JP2005505272A - 双極性障害と関連する脳で発現されるcap−2遺伝子およびタンパク質 - Google Patents

双極性障害と関連する脳で発現されるcap−2遺伝子およびタンパク質 Download PDF

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Abstract

我々は以前に双極性(BP)障害の候補領域として18q21.33−q23を同定し、そして酵母人工染色体(YAC)コンティグ地図を構築した。次の段階として、我々はこの領域から全てのCAG/CTG反復を単離しそして解析し、それらをBP障害への関与から除外した。今回、該領域から全てのCCG/CGG反復を同定する過程において、我々はセルピンをコードする6個の遺伝子のクラスターを見出した。それらのうちの一つ、18q21.3に位置するCAP2に関して、突然変異解析を行った。このようにして同定された一塩基多型(全部で6種)の解析によりBP障害とSNP c.942G>Tとの統計的に有意な関連が示された。従って、個体からのサンプルにおいて、個体のCAP2遺伝子における一塩基多型を決定すること、およびCAP2遺伝子における多型を参照することにより個体の状態を決定することを含んでなる個体におけるBPもしくはBPに対する感受性を診断する方法を提供することは本発明の目的である。

Description

【技術分野】
【0001】
本発明は、広範には精神医学的健康と関連する遺伝因子の決定に関する。さらに特に、本発明は、罹患個体およびそれらの家系における気分障害もしくは関連疾患に関係があるヒト遺伝子に関する。特に、本発明は、細胞質アンチプロテイナーゼ2(CAP2)をコードする遺伝子に関する。該遺伝子は第18染色体上に位置し、そして脳組織において発現され、そして双極性障害の診断マーカーとして用いることができる。
【背景技術】
【0002】
薬理遺伝学背景:
あらゆる個体は、それらの遺伝子および環境の相互作用の産物である。薬理遺伝学は、遺伝的な違いが薬剤に対する患者応答の変動にどのように影響を及ぼすかという研究である。薬理遺伝学の使用によって、我々はまもなく特定の医薬に対する応答を予測するために個体のDNA間の変異の概略を提示することができる。ヒトにおける臨床徴候の忍容性に優れ且つ有効な医薬を予測する標的検証は広く認められている問題であるが;真の難題は標的選択である。高処理量スクリーニングが現在可能である、受容体および酵素を包含する、限られた数の分子標的ファミリーが同定されている。優れた標的は、有効な分子(ヒット)を同定するためにそれに対して多数の化合物を迅速にスクリーニングすることができるものである。これらのヒットは、忍容性に優れ且つ有効な医薬の性質を有する最適化分子(リード(lead))に発展させることができる。疾病もしくは臨床徴候について検証することができる標的の選択は、製薬産業が直面する主要な問題である。最もよく検証された標的は、ヒトにおける忍容性に優れ且つ有効な医薬をすでに産み出しているもの(先例標的)である。多数の標的が科学的仮説に基づいて選択され、そして最初の仮説がたいていその後に反証されるので有効な医薬につながらない。
【0003】
高処理量標的としての用途に遺伝子を同定しそしてそれらのタンパク質生成物を発現するために2つの幅広い戦略が用いられている。ゲノム学および遺伝学のこれらの方法は技術を共有するが、異なる科学的戦略および投資を意味する。発見ゲノム学は、疾病に遺伝学的に関連することが知られていない扱いやすいもしくはスクロール可能な標的の遺伝子および遺伝子のファミリーを同定するためにDNA配列情報の増加する数のデータベースを用いる。
【0004】
患者から得られる疾病感受性遺伝子に関する情報の利点は、定義により、これらの遺伝子が疾病への患者の遺伝的寄与に関係があることである。しかしながら、大部分の感受性遺伝子は、扱いやすい標的ではないかもしくは有効な化合物を同定するための高処理量スクリーニング方法が容易にできない。
【0005】
関連する遺伝子変異体に関する差次的代謝は、疾病の発症もしくは進行の機構を発見するために集中的な機能性ゲノムおよびプロテオーム技術において研究することができる。
【0006】
改変された代謝と関連する受容体の重要な酵素は、標的として用いることができる。適切な細胞代謝に対する特定の感受性遺伝子変異体の役割に焦点を合わせる遺伝子→機能→標的(gene−to−function−to−target)戦略は重要になる。
【0007】
強力な生物情報学手段でのヒトゲノムプロジェクトおよび同様のプログラムからの配列のデータ採掘は、同様の配列を有するドメインを位置づけることにより遺伝子ファミリーを同定することを可能にしている。これらのゲノム戦略により同定される遺伝子は、一般に、ある種の機能的検証もしくは疾病プロセスとの関連性を必要とする。遺伝子と疾病との間の関連性を示すために差次的遺伝子発現、トランスジェニック動物モデル、プロテオミクス、in situハイブリダイゼーションおよび免疫組織化学のような技術が用いられる。
【0008】
ゲノム方法と遺伝的方法との間の主要な違いは標的選択であり、それは疾病プロセスに関与することがすでに既知である遺伝子および変異体特異的標的を遺伝学的に特定した。疾病との関連性の探求における各遺伝子での非特異的な大規模な遺伝子同定のための発見ゲノム学の最近の流行は、医薬の開発の大きな機会を生み出す。
【0009】
薬剤開発の中核となる問題は乏しい標的選択であると認識することもまた重要である。疾病関連検証を示すための実証されていない技術のスクリーニング使用、およびヒトにおける概念の実証へ各選択遺伝子を進めるのに必要な莫大な投資は、「検証」という言葉の実証されていないそして無頓着な使用に基づく。各失敗は、損失時間および金銭において非常に高くつく。例えば、差次的遺伝子発現(DGE)およびプロテオミクスは、標的検証に広く用いられるスクリーニング技術である。これらは、組織における遺伝子およびタンパク質発現の異なるレベルおよび/もしくはパターンを検出し、その組織を冒す疾病との関連性を示すためにそれらを用いることができる。
気分障害背景:
気分障害もしくは関連疾患には、精神障害の診断および統計マニュアル(Diagnostic and statistical Manual of Mental Disorders)、バージョン4(DSM−IV)分類学DSM−IVコードを括弧に入れて)において特定されるような以下の疾患:気分障害(296.XX,300.4,311,301.13,295.70)、統合失調症および関連疾患(295.XX,297.1,298.8,297.3,298.9)、不安障害(300.XX,309.81,308.3)、適応障害(309.XX)および人格障害(コード301.XX)が包含されるがこれらに限定されるものではない。
【0010】
本発明は、特に、双極性(BP)スペクトル障害として知られている気分障害の家系と関連する遺伝因子に関する。双極性障害(BP)は、高揚感の極度の状態(躁病)から抑うつの重い状態(鬱病)までにおよぶ気分の障害を特徴とする重度の精神医学症状である。2つのタイプの双極性障害が記述されている:I型BP障害(BPI)は、躁病の相と交互に起こる大鬱病エピソードを特徴とし、そしてII型BP障害(BPII)は、軽躁の相と交互に起こる大鬱病エピソードを特徴とする。BP発端者の親族は、BP、単極性障害(鬱病エピソードを経験するだけの患者;UP)、循環気質(小鬱病および軽躁エピソード;cy)、並びに躁病(SAm)および鬱病(SAd)タイプの統合失調性感情障害の増大した危険性を有する。これらの結果に基づいて、BP、cY、UPおよびSAはBPスペクトル障害と分類される。
【0011】
BPスペクトル障害の病因への遺伝因子の関与は、家系、双子および養子縁組研究により示唆された(非特許文献1)。しかしながら、伝達の正確なパターンは不明である。いくつかの研究において、複雑な分離解析によりBPの単一の主要な遺伝子座の存在が裏付けられる(非特許文献2)。他の研究者等は、罹患性閾値モデルを提示し、ここで、疾病を発症する罹患性は、多数の遺伝および環境作用の加法的組み合わせに起因する(非特許文献3)。
【0012】
遺伝の複雑な形式のために、BP障害がメンデルの法則のように伝達されると思われる家系においてパラメーターおよび非パラメーター連鎖戦略が適用される。染色体11p15(非特許文献4)およびXq27−q28(非特許文献5;非特許文献6)上の初期の連鎖結果は議論の余地があり、そして最初は再現することができなかった(非特許文献7;非特許文献8)。高度に多型のマーカーで飽和したヒト遺伝子地図の開発およびデータ解析技術の絶え間ない発展とともに、多数の新しい連鎖検索が行われた。いくつかの研究において、第4、12、18、21およびX染色体上の特定の領域への連鎖の証拠もしくは示唆的証拠が見出された(非特許文献9、非特許文献10、非特許文献11、非特許文献12および非特許文献13)。報告された連鎖結果の正当性を試験するために、これらの結果は他の独立した研究において再現されなければならない。
【0013】
最近、第18染色体上のセントロメア周囲(pericentromeric)領域への双極性障害の連鎖が報告された(非特許文献11)。18pter−p11および18q23−qterで切断点および欠失領域を有する環状第18染色体もまた、BP障害もしくは関連症候群にかかっている3人の関係のない患者において報告された(非特許文献10)。染色体18p連鎖はStine et al.(非特許文献14)によって再現され、彼らはまた、同じ研究において18q21.2−q21.32上の遺伝子座の示唆的証拠も報告した。
【0014】
興味深いことに、Stine et al.は親由来効果(parent−of−origin effect)を認め:連鎖の証拠は父方の家系において最も強く、ここで、発端者の父もしくは発端者の父の兄弟姉妹の一人が罹患している。いくつかの研究は、BP障害を伝達する家系における表現促進を記述し(非特許文献15、非特許文献16)、CAG/CTG、CCG/CGGもしくはGAA/TTC反復の増加によって引き起こされる多数の疾病が表現促進を示すこと(非特許文献17により概説される)を考慮して、トリヌクレオチド反復増加(TRE)の関与を示唆する。潜在的に増加した反復を見出そうとする以前の取り組みは、CCG/CGG反復の検索が増えているが、主としてCAG/CTG反復に集中している(非特許文献18、非特許文献19、非特許文献20、非特許文献21)。以前に、我々は三塩基反復の領域特異的単離の新規な方法:三塩基反復YAC断片化に関して報告した(非特許文献22)。これはCAG/CTG反復の単離の有効な方法であると判明し、そしてこの方法を用いて、我々は18q21.33−q23の範囲内から双極性障害へのCAG/CTG反復の関与を除外した(非特許文献23)。本発明はCCG/CGG反復の領域特異的単離の方法を適応させ、そしてそれを染色体18q21.33−q23 BP候補領域に適用した。
【非特許文献1】
Tsuang and Faraone(1990),the Genetics of Mood Disorders,Baltimore,The John Hopkins University Press)
【非特許文献2】
Spence et al.(1995),Am J.Med.Genet(Neuropsych.Genet.)QQ pp370−376
【非特許文献3】
MuGuffin et al.(1994),Affective Disorders;Seminars in Psychiatric Genetics Gaskell,London pp110−127
【非特許文献4】
Egeland et al.(1987),Nature 〜 pp783−787
【非特許文献5】
Mendlewicz et al.(1987,the Lancet 1 pp1230−1232)
【非特許文献6】
Baron et al.(1987)Nature 12&pp289−292
【非特許文献7】
Kelsoe et al.(1989)Nature 〜 pp238−243
【非特許文献8】
Baron et al.(1993)Nature Genet 〜 pp49−55
【非特許文献9】
Black wood et al.(1996)Nature Genetics 〜 pp427−430
【非特許文献10】
Craddock et al.(1994)Brit J.psychiatry 〜 pp355−358
【非特許文献11】
Berrettini et al.(1994),Proc Natl Acad Sci USA 〜 pp5918−5921
【非特許文献12】
Straub et al.(1994)Nature Genetics 〜 pp291−296
【非特許文献13】
Pekkarinen et al.(1995)Genome Research 2 pp105−115
【非特許文献14】
Stine et al.(1995)Am J.Hum Genet 22 pp1384−1394
【非特許文献15】
McInnis et al 1993
【非特許文献16】
Nylander et al 1994
【非特許文献17】
Margolis et al.,1999
【非特許文献18】
Kleiderlein et al 1998
【非特許文献19】
Mangel et al 1998
【非特許文献20】
Eichhammer et al 1998
【非特許文献21】
Kaushik et al 2000
【非特許文献22】
Del Favero et al 1999
【非特許文献23】
Goossens et al 2000
【発明の開示】
【0015】
[発明の要約]
本発明は、新規な単離された核酸配列および単離された核酸配列によりコードされる細胞質アンチプロテイナーゼ2(CAP2)タンパク質に関する。
【0016】
新規な単離された核酸配列は、18q21.33−q23でD18S68とD18S979との間にある8.9cM染色体領域に位置する。酵母人工染色体(YAC)(Verheyen et al 1999)を用いて物理的地図を構築した。
【0017】
以前に記述した方法をCCG/CGG反復の領域特異的単離に適応させ、そして染色体18q21.33−q23 BP候補領域に適用した。YACコンティグ地図により、セリンプロテイナーゼインヒビター(セルピン)をコードする6個の遺伝子のクラスターのBP候補領域内の局在が裏付けられた。セルピンは、α−プロテイナーゼインヒビターに高い全体的な相同性を有するタンパク質分解タンパク質のスーパーファミリーである。6個のセルピンは全て、典型的なアミノ末端の切断可能なシグナルペプチドを欠きそして細胞内もしくは両方であることができるセルピンのオボアルブミンファミリーに属する。CAP2もしくは18q21.33に位置するP18は、その5’UTR領域に組み合わされたCAG−CGG三塩基反復配列を含有し、そして脳において発現される。この研究において、我々はCAP2のゲノム構成およびエキソン/イントロン境界を決定し、そして配列変異体の一本鎖高次構造多型(SSCP)解析および変性高速液体クロマトグラフィー(DHPLC)により該遺伝子を調べた。シーケンス、RFLP−PCRもしくはパイロシーケンスによる6種の一塩基多型(SNP)の解析を75人の症例および75人の一致するコントロールのサンプルにおいて行った。
[発明の詳細な記述]
本発明は、第18染色体の18q染色体候補領域に位置する遺伝子を含んでなる新規な単離された核酸配列に関する。
【0018】
該遺伝子は、双極性スペクトル障害のような気分障害と関連する染色体領域に位置し、従って、双極性スペクトル障害の診断マーカーとして有用である。問題の領域はまた、ヒトゲノムの全体から取り除いた場合に、精神医学的健康および気分に影響を与える他の遺伝子を位置づけ、単離しそしてシーケンスするために用いることもできる。
【0019】
特に、BP候補領域は、多数の細胞内および細胞外機能に関与する脳で発現されるセルピン、細胞質アンチプロテイナーゼ2(CAP2)をコードする遺伝子を含有する。本研究において、我々はCAP2のゲノム構成を決定し、そして全てのイントロン/エキソン境界を特定した。CAP2は、概算される17kbのゲノム領域内に7個のエキソンを含んでなる。
【0020】
CAP2の突然変異解析により、3種の非同義一塩基多型(SNP):c.203G>A(Arg69Gln)、c.910A>G(Thr304Ala)およびc.1076G>A(Arg359His);2種の同義SNP c.477>Gおよびc.942>Tならびに1種のイントロンSNP IVS4+98A>Gが同定された。関係のないBP症例および一致するコントロールにおけるCAP2多型の解析により、対立遺伝子および遺伝子型頻度においてSNP c.942C>Tで統計的に有意な差が示された(p=0.03)。
新規な遺伝子の単離および同定:
関連する遺伝子を同定しそして特性化する過程において、同定されたYACクローンにそして適用できる場合には本明細書において特定するような気分障害に苦しむ個体からのDNAに、当業者に周知である標準的方法を適用した。例えば、本発明者等は、ヒト第18染色体上の対象の領域中の候補遺伝子を同定する目的で、選択したYACクローンにおけるTREについてスクリーニングするために、ヒトゲノム内のトリヌクレオチド反復増加(TRE)と気分障害における表現促進の現象との間の以前に同定された明白な関連(Lindblad et al.(1995),Neurobiology of Disease 2.pp55−62およびO’Donovan et al.(1995),Nature Genetics 1Q pp380−381)を利用することができる。様々な他の既知の方法もまた、以下に説明するように候補遺伝子を同定するために該YACクローンに適用することができる。
【0021】
従って、第一の態様として、本発明は、上記に特定するような気分障害もしくは関連疾患と関連する、その突然変異したおよび多型の変異体を包含する、少なくとも一つのヒト遺伝子を同定するための多型マーカーD18S68とD18S979との間に配置されるヒト染色体18qの8.9cM領域もしくはその断片の使用を含んでなる。以下に記述するように、本発明者等は、D18S51とD18S61との間に以前に位置づけられた12のSTR多型マーカーと家系MAD31における双極性障害との共分離の解析およびその後の対立遺伝子共有解析により、そのような遺伝子の染色体18qのこの候補領域を同定している。
【0022】
本発明に従って用いることができる候補領域を含む特定のYACは、961.h−9、942−c.3、766−f−12、731−c−7、907.e.1、752−g−8および717−d−3であり、好ましいものは961h−9、766.f.12および907−e.1であり、これらは、候補領域にわたる最小のタイリング経路(tiling path)を有するからである。使用のために適当なYACクローンは、D18S68とD18S979との間の絞り込んだ候補領域にわたる人工染色体を有するものである。
【0023】
気分障害もしくは関連疾患と関連する1個もしくは複数の候補遺伝子を同定するために、YACに存在するかどうかを問わず、上記に特定するような染色体18qの候補領域に適用することができる多数の方法がある。例えば、上記のように、ヒトゲノムにおけるトリヌクレオチド反復増加(TRE)の程度と気分障害の存在との間には明白な関連がある。
【0024】
従って、第三の態様として、本発明は、多型マーカーD18S68とD18S979との間に配置されるヒト染色体18qの領域におけるヌクレオチド三塩基反復を検出することを含んでなる本明細書において特定するような気分障害もしくは関連疾患と関連する、その突然変異したおよび多型の変異体を包含する、少なくとも一つのヒト遺伝子を同定する方法を含んでなる。
【0025】
該遺伝子もしくは複数の遺伝子を同定する代わりの方法は、多型マーカーD18S60とD18S61との間に配置されるヒト染色体18qの部分を含んでなるYACクローン、例えば7個の上記のYACクローンの一つもしくはそれ以上を断片化すること、および該断片における任意のヌクレオチド三塩基反復、特にCAGもしくはCTGの反復を検出することを含んでなる。少なくとも5個そして好ましくは少なくとも10個のCTGおよび/もしくはCAG三塩基反復を含んでなる核酸プローブは、適切に標識した場合に検出の適当な手段である。トリヌクレオチド反復はまた、既知のRED(反復増加検出)系(Shalling et al.(1993),Nature Genetics 〜 pp135−139)を用いて決定することもできる。
【0026】
第四の態様として、本発明は、気分障害もしくは関連疾患と関連しそして多型マーカーD18S60とD18S61との間のヒト染色体18qの領域にわたるYACクローンに存在する、その突然変異したおよび多型の変異体を包含する、少なくとも一つの遺伝子を同定する方法を含んでなり、該方法は、少なくとも8個であるが好ましくは少なくとも12個の連続したグルタミン残基の列を含んでなるアミノ酸配列を有するタンパク質を認識することができる抗体の使用によりヌクレオチド三塩基反復を含む遺伝子の発現生成物を検出するという工程を含んでなる。そのような方法は、ヒトDNA発現ライブラリーに、例えば7個の上記のYACクローンから、YAC DNAをサブクローニングすることにより実施することができる。関連する発現生成物を検出する好ましい手段はモノクローナル抗体、特にmAB1C2の使用により、その製造および特性は国際特許出願公開第WO 97/17445号に記述されている。
【0027】
本発明のさらなる態様は、BAC(細菌人工染色体)もしくはPAC(P1もしくはファージ人工染色体)のようなベクターまたはエキソン−トラップ(exon−trap)コスミドベクターのようなコスミドベクターへの上記に特定するような(YAC)DNAの(サブ)クローニングを含む関連する遺伝子もしくは複数の遺伝子を同定する方法に関する。そのような方法の出発点は、多型マーカーD18S60とD18S61との間のヒト染色体18qの領域のコンティグ地図の構築である。この目的のために、本発明者等は、7個の上記のYACクローンの各々におけるヒトDNAの断片の末端領域をシーケンスし、そしてこれらの配列を本明細書に開示する。上記のような他のベクターへのYAC DNAのサブクローニングの後、該サブクローンとコンティグ地図との間の重複部分を検出することができるように、本明細書に示すYACクローンコンティグに記述するような、この領域における任意の既知の配列標識部位(sequenced tagged site)と一緒に、これらの末端配列もしくはその一部、特に本明細書において図1〜11に示す配列を含んでなるプローブを構築することができる。現在のYACコンティグにおける既知の配列もまた、コンティグ地図サブクローンの作製に用いることができる。
【0028】
気分障害もしくは関連疾患と関連する1個もしくは複数の遺伝子を同定することができる一つの手段は、エキソントラッピング(exon trapping)の既知の技術の使用による。これは、特殊化したエキソン−トラップコスミドベクターの現在のプロトコルにおいてほとんどの場合利用する人工RNAスプライシングアッセイである。該ベクターは、複製起点および強力なプロモーター配列を含有するSV40ゲノムの断片、多数のクローニング部位を含有するイントロンで隔てられた2個のスプライシング能力を有するエキソンならびにSV40ポリアデニル化部位からなる人工ミニ遺伝子を含有する。
【0029】
YAC DNAをエキソン−トラップベクターにサブクローニングし、そして組換えDNAを哺乳動物細胞の株にトランスフェクションする。SV40プロモーターからの転写はRNA転写産物をもたらし、それは、通常、ミニ遺伝子の2個のエキソンを含むようにスプライシングする。クローニングしたDNA自体が機能性のエキソンを含有する場合、それはベクターのミニ遺伝子に存在するエキソンにスプライシングされることができる。逆転写酵素を用いてcDNAコピーを作ることができ、そして特定のPCRプライマーを用いて、インサートDNAのエキソンに関するスプライシング事象を同定することができる。そのような方法は、関連する遺伝子を同定するために気分障害もしくは関連疾患に苦しむ個体からのDNAの同等領域と比較することができるYAC DNAにおけるコーディング領域を同定することができる。
【0030】
従って、第五の態様として、本発明は、
(1)上記のように調製しそしてマッピングしたエキソントラップコスミドベクターで哺乳動物細胞をトランスフェクションすること;
(2)該哺乳動物細胞を適切な培地において培養すること;
(3)SV40プロモーターから発現されるRNA転写産物を単離すること;
(4)該RNA転写産物からcDNAを調製すること;
(5)該サブクローニングしたDNAにおけるコーディング領域の部分を解明するために該エキソントラップコスミドベクターにサブクローニングしたDNAのエキソンに関するスプライシング事象を同定すること;
(6)該コーディング領域と該気分障害もしくは関連疾患に苦しむ個体のDNAにおける同等領域との間の違いを検出すること;および
(7)該気分障害もしくは関連疾患と関連する該遺伝子またはその突然変異したもしくは多型の変異体を同定すること、
の工程を含んでなる気分障害もしくは関連疾患と関連する、その突然変異した変異体および多型を包含する、少なくとも一つのヒト遺伝子を同定する方法を含んでなる。
【0031】
エキソントラッピングの代わりの方法として、YAC DNAをBAC、PAC、コスミドもしくは他のベクターにサブクローニングし、そして上記のようにコンティグ地図を構築することができる。以下のように、サブクローニングしたDNA上の関連する遺伝子の位置を定めることができる利用可能な様々な既知の方法がある:
(a)cDNA選択もしくは捕獲(直接選択およびcDNA選択とも呼ばれる):この方法は、特定の(例えば脳)cDNAライブラリーからの全てのcDNAクローンのインサートのようなcDNAの複雑な混合物に、クローニングしたDNA(例えばYAC DNAのインサート)をハイブリダイズさせることによるゲノムDNA/cDNAヘテロ二本鎖の形成を含む。関連する配列はハイブリダイズし、そしてビオチン−ストレプトアビジン捕獲およびPCR(もしくは関連技術)を用いて次の工程において濃縮することができる;
(b)mRNA/cDNAへのハイブリダイゼーション:ゲノムクローン(例えば、特定のコスミドのインサート)を培養細胞系のパネルからのmRNAのノーザンブロットにもしくは適切な(例えば脳)cDNAライブラリーに対してハイブリダイズさせることができる。陽性シグナルは、クローニングした断片内の遺伝子の存在を示すことができる;
(c)CpGアイランド同定:CpGもしくはHTFアイランドは、遺伝子の5’末端に存在することが多い短い(約1kb)低メチル化GCリッチ(>60%)配列である。CpGアイランドは、いくつかのまれにしか切断しない制限酵素の制限部位を有することが多い。まれにしか切断しない制限部位のクラスター化は、CpGアイランド、従って可能性がある遺伝子を示す。CpGアイランドは、まれにしか切断しない酵素で消化したゲノムDNAのサザンブロットへのDNAクローンのハイブリダイゼーションにより、もしくはアイランド−レスキューPCR(アイランドと隣接するAlu反復との間の配列を増幅することによるYACからのCpGアイランドの単離)により検出することができる。
(d)ズー・ブロッティング:DNAクローン(例えば、特定のコスミドのインサート)を様々な動物種からのゲノムDNAサンプルのサザンブロットに対して減少したストリンジェンシーでハイブリダイズさせること。ハイブリダイゼーションシグナルの検出は保存配列を示唆し、可能性がある遺伝子を示すことができる。従って、第六の態様として、本発明は、
(1)上記のようなYAC DNAをコスミド、BAC、PACもしくは他のベクターにサブクローニングすること;
(2)サブクローン間の重複部分を検出しそしてその地図を構築するために、本明細書に記述するYACクローンコンティグにおけるようなこの領域におけるヌクレオチド配列もしくは任意の他の配列標識部位(STS)、または14個以上の連続した塩基からなるその一部もしくはその相補物を用いること;
(3)CpGアイランド同定、ズー・ブロッティング、cDNAライブラリーもしくは培養細胞系のパネルからのmRNAのノーザンブロットへのサブクローニングしたDNAのハイブリダイゼーションの一つもしくはそれ以上によりサブクローニングしたDNA内の遺伝子の位置を同定すること;
(4)該遺伝子と気分障害もしくは関連疾患に苦しむ個体のDNAの同等領域との間の違いを検出すること;および
(5)該気分障害もしくは関連疾患と関連する該遺伝子を同定すること、
の工程を含んでなる気分障害もしくは関連疾患と関連する、その突然変異したおよび多型の変異体を包含する、少なくとも一つのヒト遺伝子を同定する方法を含んでなる。
【0032】
クローニングしたYAC DNAをシーケンスする場合、関連する遺伝子の存在を確立するためにコンピューター解析を用いることができる。相同性検索およびエキソン予測のような技術を適用することができる。
【0033】
本発明の方法に従っていったん候補遺伝子が単離されると、正常な個体からの遺伝子と双極性スペクトル障害のような気分障害に苦しむ個体からのものとの間でさらに詳細な比較を行うことができる。例えば、DNA配列における突然変異もしくは多型を同定することができる、「突然変異試験」と記述されている2つの方法がある。第一のものとして、DNAサンプルを一つの特定の突然変異の有無に関して試験することができるが、これは、突然変異が何であるかもしれないかという知識を必要とする。第二のものとして、DNAのサンプルを標準(正常)DNAからの任意の偏差に関してスクリーニングする。この後者の方法は、突然変異が前もって同定されない場合に候補遺伝子を同定するのにいっそう有用である。さらに、正常なもしくは健康な個体からの遺伝子と気分障害もしくは関連疾患に苦しむ個体からのものとの間の違いを同定するために上記の方法により同定される遺伝子に以下の技術をさらに適用することができる:
(a)サザンブロッティング技術:患者および健康な個体の異なる制限酵素で消化したゲノムDNAを含有するナイロン膜にクローンをハイブリダイズさせる。患者と健康な個体との間の大きな違いは、放射性ラベリングプロトコルを用いて視覚化することができる;
(b)ポリアクリルアミドゲルにおけるヘテロ二本鎖移動度:この技術は、非変性ポリアクリルアミドゲルにおけるヘテロ二本鎖の移動度がホモ二本鎖の移動度より小さいということに基づく。これは200bp未満の断片に最も有効である;
(c)一本鎖高次構造多型解析(SSCPもしくはSSCA):一本鎖DNAは、弱い分子内結合により安定化される複雑な構造を形成するように折り畳まる。
【0034】
非変性ポリアクリルアミドゲル上のこれらの構造の電気泳動移動度は、それらの鎖長およびそれらの高次構造により決まる;
(d)ミスマッチ化学切断法(CCM):放射性標識したプローブを試験DNAにハイブリダイズさせ、そしてミスマッチの部位でDNAの一方の鎖を切断する一連の化学反応によりミスマッチを検出する。これは非常に高感度の方法であり、そしてキロ塩基長のサンプルに適用することができる;
(e)ミスマッチ酵素切断法:該アッセイはCCMと同様であるが、ある種のバクテリオファージもしくは真核生物の酵素により切断を行う;
(f)変性勾配ゲル電気泳動:この技術では、変性剤(化学物質もしくは温度)の増加する量の勾配がある電気泳動ゲルを通してDNA二本鎖を移動させる。鎖が融解しそして分離するゲル上の位置にDNA二本鎖が達するまで移動は続き、その後、変性したDNAはさらに移動しない。正常および突然変異体DNA二本鎖の間の単一塩基対の違いは、それらをゲルの異なる位置に移動させるのに十分である。
(g)ダイレクトDNAシーケンス。
【0035】
これらの適当なアッセイ技術のさらに詳細な説明を以下に提供する。
遺伝子型判定 本明細書において用いる場合、「遺伝子型判定」という用語は、CAP2をコードするポリヌクレオチドが位置942でチミジン(T)を含むかどうかを決定することを意味する。「遺伝子型判定」という用語は、「遺伝子検査」、「遺伝子スクリーニング」、「対立遺伝子もしくは多型を決定することもしくは同定すること」、「分子診断」のような用語または任意の他の同様の語句と同義である。
【0036】
適切なサンプルDNA配列におけるヌクレオチドの違いを識別することができる任意の方法もまた用いることができる。実際、多数の既知の異なる方法が、本発明のCAP2をコードするポリヌクレオチドの遺伝子型判定(すなわち、遺伝子型を決定すること)における使用に適している。これらの方法には、ダイレクトシーケンス、PCR−RFLP、ARMS−PCR、TaqmanTM、分子ビーコン、DNAチップおよびアレイ上のオリゴヌクレオチドへのハイブリダイゼーション、単一ヌクレオチドプライマー伸長ならびにオリゴライゲーションアッセイが包含されるがこれらに限定されるものではない。
遺伝子型スクリーニング 一つの態様として、本発明は、個体からのCAP2をコードするポリヌクレオチドを含んでなる核酸の遺伝子型スクリーニングの方法を提供する。個体からのCAP2をコードするポリヌクレオチドを含んでなる核酸の遺伝子型スクリーニングの方法は、その個体からの標的サンプルからの核酸の増幅を必要とし得る。
標的サンプル 本発明の標的サンプルは、解析する個体からのCAP2をコードするポリヌクレオチドを含んでなる任意の標的核酸であることができる。そのような核酸のアッセイには、実質的に任意の生物学的サンプル(真正(pure)赤血球以外)が適当である。例えば、都合の良い標的サンプルには、全血、白血球、精液、唾液、涙液、尿、糞便物質、汗、口腔(buccal)、皮膚および毛髪が包含されるがこれらに限定されるものではない。cDNAもしくはmRNAのアッセイには、標的サンプルは、典型的に、標的核酸が発現される細胞もしくは器官から得られる。
遺伝子型判定SNP 多数の異なる方法がSNPの遺伝子型を決定することにおける使用に適している。これらの方法には、ダイレクトシーケンス、PCR− RFLP、ARMS−PCR、TaqmanTM、分子ビーコン、DNAチップおよびアレイ上のオリゴヌクレオチドへのハイブリダイゼーション、単一ヌクレオチドプライマー伸長ならびにオリゴライゲーションアッセイが包含されるがこれらに限定されるものではない。適切なDNA配列における単一ヌクレオチドの違いを識別することができる任意の方法もまた用いることができる。
増幅 本明細書において用いる場合、「増幅」という用語は、鋳型特異性を伴う核酸複製を意味する。鋳型特異性は、「標的サンプル」もしくは「標的配列」特異性に関する。標的配列は、それらが他の核酸から選別されることが求められるという意味で「標的」である。その結果として、増幅技術は、主としてこれを選別するために設計されている。増幅方法の例には、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、特定の対立遺伝子のポリメラーゼ連鎖反応(PASA)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、転写増幅、自律配列複製および核酸に基づく配列増幅(NASBA)が包含されるがこれらに限定されるものではない。
TAQMAN 遺伝子型を決定するのに適当な手段は、TaqmanTM技術に基づくことができる。TaqmanTM技術は、以下の米国特許4,683,202;4,683,195および4,965,188に開示されている。TaqmanTM対立遺伝子識別アッセイに含まれるウラシルN−グリコシラーゼの使用は、米国特許5,035,996に開示されている。
PCR PCR技術は当該技術分野において周知である(例えば、EP−A−0200362およびEP−A−0201184ならびに米国特許第4 683 195号および第4 683 202号を参照)。標的配列を増幅する工程は、所望の標的配列を含有するDNA混合物に過剰の2種のオリゴヌクレオチドプライマーを導入することおよびその後のDNAポリメラーゼの存在下での正確な一連の温度サイクリングからなる。PCRでは、例えばゲノムDNAにおける特定の標的配列の単一コピーを、いくつかの異なる方法論(標識したプローブでのハイブリダイゼーション、ビオチン化したプライマーの導入およびその後のアビジン−酵素結合体検出、ならびに増幅配列へのdCTPもしくはdATPのような32pで標識したデオキシヌクレオチド三リン酸の導入のような)による検出可能なレベルに増幅することが可能である。あるいはまた、差次的に標識し、従って各々検出することができるプライマーで異なる多型部位(マーカー)を増幅することが可能である。多数のマーカーを解析する一つの手段は、各マーカーを異なる蛍光プローブで標識することを含む。次にPCR生成物を蛍光に基づく自動シーケンサーで解析する。ゲノムDNAに加えて、任意のオリゴヌクレオチド配列をプライマー分子の適切な組で増幅することができる。特に、PCR工程自体によって生じる増幅断片は、それら自体が次のPCR増幅の効率のよい鋳型である。例として、PCRはまた、ヒトにおけるもしくはヒトからのCAP2をコードするポリヌクレオチドの適当な部分を増幅するプライマーを同定するために用いることもできる。
プライマー 本発明はまた、一連の有用なプライマーも提供する。
【0037】
本明細書において用いる場合、「プライマー」という用語は、適切なバッファーにおいてそして適当な温度で適切な条件下で(すなわち、4種の異なるヌクレオシド三リン酸およびDNAもしくはRNAポリメラーゼまたは逆転写酵素のような重合のための因子の存在下で)鋳型指示DNA合成の開始点として作用することができる一本鎖オリゴヌクレオチドをさす。プライマーの適切な長さは、プライマーの意図される用途により決まるが、典型的には15〜30ヌクレオチドである。短いプライマー分子は、一般に、鋳型と十分に安定なハイブリッド複合体を形成するのにいっそう冷たい温度を必要とする。プライマーは鋳型の正確な配列を反映する必要はないが、鋳型とハイブリダイズするために十分に相補的でなければならない。
【0038】
「プライマー部位」という用語は、プライマーがハイブリダイズする標的DNAの領域をさす。
【0039】
「プライマー対」という用語は、増幅するDNA配列の5’末端とハイブリダイズする5’上流プライマーおよび増幅する配列の3’末端の相補物とハイブリダイズする3’下流プライマーを含む一組のプライマーを意味する。
【0040】
本発明のプライマーはDNAもしくはRNA、および一本鎖もしくは二本鎖であることができる。あるいはまた、プライマーは、天然に存在するかもしくは合成であることができるが、典型的には合成手段により製造される。
プライマーハイブリダイゼーション条件 本明細書において用いる場合、「ハイブリダイゼーション」という用語は、相補的な核酸の対合をさす。ハイブリダイゼーションおよびハイブリダイゼーションの強さ(すなわち、核酸間の会合の強さ)は、核酸間の相補性の程度、関与する条件のストリンジェンシー、形成されるハイブリッドの融解温度(Tm)および核酸内のG:C比のような因子により影響を受ける。
【0041】
本明細書において用いる場合、「ストリンジェンシー」という用語は、核酸ハイブリダイゼーションを行う、温度、イオン強度および有機溶媒のような他の化合物の存在の条件に関して用いる。
【0042】
ハイブリダイゼーションは、典型的に、ストリンジェントな条件下で、例えば、1M以下の塩濃度および少なくとも25℃の温度で行う。例えば、5X SSPE(750mM NaCl、50mM リン酸Na、5mM EDTA、pH7.4)および25−30℃の温度の条件は、対立遺伝子特異的プライマーハイブリダイゼーションに適している。
対立遺伝子特異的プライマー 対立遺伝子特異的プライマーは、多型に重なる標的DNA上の部位にハイブリダイズし、そしてプライマーが完全な相補性を示す対立遺伝子型の増幅のみをプライミングする(Gibbs,Nucleic Acid Res.17,2427−2448(1989)を参照)。このプライマーは、遠位部位でハイブリダイズする第二のプライマーとともに用いることができる。増幅はこれら2個のプライマーから進行し、特定の対立遺伝子型が存在することを示す検出可能な生成物をもたらす。コントロールは、一方が多型部位で単一塩基ミスマッチを示しそしてもう一方が遠位部位に完全な相補性を示すもう一対のプライマーで行うことができる。単一塩基ミスマッチは増幅を妨げ、そして検出可能な生成物は形成されない。多型と一列に並ぶオリゴヌクレオチドの最も3’の位置は、プライマーからの伸長に最も不安定であるので、この位置にミスマッチが含まれる場合に該方法は最もうまくいく(例えばWO 93/22456を参照)。
【0043】
単一塩基ミスマッチを検出するために特異的ハイブリダイゼーションが可能なハイブリダイゼーションプローブは、当該技術分野において既知でありそしてManiatas et al Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Ed(1989)Cold Spring Harbourに記述されている方法に従って設計することができる。
【0044】
(i)PCRプライマー 好ましくは、スクリーニングは、ヌクレオチド942を含むヒトのCAP2をコードするポリヌクレオチド(遺伝子)の部分を増幅するように設計されたPCRプライマーを用いて実施する。
【0045】
そのようなPCRプライマーの例を配列番号9および10として示す。
増幅した標的配列における多型の検出 増幅した核酸配列は、対立遺伝子特異的プローブ、タイリングアレイ、ダイレクトシーケンス、変性勾配ゲル電気泳動および一本鎖高次構造多型(SCCP)解析が包含されるがこれらに限定されるものではない方法を用いて検出することができる。
対立遺伝子特異的プローブ 二人の個体からのそれぞれの断片における異なる多型の型の存在のために一方の個体からの標的DNAの断片にハイブリダイズするがもう一方の個体からの対応する断片にハイブリダイズしない対立遺伝子特異的プローブを設計することができる。
【0046】
本明細書において用いる場合、「プローブ」という用語は、精製された制限消化産物におけるように天然に存在しようともしくは合成で製造しようと、対象の別のオリゴヌクレオチド配列にハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチド(すなわち、ヌクレオチドの配列)をさす。プローブは、特定の遺伝子配列の検出、同定および単離において有用である。本発明のハイブリダイゼーションプローブは、典型的に、核酸の相補鎖に塩基特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドである。
【0047】
本発明のプローブは、酵素(例えば、ELISA、ならびに酵素に基づく組織化学アッセイ)、蛍光、放射性および発光系が包含されるがこれらに限定されるものではない任意の検出系においてそれが検出可能であるように任意の「レポーター分子」で標識することができる。対象の標的配列(すなわち、検出される配列)もまた、レポーター分子で標識することができる。本発明は、任意の特定の検出系もしくは標識に限定されない。
【0048】
本発明のプローブに選択するハイブリダイゼーション条件は、対立遺伝子間でハイブリダイゼーション強度に有意な差、好ましくは本質的に2値の応答(binary respose)があり、それによりプローブが対立遺伝子の一方のみにハイブリダイズするように十分にストリンジェントである。典型的なハイブリダイゼーション条件は、1塩基対ミスマッチを決定することができるように本発明の対立遺伝子特異的プライマーに上記に示したようなストリンジェントな条件である。
タイリングアレイ 本発明の多型はまた、核酸アレイへのハイブリダイゼーションにより同定することもでき、そのいくつかの例はWO 95/11995に記述されている。「タイリング」という用語は、一般に、解析する配列(「標的配列」)に相補的な配列ならびにその配列のあらかじめ選択したバリエーションで構成されている特定の一組のオリゴヌクレオチドプローブの合成を意味する。これらのバリエーションには、通常、1個もしくはそれ以上のヌクレオチドでの1個もしくはそれ以上の塩基位置での置換が含まれる。
ダイレクトシーケンス 本発明の多型の配列の直接解析は、ジデオキシ連鎖停止法もしくはマクサム・ギルバート法(Sambrook et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual(2nd Ed.,CSHP,New York 1989を参照)のいずれかを用いて、または例えば、ABI Prism 377 DNAシーケンサーで解析するBig Dyeターミネーターサイクルシーケンス化学を用いる標準的なABIシーケンス技術を用いて実施することができる。好ましくは、本発明のアッセイに用いる多型は、同定された配列のPstI制限解析で生じる断片の有無により同定する。
1.5変性勾配ゲル電気泳動 PCRを用いて生成される本発明の増幅生成物はまた、変性勾配ゲル電気泳動の使用により解析することもできる。異なる対立遺伝子は、溶液中のDNAの異なる配列依存的融解特性および電気泳動移動度に基づいて同定することができる。Erlich,ed.,PCR Technology,Principles and Applications for DNA Amplification,(W.H.Freeman and Co,New York,1992),第7章。
一本鎖高次構造多型(SSCP)解析 本発明の標的配列の対立遺伝子はまた、Orita et al.,Proc.Nat.Acad.Sci.86,2766−2770(1989)に記述されているように、一本鎖PCR生成物の電気泳動移動度の変化により塩基の違いを同定する一本鎖高次構造多型(SSCP)解析を用いて識別することもできる。増幅PCR生成物を上記のように生成せしめ、そして加熱するかもしくはそうでなければ変性させて、一本鎖増幅生成物を生成せしめることができる。一本鎖核酸は、塩基配列に部分的に依存する二次構造を再生するかもしくは形成することができる。一本鎖増幅生成物の異なる電気泳動移動度は、標的配列の対立遺伝子間の塩基配列の違いに関係することができる。
試験配列とコントロール配列との間の違いを同定すること 増幅された核酸配列のこれらの検出方法は、基準核酸配列と試験核酸配列との間の変異の1つもしくはそれ以上の点の違いを同定するためにまたは2人もしくはそれ以上の個体からのCAP2遺伝子の異なる多型の型を比較するために用いることができる。
基準核酸配列 本明細書において用いる場合、「基準核酸配列」は、そのアッセイにおいて試験する対立遺伝子の各々のホモ接合体である一人もしくはそれ以上の個体に相当するコントロールDNA配列のようなコントロール核酸配列を意味する。例として、コントロールDNA配列には:(i)ホモ接合体の個体からのゲノムDNA;(ii)ホモ接合体の個体から増幅される関連したSNPを含有するPCR生成物;または(iii)プラスミドもしくは他の適当なベクターにクローニングされている関連したSNPを含有するDNA配列を包含することができるがこれらに限定されるものではない。コントロールサンプルはまた、対立遺伝子の既知の組からの複数の対立遺伝子を含んでなる対立遺伝子ラダーであることもできる。各々異なる対立遺伝子もしくは対立遺伝子の組を含有する複数のコントロールサンプルがあることができる。他の基準/コントロールサンプルには、典型的に、図表示、文書表示、鋳型またはPCR生成物もしくは核酸の他の断片における多型の存在を同定するのに適当な任意の他の手段が包含される。「基準核酸配列」、基準サンプルおよびコントロールサンプルという用語は、本文の全体にわたって互換的に用いる。
H.治療用途 本発明の一つの態様は、双極性気分障害にかかりやすい素因に関して個体をスクリーニングすること、およびポリヌクレオチド素因が同定される場合に、双極性気分障害を遅らせるかもしくは軽減するかもしくは防ぐためにその個体を処置することを提供する。
【0049】
本発明のこの態様の実施形態として、双極性気分障害にかかりやすい個体の素因は、上記に説明する検出の方法を用いて個体がヌクレオチド942がチミジン(T)であるCAP2をコードするポリヌクレオチドのホモ接合体であるか、位置942のグアノシン(G)がチミジン(T)で置換されるCAP2をコードするポリヌクレオチドのヘテロ接合体であるか、もしくはヌクレオチド942がグアノシン(G)であるCAP2をコードするポリヌクレオチドのホモ接合体であるかを決定することにより評価する。
【0050】
従って、該多型に関して、位置942でT/Tホモ接合体である個体は、危険性が最も高いと分類される。G/Tヘテロ接合体である個体は、中程度の危険を有すると分類される。G/Gホモ接合体である個体は、最も低い危険性のカテゴリーにあると分類される。
【0051】
場合により、個体の危険因子の評価は、CAP2をコードするポリヌクレオチド多型の存在並びに既知のポリヌクレオチド指標もしくは生理学的指標もしくは他の指標の両方を参照することにより計算される。このように本発明は、個体の危険性の測定が基づくことができるさらなる情報を提供する。
一般的な方法論参考文献 一般に、本明細書に記述する技術は当該技術分野において周知であるが、特にSambrook et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual(1989)およびAusubel et al.,Short Protocols in Molecular Biology(1999)4th Ed,John Wiley & Sons,Inc.を参照することができる。
【0052】
本明細書に記述する方法に関して、YACからのコーディング領域と気分障害もしくは関連疾患に苦しむ個体のDNAとの間の違いを検出する工程において、該個体はその疾患にかかっている誰でもあることができ、そして必ずしも家系MAD31の一員であるとは限らないと理解される。
【0053】
さらなる態様によれば、本発明は、気分障害もしくは関連疾患と関連しそして上記の方法のいずれかにより得ることができる単離されたヒト遺伝子およびその変異体、該遺伝子によりコードされる単離されたヒトタンパク質ならびに該タンパク質をコードするcDNAを提供する。
【0054】
いったん遺伝子が同定されると、コードされるタンパク質の機能を決定するために多数の方法が利用可能である。これらの方法は、Eisenberg et al(Nature vol.15,June 2000)により記述されており、そして引用することにより本明細書に組み込まれる。一つの方法は、ゲノム配列から機能連鎖を示す算定法を含み、そして遺伝子近接法(gene neighbor method)と呼ばれる。いくつかのゲノムにおいて、2個のタンパク質をコードする遺伝子が染色体上で近接する場合、これらのタンパク質は機能的に関連している傾向がある。この方法は、オペロンが一般的である原核生物における機能連鎖を明らかにすることにおいて有効であることができるが、真核生物における相互作用するタンパク質を解析することにも効果を発揮する。
CAP−2遺伝子
17.1kbのゲノムにわたる5’UTRおよび6個のコーディングエキソンを含有する細胞質アンチプロテイナーゼ2遺伝子(CAP2)の完全なイントロン−エキソン構造を本明細書に開示する。イントロンのサイズを測るために、CAP2 cDNA配列にわたるプライマーの異なる組み合わせを用いる。このようにして、5個のイントロンのサイズおよびエキソン−イントロン境界配列を得た。スプライス連結部の5’供与および3’受容部位は、共通配列と相関関係があった(表1)。第一の5’UTRエキソンは非常に小さく(73bp)、そして多型であるがMAD31ベルギー人家系においても罹患およびコントロール集団においても増加していないと判明した(CAG)(CGG)(CAG)配列を含有する。
【0055】
CAP2から得られるアミノ酸配列は、胎盤トロンビンインヒビターもしくはPI6(68%の同一性)およびプロテイナーゼインヒビター9 PI9(63%)を包含する細胞質セルピンのオボアルブミンファミリーの他のヒトメンバーに高度の同一性を示す。5種のエキソン多型が同定され、これらから3種はアミノ酸変化をもたらす。PI6およびPI9のアミノ酸配列とCAP2の推定一次構造との整列により、アミノ酸位置68で、CAP2はArgもしくはGlnのいずれかであることができ、そしてPI6ではGlnであることが示された。同様に、アミノ酸位置359で、CAP2はArgもしくはHisのいずれかを示し、そしてPI6はHisを示す15。さらに、アミノ酸位置304で、CAP2はThrもしくはAlaのいずれかを示し、そしてPI9はAlaを示す。逆に、アミノ酸位置314で、CAP2はAlaを示し、一方、IP6およびIP9はValを示す。
【0056】
DHPLCにより検出されるこれらの変異体のうち2種(c.910A>Gおよびc.942C>T)は、SSCP解析により以前に同定されなかった。
【0057】
ベルギー系の75/75症例−コントロールサンプルにおける関連解析を適用した。症例およびコントロールは、民族性、性別、年齢に関して厳密に一致させた。6種のSNPの対立遺伝子および遺伝子型頻度の比較により、6種のSNPのうち5種で患者とコントロールとの間に有意な関連は示されなかった。エキソン7におけるSNP c.942C>T置換の頻度は、BP患者とコントロールとの間で有意に異なり:BP患者は、コントロールと比較した場合にT対立遺伝子の頻度が高かった(p=0.03)。6種のSNPは同じ遺伝子内に位置するが、これらのうち4種は連鎖不平衡になかった。SNP c.203G>AとSNP IVS4+98A>Gとの間に非常に強いLDがあったが、コントロールにおいてのみであった。BP症例では、これら2種のSNP間のLDは弱かった。さらに、CAP2−CAG−CGG反復とCAP2 SNPとの間でLDは見出されなかった。BP障害およびCAP2 SNPで関連の強い証拠が見出されなかったことは、我々の集団における有意なLD結果の欠如と一緒に、CAP2がBP障害の病因において主要な役割を果たしていないかもしれないことを示唆する。
【0058】
家系MAD31の1人の罹患個体において、D18S68とD18S969との間で近位組換えが起こった11。CAP2遺伝子はこれらの2種のマーカーの間に位置する。CAP2−SNPは、この近位組換えが遺伝子の下流で起こったことを示した。
【実施例1】
【0059】
A.家系、患者およびコントロール被験体
BPII発端者を有するベルギー人家系、MAD31における家系および臨床診断は他の所で詳細に記述された10。簡潔に言えば、家系MAD31における異なる臨床診断は以下のとおりである:1 BPI、2 BPII、2 UP、4 大鬱病性障害(MDD)、1 統合失調性躁病(SAm)および1 統合失調性鬱病(SAd)。
【0060】
症例−コントロールサンプルは、ブリュッセルのErasme病院で確かめられたベルギー系の75人の関係のない患者、ならびに病院における告示によって募集された75人の年齢、性別および民族性の一致するコントロール被験体からなった。全てのコントロール個体は、精神医学症状を除くために面接した。患者は、BP障害の研究診断基準(Research Diagnostic Criteria)16を満たした。
B.PCR増幅
ゲノムDNAおよびcDNAは、CAP2 cDNA配列(GenBank受託番号L40377)15にわたる6つの重複するプライマー組を用いて増幅した。約50ngのゲノムDNAもしくは1ngのcDNAおよび10pgの各プライマーを標準的なPCR反応において使用した。増幅条件は以下のとおりであった:94℃で4分間の最初の変性工程、続いて1分間94℃、1分間55℃、2分間72℃で35サイクル、および72℃で10分間の最後の伸長期間。
C.サザンブロット解析
家系MAD31の3人の罹患メンバーおよび2人の非罹患メンバーからのゲノムDNAをHindIIIおよびBamHIで別個に消化し、そして1%アガロースゲル上で泳動した。サザンブロッティングは、標準プロトコル17に従って実施した。
【0061】
50ngのCAP2 cDNAをランダムプライムラベリング(Gibco−BRL)により(α−32P)dCTPで標識した。ハイブリダイゼーションは、65℃でChurchバッファーにおいて一晩実施した。次に、膜を65℃で1XSSC、0.1% SDSにおいて1回、0.5XSSC、0.1% SDSにおいて1回、そして0.1XSSC、0.1% SDSにおいて2回洗浄し、続いてKodak X線フィルムに−70℃で72時間露出した。
D.SSCPおよびDHPLC解析
PCR増幅したDNAは、あらかじめ成形されたすぐに使用できるゲルおよびHydrolink 5%グリセロールゲル(Pharmacia Biotech)でDNA解析システムを用いてSSCPにより解析した。
【0062】
変性高速液体クロマトグラフィー(DHPLC)は、Transgenomic(Santa Clara,CA,USA)から購入した自動機器で実施した。粗PCR生成物をDNASepカラム上に載せ、そして0.9ml/分の一定の流速で、0.1Mトリエチルアミンアセテートバッファー(TEAA)、pH7におけるアセトニトリル勾配を用いてカラムから溶出した。勾配は、溶離剤AおよびBを混合することにより作製した。溶離剤Aは0.1M TEAA、0.1M NaEDTAであった。溶離剤Bは0.1M TEAA中25%のアセトニトリルであった。ヘテロ二本鎖分子の成功した分離に必要な勾配および温度は、Wavemakerバージョン3.4.4により予測した。
E.DNAシーケンス
シーケンスは、製造業者のプロトコルに従って、Perkin−Elmer ABI 377自動シーケンサーおよびBig Dyeターミネーターサイクルシーケンスキット(Applied Biosystems,PE)を用いてプラスミドDNAもしくはゲル精製したPCR鋳型に行った。PCR断片は最初にアガロースゲル上で視覚化し、そして次にUltrafree−DAフィルター装置(Millipore)を用いてゲル精製した。
F.パイロシーケンス
ビオチン化したPCR生成物をストレプトアビジンで被覆した常磁性ビーズ(Dynal AS,Oslo,Norway)上に固定した。ssDNAは、固定したPCR生成物を50μlの0.5M NaOHにおいて5分間インキュベーションし、続いて100μlの10mM Tris−アセテート pH7.6において2回連続して洗浄することにより得た。プライマー エキソン7−1025(5’−GTG CCT CTG TCC AAG GTT GC−3’)は、エキソン7におけるSNP c.942の検出のためのパイロシーケンスプライマーとして用いた。プライマーアニーリングは、72℃で2分間そして次に室温で5分間のインキュベーションにより行った。パイロシーケンスは、PSQ96パイロシーケンサー(Pyrosequencing AB,Uppsala,Sweden)で行った。
G.統計解析
BP症例およびコントロールの全対立遺伝子および遺伝子型分布を比較し、そしてGenepop18を用いてハーディー・ワインバーグ平衡を試験した。対立遺伝子および遺伝子型特異的比較は、カイ二乗解析もしくは必要に応じてフィッシャーの直接確率検定を用いて行った。遺伝子型判定した全てのSNPのデータを合わせる複数点関連解析にはDismultプログラム19を用いた。連鎖不平衡(LD)は、GenepopのLinkdosを用いて計算した。患者およびコンロトールにおけるハプロタイプ頻度を概算するために、最尤法に基づくArlequinアルゴリズムを適用した20
H.CAP2遺伝子のゲノム構造
我々は、CAP2遺伝子のゲノム構造を決定した。第一に、家系MAD31の5人の選択したメンバー(3人の罹患および2人の非罹患)からのHindIIIでそしてBamHIで消化したゲノムDNAを含有する2枚の異なるサザンブロットに対してPCRで得られたCAP2 cDNA断片をハイブリダイズさせることによりCAP2遺伝子をゲノム再編成に関して解析した。観察されるハイブリダイズしたバンドに基づき、25kbの最小ゲノムサイズが概算された。罹患および非罹患個体のハイブリダイゼーションパターンの間で違いは認められなかった。
【0063】
cDNAプライマーを用いて、ゲノムDNAに対するPCRからイントロンの位置およびサイズが得られた。シーケンスの後、cDNAおよびゲノム配列の比較により正確なエキソン−イントロン境界を決定した(表1)。これらのゲノム配列からイントロンプライマーを設計した(表4)。
【0064】
【表1】
Figure 2005505272
【0065】
この解析により、CAP2は73bp(エキソン1)〜405bp(エキソン7)におよぶサイズを有する1個の非コーディングエキソンおよび6個のコーディングエキソンを含有することが示された(図1および表1)。イントロン2〜6のサイズはPCRにより決定し、そして1.3Kb(イントロン2)〜1.8Kb(イントロン3)であった(図1)。これらの実験が進行中であった間に、CAP2遺伝子を含有するBAC 793J2の完全な配列が利用できるようになった(Genbank受託番号AC009802)。エキソン−イントロン境界配列、イントロンおよびエキソンサイズを確かめ、そしてイントロン1のサイズを8.1kbと決定した。全体で、CAP2遺伝子は17.1kbのゲノム領域にわたる。
【0066】
CAP2遺伝子の方向を定めるために、CAP2−CAG断片化YAC21をL40377(CAP2エキソン7)を含む遺伝子に対してセントロメアおよびテロメアのSTSマーカーの存在に関して解析した。PCR解析により、CAP2に対してセントロメアのマーカーでの陽性ヒットおよび遺伝子に対してテロメアのマーカーでの増幅の欠如が示され、CAP2の転写方向がセントロメアからテロメアへであることが示された。
【0067】
【表2】
Figure 2005505272
【0068】
突然変異検出および解析
24人のBP患者のDNAから全てのエキソンをPCR増幅するためにイントロンプライマーを設計した。SSCP解析を用いてPCR生成物を突然変異に関してスクリーニングした。2種の非同義SNPがc.203G>A(Arg68Gln)およびc.1076G>A(Arg359His)で同定された。Leuをコードする1種の同義SNPがc.477A>G(コドン159)で同定された。さらに、1種のSNPがイントロン4、IVS4+98A>Gにおいて検出された。これらの結果はDHPLC解析により確かめられ、そしてc.910A>G(Thr304Ala)およびAlaをコードするc.942C>T(Ala314Ala)におけるものの、エキソン7における2種の追加のSNPの同定をもたらした(表2)。
【0069】
【表3】
Figure 2005505272
【0070】
75人の関係のない双極性患者および75人の一致するコントロールにおけるPCR−RFLP解析をこれらの変異体のうち3種について行った:SNP IVS4+98A>GにはRsaI−RFLPアッセイを適用した。SNP c.910A>GにはPvuII−RFLP解析を適用した。SNP c.1076G>AにはHhaI−RFLP解析を適用した。SNP c.477A>Gおよびc.203G>Aは、ゲノムDNAから作製したPCR断片のダイレクトシーケンスにより解析した。SNP c.942C>Tを解析するためにはパイロシーケンスを用いた。
【0071】
これらのSNPのうち5種において対立遺伝子頻度もしくは遺伝子型分布におけるBP患者とコントロールとの間の有意な差はなかった。しかしながら、SNP c.203G>A(p=0.05)およびc.477A>G(p=0.03)のハーディー・ワインバーグ平衡のわずかな偏差が、両方ともBPにおいてあり、これは過剰のヘテロ接合体によってもたらされる(ex3ではp=0.03;ex5ではp=0.02)。さらに、コントロールにおいてSNP c.203G>Aのわずかに過剰のヘテロ接合体がある(p=0.04)
SNP c.942C>TのT対立遺伝子は、コントロール(1%)におけるよりBP症例(6%)において有意に高い頻度を有した(χ=4.83;p=0.03)。遺伝子型を比較する場合、2/75(3%)のコントロールと比較して9/73(12%)が1個のT対立遺伝子を有した(χ=5.02;p=0.03)。興味深いことに、性別の層化後にデータを解析した場合、有意な差が認められた。男性では、T対立遺伝子はBP患者において8%の頻度を有し、一方、コントロールにおいてそれは認められなかった(フィッシャーの直接確率検定、p=0.03)。女性では、対立遺伝子もしくは遺伝子型分布における違いは症例とコントロールとの間で認められなかった。
【0072】
これらの結果を確かめるために、関係のない患者および一致するコントロール群を拡張し、そして113人のBP患者および163人の年齢、性別および民族性の一致するコントロールにおいて最終的な遺伝子型判定関連解析を行った。表3は、患者およびコントロール集団におけるこれらの多型の対立遺伝子および遺伝子型頻度を示す。
【0073】
【表4】
Figure 2005505272
【0074】
【表5】
Figure 2005505272
【表6】
Figure 2005505272

【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】18q21.33−q23 BP候補領域(Verheyen et al 1999)の最小のYACタイリング経路。YACを実線で、CCG/CGG断片化生成物を点線で表す。括弧の間のYACサイズは、PFGE解析により概算される。詰まった丸は、陽性のSTS/STRヒットを示す。斜線付きボックスは、YAC断片化により単離されたCCG/CGG反復および3つのCpGアイランドを強調する。
【図2】細胞質アンチプロテイナーゼ2(CAP2)遺伝子のゲノム構造。黒色のボックスはエキソンを表し、そしてbp単位のそれらのサイズをボックスの上に示す。イントロンサイズはkb単位である。組み合わされたCAG−CGG反復を示す。転写開始および終始コドンを示す。

Claims (13)

  1. 個体からのサンプルにおいて、個体のCAP2遺伝子における一塩基多型を決定すること、およびCAP2遺伝子における多型を参照することにより個体の状態を決定することを含んでなる個体におけるBPもしくはBPに対する感受性を診断する方法。
  2. 個体の一塩基多型がCAP2遺伝子における多型と連鎖不平衡にある請求項1に記載の方法。
  3. 一塩基多型がSNP c.942G>Tに等しい請求項1もしくは2に記載の方法。
  4. 個体のCAP2遺伝子における一塩基多型が、ARMS法およびサザンブロッティング技術のような制限断片長多型、SSCP解析、ミスマッチ化学切断法および変性高速液体クロマトグラフィーから選択される方法により決定される請求項1〜3のいずれか一つに記載の方法。
  5. 個体のCAP2遺伝子における一塩基多型が、一塩基多型を含有するCAP2遺伝子の断片を増幅する1対のPCRプライマーを用いて決定される請求項1〜3のいずれか一つに記載の方法。
  6. 一塩基多型がSNP c.942G>Tからなる請求項5に記載の方法。
  7. CAP2遺伝子の断片を増幅するPCRプライマー対が、配列番号9および配列番号10の配列を含んでなるフォワードおよびリバースプライマーからなる請求項5に記載の方法。
  8. 一塩基多型を含有するCAP2遺伝子の断片を増幅することができる1対のPCRプライマー。
  9. 配列番号9および配列番号10の配列を含んでなるフォワードおよびリバースプライマーからなる1対のPCRプライマー。
  10. 請求項8もしくは9に記載のPCRプライマー対を含んでなる診断キット。
  11. 個体のCAP2遺伝子における一塩基多型が、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドプローブによって決定される請求項1〜3のいずれか一つに記載の方法。
  12. 個体のCAP2遺伝子における一塩基多型SNP c.942G>Tを検出することができる対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドプローブ。
  13. 請求項12に記載の対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドプローブを含んでなる診断キット。
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