用にも関する。
本発明は、本発明のナノカプセルを含んでなる様々な薬学的医薬組成物にも関する。
先ず、用語「キャリヤー」は、それを投与した生物中で、分子、特に活性要素、例えば医薬品、の輸送および送達を可能にするすべての化学的存在を意味する。
さらに、用語「コロイド状」は、大きさが1マイクロメートル未満の固体物質の安定した液相中分散液を意味する。
本発明のキャリヤーを説明するのに使用する用語「ステルス」は、ナノカプセルの、それらを投与したホストの免疫系により、検出されず、次いで、封鎖(sequestered)および/または分解されないか、またはほとんど検出されず、次いで、封鎖および/または分解されない、および/または後になってから検出され、次いで、封鎖および/または分解される能力を意味する。
用語「浸出」は、ある物体が血液成分から退出することを意味する。この退出は、細孔または「穿孔」を通して、毛細血管の軸に対して接線方向に行われる。この現象は、毛細管が穿孔されている特定の臓器、例えば腎臓または肝臓、において、および特に、血管の透過性が増加している脳外充実性腫瘍および炎症を起こした、または感染した組織においてのみ観察される。
用語「ナノカプセル」は、周囲温度で多少なりとも剛性である円形の壁、および中央の区画またはコア(本発明の場合、脂肪状物質を含む)を含んでなる、直径300nm未満の球を意味する。
用語「両親媒性」は、本来疎水性である物質に対して親和力を有する基、および本来親水性である物質に対して親和力を有する基を有する分子を説明するのに使用される。
最後に、「モル%」は、モル百分率を表し、用語「活性要素」は、薬学的に活性な要素を意味する。
本発明の課題であるステルス脂質ナノカプセルは、周囲温度で液体または半液体である実質的に脂質のコア、および外側の、本来脂質である少なくとも一種の親水性界面活性剤、本来脂質である少なくとも一種の親油性界面活性剤、および少なくとも一種の両親媒性ポリ(エチレングリコール)(PEG)誘導体を含んでなる脂質外被からなり、ポリ(エチレングリコール)成分の分子量は1000g/モル以上、好ましくは2000g/モル以上である。
「ポリエチレングリコール化された(pegylated)」両親媒性誘導体が、ナノカプセルにステルス特徴を与えるのに貢献する。ナノカプセルのコアは、有利なことに、溶解した、または分散した形態にある多くの分子、より詳しくは、本来親油性である活性要素、例えば抗癌剤、を取り入れ、輸送することができる。従って、本発明のナノカプセルは、抗癌性医薬品を血液系中で、より詳しくは、腫瘍と境界を接する空隙媒体中で、長時間にわたって運ぶことができる。その上、本発明のナノカプセルは、血液循環時間が十分に長く、循環性腫瘍細胞と相互作用し、充実性腫瘍における浸出を増大させることができる。
「充実性」腫瘍は、充実した凝集塊中、または血液循環により灌注される(irrigated)組織中に組織された腫瘍細胞からなる。多くの腫瘍は、穿孔された毛細管の網目により灌注される。従って、これらの毛細管は、様々な種類の細孔を有し、細孔のサイズに応じて、血液区画から外に固体要素を通過させる。腫瘍血管基礎膜の内皮細胞間の穿孔の大きさは、腫瘍毎に異なる。しかし、大きさが300nm未満のコロイド状粒子は、ある種の腫瘍で浸出できる。その上、このコロイド状粒子の、腫瘍の空隙媒体への浸透は、腫瘍のリンパ管排液が悪いために起こる保持効果の増大と組み合わされる。この、浸透性および保持性の強化(Enhanced Permeability and Retention)を表すEPRと呼ばれる二重現象により、コロイド状キャリヤー系に基づく抗腫瘍治療法を開発することができる。特に、EPRにより、腫瘍周囲の区域におけるコロイド状粒子および巨大分子の蓄積を、健康な組織で観察される蓄積と比較して、著しく持続することができる。
そこで、このEPR現象を利用し、抗癌性活性要素を移送するためのコロイド状キャリヤーを形成している。しかし、真に効果的であるためには、そのようなキャリヤーは、ホストの免疫系により検出され、次いで破壊される前に、血液区画中で十分な時間循環し得る必要がある。従って、非ステルスコロイド状物体は免疫系の特定エフェクター、特に例えばマクロファージ、により急速に検出され、効果的であるために十分な量では腫瘍に到達できない。
事実、マクロファージは、免疫系の最も重要な成分を構成し、リポソーム、その他のコロイド状粒子を包含する異粒子を血液循環から排除する上で主要な役割を果たしている。
ナノ粒子を捕獲する際に関与する非特異的防御機構を構成するこの一連の循環性および着生単球を表す、一般的に認められた表現は、「単核性食細胞系」(MPS)である。
分子レベルでは、注入された粒子の排除は、2段階、すなわち粒子表面における血清タンパク質(または「オプソニン」)の堆積によるオプソニン作用、続いてオプソニン化された粒子のマクロファージによる認識および捕獲、で行われる。
ナノ粒子の表面を、親水性でたわみ性の、一般的にポリ(エチレングリコール)型の重合体の鎖で変性することにより、粒子が立体的に保護され、オプソニンが粒子の表面に到達してMPSの細胞による粒子の排除を引き起こすことが阻止される。これらの重合体鎖の、ステルス性質を与える有効性は、それらの重合体鎖の長さおよび密度によって異なる。例えば、Mori et al. (FEBS Lett., 284: 263, 1991)は、200nmリポソームの表面に存在する、PEG750、2000および5000g/モルの鎖を含んでなるリン脂質で比較研究を行っている。等モル百分率で、PEG750は、インビトロで、オプソニン作用に対して立体的な保護を与えるのに、全く無効であることが立証された。他方、最も長いPEG鎖は、それらの長さに関連するオプソニン作用に対して効果を示す。このインビトロ挙動は、リポソームの半減期に相関しており、マウスに静脈内注射した後、PEG750、PEG2000およびPEG5000に対してそれぞれ30分間未満、約2時間および3時間を超える。
他の研究(Allen et al., BBA, 1066: 29, 1991)は、1000g/モル未満では、ポリ(エチレングリコール)鎖は、ナノ粒子の表面で飽和濃度にあっても、十分な立体的保護、従って、ステルス特性を粒子に与えないことを立証している。
ステルスキャリヤーの、抗癌性活性要素を輸送するための設計により、治療効果を高めるのみならず、オプソニン作用現象および免疫系に対する特定の不可視性も確保することができる。その上、この血液半減期の増加(ステルス効果の結果)は、運ばれる活性要素の毒性を下げるのにも役立ち、活性要素は主として腫瘍の空隙組織で放出され、健康な組織における拡散は大きく制限される。
事実、抗癌性活性要素は、一般的に、サイズが小さく、高い、特に分割細胞に対して顕著な細胞毒性を示す分子である。その上、それらの有効治療濃度は、時として、それらが投与される生物に対して毒性となる血漿濃度とあまり変わらない。この狭い濃度寛容度のために、そのような化合物の投与にはキャリヤーの使用が必要になる。ステルスキャリヤーの使用により、キャリヤーが腫瘍の空隙組織に蓄積し、キャリヤー中の活性薬剤を放出することができる。この蓄積のために、活性要素の腫瘍内濃度は非常に高く、従来のキャリヤーを使用して、あるいは活性要素単独で到達できる濃度よりはるかに高い(Allen, Trends, Pharm. Sci., 15: 215, 1994)。従って、ステルスコロイド系により、毒性が高いために活性要素単独で投与できる投与量よりも、はるかに高い投与量で抗癌剤を使用できる。
ナノ粒子の腫瘍中蓄積およびその結果得られる治療効果は、ナノ粒子の血液循環から排除される半減期によって異なる。そのため、従来型または持続性循環を示すリポソームの様々な処方が、それらの血液排除プロファイルおよびそれらの腫瘍中蓄積に関してマウスで比較されている(Gabizon A.およびPapahadjopoulos D., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85: 6949, 1988)。例えば、約8時間の半減期を有するステルス処方は、注射された投与量の10%を超える蓄積を24時間後に腫瘍中で示す。1時間より僅かに短い半減期を有する比較処方は、ステルス処方で観察された蓄積よりはるかに低い腫瘍中蓄積を示す。特に、比較処方の24時間における腫瘍内濃度は、ステルス処方の場合に腫瘍中で検定された量の4〜16%に過ぎない。これらの結果は、半減期が1時間または1時間未満のオーダーにある処方は、腫瘍中蓄積が悪いことを示している。
リポソームまたはナノ粒子のようなコロイド系、すなわち直径25nm〜1μmの粒子懸濁液は、様々なコロイド状医薬形態の開発および商業化につながっている。
例えば、米国特許第5,811,119号明細書は、カロテノイドから誘導された抗癌性医薬品を投与するためのリポソームの使用を開示している。このリポソーム処方は、特にこれらの活性要素の生体内毒性を下げることができる。ここでは、腫瘍を処置するためのカロテノイドが、それらをリポソーム中に装填できるようにする挿入(intercalation)促進剤と組み合わされている。コアの性質が親水性であるリポソーム中におけるこれらの親油性活性要素の輸送は、両親媒性化合物、例えばトリグリセリド、の存在により可能である。これらの「挿入促進剤」により、カロテノイドを、トリグリセリド10モルに対してカロテノイド1モルの比で輸送することができる。
そのようなキャリヤーは、抗癌剤を、それらの細胞毒性を低減させながら輸送することを意図できるが、カプセル封入率が低く、その上、腫瘍を正確に標的とすることも、これらのキャリヤーの血液区画における半減期を増加することもできない。特に、リポソーム型機構の大きな欠点は、特に、循環している酵素による急速な生物分解性のために、循環中の安定性が悪いことである。
米国特許第5,527,528号明細書は、抗癌性医薬品を運び、投与するための変性リポソームの使用を記載している。開示されているリポソームは、サイズが50〜120nmであり、抗腫瘍性化合物、例えばシタラビン、を含み、それらの表面にポリ(エチレングリコール)の分子鎖を、それらを投与するホストの血液区画中の該リポソームの循環時間を著しく長くするのに十分な濃度で有する。その上、これらのリポソームは、それらの表面に、特定腫瘍抗原に対して特異的な抗体を有し、腫瘍をリポソームの活性標的にすることができる。
この書類は、循環における活性要素の輸送を持続すると共に、腫瘍を標的にするキャリヤーを開示している。
しかし、この型のキャリヤーには大きな欠点がある。具体的には、このキャリヤーは、本来親水性である抗癌剤、例えばシタラビンまたはゲンタマイシン、に特に有利である。ここでも、親油性活性要素、特にダウノマイシンのような抗癌剤の輸送は制限される。これらの化合物は、リポソームの二重リン脂質層中に取り込むことにより輸送される。このため、リポソームのコアの容積が輸送に使用されないので、取込率が低い。これらの系の主欠点は、親油性区画容積に対する水性区画容積の比が好ましくないので、親油性医薬品に対する取込容量が限られることにある。
さらに、活性要素のメンブラン取込率は、このリン脂質二重層の脂質環境に対する活性要素の可溶化度によって異なる。この二重層中の親油性を調整することは、その成分(この場合はリン脂質)の選択が限られているとすれば、困難である。従って、この型のキャリヤーは、輸送される活性要素の油溶性に対する輸送媒体のHLB(親水性−親油性バランス)を、コアの構成成分を広範囲に選択できる本発明のナノカプセルのコアと同じ位に容易に調節することは不可能である。従って、取込率は、リポソーム性メンブランに対する活性要素の溶解度によって異なる。このように、リポソームは、脂質二重層の構造を造り上げるすべての脂質に対して、疎水性活性要素の5モル%(最も一般的には1〜2%)以上をメンブラン中に取り込むことはできない(Lasic, Trends Biotechnol. 16:307, 1998)。
HLB指数、つまり親水性/親油性バランスは、出版物「Techniques de I'ngenieur」の論文K.342でC. Larpentにより定義されている。
ドキソルビシンを輸送するためにDoxil(商品名)の商標で販売されているリポソームも、血液区画中で特定のステルス特性を示す対象である。これらのリポソームは、それらの表面に、リン脂質二重層中に挿入されたPEGの分子を有し、従って、腫瘍を控えめに標的化する。
この活性要素は、ドキソルビシンが水性コア中に拡散する時にドキソルビシンが複合体形成することにより得られる「活性装填」機構により、リポソーム中に「装填」される。pH勾配により、ドキソルビシンはリポソーム中に入り、そこでこの活性要素は、ゲルの形態に変化する。この充填機構により、高い活性要素装填率が得られる。
しかし、この機構は、両親媒性でイオン化し得る性質を有し、脂質二重層を横切って容易に拡散でき(従って、小分子である)、沈殿または複合体形成特性を有する、ドキソルビシンやミトキサントロンのような、特定の活性要素だけに利用でき、ほとんどの抗癌剤には適用できない。この機構の恩恵を受けることができない活性要素は、装填率が低く、従って、活性要素をカラム上で分離し、循環使用する追加の工程が必要になる。
さらに、活性要素用のキャリヤーとしてリポソームを使用することには、別の欠点がある。特に、リン脂質二重層の存在が、得られるリポソームのサイズを物理的に制限し、このメンブランにより得られる曲率半径の値が限られるために、約50nm未満のサイズを得るのが困難である。
従って、リポソーム系キャリヤーの使用には、特に幾つかの抗癌性物質を輸送する能力において、また使用および保存の容易さに関しても、特定の大きな欠点がある。
具体的には、そのようなリポソーム系キャリヤーは、コロイド状溶液を還元した時にそれらの構造的特性および輸送能力が失われないように、凍結乾燥させることは容易ではない。その結果、リポソーム系懸濁液は、安定性が極めて乏しく、保存期間が比較的短い。
この型のキャリヤーの有効性を制限するこれらの欠点を克服するために、非リポソーム系コロイド状キャリヤーが開発されている。重合体系ミセルは、事実、親油性活性要素、特に抗癌剤、の輸送に関して、リポソームの良好な代替品になる。
例えば、国際特許第WO02/00194号明細書は、重合体系ミセルの形態にあるコロイド状キャリヤーを開示している。このキャリヤーは、とりわけ、抗癌性活性要素、例えばドキソルビシンやメトトレキセート、を輸送および送達することができる。特許権請求されたミセルは、親油性抗癌剤を中に挿入できる疎水性中央成分、および本来親水性である外側「シェル」を含んでなる。これらのミセルは、事実、ポリ(ビニルピロリドン)を基剤とする親水性半分およびポリ(乳酸)からなる疎水性半分を含んでなる2ブロック重合体の組立に相当する。疎水性中央成分は、これらのミセルを形成する重合体分子の疎水性中央成分が集合したものに相当する。このキャリヤーは、疎水性分子を輸送する能力に加えて、リポソームの場合には達成するのが困難な、サイズが非常に小さい、特に100nm未満の粒子を形成することができる。
活性要素を血液中で長時間駆動する目的で、他の型の重合体状ミセルも開発されている(Stolnik et al., J. Drug Target., 9: 362, 2001)。この型のキャリヤーも、ポリ(乳酸)(PLA)からなる疎水性成分およびPEGにより代表される親水性成分の2ブロック重合体型の構造を有する。各ブロックの長さに応じて、得られるPLA−PEGミセルは様々な大きさを有するが、より一般的には約75nmである。これらのミセルをラット中に静脈内注射することにより、一定のステルス特性を示し、排除半減期が1〜2時間であり、注射された投与量の25%が3時間後にも血液中になお存在する。
他方、ミセル系キャリヤーには、生物中で比較的不安定であり、希釈剤により急速に解離するという欠点がある。実際、ミセルの安定性は臨界ミセル濃度(CMC)によって異なり、それより下では、ミセルを形成する重合体状分子が解離する。この相対的安定性のために、抗癌性物質を治療目的で送達するためのミセルの工業的使用が微妙になる。
このため、既存のコロイド状系の安定性の不足、および/またはそれらの、本来親油性である分子を輸送する際の効率の悪さを解決するために、リポソーム以外のナノ粒子径キャリヤーが開発されている。
例えば、国際特許第WO01/64328号明細書は、剛性のある脂質表面および脂肪酸とトリグリセリドのエステルから構成された液体または半液体のコアを含んでなる脂質ナノカプセルを記載している。これらのナノカプセルの剛性表面は、一部、幾種類かのレシチンの混合物に相当するLipoid(商品名)S 75.3、およびSolutol(商品名)HS 15から構成されている。この型のキャリヤーにより、疎水性活性要素、特に抗癌剤の輸送を考えることができる。そのようなナノ粒子では、親油性活性要素がコアの内側で溶解した形態で存在し、コアの組成を変え、HLBを、選択した活性要素の油溶性との関係で調節することができる。国際特許第WO01/64328号明細書の脂質ナノカプセルは、それらの脂質ナノカプセルをラット中に静脈内注射した後、生体内で血液中のそれらの挙動が評価されている(Cahouet et al., Int. J. Pharm. 242: 367 2002)。これらのナノカプセルの表面を形成しているSolutol(商品名)HS 15は、疎水性成分および外側に突き出たポリ(エチレングリコール)660g/モルの短鎖からなる分子である。上記のように、非常に短いPEG鎖は、高密度でも、オプソニン作用に対する立体的な保護、従ってステルス特性をナノ粒子に与えるのに十分に効果的ではない。例えば、これらの脂質ナノカプセルの半減期は短く、約45分間である。しかし、これらの脂質ナノカプセルは、小さな分子、例えば放射性標識単独、よりも長時間循環する。従って、国際特許第WO01/64328号明細書の脂質ナノカプセルの半減期は、上記のように腫瘍(肝臓および脾臓以外の臓器における)中に蓄積できるように長時間循環させるには十分では無かろう。
マウス中で一定の長い循環時間を示し、抗癌性活性要素を輸送するための別の型の脂質ナノカプセルが製造され、Mosqueira et al.により開示されている(Pharm. Res., 18: 1411, 2001)。そのような脂質ナノカプセルは、親油性活性要素、特に抗癌剤、を溶解させ、従って、輸送できる脂肪物質から構成されたコア、およびPEG鎖が上にグラフト化されており、免疫系に対してある程度のステルス特性を与えている重合体の剛性外側層の両方を有する。
これらのナノカプセルは、直径が約200nmであり、該表面分子が無い同じナノカプセルの循環時間より著しく長い血液循環時間を示す。しかし、これらの結果は、マウスで得られたものであり、マウスのオプソニン作用に対する免疫系の能力は、例えばラットやヒトで観察される能力よりも小さい。これらのナノカプセルの、マウスの免疫系を逃れる上での相対的な効率は、これらの結果を、オプソニン作用に対する能力に関してはるかに強力であるラットやヒトの免疫系に外挿することはできない(Liu D. et al., BBA, 1240: 277, 1995)。
その上、それらの比較的大きな直径のために、ほとんどの充実性腫瘍で容易に浸出することは不可能であろう。例えば、血液区画における滞留時間を増加しても、腫瘍の標的効率は低いままであり、それだけ治療効果が制限される。
PLA−PEGの2ブロック構造からなる重合体で構成され、ラット中でステルス特性を示し、排除半減期が6時間であるナノ球も開発されている(Verrecchia et al., J. Control. Rel. 36: 49, 1995)。この重合体の疎水性成分は、30000g/モルのPLAからなり、親水性鎖は2000g/モルのPEGから構成されている。これらのナノ粒子は、相補的活性化には比較的好ましくない表面を有し、その結果、オプソニン作用現象およびMPSの細胞による食作用が低下する。
しかし、この型の、PLA型の固体重合体を基剤とするナノ粒子の大きな欠点は、腫瘍細胞の塊の周囲区域に入った後の、活性要素を急速に放出する能力が乏しいことである。具体的には、これらのナノカプセルの剛性の外側層は、PLAから構成されており、加水分解により比較的ゆっくり分解する。生物浸食が弱いと云うことは、これらのナノカプセル中に含まれる活性要素の放出が遅いことを意味する。ここで、そのような抗癌性キャリヤーの治療的効果は、第一に、それらの免疫系を逃れる能力から、第二に、腫瘍周囲の区域でそれらの内容物を急速に、すなわち24時間未満で放出する能力から来ている。MosqueiraまたはVerrecchiaにより開示されているナノ粒子は、生物内に24時間存在した後に実際に分解される(undergraded)が、これは充実性腫瘍の処置に最適とは云えない。
そこで、本発明は、リポソーム系キャリヤーに関して観察される欠点のほとんどを回避すること、および既存の非リポソーム系コロイド状キャリヤーと比較して、腫瘍を標的とすること/腫瘍中で活性要素を放出する効率を改良することの両方を可能にする、活性要素用の新規なキャリヤーを提供する。
治療指数を増加することにより癌、特に充実性または循環性腫瘍をより効果的に処置することができる活性要素用の新規な型のステルスキャリヤーを提供することも本発明の目的である。
治療指数は、好ましくない効果をもたらす薬物投与量と望ましい効果をもたらす投与量の比である。
本発明のナノカプセルは、薬物を溶液形態ではなく、カプセル封入してあるので、それらの低毒性、長い循環特性、および腫瘍標的能力のために、治療指数が改良された薬物を提供する。事実、活性要素をコロイド状薬物キャリヤー中にカプセル封入することにより、それらの流通体積が低下することが示されている。この薬物動態学的プロファイルの変化により、効能の増加および/または毒性の低下につながり、より大量の薬物を投与することができる。
具体的には、本発明のナノカプセルは、本発明のナノカプセルのサイズおよび目立たない特性(furtiveness)により、これらのナノカプセルが腫瘍に近づき、浸出現象によりこれらの腫瘍に浸透することができるので、活性要素用のキャリヤーとして、充実性腫瘍の処置に使用できる。この場合、腫瘍の控えめな標的化に言及する。本出願者の名誉として、標的とする腫瘍の控えめな標的化を可能にするステルス脂質ナノ粒子から構成されたキャリヤーを設計することができた。
さらに、本発明のナノカプセルは、活性要素用のキャリヤーとして、積極的な標的化の現象により循環性腫瘍の処置に使用できる。この積極的な標的化は、該ナノカプセルの表面に、循環性腫瘍の特定表面分子に特異的な分子または「リガンド」を取り付けることにより行われる。そのような表面分子の取付は、ナノカプセルを合成する際に、以下に説明する後挿入により行うのが有利である。一般的に、本発明のナノカプセルは、活性要素用のキャリヤーとして、充実性または循環性腫瘍の処置に、それらの腫瘍がリガンドにより認識され得るレセプタ−を有する場合には積極的な標的化により、あるいは控えめな標的化により(レセプタ−の関与無しに)、使用できる。
本発明のナノカプセルは、活性要素用のキャリヤーとして、腫瘍のすぐ近くの環境中にこの(これらの)活性要素を急速に、従って、より効果的に放出する。そのような急速な放出は、該ナノカプセルの構成成分の急速な生物再吸収(bioresorption)により、特に生物中に存在する酵素の作用により、可能になる。
この生物分解の特徴(特に酵素消化による)は、本発明のさらなる利点であり、これによって、このようにして投与された活性要素の治療的効果が改善される。本発明のキャリヤーは、免疫系に対して有利なステルス特性を示し、毒性が全くないことと組み合わされた完全な生物分解性を示す。事実、本発明のすべての構成成分は、生物分解性であり、生物中で急速に同化され、非経口的に使用でき、また有機溶剤を使用せずに処方されている。従って、ナノカプセルの「固有」毒性は非常に低いか、さらには存在しない。
その上、本発明のナノカプセルは、溶液中の遊離薬物と比較して低い毒性を示す有機体(organism)を通して、比較的高い含有量の潜在的に毒性の活性要素(抗癌剤のような)を運ぶことができる。
本発明のこの態様は、本明細書の例10、F)項、および図7(ドセタキセル(docetaxel)を3回静脈内注射した後のマウスの相対的平均体重の推移)および図8(マウスに投与したドセタキセルの様々な処方物に対する、15%体重損失に到達するまでの平均日数)に示す。
このように、本発明のナノカプセルは、固有毒性が非常に低く、潜在的に毒性の物質を運ぶ時の毒性低下と組み合わされて、哺乳動物における抗癌剤の非常に安全なキャリヤーになり得る。
本発明の新規なステルスコロイド状キャリヤーには、容易に凍結乾燥および滅菌することができ、懸濁液の形態に還元した時にその特性を失わないという利点もある。
このキャリヤーは、血管経路で、組織炎症を処置するための医薬品を投与することもできる。
本発明の脂質ナノカプセルは、直径が50〜150nm、好ましくは80〜120nmであるのが有利である。
該ナノカプセルのサイズは、腫瘍抗癌剤の控えめな標的化において、ある役割を果たす。具体的には、腫瘍で観察されるEPR効果により、充実性腫瘍を取り囲む空隙媒体または血液中に存在する要素(その直径は十分に小さいので、この浸出が可能になる)中への通過およびその中における保持が可能になる。本発明のナノカプセルは、有利なことにそれらのサイズを調整することができる方法を使用して製造される。その上、これらのナノカプセルは、血液区画中で2時間を超える半減期を与える長い循環特性を示す。これらの二つの特徴により、有利なことに、腫瘍毛細管の穿孔区域でナノカプセルにより作られる通路の数が増加することにより、浸出現象を促進することができる。
浸出現象を例11、G)項に示す(図9および10も参照)が、そこでは、ドセタキセルを装填し、放射性標識を付けたナノカプセルの腫瘍中蓄積が、ポリエチレングリコール化されていないナノカプセル(LN)よりも、ステルスナノカプセル(S−LN)ではるかに重要であることが分かる。
本発明のナノカプセルのステルス性質は、循環性腫瘍の場合、血液循環中に存在する悪性細胞との接触を強化することもできる。
浸出は、接線方向の濾過現象に相当し、直径200nmの細孔を有する腫瘍は、同じ直径を有する循環物体を通過させ難い。その上、本発明のナノカプセルのサイズは、肝細胞のレベルにおける浸出による捕獲を回避することができる。事実、肝臓の正弦波状毛細管の穿孔は、約50nmの粒子を浸出させることができる。最後に、該ナノカプセルは、脾臓でサイズが200nmを超える粒子に対して観察される濾過現象を回避するためには、サイズが200nm未満でなければならない。従って、ナノカプセルの限定されたサイズは、EPRにより強化される控えめな標的化の現象、および濾過および肝浸出の現象を回避することにより、該ナノカプセルが血液循環中に存続する時間を増加することの両方にとって重要である。
ナノカプセルの直径は、処置すべき腫瘍の種類に応じて調節することができ、適宜、上記の範囲より僅かに小さくても、大きくてもよい。
ナノカプセルのサイズは、実際、破壊すべき腫瘍の穿孔のサイズに調整しなければならないが、このサイズは、腫瘍の成熟度に応じて時間と共に、および同腫瘍中の空間内で変化することがある。その結果、本発明のキャリヤーの控えめな標的化は、本発明のナノカプセルのサイズを正確に調節できれば、治療レベルで可能になる。ここで、本出願者は、有利なことに、様々な、制御可能なサイズのステルスナノカプセルを正確に合成する方法を開発した。これによって、本キャリヤーは、腫瘍環境に適合する能力を有することになり、はるかに効果的になる。
本発明のナノカプセルの外側脂質外被は、本来油性である親油性界面活性剤を含んでなる。この界面活性剤は、レシチンの形態にあるのが有利であり、そのホスファチジルコリン比率は少なくとも95%に等しく、99%を超えるのが好ましい。
本出願者は、ホスファチジルコリン含有量が95%を超えるナノカプセルを構築することにより、ラットで、血液循環中の循環時間を著しく増加できることを見出した。他のリン脂質、例えばホスファチジルエタノールアミン、リソリン脂質または遊離脂肪酸、のような不純物は、これらのナノ粒子のオプソニン作用現象を増大させることがある。さらに、本出願者は、PEG分子に結合した脂質分子の挿入率は、親油性界面活性剤が95%を超える初期ホスファチジルコリン濃度を示す場合に、より優れていることも見出した。
従って、本発明のナノカプセルの観察される長い循環時間は、これらのナノカプセルの外側表面が、オプソニン作用を制限するホスファチジルコリンを基剤とする実質的に純粋なリン脂質からなるという事実から来るのであろう。ホスファチジルコリンに関する純度は、オプソニン作用を回避するための機構で、ある役割を果たす。
本来油性である親油性界面活性剤は、該外側脂質外被を形成する脂質分子の5〜30モル%であるのが有利である。
この界面活性剤は、ゲルから液相への転移温度が好ましくは25℃を超え、より好ましくは37℃を超える、すなわち周囲温度では該界面活性剤はゲル形態にあり、25℃を超える、好ましくは37℃を超える温度で初めて液相に変化する。ゲル/液体転移温度は、該ナノカプセルの外側脂質外被の剛性において、ある役割を果たす。外側外被の剛性は、本発明のナノカプセルに、それらが懸濁液中にある場合は水性媒体で、ただし血液区画中に投与された場合にも、非常に大きな物理化学的安定性を与える。実際、該外側外被の剛性は、ナノカプセルに、環境的な変化、例えば注射の際に起こるpHまたは浸透圧の変化、に耐えられる凝集性を与える。
親油性界面活性剤は、飽和化された炭素系の鎖、好ましくは2本の鎖を有するリン脂質であり、これらの鎖のそれぞれは炭素数が少なくとも16である。この結果、リン脂質は、C18−C18DSPC(ジステアロイルホスファチジルコリン)、C16−C18HSPC(水素化大豆ホスファチジルコリン)およびC16−C16DPPC(ジパルミトイルホスファチジルコリン)から選択するのが好ましい。好ましくは、HSPCは、より優れた剛性およびより優れたステルス特性を得るために、99%を超える純度で使用するとよい。HSPCは、Doxil(商品名)の商標で販売されている注射可能なリポソーム処方物の組成の一部である。
その上、該外側脂質外被は、本来脂質である、好ましくは非経口使用に承認された親水性界面活性剤を含んでなる。この親水性界面活性剤は、ポリ(エチレングリコール)アルキルエステルおよびポリ(エチレングリコール)アルキルエーテル、およびそれらの混合物から選択するのが有利である。
この親水性界面活性剤は、好ましくは該外側脂質外被を形成する脂質分子の60〜90モル%を占める。この界面活性剤は、好ましくは外側脂質外被を形成する脂質分子の約80モル%のモル比で使用する。
親水性界面活性剤は、親油性界面活性剤と共に、本発明のナノカプセルを製造するのに必要な油/水エマルションの形成に使用する。親水性界面活性剤は、実際、該ナノカプセルの合成方法の際に、トリグリセリドの混合物から形成される脂肪滴を確実に安定化する。その上、この界面活性剤は、該外側脂質外被も確実に凝集させる。該ナノカプセルの外被中に比較的高い比率の親水性界面活性剤があることにより、低い界面張力を得ることができ、親水性界面活性剤の比率が高い程、直径が小さいナノカプセルを製造することができる。
Solutol(商品名)HS15(BASF)、Brij(商品名)(Uniquema)またはMapeg(商品名)(BASF)の名称で販売されている非イオン系界面活性剤を使用するのが好ましい。好ましくは、分子量660g/モルに相当する15単位のエチレングリコールの短鎖を含んでなる、ポリ(エチレングリコール)-660の12−ヒドロキシステアレートに相当するSolutol(商品名)HS15を使用する。この界面活性剤は、有利なことに、非経口使用、より詳しくは、静脈内投与に承認されており、さらに、凝集性に関して良好な結果をもたらす。
最後に、該外側脂質外被は、該ナノカプセルの長い循環時間に効果的に寄与するPEGの両親媒性誘導体を含んでなる。具体的には、PEGの両親媒性誘導体により、ナノカプセルのオプソニン作用の現象を一度に減少させ、コロイド状溶液の安定性を改良し、これらのナノカプセルの血液循環中滞留時間を延長することができる。
PEGの両親媒性誘導体は、該外側脂質外被中に固定できるようにする疎水性成分、および該脂質ナノカプセルの外側に向き、その表面に親水性を付与するPEG型の親水性成分を含んでなる。
PEGの両親媒性誘導体は、それらの疎水性末端を経由して該ナノカプセルの外側外被中に挿入される。その結果、PEG成分は該ナノカプセルの外側を向き、各ナノカプセルを取り巻く保護性親水性シェルを形成する。疎水性末端は、外側外被の表面に固定することができる。この固定は、ポリエチレングリコール化された脂質の疎水性成分を該脂質外被の表面に存在する界面活性剤の成分に結合する低エネルギー結合力により与えられる。具体的には、本発明のナノカプセルの外側脂質外被の凝集性は、疎水性基、特にこの外被を形成する分子のアルキル鎖間に作用するファンデルワールス力により得られる。これらの低エネルギー結合により、外被の成分間に十分な凝集性を維持し、血液区画中に導入された時に本発明のナノカプセルの過度に急速な分解を回避するが、外被に十分な脆さを与え、急速な生物分解性を確保し、従って、輸送される活性要素を治療上効果的に放出することができる。
事実、Mosqueiraにより記載されているナノカプセルの表面を構成する、生理学的条件下であらゆる温度で固体形態にあるPLA(ポリ乳酸)またはPLAGA(ポリ乳酸−コ−グリコール酸)型の重合体状鎖とは異なり、本発明のナノカプセルの外被を形成する脂肪鎖は、互いに共有的に結合しておらず、従って、より解体され易い。具体的には、生物浸食は、酵素の攻撃または局所的なpH条件および水の存在に結びついた自然の生物分解(または生物再吸収)の結果である表面現象である。この浸食は、ナノカプセルの表面におけるリン脂質の損失を引き起こし、これが活性要素の放出を容易にする。
PLAまたはPLAGAを基剤とするナノカプセルの重合体鎖は、長く(Mosqueiraにより記載されているナノカプセルでは45000g/モル)、剛性で平滑な厚い表面を構成する。従って、その生物分解ははるかに遅い。例えば、PLAまたはPLAGAを基剤とするナノカプセルを完全に生物分解するには24時間以上(数週間になることもある)が必要である。本発明のナノカプセルの表面に存在するリン脂質は、別の存在であり、有利なことに、輸送される活性要素を治療的に有効に放出するのに必要な表面抽出および迅速な生物分解が可能である。
最後に、ナノカプセルの外側外被の構成成分は、すべて、生物分解性であり、非経口使用および静脈内注射用に承認されているのみならず、生物が同化することもできる。具体的には、ホスファチジルコリンまたはホスファチジルエタノールアミンのような構成成分は、食品中に一般的に存在し、生物により自然に同化される。
この様に、ナノカプセルの表面を覆う鎖、およびそれらの性質およびそれらを組み立てた状態に維持する化学結合の性質も、血液区画中で1時間以上安定していると共に、循環する酵素または空隙流体中に存在する酵素により急速に生物分解され、同化され得る、本発明のナノカプセルを製造するのに寄与する。
本発明のナノカプセルの半減期は、2時間を超えるのが有利である。理想的には、本発明のナノカプセルには、血漿中半減期が3〜10時間である。この特徴により、本発明のナノカプセルは、腫瘍中に蓄積し、それらの内容物のほとんどを妥当な時間内に放出することができる。その結果、抗癌剤の効能が増加することになる。ここで、抗癌剤を急速に放出することは、充実性腫瘍を排除する際に、それらの成長速度が高い場合に考慮すべき最初のファクターである。
本発明で使用するPEGの両親媒性誘導体は、好ましくは、疎水性基として、ホスファチジルエタノールアミンを有する。従って、これらの物質はポリエチレングリコール化されたリン脂質である。例えば、特に
DPPE−PEG(ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン)、
DSPE−PEG(ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン)、
DOPE−PEG(ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン)、および
POPE−PEG(パルミトイルオレイルホスファチジルエタノールアミン)、
およびそれらの混合物から選択された生物分解性リン脂質を使用することができ、ここでxはPEG分子のサイズをg/モルで表す。
好ましくは、PEGの分子と結合したリン脂質として、本発明のナノカプセルの外側外被中における安定性の質から、DSPE−PEGを使用する。
DSPE−PEG2000、DSPE−PEG3000およびDSPE−PEG5000を使用するのが有利である。
その上、本発明のナノカプセルのステルス効果は、ステロール核−PEG、セラミド−PEGまたはPEG2000ソルビタンテトラオレエート型、またはより一般的には外側外被中の少なくとも一種のPEG分子に固定されて疎水性を与える少なくとも一種のアルキル鎖を有するアルキル−PEG型のポリエチレングリコール化された脂質でも得られる。
上記のリン脂質にグラフト化されるPEG重合体分子のサイズも重要である。具体的には、このサイズが、該ナノカプセルの表面における空間的障害、従って、この表面への到達性、さらにこれらのナノカプセルのMPSを逃れる能力も調整する。
本発明で使用する両親媒性誘導体のPEG分子は、好ましくは分子量が1000g/モル以上である。上記のように、サイズが1000g/モル未満のPEG鎖が存在すると、オプソニン作用に対して十分に保護されない。従って、上記の親水性界面活性剤Solutol(商品名)HS15の分子上に存在する660g/モルの短いPEG鎖は、その表面をオプソニン作用に対して十分に保護できず、従って、循環を持続できないであろう。本発明で使用できる式(O−CH−CH)nのPEG分子は、113PEG単位を含んでなるPEG5000、68PEG単位を含んでなるPEG3000、および45PEG単位を含んでなるPEG2000を含んでなる群に属する。これらの長いポリエチレングリコール化された鎖は、脂質ナノカプセルの表面に親水性を与える。
該ナノカプセルの外被中に一体化されるPEGの両親媒性誘導体のモル比は、好ましくは外側脂質外被を形成する脂質分子の0.5〜12モル%、より好ましくは1〜10モル%である。好ましくは、DSPE−PEGの分子は、外被の総脂質の1〜10モル%のモル比で使用する。
好ましい実施態様ではDSPE−PEG5000分子を使用するが、これはDSPE−PEG5000分子のサイズ(DSPE−PEG2000分子の約2倍の長さを有する)が、同じ分子数で、立体効果によるより大きな反発作用、およびより大きなステルス特性を生体内で得ることができるためである。具体的には、PEG鎖は脂質外被の表面で一定運動しているので、それらの鎖が長い程、脂質ナノカプセル周囲のより大きな空間を掃き、そのために立体障害が増加し、タンパク質がこれらのナノカプセルの表面に到達する可能性がいっそう小さくなる。従って、DSPE−PEG5000の存在下で、オプソニン作用の現象を逃れる能力が増大する。
本発明のナノカプセルのコアは、脂肪酸エステルおよび/またはトリグリセリドおよび/または脂肪物質として油および/またはそれらの混合物から構成された実質的に脂質コアである。トリグリセリドは、炭素数が6〜14である中鎖トリグリセリドおよび/またはカプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、およびそれらの混合物から選択するのが有利である。より好ましくは、本発明のナノカプセルのコアを形成する脂肪物質の混合物として、Labrafac(商品名)cc、Miglyol(商品名)812NまたはMiglyol(商品名)810Nを使用するが、これらの材料は、薬局方の名称で、中鎖トリグリセリド、分別されたココナッツ油、またはカプリル酸/カプリン酸トリグリセリドに対応する。トリグリセリドは、純粋なグリセリルトリカプリレート(アルキル鎖中の炭素数8)、例えばTricaprylinから構成されたものでよい。トリグリセリドは、単独で、または非経口使用に承認された他の医薬用油または脂肪酸エステルとの混合物で使用し、コア中に溶解させる薬物の量を最大限にすることができる。
該実質的に脂質のコアを形成する脂肪酸エステルは、炭素数が8〜18である中鎖脂肪酸、例えばパルミチン酸エチル、オレイン酸エチル、ミリスチン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピルまたはミリスチン酸オクチルドデシル、およびそれらの混合物、から選択するのが有利である。
無論、これらの構成成分のそれぞれの組成および比率は、混合物に望ましい親水性/親油性バランス(またはHLB)に応じて調整および調節することができる。実際、外被の内面は本来親油性であるので、外被とコアの内容物の性質間に非相容性は無い。
これらの脂質は、該コアを形成するトリグリセリドおよび油に含まれる炭素系鎖のサイズおよび飽和度に応じて、周囲温度で液体または半液体の形態にある。本発明のナノカプセルのコア内側に脂肪物質が存在することは、輸送される抗癌剤に対する溶剤として作用するのに寄与するが、外部環境が凍結乾燥工程の後で水性液体中の溶液であっても、乾燥状態にあっても、その中におけるこれらのナノカプセルの相対的な安定性を維持するのに使用される固体材料も構成する。脂質メンブランおよび水性内部を有するリポソームまたは他のコロイド状キャリヤーと異なり、脂肪物質の内容物が存在することにより、本発明のナノカプセルに一定の安定性が与えられる(イオン強度または浸透圧の変化)。
有利なことに、本発明の課題であるステルス脂質ナノカプセルの外側脂質外被の外側表面は、本来親水性であり、実質的に脂質のコアは本来親油性である。
従って、コアと外被を形成する、両方の同化され得る生物分解性脂質の組合せにより、輸送される活性要素を急速に放出することができ、凍結乾燥させ、0.45〜0.22μmフィルターを通して滅菌することさえできる物理的安定性がナノカプセルに与えられる。従って、本発明のナノカプセルは、滅菌することができ、所望により、乾燥形態で長期間保存することができる。このように、本発明の新規なナノカプセルは、製剤を工業界で即利用できるものにする、ある種の使い易さを提供する。
本発明の課題であるステルス脂質ナノカプセルの実質的に脂質のコアは、該ナノカプセルの総重量の20〜60重量%、好ましくは25〜50重量%を占めるのが有利である。
本発明のナノカプセル(または分散した相)を製造できる水相または分散物相は、最初に一定濃度の塩(好ましくはNaCl)を含むのが有利である。この濃度は4〜8%であり、4.4〜5.2%であるのが有利である。合成方法の最後で、浸透圧調整剤(osmotic agents)、低温保護剤(cryoprotective agents)または凍結保護剤(lyoprotective agents)、および所望により保存剤をこの水相に加えることができる。
本出願者は、実際に、この塩濃度により、塩の非存在下より低い転相温度(またはTIP)が得られ、従来の製造方法(以下に説明する)の場合にPEGと結合したリン脂質分子をより大量に取り入れることができ、最後に、得られるナノカプセルのサイズを大幅に低下できることを見出した。
該コアを形成する脂肪物質混合物は、弱〜強親油性活性要素、より詳しくは、抗癌性物質を運ぶことができる。具体的には、各活性要素の油溶性に応じて、HLBを調節し、活性要素を完全に溶解できるようにする。本発明は、溶解度の異なる活性要素の混合物を輸送することもできるが、それには、中間HLBを適用し、各抗癌剤の少なくとも部分的な溶解度を確保する。
本発明の課題であるステルス脂質ナノカプセルは、一種以上の活性要素、特に本来親油性の活性要素を含むのが有利である。
活性要素は、ナノカプセルの脂質コア中に溶解または分散させることができる。
例えば、主として親油性である下記の抗癌性活性要素、すなわちパクリタキセル(paclitaxel)およびその誘導体、例えばドセタキセル、カンプトテシンおよびその誘導体、例えばイリノテカン(irinotecan)、トポテカン(topotecan)またはルブテカン(rubutecan)、ブスルファン、クロラムブシル(chlorambucil)、フタロシアニン、カロテノイドおよび特にダウノマイシン(daunomycin)を、単独で、または混合物として使用することができる。
さらに、両親媒性である抗癌性活性要素、例えばシタラビン、シクロホスファミド、メトトレキサート、フルオロ誘導体、例えば5−フルオロウラシルまたは5−フルオロウリジン、または特にドキソルビシンを本発明のナノカプセルで輸送することができる。活性要素は、前もって脂肪酸エステルまたはトリグリセリドまたは医薬用油および注射用等級の脂肪物質に溶解させる。医薬用油に溶解し難い活性要素を可溶化するには、非経口投与に承認された有機共溶剤を使用し、次いで得られた溶液をこれらの油と混合するとよい。こうして製造された活性要素の溶液は、本方法に直接使用するか、またはトリグリセリド混合物で希釈してから使用することができる。
最後に、他のあらゆる種類の活性要素、特に炎症または組織中の感染箇所を処置するための活性要素の輸送を意図することもできる。例えば、本発明のナノカプセルは、それらのステルス特性から、およびそれらのサイズを調整できることから、炎症を起こした組織に医薬品を運び、送達するのに特に好適である。具体的には、炎症の際、例えば関節炎で観察されるように、炎症を起こした区域を灌注している毛細管の穿孔は拡大し、血液中に存在する特定の要素、特にタンパク質の輸送を増加させる。同じことが、感染箇所のある組織にも当てはまる。その結果、これらの区域における蓄積が、腫瘍における程著しくなくても、炎症または感染に近い区域で、本発明のナノカプセルにより好適な活性要素を放出することにより、そのような病理学的状態を緩和させることができる。従って、本発明のナノカプセルによる、抗炎症性物質、例えばプロスタグランジンE1、非ステロイド系抗炎症剤、例えばイブプロフェン、ケトプロフェン、インドメタシンまたはコルチコイド、例えばデキサメタソン、および抗生物質、鎮痛薬および抗感染剤、例えばアムホテリシンBまたはケトコナゾールの輸送を十分に意図することができる。
従って、本発明のナノカプセルのコアは、脂肪相から構成され、その変えられる組成により、ナノカプセルの特定抗癌剤を可溶化する能力を調節することができる。
本発明の課題であるステルス脂質ナノカプセルは、運ばれる活性要素の毒性(および悪影響の深刻さ)を下げることができ、より大量の薬物を投与し、それによって強力であるが、毒性の高い薬物の治療指数を改良することができる。その上、それらの長い循環特性およびそれらのサイズのため、本発明のステルス脂質ナノカプセルは、従来の抗癌剤溶液と比較して、薬物の量を腫瘍組織中に蓄積し、増加することができる。より多くの薬物を投与でき(健康な組織に対する毒性が低下するため)、より多くの薬物を腫瘍組織に送達できる(腫瘍箇所における特殊な浸出のため)ので、腫瘍処置効能が著しく強化されることが期待される。
本発明の別の目的は、本発明のナノカプセルの、健康な組織に対する活性要素の毒性が低減された医薬品の製造への使用である。
一種以上の活性要素を含む本発明のナノカプセルを含んでなる医薬組成物も本発明の課題である。これらの医薬組成物は、該ナノカプセルを含むコロイド状水性懸濁液の形態にあるのが有利である。
そのようなキャリヤーは、非経口的に、特に静脈内、動脈内、腹腔内、関節内および筋肉内に投与できるが、皮下注射することもできる。実際、皮下注射により、リンパ管に到達し、本発明のナノカプセルをリンパ節中に確実に蓄積させることができる。従って、この到達経路は、リンパ節の不快、より詳しくは、リンパ節腫瘍の処置に特に重要である。
1)充実性および循環性腫瘍の処置
本発明は、第一に、血液を経由する抗癌治療に使用できる。
本発明のナノカプセルは、ヒトにおける充実性腫瘍の処置に使用できる。
その上、本発明のナノカプセルは、白血病またはリンパ腫型の循環性腫瘍の処置に使用できる。実際、上記のように、循環している腫瘍細胞の標的化は、コロイド状系の粒子が、肝臓や循環しているMPS細胞により捕獲される前に、腫瘍細胞との遭遇を促進するのに十分な循環時間を有する場合にのみ達成できる。従って、本発明のナノカプセルは、循環性腫瘍の処置に特に好適である。
これらのナノカプセルは、癌細胞の表面に位置するレセプタ−型の分子に対して特異的な親和力を有するリガンドを結合することにより、積極的な標的化能力も有することができる。
本発明の課題であるステルス脂質ナノカプセルは、それらの表面に特異的なリガンドを有し、これらのリガンドが、これらのリガンドに対するレセプタ−を有する細胞、特に腫瘍細胞、を積極的に標的化する能力をナノカプセルに与えるのが有利である。
リガンドは、粒子の排除現象を刺激しないか、またはほとんど刺激しないように選択するのが好ましい。
該リガンドは、糖またはオリゴ糖型、またはビタミン型、あるいはオリゴペプチド型、抗体断片またはモノクローナル抗体型であるのが有利である。
糖またはオリゴ糖型またはビタミン型(フォレート、リボフラビン)の、およびオリゴペプチド、抗体断片またはモノクローナル抗体型のリガンドでも、有利に使用できる。従って、該リガンドは、前もって、活性化されたポリエチレングリコール化されたリン脂質または他のいずれかの、ナノカプセルの表面に固定され得る疎水性成分、PEG型の親水性鎖およびこの親水性鎖の末端にある反応性化学的官能基を含んでなる脂質の分子の反応性末端に結合させる。これらのリガンドは、これらの鎖の末端に付加した後、以下に記載する後挿入技術を使用して優先的に導入される。後挿入法は、実際、本発明のキャリヤーに一連の特性を与えることができる様々な特異性を有する、様々な性質の、特別な型のリガンドを導入することができる。
従って、本発明のさらなる目的は、本発明の脂質ナノカプセルを、癌、特に充実性または循環性腫瘍を静脈内注射により処置するための医薬品の製造、または積極的な標的化により循環性または充実性腫瘍を処置するための医薬品の製造、または該ナノカプセルを腫瘍毛細管を通して浸出させた後に、控えめな標的化により充実性腫瘍を処置するための医薬品の製造に使用することである。
2)炎症を起こした組織(特に関節炎)および感染した組織の処置
本発明のナノカプセルを、特にヒトにおける組織感染および/または炎症の処置に使用することもできる。具体的には、上記のように、組織炎症または感染の際は、炎症を起こしている区域を灌注する毛細管は透過性が増加する。この一時的透過性は、充実性腫瘍の処置と同様に、浸出の現象を使用して、炎症を起こした組織中に、炎症の原因および/または結果を低減させるか、または排除するための生物活性物質を導入するのに利用できる。例えば、特に、本発明のナノカプセルにより、炎症を軽減させるための活性要素、例えば抗炎症薬、鎮痛薬または抗体、を輸送することができる。例えば特定関節の炎症に相当する関節炎の場合、本発明のナノカプセルを関節内注射するのが好ましい。これは、作用箇所に対するキャリヤーの直接標的化がこれによって強化され、その上、血液循環全体による希釈でナノカプセルが失われることが少なくなるためである。さらに、本発明のナノカプセルのステルス特性により、炎症箇所に存在するMPSおよび免疫系の多数の細胞によりナノカプセルが認識され、これらの箇所から排除されることが無くなる筈である。
従って、本発明の別の目的は、本発明の脂質ナノカプセルを、組織の炎症および/または感染を処置するための医薬品の製造に使用することである。
3)解毒
有利なことに、本発明の課題である脂質ナノカプセルは、中毒の際に血液循環中に存在する疎水性分子を吸収するのに使用できる。
本来疎水性である活性要素で急性中毒を起こした場合、活性要素を装填していないステルス脂質ナノカプセルを静脈内投与することができる。これによって、本発明のナノカプセルは、それらの循環時間が長いこと、およびそれらの疎水性脂質コアのために、血液循環中に存在する活性要素を吸収し、活性要素の遊離濃度を下げ、その結果、その毒性を下げることができる。続いて、これらの活性要素は、キャリヤーの分解と共に、毒性遊離濃度より低い濃度で徐々に放出される。
従って、本発明のもう一つの目的は、本発明のナノカプセルを、中毒を起こした場合の血液循環中に存在する疎水性分子を吸収するための医薬品の製造に使用することである。
4)滅菌濾過
最後に、本発明のナノカプセルには、直径0.45μm、さらには0.22μmのフィルターを通して滅菌濾過することにより、滅菌できるという利点があり、この工程は、以下に記載する方法の最終的な急冷工程の直後に行うことができる。実際、本出願者は、本発明のナノカプセルは、大きな変性を行わずに、および特にそれらのステルス特性および生物分解性を失わずに、この型のフィルターを通過させるのに、懸濁液中で十分に固体である。この特徴により、該ナノカプセルは、非経口使用に容易に、安全に使用することができ、そのために、例えば病院における、または工業的な大量使用に最適のキャリヤーになる。
5)乾燥/濾過形態における使用
本発明のナノカプセルは、有利なことに、凍結乾燥させ、次いでコロイド状懸濁液の形態に還元することができる。従って、これらのナノカプセルは、長期間容易に保存することができる。本発明のナノカプセルの懸濁液は、実際、使用の直前に、その場で、乾燥形態から還元することができる。そのような凍結乾燥は、上記の滅菌濾過工程の直後に行うことができる。
該ナノカプセルの凍結乾燥は、昇華の現象により製剤から水を除去することからなる。その場合、適量(約5%m/m)の低温保護剤または凍結保護剤、例えばマンニトールまたはトレハロース、を凍結乾燥すべきナノカプセルの懸濁液に加えるとよい。これらの化合物が完全に溶解した後、選択した懸濁液を約−50℃で急速凍結工程にかける。次いで、これらの懸濁液を、低温、減圧下で、蒸気の形態で水を直接抜くことにより凍結乾燥させる。これで、乾燥形態にあるナノカプセルを、使用するまで、滅菌した形態で長期間保存することができる。
6)他の投与
本発明のナノカプセルは、活性要素用のキャリヤーとして、腫瘍または炎症以外の種類の障害を処置するために使用することができる。具体的には、このコロイド状キャリヤーの品質の一つは、ホストの免疫系、特にMPSの細胞、例えばマクロファージ、を逃れる能力である。従って、本発明のステルスナノカプセルを、生物の、従来のキャリヤーの使用が特に不適当である区域で使用することができる。そのようなマクロファージ濃度が高い区域は、例えば肺胞およびリンパ節に存在する。従って、該キャリヤーを、食作用および/またはオプソニン作用のために医薬形態の効果が限られる経路を経由して投与することができる。
ナノカプセルの製造方法
本発明のステルスコロイド状キャリヤーを構成するナノカプセルは、2通りの方法を使用して有利に合成することができる。第一の方法は、脂質ナノカプセルの合成に一般的に使用されているので、「従来」の方法である。第二の方法は、本出願者により開発され、本発明のナノカプセルに適している。この方法は、特に、従来方法を使用して得られるレベルよりも高いレベルの「ポリエチレングリコール化された」リン脂質を配合でき、積極的な標的化を行わせるリガンドに結合したリン脂質を取り入れる可能性も提供する。これら2通りの方法を以下に詳細に説明する。
1)従来のナノカプセル合成方法
本発明のステルスコロイド状キャリヤーの合成方法は、有利なことに、有機溶剤を全く含まない。その上、本方法は、特別な材料を必要としない、簡単で比較的迅速な方法である。さらに、この方法は、非経口使用に承認された、特に「生物再吸収」の現象を経由して生物により自然に同化され得る生物分解性化合物だけを使用する。最後に、本発明の方法により、使用者により選択される、直径範囲40〜200nmの限定された直径を有するナノカプセルを合成することができる。合成されるナノカプセルのサイズを調節することにより、そのキャリヤーを、様々なタイプの処置すべき腫瘍に適用することができる。
先ず、油/水エマルションを、水、塩、親水性界面活性剤、親油性界面活性剤、該ナノカプセルのコアを構成するのに必要な脂肪物質、PEGの分子に結合する脂質の分子、および本発明のナノカプセルにより輸送することを意図する活性要素から構成する。活性要素は、本発明のナノカプセルのコアを構成する必要がある油性脂肪相中に前もって溶解させる。
従って、第一工程では、すべての構成成分を秤量し、それらの成分を親油性界面活性剤の融解温度を超える温度に、例えば磁気攪拌で穏やかに攪拌しながら、均質な油/水エマルションが得られるまで加熱する。例えば、親油性界面活性剤がHSPCである場合、混合物は最初に65℃に加熱する。
ついで、この油/水エマルションの転相を行い、水/油エマルションに変換する。これを行うには、混合物の温度を、このように構成された混合物の転相温度(TIP)を超える温度T2に増加させる。次いで、混合物の温度を温度T1に下げる。
転相に続いて、場合により、水/油エマルションが生じた時に処方物の導電性が消失することがあるが、一般的には、肉眼には下記のように映る。T1は、導電性が、20℃で測定される導電性の少なくとも90〜95%である温度である。T2は、導電性が消失する温度である。
この操作は、T1とT2間の転相区域のあたりの温度調整を少なくとも1サイクル行うことにより、半透明の溶液が生じるまで繰り返す。具体的には、ナノカプセルの形態における系の組織化は、最初の系の外観変化により視覚的に反映され、不透明−白色相から半透明−白色に変化する。この変化は、温度が転相温度(TIP)より下に下降する時に起こる。この温度は、一般的にTIPより6〜15℃低い。
エマルションに作用させるサイクルの数は、ナノカプセルを形成するのに必要なエネルギーの量によって異なる。油/水エマルションと水/油エマルションの間の転相により、温度増加と共に導電性が消失するまで低下する。転相区域の平均温度は転相温度(TIP)に相当する。
次いで、油/水エマルションを急冷、すなわち急激に冷却し、安定したナノカプセルを得る。この操作は、磁気攪拌しながら、2℃±1℃で脱イオン水を使用して細かいエマルション中に急速に注ぎ込み、エマルションを3〜10倍に希釈することにより行う。この急冷工程により、ナノカプセルを、それらを形成する脂質が液体であるエマルション形態から、脂質がより硬化した、従って、構造的に非常に安定した状態にある懸濁液形態にすることができる。こうして得られる粒子を5分間攪拌する。工業的用途の場合、例えば熱交換機の系で製剤を循環させることにより、製剤の急冷を行うことができる。この特別な場合、製剤の希釈は行わない。
脂肪相はLabrafac(商品名)ccであり、親油性界面活性剤はHSPC(水素化大豆ホスファチジルコリン)であり、親水性界面活性剤はSolutol(商品名)HS15であるのが有利である。PEGの両親媒性誘導体は、ポリエチレングリコール化されたリン脂質DSPE−PEG2000または−PEG5000である。これらの条件下で、T1=60℃、T2=85℃であり、サイクル数は3に等しい。
ナノカプセルの外被の構成成分に関して、本来脂質である親油性界面活性剤のモル百分率は、5〜30モル%である。本来親水性である界面活性剤のモル百分率は60〜90モル%であり、ポリエチレングリコール化されたリン脂質では0.5〜5モル%である。
該ナノカプセルの外側脂質外被を構成する各種成分は、例えば下記のモル百分率を有するのが有利である。
・HSPC:15.46モル%
・Solutol(商品名)HS15:81.2モル%
DSPE−PEG2000:3.34モル%
この例では、初期エマルションの塩濃度は4.4%(m/m)であり、脂質ナノカプセルのコアを構成するLabrafac(商品名)ccの質量は、本来脂質である構成成分または製剤中に存在する界面活性剤の44%(m/m)である。この組の構成成分は、以下、総脂質(水および塩化ナトリウム以外の成分)と呼び、この用語は、特にポリエチレングリコール化されたリン脂質を包含する。従って、外側脂質表面(上記の)と総脂質の構成成分比は56%である。
一般的に、該ナノカプセルの外側外被を形成する脂質と、それらを構成する総脂質との質量比が高い程、ナノカプセルは小さくなる。従って、本発明のナノカプセルのサイズは、それらを合成する時に外被の脂質と総脂質の好適な質量比を選択することにより、容易に調整することができる。
反対に、粒子のコアを構成する脂質の比率を増加させると、粒子径が増加する。
その上、親水性界面活性剤の比率が増加し、(親水性および親油性)界面活性剤の比率が増加すると、粒子径が低下する。界面活性剤は、界面張力の低下を引き起こし、従って、系の安定化が低下し、小さな粒子の製造が促進される。具体的には、界面張力が低い程、水溶液中における脂質ナノカプセルの懸濁液がより安定する。親水性および親油性界面活性剤の量および脂肪酸エステルの量も固定すると、ポリエチレングリコール化された脂質の添加量を増加することにより、粒子径が増加する。特定量のSolutol(商品名)HS15およびDSPE−PEGを選択することにより、様々なサイズ範囲および様々なポリエチレングリコール化されたリン脂質含有量が得られる(例4の図1参照)。
好ましい実施態様では、脂肪相はLabrafac(商品名)ccであり、本来脂質である親油性界面活性剤はHSPC(Northern ids)であり、非イオン系親水性界面活性剤はSolutol(商品名)HS15であり、PEGの分子に結合した脂質はDSPE−PEG2000である。これらの化合物は、下記の特徴を有する。
−Labrafac(商品名)cc(Gattefosse, Saint-Priest, 仏国)。これは、カプリル酸/カプリン酸中鎖トリグリセリド(CおよびC10)から構成された油である。その密度は20℃で0.930〜0.960である。そのHLB指数は約1である。その組成は、Miglyol(商品名)812N(Sasol, 独国)と同等である。Labrafac(商品名)ccは、非経口栄養供給用の製剤の組成物に包含される。
−Solutol(商品名)HS15(BASF, Ludwigshafen,独国)。これは、ポリ(エチレングリコール)−660 12−ヒドロキシステアレートである。従って、この材料は、処方物中で親水性界面活性剤の役割を果たす。この材料は、注射により使用できる(IVによりマウス中でLD50>3.16g/kg、ラット中で1.0<LD50<1.47g/kg)。
−DSPE−PEG2000(Northern Lipids Inc., Vancouver,カナダ)。これは、ナトリウム塩の形態にあるN−(カルバモイルメトキシポリ(エチレングリコール)2000)−1,2−ジステアロイル−sn−3−ホスホエタノールアミンである。この材料は、脂質ナノカプセル上にそれらのステルス特性を与える。ポリ(エチレングリコール)の長鎖により、それらの立体効果で、血液のタンパク質がそれらの上に堆積する(オプソニン作用)のを阻止することにより、ナノカプセルの表面を保護することができる。この材料は、注射により使用でき、リポソーム製剤Doxil(商品名)(Alza, Mountain View,米国)に含まれる。
最初の油/水エマルションの水相は、4〜8%の塩、例えば塩化ナトリウム、も含むことができる。塩濃度を変えることにより、転相区域がシフトする。塩濃度が高い程、転相温度が低い。この現象は、疎水性の熱に敏感な活性要素をカプセル封入するのに有利である。これによって、それらの活性要素を低温で配合することができる。
ナノカプセルの直径は、合成方法の出発混合物中の、塩と親水性界面活性剤の比率および親油性界面活性剤の純度を調節することにより、調節するのが有利である。
2)後挿入によるステルスナノカプセルの合成方法
本発明の課題であるステルス脂質ナノカプセルは、後挿入による方法で製造するのが有利である。
この方法は、ポリ(エチレングリコール)の両親媒性誘導体が欠けているナノカプセルを予備形成する工程、および次いで該ポリ(エチレングリコール)の両親媒性誘導体をこれらのナノカプセルの表面中に後挿入する工程を含んでなる。
この方法により、該予備形成工程は、従来の方法で上に説明したように数サイクルの温度増加および低下により行う油/水エマルションの転相による、PEGの両親媒性誘導体が欠けているナノカプセルの合成を含んでなるのが有利である。
本出願者により開発された方法も、有機溶剤を全く含まず、「ポリエチレングリコール化された」リン脂質を本発明のナノカプセルの表面に好収率で取り入れることができる。
例えば、外被の脂質に対するDSPE−PEGモル比が5モル%を超える、好ましくは10モル%のオーダーになるナノカプセルを得ることができる。そのような比率は、本発明のナノカプセルに良好なステルス特性を与える。ここで、上に記載した従来の合成方法では、そのような特性を得るのは困難である。その上、PEGを含まないナノカプセルを予備形成し、続いて挿入によりDSPE−PEGを取り入れる合成方法により、ナノカプセルのサイズを正確に調節し、それによって両親媒性誘導体の親水性鎖の比率および長さを調節することにより、処置すべき腫瘍のタイプに適合させることができる。DSPE−PEGの分子をより大きな比率で挿入することに加え、後挿入技術を使用し、ポリエチレングリコール化された鎖の末端にリガンドを含んでなるリン脂質の誘導体を取り入れることができる。これらのリガンドは、本発明のナノカプセルに、問題とする細胞(充実性および循環性腫瘍)を積極的で特異的に標的化する特性を与えることができる。この後挿入法は、60℃を超えない温度で行われるので、熱に敏感な分子に特に好適である。
例えば、HSPCを基剤とするが、DSPE−PEGが欠けているナノカプセルを、上に記載する方法により前もって製造する。
該後挿入工程は、予備形成されたナノカプセルを、ポリ(エチレングリコール)の両親媒性誘導体の存在下で共温置(coincubation)する第一工程、およびこうして得られたポリ(エチレングリコール)の両親媒性誘導体/予備形成されたナノカプセル混合物を、温度0〜5℃に到達するように急速に冷却する第二の「急冷」工程を含んでなるのが有利である。
例えば、上記のDSPE−PEGが欠けているナノカプセルを含む製剤に水を加え、メスフラスコ中で正確な体積に調節する。これによって、脂質の正確な濃度がmg/mlで分かり、例えば、本発明の脂質ナノカプセルの外側外被の組成物を形成する脂質全体(DSPE−PEGを包含する)に対して例えば6モル%を得るために加えるDSPE−PEG2000または−PEG5000 の量を計算するための基礎として使用することができる。続いて、ナノカプセルおよびDSPE−PEGのミセル溶液の製造を行い、個別に、60℃で15分間維持するのが有利である。
ポリ(エチレングリコール)の両親媒性誘導体/予備形成されたナノカプセル混合物の共温置工程は、転相現象による系の崩壊を避けるために、本来脂質である該親油性界面活性剤のゲル/液体相転移温度よりほんの僅かに高いが、ポリ(エチレングリコール)の両親媒性誘導体/予備形成されたナノカプセル混合物の転相温度よりは低い温度で行う。上記の例に戻って、60℃で、脂質ナノカプセルの表面は、はるかに液体状であり、追加のリン脂質を挿入することができる。次いで、必要量のDSPE−PEGのミセル溶液をナノカプセルの製剤中に導入する。これを60℃で1時間30分共温置し、15分ごとに強く攪拌する。この温置時間の後、製剤を氷浴中に1分間浸し、ナノカプセルの外被を急速に硬化させ、その中に挿入されたDSPE−PEGの分子を捕獲する。
後挿入方法により、DSPE−PEG含有量が、従来方法を使用して得られる含有量よりも高い、本発明のナノカプセルを得ることができる。実際、こうして製造されたナノカプセルは、生体内で、従来方法により製造されたナノカプセルで得られるよりもはるかに大きな、検出され難い性質を示す。
DSPE−PEGの後挿入をより低い温度(37〜50℃)で、ただし、より長い温置時間をかけて行うこともできる。例えば、この低温における挿入方法は、PEG鎖の末端に、熱的に敏感な基、例えばある種のオリゴペプチドおよびタンパク質、を有するポリエチレングリコール化されたリン脂質の誘導体を取り入れるのに好適である。これらの化合物は、本発明の、ただし腫瘍細胞を積極的に標的にすることができるナノカプセルを製造するための方向付け基として使用することができる。
さらに、該後挿入方法により、DSPE−PEG分子に加えて、ポリエチレングリコール化された鎖の末端に反応性官能基を含んでなるPDP−PEG2000−DSPE(ピリジルジチオプロピオニルアミノ−PEG2000−DSPE)またはMPB−PEG2000−DSPE(p−(マレイミドフェニル)ブタロイルアミノ−PEG2000−DSPE)タイプの活性化されたリン脂質(Northern Lipids Inc., Vancouver,カナダ)を導入することができる。これらの反応性官能基は、本発明のナノカプセルが得られた後、本来ペプチドであり、チオール基を含んでなる化合物、例えば抗体タイプのオリゴペプチドまたはタンパク質、を結合し、積極的に標的化する特性をナノカプセルに持たせることができる。
A)従来方法によるステルスナノカプセルの製造例
下記の例では、
質量%=製剤の総重量に対する質量百分率
%w/w=ナノカプセルの総重量に対する質量百分率
モル%=ナノカプセルの外側外被に対するモル百分率
m%/env.=ナノカプセルの外側外被の重量に対する質量百分率
である。
例1 DSPE−PEG2000を含んでなる製剤
従来方法による、合計約1グラムの脂質に対して2.86モル%でDSPE−PEG2000を含んでなる製剤の製造。
本発明のナノカプセルを合成するのに必要な構成成分を、表1に示す量で、20mlシンチレーションバイアル中に導入する。
表1

質量(mg) 質量% モル数 モル% m%/env.
HSPC 75 1.50% 9.843E-05 16.98% 13.25%
DSPE-PEG 46 0.92% 1.658E-05 2.86% 8.13%
Solutol HS15 445 8.90% 4.645E-04 80.15% 78.62%
Labrafac 504 10.08%
NaCl 220 4.40% 総脂質 1070
水 3710 74.20% 外被/合計 52.90%
合計 5000 100.00%
一般的に、秤量の際、最大変動(目標値に対する)は、レシチンおよびDSPE−PEGに対して±1.5%、親水性界面活性剤(Solutol(商品名)HS15)およびトリグリセリドに対して±0.2〜0.5%、および塩に対して±3%まで許容される。導入する水の量は、2%以上である。実際、上に説明したように、得られるナノカプセルのサイズは、粒子の外被を構成する脂質の合計と脂質の総質量の比(外被/合計)によって異なる。
秤量後、温度を徐々に60℃に増加し、攪拌を数分間維持し、その間にレシチンまたはDSPE−PEGの凝集物を確実に崩壊させる。次いで、温度を80〜85℃に増加する。続いて、バイアルを加熱されていないプレート上に移し、なお攪拌しながら温度を60℃に下げる。80℃までの温度上昇および60℃への下降を3サイクル行うことができる。二回目の温度上昇の際、転相現象(転相温度(PIT)未満では、溶液は半透明であり、PITを超えると、不透明になり、クリーム状の外観を呈する)を観察することができる。
第三サイクルの後、第二および第三の温度上昇の際に観察されるような外観の変化が起こる温度より10℃温度が下がった時に、1℃の冷水(12.5ml)を加えることにより、急冷を行う。急冷に続いて、攪拌を5分間維持する。ここに記載する例では、外観変化が起こる温度は75℃であり、製造時の最高温度は82℃であり、急冷は62℃で行った。
続いて、細孔径0.2μmのフィルターを通して製剤を濾過した後、動的光散乱によりサイズ分布プロファイルの分析を行うことができる。例として記載する製造により、サイズが87.5±14nmである本発明のナノカプセルを得ることができる。DSPE−PEG2000含有量は、表面の全構成成分に対して2.86モル%である。他の特性は表1に報告した。
従来の製造方法を使用して得られるDSPE−PEG2000の最大比率は3.34モル%である。ポリエチレングリコール化されたリン脂質をさらに加えることにより、最終的な急冷に続いて得られる製剤の不安定性が引き起こされる。
例2 DSPE−PEG5000を含んでなる製剤
従来方法による、合計約0.6グラムの脂質に対して1.41モル%でDSPE−PEG2000を含んでなる製剤の製造。
下記の表2に示す量を使用した以外、手順は前の例で記載した手順と同等である。
表2

質量(mg) 質量% モル数 モル% m%/env.
HSPC 37.5 1.50% 4.921E-05 15.54% 11.89%
DSPE-PEG 25.8 1.03% 4.461E-06 1.41% 8.18%
Solutol HS15 252 10.08% 2.630E-04 83.05% 79.92%
Labrafac 252 10.08%
NaCl 116 4.64% 総脂質 567.3
水 1816.7 72.67% 外被/合計 55.58%
合計 2500 100.00%
この製造では、不透明/半透明の外観変化が約72℃で起こり、サイクル中に到達した最高温度は81℃であり、急冷は65℃未満で、氷水6mlを加えて行った。
得られたナノカプセルの平均サイズは、細孔径0.2μmのフィルターを通して製剤を濾過した後、動的光散乱により63.2±9.83nmである。
従来の製造方法を使用して得られるDSPE−PEG5000の最大比率は1.49モル%である。
この様に、従来の方法を使用して取り入れられるリン脂質の量は、これらの分子が長いPEG鎖を有するために、大きく制限されている。
B)本発明の後挿入によるナノカプセルの製造例
例3 予備形成されたナノカプセル中にDSPE−PEGを挿入する方法によるナノカプセルの製造
表3は、予備形成されたナノカプセル中にDSPE−PEGを挿入する技術を使用し、直径約80nmの脂質ナノカプセルの処方物を得ることができる各種構成成分の量の例を示す。
DSPE−PEGを含まない予備形成されたナノカプセルの親製剤は、従来の方法により製造する。導入する量を表3に示す。急冷後、製剤をメスフラスコ中に移し、その体積を蒸留水で25mlに調節する。
表3

質量(mg) 質量% モル数 モル% m%/env.
HSPC 75 1.50% 9.843E-05 17.48% 14.42%
DSPE-PEG 0 0.00% 0.00 0.00% 0.00%
Solutol HS15 445 8.90 % 4.645E-04 82.52% 85.58%
Labrafac 504 10.08%
NaCl 220 4.40% 総脂質 1024
水 3756 75.12% 外被/合計 50.78%
合計 5000 100.00%
「ポリエチレングリコール化された」リン脂質を秤量し、十分量の蒸留水を加えて溶解させ、完全に溶解した後、体積を正確に5mlに調節することにより、DSPE−PEG2000およびDSPE−PEG5000のミセル溶液を前もって製造した。
次いで、親製剤2mlを、60℃の水浴中に入れた栓付きの溶血管中に分配する。ミセル溶液も水浴中に入れる。脂質ナノカプセルの製剤およびDSPE−PEGのミセル溶液を個別に60℃で15分間予備温置する。この時間の後、必要量を加え、ナノカプセル外被中のPEGの分子と会合したリン脂質6モル%の理論的比率を得る。例えば、上に記載するミセル溶液の体積および濃度で、DSPE−PEG2000532μlまたはDSPE−PEG50001108μlを加える。比較試料も熱水800μlを加えて調製する。
これらの量を加えた後、溶液を60℃で1時間30分間放置し、15分毎に攪拌する。この温置時間の後、製剤を氷浴中に注ぎ込む。
得られる脂質ナノカプセルのサイズを表4に示す。
表4

製剤 ナノカプセルのサイズ(nm)
温置していない親製剤 69±12.9
加熱した比較試料 69.9±14.2
DSPE−PEG 2000 77.9±14
DSPE−PEG 5000 78.4±13
同じ条件下で温置した比較用製剤は、60℃で温置しなかった親製剤の粒子径に近い粒子径を有する。DSPE−PEGの存在下で温置した製剤は、粒子の平均直径が大きく増加しており、ナノカプセルの表面における「ポリエチレングリコール化された」リン脂質の挿入を示唆している。
C)本発明のナノカプセルのサイズに対する様々なパラメータの影響
例4 従来方法により製造したナノカプセルのサイズの調整
例1に記載する従来方法により製剤を製造する。これらの製剤は、約1g量の脂質で製造する。図1は、親水性界面活性剤Solutol(商品名)HS15の量をそれぞれ414mg(413.5±0.50)、446mg(445.85±0.01)または504mg(504.4±0.27)で固定した場合の、ナノカプセルのサイズと、加えるDSPE−PEG2000の比率との関係を示す。HSPC、Labrafac(商品名)ccおよびNaClの量は、すべての製剤で一定に、それぞれ76mg、504.05mgおよび220mgに維持する。
一般的に、サイズは、Solutol(商品名)HS15の量を下げるにつれて増加する。特定Solutol(商品名)HS15量の同系列では、サイズは、加えるDSPE−PEGの比率が増加するにつれて増加する。
例5 後挿入方法により製造したナノカプセルのサイズの調整
特に長い循環時間を得るか、またはリガンドを導入しようとする場合、例3に記載する後挿入方法を使用する必要がある。例えば、DSPE−PEGを含まいナノカプセルを前もって製造するが、そのサイズは、粒子の表面を構成する脂質と界面活性剤の合計と、製材(表面+コア)の組成物を形成する脂質と界面活性剤の合計との質量比を変えることにより調節することができる。後挿入方法に好適な、この表面脂質/総脂質の比と、得られるナノカプセルのサイズの関係を図2に示す。
図2に示す処方物は、約1g量の脂質で製造した。HSPC、Labrafac(商品名)ccおよびNaClの量は、一定であり、例4で使用した量に対応する。使用したSolutol(商品名)HS15の量および対応する表面脂質/総脂質比(S/T比)を下記の表5に示す。
表5

Solutol(商品名)HS15 (mg) S/T比
400.6 48.6%
413.2 49.2%
445.9 50.9%
504.2 53.5%
続いて、後挿入方法を使用してポリエチレングリコール化されたリン脂質DSPE−PEGを導入し、本発明のステルスナノカプセルを得ることができる。後挿入方法は、例3に従い、DSPE−PEG2000または5000の最終的な合計比率6モル%で行う。
DSPE−PEGを含まず、それぞれ504、446および401mgのSolutol(商品名)HS15を有する親の処方物(SM系列)、およびそこから、該後挿入方法を使用し、DSPE−PEG2000および5000を取り入れて製造した本発明の処方物に対して得たサイズを図3に示す。
このように、DSPE−PEG2000の挿入により、直径が平均で7.2nm増加する。サイズ増加は、DSPE−PEG5000でより顕著であり、粒子の直径が平均で9.1nm増加している。
脂質ナノカプセルの表面におけるポリエチレングリコール化されたリン脂質の効果的な挿入を反映するこれらの直径増加に基づき、およびPEGを含まないナノカプセルのサイズと表面/総脂質比の関係(図2)から、本発明のナノカプセルのサイズを調節し、特定腫瘍毛細管の内皮に存在する穿孔を通して浸出し易くすることができる。
D)本発明のステルスナノカプセルを使用して生体内で行った排除実験の結果
例6 キャリヤーの消失速度論(PEG2000/PEG5000比較データ)
本発明のナノカプセルの血液排除を、DSPE−PEG20003.34モル%(「2K−3.34」曲線)を基剤とするナノカプセルの処方物と、DSPE−PEG5000を基剤とするナノカプセルの処方物(そのDSPE−PEG5000のモル比は1.41モル%(「5K−1.41」)である)との間の比較研究で評価した。これらの処方物は、例1および2に記載する該従来方法により製造した。
これを行うために、本発明のナノカプセルの溶液を雄のラット(Sprague-Dawley、325g)中に、処方物あたりラット4匹の比率で静脈内注射した。脂質の注射量は、「MPSの飽和」現象(これは、除去能力を超過するために長い循環時間を引き起こす)が起こり始める投与量の約10分の1になるように選択した。そこで、体積400μl中に脂質総量2mgを含んでなるナノカプセル溶液を各ラット中に静脈内注射した。
本発明のナノカプセルに、前もって滴定した放射性トレーサー、すなわち非交換性標識である[H]コレステロールヘキサデシルエーテルで標識を付けた。放射性標識の線量は、ラット1匹あたり3マイクロキューリー(μCi)である。ナノカプセルを注射してから、5、15および30分後、および1、2、4、8、12および24時間後に、一連の血液試料9点を採取した。
これらの血液試料を、Soluene 350(Canberra Packard, Mississauga, カナダ)の存在下、50℃で1時間消化させた。消化後、30%水性過酸化水素を使用して血液試料を脱色した。次いで、シンチレーション液Hionic Fluor (Canberra)を加え、試料を一晩放置した。次いで、シンチレーション計数器を使用して放射能を計数することにより、様々な時間で血液中に存在する標識を付けたナノカプセルの量を検定した。比較試料を検定することにより、100%の線量に相当するdpm(毎分の壊変)数を測定すめことができる。ラット中の総血液量は、75ml/kgである。従って、結果を総注射量の百分率として表すことができる。この実験で得られた血液プロファイルを図4に示す。
表6は、従来方法により該脂質ナノカプセルの外側外被中に取り込んだDSPE−PEGのサイズおよびモル比率を示す。
使用した命名法は、PEG成分のモル質量(2k、5kは2000または5000を表す)および表面脂質全体に対するDSPE−PEGのモル百分率を示す。
表6 使用した処方物の説明

名称 サイズ(nm) DSPE−PEG
2k−3.34 77±15 3.34モル%
5k−1.41 61±15 1.41モル%
これらの結果は、本発明のナノカプセルの血漿半減期が、ラット中で、3.34モル%のDSPE−PEG2000を基剤とするナノカプセルおよび1.41モル%のDSPE−PEG5000を基剤とするナノカプセルの両方で、2および3時間であることを示している。しかし、DSPE−PEG5000の鎖により、より大きなステルス効果が得られることは重要である。具体的には、ナノカプセルの表面でDSPE−PEG2000のモル数の2分の1未満であるモル数に対して、長いPEG鎖により、実際、質量2000g/モルを有する鎖により与えられる保護効果に匹敵する保護効果が得られる。
例7 先行技術のナノカプセルと本発明のナノカプセルの比較研究
本発明の脂質ナノカプセルおよび先行技術の国際特許第WO01/64328号明細書に記載されている脂質ナノカプセルの、血液中で消失する速度を比較するために、例6に示すものと類似の研究を行った。ラット中、図4に記載されている結果と同等の条件下で、処方物1〜4に関する結果を得た。これらの処方物を以下に簡単に説明し、得られた結果を図5に示す。この図は、比較として、Stolnik et al.(3時間の血液速度論のみ)により、およびCahouet et al.により得たデータも含んでなる。
処方物1 国際特許第WO01/64328号明細書に記載されている従来のナノカプセル。親油性界面活性剤はLipoid(商品名)S75-3であるが、これは純粋なレシチンではなく(ホスファチジルコリン70%)、粒子はPEGを含まない。
処方物2 Lipoid(商品名)S75-3を基剤とするナノカプセルであるが、従来方法により導入されたDSPE−PEG2000(1.65モル%)を含んでなる。
処方物3 HSPC(ホスファチジルコリン>99%)およびDSPE−PEG5000(1.41モル%)を基剤とするナノカプセル、従来方法により導入されたPEG5000を基剤とする、本発明のナノカプセル。
処方物4 ナノカプセル−DSPE−PEG2000(3.34モル%)、PEG2000を基剤とする、本発明のナノカプセル、HSPC用の従来方法により取り込むことができる最大量。
FS Stolnik処方物、PLA−PEGの比率13:5のミセル(PEG成分のモル質量2000g/モル)、その直径は75nmのオーダーにある。最良処方物のデータは、公開された文献(Stolnik et al., J. Drug Target., 9: 361, 2001)から引用。これらのデータは、MPSを飽和させない量のナノカプセルをラット中に静脈内注射した後にも得られる。
NL.A.A 先行技術の従来ナノカプセル処方物。これらのデータは、Cahouet et al.による研究(Int. J. Pharm. 242:367 2002)から引用した。これらの結果は、国際特許第WO01/64328号明細書に記載されているLipoid(商品名)S75-3を基剤とする処方により上記の著者らにより製造された脂質ナノカプセルをラット中に静脈内注射(量は不明)した後にも得られる。
処方物1および2は、それぞれ、従来ナノカプセルの、その表面がLipoid(商品名)S75-3(不純物を含んでなるレシチン)を含んでなる処方物、およびこれらの同じナノカプセルの、その表面が1.65モル%のDSPE−PEG2000も含んでなる処方物を表す。このレベルは、従来方法により製造される、Lipoid(商品名)S75-3を含んでなるナノカプセルに取り込むことができる最大含有量に近い。処方物4のDSPE−PEG2000含有量も、従来方法のために、その最大にある。ホスファチジルコリンHSPCは、不純物が無く、均質であるために、そのようなDSPE−PEG含有量を本発明のナノカプセル中に取り入れることができる(実質的にLipoid(商品名)S75-3より2倍多い)。
これらの結果は、本発明のナノカプセル(処方物3および4)が、血液区画から非常に急速に排除される先行技術の脂質ナノカプセル(国際特許第WO01/64328号明細書に記載されている処方物1)よりも、排除率が著しく低いことを示す。例えば、処方物1では、注射された投与量の10%だけが1時間後に血液中になお存在する。従って、先行技術のナノカプセルはステルス特性を示さない。その上、先行技術のナノカプセル(処方物2)中にDSPE−PEG2000を取り入れても、血液循環中でのそれらの持続性はほんの僅かに改良されるだけであり、それらの半減期も1時間未満である。実際、それぞれの、処方物1に対するAUC(5分と24時間の間の曲線下の面積)の増加(AUCFormx/AUCForm1)は、下記の通りである。
−処方物2:1.06
−処方物3:2.31
−処方物4:2.68
その上、先行技術の説明で記載したように、国際特許第WO01/64328号明細書のナノカプセルも、Cahouet et al.によりラットにおける生体内研究の課題になっている。血液からこれらのナノカプセルが排除される速度論は、処方物1で得られたプロファイルよりも僅かに優れ、処方物2のそれと比較的類似しているプロファイル(図5における処方物NL.A.A)を示すが、これは、恐らく注射された投与量の差ためであろう(NL.A.A、投与量不明)。Cahouet et al.のナノカプセル(NL.A.A)の半減期は、1時間未満(正確には45分間)である。従って、処方物1に関して本出願者が得たプロファイルは、先行技術の研究で得られたプロファイルと比較的類似している。1000g/モルを超えるPEGの鎖を全く含まないこれら2種類の比較処方物は、血液循環からの急速な排除に対して保護する上で、Solutol(商品名)HS15の短いPEG鎖(660g/モル)が有効ではないことを示す。例えば、これら2種類の処方物は、ステルス特性も、持続的な循環も示さず(2時間で、注射された投与量の10%)、キャリヤーの組成物に対する変性(ホスファチジルコリン純度の高いレシチンの使用)、特に長いPEG鎖の付加、の効果を評価するための、非ステルス試料と考えることができる。
図5も、Stolnik et al.の文献中に開示されている先行技術のデータを示す(記号FS)。それらの、PLA−PEGミセルの処方物は、注射された量の40%より僅かに低い量が2時間後に血液循環中になお存在するステルス性質を示す。しかし、このコロイド状製剤のステルス性質は、処方物3(DSPE−PEG5000)および4(DSPE−PEG2000)に対して、2時間後に注射量のそれぞれ50%強および60%強を示す本発明のナノカプセルのそれより低い。注射してから最初の4時間の間に血液循環中に存在する本発明のナノカプセル(処方物3および4)の比率が先行技術のステルスナノカプセル(処方物FS)のそれよりも明らかに大きいと仮定すると、充実性および/または循環性腫瘍細胞に到達しそうなキャリヤーの量が、有利なことに増加し、従って、処置が成功する機会も増加するであろう。
例8 後挿入方法により与えられるステルス特性の強化
以前の研究と同じ条件下で行う生体内研究を、4種類の異なった処方物で行った。後挿入方法の優位性を評価するために、本出願者は、該後挿入方法により製造した3種類の処方物のステルス性質を、従来方法により製造した最良の処方物のステルス性質と比較した。この生体内研究の対象である4処方物は下記の通りである。
処方物2k−3.34 ナノカプセル−HSPC−PEG2000(3.34モル%)、PEG2000を基剤とする本発明のナノカプセル、HSPCに対する従来方法により取り込むことができる最大量。この処方物は、例7の処方物4に相当し、新しいラット4匹の群に注射した。
処方物2k−6% 例3で詳細に説明した後挿入方法により、本発明のナノカプセルの表面総脂質の6モル%に相当する量のDSPE−PEG2000を取り込んだ、HSPCを基剤とするナノカプセル。
処方物5k−6% 処方物2k−6%のナノカプセルを製造するために調製した、HSPCを含んでなる同じ親処方物を基剤とするが、後挿入方法によりDSPE−PEG5000を取り込んだ、本発明のナノカプセル。
処方物2k−10% 処方物2k−6%のナノカプセルを製造するために調製した、HSPCを含んでなる同じ親処方物を基剤とするが、後挿入方法により10モル%のDSPE−PEG2000を取り込んだ、本発明のナノカプセル。
上に詳細に説明した3種類の処方物が血液から排除される結果を図6に示す。
図6に示すデータは、後挿入方法の優位性を立証している。具体的には、該後挿入方法により、本発明の、ただし従来方法により製造されたナノカプセルのステルス特性よりも明らかに優れたステルス特性を有する本発明のナノカプセルを得ることができる。その上、この研究は、本発明のナノカプセルのステルス特性が長時間にわたって安定しており、保持されることも立証している。処方物2k−3.34は、3箇月早く製造され、この研究のために再度注射された。得られたプロファイルは、同等である(注射された量の22%より僅かに大きい量が、図4に示すように、4時間後に見られる)。図6に示す処方物は、顕著なステルス特性を示している。比較用ナノカプセルの処方物(DSPE−PEGを含まない)または(先行する例の処方物1および先行技術の研究の処方物)は、2時間後に10%未満の残留投与量を示す。
後挿入方法により、図6の血液プロファイルにより示すように、従来方法により取り込むことができる量よりも大きい量のDSPE−PEGを取り込むことができ、それによって、製剤の循環時間を改良し、注射した後に続く最初の12時間の間に血液中に大量のナノカプセルを必要とする用途に採用することができる。例えば、該後挿入方法により製造された処方物は、すべて4時間後に注射量の約60%を示す。8時間目には、処方物2k−6%のナノカプセルの残留物量は、18%を超えている。より長いPEG鎖(DSPE−PEG5000)を有する同じ6モル%のDSPE−PEGは、8時間目に注射量の40%を超える量を得ることができる。より多くの、10モル%までのDSPE−PEG2000を導入すると、8時間目に注射量の50%であり、処方物5k−6%のプロファイルよりも僅かに優れたプロファイルを得ることができる。従って、後挿入方法により製造された、本発明によるナノカプセル処方物のステルス特性は、文献中に記載されている「ステルス」固体ナノ粒子で観察されるステルス特性より明らかに大きい。
E)抗癌薬を装填したステルスナノカプセルの製造例
例9 パクリタキセルおよびドセタキセルステルス脂質ナノカプセルの製造
パクリタキセルおよびドセタキセルを従来方法により脂質ナノカプセル中に配合し、次いで得られた薬物装填したナノカプセルを後挿入方法によりポリエチレングリコール化し、ステルス特性を与えることができる。
脂質ナノカプセルの内側コアを構成するドセタキセルまたはパクリタキセルのトリグリセリド溶液を、その薬物をトリグリセリド中に75℃で溶解させることにより、調製する。薬物の量は、室温に冷却した時に再結晶しない溶液を得るように調節する。パクリタキセルおよびドセタキセルの場合、短いアルキル鎖を有するトリグリセリドは、長いアルキル鎖(>C8)を有するトリグリセリドよりも優れた溶解度を示す。パクリタキセルおよびドセタキセルの、C8エステル組成が異なるトリグリセリド溶液を表7に示す。
表7 パクリタキセルおよびドセタキセルのトリグリセリド溶液

トリグリセリド 溶解度(%w/w)
名称/供給者 規格 C8含有量 パクリ ドセ
タキセル タキセル
Labrafac(商品名)cc C8:50-80% 56.7% 1.6 2
(Gattefosse) C10:20-50%
Miglyol(商品名)810N C8:65-80% 70.4% 2.7 3.9
(Sasol) C10:20-35%
Tricaprylin C8: >99% >99% 6 7
(Sigma) C10: NR
得られるトリグリセリド溶液中の薬物の重量百分率
表7は、C8エステル含有量が高いトリグリセリド(すなわちグリセリルトリカプリレート=Tricaprylin)が大量のパクリタキセルまたはドセタキセルを可溶化することを示している。純粋なC8化合物であるTricaprylinは、両方の薬物に対して最良の溶剤であった。6%以下のパクリタキセルおよび7%以下のドセタキセルのTricaprylin溶液は、室温で長期間保存できる。
一例として、6%ドセタキセルのTricaprylin溶液は、下記の組成を有する。
−Tricaprylin 552.0mg
−ドセタキセル 35.3mg
6%ドセタキセルのTricaprylin溶液は、25℃で数箇月間安定している。
薬物装填した、DSPE−PEGを含まない脂質ナノカプセルは、パクリタキセルまたはドセタキセルのTricaprylin溶液から、従来方法により製造することができる。6%パクリタキセルまたは7%ドセタキセルのTricaprylin溶液を使用して脂質ナノカプセルを製造する場合、薬物の結晶がそれぞれ10日または118日後に生じる。この不安定化現象は、これらのTricaprylin溶液が飽和に近いためである。薬物装填した脂質ナノカプセル製剤の安定性は、Tricaprylin中の薬物量を下げることにより、改良することができる。Tricaprylin中5%パクリタキセルで製造した脂質ナノカプセルは、32日間安定しており、Tricaprylin中6%ドセタキセルで製造した脂質ナノカプセルは、25℃または5℃で少なくとも7箇月間安定している。
5%パクリタキセルまたは6%ドセタキセルの「Tricaprylin溶液」で製造した、パクリタキセルまたはドセタキセル装填した脂質ナノカプセルは、下記の組成を有することができる。
−HSPC 75mg
−Solutol(商品名)HS15 15400mg
−「Tricaprylin溶液」 504mg
−NaCl 220mg
−水 十分に加える5000mg
薬物装填したナノカプセルは、下記の特徴を有する(表8)。
表8 薬物装填した脂質ナノカプセルの特徴

使用したTricaprylinの溶液 薬物装填(%w/w) サイズ(nm)
薬物無し 0 72
パクリタキセル5% 2.58% 73
ドセタキセル6% 3.09% 77
ドセタキセルは、パクリタキセルよりも、薬物装填量が優れており、安定性が改良されているので、好ましい。しかし、2%w/wパクリタキセル脂質ナノカプセルは数箇月間安定している。3.09%w/w(「3%」)ドセタキセル脂質ナノカプセルの安定性は25℃で7箇月を超える。
次いで、親の薬物装填した脂質ナノカプセル製剤を使用し、例3に記載した後挿入方法により、薬物装填したステルス脂質ナノカプセルを製造する。手短に言うと、得られた薬物装填した脂質ナノカプセル製剤の体積を25mLにする。2mLのアリコートを使用してDSPE−PEGミセル溶液(表9参照)と共に温置(15分間の予備温置に続き、60℃で90分間温置)し、後挿入時間の後、製剤を氷浴中で冷却する。DSPE−PEG後挿入の後で得られる本発明の課題である薬物装填した脂質ナノカプセルは、数箇月間安定している(配合した薬物の再結晶も、サイズの大きな変化も観察されなかった)。ドセタキセル3.5%を装填した脂質ナノカプセルの幾つかのDSPE−PEG後挿入を表9に示す。
表9 ドセタキセル3.5%(w/w)ステルス脂質ナノカプセルの特徴

製剤 サイズ(nm)
比較用LN 72
LN−DSPE−PEG 2000 −6モル% 78
LN−DSPE−PEG 5000 −6モル% 79
LN−DSPE−PEG 2000 −10モル% 82
LN−DSPE−PEG 5000 −10モル% 83
ドセタキセル3.5%を含み、同じ条件下で温置し、後挿入を行わなかった脂質ナノカプセル(LN)
どの製剤でもドセタキセルの再結晶は起きなかった。比較用製剤と比較して、直径の大きな増加は、ドセタキセル装填した脂質ナノカプセルの表面におけるDSPE−PEG脂質の効果的な挿入を反映している。
F)本発明の抗癌薬を装填したステルスナノカプセルにより生体内で行った毒性実験の結果
例10 健康なマウスにおける、ドセタキセル装填したナノカプセルとTaxotere(商品名)の毒性評価
マウスにおけるドセタキセルの毒性を、様々な処方物に対して、様々な投与量で評価した。抗癌薬の毒性は、処方物を静脈内注射した後のマウスの体重損失を測定することにより、評価することができる。ドセタキセルを、市販の注射溶液Taxotere(商品名)(Aventis)、または非ポリエチレングリコール化脂質ナノカプセル(LN)およびステルス脂質ナノカプセル(S−LN)中処方物として注射した。
Taxotere(商品名)は、ドセタキセルをポリソルベート80、エタノールおよび水に入れた溶液である。
脂質ナノカプセルおよびステルス脂質ナノカプセルは、例9に記載されている方法により、ドセタキセル装填量が3%w/wになるように製造した。これらの製剤は、25℃で7箇月を超える安定性を示し、下記の特徴(表10)を有する。
表10 3%w/wドセタキセルを装填したLNおよびS−LNの特徴

名称 組成 ポリエチレン サイズ
グリコール化
LN HSPC 75mg − 70nm
Solutol(商品名)HS15 400mg DSPE-PEG2000
S−LN 「Tricaprylin溶液 」 504mg 6モル% 80nm
6%w/wドセタキセルのTricaprylin溶液を使用した。
ドセタキセル処方物(Taxotere(商品名)、非ポリエチレングリコール化3%w/wドセタキセル装填したナノカプセルおよび3%w/wドセタキセル装填したDSPE−PEG2000−6モル%ナノカプセル)を、生理食塩水で希釈し、20、40および60mg/kgドセタキセルで注射した。注射用ドセタキセル溶液は毒性が高いので、Taxotere(商品名)では60mg/kg投与量は試験しなかった。これらのドセタキセル処方物をマウスの8群に投与し、もう一つの「比較用」群には生理食塩水を注射した(表11)。
表11 毒性研究に使用した処方物および投与量

処方物/投与量 20 mg/kg 40 mg/kg 60 mg/kg
3%w/w/ドセタキセル装填した LN-20 LN-40 LN-60
脂質ナノカプセル(LN)
DSPE-PEG2000 -6モル%
3%w/w/ドセタキセル装填した S-LN-20 S-LN-40 S-LN-60
ステルス脂質ナノカプセル(S-LN)
Taxotere(商品名) TXT-20 TXT-40 -
毒性研究は、健康な雄のBALB/cマウス、体重17〜20gで行った(処方物一種あたりマウス7匹、8処方物+比較用1)。マウスは、特定処方物(または比較用群には生理食塩水溶液)250μLを1回の静脈内投与量として投与された。最初の注射(D0)前の体重を基準体重とする。マウスは、0(D0)、5(D5)および10(D10)日で、3回の投与を受けた。マウスは、D28まで毎日、次いで、D30、D33およびD40に、体重を測定し、明らかな有害反応に関して検査した。
図7は、9群のマウスに対する相対的な体重(D/D0)を示す(誤差範囲は示していない。RSDはすべて<2.4%であった。)。すべてのドセタキセル処方物が体重損失を引き起こし、その損失は投与量の増加と共に増加した。比較群(Ctrl)は体重増加を示した。TXT−40群に関しては、2匹のマウスが後脚の萎縮および麻痺を示したので、研究を3回目の注射前のD10で中止した。TXT−40群のマウスは、体重損失が15%を超え、3回目の注射に耐えられなくなったので、10日目に殺した。
LNまたはS−LN中に20mg/kgで装填されたドセタキセルは、最下点(D23)で、Taxotere(商品名)溶液中の対応するドセタキセル投与量よりも低い体重損失(b.w.l.)を引き起こした(P<0.05、Student Test)。その上、Taxotere(商品名)中ドセタキセル40mg/kg投与量(TXT−40)は、9.7日で15%(b.w.l.)に達し、最も高い毒性を示したが、その(b.w.l.)は、LN−40やS−LN−40の対応する投与量よりも大きく、さらに60mg/kg投与量(LN−60およびS−LN−60)よりも大きかった。処方物の毒性効果を比較するために、10%および15%b.w.l.が観察された日数をそれぞれ表12および図8に示す。
表12 マウス(n=7)における10%体重損失に対応する平均日数および投与されたドセタキセルの蓄積量

群 平均日数±SD 蓄積投与量(mg/kg)
TXT−40 6.4±1.13 80
LN−60 8.3±0.95 120
S−LN−60 9.4±0.79 120
LN−40 10.7±0.95 120
S−LN−40 11.1±2.41 120
TXT−20 13.0±1.53 60
LN−20 16.1±3.08 60
S−LN−60 17.3±3.33 60
表12および図8は、Taxotere処方物が、ナノカプセル処方物よりも、等投与量でより急速に体重損失を誘発することを示している。15%b.w.l.は、TXT−40で、処方物LN−40およびS−LN−40またはLN−60およびS−LN−60のどれよりも著しく早く起きている(Student TestP<0.05)。
結論として、ドセタキセルを脂質ナノカプセルまたはステルス脂質ナノカプセル中にカプセル封入することは、同じ投与量で静脈内投与された市販の溶液Taxotere(商品名)と比較して、抗癌薬の毒性を下げる上で効果的であることが示された。その上、Taxotere(商品名)80mg/kg(2x40)の蓄積投与量は、毒性が高く、深刻な副作用を起こすのに対し、LNまたはS−LN中のドセタキセルは高投与量、すなわち180mg/kg(3x60)で投与することができ、b.w.l.は最下点でも20%未満であり、最後の投与から数週間で体重は増加することが分かった。従って、薬物を脂質ナノカプセルまたはステルス脂質ナノカプセル中に処方した場合、溶液よりも、高投与量でドセタキセルを投与するか、または観察される毒性効果を少なくすることができる。
G)本発明により抗癌薬を装填したステルスナノカプセルを、腫瘍を帯びたマウスに投与して行った、生体内生物配分研究の結果
例11 ドセタキセルを装填したナノカプセルとTaxotere(商品名)の、C26腫瘍を帯びたマウスにおける腫瘍蓄積
本発明により抗癌薬を装填したステルス脂質ナノカプセルの腫瘍蓄積を、3%w/wドセタキセル装填したDSPE−PEG2000−6モル%ステルス脂質ナノカプセル(S−LN)の処方物、非ポリエチレングリコール化3%w/w脂質ナノカプセル(LN)の処方物および市販のドセタキセル溶液Taxotere(商品名)(TXT)の比較研究で評価した。
処方物の製造
ドセタキセル装填したLNおよびS−LNを、該従来方法および後挿入方法により、例10に記載されているものと同じ成分および同じ相対比率を使用して製造した。両方のナノカプセル処方物を、[H]コレステロールヘキサデシルエーテル(ナノカプセルを追跡するため)および[14C]−ドセタキセル(薬物を追跡するため)で放射能標識を付けた。[14C]−ドセタキセルは、市販のドセタキセル溶液Taxotere(商品名)の標識付けにも使用した。3種類の処方物LN、S−LNおよびTXTを生理食塩水で適切に希釈し、ドセタキセル投与量1mg/kg(150μL)で静脈内注射した。ナノカプセル群は、0.7μCiの[H]および0.2μCiの[14C]を受け、Taxotere(商品名)マウスには0.35μCiの[14C]を注射した。
C26腫瘍を帯びたマウス
実験は、結腸癌26(C26)腫瘍を帯びた雌BALB/cマウス(17〜20g)に対して行った。腫瘍を埋植する前に、マウスの背中の毛を刈り取り、薬品で脱毛した。50μL成長媒体中2x10細胞の懸濁液を皮下注射することにより、各マウスの背中に3個のC26腫瘍を埋植した。マウスは、細胞接種後10日間、腫瘍の直径が平均8mm(5〜10mm)に達するまで試験した。次いで、腫瘍を帯びたマウスを3つの群(LN、S−LNおよびTXT)に分け、1mg/kgドセタキセルの投与量に相当する150μLの処方物を静脈内注射した。注射から2、6および12時間後にマウスを殺した(n=5)。
処理の前に腫瘍を秤量した。腫瘍をSoluene 350の存在下で消化し、30%過酸化水素を使用して漂白し、例6に記載するようにして得た溶液にシンチレーション液を加えた。腫瘍中のナノカプセルおよびドセタキセルの量を、シンチレーション計数器を使用して[H]および[14C]放射能をそれぞれ計数することにより評価した。
様々な時間における腫瘍蓄積の評価
図9は、様々な時間における腫瘍中の脂質ナノカプセル(LN)およびステルス脂質ナノカプセル(S−LN)の蓄積を示す。本発明の3%w/wドセタキセル装填したDSPE−PEG2000−6モル%脂質ナノカプセルは、それらの長い循環およびステルス特性のために、3%w/wドセタキセル装填した従来の脂質ナノカプセルよりも、どの時点においても、より高い腫瘍蓄積を示した。腫瘍中のS−LN量は、投与から12時間後に、従来LNより少なくとも3倍高かった。
図10は、脂質ナノカプセル(LN)、ステルス脂質ナノカプセル(S−LN)および基準の市販処方物Taxotere(商品名)(TXT)に対する腫瘍中ドセタキセル蓄積の量を示す。統計的に重大な差を、一方向分散分析により計算した(特定時間における処方物の間および特定処方物に対する異なった時間の間)。P値が重大であると考えられる場合(P<0.05)、post-hoc Scheffe試験を使用し、平均対間の比較を行った。静脈内注射から2時間後、腫瘍中に蓄積したドセタキセルの量は、3種類の処方物に対して大きく異なっていなかった(P=0.954)。投与から6時間後、腫瘍中に蓄積したドセタキセルの量は、S−LNがTXTよりも著しく高かった。投与から12時間後にはさらに大きな差が認められたが、TXTとLNの間でドセタキセルの量に大きな差は無く、S−LNは、LNまたはTXTよりも、より多くのドセタキセルを腫瘍に送達することができた(しかし、腫瘍中のドセタキセル量は、TXTとLNの間で統計的に異なっていない)。各処方物に対するデータの解析により、TXT処方物として投与されたドセタキセル量は、時間と共に変化しない(P=0.995)ことが分かった。従来のLN中で投与されたドセタキセル量は、腫瘍中で時間と共に僅かに増加したが、統計的に重大ではなかった(P=0.069)。しかし、本発明のドセタキセル装填したS−LNでは、腫瘍中のドセタキセル量が時間と共に著しく増加した。
結論として、本発明のドセタキセル装填したステルス脂質ナノカプセルは、市販のドセタキセル溶液(Taxotere(商品名))よりも、同じ投与量で投与した場合、腫瘍中により多く蓄積することが示された。その上、本出願者は、本発明の薬物装填したステルス脂質ナノカプセルは、その長い循環特性のために、腫瘍箇所を標的とする抗癌剤の量に関して、従来脂質ナノカプセルよりも効果的であることを見出した。
図1は、HSPCを使用して製造されるナノカプセルのサイズとDSPE−PEG2000のモル百分率との関係を示す。 図2は、DSPE−PEGを含まずに、HSPCを使用して製造されるナノカプセルのサイズと表面脂質/総脂質比との関係を示す。 図3は、後挿入方法を使用して得られる様々な処方物に対するナノカプセルのサイズを示す。 図4は、DSPE−PEG2000またはDSPE−PEG5000を使用して製造されるナノカプセルの処方物に対するステルス特性の比較(血液中における消失の速度論)である。 図5は、DSPE−PEG2000またはDSPE−PEG5000を使用して製造されるナノカプセル、または先行技術により製造されるナノカプセルの様々な処方物に対するステルス特性の比較(血液中における消失の速度論)である。 図6は、従来方法を使用して、または後挿入方法を使用して製造されるナノカプセルの様々な処方物に対するステルス特性の比較(血液中における消失の速度論)である。 図7は、3回のドセタキセル静脈内注射(矢印)後のマウスの相対的平均体重の推移である。値は、1群あたりマウス7匹の、平均相対体重を表す。 図8は、ドセタキセルの様々な処方物をマウス(n=7)に投与した場合の、15%体重損失に達するまでの平均日数を示す。 図9は、マウス(n=5)に静脈内注射した後の様々な時間における、C26腫瘍中の、ドセタキセルを装填した脂質ナノカプセルの蓄積(注射された[H]、すなわちキャリヤーの%として表示)を示す。 図10は、マウス(n=5)に静脈内注射した後の様々な時間における、C26腫瘍中の、ドセタキセルの蓄積(ng)を示す。

Claims (51)

  1. 周囲温度で液体または半液体である実質的に脂質のコアと、および
    本来脂質である少なくとも一種の親水性界面活性剤と、本来脂質である少なくとも一種の親油性界面活性剤と、および少なくとも一種の両親媒性ポリ(エチレングリコール)誘導体とを含んでなる外側脂質の外被とからなり、
    前記ポリ(エチレングリコール)成分の分子量が1000g/モル以上である、ステルス脂質ナノカプセル。
  2. 前記ポリ(エチレングリコール)成分の分子量が、2000g/モル以上である、請求項1に記載のステルス脂質ナノカプセル。
  3. 前記親油性界面活性剤がレシチンであり、前記レシチンのホスファチジルコリン比率が少なくとも95%であり、好ましくは99%を超えるものである、請求項1または2に記載のステルス脂質ナノカプセル。
  4. 前記親油性界面活性剤が、ゲル/液相転移温度が少なくとも25℃であり、好ましくは37℃を超えるものである、請求項1〜3のいずれか一項に記載のステルス脂質ナノカプセル。
  5. 前記親油性界面活性剤が、炭素数が少なくとも16であるアシル鎖を含んでなるリン脂質である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のステルス脂質ナノカプセル。
  6. 前記親油性界面活性剤が、HSPC(水素化大豆ホスファチジルコリン)、DSPC(ジステアロイルホスファチジルコリン)およびDPPC(ジパルミトイルホスファチジルコリン)、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項5に記載のステルス脂質ナノカプセル。
  7. 前記親油性界面活性剤が、前記外側脂質の外被を形成する前記分子の5〜30モル%で存在してなる、請求項1〜6のいずれか一項に記載のステルス脂質ナノカプセル。
  8. 前記親水性界面活性剤が、ポリ(エチレングリコール)アルキルエステルおよびポリ(エチレングリコール)アルキルエーテル、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1〜7のいずれか一項に記載のステルス脂質ナノカプセル。
  9. 前記親水性界面活性剤が、15単位のエチレングリコール鎖を含んでなる、ポリ(エチレングリコール)−660の12−ヒドロキシステアレート型の非イオン系界面活性剤である、請求項8に記載のステルス脂質ナノカプセル。
  10. 前記親水性界面活性剤が、前記外側脂質の外被を形成する前記分子の60〜90モル%、好ましくは80モル%で存在してなる、請求項1〜9のいずれか一項に記載のステルス脂質ナノカプセル。
  11. 前記ポリ(エチレングリコール)の両親媒性誘導体が、前記外側脂質の外被中に固定できるようにする疎水性成分と、および前記脂質ナノカプセルの外側に向き、その表面に親水性を付与するポリ(エチレングリコール)型の親水性成分とを含んでなる、請求項1〜10のいずれか一項に記載のステルス脂質ナノカプセル。
  12. 前記ポリ(エチレングリコール)の両親媒性誘導体が、生物分解性リン脂質から選択される、請求項1〜11のいずれか一項に記載のステルス脂質ナノカプセル。
  13. 前記生物分解性リン脂質が、
    DPPE−PEG(ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン)、
    DSPE−PEG(ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン)、
    DOPE−PEG(ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン)、および
    POPE−PEG(パルミトイルオレイルホスファチジルエタノールアミン)、
    (上記式中、xは1000g/モル以上である)
    、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項12に記載のステルス脂質ナノカプセル。
  14. 前記生物分解性リン脂質が、DSPE−PEG2000、DSPE−PEG3000およびDSPE−PEG5000、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項13に記載のステルス脂質ナノカプセル。
  15. 前記ポリ(エチレングリコール)の両親媒性誘導体が、前記外側脂質の外被を形成する前記分子の0.5〜12モル%、好ましくは1〜10モル%で存在する、請求項1〜14のいずれか一項に記載のステルス脂質ナノカプセル。
  16. 前記実質的に脂質のコアが、前記ナノカプセルの総重量の20〜60重量%、好ましくは前記ナノカプセルの総重量の25〜50重量%で存在する、請求項1〜15のいずれか一項に記載のステルス脂質ナノカプセル。
  17. 前記実質的に脂質のコアが、脂肪酸エステルおよび/またはトリグリセリドおよび/または油、および/またはそれらの混合物から構成されている、請求項1〜16のいずれか一項に記載のステルス脂質ナノカプセル。
  18. 前記実質的に脂質のコアを形成する前記トリグリセリドが、炭素数が6〜14である中鎖トリグリセリド、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項17に記載のステルス脂質ナノカプセル。
  19. 前記実質的に脂質のコアを形成する前記脂肪酸エステルが、炭素数が8〜18である中鎖脂肪酸からなる群から選択される、請求項17に記載のステルス脂質ナノカプセル。
  20. 前記実質的に脂質のコアを形成する前記脂肪酸エステルが、パルミチン酸エチル、オレイン酸エチル、ミリスチン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項19に記載のステルス脂質ナノカプセル。
  21. 直径が50〜150nm、好ましくは直径が80〜120nmである、請求項1〜20のいずれか一項に記載のステルス脂質ナノカプセル。
  22. 前記外側脂質の外被の前記外側表面が本来親水性であり、前記実質的に脂質のコアが本来親油性である、請求項1〜21のいずれか一項に記載のステルス脂質ナノカプセル。
  23. 前記ステルス脂質ナノカプセルの表面に特異的なリガンドを有し、前記リガンドが、前記リガンドに対するレセプタ−を有する細胞、特に腫瘍細胞、を積極的に標的化する能力を前記ステルス脂質ナノカプセルに与える、請求項1〜22のいずれか一項に記載のステルス脂質ナノカプセル。
  24. 前記リガンドが、糖、オリゴ糖、ビタミン、オリゴペプチド、抗体断片およびモノクローナル抗体型からなる群から選択される、請求項23に記載のステルス脂質ナノカプセル。
  25. 前記ステルス脂質ナノカプセルが投与されるホストの血液区画で少なくとも2時間の半減期を有する、請求項1〜24のいずれか一項に記載のステルス脂質ナノカプセル。
  26. 前記ステルス脂質ナノカプセルの内容物を生物分解により、特に酵素的消化により、急速に放出することができる、請求項1〜25のいずれか一項に記載のステルス脂質ナノカプセル。
  27. 一種以上の活性要素を含む、請求項1〜26のいずれか一項に記載のステルス脂質ナノカプセル。
  28. 一種以上の、本来主として親油性である抗癌性活性要素を含む、請求項27に記載のステルス脂質ナノカプセル。
  29. 前記抗癌性活性要素が、パクリタキセルおよびその誘導体、例えばドセタキセル、カンプトテシンおよびその誘導体、例えばイリノテカン、トポテカン、ルビテカン(rubitecan)、およびブスルファン、クロラムブシル、フタロシアニン、カロテノイドおよびダウノマイシンからなる群から選択される、請求項28に記載のステルス脂質ナノカプセル。
  30. 一種以上の、本来両親媒性である抗癌性活性要素を含む、請求項27に記載のステルス脂質ナノカプセル。
  31. 前記抗癌性活性要素が、シタラビン、シクロホスファミド、メトトレキサート、フルオロ誘導体、例えば5−フルオロウラシルまたは5−フルオロウリジン、およびドキソルビシンからなる群から選択される、請求項30に記載のステルス脂質ナノカプセル。
  32. 抗炎症性物質、コルチコイド、抗生物質、鎮痛薬および抗感染剤からなる群から選択された一種以上の活性要素を含む、請求項27に記載のステルス脂質ナノカプセル。
  33. デキサメタソン、インドメタシン、イブプロフェン、ケトプロフェン、ケトコナゾール、プロスタグランジンE1またはアムホテリシンBを含む、請求項32に記載のステルス脂質ナノカプセル。
  34. 請求項1〜33のいずれか一項に記載のナノカプセルの製造方法であって、
    ポリ(エチレングリコール)の両親媒性誘導体が欠けているナノカプセルを予備形成することと、および
    次いで前記ポリ(エチレングリコール)の両親媒性誘導体を前記ナノカプセルの表面中に後挿入することとを含んでなる、方法。
  35. 前記予備形成することが、数サイクルの温度増加および低下により行う油/水エマルションの転相により、ポリ(エチレングリコール)の両親媒性誘導体が欠けているナノカプセルを合成することを含んでなる、請求項34に記載の方法。
  36. 前記後挿入することが、予備形成されたナノカプセルを、ポリ(エチレングリコール)の両親媒性誘導体の存在下で共温置する第一工程と、および
    その後に、得られたポリ(エチレングリコール)の両親媒性誘導体/予備形成されたナノカプセル混合物を、温度0〜5℃に到達するように急速に冷却する第二の「急冷」工程とを含んでなる、請求項34に記載の方法。
  37. 前記ポリ(エチレングリコール)の両親媒性誘導体/予備形成されたナノカプセル混合物の共温置工程が、本来脂質である前記親油性界面活性剤のゲル/液体相転移温度よりほんの僅かに高いが、ポリ(エチレングリコール)の両親媒性誘導体/予備形成されたナノカプセル混合物の転相温度より低い温度で行われる、請求項36に記載の方法。
  38. 前記両親媒性誘導体を前記後挿入工程に導入する時に、前記両親媒性誘導体の親水性鎖の比率および長さを調節することにより、前記ナノカプセルの直径が調節される、請求項34〜37のいずれか一項に記載の方法。
  39. 請求項1〜33のいずれか一項に記載のナノカプセルの製造方法であって、
    従来の合成方法の出発混合物中の、塩および親水性界面活性剤の比率、および親油性界面活性剤の純度を調節することにより、前記ナノカプセルの直径が調節される、方法。
  40. 有機溶剤を含まず、非経口使用に承認された生物分解性化合物だけを使用する、請求項34〜39のいずれか一項に記載の方法。
  41. 前記ナノカプセルが、直径0.45μm〜0.22μmのフィルターを通す滅菌濾過により滅菌される、請求項34〜40のいずれか一項に記載の方法。
  42. 前記ナノカプセルが凍結乾燥され、次いでコロイド状懸濁液の形態に即座に還元される、請求項34〜41のいずれか一項に記載の方法。
  43. 請求項1〜33のいずれか一項に記載の脂質ナノカプセルを含んでなる、医薬組成物。
  44. 前記脂質ナノカプセルを含むコロイド状水性懸濁液の形態にある、請求項43に記載の医薬組成物。
  45. 静脈内注射により、癌、特に充実性または循環性腫瘍を処置する医薬品を製造するための、請求項27〜31のいずれか一項に記載の脂質ナノカプセルの使用。
  46. 循環性または充実性腫瘍を積極的な標的化により処置する医薬品を製造するための、請求項45に記載の使用。
  47. 充実性腫瘍を、腫瘍毛細管を通る前記ナノカプセルの浸出に続いて、控えめな標的化により処置する医薬品を製造するための、請求項45に記載の使用。
  48. 組織の炎症および/または感染を処置する医薬品を製造するための、請求項32または33に記載の脂質ナノカプセルの使用。
  49. 医薬品が、非経口的に投与されるか、または患者の循環中に、脈管内、特に静脈内または動脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、または関節内注射される、請求項45〜48のいずれか一項に記載の使用。
  50. 中毒の場合に続いて血液循環中に存在する疎水性分子を吸収させる医薬品を製造するための、請求項1〜26のいずれか一項に記載の脂質ナノカプセルの使用。
  51. 活性要素の、健康な組織に対する毒性が低下する、請求項45〜50のいずれか一項に記載の使用。
JP2004510937A 2002-06-11 2003-06-11 ステルス脂質ナノカプセル、その製造方法、およびその、活性要素用キャリヤーとしての使用 Pending JP2005532355A (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
FR0207175A FR2840532B1 (fr) 2002-06-11 2002-06-11 Nanocapsules lipidiques furtives, procede de preparation et utilisation comme vecteur de principes(s) actif(s)
US42111202P 2002-09-09 2002-09-09
PCT/IB2003/003213 WO2003103822A2 (en) 2002-06-01 2003-06-11 Stealth lipid nanocapsules, methods for the preparation thereof and use thereof as a carrier for active principle(s)

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2005532355A true JP2005532355A (ja) 2005-10-27

Family

ID=29738029

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2004510937A Pending JP2005532355A (ja) 2002-06-11 2003-06-11 ステルス脂質ナノカプセル、その製造方法、およびその、活性要素用キャリヤーとしての使用

Country Status (13)

Country Link
US (1) US20050214378A1 (ja)
EP (1) EP1531800B1 (ja)
JP (1) JP2005532355A (ja)
CN (1) CN1658845A (ja)
AU (1) AU2003247061B2 (ja)
BR (1) BR0314767A (ja)
CA (1) CA2488385A1 (ja)
IL (1) IL165603A (ja)
MX (1) MXPA04012567A (ja)
NO (1) NO333811B1 (ja)
NZ (1) NZ537393A (ja)
WO (1) WO2003103822A2 (ja)
ZA (1) ZA200500228B (ja)

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008542360A (ja) * 2005-06-06 2008-11-27 学校法人早稲田大学 骨髄指向性薬物送達物質およびその用途
JP2011529042A (ja) * 2008-07-23 2011-12-01 ブハラット セルムズ アンド ヴァクシンズ リミテッド 安定した注射可能な水中油型ドセタキセルナノエマルション
JP2013501752A (ja) * 2009-08-11 2013-01-17 ピエール、ファーブル、メディカマン Dhaエステルを含む非経口投与のための医薬組成物
WO2018180966A1 (ja) * 2017-03-28 2018-10-04 富士フイルム株式会社 マイクロカプセル及びその製造方法

Families Citing this family (32)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US20040234472A1 (en) 2001-04-20 2004-11-25 Jackson John K. Micellar drug delivery systems for hydrophobic drugs
JP4886297B2 (ja) 2002-11-01 2012-02-29 バイオデリバリー サイエンシーズ インターナショナル インコーポレイティッド ジオデート送達媒体
FR2864900B1 (fr) * 2004-01-09 2007-10-12 Oreal Dispersion aqueuse de nanocapsules a coeur huileux
WO2005079856A1 (en) * 2004-02-23 2005-09-01 The University Of British Columbia Drug delivery compositions comprising hydrophobic polymers and amphipathic molecules
WO2007001448A2 (en) 2004-11-04 2007-01-04 Massachusetts Institute Of Technology Coated controlled release polymer particles as efficient oral delivery vehicles for biopharmaceuticals
US9486408B2 (en) 2005-12-01 2016-11-08 University Of Massachusetts Lowell Botulinum nanoemulsions
US9267937B2 (en) 2005-12-15 2016-02-23 Massachusetts Institute Of Technology System for screening particles
EP2007435B1 (en) 2006-03-31 2019-12-18 Massachusetts Institute Of Technology System for targeted delivery of therapeutic agents
EP2019691B1 (en) 2006-05-15 2020-08-12 Massachusetts Institute of Technology Polymers for functional particles
US9381477B2 (en) 2006-06-23 2016-07-05 Massachusetts Institute Of Technology Microfluidic synthesis of organic nanoparticles
CA2666322C (en) * 2006-10-10 2013-04-23 Jina Pharmaceuticals, Inc. Aqueous systems for the preparation of lipid-based pharmaceutical compounds; compositions, methods, and uses thereof
US20100068251A1 (en) * 2006-10-10 2010-03-18 Jina Pharmaceuticals, Inc. Aqueous Systems For The Preparation Of Lipid Based Pharmaceutical Compounds; Compositions, Methods, And Uses Thereof
EP2091516A2 (en) * 2006-12-01 2009-08-26 Anterios, Inc. Peptide nanoparticles and uses therefor
SG177184A1 (en) 2006-12-01 2012-01-30 Anterios Inc Amphiphilic entity nanoparticles
EP1932516A1 (en) * 2006-12-11 2008-06-18 Universiteit Utrecht Holding B.V. Anti-inflammatory compounds containing compositions for treatment of cancer
EP1946747A1 (en) * 2007-01-17 2008-07-23 Sandoz AG Pharmaceutical composition of improved stability containing taxane derivatives
EP2134830A2 (en) 2007-02-09 2009-12-23 Massachusetts Institute of Technology Oscillating cell culture bioreactor
JP2010523595A (ja) * 2007-04-04 2010-07-15 マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー ポリ(アミノ酸)ターゲッティング部分
EP2036577A1 (de) * 2007-09-14 2009-03-18 mivenion GmbH Diagnostische Stoffe für die optische bildgebende Untersuchung auf der Basis von nanopartikulären Formulierungen
CN105770878A (zh) 2007-10-12 2016-07-20 麻省理工学院 疫苗纳米技术
US8277812B2 (en) 2008-10-12 2012-10-02 Massachusetts Institute Of Technology Immunonanotherapeutics that provide IgG humoral response without T-cell antigen
US8343498B2 (en) 2008-10-12 2013-01-01 Massachusetts Institute Of Technology Adjuvant incorporation in immunonanotherapeutics
US8591905B2 (en) 2008-10-12 2013-11-26 The Brigham And Women's Hospital, Inc. Nicotine immunonanotherapeutics
US8343497B2 (en) 2008-10-12 2013-01-01 The Brigham And Women's Hospital, Inc. Targeting of antigen presenting cells with immunonanotherapeutics
FR2939699B1 (fr) * 2008-12-12 2011-05-06 Univ Angers Procede de preparation de nanoparticules lipidiques
US20110166214A1 (en) 2010-01-07 2011-07-07 Innopharma, Llc Methods and compositions for delivery of taxanes in stable oil-in-water emulsions
KR101769666B1 (ko) 2015-04-13 2017-08-21 영남대학교 산학협력단 독소루비신 및 이리노테칸을 포함하는 항암용 약학 조성물 및 이의 제조방법
CN105213313B (zh) * 2015-11-17 2018-08-14 西安力邦肇新生物科技有限公司 一种地西他滨长循环脂质体冻干制剂及其制备方法
CA3044219A1 (en) 2016-11-21 2018-05-24 Eirion Therapeutics, Inc. Transdermal delivery of large agents
GB201721832D0 (en) 2017-12-22 2018-02-07 Waterford Institute Of Tech Ocular drug delivery
JP2022537042A (ja) * 2019-06-21 2022-08-23 ウニベルシテ カソリーク デ ルーベン インクレチンミメティックが装填された脂質ナノカプセル
CN112773776B (zh) * 2019-11-11 2023-06-20 上海胜联医药科技有限公司 一种载药纳米粒体系

Family Cites Families (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6416740B1 (en) * 1997-05-13 2002-07-09 Bristol-Myers Squibb Medical Imaging, Inc. Acoustically active drug delivery systems
US6217886B1 (en) * 1997-07-14 2001-04-17 The Board Of Trustees Of The University Of Illinois Materials and methods for making improved micelle compositions
US6123923A (en) * 1997-12-18 2000-09-26 Imarx Pharmaceutical Corp. Optoacoustic contrast agents and methods for their use
FR2805761B1 (fr) * 2000-03-02 2002-08-30 Mainelab Nanocapsules lipidiques, procede de preparation et utilisation comme medicament

Cited By (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008542360A (ja) * 2005-06-06 2008-11-27 学校法人早稲田大学 骨髄指向性薬物送達物質およびその用途
JP2011529042A (ja) * 2008-07-23 2011-12-01 ブハラット セルムズ アンド ヴァクシンズ リミテッド 安定した注射可能な水中油型ドセタキセルナノエマルション
JP2013501752A (ja) * 2009-08-11 2013-01-17 ピエール、ファーブル、メディカマン Dhaエステルを含む非経口投与のための医薬組成物
JP2016000742A (ja) * 2009-08-11 2016-01-07 ピエール、ファーブル、メディカマン Dhaエステルを含む非経口投与のための医薬組成物
WO2018180966A1 (ja) * 2017-03-28 2018-10-04 富士フイルム株式会社 マイクロカプセル及びその製造方法
JPWO2018180966A1 (ja) * 2017-03-28 2019-06-27 富士フイルム株式会社 マイクロカプセル及びその製造方法
CN110325272A (zh) * 2017-03-28 2019-10-11 富士胶片株式会社 微胶囊及其制造方法

Also Published As

Publication number Publication date
CN1658845A (zh) 2005-08-24
NO20050153L (no) 2005-01-11
ZA200500228B (en) 2005-09-28
WO2003103822A2 (en) 2003-12-18
IL165603A0 (en) 2006-01-15
WO2003103822A3 (en) 2004-03-25
NO333811B1 (no) 2013-09-23
AU2003247061B2 (en) 2008-10-09
EP1531800A2 (en) 2005-05-25
BR0314767A (pt) 2005-07-26
MXPA04012567A (es) 2005-04-19
EP1531800B1 (en) 2011-06-08
NZ537393A (en) 2007-01-26
US20050214378A1 (en) 2005-09-29
CA2488385A1 (en) 2003-12-18
AU2003247061A1 (en) 2003-12-22
IL165603A (en) 2008-08-07

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP2005532355A (ja) ステルス脂質ナノカプセル、その製造方法、およびその、活性要素用キャリヤーとしての使用
Gadekar et al. Nanomedicines accessible in the market for clinical interventions
ES2366978T3 (es) Nanocápsulas lipídicas furtivas, procedimientos para su preparación y utilización de las mismas como vehículo para principio(s) activo(s).
Wang et al. Cancer nanomedicines stabilized by π-π stacking between heterodimeric prodrugs enable exceptionally high drug loading capacity and safer delivery of drug combinations
Estanqueiro et al. Nanotechnological carriers for cancer chemotherapy: the state of the art
Lukyanov et al. Micelles from lipid derivatives of water-soluble polymers as delivery systems for poorly soluble drugs
KR100789008B1 (ko) 신규 약물 제제
JP2006513984A (ja) 医薬的に活性な、脂質をベースにしたsn38製剤
EP1246608A1 (en) Pharmaceutical formulations for the delivery of drugs having low aqueous solubility
US20050260260A1 (en) Liposome compositions for the delivery of macromolecules
JP2003530362A (ja) 診断剤をターゲッティングするための脂質ベースの系
TW201711677A (zh) 磷脂-膽固醇酯奈米調配物及其相關方法
CN113384530B (zh) 一种多糖核心Nanocells及其制备方法与应用
Mehanna et al. Pharmaceutical particulate carriers: lipid-based carriers
Radmoghaddam et al. Lipid-based nanoformulations for TKIs delivery in cancer therapy
Bangale et al. Stealth liposomes: a novel approach of targeted drug delivery in cancer therapy
Kannan et al. Nanoparticle drug delivery to target breast cancer brain metastasis: Current and future trends
Kumar et al. Novel drug delivery system
Chaurawal et al. Nano-interventions for the Drug Delivery of Docetaxel to Cancer Cells
Grandhi et al. Design, synthesis, and functionalization of nanomaterials for therapeutic drug delivery
KR20090037985A (ko) 나노 입자 및 그의 제조 방법
Bhardwaj et al. Drug delivery systems to fight cancer
CN108926719B (zh) 用c(RGD-ACP-K)修饰的长循环脂质体
Oborotova et al. Role of new pharmaceutical technologies in enhancing the selectivity of antitumor drugs
Binaymotlagh et al. Liposome–Hydrogel Composites for Controlled Drug Delivery Applications

Legal Events

Date Code Title Description
A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20090303

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20090603

A602 Written permission of extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A602

Effective date: 20090610

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20090703

A602 Written permission of extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A602

Effective date: 20090710

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20091104