発明の詳細な説明
本発明は、左入力信号と右入力信号よりなるステレオ信号をエンハンスするために適合した回路に関する。
本発明は、左入力信号と右入力信号よりなるステレオ信号をエンハンスする方法にも関する。
本発明は、音声データを再生する装置にも関する。
本発明はさらに、プロセッサにより実行可能な命令よりなる記録媒体に関する。
このような回路はEP0664661A1で開示されている。開示された信号は左入力信号と右入力信号が等しくないときエンハンスされたステレオ信号を生成する。
EP0664661A1に開示された回路には、左入力信号と右入力信号の位相は等しいが振幅が異なるときステレオ信号をエンハンスするという欠点がある。ステレオ信号が左入力信号と右入力信号の位相は等しいが振幅が異なるdialogを含むとき、dialogのステレオイメージはEP0664661A1に開示された回路によりエンハンスされてしまう。これはユーザにとって好ましくない。
本発明の目的は、従来技術の欠点を軽減することである。
本発明によると、この目的は、左入力信号および右入力信号よりなるステレオ信号をエンハンスするのに適合した回路であって、前記左入力信号と前記右入力信号の間の相互相関を算出する手段と、前記相互相関に基づきエンハンスされた左信号とエンハンスされた右信号よりなる、前記相互相関が小さいほど強いエンハンスされたステレオ信号を生成する手段と、左出力信号を取得するために前記左入力信号と前記エンハンスされた左信号とを加える第1の加算手段と、右出力信号を取得するために前記右入力信号と前記エンハンスされた右信号とを加える第2の加算手段とよりなることを特徴とする回路により達成される。
これは左入力信号と右入力信号が小さな(相互)相関を有するときにだけステレオ信号がエンハンスされるという利点を有する。
本発明による回路の実施形態は、前記回路が差信号を取得するために前記右入力信号と前記左入力信号をお互いにそれぞれから差し引き、前記相互相関と前記差信号に応じて前記エンハンスされた左信号を生成し、前記相互相関と前記差信号に応じて前記エンハンスされた右信号を生成するのにさらに適合したことを特徴とする。
これは左入力信号と右出力信号とが最大限異なるとき、ステレオ信号を広げる(ステレオ信号をエンハンスする効果のひとつ)効果がより強くなるという利点を有する。これはシステムのユーザに特別な空間的音響効果を与える。
本発明による回路の実施形態は、前記回路が、前記右入力信号と前記エンハンスされた右信号の和である右出力信号を生成し、前記右入力信号と前記エンハンスされた左信号の和である左出力信号を生成するのにさらに適合したことを特徴とする。
本発明による回路のさらなる実施形態は、前記回路が、前記右入力信号と前記エンハンスされた右信号をお互いに対してスケールし、前記左入力信号と前記エンハンスされた左信号をお互いに対してスケールするのにさらに適合したことを特徴とする回路であることを特徴とする。
これは回路のユーザがその好みによってステレオ信号のエンハンスメントを決定できるという利点を有する。
本発明による回路のさらなる実施形態は、前記回路が、センター信号を形成するために前記左入力信号と前記右入力信号との平均をとるのにさらに適合したことを特徴とする。
これは、すでにある信号から簡単な方法で回路がセンター信号を直接算出するという利点を有する。
本発明による装置は、請求項1記載の回路よりなることを特徴とする。
本発明による方法は、前記左入力信号と前記右入力信号の間の相互相関を算出するステップと、前記相互相関に応じたエンハンスされた右信号を生成するステップと、前記相互相関に応じたエンハンスされた左信号を生成するステップとを含むことを特徴とする。
本発明による記録媒体は、前記命令は前記プロセッサに請求項8記載の方法を実行可能ならしめることを特徴とする。
本発明のこれらの態様およびその他の態様は、下記の実施形態から明らかであり、これらを参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態としての回路100を示す。回路100は相関手段110と、サラウンド信号処理手段120と、第1の加算手段130と、第2の加算手段140とよりなる。図1には、左ラウドスピーカ150と右ラウドスピーカ160も示されている。左ラウドスピーカ150は回路100の左出力に接続され、右ラウドスピーカ160は回路100の右出力に接続されている。
左入力信号Lと右入力信号Rが回路100に入力される。その左入力信号Lと右入力信号Rは相関手段110に入力される。相関手段110は、左入力信号Lと右入力信号Rの相互相関に関係するサラウンド信号を生成する。本発明の好ましい実施形態において、左入力信号Lと右入力信号Rが完全に相関しているとき(相関係数が1)、サラウンド信号Sは最小値となる。両信号の相関係数が0であるとき、本発明の同一の好ましい実施形態においてサラウンド信号Sは最大値となる。
サラウンド信号Sはサラウンド信号プロセッサ120に入力される。このサラウンド信号プロセッサはWO99/41947に開示されている。この文書で開示されたサラウンド信号プロセッサは、バーチャルな音源を左右のスピーカの隣に配置するため、サラウンド信号を二つのさらなるサラウンド信号に変換する。さらなるサラウンド信号はフィルターによりサラウンド信号を分割することのより生成される。このフィルターは少なくともサラウンド信号の選択された周波数帯域を、主に分離した周波数帯域を有する二つの信号に分割する。分離した周波数帯域はサラウンド信号の選択された周波数帯域を補完的にかつ共同で構成する。更なるサラウンド信号の一方は、例えば左信号と加算により結合され、もう一方は右信号と加算により結合される。結合した信号は再生のため左右のスピーカに入力される。WO99/41947の内容はここに文献援用する。
サラウンド信号プロセッサ120は、サラウンド信号Sに基づきエンハンスされた左信号SLとエンハンスされた右信号SRを生成する。図1に示した本発明の好ましい実施形態において、エンハンスされた左信号SLは第1の加算手段130により左入力信号Lに加算され、エンハンスされた右信号SRは第2の加算手段140により右入力信号Rに加算される。こうして、左出力信号LOと右出力信号ROが生成される。図示した実施形態において、左出力信号は左ラウドスピーカ150に直接入力され、右出力信号は右ラウドスピーカ160に直接入力される。回路100の出力信号はさらに処理されてもよく、もちろん本発明の範囲を狭めるものではない。さらなる処理としては、例えば増幅や低音エンハンスメントが考えられる。
図2は相関手段110の一実施形態を示す。相関手段の本実施形態において、左入力信号Lと右入力信号Rは減算手段210により相互に差し引かれ、差信号Dを形成する。左入力信号Lと右入力信号Rは相関手段220にも入力される。相関手段220は左入力信号Lと右入力信号Rの相互相関を算出する。これは知られている「滑空」インターバルに好ましくは影響を受ける。あるいは相互相関は分離した時間インターバルで算出されてもよく、本発明の範囲を狭めるものではない。
相関部220の出力は二つの入力信号の相関係数に比例する値を有する信号CRである。差信号Dと相関信号CRはサラウンド信号Sを形成するために乗算手段230でお互いに乗算される。入力信号とサラウンド信号Sの間の関係は、関係式(1)に示されたように好ましくは表現することができる。関係式(1)において、ρは左入力信号Lと右入力信号Rの間の相関係数であり、αはオプションのスカラーである。スカラーαの乗算は増幅手段240で行ってもよい。スカラーαは好ましくは名目値
図3は本発明の更なる実施形態としての回路300を示す図である。回路300は相関手段310、サラウンド信号処理手段320、第1の乗算手段330、および第2の乗算手段340よりなる。図3には左ラウドスピーカ350と右ラウドスピーカ360も示されている。左ラウドスピーカ350は回路300の左出力に接続されており、右ラウドスピーカ360は回路300の右出力に接続されている。回路300はさらに第1増幅手段370および第2増幅手段380よりなる。
回路300の動作は、回路100(図1)の動作と略同じである。相違点はエンハンスされた左信号SLとエンハンスされた右信号SRが、左入力信号と右入力信号にそれぞれ足される前に、ファクターαによってスケールされることである。エンハンスされた信号が入力信号に足される前に増幅するため、ファクターαは1以上でもよいことは当該分野の当業者には明らかであろう。本発明の一実施形態において、増幅ファクターαは可調である。調整はユーザが行ってもよいし、別の装置で行ってもよい。本発明のさらなる実施形態において、左入力信号Lはエンハンスされた左信号SLに対してスケールすることができ、右入力信号Rはエンハンスされた右信号SRに対してスケールすることができる。
図4は本発明のさらなる実施形態としての回路400を示す。回路400は、二つの信号の相互相関を算出する相関手段410、サラウンド信号処理手段420、第1の乗算手段430、第2の乗算手段440よりなる。図4には、左ラウドスピーカ450と右ラウドスピーカ460も示されている。左ラウドスピーカは回路400の左出力に接続され、右ラウドスピーカは回路400の右出力に接続されている。
回路400の動作は回路100(図1)の動作と略同じである。回路400はセンター信号Cを形成するために左入力信号Lと右入力信号Rを加算するのに適合した第3の乗算手段445を含む。センター信号Cはセンター出力信号COとして回路400から出力され、センターラウドスピーカ490に入力される。
本発明のさらなる実施形態において、センター信号は回路400から出力される前にさらに処理されてもよい。回路400は、センター信号から200ヘルツ以上の周波数を有する全ての信号成分を取り除くためにオプションのローパスフィルター485を含む。低い信号成分はラウドスピーカで再生したときにほとんど方向情報を与えないので、入力信号のエンハンスメントの品質を低下させはしない。本実施形態において、センター出力信号COはサブウーファスピーカに入力されてもよい。
回路400は、センター信号Cを左出力信号LOと右出力信号ROに対してスケールするために増幅ファクターβを有する増幅手段480にも入力される。センター信号Cを減衰するために増幅ファクターβは1より小さくてもよいことは当該分野の当業者には明らかであろう。左入力信号Lと右入力信号Rを加算することによりセンター信号Cを生成することにより、センター信号Cは一般にはファクター
であり、リスナーが自然に感じる値よりも大きい。このため、増幅ファクターβは
本発明による回路はデジタルでもアナログでもよいことは、当該分野の当業者にとって明らかであろう。
図5は、本発明の実施形態としてのオーディオ信号を再生する装置500を示す図である。本装置は入力手段501、出力手段502、本発明の一実施形態である回路505よりなる。入力手段の実施形態としては、電気信号でも光信号でも、記録媒体の情報を光信号または電気信号に変換するように適合した、RFアンテナ、SACD、DVD、CD、MP3ファイル等が入ったCD-ROM、カセットテープ、レコード、または装置500の出力信号などでよい。しかし、これらの手段に限定されるものではないことは、当該分野の当業者には明らかであろう。出力手段の実施形態としては、CD焼付け装置、電気信号、RF信号等である。これらの手段に限定されるものではないことは、当該分野の当業者には明らかであろう。
出力手段502が電気信号を出力するとき、ラウドスピーカ510に接続できる。装置505が例えば5チャンネルのサラウンドサウンドシステムであるとき、一組のラウドスピーカでもよいことは当該分野の当業者は理解するであろう。
図6は本発明による記録媒体の実施形態としてのディスケット610を示す図であり、プロセッサにより実行可能であり、プロセッサに本発明による方法を実行可能ならしめる命令を含む。記録媒体610はコンピュータ620で使用してもよい。このコンピュータはパーソナルコンピュータでよいし、パーソナルデジタルアシスタントやUNIX(登録商標)ワークステーションでもよい。コンピュータ620は、プロセッサ622に接続されたディスケットステーション621を含む。プロセッサ622は、入力624と出力625を有する信号処理回路623にさらに接続されている。ディスケットステーション621はディスケット610からの情報を読み取り、プロセッサ622に送るように適合している。この情報はプロセッサ622により実行可能であり、本発明による方法により、信号処理回路623経由でプロセッサ622に信号処理回路623の入力624において入力信号を処理可能ならしめる命令を含む。処理された信号は、信号処理回路623の出力625を通してラウドスピーカ630に再生のため送られる。
説明した実施形態において、本発明による記録媒体はディスケット610である。しかし、記録媒体610は代替的にCD-ROMやフラッシュカードでもよいし、インターネット等のWANに接続された大容量記憶装置でもよい。しかし、本発明の記録媒体として、これとは異なる実施形態もかのうであり、本発明の範囲を狭めるものではない。
要約すると、本発明は左入力信号(L)と右入力信号(R)により表されたステレオサウンド信号をエンハンスする回路(100)にかんする。相互に相関していない左入力信号(L)の一部と右入力信号(R)の一部を使うだけで、例えばdialogのような、好ましくないステレオエンハンスメントを除去することができる。一方、爆発のような音響効果のステレオイメージはエンハンスされる。ほとんどの映画では、こうなるように適当に調整されている。本発明の一実施形態において、左入力信号と右入力信号を平均してセンター信号が生成される。本発明はステレオ音響信号をエンハンスする方法に関する。本発明はサウンドを再生する装置(500)にも関する。本発明はさらにコンピュータ実行可能なコードで、コンピュータに本発明による方法を実行可能ならしめるコードを含む記録媒体に関する。
本発明の一実施形態としての第1の回路のブロック図である。
本発明による回路で使用する相関手段のブロック図である。
本発明の一実施形態としての第2の回路のブロック図である。
本発明の一実施形態としての第3の回路のブロック図である。
本発明による装置を示す図である。
本発明による記録媒体の実施形態を示す図である。