JP2005530007A - 水性掘削流体における粘性調整剤としての陰イオン分散ポリマーの使用 - Google Patents

水性掘削流体における粘性調整剤としての陰イオン分散ポリマーの使用 Download PDF

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Abstract

地下層を貫く坑井を掘削する際に使用される、pHが約7〜12及び粘度が20〜80sec(Marsch cone)の水性掘削流体であって、淡水あるいは塩水あるいは海水に1種以上の陰イオン分散ポリマーをポリマー活性に基いて約0.02〜2.5lb/barrelの割合で混合することによって調製されたものであり、該陰イオン分散ポリマーは、約2〜98モル%の1種以上の陰イオンモノマーと、約98〜2モル%の1種以上の非イオンモノマーから構成され、且つ、該陰イオン分散ポリマーのRSVが約10〜50dL/gであることを特徴とする水性掘削流体、地下層を貫く坑井を掘削する方法、及び、水性掘削流体の粘度を調整する方法。

Description

本発明は、陰イオンポリマーを含有する水性掘削流体に関する。特に、本発明は、陰イオン分散ポリマーを使用して、水性掘削流体の粘度を増大させる方法に関し、陰イオン分散ポリマーを含有する水性掘削流体に関し、地下層を貫く坑井を掘削するための掘削流体の使用に関する。
地下層から、石油、天然ガス及び水を回収するための坑井掘削において、掘削流体あるいは泥水は、ポンプにより、中空のドリルパイプを通って降下し、ドリルビットの表面を通過し、掘削穴を通って汲み上げられる。泥水は、ドリルビットを冷却及び潤滑させるため、及び、掘削屑を地表に運び上げるため、及び、坑井の壁面を封止して掘削穴を取り囲んでいる地下層中に水と掘削流体が失われるのを防止するために役立つ。泥水は、掘削した固体を地表へ運ぶため、及び、スクリーンを通過して大きな掘屑を取り除くため、及び、沈殿池において砂を取り除くために、適切な粘性とある程度のゲル化能力の両方の性質を必要とする。
適切な粘性を達成するために、さまざまなポリマー型の粘度調節剤が掘削流体に加えることができる。そのようなポリマー類の作用で掘削流体の粘度が増大し、岩盤層と回収物質の鉱脈との間にバリアを形成する。また、ポリマー類は、掘削流体や掘削される鉱石の滑りやすさを高め、使用した泥を潤滑させるのに役立つ。ポリマー類は、掘削流体が坑井から回収された後、水、石油、及び、不要な固形物を分離させる際においても、また有用である。
かつて使用されていたポリマー粘度調整剤としては、ラテックスポリマーが挙げられる。ここで、ポリマー固形分は炭化水素溶媒中に分散され、界面活性剤、ドライポリマー、及び、溶液ポリマ―によって安定化される。
ラテックスポリマーの不利な点としては、陸上や沖合いのプラットホーム上で散逸又は排出された場合に炭化水素や界面活性剤による環境への悪影響や、炭化水素溶媒に関連して火災の危険性が挙げられる。
さらに、幾つかの国における環境規制では、一定以上の深さの地下層中に油を含んだポリマー類の注入を禁止している。ラテックスポリマーも、使用に先立って転化させて水中油型エマルジョンを破壊しなければならないが、これには界面活性剤の付加的な使用が伴う。
ドライポリマーは、ラテックスポリマーあるいは溶液ポリマーと比較して、この形態で高ポリマー濃度が得られることから、従来、掘削作業に使用される。しかしながら、ドライポリマーは、溶解させることが非常に難しいという特有な点があり、ドライポリマーを活性な希釈形へと適切に調製することを可能ならしめるためには、多大なエネルギーと水を消費することが要求される。また、ドライポリマーの溶解性と関連した難点のため、典型的にはポリマー生成物が0.5%以下となるような、非常に希薄な溶液しか調製されず、それゆえ、水の使用要求量が非常に多くなる。非常に遠隔な掘削地点については、エネルギーと水が迅速に供給され、安全性のために多大な財務が投入される。それゆえに、掘削流体について、環境にやさしく、安全で、経済的な、粘性調節剤の開発が求められ続けている。
ある局面において、本発明は、地下層を貫く坑井を掘削する際に使用される水性掘削流体の粘性を増加させる方法であって、掘削流体に1種以上の陰イオン分散ポリマーの増粘有効量を添加する工程を含み、該陰イオン分散ポリマーは、約2〜98モル%の1種以上の陰イオンモノマーと、約98〜2モル%の1種以上の非イオンモノマーから構成され、且つ、該陰イオン分散ポリマーのRSVが約10〜50dL/gであることを特徴とするものである。
別の局面において、本発明は、地下層を貫く坑井を掘削する際に使用される、pHが約7〜12及び粘度が20〜80sec(Marsch cone)の水性掘削流体であって、淡水あるいは塩水あるいは海水に1種以上の陰イオン分散ポリマーをポリマー活性に基いて約0.02〜2.5lb/barrel の割合で混合することによって調製されたものであり、該陰イオン分散ポリマーは、約2〜98モル%の1種以上の陰イオンモノマーと、約98〜2モル%の1種以上の非イオンモノマーから構成され、且つ、該陰イオン分散ポリマーのRSVが約10〜50dL/gであることを特徴とするものである。
別の局面において、本発明は、地下層を貫く坑井(well bore)を掘削する方法であって、坑井(well bore)を通じて、pHが約7〜12及び粘度が20〜80sec(Marsch cone)の水性掘削流体を循環させる掘削方法であって、該水性掘削流体は、淡水あるいは塩水あるいは海水に1種以上の陰イオン分散ポリマーをポリマー活性に基いて約0.02〜2.5lb/barrelの割合で混合することによって調製されたものであり、該陰イオン分散ポリマーは、約2〜98モル%の1種以上の陰イオンモノマーと、約98〜2モル%の1種以上の非イオンモノマーから構成され、且つ、該陰イオン分散ポリマーのRSVが約10〜50dL/gであることを特徴とするものである。
本発明の掘削流体は、有機溶媒も界面活性剤も含有しない水溶性ポリマー組成物を使用して調製され、それによって、掘削工程を利用する産業界の環境面、安全面、取り扱い面、経済面の関心事に取り組む処理方式を提供する。
本発明の陰イオン分散ポリマーを使って調製された掘削流体は、ベントナイトを含有する泥水においてベントナイトを凝集させず、それゆえ、ドライポリマーから調製された類似の組成をもつベントナイト含有掘削流体と比較して、有効寿命をかなり増加させる。
また、本発明の陰イオン分散ポリマーを用いてベントナイト含有泥水を調製するときには、ドライポリマーを使って調製された対応する組成物と同等の掘出し特性(lifting characteristics)を持つ泥水を調製するためには、より少ないベントナイトが必要とされるだけであり、結果的にドリルビットの寿命を増加させる。これは、エンドユーザーにとっては、ベントナイトに関する費用を削減できるとともに、ドリルビットの取替え頻度を減らすことに関しても費用の削減を可能とする。
用語の定義
“陰イオン分散ポリマー”は、1種以上の無機塩を含有する水溶性連続相に分散した陰イオン水溶性ポリマーを意味する。水溶性連続相における水溶性陰イオンモノマーの分散重合の代表例は、U.S. Patent Nos. 5,605,970、U.S.Patent Nos. 5,837,776、U.S.Patent Nos. 5,985,992、U.S.Patent Nos. 6,265,477、PCT Application Number US01/10867中に見られ、これらの文献は、参照されることによって、本明細書の一部として組み込まれる。
分散ポリマーは、水、1種以上の無機塩、1種以上の水溶性陰イオンモノマーと非イオンモノマー、キレート化剤、pH緩衝剤、連鎖移動剤、水溶性安定化ポリマーのような重合添加剤と組み合わせることによって調製される。さらに続けて、構造変性及び/又は構造安定剤を混合物中に加えてもよい。この混合物の全てあるいは一部は、攪拌機、熱電対、窒素導入管、及び、水コンデンサーを装着した反応器に加えられる。この溶液は、攪拌下で混合され、所望の温度に加熱され、それから水溶性開始剤が加えられる。この溶液は、数時間にわたり温度を維持し且つ混合しながら、窒素パージされる。この反応過程で、水溶性ポリマーを含有する不連続相が形成される。工程を改善するか或いはポリマーの組成又は分子量を調節するために、反応混合物の一部を、それが出発原料のいかなる組み合わせを含有するものであっても、重合過程において半回分方式(semi−batch fashion)で添加してもよい。その後、生成物は、室温に冷やされ、何らかの重合反応後添加物(post−polymerization additives)が反応器に加えられる。水溶性ポリマーの水連続相分散体は、低せん断での測定したときの生産物の粘度が、約50〜約10,000センチポイズ(cP)である流動自由な液体である。
陰イオン分散ポリマーを調製するのに適した無機塩としては、無機あるいは有機の硫酸塩、リン酸塩、塩化物、フッ化物、クエン酸塩、酢酸塩、酒石酸、リン酸水素塩、及び、それらの混合物がある。好適な塩としては、硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、硫酸マクネシウム、硫酸アルミニウム、リン酸水素アンモニウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、塩化アンモニウムが挙げられる。この塩は、組み合わせた合計の濃度が、製造した混合物中において典型的には15重量%かそれ以上である水溶液として使用される。
陰イオン分散ポリマーを調製するために、付加的なカチオン塩を単独で、或いは、上記の無機塩と組み合わせて用いてもよい。好適なカチオン塩としては、4〜22の炭素原子を持つテトラアルキルアンモニウムハロゲン化物、4〜22の炭素原子を持つ置換されたテトラアルキルアンモニウムハロゲン化物、9〜22の炭素原子を持つアリールトリアルキルアンモニウムハロゲン化物、9〜22の炭素原子を持つ置換されたアリールトリアルキルアンモニウムハロゲン化物がある。好適なカチオン塩の代表としては、セチルピリジニウム塩化物、セチルメチルアンモニウム塩化物、及び、ベンジルトリエチルアンモニウム塩化物が挙げられる。
陰イオン分散ポリマーを調製するために使用される安定化剤としては、典型的には、約10,000〜10,000,000の分子量、より好ましくは約1,000,000〜3,000,000の分子量を持ち、陰イオンにチャージした水溶性ポリマーがある。安定化剤ポリマーは、塩溶液中で、可溶性あるいはわずかに可溶性でなければならない。また、水中で可溶性でなければならない。この安定化剤は、分散ポリマーの全重量に基づき、約1〜20重量%の量が使用される。
代表的な陰イオン安定化剤としては、限定されるわけではないが、ポリアクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸)、2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸とアクリル酸及びメタクリル酸から選択される陰イオン共重合モノマーとの共重合体、1種以上の陰イオンモノマーと1種以上の非イオンモノマーのポリマー、及び、上記した陰イオン安定化剤のナトリウム塩が挙げられる。
陰イオン分散ポリマーを調製するためには、また非イオン性の安定化剤あるいは分散剤成分も、単独で、或いは、ここで記述した陰イオン安定化剤と組み合わせて使用することができる。代表的な非イオン成分としては、限定されるわけではないが、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリジノン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリエチレン、可溶性澱粉、エピクロヒドリン/ジメチルアミン、ポリ(N−ビニルピリジン)等が挙げられる。
陰イオン分散ポリマーを調製するためには、またカチオン性の安定化剤あるいは分散剤成分も、単独で、或いは、ここで記述した陰イオン性の、及び、非イオン性の安定化剤と組み合わせて使用することができる。適したカチオン安定化剤としては、限定されるわけではないが、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)、ポリ(ジメチルアミノエチルアクリレートメチルクロリド4級塩)、アクリルアミド/ジメチルアミノエチルアクリレートベンジルクロリド4級塩共重合体、ジアリルジメチルアンモニウム塩化物/ジメチルアミノエチルアクリレートベンジルクロリド4級塩共重合体が挙げられる。
グリセリンあるいはエチレングリコールのような多官能アルコールもまた、重合系に含ませることができる。これらのアルコールの存在下で、微粒子の形成が円滑に行われる。
重合反応は、適したフリーラジカルを発生させるあらゆる手段によって開始される。開始は、熱的な、光化学的な、又は、レドックスカップルの開始系を含む、従来からある数々の系の使用を通じて誘導させればよい。水溶性アゾ化合物、過酸化物、ヒドロ過酸化物、パーエステル(perester)化合物の熱的なホモリティック解離からラジカル種が生じる、熱的に誘導されるラジカルが好ましい。特に好ましい開始剤は、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミン)塩酸塩等を含む、アゾ化合物である。
粒子の微細な分散を促進させる目的で、モノマーの重合を開始させる前に、種ポリマー(seed polymer)を反応混合物に加えてもよい。種ポリマーは、多価陰イオン塩の水溶液中には不溶な水溶性ポリマーである。種ポリマーのモノマー組成は、重合中に形成される水溶性ポリマーの組成に一致する必要はない。種ポリマーは、好ましくは、ここで記述した分散ポリマーの製造法によって調製されたポリマーである。
分散ポリマーは、界面活性剤あるいは油を含有していないので、この分散ポリマーは、環境にやさしい。さらに、油が存在しない分散ポリマーとは、揮発性有機分(VOC)が実質的にゼロのポリマーと等しいものであり、従来の逆相エマルジョンと比較して、生物学的酸素要求量(BOD)、化学的酸素要求量(COD)、全有機炭素(COD)を劇的に減少させる。このことも、環境に対する、このポリマーの有利な点である。
“陰イオンモノマー”とは、正味の負電荷(a net negative charge)を有するモノマーを意味するものと、ここにおいては定義される。代表的な陰イオンモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、及び、その塩があり、限定されるわけではないが、アクリル酸、アクリル酸ナトリウム、アクリル酸アンモニウム、メタクリル酸、メタクリル酸ナトリウム、メタクリル酸アンモニウム;2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)及びそのナトリウム塩;ビニルスルホン酸及びその塩、例えばビニルスルホン酸ナトリウム;スチレンスルホン酸及びその塩;マレイン酸及びその塩、例えば限定されるわけではないがナトリウム塩及びアンモニウム塩;スルホプロピルアクリレートあるいはメタアクリレート、或いは、これらの他の水溶性形成物、或いは、他の重合可能なカルボン酸又はスルホン酸;スルホメチル化アクリルアミド;アリルスルホン酸;イタコン酸、アクリルアミドメチルブタン酸;フマル酸;ビニルホスホン酸;アリルホスホン酸、ホスホノメチル化アクリルアミド等が挙げられる。
“(メタ)アクリル酸”とは、アクリル酸あるいはメタクリル酸あるいはそれらの塩を意味する。
“(メタ)アクリルアミド”とは、アクリルアミドあるいはメタクリルアミドを意味する。
“モノマー”とは、重合可能なアリル化合物あるいはビニル化合物あるいはアクリル化合物を意味する。モノマーは、陰イオンあるいはカチオンあるいは非イオンのいずれでああってもよい。ビニルモノマーが好ましく、アクリルモノマーはさらに好ましい。
“非イオンモノマー”とは、電気的に中性なモノマーを意味するものと、ここにおいては定義される。
代表的な非イオン性の、水溶性モノマーとしては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−ビニルホルムアルデヒド、N−ビニルメチルアセトアミド、ジメチルヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、N−t−ブチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ビニル酢酸エステル、アクリロニトリル、2−エチルヘキシルアクリレート等が挙げられる。
“RSV”は、還元比粘度を表す。実質的に直鎖で十分に溶媒和された一連のポリマー同族体において、希釈ポリマー溶液についての“還元比粘度(RSV)”測定値は、ポリマー鎖長と平均分子量の指数となる。このことは、Paul J.Floryの以下の文献による。
“Principles of Polymer Chemistry”,Cornell University Press,Ithaca,NY, 1953年,Chapter VII,“Determination of Molecular Weights”,pp.266-316。
RSVは、与えられたポリマー濃度と温度で測定され、次の式で計算される。
Figure 2005530007
η=ポリマー溶液の粘度
η0=同じ温度下での溶媒の粘度
c=溶液中のポリマーの濃度
濃度“c”の単位は、「グラム/100ml」あるいは「グラム/デシリットル」である。それゆえRSVの単位は、dL/gである。本特許出願において、1.0モルのナトリウム硝酸塩溶液がRSVを測定するために使用される。この溶媒中のポリマー濃度は、約0.045g/dLである。RSVは、30℃で測定される。粘度η及びη0は、カノンウベローデセミミクロ希釈粘度計、サイズ75(Cannon Ubbelohde semimicro dilution viscometer, size 75)を使用して測定される。30±0.02℃に調整された一定温度の浴槽中で、完全に垂直状態で設置される。RSVの計算に内在する誤差は、約2dL/gである。一連の2つのポリマー同族体が同じRSV値を持つとき、2つのポリマーが同じ分子量を持つことを指し示す。
本発明の陰イオンポリマーの典型的な分散体は、RSV値が約10〜50であり、約10〜35%のポリマー活性を含有する。
本発明の陰イオンポリマーは、少なくとも約100,000の分子量を持つ。ここで分子量の上限は、掘削流体中でのポリマーの溶解性によってのみ制限される。好ましい陰イオンポリマ―は、分子量が少なくとも100万であり、より好ましいポリマーは、分子量が少なくとも500万である。
本発明の好ましい局面において、陰イオン分散ポリマーは、1種以上の陰イオンモノマーと、アクリルアミド及びメタクリルアミドからなる群から選択される1種以上の非イオンモノマーとから構成される。
別の好ましい局面において、陰イオンモノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、及び、それらの塩からなる群から選択される。
別の好ましい局面において、分散ポリマーは、アクリルアミド/アクリル酸共重合体である。
別の好ましい局面において、分散ポリマーは、約2〜50モル%のアクリル酸から構成される。
本発明に係る掘削流体は、典型的には、淡水あるいは塩水あるいは海水と、ポリマー活性に基づいて約0.02〜2.5lb/barrel、好ましくは約0.12〜0.5lb/barrelの陰イオン分散ポリマーとから構成される。
水性掘削流体は、粘土を、好ましくは10重量%までの割合で、さらに好ましくは5重量%までの割合で、さらに好ましくは4〜5重量%の割合で含有する。
好ましい粘土としては、混合層タイプのアタパルジャイトや海泡石(sepiolite)だけではなく、モンモリロナイト(ベントナイト)のようなスメクタイト粘土が挙げられる。
しかしながら、ベントナイトを含有する泥水へのアクリルアミド/アクリル酸ポリマーの添加は、粘度の初期増加を生じさせ、その後、引き続いて、ポリマーを付加的に添加したときに、ベントナイトと地層中に元々存在している粘土とが凝集する結果として、粘度低下が生じることが知られている。この凝集は、ビットによる掘削屑の適切な安定化を許容できないほどまで流体のゲル強度の増大を生じさせかねず、それによって掘削流体の有効寿命を減少させる。このゲル強度の増大は、腐食性でありケブラチョであり錯体であるリグノ硫酸エステル類のような低粘稠化剤の付加的な添加によって、ある程度補正される。
我々は、陰イオン分散ポリマーを使用して調製したベントナイト含有掘削流体は、ドライポリマーから調製した類似の組成を持つベントナイト含有掘削流体と比較して、ベントナイトを凝集させず、それゆえ有効寿命を顕著に増加させるとともに、低粘稠化剤等が要求されるレベルを減少させるということを発見した。
また、本発明の陰イオン分散ポリマーを用いてベントナイト含有泥水を調製するときには、ドライポリマーを使って調製された対応する組成物と同等の掘出し特性を持つ泥水を調製するためには、より少ないベントナイトが必要とされるだけであり、結果的にドリルビットの寿命を増加させる。これは、エンドユーザーにとっては、ベントナイトに関する費用を削減できるとともに、ドリルビットの取替え頻度を減らすことに関しても費用の削減を可能とする。
また我々は、陰イオン分散ポリマーを使用することによって、
ドライポリマーを使って調製された対応する組成物と同等の掘出し特性を持つ掘削流体を調製するために要求される量と比べて、ベントナイトの必要量が少ない掘削流体を調製することが可能であることも発見した。泥水中のベントナイトのような固体物の量を減らすことは、ドリルビットの寿命を長くさせる。このことは、ビットを頻繁に交換することを不要にさせるので、ひいては、ビット本体のコスト削減、そして、さらには、ビットを交換する際の労力の削減につながる。
本発明の掘削流体は、pHが約7〜12、好ましくは約8.5〜10の間であり、粘度が約20〜80sec、好ましくは約40〜50sec(Marsch cone)である。
水性掘削流体は、従来の添加剤を含有していてもよく、例えば、電解質、pH調整剤、潤滑剤、殺菌剤、遮断剤、鉄制御剤、起泡剤(例えば、界面活性剤)、ガス又は液体ガス、プロップパント(proppants)、希釈剤、粘度調整剤(例えば、澱粉、変性澱粉、キサンタンガム、ヒドロキシエチルセルロースポリマー等)、加重剤(例えば、重晶石、ハエマタイト等)、頁岩抑制を促進させる無機塩(例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、炭酸カリウム、酢酸ナトリウム、硫酸カルシウム等)が挙げられる。
掘削流体は、陰イオン分散ポリマー及びあらゆる付加的な従来の掘削流体添加物を、淡水あるいは塩水あるいは海水中に混合することによって調製される。
陰イオン分散ポリマーは、掘削流体に直接加えられてもよいが、好ましくは掘削流体と混合させる前に、ポリマー活性に基づいて約0.02〜2.5lb /barrel、好ましくは約0.12〜0.5lb/barrelの濃度に、淡水あるいは塩水あるいは海水を用いて希釈される。ポリマーの取り扱いが容易で且つ溶解が速いことから、ドライポリマー生成物と比較して、調製が迅速に達成され、掘削流体の調製と関連する装備のコストや人件費が削減される。陰イオン分散ポリマーの速い溶解性は、また、掘削流体の粘度の増加的変化を促進させる。この粘度変化は、特定の掘削作業の性質によって要求されることがある。
ここで記述した陰イオン分散ポリマーの使用によって、ドライ陰イオンポリマー生成物を使用する場合と比較して、水の消費量を実質的に減少させることも可能となり、ポリマー固型分に基づき、2.5lb/barrelまでのポリマー濃度を持つ掘削流体の調製が可能になるとともに、取り扱いが容易な生成物を提供する。
ここで記述した水性掘削流体は、既知の水性掘削流体と同様の方法で、あらゆる従来の掘削工程で使用すればよい。例えば、典型的な掘削作業において、掘削流体は、ポンプによって中空のドリルストリングを下降させられ、坑井の底面でビット内のノズルを通過し、穴またはケーシングとドリルストリングとによって形成された環帯(annulus)を通って地表に引き上げられる。掘削流体は、いったん地表に到達すると、一連の振動スクリーン、沈殿タンク、液体サイクロン、及び、遠心機にかけられて、地表に運ばれた岩屑などが取り除かれる。その後、添加物を用いて処理されて、所望の特性が与えられ;坑井に再び注入されて循環が繰り返される。
掘削流体は、実際の掘削に先立って組成物が調製することができ、あるいは、その代わりに、陰イオン分散ポリマーを、泥水循環システムの幾つかのポイント、例えば、泥水ポンプ吸引、ホッパー、泥水吸引ピット、リターンライン(掘削固体除去システムよりも前)、ドリルパイプ等のうち、いずれか1箇所以上において注入することによって、坑井中を進行している掘削流体に対して添加することができる。
掘削流体は、ポリマーの十分な濃度を維持するために、通常のサンプリングや分析によってモニターされるべきである。
前述した説明が、次に挙げる実施例により、よりよく理解されるであろう。次に挙げる実施例は、例証の目的で示されるものであり、本発明の範囲を制限することを意図していない。
実施例1
ポリマー固型分が22.7%の、70/30モル%のアクリルアミド/アクリル分散ポリマーを、次の手順で合成する。
1500ccの反応フラスコに、機械式攪拌機、熱電対、冷却器、窒素導入管、添加口、及び、ヒーティングテープ(heating tape)を装着した。この反応フラスコに、356.6gの脱イオン水、64gの硫酸ナトリウム、84gの硫酸アンモニウム、2.8gのギ酸ナトリウム、陰イオン安定剤ポリマー(Ondeo Nalco社、Naperbille,ILより入手)の16%水溶液を85.0g、アクリルアミド(Ondeo Nalco社製)の48.4%水溶液を329.6g、エチレンジアミン四酢酸の四ナトリウム塩を0.40g、69.30gのアクリル酸(Rohm and Haas Texas社、Deer Park,TXより入手)、水酸化ナトリウムの50%水溶液を4.0gを、組み合わせて調製された溶液を加える。モノマー反応溶液は、攪拌しながら35℃に加熱される。均一のモノマー反応溶液に、VA044(2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)二塩酸塩)(Wako Chemicals USA社,Richmond,VAより入手)の1%水溶液の1.0gが加えられる。重合は、攪拌しながら35℃、窒素気流下で行われる。全反応時間である6時間の経過後、VA044の1%水溶液の2.0gを加える。反応混合物は、一晩中35℃に保たれる。翌日、VA044の10%水溶液の2.0gを加え、反応混合物を冷却し反応器から除去する前に、さらに2時間反応温度を35℃に維持する。この反応の生成物は、乳白色液体(700cp.,RSVは33.7dL/g)である。
実施例2
代表的な掘削流体の調整
実施例1のポリマーを、ベンチュリポンプを用いて希釈槽中の水に加えて、ポリマー活性に基づいて、0.33lb/barrelのポリマー濃度とした。希釈槽には、溶液を攪拌するための混合機が装着される。ポリマー溶液が調製された後、10lb/barrelのベントナイト泥がポリマー溶液に加えられて、掘削流体が形成される。
南ヨーロッパでの水掘削作業において、上記掘削流体と、ドライ陰イオンポリマーから調製された類似組成物の掘削流体とを比較すると、本発明の掘削流体は、ベントナイトを凝集させず、対応するドライポリマーを用いて調製された掘削流体と比べて有効寿命を実質的に増加させるこということが示された。
本発明を、説明の目的で詳細に記述したが、このような細部は、単に、そのような目的のためのものであって、そこにおいては、請求項で制限されたもの以外は、本発明の技術思想や請求範囲から外れないかぎり、当業者が多くの修正、置き換え、及び、変更をなすことができるものであると理解すべきである。請求項と均等の意味及び範囲に属する全ての変更については、本発明の範囲内に包含される。

Claims (13)

  1. 地下層を貫く坑井を掘削する際に使用される、pHが約7〜12及び粘度が20〜80sec(Marsch cone) の水性掘削流体であって、淡水あるいは塩水あるいは海水に1種以上の陰イオン分散ポリマーをポリマー活性に基いて約0.02〜2.5lb/barrelの割合で混合することによって調製されたものであり、該陰イオン分散ポリマーは、約2〜98モル%の1種以上の陰イオンモノマーと、約98〜2モル%の1種以上の非イオンモノマーから構成され、且つ、該陰イオン分散ポリマーのRSVが約10〜50 dL/gであることを特徴とする水性掘削流体。
  2. 該非イオンモノマーは、アクリルアミド、及び、メタクリルアミドからなる群から選択される請求項1に記載の掘削流体。
  3. 該陰イオンモノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、及び、それらの塩からなる群から選択される請求項1に記載の掘削流体。
  4. 該分散ポリマーは、アクリルアミド/アクリル酸共重合体である請求項1に記載の掘削流体。
  5. 該分散ポリマーは、約2〜50モル%のアクリル酸により構成される請求項4に記載の掘削流体。
  6. 該掘削流体は、淡水あるいは塩水あるいは海水を構成成分とし、粘土を約10重量%までの割合で含有する請求項1に記載の掘削流体。
  7. 該粘土はベントナイトである請求項6に記載の掘削流体。
  8. 該掘削流体は、ベントナイトを約4〜5重量%の割合で含有する請求項7に記載の掘削流体。
  9. さらに、1種以上の電解質、pH調整剤、潤滑剤、殺菌剤、遮断剤、鉄制御剤、起泡剤、ガス、液体ガス、プロップパント(proppants)、希釈剤、粘性調整剤、加重剤、頁岩抑制剤を含有する請求項1に記載の掘削流体。
  10. 地下層を貫く坑井(well bore)を掘削する方法であって、坑井(well bore)を通じて請求項1に記載の水性掘削流体を循環させることを特徴とする掘削方法。
  11. 該坑井を利用して地下層から石油あるいはガスを回収する請求項10に記載の方法。
  12. 該坑井を利用して地下層から水を回収する請求項10に記載の方法。
  13. 地下層を貫く坑井を掘削する際に使用される水性掘削流体の粘性を増加させる方法であって、掘削流体に1種以上の陰イオン分散ポリマーの増粘有効量を添加する工程を含み、該陰イオン分散ポリマーは、約2〜98モル%の1種以上の陰イオンモノマーと、約98〜2モル%の1種以上の非イオンモノマーから構成され、且つ、該陰イオン分散ポリマーのRSVが約10〜50 dL/gであることを特徴とする増粘方法。
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