JP2005506834A - 細胞外メッセンジャー - Google Patents
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Abstract
本発明の様々な実施様態は、ヒトの細胞外メッセンジャー(EXMES)およびEXMESを同定し、コードするポリヌクレオチドを提供する。本発明の実施例はまた、発現ベクター、宿主細胞、抗体、アゴニストおよびアンタゴニストをも提供する。他の実施様態は、EXMESの異常発現に関連する疾患を診断、治療または予防する方法をも提供する。
Description
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規の核酸及びこれらの核酸によりコ−ドされた細胞外メッセンジャーに関する。また、本発明は、これらの核酸とタンパク質を利用した、自己免疫又は炎症性疾患、神経疾患、内分泌障害、発達障害、癌を含む細胞増殖異常、生殖障害、心血管疾患、及び感染の、診断・治療・予防に関する。本発明は、更に、核酸及び細胞外メッセンジャーの発現における、外因性化合物の効果についての評価に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞間伝達は多細胞生物の成長と生存に必須である。特に内分泌系、神経系、免疫系の機能に必須である。更に細胞間伝達は組織作製と器官形成などの発生プロセスにとって極めて大切である。その場合細胞増殖、細胞分化及び形態形成が空間的また時間的に正確な協働作用で調整されなければならない。細胞は分泌とホルモン、成長ファクター、神経ペプチド、サイトカインなどのシグナル分子の多様なタイプの取り込みによって互いに伝達する。
【0003】
ホルモン
ホルモンはシグナル伝達分子であり、胚形成から成人まで基本的な生理的プロセスを協働して調整する。これらのプロセスには代謝、呼吸、生殖、排出、胎児組織分化、器官形成、成長、発達、恒常性及びストレス反応が含まれる。ホルモン分泌と神経系は密接に組み込まれており、互いに依存している。ホルモンは内分泌腺により、主に視床下部と脳下垂体、甲状腺と副甲状腺、膵臓、副腎、卵巣、精巣で分泌される。
【0004】
循環へのホルモンの分泌はきちんと制御されている。ホルモンはしばしば日周期的パターン、拍動性パターン、及び周期性パタ−ンで分泌される。ホルモン分泌は血液生化学の摂動、他の上流で作用するホルモン、神経インパルス、負のフィードバックループにより調整される。血中ホルモン濃度は常に監視され、最適の安定したレベルを維持するよう調整される。いったん分泌されると、ホルモンは特異的受容体を発現する標的細胞だけに作用する。
【0005】
多くの内分泌系の疾患は、ホルモンの分泌不全或いは分泌過多により引き起こされる。分泌不全は、源泉のホルモンの腺が損傷したり或いは正常に機能しない場合に多くの場合発生する。分泌過多は、ホルモン分泌細胞に由来する腫瘍の増殖に多くの場合起因する。不適切なホルモンレベルは、調節フィードバックループ或いはホルモン前駆体のプロセッシングにおける障害により引き起こされる場合がある。内分泌系機能障害は、標的細胞がホルモンに応答しない場合に発生する場合もある。
【0006】
ホルモンは生化学的に、ポリペプチド、ステロイド、エイコサノイドまたアミンとして分類される。インスリンや成長ホルモンなど多様なホルモンを含むポリペプチドは、大きさや機能が様々である。多くの場合、不活性の前駆体として合成され、それらの前駆体が細胞内で成熟な活性型へ処理される。アミンにはエピネフリンとドーパミンがあり、神経内分泌シグナリングで機能するアミノ酸誘導体である。ステロイドにはコレステロールに由来するホルモンのエストロゲンとテストステロンがあり、性的成長と生殖において機能する。エイコサノイドにはプロスタグランジンとプロスタサイクリンがあり、多様なプロセスで機能する脂肪酸誘導体である。多くのポリペプチドとある種のアミンは、循環中で可溶性であり、分泌後数秒以内にタンパク質分解に対して感受性が高い。ステロイドと脂質は不溶性であり、循環ではキャリアタンパク質によって輸送される必要がある。今からの考察では、主にポリペプチドホルモンに焦点を合わせる。
【0007】
視床下部と脳下垂体腺によって分泌されたホルモンは、神経信号に応答して他の内分泌腺からホルモン分泌を調節することにより内分泌機能において重大な役割を演じる。視床下部ホルモンには、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン、性腺刺激ホルモン放出ホルモン、ソマトスタチン、成長ホルモン放出因子、副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン、サブスタンスP、ドーパミン、プロラクチン放出ホルモンがある。これらのホルモンは、脳下垂体の前葉からホルモンの分泌を直接調節する。下垂体の前葉ホルモンによって分泌されたホルモンには、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、メラニン細胞刺激ホルモン、成長ホルモン及びプロラクチンなどのソマトトロピンホルモン、甲状腺刺激ホルモン及び黄体形成ホルモン(LH)また卵胞刺激ホルモン(FSH)などの糖タンパク質ホルモン、β-リポトロピン、β-エンドルフィンがある。これらのホルモンは、甲状腺、膵臓、副腎からホルモン分泌を調節する。また排卵と精子形成を刺激して生殖器官に直接作用する。下垂体後葉は、抗利尿ホルモン(ADH,バソプレシン)とオキシトシンを合成、分泌する。
【0008】
視床下部と下垂体の疾患は多くの場合、原発脳腫瘍及び腺腫、妊娠に伴う梗塞、下垂体切除、動脈瘤、血管奇形、血栓症、感染症、免疫異常、頭部外傷による合併症などの病変から起こる。このような疾患は他の内分泌腺の機能に重大な影響を及ぼす。下垂体低下に関連した疾患には、性機能低下、シーハン症候群、尿崩症、カルマン病、カルマン症候群、ハンド‐シュラー‐クリスチャン病、レトラ‐シヴェ病、サルコイドーシス、空トルコ鞍症候群、小人症が含まれる。下垂体機能亢進症に関連した疾患には、良性線種によって発生しやすい、抗利尿ホルモン(ADH)不適合分泌症候群(SIADH)及び先端巨大症、巨人症が含まれる。
【0009】
甲状腺、副甲状腺によって分泌されるホルモンは、それぞれ主に代謝速度と血清カルシウムレベルの調製を制御する。甲状腺ホルモンには、カルシトニン、ソマトスタチン、甲状腺ホルモンが含まれる。副甲状腺は、副甲状腺ホルモンを分泌する。甲状腺機能低下症に関連した疾患には、甲状腺腫及び粘液水腫、細菌感染性急性甲状腺炎、ウイルス感染性亜急性甲状腺炎、自己免疫性甲状腺炎(橋本病)、クレチン病を含む。甲状腺機能亢進症に関連した疾患には、甲状腺中毒症及びその様々な型、グレーブス病、前脛骨粘液水腫、中毒性多結節性甲状腺腫、甲状腺癌、プランマー病を含む。副甲状腺機能亢進症に関連する疾患には、骨再吸収と副甲状腺肥大を招くConn病(chronic hypercalemia)がある。
【0010】
膵臓によって分泌されるホルモン類は、糖質、脂肪、タンパク質代謝の割合を調節して血糖値を調節する。膵臓ホルモンには、インシュリン、グルカゴン、アミリン、γ-アミノ酪酸、ガストリン、ソマトスタチン、膵臓ポリペプチドがある。膵臓の機能障害に関連する主な疾患は、不十分なインシュリン活動により引き起こされる糖尿病である。糖尿病は、通常タイプI(インシュリン依存性糖尿病、若年性糖尿病)或いはタイプII(インシュリン非依存性糖尿病、成人型糖尿病)のどちらかに分類される。インシュリン補充療法による両者の治療は公知である。糖尿は通常、低血糖症(インシュリン・ショック)、昏睡、糖尿病性ケトアシドーシス、乳酸アシドーシスなどの急性合併症を引き起こす。また目、腎臓、皮膚、骨、関節、循環系、神経系の疾患や感染への抵抗低下を招く慢性合併症も引き起こす。
【0011】
ホルモン機能に関連する解剖、生理機能、疾患については、McCance, K. L及び Huether, S. E. (1994) Pathophysiology The Biological Basis for Disease in Adults and Children, Mosby-Year Book, Inc., St. Louis, MO; Greenspan, F. S.及びBaxter, J. D. (1994) Basic and Clinical Endocrinology, Appleton and Lange, East Norwalk, CT.Growth Factorsで参照されている。
【0012】
成長因子は、細胞間伝達を仲介する分泌性タンパク質である。循環系を通って長距離を移動するホルモンとは異なり、ほとんどの成長因子は主に局所的なメディエータであり、隣接する細胞に作用する。ほとんどの成長因子は、成長因子を分泌経路に導く疎水性N末端シグナルペプチド配列を含む。またほとんどの成長因子は分泌経路内で翻訳後修飾される。このような修飾には、タンパク質分解、糖鎖形成、リン酸化反応、分子内ジスルフィド結合形成が含まれることもある。一度分泌されると、成長因子は隣接する標的細胞の表面上で特異的受容体に結合する。そして結合した受容体は細胞内シグナル伝達経路を誘発する。これらのシグナル伝達経路は、標的細胞で特異な細胞応答を引き起こす。これらの応答には遺伝子発現の調節と細胞分裂、細胞分化、細胞運動の刺激又は阻害が含まれることもある。
【0013】
成長因子は、少なくとも2つのクラスに大きく、重複して分類される。一番大きなクラスには、広範囲にわたる影響する大きなポリペプチド成長因子が含まれる。これらの因子には、上皮成長因子(EGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、トランスフォーミング成長因子-^(TGF-β)、インシュリン様成長因子(IGF)、神経成長因子(NGF)、及び血小板由来の成長因子(PDGF)が含まれる。それぞれは多数の因子に関連するファミリーを定義する。NGF(神経成長因子)を除いて大きなポリペプチド成長因子は、多様な細胞型において創傷治癒、骨合成、再形成、細胞外マトリックス合成、そして上皮、表皮、結合組織の増殖を刺激する分裂促進因子として作用する。TGF-β、EGF、FGFファミリーのメンバーは、胚芽腫の分化において誘導信号としても作用する。NGFは神経栄養因子として特異的に機能し、ニューロンの成長と分化を促進する。
【0014】
数種の大きなポリペプチド成長因子は、制限された一連の標的組織の特異的機能を実行する例えばマウス成長/分化因子9 (GDF-9)は、卵巣のみで発現されるTGF-βファミリーメンバーである(McPherron, A.C及びS.-J. Lee (1993) J. Biol. Chem. 268:3444-3449)。NGFは神経栄養因子として特異的に機能し、ニューロンの成長と分化を促進する。Scube1(シグナルペプチド-CUBドメイン-EGF-関連1)は、幾つかの器官系の発達において役割を果たし得る。10のEGFリピートと1つのCUBドメインを含有するタンパク質は、発生中の中枢神経系、生殖腺、体節、表皮外胚葉、肢芽で発現される(Grimmond 他. (2000) Genomics 70:74-81)。
【0015】
肝細胞成長因子(HGF)は、多様な標的組織の細胞の成長、細胞運動、形態形成を促進する(Michalopoulos, G.K.及びZarnegar, R. (1992) Hepatology 15:149-155、Michalopoulos及びDeFrances, M.C. (1997) Science 276:60-66)。HGFは、マウスの肝臓と胎盤の発達に必要とされ、肝臓、肺、腎臓等の成体の器官の細胞の再生を刺激する(Schmidt, C. 他. (1995) Nature 373:699-702)。HGFは、4つのクリングルドメインとその後に来るセリンプロテアーゼ様ドメインを含有し、チロシンキナーゼ受容体であるc-metの結合と活性化により、その効果を仲介する。
【0016】
フォリスタチン(FS)は、成長及び分化因子のトランスフォーミング成長因子βファミリーのメンバーであるアクティビンを特異的に結合し、抑制するタンパク質である。アクティビンは、発達中の胚の中胚葉の誘発及び成人の女性ホルモン分泌の調節を含む、成長また分化と関連する多様な機能を実行する(de Krester, D.M. (1998) J. Reprod. Immunol. 39:1-12)。アクティビンとFSの両者は、多くのタイプの細胞に見出される。FS及びアクティビンの相互作用は、性腺組織、下垂体組織、妊娠と関連する膜、血管組織、肝臓における多様な細胞過程に影響する(概説はPhillips, D.J及びD.M. de Krester (1998) Front. Neuroendocrinol. 19:287-322)。FSは胚組織の神経化においても直接的な役割を果たし得る(Hemmati-Brivanlou 他.(1994) Cell 77:283295)。
【0017】
FSは、カエル、ニワトリ、ヒト等の多様な種において保存されている。ヒトFSの変異体には、288アミノ酸アイソフォームと315アミノ酸アイソフォームが含まれる(McConnell, D.S. 他 (1998) J. Clin. Endocrinol. Metab. 83:851-858)。たいていのフォリスタチンは、10の定間隔のシステイン残基を伴う保存したドメインを含有する。これらの残基はジスルフィド結合形成及び陽イオンの結合に関与すると思われる。類似のドメインが、胚形成と修復中に多様な組織で発現される細胞外マトリクス関連糖タンパク質であるオステオネクチン(SPARC又はBM-40とも呼ばれる)、及びKazalプロテアーゼ抑制因子において保存されている(概説はLane, T.F.及びE.H. Sage (1994) FASEB J. 8:163-173)。オステオネクチンは、FS様ポリシステインドメインだけでなく、他のモジュラードメイン群を含有し、これらのモジュラードメイン群は、細胞とマトリックス成分を結合するために単独で機能でき、またマトリックスとの細胞の接触を選択的に破壊することにより細胞の形状を変更することができる。高レベルのオステオネクチンは、胚の発達する骨と歯、主に骨芽細胞、象牙質芽細胞、軟骨周囲(perichondrial)繊維芽細胞に関連する。細胞接着と増殖のオステオネクチン調節は、組織再構築と脈管形成においても機能し得る(Kupprion 他 (1998) J. Biol. Chem. 45:29635-29640)。
【0018】
FSは多様な細胞増殖異常、生殖障害、発達障害と関連する。FSを欠ける遺伝子組み換えマウスは多数の筋骨格欠陥を有し、誕生後間もなく死ぬ(Matzuk, M.M. 他. (1995) Nature 374:360-363)。FSの異常発現と局在化は、良性前立腺過形成と前立腺癌に関係していると考えられている(Thomas, T.Z. 他. (1998) Prostate 34:34-43)。FS様ポリシステインドメインを有するタンパク質をコードするフォリスタチン関連遺伝子は、白血病発生に関与し得る染色体転座と関連する(Hayette, S. (1998) Oncogene 16:2949-2954)。炎症反応において、FSは早期アテローム性動脈硬化症に特徴的なマクロファージ泡沫細胞形成を増加する(Kozaki, K. 他 (1997) Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol. 17:2389-2394)。
【0019】
骨形成タンパク質(BMP)は、異所性骨形成を誘発することが可能である骨に由来する因子である(Wozney, J.M. 他. (1988) Science 242:1528-1534)。BMPは骨生成と再生成に関与する疎水性糖タンパク質であり、それらの内の数種類はTGF-βスーパファミリーと関連する。例えば、BMP-1は骨生成において調節的な役割を有し、プロコラーゲンCプロティナーゼ活性と細胞外「CUB」ドメインの存在により特徴付けられると思われる。CUBドメインは、おそらく2つのジスルフィド架橋を形成する4つのシステインを含む約110残基からなり、機能的に多様で、ほとんど発達的に調節されるタンパク質類に見出される(ExPASy PROSITE document PR00908)。
【0020】
別の成長因子のクラスには造血性成長因子が含まれており、標的特異性において狭い。造血性成長因子は、Bリンパ球、Tリンパ球、赤血球、血小板、好酸球、好塩基球、好中球、マクロファージ、及びそれらの幹細胞前駆体のような血液細胞の増殖及び分化を刺激する。造血性成長因子にはコロニー形成活性化因子 (G-CSF、M-CSF、GM-CSF、CSF1-3)、赤血球生成促進因子、サイトカインが含まれる。サイトカインは免疫システムの細胞によって分泌される特殊な造血性因子であり、以下に詳述する。
【0021】
成長因子は、in vitroでの細胞の腫瘍性転換、及びin vivoでの腫瘍進行において重大な役割を果たす。大きなポリペプチド成長因子の過剰な発現は、培地において細胞の増殖と形質転換を促進する。in vivoの腫瘍細胞による成長因子の不適性な発現は、腫瘍の血管新生及び転移に貢献しうる。造血性成長因子の不適切な活性によって、貧血、白血病、及びリンパ腫が結果として起こる。更に成長因子は潜在的にプロトオンコジーンの発癌生成物である腫瘍性タンパク質に構造的、機能的両方に関連する。特定のFGF とPDGF ファミリーメンバ−自体が腫瘍性タンパク質に相同であるが、EGF、NGF及び FGF ファミリーの特定のメンバ−の受容体はプロトオンコジーンによってコードされる。成長因子もプロトオンコジーン及び腫瘍抑制因子遺伝子の双方の転写調節に影響を与える(概説は、Pimentel, E. (1994) Handbook of Growth Factors, CRC Press, Ann Arbor, MI、 McKay, I.及び Leigh, I.,編集. (1993) Growth Factors: A Practical Approach, Oxford University Press, New York, NY、Habenicht, A., 編集. (1990) Growth Factors, Differentiation Factors, and Cytokines, Springer-Verlag, New York, NY)。
【0022】
更に、一部の大きなポリペプチド成長因子は、発達中の胚の始原胚葉の誘導において重要な役割を果たす。この誘導により究極的には胎児の中胚葉、外胚葉、内胚葉の形成がなされる。これらが、完全な成体の体制のためのフレームワークを提供する。この誘導プロセスの崩壊は、胚発育にとって破局的となるであろう。
【0023】
小さなペプチド因子−神経ペプチド及び血管介在物質
神経ペプチド及び血管介在物質(NP/VM) は、通常20以下のアミノ酸である小さなペプチド因子のファミリーを構成する。これらの因子は通常はニューロンの興奮と血管収縮/血管拡張、筋肉収縮、脳や他の内分泌組織からのホルモン分泌の阻害において機能する。このファミリーに含まれるのは、神経ペプチド及び神経ペプチドホルモンとして、ボンベシン、神経ペプチドY、ニューロテンシン、ニューロメディンN、メラノコルチン、オピオイド、ガラニン、ソマトスタチン、タキキニン、ウロテンシンII、及び平滑筋刺激に関与する関連ペプチド、バソプレッシン、血管作用性小腸ペプチド、及び循環系によって運ばれるシグナル伝達分子(アンジオテンシン、補体、カルシトニン、エンドセリン、ホルミルメチオニルペプチド、グルカゴン、コレシストキニン、ガストリン及び上記で取り上げた多くのペプチドホルモン)である。NP/VMは直接信号を伝達することが可能であり、別の神経伝達物質及びホルモンの活性若しくは遊離を調節し、またシグナル伝達カスケードにおいて触媒酵素として働く。NP/VMの効果は、ごく短時間のものから長期間持続するものまで幅広い(Martin, C.R. 他(1985)Endocrine Physiology, Oxford University Press, New York, NY, 57-62ページの概説を参照)。
【0024】
サイトカイン
サイトカインは、免疫システム及び炎症反応を調節するシグナル分子のファミリーを構成する。サイトカインは、損傷或いは感染に反応して通常、白血球或いは白血球細胞によって分泌される。サイトカインは、Bリンパ球、Tリンパ球、単球、マクロファージ、顆粒球などの免疫システムの細胞に主に作用する成長及び分化因子として機能する。他のシグナル伝達分子のようにサイトカインは特異的原形質膜受容体に結合する。そして遺伝子発現パターンを変容する細胞内シグナル伝達経路を誘発する。炎症と免疫システムの疾患の治療におけるサイトカインの使用に関しては、相当な将来性がある。
【0025】
サイトカイン構造と機能は、in vitroで大規模に特徴付けられてきた。多くのサイトカインは30Kダルトン以下の小さなポリペプチドである。50を越えるサイトカインがヒト及びげっし類から同定されてきた。サイトカインサブファミリーの例には、インターフェロン(IFN-α、IFN-β、IFN-γ)、 インターロイキン(IL1-IL13)、腫瘍壊死因子(TNF-α及びTNF-β)とケモカイン類がある。多くのサイトカインは組換えDNA技術を利用して生成されてきた。また個々のサイトカインの活性はin vitro で決定されてきた。これらの活性は、白血球増殖、分化、運動の調節を含む。
【0026】
サイトカインは、応答細胞の表面で発現した受容体により標的と相互作用する。サイトカインは、2つの受容体サブユニットを会わせることにより、造血素受容体(hemopoietin receptor)、受容体キナーゼ、腫瘍壊死因子受容体(TNF)/神経成長因子受容体(NGF)と結合する。この受容体サブユニットの二量体は、細胞の細胞質に原形質膜を通してシグナルを伝達する。表皮性成長因子(EGF)やインシュリンの受容体等のタンパク質キナーゼ受容体の場合、2つの受容体サブユニット細胞質ドメインの並置(juxtaposition)が内因性チロシンキナーゼ活性を活性化する。結果として、サブユニットは互いにリン酸化し合う。その結果、リン酸化したチロシン残基は、次にsrc相同体2 (SH2)ドメインを含有する細胞質タンパク質と相互作用する。リン酸化した受容体分子と相互作用するSH2含有タンパク質には、ホスファチジルイノシトール3'キナーゼ、srcキナーゼファミリーメンバー、GRB2、shcが含まれる。これらのSH2含有タンパク質は、低分子量単量体GTP結合タンパク質ファミリーのRasとRho、ホスホチロシンホスファターゼSHP-2等のホスファターゼ等の、他の細胞質タンパク質としばしば会合する。これらの相互作用によって形成される シグナル伝達複合体は、raf及びマイトジェン活性化タンパク質(MAP)キナーゼを伴うキナーゼカスケード等のシグナルカスケードを開始することができる。その結果、転写調節と細胞骨格再編成を起こす。造血素受容体及びTNF/NGF受容体は内因性キナーゼ活性はないが、多くの同じシグナルカスケードを応答細胞内で活性化する。
【0027】
サイトカインシグナル伝達カスケードに関与するキナーゼの多くは、キナーゼ活性化が正常な細胞制御をもはや受けない癌細胞の腫瘍遺伝子産物として最初に同定される。実際に、約3分の1の既知の腫瘍遺伝子がタンパク質キナーゼをコードする。更に、細胞形質転換(発癌)はチロシンリン酸化活性の上昇を伴う場合が多い(Charbonneau, H.及びTonks, N. K. (1992) Annu. Rev. Cell Biol. 8:463-93)。そのように、細胞はサイトカインシグナル伝達カスケードを好適な制御下に維持する調節システムを必ず有する必要がある。
【0028】
Eps8は、EGF受容体と会合し、EGF受容体によりリン酸化されるタンパク質である。ヒトの腫瘍細胞株は高い構成性レベルのチロシンリン酸化Eps8を含有し、EGF受容体(EGFR)を発現するNIH3T3細胞におけるEps8の過剰発現は、細胞分裂応答と細胞の過度な成長の促進をもたらす(Provenzano, C. 他. (1998) Exp. Cell Res. 242:186-200)。ABI(Ablインタラクター タンパク質:Abl interactor protein)-1とABI-2/e3B1を含む分子の1ファミリーは、src-様キナーゼAbl及びEps8等のチロシンキナーゼと相互作用する。EGFRを発現するNIH3T3細胞におけるABI-2/e3B1の過剰発現は、細胞分裂促進応答と細胞成長を抑制する。よって、サイトカインシグナル伝達のマイナスの調節因子としてタンパク質のABIファミリーは機能する(Ziemnicka-Kotula, D. 他. (1998) J. Biol. Chem. 273:13681-13692)。
【0029】
SH2含有ホスホチロシンホスファターゼ、SHP-1、SHP-2は、サイトカインシグナル伝達に関与する。造血細胞ホスファターゼであるSHP-1はシグナル伝達の潜在的抑制因子であり、一方、SHP-2は幾つかのサイトカインのためのポジティブなシグナルトランスデューサである。SIRP(シグナル調節性タンパク質)と呼ばれる膜貫通糖タンパク質のファミリーは、チロシンキナーゼの基質である。リン酸化されたSIRPはSHP-2に結合し、成長因子によって誘発されたDNA合成の抑制を含む、サイトカインによって誘発される細胞応答に負の効果を有する。この抑制は、インシュリン或いはEGFで刺激したSIRP形質移入NIH3T3細胞において、減少したMAPキナーゼ活性化と相関する。SIRP過剰発現は、v-fms癌遺伝子を運搬するレトロウイルスによるNIH3T3細胞の形質転換をも抑制した(Kharitonenkov, A. 他. (1997) Nature 386:181-186)。
【0030】
in vitroの個々のサイトカインの活性化は、in vivoのサイトカインの活性化の完全な範囲を反映していないかもしれない。サイトカインはin vivo では個々に発現されないが、有機体がある刺激で攻撃される時、代わりに種々の他のサイトカインとの組み合わせとして発現される。これらのサイトカインは共に、その特異な刺激に適切な方法で集団的に免疫応答を調節する。よってサイトカインの生理学的活性は、刺激自体によって決定される。また同時に発現されるサイトカイン中の複雑な相互的ネットワークによっても決定され、これらのサイトカインは相乗作用と拮抗関係の双方を示し得る。
【0031】
最近、in vitroにおいて抗腫瘍活性化を有するように思われる固有のサイトカインが単離された(Ridge, R.J及びN.J. Sloane (1996) Cytokine 8:1-5)。抗腫瘍性尿タンパク質(ANUP)であるこのサイトカインは、ヒトの尿からのニ量体として元来精製された。ANUPは、局在性研究がヒトの顆粒球で発現されることを示した時にサイトカインとして後に分類された。ANUPは、乳房、皮膚、肺、膀胱、膵臓、子宮の腫瘍に由来する細胞株の成長を抑制する。しかし、ANUPはヒトの非腫瘍細胞株の成長に影響しない。ANUPのN-末端22アミノ酸は、成熟した該タンパク質から切断されるシグナルペプチドを含む。成熟した該タンパク質の初めの9アミノ酸は、約10%の抗腫瘍活性化を保持する。更に、ANUPは、典型的な或る種の細胞表面糖タンパク質であるLy-6/u-PAR配列モチーフを含む。このモチーフは、50残基コンセンサス配列内の6システイン残基の固有のパタ-ンにより特徴付けられる。Ly-6/u-PARモチーフは、Ly-6 T-リンパ球表面抗原と細胞外セリンプロテアーゼであるウロキナーゼタイププラスミノーゲン活性因子の受容体(u-PAR)に見出される。
【0032】
ケモカインは、30を越えるメンバーで或るサイトカインサブファミリ−を構成する(概説はWells, T.N.C及び M.C. Peitsch (1997) J. Leukoc. Biol. 61:545-550)。ケモカインは、炎症の部位に単球とマクロファージを動員する走化タンパク質として始めに同定された。最近の証拠によると、造血及びHIV-1 感染においてもケモカインは重要な役割を演じている可能性がある。ケモカインは、分子量約6〜15Kダルトンの範囲の小さなタンパク質である。更にケモカインは、或る種のシステイン残基の数と位置に基づいてC、CC、CXC、或いはCX3Cに分類される。例えばCC ケモカインは2つの連続したシステインから成る保存されたモチーフをそれぞれ含む。それに続いてそれぞれ24- 及び 16-残基間隔の下流で起こる2つの付加的なシステインを含む(ExPASy PROSITE database, documents PS00472 及び PDOC00434)。これら4つのシステイン残基の存在と間隔は高度に保存される。しかし介在している残基は著しく異なる。しかしそのシステインダブレットのおよそ15残基下流に位置するチロシンは保存されており、走化活性にとって重要であるように思われる。CC ケモカインをコ−ド化する多くのヒト遺伝子は、17番染色体上に集まっている。しかし他の所にマッピングされるCCケモカイン遺伝子の例が、少数ある。ケモカインには、他にもリンフォタクチン(lymphotactin)(C ケモカイン)、マクロファージ走化性及び活性因子 (MCAF/MCP-1、CC ケモカイン)、血小板因子 4及びIL-8 (CXC ケモカイン)そしてフラクタルカイン(fractalkine)またneurotractin (CX3C ケモカイン)がある(概説は、Luster, A. D. (1998) N. Engl. J. Med. 338:436-445)。
【0033】
最近、新規のCCケモカインがマウスとヒトの胸腺において同定された(Vicari, A.P. 他. (1997) Immunity 7:291-301)。この胸腺発現ケモカイン(TECK)と呼ばれるタンパク質は、小腸において低レベルでも発現する。TECKは、以下の2つの理由でTリンパ球発達において或る役割を果たしているであろう。第1に、TECKは、Tリンパ球成熟が起こる、主要なリンパ器官である胸腺において最も多く発現する。第2に、胸腺におけるTECKの主要な供給源は、発達するTリンパ球における自己認容の達成を助ける白血球細胞である樹状細胞である。更に、TECKは活性化したマクロファージ、樹状細胞、胸腺Tリンパ球の走化活性を示す。ヒトのTECK(hTECK)をコードするcDNAは、151アミノ酸のタンパク質を予測する453塩基対のオープンリーディングフレームを含有する。hTECKは、C30、C31、C58、C75における4つの保存したシステインを含む、上記したCCケモカインの保存された特徴を保持する。しかし、C31とC58の間の間隔は3つの残基により増加される。そしてC58とC75の間の間隔は1つの残基により増加される。更に、hTECKはほとんどのCCケモカインに見出される保存したチロシンを欠いている。
【0034】
クロモグラニンとセクレトグラニンは、内分泌腺細胞と神経内分泌細胞の分泌顆粒に存在する酸性タンパク質である(Huttner, W.B. 他. (1991) Trends Biochem.Sci. 16 2730) (Simon, J.P.他. (1989) Biochem.J. 262 113)。 グラニンは生物学的に活性なペプチドの前駆体であり得る。或いはペプチドホルモンとニューロペプチドのパッケージングにおけるヘルパータンパク質であり得るが、確かな働きについては不明である。
【0035】
アルツハイマー病(AD)は進行性痴呆であり、神経病理学的な特徴は、アミロイドβペプチドを含むプラークの存在と、特定の脳領域における神経原線維変化である。更に、ニューロンとシナプスは失われ、炎症反応は小膠細胞と星状細胞において活性化する。
【0036】
ヒトのサイトカインシグナル伝達抑制因子 (SOCS) 相同体
シグナル伝達は、シグナル伝達分子の細胞膜受容体への結合に始まり、細胞内標的分子への影響で終わるカスケード式生化学反応を通じて、細胞が細胞外シグナル(ホルモン、神経伝達物質、成長因子及び分化因子等)に応答する一般的な過程である。この過程の中間段階においては、プロテインキナーゼを介したリン酸化による様々な細胞質タンパク質の活性化とこれらの活性化したタンパク質の幾つかの細胞核への移行を含むが、細胞核で特定遺伝子群の転写が影響される。シグナル伝達のこのプロセスは、細胞増殖、分化及び遺伝子転写を含む、全てのタイプの細胞機能を制御する。 成長因子EGF、PDGF、FGF等のための多くのサイトカイン受容体は、内因性タンパク質キナーゼ活性を示す。サイトカインの受容体への結合は、受容体上のチロシン残基の自己リン酸化を誘発する。これらのリン酸化した残基は、他の細胞質シグナル伝達タンパク質の結合のための認識部位であり、細胞表面での開始受容体活性化を特定の細胞内標的分子の活性化に連結する。これらのシグナル伝達タンパク質は、ホスホチロシン残基の認識及び結合部位であるsrc相同体2(SH2)ドメインを含有する。SH2ドメインは、ホスホリパーゼCg、Ras GTPase活性化タンパク質、GRB2等の、多様なシグナル伝達分子及び腫瘍タンパク質に見いだされる(Lowenstein, E.J. 他. (1992) Cell 70:431442)。
【0037】
シグナル伝達経路の活性化の主要な事象について多くが知られているが、どのようにシグナル経路が閉じられるかについてはあまり知られていない。最近、IL-2、IL-3、IL-6、インターフェロン-γ、EPO等、様々なサイトカインによりネズミのリンパ系細胞において誘発される、幾つかのSH2含有タンパク質が同定された(Yoshimura, A. 他. (1995) EMBO Journal 14:2816-2826、Starr, R. 他. (1997) Nature 387:917-921、Naka, T. 他. (1997) Nature 387:924-929)。 これらのタンパク質の共通特性は、ネズミの細胞における成長と分化を抑制する能力である。サイトカインに刺激された細胞におけるこれらのSH2含有タンパク質の誘発は、これらのタンパク質がサイトカインシグナル伝達のマイナスの調節因子として機能し得ることを示唆する。これらのタンパク質のうち4つ、CIS(サイトカイン誘導性SH2含有タンパク質)、SOCS-1、-2、-3(サイトカインシグナル伝達の抑制因子)をコードする遺伝子の転写は、in vitroとin vivoの両者においてIL-6により誘発される(Starr 他、前出)。
【0038】
4つの該タンパク質類はN末端領域において配列相同性をほとんど共有しないが、すべては中心部の1つのSH2ドメインと「SOCSボックス」と名付けられた保存されたC末端領域を有する。SOCSボックスの機能は未知である。しかし、SOCSボックス内の保存されたコアトリプレット配列(K/R)(D/E)(Y/F)は、JAKキナーゼファミリーによるチロシンリン酸化部位認識に類似している。この類似性は、SOCSボックスがJAKキナーゼと相互作用して、JAKキナーゼを抑制する部位を提供し得ることを示唆する。SOCS-1がJAKキナーゼの触媒領域と相互作用することの発見は、この仮説を支持する(Endo, T.A. 他 (1997) Nature 387:921-24)。M1マウスリンパ系細胞のSOCS-1の恒常的な発現も、IL-6への反応における或る種の細胞シグナル伝達成分(gp130とStat3)のリン酸化を抑制する(Starr 他, 前出)。CISは、IL-3及びEPO受容体におけるβ鎖のリン酸化したチロシン残基に結合する。また他のシグナル伝達タンパク質の結合を防ぐことによる細胞シグナル伝達を抑制する別の機構の存在の可能性を提供する(Yoshimura 他, 前出)。
【0039】
最近、SOCSボックスドメインを含む、16の付加的なタンパク質が同定された(Hilton, D.J. 他 (1998) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:114-119)。上記されたSH2含有タンパク質のように、各タンパク質は1つのC末端SOCSボックスと1つのSOCSボックスの特有のモチーフN末端を含む。SH2ドメインを含む4つの新たなSOCSタンパク質に加えて、WD-40リピート(WSB-1と-2)、SPRYドメイン(SSB-1から-3まで)、或いはアンキリンリピート(ASB-1から-3まで)を含むSOCSタンパク質の3つの付加的な分類が見出された。SOCSボックスを含む低分子量GTPases(Rar タンパク質)のクラスも同定された。 WSB、SSB、ASBタンパク質の機能は、未だに未知である。しかしSH2ドメインのように、WD-40リピート、アンキリンリピート、SPRYドメインは、タンパク質間相互作用に関係していると考えられている(Hilton 他、前出)。
【0040】
CIS等のシグナル伝達タンパク質の活性における欠陥又は変容は、癌等の多様な増殖異常と疾患の発生における或る役割を果たし得る。CISをコードする推定ヒト遺伝子の損失や再構成は、細胞腎癌と肺癌の発生に関連する(Yoshimura 他, 前出)。この関連は、CISが腫瘍抑制因子遺伝子として機能し得ることを示唆する。
【0041】
発現プロファイル作成
マイクロアレイはバイオアナリシスに使われる分析ツールである。マイクロアレイは複数の分子を有し。それらは或る固体支持体の表面で空間的に分布し、その表面と安定して結合している。ポリペプチド、ポリヌクレオチド及び/又は抗体のマイクロアレイが開発されており、遺伝子配列決定、遺伝子発現のモニタリング、遺伝子マッピング、細菌の同定、薬物発見及びコンビナトリアル化学のような種々の応用において利用されている。
【0042】
特にマイクロアレイが利用できる一つの領域は遺伝子発現解析である。アレイ技術は、単一の多型遺伝子の発現や、多数の関連遺伝子又は無関係の遺伝子の発現プロファイルを探求する、簡単な方法を提供し得る。単一遺伝子の発現を試験するときは、アレイを用いて或る特定遺伝子又はその変異体の発現を検出する。発現プロファイルを試験するときは、アレイは次のような遺伝子を同定するプラットフォームを提供する。即ちどの遺伝子が組織特異的か、毒性アッセイにおいてテストされる物質に影響されるか、シグナル伝達カスケードの一部であるか、ハウスキーピング機能を実行するか、又は、特定の遺伝的素因や、条件、疾患、又は障害に、特異的に関連する遺伝子であるかの同定である。
【0043】
培地と他の成長条件は、サイトケラチンマーカーの発現を含む上皮細胞表現型に影響し得る。たいていの場合、初代ヒト乳腺上皮細胞(HMEC)と不死化の乳房細胞株は血清又は下垂体抽出物を含有する培地のプラスチック上で単層培養として成長する。血清又は下垂体抽出物に含まれる不確定の成長因子とホルモンは、遺伝子発現パターンと細胞形態に重大な影響を及ぼす。生理学的な状況下の上皮細胞は血清に決して曝露されないので、正常そして悪性細胞群の細胞生物学の研究にとってこれらの人為的な状況は理想的ではない。MDA-mb-231は、51才の女性の胸水から単離された乳癌細胞株である。MDA-mb-231は、ヌードマウス及びALS処理したBALB/cマウス中で、あまり分化していない腺癌を形成する。またWnt3癌遺伝子、EGF及び腫瘍壊死因子α(TGF-α)をも発現する。
【0044】
ヒトの大動脈内皮細胞(HAEC)は、ヒトの大動脈の内皮細胞に由来する初代細胞である。ヒトの臍帯動脈内皮細胞(HUAEC)は、臍帯動脈の内皮細胞に由来する初代細胞である。HAECとHUAECは、in vitroでのヒトの血管生物学における内皮細胞の役割を研究する実験モデルとして用いられてきた。血管内皮の活性化は、広範な生理的過程また病態生理的過程の双方、例えば血管緊張調節、凝血及び血栓症、アテローム硬化、炎症、並びにいくつかの感染症の中心的なイベントであると考えられる。
【0045】
TNF-αは、複数のシグナル伝達経路の活性化により炎症応答の仲介において中心的な役割を果たすとして知られている多面性サイトカインである。TNF-αは、活性化したリンパ球、マクロファージ、及び他の白血球細胞により生成され、内皮細胞を活性化することで知られる。
【0046】
肺癌は、米国男性の癌死の主因であり、女性の癌死の第2の原因である。肺癌症例の大部分は喫煙に起因すると考えられており、第三世界におけるタバコ消費の増加から肺癌の蔓延が予想されている。気管支の上皮がタバコの煙に接触すると組織の形態が変化し、それが癌の前兆であると考えられている。肺癌は、4つの組織病理的に異なる群に分けられる。3群(扁平上皮癌、腺癌、大細胞癌)は、非小細胞肺癌(NSCLC)に分類される。第4群の癌は、小細胞肺癌(SCLC)という。NSCLCを全部合わせると全症例中の約70%になり、SCLCは約18%である。肺癌の発生と進行に関する分子生物学及び細胞生物学的理解は不完全である。3番染色体での欠失はこの疾患に一般的であり、この領域に、腫瘍抑制遺伝子の存在を示すと思われる。K-rasの活性化突然変異は肺癌で一般的に見られ、この疾患のマウスモデルの1つの基礎である。
【0047】
大部分の通常の真核細胞は特定の回数、分裂した後、老化状態に入り、この状態において細胞は生存でき、代謝的に活性であるが、もはや複製はしない。細胞サイズの増加やpH依存性ベータガラクトシダーゼ活性のような多くの形質的変化、及び特定遺伝子群の上方制御のような分子的変化が老化細胞(senescent cells)において生じる(Shelton (1999) Current Biology 9:939-945)。老化細胞が分裂促進因子に曝露されると、多数の遺伝子が上方制御されるが、細胞は増殖しない。老化細胞がin vivoで年齢とともに蓄積され、生体の老化(aging)に寄与していることが示されている。更に、老化は腫瘍形成を抑制し、老化に必要な多くの遺伝子もまた、p53や網膜芽細胞腫感受性遺伝子のような癌抑制遺伝子として機能する。大部分の腫瘍はその複製限界を凌いだ細胞を含んでいる。つまり、これらは不死化されている。多くの癌遺伝子は腫瘍形成の第1段階として細胞を不死化する。
【0048】
酸化的ストレス、放射、活性化腫瘍性タンパク質及び細胞周期阻害剤のような多様な挑戦によって老化表現型が誘発され、老化が多くの増殖的シグナルや、抗増殖的シグナルによって影響されることが示されている(Shelton 前出)。老化は各々の細胞分裂とともに発生するテロメアの進行的短縮化と相関している。細胞内のテロメラーゼの触媒的成分の発現によってテロメアの短縮化が防がれ、また線維芽細胞や上皮細胞のような細胞が不死化されるが、別種の細胞(例えばCD8+ T細胞)は不死化しない(Migliaccio 他(2000) J. Immunol. 165:4978-4984)。このようにして、テロメアの短縮化及び、細胞種によってはその他の機構によって老化は制御される。
【0049】
加齢における老化と腫瘍形成の役割を理解するための進行中の研究の一部として、老化細胞と前老化細胞の間で異なって発現される多数の遺伝子が同定されている。大部分の老化細胞は細胞周期のG1期において増殖が静止されている。多くの細胞周期遺伝子の発現は老化細胞及び前老化細胞で類似している(Cristofalo (1992) Ann. N. Y. Acad. Sci. 663:187-194)が、増殖を抑制するサイクリン依存性キナーゼp21とp16、及びサイクリンD1とEのような他の遺伝子の発現は老化細胞において上昇している。細胞外基質タンパク質(フィブロネクチン、プロコラーゲン、及びオステオネクチン等)及びプロテアーゼ(コラゲナーゼ、ストロメライシン及びカテプシンB 等)のような、細胞周期に直接関与していない他の遺伝子群もまた上方制御される(Chen (2000) Ann. N.Y. Acad. Sci. 908:111-125)。老化細胞において発現不足の遺伝子には、熱ショックタンパク質であるc-fosとcdc-2をコードする遺伝子が含まれる(Chen 前出)。
【0050】
遺伝子発現プロファイル作成の潜在的応用は、特に治療の可能性のある化合物に対する毒性反応と治療薬剤の代謝反応の測定に関連する。ステロイドで治療する疾患とステロイド治療への代謝反応によって引き起こされる病気には、腺腫症、胆汁鬱滞、肝硬変、血管腫、シェーンライン・ヘノッホ紫斑病、肝炎、肝細胞癌、転移性癌、特発性血小板減少性紫斑病、ポルフィリン症、サルコイドーシス、ウィルソン病が含まれる。反応は、ミフェプリストン、プロゲステロン、ベクロメタゾン、メドロキシプロゲステロン、ブデソニド、プレドニゾン、デキサメサゾン、ベタメタゾン、或いはダナゾール等のステロイド化合物に曝露した或いは治療した患者の組織で発現したレベル及び配列の両者を、正常な治療されていない組織のレベル及び配列と比較することによって測定され得る。
【0051】
ステロイドは、コレステロール、胆汁酸、ビタミンD、ホルモン等の脂質可溶性分子の1クラスであり、シクロペンタヒドロフェナントレン(cyclopentanoperhydrophenanthrene)に基づく共通な4リング構造を共有し、広範囲な機能を実施する。コルチコステロイドは炎症を緩和して、免疫応答を抑制するために使用される。コルチコステロイドは、炎症反応を仲介するサイトカインの調節により、好酸球、好塩基球、気道上皮性細胞機能を阻害する。コルチコステロイドは、炎症部位で白血球侵入を阻害し、炎症反応のメディエータの機能において干渉し、更に体液の免疫応答を抑制する。コルチコステロイドは、アレルギー、喘息、関節炎、皮膚病を治療するために使用される。デキサメタゾンは、抗炎症組成物又は免疫抑制組成物において使用される合成グルココルチコイドである。喘息の症状を予防するために吸入薬においても使用される中枢神経系に到達する強力な能力のために、デキサメタゾンは脳水腫を調節するために通常選択される治療である。デキサメタゾンは、ヒドロコルチゾンより約20〜30倍、そしてプレドニゾンより5〜7倍強力である。
コルチコステロイドの抗炎症作用は、リポコルチンと総称されるホスホリパーゼA2抑制タンパク質に関係すると考えられる。逆にリポコルチンは、前駆体分子アラキドン酸の放出を阻害することによりプロスタグランジン、ロイコトリエン等炎症の強力な媒介物の生合成を制御する。提案されている作用の機構には、減少したIgE合成、白血球上で増加したβ-アドレナリン受容体の数、減少したアラキドン酸代謝が含まれる。慢性気管支喘息等の即時アレルギー反応中、アレルゲンは肥満細胞の表面上のIgE抗体を架橋し、これらの細胞の化学走化性物質の放出を誘発する。従って肥満細胞の流入と活性化が、喘息患者の炎症と口腔粘膜の過剰刺激感受性に部分的に関与している。この炎症は、コルチコステロイドの投与によって遅れ得る。
【0052】
肝臓代謝とホルモン除去機構への影響は、薬剤の薬力学を理解するために重要である。ヒトC3A肝臓細胞株は、成長での、強力な接触阻害に関して選択されたHepG2/C3(肝臓腫瘍を患う15歳の男子から単離した肝臓癌細胞株)のクローン誘導体である。クローン集団の使用は、細胞の再現性を強化する。C3A細胞は、培養中の主要なヒト肝細胞の多くの特徴を有する。i)インシュリン受容体とインシュリン様成長因子II受容体の発現、ii)フェトプロテインと比較した血清アルブミンの高率分泌、iii)アンモニアの尿素とグルタミンへの転換、iv)芳香アミノ酸代謝、v)グルコースの無いまたインシュリンの無い培地での増殖。C3A細胞株は、成熟したヒト肝臓のin vitroモデルとして今や十分に確立されている(Mickelson 他 (1995) Hepatology 22:866-875、Nagendra 他 (1997) Am J Physiol 272:G408-G416)。
【0053】
卵巣癌は、婦人科癌死の主因である。卵巣癌の大部分は上皮細胞に由来する。そして上皮卵巣癌を患う患者の70%が末期症状である。結果として、この疾患の長期生存率はとても低い。卵巣癌の早期マーカーの同定は、生存率を飛躍的に上昇させる。卵巣癌発生に関与する遺伝的変異には、p53の突然変異とマイクロサテライト不安定性が含まれる。遺伝子発現パターンは、正常な卵巣を卵巣腫瘍と比較した時おそらく異なると思われる。
【0054】
当分野では新規の組成物群を必要とする。これら新規の組成物には、自己免疫/炎症疾患、神経系疾患、内分泌障害、発達障害、癌を含む細胞増殖異常、生殖疾患、心血管障害、及び感染症の診断・予防・治療のための核酸とタンパク質が含まれる。
【発明の開示】
【発明の効果】
【0055】
本発明の様々な実施様態は、総称して「EXMES」、個別にはそれぞれ「EXMES-1」、「EXMES-2」、「EXMES-3」、「EXMES-4」、「EXMES-5」、「EXMES-6」、「EXMES-7」、「EXMES-8」、「EXMES-9」、「EXMES-10」、「EXMES-11」、「EXMES-12」、「EXMES-13」、「EXMES-14」、「EXMES-15」、「EXMES-16」、「EXMES-17」、「EXMES-18」、「EXMES-19」、「EXMES-20」、「EXMES-21」、及び「EXMES-22」と呼ぶ細胞外メッセンジャーである、精製されたポリペプチドを提供するとともに、疾患と医学的状況の検出、診断、治療のためのこれらのタンパク質を利用する、及びポリヌクレオチドをコ−ドする方法を提供する。実施様態は、効果、適量、毒性、薬理学の決定を含む薬剤発見プロセスを促進するために、精製した細胞外メッセンジャーそして/或いはそれらをコ−ドするポリヌクレオチドを利用する方法を提供する。関連する実施様態は、疾患の病因と医学的状況を調査するために、精製した細胞外メッセンジャーそして/或いはそれらをコ−ドするポリヌクレオチドを利用する方法を提供する。
【0056】
或る実施態様において本発明は、(a)SEQ ID NO:1-22からなる群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-22からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%同一、又は少なくともほぼ90%同一である天然のアミノ酸配列からなるポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-22からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片、及び(d)SEQ ID NO:1-22からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片からなる群から選択した単離されたポリペプチドを提供する。別の実施態様では、SEQ ID NO:1-22のアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチドを提供する。
【0057】
更に別の実施様態は(a)SEQ ID NO:1-22からなる群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-22からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%同一である或いは少なくとも約90%同一である天然のアミノ酸配列を含むポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-22からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片、又は(d)SEQ ID NO:1-22からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫抗原性断片からなる群から選択されたポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチドを提供する。別の実施態様では、ポリヌクレオチドはSEQ ID NO:1-22からなる群から選択したポリペプチドをコードする。別の実施態様では、ポリヌクレオチドはSEQ ID NO:23-44からなる群から選択される。
【0058】
更に、他の実施様態は、(a)SEQ ID NO:1-22からなる群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-22からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%同一である、又は少なくともほぼ90%同一である天然のアミノ酸配列を含むポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-22からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片、又は(d)SEQ ID NO:1-22からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片を含む群からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと機能的に結合したプロモーター配列を含む組換えポリヌクレオチドを提供する。別の実施態様では、組換えポリヌクレオチドを用いて形質転換した細胞を提供する。なお、他の実施例によって、組換えポリヌクレオチドを有する遺伝形質転換生物体を提供する。
【0059】
他の実施様態では、(a)SEQ ID NO:1-22からなる群から選択した或るアミノ酸配列を含むポリペプチドと、(b)SEQ ID NO:1-22からなる群から選択した或るアミノ酸配列と少なくとも90%同一である、又は少なくともほぼ90%同一である、或る天然アミノ酸配列を含むポリペプチドと、(c)SEQ ID NO:1-22からなる群から選択した或るアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片と、(d)SEQ ID NO:1-22とからなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片とからなる群から選択したポリペプチドを製造する一方法を提供する。製造方法は、(a)或る細胞を該ポリペプチドの発現に適した条件下で培養し、この細胞を組換えポリヌクレオチドを用いて形質転換する過程と、(b)そのように発現したポリペプチドを回収する過程とからなる。この組換えポリヌクレオチドは、該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに機能的に連結したプロモーター配列を有する。
【0060】
なお、他の実施様態は、(a)SEQ ID NO:1-22からなる群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-22からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%同一である、又は少なくと主ほぼ90%同一である天然のアミノ酸配列を含むポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-22からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片、及び(d)SEQ ID NO:1-22からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片から構成される群から選択されたポリペプチドに特異結合するような単離された抗体を提供する。
【0061】
更に別の実施様態は、(a)SEQ ID NO:23-44からなる群から選択したポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、(b)SEQ ID NO:23-44からなる群から選択したポリヌクレオチド配列と少なくとも90%同一である或いは少なくとも約90%同一である天然のポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、(c)(a)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、(d)(b)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、及び(e)(a)〜(d)のRNA等価物からなる群から選択した単離されたポリヌクレオチドを提供する。その他の実施様態において、ポリヌクレオチドは少なくともほぼ20、30、40、60、80又は100の連続するヌクレオチドを有し得る。
【0062】
なお、他の実施様態は、サンプル中の標的ポリヌクレオチドを検出する方法を提供する。ここで、前記標的ポリヌクレオチドは、(a)SEQ ID NO:23-44からなる群から選択したポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、(b)SEQ ID NO:23-44からなる群から選択したポリヌクレオチド配列と少なくとも90%同一である、又は少なくともほぼ90%同一である、或る天然のポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、(c)(a)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、(d)(b)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、及び(e)(a)〜(d)のRNA等価物からなる群から選択された配列のポリヌクレオチドを有する。検出方法は、(a)サンプル中の上記標的ポリヌクレオチドに相補的な或る配列からなる少なくとも20の連続したヌクレオチド群を含む或るプローブを用いて該サンプルをハイブリダイズする過程と、(b)該ハイブリダイゼーション複合体の有無を検出する過程とからなる。該プローブと該標的ポリヌクレオチド或いはその断片との間でハイブリダイゼーション複合体が形成されるような条件下で、プローブは、該標的ポリヌクレオチドに対し特異的にハイブリダイズする。関連する実施様態において、この方法にハイブリダイゼーション複合体の量の検出を含め得る。更に、その他の実施様態において、プローブは少なくともほぼ20、30、40、60、80又は100の連続するヌクレオチドを有し得る。
【0063】
更になお、他の実施様態は、サンプル中の標的ポリヌクレオチドを検出する方法を提供する。ここで、前記標的ポリヌクレオチドは、(a)SEQ ID NO:23-44からなる群から選択したポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、(b)SEQ ID NO:23-44からなる群から選択したポリヌクレオチド配列と少なくとも90%同一である、又は少なくともほぼ90%同一である、或る天然のポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、(c)(a)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、(d)(b)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、及び(e)(a)〜(d)のRNA等価物からなる群から選択された配列のポリヌクレオチドを有する。この検出方法は、(a)ポリメラーゼ連鎖反応増幅を用いて標的ポリヌクレオチド又はその断片を増幅する過程と、(b)増幅した標的ポリヌクレオチド又はその断片の有無を検出する過程とからなる。関連する実施例において、この方法に増幅された標的ポリヌクレオチド又はその断片の量を検出することを含め得る。
【0064】
他の実施様態は、有効量のポリペプチドと薬剤として許容できる賦形剤とを含む成分を提供する。 有効量のポリペプチドは、(a)SEQ ID NO:1-22からなる群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-22からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%同一である、又はほぼ90%同一である、或る天然のアミノ酸配列を含むポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-22からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片、及び(d)SEQ ID NO:1-22からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫抗原性断片からなる群れから選択される。一実施様態では、組成物はSEQ ID NO:1-22からなる群から選択されたアミノ酸配列を含み得る。他の実施様態は、機能的EXMESの発現の低下又は異常発現に関連する疾患や症状の治療方法を提供し、そのような治療の必要な患者にこの組成物を投与することを含む。
【0065】
別の実施様態はまた、(a)SEQ ID NO:1-22からなる群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-22からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるか、又は少なくともほぼ90%同一である天然のアミノ酸配列を含むポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-22からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片、及び(d)SEQ ID NO:1-22からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片からなる群から選択されたポリペプチドのアゴニストとしての有効性を確認するために化合物をスクリーニングする方法を提供する。スクリーニング方法は、(a)ポリペプチドを含むサンプルを化合物に曝す過程と、(b)サンプル中のアゴニスト活性を検出する過程とを含む。他の実施様態は、この方法で同定したアゴニスト化合物と許容される医薬用賦形剤とを有する、或る組成物を提供する。更に他の実施様態は、機能的EXMESの発現の低下に関連した疾患や症状の治療方法を提供し、また、そのような治療を必要とする患者にこの組成物を投与することが含まれる。
【0066】
なお、他の実施様態は更に、(a)SEQ ID NO:1-22からなる群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-22からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるか、又は少なくともほぼ90%同一である天然のアミノ酸配列を含むポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-22を有する群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片、及び(d)SEQ ID NO:1-22からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片からなる群から選択されたポリペプチドのアンタゴニストとしての有効性を確認するために化合物をスクリーニングする方法を提供する。スクリーニング方法は、(a)ポリペプチドを含むサンプルを化合物に曝す過程と、(b)サンプル中のアンタゴニスト活性を検出する過程とを含む。他の実施様態は、この方法で同定されたアンタゴニスト化合物と許容される医薬用賦形剤とを有する、或る組成物を提供する。更に他の実施様態は、機能的EXMESの過剰発現に関連した疾患や症状の治療方法を提供し、また、そのような治療を必要とする患者にこの組成物を投与することが含まれる。
【0067】
他の実施様態は、(a)SEQ ID NO:1-22からなる群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-22からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%同一である、又は少なくともほぼ90%同一である天然のアミノ酸配列を含むポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-22からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片、又は(d)SEQ ID NO:1-22からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片を含む群から選択されたポリペプチドに特異結合する化合物をスクリーニングする方法を提供する。スクリーニング方法は、(a)ポリペプチドを適切な条件下で少なくとも1つの試験化合物と混合させる過程と、(b)試験化合物とのポリペプチドの結合を検出し、それによってポリペプチドに特異結合する化合物を同定する過程とを含む。
【0068】
更に、他の実施様態は、(a)SEQ ID NO:1-22からなる群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-22からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%同一である、又は少なくともほぼ90%同一である天然のアミノ酸配列を含むポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-22からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片、又は(d)SEQ ID NO:1-22からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片を含む群から選択されたポリペプチドの活性を調節する化合物をスクリーニングする方法を提供する。スクリーニング方法は、(a)ポリペプチドの活性が許容された条件下で、ポリペプチドを少なくとも1つの試験化合物と混合させる過程と、(b)ポリペプチドの活性を試験化合物の存在下で算定する過程と、(c)試験化合物の存在下でのポリペプチドの活性と、試験化合物の不存在下でのポリペプチドの活性とを比較する過程とを含み、試験化合物の存在下でのポリペプチドの活性の変化は、ポリペプチドの活性を調節する化合物であることを意味する。
【0069】
更になお、他の実施様態は、SEQ ID NO:23-44からなる群から選択されたポリヌクレオチド配列を含む標的ポリヌクレオチドの発現を変化させるのに効果的な化合物をスクリーニングする方法を提供し、その方法には、(a)この標的ポリヌクレオチドを含むサンプルを化合物に曝露する過程と、(b)この標的ポリヌクレオチドの発現の変化を検出する過程と、(c)可変量の化合物の存在下と化合物の非存在下で標的ポリヌクレオチドの発現を比較する過程が含まれる。
【0070】
他の実施様態は、試験化合物の毒性の算定方法を提供する。この方法には、以下の過程がある。(a)核酸群を含む生体サンプルを試験化合物で処理する過程、(b)処理済み生体サンプルの核酸群をハイブリダイズする過程。この過程には、次のようなプローブを用いる(i)SEQ ID NO:23-44からなる群から選択した或るポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、(ii)SEQ ID NO:23-44からなる群から選択した或るポリヌクレオチド配列と少なくとも90%同一である、又は少なくともほぼ90%同一である天然のポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、(iii)(i)に相補的な配列を有するポリヌクレオチド、(iv)(ii)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、(v)(i)〜(iv)のRNA等価物からなる群から選択した或るポリヌクレオチドの少なくとも20の連続したヌクレオチド群からなるプローブである。ハイブリダイゼーションは、上記プローブと生体サンプル中の標的ポリヌクレオチドとの間に特異的ハイブリダイゼーション複合体が形成されるような条件下で生じる。上記標的ポリヌクレオチドは、(i)SEQ ID NO:23-44からなる群から選択した或るポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、(ii)SEQ ID NO:23-44からなる群から選択した或るポリヌクレオチド配列と少なくとも90%同一である或いは少なくとも約90%同一である天然ポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、(iii)(i)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、(iv)(ii)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、(v)(i)〜(iv)のRNA等価物からなる群から選択する。或いは、標的ポリヌクレオチドは、上記(i)〜(v)からなる群から選択したポリヌクレオチドの断片を含み得る。毒性の算定方法には更に(c)ハイブリダイゼーション複合体の量を定量する過程と、(d)処理した生物学的サンプルのハイブリダイゼーション複合体の量を、非処理の生物学的サンプルのハイブリダイゼーション複合体の量と比較する過程を含み、処理した生物学的サンプルのハイブリダイゼーション複合体の量との差は、試験化合物の毒性を意味する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0071】
(本発明の記載について)
本発明のタンパク質、核酸及び方法について説明する前に、説明した特定の装置、材料及び方法に本発明の実施例が限定されるものではなく、改変し得ることを理解されたい。また、ここで使用する専門用語は特定の実施例を説明する目的で用いたものであり、本発明の範囲を限定することを意図したものではないことも併せて理解されたい。
【0072】
本明細書及び請求の範囲において単数形を表す「或る」、「その(この等)」は、文脈で明確に示していない場合は複数形を含むことに注意されたい。従って、例えば「或る宿主細胞」は複数の宿主細胞を含み、その「抗体」は複数の抗体が含まれ、当業者には周知の等価物なども含まれる。
【0073】
本明細書中で用いる全ての技術用語及び科学用語は、特に定義されている場合を除き、当業者に一般に理解されている意味と同じ意味を有する。本明細書で説明するものと類似或いは同等の任意の装置、材料及び方法を用いて本発明の実施又は試験を行うことができるが、ここでは好適な装置、材料、方法について説明する。本発明の種々の実施例で言及する全ての刊行物は、刊行物中で報告されていて且つ本発明に関係して用い得る、細胞株、プロトコル、試薬及びベクターについて説明及び開示する目的で引用しているものである。本明細書のいかなる開示内容も、本発明が先行技術の効力によってこのような開示に対して先行する権利を与えられていないことを認めるものではない。
【0074】
(定義)
用語「EXMES」は、天然、合成、半合成或いは組換え体などの、全ての種(特にウシ、ヒツジ、ブタ、ネズミ、ウマ及びヒトを含む哺乳動物)から得られる実質的に精製されたEXMESのアミノ酸配列を指す。
【0075】
用語「アゴニスト」は、EXMESの生物学的活性を強めたり、模倣したりする分子を指す。このアゴニストは、EXMESに直接相互作用するか、或いはEXMESが関与する生物学的経路の成分と作用して、EXMESの活性を調節するタンパク質、核酸、糖質、小分子、任意の他の化合物や組成物を含み得る。
【0076】
用語「対立遺伝子変異配列」は、EXMESをコードする遺伝子の別の形を指す。対立遺伝子変異体は、核酸配列における少なくとも1つの突然変異から作製し得る。また、変異RNA又はポリペプチドを作製し得る。ポリペプチドの構造又は機能は、変異することもしないこともある。或る遺伝子は、その天然型の対立遺伝子変異体を全く持たない場合もあり、1個以上持つこともある。対立遺伝子変異体を生じさせる通常の突然変異性変化は一般に、ヌクレオチドの自然な欠失、付加又は置換に帰するものである。これら各変化は、単独で或いは他の変化と共に、所定の配列内で1回若しくは数回生じ得る。
【0077】
EXMESをコードする「変異」核酸配列は、様々なヌクレオチドの欠失、挿入、或いは置換が起こっても、EXMESと同じポリペプチド或いはEXMESの機能特性の少なくとも1つを備えるポリペプチドを指す。この定義には、EXMESをコードするポリヌクレオチド配列の正常な染色体の遺伝子座ではない位置での対立遺伝子変異配列との不適当或いは予期しないハイブリダイゼーション、並びにEXMESをコードするポリヌクレオチドの特定のオリゴヌクレオチドプローブを用いて容易に検出可能な或いは検出困難な多型性を含む。コードされるタンパク質も「変容する/改変される」ことがあり、また、サイレント変化を生じて機能的には等価なEXMESとなるような、アミノ酸残基の欠失、挿入、或いは置換を持ち得る。意図的なアミノ酸置換は、生物学的或いは免疫学的にEXMESの活性が保持される範囲で、残基群の、極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性、及び/又は両親媒性についての、1つ以上の類似性に基づいて成され得る。例えば、負に帯電したアミノ酸にはアスパラギン酸及びグルタミン酸があり、正に帯電したアミノ酸にはリジン及びアルギニンがある。親水性値が近似した非荷電極性側鎖を持つアミノ酸には、アスパラギンとグルタミン、セリンとトレオニンがある。親水性値が近似した非荷電側鎖を持つアミノ酸には、ロイシンとイソロイシンとバリン、グリシンとアラニン、フェニルアラニンとチロシンがある。
【0078】
用語「アミノ酸」及び「アミノ酸配列」は、オリゴペプチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質配列、或いはそれらの任意の断片を指し得、天然の分子及び合成分子を含む。「アミノ酸配列」が天然のタンパク質分子の配列を指す場合、「アミノ酸配列」及び類似の用語は、アミノ酸配列を記載したタンパク質分子に関連する完全で元のままのアミノ酸配列に限定するものではない。
【0079】
「増幅」は、核酸の複製物を作製することに関連する。増幅は、ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)技術又は当分野でよく知られている他の核酸増幅技術を用いて実行される。
【0080】
用語「アンタゴニスト」は、EXMESの生物学的活性を阻害或いは減弱する分子を指す。アンタゴニストとしては、抗体などのタンパク質、anticalin、核酸、糖質、小分子又はその他の任意の化合物や組成物を挙げることができるが、これらはEXMESと直接相互作用することによって、或いはEXMESが関与する生物学的経路の構成エレメントに作用することによって、EXMESの活性を調節する。
【0081】
「抗体」の語は、抗原決定基と結合することができる、無傷の免疫グロブリン分子やその断片、例えばFab、F(ab')2及びFv断片を指す。EXMESポリペプチドと結合する抗体は、免疫抗原として、無傷ポリペプチド群を用いて、又は、当該の小ペプチド群を有する断片群を用いて作製可能である。動物(マウス、ラット或いはウサギ等)を免疫化するために用いるポリペプチド又はオリゴペプチドは、RNAの翻訳、又は化学合成によって得られるポリペプチド又はオリゴペプチドに由来し得るもので、好みに応じてキャリアタンパク質に抱合することも可能である。通常用いられるキャリアであってペプチドと化学結合するものは、ウシ血清アルブミン、サイログロブリン及びスカシガイのヘモシアニン(KLH)等がある。その結合ペプチドを、動物を免疫化するために用いる。
【0082】
用語「抗原決定基」は、特定の抗体と接触する分子の領域(即ちエピトープ)を指す。タンパク質又はタンパク質断片を用いて宿主動物を免疫化する場合、タンパク質の多数の領域が、抗原決定基(タンパク質の特定の領域又は3次元構造)に特異結合する抗体の産生を誘導し得る。抗原決定基は、抗体への結合について、無損傷抗原(即ち免疫応答を誘導するために用いられる免疫原)と競合し得る。
【0083】
用語「アプタマー」は、特定の分子標的に結合する核酸又はオリゴヌクレオチド分子を指す。アプタマーはin vitroでの進化プロセスに由来する(例えば、SELEX(Systematic Evolution of Ligands by EXponential Enrichmentの略、試験管内選択法)、米国特許第5,270,163号に記述)。これは、大規模な組み合わせライブラリ群から標的特異的アプタマー配列を選択するプロセスである。アプタマーの構成は二本鎖又は一本鎖であり、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、ヌクレオチド誘導体又は他のヌクレオチド様分子を含み得る。アプタマーのヌクレオチド成分は、修飾された糖基(例えばリボヌクレオチドの2'-OH基が2'-F又は2'-NH2で置換し得る)を有することが可能で、そのような糖基はヌクレアーゼへの抵抗性又は血液中でのより長い寿命などの望ましい性質に改善し得る。循環系からアプタマーが除去される速度を遅くするために、アプタマーを高分子量キャリア等の分子に抱合させることができる。アプタマーは、たとえば架橋剤の光活性化によって、各々の同種リガンドと特異的に架橋させることができる(Brody, E.N.及びL. Gold (2000) J. Biotechnol. 74:5-13等を参照)。
【0084】
「intramer」の用語はin vivoで発現されるアプタマーを意味する例えば、ワクシニアウイルスに基づく或るRNA発現系を用いて、白血球の細胞質内で特定のRNAアプタマー類が高レベルに発現されている(Blind, M.他(1999) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96:3606-3610)。
【0085】
「スピーゲルマー(spiegelmer)」の語はL-DNA、L-RNAその他の左旋性ヌクレオチド誘導体又はヌクレオチド様分子を含むアプタマーを指す。左旋性のヌクレオチドを含むアプタマーは右旋性ヌクレオチドに作用する天然の酵素による分解に対して耐性がある。
【0086】
本明細書において「アンチセンス」は、特定の核酸配列を有するポリヌクレオチドのセンス(コーディング)鎖と塩基対を形成し得る任意の組成物を指す。アンチセンス組成物としては、DNAや、RNAや、ペプチド核酸(PNA)や、ホスホロチオ酸、メチルホスホン酸又はベンジルホスホン酸等の修飾されたバックボーン結合を有するオリゴヌクレオチドや、2'-メトキシエチル糖又は2'-メトキシエトキシ糖等の修飾された糖類を有するオリゴヌクレオチドや、或いは5-メチルシトシン、2-デオキシウラシル又は7-デアザ-2'-デオキシグアノシン等の修飾された塩基を有するオリゴヌクレオチドを含みうる。アンチセンス分子は、化学合成又は転写など、任意の方法で製造することができる。相補的アンチセンス分子は、細胞に導入されると、細胞が産生した天然核酸配列との塩基対を形成し、二重鎖を形成して転写又は翻訳を妨害する。「負」又は「マイナス」という表現は、ある参考DNA分子のアンチセンス鎖を意味し、「正」又は「プラス」という表現は、ある参考DNA分子のセンス鎖を意味しうる。
【0087】
用語「生物学的に活性」は、天然分子の構造的、調節的、或いは生化学的な機能を有するタンパク質を指す。同様に、用語「免疫学的に活性」又は「免疫原性」は、天然EXMES、組換え体のEXMES、合成EXMES、又はそれらの任意のオリゴペプチドが、適当な動物或いは細胞内の特定の免疫応答を誘発して特定の抗体と結合する能力を指す。
【0088】
「相補的」は、塩基対合によってアニールする2つの一本鎖核酸配列間の関係を指す。例えば、配列「5'A-G-T3'」は、相補配列「3'T-C-A5'」と対を形成する。
【0089】
「〜のポリヌクレオチド配列を含む組成物」又は「〜のアミノ酸配列を含む(有する)組成物」は広い意味で、所定のポリヌクレオチド配列若しくはアミノ酸配列を含む任意の組成物を指す。この組成物には、乾燥製剤又は水溶液が含まれ得る。EXMES若しくはEXMESの断片をコードするポリヌクレオチド配列を含む組成物は、ハイブリダイゼーションプローブとして使用され得る。これらプローブは、凍結乾燥形態で貯蔵でき、また、糖質などの安定化剤と結合させ得る。ハイブリダイゼーションにおいては、塩(例えばNaCl)、界面活性剤(例えばドデシル硫酸ナトリウム;SDS)及びその他の構成成分(例えばデンハート液、脱脂粉乳、サケ精子DNA等)を含む水溶液中にプローブを分散させることができる。
【0090】
「コンセンサス配列」は、不要な塩基を分離するためにDNA配列の解析を繰り返し行い、XL-PCRキット(Applied Biosystems, Foster City CA)を用いて5'及び/又は3'の方向に伸長され、再度シークエンシングされた核酸配列、又はGELVIEW 断片アセンブリシステム(GCG, Madison, WI)又はPhrap (University of Washington, Seattle WA)等の断片アセンブリ用のコンピュータプログラムを用いて1つ或いはそれ以上のオーバーラップするcDNAやEST、又はゲノムDNA断片からアセンブリされた核酸配列を指す。伸長及びアセンブリの両方を行ってコンセンサス配列を作製する配列もある。
【0091】
「保存的なアミノ酸置換」は、元のタンパク質の特性を殆ど変えない置換を指す。即ち、置換によってそのタンパク質の構造や機能が大きくは変わらず、そのタンパク質の構造、特にその機能が保存される。下表は、タンパク質中で元のアミノ酸と置換され得るアミノ酸であり、保存的アミノ酸置換と認められるアミノ酸を示している。
【0092】
保存アミノ酸置換では通常、(a)置換領域におけるポリペプチドのバックボーン構造、例えばβシートやα螺旋構造、(b)置換部位における分子の電荷又は疎水性、及び/又は(c)側鎖の大部分を保持する。
【0093】
「欠失」は、1個以上のアミノ酸残基が欠如するアミノ酸配列の変化、或いは1個以上のヌクレオチドが欠如する核酸配列の変化を指す。
【0094】
用語「誘導体」は、化学修飾されたポリヌクレオチド又はポリペプチドを指す。例えば、アルキル基、アシル基、ヒドロキシル基又はアミノ基による水素の置換は、ポリヌクレオチドの化学修飾に含まれ得る。ポリヌクレオチド誘導体は、天然分子の生物学的又は免疫学的機能を少なくとも1つは保持しているポリペプチドをコードする。ポリペプチド誘導体は、グリコシル化、ポリエチレングリコール化(pegylation)、或いは任意の同様なプロセスであって、誘導起源のポリペプチドの少なくとも1つの生物学的若しくは免疫学的機能を保持するプロセスによって、修飾されたポリペプチドである。
【0095】
「検出可能な標識」は、測定可能な信号を発生し得る、ポリヌクレオチドやポリペプチドに共有結合或いは非共有結合するレポーター分子又は酵素を指す。
【0096】
「差次的発現」は、少なくとも2つの異なったサンプルを比較することによって決められる、増加(上方調節)、或いは減少(下方調節)、又は遺伝子発現の欠損又はタンパク発現の欠損を指す。このような比較は例えば、処理済サンプルと不処理サンプル、又は病態サンプルと健常サンプルとの間で行われ得る。
【0097】
「エキソンシャフリング」は、異なるコード領域(エキソン)の組換えを意味する。1つのエキソンはコードされるタンパク質の1つの構造的又は機能的ドメインを代表し得るため、安定した基礎構造の新規な再構築(reassortment)を介して新しいタンパク質がアセンブリされることが可能であり、これにより新しいタンパク質機能の進化を促進できる。
【0098】
用語「断片」は、EXMESの又はEXMESをコードするポリヌクレオチドの固有の部分であって、その親配列(parent sequence)と配列は同一であり得るが親配列より長さが短いものを指す。或る断片は、定義された配列の全長から1ヌクレオチド/アミノ酸残基を差し引いた長さよりも短い長さを有し得る。例えば或る断片は、約5〜約1000の連続したヌクレオチド又はアミノ酸残基を有し得る。プローブ、プライマー、抗原、治療用分子として、或いはその他の目的のために用いられる断片は、少なくとも5、10、15、16、20、25、30、40、50、60、75、100、150、250若しくは500の連続したヌクレオチド或いはアミノ酸残基の長さであり得る。断片は、或る分子の特定領域から優先的に選択し得る。例えば、ポリペプチド断片は、所定の配列に示すようなポリペプチドの最初の250又は500アミノ酸(又は最初の25%又は50%)から選択された或る長さの連続したアミノ酸を有し得る。これらの長さは明らかに例として挙げているものであり、本発明の実施態様では、配列表、表及び図面を含む本明細書が支持する任意の長さであり得る。
【0099】
SEQ ID NO:23-44の断片は、例えば、この断片を得たゲノム内の他の配列とは異なる、SEQ ID NO:23-44を特定に同定する固有のポリヌクレオチド配列の領域を含み得る。SEQ ID NO:23-44のある断片は、本発明の例えば、ハイブリダイゼーションや増幅技術の1つ以上の実施様態、又はSEQ ID NO:23-44を関連ポリヌクレオチドから区別する類似の方法に有用である。SEQ ID NO:23-44の或る断片の正確な長さは、また、その断片が対応するSEQ ID NO:23-44の領域は、その断片に意図した目的に基づき当業者が慣例的に決定し得る。
【0100】
SEQ ID NO:1-22の断片はSEQ ID NO:23-44の断片によってコードされている。SEQ ID NO::1-22の断片はSEQ ID NO:1-22を特異的に同定する固有のアミノ酸配列の領域を含む。例えば、SEQ ID NO:1-22の断片は、SEQ ID NO:1-22を特異認識する抗体を産出するための免疫原性ペプチドとして有用である。SEQ ID NO:1-22の断片及び断片に対応するSEQ ID NO:1-22の領域の正確な長さは、断片に対する意図した目的に基づき、本明細書に記載されている、或いは当分野で知られている1つ以上の分析方法を用いて当業者が慣例的に決定することが可能である。
【0101】
「完全長」ポリヌクレオチドとは、少なくとも1つの翻訳開始コドン(例えばメチオニン)、オープンリーディングフレーム及び翻訳終止コドンを有する配列である。「完全長」ポリヌクレオチド配列は、「完全長」ポリペプチド配列をコードする。
【0102】
「相同性」は、2つ以上のポリヌクレオチド配列又は2つ以上のポリペプチド配列の配列類似性、又は配列同一性を意味する。
【0103】
ポリヌクレオチド配列に適用される「一致率」又は「%一致」の語は、標準化されたアルゴリズムを用いてアラインメントされた、2つ以上のポリヌクレオチド配列間で一致する残基の割合を意味する。標準化アルゴリズムは、2配列間のアラインメントを最適化するため、標準化された再現性のある方法で比較対象の2配列内にギャップ群を挿入し得るので、2つの配列をより有意に比較できる。
【0104】
ポリヌクレオチド配列間の一致率は、当分野で知られている或いは本明細書に記載されている1つ以上のコンピュータアルゴリズム又はプログラムを用いて決定し得る。例えば、一致率は、MEGALIGN version 3.12e配列アラインメントプログラムに組込まれているようなCLUSTAL Vアルゴリズムのデフォルトのパラメータを用いて決定できる。このプログラムは、LASERGENE ソフトウェアパッケージ(一組の分子生物学的分析プログラム)(DNASTAR, Madison WI)の一部である。このCLUSTAL Vは、Higgins, D.G.及びP.M. Sharp(1989)CABIOS 5:151-153、Higgins, D.G. 他 (1992) CABIOS 8:189-191に記載されている。ポリヌクレオチド配列を2つ1組でアラインメントする際のデフォルトパラメータは、Ktuple=2、gap penalty=5、window=4、「diagonals saved」=4と設定する。デフォルトとして「重みづけされた」残基の重みづけ表を選択する。一致率は、アラインメントされたポリヌクレオチド配列間の「percent similarity(類似性パーセント)」としてCLUSTAL Vによって報告される。
【0105】
或いは、使用可能であり、一般的に用いられ且つ自由に入手できる配列比較アルゴリズム一式が、国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)Basic Local Alignment Search Tool(BLAST)から提供されており(Altschul, S.F. 他 (1990) J. Mol. Biol. 215:403-410)、これはメリーランド州ベセスダにあるNCBI及びインターネット(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)を含む幾つかの情報源から入手可能である。このBLASTソフトウェア一式には、既知のポリヌクレオチド配列と様々なデータベースの別のポリヌクレオチド配列とのアラインメントに用いられる「blastn」を含む、様々な配列分析プログラムが含まれる。「BLAST 2 Sequences」と呼ばれるツールも入手可能であり、2つのヌクレオチド配列を直接にペアワイズで比較するために用いられる。「BLAST 2 Sequences」は、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gorf/bl2.htmlにアクセスして、対話形式で利用ができる。「BLAST 2 Sequences」ツールは、blastn及びblastp(以下に記載)の両方に用いることができる。BLASTプログラムは、一般的には、ギャップ及び他のパラメータをデフォルト設定に設定して用いる。例えば、2つのヌクレオチド配列を比較するために、デフォルトパラメータとして設定された「BLAST 2 Sequences」ツールVersion 2.0.12(2000年4月21日)を用いてblastnを実行してもよい。デフォルトパラメータの設定例を以下に示す。
【0106】
Matrix:BLOSUM62
Reward for match: 1
Penalty for mismatch: -2
Open Gap:5 及びExtension Gap:2 penalties
Gap x drop-off: 50
Expect: 10
Word Size: 11
Filter:on
一致率は、ある定義された配列の全長(例えば特定のSEQ IDナンバーで定義された配列)について測定し得る。或いは、より短い長さ、例えば、定義された、より大きな配列から得られた断片(例えば少なくとも20、30、40、50、70、100又は200の連続したヌクレオチドの断片)の長さについて一致率を測定してもよい。ここに挙げた長さは単なる例示的なものに過ぎず、表、図及び配列リストを含めた本明細書に記載された配列が支持する任意の断片長を用いて、一致率を測定し得る或る長さを説明し得ることを理解されたい。
【0107】
高度の同一性を示さない核酸配列が、それにもかかわらず遺伝子コードの縮重が原因で類似のアミノ酸配列をコードする場合がある。この縮重を利用して核酸配列内で変化を生じさせて、全ての核酸配列が実質上同一のタンパク質をコードするような多数の核酸配列を生成し得ることを理解されたい。
【0108】
ポリペプチド配列に用いられる用語「一致率」又は「%一致」とは、標準化されたアルゴリズムを用いてアラインメントされる2つ以上のポリペプチド配列間の一致する残基の百分率のことである。ポリペプチド配列アラインメントの方法は公知である。保存的アミノ酸置換を考慮するアラインメント方法もある。既に詳述したこのような保存的置換は通常、置換部位の酸性度及び疎水性を保存するので、ポリペプチドの構造を(従って機能も)保存する。
【0109】
ポリペプチド配列間の一致率は、MEGALIGN version 3.12e配列アラインメントプログラムに組込まれているようなCLUSTAL Vアルゴリズムのデフォルトのパラメータを用いて決定できる(既に説明したのでそれを参照されたい)。CLUSTAL Vを用いて、ポリペプチド配列をペアワイズアラインメントする際のデフォルトパラメータは、Ktuple=1、gap penalty=3、window=5、「diagonals saved」=5と設定される。デフォルトの残基重み付け表としてPAM250マトリクスが選択される。ポリヌクレオチドアラインメントと同様に、CLUSTAL Vは、アラインメントされたポリペプチド配列対間の「percent similarity」として一致率を報告する。
【0110】
或いは、NCBI BLASTソフトウェア一式を用いてもよい。例えば、2つのポリペプチド配列をペアワイズで比較する場合、ある者は、デフォルトパラメータで設定された「BLAST 2 Sequences」ツールVersion 2.0.12 (2000年4月21日)でblastpを使用するであろう。デフォルトパラメータの設定例を以下に示す。
【0111】
Matrix:BLOSUM62
Open Gap:11 及びExtension Gap:1 penalties
Gap x drop-off: 50
Expect: 10
Word Size: 3
Filter:on
一致率は、ある定義されたポリペプチド配列の全長(例えば特定のSEQ IDナンバーで定義された配列)について測定し得る。或いは、より短い長さ、例えば、定義された、より大きなポリペプチド配列から得られた断片(例えば少なくとも15、20、30、40、50、70、又は150の連続した残基の断片)の長さについて一致率を測定してもよい。ここに挙げた長さは単なる例示的なものに過ぎず、表、図及び配列リストを含めた本明細書に記載された配列に支持された任意の配列長さの断片を用いて、或る長さであってその長さに対して一致率を測定し得る長さを説明し得ることを理解されたい。
【0112】
「ヒト人工染色体(HAC)」は、約6kb〜10MbのサイズのDNA配列を含み得る、安定した染色体複製の分離及び維持に必要な全てのエレメントを含む直鎖状の微小染色体である。
【0113】
用語「ヒト化抗体」は、もとの結合能力を保持しつつ、よりヒトの抗体に似せるために、非抗原結合領域のアミノ酸配列が変えられた抗体分子を指す。
【0114】
「ハイブリダイゼーション」とは、所定のハイブリダイゼーション条件下で、ある一本鎖ポリヌクレオチドがある相補的な一本鎖と塩基対を形成するアニーリングのプロセスである。特異的ハイブリダイゼーションは、2つの核酸配列が高い相補性を共有することの指標である。特異的ハイブリダイゼーション複合体は許容的アニーリング条件下で形成され、「洗浄」ステップ後もハイブリダイズされたままである。洗浄ステップは、ハイブリダイゼーションプロセスのストリンジェンシーを決定する際に特に重要であり、よりストリンジェントな条件では、非特異結合(即ち完全には一致しない核酸鎖間の対の結合)が減少する。核酸配列のアニーリングのための許容的条件は、当業者が慣例的に決定できる。許容的条件は、どのハイブリダイゼーション実験でも一定でありうるが、洗浄条件は所望のストリンジェンシーを得るように、従ってハイブリダイゼーション特異性も得るように実験によって変更されうる。アニーリングが許容される条件は、例えば、温度が68℃で、約6×SSC、約1%(w/v)のSDS、並びに約100μg/mlのせん断して変性したサケ精子DNAが含まれる。
【0115】
一般に、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは或る程度、洗浄ステップを実行する温度を基準にして表すことができる。このような洗浄温度は通常、所定のイオン強度及びpHにおける特異配列の融点(Tm)より約5〜20℃低くなるように選択する。このTmは、所定のイオン強度及びpHの条件下で、完全に一致するプローブに標的配列の50%がハイブリダイズする温度である。Tmを計算する式及び核酸のハイブリダイゼーション条件はよく知られており、Sambrook, J. 他(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual, 第2版, 1-3巻, Cold Spring Harbor Press, Plainview NYに記載されており、特に2巻の9章を参照されたい。
【0116】
本発明のポリヌクレオチド間の高いストリンジェンシー条件のハイブリダイゼーションでは、約0.2xSSC及び約0.1%のSDSの存在の下、約68℃で1時間の洗浄過程を含む。別法では、約65℃、60℃、55℃、又は42℃の温度で行う。SSC濃度は、約0.1%のSDS存在下で、約0.1〜2×SSCの範囲で変化し得る。通常は、ブロッキング剤を用いて非特異ハイブリダイゼーションを阻止する。このようなブロッキング剤には、例えば、約100〜200μg/mlのせん断した変性サケ精子DNAがある。例えばRNAとDNAのハイブリダイゼーションのような特定条件下では、有機溶剤、例えば約35〜50%v/vの濃度のホルムアミドを用いることもできる。洗浄条件の有用なバリエーションは、当業者には自明であろう。ハイブリダイゼーションは、特に高ストリンジェント条件下では、ヌクレオチド間の進化的な類似性を示唆し得る。進化的類似性は、ヌクレオチド群、及びヌクレオチドがコードするポリペプチド群について、或る同様の役割を強く示唆する。
【0117】
用語「ハイブリダイゼーション複合体」は、相補的な塩基間の水素結合によって、形成された2つの核酸の複合体を指す。ハイブリダイゼーション複合体は、溶解状態で形成し得る(C0t又はR0t解析など)。或いは、一方の核酸が溶解状態で存在し、もう一方の核酸が固体支持体(例えば紙、膜、フィルタ、チップ、ピン又はガラススライド、或いは他の適切な基板であって細胞若しくはその核酸が固定される基板)に固定されているような2つの核酸間に形成され得る。
【0118】
用語「挿入」或いは「付加」は、1個以上のアミノ酸残基或いはヌクレオチドがそれぞれ追加されるアミノ酸或いはポリヌクレオチド配列の変化を指す。
【0119】
「免疫応答」は、炎症、外傷、免疫異常症、或いは伝染性疾患又は遺伝性疾患に関連する症状を指し得る。これらの症状は、細胞及び全身の防御系に作用し得る種々の因子、例えばサイトカイン、ケモカイン、その他のシグナル伝達分子の発現によって特徴づけることができる。
【0120】
用語「免疫原性断片」は、例えば哺乳動物などの生きている動物に導入すると、免疫反応を引き起こすEXMESのポリペプチド断片又はオリゴペプチド断片を指す。
【0121】
「免疫抗原性断片」の語には、本明細書中で開示したような或いは当分野で既知であるような任意の抗体産出方法において有用なEXMESの任意のポリペプチド又はオリゴペプチド断片も含まれる。
【0122】
用語「マイクロアレイ」は、基板上の複数のポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体又はその他の化合物の構成を指す。
【0123】
用語「エレメント」又は「アレイエレメント」は、マイクロアレイ上に固有の定義された位置を有する、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体又はその他の化合物を指す。
【0124】
用語「調節」は、EXMESの活性の変化を指す。例えば、調節によって、EXMESのタンパク質活性、或いは結合特性、又はその他の生物学的特性、機能的特性或いは免疫学的特性の変化が起こる。
【0125】
「核酸」及び「核酸配列」の語は、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド又はこれらの断片を指す。「核酸」及び「核酸配列」の語はまた、ゲノム起源又は合成起源のDNA又はRNAであって一本鎖又は二本鎖であるか或いはセンス鎖又はアンチセンス鎖を表し得るようなDNA又はRNAや、ペプチド核酸(PNA)や、任意のDNA様又はRNA様物質を指すこともある。
【0126】
「機能的に連結した」は、第1の核酸配列と第2の核酸配列が機能的な関係にある状態を指す。例えば、或るプロモーターが或るコード配列の転写又は発現に影響を及ぼす場合には、そのプロモーターはそのコード配列に機能的に連結している。機能的に連結したDNA配列は非常に近接するか、或いは連続的に隣接し得る。また、2つのタンパク質コード領域を結合するために必要な場合は、同一のリーディングフレーム内に在り得る。
【0127】
「ペプチド核酸(PNA)」は、末端がリジンで終わるアミノ酸残基のペプチドバックボーンに結合した、少なくとも約5ヌクレオチドの長さのオリゴヌクレオチドを有する、アンチセンス分子又は抗遺伝子剤を指す。末端のリジンは、組成物に溶解性を与える。PNAは、相補的一本鎖DNA又はRNAに優先的に結合して転写の伸長を停止するものであり、ポリエチレングリコール化して細胞におけるPNAの寿命を延長し得る。
【0128】
EXMESの「翻訳後修飾」には、脂質化、グリコシル化、リン酸化、アセチル化、ラセミ化、タンパク質分解性切断及びその他の当分野で既知の修飾を含まれ得る。これらのプロセスは、合成或いは生化学的に生じ得る。生化学的修飾は、EXMESの酵素環境に依存し、細胞の種類によって異なり得る。
【0129】
「プローブ」とは、核酸の内、EXMESやそれらの相補配列、又はそれらの断片をコードし、同一や対立遺伝子核酸、又は関連する核酸の検出に用いる核酸を指す。プローブは、単離されたオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドであって、検出可能な標識又はレポーター分子に接着した配列である。典型的な標識には、放射性アイソトープ、リガンド、化学発光試薬及び酵素がある。「プライマー」とは、相補的な塩基対を形成して標的のポリヌクレオチドにアニーリング可能な、通常はDNAオリゴヌクレオチドである短い核酸である。プライマーは次に、DNAポリメラーゼ酵素によって標的DNA鎖に沿って延長し得る。プライマー対は、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による、核酸の増幅(及び同定)に用い得る。
【0130】
本発明に用いるようなプローブ及びプライマーは通常、既知の配列の少なくとも15の連続したヌクレオチドを含んでいる。特異性を高めるために長めのプローブ及びプライマー、例えば開示した核酸配列の少なくとも20、25、30、40、50、60、70、80、90、100又は少なくとも150の連続したヌクレオチドからなるようなプローブ及びプライマーを用いてもよい。これよりもかなり長いプローブ及びプライマーもある。表、図面及び配列リストを含む本明細書が支持する、任意の長さのヌクレオチドを用い得るものと理解されたい。
【0131】
プローブ及びプライマーの調製及び使用方法については、Sambrook, J.他 (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版, 1-3巻、Cold Spring Harbor Press, Plainview NY、Ausubel, F.M.他, (1987) Current Protocols in Molecular Biology, Greene Pubi. Assoc. & Wiley-Intersciences, New York NY、Innis, M. 他 (1990) PCR Protocols, A Guide to Methods and Applications Academic Press, San Diego CA等を参照されたい。PCRプライマー対は、その目的のためのコンピュータプログラム、例えばPrimer(Version 0.5, 1991, Whitehead Institute for Biomedical Research, Cambridge MA)を用いるなどして既知の配列から得ることができる。
【0132】
プライマーとして用いるオリゴヌクレオチドの選択は、そのような目的のために本技術分野でよく知られているソフトウェアを用いて行う。例えばOLIGO 4.06ソフトウェアは、各100ヌクレオチドまでのPCRプライマー対の選択に有用であり、32キロベースまでのインプットポリヌクレオチド配列からオリゴヌクレオチド及び最大5.000ヌクレオチドまでの大きめのポリヌクレオチドとオリゴヌクレオチドを分析するのにも有用である。類似のプライマー選択プログラムには、拡張能力のための追加機能が組込まれている。例えば、PrimOUプライマー選択プログラム(テキサス州ダラスにあるテキサス大学南西部医療センターのゲノムセンターから一般向けに入手可能)は、メガベース配列から特定のプライマーを選択することが可能であり、したがってゲノム全体の範囲でプライマーを設計するのに有用である。Primer3プライマー選択プログラム(Whitehead Institute/MIT Center for Genome Research(マサチューセッツ州ケンブリッジ)より入手可能)によって、ユーザーは、プライマー結合部位として避けたい配列を指定できる「ミスプライミングライブラリ」を入力できる。Primer3は特に、マイクロアレイのためのオリゴヌクレオチドの選択に有用である(後二者のプライマー選択プログラムのソースコードは、それぞれの情報源から得てユーザー固有のニーズを満たすように修正し得る)。PrimerGenプログラム(英国ヒトゲノムマッピングプロジェクト-リソースセンター(英国ケンブリッジ)から一般向けに入手可能)は、多数の配列アラインメントに基づいてプライマーを設計し、それによって、アラインメントされた核酸配列の最大保存領域又は最小保存領域の何れかとハイブリダイズするようなプライマーの選択を可能にする。従って、このプログラムは、固有なもの、及び保存されたもの双方のオリゴヌクレオチドとポリヌクレオチド断片との同定に有用である。上記選択方法のいずれかによって同定したオリゴヌクレオチド及びポリヌクレオチド断片は、ハイブリダイゼーション技術において、例えばPCR又はシークエンシングプライマーとして、マイクロアレイエレメントとして、或いは核酸のサンプルにおいて完全又は部分的相補的ポリヌクレオチドを同定する特異プローブとして有用である。オリゴヌクレオチドの選択方法は、上記の方法に限定されるものではない。
【0133】
本明細書における「組み換え核酸」は天然の配列ではなく、2つ以上の配列の離れたセグメントを人工的に組み合わせた核酸である。この人為的組み合わせはしばしば化学合成によって達成するが、より一般的には核酸の単離セグメントの人為的操作によって、例えばSambrookの文献(前出)に記載されているような遺伝子工学的手法によって達成する。組換え核酸の語は、単に核酸の一部が付加、置換又は欠失により改変された核酸も含む。しばしば組換え核酸には、プロモーター配列に機能的に連結した核酸配列が含まれる。このような組換え核酸は、例えば細胞を形質転換するために使用されるベクターの一部とすることが可能である。
【0134】
或いはこのような組換え核酸は、ウイルスベクターの一部であって、例えばワクシニアウイルスに基づくものであり得る。そのようなワクシニアウイルスは哺乳動物に接種され、その組換え核酸が発現されて、その哺乳動物内で防御免疫応答を誘導するように使用することができる。
【0135】
「調節エレメント」は、通常は遺伝子の非翻訳領域に由来する核酸配列であり、エンハンサー、プロモーター、イントロン及び5'及び3'の非翻訳領域(UTR)を含む。調節エレメントは、転写、翻訳又はRNA安定性を制御する宿主タンパク質又はウイルスタンパク質と相互作用する。
【0136】
「レポーター分子」は、核酸、アミノ酸又は抗体の標識化に用いられる化学的又は生化学的な部分である。レポーター分子としては、放射性核種、酵素、蛍光剤、化学発光剤、発色剤、基質、補助因子、阻害因子、磁気粒子及びその他の当分野で既知の成分を含む。
【0137】
DNA分子に対する「RNA等価物」は、基準となるDNA分子とヌクレオチドの同じ直鎖の核酸配列から構成されるが、全ての窒素性塩基のチミンがウラシルで置換され、糖鎖のバックボーンがデオキシリボースではなくリボースからなる。
【0138】
用語「サンプル」は、その最も広い意味で用いられている。EXMES、EXMESをコードする核酸、又はその断片を含むと推定されるサンプルは、体液と、細胞からの抽出物や細胞から単離された染色体や細胞内小器官、膜と、細胞と、溶液中に存在する又は基板に固定されたゲノムDNA、RNA、cDNAと、組織と、組織プリント等を含み得る。
【0139】
用語「特異的結合」及び「特異的に結合する」は、タンパク質若しくはペプチドと、アゴニスト、抗体、アンタゴニスト、小分子、若しくは任意の天然若しくは合成の結合組成物との間の相互作用を指す。この相互作用は、タンパク質の特定の構造(例えば抗原決定基即ちエピトープ)であって結合分子が認識する構造が存在するか否かに依存する。例えば、抗体がエピトープ「A」に対して特異的である場合、結合していない標識した「A」及び抗体を含む反応液に、エピトープAを含むポリペプチド或いは結合していない無標識の「A」が存在すると、抗体と結合する標識Aの量が減少する。
【0140】
用語「実質的に精製された」は、自然の環境から取り除かれてから、単離或いは分離された核酸或いはアミノ酸配列であって、自然に結合している組成物が少なくとも約60%除去されたものであり、好ましくは約75%以上の除去、最も好ましいくは約90%以上除去されたものを指す。
【0141】
「置換」とは、一つ以上のアミノ酸残基又はヌクレオチドをそれぞれ別のアミノ酸残基又はヌクレオチドに置き換えることである。
【0142】
「基板」は、任意の好適な固体或いは半固体の支持物を指し、膜及びフィルタ、チップ、スライド、ウエハ、ファイバー、磁気又は非磁気ビーズ、ゲル、チューブ、プレート、ポリマー、微小粒子、毛細管が含まれる。基板は、壁、溝、ピン、チャネル、孔等、様々な表面形態を有することができ、基板にはポリヌクレオチドやポリペプチドが結合する。
【0143】
「転写物イメージ」或いは「発現プロフィール」は、所定条件下での所定時間における特定の細胞の種類又は組織による集合的遺伝子発現のパターンを指す。
【0144】
「形質転換(transformation)」とは、外来DNAが受容細胞に導入されるプロセスのことである。形質転換は、本技術分野で知られている種々の方法に従って自然条件又は人工条件下で生じ得るものであり、外来性の核酸配列を原核宿主細胞又は真核宿主細胞に挿入する任意の既知の方法を基にし得る。形質転換の方法は、形質転換する宿主細胞の種類によって選択する。限定するものではないが形質転換方法には、バクテリオファージ或いはウイルス感染、電気穿孔法(エレクトロポレーション)、熱ショック、リポフェクション及び微粒子銃を用いる方法がある。用語「形質転換された細胞」には、導入されたDNAが自律的に複製するプラスミドとして或いは宿主染色体の一部として複製可能である安定的に形質転換された細胞が含まれる。更に、限られた時間に一過的に導入DNA若しくは導入RNAを発現する細胞も含まれる。
【0145】
ここで用いる「遺伝形質転換生物体(transgenic organism)」とは任意の生物体であり、限定するものではないが動植物を含み、生物体の1個以上の細胞が、ヒトの関与によって、例えば本技術分野でよく知られているトランスジェニック(transgenic)技術によって導入された異種核酸を有する。核酸の細胞への導入は、直接又は間接的に、細胞の前駆物質に導入することによって、計画的な遺伝子操作によって、例えば微量注射法によって或いは組換えウイルスでの感染によって行う。別の実施様態では、核酸の導入は組換えウイルスベクター、例えばレンチウイルスベクターを感染させて成し得る(Lois, C. 他 (2002) Science 295:868-872)。遺伝子操作の語は、古典的な交雑育種或いはin vitro受精を指すものではなく、組換えDNA分子の導入を指すものである。本発明に基づいて予期される遺伝形質転換生物体には、バクテリア、シアノバクテリア、真菌及び動植物がある。本発明の単離されたDNAは、本技術分野で知られている方法、例えば感染、形質移入、形質転換又はトランス接合によって宿主に導入することができる。本発明のDNAをこのような有機体に移入する技術はよく知られており、前出のSambrook 他 (1989) 等の参考文献に与えられている。
【0146】
特定の核酸配列の「変異体/変異配列」は、核酸配列1本全部の長さに対して特定の核酸配列と少なくとも40%の配列同一性を有する核酸配列であると定義する。定義づけには、デフォルトパラメータに設定した「BLAST 2 Sequences」ツールVersion 2.0.9(1999年5月7日)を用いてblastnを実行する。このような核酸対は、所定の長さに対して、例えば少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれ以上の配列同一性を示し得る。或る変異体は、例えば「対立遺伝子」変異体(前述)、「スプライス」変異体、「種」変異体又は「多型性」変異体として説明し得る。スプライス変異体は参照分子との有意な同一性を有し得るが、mRNAプロセッシング中のエキソンの選択的スプライシングによって通常、より多く又はより少数のポリヌクレオチドを有することになる。対応するポリペプチドは、追加機能ドメイン群を有するか、或いは参照分子には存在するドメイン群が欠落していることがある。種変異体は、種によって異なるポリヌクレオチドである。結果的に生じるポリペプチドは通常、相互に有意なアミノ酸同一性を有する。多型性変異体は、所与の種の個体間での特定遺伝子のポリヌクレオチド配列中での変異である。多型変異配列はまた、ポリヌクレオチド配列の1つのヌクレオチド塩基が異なる「1塩基多型性」(SNP)も含み得る。SNPの存在は、例えば特定の集団、病状又は病状性向を示し得る。
【0147】
特定のポリペプチド配列の「変異体」は、ポリペプチド配列の1本の長さ全体で特定のポリペプチド配列に対して少なくとも40%の配列同一性を有するポリペプチド配列として定義される。定義づけには、デフォルトパラメータに設定した「BLAST 2 Sequences」ツールVersion 2.0.9(1999年5月7日)を用いてblastpを実行する。このようなポリペプチド対は、ポリペプチドの1つの所定の長さに対して、例えば少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれ以上の配列同一性を示し得る。
【0148】
(発明)
本発明の様々な実施様態は、新規のヒト細胞外メッセンジャー(EXMES)及びEXMESをコードするポリヌクレオチドが含まれ、これらの組成物を利用した自己免疫/炎症疾患、神経系疾患、内分泌障害、発生又は発達障害、癌を含む細胞増殖異常、生殖障害、心血管疾患、及び感染の診断、治療、或いは予防に関する。
【0149】
表1は、本発明の完全長ポリヌクレオチド及びポリペプチド実施様態の命名の概略である。各ポリヌクレオチド及びその対応するポリペプチドは、1つのIncyteプロジェクト識別番号(IncyteプロジェクトID)に相関する。各ポリペプチド配列は、ポリペプチド配列識別番号(ポリペプチドSEQ ID NO:)とIncyteポリペプチド配列番号(IncyteポリペプチドID)によって表示した。各ポリヌクレオチド配列は、ポリヌクレオチド配列識別番号(ポリヌクレオチドSEQ ID NO:)とIncyteポリヌクレオチドコンセンサス配列番号(IncyteポリヌクレオチドID)によって表示した。列6は本発明のポリペプチド及びポリヌクレオチド実施様態に相当する物理的な完全長クローンのIncyte ID番号を示す。完全長クローンは、列3に示すポリペプチドに対して少なくとも95%の配列同一性を持つポリペプチドをコードする。
【0150】
表2は、GenBankタンパク質(genpept)データベースとPROTEOMEデータベースとに対するBLAST分析で同定した、本発明のポリペプチド群に相同な配列群を示す。列1及び列2はそれぞれ、本発明の各ポリペプチドに対するポリペプチド配列識別番号(ポリペプチド SEQ ID NO:)と、それに対応するIncyteポリペプチド配列番号(IncyteポリペプチドID)を示す。列3は、GenBankの最も近い相同体のGenBank識別番号(Genbank ID NO :)と最も近いPROTEOMEデータベース相同体のPROTEOMEデータベース識別番号(PROTEOME ID NO:)を示す。列4は、各ポリペプチドとその相同体1つ以上との間の一致に関する確率スコアを示す。列5は、GenBankとPROTEOMEデータベースの相同体の注釈を示し、更に該当箇所には関連する引用文献も示す。これらを引用することを以って本明細書の一部とする。
【0151】
表3は、本発明のポリペプチドの多様な構造的特徴を示す。列1及び列2はそれぞれ、本発明の各ポリペプチドのポリペプチド配列識別番号(SEQ ID NO:)及びそれに対応するIncyteポリペプチド配列番号(IncyteポリペプチドID)を示す。列3は、各ポリペプチドのアミノ酸残基数を示す。列4及び列5はそれぞれ、GCG配列分析ソフトウェアパッケージのMOTIFSプログラム(Genetics Computer Group, Madison WI)によって決定された、リン酸化及びグリコシル化の可能性のある部位を示す。列6は、シグネチャ配列、ドメイン、及びモチーフを有するアミノ酸残基を示す。列7は、タンパク質の構造/機能の分析のための分析方法を示し、該当箇所には更に、分析方法に利用した検索可能なデータベースを示す。
【0152】
表2及び3は共に、本発明の各々のポリペプチドの特性を要約しており、それら特性が請求の範囲に記載されたポリペプチドが細胞外メッセンジャーであることを確立している。例えば、SEQ ID NO:1は、M15残基からG725残基までが、ヒト肝細胞成長因子様タンパク質(GenBank ID g1311661)との100%の同一性を有することがBasic Local Alignment Search Tool(BLAST)によって示された(表2参照)。BLAST確率スコアは0.0であり、これは観測されたポリペプチド配列アラインメントが偶然に得られる確率を示している。SEQ ID NO:1はまた、肝細胞成長因子に見出される、Pan、クリングル、トリプシン様ドメインを有し、これは、隠れマルコフモデル(HMM)を基にした保存されたタンパク質ファミリードメインのPFAMデータベースにおいて、統計的に有意な一致を検索して決定された (表3参照)。BLIMPS、MOTIFS、PROFILESCAN解析、並びにPRODOM、DOMO両データベースのBLAST解析からのデータは、SEQ ID NO:1が成長因子である、更に実証的な証拠を提供する。別の例では、SEQ ID NO:3はBLASTによって同定されるように、ヒトのトランスフォーミング成長因子β1結合タンパク質前駆体(GenBank ID g339548)にV37残基からE350残基まで96%同一である。BLAST確率スコアは3.8e-178である。SEQ ID NO:3はまた、複数のEGF様ドメイン群と1つのTBドメインを有する。これは、隠れマルコフモデル(HMM)を基にしたPFAMデータベースにおいて、統計的に有意な一致を検索して決定された。BLIMPS、MOTIFS、及び更なるBLAST解析よりのデータは、SEQ ID NO:3がヒトのトランスフォーミング成長因子β1結合タンパク質前駆体である、更に実証的な証拠を提供する。別の例では、SEQ ID NO:7は、BLASTによって同定されるように、ヒトのトランスフォーミング成長因子β1結合タンパク質前駆体(GenBank ID g339548)にC650残基からE1668残基まで93%同一である。そのBLAST確立スコアは0.0である。SEQ ID NO:7はまた、1つのEGF様ドメインと1つのTBドメインを有するが、これは、隠れマルコフモデル(HMM)を基にしたPFAMデータベースにおいて、統計的に有意な一致を検索して決定された。BLIMPS、MOTIFS、及び更なるBLAST解析よりのデータは、SEQ ID NO:7がトランスフォーミング成長因子β1結合タンパク質前駆体である、更に実証的な証拠を提供する。別の例では、SEQ ID NO:14はBLASTによって同定されるように、ヒトのトランスフォーミング成長因子β1結合タンパク質前駆体(GenBank ID g339548)にM1残基からQ958残基まで96%同一である。そのBLAST確率スコアは0.0である。SEQ ID NO:14は、TGF-β1を発現する組織で発現され、潜在型TGF-βのアセンブリと分泌に関与し、また潜在型TGFβ結合タンパク質であることが、PROTEOMEデータベースを使ったBLAST解析によって示された。SEQ ID NO:14はまた、1つのEGF様ドメインと1つのTBドメインをも有するが、これは、隠れマルコフモデル(HMM)を基にしたPFAMデータベースにおいて、統計的に有意な一致を検索して決定された。BLIMPS、MOTIFS、及び更なるBLAST解析よりのデータは、SEQ ID NO:14がヒトのトランスフォーミング成長因子β1結合タンパク質前駆体である、更に実証的な証拠を提供する。別の例においてSEQ ID NO:18は、K9残基からN104残基までが、ヒトのプロラクチン(GenBank ID g531103)に対して100%同一であると、BLASTで判定されたBLAST確率スコアは6.6e-82である。SEQ ID NO:18は更にプロラクチンと胎盤性ラクトゲンIIと相同性を有することがPROTEOMEデータベースを使ったBLAST解析によって示された。SEQ ID NO:18はまた、ソマトトロピンホルモンファミリードメインを有し、これは、隠れマルコフモデル(HMM)を基にしたPFAMデータベースにおいて、統計的に有意な一致を検索して決定された。BLIMPS、MOTIFS、及びPROFILESCAN解析よりのデータは、SEQ ID NO:18がプロラクチンであるという、更に実証的な証拠を提供する。別の例においてSEQ ID NO:22は、M1残基からL165残基までが、ヒトのリーディングフレームプロラクチン(reading frame prolactin)(GenBank ID g34211)に対して99%同一であると、BLASTで判定された。BLAST確率スコアは3.2e-83である。SEQ ID NO:22はまた細胞外領域に局在するタンパク質に対して相同性があり、血管新生の阻害及び細胞増殖の制御において役割があり、ヒトとラットのプロラクチンに対して相同性があることが、PROTEOMEデータベースを使ったBLAST解析によって示された。SEQ ID NO:22はまた、ソマトトロピンホルモンファミリードメインを有し、これは、隠れマルコフモデル(HMM)を基にしたPFAMデータベースにおいて、統計的に有意な一致を検索して決定された。BLIMPS、MOTIFS、PROFILESCANからのデータ及びPRODOMとDOMOデータベースに対するさらなるBLAST解析により、SEQ ID NO:22がソマトトロピンホルモンファミリーのメンバーであるという実証的な証拠が更に提供された。SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:4-6、SEQ ID NO:8-13、SEQ ID NO:15-17及びSEQ ID NO:19-21については、同様の方法で分析し、注釈を付けた。SEQ ID NO:1-22の解析用のアルゴリズム及びパラメータを表7に記載した。
【0153】
表4に示すように、完全長ポリヌクレオチドの具体例は、cDNA配列又はゲノムDNA由来のコード(エキソン)配列を用いて、或いはこれら2種類の配列を任意に組み合わせてアセンブリした。列1は本発明の各ポリヌクレオチドに対するポリヌクレオチド配列識別番号(ポリヌクレオチドSEQ ID NO)及び対応するIncyteポリヌクレオチドコンセンサス配列番号(Incyte ID)、及び塩基対の各ポリヌクレオチド配列の長さを示している。列2は、本発明の完全長ポリヌクレオチド実施様態をアセンブリするのに用いたcDNA配列及び/又はゲノム配列の、また、例えばSEQ ID NO:23-44を同定するため、或いはSEQ ID NO:23-44と関連するポリヌクレオチドとを区別するためのハイブリダイゼーション技術又は増幅技術に有用なポリヌクレオチドの断片の、開始ヌクレオチド(5')位置及び終了ヌクレオチド(3')位置を示す。
【0154】
表4の列2で記述されたポリヌクレオチド断片は特に、例えば組織特異的cDNAライブラリ或いはプールしたcDNAライブラリに由来するIncyte cDNAを指す場合もある。或いは列2に記載したポリヌクレオチド断片は、完全長ポリヌクレオチドのアセンブリに寄与したGenBank cDNA又はESTを指す場合もある。更に、列2のポリヌクレオチド断片は、ENSEMBL(The Sanger Centre、(英国ケンブリッジ))データベースから由来した配列を同定し得る(即ち「ENST」命名を含む配列)。或いは、列2で記述されたポリヌクレオチド断片は、NCBI RefSeq Nucleotide Sequence Records データベースから由来する場合もあり(即ち「NM」又は「NT」の命名を含む配列)、またNCBI RefSeq Protein Sequence Recordsから由来する場合もある(即ち「NP」の命名を含む配列)。又は列2のポリヌクレオチド断片は、「エキソンスティッチング(exon-stitching)」アルゴリズムにより結び合わせたcDNA及びGenscan予想エキソンの両方のアセンブリ体を意味する場合がある。例えば、FL_XXXXXX_N1_N2_YYYYY_N3_N4 と同定されるポリヌクレオチドは、アルゴリズムが適用される配列のクラスタの識別番号がXXXXXXであり、アルゴリズムにより生成される予測の番号がYYYYY であり、(もし存在すれば)N1,2,3..が解析中に手動で編集された可能性のある特定のエキソンであるような「スティッチされた(stitched)」配列である(実施例5参照)。又は、列2のポリヌクレオチド断片は「エキソンストレッチング(exon-stretching)」アルゴリズムにより結び合わせたエキソンのアセンブリ体を指す場合もある。例えば、FLXXXXXX_gAAAAA_gBBBBB_1_Nとして同定されるポリヌクレオチド配列は、「ストレッチされた」配列である。XXXXXXはIncyteプロジェクト識別番号、gAAAAAは「エキソンストレッチング」アルゴリズムを適用したヒトゲノム配列のGenBank識別番号、gBBBBBは一番近いGenBankタンパク質相同体のGenBank識別番号又はNCBI RefSeq 識別番号であり、Nは特定のエキソンを指す(実施例5を参照)。あるRefSeq配列が「エキソンストレッチング」アルゴリズムのためのタンパク質相同体として使用された場合では、RefSeq識別子(「NM」、「NP」、又は「NT」によって表される)が、GenBank識別子(即ち、gBBBBB)の代わりに使用される場合もある。
【0155】
或いは、接頭コードは、手動で編集された構成配列、ゲノムDNA配列から予測された構成配列、又は組み合わされた配列解析方法から由来する構成配列を同定する。次の表は、構成配列の接頭コードと、接頭コードに対応する配列分析方法の例を列記する(実施例4と5を参照)。
【0156】
場合によっては、最終コンセンサスポリヌクレオチド配列を確認するために表4に示すような配列の適用範囲と重複するIncyte cDNAの適用範囲が得られたが、それに関連するIncyte cDNA識別番号は示さなかった。
【0157】
表5は、Incyte cDNA配列を用いてアセンブリされた完全長ポリヌクレオチドのための代表的なcDNAライブラリを示している。代表的なcDNAライブラリとはIncyte cDNAライブラリであり、これは、最も頻繁にはIncyte cDNA配列群によって代表されるが、これら配列は、上記のポリヌクレオチドをアセンブリ及び確認するために用いられた。cDNAライブラリを作製するために用いた組織及びベクターを表5に示し、表6で説明している。
【0158】
表8は、ポリヌクレオチド実施様態に見られる一塩基多型 (SNP)を、種々のヒト集団での対立遺伝子(アレル)頻度と共に示す。列1及び列2はそれぞれ、本発明の各ポリヌクレオチドのポリヌクレオチド配列識別番号(SEQ ID NO :)及びそれに対応するIncyteプロジェクト識別番号(PID)を示す。列3はSNPが検出されたESTのIncyte識別番号(EST ID)を示し、列4はSNPの識別番号(SNP ID)を示す。列5はSNPが存在するEST配列内の位置(EST SNP)を示し、列6は完全長ポリヌクレオチド配列内のSNPの位置(CB1 SNP)を示す。列7はEST配列内に存在する対立遺伝子を示す。列8及び列9はSNP部位に存在する2つの対立遺伝子を示す。列10はESTに存在する対立遺伝子に基づいてSNP部位に含まれるコドンによってコードされるアミノ酸を示す。列11〜14は四つの異なったヒト母集団における対立遺伝子1の発生頻度を示す。n/d(検出されない)の項目は母集団における対立遺伝子1の発生頻度が低すぎて検出されなかったことを示し、また、n/a(利用不可)はその母集団において対立遺伝子の発生頻度が決定されなかったことを示す。
【0159】
本発明はまた、EXMESの変異体も含む。好適なEXMES変異体は、EXMESの機能的或いは構造的特徴を少なくとも1つ有し、かつ、EXMESアミノ酸配列に対して少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性、或いは少なくとも約90%のアミノ酸配列同一性、更には少なくとも約95%のアミノ酸配列同一性を有する変異体である。
【0160】
種々の実施態様もまた、EXMESをコードするポリヌクレオチドをも含む。或る実施様態では、EXMESをコードするSEQ ID NO:23-44からなる群から選択された配列を有するポリヌクレオチド配列が本発明に含まれている。SEQ ID NO:23-44のポリヌクレオチド配列は、配列表に示されているように等価RNA配列と同等の価値を有しているが、窒素塩基チミンの出現はウラシルに置換され、糖のバックボーンはデオキシリボースではなくてリボースから構成されている。
【0161】
本発明はまた、EXMESをコードするポリヌクレオチドの変異体を含む。詳細には、このようなポリヌクレオチド配列の変異配列は、EXMESをコードするポリヌクレオチド配列と少なくとも70%のポリヌクレオチド配列同一性、或いは少なくとも85%のポリヌクレオチド配列同一性、更には少なくとも95%ものポリヌクレオチド配列同一性を有する。本発明の或る実施態様では、SEQ ID NO:23-44からなる群から選択された核酸配列と少なくとも約70%、或いは少なくとも約85%、又は少なくとも約95%ものポリヌクレオチド配列同一性を有するようなSEQ ID NO:23-44からなる群から選択された配列を含むポリヌクレオチドの変異配列を含む。上記の任意のポリヌクレオチドの変異体は、EXMESの機能的若しくは構造的特徴を少なくとも1つ有するポリペプチドをコードし得る。
【0162】
更に別の例では、本発明の或るポリヌクレオチド変異体はEXMESをコードするポリヌクレオチドのスプライス変異配列である。或るスプライス変異体はEXMESをコードするポリヌクレオチドとの顕著な配列同一性を持つ部分を有し得るが、mRNAプロセッシング中のエキソン群の選択的スプライシングによって生ずる、配列の数ブロックの付加又は欠失により、通常、より多数又はより少数のポリヌクレオチドを有することになる。或るスプライス変異体には、約70%未満、又は約60%未満、或いは約50%未満のポリヌクレオチド配列同一性が、EXMESをコードするポリヌクレオチドとの間で全長に渡って見られるが、このスプライス変異体のいくつかの部分には、EXMESをコードするポリヌクレオチドの各部との、少なくとも約70%、或いは少なくとも約85%、又は少なくとも約95%、なお又は100%の、ポリヌクレオチド配列同一性を有することとなる。たとえば、SEQ ID NO:40の配列を含むポリヌクレオチド、SEQ ID NO:43の配列を含むポリヌクレオチド及びSEQ ID NO:44の配列を含むポリヌクレオチドは全てお互いのスプライス変異体である。別の例では、SEQ ID NO:26の配列を含むポリヌクレオチド、SEQ ID NO:30の配列を含むポリヌクレオチドは全てお互いのスプライス変異体である。別の例では、SEQ ID NO:32の配列を含むポリヌクレオチド、SEQ ID NO:33の配列を含むポリヌクレオチド及びSEQ ID NO:34の配列を含むポリヌクレオチドは全てお互いのスプライス変異体である。また別の例では、SEQ ID NO:35の配列を含むポリヌクレオチド、SEQ ID NO:36の配列を含むポリヌクレオチド及びSEQ ID NO:37の配列を含むポリヌクレオチドは全てお互いのスプライス変異体である。上記したスプライス変異配列は何れも、EXMESの機能的或いは構造的特徴の少なくとも1つを有する或るポリペプチドをコードし得る。
【0163】
遺伝暗号の縮重により作り出され得るEXMESをコードする種々のポリヌクレオチド配列には、自然発生する任意の既知の遺伝子のポリヌクレオチド配列と最小の類似性しか有しないものも含まれることを、当業者は理解するであろう。したがって本発明には、可能コドン選択に基づく組み合わせの選択によって産出し得るあらゆる可能なポリヌクレオチド配列のバリエーションを網羅し得る。これらの組み合わせは、天然のEXMESのポリヌクレオチド配列に適用される標準的なトリプレット遺伝暗号を基に作られ、全てのそのような変異が明確に開示されているとみなす。
【0164】
EXMESとその変異配列群とをコードするポリヌクレオチド群は一般に、好適に選択されたストリンジェンシー条件下で天然EXMESをコードするポリヌクレオチドにハイブリダイズ可能であるが、非天然コドンを含むなど実質的に異なるコドン使用を有する、EXMES或いはその誘導体をコードするポリヌクレオチド群を産生することは有益であり得る。宿主が特定のコドンを利用する頻度に基づいて、特定の真核宿主又は原核宿主に発生するペプチドの発現率を高めるようにコドンを選択することが可能である。コードされたアミノ酸配列を変えずに、EXMES及びその誘導体をコードするヌクレオチド配列を実質的に変更する別の理由は、天然の配列から作られる転写物より例えば長い半減期など好ましい特性を備えるRNA転写物を作ることにある。
【0165】
本発明はまた、EXMES及びその誘導体をコードするポリヌクレオチド又はそれらの断片を完全に合成化学によって作り出す過程も含む。作製後にこの合成ポリヌクレオチドを、当分野で公知の試薬を用いて、多くの入手可能な発現ベクター及び細胞系の何れの中にも挿入可能である。更に、合成化学を用いて、EXMES又はその任意の断片をコードするポリヌクレオチドの中に突然変異を導入することも可能である。
【0166】
更に本発明の実施態様は、種々のストリンジェンシー条件下で、請求項に記載のポリヌクレオチド、特に、SEQ ID NO:23-44及びそれらの断片群に示された配列を有するポリヌクレオチドにハイブリダイズ可能なポリヌクレオチド配列群が含まれる(例えば、Wahl, G.M.及びS.L. Berger (1987) Methods Enzymol.152:399-407、Kimmel, A.R. (1987) Methods Enzymol. 152:507-511を参照)。アニーリング及び洗浄条件を含むハイブリダイゼーションの条件は、「定義」に記載されている。
【0167】
DNAシークエンシングの方法は当分野では公知であり、本発明のいずれの実施例もDNAシークエンシング方法を用いて実施可能である。DNAシークエンシング方法には酵素を用い得る。例えばDNAポリメラーゼ1のクレノウ断片、SEQUENASE(US Biochemical, Cleveland OH)、Taqポリメラーゼ(Applied Biosystems)、熱安定性T7ポリメラーゼ(Amersham Biosciences, Piscataway NJ)を用い得る。或いは、例えばELONGASE増幅システム(Invitrogen, Carlsbad CA)において見られるように、ポリメラーゼと校正エキソヌクレアーゼとを併用し得る。好適には、MICROLAB2200液体転移システム(Hamilton, Reno, NV)、PTC200サーマルサイクラー(MJ Research, Watertown MA)及びABI CATALYST 800サーマルサイクラー(Applied Biosystems)等の装置を用いて配列の準備を自動化する。次に、ABI 373 或いは 377 DNAシークエンシングシステム(Applied Biosystems)、MEGABACE 1000 DNAシークエンシングシステム(Amersham Biosciences)又は当分野で既知の他の方法を用いてシークエンシングを行う。結果として得られた配列を当分野でよく知られている種々のアルゴリズムを用いて分析する(Ausubel, F.M. (1997) Short Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York NY, unit 7.7、Meyers, R.A. (1995) Molecular Biology and Biotechnology, Wiley VCH, New York NY, 856-853ページ等を参照)。
【0168】
当分野で周知の、PCR法をベースにした種々の方法と、部分的ヌクレオチド配列とを利用して、EXMESをコードする核酸を伸長し、プロモーターや調節エレメントなど、上流にある配列を検出し得る。例えば、使用し得る方法の1つである制限部位PCR法は、ユニバーサルプライマー及びネステッドプライマーを用いてクローニングベクター内のゲノムDNAからの未知の配列を増幅する方法である(例えば、Sarkar, G. (1993) PCR Methods Applic. 2:318-322を参照)。別の方法にインバースPCR法があり、これは広範な方向に伸長させたプライマーを用いて環状化した鋳型から未知の配列を増幅する方法である。鋳型は、或る既知のゲノム遺伝子座及びその周辺の配列群からなる制限酵素断片群から得る(例えばTriglia, T. 他 (1988) Nucleic Acids Res. 16:8186を参照)。第3の方法としてキャプチャPCR法があり、これはヒト及び酵母菌人工染色体DNAの既知の配列に隣接するDNA断片をPCR増幅する方法に関与している(例えばLagerstrom, M. 他 (1991) PCR Methods Applic. 1:111119を参照)。この方法では、PCRを行う前に複数の制限酵素の消化及びライゲーション反応を用いて未知の配列領域内に組換え二本鎖配列を挿入することが可能である。未知の配列群を検索するために用い得る他の複数の方法も当分野で既知である(例えばParker, J.D.他 (1991) Nucleic Acids Res. 19:30553060を参照)。更に、PCR、ネステッドプライマー及びPromoterFinder(商標)ライブラリ(Clontech, Palo Alto CA)を用いてゲノムDNAをウォーキングすることができる。この手順は、ライブラリ類をスクリーニングする必要がなく、イントロン/エキソン接合部の発見に有用である。全てのPCRベースの方法では、市販ソフトウェア例えばOLIGO 4.06プライマー分析ソフトウェア(National Biosciences, Plymouth MN)或いは別の好適なプログラムを用い、長さ約22〜30ヌクレオチド、GC含有率が約50%以上、温度約68℃〜72℃で鋳型に対してアニーリングするよう、プライマー群を設計し得る。
【0169】
完全長cDNA群をスクリーニングする際は、より大きなcDNA群を含むようにサイズ選択されたライブラリ群を用いるのが好ましい。更に、ランダムプライマーのライブラリは、遺伝子群の5'領域を有する配列をしばしば含んでおり、オリゴd(T)ライブラリが完全長cDNAを作製できない状況に対して好適である。ゲノムライブラリ群は、5'非転写調節領域への、配列の伸長に有用であろう。
【0170】
市販のキャピラリー電気泳動システムを用いて、シークエンシング産物又はPCR産物のサイズを分析し、又はそのヌクレオチド配列を確認することができる。具体的には、キャピラリーシークエンシングは、電気泳動による分離のための流動性ポリマーと、4つの異なるヌクレオチドに特異的であるような、レーザで刺激される蛍光色素と、発光された波長の検出に利用するCCDカメラとを有し得る。出力/光の強度は、適切なソフトウェア(Applied Biosystems社のGENOTYPER、SEQUENCE NAVIGATOR等)を用いて電気信号に変換し得る。サンプルのロードからコンピュータ分析及び電子データ表示までの全プロセスがコンピュータ制御可能である。キャピラリー電気泳動法は、特定のサンプルに少量しか存在しないようなDNA小断片のシークエンシングに特に適している。
【0171】
本発明の別の実施態様では、EXMESをコードするポリヌクレオチド配列又はその断片を、EXMES、その断片又は機能的等価物を適切な宿主細胞内に発現させる組換えDNA分子にクローニングし得る。遺伝暗号に固有の縮重により、実質的に同じ或いは機能的に等価のポリヌクレオチドをコードする別のポリヌクレオチドが作られ、これらの配列をEXMESの発現に利用可能である。
【0172】
種々の目的で、EXMESをコードする配列群を改変するために、当分野で一般的に既知の複数の方法を用いて、本発明のヌクレオチド配列群を組換えることができる。この組換えの多様な目的には、遺伝子産物のクローン化の、或いはプロセッシング及び/又は発現のモディフィケーションが含まれるが、これらに限定されるものではない。遺伝子断片及び合成オリゴヌクレオチドのランダムなフラグメンテーション及びPCR再アセンブリによるDNAシャッフリングを用い、ヌクレオチド配列を組み換えることが可能である。例えば、オリゴヌクレオチドを介した部位特異的変異誘導を利用して、新規な制限部位の作製、グリコシル化パターンの変更、コドン優先の変更、スプライス変異体の生成等を起こす突然変異を導入し得る。
【0173】
本発明のヌクレオチドは、MOLECULARBREEDING(Maxygen Inc., Santa Clara CA, 米国特許第5,837,458号、Chang, C.-C.他 (1999) Nat. Biotechnol. 17:793-797、Christians, F.C.他 (1999) Nat. Biotechnol. 17:259-264、Crameri, A. 他 (1996) Nat. Biotechnol. 14:315-319に記載)等のDNAシャッフリング技術の対象となり、EXMESの生物学的特性、例えば生物活性、酵素力、或いは他の分子や化合物との結合力等を変更又は向上させ得る。DNAシャッフリングは、遺伝子断片のPCRを介する組換えを用いて遺伝子変異体のライブラリを生成するプロセスである。ライブラリはその後、所望の特性を持つ遺伝子変異体群を同定する、選択又はスクリーニングの手順を経る。続いて、これら好適な変異体をプールし、更に反復してDNAシャッフリング及び選択/スクリーニングを行い得る。かくして、「人工的な」育種及び急速な分子進化によって遺伝的多様性が作られる。例えば、ランダムポイント突然変異を持つ単一の遺伝子の断片を組換えて、スクリーニングし、その後所望の特性が最適化されるまでシャッフリングし得る。或いは、所与遺伝子の断片を同種又は異種のいずれかから得た同一遺伝子ファミリーの相同遺伝子の断片と組み換え、それによって天然に存在する複数の遺伝子の遺伝的多様性を、管理された、制御可能な方法で最大化させることができる。
【0174】
別の実施態様によれば、EXMESをコードするポリヌクレオチドは、当分野で周知の1つ以上の化学的方法を用いて、全体或いは一部が合成可能である(Caruthers, M.H. 他. (1980) Nucleic Acids Symp. Ser. 7:215-223、Horn, T. 他. (1980) Nucleic Acids Symp. Ser. 7:225-232等を参照)。別法として、当分野で知られている化学的方法を用いてEXMES自体又はその断片を合成することが可能である。例えば、種々の液相又は固相技術を用いてペプチド合成を行うことができる(例えば、Creighton, T. (1984) Proteins, Structures and Molecular Properties, WH Freeman, New York NY, 55-60ページ、Roberge, J.Y. 他 (1995) Science 269:202-204を参照)。自動合成はABI 431Aペプチドシンセサイザ(Applied Biosystems)を用いて達成し得る。更にEXMESのアミノ酸配列又は任意のその一部は、直接的な合成の際の変更、及び/又は化学的方法を用いた他のタンパク質又は任意のその一部からの配列との組み合わせにより、天然のポリペプチド配列を有するポリペプチド又は変異体ポリペプチドを作製することが可能である。
【0175】
このペプチドは、分離用高速液体クロマトグラフィーを用いて実質的に精製し得る(Chiez, R.M.及びF.Z. Regnier (1990) Methods Enzymol. 182:392-421等を参照)。合成ペプチドの組成は、アミノ酸分析又はシークエンシングによって確認することができる(前出のCreighton, 28-53ページ等を参照)。
【0176】
生物学的に活性なEXMESを発現させるために、EXMESをコードするポリヌクレオチド又はその誘導体を好適な発現ベクターに挿入する。この発現ベクターは、好適な宿主に挿入されたコード配列の転写及び翻訳の調節に必要なエレメントを含む。必要なエレメントとしては、該ベクターと、EXMESをコードするポリヌクレオチドとにおける調節配列群(エンハンサー、構成型及び発現誘導型のプロモーター、5'及び3'の非翻訳領域など)が含まれる。このようなエレメントは、強度及び特異性が様々である。特定の開始シグナル類を用いて、EXMESをコードする配列群の、より効果的な翻訳を達成できる。開始シグナルの例には、ATG開始コドンと、コザック配列など近傍の配列とが含まれる。EXMESをコードするポリヌクレオチド配列群、その開始コドン、及び上流の調節配列群が、好適な発現ベクターに挿入された場合は、更なる転写制御シグナルや翻訳制御シグナルは必要ないこともある。しかしながら、コード配列或いはその断片のみが挿入された場合は、インフレームATG開始コドンなど外来性の翻訳制御シグナルが発現ベクターに含まれるようにすべきである。外来性の翻訳エレメント及び開始コドンは、様々な天然物及び合成物を起源とし得る。用いられる特定の宿主細胞系に好適なエンハンサーを含めることで発現の効率を高めることが可能である(例えばScharf, D. 他(1994) Results Probl.Cell Differ. 20:125162を参照)。
【0177】
当業者に周知の方法を用いて、EXMESをコードするポリヌクレオチド配列と、好適な転写及び翻訳制御エレメントとを持つ発現ベクターを作製し得る。これらの方法には、in vitro組換えDNA技術、合成技術、及びin vivo遺伝子組換え技術が含まれる(例えばSambrook, J.他(1989) Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, Plainview NY, 4、8及び16-17章、Ausubel, F.M.他(1995)Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York NY,9、13及び16章を参照)。
【0178】
種々の発現ベクター/宿主系を利用して、EXMESをコードするポリヌクレオチドの保持及び発現が可能である。限定するものではないがこのような発現ベクター/宿主系には、組換えバクテリオファージ、プラスミド又はコスミドDNA発現ベクターで形質転換させた細菌などの微生物等や、酵母菌発現ベクターで形質転換させた酵母菌や、ウイルス発現ベクター(例えばバキュロウイルス)に感染した昆虫細胞系や、ウイルス発現ベクター(例えばカリフラワーモザイクウイルスCaMV又はタバコモザイクウイルスTMV)又は細菌発現ベクター(例えばTiプラスミド又はpBR322プラスミド)で形質転換させた植物細胞系又は動物細胞系がある(例えば前出Sambrook、前出Ausubel、Van Heeke, G.及びS.M. Schuster (1989) J. Biol. Chem. 264:5503-5509、Engelhard, E.K. 他(1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:3224-3227、Sandig, V.他(1996) Hum.Gene Ther.7:1937-1945、Takamatsu, N. (1987) EMBO J. 6:307-311;『マグローヒル科学技術年鑑』(The McGraw Hill Yearbook of Science and Technology) (1992) McGraw Hill, New York NY, 191-196ページ、Logan, J.及びT. Shenk (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:3655-3659、Harrington, J.J. 他(1997) Nat. Genet. 15:345-355を参照)。レトロウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルス又はワクシニアウイルス由来の発現ベクター、又は種々の細菌性プラスミド由来の発現ベクターを用いて、ポリヌクレオチドを標的器官、組織又は細胞集団へ送達することができる(例えばDi Nicola, M.他(1998) Cancer Gen. Ther. 5(6):350-356、Yu, M.他 (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90(13):6340-6344、Buller, R.M.他(1985) Nature 317(6040):813-815、McGregor, D.P.他(1994) Mol. Immunol. 31(3):219-226、Verma, I.M.及びN. Somia (1997) Nature 389:239-242を参照)。本発明は使用する宿主細胞によって限定されない。
【0179】
細菌系では、多数のクローニングベクター及び発現ベクターが、EXMESをコードするポリヌクレオチドの使用目的に応じて選択可能である。例えば、EXMESをコードするポリヌクレオチドの日常的なクローニング、サブクローニング及び増殖は、PBLUESCRIPT(Stratagene, La Jolla CA)又はPSPORT1プラスミド(Invitrogen)などの多機能の大腸菌ベクターを用いて達成することができる。ベクターのマルチクローニング部位にEXMESをコードするポリヌクレオチドをライゲーションするとlacZ遺伝子が破壊され、組換え分子を含む形質転換された細菌の同定のための比色スクリーニング法が可能となる。更にこれらのベクターは、クローニングされた配列におけるin vitro転写、ジデオキシのシークエンシング、ヘルパーファージによる一本鎖のレスキュー、入れ子状態の欠失の生成にも有用であろう(Van Heeke, G.及びS.M. Schuster (1989) J. Biol. Chem. 264:5503-5509等を参照)。例えば抗体類の産生などに多量のEXMESが必要な場合は、EXMESの発現をハイレベルで指示するベクター類が使用できる。例えば、強力な誘導SP6バクテリオファージプロモーター又は誘導T7バクテリオファージプロモーターを有するベクターが使用できる。
【0180】
酵母の発現系を使用してEXMESを産出し得る。α因子、アルコールオキシダーゼ、PGHプロモーター等の構成型或いは誘導型のプロモーターを含む多数のベクターが、出芽酵母菌(Saccharomyces cerevisiae)又はピキア酵母(Pichia pastoris)に使用可能である。更に、このようなベクターは、発現したタンパク質の分泌か、又は細胞内での保持かのどちらかを誘導するものであり、安定した増殖のために宿主ゲノムの中に外来ポリヌクレオチド配列群を組み込むことを可能にする(例えば前出のAusubel, 1995、Bitter, G.A. 他 (1987) Methods Enzymol. 153:516544、Scorer, C.A. 他. (1994) Bio/Technology 12:181-184を参照)。
【0181】
植物系もEXMESの発現に使用可能である。EXMESをコードするポリヌクレオチドの転写は、ウイルスプロモーター、例えば単独或いはTMV(Takamatsu, N. (1987) EMBO J 6:307-311)由来のオメガリーダー配列と組み合わせて用いられるようなCaMV由来の35S及び19Sプロモーターによって促進される。或いは、RuBisCOの小サブユニットなどの植物プロモーター、又は熱ショックプロモーターを用い得る(例えばCoruzzi, G.他(1984) EMBO J. 3:1671-1680、Broglie, R.他(1984) Science 224:838843、Winter, J.他(1991) Results Probl.Cell Differ. 17:85105を参照)。これらの作製物は、直接DNA形質転換に又は病原体を媒介とする形質移入によって、植物細胞内に導入可能である(『マグローヒル科学技術年鑑』(The McGraw Hill Yearbook of Science and Technology) (1992) McGraw Hill New York NY,191-196ページ等を参照)。
【0182】
哺乳類細胞においては、多数のウイルスベースの発現系を利用し得る。アデノウイルスが発現ベクターとして用いられる場合、後期プロモーターと3連リーダー配列とからなるアデノウイルス転写/翻訳複合体に、EXMESをコードするポリヌクレオチドをライゲーションし得る。非必須E1又はE3領域へウイルスのゲノムを挿入し、宿主細胞でEXMESを発現する感染ウイルスを得ることが可能である。(例えば、Logan, J.及びT. Shenk (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:3655-3659等を参照)。更に、ラウス肉腫ウイルス(RSV)エンハンサー等の転写エンハンサーを用いて、哺乳動物宿主細胞における発現を増大させ得る。SV40又はEBVをベースにしたベクターを用いてタンパク質を高レベルで発現させることもできる。
【0183】
ヒト人工染色体(HAC)を用いて、プラスミドに含まれ且つプラスミドから発現するものより大きなDNAの断片を送達することもできる。治療のために約6kb〜10MbのHACを作製し、従来の送達方法(リポソーム、ポリカチオンアミノポリマー、又はベシクル)で送達する(例えばHarrington, J.J.他(1997) Nat. Genet. 15:345-355を参照)。
【0184】
哺乳動物系の組換えタンパク質の長期にわたる産生のためには、株化細胞におけるEXMESの安定した発現が望ましい。例えば、EXMESをコードするポリヌクレオチドを細胞株に形質転換するために、発現ベクター類と、同じベクター上の或いは別のベクター上の選択可能マーカー遺伝子とを用い得る。用いる発現ベクターは、ウイルス起源の複製要素、及び/又は内因性の発現要素を持ち得る。ベクターの導入後、選択培地に移す前に強化培地で約1〜2日間、細胞を増殖させ得る。選択可能マーカーの目的は選択剤への抵抗性を与えることであり、選択可能マーカーの存在により、導入した配列をうまく発現するような細胞の成長及び回収が可能となる。安定的に形質転換された細胞の耐性クローンは、その細胞型に適した組織培養技術を用いて増殖できる。
【0185】
任意の数の選択系を用いて、形質転換細胞株を回収できる。限定するものではないがこのような選択系には、tk−単純細胞のために用いられる単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼ遺伝子と、apr−細胞のために用いられるアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子がある(例えばWigler, M.他(1977) Cell 11:223-232、Lowy, I. 他(1980) Cell 22:817-823を参照)。また、選択の基礎として代謝拮抗物質、抗生物質或いは除草剤への耐性を用いることができる。例えばdhfrはメトトレキセートに対する耐性を与え、neoはアミノグリコシドであるネオマイシン及びG-418に対する耐性を与え、alsはクロルスルフロンに対する耐性を、patはホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼに対する耐性を各々与える(例えばWigler, M.他(1980) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:35673570、Colbere-Garapin, F.他(1981) J. Mol. Biol. 150:1-14を参照)。この他の選択可能な遺伝子、例えば、代謝物のための細胞の必要条件を変えるtrpB及びhisDが、文献に記載されている(Hartman, S.C及びR.C. Mulligan (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:8047-8051等を参照)。可視マーカー、例えばアントシアニン、緑色蛍光タンパク質(GFP;Clontech)、βグルクロニダーゼ及びその基質βグルクロニド、又はルシフェラーゼ及びその基質ルシフェリン等を用いてもよい。これらのマーカーを用いて、トランスフォーマントを同定するだけでなく、特定のベクター系に起因する一過性或いは安定したタンパク質発現を定量し得る(Rhodes, C.A. (1995) Methods Mol. Biol. 55:121-131等を参照)。
【0186】
マーカー遺伝子発現の有無によって目的の遺伝子の存在が示唆されても、その遺伝子の存在及び発現の確認が必要な場合もある。例えば、EXMESをコードする配列がマーカー遺伝子配列の中に挿入された場合、EXMESをコードするポリヌクレオチドを持つ形質転換された細胞は、マーカー遺伝子機能の欠落により同定可能である。又は、単一プロモーターの制御下で、或るマーカー遺伝子を、EXMESをコードする1配列とタンデムに配置することもできる。誘導又は選択に応答したマーカー遺伝子の発現は通常、タンデム遺伝子の発現も示す。
【0187】
一般に、EXMESをコードするポリヌクレオチドを含み且つEXMESを発現する宿主細胞は、当業者によく知られている種々の方法を用いて同定することが可能である。限定するものではないが当業者によく知られている方法には、DNA-DNA或いはDNA-RNAハイブリダイゼーションと、PCR増幅とがあり、また、核酸配列或いはタンパク質配列の検出、定量、或いはその両方を行うための、膜系、溶液ベース或いはチップベースの技術を含む、タンパク質の生物学的検定法又は免疫学的検定法もある。
【0188】
特異的ポリクローナル抗体又は特異的モノクローナル抗体を用いてEXMESの発現の検出及び計測を行うための免疫学的方法は、当分野で公知である。このような技術の例としては、酵素に結合した免疫吸着剤検定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、フローサイトメーター(FACS)などが挙げられる。EXMES上の2つの非干渉エピトープに反応するモノクローナル抗体を用いた、2部位のモノクローナルベースイムノアッセイ(two-site, monoclonal-based immunoassay)が好ましいが、競合結合アッセイも用いることもできる。これらのアッセイ及び他のアッセイは、当分野で周知である(例えばHampton, R.他(1990) Serological Methods, a Laboratory Manual, APS Press, St. Paul MN, Sect.IV、Coligan, J.E.他(1997) Current Protocols in Immunology, Greene Pub.Associates and Wiley-Interscience, New York NY、Pound, J.D. (1998) Immunochemical Protocols, Humana Press, Totowa NJを参照)。
【0189】
多岐にわたる標識方法及び抱合方法が、当業者に知られており、様々な核酸アッセイ及びアミノ酸アッセイにこれらの方法を用い得る。EXMESをコードするポリヌクレオチドに関連する配列を検出するための、標識されたハイブリダイゼーションプローブ或いはPCRプローブを生成する方法には、オリゴ標識化、ニックトランスレーション、末端標識化、又は標識されたヌクレオチドを用いるPCR増幅が含まれる。別法として、EXMESをコードするポリヌクレオチド、又はその任意の断片を、mRNAプローブを生成するためのベクターにクローニングすることも可能である。このようなベクターは、当分野において知られており、市販もされており、T7、T3又はSP6などの好適なRNAポリメラーゼ及び標識されたヌクレオチドを加えて、in vitroでRNAプローブの合成に用いることができる。これらの方法は、例えばAmersham Biosciences、Promega(Madison WI)、U.S. Biochemicalなどの種々の市販キットを用いて実行できる。検出を容易にするために用い得る好適なレポーター分子或いは標識には、基質、補助因子、インヒビター、磁気粒子のほか、放射性核種、酵素、蛍光剤、化学発光剤、発色剤などがある。
【0190】
EXMESをコードするポリヌクレオチド群で形質転換された宿主細胞は、細胞培地でのこのタンパク質の発現及び回収に好適な条件下で培養される。形質転換細胞から製造されたタンパク質が分泌されるか細胞内に留まるかは、使用される配列、ベクター、或いはその両者に依存する。EXMESをコードするポリヌクレオチド群を持つ発現ベクター類は、原核細胞膜又は真核細胞膜を透過してのEXMESの分泌を指示するシグナル配列群を持つように設計できることは、当業者には理解されよう。
【0191】
更に、宿主細胞株の選択は、挿入したポリヌクレオチドの発現をモジュレートする能力、又は発現したタンパク質を所望の形に処理する能力によって行い得る。限定するものではないがこのようなポリペプチドの修飾には、アセチル化、カルボキシル化、グリコシル化、リン酸化、脂質化及びアシル化がある。タンパク質の「プレプロ」又は「プロ」形を切断する翻訳後のプロセシングを利用して、タンパク質の標的への誘導、折りたたみ及び/又は活性を特定することが可能である。翻訳後の活性のための固有の細胞装置及び特徴のある機構を有する種々の宿主細胞(例えばCHO、HeLa、MDCK、HEK293、WI38等)は、American Type Culture Collection(ATCC, Manassas, VA)から入手可能であり、外来タンパク質の正しい修飾及び処理を確実にするように選択し得る。
【0192】
本発明の別の実施例では、EXMESをコードする天然のポリヌクレオチド、修飾されたポリヌクレオチド、又は組換えのポリヌクレオチドを上記した任意の宿主系の融合タンパク質の翻訳となる異種配列に連結させ得る。例えば、市販の抗体によって認識できる異種部分を含むキメラEXMESタンパク質が、EXMES活性のインヒビターに対するペプチドライブラリのスクリーニングを促進し得る。また、異種タンパク質部分及び異種ペプチド部分も、市販されている親和性マトリックスを用いて融合タンパク質の精製を促進し得る。限定されるものではないがこのような部分には、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、マルトース結合タンパク質(MBP)、チオレドキシン(Trx)、カルモジュリン結合ペプチド(CBP)、6-His、FLAG、c-myc、赤血球凝集素(HA)がある。GSTは固定化グルタチオン上で、MBPはマルトース上で、Trxはフェニルアルシンオキシド上で、CBPはカルモジュリン上で、そして6-Hisは金属キレート樹脂上で、同族の融合タンパク質の精製を可能にする。FLAG、c-myc及び赤血球凝集素(HA)は、これらのエピトープ標識を特異的に認識する市販のモノクローナル抗体及びポリクローナル抗体を用いた、融合タンパク質の免疫親和性精製を可能にする。また、融合タンパク質が、EXMESをコードする配列と異種タンパク質配列との間にタンパク質分解切断部位を持つように遺伝子操作すると、精製後にEXMESが異種部分から切断され得る。融合タンパク質の発現及び精製方法は、前出のAusubel(1995)10章に記載されている。市販されている種々のキットを用いて融合タンパク質の発現及び精製を促進することもできる。
【0193】
本発明の別の実施例では、TNTウサギ網状赤血球可溶化液又はコムギ胚芽抽出系(Promega)を用いてin vitroで放射能標識したEXMESの合成が可能である。これらの系は、T7、T3又はSP6プロモーターと機能的に連結したタンパク質コード配列の転写及び翻訳をカップルさせる。翻訳は、例えば35Sメチオニンのような放射能標識したアミノ酸前駆体の存在下で起こる。
【0194】
本発明のEXMES又はその断片、或いはEXMESの変異体を用いて、EXMESに特異結合する化合物をスクリーニングすることができる。EXMESに対する特異的結合について、一つ以上の試験化合物をスクリーンすることができる。種々の実施例において、EXMESに対する特異結合について、1、2、3、4、5、10、20、50、100又は200の試験化合物をスクリーンすることができる。試験化合物の例として、抗体、アンティカリン(anticalins)、オリゴヌクレオチド、タンパク質(例えばリガンドや受容体)、又は小分子が挙げられる。
【0195】
関連する実施様態において、EXMES、EXMESの変異体、或いはEXMES及び/又は1つ以上のEXMES変異体とのある組み合わせへの試験化合物(抗体等)の結合/をスクリーニングするために、EXMES変異体を用いることができる。ある実施様態においては、SEQ ID NO:1-22の配列の正確な配列を有するEXMESではなく、EXMESの変異体に結合する化合物のスクリーニングにEXMESの変異体を用いることができる。このようなスクリーニングを行うために使うEXMES変異体はEXMESに約50%から約99%の範囲で配列同一性を有し得る。また、種々の実施様態で60%、70%、75%、80%、85%、90%及び95%の配列同一性を有することができる。
【0196】
ある実施様態では、EXMESへの特異結合の試験において同定された化合物は、EXMESの天然のリガンド(例えば、リガンドやその断片、天然の基質、構造的又は機能的な擬態物質、又は自然結合パートナー)に密接に関連し得る。(例えばColigan, J.E.他(1991) Curr ent Protocols in Immunology 1(2):5章を参照)。別の実施態様では、こうして同定した化合物は、受容体EXMESの天然リガンドであり得る。(例えばHoward, A.D. 他(2001) Trends Pharmacol.Sci.22:132-140、Wise, A. 他(2002) Drug Discovery Today 7:235-246を参照)。
【0197】
別の実施態様で該化合物は、EXMESへの特異結合に対するスクリーニングにおいて同定された化合物は、EXMESが結合する天然受容体に、或いは少なくとも該受容体の或る断片、又は例えばリガンド結合部位や結合ポケットの全体又は一部を含む該受容体の或る断片に密接に関連し得る。例えば該化合物は、シグナルを伝播可能なEXMES受容体の場合や、シグナルを伝播できないEXMESおとり受容体の場合がある(Ashkenazi, A.及びV.M. Divit (1999) Curr. Opin. Cell Biol.11:255-260、Mantovani, A. 他(2001) Trends Immunol.22:328-336). 該化合物は既知の技術を用いて合理的に設計できる。こうした技術の例としては、化合物エタネルセプト(etanercept)(ENBREL; Immunex Corp., Seattle WA)作製に用いた技術を含む。エタネルセプトは、ヒトのリウマチ様関節炎の治療に有効である。エタネルセプトは遺伝子操作されたp75腫瘍壊死因子(TNF)受容体ダイマーであり、ヒトIgG1 のFc部分に連結されている(Taylor, P.C. 他 (2001) Curr. Opin. Immunol. 13:611-616)。
【0198】
一実施様態においては、類似又は異なる特異性を有する2つ以上の抗体のEXMES、EXMESの断片、又はEXMESの変異体への特異的結合についてスクリーニングし得る。このようにしてスクリーニングされた抗体の結合特異性は、その特異的結合によって、EXMESの特定の断片又は変異体を同定することができる。一実施例において、抗体の結合特異性によって、EXMESの特定の断片又は変異体の選択的同定が可能となるように抗体を選択することができる。他の実施例において、或る抗体を、その結合特異性によってEXMESの産生の増加、減少又は異常な特定の疾患又は病状の選択的診断が可能となるように選択することができる。
【0199】
ある実施様態において、アンティカリン(anticalin)のEXMES、EXMESの断片、或いはEXMESの変異体に対する特異的結合をスクリーニングし得る。アンティカリンはリポカリン足場(scaffold )に基づいて作成されたリガンド結合タンパク質である(Weiss, G.A. 及び H.B. Lowman (2000) Chem. Biol. 7:R177-R184、Skerra, A. (2001) J. Biotechnol. 74:257-275)。リポカリンのタンパク質構造には、その開放末端に4つのループを支持する8つの逆平行ベータ鎖を持つベータバレルが含まれ得る。これらのループはリポカリンの天然リガンド結合部位を形成し、この部位はin vitro でアミノ酸置換によって再度人工操作して、新規な結合特異性を与えることができる。このアミノ酸置換は当分野で既知の方法又は本明細書に記載の方法を用いて行うことができる。また、保存的置換(例えば、結合特異性を変えないような置換)、或いは、結合特異性を少し、中等度、又は大きく変えるような置換を行うこともできる。
【0200】
一実施態様では、EXMESに特異的に結合、もしくは刺激又は阻害する化合物のスクリーニングには、分泌タンパク質或いは細胞膜上のタンパク質の何れか一方としてEXMESを発現する適切な細胞の作製が含まれる。好適な細胞には、哺乳動物、酵母、ショウジョウバエ、又は大腸菌からの細胞が含まれる。EXMESを発現する細胞又はEXMESを含有する細胞膜断片を試験化合物と接触させて、EXMES又は化合物のいずれかの結合、刺激又は阻害を分析する。
【0201】
あるアッセイは、単に試験化合物をポリペプチドに実験的に結合させ、結合を、蛍光色素、放射性同位体、酵素抱合体又はその他の検出可能な標識により検出することができる。例えば、このアッセイは、少なくとも1つの試験化合物を、溶液中の或いは固体支持物に固定されたEXMESと混合させるステップと、EXMESとこの化合物との結合を検出するステップを含み得る。別法では、アッセイでは標識された競合物の存在下での試験化合物の結合の検出及び測定を行うことができる。更にこのアッセイでは、無細胞再構成標本、化学ライブラリ又は天然の生成混合物を用いて実施することができ、試験化合物は、溶液中で遊離させるか固体支持体に固定させる。
【0202】
アッセイを用いて、或る化合物が、その天然リガンドに結合する能力、及び/又は、その天然リガンドの、その天然受容体への結合を阻害する能力を評価しうる。こうしたアッセイの例としては、米国特許第5,914,236号及び第6,372,724号に記載されたような放射ラベルアッセイを含む。関連した実施態様では、1つ以上のアミノ酸置換が或るポリペプチド化合物(受容体など)に導入され、その天然リガンドに結合する能力を向上又は改変しうる(例えばMatthews, D.J.及びJ.A. Wells. (1994) Chem. Biol. 1:25-30を参照)。別の関連した実施態様では、1つ以上のアミノ酸置換が或るポリペプチド化合物(リガンドなど)に導入され、その天然受容体に結合する能力を向上又は改変しうる(例えばCunningham, B.C及びJ.A. Wells (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:3407-3411、Lowman, H.B. 他 (1991) J. Biol. Chem. 266:10982-10988)。
【0203】
EXMES又はその断片、或いはEXMESの変異体を用いて、EXMESの活性を変調する化合物をスクリーニングすることができる。このような化合物としては、アゴニスト、アンタゴニスト、部分的アゴニスト又は逆アゴニストなどが含まれ得る。一実施様態では、EXMESが少なくとも1つの試験化合物と結合する、EXMESの活性が許容される条件下でアッセイを実施し、試験化合物の存在下でのEXMESの活性が試験化合物不在下でのEXMESの活性と比較する。試験化合物の存在下でのEXMESの活性の変化は、EXMESの活性をモジュレートする化合物の存在を示唆する。別法では、試験化合物を、EXMESの活性に適した条件下で、EXMESを含むin vitro系すなわち無細胞系と混合してアッセイを実施する。これらアッセイの何れにおいても、EXMESの活性を調節する試験化合物は間接的に調節する場合があり、その際は試験化合物と直接接触する必要がない。少なくとも1つ、又は複数の試験化合物をスクリーニングすることができる。
【0204】
別の実施態様では、胚性幹細胞(ES細胞)における相同組み換えを用いて動物モデル系内で、EXMES又はその哺乳動物相同体をコードするポリヌクレオチドを「ノックアウト」する。このような技術は当技術分野において周知であり、ヒト疾患動物モデルの作製に有用である(米国特許第5,175,383号及び第5,767,337号などを参照)。例えば129/SvJ細胞系などのマウスES細胞は初期のマウス胚に由来し、培地で増殖させることができる。このES細胞は、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子(neo: Capecchi, M.R.(1989)Science 244:1288-1292)などのマーカー遺伝子で破壊した、目的の遺伝子を持つベクターで形質転換される。このベクターは、相同組換えにより、宿主ゲノムの対応する領域に組込まれる。或いは、Cre-loxP系を用いて相同組換えを行い、組織特異的又は発生段階特異的に目的遺伝子をノックアウトする(Marth, J.D. (1996) Clin. Invest. 97:1999-2002、Wagner, K.U.他(1997) Nucleic Acids Res. 25:4323-4330)。形質転換したES細胞を同定し、例えばC57BL/6マウス株などから採取したマウス細胞胚盤胞に微量注入する。これらの胚盤胞を偽妊娠メスに外科的に導入し、得られるキメラ子孫の遺伝形質を特定し、これらを交配させてヘテロ接合性系又はホモ接合性系を作製する。このようにして作製した遺伝子組換え動物は、潜在的な治療薬や毒性薬物で検査されうる。
【0205】
EXMESをコードするポリヌクレオチドをin vitroでヒト胚盤胞由来のES細胞において操作することが可能である。ヒトES細胞は、内胚葉、中胚葉及び外胚葉の細胞タイプを含む、少なくとも8つの別々の細胞系統に分化する可能性を有する。これらの細胞系統は、例えば神経細胞、造血系統及び心筋細胞に分化する(Thomson, J.A.他 (1998) Science 282:1145-1147)。
【0206】
EXMESをコードするポリヌクレオチドを用いて、ヒト疾患をモデルとした「ノックイン」ヒト化動物(ブタ)又は遺伝子組み換え動物(マウス又はラット)を作製することが可能である。ノックイン技術を用いて、EXMESをコードするポリヌクレオチドの或る領域を動物ES細胞に注入し、注入した配列を動物細胞ゲノムに組み込ませる。形質転換細胞を胞胚に注入し、胞胚を上記のように移植する。遺伝子組換え子孫又は近交系について試験し、潜在的医薬品を用いて処理し、ヒトの疾患の治療に関する情報を得る。別法では、例えばEXMESを乳汁内に分泌するなどEXMESを過剰発現する哺乳動物近交系は、便利なタンパク質源となり得る(Janne, J. 他 (1998) Biotechnol. Annu. Rev. 4:55-74)。
【0207】
(治療)
EXMESのある領域と細胞外メッセンジャーのある領域との間に、例えば配列及びモチーフの内容における化学的及び構造的類似性が存在する。またEXMESを発現する組織の数例は、表6と実施例 11を見られたい。従って、EXMESは、自己免疫/炎症の疾患、神経系疾患、内分泌障害、発生又は発達障害、癌を含む細胞増殖異常、生殖障害、心血管疾患、及び感染においてある役割を果たすと考えられる。EXMESの発現又は活性の増大に関連する疾患の治療においては、EXMESの発現又は活性を低下させることが望ましい。EXMESの発現又は活性の低下に関連する疾患の治療においては、EXMESの発現又は活性を増大させることが望ましい。
【0208】
従って、一実施態様では、EXMESの発現又は活性の低下に関連した疾患の治療又は予防のために、被験者にEXMES又はその断片や誘導体が投与され得る。限定するものではないが、このような疾患として自己免疫/炎症疾患には、後天性免疫不全症候群(AIDS)、アジソン病、成人呼吸窮迫症候群、アレルギー、強直性脊椎炎、アミロイド症、貧血、喘息、アテローム性動脈硬化症、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性甲状腺炎、自己免疫多発性内分泌腺障害症(APECED)、気管支炎、胆嚢炎、接触皮膚炎、クローン病、アトピー性皮膚炎、皮膚筋炎、糖尿病、肺気腫、リンパ球毒素性一時性リンパ球減少症、赤芽球症、結節性紅斑、萎縮性胃炎、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、痛風、グレーブス病、橋本甲状腺炎、過好酸球増加症、過敏性大腸症候群、多発性硬化症、重症筋無力症、心筋又は心膜の炎症、骨関節炎、骨粗しょう症、膵炎、多発性筋炎、乾癬、ライター症候群、リウマチ様関節炎、強皮症、シェーグレン症候群、全身性アナフィラキシー、全身性紅斑性狼瘡、全身性硬化症、血小板減少症、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、ウェルナー症候群、癌の合併症、血液透析、体外循環、ウイルス性感染症、細菌性感染症、真菌性感染症、寄生虫感染症、原虫感染症、蠕虫の感染症及び外傷が含まれる。神経系疾患の中には、癲癇、虚血性脳血管障害、脳卒中、大脳新生物、アルツハイマー病、ピック病、ハンチントン病、痴呆、パーキソン病及びその他の錐体外路障害、筋萎縮性側策硬化及びその他の運動ニューロン障害、進行性神経性筋萎縮症、色素性網膜炎、遺伝性運動失調、多発性硬化症及び他の脱髄疾患、細菌性及びウイルス性髄膜炎、脳膿瘍、硬膜下蓄膿症、硬膜外膿瘍、化膿性頭蓋内血栓性静脈炎、脊髄炎及び神経根炎、ウイルス性中枢神経系疾患、プリオン病(クールー、クロイツフェルト‐ヤコブ病、及びGerstmann-Straussler-Scheinker症候群を含む)、致死性家族性不眠症、神経系性栄養病及び代謝病、神経線維腫症、、結節硬化症、小脳網膜血管芽腫(cerebelloretinal hemangioblastomatosis)、脳3叉神経血管症候群、ダウン症候群を含む中枢神経系性の精神薄弱及び他の発達障害、脳性麻痺、神経骨格異常症、自律神経系障害、脳神経障害、脊髄障害、筋ジストロフィー及びその他の神経筋障害、末梢神経疾患、皮膚筋炎及び多発性筋炎、遺伝性、代謝性、内分泌性、及び中毒性の筋疾患、重症筋無力症、周期性四肢麻痺、精神病(気分性、不安性の障害、分裂病性疾患)、季節性障害(SAD)、静座不能、健忘症、緊張病、糖尿病性ニューロパシー、錐体外路性終末欠陥症候群、ジストニー、分裂病性精神障害、帯状疱疹後神経痛、トゥーレット病、進行性核上麻痺、皮質基底核変性症(corticobasal degeneration)、家族性前頭側頭骨痴呆が含まれる。また内分泌疾患の中には原発脳腫瘍及び腺腫、妊娠性梗塞、下垂体切除、動脈瘤、血管奇形、血栓症、感染症、免疫異常、頭部外傷による合併症などの病変から起こる視床下部及び下垂体の障害と、性機能低下及びシーハン症候群、尿崩症、カルマン病、ハンド‐シュラークリスチャン病、レテラー・ジーヴェ病、サルコイドーシス、エンプティセラ(トルコ鞍空虚)症候群、小人症を含む下垂体低下に関連した障害と、良性線種によって発生しやすい抗利尿ホルモン(ADH)不適合分泌症候群(SIADH)及び先端巨大症、巨人症を含む下垂体亢進に関連した障害と、甲状腺腫及び粘液水腫、細菌感染性急性甲状腺炎、ウイルス感染性亜急性甲状腺炎、自己免疫性甲状腺炎(橋本病)、クレチン病を含む甲状腺機能低下症に関連した障害と、甲状腺中毒症及びその様々な型、グレーブス病、前脛骨粘液水腫、中毒性多結節性甲状腺腫、甲状腺癌、プラマー病を含む甲状腺機能亢進症と、Conn病(chronic hypercalemia)を含む副甲状腺機能亢進症と、I型及びII型糖尿病及び合併症などの膵臓疾患と、過形成及び副腎皮質の癌腫や腺腫、アルカローシスに関連した高血圧、アミロイド症、低カリウム血、クッシング病、リドル症候群、Arnold-Healy-Gordon症候群、褐色細胞腫瘍、アジソン病、副腎機能不全などの副腎に関連した障害がある。また生殖腺ステロイドホルモンに関する疾患としては、女性に、異常プロラクチン産生、不妊症、子宮内膜症、月経周期の摂動、多嚢胞性卵巣疾患、高プロラクチン血症、選択的性腺刺激ホルモン不全(isolated gonadotropin deficiency)、無月経、乳汁漏出症、半陰陽、多毛症及び男性化、乳癌があり、閉経期後の女性に骨粗鬆症があり、男性にライジッヒ細胞欠損症、男性更年期、生殖細胞無形成症、ライジッヒ細胞腫瘍に関連した性機能亢進、アンドロゲン受容体の欠如に関連したアンドロゲン耐性、5α−還元酵素症候群、21‐ヒドロキシラーゼ症候群、女性乳房症などの生殖腺ステロイドホルモンに関連した疾患とが含まれる。発達障害には尿細管性アシドーシス、貧血、クッシング症候群、軟骨形成不全性小人症、デュシェンヌ/ベッカー型筋ジストロフィー、癲癇、性腺形成異常、WAGR症候群(ウィルムス腫瘍、無虹彩症、尿生殖器異常、精神遅滞)、スミス‐マジェニス症候群(Smith-Magenis syndrome)、骨髄異形成症候群、遺伝性粘膜上皮異形成、遺伝性角皮症や、シャルコーマリーツース病及び神経線維腫症などの遺伝性神経病、甲状腺機能低下症、水頭症や、Syndenham舞踏病(Syndenham's chorea)及び脳性小児麻痺などの発作障害、二分脊椎、無脳症、頭蓋脊椎披裂、先天性緑内障、白内障、感音難聴が含まれる。細胞増殖異常には日光角化症、動脈硬化、アテローム硬化、滑液包炎、硬変、肝炎、混合性結合組織病(MCTD)、骨髄線維症、発作性夜間ヘモグロビン尿症、真性多血症、乾癬、原発性血小板血症、並びに、腺癌、白血病、リンパ腫、黒色腫、骨髄腫、肉腫、及び奇形癌など癌、具体的には、副腎、膀胱、骨、骨髄、脳、乳房、頚部、胆嚢、神経節、消化管、心臓、腎臓、肝臓、肺、筋肉、卵巣、膵臓、副甲状腺、陰茎、前立腺、唾液腺、皮膚、脾臓、精巣、胸腺、甲状腺、及び子宮の癌が含まれる。生殖系疾患としてプロラクチン産生障害があり、卵管疾患、排卵欠損症、子宮内膜症、性周期障害、月経周期障害、多嚢胞性卵巣症候群、卵巣過刺激症候群、子宮内膜癌、卵巣癌、子宮筋腫、自己免疫疾患、子宮外妊娠、催奇形、乳癌、繊維嚢胞性乳房疾患、乳漏症、精子形成破壊、精子異常生理、良性前立腺肥大、前立腺炎、パイロニー病、性交不能が含まれる。心血管障害にはうっ血性心不全、虚血性心疾患、狭心症、心筋梗塞、高血圧性心疾患、変性弁膜性心疾患、石灰化大動脈弁狭窄症、先天性2尖大動脈弁、僧帽弁輪状石灰化(mitral annular calcification)、僧帽弁脱出、リウマチ熱、リウマチ性心疾患、感染性心内膜炎、非細菌性血栓性心内膜炎、全身性紅斑性狼瘡の心内膜炎、カルチノイド心疾患、心筋症、心筋炎、心膜炎、腫瘍性心疾患、先天性心臓疾患、心臓移植の合併症などの心疾患がある。感染症には、アデノウイルス、アレナウイルス、ブンヤウイルス(bunyavirus)、カリチウイルス(calicivirus)、コロナウイルス、フィロウイルス、ヘパドナウイルス、ヘルペスウイルス、フラビウイルス、オルソミクソウイルス、パルボウイルス、パポーバウイルス、パラミクソウイルス、ピコルナウイルス、ポックスウイルス、レオウイルス、レトロウイルス、ラブドウイルス、トガウイルスに分類されるウイルス病原体による感染や、細菌による感染(肺炎球菌、ブドウ球菌、連鎖球菌、バシラス菌、コリネバクテリウム、クロストリジウム、髄膜炎菌、淋菌、リステリア、モラクセラ、キンゲラ、ヘモフィルス、レジオネラ、百日咳菌類(ボルデテラ)や、シゲラ、サルモネラ、カンピロバクターを含むグラム陰性腸内細菌、シュードモナス、ビブリオ、ブルセラ、野兎病菌類(フランシセラ)、エルシニア、バルトネラ、norcardium、放線菌、ミコバクテリウム、spirochaetale、リケッチア、クラミジア、マイコプラズマに分類)、真菌感染(分類はアスペルギルス、ブラストミセス、皮膚糸状菌、クリプトコッカス、コクシジオイデス、malasezzia、ヒストプラスマ、又は他の真菌症起因菌)、寄生虫感染(分類はプラスモディウムすなわちマラリア原虫、寄生性アメーバ、リーシュマニア、トリパノソーマ、トキソプラズマ、ニューモシスチスカリニ、腸内原虫(ジアルジアなど)、トリコモナス、組織線虫(旋毛虫など)、腸管寄生線虫(回虫など)、リンパ管フィラリア線虫、吸虫(住血吸虫など)、及び条虫(サナダムシなど))が含まれる。
【0209】
別の実施態様では、限定するものではないが上に列記した疾患を含む、EXMESの発現又は活性の低下に関連した疾患の治療又は予防のために、EXMES又はその断片や誘導体を発現し得るベクターを被験者に投与し得る。
【0210】
更に別の実施態様では、限定するものではないが上に列記した疾患を含む、EXMESの発現又は活性の低下に関連した疾患の治療又は予防のために、実質的に精製されたEXMESを有する組成物を、好適な医薬用キャリアと共に被験者に投与し得る。
【0211】
更に別の実施例では、限定するものではないが上に列記した疾患を含むEXMESの発現又は活性の低下に関連した疾患の治療又は予防のために、EXMESの活性を調節するアゴニストを患者に投与することも可能である。
【0212】
更なる実施様態では、EXMESの発現又は活性の増大に関連した疾患の治療又は予防のために、患者にEXMESのアンタゴニストを投与することが可能である。限定するものではないが、このような疾患の例には、上記した自己免疫/炎症疾患、神経系疾患、内分泌障害、発達障害、癌を含む細胞増殖異常、生殖疾患、心血管障害、及び感染症が含まれる。一実施態様では、EXMESに特異結合する抗体が直接アンタゴニストとして、或いはEXMESを発現する細胞又は組織に薬物を運ぶターゲッティング或いは送達機構として間接的に用いられ得る。
【0213】
別の実施態様では、限定するものではないが上に列記した疾患を含む、EXMESの発現又は活性の増大に関連した疾患の治療又は予防のために、EXMESをコードするポリヌクレオチドの相補配列を発現するベクターを被験者に投与し得る。
【0214】
他の実施態様において、タンパク質、アゴニスト、アンタゴニスト、抗体、相補的配列、又はベクターは他の適切な治療剤と併用して投与し得る。併用療法で用いる好適な治療薬は、当業者が従来の医薬原理に従って選択し得る。治療薬と組み合わせることにより、上記した種々の疾患の治療又は予防に相乗効果をもたらし得る。この方法により、少量の各薬物で医薬効果をあげることが可能となり、それによって副作用の可能性を低減し得る。
【0215】
EXMESのアンタゴニストは、当分野で一般的な方法を用いて製造することが可能である。詳しくは、精製されたEXMESを用いて抗体を作ったり、治療薬のライブラリをスクリーニングしてEXMESと特異的に結合するものの同定が可能である。EXMESへの抗体も、当分野で周知の方法を用いて産生され得る。限定するものではないがこのような抗体には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、Fab断片、及びFab発現ライブラリによって作られた断片が含まれ得る。中和抗体(すなわち二量体の形成を阻害する抗体)は通常、治療用に好適である。一本鎖抗体(例えば、ラクダ又はラマに由来)は有力な酵素阻害剤であり、またペプチド擬態物質の設計及び免疫吸着剤やバイオセンサーの開発に利点があるであろう(Muyldermans, S. (2001) J. Biotechnol. 74:277-302)。
【0216】
抗体の産生のためには、ヤギ、ウサギ、ラット、マウス、ラクダ、ヒトコブラクダ、ラマ、ヒトなどを含む種々の宿主が、EXMES、若しくは免疫原性の特性を備えるその任意の断片又はオリゴペプチドの注入によって免疫化され得る。宿主の種に応じて、種々のアジュバントを用いて免疫応答を高めることもできる。限定するものではないがこのようなアジュバントには、フロイントアジュバントと、水酸化アルミニウムなどのミネラルゲルアジュバントと、リゾレシチン、プルロニックポリオル、ポリアニオン、ペプチド、油性乳剤、スカシガイのヘモシアニン(KLH)、ジニトロフェノールなどの界面活性剤とがある。ヒトに用いられるアジュバントの中では、BCG(カルメット‐ゲラン杆菌)及びコリネバクテリウム‐パルバム(Corynebacterium parvum)が特に好ましい。
【0217】
EXMESに対する抗体を誘発するために用いられるオリゴペプチド、ペプチド、又は断片は、少なくとも約5個のアミノ酸からなり、一般的には約10個以上のアミノ酸からなるものが好ましい。これらのオリゴペプチド、ペプチド又は断片は、天然のタンパク質のアミノ酸配列の一部と同一であることも望ましい。EXMESのアミノ酸の短い区間を、KLHなどの別のタンパク質の配列と融合し、キメラ分子に対する抗体を産生し得る。
【0218】
EXMESに対するモノクローナル抗体は、培地内の連続した細胞株によって、抗体分子を産生する任意の技術を用いて作製することが可能である。限定するものではないがこのような技術には、ハイブリドーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術、及びEBV-ハイブリドーマ技術がある(Kohler, G. 他 (1975) Nature 256:495-497、Kozbor, D.他 (1985) .J. Immunol. Methods 81:31-42、Cote, R.J. 他 (1983) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80:2026-2030、Cole, S.P.他 (1984) Mol. Cell Biol. 62:109-120等を参照)。
【0219】
更に、ヒト抗体遺伝子にマウス抗体遺伝子をスプライシングするなどの「キメラ抗体」作製のために開発した技術が、好適な抗原特異性及び生物学的活性を備える分子を得るために用いられる(例えばMorrison, S.L.他(1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6851-6855、Neuberger, M.S. 他(1984) Nature 312:604-608、Takeda, S.他(1985) Nature 314:452-454を参照)。別法では、当分野で周知の方法を用い、一本鎖抗体の産生のための記載された技術を適用して、EXMES特異的一本鎖抗体を生成する。関連した特異性を有するがイディオタイプ組成が異なるような抗体を、ランダムな組み合わせの免疫グロブリンライブラリ類からチェーンシャッフリングによって産生することもできる(Burton D.R. (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:10134-10137等を参照)。
【0220】
抗体の産生は、リンパ球集団におけるin vivo産生の誘導によって、或いは文献に開示されているように非常に特異的な結合試薬の免疫グロブリンのライブラリ又はパネルのスクリーニングによっても行い得る(例えばOrlandi, R.他(1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:3833-3837、Winter, G.他(1991) Nature 349:293-299を参照)。
【0221】
EXMESに対する特異的な結合部位を含む抗体断片も生成することができる。例えば、限定するものではないが、このような断片には、抗体分子のペプシン消化によって作製されるF(ab')2 断片と、F(ab')2 断片のジスルフィド架橋を還元することによって作製されるFab断片とがある。或いは、Fab発現ライブラリを作製することによって、所望の特異性を持つモノクローナルFab断片を迅速且つ容易に同定することが可能となる(Huse, W.D他 (1989) Science 246:12751281等を参照)。
【0222】
種々の免疫学的検定(イムノアッセイ)を用いてスクリーニングすることにより、所望の特異性を有する抗体を同定し得る。確立された特異性を有するポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体の何れかを用いる競合結合試験、又は免疫放射定量測定法のための数々のプロトコルが、当分野では周知である。通常このようなイムノアッセイには、EXMESとその特異性抗体との間の複合体形成の計測が含まれる。2つの非干渉性EXMESエピトープに対して反応性を持つモノクローナル抗体群を用いる、2部位モノクローナルベースのイムノアッセイが一般に利用されるが、競合結合試験も利用できる(Pound、前出)。
【0223】
ラジオイムノアッセイ技術と共にScatchard分析などの様々な方法を用いて、EXMESに対する抗体の親和性を評価する。親和性を結合定数Kaで表すが、このKaは、平衡状態の下でEXMES抗体複合体のモル濃度を遊離抗体と遊離抗原のモル濃度で除して得られる値である。多数のEXMESエピトープに対して親和性が不均一なポリクローナル抗体試薬のKaは、EXMESに対する抗体の平均親和性又は結合活性を表す。特定のEXMESエピトープに単一特異的なモノクローナル抗体医薬のKaは、親和性の真の測定値を表す。Ka値が109〜1012liter/molの高親和性抗体試薬は、EXMES抗体複合体が過酷な処理に耐えなければならないイムノアッセイに用いるのが好ましい。Ka値が106〜107L/molの低親和性抗体医薬は、EXMESが抗体から最終的に活性化状態で解離する必要がある免疫精製(immunopurification)及び類似の処理に用いるのが好ましい(Catty, D. (1988) Antibodies, Volume I: A Practical Approach. IRL Press, Washington, DC、Liddell, J. E.及びCryer, A. (1991) A Practical Guide to Monoclonal Antibodies, John Wiley & Sons, New York NY)。
【0224】
ポリクローナル抗体製剤の抗体価及び結合活性を更に評価して、後に使う或る適用例に対するこのような製剤の品質及び適性を決定することができる。例えば、少なくとも1〜2mg/mlの特異的な抗体、好ましくは5〜10mg/mlの特異的な抗体を含むポリクローナル抗体製剤は一般に、EXMES抗体複合体を沈殿させなければならない処理に用いられる。抗体の特異性、抗体価、結合活性、様々な適用例における抗体の品質や使用に対する指針については、一般に入手可能である(例えば前出のCatty、同Coligan 他を参照)。
【0225】
本発明の別の実施例では、EXMESをコードするポリヌクレオチド、又はその任意の断片や相補配列を、治療目的で使用することができる。ある実施態様では、EXMESをコードする遺伝子のコーディング領域や調節領域に相補的な配列やアンチセンス分子(DNA、RNA、PNA、修飾ヌクレオチド)を設計して遺伝子発現を変更することができる。このような技術は当分野では周知であり、アンチセンスオリゴヌクレオチド又はより大きな断片を、EXMESをコードする配列の制御領域、又はコード領域に沿った、さまざまな位置から設計可能である(Agrawal, S.編集 (1996) Antisense Therapeutics, Humana Press Inc., Totawa NJ等を参照)。
【0226】
治療に用いる場合、アンチセンス配列を適切な標的細胞に導入するのに好適な、任意の遺伝子送達系を用いることができる。アンチセンス配列は、転写時に標的タンパク質をコードする細胞配列の少なくとも一部に相補的な配列を作製する発現プラスミドの形で細胞内に送達することが可能である(例えばSlater, J.E. 他(1998) J. Allergy Clin. Immunol. 102(3):469-475、Scanlon, K.J.他(1995) 9(13):1288-1296を参照)。アンチセンス配列はまた、例えばレトロウイルスやアデノ随伴ウイルスベクターなどのウイルスベクターを用いて細胞内に導入することもできる(例えばMiller, A.D.(1990)Blood 76:271、前出Ausubel、Uckert, W.及びW. Walther(1994)Pharmacol. Ther. 63(3):323-347を参照)。その他の遺伝子送達機構には、リポソーム系、人工的なウイルスエンベロープ及び当分野で公知のその他のシステムが含まれる(例えばRossi, J.J.(1995)Br. Med. Bull. 51(1):217-225、Boado、R.J.他(1998) J. Pharm. Sci. 87(11):1308-1315、Morris, M.C.他(1997) Nucleic Acids Res. 25(14):2730-2736を参照)。
【0227】
本発明の別の実施態様では、EXMESをコードするポリヌクレオチドを、体細胞若しくは生殖細胞の遺伝子治療に用いることが可能である。遺伝子治療を行うことにより、(i)遺伝子欠損症(例えばX染色体鎖遺伝(Cavazzana-Calvo, M. 他 (2000) Science 288:669-672)により特徴付けられる重度の複合型免疫欠損(SCID)-X1の場合)、先天性アデノシンデアミナーゼ(ADA)欠損症に関連する重度の複合型免疫欠損(Blaese, R.M. 他 (1995) Science 270:475-480、Bordignon, C. 他 (1995) Science 270:470-475)、嚢胞性繊維症(Zabner, J. 他 (1993) Cell 75:207-216、Crystal、R.G. 他 (1995) Hum. Gene Therapy 6:643-666、Crystal, R.G. 他. (1995) Hum. Gene Therapy 6:667-703)、サラセミア(thalassamia)、家族性高コレステロール血症、第VIII因子若しくは第IX因子欠損に起因する血友病(Crystal, R.G. (1995) Science 270:404-410、Verma, I.M.及びN. Somia (1997) Nature 389:239-242)を治療し、(ii)条件的致死性遺伝子産物を発現させ(例えば制御不能な細胞増殖に起因する癌の場合)、或いは(iii)細胞内の寄生虫(例えばヒト免疫不全ウイルス(HIV)(Baltimore, D. (1988) Nature 335:395-396、Poescbla, E. 他 (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 93:11395-11399)、B型若しくはC型肝炎ウイルス(HBV、HCV)、Candida albicans及びParacoccidioides brasiliensis等の真菌寄生虫、並びにPlasmodium falciparum及びTrypanosomacruzi等の原虫寄生体に対する防御機能を有するタンパク質を発現させることができる。EXMESの発現若しくは調節に必要な遺伝子の欠損が疾患を引き起こす場合、導入した細胞の好適な集団からEXMESを発現させて、遺伝子欠損によって起こる症状の発現を緩和することが可能である。
【0228】
本発明の更なる実施様態では、EXMESの欠損による疾患や異常症は、EXMESをコードする哺乳動物発現ベクターを作製して、これらのベクターを機械的手段によってEXMES欠損細胞に導入することによって治療する。in vivo或いはex vitroの細胞に用いる機械的導入技術には、(i)個々の細胞内への直接的なDNA微量注射法、(ii)遺伝子銃、(iii)リポソームを介した形質移入、(iv)受容体を介した遺伝子導入、及び(v)DNAトランスポソンの使用(Morgan, R.A.及びW.F. Anderson (1993) Annu. Rev. Biochem. 62:191-217、Ivics, Z. (1997) Cell 91:501-510、Boulay,J-L.及びH. Recipon (1998) Curr. Opin. Biotechnol. 9:445-450)がある。
【0229】
EXMESの発現に影響を及ぼし得る発現ベクターには、限定するものではないが、PCDNA 3.1、EPITAG、PRCCMV2、PREP、PVAX、PCR2-TOPOTAベクター(Invitrogen, Carlsbad CA)、PCMV-SCRIPT、PCMV-TAG、PEGSH/PERV (Stratagene, La Jolla CA)、PTET-OFF、PTET-ON、PTRE2、PTRE2-LUC、PTK-HYG (Clontech, Palo Alto CA)が含まれる。EXMESを発現させるために、(i)構成的に活性なプロモーター(例えば、サイトメガロウイルス(CMV)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、SV40ウイルス、チミジンキナーゼ(TK)、若しくはβ−アクチンの遺伝子など)、(ii)誘導性プロモーター(例えば、市販されているT-REXプラスミド(Invitrogen)に含まれている、テトラサイクリン調節性プロモーター(Gossen, M.及びH. Bujard (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 89:5547-5551、Gossen, M. 他 (1995) Science 268:1766-1769、Rossi, F.M.V.及びH.M. Blau (1998) Curr. Opin. Biotechnol. 9:451-456)、エクジソン誘導性プロモーター(市販されているプラスミドPVGRXR及びPINDに含まれている:Invitrogen)、FK506/ラパマイシン誘導性プロモーター、又はRU486/ミフェプリストン誘導性プロモーター(Rossi, F.M.V.及びH.M. Blau, 前出)、又は(iii)正常な個体に由来する、EXMESをコードする内因性遺伝子の天然プロモーター若しくは組織特異的プロモーターを用い得る。
【0230】
市販のリポソーム形質転換キット(例えばInvitrogen社のPerFect Lipid Transfection Kit)を用いれば、当業者はポリヌクレオチドを培養中の標的細胞に送達することが可能になる。また、実験パラメータ群を最適化するのに必要な努力が最小限になる。別法では、リン酸カルシウム法(Graham. F.L. 及び A.J. Eb (1973) Virology 52:456-467)若しくは電気穿孔法(Neumann, B. 他 (1982) EMBO J. 1:841-845)を用いて形質転換を行う。初代培養細胞にDNAを導入するためには、標準化された哺乳類の形質移入プロトコルの修正が必要である。
【0231】
本発明の別の実施例では、EXMESの発現に関連する遺伝子欠損によって起こる疾患や異常症を、(i)レトロウイルス末端反復配列(LTR)プロモーター若しくは独立したプロモーターのコントロール下でEXMESをコードするポリヌクレオチドと、(ii)好適なRNAパッケージングシグナルと、(iii)追加のレトロウイルス・シス作用性RNA配列及び効率的なベクターの増殖に必要なコーディング配列を伴うRev応答性エレメント(RRE)とからなるレトロウイルスベクターを作製して治療することができる。レトロウイルスベクター(例えばPFB及びPFBNEO)はStratagene社から市販されており、刊行データ(Riviere, I. 他 (1995) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 92:6733-6737)に基づいている。上記データを引用することをもって本明細書の一部とする。ベクターは、好適なベクター産生細胞株(VPCL)において増殖され、VPCLは、標的細胞上の受容体に対する親和性を有するエンベロープ遺伝子又はVSVg等の汎親和性エンベロープタンパク質を発現する(Armentano, D. 他 (1987) J. Virol. 61:1647-1650、Bender, M.A. 他 (1987) J. Virol. 61:1639-1646、Adam, M.A.及びA.D. Miller (1988) J. Virol. 62:3802-3806、Dull, T. 他 (1998) J. Virol. 72:8463-8471、Zufferey, R. 他 (1998) J. Virol. 72:9873-9880)。Riggに付与された米国特許第5,910,434号(「Method for obtaining retrovirus packaging cell lines producing high transducing efficiency retroviral supernatant」)において、レトロウイルスパッケージング細胞株を得るための方法が開示されており、引用することをもって本明細書の一部とする。レトロウイルスベクター類の繁殖や、細胞集団(例えばCD4+T細胞群)の形質導入、及び形質導入した細胞群の患者への戻しは、遺伝子治療分野では当業者に周知の手法であり、多数の文献に記載がある(Ranga, U.他 (1997) J. Virol. 71:7020-7029、Bauer, G. 他. (1997) Blood 89:2259-2267、Bonyhadi, M.L. (1997) J. Virol. 71:4707-4716、Ranga, U. 他. (1998) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:1201-1206、Su, L. (1997) Blood 89:2283-2290)。
【0232】
別法では、アデノウイルス系遺伝子治療の送達系を用いて、EXMESの発現に関連する1つ以上の遺伝子異常を有する細胞にEXMES をコードするポリヌクレオチドを送達する。アデノウイルス系ベクター類の作製及びパッケージングについては、当業者に周知である。複製欠損型アデノウイルスベクター類は、種々の免疫調節タンパク質をコードする遺伝子群を、無損傷の膵島内に導入する目的で多様に利用し得ることが証明された(Csete, M.E.他 (1995) Transplantation 27:263268)。
使用できる可能性のあるアデノウイルスベクターは、Armentanoに付与された米国特許第5,707,618号(「Adenovirus vectors for gene therapy」)に記載されており、引用することをもって本明細書の一部とする。アデノウイルスベクターについては、Antinozzi, P.A. 他 (1999) Annu. Rev. Nutr. 19:511-544、 Verma, I.M.及びN. Somia (1997) Nature 18:389:239-242も参照されたい。両文献は、引用することをもって本明細書の一部とする。
【0233】
別の実施様態では、ヘルペス系遺伝子治療の送達系を用いて、EXMESの発現に関して1以上の遺伝子異常を持つ標的細胞に、EXMESをコードするポリヌクレオチド類を送達する。単純疱疹ウイルス(HSV)系のベクターは、HSV親和性の中枢神経細胞にEXMESを導入する際に特に重要である。ヘルペス系ベクター類の作製及びパッケージングは、当業者に公知である。或る複製適格性単純ヘルペスウイルス(HSV)1型系のベクターが、或るレポーター遺伝子の、霊長類の眼への送達に用いられている(Liu, X. 他 (1999) Exp. Eye Res. 169:385395)。HSV-1ウイルスベクターの作製についても、DeLucaに付与された米国特許第5,804,413号(「Herpes simplex virus strains for gene transfer」)に開示されており、該特許の引用をもって本明細書の一部とする。米国特許第5,804,413号には、ヒト遺伝子治療を含む目的のために好適なプロモーターの制御下において細胞に導入される少なくとも1つの外在性遺伝子を有するゲノムを含む組換えHSV d92の使用についての記載がある。上記特許はまた、ICP4、ICP27及びICP22を欠失した組換えHSV系統の作製及び使用について開示している。HSVベクターについては、Goins, W.F. 他 (1999) J. Virol. 73:519-532及びXu, H. 他 (1994) Dev. Biol. 163:152-161も参照されたい。両文献は、引用をもって本明細書の一部とする。クローン化ヘルペスウイルス配列の操作、巨大ヘルペスウイルスのゲノムの異なったセグメント群を含む多数のプラスミドを形質移入した後の組換えウイルスの産生、ヘルペスウイルスの成長及び増殖、並びにヘルペスウイルスの細胞への感染は、当業者に公知の技術である。
【0234】
別の実施様態では、或るαウイルス(正の一本鎖RNAウイルス)ベクターを用いて、EXMESをコードするポリヌクレオチド群を標的細胞群に送達する。プロトタイプのαウイルスであるセムリキ森林熱ウイルス(SFV)の生物学的研究が広範に行われており、遺伝子導入ベクターはSFVゲノムに基づいている(Garoff, H.及びK.-J. Li (1998) Cun. Opin. Biotech. 9:464-469)。αウイルスRNAの複製中に、通常はウイルスのカプシドタンパク質をコードするサブゲノムRNAが作り出される。このサブゲノムRNAは、完全長のゲノムRNAより高いレベルに複製されるため、酵素活性(例えばプロテアーゼ及びポリメラーゼ)を有するウイルスタンパク質に比べてカプシドタンパク質が過剰産生される。同様に、EXMESをコードする配列をαウイルスゲノムのカプシドをコードする領域に導入することによって、ベクター導入細胞において多数のEXMESをコードするRNAが産生され、高いレベルでEXMESが合成される。通常、αウイルスの感染は、数日以内の細胞溶解を伴う。一方、シンドビスウイルス(SIN)の或る変異体を有するハムスター正常腎臓細胞(BHK-21)群が持続的な感染を確立する能力は、αウイルス類の溶解複製を、遺伝子治療に応用し得るように好適に改変可能であることを示唆する(Dryga, S.A.他(1997) Virology 228:74-83)。様々な宿主にαウイルスを導入できることから、様々なタイプの細胞にEXMESを導入することできる。或る集団における或るサブセットの細胞群の特異的形質導入は、形質導入前に細胞の選別を必要とし得る。αウイルスの感染性cDNAクローンの処置方法、αウイルスのcDNA及びRNAの形質移入方法及びαウイルスの感染方法は、当業者に公知である。
【0235】
転写開始部位由来のオリゴヌクレオチドを用いて遺伝子発現を阻害することも可能である。転写開始部位(transcription initiation site)とは例えばスタート部位(start site)から数えて約−10と約+10の間である。同様に、三重らせん塩基対の形成方法を用いて阻害が可能となる。三重らせん塩基対形成は、ポリメラーゼ、転写因子又は調節分子と結合できるように十分に開こうとする、二重らせんの能力を阻害するため有用である。三重らせんDNAを用いる最近の治療の進歩については文献に記載がある(例えばGee, J.E.他(1994) in Huber, B.E.及びB.I. Carr, Molecular and Immunologic Approaches, Futura Publishing, Mt. Kisco NY, 163-177ページを参照)。相補配列又はアンチセンス分子もまた、転写物がリボソームに結合するのを阻止することによってmRNAの翻訳を阻止するべく設計することができる。
【0236】
リボザイムは酵素的RNA分子であり、RNAの特異的切断を触媒するためにリボザイムを用いることもできる。リボザイム作用のメカニズムは、相補的標的RNAへのリボザイム分子の配列特異的ハイブリダイゼーションとその後に起こる内ヌクレオチド鎖切断に関与している。例えば、遺伝子操作で作ったハンマーヘッド型リボザイム分子が、EXMESをコードするRNA分子の、内ヌクレオチド鎖切断を特異的且つ効果的に触媒できる可能性がある。
【0237】
任意の潜在的RNA標的内の特異的リボザイム切断部位は、GUA、GUU、GUC配列を含めたリボザイム切断部位に対する標的分子をスキャンすることによって先ず同定される。一度同定されると、切断部位を含む標的遺伝子の領域に対応する15〜20リボヌクレオチドの短いRNA配列が、そのオリゴヌクレオチドを機能不全にするような2次構造の特徴をもっていないかを評価することが可能になる。候補標的の適合性の評価も、リボヌクレアーゼ保護アッセイを用いて相補的オリゴヌクレオチド群とのハイブリダイゼーションへのアクセス可能性をテストすることによって行い得る。
【0238】
相補リボ核酸分子及びリボザイムは、核酸分子の合成のために当分野で既知の任意の方法を用いて作製し得る。作製方法には、固相フォスフォアミダイト化学合成等のオリゴヌクレオチドを化学的に合成する方法がある。或いは、EXMESをコードするDNA分子のin vitro及びin vivo転写によってRNA分子を産生し得る。このようなDNA配列は、T7やSP6などの好適なRNAポリメラーゼプロモーターを用いて多様なベクター内に取り込むことが可能である。或いは、相補的RNAを構成的或いは誘導的に合成するようなこれらcDNA産物を、細胞株、細胞又は組織内に導入することができる。
【0239】
細胞内の安定性を高め、半減期を長くするためにRNA分子を修飾することができる。限定するものではないが可能な修飾としては、分子の5'末端、3'末端、或いはその両方において隣接配列群を追加することや、分子の主鎖内においてホスホジエステラーゼ結合ではなくホスホロチオエート又は2'O-メチルを使用することが含まれる。この概念は、PNAの産出に固有のものであるが、これら全ての分子に拡大することができる。そのためには、内因性エンドヌクレアーゼによって容易には認識されない、アデニン、シチジン、グアニン、チミン、及びウリジンにアセチル−、メチル−、チオ−及び同様の修飾をしたものや、非従来型塩基、例えばイノシン、クエオシン(queosine)、ワイブトシン(wybutosine)等を含める。
【0240】
本発明の更なる実施例は、EXMESをコードするポリヌクレオチドの発現の変化に有効な化合物をスクリーニングする方法を含む。限定するものではないが特異ポリヌクレオチドの発現変化を起こすのに有効な化合物には、オリゴヌクレオチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、三重らせん形成オリゴヌクレオチド、転写因子その他のポリペプチド転写制御因子、及び特異ポリヌクレオチド配列と相互作用し得る非高分子化学的実体がある。有効な化合物は、ポリヌクレオチド発現のインヒビター又はエンハンサーのいずれかとして作用することによりポリヌクレオチド発現を変異し得る。従って、EXMESの発現又は活性の増加に関連する疾患の治療においては、EXMESをコードするポリヌクレオチドの発現を特異的に阻害する化合物が治療上有用であり、EXMESの発現又は活性の低下に関連する疾患の治療においては、EXMESをコードするポリヌクレオチドの発現を特異的に促進する化合物が治療上有用であり得る。
【0241】
特異ポリヌクレオチドの発現改変における有効性に対して、少なくとも1個から複数個の試験化合物をスクリーニングし得る。試験化合物は、当分野で通常知られている任意の方法により得られる。このような方法には、ポリヌクレオチドの発現を変異させる場合と、既存の、市販の又は私的な、天然又は非天然の化合物ライブラリから選択する場合と、標的ポリヌクレオチドの化学的及び/又は構造的特性に基づく化合物を合理的にデザインする場合と、組み合わせ的に又は無作為に生成した化合物のライブラリから選択する場合に有効であることが知られているような化合物の化学修飾がある。EXMESをコードするポリヌクレオチドを含むサンプルは、このようにして得られた試験化合物の少なくとも1つに曝露する。サンプルには例えば、無傷細胞、又は透過化処理した細胞、或いはin vitro 無細胞系すなわち再構成生化学系があり得る。EXMESをコードするポリヌクレオチドの発現における変化は、当分野で通常知られている任意の方法でアッセイする。通常、EXMESをコードするポリヌクレオチドの配列に相補的なヌクレオチド配列を有するプローブを用いたハイブリダイゼーションにより、特異ヌクレオチドの発現を検出する。ハイブリダイゼーション量を定量し、それによって1つ以上の試験化合物に曝露される及び曝露されないポリヌクレオチドの発現の比較に対する基礎を形成し得る。試験化合物に曝露されるポリヌクレオチドの発現における変化の検出は、ポリヌクレオチドの発現を改変する際に試験化合物が有効であることを示している。特異ポリヌクレオチドの発現改変に有効な化合物に対して、例えば分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe )遺伝子発現系(Atkins, D. 他 (1999) 米国特許第5,932,435号、Arndt, G.M. 他 (2000) Nucleic Acids Res. 28:E15)又はHeLa細胞等のヒト細胞系(Clarke, M.L. 他 (2000) Biochem. Biophys. Res. Commun. 268:8-13)を用いてスクリーニングを実行する。本発明の或る特定の実施態様は、或る特定ポリヌクレオチド配列に対するアンチセンス活性について、オリゴヌクレオチド(デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、ペプチド核酸、修飾したオリゴヌクレオチド)の組み合わせライブラリをスクリーニングする過程に関する(Bruice, T.W. 他 (1997)米国特許第5,686,242号、Bruice, T.W. 他 (2000)米国特許第6,022,691号)。
【0242】
ベクターを細胞又は組織に導入する多数の方法が利用可能であり、in vivo、in vitro及びex vivoの使用に対して同程度に適している。ex vivo治療の場合、ベクターを、患者から採取した幹細胞内に導入し、クローニング増殖して同患者に自家移植で戻すことができる。トランスフェクションによる、又はリボソーム注入やポリカチオンアミノポリマーによる送達は、当分野で周知の方法を用いて実行することができる(例えばGoldman, C.K.他 (1997) Nat. Biotechnol. 15:462-466を参照)。
【0243】
上記の治療方法はいずれも、例えば、ヒト、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ウサギ、サルなどの哺乳類を含めて治療が必要な全ての被験体に適用できる。
【0244】
本発明のさらなる実施態様は、通常薬剤として許容できる賦形剤で処方される活性成分を有する組成物の投与に関連する。賦形剤には例えば、糖、でんぷん、セルロース、ゴム及びタンパク質がある。様々な剤型が広く知られており、詳細はRemington's Pharmaceutical Sciences(Maack Publishing, Easton PA)の最新版に記載されている。このような組成物は、EXMES、EXMESの抗体、擬態、アゴニスト、アンタゴニスト、又はEXMESのインヒビターなどからなる。
【0245】
本発明に用いられる組成物は、任意の数の経路によって投与することができ、限定するものではないが経路には、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、骨髄内、クモ膜下腔内、心室内、肺、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、腸内、局所、舌下又は直腸がある。
【0246】
肺から投与する組成物は、液状又は乾燥粉末状で調製し得る。このような組成物は通常、患者が吸入する直前にエアロゾル化する。小分子(例えば伝統的な低分子量有機薬)の場合には、速効製剤のエアロゾル送達は当分野で公知である。高分子(例えばより大きなペプチド及びタンパク質)の場合には、当該分野において肺の肺胞領域を介しての肺送達が最近向上したことにより、インスリン等の薬剤を実質的に血液循環へ輸送することを可能にした(Patton, J.S. 他, 米国特許第5,997,848号等を参照)。肺送達は、針注射なしに投与する点で優れており、有毒な可能性のある浸透エンハンサーの必要性をなくす。
【0247】
本発明での使用に適した組成物には、所定の目的を達成するために必要なだけの量の活性成分を含有する組成物が含まれる。有効投与量の決定は、当業者の能力の範囲内で行う。
【0248】
EXMES又はその断片を含む高分子を直接細胞内に送達するべく、特殊な形態に組成物が調製されるのが好ましい。例えば、細胞不透過性高分子を含むリポソーム製剤は、その高分子の細胞融合と細胞内送達とを促進し得る。別法では、EXMES又はその断片をHIV Tat-1タンパク質から得た短い陽イオンN末端部に結合することもできる。このようにして生成された融合タンパク質類は、或るマウスモデル系の、脳を含む全ての組織の細胞群に形質導入することがわかっている(Schwarze, S.R. 他(1999) Science 285:1569-1572)。
【0249】
任意の化合物に対して、細胞培養アッセイ、例えば新生物性細胞の細胞培養アッセイにおいて、或いは、動物モデル、例えばマウス、ラット、ウサギ、イヌ、サル又はブタ等において、先ず治療上の有効投与量を推定することができる。動物モデルはまた、好適な濃度範囲及び投与経路を決定するためにも用い得る。このような情報を用いて、次にヒトに対する有益な投与量及び投与経路を決定することができる。
【0250】
治療有効量は、症状や容態を回復させる活性成分の量、たとえばEXMES又はその断片、EXMESの抗体、EXMESのアゴニスト又はアンタゴニスト、インヒビターなどの量を指す。治療有効度及び毒性は、細胞培養又は動物実験における標準的な薬剤手法によって、例えばED50(集団の50%の治療有効量)又はLD50(集団の50%の致死量)を測定するなどして決定することができる。毒性効果の治療効果に対する投与量比が治療指数であり、LD50/ED50比として表すことができる。高い治療指数を示すような組成物が望ましい。細胞培養アッセイ及び動物実験から得られたデータは、ヒトに用いるための投与量の範囲を策定するのに用いられる。このような組成物に含まれる投与量は、毒性を殆ど或いは全く持たず、ED50を含むような血中濃度の範囲にあることが好ましい。投与量は、用いられる投与形態、患者の感受性及び投与の経路によってこの範囲内で変わる。
【0251】
正確な投与量は、治療が必要な被験者に関する要素を考慮して、現場の医者が決定することになる。充分なレベルの活性成分を与え、或いは所望の効果を維持すべく、用法及び用量を調整する。被験者に関する要素としては、疾患の重症度、被験者の全身健康状態、被験者の年齢、体重及び性別(ジェンダー)、投与の時間及び頻度、薬剤の併用、反応感受性及び治療に対する応答等を考慮しうる。作用期間が長い組成物は、特定の製剤の半減期及びクリアランス率によって、3〜4日毎に1度、1週間に1度、或いは2週間に1度の間隔で投与し得る。
【0252】
通常の投与量は、投与の経路にもよるが約0.1〜100.000μgであり、合計で約1gまでとする。特定の投与量及び送達方法に関するガイダンスは文献に記載されており、現場の医者は通常それを利用することができる。当業者は、タンパク質又はインヒビターに対する処方とは異なる、ヌクレオチドに対する処方を利用することになる。同様に、ポリヌクレオチド又はポリペプチドの送達は、特定の細胞、症状、部位などに特異的なものとなる。
【0253】
(診断)
別の実施様態では、EXMESに特異的に結合する抗体が、EXMESの発現によって特徴付けられる疾患の診断、又はEXMESやEXMESのアゴニスト又はアンタゴニスト、インヒビターで治療を受けている患者をモニターするためのアッセイに用いられる。診断目的に有用な抗体は、上記の治療の箇所で記載した方法と同じ方法で作成される。EXMESの診断アッセイには、抗体及び標識を用いてヒトの体液或いは細胞や組織から採取されたものからEXMESを検出する方法が含まれる。この抗体は修飾されたものもされていないものも可能であり、レポーター分子との共有結合又は非共有結合で標識化できる。レポーター分子としては広くさまざまな種類が本分野で知られており、また使用可能であるが、そのうちのいくつかは上記で説明されている。
【0254】
EXMESを測定するためのELISA,RIA,及びFACSを含む種々のプロトコルは、当分野では周知であり、変わった或いは異常なレベルのEXMESの発現を診断する元となるものを提供する。正常或いは標準的なEXMESの発現の値は、複合体の形成に適した条件下で、正常な哺乳動物、例えばヒトなどの被験者から採取した体液又は細胞とEXMESに対する抗体とを結合させることによって決定する。標準複合体形成量は、種々の方法、例えば測光法で定量できる。被験者、対照、及び疾患生検組織からの各サンプルのEXMESの発現の量が基準値と比較される。標準値と被験体との偏差が、疾患を診断するパラメータを確定する。
【0255】
本発明の別の実施態様によれば、EXMESをコードするポリヌクレオチドを診断のために用いることもできる。用いることができるポリヌクレオチドには、オリゴヌクレオチド配列、相補的RNA及びDNA分子、そしてPNAが含まれる。このポリヌクレオチドを用いて、疾患と相関し得るEXMESを発現する生検組織における遺伝子の発現を検出し定量する。この診断アッセイを用いて、EXMESの存在の有無、更に過剰な発現を調べ、治療中のEXMES値の調節を監視する。
【0256】
或る実施形態では、EXMES又は近縁の分子をコードする、ゲノム配列などポリヌクレオチドを検出可能なPCRプローブ類とのハイブリダイゼーションを、EXMESをコードする核酸配列を同定するために用いることができる。プローブが高度に特異的な領域(例えば5'調節領域)から作られている、或いはやや特異性の低い領域(例えば保存されたモチーフ)から作られているかにかかわらず、そのプローブの特異性と、ハイブリダイゼーション或いは増幅のストリンジェンシーによって、そのプローブがEXMESをコードする自然界の配列のみを同定するかどうか、或いは対立遺伝子や関連配列コードする自然界の配列のみを同定するかどうかが決まるであろう。
【0257】
プローブはまた、関連する配列の検出に利用でき、また、EXMESをコードする任意の配列との少なくとも50%の配列同一性を有し得る。目的の本発明のハイブリダイゼーションプローブには、DNA或いはRNAが可能であり、SEQ ID NO:23-44の配列、或いはEXMES遺伝子のプロモーター、エンハンサー、イントロンを含むゲノム配列に由来し得る。
【0258】
EXMESをコードするポリヌクレオチドに対して特異的なハイブリダイゼーションプローブの作製方法には、EXMESをコード又はEXMES誘導体をコードするポリヌクレオチドをmRNAプローブの作製のためのベクターにクローニングする方法がある。mRNAプローブ作製のためのベクターは、当業者に知られており、市販されており、好適なRNAポリメラーゼ及び好適な標識されたヌクレオチドを加えることによって、in vitroでRNAプローブを合成するために用いられ得る。ハイブリダイゼーションプローブは、種々のレポーターの集団によって標識され得る。レポーター集団の例としては、32P又は35S等の放射性核種、或いはアビジン/ビオチン結合系を介してプローブに結合されたアルカリホスファターゼ等の酵素標識などが挙げられる。
【0259】
EXMESをコードするポリヌクレオチドを、EXMESの発現に関係する疾患の診断に用い得る。限定するものではないが、このような疾患として自己免疫/炎症疾患には、後天性免疫不全症候群(AIDS)、アジソン病、成人呼吸窮迫症候群、アレルギー、強直性脊椎炎、アミロイド症、貧血、喘息、アテローム性動脈硬化症、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性甲状腺炎、自己免疫多発性内分泌腺障害症(APECED)、気管支炎、胆嚢炎、接触皮膚炎、クローン病、アトピー性皮膚炎、皮膚筋炎、糖尿病、肺気腫、リンパ球毒素性一時性リンパ球減少症、赤芽球症、結節性紅斑、萎縮性胃炎、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、痛風、グレーブス病、橋本甲状腺炎、過好酸球増加症、過敏性大腸症候群、多発性硬化症、重症筋無力症、心筋又は心膜の炎症、骨関節炎、骨粗しょう症、膵炎、多発性筋炎、乾癬、ライター症候群、リウマチ様関節炎、強皮症、シェーグレン症候群、全身性アナフィラキシー、全身性紅斑性狼瘡、全身性硬化症、血小板減少症、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、ウェルナー症候群、癌の合併症、血液透析、体外循環、ウイルス性感染症、細菌性感染症、真菌性感染症、寄生虫感染症、原虫感染症、蠕虫の感染症及び外傷が含まれる。神経系疾患の中には、癲癇、虚血性脳血管障害、脳卒中、大脳新生物、アルツハイマー病、ピック病、ハンチントン病、痴呆、パーキソン病及びその他の錐体外路障害、筋萎縮性側策硬化及びその他の運動ニューロン障害、進行性神経性筋萎縮症、色素性網膜炎、遺伝性運動失調、多発性硬化症及び他の脱髄疾患、細菌性及びウイルス性髄膜炎、脳膿瘍、硬膜下蓄膿症、硬膜外膿瘍、化膿性頭蓋内血栓性静脈炎、脊髄炎及び神経根炎、ウイルス性中枢神経系疾患、プリオン病(クールー、クロイツフェルト‐ヤコブ病、及びGerstmann-Straussler-Scheinker症候群を含む)、致死性家族性不眠症、神経系性栄養病及び代謝病、神経線維腫症、、結節硬化症、小脳網膜血管芽腫(cerebelloretinal hemangioblastomatosis)、脳3叉神経血管症候群、ダウン症候群を含む中枢神経系性の精神薄弱及び他の発達障害、脳性麻痺、神経骨格異常症、自律神経系障害、脳神経障害、脊髄障害、筋ジストロフィー及びその他の神経筋障害、末梢神経疾患、皮膚筋炎及び多発性筋炎、遺伝性、代謝性、内分泌性、及び中毒性の筋疾患、重症筋無力症、周期性四肢麻痺、精神病(気分性、不安性の障害、分裂病性疾患)、季節性障害(SAD)、静座不能、健忘症、緊張病、糖尿病性ニューロパシー、錐体外路性終末欠陥症候群、ジストニー、分裂病性精神障害、帯状疱疹後神経痛、トゥーレット病、進行性核上麻痺、皮質基底核変性症(corticobasal degeneration)、家族性前頭側頭骨痴呆が含まれる。また内分泌疾患の中には原発脳腫瘍及び腺腫、妊娠性梗塞、下垂体切除、動脈瘤、血管奇形、血栓症、感染症、免疫異常、頭部外傷による合併症などの病変から起こる視床下部及び下垂体の障害と、性機能低下及びシーハン症候群、尿崩症、カルマン病、ハンド‐シュラークリスチャン病、レテラー・ジーヴェ病、サルコイドーシス、エンプティセラ(トルコ鞍空虚)症候群、小人症を含む下垂体低下に関連した障害と、良性線種によって発生しやすい抗利尿ホルモン(ADH)不適合分泌症候群(SIADH)及び先端巨大症、巨人症を含む下垂体亢進に関連した障害と、甲状腺腫及び粘液水腫、細菌感染性急性甲状腺炎、ウイルス感染性亜急性甲状腺炎、自己免疫性甲状腺炎(橋本病)、クレチン病を含む甲状腺機能低下症に関連した障害と、甲状腺中毒症及びその様々な型、グレーブス病、前脛骨粘液水腫、中毒性多結節性甲状腺腫、甲状腺癌、プラマー病を含む甲状腺機能亢進症と、Conn病(chronic hypercalemia)を含む副甲状腺機能亢進症と、I型及びII型糖尿病及び合併症などの膵臓疾患と、過形成及び副腎皮質の癌腫や腺腫、アルカローシスに関連した高血圧、アミロイド症、低カリウム血、クッシング病、リドル症候群、Arnold-Healy-Gordon症候群、褐色細胞腫瘍、アジソン病、副腎機能不全などの副腎に関連した障害がある。また女性の異常プロラクチン産生及び不妊症、子宮内膜症、月経周期の摂動、多嚢胞性卵巣疾患、高プロラクチン血症、選択的性腺刺激ホルモン不全(isolated gonadotropin deficiency)、無月経、乳汁漏出症、半陰陽、多毛症及び男性化、乳癌、閉経期後の骨粗鬆症、男性のライジッヒ細胞過形成、男性更年期、生殖細胞無形成症、ライジッヒ細胞腫瘍に関連した性機能亢進、アンドロゲン受容体の欠如に関連したアンドロゲン耐性、5α−還元酵素症候群、21‐ヒドロキシラーゼ症候群、女性乳房症などの生殖腺ステロイドホルモンに関連した疾患とが含まれる。発達障害には尿細管性アシドーシス、貧血、クッシング症候群、軟骨形成不全性小人症、デュシェンヌ/ベッカー型筋ジストロフィー、癲癇、性腺形成異常、WAGR症候群(ウィルムス腫瘍、無虹彩症、尿生殖器異常、精神遅滞)、スミス‐マジェニス症候群(Smith-Magenis syndrome)、骨髄異形成症候群、遺伝性粘膜上皮異形成、遺伝性角皮症や、シャルコーマリーツース病及び神経線維腫症などの遺伝性神経病、甲状腺機能低下症、水頭症や、Syndenham舞踏病(Syndenham's chorea)及び脳性小児麻痺などの発作障害、二分脊椎、無脳症、頭蓋脊椎披裂、先天性緑内障、白内障、感音難聴が含まれる。細胞増殖異常には日光角化症、動脈硬化、アテローム硬化、滑液包炎、硬変、肝炎、混合性結合組織病(MCTD)、骨髄線維症、発作性夜間ヘモグロビン尿症、真性多血症、乾癬、原発性血小板血症、並びに、腺癌、白血病、リンパ腫、黒色腫、骨髄腫、肉腫、及び奇形癌など癌、具体的には、副腎、膀胱、骨、骨髄、脳、乳房、頚部、胆嚢、神経節、消化管、心臓、腎臓、肝臓、肺、筋肉、卵巣、膵臓、副甲状腺、陰茎、前立腺、唾液腺、皮膚、脾臓、精巣、胸腺、甲状腺、及び子宮の癌が含まれる。生殖系疾患としてプロラクチン産生障害があり、卵管疾患、排卵欠損症、子宮内膜症、性周期障害、月経周期障害、多嚢胞性卵巣症候群、卵巣過刺激症候群、子宮内膜癌、卵巣癌、子宮筋腫、自己免疫疾患、子宮外妊娠、催奇形、乳癌、繊維嚢胞性乳房疾患、乳漏症、精子形成破壊、精子異常生理、良性前立腺肥大、前立腺炎、パイロニー病、性交不能が含まれる。心血管障害にはうっ血性心不全、虚血性心疾患、狭心症、心筋梗塞、高血圧性心疾患、変性弁膜性心疾患、石灰化大動脈弁狭窄症、先天性2尖大動脈弁、僧帽弁輪状石灰化(mitral annular calcification)、僧帽弁脱出、リウマチ熱、リウマチ性心疾患、感染性心内膜炎、非細菌性血栓性心内膜炎、全身性紅斑性狼瘡の心内膜炎、カルチノイド心疾患、心筋症、心筋炎、心膜炎、腫瘍性心疾患、先天性心臓疾患、心臓移植の合併症などの心疾患がある。感染症には、アデノウイルス、アレナウイルス、ブンヤウイルス(bunyavirus)、カリチウイルス(calicivirus)、コロナウイルス、フィロウイルス、ヘパドナウイルス、ヘルペスウイルス、フラビウイルス、オルソミクソウイルス、パルボウイルス、パポーバウイルス、パラミクソウイルス、ピコルナウイルス、ポックスウイルス、レオウイルス、レトロウイルス、ラブドウイルス、トガウイルスに分類されるウイルス病原体による感染や、細菌による感染(肺炎球菌、ブドウ球菌、連鎖球菌、バシラス菌、コリネバクテリウム、クロストリジウム、髄膜炎菌、淋菌、リステリア、モラクセラ、キンゲラ、ヘモフィルス、レジオネラ、百日咳菌類(ボルデテラ)や、シゲラ、サルモネラ、カンピロバクターを含むグラム陰性腸内細菌、シュードモナス、ビブリオ、ブルセラ、野兎病菌類(フランシセラ)、エルシニア、バルトネラ、norcardium、放線菌、ミコバクテリウム、spirochaetale、リケッチア、クラミジア、マイコプラズマに分類)、真菌感染(分類はアスペルギルス、ブラストミセス、皮膚糸状菌、クリプトコッカス、コクシジオイデス、malasezzia、ヒストプラスマ、又は他の真菌症起因菌)、寄生虫感染(分類はプラスモディウムすなわちマラリア原虫、寄生性アメーバ、リーシュマニア、トリパノソーマ、トキソプラズマ、ニューモシスチスカリニ、腸内原虫(ジアルジアなど)、トリコモナス、組織線虫(旋毛虫など)、腸管寄生線虫(回虫など)、リンパ管フィラリア線虫、吸虫(住血吸虫など)、及び条虫(サナダムシなど))が含まれる。EXMESをコードするポリヌクレオチドは、変容したEXMES発現を検出するために患者から採取した体液或いは組織を利用する、サザーン法やノーザン法、ドットブロット法、或いはその他の膜系の技術や、PCR法や、ディップスティック(dipstick)、ピン(pin)、及びマルチフォーマットのELISA式アッセイ、及びマイクロアレイに使用可能である。このような定性方法又は定量方法は、当分野で公知である。
【0260】
或る特定の態様では、EXMES をコードするポリヌクレオチドは、関連する疾患、特に前記したこれらを検出するアッセイにおいて有用であり得る。EXMESをコードする配列に相補的なポリヌクレオチドは、標準的な方法で標識化され、ハイブリダイゼーション複合体の形成に好適な条件の下、患者から採取した体液或いは組織のサンプルに加えることができる。好適なインキュベーション期間が経過したらサンプルを洗浄し、シグナルを定量して標準値と比較する。患者サンプル中のシグナルの量が、対照サンプルと較べて著しく変化している場合は、該サンプル内の、EXMESをコードするポリヌクレオチドのレベル変化の存在が、関連する疾患の存在を示す。このようなアッセイは、動物実験、臨床試験における特定の治療効果を評価するため、或いは個々の患者の治療をモニターするために用いることもできる。
【0261】
EXMESの発現に関連する疾患の診断基準を提供するために、発現のための正常或いは標準プロフィールを確立する。これは、ハイブリダイゼーション或いは増幅に好適な条件の下、動物或いはヒトのいずれかの正常な被験体から採取された体液或いは細胞抽出物と、EXMESをコードする配列或いはその断片とを混合することにより達成され得る。実質的に精製されたポリヌクレオチドを既知量で用いて行った実験から得た値を正常な被験者から得た値と比較することにより、標準ハイブリダイゼーションを定量することができる。このようにして得た標準値は、疾患の徴候を示す患者から得たサンプルから得た値と比較することができる。標準値からの偏差を用いて疾患の存在を確定する。
【0262】
疾患の存在が確定されて治療プロトコルが開始されると、患者の発現レベルが正常な被検者に観察されるレベルに近づき始めたかどうかを測定するため、ハイブリダイゼーションアッセイを定期的に繰り返し得る。連続アッセイから得られた結果を用いて、数日から数ヶ月の期間にわたる治療の効果を示し得る。
【0263】
癌に関しては、個体からの生体組織における異常な量の転写物(過少発現又は過剰発現)の存在は、疾患の発生素質を示したり、実際に臨床的症状が現われたりする前に疾患を検出する方法を提供し得る。この種のより明確な診断により、医療の専門家が予防方法又は積極的な治療法を早くから利用し、それによって癌の発生又は更なる進行を防止することが可能となる。
【0264】
EXMESをコードする配列から設計されたオリゴヌクレオチドのさらなる診断への利用には、PCRの利用が含まれ得る。これらのオリゴマーは、化学的に合成するか、酵素により生産するか、或いはin vitroで産出し得る。オリゴマーは、好ましくはEXMESをコードするポリヌクレオチドの断片、或いはEXMESをコードするポリヌクレオチドと相補的なポリヌクレオチドの断片を含み、最適な条件下で、特定の遺伝子や条件を識別するために利用される。また、オリゴマーは、やや緩いストリンジェント条件下で、近縁のDNA或いはRNA配列の検出、定量、或いはその両方のため用いることが可能である。
【0265】
特定態様においては、EXMES をコードするポリヌクレオチド配列群に由来するオリゴヌクレオチドプライマー類を用いて、一塩基多型(SNP)を検出し得る。SNPは、多くの場合にヒトの先天性又は後天性遺伝病の原因となるような置換、挿入及び欠失である。限定するものではないがSNPの検出方法には、SSCP(single-stranded conformation polymorphism)及び蛍光SSCP(fSSCP)法がある。SSCPでは、EXMESをコードするポリヌクレオチド配列由来のオリゴヌクレオチドプライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)でDNAを増幅する。DNAは例えば、病変組織又は正常組織、生検サンプル、体液その他に由来し得る。DNA内のSNPは、一本鎖形状のPCR生成物の2次及び3次構造に差異を生じさせる。差異は非変性ゲル中でのゲル電気泳動法を用いて検出可能である。fSCCPでは、オリゴヌクレオチドプライマーを蛍光性に標識する。それによってDNAシークエンシング機などの高処理機器でアンプリマー(amplimer)の検出が可能になる。更に、インシリコSNP(in silico SNP, isSNP)と呼ばれる配列データベース分析法は、一般的なコンセンサス配列へアセンブリされるような個々のオーバーラップするDNA断片の配列を比較することにより、多型性を同定し得る。これらのコンピュータベースの方法は、DNAの実験室での調製に、また統計モデル及びDNA配列クロマトグラムの自動分析を用いたシークエンシングのエラーに起因する配列の変異をフィルタリングして除去する。別の態様では、例えば高処理MASSARRAYシステム(Sequenom, Inc., San Diego CA)を用いた質量分析によりSNPを検出し、特徴付ける。
【0266】
SNPを利用して、ヒト疾患の遺伝的基礎を研究しうる。例えば、少なくとも16の一般的SNPが、非インスリン依存型真性糖尿病と関連がある。SNPは、嚢胞性線維症、鎌状赤血球貧血或いは慢性肉芽腫症等の単一遺伝子病の転帰の差異を研究する面でも有用である。例えば、マンノース結合レクチンの変異体であるMBL2は、嚢胞性線維症の肺での有害な転帰と相関することが示されてきた。SNPはまた、生命を脅かす毒性等の薬剤への患者の反応に影響する遺伝変異体の同定という薬理ゲノミックスにおいても有用性がある。例えば、ALOX5遺伝子のコア・プロモーターにおける或る変異は5-リポキシゲナーゼ経路を標的とする抗喘息剤を用いた治療への臨床反応の減少につながるが、Nアセチルトランスフェラーゼの或る変異は抗結核薬剤イソニアジドに反応する末梢神経障害の高発生率と関連する。異なる集団におけるSNP分布の分析は、集団の起源と移動の追跡以外にも遺伝的浮動、突然変異、組換え、選択の調査において有用である(Taylor, J.G. 他(2001) Trends Mol. Med. 7:507-512、Kwok, P.-Y.及びZ. Gu (1999) Mol. Med. Today 5:538-543、Nowotny, P. 他(2001) Curr. Opin. Neurobiol. 11:637-641)。
【0267】
EXMESの発現を定量するために用い得る方法には、ヌクレオチドの放射標識又はビオチン標識、調節核酸の相互増幅(coamplification)及び標準曲線から得た結果の補間もある(例えばMelby, P.C.他(1993) J. Immunol. Methods 159:235-244、Duplaa, C.他 (1993) Anal. Biochem. 212:229-236を参照)。目的のオリゴマー又はポリヌクレオチドが種々の希釈液中に存在し、分光光度法又は比色反応によって定量が迅速になるような高処理フォーマットのアッセイを行うことによって、複数のサンプルの定量速度を加速することができる。
【0268】
更に別の実施様態では、本明細書に記載した任意のポリヌクレオチドに由来するオリゴヌクレオチド又はより長い断片を、或るマイクロアレイにおけるエレメント群として用いることができる。多数の遺伝子の関連発現レベルを同時にモニターする転写物イメージング技術にマイクロアレイを用いることが可能である。これについては、以下に記載する。マイクロアレイはまた、遺伝変異体、突然変異及び多型性の同定に用いることができる。この情報を用いることで、遺伝子機能を決定し、疾患の遺伝的根拠を理解し、疾患を診断し、遺伝子発現の機能としての疾病の進行/後退をモニターし、疾病治療における薬物の活性を開発及びモニターすることができる。特に、患者にとって最もふさわしく、有効な治療法を選択するために、この情報を用いて患者の薬理ゲノムプロフィールを開発することができる。例えば、患者の薬理ゲノムプロフィールに基づき、患者に対して高度に効果的で副作用を殆ど示さない治療薬を選択することができる。
【0269】
別の実施様態では、EXMES、EXMESの断片、EXMESに特異的な抗体をマイクロアレイ上のエレメントとして用いることができる。マイクロアレイを用いて、上記のようなタンパク質−タンパク質相互作用、薬物−標的相互作用及び遺伝子発現プロファイルをモニター又は測定することが可能である。
【0270】
或る実施態様は、或る組織又は細胞タイプの転写イメージを作製する、本発明のポリヌクレオチドの使用に関連する。転写イメージは、特定の組織又は細胞タイプによる遺伝子発現の包括的パターンを表す。包括的遺伝子発現パターンは、所与の条件下で所与の時間に発現した遺伝子の数及び相対存在量を定量することにより分析し得る(Seilhamer 他の米国特許第5,840,484号 「Comparative Gene Transcript Analysis」を参照。該特許は特に引用することを以って本明細書の一部となす)。従って、特定の組織又は細胞タイプの転写又は逆転写全体に本発明のポリヌクレオチド又はその相補体をハイブリダイズすることにより、転写イメージを生成し得る。或る実施例では、本発明のポリヌクレオチド又はその相補体がマイクロアレイ上のエレメントのサブセットを複数含むような高処理フォーマットでハイブリダイゼーションを発生させる。結果として得られる転写イメージは、遺伝子活性のプロファイルを提供し得る。
【0271】
転写イメージは、組織、細胞株、生検又はその生体サンプルから単離した転写物を用いて作製し得る。転写イメージはしたがって、組織又は生検サンプルの場合にはin vivo、細胞株の場合にはin vitroでの遺伝子発現を反映する。
【0272】
本発明のポリヌクレオチドの発現のプロフィールを作製する転写イメージはまた、工業的又は天然の環境化合物の毒性試験のみならず、in vitroモデル系及び薬剤の前臨床評価と併せて使用し得る。全ての化合物は、作用及び毒性のメカニズムを標示し、しばしば分子フィンガープリント又は毒性シグネチャと称される、特徴的な遺伝子発現パターンを惹起する(Nuwaysir, E.F. 他 (1999) Mol. Carcinog. 24:153-159、Steiner, S及びN.L. Anderson (2000) Toxicol. Lett. 112-113:467-471)。試験化合物が既知の毒性を有する化合物のシグネチャと類似のシグネチャを有する場合には、毒性特性を共有している可能性がある。フィンガープリント又はシグネチャは、多数の遺伝子及び遺伝子ファミリーからの発現情報を含んでいる場合に、最も有用且つ正確である。理想的には、ゲノム全域にわたる発現の測定が、最高品質のシグネチャを提供する。たとえ、発現が任意の試験された化合物によって変容しない遺伝子があったとしても、それらの発現レベルを残りの発現データをノーマライズするために使用できるため、それらの遺伝子は重要である。ノーマライズ手順は、異なる化合物で処理した後の発現データの比較に有用である。毒物シグネチャの要素に遺伝子機能を割り当てることが毒性メカニズムの解釈に役立つが、毒性の予測につながる、シグネチャを統計的に一致させる過程に、遺伝子機能の知識は必要とされない(例えば2000年2月29日に米国国立環境健康科学研究所(National Institute of Environmental Health Sciences)より発行されたPress Release 00-02を参照されたい。これについてはhttp://www.niehs.nih.gov/oc/news/toxchip.htmで入手可能である)。従って、毒性シグネチャを用いる中毒学的スクリーニングの際に、全ての発現した遺伝子配列を含めることは重要且つ望ましいことである。
【0273】
或る実施様態では、核酸を有する生体サンプルを試験化合物で処理することにより、この試験化合物の毒性を算定する。処理した生物学的サンプル中で発現した核酸は、本発明のポリヌクレオチドに特異的な1つ若しくは複数のプローブでハイブリダイズし、それによって本発明のポリヌクレオチドに対応する転写物レベルを定量し得る。処理した生物学的サンプル中の転写レベルを、未処理生物学的サンプル中のレベルと比較する。両サンプルの転写物レベルの差は、処理されたサンプル中で試験化合物が引き起こす毒性反応を示す。
【0274】
別の実施態様は、本明細書に開示するポリペプチド配列群を用いて或る組織又は細胞タイプのプロテオームを分析することに関する。プロテオームの語は、特定の組織又は細胞タイプでのタンパク質発現の包括的パターンを指す。プロテオームの各タンパク質成分は、個々に更なる分析にかけることができる。プロテオーム発現パターンすなわちプロファイルは、所与の条件下で所与の時間に発現したタンパク質の数及び相対存在量を定量することにより分析し得る。したがって、或る細胞のプロテオームのプロファイルは、特定の組織又は細胞タイプのポリペプチドを分離及び分析することにより作成し得る。或る実施態様では、1次元等電点電気泳動によりサンプルからタンパク質を分離し、次に2次元ドデシル硫酸ナトリウムスラブゲル電気泳動により分子量に応じて分離するような2次元ゲル電気泳動により分離が達成される(前出のSteiner及びAnderson)。タンパク質は、通常はクーマシーブルー、或いは銀染色液又は蛍光染色液などの物質を用いてゲルを染色することにより、分散した、独自の位置にある点としてゲル中で可視化される。各タンパク質スポットの光学密度は、通常、サンプル中のタンパク質レベルに比例する。異なるサンプル、例えば試験化合物又は治療薬で処理又は未処理のいずれかの生物学的サンプルから得られる同等に位置するタンパク質スポットの光学密度を比較し、処理に関連するタンパク質スポット密度の変化を同定する。スポット内のタンパク質は、例えば化学的又は酵素的切断とそれに続く質量分析を用いる標準的な方法を用いて部分的にシークエンシングする。或るスポット内のタンパク質の同一性は、その部分配列を、好適には少なくとも5個の連続するアミノ酸残基を、目的のポリペプチド配列と比較することにより決定し得る。場合によっては、決定的なタンパク質同定のための更なる配列データが得られる。
【0275】
プロテオームのプロファイルは、EXMESに特異的な抗体を用いてEXMES発現レベルを定量することによっても作成可能である。或る実施態様では、マイクロアレイ上のエレメントとしてこれら抗体を用い、マイクロアレイをサンプルに曝して各アレイエレメントへのタンパク質結合レベルを検出することにより、タンパク質発現レベルを定量する(Lueking, A. 他(1999) Anal. Biochem. 270:103-111、Mendoze, L.G.他(1999) Biotechniques 27:778-788)。検出は当分野で既知の様々な方法で行うことができ、例えば、チオール反応性又はアミノ反応性蛍光化合物とサンプル中のタンパク質を反応させ、各アレイエレメントにおける蛍光結合の量を検出し得る。
【0276】
プロテオームレベルでの毒性シグネチャも中毒学的スクリーニングに有用であり、転写レベルでの毒性シグネチャと並行に分析するべきである。数種の組織の数種のタンパク質に対しては、転写物とタンパク質との存在量の相関が乏しいので(Anderson, N.L.及びJ. Seilhamer (1997) Electrophoresis 18:533-537)、転写物イメージには有意に影響しないがプロテオームのプロフィールを変化させるような化合物の分析においてプロテオーム毒物シグネチャは有用たり得る。更に、体液中の転写物の分析はmRNAの急速な分解のために困難なので、プロテオームのプロファイル作成はこのような場合により信頼でき、情報価値があり得る。
【0277】
別の実施様態では、タンパク質を含有する生体サンプルを試験化合物で処理することにより試験化合物の毒性を算定する。処理された生体サンプル中で発現したタンパク質は、各タンパク質の量を定量し得るように分離する。各タンパク質の量を、非処理生物学的サンプル中の対応するタンパク質の量と比較する。両サンプルのタンパク質量の差は、処理サンプル中の試験化合物に対する毒性反応を示す。個々のタンパク質は、個々のタンパク質のアミノ酸残基をシークエンシングし、これら部分配列を本発明のポリペプチドと比較することにより同定する。
【0278】
別の実施様態では、タンパク質を含有する生体サンプルを試験化合物で処理することにより試験化合物の毒性を算定する。生体サンプルから得たタンパク質は、本発明のポリペプチドに特異的な抗体を用いてインキュベートする。抗体により認識されたタンパク質の量を定量する。処理された生物学的サンプル中のタンパク質の量を、非処理生物学的サンプル中のタンパク質の量と比較する。両サンプルのタンパク質量の差は、処理サンプル中の試験化合物に対する毒性反応を示す。
【0279】
マイクロアレイは、本技術分野で既知の方法で調製し、使用し、分析する(例えばBrennan, T.M. 他(1995)米国特許第5,474,796号、Schena, M. 他(1996)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:10614-10619、Baldeschweiler 他(1995)PCT出願第WO95/251116号、Shalon, D.他(1995)PCT出願第WO95/35505号、Heller, R.A. 他(1997)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:2150-2155、Heller, M.J. 他(1997)米国特許第5,605,662号を参照)。様々なタイプのマイクロアレイが公知であり、詳細については、DNA Microarrays:A Practical Approach, M. Schena, 編集 (1999) Oxford University Press, Londonに記載がある。
【0280】
本発明の別の実施態様ではまた、EXMESをコードする核酸配列群を用いて、天然ゲノム配列をマッピングするのに有用なハイブリダイゼーションプローブ群を産生し得る。コード配列又は非コード配列のいずれかを用いることができ、或る例では、コード配列よりも非コード配列が好ましい。例えば、多重遺伝子族のメンバー内でのコード配列の保存により、染色体マッピング中に望ましくないクロスハイブリダイゼーションが生じる可能性がある。核酸配列は、特定の染色体、染色体の特定領域又は人工形成の染色体、例えば、ヒト人工染色体(HAC)、酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)、細菌P1産物、或いは単一染色体cDNAライブラリに対してマッピングされる。(例えばHarrington, J.J.他(1997)Nat. Genet. 15:345-355、Price, C.M.(1993)Blood Rev. 7:127-134、Trask, B.J.(1991)Trends Genet. 7:149-154を参照)。7:149154.) 一度マッピングすると、核酸配列群を用いて、例えば或る病状の遺伝を特定染色体領域の遺伝と又は制限酵素断片長多型(RFLP)と相関させるような遺伝子連鎖地図を開発し得る(例えば、Lander, E.S及びD. Botstein (1986) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83:7353-7357を参照)。
【0281】
蛍光原位置ハイブリッド形成法(FISH)は、他の物理的及び遺伝地図データと相関し得る(例えばHeinz-Ulrich,他 (1995) in Meyers, 前出 965-968ページを参照)。 遺伝地図データの例は、種々の科学雑誌或いはOnline Mendelian Inheritance in Man(OMIM)のウェブサイトに見ることができる。物理的な染色体地図上のEXMESをコードする遺伝子の位置と、特定の疾患との相関性、或いは特定の疾患に対する素因との相関性は、この疾患と関連するDNAの領域の決定に役立ち得るため、ポジショナルクローニングの作業を促進し得る。
【0282】
確定した染色体マーカーを用いた結合分析等の物理的マッピング技術及び染色体標本原位置ハイブリッド形成法を用いて、遺伝地図を拡張することができる。例えばマウスなど別の哺乳動物の染色体上に遺伝子を配置することにより、正確な染色体上の遺伝子座が未知でも、関連するマーカー類をしばしば明らかにし得る。この情報は、ポジショナルクローニングその他の遺伝子発見技術を用いて疾患遺伝子を探す研究者にとって価値がある。疾患又は症候群に関与する遺伝子が、血管拡張性失調症の11q22-23領域等、特定の遺伝子領域への遺伝的結合によって大まかに位置決めがなされると、該領域にマップされた任意の配列は、更なる調査のための関連遺伝子或いは調節遺伝子を提示している可能性がある。(例えばGatti, R.A. 他(1988) Nature 336:577-580を参照)。転座、反転などに起因する、健常者、保有者、罹病者の三者間における染色体位置の相違を検出する場合にも、本発明のヌクレオチド配列を用い得る。
【0283】
本発明の別の実施様態では、EXMES、その触媒作用断片或いは免疫原断片又はそのオリゴペプチドを、種々の任意の薬剤スクリーニング技術における化合物のライブラリのスクリーニングに用いることができる。薬剤スクリーニングに用いる断片は、溶液中に遊離しているか、固体支持物に固定されるか、細胞表面上に保持されるか、細胞内に位置しうる。EXMESと検査する薬剤との結合による複合体の形成を測定することもできる。
【0284】
別の薬物スクリーニング方法は、目的のタンパク質に対して好適な結合親和性を有する化合物を高い処理能力でスクリーニングするために用いられる(例えばGeysen, 他(1984)PCT出願第WO84/03564号を参照)。この方法においては、多数の異なる小さな試験用化合物を固体基板上で合成する。試験用化合物は、EXMES、或いはその断片と反応してから洗浄される。次に、本技術分野でよく知られている方法で、結合したEXMESを検出する。精製したEXMESはまた、上記した薬剤のスクリーニング技術において用いるプレート上で直接コーティングすることもできる。別法では、非中和抗体を用いてペプチドを捕捉し、ペプチドを固体支持物に固定することもできる。
【0285】
別の実施様態では、EXMESと結合可能な中和抗体がEXMESと結合するため試験用化合物と特に競合する、競合的薬剤スクリーニングアッセイを用いることができる。このようにして、EXMESと1つ以上の抗原決定因子を共有するどのペプチドの存在をも、抗体を使って検出できる。
【0286】
別の実施例では、発展途上の分子生物学技術にEXMESをコードするヌクレオチド配列を用いて、限定はされないが、現在知られているトリプレット暗号及び特異的な塩基対相互作用などのヌクレオチド配列の特性に依存する新しい技術を提供することができる。
【0287】
更に詳細説明をしなくとも、当業者であれば以上の説明を以って本発明を最大限に利用できるであろう。したがって、これ以下に記載する実施例は単なる例示目的にすぎず、いかようにも本発明を限定するものではない。
【0288】
本明細書において開示した全ての特許、特許出願及び刊行物は、米国特許出願第60/301,789号、第60/324,149号、第60/327,713号、第60/329,215号、第60/340,218号、第60/370,761号及び第373,824号を含め、言及することをもって特に本明細書の一部となす。
【実施例】
【0289】
(1 cDNAライブラリの作製)
Incyte cDNA群の由来は、LIFESEQ GOLDデータベース (Incyte Genomics, Palo Alto CA)に記載されたcDNAライブラリ群である。幾つかの組織はホモジナイズしてグアニジニウムイソチオシアネート溶液に溶解し、他の組織はホモジナイズしてフェノールに又は変性剤群の好適な混合液に溶解した。混合液の1例であるTRIZOL(Invitrogen)は、フェノールとグアニジンイソチオシアネートとの単相溶液である。結果として得られた溶解物は、塩化セシウムクッション上で遠心分離するかクロロホルムで抽出した。イソプロパノールか、酢酸ナトリウムとエタノールか、いずれか一方、或いは別の方法を用いて、溶解物からRNAを沈殿させた。
【0290】
RNAの純度を高めるため、RNAのフェノールによる抽出及び沈殿を必要な回数繰り返した。場合によっては、DNアーゼでRNAを処理した。殆どのライブラリでは、オリゴd(T)連結常磁性粒子(Promega)、OLIGOTEXラテックス粒子(QIAGEN, Chatsworth CA)又はOLIGOTEX mRNA精製キット(QIAGEN)を用いて、ポリ(A+) RNAを単離した。別法では、別のRNA単離キット、例えばPOLY(A)PURE mRNA精製キット(Ambion, Austin TX)を用いて組織溶解物からRNAを直接単離した。
【0291】
場合によってはStratagene社へのRNA提供を行い、対応するcDNAライブラリをStratagene社が作製することもあった。そうでない場合は、UNIZAPベクターシステム(Stratagene)又はSUPERSCRIPTプラスミドシステム(Invitrogen)を用いて本技術分野で既知の推奨方法又は類似の方法でcDNAを合成し、cDNAライブラリを作製した(前出のAusubel, 1997, 5.1-6.6ユニットなどを参照)。逆転写は、オリゴd(T)又はランダムプライマーを用いて開始した。合成オリゴヌクレオチドアダプターを二本鎖cDNAに連結反応させ、好適な制限酵素又は酵素でcDNAを消化した。殆どのライブラリに対しcDNAのサイズ選択(300〜1000bp)は、SEPHACRYL S1000、SEPHAROSE CL2B又はSEPHAROSE CL4Bカラムクロマトグラフィ(Amersham Biosciences)、或いは分取用アガロースゲル電気泳動法を用いて行った。cDNAは好適なプラスミドのポリリンカーの、適合する制限酵素部位にライゲーションされた。好適なプラスミドは、例えばPBLUESCRIPTプラスミド(Stratagene)、PSPORT1プラスミド(Invitrogen)PCDNA2.1プラスミド(Invitrogen, Carlsbad CA)、PBK-CMVプラスミド(Stratagene)、PCR2−TOPOTAプラスミド(Invitrogen)、PCMV-ICISプラスミド(Stratagene)、pIGEN(Incyte Genomics, Palo Alto CA)、pRARE (Incyte Genomics)、又はplNCY(Incyte Genomics)、又はこれらの誘導体である。組換えプラスミドは、Stratagene社のXL1-Blue、XL1-BIueMRF又はSOLR、或いはInvitrogen社のDH5α、DH10B又はElectroMAX DH10Bなど適格な大腸菌細胞に形質転換した。
【0292】
(2 cDNAクローンの単離)
UNIZAPベクターシステム(Stratagene)を用いたin vivo切除によって、或いは細胞溶解によって、実施例1のようにして得たプラスミドを宿主細胞から回収した。プラスミドの精製には、下記の少なくとも1つを用いた。すなわちMagic又はWIZARD Minipreps DNA精製システム(Promega)、AGTC Miniprep精製キット(Edge Biosystems, Gaithersburg MD)、QIAGEN社のQIAWELL 8 Plasmid、QIAWELL 8 Plus Plasmid及びQIAWELL 8 Ultra Plasmid精製システム、R.E.A.L. Prep 96プラスミド精製キットのいずれかである。プラスミドは、沈殿させた後、0.1mlの蒸留水に再懸濁して、凍結乾燥して或いは凍結乾燥しないで4℃で保管した。
【0293】
別法では、高処理フォーマットにおいて直接結合PCR法を用いて宿主細胞溶解物からプラスミドDNAを増幅した(Rao, V.B. (1994) Anal. Biochem. 216:1-14)。宿主細胞の溶解及び熱サイクリング過程は、単一反応混合液中で行った。サンプルを処理し、それを384ウェルプレート内で保管し、増幅したプラスミドDNAの濃度をPICOGREEN色素(Molecular Probes, Eugene OR)及びFluoroskan II蛍光スキャナ(Labsystems Oy, Helsinki, Finland)を用いて蛍光分析的に定量した。
【0294】
(3 シークエンシング及び分析)
実施例 2に記載したようにプラスミドから回収したIncyte cDNAを、以下に示すようにシークエンシングした。cDNAのシークエンス反応は、標準的方法或いは高処理装置、例えばABI CATALYST 800 サーマルサイクラー(Applied Biosystems)又はPTC-200 サーマルサイクラー(MJ Research)を、HYDRAマイクロディスペンサー(Robbins Scientific)又はMICROLAB 2200(Hamilton)液体転移システムと併用して処理した。cDNAのシークエンス反応は、Amersham Biosciences社が提供する試薬、又はABIシークエンシングキット、例えばABI PRISM BIGDYE Terminator cycle sequencing ready reaction kit(Applied Biosystems)の試薬を用いて準備した。cDNAのシークエンス反応の電気泳動的分離と、標識したポリヌクレオチドの検出とには、MEGABACE 1000 DNAシークエンシングシステム(Amersham Biosciences)か、標準ABIプロトコルと塩基呼び出しソフトウェアとを用いるABI PRISM 373又は377シークエンシングシステム(Applied Biosystems)か、或いはその他の本技術分野で既知の配列解析システムを用いた。cDNA配列内のリーディングフレームは、標準的方法(前出のAusubel, 1997, 7.7ユニットに概説)を用いて同定した。cDNA配列の幾つかを選択して、実施例8に記載した方法で配列を伸長させた。
【0295】
IncyteのcDNA配列に由来するポリヌクレオチド配列は、ベクター、リンカー及びポリ(A)配列を除去し、あいまいな塩基をマスクすることによって有効性を確認した。その際、BLAST、動的プログラミング及び隣接ジヌクレオチド頻度分析に基づくアルゴリズム及びプログラムを用いた。次に、Incyte cDNA配列又はそれらの翻訳の問い合わせを、以下のデータベース群に対して行った。すなわち、選抜した公共のデータベース群(例えばGenBankの霊長類、げっ歯類、哺乳類、脊椎動物、真核生物のデータベースと、BLOCKS、PRINTS、DOMO、PRODOM)と、ヒト、ラット、マウス、線虫(Caenorhabditis elegans)、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)、分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)及びCandida albicansからの配列群を持つPROTEOMEデータベース群(Incyte Genomics, Palo Alto CA)、及び、隠れマルコフモデル(HMM)ベースのタンパク質ファミリーデータベース群、例えばPFAM、INCY、及びTIGRFAM (Haft, D.H. 他 (2001) Nucleic Acids Res. 29:41-43)、及びHMMベースのタンパク質ドメインデータベース例えばSMART (Schultz他(1998) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:5857-5864、Letunic, I.他(2002) Nucleic Acids Res. 30:242-244)である。(HMMは、遺伝子ファミリのコンセンサス1次構造を分析する確率的アプローチである。例えばEddy, S.R. (1996) Cuff. Opin. Struct. Biol. 6:361-365等を参照)。問い合わせは、BLAST、FASTA、BLIMPS、及びHMMERに基づくプログラムを用いて行った。Incyte cDNA配列は、完全長のポリヌクレオチド配列を産出するようにアセンブリされた。或いは、GenBank cDNA群、GenBank EST群、スティッチされた配列群、ストレッチされた配列群、又はGenscan予測コード配列群(実施例4及び5を参照)を用い、Incyte cDNAのアセンブリ体群を完全長まで伸長させた。PhredとPhrapとConsedとに基づくプログラムを用いてアセンブリし、GenMarkとBLASTとFASTAとに基づくプログラムを用いて、cDNAのアセンブリ体を、オープンリーディングフレームについてスクリーニングした。完全長ポリヌクレオチド配列を翻訳し、対応する完全長ポリペプチド配列を得た。或いは、或るポリペプチドは、完全長翻訳ポリペプチドの任意のメチオニン残基で開始し得る。完全長ポリペプチド配列群の続いての分析としての問い合わせを、GenBankタンパク質データベース群(genpept)、SwissProt、PROTEOMEデータベース群、BLOCKS、PRINTS、DOMO、PRODOM及びProsite等のデータベースや、PFAM、INCY、及びTIGRFAM等の隠れマルコフモデル(HMM)ベースのタンパク質ファミリーデータベース群、並びにSMART等のHMMベースのタンパク質ドメインデータベース群に対し行った。完全長ポリヌクレオチド配列はまた、MACDNASIS PROソフトウェア(日立ソフトウェアエンジニアリング, South San Francisco CA)及びLASERGENEソフトウェア(DNASTAR)を用いて分析する。ポリヌクレオチド及びポリペプチド配列アラインメントは、アラインメントした配列と配列の一致率も計算するMEGALIGNマルチシークエンスアラインメントプログラム(DNASTAR)に組み込まれているようなCLUSTALアルゴリズムによって特定されるデフォルトパラメータを用いて生成する。
【0296】
Incyte cDNA及び完全長配列の分析及びアセンブリに利用したツール、プログラム及びアルゴリズムの概略と、適用可能な説明、参照文献、閾値パラメータを表7に示す。用いたツール、プログラム及びアルゴリズムを表7の列1に、それらの簡単な説明を列2に示す。列3は適切な参照文献であり、全ての文献は全体を引用を以って本明細書の一部となす。適用可能な場合には、列4は2つの配列が一致する強さを評価するために用いたスコア、確率値その他のパラメータを示す(スコアが高いほど、また確率値が低いほど、2配列間の同一性が高くなる)。
【0297】
完全長ポリヌクレオチド配列及びポリペプチド配列のアセンブリ及び分析に用いる上記のプログラムは、SEQ ID NO:23-44のポリヌクレオチド配列断片の同定にも利用できる。 ハイブリダイゼーション及び増幅技術に有用である約20〜約4000ヌクレオチドの断片を表4の列2に示した。
【0298】
(4 ゲノムDNAからのコード配列の同定及び編集)
推定上の細胞外メッセンジャーは、公共のゲノム配列データベース(例えば、gbpriやgbhtg)においてGenscan遺伝子同定プログラムを実行して初めに同定された。Genscanは、様々な生物からゲノムDNA配列を分析する汎用遺伝子同定プログラムである(Burge, C及びS. Karlin (1997) J. Mol. Biol. 268:78-94、Burge, C及びS. Karlin (1998) Cuff. Opin. Struct. Biol. 8:346-354参照)。プログラムは予測エキソンを連結し、メチオニンから停止コドンに及ぶアセンブリされたcDNA配列を形成する。Genscanの出力は、ポリヌクレオチド及びポリペプチド配列のFASTAデータベースである。Genscanが一度に分析する配列の最大範囲は、30kbに設定した。これらのGenscan推定cDNA配列の内、どの配列が細胞外メッセンジャーをコードするかを決定するために、コードされたポリペプチドをPFAMモデルにおいて細胞外メッセンジャーについて問い合わせて分析した。潜在的な細胞外メッセンジャーが、細胞外メッセンジャーとしてアノテーションが付けられたインサイトcDNA配列に対する相同性を基に同定された。こうして選択されたGenscan予測配列は、次にBLAST分析により公共データベースgenpept及びgbpriと比較した。必要であれば、genpeptからのトップBLASTヒットと比較することによりGenscan予測配列を編集し、余分な又は省略されたエキソンなど、Genscanが予測した配列におけるエラーを補正した。BLAST分析はまた、Genscan予測配列の、いかなるIncyte cDNA又は公共cDNAカバレッジ(coverage)の発見にも用いられ、したがって転写の証拠を提供した。Incyte cDNAカバレッジが利用できた場合には、この情報を用いてGenscan予測配列を補正又は確認した。完全長ポリヌクレオチド配列は、実施例3に記載したアセンブリプロセスを用いて、Incyte cDNA配列及び/又は公共cDNA配列でGenscan予測コード配列をアセンブリして得た。或いは、完全長ポリヌクレオチド配列は、編集した、又は非編集のGenscan予測コード配列に完全に由来する。
【0299】
(5 cDNA配列データとのゲノム配列データのアセンブリ)
スティッチ配列( Stitched Sequence )
部分cDNA配列は、実施例4に記載のGenscan遺伝子同定プログラムにより予測されたエキソンを用いて伸長させた。実施例3に記載されたようにアセンブリされた部分cDNAは、ゲノムDNAにマッピングし、関連するcDNA及び1つ若しくは複数のゲノム配列から予測されたGenscanエキソンを含むクラスタに分解した。cDNA及びゲノム情報を統合するべくグラフ理論及び動的プログラミングに基づくアルゴリズムを用いて各クラスタを分析し、引き続いて確認、編集又は伸長して完全長配列を産出するような潜在的スプライス変異体を生成した。間隔全体の長さがクラスタ中の2以上の配列に存在するような配列を同定し、そのように同定された間隔は推移性により等しいと考えられた。例えば、1つのcDNA及び2つのゲノム配列に間隔が存在する場合、3つの間隔は全て等しいと考えられた。このプロセスは、無関係であるが連続したゲノム配列をcDNA配列により結び合わせて架橋し得る。このようにして同定された区間を、親配列(parent sequence)に沿って現われる順にステッチアルゴリズムで縫い合わせ、可能な最も長い配列及び変異配列を作製する。1種類の親配列に沿って発生した間隔と間隔との連鎖(cDNA−cDNA又はゲノム配列−ゲノム配列)は、親の種類を変える連鎖(cDNA−ゲノム配列)に優先した。結果として得られるスティッチ配列は、翻訳されてBLAST分析により公共データベースgenpept及びgbpriと比較された。Genscanにより予測された不正確なエキソンは、genpeptからのトップBLASTヒットと比較することにより修正した。必要な場合には、追加cDNA配列を用いるかゲノムDNAの検査により配列を更に伸長させた。
【0300】
ストレッチ配列( Stretched Sequence )
部分DNA配列は、BLAST分析に基づくアルゴリズムにより完全長まで伸長された。先ず、BLASTプログラムを用いて、GenBankの霊長類、げっ歯類、哺乳動物、脊椎動物及び真核生物のデータベースなどの公共データベースに対し、実施例3に記載されたようにアセンブリされた部分cDNAを問い合わせた。次に、最も近いGenBankタンパク質相同体を、BLAST分析により、Incyte cDNA配列又は実施例4に記載のGenScanエキソン予測配列のいずれかと比較した。結果として得られる高スコアリングセグメント対(HSP)を用いてキメラタンパク質を産出し、翻訳した配列をGenBankタンパク質相同体上にマッピングした。元のGenBankタンパク質相同体と比較して、キメラタンパク質内では挿入又は欠失が起こり得る。GenBankタンパク質相同体、キメラタンパク質又はその両方をプローブとして用い、公共のヒトゲノムデータベースから相同ゲノム配列を検索した。このようにして、部分的なDNA配列を、相同ゲノム配列の付加によりストレッチすなわち伸長した。結果として得られるストレッチ配列を検査し、完全遺伝子を含んでいるか否かを判定した。
【0301】
(6 EXMESをコードするポリヌクレオチドの染色体マッピング)
SEQ ID NO:23-44を構築するために用いた配列を、BLAST及びSmith-Watermanアルゴリズムを用いて、Incyte LIFESEQデータベース及び公共のドメインデータベースの配列と比較した。SEQ ID NO:23-44と一致するこれらのデータベースの配列を、Phrapなどのアセンブリアルゴリズム(表7)を使用して、連続及びオーバーラップした配列のクラスタにアセンブリした。スタンフォード・ヒトゲノムセンター(SHGC)、ホワイトヘッド・ゲノム研究所(WIGR)、Genethon等の公的な情報源から入手可能な放射線ハイブリッド及び遺伝地図データを用いて、クラスタ化された配列が既にマッピングされていたかを決定した。マッピングされた配列が或るクラスタに含まれている場合、そのクラスタの全配列が、個々の配列番号と共に、地図上の位置に割り当てられた。
【0302】
地図上の位置は、ヒト染色体の範囲又は区間として表される。センチモルガン間隔の地図上の位置は、染色体の短腕(p-arm)の末端に関連して測定する。(センチモルガン(cM)は、染色体マーカー間の組換え頻度に基づく計測単位である。平均して、1cMは、ヒト中のDNAの1メガベース(Mb)にほぼ等しい。但し、この値は組換えのホットスポット及びコールドスポットに起因して広範囲に変化する。)cM距離は、各クラスタ内に配列が含まれる放射線ハイブリッドマーカー類に対して境界を提供するGenethonによってマッピングされた遺伝マーカー群に基づく。NCBI「GeneMap'99」(http://www.ncbi.nlm.nih.gpv/genemap/)などの一般個人が入手可能なヒト遺伝子マップ及びその他の情報源を用いて、既に同定されている疾患遺伝子群が、上記した区間内若しくは近傍に位置するかを決定できる。
【0303】
(7 ポリヌクレオチド発現の分析)
ノーザン分析は、転写された遺伝情報の存在を検出するために用いられる実験技術であり、特定の細胞種又は組織からのRNAが結合される膜への標識されたヌクレオチド配列のハイブリダイゼーションに関与している(例えば前出のSambrook, 7章、同Ausubel (1995) 4章及び16章を参照)。
【0304】
BLASTを適用する類似のコンピュータ技術を用いて、GenBankやLIFESEQ(Incyte Genomics)等のcDNAデータベースにおいて同一又は関連分子を検索した。ノーザン分析は、多数の膜系ハイブリダイゼーションよりも非常に速い。更に、特定の一致を厳密な或いは相同的なものとして分類するか否かを決定するため、コンピュータ検索の感度を変更することができる。検索の基準は積スコアであり、次式で定義される。
【0305】
【数1】
【0306】
積スコアは、2つの配列間の類似度と、配列が一致する長さとの両方を考慮している。積スコアは、0〜100のノーマライズされた値であり、次のようにして求める。BLASTスコアにヌクレオチドの配列一致率を乗じ、その積を2つの配列の短い方の長さの5倍で除する。高スコアリングセグメント対(HSP)に一致する各塩基に+5のスコアを割り当て、各不一致塩基対に−4を割り当てることにより、BLASTスコアを計算する。2つの配列は、2以上のHSPを共有し得る(ギャップにより隔離される)。2以上のHSPがある場合には、最高BLASTスコアのセグメント対を用いて積スコアを計算する。積スコアは、断片的オーバーラップとBLASTアラインメントの質とのバランスを表す。例えば積スコア100は、比較した2つの配列の短い方の長さ全体にわたって100%一致する場合のみ得られる。積スコア70は、一端が100%一致し、70%オーバーラップしているか、他端が88%一致し、100%オーバーラップしているかのいずれかの場合に得られる。積スコア50は、一端が100%一致し、50%オーバーラップしているか、79%一致し、100%オーバーラップしているかのいずれかの場合に得られる。
【0307】
或いは、EXMESをコードするポリヌクレオチドを、由来する組織に対して分析する。例えば幾つかの完全長配列は、少なくとも一部は、オーバーラップするIncyte cDNA配列群を用いてアセンブリする(実施例3を参照)。各cDNA配列は、ヒト組織から作製されたcDNAライブラリに由来する。各ヒト組織は、以下の臓器/組織カテゴリーの1つに分類される。即ち心血管系、結合組織、消化器系、胎芽構造、内分泌系、外分泌腺、女性生殖器、男性生殖器、生殖細胞、血液及び免疫系、肝、筋骨格系、神経系、膵臓、呼吸器系、感覚器、皮膚、顎口腔系、非分類性/混合性又は尿路である。各カテゴリーのライブラリ数を数えて、全カテゴリーの総ライブラリ数で除する。同様に、各ヒト組織は、以下の疾患/条件カテゴリー即ち癌、細胞株、発達、炎症、神経性、外傷、心血管、プール、その他の1つに分類される。各カテゴリーのライブラリ数を数えて、全カテゴリーの総ライブラリ数で除する。得られるパーセンテージは、EXMESをコードするcDNAの組織特異的及び疾患特異的な発現を反映する。 cDNA配列及びcDNAライブラリ/組織の情報は、LIFESEQ GOLD データベース(Incyte Genomics, Palo Alto CA)から得ることができる。
【0308】
(8 EXMESをコードするポリヌクレオチドの伸長)
完全長のポリヌクレオチドもまた、完全長分子の適切な断片から設計したオリゴヌクレオチドプライマーを用いて該断片を伸長させて生成した。或るプライマーは既知の断片の5'伸長を開始するべく合成し、別のプライマーは既知の断片の3'伸長を開始するべく合成した。開始プライマー群の設計にはOLIGO 4.06ソフトウェア(National Biosciences)或いは別の適切なプログラムを用い、長さが約22〜30ヌクレオチド、GC含有率が約50%以上となり、約68〜約72℃の温度で標的配列にアニーリングするようにした。ヘアピン構造及びプライマー−プライマー二量体を生ずるようなヌクレオチド群の伸長は、全て回避した。
【0309】
配列を伸長するために、選択されたヒトcDNAライブラリを用いた。2段階以上の伸長が必要又は望ましい場合には、付加的プライマー或いはプライマーのネステッドセットを設計した。
【0310】
高忠実度の増幅が、当業者によく知られている方法を利用したPCR法によって得られた。PCRは、PTC-200サーマルサイクラー(MJ Research, Inc.)を用いて96ウェルプレート内で行った。反応混合液は、鋳型DNA及び200nmolの各プライマーを有する。また、Mg2 +と(NH4)2SO4と2−メルカプトエタノールを含む反応バッファー、Taq DNAポリメラーゼ(Amersham Biosciences)、ELONGASE酵素(Invitrogen)、Pfu DNAポリメラーゼ(Stratagene)を含む。プライマーの組、PCI AとPCI Bに対して以下のパラメータで増幅を行った。ステップ1:94℃で3分間、ステップ2:94℃で15秒間、ステップ3:60℃で1分間、ステップ4:68℃で2分間、ステップ5:ステップ2、3及び4を20回繰り返す、ステップ6:68℃で5分間、ステップ7:4℃で保存。別法では、プライマー対であるT7とSK+とに対して以下のパラメータで増幅を行った。ステップ1:94℃で3分間、ステップ2:94℃で15秒間、ステップ3:57℃で1分間、ステップ4:68℃で2分間、ステップ5:ステップ2、3及び4を20回繰り返す、ステップ6:68℃で5分間、ステップ7:4℃で保存。
【0311】
各ウェルのDNA濃度は、1X TE及び0.5μlの希釈していないPCR産物に溶解した100μlのPICOGREEN定量試薬(0.25(v/v) PICOGREEN; Molecular Probes, Eugene OR)を不透明な蛍光光度計プレート(Corning Costar, Acton MA)の各ウェルに分配してDNAが試薬と結合できるようにして測定する。サンプルの蛍光を計測してDNAの濃度を定量すべく、プレートをFluoroskan II (Labsystems Oy, Helsinki, Finland)でスキャンした。反応混合物のアリコット5〜10μlを1%アガロースゲル上で電気泳動法によって解析し、どの反応が配列の伸長に成功したかを判定した。
【0312】
伸長したヌクレオチドは、脱塩及び濃縮して384穴プレートに移し、CviJIコレラウイルスエンドヌクレアーゼ(Molecular Biology Research, Madison WI)を用いて消化し、音波処理又はせん断し、pUC 18ベクター(Amersham Biosciences)への再連結を行った。ショットガン・シークエンシングのために、消化したヌクレオチドを低濃度(0.6〜0.8%)のアガロースゲル上で分離し、断片を切除し、寒天をAgar ACE(Promega)で消化した。伸長させたクローンをT4リガーゼ(New England Biolabs, Beverly MA)を用いてpUC 18ベクター(Amersham Biosciences)に再連結し、Pfu DNAポリメラーゼ(Stratagene)で処理して制限部位のオーバーハングを満たし、適格な大腸菌細胞に形質移入した。形質移入した細胞群の選択を、抗生物質を含む培地で行い、それぞれのコロニーを採取し、LB/2Xカルベニシリン培養液中の384ウェルプレート群に37℃で一晩培養した。
【0313】
細胞を溶解して、Taq DNAポリメラーゼ(Amersham Biosciences)及びPfu DNAポリメラーゼ(Stratagene)を用いて以下の手順でDNAをPCR増幅した。ステップ1:94℃で3分間、ステップ2:94℃で15秒間、ステップ3:60℃で1分間、ステップ4:72℃で2分間、ステップ5:ステップ2、3及び4を29回繰り返す、ステップ6:72℃で5分間、ステップ7:4℃で保存。上記したようにPICOGREEN試薬(Molecular Probes)でDNAを定量化した。DNAの回収率が低いサンプルは、上記と同一の条件を用いて再増幅した。サンプルは20%ジメチルスルホキシド(1:2,v/v)で希釈し、DYENAMICエネルギー移動シークエンシングプライマー、及びDYENAMIC DIRECT kit(Amersham Biosciences)又はABI PRISM BIGDYEターミネーターサイクルシークエンシングレディ反応キット(Terminator cycle sequencing ready reaction kit)(Applied Biosystems)を用いてシークエンスした。
【0314】
同様に、上記手順を用いて完全長ポリヌクレオチドを検証した。或いは、完全長ポリヌクレオチドを用い、上記手順で、そのような伸長のために設計したオリゴヌクレオチド類と、或る適切なゲノムライブラリとを用いて5'調節配列を得た。
【0315】
(9 EXMESがコードするポリヌクレオチドのSNP(一塩基多型)の同定)
一塩基多型性(SNP)として知られる一般的なDNA配列変異体は、LIFESEQデータベース(Incyte Genomics)を用いてSEQ ID NO:23-44において同定された。実施例3に記述されているように同じ遺伝子からの配列は共にクラスタ化され、アセンブリされ、遺伝子内の全ての配列変異体を同定することができた。一連のフィルタから成るアルゴリズムは、SNPを他の配列変異体から区別するために用いられる。前段フィルタ群が、最小限のPhredクオリティスコア15を要求することにより大多数のベースコールのエラーを除去し、また、配列アラインメントエラーと、ベクター配列、キメラ、スプライス変異体の、不適切なトリミングに起因するエラーを除去した。先進の染色体分析の自動化した手順により、推定上のSNPの近傍の本来のクロマトグラムファイルを分析した。クローンエラ−フィルタ群は、統計的に生み出されたアルゴリズムを用いて、逆転写酵素、ポリメラーゼ或いは体細胞性突然変異によって引き起こされる等の、実験プロセッシング中に導入されたエラ−を同定した。クラスタリングエラ−フィルタ群は、統計的に生み出されたアルゴリズムを用いて、近縁の相同体或いは偽遺伝子のクラスタリングに起因するエラー、又は非ヒト配列によるコンタミネーションによるエラ−を同定した。フィルタの最終セットは、免疫グロブリン又はT細胞受容体に見出される重複とSNPを除去した。
【0316】
異なる4つのヒト集団のSNP部位における対立遺伝子頻度を分析するために、高処理MASSARRAYシステム(Sequenom, Inc.)を用いる質量分析によって、更なる特徴付けのためにいくつかのSNPが選択された。白人集団は92人(男性46人、女性46人)から成り、そのうち83人はユタ州、4人はフランス、3人はベネズエラ、2人はアーミッシュの出身である。アフリカ系集団は194人(男性97人、女性97人)から成り、全てアフリカ系米国人である。ラテンアメリカ系集団は324人(男性162人、女性162人)から成り、全てメキシコ出身である。アジア系の集団は126人(男性64人、女性62人)からなり、中国人43%、日本人31%、コリアン13%、ベトナム人5%、他のアジア系8%の親の構成が報告されている。対立遺伝子頻度は最初に白人集団で分析された。この集団で対立遺伝子変異を示さないSNPの時には他の3つの集団で更に試験されない場合もあった。
【0317】
(10 個々のハイブリダイゼーションプローブの標識化及び使用)
SEQ ID NO:23-44から導き出されたハイブリダイゼーションプローブを用いて、cDNA、mRNA、又はゲノムDNAをスクリーニングする。約20塩基対からなるオリゴヌクレオチドの標識について特に記載するが、より大きなヌクレオチド断片に対しても本質的に同一の手順が用いられる。オリゴヌクレオチドは、OLIGO 4.06ソフトウェア(National Biosciences)等の最新ソフトウェアを用いて設計し、各オリゴマー50pmolと、[γ-32P]アデノシン3リン酸(Amersham Biosciences)250μCiと、T4ポリヌクレオチドキナーゼ(DuPont NEN, Boston MA)とを化合させることにより標識する。標識したオリゴヌクレオチドは、SEPHADEX G-25超細繊分子サイズ排除デキストラン ビーズカラム(Amersham Biosciences)を用いて実質的に精製する。下記のいずれか1つのエンドヌクレアーゼで消化されたヒトゲノムDNAの、典型的な膜ベースのハイブリダイゼーション解析において、毎分107カウントの標識されたプローブを含むアリコットを用いる。すなわちAse I、Bgl II、Eco RI、Pst I、Xba I、又はPvu II(DuPont NEN)である。
【0318】
各消化物から得たDNAは、0.7%アガロースゲル上で分画してナイロン膜(Nytran Plus, Schleicher & Schuell, Durham NH)に移す。ハイブリダイゼーションは、40℃で16時間行う。非特異的シグナルを除去するため、例えば0.1×クエン酸ナトリウム食塩水及び0.5%ドデシル硫酸ナトリウムに一致する条件下で、ブロットを室温で順次洗浄する。オートラジオグラフィー又はそれに代わるイメージング手段を用いてハイブリダイゼーションパターンを視覚化し、比較する。
【0319】
(11 マイクロアレイ)
マイクロアレイの表面上でアレイエレメントの結合又は合成は、フォトリソグラフィ、ピエゾ式印刷(インクジェット印刷、前出のBaldeschweiler等を参照)、機械的マイクロスポッティング技術及びこれらから派生したものを用いて達成することが可能である。上記各技術において基板は、均一な、無孔の表面を持つ固体とすべきである(Schena(1999)前出)。推奨する基板には、シリコン、シリカ、スライドガラス、ガラスチップ及びシリコンウエハがある。或いは、ドットブロット法又はスロットブロット法に類似した手順を利用して、熱的、紫外線的、化学的又は機械的結合手順を用いて基板の表面にエレメントを配置及び結合させてもよい。通常のアレイは、利用可能な、当業者に公知の方法と機械とを用いて作製でき、任意の適正数のエレメントを有し得る(例えばSchena, M. 他(1995) Science 270:467-470、Shalon, D.他(1996) Genome Res.6:639-645、Marshall, A.及びJ. Hodgson (1998) Nat. Biotechnol. 16:27-31を参照)。
【0320】
完全長cDNA、発現配列タグ(EST)、又はその断片又はオリゴマーが、マイクロアレイのエレメントと成り得る。ハイブリダイゼーションに好適な断片又はオリゴマーを、LASERGENEソフトウェア(DNASTAR)等の本技術分野で公知のソフトウェアを用いて選択することが可能である。アレイエレメント群を、生体サンプル中のポリヌクレオチド群とハイブリダイズする。生体サンプル中のポリヌクレオチドは、検出を容易にするために蛍光標識などの分子タグに抱合させる。ハイブリダイゼーション後、生体サンプルからのハイブリダイズされていないヌクレオチドを除去し、蛍光スキャナを用いて各アレイエレメントでのハイブリダイゼーションを検出する。或いは、レーザ脱離及び質量スペクトロメトリを用いてもハイブリダイゼーションを検出し得る。マイクロアレイ上の或るエレメントにハイブリダイズする各ポリヌクレオチドの、相補性の度合と相対存在度とを算定し得る。 一実施例におけるマイクロアレイの調製及び使用について、以下に詳述する。
【0321】
組織又は細胞サンプルの調製
グアニジニウムチオシアネート法を用いて組織サンプルから全RNAを単離し、オリゴ(dT)セルロース法を用いてポリ(A)+RNAを精製する。各ポリ(A)+RNAサンプルを逆転写するため、MMLV逆転写酵素を用い、また、0.05pg/μlのオリゴ(dT)プライマー(21mer)、1×第一鎖バッファ、0.03unit/μlのRNアーゼ阻害因子、500μMのdATP、500μMのdGTP、500μMのdTTP、40μMのdCTP、40μMのdCTP-Cy3(BDS)又はdCTP-Cy5(Amersham Biosciences)を用いる。逆転写反応は、GEMBRIGHTキット(Incyte)を用い、200ngのポリ(A)+RNAを含有する体積25mlで行う。特異的対照ポリ(A)+RNAは、非コード酵母ゲノムDNAからin vitro転写により合成する。37℃で2時間インキュベートした後、各反応サンプル(1つはCy3、もう1つはCy5標識)は、2.5mlの0.5M水酸化ナトリウムで処理し、85℃で20分間インキュベートし、反応を停止させてRNAを分解させる。サンプルは、2つの連続するCHROMA SPIN 30ゲル濾過スピンカラム(CLONTECH Laboratories, Inc. (CLONTECH), Palo Alto CA)を用いて精製する。 混合後、2つの反応サンプルは、1mlのグリコーゲン(1mg/ml)、60mlの酢酸ナトリウム及び300mlの100%エタノールを用いてエタノール析出させる。サンプルは次に、SpeedVAC(Savant Instruments Inc., Holbrook NY)を用いて乾燥して仕上げ、14μl 5×SSC/0.2% SDS中で再懸濁する。
【0322】
マイクロアレイの調製
本発明の配列を用いて、アレイエレメントを生成する。各アレイエレメントは、クローン化したcDNAインサートを有するベクターを含有する細菌細胞から増幅する。PCR増幅は、cDNAインサートに隣接するベクター配列に相補的なプライマーを用いる。30サイクルのPCRで1〜2ngの初期量から5μgより大きい最終量までアレイエレメントを増幅する。増幅したアレイエレメントは、SEPHACRYL-400(Amersham Biosciences)を用いて精製する。
【0323】
精製したアレイエレメントは、ポリマーコートされたスライドグラス上に固定する。顕微鏡スライドグラス(Corning)は、処理の間及び処理後に0.1%のSDS及びアセトン中で超音波処理をかけ、蒸留水で充分に洗浄する。スライドグラスは、4%フッ化水素酸(VWR Scientific Products Corporation (VWR), West Chester PA)中でエッチングし、蒸留水中で充分に洗浄し、95%エタノール中で0.05%アミノプロピルシラン(Sigma)を用いてコーティングする。コーティングしたスライドガラスは、110℃のオーブンで硬化させる。
【0324】
米国特許第5,807,522号で説明されている方法を用いて、コーティングしたガラス基板にアレイエレメントを付加する。該特許は、引用を以って本明細書の一部となす。平均濃度が100ng/μlのアレイエレメントDNA1μlを高速機械装置により開放型キャピラリープリンティングエレメント(open capillary printing element)に充填する。装置はここで、スライド毎に約5nlのアレイエレメントサンプルを加える。
【0325】
マイクロアレイには、STRATALINKER UV架橋剤(Stratagene)を用いてUV架橋する。マイクロアレイは、室温において0.2%SDSで1度洗浄し、蒸留水で3度洗浄する。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)(Tropix, Inc., Bedford MA)中の0.2%カゼイン中において60℃で30分間マイクロアレイをインキュベートした後、前に行ったように0.2%SDS及び蒸留水で洗浄することにより、非特異結合部位をブロックする。
【0326】
ハイブリダイゼーション
ハイブリダイゼーション反応は、5×SSC、0.2%SDSハイブリダイゼーション緩衝液中のCy3及びCy5標識したcDNA合成生成物を各0.2μg含む9μlのサンプル混合体を有する。サンプル混合体は、65℃まで5分間加熱し、マイクロアレイ表面上で等分して1.8cm2 のカバーガラスで覆う。アレイは、顕微鏡用スライドより僅かに大きい空洞を有する防水チェンバーに移す。チェンバーのコーナーに140μlの5×SSCを加えることにより、チェンバー内部を湿度100%に保持する。アレイを含むチェンバーは、60℃で約6.5時間インキュベートする。アレイは、第1洗浄緩衝液中(1×SSC、0.1%SDS)において45℃で10分間洗浄し、第2洗浄緩衝液中(0.1×SSC)において各々45℃で10分間、3度洗浄して乾燥させる。
【0327】
検出
レポーター標識ハイブリダイゼーション複合体は、Cy3の励起のためには488nm、Cy5の励起のためには632nmでスペクトル線を発生し得るInnova 70混合ガス10 Wレーザ(Coherent, Inc., Santa Clara CA)を備えた顕微鏡で検出する。励起レーザ光の焦点をアレイ上に置くため、20×顕微鏡対物レンズ(Nikon, Inc., Melville NY)を用いる。アレイを含むスライドを、顕微鏡の、コンピュータ制御のX-Yステージに置き、対物レンズを通してラスタースキャンする。本実施例で用いる1.8cm×1.8cmのアレイは、解像度20μmでスキャンする。
【0328】
2回の異なるスキャンで、混合ガスマルチラインレーザは2つの蛍光色素を連続的に励起する。発光された光は、波長に基づき分離され、2つのフルオロフォアに対応する2つの光電子増倍管検出器(PMT R1477, Hamamatsu Photonics Systems, Bridgewater NJ)に送られる。好適なフィルタ群をアレイと光電子増倍管との間に設置して、シグナルをフィルタする。用いるフルオロフォアの最大発光の波長は、Cy3では565nm、Cy5では650nmである。装置は両方の蛍光色素からのスペクトルを同時に記録し得るが、レーザ源において好適なフィルタを用いて、蛍光色素1つにつき1度スキャンし、各アレイを通常2度スキャンする。
【0329】
スキャンの感度は通常、既知濃度のサンプル混合体に添加されるcDNA対照種により生成されるシグナル強度を用いて較正する。アレイ上の特定の位置には相補的DNA配列が含まれ、その位置におけるシグナルの強度を、ハイブリダイズする種の重量比1:100,000に相関させる。 異なる源泉(例えば試験される細胞及び対照細胞など)からの2つのサンプルを、各々異なる蛍光色素で標識し、他と異なって発現した遺伝子を同定するために単一のアレイにハイブリダイズする場合には、その較正を、較正するcDNAのサンプルを2つの蛍光色素で標識し、ハイブリダイゼーション混合体に各々等量を加えることによって行う。
【0330】
光電子増倍管の出力は、IBMコンパチブルPCコンピュータにインストールされた12ビットRTI-835Hアナログ−ディジタル(A/D)変換ボード(Analog Devices, Inc., Norwood MA)を用いてディジタル化される。ディジタル化されたデータは、青色(低シグナル)から赤色(高シグナル)までの擬似カラー範囲へのリニア20色変換を用いてシグナル強度がマッピングされたようなイメージとして表示される。データは、定量的にも分析される。2つの異なる蛍光色素を同時に励起及び測定する場合には、各蛍光色素の発光スペクトルを用いて、データは先ず蛍光色素間の光学的クロストーク(発光スペクトルの重なりに起因する)を補正する。
【0331】
グリッドが蛍光シグナルイメージ上に重ねられ、それによって各スポットからのシグナルはグリッドの各エレメントに集められる。各エレメント内の蛍光シグナルは統合され、シグナルの平均強度に応じた数値が得られる。シグナル分析に用いるソフトウェアは、GEMTOOLS遺伝子発現分析プログラム(Incyte)である。少なくとも約2倍の発現変化、2.5以上のSB比、及び少なくとも40%のエレメントスポットサイズを示したアレイエレメントが、差次的発現を示したとしてGEMTOOLSプログラム(Incyte Genomics)で同定された。
【0332】
発現
例えば、SEQ ID NO:26の発現は、正常な組織に対して病変組織では下方制御されるが、これはマイクロアレイ分析で判定した。正常な脳組織の遺伝子発現プロファイルは、重度(2人)と軽度(1人)のアルツハイマー病(AD)を患う患者の扁桃、海馬、小脳、線条体、帯状の遺伝子発現プロファイルと比較された。 SEQ ID NO:26の発現は、3人すべての患者の扁桃、1人の重度のAD患者の海馬、軽度のAD患者の海馬、重度のADの2人目の患者の小脳で減少した。したがって、様々な実施様態でSEQ ID NO:26は下記の1つ或いはそれ以上で使用することができる。すなわち、i)アルツハイマー病治療のモニタリング、ii)アルツハイマー病の診断アッセイ、そしてiii)アルツハイマー病の治療法そして/或いは他の療法の開発である。
【0333】
更なる実施例では、SEQ ID NO:29とSEQ ID NO:32-34の発現は、未処理の細胞と比べて、処理の細胞において上方制御されたことが、マイクロアレイ分析により測定された。血清の存在下又は不存在下で成長する上皮細胞における表現型差異の基礎を成す分子機構を理解するために、血清の存在下又は不存在下で成長するMDA-mb-231細胞の遺伝子発現プロファイルが比較された。SEQ ID NO:29及びSEQ ID NO:32-34の発現が、血清の存在下で増加した。従って様々な実施様態において、SEQ ID NO:7をコードするSEQ ID NO:29、及びSEQ ID NO:10-12をそれぞれコードするSEQ ID NO:32-34は、下記の1つ以上の目的で用いられ得る。:i)血清の存在下及び不存在下での上皮細胞における表現型差異の基礎を成す分子機構を理解するための診断アッセイ。
【0334】
更なる実施例では、SEQ ID NO:29とSEQ ID NO:32-34の発現は、TNF-α処理の細胞においてTNF-α未処理の細胞に比べて下方制御されたことが、マイクロアレイ分析により測定された。HAECは、1、2、4、6、8、10、24、及び48時間、TNF-αで処理した。これらのTNF-α処理された細胞は、未処理のHAECと比較された。SEQ ID NO:29とSEQ ID NO:32-34の発現は、最小6時間の処理後のTNF-α処理細胞で減少しており、48時間処理までそのレベルを維持した。HAECをTNF-αで処理する間、差次的に発現された血管組織遺伝子は、血管緊張調節、凝血及び血栓症、アテローム硬化、炎症、また数種の感染症等の、生理学的と病態生理学的な過程の両者で、広範囲のマーカーとして役割を果たし得る。更にmRNA発現のレベルでのTNF-αへの内皮細胞応答のモニタリングは、TNF-αシグナル伝達経路と内皮細胞生物学の両者のよりよい理解に不可欠な情報を提供する。従って様々な実施様態において、SEQ ID NO:7をコードするSEQ ID NO:29、及びSEQ ID NO:10-12をそれぞれコードするSEQ ID NO:32-34は、下記の1つ以上の目的で用いられ得る。:i)血管緊張調節、凝血及び血栓症、アテローム硬化、炎症、また数種の感染症の治療のモニタリング、ii)血管緊張調節、凝血及び血栓症、アテローム硬化、炎症、また数種の感染症の診断アッセイ、そしてiii)血管緊張調節、凝血及び血栓症、アテローム硬化、炎症、また数種の感染症の治療そして/或いはは他の療法の開発である。
【0335】
別の実施例では、SEQ ID NO:29とSEQ ID NO:32-34の発現は、TNF-α未処理の細胞と比べてTNF-α処理の細胞において下方制御されたことが、マイクロアレイ分析により測定された。HUAECは、1、2、4、8、及び24時間、TNF-αで処理した。これらのTNF-α処理された細胞が、未処理のHUAECと比較された。SEQ ID NO:29とSEQ ID NO:32-34の発現は、最小8時間の処理後のTNF-α処理細胞で下方制御されており、24時間処理までそのレベルを維持した。HUAECをTNF-αで処理する間、差次的に発現された血管組織遺伝子は、血管緊張調節、凝血及び血栓症、アテローム硬化、炎症、また数種の感染症等の、生理学的と病態生理学的な過程の両者で、広範囲のマーカーとして役割を果たし得る。更にmRNA発現のレベルでのTNF-αへの内皮細胞応答のモニタリングは、TNF-αシグナル伝達経路と内皮細胞生物学の両者のよりよい理解に不可欠な情報を提供する。従って様々な実施様態において、SEQ ID NO:7をコードするSEQ ID NO:29とSEQ ID NO:10-12をそれぞれコードするSEQ ID NO:32-34は、下記の1つ以上の目的で用いられ得る。:i)血管緊張調節、凝血及び血栓症、アテローム硬化、炎症、また数種の感染症の治療のモニタリング、ii)血管緊張調節、凝血及び血栓症、アテローム硬化、炎症、また数種の感染症の診断アッセイ、そしてiii)血管緊張調節、凝血及び血栓症、アテローム硬化、炎症、また数種の感染症の治療そして/或いはは他の療法の開発である。
【0336】
別の実施例では、SEQ ID NO:29、SEQ ID NO:32、SEQ ID NO:34の発現は、老化細胞で少なくとも2倍下方制御されたことが、マイクロアレイ分析により測定された。従って様々な実施様態において、SEQ ID NO:7をコードするSEQ ID NO:29、SEQ ID NO:10をコードするSEQ ID NO:32、及びSEQ ID NO:12をコ−ドするSEQ ID NO: 34は、下記の1つ以上の目的で用い得る:i)老化の診断アッセイ、及びii)老化の治療そして/又は他の療法の開発である。
【0337】
別の実施例では、SEQ ID NO:29とSEQ ID NO:32-34の発現は、一致する提供者に由来する正常な肺組織と比較して腫瘍性の肺組織において下方制御されたことが、マイクロアレイ分析によって測定された。SEQ ID NO:29及びSEQ ID NO:32-34の発現が、11人の提供者中3人で減少した。したがって、様々な実施様態でSEQ ID NO:29とSEQ ID NO:32-34は下記の1つ以上の目的で使用することができる。すなわち、i)肺癌の治療のモニタリング、ii)肺癌の診断アッセイ、そしてiii)肺癌の治療法そして/或いは他の療法の開発である。
【0338】
別の実施例では、SEQ ID NO:35-37の発現は、一致する提供者に由来する正常な肺組織と比較して腫瘍性の肺組織において上方制御されたことが、マイクロアレイ分析によって測定された。SEQ ID NO:35-37は、11人中の同一の1人の提供者からの腫瘍性組織において少なくとも2倍上方制御されることが見出された。肺癌の発生と進行に伴う遺伝子発現パターンの解析はこの病気の生物学的基盤に対するすばらしい洞察を生み出すだろうし、また診断と治療の改善にもつながるだろう。したがって、様々な実施様態でSEQ ID NO:13-15をそれぞれコードするSEQ ID NO:35-37は下記の1つ以上の目的で使用することができる。すなわち、i)肺癌の治療のモニタリング、ii)肺癌の診断アッセイ、そしてiii)肺癌の治療法そして/或いは他の療法の開発である。
【0339】
例えば、SEQ ID NO:41の発現は、未処理の組織に比較してデキサメタゾンで処理された細胞では下方制御されるが、これはマイクロアレイ分析で判定した。コンフルエント前期のC3A細胞は、1μM、10μM、100μMの各濃度で、1、3、6時間の間、デキサメタゾンで処理された。処理した細胞は、未処理のコンフルエント前期のC3A細胞と比較された。したがって、様々な実施様態でSEQ ID NO:41は下記の1つ以上の目的で使用することができる。すなわち、i)喘息、及び他の自己免疫/炎症疾患の治療のモニタリング、ii)喘息、及び他の自己免疫/炎症疾患の診断アッセイ、そしてiii)喘息、及び他の自己免疫/炎症疾患の治療そして/或いはは他の療法の開発である。
【0340】
別の実施例では、SEQ ID NO:41の発現は、正常な卵巣組織に比較して卵巣腫瘍組織では下方制御されるが、これはマイクロアレイ分析で判定した。79才の女性提供者に由来する正常な卵巣が、同一の提供者に由来する卵巣腫瘍と比較された(Huntsman Cancer Institute, Salt Lake City, UT)。したがって、様々な実施様態でSEQ ID NO:41は下記の1つ以上の目的で使用することができる。すなわち、i)卵巣癌、及び他の細胞増殖異常の治療のモニタリング、ii)卵巣癌、及び他の細胞増殖異常の診断アッセイ、そしてiii)卵巣癌、及び他の細胞増殖異常の治療そして/或いはは他の療法の開発である。
【0341】
(12 相補的ポリヌクレオチド)
EXMESをコードする配列或いはその任意の一部に対して相補的な配列は、天然のEXMESの発現を検出、低減又は阻害するために用いられる。約15〜30塩基対を含むオリゴヌクレオチドの使用について記すが、これより小さな或いは大きな配列の断片の場合でも、本質的に同じ手順を用いる。OLIGO4.06ソフトウェア(National Biosciences)とEXMESをコードする配列とを用いて、適切なオリゴヌクレオチドを設計する。転写を阻害するためには、最も独特な5'配列から相補的オリゴヌクレオチドを設計し、これを用いて、プロモーターがコーディング配列に結合するのを防止する。翻訳を阻害するためには、相補的なオリゴヌクレオチドを設計して、リボソームがEXMESをコードする転写物に結合するのを阻害する。
【0342】
(13 EXMESの発現)
EXMESの発現及び精製は、細菌若しくはウイルスを基にした発現系を用いて達成される。細菌内でEXMESを発現させるには、抗生物質耐性遺伝子と、cDNA転写レベルを高める誘導性プロモーターとを有する好適なベクターにcDNAをサブクローニングする。このようなプロモーターの例には、lacオペレーター調節エレメントと併用するT5又はT7バクテリオファージプロモーター及び、trp-lac (tac)ハイブリッドプロモーターが含まれるが、これらに限定するものではない。組換えベクターを、BL21(DE3)等の好適な細菌宿主に形質転換する。抗生物質耐性をもつ細菌が、イソプロピルβ−Dチオガラクトピラノシド(IPTG)で誘発されるとEXMESを発現する。真核細胞でのEXMESの発現は、昆虫細胞株又は哺乳動物細胞株に一般にバキュロウイスルスとして知られているAutographica californica核多角体病ウイルス(AcMNPV)を感染させて行う。バキュロウイルスの非必須ポリヘドリン遺伝子をEXMESをコードするcDNAと置換するには、相同組換えを行うか、或いは、トランスファープラスミドの媒介を伴う、細菌の媒介による遺伝子転移を行う。ウイルスの感染力は維持され、強力なポリヘドリンプロモーターによって高いレベルのcDNAの転写が行われる。組換えバキュロウイルスは、多くの場合はSpodoptera frugiperda(Sf9)昆虫細胞への感染に用いられるが、ヒト肝細胞の感染にも用いられることもある。後者の感染の場合は、バキュロウイルスの更なる遺伝的変更が必要になる(Engelhard, E.K.他(1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:3224-3227、Sandig, V.他(1996) Hum.Gene Ther. 7:1937-1945を参照)。
【0343】
殆どの発現系では、EXMESが、例えばグルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)と、又はFLAGや6-Hisなどのペプチドエピトープ標識と合成された融合タンパク質となるため、未精製の細胞溶解物からの組換え融合タンパク質の親和性ベースの精製を、迅速に1ステップで行い得る。GSTは日本住血吸虫からの26kDaの酵素であり、タンパク質の活性及び抗原性を維持した状態で、固定化したグルタチオン上での融合タンパク質の精製を可能とする(Amersham Biosciences)。精製の後、GST部分を特定の操作部位でEXMESからタンパク分解的に切断できる。FLAGは8アミノ酸のペプチドであり、市販されているモノクローナル及びポリクローナル抗FLAG抗体(Eastman Kodak)を用いた免疫親和性精製を可能にする。6ヒスチジン残基が連続して伸長した6-Hisは、金属キレート樹脂上での精製を可能にする(QIAGEN)。タンパク質の発現及び精製の方法は、前出のAusubel(1995)10章、16章に記載されている。これらの方法で精製したEXMESを直接用いて以下の実施例 17 、 18 、 19 、及び 20の、適用可能なアッセイを行うことができる。
【0344】
(14 機能的アッセイ)
EXMESの機能は、哺乳動物細胞培養系において生理的に高められたレベルでの、EXMESをコードする配列の発現によって算定する。cDNAを高いレベルで発現する強いプロモーターを持つ哺乳動物発現ベクターにcDNAをサブクローニングする。選択されるベクターとしては、PCMV SPORTプラスミド(Invitrogen, Carlsbad CA)及びPCR 3.1プラスミド(Invitrogen)があり、どちらもサイトメガロウイルスプロモーターを持つ。リポソーム製剤或いは電気穿孔法を用いて、5〜10μgの組換えベクターをヒト細胞株、例えば内皮由来又は造血由来の細胞株に、一過的に形質移入する。更に、標識タンパク質をコードする配列を含む1〜2μgのプラスミドを同時に形質移入する。標識タンパク質の発現により、形質移入細胞と非形質移入細胞を区別する手段が与えられる。 また、標識タンパク質の発現によって、cDNAの組換えベクターからの発現を正確に予想できる。標識タンパク質は、例えば緑色蛍光タンパク質(GFP;Clontech)、CD64又はCD64-GFP融合タンパク質から選択できる。自動化された、レーザ光学に基づく技術であるフローサイトメトリー(FCM)を用いて、GFP又はCD64-GFPを発現する形質移入された細胞を同定し、その細胞のアポトーシス状態や他の細胞特性を評価する。FCMは、細胞死に先行するか或いは同時に発生する現象を診断する蛍光分子の取込を検出して計量する。このような現象として挙げられるのは、ヨウ化プロピジウムによるDNA染色によって計測される核DNA含量の変化、前方光散乱と90°側方光散乱によって計測される細胞サイズと粒度の変化、ブロモデオキシウリジンの取込量の低下によって計測されるDNA合成の下方調節、特異抗体との反応性によって計測される細胞表面及び細胞内におけるタンパンク質の発現の変化、及びフルオレセイン抱合したアネキシンVタンパク質の細胞表面への結合によって計測される原形質膜組成の変化とがある。フローサイトメトリー法については、Ormerod, M.G.(1994)Flow Cytometry, Oxford, New York NYに記述がある。
【0345】
遺伝子発現に与えるEXMESの影響は、EXMESをコードする配列と、CD64又はCD64-GFPのどちらかとが形質移入された、高度に精製された細胞集団を用いて評価することができる。CD64又はCD64-GFPは、形質移入された細胞表面で発現し、ヒト免疫グロブリンG(IgG)の保存領域と結合する。形質移入された細胞と形質移入されていない細胞とは、ヒトIgGかCD64に対する抗体のどちらかで被覆された磁気ビーズを用いて効率的に分離できる(DYNAL, Lake Success NY)。mRNAは、当業者に周知の方法で細胞から精製できる。EXMESと、目的とする他の遺伝子とをコードするmRNAの発現は、ノーザン分析やマイクロアレイ技術で分析できる。
【0346】
(15 EXMESに特異的な抗体の作製)
実質的に精製されたEXMESを、ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(PAGE;例えば、Harrington, M.G.(1990)Methods Enzymol 182:488-495を参照)又は他の精製技術を用いて、標準プロトコルで動物(ウサギ、マウス等)を免疫化して抗体を産出する。
【0347】
別法では、EXMESアミノ酸配列を、LASERGENEソフトウェア(DNASTAR)を用いて解析して免疫原性の高い領域を判定し、対応するオリゴペプチドを合成してこれを用いて当業者に周知の方法で抗体を生産する。C末端付近の或いは親水性領域内のエピトープなどの適切なエピトープの選択方法については、当分野に記述が多い(例えば、前出のAusubel, 1995, 11章を参照)。
【0348】
通常は、長さ約15残基のオリゴペプチドを、Fmocケミストリを用いるABI 431A ペプチドシンセサイザ(Applied Biosystems)を用いて合成し、N-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)を用いた反応によってKLH(Sigma-Aldrich, St. Louis MO)に結合させて、免疫原性を高める(前出のAusubel, 1995等を参照)。完全フロイントアジュバントにおいて、オリゴペプチド-KLH複合体を用いてウサギを免疫化する。得られた抗血清の抗ペプチド活性及び抗EXMES活性を検査するには、ペプチド又はEXMESを基板に結合し、1%BSAを用いてブロッキング処理し、ウサギ抗血清と反応させて洗浄し、更に放射性ヨウ素標識されたヤギ抗ウサギIgGと反応させる。
【0349】
(16 特異的抗体を用いる天然EXMESの精製)
天然EXMES或いは組換えEXMESを実質的に精製するため、EXMESに特異的な抗体群を用いるイムノアフィニティークロマトグラフィーを行う。イムノアフィニティーカラムは、CNBr-活性化したSEPHAROSE(Amersham Biosciences)のような活性化クロマトグラフィー用レジンと抗EXMES抗体とを共有結合させることにより形成する。結合後に、製造者の使用説明書に従ってこのレジンをブロックし、洗浄する。
【0350】
EXMESを含む培養液をイムノアフィニティーカラムに通し、EXMESを優先的に吸着できる条件で(例えば、界面活性剤の存在下において高イオン強度のバッファーで)そのカラムを洗浄する。そのカラムを、抗体とEXMESとの結合を切るような条件で(例えば、或るpH2〜3のバッファー、或いは高濃度の、例えば尿素又はチオシアン酸イオンなどのカオトロープで)溶出させ、EXMESを収集する。
【0351】
(17 EXMESと相互作用する分子の同定)
EXMES、又は生物学的に活性なその断片を、125Iボルトンハンター試薬で標識する(例えばBolton A.E.及びW.M. Hunter (1973) Biochem. J. 133:529-539を参照)。マルチウェルプレートに予め配列しておいた候補の分子を、標識したEXMESと共にインキュベートし、洗浄して、標識したEXMES複合体を有する全てのウェルをアッセイする。様々なEXMES濃度で得られたデータを用いて、EXMESの数量、候補分子との親和性及び会合についての値を計算する。
【0352】
別法では、EXMESと相互作用する分子を、Fields, S.及びO. Song(1989, Nature 340:245-246)に記載の酵母2−ハイブリッドシステム(yeast two-hybrid system)やMATCHMAKERシステム(Clontech)などの2−ハイブリッドシステムに基づいた市販のキットを用いて分析する。
【0353】
EXMESは又はイスループット型の酵母2ハイブリッドシステムを使用するPATHCALLINGプロセス(CuraGen Corp., New Haven CT)に用いて、遺伝子の2大ライブラリによってコードされるタンパク質間の全ての相互作用を判定できる(Nandabalan, K. 他 (2000) U.S. Patent No. 6,057,101)。
【0354】
(18 EXMES活性の実証)
EXMES活性は、幾つかの方法の1つによって測定される。成長因子活性は、スイスマウスの3T3細胞におけるDNA合成の刺激により測定される(McKay, I.及びI. Leigh, 編集. (1993) Growth Factors: A Practical Approach, Oxford University Press, New York, NY)。DNA合成の開始は、細胞が有糸分裂周期に入ったことと後に分割を受けるコミットメントを示す。3T3細胞は、有糸分裂促進性成長因子だけでなく、胚の誘発に関与するほとんどの成長因子に応答でき得る。この能力が可能であるのは、幾つかの成長因子により実証されたin vivoでの特異性が必ずしも生得的なものではなく、応答する組織により決定されるためである。このアッセイにおいては、可変量のEXMES が、放射性DNA前駆物質である[3H]チミジンの存在中で静止状態3T3培養細胞へと加えられる。このアッセイのためのEXMESを得る手段は、組換えでも良く、生化学的な調製より得ても良い。酸沈殿し得るDNAへの[3H]チミジンの組み込みが、適切な時間間隔で測定され、組み込まれた量は新規に合成されたDNAの量に直接比例する。少なくとも100倍のEXMES濃度レンジにわたる線形の用量反応曲線は、成長因子活性を示す。ミリリットルあたりの活性のユニットは、50%の応答レベルを生じるEXMESの濃度として定義される。ここで、100%の応答レベルは、酸によって沈殿されるDNAへの[3H]チミジンの最大の取り込みを意味している。
【0355】
或いは、サイトカイン活性の為の或るアッセイは、白血球の増殖を測定する。このアッセイでは、新たに合成されるDNAへのトリチウム化チミジンの取込量は、増殖活性を推定するために用いられる。EXMESの可変量は、放射性DNA前駆分子である[3H]チミジンの存在下で顆粒球、単球、又はリンパ球等の培養した白血球に追加される。このアッセイのためのEXMESを得る手段は、組換えでも良く、生化学的な調製より得ても良い。酸沈殿し得るDNAへの[3H]チミジンの組み込みが、適切な時間間隔で測定され、組み込まれた量は新規に合成されたDNAの量に直接比例する。少なくとも100倍のEXMES濃度レンジにわたる線形の用量反応曲線は、EXMES活性を示す。ミリリットルあたりの活性のユニットは、50%の応答レベルを生じるEXMESの濃度として定義される。ここで、100%の応答レベルは、酸によって沈殿されるDNAへの[3H]チミジンの最大の取り込みを従来意味している。
【0356】
EXMESサイトカイン活性の別のアッセイは、白血球走化性を測定するためにBoydenマイクロチェンバー(Neuroprobe, Cabin John MD)を利用する(Vicari, A.P. 他 (1997) Immunity 7:291-301)。このアッセイでは、マクロファージ又は単球等の約105の遊走細胞がチャンバの上の区画の細胞培地に配置される。可変希釈のEXMESが、下方区画に配置される。5〜8ミクロンのポアを有するポリカーボネートフィルタ(Nucleopore, Pleasanton CA)により2つの区画は分離される。37℃で80分〜120分のインキュベーション後、フィルタはメタノール中で固定され、適当な標識試薬で染色した。フィルタの他の部位に遊走する細胞が、標準的な顕微鏡を用いて計数された。化学走化性指数は、培地だけが下方区画に存在する時に計数される遊走細胞の数によって、EXMESが下方区画に存在する時計数された遊走細胞の数を割ることにより計算される。化学走化性指数はEXMESの活性に比例する。
また、EXMESをコードするベクターで形質転換された細胞株又は組織は免疫ブロットを行うことによってEXMES活性をアッセイできる。細胞はβ-メルカプトエタノールの存在でSDS中で変性され、核酸はエタノール沈澱によって除去され、タンパク質はアセトン沈澱によって精製される。ペレットはpH 7.5の20mMトリス緩衝液で再懸濁し、EXMESに特異的な抗体で前もってコーティングされたプロテインGセファロースと共にインキュベートする。洗浄後、セファロースのビーズを電気泳動サンプル緩衝液中で煮沸し、溶出されたタンパク質をSDS-PAGE.にかける。SDS-PAGE は免疫ブロットのニトロセルロース膜に移し、一次抗体としてEXMESに特異的な抗体を用い、二次抗体として一次抗体に特異的な125Iで標識されたIgGを用いてブロット上のバンドを視覚化し定量することによって、EXMES活性を測定する。
【0357】
別法では、EXMES活性のアッセイで、分泌性の膜結合オルガネラ(細胞小器官)におけるEXMESの量を測定する。上述したように形質移入された細胞を採取し、溶解する。ライセートは、当業者に既知の、ショ糖密度勾配超遠心法などの方法で分画する。そのような方法は、ゴルジ体、ER、小膜結合小胞、及びその他の分泌細胞小器官のような、細胞内要素の隔離を可能とする。分割された細胞ライセート及び全体の細胞ライセートよりの免疫沈降は、EXMES特定抗体を用いて実行され、また免疫沈降サンプルはSDS-PAGE及び免疫ブロット技術を用いて解析される。全細胞ライセート中のEXMESに対する分泌性細胞小器官中のEXMES濃度は、分泌経路を通るEXMESの量に比例する。
EXMES活性の或るアッセイは、肝細胞成長因子(HGF)活性剤の抑制活性を測定する。 このアッセイでは、HGF活性剤(450 ng/ml)が0.05%のCHAPSを含有するPBS中の様々な濃度の精製されたEXMESと混合される。また酵素抑制剤複合体を形成するために37℃で30分間インキュベートする。
【0358】
混合液中の残りのHGF-変換活性は同量の一本鎖HGF(sc-HGF) (0.05% CHAPS含有PBS 1.5 μg/ml)と硫酸デキストラン(100 mg/ml, MWCO=500,000, Sigma)を加えた後、更に2時間インキュベートした後に、還元したゲル状態下でSDS-PAGEにより分析して測定した。ゲルはクーマシーブルーで染色し、sc-HGFとヘテロ二量体の量は染色したバンドをスキャンすることにより測定した。EXMESのHGF活性因子に対する抑制活性は、残りの一本鎖型のHGF全体に対する比率を計算することにより測定される(Shimomura, T.他. (1997) J. Biol. Chem. 272:6370-6376)。
【0359】
別法では、EXMES活性のためのアッセイで、培養細胞中の神経伝達の、刺激作用若しくは抑制を測定する。培養CHO繊維芽細胞をEXMESに曝す。エンドサイトーシスによるEXMES取り込み後に、これらの細胞を新鮮培養液で洗浄し、細胞全膜電位固定したアフリカツメガエル筋細胞を、EXMESを含まない媒質中の線維芽細胞の1つと接触させる。膜電流を、この筋細胞から記録する。対照値に対し増加若しくは減少した電流は、EXMESの神経修飾性効果を示している(Morimoto, T.他(1995)Neuron 15 : 689-696)。
【0360】
別法では、AMP結合活性の測定を、EXMESと32P標識したAMPとを混合させて行う。この反応溶液を37℃でインキュベートし、反応はトリクロロ酢酸の添加で終了させる。酸抽出物を中和し、ゲル電気泳動にかけて非結合標識を除去する。ゲル内に留まる放射活性が、EXMESの活性に比例する。
【0361】
(19 EXMES分泌アッセイ)
或る高処理アッセイを用いて、真核細胞内に分泌されるポリペプチドを同定しうる。このようなアッセイの1例では、ポリペプチド発現ライブラリを作製するため、5'に偏向したcDNAを、或るリーダーのないβラクタマーゼ遺伝子の5'末端に融合する。βラクタマーゼは便利な遺伝子レポーターである。理由は、この酵素が高い信号/ノイズ比と、低い内因性バックグラウンド活性とを示し、他のタンパク質に融合しても活性を保持するからである。或る2重プロモーター系によって、βラクタマーゼ融合ポリペプチドの発現を、細菌又は真核細胞でなしうる。これにはlac又はCMVプロモーターを各々用いる。
【0362】
ライブラリは先ず細菌(大腸菌など)に形質転換され、真核生物系で分泌されうる融合ポリペプチドをコードするライブラリメンバーが同定される。哺乳類シグナル配列は、βラクタマーゼ融合ポリペプチドが細菌のペリプラズムへ移動するよう指示する。ペリプラズムでこれはカルベニシリンへの抗生物質耐性を授ける。カルベニシリン選択された細菌の単離を固体培地で行い、個々のクローンを液体培地で成長させ、生じた培養物を用いてライブラリメンバープラスミドDNAを単離する。
【0363】
哺乳類細胞(293細胞など)の播種を96ウェル組織培養プレート上に、約40,000細胞/ウェルの密度で、フェノールレッドを含まない、100μl のDMEに10%ウシ胎児血清(FBS)( Life Technologies, Rockville, MD)を加えて行う。次の日に、精製プラスミドDNA(カルベニシリン耐性細菌から単離)を、15μlのOPTI-MEM I培養液(Life Technologies)で、形質移入すべき細胞の各ウェルに25μlの容量まで希釈する。別のプレートで、1μlのLF2000 Reagent(Life Technologies)の希釈を25μl/ウェルOPTI-MEM I中に行う。25μlの希釈したLF2000 Reagentを次に25μlの希釈したDNAと混合し、短時間混ぜ合わせ、インキュベートを20分間、室温で行う。生じたDNA-LF2000試薬複合体を次に、直接、293細胞の各ウェルに加える。細胞の形質移入はまた、適切な対照プラスミド(野生型βラクタマーゼ、リーダーのないβラクタマーゼ、又は例えばCD4融合したリーダーのないβラクタマーゼのいずれかを発現するプラスミド)で行う。形質移入の24時間後、約90μlの細胞培地のアッセイを37℃で、100 _MのNitrocefin(ニトロセフィン、Calbiochem, San Diego CA)及び0.5 mMのオレイン酸(Sigma Corp., St. Louis, MO)を用い、10 mMリン酸バッファー(pH 7.0)中でおこなう。ニトロセフィンはβラクタマーゼの基質であり、加水分解されると黄色から赤へ顕著に変色する。βラクタマーゼ活性のモニターを、20分間、マイクロタイタープレートリーダーにおいて486nmで行う。486nmでの色吸収の増加が、形質移入した細胞培地でのβラクタマーゼ融合ポリペプチドの分泌に一致する。これは、融合ポリペプチドにおける真核生物シグナル配列の存在の結果である。対応するライブラリメンバープラスミドDNAのポリヌクレオチド配列分析を次に用いて、シグナル配列をコードするcDNAを同定する(記載は米国特許出願09/803,317号、ファイル日は2001年3月9日)。
【0364】
例えば、SEQ ID NO:4はこのアッセイを用いて分泌タンパク質であることが示された。
【0365】
(20 免疫グロブリン活性の実証)
EXMES活性の或るアッセイでは、EXMESが血清からの抗原類を認識し沈殿させる能力を測定する。この活性の測定は、定量沈降反応で成し得る(Golub, E. S. 他(1987)Immunology: A Synthesis, Sinauer Associates, Sunderland, MA, 113-115ページ)。EXMESを、当分野で既知の方法で同位体標識する。一定量の標識EXMESに種々の血清濃度を加える。EXMES-抗原複合体を溶液から沈殿させ、遠心分離で収集する。沈殿性EXMES-抗原複合体の量は、沈殿物中に検出される放射性同位元素の量に比例する。沈殿性EXMES-抗原複合体の量を、血清濃度に対してプロットする。異なった血清濃度の特徴的沈降曲線が得られ、沈殿性EXMES抗原複合物の量は最初は血清中濃度の増加に比例して増加し、等価点を頂点とし、その後は血清中濃度の増加に比例して減少する。このように、沈澱性EXMES-抗原複合体の量は、抗原の制限量と過剰量の両方に対する感受性によって特徴付けられるEXMES活性の測定量である。
別法として、EXMES活性の或るアッセイは、細胞表面におけるEXMESの発現を測定する。EXMESをコードするcDNAを、非白血球細胞株に形質移入する。細胞表面タンパク質は、ビオチンで標識する(de la Fuente, M.A. 他 (1997) Blood 90:2398-2405)。EXMES特異抗体を用いて免疫沈降を行い、SDS-PAGE及び免疫ブロット技術を用いて免疫沈降サンプルを分析する。標識した免疫沈降剤と未標識免疫沈降剤の比は、細胞表面に発現したEXMESの量に比例する。
別法として、EXMES活性のアッセイは、EXMESの過剰発現によって誘発される細胞凝集の量を測定することで行われる。このアッセイにおいては、NIH3T3等の培養細胞にEXMESをコードするcDNAで形質移入する。このcDNAは強いプロモーターの制御下にある適切な哺乳動物発現ベクターに含まれている。緑色蛍光タンパク質(CLONTECH)などの蛍光標識タンパク質をコードするcDNAとの共形質移入を行うと、安定な形質移入体を同定するのに役立つ。形質移入された細胞と形質移入されない細胞で細胞の凝集(塊化)量を比較する。細胞の凝集量によりEXMESの活性を直接的に測定できる。
【0366】
当業者には、本発明の要旨及び精神から逸脱しない範囲での、本発明の記載した組成物、方法及びシステムの種々の修正及び変更の手段は自明であろう。本発明が新規であり、有用なタンパク質及びそのコードするポリヌクレオチドを提供することは高く評価されるであろう。また、これらは薬物発見及び疾患及び症状の検出、診断及び治療にこれらの組成物を使用する方法に用いられ得る。本発明について説明するにあたり幾つかの実施例に関連して説明を行ったが、本発明の請求の範囲が、そのような特定の実施例に不当に制限されるべきではないことを理解されたい。また、本発明をこのような実施態様の説明によって、開示した形態だけに網羅されるか、或いは、制限されるものと見なされるべきでもない。更に、一実施態様の要素は他の実施態様の一つ以上の要素と容易に組み合わされ得る。このような組い合わせによって本発明の範囲内で多数の実施態様が形成され得る。本発明の範囲は下記の請求項及びそれに相当するものによって定義することを意図するものである。
【0367】
(表の簡単な説明)
表1は、本発明の完全長ポリヌクレオチド及びポリペプチド実施例の命名の概略である。
【0368】
表2は、本発明のポリペプチド実施例のGenBank識別番号と、最も近いGenBank相同体の注釈(annotation)と、PROTEOMEデータベース識別番号と、PROTEOMEデータベース相同体群の注釈とを示す。各ポリペプチドとその相同体が一致する確率スコアも併せて示す。
【0369】
表3は、予測されるモチーフ及びドメインなど、本発明のポリヌクレオチド実施例の構造的特徴を、ポリペプチドの分析に用いる方法、アルゴリズム及び検索可能なデータベースと共に示す。
【0370】
表4は、ポリヌクレオチド実施例をアセンブリするために用いたcDNAやゲノムDNA断片を、ポリヌクレオチドの選択された断片と共に示す。
【0371】
表5はポリヌクレオチド実施例の代表的cDNAライブラリを示す。
【0372】
表6は、表5に示したcDNAライブラリの作製に用いた組織及びベクターを説明する付表である。
【0373】
表7は、本発明のポリヌクレオチド及びポリペプチドの分析に用いたツール、プログラム、アルゴリズムを、適用可能な説明、参照文献及び閾値パラメータと共に示す。
【0374】
表8は、ポリヌクレオチド実施様態に見られる一塩基多型を、種々のヒト集団での対立遺伝子(アレル)頻度と共に示す。
【0375】
【表1】
【0376】
【表2−1】
【0377】
【表2−2】
【0378】
【表2−3】
【0379】
【表2−4】
【0380】
【表2−5】
【0381】
【表2−6】
【0382】
【表2−7】
【0383】
【表2−8】
【0384】
【表2−9】
【0385】
【表3−1】
【0386】
【表3−2】
【0387】
【表3−3】
【0388】
【表3−4】
【0389】
【表3−5】
【0390】
【表3−6】
【0391】
【表3−7】
【0392】
【表3−8】
【0393】
【表3−9】
【0394】
【表3−10】
【0395】
【表3−11】
【0396】
【表3−12】
【0397】
【表3−13】
【0398】
【表3−14】
【0399】
【表3−15】
【0400】
【表3−16】
【0401】
【表3−17】
【0402】
【表3−18】
【0403】
【表3−19】
【0404】
【表3−20】
【0405】
【表3−21】
【0406】
【表3−22】
【0407】
【表3−23】
【0408】
【表3−24】
【0409】
【表3−25】
【0410】
【表3−26】
【0411】
【表3−27】
【0412】
【表3−28】
【0413】
【表3−29】
【0414】
【表3−30】
【0415】
【表3−31】
【0416】
【表3−32】
【0417】
【表3−33】
【0418】
【表3−34】
【0419】
【表3−35】
【0420】
【表3−36】
【0421】
【表4−1】
【0422】
【表4−2】
【0423】
【表4−3】
【0424】
【表4−4】
【0425】
【表4−5】
【0426】
【表4−6】
【0427】
【表4−7】
【0428】
【表4−8】
【0429】
【表4−9】
【0430】
【表4−10】
【0431】
【表4−11】
【0432】
【表4−12】
【0433】
【表4−13】
【0434】
【表4−14】
【0435】
【表4−15】
【0436】
【表4−16】
【0437】
【表4−17】
【0438】
【表4−18】
【0439】
【表5】
【0440】
【表6−1】
【0441】
【表6−2】
【0442】
【表6−3】
【0443】
【表7−1】
【0444】
【表7−2】
【0445】
【表8−1】
【0446】
【表8−2】
【0447】
【表8−3】
【0001】
本発明は、新規の核酸及びこれらの核酸によりコ−ドされた細胞外メッセンジャーに関する。また、本発明は、これらの核酸とタンパク質を利用した、自己免疫又は炎症性疾患、神経疾患、内分泌障害、発達障害、癌を含む細胞増殖異常、生殖障害、心血管疾患、及び感染の、診断・治療・予防に関する。本発明は、更に、核酸及び細胞外メッセンジャーの発現における、外因性化合物の効果についての評価に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞間伝達は多細胞生物の成長と生存に必須である。特に内分泌系、神経系、免疫系の機能に必須である。更に細胞間伝達は組織作製と器官形成などの発生プロセスにとって極めて大切である。その場合細胞増殖、細胞分化及び形態形成が空間的また時間的に正確な協働作用で調整されなければならない。細胞は分泌とホルモン、成長ファクター、神経ペプチド、サイトカインなどのシグナル分子の多様なタイプの取り込みによって互いに伝達する。
【0003】
ホルモン
ホルモンはシグナル伝達分子であり、胚形成から成人まで基本的な生理的プロセスを協働して調整する。これらのプロセスには代謝、呼吸、生殖、排出、胎児組織分化、器官形成、成長、発達、恒常性及びストレス反応が含まれる。ホルモン分泌と神経系は密接に組み込まれており、互いに依存している。ホルモンは内分泌腺により、主に視床下部と脳下垂体、甲状腺と副甲状腺、膵臓、副腎、卵巣、精巣で分泌される。
【0004】
循環へのホルモンの分泌はきちんと制御されている。ホルモンはしばしば日周期的パターン、拍動性パターン、及び周期性パタ−ンで分泌される。ホルモン分泌は血液生化学の摂動、他の上流で作用するホルモン、神経インパルス、負のフィードバックループにより調整される。血中ホルモン濃度は常に監視され、最適の安定したレベルを維持するよう調整される。いったん分泌されると、ホルモンは特異的受容体を発現する標的細胞だけに作用する。
【0005】
多くの内分泌系の疾患は、ホルモンの分泌不全或いは分泌過多により引き起こされる。分泌不全は、源泉のホルモンの腺が損傷したり或いは正常に機能しない場合に多くの場合発生する。分泌過多は、ホルモン分泌細胞に由来する腫瘍の増殖に多くの場合起因する。不適切なホルモンレベルは、調節フィードバックループ或いはホルモン前駆体のプロセッシングにおける障害により引き起こされる場合がある。内分泌系機能障害は、標的細胞がホルモンに応答しない場合に発生する場合もある。
【0006】
ホルモンは生化学的に、ポリペプチド、ステロイド、エイコサノイドまたアミンとして分類される。インスリンや成長ホルモンなど多様なホルモンを含むポリペプチドは、大きさや機能が様々である。多くの場合、不活性の前駆体として合成され、それらの前駆体が細胞内で成熟な活性型へ処理される。アミンにはエピネフリンとドーパミンがあり、神経内分泌シグナリングで機能するアミノ酸誘導体である。ステロイドにはコレステロールに由来するホルモンのエストロゲンとテストステロンがあり、性的成長と生殖において機能する。エイコサノイドにはプロスタグランジンとプロスタサイクリンがあり、多様なプロセスで機能する脂肪酸誘導体である。多くのポリペプチドとある種のアミンは、循環中で可溶性であり、分泌後数秒以内にタンパク質分解に対して感受性が高い。ステロイドと脂質は不溶性であり、循環ではキャリアタンパク質によって輸送される必要がある。今からの考察では、主にポリペプチドホルモンに焦点を合わせる。
【0007】
視床下部と脳下垂体腺によって分泌されたホルモンは、神経信号に応答して他の内分泌腺からホルモン分泌を調節することにより内分泌機能において重大な役割を演じる。視床下部ホルモンには、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン、性腺刺激ホルモン放出ホルモン、ソマトスタチン、成長ホルモン放出因子、副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン、サブスタンスP、ドーパミン、プロラクチン放出ホルモンがある。これらのホルモンは、脳下垂体の前葉からホルモンの分泌を直接調節する。下垂体の前葉ホルモンによって分泌されたホルモンには、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、メラニン細胞刺激ホルモン、成長ホルモン及びプロラクチンなどのソマトトロピンホルモン、甲状腺刺激ホルモン及び黄体形成ホルモン(LH)また卵胞刺激ホルモン(FSH)などの糖タンパク質ホルモン、β-リポトロピン、β-エンドルフィンがある。これらのホルモンは、甲状腺、膵臓、副腎からホルモン分泌を調節する。また排卵と精子形成を刺激して生殖器官に直接作用する。下垂体後葉は、抗利尿ホルモン(ADH,バソプレシン)とオキシトシンを合成、分泌する。
【0008】
視床下部と下垂体の疾患は多くの場合、原発脳腫瘍及び腺腫、妊娠に伴う梗塞、下垂体切除、動脈瘤、血管奇形、血栓症、感染症、免疫異常、頭部外傷による合併症などの病変から起こる。このような疾患は他の内分泌腺の機能に重大な影響を及ぼす。下垂体低下に関連した疾患には、性機能低下、シーハン症候群、尿崩症、カルマン病、カルマン症候群、ハンド‐シュラー‐クリスチャン病、レトラ‐シヴェ病、サルコイドーシス、空トルコ鞍症候群、小人症が含まれる。下垂体機能亢進症に関連した疾患には、良性線種によって発生しやすい、抗利尿ホルモン(ADH)不適合分泌症候群(SIADH)及び先端巨大症、巨人症が含まれる。
【0009】
甲状腺、副甲状腺によって分泌されるホルモンは、それぞれ主に代謝速度と血清カルシウムレベルの調製を制御する。甲状腺ホルモンには、カルシトニン、ソマトスタチン、甲状腺ホルモンが含まれる。副甲状腺は、副甲状腺ホルモンを分泌する。甲状腺機能低下症に関連した疾患には、甲状腺腫及び粘液水腫、細菌感染性急性甲状腺炎、ウイルス感染性亜急性甲状腺炎、自己免疫性甲状腺炎(橋本病)、クレチン病を含む。甲状腺機能亢進症に関連した疾患には、甲状腺中毒症及びその様々な型、グレーブス病、前脛骨粘液水腫、中毒性多結節性甲状腺腫、甲状腺癌、プランマー病を含む。副甲状腺機能亢進症に関連する疾患には、骨再吸収と副甲状腺肥大を招くConn病(chronic hypercalemia)がある。
【0010】
膵臓によって分泌されるホルモン類は、糖質、脂肪、タンパク質代謝の割合を調節して血糖値を調節する。膵臓ホルモンには、インシュリン、グルカゴン、アミリン、γ-アミノ酪酸、ガストリン、ソマトスタチン、膵臓ポリペプチドがある。膵臓の機能障害に関連する主な疾患は、不十分なインシュリン活動により引き起こされる糖尿病である。糖尿病は、通常タイプI(インシュリン依存性糖尿病、若年性糖尿病)或いはタイプII(インシュリン非依存性糖尿病、成人型糖尿病)のどちらかに分類される。インシュリン補充療法による両者の治療は公知である。糖尿は通常、低血糖症(インシュリン・ショック)、昏睡、糖尿病性ケトアシドーシス、乳酸アシドーシスなどの急性合併症を引き起こす。また目、腎臓、皮膚、骨、関節、循環系、神経系の疾患や感染への抵抗低下を招く慢性合併症も引き起こす。
【0011】
ホルモン機能に関連する解剖、生理機能、疾患については、McCance, K. L及び Huether, S. E. (1994) Pathophysiology The Biological Basis for Disease in Adults and Children, Mosby-Year Book, Inc., St. Louis, MO; Greenspan, F. S.及びBaxter, J. D. (1994) Basic and Clinical Endocrinology, Appleton and Lange, East Norwalk, CT.Growth Factorsで参照されている。
【0012】
成長因子は、細胞間伝達を仲介する分泌性タンパク質である。循環系を通って長距離を移動するホルモンとは異なり、ほとんどの成長因子は主に局所的なメディエータであり、隣接する細胞に作用する。ほとんどの成長因子は、成長因子を分泌経路に導く疎水性N末端シグナルペプチド配列を含む。またほとんどの成長因子は分泌経路内で翻訳後修飾される。このような修飾には、タンパク質分解、糖鎖形成、リン酸化反応、分子内ジスルフィド結合形成が含まれることもある。一度分泌されると、成長因子は隣接する標的細胞の表面上で特異的受容体に結合する。そして結合した受容体は細胞内シグナル伝達経路を誘発する。これらのシグナル伝達経路は、標的細胞で特異な細胞応答を引き起こす。これらの応答には遺伝子発現の調節と細胞分裂、細胞分化、細胞運動の刺激又は阻害が含まれることもある。
【0013】
成長因子は、少なくとも2つのクラスに大きく、重複して分類される。一番大きなクラスには、広範囲にわたる影響する大きなポリペプチド成長因子が含まれる。これらの因子には、上皮成長因子(EGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、トランスフォーミング成長因子-^(TGF-β)、インシュリン様成長因子(IGF)、神経成長因子(NGF)、及び血小板由来の成長因子(PDGF)が含まれる。それぞれは多数の因子に関連するファミリーを定義する。NGF(神経成長因子)を除いて大きなポリペプチド成長因子は、多様な細胞型において創傷治癒、骨合成、再形成、細胞外マトリックス合成、そして上皮、表皮、結合組織の増殖を刺激する分裂促進因子として作用する。TGF-β、EGF、FGFファミリーのメンバーは、胚芽腫の分化において誘導信号としても作用する。NGFは神経栄養因子として特異的に機能し、ニューロンの成長と分化を促進する。
【0014】
数種の大きなポリペプチド成長因子は、制限された一連の標的組織の特異的機能を実行する例えばマウス成長/分化因子9 (GDF-9)は、卵巣のみで発現されるTGF-βファミリーメンバーである(McPherron, A.C及びS.-J. Lee (1993) J. Biol. Chem. 268:3444-3449)。NGFは神経栄養因子として特異的に機能し、ニューロンの成長と分化を促進する。Scube1(シグナルペプチド-CUBドメイン-EGF-関連1)は、幾つかの器官系の発達において役割を果たし得る。10のEGFリピートと1つのCUBドメインを含有するタンパク質は、発生中の中枢神経系、生殖腺、体節、表皮外胚葉、肢芽で発現される(Grimmond 他. (2000) Genomics 70:74-81)。
【0015】
肝細胞成長因子(HGF)は、多様な標的組織の細胞の成長、細胞運動、形態形成を促進する(Michalopoulos, G.K.及びZarnegar, R. (1992) Hepatology 15:149-155、Michalopoulos及びDeFrances, M.C. (1997) Science 276:60-66)。HGFは、マウスの肝臓と胎盤の発達に必要とされ、肝臓、肺、腎臓等の成体の器官の細胞の再生を刺激する(Schmidt, C. 他. (1995) Nature 373:699-702)。HGFは、4つのクリングルドメインとその後に来るセリンプロテアーゼ様ドメインを含有し、チロシンキナーゼ受容体であるc-metの結合と活性化により、その効果を仲介する。
【0016】
フォリスタチン(FS)は、成長及び分化因子のトランスフォーミング成長因子βファミリーのメンバーであるアクティビンを特異的に結合し、抑制するタンパク質である。アクティビンは、発達中の胚の中胚葉の誘発及び成人の女性ホルモン分泌の調節を含む、成長また分化と関連する多様な機能を実行する(de Krester, D.M. (1998) J. Reprod. Immunol. 39:1-12)。アクティビンとFSの両者は、多くのタイプの細胞に見出される。FS及びアクティビンの相互作用は、性腺組織、下垂体組織、妊娠と関連する膜、血管組織、肝臓における多様な細胞過程に影響する(概説はPhillips, D.J及びD.M. de Krester (1998) Front. Neuroendocrinol. 19:287-322)。FSは胚組織の神経化においても直接的な役割を果たし得る(Hemmati-Brivanlou 他.(1994) Cell 77:283295)。
【0017】
FSは、カエル、ニワトリ、ヒト等の多様な種において保存されている。ヒトFSの変異体には、288アミノ酸アイソフォームと315アミノ酸アイソフォームが含まれる(McConnell, D.S. 他 (1998) J. Clin. Endocrinol. Metab. 83:851-858)。たいていのフォリスタチンは、10の定間隔のシステイン残基を伴う保存したドメインを含有する。これらの残基はジスルフィド結合形成及び陽イオンの結合に関与すると思われる。類似のドメインが、胚形成と修復中に多様な組織で発現される細胞外マトリクス関連糖タンパク質であるオステオネクチン(SPARC又はBM-40とも呼ばれる)、及びKazalプロテアーゼ抑制因子において保存されている(概説はLane, T.F.及びE.H. Sage (1994) FASEB J. 8:163-173)。オステオネクチンは、FS様ポリシステインドメインだけでなく、他のモジュラードメイン群を含有し、これらのモジュラードメイン群は、細胞とマトリックス成分を結合するために単独で機能でき、またマトリックスとの細胞の接触を選択的に破壊することにより細胞の形状を変更することができる。高レベルのオステオネクチンは、胚の発達する骨と歯、主に骨芽細胞、象牙質芽細胞、軟骨周囲(perichondrial)繊維芽細胞に関連する。細胞接着と増殖のオステオネクチン調節は、組織再構築と脈管形成においても機能し得る(Kupprion 他 (1998) J. Biol. Chem. 45:29635-29640)。
【0018】
FSは多様な細胞増殖異常、生殖障害、発達障害と関連する。FSを欠ける遺伝子組み換えマウスは多数の筋骨格欠陥を有し、誕生後間もなく死ぬ(Matzuk, M.M. 他. (1995) Nature 374:360-363)。FSの異常発現と局在化は、良性前立腺過形成と前立腺癌に関係していると考えられている(Thomas, T.Z. 他. (1998) Prostate 34:34-43)。FS様ポリシステインドメインを有するタンパク質をコードするフォリスタチン関連遺伝子は、白血病発生に関与し得る染色体転座と関連する(Hayette, S. (1998) Oncogene 16:2949-2954)。炎症反応において、FSは早期アテローム性動脈硬化症に特徴的なマクロファージ泡沫細胞形成を増加する(Kozaki, K. 他 (1997) Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol. 17:2389-2394)。
【0019】
骨形成タンパク質(BMP)は、異所性骨形成を誘発することが可能である骨に由来する因子である(Wozney, J.M. 他. (1988) Science 242:1528-1534)。BMPは骨生成と再生成に関与する疎水性糖タンパク質であり、それらの内の数種類はTGF-βスーパファミリーと関連する。例えば、BMP-1は骨生成において調節的な役割を有し、プロコラーゲンCプロティナーゼ活性と細胞外「CUB」ドメインの存在により特徴付けられると思われる。CUBドメインは、おそらく2つのジスルフィド架橋を形成する4つのシステインを含む約110残基からなり、機能的に多様で、ほとんど発達的に調節されるタンパク質類に見出される(ExPASy PROSITE document PR00908)。
【0020】
別の成長因子のクラスには造血性成長因子が含まれており、標的特異性において狭い。造血性成長因子は、Bリンパ球、Tリンパ球、赤血球、血小板、好酸球、好塩基球、好中球、マクロファージ、及びそれらの幹細胞前駆体のような血液細胞の増殖及び分化を刺激する。造血性成長因子にはコロニー形成活性化因子 (G-CSF、M-CSF、GM-CSF、CSF1-3)、赤血球生成促進因子、サイトカインが含まれる。サイトカインは免疫システムの細胞によって分泌される特殊な造血性因子であり、以下に詳述する。
【0021】
成長因子は、in vitroでの細胞の腫瘍性転換、及びin vivoでの腫瘍進行において重大な役割を果たす。大きなポリペプチド成長因子の過剰な発現は、培地において細胞の増殖と形質転換を促進する。in vivoの腫瘍細胞による成長因子の不適性な発現は、腫瘍の血管新生及び転移に貢献しうる。造血性成長因子の不適切な活性によって、貧血、白血病、及びリンパ腫が結果として起こる。更に成長因子は潜在的にプロトオンコジーンの発癌生成物である腫瘍性タンパク質に構造的、機能的両方に関連する。特定のFGF とPDGF ファミリーメンバ−自体が腫瘍性タンパク質に相同であるが、EGF、NGF及び FGF ファミリーの特定のメンバ−の受容体はプロトオンコジーンによってコードされる。成長因子もプロトオンコジーン及び腫瘍抑制因子遺伝子の双方の転写調節に影響を与える(概説は、Pimentel, E. (1994) Handbook of Growth Factors, CRC Press, Ann Arbor, MI、 McKay, I.及び Leigh, I.,編集. (1993) Growth Factors: A Practical Approach, Oxford University Press, New York, NY、Habenicht, A., 編集. (1990) Growth Factors, Differentiation Factors, and Cytokines, Springer-Verlag, New York, NY)。
【0022】
更に、一部の大きなポリペプチド成長因子は、発達中の胚の始原胚葉の誘導において重要な役割を果たす。この誘導により究極的には胎児の中胚葉、外胚葉、内胚葉の形成がなされる。これらが、完全な成体の体制のためのフレームワークを提供する。この誘導プロセスの崩壊は、胚発育にとって破局的となるであろう。
【0023】
小さなペプチド因子−神経ペプチド及び血管介在物質
神経ペプチド及び血管介在物質(NP/VM) は、通常20以下のアミノ酸である小さなペプチド因子のファミリーを構成する。これらの因子は通常はニューロンの興奮と血管収縮/血管拡張、筋肉収縮、脳や他の内分泌組織からのホルモン分泌の阻害において機能する。このファミリーに含まれるのは、神経ペプチド及び神経ペプチドホルモンとして、ボンベシン、神経ペプチドY、ニューロテンシン、ニューロメディンN、メラノコルチン、オピオイド、ガラニン、ソマトスタチン、タキキニン、ウロテンシンII、及び平滑筋刺激に関与する関連ペプチド、バソプレッシン、血管作用性小腸ペプチド、及び循環系によって運ばれるシグナル伝達分子(アンジオテンシン、補体、カルシトニン、エンドセリン、ホルミルメチオニルペプチド、グルカゴン、コレシストキニン、ガストリン及び上記で取り上げた多くのペプチドホルモン)である。NP/VMは直接信号を伝達することが可能であり、別の神経伝達物質及びホルモンの活性若しくは遊離を調節し、またシグナル伝達カスケードにおいて触媒酵素として働く。NP/VMの効果は、ごく短時間のものから長期間持続するものまで幅広い(Martin, C.R. 他(1985)Endocrine Physiology, Oxford University Press, New York, NY, 57-62ページの概説を参照)。
【0024】
サイトカイン
サイトカインは、免疫システム及び炎症反応を調節するシグナル分子のファミリーを構成する。サイトカインは、損傷或いは感染に反応して通常、白血球或いは白血球細胞によって分泌される。サイトカインは、Bリンパ球、Tリンパ球、単球、マクロファージ、顆粒球などの免疫システムの細胞に主に作用する成長及び分化因子として機能する。他のシグナル伝達分子のようにサイトカインは特異的原形質膜受容体に結合する。そして遺伝子発現パターンを変容する細胞内シグナル伝達経路を誘発する。炎症と免疫システムの疾患の治療におけるサイトカインの使用に関しては、相当な将来性がある。
【0025】
サイトカイン構造と機能は、in vitroで大規模に特徴付けられてきた。多くのサイトカインは30Kダルトン以下の小さなポリペプチドである。50を越えるサイトカインがヒト及びげっし類から同定されてきた。サイトカインサブファミリーの例には、インターフェロン(IFN-α、IFN-β、IFN-γ)、 インターロイキン(IL1-IL13)、腫瘍壊死因子(TNF-α及びTNF-β)とケモカイン類がある。多くのサイトカインは組換えDNA技術を利用して生成されてきた。また個々のサイトカインの活性はin vitro で決定されてきた。これらの活性は、白血球増殖、分化、運動の調節を含む。
【0026】
サイトカインは、応答細胞の表面で発現した受容体により標的と相互作用する。サイトカインは、2つの受容体サブユニットを会わせることにより、造血素受容体(hemopoietin receptor)、受容体キナーゼ、腫瘍壊死因子受容体(TNF)/神経成長因子受容体(NGF)と結合する。この受容体サブユニットの二量体は、細胞の細胞質に原形質膜を通してシグナルを伝達する。表皮性成長因子(EGF)やインシュリンの受容体等のタンパク質キナーゼ受容体の場合、2つの受容体サブユニット細胞質ドメインの並置(juxtaposition)が内因性チロシンキナーゼ活性を活性化する。結果として、サブユニットは互いにリン酸化し合う。その結果、リン酸化したチロシン残基は、次にsrc相同体2 (SH2)ドメインを含有する細胞質タンパク質と相互作用する。リン酸化した受容体分子と相互作用するSH2含有タンパク質には、ホスファチジルイノシトール3'キナーゼ、srcキナーゼファミリーメンバー、GRB2、shcが含まれる。これらのSH2含有タンパク質は、低分子量単量体GTP結合タンパク質ファミリーのRasとRho、ホスホチロシンホスファターゼSHP-2等のホスファターゼ等の、他の細胞質タンパク質としばしば会合する。これらの相互作用によって形成される シグナル伝達複合体は、raf及びマイトジェン活性化タンパク質(MAP)キナーゼを伴うキナーゼカスケード等のシグナルカスケードを開始することができる。その結果、転写調節と細胞骨格再編成を起こす。造血素受容体及びTNF/NGF受容体は内因性キナーゼ活性はないが、多くの同じシグナルカスケードを応答細胞内で活性化する。
【0027】
サイトカインシグナル伝達カスケードに関与するキナーゼの多くは、キナーゼ活性化が正常な細胞制御をもはや受けない癌細胞の腫瘍遺伝子産物として最初に同定される。実際に、約3分の1の既知の腫瘍遺伝子がタンパク質キナーゼをコードする。更に、細胞形質転換(発癌)はチロシンリン酸化活性の上昇を伴う場合が多い(Charbonneau, H.及びTonks, N. K. (1992) Annu. Rev. Cell Biol. 8:463-93)。そのように、細胞はサイトカインシグナル伝達カスケードを好適な制御下に維持する調節システムを必ず有する必要がある。
【0028】
Eps8は、EGF受容体と会合し、EGF受容体によりリン酸化されるタンパク質である。ヒトの腫瘍細胞株は高い構成性レベルのチロシンリン酸化Eps8を含有し、EGF受容体(EGFR)を発現するNIH3T3細胞におけるEps8の過剰発現は、細胞分裂応答と細胞の過度な成長の促進をもたらす(Provenzano, C. 他. (1998) Exp. Cell Res. 242:186-200)。ABI(Ablインタラクター タンパク質:Abl interactor protein)-1とABI-2/e3B1を含む分子の1ファミリーは、src-様キナーゼAbl及びEps8等のチロシンキナーゼと相互作用する。EGFRを発現するNIH3T3細胞におけるABI-2/e3B1の過剰発現は、細胞分裂促進応答と細胞成長を抑制する。よって、サイトカインシグナル伝達のマイナスの調節因子としてタンパク質のABIファミリーは機能する(Ziemnicka-Kotula, D. 他. (1998) J. Biol. Chem. 273:13681-13692)。
【0029】
SH2含有ホスホチロシンホスファターゼ、SHP-1、SHP-2は、サイトカインシグナル伝達に関与する。造血細胞ホスファターゼであるSHP-1はシグナル伝達の潜在的抑制因子であり、一方、SHP-2は幾つかのサイトカインのためのポジティブなシグナルトランスデューサである。SIRP(シグナル調節性タンパク質)と呼ばれる膜貫通糖タンパク質のファミリーは、チロシンキナーゼの基質である。リン酸化されたSIRPはSHP-2に結合し、成長因子によって誘発されたDNA合成の抑制を含む、サイトカインによって誘発される細胞応答に負の効果を有する。この抑制は、インシュリン或いはEGFで刺激したSIRP形質移入NIH3T3細胞において、減少したMAPキナーゼ活性化と相関する。SIRP過剰発現は、v-fms癌遺伝子を運搬するレトロウイルスによるNIH3T3細胞の形質転換をも抑制した(Kharitonenkov, A. 他. (1997) Nature 386:181-186)。
【0030】
in vitroの個々のサイトカインの活性化は、in vivoのサイトカインの活性化の完全な範囲を反映していないかもしれない。サイトカインはin vivo では個々に発現されないが、有機体がある刺激で攻撃される時、代わりに種々の他のサイトカインとの組み合わせとして発現される。これらのサイトカインは共に、その特異な刺激に適切な方法で集団的に免疫応答を調節する。よってサイトカインの生理学的活性は、刺激自体によって決定される。また同時に発現されるサイトカイン中の複雑な相互的ネットワークによっても決定され、これらのサイトカインは相乗作用と拮抗関係の双方を示し得る。
【0031】
最近、in vitroにおいて抗腫瘍活性化を有するように思われる固有のサイトカインが単離された(Ridge, R.J及びN.J. Sloane (1996) Cytokine 8:1-5)。抗腫瘍性尿タンパク質(ANUP)であるこのサイトカインは、ヒトの尿からのニ量体として元来精製された。ANUPは、局在性研究がヒトの顆粒球で発現されることを示した時にサイトカインとして後に分類された。ANUPは、乳房、皮膚、肺、膀胱、膵臓、子宮の腫瘍に由来する細胞株の成長を抑制する。しかし、ANUPはヒトの非腫瘍細胞株の成長に影響しない。ANUPのN-末端22アミノ酸は、成熟した該タンパク質から切断されるシグナルペプチドを含む。成熟した該タンパク質の初めの9アミノ酸は、約10%の抗腫瘍活性化を保持する。更に、ANUPは、典型的な或る種の細胞表面糖タンパク質であるLy-6/u-PAR配列モチーフを含む。このモチーフは、50残基コンセンサス配列内の6システイン残基の固有のパタ-ンにより特徴付けられる。Ly-6/u-PARモチーフは、Ly-6 T-リンパ球表面抗原と細胞外セリンプロテアーゼであるウロキナーゼタイププラスミノーゲン活性因子の受容体(u-PAR)に見出される。
【0032】
ケモカインは、30を越えるメンバーで或るサイトカインサブファミリ−を構成する(概説はWells, T.N.C及び M.C. Peitsch (1997) J. Leukoc. Biol. 61:545-550)。ケモカインは、炎症の部位に単球とマクロファージを動員する走化タンパク質として始めに同定された。最近の証拠によると、造血及びHIV-1 感染においてもケモカインは重要な役割を演じている可能性がある。ケモカインは、分子量約6〜15Kダルトンの範囲の小さなタンパク質である。更にケモカインは、或る種のシステイン残基の数と位置に基づいてC、CC、CXC、或いはCX3Cに分類される。例えばCC ケモカインは2つの連続したシステインから成る保存されたモチーフをそれぞれ含む。それに続いてそれぞれ24- 及び 16-残基間隔の下流で起こる2つの付加的なシステインを含む(ExPASy PROSITE database, documents PS00472 及び PDOC00434)。これら4つのシステイン残基の存在と間隔は高度に保存される。しかし介在している残基は著しく異なる。しかしそのシステインダブレットのおよそ15残基下流に位置するチロシンは保存されており、走化活性にとって重要であるように思われる。CC ケモカインをコ−ド化する多くのヒト遺伝子は、17番染色体上に集まっている。しかし他の所にマッピングされるCCケモカイン遺伝子の例が、少数ある。ケモカインには、他にもリンフォタクチン(lymphotactin)(C ケモカイン)、マクロファージ走化性及び活性因子 (MCAF/MCP-1、CC ケモカイン)、血小板因子 4及びIL-8 (CXC ケモカイン)そしてフラクタルカイン(fractalkine)またneurotractin (CX3C ケモカイン)がある(概説は、Luster, A. D. (1998) N. Engl. J. Med. 338:436-445)。
【0033】
最近、新規のCCケモカインがマウスとヒトの胸腺において同定された(Vicari, A.P. 他. (1997) Immunity 7:291-301)。この胸腺発現ケモカイン(TECK)と呼ばれるタンパク質は、小腸において低レベルでも発現する。TECKは、以下の2つの理由でTリンパ球発達において或る役割を果たしているであろう。第1に、TECKは、Tリンパ球成熟が起こる、主要なリンパ器官である胸腺において最も多く発現する。第2に、胸腺におけるTECKの主要な供給源は、発達するTリンパ球における自己認容の達成を助ける白血球細胞である樹状細胞である。更に、TECKは活性化したマクロファージ、樹状細胞、胸腺Tリンパ球の走化活性を示す。ヒトのTECK(hTECK)をコードするcDNAは、151アミノ酸のタンパク質を予測する453塩基対のオープンリーディングフレームを含有する。hTECKは、C30、C31、C58、C75における4つの保存したシステインを含む、上記したCCケモカインの保存された特徴を保持する。しかし、C31とC58の間の間隔は3つの残基により増加される。そしてC58とC75の間の間隔は1つの残基により増加される。更に、hTECKはほとんどのCCケモカインに見出される保存したチロシンを欠いている。
【0034】
クロモグラニンとセクレトグラニンは、内分泌腺細胞と神経内分泌細胞の分泌顆粒に存在する酸性タンパク質である(Huttner, W.B. 他. (1991) Trends Biochem.Sci. 16 2730) (Simon, J.P.他. (1989) Biochem.J. 262 113)。 グラニンは生物学的に活性なペプチドの前駆体であり得る。或いはペプチドホルモンとニューロペプチドのパッケージングにおけるヘルパータンパク質であり得るが、確かな働きについては不明である。
【0035】
アルツハイマー病(AD)は進行性痴呆であり、神経病理学的な特徴は、アミロイドβペプチドを含むプラークの存在と、特定の脳領域における神経原線維変化である。更に、ニューロンとシナプスは失われ、炎症反応は小膠細胞と星状細胞において活性化する。
【0036】
ヒトのサイトカインシグナル伝達抑制因子 (SOCS) 相同体
シグナル伝達は、シグナル伝達分子の細胞膜受容体への結合に始まり、細胞内標的分子への影響で終わるカスケード式生化学反応を通じて、細胞が細胞外シグナル(ホルモン、神経伝達物質、成長因子及び分化因子等)に応答する一般的な過程である。この過程の中間段階においては、プロテインキナーゼを介したリン酸化による様々な細胞質タンパク質の活性化とこれらの活性化したタンパク質の幾つかの細胞核への移行を含むが、細胞核で特定遺伝子群の転写が影響される。シグナル伝達のこのプロセスは、細胞増殖、分化及び遺伝子転写を含む、全てのタイプの細胞機能を制御する。 成長因子EGF、PDGF、FGF等のための多くのサイトカイン受容体は、内因性タンパク質キナーゼ活性を示す。サイトカインの受容体への結合は、受容体上のチロシン残基の自己リン酸化を誘発する。これらのリン酸化した残基は、他の細胞質シグナル伝達タンパク質の結合のための認識部位であり、細胞表面での開始受容体活性化を特定の細胞内標的分子の活性化に連結する。これらのシグナル伝達タンパク質は、ホスホチロシン残基の認識及び結合部位であるsrc相同体2(SH2)ドメインを含有する。SH2ドメインは、ホスホリパーゼCg、Ras GTPase活性化タンパク質、GRB2等の、多様なシグナル伝達分子及び腫瘍タンパク質に見いだされる(Lowenstein, E.J. 他. (1992) Cell 70:431442)。
【0037】
シグナル伝達経路の活性化の主要な事象について多くが知られているが、どのようにシグナル経路が閉じられるかについてはあまり知られていない。最近、IL-2、IL-3、IL-6、インターフェロン-γ、EPO等、様々なサイトカインによりネズミのリンパ系細胞において誘発される、幾つかのSH2含有タンパク質が同定された(Yoshimura, A. 他. (1995) EMBO Journal 14:2816-2826、Starr, R. 他. (1997) Nature 387:917-921、Naka, T. 他. (1997) Nature 387:924-929)。 これらのタンパク質の共通特性は、ネズミの細胞における成長と分化を抑制する能力である。サイトカインに刺激された細胞におけるこれらのSH2含有タンパク質の誘発は、これらのタンパク質がサイトカインシグナル伝達のマイナスの調節因子として機能し得ることを示唆する。これらのタンパク質のうち4つ、CIS(サイトカイン誘導性SH2含有タンパク質)、SOCS-1、-2、-3(サイトカインシグナル伝達の抑制因子)をコードする遺伝子の転写は、in vitroとin vivoの両者においてIL-6により誘発される(Starr 他、前出)。
【0038】
4つの該タンパク質類はN末端領域において配列相同性をほとんど共有しないが、すべては中心部の1つのSH2ドメインと「SOCSボックス」と名付けられた保存されたC末端領域を有する。SOCSボックスの機能は未知である。しかし、SOCSボックス内の保存されたコアトリプレット配列(K/R)(D/E)(Y/F)は、JAKキナーゼファミリーによるチロシンリン酸化部位認識に類似している。この類似性は、SOCSボックスがJAKキナーゼと相互作用して、JAKキナーゼを抑制する部位を提供し得ることを示唆する。SOCS-1がJAKキナーゼの触媒領域と相互作用することの発見は、この仮説を支持する(Endo, T.A. 他 (1997) Nature 387:921-24)。M1マウスリンパ系細胞のSOCS-1の恒常的な発現も、IL-6への反応における或る種の細胞シグナル伝達成分(gp130とStat3)のリン酸化を抑制する(Starr 他, 前出)。CISは、IL-3及びEPO受容体におけるβ鎖のリン酸化したチロシン残基に結合する。また他のシグナル伝達タンパク質の結合を防ぐことによる細胞シグナル伝達を抑制する別の機構の存在の可能性を提供する(Yoshimura 他, 前出)。
【0039】
最近、SOCSボックスドメインを含む、16の付加的なタンパク質が同定された(Hilton, D.J. 他 (1998) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:114-119)。上記されたSH2含有タンパク質のように、各タンパク質は1つのC末端SOCSボックスと1つのSOCSボックスの特有のモチーフN末端を含む。SH2ドメインを含む4つの新たなSOCSタンパク質に加えて、WD-40リピート(WSB-1と-2)、SPRYドメイン(SSB-1から-3まで)、或いはアンキリンリピート(ASB-1から-3まで)を含むSOCSタンパク質の3つの付加的な分類が見出された。SOCSボックスを含む低分子量GTPases(Rar タンパク質)のクラスも同定された。 WSB、SSB、ASBタンパク質の機能は、未だに未知である。しかしSH2ドメインのように、WD-40リピート、アンキリンリピート、SPRYドメインは、タンパク質間相互作用に関係していると考えられている(Hilton 他、前出)。
【0040】
CIS等のシグナル伝達タンパク質の活性における欠陥又は変容は、癌等の多様な増殖異常と疾患の発生における或る役割を果たし得る。CISをコードする推定ヒト遺伝子の損失や再構成は、細胞腎癌と肺癌の発生に関連する(Yoshimura 他, 前出)。この関連は、CISが腫瘍抑制因子遺伝子として機能し得ることを示唆する。
【0041】
発現プロファイル作成
マイクロアレイはバイオアナリシスに使われる分析ツールである。マイクロアレイは複数の分子を有し。それらは或る固体支持体の表面で空間的に分布し、その表面と安定して結合している。ポリペプチド、ポリヌクレオチド及び/又は抗体のマイクロアレイが開発されており、遺伝子配列決定、遺伝子発現のモニタリング、遺伝子マッピング、細菌の同定、薬物発見及びコンビナトリアル化学のような種々の応用において利用されている。
【0042】
特にマイクロアレイが利用できる一つの領域は遺伝子発現解析である。アレイ技術は、単一の多型遺伝子の発現や、多数の関連遺伝子又は無関係の遺伝子の発現プロファイルを探求する、簡単な方法を提供し得る。単一遺伝子の発現を試験するときは、アレイを用いて或る特定遺伝子又はその変異体の発現を検出する。発現プロファイルを試験するときは、アレイは次のような遺伝子を同定するプラットフォームを提供する。即ちどの遺伝子が組織特異的か、毒性アッセイにおいてテストされる物質に影響されるか、シグナル伝達カスケードの一部であるか、ハウスキーピング機能を実行するか、又は、特定の遺伝的素因や、条件、疾患、又は障害に、特異的に関連する遺伝子であるかの同定である。
【0043】
培地と他の成長条件は、サイトケラチンマーカーの発現を含む上皮細胞表現型に影響し得る。たいていの場合、初代ヒト乳腺上皮細胞(HMEC)と不死化の乳房細胞株は血清又は下垂体抽出物を含有する培地のプラスチック上で単層培養として成長する。血清又は下垂体抽出物に含まれる不確定の成長因子とホルモンは、遺伝子発現パターンと細胞形態に重大な影響を及ぼす。生理学的な状況下の上皮細胞は血清に決して曝露されないので、正常そして悪性細胞群の細胞生物学の研究にとってこれらの人為的な状況は理想的ではない。MDA-mb-231は、51才の女性の胸水から単離された乳癌細胞株である。MDA-mb-231は、ヌードマウス及びALS処理したBALB/cマウス中で、あまり分化していない腺癌を形成する。またWnt3癌遺伝子、EGF及び腫瘍壊死因子α(TGF-α)をも発現する。
【0044】
ヒトの大動脈内皮細胞(HAEC)は、ヒトの大動脈の内皮細胞に由来する初代細胞である。ヒトの臍帯動脈内皮細胞(HUAEC)は、臍帯動脈の内皮細胞に由来する初代細胞である。HAECとHUAECは、in vitroでのヒトの血管生物学における内皮細胞の役割を研究する実験モデルとして用いられてきた。血管内皮の活性化は、広範な生理的過程また病態生理的過程の双方、例えば血管緊張調節、凝血及び血栓症、アテローム硬化、炎症、並びにいくつかの感染症の中心的なイベントであると考えられる。
【0045】
TNF-αは、複数のシグナル伝達経路の活性化により炎症応答の仲介において中心的な役割を果たすとして知られている多面性サイトカインである。TNF-αは、活性化したリンパ球、マクロファージ、及び他の白血球細胞により生成され、内皮細胞を活性化することで知られる。
【0046】
肺癌は、米国男性の癌死の主因であり、女性の癌死の第2の原因である。肺癌症例の大部分は喫煙に起因すると考えられており、第三世界におけるタバコ消費の増加から肺癌の蔓延が予想されている。気管支の上皮がタバコの煙に接触すると組織の形態が変化し、それが癌の前兆であると考えられている。肺癌は、4つの組織病理的に異なる群に分けられる。3群(扁平上皮癌、腺癌、大細胞癌)は、非小細胞肺癌(NSCLC)に分類される。第4群の癌は、小細胞肺癌(SCLC)という。NSCLCを全部合わせると全症例中の約70%になり、SCLCは約18%である。肺癌の発生と進行に関する分子生物学及び細胞生物学的理解は不完全である。3番染色体での欠失はこの疾患に一般的であり、この領域に、腫瘍抑制遺伝子の存在を示すと思われる。K-rasの活性化突然変異は肺癌で一般的に見られ、この疾患のマウスモデルの1つの基礎である。
【0047】
大部分の通常の真核細胞は特定の回数、分裂した後、老化状態に入り、この状態において細胞は生存でき、代謝的に活性であるが、もはや複製はしない。細胞サイズの増加やpH依存性ベータガラクトシダーゼ活性のような多くの形質的変化、及び特定遺伝子群の上方制御のような分子的変化が老化細胞(senescent cells)において生じる(Shelton (1999) Current Biology 9:939-945)。老化細胞が分裂促進因子に曝露されると、多数の遺伝子が上方制御されるが、細胞は増殖しない。老化細胞がin vivoで年齢とともに蓄積され、生体の老化(aging)に寄与していることが示されている。更に、老化は腫瘍形成を抑制し、老化に必要な多くの遺伝子もまた、p53や網膜芽細胞腫感受性遺伝子のような癌抑制遺伝子として機能する。大部分の腫瘍はその複製限界を凌いだ細胞を含んでいる。つまり、これらは不死化されている。多くの癌遺伝子は腫瘍形成の第1段階として細胞を不死化する。
【0048】
酸化的ストレス、放射、活性化腫瘍性タンパク質及び細胞周期阻害剤のような多様な挑戦によって老化表現型が誘発され、老化が多くの増殖的シグナルや、抗増殖的シグナルによって影響されることが示されている(Shelton 前出)。老化は各々の細胞分裂とともに発生するテロメアの進行的短縮化と相関している。細胞内のテロメラーゼの触媒的成分の発現によってテロメアの短縮化が防がれ、また線維芽細胞や上皮細胞のような細胞が不死化されるが、別種の細胞(例えばCD8+ T細胞)は不死化しない(Migliaccio 他(2000) J. Immunol. 165:4978-4984)。このようにして、テロメアの短縮化及び、細胞種によってはその他の機構によって老化は制御される。
【0049】
加齢における老化と腫瘍形成の役割を理解するための進行中の研究の一部として、老化細胞と前老化細胞の間で異なって発現される多数の遺伝子が同定されている。大部分の老化細胞は細胞周期のG1期において増殖が静止されている。多くの細胞周期遺伝子の発現は老化細胞及び前老化細胞で類似している(Cristofalo (1992) Ann. N. Y. Acad. Sci. 663:187-194)が、増殖を抑制するサイクリン依存性キナーゼp21とp16、及びサイクリンD1とEのような他の遺伝子の発現は老化細胞において上昇している。細胞外基質タンパク質(フィブロネクチン、プロコラーゲン、及びオステオネクチン等)及びプロテアーゼ(コラゲナーゼ、ストロメライシン及びカテプシンB 等)のような、細胞周期に直接関与していない他の遺伝子群もまた上方制御される(Chen (2000) Ann. N.Y. Acad. Sci. 908:111-125)。老化細胞において発現不足の遺伝子には、熱ショックタンパク質であるc-fosとcdc-2をコードする遺伝子が含まれる(Chen 前出)。
【0050】
遺伝子発現プロファイル作成の潜在的応用は、特に治療の可能性のある化合物に対する毒性反応と治療薬剤の代謝反応の測定に関連する。ステロイドで治療する疾患とステロイド治療への代謝反応によって引き起こされる病気には、腺腫症、胆汁鬱滞、肝硬変、血管腫、シェーンライン・ヘノッホ紫斑病、肝炎、肝細胞癌、転移性癌、特発性血小板減少性紫斑病、ポルフィリン症、サルコイドーシス、ウィルソン病が含まれる。反応は、ミフェプリストン、プロゲステロン、ベクロメタゾン、メドロキシプロゲステロン、ブデソニド、プレドニゾン、デキサメサゾン、ベタメタゾン、或いはダナゾール等のステロイド化合物に曝露した或いは治療した患者の組織で発現したレベル及び配列の両者を、正常な治療されていない組織のレベル及び配列と比較することによって測定され得る。
【0051】
ステロイドは、コレステロール、胆汁酸、ビタミンD、ホルモン等の脂質可溶性分子の1クラスであり、シクロペンタヒドロフェナントレン(cyclopentanoperhydrophenanthrene)に基づく共通な4リング構造を共有し、広範囲な機能を実施する。コルチコステロイドは炎症を緩和して、免疫応答を抑制するために使用される。コルチコステロイドは、炎症反応を仲介するサイトカインの調節により、好酸球、好塩基球、気道上皮性細胞機能を阻害する。コルチコステロイドは、炎症部位で白血球侵入を阻害し、炎症反応のメディエータの機能において干渉し、更に体液の免疫応答を抑制する。コルチコステロイドは、アレルギー、喘息、関節炎、皮膚病を治療するために使用される。デキサメタゾンは、抗炎症組成物又は免疫抑制組成物において使用される合成グルココルチコイドである。喘息の症状を予防するために吸入薬においても使用される中枢神経系に到達する強力な能力のために、デキサメタゾンは脳水腫を調節するために通常選択される治療である。デキサメタゾンは、ヒドロコルチゾンより約20〜30倍、そしてプレドニゾンより5〜7倍強力である。
コルチコステロイドの抗炎症作用は、リポコルチンと総称されるホスホリパーゼA2抑制タンパク質に関係すると考えられる。逆にリポコルチンは、前駆体分子アラキドン酸の放出を阻害することによりプロスタグランジン、ロイコトリエン等炎症の強力な媒介物の生合成を制御する。提案されている作用の機構には、減少したIgE合成、白血球上で増加したβ-アドレナリン受容体の数、減少したアラキドン酸代謝が含まれる。慢性気管支喘息等の即時アレルギー反応中、アレルゲンは肥満細胞の表面上のIgE抗体を架橋し、これらの細胞の化学走化性物質の放出を誘発する。従って肥満細胞の流入と活性化が、喘息患者の炎症と口腔粘膜の過剰刺激感受性に部分的に関与している。この炎症は、コルチコステロイドの投与によって遅れ得る。
【0052】
肝臓代謝とホルモン除去機構への影響は、薬剤の薬力学を理解するために重要である。ヒトC3A肝臓細胞株は、成長での、強力な接触阻害に関して選択されたHepG2/C3(肝臓腫瘍を患う15歳の男子から単離した肝臓癌細胞株)のクローン誘導体である。クローン集団の使用は、細胞の再現性を強化する。C3A細胞は、培養中の主要なヒト肝細胞の多くの特徴を有する。i)インシュリン受容体とインシュリン様成長因子II受容体の発現、ii)フェトプロテインと比較した血清アルブミンの高率分泌、iii)アンモニアの尿素とグルタミンへの転換、iv)芳香アミノ酸代謝、v)グルコースの無いまたインシュリンの無い培地での増殖。C3A細胞株は、成熟したヒト肝臓のin vitroモデルとして今や十分に確立されている(Mickelson 他 (1995) Hepatology 22:866-875、Nagendra 他 (1997) Am J Physiol 272:G408-G416)。
【0053】
卵巣癌は、婦人科癌死の主因である。卵巣癌の大部分は上皮細胞に由来する。そして上皮卵巣癌を患う患者の70%が末期症状である。結果として、この疾患の長期生存率はとても低い。卵巣癌の早期マーカーの同定は、生存率を飛躍的に上昇させる。卵巣癌発生に関与する遺伝的変異には、p53の突然変異とマイクロサテライト不安定性が含まれる。遺伝子発現パターンは、正常な卵巣を卵巣腫瘍と比較した時おそらく異なると思われる。
【0054】
当分野では新規の組成物群を必要とする。これら新規の組成物には、自己免疫/炎症疾患、神経系疾患、内分泌障害、発達障害、癌を含む細胞増殖異常、生殖疾患、心血管障害、及び感染症の診断・予防・治療のための核酸とタンパク質が含まれる。
【発明の開示】
【発明の効果】
【0055】
本発明の様々な実施様態は、総称して「EXMES」、個別にはそれぞれ「EXMES-1」、「EXMES-2」、「EXMES-3」、「EXMES-4」、「EXMES-5」、「EXMES-6」、「EXMES-7」、「EXMES-8」、「EXMES-9」、「EXMES-10」、「EXMES-11」、「EXMES-12」、「EXMES-13」、「EXMES-14」、「EXMES-15」、「EXMES-16」、「EXMES-17」、「EXMES-18」、「EXMES-19」、「EXMES-20」、「EXMES-21」、及び「EXMES-22」と呼ぶ細胞外メッセンジャーである、精製されたポリペプチドを提供するとともに、疾患と医学的状況の検出、診断、治療のためのこれらのタンパク質を利用する、及びポリヌクレオチドをコ−ドする方法を提供する。実施様態は、効果、適量、毒性、薬理学の決定を含む薬剤発見プロセスを促進するために、精製した細胞外メッセンジャーそして/或いはそれらをコ−ドするポリヌクレオチドを利用する方法を提供する。関連する実施様態は、疾患の病因と医学的状況を調査するために、精製した細胞外メッセンジャーそして/或いはそれらをコ−ドするポリヌクレオチドを利用する方法を提供する。
【0056】
或る実施態様において本発明は、(a)SEQ ID NO:1-22からなる群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-22からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%同一、又は少なくともほぼ90%同一である天然のアミノ酸配列からなるポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-22からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片、及び(d)SEQ ID NO:1-22からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片からなる群から選択した単離されたポリペプチドを提供する。別の実施態様では、SEQ ID NO:1-22のアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチドを提供する。
【0057】
更に別の実施様態は(a)SEQ ID NO:1-22からなる群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-22からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%同一である或いは少なくとも約90%同一である天然のアミノ酸配列を含むポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-22からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片、又は(d)SEQ ID NO:1-22からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫抗原性断片からなる群から選択されたポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチドを提供する。別の実施態様では、ポリヌクレオチドはSEQ ID NO:1-22からなる群から選択したポリペプチドをコードする。別の実施態様では、ポリヌクレオチドはSEQ ID NO:23-44からなる群から選択される。
【0058】
更に、他の実施様態は、(a)SEQ ID NO:1-22からなる群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-22からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%同一である、又は少なくともほぼ90%同一である天然のアミノ酸配列を含むポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-22からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片、又は(d)SEQ ID NO:1-22からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片を含む群からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと機能的に結合したプロモーター配列を含む組換えポリヌクレオチドを提供する。別の実施態様では、組換えポリヌクレオチドを用いて形質転換した細胞を提供する。なお、他の実施例によって、組換えポリヌクレオチドを有する遺伝形質転換生物体を提供する。
【0059】
他の実施様態では、(a)SEQ ID NO:1-22からなる群から選択した或るアミノ酸配列を含むポリペプチドと、(b)SEQ ID NO:1-22からなる群から選択した或るアミノ酸配列と少なくとも90%同一である、又は少なくともほぼ90%同一である、或る天然アミノ酸配列を含むポリペプチドと、(c)SEQ ID NO:1-22からなる群から選択した或るアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片と、(d)SEQ ID NO:1-22とからなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片とからなる群から選択したポリペプチドを製造する一方法を提供する。製造方法は、(a)或る細胞を該ポリペプチドの発現に適した条件下で培養し、この細胞を組換えポリヌクレオチドを用いて形質転換する過程と、(b)そのように発現したポリペプチドを回収する過程とからなる。この組換えポリヌクレオチドは、該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに機能的に連結したプロモーター配列を有する。
【0060】
なお、他の実施様態は、(a)SEQ ID NO:1-22からなる群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-22からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%同一である、又は少なくと主ほぼ90%同一である天然のアミノ酸配列を含むポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-22からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片、及び(d)SEQ ID NO:1-22からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片から構成される群から選択されたポリペプチドに特異結合するような単離された抗体を提供する。
【0061】
更に別の実施様態は、(a)SEQ ID NO:23-44からなる群から選択したポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、(b)SEQ ID NO:23-44からなる群から選択したポリヌクレオチド配列と少なくとも90%同一である或いは少なくとも約90%同一である天然のポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、(c)(a)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、(d)(b)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、及び(e)(a)〜(d)のRNA等価物からなる群から選択した単離されたポリヌクレオチドを提供する。その他の実施様態において、ポリヌクレオチドは少なくともほぼ20、30、40、60、80又は100の連続するヌクレオチドを有し得る。
【0062】
なお、他の実施様態は、サンプル中の標的ポリヌクレオチドを検出する方法を提供する。ここで、前記標的ポリヌクレオチドは、(a)SEQ ID NO:23-44からなる群から選択したポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、(b)SEQ ID NO:23-44からなる群から選択したポリヌクレオチド配列と少なくとも90%同一である、又は少なくともほぼ90%同一である、或る天然のポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、(c)(a)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、(d)(b)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、及び(e)(a)〜(d)のRNA等価物からなる群から選択された配列のポリヌクレオチドを有する。検出方法は、(a)サンプル中の上記標的ポリヌクレオチドに相補的な或る配列からなる少なくとも20の連続したヌクレオチド群を含む或るプローブを用いて該サンプルをハイブリダイズする過程と、(b)該ハイブリダイゼーション複合体の有無を検出する過程とからなる。該プローブと該標的ポリヌクレオチド或いはその断片との間でハイブリダイゼーション複合体が形成されるような条件下で、プローブは、該標的ポリヌクレオチドに対し特異的にハイブリダイズする。関連する実施様態において、この方法にハイブリダイゼーション複合体の量の検出を含め得る。更に、その他の実施様態において、プローブは少なくともほぼ20、30、40、60、80又は100の連続するヌクレオチドを有し得る。
【0063】
更になお、他の実施様態は、サンプル中の標的ポリヌクレオチドを検出する方法を提供する。ここで、前記標的ポリヌクレオチドは、(a)SEQ ID NO:23-44からなる群から選択したポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、(b)SEQ ID NO:23-44からなる群から選択したポリヌクレオチド配列と少なくとも90%同一である、又は少なくともほぼ90%同一である、或る天然のポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、(c)(a)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、(d)(b)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、及び(e)(a)〜(d)のRNA等価物からなる群から選択された配列のポリヌクレオチドを有する。この検出方法は、(a)ポリメラーゼ連鎖反応増幅を用いて標的ポリヌクレオチド又はその断片を増幅する過程と、(b)増幅した標的ポリヌクレオチド又はその断片の有無を検出する過程とからなる。関連する実施例において、この方法に増幅された標的ポリヌクレオチド又はその断片の量を検出することを含め得る。
【0064】
他の実施様態は、有効量のポリペプチドと薬剤として許容できる賦形剤とを含む成分を提供する。 有効量のポリペプチドは、(a)SEQ ID NO:1-22からなる群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-22からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%同一である、又はほぼ90%同一である、或る天然のアミノ酸配列を含むポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-22からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片、及び(d)SEQ ID NO:1-22からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫抗原性断片からなる群れから選択される。一実施様態では、組成物はSEQ ID NO:1-22からなる群から選択されたアミノ酸配列を含み得る。他の実施様態は、機能的EXMESの発現の低下又は異常発現に関連する疾患や症状の治療方法を提供し、そのような治療の必要な患者にこの組成物を投与することを含む。
【0065】
別の実施様態はまた、(a)SEQ ID NO:1-22からなる群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-22からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるか、又は少なくともほぼ90%同一である天然のアミノ酸配列を含むポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-22からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片、及び(d)SEQ ID NO:1-22からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片からなる群から選択されたポリペプチドのアゴニストとしての有効性を確認するために化合物をスクリーニングする方法を提供する。スクリーニング方法は、(a)ポリペプチドを含むサンプルを化合物に曝す過程と、(b)サンプル中のアゴニスト活性を検出する過程とを含む。他の実施様態は、この方法で同定したアゴニスト化合物と許容される医薬用賦形剤とを有する、或る組成物を提供する。更に他の実施様態は、機能的EXMESの発現の低下に関連した疾患や症状の治療方法を提供し、また、そのような治療を必要とする患者にこの組成物を投与することが含まれる。
【0066】
なお、他の実施様態は更に、(a)SEQ ID NO:1-22からなる群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-22からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるか、又は少なくともほぼ90%同一である天然のアミノ酸配列を含むポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-22を有する群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片、及び(d)SEQ ID NO:1-22からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片からなる群から選択されたポリペプチドのアンタゴニストとしての有効性を確認するために化合物をスクリーニングする方法を提供する。スクリーニング方法は、(a)ポリペプチドを含むサンプルを化合物に曝す過程と、(b)サンプル中のアンタゴニスト活性を検出する過程とを含む。他の実施様態は、この方法で同定されたアンタゴニスト化合物と許容される医薬用賦形剤とを有する、或る組成物を提供する。更に他の実施様態は、機能的EXMESの過剰発現に関連した疾患や症状の治療方法を提供し、また、そのような治療を必要とする患者にこの組成物を投与することが含まれる。
【0067】
他の実施様態は、(a)SEQ ID NO:1-22からなる群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-22からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%同一である、又は少なくともほぼ90%同一である天然のアミノ酸配列を含むポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-22からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片、又は(d)SEQ ID NO:1-22からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片を含む群から選択されたポリペプチドに特異結合する化合物をスクリーニングする方法を提供する。スクリーニング方法は、(a)ポリペプチドを適切な条件下で少なくとも1つの試験化合物と混合させる過程と、(b)試験化合物とのポリペプチドの結合を検出し、それによってポリペプチドに特異結合する化合物を同定する過程とを含む。
【0068】
更に、他の実施様態は、(a)SEQ ID NO:1-22からなる群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-22からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%同一である、又は少なくともほぼ90%同一である天然のアミノ酸配列を含むポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-22からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片、又は(d)SEQ ID NO:1-22からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片を含む群から選択されたポリペプチドの活性を調節する化合物をスクリーニングする方法を提供する。スクリーニング方法は、(a)ポリペプチドの活性が許容された条件下で、ポリペプチドを少なくとも1つの試験化合物と混合させる過程と、(b)ポリペプチドの活性を試験化合物の存在下で算定する過程と、(c)試験化合物の存在下でのポリペプチドの活性と、試験化合物の不存在下でのポリペプチドの活性とを比較する過程とを含み、試験化合物の存在下でのポリペプチドの活性の変化は、ポリペプチドの活性を調節する化合物であることを意味する。
【0069】
更になお、他の実施様態は、SEQ ID NO:23-44からなる群から選択されたポリヌクレオチド配列を含む標的ポリヌクレオチドの発現を変化させるのに効果的な化合物をスクリーニングする方法を提供し、その方法には、(a)この標的ポリヌクレオチドを含むサンプルを化合物に曝露する過程と、(b)この標的ポリヌクレオチドの発現の変化を検出する過程と、(c)可変量の化合物の存在下と化合物の非存在下で標的ポリヌクレオチドの発現を比較する過程が含まれる。
【0070】
他の実施様態は、試験化合物の毒性の算定方法を提供する。この方法には、以下の過程がある。(a)核酸群を含む生体サンプルを試験化合物で処理する過程、(b)処理済み生体サンプルの核酸群をハイブリダイズする過程。この過程には、次のようなプローブを用いる(i)SEQ ID NO:23-44からなる群から選択した或るポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、(ii)SEQ ID NO:23-44からなる群から選択した或るポリヌクレオチド配列と少なくとも90%同一である、又は少なくともほぼ90%同一である天然のポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、(iii)(i)に相補的な配列を有するポリヌクレオチド、(iv)(ii)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、(v)(i)〜(iv)のRNA等価物からなる群から選択した或るポリヌクレオチドの少なくとも20の連続したヌクレオチド群からなるプローブである。ハイブリダイゼーションは、上記プローブと生体サンプル中の標的ポリヌクレオチドとの間に特異的ハイブリダイゼーション複合体が形成されるような条件下で生じる。上記標的ポリヌクレオチドは、(i)SEQ ID NO:23-44からなる群から選択した或るポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、(ii)SEQ ID NO:23-44からなる群から選択した或るポリヌクレオチド配列と少なくとも90%同一である或いは少なくとも約90%同一である天然ポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、(iii)(i)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、(iv)(ii)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、(v)(i)〜(iv)のRNA等価物からなる群から選択する。或いは、標的ポリヌクレオチドは、上記(i)〜(v)からなる群から選択したポリヌクレオチドの断片を含み得る。毒性の算定方法には更に(c)ハイブリダイゼーション複合体の量を定量する過程と、(d)処理した生物学的サンプルのハイブリダイゼーション複合体の量を、非処理の生物学的サンプルのハイブリダイゼーション複合体の量と比較する過程を含み、処理した生物学的サンプルのハイブリダイゼーション複合体の量との差は、試験化合物の毒性を意味する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0071】
(本発明の記載について)
本発明のタンパク質、核酸及び方法について説明する前に、説明した特定の装置、材料及び方法に本発明の実施例が限定されるものではなく、改変し得ることを理解されたい。また、ここで使用する専門用語は特定の実施例を説明する目的で用いたものであり、本発明の範囲を限定することを意図したものではないことも併せて理解されたい。
【0072】
本明細書及び請求の範囲において単数形を表す「或る」、「その(この等)」は、文脈で明確に示していない場合は複数形を含むことに注意されたい。従って、例えば「或る宿主細胞」は複数の宿主細胞を含み、その「抗体」は複数の抗体が含まれ、当業者には周知の等価物なども含まれる。
【0073】
本明細書中で用いる全ての技術用語及び科学用語は、特に定義されている場合を除き、当業者に一般に理解されている意味と同じ意味を有する。本明細書で説明するものと類似或いは同等の任意の装置、材料及び方法を用いて本発明の実施又は試験を行うことができるが、ここでは好適な装置、材料、方法について説明する。本発明の種々の実施例で言及する全ての刊行物は、刊行物中で報告されていて且つ本発明に関係して用い得る、細胞株、プロトコル、試薬及びベクターについて説明及び開示する目的で引用しているものである。本明細書のいかなる開示内容も、本発明が先行技術の効力によってこのような開示に対して先行する権利を与えられていないことを認めるものではない。
【0074】
(定義)
用語「EXMES」は、天然、合成、半合成或いは組換え体などの、全ての種(特にウシ、ヒツジ、ブタ、ネズミ、ウマ及びヒトを含む哺乳動物)から得られる実質的に精製されたEXMESのアミノ酸配列を指す。
【0075】
用語「アゴニスト」は、EXMESの生物学的活性を強めたり、模倣したりする分子を指す。このアゴニストは、EXMESに直接相互作用するか、或いはEXMESが関与する生物学的経路の成分と作用して、EXMESの活性を調節するタンパク質、核酸、糖質、小分子、任意の他の化合物や組成物を含み得る。
【0076】
用語「対立遺伝子変異配列」は、EXMESをコードする遺伝子の別の形を指す。対立遺伝子変異体は、核酸配列における少なくとも1つの突然変異から作製し得る。また、変異RNA又はポリペプチドを作製し得る。ポリペプチドの構造又は機能は、変異することもしないこともある。或る遺伝子は、その天然型の対立遺伝子変異体を全く持たない場合もあり、1個以上持つこともある。対立遺伝子変異体を生じさせる通常の突然変異性変化は一般に、ヌクレオチドの自然な欠失、付加又は置換に帰するものである。これら各変化は、単独で或いは他の変化と共に、所定の配列内で1回若しくは数回生じ得る。
【0077】
EXMESをコードする「変異」核酸配列は、様々なヌクレオチドの欠失、挿入、或いは置換が起こっても、EXMESと同じポリペプチド或いはEXMESの機能特性の少なくとも1つを備えるポリペプチドを指す。この定義には、EXMESをコードするポリヌクレオチド配列の正常な染色体の遺伝子座ではない位置での対立遺伝子変異配列との不適当或いは予期しないハイブリダイゼーション、並びにEXMESをコードするポリヌクレオチドの特定のオリゴヌクレオチドプローブを用いて容易に検出可能な或いは検出困難な多型性を含む。コードされるタンパク質も「変容する/改変される」ことがあり、また、サイレント変化を生じて機能的には等価なEXMESとなるような、アミノ酸残基の欠失、挿入、或いは置換を持ち得る。意図的なアミノ酸置換は、生物学的或いは免疫学的にEXMESの活性が保持される範囲で、残基群の、極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性、及び/又は両親媒性についての、1つ以上の類似性に基づいて成され得る。例えば、負に帯電したアミノ酸にはアスパラギン酸及びグルタミン酸があり、正に帯電したアミノ酸にはリジン及びアルギニンがある。親水性値が近似した非荷電極性側鎖を持つアミノ酸には、アスパラギンとグルタミン、セリンとトレオニンがある。親水性値が近似した非荷電側鎖を持つアミノ酸には、ロイシンとイソロイシンとバリン、グリシンとアラニン、フェニルアラニンとチロシンがある。
【0078】
用語「アミノ酸」及び「アミノ酸配列」は、オリゴペプチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質配列、或いはそれらの任意の断片を指し得、天然の分子及び合成分子を含む。「アミノ酸配列」が天然のタンパク質分子の配列を指す場合、「アミノ酸配列」及び類似の用語は、アミノ酸配列を記載したタンパク質分子に関連する完全で元のままのアミノ酸配列に限定するものではない。
【0079】
「増幅」は、核酸の複製物を作製することに関連する。増幅は、ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)技術又は当分野でよく知られている他の核酸増幅技術を用いて実行される。
【0080】
用語「アンタゴニスト」は、EXMESの生物学的活性を阻害或いは減弱する分子を指す。アンタゴニストとしては、抗体などのタンパク質、anticalin、核酸、糖質、小分子又はその他の任意の化合物や組成物を挙げることができるが、これらはEXMESと直接相互作用することによって、或いはEXMESが関与する生物学的経路の構成エレメントに作用することによって、EXMESの活性を調節する。
【0081】
「抗体」の語は、抗原決定基と結合することができる、無傷の免疫グロブリン分子やその断片、例えばFab、F(ab')2及びFv断片を指す。EXMESポリペプチドと結合する抗体は、免疫抗原として、無傷ポリペプチド群を用いて、又は、当該の小ペプチド群を有する断片群を用いて作製可能である。動物(マウス、ラット或いはウサギ等)を免疫化するために用いるポリペプチド又はオリゴペプチドは、RNAの翻訳、又は化学合成によって得られるポリペプチド又はオリゴペプチドに由来し得るもので、好みに応じてキャリアタンパク質に抱合することも可能である。通常用いられるキャリアであってペプチドと化学結合するものは、ウシ血清アルブミン、サイログロブリン及びスカシガイのヘモシアニン(KLH)等がある。その結合ペプチドを、動物を免疫化するために用いる。
【0082】
用語「抗原決定基」は、特定の抗体と接触する分子の領域(即ちエピトープ)を指す。タンパク質又はタンパク質断片を用いて宿主動物を免疫化する場合、タンパク質の多数の領域が、抗原決定基(タンパク質の特定の領域又は3次元構造)に特異結合する抗体の産生を誘導し得る。抗原決定基は、抗体への結合について、無損傷抗原(即ち免疫応答を誘導するために用いられる免疫原)と競合し得る。
【0083】
用語「アプタマー」は、特定の分子標的に結合する核酸又はオリゴヌクレオチド分子を指す。アプタマーはin vitroでの進化プロセスに由来する(例えば、SELEX(Systematic Evolution of Ligands by EXponential Enrichmentの略、試験管内選択法)、米国特許第5,270,163号に記述)。これは、大規模な組み合わせライブラリ群から標的特異的アプタマー配列を選択するプロセスである。アプタマーの構成は二本鎖又は一本鎖であり、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、ヌクレオチド誘導体又は他のヌクレオチド様分子を含み得る。アプタマーのヌクレオチド成分は、修飾された糖基(例えばリボヌクレオチドの2'-OH基が2'-F又は2'-NH2で置換し得る)を有することが可能で、そのような糖基はヌクレアーゼへの抵抗性又は血液中でのより長い寿命などの望ましい性質に改善し得る。循環系からアプタマーが除去される速度を遅くするために、アプタマーを高分子量キャリア等の分子に抱合させることができる。アプタマーは、たとえば架橋剤の光活性化によって、各々の同種リガンドと特異的に架橋させることができる(Brody, E.N.及びL. Gold (2000) J. Biotechnol. 74:5-13等を参照)。
【0084】
「intramer」の用語はin vivoで発現されるアプタマーを意味する例えば、ワクシニアウイルスに基づく或るRNA発現系を用いて、白血球の細胞質内で特定のRNAアプタマー類が高レベルに発現されている(Blind, M.他(1999) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96:3606-3610)。
【0085】
「スピーゲルマー(spiegelmer)」の語はL-DNA、L-RNAその他の左旋性ヌクレオチド誘導体又はヌクレオチド様分子を含むアプタマーを指す。左旋性のヌクレオチドを含むアプタマーは右旋性ヌクレオチドに作用する天然の酵素による分解に対して耐性がある。
【0086】
本明細書において「アンチセンス」は、特定の核酸配列を有するポリヌクレオチドのセンス(コーディング)鎖と塩基対を形成し得る任意の組成物を指す。アンチセンス組成物としては、DNAや、RNAや、ペプチド核酸(PNA)や、ホスホロチオ酸、メチルホスホン酸又はベンジルホスホン酸等の修飾されたバックボーン結合を有するオリゴヌクレオチドや、2'-メトキシエチル糖又は2'-メトキシエトキシ糖等の修飾された糖類を有するオリゴヌクレオチドや、或いは5-メチルシトシン、2-デオキシウラシル又は7-デアザ-2'-デオキシグアノシン等の修飾された塩基を有するオリゴヌクレオチドを含みうる。アンチセンス分子は、化学合成又は転写など、任意の方法で製造することができる。相補的アンチセンス分子は、細胞に導入されると、細胞が産生した天然核酸配列との塩基対を形成し、二重鎖を形成して転写又は翻訳を妨害する。「負」又は「マイナス」という表現は、ある参考DNA分子のアンチセンス鎖を意味し、「正」又は「プラス」という表現は、ある参考DNA分子のセンス鎖を意味しうる。
【0087】
用語「生物学的に活性」は、天然分子の構造的、調節的、或いは生化学的な機能を有するタンパク質を指す。同様に、用語「免疫学的に活性」又は「免疫原性」は、天然EXMES、組換え体のEXMES、合成EXMES、又はそれらの任意のオリゴペプチドが、適当な動物或いは細胞内の特定の免疫応答を誘発して特定の抗体と結合する能力を指す。
【0088】
「相補的」は、塩基対合によってアニールする2つの一本鎖核酸配列間の関係を指す。例えば、配列「5'A-G-T3'」は、相補配列「3'T-C-A5'」と対を形成する。
【0089】
「〜のポリヌクレオチド配列を含む組成物」又は「〜のアミノ酸配列を含む(有する)組成物」は広い意味で、所定のポリヌクレオチド配列若しくはアミノ酸配列を含む任意の組成物を指す。この組成物には、乾燥製剤又は水溶液が含まれ得る。EXMES若しくはEXMESの断片をコードするポリヌクレオチド配列を含む組成物は、ハイブリダイゼーションプローブとして使用され得る。これらプローブは、凍結乾燥形態で貯蔵でき、また、糖質などの安定化剤と結合させ得る。ハイブリダイゼーションにおいては、塩(例えばNaCl)、界面活性剤(例えばドデシル硫酸ナトリウム;SDS)及びその他の構成成分(例えばデンハート液、脱脂粉乳、サケ精子DNA等)を含む水溶液中にプローブを分散させることができる。
【0090】
「コンセンサス配列」は、不要な塩基を分離するためにDNA配列の解析を繰り返し行い、XL-PCRキット(Applied Biosystems, Foster City CA)を用いて5'及び/又は3'の方向に伸長され、再度シークエンシングされた核酸配列、又はGELVIEW 断片アセンブリシステム(GCG, Madison, WI)又はPhrap (University of Washington, Seattle WA)等の断片アセンブリ用のコンピュータプログラムを用いて1つ或いはそれ以上のオーバーラップするcDNAやEST、又はゲノムDNA断片からアセンブリされた核酸配列を指す。伸長及びアセンブリの両方を行ってコンセンサス配列を作製する配列もある。
【0091】
「保存的なアミノ酸置換」は、元のタンパク質の特性を殆ど変えない置換を指す。即ち、置換によってそのタンパク質の構造や機能が大きくは変わらず、そのタンパク質の構造、特にその機能が保存される。下表は、タンパク質中で元のアミノ酸と置換され得るアミノ酸であり、保存的アミノ酸置換と認められるアミノ酸を示している。
【0092】
保存アミノ酸置換では通常、(a)置換領域におけるポリペプチドのバックボーン構造、例えばβシートやα螺旋構造、(b)置換部位における分子の電荷又は疎水性、及び/又は(c)側鎖の大部分を保持する。
【0093】
「欠失」は、1個以上のアミノ酸残基が欠如するアミノ酸配列の変化、或いは1個以上のヌクレオチドが欠如する核酸配列の変化を指す。
【0094】
用語「誘導体」は、化学修飾されたポリヌクレオチド又はポリペプチドを指す。例えば、アルキル基、アシル基、ヒドロキシル基又はアミノ基による水素の置換は、ポリヌクレオチドの化学修飾に含まれ得る。ポリヌクレオチド誘導体は、天然分子の生物学的又は免疫学的機能を少なくとも1つは保持しているポリペプチドをコードする。ポリペプチド誘導体は、グリコシル化、ポリエチレングリコール化(pegylation)、或いは任意の同様なプロセスであって、誘導起源のポリペプチドの少なくとも1つの生物学的若しくは免疫学的機能を保持するプロセスによって、修飾されたポリペプチドである。
【0095】
「検出可能な標識」は、測定可能な信号を発生し得る、ポリヌクレオチドやポリペプチドに共有結合或いは非共有結合するレポーター分子又は酵素を指す。
【0096】
「差次的発現」は、少なくとも2つの異なったサンプルを比較することによって決められる、増加(上方調節)、或いは減少(下方調節)、又は遺伝子発現の欠損又はタンパク発現の欠損を指す。このような比較は例えば、処理済サンプルと不処理サンプル、又は病態サンプルと健常サンプルとの間で行われ得る。
【0097】
「エキソンシャフリング」は、異なるコード領域(エキソン)の組換えを意味する。1つのエキソンはコードされるタンパク質の1つの構造的又は機能的ドメインを代表し得るため、安定した基礎構造の新規な再構築(reassortment)を介して新しいタンパク質がアセンブリされることが可能であり、これにより新しいタンパク質機能の進化を促進できる。
【0098】
用語「断片」は、EXMESの又はEXMESをコードするポリヌクレオチドの固有の部分であって、その親配列(parent sequence)と配列は同一であり得るが親配列より長さが短いものを指す。或る断片は、定義された配列の全長から1ヌクレオチド/アミノ酸残基を差し引いた長さよりも短い長さを有し得る。例えば或る断片は、約5〜約1000の連続したヌクレオチド又はアミノ酸残基を有し得る。プローブ、プライマー、抗原、治療用分子として、或いはその他の目的のために用いられる断片は、少なくとも5、10、15、16、20、25、30、40、50、60、75、100、150、250若しくは500の連続したヌクレオチド或いはアミノ酸残基の長さであり得る。断片は、或る分子の特定領域から優先的に選択し得る。例えば、ポリペプチド断片は、所定の配列に示すようなポリペプチドの最初の250又は500アミノ酸(又は最初の25%又は50%)から選択された或る長さの連続したアミノ酸を有し得る。これらの長さは明らかに例として挙げているものであり、本発明の実施態様では、配列表、表及び図面を含む本明細書が支持する任意の長さであり得る。
【0099】
SEQ ID NO:23-44の断片は、例えば、この断片を得たゲノム内の他の配列とは異なる、SEQ ID NO:23-44を特定に同定する固有のポリヌクレオチド配列の領域を含み得る。SEQ ID NO:23-44のある断片は、本発明の例えば、ハイブリダイゼーションや増幅技術の1つ以上の実施様態、又はSEQ ID NO:23-44を関連ポリヌクレオチドから区別する類似の方法に有用である。SEQ ID NO:23-44の或る断片の正確な長さは、また、その断片が対応するSEQ ID NO:23-44の領域は、その断片に意図した目的に基づき当業者が慣例的に決定し得る。
【0100】
SEQ ID NO:1-22の断片はSEQ ID NO:23-44の断片によってコードされている。SEQ ID NO::1-22の断片はSEQ ID NO:1-22を特異的に同定する固有のアミノ酸配列の領域を含む。例えば、SEQ ID NO:1-22の断片は、SEQ ID NO:1-22を特異認識する抗体を産出するための免疫原性ペプチドとして有用である。SEQ ID NO:1-22の断片及び断片に対応するSEQ ID NO:1-22の領域の正確な長さは、断片に対する意図した目的に基づき、本明細書に記載されている、或いは当分野で知られている1つ以上の分析方法を用いて当業者が慣例的に決定することが可能である。
【0101】
「完全長」ポリヌクレオチドとは、少なくとも1つの翻訳開始コドン(例えばメチオニン)、オープンリーディングフレーム及び翻訳終止コドンを有する配列である。「完全長」ポリヌクレオチド配列は、「完全長」ポリペプチド配列をコードする。
【0102】
「相同性」は、2つ以上のポリヌクレオチド配列又は2つ以上のポリペプチド配列の配列類似性、又は配列同一性を意味する。
【0103】
ポリヌクレオチド配列に適用される「一致率」又は「%一致」の語は、標準化されたアルゴリズムを用いてアラインメントされた、2つ以上のポリヌクレオチド配列間で一致する残基の割合を意味する。標準化アルゴリズムは、2配列間のアラインメントを最適化するため、標準化された再現性のある方法で比較対象の2配列内にギャップ群を挿入し得るので、2つの配列をより有意に比較できる。
【0104】
ポリヌクレオチド配列間の一致率は、当分野で知られている或いは本明細書に記載されている1つ以上のコンピュータアルゴリズム又はプログラムを用いて決定し得る。例えば、一致率は、MEGALIGN version 3.12e配列アラインメントプログラムに組込まれているようなCLUSTAL Vアルゴリズムのデフォルトのパラメータを用いて決定できる。このプログラムは、LASERGENE ソフトウェアパッケージ(一組の分子生物学的分析プログラム)(DNASTAR, Madison WI)の一部である。このCLUSTAL Vは、Higgins, D.G.及びP.M. Sharp(1989)CABIOS 5:151-153、Higgins, D.G. 他 (1992) CABIOS 8:189-191に記載されている。ポリヌクレオチド配列を2つ1組でアラインメントする際のデフォルトパラメータは、Ktuple=2、gap penalty=5、window=4、「diagonals saved」=4と設定する。デフォルトとして「重みづけされた」残基の重みづけ表を選択する。一致率は、アラインメントされたポリヌクレオチド配列間の「percent similarity(類似性パーセント)」としてCLUSTAL Vによって報告される。
【0105】
或いは、使用可能であり、一般的に用いられ且つ自由に入手できる配列比較アルゴリズム一式が、国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)Basic Local Alignment Search Tool(BLAST)から提供されており(Altschul, S.F. 他 (1990) J. Mol. Biol. 215:403-410)、これはメリーランド州ベセスダにあるNCBI及びインターネット(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)を含む幾つかの情報源から入手可能である。このBLASTソフトウェア一式には、既知のポリヌクレオチド配列と様々なデータベースの別のポリヌクレオチド配列とのアラインメントに用いられる「blastn」を含む、様々な配列分析プログラムが含まれる。「BLAST 2 Sequences」と呼ばれるツールも入手可能であり、2つのヌクレオチド配列を直接にペアワイズで比較するために用いられる。「BLAST 2 Sequences」は、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gorf/bl2.htmlにアクセスして、対話形式で利用ができる。「BLAST 2 Sequences」ツールは、blastn及びblastp(以下に記載)の両方に用いることができる。BLASTプログラムは、一般的には、ギャップ及び他のパラメータをデフォルト設定に設定して用いる。例えば、2つのヌクレオチド配列を比較するために、デフォルトパラメータとして設定された「BLAST 2 Sequences」ツールVersion 2.0.12(2000年4月21日)を用いてblastnを実行してもよい。デフォルトパラメータの設定例を以下に示す。
【0106】
Matrix:BLOSUM62
Reward for match: 1
Penalty for mismatch: -2
Open Gap:5 及びExtension Gap:2 penalties
Gap x drop-off: 50
Expect: 10
Word Size: 11
Filter:on
一致率は、ある定義された配列の全長(例えば特定のSEQ IDナンバーで定義された配列)について測定し得る。或いは、より短い長さ、例えば、定義された、より大きな配列から得られた断片(例えば少なくとも20、30、40、50、70、100又は200の連続したヌクレオチドの断片)の長さについて一致率を測定してもよい。ここに挙げた長さは単なる例示的なものに過ぎず、表、図及び配列リストを含めた本明細書に記載された配列が支持する任意の断片長を用いて、一致率を測定し得る或る長さを説明し得ることを理解されたい。
【0107】
高度の同一性を示さない核酸配列が、それにもかかわらず遺伝子コードの縮重が原因で類似のアミノ酸配列をコードする場合がある。この縮重を利用して核酸配列内で変化を生じさせて、全ての核酸配列が実質上同一のタンパク質をコードするような多数の核酸配列を生成し得ることを理解されたい。
【0108】
ポリペプチド配列に用いられる用語「一致率」又は「%一致」とは、標準化されたアルゴリズムを用いてアラインメントされる2つ以上のポリペプチド配列間の一致する残基の百分率のことである。ポリペプチド配列アラインメントの方法は公知である。保存的アミノ酸置換を考慮するアラインメント方法もある。既に詳述したこのような保存的置換は通常、置換部位の酸性度及び疎水性を保存するので、ポリペプチドの構造を(従って機能も)保存する。
【0109】
ポリペプチド配列間の一致率は、MEGALIGN version 3.12e配列アラインメントプログラムに組込まれているようなCLUSTAL Vアルゴリズムのデフォルトのパラメータを用いて決定できる(既に説明したのでそれを参照されたい)。CLUSTAL Vを用いて、ポリペプチド配列をペアワイズアラインメントする際のデフォルトパラメータは、Ktuple=1、gap penalty=3、window=5、「diagonals saved」=5と設定される。デフォルトの残基重み付け表としてPAM250マトリクスが選択される。ポリヌクレオチドアラインメントと同様に、CLUSTAL Vは、アラインメントされたポリペプチド配列対間の「percent similarity」として一致率を報告する。
【0110】
或いは、NCBI BLASTソフトウェア一式を用いてもよい。例えば、2つのポリペプチド配列をペアワイズで比較する場合、ある者は、デフォルトパラメータで設定された「BLAST 2 Sequences」ツールVersion 2.0.12 (2000年4月21日)でblastpを使用するであろう。デフォルトパラメータの設定例を以下に示す。
【0111】
Matrix:BLOSUM62
Open Gap:11 及びExtension Gap:1 penalties
Gap x drop-off: 50
Expect: 10
Word Size: 3
Filter:on
一致率は、ある定義されたポリペプチド配列の全長(例えば特定のSEQ IDナンバーで定義された配列)について測定し得る。或いは、より短い長さ、例えば、定義された、より大きなポリペプチド配列から得られた断片(例えば少なくとも15、20、30、40、50、70、又は150の連続した残基の断片)の長さについて一致率を測定してもよい。ここに挙げた長さは単なる例示的なものに過ぎず、表、図及び配列リストを含めた本明細書に記載された配列に支持された任意の配列長さの断片を用いて、或る長さであってその長さに対して一致率を測定し得る長さを説明し得ることを理解されたい。
【0112】
「ヒト人工染色体(HAC)」は、約6kb〜10MbのサイズのDNA配列を含み得る、安定した染色体複製の分離及び維持に必要な全てのエレメントを含む直鎖状の微小染色体である。
【0113】
用語「ヒト化抗体」は、もとの結合能力を保持しつつ、よりヒトの抗体に似せるために、非抗原結合領域のアミノ酸配列が変えられた抗体分子を指す。
【0114】
「ハイブリダイゼーション」とは、所定のハイブリダイゼーション条件下で、ある一本鎖ポリヌクレオチドがある相補的な一本鎖と塩基対を形成するアニーリングのプロセスである。特異的ハイブリダイゼーションは、2つの核酸配列が高い相補性を共有することの指標である。特異的ハイブリダイゼーション複合体は許容的アニーリング条件下で形成され、「洗浄」ステップ後もハイブリダイズされたままである。洗浄ステップは、ハイブリダイゼーションプロセスのストリンジェンシーを決定する際に特に重要であり、よりストリンジェントな条件では、非特異結合(即ち完全には一致しない核酸鎖間の対の結合)が減少する。核酸配列のアニーリングのための許容的条件は、当業者が慣例的に決定できる。許容的条件は、どのハイブリダイゼーション実験でも一定でありうるが、洗浄条件は所望のストリンジェンシーを得るように、従ってハイブリダイゼーション特異性も得るように実験によって変更されうる。アニーリングが許容される条件は、例えば、温度が68℃で、約6×SSC、約1%(w/v)のSDS、並びに約100μg/mlのせん断して変性したサケ精子DNAが含まれる。
【0115】
一般に、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは或る程度、洗浄ステップを実行する温度を基準にして表すことができる。このような洗浄温度は通常、所定のイオン強度及びpHにおける特異配列の融点(Tm)より約5〜20℃低くなるように選択する。このTmは、所定のイオン強度及びpHの条件下で、完全に一致するプローブに標的配列の50%がハイブリダイズする温度である。Tmを計算する式及び核酸のハイブリダイゼーション条件はよく知られており、Sambrook, J. 他(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual, 第2版, 1-3巻, Cold Spring Harbor Press, Plainview NYに記載されており、特に2巻の9章を参照されたい。
【0116】
本発明のポリヌクレオチド間の高いストリンジェンシー条件のハイブリダイゼーションでは、約0.2xSSC及び約0.1%のSDSの存在の下、約68℃で1時間の洗浄過程を含む。別法では、約65℃、60℃、55℃、又は42℃の温度で行う。SSC濃度は、約0.1%のSDS存在下で、約0.1〜2×SSCの範囲で変化し得る。通常は、ブロッキング剤を用いて非特異ハイブリダイゼーションを阻止する。このようなブロッキング剤には、例えば、約100〜200μg/mlのせん断した変性サケ精子DNAがある。例えばRNAとDNAのハイブリダイゼーションのような特定条件下では、有機溶剤、例えば約35〜50%v/vの濃度のホルムアミドを用いることもできる。洗浄条件の有用なバリエーションは、当業者には自明であろう。ハイブリダイゼーションは、特に高ストリンジェント条件下では、ヌクレオチド間の進化的な類似性を示唆し得る。進化的類似性は、ヌクレオチド群、及びヌクレオチドがコードするポリペプチド群について、或る同様の役割を強く示唆する。
【0117】
用語「ハイブリダイゼーション複合体」は、相補的な塩基間の水素結合によって、形成された2つの核酸の複合体を指す。ハイブリダイゼーション複合体は、溶解状態で形成し得る(C0t又はR0t解析など)。或いは、一方の核酸が溶解状態で存在し、もう一方の核酸が固体支持体(例えば紙、膜、フィルタ、チップ、ピン又はガラススライド、或いは他の適切な基板であって細胞若しくはその核酸が固定される基板)に固定されているような2つの核酸間に形成され得る。
【0118】
用語「挿入」或いは「付加」は、1個以上のアミノ酸残基或いはヌクレオチドがそれぞれ追加されるアミノ酸或いはポリヌクレオチド配列の変化を指す。
【0119】
「免疫応答」は、炎症、外傷、免疫異常症、或いは伝染性疾患又は遺伝性疾患に関連する症状を指し得る。これらの症状は、細胞及び全身の防御系に作用し得る種々の因子、例えばサイトカイン、ケモカイン、その他のシグナル伝達分子の発現によって特徴づけることができる。
【0120】
用語「免疫原性断片」は、例えば哺乳動物などの生きている動物に導入すると、免疫反応を引き起こすEXMESのポリペプチド断片又はオリゴペプチド断片を指す。
【0121】
「免疫抗原性断片」の語には、本明細書中で開示したような或いは当分野で既知であるような任意の抗体産出方法において有用なEXMESの任意のポリペプチド又はオリゴペプチド断片も含まれる。
【0122】
用語「マイクロアレイ」は、基板上の複数のポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体又はその他の化合物の構成を指す。
【0123】
用語「エレメント」又は「アレイエレメント」は、マイクロアレイ上に固有の定義された位置を有する、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体又はその他の化合物を指す。
【0124】
用語「調節」は、EXMESの活性の変化を指す。例えば、調節によって、EXMESのタンパク質活性、或いは結合特性、又はその他の生物学的特性、機能的特性或いは免疫学的特性の変化が起こる。
【0125】
「核酸」及び「核酸配列」の語は、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド又はこれらの断片を指す。「核酸」及び「核酸配列」の語はまた、ゲノム起源又は合成起源のDNA又はRNAであって一本鎖又は二本鎖であるか或いはセンス鎖又はアンチセンス鎖を表し得るようなDNA又はRNAや、ペプチド核酸(PNA)や、任意のDNA様又はRNA様物質を指すこともある。
【0126】
「機能的に連結した」は、第1の核酸配列と第2の核酸配列が機能的な関係にある状態を指す。例えば、或るプロモーターが或るコード配列の転写又は発現に影響を及ぼす場合には、そのプロモーターはそのコード配列に機能的に連結している。機能的に連結したDNA配列は非常に近接するか、或いは連続的に隣接し得る。また、2つのタンパク質コード領域を結合するために必要な場合は、同一のリーディングフレーム内に在り得る。
【0127】
「ペプチド核酸(PNA)」は、末端がリジンで終わるアミノ酸残基のペプチドバックボーンに結合した、少なくとも約5ヌクレオチドの長さのオリゴヌクレオチドを有する、アンチセンス分子又は抗遺伝子剤を指す。末端のリジンは、組成物に溶解性を与える。PNAは、相補的一本鎖DNA又はRNAに優先的に結合して転写の伸長を停止するものであり、ポリエチレングリコール化して細胞におけるPNAの寿命を延長し得る。
【0128】
EXMESの「翻訳後修飾」には、脂質化、グリコシル化、リン酸化、アセチル化、ラセミ化、タンパク質分解性切断及びその他の当分野で既知の修飾を含まれ得る。これらのプロセスは、合成或いは生化学的に生じ得る。生化学的修飾は、EXMESの酵素環境に依存し、細胞の種類によって異なり得る。
【0129】
「プローブ」とは、核酸の内、EXMESやそれらの相補配列、又はそれらの断片をコードし、同一や対立遺伝子核酸、又は関連する核酸の検出に用いる核酸を指す。プローブは、単離されたオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドであって、検出可能な標識又はレポーター分子に接着した配列である。典型的な標識には、放射性アイソトープ、リガンド、化学発光試薬及び酵素がある。「プライマー」とは、相補的な塩基対を形成して標的のポリヌクレオチドにアニーリング可能な、通常はDNAオリゴヌクレオチドである短い核酸である。プライマーは次に、DNAポリメラーゼ酵素によって標的DNA鎖に沿って延長し得る。プライマー対は、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による、核酸の増幅(及び同定)に用い得る。
【0130】
本発明に用いるようなプローブ及びプライマーは通常、既知の配列の少なくとも15の連続したヌクレオチドを含んでいる。特異性を高めるために長めのプローブ及びプライマー、例えば開示した核酸配列の少なくとも20、25、30、40、50、60、70、80、90、100又は少なくとも150の連続したヌクレオチドからなるようなプローブ及びプライマーを用いてもよい。これよりもかなり長いプローブ及びプライマーもある。表、図面及び配列リストを含む本明細書が支持する、任意の長さのヌクレオチドを用い得るものと理解されたい。
【0131】
プローブ及びプライマーの調製及び使用方法については、Sambrook, J.他 (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版, 1-3巻、Cold Spring Harbor Press, Plainview NY、Ausubel, F.M.他, (1987) Current Protocols in Molecular Biology, Greene Pubi. Assoc. & Wiley-Intersciences, New York NY、Innis, M. 他 (1990) PCR Protocols, A Guide to Methods and Applications Academic Press, San Diego CA等を参照されたい。PCRプライマー対は、その目的のためのコンピュータプログラム、例えばPrimer(Version 0.5, 1991, Whitehead Institute for Biomedical Research, Cambridge MA)を用いるなどして既知の配列から得ることができる。
【0132】
プライマーとして用いるオリゴヌクレオチドの選択は、そのような目的のために本技術分野でよく知られているソフトウェアを用いて行う。例えばOLIGO 4.06ソフトウェアは、各100ヌクレオチドまでのPCRプライマー対の選択に有用であり、32キロベースまでのインプットポリヌクレオチド配列からオリゴヌクレオチド及び最大5.000ヌクレオチドまでの大きめのポリヌクレオチドとオリゴヌクレオチドを分析するのにも有用である。類似のプライマー選択プログラムには、拡張能力のための追加機能が組込まれている。例えば、PrimOUプライマー選択プログラム(テキサス州ダラスにあるテキサス大学南西部医療センターのゲノムセンターから一般向けに入手可能)は、メガベース配列から特定のプライマーを選択することが可能であり、したがってゲノム全体の範囲でプライマーを設計するのに有用である。Primer3プライマー選択プログラム(Whitehead Institute/MIT Center for Genome Research(マサチューセッツ州ケンブリッジ)より入手可能)によって、ユーザーは、プライマー結合部位として避けたい配列を指定できる「ミスプライミングライブラリ」を入力できる。Primer3は特に、マイクロアレイのためのオリゴヌクレオチドの選択に有用である(後二者のプライマー選択プログラムのソースコードは、それぞれの情報源から得てユーザー固有のニーズを満たすように修正し得る)。PrimerGenプログラム(英国ヒトゲノムマッピングプロジェクト-リソースセンター(英国ケンブリッジ)から一般向けに入手可能)は、多数の配列アラインメントに基づいてプライマーを設計し、それによって、アラインメントされた核酸配列の最大保存領域又は最小保存領域の何れかとハイブリダイズするようなプライマーの選択を可能にする。従って、このプログラムは、固有なもの、及び保存されたもの双方のオリゴヌクレオチドとポリヌクレオチド断片との同定に有用である。上記選択方法のいずれかによって同定したオリゴヌクレオチド及びポリヌクレオチド断片は、ハイブリダイゼーション技術において、例えばPCR又はシークエンシングプライマーとして、マイクロアレイエレメントとして、或いは核酸のサンプルにおいて完全又は部分的相補的ポリヌクレオチドを同定する特異プローブとして有用である。オリゴヌクレオチドの選択方法は、上記の方法に限定されるものではない。
【0133】
本明細書における「組み換え核酸」は天然の配列ではなく、2つ以上の配列の離れたセグメントを人工的に組み合わせた核酸である。この人為的組み合わせはしばしば化学合成によって達成するが、より一般的には核酸の単離セグメントの人為的操作によって、例えばSambrookの文献(前出)に記載されているような遺伝子工学的手法によって達成する。組換え核酸の語は、単に核酸の一部が付加、置換又は欠失により改変された核酸も含む。しばしば組換え核酸には、プロモーター配列に機能的に連結した核酸配列が含まれる。このような組換え核酸は、例えば細胞を形質転換するために使用されるベクターの一部とすることが可能である。
【0134】
或いはこのような組換え核酸は、ウイルスベクターの一部であって、例えばワクシニアウイルスに基づくものであり得る。そのようなワクシニアウイルスは哺乳動物に接種され、その組換え核酸が発現されて、その哺乳動物内で防御免疫応答を誘導するように使用することができる。
【0135】
「調節エレメント」は、通常は遺伝子の非翻訳領域に由来する核酸配列であり、エンハンサー、プロモーター、イントロン及び5'及び3'の非翻訳領域(UTR)を含む。調節エレメントは、転写、翻訳又はRNA安定性を制御する宿主タンパク質又はウイルスタンパク質と相互作用する。
【0136】
「レポーター分子」は、核酸、アミノ酸又は抗体の標識化に用いられる化学的又は生化学的な部分である。レポーター分子としては、放射性核種、酵素、蛍光剤、化学発光剤、発色剤、基質、補助因子、阻害因子、磁気粒子及びその他の当分野で既知の成分を含む。
【0137】
DNA分子に対する「RNA等価物」は、基準となるDNA分子とヌクレオチドの同じ直鎖の核酸配列から構成されるが、全ての窒素性塩基のチミンがウラシルで置換され、糖鎖のバックボーンがデオキシリボースではなくリボースからなる。
【0138】
用語「サンプル」は、その最も広い意味で用いられている。EXMES、EXMESをコードする核酸、又はその断片を含むと推定されるサンプルは、体液と、細胞からの抽出物や細胞から単離された染色体や細胞内小器官、膜と、細胞と、溶液中に存在する又は基板に固定されたゲノムDNA、RNA、cDNAと、組織と、組織プリント等を含み得る。
【0139】
用語「特異的結合」及び「特異的に結合する」は、タンパク質若しくはペプチドと、アゴニスト、抗体、アンタゴニスト、小分子、若しくは任意の天然若しくは合成の結合組成物との間の相互作用を指す。この相互作用は、タンパク質の特定の構造(例えば抗原決定基即ちエピトープ)であって結合分子が認識する構造が存在するか否かに依存する。例えば、抗体がエピトープ「A」に対して特異的である場合、結合していない標識した「A」及び抗体を含む反応液に、エピトープAを含むポリペプチド或いは結合していない無標識の「A」が存在すると、抗体と結合する標識Aの量が減少する。
【0140】
用語「実質的に精製された」は、自然の環境から取り除かれてから、単離或いは分離された核酸或いはアミノ酸配列であって、自然に結合している組成物が少なくとも約60%除去されたものであり、好ましくは約75%以上の除去、最も好ましいくは約90%以上除去されたものを指す。
【0141】
「置換」とは、一つ以上のアミノ酸残基又はヌクレオチドをそれぞれ別のアミノ酸残基又はヌクレオチドに置き換えることである。
【0142】
「基板」は、任意の好適な固体或いは半固体の支持物を指し、膜及びフィルタ、チップ、スライド、ウエハ、ファイバー、磁気又は非磁気ビーズ、ゲル、チューブ、プレート、ポリマー、微小粒子、毛細管が含まれる。基板は、壁、溝、ピン、チャネル、孔等、様々な表面形態を有することができ、基板にはポリヌクレオチドやポリペプチドが結合する。
【0143】
「転写物イメージ」或いは「発現プロフィール」は、所定条件下での所定時間における特定の細胞の種類又は組織による集合的遺伝子発現のパターンを指す。
【0144】
「形質転換(transformation)」とは、外来DNAが受容細胞に導入されるプロセスのことである。形質転換は、本技術分野で知られている種々の方法に従って自然条件又は人工条件下で生じ得るものであり、外来性の核酸配列を原核宿主細胞又は真核宿主細胞に挿入する任意の既知の方法を基にし得る。形質転換の方法は、形質転換する宿主細胞の種類によって選択する。限定するものではないが形質転換方法には、バクテリオファージ或いはウイルス感染、電気穿孔法(エレクトロポレーション)、熱ショック、リポフェクション及び微粒子銃を用いる方法がある。用語「形質転換された細胞」には、導入されたDNAが自律的に複製するプラスミドとして或いは宿主染色体の一部として複製可能である安定的に形質転換された細胞が含まれる。更に、限られた時間に一過的に導入DNA若しくは導入RNAを発現する細胞も含まれる。
【0145】
ここで用いる「遺伝形質転換生物体(transgenic organism)」とは任意の生物体であり、限定するものではないが動植物を含み、生物体の1個以上の細胞が、ヒトの関与によって、例えば本技術分野でよく知られているトランスジェニック(transgenic)技術によって導入された異種核酸を有する。核酸の細胞への導入は、直接又は間接的に、細胞の前駆物質に導入することによって、計画的な遺伝子操作によって、例えば微量注射法によって或いは組換えウイルスでの感染によって行う。別の実施様態では、核酸の導入は組換えウイルスベクター、例えばレンチウイルスベクターを感染させて成し得る(Lois, C. 他 (2002) Science 295:868-872)。遺伝子操作の語は、古典的な交雑育種或いはin vitro受精を指すものではなく、組換えDNA分子の導入を指すものである。本発明に基づいて予期される遺伝形質転換生物体には、バクテリア、シアノバクテリア、真菌及び動植物がある。本発明の単離されたDNAは、本技術分野で知られている方法、例えば感染、形質移入、形質転換又はトランス接合によって宿主に導入することができる。本発明のDNAをこのような有機体に移入する技術はよく知られており、前出のSambrook 他 (1989) 等の参考文献に与えられている。
【0146】
特定の核酸配列の「変異体/変異配列」は、核酸配列1本全部の長さに対して特定の核酸配列と少なくとも40%の配列同一性を有する核酸配列であると定義する。定義づけには、デフォルトパラメータに設定した「BLAST 2 Sequences」ツールVersion 2.0.9(1999年5月7日)を用いてblastnを実行する。このような核酸対は、所定の長さに対して、例えば少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれ以上の配列同一性を示し得る。或る変異体は、例えば「対立遺伝子」変異体(前述)、「スプライス」変異体、「種」変異体又は「多型性」変異体として説明し得る。スプライス変異体は参照分子との有意な同一性を有し得るが、mRNAプロセッシング中のエキソンの選択的スプライシングによって通常、より多く又はより少数のポリヌクレオチドを有することになる。対応するポリペプチドは、追加機能ドメイン群を有するか、或いは参照分子には存在するドメイン群が欠落していることがある。種変異体は、種によって異なるポリヌクレオチドである。結果的に生じるポリペプチドは通常、相互に有意なアミノ酸同一性を有する。多型性変異体は、所与の種の個体間での特定遺伝子のポリヌクレオチド配列中での変異である。多型変異配列はまた、ポリヌクレオチド配列の1つのヌクレオチド塩基が異なる「1塩基多型性」(SNP)も含み得る。SNPの存在は、例えば特定の集団、病状又は病状性向を示し得る。
【0147】
特定のポリペプチド配列の「変異体」は、ポリペプチド配列の1本の長さ全体で特定のポリペプチド配列に対して少なくとも40%の配列同一性を有するポリペプチド配列として定義される。定義づけには、デフォルトパラメータに設定した「BLAST 2 Sequences」ツールVersion 2.0.9(1999年5月7日)を用いてblastpを実行する。このようなポリペプチド対は、ポリペプチドの1つの所定の長さに対して、例えば少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれ以上の配列同一性を示し得る。
【0148】
(発明)
本発明の様々な実施様態は、新規のヒト細胞外メッセンジャー(EXMES)及びEXMESをコードするポリヌクレオチドが含まれ、これらの組成物を利用した自己免疫/炎症疾患、神経系疾患、内分泌障害、発生又は発達障害、癌を含む細胞増殖異常、生殖障害、心血管疾患、及び感染の診断、治療、或いは予防に関する。
【0149】
表1は、本発明の完全長ポリヌクレオチド及びポリペプチド実施様態の命名の概略である。各ポリヌクレオチド及びその対応するポリペプチドは、1つのIncyteプロジェクト識別番号(IncyteプロジェクトID)に相関する。各ポリペプチド配列は、ポリペプチド配列識別番号(ポリペプチドSEQ ID NO:)とIncyteポリペプチド配列番号(IncyteポリペプチドID)によって表示した。各ポリヌクレオチド配列は、ポリヌクレオチド配列識別番号(ポリヌクレオチドSEQ ID NO:)とIncyteポリヌクレオチドコンセンサス配列番号(IncyteポリヌクレオチドID)によって表示した。列6は本発明のポリペプチド及びポリヌクレオチド実施様態に相当する物理的な完全長クローンのIncyte ID番号を示す。完全長クローンは、列3に示すポリペプチドに対して少なくとも95%の配列同一性を持つポリペプチドをコードする。
【0150】
表2は、GenBankタンパク質(genpept)データベースとPROTEOMEデータベースとに対するBLAST分析で同定した、本発明のポリペプチド群に相同な配列群を示す。列1及び列2はそれぞれ、本発明の各ポリペプチドに対するポリペプチド配列識別番号(ポリペプチド SEQ ID NO:)と、それに対応するIncyteポリペプチド配列番号(IncyteポリペプチドID)を示す。列3は、GenBankの最も近い相同体のGenBank識別番号(Genbank ID NO :)と最も近いPROTEOMEデータベース相同体のPROTEOMEデータベース識別番号(PROTEOME ID NO:)を示す。列4は、各ポリペプチドとその相同体1つ以上との間の一致に関する確率スコアを示す。列5は、GenBankとPROTEOMEデータベースの相同体の注釈を示し、更に該当箇所には関連する引用文献も示す。これらを引用することを以って本明細書の一部とする。
【0151】
表3は、本発明のポリペプチドの多様な構造的特徴を示す。列1及び列2はそれぞれ、本発明の各ポリペプチドのポリペプチド配列識別番号(SEQ ID NO:)及びそれに対応するIncyteポリペプチド配列番号(IncyteポリペプチドID)を示す。列3は、各ポリペプチドのアミノ酸残基数を示す。列4及び列5はそれぞれ、GCG配列分析ソフトウェアパッケージのMOTIFSプログラム(Genetics Computer Group, Madison WI)によって決定された、リン酸化及びグリコシル化の可能性のある部位を示す。列6は、シグネチャ配列、ドメイン、及びモチーフを有するアミノ酸残基を示す。列7は、タンパク質の構造/機能の分析のための分析方法を示し、該当箇所には更に、分析方法に利用した検索可能なデータベースを示す。
【0152】
表2及び3は共に、本発明の各々のポリペプチドの特性を要約しており、それら特性が請求の範囲に記載されたポリペプチドが細胞外メッセンジャーであることを確立している。例えば、SEQ ID NO:1は、M15残基からG725残基までが、ヒト肝細胞成長因子様タンパク質(GenBank ID g1311661)との100%の同一性を有することがBasic Local Alignment Search Tool(BLAST)によって示された(表2参照)。BLAST確率スコアは0.0であり、これは観測されたポリペプチド配列アラインメントが偶然に得られる確率を示している。SEQ ID NO:1はまた、肝細胞成長因子に見出される、Pan、クリングル、トリプシン様ドメインを有し、これは、隠れマルコフモデル(HMM)を基にした保存されたタンパク質ファミリードメインのPFAMデータベースにおいて、統計的に有意な一致を検索して決定された (表3参照)。BLIMPS、MOTIFS、PROFILESCAN解析、並びにPRODOM、DOMO両データベースのBLAST解析からのデータは、SEQ ID NO:1が成長因子である、更に実証的な証拠を提供する。別の例では、SEQ ID NO:3はBLASTによって同定されるように、ヒトのトランスフォーミング成長因子β1結合タンパク質前駆体(GenBank ID g339548)にV37残基からE350残基まで96%同一である。BLAST確率スコアは3.8e-178である。SEQ ID NO:3はまた、複数のEGF様ドメイン群と1つのTBドメインを有する。これは、隠れマルコフモデル(HMM)を基にしたPFAMデータベースにおいて、統計的に有意な一致を検索して決定された。BLIMPS、MOTIFS、及び更なるBLAST解析よりのデータは、SEQ ID NO:3がヒトのトランスフォーミング成長因子β1結合タンパク質前駆体である、更に実証的な証拠を提供する。別の例では、SEQ ID NO:7は、BLASTによって同定されるように、ヒトのトランスフォーミング成長因子β1結合タンパク質前駆体(GenBank ID g339548)にC650残基からE1668残基まで93%同一である。そのBLAST確立スコアは0.0である。SEQ ID NO:7はまた、1つのEGF様ドメインと1つのTBドメインを有するが、これは、隠れマルコフモデル(HMM)を基にしたPFAMデータベースにおいて、統計的に有意な一致を検索して決定された。BLIMPS、MOTIFS、及び更なるBLAST解析よりのデータは、SEQ ID NO:7がトランスフォーミング成長因子β1結合タンパク質前駆体である、更に実証的な証拠を提供する。別の例では、SEQ ID NO:14はBLASTによって同定されるように、ヒトのトランスフォーミング成長因子β1結合タンパク質前駆体(GenBank ID g339548)にM1残基からQ958残基まで96%同一である。そのBLAST確率スコアは0.0である。SEQ ID NO:14は、TGF-β1を発現する組織で発現され、潜在型TGF-βのアセンブリと分泌に関与し、また潜在型TGFβ結合タンパク質であることが、PROTEOMEデータベースを使ったBLAST解析によって示された。SEQ ID NO:14はまた、1つのEGF様ドメインと1つのTBドメインをも有するが、これは、隠れマルコフモデル(HMM)を基にしたPFAMデータベースにおいて、統計的に有意な一致を検索して決定された。BLIMPS、MOTIFS、及び更なるBLAST解析よりのデータは、SEQ ID NO:14がヒトのトランスフォーミング成長因子β1結合タンパク質前駆体である、更に実証的な証拠を提供する。別の例においてSEQ ID NO:18は、K9残基からN104残基までが、ヒトのプロラクチン(GenBank ID g531103)に対して100%同一であると、BLASTで判定されたBLAST確率スコアは6.6e-82である。SEQ ID NO:18は更にプロラクチンと胎盤性ラクトゲンIIと相同性を有することがPROTEOMEデータベースを使ったBLAST解析によって示された。SEQ ID NO:18はまた、ソマトトロピンホルモンファミリードメインを有し、これは、隠れマルコフモデル(HMM)を基にしたPFAMデータベースにおいて、統計的に有意な一致を検索して決定された。BLIMPS、MOTIFS、及びPROFILESCAN解析よりのデータは、SEQ ID NO:18がプロラクチンであるという、更に実証的な証拠を提供する。別の例においてSEQ ID NO:22は、M1残基からL165残基までが、ヒトのリーディングフレームプロラクチン(reading frame prolactin)(GenBank ID g34211)に対して99%同一であると、BLASTで判定された。BLAST確率スコアは3.2e-83である。SEQ ID NO:22はまた細胞外領域に局在するタンパク質に対して相同性があり、血管新生の阻害及び細胞増殖の制御において役割があり、ヒトとラットのプロラクチンに対して相同性があることが、PROTEOMEデータベースを使ったBLAST解析によって示された。SEQ ID NO:22はまた、ソマトトロピンホルモンファミリードメインを有し、これは、隠れマルコフモデル(HMM)を基にしたPFAMデータベースにおいて、統計的に有意な一致を検索して決定された。BLIMPS、MOTIFS、PROFILESCANからのデータ及びPRODOMとDOMOデータベースに対するさらなるBLAST解析により、SEQ ID NO:22がソマトトロピンホルモンファミリーのメンバーであるという実証的な証拠が更に提供された。SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:4-6、SEQ ID NO:8-13、SEQ ID NO:15-17及びSEQ ID NO:19-21については、同様の方法で分析し、注釈を付けた。SEQ ID NO:1-22の解析用のアルゴリズム及びパラメータを表7に記載した。
【0153】
表4に示すように、完全長ポリヌクレオチドの具体例は、cDNA配列又はゲノムDNA由来のコード(エキソン)配列を用いて、或いはこれら2種類の配列を任意に組み合わせてアセンブリした。列1は本発明の各ポリヌクレオチドに対するポリヌクレオチド配列識別番号(ポリヌクレオチドSEQ ID NO)及び対応するIncyteポリヌクレオチドコンセンサス配列番号(Incyte ID)、及び塩基対の各ポリヌクレオチド配列の長さを示している。列2は、本発明の完全長ポリヌクレオチド実施様態をアセンブリするのに用いたcDNA配列及び/又はゲノム配列の、また、例えばSEQ ID NO:23-44を同定するため、或いはSEQ ID NO:23-44と関連するポリヌクレオチドとを区別するためのハイブリダイゼーション技術又は増幅技術に有用なポリヌクレオチドの断片の、開始ヌクレオチド(5')位置及び終了ヌクレオチド(3')位置を示す。
【0154】
表4の列2で記述されたポリヌクレオチド断片は特に、例えば組織特異的cDNAライブラリ或いはプールしたcDNAライブラリに由来するIncyte cDNAを指す場合もある。或いは列2に記載したポリヌクレオチド断片は、完全長ポリヌクレオチドのアセンブリに寄与したGenBank cDNA又はESTを指す場合もある。更に、列2のポリヌクレオチド断片は、ENSEMBL(The Sanger Centre、(英国ケンブリッジ))データベースから由来した配列を同定し得る(即ち「ENST」命名を含む配列)。或いは、列2で記述されたポリヌクレオチド断片は、NCBI RefSeq Nucleotide Sequence Records データベースから由来する場合もあり(即ち「NM」又は「NT」の命名を含む配列)、またNCBI RefSeq Protein Sequence Recordsから由来する場合もある(即ち「NP」の命名を含む配列)。又は列2のポリヌクレオチド断片は、「エキソンスティッチング(exon-stitching)」アルゴリズムにより結び合わせたcDNA及びGenscan予想エキソンの両方のアセンブリ体を意味する場合がある。例えば、FL_XXXXXX_N1_N2_YYYYY_N3_N4 と同定されるポリヌクレオチドは、アルゴリズムが適用される配列のクラスタの識別番号がXXXXXXであり、アルゴリズムにより生成される予測の番号がYYYYY であり、(もし存在すれば)N1,2,3..が解析中に手動で編集された可能性のある特定のエキソンであるような「スティッチされた(stitched)」配列である(実施例5参照)。又は、列2のポリヌクレオチド断片は「エキソンストレッチング(exon-stretching)」アルゴリズムにより結び合わせたエキソンのアセンブリ体を指す場合もある。例えば、FLXXXXXX_gAAAAA_gBBBBB_1_Nとして同定されるポリヌクレオチド配列は、「ストレッチされた」配列である。XXXXXXはIncyteプロジェクト識別番号、gAAAAAは「エキソンストレッチング」アルゴリズムを適用したヒトゲノム配列のGenBank識別番号、gBBBBBは一番近いGenBankタンパク質相同体のGenBank識別番号又はNCBI RefSeq 識別番号であり、Nは特定のエキソンを指す(実施例5を参照)。あるRefSeq配列が「エキソンストレッチング」アルゴリズムのためのタンパク質相同体として使用された場合では、RefSeq識別子(「NM」、「NP」、又は「NT」によって表される)が、GenBank識別子(即ち、gBBBBB)の代わりに使用される場合もある。
【0155】
或いは、接頭コードは、手動で編集された構成配列、ゲノムDNA配列から予測された構成配列、又は組み合わされた配列解析方法から由来する構成配列を同定する。次の表は、構成配列の接頭コードと、接頭コードに対応する配列分析方法の例を列記する(実施例4と5を参照)。
【0156】
場合によっては、最終コンセンサスポリヌクレオチド配列を確認するために表4に示すような配列の適用範囲と重複するIncyte cDNAの適用範囲が得られたが、それに関連するIncyte cDNA識別番号は示さなかった。
【0157】
表5は、Incyte cDNA配列を用いてアセンブリされた完全長ポリヌクレオチドのための代表的なcDNAライブラリを示している。代表的なcDNAライブラリとはIncyte cDNAライブラリであり、これは、最も頻繁にはIncyte cDNA配列群によって代表されるが、これら配列は、上記のポリヌクレオチドをアセンブリ及び確認するために用いられた。cDNAライブラリを作製するために用いた組織及びベクターを表5に示し、表6で説明している。
【0158】
表8は、ポリヌクレオチド実施様態に見られる一塩基多型 (SNP)を、種々のヒト集団での対立遺伝子(アレル)頻度と共に示す。列1及び列2はそれぞれ、本発明の各ポリヌクレオチドのポリヌクレオチド配列識別番号(SEQ ID NO :)及びそれに対応するIncyteプロジェクト識別番号(PID)を示す。列3はSNPが検出されたESTのIncyte識別番号(EST ID)を示し、列4はSNPの識別番号(SNP ID)を示す。列5はSNPが存在するEST配列内の位置(EST SNP)を示し、列6は完全長ポリヌクレオチド配列内のSNPの位置(CB1 SNP)を示す。列7はEST配列内に存在する対立遺伝子を示す。列8及び列9はSNP部位に存在する2つの対立遺伝子を示す。列10はESTに存在する対立遺伝子に基づいてSNP部位に含まれるコドンによってコードされるアミノ酸を示す。列11〜14は四つの異なったヒト母集団における対立遺伝子1の発生頻度を示す。n/d(検出されない)の項目は母集団における対立遺伝子1の発生頻度が低すぎて検出されなかったことを示し、また、n/a(利用不可)はその母集団において対立遺伝子の発生頻度が決定されなかったことを示す。
【0159】
本発明はまた、EXMESの変異体も含む。好適なEXMES変異体は、EXMESの機能的或いは構造的特徴を少なくとも1つ有し、かつ、EXMESアミノ酸配列に対して少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性、或いは少なくとも約90%のアミノ酸配列同一性、更には少なくとも約95%のアミノ酸配列同一性を有する変異体である。
【0160】
種々の実施態様もまた、EXMESをコードするポリヌクレオチドをも含む。或る実施様態では、EXMESをコードするSEQ ID NO:23-44からなる群から選択された配列を有するポリヌクレオチド配列が本発明に含まれている。SEQ ID NO:23-44のポリヌクレオチド配列は、配列表に示されているように等価RNA配列と同等の価値を有しているが、窒素塩基チミンの出現はウラシルに置換され、糖のバックボーンはデオキシリボースではなくてリボースから構成されている。
【0161】
本発明はまた、EXMESをコードするポリヌクレオチドの変異体を含む。詳細には、このようなポリヌクレオチド配列の変異配列は、EXMESをコードするポリヌクレオチド配列と少なくとも70%のポリヌクレオチド配列同一性、或いは少なくとも85%のポリヌクレオチド配列同一性、更には少なくとも95%ものポリヌクレオチド配列同一性を有する。本発明の或る実施態様では、SEQ ID NO:23-44からなる群から選択された核酸配列と少なくとも約70%、或いは少なくとも約85%、又は少なくとも約95%ものポリヌクレオチド配列同一性を有するようなSEQ ID NO:23-44からなる群から選択された配列を含むポリヌクレオチドの変異配列を含む。上記の任意のポリヌクレオチドの変異体は、EXMESの機能的若しくは構造的特徴を少なくとも1つ有するポリペプチドをコードし得る。
【0162】
更に別の例では、本発明の或るポリヌクレオチド変異体はEXMESをコードするポリヌクレオチドのスプライス変異配列である。或るスプライス変異体はEXMESをコードするポリヌクレオチドとの顕著な配列同一性を持つ部分を有し得るが、mRNAプロセッシング中のエキソン群の選択的スプライシングによって生ずる、配列の数ブロックの付加又は欠失により、通常、より多数又はより少数のポリヌクレオチドを有することになる。或るスプライス変異体には、約70%未満、又は約60%未満、或いは約50%未満のポリヌクレオチド配列同一性が、EXMESをコードするポリヌクレオチドとの間で全長に渡って見られるが、このスプライス変異体のいくつかの部分には、EXMESをコードするポリヌクレオチドの各部との、少なくとも約70%、或いは少なくとも約85%、又は少なくとも約95%、なお又は100%の、ポリヌクレオチド配列同一性を有することとなる。たとえば、SEQ ID NO:40の配列を含むポリヌクレオチド、SEQ ID NO:43の配列を含むポリヌクレオチド及びSEQ ID NO:44の配列を含むポリヌクレオチドは全てお互いのスプライス変異体である。別の例では、SEQ ID NO:26の配列を含むポリヌクレオチド、SEQ ID NO:30の配列を含むポリヌクレオチドは全てお互いのスプライス変異体である。別の例では、SEQ ID NO:32の配列を含むポリヌクレオチド、SEQ ID NO:33の配列を含むポリヌクレオチド及びSEQ ID NO:34の配列を含むポリヌクレオチドは全てお互いのスプライス変異体である。また別の例では、SEQ ID NO:35の配列を含むポリヌクレオチド、SEQ ID NO:36の配列を含むポリヌクレオチド及びSEQ ID NO:37の配列を含むポリヌクレオチドは全てお互いのスプライス変異体である。上記したスプライス変異配列は何れも、EXMESの機能的或いは構造的特徴の少なくとも1つを有する或るポリペプチドをコードし得る。
【0163】
遺伝暗号の縮重により作り出され得るEXMESをコードする種々のポリヌクレオチド配列には、自然発生する任意の既知の遺伝子のポリヌクレオチド配列と最小の類似性しか有しないものも含まれることを、当業者は理解するであろう。したがって本発明には、可能コドン選択に基づく組み合わせの選択によって産出し得るあらゆる可能なポリヌクレオチド配列のバリエーションを網羅し得る。これらの組み合わせは、天然のEXMESのポリヌクレオチド配列に適用される標準的なトリプレット遺伝暗号を基に作られ、全てのそのような変異が明確に開示されているとみなす。
【0164】
EXMESとその変異配列群とをコードするポリヌクレオチド群は一般に、好適に選択されたストリンジェンシー条件下で天然EXMESをコードするポリヌクレオチドにハイブリダイズ可能であるが、非天然コドンを含むなど実質的に異なるコドン使用を有する、EXMES或いはその誘導体をコードするポリヌクレオチド群を産生することは有益であり得る。宿主が特定のコドンを利用する頻度に基づいて、特定の真核宿主又は原核宿主に発生するペプチドの発現率を高めるようにコドンを選択することが可能である。コードされたアミノ酸配列を変えずに、EXMES及びその誘導体をコードするヌクレオチド配列を実質的に変更する別の理由は、天然の配列から作られる転写物より例えば長い半減期など好ましい特性を備えるRNA転写物を作ることにある。
【0165】
本発明はまた、EXMES及びその誘導体をコードするポリヌクレオチド又はそれらの断片を完全に合成化学によって作り出す過程も含む。作製後にこの合成ポリヌクレオチドを、当分野で公知の試薬を用いて、多くの入手可能な発現ベクター及び細胞系の何れの中にも挿入可能である。更に、合成化学を用いて、EXMES又はその任意の断片をコードするポリヌクレオチドの中に突然変異を導入することも可能である。
【0166】
更に本発明の実施態様は、種々のストリンジェンシー条件下で、請求項に記載のポリヌクレオチド、特に、SEQ ID NO:23-44及びそれらの断片群に示された配列を有するポリヌクレオチドにハイブリダイズ可能なポリヌクレオチド配列群が含まれる(例えば、Wahl, G.M.及びS.L. Berger (1987) Methods Enzymol.152:399-407、Kimmel, A.R. (1987) Methods Enzymol. 152:507-511を参照)。アニーリング及び洗浄条件を含むハイブリダイゼーションの条件は、「定義」に記載されている。
【0167】
DNAシークエンシングの方法は当分野では公知であり、本発明のいずれの実施例もDNAシークエンシング方法を用いて実施可能である。DNAシークエンシング方法には酵素を用い得る。例えばDNAポリメラーゼ1のクレノウ断片、SEQUENASE(US Biochemical, Cleveland OH)、Taqポリメラーゼ(Applied Biosystems)、熱安定性T7ポリメラーゼ(Amersham Biosciences, Piscataway NJ)を用い得る。或いは、例えばELONGASE増幅システム(Invitrogen, Carlsbad CA)において見られるように、ポリメラーゼと校正エキソヌクレアーゼとを併用し得る。好適には、MICROLAB2200液体転移システム(Hamilton, Reno, NV)、PTC200サーマルサイクラー(MJ Research, Watertown MA)及びABI CATALYST 800サーマルサイクラー(Applied Biosystems)等の装置を用いて配列の準備を自動化する。次に、ABI 373 或いは 377 DNAシークエンシングシステム(Applied Biosystems)、MEGABACE 1000 DNAシークエンシングシステム(Amersham Biosciences)又は当分野で既知の他の方法を用いてシークエンシングを行う。結果として得られた配列を当分野でよく知られている種々のアルゴリズムを用いて分析する(Ausubel, F.M. (1997) Short Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York NY, unit 7.7、Meyers, R.A. (1995) Molecular Biology and Biotechnology, Wiley VCH, New York NY, 856-853ページ等を参照)。
【0168】
当分野で周知の、PCR法をベースにした種々の方法と、部分的ヌクレオチド配列とを利用して、EXMESをコードする核酸を伸長し、プロモーターや調節エレメントなど、上流にある配列を検出し得る。例えば、使用し得る方法の1つである制限部位PCR法は、ユニバーサルプライマー及びネステッドプライマーを用いてクローニングベクター内のゲノムDNAからの未知の配列を増幅する方法である(例えば、Sarkar, G. (1993) PCR Methods Applic. 2:318-322を参照)。別の方法にインバースPCR法があり、これは広範な方向に伸長させたプライマーを用いて環状化した鋳型から未知の配列を増幅する方法である。鋳型は、或る既知のゲノム遺伝子座及びその周辺の配列群からなる制限酵素断片群から得る(例えばTriglia, T. 他 (1988) Nucleic Acids Res. 16:8186を参照)。第3の方法としてキャプチャPCR法があり、これはヒト及び酵母菌人工染色体DNAの既知の配列に隣接するDNA断片をPCR増幅する方法に関与している(例えばLagerstrom, M. 他 (1991) PCR Methods Applic. 1:111119を参照)。この方法では、PCRを行う前に複数の制限酵素の消化及びライゲーション反応を用いて未知の配列領域内に組換え二本鎖配列を挿入することが可能である。未知の配列群を検索するために用い得る他の複数の方法も当分野で既知である(例えばParker, J.D.他 (1991) Nucleic Acids Res. 19:30553060を参照)。更に、PCR、ネステッドプライマー及びPromoterFinder(商標)ライブラリ(Clontech, Palo Alto CA)を用いてゲノムDNAをウォーキングすることができる。この手順は、ライブラリ類をスクリーニングする必要がなく、イントロン/エキソン接合部の発見に有用である。全てのPCRベースの方法では、市販ソフトウェア例えばOLIGO 4.06プライマー分析ソフトウェア(National Biosciences, Plymouth MN)或いは別の好適なプログラムを用い、長さ約22〜30ヌクレオチド、GC含有率が約50%以上、温度約68℃〜72℃で鋳型に対してアニーリングするよう、プライマー群を設計し得る。
【0169】
完全長cDNA群をスクリーニングする際は、より大きなcDNA群を含むようにサイズ選択されたライブラリ群を用いるのが好ましい。更に、ランダムプライマーのライブラリは、遺伝子群の5'領域を有する配列をしばしば含んでおり、オリゴd(T)ライブラリが完全長cDNAを作製できない状況に対して好適である。ゲノムライブラリ群は、5'非転写調節領域への、配列の伸長に有用であろう。
【0170】
市販のキャピラリー電気泳動システムを用いて、シークエンシング産物又はPCR産物のサイズを分析し、又はそのヌクレオチド配列を確認することができる。具体的には、キャピラリーシークエンシングは、電気泳動による分離のための流動性ポリマーと、4つの異なるヌクレオチドに特異的であるような、レーザで刺激される蛍光色素と、発光された波長の検出に利用するCCDカメラとを有し得る。出力/光の強度は、適切なソフトウェア(Applied Biosystems社のGENOTYPER、SEQUENCE NAVIGATOR等)を用いて電気信号に変換し得る。サンプルのロードからコンピュータ分析及び電子データ表示までの全プロセスがコンピュータ制御可能である。キャピラリー電気泳動法は、特定のサンプルに少量しか存在しないようなDNA小断片のシークエンシングに特に適している。
【0171】
本発明の別の実施態様では、EXMESをコードするポリヌクレオチド配列又はその断片を、EXMES、その断片又は機能的等価物を適切な宿主細胞内に発現させる組換えDNA分子にクローニングし得る。遺伝暗号に固有の縮重により、実質的に同じ或いは機能的に等価のポリヌクレオチドをコードする別のポリヌクレオチドが作られ、これらの配列をEXMESの発現に利用可能である。
【0172】
種々の目的で、EXMESをコードする配列群を改変するために、当分野で一般的に既知の複数の方法を用いて、本発明のヌクレオチド配列群を組換えることができる。この組換えの多様な目的には、遺伝子産物のクローン化の、或いはプロセッシング及び/又は発現のモディフィケーションが含まれるが、これらに限定されるものではない。遺伝子断片及び合成オリゴヌクレオチドのランダムなフラグメンテーション及びPCR再アセンブリによるDNAシャッフリングを用い、ヌクレオチド配列を組み換えることが可能である。例えば、オリゴヌクレオチドを介した部位特異的変異誘導を利用して、新規な制限部位の作製、グリコシル化パターンの変更、コドン優先の変更、スプライス変異体の生成等を起こす突然変異を導入し得る。
【0173】
本発明のヌクレオチドは、MOLECULARBREEDING(Maxygen Inc., Santa Clara CA, 米国特許第5,837,458号、Chang, C.-C.他 (1999) Nat. Biotechnol. 17:793-797、Christians, F.C.他 (1999) Nat. Biotechnol. 17:259-264、Crameri, A. 他 (1996) Nat. Biotechnol. 14:315-319に記載)等のDNAシャッフリング技術の対象となり、EXMESの生物学的特性、例えば生物活性、酵素力、或いは他の分子や化合物との結合力等を変更又は向上させ得る。DNAシャッフリングは、遺伝子断片のPCRを介する組換えを用いて遺伝子変異体のライブラリを生成するプロセスである。ライブラリはその後、所望の特性を持つ遺伝子変異体群を同定する、選択又はスクリーニングの手順を経る。続いて、これら好適な変異体をプールし、更に反復してDNAシャッフリング及び選択/スクリーニングを行い得る。かくして、「人工的な」育種及び急速な分子進化によって遺伝的多様性が作られる。例えば、ランダムポイント突然変異を持つ単一の遺伝子の断片を組換えて、スクリーニングし、その後所望の特性が最適化されるまでシャッフリングし得る。或いは、所与遺伝子の断片を同種又は異種のいずれかから得た同一遺伝子ファミリーの相同遺伝子の断片と組み換え、それによって天然に存在する複数の遺伝子の遺伝的多様性を、管理された、制御可能な方法で最大化させることができる。
【0174】
別の実施態様によれば、EXMESをコードするポリヌクレオチドは、当分野で周知の1つ以上の化学的方法を用いて、全体或いは一部が合成可能である(Caruthers, M.H. 他. (1980) Nucleic Acids Symp. Ser. 7:215-223、Horn, T. 他. (1980) Nucleic Acids Symp. Ser. 7:225-232等を参照)。別法として、当分野で知られている化学的方法を用いてEXMES自体又はその断片を合成することが可能である。例えば、種々の液相又は固相技術を用いてペプチド合成を行うことができる(例えば、Creighton, T. (1984) Proteins, Structures and Molecular Properties, WH Freeman, New York NY, 55-60ページ、Roberge, J.Y. 他 (1995) Science 269:202-204を参照)。自動合成はABI 431Aペプチドシンセサイザ(Applied Biosystems)を用いて達成し得る。更にEXMESのアミノ酸配列又は任意のその一部は、直接的な合成の際の変更、及び/又は化学的方法を用いた他のタンパク質又は任意のその一部からの配列との組み合わせにより、天然のポリペプチド配列を有するポリペプチド又は変異体ポリペプチドを作製することが可能である。
【0175】
このペプチドは、分離用高速液体クロマトグラフィーを用いて実質的に精製し得る(Chiez, R.M.及びF.Z. Regnier (1990) Methods Enzymol. 182:392-421等を参照)。合成ペプチドの組成は、アミノ酸分析又はシークエンシングによって確認することができる(前出のCreighton, 28-53ページ等を参照)。
【0176】
生物学的に活性なEXMESを発現させるために、EXMESをコードするポリヌクレオチド又はその誘導体を好適な発現ベクターに挿入する。この発現ベクターは、好適な宿主に挿入されたコード配列の転写及び翻訳の調節に必要なエレメントを含む。必要なエレメントとしては、該ベクターと、EXMESをコードするポリヌクレオチドとにおける調節配列群(エンハンサー、構成型及び発現誘導型のプロモーター、5'及び3'の非翻訳領域など)が含まれる。このようなエレメントは、強度及び特異性が様々である。特定の開始シグナル類を用いて、EXMESをコードする配列群の、より効果的な翻訳を達成できる。開始シグナルの例には、ATG開始コドンと、コザック配列など近傍の配列とが含まれる。EXMESをコードするポリヌクレオチド配列群、その開始コドン、及び上流の調節配列群が、好適な発現ベクターに挿入された場合は、更なる転写制御シグナルや翻訳制御シグナルは必要ないこともある。しかしながら、コード配列或いはその断片のみが挿入された場合は、インフレームATG開始コドンなど外来性の翻訳制御シグナルが発現ベクターに含まれるようにすべきである。外来性の翻訳エレメント及び開始コドンは、様々な天然物及び合成物を起源とし得る。用いられる特定の宿主細胞系に好適なエンハンサーを含めることで発現の効率を高めることが可能である(例えばScharf, D. 他(1994) Results Probl.Cell Differ. 20:125162を参照)。
【0177】
当業者に周知の方法を用いて、EXMESをコードするポリヌクレオチド配列と、好適な転写及び翻訳制御エレメントとを持つ発現ベクターを作製し得る。これらの方法には、in vitro組換えDNA技術、合成技術、及びin vivo遺伝子組換え技術が含まれる(例えばSambrook, J.他(1989) Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, Plainview NY, 4、8及び16-17章、Ausubel, F.M.他(1995)Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York NY,9、13及び16章を参照)。
【0178】
種々の発現ベクター/宿主系を利用して、EXMESをコードするポリヌクレオチドの保持及び発現が可能である。限定するものではないがこのような発現ベクター/宿主系には、組換えバクテリオファージ、プラスミド又はコスミドDNA発現ベクターで形質転換させた細菌などの微生物等や、酵母菌発現ベクターで形質転換させた酵母菌や、ウイルス発現ベクター(例えばバキュロウイルス)に感染した昆虫細胞系や、ウイルス発現ベクター(例えばカリフラワーモザイクウイルスCaMV又はタバコモザイクウイルスTMV)又は細菌発現ベクター(例えばTiプラスミド又はpBR322プラスミド)で形質転換させた植物細胞系又は動物細胞系がある(例えば前出Sambrook、前出Ausubel、Van Heeke, G.及びS.M. Schuster (1989) J. Biol. Chem. 264:5503-5509、Engelhard, E.K. 他(1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:3224-3227、Sandig, V.他(1996) Hum.Gene Ther.7:1937-1945、Takamatsu, N. (1987) EMBO J. 6:307-311;『マグローヒル科学技術年鑑』(The McGraw Hill Yearbook of Science and Technology) (1992) McGraw Hill, New York NY, 191-196ページ、Logan, J.及びT. Shenk (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:3655-3659、Harrington, J.J. 他(1997) Nat. Genet. 15:345-355を参照)。レトロウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルス又はワクシニアウイルス由来の発現ベクター、又は種々の細菌性プラスミド由来の発現ベクターを用いて、ポリヌクレオチドを標的器官、組織又は細胞集団へ送達することができる(例えばDi Nicola, M.他(1998) Cancer Gen. Ther. 5(6):350-356、Yu, M.他 (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90(13):6340-6344、Buller, R.M.他(1985) Nature 317(6040):813-815、McGregor, D.P.他(1994) Mol. Immunol. 31(3):219-226、Verma, I.M.及びN. Somia (1997) Nature 389:239-242を参照)。本発明は使用する宿主細胞によって限定されない。
【0179】
細菌系では、多数のクローニングベクター及び発現ベクターが、EXMESをコードするポリヌクレオチドの使用目的に応じて選択可能である。例えば、EXMESをコードするポリヌクレオチドの日常的なクローニング、サブクローニング及び増殖は、PBLUESCRIPT(Stratagene, La Jolla CA)又はPSPORT1プラスミド(Invitrogen)などの多機能の大腸菌ベクターを用いて達成することができる。ベクターのマルチクローニング部位にEXMESをコードするポリヌクレオチドをライゲーションするとlacZ遺伝子が破壊され、組換え分子を含む形質転換された細菌の同定のための比色スクリーニング法が可能となる。更にこれらのベクターは、クローニングされた配列におけるin vitro転写、ジデオキシのシークエンシング、ヘルパーファージによる一本鎖のレスキュー、入れ子状態の欠失の生成にも有用であろう(Van Heeke, G.及びS.M. Schuster (1989) J. Biol. Chem. 264:5503-5509等を参照)。例えば抗体類の産生などに多量のEXMESが必要な場合は、EXMESの発現をハイレベルで指示するベクター類が使用できる。例えば、強力な誘導SP6バクテリオファージプロモーター又は誘導T7バクテリオファージプロモーターを有するベクターが使用できる。
【0180】
酵母の発現系を使用してEXMESを産出し得る。α因子、アルコールオキシダーゼ、PGHプロモーター等の構成型或いは誘導型のプロモーターを含む多数のベクターが、出芽酵母菌(Saccharomyces cerevisiae)又はピキア酵母(Pichia pastoris)に使用可能である。更に、このようなベクターは、発現したタンパク質の分泌か、又は細胞内での保持かのどちらかを誘導するものであり、安定した増殖のために宿主ゲノムの中に外来ポリヌクレオチド配列群を組み込むことを可能にする(例えば前出のAusubel, 1995、Bitter, G.A. 他 (1987) Methods Enzymol. 153:516544、Scorer, C.A. 他. (1994) Bio/Technology 12:181-184を参照)。
【0181】
植物系もEXMESの発現に使用可能である。EXMESをコードするポリヌクレオチドの転写は、ウイルスプロモーター、例えば単独或いはTMV(Takamatsu, N. (1987) EMBO J 6:307-311)由来のオメガリーダー配列と組み合わせて用いられるようなCaMV由来の35S及び19Sプロモーターによって促進される。或いは、RuBisCOの小サブユニットなどの植物プロモーター、又は熱ショックプロモーターを用い得る(例えばCoruzzi, G.他(1984) EMBO J. 3:1671-1680、Broglie, R.他(1984) Science 224:838843、Winter, J.他(1991) Results Probl.Cell Differ. 17:85105を参照)。これらの作製物は、直接DNA形質転換に又は病原体を媒介とする形質移入によって、植物細胞内に導入可能である(『マグローヒル科学技術年鑑』(The McGraw Hill Yearbook of Science and Technology) (1992) McGraw Hill New York NY,191-196ページ等を参照)。
【0182】
哺乳類細胞においては、多数のウイルスベースの発現系を利用し得る。アデノウイルスが発現ベクターとして用いられる場合、後期プロモーターと3連リーダー配列とからなるアデノウイルス転写/翻訳複合体に、EXMESをコードするポリヌクレオチドをライゲーションし得る。非必須E1又はE3領域へウイルスのゲノムを挿入し、宿主細胞でEXMESを発現する感染ウイルスを得ることが可能である。(例えば、Logan, J.及びT. Shenk (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:3655-3659等を参照)。更に、ラウス肉腫ウイルス(RSV)エンハンサー等の転写エンハンサーを用いて、哺乳動物宿主細胞における発現を増大させ得る。SV40又はEBVをベースにしたベクターを用いてタンパク質を高レベルで発現させることもできる。
【0183】
ヒト人工染色体(HAC)を用いて、プラスミドに含まれ且つプラスミドから発現するものより大きなDNAの断片を送達することもできる。治療のために約6kb〜10MbのHACを作製し、従来の送達方法(リポソーム、ポリカチオンアミノポリマー、又はベシクル)で送達する(例えばHarrington, J.J.他(1997) Nat. Genet. 15:345-355を参照)。
【0184】
哺乳動物系の組換えタンパク質の長期にわたる産生のためには、株化細胞におけるEXMESの安定した発現が望ましい。例えば、EXMESをコードするポリヌクレオチドを細胞株に形質転換するために、発現ベクター類と、同じベクター上の或いは別のベクター上の選択可能マーカー遺伝子とを用い得る。用いる発現ベクターは、ウイルス起源の複製要素、及び/又は内因性の発現要素を持ち得る。ベクターの導入後、選択培地に移す前に強化培地で約1〜2日間、細胞を増殖させ得る。選択可能マーカーの目的は選択剤への抵抗性を与えることであり、選択可能マーカーの存在により、導入した配列をうまく発現するような細胞の成長及び回収が可能となる。安定的に形質転換された細胞の耐性クローンは、その細胞型に適した組織培養技術を用いて増殖できる。
【0185】
任意の数の選択系を用いて、形質転換細胞株を回収できる。限定するものではないがこのような選択系には、tk−単純細胞のために用いられる単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼ遺伝子と、apr−細胞のために用いられるアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子がある(例えばWigler, M.他(1977) Cell 11:223-232、Lowy, I. 他(1980) Cell 22:817-823を参照)。また、選択の基礎として代謝拮抗物質、抗生物質或いは除草剤への耐性を用いることができる。例えばdhfrはメトトレキセートに対する耐性を与え、neoはアミノグリコシドであるネオマイシン及びG-418に対する耐性を与え、alsはクロルスルフロンに対する耐性を、patはホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼに対する耐性を各々与える(例えばWigler, M.他(1980) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:35673570、Colbere-Garapin, F.他(1981) J. Mol. Biol. 150:1-14を参照)。この他の選択可能な遺伝子、例えば、代謝物のための細胞の必要条件を変えるtrpB及びhisDが、文献に記載されている(Hartman, S.C及びR.C. Mulligan (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:8047-8051等を参照)。可視マーカー、例えばアントシアニン、緑色蛍光タンパク質(GFP;Clontech)、βグルクロニダーゼ及びその基質βグルクロニド、又はルシフェラーゼ及びその基質ルシフェリン等を用いてもよい。これらのマーカーを用いて、トランスフォーマントを同定するだけでなく、特定のベクター系に起因する一過性或いは安定したタンパク質発現を定量し得る(Rhodes, C.A. (1995) Methods Mol. Biol. 55:121-131等を参照)。
【0186】
マーカー遺伝子発現の有無によって目的の遺伝子の存在が示唆されても、その遺伝子の存在及び発現の確認が必要な場合もある。例えば、EXMESをコードする配列がマーカー遺伝子配列の中に挿入された場合、EXMESをコードするポリヌクレオチドを持つ形質転換された細胞は、マーカー遺伝子機能の欠落により同定可能である。又は、単一プロモーターの制御下で、或るマーカー遺伝子を、EXMESをコードする1配列とタンデムに配置することもできる。誘導又は選択に応答したマーカー遺伝子の発現は通常、タンデム遺伝子の発現も示す。
【0187】
一般に、EXMESをコードするポリヌクレオチドを含み且つEXMESを発現する宿主細胞は、当業者によく知られている種々の方法を用いて同定することが可能である。限定するものではないが当業者によく知られている方法には、DNA-DNA或いはDNA-RNAハイブリダイゼーションと、PCR増幅とがあり、また、核酸配列或いはタンパク質配列の検出、定量、或いはその両方を行うための、膜系、溶液ベース或いはチップベースの技術を含む、タンパク質の生物学的検定法又は免疫学的検定法もある。
【0188】
特異的ポリクローナル抗体又は特異的モノクローナル抗体を用いてEXMESの発現の検出及び計測を行うための免疫学的方法は、当分野で公知である。このような技術の例としては、酵素に結合した免疫吸着剤検定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、フローサイトメーター(FACS)などが挙げられる。EXMES上の2つの非干渉エピトープに反応するモノクローナル抗体を用いた、2部位のモノクローナルベースイムノアッセイ(two-site, monoclonal-based immunoassay)が好ましいが、競合結合アッセイも用いることもできる。これらのアッセイ及び他のアッセイは、当分野で周知である(例えばHampton, R.他(1990) Serological Methods, a Laboratory Manual, APS Press, St. Paul MN, Sect.IV、Coligan, J.E.他(1997) Current Protocols in Immunology, Greene Pub.Associates and Wiley-Interscience, New York NY、Pound, J.D. (1998) Immunochemical Protocols, Humana Press, Totowa NJを参照)。
【0189】
多岐にわたる標識方法及び抱合方法が、当業者に知られており、様々な核酸アッセイ及びアミノ酸アッセイにこれらの方法を用い得る。EXMESをコードするポリヌクレオチドに関連する配列を検出するための、標識されたハイブリダイゼーションプローブ或いはPCRプローブを生成する方法には、オリゴ標識化、ニックトランスレーション、末端標識化、又は標識されたヌクレオチドを用いるPCR増幅が含まれる。別法として、EXMESをコードするポリヌクレオチド、又はその任意の断片を、mRNAプローブを生成するためのベクターにクローニングすることも可能である。このようなベクターは、当分野において知られており、市販もされており、T7、T3又はSP6などの好適なRNAポリメラーゼ及び標識されたヌクレオチドを加えて、in vitroでRNAプローブの合成に用いることができる。これらの方法は、例えばAmersham Biosciences、Promega(Madison WI)、U.S. Biochemicalなどの種々の市販キットを用いて実行できる。検出を容易にするために用い得る好適なレポーター分子或いは標識には、基質、補助因子、インヒビター、磁気粒子のほか、放射性核種、酵素、蛍光剤、化学発光剤、発色剤などがある。
【0190】
EXMESをコードするポリヌクレオチド群で形質転換された宿主細胞は、細胞培地でのこのタンパク質の発現及び回収に好適な条件下で培養される。形質転換細胞から製造されたタンパク質が分泌されるか細胞内に留まるかは、使用される配列、ベクター、或いはその両者に依存する。EXMESをコードするポリヌクレオチド群を持つ発現ベクター類は、原核細胞膜又は真核細胞膜を透過してのEXMESの分泌を指示するシグナル配列群を持つように設計できることは、当業者には理解されよう。
【0191】
更に、宿主細胞株の選択は、挿入したポリヌクレオチドの発現をモジュレートする能力、又は発現したタンパク質を所望の形に処理する能力によって行い得る。限定するものではないがこのようなポリペプチドの修飾には、アセチル化、カルボキシル化、グリコシル化、リン酸化、脂質化及びアシル化がある。タンパク質の「プレプロ」又は「プロ」形を切断する翻訳後のプロセシングを利用して、タンパク質の標的への誘導、折りたたみ及び/又は活性を特定することが可能である。翻訳後の活性のための固有の細胞装置及び特徴のある機構を有する種々の宿主細胞(例えばCHO、HeLa、MDCK、HEK293、WI38等)は、American Type Culture Collection(ATCC, Manassas, VA)から入手可能であり、外来タンパク質の正しい修飾及び処理を確実にするように選択し得る。
【0192】
本発明の別の実施例では、EXMESをコードする天然のポリヌクレオチド、修飾されたポリヌクレオチド、又は組換えのポリヌクレオチドを上記した任意の宿主系の融合タンパク質の翻訳となる異種配列に連結させ得る。例えば、市販の抗体によって認識できる異種部分を含むキメラEXMESタンパク質が、EXMES活性のインヒビターに対するペプチドライブラリのスクリーニングを促進し得る。また、異種タンパク質部分及び異種ペプチド部分も、市販されている親和性マトリックスを用いて融合タンパク質の精製を促進し得る。限定されるものではないがこのような部分には、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、マルトース結合タンパク質(MBP)、チオレドキシン(Trx)、カルモジュリン結合ペプチド(CBP)、6-His、FLAG、c-myc、赤血球凝集素(HA)がある。GSTは固定化グルタチオン上で、MBPはマルトース上で、Trxはフェニルアルシンオキシド上で、CBPはカルモジュリン上で、そして6-Hisは金属キレート樹脂上で、同族の融合タンパク質の精製を可能にする。FLAG、c-myc及び赤血球凝集素(HA)は、これらのエピトープ標識を特異的に認識する市販のモノクローナル抗体及びポリクローナル抗体を用いた、融合タンパク質の免疫親和性精製を可能にする。また、融合タンパク質が、EXMESをコードする配列と異種タンパク質配列との間にタンパク質分解切断部位を持つように遺伝子操作すると、精製後にEXMESが異種部分から切断され得る。融合タンパク質の発現及び精製方法は、前出のAusubel(1995)10章に記載されている。市販されている種々のキットを用いて融合タンパク質の発現及び精製を促進することもできる。
【0193】
本発明の別の実施例では、TNTウサギ網状赤血球可溶化液又はコムギ胚芽抽出系(Promega)を用いてin vitroで放射能標識したEXMESの合成が可能である。これらの系は、T7、T3又はSP6プロモーターと機能的に連結したタンパク質コード配列の転写及び翻訳をカップルさせる。翻訳は、例えば35Sメチオニンのような放射能標識したアミノ酸前駆体の存在下で起こる。
【0194】
本発明のEXMES又はその断片、或いはEXMESの変異体を用いて、EXMESに特異結合する化合物をスクリーニングすることができる。EXMESに対する特異的結合について、一つ以上の試験化合物をスクリーンすることができる。種々の実施例において、EXMESに対する特異結合について、1、2、3、4、5、10、20、50、100又は200の試験化合物をスクリーンすることができる。試験化合物の例として、抗体、アンティカリン(anticalins)、オリゴヌクレオチド、タンパク質(例えばリガンドや受容体)、又は小分子が挙げられる。
【0195】
関連する実施様態において、EXMES、EXMESの変異体、或いはEXMES及び/又は1つ以上のEXMES変異体とのある組み合わせへの試験化合物(抗体等)の結合/をスクリーニングするために、EXMES変異体を用いることができる。ある実施様態においては、SEQ ID NO:1-22の配列の正確な配列を有するEXMESではなく、EXMESの変異体に結合する化合物のスクリーニングにEXMESの変異体を用いることができる。このようなスクリーニングを行うために使うEXMES変異体はEXMESに約50%から約99%の範囲で配列同一性を有し得る。また、種々の実施様態で60%、70%、75%、80%、85%、90%及び95%の配列同一性を有することができる。
【0196】
ある実施様態では、EXMESへの特異結合の試験において同定された化合物は、EXMESの天然のリガンド(例えば、リガンドやその断片、天然の基質、構造的又は機能的な擬態物質、又は自然結合パートナー)に密接に関連し得る。(例えばColigan, J.E.他(1991) Curr ent Protocols in Immunology 1(2):5章を参照)。別の実施態様では、こうして同定した化合物は、受容体EXMESの天然リガンドであり得る。(例えばHoward, A.D. 他(2001) Trends Pharmacol.Sci.22:132-140、Wise, A. 他(2002) Drug Discovery Today 7:235-246を参照)。
【0197】
別の実施態様で該化合物は、EXMESへの特異結合に対するスクリーニングにおいて同定された化合物は、EXMESが結合する天然受容体に、或いは少なくとも該受容体の或る断片、又は例えばリガンド結合部位や結合ポケットの全体又は一部を含む該受容体の或る断片に密接に関連し得る。例えば該化合物は、シグナルを伝播可能なEXMES受容体の場合や、シグナルを伝播できないEXMESおとり受容体の場合がある(Ashkenazi, A.及びV.M. Divit (1999) Curr. Opin. Cell Biol.11:255-260、Mantovani, A. 他(2001) Trends Immunol.22:328-336). 該化合物は既知の技術を用いて合理的に設計できる。こうした技術の例としては、化合物エタネルセプト(etanercept)(ENBREL; Immunex Corp., Seattle WA)作製に用いた技術を含む。エタネルセプトは、ヒトのリウマチ様関節炎の治療に有効である。エタネルセプトは遺伝子操作されたp75腫瘍壊死因子(TNF)受容体ダイマーであり、ヒトIgG1 のFc部分に連結されている(Taylor, P.C. 他 (2001) Curr. Opin. Immunol. 13:611-616)。
【0198】
一実施様態においては、類似又は異なる特異性を有する2つ以上の抗体のEXMES、EXMESの断片、又はEXMESの変異体への特異的結合についてスクリーニングし得る。このようにしてスクリーニングされた抗体の結合特異性は、その特異的結合によって、EXMESの特定の断片又は変異体を同定することができる。一実施例において、抗体の結合特異性によって、EXMESの特定の断片又は変異体の選択的同定が可能となるように抗体を選択することができる。他の実施例において、或る抗体を、その結合特異性によってEXMESの産生の増加、減少又は異常な特定の疾患又は病状の選択的診断が可能となるように選択することができる。
【0199】
ある実施様態において、アンティカリン(anticalin)のEXMES、EXMESの断片、或いはEXMESの変異体に対する特異的結合をスクリーニングし得る。アンティカリンはリポカリン足場(scaffold )に基づいて作成されたリガンド結合タンパク質である(Weiss, G.A. 及び H.B. Lowman (2000) Chem. Biol. 7:R177-R184、Skerra, A. (2001) J. Biotechnol. 74:257-275)。リポカリンのタンパク質構造には、その開放末端に4つのループを支持する8つの逆平行ベータ鎖を持つベータバレルが含まれ得る。これらのループはリポカリンの天然リガンド結合部位を形成し、この部位はin vitro でアミノ酸置換によって再度人工操作して、新規な結合特異性を与えることができる。このアミノ酸置換は当分野で既知の方法又は本明細書に記載の方法を用いて行うことができる。また、保存的置換(例えば、結合特異性を変えないような置換)、或いは、結合特異性を少し、中等度、又は大きく変えるような置換を行うこともできる。
【0200】
一実施態様では、EXMESに特異的に結合、もしくは刺激又は阻害する化合物のスクリーニングには、分泌タンパク質或いは細胞膜上のタンパク質の何れか一方としてEXMESを発現する適切な細胞の作製が含まれる。好適な細胞には、哺乳動物、酵母、ショウジョウバエ、又は大腸菌からの細胞が含まれる。EXMESを発現する細胞又はEXMESを含有する細胞膜断片を試験化合物と接触させて、EXMES又は化合物のいずれかの結合、刺激又は阻害を分析する。
【0201】
あるアッセイは、単に試験化合物をポリペプチドに実験的に結合させ、結合を、蛍光色素、放射性同位体、酵素抱合体又はその他の検出可能な標識により検出することができる。例えば、このアッセイは、少なくとも1つの試験化合物を、溶液中の或いは固体支持物に固定されたEXMESと混合させるステップと、EXMESとこの化合物との結合を検出するステップを含み得る。別法では、アッセイでは標識された競合物の存在下での試験化合物の結合の検出及び測定を行うことができる。更にこのアッセイでは、無細胞再構成標本、化学ライブラリ又は天然の生成混合物を用いて実施することができ、試験化合物は、溶液中で遊離させるか固体支持体に固定させる。
【0202】
アッセイを用いて、或る化合物が、その天然リガンドに結合する能力、及び/又は、その天然リガンドの、その天然受容体への結合を阻害する能力を評価しうる。こうしたアッセイの例としては、米国特許第5,914,236号及び第6,372,724号に記載されたような放射ラベルアッセイを含む。関連した実施態様では、1つ以上のアミノ酸置換が或るポリペプチド化合物(受容体など)に導入され、その天然リガンドに結合する能力を向上又は改変しうる(例えばMatthews, D.J.及びJ.A. Wells. (1994) Chem. Biol. 1:25-30を参照)。別の関連した実施態様では、1つ以上のアミノ酸置換が或るポリペプチド化合物(リガンドなど)に導入され、その天然受容体に結合する能力を向上又は改変しうる(例えばCunningham, B.C及びJ.A. Wells (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:3407-3411、Lowman, H.B. 他 (1991) J. Biol. Chem. 266:10982-10988)。
【0203】
EXMES又はその断片、或いはEXMESの変異体を用いて、EXMESの活性を変調する化合物をスクリーニングすることができる。このような化合物としては、アゴニスト、アンタゴニスト、部分的アゴニスト又は逆アゴニストなどが含まれ得る。一実施様態では、EXMESが少なくとも1つの試験化合物と結合する、EXMESの活性が許容される条件下でアッセイを実施し、試験化合物の存在下でのEXMESの活性が試験化合物不在下でのEXMESの活性と比較する。試験化合物の存在下でのEXMESの活性の変化は、EXMESの活性をモジュレートする化合物の存在を示唆する。別法では、試験化合物を、EXMESの活性に適した条件下で、EXMESを含むin vitro系すなわち無細胞系と混合してアッセイを実施する。これらアッセイの何れにおいても、EXMESの活性を調節する試験化合物は間接的に調節する場合があり、その際は試験化合物と直接接触する必要がない。少なくとも1つ、又は複数の試験化合物をスクリーニングすることができる。
【0204】
別の実施態様では、胚性幹細胞(ES細胞)における相同組み換えを用いて動物モデル系内で、EXMES又はその哺乳動物相同体をコードするポリヌクレオチドを「ノックアウト」する。このような技術は当技術分野において周知であり、ヒト疾患動物モデルの作製に有用である(米国特許第5,175,383号及び第5,767,337号などを参照)。例えば129/SvJ細胞系などのマウスES細胞は初期のマウス胚に由来し、培地で増殖させることができる。このES細胞は、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子(neo: Capecchi, M.R.(1989)Science 244:1288-1292)などのマーカー遺伝子で破壊した、目的の遺伝子を持つベクターで形質転換される。このベクターは、相同組換えにより、宿主ゲノムの対応する領域に組込まれる。或いは、Cre-loxP系を用いて相同組換えを行い、組織特異的又は発生段階特異的に目的遺伝子をノックアウトする(Marth, J.D. (1996) Clin. Invest. 97:1999-2002、Wagner, K.U.他(1997) Nucleic Acids Res. 25:4323-4330)。形質転換したES細胞を同定し、例えばC57BL/6マウス株などから採取したマウス細胞胚盤胞に微量注入する。これらの胚盤胞を偽妊娠メスに外科的に導入し、得られるキメラ子孫の遺伝形質を特定し、これらを交配させてヘテロ接合性系又はホモ接合性系を作製する。このようにして作製した遺伝子組換え動物は、潜在的な治療薬や毒性薬物で検査されうる。
【0205】
EXMESをコードするポリヌクレオチドをin vitroでヒト胚盤胞由来のES細胞において操作することが可能である。ヒトES細胞は、内胚葉、中胚葉及び外胚葉の細胞タイプを含む、少なくとも8つの別々の細胞系統に分化する可能性を有する。これらの細胞系統は、例えば神経細胞、造血系統及び心筋細胞に分化する(Thomson, J.A.他 (1998) Science 282:1145-1147)。
【0206】
EXMESをコードするポリヌクレオチドを用いて、ヒト疾患をモデルとした「ノックイン」ヒト化動物(ブタ)又は遺伝子組み換え動物(マウス又はラット)を作製することが可能である。ノックイン技術を用いて、EXMESをコードするポリヌクレオチドの或る領域を動物ES細胞に注入し、注入した配列を動物細胞ゲノムに組み込ませる。形質転換細胞を胞胚に注入し、胞胚を上記のように移植する。遺伝子組換え子孫又は近交系について試験し、潜在的医薬品を用いて処理し、ヒトの疾患の治療に関する情報を得る。別法では、例えばEXMESを乳汁内に分泌するなどEXMESを過剰発現する哺乳動物近交系は、便利なタンパク質源となり得る(Janne, J. 他 (1998) Biotechnol. Annu. Rev. 4:55-74)。
【0207】
(治療)
EXMESのある領域と細胞外メッセンジャーのある領域との間に、例えば配列及びモチーフの内容における化学的及び構造的類似性が存在する。またEXMESを発現する組織の数例は、表6と実施例 11を見られたい。従って、EXMESは、自己免疫/炎症の疾患、神経系疾患、内分泌障害、発生又は発達障害、癌を含む細胞増殖異常、生殖障害、心血管疾患、及び感染においてある役割を果たすと考えられる。EXMESの発現又は活性の増大に関連する疾患の治療においては、EXMESの発現又は活性を低下させることが望ましい。EXMESの発現又は活性の低下に関連する疾患の治療においては、EXMESの発現又は活性を増大させることが望ましい。
【0208】
従って、一実施態様では、EXMESの発現又は活性の低下に関連した疾患の治療又は予防のために、被験者にEXMES又はその断片や誘導体が投与され得る。限定するものではないが、このような疾患として自己免疫/炎症疾患には、後天性免疫不全症候群(AIDS)、アジソン病、成人呼吸窮迫症候群、アレルギー、強直性脊椎炎、アミロイド症、貧血、喘息、アテローム性動脈硬化症、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性甲状腺炎、自己免疫多発性内分泌腺障害症(APECED)、気管支炎、胆嚢炎、接触皮膚炎、クローン病、アトピー性皮膚炎、皮膚筋炎、糖尿病、肺気腫、リンパ球毒素性一時性リンパ球減少症、赤芽球症、結節性紅斑、萎縮性胃炎、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、痛風、グレーブス病、橋本甲状腺炎、過好酸球増加症、過敏性大腸症候群、多発性硬化症、重症筋無力症、心筋又は心膜の炎症、骨関節炎、骨粗しょう症、膵炎、多発性筋炎、乾癬、ライター症候群、リウマチ様関節炎、強皮症、シェーグレン症候群、全身性アナフィラキシー、全身性紅斑性狼瘡、全身性硬化症、血小板減少症、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、ウェルナー症候群、癌の合併症、血液透析、体外循環、ウイルス性感染症、細菌性感染症、真菌性感染症、寄生虫感染症、原虫感染症、蠕虫の感染症及び外傷が含まれる。神経系疾患の中には、癲癇、虚血性脳血管障害、脳卒中、大脳新生物、アルツハイマー病、ピック病、ハンチントン病、痴呆、パーキソン病及びその他の錐体外路障害、筋萎縮性側策硬化及びその他の運動ニューロン障害、進行性神経性筋萎縮症、色素性網膜炎、遺伝性運動失調、多発性硬化症及び他の脱髄疾患、細菌性及びウイルス性髄膜炎、脳膿瘍、硬膜下蓄膿症、硬膜外膿瘍、化膿性頭蓋内血栓性静脈炎、脊髄炎及び神経根炎、ウイルス性中枢神経系疾患、プリオン病(クールー、クロイツフェルト‐ヤコブ病、及びGerstmann-Straussler-Scheinker症候群を含む)、致死性家族性不眠症、神経系性栄養病及び代謝病、神経線維腫症、、結節硬化症、小脳網膜血管芽腫(cerebelloretinal hemangioblastomatosis)、脳3叉神経血管症候群、ダウン症候群を含む中枢神経系性の精神薄弱及び他の発達障害、脳性麻痺、神経骨格異常症、自律神経系障害、脳神経障害、脊髄障害、筋ジストロフィー及びその他の神経筋障害、末梢神経疾患、皮膚筋炎及び多発性筋炎、遺伝性、代謝性、内分泌性、及び中毒性の筋疾患、重症筋無力症、周期性四肢麻痺、精神病(気分性、不安性の障害、分裂病性疾患)、季節性障害(SAD)、静座不能、健忘症、緊張病、糖尿病性ニューロパシー、錐体外路性終末欠陥症候群、ジストニー、分裂病性精神障害、帯状疱疹後神経痛、トゥーレット病、進行性核上麻痺、皮質基底核変性症(corticobasal degeneration)、家族性前頭側頭骨痴呆が含まれる。また内分泌疾患の中には原発脳腫瘍及び腺腫、妊娠性梗塞、下垂体切除、動脈瘤、血管奇形、血栓症、感染症、免疫異常、頭部外傷による合併症などの病変から起こる視床下部及び下垂体の障害と、性機能低下及びシーハン症候群、尿崩症、カルマン病、ハンド‐シュラークリスチャン病、レテラー・ジーヴェ病、サルコイドーシス、エンプティセラ(トルコ鞍空虚)症候群、小人症を含む下垂体低下に関連した障害と、良性線種によって発生しやすい抗利尿ホルモン(ADH)不適合分泌症候群(SIADH)及び先端巨大症、巨人症を含む下垂体亢進に関連した障害と、甲状腺腫及び粘液水腫、細菌感染性急性甲状腺炎、ウイルス感染性亜急性甲状腺炎、自己免疫性甲状腺炎(橋本病)、クレチン病を含む甲状腺機能低下症に関連した障害と、甲状腺中毒症及びその様々な型、グレーブス病、前脛骨粘液水腫、中毒性多結節性甲状腺腫、甲状腺癌、プラマー病を含む甲状腺機能亢進症と、Conn病(chronic hypercalemia)を含む副甲状腺機能亢進症と、I型及びII型糖尿病及び合併症などの膵臓疾患と、過形成及び副腎皮質の癌腫や腺腫、アルカローシスに関連した高血圧、アミロイド症、低カリウム血、クッシング病、リドル症候群、Arnold-Healy-Gordon症候群、褐色細胞腫瘍、アジソン病、副腎機能不全などの副腎に関連した障害がある。また生殖腺ステロイドホルモンに関する疾患としては、女性に、異常プロラクチン産生、不妊症、子宮内膜症、月経周期の摂動、多嚢胞性卵巣疾患、高プロラクチン血症、選択的性腺刺激ホルモン不全(isolated gonadotropin deficiency)、無月経、乳汁漏出症、半陰陽、多毛症及び男性化、乳癌があり、閉経期後の女性に骨粗鬆症があり、男性にライジッヒ細胞欠損症、男性更年期、生殖細胞無形成症、ライジッヒ細胞腫瘍に関連した性機能亢進、アンドロゲン受容体の欠如に関連したアンドロゲン耐性、5α−還元酵素症候群、21‐ヒドロキシラーゼ症候群、女性乳房症などの生殖腺ステロイドホルモンに関連した疾患とが含まれる。発達障害には尿細管性アシドーシス、貧血、クッシング症候群、軟骨形成不全性小人症、デュシェンヌ/ベッカー型筋ジストロフィー、癲癇、性腺形成異常、WAGR症候群(ウィルムス腫瘍、無虹彩症、尿生殖器異常、精神遅滞)、スミス‐マジェニス症候群(Smith-Magenis syndrome)、骨髄異形成症候群、遺伝性粘膜上皮異形成、遺伝性角皮症や、シャルコーマリーツース病及び神経線維腫症などの遺伝性神経病、甲状腺機能低下症、水頭症や、Syndenham舞踏病(Syndenham's chorea)及び脳性小児麻痺などの発作障害、二分脊椎、無脳症、頭蓋脊椎披裂、先天性緑内障、白内障、感音難聴が含まれる。細胞増殖異常には日光角化症、動脈硬化、アテローム硬化、滑液包炎、硬変、肝炎、混合性結合組織病(MCTD)、骨髄線維症、発作性夜間ヘモグロビン尿症、真性多血症、乾癬、原発性血小板血症、並びに、腺癌、白血病、リンパ腫、黒色腫、骨髄腫、肉腫、及び奇形癌など癌、具体的には、副腎、膀胱、骨、骨髄、脳、乳房、頚部、胆嚢、神経節、消化管、心臓、腎臓、肝臓、肺、筋肉、卵巣、膵臓、副甲状腺、陰茎、前立腺、唾液腺、皮膚、脾臓、精巣、胸腺、甲状腺、及び子宮の癌が含まれる。生殖系疾患としてプロラクチン産生障害があり、卵管疾患、排卵欠損症、子宮内膜症、性周期障害、月経周期障害、多嚢胞性卵巣症候群、卵巣過刺激症候群、子宮内膜癌、卵巣癌、子宮筋腫、自己免疫疾患、子宮外妊娠、催奇形、乳癌、繊維嚢胞性乳房疾患、乳漏症、精子形成破壊、精子異常生理、良性前立腺肥大、前立腺炎、パイロニー病、性交不能が含まれる。心血管障害にはうっ血性心不全、虚血性心疾患、狭心症、心筋梗塞、高血圧性心疾患、変性弁膜性心疾患、石灰化大動脈弁狭窄症、先天性2尖大動脈弁、僧帽弁輪状石灰化(mitral annular calcification)、僧帽弁脱出、リウマチ熱、リウマチ性心疾患、感染性心内膜炎、非細菌性血栓性心内膜炎、全身性紅斑性狼瘡の心内膜炎、カルチノイド心疾患、心筋症、心筋炎、心膜炎、腫瘍性心疾患、先天性心臓疾患、心臓移植の合併症などの心疾患がある。感染症には、アデノウイルス、アレナウイルス、ブンヤウイルス(bunyavirus)、カリチウイルス(calicivirus)、コロナウイルス、フィロウイルス、ヘパドナウイルス、ヘルペスウイルス、フラビウイルス、オルソミクソウイルス、パルボウイルス、パポーバウイルス、パラミクソウイルス、ピコルナウイルス、ポックスウイルス、レオウイルス、レトロウイルス、ラブドウイルス、トガウイルスに分類されるウイルス病原体による感染や、細菌による感染(肺炎球菌、ブドウ球菌、連鎖球菌、バシラス菌、コリネバクテリウム、クロストリジウム、髄膜炎菌、淋菌、リステリア、モラクセラ、キンゲラ、ヘモフィルス、レジオネラ、百日咳菌類(ボルデテラ)や、シゲラ、サルモネラ、カンピロバクターを含むグラム陰性腸内細菌、シュードモナス、ビブリオ、ブルセラ、野兎病菌類(フランシセラ)、エルシニア、バルトネラ、norcardium、放線菌、ミコバクテリウム、spirochaetale、リケッチア、クラミジア、マイコプラズマに分類)、真菌感染(分類はアスペルギルス、ブラストミセス、皮膚糸状菌、クリプトコッカス、コクシジオイデス、malasezzia、ヒストプラスマ、又は他の真菌症起因菌)、寄生虫感染(分類はプラスモディウムすなわちマラリア原虫、寄生性アメーバ、リーシュマニア、トリパノソーマ、トキソプラズマ、ニューモシスチスカリニ、腸内原虫(ジアルジアなど)、トリコモナス、組織線虫(旋毛虫など)、腸管寄生線虫(回虫など)、リンパ管フィラリア線虫、吸虫(住血吸虫など)、及び条虫(サナダムシなど))が含まれる。
【0209】
別の実施態様では、限定するものではないが上に列記した疾患を含む、EXMESの発現又は活性の低下に関連した疾患の治療又は予防のために、EXMES又はその断片や誘導体を発現し得るベクターを被験者に投与し得る。
【0210】
更に別の実施態様では、限定するものではないが上に列記した疾患を含む、EXMESの発現又は活性の低下に関連した疾患の治療又は予防のために、実質的に精製されたEXMESを有する組成物を、好適な医薬用キャリアと共に被験者に投与し得る。
【0211】
更に別の実施例では、限定するものではないが上に列記した疾患を含むEXMESの発現又は活性の低下に関連した疾患の治療又は予防のために、EXMESの活性を調節するアゴニストを患者に投与することも可能である。
【0212】
更なる実施様態では、EXMESの発現又は活性の増大に関連した疾患の治療又は予防のために、患者にEXMESのアンタゴニストを投与することが可能である。限定するものではないが、このような疾患の例には、上記した自己免疫/炎症疾患、神経系疾患、内分泌障害、発達障害、癌を含む細胞増殖異常、生殖疾患、心血管障害、及び感染症が含まれる。一実施態様では、EXMESに特異結合する抗体が直接アンタゴニストとして、或いはEXMESを発現する細胞又は組織に薬物を運ぶターゲッティング或いは送達機構として間接的に用いられ得る。
【0213】
別の実施態様では、限定するものではないが上に列記した疾患を含む、EXMESの発現又は活性の増大に関連した疾患の治療又は予防のために、EXMESをコードするポリヌクレオチドの相補配列を発現するベクターを被験者に投与し得る。
【0214】
他の実施態様において、タンパク質、アゴニスト、アンタゴニスト、抗体、相補的配列、又はベクターは他の適切な治療剤と併用して投与し得る。併用療法で用いる好適な治療薬は、当業者が従来の医薬原理に従って選択し得る。治療薬と組み合わせることにより、上記した種々の疾患の治療又は予防に相乗効果をもたらし得る。この方法により、少量の各薬物で医薬効果をあげることが可能となり、それによって副作用の可能性を低減し得る。
【0215】
EXMESのアンタゴニストは、当分野で一般的な方法を用いて製造することが可能である。詳しくは、精製されたEXMESを用いて抗体を作ったり、治療薬のライブラリをスクリーニングしてEXMESと特異的に結合するものの同定が可能である。EXMESへの抗体も、当分野で周知の方法を用いて産生され得る。限定するものではないがこのような抗体には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、Fab断片、及びFab発現ライブラリによって作られた断片が含まれ得る。中和抗体(すなわち二量体の形成を阻害する抗体)は通常、治療用に好適である。一本鎖抗体(例えば、ラクダ又はラマに由来)は有力な酵素阻害剤であり、またペプチド擬態物質の設計及び免疫吸着剤やバイオセンサーの開発に利点があるであろう(Muyldermans, S. (2001) J. Biotechnol. 74:277-302)。
【0216】
抗体の産生のためには、ヤギ、ウサギ、ラット、マウス、ラクダ、ヒトコブラクダ、ラマ、ヒトなどを含む種々の宿主が、EXMES、若しくは免疫原性の特性を備えるその任意の断片又はオリゴペプチドの注入によって免疫化され得る。宿主の種に応じて、種々のアジュバントを用いて免疫応答を高めることもできる。限定するものではないがこのようなアジュバントには、フロイントアジュバントと、水酸化アルミニウムなどのミネラルゲルアジュバントと、リゾレシチン、プルロニックポリオル、ポリアニオン、ペプチド、油性乳剤、スカシガイのヘモシアニン(KLH)、ジニトロフェノールなどの界面活性剤とがある。ヒトに用いられるアジュバントの中では、BCG(カルメット‐ゲラン杆菌)及びコリネバクテリウム‐パルバム(Corynebacterium parvum)が特に好ましい。
【0217】
EXMESに対する抗体を誘発するために用いられるオリゴペプチド、ペプチド、又は断片は、少なくとも約5個のアミノ酸からなり、一般的には約10個以上のアミノ酸からなるものが好ましい。これらのオリゴペプチド、ペプチド又は断片は、天然のタンパク質のアミノ酸配列の一部と同一であることも望ましい。EXMESのアミノ酸の短い区間を、KLHなどの別のタンパク質の配列と融合し、キメラ分子に対する抗体を産生し得る。
【0218】
EXMESに対するモノクローナル抗体は、培地内の連続した細胞株によって、抗体分子を産生する任意の技術を用いて作製することが可能である。限定するものではないがこのような技術には、ハイブリドーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術、及びEBV-ハイブリドーマ技術がある(Kohler, G. 他 (1975) Nature 256:495-497、Kozbor, D.他 (1985) .J. Immunol. Methods 81:31-42、Cote, R.J. 他 (1983) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80:2026-2030、Cole, S.P.他 (1984) Mol. Cell Biol. 62:109-120等を参照)。
【0219】
更に、ヒト抗体遺伝子にマウス抗体遺伝子をスプライシングするなどの「キメラ抗体」作製のために開発した技術が、好適な抗原特異性及び生物学的活性を備える分子を得るために用いられる(例えばMorrison, S.L.他(1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6851-6855、Neuberger, M.S. 他(1984) Nature 312:604-608、Takeda, S.他(1985) Nature 314:452-454を参照)。別法では、当分野で周知の方法を用い、一本鎖抗体の産生のための記載された技術を適用して、EXMES特異的一本鎖抗体を生成する。関連した特異性を有するがイディオタイプ組成が異なるような抗体を、ランダムな組み合わせの免疫グロブリンライブラリ類からチェーンシャッフリングによって産生することもできる(Burton D.R. (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:10134-10137等を参照)。
【0220】
抗体の産生は、リンパ球集団におけるin vivo産生の誘導によって、或いは文献に開示されているように非常に特異的な結合試薬の免疫グロブリンのライブラリ又はパネルのスクリーニングによっても行い得る(例えばOrlandi, R.他(1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:3833-3837、Winter, G.他(1991) Nature 349:293-299を参照)。
【0221】
EXMESに対する特異的な結合部位を含む抗体断片も生成することができる。例えば、限定するものではないが、このような断片には、抗体分子のペプシン消化によって作製されるF(ab')2 断片と、F(ab')2 断片のジスルフィド架橋を還元することによって作製されるFab断片とがある。或いは、Fab発現ライブラリを作製することによって、所望の特異性を持つモノクローナルFab断片を迅速且つ容易に同定することが可能となる(Huse, W.D他 (1989) Science 246:12751281等を参照)。
【0222】
種々の免疫学的検定(イムノアッセイ)を用いてスクリーニングすることにより、所望の特異性を有する抗体を同定し得る。確立された特異性を有するポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体の何れかを用いる競合結合試験、又は免疫放射定量測定法のための数々のプロトコルが、当分野では周知である。通常このようなイムノアッセイには、EXMESとその特異性抗体との間の複合体形成の計測が含まれる。2つの非干渉性EXMESエピトープに対して反応性を持つモノクローナル抗体群を用いる、2部位モノクローナルベースのイムノアッセイが一般に利用されるが、競合結合試験も利用できる(Pound、前出)。
【0223】
ラジオイムノアッセイ技術と共にScatchard分析などの様々な方法を用いて、EXMESに対する抗体の親和性を評価する。親和性を結合定数Kaで表すが、このKaは、平衡状態の下でEXMES抗体複合体のモル濃度を遊離抗体と遊離抗原のモル濃度で除して得られる値である。多数のEXMESエピトープに対して親和性が不均一なポリクローナル抗体試薬のKaは、EXMESに対する抗体の平均親和性又は結合活性を表す。特定のEXMESエピトープに単一特異的なモノクローナル抗体医薬のKaは、親和性の真の測定値を表す。Ka値が109〜1012liter/molの高親和性抗体試薬は、EXMES抗体複合体が過酷な処理に耐えなければならないイムノアッセイに用いるのが好ましい。Ka値が106〜107L/molの低親和性抗体医薬は、EXMESが抗体から最終的に活性化状態で解離する必要がある免疫精製(immunopurification)及び類似の処理に用いるのが好ましい(Catty, D. (1988) Antibodies, Volume I: A Practical Approach. IRL Press, Washington, DC、Liddell, J. E.及びCryer, A. (1991) A Practical Guide to Monoclonal Antibodies, John Wiley & Sons, New York NY)。
【0224】
ポリクローナル抗体製剤の抗体価及び結合活性を更に評価して、後に使う或る適用例に対するこのような製剤の品質及び適性を決定することができる。例えば、少なくとも1〜2mg/mlの特異的な抗体、好ましくは5〜10mg/mlの特異的な抗体を含むポリクローナル抗体製剤は一般に、EXMES抗体複合体を沈殿させなければならない処理に用いられる。抗体の特異性、抗体価、結合活性、様々な適用例における抗体の品質や使用に対する指針については、一般に入手可能である(例えば前出のCatty、同Coligan 他を参照)。
【0225】
本発明の別の実施例では、EXMESをコードするポリヌクレオチド、又はその任意の断片や相補配列を、治療目的で使用することができる。ある実施態様では、EXMESをコードする遺伝子のコーディング領域や調節領域に相補的な配列やアンチセンス分子(DNA、RNA、PNA、修飾ヌクレオチド)を設計して遺伝子発現を変更することができる。このような技術は当分野では周知であり、アンチセンスオリゴヌクレオチド又はより大きな断片を、EXMESをコードする配列の制御領域、又はコード領域に沿った、さまざまな位置から設計可能である(Agrawal, S.編集 (1996) Antisense Therapeutics, Humana Press Inc., Totawa NJ等を参照)。
【0226】
治療に用いる場合、アンチセンス配列を適切な標的細胞に導入するのに好適な、任意の遺伝子送達系を用いることができる。アンチセンス配列は、転写時に標的タンパク質をコードする細胞配列の少なくとも一部に相補的な配列を作製する発現プラスミドの形で細胞内に送達することが可能である(例えばSlater, J.E. 他(1998) J. Allergy Clin. Immunol. 102(3):469-475、Scanlon, K.J.他(1995) 9(13):1288-1296を参照)。アンチセンス配列はまた、例えばレトロウイルスやアデノ随伴ウイルスベクターなどのウイルスベクターを用いて細胞内に導入することもできる(例えばMiller, A.D.(1990)Blood 76:271、前出Ausubel、Uckert, W.及びW. Walther(1994)Pharmacol. Ther. 63(3):323-347を参照)。その他の遺伝子送達機構には、リポソーム系、人工的なウイルスエンベロープ及び当分野で公知のその他のシステムが含まれる(例えばRossi, J.J.(1995)Br. Med. Bull. 51(1):217-225、Boado、R.J.他(1998) J. Pharm. Sci. 87(11):1308-1315、Morris, M.C.他(1997) Nucleic Acids Res. 25(14):2730-2736を参照)。
【0227】
本発明の別の実施態様では、EXMESをコードするポリヌクレオチドを、体細胞若しくは生殖細胞の遺伝子治療に用いることが可能である。遺伝子治療を行うことにより、(i)遺伝子欠損症(例えばX染色体鎖遺伝(Cavazzana-Calvo, M. 他 (2000) Science 288:669-672)により特徴付けられる重度の複合型免疫欠損(SCID)-X1の場合)、先天性アデノシンデアミナーゼ(ADA)欠損症に関連する重度の複合型免疫欠損(Blaese, R.M. 他 (1995) Science 270:475-480、Bordignon, C. 他 (1995) Science 270:470-475)、嚢胞性繊維症(Zabner, J. 他 (1993) Cell 75:207-216、Crystal、R.G. 他 (1995) Hum. Gene Therapy 6:643-666、Crystal, R.G. 他. (1995) Hum. Gene Therapy 6:667-703)、サラセミア(thalassamia)、家族性高コレステロール血症、第VIII因子若しくは第IX因子欠損に起因する血友病(Crystal, R.G. (1995) Science 270:404-410、Verma, I.M.及びN. Somia (1997) Nature 389:239-242)を治療し、(ii)条件的致死性遺伝子産物を発現させ(例えば制御不能な細胞増殖に起因する癌の場合)、或いは(iii)細胞内の寄生虫(例えばヒト免疫不全ウイルス(HIV)(Baltimore, D. (1988) Nature 335:395-396、Poescbla, E. 他 (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 93:11395-11399)、B型若しくはC型肝炎ウイルス(HBV、HCV)、Candida albicans及びParacoccidioides brasiliensis等の真菌寄生虫、並びにPlasmodium falciparum及びTrypanosomacruzi等の原虫寄生体に対する防御機能を有するタンパク質を発現させることができる。EXMESの発現若しくは調節に必要な遺伝子の欠損が疾患を引き起こす場合、導入した細胞の好適な集団からEXMESを発現させて、遺伝子欠損によって起こる症状の発現を緩和することが可能である。
【0228】
本発明の更なる実施様態では、EXMESの欠損による疾患や異常症は、EXMESをコードする哺乳動物発現ベクターを作製して、これらのベクターを機械的手段によってEXMES欠損細胞に導入することによって治療する。in vivo或いはex vitroの細胞に用いる機械的導入技術には、(i)個々の細胞内への直接的なDNA微量注射法、(ii)遺伝子銃、(iii)リポソームを介した形質移入、(iv)受容体を介した遺伝子導入、及び(v)DNAトランスポソンの使用(Morgan, R.A.及びW.F. Anderson (1993) Annu. Rev. Biochem. 62:191-217、Ivics, Z. (1997) Cell 91:501-510、Boulay,J-L.及びH. Recipon (1998) Curr. Opin. Biotechnol. 9:445-450)がある。
【0229】
EXMESの発現に影響を及ぼし得る発現ベクターには、限定するものではないが、PCDNA 3.1、EPITAG、PRCCMV2、PREP、PVAX、PCR2-TOPOTAベクター(Invitrogen, Carlsbad CA)、PCMV-SCRIPT、PCMV-TAG、PEGSH/PERV (Stratagene, La Jolla CA)、PTET-OFF、PTET-ON、PTRE2、PTRE2-LUC、PTK-HYG (Clontech, Palo Alto CA)が含まれる。EXMESを発現させるために、(i)構成的に活性なプロモーター(例えば、サイトメガロウイルス(CMV)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、SV40ウイルス、チミジンキナーゼ(TK)、若しくはβ−アクチンの遺伝子など)、(ii)誘導性プロモーター(例えば、市販されているT-REXプラスミド(Invitrogen)に含まれている、テトラサイクリン調節性プロモーター(Gossen, M.及びH. Bujard (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 89:5547-5551、Gossen, M. 他 (1995) Science 268:1766-1769、Rossi, F.M.V.及びH.M. Blau (1998) Curr. Opin. Biotechnol. 9:451-456)、エクジソン誘導性プロモーター(市販されているプラスミドPVGRXR及びPINDに含まれている:Invitrogen)、FK506/ラパマイシン誘導性プロモーター、又はRU486/ミフェプリストン誘導性プロモーター(Rossi, F.M.V.及びH.M. Blau, 前出)、又は(iii)正常な個体に由来する、EXMESをコードする内因性遺伝子の天然プロモーター若しくは組織特異的プロモーターを用い得る。
【0230】
市販のリポソーム形質転換キット(例えばInvitrogen社のPerFect Lipid Transfection Kit)を用いれば、当業者はポリヌクレオチドを培養中の標的細胞に送達することが可能になる。また、実験パラメータ群を最適化するのに必要な努力が最小限になる。別法では、リン酸カルシウム法(Graham. F.L. 及び A.J. Eb (1973) Virology 52:456-467)若しくは電気穿孔法(Neumann, B. 他 (1982) EMBO J. 1:841-845)を用いて形質転換を行う。初代培養細胞にDNAを導入するためには、標準化された哺乳類の形質移入プロトコルの修正が必要である。
【0231】
本発明の別の実施例では、EXMESの発現に関連する遺伝子欠損によって起こる疾患や異常症を、(i)レトロウイルス末端反復配列(LTR)プロモーター若しくは独立したプロモーターのコントロール下でEXMESをコードするポリヌクレオチドと、(ii)好適なRNAパッケージングシグナルと、(iii)追加のレトロウイルス・シス作用性RNA配列及び効率的なベクターの増殖に必要なコーディング配列を伴うRev応答性エレメント(RRE)とからなるレトロウイルスベクターを作製して治療することができる。レトロウイルスベクター(例えばPFB及びPFBNEO)はStratagene社から市販されており、刊行データ(Riviere, I. 他 (1995) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 92:6733-6737)に基づいている。上記データを引用することをもって本明細書の一部とする。ベクターは、好適なベクター産生細胞株(VPCL)において増殖され、VPCLは、標的細胞上の受容体に対する親和性を有するエンベロープ遺伝子又はVSVg等の汎親和性エンベロープタンパク質を発現する(Armentano, D. 他 (1987) J. Virol. 61:1647-1650、Bender, M.A. 他 (1987) J. Virol. 61:1639-1646、Adam, M.A.及びA.D. Miller (1988) J. Virol. 62:3802-3806、Dull, T. 他 (1998) J. Virol. 72:8463-8471、Zufferey, R. 他 (1998) J. Virol. 72:9873-9880)。Riggに付与された米国特許第5,910,434号(「Method for obtaining retrovirus packaging cell lines producing high transducing efficiency retroviral supernatant」)において、レトロウイルスパッケージング細胞株を得るための方法が開示されており、引用することをもって本明細書の一部とする。レトロウイルスベクター類の繁殖や、細胞集団(例えばCD4+T細胞群)の形質導入、及び形質導入した細胞群の患者への戻しは、遺伝子治療分野では当業者に周知の手法であり、多数の文献に記載がある(Ranga, U.他 (1997) J. Virol. 71:7020-7029、Bauer, G. 他. (1997) Blood 89:2259-2267、Bonyhadi, M.L. (1997) J. Virol. 71:4707-4716、Ranga, U. 他. (1998) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:1201-1206、Su, L. (1997) Blood 89:2283-2290)。
【0232】
別法では、アデノウイルス系遺伝子治療の送達系を用いて、EXMESの発現に関連する1つ以上の遺伝子異常を有する細胞にEXMES をコードするポリヌクレオチドを送達する。アデノウイルス系ベクター類の作製及びパッケージングについては、当業者に周知である。複製欠損型アデノウイルスベクター類は、種々の免疫調節タンパク質をコードする遺伝子群を、無損傷の膵島内に導入する目的で多様に利用し得ることが証明された(Csete, M.E.他 (1995) Transplantation 27:263268)。
使用できる可能性のあるアデノウイルスベクターは、Armentanoに付与された米国特許第5,707,618号(「Adenovirus vectors for gene therapy」)に記載されており、引用することをもって本明細書の一部とする。アデノウイルスベクターについては、Antinozzi, P.A. 他 (1999) Annu. Rev. Nutr. 19:511-544、 Verma, I.M.及びN. Somia (1997) Nature 18:389:239-242も参照されたい。両文献は、引用することをもって本明細書の一部とする。
【0233】
別の実施様態では、ヘルペス系遺伝子治療の送達系を用いて、EXMESの発現に関して1以上の遺伝子異常を持つ標的細胞に、EXMESをコードするポリヌクレオチド類を送達する。単純疱疹ウイルス(HSV)系のベクターは、HSV親和性の中枢神経細胞にEXMESを導入する際に特に重要である。ヘルペス系ベクター類の作製及びパッケージングは、当業者に公知である。或る複製適格性単純ヘルペスウイルス(HSV)1型系のベクターが、或るレポーター遺伝子の、霊長類の眼への送達に用いられている(Liu, X. 他 (1999) Exp. Eye Res. 169:385395)。HSV-1ウイルスベクターの作製についても、DeLucaに付与された米国特許第5,804,413号(「Herpes simplex virus strains for gene transfer」)に開示されており、該特許の引用をもって本明細書の一部とする。米国特許第5,804,413号には、ヒト遺伝子治療を含む目的のために好適なプロモーターの制御下において細胞に導入される少なくとも1つの外在性遺伝子を有するゲノムを含む組換えHSV d92の使用についての記載がある。上記特許はまた、ICP4、ICP27及びICP22を欠失した組換えHSV系統の作製及び使用について開示している。HSVベクターについては、Goins, W.F. 他 (1999) J. Virol. 73:519-532及びXu, H. 他 (1994) Dev. Biol. 163:152-161も参照されたい。両文献は、引用をもって本明細書の一部とする。クローン化ヘルペスウイルス配列の操作、巨大ヘルペスウイルスのゲノムの異なったセグメント群を含む多数のプラスミドを形質移入した後の組換えウイルスの産生、ヘルペスウイルスの成長及び増殖、並びにヘルペスウイルスの細胞への感染は、当業者に公知の技術である。
【0234】
別の実施様態では、或るαウイルス(正の一本鎖RNAウイルス)ベクターを用いて、EXMESをコードするポリヌクレオチド群を標的細胞群に送達する。プロトタイプのαウイルスであるセムリキ森林熱ウイルス(SFV)の生物学的研究が広範に行われており、遺伝子導入ベクターはSFVゲノムに基づいている(Garoff, H.及びK.-J. Li (1998) Cun. Opin. Biotech. 9:464-469)。αウイルスRNAの複製中に、通常はウイルスのカプシドタンパク質をコードするサブゲノムRNAが作り出される。このサブゲノムRNAは、完全長のゲノムRNAより高いレベルに複製されるため、酵素活性(例えばプロテアーゼ及びポリメラーゼ)を有するウイルスタンパク質に比べてカプシドタンパク質が過剰産生される。同様に、EXMESをコードする配列をαウイルスゲノムのカプシドをコードする領域に導入することによって、ベクター導入細胞において多数のEXMESをコードするRNAが産生され、高いレベルでEXMESが合成される。通常、αウイルスの感染は、数日以内の細胞溶解を伴う。一方、シンドビスウイルス(SIN)の或る変異体を有するハムスター正常腎臓細胞(BHK-21)群が持続的な感染を確立する能力は、αウイルス類の溶解複製を、遺伝子治療に応用し得るように好適に改変可能であることを示唆する(Dryga, S.A.他(1997) Virology 228:74-83)。様々な宿主にαウイルスを導入できることから、様々なタイプの細胞にEXMESを導入することできる。或る集団における或るサブセットの細胞群の特異的形質導入は、形質導入前に細胞の選別を必要とし得る。αウイルスの感染性cDNAクローンの処置方法、αウイルスのcDNA及びRNAの形質移入方法及びαウイルスの感染方法は、当業者に公知である。
【0235】
転写開始部位由来のオリゴヌクレオチドを用いて遺伝子発現を阻害することも可能である。転写開始部位(transcription initiation site)とは例えばスタート部位(start site)から数えて約−10と約+10の間である。同様に、三重らせん塩基対の形成方法を用いて阻害が可能となる。三重らせん塩基対形成は、ポリメラーゼ、転写因子又は調節分子と結合できるように十分に開こうとする、二重らせんの能力を阻害するため有用である。三重らせんDNAを用いる最近の治療の進歩については文献に記載がある(例えばGee, J.E.他(1994) in Huber, B.E.及びB.I. Carr, Molecular and Immunologic Approaches, Futura Publishing, Mt. Kisco NY, 163-177ページを参照)。相補配列又はアンチセンス分子もまた、転写物がリボソームに結合するのを阻止することによってmRNAの翻訳を阻止するべく設計することができる。
【0236】
リボザイムは酵素的RNA分子であり、RNAの特異的切断を触媒するためにリボザイムを用いることもできる。リボザイム作用のメカニズムは、相補的標的RNAへのリボザイム分子の配列特異的ハイブリダイゼーションとその後に起こる内ヌクレオチド鎖切断に関与している。例えば、遺伝子操作で作ったハンマーヘッド型リボザイム分子が、EXMESをコードするRNA分子の、内ヌクレオチド鎖切断を特異的且つ効果的に触媒できる可能性がある。
【0237】
任意の潜在的RNA標的内の特異的リボザイム切断部位は、GUA、GUU、GUC配列を含めたリボザイム切断部位に対する標的分子をスキャンすることによって先ず同定される。一度同定されると、切断部位を含む標的遺伝子の領域に対応する15〜20リボヌクレオチドの短いRNA配列が、そのオリゴヌクレオチドを機能不全にするような2次構造の特徴をもっていないかを評価することが可能になる。候補標的の適合性の評価も、リボヌクレアーゼ保護アッセイを用いて相補的オリゴヌクレオチド群とのハイブリダイゼーションへのアクセス可能性をテストすることによって行い得る。
【0238】
相補リボ核酸分子及びリボザイムは、核酸分子の合成のために当分野で既知の任意の方法を用いて作製し得る。作製方法には、固相フォスフォアミダイト化学合成等のオリゴヌクレオチドを化学的に合成する方法がある。或いは、EXMESをコードするDNA分子のin vitro及びin vivo転写によってRNA分子を産生し得る。このようなDNA配列は、T7やSP6などの好適なRNAポリメラーゼプロモーターを用いて多様なベクター内に取り込むことが可能である。或いは、相補的RNAを構成的或いは誘導的に合成するようなこれらcDNA産物を、細胞株、細胞又は組織内に導入することができる。
【0239】
細胞内の安定性を高め、半減期を長くするためにRNA分子を修飾することができる。限定するものではないが可能な修飾としては、分子の5'末端、3'末端、或いはその両方において隣接配列群を追加することや、分子の主鎖内においてホスホジエステラーゼ結合ではなくホスホロチオエート又は2'O-メチルを使用することが含まれる。この概念は、PNAの産出に固有のものであるが、これら全ての分子に拡大することができる。そのためには、内因性エンドヌクレアーゼによって容易には認識されない、アデニン、シチジン、グアニン、チミン、及びウリジンにアセチル−、メチル−、チオ−及び同様の修飾をしたものや、非従来型塩基、例えばイノシン、クエオシン(queosine)、ワイブトシン(wybutosine)等を含める。
【0240】
本発明の更なる実施例は、EXMESをコードするポリヌクレオチドの発現の変化に有効な化合物をスクリーニングする方法を含む。限定するものではないが特異ポリヌクレオチドの発現変化を起こすのに有効な化合物には、オリゴヌクレオチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、三重らせん形成オリゴヌクレオチド、転写因子その他のポリペプチド転写制御因子、及び特異ポリヌクレオチド配列と相互作用し得る非高分子化学的実体がある。有効な化合物は、ポリヌクレオチド発現のインヒビター又はエンハンサーのいずれかとして作用することによりポリヌクレオチド発現を変異し得る。従って、EXMESの発現又は活性の増加に関連する疾患の治療においては、EXMESをコードするポリヌクレオチドの発現を特異的に阻害する化合物が治療上有用であり、EXMESの発現又は活性の低下に関連する疾患の治療においては、EXMESをコードするポリヌクレオチドの発現を特異的に促進する化合物が治療上有用であり得る。
【0241】
特異ポリヌクレオチドの発現改変における有効性に対して、少なくとも1個から複数個の試験化合物をスクリーニングし得る。試験化合物は、当分野で通常知られている任意の方法により得られる。このような方法には、ポリヌクレオチドの発現を変異させる場合と、既存の、市販の又は私的な、天然又は非天然の化合物ライブラリから選択する場合と、標的ポリヌクレオチドの化学的及び/又は構造的特性に基づく化合物を合理的にデザインする場合と、組み合わせ的に又は無作為に生成した化合物のライブラリから選択する場合に有効であることが知られているような化合物の化学修飾がある。EXMESをコードするポリヌクレオチドを含むサンプルは、このようにして得られた試験化合物の少なくとも1つに曝露する。サンプルには例えば、無傷細胞、又は透過化処理した細胞、或いはin vitro 無細胞系すなわち再構成生化学系があり得る。EXMESをコードするポリヌクレオチドの発現における変化は、当分野で通常知られている任意の方法でアッセイする。通常、EXMESをコードするポリヌクレオチドの配列に相補的なヌクレオチド配列を有するプローブを用いたハイブリダイゼーションにより、特異ヌクレオチドの発現を検出する。ハイブリダイゼーション量を定量し、それによって1つ以上の試験化合物に曝露される及び曝露されないポリヌクレオチドの発現の比較に対する基礎を形成し得る。試験化合物に曝露されるポリヌクレオチドの発現における変化の検出は、ポリヌクレオチドの発現を改変する際に試験化合物が有効であることを示している。特異ポリヌクレオチドの発現改変に有効な化合物に対して、例えば分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe )遺伝子発現系(Atkins, D. 他 (1999) 米国特許第5,932,435号、Arndt, G.M. 他 (2000) Nucleic Acids Res. 28:E15)又はHeLa細胞等のヒト細胞系(Clarke, M.L. 他 (2000) Biochem. Biophys. Res. Commun. 268:8-13)を用いてスクリーニングを実行する。本発明の或る特定の実施態様は、或る特定ポリヌクレオチド配列に対するアンチセンス活性について、オリゴヌクレオチド(デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、ペプチド核酸、修飾したオリゴヌクレオチド)の組み合わせライブラリをスクリーニングする過程に関する(Bruice, T.W. 他 (1997)米国特許第5,686,242号、Bruice, T.W. 他 (2000)米国特許第6,022,691号)。
【0242】
ベクターを細胞又は組織に導入する多数の方法が利用可能であり、in vivo、in vitro及びex vivoの使用に対して同程度に適している。ex vivo治療の場合、ベクターを、患者から採取した幹細胞内に導入し、クローニング増殖して同患者に自家移植で戻すことができる。トランスフェクションによる、又はリボソーム注入やポリカチオンアミノポリマーによる送達は、当分野で周知の方法を用いて実行することができる(例えばGoldman, C.K.他 (1997) Nat. Biotechnol. 15:462-466を参照)。
【0243】
上記の治療方法はいずれも、例えば、ヒト、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ウサギ、サルなどの哺乳類を含めて治療が必要な全ての被験体に適用できる。
【0244】
本発明のさらなる実施態様は、通常薬剤として許容できる賦形剤で処方される活性成分を有する組成物の投与に関連する。賦形剤には例えば、糖、でんぷん、セルロース、ゴム及びタンパク質がある。様々な剤型が広く知られており、詳細はRemington's Pharmaceutical Sciences(Maack Publishing, Easton PA)の最新版に記載されている。このような組成物は、EXMES、EXMESの抗体、擬態、アゴニスト、アンタゴニスト、又はEXMESのインヒビターなどからなる。
【0245】
本発明に用いられる組成物は、任意の数の経路によって投与することができ、限定するものではないが経路には、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、骨髄内、クモ膜下腔内、心室内、肺、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、腸内、局所、舌下又は直腸がある。
【0246】
肺から投与する組成物は、液状又は乾燥粉末状で調製し得る。このような組成物は通常、患者が吸入する直前にエアロゾル化する。小分子(例えば伝統的な低分子量有機薬)の場合には、速効製剤のエアロゾル送達は当分野で公知である。高分子(例えばより大きなペプチド及びタンパク質)の場合には、当該分野において肺の肺胞領域を介しての肺送達が最近向上したことにより、インスリン等の薬剤を実質的に血液循環へ輸送することを可能にした(Patton, J.S. 他, 米国特許第5,997,848号等を参照)。肺送達は、針注射なしに投与する点で優れており、有毒な可能性のある浸透エンハンサーの必要性をなくす。
【0247】
本発明での使用に適した組成物には、所定の目的を達成するために必要なだけの量の活性成分を含有する組成物が含まれる。有効投与量の決定は、当業者の能力の範囲内で行う。
【0248】
EXMES又はその断片を含む高分子を直接細胞内に送達するべく、特殊な形態に組成物が調製されるのが好ましい。例えば、細胞不透過性高分子を含むリポソーム製剤は、その高分子の細胞融合と細胞内送達とを促進し得る。別法では、EXMES又はその断片をHIV Tat-1タンパク質から得た短い陽イオンN末端部に結合することもできる。このようにして生成された融合タンパク質類は、或るマウスモデル系の、脳を含む全ての組織の細胞群に形質導入することがわかっている(Schwarze, S.R. 他(1999) Science 285:1569-1572)。
【0249】
任意の化合物に対して、細胞培養アッセイ、例えば新生物性細胞の細胞培養アッセイにおいて、或いは、動物モデル、例えばマウス、ラット、ウサギ、イヌ、サル又はブタ等において、先ず治療上の有効投与量を推定することができる。動物モデルはまた、好適な濃度範囲及び投与経路を決定するためにも用い得る。このような情報を用いて、次にヒトに対する有益な投与量及び投与経路を決定することができる。
【0250】
治療有効量は、症状や容態を回復させる活性成分の量、たとえばEXMES又はその断片、EXMESの抗体、EXMESのアゴニスト又はアンタゴニスト、インヒビターなどの量を指す。治療有効度及び毒性は、細胞培養又は動物実験における標準的な薬剤手法によって、例えばED50(集団の50%の治療有効量)又はLD50(集団の50%の致死量)を測定するなどして決定することができる。毒性効果の治療効果に対する投与量比が治療指数であり、LD50/ED50比として表すことができる。高い治療指数を示すような組成物が望ましい。細胞培養アッセイ及び動物実験から得られたデータは、ヒトに用いるための投与量の範囲を策定するのに用いられる。このような組成物に含まれる投与量は、毒性を殆ど或いは全く持たず、ED50を含むような血中濃度の範囲にあることが好ましい。投与量は、用いられる投与形態、患者の感受性及び投与の経路によってこの範囲内で変わる。
【0251】
正確な投与量は、治療が必要な被験者に関する要素を考慮して、現場の医者が決定することになる。充分なレベルの活性成分を与え、或いは所望の効果を維持すべく、用法及び用量を調整する。被験者に関する要素としては、疾患の重症度、被験者の全身健康状態、被験者の年齢、体重及び性別(ジェンダー)、投与の時間及び頻度、薬剤の併用、反応感受性及び治療に対する応答等を考慮しうる。作用期間が長い組成物は、特定の製剤の半減期及びクリアランス率によって、3〜4日毎に1度、1週間に1度、或いは2週間に1度の間隔で投与し得る。
【0252】
通常の投与量は、投与の経路にもよるが約0.1〜100.000μgであり、合計で約1gまでとする。特定の投与量及び送達方法に関するガイダンスは文献に記載されており、現場の医者は通常それを利用することができる。当業者は、タンパク質又はインヒビターに対する処方とは異なる、ヌクレオチドに対する処方を利用することになる。同様に、ポリヌクレオチド又はポリペプチドの送達は、特定の細胞、症状、部位などに特異的なものとなる。
【0253】
(診断)
別の実施様態では、EXMESに特異的に結合する抗体が、EXMESの発現によって特徴付けられる疾患の診断、又はEXMESやEXMESのアゴニスト又はアンタゴニスト、インヒビターで治療を受けている患者をモニターするためのアッセイに用いられる。診断目的に有用な抗体は、上記の治療の箇所で記載した方法と同じ方法で作成される。EXMESの診断アッセイには、抗体及び標識を用いてヒトの体液或いは細胞や組織から採取されたものからEXMESを検出する方法が含まれる。この抗体は修飾されたものもされていないものも可能であり、レポーター分子との共有結合又は非共有結合で標識化できる。レポーター分子としては広くさまざまな種類が本分野で知られており、また使用可能であるが、そのうちのいくつかは上記で説明されている。
【0254】
EXMESを測定するためのELISA,RIA,及びFACSを含む種々のプロトコルは、当分野では周知であり、変わった或いは異常なレベルのEXMESの発現を診断する元となるものを提供する。正常或いは標準的なEXMESの発現の値は、複合体の形成に適した条件下で、正常な哺乳動物、例えばヒトなどの被験者から採取した体液又は細胞とEXMESに対する抗体とを結合させることによって決定する。標準複合体形成量は、種々の方法、例えば測光法で定量できる。被験者、対照、及び疾患生検組織からの各サンプルのEXMESの発現の量が基準値と比較される。標準値と被験体との偏差が、疾患を診断するパラメータを確定する。
【0255】
本発明の別の実施態様によれば、EXMESをコードするポリヌクレオチドを診断のために用いることもできる。用いることができるポリヌクレオチドには、オリゴヌクレオチド配列、相補的RNA及びDNA分子、そしてPNAが含まれる。このポリヌクレオチドを用いて、疾患と相関し得るEXMESを発現する生検組織における遺伝子の発現を検出し定量する。この診断アッセイを用いて、EXMESの存在の有無、更に過剰な発現を調べ、治療中のEXMES値の調節を監視する。
【0256】
或る実施形態では、EXMES又は近縁の分子をコードする、ゲノム配列などポリヌクレオチドを検出可能なPCRプローブ類とのハイブリダイゼーションを、EXMESをコードする核酸配列を同定するために用いることができる。プローブが高度に特異的な領域(例えば5'調節領域)から作られている、或いはやや特異性の低い領域(例えば保存されたモチーフ)から作られているかにかかわらず、そのプローブの特異性と、ハイブリダイゼーション或いは増幅のストリンジェンシーによって、そのプローブがEXMESをコードする自然界の配列のみを同定するかどうか、或いは対立遺伝子や関連配列コードする自然界の配列のみを同定するかどうかが決まるであろう。
【0257】
プローブはまた、関連する配列の検出に利用でき、また、EXMESをコードする任意の配列との少なくとも50%の配列同一性を有し得る。目的の本発明のハイブリダイゼーションプローブには、DNA或いはRNAが可能であり、SEQ ID NO:23-44の配列、或いはEXMES遺伝子のプロモーター、エンハンサー、イントロンを含むゲノム配列に由来し得る。
【0258】
EXMESをコードするポリヌクレオチドに対して特異的なハイブリダイゼーションプローブの作製方法には、EXMESをコード又はEXMES誘導体をコードするポリヌクレオチドをmRNAプローブの作製のためのベクターにクローニングする方法がある。mRNAプローブ作製のためのベクターは、当業者に知られており、市販されており、好適なRNAポリメラーゼ及び好適な標識されたヌクレオチドを加えることによって、in vitroでRNAプローブを合成するために用いられ得る。ハイブリダイゼーションプローブは、種々のレポーターの集団によって標識され得る。レポーター集団の例としては、32P又は35S等の放射性核種、或いはアビジン/ビオチン結合系を介してプローブに結合されたアルカリホスファターゼ等の酵素標識などが挙げられる。
【0259】
EXMESをコードするポリヌクレオチドを、EXMESの発現に関係する疾患の診断に用い得る。限定するものではないが、このような疾患として自己免疫/炎症疾患には、後天性免疫不全症候群(AIDS)、アジソン病、成人呼吸窮迫症候群、アレルギー、強直性脊椎炎、アミロイド症、貧血、喘息、アテローム性動脈硬化症、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性甲状腺炎、自己免疫多発性内分泌腺障害症(APECED)、気管支炎、胆嚢炎、接触皮膚炎、クローン病、アトピー性皮膚炎、皮膚筋炎、糖尿病、肺気腫、リンパ球毒素性一時性リンパ球減少症、赤芽球症、結節性紅斑、萎縮性胃炎、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、痛風、グレーブス病、橋本甲状腺炎、過好酸球増加症、過敏性大腸症候群、多発性硬化症、重症筋無力症、心筋又は心膜の炎症、骨関節炎、骨粗しょう症、膵炎、多発性筋炎、乾癬、ライター症候群、リウマチ様関節炎、強皮症、シェーグレン症候群、全身性アナフィラキシー、全身性紅斑性狼瘡、全身性硬化症、血小板減少症、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、ウェルナー症候群、癌の合併症、血液透析、体外循環、ウイルス性感染症、細菌性感染症、真菌性感染症、寄生虫感染症、原虫感染症、蠕虫の感染症及び外傷が含まれる。神経系疾患の中には、癲癇、虚血性脳血管障害、脳卒中、大脳新生物、アルツハイマー病、ピック病、ハンチントン病、痴呆、パーキソン病及びその他の錐体外路障害、筋萎縮性側策硬化及びその他の運動ニューロン障害、進行性神経性筋萎縮症、色素性網膜炎、遺伝性運動失調、多発性硬化症及び他の脱髄疾患、細菌性及びウイルス性髄膜炎、脳膿瘍、硬膜下蓄膿症、硬膜外膿瘍、化膿性頭蓋内血栓性静脈炎、脊髄炎及び神経根炎、ウイルス性中枢神経系疾患、プリオン病(クールー、クロイツフェルト‐ヤコブ病、及びGerstmann-Straussler-Scheinker症候群を含む)、致死性家族性不眠症、神経系性栄養病及び代謝病、神経線維腫症、、結節硬化症、小脳網膜血管芽腫(cerebelloretinal hemangioblastomatosis)、脳3叉神経血管症候群、ダウン症候群を含む中枢神経系性の精神薄弱及び他の発達障害、脳性麻痺、神経骨格異常症、自律神経系障害、脳神経障害、脊髄障害、筋ジストロフィー及びその他の神経筋障害、末梢神経疾患、皮膚筋炎及び多発性筋炎、遺伝性、代謝性、内分泌性、及び中毒性の筋疾患、重症筋無力症、周期性四肢麻痺、精神病(気分性、不安性の障害、分裂病性疾患)、季節性障害(SAD)、静座不能、健忘症、緊張病、糖尿病性ニューロパシー、錐体外路性終末欠陥症候群、ジストニー、分裂病性精神障害、帯状疱疹後神経痛、トゥーレット病、進行性核上麻痺、皮質基底核変性症(corticobasal degeneration)、家族性前頭側頭骨痴呆が含まれる。また内分泌疾患の中には原発脳腫瘍及び腺腫、妊娠性梗塞、下垂体切除、動脈瘤、血管奇形、血栓症、感染症、免疫異常、頭部外傷による合併症などの病変から起こる視床下部及び下垂体の障害と、性機能低下及びシーハン症候群、尿崩症、カルマン病、ハンド‐シュラークリスチャン病、レテラー・ジーヴェ病、サルコイドーシス、エンプティセラ(トルコ鞍空虚)症候群、小人症を含む下垂体低下に関連した障害と、良性線種によって発生しやすい抗利尿ホルモン(ADH)不適合分泌症候群(SIADH)及び先端巨大症、巨人症を含む下垂体亢進に関連した障害と、甲状腺腫及び粘液水腫、細菌感染性急性甲状腺炎、ウイルス感染性亜急性甲状腺炎、自己免疫性甲状腺炎(橋本病)、クレチン病を含む甲状腺機能低下症に関連した障害と、甲状腺中毒症及びその様々な型、グレーブス病、前脛骨粘液水腫、中毒性多結節性甲状腺腫、甲状腺癌、プラマー病を含む甲状腺機能亢進症と、Conn病(chronic hypercalemia)を含む副甲状腺機能亢進症と、I型及びII型糖尿病及び合併症などの膵臓疾患と、過形成及び副腎皮質の癌腫や腺腫、アルカローシスに関連した高血圧、アミロイド症、低カリウム血、クッシング病、リドル症候群、Arnold-Healy-Gordon症候群、褐色細胞腫瘍、アジソン病、副腎機能不全などの副腎に関連した障害がある。また女性の異常プロラクチン産生及び不妊症、子宮内膜症、月経周期の摂動、多嚢胞性卵巣疾患、高プロラクチン血症、選択的性腺刺激ホルモン不全(isolated gonadotropin deficiency)、無月経、乳汁漏出症、半陰陽、多毛症及び男性化、乳癌、閉経期後の骨粗鬆症、男性のライジッヒ細胞過形成、男性更年期、生殖細胞無形成症、ライジッヒ細胞腫瘍に関連した性機能亢進、アンドロゲン受容体の欠如に関連したアンドロゲン耐性、5α−還元酵素症候群、21‐ヒドロキシラーゼ症候群、女性乳房症などの生殖腺ステロイドホルモンに関連した疾患とが含まれる。発達障害には尿細管性アシドーシス、貧血、クッシング症候群、軟骨形成不全性小人症、デュシェンヌ/ベッカー型筋ジストロフィー、癲癇、性腺形成異常、WAGR症候群(ウィルムス腫瘍、無虹彩症、尿生殖器異常、精神遅滞)、スミス‐マジェニス症候群(Smith-Magenis syndrome)、骨髄異形成症候群、遺伝性粘膜上皮異形成、遺伝性角皮症や、シャルコーマリーツース病及び神経線維腫症などの遺伝性神経病、甲状腺機能低下症、水頭症や、Syndenham舞踏病(Syndenham's chorea)及び脳性小児麻痺などの発作障害、二分脊椎、無脳症、頭蓋脊椎披裂、先天性緑内障、白内障、感音難聴が含まれる。細胞増殖異常には日光角化症、動脈硬化、アテローム硬化、滑液包炎、硬変、肝炎、混合性結合組織病(MCTD)、骨髄線維症、発作性夜間ヘモグロビン尿症、真性多血症、乾癬、原発性血小板血症、並びに、腺癌、白血病、リンパ腫、黒色腫、骨髄腫、肉腫、及び奇形癌など癌、具体的には、副腎、膀胱、骨、骨髄、脳、乳房、頚部、胆嚢、神経節、消化管、心臓、腎臓、肝臓、肺、筋肉、卵巣、膵臓、副甲状腺、陰茎、前立腺、唾液腺、皮膚、脾臓、精巣、胸腺、甲状腺、及び子宮の癌が含まれる。生殖系疾患としてプロラクチン産生障害があり、卵管疾患、排卵欠損症、子宮内膜症、性周期障害、月経周期障害、多嚢胞性卵巣症候群、卵巣過刺激症候群、子宮内膜癌、卵巣癌、子宮筋腫、自己免疫疾患、子宮外妊娠、催奇形、乳癌、繊維嚢胞性乳房疾患、乳漏症、精子形成破壊、精子異常生理、良性前立腺肥大、前立腺炎、パイロニー病、性交不能が含まれる。心血管障害にはうっ血性心不全、虚血性心疾患、狭心症、心筋梗塞、高血圧性心疾患、変性弁膜性心疾患、石灰化大動脈弁狭窄症、先天性2尖大動脈弁、僧帽弁輪状石灰化(mitral annular calcification)、僧帽弁脱出、リウマチ熱、リウマチ性心疾患、感染性心内膜炎、非細菌性血栓性心内膜炎、全身性紅斑性狼瘡の心内膜炎、カルチノイド心疾患、心筋症、心筋炎、心膜炎、腫瘍性心疾患、先天性心臓疾患、心臓移植の合併症などの心疾患がある。感染症には、アデノウイルス、アレナウイルス、ブンヤウイルス(bunyavirus)、カリチウイルス(calicivirus)、コロナウイルス、フィロウイルス、ヘパドナウイルス、ヘルペスウイルス、フラビウイルス、オルソミクソウイルス、パルボウイルス、パポーバウイルス、パラミクソウイルス、ピコルナウイルス、ポックスウイルス、レオウイルス、レトロウイルス、ラブドウイルス、トガウイルスに分類されるウイルス病原体による感染や、細菌による感染(肺炎球菌、ブドウ球菌、連鎖球菌、バシラス菌、コリネバクテリウム、クロストリジウム、髄膜炎菌、淋菌、リステリア、モラクセラ、キンゲラ、ヘモフィルス、レジオネラ、百日咳菌類(ボルデテラ)や、シゲラ、サルモネラ、カンピロバクターを含むグラム陰性腸内細菌、シュードモナス、ビブリオ、ブルセラ、野兎病菌類(フランシセラ)、エルシニア、バルトネラ、norcardium、放線菌、ミコバクテリウム、spirochaetale、リケッチア、クラミジア、マイコプラズマに分類)、真菌感染(分類はアスペルギルス、ブラストミセス、皮膚糸状菌、クリプトコッカス、コクシジオイデス、malasezzia、ヒストプラスマ、又は他の真菌症起因菌)、寄生虫感染(分類はプラスモディウムすなわちマラリア原虫、寄生性アメーバ、リーシュマニア、トリパノソーマ、トキソプラズマ、ニューモシスチスカリニ、腸内原虫(ジアルジアなど)、トリコモナス、組織線虫(旋毛虫など)、腸管寄生線虫(回虫など)、リンパ管フィラリア線虫、吸虫(住血吸虫など)、及び条虫(サナダムシなど))が含まれる。EXMESをコードするポリヌクレオチドは、変容したEXMES発現を検出するために患者から採取した体液或いは組織を利用する、サザーン法やノーザン法、ドットブロット法、或いはその他の膜系の技術や、PCR法や、ディップスティック(dipstick)、ピン(pin)、及びマルチフォーマットのELISA式アッセイ、及びマイクロアレイに使用可能である。このような定性方法又は定量方法は、当分野で公知である。
【0260】
或る特定の態様では、EXMES をコードするポリヌクレオチドは、関連する疾患、特に前記したこれらを検出するアッセイにおいて有用であり得る。EXMESをコードする配列に相補的なポリヌクレオチドは、標準的な方法で標識化され、ハイブリダイゼーション複合体の形成に好適な条件の下、患者から採取した体液或いは組織のサンプルに加えることができる。好適なインキュベーション期間が経過したらサンプルを洗浄し、シグナルを定量して標準値と比較する。患者サンプル中のシグナルの量が、対照サンプルと較べて著しく変化している場合は、該サンプル内の、EXMESをコードするポリヌクレオチドのレベル変化の存在が、関連する疾患の存在を示す。このようなアッセイは、動物実験、臨床試験における特定の治療効果を評価するため、或いは個々の患者の治療をモニターするために用いることもできる。
【0261】
EXMESの発現に関連する疾患の診断基準を提供するために、発現のための正常或いは標準プロフィールを確立する。これは、ハイブリダイゼーション或いは増幅に好適な条件の下、動物或いはヒトのいずれかの正常な被験体から採取された体液或いは細胞抽出物と、EXMESをコードする配列或いはその断片とを混合することにより達成され得る。実質的に精製されたポリヌクレオチドを既知量で用いて行った実験から得た値を正常な被験者から得た値と比較することにより、標準ハイブリダイゼーションを定量することができる。このようにして得た標準値は、疾患の徴候を示す患者から得たサンプルから得た値と比較することができる。標準値からの偏差を用いて疾患の存在を確定する。
【0262】
疾患の存在が確定されて治療プロトコルが開始されると、患者の発現レベルが正常な被検者に観察されるレベルに近づき始めたかどうかを測定するため、ハイブリダイゼーションアッセイを定期的に繰り返し得る。連続アッセイから得られた結果を用いて、数日から数ヶ月の期間にわたる治療の効果を示し得る。
【0263】
癌に関しては、個体からの生体組織における異常な量の転写物(過少発現又は過剰発現)の存在は、疾患の発生素質を示したり、実際に臨床的症状が現われたりする前に疾患を検出する方法を提供し得る。この種のより明確な診断により、医療の専門家が予防方法又は積極的な治療法を早くから利用し、それによって癌の発生又は更なる進行を防止することが可能となる。
【0264】
EXMESをコードする配列から設計されたオリゴヌクレオチドのさらなる診断への利用には、PCRの利用が含まれ得る。これらのオリゴマーは、化学的に合成するか、酵素により生産するか、或いはin vitroで産出し得る。オリゴマーは、好ましくはEXMESをコードするポリヌクレオチドの断片、或いはEXMESをコードするポリヌクレオチドと相補的なポリヌクレオチドの断片を含み、最適な条件下で、特定の遺伝子や条件を識別するために利用される。また、オリゴマーは、やや緩いストリンジェント条件下で、近縁のDNA或いはRNA配列の検出、定量、或いはその両方のため用いることが可能である。
【0265】
特定態様においては、EXMES をコードするポリヌクレオチド配列群に由来するオリゴヌクレオチドプライマー類を用いて、一塩基多型(SNP)を検出し得る。SNPは、多くの場合にヒトの先天性又は後天性遺伝病の原因となるような置換、挿入及び欠失である。限定するものではないがSNPの検出方法には、SSCP(single-stranded conformation polymorphism)及び蛍光SSCP(fSSCP)法がある。SSCPでは、EXMESをコードするポリヌクレオチド配列由来のオリゴヌクレオチドプライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)でDNAを増幅する。DNAは例えば、病変組織又は正常組織、生検サンプル、体液その他に由来し得る。DNA内のSNPは、一本鎖形状のPCR生成物の2次及び3次構造に差異を生じさせる。差異は非変性ゲル中でのゲル電気泳動法を用いて検出可能である。fSCCPでは、オリゴヌクレオチドプライマーを蛍光性に標識する。それによってDNAシークエンシング機などの高処理機器でアンプリマー(amplimer)の検出が可能になる。更に、インシリコSNP(in silico SNP, isSNP)と呼ばれる配列データベース分析法は、一般的なコンセンサス配列へアセンブリされるような個々のオーバーラップするDNA断片の配列を比較することにより、多型性を同定し得る。これらのコンピュータベースの方法は、DNAの実験室での調製に、また統計モデル及びDNA配列クロマトグラムの自動分析を用いたシークエンシングのエラーに起因する配列の変異をフィルタリングして除去する。別の態様では、例えば高処理MASSARRAYシステム(Sequenom, Inc., San Diego CA)を用いた質量分析によりSNPを検出し、特徴付ける。
【0266】
SNPを利用して、ヒト疾患の遺伝的基礎を研究しうる。例えば、少なくとも16の一般的SNPが、非インスリン依存型真性糖尿病と関連がある。SNPは、嚢胞性線維症、鎌状赤血球貧血或いは慢性肉芽腫症等の単一遺伝子病の転帰の差異を研究する面でも有用である。例えば、マンノース結合レクチンの変異体であるMBL2は、嚢胞性線維症の肺での有害な転帰と相関することが示されてきた。SNPはまた、生命を脅かす毒性等の薬剤への患者の反応に影響する遺伝変異体の同定という薬理ゲノミックスにおいても有用性がある。例えば、ALOX5遺伝子のコア・プロモーターにおける或る変異は5-リポキシゲナーゼ経路を標的とする抗喘息剤を用いた治療への臨床反応の減少につながるが、Nアセチルトランスフェラーゼの或る変異は抗結核薬剤イソニアジドに反応する末梢神経障害の高発生率と関連する。異なる集団におけるSNP分布の分析は、集団の起源と移動の追跡以外にも遺伝的浮動、突然変異、組換え、選択の調査において有用である(Taylor, J.G. 他(2001) Trends Mol. Med. 7:507-512、Kwok, P.-Y.及びZ. Gu (1999) Mol. Med. Today 5:538-543、Nowotny, P. 他(2001) Curr. Opin. Neurobiol. 11:637-641)。
【0267】
EXMESの発現を定量するために用い得る方法には、ヌクレオチドの放射標識又はビオチン標識、調節核酸の相互増幅(coamplification)及び標準曲線から得た結果の補間もある(例えばMelby, P.C.他(1993) J. Immunol. Methods 159:235-244、Duplaa, C.他 (1993) Anal. Biochem. 212:229-236を参照)。目的のオリゴマー又はポリヌクレオチドが種々の希釈液中に存在し、分光光度法又は比色反応によって定量が迅速になるような高処理フォーマットのアッセイを行うことによって、複数のサンプルの定量速度を加速することができる。
【0268】
更に別の実施様態では、本明細書に記載した任意のポリヌクレオチドに由来するオリゴヌクレオチド又はより長い断片を、或るマイクロアレイにおけるエレメント群として用いることができる。多数の遺伝子の関連発現レベルを同時にモニターする転写物イメージング技術にマイクロアレイを用いることが可能である。これについては、以下に記載する。マイクロアレイはまた、遺伝変異体、突然変異及び多型性の同定に用いることができる。この情報を用いることで、遺伝子機能を決定し、疾患の遺伝的根拠を理解し、疾患を診断し、遺伝子発現の機能としての疾病の進行/後退をモニターし、疾病治療における薬物の活性を開発及びモニターすることができる。特に、患者にとって最もふさわしく、有効な治療法を選択するために、この情報を用いて患者の薬理ゲノムプロフィールを開発することができる。例えば、患者の薬理ゲノムプロフィールに基づき、患者に対して高度に効果的で副作用を殆ど示さない治療薬を選択することができる。
【0269】
別の実施様態では、EXMES、EXMESの断片、EXMESに特異的な抗体をマイクロアレイ上のエレメントとして用いることができる。マイクロアレイを用いて、上記のようなタンパク質−タンパク質相互作用、薬物−標的相互作用及び遺伝子発現プロファイルをモニター又は測定することが可能である。
【0270】
或る実施態様は、或る組織又は細胞タイプの転写イメージを作製する、本発明のポリヌクレオチドの使用に関連する。転写イメージは、特定の組織又は細胞タイプによる遺伝子発現の包括的パターンを表す。包括的遺伝子発現パターンは、所与の条件下で所与の時間に発現した遺伝子の数及び相対存在量を定量することにより分析し得る(Seilhamer 他の米国特許第5,840,484号 「Comparative Gene Transcript Analysis」を参照。該特許は特に引用することを以って本明細書の一部となす)。従って、特定の組織又は細胞タイプの転写又は逆転写全体に本発明のポリヌクレオチド又はその相補体をハイブリダイズすることにより、転写イメージを生成し得る。或る実施例では、本発明のポリヌクレオチド又はその相補体がマイクロアレイ上のエレメントのサブセットを複数含むような高処理フォーマットでハイブリダイゼーションを発生させる。結果として得られる転写イメージは、遺伝子活性のプロファイルを提供し得る。
【0271】
転写イメージは、組織、細胞株、生検又はその生体サンプルから単離した転写物を用いて作製し得る。転写イメージはしたがって、組織又は生検サンプルの場合にはin vivo、細胞株の場合にはin vitroでの遺伝子発現を反映する。
【0272】
本発明のポリヌクレオチドの発現のプロフィールを作製する転写イメージはまた、工業的又は天然の環境化合物の毒性試験のみならず、in vitroモデル系及び薬剤の前臨床評価と併せて使用し得る。全ての化合物は、作用及び毒性のメカニズムを標示し、しばしば分子フィンガープリント又は毒性シグネチャと称される、特徴的な遺伝子発現パターンを惹起する(Nuwaysir, E.F. 他 (1999) Mol. Carcinog. 24:153-159、Steiner, S及びN.L. Anderson (2000) Toxicol. Lett. 112-113:467-471)。試験化合物が既知の毒性を有する化合物のシグネチャと類似のシグネチャを有する場合には、毒性特性を共有している可能性がある。フィンガープリント又はシグネチャは、多数の遺伝子及び遺伝子ファミリーからの発現情報を含んでいる場合に、最も有用且つ正確である。理想的には、ゲノム全域にわたる発現の測定が、最高品質のシグネチャを提供する。たとえ、発現が任意の試験された化合物によって変容しない遺伝子があったとしても、それらの発現レベルを残りの発現データをノーマライズするために使用できるため、それらの遺伝子は重要である。ノーマライズ手順は、異なる化合物で処理した後の発現データの比較に有用である。毒物シグネチャの要素に遺伝子機能を割り当てることが毒性メカニズムの解釈に役立つが、毒性の予測につながる、シグネチャを統計的に一致させる過程に、遺伝子機能の知識は必要とされない(例えば2000年2月29日に米国国立環境健康科学研究所(National Institute of Environmental Health Sciences)より発行されたPress Release 00-02を参照されたい。これについてはhttp://www.niehs.nih.gov/oc/news/toxchip.htmで入手可能である)。従って、毒性シグネチャを用いる中毒学的スクリーニングの際に、全ての発現した遺伝子配列を含めることは重要且つ望ましいことである。
【0273】
或る実施様態では、核酸を有する生体サンプルを試験化合物で処理することにより、この試験化合物の毒性を算定する。処理した生物学的サンプル中で発現した核酸は、本発明のポリヌクレオチドに特異的な1つ若しくは複数のプローブでハイブリダイズし、それによって本発明のポリヌクレオチドに対応する転写物レベルを定量し得る。処理した生物学的サンプル中の転写レベルを、未処理生物学的サンプル中のレベルと比較する。両サンプルの転写物レベルの差は、処理されたサンプル中で試験化合物が引き起こす毒性反応を示す。
【0274】
別の実施態様は、本明細書に開示するポリペプチド配列群を用いて或る組織又は細胞タイプのプロテオームを分析することに関する。プロテオームの語は、特定の組織又は細胞タイプでのタンパク質発現の包括的パターンを指す。プロテオームの各タンパク質成分は、個々に更なる分析にかけることができる。プロテオーム発現パターンすなわちプロファイルは、所与の条件下で所与の時間に発現したタンパク質の数及び相対存在量を定量することにより分析し得る。したがって、或る細胞のプロテオームのプロファイルは、特定の組織又は細胞タイプのポリペプチドを分離及び分析することにより作成し得る。或る実施態様では、1次元等電点電気泳動によりサンプルからタンパク質を分離し、次に2次元ドデシル硫酸ナトリウムスラブゲル電気泳動により分子量に応じて分離するような2次元ゲル電気泳動により分離が達成される(前出のSteiner及びAnderson)。タンパク質は、通常はクーマシーブルー、或いは銀染色液又は蛍光染色液などの物質を用いてゲルを染色することにより、分散した、独自の位置にある点としてゲル中で可視化される。各タンパク質スポットの光学密度は、通常、サンプル中のタンパク質レベルに比例する。異なるサンプル、例えば試験化合物又は治療薬で処理又は未処理のいずれかの生物学的サンプルから得られる同等に位置するタンパク質スポットの光学密度を比較し、処理に関連するタンパク質スポット密度の変化を同定する。スポット内のタンパク質は、例えば化学的又は酵素的切断とそれに続く質量分析を用いる標準的な方法を用いて部分的にシークエンシングする。或るスポット内のタンパク質の同一性は、その部分配列を、好適には少なくとも5個の連続するアミノ酸残基を、目的のポリペプチド配列と比較することにより決定し得る。場合によっては、決定的なタンパク質同定のための更なる配列データが得られる。
【0275】
プロテオームのプロファイルは、EXMESに特異的な抗体を用いてEXMES発現レベルを定量することによっても作成可能である。或る実施態様では、マイクロアレイ上のエレメントとしてこれら抗体を用い、マイクロアレイをサンプルに曝して各アレイエレメントへのタンパク質結合レベルを検出することにより、タンパク質発現レベルを定量する(Lueking, A. 他(1999) Anal. Biochem. 270:103-111、Mendoze, L.G.他(1999) Biotechniques 27:778-788)。検出は当分野で既知の様々な方法で行うことができ、例えば、チオール反応性又はアミノ反応性蛍光化合物とサンプル中のタンパク質を反応させ、各アレイエレメントにおける蛍光結合の量を検出し得る。
【0276】
プロテオームレベルでの毒性シグネチャも中毒学的スクリーニングに有用であり、転写レベルでの毒性シグネチャと並行に分析するべきである。数種の組織の数種のタンパク質に対しては、転写物とタンパク質との存在量の相関が乏しいので(Anderson, N.L.及びJ. Seilhamer (1997) Electrophoresis 18:533-537)、転写物イメージには有意に影響しないがプロテオームのプロフィールを変化させるような化合物の分析においてプロテオーム毒物シグネチャは有用たり得る。更に、体液中の転写物の分析はmRNAの急速な分解のために困難なので、プロテオームのプロファイル作成はこのような場合により信頼でき、情報価値があり得る。
【0277】
別の実施様態では、タンパク質を含有する生体サンプルを試験化合物で処理することにより試験化合物の毒性を算定する。処理された生体サンプル中で発現したタンパク質は、各タンパク質の量を定量し得るように分離する。各タンパク質の量を、非処理生物学的サンプル中の対応するタンパク質の量と比較する。両サンプルのタンパク質量の差は、処理サンプル中の試験化合物に対する毒性反応を示す。個々のタンパク質は、個々のタンパク質のアミノ酸残基をシークエンシングし、これら部分配列を本発明のポリペプチドと比較することにより同定する。
【0278】
別の実施様態では、タンパク質を含有する生体サンプルを試験化合物で処理することにより試験化合物の毒性を算定する。生体サンプルから得たタンパク質は、本発明のポリペプチドに特異的な抗体を用いてインキュベートする。抗体により認識されたタンパク質の量を定量する。処理された生物学的サンプル中のタンパク質の量を、非処理生物学的サンプル中のタンパク質の量と比較する。両サンプルのタンパク質量の差は、処理サンプル中の試験化合物に対する毒性反応を示す。
【0279】
マイクロアレイは、本技術分野で既知の方法で調製し、使用し、分析する(例えばBrennan, T.M. 他(1995)米国特許第5,474,796号、Schena, M. 他(1996)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:10614-10619、Baldeschweiler 他(1995)PCT出願第WO95/251116号、Shalon, D.他(1995)PCT出願第WO95/35505号、Heller, R.A. 他(1997)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:2150-2155、Heller, M.J. 他(1997)米国特許第5,605,662号を参照)。様々なタイプのマイクロアレイが公知であり、詳細については、DNA Microarrays:A Practical Approach, M. Schena, 編集 (1999) Oxford University Press, Londonに記載がある。
【0280】
本発明の別の実施態様ではまた、EXMESをコードする核酸配列群を用いて、天然ゲノム配列をマッピングするのに有用なハイブリダイゼーションプローブ群を産生し得る。コード配列又は非コード配列のいずれかを用いることができ、或る例では、コード配列よりも非コード配列が好ましい。例えば、多重遺伝子族のメンバー内でのコード配列の保存により、染色体マッピング中に望ましくないクロスハイブリダイゼーションが生じる可能性がある。核酸配列は、特定の染色体、染色体の特定領域又は人工形成の染色体、例えば、ヒト人工染色体(HAC)、酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)、細菌P1産物、或いは単一染色体cDNAライブラリに対してマッピングされる。(例えばHarrington, J.J.他(1997)Nat. Genet. 15:345-355、Price, C.M.(1993)Blood Rev. 7:127-134、Trask, B.J.(1991)Trends Genet. 7:149-154を参照)。7:149154.) 一度マッピングすると、核酸配列群を用いて、例えば或る病状の遺伝を特定染色体領域の遺伝と又は制限酵素断片長多型(RFLP)と相関させるような遺伝子連鎖地図を開発し得る(例えば、Lander, E.S及びD. Botstein (1986) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83:7353-7357を参照)。
【0281】
蛍光原位置ハイブリッド形成法(FISH)は、他の物理的及び遺伝地図データと相関し得る(例えばHeinz-Ulrich,他 (1995) in Meyers, 前出 965-968ページを参照)。 遺伝地図データの例は、種々の科学雑誌或いはOnline Mendelian Inheritance in Man(OMIM)のウェブサイトに見ることができる。物理的な染色体地図上のEXMESをコードする遺伝子の位置と、特定の疾患との相関性、或いは特定の疾患に対する素因との相関性は、この疾患と関連するDNAの領域の決定に役立ち得るため、ポジショナルクローニングの作業を促進し得る。
【0282】
確定した染色体マーカーを用いた結合分析等の物理的マッピング技術及び染色体標本原位置ハイブリッド形成法を用いて、遺伝地図を拡張することができる。例えばマウスなど別の哺乳動物の染色体上に遺伝子を配置することにより、正確な染色体上の遺伝子座が未知でも、関連するマーカー類をしばしば明らかにし得る。この情報は、ポジショナルクローニングその他の遺伝子発見技術を用いて疾患遺伝子を探す研究者にとって価値がある。疾患又は症候群に関与する遺伝子が、血管拡張性失調症の11q22-23領域等、特定の遺伝子領域への遺伝的結合によって大まかに位置決めがなされると、該領域にマップされた任意の配列は、更なる調査のための関連遺伝子或いは調節遺伝子を提示している可能性がある。(例えばGatti, R.A. 他(1988) Nature 336:577-580を参照)。転座、反転などに起因する、健常者、保有者、罹病者の三者間における染色体位置の相違を検出する場合にも、本発明のヌクレオチド配列を用い得る。
【0283】
本発明の別の実施様態では、EXMES、その触媒作用断片或いは免疫原断片又はそのオリゴペプチドを、種々の任意の薬剤スクリーニング技術における化合物のライブラリのスクリーニングに用いることができる。薬剤スクリーニングに用いる断片は、溶液中に遊離しているか、固体支持物に固定されるか、細胞表面上に保持されるか、細胞内に位置しうる。EXMESと検査する薬剤との結合による複合体の形成を測定することもできる。
【0284】
別の薬物スクリーニング方法は、目的のタンパク質に対して好適な結合親和性を有する化合物を高い処理能力でスクリーニングするために用いられる(例えばGeysen, 他(1984)PCT出願第WO84/03564号を参照)。この方法においては、多数の異なる小さな試験用化合物を固体基板上で合成する。試験用化合物は、EXMES、或いはその断片と反応してから洗浄される。次に、本技術分野でよく知られている方法で、結合したEXMESを検出する。精製したEXMESはまた、上記した薬剤のスクリーニング技術において用いるプレート上で直接コーティングすることもできる。別法では、非中和抗体を用いてペプチドを捕捉し、ペプチドを固体支持物に固定することもできる。
【0285】
別の実施様態では、EXMESと結合可能な中和抗体がEXMESと結合するため試験用化合物と特に競合する、競合的薬剤スクリーニングアッセイを用いることができる。このようにして、EXMESと1つ以上の抗原決定因子を共有するどのペプチドの存在をも、抗体を使って検出できる。
【0286】
別の実施例では、発展途上の分子生物学技術にEXMESをコードするヌクレオチド配列を用いて、限定はされないが、現在知られているトリプレット暗号及び特異的な塩基対相互作用などのヌクレオチド配列の特性に依存する新しい技術を提供することができる。
【0287】
更に詳細説明をしなくとも、当業者であれば以上の説明を以って本発明を最大限に利用できるであろう。したがって、これ以下に記載する実施例は単なる例示目的にすぎず、いかようにも本発明を限定するものではない。
【0288】
本明細書において開示した全ての特許、特許出願及び刊行物は、米国特許出願第60/301,789号、第60/324,149号、第60/327,713号、第60/329,215号、第60/340,218号、第60/370,761号及び第373,824号を含め、言及することをもって特に本明細書の一部となす。
【実施例】
【0289】
(1 cDNAライブラリの作製)
Incyte cDNA群の由来は、LIFESEQ GOLDデータベース (Incyte Genomics, Palo Alto CA)に記載されたcDNAライブラリ群である。幾つかの組織はホモジナイズしてグアニジニウムイソチオシアネート溶液に溶解し、他の組織はホモジナイズしてフェノールに又は変性剤群の好適な混合液に溶解した。混合液の1例であるTRIZOL(Invitrogen)は、フェノールとグアニジンイソチオシアネートとの単相溶液である。結果として得られた溶解物は、塩化セシウムクッション上で遠心分離するかクロロホルムで抽出した。イソプロパノールか、酢酸ナトリウムとエタノールか、いずれか一方、或いは別の方法を用いて、溶解物からRNAを沈殿させた。
【0290】
RNAの純度を高めるため、RNAのフェノールによる抽出及び沈殿を必要な回数繰り返した。場合によっては、DNアーゼでRNAを処理した。殆どのライブラリでは、オリゴd(T)連結常磁性粒子(Promega)、OLIGOTEXラテックス粒子(QIAGEN, Chatsworth CA)又はOLIGOTEX mRNA精製キット(QIAGEN)を用いて、ポリ(A+) RNAを単離した。別法では、別のRNA単離キット、例えばPOLY(A)PURE mRNA精製キット(Ambion, Austin TX)を用いて組織溶解物からRNAを直接単離した。
【0291】
場合によってはStratagene社へのRNA提供を行い、対応するcDNAライブラリをStratagene社が作製することもあった。そうでない場合は、UNIZAPベクターシステム(Stratagene)又はSUPERSCRIPTプラスミドシステム(Invitrogen)を用いて本技術分野で既知の推奨方法又は類似の方法でcDNAを合成し、cDNAライブラリを作製した(前出のAusubel, 1997, 5.1-6.6ユニットなどを参照)。逆転写は、オリゴd(T)又はランダムプライマーを用いて開始した。合成オリゴヌクレオチドアダプターを二本鎖cDNAに連結反応させ、好適な制限酵素又は酵素でcDNAを消化した。殆どのライブラリに対しcDNAのサイズ選択(300〜1000bp)は、SEPHACRYL S1000、SEPHAROSE CL2B又はSEPHAROSE CL4Bカラムクロマトグラフィ(Amersham Biosciences)、或いは分取用アガロースゲル電気泳動法を用いて行った。cDNAは好適なプラスミドのポリリンカーの、適合する制限酵素部位にライゲーションされた。好適なプラスミドは、例えばPBLUESCRIPTプラスミド(Stratagene)、PSPORT1プラスミド(Invitrogen)PCDNA2.1プラスミド(Invitrogen, Carlsbad CA)、PBK-CMVプラスミド(Stratagene)、PCR2−TOPOTAプラスミド(Invitrogen)、PCMV-ICISプラスミド(Stratagene)、pIGEN(Incyte Genomics, Palo Alto CA)、pRARE (Incyte Genomics)、又はplNCY(Incyte Genomics)、又はこれらの誘導体である。組換えプラスミドは、Stratagene社のXL1-Blue、XL1-BIueMRF又はSOLR、或いはInvitrogen社のDH5α、DH10B又はElectroMAX DH10Bなど適格な大腸菌細胞に形質転換した。
【0292】
(2 cDNAクローンの単離)
UNIZAPベクターシステム(Stratagene)を用いたin vivo切除によって、或いは細胞溶解によって、実施例1のようにして得たプラスミドを宿主細胞から回収した。プラスミドの精製には、下記の少なくとも1つを用いた。すなわちMagic又はWIZARD Minipreps DNA精製システム(Promega)、AGTC Miniprep精製キット(Edge Biosystems, Gaithersburg MD)、QIAGEN社のQIAWELL 8 Plasmid、QIAWELL 8 Plus Plasmid及びQIAWELL 8 Ultra Plasmid精製システム、R.E.A.L. Prep 96プラスミド精製キットのいずれかである。プラスミドは、沈殿させた後、0.1mlの蒸留水に再懸濁して、凍結乾燥して或いは凍結乾燥しないで4℃で保管した。
【0293】
別法では、高処理フォーマットにおいて直接結合PCR法を用いて宿主細胞溶解物からプラスミドDNAを増幅した(Rao, V.B. (1994) Anal. Biochem. 216:1-14)。宿主細胞の溶解及び熱サイクリング過程は、単一反応混合液中で行った。サンプルを処理し、それを384ウェルプレート内で保管し、増幅したプラスミドDNAの濃度をPICOGREEN色素(Molecular Probes, Eugene OR)及びFluoroskan II蛍光スキャナ(Labsystems Oy, Helsinki, Finland)を用いて蛍光分析的に定量した。
【0294】
(3 シークエンシング及び分析)
実施例 2に記載したようにプラスミドから回収したIncyte cDNAを、以下に示すようにシークエンシングした。cDNAのシークエンス反応は、標準的方法或いは高処理装置、例えばABI CATALYST 800 サーマルサイクラー(Applied Biosystems)又はPTC-200 サーマルサイクラー(MJ Research)を、HYDRAマイクロディスペンサー(Robbins Scientific)又はMICROLAB 2200(Hamilton)液体転移システムと併用して処理した。cDNAのシークエンス反応は、Amersham Biosciences社が提供する試薬、又はABIシークエンシングキット、例えばABI PRISM BIGDYE Terminator cycle sequencing ready reaction kit(Applied Biosystems)の試薬を用いて準備した。cDNAのシークエンス反応の電気泳動的分離と、標識したポリヌクレオチドの検出とには、MEGABACE 1000 DNAシークエンシングシステム(Amersham Biosciences)か、標準ABIプロトコルと塩基呼び出しソフトウェアとを用いるABI PRISM 373又は377シークエンシングシステム(Applied Biosystems)か、或いはその他の本技術分野で既知の配列解析システムを用いた。cDNA配列内のリーディングフレームは、標準的方法(前出のAusubel, 1997, 7.7ユニットに概説)を用いて同定した。cDNA配列の幾つかを選択して、実施例8に記載した方法で配列を伸長させた。
【0295】
IncyteのcDNA配列に由来するポリヌクレオチド配列は、ベクター、リンカー及びポリ(A)配列を除去し、あいまいな塩基をマスクすることによって有効性を確認した。その際、BLAST、動的プログラミング及び隣接ジヌクレオチド頻度分析に基づくアルゴリズム及びプログラムを用いた。次に、Incyte cDNA配列又はそれらの翻訳の問い合わせを、以下のデータベース群に対して行った。すなわち、選抜した公共のデータベース群(例えばGenBankの霊長類、げっ歯類、哺乳類、脊椎動物、真核生物のデータベースと、BLOCKS、PRINTS、DOMO、PRODOM)と、ヒト、ラット、マウス、線虫(Caenorhabditis elegans)、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)、分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)及びCandida albicansからの配列群を持つPROTEOMEデータベース群(Incyte Genomics, Palo Alto CA)、及び、隠れマルコフモデル(HMM)ベースのタンパク質ファミリーデータベース群、例えばPFAM、INCY、及びTIGRFAM (Haft, D.H. 他 (2001) Nucleic Acids Res. 29:41-43)、及びHMMベースのタンパク質ドメインデータベース例えばSMART (Schultz他(1998) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:5857-5864、Letunic, I.他(2002) Nucleic Acids Res. 30:242-244)である。(HMMは、遺伝子ファミリのコンセンサス1次構造を分析する確率的アプローチである。例えばEddy, S.R. (1996) Cuff. Opin. Struct. Biol. 6:361-365等を参照)。問い合わせは、BLAST、FASTA、BLIMPS、及びHMMERに基づくプログラムを用いて行った。Incyte cDNA配列は、完全長のポリヌクレオチド配列を産出するようにアセンブリされた。或いは、GenBank cDNA群、GenBank EST群、スティッチされた配列群、ストレッチされた配列群、又はGenscan予測コード配列群(実施例4及び5を参照)を用い、Incyte cDNAのアセンブリ体群を完全長まで伸長させた。PhredとPhrapとConsedとに基づくプログラムを用いてアセンブリし、GenMarkとBLASTとFASTAとに基づくプログラムを用いて、cDNAのアセンブリ体を、オープンリーディングフレームについてスクリーニングした。完全長ポリヌクレオチド配列を翻訳し、対応する完全長ポリペプチド配列を得た。或いは、或るポリペプチドは、完全長翻訳ポリペプチドの任意のメチオニン残基で開始し得る。完全長ポリペプチド配列群の続いての分析としての問い合わせを、GenBankタンパク質データベース群(genpept)、SwissProt、PROTEOMEデータベース群、BLOCKS、PRINTS、DOMO、PRODOM及びProsite等のデータベースや、PFAM、INCY、及びTIGRFAM等の隠れマルコフモデル(HMM)ベースのタンパク質ファミリーデータベース群、並びにSMART等のHMMベースのタンパク質ドメインデータベース群に対し行った。完全長ポリヌクレオチド配列はまた、MACDNASIS PROソフトウェア(日立ソフトウェアエンジニアリング, South San Francisco CA)及びLASERGENEソフトウェア(DNASTAR)を用いて分析する。ポリヌクレオチド及びポリペプチド配列アラインメントは、アラインメントした配列と配列の一致率も計算するMEGALIGNマルチシークエンスアラインメントプログラム(DNASTAR)に組み込まれているようなCLUSTALアルゴリズムによって特定されるデフォルトパラメータを用いて生成する。
【0296】
Incyte cDNA及び完全長配列の分析及びアセンブリに利用したツール、プログラム及びアルゴリズムの概略と、適用可能な説明、参照文献、閾値パラメータを表7に示す。用いたツール、プログラム及びアルゴリズムを表7の列1に、それらの簡単な説明を列2に示す。列3は適切な参照文献であり、全ての文献は全体を引用を以って本明細書の一部となす。適用可能な場合には、列4は2つの配列が一致する強さを評価するために用いたスコア、確率値その他のパラメータを示す(スコアが高いほど、また確率値が低いほど、2配列間の同一性が高くなる)。
【0297】
完全長ポリヌクレオチド配列及びポリペプチド配列のアセンブリ及び分析に用いる上記のプログラムは、SEQ ID NO:23-44のポリヌクレオチド配列断片の同定にも利用できる。 ハイブリダイゼーション及び増幅技術に有用である約20〜約4000ヌクレオチドの断片を表4の列2に示した。
【0298】
(4 ゲノムDNAからのコード配列の同定及び編集)
推定上の細胞外メッセンジャーは、公共のゲノム配列データベース(例えば、gbpriやgbhtg)においてGenscan遺伝子同定プログラムを実行して初めに同定された。Genscanは、様々な生物からゲノムDNA配列を分析する汎用遺伝子同定プログラムである(Burge, C及びS. Karlin (1997) J. Mol. Biol. 268:78-94、Burge, C及びS. Karlin (1998) Cuff. Opin. Struct. Biol. 8:346-354参照)。プログラムは予測エキソンを連結し、メチオニンから停止コドンに及ぶアセンブリされたcDNA配列を形成する。Genscanの出力は、ポリヌクレオチド及びポリペプチド配列のFASTAデータベースである。Genscanが一度に分析する配列の最大範囲は、30kbに設定した。これらのGenscan推定cDNA配列の内、どの配列が細胞外メッセンジャーをコードするかを決定するために、コードされたポリペプチドをPFAMモデルにおいて細胞外メッセンジャーについて問い合わせて分析した。潜在的な細胞外メッセンジャーが、細胞外メッセンジャーとしてアノテーションが付けられたインサイトcDNA配列に対する相同性を基に同定された。こうして選択されたGenscan予測配列は、次にBLAST分析により公共データベースgenpept及びgbpriと比較した。必要であれば、genpeptからのトップBLASTヒットと比較することによりGenscan予測配列を編集し、余分な又は省略されたエキソンなど、Genscanが予測した配列におけるエラーを補正した。BLAST分析はまた、Genscan予測配列の、いかなるIncyte cDNA又は公共cDNAカバレッジ(coverage)の発見にも用いられ、したがって転写の証拠を提供した。Incyte cDNAカバレッジが利用できた場合には、この情報を用いてGenscan予測配列を補正又は確認した。完全長ポリヌクレオチド配列は、実施例3に記載したアセンブリプロセスを用いて、Incyte cDNA配列及び/又は公共cDNA配列でGenscan予測コード配列をアセンブリして得た。或いは、完全長ポリヌクレオチド配列は、編集した、又は非編集のGenscan予測コード配列に完全に由来する。
【0299】
(5 cDNA配列データとのゲノム配列データのアセンブリ)
スティッチ配列( Stitched Sequence )
部分cDNA配列は、実施例4に記載のGenscan遺伝子同定プログラムにより予測されたエキソンを用いて伸長させた。実施例3に記載されたようにアセンブリされた部分cDNAは、ゲノムDNAにマッピングし、関連するcDNA及び1つ若しくは複数のゲノム配列から予測されたGenscanエキソンを含むクラスタに分解した。cDNA及びゲノム情報を統合するべくグラフ理論及び動的プログラミングに基づくアルゴリズムを用いて各クラスタを分析し、引き続いて確認、編集又は伸長して完全長配列を産出するような潜在的スプライス変異体を生成した。間隔全体の長さがクラスタ中の2以上の配列に存在するような配列を同定し、そのように同定された間隔は推移性により等しいと考えられた。例えば、1つのcDNA及び2つのゲノム配列に間隔が存在する場合、3つの間隔は全て等しいと考えられた。このプロセスは、無関係であるが連続したゲノム配列をcDNA配列により結び合わせて架橋し得る。このようにして同定された区間を、親配列(parent sequence)に沿って現われる順にステッチアルゴリズムで縫い合わせ、可能な最も長い配列及び変異配列を作製する。1種類の親配列に沿って発生した間隔と間隔との連鎖(cDNA−cDNA又はゲノム配列−ゲノム配列)は、親の種類を変える連鎖(cDNA−ゲノム配列)に優先した。結果として得られるスティッチ配列は、翻訳されてBLAST分析により公共データベースgenpept及びgbpriと比較された。Genscanにより予測された不正確なエキソンは、genpeptからのトップBLASTヒットと比較することにより修正した。必要な場合には、追加cDNA配列を用いるかゲノムDNAの検査により配列を更に伸長させた。
【0300】
ストレッチ配列( Stretched Sequence )
部分DNA配列は、BLAST分析に基づくアルゴリズムにより完全長まで伸長された。先ず、BLASTプログラムを用いて、GenBankの霊長類、げっ歯類、哺乳動物、脊椎動物及び真核生物のデータベースなどの公共データベースに対し、実施例3に記載されたようにアセンブリされた部分cDNAを問い合わせた。次に、最も近いGenBankタンパク質相同体を、BLAST分析により、Incyte cDNA配列又は実施例4に記載のGenScanエキソン予測配列のいずれかと比較した。結果として得られる高スコアリングセグメント対(HSP)を用いてキメラタンパク質を産出し、翻訳した配列をGenBankタンパク質相同体上にマッピングした。元のGenBankタンパク質相同体と比較して、キメラタンパク質内では挿入又は欠失が起こり得る。GenBankタンパク質相同体、キメラタンパク質又はその両方をプローブとして用い、公共のヒトゲノムデータベースから相同ゲノム配列を検索した。このようにして、部分的なDNA配列を、相同ゲノム配列の付加によりストレッチすなわち伸長した。結果として得られるストレッチ配列を検査し、完全遺伝子を含んでいるか否かを判定した。
【0301】
(6 EXMESをコードするポリヌクレオチドの染色体マッピング)
SEQ ID NO:23-44を構築するために用いた配列を、BLAST及びSmith-Watermanアルゴリズムを用いて、Incyte LIFESEQデータベース及び公共のドメインデータベースの配列と比較した。SEQ ID NO:23-44と一致するこれらのデータベースの配列を、Phrapなどのアセンブリアルゴリズム(表7)を使用して、連続及びオーバーラップした配列のクラスタにアセンブリした。スタンフォード・ヒトゲノムセンター(SHGC)、ホワイトヘッド・ゲノム研究所(WIGR)、Genethon等の公的な情報源から入手可能な放射線ハイブリッド及び遺伝地図データを用いて、クラスタ化された配列が既にマッピングされていたかを決定した。マッピングされた配列が或るクラスタに含まれている場合、そのクラスタの全配列が、個々の配列番号と共に、地図上の位置に割り当てられた。
【0302】
地図上の位置は、ヒト染色体の範囲又は区間として表される。センチモルガン間隔の地図上の位置は、染色体の短腕(p-arm)の末端に関連して測定する。(センチモルガン(cM)は、染色体マーカー間の組換え頻度に基づく計測単位である。平均して、1cMは、ヒト中のDNAの1メガベース(Mb)にほぼ等しい。但し、この値は組換えのホットスポット及びコールドスポットに起因して広範囲に変化する。)cM距離は、各クラスタ内に配列が含まれる放射線ハイブリッドマーカー類に対して境界を提供するGenethonによってマッピングされた遺伝マーカー群に基づく。NCBI「GeneMap'99」(http://www.ncbi.nlm.nih.gpv/genemap/)などの一般個人が入手可能なヒト遺伝子マップ及びその他の情報源を用いて、既に同定されている疾患遺伝子群が、上記した区間内若しくは近傍に位置するかを決定できる。
【0303】
(7 ポリヌクレオチド発現の分析)
ノーザン分析は、転写された遺伝情報の存在を検出するために用いられる実験技術であり、特定の細胞種又は組織からのRNAが結合される膜への標識されたヌクレオチド配列のハイブリダイゼーションに関与している(例えば前出のSambrook, 7章、同Ausubel (1995) 4章及び16章を参照)。
【0304】
BLASTを適用する類似のコンピュータ技術を用いて、GenBankやLIFESEQ(Incyte Genomics)等のcDNAデータベースにおいて同一又は関連分子を検索した。ノーザン分析は、多数の膜系ハイブリダイゼーションよりも非常に速い。更に、特定の一致を厳密な或いは相同的なものとして分類するか否かを決定するため、コンピュータ検索の感度を変更することができる。検索の基準は積スコアであり、次式で定義される。
【0305】
【数1】
【0306】
積スコアは、2つの配列間の類似度と、配列が一致する長さとの両方を考慮している。積スコアは、0〜100のノーマライズされた値であり、次のようにして求める。BLASTスコアにヌクレオチドの配列一致率を乗じ、その積を2つの配列の短い方の長さの5倍で除する。高スコアリングセグメント対(HSP)に一致する各塩基に+5のスコアを割り当て、各不一致塩基対に−4を割り当てることにより、BLASTスコアを計算する。2つの配列は、2以上のHSPを共有し得る(ギャップにより隔離される)。2以上のHSPがある場合には、最高BLASTスコアのセグメント対を用いて積スコアを計算する。積スコアは、断片的オーバーラップとBLASTアラインメントの質とのバランスを表す。例えば積スコア100は、比較した2つの配列の短い方の長さ全体にわたって100%一致する場合のみ得られる。積スコア70は、一端が100%一致し、70%オーバーラップしているか、他端が88%一致し、100%オーバーラップしているかのいずれかの場合に得られる。積スコア50は、一端が100%一致し、50%オーバーラップしているか、79%一致し、100%オーバーラップしているかのいずれかの場合に得られる。
【0307】
或いは、EXMESをコードするポリヌクレオチドを、由来する組織に対して分析する。例えば幾つかの完全長配列は、少なくとも一部は、オーバーラップするIncyte cDNA配列群を用いてアセンブリする(実施例3を参照)。各cDNA配列は、ヒト組織から作製されたcDNAライブラリに由来する。各ヒト組織は、以下の臓器/組織カテゴリーの1つに分類される。即ち心血管系、結合組織、消化器系、胎芽構造、内分泌系、外分泌腺、女性生殖器、男性生殖器、生殖細胞、血液及び免疫系、肝、筋骨格系、神経系、膵臓、呼吸器系、感覚器、皮膚、顎口腔系、非分類性/混合性又は尿路である。各カテゴリーのライブラリ数を数えて、全カテゴリーの総ライブラリ数で除する。同様に、各ヒト組織は、以下の疾患/条件カテゴリー即ち癌、細胞株、発達、炎症、神経性、外傷、心血管、プール、その他の1つに分類される。各カテゴリーのライブラリ数を数えて、全カテゴリーの総ライブラリ数で除する。得られるパーセンテージは、EXMESをコードするcDNAの組織特異的及び疾患特異的な発現を反映する。 cDNA配列及びcDNAライブラリ/組織の情報は、LIFESEQ GOLD データベース(Incyte Genomics, Palo Alto CA)から得ることができる。
【0308】
(8 EXMESをコードするポリヌクレオチドの伸長)
完全長のポリヌクレオチドもまた、完全長分子の適切な断片から設計したオリゴヌクレオチドプライマーを用いて該断片を伸長させて生成した。或るプライマーは既知の断片の5'伸長を開始するべく合成し、別のプライマーは既知の断片の3'伸長を開始するべく合成した。開始プライマー群の設計にはOLIGO 4.06ソフトウェア(National Biosciences)或いは別の適切なプログラムを用い、長さが約22〜30ヌクレオチド、GC含有率が約50%以上となり、約68〜約72℃の温度で標的配列にアニーリングするようにした。ヘアピン構造及びプライマー−プライマー二量体を生ずるようなヌクレオチド群の伸長は、全て回避した。
【0309】
配列を伸長するために、選択されたヒトcDNAライブラリを用いた。2段階以上の伸長が必要又は望ましい場合には、付加的プライマー或いはプライマーのネステッドセットを設計した。
【0310】
高忠実度の増幅が、当業者によく知られている方法を利用したPCR法によって得られた。PCRは、PTC-200サーマルサイクラー(MJ Research, Inc.)を用いて96ウェルプレート内で行った。反応混合液は、鋳型DNA及び200nmolの各プライマーを有する。また、Mg2 +と(NH4)2SO4と2−メルカプトエタノールを含む反応バッファー、Taq DNAポリメラーゼ(Amersham Biosciences)、ELONGASE酵素(Invitrogen)、Pfu DNAポリメラーゼ(Stratagene)を含む。プライマーの組、PCI AとPCI Bに対して以下のパラメータで増幅を行った。ステップ1:94℃で3分間、ステップ2:94℃で15秒間、ステップ3:60℃で1分間、ステップ4:68℃で2分間、ステップ5:ステップ2、3及び4を20回繰り返す、ステップ6:68℃で5分間、ステップ7:4℃で保存。別法では、プライマー対であるT7とSK+とに対して以下のパラメータで増幅を行った。ステップ1:94℃で3分間、ステップ2:94℃で15秒間、ステップ3:57℃で1分間、ステップ4:68℃で2分間、ステップ5:ステップ2、3及び4を20回繰り返す、ステップ6:68℃で5分間、ステップ7:4℃で保存。
【0311】
各ウェルのDNA濃度は、1X TE及び0.5μlの希釈していないPCR産物に溶解した100μlのPICOGREEN定量試薬(0.25(v/v) PICOGREEN; Molecular Probes, Eugene OR)を不透明な蛍光光度計プレート(Corning Costar, Acton MA)の各ウェルに分配してDNAが試薬と結合できるようにして測定する。サンプルの蛍光を計測してDNAの濃度を定量すべく、プレートをFluoroskan II (Labsystems Oy, Helsinki, Finland)でスキャンした。反応混合物のアリコット5〜10μlを1%アガロースゲル上で電気泳動法によって解析し、どの反応が配列の伸長に成功したかを判定した。
【0312】
伸長したヌクレオチドは、脱塩及び濃縮して384穴プレートに移し、CviJIコレラウイルスエンドヌクレアーゼ(Molecular Biology Research, Madison WI)を用いて消化し、音波処理又はせん断し、pUC 18ベクター(Amersham Biosciences)への再連結を行った。ショットガン・シークエンシングのために、消化したヌクレオチドを低濃度(0.6〜0.8%)のアガロースゲル上で分離し、断片を切除し、寒天をAgar ACE(Promega)で消化した。伸長させたクローンをT4リガーゼ(New England Biolabs, Beverly MA)を用いてpUC 18ベクター(Amersham Biosciences)に再連結し、Pfu DNAポリメラーゼ(Stratagene)で処理して制限部位のオーバーハングを満たし、適格な大腸菌細胞に形質移入した。形質移入した細胞群の選択を、抗生物質を含む培地で行い、それぞれのコロニーを採取し、LB/2Xカルベニシリン培養液中の384ウェルプレート群に37℃で一晩培養した。
【0313】
細胞を溶解して、Taq DNAポリメラーゼ(Amersham Biosciences)及びPfu DNAポリメラーゼ(Stratagene)を用いて以下の手順でDNAをPCR増幅した。ステップ1:94℃で3分間、ステップ2:94℃で15秒間、ステップ3:60℃で1分間、ステップ4:72℃で2分間、ステップ5:ステップ2、3及び4を29回繰り返す、ステップ6:72℃で5分間、ステップ7:4℃で保存。上記したようにPICOGREEN試薬(Molecular Probes)でDNAを定量化した。DNAの回収率が低いサンプルは、上記と同一の条件を用いて再増幅した。サンプルは20%ジメチルスルホキシド(1:2,v/v)で希釈し、DYENAMICエネルギー移動シークエンシングプライマー、及びDYENAMIC DIRECT kit(Amersham Biosciences)又はABI PRISM BIGDYEターミネーターサイクルシークエンシングレディ反応キット(Terminator cycle sequencing ready reaction kit)(Applied Biosystems)を用いてシークエンスした。
【0314】
同様に、上記手順を用いて完全長ポリヌクレオチドを検証した。或いは、完全長ポリヌクレオチドを用い、上記手順で、そのような伸長のために設計したオリゴヌクレオチド類と、或る適切なゲノムライブラリとを用いて5'調節配列を得た。
【0315】
(9 EXMESがコードするポリヌクレオチドのSNP(一塩基多型)の同定)
一塩基多型性(SNP)として知られる一般的なDNA配列変異体は、LIFESEQデータベース(Incyte Genomics)を用いてSEQ ID NO:23-44において同定された。実施例3に記述されているように同じ遺伝子からの配列は共にクラスタ化され、アセンブリされ、遺伝子内の全ての配列変異体を同定することができた。一連のフィルタから成るアルゴリズムは、SNPを他の配列変異体から区別するために用いられる。前段フィルタ群が、最小限のPhredクオリティスコア15を要求することにより大多数のベースコールのエラーを除去し、また、配列アラインメントエラーと、ベクター配列、キメラ、スプライス変異体の、不適切なトリミングに起因するエラーを除去した。先進の染色体分析の自動化した手順により、推定上のSNPの近傍の本来のクロマトグラムファイルを分析した。クローンエラ−フィルタ群は、統計的に生み出されたアルゴリズムを用いて、逆転写酵素、ポリメラーゼ或いは体細胞性突然変異によって引き起こされる等の、実験プロセッシング中に導入されたエラ−を同定した。クラスタリングエラ−フィルタ群は、統計的に生み出されたアルゴリズムを用いて、近縁の相同体或いは偽遺伝子のクラスタリングに起因するエラー、又は非ヒト配列によるコンタミネーションによるエラ−を同定した。フィルタの最終セットは、免疫グロブリン又はT細胞受容体に見出される重複とSNPを除去した。
【0316】
異なる4つのヒト集団のSNP部位における対立遺伝子頻度を分析するために、高処理MASSARRAYシステム(Sequenom, Inc.)を用いる質量分析によって、更なる特徴付けのためにいくつかのSNPが選択された。白人集団は92人(男性46人、女性46人)から成り、そのうち83人はユタ州、4人はフランス、3人はベネズエラ、2人はアーミッシュの出身である。アフリカ系集団は194人(男性97人、女性97人)から成り、全てアフリカ系米国人である。ラテンアメリカ系集団は324人(男性162人、女性162人)から成り、全てメキシコ出身である。アジア系の集団は126人(男性64人、女性62人)からなり、中国人43%、日本人31%、コリアン13%、ベトナム人5%、他のアジア系8%の親の構成が報告されている。対立遺伝子頻度は最初に白人集団で分析された。この集団で対立遺伝子変異を示さないSNPの時には他の3つの集団で更に試験されない場合もあった。
【0317】
(10 個々のハイブリダイゼーションプローブの標識化及び使用)
SEQ ID NO:23-44から導き出されたハイブリダイゼーションプローブを用いて、cDNA、mRNA、又はゲノムDNAをスクリーニングする。約20塩基対からなるオリゴヌクレオチドの標識について特に記載するが、より大きなヌクレオチド断片に対しても本質的に同一の手順が用いられる。オリゴヌクレオチドは、OLIGO 4.06ソフトウェア(National Biosciences)等の最新ソフトウェアを用いて設計し、各オリゴマー50pmolと、[γ-32P]アデノシン3リン酸(Amersham Biosciences)250μCiと、T4ポリヌクレオチドキナーゼ(DuPont NEN, Boston MA)とを化合させることにより標識する。標識したオリゴヌクレオチドは、SEPHADEX G-25超細繊分子サイズ排除デキストラン ビーズカラム(Amersham Biosciences)を用いて実質的に精製する。下記のいずれか1つのエンドヌクレアーゼで消化されたヒトゲノムDNAの、典型的な膜ベースのハイブリダイゼーション解析において、毎分107カウントの標識されたプローブを含むアリコットを用いる。すなわちAse I、Bgl II、Eco RI、Pst I、Xba I、又はPvu II(DuPont NEN)である。
【0318】
各消化物から得たDNAは、0.7%アガロースゲル上で分画してナイロン膜(Nytran Plus, Schleicher & Schuell, Durham NH)に移す。ハイブリダイゼーションは、40℃で16時間行う。非特異的シグナルを除去するため、例えば0.1×クエン酸ナトリウム食塩水及び0.5%ドデシル硫酸ナトリウムに一致する条件下で、ブロットを室温で順次洗浄する。オートラジオグラフィー又はそれに代わるイメージング手段を用いてハイブリダイゼーションパターンを視覚化し、比較する。
【0319】
(11 マイクロアレイ)
マイクロアレイの表面上でアレイエレメントの結合又は合成は、フォトリソグラフィ、ピエゾ式印刷(インクジェット印刷、前出のBaldeschweiler等を参照)、機械的マイクロスポッティング技術及びこれらから派生したものを用いて達成することが可能である。上記各技術において基板は、均一な、無孔の表面を持つ固体とすべきである(Schena(1999)前出)。推奨する基板には、シリコン、シリカ、スライドガラス、ガラスチップ及びシリコンウエハがある。或いは、ドットブロット法又はスロットブロット法に類似した手順を利用して、熱的、紫外線的、化学的又は機械的結合手順を用いて基板の表面にエレメントを配置及び結合させてもよい。通常のアレイは、利用可能な、当業者に公知の方法と機械とを用いて作製でき、任意の適正数のエレメントを有し得る(例えばSchena, M. 他(1995) Science 270:467-470、Shalon, D.他(1996) Genome Res.6:639-645、Marshall, A.及びJ. Hodgson (1998) Nat. Biotechnol. 16:27-31を参照)。
【0320】
完全長cDNA、発現配列タグ(EST)、又はその断片又はオリゴマーが、マイクロアレイのエレメントと成り得る。ハイブリダイゼーションに好適な断片又はオリゴマーを、LASERGENEソフトウェア(DNASTAR)等の本技術分野で公知のソフトウェアを用いて選択することが可能である。アレイエレメント群を、生体サンプル中のポリヌクレオチド群とハイブリダイズする。生体サンプル中のポリヌクレオチドは、検出を容易にするために蛍光標識などの分子タグに抱合させる。ハイブリダイゼーション後、生体サンプルからのハイブリダイズされていないヌクレオチドを除去し、蛍光スキャナを用いて各アレイエレメントでのハイブリダイゼーションを検出する。或いは、レーザ脱離及び質量スペクトロメトリを用いてもハイブリダイゼーションを検出し得る。マイクロアレイ上の或るエレメントにハイブリダイズする各ポリヌクレオチドの、相補性の度合と相対存在度とを算定し得る。 一実施例におけるマイクロアレイの調製及び使用について、以下に詳述する。
【0321】
組織又は細胞サンプルの調製
グアニジニウムチオシアネート法を用いて組織サンプルから全RNAを単離し、オリゴ(dT)セルロース法を用いてポリ(A)+RNAを精製する。各ポリ(A)+RNAサンプルを逆転写するため、MMLV逆転写酵素を用い、また、0.05pg/μlのオリゴ(dT)プライマー(21mer)、1×第一鎖バッファ、0.03unit/μlのRNアーゼ阻害因子、500μMのdATP、500μMのdGTP、500μMのdTTP、40μMのdCTP、40μMのdCTP-Cy3(BDS)又はdCTP-Cy5(Amersham Biosciences)を用いる。逆転写反応は、GEMBRIGHTキット(Incyte)を用い、200ngのポリ(A)+RNAを含有する体積25mlで行う。特異的対照ポリ(A)+RNAは、非コード酵母ゲノムDNAからin vitro転写により合成する。37℃で2時間インキュベートした後、各反応サンプル(1つはCy3、もう1つはCy5標識)は、2.5mlの0.5M水酸化ナトリウムで処理し、85℃で20分間インキュベートし、反応を停止させてRNAを分解させる。サンプルは、2つの連続するCHROMA SPIN 30ゲル濾過スピンカラム(CLONTECH Laboratories, Inc. (CLONTECH), Palo Alto CA)を用いて精製する。 混合後、2つの反応サンプルは、1mlのグリコーゲン(1mg/ml)、60mlの酢酸ナトリウム及び300mlの100%エタノールを用いてエタノール析出させる。サンプルは次に、SpeedVAC(Savant Instruments Inc., Holbrook NY)を用いて乾燥して仕上げ、14μl 5×SSC/0.2% SDS中で再懸濁する。
【0322】
マイクロアレイの調製
本発明の配列を用いて、アレイエレメントを生成する。各アレイエレメントは、クローン化したcDNAインサートを有するベクターを含有する細菌細胞から増幅する。PCR増幅は、cDNAインサートに隣接するベクター配列に相補的なプライマーを用いる。30サイクルのPCRで1〜2ngの初期量から5μgより大きい最終量までアレイエレメントを増幅する。増幅したアレイエレメントは、SEPHACRYL-400(Amersham Biosciences)を用いて精製する。
【0323】
精製したアレイエレメントは、ポリマーコートされたスライドグラス上に固定する。顕微鏡スライドグラス(Corning)は、処理の間及び処理後に0.1%のSDS及びアセトン中で超音波処理をかけ、蒸留水で充分に洗浄する。スライドグラスは、4%フッ化水素酸(VWR Scientific Products Corporation (VWR), West Chester PA)中でエッチングし、蒸留水中で充分に洗浄し、95%エタノール中で0.05%アミノプロピルシラン(Sigma)を用いてコーティングする。コーティングしたスライドガラスは、110℃のオーブンで硬化させる。
【0324】
米国特許第5,807,522号で説明されている方法を用いて、コーティングしたガラス基板にアレイエレメントを付加する。該特許は、引用を以って本明細書の一部となす。平均濃度が100ng/μlのアレイエレメントDNA1μlを高速機械装置により開放型キャピラリープリンティングエレメント(open capillary printing element)に充填する。装置はここで、スライド毎に約5nlのアレイエレメントサンプルを加える。
【0325】
マイクロアレイには、STRATALINKER UV架橋剤(Stratagene)を用いてUV架橋する。マイクロアレイは、室温において0.2%SDSで1度洗浄し、蒸留水で3度洗浄する。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)(Tropix, Inc., Bedford MA)中の0.2%カゼイン中において60℃で30分間マイクロアレイをインキュベートした後、前に行ったように0.2%SDS及び蒸留水で洗浄することにより、非特異結合部位をブロックする。
【0326】
ハイブリダイゼーション
ハイブリダイゼーション反応は、5×SSC、0.2%SDSハイブリダイゼーション緩衝液中のCy3及びCy5標識したcDNA合成生成物を各0.2μg含む9μlのサンプル混合体を有する。サンプル混合体は、65℃まで5分間加熱し、マイクロアレイ表面上で等分して1.8cm2 のカバーガラスで覆う。アレイは、顕微鏡用スライドより僅かに大きい空洞を有する防水チェンバーに移す。チェンバーのコーナーに140μlの5×SSCを加えることにより、チェンバー内部を湿度100%に保持する。アレイを含むチェンバーは、60℃で約6.5時間インキュベートする。アレイは、第1洗浄緩衝液中(1×SSC、0.1%SDS)において45℃で10分間洗浄し、第2洗浄緩衝液中(0.1×SSC)において各々45℃で10分間、3度洗浄して乾燥させる。
【0327】
検出
レポーター標識ハイブリダイゼーション複合体は、Cy3の励起のためには488nm、Cy5の励起のためには632nmでスペクトル線を発生し得るInnova 70混合ガス10 Wレーザ(Coherent, Inc., Santa Clara CA)を備えた顕微鏡で検出する。励起レーザ光の焦点をアレイ上に置くため、20×顕微鏡対物レンズ(Nikon, Inc., Melville NY)を用いる。アレイを含むスライドを、顕微鏡の、コンピュータ制御のX-Yステージに置き、対物レンズを通してラスタースキャンする。本実施例で用いる1.8cm×1.8cmのアレイは、解像度20μmでスキャンする。
【0328】
2回の異なるスキャンで、混合ガスマルチラインレーザは2つの蛍光色素を連続的に励起する。発光された光は、波長に基づき分離され、2つのフルオロフォアに対応する2つの光電子増倍管検出器(PMT R1477, Hamamatsu Photonics Systems, Bridgewater NJ)に送られる。好適なフィルタ群をアレイと光電子増倍管との間に設置して、シグナルをフィルタする。用いるフルオロフォアの最大発光の波長は、Cy3では565nm、Cy5では650nmである。装置は両方の蛍光色素からのスペクトルを同時に記録し得るが、レーザ源において好適なフィルタを用いて、蛍光色素1つにつき1度スキャンし、各アレイを通常2度スキャンする。
【0329】
スキャンの感度は通常、既知濃度のサンプル混合体に添加されるcDNA対照種により生成されるシグナル強度を用いて較正する。アレイ上の特定の位置には相補的DNA配列が含まれ、その位置におけるシグナルの強度を、ハイブリダイズする種の重量比1:100,000に相関させる。 異なる源泉(例えば試験される細胞及び対照細胞など)からの2つのサンプルを、各々異なる蛍光色素で標識し、他と異なって発現した遺伝子を同定するために単一のアレイにハイブリダイズする場合には、その較正を、較正するcDNAのサンプルを2つの蛍光色素で標識し、ハイブリダイゼーション混合体に各々等量を加えることによって行う。
【0330】
光電子増倍管の出力は、IBMコンパチブルPCコンピュータにインストールされた12ビットRTI-835Hアナログ−ディジタル(A/D)変換ボード(Analog Devices, Inc., Norwood MA)を用いてディジタル化される。ディジタル化されたデータは、青色(低シグナル)から赤色(高シグナル)までの擬似カラー範囲へのリニア20色変換を用いてシグナル強度がマッピングされたようなイメージとして表示される。データは、定量的にも分析される。2つの異なる蛍光色素を同時に励起及び測定する場合には、各蛍光色素の発光スペクトルを用いて、データは先ず蛍光色素間の光学的クロストーク(発光スペクトルの重なりに起因する)を補正する。
【0331】
グリッドが蛍光シグナルイメージ上に重ねられ、それによって各スポットからのシグナルはグリッドの各エレメントに集められる。各エレメント内の蛍光シグナルは統合され、シグナルの平均強度に応じた数値が得られる。シグナル分析に用いるソフトウェアは、GEMTOOLS遺伝子発現分析プログラム(Incyte)である。少なくとも約2倍の発現変化、2.5以上のSB比、及び少なくとも40%のエレメントスポットサイズを示したアレイエレメントが、差次的発現を示したとしてGEMTOOLSプログラム(Incyte Genomics)で同定された。
【0332】
発現
例えば、SEQ ID NO:26の発現は、正常な組織に対して病変組織では下方制御されるが、これはマイクロアレイ分析で判定した。正常な脳組織の遺伝子発現プロファイルは、重度(2人)と軽度(1人)のアルツハイマー病(AD)を患う患者の扁桃、海馬、小脳、線条体、帯状の遺伝子発現プロファイルと比較された。 SEQ ID NO:26の発現は、3人すべての患者の扁桃、1人の重度のAD患者の海馬、軽度のAD患者の海馬、重度のADの2人目の患者の小脳で減少した。したがって、様々な実施様態でSEQ ID NO:26は下記の1つ或いはそれ以上で使用することができる。すなわち、i)アルツハイマー病治療のモニタリング、ii)アルツハイマー病の診断アッセイ、そしてiii)アルツハイマー病の治療法そして/或いは他の療法の開発である。
【0333】
更なる実施例では、SEQ ID NO:29とSEQ ID NO:32-34の発現は、未処理の細胞と比べて、処理の細胞において上方制御されたことが、マイクロアレイ分析により測定された。血清の存在下又は不存在下で成長する上皮細胞における表現型差異の基礎を成す分子機構を理解するために、血清の存在下又は不存在下で成長するMDA-mb-231細胞の遺伝子発現プロファイルが比較された。SEQ ID NO:29及びSEQ ID NO:32-34の発現が、血清の存在下で増加した。従って様々な実施様態において、SEQ ID NO:7をコードするSEQ ID NO:29、及びSEQ ID NO:10-12をそれぞれコードするSEQ ID NO:32-34は、下記の1つ以上の目的で用いられ得る。:i)血清の存在下及び不存在下での上皮細胞における表現型差異の基礎を成す分子機構を理解するための診断アッセイ。
【0334】
更なる実施例では、SEQ ID NO:29とSEQ ID NO:32-34の発現は、TNF-α処理の細胞においてTNF-α未処理の細胞に比べて下方制御されたことが、マイクロアレイ分析により測定された。HAECは、1、2、4、6、8、10、24、及び48時間、TNF-αで処理した。これらのTNF-α処理された細胞は、未処理のHAECと比較された。SEQ ID NO:29とSEQ ID NO:32-34の発現は、最小6時間の処理後のTNF-α処理細胞で減少しており、48時間処理までそのレベルを維持した。HAECをTNF-αで処理する間、差次的に発現された血管組織遺伝子は、血管緊張調節、凝血及び血栓症、アテローム硬化、炎症、また数種の感染症等の、生理学的と病態生理学的な過程の両者で、広範囲のマーカーとして役割を果たし得る。更にmRNA発現のレベルでのTNF-αへの内皮細胞応答のモニタリングは、TNF-αシグナル伝達経路と内皮細胞生物学の両者のよりよい理解に不可欠な情報を提供する。従って様々な実施様態において、SEQ ID NO:7をコードするSEQ ID NO:29、及びSEQ ID NO:10-12をそれぞれコードするSEQ ID NO:32-34は、下記の1つ以上の目的で用いられ得る。:i)血管緊張調節、凝血及び血栓症、アテローム硬化、炎症、また数種の感染症の治療のモニタリング、ii)血管緊張調節、凝血及び血栓症、アテローム硬化、炎症、また数種の感染症の診断アッセイ、そしてiii)血管緊張調節、凝血及び血栓症、アテローム硬化、炎症、また数種の感染症の治療そして/或いはは他の療法の開発である。
【0335】
別の実施例では、SEQ ID NO:29とSEQ ID NO:32-34の発現は、TNF-α未処理の細胞と比べてTNF-α処理の細胞において下方制御されたことが、マイクロアレイ分析により測定された。HUAECは、1、2、4、8、及び24時間、TNF-αで処理した。これらのTNF-α処理された細胞が、未処理のHUAECと比較された。SEQ ID NO:29とSEQ ID NO:32-34の発現は、最小8時間の処理後のTNF-α処理細胞で下方制御されており、24時間処理までそのレベルを維持した。HUAECをTNF-αで処理する間、差次的に発現された血管組織遺伝子は、血管緊張調節、凝血及び血栓症、アテローム硬化、炎症、また数種の感染症等の、生理学的と病態生理学的な過程の両者で、広範囲のマーカーとして役割を果たし得る。更にmRNA発現のレベルでのTNF-αへの内皮細胞応答のモニタリングは、TNF-αシグナル伝達経路と内皮細胞生物学の両者のよりよい理解に不可欠な情報を提供する。従って様々な実施様態において、SEQ ID NO:7をコードするSEQ ID NO:29とSEQ ID NO:10-12をそれぞれコードするSEQ ID NO:32-34は、下記の1つ以上の目的で用いられ得る。:i)血管緊張調節、凝血及び血栓症、アテローム硬化、炎症、また数種の感染症の治療のモニタリング、ii)血管緊張調節、凝血及び血栓症、アテローム硬化、炎症、また数種の感染症の診断アッセイ、そしてiii)血管緊張調節、凝血及び血栓症、アテローム硬化、炎症、また数種の感染症の治療そして/或いはは他の療法の開発である。
【0336】
別の実施例では、SEQ ID NO:29、SEQ ID NO:32、SEQ ID NO:34の発現は、老化細胞で少なくとも2倍下方制御されたことが、マイクロアレイ分析により測定された。従って様々な実施様態において、SEQ ID NO:7をコードするSEQ ID NO:29、SEQ ID NO:10をコードするSEQ ID NO:32、及びSEQ ID NO:12をコ−ドするSEQ ID NO: 34は、下記の1つ以上の目的で用い得る:i)老化の診断アッセイ、及びii)老化の治療そして/又は他の療法の開発である。
【0337】
別の実施例では、SEQ ID NO:29とSEQ ID NO:32-34の発現は、一致する提供者に由来する正常な肺組織と比較して腫瘍性の肺組織において下方制御されたことが、マイクロアレイ分析によって測定された。SEQ ID NO:29及びSEQ ID NO:32-34の発現が、11人の提供者中3人で減少した。したがって、様々な実施様態でSEQ ID NO:29とSEQ ID NO:32-34は下記の1つ以上の目的で使用することができる。すなわち、i)肺癌の治療のモニタリング、ii)肺癌の診断アッセイ、そしてiii)肺癌の治療法そして/或いは他の療法の開発である。
【0338】
別の実施例では、SEQ ID NO:35-37の発現は、一致する提供者に由来する正常な肺組織と比較して腫瘍性の肺組織において上方制御されたことが、マイクロアレイ分析によって測定された。SEQ ID NO:35-37は、11人中の同一の1人の提供者からの腫瘍性組織において少なくとも2倍上方制御されることが見出された。肺癌の発生と進行に伴う遺伝子発現パターンの解析はこの病気の生物学的基盤に対するすばらしい洞察を生み出すだろうし、また診断と治療の改善にもつながるだろう。したがって、様々な実施様態でSEQ ID NO:13-15をそれぞれコードするSEQ ID NO:35-37は下記の1つ以上の目的で使用することができる。すなわち、i)肺癌の治療のモニタリング、ii)肺癌の診断アッセイ、そしてiii)肺癌の治療法そして/或いは他の療法の開発である。
【0339】
例えば、SEQ ID NO:41の発現は、未処理の組織に比較してデキサメタゾンで処理された細胞では下方制御されるが、これはマイクロアレイ分析で判定した。コンフルエント前期のC3A細胞は、1μM、10μM、100μMの各濃度で、1、3、6時間の間、デキサメタゾンで処理された。処理した細胞は、未処理のコンフルエント前期のC3A細胞と比較された。したがって、様々な実施様態でSEQ ID NO:41は下記の1つ以上の目的で使用することができる。すなわち、i)喘息、及び他の自己免疫/炎症疾患の治療のモニタリング、ii)喘息、及び他の自己免疫/炎症疾患の診断アッセイ、そしてiii)喘息、及び他の自己免疫/炎症疾患の治療そして/或いはは他の療法の開発である。
【0340】
別の実施例では、SEQ ID NO:41の発現は、正常な卵巣組織に比較して卵巣腫瘍組織では下方制御されるが、これはマイクロアレイ分析で判定した。79才の女性提供者に由来する正常な卵巣が、同一の提供者に由来する卵巣腫瘍と比較された(Huntsman Cancer Institute, Salt Lake City, UT)。したがって、様々な実施様態でSEQ ID NO:41は下記の1つ以上の目的で使用することができる。すなわち、i)卵巣癌、及び他の細胞増殖異常の治療のモニタリング、ii)卵巣癌、及び他の細胞増殖異常の診断アッセイ、そしてiii)卵巣癌、及び他の細胞増殖異常の治療そして/或いはは他の療法の開発である。
【0341】
(12 相補的ポリヌクレオチド)
EXMESをコードする配列或いはその任意の一部に対して相補的な配列は、天然のEXMESの発現を検出、低減又は阻害するために用いられる。約15〜30塩基対を含むオリゴヌクレオチドの使用について記すが、これより小さな或いは大きな配列の断片の場合でも、本質的に同じ手順を用いる。OLIGO4.06ソフトウェア(National Biosciences)とEXMESをコードする配列とを用いて、適切なオリゴヌクレオチドを設計する。転写を阻害するためには、最も独特な5'配列から相補的オリゴヌクレオチドを設計し、これを用いて、プロモーターがコーディング配列に結合するのを防止する。翻訳を阻害するためには、相補的なオリゴヌクレオチドを設計して、リボソームがEXMESをコードする転写物に結合するのを阻害する。
【0342】
(13 EXMESの発現)
EXMESの発現及び精製は、細菌若しくはウイルスを基にした発現系を用いて達成される。細菌内でEXMESを発現させるには、抗生物質耐性遺伝子と、cDNA転写レベルを高める誘導性プロモーターとを有する好適なベクターにcDNAをサブクローニングする。このようなプロモーターの例には、lacオペレーター調節エレメントと併用するT5又はT7バクテリオファージプロモーター及び、trp-lac (tac)ハイブリッドプロモーターが含まれるが、これらに限定するものではない。組換えベクターを、BL21(DE3)等の好適な細菌宿主に形質転換する。抗生物質耐性をもつ細菌が、イソプロピルβ−Dチオガラクトピラノシド(IPTG)で誘発されるとEXMESを発現する。真核細胞でのEXMESの発現は、昆虫細胞株又は哺乳動物細胞株に一般にバキュロウイスルスとして知られているAutographica californica核多角体病ウイルス(AcMNPV)を感染させて行う。バキュロウイルスの非必須ポリヘドリン遺伝子をEXMESをコードするcDNAと置換するには、相同組換えを行うか、或いは、トランスファープラスミドの媒介を伴う、細菌の媒介による遺伝子転移を行う。ウイルスの感染力は維持され、強力なポリヘドリンプロモーターによって高いレベルのcDNAの転写が行われる。組換えバキュロウイルスは、多くの場合はSpodoptera frugiperda(Sf9)昆虫細胞への感染に用いられるが、ヒト肝細胞の感染にも用いられることもある。後者の感染の場合は、バキュロウイルスの更なる遺伝的変更が必要になる(Engelhard, E.K.他(1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:3224-3227、Sandig, V.他(1996) Hum.Gene Ther. 7:1937-1945を参照)。
【0343】
殆どの発現系では、EXMESが、例えばグルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)と、又はFLAGや6-Hisなどのペプチドエピトープ標識と合成された融合タンパク質となるため、未精製の細胞溶解物からの組換え融合タンパク質の親和性ベースの精製を、迅速に1ステップで行い得る。GSTは日本住血吸虫からの26kDaの酵素であり、タンパク質の活性及び抗原性を維持した状態で、固定化したグルタチオン上での融合タンパク質の精製を可能とする(Amersham Biosciences)。精製の後、GST部分を特定の操作部位でEXMESからタンパク分解的に切断できる。FLAGは8アミノ酸のペプチドであり、市販されているモノクローナル及びポリクローナル抗FLAG抗体(Eastman Kodak)を用いた免疫親和性精製を可能にする。6ヒスチジン残基が連続して伸長した6-Hisは、金属キレート樹脂上での精製を可能にする(QIAGEN)。タンパク質の発現及び精製の方法は、前出のAusubel(1995)10章、16章に記載されている。これらの方法で精製したEXMESを直接用いて以下の実施例 17 、 18 、 19 、及び 20の、適用可能なアッセイを行うことができる。
【0344】
(14 機能的アッセイ)
EXMESの機能は、哺乳動物細胞培養系において生理的に高められたレベルでの、EXMESをコードする配列の発現によって算定する。cDNAを高いレベルで発現する強いプロモーターを持つ哺乳動物発現ベクターにcDNAをサブクローニングする。選択されるベクターとしては、PCMV SPORTプラスミド(Invitrogen, Carlsbad CA)及びPCR 3.1プラスミド(Invitrogen)があり、どちらもサイトメガロウイルスプロモーターを持つ。リポソーム製剤或いは電気穿孔法を用いて、5〜10μgの組換えベクターをヒト細胞株、例えば内皮由来又は造血由来の細胞株に、一過的に形質移入する。更に、標識タンパク質をコードする配列を含む1〜2μgのプラスミドを同時に形質移入する。標識タンパク質の発現により、形質移入細胞と非形質移入細胞を区別する手段が与えられる。 また、標識タンパク質の発現によって、cDNAの組換えベクターからの発現を正確に予想できる。標識タンパク質は、例えば緑色蛍光タンパク質(GFP;Clontech)、CD64又はCD64-GFP融合タンパク質から選択できる。自動化された、レーザ光学に基づく技術であるフローサイトメトリー(FCM)を用いて、GFP又はCD64-GFPを発現する形質移入された細胞を同定し、その細胞のアポトーシス状態や他の細胞特性を評価する。FCMは、細胞死に先行するか或いは同時に発生する現象を診断する蛍光分子の取込を検出して計量する。このような現象として挙げられるのは、ヨウ化プロピジウムによるDNA染色によって計測される核DNA含量の変化、前方光散乱と90°側方光散乱によって計測される細胞サイズと粒度の変化、ブロモデオキシウリジンの取込量の低下によって計測されるDNA合成の下方調節、特異抗体との反応性によって計測される細胞表面及び細胞内におけるタンパンク質の発現の変化、及びフルオレセイン抱合したアネキシンVタンパク質の細胞表面への結合によって計測される原形質膜組成の変化とがある。フローサイトメトリー法については、Ormerod, M.G.(1994)Flow Cytometry, Oxford, New York NYに記述がある。
【0345】
遺伝子発現に与えるEXMESの影響は、EXMESをコードする配列と、CD64又はCD64-GFPのどちらかとが形質移入された、高度に精製された細胞集団を用いて評価することができる。CD64又はCD64-GFPは、形質移入された細胞表面で発現し、ヒト免疫グロブリンG(IgG)の保存領域と結合する。形質移入された細胞と形質移入されていない細胞とは、ヒトIgGかCD64に対する抗体のどちらかで被覆された磁気ビーズを用いて効率的に分離できる(DYNAL, Lake Success NY)。mRNAは、当業者に周知の方法で細胞から精製できる。EXMESと、目的とする他の遺伝子とをコードするmRNAの発現は、ノーザン分析やマイクロアレイ技術で分析できる。
【0346】
(15 EXMESに特異的な抗体の作製)
実質的に精製されたEXMESを、ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(PAGE;例えば、Harrington, M.G.(1990)Methods Enzymol 182:488-495を参照)又は他の精製技術を用いて、標準プロトコルで動物(ウサギ、マウス等)を免疫化して抗体を産出する。
【0347】
別法では、EXMESアミノ酸配列を、LASERGENEソフトウェア(DNASTAR)を用いて解析して免疫原性の高い領域を判定し、対応するオリゴペプチドを合成してこれを用いて当業者に周知の方法で抗体を生産する。C末端付近の或いは親水性領域内のエピトープなどの適切なエピトープの選択方法については、当分野に記述が多い(例えば、前出のAusubel, 1995, 11章を参照)。
【0348】
通常は、長さ約15残基のオリゴペプチドを、Fmocケミストリを用いるABI 431A ペプチドシンセサイザ(Applied Biosystems)を用いて合成し、N-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)を用いた反応によってKLH(Sigma-Aldrich, St. Louis MO)に結合させて、免疫原性を高める(前出のAusubel, 1995等を参照)。完全フロイントアジュバントにおいて、オリゴペプチド-KLH複合体を用いてウサギを免疫化する。得られた抗血清の抗ペプチド活性及び抗EXMES活性を検査するには、ペプチド又はEXMESを基板に結合し、1%BSAを用いてブロッキング処理し、ウサギ抗血清と反応させて洗浄し、更に放射性ヨウ素標識されたヤギ抗ウサギIgGと反応させる。
【0349】
(16 特異的抗体を用いる天然EXMESの精製)
天然EXMES或いは組換えEXMESを実質的に精製するため、EXMESに特異的な抗体群を用いるイムノアフィニティークロマトグラフィーを行う。イムノアフィニティーカラムは、CNBr-活性化したSEPHAROSE(Amersham Biosciences)のような活性化クロマトグラフィー用レジンと抗EXMES抗体とを共有結合させることにより形成する。結合後に、製造者の使用説明書に従ってこのレジンをブロックし、洗浄する。
【0350】
EXMESを含む培養液をイムノアフィニティーカラムに通し、EXMESを優先的に吸着できる条件で(例えば、界面活性剤の存在下において高イオン強度のバッファーで)そのカラムを洗浄する。そのカラムを、抗体とEXMESとの結合を切るような条件で(例えば、或るpH2〜3のバッファー、或いは高濃度の、例えば尿素又はチオシアン酸イオンなどのカオトロープで)溶出させ、EXMESを収集する。
【0351】
(17 EXMESと相互作用する分子の同定)
EXMES、又は生物学的に活性なその断片を、125Iボルトンハンター試薬で標識する(例えばBolton A.E.及びW.M. Hunter (1973) Biochem. J. 133:529-539を参照)。マルチウェルプレートに予め配列しておいた候補の分子を、標識したEXMESと共にインキュベートし、洗浄して、標識したEXMES複合体を有する全てのウェルをアッセイする。様々なEXMES濃度で得られたデータを用いて、EXMESの数量、候補分子との親和性及び会合についての値を計算する。
【0352】
別法では、EXMESと相互作用する分子を、Fields, S.及びO. Song(1989, Nature 340:245-246)に記載の酵母2−ハイブリッドシステム(yeast two-hybrid system)やMATCHMAKERシステム(Clontech)などの2−ハイブリッドシステムに基づいた市販のキットを用いて分析する。
【0353】
EXMESは又はイスループット型の酵母2ハイブリッドシステムを使用するPATHCALLINGプロセス(CuraGen Corp., New Haven CT)に用いて、遺伝子の2大ライブラリによってコードされるタンパク質間の全ての相互作用を判定できる(Nandabalan, K. 他 (2000) U.S. Patent No. 6,057,101)。
【0354】
(18 EXMES活性の実証)
EXMES活性は、幾つかの方法の1つによって測定される。成長因子活性は、スイスマウスの3T3細胞におけるDNA合成の刺激により測定される(McKay, I.及びI. Leigh, 編集. (1993) Growth Factors: A Practical Approach, Oxford University Press, New York, NY)。DNA合成の開始は、細胞が有糸分裂周期に入ったことと後に分割を受けるコミットメントを示す。3T3細胞は、有糸分裂促進性成長因子だけでなく、胚の誘発に関与するほとんどの成長因子に応答でき得る。この能力が可能であるのは、幾つかの成長因子により実証されたin vivoでの特異性が必ずしも生得的なものではなく、応答する組織により決定されるためである。このアッセイにおいては、可変量のEXMES が、放射性DNA前駆物質である[3H]チミジンの存在中で静止状態3T3培養細胞へと加えられる。このアッセイのためのEXMESを得る手段は、組換えでも良く、生化学的な調製より得ても良い。酸沈殿し得るDNAへの[3H]チミジンの組み込みが、適切な時間間隔で測定され、組み込まれた量は新規に合成されたDNAの量に直接比例する。少なくとも100倍のEXMES濃度レンジにわたる線形の用量反応曲線は、成長因子活性を示す。ミリリットルあたりの活性のユニットは、50%の応答レベルを生じるEXMESの濃度として定義される。ここで、100%の応答レベルは、酸によって沈殿されるDNAへの[3H]チミジンの最大の取り込みを意味している。
【0355】
或いは、サイトカイン活性の為の或るアッセイは、白血球の増殖を測定する。このアッセイでは、新たに合成されるDNAへのトリチウム化チミジンの取込量は、増殖活性を推定するために用いられる。EXMESの可変量は、放射性DNA前駆分子である[3H]チミジンの存在下で顆粒球、単球、又はリンパ球等の培養した白血球に追加される。このアッセイのためのEXMESを得る手段は、組換えでも良く、生化学的な調製より得ても良い。酸沈殿し得るDNAへの[3H]チミジンの組み込みが、適切な時間間隔で測定され、組み込まれた量は新規に合成されたDNAの量に直接比例する。少なくとも100倍のEXMES濃度レンジにわたる線形の用量反応曲線は、EXMES活性を示す。ミリリットルあたりの活性のユニットは、50%の応答レベルを生じるEXMESの濃度として定義される。ここで、100%の応答レベルは、酸によって沈殿されるDNAへの[3H]チミジンの最大の取り込みを従来意味している。
【0356】
EXMESサイトカイン活性の別のアッセイは、白血球走化性を測定するためにBoydenマイクロチェンバー(Neuroprobe, Cabin John MD)を利用する(Vicari, A.P. 他 (1997) Immunity 7:291-301)。このアッセイでは、マクロファージ又は単球等の約105の遊走細胞がチャンバの上の区画の細胞培地に配置される。可変希釈のEXMESが、下方区画に配置される。5〜8ミクロンのポアを有するポリカーボネートフィルタ(Nucleopore, Pleasanton CA)により2つの区画は分離される。37℃で80分〜120分のインキュベーション後、フィルタはメタノール中で固定され、適当な標識試薬で染色した。フィルタの他の部位に遊走する細胞が、標準的な顕微鏡を用いて計数された。化学走化性指数は、培地だけが下方区画に存在する時に計数される遊走細胞の数によって、EXMESが下方区画に存在する時計数された遊走細胞の数を割ることにより計算される。化学走化性指数はEXMESの活性に比例する。
また、EXMESをコードするベクターで形質転換された細胞株又は組織は免疫ブロットを行うことによってEXMES活性をアッセイできる。細胞はβ-メルカプトエタノールの存在でSDS中で変性され、核酸はエタノール沈澱によって除去され、タンパク質はアセトン沈澱によって精製される。ペレットはpH 7.5の20mMトリス緩衝液で再懸濁し、EXMESに特異的な抗体で前もってコーティングされたプロテインGセファロースと共にインキュベートする。洗浄後、セファロースのビーズを電気泳動サンプル緩衝液中で煮沸し、溶出されたタンパク質をSDS-PAGE.にかける。SDS-PAGE は免疫ブロットのニトロセルロース膜に移し、一次抗体としてEXMESに特異的な抗体を用い、二次抗体として一次抗体に特異的な125Iで標識されたIgGを用いてブロット上のバンドを視覚化し定量することによって、EXMES活性を測定する。
【0357】
別法では、EXMES活性のアッセイで、分泌性の膜結合オルガネラ(細胞小器官)におけるEXMESの量を測定する。上述したように形質移入された細胞を採取し、溶解する。ライセートは、当業者に既知の、ショ糖密度勾配超遠心法などの方法で分画する。そのような方法は、ゴルジ体、ER、小膜結合小胞、及びその他の分泌細胞小器官のような、細胞内要素の隔離を可能とする。分割された細胞ライセート及び全体の細胞ライセートよりの免疫沈降は、EXMES特定抗体を用いて実行され、また免疫沈降サンプルはSDS-PAGE及び免疫ブロット技術を用いて解析される。全細胞ライセート中のEXMESに対する分泌性細胞小器官中のEXMES濃度は、分泌経路を通るEXMESの量に比例する。
EXMES活性の或るアッセイは、肝細胞成長因子(HGF)活性剤の抑制活性を測定する。 このアッセイでは、HGF活性剤(450 ng/ml)が0.05%のCHAPSを含有するPBS中の様々な濃度の精製されたEXMESと混合される。また酵素抑制剤複合体を形成するために37℃で30分間インキュベートする。
【0358】
混合液中の残りのHGF-変換活性は同量の一本鎖HGF(sc-HGF) (0.05% CHAPS含有PBS 1.5 μg/ml)と硫酸デキストラン(100 mg/ml, MWCO=500,000, Sigma)を加えた後、更に2時間インキュベートした後に、還元したゲル状態下でSDS-PAGEにより分析して測定した。ゲルはクーマシーブルーで染色し、sc-HGFとヘテロ二量体の量は染色したバンドをスキャンすることにより測定した。EXMESのHGF活性因子に対する抑制活性は、残りの一本鎖型のHGF全体に対する比率を計算することにより測定される(Shimomura, T.他. (1997) J. Biol. Chem. 272:6370-6376)。
【0359】
別法では、EXMES活性のためのアッセイで、培養細胞中の神経伝達の、刺激作用若しくは抑制を測定する。培養CHO繊維芽細胞をEXMESに曝す。エンドサイトーシスによるEXMES取り込み後に、これらの細胞を新鮮培養液で洗浄し、細胞全膜電位固定したアフリカツメガエル筋細胞を、EXMESを含まない媒質中の線維芽細胞の1つと接触させる。膜電流を、この筋細胞から記録する。対照値に対し増加若しくは減少した電流は、EXMESの神経修飾性効果を示している(Morimoto, T.他(1995)Neuron 15 : 689-696)。
【0360】
別法では、AMP結合活性の測定を、EXMESと32P標識したAMPとを混合させて行う。この反応溶液を37℃でインキュベートし、反応はトリクロロ酢酸の添加で終了させる。酸抽出物を中和し、ゲル電気泳動にかけて非結合標識を除去する。ゲル内に留まる放射活性が、EXMESの活性に比例する。
【0361】
(19 EXMES分泌アッセイ)
或る高処理アッセイを用いて、真核細胞内に分泌されるポリペプチドを同定しうる。このようなアッセイの1例では、ポリペプチド発現ライブラリを作製するため、5'に偏向したcDNAを、或るリーダーのないβラクタマーゼ遺伝子の5'末端に融合する。βラクタマーゼは便利な遺伝子レポーターである。理由は、この酵素が高い信号/ノイズ比と、低い内因性バックグラウンド活性とを示し、他のタンパク質に融合しても活性を保持するからである。或る2重プロモーター系によって、βラクタマーゼ融合ポリペプチドの発現を、細菌又は真核細胞でなしうる。これにはlac又はCMVプロモーターを各々用いる。
【0362】
ライブラリは先ず細菌(大腸菌など)に形質転換され、真核生物系で分泌されうる融合ポリペプチドをコードするライブラリメンバーが同定される。哺乳類シグナル配列は、βラクタマーゼ融合ポリペプチドが細菌のペリプラズムへ移動するよう指示する。ペリプラズムでこれはカルベニシリンへの抗生物質耐性を授ける。カルベニシリン選択された細菌の単離を固体培地で行い、個々のクローンを液体培地で成長させ、生じた培養物を用いてライブラリメンバープラスミドDNAを単離する。
【0363】
哺乳類細胞(293細胞など)の播種を96ウェル組織培養プレート上に、約40,000細胞/ウェルの密度で、フェノールレッドを含まない、100μl のDMEに10%ウシ胎児血清(FBS)( Life Technologies, Rockville, MD)を加えて行う。次の日に、精製プラスミドDNA(カルベニシリン耐性細菌から単離)を、15μlのOPTI-MEM I培養液(Life Technologies)で、形質移入すべき細胞の各ウェルに25μlの容量まで希釈する。別のプレートで、1μlのLF2000 Reagent(Life Technologies)の希釈を25μl/ウェルOPTI-MEM I中に行う。25μlの希釈したLF2000 Reagentを次に25μlの希釈したDNAと混合し、短時間混ぜ合わせ、インキュベートを20分間、室温で行う。生じたDNA-LF2000試薬複合体を次に、直接、293細胞の各ウェルに加える。細胞の形質移入はまた、適切な対照プラスミド(野生型βラクタマーゼ、リーダーのないβラクタマーゼ、又は例えばCD4融合したリーダーのないβラクタマーゼのいずれかを発現するプラスミド)で行う。形質移入の24時間後、約90μlの細胞培地のアッセイを37℃で、100 _MのNitrocefin(ニトロセフィン、Calbiochem, San Diego CA)及び0.5 mMのオレイン酸(Sigma Corp., St. Louis, MO)を用い、10 mMリン酸バッファー(pH 7.0)中でおこなう。ニトロセフィンはβラクタマーゼの基質であり、加水分解されると黄色から赤へ顕著に変色する。βラクタマーゼ活性のモニターを、20分間、マイクロタイタープレートリーダーにおいて486nmで行う。486nmでの色吸収の増加が、形質移入した細胞培地でのβラクタマーゼ融合ポリペプチドの分泌に一致する。これは、融合ポリペプチドにおける真核生物シグナル配列の存在の結果である。対応するライブラリメンバープラスミドDNAのポリヌクレオチド配列分析を次に用いて、シグナル配列をコードするcDNAを同定する(記載は米国特許出願09/803,317号、ファイル日は2001年3月9日)。
【0364】
例えば、SEQ ID NO:4はこのアッセイを用いて分泌タンパク質であることが示された。
【0365】
(20 免疫グロブリン活性の実証)
EXMES活性の或るアッセイでは、EXMESが血清からの抗原類を認識し沈殿させる能力を測定する。この活性の測定は、定量沈降反応で成し得る(Golub, E. S. 他(1987)Immunology: A Synthesis, Sinauer Associates, Sunderland, MA, 113-115ページ)。EXMESを、当分野で既知の方法で同位体標識する。一定量の標識EXMESに種々の血清濃度を加える。EXMES-抗原複合体を溶液から沈殿させ、遠心分離で収集する。沈殿性EXMES-抗原複合体の量は、沈殿物中に検出される放射性同位元素の量に比例する。沈殿性EXMES-抗原複合体の量を、血清濃度に対してプロットする。異なった血清濃度の特徴的沈降曲線が得られ、沈殿性EXMES抗原複合物の量は最初は血清中濃度の増加に比例して増加し、等価点を頂点とし、その後は血清中濃度の増加に比例して減少する。このように、沈澱性EXMES-抗原複合体の量は、抗原の制限量と過剰量の両方に対する感受性によって特徴付けられるEXMES活性の測定量である。
別法として、EXMES活性の或るアッセイは、細胞表面におけるEXMESの発現を測定する。EXMESをコードするcDNAを、非白血球細胞株に形質移入する。細胞表面タンパク質は、ビオチンで標識する(de la Fuente, M.A. 他 (1997) Blood 90:2398-2405)。EXMES特異抗体を用いて免疫沈降を行い、SDS-PAGE及び免疫ブロット技術を用いて免疫沈降サンプルを分析する。標識した免疫沈降剤と未標識免疫沈降剤の比は、細胞表面に発現したEXMESの量に比例する。
別法として、EXMES活性のアッセイは、EXMESの過剰発現によって誘発される細胞凝集の量を測定することで行われる。このアッセイにおいては、NIH3T3等の培養細胞にEXMESをコードするcDNAで形質移入する。このcDNAは強いプロモーターの制御下にある適切な哺乳動物発現ベクターに含まれている。緑色蛍光タンパク質(CLONTECH)などの蛍光標識タンパク質をコードするcDNAとの共形質移入を行うと、安定な形質移入体を同定するのに役立つ。形質移入された細胞と形質移入されない細胞で細胞の凝集(塊化)量を比較する。細胞の凝集量によりEXMESの活性を直接的に測定できる。
【0366】
当業者には、本発明の要旨及び精神から逸脱しない範囲での、本発明の記載した組成物、方法及びシステムの種々の修正及び変更の手段は自明であろう。本発明が新規であり、有用なタンパク質及びそのコードするポリヌクレオチドを提供することは高く評価されるであろう。また、これらは薬物発見及び疾患及び症状の検出、診断及び治療にこれらの組成物を使用する方法に用いられ得る。本発明について説明するにあたり幾つかの実施例に関連して説明を行ったが、本発明の請求の範囲が、そのような特定の実施例に不当に制限されるべきではないことを理解されたい。また、本発明をこのような実施態様の説明によって、開示した形態だけに網羅されるか、或いは、制限されるものと見なされるべきでもない。更に、一実施態様の要素は他の実施態様の一つ以上の要素と容易に組み合わされ得る。このような組い合わせによって本発明の範囲内で多数の実施態様が形成され得る。本発明の範囲は下記の請求項及びそれに相当するものによって定義することを意図するものである。
【0367】
(表の簡単な説明)
表1は、本発明の完全長ポリヌクレオチド及びポリペプチド実施例の命名の概略である。
【0368】
表2は、本発明のポリペプチド実施例のGenBank識別番号と、最も近いGenBank相同体の注釈(annotation)と、PROTEOMEデータベース識別番号と、PROTEOMEデータベース相同体群の注釈とを示す。各ポリペプチドとその相同体が一致する確率スコアも併せて示す。
【0369】
表3は、予測されるモチーフ及びドメインなど、本発明のポリヌクレオチド実施例の構造的特徴を、ポリペプチドの分析に用いる方法、アルゴリズム及び検索可能なデータベースと共に示す。
【0370】
表4は、ポリヌクレオチド実施例をアセンブリするために用いたcDNAやゲノムDNA断片を、ポリヌクレオチドの選択された断片と共に示す。
【0371】
表5はポリヌクレオチド実施例の代表的cDNAライブラリを示す。
【0372】
表6は、表5に示したcDNAライブラリの作製に用いた組織及びベクターを説明する付表である。
【0373】
表7は、本発明のポリヌクレオチド及びポリペプチドの分析に用いたツール、プログラム、アルゴリズムを、適用可能な説明、参照文献及び閾値パラメータと共に示す。
【0374】
表8は、ポリヌクレオチド実施様態に見られる一塩基多型を、種々のヒト集団での対立遺伝子(アレル)頻度と共に示す。
【0375】
【表1】
【0376】
【表2−1】
【0377】
【表2−2】
【0378】
【表2−3】
【0379】
【表2−4】
【0380】
【表2−5】
【0381】
【表2−6】
【0382】
【表2−7】
【0383】
【表2−8】
【0384】
【表2−9】
【0385】
【表3−1】
【0386】
【表3−2】
【0387】
【表3−3】
【0388】
【表3−4】
【0389】
【表3−5】
【0390】
【表3−6】
【0391】
【表3−7】
【0392】
【表3−8】
【0393】
【表3−9】
【0394】
【表3−10】
【0395】
【表3−11】
【0396】
【表3−12】
【0397】
【表3−13】
【0398】
【表3−14】
【0399】
【表3−15】
【0400】
【表3−16】
【0401】
【表3−17】
【0402】
【表3−18】
【0403】
【表3−19】
【0404】
【表3−20】
【0405】
【表3−21】
【0406】
【表3−22】
【0407】
【表3−23】
【0408】
【表3−24】
【0409】
【表3−25】
【0410】
【表3−26】
【0411】
【表3−27】
【0412】
【表3−28】
【0413】
【表3−29】
【0414】
【表3−30】
【0415】
【表3−31】
【0416】
【表3−32】
【0417】
【表3−33】
【0418】
【表3−34】
【0419】
【表3−35】
【0420】
【表3−36】
【0421】
【表4−1】
【0422】
【表4−2】
【0423】
【表4−3】
【0424】
【表4−4】
【0425】
【表4−5】
【0426】
【表4−6】
【0427】
【表4−7】
【0428】
【表4−8】
【0429】
【表4−9】
【0430】
【表4−10】
【0431】
【表4−11】
【0432】
【表4−12】
【0433】
【表4−13】
【0434】
【表4−14】
【0435】
【表4−15】
【0436】
【表4−16】
【0437】
【表4−17】
【0438】
【表4−18】
【0439】
【表5】
【0440】
【表6−1】
【0441】
【表6−2】
【0442】
【表6−3】
【0443】
【表7−1】
【0444】
【表7−2】
【0445】
【表8−1】
【0446】
【表8−2】
【0447】
【表8−3】
Claims (99)
- 以下の(a)乃至(g)からなる群から選択した単離されたポリペプチド。
(a)SEQ ID NO:1-22からなる群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチド、
(b)SEQ ID NO:2-7、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:16およびSEQ ID NO:19-21からなる群から選択した或るアミノ酸配列と少なくとも90%が同一であるような天然アミノ酸配列を含むポリペプチド、
(c)SEQ ID NO:1のアミノ酸配列に対して少なくとも99%が同一であるような天然アミノ酸配列を含むポリペプチド、
(d)SEQ ID NO:22のアミノ酸配列に対して少なくとも95%が同一であるような天然アミノ酸配列を含むポリペプチド、
(e)SEQ ID NO:17-18からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%が同一であるような天然アミノ酸配列から本質的に構成されるポリペプチド、
(f)SEQ ID NO:1-22からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片、
(g)SEQ ID NO:1-22からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片。 - SEQ ID NO:1-22からなる群から選択したアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の単離されたポリペプチド。
- 請求項1に記載のポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチド。
- 請求項2に記載のポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチド。
- SEQ ID NO:23-44からなる群から選択したポリヌクレオチド配列を含む、請求項4に記載の単離されたポリヌクレオチド。
- 請求項3に記載のポリヌクレオチドに機能的に連結したプロモーター配列を含む組換えポリヌクレオチド。
- 請求項6に記載の組換えポリヌクレオチドを用いて形質転換した細胞。
- 請求項6に記載の組換えポリヌクレオチドを含む遺伝形質転換体。
- 請求項1に記載のポリペプチドを生産する方法であって、
(a)前記ポリペプチドの発現に好適な条件下で、請求項1に記載されたポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに機能的に連結されたプロモーター配列を含む組換えポリヌクレオチドで形質転換される細胞を培養する過程と、
(b)そのように発現した前記ポリペプチドを回収する過程とからなる方法。 - 前記ポリペプチドが、SEQ ID NO:1-22からなる群から選択した或るアミノ酸配列を含むことを特徴とする、請求項9に記載の方法。
- 請求項1に記載のポリペプチドと特異的に結合する単離された抗体。
- 以下の(a)乃至(k)からなる群から選択した単離されたポリヌクレオチド。
(a)SEQ ID NO:23-44からなる群から選択したポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、
(b)SEQ ID NO:23-30およびSEQ ID NO:32-42からなる群から選択した或るポリヌクレオチド配列に対して少なくとも90%が同一であるような天然ポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、
(c)SEQ ID NO:31のポリヌクレオチド配列に対して少なくとも96%が同一であるような天然ポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、
(d)SEQ ID NO:43のポリヌクレオチド配列に対して少なくとも94%が同一であるような天然ポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、
(e)SEQ ID NO:44のポリヌクレオチド配列に対して少なくとも91%が同一であるような天然ポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、
(f)(a)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、
(g)(b)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、
(h)(c)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、
(i)(d)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、
(i)(e)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、
(k)(a)〜(j)のRNA等価物。 - 請求項12に記載のポリヌクレオチドの少なくとも60の連続したヌクレオチドを含む単離されたポリヌクレオチド。
- 請求項12に記載のポリヌクレオチドの配列を有する標的ポリヌクレオチドをサンプル中から検出する方法であって、
(a)前記サンプル中の前記標的ポリヌクレオチドに相補的な配列を持つ少なくとも20の連続したヌクレオチドを含むプローブを用いて前記サンプルをハイブリダイズする過程であって、前記プローブと前記標的ポリヌクレオチドあるいはその断片との間でハイブリダイゼーション複合体が形成される条件下で、プローブが前記標的ポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズすることを特徴とする過程と、
(b)前記ハイブリダイゼーション複合体の有無を検出し、該複合体が存在する場合にはオプションでその量を検出する過程とを含む方法。 - 前記プローブが少なくとも60の連続したヌクレオチドを含むことを特徴とする請求項14に記載の方法。
- 請求項12に記載のポリヌクレオチドの配列を有する標的ポリヌクレオチドをサンプル中から検出する方法であって、
(a)ポリメラーゼ連鎖反応増幅を用いて前記標的ポリヌクレオチド又はその断片を増幅する過程と、
(b)前記の増幅した標的ポリヌクレオチド又はその断片の有無を検出し、該標的ポリヌクレオチド又はその断片が存在する場合にはオプションでその量を検出する過程とを含むことを特徴とする方法。 - 請求項1に記載のポリペプチドと、薬剤として許容できる賦形剤とを含む組成物。
- 前記ポリペプチドが、SEQ ID NO:1-22からなる群から選択したアミノ酸配列を含むことを特徴とする請求項17に記載の組成物。
- 機能的なEXMESの発現の低下に関連する疾患や病態の治療方法であって、そのような治療が必要な患者に請求項17に記載の組成物を投与することを含むことを特徴とする治療方法。
- 請求項1に記載のポリペプチドのアゴニストとしての有効性を確認するために化合物をスクリーニングする方法であって、
(a)請求項1に記載のポリペプチドを含むサンプルを化合物に曝すステップと、
(b)前記サンプルにおいてアゴニスト活性を検出する過程とを含むことを特徴とする方法。 - 請求項20に記載の方法によって同定したアゴニスト化合物と、薬剤として許容できる賦形剤とを含むことを特徴とする組成物。
- 機能的なEXMESの発現の低下に関連する疾患や病態の治療方法であって、そのような治療が必要な患者に請求項21に記載の組成物を投与することを含むことを特徴とする治療方法。
- 請求項1に記載のポリペプチドのアンタゴニストとしての有効性を確認するために化合物をスクリーニングする方法であって、
(a)請求項1に記載のポリペプチドを含むサンプルを化合物に曝すステップと、
(b)前記サンプルにおいてアンタゴニスト活性を検出する過程とを含むことを特徴とする方法。 - 請求項23に記載の方法によって同定したアンタゴニスト化合物と、薬剤として許容できる賦形剤とを含む組成物。
- 機能的EXMESの過剰発現に関連する疾患や病態の治療方法であって、そのような治療を要する患者への請求項24に記載の組成物の投与を含む治療方法。
- 請求項1に記載のポリペプチドに特異結合する化合物をスクリーニングする方法であって、
(a)請求項1に記載のポリペプチドを適切な条件下で少なくとも1つの試験化合物と混合する過程と、
(b)請求項1に記載のポリペプチドの試験化合物との結合を検出し、それによって請求項1に記載のポリペプチドに特異結合する化合物を同定する過程とを含む方法。 - 請求項1に記載のポリペプチドの活性を調節する化合物をスクリーニングする方法であって、
(a)請求項1に記載のポリペプチドの活性が許容される条件下で、請求項1に記載のポリペプチドを少なくとも1つの試験化合物と混合する過程と、
(b)請求項1に記載のポリペプチドの活性を試験化合物の存在下で算定する過程と、
(c)試験化合物の存在下での請求項1に記載のポリペプチドの活性を、試験化合物の不存在下での請求項1に記載のポリペプチドの活性と比較する過程とを含み、
試験化合物の存在下での請求項1に記載のポリペプチドの活性の変化が、請求項1に記載のポリペプチドの活性を調節する化合物を標示することを特徴とする方法。 - 請求項5に記載の配列を含む標的ポリヌクレオチドの発現を改変するのに効果的な化合物をスクリーニングする方法であって、
(a)前記標的ポリヌクレオチドの発現に好適な条件下で、該標的ポリヌクレオチドを含むサンプルを化合物に曝露する過程と、
(b)前記標的ポリヌクレオチドの発現改変を検出する過程と、
(c)可変量の前記化合物の存在下と前記化合物の不存在下で、前記標的ポリヌクレオチドの発現を比較する過程とを含むことを特徴とする方法。 - 試験化合物の毒性を算定する方法であって、
(a)核酸を含む生物学的サンプルを前記試験化合物で処理する過程と、
(b)処理した前記生物学的サンプルの核酸と、請求項12に記載のポリヌクレオチドの少なくとも20の連続するヌクレオチドを持つプローブをハイブリダイズさせる過程であって、このハイブリダイゼーションゼーションが、前記プローブと前記生物学的サンプル中の標的ポリヌクレオチドとの間で特異的なハイブリダイゼーション複合体が形成される条件下で行われ、前記標的ポリヌクレオチドが、請求項12に記載のポリヌクレオチド又はその断片のポリヌクレオチド配列を持つポリヌクレオチドである、前記過程と、
(c)ハイブリダイゼーション複合体の収量を定量する過程と、
(d)前記処理された生物学的サンプル中のハイブリタイゼーション複合体の量を、処理されていない生物学的サンプル中のハイブリタイゼーション複合体の量と比較する過程とを含み、
前記処理された生物学的サンプル中のハイブリタイゼーション複合体の量の差が、前記試験化合物の毒性を標示するような方法。 - 生物学的サンプル中のEXMESの発現に関連する症状又は疾患に対する診断試験法であって、
(a)前記生物学的サンプルと請求項11に記載の抗体との混合を、前記抗体が前記ポリペプチドに結合し、抗体とポリペプチドとの複合体を形成するのに適した条件下で行う過程と、
(b)前記複合体を検出する過程とを含み、前記複合体の存在が、前記生物学的サンプル中の前記ポリペプチドの存在と相関することを特徴とする方法。 - 請求項11に記載の抗体であって、
(a)キメラ抗体、
(b)単鎖抗体、
(c)Fab断片、
(d)F(ab´)2断片、あるいは
(e)ヒト化抗体のいずれかである抗体。 - 請求項11に記載の抗体と、許容できる賦形剤とを含む組成物。
- 被検者のEXMESの発現に関連する病状又は疾患の診断方法であって、請求項32に記載の化合物の有効量を前記被検者に投与する過程を含むことを特徴とする方法。
- 前記抗体が標識されることを特徴とする請求項32に記載の組成物。
- 被検者のEXMESの発現に関連する病状又は疾患の診断方法であって、請求項34に記載の化合物の有効量を前記被検者に投与する過程を含むことを特徴とする方法。
- 請求項11に記載の抗体の特異性を有するポリクローナル抗体を調製する方法であって、
(a)抗体反応を誘発する条件下で、SEQ ID NO:1-22からなる群から選択したアミノ酸配列又はその免疫原性断片を含むポリペプチドを用いて動物を免疫化する過程と、
(b)前記動物から抗体を単離する過程と、
(c)前記単離された抗体を前記ポリペプチドでスクリーニングし、それによって、SEQ ID NO:1-22からなる群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチドに特異結合するポリクローナル抗体を同定する過程とを含むような方法。 - 請求項36に記載の方法で産出したポリクローナル抗体。
- 請求項37に記載のポリクローナル抗体及び適切なキャリアを含む組成物。
- 請求項11に記載の抗体の特異性を有するモノクローナル抗体を作製する方法であって、
(a)抗体反応を誘発する条件下で、SEQ ID NO:1-22からなる群から選択したアミノ酸配列又はその免疫原性断片を含むポリペプチドを用いて動物を免疫化する過程と、
(b)前記動物から抗体産出細胞を単離する過程と、
(c)前記抗体産出細胞と不死化した細胞とを融合して、モノクローナル抗体を産出するハイブリドーマ細胞を形成する過程と、
(d)前記ハイブリドーマ細胞を培養する過程と、
(e)SEQ ID NO:1-22からなる群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチドに特異結合するようなモノクローナル抗体を前記培養物から単離する過程とを含むことを特徴とする方法。 - 請求項39に記載の方法で産出したモノクローナル抗体。
- 請求項40に記載のモノクローナル抗体及び適切なキャリアを含む組成物。
- Fab発現ライブラリのスクリーニングにより前記抗体を産出することを特徴とする請求項11に記載の抗体。
- 組換え免疫グロブリンライブラリのスクリーニングにより前記抗体を産出することを特徴とする請求項11に記載の抗体。
- SEQ ID NO:1-22からなる群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチドをサンプル中に検出する方法であって、
(a)請求項11に記載の抗体と前記ポリペプチドとの特異結合を許容する条件下で、前記抗体と1サンプルとをインキュベートする過程と、
(b)特異結合を検出する過程とを含み、
前記特異結合が、SEQ ID NO:1-22からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドがサンプル中に存在することを標示することを特徴とする方法。 - SEQ ID NO:1-22からなる群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチドをサンプルから精製する方法であって、
(a)請求項11に記載の抗体と前記ポリペプチドとの特異結合を許容する条件下で、前記抗体と1サンプルとをインキュベートする過程と、
(b)前記サンプルから前記抗体を分離し、SEQ ID NO:1-22からなる群から選択したアミノ酸配列を含む精製したポリペプチドを得る過程とを含むことを特徴とする方法。 - マイクロアレイの少なくとも1つのエレメントが請求項13に記載のポリヌクレオチドであるマイクロアレイ。
- ポリヌクレオチドを含むサンプルの発現プロフィールを作製する方法であって、
(a)サンプル中のポリヌクレオチドを標識化する過程と、
(b)ハイブリダイゼーション複合体が形成されるのに適した条件下で請求項46に記載のマイクロアレイのエレメントとサンプル中の標識化ポリヌクレオチドを接触させる過程と、
(c)サンプル中のポリヌクレオチドの発現を定量する過程とを含む方法。 - 固体基板上の別個の物理的位置に固定された互いに異なるヌクレオチド分子群を含むアレイであり、前記ヌクレオチド分子の少なくとも1つが標的ポリヌクレオチドの少なくとも30の連続するヌクレオチドと特異的にハイブリダイゼーション可能な最初のオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド配列を含み、前記標的ポリヌクレオチドが請求項12に記載のポリヌクレオチドであるアレイ。
- 請求項48に記載のアレイで、前記の最初のオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドの配列が前記の標的ポリヌクレオチドの少なくとも30の連続したヌクレオチドに完全に相補的であることを特徴とするアレイ。
- 請求項48に記載のアレイで、前記の最初のオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドの配列が前記の標的ポリヌクレオチドの少なくとも60の連続したヌクレオチドに完全に相補的であることを特徴とするアレイ。
- 請求項48に記載のアレイであり、前記最初のオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド配列が前記標的ポリヌクレオチドに完全に相補的であるアレイ。
- 請求項48に記載のアレイであり、マイクロアレイであるアレイ。
- 請求項48に記載のアレイであり、前記最初のオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド配列を含むヌクレオチド分子にハイブリダイズされた前記標的ポリヌクレオチドをも含むアレイ。
- 請求項48に記載のアレイであり、リンカーが少なくとも1つの前記ヌクレオチド分子を前記固体基板に接合するアレイ。
- 請求項48に記載のアレイであり、基板上のそれぞれ固有の物理的位置には複数のヌクレオチド分子を含み、またいかなる単一の固有の物理位置の該複数のヌクレオチド分子も同じ配列を有し、基板上の各固有物理的位置には基板上の別の固有の物理的位置でのヌクレオチド分子の配列と異なる配列を持つヌクレオチド分子が含まれるアレイ。
- SEQ ID NO:1のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:2のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:3のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:4のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:5のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:6のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:7のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:8のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:9のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:10のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:11のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:12のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:13のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:14のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:15のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:16のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:17のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:18のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:19のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:20のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:21のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:22のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:23のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
- SEQ ID NO:24のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
- SEQ ID NO:25のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
- SEQ ID NO:26のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
- SEQ ID NO:27のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
- SEQ ID NO:28のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
- SEQ ID NO:29のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
- SEQ ID NO:30のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
- SEQ ID NO:31のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
- SEQ ID NO:32のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
- SEQ ID NO:33のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
- SEQ ID NO:34のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
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- SEQ ID NO:42のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
- SEQ ID NO:43のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
- SEQ ID NO:44のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
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