JP2005518786A - ヒトにおける成長ホルモン変異とその用途 - Google Patents

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Abstract

本発明は、自然発生する成長ホルモン突然変異、その検出方法及び成長ホルモン異常について患者をスクリーニングするうえでのその用途、またはこうした異常を治療するうえで適当な変異体タンパク質を産生するうえでのその用途に関する。一局面では、(a)(i)+480C→T;(ii)+446C(R)T;(iii)+1491C(R)G;(iv)−60G(R)A;(v)−40〜−39GG(R)CT;(vi)−360A(R)G;及び(vii)+748A(R)G
(ただし数値はTSSから数えた参照用の野性型ヒトGH1ヌクレオチドの位置を示す数である。)と;(b)配列(a)にほぼ相同であるか又はストリンジェントな条件下で配列(a)にハイブリダイズする配列と;(c)配列(a)若しくは(b)にほぼ相同であるか、又は遺伝子コードのdegeneracyがない場合に配列(a)若しくは(b)にハイブリダイズする配列と;(d)上記の配列(a)、(b)または(c)のいずれかに対して特異的であるオリゴヌクレオチドとからなる群から選択される、GH1の変異体を開示する。

Description

本発明は自然に発生する成長ホルモンの突然変異、こうした突然変異を検出するための方法及び成長ホルモン異常について患者をスクリーニングするうえでのこうした突然変異の用途、またはこうした異常の治療に適した変異体タンパク質を製造するための方法に関するものである。
ヒトの身長が遺伝性の因子によって支配されているということは100年以上前から知られていた。家族性低身長は通常劣性であるその遺伝様式とともに1912年には既に認識されていたが、こうした家系が科学文献で正しく取り上げられるようになるまでには更に四半世紀を要した。劣性遺伝する低身長症では一般に成長ホルモン(GH)の単独欠損をともなうとの認識が得られたのはようやく1966年になってからのことである。
GH欠損症にともなう低身長は、新生児で1/4000〜1/10000の発生率で発生すると推定されている。これらの症例の多くは散発性かつ突発性であるが、5〜30%が低身長の第1度近親者を有し、この病態に遺伝的病因が存在することと符合する。GH欠損症に遺伝的病因が存在することは、家族性低身長の分子遺伝学的分析と、罹患者の脳下垂体で発現する成長ホルモン(GH1)遺伝子で突然変異性損傷が早期に見られることから確認される。家族性低身長は他の多くの遺伝子(例、POU1F1、PROP1及びGHRHR)の突然変異によっても発生し、これらの異なる病型を区別することが重要である。
成長ホルモン(GH)は様々な作用によって骨及び軟部組織の生後の成長を促進する多機能ホルモンであるが、GHの直接、間接的な作用の相対的寄与度に関しては議論がなされている。GHの直接的作用は各種の組織や臓器で証明されており、多くのタイプの細胞においてGH受容体の存在が示されている一方で、GHの効果の大半はGH依存型インスリン様成長因子I(IGF−I)の作用によって媒介されることを示す多くのデータが存在する。IGF−1は多くの組織、主として肝臓で産生され、その受容体を介して作用して、骨、軟骨、及び骨格筋など多くの組織の増殖や成熟を促進する。GHは組織の成長を促進する以外にも、乳腺刺激作用、糖尿病誘発作用、脂肪分解作用、タンパク質同化作用、ナトリウム及び水の貯留など、他の様々な生物学的作用を示すことが示されている。
正常な成長を維持するには幼児期を通じて適量のGHが必要とされる。GH欠損症の新生児では通常体長と体重は正常であるが、一部において小陰茎または空腹時低血糖症が見られ、生後成長率は低くかつ直線状である。この場合、生後成長率は年齢とともに徐々に低下する。遺伝性成長ホルモン単独欠損症(IGHD)の新生児では骨成熟は通常遅延しており、身長の伸びも遅滞している。躯幹部の肥満、実年齢よりも若く見える顔貌、及び第2生歯の遅滞がしばしば見られる。低身長症の成人では早老で見られるものと同様の皮膚の変化を生ずる場合もある。
家族性IGHDでは特徴的な遺伝様式を有する複数の異なる疾患が見られる。GH1遺伝子座の欠陥にともなって見られるこれらのIGHDの型を、これまでに検出されている異なるタイプの原因遺伝子損傷とともに第1表に示した。
Figure 2005518786
これらの損傷を特徴付けることによって、これらのIGHDの型間での、臨床上の重篤度、遺伝様式、及び外部から投与されたGHに対する抗体産生能の差異に対する説明を与えるうえでの一助となると思われる。多くの症例は散発的であり、脳浮腫、染色体異常、ヒスチオサイトーシス、感染症、放射線被曝、中隔視神経異形成、外傷または、視床下部若しくは脳下垂体の腫瘍を含む脳の傷害や欠陥から発生すると考えられる。磁気共鳴イメージングによる検査によってIGHDの患者の約12%で視床下部または脳下垂体の異常が検出された。
低身長、「身長速度」すなわち成長速度の遅延、及び骨成熟の遅延は、GH欠損症ではすべてが見られるが、これらの中でこの疾患に特異的なものはなく、他の全身性疾患によってもこうした症状が見られる場合がある。本明細書の全体を通じて「身長速度」及び成長速度はいずれも、例えばセンチメートル/年として測定されるような、被験者または患者の身長の変化の速度を意味するものとして解釈されるべきである。
GH欠損症を証明するための刺激試験では、L−ドーパ、インスリン誘導低血糖、アルギニン、インスリン−アルギニン、クロニジン、グルカゴン、またはプロプラノロールを用いる。不適当なGHピーク応答(通常7〜10ng/mLよりも少ない)は試験毎に異なる。随伴するLH、FSH、TSH、及びACTHの欠損症についても試験を行って脳下垂体の機能不全の程度を判定し、最適な治療を計画するべきである。
組換え体由来のGHは全世界で利用されており、皮下注射によって投与する。最適な成績を得るためにはIGHDの子供で通常は診断が確定次第、代償療法を開始する。組換えGHの初期用量は体重や体表面積に基づいたものであるが、正確な使用量及び投与頻度は異なるプロトコール間で異なり得る。用量は思春期における最大量にまで体重の増加とともに増加させる。その後、GH治療を一時的に中断し、その間に患者のGH分泌能力を再評価する。GH欠損症であることが確認された患者には成人期に外因性のGHを低用量で投与する。
GHで治療される状態としては、(i)GHが有効であることが証明されているもの、(ii)GHの使用が報告されてはいるが、標準的な慣例としては受け容れられていない種々の他の状態が含まれる。GH治療が有効であることが証明されている疾患としては、単独かまたは複合下垂体ホルモン欠損症(CPHD)をともなったGH欠損症、及びターナー症候群が挙げられる。最初の2つの疾患を有する患者のGH代償療法に対する臨床的応答は、(i)GH欠損症の重篤度及び成長に対するその悪影響、治療開始時の年齢、出生体重、現在の体重、及びGHの用量、ならびに(ii)甲状腺ホルモン欠損症などの関連欠損症の治療に対する認識及び応答、ならびに(iii)抗GH抗体の産生によって治療が困難となるか否か、に応じて異なる。ターナー症候群の患者に対する治療成績は、患者の低身長の重篤度、患者の染色体組、及び治療開始時の年齢に応じて異なる。
GHの使用が報告されている更なる疾患としては、軟骨形成不全症などの特定の骨格形成異常、プラダー−ウィリ症候群、外因性ステロイドの副作用としてまたはリウマチ性関節炎などの慢性炎症疾患にともなう成長抑制、慢性腎不全、極度突発性低身長、ラッセル−シルバー症候群、及び子宮内発育遅延が挙げられる。
分子遺伝学的レベルでの家族性IGHDのキャラクタリゼーションは、幾つかの理由から重要である。関与する遺伝子座が同定されることによって、成長遅延の重篤度ばかりではなく、より重要な点として、現在利用可能な各種の治療レジメンが適当であるか否かが示されるであろう。更に、原因となる遺伝子損傷を検出することにより、その病態の遺伝学的病因が確認される。原因となる遺伝子損傷の検出は、(i)成長遅延の重篤度、及び(ii)GH治療後の抗GH抗体形成の確率を予測するうえで診断上の価値も有する。一部の例では、こうした病理学的損傷の知識がこの疾患の特徴的な遺伝様式を説明するうえでの一助となることから、GH欠損症の家族のカウンセリングに不可欠である。最後に、GH分子が機能不全(機能喪失ではなく)であるIGHDの原因である突然変異損傷のキャラクタリゼーションによって、GHの構造及び機能の新たな知見が得られる可能性がある。
細胞レベルでは、1個のGH分子が2個のGH受容体分子(GHR)に結合してこれらを二量化させる。この2個のGH結合GHR分子の二量化は、チロシンキナーゼJAK2が関連するシグナルトランスダクションに必要であると考えられている。GHの多様な作用は、異なる細胞質ドメインを有するか異なる組織で異なるリン酸化部位を有する1種類のGHR分子によって媒介されていると提唱されている。これらの異なる細胞質ドメインは、JAK2によって活性化されると異なるリン酸化経路を辿り、その内の1つは成長効果を、他の経路は異なる代謝効果を奏する。
GHは下垂体前葉の成長ホルモン分泌細胞から分泌される22kDaのタンパク質である。X線結晶解析によれば、GHは上−上−下−下という配置で配された互いに平行な2対のα−へリックスからなるコア構造を有する。この構造は2個の分子内ジスルフィド結合(Cys53−Cys165及びCys182−Cys189)によって安定化されている。2個の成長ホルモン受容体(GHR)分子がGH分子上の2つの構造的に異なる部位に結合する。これはGHRが最初に部位1に、次いで部位2に結合することによって順次進行するプロセスである。GHRのGHへの結合によってGHR分子の二量化が強化される。
GH分子のスキャニング突然変異誘発法による研究により、GHとその受容体間の結合相互作用の実態が明らかとなったのと同時に、部位特異的突然変異誘発法を用いて特定の残基の機能が調べられた。すなわち、Gly120(ヒトGHの第3番目のα−へリックスに存在)のArgによる置換によってGHRは部位2に結合できなくなり、GHRの二量化が阻害される。同様にヒトGHタンパク質の残基Phe44はプロラクチン受容体への結合に重要である。最後に、残基Asp115、Gly119、Ala122、及びLeu123はマウスGH分子の成長促進能にとって重要であることが示されている。
二量化したGHRと細胞内のチロシンタンパク質キナーゼJAK2との相互作用によって、下流のシグナルトランスダクション分子のチロシンのリン酸化、マイトジェン活性化タンパク質(MAP)キナーゼの刺激、及びシグナルトランスデューサーや翻訳の活性化因子(STATタンパク質)の誘導が生じる。このように、GHは多くの異なるシグナリング経路を通じて複数の遺伝子の発現に影響を与えることができるのである。
GH1遺伝子の発現によって複数の異なるGHが生ずる(図4にGH1の参照配列を示した)。GH1転写産物の9%においてエクソン2が、エクソン3に45bpだけ入り込んだ別のアクセプタースプライス部位にスプライシングされ、これにより32番目〜46番目のアミノ酸残基が欠失して、正常な22kDaのタンパク質の代わりに20kDaのアイソフォームを生じる。この20kDaのアイソフォームは、成長及び分化を刺激することが可能であるようである。別のアクセプタースプライス部位の選択の決定に関与している因子は、未だにキャラクタライズされていないが複雑な性質のものであることは明らかである。エクソン3によってコードされるコドン32〜71の欠失によって生じる17.5kDaのアイソフォームも下垂体腫瘍組織から微量だけ検出されている。エクソン3及び4またはエクソン2、3、4のいずれかを欠くスプライシング産物が下垂体組織で報告されているが、これらは不活性なタンパク質産物をコードしているようである。GHの24kDaのグリコシル化された変異体も知られている。22kDaの主アイソフォームのアミノ酸配列が図5に示されているが、この配列はGH1遺伝子のコード領域のヌクレオチド配列及び26個のアミノ酸からなるリーダーペプチドを含んだタンパク質のアミノ酸配列を示している。横に記した数字はアミノ酸残基の番号を示す。アミノ酸配列を挟み込んだ太字の縦向き矢印の数字は、エクソンの境界を特定している。終止コドンはアスタリスクで示している。
下垂体成長ホルモン(GH1)をコードした遺伝子は、染色体17q23の5個の関連遺伝子のクラスター内に位置している(図1)。この66.5kbのクラスターは現在ではその配列の全体が決定されている(Chen et al. Genomics 479−497 (1989)及び図4を参照)。この成長ホルモン遺伝子クラスター内に存在する他の遺伝子座は、2個の絨毛性体乳腺発育ホルモン遺伝子(CSH1及びCSH2)、絨毛性体乳腺発育ホルモン偽遺伝子(CSHP1)、及び成長ホルモン遺伝子(GH2)である。これらの遺伝子は長さ6〜13kbの遺伝子間領域で隔てられており、同じ転写方向を有し、胎盤で発現し、下流の組織特異的エンハンサーの支配下にある。GH2遺伝子座は13個のアミノ酸残基においてGH1由来成長ホルモンと異なるタンパク質をコードしている。5個の遺伝子はすべて非常に似通った構造を有し、5個のエクソンが短いイントロンによって同じ位置で分断されている(図2)。イントロンの長さはGH1の場合では長さ260bp、209bp、92bp、及び253bpである。
GH1遺伝子のエクソン1は、60bpの5’末端側非翻訳配列(ただし別の転写開始部位が−54の位置に存在する)、コドン−26〜−24、及び26個のアミノ酸からなるリーダー配列の開始点に当るコドン−23の最初のヌクレオチドを含んでいる。エクソン2はリーダーペプチドの残りと、成熟GHの最初の31個のアミノ酸をコードしている。エクソン3〜5はそれぞれアミノ酸32〜71、72〜126、及び127〜191をコードしている。エクソン5はまたポリアデニル化部位に最も特徴的な112bpの3’末端側非翻訳配列をコードしている。GH1のポリアデニル化部位の3’末端側100bpの位置にはAlu反復配列エレメントが存在している。これら5個の関連遺伝子は5’末端側のフランキング領域及びコーディング領域において高い相同性を有するが、3’末端側のフランキング領域において異なっている。
GH1とGH2遺伝子は、そのmRNAのスプライシングのパターンにおいて異なっている。上述したように、GH1の転写産物の9%においてエクソン2はエクソン3に45bpだけ入り込んだ別のアクセプタースプライス部位にスプライシングされ、正常な22kDaのタンパク質の代わりに20kDaのアイソフォームを生じる。GH2遺伝子ではこのような別のスプライシングは見られない。GH1のエクソン3によってコードされる40個のアミノ酸を欠いた17.5kDaの第3の変異体も報告されている。
CSH1とCSH2遺伝子座は、同じ配列のタンパク質をコードし、GH1配列に対してDNAレベルで93%の相同性を有する。CSH遺伝子の配列との比較によれば、CSHP1偽遺伝子は、その「エクソン」内に25個のヌクレオチド置換を含み、イントロン2のドナースプライス部位の絶対的+1の位置にその発現を部分的に不活性化するG→Aの変化を含んでいる。
多くの2多型性制限酵素断片長多型(RFLP)がGH遺伝子領域内で報告されている。これらの内、5つのもの(2箇所のBglII、2箇所のMspI、及び1箇所のHincI)が白人及び黒人で見られるのに対して、1個のBamHI多型が更に主として黒人に見られる。これらの多型間の相関には強い不均衡が見られ、この遺伝子クラスターが比較的最近進化を遂げたことと一致する。HincIIとBamHI多型はGH1遺伝子の直ぐ5’側で見られる。−75のヌクレオチドの位置でのA/G二多型に帰因するRsaI多型がGH1プロモーター領域で見られるのに対して、比較的高頻度のSph1多型は完全にキャラクタライズされていない。GH1遺伝子の約19kb3’側に極めて情報量に富んだ(83%ヘテロ)可変数の反復多型が見つかっている。この多型の18個の異なる対立遺伝子をPCR用にフォーマット化することでフラグメントのサイズ別(201〜253bp)に区別することができる。
最後に、GH1遺伝子プロモーター/5’側非翻訳領域は、570bpの長さの範囲内に17種の変異体ヌクレオチドという極めて高レベルの配列多型を有することが示された(第2表A)。
Figure 2005518786
−1、+3、+59の位置の多型が、GH1遺伝子プロモーターのこの領域によってコードされていると思われるGHDTAタンパク質のアミノ酸置換を招くことが予想される(下記参照)。一部の配列変異は、GH1遺伝子が他の胎盤発現遺伝子と異なっている位置と同じ位置に見られた。このことはこの機構が遺伝子転換である可能性を示すものであり、胎盤発現遺伝子が転換される配列の供与源として機能していることを示すものである。
GH不全症を有する思春期前の低身長の子供を用いた研究において、長谷川等[J. Clin. Endocrinol Metab 85 1290−1295 (2000)]は、GH1遺伝子上の3つの多型[IVS4C→T1101,T/G−278、及びT/G−57]とGH分泌及び身長の高さとの関連を報告している。
最初のGH1遺伝子欠失が報告されて以来、各種のより細かな損傷が報告されてきた。こうした損傷が特異なタイプのGH欠損症と関連していた場合もあり、GHの構造と機能の新たな知見を得る手段として潜在的に重要である。
成長ホルモンをコードする遺伝子(GH1)はクローン化されたヒト遺伝子では最初のものの1つであり、遺伝性の成長ホルモン欠損症の原因となる大規模遺伝子欠失(6.7kbのタイプ)の最初のものがサザンブロット法によって間もなく検出された。GH1遺伝子が関与するすべての大規模欠失は、GHがまったく産生されないことを特徴とする重篤な(IA型)欠損症を引き起こす。GH1遺伝子のキャラクタライズされている欠失の約70%は長さ6.7kbのものであるが、残りの大部分は7.6kbまたは7.0kbのものである(第2表B−GH欠損症及び低身長を引き起こすGH1遺伝子またはGH1遺伝子の隣接部分の関与する大規模欠失)。
Figure 2005518786
Figure 2005518786
更に、より低頻度で生ずる欠失の例もいくつか報告されている。近年、突然変異のスクリーニングツールとしてサザンブロットから離れてPCRに基づいた手法へと移行する様々な試みがなされてきた。GH1遺伝子がホモである場合、その欠失は、GH1遺伝子及びフランキング領域のPCR増幅の後、得られたPCR産物を制限酵素で消化することによって比較的容易に検出することが可能である。この手法はリスクをともなう妊娠においてGH1遺伝子についてホモ接合性を排除するために有効に用いられてきたが、野性型遺伝子についてのホモ接合性を、特定の遺伝子の欠失についてのヘテロ接合性から区別することは困難であった。更にこの手法ではGH1遺伝子のみが除去される比較的短い6.7、7.0及び7.6kbの欠失以外の欠失の検出も不可能であった。
GH1遺伝子を直接フランキングし、コントロールDNA試料から790bpのフラグメントを生成するPCRプライマーが設計されている。このフラグメントが生成されない場合にはGH1遺伝子が欠失していると考えられるが、PCR増幅用の内部コントロールとして「非特異的PCRフラグメント」を使用しているためにこの方法の信頼性にはいささか疑義があるといわざるを得ない。
大規模欠失とならんで、GH1遺伝子の微小欠失についても3例報告されている。これらの患者のうち、2名は6.7kbのGH1遺伝子欠失についてもヘテロであった(第3表)。
Figure 2005518786
GH1遺伝子のコード領域内からは7例の異なる一塩基対置換が報告されたのみであった(第4表)。
Figure 2005518786
これらの一塩基対置換のうち2例はシグナルペプチドのアミノ酸残基Trp−7とGlu−4を停止コドンに変換するナンセンス突然変異である。これらの突然変異は、遺伝子欠失ではないIA型欠損症を引き起こすことが知られている唯一のGH1遺伝子損傷である。これらの損傷はシグナルペプチド内で翻訳の停止を予測するものであるため、機能性GH分子の生成と適合しない。他の5例の一塩基対置換(巨人症の治療と関連して欧州特許出願公開第790305号明細書に開示される、コドン77でのR→Cを含む)は機能不全の成長ホルモン分子が生成するミスセンス突然変異である。このような自然発生突然変異は、基本的に臨床的表現型、すなわち問題となる患者の身長に直接関連付けられる場合があることから、人工的に誘発させた突然変異と比較して得られる情報量ははるかに大きいといえる。
病理学的に重要と考えられるプロモーター領域の一塩基対置換は、IGHD IA型を有する3名の中国人患者と2名のコントロールにおいてGH1遺伝子のプロモーター領域の配列を決定する(転写開始部位に対して−60〜+70の間)ことによって初めに調べられた。幾つかの相違が認められたが、これらは通常想定される多型であり、更にキャラクタライズすることはしなかった。上記に述べたように、GH1遺伝子のプロモーター領域は570bpの長さの範囲内に17種の変異体ヌクレオチドという極めて高レベルの配列多型を有することが示されている(図3)。しかしながら、これらの配列変異体はコントロールと比較して患者の体内で過剰発現しているわけではないようである。
GH1プロモーターの変異について更に個別に調べ、全体で22種の変異体多型部位が検出され、そのうちの大部分は一塩基対置換であった。これらのうち、17種はATG開始コドンの5’側550bpの領域で見られ、3種はATGの5’側−1075の位置付近で見られ、2種類がイントロン1(IVS1)内のそれぞれ位置76及び219で見られた[Wagner et al, Eur J Endocrinol 137 474−81 (1997)]。これらの変異体は4種を除いてすべてがコントロールでも見られたがこれら4種の変異体が成長ホルモン欠損症の原因とは考えられなかった。これらの変異体部位の内、1つのみが転写因子結合部位に相同な配列内で見られた。すなわち、潜在的(証明されていない)NF−1結合部位内の−333の位置におけるCCAGAとGAGAG配列が交互に存在する部分である。
したがってこれまでのところ、GH1遺伝子プロモーター内で病理学的に重要な突然変異は報告されていない。
mRNAのスプライシングに影響するGH1遺伝子内の一塩基対置換についても開示されている。それらの大半はGH欠損症の比較的稀な優性型に関連したものである(第5表)。
Figure 2005518786
トランスフェクトした細胞のmRNA in vitro発現解析によってイントロン4のドナースプライス部位におけるトランスバージョンは、エクソン4内の潜在的スプライス部位を活性化することが示された。このスプライス部位はエクソン4のドナースプライス部位の5’側73bpの位置に存在する。したがってエクソン4によってコードされるアミノ酸103〜126を欠いた異常スプライシング産物が生成することが予想され、リーディングフレームがシフトすることによって、通常は翻訳されないGH1遺伝子の3’側の非コード領域が読まれることによる29個を含む、94個の新たなアミノ酸が取り込まれることになる。
エクソン4及び5によってコードされるGHタンパク質のこの領域はGHタンパク質の分泌小胞への正確なターゲティングにとって重要であると考えられることから、こうした異常タンパク質は正常に分泌されないものと予想された。ところがIB型のGH欠損症の患者では外因性のGHに対して抗体の産生は認められなかった。したがってこの免疫寛容の回避は、異常タンパク質の少なくとも一部は分泌されて血液循環中に部分的に安定して存在しうることを示唆していると考えられる。IVS3内の7つの既知のスプライシング突然変異(第5表)がGH欠損症の家系で常染色体優性遺伝するII型の欠損状態にともなって見られる。
GH1の短縮型突然変異またはホモ接合性遺伝子欠失を有するGH欠損症患者では、GH治療に際して抗GH抗体を産生するリスクが非常に高い。対照的に、スプライス部位内でのミスセンス突然変異または一塩基対置換を有する患者でアロ抗体が産生されたという報告は本発明者等の知る限りでは存在しない。
これまでのところ突然変異体の遺伝子型と臨床的表現型との間には他の相関関係はなんら報告されていない。文献に見られる必要なデータは乏しいものであり、また質も非常にまちまちであるが、本発明者等は大規模遺伝子欠失を有する患者が、臨床上かつ表現型上の続発症においてスプライス部位突然変異を有する患者と異なっているか否かを評価する手段として、おおまかなメタ分析を行った。GH1欠失を有する患者の身長が平均で7.3SDだけ年齢調整平均(n=29)よりも低かったのに対して、GH1スプライシング突然変異を有する患者では平均値(n=17)よりも平均で5.4SD低かった。欠失患者では骨年齢の遅延は大きく、成長速度もより低かったものの、こうした所見は確信によるバイアスの影響を受けやすいので極めて解釈が難しい。
以上に述べてきた家族性GH欠損症は、多くの場合、常染色体劣性形質として遺伝するため、受け継がれた欠損状態の一部の例では、家族のサイズが小さいことにより認識されなかったものがある可能性が高い。同様に、GH1遺伝子のde novo突然変異によるGH欠損症の症例は散発性として分類されている可能性があり、その場合疾患の遺伝学的説明は考慮も探求もなされなかったであろう。最後に、欠損症の状態を定義するうえで用いられる基準によっては、GH欠損症の表現型及び遺伝子型の全体像が臨床上の注意をまったく喚起することがなかったということもありうる。こうした理由から、現在用いられているGH欠損症の罹患率の推定値は不正確であり、集団内での真の罹患率を大きく過小評価している可能性がある。
多くの研究者によって支持されているIGHDの定義とは、(a)上述したように身長が平均よりも4.5SD以上低いことによってしばしば定義される重篤な成長遅延、(b)刺激/誘発に対するGH応答の低下(4ng/mlよりも低い血清GH濃度)、及び(c)成長遅延となる他の要因がないこと、を組み合わせたものである。このようなGH欠損症の構成要因の正式な定義が厳密に守られてきたことと、研究用の患者の選別にあたってこれらの基準、特に基準(b)が比較的広く受け容れられてきた[Shalet SM et al. Endocrine Rev 19 203−223 (1998)]ために、これまでに記載されてきたGH1突然変異のスペクトルは完全とはほど遠いものであるばかりか、より広範な突然変異のスペクトルを反映しないものになっていると考えられる。
本発明者等は、研究用の患者の選択に用いられる基準を緩和することによって成長不全の原因がGH欠損症のスペクトルの異なる部分にある患者をも包含することが可能であり、これにより新たな原因突然変異損傷の群が定義されうると提唱してきた。これらの新たな損傷の中には、正常な免疫学的応答性を示すが生物学的活性はほとんどあるいはまったく示さない、安定しているがその機能は不全であるGH分子を生成するものが含まれる。ラジオイムノアッセイ試験の結果に基づいた場合、機能不全のGH分子は誤って正常な分子とみなされてきた可能性があるのである。仮にこうした機能不全の変異体が一般的であるとすると、ラジオイムノアッセイに基づいたGH「機能試験」に我々が現在依存していることでGH欠損症の診断に見落としがあることになる。更に、このことは真の機能性診断アッセイの開発が急務であることを実証するものである。
したがって本発明者等は異なる患者のコーホートを対象として研究を行い、予期せずしてGH1の新たな変異体をこれによりコードされる対応したGHタンパク質の変異体とともに発見するに到ったものである。
すなわち本発明は、
(a)(i)+480C→T;
(ii)+446C(R)T;
(iii)+1491C(R)G;
(iv)−60G(R)A;
(v)−40〜−39GG(R)CT;
(vi)−360A(R)G;及び
(vii)+748A(R)G
(ただし数値はTSSから数えたGH1ヌクレオチドの位置を示す数である。);
(b)配列(a)にほぼ相同であるかストリンジェントな条件下で配列(a)にハイブリダイズする配列;
(c)配列(a)または(b)にほぼ相同であるか、遺伝子コードのdegeneracyを例外として配列(a)または(b)にハイブリダイズする配列;
(d)上記の配列(a)、(b)または(c)のいずれかに対して特異的なオリゴヌクレオチド、
からなる群から選択されるGH1の変異体を提供するものである。
ここで云う「ほぼ相同」とは、最大で6個の塩基が欠失または付加されるものとして、また更に特定の突然変異が保存されるものとして、核酸配列のヌクレオチド塩基の少なくとも80%が配列(a)のヌクレオチド塩基と配列中の対応する位置において一致することを意味する。好ましくは、配列は配列(a)と少なくとも90%の相同性を有し、より好ましくは配列(a)と少なくとも95%の相同性を有する。このような相同配列は、本発明の核酸配列変異体によってコードされる対応したタンパク質と、ほぼ同様の生物学的活性(機能的活性など)を有するタンパク質をコードしている。
上記の核酸配列(a)〜(c)のいずれかに対して「特異的な」オリゴヌクレオチドは、本発明の配列を同定、単離するうえで有用であり、そのペプチドのアミノ酸配列の固有のフラグメントをコードした固有の配列を有している。
上記(a)に記載の変異体としては、
(a)(i)+480C→T;及び
(ii)+446C→T
が好ましい。
詳細には本発明は、前記配列がcDNAまたはmRNAのようなDNAまたはRNA配列である上記に定義した核酸配列を提供するものである。
したがって本発明は、GH1の変異体によってコードされるアミノ酸配列を有するタンパク質などのGH1の変異体(以下、「GH変異体」と称する)の転写産物であって、GH1の変異体が本発明に基づくものであるような転写産物を更に提供するものである。
すなわち本発明は、hGHに関して、
(i)上記に定義したGH1(a)(i)の変異体(すなわち+480C→T)によってコードされるようなThr27Ile;
(ii)上記に定義したGH1(a)(ii)の変異体(すなわち+446C→T)によってコードされるようなArg16Cys;
(iii)上記に定義したGH1(a)(i)の変異体(すなわち+1491C→G)によってコードされるようなIle179Met;
(iv)上記に定義したGH1(a)(v)の変異体(すなわち+480C→T)によってコードされるようなThr27Ile;及び
(v)上記に定義したGH1(a)(vi)の変異体(すなわち+748A→G)によってコードされるようなAsn47Asp
から選択されるGH変異体を提供するものである。
好ましい上記のGH1の変異体としては、
(i)上記に定義したGH1(a)(i)の変異体(すなわち+480C→T)によってコードされるようなThr27Ile;
(ii)上記に定義したGH1(a)(ii)の変異体(すなわち+446C→T)によってコードされるようなArg16Cys;及び
(iii)上記に定義したGH1(a)(i)の変異体(すなわち+1491C→G)によってコードされるようなIle179Met
である。
特に好ましい上記のGH1の変異体としては、
(i)上記に定義したGH1(a)(i)の変異体(すなわち+480C→T)によってコードされるようなThr27Ile;及び
(ii)上記に定義したGH1(a)(ii)の変異体(すなわち+446C→T)によってコードされるようなArg16Cys
である。
上記で特定したGH1の変異体またはこれによりコードされるタンパク質は以下の利点を有する。すなわち、
1.新たな損傷の特定及びキャラクタリゼーションによるGH1遺伝子突然変異の既知のスペクトルの拡張、
2.低身長の病因におけるGH1遺伝子突然変異の役割の評価、
3.新規なGH1遺伝子損傷の遺伝様式の特定、
4.突然変異体の遺伝子型と臨床上の表現型との間の関係の解明、
である。これはGH欠損症の早期検出ならびに適当な臨床管理を行ううえで不可欠であると考えられる。
5.GH分子の構造及び機能に対するGH1突然変異の影響の評価。これは、低身長の臨床上のスペクトルの穏和な側に臨床上の表現型を有する子供の評価において特に重要である。この患者群では、免疫学的に活性であるためにGH機能試験では正常範囲となる機能不全GHが産生されている可能性がある。
6.遺伝性GH欠損症の高速DNA診断試験の開発。
したがって更なる自然発生GH1損傷のキャラクタリゼーションはGHの構造、機能、及び発現の研究にとって極めて重要となろう。新規なコード配列変異体の研究によって、GHの機能のみばかりか、GHとその受容体(GHR)との間の相互作用、及びGHRによって媒介されるシグナルトランスダクションプロセスの理解が深まるはずである。得られる知見は新世代の治療薬の合理的な設計に関連性を有するものである可能性がある。同様にプロモーター領域の自然発生GH1損傷の研究によってGH1の遺伝子発現の調節に対する新たな知見が与えられるはずである。したがって広範なスペクトルの突然変異性損傷によって、遺伝性のGH欠損症における突然変異体の遺伝子型と臨床上の表現型との間の関係に対する我々の理解は必ずや深まるものと考える。家族性GH欠損症の早期検出及び適当な臨床管理を行ううえでこれらの研究が不可欠であることは明らかである。
すなわち本発明は、機能不全GHを有することが疑われる患者をスクリーニングするためのスクリーニング方法であって、
(a)患者からヒトGH1遺伝子のヌクレオチド配列を含む試験試料を得る工程と、
(b)前記試験試料より得られた配列の所定の領域を、所定の配列の対応する領域と比較する工程とを含み、前記所定の配列は本発明のGH1の変異体から選択されることを特徴とする方法を提供するものである。
より詳細には本発明のスクリーニング方法は、前記所定の配列が変異体GH1遺伝子の所定領域に対応する所定の核酸配列を有するオリゴヌクレオチドであることを特徴とする。この領域は、野性型配列の対応する領域と比較した場合、本明細書中で定義されるものから選択される少なくとも1つの変異を有する。
前記試験試料はゲノムDNAを含むことが好ましい。ゲノムDNAは従来の方法によって抽出することが可能である。
本発明はGHの機能不全が疑われる患者をスクリーニングするためのスクリーニング方法であって、
(a)患者からヒトGH1遺伝子のヌクレオチド配列を含む試験試料を採取する工程と、
(b)前記試験試料から得た前記配列の所定領域を、所定の配列の対応する領域と比較する工程とを含み、前記所定配列は本発明に基づくGH1変異体から選択されることを特徴とする方法を提供するものである。
前記所定の配列は本発明に基づく変異体GH1遺伝子の所定領域に対応した核酸配列を有するオリゴヌクレオチドであることが好ましい。この領域は野性型配列の対応する領域と比較した場合に少なくとも1つの変異を有する。
本発明のスクリーニング方法において第1の試験試料又は試験試料はゲノムDNAを含むことが好ましい。
本発明のスクリーニング方法において前記比較工程は、特に検出/比較を行う変異体の数が比較的少ない場合、例えばGH1遺伝子の適当な領域の配列を決定するなど、従来の方法にしたがって行うことが可能である。比較的多数の変異体が用いられる場合にはDNAチップ技術を利用することができる。こうした技術では例えばチップは小型の並列分析素子であり、これを用いて複数の既知の突然変異について又はすべての可能な突然変異についてスクリーニングを行う。スクリーニングは固体支持体に固定された突然変異特異的オリゴヌクレオチドプローブのマイクロアレイに標識した試料DNA(患者から得たcDNAまたはゲノムDNA)をハイブリダイズさせることによって行われる[Southern, Trends Genet 12 110−115 (1996)]。
現在用いられている試験と比較した場合の本発明に基づくDNAスクリーニング方法の利点として以下が挙げられる。
1.患者にとって個人病院で行うことのできる程度の血液検査を一回行うだけでよい。現在用いられている試験の多くと同様、入院、長期にわたる医師による監視、及び多数回の血液採取を必要としない。したがって発生するコスト、専門家の拘束時間、及び試験を受ける各患者の苦痛が低減される。
2.患者の機能性GH欠損症の早期診断が可能である。本DNAスクリーニングは容易に行うことができることから医師が患者の管理上、こうした診断結果をより早期に検討することが可能となる。現時点ではGH分泌に関する試験に内在する問題のため、医師は子供にISTを行う前に、長期、時に数年にわたって外来専用の個人病院で子供を評価することを行っている。こうしたGH欠損症の遺伝学的病因の早期診断によってGHによる早期治療が可能となり、月単位、更により表現型の重篤度が低い患者では年単位で患者の治療を適切に行うことが可能となる。
3.GH機能不全についてより多くの患者を試験することができる。本DNA試験は容易に行えることから、患者の内分泌科での初診時に医師は全低身長患者の初期評価の一部としてこれを行うことが可能である。これによって、重篤な成長障害を引き起こすGH1遺伝子の損傷を有する患者や、より穏和な損傷(例、コーディング領域のミスセンス突然変異)を有する患者が検出される可能性が高くなる。これらの患者は、臨床上/表現型上の障害がISTで検出されるほど重篤ではなかったために臨床的に見落とされていた可能性があるが、こうした患者でもGHによる治療が有効である可能性がある。
4.生涯にわたってGHによる治療を要する患者の早期特定が可能である。GH分泌についての初期試験または再試験を行うことなく、また進行度を評価するためのGH未投与期間(「無治療試験」)をおくことなく、こうした患者を適切に特定、治療することが可能である。
5.GH機能不全を有する家族を容易かつ早期に特定することが可能である。ある患者で成長障害を引き起こす遺伝子損傷が見つかった場合、患者の他の家族を同じ遺伝子損傷について評価し、GHによる治療が有効であるかを検討することは比較的容易である。
6.診断精度が向上する。GH分泌についての試験は、同じ研究機関内や異なる研究機関間でアッセイの結果の再現性に関して変動が大きいことで悪評高い。本DNAスクリーニングによればこの問題は過去のものとなろう。更にGH分泌試験の結果は、例えば患者が更に甲状腺機能低下症を併発していたり、遅発思春期である場合など特定の状況では解釈が非常に困難である。本DNAスクリーニングによってこうした疑いがなくなり、GHによる治療が有効と考えられる患者で治療開始の遅れが防止される。
そこで本発明は更に本発明のスクリーニング方法を行ううえで使用するのに適したキットを提供するものである。本キットには:
(a)変異体GH1遺伝子の所定領域に対応した核酸配列を有するオリゴヌクレオチドであって、本発明に基づく変異から選択される、対応する野性型配列からの変異を前記領域が少なくとも1つ有するようなオリゴヌクレオチド、
(b)(a)で特定された領域内の野性型配列に対応する核酸配列を有するオリゴヌクレオチド、及び必要に応じて、
(c)患者のDNAの所望の領域を増幅するためのPCRを行うのに適した1以上の試薬
を含む。
こうした試薬としては、例えばGH1遺伝子の特定のエクソンに対応したPCRプライマー、及び/または本明細書中で定義されるようなプライマー、及び/またはTaqDNAポリメラーゼなどのPCRで使用する他の試薬が含まれる。
好ましくは本キットのオリゴヌクレオチドは、前記変異体配列については例えば20塩基対など20〜25塩基対の範囲であり、前記野性型については変異が1塩基対の置換である場合には20、また変異が5塩基対の欠失である場合には25塩基対からなる。いずれの場合も本発明のオリゴヌクレオチドは、選択された領域に固有となるように、かつ、ゲノムのどこかで重複しないものとなるように選択されることが必要である。
明らかなことであるが、15〜20以上など、複数の変異についてスクリーニングすることが望ましい状況では、ヌクレオチド40種以上からなるキットが必要となる。したがってDNAチップ技術を利用した別のスクリーニング方法では本発明は更に、固体支持体に固定された、上記キットの構成要素(a)として定義された複数種のオリゴヌクレオチドを提供するものである。
ナノテクノロジー分野で開発が進められているシグナル増幅法(Q−Dotsなど)などの他のヌクレオチド検出法を利用することも可能である。また1分子検出法を利用することも可能である(STMなど)。その場合、本発明に基づくキットにはこうした別法で使用される1以上の試薬が含まれる。
また、本発明に基づくスクリーニング方法及びこれに対応したキットは、タンパク質/アミノ酸配列(例、GH1の変異体またはGH変異体に対して特異的な抗体)などのGH1の変異体若しくはGH変異体の存在を示すか又は相関のある1以上の所謂「代用マーカー」に基づいたものであってもよい。こうした「代用マーカー」は、
(a)任意の生体分子(ヌクレオチド、タンパク質、糖類、脂質など、ただしこれに限定されない);
(b)化学的化合物(薬物、その代謝産物、及び他の化学的化合物など、ただしこれに限定されない);かつ/または
(c)所定の物理的特性、を備え、患者の体内におけるその存在、非存在、又は量が測定可能であって本発明に基づくGH変異体またはGH1の変異体の存在に相関しているものを使用することができる。
更に、本発明に基づく好適な別のスクリーニング方法では、従来のタンパク質配列決定法(質量分析法、マイクロアレイ分析、ピロシークエンシングなど)、及び/または抗体に基づいた検出法(例、ELISA)、及び1以上のこうしたタンパク質配列決定法を行うことによって同定可能なGH変異体(本発明のGH1の変異体によってコードされるものなどのhGHの変異体を含むタンパク質/ペプチド配列)を含む試験試料を得てもよい。
こうした別例では本発明に基づくキットはこうした別法で用いられる1以上の試薬を含んでいてもよい。
本発明のGH1変異体には、GH機能不全のスクリーニング試験で用いるスタンダードとしての用途の他にも更なる用途が考えられる。例えば、変異がGH1遺伝子のプロモーター領域にあるもの以外の変異体を使用して、脳下垂体性巨人症や末端肥大症の場合のようにGH産生が過剰刺激されている患者を治療することができる。
本発明は更に、
(a)2個の終止突然変異を有する1以上のGH変異体又はGH1の変異体の用途であって、成長ホルモンをまったく産生せず、かつ従来の診断法によって古典的GHDとして分類される患者の特定における用途、
(b)成長ホルモン受容体またはその結合タンパク質へのGHの結合を改変するGH変異体またはGH1の変異体であって、該改変によって変異体GHが結合タンパク質に結合することによる下垂体からの輸送が低減または阻害されて未結合タンパク質が組織受容体に到達する間に破壊されるようなGH変異体又はGH1の変異体、
(c)下垂体でのGHタンパク質の亜鉛二量体貯蔵型の生成を阻害するGH変異体又はGH1の変異体、
(d)GH変異体又はGH1の変異体によって発現されるタンパク質であって、GH受容体に対して拮抗性を有するタンパク質であるとともにその受容体結合定数は変異体タンパク質の効果及び阻害作用に打ち勝つ(変異体タンパク質は受容体への結合で野性型と競合する)ために患者を治療するうえで必要な外因性GHの量(用量)を決定するようなタンパク質、
(e)治療、診断、又は検出方法のための本発明に基づくGH変異体又はGH1の変異体の用途、
(f)疾患に対する個人の感受性を判定するための本発明に基づくGH変異体又はGH1の変異体の用途、
(g)糖尿病、肥満、感染症、癌、又は心臓疾患を含む疾患に対する感受性を判定するための本発明に基づくGH変異体又はGH1の変異体の用途、
(h)GH結合欠陥及び/又は下垂体貯蔵欠陥を判定するための本発明に基づくGH変異体又はGH1の変異体の用途、
(i)末端肥大症における拮抗剤治療の診断用量を決定するための本発明に基づくGH変異体又はGH1の変異体の用途、
(j)医療措置における本発明に基づくGH変異体又はGH1の変異体の用途、
(k)遺伝子療法における本発明に基づくGH1の変異体の用途、
(l)病態に関連した1以上の多型を判定するための本発明に基づくGH変異体又はGH1の変異体の用途、
(m)GH機能不全によって個人に関連するか又は引き起こされる状態を防止、治療、診断、若しくは検出するための医薬組成物、診断用組成物若しくはキット、または検出キットを調製するための本発明に基づくGH変異体又はGH1の変異体の用途、
(n)変異体GH1遺伝子の所定領域に対応した核酸配列を有する長さ約20ヌクレオチドのオリゴヌクレオチドであって、前記領域は対応する野性型配列と比較した場合に少なくとも1つの変異を有し、該変異は1以上の本発明に基づく変異を含むようなオリゴヌクレオチド、
(o)(n)のオリゴヌクレオチドの相補体を含むオリゴヌクレオチド、
(p)前記変異に対応するヌクレオチドが該分子の3’末端に位置する(n)のオリゴヌクレオチド、
(q)変異体GH1遺伝子にはハイブリダイズするが野性型GH1遺伝子にはハイブリダイズしない一本鎖DNAプローブであって、該変異体GH1遺伝子は本発明に基づくものから選択されるようなDNAプローブ、
(r)固体支持体に固定された核酸分子のアレイであって、(q)に記載の一本鎖DNAプローブを有するアレイ、
(s)GH機能不全が疑われる患者をスクリーニングするためのスクリーニング方法であって、
(i)患者からヒトGH1遺伝子のヌクレオチド配列を含む試験試料を得る工程と、
(ii)(n)に記載の変異体GH1遺伝子の所定領域に対応する前記患者からのヒトGH1遺伝子の所定領域の配列を比較する工程と、を含むスクリーニング方法、
(t)前記比較工程は前記所定配列とのハイブリダイズを行うことを含む(s)に記載の方法、
(u)前記比較工程はヒトGH1をコードした核酸の少なくとも一部を増幅することを含む(s)に記載の方法、
(v)前記比較工程は、本明細書中に述べられるものの中から選択される1以上のオリゴヌクレオチドによってヒトGH1をコードした核酸の少なくとも一部を増幅することを含む(s)に記載の方法、
(w)本明細書中に述べられるものの中から選択される増幅オリゴヌクレオチド、
(x)本明細書中に述べられるような患者のGH1遺伝子の1以上の変異(野性型に対する置換、挿入、または欠失など)、特に上記(n)〜(q)の1以上に記載の変異の種類を決定するために必要な構成要素を含む診断キットで、特に多型部位を有するこうした遺伝子のセグメントの増幅に使用されるオリゴヌクレオチドを含む診断キット、
(y)参照hGH配列からの本明細書中に述べられるような変異に対して特異的な抗体であって、示されたアミノ酸の位置で前記変異体と対応する野性型アミノ酸を区別することが可能な抗体、及び
(z)(y)に記載の抗体を含む診断キット
を提供するものである。
本発明は更に、本発明のGH変異体を、薬学的に許容されるその担体とともに含む組成物を提供する。
本発明は更に、
(a)本発明に基づく核酸配列を含むベクター、
(b)細菌ホスト細胞などのベクター(a)を有するホスト細胞、及び
(c)本発明のGH変異体を調製するための方法であって、
(i)ホスト細胞(b)を培養することと、
(ii)これによって産生されたGH変異体を培地から回収することとを含む方法、及び
(d)培地中に存在し、上記に定義したような配列、ベクター、又は細胞によってコードまたは発現されるタンパク質又はアミノ酸配列
を提供する。
本発明を以下に実施例によって説明する。
実施例1A−患者の選択 英国での研究
患者のソース
カーディフのウェールズ大学医学部、地域小児科成長、内分泌、糖尿病サービスからの紹介、ならびに他の同様の英国内のセンター(ニューポート、バーミンガム、ブリストル、レクサム、リバプール、ストーク・オン・トレント、ポーツマス、及びサウサンプトン)の協力により低身長症の子供を特定した。家族歴、家系図、成長パラメータの記録、及び以前に行われた内分泌に関する調査を含む完全な病歴を得た。指標となる例、両親、兄弟について可能な限り正確な成長学を記録した。指標例及び適当な近縁者から分子遺伝学的分析のための血液サンプルを採取した。更なる家族をジョン A.フィリップ三世教授(米国テネシー州ナッシュビル在住)、モハマド マグニー博士(イタリア パビア在住)、ならびにタマス ニーダーランド博士(ハンガリー ジェール在住)から紹介いただいた。現在までに83例のGH欠損症家系からサンプルを得た。最初の70人の患者に関する結果は本発明者等による同時係属中の国際特許出願第PCT/GB01/2126号明細書に示されている。
使用基準
患者の選定に使用した基準は以下のとおり。
(i)所定の成長パターン[複数の身長測定値によって得られるもの。Brook CDG (Ed) Clinical Paediatric Endocrinology 3rd Ed, Chapter 9, p141 (1995, Blackwell Science)]として定義される、標的身長範囲率(%)の下限を下回る成長。この成長パターンは、標準身長チャート[Tanner et al Arch Dis Child 45 755−762 (1970)]上にプロットした場合に、患者の両親の身長に基づいた患者の推定標的成人身長の範囲を逸脱する患者の成人身長を予測するものである。
(ii)25パーセンタイル未満の身長速度[Tanner JM, Whitehouse RH Atlas of Children’s Growth (1982, London: Academic Press)]。Butler et al Ann Hum Biol 17 177−198 (1990)を統計のソースとすることで、患者の身長速度が患者の年齢の25パーセンタイル未満であるというこの基準の判定が可能となった。
(iii)実年齢と比較した場合に少なくとも2年、例として3.5〜4年の骨年齢の遅延。ただし5歳以下の子供または思春期の発育の臨床所見の見られた子供を除く。(骨年齢の遅延年数を評価するためのタナー−ホワイトハウススケールは、タナー JM、ホワイトハウス RH、キャメロン N等によって「骨格成熟及び成人身長の予測の評価」に述べられている(Tanner JM, Whitehouse RH, Cameron N et al in Assessment of Skeletal Maturity and Prediction of Adult Height (1983, London: Academic Press))。患者の骨年齢遅延の評価は、複数回の評価が行われた場合や患者が低年齢であるほど変動が大きく、例えば2歳児の複数回の評価を行った場合では骨年齢遅延には±6ヶ月の差があるが、3歳児では±4ヶ月の差である、という具合である。
(iv)他のすべての調査項目が正常値であること。
(v)成長ホルモン分泌試験の結果が正常値であること。
基準(iv)及び(v)は、「観察された成長障害を説明するGH軸欠陥の可能性以外に特定可能な病理がない」こととしてまとめられる。更にこの研究で用いる重要な基準として、子供の評価を行う医師はGH分泌試験が適性に行われるよう子供の成長パターンに関して充分に注意を払う必要があった。選択された子供は、試験の種類、試験結果、又は実際子供が試験に参加したか否かと関わりなく、GH分泌試験が適性に行われるうえで充分な臨床上の注意を喚起する臨床的表現型を示した。
第5表Bにおいて、GH FTピークは、1以上の標準成長ホルモン機能試験における活性の単位(IU/L)を示す。「ランダム」とは、GH測定値をランダムに得たことを示す。NDは「無試験」を示す。身長パーセンタイルは、50パーセンタイルよりも大幅に低い身長を有することが選択の不可欠な基準ではないことを示すために示した。すなわち本発明者等は身長がさほど低くない患者においても生ずるGH/GH1の変異を見出した。
斜体で示した患者は変異が見られた患者である。太字で示した患者は新規な変異を示したものである。
Figure 2005518786
実施例1B−患者の選別−アンダルシアでの研究
スペイン、アンダルシア地方で異なる患者のコーホートを確立した。ランケ(Ranke; Hormone Research 45 (Suppl 2) 64−66 (1996))によって定義される家族性低身長を示すFSSとしての分類に基づいて50人の患者を選別した。これらの患者は低身長を示す少なくとも1人の遺伝的家族を有していた。
患者B53、身長:−2.0SD
母親の身長:149.5cm(−2.15SD)
父親の身長:163.3(−1.71SD)
ピークGH試験:18.1ng/ml(クロニジン)
IGF−I:94ng/ml
IGFBP−3:2.03mg/L
生年月日:10/6/91
患者B49、身長−2.7SD
母親の身長:138.9cm(−3.88SD)
父親の身長:165.4(−1.40SD)
ピークGH試験:10.4ng/ml(プロパノロール)
IGF−I:94ng/ml
IGFBP−3:2.97mg/L
生年月日:13/12/92
患者B4、身長−2.1SD
母親の身長:163.4cm(−1.7SD)
父親の身長:148.7cm(−2.3SD)
IGF−I:99ng/ml
IGFBP−3:2.1mg/L
実施例2−GH1特異的フラグメントのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による増幅
実施例1の要領で選択した患者とコントロールで3.2kbのGH1特異的フラグメントのPCR増幅を行った。ゲノムDNAは標準的手法によって患者のリンパ球から抽出した。
Expand(商標名)ハイフィデリティシステム(ロシュ)を使用して、ヒトGH1遺伝子を含んだ3.2kbの単一のゲノムDNAフラグメントをPCR増幅するため、GH1特異的配列に対応したオリゴヌクレオチドプライマーとして、GH1F(5’GGGAGCCCCAGCAATGC3’;−615〜−599)及びGH1R(5’TGTAGGAAGTCTGGGGTGC3’;+2598〜+2616)を設計した。
各反応で2本の別個の肉薄の0.65ml PCRチューブを用いた。第1のチューブには、500ナノグラム(ng)ずつの各プライマー(GH1F及びGH1R)、各200μMのdATP、dTTP、dCTP及びdGTP、及び200ngの患者のゲノムDNAに滅菌水を加えて最終容量を25μlとした。第2のチューブには、5μlの10×反応バッファに滅菌水を加えて最終容量を24.25μlとした。両チューブを5分間氷冷した。この時間の後、0.75μlのExpand(商標名)ポリメラーゼミックスを第2のチューブに加え、内容物を混合して第1のチューブに移した。このチューブを30秒遠心して、反応混合物に30μlのライトミネラルオイル(シグマ)を重層した。次いでこの反応混合物を95℃に設定した480または9700プログラマブルサーマルサイクラー(パーキンエルマー)に入れた。
次いで反応混合物を以下の条件で増幅した。95℃で2分間の後、95℃で30秒、58℃で30秒、68℃で2分間を30サイクル。最後の20サイクルでは、68℃での伸長反応を各サイクルで5秒間延長して行った。この後、68℃で7分間更にインキュベートして、反応溶液を4℃に冷却してから更なる分析を行った。各反応溶液のセット毎にブランク(ネガティブコントロール)を設けた。このブランク反応液はゲノムDNA以外のすべてが含まれるものを使用し、これを使用してコンタミネートされた試薬がないことを確認した。
10分の1量(5μl)を1.5%アガロースゲルで分析してnestedPCRを行う前にPCR増幅がうまく行われたかを評価した。首尾よくPCR増幅が行われた試料は100分の1に希釈してからnestedPCRで使用した。
実施例3−nestedPCR
実施例2で得られたフラグメントでnestedPCRを行ってそれぞれについてGH1遺伝子の全体をカバーする7個の重複したサブフラグメントを生成した。更に3人の患者を除いてすべての患者でLCR(遺伝子座調節領域)をPCR増幅した(実施例5を参照)。
Taq GoldDNAポリメラーゼ(パーキンエルマー)を使用して最初の3.2kb PCR産物の7個の重複サブフラグメントをPCR増幅した。これらの反応で使用したオリゴヌクレオチドを、GH1遺伝子参照配列から決定した配列位置とともに第6表に示した。
希釈したロング(3.2kb)PCR産物の1μl量を肉薄の0.2ml PCRチューブまたは96穴マイクロタイタープレートのウェルの1個に入れた。これに5μl 10×反応バッファ、500ngの適当なプライマー対(例、GH1DF及びGH1DR)、dATP、dTTP、dCTP及びdGTPを200μMの最終濃度にまで加え、滅菌水を加えて容量を49.8μlとし、0.2μlのTaq Goldポリメラーゼを加えた。
このチューブまたはマイクロタイタープレートをPrimus96サーマルサイクラー(MWGバイオテック)に入れ、次の条件でサイクル反応を行った。95℃で12分の後、95℃で30秒、58℃で30秒、72℃で2分を32サイクル。この後、72℃で10分間更にインキュベートし、反応溶液を4℃に冷却してから更なる分析を行った。
得られた反応混合物の10分の1量(5μl)を0.8%アガロースゲルで分析して、WAVE(商標名)DNAフラグメント分析システム(トランスゲノミック社、イギリス国 チェシア クルー所在)で変性高圧液体クロマトグラフィ(DHPLC)を行うのに先立って反応が首尾よく行われたことを確認した。ヘテロ二本鎖の形成を促進するため、PCR産物を95℃で5分間変性した後、50℃で45分かけて徐々に再アニーリングを行った。得られた産物をDNAsepカラム(トランスゲノミック)にかけ、0.1Mの酢酸トリエチルアミンバッファ(TEAA pH7.0)中、0.9ml/分の一定流速で2%/分のアセトニトリル(BDHメルク)の線形濃度勾配で溶出した。濃度勾配の開始点ならびに停止点は、PCR産物のサイズにしたがって調節した。分析に要した時間は、カラムの再生及び平衡化に要した時間を含めて増幅試料毎に6.5〜8.5分であった。各試料はDHPLCMeltソフトウェアを使用して求め、第6表に示した融解温度(TM)にて分析を行った。溶出したDNAフラグメントはUV−C検出器(トランスゲノミック)によって検出した。
Figure 2005518786
上記実施例1Aにしたがって選別された患者から得られた試料に関して、以下の手法(実施例4及び5)を行った。
実施例4−GH1特異的ロングPCRフラグメントのDNA配列決定
Primus96(MWG)または9700(パーキンエルマー)PCRサーマルサイクラー上、0.2mlチューブまたは96穴マイクロタイタープレート中でBigDye(RTM)配列決定キット(パーキンエルマー)を使用してGH1特異的ロングPCRフラグメントを含むクローンの配列決定を行った。配列決定に使用したオリゴヌクレオチドプライマーは次のとおり。
GH1S1(5’GTGGTCAGTGTTGGAACTGC3’:−556〜−537);
GH3DF(5’CATGTAAGCCAAGTATTTGGCC3’:+189〜+210);
GH4DF(5’GACTTTCCCCCGCTGTAAATAAG3’:+541〜+560):及び
GH6DF(5’TCCCCAATCCTGGAGCCCCACTGA3’:+1099〜+1122)
1μgのクローン化DNAを3.2pmolの適当なプライマー及び4μlのBigDye配列決定混合物を用いて20μlの最終容量で配列決定した。次いでこのチューブまたはマイクロタイタープレートをサーマルサイクラーに入れ、次の条件でサイクル反応を行った。96℃で2分の後、96℃で30秒、50℃で15秒、60℃で4分を30サイクル。この後反応溶液を4℃に冷却してから精製を行った。
反応が完了した配列決定用反応溶液に80μlの75%イソプロパノールを加えて精製を行った。反応溶液を混合し、室温で30分放置した。次いで反応溶液を室温にて14000rpmで20分遠心した。上清を除き、沈殿物に250μlの75%イソプロパノールを加えた。この試料を混合し、室温にて14000rpmで5分遠心した。上清を除き、ペレットを75℃で2分乾燥した。
この後、試料をABI Prism377又は3100DNAシーケンサーで分析した。
実施例5−GH1遺伝子の突然変異及び多型
(a)実施例1A(英国)の患者
本発明者等の患者コーホートでGH1遺伝子のプロモーター領域に、1塩基対置換及びインデル(挿入/欠失)の2個の新たな突然変異が見出された。
(i)−60G→Aへの置換が本発明者等の患者サンプルにおいて2/25の突然変異アレルで見出された(患者57及び75でヘテロとして)。この突然変異はビタミンD応答因子のGが5個連続した部分(Alonso et al Biochem Biophys Res Commun 247: 882−887 (1998))ですべての哺乳動物で保存されている塩基で生じた。このことはこのヌクレオチドの機能的重要性と合致する。この変異には常に低発現要素であるプロモーターハプロタイプ19が関与している。
(ii)患者76Aにおける−40〜−39GG→CTへのインデル(挿入/欠失)は、遺伝子変換を鋳型としている可能性が考えられる(前者のドナー配列はGH2、CSH2又はCSHP1であり、後者ではCSH1又はCSH2である)。
Figure 2005518786
(b)実施例1B(バルセロナ)の患者
病理学的重要性を有すると思われる3個の突然変異がバルセロナの50人の家族性低身長患者の配列分析において見出された。すなわち、−360A→G(患者B4)、+1029でのGTC→ATC(Val110→Ile)(患者B53;この変異は同時係属中の国際特許出願第PCT/GB01/2126号明細書にも記載されている。)、及び+1491でのATC→ATG(Ile179→Met)(患者49)である。
コントロールサンプルでは4個のIle110アレルが見出されたことから(頻度0.025)、この変異体は一般集団で多型頻度で発生する。分子モデリングによれば、この置換はGHの構造に悪影響を及ぼすと思われる。進化過程で保存されているVal110残基はへリックス3のN末端で疎水性のコアの一部を形成しているが、これが長い側鎖を有するIleによって置き換えられることによって立体障害となると考えられる。この予想と一致してIle110変異体では、JAK/STATシグナルトランスダクション経路を活性化する能力は劇的に低下している(正常値の40%)。したがってVal110→Ileへの置換は、GH活性の低下に関連し、身長に潜在的に影響を及ぼす機能性多型を表していると考えられる。この変異には比較的正常な活性を有するプロモーターハプロタイプ2が関係している。
Ile179Met変異に関して、Ile179はhGHタンパク質の表面上、へリックス4の中央に位置しているが、hGHbp/hGHの2:1複合体では、Ile179は部位1の「ホットスポット」残基であるTRP104及びTRP169と直接相互作用する。したがってメチオニン残基によるIle179の置換によって、部位1の正確な立体拘束が妨害され、hGHの機能に大きな変化が生じると考えられる。
(c)コントロールにおけるGH1コード配列変異の研究
実施例2及び3の方法を用いてGH1遺伝子のコード領域内の変異について全体で80人の白人系の健康なイギリス人のコントロールのスクリーニングを更に行った。別々の個人において5例のサイレント置換が見出された(Asp26におけるGAC→GAT、Ser85におけるTCG(R)TCC、Ser85におけるTCG(R)TCA、Thr123におけるACG(R)ACA、ならびにAsn109におけるAAC(R)AAT)。Thr123多型変異体は以前に報告されているものである(Counts et al Endocr Genet 55−60 (2001))。
更に3例のミスセンス置換が見出された(ACC(R)ATC、Thr27(R)Ile; AAC(R)GAC、Asn47(R)Asp; GTC(R)ATC、Val110(R)Ile、 160個のアレル中それぞれ1、1、及び4個のアレルで見られた)。本発明者等による同時係属中の国際特許出願第PCT/GB01/2126号明細書に開示される患者の研究では、Val110→Ileへの置換のみが見られた(患者66)。分子モデリングによれば、この置換はGHの構造に悪影響を及ぼすと思われる。Val110はへリックス3のN末端で疎水性のコアの一部を形成しているが、これが長い側鎖を有するIleによって置き換えられることによって立体障害となると考えられる。したがって、Val110→Ileへの置換はコントロール及び患者集団の双方で見られはしたが、やはり身長に影響している可能性がある。他のコメントは上記の実施例5(b)と同様に当てはまる。しかしながらコントロール集団においてミスセンス突然変異が比較的少なかったことは、患者のコーホートにおいて見られる遺伝子損傷の病理学的重要性を支持するものである。
(d)更なる結果
Val100Ile及び−60G→Aに関して上記に述べたプロモーターハプロタイプの関与の他に、−24Thr→Ala(上記第4表参照)には低発現要素であるプロモーターハプロタイプ21が常に関与していること、及び−48G→A(本発明者等による同時係属中の国際特許出願第PCT/GB01/2126号明細書に記載)には正常な発現要素であるプロモーターハプロタイプ2が常に関与していることが示されている。
実施例6−Arg16Cys変異の特定を含む更なる研究
GH変異体のin vitro発現ならびに生物学的活性のアッセイ
プライマーとしてGHCDNA5(5’AAGCTTGCAATGGCTACAGGCTCCC3’;−3〜+16)及びGHCDNA3(5’ACCGGTCTAGAAGCCACAGCTCCC3’;+636〜+654)(HindIII及びAgeIの鋳型化されていない制限部位を下線で示した)を用いて、クローン化した野性型GH1 cDNAをPCR増幅した。このPCRフラグメントをHindIII及びAgeIで消化し、昆虫の発現ベクターであるpIZ/V5−His(インビトロジェン)にクローニングして配列を確認した。
QuikChange部位特異的突然変異誘発キット(ストラタジーン)を製造者の指示にしたがって使用して野性型GH1 cDNAに部位特異的突然変異誘発を行った。ExpressFiveSFM培地(インビトロジェン)中で培養した昆虫細胞HighFive(インビトロジェン)にセルフェクチンを用いてこのベクターをトランスフェクトした。安定してトランスフェクトされた細胞をゼオチン耐性に基づいて選別した。2回の連続した7日間の期間にわたり、細胞が80%コンフルエンスに達した段階で培地を回収した。培養上清中のヒトGHをIRMA(ニコルス・インスティテュート・ダイアグノスティクス)によって定量化した。Arg16Cys変異体(IRMAで交差反応性を示さず)を除き、IRMAにおけるGH変異体及び昆虫細胞発現野性型GHの交差反応性は希釈法によればアッセイ用の参照調製物(米国国立衛生研究所の参照用調製物NIAMDD−hGH−RP−1に対して校正したもの)と同等であった。
Arg16Cys変異体をウエスタンブロッティングによって定量した。これは、変異体バンドの強度を既知量の野性型GHによるバンドの強度と比較することによって行った。Arg16Cys変異体を発現している昆虫細胞から得た10μlの培地を、異なる量の野性型GH(7〜53ng)とともに12%ポリアクリルアミドゲルに流した。このゲルをルイス(Lewis et al., 2002)等の記載に基づきPVDFメンブレン上に電気ブロットし、抗ヒトGH抗体(ラブ・ビジョン)でプロービングし、1:500に希釈して、強調化学発光(ECLプラス、アマシャム・ファルマシア・バイオテック)によって可視化した。フィルムをイメージングデンシトメトリーで分析し、野性型GHについて標準曲線を構築した。この曲線を用いてArg16Cys変異体を定量した(平均で6回の別個の計測)。このIRMAによる定量をウエスタンブロットで確認した。等量の変異体と野性型GHをロードしたところ、変異体及び野性型バンドの強度及び分子量(22kD)はすべての場合で区別されなかった。
完全長のヒトGH受容体(GHR)をトランスフェクトし、GHR発現レベルの上昇に基づいて選別したHK293細胞(HK293Hi細胞)を用いてGH変異体の生物学的活性についてアッセイを行った(Ross et al Mol Endocrinol 11 265−73 (1997), von Laue et al J Endocrinol 165 301−11 (2000))。細胞を24穴プレートに播き(ウェル当たり細胞100,000個)、10%FCSを含有したDMEM:F−12(1:1)で24時間培養した。脂質系トランスフェクション試薬(FuGENE6、ロシュ・モレキュラーバイオケミカルズ)を使用して、STAT5−応答性ルシフェラーゼリポーター遺伝子のコンストラクト(Ross et al, ibid)及び構成的に発現するβ−ガラクトシダーゼ発現ベクター(pCH110;アマシャム・ファルマシア・バイオテック)を一晩同時トランスフェクトして、トランスフェクション効率を補正した。次いで細胞を既知の濃度範囲(0.1〜10nM)に希釈した変異体及び野性型GHとともに2.5×10−7Mのデキサメタゾンを含有する無血清DMEM:F−12(1:1)中、6時間インキュベートしてGHRを二量化させ、STAT5を活性化させ、ルシフェラーゼを発現させた。インキュベーション後、細胞を溶解し、プロメガ社のルシフェラーゼアッセイシステムを用いてマイクロプレート照度計(アプライド・バイオシステムズ)でルシフェラーゼを測定した。すなわちルシフェラーゼの発現量によって、GHR活性化の程度、ひいてはGH変異体の生物学的活性の目安が与えられた。実験は4重に行い、少なくとも3回繰り返した。分散分析(ANOVA)によってルシフェラーゼアッセイのデータの統計学的分析を行った後、Student−Newman−Keulの多重比較検定によって比較を行った。
哺乳動物細胞におけるGH分泌の研究
野性型GH1遺伝子の全体にわたる3.2kbのフラグメントを含むpGEM−Tプラスミド(プロモーターハプロタイプ1の制御下にある)及び付随するハプロタイプの制御下にあるミスセンス変異についての同様のコンストラクトをラット脳下垂体(GC)細胞系にトランスフェクトした。細胞を24穴プレートに播き(ウェル当たり200,000個)、15%ウマ血清及び2.5%FCSを含有するDMEM(完全培地)で一晩培養した。脂質系のトランスフェクション試薬Tfx−20(プロメガ)を使用して、500ngのGH1プラスミド及びβ−ガラクトシダーゼ発現ベクター(pCH110;アマシャム・ファルマシア・バイオテック)を細胞に同時トランスフェクトした。トランスフェクションは、ウェル当たり1μlのTfx−20を含有する200μlの無血清培地中で1時間かけて行い、その後0.5mlの完全培地を各ウェルに加えた。細胞を48時間培養してβ−ガラクトシダーゼアッセイ用に培地を回収し、細胞を溶解してトランスフェクション効率の差を補正した。Arg16Cysを除いてすべての変異体について、ラットGHと交差反応性を示さないヒトGH IRMA(ニコルス・インスティテュート・ダイアグノスティクス)を用いて培地中のGHを定量した。Arg16Cys変異体はGH IRMA中で交差反応性を欠くため、この変異体はヒトGH ELISA(DRGダイアグノスティクス)を用いて定量した。Arg16Cys変異体はこのアッセイで完全に交差反応し、標準曲線と平行に希釈されたのに対し、ラットGHは交差反応性を示さなかった。Arg16Cys変異体についての結果を同じ実験でELISAキットを用いて定量した野性型GHと比較した。生物学的活性のアッセイに関して述べたのと同様に実験を行い、データを分析した。
ミスセンス変異体の機能のキャラクタリゼーション
ヒトGHのX線結晶解析構造において適当なアミノ酸残基を単純に置換することによって成熟タンパク質におけるミスセンス突然変異をモデル化した。ミスセンス突然変異の大半は、機能不全であるが正常に折り畳まれたタンパク質のモデルではなく、GH分子の構造的変形のモデル(これにともなってタンパク質の折り畳みが妨害され、成体活性が低下する)と適合することが示された。しかしながら、3つのミスセンス突然変異(Arg16Cys、Lys41Arg、Thr175Ala)がGHRと相互作用することが知られているGH分子の領域内に特定された(De Vos et al Science 255 306−12 (1992))。実際、関与しているアミノ酸の内、2個のもの(Lys41及びThr175)は、GHの部位1とGHRとの間の緊密な結合親和性にとって必要であることが以前に示されている8個の重要な残基に含まれている(Cunningham and Wells 234 554−63 (1993); Clackson and Wells Science 267 383−6 (1995); Wells Proc Natl Acad Sci USA 93 1−6 (1996))。
培地中に分泌されなかったLeu−11Proを例外として、13のGHミスセンス変異体が昆虫細胞で発現した。そこでルシフェラーゼリポーター遺伝子アッセイを使用して変異体のシグナルトランスダクション活性をアッセイした。GHが生物学的に活性を有するためには、GHは2個のGHR分子に結合することによって受容体の二量化を引き起こす必要がある。これは細胞内チロシンキナーゼJAK−2を活性化し、これが更にリン酸化によって転写因子STAT5を活性化する。リン酸化されたSTAT5は二量化し、核に転位してSTAT5応答性プロモーターに結合することによりGH応答性遺伝子の発現のスイッチを入れる。ここで用いたGHの生物学的活性のアッセイではこの経路の全ての段階が機能している必要がある。6つの変異体(Thr27Ile、Lys41Arg、Asn47Asp、Ser71Phe、Ser108Arg及びThr175Ala)でJAK/STATシグナルトランスダクション経路を活性化する能力が著しく低下していたのに対して、残りの7つ(Thr−24Ala、Asp11Asn、Arg16Cys、Glu74Lys、Gln91Leu、Ser108Cys及びVal110Ile)は正常もしくはほぼ正常の機能活性を示した(図6)。原則的に後者の変異体群はJAK/STAT以外のシグナルトランスダクション経路に対して阻害作用を及ぼしたか、あるいはその阻害作用が静的なin vitroシステムでは現れなかった可能性が考えられる。またこれらの変異体ではmRNAのスプライシング、GHの折り畳み、分泌、若しくは安定性に問題があったか、又はGH軸に対する悪影響が別のかたちで現れた可能性がある。最後にこれらの変異体は単に稀なニュートラルで表現型上の影響のない変異体であった可能性もある。
これらの可能性を更に検証するため、ラットの脳下垂体GC細胞でGHのミスセンス変異体の分泌の研究を行った。GH1プロモーターハプロタイプ1の制御下にある野性型GH1遺伝子をGC細胞にトランスフェクトしたところ、48時間にわたって64pMの濃度でヒトGHの分泌(ヒトGH特異的抗体を用いたIRMAにより測定される)を引き起こすことが示された。各GH変異体はこれに伴うプロモーターハプロタイプの制御下でアッセイし、測定されたGHの分泌濃度を野性型のパーセンテージとして表した(図7)。野性型に対して低減した分泌量は、ミスセンス突然変異の直接的影響ではなく、低発現性プロモーターハプロタイプを有することによる発現量の低下にすべてまたは一部帰因すると考えられることから、付随する各隣接プロモーターハプロタイプについて経験的に導かれた発現レベルを直接比較した(図7)。Ala−24変異体によって分泌されたGHの量は野性型Thr−24の分泌量の約63%であったが、付随するプロモーターハプロタイプ21は野性型プロモーターハプロタイプ1のプロモーター活性の58%を示したに過ぎなかった。このことから、Thr−24A突然変異はGH分泌にほとんどあるいはまったく影響せず、Ala−24を有するアレルに見られる分泌量の低下は、シスエレメントである低発現性プロモーターハプロタイプの存在のみによるものと推測することができる。低下したプロモーター活性は、Asp11Asn及びAsn47Asp変異体の分泌量の低下を説明するうえでも恐らく充分であるが、機能不全であるLys41Arg及びSer71Phe変異体の低い分泌レベルは、付随する低発現性プロモーターハプロタイプだけでは恐らく説明がつかない。これに対して、Leu−11Pro突然変異を有するGH1コンストラクトでは、正常発現性プロモーター(ハプロタイプ2)が付随しているにも関わらず測定可能なGHは分泌されなかった。同様に変異体Arg16Cys、Glu74Lys、Gln91Leu、Ser108Cys及びVal110Ileで見られる分泌量の低下は、低発現性プロモーターハプロタイプによるものとは考えられず、導入されたミスセンス突然変異の結果であるものと考えられる。Leu−11Proリーダーペプチド突然変異と併せると、これらの5つの変異体はGHの機能的活性ではなくGHの分泌量を低下させる点で特徴的な群を構成するものである。Thr27Ile及びThr175Ala変異体の分泌量は野性型と同等であったが、Ser108Argの分泌量は上昇していた。
上述の基準にしたがって選別された低身長の患者において、新たなVal110Ile置換が一例見出された。しかしながらコントロール群において4例のIle100アレルがやはり見出されたことから(アレル頻度0.013に相当)、この変異体は一般集団における多型と考えることも可能である。分子モデリングによれば、この置換はGHの構造に悪影響を及ぼすと思われる。実際、進化過程で保存されているVal110残基はへリックス3のN末端で疎水性のコアの一部を形成しているが、これが長い側鎖を有するIleによって置き換えられることによって立体障害となると考えられる。この予想と一致して、Val110Phe置換は常染色体優性II型IGHDの原因として報告されている(Binder et al J Clin Endocrin Metab 86 3877−81 (2001))。ここで報告されたIle110変異体は著しく低下した分泌を示すことから機能性の多型であると考えられる。
臨床上での患者の選別に上述の基準を採用することによって、試験する発端者で新たなGH1遺伝子損傷の検出が可能となることから便利である。実際、選別された個人では選別を行わない個人(7/154)と比較して大幅に高い頻度(6/41)で機能的に有意な突然変異が発生することが示されている(オッズ比:3.6、95%信頼区間(CI):1.0〜12.9)。Val110Ile機能性多型をこの比較から除外するとオッズ比は7.0となる(95%CI:1.4〜39.0)。しかしながらこの群での機能的に有意なGH1遺伝子損傷の発生率は、GH1遺伝子の大規模欠失のないIGHD患者群と比較して大幅に低い(6/11;オッズ比:25.2;95%CI:5.1〜132.2)。新たなGH1遺伝子突然変異を拡充するうえで上記基準が適切に使用しうることは、GH分泌試験の結果とは関係なく、成長学上のパラメータと骨年齢を参照することによってGH1遺伝子損傷の保因者の特定が可能であることを実証するものである。これに対して、GH1遺伝子損傷を有することが示されている発端者では、測定されるいずれの実験上または臨床上の表現型パラメータに関しても非保因者である発端者と大きく異ならないことから、スクリーニング方法としてDNA配列決定法を使用せずに発端者間で多くの保因者を特定することは容易ではない。
本実施例にしたがって特定された変異体の内、Leu−11Pro、Lys41Arg、Asn47Asp、Ser71Phe、Ser108Arg、Thr175Ala、Glu74Lys、Gln91Leu、Ser108Cys及びVal110Ileについては本発明者等による同時継続中の国際特許出願第PCT/GB01/2126号明細書に述べられている。JAK/STAT経路を活性化する能力が低下した変異体であるThr27Ile、付随するGH1隣接プロモーターハプロタイプによる発現レベルの許容度が確立された後、ラット下垂体細胞内での分泌が低下する変異体であるArg16Cys、ならびに、MAPキナーゼのシグナルトランスダクション経路を活性化する能力が低下した変異体であるIle179Metは今回初めて記載されるものである。最初の2つのものはそれぞれ図6及び7にT27I及びR16Cとして示されている。
実施例7−変異Ile179MetによるMAPキナーゼ経路の活性化
GH変異体のタンパク質分解による消化
野性型GH又はIle179Met変異体(60μM)を発現している昆虫細胞から得た100μl培地にトリプシン、キモトリプシン、又はプロテイナーゼK(すべてシグマ、イギリス国 プール)を0.1μg/mlの最終濃度で加え、37℃で1時間インキュベートした。野性型GHを用いてこれまでに行われた用量依存実験によると、3種の酵素のすべてによって分解が始まる濃度は0.1μg/mlである。1時間の処理時間の後、10μlのトリプシン−キモトリプシン阻害剤(500μg/ml)を加えてトリプシン及びキモトリプシン消化を停止させ、1μlのPMSF(0.1M)を加えてプロテイナーゼK消化を停止させた。各反応液を更に15分37℃でインキュベートした。ミニゲル装置(バイオ−ラド・ラボラトリーズ)を使用して試料を12%ゲル上でSDS−PAGEで分析した。37℃で1時間インキュベートした未消化の野性型GH及びIle179Met変異体も等量、ゲルに流した。このゲルを上述のように(Lewis et al Neuroendrocinology 2002.14,361−367)、PVDFメンブレン上に電気ブロットし、マウスモノクローナル抗ヒトGH抗体(ラブ・ビジョン アメリカ合衆国 カリフォルニア州 フリーモント)でプロービングし、1:500に希釈し、抗マウスIgG−HRP複合体(1:5000、アマシャム・バイオサイエンス)を用いて検出し、強調化学発光(ECLプラス、アマシャム・バイオサイエンス)によって可視化した。アルファイメージャー1200デジタルイメージングシステム(アルファイノテック、アメリカ合衆国 カリフォルニア州 サンリアンドロ)を用いてフィルムを分析し、結果を酵素消化後に残存したGH量として未消化GHのパーセンテージで示した。この実験を3回繰り返して両側t検定によって統計的評価を行った。
MAPキナーゼ経路の活性化
Ile179Met変異体が野性型GHと同程度にMAPキナーゼシグナルトランスダクション経路を活性化する能力を、野性型GH及びIle179Met変異体で3T3−F442A前駆脂肪細胞を刺激する(20nMで15分)ことにより調べた。この後、上述したように細胞を溶解して10%ゲル上でSDS−PAGEを行って分析した。このゲルをPVDFメンブレン上にブロットし、p42/p44MAPキナーゼ(セルシグナリング・テクノロジー)とSTAT5(アップステート・バイオテクノロジー)の活性化型(リン酸化型)を検出する抗体を使用してプロービングした。ECLプラス(アマシャム)を用いてブロットを処理、可視化して、画像を上記のように分析した。
Ile179Met変異体の機能性キャラクタリゼーション
疎水性残基であるIle179の進化上の保存を、19種類の脊椎動物から得られたorthologousなGHタンパク質のClustalW多重配列アラインメントによって調べた(Krawczak et al Gene 1999. 237,143−151)。この残基はカメを除いたすべての脊椎動物で疎水性のバリンであり、ヒト系統でのIleによる置換は保存されていることを示している。ヒトGHクラスターのparalogousな遺伝子の比較によって、Ile179に相当する残基は、CSH1、CSH2及びCSH偽遺伝子(CSHP1)のMetであることが示された。このことは保存的Ile179Met置換が遺伝子変換を鋳型としているとする考え方と一致する。
次にヒトGHのX線結晶解析構造で残基を置換することによってIle179Met置換をモデル化した。Ile179はへリックス4でその一部が剥きだしとなるかたちで存在し、「ホットスポット」であるGHRの残基Trp169の側鎖との疎水性相互作用が可能となっている。GHRとの更なる相互作用が、Ile179の側鎖及び主鎖原子と、GHR残基であるLys167及びGly168の主鎖原子との間で生ずる。メチオニンの側鎖によるIle179側鎖の置換によれば、こうした疎水性相互作用は置換に際して保存されうることが示される。
このIle179Met変異体を昆虫細胞で発現させ、ルシフェラーゼリポーター遺伝子アッセイシステム(11,12)を使用してそのシグナルトランスダクション活性についてアッセイを行った。GHが生物学的活性を示すためには、2個のGHR分子に結合することによって受容体の二量化を引き起こす必要がある。GHRの二量化によって細胞内のチロシンキナーゼJAK2が活性化され、これによってリン酸化により転写因子STAT5が活性化される。リン酸化されたSTAT5は二量化し、核に転位してSTAT5応答性プロモーターに結合することによりGH応答性遺伝子の発現のスイッチを入れる。ここで用いたGHの生物学的活性のアッセイではこの経路の全ての段階が機能している必要がある。Ile179Met変異体では、JAK/STATシグナルトランスダクション経路を活性化する能力は正常(野性型の99±4%)であることが分かった。
しかしながらIle179Met変異体がMAPキナーゼ経路を活性化する能力をアッセイすべく設計された上記実験では、変異体に対する活性化のレベルは野性型(基底活性化レベルの14.5倍)と比較して大幅に低いことが示された(基底活性化レベルの5.7倍)。これはこの変異体が野性型GHと同レベルにSTAT5を活性化する能力とは対照的である(野性型(Ile179)では20.5倍に対し、Met179変異体では22.5倍)。STAT5のデータは、野性型GHとIle179Met変異体が同様の活性レベルを示したSTAT5応答性ルシフェラーゼバイオアッセイの結果を証明するものである。
これらの可能性を更に検証するため、ラットの脳下垂体GC細胞でのIle179Met変異体の分泌の研究を行った。GH1プロモーターハプロタイプ1の制御下にある野性型GH1遺伝子をGC細胞にトランスフェクトしたところ、48時間にわたって64pMの濃度でヒトGHの分泌(ヒトGH特異的抗体を用いたRIAにより測定される)を引き起こすことが示された。次いでIle179Met変異体(患者B49においてシスエレメントとして付随するGH1プロモーターハプロタイプ1の制御下にやはりある)をアッセイし、測定されたGHの分泌レベルを野性型のパーセンテージとして表した。分泌量は野性型の値の97±4%であったことから、この突然変異はGHの分泌にはほとんどあるいはまったく影響を及ぼさないと推測される。
最後に、Ile179Metにトリプシン、キモトリプシン、及びプロテイナーゼKでチャレンジ試験を行ってこの変異体が野性型GHよりもタンパク質分解によって切断されやすいか否かを判定した。しかしながら、179Met変異体は野性型GHと同様にタンパク質分解によって切断されにくく、これらのGHの2つの型の間でタンパク質の折り畳まれ方に大きな差異はないと思われる。
この最初の評価で、本発明者等はIle179Met変異体がJAK/STATシグナルトランスダクション経路を活性化する能力について検討し、これが野性型と区別されないことを示した。この変異体の分泌量及び安定性も正常値を示した。本発明者等は更にこの変異体がMAPキナーゼシグナルトランスダクション経路を活性化する能力についても検討し、これが大幅に低下していることを示した。こうした理由から本発明者等は、この変異体はMAPキナーゼシグナルトランスダクション経路を活性化する能力が低下しているという点で機能不全であると考えるものである。したがってこの変異体は正常な免疫学的反応性を示すが生物学的活性を示さない成長ホルモン遺伝子の別の重要な変異体である。
下垂体成長ホルモン(GH1)をコードした遺伝子を示し、染色体17q23の5個の関連遺伝子のクラスター内に位置していることを示す図。 5個の遺伝子はすべて非常に似通った構造を有し、5個のエクソンが短いイントロンによって同じ位置で分断されていることを示す図。 GH1遺伝子のプロモーター領域は570bpの長さの範囲内に17種の変異体ヌクレオチドという極めて高レベルの配列多型を有することが示す図。 GH1遺伝子の発現によって複数の異なるGHが生ずることを示すGH1の参照配列。 図4Aの続き 図4Bの続き 22kDaの主アイソフォームのアミノ酸配列。 図5Aの続き GHR媒介JAK/STATシグナルトランスダクション経路を活性化する昆虫細胞で発現したGH変異体の相対的能力を示す図。 ラット下垂体(GC)細胞からのGH変異体の分泌及び変異体関連プロモータハプロタイプの相対発現レベルを示す図。

Claims (28)

  1. ヒト成長ホルモンの核酸配列であるGH1の変異体であって、
    (a)(i)+480C→T;
    (ii)+446C(R)T;
    (iii)+1491C(R)G;
    (iv)−60G(R)A;
    (v)−40〜−39GG(R)CT;
    (vi)−360A(R)G;及び
    (vii)+748A(R)G
    (ただし数値はTSSから数えた参照用の野性型ヒトGH1ヌクレオチドの位置を示す数である。)と;
    (b)配列(a)にほぼ相同であるか又はストリンジェントな条件下で配列(a)にハイブリダイズする配列と;
    (c)配列(a)若し くは(b)にほぼ相同であるか、又は遺伝子コードのdegeneracyを例外として配列(a)若しくは(b)にハイブリダイズする配列と;
    (d)上記の配列(a)、(b)又は(c)のいずれかに対して特異的であるとともに(i)〜(vii)から選択される変異を有するオリゴヌクレオチドとからなる群から選択される変異を有する変異体を含む単離または組換えポリヌクレオチド。
  2. 前記配列(a)は、
    (a)(i)+480C→T;及び
    (ii)+446C→T から選択される請求項1に記載の核酸配列。
  3. cDNA配列である請求項1または2に記載の核酸配列。
  4. GH1の変異体によってコードされるアミノ酸配列であって、該GH1変異体は請求項1乃至3のいずれかに記載のものであるアミノ酸配列。
  5. hGH(図5、配列番号 )に関して定義されるヒトGH変異体であって、
    (i) Thr27Ile;
    (ii) Arg16Cys;
    (iii) Ile179Met;
    (iv) Thr27Ile;及び
    (v) Asn47Aspから選択されるヒトGH変異体。
  6. Thr27Ileを有する請求項4または5に記載の変異体。
  7. Arg16Cysを有する請求項4または5に記載の変異体。
  8. Ile179Metを有する請求項4または5に記載の変異体。
  9. 機能不全GHを有することが疑われる患者をスクリーニングするためのスクリーニング方法であって、
    (a)患者からヒトGH1遺伝子のヌクレオチド配列又はこれによってコードされるポリペプチド配列を含む試験試料を得る工程と、
    (b)前記試験試料より得られた配列の所定の領域を、所定の配列の対応する領域と比較する工程とを含むスクリーニング方法において、前記所定の配列は請求項1乃至3のいずれかに記載のGH1の変異体、又は請求項4乃至8のいずれかに記載のhGHの変異体から選択されることを特徴とする方法。
  10. 前記所定の配列は、変異体GH1遺伝子の所定領域に対応する核酸配列を有するオリゴヌクレオチドであり、前記領域は野性型配列の前記対応した領域と比較して請求項1乃至3のいずれかに記載の変異を少なくとも1つ有する請求項9に記載のスクリーニング方法。
  11. 前記試験試料はゲノムDNAを含む請求項9または請求項10に記載のスクリーニング方法。
  12. 前記比較工程は、GH1遺伝子の前記適当な領域の配列を決定する工程を含み、及び/又は、DNAチップ技術を使用し、該チップは、標識した試料DNAのハイブリダイゼーションによって複数の既知の突然変異またはすべての可能な突然変異について同時にスクリーニングを行ううえで使用される小型の並列分析素子である請求項9乃至11のいずれかに記載のスクリーニング方法。
  13. 前記比較工程には、質量分析、マイクロアレイ分析、及びピロシークエンシング、及び/又は、ELISAを含む抗体に基づいた検出法などのタンパク質配列決定法によるポリペプチドの同定を行うことが含まれる請求項9に記載のスクリーニング方法。
  14. 請求項9乃至13のいずれかに記載のスクリーニング方法を行ううえで使用するのに適したキットであって、
    (a)変異体GH1遺伝子の所定領域に対応した核酸配列を有するオリゴヌクレオチドであって、請求項1乃至3のいずれかに記載の変異から選択される、対応する野性型配列からの変異を前記領域が少なくとも1つ有するようなオリゴヌクレオチドと、
    (b)(a)で特定された領域内の野性型配列に対応する核酸配列を有するオリゴヌクレオチドと、必要に応じて、
    (c)患者のDNAの所望の領域を増幅するためのPCRを行うのに適した1以上の試薬とを含むキット。
  15. 前記試薬は、GH1遺伝子のエクソンに対応したPCRプライマー、及び/又は、上記に定義したプライマー、及び/又は、TaqDNAポリメラーゼを含むPCRでの使用に適した他の試薬の1以上を含む請求項14に記載のキット。
  16. 請求項1乃至3のいずれかに記載のGH1の変異体又は請求項4乃至8のいずれかに記載のGH変異体の存在を示すか又は相関のある1以上の「代用マーカー」を使用する請求項9乃至13のいずれかに記載のスクリーニング方法又は請求項14若しくは15に記載のキット。
  17. 前記「代用マーカー」は、
    (a)任意の生体分子(ヌクレオチド、GH変異体又はGH1に特異な抗体を含むタンパク質、糖類、脂質など、ただしこれに限定されない);
    (b)化学的化合物(薬物、その代謝産物、及び他の化学的化合物など、ただしこれに限定されない);及び/又は
    (c)所定の物理的特性、であるか又はこれらを含む、患者の体内におけるその存在、非存在、又は量が測定可能であって前記GH変異体又はGH1の変異体の存在に相関している請求項16に記載のスクリーニング方法またはキット。
  18. 治療、診断、又は検出方法における請求項1乃至3のいずれかに記載のGH1又は請求項4乃至8のいずれかに記載のGH変異体の用途。
  19. 糖尿病、肥満、感染症、癌、又は心臓疾患から選択される疾患に対する個人の感受性を判定するための請求項18に記載の用途。
  20. 個人におけるGH結合欠陥及び/又は脳下垂体貯蔵欠陥を判定するための請求項18に記載の用途。
  21. 遺伝子治療における請求項1乃至3のいずれかに記載のGH1の変異体の用途。
  22. 個人におけるGH機能不全に関連するか又はこれによって引き起こされる状態の予防、治療、診断又は検出のための治療用組成物、診断用組成物若しくはキット、又は検出用キットにおける請求項1乃至3のいずれかに記載のGH1の変異体又は請求項4乃至8のいずれかに記載のGH変異体の用途。
  23. 請求項4乃至8のいずれかに記載の変異体に特異的な抗体であって、該変異体と、対応する野性型アミノ酸とを区別可能である抗体。
  24. 薬学的に許容されるその担体と関連して請求項4乃至8のいずれかに記載のGH変異体を含む組成物。
  25. 請求項1乃至3のいずれかに記載の核酸配列を含むベクター。
  26. 細菌のホスト細胞を含む、請求項25に記載のベクターを含むホスト細胞。
  27. 請求項4乃至8のいずれかに記載のGH変異体を調製するための方法であって、
    (i)請求項26に記載のホスト細胞を培養することと、
    (ii)これにより産生されたGH変異体を培地から回収することとを含む方法。
  28. 培地中に存在する、請求項1乃至3のいずれか、請求項25又は26に記載の配列、ベクター又は細胞によってコードもしくは発現されるタンパク質又はアミノ酸配列。
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