JP2005508181A5 - - Google Patents

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COX2転写のポリアミド調節因子
DNAの合成、解析、および操作が理解されたことから、多様な疾病および状態の診断および治療の機会が爆発的に増加してきた。DNAと、転写因子などのタンパク質の特異的相互作用は、遺伝子の制御を管理し、そしてしたがって、細胞プロセスの制御もまた管理する。Roeder, R.G., TIBBS. 9, 327−335 (1996)。ガンからウイルス感染に渡る非常に多様なヒトの状態は、遺伝子発現を制御する生化学機構の機能不全に起因する(R. Tjian, Sci. Am., 2, 54−61 (1995))。したがって、研究者らは、発現した際に、生化学的機能不全または他のものの結果として、疾患、欠陥、および不快を引き起こすDNAの特定の配列を同定することに重点を置いてきた。この研究から、特定の遺伝的プロセス、およびこれらが誤って働いた際に、これらのプロセスを処理し、そして扱う方法がよりよく理解されてきた。
近年、研究者らは、特定の化学的化合物を用いて、遺伝的機構の表現型への影響が制御可能であることを学んできた。核酸翻訳の最終産物であるタンパク質の発現は、特定の天然化合物および合成化合物の適用によって、調節可能である。これらの化学薬品の発見および適用は、研究および療法両方に有益であった。研究においては、特定の遺伝子の機能および細胞特性を同定するため、これらの分子を用いて、その特定の遺伝子の活性が調節可能である。療法においては、これらの分子を用いて、細胞の増殖が宿主に不都合な影響を有する場合に病原として作用しうる、こうした細胞の増殖を阻害するか、または転写の誤った制御から生じる、生命を脅かす疾患と戦うことが可能である。
ポリアミドとして知られる化学的化合物は、DNAに高い親和性を持つため、こうした化合物を用いて、遺伝子発現を調節可能であることが周知である。ポリアミドは、アミド結合によって共有結合したアミノ酸のポリマーを含む。特有のDNA配列を標的とする特異的ポリアミドを用いて、他の遺伝子の発現に影響を及ぼさずに、特定の遺伝子の発現を抑制するかまたは増進することが可能である。
窒素複素環の特定のオリゴマーを用いて、二本鎖DNAの特定の領域に結合可能であることが知られている。特に、N−メチルイミダゾール(IM)およびN−メチルピロール(Py)は、特定の塩基に特異的親和性を有する。これらの2つの化合物が連結される順序に基づいて、この特異性を修飾することが可能である。G/CがIm/Pyに相補され、C/GがPy/Imに相補され、そしてA/TおよびT/Aが重複してPy/Pyに相補されることが示されている。実質的に、N−メチルイミダゾールは、グアノシンと会合する傾向があり、一方、N−メチルピロールはシトシン、アデニン、およびチミジンと会合する。1分子または2分子として、複素環の2つの鎖を提供することによって、オリゴマーの2つの鎖が逆平行である、二本鎖DNAとの2:1複合体が形成され、G/C対はIm/Pyを並列して有し、C/G対はPy/Imを、そしてT/A対はPy/Pyを並列して有する。複素環オリゴマーは、アミド(カルバミル)基によって連結され、ここでNHは、特にアデニンの、窒素不対電子との水素結合に関与することが可能である。
ガンマ−アミノ酪酸などの化合物を取り込んで、単一のポリアミドがDNAと複合体を形成するのを可能にすることによって、ヘアピン化合物を形成するように、ポリアミドを合成することが可能である。こうした構造は、DNAの標的配列へのポリアミドの結合親和性を有意に増加させることが見出された。
より最近、新規芳香族アミノ酸、3−ヒドロキシ−N−メチルピロール(Hp)をポリ
アミドに取り込んで、そして反対のPyと対形成させた場合、A−TをT−Aと区別する手段が提供されることが発見された。White S.ら, Nature 391 436−438 (1998)。予期せぬことに、ピロール上の単一の水素原子をHp/Py対中のヒドロキシ基と交換することによって、ポリアミドの親和性および特異性が、一桁、制御される。ポリアミド中でHpをPyおよびImとともに利用して、4つの芳香族アミノ酸対(Im/Py、Py/Im、Hp/Py、およびPy/Hp)を形成すると、DNAの副溝において、4つのワトソン・クリック塩基対すべてを区別する暗号が提供される。
遺伝子発現は、活性化因子、転写結合タンパク質、転写因子等の転写化合物が、転写結合部位として知られる遺伝子のプロモーター領域中の特定の位置に結合し、そしてDNA転写プロセスを開始するかまたは阻害する際に起こる。ポリアミドが、遺伝子のプロモーター領域中の特定の転写結合部位に結合するように設計されているならば、こうしたポリアミドを投与することによって、細胞の転写化合物が転写結合部位に結合するのが妨げられ、その結果、遺伝子発現が調節されることが可能である。
発明の概要:
したがって、本発明の多様な側面の中に、ポリアミド化合物を用いてCOX2遺伝子発現を制御する方法の提供、ポリアミド化合物を用いてCOX2遺伝子発現を増進する方法の提供、ポリアミド化合物を用いてCOX2遺伝子発現を抑制する方法の提供があり、そして本発明は、COX2遺伝子プロモーター領域中の転写結合部位に結合するポリアミド化合物の提供である。
したがって、簡潔には、本発明は、細胞において、COX2遺伝子発現を制御する方法に関する。該方法は、細胞において、COX2遺伝子プロモーター標的部位で、DNAへの特異的な結合を提供するため、N−メチルピロール(Py)およびN−メチルイミダゾール(IM)を含むポリアミドを選択し、そしてポリアミドおよびCOX2遺伝子含有細胞を合わせることを含む。その後、ポリアミドがCOX2遺伝子プロモーター標的部位に結合し、そしてCOX2遺伝子の転写を制御する。
本発明はさらに、COX2遺伝子発現を制御するためのポリアミド化合物に関する。該ポリアミドは、N−メチルピロール(Py)およびN−メチルイミダゾール(IM)を含み、そしてDNAのCOX2遺伝子プロモーター領域に特異的に結合する。
本発明の他の目的および特徴は、部分的に明らかであり、そして部分的に以下に指摘されるであろう。
好ましい態様の詳細な説明:
本発明にしたがって、驚くべきことに、COX2遺伝子の転写を制御するように、ポリアミドを設計し、合成し、そして利用しうることが発見された。より詳細には、本発明は、COX2プロモーター配列に存在する転写因子結合部位に結合するポリアミドを利用することによって、COX2遺伝子の転写を増進するかまたは抑制する方法を提供する。本発明はそれによって、COX2タンパク質およびPGE2の産生を増進するかまたは抑制する新規方法を提供する。
本発明は、COX2遺伝子の発現を増進するかまたは阻害するための、ポリアミドおよび類似の化学的化合物の組み合わせおよび使用に関する。ヒトCOX2プロモーター中の特定の配列に結合することが知られる転写因子の結合を分離させるため、DNA副溝領域に結合するように、特定の結合特異性を持つポリアミドを設計した。立証される結果は、COX2 mRNAの転写を直接調節して、それによって、翻訳されるCOX2タンパク
質の量とともに、プロスタグランジンE2(PGE2)の産生に影響を及ぼすことを通じて、COX2遺伝子発現を操作する能力である。
一般的に、COX2遺伝子のプロモーター領域に位置する5つの転写結合因子に選択的に結合するように、ポリアミドを設計し、そして合成する。以下の実施例に概説した研究を行い、そして試験したポリアミドの増進特性または阻害特性を決定した。研究したCOX2転写因子結合部位には、Ets−1、CRE、TATAボックス、NFκB、およびLEF−1結合部位が含まれる。特定の結合部位を標的とするように設計したポリアミドを利用することによって、COX2遺伝子の転写を選択的に増進するかまたは抑制することが可能である。
以下に記載する研究は、Ets−1、CRE、およびTATAボックス結合部位を標的とするポリアミドで処理した細胞では、COX2 mRNAレベル、並びにPGE2およびCOX2タンパク質の産生が抑制されることを決定した。しかし、NFκBおよびLEF−1結合部位を標的とするポリアミドで細胞を処理すると、COX2 mRNAレベル、並びにPGE2およびCOX2タンパク質の産生は、影響を受けないか、または有意に増加した。
インターロイキン−1β(IL−1β)で刺激したヒト滑膜線維芽細胞において、COX2転写の阻害剤としてポリアミドを評価し、分化したU937細胞において、関連した研究をいくつか行った。この研究の目的は、細胞系において、ポリアミドが、標的とされる遺伝子の転写をどのくらいよく阻害可能であるかを決定し、そして阻害が転写レベルのものであるかどうかを決定することであった。これらの細胞におけるCOX2の誘導は、ポリアミドを転写阻害剤として評価するアプローチを提示した。滑膜線維芽細胞において、COX2 mRNA、COX2タンパク質、およびPGE2レベルはすべて、IL−1βによる誘導前には非常に低いレベルで存在し、そしてCOX2遺伝子の転写を妨げるポリアミドの存在下では、IL−1β誘導後も、すべて低レベルに留まるであろう。
ヒトCOX2プロモーター中の特定の配列に結合することが知られる転写因子の結合を分離するため、DNA副溝領域に結合するようにポリアミドを設計した。これらには、Ets−1、TATAボックス、LEF−1、NFκBおよびCRE結合部位が含まれる。以下の例は、これらのポリアミドおよびその標的結合部位の説明を含有する。Ets−1、TATAボックスおよびLEF−1部位が、2つのポリアミドの組み合わせの最初の標的として選択され、HIV−1プロモーターへのこれらの3つの転写因子の結合を阻害し、陽性対照に比較して、末梢血単核細胞において、ウイルスレベルを99.9%減少させた。
これらの細胞において、COX2転写を評価するのに、いくつかの生物学的アッセイが利用可能であり、これらには、プロスタグランジンE2レベルのELISAアッセイ(PGE2合成にはCOX2が必要である)、COX2タンパク質レベルのウェスタン解析、COX2 mRNAレベルのTaqMan解析およびノーザン解析、並びに細胞生存度のMTTアッセイが含まれる。MTT(3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)ジフェニルテトラゾリウムブロミド)は、淡黄色の基質であり、生存細胞によって切断されて、ミトコンドリア酵素、コハク酸デヒドロゲナーゼにより、濃い青のホルマザン産物になる。この変換は、生存細胞中のみで起こり、そして産生されるホルマザンの量は、存在する細胞の数および細胞の代謝速度に比例する。これらの研究から、特定のポリアミドがCOX2 mRNA、COX2タンパク質、およびPGE2レベルの減少を生じた。すべての場合で、ポリアミド処理後の細胞生存度が優れていることが見出されたため、阻害はポリアミドのいかなる毒性のためでもなかった。特定の他のポリアミドは、COX2 mRNA、COX2タンパク質、およびPGE2レベルの非常に大きい増進を提供し、これ
らはすべて、統計的に非常に有意であった。総合すると、これらの結果によって、ポリアミドが、細胞において、COX2 mRNAレベルを抑制するかまたは増進することが可能であり、そしてこれらの変化が、COX2タンパク質レベルおよびPGE2レベルの同様の変化に対応することが示される。力学的に、これらの影響は、COX2遺伝子が転写調節されることと一致する。
滑膜線維芽細胞において、やはりIL−1βによって誘導されるIL−6およびICAM1(細胞間接着分子(Intracellular Adhesion Molecule)1またはCD54)に比較した、これらのポリアミドのCOX2遺伝子に対する選択性を決定するため、対照実験を行った。行った研究において、ICAM1およびIL−6レベルは、COX2を抑制するポリアミドによって、影響を受けなかった。COX2レベルを増進させるポリアミドは、ICAM1レベルに影響を及ぼさなかったが、IL−6レベルを増進させ、これはしかし、PGE2、COX2 mRNA、およびCOX2タンパク質に関して見られるのと同じ度合いではなかった。これらの結果によって、研究したポリアミドが、概して、COX2に選択的であることが立証された。しかし、この研究のポリアミドは、わずか5〜7.5塩基対と同等なものを認識し、これはヒトゲノムにおいて、これらのポリアミドが〜3x10 〜1x10 の結合部位に完全にマッチするのに相当するため、COX2遺伝子のみに対する完全な特異性は期待されないか、または達成されなかった。驚くべきことではなく、ICAM1およびIL−6遺伝子のプロモーター領域中に結合部位が存在する。予期されるように、COX2プロモーターの転写因子結合部位を標的としない対照ポリアミドは、PGE2およびCOX2 mRNAのレベルを抑制しなかった。
Ets−1結合部位を標的とする1組のポリアミドに関して、表面プラズモン共鳴(BiaCore)結合データもまた得た。これらの研究は、意図する標的DNA配列に、ポリアミドが非常によく結合することも示した。結合親和性およびCOX2の阻害の間には、いかなる相関も見られなかった。
PK研究において、ポリアミドは、ラットにおいて、経口では利用可能でないが、静脈内投薬後、最大10時間まで血漿に存在した。これらの化合物は、pH<1のマウス血漿中、室温で10〜12時間、安定であり、これによって、経口生物学的利用能が欠如しているのは、酸中で不安定であるためではないことが示された。ラットにおける 14 C放射標識局在およびラットからのクリアランスの追跡研究を行った。
投薬量:
当該技術分野に知られる方法にしたがって、標的DNAを所持する細胞または生物に、薬学的に許容しうる濃度で、前述のポリアミド化合物を投与することが可能である。1より多いポリアミド化合物を、細胞または生物に、別個に、同時に、または連続して投与することが可能である。分子輸送化合物の投与経路は、経口、静脈内、腹腔内、皮下、経皮等であることが可能である。
本発明において、ポリアミド化合物の投薬措置は、多様な要因にしたがって選択される。これらの要因には、単数または複数の選択したポリアミド化合物、患者の種類、年齢、体重、性別、食餌、および医学的状態、ポリアミド療法で治療しようとする状態の種類および重症度、ポリアミド療法で治療しようとする標的細胞種、投与経路、使用する特定の阻害剤の活性、有効性、薬物動態および毒性学プロフィールなどの薬理学的考慮、薬剤搬送系を利用するかどうか、そして阻害剤を他の成分とともに投与するかどうかが含まれる。したがって、実際に使用する投薬措置は、非常に異なる可能性があり、そしてしたがって以下に記載する好ましい投薬措置から逸脱する可能性がある。
ポリアミド化合物の投与は、単回1日用量、1日の間で間隔を開けた多数回用量、1日おきの単回用量、数日ごとの単回用量を要求する措置、または他の適切な措置を用いたものであることが可能である。
経口経路または非経口経路を通じて、ポリアミドを生物に全身投与することが可能である。また、注射またはカテーテルによってポリアミドを投与して、ポリアミド療法によって治療しようとする標的細胞を含有する特定の臓器または組織に、ポリアミドを局在させることが可能である。ポリアミドを、投与経路に適した型で、生理学的に許容しうる培地中に調製することが可能である。ポリアミド組成物は、経口経路および非経口投与経路両方のため、粉末、溶液、および培地中の分散物として調製可能である。
標的細胞の細胞内位置または細胞外位置において、約1nM〜約1mMのポリアミド濃度を提供する用量で、ポリアミドを投与すべきである。好ましくは、標的細胞の細胞内位置または細胞外位置において、約1nM〜約100μM、より好ましくは、約10nM〜10μMの間のポリアミド濃度を提供する投薬量で、ポリアミドを提供すべきである。細胞内で望ましいポリアミド濃度を達成するためには、細胞外血清中の細胞外部のポリアミド濃度は、2〜1000倍高い濃度でなければならない。
また、1以上のさらなる療法剤と組み合わせて、ポリアミドを投与することも可能である。治療しようとする状態に応じて、併用療法にはまた、抗生物質、ワクチン、サイトカイン、他のCOX2阻害剤、ポリアミドの細胞取り込みおよび核への濃縮を促進する分子輸送化合物等が含まれることも可能である。
以下の実施例は、本発明をさらに例示する。
COX2転写において使用するためのポリアミド設計および合成:
転写因子がCOX2プロモーターに結合する箇所のDNA配列と部分的にまたは完全に重複するDNA副溝領域に結合するように、ポリアミドを設計した。特定の遺伝子の転写因子結合部位には、特有のDNA配列が隣接するため、COX2結合部位への転写因子の結合を選択的に阻害するように、ポリアミド標的中にこれらの隣接配列を含んで、ゲノム中の他のプロモーターへの該転写因子の結合を分離するのを最小限にした。例えば、図1aのリボン構造は、ヒト転写因子Ets−1が、DNAの主溝と該タンパク質のαヘリックスの相互作用を介して、二重鎖DNAの部分に結合することを示す。ヒトCOX2プロモーターにおいて、Ets−1が結合する箇所の実際の配列の概略を、図1bに示す配列に示し、そしてポリアミドが結合するように設計した部位を太字体で示す。このアプローチを用いて、TATAボックス、NFκB、LEF−1およびCREタンパク質結合部位の阻害剤としても、ポリアミドを設計した。ポリアミド−DNA認識は、上述のDNAへのポリアミド結合親和性に基づいた。すべてのポリアミドは、5’−(W)1−2G(N)xW−3’モチーフ(式中、X=3〜6、W=AまたはT、およびN=ヌクレオチドいずれか)を標的とした。
Ets−1、TATAボックス、およびCRE部位を標的とするポリアミドは、PGE2、COX2タンパク質、およびCOX2 mRNAレベルを抑制した。NFκBおよびLEF−1部位を標的とするポリアミドは阻害剤ではなかった;事実上、これらの化合物のいくつかは、実際にPGE2、COX2タンパク質、およびCOX2 mRNAレベルを増進した。
ポリアミドは、図2に見られるようなヒトCOX2プロモーターの最初の600bpに位置する5つの転写因子結合部位を標的とした。これらの転写因子結合部位を、太字体部
位の上に示す。太字体で示した配列に結合するように、ポリアミドを合成した。
表1は、COX2プロモーター用に合成したポリアミド、およびそのDNA結合部位のリストを提供する。固相合成によって、これらのポリアミドを調製し、そして逆相クロマトグラフィーによって精製した。これらが阻害するように設計した転写因子にしたがって、これらを分類する。表に用いた略記には、W=AまたはT、Im=N−メチルイミダゾール−2−カルボニル、−Im=4−アミノ−N−メチルイミダゾール−2−カルボニル、−Py=4−アミノ−N−メチルピロール−2−カルボニル、−γ=4−アミノブチリル、−β=3−アミノプロピオニル、−Dp=3−(ジメチルアミノ)プロピルアミノが含まれる。アミド結合(−CONH−)はポリアミドサブユニットを連結する。転写因子結合部位を持たない(部位なし)4つのポリアミドを対照実験に用いた。
Figure 2005508181
個々のポリアミドを用いた実験に加えて、この報告に記載する実験において、4つの混合物を用いた。混合物1=化合物1、7、17、および19;混合物2=化合物1、4、7、および22。
統計的に有効なデータを得るための実験設計:
2以上の化合物の相乗作用を通じてCOX2を阻害する機会を最大にするため、そして少数の実験でポリアミドを試験するため、ポリアミドの混合物を用い、滑膜線維芽細胞を用いた実験を行った。表2に要約する2つの混合物は、各々、ヒトCOX2プロモーター中の異なる組の転写因子結合部位を標的とする、4つのポリアミドを含有した。各混合物
は、同一の転写因子を標的とする2つのポリアミドを含有した。例えば、混合物1は、Ets−1を標的とする1つのポリアミド、TATAボックスを標的とする1つのポリアミド、およびLEF−1を標的とする2つのポリアミドを含有した。
Figure 2005508181
これらのポリアミド混合物を用いて、統計的に有効なデータを得るため、無作為化実験設計を用いて、滑膜線維芽細胞の(+)IL−1β刺激6時間後にCOX2 mRNAレベルおよびPGE2レベルの抑制を、そして(+)IL−1β刺激24時間後にCOX2タンパク質レベルおよびPGE2レベルの抑制を測定した。無作為化標本分布の第一の目的は、TaqMan、PGE2およびウェスタン解析における体系的な誤りを回避することであった。無作為化12ウェルプレートは、各々、(+)IL−1β対照(ポリアミドを添加しない)4ウェル、(−)IL−1β対照2ウェル、1つのポリアミド混合物3ウェル、および別のポリアミド混合物3ウェルを含有した。まず、総ポリアミド濃度20μM(混合物中の4つのポリアミド各々が5μM)でこれらの混合物の1つを細胞に投与した。一晩インキュベーションした後(〜16時間)、培地を取り除き、そして20μMの新鮮なポリアミド混合物を含有する培地中、IL−1βで細胞を活性化した。ポリアミドが、ポリアミド処理後、2〜3時間の期間に渡って、未分化U937細胞には進入しないが、24時間の期間に渡って、これらの細胞には進入することを示す、社内の蛍光顕微鏡研究に基づいて、細胞取り込みが最適になるように、これらのポリアミドインキュベーション時間を選択した。
細胞培養のための材料および方法、並びにアッセイ条件:
15%FBS、1%グルタミン、および50μg/mlゲンタマイシンを補ったDMEM(ピリドキサルHClおよびグルタミンを含む、Gibco 11995−040、Life Technologies、メリーランド州ロックビル)中、培地を3日ごとに交換し、そして5%COとともに37でインキュベーションして、ヒト・リウマチ滑膜線維芽細胞(RSF)を維持した。0.25%EDTAを含有するトリプシンを用いて細胞を継代し、そして1:3の比で増殖させて;継代数が25になった後、継代数12で凍結したRSFのアリコットから、新鮮な培養を調製した。
アッセイのため、12ウェル培養プレートに、2ml体積中、ウェルあたり40,000細胞で、トリプシン処理した細胞を接種した。ウェルがほぼ集密になったら(約6日後、〜120,000細胞/ウェル)、対照ウェル以外で、細胞を適切なポリアミド(PA)混合物(混合物は各PA構成要素を5μM含有する)と一晩プレインキュベーションした。このプレインキュベーションから開始し、そして以後、標準培地を低FBS培地(1%FBSしか含まない以外、上記の通り)に交換した。ウェルを無作為化して、体系的な誤りを引き起こしうるエッジ効果を最小限にした。
翌朝、新鮮なポリアミド混合物に加えて、1ng/mlの組換えヒトIL−1β(カタログ番号201−LB、R&D Systems、ミネソタ州ミネアポリス)を含有する新鮮な培地と培地を交換したが、例外として、(+)IL−1β対照ウェルには、ポリア
ミドを含まない新鮮な培地(+)IL−1βを加えた。プレートを24時間インキュベーションし、その後、培地を取り除き、そして後にサイトカインアッセイまたはPGE2アッセイに使用する場合に備えて、−80に維持した。2ml低FBS培地でウェルを直ちに洗浄し、その後、100μMのアラキドン酸を加えた0.5ml低FBS培地と交換した。これは、COX−2のKmよりはるかに高く、そして産生されるPGE2が、不十分な基質に律速されるのでなく、存在するCOX−2酵素量に比例するであろうことを確実にする。1時間後、この培地もまた取り除き、そしてEIAによるPGE2放出アッセイ(以下を参照されたい)に直ちに用いるか、または上述のように後の使用のために凍結した。
PGE2アッセイ用のプレートに、最後に生存度アッセイを行った(以下を参照されたい)。望ましい場合、ウェスタンブロッティング、ICAM1アッセイ、またはmRNAメッセージレベル測定(以下を参照されたい)のために、同一のプレートを同時にセットアップした。
細胞生存度評価のための材料および方法:
MTTアッセイを用いて、細胞生存度を評価した。MTT(3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−)ジフェニルテトラゾリウムブロミド)(カタログ番号M−2128、Sigma Chemical Co.、ミズーリ州セントルイス)は、淡黄色の基質であり、生存細胞によって切断されて、ミトコンドリア酵素、コハク酸デヒドロゲナーゼにより、濃い青のホルマザン産物を生じる。この変換は、生存細胞中のみで起こり、そして産生されるホルマザンの量は、存在する細胞の数、およびいくぶんかは細胞の代謝速度に比例し、この代謝速度は細胞の処理によって影響を受ける(IL−1β処理した対照RSFは、一貫して、(−)IL−1β対照よりも、青いホルマザンのわずかに高い沈着(〜10%)を有する)。PGE2アッセイ用の培地を取り除いた直後、ウェルを1mlの低FBS培地中の1mg/ml MTTで満たし、そしてインキュベーターに1時間戻した。これを吸引し、廃棄し、そして200μlのイソプロパノールと交換し、このイソプロパノールが細胞を溶解し、そしてホルマザン結晶を溶解した。ELISAプレート読み取り装置上、試験波長570nmおよび参照波長630nmで吸光度を測定した。生存度の情報に基づくチェックとして、細胞密度もまた用いた。
PGE2酵素イムノアッセイ(EIA)の材料および方法:
PGE2のEIAは、Caymen Chemical Company(ミシガン州アナーバー)によるプロトコルに基づいた。簡潔には、96ウェルプレートのウェルをロバ抗マウス抗体(カタログ番号715−005−151、Jackson Immunoresearch、ペンシルバニア州ウェストグローブ)で一晩コーティングした。洗浄後、50μlの試料(必要であれば、上述の低FBS培地で希釈)、またはPGE2標準(典型的には0.28〜10ng/ml、カタログ番号414014、Caymen Chem Co.)いずれかを添加した。これに続いて、50μlのPGE2−アセチルコリンエステラーゼ・トレーサー(カタログ番号414010、Caymen Chem Co.)および50μlの150倍希釈した抗PGEモノクローナル抗体(社内調製、ストック2B5、参照日付4/4/94)を添加した。これを加湿容器中、一晩インキュベーションし、その後、ウェルを洗浄して、そして200μlのエルマン試薬を添加した(カタログ番号400050、Caymen Chem Co.)。1〜4時間後(発色速度に応じる)、ELISAプレート読み取り装置上、405nmで吸光度を測定した。4パラメーターロジスティックフィットを用いて、標準曲線を決定した。
FACSによるICAM1アッセイのための材料および方法:
細胞間接着分子1(ICAM1、CD54とも呼ばれる)は、IL−1βに反応して、RSF表面上に発現され、そして促進化細胞分取(FACS)を用いて定量化可能である。処理終了時、プレートウェル中の細胞をトリプシン処理し、そしてFACS解析のため、12x75mmポリスチレン試験管に移した。これらを洗浄し、吸引し、そして既定の処理の複製ウェルに相当する試験管の1つを除いてすべてに、フィコエリトリン(PE)にコンジュゲート化した抗CD54ドメイン2抗体(ネズミIgG1、カタログ番号206−050、Ancell Corp.、ミネソタ州ベイポート)を、350μl緩衝液(0.2%アジ化ナトリウムおよび2%FBSを含むPBS)中、試験管あたり1μl(〜0.5μg)添加した。残りの試験管には、アイソタイプ対照(カタログ番号278−050、Ancell Corp.)を添加した。試験管を暗所、4で30〜60分間震蘯させ、その後、2mlの緩衝液を添加し、細胞を300xgでペレット化し、吸引し、そして0.5%メタノール不含ホルムアルデヒドを含有する鞘(sheath)緩衝液中に再懸濁した。少なくとも1時間後、損なわれていない(intact)細胞に関してスクリーニングするゲート処理を用いて、FACSによって細胞を解析した。アイソタイプおよび(−)IL−1β対照に関して補正して、蛍光中央値を比較することによって、ICAM1の相対発現を測定した。
ウェスタンブロッティングによるCOX−2タンパク質発現定量化のための材料および方法:
処理終了時、培地をプレートから取り除き、そしてウェルあたり100μlの2x試料緩衝液(2%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)および10%b−メルカプトエタノールを含む、カタログ番号ER33、Owl Separation Systems, Inc.、ニューハンプシャー州ポーツマス)を添加し、混合物を回旋し、そして各ウェルの内容物を500μlのエッペンドルフ試験管に移し、そして100℃加熱ブロック上に5分間置いた。10〜20%勾配ゲル(Invitrogen(Novex)、カリフォルニア州カールスバッド)を用いたSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)に、試料15μlのアリコットを供した。Novexプロトコルのように、電気ブロッティングによって、タンパク質をニトロセルロースシートに移した。0.05%Tween20を含むTris緩衝生理食塩水(TBS−Tween)中、5%ミルクを用いて、シートを1時間ブロッキングした。0.1%BSAを含有するTBS−Tween中、1:2500希釈の抗COX−2抗体(ウサギ由来、カタログ番号PG27B、Oxford Biomedical Research、ミシガン州オックスフォード)で、震とうしながら4で一晩、シートをブロッティングし、その後、洗浄し、そして1:5000希釈の西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲート化ロバ抗ウサギ二次抗体(カタログ番号NA934、Amersham Life Science、イリノイ州アーリントンハイツ)で30分間ブロッティングした。洗浄後、増進した化学発光を用いて、X−Omat ARフィルム(Eastman Kodak Corp.、ニューヨーク州ロチェスター)に露出し、タンパク質バンドを視覚化した。ImageQuantバージョン5.0ソフトウェアを備えたモデルSI濃度計(Molecular Dynamics, Inc.、カリフォルニア州サニーベール)を用いて、(+)IL−1β対照に比較してCOX−2タンパク質を定量化した。1:600希釈のヤギ抗アクチン抗体(カタログ番号sc1616、Santa Cruz Biotechnology, Inc.、カリフォルニア州サンタクルーズ)、その後、1:2,500希釈のHRPコンジュゲート化ブタ抗ヤギ二次抗体(カタログ番号602−275、Boehringer Mannheim Corp.、インディアナ州インディアナポリス)を30分間用いて、バックグラウンドタンパク質、アクチンに関して再ブロッティングすることによって、レーン装填の変動補正を行った。上述のように、アクチンを視覚化し、そして定量化した。
mRNA測定:
我々のTaqManアッセイが統計的に確固としたものであることを述べるため、低継代数の(+)IL−1β刺激した滑膜線維芽細胞に対して、およびLPS刺激したU937細胞に対して、COX2 mRNA測定を行った。mRNAを単離するための改善法もまた用いた。これらの実験において、ポリアミド処理を伴わず、TaqManによってCOX2およびサイクロフィリン(対照)mRNAレベルを測定し、そして(+)IL−1β刺激した滑膜線維芽細胞およびLPS刺激したU937細胞に関して、12の反復実験で比較した。各細胞種の12の反復実験に関して、非常に密接したレベルのサイクロフィリンおよびCOX2 mRNAが測定された。この重要な実験は、ポリアミドによって、最小限20〜50%の転写阻害を、統計的信頼性を持って測定可能であることを立証した。公表されたプロトコルにしたがって、TaqMan解析およびノーザンブロット解析を行った。
滑膜線維芽細胞に対するポリアミドの影響:
PGE2、COX2 mRNA、COX2タンパク質、ICAM1タンパク質、およびIL−6タンパク質レベルに対するポリアミド混合物1〜2の影響を、滑膜線維芽細胞において測定した。このセクションおよび図3〜8に結果を要約する。
ポリアミド混合物1または混合物2に加えて、アラキドン酸添加の存在下および非存在下で、PGE2レベルを測定して、PGE2の観察される抑制いずれかが、COX2基質、アラキドン酸レベルが減少したためであるかどうかを決定した(図3)。機構を探査する、この実験において、ポリアミドおよび高レベルのアラキドン酸で処理したIL−1β誘導細胞は、対照に比較して、ポリアミドのみで処理したIL−1β誘導細胞と同じ度合いにPGE2レベルを抑制すると予期された。該実験において、(+)IL−1β刺激の24時間後にPGE2レベルを測定し、その後、ほぼ飽和レベルのアラキドン酸を含有する新鮮な培地に細胞培地を交換した。培地中のPGE2レベルを、1時間後に再び測定した。解析によって、アラキドン酸は、(ポリアミド)未処理対照に比較して、PGE2レベルにまったく影響を及ぼさないことが明らかに示された。混合物2は、PGE2レベルを有意に抑制し:アラキドンを添加しない場合は55%、そしてアラキドン酸を添加した場合は56%であった。驚くべきことに、混合物1は、未処理対照に比較して、PGE2レベルを非常に増進し:アラキドン酸を添加しない場合は260%、そしてアラキドン酸を添加した場合は330%であった。この統計的に有効な実験の反復実験はすべて、混合物1で同一の増進を示した。
ポリアミド混合物のデコンボリューション:
混合物1のサブセットSS1〜SS2へのデコンボリューションを行って、どのポリアミド(類)がCOX2遺伝子誘導の増加およびPGE2レベルの増進に関与しているかを決定した。混合物1は、Ets−1転写因子を標的とする1つのポリアミド、TATAボックス結合タンパク質を標的とする1つのポリアミド、およびLEF−1結合部位と提唱される部位の異なる領域を標的とする2つのポリアミドを含有した。これらのデコンボリューション実験において、3つのポリアミドのすべての組み合わせで処理した細胞に関して、PGE2レベルを測定した。図4に示すように、PGE2レベルを増進したサブセット(SS1、SS2、SS4、SS5、およびSS6)の中で、単一のポリアミドのみが共通であった。このポリアミドはLEF−1部位を標的とし、そして混合物SS3またはSS7にはいずれも存在せず、これらの混合物はどちらもPGE2レベルを増進しなかった。さらに、SS1(混合物1)は、細胞をIL−1βで誘導した場合にのみ、PGE2
レベルを増進した。これらの結果によって、ポリアミドが遺伝子転写を増進可能であることが示される。
ポリアミドがCOX2転写を制御する証拠:
混合物1および混合物2の存在下でのCOX2タンパク質レベルおよびCOX2 mRNAレベルを、上述のPGE2レベルとともに追跡した。ウェスタン解析によってCOX2タンパク質レベルをアッセイし(図5)、そしてノーザンブロットによってCOX2 mRNAレベルをアッセイした(図6aおよび図6b)。これらの実験では、mRNAレベルを評価するのにTaqManを用いなかった。PGE2レベル同様、COX2タンパク質およびCOX2 mRNAレベルもまた、混合物1によって有意に増進した。未処理対照に比較して、混合物1では、COX2タンパク質レベルの690%の増加が得られた。ノーザンブロットによって、PGE2およびCOX2タンパク質レベルの増進は、転写増進のためであることが確認され;混合物1での処理において、18S mRNAに比較して、COX2 mRNAレベルには6倍より多い増加が見られた。これらの結果と対照的に、混合物2は、COX2タンパク質レベルの35%の抑制およびCOX2 mRNAレベルの57%の抑制を提供した。これらの結果はまた、対応するPGE2抑制データとも一致した。重要なことに、3つの別個の実験で得られたPGE2、COX2 mRNA、およびCOX2タンパク質データは、ポリアミドが仲介するPGE2およびCOX2タンパク質レベルの変化がCOX2 mRNAレベルと相関することを明らかに示した。これらの結果は、ポリアミドがCOX2遺伝子の転写を制御することと一致した。
ポリアミド選択性の証拠:
ICAM1およびIL−6タンパク質もまた、滑膜線維芽細胞において、IL−1βによって誘導されるため、これらの遺伝子と対比してCOX2遺伝子に対する選択性を決定した。これらのポリアミドのDNA認識能は、5〜8塩基対の幅であるため、これらに対して、完全な遺伝子特異性は期待されなかった。ICAM1レベルは、混合物1および混合物2によって影響を受けなかった(図7)。IL−6レベルもまた、混合物2によっては影響を受けなかったが、混合物1によって増進された−しかしこれは、PGE2、COX2 mRNA、およびCOX2タンパク質に関して見られるのと同じ度合いではなかった(図8)。これらの結果によって、研究したポリアミドがCOX2に関して選択的であることが立証された。COX2プロモーター中のいかなる転写因子部位も標的としない、他の対照ポリアミドは、10μMの濃度で、滑膜線維芽細胞において、COX2 mRNAレベルにいかなる阻害効果も持たなかったが、TaqMan解析によれば、1μMのより低い濃度で、ある程度の阻害を引き起こした。同じ対照ポリアミドは、ELISAによって測定した場合、どちらの濃度でもPGE2レベルを抑制しなかった。これらの結果によって、COX2遺伝子の転写は、COX2プロモーター中の転写因子結合部位を標的とするポリアミドによって、選択的に調節可能であることが示された。
ポリアミドがDNAに結合する生化学的証拠:
ポリアミドが標的とするDNA配列に選択的に結合する、直接の証拠が得られ、ポリアミドが標的としないDNA配列に有意に結合しないという証明もまた得られた。Ets−1結合部位の両側に隣接する6bpのDNAを含有する5’ビオチン化ヘアピンDNA配列をストレプトアビジンチップに付着させ、そしてこの配列の領域を標的とするポリアミドの組に関して、BIAcore動力学および熱力学値を得た。動力学オン−速度定数(on−rate constant)(k )およびオフ−速度定数(off−rate
constant)(k )および熱力学平衡定数(K Eq )を、会合状態、解離状態および定常状態BIAcore測定から決定した。k /k 比を、典型的には、K Eq
の2の係数の範囲内であり、定常状態条件下で決定される会合定数K を計算するために用いた。価は、2.7x10 〜3.9x10 −1 の範囲であった。計算したK 値は、0.8nMと同程度に低く、そして高親和性ポリアミドの公表された解離定数と匹敵した。BIAcoreデータと生物学的データの比較は、DNA結合定数およびPGE2またはmRNAレベルの抑制間で明らかな相関を示さなかった。これらの結果によって、生物学的活性が、要因の複雑な相互作用のためであることが確認される。
1つの潜在的に重要な要因は、動力学解離定数(k )であり、これは二重鎖DNA複合体からのポリアミドの解離半減期を計算するのに価値がある。この定数は、BIAcore測定によって容易に得られ、そしてポリアミドがDNAから解離するのに掛かる時間の目安を提供する。転写の有効な阻害剤は、結合するように設計されたDNAの特定のオペレーター配列上で長い常在時間を有することが必要である可能性がある。ポリアミドが迅速に解離し、そしてDNAに再結合する場合、転写複合体が形成され、そしてポリアミドがDNAから解離する期間の間に、転写開始する可能性がある。ポリアミド不含緩衝剤が、DNA−ポリアミド複合体が結合するチップ表面を流れて通過する動的条件下で、kdは、Ets−1を標的とするポリアミドに関して、0.0049〜0.16秒−1の範囲であった。これらのkd値に基づいて、計算される解離定数は、4秒〜2.3分の範囲であった。
薬力学的研究:
ポリアミドは、動物で使用するのに適していることが望ましいため、ヒトCOX2プロモーター中のEts−1およびTATAボックス転写因子結合部位を標的とする一組のポリアミドに対して、最初の薬力学特性を得た。4つのポリアミド各々を、経口的に、3匹のラット中、5mg/kgで、そして静脈内で、3匹のラット中、1mg/kgで評価した。適用5分〜24時間後の範囲の時点で、血液を収集し、そしてLC−MSによって、親化合物の存在に関して解析した。経口投与ラットにおいて、ポリアミドはどの時点でも血漿中で検出されなかった。引き続いての安定性研究において、これらのポリアミドは、pH<1のマウス血漿に対して、室温で10〜12時間、完全に安定であることが見出された。静脈内投薬ラットにおいて、ポリアミドは10時間に渡って血漿から一掃された。
関連実験において、PGE2レベルを測定するのに用いた滑膜線維芽細胞増殖培地に残ったポリアミドの濃度を、ラットPK研究から生成した標準検量線を用いて、LC−MSによって測定した。2つの試料は、その元来のポリアミド濃度のおよそ2/3を含有し、三番目の試料は、元来のポリアミド濃度のおよそ1/10を含有し、そして四番目の試料は、元来のポリアミドをまったく含有しなかった。これらの結果と、血漿からのこれらの化合物のクリアランス速度またはCOX2転写の阻害剤としてのこれらの化合物の活性との相関は、まったくなかった。
上記を考慮して、本発明のいくつかの目的が達成されることがわかるであろう。
本発明の範囲から逸脱することなく、上記組成物および方法に多様な変化を行うことが可能であるため、上記説明に含有されるすべての事柄は、例証として解釈され、限定される意味で解釈されないことが意図されている。
図1Aは、DNAヘリックスの主溝に結合したヒトEts−1転写因子の図である。 図1Bは、COX2プロモーター領域中のEts−1結合部位配列および本発明のポリアミドの結合部位の図である。 図2は、転写因子結合位置および本発明のポリアミドの結合部位を同定するCOX2プロモーター配列の図である。 図3は、ポリアミドの存在下で、PGE2の発現に対するアラキドン酸の影響を示す棒グラフである。ポリアミドの存在下で添加したアラキドン酸(aa)は、PGE2の相対発現に対して影響を及ぼさなかった。混合物1は、PGE2レベルを劇的に増進させた((−)aa、対応のないt検定、P=0.0001)。混合物2は、PGE2レベルを41%阻害した((−)aa、対応のないt検定、P=0.01)。混合物1および混合物2に関してはN=3、(+)IL−1に関してはn=4 図4は、PGE2レベルの増進を生じる、異なるポリアミドの組み合わせの影響を示すために、混合物1のデコンボリューションを示す棒グラフである。混合物1をデコンボリューションして、どのポリアミドの組み合わせがPGE2レベルの増進を導くかを決定した。LEF1ポリアミドPA3との組み合わせがPGE2レベルを増進した。化合物キー:PA1(Ets−1、Im−Im−Py−Py−γ−Py−Im−Py−Py−β−Dp);PA2(TATAボックス、Im−Py−Py−Py−Im−γ−Py−Py−Im−Py−Py−β−Dp);PA3(LEF1、Im−Py−Py−β−Im−Py−Im−γ−Py−Im−Py−β−Im−Py−Py−β−Dp);PA4(LEF−1、Im−Py−Py−Py−Im−γ−Py−Im−Im−Im−Py−β−Dp);PA5(Ets−1、Im−Im−Py−Im−γ−Py−Py−β−Py−β−Dp);PA6(CRE、Im−Py−Py−Im−γ−Py−Im−Py−Py−β−Dp)。混合物1=PA1、PA2、PA3、PA4。混合物2=PA1、PA2、PA5、PA6。SS1=混合物1;SS2=PA1、PA2、PA3;SS3=PA1、PA2、PA4;SS4=PA1、PA3、PA4;SS5=PA2、PA3、PA4;SS6=PA3、PA4;SS7=PA1、PA2。 図5は、ポリアミドの投与から生じる、COX2タンパク質レベルの増進および抑制を示す棒グラフである。COX2タンパク質レベルは、混合物1によって700%増進され(対応のないt検定、P=0.0009)、そして混合物2によって35%阻害された(対応のないt検定、P=0.06)。混合物2は、同様のレベルのCOX2タンパク質およびPGE2の阻害を提供した。混合物1および混合物2に関してはN=3、(+)IL−1βに関してはn=4、(−)IL−1βに関してはn=2。 図6Aは、ポリアミドの投与から生じる、COX2 mRNAレベルのノーザンブロット解析を示す棒グラフである。COX2 mRNAレベルのノーザンブロット解析は、混合物1による増進および混合物2による阻害を示した。これらの結果は、タンパク質およびPGE2レベルと一致した。 図6Bは、COX2 mRNAのノーザンブロット解析の写真である。 図7は、ICAM1レベルに対するポリアミドの影響を示す棒グラフである。ポリアミドはCOX2に関して選択的である:混合物1はICAM1レベルに最小限の影響しか及ぼさず、そして混合物2は影響を及ぼさなかった 図8は、IL−6レベルに対するポリアミドの影響を示す棒グラフである。ポリアミドはいくぶん選択的であり、混合物1はIL−6産生を増加させたが、COX2に関する場合よりもはるかに少なかった。混合物2は影響を及ぼさなかった。

Claims (15)

  1. COX2遺伝子を含有する細胞においてCOX2遺伝子発現を制御する方法であって、該方法はポリアミドを細胞に導入することを含み、該ポリアミドは細胞においてCOX2遺伝子プロモーター標的部位でDNAへの特異的な結合を提供するN−メチルピロール(Py)およびN−メチルイミダゾール(IM)を含み、このため前記ポリアミドがCOX2遺伝子プロモーター標的部位に結合し、そしてCOX2遺伝子の転写を制御する、前記方法。
  2. ポリアミドが、COX2遺伝子の転写因子結合部位と部分的にまたは完全に重複する配列に結合する、請求項1の方法。
  3. 転写因子結合部位が、CRE、NFκB、Ets−1、LEF−1、およびTATAボックスからなる群より選択される、請求項2の方法。
  4. ポリアミドがCOX2遺伝子の転写を増進する、請求項3の方法。
  5. ポリアミドがCOX2遺伝子の転写を抑制する、請求項3の方法。
  6. 少なくとも2つの異なるポリアミドが、1以上の転写因子結合部位に結合する、請求項3の方法。
  7. ポリアミドが、単独で、または対で、DNAに結合する、請求項1の方法。
  8. ポリアミドがヘアピンターンを形成する、請求項1の方法。
  9. COX2遺伝子発現を制御するためのポリアミド化合物であって、N−メチルピロール(Py)およびN−メチルイミダゾール(IM)を含み、DNAのCOX2遺伝子プロモーター領域に特異的に結合する、前記ポリアミド化合物。
  10. ポリアミドが、COX2遺伝子の転写因子結合部位と部分的にまたは完全に重複する配列に結合する、請求項9のポリアミド化合物。
  11. CRE、NFκB、Ets−1、LEF−1、およびTATAボックスからなる群より選択される転写因子結合部位に結合する、請求項10のポリアミド化合物。
  12. 転写因子結合部位がCREであり、かつポリアミド化合物がIm−Py−Py−Im−γ−Py−Im−Py−Py−β−Dpである、請求項11のポリアミド化合物。
  13. 転写因子結合部位がEts−1であり、かつポリアミド化合物がIm−Im−Py−Py−γ−Py−Im−Py−Py−β−DpおよびIm−Im−Py−Im−γ−Py−Py−β−Py−β−Dpからなる群より選択される、請求項11のポリアミド化合物。
  14. 転写因子結合部位がTATAボックスであり、かつポリアミド化合物がIm−Py−Py−Py−Im−γ−Py−Py−Im−Py−Py−β−Dpである、請求項11のポリアミド化合物。
  15. 転写因子結合部位がLEF−1であり、かつポリアミド化合物がIm−β−Im−Py−γ−Im−β−Im−Py−β−Dp、Im−Py−Im−Py−γ−Im−Py−Im−Py−β−Dp、Im−Py−Py−Py−Im−γ−Py−Im−Im−Im−Py−β−Dp、Im−β−Py−Py−Im−γ−Py−Im−Im−Im−Py−β−Dp、Im−Py−Py−β−Im−Py−Im−γ−Py−Im−Py−β−Im−Py−Py−β―Dp、Im−Py−Py−γ−Im−Py−Py−β−Dp、およびIm−Py−Py−Im−Py−γ−Py−Py−Py−Py−Py−β−Dpからなる群より選択される、請求項11のポリアミド化合物。
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