JP2005507863A - キラル2−および3−置換カルボン酸の動力学的分割 - Google Patents

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Abstract

本発明をひとつの側面から見ると、キラル化合物のラセミ混合物およびジアステレオ混合物を動力学的に分割する方法に関する。本方法において重要な要素は、非ラセミキラル三級アミン含有触媒;キラル基質のラセミまたはジアステレオ混合物(例えば、環状カーボネートまたは環状カーバメートなど);ならびに求核剤(例えば、アルコール、アミンまたはチオールなど)である。本発明の好ましい実施態様は、アミノ、ヒドロキシ、およびチオカルボン酸類の誘導体のラセミ混合物およびジアステレオ混合物を動力学的に分割する方法に関する。ある実施態様においては、本発明の方法は、基質のラセミ混合物またはジアステレオ混合物を動的動力学的に分割する方法に関し、これはすなわち、分割段階前の反応条件下において、エナンチオマーまたはジアステレオマーがin situで平衡に達していることにより、分割された各エナンチオマーまたはジアステレオマーの収量が元の混合物中に含まれているそれらの量を超えるような方法である。

Description

【技術分野】
【0001】
アメリカ合衆国政府による資金援助
本発明は、国立衛生研究所から提供された政府の資金援助(補助金交付番号GM−61591)によってなされたものであり、従って、政府は本発明に対して一定の権利を有する。
【0002】
本発明をひとつの側面から見ると、キラル化合物のラセミ混合物およびジアステレオ混合物を動力学的に分割する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
鏡像異性体(エナンチオマー)的に純粋な化合物を得たいという要求が近年急速にふくらんでいる。そのような、キラル非ラセミ化合物の重要な用途のひとつは、製薬産業における合成の中間体としてである。例えば、鏡像異性体的に純粋な薬物は、ラセミ薬物の混合物よりも多くの長所を有することが明らかになってきている。これらの長所(例えば、非特許文献1に記載)としては、鏡像異性体的に純粋な化合物であることにより、副作用が少なく、力価が高いことなどが挙げられる。
【0004】
有機合成において従来から行われている方法では、ラセミ材料の産生を最大にすることが多かった。鏡像異性体的に純粋な材料の産生は、従来から、2つの方法のうちのひとつに従って行われてきた。すなわち、天然の原料(いわゆる「キラルプール」)由来の鏡像異性体的に純粋な出発材料を使う方法、および古典的な技術によってラセミ混合物を分割する方法である。しかしながら、これらの方法にはそれぞれ重大な欠点がある。キラルプールは、天然に存在する化合物に限定されるため、ある種の構造および立体配置のみしか入手できない。分割剤を用いるラセミ体の分割は、不経済かつ時間の浪費である。さらに、分割は、不要な鏡像異性体を廃棄することを意味する場合が多く、故に、効率が低下し、材料の半分を無駄にしている。
【非特許文献1】
スティンソン(Stinson),S. C.、Chem. Eng. News, 1992年9月28日号、pp.46−79
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の目的および概要
ひとつの側面から見ると、本発明は、キラル化合物のラセミおよびジアステレオ混合物を動力学的に分割する方法に関する。そのような方法において重要な要素とは、非ラセミキラル三級アミン含有触媒;キラル基質のラセミまたはジアステレオ混合物(例えば、環状カーボネートまたは環状カーバメートなど);ならびに求核剤(例えば、アルコール、アミンまたはチオールなど)である。本発明の好ましい実施態様は、アミノ、ヒドロキシおよびチオカルボン酸の誘導体のラセミおよびジアステレオ混合物の動力学的分割を実施するための方法に関する。ひとつの実施態様においては、本発明に従う方法により、基質のラセミまたはジアステレオ混合物を動的動力学的に分割することができる。すなわち、分割を行う前の反応条件下においてエナンチオマーまたはジアステレオマーがin situで平衡に達していることにより、分割された各エナンチオマーまたはジアステレオマーの収量が、元の混合物中に存在する量を超えているような方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
キラル化合物のラセミ混合物またはジアステレオマー混合物をひとつのエナンチオマーに富んだもしくはひとつのジアステレオマーに富んだキラル化合物、または、エナンチオマー的に純粋なもしくはジアステレオマー的に純粋なキラル化合物に選択的に変換する能力は、有機化学分野、特に農業および製薬業界、ならびに高分子産業において広範な用途がある。本明細書に記載しているように、本発明は、キラル化合物のラセミおよびジアステレオ混合物を動力学的に分割する方法に関する。以下に詳細に記載しているように、該方法の基本構成要素は、非ラセミキラル三級アミン含有触媒;キラル基質のラセミまたはジアステレオ混合物(例えば、環状カーボネートまたは環状カーバメートなど);求核剤(例えば、アルコールまたはチオールなど)である。本発明に従う方法においては、前記求核剤は、触媒と基質とから生成されたジアステレオマー遷移状態または中間体を選択的に攻撃し、ひとつのエナンチオマーに富んだもしくはひとつのジアステレオマーに富んだキラル生成物、または、エナンチオマー的に純粋なもしくはジアステレオマー的に純粋なキラル生成物が得られる。
【0007】
触媒を用いたヒドロキシカルボン酸の不斉合成
ラセミ5−アルキル−1,3−ジオキソラン−2,4−ジオン類(2)は、対応するラセミヒドロキシカルボン酸類(1)から容易に調製することができる(トヨオカ(Toyooka)ら、Heterocycles 1989(29)975−978)。化合物2の効率的な動力学的分割法を首尾良く開発したことにより、触媒を用いたキラル非ラセミヒドロキシカルボン酸誘導体類の良好な調製法が導かれたが、そのような誘導体類は、不斉合成における多用途キラル成分である(以下のスキーム1を参照)(リー(Lee), J. B.ら、Tetrahedron 1967(23)359−363;モリ(Mori), K.ら、Tetrahedron 1979(35)933−940;グリーコ(Grieco), P. A.ら、J. Org. Chem. 1985(50)3111−3115)。
【化1】
Figure 2005507863
【0008】
例えば、発明者らは、シンコナアルカロイド触媒アルコリシスを用い、5−フェニル−1,3−ジオキソラン−2,4−ジオン(5)を動力学的に分割することについて研究を行った。以下のスキーム2に示すように、ラセミ出発材料(5)を転換し、エナンチオマー過量率が非常に高い(97%)単一の生成物を65%の収率で得た。化合物5の動力学的分割は、最も望ましい様式、すなわち、動的動力学的分割様式で進行したことは明らかである。出発材料の不斉中心において迅速なエピメリ化が起こったことにより、出発材料(5aおよび5b)の2つのエナンチオマー間の平衡が確立された。この平衡状態、および2つのエナンチオマーのうちのひとつの選択的転換を組み合わせることにより、ラセミ混合物を転換し、エナンチオマー過剰率が高い単一の生成物を収率50%以上で得ることができた。シンコナアルカロイドは、ブレンステッド塩基およびルイス塩基として作用することにより、エピメリ化およびアルコリシス反応を触媒すると考えられた。生成物について測定されたエナンチオマー過量率に基づくと、反応の選択的因子(kfast/kslow)は50以上であった。本明細書において示しているように、動的動力学的分割は、標準的な動力学的分割に伴って生じる従来からの欠点(例えば、収率は最高50%、未反応出発材料などに由来する生成物などのような化合物の混合物を分離する必要性など)を克服するものである。すべての点から見て、本反応は、光学活性ヒドロキシカルボン酸誘導体類の不斉合成に関して最も実用的な方法のひとつに発展させることができる(キタムラ(Kitamura), M.ら、J. Am. Chem. Soc. 1988(110)629−631;マシマ(Mashima), K.ら、J. Org. Chem. 1994(59)3064−3076;バーク(Burk), M.J.ら、J. Am. Chem. Soc. 1998(120)4345−4353;ワン(Wang), Z.ら、Tetrahedron Lett. 1998(39)5501−5504;チバ(Chiba), T.ら、Tetrahedron Lett. 1993(34)2351−2354;ヘルタ(Hurta), F. F.ら、Org. Lett. 2000(2)1037−1040)。
【化2】
Figure 2005507863
【0009】
触媒を用いたアミノカルボン酸の不斉合成
アシル連鎖移動反応は、安価な反応試薬を使用し、購入可能な出発材料を有用かつ精製が容易な生成物に変換する。このような特性を高エナンチオ選択性と組み合わせることにより、リパーゼおよびエステラーゼなどのような酵素によって触媒されるアシル連鎖移動反応は、不斉合成を行うための非常に有効な方法になり得る。不斉アシル連鎖移動触媒作用の範ちゅうおよび合成における用途をさらに拡大することを目的として、リパーゼ/エステラーゼを模した合成触媒を開発することは、不斉触媒作用に関する概念上および実用上重要である。最近、ラセミアルコールの動力学的分割に使用する数種の効果的な合成触媒が発表されているが、不斉合成においてそれらが非常に有能であるにもかかわらず、低分子触媒によってラセミカルボニル誘導体類を動力学的に分割しようとする努力は報われていない。発明者らはここに、ウレタン保護アミノ酸N−カルボキシアンヒドリド類(UNCA)についての非常に汎用性があり、エナンチオ選択性が高い動力学的分割について記載しており、UNCAは、ペプチド合成などのさらなる合成過程に適した光学活性アミノ酸誘導体類を産生する。
メソアンヒドリド類を脱対称化するための高エナンチオ選択性アルコリシスの発見に触発され、発明者らは、ラセミカルボニル化合物の動力学的分割に特に関心を抱いたが、これは、シンコナアルカロイド触媒アルコリシスを介し、ウレタン保護アミノ酸N−カルボキシアンヒドリド類などのようなラセミカルボニル化合物から、光学活性カーバメート保護アミノ酸誘導体類を生成する過程である(以下のスキーム3)。UNCA 類(2)はラセミアミノ酸類(1)から容易に合成され、長期保存に対して安定である。それらをアルコリシスすることにより、カーバメート保護アミノエステル(3)および環境に優しいCOが生成する。さらに、動力学的分割後、残っているエナンチオマーに富んだUNCA(2a)を加水分解することにより、カーバメート保護アミノ酸(4)に転換することができる(以下のスキーム3)。ブレンステッド塩基性アミン触媒、酸性アミノ酸(4)および中性アミノエステル(3)を含む反応混合物は、簡便な方法によって分離可能であり、化合物3および化合物4、ならびに所望する化学的および光学的純度の回収触媒が得られる。
【化3】
Figure 2005507863
【0010】
ラセミフェニルアラニンから2段階を経て収率72%で得られたラセミN−Cbz−フェニルアラニンNCA(2a)を主要反応パラメータの初期評価におけるモデル基質として使用し、動力学的分割を行うための至適条件を確立した。エーテル中、(DHQD)AQN(10モル%)およびモレキュラーシーブ(4Å)の存在下、室温でメタノール(0.55当量)を用いて行った化合物2aの反応により、所望するメチルエステル(3a)がエナンチオマー過量率(ee)82%、転換率40%で得られたことから、動力学的分割は選択性因子16で進行したことが示唆された(表1の実験番号1)。この有望な結果に続き、発明者らは、低温下で(DHQD)AQN触媒によるアルコリシスを行うことにより、動力学的分割のエナンチオ選択性が飛躍的に向上することを見出した。−60℃においては、動力学的分割のエナンチオ選択性(s=79、表1の実験番号2)は、酵素触媒を用いた効率的な動力学的分割における選択性レベルに匹敵することがわかった。
【表1】
Figure 2005507863
【0011】
多数の天然および修飾シンコナアルカロイド類について、アルコリシスを介して2aを動力学的に分割する反応を媒介する能力をスクリーニングした。結果は表1にまとめている。修飾ビシンコナアルカロイドである(DHQD)AQNは、発明者らが行った触媒スクリーニングにおいて最も有効であり、修飾モノシンコナアルカロイドであるDHQD−PHNも有効性が高い触媒であることがわかった(表1の実験番号3)。しかしながら、特筆すべきことは、天然のシンコナアルカロイドであるキニジンを用いた場合に優れたエナンチオ選択性が得られたことである(表1の実験番号4)。興味深いことに、同一条件下においては、構造的に類似したその他のキラルおよびアキラルアミン類((DHQD)−PHN、(DHQD)−PHAL、DHQD−MEQ、DHQD−CLBおよびキヌクリジンなど)は、ごくわずかな転換(1〜4%)しか起こさなかった。
【0012】
動力学的分割の実際的な特徴については、2aの微量(4.0mmol)分割を行うことによって示した。修飾シンコナアルカロイド触媒による2aのアルコリシスはきれいに進行し、エステル3aおよび酸4aがほぼ定量的収量で単離され、さらに、簡易な抽出法を用いて純粋型の触媒を定量的に回収した(表2)。回収した触媒は、2aの別の微量分割に直接使用することができ、触媒活性および選択性において目立った不具合は観察されなかった(表2)。
【表2】
Figure 2005507863
【0013】
この反応は、広汎用性であることがわかった。多様な種類のUNCA類について、エナンチオ選択性が顕著に高いきれいな動力学的分割を行うことができた(表3)。化合物3aおよび4aの単離に使用した抽出手段と同様な手段に従い、ラセミ性化合物2を動力学的に分割することによって得られた光学活性アミノエステル類3およびアミノ酸類4は、常套的に合計収率90%以上で得られた。アルキル置換UNCA類 およびアリール置換UNCA類は、非常に高いエナンチオ選択性を伴って分割された。基質中にヘテロ原子およびヘテロ環が存在しても、動力学的分割の効率には負の影響を及ぼさなかった。基質が分岐アルキル側鎖を有していても、0℃において、合成上有効なエナンチオ選択性を伴って分割することができた(表3の実験番号8)。さらに、この反応は、保護基の構造変化に対して非常に寛容であるため、CBz−、Alloc−、Boc−、ならびに塩基に弱いFmoc−保護アミノ酸類およびエステル類も高光学純度および高収率で効率的に合成することができた。実験を行ったすべての場合において、(DHQD)AQNを触媒としてラセミ性化合物2を動力学的に分割することにより、(R)−3および(S)−4が得られた(a〜c、e、g〜m)。
【表3】
Figure 2005507863
【0014】
重要なことは、本実験の結果から、光学的に純粋なキラルアミノ酸類を調製するための実用的な方法を発見したことが示唆された。さらに、本方法は、キラルアミノ酸を合成するためのその他の触媒法よりも優れたものであると確信している。コーレイ(Corey), E. J.ら、Tetrahedron Lett.,1998(39)5347−5350;コーレイ(Corey), E. J.ら、J. Am. Chem. Soc.,1997(119)12414−12415;オオイ(Ooi), T.ら、J. Am. Chem. Soc. 2000(122)5228−5229;オオイ(Ooi), T.ら、J. Am. Chem. Soc. 1999(121)6519−6520;オドネル(O'Donnell)、M. J.ら、Tetrahedron Lett. 1998(39)8775−8778;ポーター(Porter), J. R.ら、J. Am. Chem. Soc. 2000(122)2657−2658;クルーガー(Krueger), C. A.ら、J. Am. Chem. Soc. 1999(121)4284−4285;シグマン(Sigman), M. S.ら、J. Am. Chem. Soc. 1998(120)5315−5316;シグマン(Sigman), M. S.ら、J. Am. Chem. Soc. 1998(120)4901−4902;イシュタニ(Ishtani), Hら、Angew. Chem. Int. Ed.,1998(37)3186−3188;コーレイ(Corey), E. J.ら、Org. Lett.,1999(1)157−160;バーク(Burk),M. J.ら、J. Am. Chem. Soc. 1998(120)657−663;フェラリス(Ferraris), D.ら、J. Am. Chem. Soc. 1998(120)4548−4549;ファン(Fang), X.ら、J. Org. Chem. 1999(64)4844−4849を参照。さらに、本方法は、ペプチド合成において一般的に使用される、いわゆるZ基またはCbz基などの基で保護されたアミノ酸を生成する。光学活性アミノ酸の調製用に開発されたその他の触媒反応では、特別な保護基を必要とすることが多く、そのような保護基は、最終的に、Cbzなどのより適切な保護基に転換しなければならない。最後に、不斉触媒(例えば、(DHQD)AQNなど)は、簡便な酸洗浄および抽出によってリサイクル可能である。
【0015】
すなわち、発明者らは、動力学的分割法を介してアミノ酸類を不斉合成するための効率的かつ一般的な非酵素触媒法を初めて開発した。本方法は非常に高いエナンチオ選択性および広い汎用性を有することから、シンコナアルカロイド類を触媒とし、不斉アルコリシスを介してUNCA(2)を動力学的に分割することにより、光学活性アミノ酸誘導体類の調製を行うためのエナンチオ選択性および信頼性が高い触媒法が提供され、このとき、該アミノ酸誘導体類は、さらなる合成過程に直接使用できるように適切に保護されている。反応は、容易に調製可能な基質、安価な反応試薬、市販されており、かつすべてリサイクル可能な触媒、およびクロマトグラフィーを含まない簡便な実験プロトコールを使用する。
【0016】
定義
利便を図るため、請求項、本明細書および実施例において使用している特定の語句についてここにまとめておく。
【0017】
「求核剤」は、当該分野において既知であり、本明細書においては、反応性の電子対を有する化学的部位を意味する。求核剤の例としては、電荷を帯びていない化合物(例えば、水、アミン類、メルカプタン類およびアルコール類など)、および電荷を帯びた部位(例えば、アルコキシド類、チオレート類、カーバニオン類、ならびに多様な有機および無機陰イオン類など)が挙げられる。陰イオン性求核剤の例としては、ヒドロキシド、アジド、シアニド、チオシアナート、アセタート、ホルメートもしくはクロロホルメートならびにビスルファイトなどのような単純陰イオンなどが挙げられる。有機金属反応試薬(例えば、有機銅化合物、有機亜鉛化合物、有機リチウム化合物、Grignard試薬、エノレート類、アセチリド類など)は、適切な反応条件下においては求核剤として適している。基質の還元を所望する場合には、ヒドリドも求核剤として適している。
【0018】
「求電子剤」は、当該分野において既知であり、上に定義した求核剤から電子対を受け取ることができる化学的部位をさす。本発明において有用な求電子剤としては、エポキシド類、アジリジン類、エピスルフィド類、環状スルフェート類、カーボネート類、ラクトン類、ラクタム類などのような環状化合物が挙げられる。非環状求電子剤としては、スルフェート類、スルホネート類(例えば、トシレート類など)、クロリド類、ブロミド類、ヨーダイド類などが挙げられる。
【0019】
本明細書において使用している「求電子原子」、「求電子中心」および「反応中心」とは、求核剤に攻撃され、新しい結合を形成する基質の原子をさす。ほとんど(すべてではない)の場合において、そのような原子は、脱離基が外れる原子である。
【0020】
「電子求引性基」は、当該分野において既知であり、本明細書においては、水素原子と同じ位置において、水素原子よりも自分の方へ電子を引き寄せる作用を有する基を意味する。電子求引性基の例としては、ニトロ、ケトン、アルデヒド、スルホニル、トリフルオロメチル、−CN、クロリドなどが挙げられる。本明細書において使用している「電子供与基」とは、水素原子と同じ位置において、水素原子よりも自分の方へ電子を引き寄せる力が弱い基を意味する。電子供与基の例としては、アミノ、メトキシなどが挙げられる。
【0021】
「ルイス塩基」および「ルイス塩基性」は、当該分野において既知であり、特定の条件下において、電子対を供与することができる化学的部位をさす。
【0022】
「メソ化合物」は、当該分野において既知であり、少なくとも2個のキラル中心を有するが、対称の内部平面または内部点を有するためにアキラルである化合物を意味する。
【0023】
「キラル」とは、鏡像体の相手に重ね合わせることができないという特性を有する分子をさし、また、「アキラル」とは、鏡像体の相手に重ね合わせることができる分子をさす。「プロキラル分子」とは、特定の過程を経ることによってキラル分子に転換し得るアキラル分子である。
【0024】
「ステレオアイソマー(立体異性体)」とは、化学組成は同一だが、空間における原子または基の配置が異なる化合物をさす。特に、「エナンチオマー」とは、互いに重ね合わせることができない鏡像体である化合物の2つのステレオアイソマーをさす。一方、「ジアステレオマー」とは、2個またはそれ以上の不斉中心を有し、互いに鏡像体ではない一対のステレオアイソマー間の関係をさす。
【0025】
さらに、「ステレオ選択的過程」とは、反応生成物の特定のステレオアイソマーを生成する可能性のある他のステレオアイソマーよりも多く生成する過程である。「エナンチオ選択的過程」とは、反応生成物の取り得る2つのエナンチオマーのうちのひとつを多く生成する過程である。生成物中の特定のステレオアイソマーの収率が、キラル触媒不在下において同一反応を行って得られた生成物のステレオアイソマーの収率に比べて、統計的に有意に高い場合に、そのような方法は、「ステレオ選択性に富んだ生成物」(例えば、エナンチオ選択性に富んだ、またはジアステレオ選択性に富んだ、など)を産生するという。例えば、キラル触媒のうちのひとつを用いて触媒したエナンチオ選択的反応によって得られた特定のエナンチオマーに対するe.e.は、キラル触媒を加えなかった反応のe.e.よりも大きい。
【0026】
「レジオアイソマー(位置異性体)」とは、分子組成は同一であるが、原子の結合性が異なっている化合物をさす。従って、「位置選択的過程」とは、特定の位置異性体が他の異性体よりも多く生成する過程であり、例えば、反応によって特定の位置異性体が統計的に有意に多く産生する場合などがある。
【0027】
「反応生成物」とは、求核剤と基質との反応によって得られた化合物を意味する。一般的に、本明細書において使用している「反応生成物」とは、安定で単離可能な化合物であり、不安定な中間体または遷移状態は含まない。
【0028】
「基質」とは、本発明に従って求核剤または環拡張剤と反応し、ステレオジェン中心を有する少なくとも1つの生成物が得られる化合物を意味する。
【0029】
「触媒量」は、当該分野において既知であり、反応物の量に対して当量以下の量であることを意味する。本明細書において使用しているように、触媒量とは
反応物に対して0.0001〜90モル%であり、好ましくは0.001〜50モル%であり、より好ましくは0.01〜10モル%であり、さらに好ましくは、0.1〜5モル%である。
【0030】
以下に詳細に記載しているように、本発明において企図している反応とは、エナンチオ選択性、ジアステレオ選択性、および/または位置選択性の反応を含む。エナンチオ選択性の反応とは、アキラルの反応物をひとつのエナンチオマーに富んだキラル生成物に転換する反応である。一般的に、エナンチオ選択性は、次の式で表される「エナンチオマー過量率(ee)」として定量化される:
化合物Aのエナンチオマー過量率(ee)%=(エナンチオマーAの%)−(エナンチオマーBの%)
ここで、AおよびBは生成したエナンチオマーである。エナンチオ選択性と併せて使用するその他の語句としては、「光学的に純粋」または「光学活性」が挙げられる。エナンチオ選択性反応では、eeが0より大きい生成物が得られる。好ましいエナンチオ選択性反応では、eeが20%以上の生成物が得られ、より好ましくは50%以上であり、さらに好ましくは70%以上であり、最も好ましくは80%以上である。
【0031】
ジアステレオ選択性反応では、キラル反応物(ラセミ性またはエナンチオマー的に純粋な反応物)をひとつのジアステレオマーに富んだ生成物に転換する。キラル反応物がラセミ性である場合には、キラル非ラセミ反応試薬または触媒の存在下において、反応物のひとつのエナンチオマーが他のエナンチオマーよりもゆっくりと反応する。この様式の反応は動力学的分割と呼ばれ、反応速度が異なることによって反応物のエナンチオマーが分割され、エナンチオマーに富んだ生成物とエナンチオマーに富んだ未反応基質とが得られる。通常、動力学的分割は、反応物のひとつのエナンチオマーとのみ反応する反応試薬を十分量用いて行う(すなわち、ラセミ基質1モルに対して1/2モルの反応試薬を使用する)。ラセミ反応物の動力学的分割に使用されている触媒反応の例としては、Sharplessエポキシ化およびNoyori水素化が挙げられる。
【0032】
位置選択性反応とは、ある反応中心において、それと同等ではない別の反応中心においてよりも進行しやすい反応である。例えば、非対称置換エポキシド基質の位置選択性反応は、2個のエポキシド環炭素のうちのひとつにおいて反応が起こりやすい。
【0033】
キラル触媒に関して「非ラセミ性」とは、特定のエナンチオマーを50%以上含む、より好ましくは75%以上含む触媒調製物を意味する。
【0034】
触媒調製物に関して「実質的に非ラセミ性」とは、触媒中の特定のエナンチオマーに対するeeが90%以上、より好ましくは、95%以上である触媒調製物をさす。
【0035】
「アルキル」とは、飽和脂肪族基のラジカルをさし、直鎖アルキル基、分岐鎖アルキル基、シクロアルキル(脂環式)基、アルキル置換シクロアルキル基、およびシクロアルキル置換アルキル基などが挙げられる。好ましい実施態様においては、直鎖または分岐鎖アルキルは、骨格内に30個またはそれ以下の炭素原子を有し(例えば、直鎖についてはC1〜C30、分岐鎖については、C3〜C30など)、より好ましくは、20個またはそれ以下の炭素原子を有する。同様に、好ましいシクロアルキルは、環構造内に4〜10個の炭素原子を有し、より好ましくは、環構造内に5、6または7個の炭素原子を有する。
【0036】
炭素数に関しては、特に明記していない限りは、本明細書に使用している「低級アルキル」とは、上で定義したアルキル基を意味するが、骨格構造内に1〜10個の炭素原子を有し、より好ましくは1〜6個の炭素原子を有する。同様に、「低級アルケニル」および「低級アルキニル」も同様な長さの炭素鎖を有する。
【0037】
「アルケニル」および「アルキニル」とは、上述したアルキルと同等な長さおよび置換の可能性を有する非飽和脂肪族基をさすが、前者は少なくとも1個の炭素−炭素二重結合、後者は少なくとも1個の炭素−炭素三重結合を有する。
【0038】
本明細書に記載しているように、「アミノ」は−NHを意味し;「ニトロ」は−NOを意味し;「ハロゲン」は−F、−Cl、−Brまたは−Iを表し;「チオール」は−SHを意味し;「ヒドロキシル」は−OHを意味し;「スルホニル」は−SO−を意味し;「有機金属」とは、炭素原子に直接結合している金属原子(例えば、水銀、亜鉛、鉛、マグネシウムまたはリチウムなど)またはメタロイド(例えば、シリコン、ヒ素またはセレンなど)をさし、ジフェニルメチルシリル基などがある。
【0039】
一般式として次のように表される:
【化4】
Figure 2005507863
【0040】
ここで、Rは上に定義したとおりであり、R'11は、水素、アルキル、アルケニルまたは−(CH)−Rを表しており、mおよびRは上に定義したとおりである。
【0041】
「アミド」は、アミノ置換カルボニルとして、当該分野において既知であり、次の一般式で表すことができる部位を含む:
【化5】
Figure 2005507863
【0042】
ここで、RおよびR10は上に定義したとおりである。アミドの好ましい実施態様においては、不安定なイミドは含まない。
【0043】
「アルキルチオ」とは、上に定義したアルキル基に硫黄ラジカルが付加したものをさす。好ましい実施態様においては、「アルキルチオ」部位は、−S−アルキル、−S−アルケニル、−S−アルキニルおよび−S−(CH)−Rで表され、ここで、mおよびはR上に定義したとおりである。代表的なアルキルチオ基としては、メチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。
【0044】
「カルボニル」は当該分野において既知であり、そのような部位は次のような一般式で表すことができる:
【化6】
Figure 2005507863
【0045】
ここで、Xは、結合または酸素もしくは硫黄を表し、R11は水素、アルキル、アルケニル、−(CH)−Rまたは薬剤学的に許容される塩を表し、R'11は、水素、アルキル、アルケニルまたは−(CH)−Rを表しており、mおよびRは上に定義したとおりである。Xが酸素であり、R11またはR'11が水素でない場合には、上の式は「エステル」を表す。Xが酸素であり、R11が上に定義したとおりである場合には、そのような基はカルボキシル基を表し、特に、R11が水素である場合には、上の式は「カルボン酸」を表す。Xが酸素であり、R'11が水素である場合には、上の式は「ホルメート」を表す。一般的に、上の式の酸素原子を硫黄原子に置き換えた場合には、その式は「チオカルボニル」基を表す。Xが酸素であり、R11またはR'11が水素でない場合には、上の式は「チオエステル」を表す。Xが酸素であり、R11が水素である場合には、上の式は「チオカルボン酸」を表す。Xが酸素であり、R'11が水素である場合には、上の式は「チオホルメート」を表す。一方、Xが結合であり、R11が水素でない場合には、上の式は「ケトン」基を表す。Xが結合であり、R11が水素である場合には、上の式は「アルデヒド」基を表す。
【0046】
本明細書において使用している「アルコキシル」または「アルコキシ」とは、上に定義したアルキル基に酸素ラジカルが付加したものをさす。代表的なアルコキシル基としては、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、tert−ブトキシなどが挙げられる。「エーテル」は、酸素を介して2個の炭化水素が共有結合したものである。従って、アルキルをエーテルにするようなアルキルの置換基はアルコキシルであり、−O−アルキル、−O−アルケニル、−O−アルキニルおよび−O−(CH)−Rで表され、ここで、mおよびRは上に定義したとおりである。
【0047】
「スルホネート」は当該分野において既知であり、次のような一般式で表される部位を含む:
【化7】
Figure 2005507863
【0048】
ここで、R41は電子対、水素、アルキル、シクロアルキルまたはアリールである。
【0049】
トリフリル、トシル、メシルおよびノナフリルという語句は当該分野において既知であり、それぞれ、トリフルオロメタンスルホニル基、p−トルエンスルホニル基、メタンスルホニル基およびノナフルオロブタンスルホニル基をさす。トリフレート、トシレート、メシレートおよびノナフレートという語句は当該分野において既知であり、それぞれ、トリフルオロメタンスルホネートエステル官能基、p−トルエンスルホネートエステル官能基、メタンスルホネートエステル官能基、およびノナフルオロブタンスルホネートエステル官能基、ならびにそのような基を含む分子をさす。
【0050】
Me、Et、Ph、Tf、Nf、Ts、Msという略語は、それぞれ、メチル、エチル、フェニル、トリフルオロメタンスルホニル、ノナフルオロブタンスルホニル、p−トルエンスルホニルおよびメタンスルホニルを表す。有機化学分野の当業者によって使用される略語のより包括的なリストは、有機化学雑誌(Journal of Organic Chemistry)の各巻の初号に掲載されており、一般的にこのリストは、略号標準表(Standard List of Abbreviations)と表題が付けられた表として示されている。この表に含まれている略語および通常の技術を有する有機化学者が使用するすべての略語を参照として本明細書中に取り入れておく。
【0051】
「スルフェート」は当該分野において既知であり、次のような一般式で表される部位を含む:
【化8】
Figure 2005507863
【0052】
ここで、R41は上に定義したとおりである。
【0053】
「スルホニルアミノ」は当該分野において既知であり、次のような一般式で表される部位を含む:
【化9】
Figure 2005507863
【0054】
「スルファモイル」は当該分野において既知であり、次のような一般式で表される部位を含む:
【化10】
Figure 2005507863
【0055】
本明細書において使用している「スルホニル」とは、次のような一般式で表される部位をさす:
【化11】
Figure 2005507863
【0056】
ここで、R44は、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、複素環、アリールまたはヘテロアリールを含む群から選択される。
【0057】
本明細書において使用している「スルホキシド」とは、次のような一般式で表される部位を含む:
【化12】
Figure 2005507863
【0058】
ここで、R44は、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、複素環、アラルキルまたはアリールを含む群から選択される。
【0059】
「セレノアルキル」とは、置換されたセレノ基が結合しているアルキル基をさす。アルキル基上で置換が行われている「セレノエーテル類」の例としては、−Se−アルキル、−Se−アルケニル、−Se−アルキニルおよび−Se−(CH)−Rで表され、ここで、mおよびRは上に定義したとおりである。
【0060】
アルケニル基およびアルキニル基に同様の置換を行い、例えば、アルケニルアミン類、アルキニルアミン類、アルケニルアミド類、アルキニルアミド類、アルケニルイミン類、アルキニルイミン類、チオアルケニル類、チオアルキニル類、カルボニル置換アルケニル類もしくはアルキニル類、アルケノキシル類、アルキノキシル類、メタロアルケニル類およびメタロアルキニル類などを生成することができる。
【0061】
本明細書において使用している「アリール」とは、0〜4個のヘテロ原子を含む4員、5員、6員および7員の単環芳香族基を含み、例えば、ベンゼン、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、トリアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジンおよびピリミジンなどが挙げられる。環構造内にヘテロ原子を有するアリール基は、「複素環アリール」とも称する。芳香環は、上記のような置換基、例えば、ハロゲン類、アルキル類、アルケニル類、アルキニル類、ヒドロキシル、アミノ、ニトロ、チオール、アミン類、イミン類、アミド類、ホスホネート類、ホスフィン類、カルボニル類、カルボキシル類、シリル類、エーテル類、チオエーテル類、スルホニル類、セレノエーテル類、ケトン類、アルデヒド類、エステル類または−(CH)−R、−CF、−CNなどで環上のひとつまたはそれ以上の位置を置換することができる。
【0062】
「複素環」または「複素環基」とは、1〜4個のヘテロ原子を含む4〜10員環構造、より好ましくは5〜7員環構造をさす。複素環基としては、ピロリジン、オキソラン、チオラン、イミダゾール、オキサゾール、ピペリジン、ピペラジン、モルホリンなどが挙げられる。複素環は、上記のような置換基、例えば、ハロゲン類、アルキル類、アルケニル類、アルキニル類、ヒドロキシル、アミノ、ニトロ、チオール、アミン類、イミン類、アミド類、ホスホネート類、ホスフィン類、カルボニル類、カルボキシル類、シリル類、エーテル類、チオエーテル類、スルホニル類、セレノエーテル類、ケトン類、アルデヒド類、エステル類または−(CH)−R、−CF、−CNなどで環上のひとつまたはそれ以上の位置を置換することができる。
【0063】
「多環」または「多環基」とは、2個またはそれ以上の環(例えば、シクロアルキル類、シクロアルケニル類、シクロアルキニル類、アリール類および/または複素環類など)をさし、2つの隣接する環の間で2個またはそれ以上の炭素が共有されており、例えば、「融合環」を成している。非隣接原子を介して結合している環は、「架橋」環と称される。多環を構成している各環は、上記のような置換基、例えば、ハロゲン類、アルキル類、アルケニル類、アルキニル類、ヒドロキシル、アミノ、ニトロ、チオール、アミン類、イミン類、アミド類、ホスホネート類、ホスフィン類、カルボニル類、カルボキシル類、シリル類、エーテル類、チオエーテル類、スルホニル類、セレノエーテル類、ケトン類、アルデヒド類、エステル類または−(CH)−R、−CF、−CNなどで置換することができる。
【0064】
本明細書において使用している「ヘテロ原子」とは、炭素または水素以外の任意の原子を意味する。好ましいヘテロ原子は、窒素、酸素、硫黄、リンおよびセレンである。
【0065】
本発明の実施においては、化学元素は、「化学および物理学のハンドブック(Handbook of Chemistry and Physics)」第67版(1986〜87年)の表紙裏に掲載されている周期律表(Periodic Table of Elements)CAS版に従って定義している。
【0066】
オルト、メタ、パラという語句は、それぞれ、ベンゼンの1,2−ジ置換、1,3−ジ置換および1,4−ジ置換をさす。例えば、1,2−ジメチルベンゼンとオルト−ジメチルベンゼンとは同義である。
【0067】
トリフリル、トシル、メシルおよびノナフリルという語句は当該分野において既知であり、それぞれ、トリフルオロメタンスルホニル基、p−トルエンスルホニル基、メタンスルホニル基およびノナフルオロブタンスルホニル基をさす。トリフレート、トシレート、メシレートおよびノナフレートという語句は当該分野において既知であり、それぞれ、トリフルオロメタンスルホネートエステル官能基、p−トルエンスルホネートエステル官能基、メタンスルホネートエステル官能基、およびノナフルオロブタンスルホネートエステル官能基、ならびにそのような基を含む分子をさす。
【0068】
Me、Et、Ph、Tf、Nf、Ts、Msという略語は、それぞれ、メチル、エチル、フェニル、トリフルオロメタンスルホニル、ノナフルオロブタンスルホニル、p−トルエンスルホニルおよびメタンスルホニルを表す。有機化学分野の当業者によって使用される略語のより包括的なリストは、有機化学雑誌(Journal of Organic Chemistry)の各巻の初号に掲載されており、一般的にこのリストは、略号標準表(Standard List of Abbreviations)と表題が付けられた表として表されている。この表に含まれている略語および通常の技術を有する有機化学者が使用するすべての略語を参照として本明細書中に取り入れておく。
【0069】
本明細書において使用している「保護基」という語句は、反応性の官能基を所望しない化学的変換から保護する一時的な置換基を意味する。そのような保護基の例としては、カルボン酸類のエステル類、アルコール類のシリルエーテル類ならびに、アルデヒド類およびケトン類のアセタール類およびケタール類などが挙げられる。保護基化学の分野については総説にまとめられている(グリーン(Greene), T. W.、ヴッツ(Wuts), P. G. M.、「有機合成における保護基(Protective Group in Organic Chemistry)」第2版、ウィレー(Wiley)社、ニューヨーク、1991年)。
【0070】
本明細書において使用している「置換された」という語句は、有機化合物の許容されるすべての置換基を含む。広義においては、許容される置換基としては、有機化合物の非環式および環式置換基、分岐および非分岐置換基、炭素環式および複素環式置換基、芳香族および非芳香族置換基が挙げられる。置換基の例としては、例えば、上述のものなどが挙げられる。許容される置換基としては、適切な有機化合物に対して1個またはそれ以上、ならびに、同一または異なる基を用いることができる。本発明の目的を遂行するためには、窒素などのヘテロ原子は、水素置換基および/または、本明細書に記載され、ヘテロ原子の原子価を満たす有機化合物のうちの許容される任意の置換基を有する場合がある。本発明は、如何なる場合においても、有機化合物の許容される置換基によって制限されることはない。
【0071】
本発明において使用した触媒
本方法において使用した触媒は、非ラセミキラル三級アミン類、ホスフィン類およびアルシン類であり、これらは不斉環境を提供し、基質混合物中の2つのエナンチオマー間またはジアステレオマー間に差異を起こさせる、すなわち、キラル非ラセミ触媒は、基質混合物中のひとつのエナンチオマーまたはジアステレオマーと積極的に反応する。好ましい実施態様においては、本方法において使用した触媒は、非ラセミキラル三級アミン類、例えば、シンコナアルカロイド類である。一般的には、本発明の方法に対して有用な触媒は、多数の特徴によって特性付けられる。例えば、好ましい実施態様においては、触媒は、三級アミン部位を含む不斉二環または多環骨格を有しており、該三級アミン部位がアミンの窒素の近隣に強固または準強固な環境を提供している。骨格内に存在する1個またはそれ以上の不斉中心の近隣に存在するアミン窒素上に構造的な強さが課せられていることを介して、この特徴が、変換過程全体に対し、対応するジアステレオマー遷移状態のエネルギーの有意差を創出することに寄与している。さらに、三級アミン上の置換基を選択することにより、触媒の反応性を変化させることもでき、一般的に、かさ高い置換基は触媒の回転数を上げることがわかっている。
【0072】
上述した各実施態様に対する好ましい実施態様により、分子量が2000g/mol以下、好ましくは1000g/mol以下、より好ましくは500g/mol以下の触媒が提供された。さらに、触媒上の置換基は、特定の溶媒系における触媒の溶解性に影響を与えるように選択することができる。図2および3は、本発明の方法において使用した三級アミン触媒の好ましい実施態様を示したものである。
【0073】
上に端的に記載したように、触媒置換基の選択は、触媒の電気的特性に影響を与えることもできる。電子に富む(電子供与)部位(例えば、アルコキシまたはアミノ基など)で触媒を置換することにより、三級アミン窒素における触媒の電子密度が上昇し、より強力なBronstedおよび/またはLewis塩基になる。逆に、電子欠乏性部位(例えば、クロロまたはトリフルオロメチル基など)で触媒を置換することにより、三級アミン窒素における触媒の電子密度が低下し、弱いBronstedおよび/またはLewis塩基になる。この考察をまとめると、三級アミン窒素の電子密度が窒素のLewis塩基性および求核性に影響を及ぼすことから、触媒の電子密度が重要である。従って、適切な置換基を選択することにより、反応の速度および立体選択性の「調整」が可能になる。
【0074】
本発明の方法−触媒反応
ひとつの側面から見ると、本発明は、基質のラセミまたはジアステレオ混合物を動力学的に分割する方法を提供し、生成物もしくは未反応基質またはそれらの両方から、ひとつのエナンチオマーまたはジアステレオマーが得られる。本方法において重要な要素は、非ラセミキラル三級アミンを含有する触媒、キラル基質のラセミまたはジアステレオ混合物(例えば、環式カーボネートまたは環式カーバメートなど)、ならびに求核剤(例えば、アルコールまたはチオールなど)である。本発明の長所は、基質のラセミまたはジアステレオ混合物からエナンチオマーに富んだまたはジアステレオマーに富んだ基質、生成物またはそれらの両方が得られることである。
【0075】
ある実施態様においては、本発明の方法により、基質のラセミまたはジアステレオ混合物を動的動力学的に分割することができ、すなわち、分割段階前の反応条件下において、エナンチオマーまたはジアステレオマーをin situで平衡化に達していることにより、はじめの混合物中に存在するエナンチオマーまたはジアステレオマーの量よりも多量のエナンチオマーまたはジアステレオマーが得られる動力学的分割を行うことができる。動的動力学的分割の長所は、所望しないエナンチオマーまたはジアステレオマーが存在することに伴う収量ロスを実質的に削減するまたは排除することができることである。本発明の好ましい実施態様は、アミノ、ヒドロキシおよびチオカルボン酸の誘導体類のラセミおよびジアステレオ混合物を動力学的に分割するための方法に関する。
【0076】
一般的に、本発明は、立体選択的な開環過程を特徴とするが、この過程は、求核剤(例えば、アルコール、チオールまたはアミンなど)、キラル環式基質(例えば、ヘテロ原子置換カルボン酸から調製されるものなど)のラセミまたはジアステレオ混合物、および触媒量の非ラセミキラル三級アミン含有触媒を混合することを含む。環式基質は、前駆体またはヘテロ原子置換カルボン酸のカルボキシレート炭素を有しており、該カルボキシレート炭素は、三級アミン含有触媒および求核剤による協同攻撃を受けやすい。混合状態は、キラル三級アミン含有触媒が基質のラセミまたはジアステレオ混合物の動力学的分割を触媒するのに適した条件下においては維持されている。本方法は、動的動力学的分割に応用することもでき、例えば、触媒が該カルボキシレート炭素を攻撃する前に、基質のエナンチオマーをin situで平衡化することにより、ラセミ基質を動力学的に分割することによって得られるエナンチオマー的に純粋な生成物の収量が50%を超える。動的動力学的分割法が好ましい。
【0077】
非動的動力学的分割法では、ラセミ基質に対して適用した場合には、ひとつのエナンチオマーは未反応基質として回収され、他方のエナンチオマーは所望する生成物に変換される。通常の技術を有する当業者にとっては、動力学的分割によって得られる所望する生成物は、反応するエナンチオマーもしくはジアステレオマー、反応しないエナンチオマーもしくはジアステレオマー、またはそれらの両方であることは、当然自明である。本発明のひとつの顕著な長所は、出発材料として、高価でエナンチオマー的もしくはジアステレオマー的に純粋な化合物ではなく、安価なラセミまたはジアステレオ混合物を用いることができることである。
【0078】
本発明の過程は、非常に高い立体選択性(例えば、エナンチオ選択性またはジアステレオ選択性など)を伴う光学活性生成物を提供できることである。本発明の動力学的分割の好ましい実施態様においては、未反応基質もしくは生成物または両者のエナンチオマー過量率は、好ましくは50%以上、より好ましくは75%以上、最も好ましくは90%以上である。本発明の過程は、商業ベースでの実施に適した反応条件下においても実施可能であり、一般的に大量操作に適した反応速度で進行させることができる。
【0079】
さらに、本発明の動力学的分割法によって調製可能なキラル生成物は、さらなる反応に供することにより、所望するそれらの誘導体を得ることができる。そのような許容される誘導体化反応は、当該分野において既知の従来法に従って行うことができる。例えば、可能な誘導体化反応としては、エステル化、アミド類のN−アルキル化などが挙げられる。特に本発明は、薬剤(例えば、心血管薬、非ステロイド性抗炎症薬、中枢神経系薬物および抗ヒスタミン剤など)の調製もしくは開発、またはそれらの両者に有用な最終生成物および合成中間体の調製を包含する。
【0080】
ある実施態様においては、本発明は、キラル基質のラセミまたはジアステレオ混合物を動力学的に分割する方法に関し、そのような方法は、キラル非ラセミ触媒の存在下、キラル基質のラセミまたはジアステレオ混合物を求核剤と混合し、ここで、該キラル非ラセミ触媒は、求核剤がキラル基質に付加してキラル生成物を生成する、もしくは未反応キラル基質が得られる、あるいは、ひとつのエナンチオマーもしくはジアステレオマーに富んだ生成物または未反応キラル基質が得られる反応を触媒する。
【0081】
ある実施態様においては、本発明は、動力学的分割を行う上述の方法に関し、このとき、該動力学的分割は動的である。
【0082】
ある実施態様においては、本発明は、動力学的分割を行う上述の方法に関し、このとき、前記求核剤はアルコール、アミンまたはチオールである。
【0083】
ある実施態様においては、本発明は、動力学的分割を行う上述の方法に関し、このとき、前記キラル非ラセミ触媒は三級アミン、ホスフィンまたはアルシンである。
【0084】
ある実施態様においては、本発明は、動力学的分割を行う上述の方法に関し、このとき、前記キラル非ラセミ触媒は三級アミンである。
【0085】
ある実施態様においては、本発明は、動力学的分割を行う上述の方法に関し、このとき、前記キラル非ラセミ触媒はシンコナアルカロイドである。
【0086】
ある実施態様においては、本発明は、動力学的分割を行う上述の方法に関し、このとき、前記キラル非ラセミ触媒は、キニジン、(DHQ)PHAL、(DHQD)PHAL、(DHQ)PYR、(DHQD)PYR、(DHQ)AQN、(DHQD)AQN、DHQ−CLB、DHQD−CLB、DHQ−MEQ、DHQD−MEQ,DHQ−AQN、DHQD−AQN、DHQ−PHNまたはDHQD−PHNである。
【0087】
ある実施態様においては、本発明は、動力学的分割を行う上述の方法に関し、このとき、前記基質は1個の不斉炭素を有する。
【0088】
ある実施態様においては、本発明は、動力学的分割を行う上述の方法に関し、このとき、前記求核剤は、アルコール、アミンまたはチオールであり;前記キラル非ラセミ触媒は三級アミン、ホスフィンまたはアルシンであり;ならびに、前記基質は1個の不斉炭素を有する。
【0089】
ある実施態様においては、本発明は、動力学的分割を行う上述の方法に関し、このとき、前記求核剤は、アルコール、アミンまたはチオールであり;前記キラル非ラセミ触媒は三級アミンであり;ならびに、前記基質は1個の不斉炭素を有する。
【0090】
ある実施態様においては、本発明は、動力学的分割を行う上述の方法に関し、このとき、前記求核剤は、アルコール、アミンまたはチオールであり;前記キラル非ラセミ触媒はシンコナアルカロイドであり;ならびに、前記基質は1個の不斉炭素を有する。
ある実施態様においては、本発明は、動力学的分割を行う上述の方法に関し、このとき、前記求核剤は、アルコール、アミンまたはチオールであり;前記キラル非ラセミ触媒はキニジン、(DHQ)PHAL、(DHQD)PHAL、(DHQ)PYR、(DHQD)PYR、(DHQ)AQN、(DHQD)AQN、DHQ−CLB、DHQD−CLB、DHQ−MEQ、DHQD−MEQ,DHQ−AQN、DHQD−AQN、DHQ−PHNまたはDHQD−PHNであり;ならびに、前記基質は1個の不斉炭素を有する。
【0091】
ある実施態様においては、本発明は、動力学的分割を行う上述の方法に関し、このとき、生成物または未反応基質のエナンチオマー過量率またはジアステレオマー過量率は約50%以上である。
【0092】
ある実施態様においては、本発明は、動力学的分割を行う上述の方法に関し、このとき、生成物または未反応基質のエナンチオマー過量率またはジアステレオマー過量率は約70%以上である。
【0093】
ある実施態様においては、本発明は、動力学的分割を行う上述の方法に関し、このとき、生成物または未反応基質のエナンチオマー過量率またはジアステレオマー過量率は約90%以上である。
【0094】
ある実施態様においては、本発明は、以下のスキーム1で表される動力学的分割法に関する:
【化13】
Figure 2005507863
【0095】
ここで、Xは、NR'、OまたはSを表し;
Yは、それぞれ別異にOまたはSを表し;
Zは、NR'、OまたはSを表し;
Rは、それぞれ別異に、水素、または随意に置換されたアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキルまたはヘテロアラルキルを表し;
R'は、それぞれ別異に、R、ホルミル、アシル、スルホニル、−CORまたは−C(O)NRを表し;
基質および生成物はキラルであり;
NuHは、水、アルコール、チオール、アミン、ケトエステル、マロネート、またはそれらの任意のものからなるコンジュゲート塩基を表し;
キラル非ラセミ触媒は、キラル非ラセミ三級アミン、ホスフィンまたはアルシンであり;
nは1または2であり;さらに、
上記の方法が完了したとき、または中断したときには、未反応基質のエナンチオマー過量率もしくはジアステレオマー過量率は、動力学的分割前の基質のそれらよりも大きく、生成物のエナンチオマー過量率もしくはジアステレオマー過量率は0より大きい、または両方とも0より大きい。
【0096】
ある実施態様においては、本発明の動力学的分割法は化13および付随する定義によって表され、このとき、XはOである。
【0097】
ある実施態様においては、本発明の動力学的分割法は化13および付随する定義によって表され、このとき、YはOである。
【0098】
ある実施態様においては、本発明の動力学的分割法は化13および付随する定義によって表され、このとき、NuHはアルコール、チオールまたはアミンを表す。
【0099】
ある実施態様においては、本発明の動力学的分割法は化13および付随する定義によって表され、このとき、NuHはアルコールを表す。
【0100】
ある実施態様においては、本発明の動力学的分割法は化13および付随する定義によって表され、このとき、前記キラル非ラセミ触媒はキラル非ラセミ三級アミンである。
【0101】
ある実施態様においては、本発明の動力学的分割法は化13および付随する定義によって表され、このとき、前記キラル非ラセミ触媒はシンコナアルカロイドである。
【0102】
ある実施態様においては、本発明の動力学的分割法は化13および付随する定義によって表され、このとき、前記キラル非ラセミ触媒は、キニジン、(DHQ)PHAL、(DHQD)PHAL、(DHQ)PYR、(DHQD)PYR、(DHQ)AQN、(DHQD)AQN、DHQ−CLB、DHQD−CLB、DHQ−MEQ、DHQD−MEQ,DHQ−AQN、DHQD−AQN、DHQ−PHNまたはDHQD−PHNである。
【0103】
ある実施態様においては、本発明の動力学的分割法は化13および付随する定義によって表され、このとき、XはOであり、YはOである。
【0104】
ある実施態様においては、本発明の動力学的分割法は化13および付随する定義によって表され、このとき、XはOであり、YはOであり、さらに、NuHはアルコール、チオールまたはアミンを表す。
【0105】
ある実施態様においては、本発明の動力学的分割法は化13および付随する定義によって表され、このとき、XはOであり、YはOであり、さらに、NuHはアルコールを表す。
【0106】
ある実施態様においては、本発明の動力学的分割法は化13および付随する定義によって表され、このとき、XはOであり、YはOであり、さらに、該キラル非ラセミ触媒はキラル非ラセミ三級アミンである。
【0107】
ある実施態様においては、本発明の動力学的分割法は化13および付随する定義によって表され、このとき、XはOであり、YはOであり、
さらに、該キラル非ラセミ触媒はシンコナアルカロイドである。
【0108】
ある実施態様においては、本発明の動力学的分割法は化13および付随する定義によって表され、このとき、XはOであり、YはOであり、さらに、該キラル非ラセミ触媒は、キニジン、(DHQ)PHAL、(DHQD)PHAL、(DHQ)PYR、(DHQD)PYR、(DHQ)AQN、(DHQD)AQN、DHQ−CLB、DHQD−CLB、DHQ−MEQ、DHQD−MEQ,DHQ−AQN、DHQD−AQN、DHQ−PHNまたはDHQD−PHNである。
【0109】
ある実施態様においては、本発明の動力学的分割法は化13および付随する定義によって表され、このとき、XはOであり、YはOであり、NuHはアルコールを表し、さらに、該キラル非ラセミ触媒はキラル非ラセミ三級アミンである。
【0110】
ある実施態様においては、本発明の動力学的分割法は化13および付随する定義によって表され、このとき、XはOであり、YはOであり、NuHはアルコールを表し、さらに、該キラル非ラセミ触媒はシンコナアルカロイドである。
【0111】
ある実施態様においては、本発明の動力学的分割法は化13および付随する定義によって表され、このとき、XはOであり、YはOであり、NuHはアルコールを表し、さらに、該キラル非ラセミ触媒は、キニジン、(DHQ)PHAL、(DHQD)PHAL、(DHQ)PYR、(DHQD)PYR、(DHQ)AQN、(DHQD)AQN、DHQ−CLB、DHQD−CLB、DHQ−MEQ、DHQD−MEQ,DHQ−AQN、DHQD−AQN、DHQ−PHNまたはDHQD−PHNである。
【0112】
ある実施態様においては、本発明の動力学的分割法は化13および付随する定義によって表され、このとき、生成物または未反応基質のエナンチオマー過量率またはジアステレオマー過量率は約50%以上である。
【0113】
ある実施態様においては、本発明の動力学的分割法は化13および付随する定義によって表され、このとき、生成物または未反応基質のエナンチオマー過量率またはジアステレオマー過量率は約70%以上である。
【0114】
ある実施態様においては、本発明の動力学的分割法は化13および付随する定義によって表され、このとき、生成物または未反応基質のエナンチオマー過量率またはジアステレオマー過量率は約90%以上である。
【0115】
ある実施態様においては、本発明は、以下のスキーム2で表される動力学的分割法に関する:
【化14】
Figure 2005507863
【0116】
ここで、XはNR'、OまたはSを表し;
ZはNR'、OまたはSを表し;
RおよびR2は、それぞれ別異に、水素、または随意に置換されたアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、またはヘテロアラルキルを表し、RとR2とは同一ではなく;
R'は、それぞれ別異に、R、ホルミル、アシル、スルホニル、−CORまたは−C(O)NRを表し;
キラル非ラセミ触媒は、キラル非ラセミ三級アミン、ホスフィンまたはアルシンであり;さらに、
上記の方法が終了したとき、または中断したときには、未反応基質のエナンチオマー過量率もしくはジアステレオマー過量率は、動力学的分割前の基質のそれらよりも大きく、生成物のエナンチオマー過量率もしくはジアステレオマー過量率は0より大きい、または両方とも0より大きい。
【0117】
ある実施態様においては、本発明の動力学的分割法は化14および付随する定義によって表され、このとき、XはOを表す。
【0118】
ある実施態様においては、本発明の動力学的分割法は化14および付随する定義によって表され、このとき、ZはNR'またはOを表す。
【0119】
ある実施態様においては、本発明の動力学的分割法は化14および付随する定義によって表され、このとき、前記キラル非ラセミ触媒はキラル非ラセミ三級アミンである。
【0120】
ある実施態様においては、本発明の動力学的分割法は化14および付随する定義によって表され、このとき、前記キラル非ラセミ触媒はシンコナアルカロイドである。
【0121】
ある実施態様においては、本発明の動力学的分割法は化14および付随する定義によって表され、このとき、前記キラル非ラセミ触媒は、キニジン、(DHQ)PHAL、(DHQD)PHAL、(DHQ)PYR、(DHQD)PYR、(DHQ)AQN、(DHQD)AQN、DHQ−CLB、DHQD−CLB、DHQ−MEQ、DHQD−MEQ,DHQ−AQN、DHQD−AQN、DHQ−PHNまたはDHQD−PHNである。
【0122】
ある実施態様においては、本発明の動力学的分割法は化14および付随する定義によって表され、このとき、XはOを表し、ZはNR'またはOを表す。
【0123】
ある実施態様においては、本発明の動力学的分割法は化14および付随する定義によって表され、このとき、XはOを表し、ZはNR'またはOを表し、さらに、該キラル非ラセミ触媒はキラル非ラセミ三級アミンである。
【0124】
ある実施態様においては、本発明の動力学的分割法は化14および付随する定義によって表され、このとき、XはOを表し、ZはNR'またはOを表し、さらに、該キラル非ラセミ触媒はシンコナアルカロイドである。
【0125】
ある実施態様においては、本発明の動力学的分割法は化14および付随する定義によって表され、このとき、XはOを表し、ZはNR'またはOを表し、さらに、該キラル非ラセミ触媒は、キニジン、(DHQ)PHAL、(DHQD)PHAL、(DHQ)PYR、(DHQD)PYR、(DHQ)AQN、(DHQD)AQN、DHQ−CLB、DHQD−CLB、DHQ−MEQ、DHQD−MEQ,DHQ−AQN、DHQD−AQN、DHQ−PHNまたはDHQD−PHNである。
【0126】
ある実施態様においては、本発明の動力学的分割法は化14および付随する定義によって表され、このとき、生成物または未反応基質のエナンチオマー過量率またはジアステレオマー過量率は約50%以上である。
【0127】
ある実施態様においては、本発明の動力学的分割法は化14および付随する定義によって表され、このとき、生成物または未反応基質のエナンチオマー過量率またはジアステレオマー過量率は約70%以上である。
【0128】
ある実施態様においては、本発明の動力学的分割法は化14および付随する定義によって表され、このとき、生成物または未反応基質のエナンチオマー過量率またはジアステレオマー過量率は約90%以上である。
求核剤
本発明において有用な求核剤は、当業者であれば、いくつかの基準に従って判断することができる。一般的に、適切な求核剤は次の特性のうちのひとつまたはそれ以上を有する:1)所望する求電子部位において基質と反応することができる;2)基質との反応によって有用な生成物を得ることができる;3)所望する求電子部位以外の官能基においては基質と反応しない;4)キラル触媒によって触媒されるという機構を通して少なくとも部分的に基質と反応する;5)所望する様式で基質と反応した後、さらに不要な反応は実質的に進行しない;6)触媒とは実質的に反応しない、または触媒を実質的に分解しない。所望しない副反応(例えば、触媒の分解など)が起こる可能性があるとしても、そのような反応の速度は、適切な反応物および条件を選択することにより、所望する反応よりも遅くすることができることは明らかである。
【0129】
上記の基準を満たす求核剤を各基質に合わせて選択することができ、それらは、基質の構造および所望する生成物によって異なる。特定の変換を行うためには、繰り返し実験を行って好ましい求核剤を決定する必要がある。例えば、窒素含有求核剤が好ましい場合には、アンモニア、フタルイミド、ヒドラジン、アミンなどから選択する。同様に、水、ヒドロキシド、アルコール類、アルコキシド類、シロキサン類、カルボキシレート類またはパーオキシド類などのような酸素求核剤を用いて酸素を導入することができ、また、メルカプタン類、チオレート類、ビスルファイト、チオシアナートなどを用いて硫黄含有部位を導入することができる。さらなる求核剤については、通常の技術を有する当業者には自明である。
【0130】
陰イオン性求核剤に対しては、従来から使用されている多様な陽イオンのうちの任意のものを対イオンとして用いることができ、例えば、アルカリ金属陽イオン類、アルカリ土類陽イオン類、およびアンモニウム陽イオン類などが挙げられる。
【0131】
ある実施態様においては、求核剤が基質の一部であるため、分子内反応を起こす場合がある。
【0132】
基質
上述したように、本発明の方法においては、多様な種類のラセミおよびジアステレオ混合物を基質として用いることができる。基質の選択は、使用する求核剤および所望する生成物などのような因子によって異なり、適切な基質は当業者においては自明である。基質は、本発明の動力学的分割を干渉するようないかなる機能も有しないことが好ましいのは当然である。一般的に、適切な基質は、触媒の補助の下に求核剤が攻撃することができる反応性の求電子部位を少なくともひとつ有する。触媒作用による、ラセミ混合物のひとつのエナンチオマー、またはジアステレオ混合物のひとつのジアステレオマーの立体選択的変換は、本発明の動力学的分割に基づくものである。
【0133】
本発明の方法における使用が企図される基質の大多数は、原子数が3〜7個である少なくとも1個の環構造を有する。小さな環は、緊張していることが多いが、反応性は高められている。しかしながら、いくつかの実施態様においては、環状基質は緊張しておらず、大きな電子求引性環を有する場合がある。
【0134】
本方法における適切な環状基質の例としては、以下に示す化合物1〜6などが挙げられる。ある実施態様においては、基質はラセミ混合物である。ある実施態様においては、基質はジアステレオマーの混合物である。
【化15】
Figure 2005507863
【0135】
反応条件
本発明の不斉反応は、広範な反応条件下において実施することができるが、本明細書中に引用している溶媒および温度範囲は、本発明の反応過程の好ましい様式に対応させるためのものであり、制限するためのものではないことは明らかである。
【0136】
一般的に、反応は、基質、触媒または生成物に逆効果を及ぼさないような緩和な条件を用いて行うことが望ましい。例えば、反応温度は反応速度に影響を及ぼし、同時に、反応物、生成物および触媒の安定性にも影響を及ぼす。通常、反応は、−78℃〜100℃の範囲で行うが、より好ましくは−20℃〜50℃の範囲で、さらに好ましくは−20℃〜25℃の範囲で行う。
【0137】
一般的に、本発明の不斉合成反応は、液体反応媒体中で行う。求核剤が液体の場合になどには、溶媒を加えずに反応を行うことができる。別の方法としては、不活性溶媒内、好ましくは、触媒を含む反応材料のうちのひとつが実質的に可溶性である溶媒内で反応を行うことができる。適切な溶媒としては、エーテル類(例えば、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ジグリム、t−ブチルメチルエーテルおよびテトラヒドロフランなど);ハロゲン化溶媒(例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタンおよびクロロベンゼンなど);脂肪族または芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、トルエン、ヘキサンおよびペンタンなど);エステル類およびケトン類(例えば、酢酸エチル、アセトンおよび2−ブタノンなど);極性非プロトン性溶媒(例えば、アセトニトリル、ジメチルスルホキシドおよびジメチルホルムアミドなど);または、2つもしくはそれ以上の溶媒の混合物などが挙げられる。さらに、ある実施態様においては、反応条件下において基質に対して不活性ではない溶媒を使用することが有利であり、例えば、所望する求核剤がエタノールである場合に、溶媒としてエタノールを用いることなどが挙げられる。求核剤として水およびヒドロキシドが好ましくないような実施態様においては、無水条件下で反応を行うことができる。ある実施態様においては、エーテル類似の溶媒が好ましい。求核剤として水およびヒドロキシドが好ましいような実施態様においては、適量の水および/またはヒドロキシドを含む溶媒混合物中で反応を行う。
【0138】
本発明は、溶媒の二相性混合物、エマルションもしくは懸濁液、または脂質小胞もしくは二重層中で行う反応も包含する。ある実施態様においては、固相中で触媒反応を行うことが好ましい場合がある。
【0139】
いくつかの好ましい実施態様においては、反応性気体の雰囲気下で反応を行うことができる。例えば、シアニドを求核剤として使用する動力学的分割は、HCNガスの雰囲気下で行うことができる。反応性気体の分圧は、0.1〜1000atmであり、より好ましくは0.5〜100atmであり、最も好ましくは約1〜10atmである。
【0140】
ある実施態様においては、窒素またはアルゴンなどの不活性気体の雰囲気下で反応を行うことが好ましい。
【0141】
本発明の不斉合成法は、連続的、準連続的、またはバッチ様式で行うことができ、さらに、所望する場合には、液体のリサイクル操作、および/または気体のリサイクル操作を含む。本発明の過程は、バッチ様式で行うことが好ましい。同様に、反応材料、触媒および溶媒の添加法または添加順序は重要ではなく、従来から行われている任意の様式で行うことができる。
【0142】
反応は、単一の反応帯中または複数の反応帯中で、連続もしくは平行して行うことができ、あるいは、長い環状帯またはそのような一連の反応帯中で、バッチ様式または連続的に行うことができる。反応帯の作成に使用した材料は、反応中、出発材料に対して不活性でなくてはならず、装置の構成は、反応温度および圧力に絶え得るものでなければならない。反応過程中にバッチ様式または連続的に反応帯に添加する出発材料または原料の添加法および/または量の調整法は、出発材料の所望するモル比を特に維持する必要がある過程において、適宜使用することができる。反応段階は、出発材料のうちのひとつを他の材料と比較して増量添加することによって遂行される。また、反応段階は、出発材料を光学活性金属リガンドコンプレックス触媒に同時添加することによって組み合わせることができる。完全な転換を所望しない、または完全な反応が得られない場合は、出発材料を生成物から分離し、反応帯に再び戻すことができる。
【0143】
本過程は、ガラス張り、ステンレススチール製、または同様な反応装置内で行うことができる。不要な温度変化を制御するため、または反応温度の「放出」の可能性を阻止することを目的として、反応帯には1個またはそれ以上の内部および/または外部熱交換器を装着することができる。
【0144】
さらに、キラル触媒は、ポリマーもしくはその他の不溶性マトリックス内に固定または組み込むことができ、例えば、触媒内の1個またはそれ以上の置換基を介してポリマーまたは固体支持体に共有結合させることなどがある。固定化された触媒は、ろ過または遠心分離などにより、反応後容易に回収できる。
【実施例】
【0145】
本発明を一般的に説明してきたが、以下の実施例を参照することにより、より十分に理解することができるはずである。これらの実施例は、本発明の特定の側面および実施態様について例示することのみを目的とするためのものであり、本発明を制限するためのもではない。
【0146】
実施例1
( DHQD ) AQNを用いた5−フェニル−1,3−ジオキソラン−2,4−ジオンの動的動力学的分割
【化16】
Figure 2005507863
【0147】
5−フェニル−1,3−ジオキソラン−2,4−ジオン(17.8mg、0.1mmol)および(DHQD)AQN(18.2mg、0.02mmol)の無水ジエチルエーテル(4ml)溶液を−78℃において無水EtOH(9μl)で処理した。得られた反応混合物を−78℃で8時間撹拌した。次に、HCl(0.2N、5ml)を加えて反応を停止した。有機層を分離し、水層をジエチルエーテル(2×2.0ml)で抽出した。合わせた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮した。カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/酢酸エチル=2:1)で残渣を精製し、無色油状のマンデル酸エチルエステルを得た(12mg、収率67%)。キラルHPLC分析によって測定したマンデル酸エチルエステルのエナンチオマー過量率は97%であった。
【0148】
実施例2
キニジンを用いた5−フェニル−1,3−ジオキソラン−2,4−ジオンの動的動力学的分割
【化17】
Figure 2005507863
【0149】
10mgの乾燥モレキュラーシーブ(4Å)を加えた5−フェニル−1,3−ジオキソラン−2,4−ジオン(17.8mg、0.1mmol)およびキニジン(6.5mg、0.02mmol、純度97%)の溶液に、−78℃において無水EtOH(9μl)を一度に添加して処理し、反応混合物を−78℃で8時間撹拌した。大過量のメタノールを加えて反応を停止した。GCによって測定した転換率は52%であった。キラルHPLC分析によって測定した生成物のエナンチオマー過量率は85%であった。
【0150】
実施例3
( DHQD ) AQNを用いたラセミ5−ベンジル−1−アザ−3−オキソラン−2,4−ジオンの動力学的分割
【化18】
Figure 2005507863
【0151】
−60℃において、ラセミフェニルアラニンUNCA(15.3mg、0.047mmol)およ(DHQD)AQN(7.7mg、0.009mmol)の乾燥ジエチルエーテル(3.5ml)溶液にメタノール(0.25ml)を一度に添加した。得られた透明な溶液を−60℃で5.5時間撹拌した。HCl(2N、2.0ml)を加えて反応を停止した。有機層を分離し、水層をジエチルエーテル(2×1.0ml)で抽出した。合わせた有機層をHCl(2N、2×1.0ml)で洗浄し、次に、NaOH(2N、1×3.0ml))で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮することによって無色油状のアミノエステルを得た(7.0mg、収率47%)。塩基性の水層は、濃HClを用いてpH を3未満に調整し、エーテル(2×10ml)で抽出した。合わせた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮することにより、アミノ酸を得た(5.2mg、収率37%)。HPLCによって測定したアミノエステルおよびアミノ酸のエナンチオマー過量率は、それぞれ、93%および94%であった。
【0152】
実施例4
キニジンを用いたラセミ5−ベンジル−1−アザ−3−オキソラン−2,4−ジオンの動力学的分割
【化19】
Figure 2005507863
【0153】
UNCA(Phe−Z)(16.3mg、0.05mmol)、(+)−キニジン(3.2mg、0.01mmol)および4Åのモレキュラーシーブ(10mg)の混合物中に無水エーテル(3.5ml)を添加し、得られた混合物を室温で15分間撹拌し、次に、−60℃に冷却し、メタノールのエーテル溶液(5%v/v、21.1μl、メタノールは0.026mmol)を加えた。得られた反応混合物を−60℃で40時間撹拌した。反応混合物の少量(50μl)を乾燥エタノール(200μl)に加え、得られた溶液を室温で30分間撹拌した後、シリカゲルプラグに通した(溶出液はエーテル)。減圧下、溶媒を除去し、GC分析(HP−5カラム、200℃で4分、10℃/分で250℃まで温度を上げ、250℃で8分)およびキラルHPLC分析(DaicelキラルパックOJカラム、ヘキサン:IPA=4:1、0.7ml/分、λ=220nm)用のメチルおよびエチルエステルの混合物を得た。出発物質の転換率は43.8%であり、生成物のエナンチオマー過量率は85.6%であり、エチルエステルによって明らかになった出発材料のエナンチオマー過量率は69.2%であった。これらの数字から、選択的因子(s=kfast/kslow)は20以上であることがわかった。
【0154】
実施例5
ジオキソランジオン類の一般的な調製法
【化20】
Figure 2005507863
【0155】
マンデル酸(0.5g)を5mlの乾燥THFに溶解し、ジホスゲン(0.8ml)で処理し、次に、触媒量の活性炭(約10mg)を添加した。混合物を室温で一晩撹拌し、Celiteでろ過した。減圧下、溶媒を除去し、ほぼ定量的な収量(95%以上)で生成物が得られた。
【0156】
実施例6
アミノ酸N−カルボキシアンヒドリド類(NCA類およびUNCA類)の調製
一般的方法
A.NCA類
【化21】
Figure 2005507863
【0157】
ラセミ酸(3.0〜25.0mmol)の無水THF(8〜40ml)懸濁液(50℃)中にトリホスゲン(1.0当量)を一度に加えた。1時間以内に透明な溶液が得られなかった場合には、反応混合物に1〜2アリコートのトリホスゲン(0.1当量/アリコート)を45分間隔で添加した。反応混合物は、50℃で計3時間撹拌し、その後、不溶性材料が残っている場合には、ろ過によって除去した。ろ液をヘキサン(20〜120ml)に注ぎ、得られた混合物をフリーザー(−20℃)中で一晩保存した。この間に形成した白色結晶を回収し、減圧乾燥することによって所望するNCAを得、さらに精製することなく次の段階に使用した。
【0158】
B.UNCA類
【化22】
Figure 2005507863
【0159】
ラセミNCA(1.0〜10.0mmol)の無水THF(5.0〜25.0mmol)溶液(−25℃)中にアルキル(ベンジル、アリルおよびフルオレニルメチル)クロロホルメート(1.2〜1.3当量)を添加した。N−メチル−モルホリン(NMM)(1.25〜1.5当量)のTHF溶液(1.0〜5.0mmol)を15分以上かけて反応混合物に滴下した。得られた混合物を−25℃で1時間撹拌し、つぎに室温に戻して一晩放置した。反応混合物を−25℃に冷却し、HCl(ジオキサン中4.0M)を用いて混合物のpH を約3にした。得られた混合物を室温に戻した。N雰囲気下、乾燥Celite521(3.0g)を用いて沈殿物(NMMヒドロクロリド)をろ去し、乾燥THFで洗浄した(2×20ml)。ろ液を濃縮し、−20℃で一晩かけてTBME/THF/ヘキサンから残渣を再結晶させた。白色固体を回収し、減圧乾燥することにより、所望するUNCA類は、ラセミアミノ酸から収率47〜86%で得られた(表3に記載している14種類のUNCAについての平均収率は67%であった)。
【0160】
特定の化合物の調製
【化23】
Figure 2005507863
【化24】
Figure 2005507863
【化25】
Figure 2005507863
【化26】
Figure 2005507863
【化27】
Figure 2005507863
【化28】
Figure 2005507863
【化29】
Figure 2005507863
【化30】
Figure 2005507863
【化31】
Figure 2005507863
【化32】
Figure 2005507863
【化33】
Figure 2005507863
【化34】
Figure 2005507863
【化35】
Figure 2005507863
【化36】
Figure 2005507863
【0161】
実施例7
ウレタン保護アミノ酸N−カルボキシアンヒドリド類(UNCA類)を動力学的に分割するための一般的方法
【化37】
Figure 2005507863
【0162】
UNCA2(0.10mmol)およびモレキュラーシーブ(4Å)(10mg)を無水ジエチルエーテル(7.0ml)中、室温で15分間撹拌し、次に、表3に示す温度まで冷却し、その後、混合物に修飾シンコナアルカロイド(0.10mmol)を加えた。得られた混合物をさらに5分間撹拌し、メタノールのエーテル溶液(v/v=1/19、メタノールは0.052〜0.10mmol、実験番号9および10では0.055mmolのエタノールを使用)をシリンジで滴下した。得られた反応混合物は、指定された温度で15〜85時間撹拌した。HClのエーテル溶液(1N、1.0ml)を加えて反応を停止した。15分後、反応混合物にHCl水溶液(2N、2.0ml)を加え、得られた混合物を室温に戻した。有機層を回収し、HCl水溶液(2N、2×1ml)で洗浄、乾燥(硫酸ナトリウム)し、濃縮した。残渣をHO/THF(v/v=1:4、5.0ml)に溶解し、得られた溶液を室温で一晩撹拌した。次に、溶液を濃縮し、残渣をエーテル(3.0ml)に溶解した。得られた溶液をNaCO水溶液で抽出した(1N、2×3.0ml)。有機層を水(1.0ml)で洗浄、乾燥(硫酸ナトリウム)し、濃縮することにより、NMRレベルで純粋型であることが確認されたアミノエステル3を得、それらの収率は表3に示している。水層を合わせ、濃HClでpHを3未満に調整し、酢酸エチルで抽出した(3×10ml)。有機層を乾燥させ(硫酸ナトリウム)、濃縮することにより、NMRレベルで純粋型であることが確認されたアミノ酸類4を得、それらの収率は表3に示している。上述した方法は、2a〜d、f〜i、k〜nの動力学的分割に使用した。
【0163】
2eおよび2jの動力学的分割については、クロマトグラフィー精製によってアミノエステル類3e、3jおよびアミノ酸類4e、4jを単離したが、その方法は次の通りである:反応を停止した後、上記のようにHCl水溶液を用いて触媒を対応するアンモニウム塩に転換し、HO/THF中で徹底的に加水分解を行う代わりに、有機層を濃縮して得られた残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(SiO)にかけ、初期溶出液としてエーテル/ヘキサン(v/v=1:5)を用いることにより、NMRレベルで純粋型であることが確認された所望するエステル類3(e、j)を得、次に、溶出液をエーテル/AcOH(v/v=100/1)に変えることにより、NMRレベルで純粋型であることが確認された所望するアミノ酸類4(e、j)を得、それらの収率は表3に示している。
【0164】
実施例8
ウレタン保護アミノ酸N−カルボキシアンヒドリド類(UNCA類)を動力学的に分割したときの転換率を求めるための一般的方法
【化38】
Figure 2005507863
【0165】
反応混合物の少量のアリコート(50μl)を乾燥エタノール(200μl)中に加えた。得られた混合物を室温で30分間撹拌し、エーテルと共にシリカゲルプラグに通した。溶液を濃縮し、GC分析(HP−5カラム、200℃で4分、10℃/分で250℃まで温度を上げ、250℃で8〜12分)を行った。求核剤としてエタノールを用いてUNCA2iおよび2j(表3の実験番号9および10)の動力学的分割を行うため、反応混合物のアリコートを乾燥メタノールに加えた。以下に示すように、実験によって測定された転換率と計算上の転換率は互いに一致していた。
【0166】
実施例9
動力学的分割の生成物および未反応出発材料のエナンチオマー過量率を求めるための一般的方法
エステル類3のエナンチオマー過量率は、以下に定める条件下でHPLC分析にを行うことによって求めた。未反応UNCA類2のエナンチオマー過量率は、上述しているように、化合物2をエステル類5に転換することによって求め、以下に定める条件下でHPLC分析を行うことによってエステル類5のエナンチオマー過量率を求めた。アミノ酸類4のエナンチオマー過量率は、HPLC分析によって求め、対応するエステル類5のエナンチオマー過量率と例外なく一致していることがわかった。
【0167】
(s)−(N−ベンジルオキシカルボニル)フェニルアラニン(4a)
【化39】
Figure 2005507863
【0168】
(R)−メチル−(N−ベンジルオキシカルボニル)フェニルアラニナート(3a)
【化40】
Figure 2005507863
【0169】
エチル(N−ベンジルオキシカルボニル)フェニルアラニナート(5a)
【化41】
Figure 2005507863
【0170】
(s)−(N−ベンジルオキシカルボニル)−p−フルオロフェニルアラニン(4b)
【化42】
Figure 2005507863
【0171】
(R)−メチル−(N−ベンジルオキシカルボニル)−p−フルオロフェニルアラニナート(3b)
【化43】
Figure 2005507863
【0172】
エチル(N−ベンジルオキシカルボニル)−p−フルオロフェニルアラニナート(5b)
【化44】
Figure 2005507863
【0173】
(s)−(N−ベンジルオキシカルボニル)−p−クロロフェニルアラニン(4c)
【化45】
Figure 2005507863
【0174】
(R)−メチル−(N−ベンジルオキシカルボニル)−p−クロロフェニルアラニナート(3c)
【化46】
Figure 2005507863
【0175】
エチル(N−ベンジルオキシカルボニル)−p−クロロフェニルアラニナート(5c)
【化47】
Figure 2005507863
【0176】
(s)−(N−ベンジルオキシカルボニル)−p−ブロモフェニルアラニン(4d)
【化48】
Figure 2005507863
【0177】
(R)−メチル−(N−ベンジルオキシカルボニル)−p−ブロモフェニルアラニナート(3d)
【化49】
Figure 2005507863
【0178】
エチル(N−ベンジルオキシカルボニル)−p−ブロモフェニルアラニナート(5d)
【化50】
Figure 2005507863
【0179】
(s)−(N−ベンジルオキシカルボニル)−3−(2−チエニル)アラニン(4e)
【化51】
Figure 2005507863
【0180】
(R)−メチル−(N−ベンジルオキシカルボニル)−3−(2−チエニル)アラニナート(3e)
【化52】
Figure 2005507863
【0181】
エチル(N−ベンジルオキシカルボニル)−3−(2−チエニル)アラニナート(5e)
【化53】
Figure 2005507863
【0182】
(N−ベンジルオキシカルボニル)−2−アミノカプリル酸(4f)
【化54】
Figure 2005507863
【0183】
メチル(N−ベンジルオキシカルボニル)−2−アミノカプリレート(3f)
【化55】
Figure 2005507863
【0184】
エチル(N−ベンジルオキシカルボニル)−2−アミノカプリレート(5f)
【化56】
Figure 2005507863
【0185】
(s)−(N−ベンジルオキシカルボニル)−p−クロロフェニルアラニン(4g)
【化57】
Figure 2005507863
【0186】
(R)−メチル−(N−ベンジルオキシカルボニル)−p−クロロフェニルアラニン(3g)
【化58】
Figure 2005507863
【0187】
エチル(N−ベンジルオキシカルボニル)−p−クロロフェニルアラニン(5g)
【化59】
Figure 2005507863
【0188】
(s)−(N−ベンジルオキシカルボニル)バリン(4h)
【化60】
Figure 2005507863
【0189】
メチル(R)−(N−ベンジルオキシカルボニル)バリナート(3h)
【化61】
Figure 2005507863
【0190】
エチル(N−ベンジルオキシカルボニル)バリナート(5h)
【化62】
Figure 2005507863
【0191】
(s)−(N−ベンジルオキシカルボニル)フェニルグリシン(4i)
【化63】
Figure 2005507863
【0192】
(R)−エチル−(N−ベンジルオキシカルボニル)フェニルグリシナート(3i)
【化64】
Figure 2005507863
【0193】
メチル(N−ベンジルオキシカルボニル)−フェニルグリシナート(5i)
【化65】
Figure 2005507863
【0194】
(s)−(N−ベンジルオキシカルボニル)−p−クロロフェニルアラニン(4j)
【化66】
Figure 2005507863
【0195】
(R)−メチル−(N−ベンジルオキシカルボニル)−p−クロロフェニルアラニン(3j)
【化67】
Figure 2005507863
【0196】
エチル(N−ベンジルオキシカルボニル)−p−クロロフェニルアラニン(5j)
【化68】
Figure 2005507863
【0197】
(s)−N−(9−フルオレニルメトキシカルボニル)フェニルアラニン(4k)
【化69】
Figure 2005507863
【0198】
(R)−メチル−N−(9−フルオレニルメトキシカルボニル)フェニルアラニナート(3k)
【化70】
Figure 2005507863
【0199】
エチル−N−(9−フルオレニルメトキシカルボニル)フェニルアラニナート(5k)
【化71】
Figure 2005507863
【0200】
(s)−(N−t−ブチルオキシカルボニル)フェニルアラニン(4l)
【化72】
Figure 2005507863
【0201】
(R)−メチル−(N−t−ブチルオキシカルボニル)フェニルアラニナート(3l)
【化73】
Figure 2005507863
【0202】
エチル(N−t−ブチルオキシカルボニル)フェニルアラニナート(5l)
【化74】
Figure 2005507863
【0203】
(s)−(N−アリルオキシカルボニル)フェニルアラニン(4m)
【化75】
Figure 2005507863
【0204】
(R)−メチル−(N)−アリルオキシカルボニル)フェニルアラニナート(3m)
【化76】
Figure 2005507863
【0205】
エチル(N−アリルオキシカルボニル)フェニルアラニナート(5m)
【化77】
Figure 2005507863
【0206】
(N−アリルオキシカルボニル)ホモフェニルアラニン(4n)
【化78】
Figure 2005507863
【0207】
メチル(N−アリルオキシカルボニル)ホモフェニルアラニナート(3n)
【化79】
Figure 2005507863
【0208】
エチル(N−アリルオキシカルボニル)ホモフェニルアラニナート(5n)
【化80】
Figure 2005507863
【0209】
実施例10
UNCA類を動的動力学的に分割するための一般的方法
【化81】
Figure 2005507863
【0210】
UNCA2(0.20mmol)およびモレキュラーシーブ(4Å)(20mg)の混合物を無水エーテル(14.0ml)中、室温で10分間撹拌し、実施例7または8に示す温度まで冷却し、その後、(DHQD)AQN(0.040mmol)を加えた。得られた混合物を5分間撹拌し、アルコールのエーテル溶液(v/v=1/39、アルコール量は0.12mmol)をシリンジで20分以上かけて滴下した。得られた混合物は、指示された温度で40分間撹拌した。再度、アルコールのエーテル溶液(v/v=1/39、アルコール量は0.12mmol)をシリンジで20分以上かけて滴下した。40分後、反応混合物にHCl水溶液(2N、4.0ml)を加え、得られた混合物を室温で10分間撹拌した。有機層を集め、HCl水溶液(2N、2×1ml)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮することによって化合物3を得、フラッシュクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:9)による精製は、行ったものと行わなかったものがあった。
【0211】
参考文献の取り込み
本明細書に引用しているすべての特許および印刷物は、参照として取り入れておく。
【0212】
発明の等価性
当業者であれば、日常的な実験を行っただけで、本発明の特定の実施態様に記載されているものと同等の態様を認識または確認することができる。そのような同等の態様は、本発明に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0213】
【図1】本発明に従う方法において使用した触媒の構造および本明細書中で使用しているそれらの略号
【図2】本発明に従う方法において使用した触媒の構造および本明細書中で使用しているそれらの略号
【図3】本発明に従う方法のうちの2つの実施態様
【図4】多様なジオキソランジオン類を動力学的に分割して得られた生成物および未反応の出発材料の収量およびエナンチオマー過量率を記載した表
【図5】多様なジオキソランジオン類を動力学的に分割して得られた生成物および未反応の出発材料の収量およびエナンチオマー過量率を記載した表
【図6】多様なジオキソランジオン類を動力学的に分割して得られた生成物および未反応の出発材料の収量およびエナンチオマー過量率を記載した表
【図7】ウレタン保護した多様なアミノ酸N−カルボキシアンヒドリド類を動的動力学的に分割して得られた生成物の収率およびエナンチオマー過量率を記載した表
【図8】ウレタン保護した多様なアミノ酸N−カルボキシアンヒドリド類を動的動力学的に分割して得られた生成物の収率およびエナンチオマー過量率を記載した表

Claims (48)

  1. キラル基質のラセミ混合物またはジアステレオ混合物を動力学的に分割する方法であって、
    キラル非ラセミ触媒の存在下において、キラル基質のラセミ混合物またはジアステレオ混合物を求核剤と混合し、ここで、該キラル非ラセミ触媒は、求核剤がキラル基質に付加することにより、キラル生成物もしくは未反応キラル基質、あるいは、ひとつのエナンチオマーもしくはジアステレオマーに富んだ生成物および未反応基質が得られる反応を触媒することを特徴とする方法。
  2. 前記動力学的分割が動的であることを特徴とする請求項1記載の方法。
  3. 前記求核剤がアルコール、アミンまたはチオールであることを特徴とする請求項1記載の方法。
  4. 前記キラル非ラセミ触媒が、三級アミン、ホスフィンまたはアルシンであることを特徴とする請求項1記載の方法。
  5. 前記キラル非ラセミ触媒が三級アミンであることを特徴とする請求項1記載の方法。
  6. 前記キラル非ラセミ触媒がシンコナアルカロイドであることを特徴とする請求項1記載の方法。
  7. 前記キラル非ラセミ触媒が、キニジン、(DHQ)PHAL、(DHQD)PHAL、(DHQ)PYR、(DHQD)PYR、(DHQ)AQN、(DHQD)AQN、DHQ−CLB、DHQD−CLB、DHQ−MEQ、DHQD−MEQ,DHQ−AQN、DHQD−AQN、DHQ−PHNまたはDHQD−PHNであることを特徴とする請求項1記載の方法。
  8. 前記基質が1個の不斉炭素を有することを特徴とする請求項1記載の方法。
  9. 前記求核剤がアルコール、アミンまたはチオールであり;前記キラル非ラセミ触媒が三級アミン、ホスフィンまたはアルシンであり;さらに、前記基質が1個の不斉炭素を有することを特徴とする請求項1記載の方法。
  10. 前記求核剤がアルコール、アミンまたはチオールであり;前記キラル非ラセミ触媒が三級アミンであり;さらに、前記基質が1個の不斉炭素を有することを特徴とする請求項1記載の方法。
  11. 前記求核剤がアルコール、アミンまたはチオールであり;前記キラル非ラセミ触媒がシンコナアルカロイドであり;さらに、前記基質が1個の不斉炭素を有することを特徴とする請求項1記載の方法。
  12. 前記求核剤がアルコール、アミンまたはチオールであり;前記キラル非ラセミ触媒がキニジン、(DHQ)PHAL、(DHQD)PHAL、(DHQ)PYR、(DHQD)PYR、(DHQ)AQN、(DHQD)AQN、DHQ−CLB、DHQD−CLB、DHQ−MEQ、DHQD−MEQ,DHQ−AQN、DHQD−AQN、DHQ−PHNまたはDHQD−PHNであり;さらに、前記基質が1個の不斉炭素を有することを特徴とする請求項1記載の方法。
  13. 生成物または未反応基質のエナンチオマー過量率またはジアステレオマー過量率が約50%以上であることを特徴とする請求項1記載の方法。
  14. 生成物または未反応基質のエナンチオマー過量率またはジアステレオマー過量率が約70%以上であることを特徴とする請求項1記載の方法。
  15. 生成物または未反応基質のエナンチオマー過量率またはジアステレオマー過量率が約90%以上であることを特徴とする請求項1記載の方法。
  16. 以下のスキーム1で表される動力学的分割法であって:
    Figure 2005507863
    ここで、Xは、NR'、OまたはSを表し;
    Yは、それぞれ別異にOまたはSを表し;
    Zは、NR'、OまたはSを表し;
    Rは、それぞれ別異に、水素、または随意に置換されたアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキルもしくはヘテロアラルキルを表し;
    R'は、それぞれ任意にR、ホルミル、アシル、スルホニル、−CORまたは−C(O)NRを表し、
    基質および生成物はキラルであり;
    NuHは、水、アルコール、チオール、アミン、ケトエステル、マロネートまたはそれらのうちの任意のもののコンジュゲート塩を表し;
    キラル非ラセミ触媒は、キラル非ラセミ三級アミン、ホスフィンまたはアルシンであり;
    nは1または2であり;さらに、
    該方法が終了したとき、または中断されたときには、未反応基質のエナンチオマー過量率またはジアステレオマー過量率は、動力学的分割前の基質のそれらよりも大きく、生成物のエナンチオマー過量率もしくはジアステレオマー過量率は0よりも大きい、または両方とも0より大きい、ことを特徴とする方法。
  17. XがOであることを特徴とする請求項16記載の方法。
  18. YがOであることを特徴とする請求項16記載の方法。
  19. NuHは、アルコール、チオールまたはアミンを表すことを特徴とする請求項16記載の方法。
  20. NuHはアルコールを表すことを特徴とする請求項16記載の方法。
  21. 前記キラル非ラセミ触媒がキラル非ラセミ三級アミンであることを特徴とする請求項16記載の方法。
  22. 前記キラル非ラセミ触媒がシンコナアルカロイドであることを特徴とする請求項16記載の方法。
  23. 前記キラル非ラセミ触媒が、キニジン、(DHQ)PHAL、(DHQD)PHAL、(DHQ)PYR、(DHQD)PYR、(DHQ)AQN、(DHQD)AQN、DHQ−CLB、DHQD−CLB、DHQ−MEQ、DHQD−MEQ,DHQ−AQN、DHQD−AQN、DHQ−PHNまたはDHQD−PHNであることを特徴とする請求項16記載の方法。
  24. XがOであり;さらに、YがOであることを特徴とする請求項16記載の方法。
  25. XがOであり;YがOであり;さらに、NuHは、アルコール、チオールまたはアミンを表すことを特徴とする請求項16記載の方法。
  26. XがOであり;YがOであり;さらに、NuHはアルコールを表すことを特徴とする請求項16記載の方法。
  27. XがOであり;YがOであり;さらに、前記キラル非ラセミ触媒がキラル非ラセミ三級アミンであることを特徴とする請求項16記載の方法。
  28. XがOであり;YがOであり;さらに、前記キラル非ラセミ触媒がシンコナアルカロイドであることを特徴とする請求項16記載の方法。
  29. XがOであり;YがOであり;さらに、前記キラル非ラセミ触媒が、キニジン、(DHQ)PHAL、(DHQD)PHAL、(DHQ)PYR、(DHQD)PYR、(DHQ)AQN、(DHQD)AQN、DHQ−CLB、DHQD−CLB、DHQ−MEQ、DHQD−MEQ,DHQ−AQN、DHQD−AQN、DHQ−PHNまたはDHQD−PHNであることを特徴とする請求項16記載の方法。
  30. XがOであり;YがOであり;NuHはアルコールであり;さらに、前記キラル非ラセミ触媒が三級アミンであることを特徴とする請求項16記載の方法。
  31. XがOであり;YがOであり;NuHはアルコールであり;さらに、前記キラル非ラセミ触媒がシンコナアルカロイドであることを特徴とする請求項16記載の方法。
  32. XがOであり;YがOであり;NuHはアルコールであり;さらに、前記キラル非ラセミ触媒が、キニジン、(DHQ)PHAL、(DHQD)PHAL、(DHQ)PYR、(DHQD)PYR、(DHQ)AQN、(DHQD)AQN、DHQ−CLB、DHQD−CLB、DHQ−MEQ、DHQD−MEQ,DHQ−AQN、DHQD−AQN、DHQ−PHNまたはDHQD−PHNであることを特徴とする請求項16記載の方法。
  33. 生成物または未反応基質のエナンチオマー過量率またはジアステレオマー過量率が約50%以上であることを特徴とする請求項16記載の方法。
  34. 生成物または未反応基質のエナンチオマー過量率またはジアステレオマー過量率が約70%以上であることを特徴とする請求項16記載の方法。
  35. 生成物または未反応基質のエナンチオマー過量率またはジアステレオマー過量率が約90%以上であることを特徴とする請求項16記載の方法。
  36. 以下のスキーム2で表される動力学的分割法であって:
    Figure 2005507863
    ここで、Xは、NR'、OまたはSを表し;
    Zは、NR'、OまたはSを表し;
    RおよびR2は、それぞれ別異に、水素、または随意に置換されたアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキルもしくはヘテロアラルキルを表し;RおよびR2は異なっており;
    R'は、それぞれ別異にR、ホルミル、アシル、スルホニル、−CORまたは−C(O)NRを表し、
    キラル非ラセミ触媒は、キラル非ラセミ三級アミン、ホスフィンまたはアルシンであり;さらに、
    該方法が終了したとき、または中断されたときには、未反応基質のエナンチオマー過量率またはジアステレオマー過量率は、動力学的分割前の基質のそれらよりも大きく、生成物のエナンチオマー過量率もしくはジアステレオマー過量率は0よりも大きい、または両方とも0より大きい、
    ことを特徴とする方法。
  37. XがOを表すことを特徴とする請求項36記載の方法。
  38. Zは、NR'またはOを表すことを特徴とする請求項36記載の方法。
  39. 前記キラル非ラセミ触媒がキラル非ラセミ三級アミンであることを特徴とする請求項36記載の方法。
  40. 前記キラル非ラセミ触媒がシンコナアルカロイドであることを特徴とする請求項36記載の方法。
  41. 前記キラル非ラセミ触媒が、キニジン、(DHQ)PHAL、(DHQD)PHAL、(DHQ)PYR、(DHQD)PYR、(DHQ)AQN、(DHQD)AQN、DHQ−CLB、DHQD−CLB、DHQ−MEQ、DHQD−MEQ,DHQ−AQN、DHQD−AQN、DHQ−PHNまたはDHQD−PHNであることを特徴とする請求項36記載の方法。
  42. XがOを表し;さらに、Zは、NR'またはOを表すことを特徴とする請求項36記載の方法。
  43. XがOを表し;Zは、NR'またはOを表し;さらに、前記キラル非ラセミ触媒がキラル非ラセミ三級アミンであることを特徴とする請求項36記載の方法。
  44. XがOを表し;NR'またはOを表し;さらに、前記キラル非ラセミ触媒がシンコナアルカロイドであることを特徴とする請求項36記載の方法。
  45. XがOを表し;Zは、NR'またはOを表し;さらに、前記キラル非ラセミ触媒が、キニジン、(DHQ)PHAL、(DHQD)PHAL、(DHQ)PYR、(DHQD)PYR、(DHQ)AQN、(DHQD)AQN、DHQ−CLB、DHQD−CLB、DHQ−MEQ、DHQD−MEQ,DHQ−AQN、DHQD−AQN、DHQ−PHNまたはDHQD−PHNであることを特徴とする請求項36記載の方法。
  46. 生成物または未反応基質のエナンチオマー過量率またはジアステレオマー過量率が約50%以上であることを特徴とする請求項36記載の方法。
  47. 生成物または未反応基質のエナンチオマー過量率またはジアステレオマー過量率が約70%以上であることを特徴とする請求項36記載の方法。
  48. 生成物または未反応基質のエナンチオマー過量率またはジアステレオマー過量率が約90%以上であることを特徴とする請求項36記載の方法。
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