JP2005513414A - 電界中におけるデータ収集および未知イオン種識別のためのシステム - Google Patents

電界中におけるデータ収集および未知イオン種識別のためのシステム Download PDF

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Abstract

高電界の関数として移動度を測定することによって化学種を識別し、所定の補償電圧についての複数のピークRF電圧におけるイオン移動度に基づいて、固有の化合物依存特性を生成する装置である。得られた結果の検出データをデータ・ライブラリと比較し、検出された化学種を識別する。

Description

本発明は、一般に、移動度特性によりサンプルの未知の成分の識別に関し、詳細には、高電界非対称波形イオン移動度分光測定法により化合物を分析する装置に関する。
サンプル内の化合物を識別するために化学分析を実行するのが望ましい、多くのさまざまな環境が存在する。このようなサンプルは、その環境から直接採取される場合もあれば、分析前に化合物を分離させる、または調製する前置の特殊装置によって提供される場合もある。残念ながら、最近の事故では、危険に晒されることを事前に想定しなかった状況で、一般市民が危険な化合物に晒される事態が発生している。そのため、サンプルの化学的構成を検出できる、廉価で正確は容易に使用でき、かつ信頼性の高い装置に対する需要が存在する。
公知の化学分析計の1つの種類は質量分析計である。質量分析計は、フラグメント・イオンについてもフィンガープリント・パターンを生成可能であることから、一般的に、化合物の識別に関して最も正確なタイプの検出器であると認識されている。しかし、質量分析計は、非常に高価であり、そのコストは10万ドル以上になることが多い。また物理的に大きく、一般市民が危険な化学物質に晒される可能性のあるどの場所にも配備するのは困難である。さらに、質量分析計は比較的低圧で操作する必要があり、結果的にサポートシステムが複雑になる等の欠点もある。また、結果を扱い、それを解明する高度に訓練されたオペレータが必要である。したがって、質量分析計は、一般的に研究施設以外で利用するのは困難である。
現場操作により適した化学分析計の1つの種類は、電界非対称イオン移動度分光計(FAIMS)として知られており、他にも、無線周波数イオン移動度分光計(RFIMS)等の名称でも知られている。このタイプの分析計は、イオン化されたガス・サンプルに変動する高−低非対称電界を与え、その電界移動度に基づいてイオンを濾過する。
ガス・サンプルは、補償電圧に応じて選択されたイオン種のみを通過させる電界、詳細には、その電界に対して特定の移動度応答を示すイオンのみを通過させる電界中を流れる。この時、イオン検出器は検出されたイオンの検出強度データを収集する。この強度データは、「ピーク」等のような属性を示す。これらのピークは、設定された電界パラメータの非対称電界をイオン種が通過できる補償電圧に従って解釈される。
通常のFAIMS装置は、ドリフト・チューブ内に1対の電極を有する。非対称電界はイオンの流路と交差する電極に印加される。RF非対称電界は、図1Aに示すように、高または「ピーク」の電界強度と低電界強度との間を交番する。電界は、特定の時間t(周波数)およびデューティ・サイクルdで変化する。電界強度Eは、印加される電圧Vおよび電極間の空隙の大きさで変化する。イオンは、非対称電界の時間当たりの正味の横方向変位がゼロの場合だけ、電極間の空隙を通過する。これに対して、正味変位をするイオンは、最終的に一方の電極上で衝突中和する。特定の無線周波数(RF)非対称電界中では、変位したイオンは、低強度DC電界(補償電圧Vcomp)がRFに重畳されると、空隙の中心に戻る(すなわち、そのイオンについては正味変位なしで補償される)ことができる。異なる変位量のイオン(高電界状態における特性依存性の移動度による)は、特定イオンに固有の補償電圧において空隙を通過でき、これは異なった強度のVcompを印加することによって達成される。この場合、このシステムは継続的なイオン・フィルタとして機能でき、または、Vcompを走査することによって分析器内のイオン種を正確に計測することができる。サンプルのスペクトル走査の記録画像は、「移動度走査」または「イオノグラム」と呼ばれることもある。
FAIMS装置からの出力に基づく移動度走査の例を図1B−1および1B−2に示す。ここで分析された化合物は、アセトンおよびキシレンの異性体(o−キシレン)から構成されていた。第1の事例において(図1B−1)、単一化合物のアセトンは単独でFAIMS分析器にかけられた。図示するプロットはFAIMS装置において観測される一般的反応であり、検出されるイオンの強度は補償電圧(Vcomp)に依存する。例えば、アセトンのサンプルは約−2ボルトの補償電圧でピーク強度の反応を示した。
図1B−2は、2つの化合物、ここではアセトンとo−キシレンの混合物を分析した場合の結果を示す。合成反応は、単独の場合とほぼ同一領域で2つのピークを示す。したがって、混合物に含まれる化合物は、その反応を、例えば単独で分析された化合物の既知の反応が格納されたライブラリ、または混合物のライブラリと比較することによって検出できる。そのため、図1B−1に示す単独で分析された化合物をコンピュータ・システムに記憶させ、図1B−2に示すような化合物反応が見られる場合に、ピークの相対的な位置をライブラリに格納されている反応と比較して、混合物の構成を決定することができる。
しかし、特にFAIMS装置では、比較的複雑なサンプルは検出が極めて困難であるという問題が生じる。まず第1に、典型的なFAIMSスペクトルに見られるピークは一般に幅が広い。したがって、ほぼ同じ補償電圧でピークを有する化合物は、相互の分別が難しい場合がある。実際に、2つの異なる化学物質が、印加される非対称RF電圧(以下、ピークRF電圧と言う)の所定の最大強度で同一補償電圧を示すという特殊な状況もあり得る。このような事例では、2つの異なる化学物質を見分けることは全く不可能である。2つまたはそれ以上の化学種が同一またはほぼ同一移動度を有する場合は、別の問題が発生する可能性がある。これは、既存の大半のイオン移動度分光計システムが作動する低電界領域において最も発生しやすい。したがって、2つまたはそれ以上の化学種が同一またはほぼ同一移動度を有する場合、それらの分光ピークが重なり、個々の化学種の識別および定量化は困難になるか、または不可能になる。
特定のRFレベルおよび補償電圧は、特定のイオン種(移動度による)だけがフィルタを通過して検出器に達することを可能にする。RFレベルおよび補償電圧と、それに対応する検出信号を知ることにより、様々なイオン種およびその相対濃度(ピーク特性に見られるように)を識別できる。
図1Cに示すような、電界依存性の移動度のプロットについて検討する。この図は3つのイオンの例における移動度対電界強度の図であり、各イオン種の電界依存性移動度(高電界移動度の係数αで表示)がゼロよりも大きい場合、ゼロと等しい場合、およびゼロより小さい場合を示す。イオンの速度は十分低い電界E中において測定でき、速度Vは移動度の係数と呼ばれる係数KによりV=KEとして示されるように電界に比例する。Kは、イオン種およびガス分子相互作用特性と理論的に関連していることを示すこともできる。この移動度の係数は、異なるイオン種を識別できる固有パラメータであると考えられ、電荷、大きさ、質量等のイオン特性、ならびに衝突周波数および衝突間でイオンが得るエネルギーによって決定される。
E/N比が小さい場合、Kの値は一定であるが、E/N値が増加すると移動度の係数は変化し始める。電界の効果は近似的に次の式で表される。
K(E)=K(0)[1+α(E)]
ここで、K(0)は低電圧の移動度係数であり、αは特定のイオンに関する移動度の電界依存性を示す特定パラメータである。
したがって、図1Cに示すように、例えばセンチメートル当り約8,000ボルト(V/cm)より低いような、比較的低い電界強度では複数のイオンが同一移動度を有することもある。しかし、電界の強度が上がるにつれてそれぞれのイオン種ごとにその反応が分散するため、印加された電界の関数としてそれぞれの移動度が変化する。これは、イオンの移動度が、比較的低電界強度では印加される電界に依存しないが、高電界強度が印加される場合は電界に依存することを明瞭に表している。
図1Bは、高電界においてそれぞれのイオン種がその移動度特性に従って特有の挙動を取ることを示す。フィルタを通過したイオンは下流で検出される。検出信号の強度はプロットすることができ、その結果、所定のRFおよびVcompにおける特性検出ピークの表示が得られる。ピーク強度、位置および形状は通常、イオン種の識別に用いられる。
しかし、特にFAIMS装置では、比較的複雑なサンプルは検出が極めて困難であるという問題が生じる。まず第1に、典型的なFAIMSスペクトルに見られるピークは一般に幅が広い。したがって、ほぼ同じ補償電圧でピークを有する化合物は、相互の分別が難しい場合がある。実際に、2つの異なる化学物質が、印加される非対称RF電圧の所定の最大強度で同一補償電圧を示すという特殊な状況もあり得る。
例えば、図1Dはそれぞれが固有の特性移動度曲線を示す4つの化合物を示す。特性移動性曲線は、様々なピークRF値および補償電圧レベルのそれぞれで、その化合物に関連する移動度依存性を示す。図には4つの異なる化合物が示されており、これらはルチジン、シクロヘキサン、ベンゼン、および化学薬剤類似物のジメチル・メチル・ホスホネート(DMMP)である。各曲線は、様々な電界状況での検出ピークを示しており、これを合わせたものがその化合物の特性である。図示する通り、DMMPとシクロヘキサンの移動度曲線が重なる領域100がある。したがって、ピークRF電圧が約2,500ボルトから2,650ボルトの領域で、−6ボルトから−8ボルトの補償での動作では、単一の走査で2つの化合物を分別することが不可能であることがわかる。言い換えると、従来のスペクトル走査は、重畳するピークをその電界状態において単一ピークとしてプロットすることがあった。
米国特許第5,420,424号に、円筒形のFAIMS装置が記載されており、その非対称周期電圧の振幅は約1〜6Kvまたは2〜5Kvの範囲、好ましくは約3Kvであり、この電圧は対象とするイオン種に依存する。非対称電圧の大きさを設定後、補償電圧を一定に保つか、または走査して、イオン種の分離を実現する。
このような改良がなされても、特に複雑なサンプル混合物についてはイオン種の検出エラーはなくならない。誤った否定は危険であり、また誤った肯定は費用がかかり、また装置の信頼性を損なう。これは、有害な化合物を監視している場合には極めて重大になる可能性がある。また、迅速かつ簡単に、このような検出を高精度で達成できる装置を実現することが望ましい。
本発明は、非対称励起電界中を移動する未知のイオン種を識別する方法およびシステムに関するものであり、この識別は、既知の電界状態下でのイオン種の、既知の特性の移動度挙動に基づいてなされる。
図示する本発明の装置には、イオン化部、フィルタ部、検出部、識別部、コントローラ部が含まれる。コントローラ(例えばマイクロプロセッサ、ラップトップ等)は通常、識別部(ルックアップ表、コンパレータ等)を組み込んでいてもよい。
本発明の具体化において、本発明者らは、サンプル内の対象とするイオン種を分離し、高い信頼性でその種を識別する革新的方法を開示する。本発明では、検出および識別のプロセスを改良する手法を用いる。このプロセスは、バックグラウンド・ノイズからのイオンの分離またはサンプル内の他のイオン種からの分離を含むこともできる。
1つの重要な構成では、本発明は、フィルタ電界の変化(すなわち「電界状態」の変化)を意図的に制御および利用することにより、サンプル内のイオン種を明確に識別し、分離する。イオン化部およびフィルタ部は、多様な物理的形状を採用できる。
イオンは、フィルタを通過するとき、検出器で電荷を帯電する。次に、設定されたRF状態(Vrf)で、補償電圧(Vcomp)に対して検出の強度が記録される。Vcompが一定範囲に渡り走査される間に、スペクトルのピークも決定される。
さらに、本発明はこのプロセスを進行する。詳細には、本発明者らは、イオン種の分離を向上させる結果を得るように意図的に電界状態を制御することによって、イオン種の分別を改良する手法を明らかにした。1つの実施形態では、これは、少なくとも2つの異なる印加RF電界強度、したがって2つの異なる一連の電界状態に反応するイオン種の挙動の検出を含む。イオン種の検出を行う毎に、印加した補償およびRFを検出信号と関連付け、これを既知のデータとの一致または相関を取り、検出したイオン種を識別する。
電界状態を調整するいくつかの方法を利用して、イオン移動度に影響を与える電界状態に有意な変化を与えることができる。前記調整方法には、例えば、電界強度、周波数、波形非対称性の形態、パルスの形状、デューティ・サイクル等の調整を含む。これらの調整対象は、サンプル内のイオン種の分離および遊離に対して提供する能力で選択される。これは、イオン種がこれらの変化に敏感であることを前提としている。電界中におけるイオンの移動度挙動に望ましい効果がある限り、この制御方法を利用できる。いかなる場合においても、これらの制御の目的は、電界内において1つのイオン種に他の種と異なる挙動を発生させることにより、高純度のまたは正確に定義された一連のイオンが検出器を通過できるようにすることである。
したがって、本発明の目的のために、ここでは、「電界状態」および「一連の電界状態」を、イオンの移動度に影響を与える可能性のあるフィルタ電極間の空隙に形成される、補償とRFとのあらゆる組み合わせと定義する。RFまたは補償の属性が変化した場合、それが周波数、強度、非対称性、周期性、パルスの形状、または同等の変数を調整する形式を取るかどうかによらず、電界状態は変化すると考えられる。それにも関わらず、本発明では、電界状態および電界のエネルギーを、電界におけるイオン移動度に異なる効果を与えるように制御することができる。本発明では、この異なる効果をイオンの濾過の制御に用いる。また、好ましい実施形態においては、「電界状態」は、例えば温度、流速、圧力、フィルタ内の流量、およびキャリヤ・ガスがある場合はその性質などのような、他の様々な側面も考慮するものとする。
本発明の具体化において、電界状態はいくつかの手法で制御できる。例えば、周波数は、出力の走査されたピークの「選択度」(幅)に影響を与える。これは例えば、固定の動作周波数の値を変化させることによって、または周波数の範囲を走査できる場合はダイナミック周波数変調によって、実現可能である。パルス形状を利用して、既知の方法で電界中のイオンの反応に影響を与えることができる場合は、パルスの形状、つまり、正方形、三角形、正弦、ランプを制御して調整できる。また磁界を利用して、既知の反応特性に従ってイオンの流れを制御できる。
補償電圧Vcompは、個別のDC電圧であっても、または例えばデューティ・サイクルを変化させること等によってRF信号Vrfに加えても良い。したがって、補償という用語は、所望のイオン種を検出器まで通過させるように電界を調和させるバイアス電圧または他の手段によって電界を調和する意味である理解されるであろう。スペクトル走査を実行する場合、通常、一定範囲内で補償電圧を走査する。しかし、デューティ・サイクルまたはパルス幅を変化させると、補償電圧の調整または走査と同様の影響が発生する。後者は、パルス幅を一定に保ちながら周波数を変化させるか、または周波数を一定に保ちながらパルス幅を変化させることによって達成できる。また、補償の生成と調整を行うためのさらに別の方法である、パルス振幅変調の手法を用いることも可能である。また、パルス振幅が固定される場合は、ベースライン電圧を変化させることによって補償を行うことができる。これらの制御は、アナログ回路でも、またデジタル的にも実現できる。これらの制御方法およびさらに別の制御方法が本発明の精神および範囲内にあることは、当業者には明白であろう。
したがって、本発明では、様々なイオン種が電界状態に応じてフィルタを通過することを知った上で、その電界状態を制御することによって電界におけるイオンの挙動を制御する能力を利用する。1つの例では、電界の強度、例えばRF信号の振幅を設定することにより、イオン種の検出に必要なレベルまで補償を調整または移動させる。この電界状態の設定でピークが検出されると、この検出データを採用し(検出ピークと電界状態を記録する)、このデータを、既知のイオン種の移動度挙動の格納値と比較する。一致またはほぼ一致が見られれば、検出したイオン種の信頼できる識別が可能である。
さらに、本発明では電界制御を利用して、一層の明瞭性を必要とする複数の検出データを識別する。このように一連の電界状態において、いくつかのピークが重なる場合もあるが、電界強度または補償の変更などの電界調整を行えば、これらの重畳するピークを分離し、個別に処理でき、それぞれが表すイオン種を個々に識別することができる。検出データおよび電界状態が格納データと相関関係にある場合は、検出を進行して、確実なイオン種の識別を行なう。
「反応イオン・ピーク」(RIP)が、FAIMS装置において検出可能であり、ドリフト・チューブ内のバックグラウンド環境のイオン化の結果であるイオンと関連することは、当業者には理解されるであろう。このバックグラウンド環境には、イオン化されるキャリヤ・ガスの分子や、おそらくはイオン化処理の過程でプロトン化される水分子も含まれる可能性がある。これらのイオンの検出と関連するピークは、対象とする化学イオンの検出と関連するピークとは異なり、「反応イオン・ピーク」と言われる。
本発明の具体化における1つの例では、RF電界強度が高くなると、サンプル・イオン種に対してよりもバックグラウンドRIPに対して、はるかに大きい影響を与える。2箇所またそれ以上の一連の異なる電界状態(RF電界または補償の差のいずれにせよ)でサンプリングを行った結果、RIPピークは、対象とするイオン種のピークからずれることがある。
この検出データの分離は、対象とするイオン種をバックグラウンド検出データから隔離し、その結果、より明確かつより正確にイオン種の検出および識別がなされる。このように、本発明の具体化では、検出精度が改良され、誤りの発生が減少する。
さらに、一定範囲の電界状態を横切って意図的に変更または走査することにより、複合化合物またはクラスタを形成する化合物と関連するピークを、サンプル内のモノマーと関連するピークから離して移動させることができる。これにより、イオン種の確実な分離が可能になる。さらに、電界強度が十分高い状態では、クラスタを形成する化合物が分解し識別可能な組成物に分解されやすくなる。したがって、単一の複合化合物は、前述の電界状態および検出データと既知のデータ格納値との比較に基づいて、その特性成分であるイオンまたはサブ・クラスタによって識別できる。
本発明の実施形態では、例えばイオン化エネルギーを増加させ、サンプルを特性成分に断片化することによって、イオン化を制御する。これは検出データの特定性を高める。別の実施形態では、フィルタ部のRFエネルギーを増加することによって断片化を達成する。これによってもまた、サンプルの構成成分を個別に検出でき、検出の組み合わせによって、サンプル内のイオン種のより正確な識別が可能となる。したがって、イオン化部またはフィルタ部の動作を制御することにより検出信号の品質に有利な効果を与えることができる。
本発明では、検出器領域において、フィルタ部の電界状態(およびイオン化と流れ)を検知し、その後、この電界状態と検出強度データとの相関関係を取る。これは、未知のタイプのイオン種の検出の特性を決定する。この検出データを、格納されている既知の電界状態での既知のイオン種の検出データと比較し、検出データの識別を行う。この手法は簡略化されているが、本発明のそれぞれの実施形態にも適合できる。
しかし、本発明の別の実施形態の具体化では、ピーク・スペクトル・エネルギーの評価、移動度曲線の生成、曲線の一致等の手法を用いて、さらに検出信号の処理を行う。これにより、より決定的な検出プロセスが可能になる。
本発明の1つの具体化では、少なくとも2つの電界状態でイオン種の検出を行う。これらの電界状態において検出されたイオン種の固有特性を表す複数の検出データを収集し、この固有特性データを既知のイオン種の固有特性の格納値と比較することによって、識別を行う。識別されるイオン種は、単独で移動するものもあれば、同一または異なる特性移動度挙動を取るイオンのグループで移動するものもある。このような状態であっても、本発明ではイオン種別の分離および識別を達成できる。
さらに別の実施形態では、FAIMS装置は、完全なリアルタイムのサンプル分析を実行するために、正イオン検出モード(「正モード」または「正イオン・モード」)および負イオン検出モード(「負モード」または「負イオン・モード」の両方で同時に作動する。また別に、2つの別個のFAIMS装置がそれぞれのモードで作動するタンデム式で作動しても良く、検出結果を順次または同時に処理し、それを組み合わせて完全なリアルタイム・サンプル分析を行うこともできる。
好ましい方法および装置は、イオン移動度およびイオン極性の両方を基にして複数の種を同時に検出する。本発明の好ましい方法および装置には、濾過、およびメルカプタン並びに他の硫黄含有化合物および空気、メタンまたは他のガス等のサンプルからの正イオンおよび負イオン種の同時移送および検出に適用される、平板型FAIMS分析計が含まれる。
本発明の1つの具体化では、補償された非対称の高RF電界を用いて、硫黄含有化合物(メルカプタン等)を炭化水素のバックグラウンド(メタン等)から分離する。サンプルはイオン化され、硫黄含有化合物(メルカプタン等)を表すイオンは極性(すなわち、大部分は負イオン)によって検出される。炭化水素のバックグラウンドは同一の装置内で極性(つまり大部分は正イオン)によって検出される。これらの検出は、2つの検出器に反対のバイアスが掛けられている場合は同時に行うことも可能である。
1つの特定の最終用途では、本発明は、変化する高炭化水素バックグラウンドにおいても微量(ppm、ppb、ppt)のメルカプタンを検出できる。この装置はまた、炭化水素ガスのバックグラウンドの特性を決定することもできる。本発明の好ましい実施形態は、変化する高炭化水素バックグラウンドにおいても微量の硫黄含有化合物(例えばメルカプタン)を検出し、同時に同じ装置で炭化水素バックグラウンドの特性を決定する能力がある。
本発明のこの実施形態では、硫黄含有化合物(例えばメルカプタン)およびメタン(または空気を含む他のガス)を有するガス・サンプルは、イオン化され、FAIMSフィルタを通って流れる。負イオンは検出され、硫黄含有化合物の濃度および識別を示す。同一テストが再度実行され、正イオンが検出され、サンプル内の炭化水素ガスを示す。
これらの化合物は、補償されたフィルタ電界中における化合物の移動度挙動および化合物が取る類似の軌道に従ってFAIMSフィルタを通過する。通過したイオンは、極性に基づいてさらに分離され、例えばメルカプタンは、空気またはメタン等のガスから分離される。負モードではメルカプタンが検出され、正モードではガス(例えばメタン)がメルカプタンから分離される。両方のモードを同時に実行することも可能である。
したがって、炭化水素ガスのようなサンプルの大部分は正イオン種に分別され、硫黄含有化合物(例えばメルカプタン)の大部分は負イオン種に分別されることが一般に判明していることは理解されるであろう。好ましい平板型FAIMS分光計は、簡単で廉価な装置であり、例えば炭化水素または空気等のガス中のる硫黄含有化合物(例えばメルカプタン)を有する複合的な混合物の直接的定量分析を行うことができる。
本発明の具体化では、フィルタの下流にある単一の正バイアスが掛けられた検出電極は、負に帯電したイオンの流れを検出する(負モード)。フィルタの下流にある単一の負バイアスが掛けられた検出電極は、正に帯電したイオンの流れを検出する(正モード)。検出信号は、これらのイオンがその電荷を検出器電極に堆積すると発生する。これらの検出信号とRF信号、補償電圧および検出器バイアスとの相関関係を取ることにより、検出されたイオン種を識別できる。
下流側に、それぞれに逆バイアスを掛けた2つの検出器電極を設ける場合、正および負に帯電した両方のイオン種を検出および識別できる。本発明の1つの具体化では、炭化水素バックグラウンド内でメルカプタンを検出したが、このときのイオン・フィルタ電極に印加した非対称電圧は約900〜約1.5kV(高電界状態)および約−400〜−500V(低電界状態)の低電圧の範囲であった。周波数は1〜2MHzの範囲で、高周波数は約30%のデューティ・サイクルを有したが、別の動作範囲も可能である。1つの実施形態では、検出器電極は+5vおよび−5vでバイアスを掛けた。この場合、メルカプタンは負モードで検出され、炭化水素ガスは正モードで検出できる。
前記の識別プロセスは、非常に効果的かつ有益ではあるが、用途によっては、αパラメータ(高電界移動度の係数)情報およびα曲線を、固有の移動度特性を用いる確実で信頼性の高い識別プロセスの一部として取り入れおよび使用することによって、前記プロセスを実質的に改良し、簡略化できる。
さらに、イオン種の電界依存性移動度をαの関数として表せることが判明した。実際には、イオン種の電界依存性移動度の係数αは電界の関数として表される。経験した移動度を示す結果の曲線、つまり「α」曲線は、そのイオン種に固有の特性である。さらに、この固有特性は装置に依存しない関数で表すことができる。
各イオン種の特性移動度は、複数の電界状態でプロットでき(すなわち、一連の電界状態で記録される検出強度)、これはイオン種を一義的に識別する固有の「α関数」として表すことができる。
1つの一連の電界状態について電界移動度依存係数αを用いることは、必ずしも一義的な識別を得ることにならないことに注意すべきである。なぜなら、複数の異なるイオン種が、その単一の一連の電界状態において偶然に同一移動度を有する場合があるからである。しかし、検出されたイオン種に関して複数のαデータ・セットを得ることによって、単一の一連の電界状態においては他のイオン種と分別できない場合でも、算出された「α曲線」によってその種を一義的に識別できることが判明した。
本発明の1つの具体化では、α関数を使用することにより、2つの密接に関連する検出データ・セット(すなわち、2つの異なってはいるが近い一連の電界状態における検出強度を意味する)を用いて、サンプル内の特定のイオン種を一義的に識別する。これらの関連する一連の電界状態の値を1つの曲線上の2点として用い、そこから曲線の勾配および符号(勾配の正負)を生成する。次に、符号および勾配を各検出と関連付け、格納されている既知の検出結果と比較することができる。このように、検出されたイオン種(2つの検出により)を、それに関連する移動度曲線に従って識別できる。さらに、本発明では、この移動度曲線がイオン種特有であることを確認し、さらに、このような識別を装置に依存しないようにするプロセスを明確にした。いずれの場合でも、検出および算出されたデータを既知のデータの格納値と比較し、検出されたイオン種を確実に識別する。
本発明のシステム(方法および/または装置で表される)は、変化する励起電界を通過して移動する未知のイオン種を識別するためのものである。電界は、その電界を通過して移動するイオン(単数または複数)の種(単数または複数)の移動度挙動に様々な影響を与えるものとして特徴付けられる。検出されたイオンの識別は、検出されたイオンの電界依存性移動度挙動と、格納されている少なくとも1つの既知のイオン種の既知の電界依存性移動度挙動との相関関係を基にする。
本発明では、複数の電界状態で走査を行い、複数の検出ピークを得ることができる。また必要に応じて、細分化、クラスタの分解、またはドーパントを使用することにより、既存の検出ピークを制御または追加生成または明確化することもできる。これらの代替方法を用いて、特定の状態における複数の検出データを生成することができ、このデータは、例えば曲線/ピーク一致等のような、様々な評価手法を用いて処理され、参照比較を行い検出されたイオン種を確実に識別する。一致すれば、サンプル内の検出されたイオン種を確実に識別することができる。
本発明の前述およびその他の目的、特徴、および利点は、添付図面に示す本発明の好ましい実施形態の以下の詳細な説明で明らかになるであろう。図面では、同一参照符号は異なる図面においても同一部品を指す。図面は必ずしも縮尺通りでなく、本発明の原理を示すことに重点が置かれている。
A.電界非対称イオン移動度分光計
まず、本発明は、高電界イオン移動度分光計に特定した用途を有し、また化合物の正確な識別または分別を達成できるとの知見を含む。ただし本発明は、多様な電界駆動型およびガス駆動型の実施形態で具体化できる。
本発明の1つの構成は、プロセスのステップに関して述べることができる。詳細には、システムを利用して未知のイオンを、励起電界を通して移動させる。電界は、様々なイオンが電界を通過して移動する際の挙動に多様な影響を与える。識別は、様々なイオン種の、この既知の電界依存性挙動に基づいてなされる。イオン種の識別は、ある一連の電界状態の下で観測される結果を、他の一連の電界状態の下で観測される結果と比較することによって行うことができる。
また、様々な手法を適用して、検出データおよびその後の識別の量を増やすか、または信頼性を向上させることができる。その結果、より正確にイオン種が検出され、誤りの発生が減少する。
詳細には、本発明を利用できる図2に示される1つの装置は、平板型電界非対称イオン移動度分光計(FAIMS)装置10である。この装置は、流路11の一端のサンプル入口12から流路の他端のサンプル出口13へとサンプルSを運ぶキャリヤ・ガスGの流れを収容するサンプル・フロー部10を有する。
動作において、サンプルは周囲環境から導入されるか、またはガス・クロマトグラフのような前置装置から受け入れられ、イオン化領域14に流れ込む。サンプル内の化合物は、サンプルがイオン化領域14を通って流れる際にイオン化源16によってイオン化され、サンプルS内の様々な化学種のイオン化分子の対17+、17−および幾つかの中性分子17nを生成する。これには、モノマー・イオンおよびクラスタ・イオンが含まれることもある。このようなクラスタは、モノマーが水分子または他のバックグラウンド分子と結合し、その結合がイオン化されたときに生成される。
キャリヤ・ガスは、イオン化されたサンプルを、イオン・フィルタ24のフィルタ電極20、22間のイオン・フィルタ領域18に運ぶ。この領域で、フィルタ電界中のイオン移動度の差に基づいて濾過が進行し、この濾過はイオンの大きさ、形状、質量および電荷の影響を受ける。
詳細には、フィルタ電極の両端に印加される非対称電界は、フィルタ領域18で高電界強度状態と低電界強度状態との間を交番する。イオンは、その移動度特性に基づき電界に反応して移動する。通常、高電界状態での移動度は低電界状態での移動度と異なる。この移動度の差が、イオンがフィルタ24を通って長軸方向に移動する際のイオンの正味横方向変位を発生し、イオン軌道を決定する。
1つの例では、キャリヤ・ガス(または他のフロー・メカニズム)がイオン化されたサンプルをフィルタ電極間のイオン・フィルタ領域に運ぶ。濾過は、イオン移動度の差に基づいて進行し、これはイオンの大きさ、形状、質量および電荷の影響を受ける。これにより、各イオンの移動度特性に基づいてイオン種の識別が可能となる。
本発明の好ましい実施形態によれば、本明細書内で「RF」、「Vrf」または「Vdisp」と様々に呼ばれる非対称電界電圧または分散電圧は、高電界強度状態と低電界強度状態との間で駆動されるRF電圧としてフィルタ電極の両端に印加される。この行程によって、イオンは流路を流れる際に流れを横切って移動し、この横方向移動がそのイオンの特性イオン移動度を表す。通常、高電界状態での移動度は低電界状態の移動度とは異なる。この移動度の差が、電極間のフィルタを通って長軸方向に移動する際のイオンの正味横方向変位を発生する。
補償電圧Vcompは、特定のイオン種を流路の中心方向に戻し、それによってフィルタ電極と衝突することなく、また中性化することなく、フィルタから出る。他のイオン種は十分に補償されず、フィルタ電極20、22と衝突して中性化されることになる。中性化されたイオンはキャリヤ・ガスによって、または例えば流路11を加熱することによって、除去される。
B.様々な電界状態におけるFAIMS装置の検出応答
したがって、一連の非対称電界状態の存在下において、VrfおよびVcompを印加すると、移動度の差に基づくイオンの相互識別が達成される。ただし、単一の移動度走査では、所定のRF電界において2つのイオンが同一補償信号によって補償される場合、一般には、これらイオンがフィルタ24を通過後に、これらを識別する方法はない。所定の電界状態においてこれらが同一移動度特性を示す場合には、このようなことが発生する可能性がある。
しかし、本発明の一実施形態の1つの具体化では、これらのイオンが、イオン17−および17+の例にあるように、異なる極性を有する場合は識別できる。したがって、図2の装置はガス流の正イオンと負イオンの両方を同時に検出するよう動作し、同時に2つの化合物を識別できるか、または単一化合物について同時に2つのモードの検出ができる。
詳細には、2つのイオン種17+および17−が検出領域25に入り、そこでさらに分離が行われ、その後にそれらのイオン強度が測定される。好ましい実施形態では、検出器26は第1検出電極28および第2検出電極30を含む。電極28は正のバイアスが掛けられ、したがってイオン17−を吸引し、イオン17+を反発する。電極30は負のバイアスが掛けられ、イオン17+を吸引し、イオン17−を反発する。したがって、分離のこの最終段階は、適切なバイアスが掛けられた検出電極28または30に分離したイオンがそれぞれの電荷を堆積することによって、終了する。検出電極28および30で収集するイオンによって生成された信号は、各増幅器36および38で増幅され、命令・制御部34に信号を提供する。
好ましい実施形態では、本発明は平板型装置構成の高電界非対称波形イオン移動度分光計に応用され、流路18、フィルタ電極24、および検出電極28は全て平板型のパッケージ内に設けられる。これにより、様々なシステム構成要素および場合により周辺電子回路を共通基板上に備える、小型で低コストの装置を製造する能力が提供される。したがって、本発明による分光計は、公知のマイクロチップ製造技術を用いて製造でき、同時に、現場および研究施設の両方の環境で用いられる極めて有効な分析装置を提供する。
フィルタ電界に補償を加えることによって、特定の移動度特性を持つイオンは流路の中央方向に戻り、その結果フィルタを通過するのがFAIMS分析計の特徴である。したがって、本発明の具体化では、補償に従ってイオンを分別することにより、特定の移動度を有するイオンだけを、検出器26を通過させる結果となる(基板上の電極構成でも、例えば質量分析計のような基板外の検出器を含んでもよい)。他の全てのイオン種は十分に補償されず、フィルタ電極と衝突して中性化される。
好ましい実施形態では、本発明は平板型装置構成の高電界非対称波形イオン移動度分光計に応用され、流路18、フィルタ電極24、および検出電極28は全て平板型パッケージ内に設けられる。これにより、様々なシステム構成要素および場合により制御電子回路を共通基板上に備える、小型で低コストの装置を製造する能力が提供される。したがって、本発明による分光計は、公知のマイクロチップ製造技術を用いて製造でき、同時に、現場および研究施設の両方の環境で用いられる極めて有効な分析装置を提供する。
制御部40は、本発明に従って多くの重要な機能を実行する多数の電子デバイスを含む。これには、RF電圧発生器42、補償電圧発生器44、マイクロプロセッサ(MPU)46、メモリ47、アナログ/デジタル変換器48、ディスプレイ49等が含まれる。マイクロプロセッサ46はデジタル制御信号をRF(AKA「分散」)電圧発生器42および補償電圧発生器44に提供し、これら発生器のそれぞれは、フィルタ24を駆動する所望の駆動電圧を発生する。これらには、例えば、詳細は図示されていないデジタル/アナログ変換器を含むこともできる。
またマイクロプロセッサ46は、特定の分散電圧Vrfおよび補償電圧Vcompの印加を、アナログ/デジタル変換器48を通して読み取れる検出器26からの観測した反応により調整する。例えば、一定範囲の補償電圧Vcompに渡る特定イオンのピーク観測量の観測された反応を比較することによって、マイクロプロセッサ46は、特定の反応曲線を、メモリ47に格納されている反応曲線のライブラリまたは他のデータと比較することによって特定の化合物を識別することができる。比較動作の結果は、例えばディスプレイ49のような適当な出力装置の形で提供するか、またはインタフェース50を介して電気信号によって別のコンピュータ装置に提供することもできる。
図10A〜10Gに関連して、複数の電界状態の下でマイクロプロセッサ46がどのように反応を検出できるかの詳細な例を以下に記載する。
本発明の実施形態の具体化では、印加されるピークRF電圧の範囲は1,000V/cm未満〜30,000V/cm、またはそれ以上まで取ることができる。周波数の範囲は1〜20メガヘルツ(MHz)まで取ることができ、最高周波数では約30パーセントのデューティ・サイクルを有するが、他の動作範囲、電圧、電界強度、デューティ・サイクル、波長、および周波数も、本発明の実施形態では可能である。
本発明の1つの実施形態の具体化では、プロセッサ46は、第1の測定セットとして印加されるピークRF(分散)電圧によって制御される特定のRF電界強度の補償電圧の一定範囲を走査または掃引し(すなわち走査)、次に、RFは他のレベルにリセットされ、補償電圧は再度走査されて第2の測定セットが実行される。この情報と前述の取得された検出信号との相関を取り、ルックアップ表と比較することによって、化合物の識別ができる。
より一般化して述べると、識別の目的は、フィルタを通過するイオンの強度を検出し、この強度を電界状態と関連付けることである。識別された各化合物は、少なくとも1つの特定のスペクトル・ピークと関連付けられ、ピーク評価またはピーク一致のプロセスを用いて、ピーク毎に化合物を識別することができる。このプロセスは、単一のピークに限定されることなく、単一の走査で検出された複数のピークについても、このプロセスを用いて特定の化合物の組み合わせの固有特性を定義することができる。繰り返し発生する現象の場合は、このような複合固有特性をルックアップ・データ表の一部とすることもできる。
スペクトル走査における特定のピークの組み合わせが既知であり、重要である場合、これらの複数のピークを表すデータを格納でき、将来の検出データをこの格納データと比較することができる。例えば、電界強度を上げる等の制御電界状態の下で、クラスタ化合物が分解することがある。その結果得られる検出はピークの固有特性となり、この検出結果を用いて、単一の走査で検出されたのと同様に検出されたソース化合物を識別できる。
本発明の具体化では、炭化水素バックグラウンドで硫黄含有化合物を検出するためのイオン移動度に基づく方法および装置を開発した。1つの例では、負イオンの検出および測定を負モードで行い、正イオンの検出と測定を正モードで行う。検出されたデータによって、炭化水素バックグラウンドに関係なくこれらの硫黄含有化合物の濃度の定量測定が可能となる。
C.正電界および負電界の測定
図2に示す実施形態を参照すると、フィルタの下流側の単一の正バイアスを掛けた検出電極30(または28)を用いて負に帯電したイオンの流れを検出(負モード)でき、また選択的に、他方の電極28(または30)に負のバイアスを掛け、負イオンを正バイアスが掛けられた検出電極に偏向させることもできる。また、フィルタの下流側の単一の負バイアスが掛けられた検出電極28(または30)は正に帯電したイオンの流れを検出(正モード)でき、また選択的に、他方の電極30(または28)に正バイアスを掛け、正イオンを負バイアスが掛けられた検出電極に偏向させることもできる。
したがって、正モードおよび負モードは、FAIMS分光計において、直列または並列装置で検出できる。場合によっては、単一装置の単一走査で、両モードを同時に検出することによって複数のデータの同時収集もできる。再び図2に示す実施形態を参照すると、1つの例では、フィルタの下流の単一の正バイアスが掛けられた電極30を用いて負に帯電したイオンの流れを検出(負モード)し、一方で電極28に負のバイアスを掛け、負イオンをこの正バイアスが掛けられた検出電極30に偏向させて収集効率を上げる。しかし同時に、所望する場合は、負のバイアスが掛けられた電極28が、正に帯電した電極30によって偏向された正帯電イオンの流れ(正モード)を検出する。
検出信号は、これらのイオンがその電荷をそれぞれの検出電極に堆積すると発生する。これらの検出信号と、RF信号、補償電圧および検出バイアスとの相関を取ることにより、検出されたイオン種を明確に識別できる。したがって、各々に逆のバイアスを掛けた2つの検出電極を下流に設けると、正および負に帯電した両イオン種を同時に検出し、識別できる。
1つの実施形態では、本発明を利用して、変化する、高炭化水素バックグラウンドにおいても微量(ppm、ppb、ppt)のメルカプタンを検出した。またこの装置は、炭化水素ガス・バックグラウンドの特性を決定することもできる。例えば、本発明は、メタン・バックグラウンドにおいてエチル・メルカプタンのようなメルカプタンを検出することができ、またメルカプタン・バックグラウンドにおいてメタン等のガスを検出することもできる。
本発明のこの具体化では、炭化水素バックグラウンドにおいてメルカプタンを検出したが、このときのイオン・フィルタ電極に印加した非対称電圧は、約900〜約1.5kV(高電界状態)および約−400〜−500V(低電界状態)の低電圧の範囲であった。周波数は1〜2MHzの範囲を取り、高周波数は約30%のデューティ・サイクルを有したが、他の動作範囲も可能である。1つの実施形態では、検出電極は+5vおよび−5vでバイアスが掛けられた。ここで、メルカプタンは負モードにおいて検出され、炭化水素ガスは正モードで検出できる。
システム駆動に利用するハードウェアは従来方式のものでよい。例えば、Analog Devicesのモデル459増幅器のような増幅器を用いることもできる。信号は、例えばNational Instrumentsの基板(モデル6024E)等を用いた従来の方法で処理し、走査をデジタル化して記憶し、ソフトウェアを用いてその結果をスペクトル、イオン強度対時間の形態図、またはグラフとして表示することもできる。イオン化源は、プラズマまたは放射線源またはUVランプ等でもよい。
本発明では、フィルタを通過したイオンが移動性イオン種17mとなる。別の例では、このイオン種はさらに、例えば検出電極の対28、30のバイアスを修正するなどのような、極性修正によって分別できる。図2に示す例では、イオン17+、17−によって定義されるイオン種がフィルタ24を通過する。このイオン種はさらに、一方の電極、例えば検出電極28を1つの極性の、例えば負極性に維持し、他の電極、例えば検出電極30を正バイアスに維持することによって、正および負のイオン種または亜種に分別することができる。ここで、イオン17+は電極28に吸引されて検出され、イオン17−は電極30に吸引されて検出される。
したがって、本発明の装置はフィルタから流れ出た 正イオンおよび負イオンの両方を同時に検出するよう動作可能である。これにより、本発明の具体化において、複数の化合物を同時に識別できる。
詳細には、装置10によるイオンと中性分子の識別は、それらの移動度挙動、その結果の軌道および極性に基づいてなされる。したがって、所定の非対称RF電界状態において、所定の補償バイアスの存在下で特定の移動度挙動およびその結果の軌道を有するイオン種17−および17+のみがフィルタを通過する。
テストされる化合物についてこの補償バイアスを決定する必要があることは、当業者には理解されるであろう。本発明の装置は極めて安定しており、テスト結果は再現性がある。したがって、本発明の好ましい実施形態では、検出されたイオン種と補償電圧およびRF電界との相関関係を取って、そのイオン種の履歴表を作成することにより、特に校正を行うことなく装置を継続的に使用できる。さらに、本発明の範囲には、例えば反応イオン・ピークまたはドーパント・ピークを用いてシステムの校正を行うことも含む。
本発明の1つの具体化では、移動性イオン種17mはフィルタ24を通過した。このイオン種は硫化水素イオン17m−およびメタン・イオン17m+(両方とも、所定の補償された非対称電界で同様の結果的な軌道を有する)を含んでいた。他の正イオンおよび負イオンは、異なる非選択移動度特性により中性化される。(中性化イオン17nは、例えばキャリヤ・ガスによってまたは流路11を加熱することによって除去される。)
2種のイオン17m+および17m−は検出領域25に入り、そこでさらにイオン種の分離が行われ、その後、検出される。好ましい実施形態では、検出器電極28は正のバイアスが掛けられており、したがって硫化水素種17m−を吸引する一方で、メタン種17m+を反発する。電極30は負のバイアスが掛けられており、メタン種17m+を吸引する一方で、硫化イオン17m−を偏向させる。このように、分離の最終段階では、分離されたイオンが、適切にバイアスが掛けられた検出器電極にそれぞれの電荷を堆積させる(すなわち、正電極には負電荷、負電極には正電荷)。
非対称電界および補償バイアスは通常、命令・制御部34内で駆動回路32によってフィルタ電極20、22に印加される。検出器電極28、30でイオンによって生成された信号は、制御ユニット34の指示および制御(ワイヤまたはリボンケーブル等によって通信される)の下で増幅器36、38により増幅される。一般に40で示されるデータ格納部を含むコンピュータ(またはマイクロプロセッサ)は、装置の履歴データと、フィルタ電極に印加される駆動信号および増幅器36、38からの検出信号との相関関係を取り、読出し装置49に化合物識別情報を提供する。この例では、検出された硫化水素およびメタンの量の表示が示される。
特定の実施形態では、命令・制御部34はまた、イオン流れおよび特定の分散電圧Vrfおよび補償電圧Vcompを、検出器26からの観測反応と整合させる。例えば、一定範囲のピークRF電圧、Vcompに渡り特定のイオンについて観測されたピーク量の観測反応を比較することにより、マイクロプロセッサは、特定の反応曲線をメモリに格納された反応曲線ライブラリと比較するなどによって、特定の化合物を識別することができる。その後、比較動作の結果はディスプレイのような適切な出力装置の形で提供するか、またはインタフェースを介して電気信号により他のコンピュータ機器に提供することもできる。
本発明のこの実施形態では、単一の分光装置10は2つの検出電極28、30を備えた検出器を提供する。一方の電極には正バイアスが掛けられ、他方の電極には負バイアスが掛けられる。正モードでは、負バイアスが掛けられた検出電極が同一極性のイオンに対しては偏向電極として作用し、これらのイオンを正に帯電された検出電極の方向に偏向して検出する。負モードでは、正バイアスが掛けられた一方の検出電極が同一極性のイオンに対して偏向電極として作用し、これらのイオンを負に帯電された検出電極の方向に偏向して検出する。同時動作においては、これらの各検出電極は二つの役割を果たし、それぞれに帯電したイオンに対して偏向電極および検出電極の両方の作用を果たす。
本発明の1つの実施形態の具体化では、所定の電圧範囲全体に渡って補償バイアスを掃引することにより、サンプルSの完全なスペクトルを得ることができる。システム命令・制御部40のコンピュータ制御によって、特定の電界状態の選択が可能となり、その結果、対象とするイオン種をフィルタ通過させる一方で他の全ての対象分子を中性化できる。別の実施形態では、補償バイアスは非対称電界のデューティ・サイクルを変化させる方式であり、バイアス電圧を補償する必要はない。これらのどの方法でも、装置は調整可能、すなわち所望の選択された移動度のイオン種のみを通過させるよう調整することができ、さらに前記の極性モード検出により完全性を向上できる。
本発明の好ましい実施形態では、高電圧RF信号は、一方のフィルタ電極、例えば電極20に印加され、他方の電極、例えば電極22はグラウンドに接続される。このとき、通過させるイオン種に応じて、補償電圧が一方のフィルタ電極またはフィルタ電極両端に印加される。さらに、電極28を−5ボルトに維持しおよび電極30を+5ボルトに維持するなどのようなフローティング・バイアスで検出電極28、30にバイアスを掛けることによって、炭化水素または空気のバックグラウンドにおけるメルカプタンを精度よく検出できることが判明した。
実験データは、この方法の存続可能性を証明している。ここで図3Aおよび3Bを参照すると、バックグラウンドのガス・レベルの変化に左右されないエチル・メルカプタンの検出が示されている。図3Aは、正イオン検出モード(「正モード」)の検出を示し、検出電極は負バイアスが掛けられ、正メタン・イオン17m+を引き付けてこれを検出する。図3Bは、負イオン・モード(「負モード」)においてメタン濃度の変化がエチル・メルカプタン・スペクトルに与える影響を示す。ここで、検出電極には正バイアスが掛けられ、負のメルカプタン・イオン17m−を引き付けてこれを検出する。
これらのスペクトルは、本発明の実施形態の正モード動作および負モード動作における、空気とメタン・ドリフト・ガスとの混合ガス中のエチル・メルカプタンの異なる量に対するものである。メルカプタンの固有特性は、様々な分量レベルで空気−炭化水素ドリフト・ガスのバックグラウンドに左右されずに収集できる。検出されたサンプル・ピークはバックグラウンドから完全に分離している。図3Aでは反応イオン・ピーク(RIP)は明瞭に分離しており、図3Bではバックグラウンドが平坦である。
前記の内容は特定の化合物のイオン化の例であり、結果的に、正イオンと負イオンとの混合である。いずれのイオンのタイプも、本発明の実施形態の具体化において同時に評価し、検査する化学物質を明確に識別できる。例えば、メルカプタンのサンプルはイオン化すると大部分は負イオンを持つが、正イオンも含む場合もある。ここで、両方のモードを同時に用いて正確に識別し、誤りの発生を減少させることにより、固有の検出特性を示すことができる。詳細には、負モードがメルカプタンを正しく識別する一方で、メルカプタンに関連する追加の正イオン識別素子は、複合サンプルにおける識別を可能にする。既知の装置の結果および既知のイオン種の固有特性の格納されたルックアップ・データは、単一モード検出または同時モード検出のいずれについてもアクセスできる。装置の過去の検出データと比較することにより、これらのピークはメルカプタンのスペクトル全体を表すものとして明瞭に識別できる。両方のスペクトルによって、定性的および定量的に、メルカプタンが明瞭に識別される。両モードを同時に実行することにより、格納されたデータとの比較および一致が可能な固有の、決定的な検出データを用いてサンプルを明瞭に識別し、検出されたイオンを識別できる。
したがって、本発明は、メルカプタンおよび炭化水素ガスを含むような複合サンプルをリアルタイムで分析できる。なぜなら、これらのイオンはほぼ同一移動度を持ち、同一電界状態でフィルタを通過できるからである。
単一の移動度走査による正モードおよび負モードの同時検出は、多量の検出データを提供する。この増加した識別データにより、化合物識別における信頼度のレベルが上がり、誤りの発生が減少する。これは従来技術の単純なFAIMSピーク識別方法の有用な改良である。
負モードの走査から得られるデータは通常、正モードの走査から得られるデータとは異なる。化合物の識別は一方のモードだけを用いても達成できるが、両方のモードからの検出を用いることによって、エラーの可能性が低いより決定的な識別を得る。
D.検出データ処理の改良
前述の内容は、サンプル内の検出イオン種を正しく識別するために、単一の移動度走査から複数の検出データを有利に得ることを述べている。この革新的な方法は、多くの用途において有効である。この有用な革新的な方法に関わらず、本発明では、(1)複数の移動度走査から複数の検出データを取得し、(2)これらのデータをさらに処理して、例えば移動度係数αのような装置に依存しない属性を抽出することによって、より高いレベルの信頼性を得て、誤りの発生を減らすこともできる。
1.複数の移動度走査からの複数の検出データ
この「複数走査」の実施形態では、イオンは、1組の電界状態に基づくのではなく、少なくとも2つ、可能な場合はさらに多くの数の高電界状態(すなわち、最低限2つの電界測定点において)で検出された複数の強度データに基づいて識別される。検出は、少なくとも2つの異なる電界状態で印加されるRF電圧および補償との相関を取り、所定の検出化合物の特性を決定する。複数の検出データが所定の対象イオン種と関連付けられるため、より正確な検出ができる。格納されたデータと比較することにより、検出化合物の信頼性の高い識別が可能になる。
スペクトル・ピークまたは移動度曲線のデータに基づいて検出されたイオンを識別する手法には、曲線一致、ピーク一致、および(重なるピークについては)デコンボルーション等の手法がある。これらの手法により、正モードおよび負モードの同時検出を含む単一走査、および複数走査でも、検出されたイオン種ベースのピークの識別が可能になる。その目的は同じであり、すなわち、複数の検出データの識別を利用して、検出されたイオン種を決定的に識別できることである。
詳細には、本発明では、化学物質の異なるイオン種が、高電界状態を発生する補償された印加RFピーク電圧の関数として、異なる移動度を示すことを観測した。したがって、異なる一連のRFピーク電圧を印加し、様々な化合物のピーク位置における補償電圧を測定することによって、1つの化合物の一群の測定点特性を明らかにできる。次に、この一群の測定点をプロットして、RFピーク電圧および補償の関数として特定のイオン種の移動度曲線固有特性を決定できる。本発明では、これらのデータを記録し、将来未知の化合物の検出を行う際、比較および識別にこのデータを利用できるようにしている。
さらに、本発明では、電界状態データ(例えば同一イオン種の2つの近接した検出データについての電界強度および補償電圧)を抽出できる。次に、移動度曲線、すなわち少なくともその2つのデータ点間の曲線の符号(勾配の正負)および勾配を、検出されたイオン種の固有特性として導き出すことができる。このデータを、その化合物の固有特性として、そのデータが発生した電界状態と共に単に格納できる。将来、そのイオン種に関して2つの近接するまたは関連するピークの検出を行う場合、再び電界状態を知り、符号および勾配またはその曲線を表す他の数学的変数を計算し、格納しているデータと比較して一致および識別を決定することができる。この方法は高い信頼性を有し、より完全な曲線一致も可能ではあるが、その必要はない。
当業者には明らかなように、測定点の選択および測定点の数は、特定の用途に必要とされる特異性に応じて調整できる。測定点の最低数は2つであり、この2点が、既知の電界値が与えられると、少なくとも化合物の特性曲線の形状(勾配等)を識別する。
図1C(従来技術)の収集および記録された複数の走査データに示されるように、各化合物は、様々な関連付けられたピークRFおよび補償値のそれぞれでその化合物に関連するピーク検出データを表す、固有の特性移動度曲線を有する。したがって、ルチジン、シクロヘキサン、ベンゼン、および化学薬剤類似物のジメチル・メチル・ホスホネート(DMMP)を含む4つの異なる化合物の検出が示される。各曲線はその化合物の特性を決定するそれぞれ異なった電界状態で検出ピークを示す。
図1Cの補償電圧対分散電圧(つまりRFピーク電圧)の図は、所定のRFピークで示されている特定の化合物それぞれのスペクトル・ピークに関連する補償電圧を示す。この図に示されるように、DMMPおよびシクロヘキサンに対する反応は相互に多少重なる(つまり移動度曲線が重なる)領域(参照符号100で示す)がある。したがって、約2,500〜2,650ボルトのピークRF電圧領域において約−6〜−8ボルトの補償で作動すると、単一走査で2つの化合物を識別するのは不可能であることがわかるであろう。言い換えると、従来のスペクトル走査は重畳するピークをその電界状態での単一ピークとしてプロットする。ここでは、ピークを分離するのに必要な別のソフトウェア「トウィーキング(tweaking)」を除いては、ピーク一致は適切ではないと思われる。しかし、このトウィーキングは限られたルックアップ・データセットの格納データに適合しない場合があり、そのため識別できない可能性もある。これは、現実の大きさ、空間、計算能力、または他の制限がある携帯型装置ではその可能性が高い。
本発明では、所定の化学サンプルに関して、一定範囲の補償電圧に渡って一定範囲のRFピーク電圧に対するFAIMSシステムの全体的反応を見ることによって、各曲線が固有の電界挙動の特性を表すことがわかることを認識した。本発明では、この移動度挙動を固有特性移動度挙動と呼び、この固有特性挙動によって化合物を識別できる。
このように、本発明の好ましい具体化が、RFピーク電圧を段階的に変化させ、補償電圧を走査することにより、検出化合物を識別および区別する一連の固有データを生成して移動度固有特性のデータ格納を実現することを意図していることは理解されるであろう。次に、これらの移動度曲線の特性を決定するルックアップ用にデータを格納し、このデータを利用して化合物を識別できる。このプロセスについては、図10A〜10Fに関連して詳細に説明する。
このように、本発明では、未知の化学種の識別および定量化は、各化学種について、移動度対印加電界の実験的に決定される曲線を生成することによって改良できることを見出した。しかし、ピークの観測された移動度対電界の反応を単に比較するのではなく、移動度は一定範囲の補償電界全体に渡り決定され、これには比較的低電圧の電界強度(幾つかの化合物で移動度が同一の場合)と比較的高電圧の電界強度(多くの化合物で移動度が基本的に異なる場合)とが含まれる可能性がある。検出データから生成されるスペクトル曲線または移動度曲線の比較は、格納されている曲線データに対してなされ、正しい識別が可能になる。
このように、傾向、すなわちスペクトル・ピークおよび関連する補償電圧の第1の電界状態から第2の電界状態への移行を見ることによって、化合物の同一性をより正確に確認することができる。言い換えると、別の化合物は同一データ位置で同一の移行の組み合わせを取ることはないため、正確な識別がなされる可能性が高い。
一般化された例として、図4(A)および4Bに、特定の印加電界強度での補償電圧の関数としての検出強度(検出量)を示す。図4(A)において、ピーク110−1、110−2、110−3、110−4は、所定のVcompで、1400VのVrf(電界強度は28,000V/cm)で発生することがわかる。したがって、図4(B)に示すようにVrfが1450v(電界強度29,000v/cm)に変化すると、一連のピークは異なるVcompの場所に移動する。このように、関連する補償レベルの移動に示されるように、わずかに異なる電界状態を与えるだけで、ピーク位置は少なくともわずかに移動する結果になる。したがって、これらの観測は、RFおよびVcompのレベルを収集して検出データと関連付け、さらに既知のイオン種の格納されている識別データと比較することによって、検出イオン種を識別するプロセスで利用できる。一致またはほぼ一致すれば、検出されたイオン種の識別が可能となる。
他の手段では不可能ではないが個別に識別するのが通常は困難な化合物同士でも、電界状態を制御して分別できることは、理解されるであろう。電界状態を選択することによって、対象とするイオン種の分離が可能となる。さらに、本発明のシステムは検出データを格納データと一致させるため、サンプル内に関連するイオン種が存在すると仮定して、格納データと一致する検出データを生み出す電界状態を選択できる。
図5Aおよび5Bでは、本発明の具体化において有効な選択度について述べる。図5Aでは、24000v/cmの電界強度で、サンプル内の3つの異なるキシレン異性体p−、o−、m−のピークを検出した。図5Aでは、p−とo−のピークは区別できないが、m−のピークは形状が明瞭である。このサンプルをさらに評価するために、電界強度がさらに低い18000v/cmで図5Bに示す第2の検出を行い、その結果、3つの異なるキシレン異性体は明瞭に区別され、識別された。
したがって、本発明でさらに認識された点は、イオン種の正確な区別は、必ずしも高電界状態の結果とは限らないことである。実際にこの例では、p−とo−のキシレン異性体は低電界強度で区別可能となった。ここでもやはり、イオン種の識別は、好ましくは複数の検出データのルックアップ表によって行い、一連の電界状態の増加または減少に無関係に行う。
ここでの認識において重要なことは、他の者も示唆しているように(米国特許第5,420,424号参照)単に電界強度を上げても必ずしも分解能が高まるわけではないという点である。実際に、化合物(または異性体)の組み合わせの存在を検査するとき、またはそのような存在を示唆する検出データを収集したとき、複数の検出データを収集し、それらを合わせて用いて検出されたイオンの固有特性を生成することもできる。格納データとの比較を行うことによって、単一イオン種の識別が可能な場合もあれば、一般的なイオン種のグループの識別が可能な場合もある。例えば、図5Aまたは5Bに示される検出データは、単にそれぞれが3つのキシレン異性体の特性プロットあり、したがって、これらのプロットだけで幾つかの識別をすることも可能であるが、これらを合わせると、3つのキシレン異性体が検出されたという極めて高水準の確実性を得ることができる。したがって、これらの異性体に関して両方の電界状態についての格納データが一致すると、誤り発生の可能性の低い、信頼性の高いイオン種の識別が実現される。さらに、単にこれら2つのまたは同様の「データポイント」を見る携帯型装置は、本発明の具体化において、ハンディ・キシレン検出器として提供されるであろう。
本発明の別の例では、印加される電界状態の一定範囲に渡り検出データを生成する。例えば、図6Aおよび6Bに、ヘキサノンおよびオクタノンについての、異なる補償レベルでの検出ピークの位置における電界強度の変化の影響を示す。これらの図は、異なる電界強度を印加した場合のFAIMS装置の反応の一連のプロットを表している。曲線は垂直軸上で偏位し、電界強度が高まるについてこの偏位が大きくなる。図示する通り、異なる動作範囲が可能であるが、図6Aおよび6Bは、低い約620ボルト(それぞれの最低プロット)から高い約1450ボルト(各々の最高プロット)までの間のピークRFを表していることは、理解されるであろう。この一連の反応において幾つかの属性が見られる。例えば、図6Aのヘキサノンの図に特に注目すると、特に対象とするモノマー・ピークの601−1は最低の電界強度状態では幾分不明瞭である。しかし最高の電界強度が適用されると、ヘキサノンに対応するピーク601−mは、他のピークから明瞭に識別できる。
印加する電界強度の増加に伴い、幾つかの現象が発生した。第1に、反応イオン・ピーク(RIP)605−1が低電界電圧の測定値においては相対的に支配的であった。しかし、電界強度が高まるにつれて、RIP605−mは、対象とするモノマー・イオン・ピーク601−mよりも急速に左に移動する。これは、反応イオン種の移動度係数のαパラメータが、対象とするモノマー・イオンのαパラメータと異なるからである。
加えて、反応イオン・ピーク605の相対振幅が電界の増加するにつれて著しく減少することが認識される。したがって、RIP605−mは大幅に低い振幅で観測され、特定の電界状態で対象のモノマー・ピーク601−mから明らかに分離する。モノマー・ピーク601もまた移動するが、同じ量だけ、またはそれ以上に移動することはない。したがって、印加される一定範囲の電界状態に渡って化合物を分析することによって、RIP605が他の観測されたピーク電圧から離れて移動し、またはその目盛を超えて移動する状態を見出すことができる。これにより、対象とするモノマー・イオン・ピーク601を容易に検出できる場合もある。
オクタノンに関して観測されるモノマー・ピーク610−1、610−〜610−n、およびその結果である反応イオン・ピーク615−1〜615−mにおいても同様の挙動が観測される。したがって、この情報を利用して、一群の反応曲線を格納されている既知の反応曲線の一群と比較することによって、イオン種を識別できる。
図6Aおよび6Bの両方から観測される別の効果は、いわゆるクラスタ・イオン608、610のグループが見られることである。クラスタ・イオン608は、サンプル内の化学物質のクラスタを表す。大きい化学量の一般的なクラスタ・イオンは、所定のモノマー・イオン・ピークとは異なって移動するピークを有する。特に、これらがより重いことから、クラスタ・ピークは異なった移動を示す。この例では、クラスタ・ピークは、印加する電界強度が高まる場合のモノマー・ピークの移動方向から遠ざかる方向に移動する。このサンプルにより観測されるクラスタ・イオンのこの特性形状を格納し、ヘキサノンまたはオクトノン・イオンの識別に利用することもできる。
図6Aおよび6Bに示されるこれらの曲線は、所定のサンプルを検出するために、一定範囲の電界状態をどのように印加すれば有利に利用できるのかを示す、1つの例に過ぎない。比較的高い電界強度を印加することによって、他の影響を観測することもできる。詳細には、複合イオンのグループを高電界強度で分解させ、グループ自体の構成成分を個別に検出することができる。
例えば、六弗化硫黄(SF6)は、負モードでは容易に検出できる。しかし、正モードでの反応は、単独では決定的ではないが、プロファイルを有するため、負モードと組み合わせれば確実になり、誤った検出が起こる可能性が低い。したがって、二重モードの単一モードで、順次または同時にSF6を検出することができる。
SF6ガスは、漏れの発生点を検出するパイプの漏れ検出のためのトレーサ(tracer)として、空気の流れを監視する大気トレーサ用途に用いられ、特に、発電所において、スイッチの破損を減らすまたは防ぐためにスイッチを絶縁する目的で用いられる。SF6の隔離および検出は、困難な提案である場合が多い。
本発明の実施の際、空気中でSF6を検出し、SF6のピークを反応イオン・ピークと極めて明瞭に区別することができる。反応イオン・ピークは、空気中のイオン化窒素および水分子で構成される。
従来のIMS(飛行時間)では、反応イオン・ピークはSF6のピークと重なる。本発明によるFAIMS改良の具体化では、負イオン・モード(すなわち以下の例に示すようにRFおよび補償に基づいてFAIMSフィルタを通過する負イオンを検出する)において、SF6のピークと反応イオン・ピーク(RIP)とを明瞭に区別できる。負モードにおけるSF6のピークとRIPの区別の優れた結果は、図3Cに明らかに示されている。しかし、正イオン・モードでは、図3Dに示すように、SF6が存在しない場合とSF6が存在する場合とで差は検出されない。
図3Eに、負イオン・モードにおける異なるRF電圧レベルでのFAIMS反応の図を示す。図3Fは、この結果、およびSF6が存在しない状態で検出されたRIPを示す。このように、適切なRFおよび補償電圧が選択された場合は、本発明のFAIMSフィルタに明らかな効果があることが示されている。いずれの場合でも、SF6のピークはRIPから移動し、区別される。
図3Gは正イオン・モード(FAIMSイオン・フィルタを通過する 正イオンの検出)でのFAIMS反応を示し、ここではSF6のピークはRIPから離れていない。これだけでは決定的ではないが、これは予測される検出であるため、決定的なSF6の負モード検出と組み合わせた場合の、確認のために利用できる。
本発明の1つの実施形態では、感度1×10−9atm cc/sec SF6(0.01PPM)でSF6を検出する携帯型バッテリー電源装置が可能である。この実施形態において、本発明を利用して、例えば電力産業において高電圧開閉装置の気密性を確実にし、および研究施設において換気フードをASHREA110仕様に照らし合わせて検査できる。他の用途には、魚雷ヘッド、配管工事系統、エアバッグの結合性検査が挙げられる。本発明の高感度、堅牢な設計、および使用と設定の容易性は、SF6の検出を含む様々な用途において有益である。
図7はメルカプタン・イオン・サンプルに与える影響の例である。特に、一定範囲のバックグラウンド電圧(620〜1450ボルト)がエチル・メルカプタン・スペクトルに印加され、電界状態が強くなるにつれて、イオン・ピーク挙動の一般的な移動が見られる。しかし、分断状態も観測される。詳細には、低電界状態が印加された場合は、例えば701−1のように強い単一ピークが観測される。しかし、電界状態の強度が増すについて、複数のピーク701−n、702〜710がスペクトルで観測される。低電圧の電界状態だけでなく一定範囲の電界状態に渡りピークの場所を観測し、記録することによって、この分断挙動をさらに探求し化合物を明瞭に識別できる。分断が発生してピークRF電圧または分断ピークの場所を示すデータを格納し、検出データの一致の際にこれを用いることができる。
本発明ではまた、装置に依存しないイオン種の識別方法を見出すこともできた。ここで図8Aおよび8Bを参照すると、アセトン、ブタノン、ペンタノン、ヘキサノン、ヘプタノン、オクタノン、ノナノン、デカノンを含むケトンの同族グループ(8A−モノマー、8B−クラスタ)に関する表1(図8C)に記録された実験的検出データをプロットした。各イオン種は、所定の一連の電界状態について、固有の移動度曲線を持ち、したがって固有の移動度固有特性を持つ。本発明では、このデータを格納でき、したがってケトンの検出器と同一装置を利用できる。一連の検出データを取得し、格納されたデータとの曲線一致または他のデータとの比較を行う。一致により、その装置で検出されたケトンの識別を可能にする。また、既知のイオン種に関する実験的な検出データについて、例えば勾配と符号などの2組の点および記憶曲線データを取ることもできる。ここで、例えばピークRF電界強度(E)が28000および29000V/cmなどのような2つを検出することにより、2つのデータ点を有し、その間で意図的に連結される曲線関数の勾配および符号を計算でき、次に格納データと比較してその装置で検出されたイオン種の確実な識別を行う。
しかし、本発明では、識別プロセスを装置に依存しないようにすることによって、さらに段階を進めることができる。したがって、イオンに依存する電界移動度を検出する、あらゆるシステムにおいて利用できるデータを生成する。これは、各イオン種と関連する基本的な移動度係数から算出される関数のパラメータを決定することを基にする。
したがって、例えば、図4(A)と4B、および5Aと5Bに示す複数のデータをそれぞれ利用して、イオン種を識別する固有かつ本質的な移動度特性によって、検出されたイオン種の確実な識別を実現できる。問題としている装置に特有のルックアップ表とこの比較を行うが、装置に依存しない一般的の一連のデータであってもよい。したがって、一般には、検出量曲線対補償電圧のプロットを個別に比較するだけを望むのではなく、特定の補償電圧について観測されるピーク位置のプロットを生成し、それにより、曲線、勾配、符号および多様な詳細を認識して、各検出イオンをルックアップ・データのライブラリと比較できる。
(2.アルファ係数の決定)
詳細には、移動度固有特性値の計算において、本発明者らは、電界の関数として表される、イオン移動度の電界依存性の表示であるいわゆるα係数を用いて、そのイオン種に固有でありかつ装置に依存しない固有のα関数を生成できることを見出した。したがって、α関数は、イオン種の固有特性値として用いることができる。さらに注目すべきことは、この関数がイオン種の固有特性値の両方を表し、装置に依存しないことである。要するに、ピークは異なるアルファ固有値を持っているため、固有特性値によりピーク位置が変化することを見出した。
したがって、ここでは、検出されたイオン種の移動度固有特性としてα関数を用いる。この移動度固有特性は、用いる電界状態に基づいて検出された化合物に対して決定することができ、したがって、この固有特性を用いて、既知の化合物と関連する格納されている既知の固有特性データのルックアップ表に従って識別を実行できる。詳細には、本発明の好ましい実施形態の具体化において、イオン種は、様々な電界状態下でイオン種の移動度依存性に基づいて識別される。少なくとも2つの電界状態でテストされたサンプルのデータを収集し、データを処理し、テストされたサンプルのα関数として計算される検出データと格納データとを比較することによって、サンプル内の化合物の識別が可能となる。
αパラメータの説明を再び参照すると、図1Bは3つのイオンの例の移動度と電界強度を示す図であり、αがゼロより大きい、ゼロと等しい、およびゼロより小さい場合の、イオン種の電界依存性移動度(高電界移動度の係数αとして表示)が示されている。所定のあらゆる一連の電界状態についても、電界強度と補償はα値と関連付けることができる。これは、Buryakovらによる研究「A New Method of Separation of Multi-Atomic Ions by Mobility at Atmospheric Pressure Using a High-Frequency Amplitude Asymmetric Strong Electric Field, Intl J. MassSpec and Ion Proc. (1993)」の145ページに記載されている。
本発明者らは、特定の電界強度でαパラメータのみが判明しても、誤りの発生を避けられないことを見出した。これは、図1Dにおける2つのプロットの交差点である参照符号100に示される点で発生する。詳細な情報がなければ、その位置での各イオン種のαパラメータを知るだけでは、双方の化合物の固有の移動度固有特性を求められない。したがって、さらに情報を得ないと、この交差点で多数の測定結果を得ても、結果的に検出エラーとなる可能性がある。
しかし、本発明では、イオンのα移動度特性を電界の関数として、すなわちα(E)として表すことができ、装置に依存しないイオン種の固有の移動度固有特性を定義できることも見出した。このα(E)、つまり「アルファ関数」は、イオンの大きさ、有効断面、形状および質量を電界状態と関連付ける。印加される電界が高くなると、増加する電界はイオンの結合を移動、伸張させ、および/または破壊する傾向があるため、電界が強くなるほど、誘導される双極子、四極子が増えるか、またはイオンのモーメントの次数が高くなる。一方、これらは特定のイオンの相対的移動度に影響を与える。関係するこれらの側面の結果は、対象とするイオン種の固有の移動度固有値を定義することになる。これもまた、装置に依存しないものとなる。
α(E)関数と電界状態との関係は次式で示される。
Figure 2005513414
ここで、Vcは補償電圧(ピーク位置)、Esは電界強度、f(t)は波形パラメータ(波形等)である。
したがって、各スペクトル検出について、電界状態の関数としてα、すなわちα(E)を計算できる。特に、平板型電界非対称波形移動度分光計における非対称波形、Emax(t)=Emaxf(t)は、次の条件を満たすよう設計される。
Figure 2005513414
Figure 2005513414
ここで、f(t)は波形を表す正規化関数であり、Emaxは波形の最大振幅である。波形は平均値がゼロ(式3a)になるよう設計され、1周期中の電界の極性は正と負の両方である。補償電界Cが波形E(t)に追加されると、式4が成り立つ。
Figure 2005513414
したがって、非対称波形の1周期に渡る平均イオン速度は、次のように表すことができる。
Figure 2005513414
平均速度がゼロ、つまりv=0のイオンだけが中性化されず空隙を通過する。イオンが空隙を通過するのに必要な補償電界の式は、式(6)に示すように式(2)、(3)、(4)を式(5)に代入することによって得られる。
Figure 2005513414
この補償電界の値は、イオン種のアルファ・パラメータ、波形f(t)および非対称波形Emaxの振幅がわかれば正確に予測できる。
このようにして、移動度走査の電界依存性の実験的測定からα(E)を算出する手順が判明する。このセクションでは、アルファ・パラメータおよびこのパラメータを決定する方法に関する、幾つかの追加的な検討事項を述べる。まず、アルファ・パラメータは関数であり(数字ではない)、イオンに関する物理的および化学的な情報はα(E)曲線に含まれていることを強調しなければならない。この曲線を表示する方法は主題に付随するものである。これらの方法において重要な唯一の評価基準は、移動度に関する計算値(つまりK(E)=K{1+α(E)})ができる限り実験値に近い必要があることだけである。α(E)の関数は、偶数乗のべき級数としてまたは複素形式で表すことができる。いずれの例でも、実験結果および計算結果の曲線は密接に一致する必要がある。したがって、近似の品質(精度)は実験結果の正確性によって限度があり、それを図に示した。2つのパラメータ、3つのパラメータに基づくモデルの品質、または5つのパラメータの非線形関数の品質の認識は困難であった。全ての近似値はΔCの誤差(±9%)内にあった。
この研究では、関数α(E)を表すための簡単な統一された方法が説明されており、この方法は異なる実験状態の下で得られる結果の比較に適するものである。異なる非対称波形、または異なる設計のIMSドリフト・チューブ、すなわち線形、円筒形、または平板型FAIMSに対して、これらの方法を利用できる。一般的に、アルファの近似の水準を選択する基準は、まず第1に、アルファ・パラメータの算出方法が、実験装置の最少の数の個別パラメータを用いることを保証することである。第2に、その結果が、最少の数の調整可能パラメータを含み、近似曲線が実験誤差範囲内にある必要がある。次のセクションで、アルファ・パラメータを算出する一般的な方法を説明し、それに続くセクションで適用する。
関数α(E)は、式7に示されるように、電界強度E次数の級数への多項式展開として与えられる。
Figure 2005513414
式(6)に式(7)を代入することによって、式(8)に示されるように補償電圧の値が得られる。式(8)では、奇数多項式関数を偶数多項式関数で除する。したがって、識別符号の後に奇数次数の多項式を置き、実験結果を近似する。
Figure 2005513414
これにより、式(9)に示すように、予測係数(近似された)をアルファ・パラメータの値と比較できるようになる。
Figure 2005513414
また別に、アルファ・パラメータは、実験結果の近似を用いて式を逆にして、式(10)により算出できる。
Figure 2005513414
原則的には、実際的な限界は存在するが、任意の数の多項式の項(例えば2n)でも式(10)から決定することができる。なぜなら、近似の実験結果c2n+1における多項式の項数は、アルファ係数α2nの予測数よりも大きいはずだからである。nの大きさは実験誤差に依存するため、実験曲線C(E)の近似のべき数が制限なく増加することは不可能である。通常、Ci(Esi)のN個の実験点が同一のイオン種について存在し、実験データは従来の最小二乗法を用いて多項式によって近似できる。最後に、級数の項数は実験点の数を越えることはないため、一致曲線が実験の誤差範囲内にある場合には、その実験点を越えて級数の項数が増加することは不合理である。実際に、従来の研究結果で示される良好な近似を実現するには、2つまたは3つの項で十分である。測定の誤差を判断して、アルファの多項式の次数を決定する必要がある。これらの実験における誤差の発生源は(予測誤差が既知に場合)には、以下のものがあった。
1.RF電界振幅の測定およびモデル化に関連する誤差(〜5%)
2.式(4)の1次近似からのC(E)における誤差(〜3%)
3.補償電圧の測定における誤差(〜5−8%)
近似誤差は〜10%であると考えられ、2つの多項式項を越える近似は意味がない。したがって、アルファはα(E/N)=1+α(E/N)+α(E/N)と表され、正確性のレベルは測定において許容されるレベルである。
標準的な最小二乗法(回帰分析)を用いて、実験結果を近似またはモデル化した。C(Esi)のN個の実験点およびC=c+cについて、関数y=c+cxを定義でき、ここでは、y=C/S、x=Sであるため、cおよびcはそれぞれ、式(11)および(12)から得られる。
Figure 2005513414
Figure 2005513414
実験値c、cを代入することによって、αとαの値は式(13)および(14)により得ることができる。
Figure 2005513414
Figure 2005513414
α2nを算出するために、C(Es)、および非対称波形を示す正規化関数である関数f(t)の実験曲線の近似を知る必要がある。
例えば、図8Cの表1で収集されたデータに基づき、図8の8つのケトンのそれぞれについて9つのデータ点を識別した。これらデータを利用して、例えばα曲線への区分的線形近似を用いて、そのイオン種のα曲線を計算できる。例えば、ブタノンについての2つのデータ点はa(Vcomp−a、Vrf−a)とb(Vcomp−b、Vrf−b)である。これらの2点間で、ブタノン曲線の勾配と符号を計算することができる。曲線の完全な特性決定は、例えば多項式曲線一致を用いても可能である。
ここで、この一連のデータは格納データの一部となり、未知の検出イオン種の識別に用いられる(この未知検出イオンについて、2つのデータ点が収集され、対応する曲線データが計算される)。要するに、本発明の簡単な具体化では、所定のイオン・サンプルについて、少なくとも2つの密接に関連する点(ピーク)でのデータを収集し、それに従って曲線データを生成する。データを検出し計算し終わると、これがアルファ曲線を近似すると仮定し、次に格納データを検索する。一致を見出すことにより、このサンプルを確実に識別できる。
図9Aおよび9B(それぞれ、モノマーとクラスタ)では、図7Bの表で収集されたデータに基づいてケトン・イオン(アセトン、ブタトン、ペンタノン、ヘキサノン、ヘプタノン、オクタノン、ノナノン、デカノン)の固有のα曲線を計算し、様々なデータ収集されたイオン表1(図8C)について、電界強度の変化に対するαのパーセント変化をプロットする。これらの、電界強度に対するαのパーセント変化のプロットは、これらの各イオン種についての固有特性を表す。これは、後の比較のために格納されるデータに読み込まれる。固有特性データはピークが検出されるRF電界強度および補償電圧を含み、またこの固有特性データを、各イオン種の検出されたピークの場所および電界状態と関連する既知のα関数の識別データに関連付ける。
このように、図9Aおよび9Bは、0〜80Td(〜23kV/cm)の電界に渡る個々のケトンのα関数を表し、図ではこれを電界状態の関数としてアルファのパーセント変化で表している。これらのプロットは、これらのイオン種の基本的は固有特性の特徴を示しており、ドリフト・チューブ・パラメータに依存せず、別の移動度分光計でも利用できる。このように、本発明の具体化では、α関数を有利に利用して、装置に依存しない一連の移動度識別データを提供する。
これらの結果は極めて有効であり、同一官能基を持つ化学物質については、単一タイプのプロトン化されたモノマーは、電界での移動度の係数の依存性に関しては広範囲の挙動を示すことを表わす。このような共通成分の挙動の差は、電界からの影響が分子構造の他の側面と関連していることを示唆している。1つの解釈としては、高電界の印加でイオンが加熱され、プロトン化されたモノマーに影響が出ると考えられる。(HO)M(HO)またはおそらく(HO)M(HO)(Nの構造を持つこれらのイオンは、高電界状態によってイオンの温度がわずかに上昇しただけでも解離する傾向にあるはずである。したがって、イオン断面および移動度は高電界でクラスタ分解された小さなイオンを伴う。
再び図9Aを参照すると、高電界でアセトンのプロトン化されたモノマーのα(E)に約20%の増加が見られる。ケトンの分子量が増加するにつれて、イオンの加熱は明らかに減少し、α(E)関数に反映されるはずである。プロトン結合ダイマー(クラスタ)のα(E)関数は、高電界状態下での移動度の低下と一致する。その結果、α(E)関数の基準はプロトン化されたモノマーのそれとは異なる。実際に、デカノンのプロトン結合ダイマーは高電界では5%低下する。高電界で移動度が低下する原因についての既存のモデルはないが、イオンとサポート・ガスとの衝突サイズの拡大またはこれらの相互作用の強度の増加によるものであろう。
さらに、図1CのシクロヘキサンおよびDMMPに同じことを行った場合、計算されるアルファ曲線はそれに応じて異なると思われる。このように、移動度曲線が重なる場合でも、対象とする各検出イオン種と関連する少なくとも第2の一連の検出データがある限り、イオン種を識別できる。したがって、本発明による識別の正確性は高レベルで保証される。
このように、高電界でのイオンの移動度の依存性の基本は、電界非対称イオン移動度分光計から得られることを示してきた。依存性の関数は、不完全な波形を扱う既知の方法を用いた実験から算出することができる。これらの実験結果は、ケトンの同族系列との内部一致性を示し、また、これまでに報告されていない質量依存性も示す。
ここで、本発明の実施の際、イオン種は様々な電界状態下における種のイオン移動度依存性に基づいて識別されることが理解されるであろう。まず第1に、電界強度および電界補償の変化に基づくイオン移動度の特性変化が記録され、既知の化合物のライブラリに格納される。第2に、多様な電界状態についてテストされるサンプルのためにデータが収集される。第3に、テストされたサンプルの検出データを格納データと比較することにより、サンプル内の化合物を識別できる。格納データの品質と移動度関係の強さによって、イオン種の識別精度が向上する。
さらに、本発明は平板型電界非対称イオン移動度システムだけでなく、基本的には様々なタイプのイオン移動度分光測定装置に適用可能であり、これには、様々な形体、イオン化装置、検出器装置等が含まれることは理解されるであろう。また、本発明は、新しい用途および当技術分野で公知の構造についても改良された結果をもたらすことも理解されるであろう。このように、本発明は、平板型構造の例に限定されず、放射状および円柱形のFAIMS装置を含む他のあらゆる構造で具体化できる。さらに、本発明の実施形態の具体化では、FAIMSフィルタの出力は装置の基板外、例えば質量分析計または他の検出器で検出可能であり、これも本発明の精神および範囲内に含まれる。
前述の説明は、イオン種の検出および識別に焦点を当てていた。しかし、本発明はさらに広範囲なものであり、変化する制御励起電界中を移動する未知のイオン種を識別するためのあらゆるシステムに適用可能であり、識別は、変化する電界状態下における、既知のイオン種の特徴的移動挙動に基づいて行われる。識別される単数または複数のイオンは、単独、または同一あるいは異なる特徴的移動挙動を有するイオンのグループとして移動する。電界の補償は、対象とするイオン種が流れの中心に戻りフィルタを通過することができ、一方で他の全てのイオン種が阻止または中性化される限りにおいて、様々な方法のいずれの方法で補償してもよい。識別は、既知の電界状態で電界中を移動する少なくとも1つのイオン種の、既知の電界依存性が異なる移動度挙動に基づいて行われる。
E.化合物識別のプロセス
ここで、図10A〜10Fに注目すると、本発明の実施形態の幾つかにおいてイオン種の識別を行うために実施される、特定のシーケンスのステップが示されている。これらは説明のために示したものであり、これに限定されるものではない。この図において、一連のステップは、イオン移動度分光測定装置10に結合されたマイクロプロセッサ46によって実行される。図2に関連して既に説明したとおり、RF電圧発生器42、補償電圧発生器44、メモリ47、およびアナログ/デジタル変換器48も備えていると考えられる。マイクロプロセッサ46は、デジタル制御信号をRF分散電圧発生器42および補償電圧発生器44に提供し、所望するフィルタ24の駆動電圧を制御する。これらは、例えば、本図面にはその詳細が示されていないデジタル/アナログ変換器を備えることもできる。
マイクロプロセッサ46は、特定のRF分散電圧Vrfおよび補償電圧Vcompの印加を調整し、またアナログ/デジタル変換器48を通して読まれる検出器26からの反応を観測する機能も考慮に入れる。Vrf電圧の一定範囲に渡って観測される特定イオン種の検出量の属性(ピーク等)を検出することによって、マイクロプロセッサ46は数ステップを取って、特定化合物を識別できる。これらは、例えば、特定の「反応曲線」データの、メモリ47に格納されている反応曲線データのライブラリとの比較または相関を取ることを含むこともある。またα曲線パラメータの計算を含むこともある。比較動作の結果は、ディスプレイまたはパーソナル・コンピュータ等の適正な出力装置の形式で提供することができ、またはインタフェースを介してデータ処理装置に電気信号によって提供することもできる。
図10Aで詳細に示すように、状態1000はマイクロプロセッサ46に入り、そこで化合物が分析される。ここで、例えばユーザが識別テキスト・ストリングをコンピュータに入力するなどにより、化合物が認識され、識別される。次に、一連のステップが実行され、それによって既知の化合物に関するデータが得られる。この状態1000から、次の状態1002に入り、プロセッサ46によって一定範囲の分散電圧Vrfおよび補償電圧Vcompが決定される。これらの範囲には、開始電圧(b)、終了電圧(s)、および各範囲に印加されるステップ電圧(s)が含まれ、Vrfは初期値Vrf(b)から最終値Vrf(e)へと、ステップ量Vrf(s)ごとに変化する。同様に、Vcompは、Vcomp(b)から最終値のVcomp(e)までステップ量Vcomp(s)ごとに変化する。
次に、前記電圧範囲が以下のステップで印加される。詳細には、ステップ1004に入り、そこでVrfは一定範囲の値全体に渡ってステップ的に変化する。次に状態1008に入り、そこで補償電圧Vcompも一連の値または範囲を通して掃引されるか、またはステップ的に変化する。
状態1010では、各印加電圧に対する反応が値aとして格納される。
最終の補償電圧がテストされていない場合、処理は状態1008に戻り、次の補償電圧が印加される。ただし、状態1012で全ての補償電圧が印加されている場合は、処理は状態1014に進み、すべての分散電圧が印加されたかどうかを見るテストが行われる。
全ての補償電圧および分散電圧が印加されるまでループが継続され、その結果である一連のデータは状態1018で分析されて、対象とする特徴を識別される。説明されている特定の例では、対象とするのはピーク位置となる。所定の印加分散電圧について観測された反応のこのような各ピークに対して、特定のVcompの反応値が決定され、それに対応する振幅aが検出され、格納される。
反応曲線データ、またはピーク位置のようなその曲線データの属性は、図10Bに示すようにデータ対象P(または表)として記憶される。このような対象は一般的に、テキスト文字列のようなテストされた化合物の識別を含む。また、印加された一連の分散電圧Vrfも、当然格納される。このような各分散電圧Vrfについて、対応するピーク補償電圧が格納される。詳細には、少なくともピークが観測された補償電圧Vcompが格納され、また一般的には、そのピークで観測された、対応する反応の振幅(検出量)も記憶される。
ここまでの説明により、所定のRF電圧Vrfについて、その電圧で複数の「ピーク」が観測される一連の補償電圧が実際に存在することは、理解されるであろう。例えば、図6Aに関連して説明したように、分析されたサンプルは、特定のイオン・モノマー、クラスタ・イオン、および反応イオン・ピークから構成されていた。したがって、いかなる特定の移動度走査においても複数のピークが観測されることを予測し、また反応曲線ごとのピーク数は常に同じ数ではないことを予測して、対象Pの構造に順応性を持たせるべきである。
ここで、対象Pのデータの例を示す。この例では、単一のRF分散電圧Vrf−1について、対応する振幅a11〜a1nを有する補償電圧Vc11〜Vc1nでピークを観測した。これは、多数のピーク601−、605−1、608−1が検出された図6Aの印加分散電圧が最低の場合に相当すると思われる。しかし、別の分散電圧Vrf−mでは、Vcomp−m、amでは単一のピークしか検出されなかった。これは、単一のピーク601−mしか検出されなかった図6Aの一番上の曲線の場合に相当すると思われる。
一般的な用途では、データ対象Pのライブラリ(参照ベクトル)は、異なる既知の化合物について図10Aのステップを実行することによって作成される。
これによって、測定器は最終的に、図10Cに示すように化学物質認識状態1200に入ることができる。この状態から、状態1202〜1214で一連の測定が行われるが、それらは図10Aで行った測定と異なる。詳細には、特定の補償電圧およびRF電圧について一連の測定が行われる。このモードでは、化学データ取得モードで行ったものと、全て同一の一連の測定を実行する必要はないことを理解されるべきである。詳細には、比較的密度の高い反応曲線上の全ての点について取る必要はなく、各化合物を識別するだけで十分である。
測定が完了すると状態1220に入り、そこで各ピークについて反応のピークなどの特徴が識別され、対応する補償電圧および振幅が識別され、これらは対象候補となる測定ベクトルP’に格納される。
対象候補となるベクトルP’は、複数の対象候補となる化合物に対してテストする必要のある一連のデータを表す。次に、対称となるベクトルP’は、状態1230および/または1240で、参照ベクトル対象Pのライブラリ内の該当する対応化合物を検索し、PとP’との一致を記録することによって、分析される。これらのステップは、一致あるいは最良の一致が状態1250において決定されるまで繰り返すことができる。
PとP’との一致の程度を決定するのに、任意の数の手法を用いることができることは理解されるべきである。例えば、PおよびP’の要素(Vcomp、a)がユークリッド幾何学空間のデータ点であると考えられる場合、距離を計算できる。最小のユークリッド距離との比較が、最良の一致として選択される。しかし、他の認識手法を用いて未知の化合物の識別を決定してもよく、例えば相関を利用してピークを分解するなどの、より高度な信号処理技術を用いてもよく、または他の既知のパターン認識アルゴリズム、ニューラル・ネットワークまたは人工知能技術などを用いてP’に最も一致するものを探してもよい。
この最良の一致は、状態1260において化合物識別電界を検索し、表示することなどによって、ユーザに識別される。
図10Dは、副次的データ処理特性を利用するために、データ取得フェーズおよび化学物質認識フェーズに追加できる一連のステップを示す。例えば、データ取得状態において、一連の状態1020、1022、1024、1026を追加して、測定された反応の特定の属性を曲線に合わせるようにしてもよい。詳細には、状態1020に入り、対象Pの各データ要素について、ピーク補償電圧vc11、vc12、〜vc1mからベクトルzが形成される。
このベクトルは、実際に、一定範囲の補償電圧について観測されたピーク点のベクトルである。再び図6Aを参照すると、簡単に言えば、これは例えば対象とするモノマー・イオンのピークの高さおよび場所に対応する点601−1、〜601−m、〜601−nに相当する。次に、状態1024において、曲線は、例えば曲線一致アルゴリズムの適用によって、これらのピークを通して一致する。図示する例では、二次方程式はy=βx+γの形でピークを一致させると仮定する。次に状態1026において、係数βおよびγはベクトルと関連付けて格納される。このように、化学物質は、その移動度(α係数)挙動を近似するピーク位置に一致する曲線によって識別される。
これが実行される場合、一般に、対応する一連のステップ1270、1272、および1274が化学物質認識プロセスに追加される。したがって、状態1270および1272で生データ値を比較するのではなく、曲線の一致を行ってデータを観測し、係数γおよびβを決定することによって、ピークが識別される。状態1274で、係数βおよびγをテストして、対象Pのライブラリ内で最も一致していることを決定する。
図10Fは、取得フェーズでピークを識別または区別するのに利用できる一連のステップを示す。ここでピークをクラスタ・ピークまたはモノマー・ピークとして識別することにより、初期データを対象Pに追加してもよい。具体的には、電界状態電圧(例えば図6A)の範囲が拡大するにつれて、ピークの移動が一定範囲で観測される場合、これはクラスタ・ピークとして識別できる。ピークが特定の移動基準を満たさない場合は、モノマー・ピークとして識別できる。したがって、状態1310、1331、1320を識別プロセスに追加できる。これらのステップの結果は、図10Eに示すように、対象Pにおける各データ点に関連する追加のパラメータLを追加して、各ピークがモノマー・ピークか、クラスタ・ピークか、または他のピーク・タイプかをさらに識別できる。
これに対して別の方法を用いて、ピークを表記できる。例えば、サンプルが供給されていないときに、測定器の反応の分析を実行することにより、反応イオン・ピークを識別できる。このモードでは、補償電圧の一定範囲に渡るイオン挙動で発生する反応イオン・ピークだけが、格納される。少なくとも、特定タイプのピークに関する情報は、このようなピークが検出される状態1320でポインタ・データに格納できる。この情報は、図10Eに示すように特定的に対象Pに加えることができる。
図10Gは、モノマーおよびクラスタのイオンが観測される図8Aおよび8Bの状態を利用するために、化学物質認識状態で実行できる追加的な処理ステップを示す。詳細には、図10Gのこれらのステップは、認識フェーズにおいて追加ステップ1280として加えることができる。ここで、全ての対象候補ピークP’について、参照列Pに対応するモノマー・ピークを比較する。次に、比較スコアを状態1284で最も一致するものと関連付け、同様に状態1286で、クラスタ・ピークを、ピーク・ライブラリP内の対応するものと比較する。次に、ステップ1288で、この一致と最も近いものに依存してスコアscを決定する。最後に、状態1290で、最終スコアsfは、加重係数wmおよびwcによってモノマ・ピーク・スコアおよびクラスター・ピーク・スコアに加重して、加算する。例えば、クラスタ・ピークがモノマー・ピークよりも多くの情報を提供すると予測される場合、クラスタ・ピークには大きい加重をかけ、モノマー・ピークは比較的低い係数またはゼロ係数がかけられる。この加重は、モノマーとクラスタ両方のピーク識別を組み合わせて、化合物の識別の精度を向上させる方法と理解される。
当業者には明らかであるが、本明細書の精神および範囲を逸脱することなく本発明に様々な修正および変更を加えることが可能である。例えば、図2には単一のフィルタ24および検出器28が示されていたが、特定のガス・イオン化サンプルSに一連のフィルタ24を適用可能であることは、理解されるべきである。第1フィルタを前置フィルタとして利用して、化学種を、対象と認識する特定範囲の種に限定することができ、第2フィルタを直列に用いて、精密な増分電圧で詳細に掃引し、優れた分解能を実現する。
本明細書には、本発明の実施形態の具体化における新規の検出方法の様々な実例が開示されている。この内容は、イオン、粒子、物品、生物学、車両、人、物等、およびその変形形態に適用することができる。これらは、限定されずに、「イオン」などのような代替用語によっても記述でき、さらに、このような幅は本発明の精神および範囲内であることは理解されるであろう。
本発明を好ましい実施形態により図示し、説明してきたが、当業者には、添付の特許請求の範囲に定義された本発明の精神と範囲から逸脱することなく、形態または細部に各種の変更を加えるのが可能であることは理解されるであろう
ピークRF、時間周期、デューティ・サイクルを有する非対称電界を示す図である。 電界非対称イオン移動度分光計において所定の電界強度に対しての検出量対印加される補償電圧を一般的に示す図であり、アセトンのみを示す(従来技術)。 同o−キシレンとアセトンの組み合わせを示す図である(従来技術)。 3つの異なる化合物について、電界強度に依存する移動度を示す図である(従来技術)。 4つの異なる化合物について、ある範囲のピーク無線周波数(RF)電圧および補償電圧の組み合わせ全体に渡る検出ピークを示す図である(従来技術)。 本発明の具体化における好ましい平板型電界非対称イオン移動度分光計の概略図である。 本発明の具体化における、異なる量のエチル・メルカプタンについての正モードのスペクトルを示す図である。 同負モードのスペクトルを示す図である。 補償電圧の変化のような電界状態の変化が特定のスペクトルに与える影響を示す図であり、本発明の具体化における、六弗化硫黄(SF6)を検出するための電界の変化に伴うモノマーおよび反応イオン・ピーク(RIP)検出の分散する反応挙動を示す。 補償電圧の変化のような電界状態の変化が特定のスペクトルに与える影響を示す図であり、本発明の具体化における、六弗化硫黄(SF6)を検出するための電界の変化に伴うモノマーおよび反応イオン・ピーク(RIP)検出の分散する反応挙動を示す。 補償電圧の変化のような電界状態の変化が特定のスペクトルに与える影響を示す図であり、本発明の具体化における、六弗化硫黄(SF6)を検出するための電界の変化に伴うモノマーおよび反応イオン・ピーク(RIP)検出の分散する反応挙動を示す。 補償電圧の変化のような電界状態の変化が特定のスペクトルに与える影響を示す図であり、本発明の具体化における、六弗化硫黄(SF6)を検出するための電界の変化に伴うモノマーおよび反応イオン・ピーク(RIP)検出の分散する反応挙動を示す。 補償電圧の変化のような電界状態の変化が特定のスペクトルに与える影響を示す図であり、本発明の具体化における、六弗化硫黄(SF6)を検出するための電界の変化に伴うモノマーおよび反応イオン・ピーク(RIP)検出の分散する反応挙動を示す。 (A)、(B)は、本発明の具体化における、補償電圧におけるピーク位置の変化の違いを示す図である。 本発明の具体化における、電界状態の変化によって検出されるイオン種の識別能力を示す図である。 本発明の具体化における、電界状態の変化によって検出されるイオン種の識別能力を示す図である。 補償電圧の変化のような電界状態の変化が特定のスペクトルに与える影響を示す図であり、本発明の具体化において、ヘキサノンおよびオクタノンについて電界の変化に伴うモノマー、クラスタおよび反応イオン・ピーク(RIP)検出の分散する反応挙動を示す。 補償電圧の変化のような電界状態の変化が特定のスペクトルに与える影響を示す図であり、本発明の具体化において、ヘキサノンおよびオクタノンについて電界の変化に伴うモノマー、クラスタおよび反応イオン・ピーク(RIP)検出の分散する反応挙動を示す。 本発明の具体化において、電界状態の変化が個々の検出ピークの位置およびピーク識別能力に与える影響を示す図である。 それぞれの図は、本発明の具体化において、ケトン系の検出されたモノマーおよびクラスタのイオン・ピークに対する補償電圧対電界強度を示す図である。 それぞれの図は、本発明の具体化において、ケトン系の検出されたモノマーおよびクラスタのイオン・ピークに対する補償電圧対電界強度を示す図である。 検出データを収集した表1を含む図であり、このデータから、本発明の具体化における8つのケトンのモノマーおよびダイマー(クラスタ)のグループに関して図8Aおよび8Bの曲線が生成される。 本発明の具体化における、正規化されたアルファ・パラメータ曲線の算出結果を示す図である。 本発明の具体化における、正規化されたアルファ・パラメータ曲線の算出結果を示す図である。 本発明の具体化における、特定の化学的イオン種に関するデータを取得するのに用いるコンピュータ処理のステップのシーケンスを示す図である。 本発明の具体化における、格納された化合物データ測定情報のライブラリの1つの可能なデータ構造を示す図である。 本発明の具体化における、化学物質の識別を行うために適用可能な一連のステップを示す図である。 本発明の具体化における、アルファ曲線一致を用いてデータ取得プロセスおよび化学物質識別プロセスに追加可能な一連のステップを示す図である。 本発明の具体化において利用可能な、より複雑なデータ構造を示す図である。 本発明の具体化における、モノマー・ピークおよびクラスタ・ピークの反応を区別するのに利用可能なプロセスのシーケンスを示す図である。 本発明の具体化における、モノマーおよびクラスタのスコアの結合方法を示すプロセス図である。

Claims (44)

  1. 励起電界中を移動する少なくとも1つの未知の単位体の化学種を識別する方法であって、前記電界はこの電界中を移動する単位体の挙動に多様な影響を与えるものであり、
    多様な励起電界を発生するステップと、
    少なくとも1つの単位体に前記電界を印加するステップであって、この単位体が電界状態を反映する電界依存性移動度を有する、ステップと、
    前記少なくとも1つの単位体に、前記電界の少なくとも2つの異なる電界状態を印加するステップと、
    前記電界の状態を補償して、前記単位体が前記電界中を通過するようにするステップと、
    前記単位体を既知の化学種の1成分として識別するステップであって、この識別は補償された電界状態における前記既知の化学種の既知の電界依存性挙動を基にする、ステップとを含む、方法。
  2. 請求項1において、さらに、データの格納を実行するステップであって、この格納には、(1)既知の電界状態で動作する既知の非対称励起電界を識別するデータと、(2)単位体の既知の化学種を識別するデータであり、この単位体の既知の化学種は、前記既知の電界状態の電界中を移動するときに、既知の電界依存移動度挙動を共通して有する単位体によって定義される、データと、(3)前記既知の単位体の化学種の少なくとも1つの単位体についての前記電界中の通過を表す複数のデータであり、前記通過は既知の電界状態と相関関係にあるデータと、を含むステップと、
    少なくとも1つの未知の化学種の単位体のサンプルに、選択された既知の電界状態で前記電界を印加するステップと、
    前記未知の化学種の単位体の検出および前記選択された既知の電界状態で前記電界を通る前記単位体の通過に関連する、複数の一連の検出データを生成するステップと、
    前記検出データを前記格納されたデータと比較するステップと、
    前記検出データに最も一致する前記格納データ内のデータを検索して、前記未知の化学種を識別するステップとを含む、方法。
  3. 請求項2において、前記未知の化学種と関連する複数の一連の検出データを生成するステップが、既知の電界状態で前記電界を走査し、負および正の走査スペクトルを検出し、これらのスペクトルを前記複数の一連の検出データとして処理するステップを含む、方法。
  4. 請求項2において、識別される複数の単位体は異なる特性挙動の単位体のグループで移動するものであり、さらに、複数の化学種について複数の一連のデータを生成し、このデータから代表的な曲線を生成し、曲線特性を前記格納データ内のデータと一致させて前記サンプル内の複数の化学種から複数の単位体の識別を行うことを含む、方法。
  5. 請求項2において、さらに、前記検出された少なくとも1つの単位体について電界依存性移動度の係数を算出し、前記算出されたアルファ・データを、既知の化学種と関連する前記格納データ内のアルファ・データと比較することによって前記単位体をさらに識別するステップを含む、方法。
  6. 請求項5において、さらに、既知の化学種と関連する前記格納部内の前記アルファ・データと比較された前記検出された単位体を識別するために、前記検出された単位体の前記アルファ・データと関連するアルファ曲線の符号および勾配を算出するステップを含む、方法。
  7. 請求項2において、前記未知の化学種と関連する複数の一連の検出データを生成するステップが、さらに、
    少なくとも2つの異なる一連の電界状態において検出データを収集し、
    それに関連する少なくとも2つの一連の検出データを取得し、
    前記一連の検出データを前記格納データと比較し、
    前記複数の一連の検出データの両方が最も一致する、前記格納データ内の単一の既知の化学種を見い出すことによって前記未知の化学種を識別することを含む、方法。
  8. 請求項1において、識別される前記単位体は、単独で、または同一もしくは異なる特性挙動を取る単位体のグループで移動するものである方法。
  9. 請求項1において、前記単位体はイオンであり、前記電界は高電界状態および低電界状態の間で変化する周期的非対称高強度電界であり、前記システムはイオン・フィルタ・システムである、方法。
  10. 請求項1において、さらに、前記イオン種を断片化するのに十分な強度の励起電界を印加することを含む、方法。
  11. 請求項10において、前記断片化によって正イオンおよび負イオンが生成される、方法。
  12. 請求項11において、さらに、前記補償電圧の範囲全体に渡り前記正イオンおよび負イオンを識別する、方法。
  13. 請求項10において、さらに、イオン化モノマーを生成するために前記電界を変化させる、方法。
  14. 請求項10において、前記電界状態は分散電圧の一定範囲に渡り変化し、前記補償電圧に依存する前記電界依存性挙動の複数の属性を生成する、方法。
  15. 請求項14において、前記属性はピークであり、各ピークが特定のイオンを識別する、方法。
  16. 請求項1において、さらに、化合物の同族化学系列に対してアルファ・パラメータの系統的関数を決定するステップを含む、方法。
  17. 請求項16において、さらに、電界強度が変化する際の、単位体に関する補償電圧の傾向からαの値を導き出すことを含む、方法。
  18. 請求項1において、さらに、移動度装置の構成に依存せず、イオン挙動の作表としてα係数を決定する、方法。
  19. 請求項1において、さらに、プロトン化モノマーおよびプロトン結合ダイマーとして質量識別されたイオンのアルファ・パラメータを決定する、方法。
  20. サンプル内の化合物を識別する方法であって、
    前記化合物を表すイオン源を設け、
    前記イオンを、ドリフト・チャネルを通して移送させ、前記ドリフト・チャネルはそれに組み合わされたイオン・フィルタを有し、
    前記フィルタに高電界無線周波数(RF)電圧を印加し、この高電界が前記チャネル内の高電界強度の発生状態を主として決定し、
    前記フィルタに補償電圧を印加し、主としてこの補償電圧により前記フィルタを通過できる特定の移動度を有するイオンの選択がなされ、
    制御システムによって、前記RF電圧および一定範囲の補償電圧を前記フィルタに印加し、イオン種の高電界イオン移動度特性に従って前記化合物に固有の特性を生成し、
    少なくとも2つの異なるピークRF電圧状態をフィルタに印加して、少なくとも2つの異なる電界状態に対する前記サンプルの反応を観測し、
    前記反応に基づき、既知の化学種の1成分として前記化合物を識別することを含む、方法。
  21. 請求項20において、前記変化するRF電圧状態は周波数である、方法。
  22. 請求項20において、前記変化するRF電圧状態はデューティ・サイクルである、方法。
  23. 請求項20において、前記変化するRF電圧状態はパルス振幅である、方法。
  24. 請求項20において、前記変化するRF電圧状態はパルス形状である、方法。
  25. 請求項21において、前記印加電界の周波数の変化を利用して、反応イオン・ピークを選択的に濾過する、方法。
  26. 請求項20において、さらに、補償電圧対RFピーク電圧の前記測定からα(E)を得るステップを含む、方法。
  27. 請求項20において、さらに、高電界でプラトーを示すヘキサノンからオクタノンへのケトンの挙動を決定することを含む、方法。
  28. 請求項20において、前記粒子は六弗化硫黄(SF6)の分子である、方法。
  29. 請求項28において、さらに、反応イオン・ピークからSF6のピークを分離して検出することを含む、方法。
  30. 粒子を分析する方法であって、
    化合物を表す粒子源を提供し、
    高電界を印加して、前記粒子がドリフト・チャネルを通過するようにし、このドリフト・チャネル内での前記粒子の挙動に従って特定の化学種の粒子を分別し、
    前記ドリフト・チャネルに印加された少なくとも2つの異なる高電界強度について移動度反応属性を決定し、
    前記少なくとも2つの異なる高電界強度状態について、前記複数の反応属性を比較することによって前記粒子を識別することを含む、方法。
  31. 請求項30において、さらに、補償電圧を印加することにより、前記ドリフト・チャネルを完全に通過する、特定の属性を有する粒子を選択することを含む、方法。
  32. 請求項31において、さらに、印加電界および補償電圧の一定範囲に渡り検出された粒子の検出量を測定し、検出量反応を決定することを含む、方法。
  33. 請求項32において、さらに、少なくとも2つの異なる、同時に印加された電界強度についての、前記検出量反応において選択されたピーク特性を比較することを含む、方法。
  34. 請求項30において、さらに
    多様な化合物について、印加電界強度特性に関する移動度依存性を決定し、
    前記ドリフト・チャネル内で観測された移動度挙動に基づいて特定のサンプル化合物の構成成分を識別することを含む、方法。
  35. 請求項34において、さらに、高電界観測曲線に関する移動度依存性を、予測される曲線のライブラリと比較することによって、前記サンプルを識別することを含む、方法
  36. 請求項34において、さらに、移動度依存性の範囲を選択し、この範囲における前記依存性の属性を決定してサンプルを識別することを含む、方法。
  37. 請求項32において、さらに、2つの異なる印加電界電圧について、検出量曲線のピーク位置の差を決定することを含む、方法。
  38. 請求項31において、さらに、2つの異なる印加電界電圧について、検出量曲線のピークの高さの差を決定することを含む、方法。
  39. 請求項30において、前記粒子は帯電イオンであり、前記印加される高電界は高電圧電界である、方法。
  40. 請求項30において、前記印加される高電界は磁界である、方法。
  41. 請求項30において、さらに、化合物の識別は、高印加電圧電界に関する依存性およびイオン移動度に関する依存性を検出することによって決定されることを含む、方法。
  42. 請求項30において、さらに、電圧を印加して、前記ドリフト・チャネルを通過する移動度挙動を制御し、前記印加電圧は、前記ドリフト・チャネル内の前記高電界強度の発生状態を主として決定する高電界無線周波数(RF)電圧と、前記ドリフト・チャネルを通過できる特定移動度を有するイオンの選択機能を主として果たす補償電圧とを含む、方法。
  43. 請求項30において、さらに、一定範囲の補償電圧およびピークRF高電界電圧を印加することによって移動度特性を決定し、RF高電界電圧対ピーク観測補償電圧が印加された移動度曲線を作成することを含む、方法。
  44. 請求項30において、前記識別ステップは、ルックアップ表と、ニューラル・ネットワークと、相関とから成るグループから選択されるデータ比較手法を用いる、方法。
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