本発明は、広義には生物学的に活性化合物に関し、特に、両親媒性である(すなわち親水性の部分と疎水性の部分の両方を有する)、化合物、ペプチド、タンパク質、その断片、類似体、モジュレーターに関する。具体的には、本発明は、ミセル又はミセルのモノマーを用いた診断、治療、化粧品での用途の他、臓器、組織および細胞を保存する用途に関連して、両親媒性のペプチド、タンパク質、その断片、類似体、モジュレーターを単独で又は他の化合物に接合して送達および提供するための改良された方法に関する。また、本発明は、水溶液に不溶性の化合物を送達するための方法も提供するものである。具体的には、本発明によれば、脂質で表面コーティングされた不溶性の又は不溶性に近い結晶化合物で構成される立体的に安定化された結晶生成物の生成方法が得られる。
本発明で特に重要視しているのは、血管作用性腸管ペプチド(VIP)、成長ホルモン放出因子(GRF)、hypocretins、ペプチドヒスチジンイソロイシン(PHI)、ペプチドヒスチジンメチオニン(PHM)、下垂体のアデニルシクラーゼ活性化ポリペプチド(PACAP)、胃抑制ペプチド(GIP)、ヘモデルミン(hemodermin)、成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)、ソーバジンおよびウロテンシン1、セクレチン、グルカゴン、ガラニン、エンドセリン、カルシトニン、α1−プロテイナーゼインヒビター、アンジオテンシンII、副腎皮質刺激ホルモン放出因子、抗菌ペプチドおよびタンパク質全般、表面活性ペプチドおよびタンパク質、α−MSH、アドレノメデュリン、ANF、IGF−1、α2アミリン、オルファニン、オレキシンを含むがこれに限定されるものではないペプチド化合物のファミリーのメンバーである生物学的に活性な両親媒性ペプチドである。特に、本発明は、VIP/GRF又はIR−2ペプチドファミリー(両親媒性ペプチド全般)、タンパク質およびその生物学的に活性な類似体、断片およびモジュレーターのメンバーを含む、改良されたミセル組成物を用いて、VIP/GRF又はIR−2ファミリーのペプチドならびに他の両親媒性で標的組織までペプチドを送達するための改良された治療方法に関する。
VIPは、生物学的作用のプロファイルが広範囲にわたり、複数のシグナル伝達経路を活性化することで知られている、28アミノ酸長の神経ペプチドである。たとえば、Peptides 5(Suppl.1):149〜150(1984)およびPaulおよびEbadi、Neurochem.Int.23:197〜214(1993)を参照のこと。π−ヘリックス構造を持つVIPでは非極性基と極性基とが分離してヘリックスの反対側の面に結合しているが、このような両親媒特性はVIPを無秩序なα−ヘリックスとしてモデル化しても顕著に認められることが、VIPのシッファー・エドマンドソン投影図から明らかになっている(Mussoら、Biochemistry 27:8147〜8181(1988))。Bodanszkyら、Bioorgan.Chem.3:133〜140(1974)には、VIP類似体のヘリックス形成傾向とその生理活性との相関について説明されている。純水中では、VIPのスペクトル特性がランダムコイルのスペクトル特性と一致する。しかしながら、この分子では有機溶媒およびアニオン性脂質によってヘリカル情報が導出される。たとえば、Robinsonら、Biopolymers 21:1217〜1228(1983)、Hamedら、Biopolymers 22:1003〜1021(1983)、Bodanszkyら、Bioorganic Chem.3:133〜140(1974)を参照のこと。
両親媒性ヘリックスを形成できる短鎖ペプチドが脂質二重膜と結合したり脂質二重膜を貫通したりすることは周知である。KaiserおよびKezdy、Ann.Rev.Biophys.Biophysical Chem.15:561〜581(1987)およびSansom、Prog.Biophys.Molec.Biol.55:139〜235(1991)を参照のこと。一例として、DeGradoおよびLear、J.Am.Chem.Soc.107:7684〜7689(1985)に開示されている(LKKLLKL−)のようなモデルペプチドや、WatataおよびGwozdzinski、Chem−Biol.Interactions 82:135〜149(1992)に開示されている26残基のハチ毒ペプチドであるメリチンがあげられる。考えられる結合機序として、極性アミノ酸とリン脂質極性基との間の静電相互作用によって二重層面と平行にペプチドモノマーが配置されることや、疎水性作用によって多少なりとも安定化された無極性の二重層コアにペプチド集合体が挿入されることがあげられる。Sansom、Prog.Biophys.Molec.Biol.55:139〜235(1991)を参照のこと。
VIPはホモペプチドファミリーに属し、同じファミリーの他のメンバーとしては、ペプチドヒスチジンイソロイシン(PHI)、ペプチドヒスチジンメチオニン(PHM)、成長ホルモン放出因子(GRF)、hypocretins、下垂体のアデニルシクラーゼ活性化ポリペプチド(PACAP)、胃抑制ペプチド(GIP)、ヘモデルミン、成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)、ソーバジンおよびウロテンシン1、セクレチンおよびグルカゴンがあげられる。VIP同様に、VIP/GRFペプチドファミリーの他のメンバーならびにその生物学的に活性な類似体は、脂質二重膜を結合できる両親媒性ヘリックスを形成することができる。VIP/GRFペプチドファミリーのメンバーの生物学的作用は細胞表面で発現されるタンパク質受容体や細胞内受容体によって媒介されると考えられており、最近になってカルモジュリンがVIPに対する細胞内受容体である可能性が高いことが示された[Stallwoodら、J.Bio.Chem.267:19617〜19621(1992)およびStallwoodら、FASEB J.7:1054(1993)]。
旋光分散および円二色性スペクトルによってVIPのコンホメーションを研究調査したのはBodanszkyらが最初であった(Bioorgan.Chem.3:133〜140(1974))。彼らはVIPを溶解した溶媒の疎水度次第でVIPの構造が異なることを示した。VIPの水中でのスペクトルから、ほとんど(約80%)はランダムコイル構造であることが明らかになった。しかしながら、トリフルオロエタノール(TFE)またはメタノールなどの有機溶媒を添加すると、たとえ低濃度であったとしても明らかにヘリカル構造に変化していた。著者らは、有機溶媒がペプチドの構造に及ぼす上記のような作用が受容体の状態に合っているため、VIPのヘリカルコンホメーションがその生理活性に必要な「アクティブアーキテクチャ」に相当するのであろうとの見解を打ち出した。これらの初期の研究調査は、VIPならびにそのファミリーメンバーのうちの2つであるセクレチンおよびグルカゴンの水中でのコンホメーション、アニオン性洗剤およびアニオン性脂質(PAおよびホスファチジルグリセロール(PG))のコンホメーションを解析した、Robinsonらによる所見(Biopolymers 21:1217〜1228(1982))と一致していた。彼らは、アルギニル残基、ヒスチジル残基、リシル残基(これらの3種類のペプチドすべてにおいて、その13〜20アミノ酸領域に相当)によって、ヘリックス形成率が高くなることを示した。ここでも両性イオン性脂質および水系溶媒中のVIPに目立って無秩序な構造が見られることから、極性頭部基の電荷がヘリックス形成に重要な役割を果たしているであろうと思われた。40%HFIP/H2O混合物を用いる円二色性(CD)スペクトル解析と1H−NMR解析とを利用して、Fournierらは、有機溶剤の存在下でVIPのセグメント15〜28がα−ヘリックスを形成する(Peptides 5:160〜177(1984))ことを示した。また、Theriaultらは、二次元1H−NMR分光法を利用して40%TFE中での未変性VIPの完全構造解析を実施した(Biopolymers 31:459〜464(1991))。これらの解析の結果は、VIPを25%メタノール/水中にて調査したFryらによって得られたもの(Biochemistry 28:2399〜2409(1989))と同様であった。彼らは、アミノ酸7〜15と19〜27との間の2つのヘリカルセグメントが、分子に易動性を与えるランダムコイルのペプチド鎖部分によって結合されていると説明していた。
最後に、未変性ペプチドは生体移行性が極めて低いため、いくつかのグループがVIPのさらに有効な類似体を潜在的治療薬として開発することに取り組んだ。興味深いことに、どのグループでもVIPの配列を修飾してそのヘリシティと両親媒性を高めた。Bolinと彼の同僚の手によってVIP構造活性関係が徹底的に研究調査された(Fryら、Biochemistry 28:2399〜2409(1989)、Bolinら、Biopolymers 37:57〜66(1995))。これらの結果のうち、アミノ酸残基を特定の形で置換してヘリカル構造を強化することが薬効増大と比例的に関係していた。また、VIPの薬剤活性官能基がペプチド配列全体にわたって複数の結合部位からなるものであることが明らかになった。Mussoらによって、受容体との間で一層強い相互作用を示すVIPのヘリックスベースの類似体も開発された(Biochemistry 27:8174〜8181(1988))。インポテンツの非侵襲治療用(Endocrinology 134:2121〜2125(1994))および神経変性疾患用(Gozesら、J.Pharmacol.Exp.Ther.273:161〜167(1996))に、Gozesらによって薬効の100倍高いステアリル−ノルロイシン−VIP類似体が設計された。脂肪酸部分を加えてアミノ酸を置換するとペプチドの親油性が高まったが、これによって生物膜に対する貫通性が改善されると思われた。
要するに、VIP及びスーパーファミリーの他のメンバーは有機溶媒が与えられると疎水性環境でヘリカルコンホメーションをとり、環境の疎水性が強まるにつれてVIPのヘリカル構造も増すことが明らかになっている。このペプチドは塩基性かつ疎水性の残基を多く含むものであるが、その中央部分に見られるヘリカルモチーフによって、受容体との結合を容易にして膜脂質との直接的な相互作用を促進し、生理活性の増加を引き起こし得る両親媒性構造が形成される。さらに、タンパク質分解が特に発生しやすい特定の部位を保護することで、VIPのヘリカル構造が安定性を高める一助となっている可能性もある。
Gozesらが述べている(Mol.Neurobiol.3:201〜236(1989))ように、免疫蛍光法およびラジオイムノアッセイ法によって、VIPの中枢神経系および末梢神経系での分布が広範囲にわたると同時に選択的あることが明らかになった。脳ではVIPを豊富に含むニューロンの密度が視床下部(特に視交叉上核および室傍核ならびに大脳皮質)で最大になる。末梢血よりも下垂体門脈血の方がVIP濃度が高いことから、このペプチドが視床下部によって分泌され、腺下垂体に輸送されることが分かる。末梢神経系では、多くの臓器で、血管、非血管平滑筋、腺胞および導管をなすVIP免疫陽性神経が、線維および終末に認められる。コリン作動性ニューロンでVIPとアセチルコリンが共存していることも、さまざまな文献に記載されている。VIP神経のなかには、自律神経系の構成要素であることが最近になって認められたものもある。さらに、Mullerら(Mol.Neurobiol. 10:115〜134(1995))によって、血小板、肥満細胞、皮膚細胞、好中球、網膜アマクリン細胞などの特定の細胞群はVIPを合成および放出できるであろうことが示された。
VIPの生理作用は、特定の細胞受容体に対する結合によって主に生じるものである。Hirataらは、ラット大動脈由来の培養血管平滑筋細胞に見られ、β−アドレナリン作動性受容体とは異なる、VIPに対する2つの特定の受容体結合部位(一方が低親和度で他方は高親和度である)について述べた(Biochem.Biophys.Res.Comm.132:1079〜1087(1985))。分子的な面からみると、cDNAのクローニング後に2種類の多価VIP受容体が識別された。第1の受容体であるVIP1受容体は、PACAP II受容体とも呼ばれるセクレチン受容体と類似のものであり、腸、肺、肝臓、筋肉細胞、卵巣の他、さまざまな脳領域で発現される(Sreedharanら、Biochem.Biophys.Res.Comm.203:141〜148(1994))。第2の受容体であるVIP2受容体は、GRF結合部位に近いものであり、中枢神経系にその分布がはっきりと認められる(Lutzら、FEBS Let.334:3〜8(1993))。最近の研究調査から、VIPの作用が受容体によるものではない可能性があることも分かっている(Sejourneら、Am.J.Physiol.273:R287〜R292(1997))。
何年にもわたって研究調査されてきているが、VIPの細胞内シグナル伝達カスケードのほとんどはいまだ解明されないままである。多くの細胞で観察される最も一般的な細胞作用が、アデニルシクラーゼの刺激による細胞内での環状アデノシン一リン酸(cAMP)の産生増大である。cAMP誘導経路の以後のステップは依然として仮説の域を全く出ていない。逆に、cAMP非依存性のシグナル形質導入カスケードの存在を明らかにしている観察結果もいくつかある。Sreedharanらは、VIP1受容体が、2つの異なる経路すなわちアデニルシクラーゼの活性化と細胞内Ca2+の増加をひとつの細胞型で誘導することを最近になって見出した(Biochem.Biophys.Res.Comm.203:141〜148(1994))。副腎髄質および頚神経節がVIPによって刺激されると、イノシトール1,4,5三リン酸(IP3)および細胞内Ca2+の生成量が増えることが明らかになった(Malhotraら、J.Biol.Chem.263:2123〜2126(1988))。さらに、内在化されたVIPは核受容体と結合してタンパク質キナーゼCを賦活できる可能性も示された(Omaryら、Science 238:1578〜1580(1987)、Zornら、Biochem.Pharmacol.40:2689〜2694(1990))。
VIPの多彩な分布は広範囲にわたる生理活性スペクトルを生んでいることと関係があり、次第に増えていく証拠からみて、VIPは多くの臓器で重要なさまざまな機能の調節に重要な役割を果たしているのではないかと考えられる。VIPの生理作用は、心臓血管系、呼吸器系、生殖系、消化系、免疫系、中枢神経系ならびに代謝機能、内分泌機能および神経内分泌機能で報告されている(論評については、Trends Endocrimol.Metab.2:107〜112(1991)などを参照のこと)。多くの場合、VIPは神経伝達物質または神経修飾物質として作用し、小さな集合体で局所循環系に放出される。血管緊張の調節に関連のある、大脳血管、冠状動脈血管、末梢血管、肺血管の血管拡張;胃腸平滑筋、子宮平滑筋、気管支平滑筋の弛緩;腸、呼吸器、膵上皮による外分泌液、水およびアニオン;男性および女性の活性と応答の刺激;神経内分泌機能の放出および調節(レニン放出、メラトニン分泌);免疫系の阻害(血小板凝集の阻害);神経細胞の刺激と保護が、いずれもVIPによって媒介または促進されると考えられている機能である(たとえば、Trends Endocrimol.Metab.2:107〜112(1991)、Paulら、Neurochem.Int.23:197〜214(1993)などを参照のこと)。
血管平滑筋細胞成長及び小細胞肺臓癌腫(SCLC)(Saidら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,95(24):14373−8(1998))の阻害、培養したヒトケラチノサイトの増殖、細胞の分化と個体発生に関与する神経栄養因子および成長因子の放出、抗酸化特性などの新たなVIP機能が最近になって報告されたが、依然としてさらに研究調査を行う必要がある(Mullerら、Mol.Neurobiol.10:115〜134(1995)、たとえば、Trends Endocrinol.Metab.2:107〜112(1991))。
今日のヒトの疾患のなかには、VIPの放出不足と関連していることが知られているものがある。VIP欠乏は、嚢胞性線維症、糖尿病性インポテンツ、ハーシュスプルング病の先天性巨大結腸症、食道アカラジアなどのいくつかの疾患の病因と関連している。さらに、VIPは人間で気道弛緩を引き起こすことが知られているため、VIP不足は喘息気道における気管支過敏の原因となり得る。また、喘息患者の肺組織にはVIP神経の選択的な欠如が認められた(Ollerenshawら、N.Engl.J.Med.320:1244〜1248(1989))。最後に、Avidorらによって、本態性高血圧自然発症ラットで脳のVIP遺伝子発現の増加が観察され、この疾患の病理生理と関連していると考えられた(Brain Res.503:304〜307(1989))。
一方、VIPの過剰放出が病因に関連している疾患はほとんどない。その病理症候群のひとつが所謂膵性コレラ(VIPOMA)すなわち、水様性下痢−低K血症−無酸症状態である(Krejs、Ann.N.Y.Acad.Sci.527:501〜507(1988))。特定の腫瘍、特に膵臓腫瘍、気管支原性腫瘍、神経原性腫瘍は、VIPの循環レベルの上昇と関連している。さらに、VIPを含んで、神経ペプチドの増加レベルが自閉症である子供の新生児の血液で見つかることを示唆した(Nelsonら、American Journal of Epidemiology 151(11Supplement):pS3 June 12000)。
VIPの多数の生理作用がゆえに、VIPを医薬品として使用することに対する感心は次第に高まっている。VIPの開発内容で治療効果が上がる可能性があるものとして、局所血流が阻害される疾患の治療があげられる。これには、全身の血管過負荷の低減による高血圧治療、左心不全、鬱血性心不全、冠状動脈または末梢血管での虚血の治療を含む。人間に10時間VIPを注入すると、総末梢抵抗が30%小さくなり、前腕血流が270%増加することが明らかになった(Fraseら、Am.J.Cardiol.60:1356〜1361(1987))。さらに、同様にAm.J.Med.Sci.304:319〜333(1992)には強皮症患者では皮膚のVIP−免疫陽性神経と血漿VIP濃度が低いことが分かったとあるため、VIPを用いての治療によってこの障害状態から回復する可能性がある。VIPを投与することで治療できるであろう他の疾患としては、喘息の気管支痙攣の治療があげられる。VIPは喘息患者で気管支収縮に対する保護に役立ち、気道平滑筋の弛緩薬として作用することが明らかになっている(Moriceら、Lancet 26 2(8361):1225〜1227(1983))。その抗炎症特性によって喘息での治療効果をさらに高められる可能性もある(たとえば、Biomed.Res.13(Suppl.2):257〜262(1992))。また、組織傷害の予防および/または軽減にもVIPの投与を利用できる。このペプチドは、ヒト免疫不全ウイルスの外部エンベロープタンパク質gp120によって生じる神経細胞死をインビトロにて妨害すると説明されている(Gozesら、Mol.Neurobiol.3:201〜236(1989)、Hokfelt、Neuron. 7:867〜879(1991))が、これはAIDS痴呆に対する潜在的な治療法ならびにアルツハイマー病の治療につながる可能性がある。同様に、酸化ストレスを含むさまざまな成因によって引き起こされる感染性の急性肺傷害がVIPの存在によって軽減した(Berishaら、Am.J.Physiol.259:L151〜L155(1990))。VIPを特定の肺麻痺液に添加して使用すると移植前のラット肺保存が改善されることが明らかになった(Alessandriniら、Transplantation 56:964〜973(1993))。
VIPのインビボ投与を制限している主な要因のひとつが、主にタンパク質分解、加水分解および/またはこのペプチドのとるコンホメーションの多様性による標的組織での生体移行性の低さであった。VIP単独および/またはVIP−カルモジュリン混合物の細胞内送達によって、このペプチドの細胞表面結合に必要な要件をバイパスし、これによってペプチドの生物学的作用を高められるのではないかと考えられてきた。リポソーム又はミセルの脂質二重膜は細胞のプラズマ膜と融合し、捕捉した内容物を細胞内区画まで送達することが知られているため、このペプチドがリポソーム又はミセル内およびリポソーム又はミセル表面で発現されれば細胞内送達が可能になるかもしれない。
リポソームとはリン脂質で構成された非常に小さな球状構造物であり、1960年代に入って初めて発見された(Banghamら、J.Mol.Biol.13:238(1965))。水性媒体中では、両親媒性のリン脂質分子が親水性相互作用および疎水性相互作用の結果として二重層として閉じた形状で本態的に自己集合する。このようにして形成される小胞はリポソームと呼ばれ、生物学的に活性な親水性分子および薬物に対するインビボでの潜在的なキャリアとなり得る特性のひとつとして、懸濁された水性媒体の内部に封入される。親油性の薬剤を輸送し、リポソーム膜の中に取り込むことも可能である。しかしながら、リポソームは細網内皮系(RES)に急速に捕獲されてしまうため、医療用途でリポソームを活用して成果が得られるのは非常に限られた場合であった。リポソームのRESによる貪食を低減しようと尽力したところ、1980年代後半になって、循環半減期が大幅に延長されたリポソーム(立体的に安定化されたリポソーム)(sterically stabilized liposome;SSL)が開発され、リポソームの薬物送達系としての開発に再び希望をなげかけた。独立した2つの研究所で、赤血球細胞のバイオロジーを研究調査している過程で、赤血球膜上にシアル酸が存在することが滞留時間を極めて長くしている一因であることつきとめた。特に、ガングリオシドGM1などのシアル酸を含む糖脂質をホスファチジルコリン(PC):コレステロール(Chol)リポソームに取り込むと、小胞の滞留時間が効率よく延長された(Allenら、FEBS Letter 223:42〜46(1987)、1990年4月4日付けでAllenらに付与された、米国特許第4,920,016号(1987年12月18日に第132,136号として出願、第24頁)、Gabizonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 8:6949(1988))。これらの初期の頃の結果から、特に化学療法の分野でリポソームを薬剤キャリアとして用いることへの新たな展望が得られた。というのは、半減期が延長されることは、マウスに移植した腫瘍による取り込み量が多くなることと十分に相関していたためである(Gabizonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 8:6949(1988))。
1990年代には、ポリエチレングリコール(PEG)の脂質誘導体を含有する第二世代のSSLについて、さまざまな研究調査によってほぼ同時期に開発がなされ、さらなる改良へとつながった(Klibanovら、FEBS Letter 268(1):235〜237(1990)、Allenら、Biochim.Biophys.Acta 1066:29〜36(1991))。Klibanovらは、PC/Chol/PEG−PE(1:1:0.15)小胞について、マウスでのPC/Chol(1:1)リポソームの血中半減期が30分vs.5時間であることを示した(FEBS Letter 268(1):235〜237(1990))。この他にも、複合リン脂質PEG−ジ−ステロイル−ホスファチジルエタノールアミン(DSPE)の調製法が迅速かつ単純であることが報告され(Klibanovら、FEBS Letter 268(1):235〜237(1990)、Allenら、Biochim.Biophys.Acta 1066:29〜36(1991))、PEGは製剤としての用途ですでに承認を受けた(PEG−ADA、Rhinaris(登録商標))。
本発明では、タンパク質の水溶性ポリマーとの接合によって循環タンパク質の半減期が延長されるという観察結果に注目している[Nucciら、Adv.Drug Del.Rev.6:133〜151(1991)、Woodleら、Proc.Intern.Symp.Control.Rel.Bioact.Mater.17:77〜78(1990)]。この観察結果から、循環によるリポソームの急速な排除の発生を有意に最低限に抑える改良された薬物送達系として、立体的に安定化されたリポソーム(SSL)(「PEG−リポソーム」としても知られている)が開発された[LasicおよびMartin、Stealth Liposomes、CRC Press,Inc.、Boca Raton、FL(1995)]。SSLは、ポリエチレングリコール(PEG)が好ましいポリマーでコーティングされたリポソームであり、リン脂質のうちの1つと共有結合的に接合され、その小胞の二重層の外には親水性の被膜が形成されている。このような立体障壁によって、オプソニンによる認識を遅らせて従来のリポソームよりもかなり長い時間SSLを循環系にとどめることができるようになり[LasicおよびMartin、Stealth Liposomes、CRC Press,Inc.、Boca Raton、FL(1995)、Woodleら、Biochem.Biophys.Acta 1105:193〜200(1992)、Litzingerら、Biochem.Biophys.Acta 1190:99〜107(1994)、Bedu Addoら、Pharm.Res.13:718〜724(1996)]、いくつかの化学治療薬および抗感染薬で封入された薬剤の薬効が高まる[LasicおよびMartin、Stealth Liposomes、CRC Press,Inc.、Boca Raton、FL(1995)]のである。この分野での研究調査から、さまざまな要因がSSLの循環半減期に影響するため、平均小胞径は200nm未満で、PEGの分子量約2,000Da、濃度5%(9〜12)とするのが理想であることが明らかになっている[LasicおよびMartin、Stealth Liposomes、CRC Press,Inc.、Boca Raton、FL(1995)、Woodleら、Biochem.Biophys.Acta 1105:193〜200(1992)、Litzingerら、Biochem.Biophys.Acta 1190:99〜107(1994)、Bedu Addoら、Pharm.Res.13:718〜724(1996)]。
SSLがマクロファージを回避して血液中に長時間滞留する機序には、結合したPEG分子によるリポソーム周囲への「立体障壁」の形成が関与していると考えられている。Torchilinらは、Stealth Liposomes、D.LasicおよびF.Martin(編)、CRC Press、Boca Raton、FL、第51〜62頁(1995)にて、PEGがリポソームのオプソニン化を妨害する能力は、比較的低いポリマー濃度であっても小胞表面への親水性被膜の形成を伴う、PEGの溶媒中での挙動によって決まるのだと主張した。この負の親水性コーティングが保護シールドとして作用するため、正に荷電した脂質表面に結合することの多いオプソニンがリポソームと結合するのが遅れるのであろうと思われる。
リポソームのサイズ、PEG分子量、鎖長および濃度の選択の仕方と脂質組成物の選択の仕方によって、立体的に安定化されたリポソームの滞留時間を制御することができる。Maruyamaらは、一定のサイズ(180〜200nm)および組成(DSPC/Chol(1:1)中6%DSPE−PEG)でPEG分子量の異なる(1,000Da、2,000Da、5,000Da、12,000Da)SSLを試験した(Chem.Pharm.Bull.39:1620〜1622(1991))。マウスでは、6時間後に注射用量の47.1%が依然として血中に滞留していたPEG2,000-リポソームが最も長く持続する組成であるように思われた。Klibanovらは、直径200nmのPC/Chol/PEG−PE(10:5:1)押出リポソームを用いて、PEG750、PEG2,000およびPEG5,000で、マウスにて同様の研究調査を行った(FEBS Letter 268(1):235〜237(1990))。著者らはリポソーム表面に生成される「立体障壁の度合い」を評価し、この度合いがPEGの鎖長と直接相関した濃度依存性のものであるという結論に至った。また、SSLの延長はPEG鎖長に直接比例し、これ自体が立体障壁に対応することを示唆した。最後に、他のグループ(Allenら、Biochim.Biophys.Acta 1066:29〜36(1991)、Woodleら、Biochim.Biophys.Acta 1105:193〜200(1992))では、PEG鎖長を2,000Daから5,000Daに伸長してもRESの取り込みに対してさらに抑制作用が働くわけではないことを示す、多少なりとも相反する結果を見出した。分子量1,900、2,000および5,000のPEGは近年、さまざまな用途に利用されている。
Huangのグループ(Klibanovら、Biochim.Biophys.Acta 1062:142〜148(1991)、Litzingerら、Biochim.Biophys.Acta 1190:99〜107(1994))は、生物分布の研究調査においてリポソームのサイズがいかに重要かを指摘し、小さな小胞(<100nm)は肝臓に取り込まれるが、大きめのもの(300nm<直径<500nm)になると脾臓の特に赤脾髄および辺縁帯に蓄積されるという観察結果を得た。特に、脾臓の主な機能は老化赤血球や損傷赤血球を濾過することであり、リポソームの取り込みにもこれと同じ濾過の機序が利用され、次いで脾臓のマクロファージによるエンドサイトーシスが起こるように見えた。しかしながら、このような取り込みが起こる理由は明らかになっていない。彼らの研究調査から、最適な滞留時間は直径150〜200nmのSSLを用いる場合に得られることが分かった。Ghoshらはこの成果を確認し、SSLの延長作用が得られるのは直径70〜200nmという狭い範囲のサイズのときに限られることを示した(Stealth Liposomes、D.LasicおよびF.Martin(編)、CRC Press、Boca Raton、FL、第13〜24頁(1995))。SSLの用途のほとんどは、リポソームの調製方法にサイズを低減する工程を含むものであるように思われる。
Klibanovらは脂質組成物がSSLの血中滞留時間に対して及ぼす影響について研究調査し、ホスファチジルセリン(PS)を添加した場合以外は、SSLが異なっても半減期はいずれも極めて近いことを見出した(Biochim.Biophys.Acta 1062:142〜148(1991))。Woodleらも脂質組成の異なるSSLを用いてマウスおよびラットで生物分布の研究調査を行った(Biochim.Biophys.Acta 1105:193〜200(1992))。彼らも同様に、PCの水素化量の増加(すなわちバルク脂質の転移温度の上昇)、アニオン性脂質であるPGの添加、コレステロール濃度の違いは、延長作用に何ら影響しないことを示した。リン脂質の相転移、コレステロール含量または中性/負の電荷とは無関係に、血中クリアランスについては首尾一貫して半減期で約15時間が観察された。
それにもかかわらず、最近になって、Bedu−Addoらが、延長後の滞留時間に適したほとんどの組成では、短鎖PEG−PEの濃度を低く抑えて(<10%)コレステロールを最低でも30mol%含有すべきであると主張し、リポソームを安定化させる上でのコレステロールの役割に光明を投じた(Pharm.Res.13:718〜724(1996))。著者らは、蛍光エネルギー移動法を用いてインビトロでの表面保護効率を調査した。コレステロールを添加すると、二重層の結合強度の増加により表面保護性が改善された。これによって、リポソームの二重層にPEG−PE量の少ない「むき出しの点」が形成されにくくなり、相分離や血中リポタンパク質との間の脂質交換が防止される。しかしながら、インビボでは、長時間にわたって維持されるSSL循環のほとんどがPEGコーティングに左右され、リポソームの二重層の組成に依存する面は少ないのではないかと思われる。
わずか5%のPEG−PEで小胞に最適な立体障壁作用が得られるとの報告がさまざまな研究者からなされた(Klibanovら、Biochim.Biophys.Acta 1062:142〜148(1991)、Woodleら、Biochim.Biophys.Acta 1105:193〜200(1992)、McIntoshら、Stealth Liposomes、D.LasicおよびF.Martin(編)、CRC Press、Boca Raton、FL、第63〜71頁(1995))。インビトロでの研究調査で十分な結果を得るためのPEGの最大値は10mol%であり、これより高い濃度になるとPEG−PEのミセルが自然に形成されてしまうことが、極めて最近になって報告された(Bedu−Addoら、Pharm.Res.13:718〜724(1996))。
また、本願では、立体的に安定化されたリポソームの改良ならびにこれを用いた音響診断法を含む治療方法および診断方法とに関するPCT出願第PCT/US97/05161号の開示内容にも注目している。
本発明では「ミセル」と呼ばれる分子の集合体に関して得られた成果にも注目している。ミセルは、両親媒性化合物によって水中で自発的に形成されるコロイド状の集合体のうち、臨界溶質濃度すなわち臨界ミセル濃度(CMC)を上回り、溶液温度が臨界ミセル温度(CMT)よりも高いものとして定義される。ミセルを構成している分子は、未会合の分子との間で急速に動的平衡状態になる。濃度がCMCよりも高くなるとミセルのサイズが変わらないままミセルの数だけが増えるが、場合によっては、リン脂質混合ミセルで球状のミセルが大きくなって棒状ミセルになることもある(Careyら、Arch.Inter Med.130:506〜527(1972)、Hjelm,Jr.ら、J.Phys.Chem.96(21):8653〜8661(1992))。CMCは温度依存性が高く、特定の濃度では広い温度範囲でモノマーからミセルへの変化が徐々に起こる(Almgrenら、Colloid Polym.Sci.273:2〜15(1995))。温度が上昇すると集合体の数は増えるが、流体力学的半径は一定のままである(Nivaggiollら、Langmuir.11(3):730〜737(1995)、Alexandridisら、Langmuir.11:1468〜1476(1995))。一般に、温度の上昇は疎水性相互作用の増加につながり、イオンの反発力が強くなって水の比誘電率が小さくなる。両親媒性化合物のCMCを判定するための方法にはさまざまなものがある(表面張力測定値による方法、水不溶性染料または蛍光プローブの可溶化による方法、導電率測定値による方法、光の散乱による方法など)。好ましい方法によれば、表面張力測定値を用いてPEG−DSPEミセルのCMCを室温にて判定することができる。
薬学技術の多くの分野で、界面活性剤ミセルがアジュバントおよび薬物キャリア系として利用されている。ミセルは生体移行性の亢進または薬物による副作用の低減の目的で用いられてきた(Trubetskoyら、Advan.Drug Deliv.Reviews 16:311〜320(1995))。また、小さなサイズのミセルは血液脳関門を含む膜を通しての輸送に重要な役割を果たしている(Muranushiら、Chemistry and Physics of Lipids 28:269〜279(1981)、Saletuら、Int.Clin.Psychopharmacol.3:287〜323(1988))。界面活性剤ミセルは水性媒体中において熱力学的に不安定であり、希釈時に解離される。Yokoyamaらは、水溶液中で一層安定したポリマーミセルを形成することが知られているポリエチレングリコール(PEG)などの両親媒性ポリマーを提案した(Makromol Chem.Rapid Commun.8:431〜435(1987))。ポリマーミセルには、小さなサイズであっても生理学的なバリアの貫通を制御できる、インビボで半減期が延長される、特定の組織に対してミセルを標的化できるなど、など利点が多い。
PEと接合されたPEGなどのポリマー接合脂質ミセルに関する研究調査が行われるようになったのは、ごく最近になってからである。このような研究調査のひとつに、ポリエチレンオキシド(PEO)をPEと接合させて水性媒体に溶解し、ミセルを形成するものがある。Trubetskoyらによってなされた研究調査(Acad.Radiol.3:232〜238(1996))では、PEO−PE接合脂質を用いて、核磁気共鳴撮影(MRI)トポグラフィを用いる経皮リンパ管造影用の造影剤としてインジウム−IIIキレートおよびガドリニウムキレートを封入している。この研究調査では、PEO−PEミセルは両親媒性の薬剤を取り込み、RESを回避して薬剤の作用時間をインビボにて延長することができ、滞留時間を延長することができるのだという結論に至った。
両親媒性ミセルの安定性は、ファンデルワールス相互作用の強度によって左右される。ミセル表面に存在するポリマーがマクロファージの疎水性に対する親水層の反発作用による立体保護の一助となるため、細網内皮系(RES)による取り込み量が少なくなる。さらに、ポリマーが持つ負の電荷によってインビボにて反発的な立体作用が発生し、RESによる取り込みを容易にするプラズマタンパク質であるオプソニンの結合が妨害される(Trubetskoyら、Proceed.Intern.Symp.Control.Rel.Bioact.Mater.22:452〜453(1995))。このように、インビボでのリン脂質ミセルの立体安定化は、インビボ環境に対するポリマーの極性相互作用および静電相互作用によって達成されるのである。
立体安定化されたリン脂質ミセル(SSM)を形成するためには、疎水部と親水部の量が正しい最適な両親媒性化合物が必要である。ポリマーの分子量および鎖長、サイズ、脂質濃度、ポリマー濃度などの要因が、最適なミセル組成を得る上で極めて重要な役割を果たす場合がある。しかしながら、現在までのところ、最適な組成および活性を得るためのパラメータを評価するリン脂質ミセルについての研究調査は行われていなかった。
一方、ブロックコポリマー、両親媒性ポリマー、ミセルに関する研究調査は、数多く行われてきた。Nivaggioliらは、一定の温度および濃度で、数種類のプルロニックコポリマー(PEO−PPO−PEO)のブロックコポリマーミセルを試験した(Langmuir.11(3):730〜737(1995))。著者らは、コポリマーの分子量が増加すると流体力学的なサイズが大きくなることを見出したため、疎水性コアのサイズも大きくなるのではないかと考えた。このように、分子量および鎖長に応じてミセルのサイズが大きくなると、RESによる取り込み量も多くなると思われる。したがって、高い分子量および鎖長で滞留時間が短くなり、よってSSMの半減期も短くなる。全体として、著者らは、SSMの安定性を得るにはPEOが最も有望なコポリマーであることを見出した。さらに、Careyと同僚らは、ポリマー濃度がCMCを超えて大幅に上昇すると、棒状ミセルが形成されて溶液の粘度が増すことを突き止めた(Careyら、Arch.Inter Med.130:506〜527(1972)、Almgrenら、Colloid Polym.Sci.273:2〜15(1995))。したがって、ミセルが細長くなることでミセルの疎水性が高まり、さらに多くの非極性の薬物を封入できる可能性がある。
これらのブロックコポリマーすなわち両親媒性化合物から、リン脂質ミセル安定性の組成と活性を最適化するパラメータについて研究調査するのは極めて適切なことであり、将来的に検討していくべきものであると判断することができる。
SSMを薬物送達系として利用することは、特に治療薬および診断薬としての極めて新しい用途である。Trubetskoyらが指摘した(Proceed Intern.Symp.Control.Tel.Bioact.Mater.21:452〜453(1995))ように、ミセル薬物が形成されることで、考え得るほとんどすべての薬物投与経路が生体移行性の増大または副作用の低減という点で何らかの利益を得ているのである。サイズの小さなミセル組成物は血液脳関門を貫通することができるため、アルツハイマー病などのCNS疾患を治療するための理想的なキャリアとなる。最近になって、SSMはMRI法およびSTM法を用いる診断用の薬剤として利用されてきている(Trubetskoyら、Proceed.Intern.Symp.Control.Test.Bioact.Mater.、22:452〜453(1995)、Zareieら、Collids and Suraces A: Physiocochemical and Engineering Aspects.112:19〜24(1996))。いずれの場合もSSMは染料または常磁性薬剤のいずれかを含む混和物(incorporation)であり、これを非経口投与および可視化していた。いずれの場合も、SSMの半減期は少なくとも2時間であった。
また、本発明では、血管作用性腸管ペプチド類似体を含む生理活性ペプチドを送達するためのサブミクロンエマルジョンに関する、Friedmanらによる米国特許第5,514,670号の開示内容にも注目している。サブミクロン粒子は、加重平均値から求めた直径が10〜600nm、より好ましくは30〜500nm、最も好ましくは300nmであると言われている。
さらに、本発明では、体内の至る所に見出され、多くの機能を有する、17kdの遍在タンパク質であるカルモジュリン(CaM)に注目している。カルモジュリンは主に調節タンパク質として機能し、カルシウムイオンに対するセンサとして作用する。カルシウムイオン(Ca+2)がカルモジュリンの4カ所の結合部位に結合するとα−ヘリックスが形成されるとともに、コンホメーションに変化が生じてカルモジュリンは不活性型から活性型へと変わる。次に、活性化されたカルモジュリンが細胞内の多くの酵素やタンパク質と結合され、その活性を変えていくことになる。タンパク質の疎水性の結合部位はCaMの球状構造内に埋没しているが、CaMとCa+2イオンおよび/または膜リン脂質が相互作用すると埋没した結合部位が露出する(Chibaら、Life Sciences 47:953〜960(1990)、Damrongehaiら、Bioconjugate Chem.6:264〜268(1995))。Bolinは、VIPがカルモジュリンに対するCa+2結合の潜在的な賦活薬であることを見出し、VIPのCaMとの相互作用と特定の細胞調節活性との間に何らかの相関があるのではないかと考えた(Neurochem.Int.23:197〜214(1993))。
Paulらはまた、内部移行したVIPはカルモジュリン(CaM)を直接結合でき、ホスホジエステラーゼ依存性ならびにカルモジュリン依存性のミオシン軽鎖キナーゼ活性がいずれも阻害されると報告した(Neurochem.Int.23:197〜214(1993))。この観察結果はVIP−CaM複合体の機能的な役割(Stallwoodら、J.Biol.Chem.267:19617〜19621(1992)、Shiragaら、Biochem.J.300:901〜905(1994))を裏付けるものであるため、多種多様なシグナル伝達酵素の調節に必要な多機能タンパク質であるカルモジュリンがVIPの細胞内受容体である可能性が考えられる(Paulら、Neurochem.Int.23:197〜214(1993))。したがって、VIPがCaMとの会合によってシグナル形質導入を調節できる可能性がある。さらに、CaMも細胞外液および脳脊髄液に存在し、細胞によって積極的に分泌されることが明らかになっている(Paulら、Neurochem.Int.23:197〜214(1993))ため、VIP−CaM複合体によってプロテアーゼによる消化からペプチドを保護できる可能性がある。Ca+2イオンと脂質はペプチド−CaM相互作用に影響することが知られている。CaMによるVIPとCa+2との結合は、受容体に対するカルシウムイオン結合がVIPのCaMに対する結合を容易にしたり、あるいはその逆であったりする点で、協同的なものである。ホスホリパーゼ治療を用いることで、無傷の膜においてVIP結合が阻害され、VIP結合タンパク質画分の可溶化によって結合が調節されることが明らかになっている(Paulら、Ann.N.Y.Acad.Sci.527:282〜295(1988))。このため、VIP−CaM結合によってどのような生化学的な結果が得られるかは、CaM結合部位の同一性とVIP−CaM結合によって引き起こされるコンホメーションの変化とに左右される。
したがって、従来技術においては、特に種の疾病状態の治療において、生理活性分子を治療および診断目的で投与するためにミセル技術を使用する方法をさらに改善する必要性がある。具体的には、従来技術においては、さらに長期間にわたって持続する有効な治療効果を達成すべく、リン脂質に関連のあるVIP/GRFペプチドファミリーのメンバーを含むがこれに限定されるものではない両親媒性ペプチドを投与するための改良された方法に需要がある。
本発明は、ミセルと会合状態にある1種またはそれ以上の生物学的に活性な両親媒性化合物を含む生物学的に活性なミセル生成物を調製するための改良された方法を提供するものである。本願明細書において使用する化合物とは、ペプチド、タンパク質、酵素全般を包含し、さらには、これらの断片、類似体、モジュレーターも包含する。ポリペプチドについて見ると、本発明はL体とD体の両方を使用することを企図したものである。本発明の化合物がシスとトランスの両方のコンホメーションで存在する場合、本発明ではいずれか一方の形態のみまたは両方の形態の組み合わせを用いることを理解されたい。本発明のミセル製剤は、関連するペプチドの生物学的作用の有効性および持続時間を改善する方法で、生物学的に活性なペプチドの生理活性を送達および増強する。生物学的作用の有効性が高まってその持続時間が長くなるのは、少なくともある程度は、化合物が活性型のコンホメーションを達成するか、あるいは、水性環境中での化合物のコンホメーションより活性の高いコンホメーションを達成してこれが維持されるような方法で、化合物とミセルとが相互作用することによるものであると考えられている。したがって、本発明は、細網内皮系による取り込み、不活性型のコンホメーションでの化合物の分解または化合物の送達などであるがこれに限定されるものではない、従来のリポソーム製剤に関連した問題を解決するものである。本発明の一態様によれば、ポリエチレングリコール(PEG)をDSPEと共有結合的に接合してポリマーミセルの形成に利用し、これをVIPに受動的に含有させる。PEG−DSPEは、PEGポリマーによって形成される親水性の「殻」で囲まれたジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)脂肪酸鎖からなる疎水性コアを有するミセルを形成する。
本発明の一態様によれば、ミセルと会合状態にある1種またはそれ以上の生物学的に活性な両親媒性化合物を含む生物学的に活性なミセル生成物を調製するための方法が得られる。前記方法は、a)水溶性ポリマーと共有結合した少なくとも1種の脂質成分を含む脂質1種またはそれ以上の配合物を混合する工程と、b)前記脂質の配合物から立体的に安定化されたミセルを形成する工程と、c)水溶液中の化合物よりも生物学的活性の高い活性型のコンホメーションで、1種またはそれ以上の生物学的に活性な両親媒性化合物と工程b)で得られる前記ミセルとが会合するような条件下にて、工程b)で得られるミセルを前記化合物と共にインキュベートする工程と、を含む。本発明のさらに他の態様によれば、生物学的に活性な両親媒性化合物と脂質とを共沈させてミセルを形成し、インキュベーションを必要とせずに生物学的に活性なミセル生成物を生成することができる。具体的には、ミセルと会合状態にある1種またはそれ以上の生物学的に活性な両親媒性化合物を含む生物学的に活性なミセル生成物を調製するための方法が得られる。前記方法は、a)生物学的に活性な両親媒性化合物と共に、水溶性ポリマーと共有結合した少なくとも1種の脂質成分を含む脂質1種またはそれ以上を混合する工程と、b)活性型のコンホメーションで前記化合物と前記ミセルとが会合するような条件下にて、工程(a)で得られる混合物から立体的に安定化されたミセルを形成する工程と、を含む。
本発明の一態様として、ミセルは、水溶性ポリマーに共有結合した少なくとも1種の脂質成分を含む脂質配合物から生成される立体的に安定化されたミセル(SSM)である。このポリマー結合リン脂質がミセル形成成分である。他の脂質が実際にこのミセルに可溶化されて混合ミセルが形成されている。水溶性ポリマーは、好ましくはポリエチレングリコール(PEG)であり、この水溶性ポリマーによって脂質の可溶性を高めて水性媒体中で小胞ではなくミセルが形成されている。また、水溶性ポリマーは、上記のようにして得られるミセルを細網内皮系の成分に取り込ませることなく立体的に安定化させるよう作用する。
もう1つの態様では、本発明は、1種またはそれ以上の生物学的に活性な両親媒性化合物を含む生物学的に活性な立体的に安定化されたミセル生成物を調製するための方法であって、a)水溶性ポリマーと接合された1種またはそれ以上の脂質と水溶液との混合物を調製する工程と、b)立体的に安定化されたミセルを形成する工程と、c)前記ミセルを1種またはそれ以上の両親媒性化合物と混合する工程と、d)前記ミセルとの会合時に、水溶液中の化合物と比較して両親媒性化合物が一層望ましい生物学的に活性なコンホメーションをとると仮定される条件下で、前記ミセルおよび前記両親媒性化合物をインキュベートする工程と、を含む方法を提供するものである。
別の態様では、本発明は、1種またはそれ以上の生物学的に活性な両親媒性化合物を含む生物学的に活性な立体的に安定化されたミセル生成物を調製するための方法であって、a)水溶性ポリマーと接合された1種またはそれ以上の脂質を有機溶媒に溶解する工程と、b)有機溶媒を除去して乾燥した脂質膜を残す工程と、c)乾燥した脂質膜を、水溶液を用いて水和させる工程と、d)立体的に安定化されたミセルを形成する工程と、e)前記ミセルと1種またはそれ以上の両親媒性化合物とを混合する工程と、f)前記ミセルとの会合時に、水溶液中の化合物と比較して両親媒性化合物が一層望ましい生物学的に活性なコンホメーションをとると仮定される条件下で、前記ミセルおよび前記両親媒性化合物をインキュベートする工程と、を含む方法を提供するものである。
もう1つの態様では、本発明は、1種またはそれ以上の生物学的に活性な化合物と、1種またはそれ以上のターゲティング化合物と、を含む生物学的に活性な立体的に安定化されたミセル生成物を調製するための方法であって、a)前記生物学的に活性な化合物と、水溶性ポリマーと接合された1種またはそれ以上の脂質とを有機溶媒に溶解する工程と、b)有機溶媒を除去して乾燥膜を形成する工程と、c)水溶液を用いて乾燥膜を水和させる工程と、d)立体的に安定化されたミセル生成物を形成する工程と、e)前記ミセル生成物と1種またはそれ以上のターゲティング化合物とを混合する工程と、f)ターゲティング化合物が前記ミセル生成物と会合する条件下で前記ミセル生成物をインキュベートする工程と、を含む方法を提供するものである。一態様では、ターゲティング化合物がミセルの1種またはそれ以上の脂質成分に結合される。好ましくは、ターゲティング化合物と脂質との間の結合は、ターゲティング化合物が、その同族受容体、リガンドまたは結合パートナーと相互作用し、ミセルをごく近くに配置できるような方法で共有結合的な手段で行われる。
本発明の方法は、生物学的に活性などのような両親媒性化合物、ペプチド、タンパク質またはその断片、類似体またはモジュレーターでも有用であり、本発明の方法によって、これらの両親媒性化合物、ペプチド、タンパク質またはその断片、類似体またはモジュレーターを、ミセルの脂質コアと会合状態または脂質コア内で、活性型のコンホメーションで安定して維持することができる。好ましい両親媒性化合物としては、各々の生物学的に活性なコンホメーションで1種またはそれ以上のα−ヘリカルドメインまたはπ−ヘリカルドメインを有することが特徴である化合物、特に、極性基と無極性基がヘリックスの対向する側に分かれた化合物があげられる。本発明で有用な特に好ましい両親媒性化合物としては、血管作用性腸管ペプチド(VIP)/成長ホルモン放出因子(GRF)ペプチドファミリーのメンバー(その生物学的に活性な類似体を含む)があげられる。哺乳動物および非哺乳動物のVIP/GRFペプチドファミリーとしては、VIPおよびGRF、ペプチドヒスチジンイソロイシン(PHI)、ペプチドヒスチジンメチオニン(PHM)、成長ホルモン放出因子(GRF)、下垂体のアデニルシクラーゼ活性化ポリペプチド(PACAP)、セクレチン、グルカゴンのそれぞれの機能性類似体があげられる。VIPと同様に、VIP/GRFペプチドファミリーおよびその生物学的に活性な類似体の他のメンバーも、ペプチドの疎水性ドメインと親水性ドメインが分離され、疎水性ドメインが脂質コアを結合できる、両親媒性ヘリックスを形成することが可能である。さらに、本発明は、ニューロペプチドY(NPY)、ニューロペプチドYY(NPYY)、ACTH、カルシトニン、GAP(GnRH前駆体分子)グルタミン酸デカルボキシラーゼ、GnRH/GL、キーホール リンペットヘモシニアン、ロイシン−エンケファリン、メソトシン、メソトシン−エンケファリン、ニューロテンシン、ペルオキシダーゼ、ソマトスタチン、サブスタンスP、バソプレシンを含んでいる他のニューロペプチドの用途も企図している。また、本発明は、本発明の方法によって調製されるミセルと会合した状態で生理活性が高まるモジュレーターも企図している。本発明によって使用するのに特に好ましいペプチドがVIPである。1つの態様において、本発明によるミセルは、平均直径が約20nm未満であることが特徴である。本発明の一態様によれば、ミセルはさらにカルモジュリンを含む。治療用、診断用、化粧品用の他、臓器、組織および細胞を保存するなど、高濃度の生物学的に活性な化合物を送達したり、後述するようにミセル生成物の標的した送達を検出すると望ましいさまざまな用途で、本発明の生物学的に活性なペプチド生成物を利用することができる。
もう1つの態様では、本発明は、水溶液に不溶である1種またはそれ以上の生物学的に活性な化合物を含む生物学的に活性な立体的に安定化された結晶生成物を調製するための方法であって、a)前記生物学的に活性な化合物と、水溶性ポリマーと接合された1種またはそれ以上の脂質と、を有機溶媒に溶解する工程と、b)有機溶媒を除去して乾燥膜を残す工程と、c)水溶液を用いて乾燥膜を水和させる工程と、d)立体的に安定化された結晶生成物を形成する工程と、を含む方法を提供するものである。本願明細書および後述する本発明の結晶生成物において、「不溶性」とは、溶質1部あたり溶媒10,000部以上が要件である、米国薬局方国民医薬品集[USP 23、1995、第10頁]に従って定義される。この方法の結晶生成物は、本質的には、密に集合して結晶化された不溶性化合物のミセル封入集合体である。
さらに他の態様では、本発明は、水溶液に不溶である1種またはそれ以上の生物学的に活性な化合物を含む生物学的に活性な立体的に安定化された結晶生成物を調製するための方法であって、a)前記生物学的に活性な化合物と、水溶性ポリマーと接合された1種またはそれ以上の脂質と、を有機溶媒に溶解する工程と、b)フリーズドライによって有機溶媒を除去する工程と、c)水溶液を用いて水和させる工程と、d)立体的に安定化された結晶生成物を形成する工程と、を含む方法を提供するものである。
さらに別の態様では、本発明は、水溶液に不溶な1種またはそれ以上の生物学的に活性な化合物と、1種またはそれ以上の両親媒性ターゲティング化合物と、を含む生物学的に活性な立体的に安定化された結晶生成物を調製するための方法であって、a)前記生物学的に活性な化合物と、水溶性ポリマーと接合された1種またはそれ以上の脂質と、を有機溶媒に溶解する工程と、b)有機溶媒を除去して乾燥膜を残す工程と、c)水溶液を用いて乾燥膜を水和させる工程と、d)立体的に安定化された結晶生成物を形成する工程と、e)前記結晶生成物と1種またはそれ以上のターゲティング化合物とを混合する工程と、f)ミセルの脂質と接合されるターゲティング化合物が前記結晶生成物と会合する条件下で、前記結晶生成物をインキュベートする工程と、を含む方法を提供するものである。
立体的に安定化された結晶生成物を生成するための本発明の方法では、水溶液に不溶であればどのような化合物でも使用することができる。好ましい不溶性化合物としては、プロゲステロン、テストステロン、エストロゲン、プレドニゾロン、プレドニソン、2,3メルカプトプロパノール、アムホテリシンB、ベツリン酸、カンプトセシン、ジアゼパム、ナイスタチン、プロポフォル、シクロスポリンA、ドキソルビシン、パクリタキセル(Taxol(登録商標))、テトラメチルNDGAがあげられるが、これに限定されるものではない。1種またはそれ以上のターゲティング化合物をさらに含む、立体的に安定化された結晶生成物を生成するための本発明の方法では、立体的に安定化された結晶生成物と会合したときに生物学的に活性なコンホメーションが想定できるまたはこのようなコンホメーションが維持される化合物であれば、どのようなターゲティング化合物でも使用することができる。好ましい実施形態では、上述したような両親媒性化合物のうちいずれかを使用する。最も好ましい実施形態では、ターゲティング化合物は、VIPまたはVIP/GRYファミリーまたはタンパク質の他のメンバーである。他の実施形態において、ターゲティング化合物は、ヘリオスペクチン(heliospectins)I、ヘリオスペクチンII、或いは、ニューロペプチド断片2−36及び関連断片を含むニューロペプチドY(NPY)、ニューロペプチドYY(NPYY)、ACTH、カルシトニン、GAP(GnRH前駆体分子)、グルタミン酸カルボキシラーゼ、キーホール リンペットヘモシニアン、ロイシン−エンケファリン、メソトシン、メソトシン−エンケファリン、ニューロテンシン、ペルオイシダーゼ、ソマトスタチン、サブスタンスP、バソプレシン及びバソトシンのようなニューロペプチドファミリーの任意のメンバーである。
本発明の生物学的に活性なミセル生成物を含む組成物としては、生物学的に活性な両親媒性ペプチド、タンパク質、その断片、類似体またはモジュレーターが、抗酸化活性と、抗痛活性と、抗炎症活性と、創傷治癒活性と、抗菌活性と、抗気管支痙攣活性と、代謝活性と、抗癌活性と、心臓血管活性と、抗緑内障活性と、抗アポトーシス活性と、抗皺活性と、凍結保存活性と、抗老化活性よりなる群から選択される活性を有する組成物があげられる。本発明の組成物は、化粧品用、治療用および診断用の組成物を含む。診断用組成物の場合、ミセル生成物はさらに、蛍光標識と、放射性標識と、染料と、ガス、ならびに放射線撮像、磁気共鳴撮像、および超音波撮像での画質を高める化合物よりなる群から選択される検出可能な標識を含む。
本発明は、病気で苦しむ個体に病状に関連した状態を阻害するのに効果的なミセル組成物の量を投与するステップを含み、自閉症、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、エネウレシス(eneuresis)、パーキンソン病、脳虚血、発作、無秩序に眠っている脳性小児麻痺(CP)、供給無秩序及びAIDS関連痴呆からなる群から選択される病状を治療する方法をさらに提供し、前記ミセル組成物は以下の方法によって調整される。
(a)一つ以上の脂質を混合し、ここで少なくとも一つの脂質成分が水溶性ポリマーと共有結合であること。
(b)脂質から立体的に安定したミセルを形成すること。
(c)前記化合物がより生物学的活性のコンホメーションである前記ミセルと会合するようになる条件下で一つ以上の生物学的活性の両親媒性化合物とステップ(b)からのミセルをインキュベートし、ここで、少なくとも一つの両親媒性化合物は、ペプチド断片と類似体とを含むペプチドのVIP/グルカゴン/セクレチンファミリーのメンバーである。他の実施形態において、治療の方法は、それらを含み、ミセル組成物を調製する方法で、ステップ(a)で混合することは有機溶媒中で実行され、また、ステップ(b)で立体的に安定したミセルを形成することは以下のステップで実行されることを含む。
(i)乾燥膜を除去するために有機溶媒を除去すること。
(ii)水溶液と乾燥膜を水和させること。
さらに、本発明は、ミセル組成物を調製する方法で、ステップ(a)の有機溶媒はエバポーレション又は凍結乾燥によって除去される治療の方法を提供する。一の態様において、本発明によれば、自閉症、多発性硬化症、エネウレシス、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症及びAIDS関連痴呆を治療する方法は、ミセル組成物を調整する方法で、ステップ(a)で混合することは水溶液中で実行されることを含む。
さらに、本発明は、病状に関連した状態を軽減するのに効果的なミセル組成物の量を投与するステップを含み、自閉症、多発性硬化症、エネウレシス、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症及びAIDS関連痴呆からなる群から選択される病状を治療する方法を提供し、前記ミセル組成物は以下の方法によって調整される。
(a)一つ以上の生物学的活性の両親媒性化合物と一つ以上の脂質を混合し、ここで少なくとも一つの脂質成分が水溶性ポリマーと共有結合であり、また、少なくとも一つの両親媒性化合物はペプチド断片と類似体とを含むペプチドのVIP/グルカゴン/セクレチンファミリーのメンバーであること。
(b)前記化合物がより生物学的活性のコンホメーションである前記ミセルと会合するようになる条件下でステップ(a)の混合物から立体的に安定したミセルを形成すること。
一つの態様において、治療の方法は、それらを含み、ミセル組成物を調整する方法を含み、ステップ(a)で混合することは有機溶媒中で実行され、また、少なくとも一つの脂質はターゲティング化合物と結合させ、また、ステップ(b)でミセルを形成することは以下のステップからなるプロセスで実行されることを含む。
(i)乾燥膜を除去するために有機溶媒を除去すること。
(ii)水溶液と乾燥膜を水和させること。
また、前記方法はさらに以下のステップからなる。
(c)ターゲティング化合物が活性のコンホメーションである前記ミセル生成物と会合するようになる条件下で前記ミセル生成物をインキュベートすること。
さらに、本発明は、病状で苦しむ個体に病状に関連した状態を阻害するのに効果的な立体的に安定した結晶組成物の量を投与するステップを含み、自閉症、多発性硬化症、エネウレシス、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症及びAIDS関連痴呆からなる群から選択される病状を治療する方法を提供し、前記立体的に安定した結晶組成物は一つ以上の生物学的活性の化合物(水溶液に不要である)からなり、前記立体的に安定した結晶組成物は以下の方法によって調整される。
(a)一つ以上の脂質と生物学的活性の化合物を混合し、ここで少なくとも一つの脂質が水溶性ポリマーと結合し、また、少なくとも一つの生物学的活性の化合物はペプチド断片と類似体とを含むペプチドのVIP/グルカゴン/セクレチン又はIL−2ファミリーのメンバーであること。
(b)立体的に安定した結晶生成物を形成すること。
一つの実施形態において、本発明の方法は、それらを含み、立体的に安定した結晶化合物を調整する方法で、ステップ(a)で混合することは有機溶媒中で実行され、また、ステップ(b)で結晶生成物を形成することは以下のステップからなるプロセスで実行されることを含む。
(i)乾燥膜を除去するために有機溶媒を除去すること。
(ii)水溶液と乾燥膜を水和させること。
また、前記方法はさらに以下のステップからなる。
(c)一つ以上のターゲティング化合物と前記結晶生成物を接触させること。
(d)ターゲティング化合物が前記結晶生成物と会合するようになる条件下で前記結晶生成物をインキュベートすること。
他の態様において、本発明によれば、自閉症、多発性硬化症、エネウレシス、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症及びAIDS関連痴呆を治療する方法はそれらを含み、立体的に安定した結晶組成物を調整する方法で、ステップ(b)で形成することは、以下からなるステップで実行される。
(i)乾燥膜を除去するために有機溶媒を除去すること。
(ii)水溶液と乾燥膜を水和させること。
一の実施形態において、本発明にれば、自閉症、多発性硬化症、エネウレシス、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症及びAIDS関連痴呆からなる群から選択される病気を治療する方法は、ミセル組成物又は結晶組成物を含み、水溶性ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)である。他の実施形態において、本発明の方法は、約25nm以下の平均直径を有するミセルの用途を含む。他の形態において、本発明の方法は、約50nm以下の平均直径を有するミセルの用途を含む。また、他の実施形態において、本発明の方法は、ミセル組成物又は結晶組成物を含み、脂質の組合せは、PEGと共有結合するジステアロイル−ホスファチジルエタノールアミン(PEG−DSPE)からなる。
さらに、本発明は、ミセル組成物は以下のステップからなる方法によって調整されることを含み、自閉症、多発性硬化症、エネウレシス、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症及びAIDS関連痴呆を治療するための薬剤を提供する。
(a)一つ以上の脂質を混合し、ここで少なくとも一つの脂質成分は水溶性ポリマーと共有結合であること。
(b)脂質から立体的な安定したミセルを形成すること。
(c)前記化合物はより生物学的活性の化合物である前記ミセルと会合するようになる条件下で一つ以上の生物学的活性の両親媒性化合物とステップ(b)からのミセルをインキュベートすること。
ここで、少なくとも一つの両親媒性化合物はペプチド断片と類似体とを含むペプチドのVIP/グルカゴン/セクレチン又はIL−2ファミリーのメンバーであること。
他の実施形態において、本発明の薬剤は、それらを含み、ミセル組成物を調整する方法で、ステップ(a)で混合することは、有機溶媒中で実行され、また、ステップ(b)で立体的な安定したミセルを形成することは以下のステップで実行されることを含む。
(i)乾燥膜を除去するために有機溶媒を除去すること。
(ii)水溶液と乾燥膜を水和させること。
さらに、本発明は、薬剤を提供し、ミセル組成物を調整する方法で、ステップ(a)で有機溶媒はエバポーレション又は凍結乾燥によって除去される。一の態様において、本発明の薬剤は、それらを含み、ミセル組成物を調整する方法で、ステップ(b)で混合することは水溶液中で実行される。
さらに、本発明は、ミセル組成物は以下のステップからなる方法によって調整されることを含み、自閉症、多発性硬化症、エネウレシス、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症及びAIDS関連痴呆を治療するための薬剤を提供する。
(a)一つ以上の生物学的活性な両親媒性化合物と一つ以上の脂質を混合し、ここで少なくとも一つの脂質成分は水溶性ポリマーと共有結合であり、また、少なくとも一つの両親媒性化合物はペプチド断片と類似体とを含むペプチドのVIP/グルカゴン/セクレチンファミリーのメンバーであること。
(b)化合物はより生物学的活性の化合物である前記ミセルと会合するようになる条件下でステップ(a)の混合物から立体的に安定したミセルを形成すること。
一の態様において、薬剤はそれらを含み、ミセル組成物を調整する方法で、ステップ(a)で混合することは、有機溶媒中で実行され、また、少なくとも一つの脂質は一つ以上のターゲティング化合物と結合され、また、ステップ(b)のミセルを形成することは以下のステップのプロセスで実行される。
(i)乾燥膜を除去するために有機溶媒を除去すること。
(ii)水溶液と乾燥膜を水和させること。
また、前記方法はさらに以下のステップからなる。
(c)ターゲティング化合物と活性コンホメーションでミセル生成物と会合するようになる条件下でミセル生成物をインキュベートすること。
さらに、本発明は、一つ以上の生物学的活性の化合物(水溶液に不溶である)を含む立体的に安定した結晶組成物を含み、自閉症、多発性硬化症、エネウレシス、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症及びAIDS関連痴呆を治療するための薬剤を提供し、立体的に安定した結晶組成物は以下のステップからなる方法によって調整される。
(a)一つ以上の脂質と生物学的活性の化合物を混合し、ここで少なくとも一つの脂質は水溶性ポリマーと共有結合であり、また、少なくとも一つの生物学的活性の化合物はペプチド断片と類似体とを含むペプチドのVIP/グルカゴン/セクレチン又はIL−2ファミリーのメンバーであること。
(b)立体的に安定した結晶生成物を形成すること。
一の実施形態において、本発明の薬剤は、それらを含み、立体的に安定した結晶化合物を調整する方法で、ステップ(a)で混合することは、有機溶媒中で実行され、また、ステップ(b)で結晶生成物を形成することは、以下のステップからなるプロセスで実行される。
(i)乾燥膜を除去するために有機溶媒を除去すること。
(ii)水溶液と乾燥膜を水和させること。
また、前記方法はさらに以下のステップからなる。
(c)一つ以上のターゲティング化合物と結晶生成物と接触させること。
(d)ターゲティング化合物が前記結晶生成物と会合するようになる条件下で前記結晶生成物をインキュベートすること。
他の形態において、本発明による薬剤は、それらを含み、立体的に安定した結晶化合物を調整する方法で、ステップ(b)で形成することは、以下のステップで実行される。
(i)乾燥膜を除去するために有機溶媒を除去すること。
(ii)水溶液と乾燥膜を水和させること。
一の実施形態において、本発明の薬剤は、ミセル組成物又は結晶化合物を含み、水溶性ポリマーはポリエチレングリコール(PEG)である。他の実施形態において、本発明の薬剤は、約25nm以下の平均直径を有するミセルの用途を含む。また、他の実施形態において、本発明の薬剤は、ミセル組成物又は結晶組成物を含み、脂質の組合せは、PEGと共有結合するジステアロイル−ホスファチジルエタノールアミン(PEG−DSPE)からなる。
さらに、本発明は、病状で苦しむ個体に病状に関連した状態を軽減するのに効果的なミセル組成物の量を投与するステップを含み、免疫疾患、炎症性状態及び癌からなる群から選択される病状を治療する方法を提供し、前記ミセル組成物はステップからなる方法によって調整される。
また、他の態様において、本発明は、橋本甲状腺炎、悪性貧血、アジソン病、糖尿、全身性エリテマートーデス、皮膚筋炎、シェーグレン症候群、皮膚筋炎、多発性硬化症、重症筋無力症、ライター症候群、眼球突出性甲状腺腫、炎症性腸疾患、変形性関節症、リウマチ様関節炎、喘息、アレルギー、炎症性神経障害(Guillain Berre、炎症性多発性神経炎)、脈管炎(Wegener's granulomatosus、結節性多発動脈炎)及び、ポリリムヤルギアレウレマチカ(polyrmyalgia rheurmatica)、一時性の動脈炎、シェーグレン症候群、ベーチェット病、Churg-Strauss症候群及び高安の動脈のような無秩序からなる群から選択される病状を治療する方法を提供する。
また、他の態様において、本発明は、個体に標的病状を治療するために効果的な立体的に安定したミセル又は結晶組成物の量を投与するステップを含み、VIP誘導低血圧症を防止する方法を提供し、前記立体的な安定したミセル又は結晶組成物を任意の本発明の方法によって調整される。
本発明は、ミセルと会合状態にある生物学的に活性な両親媒性化合物を含む生物学的に活性なミセル生成物を調製するための改良された方法を提供するものである。また、本発明は、水溶液に不溶な化合物を含む立体的に安定化された結晶生成物を調製するための方法を提供するものである。本発明の結晶生成物は、単独でまたはターゲティング化合物との配合物で調製される。ターゲティング化合物が、結晶生成物と会合した状態で一層望ましい生物学的コンホメーションを想定できる両親媒性化合物であると好ましい。好ましい両親媒性化合物は、疎水性ドメインがミセルのコア内で会合できる程度に親水性ドメインと疎水性ドメインとが分離されていることを特徴とする化合物である。本発明の化合物は、ミセルのコアと会合状態またはミセルのコア内で生物学的に活性なコンホメーションを達成するものであると好ましい。生物学的活性がさらに高いコンホメーションは、たとえば受容体またはリガンドの認識および結合によって、所望の化合物がほとんどその通常の生物学的活性に作用できるコンホメーションであり、生物学的活性の比較は、水溶液中または環境中の化合物との対比で、本発明のミセルまたは結晶生成物と会合した化合物に対してなされる。本発明の化合物は、疎水性ドメインと親水性ドメインとを分離する、1種またはそれ以上の異なるπ−ヘリカルドメインまたはα−ヘリカルドメインを有することが特徴のものであってもよい。本発明の好ましい化合物は、VIP/GRFペプチドファミリーのメンバーである。本発明の最も好ましい化合物はペプチド断片と類似体とを含むVIP/グルカゴン/セクレチン又はIL−2ファミリーのメンバーである。生物学的に活性な化合物はミセルのコアと会合するが、会合は不可逆的ではなく、ミセルおよび化合物の特性に応じて、ミセルとの会合後すみやかにまたは時間をかけて化合物を放出することができる。
立体的に安定化された結晶生成物を調製するための本発明の方法では、水溶液に不溶であればどのような化合物を結晶生成物に封入してもよい。本発明の方法では、不溶性化合物が結晶化される程度に被会合脂質の疎水性コアで不溶性化合物が会合する。本発明では、結晶生成物を生成するものであればどのような不溶性化合物を使用してもよいが、好ましい化合物は、通常不溶性である抗癌抗癌剤、抗真菌剤、鎮静剤、ステロイド性化合物である。最も好ましくは、不溶性化合物は、パクリタキセル(Taxol(登録商標))と、ベツリン酸と、ドキソルビシンと、アムホテリシンBと、ジアゼパムと、ナイスタチンと、プロポフォルと、テストステロンと、エストロゲンと、プレドニゾロンと、プレドニソンと、2,3メルカプトプロパノールと、プロゲステロンと、からなる群から選択される。
本発明の生物学的活性の両親媒性ペプチドは、ペプチド化合物のファミリーのメンバーであるが、限定されず、血管作用性腸管ペプチド(VIP)、成長ホルモン放出因子(GRF)、hypocretins ペプチドヒスチジンイソロイシン(PHI)、ペプチドヒスチジンメチオニン(PHM)、下垂体のアデニルシクラーゼ活性化ポリペプチド(PACAP)、胃抑制ペプチド(GIP)、ヘモデルミン、成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)、ソーバジンおよびウロテンシン1、セクレチン、グルカゴン、ガラニン、エンドセリン、カルシトニン、α1−プロテイナーゼインヒビター、アンジオテンシンII、副腎皮質刺激ホルモン放出因子、抗菌ペプチドおよびタンパク質全般、表面活性ペプチドおよびタンパク質、α−MSH、アドレノメデュリン、ANF、IGF−1、α2アミリン、オルファニン、オレキシンを含む。
好ましい他のペプチドは、一つの孤立性の神経集団から他のものに情報を伝達するニューロペプチド(統合化学伝達物質として役立つ)を含む。さらに、ニューロペプチドがニューロンからグリア及び免疫細胞まで伝達イベントで連結されていることを含むことは明白である。ニューロペプチド調査の主要エリアは、痛覚及び無痛、食欲制御、炎症、気分、並びに、感情行動を含む。記載されたニューロペプチドに加えて、他のニューロペプチドは、限定されず、ヘリオスペクチンI、ヘリオスペクチンII、ニューロペプチド断片2−36及び関連断片を含むニューロペプチドY(NPY)、ニューロペプチドYY(NPYY)、ACTH、カルシトニン、GAP(GnRH前駆体分子)、グルタミン酸カルボキシラーゼ、キーホール リンペットヘモシニアン、ロイシン−エンケファリン、メソトシン、メソトシン−エンケファリン、ニューロテンシン、ペルオイシダーゼ、ソマトスタチン、サブスタンスP、バソプレシン、バソトシンを含む。
本発明によるミセルは、ミセル製造分野で通常用いられており、水溶性ポリマーと共有結合した少なくとも1種の脂質成分を含む、周知の脂質物質の配合物から生成できる。脂質は、スフィンゴミエリンなどの比較的硬い変種や不飽和アシル鎖を有するリン脂質などの流体型を含むものであってもよい。脂質物質は、ミセルの滞留時間が薬物の放出速度とバランスするように当業者が選択できるものである。これらのミセルの効力を薬物送達で十分に活用するため上で取り組むべき重要な課題のひとつが、ミセルからの薬物の漏出を血漿中での分布速度よりもかなり低いレベルまで妨害することである。しかしながら、この点はおそらくSSLとSSMを得る上で基本的な要件である。というのは、SSLやSSMの送達を制御するのは困難であり、その送達が封入された薬剤の生物学的利用能に対応するためである。SSMはリポソームよりも動的であり、薬物の放出という点ではSSLを上回ることがある。したがって、本発明のポリマーは、ポリビニルアルコール、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリグリセロール、ポリアキソズリン(polyaxozline)またはポリマー頭部基との合成脂質など、タンパク質の循環半減期を延ばす上で有用な、立体的に安定化されたリポソーム(SSL)技術の分野で通常用いられる周知の化合物であれば、どのような化合物を含むものであってもよい。本発明の最も好ましいポリマーは、分子量1000〜5000のPEGである。本発明によるミセルを生成する上で好ましい脂質としては、PEGと共有結合したジステアロイル−ホスファチジルエタノールアミン(PEG−DSPE)単独、あるいは、これをさらにホスファチジルコリン(PC)と併用したもの、ホスファチジルグリセロール(PG)をさらにコレステロール(Chol)および/またはカルモジュリンと併用したものがあげられる。
立体的に安定化されたミセル生成物または立体的に安定化された結晶生成物を調製するための本発明の方法は、さまざまな技法を用いて実施可能なものである。一態様では、有機溶媒中でミセル成分を混合し、蒸発または凍結乾燥のいずれかを用いて溶媒を除去する。有機溶媒を除去することで、脂質膜またはケークが形成され、次いで水溶液を用いてこれを水和し、ミセルが形成できるようにする。このようにして得られるミセルを本発明の両親媒性化合物と混合する。これによって、両親媒性化合物がミセルと会合し、一層望ましい生物学的に活性なコンホメーションをとると想定される。
さらに単純な調製法では、1種またはそれ以上の脂質を水溶液中で混合すると、脂質が自発的にミセルを形成する。得られるミセルを、ミセル生成物と会合して一層望ましい生物学的に活性なコンホメーションをとると想定される両親媒性化合物と混合する。この方法でミセル生成物を調製することは、特に大規模かつ安全な調製に馴染みやすく、上述した方法よりも必要な時間枠がかなり短くてすむ。この方法は有機溶媒を使用しないという点でそもそも安全性の高いものである。
立体的に安定化された結晶生成物を調製するための本発明の方法では、有機溶媒中で1種またはそれ以上の脂質化合物と1種またはそれ以上の不溶性化合物とを混合するのが好ましい。蒸発または凍結乾燥によって有機溶媒を除去し、膜またはケークを得る。次に、このようにして得られた膜またはケークを、水溶液の導入によって水和させる。結果として、不溶性化合物が脂質構造物の疎水性コア内で会合し、可溶化または再結晶化される。本発明の一態様では、可溶化された化合物または結晶生成物を、本発明のミセル生成物の調製で上述したように一層望ましい生物学的に活性なコンホメーションで結晶生成物と会合するターゲティング化合物と混合する。本発明の結晶生成物は、立体的に安定化されたミセル生成物と同様に、RESを回避できるという点が優れている。さらに重要なこととして、本発明の結晶生成物を用いることで、好ましくは300nm未満のサイズという少量で、さらに高濃度の不溶性化合物を投与することが可能になる。また、この結晶生成物によって、固有の不溶性がゆえに通常であれば効果的に投与することが困難な不溶性化合物を、かかる化合物が必要な哺乳動物に効果的に投与することが可能な方法が得られる。
本発明の方法によって生成されるミセルおよび結晶生成物は、改良された安定性および生物学的活性を有することが特徴であり、治療用、診断用および/または化粧品用などのさまざまな用途において有用である。一実施形態によれば、本発明は、生物学的に活性なミセル生成物を含む組成物を包含し、前記生物学的に活性な両親媒性化合物が、抗酸化活性、抗老化能、抗皺形能または創傷治癒能を有する。このタイプの組成物が化粧品用または治療用の性質を有する場合がある。化粧用の好ましい組成物としては生物学的に活性なペプチド断片と類似体とを含むVIP/グルカゴン/セクレチン又はIL−2ファミリーのメンバーがあげられる。また、本発明は、胃腸病の治療用の経口徐放製剤を提供するものであって、前記調製方法が、生物学的に活性なミセルまたは結晶生成物を腸溶カプセルに封入する工程をさらに含む。あるいは、ミセルまたは結晶生成物をゼラチンカプセルに封入してもよい。この経口徐放製剤は、炎症性腸疾患と、慢性便秘と、ヒルシュスプルング病と、アカラジアと、乳児肥厚性幽門狭窄と、潰瘍と、からなる群から選択されるものをはじめとする、さまざまな胃腸病において有用である。本発明のミセル、特にVIP/GRFファミリーのタンパク質、ペプチドおよびその断片、類似体、モジュレーターのメンバーを含むミセルの有用性を示す目安になるものとしては、他に、喘息、慢性肺閉塞症、関節炎、紅斑性狼瘡、アルツハイマー病、脳性麻痺、脳卒中、緑内障、急性食物圧入(acute food impaction)、強皮症、鼻炎、全身高血圧および肺高血圧、乾癬、禿髪症、自閉症、多発性硬化症、エネウレシス、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、AIDS関連痴呆、インポテンツおよび雌性覚醒性機能障害があげられる。好ましい経口製剤としては生物学的に活性なペプチド断片と類似体とを含むVIP/グルカゴン/セクレチン又はIL−2ファミリーのメンバーがあげられる。生物学的に活性なペプチド断片と類似体とを含むVIP/グルカゴン/セクレチン又はIL−2ファミリーのメンバーを含むミセル製剤も、喘息、慢性肺閉塞症、全身高血圧および肺高血圧、強皮症、嚢胞性線維症、気管支拡張症、心筋虚血、インポテンツおよび禿髪症などの症状に対する有望な治療薬である。さらに他の目安としては、精子/卵子の運動性の低下、粘膜毛様体クリアランスの低下、カルタゲナー症候群、炎症細胞遊走および炎症細胞活性化の亢進、ムチン分泌量の増加、塩化物イオン分泌量の減少(嚢胞性線維症と関連することが多い)、血管収縮、臓器または組織への血管の閉塞(鎌状赤血球性クリーゼと関連することが多い)、便秘症、インポテンツ、女性の冷感症があげられる。本発明はさらに、化粧品用として使用するための方法と、ペプチド断片と類似体とを含むVIP/グルカゴン/セクレチン又はIL−2ファミリーのメンバーを含むミセル組成物で、体の臓器、組織または細胞をインキュベートする工程を含む、前記臓器、組織または細胞型を保管および輸送またはレシピエントでの受精用に保存するための方法と、を提供するものである。
本発明のさらに他の態様では、会合する両親媒性化合物と共に調製されるミセル生成物または両親媒性化合物のない状態で調製されるミセル生成物を用いて、凍結保存した細胞、組織および臓器の生存度を改善することが可能である。この態様では、細胞を単独で、あるいは、この分野で通常用いられている周知の他の保存用化合物(ジメチルスルホキシド(DMSO)、スクロース、グリセロールまたはエチレングリコールなど)の存在下で、凍結保存前に本発明のミセル生成物と接触させる。
本発明はさらに、生物学的に活性な両親媒性化合物を標的組織に投与するための方法であって、本発明の方法によるミセルまたは結晶生成物と会合状態で生物学的に活性な両親媒性化合物を含む生物学的に活性なミセルまたは結晶生成物を調製する工程と、治療的に有効な量のミセルまたは結晶生成物を前記標的組織に投与する工程と、を含む方法を提供するものである。本発明のミセル生成物は、静脈内投与、動脈内投与、鼻腔内投与(エアロゾル投与、噴霧、吸入または通気法などによる)、気管内投与、関節内投与、経口投与、経皮投与、皮下投与、粘膜への局所投与(口腔粘膜、下部消化管粘膜および結膜などであるがこれに限定されるものではない)したり、あるいは標的組織に直接塗布することが可能なものである。両親媒性化合物の投与方法は、水溶液に不要な化合物の投与でも同様に容易に適用可能である。
治療方法では、特に循環系における化合物の半減期がとりわけ短い場合または生理活性が低い場合に、化合物単独での投与と比較して有意に低い用量レベルで生物学的に活性な化合物を投与することが可能である。たとえば、SSMと会合したVIPは、単独で投与されるVIPよりも生理活性が強くかつ長時間持続するであろうと思われる。どの生理活性化合物をSSMと会合させるかとは無関係に、ミセル生成物を試験して、従来の手段で投与される化合物によって得られる効果と同一の効果を得るのに必要な生物学的に有効な量を求めなければならない。従来の手段で送達された場合の特定化合物の生物学的に有効な量がSSMでの化合物の有効量を求める際の開始点になるであろうことは、当業者であれば理解できよう。したがって、従来と同一用量以下のSSMで同程度に有効であり、上記の作業が所望の生物学的作用を達成するのに必要な最低用量を求めるための単なる機械的な作業であることは極めて容易に想像できるであろう。たとえばVIPを投与する場合であれば、従来の投与方法を用いる場合に必要な用量が20mgであるとすると、同一の効果を得るためにSSMに内封したVIPで必要な用量はかなり少なくなる可能性が高い。立体的に安定化されたミセル生成物と会合状態の両親媒性化合物を投与する場合と同様に、立体的に安定化された結晶(SSC)生成物を用いることで、水溶液中で不溶な化合物を一層有効な用量で投与することが可能になる。
本発明の他の態様は、VIP誘導低血圧症を防止するための手段である。VIP投与の有害な影響のうちの一つは、血管拡張によってもたらされる結果として生じる低血圧症であった。低血圧症は、血圧が90/60より低い、或いは、徴候を引き起こす又は健康を妨げるのに充分低い異常状態である。血圧は、通常90/60mmHg(水銀ミリメータ)を超える。血圧があまりに低いときに、不適切な血流量が心臓、脳及び他の生命の維持に重要な器官にある。立体的に安定したミセルで投与されたVIPは、VIP誘導低血圧症を制限する手段を提供する。
例えば、自閉症、多発性硬化症、エネウレシス、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症及びAIDS関連痴呆の治療において例示的な編入は、1日の投薬量で、或いは、長期間又は短期間(1日おきに、週に2回、毎週、毎月、年に2回、1日に2回又は3回)で等しい投薬量で与えられ、0.001mg/kg体重から約1000mg/kg体重まで、約0.01mg/kg体重から約100mg/kg体重、約0.1mg/kg体重から約100mg/kg体重、約1.0mg/kg体重から約50mg/kg体重、又は、約1mg/kg体重から約20mg/kg体重の投与を含む。または、投薬量は、約0.001IU/kg体重から約1000IU/kg体重まで、約0.01IU/kg体重から約100IU/kg体重、約0.1IU/kg体重から約100IU/kg体重、約1IU/kg体重から約100IU/kg体重、約1IU/kg体重から約50IU/kg体重、又は、約1IU/kg体重から約20IU/kg体重の範囲である国際単位(IU)で測定されてもよい。投与は、経口、静脈内、皮下、経鼻投与、吸入、経皮、経壁、又は、記載された他の方法であってもよい。
生物学的に活性な両親媒性化合物または不溶性化合物と、それぞれ本発明のSSM生成物またはSSC生成物との会合によって、化合物単独で投与した後に認められる効果と比べて、化合物の生物学的作用の強さが約50%から100%増すものと思われる。同様に、本発明のSSMまたはSSCとの会合によって、生物学的作用がさらに長時間継続するようになるものと思われる。
本発明はさらに、生物学的に活性なミセル生成物を含む改良された診断用組成物と、その使用方法とを提供するものである。かかる方法は、本発明の方法によって調製されたミセルと会合状態で生物学的に活性な両親媒性化合物を含む生物学的に活性なミセル生成物を調製する工程と、診断的に有効な量のミセル生成物を標的組織または臓器に投与する工程と、標的組織または臓器においてミセル生成物の取り込みまたは相互作用を検出する工程と、を含む。本発明の一態様によれば、標的組織は腫瘍である。この方法の一態様では、放射性標識と、蛍光標識と、非蛍光標識と、染料と、X線撮影、磁気共鳴、超音波撮像(MRI)での画質を高めるガスまたは化合物と、を含む群から選択される標識を用いて、ミセル生成物を検出可能に標識し、この標識が標的組織で検出されるようにする。
また、本発明は、生物学的に活性な両親媒性化合物を含み、本発明の方法によって生成される、生物学的に活性なミセル生成物を、炎症、慢性肺閉塞症、ムチン分泌量の増加、急性食餌閉塞、鼻炎、カルタゲナー症候群、嚢胞性線維症、気管支拡張症、高血圧、アレルギー、アルツハイマー病、脳性麻痺睡眠障害、発作、アテローム性動脈硬化症、炎症性腸疾患、慢性便秘、ヒルシュスプルング病、アカラジア、乳児肥厚性幽門狭窄、潰瘍の治療に使用し、細胞増殖を亢進または抑制し、アポトーシスを妨害し、体の臓器または組織での創傷治癒を促進し、細胞、臓器、組織による拒絶、自閉症、多発性硬化症、エネウレシス、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、AIDS関連痴呆、インポテンツおよび雌性覚醒性機能障害を妨害するための方法を提供するものである。記載されるように、ペプチド断片と類似体とを含むVIP/グルカゴン/セクレチン又はIL−2ファミリーのメンバーを含む、自閉症の子供からの新生児の血液は、ニューロペプチドのレベルを増加したことを示した。この観察のための一つの可能な説明は、内因的に発現されたペプチド断片と類似体とを含むVIP/グルカゴン/セクレチン又はIL−2ファミリーのメンバーは、生物学的不活性(又は部分的に不活性)であってもよいことである。循環ペプチドは不活性であり、効果は実現されないので、付加ペプチドは所望の効果を達成するために絶えず生じる。本発明の組成物のペプチド断片と類似体とを含むVIP/グルカゴン/セクレチン又はIL−2ファミリーのメンバーの投与(生物学的活性のコンホーメションのペプチド断片と類似体とを含むVIP/グルカゴン/セクレチン又はIL−2ファミリーのメンバーを維持する)は、内因的な不活性なペプチドでないペプチド断片と類似体とを含むVIP/グルカゴン/セクレチン又はIL−2ファミリーのメンバーに依存する生物学的プロセスを作動すると予期される。他の説明として、本発明のミセル組成物のVIPは修飾された受容体と認識できる又は相互作用できる、或いは、非受容体治療された経路で生物学的活性に影響できるので、VIP受容体は、自然のVIPが相互作用できない程度まで機能障害にする。
本発明の立体的に安定化された結晶生成物は、抗癌剤を投与する上で特に有用である。たとえば、健常な乳房細胞よりも高いレベルのVIP受容体を発現するか、VIPに対する結合親和性の高い受容体を発現することが知られている乳癌細胞に、パクリタキセル(Taxol(登録商標))を不溶性化合物として含み、かつ、VIPをターゲティング剤として含む本発明の結晶生成物を標的することが可能である。パクリタキセル(Taxol(登録商標))は乳癌細胞を選択的に殺すことが明らかになっている。
本発明のミセルおよび結晶生成物での化粧品としての用途には、抗老化活性、抗皺活性、抗酸化活性を得る他、サンスクリーン剤としての用途がある。
以下、実施例を参照して本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例では、次の物質を使用した。脂質:L−α−卵黄ホスファチジルコリンV−E型のクロロホルム:メタノール(9:1)溶液(ロット番号34H8395および75H8368)、L−α−卵黄ホスファチジル−D−α−グリセロールのクロロホルム:メタノール(98:2)溶液(ロット番号72H8431および85H8395)、コレステロール(ロット番号60H0476)(いずれもミズーリ州セントルイスのSigma Chemical Co.から入手)。ジ−パルミトイルホスファチジルコリン(ロット番号LP−04−01−112−187)(スイスのSygenal Ltd.から入手)。凍結乾燥粉末形態のPEG−DSPE(ロット番号180PHG2PK−26)(アラバマ州アルバスターのAvanti Polar Lipids Inc.から入手)。ペプチド:VIP(ロット番号K02012A1、F02018A1、K02018A1)、VIPフラグメント1〜12(ロット番号H05009T1)、VIPフラグメント10〜28(ロット番号NB0222)、バソプレッシン(ロット番号SD1051A)(カリフォルニア州サニーベールのAmerican Peptide Co.から入手)。その他のバイオ製品:ウシ脳カルモジュリン(ロット番号B10537)(カリフォルニア州ラホーヤのCalbiochem Intl.から入手)。ELISAアッセイキット(ロット番号976605)(カリフォルニア州ベルモントのPeninsula Laboratoriesから入手)。さまざまな化学薬品:トレハロース(ロット番号43H7060)、2,4−ジアミノフェノール(アミドール、ロット番号74H3652)、モリブデン酸アンモニウム(ロット番号42H3506)、亜硫酸水素ナトリウム(ロット番号41H09432)、HEPES(ロット番号43H5720)、塩化ナトリウム(ロット番号22H0724)(ミズーリ州セントルイスのSigma Chemical Co.から入手)。ドデシル硫酸ナトリウム(ロット番号11120KX)(Aldrich Chemical Co.Inc.から入手可能)。過塩素酸70%(ロット番号945567)、クロロホルムHPLCグレード(ロット番号902521)、リン酸二水素カリウム(ロット番号914723)(ペンシルベニア州ピッツバーグのFisher Sci.から入手)。ここに使用される「炎症」とは、組織の傷又は破壊によって引き出される、集中される保護応答をいい、有害な薬剤及び害された組織の両方を破壊する、希釈する、囲む(隔離する)役目をする。炎症は、顕著に、白血球及び/又は好中球の化学走性の流入と関係される。炎症は、病原性の有機体及びウィルスによる感染、並びに、心筋梗塞又は脳卒中、異質な抗原への免疫反応、及び、自己免疫応答になる外傷又は再灌流のような無感染の手段に起因してもよい。したがって、発明に受け入れられる炎症性疾患は、非特異性の防御システムの反応と同様に特異性の防御システムの反応と関連する疾患を包含する。
ここに使用されるように、「特異性の防御システム」とは、特異性の抗原の存在に反応する免疫システムの成分をいう。特異性の防御システムの反応に起因する炎症の例は、異質の抗原、自己免疫疾患、及び、T細胞によって媒介される遅らされたタイプ過敏反応に対する古典的反応を含む。慢性の炎症性疾病、堅実な移植された組織及び器官(例えば、腎臓及び骨髄移植)の拒絶並びに移植片対ホスト疾病(GVHD)は、特異性の防御システムの炎症性反応のさらなる例である。
ここに使用されるような用語「非特異性の防御システム」とは、免疫学のメモリ(例えば、顆粒細胞、マクロファージ)をできない白血球によって媒介する炎症性疾病をいう。非特異性の防御システムの反応に、少なくとも一部分起因する炎症の例は、大人(急性)新生児呼吸障害症候群(ARDS)又は多数の器官傷症候群のような条件に関連した炎症;再灌流傷;急性糸球体腎炎;反応的な関節炎;急性炎症性成分を有する皮膚病;脳卒中のような急性化膿性の脳膜炎又は他の中枢神経系炎症性疾病;熱の傷;炎症性腸疾病;顆粒細胞輸液関連症候群;及びサイトカインで引き起こされた毒性を含む。
ここに使用されるような「自己免疫疾患」とは、組織傷が身体自身の要素に対する体液の反応又は細胞媒介した反応に関係している任意のグループの疾病をいう。ここに使用される「アレルギーの疾病」とは、アレルギーに起因する任意の徴候、組織損害又は組織機能の損失をいう。ここに使用されるような「関節炎の疾病」とは、様々な病因に起因する継ぎ目の炎症性傷害によって特徴付けられる任意の疾病をいう。ここに使用されるような「皮膚炎」とは、様々な病因に起因する皮膚の炎症によって特徴付けられる任意の大ファミリーの皮膚の疾病をいう。ここに使用されるような「移植拒絶」は、クラフトされる周囲の組織、苦痛、肥大、白血球増多症及び血小板減少症の機能の損失によって特徴づけられて、器官又は細胞(例えば、骨髄)を含むクラフトされた組織に対して導かれる任意の免疫反応をいう。
本発明の治療の方法は、炎症性細胞活性化に関連した病気の治療する方法を含む。「炎症性細胞活性化」とは、炎症性細胞(限定されず、単核白血球、マクロファージ、Tリンパ細胞、Bリンパ細胞、顆粒球(つまり、好中球、好塩基性細胞及びエオシン好性細胞を含む多形核の白血球)、マスト細胞、樹木状細胞、ランゲルハンス細胞、及び、内皮細胞で、増殖細胞応答の刺激(限定されず、サイトカイニン、抗原又は自己抗体を含む)による誘導、可溶媒介剤(限定されず、サイトカイニン、酸素ラジカル、酵素、プロスタノイド又は血管に作用するアミンを含む)の産出、又は、新しい数又は増加させられた数の媒介剤(限定されず、主な組織適合適合性抗原又は細胞付着分子)の細胞表面発現をいう。1つの活性化又はこれらの細胞のこれら表現型の組合せは、炎症性疾病の開始、永続又は悪化に寄与することができることは当業者によって評価される。
本発明は、例えば、慢性関節リウマチ、骨関節炎、痛風性の関節炎、脊椎炎のような関節炎の疾病;Behcet疾病;敗血症、腐敗性の衝撃、内毒素の衝撃、グラム否定敗血症、グラム原級敗血症及び有毒衝撃症候群;敗血症、外傷又は出血に第2の複合の器官傷症候群;アレルギーの結膜炎、青春の結膜炎、葡萄膜炎及び甲状腺関連眼障害のような眼科の障害;好酸球増加症の肉芽腫;喘息、慢性の気管支炎、アレルギーの鼻炎、ARDS、慢性の肺の炎症性疾病(例えば、慢性閉鎖性の肺の疾病)、珪肺、肺のサーコイドーシス、肋膜炎、肺胞炎、脈管炎、肺気腫、肺炎、気管支拡張症及び肺の酸素毒性のような肺又は呼吸器障害;心筋、脳又は末端の再灌流傷;嚢胞性繊維症のような繊維症;ケロイド構成又は瘢痕組織構成;アテローム性動脈硬化症;全身エリテマトーデス(SLE)、自己免疫の甲状腺炎、多発性硬化症、糖尿病のいくつかの形態及びReynaud症候群のような自己免疫疾患;GVHD及び移植片拒絶のような移植拒絶障害;慢性の糸球体腎炎;Crohn病、潰瘍の大腸炎及び壊死する全腸炎のような炎症性腸疾病;皮膚炎、アトピー性皮膚炎、乾癬又はじんましんのような炎症性皮膚疾患;伝染による熱及び筋肉痛;脳膜炎、脳炎及び小さな外傷による脳又は脊髄損傷のような中枢又は末梢神経系炎症性障害;Sjogren症候群;白血球血管外遊出を含む疾病;アルコールの肝炎;バクテリアの肺炎;抗原抗体複雑媒介疾病;血液量不足の衝撃;タイプIの糖尿病;急性及び遅性過敏;白血球疾患及び転移による疾病状態;熱の傷;顆粒細胞輸液関連症候群;並びにサイトカイニン誘導毒性のような炎症に関連する又は炎症によって特徴付けられる様々な疾病を治療する方法を可能する。
本発明のタンパクを使用して治療される自己免疫疾患は、例えば、結合組織病、多発性硬化症、全身性エリテマートーデス、リウマチ様関節炎、自己免疫肺炎症、Guillain Barre症候群、自己免疫甲状腺炎、インシュリン依存性糖尿メリチス(mellitis)、重症筋無力筋、移植片対ホスト疾患及び自己免疫炎症性眼疾患を含む。さらに、本発明のタンパク(又は、それらの拮抗薬、抗体を含む)は、喘息(特に、アレルギー喘息)又は他の呼吸系疾患のようなアレルギー性反応及び状態(例えば、アナフィラキシー、血清病、薬物反応、食物性アレルギー、昆虫毒アレルギー、肥満細胞症、アレルギー性鼻炎、過敏性肺臓炎、じんま疹、血管性浮腫、湿疹、アトピー性皮膚炎、アレルギ接触皮膚炎、多形成紅斑、Stevens Johnson症候群、アレルギー性結膜炎、アトピーの角結膜炎、性病の角結膜炎、巨大な乳頭状の結膜炎、及び、接触アレルギー)の治療に役立つ。
さらに、本発明は、動物にDNK-PK活性を阻害する化合物を有効量で投与することからなる動物の癌を治療する方法を提供する。本発明は、生態系で細胞増殖、感染及び転移のプロセスを含む癌細胞成長を阻害する方法を目的とする。方法は、癌細胞成長の阻害剤として本発明の化合物の使用を含む。好ましくは、方法は、生活動物(例えば、哺乳動物)の癌細胞成長、感染、転移又は腫瘍発生を阻害する又は減少するために使用される。さらに、本発明の方法は、癌細胞成長に影響を与える化合物を識別することと同様に、アッセイシステム(例えば、癌細胞成長及びそれらの性質を分析すること)で使用のために広く順応される。
本発明の化合物は、一つ以上の望ましい特性と、増加した活性及び/又は溶解性、ネガティブな副作用の減少を含む予期しない組合せの特性を有する。これらの化合物は、増殖、感染及び転移を含む癌の成長を阻害することがわかり、癌の治療のために特に望ましくなった。特に、本発明の化合物は、副作用のほとんどないように見える濃度で癌阻害特性を有する。これらの化合物は、従来の化学療法化合物の使用は望ましくない副作用を有する拡張治療手順のために役立つ。例えば、本発明の化合物と他のより毒性の化学療法剤との共投与は、癌の有効な阻害を達成でき、一方、患者の毒性の副作用を効果的に引き下げる。
さらに、本発明の化合物の親水性及び疎水性の特性は、よくバランスされ、インビトロと特にインビボとの使用の両方の有益性を増強し、一方、そのようなバランスを欠いている他の化合物は本質的にほとんど有益性がない。具体的に、本発明の化合物は、身体に吸収及び生物学的利用能ができる水性媒体で適切な溶解度を有し、一方、化合物が活動の推定部位まで細胞膜を移動できる脂質である程度の溶解度を有する。したがって、本発明の化合物は、腫瘍の部位に送達できるとき、最大限に効果的であり、そして、腫瘍細胞に入る。
本発明の方法によって治療できる癌は、哺乳動物で好ましくは生じる。哺乳動物は、例えば、犬及び猫のようなペット又はコンパニオン動物、ラット、マウス及びウサギのような実験動物、並びに、ウマ、ブタ、ヒツジ及びウシのような家畜と同様に、ヒト及び他の霊長目動物を含む。
腫瘍及び新生物は細胞の増殖が抑制できなく、進行する組織細胞の成長を含む。ある成長は良性であるが、他は「悪性腫瘍」といわれ、そして、生体の死に至ることがある。悪性腫瘍新生物又は「癌」は、積極的な細胞増殖を有することに加えて、周囲組織に侵入し、転移する点で良性成長と区別される。さらに、悪性腫瘍新生物は、それらが分化(より大きな「退化分化」)、並びに、お互い及び周囲組織に関する組織のより大きな損失を示すことで特徴付けられる。この特性は、「退形成」と呼ばれる。
本発明によって治療される新生物は、固形腫瘍(すなわち、癌腫及び肉腫)を含む。癌腫は、周辺組織を浸潤させる(侵入する)上皮性細胞から誘導される悪性新生物を含み、転移を引き起こす。腺癌は、腺の組織又は認識できる腺の構造から誘導される癌腫である。他の広いカテゴリー又は癌は、肉腫(細胞が原繊維又は胚結合組織のような均一な物質で包埋される腫瘍)を含む。さらに、本発明は、白血病、リンパ腫、並びに、典型的に腫瘍質量として現れなく、血管又はリンパ細網システムで配布される癌を含む骨髄性又はリンパシステムの癌の治療を可能にする。
本発明で治療される癌又は腫瘍細胞のタイプは、例えば、ACTH−産生性腫瘍、急性リンパ球性白血病、急性非リンパ球性白血病、副腎皮質の癌、膀胱癌、脳癌、乳癌、子宮頸癌、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、結直腸癌、悪性皮膚T細胞リンパ腫、子宮内膜癌、食道癌、ユーイングの肉腫、胆嚢癌、ヘアリーセル白血病、頭頚部癌、ホジキンのリンパ腫、カポジ肉腫、腎臓癌の癌、肝癌、肺癌(小及び非小細胞)、悪性腹水、悪性胸水、黒色腫、中皮腫、多発性骨髄腫、神経芽細胞腫、グリオーマ、非ホドキンのリンパ腫、骨肉腫、卵嚢癌、卵巣の(生殖細胞)癌、膵臓癌、陰茎癌、前立腺癌、網膜芽細胞腫、皮膚癌、軟部組織肉腫、扁平上皮癌、胃癌、精巣の癌、甲状腺癌、栄養膜の新生物、子宮癌、膣癌、陰門の癌、及び、ウイルムス腫瘍を含む。
本発明は、特に実験的に定義される癌の特定のタイプの治療に関して例示される。これらの例示される治療において、インビトロ及びインビボモデルの最新技術が使用された。これらの方法は、インビボの治療処置で有効である薬剤を識別するために使用される。しかしながら、本発明の方法は、これらの腫瘍タイプの治療に限定されず、任意の器官システムから誘導される任意の固形腫瘍に及ぶと理解される。癌(癌の侵入性又は転移はDNA-PK発現又は活性と関連する)は、特に本発明の手段によって阻害される又は退行するために誘導さえされることに影響されやすい。
さらに、本発明は、腫瘍細胞を放射性増感することに関する。ここに使用される用語「放射線増感剤」は、電磁放射線に放射線増感させるべき細胞の感度を増加させるために、及び/又は、電磁放射線で治療される疾患の治療を促進するために治療上有効な量で動物に投与される分子(好ましくは、低分子量の分子)として定義される。電磁放射線で治療される疾患は、腫瘍疾患、良性及び悪性腫瘍、並びに、癌細胞を含む。
ここにリストされない他の疾患の電磁放射線治療も、本発明によって考慮される。ここに使用される用語「電磁放射線」及び「放射線」は、特に限定されず、100メートルに10−20の波長を有している放射線を含む。本発明の好ましい実施形態は、γ線(10−20〜10−13m)、X線(10−12〜10−9m)、紫外線(10nm〜400nm)、可視光(400nm〜700nm)、赤外線(700nm〜1.0mm)、及び、マイクロ波放射線(1mm〜30cm)の電磁放射線を使用する。
放射線増感剤は、電磁放射線の中毒作用に癌細胞の感度を増加させることが知られている。放射線増感剤の作用モードのためのいくつかのメカニズムが、低酸素性細胞放射線増感剤(例えば、2−ニトロイミダゾール化合物及びベンゾトリアジン二酸化物化合物)は、低酸素症組織の再酸素化を促進する及び/又は酸素基に損害を与える産生に触媒作用を及ぼす;非低酸素症細胞放射線増感剤(例えば、ハロゲン化ピリミジン)は、DNA塩基の類似体であり、癌細胞のDNAに好ましくは結合することがある(それによってDNA分子の放射イオン−誘導性ブレークを促進する及び/又は正常DNA修復メカニズムを防止する);並びに、さまざまな他の潜在的な作用メカニズムは、疾患の治療で放射線増感剤のために仮定されることを含む文献において提案された。
多くの癌治療の手順は、現在、X線の電磁放射線によって活性化される放射線増感剤を使用する。X線活性放射線増感剤の例は、特に限定されず、メトロニダゾール、ミソニダゾール、デスメチルミソニダゾール、ピモニダゾール、エタニダゾール、ニモラゾール、マイトマイシンC、RSU 1069、SR 4233、E09、RB 6145、ニコチン酸アミド、5-ブロモジオキシウリジン(BUdR)、5-ヨードデオキシウリジン(IUdR)、ブロモジオキシサイチジン、フルオロジオキシウリジン(FUdR)、ヒドロキシ尿素、及び、シスプラチン、治療上効果的な同様な類似体及び誘導体を含む。
癌の光感化療法(PDT)は、感度薬剤の放射線活性剤として可視光を使用する。光化学の放射線増感剤の例は、特に限定されず、ヘマトポルフィリン誘導体、フォトフィン(Photoffin(r))、ベンゾポルフィリン誘導体、NPe6、スズのエチオポルフィリン(SnET2)、フェオボルビデ-a(pheoborbide-a)、バクテリオクロロフィル-a、ナフタロシアニン、フタロシアニン、亜鉛フタロシアニン、並びに、治療上有効な同様な類似体及び誘導体を含む。
放射線増感剤は、特に限定されず、ターゲット細胞に放射線増感剤の組み入れを促進する化合物;ターゲット細胞に治療、栄養素及び/又は酸素の流れを制御する化合物;付加的な放射線と又は付加的な放射線無しで腫瘍に作用する化学治療剤;或いは、癌又は他の疾患を治療するために他の治療上効果的な化合物を含む1つ以上の他の下記の化合物を治療上効果的な量で組み合わせて投与されてもよい。放射線増感剤と組み合わせて使用されてもよい付加的な治療剤の例は、特に限定されず、5-フルオロウラシル(5-FU)、ロイコボリン、5(-アミノ-5(-デオキシチミジン、酸素、カルボゲン(carbogen)、赤血球輸注、パーフルオロカーボン(例えば、Fluosol(r)-DA)、2,3-DPG、BW12C、カルシウムチャネルブロック剤、ペントキシフィリン、反脈管形成化合物、ヒドララジン及びL-BSOを含む。放射線増感剤と組み合わせて使用されてもよい化学治療剤の例は、特に限定されず、アドリアマイシン、カンプトセシン、カルボプラチン、シスプラチン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、インタフェロン(α、β、γ)、インターロイキン2、イリノテカン、ドセタキセル、パクリタキセル、トポテカン、並びに、治療上有効な同様な類似体及び誘導体を含む。
さらに、本発明は、本発明の化合物と他の抗癌性化学治療剤(例えば、任意の従来の化学治療剤)を含むことによって実施される。他の薬剤とテトラサイクリン化合物の組合せは、化学療法の手順を強化することができる。多数の化学療法の手順は、本発明の方法に組み込むことができるように当業者に可能にする。任意の化学治療剤も、天然物と同様にアルキル化剤、代謝拮抗物質、ホルモン及び拮抗薬、放射性同位元素を含み使用される。例えば、本発明の化合物は、ドキソルビシン及び他のアントラサイクリン系類似体のような抗生物質、環状リン酸アミドのようなナイトロジェンマスタード、5-フルオロウラシルのようなピリミジン類似体、シスプラチン、ヒドロキシ尿素、パクリタキセル(Taxol(登録商標))、並びに、その自然物及び合成誘導体等と投与される。他の例として、腫瘍は性腺刺激ホルモン依存細胞及び性腺刺激ホルモン独立細胞を含む混合腫瘍(例えば、胸部の腺癌)の場合に、化合物はロイプロリド又はゴセレリン(LH-RHの合成ペプチド類似体)と組み合わせて投与されることができる。他の治療様式(例えば、外科、放射等)とテトラサイクリン化合物の使用を含む他の悪性腫瘍手順は、「補助抗悪性腫瘍様式」として参照される。このように、本発明の方法は、副作用を減じて、有効性を強化する利点を有する従来の療法で使用されることができる。
治療組成物は、本発明の範囲内である。医薬品組成物は、治療上効果的な量のミセル組成物単独又は薬学的に又は生理的に受容可能な製剤(投与のモードに適合するために選択される)と混合して含まれてもよい。医薬組成物は、薬学的に又は生理的に受容可能な製剤(投与のモードに適合するために選択される)と混合して、治療上効果的な量の1つ以上のミセル組成物を含んでもよい。
医薬組成物は、例えば、pH、モル浸透圧濃度、粘性、透明度、色、等張力、臭気、生殖不能、安定性、溶解又は放出の割合、組成物の吸着又は浸透を改変する、保持する又は保存するための製剤物質を含んでもよい。適切な製剤物質は、特に限定されず、アミノ酸(例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン又はリシン);抗菌剤;酸化防止剤(例えば、アスコルビン酸、亜硫酸ナトリウム又は亜硫酸水素ナトリウム);緩衝剤(例えば、ホウ酸塩、重炭酸塩、TrisHCI、クエン酸塩、リン酸塩、他の有機酸);充填剤(例えば、マンニトール又はグリシン);キレート剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA));錯化剤(例えば、カフェイン、ポリビニルピロリドン、βシクロデキストリン又はヒドロキシプロピルβシクロデキストリン);フィラー;単糖;二糖及び他の炭水化物(例えば、グルコース、マンノース又はデキストリン); タンパク(例えば、血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリン); 着色剤; 香料及び賦形剤;乳化剤;親水性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン); 低分子量のポリペプチド;対イオン形成塩(例えば、ナトリウム);防腐剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、安息香酸、サリチル酸、チメロサール、フェネチルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロルヘキシジン、ソルビン酸又は過酸化水素);溶剤(例えば、グリセリン、プロピレングリコール又はポリエチレングリコール);糖アルコール(例えば、マンニトール又はソルビトール);懸濁化剤;サーファクタント又は湿潤剤(例えば、プルオニクス(pluronics)、PEG、ソルビタンエステル、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20)、ポリソルベート80、三重陽子、トロメタミン、レシチン、コレステロール、チロキサポール);安定性促進剤(スクロース又はソルビトール);緊張度促進剤(例えば、ハロゲン化アルカリ金属(好ましくは、ナトリウム又は塩化カリウム、マンニトールソルビトール);送達媒介体;希釈液; 医薬品添加物及び/又は製薬アジュバントを含む(Remington's Pharmaceutical Sciences, l8th版、A.R.Gennaro編集、Mack Publishing Company、1990)。
製薬のミセル組成物は、腸管外の送達のために選択される。または、組成物は、吸入法のために、又は、消化管(例えば、口)で送達のために選択される。薬学的に受容可能な組成物の調整は、技術の範囲内である。
一実施形態において、製薬組成物は、吸入法のために処方される。例えば、ミセル組成物は、吸入法のために乾燥粉末として処方されてもよい。さらに、製薬ミセル組成物吸入法溶液は、エアゾール送達のために噴射剤と処方されてもよい。さらに、他の実施形態で、溶液は霧状にされてもよい。さらに、肺の投与は、化学改質プロテイン肺の送達を記載するPCT 出願番号PCT/US94/001875に記載されている。
特定の製剤が経口投与されることは意図される。本発明の一実施形態で、この方法で投与されるミセル組成物は、固形投薬形態(例えば、タブレット及びカプセル)の化合物で慣習的に使用されるキャリアの有無にかかわらず処方されることができる。例えば、カプセルは、生物学的利用能が最大にされ、また、プレ全身の劣化は最小にされるとき、胃腸管中の点で製剤の活性部位を放出するように設計されてもよい。付加的な薬剤は、ミセル組成物の吸収を容易にするために含まれることができる。また、希釈液、香料、低融点ワックス、植物油、潤滑剤、懸濁化剤、タブレット崩壊剤及び結合剤は、使用されることができる。
他の製薬組成物は、タブレットの製造に適している非有毒医薬品添加物と混合で効果的な量のミセル組成物を含んでもよい。滅菌水又は他の適切なビヒクルでタブレットを溶解することによって、溶液は単位投薬形態で調整されることができる。適切な医薬品添加物は、特に限定されず、非活性希釈液(例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム又は重炭酸ナトリウム、乳糖、或いは、リン酸カルシウム);結着剤(例えば、デンプン、ゼラチン又はアカシア);或いは、潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸又はタルク)を含む。
付加的な製薬ミセル組成物(保持される又は制御される送達製剤でミセル組成物を含む製剤を含む)は、当業者に明白である。種々の他の保持される又は制御される送達手段を処方するための技術(例えば、リポソームキャリア、バイオ浸食微小粒子又は多孔性ビーズ、並びに、デポー製剤注射)は、当業者に公知である。
インビボ投与で使用される製剤ミセル組成物は、典型的に無菌である必要がある。これは、濾過滅菌法膜で濾過によって達成されてもよい。組成物が凍結乾燥されるところで、この方法で使用される滅菌は、凍結乾燥及び再構成の前後のどちらかで処理されてもよい。非経口投与のための組成物は、凍結乾燥形態又は溶液で貯蔵されてもよい。さらに、非経口組成物は、一般的に無菌アクセスポートを有する容器(例えば、皮下注射針によって突き刺すことができる栓を有する静脈内の溶液バッグ又は小びん)中に置かれる。
一旦、製薬組成物が処方されると、溶液、懸濁液、ゲル、乳濁質液、固体、或いは、脱水又は凍結乾燥粉末として無菌小びんで貯蔵されてもよい。そのような製剤は、投与前に再構成を要求して、形態を使用するための準備で又は形態(例えば、凍結乾燥)のどちらかで貯蔵されてもよい。
使用される効果的な量の製薬ミセル組成物は、例えば、治療的に、治療状況及び目的に依存する。当業者は、治療のための適当な投薬レベルは、部分的に、送達させる分子、使用されるミセル組成物であるための指示、投与のルート、患者のサイズ(体重、体表又は器官サイズ)及び患者の状態(年齢及び身体全体の健康)に依存することを変化させることを認める。したがって、臨床医は最適な治療効果を得るために、投薬量を滴定してもよく、投与のルートを改変してもよい。典型的な投薬量は、上述した要因に依存して、約0.1mg/kgから約100mg/kg又はそれ以上までの範囲であってもよい。他の実施形態で、投薬量は、0.1mg/kgから約100mg/kgまで;1mg/kgから100mg/kgまで;又は、5mg/kgから約100mg/kgまでの範囲であってもよい。
投薬の頻度は、使用される製剤でミセル組成物のファーマコキネティックパラメータに依存する。典型的に、臨床医は所望の効果を達成する投薬量に達するまで組成物を投与してもよい。したがって、組成物は、時間をかけて、或いは、体内移植装置又はカテーテルを経て連続的な点滴で、1回の投薬又は2回以上の投薬(同じ量の適切な分子を含んでもよく、含まなくてもよい)で投与されてもよい。さらに、適当な投薬の改良は、当業者に通常なされて、それらによって通常実施される作業の範囲内である。適当な投薬は、適当な投薬応答データの使用によって確認されてもよい。
製薬組成物の投与のルートは、例えば、保持される放出システムによって又は体内移植装置によって、経口、経静脈による注射、腹腔内、大脳内(実質性イントラ)、脳室内、筋肉内、眼球内、動脈内、門脈内、又は、病巣内経路の公知の方法と一致する。所望されるところで、組成物は、ボーラス注射又は連続的な注入、或いは、体内移植装置によって投与されてもよい。
二者択一的に又はさらに、組成物は、メンブレン、スポンジ、又は、所望の分子が吸収される又はカプセルに包まれる他の適当な材料の体内移植を経て局所投与されてもよい。体内移植装置は使用されるところで、装置は、任意の適切な組織又は器官に体内移植してもよく、また、適切な分子の送達は、拡散、時限放出ボーラス又は継続投与を経ることができる。
ある場合に、エキソビボ方法で、製薬ミセル組成物を使用するとは好ましい。そのような場合には、細胞、組織又は患者から除去された器官は、細胞、組織及び/又は器官は患者中にその後戻した後、製薬ミセル組成物に露出されてもよい。
本願明細書において開示される投与のモードに加えて、本発明の組成物が他のモード(例えば、特に限定されず、関節内、腫瘍内、脳脊髄、動脈内、腹腔内、直腸内及び大腸、傷害内、局所、結膜下、膀胱内、膣内、硬膜外、肋骨内面、皮内、吸入法、経皮、トランス漿膜、口内、口頭、鼻腔内、筋肉内、口又は他の体腔の溶解、気道に対する点滴注入法、気道で吸入、血管への注射、腫瘍、器官等、並びに、哺乳動物の身体の腔への注射又は沈殿)によって哺乳動物に治療のために導入されることができる。
本願明細書において開示される他の疾患又は障害の治療に加えて、本発明の組成物が、脳血管虚血、拡張性の機能不全、雌性の覚醒状態機能不全、運動ニューロン疾患、神経障害、痛覚、欝状態、不安障害、脳外傷、敗血症、敗血症性ショック、ショック、成人呼吸窮迫症候群、胎便吸入、新生児呼吸困難症候群、記憶欠陥、痴呆、認識障害、自閉症、脳脊髄疾患(例えば、パーキンソン病、Alzheimerの疾患)、片頭痛、脳性小児麻痺、神経変性疾患、発作、高血圧症、肺高血圧症、門脈圧亢進症、虚血性心疾患、関節炎、変形性関節症、痛風性関節炎、結晶-起因性関節炎、いびき、動脈炎、鼻炎、乾癬、放射線障害性組織外傷、敗血症、外分泌の膵機能不全症、膵臓炎、脊椎関節症、過敏症、アナフィラキシー、脳症、血管不全、破傷風、腱鞘炎、滑膜炎、虚血、神経炎、神経軽度の麻痺、圧力潰瘍、進行性多病巣性白質脳障害、髄膜炎、心膜炎、心筋炎、炎症、多発性硬化症、多器官クラッシュ、腎炎、閉塞の細気管支炎、閉塞性細気管支炎編成肺炎、脳炎、転換大腸炎及び嚢炎、炎症性ポリープ、多発性筋炎、多発性軟骨炎、多発性関節炎、天疱瘡、水疱性類天疱瘡、アクネ、酒さ、腎炎、腎炎、癌、間質性肺疾患、特発肺線維症、サルコイドーシス、結節硬化症、脈管炎、トキシックショック症候群、喘息、クロイック(chroic)な閉塞性肺疾患、気管支炎、気腫、気管支拡張症、急性冠状動脈症候群、狭心症、胃不全麻痺、精神薄弱、リウマチ(rheumatioid)関節炎、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、筋疾患、自己免疫疾患(例えば、ループスエリテマトーデス、強皮症、皮膚筋炎、シェーグレン症候群、CREST)、レイノー現象、Bierger疾患、末梢血管疾患、慢性静脈の潰瘍、デルンマチチス(dernmatitis)、真性糖尿病、アテローム性動脈硬化症、心筋梗塞、胃及び十二指腸潰瘍、虚血性心疾患、線維症、再狭窄、血栓治療薬、カリディアク(caridiac)障害、心筋症、脳症、脳炎、強直性脊椎炎、変形性関節症、腎機能不全、神経炎、神経障害、脊椎症、網膜疾患、哺乳動物のニューロンの細胞死の予防、食物嵌入、VIP産生腫瘍、創傷治癒、便秘、関節症、子癇前症、浮浪者、皮膚潰よう、中毒性巨大結腸症、器官、組織及び細胞保存、ライター症候群、乾癬性関節炎、低血圧症及び前記ペプチドによって誘導される高血圧症の予防)の治療のために使用できる。
以下の例は、目的だけを説明するもので、本発明の範囲を限定することとして解釈されない。
本実施例では、以下の方法で立体的に安定化されたミセルにVIPを取り込んだ。ミセルの調製に必要なPEG−DSPE濃度を求めるために、PEG−DSPE水溶液の表面張力について研究調査を行った。臨界ミセル濃度は0.5〜1.0μlであることが明らかになったため、1.0μMのPEG−DSPEを用いて確実にミセルが形成されるようにした(図1)。PEG−DSPE脂質(1μmol/ml)をクロロホルムに溶解し、丸底フラスコで混合した。rotoevaporaterを浴水温度45℃で用いて有機溶媒を蒸発させた(ミズーリ州カンサスシティ、Labconco)。一晩の減圧乾燥によって完全に乾燥させた。乾燥した脂質膜を生理食塩水(0.15N、pH6.8)またはHEPES緩衝液(10mM、pH7.4)で水和させた。この溶液をヒトVIP(13μg/ml)と共に30分間インキュベートした後、円二色性で使用した。リン脂質ミセル懸濁液にヒトVIP(0.1nmol/ml)を添加し、室温にて2時間インキュベートした後、頬袋で研究調査を行った。
本実施例では、VIPおよびカルモジュリンを含む立体的に安定化されたミセルを実施例1の方法で調製した。実施例1の方法に従ってSSM懸濁液を調製し、インキュベーション段階でVIP−ミセル900μlに10-9MのCaMを100μl添加(全体のCaM濃度が10-10Mになるように)し、4℃にて2時間インキュベートした後に円二色性で使用した。リン脂質ミセル900μlにヒトVIP(0.1nmol/ml)と10-9MのCaMを100μlとを添加(全体のCaM濃度が10-10Mになるように)し、室温にて2時間インキュベートした後、頬袋で研究調査を行った。VIP濃度を0.1nmolとし、立体的に安定化されたミセル組成でVIPを用いた場合の結果を比較できるようにした。
本実施例では、準弾性光散乱(NICOMP270型Submicron Particle Sizer、カリフォルニア州メンローパーク、Pacific Scientific社)を用いて小胞のサイズを求めた。この装置には、64チャネルでの自己相関関数のある励起波長623.8nmの5mWヘリウムネオンレーザと、温度制御式遊走細胞ホルダと、溶液中での粒子の拡散によって生じる散乱光強度のゆらぎを解析するためのADM 11ビデオ表示端末コンピュータ(learr Siegler Inc.)が含まれている。30分間積算した自己相関関数を解析して得た測定拡散係数を用いて、ストークス−アインシュタインの関係から流体力学的な平均粒径dhを得た。機器の設定値は以下のとおりとした。温度23℃、粘度0.9325cp、屈折率1.333、散乱角90°。血管作用性腸管ペプチド(VIP)が封入された立体的に安定化されたリン脂質ミセル(SSM)の最終平均サイズは−17.9±0.6nmであった。
本実施例では、円二色性(CD)実験を行い、リン脂質ミセルに内封したVIPおよび水溶液中のVIPのコンホメーションの変化、pHおよび温度の変化を求めた。経路長1cmの溶融石英セルを用いて、JASCO J−700分光偏光計でCDスペクトルを記録した。ペプチド濃度4μMおよび脂質濃度1mMで、0.15N生理食塩水(pH6.8)および5mMヘペス緩衝液(pH7.4)中でのスペクトルを測定した。CaM、pH(6.8または7.4)、温度(25℃または37℃)がVIPのコンホメーションに対して及ぼす影響についても研究調査を行った。VIPフラグメントのコンホメーションについても同様に調べた。特に明記しない限り、測定はいずれも室温(〜25℃)にて行った。帯域幅を1.0nm、ステップレゾリューションを0.5nmとし、近紫外域(波長200〜260nm)にて試料1つあたり平均で9枚の走査画像を得た。緩衝液中でペプチドのスペクトルにバックグラウンドバンドが認められたため、内封物のない小胞(empty vesicle)のバンドを差し引き、ノイズリダクション機能を用いてスムージングを行った。溶融石英CDセルを囲むジャケットに取り付けた循環水浴を用いて、スペクトル解析時の温度を維持した。Haghjooらの方法(Peptide Research 9(6):327〜331(1996))によってVIPのヘリカル特性の比率すなわちヘリシティ(%)=[−θ208+4000)/29 000]×100を求め、結果を表1に示す。
この実施例では、生理食塩水およびヘペス緩衝液中のVIPとリン脂質ミセルに内封したVIPのコンホメーションを、室温および37℃にてCDを用いて求めた。予備的な研究調査で求めたようにして、13μgのヒトVIPを1mlのPEG−DSPE(1μmol)ミセルと共に室温にて30分間インキュベートした後、CDスペクトル解析を行った。帯域幅を1.0nm、ステップレゾリューションを0.5nmとし、近紫外域(200〜260nm)にて試料1つあたり平均で9枚の走査画像を得た。スペクトル解析を行っている間、溶融石英CDセルを囲むジャケットに取り付けた循環水浴を用いて温度を維持した。円二色性によってSSMに内封したVIP分子のコンホメーションを評価したところ、SSMはサイズが小さく均一な小胞構造をとっているため球状粒子によって生じる歪みがなく、正しく評価することができた。また、ミセルの動的な性質によってVIPとリン脂質との相互作用も大きくなった。VIPのコンホメーションについての本願発明者らの研究調査では、SSLのリン脂質二重膜と類似の疎水性コアが得られるという点でリン脂質ミセルが理想的であった。さらに、負の電荷とPEGによって得られる親水性の層のいずれも本願発明者らのSSLの状態に近く、VIPコンホメーションがどのようなものであるか推測することができた。
VIPは純水中でランダムコイル構造をとることがスペクトル特性から明らかになったが、有機溶媒中でのVIPはα−ヘリックス状であった(Fournierら、Peptides 5:160〜177(1984)、Fryら、Biochemistry 28:2399〜2409(1989)、Theriaultら、Biopolymers 31:459〜464(1991))。さらに、両親媒性ヘリックスを形成できる短鎖ペプチドが脂質二重膜と結合されたりこれを貫通したりすることが分かっている(Nodaら、Biochim.Biophys.Acta.1191:324〜330(1994))。これらの情報に基づいて、VIPはミセルと会合するとヘリカル構造をとるのではないかと思われる。
ヒトVIPの生理食塩水(pH6.8)中でのCDスペクトルならびにリン脂質ミセルの存在下でのCDスペクトルを図2に示す。これらの研究調査から、ペプチドのコンホメーションは環境に極めて影響されやすいものであることが明らかになった。VIPは生理食塩水中では203nmで極小であり、主にランダムコイル構造であることが明らかになった。リン脂質ミセルの存在下では、主にα−ヘリックスコンホメーションで構成され、208nmと222nmの2回極小が認められた(表1)。
ヒトVIPのヘペス緩衝液(pH7.4)中でのCDスペクトルならびにリン脂質ミセルの存在下でのCDスペクトルを図2に示す。(生理食塩水中およびヘペス緩衝液中(点線)でのVIPのCDスペクトル解析結果をリン脂質の存在下(実線)でのVIPの場合と対比してある。いずれも試料1つあたり9枚の走査画像から得た平均スペクトルである。)これらの研究調査から、ペプチドはヘペス緩衝液中では203nmで極小であり、主にランダムコイル構造であることが明らかになった。リン脂質ミセルの存在下では、主にα−ヘリックスコンホメーションで構成され、208nmと222nmの二回極小が認められた(表1)。これらの結果は生理食塩水(pH6.8)中でのVIPの場合と同様である。
血管作用性腸管ペプチドの生理食塩水中でのCDスペクトルとSSMの存在下でのCDスペクトルとについて研究調査を行ったところ、VIPは生理食塩水ではほとんどランダムコイル状のコンホメーションをとるが、SSMの存在下ではα−ヘリックスコンホメーションが優勢であることが明らかになった。このことから、PEGによる立体障害の可能性とは無関係にVIPがある程度は疎水性コアに侵入し、一層安定したα−ヘリックスコンホメーションへと変化することが分かる。多くの両親媒性分子とは異なり、pHを変えてもVIPコンホメーションには有意な変化は認められなかったことから、VIPは研究調査を行った範囲でのイオン環境には影響されないものと思われる。
37℃におけるヒトVIPの生理食塩水中でのCDスペクトルならびにリン脂質ミセルの存在下でのCDスペクトルを図3に示す。(生理食塩水中でのVIPの室温(破線、灰色)でのCDスペクトル解析結果と37℃(実線、灰色)での結果を、リン脂質の存在下でVIPの室温(点線、黒)および37℃(実線、黒)での結果と対比してある。いずれも試料1つあたり9枚の走査画像から得た平均スペクトルである。)これらの研究調査から、スペクトルの形状には何ら変化のない状態で、室温の場合よりも37℃の場合の方がペプチドのミセルでの吸収強度が増大することが明らかになった。吸収強度が増大することから、α−ヘリックスコンホメーションが増幅されていることが分かる。これは、VIPのヘリカル含有量(%)が3倍になっていることからも明らかである(表1)。
SSMに内封したVIPのコンホメーションに対する温度上昇による影響は、ほとんどが臨界ミセル温度(CMT)の影響によるものである。ここで、CMTは、ミセルが形成される温度である。このような温度の上昇に伴って、ミセルの数も増加していくことが明らかになっている(Nivaggioliら、Langmuir.11(3):730〜737(1995))。ミセルの数が増加すると、ミセル懸濁液の疎水性が高まる。したがって、一層多くのVIP分子がミセルまたはミセルコアと相互作用することになり、VIP分子のα−ヘリックス構造の増幅が認められる。
本実施例では、実施例4の方法を繰り返し、生理食塩水でのVIPのコンホメーションと、リン脂質ミセルにカルモジュリン(CaM)を加えた中でのコンホメーションを求めた。13μg/mlのVIPをリン脂質ミセル1.0μmol/mlと共に30分間インキュベートした後、10-10MのCaMをリン脂質ミセルに内封してVIPと共に4℃で2時間インキュベート(conjugation paper)し、その後CDスペクトルを測定した。帯域幅を1.0nm、ステップレゾリューションを0.5nmとし、近紫外域(200〜260nm)にて試料1つあたり平均で9枚の走査画像を得た。
ヒトVIPの生理食塩水中でのCDスペクトルと、リン脂質の存在下でミセルにCaMを加えた中でのCDスペクトルを、図4に示す。(CDスペクトル解析結果については、生理食塩水中でVIP+CaM(点線、黒)、生理食塩水でCaM(点線、灰色)をリン脂質の存在下でのVIP(実線、灰色)およびVIP+CaM(実線、黒)と対比してある。いずれも試料1つあたり9枚の走査画像から得た平均スペクトルである。)これらの研究調査から、スペクトルの形状には何ら変化のない状態で、リン脂質ミセルに内封されたVIPの吸収強度がCaMによって高まることが明らかになった。このような吸収の増大が認められることから、α−ヘリックスコンホメーションが増幅されていることが分かる。これは、VIPのヘリカル含有量(%)が2倍になっていることからも明らかである(表1)。CaM単独では生理食塩水中のVIPのコンホメーションには何ら影響しなかった(図4)。
リン脂質の存在下でVIPのα−ヘリックス構造が増幅するのはCaMが原因であるように見える。CaMはリン脂質と相互作用することが知られており(Chibaら、Life Sciences 47:953〜960(1990)、Houbreら、J Biol.Chem.266(11):71217131(1991)、Stallwoodら、J Biol.Chem.267:19617〜19621(1992)、Bolin、Neurochem.Int.23:197〜214(1993)、Paulら、Neurochem.Int.23:197〜214(1993))、この相互作用によってCaMの疎水性領域が露出し、VIPのα−ヘリックス構造が増える可能性が最も高い。さらに、CaMを添加することでCMCが低下してミセル数の増加につながり、これがさらに溶液の疎水性を高めてα−ヘリックス構造の増幅を引き起こしている可能性がある。
本実施例では、実施例4の方法を繰り返してVIPフラグメントの生理食塩水中とリン脂質ミセルに内封された場合のコンホメーションを求めた。VIPと等しいモル濃度(すなわちVIP10〜28フラグメントで9μg/ml、VIP1〜12フラグメントで6μg/ml)にて30分間VIPフラグメントをリン脂質ミセルと共にインキュベートした後、CDスペクトルを測定した。帯域幅を1.0nm、ステップレゾリューションを0.5nmとし、近紫外域(200〜260nm)にて試料1つあたり平均で9枚の走査画像を得た。具体的には、リン脂質ミセルの存在下でのヒトVIPフラグメント(1〜12)および(10〜28)のCDスペクトルを図5に示す。(CDスペクトル解析については、生理食塩水中でのVIP(破線、灰色)、VIP1〜12(二点鎖線、灰色)およびVIP10〜28(破線、灰色)を、リン脂質の存在下でのVIP(実線、黒)、VIP1〜12(一点鎖線、灰色)およびVIP10〜28(実線、灰色)と対比してある。いずれも試料1つあたり9枚の走査画像から得た平均スペクトルである。)VIP1〜12フラグメントのスペクトルは生理食塩水でSSMの存在下では203nmで極小であり、主にランダムコイル構造であることが分かる。一方、SSMの存在下でのVIP10〜28のスペクトルには208nmと225nmの2回極小が認められることから、α−ヘリックス構造が優勢であると思われる。VIP10〜28の生理食塩水でのスペクトルは203nmで極小であり、主にランダムコイル状のコンホメーションであることが分かる。これらの作用は、生理食塩水中およびリン脂質の存在下で求めたVIPフラグメントのヘリシティ(%)と十分に相関がある(表1)。
VIPフラグメントのCDスペクトルから、ペプチドのα−ヘリックス領域がVIPの10〜28アミノ酸配列にあることが明らかに分かる。本願発明者ら以外にも、有機溶媒中でVIPのCDスペクトルを用いてこの現象を観察した人がいる。VIP10〜28でα−ヘリックスが形成されることから、このペプチドのインビボにおけるアンタゴニストとしての生理活性を説明しやすくなる。かつて本願発明者らの実験室で観察したハムスターの頬袋での微小循環において、VIP10〜28フラグメントから本来のVIP応答が完全に失われ、SSL応答におけるVIPの作用が弱くなったことがあった(Sejourneら、Pharm.Res.14(3):362〜365(1997))。この機序はVIP10〜28のα−ヘリックス構造によって説明可能なものであり、これによってフラグメントをVIP−受容体部位と結合させて受容体のVIPとの相互作用を阻害できる。VIP10〜28は、平滑筋上で1種類のVIPと結合することが報告されている(Rorstadら、Mol.Pharmacol.37:971〜977(1990))。
実施例4の方法を繰り返し、室温および37℃にてバソプレッシン(VP)の生理食塩水中とリン脂質ミセルに内封した場合のコンホメーションを求めた。VIPに等しいモル濃度(すなわちリン脂質1.0μmol/ml中に4μg/mlのVP)で30分間VPをリン脂質ミセルと共にインキュベートした後、CDスペクトルを測定した。帯域幅を1.0nm、ステップレゾリューションを0.5nmとし、近紫外域(200〜260nm)にて試料1つあたり平均で9枚の走査画像を得た。溶融石英CDセルを囲むジャケットに取り付けた循環水浴を用いて、スペクトル解析時の温度を維持した。
SSLとして投与した後に長い滞留時間と活性についてバソプレッシン(VP)が試験されてきている。したがって、この研究調査では、VPもリポソームの二重層との会合によって作用するのか否かを判断することを意図していた。VPをSSMと共にインキュベートし、CDスペクトルの旋光解析を行った。図6(VP(点線、灰色)およびVIP(点線、黒)の生理食塩水中でのCDスペクトル解析結果をVP(実線、灰色)およびVIP(実線、黒)のミセル存在下での結果と対比してある。いずれも試料1つあたり9枚の走査画像から得た平均スペクトルである。)は、バソプレッシンの生理食塩水中およびSSMの存在下でのCDスペクトルをVIPスペクトルと対比して示す図である。このスペクトルから、生理食塩水中およびSSMの存在下でのVPは204nmに極小のある同様のスペクトルを有し、いずれの場合も主にランダムコイル状のコンホメーションをとっていることが分かる。
予想通り、リン脂質ミセルの存在(脂質環境よりも水性媒体に対する親和性が高いことおよび/または非可撓性でミセルコアへの嵌入または貫通ができないことが最も可能性のある要因)がゆえにバソプレッシンのコンホメーションには何ら有意な変化は認められなかった。
したがって、コンホメーションについての研究調査から、ミセルコアまたは脂質二重膜を貫通するために、ペプチド分子はコンホメーションが変化するよう可撓性で、かつ、疎水性環境に対する親和性を有するものでなければならないことが分かる。さらに、ペプチド−リン脂質間の相互作用が起こりやすくなるのは、PEG−DSPEの負の電荷によって静電引力が発生することが原因である可能性が最も高い。したがって、CDスペクトル解析から、まず静電引力、次いで安定したα−ヘリックスコンホメーションによって、VIPが疎水性のミセルコアまたはリポソーム二重層に侵入し、これによってインビボ活性が得られるアクティブ型のコンホメーションをとるVIPとなる可能性が最も高いことが分かる。
本実施例では、SSMに内封したVIPの血管弛緩作用を次のような方法で求めた。具体的には、オスのゴールデンシリアンハムスターの成体をSasco(ネブラスカ州オマハ)から購入した。正常血圧を制御したオスの本態性高血圧自然発症成体ハムスターをCanadian Hybrid Farms(カナダ、ノバスコシア州Halls Harbour)から購入した。
ハムスターを遺伝性心筋症のゴールデンシリアンハムスターおよび健常なゴールデンシリアンハムスターと交配した後、高血圧症の動物を同定した。本願発明者らの研究室では、かつてこれらのアルビノ動物を使用したことがある(Rubinsteinら、Biochem.Biophys.Res.Commun.183:1117〜1123(1992)、Artwohlら、FASEB J.10:A629(1996))。ペントバルビタールナトリウム(体重100gあたり6mg、i.p.)で動物を麻酔した。気管を切開し、自発呼吸を容易にした。大腿静脈にカニューレを挿入し、実験の間追加の麻酔薬を注入した(体重100gあたり2〜4mg/時)。体温を一定(37〜38℃)に維持し、実験が終わるまで加熱用パッドとフィードバックコントローラとを介してモニタリングした。
VIPをin situにて拡散させることによって得られる、SSMに内封した場合の生理活性を、ハムスターの頬袋での微小循環を可視化することによって求めた。本願発明者らの研究室で過去に開発した方法によって、頬袋での微小循環を局所的に可視化した(Suzukiら、Life Sci.57:1451〜1457(1995)、Suzukiら、Am.J.Physiol.271:R393〜R397(1996)、Suzukiら、Am.J.Physiol.271:H282〜H287(1996))。簡単に説明すると、左側の頬袋を小さなプラスチック製のベースプレートに拡げ、外側の皮膚を切開して頬袋の膜を露出させた。無血管性結合組織層を除去し、ベースプレートにプラスチック製のチャンバをかぶせ、皮膚を上側のチャンバの周囲に縫合して適所に固定した。これによって、ベースプレートと、露出した頬袋の膜と、上側のチャンバとの三層で構成される複合体が得られる。上述したような最初の作業の後、加熱した顕微鏡のステージにハムスターを移した。温めた重炭酸緩衝液(37〜38℃)が入った容器にチャンバを連結し、頬袋を連続的に灌流(suffusion)できるようにした。95%N2−5%CO2(pH7.4)を用いて緩衝液に連続して気泡を導入した。また、三方操作弁を介して、灌流緩衝液(suffusion buffer)への薬物の定量投与を可能にするインフュージョンポンプ(マサチューセッツ州ケンブリッジ、Sage Instruments)にもチャンバを連結した。
100Wの水銀光源を用いて頬袋の微小循環を落射照明し、倍率を×40とした顕微鏡(日本の東京の株式会社ニコン)で観察した。低光量対応のTVカメラと、モニタと、ビデオテープレコーダ(日本の横浜のパナソニック)で構成される閉回路テレビシステムに、顕微鏡を介して画像を投影した。ビデオマイクロメータ(VIA 100、アリゾナ州トゥーソン、Boeckeler Instruments)を用いて、顕微鏡画像のビデオ映像から、頬袋での血管抵抗を調節する第二次細動脈の内壁直径(44〜62mm)(Raud、Acta Physiol.Scand.(Suppl.)578:1〜58(1989)、Suzukiら、Life Sci.57:1451〜1457(1995)、Suzukiら、Am.J.Physiol.271:R393〜R397(1996))を測定した。顕微鏡のステージでのマイクロメータを用いてビデオシステムの倍率を較正し、マイクロメータで微小循環系のディメンションが得られるようにした。ビデオモニタ画面の明瞭度と頬袋の細動脈分枝パターン内での位置をパラメータとして用いて、観察用として選択した血管を判定した。いくつかの実験では、過去の実験時に得られた細動脈径測定値を基線に戻した後、2以上の処理群で動物を使用した(実験プロトコルを参照のこと)。
立体的に安定化されたリン脂質ミセル(SSM)でVIPを0.1nmolおよび1.0nmolの量で7分ずつ灌流すると、ハムスター頬袋の微小循環における細動脈で、温度依存性かつ長時間にわたる有意な血管拡張が誘発された。細動脈径は基線値(図7;平均±SEM、各群n=3、p<0.05)からそれぞれ20.2±2.4%および24.5±1%増加した。灌流開始から2分以内に有意な血管拡張が認められ、4分以内に血管拡張が最大になった。細動脈径は、VIP−SSMの灌流を停止した後7分(0.1nmol)および11分(1.0nmol)で基線値に戻った。内封物のないSSMと未変性のVIPのみ、細動脈径に対する有意な影響が認められなかった(図7:0.1nmol(三角形)および1.0nmol(四角形)のVIP−SSMならびに内封物のないSSM(丸形)を灌流している間(7分間)と灌流後の細動脈径の変化を示す。白い横棒は灌流継続時間。値はいずれも平均±SEM、各群、n=4、*p<0.05、基線と比較)。
血管弛緩についての研究調査の結果から、in situにてSSMに内封してVIPをハムスターの頬袋に灌流することが、温度依存性かつ長時間にわたる有意な血管拡張と関連していることが明らかになった。ミセルは動的で灌流時に崩壊するであろうと思われるため、このようにSSMに内封するとVIPの活性が長時間持続するというのは驚くべきことである。したがって、活性の持続時間が延長されることから、おそらくVIPが存在することで、疎水性の相互作用によってVIP−リン脂質複合体を形成することができ、これによってミセルが長時間にわたって無傷のまま維持され、ミセルが安定しているのであろうということが分かる。キャリアの滞留時間を延ばすことに成功し、ペプチドを安定してローディングすることで生成物の徐放が可能になったことで、VIP−SSMの活性が長時間持続するようになった可能性がある。さらに、SSLよりもSSMの方がサイズが小さいため、滞留時間がさらに延長され、作用の持続時間がさらに延長された可能性もある。また、SSMのサイズは小さいため、リポソームが侵入できない領域にも移行でき、これによってその生物分布が大きくなっている。
血管収縮薬ペプチドであるアンギオテンシンIIおよびガラニンを用いて実施した実験では、ペプチドを実施例11で後述するようにして調製した「SI」ミセルと会合させた場合に、生物学的活性に同じタイプの増加が検出された。ミセル製剤中0.06nmolの用量でアンジオテンシンIIを用いると、生理食塩水の緩衝液のみでのアンジオテンシンIIと比べて血管収縮が2倍から4倍になった。SI(実施例11)ミセル製剤中ガラニンを0.1nmolの用量で用いると、緩衝液中のガラニンの場合と比べて血管収縮は約2倍であった。さらに高い用量(1.0nmol)で、ミセルに内封したガラニンによる効果は緩衝液中のガラニンよりも依然として有意に高かった(約33%)。
本実施例では、SSMに内封したVIPの血管弛緩作用に対するカルモジュリン(CaM)の役割を実施例7の方法に従って求めた。具体的には、SSMに内封したVIP+CaM 0.1nmolを7分間灌流すると、ハムスター頬袋の微小循環で細動脈に対するVIP−SSM誘導血管拡張の効能が有意に延長された。細動脈径は基線値から40±1%増加した(図8;平均±SEM、各群、n=4、p<0.05)。灌流開始から2分以内に有意な血管拡張が認められ、5分以内に血管拡張が最大になった。細動脈径は、VIP+CaM−SSMの灌流を停止した後8分で基線値に戻った。内封物のないCaM−SSMと未変性のVIPのみ、細動脈径に対する有意な影響が認められなかった(図8:VIP−SSMを0.1nmol(三角形)、VIP+CaM−SSMを0.1nmol(四角形)、CaM−SSL(丸形)を灌流している間(7分間)と灌流後の細動脈径の変化を示す。CaM濃度は10-10Mとした。白い横棒は灌流継続時間。値はいずれも平均±SEM、各群、n=4、*p<0.05、基線と比較)。
これらの研究調査の結果から、SSMに内封してVIP+CaMを灌流すると、SSMに内封したVIPによって頬袋循環で温度依存性かつ長時間にわたる有意な血管拡張が助長されることが明らかになった。このような助長効果は、ある程度はリン脂質との間でのカルモジュリンの相互作用によってその疎水性−タンパク質結合領域が露出することに起因している可能性がある。また、この疎水性領域は、SSMの疎水性環境の増加によってVIPのα−ヘリックスコンホメーションを促進する。α−ヘリックス構造のVIPの増幅によって、受容体反応性複合体の誘導が亢進され、膜と膜結合タンパク質との間の直接的な接触が促進されてVIPの第2メッセンジャー作用が高まる可能性がある。さらに、CaMを添加することでCMCが低下してミセル数の増加につながり、これがさらに溶液の疎水性を高めてα−ヘリックス構造の増幅を引き起こしている可能性がある。このように利用できる活性VIP量が増加することが、SSMに内封したVIPの血管拡張がCaMによって助長される機序である可能性がある。
本実施例では、上記の実施例におけるSSMが平均動脈圧に対して及ぼす降圧作用を求める。
平均動脈圧を求めるために、ハムスターの左大腿動脈にカテーテルを挿入し、圧力トランスデューサおよびストリップチャートレコーダ(オハイオ州バレービュー、Gould Instrument Systems Inc.、モデル260)を使用して全身動脈圧および心拍数を記録する。動物の麻酔維持のため平均動脈圧のモニタリングを6時間に制限した。カニューレを挿入した大腿静脈を用いて生成物を静脈注射した。高血圧症ハムスターに、SSMに内封したVIP(0.1nmol)を0.5ml/分の速度で1分間静脈(i.v.)注射する。VIPのみ(0.1nmol)と内封物のないSSM(VIPが内封されている場合は濃度0.1nmolに等しいすなわち、〜18nmolリン脂質)も高血圧症のハムスターに注射した。平均動脈圧(MAP)を5分ごとに6時間のあいだ算出した。麻酔薬の注射に関連した変動については考慮しなかった。
本実施例の一態様では、正常血圧のハムスターで静脈内に投与した場合のVIP−SSMの作用について研究調査を実施する。VIP SSL(0.1nmol)、内封物のないSSL、VIPのみ(0.1nmol)を高血圧症ハムスターの場合と同一速度で正常血圧のハムスターに注射する。ハムスターの下に敷いた温水パッドを用いてハムスターの体温を維持する。本態性高血圧自然発症ハムスターにVIP−SSMを静脈内投与すると、有意な降圧作用が長時間にわたって得られるものと思われる。
本実施例では、両親媒性化合物を含むミセルを生成するための別の方法を設計した。この別の調製方法は、実施例1で説明した方法と比べて、本発明のミセルの安全かつ大規模な製造に一層容易に適用可能なものである。この方法を、ほとんどが阻害性で過分極型の生物学的活性を有する30アミノ酸長の神経ペプチドであるヒトガラニンを用いて、以下のようにして実証する。
DSPE−PEG(16.5mg、分子量2748.01)を20mlのガラス製バイアルに入れ、生理食塩水の緩衝液6mlを添加して最終DSPE−PEG濃度1.0μmol/mlを得た。この混合物を、溶液が透明になるまで1分間ボルテックスした後、バイアルをアルゴンでパージしてパラフィンで密封した。この混合物を室温にて1時間放置するか混合物から気泡が抜けるまで放置した。このようにして得られるミセル溶液を「SI」とした。ヒトガラニン(分子量3158.1)12μgをポリプロピレンチューブに入れ、SIミセル製剤5mlをチューブに加えて最終ガラニン濃度1nmol/1.4mlを得た。この混合物を10秒間ボルテックスし、室温にて2時間インキュベートした。このようにして得られるガラニン含有ミセルのサイズを実施例3で説明したようにしてQELSで測定したところ、17〜20nmであった。
本実施例では、DSPE−PEGミセル組成物を用いて、通常であれば水不溶性の化合物の可溶性の増大についてさらに調査を行った。また、封入された水不溶性化合物に加えてターゲティング剤を含むミセルを調製するための方法も設計した。薬物の可溶性については以下のようにして求めた。
過剰量の薬物を粉末形態で加えることで、実施例1において上述したような成膜方法を用いて調製したPC/胆汁酸塩またはDSPE−PEGの入ったポリエチレン製マイクロチューブに活性薬を仕込んだ。余分な薬物を遠心分離によって除去し、上澄みをHPLCによって解析した。プロゲステロンの場合、HPLC条件にYMC−CN(A−503、250×内径4.6)カラム、アセトニトリルと水(40:60)とを含む移動相、流量1.5ml/分を含めた。HPLC溶離剤を測定したところ、254nmに吸収が認められた。PC/胆汁酸塩混合ミセルでプロゲステロン対脂質の比率を求めたところ、0.0156であった。DSPE−PEGミセルでは、プロゲステロン対脂質の比率は0.17であることが分かった。
これらの結果から、DSPE−PEG 10mg/mlでプロゲステロン(上述したように本質的に水に不溶である)が最大198.5μg/mlまで可溶であることが明らかになった。この結果は、DSPE−PEG 10mg/mlで水に難溶であるベツリン酸を用いた場合に最大で200μg/mlまで可溶であった結果と一致した(メルクインデックス第12版、第1213頁を参照のこと)。ベツリン酸(USPに定義されているように不溶性である)を用いる同様の実験で可溶性を算出したところ、SSMまたはSSCで250μg/mlであった。
ミセルを含む標的薬物送達系を設計するにあたり、所望の化合物を上述したようにしてミセル組成物に取り込む。実施例1で説明したように、このようにして得られるミセル組成物を両親媒性化合物と共にインキュベートし、ミセル表面に化合物が取り込まれるようにする。このような構成の膜関連化合物は、膜関連タンパク質に対する受容体などに送達されるミセル組成物全体に対するターゲティング剤として作用する。別の方法では、amphilicな化合物を、好ましくは共有結合的な修飾によって、ミセルの脂質成分のうちのひとつまたは複数と結合させる。これらの機序のうちどちらを利用するにしても、ミセルに取り込んだ薬物をミセルで担持し、同族の受容体を発現する標的細胞または組織型に送達することが可能である。
たとえば、乳癌細胞は健常な乳房細胞よりも高レベルでVIP受容体を発現する。したがって、膜関連VIPを含むミセルは、健常な細胞よりも乳癌細胞を優先的に結合する。Taxol(登録商標)は乳癌細胞を死滅させることが明らかになっているため、Taxol(登録商標)をVIP/ミセルに取り込むことで、腫瘍細胞型を選択的に死滅させるべく標的薬物を送達することができる。
本実施例では、DSPE−PEGミセル組成物を用いて、通常であれば水不溶性の化合物の可溶性の増大についてさらに調査を行った。また、封入された水不溶性化合物に加えてターゲティング剤を含むミセルを調製するための方法も設計した。薬物の可溶性については以下のようにして求めた。
過剰量の薬物を粉末形態で加えることで、実施例1において上述したような成膜方法を用いて調製したPC/胆汁酸塩またはDSPE−PEGの入ったポリエチレン製マイクロチューブに活性薬を仕込んだ。余分な薬物を遠心分離によって除去し、上澄みをHPLCによって解析した。プロゲステロンの場合、HPLC条件にYMC−CN(A−503、250×内径4.6)カラム、アセトニトリルと水(40:60)とを含む移動相、流量1.5ml/分を含めた。HPLC溶離剤を測定したところ、254nmに吸収が認められた。PC/胆汁酸塩混合ミセルでプロゲステロン対脂質の比率を求めたところ、0.0156であった。DSPE−PEGミセルでは、プロゲステロン対脂質の比率は0.17であることが分かった。
これらの結果から、DSPE−PEG 10mg/mlでプロゲステロン(上述したように本質的に水に不溶である)が最大198.5μg/mlまで可溶であることが明らかになった。この結果は、DSPE−PEG 10mg/mlで水に難溶であるベツリン酸を用いた場合に最大で200μg/mlまで可溶であった結果と一致した(メルクインデックス第12版、第1213頁を参照のこと)。ベツリン酸(USPに定義されているように不溶性である)を用いる同様の実験で可溶性を算出したところ、SSMまたはSSCで250μg/mlであった。
ミセルを含む標的薬物送達系を設計するにあたり、所望の化合物を上述したようにしてミセル組成物に取り込む。実施例1で説明したように、このようにして得られるミセル組成物を両親媒性化合物と共にインキュベートし、ミセル表面に化合物が取り込まれるようにする。このような構成の膜関連化合物は、膜関連タンパク質に対する受容体などに送達されるミセル組成物全体に対するターゲティング剤として作用する。別の方法では、amphilicな化合物を、好ましくは共有結合的な修飾によって、ミセルの脂質成分のうちのひとつまたは複数と結合させる。これらの機序のうちどちらを利用するにしても、ミセルに取り込んだ薬物をミセルで担持し、同族の受容体を発現する標的細胞または組織型に送達することが可能である。
たとえば、乳癌細胞は健常な乳房細胞よりも高レベルでVIP受容体を発現する。したがって、膜関連VIPを含むミセルは、健常な細胞よりも乳癌細胞を優先的に結合する。パクリタキセル(Taxol(登録商標))は乳癌細胞を死滅させることが明らかになっているため、パクリタキセル(Taxol(登録商標))をVIP/ミセルに取り込むことで、腫瘍細胞型を選択的に死滅させるべく標的薬物を送達することができる。
本発明のこの態様では、エンセリン(enthelin)−1(ET−1)単独またはSSM組成での輸液が、麻酔下のラットで、平均動脈圧(MAP)、心拍出量(CO)、全末梢抵抗(TPR)、局所的血液循環に対して及ぼす影響について、放射性のマイクロスフェアによる手法を用いて検討した。実施例11で説明した方法に従って、DSPE−PEGを生理食塩水中で用いてET−1を含むSSMまたは含まないSSMを調製した。各群ごとの処置は以下のとおりである。(i)対照、SSM 2.7mg/ml(n=6)、(ii)50ng/kg/分(n=5)でET−1輸液、(iii)50ng/kg/分でSSMに内封してET−1を輸液(n=8)。0.1ml/分の速度で30分かけて薬物を輸液した。
これらの結果から、MAP、CO、TPRまたは消化管(GIT)への血流にSSMが影響することはないが、基線に対し腎臓への血流増加(約25%)と脳への血流増加(約19%)が観察された。腎臓、GIT、脳では血流が減少して血管抵抗が大きくなった。SSMに内封したET−1を使用すると、ET−1単独の場合と比べて有意に顕著な心臓血管作用が得られた。TPRの増加はET−1群で102%、SSMに内封したET−1を用いて処理した群では227%であった。腎臓の血管抵抗はET−1群で76%、SSMに内封したET−1を用いて処理した群では281%であった。しかしながら、脳では、血管抵抗はET−1群で62%、SSMに内封したET−1を用いて処理した群では20%であった。これらの結果から、MAP、TPRおよび局所血管抵抗の変化はSSMに内封したET−1によって助長されることが明らかになった。
本発明のこの態様では、本発明のミセル生成物が凍結保存後に細胞生存度を高める能力について検討した。この実験では、DMSO、DSPE−PEGミセル生成物またはVIP含有DSPE−PEGミセル生成物のいずれかと共に細胞を30分間インキュベートした上で、液体窒素中にて48時間保管した。液体窒素から取り出した後、細胞を解凍し、トリパンブルーを用いて標準的な染色法で細胞の生存度を測定した。
これらの結果から、VIPが会合したミセルまたは未会合のミセルでの処理後の細胞の生存度は、DMSOで処理した後の細胞の生存度以上であることが明らかになった。DMSOは周知であり、細胞の凍結保存分野において定常的に用いられているため、これらの結果からミセルを用いることで現状と同程度またはそれ以上の保護性を得ることができ、よって細胞保存用の別の保護剤になることが分かる。
この実施例で、立体的に安定したリン脂質ミセル(SSM)で自己会合したセクレチンの生理活性、受容体特異性及びコンホメーションが研究された。
DSPE−PEG2000は、生理食塩水に溶解された。乾燥粉末としてのセクレチンは添加され、また、室温で2時間インキュベートされた。麻酔をかけられた大人雄のシリアンハムスターの頬嚢は、Sejourneら、Am.J.Physiol、273:R387-R292(1997)で記載されるように微小循環の生存内顕微鏡学的な研究のために調製された。平均動脈圧及び心拍数は、モニタされて、また、実験の持続期間の全体にわたって有意に変動しなかった。頬嚢中の第2細動脈の直径は、単独又は7分間の頬嚢上のSSMでセクレチン(5nmol)の充填によって追従される30分間の緩衝剤の充填の間で、決定された。加えて、空のSSMは、同じように7分間満たされた。少なくとも2時間が次の充填の間で経過した。細動脈の直径が、1時間の医薬品の充填の前、並びに、1時間の医薬品の充填の間及び後に毎分測定された。SSM(5nmol)のセクレチンは、7分間充填された。2時間後、VIP10-28(50nmol)、選択的VIP受容体拮抗薬が、単独又は7分間のSSMでセクレチン(5nmol)の反復充填の前及び間で、30分間充填された。細動脈の直径は、上述のように決定された。生理食塩水及びSSM(5μM)のセクレチンのコンホメーションは、室温でJASCO J-710分光旋光計を使用して、円偏光二色性(CD)で決定された。
生理食塩水及びSSM(5mnol)のセクレチンの充填は、有意で会合され、また、細動脈の直径の増加を長くした(10.3±0.6%、14.4±0.7%[平均値±SEM]はそれぞれ、ベースラインから増加する;n=4;p、0.05)。細動脈の直径のSSMのセクレチンの効果は、時間とともにセクレチン単独によって誘導されるものよりかなり大きかった(n=4;p、0.05)。空のSSMの充填は、細動脈の直径の有意な効果を有しなかった。VIP10-28単独の充填は、細動脈の直径の有意な効果を有しなかった。しかしながら、それは、セクレチン及びSSM誘導の血管拡張のセクレチンを廃止した(n=4;p、0.05)。CD分光学は、セクレチンが生理食塩水において無秩序であることを明らかにした。しかしながら、それは、SSMの存在下で、かなりのα−へリックスコンホメーションと仮定する。
結果は、SSMとセクレチンの会合がインビボで無損傷の末梢の微小循環でその血管作用性の効果を増幅することを示した。この反応は、VPAC1受容体の刺激作用及びα−ヘリックスへのSSMのセクレチン分子のコンホメーション移行によってたいてい調整される。結果は、SSMのセクレチンがヒトの使用のための好ましい製剤であることを示す。
この実施例によれば、水性媒体でIL−2と相互作用して、安定させるDSPE−PEG5000の機能は、評価された。タンパクの安定性は、二次及び三次構造決定のための円偏光二色性及び蛍光分光学法、それぞれ、UVによる濁度及び視覚外観試験で測定された。
IL−2は、4つのα−螺旋状の塊内で単一のトリプトファンを含む疎水性タンパク質とよく特徴づけられる。三次構造が放出波長のシフトによってモニタされることができるという点で、これらの性状はIL−2典型をリン脂質と相互作用するとみなし、また、蛍光分光学法によって特徴づけられる。IL−2の等電点(pl)は、7.05である。このpHで、タンパクが化学的に最も安定であるが、物理的に少なくとも安定である。この実施例で、タンパクが物理的に相互作用的な環境を提供するために展開されて、電気的に中性であるために、IL−2はサイトカインのpIでDSPE−PEG5000の存在下で、保管された。
水性媒体でIL−2と相互作用して、安定させるDSPE−PEG5000の機能を決定するために、サンプルは、調整された。自然な状態でタンパクを得るために、純粋の凍結乾燥された組換えヒトIL−2(医薬品添加物でない)が、pH5.0で15mMの酢酸ナトリウムで溶解された。DSPE−PEG5000を乾燥させるために、pH7.1で100mMのTrisバッファを加えることによって、DSPE−PEG5000のミセル(100μM)が調製された。リン脂質混合物は、2分間ボルテックスされて、それから5分間の減圧下で超音波処理された。ミセルのサイズ(〜25nm)は、タンパクの添加の前にNicomp 380 Particle Size Analyzerにおいて評価された。タンパクは、ミセル溶液又はTrisバッファ単独に添加された。全てのタンパクのサンプルでIL−2の最終濃度は、0.12mg/mlであった。DSPE−PEG5000は、全てのDSPE−PEG5000のサンプルで70μMであった。溶液の最終pHは7.0と7.1との間であった。バッファ中のDSPE−PEG5000及びバッファ単独はコントロールとして含まれた。サンプルは、Iタイプ(FluoroTec(登録商標)コートされたスットパーを有するガラスの小びん)で保管されて、また、28日間、5℃及び25℃で保管された。実験は、二つ作製して実行された。
サンプル解析は、二次構造の変化のために円偏光二色性(CD)、三次構造の変化のために蛍光分光学法(励起295nm、放出305−500nm)、濁度のためにUV(A360)、並びに、視覚外観(色、透明度及び沈殿物)によって実施された。CDスペクトルは、%α−螺旋状含有量を決定するためにSELCON(Softsec Version 1.2、1996)によって分析された。
視覚濁度は、凍結乾燥されたタンパクの初期の再構成に強調された。しかしながら、タンパク溶液で観察される濁度は、バッファ単独との類似的希釈法と比較して、DSPE−PEG5000に添加して減少した。100mMのTrisバッファの100μMのDSPE−PEG5000のミセル(pH7.1)は、透明な、無色の溶液を与えた。増加された濁度はDSPE−PEG5000の劣化によって主に生じたと示唆して、25℃でIL−2/DSPE−PEG5000のサンプルで観察された濁度は、DSPE−PEG5000/バッファのサンプルで観察されたものと同じ割合で増加した。5℃で保管されたIL−2/DSPE−PEG5000のサンプルは、研究される28日間を通じて不変であった。
IL−2の二次構造は、全調査のためのDSPE−PEG5000の存在下で、保存されたのに、バッファ単独のIL−2は保存温度にかかわらず溶液の7日後に起源のα−螺旋状の構造の<50%で保持した。蛍光のピークシフトは、IL−2/DSPE−PEGのサンプル及びIL−2/バッファのサンプルの間で観察されなかった。しかしながら、IL−2/DSPE−PEG5000のサンプルの蛍光強度は、IL−2/バッファのサンプルよりかなり大きかった。バッファ単独のDSPE−PEG5000からの蛍光は、この相違を説明しない。蛍光強度の相違は、IL−2/バッファのサンプルに存在する多量の集合体及び沈殿物のためである。有意な量の沈殿物は、3日保存後でIL−2/バッファの視覚外観によって注意された。
結果は、IL−2が、タンパクのpIでDSPE−PEG5000と相互作用する(モル比W〜9:1)ことを示した。pH7の相互作用は、IL−2の身体的な安定性を増加させた。これらの結果が、比較的安全な、ペギレートされた(pegylated)リン脂質が5℃で少なくとも28日間の水性媒体でIL−2を安定させるために用いることができることを示唆した。相互作用の下にあるメカニズムは、不明なままである。
この実施例によれば、本発明のミセル組成物は、さらに特徴づけられる。特に、分子量2000、3000及び5000PEGに結合されたDSPEで調整された立体的に安定化したミセルの生理化学的な特性は、分析された。リン脂質の臨界ミセル濃度(CMC)は、水不溶性蛍光性プローブ(1,6−ジフェニル−1,3,5−ヘキサトリエン)を使用してpH7.4及び25℃で決定された。ミセルの大きさは、準弾性光散乱によって決定された。ミセルの可溶化潜在性は、モデル疎水性薬及びRP-HPLCとしてジアゼパムを使用して決定された。
結果として、0.5から1.5μMまで増加したDSPE−PEGのCMCは、2000から5000まで増加したPEGの分子量の範囲である。ミセルの平均の流体力学的直径(±SEM)は、PEG2000、3000及び5000にとってそれぞれ16.8±0.3、20.3±0.6及び23.9±2.1nmであった。さらに、PEG200、3000及び5000で溶解されたジアゼパムの最大濃度(±SD)は、一定の濃度のリン脂質(1mM)でそれぞれ288.97±7.51、224.26±6.22及び195.92±19.73μg/mlであった。
これらの結果は、DSPE−PEGのより短いPEG鎖長が、不溶解性の薬剤のための増加される可溶化潜在性を有する小さいミセルの大きさ及び低いCMCに帰着することを示している。DSPE−PEG2000のミセルが、小さい疎水性分子のためのより可溶化剤である(ミセル/モル脂質濃度の数の増加に関連がある)ことを示唆する。
この実施例によれば、溶液で1、2、3又は5KDaのPEGと結合したDSPE(単独又は卵黄ホスファチジルコリンと混合される(EYPC))は、空電(SLS)及び動的光散乱(DLS)によって研究された。
合計リン脂質濃度の機能として、SLS及びDLSは、単独又は25mole%EYPCとのどちらかで、名目上の分子量1、2、3又は5KDaのPEGと結合したDSPEで、ミセルを研究するために使用された。リン脂質は、メタノールで溶解されて、フィルムとして乾燥された。フィルムは、10mMのHEPESバッファ、pH7.4、0.15NaClで攪拌して溶解された。サンプルは、それから窒素で洗浄されて、封止されて、48時間室温で暗闇でインキュベートされた。サンプルは、ダストを除去するために、0.2μフィルタを通された。
下記の運動量移動の関数(O)としてSLS及びDLSを測定するために装置は設定される。Oは、数1として、散乱角、2θ、波長、λ=632.8及び媒質の屈折率、nに関する。
相関関数は、2×10-7と10sとの間で遅延時間でALV-5000 Multiple Tau Digital Correlatorを使用して測定される。大きな動的な範囲を超えて多角散乱強度及び相関関数は、ミセルの大きさ、形及び多分散の特性を詳述した。
球状粒子のSLSのためのGuinier近似(数2)、並びに、ロッド及びシートのための等価の形態(Hjelm他、J.Phys.Chem.、B104:197(2000))は、粒子回転半径(RgO<1.3Rg領域のRg及び形状)の評価をするために使用される。
時間に依存する相関関数の測定によって、DLSは粘性(η)の媒体中の粒子の拡散係数(D)の評価を与える。Dは、ストーク−アインシュタイン方程式(数3)による粒子水力学的半径(RH)を評価するために用いることができる。
これらの結果が、DSPE−PEG1000がサンプル又は混合された界面活性剤溶液のどちらかでミセルを形成しないことを示した。1、2、3又は5KDaのDSPE−PEGは、1.1mMのミセルを形成して、また、EYPCの有無に関わらずより小さい。EYPCについては、ミセルはかなりより大きかった。より高い濃度で、DSPE−PEG/EYPCの混合物は、異型接合体相を形成する。特定の形態の特性は、EYPCが単一のDSPE−PEGミセルに組み込まれるときに、特定の曲率及び形状がより大きい疎水性コアを与えるために変動するという予想に対処した、したがって、リン脂質ミセルの可溶化潜在性は改良する。結果は、サイズが第2のリン脂質の付加によって制御されていることができることを示す。アプローチがミセル薬剤送達システムを開発するために役立ってもよいことを示す。
この実施例によれば、本発明の治療の使用は、分析される。以前に、立体的に安定したリポソーム(SSL)は、それらの表面に非共有結合で会合するVIPによって調製された。しかしながら、これらのリポソームは,生体内原位置のラットの乳癌に活性に標的にでなかった。この実施例で、SSLに共有結合でVIPと結合させる必要は検討され、また、インビトロでn−メチルニトロソ尿素(MNU)誘導ラット乳癌に対するVIP−SSLのターゲッティング機能は、試験される。
DSPE−PEG3400−NHS[1,2−ジオレイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−[ポリ(エチレングリコール)]−N−ヒドロキシコハク酸アミド、PEGMw3400]、及び、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE−PEG2000)を結合させたポリエチレングリコール(Mw2000)は、Shearwater Polymers, Inc.(Huntsville, AL)から得られた。BODIPY-Chol(フロオレスセント(flourescent)コレステロール)は、Molecular Probers Inc.(Portland, OR)から得られた。Fluo-VIPTM(Portland, OR)。Fluo-VIPTMフルオレセインラベルVIPは、Advanced Bioconcept(Montreal, Quebec, カナダ)から購入された。VIP(ヒト/ラット)は、Research Resources Center, シカゴのUniversity of Illinoisで、Protein Research Laboratoryによって固相合成を用いて合成された。卵子−ホスファチジルコリン(PC)及びコレステロール(CH)は、Sygena(スイス)から得られた。抗原刺激を受けたことのない雌スピローグ−ドーリーラット(〜140gの体重)は、Harlan(Indianapolis, IN)から得られた。
動物を使用している調査を実施することにおいて、調査者はInstitutional Animal Care Committee ガイドライン、並びに、Guide for the Care及びUse of Laboratory Animals of the Institute of Laboratory Animal Resources(National Research Council)に固守した。
活性DSPE−PEG(DSPE−PEG3400−NHS)は、DSPE−PEG3400にVIPを接合するために使用された。この反応がアミンとNHS基との間で起こる(連結剤として作用する)。0.01Mの等圧のHEPES バッファ(pH6.6)で、1:5(VIP:DSPE−PEG3400−NHS)のモル比のVIP及びDSPE−PEG3400−NHSは、別に溶解された。DSPE−PEG3400−NHS溶液が4℃でVIP溶液に1−2分にわたる小さい増加に添加され、その後、残留するNHS部分を消費するために反応混合物にグリシン溶液を添加されることによって停止される。結合は、SDS-PAGE、並びに、第1のCoomassie Blue R-250及びそれから銀汚染で次の染色法を使用して試験された。DSPE−PEG3400(DSPE−PEG3400−VIP)に結合されたVIPは、その後蛍光VIP−SSLを調製するために使用された。
乳癌が、S.Dagar他、Breast Cancer Treatment, in press及びG.O. Udeani他、Cancer Research, 57:3424-3428(1997)で上記したように、MNUを有するラットに導入された。一時的に、抗原刺激を受けたことのない女性のスピローグ−ドーリーラット(36日後、体重〜140g)は、ケタミン/キシラジン(100gの体重につき13.3/1.3mg、i.m.)によって麻酔をかけられた。尾静脈を経て、各々の動物は、酸性化された食塩水(pH5.0)のMNU(50mg/kg体重)の単一の静注を受けた。ラットは、毎週体重測定された。それらは毎週触診された(3週間後−MNU投与から始まった)。触知可能な乳腺腫瘍は、注射後で100−150日以内で検出された。
インビトロのバインディングの試験のために、S. Dagar他、Pharm. Sci., 1:S-294(1998)及びM.Patel他、Proc. Int. Symp. Control. Rel. Bioact. Mat., 24:913-914(1997)で記載したように(しかし、脂質混合物中で1:1500のモル比(脂質:プローブ)でプローブを組み込まれた)、リポソームを含んでいるBODIPY−Chol(非交換できる蛍光プローブ)が、フィルム再水和−押出方法で調製された。卵子ホスファチジルコリン(PC)、コレステロール(CH)、DSPE−PEG2000及びジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)は、PC:DPPG:DSPE−PEG2000:CHのモル比を0.50:0.10:0.03:0.35で等圧の0.01MのHEPES バッファ(pH6.6)を使用して、フィルム再水和及び再構成によって立体的に安定したリポソームを形成するために使用された。これは、Liposofast(登録商標)(Avestin Inc. カナダ)押出機を使用して、ポリカーボネートフィルタ(100nm)で、押出しによって進められた。最終的なリポソームのサイズは、準弾性光散乱(NICOMP 370、ParticleSizing Systems, Santa Barbara, CA)を使用して決定されたように〜140nmであった。DSPE−PEG3400−VIPは、蛍光性VIP結合立体的に安定したリポソーム(VIP―SSL)を形成するために、4℃で一晩のインキュベートによってこれらの蛍光リポソームに挿入された。
ラットは、閉鎖室の二酸化炭素に露出によって安楽死した。正常及び癌性の胸部組織は、切除されて、液体窒素ですぐ凍結されて、使用まで−70℃で保存された。冷凍胸部組織は、20mmに切り分けられて、顕微鏡学的スライドに取着された。それらは、それから4%のホルムアルデヒドを固定されて、10分間乾燥空気に置かれた。5mm付近の厚さの凍結組織切片は、胸部組織の癌の有無を確認するためにヘモトキリン(hemotoxylin)及びエオシンで着色された。これらのラットの乳がん組織のVIP−Rの存在は、S.Dagar他、Breast Cancer Res. Treatment(2000) in pressにて記載されたように、蛍光VIP(Fluo-VIPTM)を使用して確認された。MNU導入ラット乳がん組織の20のマイクロメータ切片は、クライトメ(cryotome)を使用して切断され、スライドに載置され、20分間4%ホルマリンに固定され、その後10分間乾燥空気に置かれた。VIP−SSLを含んでいるBODIPY−Cholは、切片に添加されて、室温で、1時間インキュベートされた。インキュベート期間終了後、スライドは各々等圧の0.01MのHEPESバッファ(pH6.6)で、60秒間4回洗浄された。スライドは、それからZeiss Camera(Carl Zeiss Inc.,Thornwood, NY)によって観察されて、撮影された。全ての写真は、Kodak Elite Chrome 400写真フィルムを使用して2分の露出をとられた。VIP−SSLは、VIP無し又は非共有結合で会合するVIPとSSLと比較され、そして、組織に存在する蛍光リポソームの数の差は、MNU導入ラット乳がん組織にVIP−SSlの付着の差を示した。
反応条件は、pH、反応時間、反応温度、VIPのモル比のシステムの変化後で最適化された:DSPE−PEG3400−NHS及び攪拌割合。現在使用する反応(4℃2時間、pH6.6、穏やかな攪拌及び1:5のモル比)の状態が最善の結果を与えることが分かった。したがって、次の実験は、これらの最適化された状態を使用してされた。結合混合物の着色されたゲル(SDS−PAGE)は、大部分の生成物が1:1のVIPとDSPE−PEG3400との結合(DSPE−PEG3400−VIP)、フリーVIP、及び、1:2のVIPとDSPE−PEG3400との結合(1:1のDSPE−PEG3400−VIP結合と比較して非常により小さい範囲で存在する)であることを示した。さらに、乳がん組織の蛍光顕微写真は、より多くのVIP−SSLがMNU導入ラット乳がん組織切片に付着され、一方、VIPのない又は非共有結合会合VIPとSSLが有意な付着が示さなかったことを示した。
この実験において、VIPは、うまくDSPE−PEG3400に結合されて、VIP−SSL生成物を形成するために好ましい立体的に安定したリポソームに組み込まれた。結果は、インビトロでMNU導入ラット乳がんに、活性で目標とするこの新規な生成物の実施可能性を示した。
この例によれば、炎症性疾患(例えば、マウスのコラーゲン誘導関節炎(CIA))の治療のVIP−SSM及びその治療効果は、さらに特徴づけられて、評価された。以前、VIP(5.0nmol)の反復腹腔内注射がマウスのCIAを改善することを示した[Delgado他、Nat Med 7:563-568, (2001)]。しかしながら、インビボでその短い半減期は、その臨床用途を排除した。SSMのVIP(VIP−SSM)の送達は、その安定性、半減期及び標的病気組織を増加する[Onyuksel他、Pharm Res 16:155-160,(1999)]。したがって、この研究は、CIAを有するマウスのVIP−SSMの静脈内の送達の治療効果を検討した。
SSMは、前例において、及び、Onyaksel他(1999)によって上述の通りに調製された。VIP(1.0nmol)は、25℃2時間SSMとインキュベートされた。VIP−SSMのサイズは、動的光散乱で測定された。VIP−SSMの希釈法の効果は、サイズ排除クロマトグラフィによって決定された(SEC)。バッファ(1.0nmol及び5.0nmol)中のVIP−SSM(1.0nmol)及びVIPの効果は、22又は34日後−CIA誘導で治療されるCIAを有するマウスにおいて評価された。臨床の関節炎評点(CAS)及び後足厚さ(PT)は、45日後誘導まで記録された。
VIP−SSMのサイズは、〜17nmであった。SECは、VIP−SSMはサイログロブリンに比較的8.7分に溶出させられ、タンパク標識(〜20nm)は8.6分で溶出させることを示した。VIP−SSMは、12.8分でフリーVIPの軽微なピークを有する主要ピークであった。10倍の希釈法で、VIP−SSMは、フリーVIPの有意な増加なしで1つの主要ピークとして溶出させられた。予備的なPT及びCASのデータは、1.0nmolでバッファでVIP[22日(78.09%)及び34日(96.55%)、それぞれ]又は5.0nmolでバッファでVIP[22日(56.37%)及び34日(69.71%)、それぞれ]と比較して、VIP−SSM[22日(45.10%)及び34日(58.60%)、それぞれ]を有する22又は34日で治療されるマウスのCIAの減じられたプログレッションを示した。
この研究は、大部分のVIPが希釈でSSMと会合のままであることを証明した。さらに、5倍のより小さい濃度でバッファ単独のVIPのためより、VIP−SSMのために大きな希釈の有効性が示された。これらのデータは、VIP−SSMがマウスのCIPの治療に成功していることを示して、VIP−SSMが同様に他の炎症性疾患の治療のための新規な療法として使われることができることを示唆する。
この実施例によれば、SSM(VIP−SSM)のα−ヘリックスVIPの治療の送達が治療の炎症性疾患の治療として試験された。VIPによる短い半減期及び誘導低血圧症は、すでに炎症性疾患(例えば、リウマチ様関節炎(RA))の治療でその臨床用途を排除した。しかしながら、VIP−SSMの送達が、VIPの安定性、半減期及び生理活性を増加することを示された。したがって、この研究の目的は、コラーゲン−誘導関節炎(CIA)を有するマウスのα−ヘリックスVIP(VIP−SSM)の静脈内投与の効果を決定することになった。
VIP、VIP−SSM(各々、0.5、1.0及び5.0nmol)、空のミセル及びバッファは、22日又は34日後−CIA導入で尾静脈に導入された。臨床の関節炎評点(CAS)及び後足厚さ(PT)は、45日後−CIA導入まで記録された。システム血圧(SAP)は、抑制されたマウスの尾カフによって記録された。我々は、PTが、水溶液VIP(0.5、1.0及び5.0nmolの投薬量、それぞれ)で治療された動物のための85.63±6.20%、78.66±6.44%及び46.69±6.92%に対して、α−ヘリックスVIP(0.5、1.0及び5.0nmolの投薬量、それぞれ)で治療されたマウスのための38.34±4.64、35.36±2.05%及び26.47±2.94%によって増加することを発見した(n=4;p<0.05)。CAS減少は、α−ヘリックス VIP−及び水溶液VIP−治療マウスで治療後、PTに同様であった。空のミセルは、CIAに有意な効果を有しなかった。水溶液VIPと異なって、α−ヘリックスVIPはSAPで有意な効果を有しなかった。
集合的に、これらのデータは、低投薬量静脈内α−ヘリックスVIPがSAPで有意な効果なしで有意にマウスのCIAを減少することを示した。これらの結果は、SSMで送達されるα−ヘリックスVIPが炎症性疾患(例えば、RA)の治療のための新規な療法を示すことを示唆する。
この実施例によれば、SSMを有する卵子−ホスファチジルコリン(PC)をプラスして、立体的に安定した混合ミセル(SSMM)、ポリ(エチレングリコール−2000)グラフトジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(PEG(2000)-DSPE)からなるSSMは、水不溶性薬剤の送達のための新規なキャリアとして調査された。SSMMは、PCを組み込むことによって各々のSSMの疎水性コアを増加することによって可溶化潜在性を増加することによってSSMの可溶化潜在性を改良する。疎水性薬剤のためのミセルの可溶化容量を増加するとともに、このようにSSMの第二世代として、SSMMはSSMの全ての効果を保持した。この研究は、抗癌剤(パクリタキセル(別名、Taxol(登録商標)))の送達のための改良された薬剤送達システムとして、SSMMにインビトロの用途を調査し、それをSSMのパクリタキセルの送達と比較する(深刻な製剤課題を有する)(Terwogt他、Cancer Treat Rev. 23:87-95(1997); Kohler and Goldspiel, Pharmacotherapy 14:3-34(1994);van Zuylen他、Cancer Chemother Pharmacol. 47:309-318(2001)。
パクリタキセルは、次のような等圧の0.01MのHEPESバッファ(pH7.4)と共沈及び再水和作用によってSSM(P−SSM)及び立体的に安定した混合ミセル(P-SSMM)において可溶化された。一時的に、単純なミセルのために、0.16のモル比でパクリタキセル及びPEG(2000)-DSPEは、メタノールで溶解された。溶剤は、ドライフィルムを形成するためにアルゴンの流れの下で減圧回転式エバポーレションによって取り除かれた。このドライフィルムは、残留する溶剤のいかなる痕跡も取り除くために、一晩中減圧下でさらに乾燥した。ドライフィルムは、等圧の0.01MのHEPESバッファ(pH7.4)によって再水和された。溶液がそれからアルゴンで洗浄され、封止されて、室温で12時間平衡させられた。不溶化された過剰パクリタキセルは、透明な分散を得るために5分間13000gで遠心分離によって除去された。結晶形成の非存在下でパクリタキセルの最大溶解度は、5mMで結合されるリン脂質濃度を保ち、単一の同質系がサイズ分析によって単一のピークによって確認するように決定されるまで系統的に薬剤濃度(薬剤:リン脂質、モル比、0.076、0.078、0.082、0.088)を減少することによって、PEG(2000)-DSPEの単一のミセルにおいて決定された。
パクリタキセルを可溶化しているSSMMを調製するために、まず最初に、PEG(2000)-DSPE及びEPC(90:10、85:15、80:20及び75:25)のさまざまなモル比は、500μgのパクリタキセルに加えて共沈され、そして、上述したように同じ手順を行った。合計リン脂質濃度は、5mMで一定に保たれた。各々の製剤が3つ調製された。準備された分散は、それからそれらのサイズ及び形態のために特徴づけられて、それらの薬剤含有量のために検定された。SSM又はSSMMの最適製剤は、それから相同系の、及び、パクリタキセルのための最大値可溶化潜在性を有する構造に基づいて選択された。これらの最適SSM及びSSNM製剤は、生理活性のために試験された。遠心分離による過剰な薬剤の分離後、上澄の粒子の平均粒径及び形態は、下述される準弾性光散乱(QELS)及び透過型電子顕微鏡(TEM)で決定された。
パクリタキセルの準備された水性分散液の粒子径分布及び平均直径は、上述したセルホルダーを制御する632.8nm及び温度で5mWのHelium-Neonレーザを備えているNICOMP 380 Submicron Particle Sizer(Santa Barbara CA)を使用して、準弾性光散乱で決定された[Alkan-Onyuksel他、Pharm Res. 11:206-212(1994)]。平均の水力学的粒径、
は溶液の粒子の測定された拡散を使用してストーク−アインシュタイン関係から、得られた(η=0.933、T=23℃、n=1.33)。データは、体積及び強度加重分布に関して分析された。各々の報告された実験結果は、少なくとも20分間集積される自己相関関数の解析から得られる少なくとも3つの
値の平均である。
存在のパクリタキセル及びPEG(2000)-DSPEの非存在の形態は、ネガティブスティングを使用して透過型電子顕微鏡(TEM)によって視覚化された。PEG(2000)-DSPE(モル比、0.16)を有する及びPEG(2000)-DSPEを有さない準備されたパクリタキセル分散の滴は、炭素被覆銅格子に載置されて、1%のリンタングステン酸によって着色された。2−3分間の自然乾燥後、それはそれから電子顕微鏡(JEOL 100CX)の下で見られて、撮影された。
パクリタキセルのためのSSMM及びSSMの可溶化潜在性は、RP-HPLCで決定された。透明な水性分散液は、メタノールで希釈された。20μlの各々のサンプルは、μBondapak C-18カラム(C-18カラムガードを備えた3.9mm×30cm(Waters, Milford, MA))へ少なくとも3回投入された。カラムは、1.0ml/min(Water 600)でアセトニトリル/水(60:40)で溶出させられた。検出は、227nm(Waters 490)で、UV吸収測定によってあった。ピーク面積は、電子積分器(Hewlett Packard)に、検出器との入出力を行うことによって算出された。薬物濃度は、標準曲線から算出された。分析評価は試験された濃度域上の直線であり、分析評価とリン脂質の干渉がなかった。
SSMM、SSM及びジメチルスルホキシド(10%のDMSO)のパクリタキセルの細胞障害能活性は、ヒトの乳がん細胞に対して決定された(MCF-7;ATCC#HTB-22)。細胞株は、37℃の湿った5%二酸化炭素の大気において、10%のウシ胎仔血清及び抗生物質(ペニシリン及びストレプトマイシン)1.0%を含むRPMI 1640媒体で保持された。可溶化研究から選択されるパクリタキセル−SSM及びパクリタキセル−SSMMの最適溶液は、試験溶液として使用された。さらに、パクリタキセルの10%のジメチルスルホキシド(DMSO)溶液が、コントロールとして試験された。0.01MのHEPESバッファ(pH7.4)で、薬物フリー単純なミセル(SSM)及び混合ミセル(SSMM)が、試験溶液と同じ濃度で準備されて、コントロールとして使用された。溶媒、10%DMSO及びHEPESバッファは、製剤において使用される最も高い濃度で試験された。全てのサンプルは、調製されて、3つで試験された。
製剤のインビトロ細胞障害能活性を試験するために用いる手順は、上述した[Likhitwitayawuid他、J Nat Prod 56:30-38(1993)]。一時的に、以前に記載されているようにサンプルは準備され、連続希釈液が、HEPESバッファ又は10%のDMSOであるそれぞれの溶媒を使用して、0.0013から4μg/mlの範囲でパクリタキセル濃度を得るためにつくられた。6×104/mlの密度の190μLの細胞懸濁液は、96−ウェルプレートに塗布された。10μl/wellの試験溶液及びコントロールがミクロタイタープレートに添加された。さらに、コントロール群は、添加された10μlの溶媒に、加えられた。各々のサンプルは、3つで評価された。プレートは、それから37℃の湿った5%二酸化炭素の大気で3日間インキュベートされた。インキュベート期間後、細胞は、100μl/wellの冷たい20%トリクロロ酢酸(TCA)を加え、1時間4℃でインキュベートすることによって、プレートに固定された。プレートは、それから洗浄されて、空気乾燥されて、30分間の1%酢酸中で100μl/wellの0.4%Sulforhodamine Bで着色された。プレートは、それから1%酢酸によって洗浄され、すすがれ、また、10mMのTrisバッファ(200μl/well)が添加された。光学密度は、それから515nmで読み込まれた。溶媒コントロールのために得られる光学密度読み込みは、0日のコントロールのために得られる値のための修正後、100%の成長を定義するために使用された。%生残およびED50値が非線形回帰分析(パーセント生残対濃度)を使用して算出したので、これらの値はそれから表現された。
全てのデータは、平均値±標準偏差(SD)として表される。パクリタキセルの量が分散のml当たりで可溶化したので、パクリタキセルのためのSSMMの可溶化潜在性は示される。SSMMのための合計脂質量の増加で可溶化の増加は、回帰分析及びR−四角値による直線であると決定され、決定された直線に対する方程式であった。細胞障害能活性は、細胞のパーセンテージ生残として表され、Neuman-Keuls後の検査を有する重複測定分散分析法を使用してベースラインと比較された。ED50値は、各々の製剤のために算出されて、統計学的に一方向の分散分析を使用して比較された。p−値<0.05は、統計学的に有意であるとみなされた。
P-SSMM及びP-SSMの平均の流体力学的径は、それぞれ13.1±1.1nm及び15±1nm(n=3)であった。SSMMは、同じ合計脂質濃度のためのSSMより1.5倍のパクリタキセルを可溶化した。可溶化されたパクリタキセル量は、脂質濃度の増加と直線で増加した。SSAMの治療と関連した脂質濃度(15mM)は、1321±48μg/mlのパクリタキセルを可溶化した。充分なSSMの非存在下でパクリタキセルは、脂質被覆された結晶を形成するために凝集した。10%のDMSO中のP-SSMM、P-SSM及びパクリタキセルは、MCF-7細胞に対して比較的細胞障害能活性を有した。
このインビトロ研究は、脂質ベースの薬剤送達システム(SSMM)が水不溶性薬剤(例えば、パクリタキセル)の可溶化に適していることを証明した。SSMMは、SSM及び両方の製剤が培養されたMCF-7細胞に対して、有意な細胞障害能活性を示したより、パクリタキセルの高い濃度を可溶化した。全てのその効果を保持するとともに、SSMMはSSMと比較して増加する可溶化潜在性を示し、したがって、水不溶性薬剤のために、改良された脂質ベースのキャリアとして使用されることができる。この研究は、有効な化学療法送達系としてパクリタキセルを含んでいるSSM及びSSMMのための潜在性を示した。
この実施例によれば、ペジレート(pegylated)されたリン脂質の安定性がペジレートされたリン脂質(例えば、メトキシ−PEG−ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE-PEG)とモデルタンパク(例えば、ミエロポイエチン(myelopoietin)(MPO))との間の相互作用は、ミセルへのタンパクの取り込みによって又は個々のタンパク分子の脂質コーティングによって定めるかどうか決定するために研究された。最近の研究は、その生物適合性(biocompatable)なPEGylatedされたリン脂質(例えば、DSPE-PEG 5000)はモデルサイトカインインターロイキン−2(IL-2)と相互作用し、安定化したことを明らかにした(Kirchhoff他、Proc. Controlled Release of Bioactive Materials, abstr. #5188, 2001)。PEG鎖長の衝撃及び空想的なサイトカイン(MPO)を有するPEGylatedされたリン脂質の相互作用/物質の錯体化のさまざまなモル比は、評価された。
タンパクの物質的な不安定は、凝集/沈殿析出及び/又は生理活性の損失に結果としてなっている配座変化に至る。いくつかの両親媒性の神経ペプチド(VIP、セクレチン及びPACAP)を有するDSPE-PEG(Onyuksel他、 Pharm Res 16:155-160, 1999; Gandhi 他、Peptides 23:1433-1439, 2002;及び、Tsueshita他、J Appl Physiol 93:1377-1383, 2002)とタンパク(組換え体ヒトIL-2)(Kirchhoff他、Proc. Controlled Release of Bioactive Materials, abstr. #5188, 2001)との相互作用は、増加する安定性に結果としてなったことを、以前報告した。しかしながら、タンパクを有するDSPE-PEGの相互作用のメカニズムは、明らかでなかった。したがって、この研究は、DSPE-PEGとMPOとの間の相互作用は、ミセルへのタンパクの取り込みによって又は個々のタンパク質分子の脂質コーティングによって定めるかどうか決定するために引き受けられた。
MPOが、好中球減少症及び血小板減少症の治療のために使用された(Dempke他、Anticancer Research 20:5155-5164, 2000)。それは、33kDaのタンパク(空想的なサイトカイン及び二相の作用薬として作用する)である;それは、二次構造2×4α−ヘリカル束を有する(McWherter他、Biochemistry 38:4564-4571, 1999)。MPOは、3つのトリプトファン(Trp)残留物及び蛍光は部分的に露出したTrpを示唆するそれを含む。それが電気的に中性で、最も化学的に安定していて、最も少なく物理的に安定している、等電点は5.6である。
DSPE-PEG2000及び5000:MPO分散の準備は、以下のように完了された。脂質は、pH5.6バッファで溶解されて、ボルテックスされて、DSPE-PEG溶液を得るために超音波で分散された。MPO株は、DSPE-PEG溶液に添加されて、3時間釣り合うことができた。MPOは、さまざまな時限のための室温で等電点でDSPE-PEGミセルとインキュベートされた。DSPE-PEGとMPOとの相互作用蛍光は、その後蛍光分光学法で測定された。蛍光強度は、DSPE-PEG-5000:MPOのさまざまなモル比のためにさまざまな波長で測定された。蛍光放出ピークは、DSPE-PEG 2000及び5000:MPOのさまざまなモル比で測定された(励起295nm;放出305−410nm)。蛍光放出ピークシフト(FEPS)は、錯体化をモニタした。二次構造後錯体化は、円偏光二色性によって評価された:260−198nmから走査された。9nmまでのFEPSは、PEGylatedされた脂質がタンパクと相互作用したことを示しているDSPE-PEG:MPOモル比の≧50:1のために見られた。この効果は、PEG鎖長で変化しなかった。二次構造は、タンパク活性の保持を提案しているDSPE-PEG:MPOモル比に関係なく相互作用のままだった。
DSPE-PEG2000及び5000は、タンパクの等電点の濃度依存方法のMPOと錯体をつくり、二次構造を節約して、タンパク安定性を改良した。類似的FEPS(MPO とDSPE-PEG 2000及びDSPE-PEG 5000との自発性錯体化によって観察した)は、脂質モノマーがDSPE-PEGミセルに組み込まれているMPOよりむしろMPO分子を塗着することを示唆する。したがって、DSPE-PEGが、水溶液タンパク製剤のための安定化医薬賦形剤として使われることができ、この新規な実例は、水溶液の治療のタンパクの安定化のために利用されることができた。一例として上記にて説明した本発明に対し、当業者であればさまざまな修正および変更を施すことが可能であろう。したがって、本発明を限定できるのは添付の特許請求の範囲に記載の内容のみである。
室温にて臨界ミセル濃度(CMC)を求めるためのPEG−DSPE水溶液の表面張力測定値を示す図である。
室温にて、生理食塩水、ヘペス緩衝液、リン脂質中で得たVIPのCDスペクトル解析結果を示す図である。
室温および37度で得たVIPのCDスペクトル解析結果を示す図である。
生理食塩水およびリン脂質中で、VIPのCDスペクトル解析結果に対してカルモジュリンがどのような影響を及ぼすかを示した図である。
生理食塩水およびリン脂質中で得た、VIPフラグメントのCDスペクトル解析結果を示す図である。
生理食塩水およびリン脂質中で得た、VIPおよびバソプレッシン(VP)のCDスペクトル解析結果を示す図である。
VIP−SSMが血管拡張に対して及ぼす影響について示す図である。
カルモジュリンがVIP−SSM誘導血管拡張に対して及ぼす影響について示す図である。