JP2005507868A - 虚血後の白血球内皮相互作用の調節 - Google Patents

虚血後の白血球内皮相互作用の調節 Download PDF

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Abstract

本発明は、虚血(例えば、発作)後の再灌流によって引き起こされる、組織または器官(例えば、脳)に対する損傷の減少または予防のための方法および組成物に関する。本発明はまた、P−セレクチンアンタゴニストを投与することによる被験体における虚血および/または再灌流から引き起こされる梗塞の大きさの減少のための方法および組成物を提供する。本発明はさらに、可溶性P−セレクチンリガンドまたはそのフラグメント、抗P−セレクチンリガンド抗体または抗P−セレクチン抗体を投与することにより、被験体における白血球ローリング、細胞間接着、および血管への細胞接着を調節(例えば、減弱)するための方法を提供する。本発明はまた、虚血性障害および再灌流損傷により引き起こされる組織または器官に対する損傷を減少または予防し得る化合物を同定する方法を提供する。

Description

【背景技術】
【0001】
本願は、2001年8月3日に出願された、米国仮出願第60/309,816号からの優先権を主張する。
【0002】
(発明の背景)
発作は、米国における死亡および成人障害の最大の要因である。National Stroke Associationによると、発作は、米国における3番目の死因であり、ほぼ160,000人が死亡している。米国において、毎年、約720,000人が発作に苦しんでおり、そのうちの600,000以上が、虚血性発作である。虚血性発作は、血液塊が、脳への血流をブロックする場合に生じる。生じる酸素枯渇(すなわち、虚血)は、細胞死を導く。脳の罹患した領域への血流が、自然にかまたは血栓溶解薬による処置を通して回復され得る。脳の罹患した領域への血流の回復は、再灌流と呼ばれる。再灌流は、しばしば、急性炎症応答を誘発し、これは、発作関連脳損傷の重要な部分を導くと考えられる。この損傷(再灌流損傷と呼ばれる)は、主に、好中球により引き起こされる。
【0003】
白血球細胞が、一過性の虚血の後の脳に対する損傷の悪化に寄与していることを示す、多くの証拠が存在する。接着分子が、虚血および再灌流損傷に対する重要な寄与分子であるという証拠もまた存在する。多くの動物研究は、虚血および再灌流損傷における白血球の関与の調節が、その後の脳への損傷の大きさに影響を与えることを実証した。白血球は、病巣および全体的な虚血モデルにおける虚血/再灌流損傷に対する保護を提供することが実証された(Bednarら(1991)Stroke 22:44−50;Duktaら(1989)Stroke 20:390−5;Matsuoら(1994)Brain Resarch 656:344−52)。後の研究者は、ブロッキングインテグリンが、一過性の虚血後の脳に対する損傷の大きさに対する効果を有することを実証した(Bowersら(1993)Neurology 119:215−9;Choppら(1994)Stroke 25:869−75;Jiangら(1994)Neuroscience Resarch Communications 15:85−93;Zhangら(1994)Neurology 44:1747−51)。
【0004】
セレクチン(例えば、P−セレクチン、E−セレクチン、およびL−セレクチン)は、標的細胞(例えば、血小板および白血球)の表面上に存在するリガンドとの特異的相互作用を通して細胞間接着を媒介すると考えられている。一般的には、セレクチンのリガンドは、炭化水素部分の少なくとも一部(例えば、シアリルLewis(sLe)およびシアリルLewis(sLe))を含む。P−セレクチンは、非シアレート形態のLewis血液型抗原を含み、シアリルLewisに対するより高い親和性を有する炭化水素に結合する。P−セレクチン糖タンパク質リガンド−1(PSGL−1)(E−セレクチンおよびL−セレクチンにも結合し得る高親和性P−セレクチンリガンド)は、白血球により発現され、そして白血球、血小板、および内皮細胞型の間の細胞接着を媒介する(米国特許第5,843,707号および米国特許第5,827,817号)。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の要旨)
本発明は、一部、P−セレクチンアンタゴニスト(例えば、rPSGL−Ig)が、一過性虚血後の大脳皮質における細静脈に沿った白血球ローリングおよび血小板への白血球接着と干渉するという発見に基づく。例えば、虚血前、再灌流前、または再灌流中に被験体にP−セレクチンアンタゴニスト(例えば、rPSGL−Ig)を投与することによる、P−セレクチンとP−セレクチンリガンドとの相互作用のブロックは、脳への損傷(一過性虚血により引き起こされる、脳における梗塞体積を含む)の大きさを減少するのに効果的である。
【0006】
従って、本発明は、被験体において、虚血(例えば、発作)後の再灌流損傷により引き起こされる組織または器官(例えば、脳)への損傷を減少するために使用するための方法および組成物を提供する。本発明はまた、被験体において、虚血後の再灌流から生じる梗塞(例えば、皮質梗塞)の大きさを減少するために使用するための方法および組成物を提供する。虚血を生じ、従って再灌流損傷を生じ得る他の虚血性障害としては、例えば、腸間膜および末梢血管疾患、器官移植、循環性ショック、および血栓性障害(例えば、血栓塞栓症、深静脈血栓症、肺性塞栓症、発作、心筋梗塞、流産、抗トロンビンIII不全と関連する血栓形成傾向、プロテインC不全、プロテインS不全、活性化プロテインCに対する耐性、異常フィブリノーゲン血症、フィブリン溶解性障害、ホモシスチン尿症、妊娠、炎症性障害、骨髄増殖性障害、動脈硬化、アンギナ(例えば、不安定アンギナ)、汎発性血管内凝固症候群、血栓性血小板減少性紫斑病、癌転移、鎌状赤血球疾患、および糸球体腎炎が挙げられる。
【0007】
本発明は、少なくとも一部、対象(P−セレクチンリガンド分子もしくはP−セレクチンリガンド活性を有するそのフラグメント(例えば、可溶性PSGL−1、または可溶性組換えPSGL融合タンパク質、抗P−セレクチン抗体、および抗P−セレクチンリガンド抗体)を含む)にP−セレクチンアンタゴニストを投与することによるP−セレクチンアンタゴニズムが、細胞接着(例えば、細胞間接着、(例えば、白血球内皮接着および白血球血小板接着)および血管への細胞(例えば、白血球)接着)を阻害すること、および一過性の虚血後の脳の表面上の細静脈における白血球ローリングを減弱することによって、一過性虚血および再灌流により引き起こされる脳への損傷および梗塞の大きさを効果的に減少させるという発見に基づいている。本発明のP−セレクチンリガンド分子は、本明細書中で、P−セレクチン糖タンパク質リガンド−1(PSGL−1)分子と称される。
【0008】
1つの局面において、本発明は、例えば、虚血後の被験体の脳における、再灌流損傷を予防または減少させるための方法を提供する。この方法は、P−セレクチンアンタゴニストを含む有効量の組成物を投与する工程を包含する。1つの実施形態において、被験体は、発作に罹患している。別の実施形態において、再灌流損傷は、皮質梗塞である。さらなる実施形態において、P−セレクチンアンタゴニストは、虚血前に被験体に投与される。別の実施形態において、P−セレクチンアンタゴニストは、再灌流の間に被験体に投与される。好ましい実施形態において、P−セレクチンアンタゴニストは、再灌流の前に被験体に投与される。なお別の実施形態において、P−セレクチンアンタゴニストは、有効量の接着分子の1つ以上のインヒビター(例えば、E−セレクチン、L−セレクチン、ICAM−1、VCAM−1、またはCD−18のインヒビター)と組み合わせて被験体に投与される。さらなる実施形態において、P−セレクチンアンタゴニストは、血栓溶解剤(例えば、組織プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)、またはストレプトキナーゼ、抗血小板剤(例えば、アスピリンまたはヘパリン)、抗凝固剤(例えば、ワルファリン)、または細胞保護剤と組み合わせて投与される。
【0009】
1つの実施形態において、P−セレクチンアンタゴニストは、P−セレクチンリガンドタンパク質である。別の実施形態において、P−セレクチンリガンドタンパク質は、ヒトP−セレクチンリガンドタンパク質である。好ましい実施形態において、P−セレクチンアンタゴニストは、可溶性P−セレクチンリガンドタンパク質もしくはP−セレクチンリガンド活性を有するそのフラグメント(例えば、可溶性PSGL−1)、または可溶性組換えPSGL融合タンパク質(例えば、組換えPSGL−Ig)である。別の実施形態において、P−セレクチンアンタゴニストは、抗P−セレクチン抗体もしくは生物学的に活性なそのフラグメント、または抗P−セレクチンリガンド抗体もしくは生物学的に活性なそのフラグメントである。なお別の実施形態において、この組成物はさらに、薬学的に受容可能なキャリアを含む。
【0010】
1つの実施形態において、被験体は哺乳動物(例えば、ヒト)である。別の実施形態において、本発明の方法は、P−セレクチンリガンドタンパク質の細胞外ドメインの少なくとも一部(例えば、配列番号2に示されるアミノ酸配列のアミノ酸42〜60、42〜88、42〜118、42〜189、または42〜310)を含む、可溶性P−セレクチンリガンドタンパク質の投与を包含する。別の実施形態において、このタンパク質は、配列番号2に示されるP−セレクチンリガンドタンパク質の少なくとも細胞外ドメインを含む、可溶性P−セレクチンリガンドタンパク質である。さらなる実施形態において、本発明は、免疫グロブリン(例えば、ヒトIgG)のFc部分をさらに含む、可溶性タンパク質を提供する。関連する実施形態において、この可溶性タンパク質は、配列番号2のアミノ酸42〜アミノ酸60のアミノ酸配列を含み、そのC末端で、免疫グロブリンのFc部分に融合されている可溶性P−セレクチンリガンドタンパク質である。関連する実施形態において、この可溶性タンパク質は、配列番号2のアミノ酸42〜アミノ酸88のアミノ酸配列を含み、そのC末端で、免疫グロブリンのFc部分に融合されている可溶性P−セレクチンリガンドタンパク質である。さらなる実施形態において、免疫グロブリンのFc部分は、連結配列を通して、P−セレクチンリガンドタンパク質に融合されている。
【0011】
別の局面において、本発明は、有効量のP−セレクチンアンタゴニストまたはP−セレクチンリガンド活性を有するそのフラグメント(例えば、可溶性PSGL−1、または可溶性組換えPSGL融合タンパク質(例えば、組換えPSGL−Ig)、抗P−セレクチンリガンド抗体もしくは生物学的に活性なそのフラグメント、または抗P−セレクチン抗体もしくは生物学的に活性なそのフラグメント)を含む組成物を投与することによる、被験体における虚血後の脳における梗塞を予防または減少する方法を提供する。さらなる局面において、本発明は、有効量のP−セレクチンアンタゴニストまたはP−セレクチンリガンド活性を有するそのフラグメント(例えば、可溶性PSGL−1、または可溶性組換えPSGL融合タンパク質(例えば、組換えPSGL−Ig)、抗P−セレクチンリガンド抗体もしくは生物学的に活性なそのフラグメント、または抗P−セレクチン抗体もしくは生物学的に活性なそのフラグメント)を含む組成物を投与することによる、被験体における発作後の脳に対する損傷を予防または減少するための方法を提供する。なお別の局面において、本発明は、有効量のP−セレクチンアンタゴニストまたはP−セレクチンリガンド活性を有するそのフラグメント(例えば、可溶性PSGL−1、または組換えPSGL融合タンパク質(例えば、組換えPSGL−Ig)、抗P−セレクチンリガンド抗体もしくは生物学的に活性なそのフラグメント、またはP−セレクチン抗体もしくは生物学的に活性なそのフラグメント)を含む組成物を投与することによる、虚血後の被験体における血管に対する細胞接着を阻害する方法を提供する。1つの実施形態において、血管は、被験体の脳に存在する。別の実施形態において、細胞は、白血球である。
【0012】
なお別の局面において、本発明は、有効量のP−セレクチンアンタゴニストまたはP−セレクチンリガンド活性を有するそのフラグメント(例えば、可溶性PSGL−1、または可溶性組換えPSGL融合タンパク質(例えば、組換えPSGL−Ig)、抗P−セレクチンリガンド抗体もしくは生物学的に活性なそのフラグメント、または抗P−セレクチン抗体もしくは生物学的に活性なそのフラグメント)を含む組成物を投与することによる、虚血後の被験体における、細胞間接着(例えば、白血球血小板接着)を阻害するための方法を提供する。
【0013】
なお別の局面において、本発明は、例えば、一過性虚血後の、例えば、大脳皮質における細静脈に沿った血管における再灌流損傷を予防もしくは減少し得る、および/または白血球ローリングを減弱し得る化合物を同定する方法を提供する。この方法において、PSGL−1ポリペプチド活性を調節する化合物の能力がアッセイされる。1つの実施形態において、PSGL−1ポリペプチド活性を調節する化合物の能力は、細胞接着(例えば、細胞間接着(例えば、白血球内皮細胞接着または白血球血小板接着)および血管への細胞(例えば、血小板または白血球)の接着)における減少を検出することにより決定される。
【0014】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および請求項から明らかである。
【0015】
(発明の詳細な説明)
本発明は、少なくとも一部、可溶性P−セレクチンリガンド分子が、虚血発作の動物モデルにおける一過性虚血後の大脳皮質における細静脈に沿った白血球ローリングを調節(例えば、減弱)するという発見に基づく。本明細書中で使用する場合、「白血球ローリング」は、接着細胞を強固にする前およ「び内皮組織への白血球の移動の前の、血管の内皮細胞への白血球の弱い接着および血管の内皮細胞に沿った白血球のローリングを含む。被験体への可溶性P−セレクチンリガンド分子の投与はまた、虚血後の再灌流から生じる皮質梗塞の大きさを有意に減少させる。従って、可溶性P−セレクチンリガンド分子の投与は、虚血(例えば、発作)および再灌流損傷により引き起こされる損傷から被験体の脳を保護する。
【0016】
従って、本発明は、虚血(例えば、発作)の後の再灌流により引き起こされる損傷、例えば、組織または器官(例えば、脳)への損傷の予防または減少のための方法および組成物を提供する。本発明はまた、P−セレクチンアンタゴニスト(例えば、可溶性P−セレクチンリガンドタンパク質、もしくはP−セレクチンリガンド活性を有するそのフラグメント(例えば、可溶性PSGL−1)、または可溶性組換えPSGL融合タンパク質、抗P−セレクチンリガンド抗体、もしくは生物学的に活性なそのフラグメント、または抗P−セレクチン抗体もしくは生物学的に活性なそのフラグメント)の投与による、インビボでの再灌流損傷の調節(例えば、予防または減少)のための方法および組成物を提供する。P−セレクチンアンタゴニストは、虚血の前、再灌流の前、または再灌流の間に投与され得る。本発明の方法において使用されるP−セレクチンリガンドタンパク質は、本明細書中で、P−セレクチン糖タンパク質リガンド−1(PSGL−1)分子と称される。
【0017】
本明細書中で使用される場合、虚血障害は、血流が遮断または中断されて、任意の器官、組織または細胞への血液供給および酸素供給の欠如を生じる、任意の障害または状態である。多数の医療的介入(例えば、バイパス手術)の間の血流の中断は、虚血を生じ得る。虚血は、罹患した心血管組織によって引き起こされ得、そして虚血心疾患におけるように、心血管組織に影響を与え得る。しかし、虚血は、酸素供給の欠如に苦しむ任意の器官で生じ得る。虚血を生じ、従って、再灌流損傷を生じ得る他の虚血障害としては、例えば、以下が挙げられる:心筋虚血、腸間膜および腹腔の血管疾患、臓器移植、循環器発作および血栓障害(例えば、血栓塞栓症、深部静脈血栓症、肺塞栓症)、心筋梗塞、流産、抗トロンビンIII欠損、プロテインC欠損、プロテインS欠損、活性化プロテインCに対する耐性、異常フィブリノーゲン血症、フィブリン溶解性障害に関連する血栓形成傾向、ホモシスチン尿症、妊娠、炎症障害、骨髄増殖性障害、アテローム硬化症、アンギナ(例えば、不安定狭心症)、播種性血管内凝固症候群、血栓性血小板減少性紫斑病、癌転移、鎌状赤血球症および糸球体腎炎。
【0018】
本明細書中で使用される場合、「再灌流」とは、天然にかまたは血栓溶解剤(例えば、組織プラスミノゲンアクチベータ(tPA)、ストレプトキナーゼまたは他の薬剤(例えば、抗凝固剤もしくは抗血小板剤))による誘導によってかのいずれかでの、虚血血管への血流の回復を含む。本明細書中で使用する場合、「再灌流損傷」は、組織不全および組織梗塞(例えば、皮質梗塞)を生じ得る虚血および再灌流から生じる、器官、組織(例えば、血管)もしくは細胞の破壊またはこれらの損傷のいずれかを含む。おそらく、血小板および内皮を白血球に対して接着性にするトロンビンおよびサイトカインによる血小板および内皮の活性化に一部起因して、再灌流損傷は、被験体における炎症応答(細胞−細胞接着(例えば、白血球−内皮細胞接着および白血球−血小板接着)および虚血領域における白血球浸潤(白血球ローリング(rolling)))によって、少なくとも一部、引き起こされる(Romsonら、Circulation 67:1016−1023、1983)。白血球ローリングの後、これらの接着性白血球は、内皮を通って遊走して、再灌流の間に虚血組織を破壊し得る。従って、白血球ローリングの減少は、再灌流によって引き起こされる組織および器官に対する損傷の減少を生じる。
【0019】
本明細書中で使用される場合、「P−セレクチンアンタゴニスト」は、例えば、P−セレクチンまたはE−セレクチンとP−セレクチンリガンドタンパク質との間の相互作用を阻害することによって、例えば、P−セレクチンまたはE−セレクチンを発現する内皮細胞とPSGL発現白血球で活性化された血小板との間の相互作用を阻害することによって、P−セレクチンおよび/またはE−セレクチンをアンタゴナイズし得る、任意の薬剤を含む。例えば、P−セレクチンアンタゴニストは、P−セレクチンリガンド分子またはP−セレクチンリガンド活性を有するそのフラグメント(例えば、可溶性PSGL−1または可溶性組換えPSGL融合タンパク質(例えば、組換えPSGL−Ig))および低分子、抗P−セレクチン抗体ならびにP−セレクチンリガンド抗体が挙げられる。好ましい実施形態において、P−セレクチンリガンドは、可溶性である。
【0020】
本明細書中で交換可能に使用される場合、「P−セレクチンリガンド活性」、「PSGL−1活性」、「PSGL−1の生物学的活性」または「PSGL−1の機能的活性」は、標準的な技術に従ってインビボまたはインビトロで測定されるような、PSGL−1応答性細胞(例えば、血小板、白血球または内皮細胞)に対して、PSGL−1タンパク質、PSGL−1ポリペプチドまたはPSGL−1核酸分子によって発揮される活性を含む。PSGL−1活性は、直接的活性(例えば、PSGL−1標的分子(例えば、P−セレクチンまたはE−セレクチン)との会合)であり得る。本明細書中で使用される場合、「基質」または「標的分子」または「結合パートナー」は、PSGL−1タンパク質が天然に相互作用または結合して、PSGL−1媒介性の機能(例えば、細胞遊走または細胞接着の調節)が達成される分子(例えば、P−セレクチンまたはE−セレクチン)である。PSGL−1標的分子は、非PSGL−1分子またはPSGL−1タンパク質もしくはPSGL−1ポリペプチドであり得る。このような標的分子の例としては、PSGL−1タンパク質と同じシグナル伝達経路中のタンパク質(例えば、このタンパク質は、P−セレクチン結合の調節に関与する経路中のPSGL−1タンパク質の上流(活性の刺激因子およびインヒビターの両方を含む)または下流で機能し得る)が挙げられる。あるいは、PSGL−1活性は、間接的活性(例えば、PSGL−1標的分子(例えば、P−セレクチンまたはE−セレクチン)とPSGL−1との相互作用によって媒介される細胞シグナル伝達活性)である。P−セレクチンの生物学的活性は、本明細書中に記載され、そしてこれには、例えば、以下の1つ以上の活性が挙げられる:1)P−セレクチンまたはE−セレクチンに結合するかまたはこれらと相互作用する活性;2)P−セレクチン結合またはE−セレクチン結合を調節する活性;3)細胞接着(例えば、細胞間接着(例えば、白血球−内皮細胞接着および白血球−血小板接着)および血管(例えば、脳の血管)への細胞(例えば、白血球)の接着)を調節(例えば、減少または減弱)する活性;4)血小板および内皮細胞への白血球の補給を調節する活性;5)細胞(例えば、白血球または血小板)の遊走を調節する活性;6)例えば、脳の血管における白血球のローリングを調節(例えば、減少または減弱)する活性;7)虚血後の再灌流損傷を調節(例えば、減少または減弱)する活性;ならびに8)再灌流後の、例えば、脳内の梗塞の大きさを調節(例えば、減少または減弱)する活性。
【0021】
被験体へのP−セレクチンアンタゴニストの投与は、虚血前、再灌流前または再灌流の間であり得る。好ましい実施形態において、P−セレクチンアンタゴニストの投与は、虚血後かつ再灌流前である。P−セレクチンアンタゴニストは、特定の時間(例えば、再灌流前および再灌流の間)で、単一用量または複数用量で投与され得る。好ましい実施形態において、P−セレクチンアンタゴニストは、静脈内投与される。
【0022】
P−セレクチンアンタゴニストは、単独でか、あるいは血栓溶解剤(例えば、組織プラスミノゲンアクチベータ(tPA)、ストレプトキナーゼ)、抗血小板剤(例えば、アスピリンまたはヘパリン)、抗凝固剤(例えば、ワルファリン)もしくは細胞保護剤と組み合わせてか、または接着分子の1以上のインヒビター(例えば、E−セレクチン、L−セレクチン、ICAM−1、VCAM−1またはCD−18のインヒビター)と組み合わせて、投与され得る。
【0023】
本発明の方法において使用されるPSGL−1分子は、米国特許第5,827,817号(この内容は、本明細書中で参考として援用される)に記載される。
【0024】
本発明の方法において使用されるPSGL−1分子は、以下の末端糖質の1つ以上を含み得る糖タンパク質である:
【0025】
【化1】
Figure 2005507868
【0026】
【化2】
Figure 2005507868
ここで、Rは、糖質鎖(これは、P−セレクチンリガンドタンパク質に直接共有結合する)または脂質部分(これは、P−セレクチンリガンドタンパク質に共有結合する)のいずれかの残りを示す。本発明の方法において使用されるP−セレクチンリガンド糖タンパク質は、さらに、硫酸化され得るかあるいは翻訳後修飾され得る。COS細胞およびCHO細胞中で発現される場合、全長P−セレクチンリガンドタンパク質(配列番号2のアミノ酸1〜402)または成熟P−セレクチン(配列番号2のアミノ酸42〜402)は、非還元的SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって示されるような、220kDの見かけの分子量を有するホモダイマーまたは二価のタンパク質である。
【0027】
PSGL−1は、内皮細胞および血小板に対して、P−セレクチンおよびE−セレクチンについてのリガンドとして作用する糖タンパク質である。PSGL−1のDNA配列は、配列番号1に示される。PSGL−1の完全アミノ酸配列(すなわち、成熟ペプチド+リーダー配列)は、配列番号2のアミノ酸1〜アミノ酸402において示されるアミノ酸配列によって特徴付けられる。成熟PSGL−1タンパク質は、配列番号2のアミノ酸42〜402において示されるアミノ酸配列によって特徴付けられる。
【0028】
本明細書中で使用される場合、「可溶性PSGL−1タンパク質」または「可溶性P−セレクチンリガンドタンパク質」は、sLeを構成する糖質を含む、可溶性P−セレクチンリガンドタンパク質(例えば、可溶性PSGL−1、またはP−セレクチンリガンド活性を有するそのフラグメント)をいう。本発明の方法において使用される可溶性P−セレクチンリガンドタンパク質は、好ましくは、PSGL−1の細胞外ドメイン(配列番号2のほぼアミノ酸18〜ほぼアミノ酸310)またはその生物学的に活性なフラグメントを少なくとも含む。P−セレクチンリガンド分子の他の可溶性形態は、例えば、配列番号2のアミノ酸42〜310において示されるアミノ酸配列またはその生物学的に活性なフラグメントによって特徴付けられる。PSGL−1の細胞外ドメインの生物学的に活性なフラグメントとしては、例えば、配列番号2に示されるアミノ酸配列の、アミノ酸42〜60、42〜88、42〜118および42〜189が挙げられる。本発明の方法において使用される可溶性PSGL−1タンパク質は、好ましくは、モノマーまたはダイマーのPSGL−1タンパク質である。
【0029】
本発明の方法の1実施形態において、本発明の方法のP−セレクチンリガンド分子の可溶性形態は、「リンカー」配列を介して、免疫グロブリン(例えば、IgG分子)のFc部分と融合されて、融合タンパク質を形成し得る。他の免疫グロブリンアイソタイプもまた、このような融合タンパク質を生成するために使用され得る。
【0030】
本発明の別の実施形態において、可溶性P−セレクチンリガンドタンパク質は、PSGL−1タンパク質分子の細胞外ドメイン、sLeを構成する糖類からなるキメラ分子であり、そしてリンカー配列を介してヒトIgGのFc部分へと融合される。
【0031】
PSGL−1のモノマー形態は、例えば、配列番号2の310位のシステインがセリンまたはアラニンで置換されるように、PSGL−1のアミノ酸配列を変更することによってか、あるいは当該分野で公知の他の方法によって、生成され得る。
【0032】
好ましい実施形態において、ダイマーPSGL−1(dimPSGL−1)融合タンパク質は、成熟PSGL−1のN末端の47アミノ酸によって生成され、それによって、P−セレクチンに対しては高い親和性を維持するが、L−セレクチンおよびE−セレクチンに対する結合を低減する。PSGL−1のN末端の47アミノ酸は、ヒト免疫グロブリン(IgG)のFc部分に連結され、それによって、ネイティブのPSGL−1分子において観察される二価の提示を回復する。最後に、Fcレセプター結合および補体固定効果または機能を無効にするために、IgG−Fc領域の2つのアミノ酸が変異される(実施例1を参照のこと)。
【0033】
本発明の方法は、遺伝子コードの縮重に起因して配列番号1に示されるヌクレオチド配列とは異なり、従って、配列番号1に示されるヌクレオチド配列によってコードされるのと同じPSGL−1タンパク質をコードする、核酸分子の使用を包含する。別の実施形態において、本発明の方法に含まれる単離された核酸分子は、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列を有する。
【0034】
本発明の方法は、ヒトPSGL−1の対立遺伝子改変体(例えば、機能的対立遺伝子改変体または非機能的対立遺伝子改変体)の使用をさらに含む。機能的対立遺伝子改変体は、本明細書中に記載されるPSGL−1活性(例えば、P−セレクチン結合またはE−セレクチン結合)を維持するヒトPSGL−1タンパク質の、天然に存在するアミノ酸配列改変体である。機能的対立遺伝子改変体は、代表的に、配列番号2の1つ以上のアミノ酸の保存的置換、またはこのタンパク質の非必須領域中の非必須残基の置換、欠失もしくは挿入のみを含む。非機能的対立遺伝子改変体は、PSGL−1活性を有さない、ヒトPSGL−1タンパク質の天然に存在するアミノ酸配列改変体である。非機能的対立遺伝子改変体は、代表的に、配列番号2のアミノ酸配列の非保存的な置換、欠失もしくは挿入または未成熟短縮、あるいはこのタンパク質の必須領域もしくは非必須領域中の置換、挿入もしくは欠失を含む。
【0035】
本発明の種々の局面を、以下のサブセクションにおいてさらに詳細に記載する。
【0036】
(I.本発明の方法において使用される、単離されたPSGL−1タンパク質、抗PSGL−1抗体および抗P−セレクチン抗体)
本発明の方法は、単離されたP−セレクチンリガンドタンパク質(例えば、PSGL−1タンパク質)およびその生物学的に活性な部分、ならびに抗P−セレクチン抗体を惹起するための免疫原としての使用に適切なポリペプチドフラグメントの使用を含む。1実施形態において、ネイティブのPSGL−1タンパク質が、標準的なタンパク質生成技術を使用して、適切な精製スキームによって、細胞供給源または組織供給源から単離され得る。別の実施形態において、PSGL−1タンパク質は、組換えDNA技術によって生成される。組換え発現の代わりに、PSGL−1タンパク質またはポリペプチドは、標準的なペプチド合成技術を使用して化学的に合成され得る。
【0037】
本明細書中で使用される場合、PSGL−1タンパク質の「生物学的に活性な部分」は、PSGL−1活性を有する、PSGL−1タンパク質のフラグメントを含む。PSGL−1タンパク質の生物学的に活性な部分としては、PSGL−1タンパク質のアミノ酸配列(例えば、配列番号2に示されるアミノ酸配列)と十分に同一であるかまたはこのアミノ酸に由来するアミノ酸配列を含むペプチドが挙げられ、これは、全長PSGL−1タンパク質よりも少ないアミノ酸を含み、そしてPSGL−1タンパク質の少なくとも1つの活性を示す。代表的に、生物学的に活性な部分は、PSGL−1タンパク質の少なくとも1つの活性を有する、ドメインまたはモチーフを含む(例えば、PSGL−1の細胞外ドメインを含むフラグメント、またはP−セレクチンおよび/もしくはE−セレクチンと相互作用し得るそのフラグメント)。PSGL−1タンパク質の生物学的に活性な部分は、例えば、18、20、22、25、50、75、100、125、150、175、200、250、300またはそれ以上のアミノ酸長のポリペプチドであり得る。PSGL−1タンパク質の生物学的に活性な部分は、PSGL−1活性を調節する薬剤を開発するための標的として使用され得る。
【0038】
好ましい実施形態において、本発明の方法において使用されるPSGL−1タンパク質は、少なくとも、配列番号2に示されるアミノ酸配列の細胞外ドメインまたはPSGL−1の細胞外ドメインのP−セレクチン結合フラグメント、あるいは配列番号2の細胞外ドメインを有する。他の実施形態において、PSGL−1タンパク質は、以下のサブセクションIIにおいて詳細に記載されるように、配列番号2と実質的に同一であり、そして配列番号2のタンパク質の機能的活性を保持するが、天然の対立遺伝子改変体または変異に起因してアミノ酸配列においては異なる。従って、別の実施形態において、本発明の方法において使用されるPSGL−1タンパク質は、配列番号2と少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上同一なアミノ酸配列を含むタンパク質である。
【0039】
好ましい実施形態において、本発明の方法において使用されるPSGL−1タンパク質は、可溶性P−セレクチンリガンドタンパク質である。P−セレクチンリガンドタンパク質の可溶性形態をコードするDNAは、P−セレクチンリガンドタンパク質の膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインをコードする領域が欠失されているか、そして/または停止コドンが細胞外ドメインのカルボキシ末端のアミノ酸についてのコドンに対して3’側に導入されている、改変DNAの発現によって調製され得る。例えば、疎水性分析は、配列番号2に示されるP−セレクチンリガンドタンパク質が、配列番号2のアミノ酸311〜332からなる膜貫通ドメインおよび配列番号2のアミノ酸333〜402からなる細胞質ドメインを有することを予測する。上記のような改変DNAは、標準的な分子生物学の技術(例えば、当該分野で公知の部位特異的変異誘発を含む)または適切なオリゴヌクレオチドプライマーを使用するポリメラーゼ連鎖反応によって、作製され得る。種々の可溶性P−セレクチンリガンドタンパク質をコードするいくつかのDNAを生成するための方法は、本明細書中で参考として援用される米国特許第5,827,817号に示される。
【0040】
2つのアミノ酸配列または2つの核酸配列の同一性%を決定するために、これらの配列は、最適な比較目的のために整列される(例えば、ギャップは、最適なアラインメントのために第一および第二のアミノ酸配列または核酸配列の一方または両方中に導入され得、そして非同一配列は、比較目的のために無視され得る)。好ましい実施形態において、比較目的のために整列される参照配列の長さは、参照配列の長さの少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも60%、そしてさらにより好ましくは少なくとも70%、80%または90%である(例えば、第二の配列を、400アミノ酸残基を有する配列番号2のPSGL−1アミノ酸配列に対して整列させる場合、少なくとも280、好ましくは少なくとも240、より好ましくは少なくとも200、なおより好ましくは少なくとも160、そしてなおより好ましくは少なくとも120、80もしくは40またはそれ以上のアミノ酸残基が、整列される)。次いで、対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置にあるアミノ酸残基またはヌクレオチドが比較される。第一の配列中の位置が、第二の配列中の対応する位置と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドによって占められる場合、これらの分子は、その位置で同一である(本明細書中で使用する場合、アミノ酸または核酸の「同一性」は、アミノ酸または核酸の「相同性」と等価である)。2つの配列間の同一性%は、2つの配列の最適なアラインメントのために導入される必要があるギャップの数、各ギャップの長さを考慮した、これらの配列によって共有される同一な位置の数の関数である。
【0041】
配列比較および2つの配列間のパーセント同一性の決定は、数学的アルゴリズムを使用して達成され得る。好ましい実施形態において、2つのアミノ酸配列間のパーセント同一性は、NeedlemanおよびWunsch(J.Mol.Biol.48:444−453(1970))のアルゴリズム(これは、GCGソフトウェアパッケージ(http://www.gcg.comから入手可能)中のGAPプログラムに組み込まれている)を使用して、Blosum 62マトリクスまたはPAM250マトリクスのいずれか、ならびにギャップウェイト16、14、12、10、8、6、または4およびレングスウェイト(length weight)1、2、3、4、5、または6を用いて決定される。さらに別の好ましい実施形態において、2つのヌクレオチド配列間のパーセント同一性は、GCGソフトウェアパッケージ(http://www.gcg.comから入手可能)のGAPプログラムを用い、NWSgapdna.CMPマトリクスならびにギャップウェイト40、50、60、70、または80およびレングスウェイト1、2、3、4、5、または6を用いて決定される。別の実施形態において、2種のアミノ酸またはヌクレオチド配列間のパーセント同一性が、ALIGNプログラム(バージョン2.0または2.0U)に組み込まれたE.MeyersおよびW.Miller(Comput.Appl.Biosci.4:11−17(1988))のアルゴリズムを用い、PAM120ウェイト残基表、ギャップレングスペナルティー12およびギャップペナルティー4を用いて決定される。
【0042】
本発明の方法はまた、PSGL−1キメラタンパク質またはPSGL−1融合タンパク質を使用し得る。本明細書中で使用される場合、PSGL−1「キメラタンパク質」または「融合タンパク質」は、非PSGL−1ポリペプチドに作動可能に連結されたPSGL−1ポリペプチドを含む。「PSGL−1ポリペプチド」は、PSGL−1分子に対応するアミノ酸配列を有するポリペプチドをいうが、「非PSGL−1ポリペプチド」は、PSGL−1タンパク質に対して実質的に相同ではないタンパク質(例えば、PSGL−1タンパク質とは異なり、かつ同一または異なる生物体に由来するタンパク質)に対応するアミノ酸配列を有するポリペプチドをいう。PSGL−1融合タンパク質において、PSGL−1ポリペプチドは、PSGL−1タンパク質のすべてまたは一部分に対応し得る。好ましい実施形態において、PSGL−1融合タンパク質は、PSGL−1タンパク質の少なくとも1つの生物学的に活性な部分(例えば、PSGL−1の細胞外ドメインまたはそのP−セレクチン結合フラグメント)を含む。別の好ましい実施形態において、PSGL−1融合タンパク質は、PSGL−1タンパク質の少なくとも2つの生物学的に活性な部分を含む。融合タンパク質において、用語「作動可能に連結された」は、PSGL−1ポリペプチドおよび非PSGL−1ポリペプチドが、互いにインフレームで融合されていることを示すことが意図される。非PSGL−1ポリペプチドは、PSGL−1ポリペプチドのN末端またはC末端に融合され得る。
【0043】
例えば、1つの実施形態において、この融合タンパク質は、PSGL−1タンパク質の組換え可溶性形態であり、ここでPSGL−1分子の細胞外ドメインは、ヒトIgG(例えば、可溶性rPSGL−Ig)に融合される。
【0044】
別の実施形態において、この融合タンパク質は、そのN末端で異種シグナル配列を含むPSGL−1タンパク質である。特定の宿主細胞(例えば、哺乳動物宿主細胞)において、PSGL−1の発現および/または分泌は、異種シグナル配列の使用を通じて増加され得る。
【0045】
本発明の方法において使用される可溶性PSGL−1融合タンパク質(例えば、rPSGL−Ig)は、薬学的組成物に組み込まれ、インビボで被験体に投与され得る。可溶性PSGL−1融合タンパク質は、PSGL−1基質(例えば、P−セレクチンまたはE−セレクチン)のバイオアベイラビリティーに影響するように使用され得る。
【0046】
さらに、本発明の方法において使用されるPSGL−1融合タンパク質は、被験体において抗P−セレクチンリガンド抗体を産生するための免疫原として、P−セレクチンリガンドを精製するため、およびスクリーニングアッセイにおいて、P−セレクチンリガンド分子とP−セレクチン分子の相互作用を阻害する分子を同定するために使用され得る。
【0047】
好ましくは、本発明の方法において使用されるPSGL−1キメラタンパク質またはPSGL−1融合タンパク質は、標準的組換えDNA技術により生成される。例えば、異なるポリペプチド配列をコードするDNAフラグメントを、従来の技術に従って(例えば、連結のために平滑末端または付着末端(stagger−ended)を使用すること、適切な末端を提供するための制限酵素消化、適切な場合は付着末端(cohesive end)を埋めること(filling−in)、望ましくない結合を避けるためのアルカリホスファターゼ処理、および酵素的連結によって)インフレームでともに連結される。別の実施形態において、融合遺伝子は、自動化DNA合成機を含む従来の技術によって合成され得る。あるいは、遺伝子フラグメントのPCR増幅は、2つの連続する遺伝子フラグメント間の相補的オーバーハング(overhang)を生じるアンカープライマーを使用して実施され得、これらのフラグメントは、引き続いてキメラ遺伝子配列を生成するためにアニールされ、そして再増幅され得る(例えば、Current Protocols in Molecular Biology,Ausubelら編、John Wiley & Sons:1992を参照のこと)。さらに、すでに融合部分(例えば、GSTポリペプチド)をコードする、多くの発現ベクターが、市販されている。PSGL−1をコードする核酸は、このような発現ベクターへクローン化され得、その結果、融合部分は、インフレームでPSGL−1タンパク質に連結される。
【0048】
本発明はまた、PSGL−1タンパク質の改変体の使用に関し、このPSGL−1タンパク質の改変体は、PSGL−1アゴニスト(模倣物)またはPSGL−1アンタゴニストのいずれかとして機能する。PSGL−1タンパク質の改変体を、変異誘発(例えば、PSGL−1タンパク質の個別の点変異または短縮化(truncation))により作製し得る。PSGL−1タンパク質のアゴニストは、天然に存在する形態のPSGL−1タンパク質の生物学的活性と実質的に同一な活性か、またはそのサブセットを保持し得る。PSGL−1タンパク質のアンタゴニストは、天然に存在する形態のPSGL−1タンパク質の1つ以上の活性を、例えば、このPSGL−1タンパク質のPSGL−1媒介活性を競合的に調節することによって阻害し得る。従って、特定の生物学的効果を、制限された機能の改変体で処理することにより誘発し得る。1つの実施形態において、このタンパク質の天然に存在する形態の生物学的活性のサブセットを有する改変体での被験体の処置は、天然に存在する形態のPSGL−1タンパク質での処置と比較して、被験体においてより少ない副作用を有する。
【0049】
1つの実施形態において、PSGL−1アゴニスト(模倣物)またはPSGL−1アンタゴニストのいずれかとして機能するPSGL−1タンパク質の改変体は、PSGL−1タンパク質アゴニスト活性またはPSGL−1タンパク質アンタゴニスト活性について、PSGL−1タンパク質の変異体(例えば、短縮型変異体)のコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングすることによって同定され得る。1つの実施形態において、PSGL−1改変体の多様なライブラリーは、核酸レベルにおけるコンビナトリアル変異誘発によって生成され、そして多様な遺伝子ライブラリーによってコードされる。PSGL−1改変体の多様なライブラリーは、例えば、遺伝子配列に合成オリゴヌクレオチドの混合物を酵素的に連結することによって産生され得、その結果、潜在的なPSGL−1配列の縮重セットが個々のポリペプチドとして、または代替的に、そこにPSGL−1配列のセットを含む、より大きな融合タンパク質のセットとして(例えば、ファージディスプレイのために)発現可能である。縮重オリゴヌクレオチド配列から潜在的なPSGL−1改変体のライブラリーを産生するために使用され得る種々の方法が存在する。縮重遺伝子配列の化学合成は、自動化DNA合成機において実行され、次いで合成遺伝子は、適切な発現ベクターに連結され得る。遺伝子の縮重セットの使用は、1つの混合物中での、潜在的なPSGL−1配列の所望のセットをコードする配列のすべての提供を可能にする。縮重オリゴヌクレオチドを合成するための方法は、当該分野で公知である(例えば、Narang,S.A.(1983)Tetrahedron 39:3,Itakuraら(1984)Annu.Rev.Biochem.53:323;Itakuraら(1984)Science 198:1056;Ikeら(1983)Nucleic Acid Res.11:477を参照のこと)。
【0050】
さらに、PSGL−1タンパク質コード配列のフラグメントのライブラリーは、PSGL−1タンパク質の改変体のスクリーニングおよび引き続く選択のためにPSGL−1フラグメントの多様な集団を生成するために使用され得る。1つの実施形態において、コード配列フラグメントのライブラリーは、PSGL−1コード配列の二本鎖PCRフラグメントを、ニックが1分子あたり約1つだけ生じる条件下でヌクレアーゼで処理すること、二本鎖DNAを変性させること、DNAを再生させて、異なるニックを有する生成物からセンス/アンチセンス対を含み得る二本鎖DNAを形成すること、S1ヌクレアーゼを用いる処理によって、再形成された二重鎖から一本鎖部分を除去すること、および得られるフラグメントライブラリーを発現ベクターに連結すること、によって生成され得る。この方法によって、PSGL−1タンパク質のN末端、C末端および種々のサイズの内部フラグメントをコードする発現ライブラリーを誘導し得る。
【0051】
点変異または短縮化によって作製されるコンビナトリアルライブラリーの遺伝子産物をスクリーニングするため、および選択された特性を有する遺伝子産物についてcDNAライブラリーをスクリーニングするためのいくつかの技術が、当該分野で公知である。このような技術は、PSGL−1タンパク質のコンビナトリアル変異誘発によって生成される遺伝子ライブラリーの迅速スクリーニングのために適合可能である。高スループット分析に従う、大きい遺伝子ライブラリーのスクリーニングのための最も広範に使用される技術は、代表的には、複製可能な発現ベクターへの遺伝子ライブラリーのクローニング、得られるベクターのライブラリーでの適切な細胞の形質転換、および所望の活性の検出が、遺伝子産物が検出された遺伝子をコードするベクターの単離を容易にする条件下でのコンビナトリアル遺伝子の発現を含む。帰納的アンサンブル変異誘発(recursive ensamble mutagenesis)(REM)は、ライブラリーにおける機能的変異体の頻度を高める技術であり、PSGL−1改変体を同定するためにスクリーニングアッセイと組み合わせて使用され得る(ArkinおよびYourvan(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:7811−7815;Delgraveら(1993)Protein Engineering 6(3):327−331)。
【0052】
本発明の方法は、抗PSGL−1抗体および抗P−セレクチン抗体の使用をさらに包含する。単離されたPSGL−1タンパク質もしくはP−セレクチンタンパク質、またはその一部分もしくはフラグメントは、ポリクローナル抗体調製およびモノクローナル抗体調製のための標準的な技術を使用して、PSGL−1またはP−セレクチンを結合する抗体を生成するための免疫原として使用され得る。P−セレクチンリガンド抗体は、例えば、米国特許第5,852,175号に記載されている。P−セレクチンに特異的な抗体は、例えば、Kurome T.ら、(1994)J.Biochem.115(3):608−614に記載されている。
【0053】
全長PSGL−1タンパク質または全長P−セレクチンタンパク質が使用され得るか、あるいは、PSGL−1またはP−セレクチンの抗原性ペプチドフラグメントが、免疫原として使用され得る(Johnstonら、(1989)Cell 56:1033−1044)。PSGL−1の抗原性ペプチドは、配列番号2に示されるアミノ酸配列の少なくとも8アミノ酸残基を含み、そしてPSGL−1のエピトープを含み、その結果、このペプチドに対して惹起された抗体は、PSGL−1タンパク質との特異的な免疫複合体を形成する。好ましくは、抗原性ペプチドは、少なくとも10アミノ酸残基、より好ましくは、少なくとも15アミノ酸残基、なおより好ましくは、少なくとも20アミノ酸残基、そして最も好ましくは、少なくとも30アミノ酸残基を含む。
【0054】
その抗原性ペプチドによって含まれる好ましいエピトープは、そのタンパク質の表面に位置するPSGL−1の領域(例えば、親水性領域)ならびに高い抗原性を有する領域である。
【0055】
代表的には、PSGL−1免疫原またはP−セレクチン免疫源を使用して、適切な被験体(例えば、ウサギ、ヤギ、マウスまたは他の哺乳動物)を免疫原で免疫することにより抗体を調製する。適切な免疫原性調製物は、例えば、組換え発現されたPSGL−1タンパク質もしくはP−セレクチンタンパク質または化学合成されたPSGL−1ポリペプチドもしくはP−セレクチンポリペプチドを含み得る。この調製物は、アジュバント(例えば、フロイント完全アジュバントまたはフロイント不完全アジュバント、または同様な免疫刺激剤)をさらに含み得る。適切な被験体を免疫原性PSGL−1調製物で免疫することにより、ポリクローナル抗PSGL−1抗体応答またはポリクローナル抗P−セレクチン抗体応答が誘導される。
【0056】
用語「抗体」とは、本明細書中で用いられる場合、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な一部(すなわち、抗原(例えば、PSGL−1またはP−セレクチン)を特異的に結合する(抗原と免疫反応する)抗原結合部位を含む分子)をいう。免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分の例としては、酵素(例えば、ペプシン)で抗体を処理することにより生成され得るF(ab)フラグメントおよびF(ab’)フラグメントが挙げられる。本発明は、PSGL−1分子を結合するポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を提供する。用語「モノクローナル抗体」または「モノクローナル抗体組成物」とは、本明細書中で使用される場合、PSGL−1の特定のエピトープと免疫反応し得る抗原結合部位の1種のみを含む抗体分子の集団をいう。従って、モノクローナル抗体組成物は、代表的には、これが免疫反応する特定のPSGL−1タンパク質またはP−セレクチンに対する単一の結合親和性を提示する。
【0057】
ポリクローナル抗PSGL−1抗体またはポリクローナルP−セレクチン抗体は、適切な被験体をPSGL−1免疫原またはP−セレクチン免疫源で免疫することにより、上記のように調製され得る。免疫した被験体における抗PSGL−1抗体力価または抗P−セレクチン抗体力価は、標準的技術により(例えば、固定化したPSGL−1またはP−セレクチンを用いる酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を用いて)経時的にモニターされ得る。所望であれば、いずれの抗原に対する抗体分子は、哺乳動物から(例えば、血液から)単離され得、そしてさらに周知の技術(例えば、IgG画分を得るためのプロテインAクロマトグラフィー)により精製され得る。免疫後、適切な時間に、例えば、抗体力価が最も高いときに、抗体生成細胞を被験体から獲得し得、そしてこれを使用して、標準的技術(例えば、初めは、KohlerおよびMilstein(1975)Nature 256:495−497により記載されたハイブリドーマ技術(Brownら(1981)J.Immunol.127:539−46;Brownら(1980)J.Biol.Chem.255:4980−83;Yehら(1976)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 76:2927−31;およびYehら(1982)Int.J.Cancer 29:269−75もまた参照のこと)、より最近のヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozborら(1983)Immunol.Today 4:72)、EBVハイブリドーマ技術(Coleら(1985)、Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,Inc.,77−96頁)またはトリオーマ(trioma)技術)によりモノクローナル抗体を調製し得る。モノクローナル抗体ハイブリドーマを生成する技術は、周知である(一般には、Kenneth,R.H.、Monoclonal Antibodies:A New Dimension In Biological Analyses,Plenum Publishing Corp.,New York,New York(1980);Lerner,E.A.(1981)Yale J.Biol.Med.54:387−402;Gefter,M.L.ら(1977)Somatic Cell Genet.3:231−36を参照のこと)。簡潔には、不死細胞株(代表的には骨髄腫)を、上記のように免疫原で免疫した哺乳動物由来のリンパ球(代表的には、脾臓細胞)と融合し、そして得られたハイブリドーマ細胞の培養物上清をスクリーニングして、PSGL−1またはP−セレクチンを結合するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを同定する。
【0058】
リンパ球と不死化細胞株とを融合するために使用される任意の多くの周知のプロトコルは、抗PSGL−1モノクローナル抗体または抗P−セレクチンモノクローナル抗体を生成する目的で適用され得る(例えば、Galfreら(1977)Nature 266:550−52;Galfterら(1977)上記;Lerner(1981)上記;およびKenneth(1980)上記、を参照のこと)。さらに、当業者は、このような方法の多くのバリエーションが存在し、これらは、やはり有用であることを理解する。代表的には、不死細胞株(例えば、骨髄腫細胞株)はリンパ球と同じ哺乳動物種に由来する。例えば、マウスハイブリドーマは、本発明の免疫原性調製物で免疫したマウス由来のリンパ球と不死化マウス細胞株とを融合することにより作製され得る。好ましい不死細胞株は、ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジンを含む培養培地(「HAT培地」に感受性であるマウス骨髄腫細胞株である。任意の多くの骨髄腫細胞株は、標準的技術に従う融合パートナーとして使用され得る(例えば、P3−NS1/1−Ag4−1、P3−x63−Ag8.653またはSp2/O−Ag14骨髄腫株)。これらの骨髄腫株は、ATCCから入手可能である。代表的には、HAT感受性マウス骨髄腫細胞を、ポリエチレングリコール(「PEG」)を使用してマウス脾臓細胞に融合する。次いで、融合から得られたハイブリドーマ細胞を、HAT培地を用いて選択する(このことにより、融合していない細胞および生成性でない融合骨髄腫細胞は死ぬ(融合していない脾臓細胞は、形質転換していないので数日後に死ぬ))。本発明のモノクローナル抗体を生成するハイブリドーマ細胞は、PSGL−1またはP−セレクチンを結合する抗体について、ハイブリドーマ培養物上清をスクリーニングすることにより(例えば、標準的ELISAアッセイを使用して)検出される。
【0059】
モノクローナル抗体分泌ハイブリドーマを調製するかわりに、モノクローナル抗PSGL−1抗体またはモノクローナル抗P−セレクチン抗体を、組換えコンビナトリアル免疫グロブリンライブラリー(例えば、抗体ファージディスプレイライブラリー)をそれぞれPSGL−1またはP−セレクチンを用いてスクリーニングすることにより同定および単離し得、それによってPSGL−1またはP−セレクチンを結合する免疫グロブリンライブラリーメンバーを単離し得る。ファージディスプレイライブラリーを生成し、そしてスクリーニングするためのキットは、市販されている(例えば、the Pharmacia Recombinant Phage Antibody System,カタログ番号27−9400−01;およびthe Stratagene SurfZAPTM Phage Display Kit,カタログ番号240612)。さらに、抗体ディスプレイライブラリーを生成し、そしてスクリーニングする際の使用に特になじみやすい方法および試薬の例は、例えば、Ladnerら、米国特許第5,223,409号;Kangら、PCT国際公開WO92/18619;Dowerら、PCT国際公開WO91/17271;Winterら、PCT国際公開WO92/20791;Marklandら、PCT国際公開WO92/15679;Breitlingら、PCT国際公開WO93/01288;MacCaffertyら、PCT国際公開WO92/01047;Garrardら、PCT国際公開WO92/09690;Ladnerら、PCT国際公開WO90/02809;Fuchsら(1991)Bio/Technology 9:1370−1372;Hayら(1992)Hum.Antibod.Hybridomas 3:81−85;Huseら(1989)Science 246:1275−1281;Griffithsら(1993)EMBO J.12:725−734;Hawkinsら(1992)J.Mol.Biol.226:889−896;Clarksonら(1991)Nature 352:624−628;Gramら(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:3576−3580;Garradら(1991)Biotechnology 9:1373−1377;Hoogenboomら(1991)Nuc.Acids Res.19:4133−4137;Barbasら(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:7978−7982;およびMcCaffertyら(1990)Nature 348:552−554に見出され得る。
【0060】
さらに、ヒトおよび非ヒト部分の両方を含む組換え抗PSGL−1抗体または組換えP−セレクチン抗体(例えば、キメラおよびヒト化モノクローナル抗体)は、本発明の技術範囲内であり、これらは、標準的な組換えDNA技術を用いて作製され得る。このようなキメラおよびヒト化モノクローナル抗体は、当該分野で公知の組換えDNA技術により(例えば、Robinsonら、国際出願番号PCT/US86/02269;Akiraら、欧州特許出願第184,187号;Taniguchi,M.,欧州特許出願第171,496号;Morrisonら 欧州特許出願第173,494号;Neubergerら、PCT国際公開WO 86/01533;Cabillyら、米国特許第4,816,567号;Cabillyら、欧州特許出願番号第125,023号;Betterら(1988)Science 240:1041−1043;Liuら(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:3439−3443;Liuら(1987)J.Immunol.139:3521−3526;Sunら(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:214−218;Nishimuraら(1987)Cancer Res.47:999−1005;Woodら(1985)Nature 314:446−449;Shawら(1988)J.Natl.Cancer Inst.80:1553−1559;Morrison,S.L.(1985)Science 229:1202−1207;Oiら(1986)BioTechniques 4:214;Winter 米国特許第5,225,539号;Jonesら(1986)Nature 321:552−525;Verhoeynら(1988)Science 239:1534;およびBeidlerら(1988)J.Immunol.141:4053−4060に記載される方法を使用して)生成され得る。
【0061】
本明細書中に記載される抗体は、PSGL−1タンパク質またはP−セレクチンの発現の量およびパターンを評価するために、(例えば、細胞溶解物または細胞上清において)このタンパク質を検出するために使用され得る。このような抗体は、例えば、所定の処置レジメの効力を決定するために、臨床試験の手順の一部として、組織におけるタンパク質レベルを診断的にモニターするために使用され得る。検出は、抗体を検出可能な物質と結合させる(すなわち、物理的に連結させる)ことによって容易にされ得る。検出可能な物質の例としては、種々の酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質、生体発光物質、および放射活性物質が挙げられる。適切な酵素の例には、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼが挙げられ;適切な補欠分子族複合体の例には、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンが挙げられ;適切な蛍光物質の例には、ウンベリフェロン(umbelliferone)、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリド、またはフィコエリトリンが挙げられ;発光物質の例には、ルミノールが挙げられ;生体発光物質の例には、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、およびエクオリンが挙げられ;そして、適切な放射活性物質の例には、125I、131I、35S、またはHが挙げられる。
【0062】
(II.本発明の方法において使用される、単離された核酸分子)
単離されたヒトPSGL−1 cDNAのコード配列およびヒトPSGL−1ポリペプチドのアミノ酸配列が、それぞれ、配列番号1および配列番号2に示される。PSGL−1配列はまた、米国特許第5,827,817号および同第5,843,707号に記載されている(これらの内容は、本明細書中に参考として援用される)。
【0063】
本発明の方法は、PSGL−1タンパク質、またはその生物学的に活性な部分をコードする、単離された核酸分子、ならびに、PSGL−1をコードする核酸分子(例えば、PSGL−1 mRNA)を同定するための、ハイブリダイゼーションプローブとしての使用に足りる核酸フラグメント、およびPSGL−1核酸分子を増幅または変異誘発するためのPCRプライマーとしての使用のためのフラグメントの使用を、包含する。本明細書中で使用される場合、用語「核酸分子」は、DNA分子(例えば、cDNAまたはゲノムDNA)およびRNA分子(例えば、mRNA)、ならびにヌクレオチドアナログを使用して生成されたDNAアナログまたはRNAアナログを含むことを意図される。この核酸分子は一本鎖または二本鎖であり得るが、好ましくは二本鎖DNAである。
【0064】
本発明の方法において使用される核酸分子(例えば、配列番号1、またはその一部分のヌクレオチド配列を有する核酸分子)を、標準的な分子生物学的技術および本明細書中に提供される配列情報を使用して単離し得る。ハイブリダイゼーションプローブとして、配列番号1の核酸配列の全部または一部を使用して、PSGL−1核酸分子を、(例えば、Sambrook,J.Fritsh,E.F.,およびManiatis,T.Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,1989に記載されるような)標準的なハイブリダイゼーション技術およびクローニング技術を使用して単離し得る。
【0065】
さらに、配列番号1の全部または一部を含有する核酸分子を、配列番号1の配列に基づいて設計した合成オリゴヌクレオチドプライマーを使用するポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって、単離し得る。
【0066】
本発明の方法において使用される核酸を、標準的なPCR増幅技術に従って、テンプレートとしてのcDNA、mRNAあるいはゲノムDNA、および適切なオリゴヌクレオチドプライマーを使用して、増幅し得る。さらに、PSGL−1ヌクレオチド配列に対応するオリゴヌクレオチドを、標準的な合成技術(例えば、自動化DNA合成機を使用すること)によって、調製し得る。
【0067】
好ましい実施形態において、本発明の方法において使用される単離された核酸分子は、配列番号1に示されるヌクレオチド配列、配列番号1に示されるヌクレオチド配列の相補体、またはこれらのヌクレオチド配列のいずれかの一部分を含む。配列番号1に示されるヌクレオチド配列に相補的である核酸分子とは、配列番号1に示されるヌクレオチド配列に十分に相補的である核酸分子であり、その結果、この核酸分子は配列番号1に示されるヌクレオチド配列にハイブリダイズし得、それによって安定な二重鎖を形成する。
【0068】
なお別の好ましい実施形態において、本発明の方法において使用される単離された核酸分子は、配列番号1に示されるヌクレオチド配列の全長、またはこのヌクレオチド配列の任意の部分に、少なくとも約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%以上同一であるヌクレオチド配列を含有する。
【0069】
さらに、本発明の方法において使用される核酸分子は、配列番号1の核酸配列の部分(例えば、プローブもしくはプライマーとして使用され得るフラグメント)、またはPSGL−1タンパク質の部分(例えば、PSGL−1タンパク質の生物学的に活性な部分)をコードするフラグメント)のみを含み得る。代表的に、プローブ/プライマーは、実質的に精製されたオリゴヌクレオチドを含む。代表的に、オリゴヌクレオチドは、配列番号1のセンス配列、配列番号1のアンチセンス配列、あるいは配列番号1の天然に存在する対立遺伝子の改変体または変異体の少なくとも約12または15、好ましくは約20または25、より好ましくは約30、35、40、45、50、55、60、65または75個連続したヌクレオチドにストリンジェントな条件下で、ハイブリダイズするヌクレオチド配列の領域を含む。1つの実施形態において、本発明の方法において使用される核酸分子は、100、100〜200、200〜300、300〜400、400〜500、500〜600、600〜700、700〜800、800〜900、900〜1000、1000〜1100、1100〜1200、1200〜1300、1300〜1400、1400〜1500、1500〜1600以上のヌクレオチド長よりも長く、かつストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、配列番号1の核酸分子にハイブリダイズするヌクレオチド配列を含む。
【0070】
本明細書中で使用される場合、用語「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」は、お互いに有意に同一または相同であるヌクレオチド配列が、お互いにハイブリダイズされたままである状態でハイブリダイゼーションおよび洗浄するための条件を記載することを意図する。好ましくは、この条件は、少なくとも約70%、より好ましくは少なくとも約80%、なおより好ましくは少なくとも約85%または90%で、互いに同一な配列が、互いにハイブリダイズしたままであるような条件である。このようなストリンジェントな条件は、当業者に公知であり、そしてCurrent Protocols in Molecular Biology,Ausubelら編、John Wiley & Sons,Inc.(1995),2節,4節および6節に見出され得る。さらなるストリンジェントな条件は、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Sambrookら、Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,NY(1989),7節、9節および11節に見出され得る。好ましい、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の非限定的な例としては、約65〜70℃での、4×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中でハイブリダイゼーション(または約42〜50℃での、4×SSC+50%ホルムアミド中でハイブリダイゼーション)、次いで約65℃〜70℃での、1×SSCで1回以上の洗浄が挙げられる。好ましい、高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の非限定的な例としては、約65〜70℃での、1×SSC中でハイブリダイゼーション(または約42〜50℃での、1×SSC+50%ホルムアミド中でハイブリダイゼーション)、次いで約65℃〜70℃での、0.3×SSCで1回以上の洗浄が挙げられる。好ましい、低いストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件の非限定的な例としては、約50〜60℃での、4×SSC中でハイブリダイゼーション(または約40〜45℃での、6×SSC+50%ホルムアミド中でハイブリダイゼーション)、次いで約50℃〜60℃での、2×SSCで1回以上の洗浄が挙げられる。上記の値の中間の範囲(例えば、65〜70℃または42〜50℃)もまた、本発明に含まれることが意図される。SSPE(1×SSPEは、0.15M NaCl、10mM NaHPOおよび1.25mM EDTA、pH 7.4である)は、ハイブリダイゼーションおよび洗浄緩衝液中でSSC(1×SSCは、0.15M NaClおよび15mMクエン酸ナトリウムである)に置き換わり得る;洗浄は、各ハイブリダイゼーションが終了した後で、15分間実行される。50塩基対長未満であることが予測されるハイブリッドのハイブリダイゼーション温度は、ハイブリッドの融解温度(T)より5〜10℃低くあるべきであり、ここでTが以下の式に従って決定される。18塩基対長未満であるハイブリッドについて、T(℃)=2(A+T塩基の数)+4(G+C塩基の数)。18塩基対長と49塩基対長の間のであるハイブリッドについて、T(℃)=81.5+16.6(log10[Na])+0.41(%G+C)−(600/N)、ここで、Nはハイブリッド中の塩基の数であり、そして[Na]は、ハイブリダイゼーション緩衝液中のナトリウムイオンの濃度である(1×SSCに対する[Na]=0.165M)。膜(例えば、ニトロセルロース膜、またはナイロン膜)への核酸分子の非特異的ハイブリダイゼーションを減少させるために、さらなる試薬が、ハイブリダイゼーションおよび/または洗浄緩衝液に添加され得ることが当業者によってまた認識され、この試薬としては、限定されないが以下が挙げられる:ブロッキング剤(例えば、BSA、もしくはサケまたはニシンの精子キャリアDNA)、界面活性剤(例えば、SDS)、キレート剤(例えば、EDTA)、Ficoll、PVPなど。ナイロン膜が使用される場合、特にさらなる好ましい、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の非限定的な例としては、約65℃での、0.25〜0.5M NaHPO、7% SDS中でハイブリダイゼーション、次いで65℃での、0.02M NaHPO、1% SDSで1回以上の洗浄である(例えば、ChurchおよびGilbert(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:1991−1995,(または代替的に0.2×SSC、1% SDS)。
【0071】
好ましくは、ストリンジェンシー条件下で、配列番号1の配列にハイブリダイズする本発明の単離された核酸分子は、天然に存在する核酸分子に対応する。本明細書中で使用される場合、「天然に存在する」核酸分子は、天然に存在する(例えば、天然のタンパク質をコードする)ヌクレオチド配列を有するRNA分子またはDNA分子をいう。
【0072】
好ましい実施形態において、プローブは、さらに、プローブに結合される標識基を含み、例えば、この標識基は、放射線同位体、蛍光化合物、酵素、または酵素補因子であり得る。このようなプローブは、例えば、被験体からの細胞のサンプル中のPSGL−1コード核酸のレベルを測定すること(例えば、PSGL−1 mRNAレベルを検出すること)、またはゲノムPSGL−1遺伝子が変異または欠失しているか否かを決定することによって、PSGL−1タンパク質を誤発現する細胞または組織を同定するための診断用試験キットの一部として使用され得る。
【0073】
本発明の方法は、ヒトPSGL−1タンパク質の非ヒトオルソログを使用し得る。ヒトPSGL−1タンパク質のオルソログは、非ヒト生物から単離され、そして同一のPSGL−1活性を有するタンパク質である。
【0074】
本発明の方法は、さらに、配列番号1のヌクレオチド配列を含む核酸分子、またはその一部の使用を含み、ここで、変異が導入される。この変異は、「非必須」アミノ酸残基または「必須」アミノ酸残基におけるアミノ酸置換を導き得る。「非必須」アミノ酸残基は、生物学的活性を変更することなく、PSGL−1の野生型配列(例えば、配列番号2の配列)から変更され得る残基であり、それに対して「必須」アミノ酸残基は、生物学的活性に必要とされる。例えば、P−セレクチンと相互作用し得るか、あるいはP−セレクチン媒介性膜接着または細胞移動を阻害し得るフラグメントを含むアミノ酸残基は、そう簡単に変更に影響を受けない。
【0075】
変異は、標準的な技術(例えば、部位特異的変異およびPCR媒介変異)によって、配列番号1に導入され得る。好ましくは、保存的なアミノ酸置換は、1個以上の推定非必須アミノ酸残基から作製される。「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置換されるアミノ酸置換である。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当該分野で規定されている。これらのファミリーとしては、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分枝側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)、および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸が挙げられる。従って、PSGL−1タンパク質中の予測される非必須アミノ酸残基は、好ましくは、同一側鎖ファミリー由来の別のアミノ酸残基で置換される。あるいは、別の実施形態において、変異は、PSGL−1コード配列の全てまたは一部に沿って無作為に導入され得(例えば、飽和変異誘発によって)、そして得られる変異体は、活性を保持する変異体を同定するために、PSGL−1生物学的活性についてスクリーニングされ得る。配列番号1の変異誘発の後、コードされるタンパク質は、組換え発現され得、そしてタンパク質の活性が、本明細書中に記載されるアッセイを使用して、決定され得る。
【0076】
本明細書中に開示されるPSGL−1をコードするコード鎖配列を考慮して、本発明のアンチセンス核酸を、ワトソンおよびクリックの塩基対形成の法則に従って設計し得る。アンチセンス核酸分子は、PSGL−1 mRNAのコード領域全体に対して相補的であり得るが、より好ましくは、PSGL−1 mRNAのコード領域全体または非コード領域のうちの一部分のみに対してアンチセンスであるオリゴヌクレオチドである。例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、PSGL−1 mRNAの翻訳開始部位周辺の領域に対して相補的であり得る。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、例えば、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、または50ヌクレオチド長であり得る。本発明のアンチセンス核酸は、当該分野において公知の手順を使用する化学合成および酵素的連結反応を使用して構築され得る。例えば、アンチセンス核酸(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド)が、天然に存在するヌクレオチドまたは種々に改変されたヌクレオチドを使用して化学的に合成され得、この種々に改変されたヌクレオチドは、分子の生物学的安定性を増加させるように、またはアンチセンス核酸とセンス核酸との間に形成される二重鎖の物理的安定性を増加させるように設計される(例えば、ホスホロチオエート誘導体およびアクリジン置換ヌクレオチドが使用され得る)。アンチセンス核酸を生成するために使用され得る改変ヌクレオチドの例としては、以下が挙げられる:5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−クロロウラシル、5−ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4−アセチルシトシン、5−(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、β−D−ガラクトシルクエオシン、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−アデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、β−D−マンノシルクエオシン、5’−メトキシカルボキシメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、ウイブトキソシン(wybutoxosine)、プソイドウラシル、クエオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、5−メチル−2−チオウラシル、3−(3−アミノ−3−N−2−カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3)wおよび2,6−ジアミノプリン。あるいは、アンチセンス核酸が、核酸がアンチセンス方向でサブクローニングされた発現ベクターを使用して、生物学的に生成され得る(すなわち、以下の節でさらに記載されるように、挿入された核酸から転写されたRNAは、目的の標的核酸に対してアンチセンス方向である)。
【0077】
なお別の実施形態において、本発明の方法において使用されたPSGL−1核酸分子を、塩基部分、糖部分またはホスフェート骨格において改変し、例えば、分子の安定性、ハイブリダイゼーション、または溶解度を改善し得る。例えば、核酸分子のデオキシリボースホスフェート骨格は、ペプチド核酸を生成するために改変され得る(Hyrup B.ら、(1996)Bioorganic & Medicinal Chemistry 4(1):5−23を参照のこと)。本明細書中で使用される場合、用語「ペプチド核酸」または「PNA」は、デオキシリボースホスフェート骨格が偽ペプチド骨格により置換され、そして4つの天然の核酸塩基(nucleobase)のみが保持されている核酸模倣物(例えば、DNA模倣物)をいう。PNAの中性の骨格は、低イオン強度の条件下で、DNAおよびRNAに対する特異的ハイブリダイゼーションを可能にし得ることが示されている。PNAオリゴマーの合成は、Hyrup B.ら、(1996)前出、およびPerry−O’Keefeら(1996)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:14670−675に記載のような、標準的固相ペプチド合成プロトコルを使用して実施され得る。
【0078】
PSGL−1核酸分子のPNAは、本明細書中に記載される治療的適用および診断的適用において使用され得る。例えば、PNAは、遺伝子発現の配列特異的調節(例えば、転写または翻訳の停止を誘導すること、または複製を阻害することによる)のためのアンチセンス剤またはアンチジーン(antigene)剤として使用され得る。PSGL−1核酸分子のPNAはまた、(例えば、PNA指向PCRクランピング(PNA−directed PCR clamping)による)遺伝子内の一塩基対変異の分析において、他の酵素(例えば、S1ヌクレアーゼ)と組み合わせて使用される場合の人工制限酵素として(Hyrup B.ら、(1996)前出);またはDNA配列決定またはハイブリダイゼーションのプローブまたはプライマーとして(Hyrup B.ら、(1996)、前出;Perry−O’Keefeら(1996)、前出)使用され得る。
【0079】
別の実施形態において、PSGL−1のPNAは、PNAに対して脂肪親和性基または他のヘルパー基を付着することによって、PNA−DNAキメラの形成によって、あるいはリポソームまたは当該分野で公知の薬物送達の他の技術の使用によって、(例えば、それらの安定性または細胞性取り込みを増強するために)改変され得る。例えば、PSGL−1核酸分子のPNA−DNAキメラが生成され得、これは、PNAおよびDNAの有利な特性を合わせ得る。このようなキメラは、DNA認識酵素(例えば、RNAse HおよびDNAポリメラーゼ)がDNA部分と相互作用することを可能にし、一方PNA部分は、高い結合親和性および特異性を提供する。PNA−DNAキメラは、塩基スタッキング、核酸塩基間の結合数、および方向の点において選択される適切な長さのリンカーを使用して連結され得る(Hyrup B.ら、1996)、前出)。PNA−DNAキメラの合成は、Hyrup B.ら、(1996)、前出、およびFinn P.J.ら(1996)Nucleic Acids Res.24(17):3357〜63に記載されるように実施され得る。例えば、DNA鎖は、標準的なホスホロアミダイト結合化学および改変されたヌクレオシドアナログ(例えば、5’−(4−メトキシトリチル)アミノ−5’−デオキシ−チミジンホスホロアミダイト)を使用して固体支持体上で合成され得、PNAとDNAの5’末端との間として使用され得る(Mag,Mら(1989)Nucleic Acid Res.17:5973〜88)。次いで、PNAモノマーは、段階的な様式で結合されて、5’PNAセグメントおよび3’DNAセグメントを有するキメラ分子を生成する(Finn P.J.ら、(1996)前出)。あるいは、キメラ分子は、5’DNAセグメントおよび3’PNAセグメントを用いて合成され得る(Peterser,K.H.ら(1975)Bioorganic Med.Chem.Lett.5:1119〜11124)。
【0080】
他の実施形態において、本発明の方法において使用されるオリゴヌクレオチドは、ペプチドのような他の付属基(例えば、インビボにおいて宿主細胞レセプターを標的化するため)、または細胞膜(例えば、Letsingerら(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:6553〜6556;Lemaitreら(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:648〜652;PCT公開番号WO88/09810を参照のこと)もしくは血液脳関門(例えば、PCT公開番号WO89/10134を参照のこと)を横切る輸送を容易にする薬剤を含み得る。さらに、オリゴヌクレオチドは、ハイブリダイゼーション誘発(hybridization−triggered)切断剤(例えば、Krolら(1988)Bio−Techniques 6:958〜976を参照のこと)または挿入剤(例えば、Zon(1988)Pharm.Res.5:539〜549)を用いて改変され得る。この目的のために、オリゴヌクレオチドは、別の分子(例えば、ペプチド、ハイブリダイゼーション誘発架橋剤、輸送剤、またはハイブリダイゼーション誘発切断剤)に結合体化され得る。
【0081】
本発明の方法において使用されるP−セレクチンリガンドタンパク質の他のフラグメントおよび改変形態をコードするDNAは、全長配列の一部分が欠失または変更されている改変されたDNAの発現によって調製され得る。P−セレクチンリガンドタンパク質配列の実質的な欠失は、P−セレクチンリガンドタンパク質活性を保持する間になされ得る。例えば、配列番号2のアミノ酸42〜アミノ鎖189、配列番号2のアミノ酸42〜アミノ酸118、または配列番号2のアミノ酸42〜アミノ酸89を含むP−セレクチンリガンドタンパク質の各々は、P−セレクチンタンパク質結合活性およびE−セレクチンに結合する能力を保持する。1つ以上のN連結グリコシル化部位(例えば、配列番号2のアミノ酸65、111および292のN連結グリコシル化部位)が、他のアミノ酸に置換されたかまたは欠失されたP−セレクチンリガンドタンパク質もまた、P−セレクチンタンパク質結合活性およびE−セレクチンに結合する能力を保持する。配列番号2のアミノ酸42〜アミノ酸60を含むP−セレクチンリガンドタンパク質(これは、配列番号2のアミノ酸45〜アミノ酸58由来のタンパク質の高度にアニオン性の領域を含む)もまた、P−セレクチンリガンドタンパク質活性を保持する;しかし、このような配列に限定されたP−セレクチンリガンドタンパク質は、E−セレクチンに結合しない。好ましくは、P−セレクチンリガンドタンパク質は、配列番号2のアミノ酸46、48、および51に見出されるチロシン残基の少なくとも1つ(より好ましくは、少なくとも2つ、そして最も好ましくは全3つ)を保持し、これらの硫酸化は、P−セレクチンリガンドタンパク質活性に寄与し得る。これらおよび他の活性なフラグメントをコードするDNAの構築またはP−セレクチンリガンドタンパク質の変更された形態は、当業者に公知の方法によって達成され得る。
【0082】
本発明の方法において使用される単離されたDNAは、P−セレクチンリガンド組換えを生成するために、pMT2またはpED発現ベクター(Kaufinanら、Nucleic Acids Res.19,4485−4490(1991)に開示される)のような発現制御配列に作動可能に連結され得る。多くの適切な発現制御配列は当該分野に公知である。発現組換えベクタータンパク質の一般的な方法はまた、公知であり、そしてR.Kaufman、Methods in Enzymology 185,537−566(1990)に例示されている。本明細書中に規定される場合、「作動可能に連結された」は、P−セレクチンリガンドタンパク質が(連結されたDNA/発現制御配列で形質転換(トランスフェクト)された)宿主細胞によって発現されるような方法で、本発明の単離されたDNAと発現制御配列との間に共有結合を形成するために、酵素的または化学的に連結されることを意味する。
【0083】
いくつかの内在性タンパク質分解酵素は、対のアミノ酸配列(例えば、−Lys−Arg−および−Arg−Arg−)のカルボキシル側で前駆体ペプチドを切断し、成熟タンパク質を生じることが公知である。このような酵素は、一般的に、対の塩基性アミノ酸転換酵素またはPACEとして公知であり、成熟タンパク質の組換え的生産におけるこれらの使用は、WO 92/09698および米国特許出願番号07/885,972(これら両方とも、本明細書中に参考として援用される)に広範に開示される。酵素のPACEファミリーは、組換え宿主細胞における前駆体ポリペプチドのタンパク質分解プロセシングの効率を高めることが知られている。特定の実施形態において、本発明のP−セレクチンリガンドタンパク質は、このようなPACE切断部位を含む。
【0084】
本発明の方法において使用される可溶性成熟P−セレクチンリガンドタンパク質は、本明細書中に記載されるような任意の可溶性P−セレクチンリガンドタンパク質をコードするDNA配列、ならびにWO 92/09698および米国特許出願番号07/885,972(本明細書中に参考として援用される)に記載されるようなPACEをコードするDNA配列を含む宿主細胞によって作製され得る。このような宿主細胞は、可溶性P−セレクチンリガンドタンパク質DNAおよびPACE DNAをそれぞれ含む、別個の発現ベクターの同時形質転換または連続形質転換の結果として生じたDNAを含み得る。3/4FTをコードする第3のDNAはまた、P−セレクチンリガンドタンパク質およびPACEをコードするDNAで同時形質転換され得る。あるいは、宿主細胞は、可溶性P−セレクチンリガンドタンパク質DNAおよびPACE DNAの両方を含む、単一の発現ベクターの形質転換の結果として生じたDNAを含み得る。このような発現ベクターの構築は、分子生物学における当業者のレベルの範囲内である。同時形質転換および形質転換の方法はまた、公知である。
【0085】
PACEをコードする、多くのDNA配列は公知である。例えば、PACEの1形態(フリン(furin)として知られている)をコードするDNAは、A.M.W.van den Ouwelandら、Nucl.Acids Res.18,664(1990)(本明細書中に参考として援用される)に開示されている。PACEの可溶形態をコードするcDNAは、PACESOLとして公知である。PACEの他の形態をコードするDNAもまた存在し、任意のこのようなPACEコードDNAは、PACEがP−セレクチンリガンドタンパク質をアミノ酸38〜41で切断し得る限り、本発明の可溶性成熟P−セレクチンリガンドタンパク質を生成するために使用され得る。好ましくは、PACEの可溶性形態をコードするDNAは、本発明の可溶性成熟P−セレクチンリガンドタンパク質を生成するために使用され得る。
【0086】
P−セレクチンリガンドタンパク質およびPACEの可溶性形態を(別個にか、または一緒に)コードするDNAは、上で議論されたpMT2またはpED発現ベクターに含まれるような発現制御配列に作動可能に連結して、PACE−切断可溶性P−セレクチンリガンド組換えを生じ得る。さらに適切な発現制御配列は、当該分野で公知である。
【0087】
(III.本発明の方法に用いられる組換え発現ベクターおよび宿主細胞)
本発明の方法(例えば、本明細書中で記載されるスクリーニングアッセイ)としては、PSGL−1タンパク質(またはその部分)をコードする核酸を含む、ベクター(好ましくは、発現ベクター)の使用が挙げられる。本明細書中で用いられる場合、用語「ベクター」とは、それが連結されている別の核酸を輸送し得る核酸分子をいう。1つの型のベクターは、「プラスミド」であり、これは、さらなるDNAセグメントが連結され得る環状二本鎖DNAループをいう。別の型のベクターは、ウイルスベクターであり、これはさらなるDNAセグメントが、ウイルスゲノムへと連結され得る。特定のベクター(例えば、細菌の複製起点を有する細菌ベクターおよびエピソームの哺乳動物ベクター)は、これらが導入される宿主細胞中で自発的に複製され得る。他のベクター(例えば、非エピソームの哺乳動物ベクター)は、宿主細胞へと導入される際に宿主細胞のゲノムへと組み込まれ、それによって、宿主ゲノムと共に複製される。さらに、特定のベクターは、それらが作動可能に連結されるゲノムの発現を指向し得る。このようなベクターは、本明細書中で、「発現ベクター」といわれる。一般的に、組換え発現技術において有用な発現ベクターは、頻繁に、プラスミドの形態である。本明細書中では、「プラスミド」および「ベクター」は交換可能に用いられ得る。なぜならば、プラスミドは、最も一般的には、ベクターの形態で用いられるからである。しかし、本発明は、等価な機能を果たすウイルスベクター(例えば、複製欠損のレトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス)のような、発現ベクターの他の形態を含むことが意図される。
【0088】
本発明の方法において用いられる組換え発現ベクターは、宿主細胞における核酸の発現に適切な形態の本発明の核酸を含み、このことは、組換え発現ベクターが、発現のために用いられる宿主細胞を基準に選択され、発現される核酸配列に作動可能に連結される、1つ以上の調節配列を含むことを意味する。組換え発現ベクターにおいて、「作動可能に連結される」とは、目的のヌクレオチド配列が、(ベクターが、宿主細胞に導入される場合、例えば、インビトロでの転写/翻訳系または宿主細胞において)ヌクレオチド配列の発現を可能にする様式において調節配列に連結されることを意味する。用語「調節配列」は、プロモーター、エンハンサー、および他の発現制御配列(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含むことを意図する。このような調節配列は、例えば、Goeddel(1990)Methods Enzymol.185:3−7に記載される。調節配列としては、多くの型の宿主細胞においてヌクレオチド配列の構成的発現を指向するものおよび特定の宿主細胞においてのみヌクレオチド配列の発現を指向するもの(例えば、組織特異的調節配列)が挙げられる。発現ベクターの設計が、形質転換される選抜きの宿主細胞の機能、所望のタンパク質の発現のレベルなどのような因子に依存し得ることは当業者により理解される。本発明の発現ベクターは、宿主細胞に導入され、それにより、本明細書中に記載される核酸によりコードされる、融合タンパク質またはペプチド(例えば、PSGL−1タンパク質、PSGL−1タンパク質の変異形態、融合タンパク質など)を含む、タンパク質またはペプチドを産生し得る。
【0089】
本発明の方法において用いられる組換え発現ベクターは、原核生物細胞または真核生物細胞におけるP−セレクチンリガンドタンパク質の発現のために設計され得る。例えば、PSGL−1タンパク質は、E.coliのような細菌細胞、昆虫細胞(バキュロウイルス発現系を用いる)、酵母細胞、または哺乳動物細胞において発現され得る。適切な宿主細胞は、Goeddel(1990)前出においてさらに議論される。あるいは、組換え発現ベクターは、インビトロにおいて(例えば、T7プロモーター調節配列およびT7ポリメラーゼを用いて)転写および翻訳され得る。
【0090】
原核生物におけるタンパク質の発現は、最も頻繁には、融合タンパク質または非融合タンパク質のいずれかの発現を指向する構成的プロモーターまたは誘導性プロモーターを含むベクターを用いて、E.coli中で実行される。融合ベクターは、多数のアミノ酸をそれらの中でコードされるタンパク質に(通常は、組換えタンパク質のアミノ末端に)加える。このような融合ベクターは、代表的には、以下の3つの目的を果たす:1)組換えタンパク質の発現を増大させるため;2)組換えタンパク質の可溶性を増大させるため;および3)アフィニティー精製におけるリガンドとして作用することにより組換えタンパク質の精製を補助するため。頻繁に、融合発現ベクターにおいて、タンパク質分解切断部位は、融合部分と組換えタンパク質との接合部に導入され、融合部分からの組換えタンパク質の分離、引き続いての、融合タンパク質の精製を可能にする。このような酵素、およびそれらの同族認識配列としては、Xa因子、トロンビンおよびエンテロキナーゼが挙げられる。代表的な融合発現ベクターとしては、pGEX(Pharmacia Biotech,Inc;Smith,D.B.およびJohnson,K.S.(1988)Gene 67:31−40)、pMAL(New England Biolabs,Beverly,MA)およびpRIT5(Pharmacia,Piscataway,NJ)が挙げられ、これらは、それぞれ、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)、マルトースE結合タンパク質、またはプロテインAを、標的組換えタンパク質に融合する。
【0091】
精製した融合タンパク質は、PSGL−1活性アッセイ(以下に詳細に記載される直接アッセイまたは競合アッセイ)において、またはPSGL−1に特異的な抗体を産生するするために利用され得る。
【0092】
別の実施形態では、本発明の核酸は、哺乳動物発現ベクターを用いて、哺乳動物細胞において発現される。哺乳動物発現ベクターの例としては、pCDM8(Seed,B.(1987)Nature 329:840)およびpMT2PC(Kauftnanら(1987)EMBO J.6:187−195)が挙げられる。哺乳動物細胞において用いられる場合、発現ベクターの制御機能は、頻繁に、ウイルス調節エレメントにより提供される。例えば、一般的に用いられるプロモーターは、ポリオーマ、アデノウイルス2、サイトメガロウイルスおよびサルウイルス40に由来する。原核生物細胞および真核生物の両方に適切な他の発現系については、Sambrook,J.ら、Moleular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,1989を参照のこと。
【0093】
別の実施形態では、組換え哺乳動物発現ベクターは、特定の細胞型において優先的に核酸の発現を指向し得る(例えば、組織特異的調節エレメントが、核酸を発現するために用いられる)。
【0094】
本発明の方法は、アンチセンス方向で発現ベクターへとクローン化された本発明のDNA分子を含む組換え発現ベクターをさらに使用し得る。すなわち、このDNA分子は、PSGL−1 mRNAに対するアンチセンスであるRNA分子の(DNA分子の転写による)発現を可能にする様式で、調節配列に作動可能に連結される。アンチセンス方向でクローン化された核酸に作動可能に連結される調節配列としては、種々の細胞型におけるアンチセンスRNA分子の連続発現を指向するもの(例えば、ウイルスプロモーターおよび/またはエンハンサー)が選択され得るか、あるいは調節配列としては、アンチセンスRNAの構成的発現、組織特異的発現、または細胞型特異的発現を指向するものが選択され得る。アンチセンス発現ベクターは、アンチセンス核酸が高効率の調節領域の制御下で産生される、組換えプラスミド、ファージミド、または弱毒化ウイルスの形態であり得、これらの活性はベクターが導入される細胞型により決定され得る。アンチセンス遺伝子を用いる遺伝子発現の調節の議論については、Weintraub,H.ら、Antisense RNA as a molecular tool for genetic analysis,Reviews−Trends in Genetics,Vol.1(1)1986を参照のこと。
【0095】
本発明の別の局面は、本発明のPSGL−1核酸分子(例えば、組換え発現ベクター内のPSGL−1核酸分子または宿主細胞のゲノムの特定の部位に相同的に組換えされ得る配列を含むPSGL−1核酸分子)が導入される宿主細胞の使用に関する。用語「宿主細胞」および「組換え宿主細胞」は、本明細書中において、互換的に使用される。このような用語は、特定の被験体細胞をいうだけでなく、このような細胞の子孫または潜在的な子孫もいうことが理解される。突然変異または環境の影響のいずれかに起因する特定の改変体が、次の世代を生じ得るので、このような子孫は、実際に、親細胞と同一でないかもしれないが、本明細書中に使用される用語の範囲内になお含まれる。
【0096】
宿主細胞は、任意の原核生物細胞または真核生物細胞であり得る。例えば、PSGL−1タンパク質は、細菌細胞(例えば、E.coli、昆虫細胞、酵母細胞または哺乳動物細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)またはCOS細胞))において発現され得る。他の適切な宿主細胞は、当業者に公知である。
【0097】
多くの細胞の型は、P−セレクチンリガンドタンパク質の発現に適切な宿主細胞として働き得る。適切な宿主細胞は、機能的P−セレクチンリガンドタンパク質に特徴的な炭水化物側鎖を結合し得る。このような能力は、天然に存在するか、化学的突然変異によって誘導されるか、またはグリコシル化酵素をコードするDNA配列を含む適切な発現プラスミドを有する宿主細胞のトランスフェクションによるかのいずれかによる、宿主内の適切なグリコシル化酵素の存在によって生じ得る(anise)。宿主細胞としては、例えば、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒト腎臓293細胞、ヒト表皮A431細胞、ヒトColo205細胞、3T3細胞、CV−1細胞、他の形質転換された霊長類細胞株、通常の二倍体細胞、一次組織のインビトロ培養由来の細胞株、一次外植片、HeLa細胞、マウスL細胞、BHK、HL−60、U937、またはHaK細胞が挙げられる。
【0098】
P−セレクチンリガンドタンパク質はまた、本発明の単離DNAおよび適切なグリコシル化酵素をコードする1つ以上のDNAを、1つ以上の昆虫発現ベクターにおいて適切な制御配列に、作動可能に連結し、そして昆虫発現ベクターを使用することによって産生され得る。バキュロウイルス/昆虫細胞発現系についての材料および方法は、Invitrogen,San Diego,California,U.S.A.(the MaxBac(登録商標)キット)製のキットの形態で市販されており、そしてこのような方法は、本明細書中に参考として援用される、SummersおよびSmith,Texas Agricultural Experiment Station Bulletin No.1555(1987)に記載されるように当該分野において公知である。P−セレクチンリガンドタンパク質の可溶性形態はまた、上記されるように適切な単離DNAを使用して昆虫細胞中で産生され得る。PACEのある形態をコードするDNAはさらに、昆虫宿主細胞において同時発現され、PACE切断形態のP−セレクチンリガンドタンパク質を産生する。
【0099】
あるいは、P−セレクチンリガンドタンパク質を下等真核生物(例えば酵母)または原核生物(例えば細菌)において産生することは可能であり得る。潜在的に適切な酵母株としては、Saccharomyces cerevisiae、Schizosaccharomyces pombe、Kluyveromyces株、Candida、または異種タンパク質を発現し得る任意の酵母株が挙げられる。潜在的に適切な細菌株としては、Escherichia coli、Bacillus subtilis、Salmonella typhimurium、または異種タンパク質を発現し得る任意の細菌株が挙げられる。P−セレクチンリガンドタンパク質が酵母または細菌中で作製される場合、グリコシル化P−セレクチンリガンドタンパク質を得るために、適切な炭水化物をタンパク質部分の適切な部位に共有結合する必要がある。このような共有結合は、公知の化学的方法または酵素的方法を使用して達成され得る。
【0100】
ベクターDNAは、従来の形質転換技術またはトランスフェクション技術によって、原核生物細胞または真核生物細胞に導入され得る。本明細書中で使用される場合、用語「形質転換」および「トランスフェクション」は、外来核酸(例えば、DNA)を宿主細胞中に導入するための、種々の当該分野で認識される技術をいうことを意図され、これらとしては、リン酸カルシウム共沈降法、または塩化カルシウム共沈降法、DEAE−デキストラン媒介トランスフェクション法、リポフェクション法、あるいはエレクトロポレーション法が挙げられる。宿主細胞を形質転換またはトランスフェクションする適切な方法は、Sambrookら、(Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版、Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,1989)、および他の実験室マニュアルに見出され得る。
【0101】
本発明の方法において使用される宿主細胞(例えば、原核生物宿主細胞培養物および真核生物宿主細胞培養物)は、PSGL−1タンパク質を産生(すなわち、発現)するために使用され得る。従って、本発明はさらに、本発明の宿主細胞を用いてPSGL−1タンパク質を産生する方法を提供する。1つの実施形態において、本方法は、PSGL−1タンパク質が産生されるように、適切な培地中で、(PSGL−1タンパク質をコードする組換え発現ベクターが導入された)本発明の宿主細胞を培養する工程を包含する。別の実施形態において、本方法はさらに、培地または宿主細胞からPSGL−1タンパク質を単離する工程を包含する。
【0102】
(IV.使用方法)
本発明は、虚血障害および/または再灌流損傷(発作を含む)の危険のある(またはそうであることが疑われる)被験体(例えば、ヒト)において、組織損傷を処置、予防、または低減する予防方法および治療方法の両方を提供する。処置の予防方法および/または治療方法の両方に関して、このような処置は、薬物ゲノム学分野から得られた知見に基づき、特異的に仕立てられ得るかまたは改変され得る。本明細書中で使用する場合、「処置」は、患者への治療因子の適用もしくは投与、あるいは疾患もしくは障害、疾患もしくは障害の徴候、または疾患もしくは障害に対する素因を有する患者から、疾患もしくは障害、疾患もしくは障害の徴候、または疾患もしくは障害に対する素因を治療(cure)、治癒(heal)、緩和(alleviate)、解放(relief)、変更(alter)、救済(remedy)、改善(ameliorate)、改善(improve)、もしくは影響を与える(affect)目的での、単離された組織もしくは細胞株への治療因子の適用もしくは投与として定義される。
【0103】
本明細書中で使用する場合、「薬物ゲノム学」は、臨床的開発および市場での薬物へのゲノム学技術(例えば、遺伝子配列決定、統計遺伝学、および遺伝子発現分析)の応用をいう。より詳細には、この用語は、患者の遺伝子が薬物に対する応答(例えば、患者の「薬物応答表現型」、または「薬物応答遺伝子型」)を決定する方法の研究をいう。
【0104】
従って、本発明の別の局面は、本発明のP−セレクチンアンタゴニストまたは個体の薬物応答遺伝子型に従うP−セレクチンリガンドモジュレーターを用いて、被験体の予防的処置または治療的処置を仕立てる方法を提供する。薬物ゲノム学は、臨床医または内科医が、予防的処置または治療的処置を、その処置から最も利益を受ける患者に標的化すること、および毒性の薬物に関連する副作用を経験する可能性のある患者の処置を回避することを可能にする。
【0105】
(A.予防方法および治療方法)
P−セレクチンは、血管損傷および血栓症に関連するいくつかの機能を有する。これらの機能としては、血管内皮上での白血球のローリングの媒介、白血球活性化を引き起こす白血球と血小板との相互作用の促進、およびこれらの活性化細胞からの、組織因子の豊富な微粒子の放出、ならびに/または内皮細胞を活性化してより多くの白血球の捕捉;血餅および血餅増殖を促進する内皮上の白血球由来微粒子の捕捉;および虚血の領域に延ばすための微小血管の閉塞を促進する炎症前メディエーター、が挙げられる。P−セレクチンとそのリガンドPSGL−1との相互作用の特異的インヒビターは、これらの現象を有意に減少させると考えられる。rPSGL−Igの場合、この可溶性リガンド構築物は、内皮および血小板上で発現されたP−セレクチンに結合し、従って、白血球または白血球由来微粒子の表面上のネイティブPSGL−1の結合能を減少させると考えられる。rPSGL−Igの存在の効果は、P−セレクチン/PSGL−1相互作用の増加を引き起こす状況における、炎症応答および血栓応答を減少させることである。
【0106】
P−セレクチン/PSGL−1相互作用の阻害は、血栓性発作において特に有用であり得る。rPSGL−1との活性化血小板/白血球複合体の形成の減少は、P−セレクチン/PSGL−1相互作用の結果として形成される血小板/白血球複合体に起因する血管閉塞を減少させることにより、血管閉塞の下流の微小血管の流れを改善し得る。この改善された微小血管の流れは、脳梗塞の成長を低減し、従って、脳に対する長期間の損傷の程度を低減し得る。線維素溶解因子による介入は、主に、出血のより高い危険性およびより長い発作後期間の明らかな治療的利益の欠如に起因して、発作の臨床的徴候の3時間後までに制限される。rPSGL−Igは、明らかな出血傾向を促進しないが、組織因子経路および血餅付着に対するその影響を介して溶解の改善を促進し得るので、rPSGL−Igと線維素溶解処置との組み合わせは、溶解応答を加速するのに有益であり得る。さらに、白血球/内皮細胞ローリングを減少することにより、rPSGL−Igは、血餅溶解後の再灌流損傷の程度を減少させ、従って、梗塞の大きさを有意に減少させ得る。最後に、発作後の脳の浮腫は、セレクチンにより媒介される、ゆっくりと進行する血管炎症現象の結果であり得、そして微小血管の完全性を破壊する。rPSGL−Igは、これらの長期間の現象を阻害することによって、浮腫が進行する傾向を低減し得る。浮腫の減少は、血栓性発作に関連する疾患率および死亡率を有意に減少させ得る。
【0107】
rPSGL−Igの使用はまた、出血性発作を患う患者の処置に有益であり得る。rPSGL−Igに関連する低度の出血〜無出血は、発作を起こした患者への早期投与に対して、この出血を比較的安全にする。出血は、活性化血液細胞からの炎症性メディエーターの放出および/またはセロトニン、トロンビンおよびロイコトリエンC4を含む凝集経路を介して、組織炎症を亢進することが公知である。これらの因子は、血小板および内皮細胞に対してPセレクチンの発現を亢進することが公知である。セレクチンアンタゴニストを用いる初期治療によりこれらの二次的な炎症応答を低減することは、出血性発作に関連した罹病率および致死率を低減するのに非常に有益であることを証明し得る。
【0108】
1つの局面において、本発明は、PSGL−1発現またはPSGL−1活性を調節する因子(例えば、Pセレクチン結合またはEセレクチンの結合を調節する因子、細胞接着(例えば、細胞−細胞間接着(例えば、脳における白血球−内皮細胞の接着または白血球−血小板の接着、および血管への細胞(例えば、白血球)の接着))を調節する因子、ならびに例えば脳細静脈において白血球のローリング(rolling)を調節する因子)を含む組成物を被験体に投与することによって、被験体において、出血(例えば、発作)の後の再灌流傷害により引き起こされる器官損傷または組織損傷(例えば、脳損傷)を、例えば処置、予防または低減するための方法を提供する。虚血および/または再灌流傷害の危険にある被験体は、例えば、本明細書中に記載されるかまたは当業者に公知の、いずれかの診断アッセイまたは予知(prognostic)アッセイ、またはそれらの組み合わせによって同定され得る。
【0109】
虚血および再灌流によって引き起こされる組織損傷または器官損傷の危険に患者をさらし、そしてそれら虚血および再灌流を本発明のPセレクチンを用いる処置のための標的とする虚血性障害としては、例えば、発作、腸間膜血管疾患および末梢血管疾患、組織移植、循環器ショックおよび血栓障害(例えば、血栓塞栓症、重度静脈血栓、肺動脈塞栓症、発作、心筋梗塞、流産、抗トロンビンIII不全、プロテインC不全、プロテインS不全、活性化プロテインC耐性に関連する血栓症、原線維生成不全症(dysfibrionogenemia)、フィブリン溶解性障害、ホモシスチン尿症、妊娠、炎症障害、骨髄増殖性障害、動脈硬化症、アンギナ(例えば、不安定狭心症)、汎発性血管内凝固症候群、血栓性血小板減少性紫斑病、癌転移、鎌状赤血球病、および糸球体腎炎)が挙げられる。
【0110】
予防因子または治療因子(例えば、P−セレクチンリガンド分子もしくはP-セレクチンリガンド活性を有するそのフラグメント(例えば、可溶性PSGL−1)、または可溶性組換えPSGL融合タンパク質(例えば、rPSGL−Ig)、抗P−セレクチン抗体もしくはその生物学的に活性なフラグメント、または抗P−セレクチンリガンド抗体もしくはその生物学的に活性なフラグメント)の投与は、再還流の前に起こり得、その結果、組織および器官(例えば、脳)、ならびに梗塞の大きな塊り(infarct volume)に対する損傷が阻害または減少される。
【0111】
虚血および/または再還流の後の器官損傷または組織損傷を処置、予防、または低減するための、P−セレクチンアンタゴニスト(例えば、抗P−セレクチン抗体、抗P−セレクチンリガンド抗体、可溶性P−セレクチンリガンド、可溶性PSGL−1、もしくはそのフラグメント、または可溶性rPSGL−Ig)の被験体への投与方法としては、以下の方法が挙げられるが、これらに制限されない。
【0112】
本発明の可溶性P−セレクチンアンタゴニストは、このような投与に適切な薬学的組成物の形態で被験体に投与される。このような組成物は、代表的に、有効量の活性薬因子(例えば、タンパク質または抗体)および薬学的に受容可能なキャリアを含む。本明細書中で用いられる場合、語句「薬学的に受容可能なキャリア」は、薬学的投与に適合性の、任意かつ全ての溶媒、分散媒質、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤(absorption delaying agents)などを含むことが意図される。薬学的に活性な物質についてのこのような媒質および因子の使用は、当該分野で周知である。任意の従来の媒質または因子が、活性化合物と不適合である範囲を除いて、組成物におけるその使用が意図される。補助的な活性化合物もまた、組成物へ組み込まれ得る。
【0113】
本発明の治療方法として使用される薬学的組成物は、意図する投与経路と適合するように処方される。
【0114】
投与経路の例としては、例えば、静脈内投与、皮内投与、皮下投与、経口(例えば、吸入)投与、経皮(局所)投与、経粘膜投与、および直腸投与のような非経口投与が挙げられる。非経口用途、皮内用途、または皮下用途のために使用される溶液または懸濁液としては、以下の成分が挙げられ得る:注射のための無菌希釈物(例えば、水、生理食塩水、固定油、ポリエチレン、グリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒;抗細菌剤(例えば、ベンジルアルコールまたはメチルパラベン);抗酸化剤(アスコルビン酸、重亜硫酸ナトリウム);キレート剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸);緩衝液(例えば、酢酸、クエン酸、またはリン酸)および張性の調整のための薬剤(例えば、塩化ナトリウムまたはデキストロース)。pHは酸または塩基(例えば、塩酸または水酸化ナトリウム)で調製され得る。非経口調製物は、アンプル、使い捨てシリンジまたはガラスもしくはプラスチックからなる複数回投与バイアルに封入され得る。
【0115】
注射用途のための適切な薬学的組成物としては、無菌注射溶液または分散物の即時調製剤ための無菌水溶液(ここでは水に可溶である)または分散剤および無菌散剤が挙げられる。静脈内投与のために、適切なキャリアとしては、生理学的食塩水、静菌水、Cremophor ELTTM(BASF,Parsippany,NJ)またはリン酸緩衝化食塩水(PBS)が挙げられる。全ての場合において、この組成物は無菌でなければならず、かつ容易な注射可能性(syringability)存続する程度まで流動性であるべきである。これは、製造および貯蔵の条件下で安定でなければならず、そして細菌および真菌類のような微生物の夾雑作用に対して保護されるべきである。このキャリアは、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)およびそれらの適切な混合物を含む溶媒または分散媒体であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティングの使用、分散物の場合に必要とされる粒径の維持、および界面活性剤によって維持され得る。微生物の作用を防ぐことは、種々の抗細菌剤および抗真菌剤(例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなど)によって達成され得る。多くの場合において、等張剤(例えば、糖類、ポリアルコール(例えば、マンニトール)、ソルビトールおよび塩化ナトリウム)をその組成物中に含むことが好ましい。注射可能組成物の持続性吸収は、吸収を遅延させる薬剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチン)をその組成物中に含むことによって生じ得る、
無菌注射可能溶液は、1成分または上で列挙された成分の組み合わせで必要とされる量にてPSGL−1活性を調節する薬剤(例えば、可溶性のPSGL−1タンパク質のフラグメント)を取り込むことによって、必要とされる場合には、その後の濾過による無菌化によって調製され得る。一般的に、分散物は、基礎となる分散媒体および上で列挙した成分に由来する必要とされる他の成分を含む無菌性ビヒクルに活性化合物を組み込むことによって調製される。無菌注射可能溶液の調製のための無菌散剤の場合において、活性成分の散剤および、任意のさらに所望される成分をそれらの溶液から予め無菌濾過することによって生じる調製の好ましい方法は、減圧乾燥および凍結乾燥である。
【0116】
経口組成物は、一般に、不活性希釈剤または可食性キャリアを含む。これらは、ゼラチンカプセルに封入され得るかまたは錠剤へと圧縮され得る。経口治療投与の目的のために、活性化合物が賦形剤と組み込まれ得、っそして、錠剤、トローチ、またはカプセルの形態で使用され得る。経口組成物はまた、口内洗浄剤としての用途のための流体キャリアを使用して調製され得、ここで、この流体キャリア中の化合物は、経口適用され、スウッシュ(swish)され、そして吐き出されるかまたは飲み込まれる。薬学的適合可能な結合剤、および/またはアジュバント物質は、この組成物の一部として含まれ得る。この錠剤、丸薬、カプセル、トローチなどは、以下の成分のいずれかまたは類似の性質の化合物を含み得る:結合剤(例えば、微晶質セルロース、トラガカントガム、またはゼラチン);賦形剤(デンプンまたはラクトース)、崩壊剤(例えば、アルギン酸)、Primogelまたはコムスターチ(com starch);滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウムまたはSterotes);グリダント(glidant)(例えば、コロイド二酸化ケイ素);甘味料(例えば、スクロースまたはサッカリン);あるいは香料(例えば、ペパーミント、メチルサリチレートまたは有機香料)。
【0117】
吸入目投与のために、これらの化合物は、圧力容器または適切な推進剤(例えば、二酸化炭素のような気体)で収容するディスペンサーまたは噴霧器からエアロゾル噴霧の形態で送達される。
【0118】
全身投与はまた、経粘膜手段または経皮手段になされ得る。経粘膜または経皮による投与のために、通過する障壁に対して適切な透過剤(penetrate)が処方物の中に使用される。このような透過剤は、一般的に、当該分野で公知であり、そして例えば、経粘膜投与のために、界面活性剤、胆汁酸塩、およびフシジン酸の誘導体が含まれ得る。経粘膜投与は、鼻腔噴霧または坐剤の使用によって達成され得る。経皮膚投与のために、活性化合物が、軟膏剤(ointment)、軟膏(salve)、ゲルまたはクリームが一般的に当該分野で公知であるように処方される。
【0119】
PSGL−1活性を調製するための薬剤はまた、坐剤の形態(例えば、ココアバターおよび他のグリセリドのような坐剤のための従来の基剤が用いられる)または直腸送達のための停留性の浣腸の形態で調製され得る。
【0120】
1実施形態において、PSGL−1活性を調節する薬剤が身体からの迅速な排出に対して化合物を保護するキャリア(例えば、制御放出処方剤(移植物およびマイクロカプセル化送達システムを含む))とともに調製される。生体分解性で、生体適合性であるポリマーが使用され得る(例えば、エチレンビニルアセテート、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸)。このような処方物の調製のための方法は、当業者によって明らかである。これらの物質はまた、Alza CorporationおよびNova Pharmaceuticals,Incから市販されている。リポソーム性懸濁物(これは、ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体を用いて感染させた細胞に対して標的化されたリポソームを含む)はまた、薬学的に受容可能なキャリアとして使用され得る。これらは、例えば、米国特許第4,522,811号に記載されるような当業者に公知の方法に従って調製され得る。
【0121】
投与の簡便性および投薬の一様性たのめの投薬単位形態で経口組成物および非経口組成物を処方することが特に有利である。本明細書中で使用されるような投薬単位形態は、処置を受ける被験体に対する一元的な投薬として適切な物理的な分離されている単位をいい;各単位は、必要とされる薬学的なキャリアを伴って所望の治療効果を生じるために計算された予め決定された量の活性化合物を含む。本発明の投薬単位のための詳細な説明は、PSGL−1活性を調節する薬剤の固有の性質および達成されるべき特定の治療効果、および被験体を処置するるためのこのような薬剤を配合する技術にもともと伴う限界によって決定付けられるかまたは直接的に依存する。
【0122】
このような薬剤の毒性および治療効力は、例えば、LD50(集団の50%における致死量)およびED50(集団の50%において治療的に有効な用量)を決定するために細胞培養物または実験動物における標準的な薬学的手順によって決定付けられ得る。毒性と治療効果との間での用量比が、治療指数であり、そして、LD50とED50との比として表される。大きな治療指数を提示する薬剤が好ましい。毒性の副作用を提示する薬剤が使用される一方で、罹患していない細胞に対する潜在的な損傷を最小化してそれにより副作用を最小化するために、罹患した組織の部位にこのような薬剤を標的化するような送達系を設計することに注意がなされるべきである。
【0123】
このような細胞培養アッセイおよび動物研究から得られるデータは、ヒトにおける使用のための投薬範囲を処方するのに使用され得る。このようなPSGL−1調節薬剤の投薬量は、毒性が殆ど無いかまたたは全くないED50を含む循環濃度の範囲で存在することが好ましい。この投薬量は、使用される投薬量および利用される投薬経路に依存するこの範囲内で変化し得る。本発明の治療方法において使用される任意の薬剤について、治療有効用量は、細胞培養アッセイから最初に見積もられ得る。投薬量が、細胞培養物において決定されるような、IC50(すなわち、症状の最大阻害の半分を達成する試験化合物の濃度)を含む循環血漿濃度範囲を達成するために動物モデルにおいて処方され得る。このような情報が、ヒトにおける有用な投薬量をより正確に決定付けるために使用され得る。血漿におけるレベルが、例えば、高速液体クロマトグラフィーによって測定され得る。
【0124】
本明細書中に記載されるように、タンパク質またはポリペプチドの治療有効量(すなわち、有効投薬量)は、約0.001mg/kg体重〜30mg/kg体重、好ましくは、約0.01mg/kg体重〜25mg/kg体重、より好ましくは、約0.1mg/kg体重〜20mg/kg体重、およびさらにより好ましくは、約1mg/kg体重〜10mg/kg体重、2mg/kg体重〜9mg/kg体重、3mg/kg体重〜8mg/kg体重、4mg/kg体重〜7mg/kg体重または5mg/kg体重〜6mg/kg体重に及ぶ。当業者は、特定の因子が被験体を有効に治療するのに必要とされる用量に影響を与え得ることを理解し得、その特定の因子としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:被験体の、疾患または障害の重篤度、以前の処置、全身の健康状態および/または年齢ならびに現存する他の疾患。さらに、治療有効量のタンパク質、ペプチド、または抗体を用いる被験体の処置は、単回の処置を含み得、好ましくは、一連の処置を含み得る。
【0125】
好ましい例においては、被験体は、約0.1〜20mg/kg細胞増殖の範囲の抗体、タンパク質またはポリペプチドを用いて、約1〜10週間の間、好ましくは2〜8週間の間、より好ましくは約3〜7週間の間、およびさらにより好ましくは約4、5、または6週間の間、1週間に1回、処置される。処置のために使用される抗体、タンパク質またはポリペプチドの有効投与量が、特定の処置の経過にわたって増大し得るかまたは減少し得ることもまた、明らかである。投与量の変化が生じ得、そして本明細書中に記載されているような診断アッセイの結果から生じ得ることは明白となり得る。
【0126】
本発明は、発現または活性を調節する因子を含む。因子は、例えば、低分子であり得る。例えば、このような低分子としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:ペプチド、ペプチド模倣物、アミノ酸、アミノ酸アナログ、ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチドアナログ、ヌクレオチド、ヌクレオチドアナログ、約10,000g/モル未満の分子量を有する有機化合物または無機化合物(すなわち、へテロ有機化合物および有機金属化合物を含む)、約5,000g/モル未満の分子量を有する有機化合物または無機化合物、約1,000g/モル未満の分子量を有する有機化合物または無機化合物、約500g/モル未満の分子量を有する有機化合物または無機化合物、ならびにこのような化合物の塩、エステル、および薬学的に受容可能な他の形態。低分子因子の適切な用量が当該分野の医師、獣医師または研究者の知識内の多くの要因に依存することが、理解される。低分子の用量は、例えば、処置される被験体またはサンプルの正体、サイズおよび状態に依存して変化し、適用可能な場合、この組成物が投与される経路、およびこの低分子が有していることを開業医が所望する、本発明の核酸またはポリペプチドに対する効果にさらに依存して、変化する。
【0127】
代表的な用量は、被験体またはサンプル重量1kgあたりmgまたはμgの量の低分子を含む(例えば、約1μg/kg〜約500mg/kg、約100μg/kg〜約5mg/kg、または約1μg/kg〜約50μg/kg)。低分子の適切な用量は、調節されるべき発現または活性に対するこの低分子の効力に依存することがさらに理解される。このような適切な用量は、本明細書中で記載されるアッセイを使用して、決定され得る。これらの低分子の1つ以上が、本発明のポリペプチドまたは核酸の発現または活性を調節するために、動物(例えば、ヒト)に投与される場合、医師、獣医または研究者は、例えば、初めに比較的低い用量を処方し、続いて、適切な応答が得られるまで、この用量を増加し得る。さらに、任意の特定の動物被験体についての特定の用量レベルは、用いられる特定の化合物の活性、被験体の年齢、細胞増殖、身体全体の健康状態、性別および食餌、投与時間、投与経路、排泄速度、任意の薬物の組合せ、ならびに調節されるべき発現または活性の程度を含む種々の因子に依存することが、理解される。
【0128】
さらに、抗体(またはそのフラグメント)が、治療的部分(例えば、細胞毒、治療剤または放射性金属イオン)に結合され得る。細胞毒または細胞毒性剤としては、細胞に対して有害な任意の因子を含む。治療剤としては、代謝拮抗剤(例えば、メトトレキサート、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、シタラビン、5−フルオロウラシルデカルバジン)、アルキル化剤(例えば、メクロレタミン、チオエパクロランブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)およびロムスチン(CCNU)、シクロソスファミド(cyclothosphamide)、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、ならびにcis−ジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(以前は、ダウノマイシン)およびドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(以前は、アクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシンおよびアントラマイシン(AMC))、ならびに抗有糸分裂剤(例えば、ビンクリスチンおよびビンブラスチン)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0129】
本発明の結合体は、所定の生物学的応答を調節するために使用され得、薬物部分は、古典的な化学療法剤に限定されると解釈されるべきではない。例えば、薬物部分は、所望の生物学的活性を有するタンパク質またはポリペプチドであり得る。このようなタンパク質としては、例えば、毒素(例えば、アブリン、リシンA、シュードモナス体外毒素またはジフテリア毒素);タンパク質(例えば、腫瘍壊死因子、α−インターフェロン、β−インターフェロン、神経成長因子、血小板由来増殖因子、組織プラスミノゲンアクチベータ;または生物学的応答調節因子(例えば、リンホカイン、インターロイキン−1(「IL−1」)、インターロイキン−2「IL−2」)、インターロイキン−6(「IL−6」)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「GM−CSF」)、顆粒球コロニー刺激因子(「G−CSF」)、または他の増殖因子)が挙げられる。
【0130】
このような治療的部分を抗体に結合するための技術は、周知である。例えば、Arnonら.,「Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy」,Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy,Reisfeldら(編),pp.243〜56(Alan R.Liss,Inc.1985);Hellstromら,「Antibodies For Drug Delivery」,Controlled Drug Delivery(第2版),Robinsonら(編),pp.623−53(Marcel Dekker,Inc.1987);Thorpe,「Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy:A Review」,Monoclonal Antibodies ’84:Biological And Clinical Applications,Pincheraら(編),pp.475−506(1985);“Analysis,Results,And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy”,Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy,Baldwinら(編),pp.303−16(Academic Press 1985),およびThorpeら、「The Preparation And Cytotoxic Properties Of Antibody−Toxin Conjugates」,Immunol.Rev.,62:119−58(1982)を参照のこと。あるいは、抗体は、米国特許第4,676,980号においてSegalにより記載されるように、第2の抗体と結合体化して、抗体ヘテロ結合体を形成する。
【0131】
本発明の方法において使用される核酸分子は、ベクターに挿入され、遺伝子治療ベクターとして使用され得る。遺伝子治療ベクターは、例えば、静脈注射、局所投与(米国特許第5,328,470号を参照のこと)または定位注射(例えば、Chenら、(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:3054−3057を参照のこと)によって、被験体に送達され得る。遺伝子治療ベクターの薬学的調製物は、受容可能な希釈剤中に遺伝子治療ベクターを含み得るか、または遺伝子送達ビヒクルが埋め込まれる徐放マトリクスを含み得る。あるいは、完全な遺伝子送達ベクター(例えば、レトロウイルスベクター)が組換え細胞からインタクトで産生され得る場合、薬学的調製物は、遺伝子送達系を産生する1つ以上の細胞を含み得る。
【0132】
(B.薬物ゲノム学(pharmacogenomics))
本発明の治療方法と共に、薬物ゲノム学(すなわち、被験体の遺伝子型とこの被験体の外来化合物または薬物に対する応答との間の関係の研究)が、考慮され得る。治療剤の代謝における差異は、薬理学的に活性な薬物の用量と血液濃度との間の関係を変更することにより、重篤な毒性または治療不良をもたらし得る。従って、医師または臨床医は、P−セレクチンアンタゴニスト(例えば、可溶性PSGL−1)を投与するか否かを決定する際、ならびにPSGL−1活性を調節する薬剤を用いる処置の投薬量および/または治療レジメンを変更する際に、関連の薬物ゲノム学研究において得られた知識を適用することを考慮し得る。
【0133】
薬物ゲノム学は、変更された薬物処置および罹患した個人における異常な作用に起因する薬物に対する応答における、臨床学的に有意な遺伝的変異を処置する。例えば、Eichelbaum,M.ら、(1996)Clin.Exp.Pharmacol.Physiol.23(10−11):983−985およびLinder,M.W.ら、(1997)Clin.Chem.43(2):254−266を参照のこと。一般に、2つの型の薬理遺伝学的条件が、区別され得る。
【0134】
遺伝的条件は、薬物が身体に作用する様式を変更する(変更された薬物作用)単一因子としてか、または身体が薬物に作用する様式を変更する(変更された薬物代謝)単一因子として伝わった。これらの薬理遺伝学的条件は、稀な遺伝子欠損としてかまたは天然に存在する多型としてかの、いずれかとして生じ得る。例えば、グルコース−6−ホスフェートアミノペプチダーゼ欠損(G6PD)は、一般的な遺伝性酵素病であり、ここで、主な臨床学的合併症は、酸化薬剤(抗マラリア薬、スルホンアミド、鎮痛薬、ニトロフラン)の摂取およびソラマメの消費後の溶血である。
【0135】
「ゲノムワイドアソシエーション(genome−wide association)」として知られている、薬物応答を予測する遺伝子を同定するための、1つの薬物ゲノム学アプローチは、すでに知られているゲノム関連マーカー(例えば、「二座対立遺伝子」遺伝子マーカーマップ(これは、60,000〜100,000の多型またはヒトゲノム上の可変性部位からなり、これらの各々が、2つの改変体を有する))からなるヒトゲノムの高解像度マップに、主に依存する。このような高解像度ゲノムマップは、特定の観察された薬物応答または副作用に関連したマーカーを同定するために、第II期/第III期の薬物試験に参加した、統計学的に有意な数の患者の各々のゲノムのマップと比較され得る。あるいは、このような高解像度マップは、ヒトゲノムにおいて、数千万の公知の単一ヌクレオチド多型(SNP)の組み合わせから生じ得る。本明細書中で使用される場合、「SNP」は、DNAのストレッチにおいて、単一ヌクレオチド塩基において生じる一般的な変更である。例えば、SNPは、DNAの1000塩基毎に1回起き得る。SNPは、疾患プロセスに関与し得るが、大部分は、疾患に関連しないかもしれない。このようなSNPの発生に基づくゲノムマップが与えられると、個体は、個々のゲノムにおいて、SNPの特定のパターンに依存して、遺伝子のカテゴリーに分類され得る。このような様式において、処置レジメンは、遺伝子学的に類似の個体の間で共通であり得る特性を考慮して、このような遺伝子学的に類似の個体の群に対して変更され得る。
【0136】
あるいは、「候補遺伝子アプローチ」と呼ばれる方法は、薬物応答を予測する遺伝子を同定するために用いられ得る。この方法に従って、薬物の標的(例えば、本発明のPSGL−1タンパク質)をコードする遺伝子が既知である場合、その遺伝子の全ての共通の改変体は、その集団においてかなり容易に同定され得、そして別の遺伝子バージョンに対して1つの遺伝子バージョンを有することが特定の薬物応答に関連するか否かが決定され得る。
【0137】
例示的実施形態として、薬物代謝酵素の活性は、薬物作用の強度および持続時間の両方の主要な決定因子である。薬物代謝酵素(例えば、N−アセチルトランスフェラーゼ2(NAT2)およびシトクロムP450酵素であるCYP2D6およびCYP2C19)の遺伝子多型の発見は、標準的かつ安全な用量の薬物を摂取した後に、予測される薬物効果を得ることも過大な薬物応答および重篤な毒性を示すこともない患者が存在する理由に関する説明を提供した。これらの多型は、その集団中で2つの表現型(代謝が速い者(EM)および代謝が遅い者(PM))で表わされる。PMの普及率は、種々の集団間で異なる。例えば、CYP2D6をコードする遺伝子は、非常に多型性であり、そしていくつかの変異が、PMにおいて同定されており、そのすべてが、機能的CYP2D6の不在をもたらす。CYP2D6およびCYP2C19の代謝速度が遅い者は、標準的用量を受けたときに、過大な薬物応答および副作用を非常に頻繁に経験する。代謝物が活性な治療部分である場合、PMは、CYP2D6が形成した代謝物であるモルヒネにより媒介されるコデインの鎮痛効果について示されるような、治療応答を示さない。その他の極端な者は、標準的用量に対して応答しない、いわゆる代謝が著しく速い者である。最近、著しく速い代謝の分子的基礎が、CYP2D6遺伝子増幅に起因することが同定された。
【0138】
あるいは、「遺伝子発現プロファイリング」と呼ばれる方法が、薬物応答を予測する遺伝子を同定するために用いられ得る。例えば、薬物(例えば、本発明のPSGL−1分子またはP−セレクチンアンタゴニスト)を投薬された動物の遺伝子発現は、毒性に関連する遺伝子経路が作動したか否かの指標を与え得る。
【0139】
上記薬物ゲノム学的アプローチのうちの1つより多くから得られる情報が、被験体の予防的処置または治療的処置のための、適切な投薬量および処置レジメンを決定するために使用され得る。この知識は、投薬または薬物選択に適用される場合、有害な反応または治療の失敗を回避し得、それによって、P−セレクチン活性を調節する薬剤で、虚血およびまたは再灌流傷害によって引き起こされる組織または器官の損傷を処置、予防、または低減する場合、治療効果または予防効果を増強し得る。
【0140】
(V.スクリーニングアッセイ)
本発明は、モジュレーター(すなわち、PSGL−1タンパク質に結合するか、PSGL−1発現またはPSGL−1活性に対する刺激効果または阻害効果を有するか、あるいはPSGL−1標的分子(例えば、P−セレクチンまたはE−セレクチン)の発現または活性に対する刺激効果または阻害効果を有するか、あるいはPSGL−1標的分子を発現する細胞(例えば、内皮細胞および活性化血小板)に対する影響(例えば、細胞の移動または接着の阻害)を有する、候補化合物もしくは試験化合物または薬剤(例えば、ペプチド、ペプチド模倣物、低分子、リボザイム(nibozyme)またはPSGL−1アンチセンス分子))を同定するための方法(本明細書中で「スクリーニングアッセイ」ともいわれる)を提供する。本明細書中に記載されるアッセイを使用して同定される化合物は、虚血の後に再灌流を生じる組織および器官の損傷を処置、予防、または低減するために有用であり得る。
【0141】
候補化合物/試験化合物としては、例えば、以下が挙げられる:1)可溶性ペプチドのようなペプチド(Igをテイルとする融合ペプチドならびにランダムペプチドライブラリー(例えば、Lam,K.S.ら(1991)Nature 354:82−84;Houghten,R.ら(1991)Nature 354:84−86を参照のこと)およびD立体配置アミノ酸および/またはL立体配置アミノ酸から作製されるコンビナトリアルケミストリー由来の分子ライブラリーのメンバーが挙げられる);2)リンペプチド(例えば、ランダムかつ部分的に分解した特異的リンペプチドライブラリーのメンバー、例えば、Songyang,Z.ら(1993)Cell 72:767−778を参照のこと);3)抗体(例えば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、抗イディオタイプ抗体、キメラ抗体、および単鎖抗体、ならびにFab、F(ab’)、Fab発現ライブラリーフラグメント、および抗体のエピトープ結合フラグメント);ならびに4)有機低分子および無機低分子(例えば、コンビナトリアルライブラリーおよび天然物ライブラリーから得られる分子)。
【0142】
本発明の試験化合物は、当該分野において公知のコンビナトリアルライブラリー法における多くのアプローチのいずれか(生物学的ライブラリー;空間的にアドレス可能な並列固相ライブラリーまたは液相ライブラリー;デコンヴォルーションを必要とする合成ライブラリー法;「1ビーズ1化合物」ライブラリー法;およびアフィニティクロマトグラフィー選択を使用する合成ライブラリー法を含む)を使用して取得され得る。生物学的ライブラリーアプローチは、ペプチドライブラリーに限定されるが、他の4つのアプローチは、化合物のペプチドライブラリー、非ペプチドオリゴマーライブラリーまたは低分子ライブラリーに適用可能である(Lam、K.S.(1997)Anticancer Drug Des.12:145)。
【0143】
分子ライブラリーの合成方法の例としては、例えば、以下のような当該分野で見出され得る:DeWittら(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.90:6909;Erbら(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:11422;Zuckermannら(1994).J.Med.Chem.37:2678;Choら(1993)Science 261:1303;Carrellら(1994)Angew.Chem.Int.Ed.Engl.33:2059;Carellら(1994)Angew.Chem.Int.Ed.Engl.33:2061;およびGallopら(1994)J.Med.Chem.37:1233。
【0144】
化合物のライブラリーは、溶液中で(例えば、Houghten(1992)Biotechniques 13:412−421)、あるいはビーズ(Lam(1991)Nature 354:82−84)、チップ(Fodor(1993)Nature 364:555−556)、細菌(Ladner USP 5,223,409)、胞子(Ladner USP’409)、プラスミド(Cullら(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:1865−1869)またはファージ(ScottおよびSmith(1990)Science 249:386−390;Devlin(1990)Science 249:404−406;Cwirlaら(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.87:6378−6382;Felici(1991)J.Mol.Biol.222:301−310;Ladner前出)上で調製され得る。
【0145】
PSGL−1活性およびP−セレクチン活性を調節する化合物を同定するために使用され得るアッセイとしては、以下が挙げられる:51Cr標識細胞(例えば、白血球)を使用する細胞接着についてのアッセイ(例えば、Kennedyら(2000)Br J Pharmacology 130(1):95に記載される)、ならびに細胞移動(例えば、血小板、好中球および白血球の移動)についてのアッセイ(例えば、Kogakiら(1999)Cardiovascular Res 43(4):968およびBengtssonら(1999)Scand J Clin Lab Invest 59(6):439に記載される)。
【0146】
1つの局面において、アッセイは、PSGL−1タンパク質、またはE−セレクチンもしくはP−セレクチンの結合に関与すると考えられるPSGL−1タンパク質の生物学的に活性な部分(例えば、配列番号2のアミノ酸残基42〜60)を発現する細胞が、試験化合物と接触され、そしてPSGL−1活性を調節する試験化合物の能力が決定される、細胞ベースのアッセイである。好ましい実施形態において、PSGL−1タンパク質の生物学的に活性な部分は、P−セレクチンと相互作用し得るかまたはP−セレクチン媒介細胞接着を阻害し得るドメインまたはモチーフを含む。PSGL−1活性を調節する試験化合物の能力を決定することは、例えば、細胞接着または細胞移動をモニタリングすることによって達成され得る。例えば、細胞は、哺乳動物起源であり得る(例えば、内皮細胞または白血球)。
【0147】
試験化合物が、基質へのPSGL−1の結合を調節する能力またはPSGL−1に結合する能力もまた、決定され得る。基質へのPSGL−1の結合を調節する試験化合物の能力を決定することは、例えば、PSGL−1へのPSGL−1基質の結合が、複合体中の標識化PSGL−1基質を検出することによって決定され得るように、放射性同位元素標識または酵素標識とPSGL−1基質とを結合することによって達成され得る。あるいは、複合体中でPSGL−1基質へのPSGL−1の結合を調節する試験化合物の能力をモニターするために、PSGL−1が、放射性同位元素標識または酵素標識と結合され得る。PSGL−1に結合する試験化合物の能力を決定することは、例えば、PSGL−1への化合物の結合が、複合体中の標識化PSGL−1化合物を検出することによって決定され得るように、放射性同位元素標識または酵素標識と化合物とを結合することによって達成され得る。例えば、PSGL−1基質は、直接的かまたは間接的にかのいずれかで、125I、35S、14CまたはHで標識化され得、そして放射性同位元素は、電波放出の直接的な計数またはシンチレーション計数によって検出され得る。あるいは、化合物は、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼまたはルシフェラーゼで酵素的に標識化され得、そして酵素的標識は、適切な基質の産物への変換の決定によって検出され得る。
【0148】
化合物が、いずれの相互作用体(interactant)の標識化もなしでPSGL−1と相互作用する能力を決定することもまた、本発明の範囲内である。例えば、微小生理機能測定器(microphysiometer)を使用して、化合物またはPSGL−1のいずれの標識化もなしで、PSGL−1との化合物の相互作用を検出し得る(McConnell,H.M.ら(1992)Science 257:1906−1912)。本明細書中で使用される場合、「微小生理機能測定器」(例えば、Cytosensor)は、光でアドレス可能な電位差測定センサー(LAPS)を使用して、細胞がその環境を酸性化する速度を測定する、分析装置である。この酸性化速度の変化は、化合物とPSGL−1との間の相互作用の指標として使用され得る。
【0149】
別の実施形態において、本発明のアッセイは、PSGL−1タンパク質またはその生物学的に活性な部分(例えば、P−セレクチンに結合し得るPSGL−1のフラグメント)が、試験化合物と接触され、そしてこの試験化合物がPSGL−1タンパク質もしくはその生物学的に活性な部分に結合する能力、またはこれらの活性を調節する(例えば、刺激するかまたは阻害する)能力が決定される、無細胞アッセイである。本発明のアッセイにおいて使用されるPSGL−1タンパク質の好ましい生物学的に活性な部分としては、非PSGL−1分子との相互作用に関与するフラグメント(例えば、高い表面確率スコアを有するフラグメント)が挙げられる。試験化合物がPSGL−1タンパク質に結合する能力を決定することはまた、real−time Biomolecular Interaction Analysis(BIA)(Sjolander,S.およびUrbaniczky,C.(1991)Anal.Chem.63:2338−2345ならびにSzaboら(1995)Curr.Opin.Struct.Biol.5:699−705)のような技術を用いて達成される。本明細書中で使用される場合、「BIA」は、いずれの相互作用体も標識することなく、リアルタイムで生体特異的相互作用体を検出するための技術である(例えば、BIAcore)。表面プラズモン共鳴(SPR)の光学的現象(optical phenomenon)の変化は、生物学的分子間のリアルタイム反応の指標として使用され得る。
【0150】
本発明の上記のアッセイ方法の1つ以上の実施形態において、PSGL−1またはP−セレクチンのいずれかを固定して、そのタンパク質の一方または両方の非複合体化形態からの複合体化形態の分離を容易にし、そしてこのアッセイの自動化に適用させることが、望ましくあり得る。試験化合物のPSGL−1タンパク質への結合、または試験化合物の存在下および非存在下でのPSGL−1タンパク質のP−セレクチンとの相互作用は、これらの反応物を収容するのに適切な任意の容器内で成され得る。このような容器の例には、マイクロタイタープレート、試験管、および微小遠心管が挙げられる。1つの実施形態において、そのタンパク質の一方または両方をマトリックスに結合することを可能にするドメインを追加する融合タンパク質が、提供され得る。例えば、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ/PSGL−1の融合タンパク質またはグルタチオン−S−トランスフェラーゼ/標的の融合タンパク質は、グルタチオンセファロースビーズ(Sigma Chemical、St.Louis、MO)またはグルタチオン誘導体化マイクロタイタープレート上に吸着され得、次いで、これらを、試験化合物と混ぜ合わせるか、あるいは試験化合物および非吸着の標的タンパク質またはPSGL−1タンパク質のいずれかと混ぜ合わせ、そしてこの混合物を、複合体形成を招く条件下(例えば、塩およびpHに関する生理学的条件)でインキュベートする。インキュベーション後、ビーズまたはマイクロタイタープレートウェルを洗浄して、結合していないあらゆる成分を除去し、ビーズの場合にはマトリックスを固定し、例えば、上記のように、複合体を直接的または間接的のいずれかで決定する。あるいは、複合体をマトリックスから解離させ得、そしてPSGL−1結合レベルまたはPSGL−1活性レベルを標準的な技術を使用して決定し得る。
【0151】
タンパク質をマトリクス上に固定するための他の技術はまた、本発明のスクリーニングアッセイにおいて使用され得る。例えば、PSGL−1タンパク質またはP−セレクチン分子は、ビオチンとストレプトアビジンとの結合体化を使用して固定され得る。ビオチン化されたPSGL−1タンパク質またはP−セレクチンタンパク質を、当該分野において公知の技術を使用して、ビオチン−NHS(N−ヒドロキシスクシンイミド)から調製し得(例えば、ビオチン化キット、Pierce Chemicals、Rockford、IL)、そしてストレプトアビジンでコーティングした96ウェルのプレート(Pierce Chemical)のウェル中に固定し得る。あるいは、PSGL−1タンパク質またはP−セレクチンと反応性であるが、PSGL−1タンパク質のその標的分子への結合を妨害しない抗体は、プレートのウェルに誘導体化され得、そして結合していない標的またはPSGL−1タンパク質が、抗体の結合体化によってウェル内にトラップされ得る。このような複合体を検出するための方法には、GST固定化複合体に関しての上記のものに加えて、PSGL−1タンパク質またはP−セレクチンと反応性の抗体を使用する複合体の免疫検出、ならびにPSGL−1タンパク質またはP−セレクチンに関する酵素活性の検出に依存する酵素結合アッセイが挙げられる。
【0152】
本発明のなお別の局面において、PSGL−1タンパク質またはそのフラグメント(例えば、P−セレクチンもしくはE−セレクチンを結合し得るフラグメント)は、ツーハイブリッドアッセイまたはスリーハイブリッドアッセイ(例えば、米国特許第5,283,317号;Zervosら、(1993)Cell 72:223〜232;Maduraら(1993)J.Biol.Chem.268:12046〜12054;Bartelら(1993)Biotechniques 14:920〜924;Iwabuchiら(1993)Oncogene 8:1693〜1696;およびBrent WO94/10300を参照のこと)において、PSGL−1と結合または相互作用する他のタンパク質(「PSGL−1結合タンパク質」または「PSGL−1−bp」)、およびPSGL−1活性に関与する他のタンパク質を同定するために「ベイト(bait)タンパク質」として使用され得る。そのようなPSGL−1結合タンパク質は、例えば、PSGL−1媒介性シグナル伝達経路の下流エレメントとして、PSGL−1タンパク質またはPSGL−1標的によるシグナルの伝達に関与している可能性もある。あるいは、このようなPSGL−1結合タンパク質は、PSGL−1インヒビターである可能性がある。
【0153】
このツーハイブリッドシステムは、ほとんどの転写因子のモジュラー型の性質に基づく。ほとんどの転写因子は、分離可能なDNA結合ドメインおよび活性化ドメインからなる。簡単に述べると、このアッセイは、2つの異なるDNA構築物を利用する。1つの構築物において、PSGL−1タンパク質をコードする遺伝子が、既知の転写因子(例えば、GAL−4)のDNA結合ドメインをコードする遺伝子に融合される。他の構築物において、同定されていないタンパク質(「プレイ(prey)」または「サンプル」)をコードするDNA配列ライブラリー由来のDNA配列が、既知の転写因子の活性化ドメインをコードする遺伝子に融合される。「ベイト」タンパク質と「プレイ」タンパク質とがインビボで相互作用してPSGL−1依存性複合体を形成し得る場合、その転写因子のDNA結合ドメインと活性化ドメインとは、近接する。このように近くにあることにより、その転写因子に応答性の転写調節部位に作動可能に連結したレポーター遺伝子(例えば、LacZ)の転写が可能になる。そのレポーター遺伝子の発現が検出され得、そしてその機能的な転写因子を含む細胞コロニーが、単離され得、そしてPSGL−1タンパク質と相互作用するタンパク質をコードするクローン遺伝子を得るために使用され得る。
【0154】
別の局面において、本発明は、本明細書中に記載されるアッセイの2つ以上の組み合わせに関する。例えば、調節剤が、細胞ベースのアッセイまたは無細胞アッセイを用いて同定され得、そしてその因子がP−セレクチンリガンドアンタゴニストの活性を調節する能力が、例えば、動物モデル(例えば、虚血についての動物モデル(例えば、発作についての動物モデル))においてインビボで確認され得る。虚血および再灌流についての動物モデルとしては、本明細書中に記載される動物モデルおよび少なくとも以下に記載される動物モデルが挙げられる:例えば、Sarabiら(2001)Exp.Neurol.170(2):283−9;Descheerderら(2001)J.Am.Soc.Echocardiogr 14(7):691−7;Oharaら(2001)Gene Trer.8(11):837;およびDammersら(2001)Br.J.Surg.88(6):816−24.
さらに、本明細書中に記載されるように同定されたPSGL−1調節因子(例えば、アンチセンスPSGL−1核酸分子、PSGL−1特異的抗体、または低分子)が、そのような調節因子を用いる処置の効力、毒性、または副作用を決定するために動物モデルにおいて使用され得る。あるいは、本明細書中に記載されるように同定されたPSGL−1調節因子が、このような調節因子の作用機構を決定するために動物モデルにおいて使用され得る。
【0155】
本発明は、以下の実施例によってさらに例示され、この実施例は、限定と解釈されるべきではない。本願全体にわたって引用される全ての参考文献、特許および公開特許出願の内容、ならびに図面および配列表は、本明細書中で参考として援用される。
【実施例】
【0156】
(実施例1:P−セレクチンリガンドタンパク融合体)
この実施例は、二量体P−セレクチンリガンド融合タンパク質(本明細書中で、rPSGL−Igとも称される)の生成を記載する。シグナルペプチド、PAGE切断部位、およびネイティブFc配列のHis224でヒトIgG1の変異Fc領域成熟に融合されたP−セレクチンリガンド配列の最初の47アミノ酸をコードするcDNAを構築した。cDNA構築物の配列を、配列番号3として報告する。その融合点は、ヌクレオチド261の新規NotI部位である。このcDNA構築物によりコードされるアミノ酸配列を、配列番号4として報告する。コードされる融合タンパク質の成熟アミノ酸配列は、配列番号4のアミノ酸42で開始する。Fc部分における変異は、ネイティブFc配列のLeu234およびGly237のAlaへの変更であった。
【0157】
(実施例2:脳に対する虚血/再灌流損傷の減弱における可溶性P−セレクチン(rPSGL−Ig)の効果)
この実施例は、虚血の動物モデルにおける脳に対する虚血/再灌流損傷の減弱における可溶性P−セレクチン(rPSGL−Ig)の効果を試験する研究の結果を記載する。この動物モデルにおける結果は、ヒトにおける結果の推定となるということが有望である。
【0158】
(材料および方法)
頭蓋骨ウィンドウ(cranial window)を、Sprague−Dawleyラット(体重250〜300グラム)に移植した。ウィンドウを配置した日に、ラットを、ペントバルビタール(40mg/kgI.p.)で麻酔した。この動物を、虚血の誘導の前に少なくとも4日間回復させた。全ての動物を、虚血発作の前夜に絶食させた。麻酔を、ケタミン(100mg/ml)およびキシラジン(20mg/ml)の1:1混合物を、0.1ml/100g体重でi.m.誘導した。中大脳動脈の一過性の閉塞についてBelayev,Lら(1996)Stroke 27(9):1616−22に記載されるような、Koizumiらにより開発された技術の改良版を用いて、限局的虚血発作を生成した。縫合を、外頸動脈を介して、内頸動脈に導入した。この縫合を、30分または120分維持し、次いで除去した。中大脳動脈が各々の動物において十分に閉塞されたことを確認するために、体性感覚誘発電位(SSEP)を、縫合の配置の前後でモニタリングした。縫合を配置した場合に誘発応答の損失を示した動物のみを含めた。脳の温度を、37℃で維持した。
【0159】
これらのラットを、各々の研究において、2つの群(処置群および非処置群)に分けた。第1の研究において、処置動物は、中大脳動脈からの縫合の除去の1分前にrPSGL−Ig(1mg/kg)を静脈内に受けた。第2の研究において、それらは、虚血の前に薬物(4mg/kg)を受けた。非処置動物は、薬物の代わりに、等量のビヒクルを静脈内に受けた。落射照明顕微鏡を、頭蓋骨表面の生体内顕微鏡試験のために使用した。中央密度フィルターを使用して、光強度を減少し、そして光毒性を回避した。Genisyl画像増感子に接続されたCCDカメラを用いて、微小血管床のビデオ画像をビデオテープレコーダーに送信した。画像増感子の使用により、組織の低強度の曝露でビデオ画像を記録することが可能になった。証明強度は、白血球ローリングおよび接着に直接的に影響する。20倍水浸レンズを、微血管床の拡大に使用した。20〜45μmの範囲の毛細後細静脈(Post−capillary venule)を観察のために選択した。測定を、血管分枝点の200μm下流で行った。細静脈を、白血球ローリングおよび接着の分析のためにビデオテープに録画した。
【0160】
この研究の最後に、これらの動物を、ペントバルビタールで麻酔し、そして断頭した。脳を直ちに取りだし、そして切片化を容易にするために冷たい(4℃)生理食塩水中に配置した。5つの冠状切片を作製した。次いで、各々の切片を、この溶液中で、暗所にてインキュベートし(37℃で30分間)、次いで、10%リン酸緩衝生理食塩水中で固定した。固定された切片を解剖顕微鏡下に置きそして写真撮影した。5つの切片の各々を頭側と尾側の両方で写真撮影した。写真画像を、梗塞サイズのコンピュータ分析のために、Seattle Filmworks(Seattle,WA,USA)によってデジタル化した。
【0161】
(結果)
この結果は、rPSGL−Igが、一過性の虚血後の脳の表面上での細静脈における白血球ローリングを減弱する傾向を有することを示した。細静脈における白血球ローリングは、中大脳動脈の閉塞の30分後の再灌流の間の測定のために選択された全ての時間の間により低い傾向を有する(図1を参照のこと)閉塞の120分後、ローリングは、再灌流の60分後により低い傾向を有する(図2を参照のこと)。このことは、少なくとも一部、剪断率の差に起因し得る。
【0162】
閉塞の30分の持続時間は、信頼できる脳への梗塞を生成するのに不十分であった。120分間の中大脳動脈の閉塞は、非処置動物における同側大脳半球の薬32%の梗塞を引き起こした。この梗塞の大きさは、再灌流の1分前のrPSGL−Igの投与によりわずかに(同側半球の約26%まで)減少した。これらの動物における梗塞の大きさは、再灌流の間により低い用量を受けた梗塞よりもわずかに小さかった(22%)が、この結果は、大きくは異ならない。
【0163】
これらの結果は、P−セレクチンの発現が、虚血および/または再灌流損傷に対する重要な寄与因子であることを示す。この結果はまた、rPSGL−Igは、一過性の虚血後の大脳皮質における細静脈に沿った白血球ローリングと干渉したことを示す。虚血の前または再灌流の間のいずれかでの、P−セレクチンアンタゴニスト(例えば、rPSGL−Ig)によるP−セレクチンのブロッキングは、一過性の虚血により引き起こされる脳への損傷の大きさを減少するのに効果的である。
【0164】
当業者は、慣用にすぎない実験を用いて、本明細書中に記載される本発明の特定の実施形態に対する多くの等価物を認識または確認する。このような等価物は、添付の特許請求の範囲により包含されることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0165】
【図1】図1は、中大脳動脈の閉塞の30分後の再灌流障害の間の脳の表面上の細静脈における白血球ローリングに対するrPSGL−Igの効果を示すグラフである。
【図2】図2は、中大脳動脈の閉塞の120分後の再灌流障害の間の脳の表面上の細静脈における白血球ローリングに対するrPSGL−Igの効果を示すグラフである。

Claims (28)

  1. 虚血後の被験体の脳における再灌流損傷を予防または低減する方法であって、P−セレクチンアンタゴニストまたはP−セレクチンリガンド活性を有するそのフラグメントを含む有効量の組成物を投与する工程を包含する、方法。
  2. 前記被験体が、発作に罹患している、請求項1に記載の方法。
  3. 前記再灌流損傷が、皮膚梗塞である、請求項1に記載の方法。
  4. 前記P−セレクチンアンタゴニストが、抗P−セレクチンリガンド抗体またはそのフラグメントである、請求項1に記載の方法。
  5. 前記P−セレクチンアンタゴニストが、可溶性PSGL−1タンパク質またはP−セレクチンリガンド活性を有するそのフラグメントである、請求項1に記載の方法。
  6. 前記可溶性PSGL−1タンパク質が、ヒトPSGL−1である、請求項5に記載の方法。
  7. 前記可溶性PSGL−1タンパク質が、組換えタンパク質である、請求項5に記載の方法。
  8. 前記可溶性PSGL−1タンパク質が、免疫グロブリンのFc部分を含む、請求項5に記載の方法。
  9. 前記免疫グロブリンが、ヒトIgGである、請求項8に記載の方法。
  10. 前記可溶性PSGL−1タンパク質が、組換えヒトPSG−Ig融合タンパク質である、請求項5に記載の方法。
  11. 前記フラグメントが、配列番号2に示すアミノ酸配列のアミノ酸42〜アミノ酸60を含む、請求項10に記載の方法。
  12. 前記フラグメントが、配列番号2に示すアミノ酸配列のアミノ酸42〜アミノ酸88を含む、請求項10に記載の方法。
  13. 前記フラグメントが、配列番号2に示すアミノ酸配列のアミノ酸42〜アミノ酸118を含む、請求項10に記載の方法。
  14. 前記フラグメントが、配列番号2に示すアミノ酸配列のアミノ酸42〜アミノ酸189を含む、請求項10に記載の方法。
  15. 前記フラグメントが、配列番号2に示すアミノ酸配列のアミノ酸42〜アミノ酸310を含む、請求項10に記載の方法。
  16. 前記可溶性PSGL−1タンパク質が、配列番号2のアミノ酸42〜アミノ酸88までのアミノ酸配列を含み、そのC末端が、免疫グロブリンのFc部分と融合されている、請求項4に記載の方法。
  17. 前記可溶性PSGL−1タンパク質がさらに、免疫グロブリンのFc部分を含む、請求項1に記載の方法。
  18. 前記被験体が、ヒトである、請求項1に記載の方法。
  19. 前記P−セレクチンアンタゴニストが、再灌流の前に被験体に投与される、請求項1に記載の方法。
  20. 前記P−セレクチンアンタゴニストが、有効量の接着分子の1つ以上のインヒビターと組み合わせて被験体に投与される、請求項1に記載の方法。
  21. 前記P−セレクチンアンタゴニストが、再灌流の間に被験体に投与される、請求項1に記載の方法。
  22. 前記P−セレクチンアンタゴニストが、有効量の接着分子の1つ以上のインヒビターと組み合わせて被験体に投与される、請求項1に記載の方法。
  23. 被験体において、該虚血後の被験体の脳における梗塞を予防または低減する方法であって、P−セレクチンアンタゴニストまたはP−セレクチンリガンド活性を有するそのフラグメントを含む有効量の組成物を投与する工程を包含する、方法。
  24. 被験体において発作後の脳に対する損傷を予防または低減する方法であって、P−セレクチンアンタゴニストまたはP−セレクチンリガンド活性を有するそのフラグメントを含む有効量の組成物を投与する工程を包含する、方法。
  25. 再灌流後の被験体の脳における血管に対する細胞接着を阻害する方法であって、P−セレクチンアンタゴニストまたはP−セレクチンリガンド活性を有するそのフラグメントを含む有効量の組成物を投与する工程を包含する、方法。
  26. 前記細胞が白血球である、請求項25に記載の方法。
  27. 被験体の脳において再灌流後の該被験体における細胞間接着を阻害する方法であって、P−セレクチンアンタゴニストまたはP−セレクチンリガンド活性を有するそのフラグメントを含む有効量の組成物を投与する工程を包含する、方法。
  28. 前記細胞が、白血球および血小板である、請求項27に記載の方法。
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