JP2005506282A - Flintグリコフォーム - Google Patents
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Abstract
本発明は、シアル酸含量がFLINT一分子あたり0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0または4.0を越えるFLINTアイソフォームを提供する。さらに、本発明は該アイソフォームの混合物および該アイソフォームの製造方法を提供する。
Description
【技術分野】
【0001】
発明の背景
FLINTはアポトーシスに関与する糖タンパク質である。ここ数年、多くの強力な生物学的効果を有する数多くの腫瘍壊死因子レセプタータンパク質 (「TNFRタンパク質」) が単離されている。これらタンパク質の通常の活性の喪失は、数多くの病的状態に関わっている。
【0002】
FAS-FASリガンドシグナルトランスダクション経路の活性化の増大は、ランナウェイ(runaway)アポトーシス(Kondo et al., Nature Medicine 3 (4): 409-413 (1997); Galle et al., J. Exp. Med. 182: 1223-1230 (1995))、および好中球の活性化から生じる炎症性疾患 (Miwa et al., Nature Medicine 4: 1287 (1998))を含む多くの病的状態に関与する。「ランナウェイアポトーシス」とは、正常より大きなレベルのアポトーシス、または不適切な時に生じるアポトーシスである。ランナウェイアポトーシスにより生じる病的状態には、例えば肝臓、腎臓、および膵臓の臓器不全が含まれる。好中球の過剰な活性化を伴う炎症性疾患には、敗血症、ARDS、SIRSおよびMODSが含まれる。
【0003】
本明細書において「Fasリガンド阻害タンパク質」または「FLINT」と称する、1つの具体的なTNFRホモローグは、Fasリガンド (FasL)と結合することによってFasLとFasの相互作用を妨害する。FLINTはまた、LIGHTとして知られているリガンドと結合して、LIGHTとLTBRとの相互作用(第2の独立したアポトーシス経路においてステップを開始する)を妨害する。
【0004】
FLINTのような化合物は、Fas−FasLおよびLIGHT−LTBRのいずれかまたはその両方が関与する結合相互作用のいずれかまたはその両方と臨床的に関連し得るヒトを含む哺乳動物における疾患または状態を処置または阻止するために使用することができる。
【0005】
FLINTを含む多くの真核生物の分泌型タンパク質は1またはそれ以上のオリゴ糖基で修飾されているものが含まれる(PCT出願WO00/58466、WO00/58465、およびWO99/50413を参照)。そのようなタンパク質のグリコシレーションの程度は、物理的特性に劇的に影響を及ぼし、安定性、分泌、および細胞内ローカリゼーションにとって重要である。さらに、適切なグリコシレーション生物学的活性に本質的であり得る。実際、真核生物由来のいくつかの遺伝子は、バクテリア(例えば大腸菌)において発現したときにグリコシレーションのためにタンパク質の活性がほとんどまたは全くなかった。
【0006】
グリコシレーションは、ポリペプチド骨格に沿って特定の位置に存在し、通常2つのタイプに分けられる:コンセンサス配列の一部がAsn−X-Ser/Thr(ここで、Xはプロリン以外の任意のアミノ酸である)の場合、O−結合オリゴ糖はセリンまたはトレオニン残基に結合し、N−結合オリゴ糖はアスパラギン残基に結合する。
【0007】
さらに、N−結合およびO−結合オリゴ糖の構造および組成は異なる。N−結合およびO−結合オリゴ糖に通常見られる糖の1つのタイプは、N−アセチルノイラミン酸(以下、シアル酸と称する)である。シアル酸は、通常、N−結合およびO−結合オリゴ糖の両方に存在する末端残基であり、負に荷電しているために、糖タンパク質において酸性の特性を付与する。
【0008】
FLINTは、配列番号3のAsn173(配列番号1のAsn144)でN−結合グリコシレーション部位を、および配列番号3のThr203(あるいは、Thr174配列番号1の);および配列番号3のThr245(あるいは、配列番号1のThr216)でO−結合グリコシレーションを有する。一般的な組換え法では、配列番号1のThr216のO−結合部位は、配列番号1のThr174よりも実質的にグリコシレーションが少ない。
【0009】
FLINTシアル酸含量および分子のPIプロファイルに対する効果は、これまで明らかになっていない。本明細書では、FLINTの血清からのin vivoのクリアランスがシアル酸含量のレベルに依存するという証拠を示す。シアル酸化の程度が低いFLINTは、比較的シアル酸含量が高いFLINTよりも、霊長類の血清から迅速に消失する。これは、ある特定の肝臓のレセプター例えばアシアロ糖タンパク受容体との相互作用による、循環血からのシアル酸化されたFLINTまたはシアル酸化の程度が低いFLINTのクリアランスによって説明し得る(cf. Morrell et al. J. Biol. Chem. 243, 155 (1968);Briggs, et al. Am. J. Physiol. 227, 1385 (1974);Ashwell et al. Methods Enzymol. 50, 287 (1978)参照)。シアル酸化のレベルを上げることによってin vivoのクリアランスを遅くし、これによってFLINTの治療上の有用性が改善されると期待される。
【0010】
本発明の目的は、増大したシアル酸含量を有するFLINTのアイソフォームを提供することである。そのような分子を含有する医薬組成物によって、in vivoでのより遅いクリアランス時間、および増大した治療的価値を有するFLINT組成物が提供される。
【0011】
発明の要旨
本発明は、FLINTシアル酸アイソフォームに関する。さらに、本発明は、FLINTアイソフォームの製造方法およびFLINTアイソフォームを含有する製薬的に許容し得る組成物を提供する。本発明は、さらにヒトを含む哺乳動物における疾患または状態を処置および/または阻止するのに治療上有効な量のFLINT組成物を投与することを含む治療方法に関する。
【0012】
本発明はさらに、FLINTを含有する材料を、イオン交換クロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、またはクロマトフォーカシングに接触させることを含むFLINTアイソフォームの製造方法、ならびに酵素的方法をの使用を含むFLINTのシアル酸化を増大させる方法に関する。
【0013】
発明の詳細な記載
配列番号1−成熟ヒトFLINT、即ちリーダー配列を除いた天然FLINT。
配列番号2−成熟ヒトFLINTをコードする核酸/cDNA
配列番号3−天然ヒトFLINT
配列番号4−ヒトFLINTをコードする核酸
【0014】
用語「アナログ」または「FLINTアナログ」は、配列番号1または配列番号3において1またはそれ以上のアミノ酸配列変化、例えば、置換、付加、欠失、を有するFLINT配列変異体を意味するために特に用いる。該変化によって、配列番号1の第218番および219番(配列番号3の第247番および第248番)の間でプロテアーゼ耐性であるアナログを生じる。R218Qのようなプロテアーゼ耐性アナログはさらにN−結合グリコシレーション部位も有し得る。例えば、アナログR34N、D36T、R218Qは1つの更なる部位を含み;R34N、D36T、D194N、S196T、R218Qは2つのグリコシレーション部位をさらに含む。これらのアナログは、FLINTの生物学的活性を保持している。
【0015】
本明細書において用いられる、「平均シアル酸含量」は、FLINTサンプル調製物のシアル酸含量の定量的測定値を表し、FLINT1モルあたりのシアル酸のモル比率で表示する。この用語は、FLINTの異なる調製物を比較するのに有用である。FLINT調製物は、複数のFLINTアイソフォーム、例えば、FLINT一分子あたり0、1、2、3、4、5、6、7、8、またはそれ以上のシアル酸を含み得る。
【0016】
用語「天然FLINT」は、配列番号3を意味する。
用語「成熟FLINT」は、配列番号1を意味する。
【0017】
本明細書におけるFLINTアイソフォームの記載は、配列番号1または配列番号3を意味する。FLINTの成熟および天然のいずれの形態も本発明の範囲内であると意図される。
【0018】
用語「FLINT」には、FLINTの天然, 成熟,およびプロテアーゼ耐性が含まれる。FLINTは、in vitroおよびin vivoでFas−FasLによって誘発されるアポトーシスを阻害する能力を有するTNFRファミリーの1つである。
【0019】
「FLINTアイソフォーム」は、FLINTのシアル酸変異体を意味する。天然FLINTには、配列番号1のAsn144の1つのN−結合部位、および配列番号1のThr174の1つのO−結合部位に基づいて、FLINT一分子あたり0、1、2、3、4、5、または6個のシアル酸が存在し得る。配列番号1のThr216の第2のO−結合部位は、Thr174部位と比較して実質的にグリコシレーションが少ない。プロテアーゼ耐性アナログR218Qには、配列番号1のAsn144の1つのN−結合部位、配列番号1のThr174の1つのO−結合部位およびThr216の1つのO−結合部位に基づいて、タンパク質1分子あたり、0、1、2、3、4、5、6、7、または8個のシアル酸が存在し得る。O−結合グリコシレーションは、天然FLINTと比較して第216番のR218Q(配列番号1)で実質的に増大する。シアル酸化は、宿主細胞および増殖条件に依存する。シアル酸化は、本明細書中後述する酵素的方法を用いて試験管内で増大させることができる。
【0020】
用語「N−グリコシル化ポリペプチド」は、アスパラギンの側鎖アミド中の窒素原子がグリコシル基と共有結合している1またはそれ以上のNXS/Tモチーフを有するポリペプチドを表す。「X」は、プロリン以外のあらゆる天然のアミノ酸残基を表す。「天然のアミノ酸」は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、セリン、トレオニン、システイン、メチオニン、リジン、アルギニン、グルタミン酸、アスパラギン酸、グルタミン、アスパラギン、フェニルアラニン、ヒスチジン、チロシン、およびトリプトファンである。N−グリコシル化タンパク質は所望によりO−グリコシル化される。
【0021】
用語「O−グリコシル化ポリペプチド」は、側鎖中の酸素原子がグリコシル基と共有結合している1またはそれ以上のセリンおよび/またはトレオニンを有するポリペプチドを表す。N−グリコシル化タンパク質は所望によりO−グリコシル化される。
【0022】
用語「プロテアーゼ耐性」とは、FLINTと比較した場合に、配列番号1の218位および219位間の残基のタンパク質加水分解についてより耐性である、FLINTアナログを意味する(PCT出願WO00/58466参照)。プロテアーゼ耐性のアナログは、天然のFLINTまたは成熟FLINTと比べたりまたはそれらに対して、1つ以上のアミノ酸の置換、欠損、逆位、付加、および/またはグリコシル部位もしくはパターンの変化によってFLINTとは区別される。これらの変化は、配列番号1のおよそ214〜222位の位置の領域において起こることが好ましい。
【0023】
本明細書で用いているヌクレオチドおよびアミノ酸の略号は、当該分野および米国特許商標庁(37 C. F. R. 1.822(b)(2)に記載)で認められたものである。
【0024】
本発明は、天然FLINTに対して1またはそれ以上のアミノ酸が置換、欠失、または付加によって、プロテアーゼ耐性が生じ、場合によっては、グリコシレーションの部位がさらに追加される、天然FLINTのアイソフォーム(配列番号1および/または配列番号3)、およびFLINTのプロテアーゼ耐性アナログのアイソフォームを含む、FLINTのシアル酸アイソフォームに関する。
【0025】
プロテアーゼ耐性アナログは、配列番号1の第214〜222によって定義される領域に1またはそれ以上のアミノ酸変化を含む。具体例としては、第218のArgからGln、Glu、Ala、Gly、Ser、Val、またはTyrへの1個のアミノ酸置換が挙げられる。その他の例としては、Gly214から任意の天然のアミノ酸、Pro215から任意の天然のアミノ酸、ThR216から任意の天然のアミノ酸、Pro217から任意の天然のアミノ酸、Arg218から任意の天然のアミノ酸、Ala219から任意の天然のアミノ酸、Gly220から任意の天然のアミノ酸、Arg221から任意の天然のアミノ酸、Ala222から任意の天然のアミノ酸を含む、配列番号1の214〜222番の1またはそれ以上の置換が挙げられる。
【0026】
その他の置換には、Gly214から、His、ArgまたはLysで定義されるような正に荷電したアミノ酸、Pro215から正に荷電したアミノ酸、ThR216から正に荷電したアミノ酸、Pro217から正に荷電したアミノ酸、Arg218から正に荷電したアミノ酸、Ala219から正に荷電したアミノ酸、Gly220から正に荷電したアミノ酸、Arg221から正に荷電したアミノ酸、Ala222から正に荷電したアミノ酸が挙げられる。
【0027】
その他の置換には、Gly214からAspまたはGluで定義されるような負に荷電したアミノ酸、Pro215から負に荷電したアミノ酸、ThR216から負に荷電したアミノ酸、Pro217から負に荷電したアミノ酸、Arg218から負に荷電したアミノ酸、Ala219から負に荷電したアミノ酸、Gly220から負に荷電したアミノ酸、Arg221から負に荷電したアミノ酸、Ala222から負に荷電したアミノ酸が挙げられる。
【0028】
その他の置換には、Gly214からCys、Thr、Ser、Gly、Asn、Gln、Tyrで定義されるような極性非荷電アミノ酸、Pro215から極性非荷電アミノ酸、ThR216から極性非荷電アミノ酸、Pro217から極性非荷電アミノ酸、Arg218から極性非荷電アミノ酸、Ala219から極性非荷電アミノ酸、Gly220から極性非荷電アミノ酸、Arg221から極性非荷電アミノ酸、Ala222から極性非荷電アミノ酸が挙げられる。
【0029】
その他の置換には、Gly214からAla、Pro、Met、Leu、Ile、Val、Phe、Trpで定義されるような非極性アミノ酸、Pro215から非極性アミノ酸、ThR216から非極性アミノ酸、Pro217から非極性アミノ酸、Arg218から非極性アミノ酸、Ala219から非極性アミノ酸、Gly220から非極性アミノ酸、Arg221から非極性アミノ酸、Ala222から非極性アミノ酸が挙げられる。
【0030】
その他の置換には、プロテアーゼ耐性FLINTに、1またはそれ以上のさらなるN−結合グリコシレーション部位を追加しうる複数の変化が含まれる。例えば、Arg34からAsn、Asp36からThr、Arg218からGln、Glu、Ala、Gly、Ser、ValまたはTyr;Arg34からAsn、Asp36からThr、Asp194からAsn、SeR196からThr、Arg218からGln、Glu、Ala、Gly、Ser、Val、またはTyr;またはArg34からAsn、Asp36からThr、Arg218からArgでない任意のアミノ酸、Argでない任意の正に荷電したアミノ酸、Argでない任意の負に荷電したアミノ酸、Argでない任意の極性を有する非荷電アミノ酸、Argでない任意の非極性アミノ酸、またはGlu、Gln、Ala、Gly、Ser、Val、またはTyrであるアミノ酸;
Arg34からAsn、Asp36からThr、Asp194からAsn、SeR196からThr、Arg218からArgでない任意のアミノ酸、Argでない任意の正に荷電したアミノ酸、Argでない任意の負に荷電したアミノ酸、Argでない任意の極性を有する非荷電アミノ酸、Argでない任意の非極性アミノ酸、Glu、Gln、Ala、Gly、Ser、Val、またはTyrであるアミノ酸;またはSeR132からAsn、Arg218からArgでない任意のアミノ酸、Argでない任意の正に荷電したアミノ酸、Argでない任意の負に荷電したアミノ酸、Argでない任意の極性を有する非荷電アミノ酸、Argでない任意の非極性アミノ酸、Glu、Gln、Ala、Gly、Ser、Val、またはTyrであるアミノ酸。
【0031】
本発明によれば、FLINTアイソフォームは、等電点電気泳動法(IEF)、を含む様々な技術によって分離することができる。pHグラジェントおよび中に置き、電場に付したときに、タンパク質は正味の電荷を有しない点に移動する。これはそのタンパク質の等電点(pI)である。IEFで観察される個々のバンドは特定のpIを有する分子を表し、同じ重複する電荷はアイソフォームと呼ばれる。本明細書で用いられる用語「FLINTアイソフォーム」は、適当な方法似よって測定したときにほぼ同じpIを有し、そして同じアミノ酸配列を有するFLINT調製物を意味する。
【0032】
FLINTアイソフォームを分離するためのその他の方法としては、イオン交換カラムによる分画が挙げられる。好ましくは、アイソフォームを液体クロマトグラフィーによって分離する。
【0033】
好ましい態様では、FLINTを非ヒト真核宿主細胞で組換えにより発現させる(即ち、「組換えFLINT」)。組換えFLINTは、本明細書の一部を構成する、一般に公開されているPCT出願WO00/58466、WO00/58465、およびWO99/50413に記載されている方法にしたがって都合よく製造および精製する。例えば、FLINTcDNAを、FLINT遺伝子発現およびDHFR選択を指揮するCMVプロモーターを提供するベクターpcDNA3DHFRに組み込む。DG44-C.B4CHO細胞を線状化ベクターでエレクトロポレーションによりトランスフェクトする。非選択的増殖については、細胞をEx-Cell302培地(JRH BioSciences), 1X HT Supplement (GibcoBRL)、1×デキストラン硫酸塩 (Sigma)および6mML−グルタミン (GibcoBRL) 中で培養する。選択的増殖については、細胞を、Ex-Cell 302培地 (JRH BioSciences), 1×Supplement (GibcoBRL)、1×デキストラン硫酸塩 (Sigma)、6mML−グルタミン (GibcoBRL)およびメトトレキセート(20mMstock, USP)中で培養する。
【0034】
エレクトロポレーションの後、細胞を非選択的培養用培地に72時間回収する。96ウェルプレートを用いてプレーティングを行う。種々の細胞密度、および種々のメトトレキセート(MTX)選択圧のレベルで細胞をプレーティングする。コロニー形成が認められたら、プレートをELISAによりスクリーニングした。ウェルを24ウェルディスに移し、細胞を完全発現試験に十分に増殖させる。
【0035】
マスターのウェルを種々のレベルのメトトレキセートで増幅させる。すべてのマスターのウェルが、増幅工程の終了時点で増加した発現レベルを示した。2つのマスターウェルをFACSクローニングを用いてクローニングした。
【0036】
別の組換えFLINTのアイソフォーム(配列番号3)は、1〜8シアル酸を有するFLINT分子に対応した。FLINT1分子あたりのシアル酸残基の数が増えると、 in vivoでのFLINTのクリアランスが遅くなる効果がある
【0037】
本明細書において示されるように、in vivoクリアランスFLINTおよびR218Q(配列番号1の第218番においてArgからGln)等のプロテアーゼ耐性アナログは、シアル酸含量と関連している(実施例3および4参照)。具体的には、シアル酸含量の大きいFLINT、例えば、より大きい平均シアル酸含量は、霊長類において、対応する低いシアル酸含量を有する対応するFLINTよりもinvivoでゆっくりと消失する。天然FLINTは、1つのN−結合部位と1つのO−結合部位を有し、R218Qアナログは、1つのN−結合部位と2つのO−結合部位を有し、R218Qにおいて天然FLINTに対するさらなるO−結合部位が配列番号1の第216番に存在する。
【0038】
FLINTアイソフォーム
本発明は、FLINTアイソフォームの組成物を提供する。FLINTの特定のアイソフォームのシアル酸化パターンは、特に製造に用いた宿主細胞および増殖条件に依存して変化し得る。好ましい態様では、本発明は、平均シアル酸含量がFLINT一分子あたり約0.5シアル酸残基;あるいは、FLINT一分子あたり平均約1.0シアル酸;あるいは、FLINT一分子あたり平均約1.5シアル酸;あるいは、FLINT一分子あたり平均約2.0シアル酸;あるいは、FLINT一分子あたり平均約2.5シアル酸;あるいは、FLINT一分子あたり平均約3.0シアル酸;あるいは、FLINT一分子あたり平均約3.5シアル酸;あるいは、FLINT一分子あたり平均約4.0シアル酸;FLINT一分子あたり平均約4.5シアル酸;FLINT一分子あたり平均約5.0シアル酸;FLINT一分子あたり平均約5.5シアル酸;FLINT一分子あたり平均約6.0シアル酸;あるいは、FLINT一分子あたり約6.0シアル酸以上のシアル酸含量を有するFLINTアイソフォーム組成物に関する。
【0039】
平均シアル酸含量に関して定義される本発明の組成物は、それぞれ異なるシアル酸含量またはプロファイルを有し得る種々のFLINTアイソフォームを含有していてもよい。例えば、N−結合部位は、理論的には1つの部位に0、1、2、3、または4シアル酸を有し得る;O−結合部位は、理論的には1つの部位に0、1、または2シアル酸を有し得る。平均シアル酸含量がFLINT1モルあたり約1シアル酸の天然FLINTの組成物が考えられる。本発明の範囲内に属する組成物は、N−結合部位で平均して1回シアル酸化されている、またはO−結合部位で1回シアル酸化されているものが含まれ得る。本発明の範囲内に含まれる他の例として、組成物中のFLINT分子の画分の複数のシアル酸化が挙げられることは当業者によって理解される。本発明の組成物は、アイソフォームのそのような組み合わせのいずれかおよびすべてを意図する。
【0040】
本発明はさらに、FLINTアイソフォーム組成物の製造方法を提供する。これらの方法には、調製用等電点電気泳動法またはイオン交換クロマトグラフィー、またはクロマトフォーカシング等の方法によるアイソフォームの単離が含まれる。
【0041】
一般的に、イオン交換クロマトグラフィーおよびクロマトフォーカシングは、カラム樹脂へ、FLINTを含む準備した培地または精製した物質を、いくつかまたはすべてのFLINTアイソフォームの樹脂への結合を可能にする条件化でアプライする。
約pH5でカラムにタンパク質をアプライするのが好ましい。カラムを約pH5の緩衝液で洗浄した後、イオン交換カラムに結合したFLINTアイソフォームを、増加する塩濃度の緩衝液で溶出する。クロマトフォーカシングについては、pHをグラジェントに下げるか、またはカラムを高濃度の塩で洗浄することにより、カラムから溶出する。
【0042】
FLINT分子は分子のシアル酸含量を限定することができる、N−結合またはO−結合オリゴ糖構造を有する。例えば、テトラ触角型(antennary)(4つに分岐した)N−結合オリゴ糖は、シアル酸結合のための可能な部位が4つあるが、アスパラギン結合部位の4触角型構造に対して置換することができる2および3触角型オリゴ糖鎖は、結合したシアル酸を通常2または3個有する。O−結合オリゴ糖は通常シアル酸結合のための部位を2つ持っている。
【0043】
このように、FLINT分子は、1個のN−結合オリゴ糖が4触角型であれば、合計8つのシアル酸残基を有する。FLINTのN−結合オリゴ糖は、ガラクトースに対してα-2,3およびα−2,6結合の両方でシアル酸を含む(Takeuchi et al. J. Biol. Chem. 263, 3657(1988))。典型的には、α-2,3結合のシアル酸をマンノースα-1,6分岐鎖でガラクトースに付加し、α-2,6結合のシアル酸をマンノースα-1,3分岐鎖でガラクトースに付加する。これらシアル酸を付加する酵素(β-ガラクトシドα-2,3 シアリルトランスフェラーゼおよびβ-ガラクトシドα-2,6 シアリルトランスフェラーゼ) が、シアル酸をそれぞれマンノースα-1,6およびマンノースα-1,3分岐鎖に付加するのに最も効率的である。
【0044】
哺乳類培養細胞を、組換えFLINTに4触角型の鎖を優先的に付加する細胞についてスクリーニングし、これによりシアル酸結合のための部位の数を最大限にすることができる。ジヒドロ葉酸デヒドロゲナーゼ(DHFR)欠損Chinese Hamster Ovary (CHO) 細胞が、組換えFLINTを含む組換え糖タンパク質の製造に一般的に用いられる。これらの細胞は、β-ガラクトシドα-2,6シアリルトランスフェラーゼ酵素を発現しないため、シアル酸を、これら細胞によって産生された糖タンパク質のN−結合オリゴ糖へα-2,6結合で付加しない (Mutsaers et al. Eur. J. Biochem. 156, 651 (1986);Takeuchi et al. J. Chromatogr. 400, 207 (1987))。したがって、CHO 細胞で産生された組換えFLINTは、2,6結合でガラクトースに結合したシアル酸を欠いている (Sasaki et al. (1987), 前掲;Takeuchi et al. (1987), 前掲)。したがって、本発明の1つの態様では、ガラクトースにα-2,6結合での組み込むための機能的なβ-ガラクトシドα-2,6シアリルトランスフェラーゼ遺伝子でトランスフェクトしたCHO細胞でFLINTアイソフォームを産生させる。修飾したCHO細胞,または他の哺乳動物宿主細胞作成するための方法の開示としては、本明細書の一部を構成するLee et al. J. Biol. Chem. 264, 13848 (1989)を参照。
【0045】
FLINTのシアル酸化のin vitroでの増大
さらに本発明は、in vitro での酵素的修飾によるシアル酸化を増大させる方法を意図する。
【0046】
血中のFLINT等の糖タンパク質の循環寿命は、N−結合オリゴ糖の組成と構造に大きく依存する。一般的に、糖タンパク質の血漿半減期を最大にするには、そのN−結合炭化水素基がNeuAcGalGlcNAcの配列で終わっていることが必要である。末端のシアル酸残基(NeuAc)がなければ、暴露したGal残基を認識するレセプターによって糖タンパク質は血液から急速に消失する。このため、FLINTのような治療タンパク質の高度のシアル酸化を可能にすることは、商業的な開発には重要である。
【0047】
糖タンパク質における炭化水素構造の複雑さについては多くのことが知られているが、培養細胞において翻訳後グリコシレーションを特定する試みは遺伝子発現の技術と同じように進歩しているわけではなく、FLINTを含めて、分泌型組換え糖タンパク質のグリコシレーションは不完全であるのが一般的である。この問題に対する1つの解決手段は、炭化水素鎖を完全にするためのinvitroでの単離されたグリコシルトランスフェラーゼの使用である。
【0048】
最適なグリコシレーションは、哺乳類細胞培養系を用いて達成することは難しいかもしれない。大規模な増殖条件下では、糖タンパク質のタンパク質骨格の過剰産生は、完全なシアル酸化を達成する宿主細胞の能力を超え得る。
【0049】
本発明の方法は、シアル酸をFLINTの受容部位に付加するためのシアルトランスフェラーゼの使用を含み、好ましくは、該部位は、ガラクトシル単位を有する。FLINTのシアル酸化を増大させるための方法は、本明細書の一部を構成する、米国特許第6、030、815号の開示にしたがう。本質的には、個の方法は、シアルトランスフェラーゼをFLINTのサンプルおよび触媒量のCMP−シアル酸合成酵素、シアル酸、CTPおよび可溶性の2価の金属陽イオン(Mn+2、Mg+2、Ca+2、Co+2、およびZn+2を含む)に添加する工程を含む。好ましくは、2価陽イオン濃度を2mM〜75mMに維持する。あるいは、反応物はさらに、米国特許第6、030、815号に記載のように、CMP−シアル酸再生系(recyclilng system)を含み得る。反応を行うための商業的に入手可能な系 (GlycoAdvance(登録商標))はNeose Technologies, Inc. (Horsham, PA)から入手可能である。
【0050】
本発明の別の態様では、FLINTは、FLINTを発現させるための適当なベクターでトランスフェクトすることにより、適当な哺乳類細胞型、例えば CHO 細胞、において組換えにより製造する。FLINTを含む培養上清を濃縮し、GlycoAdvance(登録商標)系または商業的な非商業的な系を用いてプロセシングする。増大したシアル酸化を有するFLINTを標準的な精製法を用いて回収する。
【0051】
本発明はさらに、治療的適用に有用な適当な希釈剤、アジュバントおよび/または担体と共に、治療上有効量の、FLINT一分子あたり平均シアル酸含量約0.5シアル酸、あるいは、FLINT一分子あたり平均約1.0シアル酸;あるいは、FLINT一分子あたり平均約1.5シアル酸;あるいは、FLINT一分子あたり平均約2.0シアル酸;あるいは、FLINT一分子あたり平均約2.5シアル酸;あるいは、FLINT一分子あたり平均約3.0シアル酸;あるいは、FLINT一分子あたり平均約3.5シアル酸;あるいは、FLINT一分子あたり平均約4.0シアル酸;あるいは、FLINT一分子あたり平均約4.5シアル酸;あるいは、FLINT一分子あたり平均約5.0シアル酸;あるいは、FLINT一分子あたり平均約5.5シアル酸;あるいは、FLINT一分子あたり平均約6.0シアル酸;あるいは、FLINT一分子あたり平均約6.0以上のシアル酸を有するFLINTアイソフォームを含有する医薬組成物を意図する。本明細書において用いられる「治療上有効な量」とは、与えられた条件および投与レジメに関して治療効果をもたらす量を意味する。FLINTアイソフォームの投与は、静脈内投与が好ましい。
【0052】
治療的適用
本発明のFLINTアイソフォームの臨床的有用性は実質的なものであると期待される。FLINTはFasとFasLおよびLIGHTとLTBRおよびTR2/HVEWレセプターの結合を阻害し、そのような結合が関与し得る疾患および/または状態を処置するために用いることができる。
【0053】
FasL/Fasが関与する多くの病気および/または病状は、FLINT類似体による治療に応じやすい可能性がある。適当な病気および/または病状の例には、以下のものが含まれる。
【0054】
炎症性/自己免疫疾患−リウマチ性関節炎、炎症性腸疾患、移植片対宿主病、インスリン依存性糖尿病、SIRS/敗血症/MODS、膵炎、乾癬、多発性硬化症、橋本甲状腺炎、Grave病、移植拒絶、SLE、自己免疫性胃炎、繊維化肺疾患が含まれる。
【0055】
感染性疾患−HIV性リンパ球減少症、劇症ウイルス性B/C型肝炎、慢性肝炎/肝硬変、H.pylori関連潰瘍形成。
【0056】
虚血/再還流病状−急性冠動脈症候群、急性心筋梗塞、鬱血性心不全、アテローム性動脈硬化症、急性脳虚血/梗塞、脳/脊髄損傷、移植時の臓器保存。
【0057】
その他の処置としては、癌治療時の細胞保護、化学療法の補助、アルツハイマー性慢性糸球体腎炎、骨粗鬆症、TTP/HUS、再生不良性貧血、骨髄異形成症候群が挙げられる。急性肺損傷(ALI)/急性呼吸困難症候群(ARDS)、潰瘍性大腸炎、およびクローン病の治療および予防も興味深い。
【0058】
FLINT類似体が治療的に有用である他の疾患には、リウマチ性関節炎(Elliott et al., Lancet 344: 1105-10 (1994))、繊維増殖性肺疾患、繊維性肺疾患、HIV (Dockrell et al., J. Clin. Invest. 101: 2394-2405 (1998))、虚血 (Sakurai et al. 1998 Brain Res 797: 23-28)、脳外傷/損傷(Ertel et al. 1997 J Neuroimmunol 80: 93-6)、慢性腎不全(Schelling et al. 1998 Lab Invest 78: 813-824)、移植片対宿主疾患(GVHD) (Hattori et al. 1998 Blood 11: 4051-4055)、皮膚炎症 (Orteu at al. 1998 J Immunol 161: 1619-1629)、血管漏出症候群(Vascular leak syndrome)(Rafi et al. 1998 J Immunol 161: 3077-3086)、Helicobacter pylori感染症(Rudi et al. 1998 J Clin Invest 102: 1506-1514)、Goiter (Tamura et al. 1998 Endocrinology 139: 3646-3653)、アテローム性動脈硬化症(Sata and Walsh, 1998 J Clin Invest 102: 1682-1689)、IDDM (Itoh et al. 1997 J Exp Med 186: 613-618)、骨粗鬆症(Jilka et al. 1998 J Bone Min Res 13: 793-802)、クローン病(van Dullemen et al. 1995 Gastroenterology 109: 129-35)、臓器保存および移植(移植片)拒絶(Lau et al. 1996 Science 273: 109-112)、敗血症(Faist and Kim. 1998 New Horizons 6: S97-102)、膵炎(Neoptolemos et al. 1998 Gut 42: 886-91)、癌(メラノーマ、大腸、および食道)(Bennett et al. 1998 J Immunol 160: 5669-5675)、自己免疫病(IBD、乾癬、ダウン症候群 (Seidi et al., Neuroscience Lett. 260: 9 (1999)、および多発性硬化症 (D'Souza et al. 1996 J Exp Med 184: 2361-70)が含まれる。アルツハイマー病、末期腎疾患(ESRD)、単球増加症(mononulceosis)、EBV、ヘルペス、抗体依存性細胞毒性、溶血および凝固過剰症候群、例えば血管出血、DIC (播種性血管間凝固)、子癇、HELLP (血小板減少症、溶血、および肝機能障害に伴う子癇前症)、HITS (ヘパリン性血小板減少症)、HUS (溶血性尿毒症症候群)、および子癇前症、造血障害、例えば再生不良性貧血、血小板減少症(TTP)、および骨髄異形成(myelodysplasia)、ならびに例えばE. bolaによって生じる溶血性発熱(hemolytic fever)が含まれる。
【0059】
例えば、回収用調製物において臓器を保存する場合は、FLINTは、臓器提供者から取り出した臓器に対する虚血再還流障害に関連するアポトーシスを防ぐために予防的に有用である。この目的に適した媒質は知られている(例えば、EP0356367A2に記載の媒質(この内容は本明細書の一部を構成する))。該方法には移植手術の前および/または後に移植者をFLINTで処置することを含んでいてもよい。
【0060】
ARDSにヒトの可溶性FasL/Fas相互作用が介在することがあるという証拠がある (Matute-Bello et al., J. Immunol. 163,2217-2225,1999)。FLINTはFasLと結合することにより肺細胞(pneumocytes)および/または内皮細胞のFasL介在性アポプトーシを阻害することにより、急性炎症性傷害からALIへの、およびALIからARDSへの進行を阻害または予防するかも知れない。
【0061】
したがって、別の態様において、本発明は治療的有効量のFLINTをそれを必要とするヒトに投与することを含むALIおよび/またはARDSを阻害および/または治療するためのFLINTの使用に関する。
【0062】
別の態様において、本発明は、治療的有効量のFLINTを投与することにより慢性閉塞性肺疾患(COPDを治療および/または阻害する必要がある患者のCOPDを治療および/または阻害するためのFLINTアナログの使用に関する。
【0063】
別の態様において、本発明は肺繊維症(PF)を阻害および/または治療するためのFLINTの使用に関する。例えば、FLINTを肺への炎症性傷害時(例えばブレオマイシン処置時)に急性に投与し、PFの発生を防ぐことができる。
【0064】
「対象」は治療(処置)を要する哺乳動物、好ましくはヒトであるが、獣医的治療を要する動物、例えば家畜(domestic animals)(例えばイヌ、ネコなど)、家畜(farm animals)(例えば乳牛、ヒツジ、ブタ、ウマなど)、および実験動物(例えばラット、マウス、モルモットなど)でもあり得る。
【0065】
FLINTアイソフォームの「有効量」は、FASとFASリガンドまたはLIGHTとLTβRおよび/またはTR2/HVEMとの結合が介在する1またはそれ以上の過程の充分な阻害をもたらし、異常なFAS/FASL結合および/またはLIGHT介在結合に関連し得る病気または病状を有する対象において所望の治療もしくは予防効果を達成する量である。そのような過程の1例がランナウェイアポトーシスである。あるいはまた、FLINTアイソフォームの「有効量」は、FASL誘導好中球活性化により生じる炎症、または異常なFASL活性に関連するあらゆる他の前記疾患を有する対象において所望の治療および/または予防効果を達成するのに充分な量である。
【0066】
病気または病状を有する対象における「所望の治療および/または予防効果」には、そのような病気に関連する症状の軽減もしくは症状の発現の遅延が含まれる。あるいはまた、「所望の治療および/または予防効果」には、該病気を有する対象の生存率の増加または寿命の増加が含まれる。
【0067】
個体に投与するFLINTアイソフォームの量は、病気の種類と重症度、および個体の特性、例えば一般健康状態、年齢、性別、体重、および薬剤に対するトレランスに依存するであろう。該量は、病気の程度、重症度、および種類にも依存するであろう。当業者は、これらおよび他の要因に応じて適切な用量を決定することができよう。
【0068】
一般的提案として非経口的に投与される、用量あたりの本発明FLINTアイソフォーム分子の総医薬的有効量は、約1μg/kg(患者体重)/日〜10mg/kg/日、詳細には2mg/kg/日〜8mg/kg/日、より詳細には詳細には2mg/kg/日〜4mg/kg/日、さらにより詳細には2.2mg/kg/日〜3.3mg/kg/日、および最終的には2.5mg/kg/日の範囲であるが、前述したように、これは治療上の自由裁量に従うであろう。より好ましくは、この用量は少なくとも0.01mg/kg/日である。連続的に与える場合は、典型的には、本発明FLINTアイソフォームは約1μg/kg/時〜約50μg/kg/時の投与速度で1日に1〜4回注射するか、または例えばミニポンプを用いて連続的に皮下注入することにより投与される。静脈用バッグ溶液を用いてもよい。変化を観察するのに必要な処置の長さと反応が生じるための治療後の間隔は、所望の効果に応じて変化するようである。
【0069】
本発明のFLINTアイソフォーム分子を含む医薬組成物は、経口的、経直腸的、頭蓋内、非経口的、槽内(intracisternally)、膣内、腹腔内、局所的(粉末剤、軟膏、滴剤、または経皮パッチによる)、経皮的、鞘内、腔内、または経口もしくは鼻内スプレーとして投与してよい。「医薬的に許容される担体」は、非毒性固体、半固体、または液体充填剤、希釈剤、カプセル化(encapsulating)物質、またはあらゆる種類の製剤助剤を意味する。本明細書で用いている用語「非経口的」には、限定されるものではないが、FLINTアイソフォームを含む静脈内、筋肉内、腹腔内、イントラスターナル(intrasternal)、皮下、および動脈内注射、注入、およびインプラントが含まれる。
【0070】
本発明のFLINTアイソフォームは持続放出系によっても適切に投与される。適切な持続放出組成物の例には、成形品、例えば、フィルムまたはマイクロカプセルの形の半透過性ポリマー物質を含む。持続放出マトリックスには、ポリラクチド(米国特許第3,773.919号、EP 58,481)、L-グルタミン酸およびγ−エチル-L-グルタメートの共重合体(Sidman, U. et al., Biopolymers 22: 547-556 (1983))、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)(R. Langer et al., J. Biomed. Mater. Res. 15: 167-277 (1981)、およびR. Langer, Chem. Tech. 12: 98-105 (1982))、エチレンビニルアセテート(R. Langer et al., Id.)、またはポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸(EP 133,988)が含まれる。他の持続放出組成物には、リポソームに吸着された(entrapped)FLINTも含まれる。そのようなリポソームは本質的に知られた方法により製造される:DE 3,218,121; Epstein et al., Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 82: 3688-3692 (1985); Hwang et al., Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 77: 4030-4034 (1980); EP 52,322; EP 36,676; EP 88,046; EDP 143,949; EP 142,641; 日本特許出願第83-118008号; 米国特許第4,485,045および4,544,545号;ならびにEP 102,324。通常、リポソームは、脂質含有量が約30 mol %コレステロールより大きい小(約200-800Å)単層型である(選択する割合は最適なTNFRポリペプチド療法に対して調整される)。
【0071】
非経口投与するには、一般に、本発明のFLINTアイソフォームを所望の純度で医薬的に許容される担体、すなわち、用いる用量および濃度でレシピエントに無毒であり、製剤の他の成分と適合性である担体と混合して注射可能な単位用量剤形(溶液剤、サスペンジョン剤、またはエマルジョン剤)に製剤化される。例えば、該製剤は酸化剤およびポリペプチドに有害であることが知られている他の化合物を含まないことが望ましい。
【0072】
典型的には本発明FLINTアイソフォームは、適当なビークルを用いて約0.1mg/ml〜100mg/ml、好ましくは1-10mg/ml(pH約3〜8)の濃度に製剤化される。賦形剤、担体、または安定化剤のあるものを用いて本発明FLINT分子の塩が形成されると理解されよう。
【0073】
本発明は、本発明の医薬組成物の1またはそれ以上の成分を充填した1またはそれ以上の容器を含む医薬パックもしくはキットをも提供する。そのような容器には、医薬品もしくは生物学的生成物の製造、使用もしくは販売を規制する政府機関が規定する様式の、ヒト投与用の製造、使用もしくは販売の該機関による承認を反映した注意書を組み合わせることができる。さらに、本発明FLINT類似体は他の治療用化合物と組み合わせて用いてよい。
【0074】
以下の実施例は、本発明をさらに詳細に記載するが、本発明の範囲の限定するものではない。
【実施例】
【0075】
実施例1
組換えFLINTアイソフォームの単離
哺乳動物発現ベクターpGTD (Gerlitz, B. et al., 1993, Biochemical Journal 295:131)中に「内在リボソームエントリー(entry)部位」/緑色蛍光増強ポリペプチド(IRES/eGFP)をコードするPCR断片を挿入することにより、ビシストロニック(bicistronic)発現ベクターを構築した。pIG3で表すこの新規ベクターは以下のエレメントを含む:Ela反応性GBMTプロモーター(D.T.Berg et al., 1993 BioTechniques 14:972; D.T.Berg et al., 1992 Nucleic Acids Research 20: 5485)、多クローニング部位(MCS)、脳心筋炎ウイルス(EMCV)由来IRES配列、eGFPコード配列(Cormack, et al., 1996 Gene 173:33, Clontech)、SV40小「t」抗原スプライス部位/ポリアデニル化配列、SV40初期プロモーター、および複製起点、ネズミジヒドロ葉酸還元酵素(dhfr)コード配列、ならびにpBR322由来複製起点およびアンピシリン耐性遺伝子。
【0076】
ヒトFLINT cDNA配列(例えば配列番号3)に基づき、各5'末端にBclI制限部位を有するフォワードおよびリバースPCRプライマーを合成する。これらプライマーを用いてFLINT類似体cDNAをPCR増幅する。ヒトFLINT cDNAの方向とヌクレオチド配列を制限消化および挿入物の二本鎖シーケンシングにより確認する。FLINT類似体PCR増幅約900塩基対をそれぞれ制限エンドヌクレアーゼNheIおよびXbaIで消化し、NheIおよびXbaI粘着末端を有する断片を生成した。次いで、この断片をpIG3のユニークXbaI部位と結合させ、組換えプラスミドpIG3-FLINTを得た。
【0077】
組換えpIG3−FLINTプラスミドは、FLINT遺伝子を有し、メトトレキセートに対する耐性をコードする。AV12 RGT18細胞を、リン酸カルシウム法を用いて組換えpIG1ベクターでトランスフェクトする。250nMメトトレキセートに耐性な細胞を選んでプールする。耐性クローンのプールを蛍光補助セルソーティング(FACS)にかけ、ポピュレーションの上から5%の蛍光値を有する細胞をソートし単細胞としてプールした。高蛍光プールを2回連続ソーティングにかけた。一回および二回目に得られたプールおよび個々のクローンのFLINT産生をELISAで分析した。最高レベルにFLINTを発現しているプールまたはクローンを用いてスケールアップさせ、FLINTを精製した。
【0078】
FLINTの大規模製造を、数個10Lスピナー中で、pIG3−FLINTでトランスフェクトしたAV12 RGT18細胞の安定なクローンを培養することにより行った。コンフルエントに達した後にさらに細胞を2〜3日間インキュベーションし、培地中に最大量のFLINTを分泌させた。FLINTを含む培地を、0.1%CHAPSに調整し、Amicon ProFlux M12タンジェンシャルろ過システムにて350mLに濃縮した。濃縮した培地をpH6.0に調整し、流速7mL/分でSPセファロースFast Flow(Pharmacia, 500mL)に通した。吸光度(280nm)がベースラインに戻るまでカラムを緩衝液A (20mM MOPS, 0.1%CHAPS, pH6.0)で洗浄し、結合したポリペプチドを0〜1MのNaCl (緩衝液A中)の直線勾配で、4カラム体積分展開して溶出した。FLINTを含む分画をプールし、流速10mL/分で0.1%TFA/H2Oで平衡化したVydacC4カラム(100ml)に通した。この物質をPBS、0.5M NaCl、pH7.4で平衡化した16/60 Superdex200分粒カラム(Pharmacia)に通す。FLINT含有分画をSDS-PAGEで分析し、精製ポリペプチドのN末端配列がFLINTであることを確認する。
【0079】
別の精製法として、濃縮し、透明にした、FLINTを含有する培地をBlueセファロースDACに通し、7M尿素、1MNaCl(pH8)で溶出する。溶出した物質はさらにCG71逆相クロマトグラフィーで精製し、35%アセトニトリル、0.6MNaCl(pH7.4)で溶出した。溶出した物質を、30%アセトニトリル(pH2.5)で溶出するSP650M陽イオン交換でさらに精製した。この工程の後、溶出した物質をTFFを緩衝液に溶媒交換し、大容量の冷凍庫で保存する。
【0080】
FLINTは、配列番号1のAsn144で1個のN−結合糖タンパク質部位を有している。FLINTのオリゴ糖構造を特徴付けるために、AV12細胞にて産生させ、インタクトなFLINTおよび、のサンプルを、およびノイラミニダーゼおよびHEXseIIで処理して、末端のGalNAcおよびGlcNAc残基を除去したFLINT(脱シアル酸化FLINT)のサンプルをキャピラリーHPLC/ESI-MSにより分析した。この処理によって遊離したオリゴ糖を2-アミノベンズアミドで標識し、弱陰イオン交換(WAE)HPLCおよびLC質量分析法(LC/MS)により解析した。
【0081】
実施例2
HPLC/ESI-MSおよび蛍光HPLCによるフリントのオリゴ糖プロファイル
FLINTは1個のN−グリコシレーション部位を有する。分析に用いた組換えFLINTは、実施例1と同様にAV12細胞にて発現させ、精製した。インタクトなFLINTをキャピラリーHPLC/ESI-MSにより直接分析するか、またはノイミラニダーゼまたはHEXaseII、次いでHPLC/ESI-MSで処理した。得られた質量および予測されるFLINTペプチド骨格の質量に基づいて、オリゴ糖構造を計算した。蛍光標識したFLINTオリゴ糖を弱陰イオン交換(WAE)HPLCにより分画した。画分を集め、LC/MSにより同定した。
【0082】
FLINTのノイミラニダーゼ、HEXaseII処置
FLINT含有溶液10μL(PBS中0.43mg/mL、0.5MNaCl)を8μLの50mMNaOAc緩衝液(pH5.2)、および2uLのノイミラニダーゼ溶液(1unit/mL)と混合した。この混合物を37℃で2時間インキュベーションした。この混合物7μLをHPLC/MS分析に用い、2μLのHEXaseII酵素溶液 (Glyko, Inc.)を残りの溶液に加え、これを37℃で3時間インキュベーションしたのち、HPLC/MS分析に付した。
【0083】
蛍光標識したオリゴ糖の弱陰イオン交換(WAE)HPLC
約0.2mgのタンパク質を含有する、融解した、FLINT溶液の200μLのアリコートを、60mgの尿素、17.6μLの3MTris緩衝液(pH8.0)および3μLの50mg/mLジチオスレイトールと混合し、この混合物を37℃で10分間インキュベーションした。100mg/mLのヨード酢酸溶液5μLを添加してサンプルをアルキル化して、暗室下、室温で10分間インキュベーションした。サンプルを使い捨てのゲル濾過カラムで脱塩し、1単位のN−ガラクトシダーゼF溶液で、37℃にて2時間処理することによってオリゴ糖を遊離させた。脱グリコシル化したタンパク質を10%(v/v)酢酸溶液でpHを調整することによって沈殿させた。オリゴ糖溶液の300μLのアリコートを乾燥し、2-アミノベンズアミド染料で標識した。過剰の染料をP-2スピンカラムを用いて除去した後、標識されたオリゴ糖溶液を蛍光検出器を用いてWAE-HPLCで分析した。
【0084】
2-AB標識したFLINTオリゴ糖のWAEHPLC画分の脱シアル酸化
回収したWAEHPLC画分をそれぞれ2本のバイアルに移し、遠心吸引システムを用いて乾燥した。15μL(ノイミラニダーゼ2.5munitsを含む)の15mMNaOAc緩衝液(pH5.2)を各画分について1本のバイアルに加えた。この混合物5μLを室温で1〜15時間インキュベーションした後、LC/MS分析のために用いた。インタクトなオリゴ糖画分については、15μLのH2Oを(9)バイアルに加え、この溶液の5μLをLC/MS分析に用いた。
【0085】
キャピラリーHPLC/ESI-MS
126型溶媒デリバリーモジュールを取り付けたBeckman System Goldを使用した。HPLC 緩衝液(A:0.15%ギ酸(H2O中)およびB:0.12%ギ酸(ACN中))をTスプリットを介してポンプで送り込み、Zorbax300SBC18、2.1×150mMカラムを出口と手動注入バルブにつなぎ、Vydacキャピラリーカラム(C18、0.3×150mm)およびAPIUV検出器(785A)を別の出口につないだ。キャピラリーからのHPLCの流出分を、接合させたシリカ輸送ラインを通じて直接質量分析器に通した。Beckman溶媒デリバリーシステムは、以下のグラジェントで0.2ml/分にてポンプで送り込んだ。
時間 (分) 0 2 42 43 45 46 57
緩衝液B% 10 10 45 90 90 10 10
【0086】
スプリットの後、約5-6μL/分のHPLC流出分をキャピラリーカラムへ迂回させた。実施するごとに約2μgのFLINTをキャピラリーカラムへ注入した。APIUV検出器を、λ=214nmにセットし、データをHP1000に格納した。アーティキュレーテッド・イオンスプレー源を取り付けたPESciexAPIIII質量分析計を、CC1、OR55VおよびISV4800V、Q1scan90〜1500または100〜1400、0.33または0.20/ステップ、から滞留時間3msおよび6sec/スキャンの条件下で、これらの試験に用いた。オリゴ糖画分分析については、ショート溶媒グラジェントプログラムを用いた。
【0087】
FLINTは、1つのN−グリコシレーション部位、Asn−144を有する。タンパク質単独の理論的な分子量は29736.9Daである。インタクトなFLINTの質量スペクトルおよび再構成した質量スペクトルによって、初発シグナルの分子量31839、31883、31918、32090、32131、32169Daであり、予測されるタンパク質配列の分子量よりも約2kDa高かった。これらの質量は、二触角型オリゴ糖の予測される分子量である。中性およびアミノ単糖組成の定量分析は、FLINTがGlcNAc、GlaNAc、Man、GalおよびFucを含んでいることを示している。インタクトなFLINTの32131Daのシグナルは、(NeuAc)2(Hex)4(HexNAc)5(dHex)1(29736.9+2393.2=32130.1Da)炭化水素部分を有するFLINTタンパク質1-299で構成されている。蒸留後、このシグナルは、31547Da、twoNeuAc残基の分子量(582.6Da)から-584Da、さらにHEXaseII処置後31346Da、-201Da(HexNAc)にシフトした。理論的には消失したHexNAc残基をGalNAcまたはGlcNAcに割り当てることができる。しかし、単糖GalNAcが認められGalNAcがGlcNAcに結合しているので、消失したHexNAcは、GalNAcでありGlcNAcではない。したがって32131Daの質量のオリゴ糖は(NeuAc)2(Gal)1(GalNAc)1(GlcNAc)4(Man)3(Fuc)1である。
【0088】
これらの実験結果に基づき、FLINTの初発の糖構造は、ガラクトース残基を通常二触覚型の構造に置換する0〜2のN−アセチルガラクトサミン残基を有するモノ−およびジ−シアル酸化された二触角型のオリゴ糖であることが明らかになった。見つかったオリゴ糖の大部分は、五糖類の骨格構造にFuc残基を含んでいる。少量の三触覚型、シアロ二触覚型および硫酸化オリゴ糖もまた見つかった。
【0089】
標識されたFLINTオリゴ糖は、それらの負電荷の数にしたがってWAEHPLCにより複数のピークに分画された。各画分中の同定されたオリゴ糖初発構造は、モノおよびジ−シアル酸化された二触覚型オリゴ糖であり、総オリゴ糖の70%以上である。三および/または四触覚型オリゴ糖は、炭化水素合計の10%未満であった。
【0090】
タンパク質が完全にグリコシル化されている場合、タンパク質中のシアル酸のモル比率をWEAHPLCクロマトグラムにおける蛍光標識されたオリゴ糖の標準化されたピーク面積を用いて推定した。
【0091】
FLINTは、完全にグリコシル化されたグリコシレーション部位を1個のみ有するので(非グリコシル化タンパク質はLC/MSによって検出されなかった)、シアル酸含量を以下のWEAHPLCの結果に基づいて計算することができる:
シアル酸含量=画分のΣシアル酸化の程度×画分の百分率/100。
【0092】
FLINTのこの調製物の平均シアル酸含量は、この蛍光標識法を用いて、タンパク質1モルあたり約1.5モルであると見積もられる。同様に、タンパク質に対するシアル酸の比率はHPLC/MSのデータによって決定することができる。この同じ方法を適用して、タンパク質に対するシアル酸の比率が、LC/MS分析について1.4であると決定された。WEAHPLCクロマトグラムの標準化されたピーク面積を用いることの利点は、FLINTの正確な質量を正確に決定する必要がないということである。
【0093】
シアル酸含量をJourdian et al. J. Biol. Chem. 246, 430 (1971)の方法の修飾によって決定することもできる。シアル酸残基を、0.35M硫酸を用いて80℃にて30分間加水分解すること糖タンパク質から切断し、この溶液を水酸化ナトリウムで中和した後分析した。存在するタンパク質の量を見積もるために、組換えFLINTを標準として用い、Bio-Radによって供給される分析試薬およびマイクロ法を用いて、Bradfordタンパク質分析(Bradford Anal. Biochem. 72, 248 (1976))を行った。
【0094】
実施例3
R218QFLINTのクリアランスに対する高度シアル酸化の効果
FLINT(R218Q)の2つのロット(C7T-63A-1およびC7Z-PBS-32)の薬動力学を、雄性Cynomolgusサルにおけるクリアランスに対するシアル酸含量の影響について試験した。LC/MSおよびオリゴ糖プロファイリングに基づいて、lot#C7T-63A-1のシアル酸比率は1.7、lot#C7Z-PBS-32のシアル酸比率は0.4であった。
【0095】
FLINT(R218Q)のロットを1回の静脈内ボーラス投与(0.5mg/kg)および血液サンプルを投与後48時間の間に採取した。アフィニティー精製されたウサギポリクローナル抗FLINT抗体を用いたサンドウィッチELISA法を用い、処置した動物から得た血漿サンプルをFLINT(R218Q)の濃度について分析した。捕捉抗体は、FLINT(R218Q)のN末端部分を認識する。サンドウィッチ抗体は、FLINT(R218Q)のC末端部分を認識するビオチン化ポリクローナル抗体であった。記載したように、ELISAにおける測定は、全長FLINT(R218Q)、またはN−またはC-末端領域の分解が最小限である分子の存在に依存する。
【0096】
静脈内投与後、二相法によって両ロットのFLINT(R218Q)を血漿から除去した。化合物の両ロットのクリアランスは、早い(rapid)分配相で特徴的であった。全体として、C7Z-PBS-32(シアル酸比率:0.4)のFLINT(R218Q)の全身クリアランスは、lotC7T-63A-1(シアル酸ratio:1.7)よりも約2.5倍速かった。
【0097】
ロットC7Z-PBS-32のFLINT(R218Q)の初発分布は、より完全にシアル酸化された形態(lotC7T-63A-1)で観察されたものより広範に広がっていた。5分のレベルの約12%および23%がそれぞれ、ロットC7Z-PBS-32およびC7T-63A-1由来のFLINT(R218Q)を投与してから1時間後に血漿に残存していた。さらに、最初の時点(5分)の濃度は、ロットC7Z-PBS-32(5.48μg/ml)の投与後の方が、ロットC7T-63A-1(8.47μg/ml)の投与後よりも低かった。末期のt1/2は、より低いシアル酸含量を有するFLINT(R218Q)についてさらに短かくなった。(8.3対12.7時間;表1)。このデータは、FLINT(R218Q)上に存在する炭化水素部分における末端のシアル酸化の程度が、静脈内経路での投与後の化合物のクリアランス動力学に影響を及ぼすことを示している。シアル酸化の程度が低い分子の循環血からのクリアランス速度の増大は、暴露された末端のガラクトシダーゼ残基によって肝臓のアシアロ糖タンパク受容体を介して媒介されている可能性が最も高い。
【0098】
実施例4
天然FLINTのクリアランスに対する高度なシアル酸化に対する効果
FLINTの複数のロットの薬動力学を、哺乳類、例えば雄性CynomolgusサルにおけるFLINTのクリアランスに対するシアル酸含量の影響について試験した。LC/MSを用いたオリゴ糖およびシアル酸プロファイリングを用いて、ロット間のシアル酸化の違いを調べた。
【0099】
FLINTのロットをCynomolgusサルに1回の静脈内ボーラス投与(0.5mg/kg)で投与し、血液サンプルを投与後48時間の間に採取した。
【0100】
アフィニティー精製されたウサギポリクローナル抗FLINT抗体を用いたサンドウィッチELISA法を用い、処置した動物から得た血漿サンプルをFLINTの濃度について分析した。捕捉抗体は、FLINTのN末端部分を認識する。サンドウィッチ抗体は、FLINTのC末端部分を認識するビオチン化ポリクローナル抗体であった。記載したように、ELISAにおける測定は、全長FLINT、またはN−またはC-末端領域の分解が最小限である分子の存在に依存する。
【0101】
FLINTのクリアランス動力学に対するシアル酸化のレベルの効果を実施例3に記載したように測定する。
【0102】
実施例5
SPセファロースに対する低pHグラジェントを用いた組換えFLINTアイソフォームの精製
pHを減少させ、イオン強度を増加させるグラジェントを用いてFLINTアイソフォームを分離する。濃縮し、濾過したFLINT含有培地を、約20mg総タンパク質/mLゲルの割合でSP−セファロースのカラムに加える。次いで、カラムを約3体積カラム体積の20mMMOPS(pH5.5)で洗浄する。FLINTアイソフォームを、20mMMOPS(pH5.5)で開始し、20mMMOPS、600mMNaCl(pH5.5)を用いるグラジェントでカラムから溶出させる。
【0103】
本発明を好ましい態様について記載したが、開示した態様に限定されず、むしろ添付したクレームのの精神と範囲に様々な修飾および等価物が含まれることを意図するものであり、そのクレームの範囲はそのような修飾および等価物のすべてが含まれるようなもっとも広い解釈が認められるべきである。
【0001】
発明の背景
FLINTはアポトーシスに関与する糖タンパク質である。ここ数年、多くの強力な生物学的効果を有する数多くの腫瘍壊死因子レセプタータンパク質 (「TNFRタンパク質」) が単離されている。これらタンパク質の通常の活性の喪失は、数多くの病的状態に関わっている。
【0002】
FAS-FASリガンドシグナルトランスダクション経路の活性化の増大は、ランナウェイ(runaway)アポトーシス(Kondo et al., Nature Medicine 3 (4): 409-413 (1997); Galle et al., J. Exp. Med. 182: 1223-1230 (1995))、および好中球の活性化から生じる炎症性疾患 (Miwa et al., Nature Medicine 4: 1287 (1998))を含む多くの病的状態に関与する。「ランナウェイアポトーシス」とは、正常より大きなレベルのアポトーシス、または不適切な時に生じるアポトーシスである。ランナウェイアポトーシスにより生じる病的状態には、例えば肝臓、腎臓、および膵臓の臓器不全が含まれる。好中球の過剰な活性化を伴う炎症性疾患には、敗血症、ARDS、SIRSおよびMODSが含まれる。
【0003】
本明細書において「Fasリガンド阻害タンパク質」または「FLINT」と称する、1つの具体的なTNFRホモローグは、Fasリガンド (FasL)と結合することによってFasLとFasの相互作用を妨害する。FLINTはまた、LIGHTとして知られているリガンドと結合して、LIGHTとLTBRとの相互作用(第2の独立したアポトーシス経路においてステップを開始する)を妨害する。
【0004】
FLINTのような化合物は、Fas−FasLおよびLIGHT−LTBRのいずれかまたはその両方が関与する結合相互作用のいずれかまたはその両方と臨床的に関連し得るヒトを含む哺乳動物における疾患または状態を処置または阻止するために使用することができる。
【0005】
FLINTを含む多くの真核生物の分泌型タンパク質は1またはそれ以上のオリゴ糖基で修飾されているものが含まれる(PCT出願WO00/58466、WO00/58465、およびWO99/50413を参照)。そのようなタンパク質のグリコシレーションの程度は、物理的特性に劇的に影響を及ぼし、安定性、分泌、および細胞内ローカリゼーションにとって重要である。さらに、適切なグリコシレーション生物学的活性に本質的であり得る。実際、真核生物由来のいくつかの遺伝子は、バクテリア(例えば大腸菌)において発現したときにグリコシレーションのためにタンパク質の活性がほとんどまたは全くなかった。
【0006】
グリコシレーションは、ポリペプチド骨格に沿って特定の位置に存在し、通常2つのタイプに分けられる:コンセンサス配列の一部がAsn−X-Ser/Thr(ここで、Xはプロリン以外の任意のアミノ酸である)の場合、O−結合オリゴ糖はセリンまたはトレオニン残基に結合し、N−結合オリゴ糖はアスパラギン残基に結合する。
【0007】
さらに、N−結合およびO−結合オリゴ糖の構造および組成は異なる。N−結合およびO−結合オリゴ糖に通常見られる糖の1つのタイプは、N−アセチルノイラミン酸(以下、シアル酸と称する)である。シアル酸は、通常、N−結合およびO−結合オリゴ糖の両方に存在する末端残基であり、負に荷電しているために、糖タンパク質において酸性の特性を付与する。
【0008】
FLINTは、配列番号3のAsn173(配列番号1のAsn144)でN−結合グリコシレーション部位を、および配列番号3のThr203(あるいは、Thr174配列番号1の);および配列番号3のThr245(あるいは、配列番号1のThr216)でO−結合グリコシレーションを有する。一般的な組換え法では、配列番号1のThr216のO−結合部位は、配列番号1のThr174よりも実質的にグリコシレーションが少ない。
【0009】
FLINTシアル酸含量および分子のPIプロファイルに対する効果は、これまで明らかになっていない。本明細書では、FLINTの血清からのin vivoのクリアランスがシアル酸含量のレベルに依存するという証拠を示す。シアル酸化の程度が低いFLINTは、比較的シアル酸含量が高いFLINTよりも、霊長類の血清から迅速に消失する。これは、ある特定の肝臓のレセプター例えばアシアロ糖タンパク受容体との相互作用による、循環血からのシアル酸化されたFLINTまたはシアル酸化の程度が低いFLINTのクリアランスによって説明し得る(cf. Morrell et al. J. Biol. Chem. 243, 155 (1968);Briggs, et al. Am. J. Physiol. 227, 1385 (1974);Ashwell et al. Methods Enzymol. 50, 287 (1978)参照)。シアル酸化のレベルを上げることによってin vivoのクリアランスを遅くし、これによってFLINTの治療上の有用性が改善されると期待される。
【0010】
本発明の目的は、増大したシアル酸含量を有するFLINTのアイソフォームを提供することである。そのような分子を含有する医薬組成物によって、in vivoでのより遅いクリアランス時間、および増大した治療的価値を有するFLINT組成物が提供される。
【0011】
発明の要旨
本発明は、FLINTシアル酸アイソフォームに関する。さらに、本発明は、FLINTアイソフォームの製造方法およびFLINTアイソフォームを含有する製薬的に許容し得る組成物を提供する。本発明は、さらにヒトを含む哺乳動物における疾患または状態を処置および/または阻止するのに治療上有効な量のFLINT組成物を投与することを含む治療方法に関する。
【0012】
本発明はさらに、FLINTを含有する材料を、イオン交換クロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、またはクロマトフォーカシングに接触させることを含むFLINTアイソフォームの製造方法、ならびに酵素的方法をの使用を含むFLINTのシアル酸化を増大させる方法に関する。
【0013】
発明の詳細な記載
配列番号1−成熟ヒトFLINT、即ちリーダー配列を除いた天然FLINT。
配列番号2−成熟ヒトFLINTをコードする核酸/cDNA
配列番号3−天然ヒトFLINT
配列番号4−ヒトFLINTをコードする核酸
【0014】
用語「アナログ」または「FLINTアナログ」は、配列番号1または配列番号3において1またはそれ以上のアミノ酸配列変化、例えば、置換、付加、欠失、を有するFLINT配列変異体を意味するために特に用いる。該変化によって、配列番号1の第218番および219番(配列番号3の第247番および第248番)の間でプロテアーゼ耐性であるアナログを生じる。R218Qのようなプロテアーゼ耐性アナログはさらにN−結合グリコシレーション部位も有し得る。例えば、アナログR34N、D36T、R218Qは1つの更なる部位を含み;R34N、D36T、D194N、S196T、R218Qは2つのグリコシレーション部位をさらに含む。これらのアナログは、FLINTの生物学的活性を保持している。
【0015】
本明細書において用いられる、「平均シアル酸含量」は、FLINTサンプル調製物のシアル酸含量の定量的測定値を表し、FLINT1モルあたりのシアル酸のモル比率で表示する。この用語は、FLINTの異なる調製物を比較するのに有用である。FLINT調製物は、複数のFLINTアイソフォーム、例えば、FLINT一分子あたり0、1、2、3、4、5、6、7、8、またはそれ以上のシアル酸を含み得る。
【0016】
用語「天然FLINT」は、配列番号3を意味する。
用語「成熟FLINT」は、配列番号1を意味する。
【0017】
本明細書におけるFLINTアイソフォームの記載は、配列番号1または配列番号3を意味する。FLINTの成熟および天然のいずれの形態も本発明の範囲内であると意図される。
【0018】
用語「FLINT」には、FLINTの天然, 成熟,およびプロテアーゼ耐性が含まれる。FLINTは、in vitroおよびin vivoでFas−FasLによって誘発されるアポトーシスを阻害する能力を有するTNFRファミリーの1つである。
【0019】
「FLINTアイソフォーム」は、FLINTのシアル酸変異体を意味する。天然FLINTには、配列番号1のAsn144の1つのN−結合部位、および配列番号1のThr174の1つのO−結合部位に基づいて、FLINT一分子あたり0、1、2、3、4、5、または6個のシアル酸が存在し得る。配列番号1のThr216の第2のO−結合部位は、Thr174部位と比較して実質的にグリコシレーションが少ない。プロテアーゼ耐性アナログR218Qには、配列番号1のAsn144の1つのN−結合部位、配列番号1のThr174の1つのO−結合部位およびThr216の1つのO−結合部位に基づいて、タンパク質1分子あたり、0、1、2、3、4、5、6、7、または8個のシアル酸が存在し得る。O−結合グリコシレーションは、天然FLINTと比較して第216番のR218Q(配列番号1)で実質的に増大する。シアル酸化は、宿主細胞および増殖条件に依存する。シアル酸化は、本明細書中後述する酵素的方法を用いて試験管内で増大させることができる。
【0020】
用語「N−グリコシル化ポリペプチド」は、アスパラギンの側鎖アミド中の窒素原子がグリコシル基と共有結合している1またはそれ以上のNXS/Tモチーフを有するポリペプチドを表す。「X」は、プロリン以外のあらゆる天然のアミノ酸残基を表す。「天然のアミノ酸」は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、セリン、トレオニン、システイン、メチオニン、リジン、アルギニン、グルタミン酸、アスパラギン酸、グルタミン、アスパラギン、フェニルアラニン、ヒスチジン、チロシン、およびトリプトファンである。N−グリコシル化タンパク質は所望によりO−グリコシル化される。
【0021】
用語「O−グリコシル化ポリペプチド」は、側鎖中の酸素原子がグリコシル基と共有結合している1またはそれ以上のセリンおよび/またはトレオニンを有するポリペプチドを表す。N−グリコシル化タンパク質は所望によりO−グリコシル化される。
【0022】
用語「プロテアーゼ耐性」とは、FLINTと比較した場合に、配列番号1の218位および219位間の残基のタンパク質加水分解についてより耐性である、FLINTアナログを意味する(PCT出願WO00/58466参照)。プロテアーゼ耐性のアナログは、天然のFLINTまたは成熟FLINTと比べたりまたはそれらに対して、1つ以上のアミノ酸の置換、欠損、逆位、付加、および/またはグリコシル部位もしくはパターンの変化によってFLINTとは区別される。これらの変化は、配列番号1のおよそ214〜222位の位置の領域において起こることが好ましい。
【0023】
本明細書で用いているヌクレオチドおよびアミノ酸の略号は、当該分野および米国特許商標庁(37 C. F. R. 1.822(b)(2)に記載)で認められたものである。
【0024】
本発明は、天然FLINTに対して1またはそれ以上のアミノ酸が置換、欠失、または付加によって、プロテアーゼ耐性が生じ、場合によっては、グリコシレーションの部位がさらに追加される、天然FLINTのアイソフォーム(配列番号1および/または配列番号3)、およびFLINTのプロテアーゼ耐性アナログのアイソフォームを含む、FLINTのシアル酸アイソフォームに関する。
【0025】
プロテアーゼ耐性アナログは、配列番号1の第214〜222によって定義される領域に1またはそれ以上のアミノ酸変化を含む。具体例としては、第218のArgからGln、Glu、Ala、Gly、Ser、Val、またはTyrへの1個のアミノ酸置換が挙げられる。その他の例としては、Gly214から任意の天然のアミノ酸、Pro215から任意の天然のアミノ酸、ThR216から任意の天然のアミノ酸、Pro217から任意の天然のアミノ酸、Arg218から任意の天然のアミノ酸、Ala219から任意の天然のアミノ酸、Gly220から任意の天然のアミノ酸、Arg221から任意の天然のアミノ酸、Ala222から任意の天然のアミノ酸を含む、配列番号1の214〜222番の1またはそれ以上の置換が挙げられる。
【0026】
その他の置換には、Gly214から、His、ArgまたはLysで定義されるような正に荷電したアミノ酸、Pro215から正に荷電したアミノ酸、ThR216から正に荷電したアミノ酸、Pro217から正に荷電したアミノ酸、Arg218から正に荷電したアミノ酸、Ala219から正に荷電したアミノ酸、Gly220から正に荷電したアミノ酸、Arg221から正に荷電したアミノ酸、Ala222から正に荷電したアミノ酸が挙げられる。
【0027】
その他の置換には、Gly214からAspまたはGluで定義されるような負に荷電したアミノ酸、Pro215から負に荷電したアミノ酸、ThR216から負に荷電したアミノ酸、Pro217から負に荷電したアミノ酸、Arg218から負に荷電したアミノ酸、Ala219から負に荷電したアミノ酸、Gly220から負に荷電したアミノ酸、Arg221から負に荷電したアミノ酸、Ala222から負に荷電したアミノ酸が挙げられる。
【0028】
その他の置換には、Gly214からCys、Thr、Ser、Gly、Asn、Gln、Tyrで定義されるような極性非荷電アミノ酸、Pro215から極性非荷電アミノ酸、ThR216から極性非荷電アミノ酸、Pro217から極性非荷電アミノ酸、Arg218から極性非荷電アミノ酸、Ala219から極性非荷電アミノ酸、Gly220から極性非荷電アミノ酸、Arg221から極性非荷電アミノ酸、Ala222から極性非荷電アミノ酸が挙げられる。
【0029】
その他の置換には、Gly214からAla、Pro、Met、Leu、Ile、Val、Phe、Trpで定義されるような非極性アミノ酸、Pro215から非極性アミノ酸、ThR216から非極性アミノ酸、Pro217から非極性アミノ酸、Arg218から非極性アミノ酸、Ala219から非極性アミノ酸、Gly220から非極性アミノ酸、Arg221から非極性アミノ酸、Ala222から非極性アミノ酸が挙げられる。
【0030】
その他の置換には、プロテアーゼ耐性FLINTに、1またはそれ以上のさらなるN−結合グリコシレーション部位を追加しうる複数の変化が含まれる。例えば、Arg34からAsn、Asp36からThr、Arg218からGln、Glu、Ala、Gly、Ser、ValまたはTyr;Arg34からAsn、Asp36からThr、Asp194からAsn、SeR196からThr、Arg218からGln、Glu、Ala、Gly、Ser、Val、またはTyr;またはArg34からAsn、Asp36からThr、Arg218からArgでない任意のアミノ酸、Argでない任意の正に荷電したアミノ酸、Argでない任意の負に荷電したアミノ酸、Argでない任意の極性を有する非荷電アミノ酸、Argでない任意の非極性アミノ酸、またはGlu、Gln、Ala、Gly、Ser、Val、またはTyrであるアミノ酸;
Arg34からAsn、Asp36からThr、Asp194からAsn、SeR196からThr、Arg218からArgでない任意のアミノ酸、Argでない任意の正に荷電したアミノ酸、Argでない任意の負に荷電したアミノ酸、Argでない任意の極性を有する非荷電アミノ酸、Argでない任意の非極性アミノ酸、Glu、Gln、Ala、Gly、Ser、Val、またはTyrであるアミノ酸;またはSeR132からAsn、Arg218からArgでない任意のアミノ酸、Argでない任意の正に荷電したアミノ酸、Argでない任意の負に荷電したアミノ酸、Argでない任意の極性を有する非荷電アミノ酸、Argでない任意の非極性アミノ酸、Glu、Gln、Ala、Gly、Ser、Val、またはTyrであるアミノ酸。
【0031】
本発明によれば、FLINTアイソフォームは、等電点電気泳動法(IEF)、を含む様々な技術によって分離することができる。pHグラジェントおよび中に置き、電場に付したときに、タンパク質は正味の電荷を有しない点に移動する。これはそのタンパク質の等電点(pI)である。IEFで観察される個々のバンドは特定のpIを有する分子を表し、同じ重複する電荷はアイソフォームと呼ばれる。本明細書で用いられる用語「FLINTアイソフォーム」は、適当な方法似よって測定したときにほぼ同じpIを有し、そして同じアミノ酸配列を有するFLINT調製物を意味する。
【0032】
FLINTアイソフォームを分離するためのその他の方法としては、イオン交換カラムによる分画が挙げられる。好ましくは、アイソフォームを液体クロマトグラフィーによって分離する。
【0033】
好ましい態様では、FLINTを非ヒト真核宿主細胞で組換えにより発現させる(即ち、「組換えFLINT」)。組換えFLINTは、本明細書の一部を構成する、一般に公開されているPCT出願WO00/58466、WO00/58465、およびWO99/50413に記載されている方法にしたがって都合よく製造および精製する。例えば、FLINTcDNAを、FLINT遺伝子発現およびDHFR選択を指揮するCMVプロモーターを提供するベクターpcDNA3DHFRに組み込む。DG44-C.B4CHO細胞を線状化ベクターでエレクトロポレーションによりトランスフェクトする。非選択的増殖については、細胞をEx-Cell302培地(JRH BioSciences), 1X HT Supplement (GibcoBRL)、1×デキストラン硫酸塩 (Sigma)および6mML−グルタミン (GibcoBRL) 中で培養する。選択的増殖については、細胞を、Ex-Cell 302培地 (JRH BioSciences), 1×Supplement (GibcoBRL)、1×デキストラン硫酸塩 (Sigma)、6mML−グルタミン (GibcoBRL)およびメトトレキセート(20mMstock, USP)中で培養する。
【0034】
エレクトロポレーションの後、細胞を非選択的培養用培地に72時間回収する。96ウェルプレートを用いてプレーティングを行う。種々の細胞密度、および種々のメトトレキセート(MTX)選択圧のレベルで細胞をプレーティングする。コロニー形成が認められたら、プレートをELISAによりスクリーニングした。ウェルを24ウェルディスに移し、細胞を完全発現試験に十分に増殖させる。
【0035】
マスターのウェルを種々のレベルのメトトレキセートで増幅させる。すべてのマスターのウェルが、増幅工程の終了時点で増加した発現レベルを示した。2つのマスターウェルをFACSクローニングを用いてクローニングした。
【0036】
別の組換えFLINTのアイソフォーム(配列番号3)は、1〜8シアル酸を有するFLINT分子に対応した。FLINT1分子あたりのシアル酸残基の数が増えると、 in vivoでのFLINTのクリアランスが遅くなる効果がある
【0037】
本明細書において示されるように、in vivoクリアランスFLINTおよびR218Q(配列番号1の第218番においてArgからGln)等のプロテアーゼ耐性アナログは、シアル酸含量と関連している(実施例3および4参照)。具体的には、シアル酸含量の大きいFLINT、例えば、より大きい平均シアル酸含量は、霊長類において、対応する低いシアル酸含量を有する対応するFLINTよりもinvivoでゆっくりと消失する。天然FLINTは、1つのN−結合部位と1つのO−結合部位を有し、R218Qアナログは、1つのN−結合部位と2つのO−結合部位を有し、R218Qにおいて天然FLINTに対するさらなるO−結合部位が配列番号1の第216番に存在する。
【0038】
FLINTアイソフォーム
本発明は、FLINTアイソフォームの組成物を提供する。FLINTの特定のアイソフォームのシアル酸化パターンは、特に製造に用いた宿主細胞および増殖条件に依存して変化し得る。好ましい態様では、本発明は、平均シアル酸含量がFLINT一分子あたり約0.5シアル酸残基;あるいは、FLINT一分子あたり平均約1.0シアル酸;あるいは、FLINT一分子あたり平均約1.5シアル酸;あるいは、FLINT一分子あたり平均約2.0シアル酸;あるいは、FLINT一分子あたり平均約2.5シアル酸;あるいは、FLINT一分子あたり平均約3.0シアル酸;あるいは、FLINT一分子あたり平均約3.5シアル酸;あるいは、FLINT一分子あたり平均約4.0シアル酸;FLINT一分子あたり平均約4.5シアル酸;FLINT一分子あたり平均約5.0シアル酸;FLINT一分子あたり平均約5.5シアル酸;FLINT一分子あたり平均約6.0シアル酸;あるいは、FLINT一分子あたり約6.0シアル酸以上のシアル酸含量を有するFLINTアイソフォーム組成物に関する。
【0039】
平均シアル酸含量に関して定義される本発明の組成物は、それぞれ異なるシアル酸含量またはプロファイルを有し得る種々のFLINTアイソフォームを含有していてもよい。例えば、N−結合部位は、理論的には1つの部位に0、1、2、3、または4シアル酸を有し得る;O−結合部位は、理論的には1つの部位に0、1、または2シアル酸を有し得る。平均シアル酸含量がFLINT1モルあたり約1シアル酸の天然FLINTの組成物が考えられる。本発明の範囲内に属する組成物は、N−結合部位で平均して1回シアル酸化されている、またはO−結合部位で1回シアル酸化されているものが含まれ得る。本発明の範囲内に含まれる他の例として、組成物中のFLINT分子の画分の複数のシアル酸化が挙げられることは当業者によって理解される。本発明の組成物は、アイソフォームのそのような組み合わせのいずれかおよびすべてを意図する。
【0040】
本発明はさらに、FLINTアイソフォーム組成物の製造方法を提供する。これらの方法には、調製用等電点電気泳動法またはイオン交換クロマトグラフィー、またはクロマトフォーカシング等の方法によるアイソフォームの単離が含まれる。
【0041】
一般的に、イオン交換クロマトグラフィーおよびクロマトフォーカシングは、カラム樹脂へ、FLINTを含む準備した培地または精製した物質を、いくつかまたはすべてのFLINTアイソフォームの樹脂への結合を可能にする条件化でアプライする。
約pH5でカラムにタンパク質をアプライするのが好ましい。カラムを約pH5の緩衝液で洗浄した後、イオン交換カラムに結合したFLINTアイソフォームを、増加する塩濃度の緩衝液で溶出する。クロマトフォーカシングについては、pHをグラジェントに下げるか、またはカラムを高濃度の塩で洗浄することにより、カラムから溶出する。
【0042】
FLINT分子は分子のシアル酸含量を限定することができる、N−結合またはO−結合オリゴ糖構造を有する。例えば、テトラ触角型(antennary)(4つに分岐した)N−結合オリゴ糖は、シアル酸結合のための可能な部位が4つあるが、アスパラギン結合部位の4触角型構造に対して置換することができる2および3触角型オリゴ糖鎖は、結合したシアル酸を通常2または3個有する。O−結合オリゴ糖は通常シアル酸結合のための部位を2つ持っている。
【0043】
このように、FLINT分子は、1個のN−結合オリゴ糖が4触角型であれば、合計8つのシアル酸残基を有する。FLINTのN−結合オリゴ糖は、ガラクトースに対してα-2,3およびα−2,6結合の両方でシアル酸を含む(Takeuchi et al. J. Biol. Chem. 263, 3657(1988))。典型的には、α-2,3結合のシアル酸をマンノースα-1,6分岐鎖でガラクトースに付加し、α-2,6結合のシアル酸をマンノースα-1,3分岐鎖でガラクトースに付加する。これらシアル酸を付加する酵素(β-ガラクトシドα-2,3 シアリルトランスフェラーゼおよびβ-ガラクトシドα-2,6 シアリルトランスフェラーゼ) が、シアル酸をそれぞれマンノースα-1,6およびマンノースα-1,3分岐鎖に付加するのに最も効率的である。
【0044】
哺乳類培養細胞を、組換えFLINTに4触角型の鎖を優先的に付加する細胞についてスクリーニングし、これによりシアル酸結合のための部位の数を最大限にすることができる。ジヒドロ葉酸デヒドロゲナーゼ(DHFR)欠損Chinese Hamster Ovary (CHO) 細胞が、組換えFLINTを含む組換え糖タンパク質の製造に一般的に用いられる。これらの細胞は、β-ガラクトシドα-2,6シアリルトランスフェラーゼ酵素を発現しないため、シアル酸を、これら細胞によって産生された糖タンパク質のN−結合オリゴ糖へα-2,6結合で付加しない (Mutsaers et al. Eur. J. Biochem. 156, 651 (1986);Takeuchi et al. J. Chromatogr. 400, 207 (1987))。したがって、CHO 細胞で産生された組換えFLINTは、2,6結合でガラクトースに結合したシアル酸を欠いている (Sasaki et al. (1987), 前掲;Takeuchi et al. (1987), 前掲)。したがって、本発明の1つの態様では、ガラクトースにα-2,6結合での組み込むための機能的なβ-ガラクトシドα-2,6シアリルトランスフェラーゼ遺伝子でトランスフェクトしたCHO細胞でFLINTアイソフォームを産生させる。修飾したCHO細胞,または他の哺乳動物宿主細胞作成するための方法の開示としては、本明細書の一部を構成するLee et al. J. Biol. Chem. 264, 13848 (1989)を参照。
【0045】
FLINTのシアル酸化のin vitroでの増大
さらに本発明は、in vitro での酵素的修飾によるシアル酸化を増大させる方法を意図する。
【0046】
血中のFLINT等の糖タンパク質の循環寿命は、N−結合オリゴ糖の組成と構造に大きく依存する。一般的に、糖タンパク質の血漿半減期を最大にするには、そのN−結合炭化水素基がNeuAcGalGlcNAcの配列で終わっていることが必要である。末端のシアル酸残基(NeuAc)がなければ、暴露したGal残基を認識するレセプターによって糖タンパク質は血液から急速に消失する。このため、FLINTのような治療タンパク質の高度のシアル酸化を可能にすることは、商業的な開発には重要である。
【0047】
糖タンパク質における炭化水素構造の複雑さについては多くのことが知られているが、培養細胞において翻訳後グリコシレーションを特定する試みは遺伝子発現の技術と同じように進歩しているわけではなく、FLINTを含めて、分泌型組換え糖タンパク質のグリコシレーションは不完全であるのが一般的である。この問題に対する1つの解決手段は、炭化水素鎖を完全にするためのinvitroでの単離されたグリコシルトランスフェラーゼの使用である。
【0048】
最適なグリコシレーションは、哺乳類細胞培養系を用いて達成することは難しいかもしれない。大規模な増殖条件下では、糖タンパク質のタンパク質骨格の過剰産生は、完全なシアル酸化を達成する宿主細胞の能力を超え得る。
【0049】
本発明の方法は、シアル酸をFLINTの受容部位に付加するためのシアルトランスフェラーゼの使用を含み、好ましくは、該部位は、ガラクトシル単位を有する。FLINTのシアル酸化を増大させるための方法は、本明細書の一部を構成する、米国特許第6、030、815号の開示にしたがう。本質的には、個の方法は、シアルトランスフェラーゼをFLINTのサンプルおよび触媒量のCMP−シアル酸合成酵素、シアル酸、CTPおよび可溶性の2価の金属陽イオン(Mn+2、Mg+2、Ca+2、Co+2、およびZn+2を含む)に添加する工程を含む。好ましくは、2価陽イオン濃度を2mM〜75mMに維持する。あるいは、反応物はさらに、米国特許第6、030、815号に記載のように、CMP−シアル酸再生系(recyclilng system)を含み得る。反応を行うための商業的に入手可能な系 (GlycoAdvance(登録商標))はNeose Technologies, Inc. (Horsham, PA)から入手可能である。
【0050】
本発明の別の態様では、FLINTは、FLINTを発現させるための適当なベクターでトランスフェクトすることにより、適当な哺乳類細胞型、例えば CHO 細胞、において組換えにより製造する。FLINTを含む培養上清を濃縮し、GlycoAdvance(登録商標)系または商業的な非商業的な系を用いてプロセシングする。増大したシアル酸化を有するFLINTを標準的な精製法を用いて回収する。
【0051】
本発明はさらに、治療的適用に有用な適当な希釈剤、アジュバントおよび/または担体と共に、治療上有効量の、FLINT一分子あたり平均シアル酸含量約0.5シアル酸、あるいは、FLINT一分子あたり平均約1.0シアル酸;あるいは、FLINT一分子あたり平均約1.5シアル酸;あるいは、FLINT一分子あたり平均約2.0シアル酸;あるいは、FLINT一分子あたり平均約2.5シアル酸;あるいは、FLINT一分子あたり平均約3.0シアル酸;あるいは、FLINT一分子あたり平均約3.5シアル酸;あるいは、FLINT一分子あたり平均約4.0シアル酸;あるいは、FLINT一分子あたり平均約4.5シアル酸;あるいは、FLINT一分子あたり平均約5.0シアル酸;あるいは、FLINT一分子あたり平均約5.5シアル酸;あるいは、FLINT一分子あたり平均約6.0シアル酸;あるいは、FLINT一分子あたり平均約6.0以上のシアル酸を有するFLINTアイソフォームを含有する医薬組成物を意図する。本明細書において用いられる「治療上有効な量」とは、与えられた条件および投与レジメに関して治療効果をもたらす量を意味する。FLINTアイソフォームの投与は、静脈内投与が好ましい。
【0052】
治療的適用
本発明のFLINTアイソフォームの臨床的有用性は実質的なものであると期待される。FLINTはFasとFasLおよびLIGHTとLTBRおよびTR2/HVEWレセプターの結合を阻害し、そのような結合が関与し得る疾患および/または状態を処置するために用いることができる。
【0053】
FasL/Fasが関与する多くの病気および/または病状は、FLINT類似体による治療に応じやすい可能性がある。適当な病気および/または病状の例には、以下のものが含まれる。
【0054】
炎症性/自己免疫疾患−リウマチ性関節炎、炎症性腸疾患、移植片対宿主病、インスリン依存性糖尿病、SIRS/敗血症/MODS、膵炎、乾癬、多発性硬化症、橋本甲状腺炎、Grave病、移植拒絶、SLE、自己免疫性胃炎、繊維化肺疾患が含まれる。
【0055】
感染性疾患−HIV性リンパ球減少症、劇症ウイルス性B/C型肝炎、慢性肝炎/肝硬変、H.pylori関連潰瘍形成。
【0056】
虚血/再還流病状−急性冠動脈症候群、急性心筋梗塞、鬱血性心不全、アテローム性動脈硬化症、急性脳虚血/梗塞、脳/脊髄損傷、移植時の臓器保存。
【0057】
その他の処置としては、癌治療時の細胞保護、化学療法の補助、アルツハイマー性慢性糸球体腎炎、骨粗鬆症、TTP/HUS、再生不良性貧血、骨髄異形成症候群が挙げられる。急性肺損傷(ALI)/急性呼吸困難症候群(ARDS)、潰瘍性大腸炎、およびクローン病の治療および予防も興味深い。
【0058】
FLINT類似体が治療的に有用である他の疾患には、リウマチ性関節炎(Elliott et al., Lancet 344: 1105-10 (1994))、繊維増殖性肺疾患、繊維性肺疾患、HIV (Dockrell et al., J. Clin. Invest. 101: 2394-2405 (1998))、虚血 (Sakurai et al. 1998 Brain Res 797: 23-28)、脳外傷/損傷(Ertel et al. 1997 J Neuroimmunol 80: 93-6)、慢性腎不全(Schelling et al. 1998 Lab Invest 78: 813-824)、移植片対宿主疾患(GVHD) (Hattori et al. 1998 Blood 11: 4051-4055)、皮膚炎症 (Orteu at al. 1998 J Immunol 161: 1619-1629)、血管漏出症候群(Vascular leak syndrome)(Rafi et al. 1998 J Immunol 161: 3077-3086)、Helicobacter pylori感染症(Rudi et al. 1998 J Clin Invest 102: 1506-1514)、Goiter (Tamura et al. 1998 Endocrinology 139: 3646-3653)、アテローム性動脈硬化症(Sata and Walsh, 1998 J Clin Invest 102: 1682-1689)、IDDM (Itoh et al. 1997 J Exp Med 186: 613-618)、骨粗鬆症(Jilka et al. 1998 J Bone Min Res 13: 793-802)、クローン病(van Dullemen et al. 1995 Gastroenterology 109: 129-35)、臓器保存および移植(移植片)拒絶(Lau et al. 1996 Science 273: 109-112)、敗血症(Faist and Kim. 1998 New Horizons 6: S97-102)、膵炎(Neoptolemos et al. 1998 Gut 42: 886-91)、癌(メラノーマ、大腸、および食道)(Bennett et al. 1998 J Immunol 160: 5669-5675)、自己免疫病(IBD、乾癬、ダウン症候群 (Seidi et al., Neuroscience Lett. 260: 9 (1999)、および多発性硬化症 (D'Souza et al. 1996 J Exp Med 184: 2361-70)が含まれる。アルツハイマー病、末期腎疾患(ESRD)、単球増加症(mononulceosis)、EBV、ヘルペス、抗体依存性細胞毒性、溶血および凝固過剰症候群、例えば血管出血、DIC (播種性血管間凝固)、子癇、HELLP (血小板減少症、溶血、および肝機能障害に伴う子癇前症)、HITS (ヘパリン性血小板減少症)、HUS (溶血性尿毒症症候群)、および子癇前症、造血障害、例えば再生不良性貧血、血小板減少症(TTP)、および骨髄異形成(myelodysplasia)、ならびに例えばE. bolaによって生じる溶血性発熱(hemolytic fever)が含まれる。
【0059】
例えば、回収用調製物において臓器を保存する場合は、FLINTは、臓器提供者から取り出した臓器に対する虚血再還流障害に関連するアポトーシスを防ぐために予防的に有用である。この目的に適した媒質は知られている(例えば、EP0356367A2に記載の媒質(この内容は本明細書の一部を構成する))。該方法には移植手術の前および/または後に移植者をFLINTで処置することを含んでいてもよい。
【0060】
ARDSにヒトの可溶性FasL/Fas相互作用が介在することがあるという証拠がある (Matute-Bello et al., J. Immunol. 163,2217-2225,1999)。FLINTはFasLと結合することにより肺細胞(pneumocytes)および/または内皮細胞のFasL介在性アポプトーシを阻害することにより、急性炎症性傷害からALIへの、およびALIからARDSへの進行を阻害または予防するかも知れない。
【0061】
したがって、別の態様において、本発明は治療的有効量のFLINTをそれを必要とするヒトに投与することを含むALIおよび/またはARDSを阻害および/または治療するためのFLINTの使用に関する。
【0062】
別の態様において、本発明は、治療的有効量のFLINTを投与することにより慢性閉塞性肺疾患(COPDを治療および/または阻害する必要がある患者のCOPDを治療および/または阻害するためのFLINTアナログの使用に関する。
【0063】
別の態様において、本発明は肺繊維症(PF)を阻害および/または治療するためのFLINTの使用に関する。例えば、FLINTを肺への炎症性傷害時(例えばブレオマイシン処置時)に急性に投与し、PFの発生を防ぐことができる。
【0064】
「対象」は治療(処置)を要する哺乳動物、好ましくはヒトであるが、獣医的治療を要する動物、例えば家畜(domestic animals)(例えばイヌ、ネコなど)、家畜(farm animals)(例えば乳牛、ヒツジ、ブタ、ウマなど)、および実験動物(例えばラット、マウス、モルモットなど)でもあり得る。
【0065】
FLINTアイソフォームの「有効量」は、FASとFASリガンドまたはLIGHTとLTβRおよび/またはTR2/HVEMとの結合が介在する1またはそれ以上の過程の充分な阻害をもたらし、異常なFAS/FASL結合および/またはLIGHT介在結合に関連し得る病気または病状を有する対象において所望の治療もしくは予防効果を達成する量である。そのような過程の1例がランナウェイアポトーシスである。あるいはまた、FLINTアイソフォームの「有効量」は、FASL誘導好中球活性化により生じる炎症、または異常なFASL活性に関連するあらゆる他の前記疾患を有する対象において所望の治療および/または予防効果を達成するのに充分な量である。
【0066】
病気または病状を有する対象における「所望の治療および/または予防効果」には、そのような病気に関連する症状の軽減もしくは症状の発現の遅延が含まれる。あるいはまた、「所望の治療および/または予防効果」には、該病気を有する対象の生存率の増加または寿命の増加が含まれる。
【0067】
個体に投与するFLINTアイソフォームの量は、病気の種類と重症度、および個体の特性、例えば一般健康状態、年齢、性別、体重、および薬剤に対するトレランスに依存するであろう。該量は、病気の程度、重症度、および種類にも依存するであろう。当業者は、これらおよび他の要因に応じて適切な用量を決定することができよう。
【0068】
一般的提案として非経口的に投与される、用量あたりの本発明FLINTアイソフォーム分子の総医薬的有効量は、約1μg/kg(患者体重)/日〜10mg/kg/日、詳細には2mg/kg/日〜8mg/kg/日、より詳細には詳細には2mg/kg/日〜4mg/kg/日、さらにより詳細には2.2mg/kg/日〜3.3mg/kg/日、および最終的には2.5mg/kg/日の範囲であるが、前述したように、これは治療上の自由裁量に従うであろう。より好ましくは、この用量は少なくとも0.01mg/kg/日である。連続的に与える場合は、典型的には、本発明FLINTアイソフォームは約1μg/kg/時〜約50μg/kg/時の投与速度で1日に1〜4回注射するか、または例えばミニポンプを用いて連続的に皮下注入することにより投与される。静脈用バッグ溶液を用いてもよい。変化を観察するのに必要な処置の長さと反応が生じるための治療後の間隔は、所望の効果に応じて変化するようである。
【0069】
本発明のFLINTアイソフォーム分子を含む医薬組成物は、経口的、経直腸的、頭蓋内、非経口的、槽内(intracisternally)、膣内、腹腔内、局所的(粉末剤、軟膏、滴剤、または経皮パッチによる)、経皮的、鞘内、腔内、または経口もしくは鼻内スプレーとして投与してよい。「医薬的に許容される担体」は、非毒性固体、半固体、または液体充填剤、希釈剤、カプセル化(encapsulating)物質、またはあらゆる種類の製剤助剤を意味する。本明細書で用いている用語「非経口的」には、限定されるものではないが、FLINTアイソフォームを含む静脈内、筋肉内、腹腔内、イントラスターナル(intrasternal)、皮下、および動脈内注射、注入、およびインプラントが含まれる。
【0070】
本発明のFLINTアイソフォームは持続放出系によっても適切に投与される。適切な持続放出組成物の例には、成形品、例えば、フィルムまたはマイクロカプセルの形の半透過性ポリマー物質を含む。持続放出マトリックスには、ポリラクチド(米国特許第3,773.919号、EP 58,481)、L-グルタミン酸およびγ−エチル-L-グルタメートの共重合体(Sidman, U. et al., Biopolymers 22: 547-556 (1983))、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)(R. Langer et al., J. Biomed. Mater. Res. 15: 167-277 (1981)、およびR. Langer, Chem. Tech. 12: 98-105 (1982))、エチレンビニルアセテート(R. Langer et al., Id.)、またはポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸(EP 133,988)が含まれる。他の持続放出組成物には、リポソームに吸着された(entrapped)FLINTも含まれる。そのようなリポソームは本質的に知られた方法により製造される:DE 3,218,121; Epstein et al., Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 82: 3688-3692 (1985); Hwang et al., Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 77: 4030-4034 (1980); EP 52,322; EP 36,676; EP 88,046; EDP 143,949; EP 142,641; 日本特許出願第83-118008号; 米国特許第4,485,045および4,544,545号;ならびにEP 102,324。通常、リポソームは、脂質含有量が約30 mol %コレステロールより大きい小(約200-800Å)単層型である(選択する割合は最適なTNFRポリペプチド療法に対して調整される)。
【0071】
非経口投与するには、一般に、本発明のFLINTアイソフォームを所望の純度で医薬的に許容される担体、すなわち、用いる用量および濃度でレシピエントに無毒であり、製剤の他の成分と適合性である担体と混合して注射可能な単位用量剤形(溶液剤、サスペンジョン剤、またはエマルジョン剤)に製剤化される。例えば、該製剤は酸化剤およびポリペプチドに有害であることが知られている他の化合物を含まないことが望ましい。
【0072】
典型的には本発明FLINTアイソフォームは、適当なビークルを用いて約0.1mg/ml〜100mg/ml、好ましくは1-10mg/ml(pH約3〜8)の濃度に製剤化される。賦形剤、担体、または安定化剤のあるものを用いて本発明FLINT分子の塩が形成されると理解されよう。
【0073】
本発明は、本発明の医薬組成物の1またはそれ以上の成分を充填した1またはそれ以上の容器を含む医薬パックもしくはキットをも提供する。そのような容器には、医薬品もしくは生物学的生成物の製造、使用もしくは販売を規制する政府機関が規定する様式の、ヒト投与用の製造、使用もしくは販売の該機関による承認を反映した注意書を組み合わせることができる。さらに、本発明FLINT類似体は他の治療用化合物と組み合わせて用いてよい。
【0074】
以下の実施例は、本発明をさらに詳細に記載するが、本発明の範囲の限定するものではない。
【実施例】
【0075】
実施例1
組換えFLINTアイソフォームの単離
哺乳動物発現ベクターpGTD (Gerlitz, B. et al., 1993, Biochemical Journal 295:131)中に「内在リボソームエントリー(entry)部位」/緑色蛍光増強ポリペプチド(IRES/eGFP)をコードするPCR断片を挿入することにより、ビシストロニック(bicistronic)発現ベクターを構築した。pIG3で表すこの新規ベクターは以下のエレメントを含む:Ela反応性GBMTプロモーター(D.T.Berg et al., 1993 BioTechniques 14:972; D.T.Berg et al., 1992 Nucleic Acids Research 20: 5485)、多クローニング部位(MCS)、脳心筋炎ウイルス(EMCV)由来IRES配列、eGFPコード配列(Cormack, et al., 1996 Gene 173:33, Clontech)、SV40小「t」抗原スプライス部位/ポリアデニル化配列、SV40初期プロモーター、および複製起点、ネズミジヒドロ葉酸還元酵素(dhfr)コード配列、ならびにpBR322由来複製起点およびアンピシリン耐性遺伝子。
【0076】
ヒトFLINT cDNA配列(例えば配列番号3)に基づき、各5'末端にBclI制限部位を有するフォワードおよびリバースPCRプライマーを合成する。これらプライマーを用いてFLINT類似体cDNAをPCR増幅する。ヒトFLINT cDNAの方向とヌクレオチド配列を制限消化および挿入物の二本鎖シーケンシングにより確認する。FLINT類似体PCR増幅約900塩基対をそれぞれ制限エンドヌクレアーゼNheIおよびXbaIで消化し、NheIおよびXbaI粘着末端を有する断片を生成した。次いで、この断片をpIG3のユニークXbaI部位と結合させ、組換えプラスミドpIG3-FLINTを得た。
【0077】
組換えpIG3−FLINTプラスミドは、FLINT遺伝子を有し、メトトレキセートに対する耐性をコードする。AV12 RGT18細胞を、リン酸カルシウム法を用いて組換えpIG1ベクターでトランスフェクトする。250nMメトトレキセートに耐性な細胞を選んでプールする。耐性クローンのプールを蛍光補助セルソーティング(FACS)にかけ、ポピュレーションの上から5%の蛍光値を有する細胞をソートし単細胞としてプールした。高蛍光プールを2回連続ソーティングにかけた。一回および二回目に得られたプールおよび個々のクローンのFLINT産生をELISAで分析した。最高レベルにFLINTを発現しているプールまたはクローンを用いてスケールアップさせ、FLINTを精製した。
【0078】
FLINTの大規模製造を、数個10Lスピナー中で、pIG3−FLINTでトランスフェクトしたAV12 RGT18細胞の安定なクローンを培養することにより行った。コンフルエントに達した後にさらに細胞を2〜3日間インキュベーションし、培地中に最大量のFLINTを分泌させた。FLINTを含む培地を、0.1%CHAPSに調整し、Amicon ProFlux M12タンジェンシャルろ過システムにて350mLに濃縮した。濃縮した培地をpH6.0に調整し、流速7mL/分でSPセファロースFast Flow(Pharmacia, 500mL)に通した。吸光度(280nm)がベースラインに戻るまでカラムを緩衝液A (20mM MOPS, 0.1%CHAPS, pH6.0)で洗浄し、結合したポリペプチドを0〜1MのNaCl (緩衝液A中)の直線勾配で、4カラム体積分展開して溶出した。FLINTを含む分画をプールし、流速10mL/分で0.1%TFA/H2Oで平衡化したVydacC4カラム(100ml)に通した。この物質をPBS、0.5M NaCl、pH7.4で平衡化した16/60 Superdex200分粒カラム(Pharmacia)に通す。FLINT含有分画をSDS-PAGEで分析し、精製ポリペプチドのN末端配列がFLINTであることを確認する。
【0079】
別の精製法として、濃縮し、透明にした、FLINTを含有する培地をBlueセファロースDACに通し、7M尿素、1MNaCl(pH8)で溶出する。溶出した物質はさらにCG71逆相クロマトグラフィーで精製し、35%アセトニトリル、0.6MNaCl(pH7.4)で溶出した。溶出した物質を、30%アセトニトリル(pH2.5)で溶出するSP650M陽イオン交換でさらに精製した。この工程の後、溶出した物質をTFFを緩衝液に溶媒交換し、大容量の冷凍庫で保存する。
【0080】
FLINTは、配列番号1のAsn144で1個のN−結合糖タンパク質部位を有している。FLINTのオリゴ糖構造を特徴付けるために、AV12細胞にて産生させ、インタクトなFLINTおよび、のサンプルを、およびノイラミニダーゼおよびHEXseIIで処理して、末端のGalNAcおよびGlcNAc残基を除去したFLINT(脱シアル酸化FLINT)のサンプルをキャピラリーHPLC/ESI-MSにより分析した。この処理によって遊離したオリゴ糖を2-アミノベンズアミドで標識し、弱陰イオン交換(WAE)HPLCおよびLC質量分析法(LC/MS)により解析した。
【0081】
実施例2
HPLC/ESI-MSおよび蛍光HPLCによるフリントのオリゴ糖プロファイル
FLINTは1個のN−グリコシレーション部位を有する。分析に用いた組換えFLINTは、実施例1と同様にAV12細胞にて発現させ、精製した。インタクトなFLINTをキャピラリーHPLC/ESI-MSにより直接分析するか、またはノイミラニダーゼまたはHEXaseII、次いでHPLC/ESI-MSで処理した。得られた質量および予測されるFLINTペプチド骨格の質量に基づいて、オリゴ糖構造を計算した。蛍光標識したFLINTオリゴ糖を弱陰イオン交換(WAE)HPLCにより分画した。画分を集め、LC/MSにより同定した。
【0082】
FLINTのノイミラニダーゼ、HEXaseII処置
FLINT含有溶液10μL(PBS中0.43mg/mL、0.5MNaCl)を8μLの50mMNaOAc緩衝液(pH5.2)、および2uLのノイミラニダーゼ溶液(1unit/mL)と混合した。この混合物を37℃で2時間インキュベーションした。この混合物7μLをHPLC/MS分析に用い、2μLのHEXaseII酵素溶液 (Glyko, Inc.)を残りの溶液に加え、これを37℃で3時間インキュベーションしたのち、HPLC/MS分析に付した。
【0083】
蛍光標識したオリゴ糖の弱陰イオン交換(WAE)HPLC
約0.2mgのタンパク質を含有する、融解した、FLINT溶液の200μLのアリコートを、60mgの尿素、17.6μLの3MTris緩衝液(pH8.0)および3μLの50mg/mLジチオスレイトールと混合し、この混合物を37℃で10分間インキュベーションした。100mg/mLのヨード酢酸溶液5μLを添加してサンプルをアルキル化して、暗室下、室温で10分間インキュベーションした。サンプルを使い捨てのゲル濾過カラムで脱塩し、1単位のN−ガラクトシダーゼF溶液で、37℃にて2時間処理することによってオリゴ糖を遊離させた。脱グリコシル化したタンパク質を10%(v/v)酢酸溶液でpHを調整することによって沈殿させた。オリゴ糖溶液の300μLのアリコートを乾燥し、2-アミノベンズアミド染料で標識した。過剰の染料をP-2スピンカラムを用いて除去した後、標識されたオリゴ糖溶液を蛍光検出器を用いてWAE-HPLCで分析した。
【0084】
2-AB標識したFLINTオリゴ糖のWAEHPLC画分の脱シアル酸化
回収したWAEHPLC画分をそれぞれ2本のバイアルに移し、遠心吸引システムを用いて乾燥した。15μL(ノイミラニダーゼ2.5munitsを含む)の15mMNaOAc緩衝液(pH5.2)を各画分について1本のバイアルに加えた。この混合物5μLを室温で1〜15時間インキュベーションした後、LC/MS分析のために用いた。インタクトなオリゴ糖画分については、15μLのH2Oを(9)バイアルに加え、この溶液の5μLをLC/MS分析に用いた。
【0085】
キャピラリーHPLC/ESI-MS
126型溶媒デリバリーモジュールを取り付けたBeckman System Goldを使用した。HPLC 緩衝液(A:0.15%ギ酸(H2O中)およびB:0.12%ギ酸(ACN中))をTスプリットを介してポンプで送り込み、Zorbax300SBC18、2.1×150mMカラムを出口と手動注入バルブにつなぎ、Vydacキャピラリーカラム(C18、0.3×150mm)およびAPIUV検出器(785A)を別の出口につないだ。キャピラリーからのHPLCの流出分を、接合させたシリカ輸送ラインを通じて直接質量分析器に通した。Beckman溶媒デリバリーシステムは、以下のグラジェントで0.2ml/分にてポンプで送り込んだ。
時間 (分) 0 2 42 43 45 46 57
緩衝液B% 10 10 45 90 90 10 10
【0086】
スプリットの後、約5-6μL/分のHPLC流出分をキャピラリーカラムへ迂回させた。実施するごとに約2μgのFLINTをキャピラリーカラムへ注入した。APIUV検出器を、λ=214nmにセットし、データをHP1000に格納した。アーティキュレーテッド・イオンスプレー源を取り付けたPESciexAPIIII質量分析計を、CC1、OR55VおよびISV4800V、Q1scan90〜1500または100〜1400、0.33または0.20/ステップ、から滞留時間3msおよび6sec/スキャンの条件下で、これらの試験に用いた。オリゴ糖画分分析については、ショート溶媒グラジェントプログラムを用いた。
【0087】
FLINTは、1つのN−グリコシレーション部位、Asn−144を有する。タンパク質単独の理論的な分子量は29736.9Daである。インタクトなFLINTの質量スペクトルおよび再構成した質量スペクトルによって、初発シグナルの分子量31839、31883、31918、32090、32131、32169Daであり、予測されるタンパク質配列の分子量よりも約2kDa高かった。これらの質量は、二触角型オリゴ糖の予測される分子量である。中性およびアミノ単糖組成の定量分析は、FLINTがGlcNAc、GlaNAc、Man、GalおよびFucを含んでいることを示している。インタクトなFLINTの32131Daのシグナルは、(NeuAc)2(Hex)4(HexNAc)5(dHex)1(29736.9+2393.2=32130.1Da)炭化水素部分を有するFLINTタンパク質1-299で構成されている。蒸留後、このシグナルは、31547Da、twoNeuAc残基の分子量(582.6Da)から-584Da、さらにHEXaseII処置後31346Da、-201Da(HexNAc)にシフトした。理論的には消失したHexNAc残基をGalNAcまたはGlcNAcに割り当てることができる。しかし、単糖GalNAcが認められGalNAcがGlcNAcに結合しているので、消失したHexNAcは、GalNAcでありGlcNAcではない。したがって32131Daの質量のオリゴ糖は(NeuAc)2(Gal)1(GalNAc)1(GlcNAc)4(Man)3(Fuc)1である。
【0088】
これらの実験結果に基づき、FLINTの初発の糖構造は、ガラクトース残基を通常二触覚型の構造に置換する0〜2のN−アセチルガラクトサミン残基を有するモノ−およびジ−シアル酸化された二触角型のオリゴ糖であることが明らかになった。見つかったオリゴ糖の大部分は、五糖類の骨格構造にFuc残基を含んでいる。少量の三触覚型、シアロ二触覚型および硫酸化オリゴ糖もまた見つかった。
【0089】
標識されたFLINTオリゴ糖は、それらの負電荷の数にしたがってWAEHPLCにより複数のピークに分画された。各画分中の同定されたオリゴ糖初発構造は、モノおよびジ−シアル酸化された二触覚型オリゴ糖であり、総オリゴ糖の70%以上である。三および/または四触覚型オリゴ糖は、炭化水素合計の10%未満であった。
【0090】
タンパク質が完全にグリコシル化されている場合、タンパク質中のシアル酸のモル比率をWEAHPLCクロマトグラムにおける蛍光標識されたオリゴ糖の標準化されたピーク面積を用いて推定した。
【0091】
FLINTは、完全にグリコシル化されたグリコシレーション部位を1個のみ有するので(非グリコシル化タンパク質はLC/MSによって検出されなかった)、シアル酸含量を以下のWEAHPLCの結果に基づいて計算することができる:
シアル酸含量=画分のΣシアル酸化の程度×画分の百分率/100。
【0092】
FLINTのこの調製物の平均シアル酸含量は、この蛍光標識法を用いて、タンパク質1モルあたり約1.5モルであると見積もられる。同様に、タンパク質に対するシアル酸の比率はHPLC/MSのデータによって決定することができる。この同じ方法を適用して、タンパク質に対するシアル酸の比率が、LC/MS分析について1.4であると決定された。WEAHPLCクロマトグラムの標準化されたピーク面積を用いることの利点は、FLINTの正確な質量を正確に決定する必要がないということである。
【0093】
シアル酸含量をJourdian et al. J. Biol. Chem. 246, 430 (1971)の方法の修飾によって決定することもできる。シアル酸残基を、0.35M硫酸を用いて80℃にて30分間加水分解すること糖タンパク質から切断し、この溶液を水酸化ナトリウムで中和した後分析した。存在するタンパク質の量を見積もるために、組換えFLINTを標準として用い、Bio-Radによって供給される分析試薬およびマイクロ法を用いて、Bradfordタンパク質分析(Bradford Anal. Biochem. 72, 248 (1976))を行った。
【0094】
実施例3
R218QFLINTのクリアランスに対する高度シアル酸化の効果
FLINT(R218Q)の2つのロット(C7T-63A-1およびC7Z-PBS-32)の薬動力学を、雄性Cynomolgusサルにおけるクリアランスに対するシアル酸含量の影響について試験した。LC/MSおよびオリゴ糖プロファイリングに基づいて、lot#C7T-63A-1のシアル酸比率は1.7、lot#C7Z-PBS-32のシアル酸比率は0.4であった。
【0095】
FLINT(R218Q)のロットを1回の静脈内ボーラス投与(0.5mg/kg)および血液サンプルを投与後48時間の間に採取した。アフィニティー精製されたウサギポリクローナル抗FLINT抗体を用いたサンドウィッチELISA法を用い、処置した動物から得た血漿サンプルをFLINT(R218Q)の濃度について分析した。捕捉抗体は、FLINT(R218Q)のN末端部分を認識する。サンドウィッチ抗体は、FLINT(R218Q)のC末端部分を認識するビオチン化ポリクローナル抗体であった。記載したように、ELISAにおける測定は、全長FLINT(R218Q)、またはN−またはC-末端領域の分解が最小限である分子の存在に依存する。
【0096】
静脈内投与後、二相法によって両ロットのFLINT(R218Q)を血漿から除去した。化合物の両ロットのクリアランスは、早い(rapid)分配相で特徴的であった。全体として、C7Z-PBS-32(シアル酸比率:0.4)のFLINT(R218Q)の全身クリアランスは、lotC7T-63A-1(シアル酸ratio:1.7)よりも約2.5倍速かった。
【0097】
ロットC7Z-PBS-32のFLINT(R218Q)の初発分布は、より完全にシアル酸化された形態(lotC7T-63A-1)で観察されたものより広範に広がっていた。5分のレベルの約12%および23%がそれぞれ、ロットC7Z-PBS-32およびC7T-63A-1由来のFLINT(R218Q)を投与してから1時間後に血漿に残存していた。さらに、最初の時点(5分)の濃度は、ロットC7Z-PBS-32(5.48μg/ml)の投与後の方が、ロットC7T-63A-1(8.47μg/ml)の投与後よりも低かった。末期のt1/2は、より低いシアル酸含量を有するFLINT(R218Q)についてさらに短かくなった。(8.3対12.7時間;表1)。このデータは、FLINT(R218Q)上に存在する炭化水素部分における末端のシアル酸化の程度が、静脈内経路での投与後の化合物のクリアランス動力学に影響を及ぼすことを示している。シアル酸化の程度が低い分子の循環血からのクリアランス速度の増大は、暴露された末端のガラクトシダーゼ残基によって肝臓のアシアロ糖タンパク受容体を介して媒介されている可能性が最も高い。
【0098】
実施例4
天然FLINTのクリアランスに対する高度なシアル酸化に対する効果
FLINTの複数のロットの薬動力学を、哺乳類、例えば雄性CynomolgusサルにおけるFLINTのクリアランスに対するシアル酸含量の影響について試験した。LC/MSを用いたオリゴ糖およびシアル酸プロファイリングを用いて、ロット間のシアル酸化の違いを調べた。
【0099】
FLINTのロットをCynomolgusサルに1回の静脈内ボーラス投与(0.5mg/kg)で投与し、血液サンプルを投与後48時間の間に採取した。
【0100】
アフィニティー精製されたウサギポリクローナル抗FLINT抗体を用いたサンドウィッチELISA法を用い、処置した動物から得た血漿サンプルをFLINTの濃度について分析した。捕捉抗体は、FLINTのN末端部分を認識する。サンドウィッチ抗体は、FLINTのC末端部分を認識するビオチン化ポリクローナル抗体であった。記載したように、ELISAにおける測定は、全長FLINT、またはN−またはC-末端領域の分解が最小限である分子の存在に依存する。
【0101】
FLINTのクリアランス動力学に対するシアル酸化のレベルの効果を実施例3に記載したように測定する。
【0102】
実施例5
SPセファロースに対する低pHグラジェントを用いた組換えFLINTアイソフォームの精製
pHを減少させ、イオン強度を増加させるグラジェントを用いてFLINTアイソフォームを分離する。濃縮し、濾過したFLINT含有培地を、約20mg総タンパク質/mLゲルの割合でSP−セファロースのカラムに加える。次いで、カラムを約3体積カラム体積の20mMMOPS(pH5.5)で洗浄する。FLINTアイソフォームを、20mMMOPS(pH5.5)で開始し、20mMMOPS、600mMNaCl(pH5.5)を用いるグラジェントでカラムから溶出させる。
【0103】
本発明を好ましい態様について記載したが、開示した態様に限定されず、むしろ添付したクレームのの精神と範囲に様々な修飾および等価物が含まれることを意図するものであり、そのクレームの範囲はそのような修飾および等価物のすべてが含まれるようなもっとも広い解釈が認められるべきである。
Claims (16)
- 平均シアル酸含量がFLINT一分子あたり約0.5シアル酸未満である、FLINTアイソフォームを含有する組成物。
- 平均シアル酸含量がFLINT一分子あたり約0.5シアル酸である、FLINTアイソフォームを含有する組成物。
- 平均シアル酸含量がFLINT一分子あたり約1.0シアル酸未満である、FLINTアイソフォームを含有する組成物。
- 平均シアル酸含量がFLINT一分子あたり約1.5シアル酸未満である、FLINTアイソフォームを含有する組成物。
- 平均シアル酸含量がFLINT一分子あたり約2.0シアル酸未満である、FLINTアイソフォームを含有する組成物。
- 平均シアル酸含量がFLINT一分子あたり約2.5シアル酸未満である、FLINTアイソフォームを含有する組成物。
- 平均シアル酸含量がFLINT一分子あたり約3.0シアル酸未満である、FLINTアイソフォームを含有する組成物。
- 平均シアル酸含量がFLINT一分子あたり約3.5シアル酸未満である、FLINTアイソフォームを含有する組成物。
- 平均シアル酸含量がFLINT一分子あたり約4.0シアル酸未満である、FLINTアイソフォームを含有する組成物。
- 平均シアル酸含量がFLINT一分子あたり約4.5シアル酸未満である、FLINTアイソフォームを含有する組成物。
- 平均シアル酸含量がFLINT一分子あたり約5.0シアル酸未満である、FLINTアイソフォームを含有する組成物。
- 平均シアル酸含量がFLINT一分子あたり約5.5シアル酸未満である、FLINTアイソフォームを含有する組成物。
- 平均シアル酸含量がFLINT一分子あたり約6.0シアル酸未満である、FLINTアイソフォームを含有する組成物。
- 前記アイソフォームがプロテアーゼ耐性FLINTアナログR218である、請求項1〜13のいずれかに記載の組成物。
- 製薬的に有効量のFLINTアイソフォームおよび製薬的に許容できる希釈剤、アジュバントまたは担体を含有する医薬組成物。
- 前記FLINTがR218Qである、請求項15に記載の組成物。
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