JP2005507639A - 高親和性インテグリンポリペプチドおよびその使用方法 - Google Patents
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Abstract
変種インテグリンαサブユニットAドメインまたは変種インテグリンβサブユニットA様ドメインの、全てまたは一部を含むポリペプチドを記述する。溶液または膜結合型において、本発明のポリペプチドのAドメインまたはA様ドメインは、主に高親和性コンフォメーションで存在する。変種インテグリンポリペプチドと呼ばれる本発明のポリペプチドでは、重要なイソロイシン残基(以下に詳細に記載)が存在しない。イソロイシンは、欠失されるか、または異なるアミノ酸残基、好ましくはより小さいかまたはより疎水性の低いアミノ酸残基、例えばアラニンまたはグリシンに置換されうる。本発明の変種インテグリンポリペプチドは、溶液または膜結合型として主に高親和性コンフォメーションで存在することから、それらはインテグリンに結合する(および/またはその活性を媒介する)分子を同定するための、スクリーニングアッセイにおいて有用である。それらはまた、インテグリンの高親和性型に結合する抗体、例えばモノクローナル抗体を作製するためにも有用である。いくつかのそのような抗体は、より低い親和性のコンフォメーションであるインテグリン上には存在しないか、または近づくことができないエピトープを認識する。本発明の変種インテグリンポリペプチドは、任意のインテグリンαサブユニットまたは任意のインテグリンβサブユニットに由来することができ、治療的に用いることができるであろう。変種インテグリンポリペプチドには、好ましくはAドメインまたはA様ドメインのリガンド結合部分が含まれる。
Description
【背景技術】
【0001】
背景
インテグリンは、リガンドの結合によって細胞間の、および細胞と細胞外マトリクスとの双方の多様な重要な相互作用を媒介するヘテロダイマー受容体である。全てのインテグリンはαサブユニットとβサブユニットとを有する。αサブユニット内において、Aドメイン(またはIドメイン)と呼ばれる領域は、リガンド結合の重要なメディエータであることが知られている。類似の領域、A様ドメインが多くのβサブユニットに存在する。多くのインテグリンは二つのコンフォメーション、すなわち低親和性状態(「閉鎖型(closed)」または「非リガンド結合(unliganded)」コンフォメーション)と高親和性状態(「開放型(open)」、または「リガンド結合(liganded)」コンフォメーション)で存在すると考えられており、後者が高親和性リガンド結合に関与している。
【0002】
インテグリンは、細胞の生理活性(例えば、運動性、増殖、分化)に及ぼすマトリクスの作用を媒介するシグナルを伝達する。その上、インテグリンは、炎症ならびに腫瘍発生的な細胞の形質転換、転移、およびアポトーシスにおいて役割を有する。このように、一つまたは複数のインテグリンを活性化またはその活性を阻害することができる化合物を同定することにかなりの関心が集まっている。
【0003】
有効なインテグリン-リガンド結合が起こるためには、インテグリンは、その高親和性コンフォメーションでなければならないと考えられる。細胞が、多様な刺激によって活性化される場合に産生される内側から外へのシグナルが、インテグリンを低親和性状態から高親和性へと切り替えるように思われる。この機能的上方制御は、αサブユニットのAドメインおよびβサブユニットのA様ドメインが含まれるインテグリンの細胞外領域におけるコンフォメーションの変化に関連している(スミス(Smith)ら、1988、J. Biol. Chem. 263:18726)。
【0004】
インテグリンAドメインは、その上部に金属イオン依存的接着部位(MIDAS)を有するジヌクレオチド結合のひだの形状を示し(リー(Lee)ら、1995、Cell 80:631;エムスレイ(Emsley)ら、1997、J. Biol. Chem. 272:28512;リ(Li)ら、1998、J. Cell Biol. 143:1523;ノルト(Nolte)ら、1999、FEBS Lett. 452:379;およびレッジェ(Legge)ら、2000、J. Mol. Biol. 295:1251)、これはその底部でC末端のα7ヘリックスによってインテグリンの本体に結合している。MIDASおよびその周辺の露出した側鎖は、生理的リガンド(リ(Li)ら、上記;ミチシタ(Michishita)ら、Cell 72:857〜867、1993;カマタ(Kamata)ら、J. Biol. Chem. 269:26006〜26010、1994;ケルン(Kern)ら、J. Biol. Chem. 269:22811〜6、1994;エドワーズ(Edwards)ら、J. Biol. Chem. 273:28937〜44、1998;ザング(Zhang)ら、Biochemistry 38:8064〜71、1999)および特定のアンタゴニスト(リウ(Rieu)ら、J. Biol. Chem. 271:15858〜15861、1996)の結合部位を形成する。「開放型」コンフォメーションの場合、タンパク質における三つの非荷電残基は、MIDASにおける金属イオンに直接配位結合する。偽リガンドまたはリガンドグルタメート残基(リー(Lee)ら、上記;リ(Li)ら、上記;エムスレイ(Emsley)ら、Cell 100:47〜56、2000)が、金属の配位結合を完成させる。「閉鎖」型では、両親媒性C末端のα7ヘリックスが「開放」型と比較して10 Å上方に移動しており、ドメインの残りを取り巻いている。この大きな移動は金属配位結合の変化に関連しており、この場合、三つの配位結合残基の一つであるトレオニンがアスパラギン酸塩に置換され、金属イオン配位結合の球を完成させるために水分子がグルタミン酸塩をの代わりに存在する(リー(Lee)ら、Structure 3:1333〜1340、1995)。金属配位結合のこれらの変化およびMIDASの位相学は、構造的に相同なGタンパク質において記述されるものと類似である(リー(Lee)ら、上記)。
【0005】
四つのインテグリンAドメイン(CD11b、CD11a、CD49a、およびCD49b)の結晶構造が現在までに報告されている(リー(Lee)ら、上記、1995;リー(Lee)ら、Structure 3:1333、1995;エムスレイ(Emsley)ら、上記;リ(Li)ら、上記;エムスレイ(Emsley)ら、J. Biol. Chem. 272:28512、1997)。インテグリンCD11b Aドメイン(11bA)の例外を除き、全てが、「閉鎖」型のみで存在することから、「開放」型は有益でない結晶アーチファクトであることが示唆された(ボルディン(Baldwin)ら、Structure 6:923〜935、1998)。インテグリン-Aドメインの「開放」型が「高」親和性状態と等しいという考え方は、三つの研究によって支持されている(リ(Li)ら、1998、J. Cell Biol. 143:1523;リウ(Rieu)ら、上記;オクスビグ(Oxvig)ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96:2215〜20、1999)。第一に、「閉鎖型」構造を脱安定化させ、構造の基礎において予想されるCD11bAの点突然変異によって、溶液中の「高親和性」型の比率が増加した(リ(Li)ら、1998、J.Cell Biol. 143:1523)。第二の研究において、「活性化依存的」モノクローナル抗体の結合部位は、Aドメインのコンフォメーション感受性領域にマッピングされた(オクスビグ(Oxvig)ら、上記)。第三の研究によって、短いコラーゲンペプチドとの複合体においてAドメインが「開放型」コンフォメーションの形をとることが示され、このことは「開放」型がリガンドの存在下に限って得られうることを示唆した(エムスレイ(Emsley)ら、上記)。リガンドがインテグリンのコンフォメーションの変化を引き起こすことが示唆されているが、インテグリンがリガンドの非存在下においても高親和性状態で存在しうることが、少なくとも一つの研究によって示唆されている(スミスおよびチェレシュ(SmithおよびCheresh)、1988、J. Biol. Chem. 263:18726〜31)。さらにいくつかの研究によって、ヘテロダイマーインテグリンにおけるリガンド結合親和性をアロステリックに変化させうることが示唆された(リ(Li)ら、1998、J. Cell Biol. 143:1523;エドワーズ(Edwards)ら、J. Biol. Chem. 273:28937〜28944、1988;カルダーウッド(Calderwood)ら、J. Biol. Chem. 273:5625、1988;ザング(Zhang)ら、J. Biol. Chem. 271:29953〜7、1996)。
【発明の開示】
【0006】
概要
本発明は、変種インテグリンαサブユニットAドメインまたは変種インテグリンβサブユニットA様ドメインの、全てまたは一部を含むポリペプチドを特徴とする。変種インテグリンポリペプチドと呼ばれる本発明のポリペプチドでは、重要なイソロイシン残基(下記により詳細に記述)が存在しない。イソロイシンは、欠失させるか、または異なるアミノ酸残基、好ましくはより小さいもしくはより疎水性が低いアミノ酸残基、例えばアラニンまたはグリシンに置換することができる。本発明の変種インテグリンポリペプチドは、溶液中において高親和性コンフォメーションで存在する傾向があるため、それらはインテグリンに結合する(および/またはその活性を調節する)分子を同定するためのスクリーニングアッセイにおいて有用である。それらはまた、インテグリンの高親和性型に結合する抗体、例えば、モノクローナル抗体を作製するためにも有用である。そのような抗体のいくつかは、低親和性コンフォメーションで存在するインテグリンには存在しないか、またはそのようなインテグリンでは近づくことができないエピトープを認識する。このように、本発明は、対応する野生型インテグリンより大きな親和性により、本発明の変種インテグリンに結合する抗体を特徴とする。本発明の変種インテグリンポリペプチドは、任意のインテグリンαサブユニットまたは任意のインテグリンβサブユニットにも由来しうる。変種インテグリンポリペプチドには、好ましくは、AドメインまたはA様ドメインのリガンド結合部分が含まれる。
【0007】
本発明はまた、本発明の変種インテグリンポリペプチドに結合する化合物を同定する方法を特徴とする。そのようなスクリーニング方法は、関係する被験化合物にポリペプチドを曝露すること、および化合物がポリペプチドに結合するか否かを決定することを含みうる。このように、アッセイは、単純な結合アッセイ(例えば、化合物の結合をリガンドの非存在下に限って測定する)、または競合的結合アッセイ(例えば、化合物の結合をリガンドの存在下で測定する)となりうる。本発明はまた、被験化合物の存在下および非存在下で変種インテグリンポリペプチドに対するインテグリンリガンドの結合を測定することによって、インテグリンに対するインテグリンリガンドの結合を妨害する化合物を同定する方法を特徴とする。また、被験化合物がインテグリンに対するインテグリンリガンドの結合を妨害できるか否を試験してもよい。さらに、被験化合物の存在下および非存在下で、第二のインテグリンに対するインテグリンリガンドの結合を測定することによって(またはインテグリンに対する第二のリガンドの結合を測定することによって)、化合物の結合特異性を評価することができる。
【0008】
本発明はまた、本発明の変種インテグリンポリペプチド、または本発明の変種インテグリンポリペプチドに選択的に結合する抗体を投与することによって、インテグリンリガンドに対するインテグリンの結合を妨害する方法を特徴とする。
【0009】
本発明はまた、活性なインテグリンに結合するリガンドの有無を同定する目的で、本発明の変種インテグリンポリペプチド、または本発明の変種インテグリンポリペプチドに選択的に結合する抗体を投与する方法を特徴とする。そのようなアッセイは、炎症、例えば潜在性の炎症(例えば、膿瘍、または活性なアテローム性動脈硬化症の病変)を診断するために有用である。
【0010】
本発明はさらに、本発明のポリペプチドまたは本発明のポリペプチドを含むポリペプチドをコードする核酸分子(例えば、mRNAおよびDNA)を特徴とする。本発明にはまた、本発明のポリペプチドおよび第二のポリペプチド、例えば、免疫グロブリン定常ドメインを含む、融合ポリペプチドをコードする核酸分子も含まれる。
【0011】
下記の実験は、CD11bの野生型より活性の高いCD11bの変種型(インテグリンαサブユニット)の設計および調製に関する。いかなる特定の理論にも拘束されないが、溶液中では、開放型(活性な)コンフォメーションであるこの変種サブユニットの量がサブユニットの対応する野生型より大きいように思われる。
【0012】
変種CD11bの作製は、非可逆的なC末端Ile残基の欠失または置換を含む。Ile残基の欠失または置換は、無傷のインテグリンのみならず単離されたCD11b Aドメインにおいて高親和性表現型を付与する。その上、Ile改変Aドメインは、「開放型」コンフォメーションで結晶化することができる。このように、いかなる特定の理論にも拘束されることなく、Ileに基づくアロステリックスイッチは、インテグリンAドメインの親和性およびコンフォメーションを制御するように思われる。したがって、対応する高度に保存されたIle残基を欠失または置換することによって、他のインテグリンαサブユニット(およびβサブユニット)の変種、すなわち高親和性型を作製することができる。
【0013】
CD11bの安定な開放(高親和性)型および閉鎖(低親和性)型も同様に、CD11b(またはCD11b Aドメイン)の所望の型を安定化させるジスルフィド架橋を作製するために、システイン残基をCD11bに導入することによって作製することができる。このように、本発明はまた、F313およびA320がシステイン残基に置換されている変種CD11b Aドメイン含有ポリペプチドを特徴とする(アミノ酸の位置は、Mから始まる完全長のCD11bを指し、Fから始まる成熟CD11bではない)。この変種はAドメインの安定な開放型を形成する。本発明はまた、V315およびA320がシステイン残基に置換されている変種CD11b Aドメイン含有ポリペプチドも特徴とする(アミノ酸の位置は、Mから始まる完全長のCD11bを指し、Fから始まる成熟CD11bではない)。この変種はAドメインの安定な閉鎖型を形成する。本発明はまた、これらの変種型をコードする核酸分子、これらの変種型の一つまたは他方に選択的に結合する抗体、双方の変種型に結合する抗体、およびこれらの変種型の一つまたは双方に選択的に結合する化合物を同定する方法も特徴とする。本発明はまた、CD11a、CD11c、CD11d、および他のインテグリンサブユニットに由来するAドメイン含有ペプチドも特徴とする。
【0014】
本発明の一つまたは複数の態様の詳細は、添付の図面および下記の説明に記述する。本発明のその他の特徴、目的、および長所は、説明と図面、および特許請求の範囲から明らかであると考えられる。引用する全ての特許および刊行物は、参照として本明細書に組み入れられる。
【0015】
詳細な説明
実施例1:欠失による安定な高親和性CD11b変種Aドメインの作製
CD11bのアミノ酸E123〜K315からなる変種CD11b Aドメイン(11bA123-315;11bAE-Kとも呼ばれる)を作製した。これらの実施例において番号を付けたアミノ酸は、成熟タンパク質に対応することに注意。下記の表2および3におけるアミノ酸の番号は、完全なタンパク質(シグナル配列を含む)における番号を意味する。CD11bは、アミノ酸16個のシグナル配列を有する。このように、成熟タンパク質におけるE123は、完全なタンパク質におけるE139に相当する。この変種Aドメインの特徴を調べて、アミノ酸E123〜G321からなるCD11b Aドメイン(11bA123-321;11bAE-Gとも呼ばれる)と比較した。残基316位でイソロイシンがグリシンに変化した変種Aドメイン(11bAI-G)も同様に作製した。これらの三つのタンパク質は全て、GST融合タンパク質として発現され、これは切断されて関係するタンパク質を放出した。
【0016】
変種ポリペプチドは、標準的な組換え型技術を用いて作製した。制限および改変酵素は、ニューイングランドバイオラブスインク(ビバリー、マサチューセッツ州)、ベーリンガーマンハイム社(ドイツ)、またはギブコBRL社(ガイサースバード、メリーランド州)から購入した。部位特異的変異誘発を、記述されるように(リウ(Rieu)ら、1996、J. Biol. Chem. 271:15858)pGEX-4T-1ベクターにおいて行った。以下の変異誘発プライマーを用いた。
IFAdel正方向:
逆方向:
I-G逆方向:
それぞれの変異の導入は直接DNA配列決定によって確認した。変異を含むAドメインのPvuI-BspEI-制限cDNA断片を、PvuI-BspEI-制限処理したCD11b cDNAにサブクローニングして、完全長のヒトCD11b(リウ(Rieu)ら、1996、J. Biol Chem. 271:15858)を含む、pcDNA3プラスミドにクローニングした。11b A123-321および11bA123-315ならびに11bAI → Gドメインは、大腸菌においてGST融合タンパク質として発現させ(ミチシタ(Michishita)ら、1993、Cell 72:857)、トロンビンによって切断して、リら(Li、1999、J. Cell Biol. 143:1523)に記載されるように精製した。C129は、トロンビン切断後に溶液中でジスルフィド結合二量体の形成を防止するために(示していない)、発現された全てのGST-Aドメイン融合型においてSに置換された。純度はSDS-PAGE分析によって確認した。
【0017】
11bA123-321および11bA123-315の構造は、x線結晶学によって決定した。結晶は、10 mg/ml保存タンパク質溶液、およびリら(Li、1998、J. Cell Biol. 143:1523)に記載されるように懸滴蒸気拡散法を用いて成長させた。それぞれのAドメインに関していくつかの結晶条件を試みた。11bA123-315および11bAI → Gは、15%ポリエチレングリコール8K、0.10 Mトリス、pH 8.2、150 mM CaCl2を含むリザーバー溶液の存在下で室温で結晶を形成した。結晶は一週間以内に形成し始め、二週間で典型的な大きさ0.3 mm×0.05 mm×0.04 mmに成長して、正方晶系空間群P4に属し、単位格子はa=b=45.7Åであった。11bA123-321はこれらの条件では結晶化しなかったが、10%ポリエチレングリコール4000、0.1 Mクエン酸ナトリウム、pH 4.5、5mM MnCl2をリザーバー緩衝液に用いると室温で結晶を形成した。11bA123-321は、P212121空間群で結晶化して、単位格子はa=48.1Å、b=121.5Å、c=74.5Åであった。
【0018】
11bA123-315単結晶は、100 Kで、ブルックヘイブン国立研究所で国立シンクロトロン光源の光線X12B上でCCD検出器を用いて2.3Å分解能データセットを収集するために用いた。11bA123-321単結晶は、施設内X-線を用いて造影板上に100 Kで2.6Å分解能データを収集するために用いた。データはDENZOおよびSCALEPACKによってそれぞれ処理して、Rsym 8.8%、7.7%を得た。開始モデルはそれぞれ、残基D132〜K315を含む精密化1.8ÅMg2+構造(pdbアクセッションコードlido)(リー(Lee)、1995、Cell 80:631)、および残基D132〜A318を含む精密化2.0ÅMg2+構造(pdbアクセッションコード1jlm)(リー(Lee)ら、1998、Structure 6:923)であり、それぞれ金属および水分子を除去した。予備的な剛体精密化は、X-plorを用いて行い、回折データは、Rフリー計算の場合5%反射で8.0〜3.0Å分解能の範囲であった。位相を徐々に高分解能にして、構造は、ねじれ角の動力学と個々の拘束等方性B因子精密化プロトコールとを交互に数サイクル行うことによって精密化して、全ての回折データが11bA123-321および11bA123-315構造に関してそれぞれ、分解能8.0〜2.6Å、8.0〜2.3Åとなった(表1)。モデルの点検および手動での調節は、SGIグラフィックスワークステーション上でO(ジョーンズ(Jones)ら、1991、Acta Crystallogr 47:110)を用いて行った。溶媒分子の添加は、差分マップにおける適したピーク、妥当な水素結合、および50Å2未満の精密化温度因子に基づいた。構造は11bA123-315構造に関して最終的なR因子が20.3%(Rフリー:25.6%)、および11bA123-321構造に関して21.9%(Rフリー:30.0%)となるように精密化した。最終モデルは11bA123-315に関して、残基D132〜K315の全ての非水素原子、水分子30個、およびCa2+イオン1個、11bA123-321に関して残基D132〜G321、水分子44個、およびMn2+イオン1個を含む。結晶学的データを表1に示す。
【0019】
【表1】
* Rmerge=Σ|I-<I>|ΣI、式中Iは認められた強度、<I>は、対称性に関連した反射の複数回観察の平均強度である。
§ {}内の数値は最高の0.1Å解像ビンを示す。
† R因子=Σ|Fo-Fc|ΣFo
‡ Rフリー=ΣT|Fo-Fc|ΣT Fo、式中、Tは精密化から省略された反射のうちの、無作為に選択した5%を含む試験セットである。
【0020】
結晶構造11bA123-321は、「閉鎖型」コンフォメーションの結晶構造であった(図2A、2C、および2E)。対照的に11bA123-315は、「開放」型で結晶化した(図2B、2D、および2F)。
【0021】
ビアコア(BIAcore)(BIAcoreAB、アップサラ、スウェーデン)上で既に記述されている(リ(Li)ら、上記)表面プラズモン共鳴を用いて、11bA123-321および11bA123-315のリガンド結合特性を決定した。IC3b、フィブリノーゲン、またはCD54はそれぞれ、異なるCM5センサーチップ(BIAcoreAB)のデキストランマトリクスに1級アミン基を通して共有結合によって結合した。同じように固定したBSAを対照表面として用いた。11bA123-321、11bA123-315、および11bAI-GAドメインは、異なる時間に5ml/分でチップ上を流れた。2mM MgCl2および0.005%P20(BIAcoreAB)を含むTBS(20 mMトリス塩酸、pH 8.0、150 mM NaCl)を実施緩衝液として用いた。1M NaClの20 mMトリス塩酸緩衝液溶液、pH 8.0を用いて結合タンパク質を除去して表面を再生した。結合は時間の関数として測定した。結合データ(BSAコーティングチップに対するバックグラウンドの結合を差し引いた後)は既に記述されているように(ダルアクア(Dall'Aqua)ら、1996、Biochemistry 35:9667〜9676)スキャッチャードプロットを用いて分析した。〜70%コンフルエンスのCOS M7サル線維芽細胞に、記載されているように(ミチシタ(Michishita)ら、上記)WTまたはCD11bI → GをコードするスーパーコイルcDNAを完全長のCD18と共にトランスフェクトした。
【0022】
トランスフェクトしたCOS細胞を、10%FBS、2mMグルタミン、50 IU/mlペニシリンおよびストレプトマイシンを添加したイスコブ改変ダルベッコ培地(バイオウィッタッカーインク、ウォーカーズビル、メリーランド州)において37℃で24時間増殖させた。細胞を洗浄して、0.1%トリプシン-EDTAによって剥離させ、24もしくは48ウェルプレート(コスター社、ケンブリッジ、マサチューセッツ州)、または100 mmペトリ皿に同じものを播種して24時間培養した。24または48ウェルプレートにおけるコンフルエント単層を細胞表面抗原定量のために用い、ペトリ皿で培養した細胞を免疫沈降試験に用いた。ヘテロダイマー形成および野生型およびCR3I → Gハロ受容体に対するiC3bコーティング赤血球の結合は、記載通りに実施した(リウ(Rieu)ら、1996、J. Biol. Chem. 271:15858)。ハロ受容体に対するiC3bの特異的結合は、偽トランスフェクトCOS細胞に対するバックグラウンド結合を差し引くことによって得た。CR3I → Gに対する結合は、mAb904の結合を用いて表面発現の程度を修正した後、野生型に対する結合の百分率として表記した(リウ(Rieu)ら、1996、J. Biol. Chem. 271:15858)。
【0023】
図3A〜3Jに示すように、11bA123-321は、活性化依存的「生理的」リガンド、補体iC3b、フィブリノーゲン、およびCD54(ICAM-1)に対する結合を示さなかった。対照的に、11bA123-315は、3つ全てのリガンドに対する高親和性結合を示した(図3A〜3J)。双方のドメインは、活性化非依存的「リガンド」NIF(好中球阻止因子)(図3Dおよび3I)、ならびにmAb904(図3Eおよび3J)に対して等しく十分に結合し、認められた差がAドメイン濃度の変化によって引き起こされたものではないことを示した。これらのデータは、「開放型」および「閉鎖型」結晶構造がインテグリン11bAの「高」および「低」親和性状態にそれぞれ対応することを決定的に確立する。
【0024】
実施例 2 :置換による安定な高親和性状態 CD11b 変種の作製
Ile316は、現在までクローニングされた全てのインテグリンαAドメインにおいて不変である(図5)。イソロイシンからグリシンへの置換を有するAドメイン(11bAI → G)は、「高親和性」状態を示した(図4A)。ハロ受容体に同じ置換を作製すると、そのリガンド結合活性は劇的に増加した(図4B)。結晶構造11bAI → Gは、「開放型」11bA123-315型の結晶構造と同一であった。これらのデータは、「開放型」高親和性コンフォメーションが、ドメインに固有のイソロイシンに基づくスイッチによって主に指示され、MIDAS面上のリガンド結合親和性をアロステリックに調節するように作用することを確固として確証する。インテグリンの不活性な活性コンフォメーション異性体がリガンドの非存在下で存在することは既知である(スミス(Smith)ら、上記;ヤン(Yan)ら、J. Biol. Chem. 275:7249〜60、2000)。上記の結果に基づいて、リガンドの役割は、最近提唱されているように(エムセリー(Emsely)ら、上記)、高親和性状態を開始することではなく、低親和性と高親和性状態との平衡が後者に都合がよいように移動することによって高親和性状態を安定化することであるように思われる(リ(Li)ら、上記)。内側から外側へのシグナル伝達によってインテグリンが活性化されると、この平衡が移動して、リガンドの結合に関して「利用可能」になる細胞表面上の高親和性受容体の比率が増加すると考えられる。次に、リガンドが結合すると、おそらくAドメインに対して外因性であって、外側から内側へのシグナル伝達を開始させる新しいエピトープを形成すると考えられる。
【0025】
保存された疎水性分子内ソケット(SILEN、イソロイシン用ソケット;Socket for Isoleucine)は、「閉鎖型」コンフォメーションにおけるI316のフィンガーを固定し;「開放型」構造においてI316がL312に置換される(図1Aおよび1F)。SILENは、「閉鎖型」および「開放型」コンフォメーションの双方においてI135、L164、I236、およびY267の疎水性側鎖によって形成される(図1Cおよび1D)。いくつかのインテグリンにおいて、外側のMIDASに存在する特定の変異は、ハロ受容体において機能獲得作用を生じ、アロステリックに作用すると考えられている(ザング(Zhang)ら、上記;オクスビッヒ(Oxvig)ら、上記;ザング(Zhang)ら、上記)。これらの試験は、ハロ受容体において行われており、可能性があるドメイン内相互作用および/または他の第四の作用のために、機構の解釈を提供することが難しい。これらの変異は、SILENにおいて、またはその周辺で起こる。例えば、CD11bのα1-βBループをCD11aに置換すると、構成的に活性なインテグリンを生じる(ザング(Zhang)ら、上記)。この領域はSILEN残基L164の一つに及ぶ。インテグリンの活性化も同様に、L164-F置換(オクスビッヒ(Oxvig)ら、上記)において起こり、これはSILENを予測可能により小さくして、したがって、I316により適応しにくくなる。E131、D132、K231、およびF234を含む他の活性化変異は、SILENの非常に近位の構造の底部に存在し(オクスビッヒ(Oxvig)ら、上記)、このように、SILENにおいてIleの「フィンガー」の適切なコンフォメーション結合を妨害することによってその作用を発揮する可能性がある。MIDASの反対側上のエピトープによる特定のmAb(例えば、mAb 44a、そのエピトープがSILENの上部の残基に及ぶ)の阻害作用は、同様に、SILENポケットの安定化を通して説明される可能性がある。
【0026】
N末端伸張が存在すると、あまり好ましくない高親和性状態へのAドメインの切り替えが促進される(リ(Li)ら、上記)。由来する3-D構造にはN末端伸長部におけるいずれの残基も含まれないことから、この作用の基礎となる構造の基礎は不明である。しかし、この伸長部内の残基がAドメインにおけるリガンド結合を調節することが認められた。最初に、vWF A1ドメインのこのセグメントにおける天然に存在する点突然変異は、野生型IIB型vWf疾患を有する患者において機能獲得表現型を引き起こす(マツシタ(Matsushita)ら、J. Biol. Chem. 279:13406〜14、1995)。この領域はまたCD11b Aドメインにおいて活性化変異を含む(オクスビッヒ(Oxvig)ら、上記)。第三に、N末端の伸長部からの合成ペプチドは、CD11a-依存的接着を阻害した。CD49b Aドメインからの構造データも同様に、α7ヘリックスを超えて伸張する三つの残基を、N末端伸長部における残基によってその一部が形成されたくびれた部分に充填することができ、NおよびC末端を非常に近位に存在させることを示している(エムスレイ(Emsley)ら、上記)。α7におけるC末端残基の柔軟性も同様に、CD11a Aドメインの結晶およびNMR構造において認められている。併せて考慮すると、これらのデータは、N末端伸長部がSILENからイソロイシンを離すように誘導するための不完全な「競合的」表面による代用物を提供し、いくつかの分子を「開放」型で存在させる可能性があることを示唆している。本発明のデータは、そのような機構がハロ受容体において機能する可能性があることを示唆し、内側から外側へのシグナルによってインテグリンが活性化する機構の基礎を提供する。
【0027】
変種インテグリンポリペプチド
インテグリンαサブユニットにおける配列類似性を考慮して、CD11bのIle316に対応する選択されたインテグリンαサブユニットにおけるIleの置換の欠失によって、サブユニットの野生型より活性な(すなわち、溶液中で、リガンド結合型ポリペプチドの比率がより高くなる)変種インテグリンαサブユニットが形成されるはずである。図5は、9個のインテグリンαサブユニット(CD11b、CD11c、CD11d、CD11a、α1、α2、α10、α11、およびαE)のAドメインのC末端α7ヘリックスのアラインメントを示す。このアラインメントにおいて、他のインテグリンαサブユニットにおけるCD11bのIle316に対応する不変のIleを概説する(矢印)。不変のIleをアラニンもしくはグリシンまたは他のいくつかの適したアミノ酸に置換すると、活性が増加した変種インテグリンポリペプチドが得られるはずである。われわれは、CD11a Aドメインにおいてもこれが当てはまることを示した(図6)。IからGへの置換を含む変種CD11a Aドメインは、ELISAアッセイにおいて活性化依存的リガンドICAM-1に対する結合を示す。この置換がない野生型タンパク質には結合が認められなかった。または、不変のIleと不変のIleに対してC末端の全てのアミノ酸残基を含むインテグリンαサブユニット(またはAドメイン)の一部を欠失させることができる。表2は、図5において示したインテグリンαサブユニットのそれぞれにおける不変のIleの位置の一覧を示す。
【0028】
【表2】
【0029】
本発明は、不変のIle(表2に記載)がGly、Alaまたは他のあるアミノ酸(例えば、Val)に置換されている変種インテグリンαサブユニットを特徴とする。ポリペプチドは、表示のAドメインの一部または全て、例えば、不変のIleの位置を含むAドメインの10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、または200連続アミノ酸を含みうる。本発明には、Ileが欠失している変種インテグリンαサブユニットも含まれる。同様に、不変Ileを除くインテグリンαの完全なAドメインを含むポリペプチドも本発明に含まれる。例えば、CD11bのアミノ酸144〜132位、CD11cのアミノ酸145〜332位、CD11dのアミノ酸144〜331位、CD11aのアミノ酸150〜330位も含まれるが、インテグリンαサブユニットの残りの部分は含まれない。本発明はまた、不変のIleまでを含むが不変のIleを含まず、さらに不変のIle以降のアミノ酸5個を欠失するインテグリンαサブニットのAドメインを含むポリペプチド(例えば、CD11bのアミノ酸144〜331位、しかし332〜336位は含まない;CD11cのアミノ酸145〜332位、しかし333〜337位は含まない;CD11dのアミノ酸144〜331位、しかし、332〜336位は含まない;CD11aのアミノ酸150〜330位、しかし331〜335位は含まない;ヒトα1のアミノ酸139〜330位、しかし331〜335位は含まない;ヒトα2のアミノ酸169〜360位、しかし361〜335位は含まない;ヒトα10のアミノ酸57〜248位、しかし249〜253位は含まない;ヒトα11のアミノ酸159〜348位、しかし、349〜353位は含まない;またはヒトαEのアミノ酸196〜384位、しかし385〜389位は含まない)も特徴とする。
【0030】
インテグリンβサブユニットのA様ドメインにおける配列類似性を考慮すると、CD11bのIle316に対応する選択されたインテグリンβサブユニットにおけるIleの欠失または置換によって、サブユニットの野生型より活性である(すなわち、溶液中でポリペプチドのリガンド結合型がより大きな比率で存在する)変種インテグリンβサブユニットが得られるはずである。図7はインテグリンβサブユニットのA様ドメインのアラインメントである。保存されたIleをAlaもしくはGly、または他の適したアミノ酸に置換すると、活性が増加した変種インテグリンポリペプチドが得られるはずである。または、保存されたIleと不変のIleに対してC末端の全てのアミノ酸残基を含むインテグリンβサブユニット(またはサブユニットのA様ドメイン)の一部を欠失させることができる。下記の表3は、図7に示すインテグリンβサブユニットのそれぞれにおける保存されたIleの位置を記載する。
【0031】
【表3】
【0032】
CD11bの安定な開放(高親和性)および閉鎖(低親和性)型はまた、CD11b(またはCD11b Aドメイン)の所望の型を安定化させるジスルフィド架橋を形成するために、システイン残基をCD11bに導入することによって作製することができる。このように、本発明はまた、F313およびA320がシステイン残基に置換されている変種CD11b Aドメイン含有ポリペプチドを特徴とする(アミノ酸の位置は、Mから始まる完全長のCD11bを指し、Fから始まる成熟CD11bではない)。この変種はAドメインの安定な開放型を形成する。本発明はまた、V315およびA320がシステイン残基に置換されている変種CD11b Aドメイン含有ポリペプチドも特徴とする(アミノ酸の位置は、Mから始まる完全長のCD11bを指し、Fから始まる成熟CD11bではない)。この変種はAドメインの安定な閉鎖型を形成する。類似の変化は、CD11a、CD11c、CD11d、および他のインテグリンサブユニットに由来するAドメイン含有ペプチドにおいて作製することができる。表4は、表記のインテグリンの安定な閉鎖型および開放型を調製するために、システイン残基に変更しなければならない残基を示している。安定な開放型は、活性なインテグリンに対する抗体を作製するために有用である。活性な開放型ポリペプチドはまた、インテグリンとそのリガンドとの相互作用を阻害するためにも有用である。
【0033】
【表4】
【0034】
変種インテグリンポリペプチドをコードする核酸分子
本発明は、変種インテグリンポリペプチド、例えば完全長の変種インテグリンサブユニットまたはその断片(例えば、不変のIleが欠失または置換されている)、例えば生物的に活性な変種インテグリンポリペプチドをコードする単離または精製された核酸分子を特徴とする。
【0035】
一つの態様において、本発明の単離核酸分子には、CD11bαサブユニット(配列番号:1)のアミノ酸123〜315位またはその一部をコードするヌクレオチド配列が含まれる。核酸分子には、非コード配列またはインテグリン以外のタンパク質の全てもしくは一部をコードする配列が含まれうる。
【0036】
もう一つの態様において、本発明の単離核酸分子には、CD11bαサブユニットのアミノ酸123〜315位をコードするヌクレオチド配列の相補体である核酸分子が含まれる。
【0037】
本発明の核酸分子には、配列番号:1の核酸配列の一部のみが含まれうる。例えば、そのような核酸分子には、インテグリンAドメインまたはA様ドメインの全てもしくは一部(例えば、免疫原性もしくは生物学的に活性な部分)をコードする断片が含まれうる。
【0038】
変種インテグリンポリペプチド
本発明にはまた、変種インテグリンポリペプチドが含まれる。そのようなポリペプチドは、組換えDNA法を用いて、化学合成によって、または他の技術を用いて産生することができる。ポリペプチドは、インテグリンAドメインまたはA様ドメインの活性型に結合する抗体を作製するための、免疫原または抗原として用いることができる。ポリペプチドは、翻訳後改変、例えばグリコシル化することができる。
【0039】
変種インテグリンポリペプチドは、変種インテグリンポリペプチドではない第二のポリペプチドの全てまたは一部を含む、融合タンパク質の一部となりうる。この第二のポリペプチドは、変種インテグリンポリペプチドのC末端またはN末端に融合させることができる。第三のペプチドの全てまたは一部が存在してもよい。このように、変種インテグリンポリペプチドは、例えば、GST、免疫グロブリン定常領域、異種シグナル配列に融合することができる。
【0040】
本発明の変種インテグリンポリペプチド融合タンパク質は、薬学的組成物に組み入れて、インビボで被験者に投与することができる。例えば、変種インテグリンポリペプチドは、骨格筋損傷を減少させるために用いることができる。単離されたCD11b Aドメインは既に、この型の損傷の動物モデルにおいて障害を減少させることが判明している。簡単に説明すると、機械による骨格筋損傷を誘導する30分前に、精製した組換え型ラットCD11b Aドメインの1回量(1mg/kg)を、ルイスラットの7群(1群当たり5匹)に静脈内投与した。同数のラットに機能遮断性の抗CD11b/CD18 mAb(1mg/kg)を処置した。対照ラットにおける(PBSによって処置)創傷領域の定量的組織学的検査によって、浮腫、筋繊維の破壊、壊死、および赤血球の滲出が示された。好中球の流入は創傷の30分後に検出され、その3時間後に第二波が起こった。同様に、直接の創傷領域(5mm域)の外側には、活性化好中球の存在に関連して有意な組織壊死を認めた。AドメインまたはmAb-処置ラットは、浸潤PMN数(75±10%、n=35)、および直接の壊死領域外の筋繊維の保護(80±8%、n=35)に同等で有意な減少を示した。これらのデータは、Aドメインがこの筋損傷モデルにおいて有効な組織保護剤となりうることを示している。変種Aドメインも等しく有効となりうる。
【0041】
変種インテグリンポリペプチド融合タンパク質を用いて、変種インテグリンポリペプチドリガンドの生物学的利用率に影響を及ぼすことができる。
【0042】
変種インテグリンポリペプチド融合タンパク質は、例えば、虚血-再灌流損傷(Stroke 30:134〜9、1999)、免疫複合体(J Exp Med 186:1853〜63、1997)、再狭窄、および寄生虫疾患(例えば、鉤虫種(Ancylostoma spp);J Cell Biol 127:2081〜91、1994を参照のこと)によって引き起こされた障害の治療のために、治療的に有用となる可能性がある。
【0043】
その上、本発明の変種インテグリンポリペプチド-融合タンパク質は、被験者において抗変種インテグリンポリペプチド抗体を産生するため、変種インテグリンポリペプチドリガンドを精製するため、および変種インテグリンポリペプチドリガンドと変種インテグリンポリペプチドとの相互作用を阻害する分子を同定するためのスクリーニングアッセイにおいて、免疫原として用いることができる。
【0044】
融合部分(例えば、GSTポリペプチド)を既にコードしている発現ベクターが市販されている。変種インテグリンポリペプチドをコードする核酸は、融合部分が変種インテグリンポリペプチドタンパク質にインフレームで結合するように、そのような発現ベクターにクローニングすることができる。
【0045】
変種インテグリンポリペプチドは、発現ベクター(例えば、プラスミドベクターまたはウイルスベクター)を用いて産生することができる。ベクターは、自律的に増幅することができるか、または宿主ゲノムに組み入れられることができる。発現ベクターには、発現されるべき核酸配列に機能的に結合した少なくとも一つの調節配列(例えば、プロモーター、エンハンサー、ポリA部位、または細胞もしくは組織特異的転写因子結合部位)が含まれうる。発現ベクターは、原核または真核細胞、例えば植物細胞、昆虫細胞、酵母細胞、哺乳類細胞、および大腸菌(E.coli)において発現されるように設計することができる。変種インテグリンポリペプチドを発現させるために用いる宿主に応じて、宿主細胞にとって最適なコドンを用いてポリペプチドをコードすることが望ましい可能性がある。場合によっては、組織特異的発現を指示することができる発現ベクターを用いることが望ましい可能性がある。
【0046】
本発明はまた、変種インテグリンポリペプチドをコードする核酸分子を有する、宿主細胞または組換え型細胞を特徴とする。核酸分子は、宿主ゲノムに組み入れられることができ、または自律的に複製するベクターに存在しうる。宿主細胞は任意の原核または真核細胞、例えば、大腸菌(E.coli)、昆虫細胞、酵母または哺乳類細胞となりうる。核酸分子は、形質転換またはトランスフェクション技術によって宿主細胞に導入することができる。
【0047】
本発明の宿主細胞は、ポリペプチドが産生されるような条件で宿主細胞を培養する段階、および次に細胞または培養培地からポリペプチドを単離する段階によって、変種インテグリンポリペプチドを産生(すなわち、発現)するために用いることができる。
【0048】
変種インテグリンポリペプチドを認識する抗体
本発明はまた、変種インテグリンポリペプチドに対して作製された抗体を特徴とする。そのような抗体は、それらが対応する野生型インテグリンポリペプチドに結合するより大きな親和性によって、変種ポリペプチドに結合する。抗体は標準的な方法を用いて作製することができ、変種インテグリンポリペプチドに対する抗体の結合を、対応する野生型ポリペプチドに対する抗体の結合と比較することによってスクリーニングすることができる。
【0049】
「抗体」という用語は、免疫グロブリン分子、またはその免疫学的活性部分、すなわち抗原結合部分を意味する。免疫グロブリン分子の免疫学的活性部分の例には、F(ab)およびF(ab')2断片が含まれ、これらはペプシンのような酵素によって抗体を処理することによって作製することができる。抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、組換え型、例えばキメラまたはヒト化、完全なヒト、非ヒト、例えば、マウス、または一本鎖抗体となりうる。好ましい態様において、これはエフェクター機能を有する。抗体は、潜在的炎症(例えば、膿瘍、または活性アテローム斑)を診断するために用いられる、毒素または造影剤に結合させることができる。
【0050】
キメラ、ヒト化、しかし最も好ましくは、完全なヒト抗体は、反復投与、例えばヒト患者の治療的処置(およびいくつかの診断的応用)を含む適用にとって望ましい。
【0051】
抗変種インテグリンポリペプチド抗体は、多価抗体を産生するために選択的に二量体または多量体にすることができる、一本鎖抗体でありうる。抗体は、Fc受容体にほとんどまたは全く結合しないように設計することができる。
【0052】
本発明の抗体は、活性コンフォメーションであるインテグリンサブユニットを検出または精製するために用いることができる。このように、それらを用いて、臨床検査技法の一部としてインテグリンの活性型の量および発現パターンを評価することができる。検出は、抗体を検出可能な物質に結合させる(すなわち、物理的に連結させる)ことによって(すなわち抗体の標識)、容易にすることができる。検出可能な物質の例には、様々な酵素、補欠分子団、蛍光材料、発光材料、生体発光材料、および放射活性材料(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、アセチルコリンエステラーゼ、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチン、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシルまたはフィコエリスリン、ルミノール、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、アエコリン、125I、131I、35Sおよび3H)が含まれる。
【0053】
変種インテグリンポリペプチドと相互作用する化合物を同定するためのスクリーニングアッセイ
本発明は、化合物が変種インテグリンポリペプチドに結合するか否か、または化合物がインテグリンリガンド(例えば、天然に存在するインテグリンリガンド)の変種インテグリンポリペプチドに対する結合能を阻害するか否かを評価する方法を特徴とする。方法には、リガンドの存在下または非存在下において、化合物を変種インテグリンポリペプチドに接触させる段階、および変種ポリペプチドに対する化合物またはリガンドの結合能を測定する段階が含まれうる。方法は、インビトロで、例えば細胞不含系において、またはインビボで、例えばツーハイブリッド相互作用捕獲アッセイにおいて行うことができる。方法は、インテグリンと相互作用する天然に存在する分子を同定するために用いることができる。同様に、インテグリンとインテグリンリガンドとの相互作用の、天然または合成の阻害剤を発見するために用いることも可能である。
【0054】
調べる化合物は、例えば、タンパク質、ペプチド、ペプチド模倣体、ペプトイド、および低分子となりうる。被験化合物は、生物ライブラリ;ペプトイドライブラリ;空間的に位置特定可能な平行固相または液相ライブラリ;逆重畳積分を必要とする合成ライブラリ法;「1ビーズ1化合物」ライブラリを含む組み合わせライブラリから得ることができる。
【0055】
化合物のライブラリは、溶液中(例えば、ホーテン(Houghten)、1992、Biotechniques 13:412〜421)、またはビーズ(ラム(Lam)、1991、Nature 354:82〜84)、チップ(フォドー(Fodor)、1993、Nature 364:555〜556)、細菌(ラドナー(Ladner)、米国特許第5,223,409号)、胞子(ラドナー(Ladner)、米国特許第5,223,409号)、プラスミド(カル(Cull)ら、1992、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:1865〜1869)、またはファージ(スコットおよびスミス(ScottおよびSmith)、1990、Science 249:386〜390;デブリン(Devlin)、1990、Science 249:404〜406;クィーラ(Cwirla)ら、1990、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:6378〜6382;フェリチ(Felici)、1991、J. Mol. Biol. 222:301〜310;ラドナー(Ladner)、上記)上に存在してもよい。
【0056】
スクリーニングアッセイは、変種インテグリンポリペプチドタンパク質またはその生物活性部分を発現する細胞を被験化合物に接触させて、被験化合物が変種インテグリンポリペプチド活性を調節できるか否かを決定する細胞に基づくアッセイとなりうる。被験化合物が変種インテグリンポリペプチド活性を調節できるか否かの決定は、例えば、インテグリンリガンドとの結合能をモニターすることによって達成できる。
【0057】
被験化合物が化合物、例えばインテグリンリガンドに対するインテグリンポリペプチドの結合を調節できるか否か、または変種インテグリンポリペプチドに結合できるか否かも同様に評価することができる。これは、例えば化合物、例えば基質の変種インテグリンポリペプチドに対する結合が、複合体における標識化合物、例えば基質を検出することによって決定されうるように、化合物、例えば基質を放射性同位元素または酵素標識に結合させることによって行うことができる。または、変種インテグリンポリペプチドまたはインテグリンリガンドは、被験化合物がインテグリンリガンドに対する変種インテグリンポリペプチドの結合を調節できるか否かをモニターするために、放射性同位元素または酵素標識に結合させることができる。例えば、化合物は、125I、35S、14C、または3Hによって直接または間接的に標識することができ、放射性同位元素は、放射線放出の直接計数またはシンチレーション計数によって検出することができる。または、化合物は、例えば西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、またはルシフェラーゼによって酵素的に標識することができ、酵素標識は、適当な基質の産物への変換を測定することによって検出される。
【0058】
さらにもう一つの態様において、変種インテグリンポリペプチドまたはその生物活性部分を被験化合物に接触させ、変種インテグリンポリペプチドまたはその生物活性部分に化合物が結合するか否かを評価する、細胞不含アッセイが提供される。本発明のアッセイにおいて用いられる変種インテグリンポリペプチドの好ましい生物活性部分には、インテグリンリガンドに結合する断片が含まれる。
【0059】
単離されたタンパク質(例えば、変種インテグリンポリペプチドタンパク質またはその生物活性部分)の可溶性および/または膜結合型は、本発明の細胞不含アッセイにおいて用いることができる。タンパク質の膜結合型を用いる場合、可溶化剤を用いることが望ましい可能性がある。そのような可溶化剤の例には、n-オクチルグルコシド、n-ドデシルグルコシド、n-ドデシルマルトシド、オクタノイル-N-メチルグルカミド、デカノイル-N-メチルグルカミド、トライトン(登録商標)X-100、トライトン(登録商標)X-114、テジット(登録商標)、イソトリデシルポリ(エチレングリコールエーテル)n、3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアミニオ]-1-プロパンスルホネート(CHAPS)、3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアミニオ]-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホネート(CHAPSO)、またはN-ドデシル=N,N-ジメチル-3-アンモニオ-1-プロパンスルホネートのような非イオン性洗浄剤が含まれる。
【0060】
細胞不含アッセイは、標的遺伝子タンパク質と被験化合物との反応混合物を、二つの成分が相互作用して結合するために十分な条件および時間で調製する段階、次に除去および/または検出することができる複合体を形成する段階を含む。
【0061】
二つの分子間の相互作用も同様に、蛍光エネルギー移動(FET)(例えば、ラコヴィッツ(Lakowicz)ら、米国特許第5,631,169号;スタブリャノポーロス(Stavrianopoulos)ら、米国特許第4,868,103号を参照のこと)を用いて検出することができる。第一の「ドナー」分子上での蛍光体標識は、その放出された蛍光エネルギーが第二の「アクセプタ」分子上の蛍光標識によって吸収され、今度は吸収されたエネルギーによって蛍光を発することができるように選択される。または、「ドナー」タンパク質分子は、単にトリプトファン残基の天然の蛍光エネルギーを利用してもよい。「アクセプタ」分子の標識が「ドナー」の標識と区別されるように、異なる波長の光を放出する標識を選択する。二つの標識間でのエネルギー移動効率は分子が離れている距離に関連するため、分子間の空間的関係を評価することができる。結合が分子間で起こる状況では、アッセイにおける「アクセプタ」分子標識の蛍光放出は最大でなければらなない。FET結合事象は、当技術分野で周知である標準的な蛍光検出手段(例えば、蛍光計を用いて)によって従来のように検出することができる。
【0062】
もう一つの態様において、変種インテグリンポリペプチドタンパク質が標的分子、例えばインテグリンリガンドに結合するか否かを決定することは、上記のようにリアルタイム生体分子相互作用分析(BIA)(例えば、シェランダーおよびウルバニクツキー(SjolanderおよびUrbaniczky)(1991)、Anal. Chem. 63:2338〜2345およびスザボ(Szabo)ら、(1995)、Curr. Opin. Struct. Biol. 5:699〜705を参照のこと)を用いて行うことができる。「表面プラズモン共鳴」または「BIA」は、いかなる相互作用物質も標識せずに、リアルタイムで生体特異的相互作用を検出する(例えば、ビアコア)。結合表面での質量の変化(結合事象を示す)によって、表面近傍の光の屈折指数の変化が起こり(表面プラズモン共鳴の光学現象(SPR))、検出可能なシグナルが得られ、これを生体分子間のリアルタイム反応の指標として用いることができる。
【0063】
一つの態様において、ポリペプチドまたは被験化合物を固相上に固定する。固相に固定したポリペプチド/被験化合物は、反応終了時に検出することができる。好ましくは、ポリペプチドを固相表面に固定することができ、被験化合物(固定していない)を、検出可能な標識によって直接または間接的に標識することができる。
【0064】
一つまたは双方のタンパク質の非複合体型からの複合体型の分離を容易にするためと共に、アッセイを自動化に適応させるために、変種インテグリンポリペプチド、抗変種インテグリンポリペプチド抗体またはその標的分子を固定することが望ましい可能性がある。変種インテグリンポリペプチドタンパク質に対する被験化合物の結合、または候補化合物の存在下および非存在下で標的分子と変種インテグリンポリペプチドタンパク質との相互作用は、反応物質を含む適した任意の容器において行うことも可能である。そのような容器の例には、マイクロタイタープレート、試験管、および微量遠心管が含まれる。一つの態様において、一つまたは双方のタンパク質がマトリクスに結合できるようにするドメインを付加する融合タンパク質を提供することができる。例えば、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ/変種インテグリンポリペプチド融合タンパク質またはグルタチオン-S-トランスフェラーゼ/標的融合タンパク質を、グルタチオンセファロースビーズ(シグマケミカル社、セントルイス、ミズーリ州)またはグルタチオン誘導体化マイクロタイタープレートに吸収させることができ、次にこれを被験化合物、または被験化合物と吸収されない標的タンパク質もしくは変種インテグリンポリペプチドタンパク質のいずれかと混合して、混合物を複合体を形成する条件(例えば、塩およびpHに関して生理的条件)でインキュベートする。インキュベーションの後、ビーズまたはマイクロタイタープレートウェルを洗浄して、未結合の化合物、ビーズの場合には固定したマトリクスを除去し、複合体は例えば上記のように直接または間接的に決定することができる。または、複合体をマトリクスから解離させて、変種インテグリンポリペプチド結合または活性レベルを標準的な技術を用いて決定することができる。
【0065】
変種インテグリンポリペプチドまたは標的分子のいずれかをマトリクス上に固定する他の技術には、ビオチンとストレプトアビジンとを用いることが含まれる。ビオチン結合変種インテグリンポリペプチドまたは標的分子は、当技術分野で既知の技術(例えば、ビオチン結合キット、ピアスケミカルズ社、ロックフォード、イリノイ州)を用いてビオチン-NHS(N-ヒドロキシ-スクシニミド)から調製して、ストレプトアビジンコーティング96ウェルプレート(ピアスケミカル社)のウェルに固定することができる。
【0066】
アッセイを行うために、固定成分を含むコーティング表面に非固定成分を加える。反応が終了した後、形成された如何なる複合体も固相表面上に固定されたままであるように未反応成分を除去する(例えば、洗浄によって)。固相表面に固定された複合体の検出は、多くの方法によって行うことができる。先に固定されていない成分が予め標識されている場合、表面上に固定された標識が検出されれば、複合体が形成されたことを示している。先に固定されていない分子が予め標識されていない場合、間接的な標識、例えば固定成分に対して特異的な標識抗体(次に抗体を、例えば標識抗Ig抗体によって直接または間接的に標識することができる)を用いて、表面上に固定された複合体を検出することができる。
【0067】
一つの態様において、このアッセイは、変種インテグリンポリペプチドまたは標的分子と反応するが、変種インテグリンポリペプチドのその標的分子に対する結合を妨害しない抗体を利用して行われる。そのような抗体は、プレートのウェルに誘導体化することができ、未結合の標的または変種インテグリンポリペプチドタンパク質は抗体の結合によってウェルに捕獲される。GST固定複合体に関して先に記述した方法の他に、そのような複合体を検出する方法には、変種インテグリンポリペプチドまたは標的分子に反応する抗体を用いて複合体を免疫学的に検出することと共に、変種インテグリンポリペプチドまたは標的分子に関連した酵素活性の検出に依存する酵素結合アッセイが含まれる。
【0068】
または、細胞不含アッセイは液相において行うことができる。そのようなアッセイにおいて、反応産物は、クロマトグラフィー、電気泳動、および免疫沈降を含む多くの標準的な技術によって未反応成分から分離する。好ましい態様において、アッセイには、変種インテグリンポリペプチドまたはその生物活性部分を、変種インテグリンポリペプチドに結合する既知の化合物に接触させてアッセイ混合物を形成すること、アッセイ混合物を被験化合物に接触させること、および被験化合物が変種インテグリンポリペプチドと相互作用するか否かを決定する段階が含まれ、被験化合物が変種インテグリンポリペプチドと相互作用するか否かを決定することには、被験化合物が選択的に変種インテグリンポリペプチドもしくはその生物活性部分に結合することができるか否か、または既知の化合物と比較して標的分子の活性を調節することができるか否かを決定することが含まれる。
【0069】
変種インテグリンポリペプチドとインテグリンリガンドとの相互作用を妨害する化合物を同定するために、変種インテグリンポリペプチドとリガンドとを含む反応混合物を、2つの産物が複合体を形成するために十分な条件および時間でインキュベートする。阻害物質を調べるために、反応混合物は被験化合物の存在下および非存在下で提供する。被験化合物は、最初に反応混合物に含めることができ、または一度に加えてから、標的遺伝子およびその細胞もしくは細胞外結合パートナーを加えることができる。対照反応混合物は、被験化合物を加えないで、またはプラセボを加えてインキュベートする。次に、変種インテグリンポリペプチドとインテグリンリガンドとの任意の複合体の形成を検出する。対照反応において複合体が形成されるが、被験化合物を含む反応混合物において形成されなければ、化合物が相互作用を妨害することを示している。さらに、被験化合物と変種インテグリンポリペプチドとを含む反応混合物における複合体形成を、被験化合物と対応する野生型インテグリンポリペプチドとを含む反応混合物における複合体形成と比較することができる。これらのアッセイは、不均一または均一フォーマットで行うことができる。不均一アッセイは、変種インテグリンポリペプチドまたは結合パートナー(すなわち、インテグリンリガンド)のいずれかを固相上に固定すること、および反応終了時に固相上に固定された複合体を検出することを含む。均一アッセイでは、反応全体を液相で行う。いずれかのアプローチにおいて、反応物質を加える順序は、調べる化合物に関して異なる情報が得られるように変更することができる。例えば、変種インテグリンポリペプチドと結合パートナー(例えば、インテグリンリガンド)との相互作用を、例えば競合によって妨害する被験化合物は、試験物質の存在下で反応を行うことによって同定することができる。または、予め形成された複合体を破壊する被験化合物、例えば複合体から成分の一つを置換するより高い結合定数を有する化合物は、複合体が形成された後に反応混合物に被験化合物を加えることによって調べることができる。様々なフォーマットを下記に簡単に説明する。
【0070】
不均一アッセイ系において、変種インテグリンポリペプチドまたはインテグリンリガンドのいずれかを固相表面(例えば、マイクロタイタープレート)に固定して、非結合種は直接または間接的に標識する。固定種は、非共有または共有結合によって固定することができる。または、固定すべき種に特異的な固定抗体を用いて固相にその種を固定することができる。
【0071】
アッセイを行うために、固定種のパートナーを被験化合物と共にまたは被験化合物の非存在下でコーティング表面に曝露する。反応が終了した後、未反応の成分は除去されるが(例えば、洗浄によって)、形成された如何なる複合体も固相表面に固定されたままである。非固定種が予め標識されている場合、表面上に固定された標識が検出されれば、複合体が形成されたことを示している。非固定種が予め標識されていない場合、間接的な標識を用いて、例えば最初の非固定種に対して特異的な標識抗体(次に抗体を、例えば標識抗Ig抗体によって直接または間接的に標識することができる)を用いて、表面上に固定された複合体を検出することができる。反応成分を加える順序に応じて、複合体形成を阻害するまたは予め形成された複合体を破壊する被験化合物を検出することができる。
【0072】
または、反応は、被験化合物の存在下または非存在下で液相で行うことができ、反応産物を未反応成分から分離して、例えば溶液において形成された如何なる複合体も固定するために結合成分の一つに対して特異的な固定抗体と、固定された複合体を検出するための他のパートナーに対して特異的な標識抗体とを用いて、複合体を検出することができる。この場合も、反応物質を液相に加える順序に応じて、複合体を阻害する、または予め形成された複合体を破壊する被験化合物を同定することができる。
【0073】
本発明のもう一つの態様において、均一アッセイを用いることができる。例えば、変種インテグリンポリペプチドまたはインテグリンリガンドのいずれかが標識されているが、標識によって産生されたシグナルが複合体形成によって消光するような、変種インテグリンポリペプチドとインテグリンリガンドとの予め形成された複合体を調製する(例えば、このアプローチをイムノアッセイに利用する米国特許第4,109,496号を参照のこと)。種の一つに競合する、または予め形成された複合体から種の一つを置換する試験物質を加えれば、バックグラウンドを超えるシグナルが産生されると考えられる。このようにして、変種インテグリンポリペプチド結合パートナー相互作用を破壊する試験物質を同定することができる。
【0074】
さらにもう一つの局面において、変種インテグリンポリペプチドタンパク質は、変種インテグリンポリペプチドに結合または相互作用する他のタンパク質を同定するために、ツーハイブリッドアッセイまたはスリーハイブリッドアッセイにおける「ベイト(bait)」タンパク質として用いることができる(例えば、米国特許第5,283,317号;ゼルボス(Zervos)ら、(1993)Cell 72:223〜232;マデュラ(Madura)ら(1993)J. Biol. Chem. 268:12046〜12054;バーテル(Bartel)ら(1993)Biotechniques 14:920〜924;イワブチ(Iwabuchi)ら(1993)Oncogene 8:1693〜1696;およびブレント(Brent)、国際公開公報第94/10300号を参照のこと)。
【0075】
ツーハイブリッドアッセイは、ベイトタンパク質として変種Aドメインを用いて行うことができる。簡単に説明すると、変種AドメインをLexA DNA結合ドメインに融合させて、これをベイトとして用いる。プレイ(prey)は、N末端核局在シグナル、LexA活性化ドメイン、およびエピトープタグとの融合タンパク質としてTrxA発現の活性部位ループにクローニングした、アプタマーライブラリである(コラス(Colas)ら、1996 Nature 380:548;およびギウリス(Gyuris)ら、Cell 1993、75:791)。酵母細胞をベイトおよびプレイ遺伝子によって形質転換する。アプタマーが変種Aドメインに結合すれば、LexA活性化ドメインは、LexA DNA結合ドメインと近位になり、適切に配置されたLexA結合部位を有する遺伝子の発現が増加する。
【0076】
この系を調べるために、酵母株EGY48をベイトプラスミドおよびpSH18-34(URA3、その中でGAL1エンハンサー様の上流活性化配列(UASG)が、8個のLexA二量体の結合部位に置換されているlacZに融合したGAL1プロモーターを含む、2μmプラスミド)によって形質転換した。酵母株は、2つのレポーター遺伝子、LexAop-LEU2(酵母染色体LEU2遺伝子を置換)およびLexAop-lacZを2μm HIS3+プラスミド上に含む。形質転換細胞をX-galを含む培地上で播種した。ベイトの存在によって、β-ガラクトシダーゼの発現は引き起こされなかった。形質転換細胞はロイシン欠損プレートにおいて増殖しなかったことから、ベイト自身も同様にEGY48においてLexAop-Leu2遺伝子を活性化しなかった。次に、抑制型のアッセイにおいて、ベイトプラスミドおよびpJK101レポーターを用いて、ベイトの核輸送を評価した。このアッセイにおいて、転写的に不活性なLexA融合タンパク質によるDNA結合を検出することができる。pJK101レポーターは、URA3、すなわちUASGのほとんどを含む2μmプラスミドである。LexAの高親和性部位は、Gal1転写開始とUASGとのあいだに存在する。CD11bA-LexAベイトは、ガラクトース培地で増殖させるとpJK101プラスミドを有する酵母のガラクトシダーゼ活性を障害し、このベイトが核に入ることを示している。
【0077】
アプタマーライブラリをLeuおよびlacZレポーター含有酵母細胞に導入した。ライブラリタンパク質の合成は、ガラクトース培地において酵母を増殖させることによって誘導した。ベイトに結合する適したプレイが存在しない場合、酵母細胞は、Leu-培地上で増殖せず、β-ガラクトシダーゼ活性を有しない。適したプレイを発現する細胞は、Leu培地上でコロニーを形成して、β-ガラクトシダーゼを有する。選択的ガラクトース(しかし、グルコースではない)誘導性発現によって、LeuおよびLacZ表現型を決定的にライブラリタンパク質に帰することができ、その後の分析によって除外しなければならないライブラリプラスミドの数を減少させる。陽性コロニー(すなわち、ガラクトース上で増殖することができるコロニー、Ura-、Trp-、His-、Leu-プレート)由来のプラスミドを救出した(ホフマン(Hoffman)ら、1987、Gene 57:267)。それぞれのクローンの特徴をさらに調べる前に、ベイトとの相互作用の特異性を調べた。これは、無関係または非機能的なベイト(例えばそれぞれ、CD11a Aドメイン-LexAおよび11bA-D242A-LexA)、ベイトのDNA結合ドメイン部分と特異的に、または非特異的にプロモーターもしくは他の転写機構のエレメントと相互作用しないことを示すことによって行われた。ライブラリプラスミドは、ガラクトース依存的Leu+lacZ+酵母から救出して、当初の選択株および異なるベイトを含む他の株に再度導入した。特異的相互作用物質は、ガラクトース依存的Leu+およびlacZ+表現型を、当初のベイトを含む酵母に付与するが、無関係なベイトを含む酵母には付与しない。相互作用交配アッセイを用いて特異性を調べることができる。簡単に説明すると、プレイを含む株を当初のベイトタンパク質または対照ベイトタンパク質のいずれかを発現する異なる酵母株と交配させる。レポーターは、当初のベイトを含む二倍体でのみ活性となるはずである(フィンレー(Finley)ら、(1994)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:12980)。
【0078】
本発明はさらに、上記のスクリーニングアッセイによって同定される新規作用物質に関する。したがって、そのような作用物質による処置の有効性、毒性、副作用、または作用機序を決定するために、本発明に記載されるように同定された作用物質(例えば、変種インテグリンポリペプチド調節作用物質)を適当な動物モデルにおいてさらに用いることは本発明の範囲内である。さらに、上記のスクリーニングアッセイによって同定された新規作用物質は、本明細書に記載の治療のために用いることができる。
【0079】
薬学的組成物
変種インテグリンポリペプチド、その断片と共に本発明の抗変種インテグリンポリペプチド抗体(本明細書において「活性化合物」とも呼ばれる)は、薬学的組成物に組み入れることができる。そのような組成物は、典型的にタンパク質または抗体と薬学的に許容される担体とを含む。本明細書において用いられるように、「薬学的に許容される担体」という句には、薬学的投与に適合性の溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌および抗真菌剤、等張剤ならびに吸収遅延剤等が含まれる。補助活性化合物も同様に組成物に組み入れることができる。
【0080】
薬学的組成物は、その意図する投与経路に適合するように製剤化される。投与経路の例には、非経口、静脈内、皮内、皮下、経口、吸入、経皮、経粘膜、および直腸投与が含まれる。非経口、皮内、または皮下適用のために用いられる溶液または懸濁液には、以下の成分が含まれうる:注射用水、生理食塩液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、または他の合成溶媒のような滅菌希釈剤;ベンジルアルコール、またはメチルパラベンのような抗菌剤;アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムのような抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸のようなキレート剤;酢酸塩、クエン酸塩、または燐酸塩のような緩衝液、および塩化ナトリウムまたはデキストロースのような等張性調節剤。pHは、塩酸または水酸化ナトリウムのような酸または塩基によって調節することができる。非経口調製物は、ガラスもしくはプラスチック製のアンプル、使い捨てシリンジ、または多数回投与バイアルに封入することができる。
【0081】
注射可能な使用に適した薬学的組成物には、滅菌水溶液(水溶性の場合)または分散剤、および滅菌注射溶液または分散液の即時調合調製物のための滅菌粉末が含まれる。静脈内投与の場合、適した担体には、生理食塩液、静菌水、クレモフォアEL(Cremophor EL;商標)(BASF、パーシッパニー、ニュージャージー州)または燐酸緩衝生理食塩液(PBS)が含まれる。全ての場合において、組成物は滅菌でなければならず、容易なシリンジ操作性が存在する程度に流動性でなければならない。組成物は、製造および保存条件で安定でなければならず、細菌および真菌のような微生物の混入作用に対して保護されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコール等)を含む溶媒または分散媒体、ならびにその適した混合物となりうる。適切な流動性は、例えばレシチンのようなコーティングを用いることによって、分散剤の場合には必要な粒子径を維持することによって、および界面活性剤を用いることによって維持することができる。微生物の作用の予防は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサール等によって行うことができる。多くの場合、等張剤、例えば糖、マンニトール、ソルビトールのような多価アルコール、塩化ナトリウムを組成物に含めることが好ましいと考えられる。注射可能組成物は、吸収を遅らせる作用物質、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを組成物に含めることによって持続的に吸収させることができる。
【0082】
滅菌注射用溶液は、先に列挙した成分の一つまたは組み合わせと共に適当な溶媒において活性化合物の必要量を組み入れて、必要であれば濾過滅菌を行うことによって調製することができる。一般的に、分散剤は、基礎分散媒体と先に列挙した必要な他の成分とを含む滅菌溶媒に活性化合物を組み入れることによって調製される。滅菌注射溶液の調製のための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、先に濾過滅菌したその溶液から、活性成分プラスさらなる所望の成分の粉末を生じる真空乾燥および凍結乾燥である。
【0083】
経口組成物には一般的に、不活性希釈剤または食用担体が含まれる。経口治療的投与の目的に関して、活性化合物は賦形剤と共に組み入れて、錠剤、トローチ剤、またはカプセル剤、例えばゼラチンカプセルの形で用いることができる。経口組成物は、マウスウォッシュとして用いられる液体担体を用いて調製することも可能である。薬学的に適合性の結合剤、および/またはアジュバント材料を、組成物の一部として含めることができる。錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤等は、以下の成分または類似の特性を有する化合物のいかなるものも含むことができる:微結晶セルロース、トラガカントゴム、もしくはゼラチンのような結合剤;デンプンもしくは乳糖のような賦形剤;アルギン酸、プリモゲル、もしくはコーンスターチのような崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムもしくはステローテスのような潤滑剤;二酸化珪素コロイドのような滑り剤;蔗糖もしくはサッカリンのような甘味料;またはペパーミント、サリチル酸メチル、もしくはオレンジ香料のような香料。
【0084】
吸入投与の場合、化合物は、適した噴射剤、例えば、二酸化炭素のようなガス含む加圧容器まもしくディスペンサー、またはネブライザーからエアロゾルスプレーの形で輸送される。
【0085】
全身投与はまた、経粘膜または経皮手段によっても行うことができる。経粘膜または経皮投与の場合、浸透すべき障壁に対して適当な浸透剤を製剤において用いる。そのような浸透剤は一般的に当技術分野で既知であり、例えば、経粘膜投与に関して、洗浄剤、胆汁酸塩、およびフシジン酸誘導体が含まれる。経粘膜投与は、鼻腔内スプレーまたは坐剤を用いて行うことができる。経皮投与の場合、活性化合物は、当技術分野で一般的に既知のように軟膏剤、軟膏、ゲル、またはクリームに製剤化される。
【0086】
化合物はまた、直腸輸送のために坐剤(例えば、カカオバターおよび他のグリセリドのような従来の坐剤基剤と共に)または浣腸の形で調製することができる。
【0087】
一つの態様において、活性化合物は、インプラントおよび微量封入輸送系を含む、徐放性製剤のような、化合物が体から迅速に消失しないようにする担体と共に調製される。エチレン酢酸ビニル、多価無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸のような生体分解性の生体適合性ポリマーを用いることができる。そのような処方を調製する方法は当業者に明らかである。材料はまた、アルザ社およびノバファーマシューティカルズインクから購入することができる。リポソーム懸濁液(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体によって感染細胞にターゲティングされるリポソームを含む)も同様に薬学的に許容される担体として用いることができる。これらは、例えば、米国特許第4,522,811号に記載されるように当業者に既知の方法に従って調製することができる。
【0088】
投与を容易にするため、および投与を均一にするために、単位用量で経口または非経口組成物を処方することが都合がよい。本明細書において用いられる用量型は、各単位が必要な薬学的担体に関連して所望の治療効果を生じるように計算された活性化合物の規定量を含む、処置される被験者に関して単位用量として適している物理的に個別の用量を意味する。
【0089】
そのような化合物の毒性および治療的有効性は、細胞培養または実験動物における標準的な薬学的技法、例えばLD50(集団の50%に対して致死的な用量)およびED50(集団の50%において治療的に有効な用量)を決定することによって決定することができる。毒性と治療効果の用量比が治療指数であり、LD50/ED50比として表記されうる。高い治療指数を示す化合物が好ましい。毒性副作用を示す化合物を用いてもよいが、非罹患細胞に対する可能性がある損傷を最小限にして、それによって副作用を減少させるために、そのような化合物を罹患組織の部位にターゲティングする輸送系を設計するように注意しなければならない。
【0090】
細胞培養アッセイおよび動物試験から得られたデータは、ヒトにおいて用いられる幅広い用量を処方するために用いることができる。そのような化合物の用量は好ましくは、ほとんどまたは全く毒性を示さないED50を含む循環中の濃度範囲内に存在する。用量は、用いる投与剤形および利用する投与経路に応じてこの範囲内で変動してもよい。本発明の方法において用いられる任意の化合物に関して、治療的に有効な用量は、細胞培養アッセイから最初に推定することができる。用量は、細胞培養において決定されたIC50(すなわち、症状の最大阻害の半量を得る被験化合物の濃度)を含む循環中の血漿濃度範囲を得るように動物モデルにおいて処方してもよい。そのような情報を用いて、ヒトにおける有用な用量をより正確に決定することができる。血漿中レベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィーによって測定してもよい。
【0091】
本明細書において定義されるように、タンパク質またはポリペプチドの治療的有効量(すなわち、有効量)は、約0.001〜30 mg/kg体重、好ましくは約0.01〜25 mg/kg体重、より好ましくは約0.1〜20 mg/kg体重、およびさらにより好ましくは約1〜10 mg/kg、2〜9mg/kg、3〜8mg/kg、4〜7mg/kg、または5〜6mg/kg体重の範囲である。タンパク質またはポリペプチドは、約1〜10週間のあいだに、好ましくは2〜8週間、より好ましくは3〜7週間、およびさらにより好ましくは約4、5、または6週間のあいだに週1回投与することができる。当業者は、疾患または障害の重症度、これまでの治療、被験者の全身健康および/または年齢、および存在する他の疾患を含むがこれらに限定されない特定の要因が、被験者を有効に治療するために必要な用量および時期に影響を及ぼす可能性があることを認識すると考えられる。その上、タンパク質、ポリペプチド、または抗体の治療的有効量による被験者の治療には、一回治療が含まれうる、または好ましくは一連の治療が含まれうる。
【0092】
抗体に関して、好ましい用量は0.1 mg/kg体重(一般的に10 mg/kg〜20 mg/kg)である。抗体が脳において作用する場合、50 mg/kg〜100 mg/kgの用量が通常適当である。一般的に部分的なヒト抗体および完全なヒト抗体は、他の抗体よりヒトの体内において長い半減期を有する。したがって、より低い用量およびあまり頻繁でない投与がしばしば可能である。脂質付加のような改変を用いて抗体を安定化させ、取り込みおよび組織の浸透(例えば、脳への)を増強することができる。抗体の脂質付加方法は、クルイクシャンクら(Cruikshank、1997、J. Acquired Immune Deficiency Syndromes and Human Retrovirology 14:193)に記載されている。
【0093】
本発明は、発現または活性を調節する作用物質を含む。作用物質は例えば低分子であってもよい。例えば、そのような低分子には、ペプチド、ペプチド模倣体(例えば、ペプトイド)、アミノ酸、アミノ酸類似体、ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド類似体、ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、1モルあたりの分子量が約10,000 g未満の有機または無機化合物(すなわち、ヘテロ有機または有機金属化合物を含む)、1分子あたりの分子量が約5,000 g未満の有機または無機化合物、1分子あたりの分子量が約1,000 g未満の有機または無機化合物、1分子あたりの分子量が約500 g未満の有機または無機化合物、ならびにそのような化合物の塩、エステル、および他の薬学的に許容される型が含まれるがこれらに限定されない。
【0094】
例としての用量には、被験者または試料重量1kgあたり低分子のミリグラムまたはマイクログラム量が含まれる(例えば、約1μg/kg〜約500 mg/kg、約100 μg/kg〜約5mg/kg、または約1μg/kg〜約50 μg/kg)。さらに、低分子の適当な用量は、調節すべき発現または活性に関する低分子の有効性に依存する。これらの低分子の一つまたは複数を、本発明のポリペプチドまたは核酸の発現または活性を調節するために、動物(例えば、ヒト)に投与する場合、医師、獣医師、または研究者は、例えば最初に比較的低用量を処方して、その後適当な反応が得られるまで用量を増加させてもよい。さらに、任意の特定の動物被験者の特定の用量レベルも、用いる特定の化合物の活性、被験者の年齢、体重、全身体重、全身健康、性別、および食事、投与時期、投与経路、排泄速度、薬剤併用、および調節すべき発現または活性の程度を含む様々な要因に依存すると理解される。
【0095】
抗体(またはその断片)は、サイトトキシン、治療作用物質、または放射活性金属イオンのような治療部分に結合してもよい。サイトトキシンまたは細胞毒物質には、細胞にとって有害な任意の作用物質も含まれる。例には、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、エチジウムブロマイド、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミスラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、およびピューロマイシンならびにその類似体または相同体が含まれる。治療作用物質には、抗代謝剤(例えば、メソトレキセート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、5-フルオロウラシル、デカルバジン)、アルキル化剤(例えば、メクロルエタミン、チオエパクロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)、およびロムスチン(CCNU)、シクロトスファミド(cyclothosphamide)、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、およびシス-ジクロロジアミンプラチナ(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(これまでダウノマイシン)、およびドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(これまでアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミスラマイシン、およびアントラマイシン(AMC))、ならびに抗分裂剤(例えば、ビンクリスチンおよびビンブラスチン)が含まれる。
【0096】
本発明の結合体は、所定の生物反応を改変するために用いることができ、薬剤部分は、古典的な化学治療物質に限定されると解釈すべきではない。例えば、薬剤部分は、所望の生物活性を有するタンパク質またはポリペプチドであってもよい。そのようなタンパク質には、例えばアブリン、リシンA、シュードモナス(Pseudomonas)外毒素、ジフテリア毒素、またはサイトカインもしくはインターロイキンのようなタンパク質が含まれてもよいが、これらに限定されない。
【0097】
または抗体は、シーガル(Segal)らによって米国特許第4,676,980号に記載されるように、第二の抗体に結合して抗体のヘテロ結合体を形成することができる。
【0098】
本発明の核酸分子は、ベクターに挿入して、これを遺伝子治療ベクターとして用いることができる。遺伝子治療ベクターは、例えば、静脈内注射、局所投与(米国特許第5,328,470号を参照のこと)によって、または定位注射(例えば、チェン(Chen)ら(1994)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:3054〜3057)によって被験者に輸送することができる。遺伝子治療ベクターの薬学的調製物には、許容される希釈剤における遺伝子治療ベクターが含まれうる、または遺伝子輸送媒体が抱埋される徐放性マトリクスを含みうる。または、完全な遺伝子輸送ベクターを、組換え型細胞、例えばレトロウイルスベクターから無傷で産生することができる場合、薬学的調製物には、遺伝子輸送系を生じる一つまたは複数の細胞が含まれうる。
【0099】
薬学的組成物は、投与のための説明書と共に容器、パック、ディスペンサーに含まれうる。
【0100】
インテグリンを含むプロセスの動物モデル
可能性がある治療的組成物を調べるために有用となりうる血管損傷モデルは、サイモン(Simon)ら(J. Clin. Invest. 2000 105:293)によって記述される。タン(Tang)ら(1997、J. Exp. Med 186:1853)は、様々なスクリーニングアッセイにおいて有用となりうるCD11bノックアウトマウスを記述している。火傷の損傷に関する動物モデルも同様に有用となる可能性がある(Plast Reconstr Surg 1995、96:1177)。
【0101】
治療方法
本発明は、異常または望まないインテグリン発現または活性に関連した障害の危険性をもつ(または感受性がある)か、または障害を有する被験者を治療する、予防的および治療的方法を提供する。
【0102】
本明細書において用いられる「治療」または「患者を治療する」とは、疾患、疾患の症状、または疾患に対する素因を治療、治癒、緩和、軽減、変化、治療、改善、和らげる、改善もしくは影響を及ぼす目的で、治療物質を患者に適用もしくは投与すること、または疾患、疾患の症状、もしくは疾患に対する素因を有する患者から単離された組織もしくは細胞株に対する治療物質の適用もしくは投与であると定義される。治療物質には、低分子、ペプチド、抗体、リボザイム、およびアンチセンスオリゴヌクレオチドが含まれる。
【0103】
そのような化合物の毒性および治療的有効性は、細胞培養または実験動物において標準的な薬学的技法によって、例えば、LD50(集団における50%に致死的な用量)、およびED50(集団における50%において治療的に有効な用量)を決定することによって決定することができる。毒性と治療効果の用量比が治療指数であり、LD50/ED50比として表記することができる。高い治療指数を示す化合物が好ましい。毒性副作用を示す化合物を用いてもよいが、非罹患細胞に対する可能性がある損傷を最小限にして、それによって副作用を減少させるために、そのような化合物を罹患組織の部位にターゲティングする輸送系を設計するように注意しなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1A−1B】CD11b Aドメインの結晶構造の表面の略図をその「閉鎖型」(図1A)および「開放型」(図1B)状態で示し、C末端のα7ヘリックスを灰色のリボンで示し、イソロイシン(I316)残基を黒色で示す。矢印はMIDAS表面を指す。MIDASおよびSILEN(イソロイシンのためのソケット)は、Aドメイン構造のほぼ正反対の末端に存在する。
【図1C−1D】SILEN残基(I316から半径4Åの範囲内に存在するI135、L164、I236、Y267)の拡大表面図を「閉鎖型」(図1C)および「開放型」(図1D)コンフォメーションで示す。「閉鎖」型(図1C)では、I316側鎖はSILENに入り込んでいる;L312は上部に認められる。L312は「開放型」構造(図1D)ではSILENを覆うように移動する。図1A〜1DはGRASP(バリー・ホニヒ(Barry Honig)、コロンビア大学、ニューヨーク)を用いて作製した。
【図1E−1F】「閉鎖型」(図1E)および「開放型」(図1F)コンフォメーションにおけるI316配位結合ソケットの立体図を示す。SILEN残基およびI316およびL312に印をつけている。
【図2A−2B】11bA123-321(図2A)および11bA123-315構造のα7のC末端部分の2F0-Fc電子密度マップを示す。マップは、1.1σで輪郭を示し、Oによって作製する。
【図2C−2D】CD11b Aドメインについてそれぞれ報告された「閉鎖」(図2C、緑色の記録)および「開放」(図2D、緑色の記録)型に、11bA123-321(図2C、赤色の記録)および11bA123-315(図2D、赤色の記録)構造を完全に重ね合わせて示す、リボン略図を示す。金属イオンを紫色の球として示す。
【図2E−2F】MIDASの立体図を11bA123-321(図2E)および11bA123-315(図2F)構造で示す。直接のD242金属結合、および間接的なT209-水-金属結合(図2E)が、「閉鎖型」コンフォメーションの特徴である。この場合の金属イオンは、Mn2+である。MIDASコンフォメーション(直接のT209-金属結合、間接的なD242-水-金属結合、および緑色で示す活性部位を占有する偽リガンドグルタメート、ならびに直接配位結合する金属イオン(Ca2+)は、「開放型」コンフォメーションのものである)。図2Eおよび2Gにおいて、金属イオンは紫色で示し、水素結合は黄色の点線で示す。
【図3A−3J】11bAE-G(図3A〜3E)および11bA123-315(図3F〜3J)、ならびに活性化依存的リガンドiC3b(図3Aおよび3F)、フィブリノーゲン(図3Bおよび3G)、またはCD54(図3Cおよび3H)との相互作用を記録するために、ビアコア(商標)を用いた11bAE-Gおよび11bA123-315Aドメインの機能的分析の結果を示す。三つのリガンド全てが11bA123-3151に結合したが、11bA123-321には結合しなかった。活性化非依存的リガンド、NIF(図3Dおよび3I)、ならびにmAb 904に対する結合が同等であったことから、認められた結合の差はタンパク質濃度の差が原因ではなかった。親和性を定量的に決定するために、Aドメインペプチドの様々な濃度を用いた。結合データは、一次変換によって分析し、解離定数(Kd、平均値±SD、n=2)0.46±0.15 μM(iC3bに関して)、0.25±0.07 μM(フィブリノーゲンに関して)、および0.22±0.04 μM(CD54に関して)を得た。
【図4A】11bAI → GのiC3bに対する結合の分析結果を示す。破線は同じリガンドに対する11bA123-321の結合が存在しないことを表す。計算されたKdは0.66±0.3 μM(平均値±SD、n=2)である。
【図4B】野生型受容体と比較して、COS細胞上に発現された1-GCR3のiC3bに対する相対的結合を示すヒストグラム(平均値±SD、n=3)を示す。
【図5】9個のαインテグリンαサブユニット(CD11b、CD11c、CD11d、CD11a、α1、α2、α10、α11、およびαE)のAドメインのアラインメントを示す。このアラインメントにおいて、不変のIle(I316)を矢印で示す。
【図6】CD11a Aドメインにおける不変のイソロイシンのIからGへの変異が、このインテグリンにおいて活性化ドメインを誘導することを示し、CD11b Aドメインにおけるこの知見を他のインテグリンAドメインに適用可能であることを強調する。
【図7】8個のインテグリンβサブユニットのA様ドメインのアラインメントである。このアラインメントにおいて、βサブユニットにおける不変のIleに対応する残基を矢印で示す。
【0001】
背景
インテグリンは、リガンドの結合によって細胞間の、および細胞と細胞外マトリクスとの双方の多様な重要な相互作用を媒介するヘテロダイマー受容体である。全てのインテグリンはαサブユニットとβサブユニットとを有する。αサブユニット内において、Aドメイン(またはIドメイン)と呼ばれる領域は、リガンド結合の重要なメディエータであることが知られている。類似の領域、A様ドメインが多くのβサブユニットに存在する。多くのインテグリンは二つのコンフォメーション、すなわち低親和性状態(「閉鎖型(closed)」または「非リガンド結合(unliganded)」コンフォメーション)と高親和性状態(「開放型(open)」、または「リガンド結合(liganded)」コンフォメーション)で存在すると考えられており、後者が高親和性リガンド結合に関与している。
【0002】
インテグリンは、細胞の生理活性(例えば、運動性、増殖、分化)に及ぼすマトリクスの作用を媒介するシグナルを伝達する。その上、インテグリンは、炎症ならびに腫瘍発生的な細胞の形質転換、転移、およびアポトーシスにおいて役割を有する。このように、一つまたは複数のインテグリンを活性化またはその活性を阻害することができる化合物を同定することにかなりの関心が集まっている。
【0003】
有効なインテグリン-リガンド結合が起こるためには、インテグリンは、その高親和性コンフォメーションでなければならないと考えられる。細胞が、多様な刺激によって活性化される場合に産生される内側から外へのシグナルが、インテグリンを低親和性状態から高親和性へと切り替えるように思われる。この機能的上方制御は、αサブユニットのAドメインおよびβサブユニットのA様ドメインが含まれるインテグリンの細胞外領域におけるコンフォメーションの変化に関連している(スミス(Smith)ら、1988、J. Biol. Chem. 263:18726)。
【0004】
インテグリンAドメインは、その上部に金属イオン依存的接着部位(MIDAS)を有するジヌクレオチド結合のひだの形状を示し(リー(Lee)ら、1995、Cell 80:631;エムスレイ(Emsley)ら、1997、J. Biol. Chem. 272:28512;リ(Li)ら、1998、J. Cell Biol. 143:1523;ノルト(Nolte)ら、1999、FEBS Lett. 452:379;およびレッジェ(Legge)ら、2000、J. Mol. Biol. 295:1251)、これはその底部でC末端のα7ヘリックスによってインテグリンの本体に結合している。MIDASおよびその周辺の露出した側鎖は、生理的リガンド(リ(Li)ら、上記;ミチシタ(Michishita)ら、Cell 72:857〜867、1993;カマタ(Kamata)ら、J. Biol. Chem. 269:26006〜26010、1994;ケルン(Kern)ら、J. Biol. Chem. 269:22811〜6、1994;エドワーズ(Edwards)ら、J. Biol. Chem. 273:28937〜44、1998;ザング(Zhang)ら、Biochemistry 38:8064〜71、1999)および特定のアンタゴニスト(リウ(Rieu)ら、J. Biol. Chem. 271:15858〜15861、1996)の結合部位を形成する。「開放型」コンフォメーションの場合、タンパク質における三つの非荷電残基は、MIDASにおける金属イオンに直接配位結合する。偽リガンドまたはリガンドグルタメート残基(リー(Lee)ら、上記;リ(Li)ら、上記;エムスレイ(Emsley)ら、Cell 100:47〜56、2000)が、金属の配位結合を完成させる。「閉鎖」型では、両親媒性C末端のα7ヘリックスが「開放」型と比較して10 Å上方に移動しており、ドメインの残りを取り巻いている。この大きな移動は金属配位結合の変化に関連しており、この場合、三つの配位結合残基の一つであるトレオニンがアスパラギン酸塩に置換され、金属イオン配位結合の球を完成させるために水分子がグルタミン酸塩をの代わりに存在する(リー(Lee)ら、Structure 3:1333〜1340、1995)。金属配位結合のこれらの変化およびMIDASの位相学は、構造的に相同なGタンパク質において記述されるものと類似である(リー(Lee)ら、上記)。
【0005】
四つのインテグリンAドメイン(CD11b、CD11a、CD49a、およびCD49b)の結晶構造が現在までに報告されている(リー(Lee)ら、上記、1995;リー(Lee)ら、Structure 3:1333、1995;エムスレイ(Emsley)ら、上記;リ(Li)ら、上記;エムスレイ(Emsley)ら、J. Biol. Chem. 272:28512、1997)。インテグリンCD11b Aドメイン(11bA)の例外を除き、全てが、「閉鎖」型のみで存在することから、「開放」型は有益でない結晶アーチファクトであることが示唆された(ボルディン(Baldwin)ら、Structure 6:923〜935、1998)。インテグリン-Aドメインの「開放」型が「高」親和性状態と等しいという考え方は、三つの研究によって支持されている(リ(Li)ら、1998、J. Cell Biol. 143:1523;リウ(Rieu)ら、上記;オクスビグ(Oxvig)ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96:2215〜20、1999)。第一に、「閉鎖型」構造を脱安定化させ、構造の基礎において予想されるCD11bAの点突然変異によって、溶液中の「高親和性」型の比率が増加した(リ(Li)ら、1998、J.Cell Biol. 143:1523)。第二の研究において、「活性化依存的」モノクローナル抗体の結合部位は、Aドメインのコンフォメーション感受性領域にマッピングされた(オクスビグ(Oxvig)ら、上記)。第三の研究によって、短いコラーゲンペプチドとの複合体においてAドメインが「開放型」コンフォメーションの形をとることが示され、このことは「開放」型がリガンドの存在下に限って得られうることを示唆した(エムスレイ(Emsley)ら、上記)。リガンドがインテグリンのコンフォメーションの変化を引き起こすことが示唆されているが、インテグリンがリガンドの非存在下においても高親和性状態で存在しうることが、少なくとも一つの研究によって示唆されている(スミスおよびチェレシュ(SmithおよびCheresh)、1988、J. Biol. Chem. 263:18726〜31)。さらにいくつかの研究によって、ヘテロダイマーインテグリンにおけるリガンド結合親和性をアロステリックに変化させうることが示唆された(リ(Li)ら、1998、J. Cell Biol. 143:1523;エドワーズ(Edwards)ら、J. Biol. Chem. 273:28937〜28944、1988;カルダーウッド(Calderwood)ら、J. Biol. Chem. 273:5625、1988;ザング(Zhang)ら、J. Biol. Chem. 271:29953〜7、1996)。
【発明の開示】
【0006】
概要
本発明は、変種インテグリンαサブユニットAドメインまたは変種インテグリンβサブユニットA様ドメインの、全てまたは一部を含むポリペプチドを特徴とする。変種インテグリンポリペプチドと呼ばれる本発明のポリペプチドでは、重要なイソロイシン残基(下記により詳細に記述)が存在しない。イソロイシンは、欠失させるか、または異なるアミノ酸残基、好ましくはより小さいもしくはより疎水性が低いアミノ酸残基、例えばアラニンまたはグリシンに置換することができる。本発明の変種インテグリンポリペプチドは、溶液中において高親和性コンフォメーションで存在する傾向があるため、それらはインテグリンに結合する(および/またはその活性を調節する)分子を同定するためのスクリーニングアッセイにおいて有用である。それらはまた、インテグリンの高親和性型に結合する抗体、例えば、モノクローナル抗体を作製するためにも有用である。そのような抗体のいくつかは、低親和性コンフォメーションで存在するインテグリンには存在しないか、またはそのようなインテグリンでは近づくことができないエピトープを認識する。このように、本発明は、対応する野生型インテグリンより大きな親和性により、本発明の変種インテグリンに結合する抗体を特徴とする。本発明の変種インテグリンポリペプチドは、任意のインテグリンαサブユニットまたは任意のインテグリンβサブユニットにも由来しうる。変種インテグリンポリペプチドには、好ましくは、AドメインまたはA様ドメインのリガンド結合部分が含まれる。
【0007】
本発明はまた、本発明の変種インテグリンポリペプチドに結合する化合物を同定する方法を特徴とする。そのようなスクリーニング方法は、関係する被験化合物にポリペプチドを曝露すること、および化合物がポリペプチドに結合するか否かを決定することを含みうる。このように、アッセイは、単純な結合アッセイ(例えば、化合物の結合をリガンドの非存在下に限って測定する)、または競合的結合アッセイ(例えば、化合物の結合をリガンドの存在下で測定する)となりうる。本発明はまた、被験化合物の存在下および非存在下で変種インテグリンポリペプチドに対するインテグリンリガンドの結合を測定することによって、インテグリンに対するインテグリンリガンドの結合を妨害する化合物を同定する方法を特徴とする。また、被験化合物がインテグリンに対するインテグリンリガンドの結合を妨害できるか否を試験してもよい。さらに、被験化合物の存在下および非存在下で、第二のインテグリンに対するインテグリンリガンドの結合を測定することによって(またはインテグリンに対する第二のリガンドの結合を測定することによって)、化合物の結合特異性を評価することができる。
【0008】
本発明はまた、本発明の変種インテグリンポリペプチド、または本発明の変種インテグリンポリペプチドに選択的に結合する抗体を投与することによって、インテグリンリガンドに対するインテグリンの結合を妨害する方法を特徴とする。
【0009】
本発明はまた、活性なインテグリンに結合するリガンドの有無を同定する目的で、本発明の変種インテグリンポリペプチド、または本発明の変種インテグリンポリペプチドに選択的に結合する抗体を投与する方法を特徴とする。そのようなアッセイは、炎症、例えば潜在性の炎症(例えば、膿瘍、または活性なアテローム性動脈硬化症の病変)を診断するために有用である。
【0010】
本発明はさらに、本発明のポリペプチドまたは本発明のポリペプチドを含むポリペプチドをコードする核酸分子(例えば、mRNAおよびDNA)を特徴とする。本発明にはまた、本発明のポリペプチドおよび第二のポリペプチド、例えば、免疫グロブリン定常ドメインを含む、融合ポリペプチドをコードする核酸分子も含まれる。
【0011】
下記の実験は、CD11bの野生型より活性の高いCD11bの変種型(インテグリンαサブユニット)の設計および調製に関する。いかなる特定の理論にも拘束されないが、溶液中では、開放型(活性な)コンフォメーションであるこの変種サブユニットの量がサブユニットの対応する野生型より大きいように思われる。
【0012】
変種CD11bの作製は、非可逆的なC末端Ile残基の欠失または置換を含む。Ile残基の欠失または置換は、無傷のインテグリンのみならず単離されたCD11b Aドメインにおいて高親和性表現型を付与する。その上、Ile改変Aドメインは、「開放型」コンフォメーションで結晶化することができる。このように、いかなる特定の理論にも拘束されることなく、Ileに基づくアロステリックスイッチは、インテグリンAドメインの親和性およびコンフォメーションを制御するように思われる。したがって、対応する高度に保存されたIle残基を欠失または置換することによって、他のインテグリンαサブユニット(およびβサブユニット)の変種、すなわち高親和性型を作製することができる。
【0013】
CD11bの安定な開放(高親和性)型および閉鎖(低親和性)型も同様に、CD11b(またはCD11b Aドメイン)の所望の型を安定化させるジスルフィド架橋を作製するために、システイン残基をCD11bに導入することによって作製することができる。このように、本発明はまた、F313およびA320がシステイン残基に置換されている変種CD11b Aドメイン含有ポリペプチドを特徴とする(アミノ酸の位置は、Mから始まる完全長のCD11bを指し、Fから始まる成熟CD11bではない)。この変種はAドメインの安定な開放型を形成する。本発明はまた、V315およびA320がシステイン残基に置換されている変種CD11b Aドメイン含有ポリペプチドも特徴とする(アミノ酸の位置は、Mから始まる完全長のCD11bを指し、Fから始まる成熟CD11bではない)。この変種はAドメインの安定な閉鎖型を形成する。本発明はまた、これらの変種型をコードする核酸分子、これらの変種型の一つまたは他方に選択的に結合する抗体、双方の変種型に結合する抗体、およびこれらの変種型の一つまたは双方に選択的に結合する化合物を同定する方法も特徴とする。本発明はまた、CD11a、CD11c、CD11d、および他のインテグリンサブユニットに由来するAドメイン含有ペプチドも特徴とする。
【0014】
本発明の一つまたは複数の態様の詳細は、添付の図面および下記の説明に記述する。本発明のその他の特徴、目的、および長所は、説明と図面、および特許請求の範囲から明らかであると考えられる。引用する全ての特許および刊行物は、参照として本明細書に組み入れられる。
【0015】
詳細な説明
実施例1:欠失による安定な高親和性CD11b変種Aドメインの作製
CD11bのアミノ酸E123〜K315からなる変種CD11b Aドメイン(11bA123-315;11bAE-Kとも呼ばれる)を作製した。これらの実施例において番号を付けたアミノ酸は、成熟タンパク質に対応することに注意。下記の表2および3におけるアミノ酸の番号は、完全なタンパク質(シグナル配列を含む)における番号を意味する。CD11bは、アミノ酸16個のシグナル配列を有する。このように、成熟タンパク質におけるE123は、完全なタンパク質におけるE139に相当する。この変種Aドメインの特徴を調べて、アミノ酸E123〜G321からなるCD11b Aドメイン(11bA123-321;11bAE-Gとも呼ばれる)と比較した。残基316位でイソロイシンがグリシンに変化した変種Aドメイン(11bAI-G)も同様に作製した。これらの三つのタンパク質は全て、GST融合タンパク質として発現され、これは切断されて関係するタンパク質を放出した。
【0016】
変種ポリペプチドは、標準的な組換え型技術を用いて作製した。制限および改変酵素は、ニューイングランドバイオラブスインク(ビバリー、マサチューセッツ州)、ベーリンガーマンハイム社(ドイツ)、またはギブコBRL社(ガイサースバード、メリーランド州)から購入した。部位特異的変異誘発を、記述されるように(リウ(Rieu)ら、1996、J. Biol. Chem. 271:15858)pGEX-4T-1ベクターにおいて行った。以下の変異誘発プライマーを用いた。
IFAdel正方向:
逆方向:
I-G逆方向:
それぞれの変異の導入は直接DNA配列決定によって確認した。変異を含むAドメインのPvuI-BspEI-制限cDNA断片を、PvuI-BspEI-制限処理したCD11b cDNAにサブクローニングして、完全長のヒトCD11b(リウ(Rieu)ら、1996、J. Biol Chem. 271:15858)を含む、pcDNA3プラスミドにクローニングした。11b A123-321および11bA123-315ならびに11bAI → Gドメインは、大腸菌においてGST融合タンパク質として発現させ(ミチシタ(Michishita)ら、1993、Cell 72:857)、トロンビンによって切断して、リら(Li、1999、J. Cell Biol. 143:1523)に記載されるように精製した。C129は、トロンビン切断後に溶液中でジスルフィド結合二量体の形成を防止するために(示していない)、発現された全てのGST-Aドメイン融合型においてSに置換された。純度はSDS-PAGE分析によって確認した。
【0017】
11bA123-321および11bA123-315の構造は、x線結晶学によって決定した。結晶は、10 mg/ml保存タンパク質溶液、およびリら(Li、1998、J. Cell Biol. 143:1523)に記載されるように懸滴蒸気拡散法を用いて成長させた。それぞれのAドメインに関していくつかの結晶条件を試みた。11bA123-315および11bAI → Gは、15%ポリエチレングリコール8K、0.10 Mトリス、pH 8.2、150 mM CaCl2を含むリザーバー溶液の存在下で室温で結晶を形成した。結晶は一週間以内に形成し始め、二週間で典型的な大きさ0.3 mm×0.05 mm×0.04 mmに成長して、正方晶系空間群P4に属し、単位格子はa=b=45.7Åであった。11bA123-321はこれらの条件では結晶化しなかったが、10%ポリエチレングリコール4000、0.1 Mクエン酸ナトリウム、pH 4.5、5mM MnCl2をリザーバー緩衝液に用いると室温で結晶を形成した。11bA123-321は、P212121空間群で結晶化して、単位格子はa=48.1Å、b=121.5Å、c=74.5Åであった。
【0018】
11bA123-315単結晶は、100 Kで、ブルックヘイブン国立研究所で国立シンクロトロン光源の光線X12B上でCCD検出器を用いて2.3Å分解能データセットを収集するために用いた。11bA123-321単結晶は、施設内X-線を用いて造影板上に100 Kで2.6Å分解能データを収集するために用いた。データはDENZOおよびSCALEPACKによってそれぞれ処理して、Rsym 8.8%、7.7%を得た。開始モデルはそれぞれ、残基D132〜K315を含む精密化1.8ÅMg2+構造(pdbアクセッションコードlido)(リー(Lee)、1995、Cell 80:631)、および残基D132〜A318を含む精密化2.0ÅMg2+構造(pdbアクセッションコード1jlm)(リー(Lee)ら、1998、Structure 6:923)であり、それぞれ金属および水分子を除去した。予備的な剛体精密化は、X-plorを用いて行い、回折データは、Rフリー計算の場合5%反射で8.0〜3.0Å分解能の範囲であった。位相を徐々に高分解能にして、構造は、ねじれ角の動力学と個々の拘束等方性B因子精密化プロトコールとを交互に数サイクル行うことによって精密化して、全ての回折データが11bA123-321および11bA123-315構造に関してそれぞれ、分解能8.0〜2.6Å、8.0〜2.3Åとなった(表1)。モデルの点検および手動での調節は、SGIグラフィックスワークステーション上でO(ジョーンズ(Jones)ら、1991、Acta Crystallogr 47:110)を用いて行った。溶媒分子の添加は、差分マップにおける適したピーク、妥当な水素結合、および50Å2未満の精密化温度因子に基づいた。構造は11bA123-315構造に関して最終的なR因子が20.3%(Rフリー:25.6%)、および11bA123-321構造に関して21.9%(Rフリー:30.0%)となるように精密化した。最終モデルは11bA123-315に関して、残基D132〜K315の全ての非水素原子、水分子30個、およびCa2+イオン1個、11bA123-321に関して残基D132〜G321、水分子44個、およびMn2+イオン1個を含む。結晶学的データを表1に示す。
【0019】
【表1】
* Rmerge=Σ|I-<I>|ΣI、式中Iは認められた強度、<I>は、対称性に関連した反射の複数回観察の平均強度である。
§ {}内の数値は最高の0.1Å解像ビンを示す。
† R因子=Σ|Fo-Fc|ΣFo
‡ Rフリー=ΣT|Fo-Fc|ΣT Fo、式中、Tは精密化から省略された反射のうちの、無作為に選択した5%を含む試験セットである。
【0020】
結晶構造11bA123-321は、「閉鎖型」コンフォメーションの結晶構造であった(図2A、2C、および2E)。対照的に11bA123-315は、「開放」型で結晶化した(図2B、2D、および2F)。
【0021】
ビアコア(BIAcore)(BIAcoreAB、アップサラ、スウェーデン)上で既に記述されている(リ(Li)ら、上記)表面プラズモン共鳴を用いて、11bA123-321および11bA123-315のリガンド結合特性を決定した。IC3b、フィブリノーゲン、またはCD54はそれぞれ、異なるCM5センサーチップ(BIAcoreAB)のデキストランマトリクスに1級アミン基を通して共有結合によって結合した。同じように固定したBSAを対照表面として用いた。11bA123-321、11bA123-315、および11bAI-GAドメインは、異なる時間に5ml/分でチップ上を流れた。2mM MgCl2および0.005%P20(BIAcoreAB)を含むTBS(20 mMトリス塩酸、pH 8.0、150 mM NaCl)を実施緩衝液として用いた。1M NaClの20 mMトリス塩酸緩衝液溶液、pH 8.0を用いて結合タンパク質を除去して表面を再生した。結合は時間の関数として測定した。結合データ(BSAコーティングチップに対するバックグラウンドの結合を差し引いた後)は既に記述されているように(ダルアクア(Dall'Aqua)ら、1996、Biochemistry 35:9667〜9676)スキャッチャードプロットを用いて分析した。〜70%コンフルエンスのCOS M7サル線維芽細胞に、記載されているように(ミチシタ(Michishita)ら、上記)WTまたはCD11bI → GをコードするスーパーコイルcDNAを完全長のCD18と共にトランスフェクトした。
【0022】
トランスフェクトしたCOS細胞を、10%FBS、2mMグルタミン、50 IU/mlペニシリンおよびストレプトマイシンを添加したイスコブ改変ダルベッコ培地(バイオウィッタッカーインク、ウォーカーズビル、メリーランド州)において37℃で24時間増殖させた。細胞を洗浄して、0.1%トリプシン-EDTAによって剥離させ、24もしくは48ウェルプレート(コスター社、ケンブリッジ、マサチューセッツ州)、または100 mmペトリ皿に同じものを播種して24時間培養した。24または48ウェルプレートにおけるコンフルエント単層を細胞表面抗原定量のために用い、ペトリ皿で培養した細胞を免疫沈降試験に用いた。ヘテロダイマー形成および野生型およびCR3I → Gハロ受容体に対するiC3bコーティング赤血球の結合は、記載通りに実施した(リウ(Rieu)ら、1996、J. Biol. Chem. 271:15858)。ハロ受容体に対するiC3bの特異的結合は、偽トランスフェクトCOS細胞に対するバックグラウンド結合を差し引くことによって得た。CR3I → Gに対する結合は、mAb904の結合を用いて表面発現の程度を修正した後、野生型に対する結合の百分率として表記した(リウ(Rieu)ら、1996、J. Biol. Chem. 271:15858)。
【0023】
図3A〜3Jに示すように、11bA123-321は、活性化依存的「生理的」リガンド、補体iC3b、フィブリノーゲン、およびCD54(ICAM-1)に対する結合を示さなかった。対照的に、11bA123-315は、3つ全てのリガンドに対する高親和性結合を示した(図3A〜3J)。双方のドメインは、活性化非依存的「リガンド」NIF(好中球阻止因子)(図3Dおよび3I)、ならびにmAb904(図3Eおよび3J)に対して等しく十分に結合し、認められた差がAドメイン濃度の変化によって引き起こされたものではないことを示した。これらのデータは、「開放型」および「閉鎖型」結晶構造がインテグリン11bAの「高」および「低」親和性状態にそれぞれ対応することを決定的に確立する。
【0024】
実施例 2 :置換による安定な高親和性状態 CD11b 変種の作製
Ile316は、現在までクローニングされた全てのインテグリンαAドメインにおいて不変である(図5)。イソロイシンからグリシンへの置換を有するAドメイン(11bAI → G)は、「高親和性」状態を示した(図4A)。ハロ受容体に同じ置換を作製すると、そのリガンド結合活性は劇的に増加した(図4B)。結晶構造11bAI → Gは、「開放型」11bA123-315型の結晶構造と同一であった。これらのデータは、「開放型」高親和性コンフォメーションが、ドメインに固有のイソロイシンに基づくスイッチによって主に指示され、MIDAS面上のリガンド結合親和性をアロステリックに調節するように作用することを確固として確証する。インテグリンの不活性な活性コンフォメーション異性体がリガンドの非存在下で存在することは既知である(スミス(Smith)ら、上記;ヤン(Yan)ら、J. Biol. Chem. 275:7249〜60、2000)。上記の結果に基づいて、リガンドの役割は、最近提唱されているように(エムセリー(Emsely)ら、上記)、高親和性状態を開始することではなく、低親和性と高親和性状態との平衡が後者に都合がよいように移動することによって高親和性状態を安定化することであるように思われる(リ(Li)ら、上記)。内側から外側へのシグナル伝達によってインテグリンが活性化されると、この平衡が移動して、リガンドの結合に関して「利用可能」になる細胞表面上の高親和性受容体の比率が増加すると考えられる。次に、リガンドが結合すると、おそらくAドメインに対して外因性であって、外側から内側へのシグナル伝達を開始させる新しいエピトープを形成すると考えられる。
【0025】
保存された疎水性分子内ソケット(SILEN、イソロイシン用ソケット;Socket for Isoleucine)は、「閉鎖型」コンフォメーションにおけるI316のフィンガーを固定し;「開放型」構造においてI316がL312に置換される(図1Aおよび1F)。SILENは、「閉鎖型」および「開放型」コンフォメーションの双方においてI135、L164、I236、およびY267の疎水性側鎖によって形成される(図1Cおよび1D)。いくつかのインテグリンにおいて、外側のMIDASに存在する特定の変異は、ハロ受容体において機能獲得作用を生じ、アロステリックに作用すると考えられている(ザング(Zhang)ら、上記;オクスビッヒ(Oxvig)ら、上記;ザング(Zhang)ら、上記)。これらの試験は、ハロ受容体において行われており、可能性があるドメイン内相互作用および/または他の第四の作用のために、機構の解釈を提供することが難しい。これらの変異は、SILENにおいて、またはその周辺で起こる。例えば、CD11bのα1-βBループをCD11aに置換すると、構成的に活性なインテグリンを生じる(ザング(Zhang)ら、上記)。この領域はSILEN残基L164の一つに及ぶ。インテグリンの活性化も同様に、L164-F置換(オクスビッヒ(Oxvig)ら、上記)において起こり、これはSILENを予測可能により小さくして、したがって、I316により適応しにくくなる。E131、D132、K231、およびF234を含む他の活性化変異は、SILENの非常に近位の構造の底部に存在し(オクスビッヒ(Oxvig)ら、上記)、このように、SILENにおいてIleの「フィンガー」の適切なコンフォメーション結合を妨害することによってその作用を発揮する可能性がある。MIDASの反対側上のエピトープによる特定のmAb(例えば、mAb 44a、そのエピトープがSILENの上部の残基に及ぶ)の阻害作用は、同様に、SILENポケットの安定化を通して説明される可能性がある。
【0026】
N末端伸張が存在すると、あまり好ましくない高親和性状態へのAドメインの切り替えが促進される(リ(Li)ら、上記)。由来する3-D構造にはN末端伸長部におけるいずれの残基も含まれないことから、この作用の基礎となる構造の基礎は不明である。しかし、この伸長部内の残基がAドメインにおけるリガンド結合を調節することが認められた。最初に、vWF A1ドメインのこのセグメントにおける天然に存在する点突然変異は、野生型IIB型vWf疾患を有する患者において機能獲得表現型を引き起こす(マツシタ(Matsushita)ら、J. Biol. Chem. 279:13406〜14、1995)。この領域はまたCD11b Aドメインにおいて活性化変異を含む(オクスビッヒ(Oxvig)ら、上記)。第三に、N末端の伸長部からの合成ペプチドは、CD11a-依存的接着を阻害した。CD49b Aドメインからの構造データも同様に、α7ヘリックスを超えて伸張する三つの残基を、N末端伸長部における残基によってその一部が形成されたくびれた部分に充填することができ、NおよびC末端を非常に近位に存在させることを示している(エムスレイ(Emsley)ら、上記)。α7におけるC末端残基の柔軟性も同様に、CD11a Aドメインの結晶およびNMR構造において認められている。併せて考慮すると、これらのデータは、N末端伸長部がSILENからイソロイシンを離すように誘導するための不完全な「競合的」表面による代用物を提供し、いくつかの分子を「開放」型で存在させる可能性があることを示唆している。本発明のデータは、そのような機構がハロ受容体において機能する可能性があることを示唆し、内側から外側へのシグナルによってインテグリンが活性化する機構の基礎を提供する。
【0027】
変種インテグリンポリペプチド
インテグリンαサブユニットにおける配列類似性を考慮して、CD11bのIle316に対応する選択されたインテグリンαサブユニットにおけるIleの置換の欠失によって、サブユニットの野生型より活性な(すなわち、溶液中で、リガンド結合型ポリペプチドの比率がより高くなる)変種インテグリンαサブユニットが形成されるはずである。図5は、9個のインテグリンαサブユニット(CD11b、CD11c、CD11d、CD11a、α1、α2、α10、α11、およびαE)のAドメインのC末端α7ヘリックスのアラインメントを示す。このアラインメントにおいて、他のインテグリンαサブユニットにおけるCD11bのIle316に対応する不変のIleを概説する(矢印)。不変のIleをアラニンもしくはグリシンまたは他のいくつかの適したアミノ酸に置換すると、活性が増加した変種インテグリンポリペプチドが得られるはずである。われわれは、CD11a Aドメインにおいてもこれが当てはまることを示した(図6)。IからGへの置換を含む変種CD11a Aドメインは、ELISAアッセイにおいて活性化依存的リガンドICAM-1に対する結合を示す。この置換がない野生型タンパク質には結合が認められなかった。または、不変のIleと不変のIleに対してC末端の全てのアミノ酸残基を含むインテグリンαサブユニット(またはAドメイン)の一部を欠失させることができる。表2は、図5において示したインテグリンαサブユニットのそれぞれにおける不変のIleの位置の一覧を示す。
【0028】
【表2】
【0029】
本発明は、不変のIle(表2に記載)がGly、Alaまたは他のあるアミノ酸(例えば、Val)に置換されている変種インテグリンαサブユニットを特徴とする。ポリペプチドは、表示のAドメインの一部または全て、例えば、不変のIleの位置を含むAドメインの10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、または200連続アミノ酸を含みうる。本発明には、Ileが欠失している変種インテグリンαサブユニットも含まれる。同様に、不変Ileを除くインテグリンαの完全なAドメインを含むポリペプチドも本発明に含まれる。例えば、CD11bのアミノ酸144〜132位、CD11cのアミノ酸145〜332位、CD11dのアミノ酸144〜331位、CD11aのアミノ酸150〜330位も含まれるが、インテグリンαサブユニットの残りの部分は含まれない。本発明はまた、不変のIleまでを含むが不変のIleを含まず、さらに不変のIle以降のアミノ酸5個を欠失するインテグリンαサブニットのAドメインを含むポリペプチド(例えば、CD11bのアミノ酸144〜331位、しかし332〜336位は含まない;CD11cのアミノ酸145〜332位、しかし333〜337位は含まない;CD11dのアミノ酸144〜331位、しかし、332〜336位は含まない;CD11aのアミノ酸150〜330位、しかし331〜335位は含まない;ヒトα1のアミノ酸139〜330位、しかし331〜335位は含まない;ヒトα2のアミノ酸169〜360位、しかし361〜335位は含まない;ヒトα10のアミノ酸57〜248位、しかし249〜253位は含まない;ヒトα11のアミノ酸159〜348位、しかし、349〜353位は含まない;またはヒトαEのアミノ酸196〜384位、しかし385〜389位は含まない)も特徴とする。
【0030】
インテグリンβサブユニットのA様ドメインにおける配列類似性を考慮すると、CD11bのIle316に対応する選択されたインテグリンβサブユニットにおけるIleの欠失または置換によって、サブユニットの野生型より活性である(すなわち、溶液中でポリペプチドのリガンド結合型がより大きな比率で存在する)変種インテグリンβサブユニットが得られるはずである。図7はインテグリンβサブユニットのA様ドメインのアラインメントである。保存されたIleをAlaもしくはGly、または他の適したアミノ酸に置換すると、活性が増加した変種インテグリンポリペプチドが得られるはずである。または、保存されたIleと不変のIleに対してC末端の全てのアミノ酸残基を含むインテグリンβサブユニット(またはサブユニットのA様ドメイン)の一部を欠失させることができる。下記の表3は、図7に示すインテグリンβサブユニットのそれぞれにおける保存されたIleの位置を記載する。
【0031】
【表3】
【0032】
CD11bの安定な開放(高親和性)および閉鎖(低親和性)型はまた、CD11b(またはCD11b Aドメイン)の所望の型を安定化させるジスルフィド架橋を形成するために、システイン残基をCD11bに導入することによって作製することができる。このように、本発明はまた、F313およびA320がシステイン残基に置換されている変種CD11b Aドメイン含有ポリペプチドを特徴とする(アミノ酸の位置は、Mから始まる完全長のCD11bを指し、Fから始まる成熟CD11bではない)。この変種はAドメインの安定な開放型を形成する。本発明はまた、V315およびA320がシステイン残基に置換されている変種CD11b Aドメイン含有ポリペプチドも特徴とする(アミノ酸の位置は、Mから始まる完全長のCD11bを指し、Fから始まる成熟CD11bではない)。この変種はAドメインの安定な閉鎖型を形成する。類似の変化は、CD11a、CD11c、CD11d、および他のインテグリンサブユニットに由来するAドメイン含有ペプチドにおいて作製することができる。表4は、表記のインテグリンの安定な閉鎖型および開放型を調製するために、システイン残基に変更しなければならない残基を示している。安定な開放型は、活性なインテグリンに対する抗体を作製するために有用である。活性な開放型ポリペプチドはまた、インテグリンとそのリガンドとの相互作用を阻害するためにも有用である。
【0033】
【表4】
【0034】
変種インテグリンポリペプチドをコードする核酸分子
本発明は、変種インテグリンポリペプチド、例えば完全長の変種インテグリンサブユニットまたはその断片(例えば、不変のIleが欠失または置換されている)、例えば生物的に活性な変種インテグリンポリペプチドをコードする単離または精製された核酸分子を特徴とする。
【0035】
一つの態様において、本発明の単離核酸分子には、CD11bαサブユニット(配列番号:1)のアミノ酸123〜315位またはその一部をコードするヌクレオチド配列が含まれる。核酸分子には、非コード配列またはインテグリン以外のタンパク質の全てもしくは一部をコードする配列が含まれうる。
【0036】
もう一つの態様において、本発明の単離核酸分子には、CD11bαサブユニットのアミノ酸123〜315位をコードするヌクレオチド配列の相補体である核酸分子が含まれる。
【0037】
本発明の核酸分子には、配列番号:1の核酸配列の一部のみが含まれうる。例えば、そのような核酸分子には、インテグリンAドメインまたはA様ドメインの全てもしくは一部(例えば、免疫原性もしくは生物学的に活性な部分)をコードする断片が含まれうる。
【0038】
変種インテグリンポリペプチド
本発明にはまた、変種インテグリンポリペプチドが含まれる。そのようなポリペプチドは、組換えDNA法を用いて、化学合成によって、または他の技術を用いて産生することができる。ポリペプチドは、インテグリンAドメインまたはA様ドメインの活性型に結合する抗体を作製するための、免疫原または抗原として用いることができる。ポリペプチドは、翻訳後改変、例えばグリコシル化することができる。
【0039】
変種インテグリンポリペプチドは、変種インテグリンポリペプチドではない第二のポリペプチドの全てまたは一部を含む、融合タンパク質の一部となりうる。この第二のポリペプチドは、変種インテグリンポリペプチドのC末端またはN末端に融合させることができる。第三のペプチドの全てまたは一部が存在してもよい。このように、変種インテグリンポリペプチドは、例えば、GST、免疫グロブリン定常領域、異種シグナル配列に融合することができる。
【0040】
本発明の変種インテグリンポリペプチド融合タンパク質は、薬学的組成物に組み入れて、インビボで被験者に投与することができる。例えば、変種インテグリンポリペプチドは、骨格筋損傷を減少させるために用いることができる。単離されたCD11b Aドメインは既に、この型の損傷の動物モデルにおいて障害を減少させることが判明している。簡単に説明すると、機械による骨格筋損傷を誘導する30分前に、精製した組換え型ラットCD11b Aドメインの1回量(1mg/kg)を、ルイスラットの7群(1群当たり5匹)に静脈内投与した。同数のラットに機能遮断性の抗CD11b/CD18 mAb(1mg/kg)を処置した。対照ラットにおける(PBSによって処置)創傷領域の定量的組織学的検査によって、浮腫、筋繊維の破壊、壊死、および赤血球の滲出が示された。好中球の流入は創傷の30分後に検出され、その3時間後に第二波が起こった。同様に、直接の創傷領域(5mm域)の外側には、活性化好中球の存在に関連して有意な組織壊死を認めた。AドメインまたはmAb-処置ラットは、浸潤PMN数(75±10%、n=35)、および直接の壊死領域外の筋繊維の保護(80±8%、n=35)に同等で有意な減少を示した。これらのデータは、Aドメインがこの筋損傷モデルにおいて有効な組織保護剤となりうることを示している。変種Aドメインも等しく有効となりうる。
【0041】
変種インテグリンポリペプチド融合タンパク質を用いて、変種インテグリンポリペプチドリガンドの生物学的利用率に影響を及ぼすことができる。
【0042】
変種インテグリンポリペプチド融合タンパク質は、例えば、虚血-再灌流損傷(Stroke 30:134〜9、1999)、免疫複合体(J Exp Med 186:1853〜63、1997)、再狭窄、および寄生虫疾患(例えば、鉤虫種(Ancylostoma spp);J Cell Biol 127:2081〜91、1994を参照のこと)によって引き起こされた障害の治療のために、治療的に有用となる可能性がある。
【0043】
その上、本発明の変種インテグリンポリペプチド-融合タンパク質は、被験者において抗変種インテグリンポリペプチド抗体を産生するため、変種インテグリンポリペプチドリガンドを精製するため、および変種インテグリンポリペプチドリガンドと変種インテグリンポリペプチドとの相互作用を阻害する分子を同定するためのスクリーニングアッセイにおいて、免疫原として用いることができる。
【0044】
融合部分(例えば、GSTポリペプチド)を既にコードしている発現ベクターが市販されている。変種インテグリンポリペプチドをコードする核酸は、融合部分が変種インテグリンポリペプチドタンパク質にインフレームで結合するように、そのような発現ベクターにクローニングすることができる。
【0045】
変種インテグリンポリペプチドは、発現ベクター(例えば、プラスミドベクターまたはウイルスベクター)を用いて産生することができる。ベクターは、自律的に増幅することができるか、または宿主ゲノムに組み入れられることができる。発現ベクターには、発現されるべき核酸配列に機能的に結合した少なくとも一つの調節配列(例えば、プロモーター、エンハンサー、ポリA部位、または細胞もしくは組織特異的転写因子結合部位)が含まれうる。発現ベクターは、原核または真核細胞、例えば植物細胞、昆虫細胞、酵母細胞、哺乳類細胞、および大腸菌(E.coli)において発現されるように設計することができる。変種インテグリンポリペプチドを発現させるために用いる宿主に応じて、宿主細胞にとって最適なコドンを用いてポリペプチドをコードすることが望ましい可能性がある。場合によっては、組織特異的発現を指示することができる発現ベクターを用いることが望ましい可能性がある。
【0046】
本発明はまた、変種インテグリンポリペプチドをコードする核酸分子を有する、宿主細胞または組換え型細胞を特徴とする。核酸分子は、宿主ゲノムに組み入れられることができ、または自律的に複製するベクターに存在しうる。宿主細胞は任意の原核または真核細胞、例えば、大腸菌(E.coli)、昆虫細胞、酵母または哺乳類細胞となりうる。核酸分子は、形質転換またはトランスフェクション技術によって宿主細胞に導入することができる。
【0047】
本発明の宿主細胞は、ポリペプチドが産生されるような条件で宿主細胞を培養する段階、および次に細胞または培養培地からポリペプチドを単離する段階によって、変種インテグリンポリペプチドを産生(すなわち、発現)するために用いることができる。
【0048】
変種インテグリンポリペプチドを認識する抗体
本発明はまた、変種インテグリンポリペプチドに対して作製された抗体を特徴とする。そのような抗体は、それらが対応する野生型インテグリンポリペプチドに結合するより大きな親和性によって、変種ポリペプチドに結合する。抗体は標準的な方法を用いて作製することができ、変種インテグリンポリペプチドに対する抗体の結合を、対応する野生型ポリペプチドに対する抗体の結合と比較することによってスクリーニングすることができる。
【0049】
「抗体」という用語は、免疫グロブリン分子、またはその免疫学的活性部分、すなわち抗原結合部分を意味する。免疫グロブリン分子の免疫学的活性部分の例には、F(ab)およびF(ab')2断片が含まれ、これらはペプシンのような酵素によって抗体を処理することによって作製することができる。抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、組換え型、例えばキメラまたはヒト化、完全なヒト、非ヒト、例えば、マウス、または一本鎖抗体となりうる。好ましい態様において、これはエフェクター機能を有する。抗体は、潜在的炎症(例えば、膿瘍、または活性アテローム斑)を診断するために用いられる、毒素または造影剤に結合させることができる。
【0050】
キメラ、ヒト化、しかし最も好ましくは、完全なヒト抗体は、反復投与、例えばヒト患者の治療的処置(およびいくつかの診断的応用)を含む適用にとって望ましい。
【0051】
抗変種インテグリンポリペプチド抗体は、多価抗体を産生するために選択的に二量体または多量体にすることができる、一本鎖抗体でありうる。抗体は、Fc受容体にほとんどまたは全く結合しないように設計することができる。
【0052】
本発明の抗体は、活性コンフォメーションであるインテグリンサブユニットを検出または精製するために用いることができる。このように、それらを用いて、臨床検査技法の一部としてインテグリンの活性型の量および発現パターンを評価することができる。検出は、抗体を検出可能な物質に結合させる(すなわち、物理的に連結させる)ことによって(すなわち抗体の標識)、容易にすることができる。検出可能な物質の例には、様々な酵素、補欠分子団、蛍光材料、発光材料、生体発光材料、および放射活性材料(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、アセチルコリンエステラーゼ、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチン、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシルまたはフィコエリスリン、ルミノール、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、アエコリン、125I、131I、35Sおよび3H)が含まれる。
【0053】
変種インテグリンポリペプチドと相互作用する化合物を同定するためのスクリーニングアッセイ
本発明は、化合物が変種インテグリンポリペプチドに結合するか否か、または化合物がインテグリンリガンド(例えば、天然に存在するインテグリンリガンド)の変種インテグリンポリペプチドに対する結合能を阻害するか否かを評価する方法を特徴とする。方法には、リガンドの存在下または非存在下において、化合物を変種インテグリンポリペプチドに接触させる段階、および変種ポリペプチドに対する化合物またはリガンドの結合能を測定する段階が含まれうる。方法は、インビトロで、例えば細胞不含系において、またはインビボで、例えばツーハイブリッド相互作用捕獲アッセイにおいて行うことができる。方法は、インテグリンと相互作用する天然に存在する分子を同定するために用いることができる。同様に、インテグリンとインテグリンリガンドとの相互作用の、天然または合成の阻害剤を発見するために用いることも可能である。
【0054】
調べる化合物は、例えば、タンパク質、ペプチド、ペプチド模倣体、ペプトイド、および低分子となりうる。被験化合物は、生物ライブラリ;ペプトイドライブラリ;空間的に位置特定可能な平行固相または液相ライブラリ;逆重畳積分を必要とする合成ライブラリ法;「1ビーズ1化合物」ライブラリを含む組み合わせライブラリから得ることができる。
【0055】
化合物のライブラリは、溶液中(例えば、ホーテン(Houghten)、1992、Biotechniques 13:412〜421)、またはビーズ(ラム(Lam)、1991、Nature 354:82〜84)、チップ(フォドー(Fodor)、1993、Nature 364:555〜556)、細菌(ラドナー(Ladner)、米国特許第5,223,409号)、胞子(ラドナー(Ladner)、米国特許第5,223,409号)、プラスミド(カル(Cull)ら、1992、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:1865〜1869)、またはファージ(スコットおよびスミス(ScottおよびSmith)、1990、Science 249:386〜390;デブリン(Devlin)、1990、Science 249:404〜406;クィーラ(Cwirla)ら、1990、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:6378〜6382;フェリチ(Felici)、1991、J. Mol. Biol. 222:301〜310;ラドナー(Ladner)、上記)上に存在してもよい。
【0056】
スクリーニングアッセイは、変種インテグリンポリペプチドタンパク質またはその生物活性部分を発現する細胞を被験化合物に接触させて、被験化合物が変種インテグリンポリペプチド活性を調節できるか否かを決定する細胞に基づくアッセイとなりうる。被験化合物が変種インテグリンポリペプチド活性を調節できるか否かの決定は、例えば、インテグリンリガンドとの結合能をモニターすることによって達成できる。
【0057】
被験化合物が化合物、例えばインテグリンリガンドに対するインテグリンポリペプチドの結合を調節できるか否か、または変種インテグリンポリペプチドに結合できるか否かも同様に評価することができる。これは、例えば化合物、例えば基質の変種インテグリンポリペプチドに対する結合が、複合体における標識化合物、例えば基質を検出することによって決定されうるように、化合物、例えば基質を放射性同位元素または酵素標識に結合させることによって行うことができる。または、変種インテグリンポリペプチドまたはインテグリンリガンドは、被験化合物がインテグリンリガンドに対する変種インテグリンポリペプチドの結合を調節できるか否かをモニターするために、放射性同位元素または酵素標識に結合させることができる。例えば、化合物は、125I、35S、14C、または3Hによって直接または間接的に標識することができ、放射性同位元素は、放射線放出の直接計数またはシンチレーション計数によって検出することができる。または、化合物は、例えば西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、またはルシフェラーゼによって酵素的に標識することができ、酵素標識は、適当な基質の産物への変換を測定することによって検出される。
【0058】
さらにもう一つの態様において、変種インテグリンポリペプチドまたはその生物活性部分を被験化合物に接触させ、変種インテグリンポリペプチドまたはその生物活性部分に化合物が結合するか否かを評価する、細胞不含アッセイが提供される。本発明のアッセイにおいて用いられる変種インテグリンポリペプチドの好ましい生物活性部分には、インテグリンリガンドに結合する断片が含まれる。
【0059】
単離されたタンパク質(例えば、変種インテグリンポリペプチドタンパク質またはその生物活性部分)の可溶性および/または膜結合型は、本発明の細胞不含アッセイにおいて用いることができる。タンパク質の膜結合型を用いる場合、可溶化剤を用いることが望ましい可能性がある。そのような可溶化剤の例には、n-オクチルグルコシド、n-ドデシルグルコシド、n-ドデシルマルトシド、オクタノイル-N-メチルグルカミド、デカノイル-N-メチルグルカミド、トライトン(登録商標)X-100、トライトン(登録商標)X-114、テジット(登録商標)、イソトリデシルポリ(エチレングリコールエーテル)n、3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアミニオ]-1-プロパンスルホネート(CHAPS)、3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアミニオ]-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホネート(CHAPSO)、またはN-ドデシル=N,N-ジメチル-3-アンモニオ-1-プロパンスルホネートのような非イオン性洗浄剤が含まれる。
【0060】
細胞不含アッセイは、標的遺伝子タンパク質と被験化合物との反応混合物を、二つの成分が相互作用して結合するために十分な条件および時間で調製する段階、次に除去および/または検出することができる複合体を形成する段階を含む。
【0061】
二つの分子間の相互作用も同様に、蛍光エネルギー移動(FET)(例えば、ラコヴィッツ(Lakowicz)ら、米国特許第5,631,169号;スタブリャノポーロス(Stavrianopoulos)ら、米国特許第4,868,103号を参照のこと)を用いて検出することができる。第一の「ドナー」分子上での蛍光体標識は、その放出された蛍光エネルギーが第二の「アクセプタ」分子上の蛍光標識によって吸収され、今度は吸収されたエネルギーによって蛍光を発することができるように選択される。または、「ドナー」タンパク質分子は、単にトリプトファン残基の天然の蛍光エネルギーを利用してもよい。「アクセプタ」分子の標識が「ドナー」の標識と区別されるように、異なる波長の光を放出する標識を選択する。二つの標識間でのエネルギー移動効率は分子が離れている距離に関連するため、分子間の空間的関係を評価することができる。結合が分子間で起こる状況では、アッセイにおける「アクセプタ」分子標識の蛍光放出は最大でなければらなない。FET結合事象は、当技術分野で周知である標準的な蛍光検出手段(例えば、蛍光計を用いて)によって従来のように検出することができる。
【0062】
もう一つの態様において、変種インテグリンポリペプチドタンパク質が標的分子、例えばインテグリンリガンドに結合するか否かを決定することは、上記のようにリアルタイム生体分子相互作用分析(BIA)(例えば、シェランダーおよびウルバニクツキー(SjolanderおよびUrbaniczky)(1991)、Anal. Chem. 63:2338〜2345およびスザボ(Szabo)ら、(1995)、Curr. Opin. Struct. Biol. 5:699〜705を参照のこと)を用いて行うことができる。「表面プラズモン共鳴」または「BIA」は、いかなる相互作用物質も標識せずに、リアルタイムで生体特異的相互作用を検出する(例えば、ビアコア)。結合表面での質量の変化(結合事象を示す)によって、表面近傍の光の屈折指数の変化が起こり(表面プラズモン共鳴の光学現象(SPR))、検出可能なシグナルが得られ、これを生体分子間のリアルタイム反応の指標として用いることができる。
【0063】
一つの態様において、ポリペプチドまたは被験化合物を固相上に固定する。固相に固定したポリペプチド/被験化合物は、反応終了時に検出することができる。好ましくは、ポリペプチドを固相表面に固定することができ、被験化合物(固定していない)を、検出可能な標識によって直接または間接的に標識することができる。
【0064】
一つまたは双方のタンパク質の非複合体型からの複合体型の分離を容易にするためと共に、アッセイを自動化に適応させるために、変種インテグリンポリペプチド、抗変種インテグリンポリペプチド抗体またはその標的分子を固定することが望ましい可能性がある。変種インテグリンポリペプチドタンパク質に対する被験化合物の結合、または候補化合物の存在下および非存在下で標的分子と変種インテグリンポリペプチドタンパク質との相互作用は、反応物質を含む適した任意の容器において行うことも可能である。そのような容器の例には、マイクロタイタープレート、試験管、および微量遠心管が含まれる。一つの態様において、一つまたは双方のタンパク質がマトリクスに結合できるようにするドメインを付加する融合タンパク質を提供することができる。例えば、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ/変種インテグリンポリペプチド融合タンパク質またはグルタチオン-S-トランスフェラーゼ/標的融合タンパク質を、グルタチオンセファロースビーズ(シグマケミカル社、セントルイス、ミズーリ州)またはグルタチオン誘導体化マイクロタイタープレートに吸収させることができ、次にこれを被験化合物、または被験化合物と吸収されない標的タンパク質もしくは変種インテグリンポリペプチドタンパク質のいずれかと混合して、混合物を複合体を形成する条件(例えば、塩およびpHに関して生理的条件)でインキュベートする。インキュベーションの後、ビーズまたはマイクロタイタープレートウェルを洗浄して、未結合の化合物、ビーズの場合には固定したマトリクスを除去し、複合体は例えば上記のように直接または間接的に決定することができる。または、複合体をマトリクスから解離させて、変種インテグリンポリペプチド結合または活性レベルを標準的な技術を用いて決定することができる。
【0065】
変種インテグリンポリペプチドまたは標的分子のいずれかをマトリクス上に固定する他の技術には、ビオチンとストレプトアビジンとを用いることが含まれる。ビオチン結合変種インテグリンポリペプチドまたは標的分子は、当技術分野で既知の技術(例えば、ビオチン結合キット、ピアスケミカルズ社、ロックフォード、イリノイ州)を用いてビオチン-NHS(N-ヒドロキシ-スクシニミド)から調製して、ストレプトアビジンコーティング96ウェルプレート(ピアスケミカル社)のウェルに固定することができる。
【0066】
アッセイを行うために、固定成分を含むコーティング表面に非固定成分を加える。反応が終了した後、形成された如何なる複合体も固相表面上に固定されたままであるように未反応成分を除去する(例えば、洗浄によって)。固相表面に固定された複合体の検出は、多くの方法によって行うことができる。先に固定されていない成分が予め標識されている場合、表面上に固定された標識が検出されれば、複合体が形成されたことを示している。先に固定されていない分子が予め標識されていない場合、間接的な標識、例えば固定成分に対して特異的な標識抗体(次に抗体を、例えば標識抗Ig抗体によって直接または間接的に標識することができる)を用いて、表面上に固定された複合体を検出することができる。
【0067】
一つの態様において、このアッセイは、変種インテグリンポリペプチドまたは標的分子と反応するが、変種インテグリンポリペプチドのその標的分子に対する結合を妨害しない抗体を利用して行われる。そのような抗体は、プレートのウェルに誘導体化することができ、未結合の標的または変種インテグリンポリペプチドタンパク質は抗体の結合によってウェルに捕獲される。GST固定複合体に関して先に記述した方法の他に、そのような複合体を検出する方法には、変種インテグリンポリペプチドまたは標的分子に反応する抗体を用いて複合体を免疫学的に検出することと共に、変種インテグリンポリペプチドまたは標的分子に関連した酵素活性の検出に依存する酵素結合アッセイが含まれる。
【0068】
または、細胞不含アッセイは液相において行うことができる。そのようなアッセイにおいて、反応産物は、クロマトグラフィー、電気泳動、および免疫沈降を含む多くの標準的な技術によって未反応成分から分離する。好ましい態様において、アッセイには、変種インテグリンポリペプチドまたはその生物活性部分を、変種インテグリンポリペプチドに結合する既知の化合物に接触させてアッセイ混合物を形成すること、アッセイ混合物を被験化合物に接触させること、および被験化合物が変種インテグリンポリペプチドと相互作用するか否かを決定する段階が含まれ、被験化合物が変種インテグリンポリペプチドと相互作用するか否かを決定することには、被験化合物が選択的に変種インテグリンポリペプチドもしくはその生物活性部分に結合することができるか否か、または既知の化合物と比較して標的分子の活性を調節することができるか否かを決定することが含まれる。
【0069】
変種インテグリンポリペプチドとインテグリンリガンドとの相互作用を妨害する化合物を同定するために、変種インテグリンポリペプチドとリガンドとを含む反応混合物を、2つの産物が複合体を形成するために十分な条件および時間でインキュベートする。阻害物質を調べるために、反応混合物は被験化合物の存在下および非存在下で提供する。被験化合物は、最初に反応混合物に含めることができ、または一度に加えてから、標的遺伝子およびその細胞もしくは細胞外結合パートナーを加えることができる。対照反応混合物は、被験化合物を加えないで、またはプラセボを加えてインキュベートする。次に、変種インテグリンポリペプチドとインテグリンリガンドとの任意の複合体の形成を検出する。対照反応において複合体が形成されるが、被験化合物を含む反応混合物において形成されなければ、化合物が相互作用を妨害することを示している。さらに、被験化合物と変種インテグリンポリペプチドとを含む反応混合物における複合体形成を、被験化合物と対応する野生型インテグリンポリペプチドとを含む反応混合物における複合体形成と比較することができる。これらのアッセイは、不均一または均一フォーマットで行うことができる。不均一アッセイは、変種インテグリンポリペプチドまたは結合パートナー(すなわち、インテグリンリガンド)のいずれかを固相上に固定すること、および反応終了時に固相上に固定された複合体を検出することを含む。均一アッセイでは、反応全体を液相で行う。いずれかのアプローチにおいて、反応物質を加える順序は、調べる化合物に関して異なる情報が得られるように変更することができる。例えば、変種インテグリンポリペプチドと結合パートナー(例えば、インテグリンリガンド)との相互作用を、例えば競合によって妨害する被験化合物は、試験物質の存在下で反応を行うことによって同定することができる。または、予め形成された複合体を破壊する被験化合物、例えば複合体から成分の一つを置換するより高い結合定数を有する化合物は、複合体が形成された後に反応混合物に被験化合物を加えることによって調べることができる。様々なフォーマットを下記に簡単に説明する。
【0070】
不均一アッセイ系において、変種インテグリンポリペプチドまたはインテグリンリガンドのいずれかを固相表面(例えば、マイクロタイタープレート)に固定して、非結合種は直接または間接的に標識する。固定種は、非共有または共有結合によって固定することができる。または、固定すべき種に特異的な固定抗体を用いて固相にその種を固定することができる。
【0071】
アッセイを行うために、固定種のパートナーを被験化合物と共にまたは被験化合物の非存在下でコーティング表面に曝露する。反応が終了した後、未反応の成分は除去されるが(例えば、洗浄によって)、形成された如何なる複合体も固相表面に固定されたままである。非固定種が予め標識されている場合、表面上に固定された標識が検出されれば、複合体が形成されたことを示している。非固定種が予め標識されていない場合、間接的な標識を用いて、例えば最初の非固定種に対して特異的な標識抗体(次に抗体を、例えば標識抗Ig抗体によって直接または間接的に標識することができる)を用いて、表面上に固定された複合体を検出することができる。反応成分を加える順序に応じて、複合体形成を阻害するまたは予め形成された複合体を破壊する被験化合物を検出することができる。
【0072】
または、反応は、被験化合物の存在下または非存在下で液相で行うことができ、反応産物を未反応成分から分離して、例えば溶液において形成された如何なる複合体も固定するために結合成分の一つに対して特異的な固定抗体と、固定された複合体を検出するための他のパートナーに対して特異的な標識抗体とを用いて、複合体を検出することができる。この場合も、反応物質を液相に加える順序に応じて、複合体を阻害する、または予め形成された複合体を破壊する被験化合物を同定することができる。
【0073】
本発明のもう一つの態様において、均一アッセイを用いることができる。例えば、変種インテグリンポリペプチドまたはインテグリンリガンドのいずれかが標識されているが、標識によって産生されたシグナルが複合体形成によって消光するような、変種インテグリンポリペプチドとインテグリンリガンドとの予め形成された複合体を調製する(例えば、このアプローチをイムノアッセイに利用する米国特許第4,109,496号を参照のこと)。種の一つに競合する、または予め形成された複合体から種の一つを置換する試験物質を加えれば、バックグラウンドを超えるシグナルが産生されると考えられる。このようにして、変種インテグリンポリペプチド結合パートナー相互作用を破壊する試験物質を同定することができる。
【0074】
さらにもう一つの局面において、変種インテグリンポリペプチドタンパク質は、変種インテグリンポリペプチドに結合または相互作用する他のタンパク質を同定するために、ツーハイブリッドアッセイまたはスリーハイブリッドアッセイにおける「ベイト(bait)」タンパク質として用いることができる(例えば、米国特許第5,283,317号;ゼルボス(Zervos)ら、(1993)Cell 72:223〜232;マデュラ(Madura)ら(1993)J. Biol. Chem. 268:12046〜12054;バーテル(Bartel)ら(1993)Biotechniques 14:920〜924;イワブチ(Iwabuchi)ら(1993)Oncogene 8:1693〜1696;およびブレント(Brent)、国際公開公報第94/10300号を参照のこと)。
【0075】
ツーハイブリッドアッセイは、ベイトタンパク質として変種Aドメインを用いて行うことができる。簡単に説明すると、変種AドメインをLexA DNA結合ドメインに融合させて、これをベイトとして用いる。プレイ(prey)は、N末端核局在シグナル、LexA活性化ドメイン、およびエピトープタグとの融合タンパク質としてTrxA発現の活性部位ループにクローニングした、アプタマーライブラリである(コラス(Colas)ら、1996 Nature 380:548;およびギウリス(Gyuris)ら、Cell 1993、75:791)。酵母細胞をベイトおよびプレイ遺伝子によって形質転換する。アプタマーが変種Aドメインに結合すれば、LexA活性化ドメインは、LexA DNA結合ドメインと近位になり、適切に配置されたLexA結合部位を有する遺伝子の発現が増加する。
【0076】
この系を調べるために、酵母株EGY48をベイトプラスミドおよびpSH18-34(URA3、その中でGAL1エンハンサー様の上流活性化配列(UASG)が、8個のLexA二量体の結合部位に置換されているlacZに融合したGAL1プロモーターを含む、2μmプラスミド)によって形質転換した。酵母株は、2つのレポーター遺伝子、LexAop-LEU2(酵母染色体LEU2遺伝子を置換)およびLexAop-lacZを2μm HIS3+プラスミド上に含む。形質転換細胞をX-galを含む培地上で播種した。ベイトの存在によって、β-ガラクトシダーゼの発現は引き起こされなかった。形質転換細胞はロイシン欠損プレートにおいて増殖しなかったことから、ベイト自身も同様にEGY48においてLexAop-Leu2遺伝子を活性化しなかった。次に、抑制型のアッセイにおいて、ベイトプラスミドおよびpJK101レポーターを用いて、ベイトの核輸送を評価した。このアッセイにおいて、転写的に不活性なLexA融合タンパク質によるDNA結合を検出することができる。pJK101レポーターは、URA3、すなわちUASGのほとんどを含む2μmプラスミドである。LexAの高親和性部位は、Gal1転写開始とUASGとのあいだに存在する。CD11bA-LexAベイトは、ガラクトース培地で増殖させるとpJK101プラスミドを有する酵母のガラクトシダーゼ活性を障害し、このベイトが核に入ることを示している。
【0077】
アプタマーライブラリをLeuおよびlacZレポーター含有酵母細胞に導入した。ライブラリタンパク質の合成は、ガラクトース培地において酵母を増殖させることによって誘導した。ベイトに結合する適したプレイが存在しない場合、酵母細胞は、Leu-培地上で増殖せず、β-ガラクトシダーゼ活性を有しない。適したプレイを発現する細胞は、Leu培地上でコロニーを形成して、β-ガラクトシダーゼを有する。選択的ガラクトース(しかし、グルコースではない)誘導性発現によって、LeuおよびLacZ表現型を決定的にライブラリタンパク質に帰することができ、その後の分析によって除外しなければならないライブラリプラスミドの数を減少させる。陽性コロニー(すなわち、ガラクトース上で増殖することができるコロニー、Ura-、Trp-、His-、Leu-プレート)由来のプラスミドを救出した(ホフマン(Hoffman)ら、1987、Gene 57:267)。それぞれのクローンの特徴をさらに調べる前に、ベイトとの相互作用の特異性を調べた。これは、無関係または非機能的なベイト(例えばそれぞれ、CD11a Aドメイン-LexAおよび11bA-D242A-LexA)、ベイトのDNA結合ドメイン部分と特異的に、または非特異的にプロモーターもしくは他の転写機構のエレメントと相互作用しないことを示すことによって行われた。ライブラリプラスミドは、ガラクトース依存的Leu+lacZ+酵母から救出して、当初の選択株および異なるベイトを含む他の株に再度導入した。特異的相互作用物質は、ガラクトース依存的Leu+およびlacZ+表現型を、当初のベイトを含む酵母に付与するが、無関係なベイトを含む酵母には付与しない。相互作用交配アッセイを用いて特異性を調べることができる。簡単に説明すると、プレイを含む株を当初のベイトタンパク質または対照ベイトタンパク質のいずれかを発現する異なる酵母株と交配させる。レポーターは、当初のベイトを含む二倍体でのみ活性となるはずである(フィンレー(Finley)ら、(1994)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:12980)。
【0078】
本発明はさらに、上記のスクリーニングアッセイによって同定される新規作用物質に関する。したがって、そのような作用物質による処置の有効性、毒性、副作用、または作用機序を決定するために、本発明に記載されるように同定された作用物質(例えば、変種インテグリンポリペプチド調節作用物質)を適当な動物モデルにおいてさらに用いることは本発明の範囲内である。さらに、上記のスクリーニングアッセイによって同定された新規作用物質は、本明細書に記載の治療のために用いることができる。
【0079】
薬学的組成物
変種インテグリンポリペプチド、その断片と共に本発明の抗変種インテグリンポリペプチド抗体(本明細書において「活性化合物」とも呼ばれる)は、薬学的組成物に組み入れることができる。そのような組成物は、典型的にタンパク質または抗体と薬学的に許容される担体とを含む。本明細書において用いられるように、「薬学的に許容される担体」という句には、薬学的投与に適合性の溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌および抗真菌剤、等張剤ならびに吸収遅延剤等が含まれる。補助活性化合物も同様に組成物に組み入れることができる。
【0080】
薬学的組成物は、その意図する投与経路に適合するように製剤化される。投与経路の例には、非経口、静脈内、皮内、皮下、経口、吸入、経皮、経粘膜、および直腸投与が含まれる。非経口、皮内、または皮下適用のために用いられる溶液または懸濁液には、以下の成分が含まれうる:注射用水、生理食塩液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、または他の合成溶媒のような滅菌希釈剤;ベンジルアルコール、またはメチルパラベンのような抗菌剤;アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムのような抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸のようなキレート剤;酢酸塩、クエン酸塩、または燐酸塩のような緩衝液、および塩化ナトリウムまたはデキストロースのような等張性調節剤。pHは、塩酸または水酸化ナトリウムのような酸または塩基によって調節することができる。非経口調製物は、ガラスもしくはプラスチック製のアンプル、使い捨てシリンジ、または多数回投与バイアルに封入することができる。
【0081】
注射可能な使用に適した薬学的組成物には、滅菌水溶液(水溶性の場合)または分散剤、および滅菌注射溶液または分散液の即時調合調製物のための滅菌粉末が含まれる。静脈内投与の場合、適した担体には、生理食塩液、静菌水、クレモフォアEL(Cremophor EL;商標)(BASF、パーシッパニー、ニュージャージー州)または燐酸緩衝生理食塩液(PBS)が含まれる。全ての場合において、組成物は滅菌でなければならず、容易なシリンジ操作性が存在する程度に流動性でなければならない。組成物は、製造および保存条件で安定でなければならず、細菌および真菌のような微生物の混入作用に対して保護されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコール等)を含む溶媒または分散媒体、ならびにその適した混合物となりうる。適切な流動性は、例えばレシチンのようなコーティングを用いることによって、分散剤の場合には必要な粒子径を維持することによって、および界面活性剤を用いることによって維持することができる。微生物の作用の予防は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサール等によって行うことができる。多くの場合、等張剤、例えば糖、マンニトール、ソルビトールのような多価アルコール、塩化ナトリウムを組成物に含めることが好ましいと考えられる。注射可能組成物は、吸収を遅らせる作用物質、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを組成物に含めることによって持続的に吸収させることができる。
【0082】
滅菌注射用溶液は、先に列挙した成分の一つまたは組み合わせと共に適当な溶媒において活性化合物の必要量を組み入れて、必要であれば濾過滅菌を行うことによって調製することができる。一般的に、分散剤は、基礎分散媒体と先に列挙した必要な他の成分とを含む滅菌溶媒に活性化合物を組み入れることによって調製される。滅菌注射溶液の調製のための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、先に濾過滅菌したその溶液から、活性成分プラスさらなる所望の成分の粉末を生じる真空乾燥および凍結乾燥である。
【0083】
経口組成物には一般的に、不活性希釈剤または食用担体が含まれる。経口治療的投与の目的に関して、活性化合物は賦形剤と共に組み入れて、錠剤、トローチ剤、またはカプセル剤、例えばゼラチンカプセルの形で用いることができる。経口組成物は、マウスウォッシュとして用いられる液体担体を用いて調製することも可能である。薬学的に適合性の結合剤、および/またはアジュバント材料を、組成物の一部として含めることができる。錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤等は、以下の成分または類似の特性を有する化合物のいかなるものも含むことができる:微結晶セルロース、トラガカントゴム、もしくはゼラチンのような結合剤;デンプンもしくは乳糖のような賦形剤;アルギン酸、プリモゲル、もしくはコーンスターチのような崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムもしくはステローテスのような潤滑剤;二酸化珪素コロイドのような滑り剤;蔗糖もしくはサッカリンのような甘味料;またはペパーミント、サリチル酸メチル、もしくはオレンジ香料のような香料。
【0084】
吸入投与の場合、化合物は、適した噴射剤、例えば、二酸化炭素のようなガス含む加圧容器まもしくディスペンサー、またはネブライザーからエアロゾルスプレーの形で輸送される。
【0085】
全身投与はまた、経粘膜または経皮手段によっても行うことができる。経粘膜または経皮投与の場合、浸透すべき障壁に対して適当な浸透剤を製剤において用いる。そのような浸透剤は一般的に当技術分野で既知であり、例えば、経粘膜投与に関して、洗浄剤、胆汁酸塩、およびフシジン酸誘導体が含まれる。経粘膜投与は、鼻腔内スプレーまたは坐剤を用いて行うことができる。経皮投与の場合、活性化合物は、当技術分野で一般的に既知のように軟膏剤、軟膏、ゲル、またはクリームに製剤化される。
【0086】
化合物はまた、直腸輸送のために坐剤(例えば、カカオバターおよび他のグリセリドのような従来の坐剤基剤と共に)または浣腸の形で調製することができる。
【0087】
一つの態様において、活性化合物は、インプラントおよび微量封入輸送系を含む、徐放性製剤のような、化合物が体から迅速に消失しないようにする担体と共に調製される。エチレン酢酸ビニル、多価無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸のような生体分解性の生体適合性ポリマーを用いることができる。そのような処方を調製する方法は当業者に明らかである。材料はまた、アルザ社およびノバファーマシューティカルズインクから購入することができる。リポソーム懸濁液(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体によって感染細胞にターゲティングされるリポソームを含む)も同様に薬学的に許容される担体として用いることができる。これらは、例えば、米国特許第4,522,811号に記載されるように当業者に既知の方法に従って調製することができる。
【0088】
投与を容易にするため、および投与を均一にするために、単位用量で経口または非経口組成物を処方することが都合がよい。本明細書において用いられる用量型は、各単位が必要な薬学的担体に関連して所望の治療効果を生じるように計算された活性化合物の規定量を含む、処置される被験者に関して単位用量として適している物理的に個別の用量を意味する。
【0089】
そのような化合物の毒性および治療的有効性は、細胞培養または実験動物における標準的な薬学的技法、例えばLD50(集団の50%に対して致死的な用量)およびED50(集団の50%において治療的に有効な用量)を決定することによって決定することができる。毒性と治療効果の用量比が治療指数であり、LD50/ED50比として表記されうる。高い治療指数を示す化合物が好ましい。毒性副作用を示す化合物を用いてもよいが、非罹患細胞に対する可能性がある損傷を最小限にして、それによって副作用を減少させるために、そのような化合物を罹患組織の部位にターゲティングする輸送系を設計するように注意しなければならない。
【0090】
細胞培養アッセイおよび動物試験から得られたデータは、ヒトにおいて用いられる幅広い用量を処方するために用いることができる。そのような化合物の用量は好ましくは、ほとんどまたは全く毒性を示さないED50を含む循環中の濃度範囲内に存在する。用量は、用いる投与剤形および利用する投与経路に応じてこの範囲内で変動してもよい。本発明の方法において用いられる任意の化合物に関して、治療的に有効な用量は、細胞培養アッセイから最初に推定することができる。用量は、細胞培養において決定されたIC50(すなわち、症状の最大阻害の半量を得る被験化合物の濃度)を含む循環中の血漿濃度範囲を得るように動物モデルにおいて処方してもよい。そのような情報を用いて、ヒトにおける有用な用量をより正確に決定することができる。血漿中レベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィーによって測定してもよい。
【0091】
本明細書において定義されるように、タンパク質またはポリペプチドの治療的有効量(すなわち、有効量)は、約0.001〜30 mg/kg体重、好ましくは約0.01〜25 mg/kg体重、より好ましくは約0.1〜20 mg/kg体重、およびさらにより好ましくは約1〜10 mg/kg、2〜9mg/kg、3〜8mg/kg、4〜7mg/kg、または5〜6mg/kg体重の範囲である。タンパク質またはポリペプチドは、約1〜10週間のあいだに、好ましくは2〜8週間、より好ましくは3〜7週間、およびさらにより好ましくは約4、5、または6週間のあいだに週1回投与することができる。当業者は、疾患または障害の重症度、これまでの治療、被験者の全身健康および/または年齢、および存在する他の疾患を含むがこれらに限定されない特定の要因が、被験者を有効に治療するために必要な用量および時期に影響を及ぼす可能性があることを認識すると考えられる。その上、タンパク質、ポリペプチド、または抗体の治療的有効量による被験者の治療には、一回治療が含まれうる、または好ましくは一連の治療が含まれうる。
【0092】
抗体に関して、好ましい用量は0.1 mg/kg体重(一般的に10 mg/kg〜20 mg/kg)である。抗体が脳において作用する場合、50 mg/kg〜100 mg/kgの用量が通常適当である。一般的に部分的なヒト抗体および完全なヒト抗体は、他の抗体よりヒトの体内において長い半減期を有する。したがって、より低い用量およびあまり頻繁でない投与がしばしば可能である。脂質付加のような改変を用いて抗体を安定化させ、取り込みおよび組織の浸透(例えば、脳への)を増強することができる。抗体の脂質付加方法は、クルイクシャンクら(Cruikshank、1997、J. Acquired Immune Deficiency Syndromes and Human Retrovirology 14:193)に記載されている。
【0093】
本発明は、発現または活性を調節する作用物質を含む。作用物質は例えば低分子であってもよい。例えば、そのような低分子には、ペプチド、ペプチド模倣体(例えば、ペプトイド)、アミノ酸、アミノ酸類似体、ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド類似体、ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、1モルあたりの分子量が約10,000 g未満の有機または無機化合物(すなわち、ヘテロ有機または有機金属化合物を含む)、1分子あたりの分子量が約5,000 g未満の有機または無機化合物、1分子あたりの分子量が約1,000 g未満の有機または無機化合物、1分子あたりの分子量が約500 g未満の有機または無機化合物、ならびにそのような化合物の塩、エステル、および他の薬学的に許容される型が含まれるがこれらに限定されない。
【0094】
例としての用量には、被験者または試料重量1kgあたり低分子のミリグラムまたはマイクログラム量が含まれる(例えば、約1μg/kg〜約500 mg/kg、約100 μg/kg〜約5mg/kg、または約1μg/kg〜約50 μg/kg)。さらに、低分子の適当な用量は、調節すべき発現または活性に関する低分子の有効性に依存する。これらの低分子の一つまたは複数を、本発明のポリペプチドまたは核酸の発現または活性を調節するために、動物(例えば、ヒト)に投与する場合、医師、獣医師、または研究者は、例えば最初に比較的低用量を処方して、その後適当な反応が得られるまで用量を増加させてもよい。さらに、任意の特定の動物被験者の特定の用量レベルも、用いる特定の化合物の活性、被験者の年齢、体重、全身体重、全身健康、性別、および食事、投与時期、投与経路、排泄速度、薬剤併用、および調節すべき発現または活性の程度を含む様々な要因に依存すると理解される。
【0095】
抗体(またはその断片)は、サイトトキシン、治療作用物質、または放射活性金属イオンのような治療部分に結合してもよい。サイトトキシンまたは細胞毒物質には、細胞にとって有害な任意の作用物質も含まれる。例には、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、エチジウムブロマイド、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミスラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、およびピューロマイシンならびにその類似体または相同体が含まれる。治療作用物質には、抗代謝剤(例えば、メソトレキセート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、5-フルオロウラシル、デカルバジン)、アルキル化剤(例えば、メクロルエタミン、チオエパクロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)、およびロムスチン(CCNU)、シクロトスファミド(cyclothosphamide)、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、およびシス-ジクロロジアミンプラチナ(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(これまでダウノマイシン)、およびドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(これまでアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミスラマイシン、およびアントラマイシン(AMC))、ならびに抗分裂剤(例えば、ビンクリスチンおよびビンブラスチン)が含まれる。
【0096】
本発明の結合体は、所定の生物反応を改変するために用いることができ、薬剤部分は、古典的な化学治療物質に限定されると解釈すべきではない。例えば、薬剤部分は、所望の生物活性を有するタンパク質またはポリペプチドであってもよい。そのようなタンパク質には、例えばアブリン、リシンA、シュードモナス(Pseudomonas)外毒素、ジフテリア毒素、またはサイトカインもしくはインターロイキンのようなタンパク質が含まれてもよいが、これらに限定されない。
【0097】
または抗体は、シーガル(Segal)らによって米国特許第4,676,980号に記載されるように、第二の抗体に結合して抗体のヘテロ結合体を形成することができる。
【0098】
本発明の核酸分子は、ベクターに挿入して、これを遺伝子治療ベクターとして用いることができる。遺伝子治療ベクターは、例えば、静脈内注射、局所投与(米国特許第5,328,470号を参照のこと)によって、または定位注射(例えば、チェン(Chen)ら(1994)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:3054〜3057)によって被験者に輸送することができる。遺伝子治療ベクターの薬学的調製物には、許容される希釈剤における遺伝子治療ベクターが含まれうる、または遺伝子輸送媒体が抱埋される徐放性マトリクスを含みうる。または、完全な遺伝子輸送ベクターを、組換え型細胞、例えばレトロウイルスベクターから無傷で産生することができる場合、薬学的調製物には、遺伝子輸送系を生じる一つまたは複数の細胞が含まれうる。
【0099】
薬学的組成物は、投与のための説明書と共に容器、パック、ディスペンサーに含まれうる。
【0100】
インテグリンを含むプロセスの動物モデル
可能性がある治療的組成物を調べるために有用となりうる血管損傷モデルは、サイモン(Simon)ら(J. Clin. Invest. 2000 105:293)によって記述される。タン(Tang)ら(1997、J. Exp. Med 186:1853)は、様々なスクリーニングアッセイにおいて有用となりうるCD11bノックアウトマウスを記述している。火傷の損傷に関する動物モデルも同様に有用となる可能性がある(Plast Reconstr Surg 1995、96:1177)。
【0101】
治療方法
本発明は、異常または望まないインテグリン発現または活性に関連した障害の危険性をもつ(または感受性がある)か、または障害を有する被験者を治療する、予防的および治療的方法を提供する。
【0102】
本明細書において用いられる「治療」または「患者を治療する」とは、疾患、疾患の症状、または疾患に対する素因を治療、治癒、緩和、軽減、変化、治療、改善、和らげる、改善もしくは影響を及ぼす目的で、治療物質を患者に適用もしくは投与すること、または疾患、疾患の症状、もしくは疾患に対する素因を有する患者から単離された組織もしくは細胞株に対する治療物質の適用もしくは投与であると定義される。治療物質には、低分子、ペプチド、抗体、リボザイム、およびアンチセンスオリゴヌクレオチドが含まれる。
【0103】
そのような化合物の毒性および治療的有効性は、細胞培養または実験動物において標準的な薬学的技法によって、例えば、LD50(集団における50%に致死的な用量)、およびED50(集団における50%において治療的に有効な用量)を決定することによって決定することができる。毒性と治療効果の用量比が治療指数であり、LD50/ED50比として表記することができる。高い治療指数を示す化合物が好ましい。毒性副作用を示す化合物を用いてもよいが、非罹患細胞に対する可能性がある損傷を最小限にして、それによって副作用を減少させるために、そのような化合物を罹患組織の部位にターゲティングする輸送系を設計するように注意しなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1A−1B】CD11b Aドメインの結晶構造の表面の略図をその「閉鎖型」(図1A)および「開放型」(図1B)状態で示し、C末端のα7ヘリックスを灰色のリボンで示し、イソロイシン(I316)残基を黒色で示す。矢印はMIDAS表面を指す。MIDASおよびSILEN(イソロイシンのためのソケット)は、Aドメイン構造のほぼ正反対の末端に存在する。
【図1C−1D】SILEN残基(I316から半径4Åの範囲内に存在するI135、L164、I236、Y267)の拡大表面図を「閉鎖型」(図1C)および「開放型」(図1D)コンフォメーションで示す。「閉鎖」型(図1C)では、I316側鎖はSILENに入り込んでいる;L312は上部に認められる。L312は「開放型」構造(図1D)ではSILENを覆うように移動する。図1A〜1DはGRASP(バリー・ホニヒ(Barry Honig)、コロンビア大学、ニューヨーク)を用いて作製した。
【図1E−1F】「閉鎖型」(図1E)および「開放型」(図1F)コンフォメーションにおけるI316配位結合ソケットの立体図を示す。SILEN残基およびI316およびL312に印をつけている。
【図2A−2B】11bA123-321(図2A)および11bA123-315構造のα7のC末端部分の2F0-Fc電子密度マップを示す。マップは、1.1σで輪郭を示し、Oによって作製する。
【図2C−2D】CD11b Aドメインについてそれぞれ報告された「閉鎖」(図2C、緑色の記録)および「開放」(図2D、緑色の記録)型に、11bA123-321(図2C、赤色の記録)および11bA123-315(図2D、赤色の記録)構造を完全に重ね合わせて示す、リボン略図を示す。金属イオンを紫色の球として示す。
【図2E−2F】MIDASの立体図を11bA123-321(図2E)および11bA123-315(図2F)構造で示す。直接のD242金属結合、および間接的なT209-水-金属結合(図2E)が、「閉鎖型」コンフォメーションの特徴である。この場合の金属イオンは、Mn2+である。MIDASコンフォメーション(直接のT209-金属結合、間接的なD242-水-金属結合、および緑色で示す活性部位を占有する偽リガンドグルタメート、ならびに直接配位結合する金属イオン(Ca2+)は、「開放型」コンフォメーションのものである)。図2Eおよび2Gにおいて、金属イオンは紫色で示し、水素結合は黄色の点線で示す。
【図3A−3J】11bAE-G(図3A〜3E)および11bA123-315(図3F〜3J)、ならびに活性化依存的リガンドiC3b(図3Aおよび3F)、フィブリノーゲン(図3Bおよび3G)、またはCD54(図3Cおよび3H)との相互作用を記録するために、ビアコア(商標)を用いた11bAE-Gおよび11bA123-315Aドメインの機能的分析の結果を示す。三つのリガンド全てが11bA123-3151に結合したが、11bA123-321には結合しなかった。活性化非依存的リガンド、NIF(図3Dおよび3I)、ならびにmAb 904に対する結合が同等であったことから、認められた結合の差はタンパク質濃度の差が原因ではなかった。親和性を定量的に決定するために、Aドメインペプチドの様々な濃度を用いた。結合データは、一次変換によって分析し、解離定数(Kd、平均値±SD、n=2)0.46±0.15 μM(iC3bに関して)、0.25±0.07 μM(フィブリノーゲンに関して)、および0.22±0.04 μM(CD54に関して)を得た。
【図4A】11bAI → GのiC3bに対する結合の分析結果を示す。破線は同じリガンドに対する11bA123-321の結合が存在しないことを表す。計算されたKdは0.66±0.3 μM(平均値±SD、n=2)である。
【図4B】野生型受容体と比較して、COS細胞上に発現された1-GCR3のiC3bに対する相対的結合を示すヒストグラム(平均値±SD、n=3)を示す。
【図5】9個のαインテグリンαサブユニット(CD11b、CD11c、CD11d、CD11a、α1、α2、α10、α11、およびαE)のAドメインのアラインメントを示す。このアラインメントにおいて、不変のIle(I316)を矢印で示す。
【図6】CD11a Aドメインにおける不変のイソロイシンのIからGへの変異が、このインテグリンにおいて活性化ドメインを誘導することを示し、CD11b Aドメインにおけるこの知見を他のインテグリンAドメインに適用可能であることを強調する。
【図7】8個のインテグリンβサブユニットのA様ドメインのアラインメントである。このアラインメントにおいて、βサブユニットにおける不変のIleに対応する残基を矢印で示す。
Claims (68)
- 332位のイソロイシンがグリシンおよびアラニンから選択されるアミノ酸によって置換された、変種CD11bαサブユニットをコードする単離核酸分子。
- 332位のイソロイシンがグリシンおよびアラニンから選択されるアミノ酸によって置換された、変種CD11bαサブユニットポリペプチド。
- CD11bαサブユニットのアミノ酸144位〜331位からなるポリペプチドをコードする、単離核酸分子。
- 332位のイソロイシンがグリシンおよびアラニンから選択されるアミノ酸によって置換されているCD11bαサブユニットのアミノ酸144位〜332位を含むポリペプチドをコードする、単離核酸分子。
- 332位のイソロイシンがグリシンおよびアラニンから選択されるアミノ酸によって置換されている、CD11bαサブユニットのアミノ酸144位〜332位を含むポリペプチド。
- CD11bαサブユニットのアミノ酸332位〜1152位を含まない、CD11bαサブユニットのアミノ酸144位〜331位を含むポリペプチド。
- 331位のイソロイシンがグリシンおよびアラニンから選択されるアミノ酸によって置換された、変種CD11aαサブユニットをコードする単離核酸分子。
- 331位のイソロイシンがグリシンおよびアラニンから選択されるアミノ酸によって置換されている、変種CD11aαサブユニット。
- CD11aαサブユニットのアミノ酸150位〜330位からなるポリペプチドをコードする、単離核酸分子。
- 331位のイソロイシンがグリシンおよびアラニンから選択されるアミノ酸によって置換されている、CD11aαサブユニットのアミノ酸150位〜331位を含むポリペプチドをコードする、単離核酸分子。
- 331位のイソロイシンがグリシンおよびアラニンから選択されるアミノ酸によって置換されている、CD11aαサブユニットのアミノ酸150位〜331位を含むポリペプチド。
- CD11aのアミノ酸331位〜1223位を含まない、CD11aαサブユニットのアミノ酸150位〜330位を含むポリペプチド。
- 以下を含む、被験化合物がCD11bに結合するための候補化合物であるか否かを決定する方法:
(a)アミノ酸332位のイソロイシンがグリシンおよびアラニンから選択されるアミノ酸によって置換されている、CD11bαサブユニットのアミノ酸144位〜332位を含むポリペプチドに、被験化合物を接触させる段階、ならびに
(b)ポリペプチドに結合する化合物がCD11bに結合する候補化合物である、被験化合物がポリペプチドに結合するか否かを決定する段階。 - アミノ酸332位のイソロイシンがグリシンおよびアラニンから選択されるアミノ酸によって置換されている、CD11bαサブユニットのアミノ酸144位〜332位を含むポリペプチドを、ヒト以外の哺乳類に接種する段階;および
CD11bの開放型を含むポリペプチドに選択的に結合する抗体を、哺乳類から単離する段階
を含む、CD11bの開放型を含むポリペプチドに選択的に結合する抗体を作製する方法。 - アミノ酸332位のイソロイシンがグリシンおよびアラニンから選択されるアミノ酸によって置換されている、CD11bαサブユニットのアミノ酸144位〜332位からなるポリペプチドに選択的に結合する抗体。
- モノクローナル抗体である、請求項15記載の抗体。
- 以下を含む、被験化合物が炎症障害を治療するための候補化合物であるか否かを決定する方法:
(a)アミノ酸332位のイソロイシンがグリシンおよびアラニンから選択されるアミノ酸によって置換されている、CD11bαサブユニットのアミノ酸144位〜332位を含むポリペプチドに、被験化合物を接触させる段階、ならびに
(b)ポリペプチドに結合する化合物が、炎症障害を治療するための候補化合物である、被験化合物がポリペプチドに結合するか否かを決定する段階。 - アミノ酸313位のフェニルアラニンおよびアミノ酸320位のアラニンがシステインに置換されている、CD11bαサブユニットのアミノ酸144位〜320位を含むポリペプチドをコードする単離核酸分子。
- アミノ酸313位のフェニルアラニンおよびアミノ酸320位のアラニンがシステインに置換されている、CD11bαサブユニットのアミノ酸144位〜320位を含むポリペプチド。
- アミノ酸315位のバリンおよびアミノ酸320位のアラニンがシステインに置換されている、CD11bαサブユニットのアミノ酸144位〜320位を含むポリペプチドをコードする単離核酸分子。
- アミノ酸315位のバリンおよびアミノ酸320位のアラニンがシステインに置換されている、CD11bαサブユニットのアミノ酸144位〜320位を含むポリペプチド。
- 以下を含む、被験化合物がCD11bに結合する候補化合物であるか否かを決定する方法:
(a)アミノ酸313位のフェニルアラニンおよびアミノ酸320位のアラニンがシステインに置換されている、CD11bαサブユニットのアミノ酸144位〜320位を含むポリペプチドに、被験化合物を接触させる段階、ならびに
(b)ポリペプチドに結合する化合物がCD11bに結合する候補化合物である、被験化合物がポリペプチドに結合するか否かを決定する段階。 - アミノ酸313位のフェニルアラニンおよびアミノ酸320位のアラニンがシステインに置換されている、CD11bαサブユニットのアミノ酸144位〜320位を含むポリペプチドを、ヒト以外の哺乳類に接種する段階、ならびに
CD11bの開放型を含むポリペプチドに選択的に結合する抗体を哺乳類から単離する段階、
を含む、CD11bの開放型を含むポリペプチドに選択的に結合する抗体を作製する方法。 - アミノ酸313位のフェニルアラニンおよびアミノ酸320位のアラニンがシステインに置換されている、CD11bαサブユニットのアミノ酸144位〜320位からなるポリペプチドに選択的に結合する抗体。
- モノクローナル抗体である、請求項24記載の抗体。
- 以下を含む、被験化合物が、炎症障害を治療する候補化合物であるか否かを決定する方法:
(a)アミノ酸313位のフェニルアラニンおよびアミノ酸320位のアラニンがシステインに置換されている、CD11bαサブユニットのアミノ酸144位〜320位を含むポリペプチドに被験化合物を接触させる段階、ならびに
(b)ポリペプチドに結合する化合物が炎症障害を治療するための候補化合物である、被験化合物がポリペプチドに結合するか否かを決定する段階。 - 以下を含む、被験化合物がCD11bに結合する候補化合物であるか否かを決定する方法:
(a)アミノ酸315位のバリンおよびアミノ酸320位のアラニンがシステインに置換されている、CD11bαサブユニットのアミノ酸144位〜320位を含むポリペプチドに、被験化合物を接触させる段階、ならびに
(b)ポリペプチドに結合する化合物が、CD11bに結合する候補化合物である、被験化合物がポリペプチドに結合するか否かを決定する段階。 - アミノ酸315位のバリンおよびアミノ酸320位のアラニンがシステインに置換されている、CD11bαサブユニットのアミノ酸144位〜320位を含むポリペプチドを、ヒト以外の哺乳類に接種する段階;ならびに
CD11bの開放型を含むポリペプチドに選択的に結合する抗体を、哺乳類から単離する段階、
を含む、CD11bの開放型を含むポリペプチドに選択的に結合する抗体を作製する方法。 - アミノ酸315位のバリンおよびアミノ酸320位のアラニンがシステインに置換されている、CD11bαサブユニットのアミノ酸144位〜320位からなるポリペプチドに選択的に結合する抗体。
- モノクローナル抗体である、請求項29記載の抗体。
- 以下を含む、被験化合物が炎症障害を治療するための候補化合物であるか否かを決定する方法:
(a)アミノ酸315位のバリンおよびアミノ酸320位のアラニンがシステインに置換されている、CD11bαサブユニットのアミノ酸144位〜320位を含むポリペプチドに、被験化合物を接触させる段階、ならびに
(b)ポリペプチドに結合する化合物が炎症障害を治療する候補化合物である、被験化合物がポリペプチドに結合するか否かを決定する段階。 - 332位のイソロイシンがイソロイシン以外のアミノ酸に置換された、変種CD11bαサブユニットをコードする単離核酸分子。
- 332位のイソロイシンがイソロイシン以外のアミノ酸に置換された、変種CD11bαサブユニット。
- アミノ酸332位のイソロイシンがイソロイシン以外のアミノ酸に置換されている、CD11bαサブユニットのアミノ酸144位〜332位を含むポリペプチドをコードする単離核酸分子。
- 332位のイソロイシンがグリシンおよびアラニンから選択されるアミノ酸によって置換されている、CD11bαサブユニットのアミノ酸144位〜332位を含むポリペプチド。
- 333位のイソロイシンがイソロイシン以外のアミノ酸に置換された変種CD11cαサブユニットをコードする、単離核酸分子。
- 333位のイソロイシンがイソロイシン以外のアミノ酸に置換された変種CD11cαサブユニットポリペプチド。
- CD11cαサブユニットのアミノ酸144位〜332位からなるポリペプチドをコードする、単離核酸分子。
- 332位のイソロイシンがイソロイシン以外のアミノ酸に置換されている、CD11cαサブユニットのアミノ酸144位〜333位を含むポリペプチドをコードする、単離核酸分子。
- 332位のイソロイシンがイソロイシン以外のアミノ酸に置換された変種CD11dαサブユニットをコードする、単離核酸分子。
- 332位のイソロイシンがイソロイシン以外のアミノ酸に置換された変種CD11dαサブユニットポリペプチド。
- CD11dαサブユニットのアミノ酸144位〜331位からなるポリペプチドをコードする、単離核酸分子。
- アミノ酸332位のイソロイシンがイソロイシン以外のアミノ酸に置換されている、CD11dαサブユニットのアミノ酸144位〜332位を含むポリペプチドをコードする、単離核酸分子。
- 331位のイソロイシンがイソロイシン以外のアミノ酸に置換された変種CD49aαサブユニットをコードする、単離核酸分子。
- 331位のイソロイシンがイソロイシン以外のアミノ酸に置換された、変種CD49aαサブユニットポリペプチド。
- CD49aαサブユニットのアミノ酸144位〜330位からなるポリペプチドをコードする、単離核酸分子。
- アミノ酸331位のイソロイシンがイソロイシン以外のアミノ酸に置換されている、CD49aαサブユニットのアミノ酸144位〜332位を含むポリペプチドをコードする、単離核酸分子。
- 361位のイソロイシンがイソロイシン以外のアミノ酸に置換された変種CD49bαサブユニットをコードする、単離核酸分子。
- 361位のイソロイシンがイソロイシン以外のアミノ酸に置換されている、変種CD49bαサブユニット。
- CD49bαサブユニットのアミノ酸144位〜360位からなるポリペプチドをコードする、単離核酸分子。
- アミノ酸361位のイソロイシンがイソロイシン以外のアミノ酸に置換されている、CD49bαサブユニットのアミノ酸144位〜361位を含むポリペプチドをコードする、単離核酸分子。
- 249位のイソロイシンがイソロイシン以外のアミノ酸に置換された変種α10αサブユニットをコードする、単離核酸分子。
- 249位のイソロイシンがイソロイシン以外のアミノ酸に置換された、変種α10αサブユニットポリペプチド。
- α10αサブユニットのアミノ酸57〜248位からなるポリペプチドをコードする単離核酸分子。
- アミノ酸249位のイソロイシンがイソロイシン以外のアミノ酸に置換されている、α10αサブユニットのアミノ酸57〜249位を含むポリペプチドをコードする、単離核酸分子。
- 349位のイソロイシンがイソロイシン以外のアミノ酸に置換された変種α11αサブユニットをコードする単離核酸分子。
- 349位のイソロイシンがイソロイシン以外のアミノ酸に置換された、変種α11αサブユニットポリペプチド。
- α11αサブユニットのアミノ酸159〜348位からなるポリペプチドをコードする、単離核酸分子。
- アミノ酸349位のイソロイシンがイソロイシン以外のアミノ酸に置換されている、変種α11αサブユニットのアミノ酸159〜349位を含むポリペプチドをコードする、単離核酸分子。
- 385位のイソロイシンがイソロイシン以外のアミノ酸に置換された変種αEαサブユニットをコードする単離核酸分子。
- 385位のイソロイシンがイソロイシン以外のアミノ酸に置換された変種α11αサブユニット。
- α11αサブユニットのアミノ酸196〜384位からなるポリペプチドをコードする、単離核酸分子。
- アミノ酸385位のイソロイシンがイソロイシン以外のアミノ酸に置換されている、α11αサブユニットのアミノ酸196〜387位を含むポリペプチドをコードする、単離核酸分子。
- イソロイシン以外のアミノ酸がグリシンおよびアラニンからなる群より選択される、請求項32、34、36、38、39、40、42、43、44、46、47、48、50、51、52、54、56、58、59、60、62、および63のいずれか一項記載の単離核酸分子。
- イソロイシン以外のアミノ酸がグリシンおよびアラニンからなる群より選択される、請求項33、35、37、41、45、49、53、55、57、および61のいずれか一項記載のポリペプチド。
- 請求項15、24、および29のいずれか一項記載の抗体を投与する段階を含む、炎症障害を治療する方法。
- 請求項15、24、29のいずれか一項記載の抗体を投与する段階を含む、虚血-再潅流傷害を治療する方法。
- 請求項15、24、および29のいずれか一項記載の抗体を投与する段階を含む、再狭窄を治療する方法。
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